1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年三月十九日(火曜日)
午前十時三十一分開会
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出席者は左の通り。
委員長 廣瀬 久忠君
理事
木内 四郎君
西川甚五郎君
江田 三郎君
平林 剛君
天坊 裕彦君
委員
稲浦 鹿藏君
木暮武太夫君
塩見 俊二君
土田國太郎君
苫米地英俊君
宮澤 喜一君
武藤 常介君
天田 勝正君
大矢 正君
栗山 良夫君
椿 繁夫君
杉山 昌作君
事務局側
常任委員会専門
員 木村常次郎君
公述人
一橋大学教授 井藤 半弥君
日本労働組合総
評議会政治部長 小山 良治君
全日本中小企業
協議会中央委員
長 五藤 斉三君
興国人絹パルプ
株式会社取締役
経理部長 青砥 正吉君
産業経済新聞社
取締役論説副委
員長 波多 尚君
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本日の会議に付した案件
○所得税法の一部を改正する法律案
(内閣送付、予備審査)
○法人税法の一部を改正する法律案
(内閣送付、予備審査)
○租税特別措置法案(内閣送付、予備
審査)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/0
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001・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) これより大蔵委員会公聴会を開きます。
本日は所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法案、以上、三案について五人の公述人の方々から御意見を伺うのでございますが、公聴会に入るに先立ちまして、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます、
御多用のところ、御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。当委員会としては皆さん方の御意見を十分に拝聴いたし、今後の法律案の審査に参考といたして参りたいと存じておるのでございます。この点お含みの上、忌憚なき御意見の御開陳をお願いいたします。
また、後刻、委員からいろいろ御質問を申し上げますが、その際は簡明に御答弁をお願いいたします。
それではまず、一橋大学教授井藤半弥君に公述をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/1
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002・井藤半弥
○公述人(井藤半弥君) 一橋大学の井藤半弥であります。お招きによりまして、所得税法、法人税法、租税特別措置法の一部を改正する法律案、諸法案を中心に卑見を申し上げることにいたします。
三つの法案が主題になっておりますが、ほかの国税で時には地方税とも関連がございますので、この三つの法案以外のものに多少触れるところもございますので、この点あらかじめ御了承願いたいと思います。
それで私申し上げますことは、三つの法案を中心とすると申しますけれども、実は国税全般にわたるところが非常に多いと思いますので、この点もあらかじめお含みを願います。それからもう一つあらかじめ御了承願いたいことは、ちょうど一カ月前、二月十九日衆議院予算委員会で、予算の公聴会に招かれまして公述いたしました。そのときもやはり税制問題につきましても簡単に触れたのであります。今日申し上げますことは、その部分と非常に重複するところが多いのであります。また重複するのはある意味において当然とも考えられます。同じ人間が同じ問題について意見を述べるということになりますと、多少重複する部分は当然かということでありまするが、しかし多少違うところもございますが、それはこの一カ月の間に、政府が新らしい計数なんかを発表したものがございますので、一カ月前に申し上げた資料をもっと新らしい材料によって補綴を加えたところもあるということを申し添えておきます。それから一カ月前の衆議院の予算の公聴会の場合は、予算全般でございましたが、きょうは何と申しましても税制中心でございますので、それと結論は同じでございますけれども、よりこまかに卑見を申し上げさしていただきます。
すぐに中へ入ります、これは毎度いつもこういう機会に申し上げておることでございますが、国の税制を検討する場合に二つの点に分けて問題にするのが便利だと思います。そのうちの一つは、租税負担が全体として見まして、国の、国民の全体の経済力その他から見て当を得たものであるかどうか、これが一番の問題であります。二番の問題はこの全体としての数量がかりに当を得たもの、あるいはかりに当を得ないものと仮定いたしましても、その内容がどうか、それを国民に割当てる割り当て方がうまくいっておるかどうか、すなわち数量の問題と内容の問題、この二つに分けて公述するのが便利だと思いますので、このやり方によって公述いたします。
まず第一に数量の問題であります。御案内の通り、昭和三十二年度の予算によりますと、国税は合計いたしまして、もちろんその中には、たばこ、その他の専売益金を含めますが、国税が、合計いたしまして一兆九百四十八億円であります。それに地方税が四千六百九十二億円、国税、地方税を合計いたしますと一兆五千六百四十億円。そこでこの一兆五千六百四十億円というこの税金の総額が、国民の経済力その他から見て当を得たものかどうかという問題、これにつきまして、私、衆議院、参議院の税制の公聴会においてたえずこの点を問題にいたしましたが、いつも同じようなことを申し上げるのはどうかと思いますが、きょうはその結論だけを申し上げます。それからもちろん計数は明らかにいたしまして、それで一番普通に行われているのは、この一兆五千六百四十億円というのを国民所得で割り算いたしまして、国民所得の何パーセントかということによって大体の見当をつける。政府の発表の資料によりますと、現在の昭和三十二年度国民所得は八兆一千八百億でありますので、租税の国民所得に対する割合を見ますと、昭和三十二年度は一九%であります。去年は二〇%、大体同じ率であります。一%軽くなっているということになりますけれども、もうこの辺の一%なんかは大勢に影響ございません。一%軽くなったから軽いとか重いとかということ自体が少し変なんでありまして、この辺はまあ一、二%は同じと考えていいのじゃないかと思います。とにかく三十二年度は一九%三十一年度は二〇%、終戦後このパーセンテージが一番重かったのが昭和二十四年であります。昭和二十四年が二六%、昭和二十四年と申しますと、皆さん御案内の通りアメリカのシャウプ使節団が参りました年でありまして、シャウプ税制が実施されたのが二十五年、シャウプ税制の実施される前の、旧税制の最後の年、二十四年度が二六%、戦争のまっ最中の昭和十九年度が二九%、昭和十年度が一四%であります。
そこで租税の国民所得に対する割合をみますと、途中でいろいろな数字をあげましたけれども、中華事変前の昭和十年の一四%と昭和三十二年度の一九%と比較いたしますと、三割六分現在が重いということになっております。三割六分、一九%と一四%、三十二年度の一九%を昭和十年の一四%に比較いたしますと、三割六分だけ重いことになっております。ところがこれはもう絶えず多くの人が主張いたしますように、租税を国民所得で割っただけで税金の負担が重いか軽いかということを判定することは、ちょうど井藤の声の大きい小さいで、井藤が達者であるかどうかを判定するのと同じでありまして、まあ井藤の声が大きいときは元気、声の小さいときは元気がないと、病気だというくらいの程度にしか意味がないのであります。これはどの点が当てにならないかということを、かつてこの公聴会で申したこともございますが、きょうはそれを省きます。
そこで三割六分だけ重いというのは、まあこれは大体そうだということであって、厳密なものでありません。それでより精密、より真相に近いものを数字で表わすにはどうしたらいいか、これについてもいろいろ問題がありますが、昨年来やっておりますことは、ここでも皆さんまたかとおっしゃるかもしれませんが、これはいつもやっていることでございますが、分子に租税を置きまして、分母に負担能力の最大限を表わすもの、これを分母に置いて、負担能力の何割が税金になっているか、そういう計算をするのであります。そこで負担能力というものを一体どうしてはかるかといった場合に、国民所得の総額というものは必ずしも負担能力を表わすものではございません。ということは、これは国民所得全部を国家がその税金として取るようなことがあれば、国民の手元に少しも金が残りませんので困るのであります。そこで負担能力というものは、国民所得から国民の最小生活費を控除した残りが、これが負担能力の最大限を表わしたものと考えるのであります。ところが国民の最小生活費をどうして計算するか、これも最小生活費とは何かという解釈によりまして、何とでも答が出てくるのでございまして、たとえば人間が動物としての最小生活を営むにはどうしたらよいかといった場合には、われわれは飯を食うのもぜいたくだ、どっかで残飯を食ってきたらよいのだとか、あるいはカルシウムをとるために骨の粉を飲めばいいとか、何とかかんとかいいますが、これは人間が動物としての生活を行う最小限度でございます。それでは困るのでありまして、まあ文化的最小生活費でなくてはいけない。この計算はやさしいようでむずかしいし、急に間に合いませんので、私が絶えずやっております方法は、われわれの飲食費、食費をかりに最小生活費を表わすものと仮定いたしまして、もちろん、それでは衣食住のうち衣と住はどうするかということになりますが、そう厳密なことを申しますと、計数で計算するのは非常に困難でありますので、拙速という意味で、かりに食費だけを国民の最小生活費を代表——食費によって国民の最小生活費が代表されるものと仮定いたしまして、そして国民所得から食費の分を引きます。これを分母に置きまして、分子に税金を置いて、租税の負担能力に対する割合を絶えず私は計算しておるのであります。その計算方法によりますと、昭和三十二年度は何パーセントになるかというと三四%になるのであります。租税の国民所得に対する割合は、先ほど申し上げましたように一九%でございますが、今申しましたあとの計算方法、租税の負担能力最大限に対するパーセンテージを求めますと、昭和三十二年度は三四%になります。それから去年はどうだったかというと、三十一年度は同じようにして計算しますと三六%であります。それから、途中は飛ばしまして、昭和十年、日華事変以前の昭和十年度はどうだったかというと一九%になるのであります。そこでこの方法によりますと、昭和三十二年度は三四%であり、昭和十年度は一九%になるのであります。両者比較いたしますと、現在は八割重いということになっております。租税の国民所得に対する割合で申しますと、先ほど申しましたように三割六分重いということになっておるのでありますが、ああいう租税のいろいろな負担能力に対する割合によって計算いたしますと、昭和十年に比べて昭和三十二年度は八割重いということになっておるのであります。これは総額の問題でございます。これにもまだいろいろ不正確なところがございますが、こういう場合に、学校の講義のように学説を申し上げるということは、かえって所を得ませんので、やはり計数で申し上げなくてはいけないと思いますので、計数で計算し得る程度のことを申し上げたのであります。これは数量の問題であります。
今度は内容です。一兆五千億、ここでは主として一兆五千億だと申しますけれども、国税を中心といたしております一兆九百四十八億、地方税を省きまして、国税の内容が、制度として内容がどうかというと、日華事変以前に比べまして、現在は国民の負担が八割重くなっているが、一体内容はどうかという問題であります。そこで内容がいいか悪いかを検討するためには、厳密に申しますと、租税制度全体について、税法全体についてこまかに検討しなければならないのでありますが、これを数字によって大づかみに大体の見当をつけるということは不便であります。そこで一番普通に行われておる方法は、租税、この場合国税でありますが、国税の中には、もちろん専売益金を含めまして、国税を直接税と間接税に分けて比較するということが普通行われております。その言わんとする心は直接税というやつはとかく累進課税が行われておる。間接税は貧乏な者も金持の者も同じ金額——まあものによって違いますが、大体同じことだ。そこで直接税が多い方が税制として大体よいということが普通行われておる考え方であります。そこで直接国税が昭和三十二年度は何パーセントを占めているかというと五〇%であります。残りの、五〇%が間接国税であります。大蔵省主税局の発行いたします租税、印紙収入に関する説明でございまして、これは皆さんのお手もとに配付し、私もちょうだいいたしました。あれを見ますと、直接税と間接税と、その他のものというものが入っていますが、あのその他のものは、私は間接税に入れております。そこで、昭和三十二年度は直接税、間接税ともに五〇%であります。去年はどうだったかというと、三十一年度は直接税が五一%でございました。シャウプが参りました年——昭和二十四年度は五四%、間接税は省きます。百から引けば間接税が出ます。戦争まつ最中の昭和十九年度は六六%、昭和十年度は三五%、そこでこの戦争前、昭和十年度と現在と比べますと、昭和十年度の三五%を昭和三十二年度の五〇%に比べますと、租税の重心が戦争中は別といたしまして、事変前に比べますと、現在は直接税の負担が重くなっておるのでございます。大づかみにいたしまして、税制として大体いい方向に向っていると一応は言えるのでありますが、これも私は、計数は違いますが、絶えず計っておることでございますが、現在は面接税と申しましても、大衆課税の色彩が非常に強いのであります。それで現在日本におきまして直接税、間接税を分けまして、直接税が多いからこれは大部分金持が負担する、間接税が少いから大衆課税が少いということは言えないのでありまして、現在日本におきましては、直接税も間接税もともに大衆課税の色彩が非常に強いのであります。計数を新たにいたしましたのですが、この方法は、私の書物やあるいは公聴会で絶えず言っておることでありますが、この直接税のうちの代表的なものでありますところの所得税の納税者の内容を見ますと、いかに現在の……、税制改革をやってから後の話ですが、昭和三十二年度といえども今度は千億の減税とか何とかで相当減税をやりましたが、それから後でもなお現在の直接税、ことに所得税には大衆課税の色彩が強い。それをまず計数で申しますと、所得税の申告納税者の予定数は二百十三万人であります。これはやはりちょうだいいたしました資料によって最近計算いたしました。そのうち、所得年五十万円以下の者が何パーセントを占めておるかというと、八二%を占めておるのであります。年所得五十万円というと決して金持ちというのではありません。井藤といえども五十万円を突破しておるのでありますが、この五十万円以下の連中は八二%であります。それから、国民所得総額でなく、申告所御税を払うための、申告所得総額が幾らかと申しますと、八千七百五十七億円であります。このうち五十万円以下の分の所得はどれだけかというと、六一%であります。すなわち、大部分が五十万円以下、それからまた、見方をかえまして、課税の対象となる給与所得、勤労所得、ここに申しますのは給与所得総額ではなくて、給与所得の少し上の力ですが、課税の対象としての給与所得に属する人は何人かと申しますと、八百四十九万人であります。このうち五十万円以下の者が八九%でございます。大体九割が五十万円以下。前の申告所得の場合は八二%でしたが、今度は八九%。やはりパーセンテージは上っております。それから課税の対象となる給与所得総額は幾らかと申しますと二兆六千九百九十億円、うち、やはり五十万円以下の所得の占める割合が七五%になっておるのであります。
申告納税者の場合は、六一%に対して七五%。そこでこの申告納税を見ましても、それから主として源泉徴収をされる給与所得を見ましても、人数から申しましても、所得の金額から申しましても、大体六割ないし九割に当る。これは今申しましたこまかな数字をやめまして、六割ないし九割は五十万円以下のいわば階層が負担するのでありまして、こういう意味において現在日本の直接税の代表的なものであるところの所得税に大衆課税の色彩が強いということは、今度の一千億円の減税をやってなおしかりということが言えるのでありまして、なぜこうなったかというと、これはやはりやむを得ない、ある意味においてやむを得ない事情がございます。
それは所得税のかかる所得階層別の表について分析いたしますと、所得税のかかる所得を、たとえば百万円から二百万円までの者は何人で、その金額は幾らとか、あるいは二百万円を越え五百万円までの者は何人おって、その金額は幾らとか、あるいは百万円以下七十万円の者は何人かという階層別の分布表です。それをもとにいたしまして、一年の所得百万円以上の階層は一体どのくらいおるか、百万円というと、これは相当の金持という意味でありますが、年所得現在百万以上の階層はどれだけおるかと申しますと、これは昭和三十年度の計算でありますが、所得金額について申しますと六%であります。現在所得税を払う、所得税の課税対象となる所得のうち、百万円を越える階層の所得を合計するとわずかに六%であります。ところが事変前の昭和十年度はどうであったか。昭和十年度の百万円といえば、今の貨幣価値に直せば三億円以上ですから、そんなのはここでは問題にできません。そこで昭和十年度の大体三千円が現在の百万円に該当するのであります。物価指数で調整いたしますと昭和十年度の三千円、これは現在の貨幣価値に直して百万円、そこで昭和十年度について見ますと、三千円以上の人の所得金額が何%を占めておったか。別の言葉で申しますと、昔の三千円が今の百万円でありますが、その百万円に属する者は当時課税の対象となる所得の何形を占めておったかというと六一%、現在はどうかというと、百万円以上はわずかに六%であるのに対しまして、昭和十年度は六一%という、すなわち半分以上が、六割以上が三千円を越える、現在の貨幣価値に直しまして百万円以上の階層であります。それから税金を見ますと、やはり昭和三十年度で年所得百万円以上の人が所得税のうちの何割を負担しておるかというと二二%であります。さっきは六%であった。今度は二二%になりました。これは累進課税の関係でこれはこうなるのは当然でありますが、所得額が百万円以上の人の所得税額が、所得税全体の何%を占めておるかというと、昭和三十年度は二二%であります。ところが昭和十年度の三千円以上の人が当時の所得税総額において占める割合を見ますと八九%であります。当時大体所得税の九割近くのものを三千円以上の人が占めておる、いかに現在は国民が貧乏になったかということがわかるのでありまして、国民全体として富の分配関係が、今度の戦争やその他の関係で非常に平等になっておる、しかも低い方の平等になっておるということは言えます。そのためにやはり納税者総数もふえまして、昔のようにいわゆる金持ちだけ所得税を負担するということができなくなりまして、納税者は総数を見ましても、昭和十年まではいつも百万人以下でありましたが、昭和三十二年度は、これは概数でありますが、一千六十二万人ということになっております、大蔵省の発表の数字では。もちろん昭和三十年の一千九百万人に比べますとだいぶ減っておりますけれども、もとより人口もふえておりますが、しかしながら、事変前に比べますと十倍の人が所得税を納めておる、なぜこういうふうになったかと申しますと、国民全体が貧乏、所得の分配関係が平等に近くなった。これは申し上げるまでもないことであります、次に、戦争中、事変後における事実並びに政府の政策によってこういうふうになったのであります。ただ結論だけを申しますと、第一が戦災で、戦災ではやはり持てるものが失うのであります。ないものは失いません。それから農地改革、それから財産税、昭和二十一年三月一日現在でたしか最高九〇%の財産税がかかりました。財閥解体、集中排除、それからインフレーション等々、こういういろいろの事実によりまして、頭の高いところはずっと切られた。こういう意味で、富の分配関係が下の方に、貧乏なところの線で平等に近くなった。もちろん最近はだいぶこれが矯正といいますか、変りつつありますけれども、しかしあれは大体こういう傾向が残っておるのであります。これは第一次世界大戦後の日本の場合とは逆でありまして、あれは、あの当時は資本主義の興隆期でございましたために、富の分配が不平等になって、金持もたくさん出ましたが、今度はその逆のような傾向になっております。こういうようなことになっておりますために、現在日本の租税政策が非常に困難なのであります。たとえば、所得税の場合に税率は金持は最高九九%にしようとか、あるいは一二〇%にして、あとの二〇%はえんまさんに取ってもらえなんていうようなことを言いましても、これはあまりほんとうは収入が上らない。私はそういう制度が悪いと言うのではありません。金持はたくさん税金を納めるのは、これは当然のことでありますが、それでは国家の収入が上らない。どうしても大衆課税をやらざるを得ない宿命的な、運命的客観情勢にわが日本の経済が置かれておる。そこに日本の現在の租税制度のむずかしさ、税制改革のむずかしさがあるのであります。そこでこういうことを前提として考えますと、現在日本におきましては、外国の場合と比べまして、間接税というものが現在意味がある。というのは、間接税がかりに大衆課税といたしましても、間接税を払う者も直接税を払う者も大体大衆と言われておる階級でございます。そういたしますと、やはり間接税は直接税にない特性がございますので、やはり現在の日本におきましては間接税というものが意味がある。どういう点で意味があるかと申しますと、まず直接税に比べまして、間接税は選択の余地がある。遊興飲食税やたばこの税金、酒の税金を払うことのいやな人は 井藤のようにそういうことをやらなければいい、こういうことになりますので、選択の余地がある。それから分割して納税ができる。それから税金に伴う苦痛が少い、徴税費が少い、便利である等々。これは主として末梢的な問題でありますが、もっと根本的なことは、間接税によりまして奢侈重課ができるということが間接税の特徴であります。現在私は日本におきましては間接税も存在の理由があると考えております。そこで今度の税制改革案の内容についての説明を申し上げさしていただきます。
今度の税制改革の内容は、言うまでもなく臨時税制調査会の答申が中心になっております。今度の税制改革の一番大きな特徴は、申すまでもなく、普通の所得税におきまして一千億強の大減税をやるということが何と言っても大きな特徴であります。それからもう一つ、よく世間に言われておるのは、今度の臨時税制調査会の答申並びにそれを基礎とする政府の税制改革案が日本の租税制度の根本的修正であるかのごとく言われておりますけれども、これは根本的修正ではございませんので、修正の意味から申しますと、部分的な修正であります。ただ特徴は大規模な減税をやるという点に特徴があるのであります。そこで臨時税制調査会の案と政府の税制改革に関する法案と比較しながら私の意見を申し上げさしていただきます。
ちょっと申し上げておきますが、私はもう臨時税制調査会の委員として私加わったのでありますが、臨時税制調査会の意見は、私の意見と必ずしも一致しておりません。大体一致しておるのでございますけれども、私がこれから申しますことは、みな井藤の個人的意見ということを御了承願いたいのであります。
そこでこの臨時税制調査会の前提となったのはどういうものかと申しますと、あの臨時税制調査会で税制改革は去年ごろからもやっておったのでありますが、実際この税制改革案の作成にかかったのが去年の夏ごろでございました。それにあのときは自然増収は幾らだったかと申しますと、千二百億円が自然増収と言われておったのであります。ところがそれからあといろいろ情勢が変化いたしまして、臨時税制調査会でも大体原案ができかけました十二月になりますと、自然増収は千五百億円と言われておったのであります、それからことしになりますと、さらにまた資料によって新たに計算をし直しますと、自然増収は二千億円になった。そこでもし去年の夏ごろ二千億円の自然増収があるということがわかっておるとすれば、臨時税制調査会の答申書の内容も現在とはきっと違ったものに私はなったんじゃないかと思っております。大体千二百億円を前提としてやった答申書でございますので、従って二千億円の自然増収があることになりますと、やはりこのいろいろ内容も変ってきたんじゃないかと考えられます。
そこで臨時税制調査会の案は、申すまでもなく次の三つの足の上に立っております。まず一番が、普通の所得税の大減税、千億円程度の大減税をやるということ、これが一番。二番は租税特別措置を整理するということ、三番は間接税の増徴をやる。この三本建になっております。このうち政府が大体臨時税制調査会の案に近い案を、立場をとったのが、一番の所得税の大減税の点であります。これは大体臨時税制調査会の案が実現されるのでありまして、私は大体この政府の原案に賛成であります。所得税の大減税をやろう。ところが二番の租税特別措置の整理と間接税の増徴問題になりますと、私はこの政府の案には必ずしも賛成できないのであります。そこでこの二番の租税の特別措置の整理の問題でありますが、これも臨時税制調査会の案を大体政府が取り入れておりまして、その点は私も賛成するのでございますけれども、重要なる次の三つにつきましてこの特別措置が残されておるということは、私は遺憾だと思います。三つとは何かと申しますと、まず一番が、社会保険の診療報酬に関する特別措置を残したということ。それから二番は、農家の米穀所得算定に関する特例を残したということ。三番は、利子所得について免税制度を一部について残したということ。この三つが臨時税制調査会の案と違うのでございまして、私は臨時税制調査会の案がやはり現在でもいいと考えております。
そこでなぜ私はこの二つの特別措置を撤廃すべきかと申しますと、これは臨時税制調査会の考え方と同じであります。一番の、社会保険の診療報酬の所得算定に関する特例、御案内の通り、社会保険の診療報酬の七二%を経費として引くことになっております。一律に引く。ところが申すまでもなくこの七二%というものは、多くの場合にこれは経費以上であって多過ぎるのであります。それからまた七二%均一というところに問題があるのでございまして、お医者さんの種類やその他によりまして、やはり経費は違うのでありまして、ここにやはり不均衡があるのであります。これは申すまでもなく、理屈に合わないということは、だれも承知の上でやっておるのでございますが、これは診療報酬の単価が安い、その単価の安いしわが租税制度に寄せられておるのでありまして、租税制度という立場から見ますと、やはりこの単価を引き上げるものはやはり適当に引き上げて、この制度のしわを取りませんと、負担不均衡という現象はどうしても起るのであります、その意味で私は一番の特例はやはり廃止すべきだ。それから三番が農家の米穀所得算定に関する特例、これは皆さん御案内の通り、予約売り渡し米穀の代金の一部は、政府は農業政策の立場から非課税にしております。これがまた現在非常な国民間の負担不均衡の原因となっております。御案内の通り、農家の自家用保有米というものは大体家族の数に比例いたしますので、いわば大農も小農も自家用保有米というものは大体同じであります。ところが大農はどうかというと、自家用保有米を残しておいてもなおたくさん米が残りますので、こういう人たちは、大農は予約売り渡しをする米の数量が多い。ところが予約売り渡しをすることによって生じたところの所得についての一部を減免税するのでございますので、この制度は大農ほど保護されておる。小農はあまり保護されておらないということになっております。この制度、その他の制度で、現在農家のうち八〇%以上の人は所得税がかかっておりません。残りの二〇%近くの者が所得税を払っておる。これはいわば大農でありまして、この利益の恩典に浴する者は主として大農であります。それからまたこの制度は、予約米穀の売り渡し時期が早いほど引いてもらう、免税となる金額が多いのでありますが、これも地方によりまして、米が早く出る地方とおそく出る地方との違いがございますので、米の早く出る地方の農民はやはり利益に浴するということになるのであります。これは一年古い計数でございますけれども、この米穀の所得の算定の特例による減税額がおよそ三十億と言われております。これは税制調査会に出ておる数字でございますが、ところがこの特例がない場合は、農家の払うべき所得税はおよそ百億円であります、百億円に対して三十億円減税するのでありますので、いわば大体大農が三〇%の減税を受けておるという計算になるのであります。これにつきましては政府では米穀管理制度を目下検討中なんですが、そのときあわせて検討されることになっておりますが、これまた農業政策のしわが税制に寄っておるのでございまして、これもやはりこのためにいろいろの負担不均衡が出ておりますが、これも何とかして改めなくちゃならないと思います。そのために勤労所得と農業所得と、農業以外の個人の営業所得という三つを比較いたしますと、農業所得が非常に所得税が軽くなっております。もちろん農業には事業税がかからぬというようなこともございますが、かりに所得税だけをとって見ましても、農業の所得の税金が非常に安いのであります。これも最近いただきました計数によって計算いたしますと、納税者の所得、勤労所得も農業所得も、農業以外の営業所得、これを三つに分けまして、もちろん個人でありますが、そうして納税者の所得が、この同業者の所得の何割を占めておるか。たとえば勤労所得者を取って見ますと、勤労所得者は全部税金を払っておるのではありません。免税点以下、基礎控除以下の人があります。そこで税金を払う人の所得を分子において、分母にその勤労所得全体の所得、すなわち同業者の所得全体を分母において計算いたしますとどういうことになるかと申しますと、別の言葉で申しますと、所得のうち何割が税金のかかる所得かということです。たとえば勤労所得のうち、勤労所得が一兆円とすると、そのうち半分税金がかかっておるということは、五〇%という計数が出るのでありますが、そういうふうな所得のうち、何割が税金の対象になっておるかということを調べてみますと、昭和三十二年度におきましては、勤労所得の場合は六九%が税金の対象になっております。ところが農業所得は僅かに一四%であります。それから営業所得は二三%であります。これは昭和三十二年度でこの税制改革をした前提としての計数であります。それから、これは昭和二十四年シャウプ税制の前の、昭和二十四年に比べますと、この傾向は非常に強くなっておりまして、この差が昭和二十四年度は、勤労所得の場合は九六・五%が課税の対象になっております。農業所得は四九・一%それから農業以外の営業所得は五〇・六%、昭和二十四年度は、大体農業所得も、それから農業以外の営業所得も、税金の対象となるパーセンテージが同じだったのでありますが、勤労所得も断然多かったのですが、現在では、先ほど申しましたように勤労所得が六九%、農業所得が六〇%、農業以外の営業所得が二三・一%となっておりまして、それからまた同じこの三つにつきまして、そういう人たちが払う所得税をその同業の所得につきまして割算いたします、分子に所得税を置き、その勤労所得なら勤労所得の総体を分母に置いて計算いたしますと、勤労所得者なら勤労所得者がそのうち何制を払うかという問題であります、そこでそういうものを計算いたしますと、昭和三十二年度には勤労所得は三・九%、農業所得は〇・四%、農業以外の営業所得は一・八%であります。これを見ましても、農業所得がいかに現在税金が軽いかということが言えるのであります。それから昭和二十四年について同じ計数で見ますと、勤労所得は一一・七%、農業所得は七・一%、農業以外の営業所得が一三・八%であります。それに対して昭和三十二年度は、勤労所得三・九%農業所得が〇・四%、農業以外の営業所得が一・八%、こういうふうに非常な両者間に負担の不均衡が出ているのですが、これはやはりこの特例があることが一つの大きな原因となっていると思います。
それから次に、利子所得の特例でありますが、今度の政府の案を見ますと、一年以上の長期の預金については依然として免税制度が行われております。これはやはり利子制度に不当な優遇を加えるものであります。もちろん貯蓄の奨励ということは必要でありますが、しかしながら貯蓄の奨励は、私はわれわれ国民が貯蓄をいたしますのには、税金が安いということも一つの理由でありますが、より以上に通貨価値に対して一体信頼を持つか持たぬか、これが大きな問題をなしておるのでございまして、私は税金を取ったからと言って貯蓄が減るとは考えておりません。要するに租税の特例措置の整理というものは、私はさらに強化すべきものと考えております。それで租税特別措置によって免税いたしますと、外部から見るとよく現われない。ところが逆に補助金を出すと、こうなりますと、これはすっかり目に見えますために、これはいかぬ。ところが税金をまけてやるとなると、表面に出ないために、国民の批判を受けることが少いのでありますが、これは補助金と結局同じことでありますから、私はこれは何とかやめなければならない、政府の今度のやり方はそういう意味で不徹底であると思います。
それから最後に間接税の増徴でありますが、税制調査会では間接税を増徴しようという案でありましたが、そのうち原糸課税の中止を政府はやりましたが、これは私は賛成です。私はこの政府の案に賛成であります。なぜかと申しますと、千二百億円の自然増収に対して、増在二千億の租税増収をやるのだからして、原糸課税というものはやはりある意味において大衆課税性があります。税制調査会の案においては、大衆課税をなくするために、多少免税品目を設けましたけれども、これは一部でございまして、私は原糸課税をこの際政府が中止したということは、私はこの政策には賛成であります。ところがその次が賛成できない。それは物品税を重くしようという税制調査会の案、私はこの案に賛成でございますが、この案が見送られたということには私は賛成できません。それで税制調査会ではテープ・レコーダーとか、観光バスなどに物品税をかけるようにしようとか、あるいは電気洗濯機の課税の最低限を引き下げようということにして、このものにも重い税金をかけようという案がありました。物品税というものは申すまでもなく奢侈重課、贅沢品に重くかけようという建前になっておりますので、そういう点から言いますと、私はこれは当然やるべき問題だと思うのでありますが、政府はこれはやりませんでしたが、これは遺憾だと思います。
そこで現在、日本の間接税または消費税について問題になる税金は取引高税でありますが、私は結論を申し上げますと、取引高税は反対であります。これは広くしかも浅く、まあ広くかけようというのですが、これはやはり大衆課税性が強いし、それから昭和二十四年に行われました取引高税を現在かけるとなると二千億の増収が上ります。今現在日本の二千億円の大増収があればやはり政府が乱費をする危険があるので、取引高税には反対であります。そこでこの機会に申し上げたいと思いますのは、学界で問題になっておるだけで実施はされておりませんが、総合消費税というものが問題になっておるということを申し上げたいのであります。総合消費税と申しますと、井藤なら井藤、井上なら井上という人が一年に使った金、消費した金の総額に対して累進税がかかるのでありますが、これは未実施の、まだ実施されておらない新税として注目すべきものだと思います。これは個々の問題について申し上げますと、大体私は今度の制度でいろいろの点がよくなったと思うのですが、法人所得の課税制度が非常に不徹底で、また整理を要するものだと考えております。現在の日本の法人課税は、御案内の通り法人擬制説的な課税が中心になっておりますが、しかしながら、法人でも実在的な課税の要素が加味されておりまして、理論的に非常にすっきりしないものになっておる。ところが皆さん御承知の通りと思いますが、たとえば法人税の税率に累進課税がかかっておるとか、あるいは今度政府の案を見ましても、配当控除率の控除が一千万円を超過した分に対しては一〇%、一千万円分に対しては二〇%という配当控除率に対して差等を設けるということは、これはいずれも法人実在的な考えを前提とするから行われるのであります。それから現在の制度は法人擬制説を中心にするというのですが、これは低所得者、これは所得の低い人ですが、同じ配当をもらう人でも低所得者が不利であります。それはどうしてかと申しますと、配当所得者が二割ないし一割というけれども、前に払った法人税をあとから返すのだという建前になっております。ところが所得税を払った人は、このうち配当の割合の一割か二割を返してもらいますけれども、免税点以下の所得税を払わない人の配当をもらっておる人は配当控除の恩典に浴することができませんので、かえって負担が重いということになるのであります。結論から申しますと、法人擬制説よりも実在説の方が日本の国民の感情に合うのじゃないか。会社というものは個人の集合だと言えますけれども、これはやはり別個の経済的単位と見て別個の課税をするのが、日本の国民の感情やその他の気持に合うのじゃないかと思います。それからまた個人会社的な色彩の強いものは、これは私は絶えず言っておることでありますが、個人の所得税をかける方がいいのじゃないかと思います。
はなはだまとまりのないことを申し上げましたが、これによって私の公述を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/2
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003・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) ありがとうございました。
井藤公述人に対しまして質疑がございましたらこの際お願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/3
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004・木暮武太夫
○木暮武太夫君 最近ですね、ずっと古いころから行われておりましたが、近ごろ、今の税金というものは、その所得を標準としてかけるいわゆるインカム・タックスですね、それではほんとうの個人の負担力を把握することはできないのじゃないかというので、イギリスあたりでエクスペンヂチュア・タックスというのがあるのですが、私はよく知らないのですが、今先生の言われた総合消費とかなんとかいうのは、そういうことを言ったのですか。あれはずっと前に私らが読んだ本でそういう意見があったように覚えておるのですが、最近は今の個人のエクスペンヂチュアというものも、この租税をとる場合の要素として、インカムばかりでなく見ていこうという論が、これは議論ですけれどもあるのでしょうか、伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/4
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005・井藤半弥
○公述人(井藤半弥君) 今の木暮さんのおっしゃいましたエクスペンヂチュア・タックス、これは私、先ほど、今から五分ほど前に申しました総合消費税これと同じことでございます。それでエクスペンヂチュァ・タックスというのは、一部の人は、日本で文字通り支出税と訳しております。ところが日本の財政学の書物などでは数十年前から、支出税と申しますと、そういう総合ではなくて、たとえば遊興飲食税であるとか、あるいは物じゃなく、入場税であるとか、そういうようなものに支出税という名称を与えておる慣習になっておりまして、これはアウフヴァンドストイエルというドイツ語を日本で翻訳して、それを支出税といっております。私はそれとの混同を避けるために、総合消費税という言葉を使っております。それで今、木暮さんおっしゃいましたように、この総合消費税というものは、私もさっき申しましたように、個々の消費税ですと、みなばらばらに払いますね。たとえば理屈からいいますと、酒一升飲む人に酒の税金をかけるのはかりにいいとしましても、一升飲む人には重い税金をかけても、井藤のように一晩に一ぱいしか飲まない人の税金は、一ぱい飲むか飲まないかの場合は、睡眠剤だから税金をまけてやっていいということになります。要するにそれは物中心ですから、それはばらばら消費になる。全体の消費高が幾らかといった場合に、所得の多い人もやっぱり消費いたしますし、過去から蓄積した財産の多い人の方が消費能力が多い。そこで、今おっしゃいましたように、所得税というものが理想的な税金だといわれておりますけれども、所得税だけではいけない。と申しますと、たとえば一年に五十万円の勤労所得の人で、夫婦で子供が三人なら三人の場合、これは金の使い方いかんにかかわらず、その人の払う所得税は同じわけです。ところが国家という立場から見ますと、その五十万円の金を、税金を払って後、それでたとえば国家社会という立場から見て価値ある方に金を使う人と、それから変な方に金を使う人とは、税金で差別しなくてはいけない。これはやはり消費税は必要なんです。そこで現在奢侈消費という建前で個々の奢侈行為について課税しておりますが、さっき申しましたように、人を無視いたしますし、その消費分量を無視いたしますために、さっきお話のエクスペンヂチュア・タックス、総合消費税が問題になります。そこで先ほど木暮さんからお話があった、私は書物で読んだように思うとおっしゃいましたが、その通りでありまして、古い方から申しますと、トーマス・ホッブスが言ったとか、そういうことはどうでもよろしいのですが、そういうことは、学校の教員が過去にさかのぼって言うからそういうこともございますので、もっと近いところで申しますと、アメリカで一九四二年ごろ、戦時財政の財源としてこのエクスペンヂチュア・タックスをかけようとして、アメリカの政治界で問題になったのです。ところがこれは、やめになりまして、それから終戦後英国の税制調査会でまたこれが問題になったのですが、これまたできませんでした。これは理屈としては非常にいいのです、一年に幾ら井藤が消費するかということを合計いたしまして、これに累進税をかけるのですね。そのかわり蓄積したものは税金がかかりません。だからこれは非常にいいのですね。資本蓄積も助長するし、それから累進税をかけるからいいんですが、一番大きな批判は、一体一年の消費高をどうして計算するか、すなわち、井藤が円タクに乗っても帳面をつけなければ、良心的な納税者になり得ない。これはきわめて簡単なやり方です。一年の消費資金がございますね、大体私どもでは月給でありますが、それから貯蓄高を引くのです、その残りを消費とみなせばいいじゃないか、そうすると現在の所得税における申告納税と同じような手続でいける。これはアメリカの経済学者のフィッシャーが言いかけまして、今ではそれがいいということになっておりますが、しかしながら、これが何分にもなれない新税でございますので、最近英国の学者のアルドワンという人がエクスペンヂ・チュア・タックスの書物を書いたりいたしまして、日本でもちょいちょい問題にされております。日本では神戸正雄先生が大正の末期に、これを総合的奢侈税という名前で主張されたことがあります。それから井藤の昭和二十五年の書物にも総合消費税として簡単に紹介しておきました。それが近ごろ割合問題になってきまして、それでこの税金をかけると、一体所得税はやめるのがどうかという問題ですが、これはいろいろございまして、総合消費税をかける場合に、所得税と並行してかけようというのもございます。それからまた、所得税は所得の少い、いわば貧乏なところ、貧乏ということは不適切でございますが、低所得者に対しては所得税をかける、高所得者に対してはこの総合消費税をかけようという、いろいろな説がございますが、これは現在まだ学校の教員の空論の範囲でありまして、どこでも実施されているところはありません。しかしわが日本でも、やがては問題になる税金じゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/5
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006・木暮武太夫
○木暮武太夫君 これは今問題になっている国税の方じゃないのですけれども、ちょっと先生がおいでだから、所得税以外のことを聞きたいと思うのです。
今度の地方税の問題のときに、よくわからないのですけれども、事業税の中で電灯やガスの、従来は客観性を持った何か物件を標準として税金をかけたようだが、今度はほかの法人の事業税と同じような、法人の所得を標準としてかけるということになったわけですが、ところがそれは多年そういう希望があるから便宜的にそれはいいと思いますが、そこで、先生の御意見を伺いたいと思うのは、一体、事業税というものは、われわれはしろうとでよく知らぬものだから、所得税の二重取りということで、よく反対をしているのだが、しかしこれは応能課税でなくて、一極の応益課税である。県なら県にその事業が存在している、そうすると県の施設を利用することによって利益を受けることに対して税を払うべきもので、その会社が利益があるなしにかかわらず、赤字であっても税金を出すべきものだというのが事業税の本質のようにも私ら考えるのですね。一ころ日本でもやりかけてつぶれた一種の付加価値税のようなもののように事業税は考える意味において、所得税の二重取りでないというので、あれが地方税として存在し、法人所得税が国税として存在する理由がある、こう思うのですが、そこで今度のような地方税の改正の場合に、ああいう改正が行われるというのは、論理が一貫するだろうかということに対する意見を、ちょっと伺いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/6
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007・井藤半弥
○公述人(井藤半弥君) 今の御意見、私は全然同感でございまして、事業税というのは普通、物税と言いまして、所得税や法人税は人税で、一年のもうけ高を全部出してかける。それから事業税は、今おっしゃいましたように、応益原則ということをも加味しまして、やはりかける税金でございますので、それで地方団体……国税と言えば国税でありますが、国家や地方団体から受ける利益に対する反対給付という意味をも加味して取る、これが事業税の建前になっております。それで今度の地方税の改正案で、現在日本では、この例外といたしまして、数種の事業だけにつきましてこの外形標準による課税が行われておりましたが、今度は私はむしろそういうものを、例外じゃなくて、原則として確立すべきものであると考えます。それに対して今度はまた逆に、所得課税の方へ一部持っていったということは、私の立場から見ますと、それは逆行じゃないかと私は考えております。ただし、やはり事業の方もかなり負担が重いですから、税率については私は考慮する必要があるのじゃないかと考えております。応益原則をも加味して取るという場合は、さっきおっしゃいましたように、利益がない場合にも税金がかかるのは当然のことであります。そのかわり税率についてはやはり考慮の余地があるのじゃないかと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/7
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008・木暮武太夫
○木暮武太夫君 私は反対とか賛成とかでないのですが、そこで理屈をくっつけて、政府の今の地方税法をジャスティファイする意味から言うと、事業税というものと所得税というものは、所得をもととしてかけたにしても、国税の所得税の方は、あるいは家族の扶養控除とか、いろいろの基礎控除や何かがあるのだ、一方、地方税の事業税というものは、そういう人的の要素というものを置かないのだ、そこで、事業税というのは、所得税と違った性質を持っているものだというふうな議論は立ちませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/8
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009・井藤半弥
○公述人(井藤半弥君) 所得税や法人税は、先ほど申しましたように人税で、人中心でございますので、基礎控除だとか扶養家族の控除を設くべきは当然だと思います。事業税は、先ほど申しました物税と申しますか、納税者はございますけれども、事業というものにかかるという建前から申しまして、基礎控除とか、いわんや扶養控除ということは意味が薄いということは、私言えると思います。ただ、物税としての事業税が、昔は外形標準を中心にしたり何かしておりましたが、近ごろは分類所得税に非常に近くなってきておりますので、所得税と同じように、所得を標準として課税をやります場合に、小さな事業者の負担を軽くするというような意味で、私は基礎控除なんか設けておるのだと思います。そこで、先ほどの御質問の建前に戻りまして、事業税というのは外形標準によってかくべきものだという原則から言いますと、基礎控除とか何とかいう控除というものは、したくてもできないということになってきているのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/9
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010・栗山良夫
○栗山良夫君 先ほどお話の中で、配当所得の控除の問題にお触れになりまして、やはり法人実在説の方へいくべきで、法人擬制説はよろしくないという話でありました。大蔵大臣も大体そういうお考えのようで、漸次法人税は実在説の方へいくように将来施策をしていきたいというお話があった。ところが、そういう空気が政界方面で出てきましたことについて、最近証券界においては、例の名義貸しに対する取締りが強化され、また法人実在説によりまして、配当所得に対する特別な恩恵というものを切っていく、こういう形が出たために、若干動揺をしておるような空気を私は見受けるのです。実際問題としまして、証券の民主化というものは、終戦後の一つの大きな経済民主化の柱であったと思いますが、最近見ていると、だんだんと昔のように集中化されまして、民主化と逆行するような線が出ていると思います。そういう傾向とあわせて考えてみました場合に、私は、少々そういう意味の反対があっても、政府はもう少し急ピッチに今の方針を推し進めていくべきでないか、こう考えるのですけれども、先生は、その緩急の問題、それはどういう工合にお考えになるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/10
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011・井藤半弥
○公述人(井藤半弥君) 関係……、実は私やや耳が遠いのでありますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/11
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012・栗山良夫
○栗山良夫君 緩急の度合いの問題ですね。今の、理論としては大へんいいのですが、実際の証券業界にそんなに急激にそういうことをやられては困るという空気がありますので、実際に経済界の中心になるわけですから……。そこで僕は最近の証券業界の動きというものは、株式の民主化というものとは逆行しておるものと見ておる。だんだん集中されてきておりますから、何ら別に苦にする必要はないじゃないかというふうに思っておるのですが、実際どういうふうにお考えになるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/12
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013・井藤半弥
○公述人(井藤半弥君) 私は、今の問題に限らず、一般に税制改革で、証券界に限らず、あらゆる業界であろうとそれから勤労者の間でも、いろいろ激動を与えるというようなことはできるだけ避くべきだと思いますが、根本的な改正をやった場合に、ある程度の影響のあることは、これは当然じゃないかと考えるのであります。ことに証券界というやつは、現在の経済の先端を走るものでございまして、ちょっとしたことでも非常に強く影響するところでございますので、私は、できるだけ激動は避けるようにすべきだと思いますけれども、しかしながら、ある程度の影響のあるのはやむを得ないじゃないかと考えます。それからもう一つ、配当の問題は、これは証券界に影響のある、これはまあ当然のことでございますが、私やむを得ないじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/13
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014・平林剛
○平林剛君 先ほど先生のお話を聞きまして、大へん課税の仕方が大衆課税的な方向になっておるというお話がございました。主として面接税を中心にお話しになったのでありますけれども、全般的に見ましても、私は社会党の立場から見て、どうも政府の租税制度というものが大衆課税的になっている。結局、税制調査会においても、たとえば、租税特別措置法のような、税制を破った経済政策が強くなり過ぎて、その結果が、一部の人たちからの課税を免除してしまって、大衆に振りかかってきておる、こういう見解を持っておるわけであります。特に直接税につきましては、これはまあそれほどでないにいたしましても、先ほど先生がおあげになった数字から見ましても、十分それがうかがえるわけであります。そこで今度の税制調査会の減税の方向を、税率を中心に行われたということになりますと、かえってその傾向が強くなるじゃないか。ある程度、税制調査会は、その調和を保つ意味で、税額控除の点についても配慮はされておりますけれども、先ほど先生のお説からいくと、税率中心の税制改正をおこなうと、先ほどの数字よりもっとひどく大衆課税的になっていくじゃないだろうかという気持ちがするわけであります。こういう点につきましての先生の御意見を一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/14
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015・井藤半弥
○公述人(井藤半弥君) 今度の税制調査会の案、従って政府の案も、大体この傾向でございますが、大体五十万円から百万円ぐらいのところが非常に恩恵をこうむる、あれが大ぶん——あなたに言うのではありませんが、世間に誤解されておるじゃないか。それは、租税及び印紙収入に関するあの資料の裏に、減税になったパーセンテージが出ておりますが、あれを見ますと、やっぱり所得の低い人ほど減税になったパーセンテージは多い。多少の狂いはありますよ。それはなぜそうなったかと言いますと、基礎控除が八万円、九万円でしたかによりますね。基礎控除というものは上へ行くほど影響が少くて、下ほど影響が多い。それから扶養控除の一人目を四万円を五万円に上げたのですか、たしかそうでございましたですね。あの辺で、下のほうがやっぱり相当潤おっておるです。それから最低一五%が一〇%に下りましたですね。それですから、五十万円から百万円とか二百万円ぐらいの、井藤級のところですな、この辺に確かに潤うということもございますけれども、しかし、減税の割合から見ますと、家族一人であろうと二人であろうと、みな下の方がパーセンテージは多いですな。減税になったパーセンテージは多うございます。ただし私は、全体として低所得者の負担をできるだけ軽くする方針はもちろん賛成です。それで、たとえば基礎控除なども九万円よりも十万円にする方がいいのじゃないかと思いますが、税収に影響があるというような問題がございますね。それから今の五十万円から百万円、二百万円ぐらいの方が、これは確かに従来の税制改革に比べまして恩恵をこうむる程度が税率からいいますと強くなりますが、これは税制調査会などでも答申書の中で言っておりますように、昭和十五年ごろから最近までの税制改革の動向を見ますと、基礎控除、扶養控除というものばかりに重点を置いて、その辺に重点を置かなかったために累進税の上り方が急にぐっとなっておるのです。今度のように二千億ですか、われわれの考えておる線は千二百億ですが、相当経済界に余裕ができたときにでもこの辺を直しておかないと、累進税の急角度の進み方を抑えることができないのじゃないか、こういうふうに私は考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/15
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016・平林剛
○平林剛君 その点はいろいろ議論があるところだろうと思いますが、先ほどお話しになったように、負担能力という点は、国民所得から国民の最小生活費を除いたという意味の、少し見方は違うかもしれませんけれども、パーセントは確かにそうなっているけれども、実際の減税額というものと生活費と比べて考えてみた場合には、非常に税率を中心にしてしまいますというとパーセントは高くなるけれども、生活費をカバーしていくという意味では、低額所得者の方が少し今回の場合では気の毒になっているのじゃないかという見解を持っておるわけであります。
そこでもう一つのことについては、この点はどうも私は政府に対しても文句を言ったのでありますが、臨時税制調査会で出した税の自然増収の見方について初めからもっとあったのに隠していたのじゃないか。これは政府は大蔵省というりっぱな官僚機構を持って一般よりも調査機能が発達をしているにかかわらず、三カ月や半年先の見通しがないなんていうことはおかしい。しかも三カ月や半年の間におよそ倍に近いぐらいの自然増収が見込まれる、変ってくるなんということは、まことにけしからぬ話だと言って攻撃をしたことがあるのです。先生のお話でも、もし自然増収がもう少しあったとすれば答申案も違ったはずだと、こういう御説明がありましたが、現段階において自然増収が答申より大幅に多くなる。もし先生が、自然増収の分を、租税の公平や、今の租税に対する国民感情から見て、国民の気持を、全部おまかせするから、どうか一つこれで何とか税の一番いい方法がありませんかということを言われた場合、先生としてはどうなさるかということを参考のために聞きたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/16
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017・井藤半弥
○公述人(井藤半弥君) どうも初め私は別に大蔵省に他意あったとは思いません。これはちょっと弁護するようでいけませんが、やはり法人の何がありますね、決算期が、九月にあるとか、それから十二月にあるとか、それによってやはり推算の基礎が違ってくるのですから、それは僕はある程度のかけ引きはあると思います。自然増収を拡張しなければやりにくいということはありますけれども、しかしそうだます——だますと言うことは過ぎますけれども、これは善意だと考えております。善意か悪意かは別といたしまして、これは大体善意だと考えております。もし二千億自然増収があった場合に、井藤が大蔵大臣になった場合には、どういう財政政策を持つかということですが、大臣には井藤は絶対なりませんので、乱暴なことを申しますがまず私だったらこうしますね。昭和三十一年でも、私は政府の経費が全体として多い。今度は二千億のうちの一部を減税に回して一部を経費膨張に回しましたが、私はどうしてもふやさなくちゃならぬものはありますよ。賠償経費だとか何とか、そんなものはありますけれども、やはりこういう際には、なるべく経費膨張に向けないで、減税に向ける。そうすると減税額はもっとふえる。まず基礎控除をふやす、扶養控除をふやす、そこに重点を置くべきだと思っております。それでは幾らにするかというと、それは減収と関係がありますので、多ければ多いほどいいということは言うまでもありません。勤労控除もできれば私はもう少し勤労者に対して有利にする方がいいのじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/17
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018・木内四郎
○木内四郎君 私は誤解しておる点があるかもしれませんから一つだけ……。先生はさっき利子所得の課税、あれは取るべきだという御意見なんですが、配当所得の方は先生どうおっしゃったのでしょうか。配当所得は総合課税しておるから、今の一〇%引くということは、理論的には無意味だと思います。のみならず、小額所得者たちは、栗山委員からもさっき言われましたように、証券の民主化をいたしまして、小さい人がたくさん証券を持っておる。計算すると課税の限度に達しない人が相当持っておる。その人たちは期日までに正確な申告をして払い戻しを請求しなければ、国家に納むべからざるものをただ取られておるという結果になるので、私は一〇%は悪いものだと思うのですが、先生はさっきどうおっしゃったのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/18
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019・井藤半弥
○公述人(井藤半弥君) これは実は二つの問題がありまして、現在配当金を会社が払うときに一割の源泉徴収をやりますね。それと、それからもう一つ、われわれ一割の源泉徴収をやってもらって配当金をわれわれ個人がもらいますね。それを三月十五日に確定申告をやりますときにやって、そうして税金の計算をやりまして、その税金から現在一人三〇%を引いておりますね。この二つの問題がある。私は先の方の問題については触れませんでした。先の方の問題といいますと、源泉徴収の方は、政府が免税点以下の人については取るべからざる金を取っておったのですから、国民がこれを確定申告をすれば当然返すべきですね。ところが、事実はどうかというと、税務署は警察と同じように、どうも入りにくいところで、どうもわれわれ、できるだけ税務署に近づかないようにいたしますと、実際は取るべからざる金を政府が取っておるにもかかわらず、人民は返還の催促をしておりません。これはある意味においては、私は無理なことを言うようですが、人民側が権利の上に眠っておるということもございますね。やるべきことを無知のためにやっておらぬということもありますが、これは制度としていいか悪いかは別問題として、先に私が公述の中で申しましたのはその問題ではなしに、われわれが配当金をもらって、配当金を入れて総合所得を計算いたしまして、それに対して税金を計算して、現在臨時措置で三〇%引く、今度の政府の案では千万円までは二〇%で、千万円を越えた場合は一〇%、これは先のことは別の問題でございまして、現在法人税というものは、法人は擬制説をとりまして、法人というものは本来納税すべきものではない、個人が払うべきものである……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/19
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020・木内四郎
○木内四郎君 その点はわかっておるのです。その一〇%の源泉控除というものは、多数が権利の上に眠ると言われればそうですけれども、実際多数の人から納むべからざるものを取っておるその制度はやめるべきであるかどうかということの御意見はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/20
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021・井藤半弥
○公述人(井藤半弥君) 私はこれはやはり課税の便宜上やっておく方がいいと考えております。それはこれに限らず、利子についてもやっております。それからその他いろいろなものについて源泉徴収制度というものがございますので、課税の便宜の上から私はやる方がいいのじゃないか。私は源泉徴収はできるだけ広い範囲でやる方が便宜ではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/21
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022・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) それではまことにありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/22
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023・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) それでは次に、日本労働組合総評議会政治部長小山良治君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/23
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024・小山良治
○公述人(小山良治君) 総評の小山でございます。実は私どもがこの臨時税制調査会あるいは今度の法案の改正につきましては、非常に大きな期待を持って参りました。ところが残念ながら今提案されておるものにつきましては、非常な不満と、むしろ内容によっては忿懣を持つというぐらいにも考えなければならない問題が出て参っております。たくさんいろいろ申し上げたいことがありますけれども、私は労働者、働く国民の立場から一、二意見を申し上げまして、できるならば私どもの希望通りやっていただきたい、こう考えておる次第でございます。
私どもは今まで所得税につきましては収入が五十万円までの場合には免税としてもらいたい、基礎控除は十六万円までにしていただきたい、こういう申し出を総理大臣初め関係の大臣に機会あるごとに要望して参りました。しかし残念ながら、この要求はなかなか実現が困難である事情でございますので、今回の改正案の中でも、できますならば所得三十二万円まではぜひ免税にしてほしい、それから税率の改正につきましては低額所得者を中心として引き上げていただきたい。それから三番目の問題といたしましては、勤労控除扶養控除大幅引き上げをはかっていただきたい。第四は、石炭手当あるいは各種手当などにつきましては免税にしてもらいたい。それから退職金につきましては免税をしていただきたい。この五つのことはぜひ一つ実現をしていただきたい、こう考えておるのでございます。特にこういうわれわれの要求につきまして、もし実行できますならば、租税特別措置法の全廃とその適正化の措置、それから自然増収がこれは今も御意見がありましたように、大へん膨大にあるのでございますが、これらに見合うところの減税をしていただきたい、こう考えておるのでございます。
なお、私が申し上げましたこの項目につきましては総評に結集しておりますところの三百六十万の黙々として今日日本の経済復興のために努力して参りました勤労者の全体の気持であることを申し述べたいと思うのでございます。もちろん私ども総評に結集している以外の、もっと団結力の弱い、全然声の出ない方々の御意見というものはなお一そうきついものがあるのではないか、こう考えておるのでございます。
そこで今回の減税が所得税を中心に行われておるのでありまするが、御承知の通り、その焦点が年収五十万円から百万円のいわゆる中堅所得層にしぼられておるのでありますが、今日神武景気と言われるような未曾有の好景気のうたわれておるさなかにおきまして、大企業、大法人は利益率の上昇、あるいは配当の増加、資本の蓄積、設備投資の増大が異常なものであると言われておるのでありますが、これに対しまして私ども労働者の賃金上昇率は一体どうか、これを見ますると、昭和三十一年度におきましては前年に比べまして三ないし五%上っておるにすぎないのでございます。組織された労働者がこのような状態でありまするから、未組織の中小企業労働者あるいは日雇いの方、臨時人夫、それらの方々につきましてはおして知るべきでございます。エンゲル係数が五〇%以上は貧困階級すなわちもうこれは食うや食わずの階級である、こう言われておりまするが、ある統計を見ますると、戦前四%しかなかったこの階級が現在では四四%に達していることを指摘しております。また政府が発表しておりまする厚生白書には、低所得層の沈澱累積という形が激化している、社会のゆがみはもはや放置できない限界点に達していると述べられております。社会の断層といいましょうか、貧富の格差がますます拡大されつつある現実を考えたとき、今日の税制改革の急務は低額所得者、最低生活者に対する生活費に食い込まない税制の確立、最低生活費に食い込まない税制の確立に求めなければならないと主張したいのでございます。先ほど申し上げましたように、ここで皆さん方に申し上げたいと思いまするのは、五十万や百万の方々が中堅だと言われますけれども、事実はこれはもう私どもにとっては、まさに砂浜の中のダイヤモンドを探すと等しいぐらい、ほとんど組織された労働者の中にはないといっても過言ではない、かように思うのでございます。しかもこの五十万、百万と言われる方々は、これは給料以外にたくさんの税金のかからない所得があるわけです、たとえば出張費でありますとか、そういうものがたくさんある。ところがそれ以外の方々にはそういうものがほとんどない、こういうのが現実でございます。これは皆さん方が一番直接タッチされておりますところの、官庁のいわば局長、部長クラスの方々は、これはほとんど一カ月のうちまあ少くて十日、多ければ二十日以上出張しているのが事実であります。しかし一般の机についておられる課員の方々はそのような出張をされているかどうかということは、皆さん御承知の通りであります。これは非常に口の悪い方がおるのでありますが、国会議員の方々の歳費が合計してそういうことになるので、そういうものを通すためにこういうことをやっているのじゃないか、こういうような御意見がありますけれども、どうかそういう点で政府あるいは大蔵大臣の御説明等には強く皆さん認識を改めていただきたい、こう考えておるのでございます。で、なるほど今回は基礎控除を八万円から九万円と、一万円だけ引き上げられましたが、私どもが言いたいのは、戦前千二百円まで、その後の物価変動がかりに三百倍と言われておりますが、これを換算してみましても、三十六万円までは無税であっていいのじゃないか、かように考えるのでございます。こころみに参考までに数字を申し上げますならば、昭和十年の所得税納税者六十七万九千三百人のうち、今日の貨幣価値に直しまして階層別の負担関係は、三十万円から五十万円の収入者が三八%、五十万以上は六二%ということになっておりまするが、昭和二十九年には納税者は千百十七万人にふえ、そのうち三十万以下七一%、三十万以上五十万以下二二%、五十万以上七%というふうに変ってきておるのでございます。この数字が明らかにしておりまするように、今日の税負担が能力に応じて公正にかけられているものではないと思うのでございます。今度の減税案によりますると、免税額は五人世帯でほぼ二十七万円ということになっております。昭和三十年度内閣統計局調べの消費支出は、五人世帯で全国平均二万九千五百七円でありまするから、今なお二万円程度税金が生活費に食い込んでいるということが明白であります。われわれが年収三十二万円まで免税を主張する点はここにあるのでございます。従いまして私どもは今日の段階におきましても、このことを強く要望する次第であります。
次に税率について申し上げます。今度の改革は税率の是正に重点がおかれております。そしてそれは政府の言葉をかりますと、年収五十万円から百万円の中間所得層の税金を軽減したと言っております。ここで問題になりますのは、先ほど私が申し上げましたが、繰返して申し上げますと、年収五十万から百万の所得層が中間であるというものの言い方、認識の仕方であります。われわれの見解からすれば、これは完全なる高額所得者だと考えておる次第でございます。なぜならば所得者は全体の中の七%くらいしかないからでございます。今度の改革はこの僅少の人間に対しまして七百億に近い軽減を行いながら、五十万以下の所得者に対しましては約三百億くらいしか軽減をしない仕組みになっておるのでございます。具体的な金額で例示しますると、大蔵省の資料では、標準家族で、年間三十万円の所得者は月三百四十三円しか減税されないが、年間五十万の人は月割り二千二百四十六円の手取り増となります。年間百万円の人は八千八百九十三円も軽減されるのであります。これを言いかえますると、五十万円の所得者は三十万円の人の約七倍も減税の恩恵にあずかるということになるのであります。御承知の通り、三十万円といえば月二万三、四千円取っている人で、これらの所得者は中小企業の労働者の中では最高級の人たちであります。子供を三人も四人もかかえて文字通り生活にあえいでおるこれらの人の減税を最も必要とし、税金によって最も強く家計が圧迫されておる階層は今度の税制改革では大して恩恵がないというのは、大へんな矛盾と言わなければなりません。
この機会に特に触れておきたいのは、わが国の就労人口は約四千四百万人と言われておりますが、そのうち所得税納税者数は先ほど言いましたように千百万人ですから、所得税を納めない三千三百人が減税の恩典に浴さないばかりでなく、これらの人たちは全く税金の中で、間接税で酒税、砂糖消費税、揮発油税、物品税、入場税、たばこ税をそれぞれ納めておるのであります、そこで三十二年度予算を見ますれば、専売益金の五十五億円の増が見込まれております。この内容は下級たばこの品質低下、生産制限を行い、高級たばこを強制しようというねらいを持っておるのでありまして、その他国鉄運賃の一三%の引き上げ、私鉄の料金あるいはまた場合によっては米価の値上げ、健康保険の改正等による患者負担の増加、諸物価の騰貴等々によるはね返りは、家計負担をますます重くし、増税と同じような結果を生んでおるのであります。従って今回の税制改革が私どもの期待を十分かなえるものでなかったと申しても決して過言でない、かように思うのでございます。
さらに勤労控除、扶養控除の引き上げも切実な要求としてお願いして参りましたけれども、この点も若干の手直しに終ったことははなはだ残念であります。私どもは年々賃金引き上げの要求をやっておるのでございますが、その要求の仕方は最近最低を上げるということと、これは私どもは底上げと言っておるのでありまするが、これを真剣に考えて参りましたが、今これと同時に各単位労働組合におきましては、産業別の保障賃金という方式を採用いたしまして、最低賃金制の確立を要求しておるのはここにあるのでございます。このことは日経連あたりでも賃金格差が拡大しておるということを指摘しておるのでございますが、政府や国会はこのような生活実態を十分考慮した税制を考えていただきたいと思う次第でございます。
また私どもは年末手当なり、あるいは石炭手当の免税をお願いいたして参りました。なるほど皆さんがおっしゃる通りこれは所得であります。しかしこの際、考えていただきたいことは、石炭手当は元来一冬に必要とするところの暖房用の石炭を買うためのもので、いわば実費弁償の性格を持っておるのでございます。ところが現在は二四%ないし四五%の税率で課税されておりまするので、実際支給される手当では必要量の二分の一ぐらいしか石炭が購入できないことになります。しかもそれは年間総所得に加算されてまた課税され、さらに地方税の対象にもなっておるのでありまするから、きわめて不合理と言わなければなりません。また年末手当につきましても、私どもが生活費の不足を補う性質のものだと考えておるのでございます。私どもの要求に対しまして、大蔵省は税体系を乱すものだからということで拒否されて参りました。そのことを言うならば、私どもは租税特別措置法はどうなのかという反問をしたくなるのであります。この際、税法はともかくとして、実際の状況を検討していただきまして、石炭手当あるいは年末手当の少くとも五千円までを免税するという最低の私どもの願望につきましては真剣に取り上げていただきたいと思う次第でございます。
次に申し上げたいのは、一千億減税の前提でございます。それは臨時税制調査会の答申が昭和三十二年度一千億自然増収があるという前提に立っておったのでございますが、ところが政府は二千億の自然増収の見積りを行いました。従いまして政府の行おうとする一千億の減税は決して大いばりできる数字ではないと申し上げたいのでございます。しかし最近仄聞するところによりますると、二千億円の自然増収は過大な見積りだと言われております。そうすると、これを裏返しますと、これは徴税の強化を意味するということになると思います。これでは税率の引き下げにもかかわらず、徴税の面では大衆が重税の苦悩から免れないということを物語るものであります。この点で大蔵省の資料をひもとけば、労働者の源泉所得は三割五分ふえた、法人税は四割五分ふえた、資本金一億円以上の大会社の利益はひどく三割増しを見込んでおるのでございます。このことは中小法人の自然増収は五割ないし六割増しということを意味する数字でございます。年末のデパートの売り上げは未曾有と言われておりまするが、これは前年に比べて四割増しと言われておるそうでございます。ここから考えて、大蔵省は中小企業がそれ以上の利益を上げていると思っているのですから、税金の捕捉あるいは税金の取り方につきましてはいよいよきびしくなるものと考えなければなりません。これは大へんでございます。最近私ども傘下の税金を取っておりまするところの全国税の諸君に聞いてみますと、勤務評定なるものを昨年の五月作りまして——これは人事院によりますると、もし作るときには科学的妥当性のあるものでなければならぬということになっておるそうでございまするけれども、これを業務命令によって無理やりに押しつけて、税金を無理やりにしぼり取ってくる者が成績がよくて、いろいろ人情の機微等に通じております者につきましては、これは成績が悪いのだ、こういうことを強行しておるそうでございます。こういう面につきましても、私どもは今度の自然増収というものにつきましては非常に心配をしておりまするし、徴税の強化という点につきましては、単に減税という面でなくて考えていかなければならない、こう考えておるのでございます。それから租税特別措置法の点につきまして一、二不満の点を申し上げたいのでございまするが、私は税金というものは政治道徳の基本でなくてはならない、かように考えておるのでございます。残念ながら日本の国民の多くの者は税金を納めるのではなくて、税金を取られる、こういうふうに考えておると思うのでございまして、非常な不信感というものを持っておるのではないかと思うのでございます。その一つの原因が何といいまするか、大資本に対しまして特別の有利な条件を税体系に盛っておる、こういうところにあるのではないかと思うのでございます。この制度が戦後の復興期にあって資本蓄積とか、あるいは輸出増進とか企業の近代化ということで大法人に特別の減免税を講じてきたということに対しましては、私どもは一歩下って理解しないわけではございません。しかし経済白書が言っておりまするように、今は戦後ではない、こういう言葉で示されておるように、経済が立ち直り、神武以来の景気と言われておる今日におきまして、そのほとんどを撤廃すべき時期に来ておる、かように思うのでございます。ところが今度の改正案ではこれが無視されたばかりでなく、先の臨時税制調査会の答申の線よりは後退をしておるのでございます。今度の改正案によれば、この租税特別措置法にはほとんど触れずに、逆に中小商工業者の勤労控除ともいうべき概算所得控除や協同組合などに対するところの減免税の特例を廃止しておるのでございます。一年間で実に一千億といわれておる特別措置を約二百億円整理したのでございますが、そのうち概算控除は七十九億でございまするから、相変らず大企業擁護の税制は維持されておる、こう言っても過言ではないと思います。なお、こういう点から申し上げまして、私どもは高額所得者に対するところの大幅の減税と関連して、今度の税制改革案が証券市場の確立といいまするか、擁護といいまするか、あるいは大資本擁護のためにわれわれ労働者の生活が必要以上に犠牲に供されておる大へん不合理な政策ではないか、かように考えておるのであります。どうかその点からいたしまして、冒頭に申し上げました私どもの五つの最低の要求につきましては、ぜひとも一つお考えを願いたい、かように考えておるのであります、
最後に、時間も迫っておりますので簡潔に要望を申し上げたいと思うのでございますが、なお、この中に、人格なき社団といいまするか、これらにつきまして今度の改正案で取られる、こういう工合になっておりますけれども、ほんとうに働く労働者が音楽を聞きたい、あるいは芝居を見たい、あるいはまた家族がお料理を習いたい、あるいはいけ花を習いたい、こういうことのために、わずかの金を醵出しあってやろうというそういう団体がまっ先にこれによって取り締られる、これは非常に不合理じゃないかと考えておるのでございます。文化国家を提唱いたしておりまするところの現在の政府が、そういう下の生活をしておりますところの連中の強い要求と申しまするか、むしろ政府の施策によらずして、実際に共同してやっていこうというものについて弾圧しようということにつきましては、われわれとしてははなはだ納得のいかないものでございます。どうかこういう点についてもお考えを願いたい、かように考えておるのでございます。
それからもう一つ申し上げたいと思っておりますることは、これはこの法案にあるいは直接関係ないかもしれませんが、本日はここに出席さしていただきまして、公述さしていただいておるのでありますが、できますならば、この法律のできる前の税制審議会、こういうものの作り方につきまして私どもとしては意見があるのでございます。残念ながら、今度の臨時税制調査会につきましても、当初は勤労者の代表が一名も加わっておらない。すべて大資本と申しまするか、あるいはわれわれに関係のない方々が出ておって、直接国民の大多数を占めておりますところの勤労者の代表が出ておらない。こういう審議会では、私は、国民各層の要望を充たすところの答申案ができるかどうかはなはだ疑問がございます。こういう点に関しまして、法律ができ上ってからものをいうのでなくして、法律のでき上る前に十分意見の出せる機会を作っていただきたい、かように考えておるのでございます。
それからもう一つは、現在の与党が選挙の際に公約いたしました点でございますが、これは端的に申しまして、三つの公約があるのでございます。これは低額所得者に対するところの減税、租税の公平あるいは税制の簡素化、この三つが公約であったと思います。しかし今二つの点につきましては申し上げましたけれども、税制の簡素化、この点につきましては残念ながら意見を申し述べる機会がございませんでしたけれども、どうかこの点につきましては一つ今のような、何を取られているかわからぬというような複雑な税体系でなくて、もっとだれにもわかりやすい税体系にしていただきたいということを要望申し上げたいと思います。
それからその次に申し上げたいと思いますることは、これもこの法律とは直接関係ないかもしれませんけれども、作られておりますところの法律と、実際にこの税金を納める、あるいは取られる場合の大きな食い違いでございます。現在言葉の中で九、六、四という言葉が言われております。私ども特にこの九に該当するところの勤労者でございますけれども、どうもこういう不合理なやり方につきましては、先ほど申し上げましたように、非常なる勤労者の中には税金に対する不信感というものがあるのでございます。こういうような法律と実際の食い違い、こういう点につきましても、一つ国会の権威をもって当っていただきたい、かように考えているのでございます。
それから最後に申し上げたいと思いますことは、これもあるいは直接関係ないことかもしれませんが、やはりわれわれが汗水たらしまして納めました税金の使い道、これにつきまして、改正案と同時にお考えをいただきたい、こう考えておるのでございます。汚職でありますとか、疑獄という問題が絶えず問題になっておるところでございますけれども、こういうことでは私ども汗水たらしまして、ほんとうに日本の経済の再建にやって参りました中から出しました税金が、非常にきたない方向に使われていることにつきましては納得できないということでございます。どうかこんどのこの法律の改正と同時に、こういう問題に力点を置いてやっていただきたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/24
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025・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) 小山公述人に対して御質疑がございましたらお願いをいたします。別に御質疑がなければ、これにて休憩をいたしまして、午後は一時半から再開いたします。
午後零時十五分休憩
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午後一時四十二分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/25
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026・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) それでは休憩前に引き続き公聴会を開きます。
まず、全日本中小企業協議会中央委員長五藤斉三君に公述をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/26
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027・五藤斉三
○公述人(五藤斉三君) 予算の中で、税制改正の問題について公述をさしていただくわけでありますが、三十二年度の予算でわれわれ低所得層が待望いたしておりました千億減税がまさに実現をいたそうとしておりますことは、私も大へん賛意を表する次第であります。
ちょうだいをいたしました資料を拝見いたしてみますというと、この減税案の実施の結果、平年度において、五人家族の非課税限度が二十七万円余であるようでありますが、これは戦前の貨幣価値に引き直してみますというと月収六十円弱の収入階層の程度まで税が要らないということになったということになるように思うのであります。年々税法上の減税が行われまして、実際は所得の増加がこれを補って自然増収の中で年々減税が行われて参ったことだと思うわけでありますが、年収二十七万円余の非課税限度は、これはまだまだ低過ぎると思うのでございます。大へんけっこうなことではありまするけれども、なお予算上で、技術的にいろいろ彼此融通し合っていただきまして、願わくば年収四十万程度まで非課税限度を引き上げていただきたい。夫婦、三人子供の標準家族で、年収四十万円程度までは非課税限度を引き上げてもらいたいと思うのでございます。これを戦前の月収に直しますならば、月収百円の階層でありまして、まさに戦前における所得税の国税免税点に当る程度になると思うのでありますので、この程度までは非課税程度が引き上げられますことによって、国民生活の安定が、まずまずなし遂げられるのではないかと思われる次第でございます。それと同時に中産階級の中におきまして、資本蓄積が促進できますように考慮いたしますることが、わが国の経済再建今後の経済発展のために不可避の問題ではなかろうかと存じます。こういう観点から、年収四百万円程度までの階層の中堅所得層の税率は、また従って引き下げられまして、資本蓄積の促進がはかられますようにすべきではなかろうかと存じます。
私、一昨年アメリカへ参りまして、アメリカの税制をいろいろ聞いてみたのでありますが、アメリカの個人所得におきましては、勤労所得、事業所得の別がないようでありますが、五人家族におきましては三千ドル、日本の金に直しまして百八万円までは非課税のようであります。主人及び家族を通じて、一人当り六百ドルの基礎控除があるようでありまして、これによって五人で三千ドルまでは非課税になるという話でありました。アメリカと日本との収入の差あるいは物価の差等を勘案いたしまして、その四〇%くらいの非課税を考えますことが、現在の日本の経済事情及び社会事情から考察をいたしまして、まず必要な程度ではなかろうかと私は考えるのでございます。また中小企業の税金は、アメリカにおきましては、年収十万ドルまでが一五%だということを聞いております。こういう点からも、今申し上げましたようなふうに年収四十万程度までは非課税限度が引き上げられ、年収四百万円程度までは資本蓄積の観点から税率が逓減せられまして、従って経済再建が促進されるということが望ましいと思います。
私、昨年の暮から今年にかけまして、しばらく中国を歩いて参りましたが、中国の税制を見てみますというと、中国には個人の所得税というものが全くないようであります。これはああいう共産圏の国でありまするし、非常に民度の低い国でありますので、若干原始国家的な形があると考えなければならぬという観点から、そういうふうになっているかとも思われるのでありますけれども、相当の有識者、知識階級に聞いてみましても、日本は非常に重税に悩んでいられるということを聞きますが、大へんでしょうね、われわれは税金の苦難からは全く解放せられておりますといったようなことを言って、われわれをうらやませるのでございますが、ただし、この中国の税制の中には一種の間接課税が大きくのしかかっておりますことは申すまでもないことでございまして、国家財政の大半を調べてみますというと、歳入の金額の四八%が国営及び公私合営企業の利益という形で、間接課税の形による収入が見込まれております。また四七%を占めます税収も、多くは営業税とか売上税とかという形の間接課税でございまして、個人の収入に対しては全然税を課していないようであります。実際は非常に健全財政が行われておりますけれども、個人に対する税の負担の観念がきわめて薄いということは、一つ考慮に値するところではないだろうかという感じを持って参ったのでありますが、こんな世界の二大陣営の両方の税制を見てみましても、わが国の税制がまだまだ非常に過重であるということはかくれなき事実であると思うのでございますから、千億減税が実現いたそうといたしております今日、これは大へんけっこうなことでございまするけれども、な一段の御奮励を願って、戦前の程度に日本も税の苦痛を軽減をせられるように御考慮を願い、同時に資本蓄積が中小企業の中にもできますような税制をお考えを願いたいと存じます。
で、こういうふうに三十二年度の千億減税だけでも大へんな財政上の技術を要したところでおありになろうかと思うのでございますが、これをさらにさらに減税を普遍的に大きく引き上げよと申し上げますことは、非常に無責任なふうにも聞えるかもわからぬのでありますが、私どもはこれは可能ならしむるかわり財源はあるのではないかと想像いたしておるものでございます。で、本年は年度末にただいまなっておりますが、この三十二年度のわが国経済は御承知の通り、神武以来の好景気といううたい文句で表現せられておりますように、企業が異常の発展を遂げまして、従って国民の収入がふえて、これによって税の自然増収が大きく実現をするという見通しを持ち得るようになりましたことは、御同慶の至りでありますが、政府側においては、これが千億円程度だろうというふうに言われておりまするようでありまするが、経済界、ことに金融界等の計算を聞いてみますと、三十一年度の自然増収も年度を締め切ったあとの計算ではおそらく二千億に達するのではないかという見通しをつけておるように申しておるのでございます。来年度の三十二年度の自然増収も政府においては千九百億程度のように見ておられるようでありまするが、これも過日十三日に衆議院の大蔵公聴会で慶応大学の高木教授が述べられましたように、見方によればこれが三千億に達するだろうという見方も今日すでに見通されておりまするように、ここしばらくわが国の経済事情から考えますならば、好況が続きまして、税の自然増収は巨額に達するものと考えられるのでございます。もとより一面におきましては、これによって経済発展のために各種の投融資、積極的な財政支出をお考えにならなければならないだろうとは思いまするけれども、まだまだこの自然増収を取り崩して減税に回すという余裕は私はあるものであろうかと考えるのでございます。
いま一つはきょうの案件の中にも取り上げられております租税特別措置法の改廃の問題でありますが、三十二年の予算におきましては、これをちょっぴり改善をせられまして、相当額の増徴を期待しておられるようでありますが、私はこの租税特別措置法はこの際一応全廃をしていただくように主張を申し上げたいと存ずるのでございます。数日前に大蔵省の主税局調査課の新聞紙上に発表せられました数字を拝見をいたしてみますというと、この租税特別措置法によって、今日まで大企業が内部保留をいたしました総額は優に二千億円をこえるようであります、昨年三月期だけでも一億以上の——二百十社の計算で二百五十億をこえた内部保留をいたしているようでありますが、これが一社一億五千万円の割合に達するものだと新聞は書いておったのであります。昨日の日経に出ておりましたが、この租税特別措置法の全廃によって、あるいは今後これを若干残すといたしまするならば、中小企業に対して内部保留ができますようなふうに、これを再検討をすべきであろうかと思うのであります。大部分のこれによって浮かびます金額は、減税のかわり財源として使うことができるのじゃないかと思います。これら二つのかわり財源を考えまして、なお不足が生じまするならば、これは低率広課、低い率で広く課税をするという原則によりまして、間接税を新設してこれの補完に資することが一つの方法ではなかろうかと存じます。
間接税課税につきましては多くの反対意見がありまして、税制調査会等でも非常にこれが議題になりましても、実現を見なかったわけだと思うのでございますが、私中国の例を先ほど申しましたが、中国の例を見まして、わが国とは全く事情を異にする国ではありまするけれども、ほとんどその全部が間接税でまかなわれていることによって、国民大衆はきわめて税に対する圧迫を感じていないという観点から考えましても、この間接税の増徴によって浮かびましたものを全部をあげて直接税の減税に振り向けますならば、これは反対はそう多くはないと私は信じている者でございます。税を納めない階層が物価の騰貴によって被害をこうむるという説がよく唱えられておりますけれども、私は企業の中できわめて低率な間接課税ならば、経営合理化の面においてこれを吸収することが十分できるものであるという確信を持っている者でございます。これらの各種の税源をにらみ合せまして、願わくば千億減税の上に、さらに先ほど申し上げましたように、個人所得四十万程度の非課税限度引き上げをお考え願い、年収四百万程度までの資本蓄積が促進できますように減税措置がはかられたいと存ずる次第であります。
これは一般論でございますが、具体的に申し上げますならば、今度の税制改正の中で中小法人の法人税軽減率が従来五十万円まででありましたのが、百万円まで拡張適用をせられるように改正せられようといたしておりますことは、大変喜ばしい次第でありまするけれども、私どもはこれを自来主張して参りました百五十万円程度まで拡張していただくことをお願いいたしたいと思う次第でございます。中小企業が、神武以来の好景気と言われますうたい文句の中でも、業績の改善を求められませんようなものがまだ大部分残っておりますことは御承知の通りでありまして、各種の政治的な配慮から取り残されている中小企業界に最後の善政が振り向けられまして、今後の日本の財政経済に大きな弾力性を持たせ、またその底力を養成するという役目を講ずるために、中小企業に対する減税が今後は主点的に考えられなければならぬのではないかと存じます。米国の税制におきまして、一万ドルまでの企業所得に対しましては一五%の税で間に合うそうでありまするが、これをその四十%程度と見まするならば、さしあたりこれが百五十万円くらいにわが国には当るのではないかと思うのでございまして、この程度まで中小法人税の軽減税率がさしあたり拡張せられまするように望みたいと思います。なお、これは漸次これを拡張していただきまして、将来は中小法人の四百万円くらいの年所得に対して三〇%程度までの法人税で済むようにしていただきたいと思います。これは大法人における各種の租税特別措置法による軽減税法の適用によりまして、過去において多くの主幹産業の場合は二五%から三〇%の程度の法人税の負担で今日まで経済再建がなし遂げられて参りましたことは、御承知の通りであります。ことに金融機関等は最も低い税率で済んでおりますのは、一六%程度で税率が済んでおるところすらあると言われておりまするように、大企業におきましては、非常に低い税率によって資本蓄積がなし遂げられております状況を考えますならば、こういったような配慮が中小企業法人に対してなさるべきが当然であろうかと考えられます。
それからまた、今度の改正法に全然織り込まれておりません同族会社の保留利益課税を対象とする問題は、この課税を全廃するように私どもは多年主張して参りましたが、この同族会社と申しますのは、御承知の通り大部分が中小企業でありまして、中小企業の資本蓄積が先ほど申しましたように非常におくれておりまする現状からいたしまするならば、これを全廃して中小企業の保留を促進すべきであろうと思います。この保留利益課税は、言ってみれば、中小企業の資本蓄積を行いますことに対して一種の懲罰的な意味を持った税法ではなかろうかと思いますが、逆に営々と働きましていい利益をあげましたものには一種の褒賞を与えるといったような意味においても、この課税は全廃すべきものであろうと思います。
いま一つ新しい税制に盛り込まれました増税の一方法といたしまして、人格なき社団の課税が新設せられるようでありますが、これはその理念においてやむを得ないところもあると思うのでありまするが、この中で公益性のあるものには、税法においてただし書きがありますもの以外におきましても、これは考慮せらるべきではなかろうかと存じます。たとえば中小企業の各種の団体等が、その広報機関として新聞や雑誌を発行いたしておりまして、これに広告等を取りますことによって多少の剰余金を出して、これが団体運用の資金に使われておるといったような場合に、この収益性のある仕事に限ってこれを分離課税をするというふうになっておるというふうに大蔵省は説明をしておられるようでありますが、これは非常に遺憾なことであると思います。で、万やむを得ない場合でも、公益性ある社団に対しては、非課税の経理と合併通算をして、その社団全体の収支において剰余金のある場合は課税をせられるのもやむを得ないかと存じまするけれども、これを十分御考慮を願いたいと思うのでございます。
いま一つ、地方税では固定資産税が資本蓄積のためには償却を奨励をしておられますが、課税標準価格といたしましては、そのときの購入価格を見まして地方庁が標準価格を決定しておられると、こういう矛盾がありますので、これは償却を行いました帳簿価格を基準として課税をせられるように改正をしていただきたいと存じます。なお、課税標準価格を、百五十万円程度まで免税点を引き上げていただきたいと存じます。
それから、中小企業の再評価の問題でありますが、これは大体において異議のないところでありまするけれども、中小企業は企業合理化が非常におくれておりますので、税金相当額を合理化資金として使用する際は、五カ年以上の延納を許されるように認めていただきたいと存じます。この中小企業の資産再評価は、第三次の再評価においてもなお行われておりませんようなものが取り上げられますことは非常にけっこうなことでありますが、中には零細企業等では経理の不整備等のために長い年月にわたって全く資産償却をしていない企業が多々あるのでありまして、これらの企業資産は逆に帳簿上含めておるといったよな場合がありまして、資産再評価をやるのに、増価評価をいたしませんで、減価評価をいたす必要がある企業がたくさんあるということを御認識を願いたいと存じます。こういう観点から、零細企業に対する資産再評価の逆再評価の法律も制定をしていただきますように、とかく中小企業対策が常に中大企業に片寄る傾向がありまして、零細企業、小企業は、いつもおいてきぼりになる傾向がありますので、これらの点も御考慮をいただきたいと存じます。
最後に、多少問題が違いまするが、金融界の問題といたしまして、信用金庫界のために、預金保障基金法案というものが提案せられんとしておるように承わるのでありますが、この基金法案の内容を拝見してみますと、毎年預金総額の万分の十を出捐として積み立てて、これによって共同保障をするというふうになっておるようでありますが、なお共同保障を行なった結果、この基金そのものに欠損を生じました場合には、あとから余分に賦課出捐を課することができるというふうになっておるようであります。この出捐というのが非常に私は問題だと思うのでありまして、信用力の基礎の薄弱な信用金庫から毎年々々預金総額の万分の十の損失科目になる金を出捐させるということは、非常に経営を不安定ならしむる要素になるのではないかと存じます。さらに、出捐ということにいたしまして、金を出したものが運営に何ら関係を持ち得ないというようなふうになっておりまするのも、一つの問題であると思うのであります。で、全国の信用金庫の納税額を概算をいたしてみますというと、国税だけで年額三十億円程度の納税をいたしておるようでありますが、その一割程度の三億が大体預金保障基金法案の積立金の限度になっておるようでありますが、この一割程度の国庫補助を何とかお考えを願ってこれを基金として、預金者保護のこの法案が運営せられますように願いたいと存ずるのであります。あるいはそうでありませんならば、信用金庫に課せられます税法の改正によりまして、減税額に相当する出捐を信用金庫のために課する、こういうようなふうにいたしまして、せっかく信用組合から普通の金融機関に成長いたして参りました信用金庫界の今後の発展の芽をつむようなふうになりませんことを期待を申し上げたいと存じます。むしろこれは全国信用組合連合会という全信連に積立金をさせまして、そうしてこれらの預金保証の、共同保証の運営をこの全信連にまかすという方針が一番望ましいやり方ではないかと存ずるのでございます。きょうの税制の問題と多少関係もございまするので、この際これらの点を申し述べまして、私の公述を終らせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/27
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028・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) ありがとうございました。
五藤公述人に御質疑のございます方は、この際御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/28
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029・土田國太郎
○土田國太郎君 五藤さんにちょっとお伺いいたしますが、御承知のように今中小企業の再評価の法案が提案されておるんでございますが、今、私ちょっと聞き落したのでございますが、再評価に際しまして零細企業の資産云々という、そこを聞き落したのですが、どういう意味でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/29
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030・五藤斉三
○公述人(五藤斉三君) 零細企業の中には従来経理が極端に不備でありました等のために、資産償却を全く行なっていない、多年にわたって資産償却を怠っておる企業がたくさんある。これらの企業資産は逆にふくれておる、償却をいたしませんので。いつも購入をしたときのままで帳簿価格が残っておる、こういうことは、資産再評価という意味から申しますと、価格を減す再評価をする必要のものもあるのだということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/30
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031・土田國太郎
○土田國太郎君 二十八年の一月一日基準ですね。今、三十二年でしょう。四年間もあるわけですからね、その心配はないのじゃないですか、二十八年の一月一日を基準としてやるのですから。いかがですか。二十八年一月一日の評価額を基準としてやるわけですから、その心配はないと思うのですが、それは見方が違うかもしれませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/31
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032・五藤斉三
○公述人(五藤斉三君) これは、たとえば終戦以来償却をしない、こういうものもあり得るわけでございますね。まあ事実におきましては、たとえば建物等で、全く腐朽をして、再建をしなければならないようなふうになっておるのだ、これらも帳簿価格の上では建築当時の価格のようになっておるのだ、こういったようなものがあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/32
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033・土田國太郎
○土田國太郎君 いいじゃないですか。高く評価されるからいいじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/33
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034・五藤斉三
○公述人(五藤斉三君) しかし高く評価されるということは、含みが全然なくなるだけでない、仮想の資産が残っておる……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/34
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035・土田國太郎
○土田國太郎君 仮想の資産でも、百万円のものが、実際の価値は十万円かもしれませんけれどもね、この百万円の基準でもってどんどん計算していけば、償却率が多くなるんじゃないか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/35
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036・五藤斉三
○公述人(五藤斉三君) そういう意味から申しますと、そういう仮想の資産は、この際切り捨てられるような資産再評価が望ましいということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/36
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037・土田國太郎
○土田國太郎君 それから事業税のことを私は聞き落したかどうか知りませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/37
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038・五藤斉三
○公述人(五藤斉三君) 事業税のことは私は申し上げませんでした、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/38
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039・土田國太郎
○土田國太郎君 御承知のように、これは商工業者が単独で納めるべき税金で納めるべき税金ですね。しかもこれが使い道は農村が一番使うとかいうようなことで、二重課税みたいなふうになっておるわけですが、事業税は。これらに対して、これは店内の事業をしておる方々は、営業のいかんを問わず、農村を問わず、あらゆる業を営んでおるものは、勤労者はもちろんですが、そういうものが所得に応じて納めていくべきだというようなことも言われておるんですが、非常にこれは中小企業等の連中は困っておる税金で。それに対しましてあなたの方のお考えはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/39
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040・五藤斉三
○公述人(五藤斉三君) 事業税の問題につきましては、ひとり商工業者のみが担税をいたしておるということは大へん不合理である。国家財政でも地方財政でも、税収によって各種の産業政策が行われておりますが、農林水産業に対しましても各種の財政支出が行われておりまして、これに反対給付いたします税は商工業者のみから徴税せられておるという不合理はなくすべきであるという考え方は、私の方も持っております。ただ、これら事業税を全廃するということになりますと、このかわり財源を人頭税的なものに求めなければならぬのではないかと思いますが、これが適当であるかどうかということは、相当考慮を要する問題ではなかろうかと、こういうふうに私どもは考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/40
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041・平林剛
○平林剛君 一つだけちょっとお尋ねしておきたいのですが、先ほどのお話の中で、人格なき社団のことについて触れておられるのですが、私も法人税法や所得税法で一番わからないのは、人格なき社団というやつで、これは初めて税法の中に現われてきた制度であります。政府の方の説明によりますというと、大体こういうものが全国で三十万とか四十万とかあるのだそうでありますが、おそらくこの税法が成立いたしましても、自分は一体人格なき社団であるのか、そうでないのかというふうに、わからない人たちが多いのじゃないか、税法上からは。国民が、自分がそれに該当するかしないのかわからないうちに税法が通ってしまうというようなことは、悪く言えば、これは氏名のない逮捕状のようなもので——徴税をこういうふうにいうのは適当かどうかわかりませんけれども、氏名のない逮捕状だなんというような悪口を言う人さえあるわけであります。特にこの「収益事業を営む」というような抽象的な文句で課税の対象になりますから、税法によらず、結局実際上の徴税の際に、捕捉をされたりあるいは免除をされたりという工合に、そういう面でも非常に今後不公平が起きてくるという心配を感ずるのですが、あなたのお話でありますというと、中小企業の団体の中にもある。先ほどの例はごくわずかしかお話がありませんでしたけれども、大体どの範囲ぐらいまで、こういう対象になると御心配になっておるのでしょうか。概略でもけっこうです。できるだけ広く御存じの点がありましたらお話願えれば幸いですが、概略でもけっこうですから、お話を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/41
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042・五藤斉三
○公述人(五藤斉三君) 今お述べになりましたような法律理念的な反対の御意見が、十三日の衆議院の公聴会でも、日本橋会計事務所長の平石さんから述べられておりますようでありますが、私は経済的な観点から先ほど申し上げたわけでありまして、私のリードいたしております全日本中小企業協議会と申しますのも、その協議会全体の経理というものは、はなはだお恥かしい次第でありますが、常に赤字を続けておるのであります。ただこれが、付設せられております新聞の仕事によりまして、この新聞に広告料を取ることによってわずかにその収支がペイせられておるような状態でありますが、これは私どもといたしましても、さっそく、団体といたしまして痛いところでありますので、大蔵省にお聞きをいたしましたところが、団体全体は赤字であっても、収益事業があるならば、その収益事業だけを切り離して収支の計算をして、剰余金に対しては課税の対象とする、こういう回答を明確にせられたようでありまして、この点は私は非常に問題だと思うのであります。そういったようなことが中小企業団体等ではいろいろございます。出版物を出しているというだけでありませんで、普通のいろいろのサービス的な仕事をいたしまして、その収益によって会員、組合員の負担の増高にならないような形で運営されておるというような団体がたくさんあると思うのであります。こういったようなものが経済団体の中においては、ことごとく課税の対象になるということで、非常にあわてているようであります。きょうの公聴会ではぜひとも私に代弁をしてくれというようないろいろの要望を受けているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/42
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043・塩見俊二
○塩見俊二君 一言だけお伺いしたいと思います。先ほど中共の税制のお話が出ておったようでありますが、私、実は若干向うにおりまして調べてきたのですが、まあおっしゃる通り、約五〇%の国の事業所得、これは結局私は五藤先生と同じように、ある意味での法人税の大体だ、こういうふうに見ているわけです。それから個人の所得税ですが、これはないとおっしゃいますけれども、これはあると思うのであります。ただ、現在大衆がああいったような組織になりまして、非常に少なくなっておりますけれども、それでも全収入の約七、八%に当る数字でありまして、これはもっぱら資本の蓄積を、ないようにするといいますか、逆の観点からやはり取っているようです。これは一つお調べ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/43
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044・五藤斉三
○公述人(五藤斉三君) それは商工業の所得税、利子所得税のことではございますまいか。個人の勤労所得税には全然税を課しておらんように聞きましたが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/44
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045・塩見俊二
○塩見俊二君 それはありません。独立して事業をやりまして、その期間資本の蓄積にかわるおそれのあるようなものは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/45
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046・五藤斉三
○公述人(五藤斉三君) これは法人所得に該当いたしますようなものは商工業所得の……(「委員長の許可を受けないでやり取りしては困りますよ、雑談ではないのだから、一々委員長の許可を受けてもらいたい」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/46
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047・塩見俊二
○塩見俊二君 それでは最後にもう一つ。これは見方の問題ですが、中共はたしかにそういうような圧迫感が緊迫でないということは私も同感をいたします。しかし農村に行きますと、収穫量の約一二%を現物で徴収をしておるというようなことで、戦争の惨禍なり土匪なりそういうもので非常に苦しんでおって、現在非常に安定しておるという感がされておりますが、なかなか税金が重いように見てきましたが、いかがなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/47
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048・五藤斉三
○公述人(五藤斉三君) お説のように、農業税は収穫を対象として、一種の年貢を納めるような形で現物納税をいたしておるようでありますが、まあその点はあるいは個人の所得税に該当するものかもわかりません。ただ、御承知のように、農業は農業合作社がどんどんふえておりますようでありますし、商工業は九七%が公私合併になってしまったということを申しておりましたが、おそらく農業の方も国営農業と合作社的経営に漸次変っていくのではないかと私は聞いて参りました。こういうような点から、個人所得というものに対する税の圧迫感は現在すでに商工業界におきましては、すべてが一種の国家機関の雇い人のような形になっておりまして、勤労所得の形で所得を得ているようでありますから、この面では税は全然かけられておりませんで、農業の方も合作社的になりますと、それに準ずるようになるのでありまして、そんなふうになるのではないかというふうに思って私は帰って参りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/48
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049・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/49
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050・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) 次に移ります、興国人絹パルプ株式会社取締役経理部長青砥正吉君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/50
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051・青砥正吉
○公述人(青砥正吉君) 先ほど御紹介をいただきました青砥でございます。日ごろ税制につきましては、専門的な立場からいろいろ御検討願っております皆さん方の前で、私ごときが意見を申し上げますのは、いささか釈迦に説法の感がいたしまして、面はゆい感じがいたしますが、国民の声といたしまして、しばらくお聞きとりを願いたいと思います。
今次国会に提出せられております税制改正の一案の問題でございますが、与えられました時間も限られておりますので、その中から私が特に気つきましたもので、おもなものをピック・アップいたしまして申し上げたいと存じます。
まず、所得税のいわゆる一千億円の減税案でございますが、これは細部につきましてはいろいろ問題もございましょうが、戦後過重でございましたこの税を思い切ってここに軽減せられようとすることは、戦後の税制史上特筆大書すべき善政でございまして、皆さん方の御勇気と英知に対しては深甚の敬意を表するものでございます。しかし間接税の拡大と、企業の内部蓄積につきましては、ほとんど改善のあとが見られないという点がございますが、これは皆さん方が一ぺん大改革をやっては混乱をきたす、こういうようなことで、財源が関係もございましょうが、お見送りになったということは、私たち企業担当者といたしましては、いささか遺憾の点がございます。
所得税の細部の問題でございますが、こちらからいただきました資料の新旧対照表がございますが、給与所得の控除の問題でございます。十ページの第九条の五項の問題でございます。給与所得の控除につきましては、今回十二万円まで限度が上ったわけでございますが、実は戦前昭和十五年の例を申しますと、最高限度が七百二十円になっております。現在の物価の指数から申しますと、それを三百三十倍いたしますと約二十四万円になるわけでございます。今回十二万円になったわけでありますが、なお戦前と比べて半分にしかなっていない。それからもう一つ、シャウプ勧告によりまして、昭和二十五年に全面的な税制の改正がございましたが、これによりまして申告納税制度が新たに採用されたわけでございます。この申告納税制度によりまして、源泉から徴収されております給与所得者と、一般の商工業、農業等のアンバランスが非常に大きくなっておるということは、皆さん方もよく御認識なさっておることと思いますが、これを人員の面から見ますと、改正前の昭和二十四年と現在とを比較しますと、給与所得者については改正前比率で申しますと百人のものが現在は六十七人になっております。一般の事業所得者の方は、百人のものが二十七人に減っております、つまり給与所得者と比べますと非常に減り方が激しい。この事業所得者のうち、特に農業について見ますと、百人が十九人になっております。給与所得者の三分の一以上に減っているというふうな現象がございます。それから今度は所得の金額の動向と税額を比較いたして見ますと、現在は給与所得者につきましては、所得は改正前の二・七倍になっております。これに伴いまして税額も一・四倍にはね上っております。しかるに農業所得者につきましては、所得は改正前と比べますと一・九倍になっておりますが、税額の方は実に六分の一に減って参っております。これは米作所得の非課税の問題等もからんでおるわけでございましょうが、ただいま申し上げました比率だけから通して見ましても、いかに申告納税制度がほんとうの意味の実質的な税の負担をアンバランスにしておるかということが十分おわかりいただけると思うのであります。こういう点を勘案いたしますと、戦前の二十四万円でもまだ足りない、少くとも五、六十万円に引き上げなければ、勤労所得者と他の事業所得者とのアンバランスは是正されないというふうに看取されるわけでありまして、今回一応十二万円に引き上げられましたことは、これはまことにけっこうでございますが、なお今後ともこの金額をさらにそういった適正な額までに引き上げていくことを考慮していただきたい。
それから比較表の二十二ページの十一条の三、配当所得と不動産所得の世帯合算、これは今回新しくここに取り上げられたものでございますが、いわゆる配当金の名寄せの問題、不動産収入の名寄せの問題でございます。親、兄弟、おじいさん、おばあさんの収入を全部申告者の一人の収入にして課税をしよう、こういうふうな考え方であります。これは一部脱税者を捕捉いたします点から見れば、まことにもっともな考え方ではございますが、正直者までも巻き添えにするという点がありやしないかということでございます。社会悪を除くために刑務所を作ってどろぼうを入れる、こういうことは非常にけっこうでありますが、この法の施行せられました結果は、どろぼうでない善良な市民まで同じように刑務所に入れられるという、結果に陥らないかどうか、こういうことが私は非常に心配でございます。現にこの所得につきましては、たとえば株式の配当を取ります場合には、その前に株式を買わなければならない。買うにつきましては、年十万円以上は、これは譲渡所得の課税の対象になっておるわけであります。従いまして税務署で調査いたします場合に、この株を買った金は一体どこから出たのですかということで現に追及をされておるわけであります。ですからこういった調査をもう少し掘り下げてやればこういうふうな、正直者までも巻き添えを食わすような立法はされなくてもいいんじゃないかというふうに私は感ずるわけでございます。
それからその次は租税特別措置の整理の問題、それから法人税率の問題について申し上げたいと思いますが、説明の順序といたしまして企業資本の蓄積の問題に触れてみたいと思います。
企業資本蓄積については先ほどもちょっとお話があったようでありますが、戦前の昭和十一年の最もノルマルな頃の企業の資本の構成は自己資本が六一%——資本の総額を百といたしますと自己資本が六十一で他人資本が三十九であったわけであります。申し上げるまでもなく、企業経営におきまして、借入金とか社債というような他人資本をたくさん持っておりますと、金融市場の変化がありましたり、あるいは事業の不況の際、この資金を回収されまして安んじて事業を継続していくことができないというわけでございます。ところが戦後は先ほどの比率が全く逆転いたして参ったわけであります。すなわち、六十一対三十九が逆に三十八対六十二になったわけであります。不安定をもたらす他人資本の比率が非常に大きくなって参ったわけであります。今これを自己資本だけについてもう一ぺんそのことを繰り返して申しますと、自己資本は終戦直後がた落ちとなりまして、その後ほとんど比率は増加いたしておりません。先ほども申し上げたように三八%でございます。日本の戦前の六一%、あるいはアメリカの現在の六四%に比べますと、非常に低くて、企業経営は不安定な状態にあるのであります。で、自己資本を戦前と同じように増強することによりまして、原価も安くしまして外国製品とも太刀打ちできる、また金融梗塞の際には、不況にもたえるというようなことにもなるのでございますが、現状としてはそういうようなことで非常に不安定な状態にある。これにつきましては、いろいろな面からの施策がもちろん必要でありますが、税制の面からも内部蓄積を増強する政策を打ち出すとかあるいは税率を引き下げまして内部蓄積をはかるとか、こういう必要があるのじゃないかというふうに思うのでございます。
さらに企業の利益と資本蓄積の問題について申し上げてみますと、全国の企業の平均売上高利益率を見ますと、戦争前が一三・一%、約一三%あります。これが現在どういうことになっておるかと申しますと、僅かに三%半であります。四分の一でございます。また一方使用いたしております総資本と利益との比率から見ますと、これもほぼ先ほどの売上高利益率と同様で非常に低下して参っております。なぜこういうことになったかということを申し上げますと、この場合も借入金とか社債等の他人資本の比率が先ほど申し上げたように倍近くはね上っておる。その上に金利のレートが高くなっておりまして、支払い金利というものが金額的に戦前以上の比率に非常にはね上っておる、倍ぐらいにはね上っておるわけであります。それからもう一つは、企業の配当率が戦前と比べると高くなった。これは企業の株式資本を集めますために、やはり金利との関係がございまして、金利に見合うような配当率を計上しなければ株式資本は集まってこない。こういうことでありまして、現在はその率が全国平均いたしまして一三・一%になっております。戦争前の八%四、アメリカの一〇%九に比べますと相当高くなって参っております。
こういうことで一応企業資本の蓄積は非常にむずかしくなってきておる上に、これに加えて法人税の負担というものがございます。こういうことでありますので、企業利益は、社会に流出いたしまして、内部にはほとんど残ってない。残ってないから、戦前と比べて非常に率が下ってくる。それからいま一つは、企業の社会性という問題がございます。企業には従業員、株主はもとより、取引先それから一般消費者または業界が付随しておりまして、一つのサークルを形成しております。企業の盛衰また不安定は、国家の盛衰また不安とつながっておりますことは今さら申し上げるまでもないのでございます。従いまして税制の面からもこの企業内部の蓄積をはかっていただいて、資本構成を少くとも戦前もしくはアメリカ程度に是正していただくと、しかることによって従業員にも少くとも戦前なみの給与を払う、よく最近は、先ほど出ましたように、神武以来の好況と申しておりますが、実は、この一般のサラリーマンの月給は、一人平均としまして戦前の状態に私は達していないと思うのでございます。物価は三百三十倍でございますが、料理屋なんかはおそらく四百倍ぐらいになっておると思います。ところが一般のサラリーマンの平均といたしますと、これは三百三十倍でなく、せいぜい二百六、七十倍の、最近上って参っておりますが、その程度と思います。戦前に比べて約八割というところではないかと思います。企業の資本の方は、戦前と比べますとわずかに六割であると、それから給与の方は戦前の八割である。従いまして神武以来の好景気というものは、少くともサラリーマンにはまだ何ら関係がないというふうに、冷酷な数字はそういうふうに語っているように私感じております。税を軽減して資本蓄積することによりまして、そういった従業員に対する給与も、少くとも戦前程度は払い、消費者大衆にもより安価な物品を提供する、輸出も増進する、こういうことで、今回の企図せられております租税特別措置の問題につきましても、また法人税の税率引き下げの問題につきましても、慎重な考慮を払っていただきたいと存ずるものでございます。
この点につきまして、法人税の税率の引き下げと、財源としての間接税の拡大についてちょっと申し上げてみたいと思いますが、法人税の税率につきましては、法人税法の新旧対照表の十六ページ第十七条でございます。先ほど中共の話が出て参っておりまして、質疑もあったことを伺っておりますが、この中共初め後進国には間接税中心主義が多いようでございます。ところがシャウプさんが日本に見えまして、昭和二十五年から英米系の直接税主義をとられたために、非常にわれわれは税の重さを、税そのものも重くなっておりますが、直接税が非常に加重になったために、よけい重さを感ずる。これは戦前と現在との直接税、間接税の伸び方を検討してみますと、金額におきまして直接税は戦前と比べると千百十倍になっております。これに対しまして、間接税は五百五十六倍でございます。従いまして戦前と比べますと、直接税は間接税の二倍にはね上っておるというわけでございます。税そのものがすでに総額としまして、戦前と比べますと非常に重くなっているにかかわらず、直接税をそのように間接税の二倍以上に持ってきたということが、この税をさらに重く感ぜしめるという結果になっているのでございます。フランスの三五%、イタリアの一八・四%というようなものに比べますと、現在の日本は相当高い比率になっております。日本の戦前はこれが三四・八%というふうになっております。少くともこういう線に近い方向に持ってゆく必要はないか。
で、この間接税の功徳を一々申し上げる必要はございませんが、税を意識しないで払う。ビール一本飲みましても、その中の五割六分は税金でございます。半分以上が税金であります。ピース一本を吸いましても、その中の六割七分、約七割というものは税金であります。ですからたばこを吸いまして、ほんとうに吸うところだけが、七割部分が税金であって、あと灰皿の中に落しますのがほんとうのたばこの代金だけであります。ほんとうのたばこを吸わないで、皆さん税金を吸って、われわれも灰皿の中に落しております。しかし税金を吸っているという意識を持たないで税金を払う、こういうところに間接税の妙味があるのじゃないかというふうに感じます。それから間接税につきましては、先ほど申しました申告納税と源泉徴収とのアンバランスを是正する点においても意味があるのじゃないか。
それから間接税は大衆課税であるというふうに論駁される方もございますが、現在の直接税、所得税は相当大衆課税になっているのでございます。戦前この所得税を払っておりますのは八十五万人でございますが、現在は一千万人が税金を払っているわけでございます。すでに所得税そのものが大衆課税になっておりますので、税の理想から申しますというと、なるべくたくさんの人から少しずつ取るということが一番理想ではないかと思いますので、そういう面からも、この間接税を強化するということが考えられているのじゃないかと思います。ただ間接税を強化いたしました場合に、低額所得者の税を軽減するというふうなことを考慮しなければならないと思うのでありますが、これについては扶養控除の限度を上げる必要があるのじゃないか。日本の扶養控除を外国と比べますと、非常に英米のような金持の国とは比較になりませんが、かりにドイツあたりと比べてみますと、ドイツは妻が七万七千円、一子と二子が六万一千円、三子以上になりますとかえって日本とは逆にふえまして十四万四千円、こういうふうにかえって多い。ドイツはいわば人口のふえることを歓迎する、生めよ、ふやせよというような国柄を幾分反映しておりますが、とにかくこういった扶養控除が非常に、比べると日本の方がむしろ小さい。ですから間接税を設けた場合には、どうしてもそっちの方を減らさなければならんのではないか。間接税につきましては、今回もやはり税制調査会等で取り上げまして、だいぶ問題になっておりましたのですが、とかく新税は悪税なりと申しまして、税もなじんでしまえばそうでもありませんが、新しい税制をしくということにつきましては、とかくの強い摩擦がありまして、いわゆる新税は悪税なりという言葉で表現されておりますが、やりにくい点も多々あると思いますが、日本のほんとうの税を軽減して、民をして楽しんでこの世を謳歌させるというためには、そこに思い切って一つ皆さん方政治力を結集して、この間接税の強化を実施していただきたいというふうに念願いたすものであります。三十二年度の法人税の自然増収なりあるいは法人の租税特別措置の整理による歳入増加分は、実際は当然法人税の軽減に向けられなければならない性質のものではないと思います。それが今回所得税の軽減に向けられておるのでございますから、三十二年度の自然増収なり先ほど申し上げました間接税の拡大論は今後法人税の軽減に一つ当てていただきたいと考える次第であります。
それから次は租税特別措置の問題でございますが、一口に租税特別措置と申しましても、これをその性質から分けますと大体三つに分れるのでございます。一つは会計理論上当然認めなければならないもの、二つは経済政策推進のために設けられたもの、三つには、その先ほどの中間的なものとこういうことになりますが、会計理論上当然認むべきものは、これはいわゆる企業会計原則によります費用収益対応の原則という鉄則がございまして、これを計上してやらなければ、その期間の正確な損益は、利益は計算できない、こういうふうなものでございます。しかもこれに属しますものといたしましは、退職給与引当金、特別修繕引当金、貸し倒れ準備金、価格変動準備金、渇水準備金、違約損失準備金、異常危険準備金、輸出損失準備金、こういうものがこれに属するわけでありますが、これは実は免税ではないわけであります。全部税金の繰り延べでございます。つまり今払わないで先になって払うというふうなものでございます。ですから、あと払いか先払いかだけの差でございまして、いわゆる税金相当額、税金をあとで払う金利だけを企業は得をする程度のものでございまして、国の歳入から申しますとほとんど全然変らないというものでございます。退職給与引当金にいたしましてもそうでございます。これはそれを積みまして、三十年で従業員がやめるときには払うというわけであります。三十年たってやめるときに一ぺんに払うのか、今貯金をしておいてそのときになって払うのか、こういうだけの問題でございます。これにつきましても三十一年度において従来の限度を半分にされたわけであります。従来の限度も、ほんとうにその従業員がやめるときの退職金そのものではなくて、自分の都合でやめる場合の金額をもとにして計算しておるのであります。実際に払うのはそれより三割、四割多いわけでありますが、それをさらに半分にしろというのであります。この考え方は、何もそんなにたくさん一ぺんに積んでおけば払えるのじゃないかということでございます。これはいわゆる金繰りと、それから損益の計算とを混同した考え方でございます。資金の方からいけば半分も積んであればもちろん払えるわけでございます。しかし損益の面から見れば、これは労働協約によりましてこまかい退職金の方の規定がありまして、それによって企業が払うことを義務付けるわけでございますが、毎年、年数がたちますと、それによって大体一年一カ月というふうにふえていくわけであります。それを毎期積む、こういうわけでございます。昨年これが半減されましたことは、今なお企業におきましては、どうもこれは筋が通らない、おかしいと、こういっておるわけでございます。それから特別修繕引当金、それから貸し倒れ準備金、価格変動準備金、渇水準備金、違約損失準備金、異常危険準備金、それから輸出損失準備金はこれは実際利用名がほとんどないようでございますので、今回これを期限をもって廃止するという案は適当ではないかと考えます。他のものについては、それぞれの限度なり毎年計上するものを引き下げるというふうな考え方でございますが、実はこの貸し倒れ準備金にいたしましても、この限度はそのままにおいてあるわけであります。この限度が適当であるかどうかということは、これが問題なんでございまして、むしろ会計理論だけの立場から申しますと、適正な限度をはじいて、その限度まではなるべく早く積み立てるということが理想でございますが、今回の改正では、限度はそのままにしておいて、積み立てる率を減らそうということでございます。ですから会計理論の行き方からいたしますと、まるで逆になっている。税と会計は違うからいいじゃないかというふうに日本では言われておりますが、実際、税というものは私は違ってはむしろならないのじゃないか。生きた企業なり個人を対象とする税でございますから、あくまでもそういうものと密着不可分の考え方なり処理をしなければ、ほんとうのスムースな税務行政はとれないのじゃないか、また国民が喜んで払うような、納めるような税制にはならないのじゃないかということを心配するものでございます。これはこういった一連の租税特別措置につきましては、昭和二十七年のいわゆる法人税率を三五%から二割上げまして四二%にいたします際に、今後も上げるが、企業蓄積については個々について検討した結果これを考えるということで、これがいろいろ認められたのが現在の租税特別措置でございます。ところがまあ時間の経過と申しますか、担当者も変ったと申しますか、その当時のいきさつに変りなく今回下げられようとすることは、私どもとしましてはまことに了解しにくい点でございまして、この点を再考をいただきたいと思うのでございます。
それから経済政策推進のための租税特別措置といたしましては、重要物産の免税とか、利子所得の非課税、配当所得税等の課税の特例、それに控除の特例、生命保険の控除、増資配当金の免税、輸出所得の特別控除、それから設備の五割増し償却、初年度二分の一特別償却とございますが、輸出所得の特別控除につきまして、今回その期限をさらに二カ年間延長されようとしておりますことは、まことに企業なり日本の輸出貿易の実態をおつかみになったお考え方として敬意を表するものでございます。五割増の特別償却等につきましても、今回さらにこれを実情に近づけるように持っていこうというふうな考えがございまして、非常なけっこうなお考え方かと拝察するのでございますが、重要物産の免税につきましては、実はこの制度は大正二年から日本にはこの制度があるわけであります。いわゆる技術面におきまして、他の先進国と比べて劣っております国におきましては、こういった免税の制度が大体置いてございますし、従いまして、日本の現状から見まして、なおこの制度は暫く置くべきではないかというふうに考えておりますが、今回その所得の限度を投下資本の四割という線で抑えられております。この四割の線はこれは相当私は問題でございますが、一応この四割の線で切らなければならないということでございますならば、ここにそれだけ日本の科学、一般の工業技術その他の技術が進歩したということであれば、さらに試験研究を将来先進国と肩を並べる、あるいはそれ以上に日本の産業を振興発展せしめるための何らかの措置を講ずる必要はないか。企業合理化促進法等で多少の補助金等の形でそういった措置はとられておりますが、税制の面から特にこれを考えてみる必要はないか。その意味で試験研究積立金、あるいは準備金というようなものを一つお考えいただきたい。これはアメリカ等でも最近は試験研究を非常に盛んにやっておりまして、その試験研究の費用は大体売り上げの三%ないし八%と言われております。ですから、半期百億の売り上げがございますならば、その半期の研究費は三億ないし八億という膨大な金をかけて試験研究をやっております。そういうことでございますから、アメリカもいろんな新しい科学技術の進歩は非常なものでございまして、これはもちろん総会等においてもそういった説明をいたしておりますが、日本においても大体この積立金を、これは私の一つの私案でございますが、毎年試験研究をやりました新製品なりあるいは新しい設備を研究いたしますために投下しました金額と同じ金額を積み立て、これを五年なら五年積み立てさせる。つまり半期一億の試験研究費を使ったということといたしますと、五年で十期ございますから十億円になります。この十億円の積み立てをやる。そうしますと、そのうち税で半分は持っていかれますから、つまり税に相当する五億だけが企業には残りまして、それを運用できる。第六年目はどうするかと申しますと、最初の第一年を落しまして第六年のを計上する。かりに二億といたしますと、十億が今度は十一億になるわけであります。こういうことで、結局五年たつと最初の税金を払うということでございます。ですから、五年間だけは逐次税を繰り延べて払う。その間だけ税に相当する資金を運用するということでございまして、損益の面からいきますと税金に相当する金利だけが企業のプラスになる、こういうのでございます。これはもちろん総会のときの貸借対照表にもなりますし、一般の投資家なり株主はそれを見まして、あそこの会社はどの程度の試験研究をやっているか、また試験研究の実績がそこの金額になって出るわけでありますから、それによりましてその会社の将来の発展性を判断するというふうなことができまして、みな競ってそういうことをやるということになるのじゃないかと思うのであります。企業合理化促進法等によりますと、補助金等が一応充てられますことになっていますが、補助金は申請がございますし、当局の査定というものがございます。それには細部のいろいろな明細をつけて出さなければならぬということになりまして、秘密が漏洩するおそれがございます。従いまして、こういう制度が実際ありましても、企業といたしましては新しいそういうものは実は申請をしません。秘密が漏洩いたしますから申請いたしません。ですから法律があっても実際には適用を受けないということです。ところがこれを税の面から取り上げて参りますと、そういった秘密が漏洩いたさないのでございます。しかも申請するしないにかかわらず、これが平等に公平に適用できる。こういう意味で非常に私は妙味があるのじゃないかというふうに感じております。
それから生命保険料の控除の問題でございますが、今回これを拡充せられるということは、貯蓄奨励の意味もあるそうでございまして、私はそれもけっこうだと思いますが、企業に働いております従業員を対象とした、あるいはまた一般市民でもそこまで広げればさらにけっこうだと思いますが、年金制度を布いていただきたい。欧米の先進国におきましては、すでに年金の制度が布かれております。従いまして、日本でもこういった制度を布いて従業員をして老後の生活を保障してやりまして、安んじて生活ができるような方向に持って行ったらどうか。このためには何も国の機関を設ける必要はございません。一、二の民間会社を設立するとか、あるいは現在の信託銀行あたりを二、三指定いたしまして、それらをして行わしめるということになりますと、経費もかかりません。ただ国としては年金制に参加した個人に対しては利息をある程度めんどうをみる。たとえば年八分までの利息をみるとか、あるいは二分か三分程度の利息を五年間みてやる。これは金額にしまして財政にはほとんど影響を与えないと思います。それほど小さい金額でございますが、この制度が確立することによって一般従業員等は安んじて働き得る、こういうことになって大へんけっこうではないかと思います。
このほかさらに織り込んでいただきたいのは造林特別積立金でございます。造林特別積立金につきましては今回地ごしらえ等について償却年数を短くするというふうなお考えのようでございますが、日本の国は御存じの通り約七割が山でございます。山のひだを入れますと八割が山であると申しても差しつかえないと思いますが、この狭い日本の国土を利用する面から見ますと、この八割の山をほったらかしておくほどばかげたことはないと思うのでございます。こういう意味におきましても造林を盛んに起す。毎年、木は切り倒されて枯渇する一方でございます。このことは材木の値段が毎年々々上って来るということからも御了承いただけると思いますが、そういう意味におきましても、造林につきましては特段の御考慮をいただきたいと思うのでございます。
それから今回は取り上げられなかったのでございますが、保証契約引当金、返品引当金というものがございます。保証契約は、工事をいたしました場合に、その工事をいたしましたあとまでも保証をする。それから最近よく行われておりますが、テレビとか電気洗濯機というものにおいて、納めましても一年間ないし六カ月間は保証する。こういうのでございますが、これは売ったと同時にそういった契約を結ぶわけでありますから、売ったときにその債務が発生するわけでございます。それから返品引当金、これは出版会社等でございますが、本の返品が常時あるわけでございます。こういうものについてもこれは金額的にわずかでございますが、なるべく会社の会計処理を実際に実情にマッチしたようにもって行くという意味においても、税制の面からこれを御考慮いただきたいと思うのであります。
それから減価償却の問題でございますが、大企業におきましては、第三次までの再評価と企業合理化促進法によりまして償却率も向上して参っております。しかし現在の耐用年数は、これは昭和二十六年にきめられましたのでございますが、これはその当時は、現在とは、よほどまだ世の中も落ちついて参っておりませんというような関係で、いわゆる物理的耐用年数だけを対象にして計算されたわけでございます。この物理的耐用年数と申しますと、機械なら機械が、それが摩滅するまで何年かかるかというふうな考え方でございます。ところが最近は非常に技術が進歩いたして参りまして、たとえば化学とか、化繊とか、機械等の部門は、機械そのものはまだ使えるが、これは能率が非常に劣っておる、だからここで一億なら一億の金を出しても新しい機械と取りかえた方が有利だというふうなことで取りかえることが再々ございます。実際は十五年、物理的に言えば十五年たったら摩滅してこわれて使えなくなる、ところが今の別の経済的な立場から行きますと、十年たつと新しい機械ができて、これは能率が悪くなったから、まだあと五年は使えるのだが、これを倉庫に入れなきゃいかぬ、こういう問題があるのであります。そういった償却が実は織り込んでないわけであります。これも一つぜひお考えいただきたい。それから償却の仕方に少し幅を持たせていただきたいということであります。現在はただきめられた年数によって機械的に計算をするわけでございますが、一定の基準を示して、それから三割はよけいやってもいいというふうなやり方でございます。これはむしろ企業のもうかっておりますときにはそういった償却をするわけであります。もうかっているときには国の財政収入も実は多いわけであります。そういった余分な償却をいたしましてもなお普通の年度よりも利益は多いということでございまして、国の収入からいきますと、かえって収入が、自然増収が調節せられて、かえって結果はよろしい、こういうふうな結果になるのじゃないかと思います。これも一つ考慮していただきたい。
大体以上はなはだ勝手なことを申し上げたきらいがございますが、産業関係の切実な声をお伝えしたと思っております。どうぞこの声を今次の改正案に織り込んでいただくなり、財源等の関係で今回織り込めないということでございますならば、少くとも次年度におきましてはぜひそれを織り込んでいただきたいということを申し上げまして私の公述を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/51
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052・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) ありがとうございました。何か御質疑ございませんか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/52
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053・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) ございませんければ、最後に産業経済新聞社の取締役、論説副委員長波多尚君に公述をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/53
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054・波多尚
○公述人(波多尚君) 私は、今度の大きな減税として諸税制改正というものが戦後初めてのチャンスでありますし、またこんなチャンスは二度と近いうちにないだろうと思うのです。まあこういう一通りの大きな案ができたということについては非常に喜んでおるものの一人でございます。千億減税とか千億施策というふうな、両建の、これは非常にいわばぜいたくな予算、これは池田大蔵大臣のようなベテランが出られまして、非常に恵まれた条件のもとでこしらえられました。まあそれはそれとして一つの理由は確かにわかるのでありますが、私どもはこういう経済界が拡張し上昇しておるようなときには、やはり財政はできるだけ小さい方がよろしいのではないか、そうしてなるべく民間の経済自身の力で伸びるというふうな建前におきまして、この自然増収というものは国民にできるだけ返してやる、つまり幅をできるだけ大きくしてやるということがほんとうではないかと思うのであります。ことにまだ、ことし、明年度一ぱいは相当好景気であろうと思われます。それにいたしましても、来年の下期から再来年にかけては、だいぶ空気が、徴候がおかしくなっておる、それにしてもまあ非常に大きな反動がくるというふうには思われませんので、この際、私どもは、この減税の幅というふうなものはもっと大きく見てもらった方がよかったのではないか、こういうふうな感じを持っておるのであります。
まあ問題は、この自然増収を千九百二十億と見たこの見積りが過大であるのか、あるいは多小とも内輪であるのかということについてはいろいろ御議論があるようであります。これを非常に過大であって危ないというふうな御意見も方々に聞くのでありますが、本年度の自然増収がすでにもう千億にもなっておるということから比較して参りますならば、明年度の実際の増収というものは一応九百億ぐらいと見積ってあるというふうに言っていいのだろうと思います。そうしてその前提となっておる考え方を、根拠を見ますと、工業生産指数で見て一二・五%とか、国民所得の伸びが大体七・五%とか、雇用の増加が二%とか、あるいは資本の増大その他見込んで配当が三〇%とかいうふうないろいろな根拠があげてあります。しかしながら最近のいろいろなベース・アップその他による賃金の上昇率が割合に高い、そしていわゆる手当とかいろいろな形における給与というものは非常にふえておる、中小企業におきましても相当膨張しておる、いろいろなこの実情、それからまたこの減税による国民の収入へのはね返りというふうないろいろなことから見まして、本年度の実績に比較しましては九百億ぐらいの増収であるということは、これはまだ実は多少余地があるのではないかという感じを強く持つのであります。
今までの経験から言いましても、予算に比較して非常な減収を見たという記憶はあまりございません。かつて私の記憶しておりますところでは、昭和四年の非常なパニックがありましたときに、あれほどの経済界が生きるか死ぬかの騒ぎのとき、初めて予算よりかなり減収をみたというふうな経験がありますけれども、今まで大蔵省の手固い、内輪に見積るようなやり方、これは堅実でありますが、それから見ましても、もう少し自然増収はあるじゃないか。その根拠につきましてはいろいろな推算の仕方もありましょうし、またこれはすべて予測でありますから、なかなかむずかしいのでありますけれども、ただ感じといたしては、そういふうなことで、まだ若干の自然増収は見積れるのじゃないかというふうにも思います。従いまして、これはまだ減税の幅を多少ふくらます余地があるのじゃないかという感じを持っております。
それからもう一つの問題点としまして、減税は消費需要を刺激するのでインフレ的である、こういう議論がございます。しかも、これは減税しないで歳出の増加としてまかなった場合と比較した場合には、はるかにこれは減税していった方が堅実である、こういうふうにやはり考えます。問題は、物価の安定とか通貨価値の維持とかというふうなことをどの程度までやっていけるかということに関連しているのでありまして、それが消費の性向、あるいは貯蓄というものの性向というものをおそらく決定してくるでありましょう。従いまして、この減税をインフレ的というふうな考え方で非常に攻撃するということについては、私はやはり、どちらかというと、減税する方がより堅実であるというような意味において、私は減税の拡大の方を支持したい、こう思っております。ただ見積りと実績とが多少食い違いますれば、ちょうど最近の金融事情が示しておりますように、非常にデフレ的な——つまり財政資金の揚超ということから、かなりデフレ的な要素を与えてくるというようなことになるのであります。まあ明年度は、おそらく本年度の自然増収が、いろいろな形で、補正予算が組まれておりますけれども、だんだん使っていき、まあ本年度ほどのことではないということから、そういうふうな財政資金からくる圧迫というものは、あるいはあまりないのじゃなかろうか、こう思っております。今までの非常な重税が社会に——経済的だけでなく、いろいろな形で社会に与えている影響というものが恐るべきものであったということについては、これは異論のないところだと考えます。これが勤労意欲ないしは事業意欲に及ぼした悪い影響、あるいは税金が重過ぎるために公然に脱税する、その脱税することが天下の普通の習慣になっているというようなことから、順法精神にも非常に悪い影響を与え、会社の経理その他にも、社用族だとか公用族だとかというふうなことで、経理関係も非常に混乱しているというようなことは、そうやすやすと建て直せるものではありませんけれども、この減税案はそういうことを是正していく上に非常に役に立つものである。またこれを政策としても大いに採用して、そういうふうに向けていっていただきたい、こういうふうに考えております。
シャウプの税制理論は、理論としては非常にりっぱでありましたけれども、これは日本で適合しなかったということについては、もはや問題のないところであると思います。どうも税制というものを私ども感じますのに、やはりあの税制理論というものは、イギリス、アメリカのように非常に社会の秩序が安定して、階級というものが固定している、そうして豊かな経済を持っている国においては、ああいう直接税中心の理論というものは、まことにりっぱでもあり、またそれに適合するかと思うのでありますが、ちょうど日本にとっては悪い時期に——インフレの最中、しかも戦後いろいろな秩序がこわれて、資本が分散する、つぶれてしまうというようなふうな時期にこれが出てきたということは、はなはだ不幸であったと思うのであります。まあ一口に申しますれば、この今の急激な累進課税中心主義というものが、あまり過度に日本の富の均分化ということに作用し過ぎた点があるというふうにも思います。ちょうど戦後ああいうふうに、財閥解体とか、土地制度の改革とか、独禁法とか、その他の一切の占領行政というものは、日本のそうした資本主義の形態をこわして、いわゆる経済民主化という名前のもとに、非常に資本分散を行なった、この上にかぶさって、こうした税制が持ち込まれたということは、理論上はともかくといたしましても、日本にとっては決して経済を再建していくという方向に対しては過度過ぎた税制であったかというふうに思われるのであります。財政プロパーの方につきましては、いわゆるドッジ・ラインで健全財政をとって、その意味におきましては日本の経済を正常化していくのに非常に役に立ったでありましょうが、その歳出、歳入を通じたやり方というものは相当きびしかったために、たとえば会社経営なら会社経営というふうなものは、日本の国家の財政が健全なくせに、借金だらけである、つまり国家は健全であって日本の経済の実体は非常に赤字だらけだ、そうして資本の蓄積はおくれているし、いわゆる底の浅い経済というふうなことから、なかなか立ち直れなかった。それにはもちろん、いろいろな条件がありまして、やむを得なかったとは思うのでありますが、結局、理想のシャウプ税制というものは、アメリカですら理想的であったといものが日本に持ち込まれたということでありましたので、私はやはり日本には日本らしい税制、日本の実情に即した税制というものを考えなければならなかった、そうして毎年々々、たとえば免税点、基礎控除その他を引き上げていくというふうな改正は行われて参りましたけれども、まだまだ今までの税制は日本の今の経済にぴったり合っているものではない、こういうふうに考えるのであります。
今の日本国民の所得分布を戦前と比べて、また欧米と比べたりいたしましても、全く高額所得者というものが幾らもいない、やはりみんながいわば非常に貧乏している、資本の蓄積もあまりない、まだ非常に遠いという状況であります。従って、ちょっと収入がふえていくと、非常に高い脱率か、あるいは、そうかといって、下の方も相当きつい税であるというふうなことでありまして、たとえば低い方の一般のレベルというものは、家計調査などいろいろ統計の数字で見ますと、戦前に復帰したというふうにも言われておりますが、現実問題として、とにもかくにも下の方は漸次安定しつつある。しかしながら上の方の幅が非常に狭い。そこへこういうふうな高度累進を適用してあるのでありますから、今千九百億というふうな大きな自然増収というものも、まあ戦前のノーマルな時代の自然増収というよりも、いわばちょっと上れば高い税率が適用されるというふうな意味におきまして、皮肉に言えば不自然な増収だということも言っていいのではなかろうかと思うのであります。そういうふうな、つまり税率の問題ということが、このシャウプ税制の根幹をなしている体系の中で非常に問題だとは思いますが、そのほかに、もちろんいろいろな中央と地方にわたる、あるいは給与所得と営業所得、農業その他の所得あるいは利子、配当の資産所得とか、個人と法人との間とかというふうな、いろいろな意味におきまして非常な不均衡ができておるので、これをこの税制案におきましては相当程度是正してある、あるいは是正しようと努力しておるという趣旨は、私どもこれを了とするにやぶさかでないと思うのであります。
まず根本の問題といたしまして、直接税と間接税の立て方の問題、これは税制調査会におきましては、そういうふうな前提からおそらく直接税というものの限界を認めたのでありましょうが、間接税に移行すべしというふうな案を立てたようであります。しかし結果から言いますと、この自然増収を含めて面接税が本年度の予算におきまして五一%に対して、間接税が四六。明年度の予算におきましても結局この割合は大して変っておりません。五〇・二と四六・三、こういう比率になっております。あとは流通税であります。まあ実際所得税が実質的にはそうした意味における大衆課税でありまして、いわば限界を越えておるというようなものでありますから、ある程度間接税に重点を移すというふうな考え方もわからぬではありませんけれども、今、当面にやるべき方法は、やはり直接税だけを下げていくという今の案の立て方の方がより現実的であろうと思います。ただこの中で数字的に見ますと、法人税の増収が非常に大きい。そういうことから直接税の割合が割合に高いのでありますが、その法人税についてはあとで申し上げますけれども、まあ、それだからといって、間接税ということよりも、まず所得税ないしは法人税をまず一歩減らしていくということで、直接税のウエイトを低くしていくというのがやはり当面妥当な行き方ではないか。こう思うのであります。
そこで所得税でありますが、何よりもまず今度の場合、低所得者の問題と、それから税率の緩和の問題という二つの要求が、緩和の方で七割、控除の引き上げの方で三割というふうな割合で、財源が配分されてあります。そこでまあ考えてみるのですが、年収百万円というのは非常に多いのでありますけれども、これを戦前の月収に引き直しますと、まあいろいろな計算の仕方はありますが、私の見当では大体月収百五十円くらいというのが年収百万円のクラスじゃないか。数年前に、電産でしたか、例のマーケット・バスケット方式で要求賃金の計算をしたときに、平均月の給与七万円という数字を出したことがあります。まあそのときの話ですから、その後の物価の上昇を見ますと、七万円はおそらく八万円か八万五千円くらいに計算されるでありましょう。これがまあ一応その当時の労働組合の立場から見ましても一つの標準でもあり、また一種の理想的な中心の生活程度であるというふうに考えたわけでありましょう。決してそれはぜいたくなものでもなければ、非常な高額の所得者でもないというようなもので、当時の七万円という計算が出た。それが七万円といえば年収にすれば大体百万円。ところが、この百万円から五十万円、六、七十万円というふうなクラスが、戦前に比べまして一番今の累進の率が高い。非常に重加されておるということでありまして、この辺のクラスをもっと下げてやるということが今回の税率緩和において一番大事な問題であろうと思います。ただいわゆる神武景気ということになりますと、多少収入がふえると、すぐこのクラスに入ってくる。このクラスに入ってくると、すぐその税率に当てはまるというようなことで、いわゆる中堅所得者というように言われておりますけれども、こういうまあ戦前でいえばせいぜい百五十円くらいの収入のクラスが結局大部分を占めた所得税であるということ、そういうことが日本の実情であり、所得税の非常な累進課税が無理であるという土台として、やはりこれはわれわれ真剣に考えてみたのであります。しかるに百万円以下で明年度において数字を調べてみますと、所得税納税者の人員の九七%、それから税額では七四%というものがこのクラスで占めておる。百万円以上になりますと人員ではわずか三%に足らない。税額では二五%しかないというふうな状況、そのうちでまた一番問題になるのは、五十万円以下のクラスが人員で八七%、税額で四三%と、結局こうした低い層がおもなる所得税の負担者である。戦前百万円以上の層が税額の九〇%弱を負担している。人員も二六%もあったということと比べますと、これは今の所得税の立て方がどんなにむずかしいかということになるのだと思うのであります。それで、この低い層をもう少し緩和して、百万円以上の方にもう少しウエイトをかけるという、いわばまあ税率のきざみ方を多少中たるみで尻を上げるというふうに、もう少し考えられないものだろうかというのが、われわれの一つの——まあ全体的に考えれば——一つの考え方として持っておるのでありますが、それは同じ税収の中で加減する方法もあり、多少増収ないし財源を別に見込むという方法もありましょうが、まあ現在の案でもその辺のクラスは四〇%から五〇%近くの減税になるのではないかという御議論もございます。しかしこれを地方税とひっくるめて考えますと、地方税の幅の方は若干少いのでありますから、この辺もう一つ踏み切ってもらえまいかということであります。それと相並んで、最も低い五十万円以下のクラスでありますが、まあ五十万円といいますと大体戦前の八十円ぐらいになりますか、戦前であったら全然税金のかからないクラス、そこまで免税点を引き上げることができたら、まことにけっこうでありまするが、まあ現在の財源ではそこまではむずかしいということであるならば、これをどうするかということでございます。現実にはなかなか案はございませんけれども、また、これは税制の問題に関する限り、税のかからぬ最低クラスというものにはどうするかという議論に対しましては、これは税の問題ではない、社会保障の問題だというふうに考えるのも一つでありましょう。しかし、もっと低い、免税点の上でも、もう少し税率をどうか下げられまいかというようなクラスに関しましては、もっと地方税の方で同時にまた考える方法はないだろうかというふうにも思います。これは住民税も、一応いろんな経過を経てあのような案ができまして、はなはだ税それ自体から見ますと不徹底だとは思います。この辺もう少し地方税の中で今年すぐの問題ではありませんから、もっと検討してもらえまいかというふうに考えます。そこの中で、住民税ではありませんが、私、一つ非常に興味があると思いましたのは、固定資産税と関連して一つの提案を出しております。御承知かとも思いまするが御紹介いたしますと、居住税というようなアイデア、これは持ち家だとかあるいは借家、あるいはアパート、どんな家にいたしましても、世帯人員一人当り一定の価格を一応きめておいて、それ以上の住居に住んでいる人に対しては、超過分に対して定率ないしは累進的に課税するというふうな考え方でありまして、まあこれはこれとして一つ低所得者にも関連しておもしろいアイデアであると思います。それを固定資産税なり所得税なりと関連させて考える道がありはしまいかというふうにも思います。
次に、全般の傾向といたしまして、国民所得の中で賃金所得の率、割合というものは、戦後年々ふえて参りまして、今後とも増加の趨勢にあると思います。その中で、従いまして給与所得に対する源泉課税、それと、申告課税であるところの営業所得や農業所得その他の事業所得というものの不均衡が非常に拡大しておることは周知の通りであります。この源泉課税制度をとったというのは、非常な大きな変革でありましたが、今のところ、日本の国民性は、どうも一ぺんきまりますと、長いものには巻かれろというふうなことでイージーにあきらめる傾向が強いのでありまするが、この源泉課税と申告課税によるそのほかの所得と給与所得の関係は、よほどもう一ぺん考えてもらいたい点があると思うのであります。これは、給与所得の控除率をもっと多くするとかいうふうな考え方もあるのじゃないかと思うのです。全般的に租税のそうした点について不満を持たしたのは、今度の芸者の花代だとか、マージャンだとかいうふうなものの税率を低くして捕捉を正確にしようというふうないろんな理由もありましょうが、そういう地方税の中でもあるいは国税の中でもそういうものがとられた。そういたしますと、正直に納めるのは損だ、にげるやつに対しては税を負けてくれるというふうな印象を非常に強く与えます。従って、ああした三割とか一割五分とかいう花代の税率、あるいはマージャンにいたしましても、二千円を千円にするというふうなことが非常に過当な高い税であるというふうには思われないのでありますけれども、そういうふうなことがありますと、やはり脱税した方が得だという印象を強く国民に与える。そうすれば、その税金が安くなる可能性があるというふうなことで、私はこういうふうな印象を与えるような税制というものに対しては非常に疑問を持つのであります。ところが、そういう意味におきましては、この給与所得というものが源泉課税であるという点で、非常にまあ全般的には損をしておるのでありますから、特にもう一ぺんこの辺を進めた案を、控除率なり何なりで考えていただくということができればというふうにも思うのであります。
なお、そういう公平の立場から言いますと、農業事業税の問題も、地方税の中でしきりに出て参りましたが、今こうした一方に大きな減税があるときに、新しい税によって増税するというふうなことは、いろんな意味でおもしろくないということで延ばされたようでありますが、これはまあ一応現在においてはやむを得ないとは思いますけれども、今後ともこの問題については一つ考えていただきたいという気がするのであります。どうも地方税の問題なんかをいろいろ見ておりますと、どうしても理事者とか、税金を取る方だとかいうふうな意見が先に立ちまして、納税者の立場というものはどうもとぼけておる、かすんでおるような感じがしてならないのであります。これは直接この税制問題と関係がありますのでお述べもしたのでありますが、なお、地方財政、行政については根本的にもう一ぺん考え方を、非常に大きな問題でありますけれどもぜひ推進して改革していただきたい。そうして地方税の根本的な整理というものを国税と結び合せてもう一ぺん徹底していただきたい。こういうことを特に希望いたしたいのであります、
それから、一つ問題として提起いたしておきたいのは、退職金ないしは今の方も言われました年金とかいうふうな厚生施設に関する課税の問題です。これは現在の社会保障制度がどうせそこまでいかないのでありますから、この退職金が老後を養うような人たちにとりましては、この税金が相当重い、五十万円というのが一つのめどになっておるというようなことではなかなか安心がならない。この点は、もう一ぺん思い切った考え方を、お金が要るわけでありませんから、とってもらえまいかと思うのであります。公務員には恩給がともかくあります。しかし民間では、いかなる大企業といえども、今、年令が延びておるという実情から、退職金だけで老後を養うというふうなことにはならない。ですから、こういうものに対する課税の仕方というものは特にもっと軽いものにして、その辺を保障するとか何とかというふうな考え方ができないものかと思うのであります。もっとも退職金でもいろいろありますので、中には議員さんたち、ここで申してはどうかと思うのですが、地方の議員ではよくそういう問題が出てくる。こういうものとの区別ということも規定の仕方ではいろいろ考えられると思うのです、しかし、また実際問題として、あるいは公舎、公邸にやめた人たちが居すわっておるというふうな問題も、いわゆる高額所得者というものの生活が戦前と比べれば低いもので安定していないということの、そういう実情からきているのでありまして、もちろんそういうことは喜ばしいことではございませんけれども、なぜそうなっているかという全般的な問題については、よほど税制の上でも考えていただく必要がある、こういうふうに希望するのであります。
テーマだけを簡単に申し上げて参りますが、高額所得者は先ほど申しましたように百万円以上、今の実情におきましてはせいぜい五百万円以上というところに相当ウエートをかけていくというのが今の考えだと思うのです。それで、問題は配当所得の問題でありますが、これが三千万円、五千万円になりますと、主として配当所得だ、六割から七割まで配当所得だ。こういうものに対しまして、今の配当に対する課税の仕方というものが割合に優遇されております。そこで、この辺はもう少し考え直す余地があるのではないか。これはまあ二重課税とかいろいろな問題はありますけれども、実情に即してもう少し資産所得にそういう意味における重課をするというふうなことが考えられてよいのではないか。これは累進全般の問題と関連してそう考えるのであります。
なお法人税の問題は特別措置の廃止と関連して問題になるのでありますが、今度全面的に整理するということがなかなか困難だったようであります。もちろん経済界の立ち直りはこの数年間ようやく軌道に乗ってきたというだけのことで、今すぐこれを全部ないしは大部分を廃止する、あるいは整理するということはなかなかむずかしいことはよくわかります。しかしながら九百億にも上るこれを、特別措置による減税を、今度は二百五十億ですか、平年化して四百五十億とかというのでありますが、こういうこともできるだけ早く整理をして見当をつけておいた方がよい。でないと、税体系全般として法人税との関係も不明確なまま臨時の形でいく、経済が正常化するというならば、こういうものもある限界点までぎりぎりにおしつめていって、むしろ年次計画を立てておいたらどうか。一年先はこうするとか、二年先はこうするとか、法人税はこうするということで、そうしますと経済界の方もこれに対応した計画が立つのではないかと思う。また二年ないし三年という控除の暫定的な措置が今年はだいぶありますが、そのときにがんばればまた伸びるのではないかというふうな余地が多分に残っておるように思うのです。そういうことではこの廃止ということはなかなか困難ではないかと思うので、税制をどうせ整理いたしますならば、そういうふうなめどと申しますか計画と申しますか、今度の法案は法案といたしまして、一つ計画を立てておいたらいいではないかと、こういうふうに考えます。長くなりましたから、以上で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/54
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055・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) それでは公述人青砥君及び波多君に対しまして、御両人のどちらにでも御質問をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/55
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056・平林剛
○平林剛君 初め波多さんに……。今あなたの御説の中で、自然増収というものは国民から取り立てたもののさらに予期した以上の収入であるから、国民に返せという御議論が冒頭にありました。ことしの自然増収が非常にたくさんあるという御説がございまして、その点について私はお伺いをいたしたいわけでありますけれども、この自然増収が政府の見込みよりも、もっと多くなる。一説によればこれが政府の考えている以上にもっと多くなるという工合に言われているわけです。あなたの御説から言いますと、もしそういう事態あるいはそういうことが十分予想されるということであれば、一体どういうところに減税を差し向けたらよいか。つまり今政府が議会に出している案について御検討なさったと思うのでありますけれども、なおその足らざるところをいろいろ補足をする必要があるのではないか。もし波多さんがこの減税を実際に行う実力者である、こういう想定のもとに立ちまして、あなたはどういう点をなお措置したいとお考えになっておられますか。一つその構想をお聞かせ願いたいと思うのであります。公平な立場に立ちまして、どういうところをなお直していったらいいか、あるいはどういうところに減税を振り向けたらもっとよい案ができ上るだろうか、こういうような立場で御見解を一つお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/56
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057・波多尚
○公述人(波多尚君) 今申し上げたように、まず累進税率の関係は、つまり百万円以下、特に五十万円以下というふうな点の税率をずっと低くして、むしろ尻を上げていくというような考えが一つです。それからもう一つは、さっき申しましたように、勤労給与所得の控除率というものが、農業、営業所得と比較の関係におきまして、もっと高めてよいのではないか、こういうように思います。これが第一の段階ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/57
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058・平林剛
○平林剛君 もう一つ。これは今度は青砥さん、あなたの御意見の中に、どうも少しその点考え直してもらいたいと思う点があるわけなんです。それは、特に自然増収があった場合には、法人税の方に回してくれというような御要望があったわけでありますけれども、大体自然増収の性格から見て、それが法人税に回るのが妥当であるかどうかということには非常に疑問があるのではないかと思う。特に自然増があるのは、経済界の活況という点にありまして、いろいろな政治上の政策の性向を背景にして起るものでありますけれども、同時にまた、そうした自然増が期待される過程の中においては、相当多くの犠牲が伴っている、たとえば一般の勤労者におきましても、国是として資本蓄積というところに重点が向けられますと、その分だけ給与の所得を押えられる。卑近な例を言いますと、たとえば鉄道運賃の引き上げにいたしましても、政府の考え方によれば、鉄道運賃を引き上げることによっていろいろな運搬費を逓減をして産業界に潤いをもたらす、こういう高等政策によって提案しておるわけでありますが、実際の面においては国民がそれぞれ運賃の引き上げによって生活費の負担増を来たすものですね、そういう意味で自然増の性格をいろいろ考えてみますというと、いろいろな犠牲の上に立っているということも言えるわけです。それがいきなり法人税の方に返すという議論だけでは、公平な立場からいって成り立たない意見じゃないかと思うのですけれども、どうでしょうか、そういう点は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/58
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059・青砥正吉
○公述人(青砥正吉君) この自然増収と申しますか、実は本年三十二年度の自然増収でございますね、これはこの所得税からも生れますし、それから法人税からも相当額生れる、それからその他の税からも生れるわけですが、まあ所得の中から生れるものは所得税を軽減する、法人から生れるものは法人税へ返す、こういうのが、大体少し原始的ではありますが筋が通った考え方じゃないか、こういうことなんですね。従いまして、三十二年度は所得税をいわゆる一千億を減税する、こういうことにすべてを集中なさる。ですから、先ほど申し上げたように一ぺんに両方やるということはなかなかむずかしい。それからまあ自然増収を減税に当てていいかどうかということについてはこれは議論もあるところでございますし、こういうふうなことで、ことしは一千億円の減税にいきたい、しかし経済界の将来を見ますと、世界的に景気の調整が非常にうまくなっています。日本は戦国時代から一騎打ちの精神で鍛えられたので非常に競争が激しい、こういうことで過剰設備等もぼつぼつ出て参るというような傾向ですね。世界と比べれば、先進国と比べれば、その波は荒いかもしれないけれども、過去の変動から見ますと、よほど変動の波は小さくなっている。先ほどもちょっと触れましたように、企業の戦前の利益というものは、売上げ利益にしましても、投下資本の利益にしましても一三%一だった、それが現在は三%半だ、四分の一になっている、こういうことなんですね。そういうふうに景気の調整がうまくなってきている。それから戦後の回復にしましても、これは世界全体が景気がよくならなければ、ちょうど人間のからだみたいなもので、どこか一カ所けががあっても全体の成長に差しつかえる。スエズの問題についてもそうだと思います。世界経済の面から見れば、そういうところにちょっと問題があれば、一時は日本に有利であるが、終局においてはそうでもないのじゃないか。こういうことで、今後私はそういうことで、世界的にも日本も景気の調整はうまくなっているし、戦前と比べたら利潤が少くなっている、こういうことは漸次そういうことによってとれていく、従って自然増収もあり得る、ですから三十三年度の自然増収で、今の間接税の拡充により間接税も一%を設定することによって千八百億はとれるわけであります。千八百億とれれば、まあそれで扶養控除をふやしまして、そうすると、まあ所得税はおそらく今度減税されてさらに半分くらいになる、その余りで法人税をまた減らすということもできるのじゃないかというふうに考えます。
で、先ほど犠牲のお話がございましたけれども、なるほど犠牲はございますけれども、犠牲に報いるように、勤労者に対する給与にしましても戦前に比べればまだ八割にもなっていない。ですから神武以来の好景気が素通りしている、企業の方は戦前に比べて六割にしかなっていない、こういうことなんです。ですから、これにはいろいろ順序はありましょうが、卵が先か鳥が先かというようなことになりますが、結局同じように、木を少し太らせるために肥料を先へやって太らして、大きいりっぱな果物を食った方がむしろいいのじゃないかとまあこういうふうにも感ずる、そこはいろいろかね合いであって、木を枯らしてしまったり、木が弱って果物がならなければ、分けようにも分け方がないわけです。そこは犠牲と申しますか、これは双方にそういった犠牲と努力があるわけです。努力というのを私が申し上げたのは、戦前と比べて企業の利潤も低いし、内部蓄積も戦前の六割くらいしかないのだ。だからこっちの方も税の面でも考えて多少太らせるようにして、そうして従業員も戦前以上の給与を支給していけるように税制の面で考慮を払いたい、こういうふうな考え方なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/59
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060・平林剛
○平林剛君 あなたの話を聞いていると、今の神武以来の景気の風がどこを吹いているのかわからなくなってしまう。これはあまり議論をしても仕方がないのですから、もう一つだけちょっとお聞きしますけれども、今、波多さんからの御意見に、租税特別措置法のようなものはなるべく早く整理をすべきだ、これは、きょうおいでになったどなたも強調されたことなんで、あなただけが特別なお考えを持っておられるのでありますけれども、その際にも今お聞きになったように年次計画を立ててやるくらいのことは考えたらどうだという、非常に傾聴すべき御意見であります。私もこの間大蔵大臣にその点をいろいろお話しまして、今のままでは租税特別措置法は租税特別措置にならない、銀行利子の免税でも、配当課税の特別措置でも、今のままでは恒久的なものにずるずるずるずるなっていってしまうおそれがあるので、いつまで経っても税負担の公平ということや国民が非常に強く批判をしていることに対する解決策になっていかない。これは一つ業界の方も経済界の方でも、租税の原則というものに立って、もう少し謙虚な立場でこれに対応するような形をとってもらわなければならぬのじゃないだろうかと、先ほどのお説と全く同様な見解を述べまして議論をしたこととがあるわけなんでありますけれども、あなたが決して経済界を代表してきょうおいでになったとは思いませんけれども、実際には私はそういうくらいの心がまえがないというと、現在の租税の体制というものを直すことはできない。経済界でもやはり全般的な立場を考えて、租税特別措置については相当思い切って政府にも協力をするという態勢が必要ではないだろうか、こう思うのでありますけれども、どうも先ほどの御意見を聞いておりますというと、少し自分の田に水を引くようなことばかりお話になって、私としては気にいらないわけであります。まあ一つあなたにお考えがあったらお伺いしましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/60
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061・青砥正吉
○公述人(青砥正吉君) 租税特別措置については、先ほど申し上げました昭和二十七年に税率を三十五から四十二に上げる際、税を上げますと企業の内部に入ります利益が少くなるわけですね。ですから、財政収入をカバーするためにやむを得ず上げるのだが、ここにおいて一つめんどうをみる、こういうことで上げられたわけです。ここにきて法人税をまあ三十五の適用限度は五十万だけれども、一応ふえるはふえたのです。しかしその目的は中小企業をカバーする、こういうような意味でふえたのです。租税特別措置とは関係がないわけなんですね。それからもう一つには、税の理想としてはそういった政策を織り込んではいけない、こういうことがまあ理想なんですね。本に書いてある理想ですが、まあ特にこういう国会の方々においては、あらゆる政策をひっさげて国民を富ましめる、国を振興せしめる、こういうことがおそらく主たる御任務ではないかと私は想像いたします。そういう意味において、それは大蔵省の税務当局のお考え方が税にそういった制度を織り込まないというのもわかるのですが、むしろあなた方のお立場からすれば、そういった政策を織り込んで実際にマッチせしめる、こういう考えでむしろ織り込んでいただく方が本筋ではないか、しかしそれも税率も戦前と比べると、三五にしましてもまあむしろ高くなっておりますから、税全体を、法人税率を一〇%ぐらいにすると、こういうことなら企業の内部で蓄積が残りまして、特にそういった細かい税法を作って、ああだ、こうだと言わなくてもいいのではないか。しかし税率が高いから、特におくれたものとか、あるいは国のために必要なものを振興させるために、何と言いますか、ちょっと注射を一本さすというぐらいのことでありまして、永久にこれが必要だというようなことではございません。ですから、自己資本が戦前のように六一とか、アメリカのように六四ということになれば、これは当然はずされていいのではないか。ですからそういう意味で、国の財政税制の十カ年計画、こういうふうなものを作られるということは、非常に国民としてもよりどころがあって非常にけっこうだと思います。そういう要望は私たちとしても、してはおるのでありますけれども、なかなか責任ある当局の立場としては、将来の見通しですから非常に狂いがちなんですね。それで、いまだもって示されないような状況で、その点についてはまことに御同感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/61
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062・平林剛
○平林剛君 まあ私は、あなたのお説の中で、租税特別措置法と補助金の関係についても御意見が伺いたいのでありますが、時間がありませんから省略をいたします。
最後に、あなたはお話しにならなかったけれども、いわる今度の所得税法で支払い調書を作る。いわゆる名義人としての配当を受ける者の措置がきめられるわけでありますけれども、あなたの方は一体どういう御見解を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/62
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063・青砥正吉
○公述人(青砥正吉君) それは私ちょっとこの間見たのですれけども、十分読んでいないのです、見出しだけで。どういう内容か、ちょっとわかりませんので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/63
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064・平林剛
○平林剛君 それではいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/64
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065・廣瀬久忠
○委員長(廣瀬久忠君) まことに御苦労さまでした。これにて公聴会を終ります。
散会いたします。
午後四時十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614646X00119570319/65
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