1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年三月二十七日(木曜日)
午前十時四十一分開議
出席委員
委員長 西村 直己君
理事 内海 安吉君 理事 大島 秀一君
理事 大高 康君 理事 荻野 豊平君
理事 久野 忠治君 理事 前田榮之助君
理事 三鍋 義三君
逢澤 寛君 池田 清志君
井原 岸高君 薩摩 雄次君
徳安 實藏君 堀川 恭平君
廣瀬 正雄書 山口 好一君
井谷 正吉君 井手 以誠君
小川 豊明君 中島 巖君
出席国務大臣
建 設 大 臣 根本龍太郎君
出席政府委員
農林政務次官 瀬戸山三男君
農林事務官
(農地局長) 安田善一郎君
通商産業事務官
(石炭局長) 村田 恒君
通商産業技官
(鉱山保安局
長) 小岩井康朔君
建 設 技 官
(河川局長) 山本 三郎君
建設事務官
(住宅局長) 植田 俊雄君
委員外の出席者
大蔵事務官
(主計官) 松永 勇君
農林事務官
(林野庁林政部
長) 戸嶋 芳雄君
通商産業事務官
(鉱山保安局管
理課長) 竹田 達夫君
建設事務官
(河川局次長) 關盛 吉雄君
建設事務官
(河川局水政課
長) 國宗 正義君
建 設 技 官
(河川局砂防課
長) 戸田福三郎君
建設事務官
(住宅局住宅総
務課長) 鮎川 幸雄君
専 門 員 山口 乾治君
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三月二十六日
委員池田清志君及び三鍋義三君辞任につき、そ
の補欠として足立篤郎君及び勝間田清一君が議
長の指名で委員に選任された。
同日
委員足立篤郎君辞任につき、その補欠として池
田清志君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十七日
委員馬場元治君、田中幾三郎君及び勝間田清一
君辞任につき、その補欠として井原岸高君、井
手以誠君及び三鍋義三君が議長の指名で委員に
選任された。
同日
委員井原岸高君辞任につき、その補欠として馬
場元治君が議長の指名で委員に選任された。
同日
三鍋義三君が理事に補欠当選した。
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三月二十五日
二級国道小樽江差線島牧地区の整備等に関する
請願(椎熊三郎君紹介)(第二二五一号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
理事の互選
地すべり等防止法案(内閣提出第七六号)
地すべり等による災害の防止等に関する法律案
(井手以誠君外二十五名提出、衆法第一号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/0
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001・西村直己
○西村委員長 これより会議を開きます。
理事の補欠選任についてお諮りいたします。理事三鍋義三君が昨二十六日委員を辞任されましたので、理事が一名欠員になっております。理事の選挙は、先例によりまして選挙の手続を省略し、委員長において指名するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/1
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002・西村直己
○西村委員長 御異議なしと認め、再び委員になられました三鍋義三君を理事に指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/2
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003・西村直己
○西村委員長 次に地すべり等防止法案及び地すべり等による災害の防止等に関する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。御質疑はございませんか。——井手以誠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/3
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004・井手以誠
○井手委員 私は、地すべり等防止法案の審議がいよいよ最終段階に入りましたので、一通り今日まで質疑はいたしましたが、なお念を押しておきたい点、数点についてお尋ねいたしたいと思うのであります。当局の都合もあるようでありますから、まず農林省の政務次官にお伺いをいたします。
農林漁業金融公庫から移転農家に対する貸出金額はどのくらい予定されておるのか、これが第一点。次いで、農林漁業金融公庫の金利なり償還期間などについては、すでに何回も質問をいたしておりますが、この貸付の条件は当然住宅金融公庫と同一にすべきであると私は強く主張いたしておるのであります。またほかの委員さんからもそういう意見も強いようでありますが、農林漁業金融公庫は最大限どこまで金利を引き下げ、あるいは償還期限を延長なさる御用意があるのか、この点を確かめておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/4
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005・瀬戸山三男
○瀬戸山政府委員 まず第一点の、地すべり対策上農家に対する農林漁業金融公庫関係からの資金をどのくらい予定しておるかということでありますが、昭和三十三年度といたしましては大体五千万を予定いたしております。それから、今日までこの法律案の審議に当りましてしばしば問題になり、また強い御意向もあったようでありますが、関連事業として移転をしなければならない場合はほとんど農家が多いわけでありまして、その際、農家の住宅あるいはこれに付属する農畜舎等のいわゆる家屋移転についての融資の条件等についてのことでありますが、これは前にもお答えいたしておりましたように、私どもといたしましては、こういう特殊な事情によって移転を余儀なくされる方々に対しては、できるだけ条件を緩和するようにいたすべきだという考え方のもとで努力をいたして参ったのでありますけれども、住宅金融公庫の場合の住宅に対する融資の問題と、それから農舎あるいは畜舎等の、付属建物といいますか、農業上の建物の移転に対するものとは考え方の相違があるかもしれませんけれども、農業用の施設は一種の再生産をする施設であるという関係から、住居の場合とは融資の条件について多少の差があるのである、これは今日しまでもそういう建前をとった制度になっておるのであります。このような考え方は、そういう建前から今度の地すべり対策に対しても案を立てておるわけでありますが、その場合において、一般の場合と、この地すべり対策に対する場合と、しからばどういうふうにするかということがきわめて問題になるのであります。先ほども申し上げましたように、融資の条件として、率であるとかあるいは据置期間、償還年限というものについてできるだけ緩和すベきものであるという建前から、先ほど申し上げました前提の上に立ちまして考えましたのが、もうすでに御承知だと思いますけれども、農林漁業金融公庫のこういう建物に対する融資の場合は、現在災害の場合に利率を七分としておりますので、この最低の七分にいたしたい、その利率については、一般の場合は七分五厘でありますが、これを七分にいたしたい、それから償還期限も、十年を最大限度にいたしておりますが、これもやはり十五年にいたしたい、こういうふうに私どもとしては最大限に緩和するという考え方で案を立てておるわけであります。しかしこれについても、しばしば御意向もありましたように、かわいそうではないか、気の毒ではないかという御説はきわめてごもっともでありますが、農林漁業金融公庫の資金源等の割合から見まして、農林漁業金融公庫の資金軍用について全般的の問題もありますので、それ以上緩和するということはきわめて困難であります。将来の問題といたしましては、農林漁業金融公庫の資金の構成を考えていく、たとえば利子のつかない国庫財政からの支出を多くいたしまして、全般的に農林漁業金融公庫の利率を引き下げる方向にわれわれは努力をしなければならないと思いますけれども、現在の段階においては、先ほど御説明を出し上げたような考え方を持っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/5
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006・井手以誠
○井手委員 政務次官の御答弁には誠意の一端は認められまするけれども、全体的にはきわめて不満であります。住宅に対してすら五分五厘の金利であるのに、政務次官が言われるように生産施設である、再生産に絶対必要な農舎、畜舎に対して金利七分ということは、これはきわめて不合理であります。多くは申しませんけれども、この点については、原案においては助成規定のない今日ですよ。少くとも金利は住宅金融公庫同様にすべきであると私は重ねて申し上げる。従って政務次官、今後さらに金利の引き下げについて折衝し、研究される御用意があるかどうかをお尋ねいたしたいのであります。
続いてお伺いをいたしますが、農林漁業金融公庫から貸し出す、べき一戸当りの金額は最高限どのくらいであるか、それが第二点。
次いで、政務次官のお話にもありましたように、移転する農家は全般的に非常に困窮をいたしておるのでありまして、従ってそういう農家を援護するために、同時に自作農創設維持資金をもあわせて考慮すべきではないかと考えておるのであります。そうすることが関連事業計画というものを生かす道であると私は信じておりますから、この用意があるかどうか。以上三点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/6
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007・瀬戸山三男
○瀬戸山政府委員 金利等の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、農林漁業金融公庫の資金構成と、結局運用上の問題になります。それから他の各種の金利体系との関係もありますから、これは全般的に資金構成等をさらに金利を下げられる方向に努力をしなければならぬ、かように考えております。
それから第二点の、一戸当りどの程度のものを融資する考えを持っておるか。これは必ずしも平均するというわけには参らないと思います。農家の場合においては、やはり個別に多少事情は違うと思いますけれども、大体一戸当り二十万円程度のものを考えておるわけであります。
それから第三に、こういう場合に自作農創設資金を大いに活用してはどうか、こういうお話でありますが、原則といたしましては当然にさように考えております。しかしながら自作農創設資金については、自作農維持のための諸条件があるわけでありますから、その諸条件に合わなければ、もちろん法律上これを運用することはできませんけれども、しかし多くの場合は、こういう特殊の事情によって農家が移転を余儀なくされる。そうすると農地の移転等もありましょうし、それからただいま申し上げましたような金利の問題で、負債が多くなる。こういう営農上支障を来たすような条件が特に重なるわけでありますから、そういう場合には、自作農創設維持資金の方で、できるだけ営農に支障のないように、その運用をいたしたい。結局簡単に申し上げると、こういう人は気の毒なんですから、気の毒だという気持ちをもってできるだけ、法律の範囲ではありますけれども、軍用をいたして、こういう人々の営農をやりやすいようにいたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/7
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008・井手以誠
○井手委員 この地すべり等防止法案について私がしばしば申し上げたように、農家を援護する農林省の対策というものが、当初の案よりも著しく後退をいたしておるのであります。関連事業計画が雑則になっておるという一事だけでこれははっきりすると私は考えます。私はこれ以上申し上げませんけれども、これが運用に当っては、そのほとんどが農家であるという立場から、農業経営を成り立たせるという意味、あるいは農地の保全を期するという立場から、万全の対策を講ぜられるように御注意を申し上げて、農林省に関する質疑を終りたいと存じます。
次に石炭局長にお伺いをいたします。本法案の審議に関してボタ山がその一つとして取り上げられておることは、非常にけっこうな対策だと私は存じております。そこで鉱物の試掘、採掘が地すべりを起すおそれのある場合はどうするかという点が、この委員会においても何回も論議をされました。その結果、第二十一条において、地すべりの防止上著しい支障が生じたときは試掘、採掘の行為を制限することができるということになっておるのであります。これは私の質問に対して法制局の方から、内閣の統一見解として明らかにされたのであります。私は本来ならば、いろいろ解釈がございますのでこれを明記すべきものと思っておりましたが、内閣の統一解釈として明示されましたので、やむを得ないとも考えておりますが、その主管省である通産省の石炭局は、おそらくそうであろうとは信じますけれども、この地すべりの防止上著しい支障を生じたときは、鉱物の試掘、採掘にも及ぶという場合があるとお考えになっておりますか、その点を確かめたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/8
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009・村田恒
○村田(恒)政府委員 ただいまお示しのように、地すべり防止上重大な影響がある場合には試掘、採掘にも及ぶもの、そういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/9
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010・井手以誠
○井手委員 その点はそれでけっこうであります。
次にお伺いをいたしますが、ボタ山の崩壊防止については、本委員会ばかりではなく、参議院においてもかなり強い意見がある。むしろボタ山の崩壊防止は本法案からはずして、単独立法によって崩壊防止の万全を期すべきであるという強い意見があるが、せっかくこの地すべり等防止によって、鉱業権者のないボタ山の崩壊防止が期せられるといたしましても、鉱業権者の明らかになっておるボタ山が次々に崩壊をしておる。しかも保安施設、保安命令、あるいは鉱害復旧等々の法令がありましても、中小炭鉱などにおいては資金繰りその他を理由にいたしまして、崩壊防止施設をなかなかやらないのであります。そうなりますと、一方は鉱業夫権者の明らかでない、本法案の対象となるボタ山については地すべりの防止対策が講ぜられ、一方においては鉱業権者の明らかなものについては、崩壊防止の対策がなかなか講ぜられないということでは、きわめて片手落ちである、こういう不満も強いのであります。従ってその均衡をはかる上においても、地元の鉱害防止、地すべり防止をはかる意味においても、鉱業権者の明らかであるものの崩壊防止策をどのようにお考えになっておるのか。この法案の成立を機会に、やはりその方についても万全の対策を考えるべきであると私は考えるのであります。もちろん中小炭鉱の中には、そういう施設を完全にやることにおいて経営に重大な支障を来たす場合もあると私は考えておりますけれども、そのぎりぎりまではやはりやらすベきだと私は存じております。それに対する当局の見解、対策を、承わりたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/10
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011・村田恒
○村田(恒)政府委員 この点もただいまお示しのように、ボタ山の崩壊の危険性が一般に認識されて参りましたのは数年前からでございますか、通産省といたしましては、鉱山保安法及び石炭鉱山保安規則というものに基きまして、ボ夕山の崩壊防止の義務を鉱業権者あるいは租鉱権者に課しますと同時に、その守ってもらわなければならない細目を規定いたしまして、監督の実施に当って参った次第でございますが、今お話のございましたように、なお十分でないところが多々ございます。そのために、昭和三十年十月にはこの規則の一部を改正強化いたしまして、一そう監督の充実に努めておる段階でございます。
なお、今後この法案が成立いたしまして、ボタ山の崩壊防止について具体的な方策がとられるようになりました場合には、これと並行いたしまして均衡を失しないように、鉱山保安の面におきましても、農林、建設両御当局と緊密な連携をとりまして、ボタ山の崩壊防止方法、防止のための工事等につきまして、本法と同様の精神に基き、本法において規定されましたのと均衡を失しなをいような基準によりまして、鉱業権者に実施させるということにいたしますが、これもただいまお示しのございましたように、特に中小炭鉱につきまては、鉱害防止に対する資力の貧弱ということもございますので、ボタ山の管理に当って十分な措置をとっていくようにいたしたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/11
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012・井手以誠
○井手委員 念のためにお伺いいたしますが、鉱山保安法による崩壊防止の具体的な方法は、現在どういうものが考えられておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/12
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013・村田恒
○村田(恒)政府委員 その点につきましては、技術者であります鉱山保安局長が出席しておりますから、鉱山保安局長からお答えいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/13
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014・小岩井康朔
○小岩井政府委員 ボタ山の崩壊防止につきましては、石炭鉱山保安規則の中に相当こまかく述べてありまして、かなり厳重な防止方法を講ずるようになっております。具体的にその説明をいたしますと、まず三百七十六条の七で、「捨石の集積および坑水または廃水の処理については、左の各号の事項について、その細目を保安規程に定めなければならない。」ということの中に、「捨石集積場の管理に関すること」それから「応急の際の措置に関すること」こういうような点につきまして、各山がそれぞれの山の実情に応じました内容のこまかい点を個々にきめることになっておるわけであります。
それから三百七十六条の八で、「捨石集積場および坑水または廃水の処理施設を設けるときは、坑外保安係員は、左の各号の規定を守らなければならない。」ということで、「捨石集積場および坑水または廃水の処理施設を毎日巡視し、その結果を保安目誌に記載すること」というこまかい規定がございます。それから「捨石集積場の表面にき裂、沈降等を生じ、崩壊、地すべり等の危険のおそれが多いときは、ただちに鉱山労働者に対する退避の指示その他の応急処置をし、かつ、管理者に報告すること」、従いまして係員は絶えずボタ山の周辺を回りまして、危険な場合には直ちに上司に連絡をとって適当な処置を講ずる。それから「降雨または融雪の際には、捨石集積場に係る前項第一号の巡回の回数は、増加しなければならない。」従って増加の巡回の必要な場合には、その回数を適当に増加させるということもうたってございます。
それから三百七十六条の九におきましては、「捨石は、崩壊、地すべり等により危害または鉱害を生ずるおそれが多い箇所に集積してはならない。」現在では選炭場を建設いたしますときに、それに伴って出ますボタの集積につきましては、どういうところへ集積するかという点につきまして、図面に詳細に記入をさせまして、当方でこの場所が適当であるか不適当であるかという点につきましても、こまかく検討いたすことにいたしております。
それから「崩壊、地すべり等により危害または鉱害を生ずるおそれが多い捨石集積場は、人家および事務所、学校その他の人を収容する建築物から三十メートル以上の距離を保たなければならない。」これも私どもの方の監督によりまして、家を移転させる場合もございます。それから危険なものにつきましては、移転命令等もすでに何件も出しておりまして、この趣旨の徹底に努めておるわけであります。
それから三百七十六条の十一には「捨石の酸化によって有毒ガスが発生し、または発生するおそれが多い捨石集積場には、人が居住する建設物を設けてはならない。」これはボタ山の集積場には酸分がありますので、その上に家などを建てまして、ガスが発生するようなおそれもございます。そういうような場合のためにもこういう規則を作りまして、居住をさせないという方法とっております。
以上の方法によりまして、規則におきましてはかなり詳細に規定をいたしております。特に佐世保のボタ山の崩壊事件後、早急に規則を改正いたしまして、従来は崩壊をするという観念だけの範囲内の規則でありましたものを、崩壊流出するという観念の規則に切りかえまして、ボタ山の崩壊流出につきましては、規則上におきましてもかなり厳重に規定されておると考えております。時にこの規則によりまして、今後監督を厳重にいたしまして、先ほど石炭局長から説明がありましたように、特に中小の炭鉱のボタ山崩壊につきましては、いろいろ困難な実情もございますが、今後そう監督を厳にいたしまして、可及的に崩壊の防止の万全を則したい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/14
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015・井手以誠
○井手委員 鉱山保安局長からいろいろ御説明を承わりました。厳重にやっておる、法令には詳細に規定してある、そういうお話は商工委員であなたから何回も承わっておりますが、厳重にやっておるとおっしゃっても、実際は厳重にやっていないところに問題があるのであります。私は炭鉱地帯の現地におりまして、そのことを痛切に感じております。私はここでいろいろ論議をしようとは思っておりません。この法案の成立を機会に、特に鉱業権者のあるボタ山の崩壊防止については万全の策を講ぜられるように、従来の態度でなくして、もっと筋の通った対策を講ぜられるように要望いたしておきます。
第三にお伺いいたしたいのは、最近問題になっておりますが、水洗炭の原石をとることによって、ボタ山が崩壊するという問題が起っておるのであります。この水洗炭の原石をとるボタ山の崩壊防止、これに対してはどういうふうに石炭局ではお考えになっておるか、取締りの面についての見解ないし態度をお伺いいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/15
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016・村田恒
○村田(恒)政府委員 水洗炭業者の問題は、その業態非常につかみにくい業態でございましたが、昨年七月、福岡県を中心といたしまして、通産省で調査いたしましたところによりますと、事業者数は約五百五十、従業員数は六千五百名前後、毎月水洗炭によって洗って出しておりまする炭が五万トンないし六万十ンというふうになっております。それによって起って参ります被害はどういうものが主であるかと申しますと、やはりよこれた水を流しまして、あるいは土砂を流出させるというために、河川あるいは川水に対する被害が非常に多いようでございます。この報告を基礎にいたしまして、九州地区の鉱業権者及び租鉱権者に対しまして、その鉱業権者なり租鉱権者なりが管理しておりまするボタ山につきましては、特に厳重にその被害を起さないようにしろという通牒を出したわけでありまして、これは石炭鉱山保安規則に従いまして、汚濁水の放流及びボタ山崩壊の防止の措置を十分に講じ、たとい契約に基いてその責任を水洗炭業者に負わしている場合におきましても、その鉱業権者あるいは租鉱権者がみずからの責任において防止措置をとるように、厳重な警告を発したわけでございます。と同時に、地方の公共団体におきましても、府県条例等の規則あるいは条例によります取締り運用を強化するように要望した次第でございます。今後もこの方針をなお厳守いたしまして、私どもといたしましてはあくまで鉱業権者なり租鉱権者に対する監督を厳重にいたしますと同時に、さらに関係のなあります府県につきましてはできるだけ条例等を制定して、その取締りを強化していただきたい。井手委員の御承知のように佐賀県におきましてはすでに条例もありまして、これが励行されておるような段階にあると承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/16
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017・井手以誠
○井手委員 御答弁の中にありました条例によって効果を上げたいというお話は、実はあまり感心したことではないのであります。条例というものには限度がございます。佐賀県においては比較的に一時効果を上げましたけれども、それ以上効果を上げるということは、これは困難であります。限界がございます。やはりほんとうの効果を上げるためには、必要があれば法令を改正してその崩壊防止のいわゆる法案の万全を期すべきだと考えております。最近石炭水洗業者の原石をとることによってボタ山が崩壊しつつあるこの現状に対して、特段の御注意なりあるいは法令改正の御用意も必要によってはお願いしたい、かように要望をいたしておきたいと思います。以上で石炭局の関係は終ることにいたします。
次に住宅についてお尋ねをいたします。移転家屋に対する住宅金融公庫の貸付については再三お伺いをいたしました。原案に対する当局の態度、特に現地の者にとっては非常に不満の点が多いのでありますが、もうすでに最終段階になりましたので、最後に一点だけお伺いをいたしておきたいと思います。
それは貸付金額が予定の家屋に対する三十万、用地に対する三万円、合計三十三万円で足りないことは前会もるる申し述べた通りであります。もちろん自己資金がある者とかあるいは余裕がつく者は最高限まで借りるわけではないのであります。たとい安い金利でありましても、必要でない金は農家はなかなか憤りないのであります。従ってこの住宅金融公庫から貸し出す金額を、実情に合うように四十万円以上に引き上げるべきものだと私は考えておるのであります。これは先般参りまして実地に調査いたしまして、昨年の九月の佐賀県伊萬里市における地すべり被害農家の移転の実情を伺っても、その点ははっきりいたしておるのであります。この一戸当り貸付金額の最高限度を、三十三万円から少くとも三割程度は引き上げるべきだと考えておりますが、当局では実情に即するように引き上げられる御用意がおありになるかどうか、この点をお伺いいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/17
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018・植田俊雄
○植田政府委員 この問題につきましては出委員会で従来しばしば論議せられたものでございますので、詳しい説明は省略申し上げますが、この貸付限度額は政令できめることになっておりまして、ただいままでのところ、事務的には、先ほど御指摘になりましたように三十万という限度をもって財務当局との話し合いを進めておるところでございます。政令を出すまでにまだまだ折衝の余地がございますので、その間におきまして財務当局とも交渉いたしまして、本委員会の御審議の状況に即して結論を得ますように努力をいたしたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/18
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019・井手以誠
○井手委員 努力するというお話でございますが、ここではっきり幾らまでとは私は申し上げませんけれども、幾らか引き上げられるお見込みはお持ちでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/19
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020・植田俊雄
○植田政府委員 この限度額につきましては、再三財務当局とも交渉いたしました金額でございまして、今直ちに幾らまで引き上げられるということにつきまして、この際確答申し上げることも困難でございます。まだまだ折衝の余地が残されておるものでございますので、その折価の余地が残されておる期間を利用いたしまして、私自身も財務当局との交渉に乗り出しまして、御期待に沿うように大いに努力いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/20
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021・井手以誠
○井手委員 次に大蔵省にお伺いをいたします。それは、高率適用の規定は昭和三十三年度に限り適用するということになっておるのであります。この点は先般もお伺いをいたしましたが、ここでお尋ねしたいのは、財政再建の臨時特例法というものを大蔵省はどういうふうにお考えになっておるのか。私どもは、地方財政が一時よりもややよくなった、再建されつつあるという大蔵省当局の見解に対して意見を異にしておるのであります。それは増税であるとか、あるいは必要経費の圧縮であるとか、首切りであるとか、そういう住民の犠牲の上に地方財政は再建されつつあるのでありまして、従って真の再建ではないと私どもは考える。私の佐賀県などにおいては、毎年県職員あるいは教職員が二百人、三百人整理されておる。そう考えて参りますると、今の交付金の総額あるいは補助金の状態、いろいろ考えて参りましても、地方財政が真に再建されておるとは決して考えません。起債の圧迫、五千数百億円に上る地方債の圧迫というものがそのガンになっておることは松永さんも御承知の通りであります。従って臨時特例法というものは、当然三十四年度以降も存続すべきものであると私どもは考えておるのでありますが、大蔵省はどのようにお考えになっておるのであるか、その点をまずお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/21
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022・松永勇
○松永説明員 御承知のように、臨時特例法は三十三年度で当然失効するような規定の書き方になっております。これは昭和三十年に、地方財政の悪化を防止するという建前から特別に公共事業関係の補助率、負担率を引き上げ、これによって地方の財政の好転を待つという考え方でできたものでございますが、最近の情勢から見ますれば、地方財政は確かに好転はしている。これを、当初法案で予定しました通り、三十三年度は当然失効することになっておるわけでございますが、さらに高率補助を続けるかどうかということは、新しい政策として、その必要性があるかどうかを論議しなければならない。これは三十四年度の予算を編成する際には、地方財政の状況も十分検討した上で、新しい政策を立てるかどうかということが論議されることになろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/22
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023・井手以誠
○井手委員 高率適用については三十四年度以降の問題である、それは今後論議されるベき問題である、こういうふうなお答えでありました。しかし現在審議しておりまする地すべり等防止法案——これは本法案ばかりではございません。ほかの道路法その他についても同様の規定があるのでございます。臨時特例法の有効期間内は高率適用をする。そういたしますると、たとえば本法律を実施して参ります場合に、三十三年度までは二分の一のものが三分の二の補助になる、そういう高率適用が翌年度からは廃止される。たとえば地すべり防止については緊急な工事が五十億円にも上っておる。それをやりかけておりますときに、三十三年度、までは高率適用であったから防止工事もできたけれども、三十四年度からはそれが除外され、廃止になったために、工事がうまくいかないという事態も私は出てくると思うのであります。そうなりますると、三十四年度以降の臨時特例をどうするかという見通しが、本法案の成立に大きな影響があると私は存じております。
そこで私はさらにお伺いをいたしますが、大蔵省の見解では、今後の論議では、問題ではあるけれども、現在の地方財政の状態では引き続き高率適用も考慮しなくてはならぬではないかという御見解に立っておられますか、あるいはまた全然その必要はなくなったとお考えになっておりますか、その点をお伺いいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/23
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024・松永勇
○松永説明員 御承知のように公共事業関係の事業につきましては、国と地方の利益と申しますか、そういうこと、それから国と地方の相協力して行う財政負担をどうするかということにつきまして、基本的な考え方で補助率というものの原則をきめておる。それは本則にございますように、地すべりにつきましては三分の二ということできめておるが、これは原則でありまして、一面その補助率を高率適用する必要があるかどうかという政策の問題は、これは地方財政の財政力をどうするかという問題と相関連してそういう措置をとっているわけでございます。三十三年度までは一般の臨時特例が、特に高率適用を行うということで続けられておりますので、地すべりにつきましても同様の措置を講ずる。三十四年度以降につきましては、地方財政は私たちの見たところでは確かに好転しておるので、法理論士は当然これは一般の臨時特例でございまして、三十四年度以降は当然廃止されて、原則に立ち戻るという形になっておるわけでございますが、三十三年度までこういう高率補助を行うということは、前回のあの法律制定の際の政策として打ち出されたものである。今後これを続けるかどうかということは新しい政策として、地方財政の現状を見きわめた上で政策を立てる。現在の段階でどちらにするかということは、まだ実際問題としては検討されていないと思います。三十四年度以降の予算編成には十分検討したい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/24
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025・井手以誠
○井手委員 臨時特例法による高率適用の問題については、これはここだけの問題でなくて、全般的な大きな問題でございますから、松永さんから基本的な態度をお聞きするのは無理かとは存じておりますが、やはり本法案について最終的に結論を出す場合には、一応お伺いをしなくてはならなかったので、お伺いいたしたわけであります。なお高率適用の延長その他については、国会においても十分論議すべき機会がありますので、ここで私は結論を得ようとは考えておりません。しかしこの際申し上げておきたいのは、大蔵省の考えておられる地方財政は好転しているというこの見方は誤まりがある。しかもこの地すべり防止対策については、国が責任を持ってこの大きな災害を予防しようという目的のために立法されているものでありますから、年度によって国の負担が重くなったり軽くなったりするという、そういう法律の建前は私は感心しないのであります。しかしこれ以上は意見の相違になるかと思いますので、この程度でとどめておきますが、私どもはあくまでも臨時特例法は延長すべきである、補助率は引き続き同一のものでなければならぬという立場で進みたいと考えているのであります。大蔵省においても再考されるようにお願いをいたしておきます。なお、大蔵省はそういう見解ですけれども、肝心の自治庁は、あなたの方の考えとは違って、大体私どもの見解と同様であることをここにつけ加えておきたいと思います。
次に、建設省にお伺いをいたしたい。これは大臣にお伺いをいたしたい。先日この法律案が生まれましたのは、昨年六月の佐賀県伊萬里市における地すべりの大惨害が動機になっている。そうして各方面の御尽力によってこの法案ができたわけでありますが、その昨年六月の大惨害を受けた農家も、なお完全に家屋移転が終了していないのであります。間借りをしたり、あるいは一応住宅金融公庫から融資を受けて仮住まいはいたしておりますけれども、その住宅金融公庫から二十三万円を借りて建てた家たるやマッチ箱のようで、その二十三万円のマッチ箱のような家がずっと次々に建てられている。これはどう欲目に見ましても、農家らしい農家ができようとは考えられないのであります。しかしこれは一たん融資を受けて建てたものでありますから、これをとやかく言おうとは考えておりませんけれども、家屋移転が完了していないのに、なお先般も申し上げましたように、引き続き地すべりが拡大しておりまして、今日でも明日でも次々と家屋移転が行われている。家屋が撤去されている。しかしこの法律は四月一日から実施される。関連事業計画を立てなければ融資の対象にならないというのがこの適用規定でございますが、この問題に対して先日大蔵省の松永主計官はこういうことをおっしゃった。「そういうものにつきましては、この法律がもちろん適用になり、これに伴う融資の措置ということもはかられるわけでございます。要は、その地すべり関連事業計画の作り方というものにかかってくるでございましょう。」こういうふうな答弁をなさっている。大体これで明確になってはおりますけれども、いざこれを地方に参って運用する場合には、従来の役所式から考えますと、なかなか思う通りに——ここで論議された通りには実行されないのであります。いわゆる役所式のために、お前の方はもう前の問題ではないか、この法律は四月一日から実施されるものだから、お前の方は関係ないじゃないか、こういうふうに冷たく突っぱねられるおそれがあることを私は心配をいたします。特に大臣のお考えを承わっておきたいのであります。金を出そうという大蔵省でも、関連事業計画に乗っておれば——昨年被害を受けた、家屋をなくした被害者、その後地すべりによって家屋を撤去しつつあるものについても、関連事業計画に入っておれば融資対象になるという、この大蔵省の見解に対して、おそらく建設大臣も同様であろうと存じておりますが、その点を明示願いたいと、実際の運用に当っては、この困っておる人々に対して、あたたかい気持で、なるべくそれに該当するように運用していきたいという、大臣の心構えをお聞かせ願いたいと存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/25
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026・根本龍太郎
○根本国務大臣 法律の明文からしますれば、法律はさかのぼって適用しないということが原則でありますが、ただいま御指摘のように、まだ小屋がけになっておるところに居住しておるとか、あるいはいまだ移転もしないでそのままになっておる、こういう方々はまことにお気の毒でありますので、運営に当りましては、大蔵事務当局が申したように処理させたいと思います。今後地方においていろいろ計画を立てる場合において、ぜひそういうものが、中に入って計画されるように指導するとともに、その計画に基いて法の運営をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/26
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027・井手以誠
○井手委員 家屋移転に対する融資については、どうぞそういうふうにあたたかい立場で取扱いを願いたいことを、重ねて要望いたしておく次第であります。なおほかにもいろいろ質疑したい点もございますが、この法律案はすみやかに成立させねばならぬという緊急なものでございますので、ほかの質問は一切省略をいたします。
以上で、私は本法案に対する質疑を終ることにいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/27
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028・西村直己
○西村委員長 他に御質疑はございませんか。——御質疑がないようでありますから、両案に対する質疑はこれにて終了いたしたいと思いますが、御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/28
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029・西村直己
○西村委員長 御異議ないと認め、さよう決します。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/29
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030・西村直己
○西村委員長 この際お諮りをいたします。井手以誠君外二十五名提出の、地すべり等による災害の防止等に関する法律案について、提出者より撤回の申し出がありますが、本案はすでに本委員会の議題となっておりますので、これを撤回するには、衆議院規則第三十六条の規定によりまして、委員会の許可を要するのであります。つきましては、本案の撤回を許可するに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/30
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031・西村直己
○西村委員長 御異議なしと認め、撤回を許可することに決定いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/31
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032・西村直己
○西村委員長 引き続き、これより内閣提出、地すべり等防止法案を議題として議事を進めます。
この際井手以誠君より、本案に対する修正案が提出されております。本修正案の内容は、すでに各位のお手元に配付いたしておる通りであります。
まず本修正案の趣旨について、提出者の趣旨弁明を求めます。井手以誠君。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/32
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033・井手以誠
○井手委員 この際地すべり等防止法案に対して、日本社会党を代表して修正の動議を提出いたすものであります。
修正案提出の理由を申し上げます前に、一言、撤回に至った事情を釈明いたしたいと存ずるのであります。私ども社会党は、地すべり防止という緊急事態に備えるために、昨年十一月の臨時国会に、地すべり等の防止に関する法律案を提出いたしました。これは、自民党の皆さんと一緒に提出するつもりでありましたけれども、残念ながら、いろいろな事情から、私どもだけの提案となったのであります。きわめて忽々の間に提案したものであります。議員提案であるにもかかわらず、その内容においては決して政府案に劣るものでないことを、私どもは確信いたしておったのであります。先日、参議院におきます参考人、早稲田大学の中村教授の陳述によりますと、政府案よりも社会党の案の方がずっと筋が通っておる、こういうおほめの言葉もいただいたのであります。また本委員会においても、これは個人的でありましたけれども、いや、井手君の方の案がずっといいんだぞ、こういうようなお言葉もいただいた次第であります。(笑声)(「おせじだよ」と呼ぶ者あり)おせじだというお話もありますけれども、井手君、それはおせじじゃない、ほんとうだ、と前提をしてのおほめでありました。しかし、たといりっぱな法律案でありましても、やはり成立することが一番大事であり、残念ながら、今の政治情勢、議会内の勢力から申しますと、なかなか私どもの案が成立しそうもないのであります。非常に残念ではありますけれども、そういう情勢を勘案して、さらにまた、先般根本建設大臣が、いろいろ御不満もありましょう、自分もそう考えておるけれども、この法律案を作ることが一歩前進だという意味で御了解願いたいというお言葉もあり、確かにこの法律案を作るということそれ自体が、一つの進歩であることは認めておるのであります。従って、諸般の情勢を勘案し、あるいは一歩前進だ、地すべり対策に対して画期的な法案だという立場を考えまして、この際いさぎよく私どもの法律案を——残念ではありましたけれども、撤回をしたような次第でありますので、一言釈明をいたしておく次第であります。
続いて、本修正案の提出の理由を申し上げたいと存じます。
その第一は、地すべり地帯の関係者は大部分が農家であり、この人たちは、土地に対する執着、愛着が特別に深く、しかも経済的に余裕がないのが普通であります。そして一般の災害と異なり、地すべりは予見できるものであります。国土保全と人命財産を守るために、公共的立場から、危険とわかっている農家には当然移転を勧告して、生活に対する不安を除き、民生の安定を期するのが政治であると考えておるのであります。先日、本委員会における河川局長の答弁によりますと、命令でもなかなか家屋移転というものは完全に行われないということを申されたのであります。命令でもできないもの、しかも原案によりますと、関連事業計画で自主的に計画を、立てさせる、こういうことでは、なかなか家屋移転というものがうまくいかないのであります。家屋移転に対しましては、私は少くとも勧告ということを一条設けて行うべきものであると考えておりますので、修正の第一にこれをあげたのであります。
その第二といたしましては、この家屋等の移転に対しましては、やはり助成をしなくてはその実効を期することができないのであります。その理由は、先般来質疑を通じていろいろと申し上げております。家屋移転をしなくちゃならない農家などは、二重、三重の負担がかかってくるのであります。従って私どもの提案では、家屋移転をする者に対しましては二割五分の助成、農舎、畜舎に対しては五割の助成を考慮いたしておりましたけれども、本法案にはその規定がないのであります。助成規定がないのでありますが、真に家屋移転を円滑に実施させ、そしてその農家を守っていくためには、助成の規定はぜひとも必要であるということから、助成の規定を修正することにいたしたのであります。
次に、関連事業計画。先刻も申し上げますように、雑則にうたわれておるこの関連事業計画、いわゆる土地事業計画というものは、防止工事、家屋移転、この二つと並んで、その家屋を移転する者の農業経営を成り立たせるという三つの柱の一つであります。それはやはり本則にうたってその援護の万全を期すべきだと考えておるわけであります。従って関連事業計画は、その補助率を二分の一から三分の二に引き上げるべきである、かように存ずるのであります。
その次第四には、ボタ山の下にある家屋の移転関係については、関連事業計画の読みかえがないのであります。原案によりますと、ボタ山については関連事業計画が除外されておる。しかし実情から申しますならば、当然関連事業計画を適用すべきものであると私は考えますので、その規定を当然関連事業計画を準用するということで修正を考えた次第でございます。
さらに第五には、先刻も質問いたしましたように、原案によりますと補助率の高率適用は三十三年度限りでありますけれども、やはり地すべり防止工事を完全に行いますためには、地方財政云々ということで補助率を上げたり下げたりするような不安定なものであってはならないと考えております。従って三十三年度限りとありますのを、「当分の間」と改めて補助率を安定させたい、これが第五の修正点であります。
ほかに一、二点ございますけれども、それは重要な点ではございませんので、省略をいたします。
以上五点の理由を申し上げまして、私どもの社会党が提出いたしました修正案の提案理由の説明にかえる次第でございます。何とぞこの修正の要点が地すべりの防止対策を完全にする一番大事な点であるということを御賢察願いまして、皆さん方の御賛成をお願い申し上上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/33
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034・西村直己
○西村委員長 ただいまの修正案に対して、御発言はございませんか。——御発言がなければ、この際、国会法第五十七条の三の規定によりまして、本修正案に対する内閣の意見を聴取いたしたいと思います。根本建設大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/34
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035・根本龍太郎
○根本国務大臣 ただいま井手さんの方から修正案の趣旨弁明がございましたが、この地すべり法案は、政府におきましても慎重に審議をいたし、その結果各般の方面を総合的に検討をいたしました結果出てきた案でございますので、いろいろ社会党の方々の御意見の趣旨ももっともな点もございますが、政府といたしましては原案でこの法律案が成立することを強くお願いする次第でございます。
まず第一に、社会党修正案の第一点である家屋移転の勧告の件でございますが、これは御承知のように、勧告ということはその居住者に対する非常に強い行為制限でありまして、その行為制限をこの法律で規定するということは、法制上も非常に議論の存するところでありますし、なおまた住宅のみならず納屋その他のものも、やはりこれは移転と同時に生活の根拠が移転すればこれもやらなければならぬ、かなり広範囲な問題になるのでございます。そういった関係から、また、実際の状況から勘案いたしまして、むしろこれは指定された区域における地方自治体の計画に基いて、その地区に居住される方々の自発的同意によって処置することがやはり民主的であり、実際的でをある、こういう観点においてわれわれは原案をそのまま通していただきたいと考えております。
次に、家屋移転等の助成規定を設けよという点でありますが、これは人情論としてはまことにそうでございます。しかしながら、この移転をした場合における利益はやはり移転をした人それ自身が受ける利益でございます。これによって一般公共の利益になるということでありますれば、また議論の立て方もございますが、原則として政府のこういういろいろな災害の類似の問題に対する考え方といたしましては、そういう場合においては補助をいたしておりません。そのかわりに公庫の融資等、別途の方法をもって優遇措置をしておりますので、他の類似の状況にあられる人々との均衡をとる意味においても、融資という優遇措置で満足していただきたいと思う次第であります。
その次に、関連事業に対する国の補助率をもう少し上げよという御提案でありますが、従来も類似の事業について、たとえば老朽ため池とか急傾斜農地等に対する補助率等と比較いたしまして、むしろこの地すべり等に対する補助率の方が、二分の一にするわけでありますから、上っておるわけであります。これを三分の二にせよ、あるいは五分の四にせよ、その思いやりの気持は十分に了承いたしますが、政府の行いますところの事業が類似の事態に対してやはり均衡をとるということも政治のとるべき態度であると考えまして、従来類似になっておるところの事態の最高限度をここのところは規定しておるという意味において御了承願いたいと思います。
それからボタ山の防止地区についての関連事業の規定の問題でありますが、御承知のように現在問題になっておるボタ山につきましては、農地、住宅等もきわめて少いのであります。そういう関係からこれを全部関連事業というふうに、地すべりと同様に規定することは必ずしも実情に合わない。しかしながら全然放置するわけではございませんで、これはボタ山地区におけるそうした事態については、一般の農業対策あるいは住宅政策で処理し得る、こういう意味において、これも原案の通りにしていただきたいものと考えております。
それから附則第三条の「昭和三十三年度における適用については、」とあるのを「当分の間」に改めるということでございますが、これは先ほど来いろいろと御論議のあったところでございますが、政府といたしましては、いわゆるり臨特法に基くところの時限立法がございまして、これによりまして他のものも規定しております。問題は三十四年度以降の補助率の分担金の問題に関連するのでありますが、これは地方財政と国の財政全体の総合的観点において検討し、あらためて規定する、こういう大前提に立って本国会に提案しておるところの諸般の問題が処理されておりますので、その際にこれは総合的に処理いたしたい、こういう意味におきまして、これまた原案に御賛成を願いたいと思っておるわけであります。
以上の五点の理由をもちまして、政府といたしましては、修正案については遺憾ながら賛成をいたしかねます。原案の通りに成立することをお願いする次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/35
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036・西村直己
○西村委員長 これより本案並びに修正案を一括して討論に付します。討論の通告がありますからこれをお許しいたします。三鍋義三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/36
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037・三鍋義三
○三鍋委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました地すべり等防止法案につきまして、修正案並びに修正部分を除く原案に賛成の討論をいたしたいと思います。
本法案は、前第二十七国会におきまして日本社会党が提出し、今国会におきまして本案と並行審議となりました地すべり等による災害の防止に関する法律案が政府を刺激して、提出の運びとなったものであります。しかしながら、先ほど修正動議を提出いたしましたように、内容の一部に政府と意見を異にする点がありますので、この際、この点を明らかにいたしておきたいと思います。
その第一点は、関連事業計画について、家屋等の移転の勧告及びこれに伴う助成規定がないこと、ボタ山に関連事業計画を適用していないこと及び関連事業計画に対する国の補助率が適当でないことであります。これらは関連事業計画の実施をはなはだしく困難にし、ひいては地すべり防止対策の効果を減じ、民生の安定につき不安の影を、投げることをおそれるものであります。
第二点は、地すべり等防止工事並びに関連事業計画に対する補助率の規定が適当でないと思われる点であります。地すべり等の地域が、財政費弱団体に偏在している実情を十分に考慮する必要があります。以上の二つの見地から、修正案に賛成の意志を表するものであります。
しかしながら本法案は、わが党が提出いたしました法案と精神におきまして一致しております。また特に昨年の大災害以来、地すべり等の対策に関する基本法が待望せられておりますので、修正部分を除く原案については時宜に適した処置であることを率直に認め、地すべり対策の画期的飛躍を期待いたしまして、賛成をする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/37
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038・西村直己
○西村委員長 久野忠治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/38
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039・久野忠治
○久野委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました地すべり等防止法案に対する修正案に反対し、原案に賛成の討論を行わんとするものであります。
地すべりは、現在三十六道府県にわたり、約五千五百カ所、十四万五千町歩に及び、年々多大の被害が発生しております。また保安義務者のない約二百二十カ所のボタ山のうちにも、崩壊により被害が発生しているものが少くありません。これらに対し、その防止に関する抜本的対策を要望する声が、昨年の大災害以来、特に大きく叫ばれていたのでございます。このときに当り、政府が本法案を提出されたことは、まことに時宜に適した措置でありまして、本法案提出に至るまでの政府当事者の努力に対し、深甚の敬意を表する次第でございます。
本法案は、地すべり及びボタ山の崩壊につきまして防止区域を指定し、管理責任を明確にし、この区域内における地すべり等の助長行為の制限を行う等の管理規定を設け、防止施設の施行者費用の負担等を明確にいたすとともに、地すべりによる被害軽減策として、危険区域の家屋移転、農業用施設の整備等を関連事業として施行することとし、これに補助または融資の道を講じようとするものであります。このような措置はまことに適切なことであり、全面的にこれに賛意を表する次第でございます。
しかし一言希望を申し上げたいことは、第一に、本法案が成立いたしました上は、予算の上にも反映し、この法律を十分に生かしていただきたいこと。次に、鉱山保安法による監督を厳重にし、今後この法律の適用を受けるボタ山を発生させないようにしでいただきたいこと。この二点でございます。
以上、希望を申し添えまして、修正案に反対し、原案に賛成の意を表する次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/39
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040・西村直己
○西村委員長 討論はこれにて終局いたしました。これより採決を行います。まず井手以誠君提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/40
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041・西村直己
○西村委員長 起立少数。よって、井手以誠君提出の修正案は否決されました。
よって、原案について採決いたします。原案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/41
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042・西村直己
○西村委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。(拍手)
この際三鍋義三君より、本案に対し付帯決議を付するべしとの動議が提出されております。提出者の趣旨説明を求めます。三鍋義三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/42
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043・三鍋義三
○三鍋委員 本案に対しまして付帯決議を付したいと思います。案文はお手元に配付してございますが、念のために読み上げます。
地すべり等防止法案に対する附帯決議案
政府は、本法の施行に当り、左記各項の実現につき特に配慮すべきである。
記
一、緊急を要する地すべり等防止工事は、おおむね五箇年間に完成すること。
二、住宅金融公庫の貸付の手続きを簡素化すると共に、貸付金額の最高限度をつとめて引きであげること。
三、農林漁業金融公庫の貸付の条件は、住宅金融公庫の貸付の条件との均衡を充分に考慮してこれを定めること。
四、本法の対象とならないぼた山については、鉱山保安法による監督指導を厳重にし、鉱業権者等をしてその崩壊防止対策につき遺憾なからしめること。
以上であります。
次に、これに対するところの趣旨を御説明申し上げたいと思います。
まず第一点でありますが、地すべり等のうち、その防止工事を必要とするものは建設省関係約百八十七億、農林省関係約百四十六億円、計約三百三十三億円に上るのであります。このうち、五カ年間に緊急に行わなければならない工事として、建設省関係において約二十億円、農林省関係において約三十九億二千五百万円、合計約五十九億余円の事業費を要することが、政府答弁においても明らかになったところであります。一方、三十三年度予算に計上せられております補助金は、両省合せて三億二千万余円、これを事業費に逆算しましても、五億円程度のものであろうかと思われるのであります。かくては、危険に瀕している地すべり等の地域の住民の安全にはほど遠く、本法の目的に沿わないものであります。政府は、すべからく本法の精神を予算の上に表わし、緊急工事はぜひとも五カ年問に完成すべきであると存ずるものであります。
第二点及び第三点といたしまして、これは関連事業計画による資金の融資についての問題でありますが、本法により対象となるのは農家が主たるものでありまして、農家にとっては各種の官庁式手続は最も苦手とするところであり、また実際にそのいとまがないでありましょう。従ってせっかく資金を貸し付けるのでありますから、借りやすいように特に手続を簡素化すべきものと思います。また農家は普通の住宅に比べて広いものを必要としており、かつは現金収入も少く、本法による住宅等の移転は災害のそれと異なって、永住地を移るのでありますから、貸付の最高額は、他のいかなる条件よりも優位に取り扱わるべきものと存じます。
次に農林漁業金融公庫の貸付の条件は、現在までの政府言明によりますと、住宅金融公庫のそれに比べましてあまりに隔たりがあるように思われます。前述の農家の特殊事情を考慮いたしますならば、その貸付条件を住宅金融公庫のそれに極力近づけるよう特別の配慮がなさるべきであろうと思うのであります。
第四点は、ボタ山についてであります。本法第二条により、現に鉱業権者等の保安義務者のないボタ山のみが本法の適用を受けて、崩壊防止工事は都道府県知事の行うところとなり、現に鉱業権者等のおるボタ山は本法の適用から除外されているのであります。これらは、今後は鉱山保安法のみによって崩壊防止の措置を講じなければならないのでありますから、鉱山保安当局は監督を十分に厳に行なって、いやしくも崩壊することのないよう、また今後保安義務者のないボタ山が断じて生じないよう監督の全きを期すべきであると存ずるものであります。また同時に、中小炭鉱が以上の鉱山保安法の厳重なる監督によってその経営が危地に追い込まれることのないよう、別途に適当なる指導をなすべきでありましょう。
以上が付帯決議の趣旨でございます。何とぞ委員各位の御賛成をお願いしたいと存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/43
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044・西村直己
○西村委員長 ただいまの三鍋義三君の説明に対しまして御発言はございませんか。——別に御発言もないようでございますから、採決いたします。
ただいまの付帯決議に賛成の諸君の御起立をお願いいたします。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/44
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045・西村直己
○西村委員長 起立総員。よって付帯決議を付するに決しました。
なお、ただいま可決いたしました法案の報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/45
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046・西村直己
○西村委員長 御異議ないものと認め、さよう取り計らいます。
本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時四分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804149X01819580327/46
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