1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年三月六日(木曜日)
午前十時三十二分開議
出席委員
委員長 小平 久雄君
理事 阿左美廣治君 理事 内田 常雄君
理事 笹本 一雄君 理事 島村 一郎君
理事 長谷川四郎君 理事 加藤 清二君
理事 松平 忠久君
有馬 英治君 大倉 三郎君
川野 芳滿君 菅 太郎君
神田 博君 齋藤 憲三君
櫻内 義雄君 椎名悦三郎君
首藤 新八君 南 好雄君
山手 滿男君 佐竹 新市君
田中 武夫君 田中 利勝君
永井勝次郎君 水谷長三郎君
八木 昇君
出席国務大臣
通商産業大臣 前尾繁三郎君
出席政府委員
通商産業政務次
官 小笠 公韶君
通商産業事務官
(通商局長) 松尾泰一郎君
通商産業事務官
(企業局長) 松尾 金藏君
通商産業事務官
(繊維局長) 小室 恒夫君
工業技術院長 黒川 眞武君
中小企業庁長官 川上 為治君
委員外の出席者
大蔵事務官
(大臣官房財務
調査官) 稲益 繁君
大蔵事務官
(主計官) 海堀 洋平君
専 門 員 越田 清七君
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三月五日
工業用水道事業法案(内閣提出第一二二号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
日本貿易振興会法案(内閣提出第八八号)
中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案(
内閣提出第一〇四号)
工業用水道事業法案(内閣提出第一二二号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/0
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001・小平久雄
○小平委員長 これより会議を開きます。
まず、昨五日、本委員会に付託されました工業用水道事業法案を議題とし、審査に入ります。
まず、その趣旨の説明を求めます。小笠通商産業政務次官発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/1
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002・小笠公韶
○小笠政府委員 ただいま議題となりました工業用水道事業法案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。
わが国経済の発展をはかるためには、道路、港湾、鉄道、工業用水、工業用地等の工業立地条件を総合的に整備し、その隘路を打開することによって、工業生産の急速な拡大をはかることが、基本的な重要性を有することは、あらためて申し上げるまでもありません。なかんずく、工業用水は、原材料、動力と並んで工業生産上不可欠のものであり、かつ、きわめて大量の供給を必要とするものでありますので、豊富低廉な用水の確保は、工業の発展をはかる上において、最も重大な要件をなすものであります。しかるに、近年における工業生産の急速な拡大に伴いまして、工業用水に対する需要は急激な増大を見せ、このため、主要な工業地帯においては、用水の供給がきわめて逼迫いたしまして、今や工業用水の不足が工業の発展にとって重大な阻害要因となるに至ったのであります。
一方、工業用水に対する需要の増大に伴いまして、その最大の供給源であります河川水は、これまでのように工場の近辺に求めることが困難となって参りまして、工場がみずから単独で引水することは、きわめて困難となったばかりでなく、河川水と並ぶ大きな供給源でありました地下水につきましても、多くの工業地帯では、すでにくみ上げの限界に達しており、過度くみ上げのため、種々の障害を惹起して、工業用水法の指定地域としてくみ上げ制限を行なっている地帯もある現状であります。従いまして、今後における工業生産の発展を期するためには、相当遠方から工業地帯に引水することによって、工業用水の供給を確保することが、絶対的な要請となってくるのであります。
このような事情を反映して、工業用水道事業は、最近急速な拡大を見せつつありまして、わが国における主要な工業地帯における用水の供給は、今後は、その大きな部分を工業用水道事業によって行われることになるものと思われます。
しかも、将来の工業の発展に伴って、工業用水に対する需要は、増大の一途をたどるものと予測されております。通商産業省におきまして調査したところによりますと、全国主要工場の工業用水使用量は、昭和三十一年におきましては、一日三千二十万トン、うち淡水千七百四十万トン、海水千二百八十万トンであったものが、新長期経済計画の最終年次である昭和三十七年には、五千九百八十万トン、うち淡水三千三百八十万トン、海水二千六百万トンと、約二倍近くの量が必要となるものと推定されており、工業用水の獲得は、今後の大きな課題となっているのであります。
従いまして、通商産業省といたしましては、今後の工業用水供給の基幹となると考えられます工業用水道事業について、一方、工業用水道の布設に対する補助金の交付、資金獲得の援助等、一連の助成措置を講ずるとともに、他方これらの措置を通じて積極的な行政指導を行うことによりまして、工業用水道事業の運営の適正化、合理化をはかってきたのでありますが、何分、工業用水道事業は、最近ようやく普及して参りました事業でありまして、従来、その根拠となるべき法律がなかったのであります。
しかしながら、工業用水の需要の飛躍的増大が必至であり、これに対応するため、工業用水道事業が急激に増加しつつある今日の事態におきましては、従来の体制ではとうてい不十分であると申さなければなりません。通商産業省といたしましては、工業用水道事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによって、工業用水の豊富低廉な供給をはかるため、ここに本法案を立案し、工業の健全な発達に寄与いたしたいと考えている次第であります。
本法案の主なる内容は、次の通りであります。
第一に、工業生産の発展に伴い、工業用水道事業が工業用水の主要な供給源となりつつある現状にかんがみまして、工業用水道事業の開始を、地方公共団体の営むものについては事前届出制、その他のものについては許可制をとることとし、法定の基準にのっとった工業用水道の建設及び運営が行われるように措置いたしました。
第二に、工業用水道の水源は、量的にきわめて限られており、工業用水道事業は、工業に対して、事実上強い地域的独占性を有するものとなっておりますが、他方、工業用水は、きわめて大量に使用されるものでありますため、その供給条件のいかんは、工業経営に重大な影響を及ぼすこととなります。このため、工業用水道事業者に、供給規程の設定の義務を課するとともに、その内容について一定の基準を示して、これによらしめることとし、地方公共団体については、これを届け出させるとともに、その他のものについては認可制をとり、その供給条件の適正化をはかることといたしました。
第三に、工業用水の供給は、工業生産上不可欠のものでありますので、その供給が拒まれ、あるいは不測の事故等によって供給が停止されることとなりますと、直ちに工業生産の停止を招来することとなります。このため、工業用水道事業者に対し、給水の確保、施設の維持について所要の義務を課し、給水の安定性を確保することといたしました。
第四に、豊富低廉な工業用水の供給をはかるため、工業用水道の布設につき、国が資金の確保その他の援助に努めることを法定いたしましたほか、工業用水道の布設を促進するため、通商産業大臣の行う水源調査、土地立ち入り、土地収用、道路占用の特例等の法的措置を講ずることといたしました。
以上がこの法律案を提出する理由であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同あらんことを切望いたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/2
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003・小平久雄
○小平委員長 本案に関する質疑は、後日に譲ることにいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/3
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004・小平久雄
○小平委員長 次に、中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
質疑を継続いたします。内田常雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/4
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005・内田常雄
○内田委員 中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案が、当委員会に付託されておりますが、その内容は、きわめて簡単でありまして、先般の政府の御説明にありますように、その公庫に副総裁一名を置くということと、もう一つは、環境衛生同業組合及びその連合会も、やはりその三分の二以上が中小企業者をもって構成せられるものでなければならぬということで、前回の議員立法のミス・プリントを修正するという程度で、ごく小さい、軽い法律案であることは、諸君も御承知の通りであります。
ところで、お伺いをいたしたいのは、この両項目とも、わざわざ法律案にして、この国会の審議にまで持ち出すような大問題ではないのでありますが、中小企業金融公庫に副総裁を置くことが、そんなに大問題でありましょうか。また、もし副総裁を置く必要があるといたしましても、中小企業金融公庫におきましては、職制などにつきまして、政府がこれを監督しているはずでありますから、副総裁というものは、法律などによらないで、理事の執務順位を定めると同じようなことで、職制で御自由にお置きになったら、それで済むことであって、こういうつまらぬ法律をわざわざ出すくらいなら、中小企業につきましては、もっと出さなければならぬ大切な法律があると思うのでありますが、なぜこういうものを先にお出しになるのか、ちょうど政務次官がおいでになりますから、お聞きをいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/5
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006・小笠公韶
○小笠政府委員 公庫法の改正の内容につきましては、お示しの二点でございます。お尋ねのように、副総裁は、内部の職制で置いてもいいじゃないかというお話もございます。そういう便宜措置も、講じ得るとは考えますが、公庫は、政府の機関でありまして、政府機関の役職員というものは、法定することが普通でございます。従いまして、こういう副総裁という重要なポストを法定しておくことが、より適切である、こういう考え方をいたしておるのであります。
副総裁を置かなければならぬかどうかという問題になりますと、御承知のように、公庫が誕生いたしまして、四年近くになるわけであります。順次その機能を拡大して参りまして、中小企業金融に貢献しつつあること、御承知の通りであります。従いまして、内部にも、いろいろ多くの事務が輻湊して参りましたので、総裁にかわって公庫を代表し、それを統括していくというふうな副総裁制度を置く方が適当だ、こういう考え方におきまして、副総裁制度を置くことにいたしたのであります。
なお、第三点といたしまして、中小企業に関するいろいろな重要な諸点があるのに、これを優先さしたのはなぜかというお尋ねのように聞きましたが、中小企業の問題につきましては、別途御審議を願っておるようないろいろな案件もございますが、今、申し上げましたような公庫の組織を変えることもまた、重要なことだと考えて、提出いたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/6
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007・内田常雄
○内田委員 大体、先般の法律案の提案趣旨の御説明と同じようでありますが、私は、第一点の、中小企業金融公庫に副総裁を置くことは、反対ではございません。何しろ、今まで平理事でおった方が、副総裁になるのでありますから、格もつきますし、また、よりりっぱな自動車にも乗れるわけでありまして、けっこうなことでありますから、それ自体反対はいたしませんが、しからば、政府関係の中小企業金融機関につきましては、ほかに国民金融公庫もあり、商工中金もございます。国民金融公庫につきましては、法律上か職制上か、とにかく副総裁というものがおられて、民間から来ておられるのでありますが、商工中金の方はどうなっておるでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/7
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008・小笠公韶
○小笠政府委員 商工組合中央金庫法に、副理事長の制度はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/8
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009・内田常雄
○内田委員 それならば、お尋ねいたしたいのでありますけれども、商工組合中央金庫というのは、単純なる民間機関ではなしに、商工組合中央金庫法という法律がありまして、その第何条かに、この金庫の理事長、理事、監事は、政府がこれを任命するという項目がありまして、公庫、公団における役員任命制度と全く同じであります。今、政務次官のお話では、中小企業金融公庫は、創立以来四年になって忙しいということでありますが、それならば、商工組合中央金庫は、創立以来数十年になって、もっと忙しいはずです。大体この商工組合中央金庫と中小企業金融公庫とは、現在どの程度に忙しさが違うか。この営業所は、商工組合中央金庫は大体何カ所あるか、それから中小企業金融公庫は大体何カ所あるか。これは御存じないでしょうから、中小企業庁長官からお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/9
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010・川上為治
○川上政府委員 この営業所につきましては、中小企業金融公庫の方は、現在支所が八つあります。今回予算をとっていただきまして、さらにこれを二カ所ふやすことにしております。それから商工中金の営業所につきましては、現在約五十数カ所あります。従いまして、その点におきましては、商工中金の方が、人数の上から、営業所の数からいいましても、はるかに多いわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/10
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011・内田常雄
○内田委員 しからば、次に長官にお尋ねいたしますが、従業員の数は、どっちが多いか。これも資料がないでしょうから、何千人であるか、何百人であるか、大体のところでいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/11
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012・川上為治
○川上政府委員 従業員につきましては、商工中金が大体二千名であります。それから中小企業金融公庫の方が五百七十名余であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/12
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013・内田常雄
○内田委員 それだけお尋ねいたしましても、営業所の数が、商工中金の方がはるかに多い。また従業員の数から申しましても、今度副総裁を法律上置こうとする中小企業金融公庫の方では、わずかに四分の一であるということで、ものの程度がおわかりでしょうが、次に、中小企業者に対する貸出残高は、両公庫おおむねどのくらいありましょうか。それについて、大体の見当でよろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/13
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014・川上為治
○川上政府委員 貸付残高につきましては、商工中金の方が約八百八十億、それから中小企業金融公庫の方が八百四十億程度であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/14
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015・内田常雄
○内田委員 これは大体どちらも八百億円台でありまして、同じでありますが、こまかく言えば、商工中金の方は、この点においても多いわけでありますが、この二つの中小企業金融機関の御所管は、どこになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/15
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016・川上為治
○川上政府委員 所管につきましては、両公庫とも大蔵、通産の共管でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/16
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017・内田常雄
○内田委員 しからば、私はますますわからなくなったのでありますが、そういう事態のもとで公庫、公団あるいは特殊金融機関の役員というものを、りっぱな自動車に乗せるということは、反対でもないし、賛成でもないのでありますから、お好きなようにやったらよろしいと思いますが、そういうような同じ状態か、商工中金の方がより多くの業務をやり、より多くの従業員を擁し、より大きな資金を中小企業者に貸し出しておりまして、一体、指数からウエートがどうなるかわかりませんが、とにかく普通の算術換算をいたしますならば、商工中金の方が忙しいにきまっている。同じ政府関係の金融機関でありまして、同じく特殊立法をもって役員の任命規定があるのでありますから、どうして今回は中小企業金融公庫だけについて、法律上副総裁を置かれることにしたか、それをお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/17
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018・川上為治
○川上政府委員 先ほど政務次官から、商工中金につきましては、法律上副理事長制はないというお話を申し上げましたが、実際問題といたしましては、内部職制によりまして、現在副理事長を置いておるわけであります。私どもの方といたしましては、この商工中金のいろいろな法律の問題につきましては、改正を要すべき点が多々あると考えておりまして、現在いろいろ研究をいたしております。単に副理事長制の問題だけではなくて、ほかに、たとえば任命制の問題とか、あるいはその他の問題につきまして、いろいろ改正をしなければならぬ点があるわけでございまして、現在いろいろ研究いたしておりますが、今回これを提案するところまで至っておりません。そこでさしあたり中小企業金融公庫につきまして、先ほど政務次官からお話がありましたように、副総裁制度を設けた方がいいのじゃないかというふうに考えましたので、この際、農林関係の同じ公庫につきましても、副総裁を設けるということに大体なっておりまして、現在法律案が出ておるはずでございますので、そういうものをあわせて考えまして、中小企業金融公庫関係だけを実は出したわけであります。商工中金の問題につきましては、これはさらに研究をいたしまして、いろいろな問題と一緒に改正していきたいというふうに、私どもの方としましては考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/18
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019・内田常雄
○内田委員 話がまるで逆です。今のお話によると、商工中金についても、役員制度その他について、改正を考慮中であるということですが、中小企業者に対して、どちらの機関が軽いか重
いかという差異はないはずであります。今日どちらが中小企業者のために機能を果しているかといえば、これはむしろ疑いもなく商工中金の方が機能を果しているのでありますから、商工中金法の改正の準備ができるまで中小企業公庫法の改正は待って、車の両輪のようにおやりになるのが、私はほんとうだと思う。しかるに、どっかの他の公団とか公社で副総裁を置く規定があるから、それをあわせて、この中小企業金融公庫だけに副総裁を置くというように、この規定だけ私はそれ自身反対じゃありませんが、この忙しいときに政府が時間を使い、紙を使い、国会議員に時間を使わせて、こういうものをわざわざ、商工中金の方と片びっこになるかもしれないのに出すという不見識は、私は納得できない。先ほど私が政務次官に聞いたら、商工中金には副理事長はないと言うけれども、中小企業庁長官は、職制上副理事長を置いてあると言っておる。佐藤某という方がおられるはずです。だから、この改正法案はしばらくおいて、一方の商工中金法についての改正の準備ができたときに、一緒にやるのが至当だと私は思う。私が、なぜこういうことを言うかというと、今回これだけのことをおやりになると、中小企業金融公庫には副総裁ができて、何でもかでも法律的にも援護するが、商工中金については、あなた方はなすべきことをなしていないから、同じ資金運用部からこの両機関に金を出すにも、中小企業金融公庫には、法律上六分五厘の低利な直接貸付ができるけれども、一方の商工中金については、その道を閉ざしている。本院商工委員会において、また参議院の商工委員会においても、何べん決議をしても、あなた方はそれを軽んじて実行しないし、その上、こういうように一方に副総裁を置くようにすると、その傾向をますます馴致して、そして中小企業金融公庫については、政府は副総裁を置いたり、りっぱな自動車に乗せたり、商工中金より安い金を貸すようになる。今度、中小企業団体法が四月一日から施行されて、商工組合というものができるはずです。商工組合員であろうがなかろうが、だれにでも金を貸す。中小企業金融公庫にはこういうことまでやって、商工中金については、政府が理事長、理事、監事の任命までやっていながら、また剰余金の処分とか一切の監督をやって縛っておきながら、何も有益なことはやらないということになると、あなた方はますます中小企業者から、その見識を疑われるようになるのですから、やるべきことを先におやりになる方がいいだろうと私は申し上げているのです。もし、しいてこういう法案を出されるならば、この法律案の附則でも何でもいいから、商工中金の方の機構改革とか、副理事長を置くのが間に合わなければ、せめて商工中金に対しても、政府は資金運用部の直接貸しを、安い利息で貸すというような規定をお加えになるならば、私は賛成するが、国民全体を代表しているこの国会に、こういうばかばかしい法律だけ単独に出すということは、私ははなはだ不見識だと思う。私は、だれが副総裁になられるか知っておりますので、その方には気の毒ですから、私はあえて賛成も反対もしないけれども、今、私が申し上げました点を、いかに考えられるか、これは一つ政務次官からお答え願いたい。これは決して逃げ隠れでなく、あなた方が弱い態度を示しますと、商工中金が中小企業者に対して安い金を供給するということは、ますます、困難な立場に追い込まれます。小笠政務次官は、あなた自身が商工委員のとき主張しておられたことを実現させなければならないと思うのです。あなたは、一生政務次官をやられるわけでもないのでありますから、ここでほんとうのことを、おれはこう思うのだが政府部内でできないのだ、できない理由はここにあるのだということを、議員の一人としてあなたは答弁していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/19
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020・小笠公韶
○小笠政府委員 数々の御意見拝聴いたしました。私は商工中金の副理事長がないとは申しません。商工組合中央金庫法には、副理事長の規定がないと申したのであります。職制の点までお話をしなかったのであります。その点は誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
今、お話がございましたように、この商工組合中央金庫に対して、資金運用部の資金を直接貸し付けるという道は、私はぜひその道は開きたい、こういう念願でおるのでございますが、今日までその実現を見ないということでございまして、遺憾に存じております。なぜ政府機関である中小企業金融公庫にはその道があり、同じく政府機関と称せられておる商工組合中央金庫に、その道がなかなか達成されないかということになりますと、これはいろいろな御意見がございましょうが、戦後商工組合中央金庫の再建の途上において、これを民間ベースの金融機関に再建さしていこうということでスタートいたしたのであります。政府の金と民間の資金とでなっておりますが、その当時のいきさつがまだ残っておりまして、純粋の、いわゆる政府機関にまだなり切っておらないところに問題があるのであります。そういう点から考えまして、商工組合中央金庫の性格というものを、もう少し変えたらどうか。ほんとうに政府機関なら政府機関の形にして、それに伴って中小企業金融公庫との職能分野をはっきり分けていく、こういうふうな考え方で、性格のところから一つすっきりしたものにしたい、こういうつもりでおるのであります。そうしなければ、いつまでも過去の事柄が尾を引いて、なかなか話がまとまりにくい、こういうふうな考え方をいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/20
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021・内田常雄
○内田委員 私は、ここで重大な説明を小笠政務次官にいたしますが、私の本心は、決してあなたを攻撃するためではありませんから、よく聞いていただいて、一つ私の思想を、あなたは受け入れていただきたい。
商工中金の性格というものを変える必要は、ごうもありません。もし人あって民間機関というならば、それでいいです。何も公団、公社にする必要はない。しかし、あれは長期信用銀行や、興業銀行や不動産銀行と違いまして、準則立法の金融機関ではない。そのものずばり、商工組合中央金庫法という組織法があって、できておる機関でありますから、政府機関といっても、差しつかえないと私は思いますが、他の見解があってもかまいません。
ところで、小笠君の考え方が非常に間違っておるというか、人にわざわいされてきておるところがあります。申し上げますと、今日、資金運用部資金の貸付先は、決して三公社五現業とか、あるいは政府の特別会計だけに貸すという性格のものではないのです。戦後、昭和二十四年に私が経済安定本部の財政金融局長をしておるときに、ドッヂというアメリカ人が来て、一般会計においては超均衡財政をやって、国民大衆からは税金でも何でも金を吸い上げればいいのだ。そして、それを財政の中に蓄積をしておいて、日本のインフレをとめる。のみならず、郵便貯金でも何でも、政府機関の窓口を通じて集められたものは——郵便貯金は一般大衆の貯金でありますけれども、これは政府機関を通じて吸い上げてきたものだから、決して民間に放出してはいかぬ。これは国とか、公共団体とか、あるいは政府機関に限るべしということで、私を初め、時の政府から司令部に日参をして抵抗したにかかわらず、司令部に押し込められて作られた。今日ここに大蔵省の職員が来ておりますが、これはあなた方が作ったものではない。これは私が一番よく知っておる。今日の理財局長よりも、だれよりも知っておる。今日の大蔵省の諸君は、この資金運用部の性格を誤解している。この資金は公社とか公団とか、あるいは国とか、公共団体とかいうもの以外に貸してはならぬものだと思っておる。あなたはその思想にかぶれて、商工中金を公社、公団と同じように改組しなければ、預金部の安い金を出せないものだと観念しておるところに誤まりがある。今日世間に、商工中金や、はたまた信用金庫に預金部資金を出せという声があったとして、それがほんとうに中小企業の振興のために必要であると政府が踏み切り、あるいは自由民主党なり、社会党なりが、それをほんとうに国を興すために必要だと考えれば、それをやってもいいのだ。私は、今これをやれというのじゃない。もし、社会党のために言うならば、もし労働金庫に資金運用部の金を回すことが、天下の大政策として国を立てるために必要だというならば、何も労働金庫、あるいは信用金庫を政府機関にする必要はない。むしろ、資金運用部の運用法規のあり方を、ドッジだとか、マッカーサーだかの支配を脱して、本来の姿に戻せばいい。戦前においては、資金運用部は商工中金にも直接貸しをしておった。それが神武以来の政策だ。戦争中にもこれをやった。しかるに、戦後ドッヂが来て、その当時の特定の目的から政策転換をした。そのときには、時代的、歴史的意味はあったが、今日は終戦後十三年であって、世の中の流れがすっかり変っておる。何が一体資金運用部をして一番よい運用の仕方であるかということを、政策としてきめていって、必要であれば、資金運用部資金法を改正することも一向差しつかえないのである。決して資金運用部の貸し出し先は、本来の建前として、三公社、五現業と特別会計に限られているものではないから、あれから金を借りようとすれば、みなお役人にならなければ金を借りられないという考え方をすべきではない。資金運用部のあり方を、時代に即応し、歴史の動きに即し、金融情勢に即して、昔に戻せとは言いませんが、そのとき、そのときに即応する政策として持ってくることが、正しいことであります。ただ、ここには一つの危険がある。もし資金運用部資金法の融資対象を広げるということになると、どこまで広がってくるかわからない。しまいには民間の銀行とか、あらゆる重工業、軽工業、一切の特殊会社と名のつくものは、資金運用部から金を借りられるように直される危険があるというので、政府の一部では押えられておりますが、ただ商工中金につきましては、現在すでに債権引き受けの道が開かれておりまして、資金運用部資金法第七条を見ましても、商工中金に対する債権の引き受けという言葉が載っておるのでありますから、これは新しい対象を設けることにはならぬのであります。だから、商工中金に直接貸しということをやらせましても、決してあと漫然と多数の対象がついてくるということはありません。しかし、これは、ほんとうの精神は、ただあとからついてくるものを拒むということではありません。ほんとうの政策から考えて必要の場合には、必要の対象に郵便貯金を還元するということを、やらなければならぬのでありまして、これが政治である。われわれが代議士に出てきているゆえんのものは、そのために出てきているので、昔は私も官僚であったが、官僚政治にまかせられないので、私は官僚をやめて代議士に出てきたのです。この中小企業金融公庫法の改正というつまらぬ法律を出すくらいならば、もっとほんとうに大切なことを一緒にやってこいということを、私は最後の機会として切々申し上げておきますから、よく考えられてほしいと思います。しかし、あなた方が反省し理解しなければ、私は、この法律の通過には、一人になっても最後まで反対をいたします。
委員長、私はまだこの質問を留保いたしておきます。これは別に政府の重要法案でありません。この法律を作らないからといって、予算が動かないとか、岸内閣がどうとかという法律ではございませんから、私は最後の瞬間まで反対をいたします。私は政府の考え方が納得できるようになるまでは、議員の一人として、こういうばかばかしい法律案には賛成できませんから、申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/21
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022・小笠公韶
○小笠政府委員 いろいろお話を伺いましたが、ごもっともな点も多々あります。目的は、中小企業の金融を、より円滑にすることでありまして、法律操作の問題については、いろいろの考え方がございますが、先ほど申し上げましたような事情もありますので、各種の角度から考えて、この目的が達成されるように、今後努力をいたしたいと考えております。非常に過去の事情に精通せられている内田委員からも、いろいろ御支援をお願いしまして、進めて参りたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/22
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023・松平忠久
○松平委員 今の中小企業金融公庫法の改正案について、今、環境衛生部長を、私は要求しているのでありますが、来ないらしいから、留保しておきまして、次の機会にやりたいと思いますから、そういうふうに取り計らっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/23
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024・長谷川四郎
○長谷川(四)委員 今、いろいろな御意見があったのですが、ただ一つ、伺ってみたいのは、公庫の中には、理事がたくさんいるでしょう。その理事が、各県を分担して担当しているという理事はいないのですね。全部一緒くたなのですか。何かそれぞれの地域を担当するような理事を作って、たとえば、群馬と栃木と東京までは、だれだれ理事の担当だということになると、非常に金融のいろいろな面が促進しやすいと考えますが、そういうふうになっていないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/24
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025・川上為治
○川上政府委員 中小企業金融公庫の理事につきましては、大阪以西の問題につきましては、主として現在大阪に配置されております理事が受け持っておりまして、それから以東、以北の問題につきましては、本店の方で実は扱っております。しかし、仰せの通り、本店の中で、各理事が地域的な分担はいたしておりませんので、今お話しになりましたような点は、今後の職制改革の問題として、十分研究したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/25
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026・長谷川四郎
○長谷川(四)委員 とにかく公庫の理事になれば、相当頭のよい人だと思っておった。ところが、あまりよくない。そういう人に、大阪から分けて、これだけ広い地域を見ろと言ったって、無理です。私は、常にそういうことは考えておる。いろいろなことを言っていっても、ちっとも理事がわからない。総括したものしかわからないということでなく、もっと真剣味を帯びて——われわれが、中小企業金融公庫なり、あるいは商工中金なりが、いかに中小企業に大事か。こういうことで、今度の予算にしても、これだけの力こぶを入れているゆえんというものは、どこにあるかということなんです。中小企業の実際の苦境がどこにあり、どの程度のものであるかということが、理事そのものにわからなければならぬと思う。そのわからないところが、われわれの期待に沿わないところであると私は考えている。だから、どうかそういうふうに分担をして担当をきめていく。そうなったならば、必ずや私は一歩前進する、こう考える。どうかその点を考えてもらいたい、それだけです。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/26
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027・小平久雄
○小平委員長 次に、日本貿易振興会法案を議題とし、審査を進めます。
質疑を継続いたします。加藤清二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/27
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028・加藤清二
○加藤(清)委員 私は大臣を要求しておりますが、いつ参りますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/28
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029・小平久雄
○小平委員長 今、参議院の方と打ち合せをしています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/29
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030・加藤清二
○加藤(清)委員 参議院にかまけて、いつも大臣が出て参りません。決して委員の不勉強でも、なまけでもないのに、審議が渋滞するゆえんのものは、大臣が予算とか参議院とかにかまけて出てこないからだ。それで、委員長におかせられては、至急大臣を呼び寄せていただきたい。
大臣がおりませんので、次官にお尋ねいたします。ただいま審議されておるこの貿易振興会法に関して、お尋ねいたしますが、新聞によると、御承知の通り、国民待望のうちに、日中の第四次貿易協定が締結されたようでございます。これに対して、政府の態度をただしたいのですが、まず第一番に、この協定によれば、民間代表部を交互設置することに相なっております。承われば、中小企業金融公庫のごときは、法律が決定しない前に、人間がきまっておるようでございます。ところが、この中国の民間代表部設置については、それほどお手回しよくやっていらっしゃるのか、やっていらっしゃらないのか。一体、だれを目当てにしていらっしゃるのか、あるいはだれということがわからなければ、どういう人物をこれに当てようとしていらっしゃるのか。常にお手回しのよい通産当局でございますので、おそらく、すでに当てがあることと存じます。お答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/30
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031・小笠公韶
○小笠政府委員 お答えいたします。第四次協定が調印せられまして、わが国から中国に代表部を送る場合に、どういう人を代表として派遣するかというお尋ねでありますが、そういうふうな人事の問題は、まだ何もきまっておりません。また、御承知の通り、民間協定でございますので、政府としては、直接には、ただいまのところ承知しておらない、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/31
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032・加藤清二
○加藤(清)委員 だから、大臣に来てもらいたいということを言っているわけですが、それは異なことを聞くものです。なるほど、名前は民間協定ではございますが、今までこの民間協定が難渋に難渋を重ねたゆえんのものは、一体どこにあるかといえば、政府みずからが、この協定に対していろいろサゼスチョンをし、そのサゼスチョンの内容が遅延した原因になっている。決して政府が干渉しないとか、関係しないということは言えないはずです。問題は、熱の入れ方です。ジェトロの人的構成についても、すでに御用意があると、ほのかに聞いております。すべての問題が、準備万端整っているにもかかわりませず、この協定は、きのう、きょうできたものではございません。すでに一年有余、準備期間からいえば、二年有余もかかっている。その内容の第一に、民間代表部を設置するということがあげられていることは、明らかな事実です。イギリスのごときは、御承知の通りに、オールドパー卿というような、皇室に最も近い、国民の師表に仰がれるような人を北京に派遣して、すでに五年になっております。日本の貿易は、どこの国においても立ちおくれておりますが、特に中国に関しては、それがはなはだしい。それは政府の怠慢のゆえんであるといわれてもやむを得ないだろうと思います。だれ、かれということが、わかっておらなければ、せめて、どういうスタイルの、どういう範疇の方を派遣しようと考えていらっしゃるのか。政府は全く関係しないというならば、今後、民間においてそれを選定したときに、絶対にこれに対してサゼスチョンをしないとおっしゃるのか、その点を明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/32
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033・小笠公韶
○小笠政府委員 昨日、協定が調印されたということを承知いたしておるのでありますが、その具体的な内容につきましては、まだ承知いたしておりません。そういうふうな事情でありますので、代表部の代表者に、どういう人を送るかということは、まだ何にも考えていないのでありまして、もう少し先の問題に属するというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/33
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034・加藤清二
○加藤(清)委員 今度の協定について、何にも存ぜぬというようなことは、逃げ口上以外の何物でもない。すでにどの新聞も、かくのごとく一斉に大見出しでトップ記事に出している。しかも、その内容は全部一致している。何に一致しているかといえば、すでに代表団が立たれます折に、十分に日中議連において検討されたことであり、その問題は、政府みずからも、また与党も野党も、それぞれの立場において検討済みのことです。それを知らぬ存ぜぬと言われては、それでは次官の責任が全うできないといわなければならぬじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/34
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035・小笠公韶
○小笠政府委員 協定されました文書につきましては、今朝の新聞等の報道で、承知をいたしておりますが、なお、わが方の代表の池田団長がお帰りになってから、いろいろ協定の内容等もあろうと思いますので、そういうお話を伺わないと、はっきりしたことがまだ十分につかみ得ない状態だと思うのであります。文章の読み方のあやというものも、いろいろあろうと思うのでありまして、そういう段階でありますので、まだはっきりわかりかねるというのが、少くともただいまの状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/35
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036・加藤清二
○加藤(清)委員 慎重を期されることはいいのですが、当然わかっておられなければならぬ問題について、質問を進めていきましょう。
昭和三十一年と三十二年の中国との貿易量、及び金額に換算したものを比較してみまして、三十二年度の方が少くなっております。この原因は、一体どこにあるか。金額は、どれだけであったのか、この点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/36
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037・松尾泰一郎
○松尾(泰)政府委員 日中の貿易輸出入の状況を申し上げますと、通関ベースにおきまして、五六年度は、輸出が二千四百五万ポンドであります。五七年度は、輸出が二千百五十九万九千ポンドであります。他方輸入の方は、五六年度におきましては二千九百九十四万三千ポンドであります。五七年度におきまする輸入は二千八百六十九万九千ポンド、かようになっておりまして、御指摘のように輸入の方はほとんど横ばいか、若干減っておるわけであります。輸出の方は約二百万ポンド以上減っておるという状況でございます。この原因は、五六年度が、その前年に比べまして、輸出入とも異常に伸びたわけでありまして、いわば、一つの反動ではなかったかと思うのでありますが、昨年度におきましては、中国における経済計画の改編その他もあり、また財界の事情の悪化等によりまして、わが方の輸出も若干伸び悩んだのではないかというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/37
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038・加藤清二
○加藤(清)委員 そこで、市場調査をし、商品のあっせんを主たる目的として設立されておりますジェトロさんの方にお尋ねしますが、一体、何がゆえに、この中国貿易が三十一年と二年と比較して、減っているか。ただいまの局長の答弁によりますれば、何か原因が中国側にあったかの印象を受ける御答弁でございました。ところが、わが党の調査によりますれば、あにはからずや、日本は減っておるのでありますが、イギリス、フランス、イタリア等の、いわゆる自由国家群の中国に対する貿易量を調べてみますと、これは非常な増加を示しておるのであります。なるほど、五カ年計画が、ちょうど第一次が終って第二次に入る時期でございましたので、少々今の御答弁に当てはまるようなこともございました。しかし、すでに第一次が終ると同時に、第二次が始まっている。終ると同時にではなく、重なっておる。しかも、第一次の五カ年計画で完成された向うの工場を見ますと、その設備は、遺憾ながらメイド・イン・イングランドであり、メイド・イン・ジャーマニーであり、メイド・イン・USAである。このことは、北京の市街をごらんになっても、すぐおわかりになるはずです。アメリカ製の自動車が、北京の市街を幾らでも走っておる。ひとり日本のみが、なぜ立ちおくれをしなければならなかったのか、何がゆえに前年度の実績を下回る貿易量しか獲得できなかったのか、この点について、ちょうど大臣が見えましたから、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/38
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039・松尾泰一郎
○松尾(泰)政府委員 大臣お見えになりましたが、途中でお見えになりましたので、私、ちょっとかわりまして申し上げます。
確かに、ヨーロッパ諸国からの中共への貿易は、増進をいたしてはいるわけでありまするが、しかしながら、これも年々によりまして、日本が非常に伸びた年もある、あるいはまた、他の国が非常に伸びた年もあるということでありまして、毎年々々日本が増加率におきまして最先端を切っていくということは、非常にむずかしいのであります。数字でごらん願いますと、おわかりになると思いますが、五六年度におきましては、日本は非常に伸びたのであります。また自由諸国と中共どの間の貿易を見ましても、日本の占める地位というものは、やはり第一番でありまして、昨年度におきましては、先ほど申し上げましたように、若干伸び悩んだことは事実ではございますが、われわれといたしましては、将来決して悲観をしておるわけじゃありませんで、地理的にも非常に近くありますし、輸入の関係を考えてみましても、わが方は、ヨーロッパ諸国よりは、物資の買付にも有利な条件にもありますので、今後は、輸入を多くすることによって、中共への輸出はますます増加できる。従いまして、一時は他国が増加率において多少追い抜いたような感じはございますが、絶対量におきましても、またいろいろ諸般の事情から見ましても、決してひけはとらぬだろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/39
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040・加藤清二
○加藤(清)委員 永井さんが、ぜひ大臣にということでございますから、ここでかわりたいと思いますが、せっかく大臣が見えましたのですから、お尋ねします。
第四次協定が無事調印されたようでございます。その内容の第一に、民間代表部の交互設置ということがございます。もし日本から代表を選ばれて向うに派遣される場合に、だれを選定されますか、ないしは、どういうスタイルの方、どういう程度の人を送られようとしていらっしゃるのか、大臣の腹を——何も今さっき次官がしゃべったことを、あなた、そこで耳打ちせぬでもよろしい、大臣の腹を聞いているのですから。
それと、もう一点、日本の貿易、特に中国貿易を伸展させようというのは、これはもう国民の声なのです。ところが、これは三十一年と三十二年と比較いたしますと、減っている。その原因は、決して今、通商局長が答えたような原因だけではない。買わないとか言われますが、もしそうおっしゃるならば、ジェトロに聞きたいことは、オファーが一体どれだけ来ていたのか。これはジェトロの責任でございますが、中国から買いたいという注文量がどれだけあったのか聞きたい。そうして実績はどれだけあったのか、この点を承わりたい。私が見たところによりますと、またわが党の調査によれば、これは決して中国が日本から買わなかったわけじゃない、あるいはドル不足のおかげで買わなかったのでもない。そういう原因もありますけれども、向うからオファーはこの実績以上、少くともこれの五倍を上回るものが来ているはずです。あいにく日本がこれを出さなかっただけである。日本が出さないで——日本のだれが出さなかったか。業者は出したかった、商社も出したかった。ところが、政府がこれに対していろいろなサゼスチョンをし、協力をしなかった、こういうことなのです。そのゆえに、こういう結果が生じてきたわけです。まだ、ほかに原因がありますけれども、次の委員が質問したいとおっしゃいますので、まず序論のまた序論程度で、ちょっと譲ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/40
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041・前尾繁三郎
○前尾国務大臣 第四次協定の調印されたのを、新聞で承知もいたしております。その詳細は、まだわかりませんで、池田代表その他の諸君がお帰りになって、そして事情を十分承知いたしませんと、今後の運びをどういうふうにするかということについては、何ともお答えする段階でないと思います。ただ、今後向うへ代表部を出すにいたしましても、これは民間の代表部でありますから、これは民間で自主的にお考え願う、こういうことに相なってくると思うのであります。
それから、中共貿易の今までの推移につきましては、御承知のように、根本は、われわれがわが国に輸入するというものが、どうも適当なものがないということにあるのでありまして、石炭につきましては、御承知のように、現在非常に貯炭が多いのです。まあ一般炭を入れるというわけには参りません。それらの事情から、中共貿易が思ったほど伸びなかった。と申しまして、われわれとしましても、極力外地炭につきましても、切りかえていくという考えでありますが、石炭につきましては、御承知のように、よほど良質の粘結炭等でなければ、一般炭をただいま入れるということになりますと、国内に相当の波乱を起すのであります。従って、それらも、従来思うようにはいかなかったのであります。もちろん、いろいろ政治的な問題もありましょう。しかし、私は、政治の問題と貿易の問題は、従来からお話し申し上げておりますように、十分これは別個に考えていかなければなりません。と申しまして、それはそう簡単ではありませんが、しかし、貿易はあくまで推進していくという考え方でやっております。将来につきましては、十分御期待に沿うように努力いたしたい、こういうように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/41
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042・永井勝次郎
○永井委員 参議院の方に大臣が呼ばれておりまして、十五分か二十分ということでおいでを願ったので、貿易振興法案についての基本的な問題だけを、大臣にお尋ねして、引き続いて、当局の方にお尋ねをすることにしたいと存じます。
日本の貿易を振興するというためには、日本貿易の体質なりあるいは現状診断というものが正確に確立されて、これに対する対症療法、あるいはこれに対する基本的な体質改造というような問題に触れていきませんと、貿易振興のほんとうのねらいというものがきまってこない、こう思うのであります。そこで、大臣にお尋ねいたしたいのは、日本貿易の現状の体質及び病状等に対する大臣のカルテを一つお伺いしたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/42
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043・前尾繁三郎
○前尾国務大臣 貿易の根本におきましては、やはりよい商品を安く作るとともに、各地に対して、需要のあるものをそれぞれ考えて参らなければなりません。もちろん、現在の輸出商品の構造を考えますと、御承知のように、繊維が三分の一を占めているのであります。また機械類につきましては二割近く行っておりますが、これは、船舶を含めているからでありまして、それを除きますと、六、七%にすぎません。また、雑貨が一割二分であります。将来の貿易は、これは、もうすでに現に起っておるのでありますが、何と申しましても開発された地域につきましては、雑貨品なり繊維品につきましても、高級なものを作って売っていくということでなければならない。それから低開発地域につきましては、機械類等の重工業品並びに化学工業品、こういうような方向に行かなければならぬ。もうすでに、その点では多少日本が立ちおくれている、こういう感じすら持っているのであります。従って、国内の産業構造としましては重化学工業品につきまして特段の努力をし、向うに向くものを考えていかなければなりません。ただ、もう一つ、現にあります問題は、延べ払いの問題であります。延べ払いにつきましては、少くとも外国と競争のできるような方向に持っていかなければならぬ、かように考えているのであります。それからもう一つの問題は、これは率直に申し上げますと、今までの制度でも、輸出金融について、どうも思うようにいかなかった。あるいは税法上の特典につきましては、御承知のように、前国会に輸出所得の控除を拡充いたしまして、これは数十億の減税ということになっていると思います。また輸出保険につきましても、保険料を極力引き下げるというような措置もいたしているのでありまして、すでに御審議を願っているのであります。それからまた、輸出手続が煩瑣だというような面もございますので、これにつきましても、思い切った簡素化をはかりたい、かように考えているのであります。業者の関係におきましては、御承知のように、一つには責任体制を作り上げるということ、これは、今まで無責任だったという診断をしておるわけではありませんが、極力責任を持って出していただく。その反面において、過当競争が行われているということにつきましては、これは日本の貿易における非常な弱点でありまして、この点は、日本の輸出が、中小企業者の方々の輸出品が、大きな割合を占めており、しかもまた一面におきまして、業者の数が多いというような面もあります。これにつきます手当につきましては、輸出入取引法の改正等を考えているのであります。いろいろ問題はあると思います。それは、産業構造上の問題、あるいは貿易構造の問題もあります。極力、将来にわたりましては、輸入も輸出とバランスするというような方面で考えて、見直して、どんどん切りかえていくということもやらなければならぬ。非常に散漫なお答えになりましたが、以上現在の日本の貿易における欠陥、これは、外交上の問題あるいは経済協力の問題は別といたしまして、そういうような点にあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/43
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044・永井勝次郎
○永井委員 市場の問題について、大臣の所見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/44
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045・前尾繁三郎
○前尾国務大臣 ただいま申し上げた中に、申し上げなかったのでありますが、市場の開拓という点、これは、御承知のように政府だけで、また政府が特別に個々の商社なりあるいは商品についての宣伝等をやるわけには参りません。と申しまして、中小企業者の方方が個々別々に宣伝をおやりになるといっても、これもむずかしい。そこで、自然発生的に出て参りましたのは、府県が相当の肩入れをしてできました、いわゆる現在言われておるジェトロというもの、これも御承知でありましょうが、見本市の協議会、あるいは市場調査の協議会、あるいはいろいろ、三つぐらいの団体が統合されてできたものであります。しかし、貿易のことは、御承知の通り国全体の問題であります。従って、国が本腰を入れて、そうして民間団体だけでなしに、と申しまして、役人でやるというようなことではなしに、両者の中間であります特殊法人というような形態で、民間業者における海外の宣伝あるいは貿易のあっせん、あるいは市場の開拓という面につきまして協力をしていかなければならぬ、かように考えましたのが、今回の特殊法人日本貿易振興会というものの趣旨であります。これによって、国が本腰を入れ、またそれだけの機構を持ったものでありましたら、民間の方々も、安心していろいろ事業を委託していただける、こういうことにもなると思います。これをぜひとも今回は実現しなければならぬ、かように考えまして、法律案も提出いたしておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/45
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046・永井勝次郎
○永井委員 貿易構造としての所見においては、第一は対米貿易、第二は東南アジア、中近東、第三は韓国、台湾、中共等を含めたアジア地域というふうに、大きく市場別に分けることができると思うのでありますが、これらの諸地域におけるそれぞれの特徴的なもの、そしてこれに対する対処策、こういうものを一つ伺いたいと思います。対米貿易において、現在どういうふうな診断の上に立って、この関係はどういうふうに治療をするかというようなこと、あるいは東南アジア、中近東等におけるイギリス勢力圏、あるいはは西欧圏なり、あるいはアメリカの植民地的な支配の強い地域において、どういうふうに今後おやりになっていく考えであるか、これらの貿易構造に対する大臣の所見を、一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/46
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047・前尾繁三郎
○前尾国務大臣 貿易構造につきましては、商品別に見ますと、先ほど申し上げたようなことでありますが、地域別に見ますと、御承知のように、対米貿易というものは、非常にに大きなウエートを占めております。しかし、先ほども申しておりますように、対米貿易は、非常な輸入超過であります。従って、極力他の地域に輸入を切りかえていくことが、日本の貿易に役立つことは当然のことであります。そういう意味におきましては、極力切りかえていきたいと思っております。対米貿易につきましては、輸入制限の運動が、ことしは特に熾烈になっております現状をかんがみますと、結局において着実な、一割か二割程度の輸出の増加ということを考えていかなければなりません。倍にしよう、三倍にしようえというわけには参りません。従って、極力新規な商品を出すこと、またそうでなくても、向うの中小企業者とあまりまっ正面から衝突を起すような輸出の仕方は、極力避けていかなければならとぬ思います。しかし、一割なり二割なりは、これをふやしていきませんと、現在、貿易の中で大きな比重を占めておるのでありまして、これについても、従来以上に努力をしていかなければならぬことは当然だと思います。
次に、中近東その他の関係におきましては、先ほども申し上げておりますように、プラント輸出というようなものを考えていかなければならぬと思います。また東南アジアについては、御承知のように、フィリピンにいたしましても、インドネシアにいたしましても、その他の国々は、賠償も決定して参っております。これが今後の貿易に非常に役立たせる意味でやっておるのであります。従って、一面におきましては、経済協力をもっと動くようにして、他面において東南アジアにつきましては、できるだけ開発を促進して、向うから原材料の輸入をいたしまして、また賠償地域でありませんインドにつきましても、御承知のように先般五千万ドルの借款の問題も片づいておるのでありますが、それらも今後東南アジアの開発をやりながら、そうして必要な原材料も輸入しながら、日本の輸出をふやしていくということでいかなければならぬのであります。
中共あるいはソ連貿易におきましても、先ほど申し上げておりますように、極力日本の輸入を切りかえて、そうして、これは現在非常に小さい額でありまして、まだ伸びる余地があると思っております。その方面については、向うの要求しておりますような機械類、化学工業品、鉄鋼というようなものを、輸出するというふうに考えて参っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/47
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048・永井勝次郎
○永井委員 今、大臣の御答弁によると、対米貿易においては、輸入超過の現状を、バランスとるようにしていく、こういうお話であります。そこで、一つ伺いたいのでありますが、対米貿易を、現状から改めていくためには、現在アメリカの輸入は、向うの経済援助の形においてこれが促進されておる。輸出は、特需というようなものが大きな部分を占めてそれが行われておる。非常にアメリカの植民地的あるいは従属的な形になっておるわけでありますが、これを改めるためには、本質的にこういう点から改めていかなければならないと思うわけであります。たとえば、商品構成から見ましても、輸出の面においては、生糸が激減していく。そうして向うへ売り込むものというのは、こっちの中小企業の製品である繊維製品であるとか、あるいは喫煙具であるとか、あるいはカン詰であるとか、こういうもので、向うの中小企業の零細な分野と衝突する。輸入する面はどうかというと、石油であるとか、石炭であるとか、あるいはは鉄鉱石であるとか、綿花であるとか、こういった向うの巨大な資本にぶつかっていく。こういうような本質的な現在のゆがめられた形を、大臣は、この輸出入のバランスをとっていくのだという。こういう考え方はいいとして、それでは、こういう一つの貿易構造の中で、具体的にどういうふうにバランスをとるようにやっていくか、一つ具体的に説明していただきたい。東南アジアあるいはアジア地域、いろいろありますが、これは時間がありませんから、一つの例として、対米依存の現在の日本の植民地的従属型を、自立型にどういうふうにして切りかえていくのか、具体的に一つ示していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/48
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049・前尾繁三郎
○前尾国務大臣 これは、もちろんコマシャル・べースに乗っていかなければなりません。ただ、非常に価格が高くても、どんどんほかの地域から買う、こういうわけには参りません。しかし、大体の趨勢としましては、綿花等につきましても、中近東なり、そういう方面から極力買うようにする。大豆等につきましても、中共から極力買うようにする。米につきましても、極力東南アジア、中共というようなところに切りかえていく、こういうことであります。ただ、非常に困ります点は、質が非常に違ったり、価格が非常に違ったりすることですが、これらの面は、極力アメリカ以外の地域の方々も十分お考えを願って、また政府といたしましても、極力協力をしていく、こういうことよりいたし方ない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/49
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050・永井勝次郎
○永井委員 重ねて伺うのですが、たとえば、アメリカから輸入するものは、主要原料です。これがなかったら、現在日本の産業が成り立たない。それを、東南アジアに切りかえていくと、こう簡単に言ったって、そうなかなかスムーズに切りかえることはできないでありましょうし、これらの輸入というものは、アメリカの経済援助に待つものが非常に多い。だから、切りかえるといえば、簡単なようでありますけれども、本腰を据えて切りかえるというためには、相当な腹をきめていかなければ、原料輸入の関係における切りかえということは、そう簡単にはいかないと思う。さらに、やり方のいかんによっては、台湾や韓国や、こういった地区のアメリカの勢力範囲における輸出の面においても、相当影響を受けるでありましょうし、また東南アジアその他における日本の現在の貿易は、アメリカの代替輸出というような、そういう質的な内容を持っておるものです。アメリカの支配から脱却して、ほんとうに自主的にやるというためには、全面的な貿易の面における相当の大きな抵抗が来ることを、覚悟しなければいけないと思います。またアメリカへ輸出するものが、ライターであるとか、あるいは真珠であるとか、ブラウスであるとか、こんな小さなももをどんなに集めても、なかなかバランスをとれるようにはいかない。そうすると、貿易全体の中でこれを切りかえていくというためには、相当に覚悟が要るわけでありまして、そういうことは、一通産大臣だけの考えでもできないと思うのですが、岸内閣は、そういうような大きな貿易面における革命的な方向をとってやっていくのだ、原料輸入その他については市場転換、アメリカから中共やソ連や、そういう東西貿易の分野にまで広く立ち向っていくのだというような覚悟をきめての御発言でありますか、あるいは、ただ頭で考えて、こういうことが望ましいというだけの希望的な観測で御答弁になっているのか、その決意のほどを、一つ承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/50
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051・前尾繁三郎
○前尾国務大臣 実は、そんなにむずかしい問題であるとは、私は考えておりません。と申しますのは、ただいま中共なりあるいはソ連なりその他の地域におきまして、実際に向うから輸入ができるというものは、そんな大きな量ではございません。アメリカにおきます輸出とのバランスから考えますと、そんなアメリカに大きな変動を起すほどのものではありません。これは十分話し合えば、向うもわかってくれるのでありますし、そんなに私は困難な問題だとは考えておりません。もちろん、将来にわたりまして、輸入する物が今後にできましたら、これは大きな変化も来るでありましょう。ただいま輸入できるという限度について考えますと、アメリカのバランスという点から考えれば、まだまだそんなに大きな問題だとは考えておりませんし、またわれわれといたしましても、十分それだけの決意は持ってお答えを申し上げておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/51
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052・永井勝次郎
○永井委員 大臣の答弁の限りでは、これは、やはりアメリカの植民地的従属という、そういう範囲内において、そうしてアメリカのごきげんを損じない限度においてやるというならば、対米貿易におけるところの自立なんというものは、これはできるものではありません。その程度の御答弁であれば、あえて大臣も、対米貿易の輸出入のバランスをとるという、こういう大きな課題で、そういうテーマを掲げて答弁するだけのものではない。要は、やはりアメリカの顔色を見ながら少しずつやっていくということでありまして、これは、時間がありませんから、これ以上申しませんが、その程度のことより、この内閣ではできないだろうと思うわけであります。その次に、今、貿易面において、出血輸出ということが、非常に問題に取り上げられている。過度の競争を押えなければならぬ、これが貿易振興のオールマイティーであるというような印象を与える発言が、どんどんなされておるのでありますが、この問題について、大臣はどのように理解されているか。それから、この問題に対する具体的な対処策、こういうものを伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/52
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053・前尾繁三郎
○前尾国務大臣 過当競争によります売り込みのため、価格が逆に下落をし、また日本の商品の価値をかえって害しているという事実は、何人も認めておられるところであります。従って、これに対しましては、従来からいろいろと努力をされてきたのであります。輸出入取引法その他の法律ができましたのも、みなそれに対する対処策としてやってきたのであります。ところで、率直に申し上げますと、もう少し政府が強力に言えばよかったじゃないかというようなことも、しばしば現在においてはいわれております。従って、輸出入取引法におきましても、協定の締結がない、あるいは協定されましても、内容についてどうかというようなものにつきましては、政府もいろいろ勧告権を持って勧告をすることができるというようなことにいたしまして——もっとも、一番強力にやりますのは、貿易管理令によって、将来も品目として取り上げればいいのでありますが、そこにいきます過程において、政府ももう少しこの過当競争についての指導のやりやすいようにということを、われわれ現在考えておるわけであります。また支店の設置等につきましても、御承知のように、必要な所には出たがらなくて、もうすでに出過ぎておるというようなところに、かえって出られるというような傾向もありますから、こういうような点も是正していきたいというふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/53
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054・永井勝次郎
○永井委員 そうすると、大臣のお考えは、出血輸出の問題、過度の競争を是正するということは行政措置でやる、それで十分目的は達せられる、こういうふうにお考えになっておられる、こういうふうに理解してよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/54
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055・前尾繁三郎
○前尾国務大臣 ただいま申し上げましたような勧告権とか、そういうものは、やはり法律の改正を要するわけでありまして、日ならずして皆さんの御審議をわずらわしたい、かように考えておるわけであります。なおまた、出血輸出というような問題につきましては、肥料につきまして最近起りましたのですが、今までは、特別な出血輸出というようなものは、あまりなかったように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/55
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056・永井勝次郎
○永井委員 大臣は、参議院の方で呼ばれているそうでありますから、それでは最後に一点だけお尋ねいたします。
一体、過度の競争、出血輸出の問題を、単に法律改正をして、それで行政権限でこれをチェックしていく、あるいは行政措置の運営でこれを押えていこう。そんななまやさしい問題かどうかということを、大臣は、もっと深刻に事態を見なければいけないと思います。この出血輸出の問題は、単に肥料の問題ばかりではなくて、ほんとうにライターから真珠から、ありとあらゆるものが出血輸出の状態であります。そうして、これらの出血輸出の問題は、どこにしわ寄せが来ているかといえば、大臣も御承知のように、ライターのごときは一個三十五、六円で作る。一個三十五、六円で作ったものが、アメリカへいってどのくらいに売られているかといえば、一個五ドル前後で売られている。もう何十倍というような価格で売られている。あるいはスカーフ関係だって、これは最初のうちは、加工賃は国内で一枚八十円でやつていたものが、現在では一ダースが六十五円というような、こんなひどい状態にどんどんなってきている。自分で自分の身を食うような形において出血輸出が行われている。たとえば、真珠の面においても、同様でありますが、もうあらゆるものが、国内の奴隷的賃金に押えられている。奴隷的賃金ばかりではなしに、スカーフのごときは、賃金を払わないで、経営者だけがわずかな差額の中で何とか生活するというような、深刻な状態で出血輸出をやっている。こういう問題を、単に貿易の窓口で、法律を作ってどうするのだ、行政措置でどうするのだというような、なまやさしいことで解決できるものではないと思う。ですから、貿易のいろいろな問題をほんとうに掘り下げて、正確な診断の上に立って措置をするというならば、もっと日本の国全体の経済政策、あるいは産業政策、こういう基本の問題に触れていかなければならない。アメリカでは、日本の物をたたいて買って、向うで十倍、二十倍という価格で売っているのでありますから、幅がないわけではありません。ですから、最低賃金をしいて、これ以下にはできないというような経済的機構を確立して、その中における貿易の上の行政措置、あるいはいろいろ技術面の問題が出ると思いますが、そういうことをするのでなければ、そういう問題をほったらかしておいて、ただ貿易面の窓口において出血輸出をどうする、過度の競争をどうすると、寝言のようなことを言っていては、問題の解決にはならぬと思いますが、この問題に対する大臣の考え方、決意を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/56
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057・前尾繁三郎
○前尾国務大臣 出口だけを問題にしたのでは意味のないことは、私も十分承知しております。家内産業等についても考えなければなりませんし、たとえば、最低賃金制というようなものをしきますゆえんも、従来、ともすれば輸出品が賃金にしわ寄せされ、しわ寄せができるから値を下げる、こういうぐるぐる回りになっております。これらにつきましては、できるだけ早く最低賃金制を作って、ダンピングをやらぬということを、はっきりさせていくことも、一つの問題だと思います。また、その他の国内のものにつきましても、輸出品だけで過当競争をやめるというわけには参りません。従って、われわれとしましても、さらに広げて、独占禁止法の問題にも触れていかなければならぬ、こういうふうに考えているのであります。これらにつきましても、せっかく審議会の答申もありましたので、今後研究をして御審議を願うというふうに考えているのであります。あらゆる面で、過当競争を排除することにつきましては、すでに御審議を得ました中小企業団体法というようなものにも、重要な役割をしてもらわなければなりません。それを怠っているのではありませんが、当座の直接の関係としまして、ただいま申し上げましたような措置を考えております。しかし、これはあくまで自主的にやってもらうことであり、自主的に、道義的にやってもらう、これが中心であることは、変らぬ原理だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/57
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058・永井勝次郎
○永井委員 それでは、次官にお尋ねいたしますが、大臣の今の答弁では、非常に上っつらなことだけしゃべって、何かからだの上をなでているだけで、内臓がどうなっているかわからないで答弁しているみたいで、非常に心もとなく思うのであります。
そこで、ジェトロは、予算が通って実行に移りますと、国内に出張所の増設を計画しているようでありますが、国内におけるジェトロの出張所は、どことどこに新設をされる計画であるか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/58
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059・松尾泰一郎
○松尾(泰)政府委員 今のところは、大体十個所ばかりの支部を持つ予定であります。東京を本部にしまして、大阪以下持つ。現在のところも、かなり広範囲に支部がありますが、北海道は今のところ、たしかなかったかと思いますので、そういう地域については新設いたしますし、また、今ありましても、名目的になっておるようなところにつきましては、もう少し強力なものにしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/59
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060・永井勝次郎
○永井委員 そうするとジェトロの出張所は、北海道は札幌だと思いますが、札幌に新設される、こう了承してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/60
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061・松尾泰一郎
○松尾(泰)政府委員 大体さように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/61
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062・永井勝次郎
○永井委員 それから業種別のいろいろな共同施設を持つようでありまして、合板について何か施設を用意されておるということでありますが、これはどういう状況になって、どういうふうな運びになるのか、伺いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/62
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063・松尾泰一郎
○松尾(泰)政府委員 合板につきましては、アメリカのサンフランシスコに、合板の輸出組合と共同で、共同施設を持つことにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/63
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064・永井勝次郎
○永井委員 この共同施設というのは、みんな海外に置くので、国内には置かないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/64
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065・松尾泰一郎
○松尾(泰)政府委員 国内にはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/65
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066・永井勝次郎
○永井委員 それでは、私、最後に政務次官に伺いますが、出血輸出を押えるためには、国内における零細企業を整理して、大口のメーカー、大口の商社でなければ、出血輸出はなかなかとまらない、こういうような考え方が主になって、そういう国内における零細企業、オモチャであるとか、あるいはライターであるとか、ブラウスであるとか、そういったいろいろなこまごました雑貨類があるわけでありますが、表面にはそういう色合いは出さないで、実際には今度のジェトロを強化することを機会に、出血輸出をチェックするというような旗じるしのもとに、中小企業の整理段階に順次入っていく方向をとるのではないか、こういうことが予見されるように思われるわけであります。もちろん、この分野だけでどうこうということはないのでありますけれども、たとえば、独禁法を改正するとか、貿易に限ってということで、いろいろの旗じるしのもとにそういう方向をとる。あるいは外国為替の関係の手続なんかを簡素化するというような名目のもとに、大企業でなければ、大商社でなければやれないような方法をとって、そうしてLCをどうするとか、こういうような方法をとるとか、貿易振興の一連の政策の方向、あるいは性格というものは、何か国内の中小企業を整理して、大企業へ集約していくという方向をとっておるように見えてならないのであります。御承知のようにさっき大臣にも伺ったのでありますが、ライターのごときは、ロンソン型のタイプのものが、国内では原価三十五円から三十八円に売って、これがアメリカに行って五ドル前後、安くても三ドルぐらいに売っておる。こういうようなひどい状態の出血輸出がなされておりますし、あるいはスカーフの関係から申しましても、十数倍になっておる。あるいは真珠の面においても、同様な状態になっておる。こういうような、国内において解決すれば解決できる、そうして中小企業が、零細な一つの企業の中で努力して国際市場を開拓しつつある、その開拓したものを横取りするような非情なやり方をするように見えてならないのでありますが、これに対して、一体一連の貿易振興の施策が、どういうふうな方向において今後改正され、あるいは行政措置を考えておるのか、この点を承わりたいわけであります。問題は、そんな貿易の出入口の問題だけではなくて、先ほども言いましたように、結局は、賃金を不払いにして、その国内の気の毒な、労働賃金をもらえない人を犠牲にしておいて、そうして出血輸出をする。こういう根本の問題を底入れすれば、問題は解決できる。あるいは金融の面をちょっとてこ入れすれば、できる。あるいは海外市場の状況を、めくら貿易じゃなしに、正確にジェトロなり何なりでやれば、そういうところのカバーはできる。こういうような、補強政策をとるというのでなくて、これだから、だめだから整理する、切り捨てる、こういう政策をとるように見えてならないわけであります。これに対して、政務次官の所見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/66
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067・小笠公韶
○小笠政府委員 非常にむずかしい問題でありまして、出血輸出対策につきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げたような次第でありますが、私は、今、とっておる輸出振興策というものが、いわゆる中小企業の犠牲において、輸出の振興をはかっていくというふうな感じを受けられるというふうなお話は、まことに意外なのでありまして、そういうことは、あってはならないと実は考えておるのであります。日本の輸出品を、商品別に見ますと、大きなプラント類、あるいはまた原材料というようなものを除きますと、中小企業製品が非常に多いことは、御承知の通りであります。この中小企業製品を海外へ出していくという場合に、大商社に偏重していくということは、絶対にいかぬのであります。昔からいわれておる通りに、中小企業製品は、専門商社によってのみ、最も能率的に輸出されるものと考えておるのでありまして、そういう意味におきまして、輸出業者といたしましても、中小の専門業者というものが非常に必要だ、こう考えておるのであります。そこで、御指摘になりました点で、たとえば為替政策の問題について、LCべースの緩和というふうな政策は、ともすれば大商社へ注文が来やすくなる、こういう御指摘は、そういう傾向があることは、私も率直にそう考えるのであります。そこで、中小企業の輸出業者が、これに耐え得るような体制を準備せずして、そういう方向に踏み切ることは、不適当だというふうに実は考えておるのであります。さらにまた、今度の貿易振興会の一つのねらいというものは、海外の市場調査、あるいは取引のあっせん、見本市の開催というようなことは、主として中小企業製品のいわゆるあっせん、あるいは輸出に関する調査というようなことでありまして、その主力が、ともすればめくら貿易の状態に置かれ、いわゆるバイヤーなるものに買いたたかれておった。日本の輸出品メーカーに知識を与え、あるいはこれを指導していく、ジェトロというものは、こういうところに重点を置いていかなければならぬと思うのであります。大商社は、御承知の通り、すでに海外に有能な支店を置き、有能な職員を配置しておりまして、十分に市場調査あるいは取引をなし得るのでありまして、そういう点からいたしましても、ジェトロの動きの方向は、当然にそういう方向に持って参らなければならぬと思うのであります。さらに、私は、先ほど永井先生からのお話で、日本の出血輸出の体制をやるのは、中小企業の製品に例をとってみますと、何といっても、賃金をだんだん切り下げていくというところに問題があるというようなお話がございました。私も、現状としてそういう向きがあることを、率直に認めます。そこで、この輸出振興、特に中小企業の手になる製品の輸出というものは、流通段階に入る前の生産体制において、これが健全な運営ができるような指導というものが、まず第一に行われなければならぬと思うのであります。そこに適正な経営ができるように指導するということは、輸出振り興の対策であると同時に、日本の中小企業対策の基本になると思います。それによって出てきたものを、先ほど申し上げましたような、その流れを一つはっきりさせていく、こういう形にすることによって、出血輸出というものが順次少くなってくる、こういうふうな考え方をいたしております。われわれといたしましては、何を申しましても、今日の状態からいいますと、中小企業製品が、出血輸出にならないように、こういう実質的な産業上の指導によって、初めて出血輸出がなくなるのでありまして、それをやらせるのに必要な立法措置というものが、考えられるのであります。その立法措置によって、すぐ効果が上るとは私も思っておりません。あくまでも、今申しました産業の培養というところにあると、実は考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/67
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068・永井勝次郎
○永井委員 今の答弁、問題の掘り下げ方が、まだまだ浅い。低賃金にしわ寄せするということを、率直に認めるとか認めないどころの騒ぎでなくて、これはひどい状態であるということを、お互いに認識して、普通の常識を越えた状態でありますから、これを根本的に、まず輸出振興の基礎をここから出発するというくらいにスタートを切らなければならないのです。たとえば、さっき申しましたように、スカーフの関係をいいましても、最初は一枚加工賃八十円であった、それが現在はどうかというと、一ダースが六十五円です。こんなひどい状態になっております。そうして、このしわ寄せばどうかというと、職工賃金の不払い、染料の不払い、こういうことになって、自分も倒れれば関連産業も倒れていく、こんな状態です。一枚八十円の加工賃であったものが、競争によって一ダース六十五円にまで切り下ってくる。これを何とか維持したいというのが、スカーフの状態です。この外貨の関係は、さっき言いました中小企業の面におきましても、ひどい状態です。金融の面でたたかれる、意匠の面でたたかれる、あるいはバイヤーの現金ぶっつけで適当にやられる、あるいは窓口において、貿易のいろいろな煩雑な手数にたたかれる、もう四方八方ひどい状態です。こんな状態の分析なしに、こういう事態を正確に認識しないで、貿易振興はジェトロだ、そこにジェトロの予算を食わせれば、それで貿易振興ができるというような甘っちょろい考えでは、問題は非常にうわずっている、天井向いているようなものであります。でありますから、少くも政務次官は、中小企業庁長官もやり、中小企業のためには努力をしている、その誠意は認めるのでありますが、善意だけでは問題は解決しないのでありまして、これに対する適切な対策というものが、具体的に立たなければならないわけであります。こういう点を一つ明確に、今後は、今言ったような方向をもっと掘り下げて、誠実にやっていただきたい。
それから貿易の面における商社が、中小商社がいいか悪いかという問題は、これはいろいろ問題があろうと思います。しかし、こういう輸出製品を作っている中小企業メーカーの必要性というものは、私は十分にあると思うのでありまして、そういう点に力を入れたらよろしいと思うわけであります。
それから、それをするために、独禁法どうこうというのでありますが、これはわれわれと、本質的なものの見方が全然違っておるのでありまして、こういう状態であればこそ、私は独禁法を強化して、大企業が、金の力によって、経済力によって中小企業を併呑していくということを阻止しなければならないということが必要でありまして、そういう一つの環境をちゃんと整備しておいて、その中で中小企業を育て上げていく、育成していくという助長政策が必要な段階だ、こう思うわけであります。これは、こういう違いが、自民党とわれわれとの違いだろうと思うわけですから、これ以上は申し上げません。あえて答弁も要りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/68
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069・田中武夫
○田中(武)委員 ただいまの永井委員の御質問に対する小笠次官の御答弁、これに関連して一問だけお伺いします。先ほど次官は、日本貿易振興会は、中小企業メーカーの製品の海外宣伝、バイヤーの情報あるいはそれらの見本市の開催、こういうことを世話する。すなわち、中小企業メーカー製品を重点に置いてやるのだ、こういった意味の御答弁があったと思います。だが、われわれは、きのう、実はこの中小企業メーカーといいますか、貿易品をやっておるこういった中小企業、零細企業の代表の人たちに来てもらって、意見を聞いたわけであります。ところが、このジェトロに対するこれらの人の意見は、今日までジェトロから何ら恩恵を受けていない、あるいはまた、ジェトロというものが何をしておるのか知らない、その存在すら知らないといったような意見が出ておりました。従って、今日まで、少くともジェトロは、中小企業のメーカー製品の海外輸出、あるいはこれらに対する貿易について、そう大きな役割をしたとか、あるいはそれらの助長をやったとかということは考えられない。そこで、次官が言われたように、今度の法律によって、ジェトロを特殊法人とする、こういうことですが、それでは、今までのジェトロと、今度法律によってできる日本貿易振興会とは、どのような関連を持たすのか、あるいは今、次官の御答弁のような方向に持っていくためには、今後どのような指導をするのか、そういう点をお伺いしたい。幾ら法律でやってみても、内容が変らなければ、あるいは人的構成その他の機構が変らなければ、かりに、次官それ自体はそう考えておられても、やはりやるところは、大企業の差別機関になってしまう、こうとしか私は考えられないわけであります。きのうの代表の意見の中にも、率直にいって、ジェトロの関係者というか、これらの人たちは、もとの農林省なり通産省のお役人上りの人ですから、われわれのような、手足まといになるような中小企業を相手にするよりか、大企業を相手にした方がいい、こういうお考えでやっておられるように思う、こういう意見が出ておったわけであります。こういう点について、今日までのジェトロの状態を、どう見ておられるか。あるいは、この法律がかりに通過した後の、今後の方針といいますか、指導、そういうようなことについて、どう考えておられるか。こういったような今までの悪弊、大企業中心であったものを、中小企業のサービス機関とするためには、どういうような心組みをもって臨もうとしておられるか、そういう点についてお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/69
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070・小笠公韶
○小笠政府委員 これまでのジェトロの活動に対する御批判の向きは、私も耳にいたしております。率直に言って、これまでのジェトロの活動が、外ばかりに目が向いておって、国内にあまり目が向いていなかったというふうなきらいがあると思います。もちろん、いろいろな事情からきておると思うのでありますが、その組織の構成、その他財政的な事情等から、思うように活動ができなかったという事情もあろうと思うのであります。これを、今回、特殊法人として、全額政府出資の政府機関にするゆえんのものは、ぜひとも日本の国の輸出振興事業というものを、総合的かつ能率的に行わせるためには、国が責任をとっていく。その場合に、日本の国の産業諸情勢から考えまして、中小企業というものの輸出をできるだけ促進していく、こういう方向のために、この貿易振興会ができる、こう思うのであります。そこで、これから、従来のような微弱な活動を、新しい組織によって、どういう方針で切りかえていくかというお尋ねでございましたが、先ほど永井委員からのお尋ねもあったようでございますが、国内における啓蒙、あっせん、指導という任務を、相当強めていく必要があると思うのでありまして、その意味から、今回、十カ所の支所といいますか、支部を作って、一つの方針のもとに進めていくということが、一つであろうと思うのであります。第二は、何と申しましても、特殊法人になることによって、組織の安定性が確保されますので、ここに働く人々の気持が安定して、輸出振興のために、強く努力ができるようになるであろう、こういうことを期待いたしておるのであります。さらに、海外に置きます支所というか、貿易斡旋事務所あるいは駐在員というような人々に対しましても、国の輸出振興の一定の方向のもとにこれを指導し、これに活動せしめる。事業の遂行に、国家の意思を盛り込んで、統一的にやらしていくということが、今回は非常に強く打ち出せると思うのであります。私は、今日の日本の輸出の状況から見まして、これらを背景として、主として中小企業製品の伸展に、このジェトロが一役買っていくように運営さしていく、こういうふうな考え方をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/70
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071・田中武夫
○田中(武)委員 ただいまの御答弁で、政府機関となれば、今後の指導あるいは組織の面が安定する。そういうことはわかります。問題は、やはりそういうことよりか、やはり人だと思うのです。まず、そこの人の持つ考え方、センスだと思うのです。そういう点において、今日までのジェトロの、何といいますか、どういう人たちだか知りませんが、幹部の人たち、そういう人をそのままに置いておくのか。それとも、政府機関になった場合には、どういう人をもってそういった指導的な地位につけるのか、それについての構想をお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/71
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072・小笠公韶
○小笠政府委員 今度の新組織の人事につきましては、最終的にまだ決定をいたしておりません。でありますかつら、どういうふうな人をこの役員、特に代表者につけていくかという問題につきましては、まだはっきりしておらぬのでありますが、私は、先ほど申し上げましたように、この組織に課された任務が非常に大きいということと、特に国際的な視野と同時に、国内産業の実態を理解した指導者を得ることが、どうしても必要だと考えるのであります。そういう人によって、初めてこの組織の活動というものが予期された方向に進み得る、こういうふうな考え方で、ぜひとも大臣とも御相談して、人選を進めていく方向に持っていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/72
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073・田中武夫
○田中(武)委員 今までの人は、どうするのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/73
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074・小笠公韶
○小笠政府委員 現在の組織に働いておる人々、その役員に列しておる人々をどうするかということについては、まだどういうふうにも考えておりません。ただ事務に従事しておる職員につきましては、引き続いてその職務にとどまってもらうという方向にいくべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/74
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075・小平久雄
○小平委員長 加藤君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/75
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076・加藤清二
○加藤(清)委員 私は、簡単に特定物資の一部について御質問いたしますので、答弁者は、要点をかいつまんでお答え願いたい。
第一点は、通産省は、一年前、二年前に提出された書類、約束された書類というものについて、それと変った、あるいは反対の考え方を持たれた場合に、その対象に対して、無警告ないしは相談なしで変更されることがあり得ますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/76
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077・小笠公韶
○小笠政府委員 非常にむずかしい包括的なお尋ねでありまして、お答えがしにくいのでありますが、行政のやり方といたしましては、そのときどきの情勢を十分勘案して、一つの理想あるいは計画をもって進めるのが普通でございます。従いまして、その当時から時間が経過したときに、変った手を打つということは、当然あり得るのであります。そのときに、国会に一々御連絡するか、しないかというお尋ねの要旨のように考えられるのでありますが、事の内容に関しましては、いろいろ事前に御連絡申し上げるということもいたしますし、事の急なもの、軽微なものにつきましては、そのときどきの情勢によって措置することが多いと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/77
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078・加藤清二
○加藤(清)委員 韓国ノリの輸入の問題でございますが、これについて、御承知の通り通産省の昭和三十一年四月十七日付の委員会に提出された書類によれば、ノリの生産期には輸入しない、こういうことが明記されているわけでございますが、ほのかに聞くところによりますと、四月、きめられた、約束された日以前に、通関を許すとか聞いておりますが、それはうそですか、ほんとうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/78
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079・小笠公韶
○小笠政府委員 前に提出いたしました韓国ノリ輸入に関する書類につきまして、私は承知いたしておりませんが、原則として、十一月から翌年の三月一ぱいまでは、日本の生産期でございます。その間に韓国からノリを輸入しないという建前にいたしておるのであります。今回、問題になりましたのは、この原則に対して、特殊の事情が出て参りまして、少くとも韓国との関係において、いわゆる決済を了する、韓国に対する関係においては輸入をする、こういう措置をとることが、わが国として適当であろう。ただ、国内販売は、国内の生産業者に対する圧迫を来たすような販売はさせない、こういうような趣旨の措置をとることにいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/79
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080・加藤清二
○加藤(清)委員 そうすると、通関は許されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/80
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081・小笠公韶
○小笠政府委員 税関上屋からの引き取りは、認めない予定であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/81
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082・加藤清二
○加藤(清)委員 私の聞いているのは、約束の文書を破って、そういうここを通産省が行われるかどうかということを聞いている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/82
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083・小笠公韶
○小笠政府委員 お約束申し上げました文書につきましては、先ほど申し上げましたように、どういう文書になっておるか、つまびらかにいたしませんが、今、申し上げましたような事情で、特に韓国とのいろいろの外交事情等も考えますと、この際、韓国に決済をすみやかにした方がいい、こういう考え方をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/83
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084・加藤清二
○加藤(清)委員 保税倉庫に荷が入ったままで決済は成り立つと、大蔵省の税関部は申しております。これについて、通産省はどのようにお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/84
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085・小笠公韶
○小笠政府委員 保税倉庫に荷物があるということは、あるままで決済ができるというためには一応LCの輸入許可といいますか、為替許可の延長をいたしまして、決済が可能なような事務的手続をとらなければいかぬと考えまして、そういうふうにいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/85
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086・加藤清二
○加藤(清)委員 韓国との関係とおっしゃいますが、決済が済みさえすれば、韓国との問題は片づくはずです。にもかかわりませず、前に通産省から出された通達、それをも破り、そして、あえてこの際、韓国ノリに対して、保税倉庫から出すことを許されなければならぬという理由が、私にはわからない。先般の質問によれば、生産が不足しておるという理由だった。きょうになれば韓国だと、こうおっしゃいますが、韓国の方は、決済が成り立てば、それで事は足りるわけなんです。荷物はとっくに来ておるのです。それを、あえて日本のノリ業者の生産時期をねらって出さなければならないという理由は、私には納得できない。納得のできるように御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/86
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087・小笠公韶
○小笠政府委員 私は、現在の保税倉庫からの庫出しは、四月まで認めない、こういうことを申し上げておるのであります発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/87
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088・加藤清二
○加藤(清)委員 ところが、先般、御承知でございましょうが、東和商事事件というのがあった。この折りも、同じ答弁が行われておった。ところが夜な夜なこれが外へ飛び出しました。何でこんなものが夜な夜な飛び出したかと聞いてみますと、あれはやみ輸入で入れたので、ぬれておった。おてんとさまに、さらさなければいけなかった。だから、倉庫から出した。それが、いつの間にか足がはえて、日本橋の山本屋の店に出たのだ、こういうことであった。保税倉庫から通関を許したということに相成りますと、これはもう当然のことながら、これが足がはえて出るという実例が、つい最近にある。そのおかげで、御承知でございましょうが、ノリ生産業者は六億五千万の欠損をした。先般の予算委員会の質問においては、ノリが高くなっているからだという理由もおっしゃいました。いや、それをすれば安くなるからだ、一般市民が、安いノリを食えるようになるからだという理由もおっしゃいました。しかし、保税倉庫から出たゆえに、一般小売価格が安くなったというためしは、聞いたことはない。結局は、韓国ノリが入った、入った、許された、許されたという声が問屋の方に響き、問屋の方が、生産業者に向って買いたたきをするところの原因になっただけのことだ。そのために、全国のノリ業者は、全国大会も行いました。またぞろ一部の権利を自由に動かすことのできる方々のおかげで、六億も七億も欠損されては、たまったものでないということで、全国から毎日のようにこの陳情が参っているわけでございますが、そういう生産業者の陳情も、あえて踏みにじって、これを許されようとするところの意思が、私にはわからない。一体、原因は那辺にあるのか、お尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/88
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089・小笠公韶
○小笠政府委員 先ほど申し上げましたように、十一月から翌年三月一ぱいまでの国内生産時期に、物を出さないというのを原則といたしておることは、先ほど申し上げた通りであります。私は、予算委員会の分科会でのお尋ねのとき申し上げましたように、今年度において特殊な措置をとらなければならない理由としては、韓国との外交関係が一つ。ことしは暖冬異変である、そのために、生産量が予想よりも相当下回った作柄になった、価格は従って上ってきた、こういう状態にあるので、九月ごろから一応為替許可をして、値段のため話がつかなくて、延び延びになっている一億枚について、為替の期限の延長を認めるということが、対外的にも国内的にも適当ではないか、こういうような考え方をいたしておったのであります。でありますが、その後いろいろな生産業者の御事情もあり、もうわずかの期間でありますので、一応韓国との関係において決済をさせる、そうして外交関係の問題に、少しでもいい空気を作りたい。だが、荷物は、現在の保税倉庫から、三月一ぱいは出さない、こういうようにいたすことによって問題を解決していきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/89
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090・加藤清二
○加藤(清)委員 だから、私は先ほどからお尋ねしているのです。大蔵省の税関部においては、保税倉庫に荷が入ったままで取引が可能であると言っている。韓国、韓国と盛んにおっしゃいますが、韓国の問題は、代金決済をしさえすれば、これで可能なんだ、両方でこれで済むわけです。何がゆえにそういうことをおっしゃるのか、まだ意味がわからない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/90
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091・小笠公韶
○小笠政府委員 通関といいますか、輸入手続のこまかい問題になるようでありますが、先ほど申し上げました大ざっぱな考え方で措置いたしたのであります。輸入をするには、いわゆる担保金を積んでおくとか、いろいろな措置があることは、御承知の通りでありますから、できるだけ原価をより安くしていく、こういうような考え方をして、一応輸入の手続を完了さした方がいい、こういうふうな考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/91
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092・加藤清二
○加藤(清)委員 本件に関しては、ただ韓国との国際関係という美名に隠れて、委員会の決議を無視され、しかもその決議に対する通産省みずからになるところの答弁書、約束書なるものをまた踏み破って、延び延びになっても、もうあと二十日か二十五日たてば約束通りいけるのだ。それがしんぼうし切れぬ、それを、何がゆえに今許さなければならないのか。どこに問題があるか。しかも、本件に関しては、大蔵省は、このままでいけると言うておる。農林省は、反対だと言うておる。農林委員会も、反対だと言うておる。これは、与党も野党も、こぞって有志が、このことについては、るる申し入れをしている。にもかかわりませず、それをあえてしなければならないということになりますと、私どもは、この中に包含されているところの復権の問題についても、触れてみなければならないことに相なってくる。一体この外貨割当は、正式なものではありますけれども、この中に、正式以外の、韓国の焦げつき債権の復権というものがここに行われておる。それが、前の通産省の通告書によれば、それはもう認めないようにいたします、そういう悪いことをした者については、半減もしますというふうに、全部ここに約束が書いてある。にもかかわらず、またぞろ復権されてきておる。もしそれ、そういうことが許されるとするならば——焦げつき債権なるがゆえに復権が認められるというならば、私は、先般樋詰君の折りにも言うたことがあるが、それでは、なぜノリ以外のものも認めないか、拿捕された船以外のものも認めないかと言いたくなる。韓国に対する焦げつき債権のおかげで、名古屋地区、愛知県地区のみならず、関西地区においては、あのフフノ旋風が吹き、大きな商社がばたばたといかれていった。どうしてそれを許さないか。しかも、これは輸入有効期限が切れてしまっている。輸入有効期限が切れたものに対して、復権を許すというようなことが、ほかに間々ありますか。かって、私は、こういう問題で言ったことがあるが、ノリ以外の問題で絶対に許さないということだった。それも、天変地異があれば別だ。地震があったとか、台風があって船が沈んだというなら、これは別だ。しかし、そういうことはないはずだ。これは、すでに九月以前にスムーズにいっておれば、できたものを、それを八十セントというものを四十セント、四十セントでたたいて、ここへ引っぱってきたのだ。何もそのしわ寄せを生産者がこうむらなければならないという理由は、どこにもない。あえて値段の点で韓国とたたき合って、そうしてここまで引っぱってきた。つまり、ノリの生産時期を見越して引っぱってきた。ほんとうに韓国問題、国際問題が大事だというならば、何がゆえに八十セントのものを四十セント、四十セントと言うて、半年の余引き延ばしておかなければならないのだろうか。そこだ、きのう参議院において、森委員が岸総理に対して、この問題について、汚職のにおいがふんぷんとしておるが、本件に関して、総理大臣は一体どのように考えるかという質問に対して、ごもっともな御意見でございます、私も全く同感でございます、そのように善処しますと、こう答えておられるわけでございます。そこで、お尋ねいたしますが、総理大臣も、なるほど事情をいろいろつまびらかに調べてみると、いろいろな問題がある、しかも、もうあと残された二十日か二十五日くらい延ばすといったところが、何も問題がない。早く決裁してほしいといえば、大蔵省はこのままで許すと言うておるのです。やれると言うておるのだから、韓国問題は、これで解決ができるはずです。こういう間に立って、通産省としては、どのような態度に出られますか。その態度いかんによっては、追って質問もいたしますし、別な具体的対策を、われわれも講じなければならぬことに相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/92
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093・小笠公韶
○小笠政府委員 私どもは、この問題が起りましたときに、政府部内の関係部局とは、連絡をとってこれを措置して参ったのであります。いろいろやり方についての意見の相違はあるかもしれませんが、私どもといたしましては、生産業者の立場も考えなければなりませんが、同時に、消費者、またこれを仕事の材料にする人々の立場も考えなければなりません。ことに、政治は最大公約数的な考え方をとらざを得ないところがあると私は思うのでありまして、そういうふうな考え方のもとに、関係者とも打ち合せの上、先ほど申し上げましたような措置をとることにいたしたのでありまして、全く純粋にこれを処理いたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/93
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094・加藤清二
○加藤(清)委員 それは小笠次官は純粋でしょう。私はそれを信じておる。また松尾通商局長も、私はりっぱな人だと信じておる。りっぱな人だと信ずればこそ、私はこういうことを申し上げる。本件に関しては、過去において、何べんも何べんも問題になった。しかも、汚職のにおいがふんぷんとしておる。これは私の意見じゃなくして、ノリにかかわるものであれば、全部知っておることです。消費者のことを考えてと、あえてあなたはおっしゃいました。まことにりっぱです。小笠次官なら、そうお考えになるでしょう。私も、消費者のことを考えておる。しかしながら、韓国ノリが今入ったからといって、それじゃ果して東京のノリの小売り相場が下りますか。どのくらい下りましたか、下ったためしが過去にあったら聞きたい。これは何に使われるかというと、ノリ生産業者が供出するときに、たたかれる材料に使われておっただけです。もっと具体的にいえば、このノリが、消費者に対して、これは韓国ノリでありますというて売られたためしがありますか。ここに大ぜいさん、いらっしゃいますが、これは韓国ノリでございますというて、食べた人が一人でもおりますか、みな日本ノリに化けて出る。さすれば、消費者にとっては迷惑しごくだ。しかも、生産数量は、年々歳々上昇しておる。ことしは腐れだとか、あるいは油だとかで、なるほど初期においては少々生産が低下した。従って、寒中にとれるところのノリは、やや生産が落ちた。従って、極上物については、市販が上っていることは事実でございます。しかしながら、標準物につ
いては、その後どんどん出るようになった。しかも、生産技術がすっかり変ってきた。従って、ノリは年々歳々生産が上昇しておる。そういうやさきに、何がゆえにこれを入れなければならないのか、私には解せない。そこで岸総理までが、ごもっともだ、そのように善処しますと、こう言うておられるのでございますから、消費者のためを思い、生産業者のこともあえて考えておっていただきます次官、大臣とよく相談していただいて、ほんとうに賢明な措置に出ていただきたい。もちろん、韓国の問題については、私どもも、国際関係が円満にいくことを希望する点においては、人後に落ちないし、常々この問題は、韓国との間において、向うの言い値の八十セント、こちらの問屋側の言うところの四十セントが食い違って、だんだんと商談が成立せずに引き延ばされてきた、そのことについてさえも、われわれはにがにがしく考えている。そういうわけでございますので、一つぜひこの点御善処願いたい。
本件に関しては、もう本会開会のベルが鳴っておりますので、ここで留保をいたしまして、いずれ次の機会にこの後段をやります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/94
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095・小平久雄
○小平委員長 本日はこの程度にとどめます。
次会は来たる十一日午前十時十五分より開会する予定であります。
これにて散会いたします。
午後一時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804461X01419580306/95
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