1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年三月二十五日(火曜日)
午前十一時十二分開議
出席委員
委員長 西村 直己君
理事 内海 安吉君 理事 大島 秀一君
理事 大高 康君 理事 荻野 豊平君
理事 久野 忠治君 理事 前田榮之助君
理事 三鍋 義三君
池田 清志君 井原 岸高君
薩摩 雄次君 徳安 實藏君
廣瀬 正雄君 堀川 恭平君
松澤 雄藏君 山口 好一君
出席政府委員
建設政務次官 堀内 一雄君
建設事務官
(計画局長) 町田 稔君
委員外の出席者
建設事務官
(計画局総務課
長) 志村 清一君
建 設 技 官
(計画局水道課
長) 岩井 四郎君
専 門 員 山口 乾治君
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三月二十四日
委員逢澤寛君辞任につき、その補欠として河野
金昇君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十五日
委員馬場元治君及び井手以誠君辞任につき、そ
の補欠として井原岸高君及び鈴木義男君が議長
の指名で委員に選任された。
同日
委員井原岸高君辞任につき、その補欠として馬
場元治君が議長の指名で委員に選任された。
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三月二十四日
下水道法案(内閣提出第一四六号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
下水道法案(内閣提出第一四六号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01719580325/0
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001・西村直己
○西村委員長 これより会議を開きます。
昨日付託になりました内閣提出下水道法案を議題とし、審査に入ります。まず本案の趣旨につきまして説明を聴取いたします。堀内政務次官。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01719580325/1
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002・堀内一雄
○堀内政府委員 ただいま議題となりました下水道法案につきまして、提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。
下水道は都市における浸水の防止、生活環境の改善、公共水の汚濁防止等に重大な関係を有しまして、都市の健全な発達と公衆衛生の向上のために欠くことのできない施設でありますが、近時市街地の急激な発展、化学肥料の普及による屎尿処理の行き詰まり、工業用水の大規模な使用等は、下水道の整備による下水の計画的かつ合理的な排除を一そう緊急を要するものとしているのであります。しかるに、下水道は都市の公共施設のうちでは最も整備のおくれた分野でありまして、今後大いに力を入れてその整備をはかっていく必要があるのであります。しかも、下水道の整備は、都市における今後の道路網の整備と軌を一にする必要があり、この意味においても下水道の整備は、今後都市計画の一環として急速かつ強力に推進されなければならないのであります。
政府におきましては、従来より下水道の普及に意を用い、所要資金の確保、維持管理の強化、国庫補助金の増額等をはかってきたのでありますが、これを規制する下水道法は古く明治三十三年制定のものであり、下水道の整備を促進するために必要な設置及び管理の基準、下水排除の責任、使用料の負担、下水道の管理を妨げる行為の制限、国の助成措置等の規定が整備されておらず、今後大いに促進する必要のある下水道を律するには不十分な点がありますので、今回その全面的改正をはかることとしたのであります。
以上がこの法律案を提出した理由でありますが、次にその要旨について御説明申し上げます。
第一に、下水道を公共下水道と都市下水路とに分けて規定することといたしました。公共下水道とは、従来改良下水道と称されてきたものでありまして、主として暗渠により道路の地下に埋設され、市街地に網状に布設されるものであります。都市下水路とは、従来在来水路あるいは公共溝渠等と称されているもののうち規模が大で、市街地の浸水防止及び生活環境の改善に重大な関係を有するものであります。この公共下水道及び都市下水路の整備は、その公共性にかんがみ、地方公共団体において管理することが最も適当でありますので、公共下水道及び都市下水路の管理は第一次的に市町村が、第二次的に都道府県が行うものとして、下水道の管理責任を明確にしたのであります。
第二に、公共下水道に関しては、その構造、放流水の水質、終末処理場の維持管理等について技術上の基準を定め、また技術者による設計及び工事の監督管理、公共下水道台帳等の制度を採用し、これによって公共下水道の健全な発達及び公共水の汚濁防止の実現を期したのであります。都市下水路に関しても、その構造及び維持管理の基準、都市下水路台帳その他の規定を設け、必要な規制を行うこととしたのであります。
第三に、公共下水道及び都市下水路の利用の調整に関する規定を設けることといたしました。公共下水道に関しては、その供用開始の際下水排除の責任を負うべき地域を排水区域として、これを公示せしめるとともに、その区域内の土地の所有者または占有者にその土地の下水を公共下水道に流入させるための排水設備を設置する義務を課することとして、公共下水道の利用の増進をはかることとしたのであります。これに伴い、その利用者間の受認義務の規定を設け、また公共下水道に特に悪質の下水を排除するものに対して除害施設の設置を命じ得る道を開くこととする等の規定を設けることとしたのであります。なお都市下水路に関しても、特に都市下水路の機能を妨げるおそれのある下水を排除するものに対し、特定排水施設として構造上の基準を定めることとしたのであります。
第四に、公共下水道及び都市下水路の公共性にかんがみ、下水道の維持管理に障害を及ぼすおそれのある行為の制限の規定を設けて、その機能の保全をはかることといたしました。
第五に、公共下水道に関して使用料及び工事負担金等の制度を設け、国民に過当な負担とならない範囲内において、その設置及び維持管理の費用の一部をまかなわせることとし、公共下水道の急速なる普及に役立たしめることといたしました。
第六に、公共下水道に対する国庫補助、資金の融通並びに公共下水道及び都市下水路に対する国有地の無償貸付もしくは譲与等の助成の制度を設けることといたしました。
その他下水道の監督に関する規定等下水道の管理に関し必要な規定を設けることといたしております。
以上が下水道法案の提案理由及びその要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01719580325/2
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003・西村直己
○西村委員長 続いて補足説明を聴取いたします。町田計画局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01719580325/3
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004・町田稔
○町田政府委員 下水道法案の概要を条を追って御説明申し上げます。
まず第一条につきましては下水道法の目的を明示いたしたものでありまして、この法律は公共下水道と都市下水路について、その設置その他の管理の基準等を定めることによって、公共下水道及び都市下水路の整備を促進することとしておりますが、下水道のうち最も重要なこれら二種類のものについての整備をはかっていくことが、すなわち都市の健全な発達と公衆衛生の向上に寄与することとなる趣旨を明らかにしようとしております。
第二条は、この法律において用いられる用語の定義を掲げたものでありますが、まず下水道を流れる下水を、生活もしくは事業に伴って生ずる廃水と雨水をいうものとし、農耕に伴う灌漑排水を除くすべての廃水を下水道において取扱うこととし、従って下水道とはこの下水を排除するために設けられる排水施設、及びこれに接続してその下水を処理するために設けられる施設、またはこれらの施設を補完するために設けられる施設の総体をいうものといたしました。
次に公共下水道及び都市下水路について定義を掲げ、この法律において規制の対象となる二種類の下水道について、その意味を確定いたしました。
公共下水道とは、主として市街地における下水を排除または処理するために地方公共団体が設置するもので、下水を排除すべき区域が政令で定める規模以上であるかあるいは終末処理場を有するものであり、その構造は排水施設の相当部分が暗渠でなくてはならないものといたしました。
都市下水路はこれに対しまして、地方公共団体が管理している在来の水路、みぞ等であれば、規模について若干の規格をいうほかは、当該団体が単に指定することによって都市下水路となって、この法律の規定の適用を受けることとしたのであります。
次に終末処理場についてでありますが、これは屎尿を含む下水を最終的に処理する施設であるといたしまして、下水道の終末処理場は必ず屎尿を含む下水を処理する機能を果すべきものとしたのであります。
以上で第一章の総則を終え、第二章は公共下水道に関する章といたしまして、公共下水道について詳細規定いたしております。
まず第三条は、公共下水道の設置その他の管理は原則として市町村が行うべきものとし、都道府県は二以上の市町村の行いがたい例外的場合にのみその同意を得て行い得るものとしましたが、これは現下水道法では市のみに限定していたことと対照をなすものと考えられます。
第四条は、公共下水道を設置しようとするときは、まず事業計画を定めて主務大臣の認可を受けるべきものとしたのであります。公共下水道は、特定区域を排水区域と定めて、その区域内のすべての土地家屋の所有者等に排水義務を課するほか、その構造が複雑であり、かつ長期の計画的配慮のもとに設置すべきものでありますから、国の後見的監督を必要とされるものであります。
第五条は、その重要な内容を列挙して事業動画の記載事項とした規定であります。
第六条は、主務大臣が認可しようとする際の審査すべき事業計画の判断基準を示したものであります。この規定は、一面よりすれば事業計画の作成基準を示したものといえるのでありまして、公共下水道の配置、能力、構造、排水区域または処理区域の範囲、工事着手の適時等についてよるべきおもな基準を表示したものであります。
第七条は、公共下水道の構造についての技術士の基準を別途詳細政令で定めることとしたものであります。
第八条は、公共下水道から放流される下水の水質の基準を政令で示すこととしたものでありますが、下水道からの放流水による公共水の汚濁を防止するには、まず放流水の水質基準を定める必要があると考えられるのであります。
第九条は、公共下水道を公共の利用に供しようとする場合に、あらかじめ必要な事項を公示して、排水設備を設置し、下水を排除する義務を負う排水区減等を住民に明示して、その利便に供すべき旨を規定したものであり、特に終末処理場による下水の処理を開始しようとする場合には、処理区域を余して、その区域内の下水は屎尿を含む下水として公共下水道に流入させてもよいこと、すなわち水洗便所を下水道に直結させてもよいことをあらかじめ公衆に知らせるようにしたものであります。
第十条は、公共下水道の排水区域内の土地の所有者等は、その土地の下水を公共下水道に流入させるために必要な排水設備を設置し、及びその他の管理をすべき義務を負う旨の規定でありまして、現下水道法の規定と同趣旨の規定をより明確にしようとしたものであります。
第十一条は、その排水義務の履行のために他人の土地または他人の排水設備を利用しなければならなくなる場合に、その利用を法律上当然に可能とする旨の規定でありまして、民法の相隣関係を若干拡張したものでありますが、現下水道法の考え方を受け継いでいる規定であります。
第十二条は、特定の悪質な下水を流入させる者に対し、政令で定める基準に従って、条例によって、除害施設の設置あるいは下水を適切に処理した上で公共下水道に流入させるように命ずることができることとしたものであります。これによって、公共下水道の施設を保護し、またはその放流水による公共水の汚濁を防止する措置の相当の程度が可能となるわけであります。
次に第十三条は、公共下水道に下水を流入させる措置を講じ、そのために適当な排水設備を設けるようにした以上三つの義務履行を監視するために、公共下水道管理者に対し立ち入り検査権を認めた規定であります。
第十四条は、公共下水道の供用を一たん開始した以上は、下水排除の性質上当然に任意に供用を停止することは公共の利益に著しく反する結果となるわけでありますから、法律としては特定の限られた場合にのみその供用の一時停止を認め、かつその場合にもあらかじめ公衆にその旨を知らせて不便なからしめるようにすべきものとしたのであります。
第十五条及び第十六条は、公共下水道の公共性にかんがみ、その施設の部分的改築、修繕等の工事あるいは通常の維持行為は、これを利用し、あるいはこれによって利便を受けるすべての者に行わせる方がよいのでありますが、その趣旨にのっとる一方、公共下水道の工事の複雑さも考慮に入れて、公共下水道管理者との協議またはその承認に基いて他の者に行わせることを認めたものであります。
第十七条は、そのうち公共下水道の施設が他の工作物の効用を兼ねる場合の費用の負担区分の規定であります。
第十八条及び第十九条は、それぞれ公共下水道の施設を損傷した行為により、あるいは一定量以上の排水能力のある排水設備を公共下水道に接続させる行為により、公共下水道の施設の修繕または改築をする必要を生じた場合における費用負担の規定であります。
第二十条は、公共下水道を使用して下水を排除する者に対して、条例で使用料を納入させることができることとしたものでありますが、元来下水の排除は地方公共団体の事務として行うべきものではありましても、公共下水道の布設には多大の資金を必要とし、また住民に著しく利益を与えることになるわけでありますから、公共下水道により利益を受ける者から、その布設に要する費用の額を限度として使用料を徴収してその布設の促進をはかることは、現在の段階では適切な措置であると考えられるのでありまして、第二十条はこの趣旨に出て、その使用料の限度を明定したものであります。
第二十一条は、放流水の水質管理上必要な規定であり、第二十二条は構造管理上、第二十三条はその利用、保全上必要な規定であります。
第二十四条もこれらの規定の趣旨と同じく、公共下水道の施設の管理の適正を期するため、これに物件を設ける行為を制限し、または禁止する措置を講じたものであります。
第二十五条は、この法律に規定するもの以外に、なほ必要な事項については、条例で定めることができる旨を、当然ながら念のために規定しております。
第三章は、都市下水路に関する規定を集めております。
まず都市下水路の設置その他の管理は、公共下水道のそれと同じく市町村を第一義とし、都道府県は例外的にのみ行い得るものといたしました。都市下水路は、その性質上新たに設置していく場合が少く、在来の水路について改修管理を行うものでありますから、第二十七条の規定により指定行為によってその施設を特定するものとし、その際灌漑排水施設の効用をも果している場合には、当該効用について利害関係のある土地改良区等の意見を聞くことによってその間の調整をとることといたしております。第二十八条及び第二十九条は、その構造管理上あるいは利用管理上必要な規定であります。
第三十条も同様の趣旨に出でるものでありますが、特定量以上の下水あるいは悪質の下水を多量に排出する排水施設が都市下水路に接続する場合には、一定の構造基準によったものでなければならない旨を規定することによって、都市下水路の整備をはかっていくのと並行して、これら大規模な排水施設についても都市下水路に準じた整備を要求して、当該地域の下水の処理の完璧を期することといたしました。
第三十一条は、公共下水道に関する工事及び費用負担の規定と台帳整備及び条例による規制に関する規定をそのまま都市下水路に準用したものでありますが、都市下水路の公共性について公共下水道と軌を一にする面をとらえたものであります。
第四章以下は、公共下水道と都市下水路に通ずる共通の管理権の行使の態様、主務大臣の監督権の行使、国の助成、主務大臣の所管区分等について規定したものであります。
まず第三十二条は、公共下水道または都市下水路に関する調査、工事等のための他人の土地の立ち入りまたは一時使用の権限を当該管理者に対して付与する規定であります。
第三十三条は、当該管理者が第三者に工事または行為の承認または許可をする際に最小限度の条件をつけることができることとした規定であり、公共水道または都市下水路の公物たる性質上最小限度必要であると考えられるのであります。
第三十四条から第二十六条までは国の助成に関する規定であります。
第三十七条は、主務大臣の公共下水道または都市下水路に関する監督規定でありまして、公共下水道についての事業計画あるいは構造と都市下水路の構造をこの法律の命ずるところに従って保持させるために必要な規定であります。
第三十八条は、公共下水道管理者または都市下水路管理者に対して当該施設の維持管理上必要な公権力を付与した規定でありますが、むしろ範囲を限定し特定の違反行為の場合のほかは、工事のためにやむを得ない場合その他公益上やむを得ない場合にのみ行使し得るものとしたものであります。
第三十九条は、主務大臣による監督上必要な報告の徴収。第四十条は、主務大臣の都道府県知事に対する権限の委任。
第四十一条は、国または地方公共団体が公共下水道または都市下水路に施設その他の物件を設ける場合の特例に関する規定であります。
第四十二条において、公共下水道及び都市下水路は、東京都におきましては特別区とせず、都において一括行うべきものといたしました。
第四十三条は、公共下水道管理者または都市下水路管理者のした処分について異議の申し立ての道を開いてその権力行使の適正を求めることができることとし、当該管理者に認めた公権力行使との調整をはかったものであります。
第四十四条は、この法律に規定する主務大臣は原則として建設大臣とし、終末処理場に関する事項についてのみは厚生大臣として、さきに定められた所管分割にのっとって明確に権限分配を規定したものであります。
第五章、罰則の規定は必要最小限度のものとし、地方公共団体については悪をなさずの原則に従って一切罰則の規定は設けないこととしております。
附則におきましては、この法律の施行は公布の日から一年以内に政令で定めることといたしましたが、これはこの法律の施行につきまして各種の政令の準備が必要となるので、その必要な期間だけ施行を延期していただきたい趣旨であります。
公共下水道に関する経過措置といたしましては、現下水道法に基いて築造した下水道はすべて公共下水道として取り扱い、その排水区域または処理区域はそのままこの法律に基く排水区域または処理区域とし、公共下水道となるべきものに設けられている施設その他の物件はそのままこれを認めるものといたしました。地方財政法、建築基準法その他の法律の改正は、この法律の規定の趣旨あるいは規定の文言上当然に改正すべきものとして取り扱ったものであります。
以上で逐条による大要の説明を終ります。なお、詳細の点につきましては御質疑に基き十分御納得の上、すみやかに御可決いただきますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01719580325/4
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005・西村直己
○西村委員長 本案に対する質疑は次会より行うこととし、次会は公報をもってお知らせすることといたしまして、本日はこれにて散会いたします。
午前十一時三十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01719580325/5
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