1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年四月二日(水曜日)
午前十時五十七分開議
出席委員
委員長 福永 健司君
理事 相川 勝六君 理事 高橋 等君
理事 保科善四郎君 理事 前田 正男君
理事 山本 正一君 理事 石橋 政嗣君
理事 受田 新吉君
大坪 保雄君 大村 清一君
北 れい吉君 小金 義照君
纐纈 彌三君 辻 政信君
中川 俊思君 永山 忠則君
眞崎 勝次君 茜ケ久保重光君
淡谷 悠藏君 稻村 隆一君
木原津與志君 西村 力弥君
出席政府委員
総理府総務長官 今松 治郎君
総理府事務官
(恩給局長) 八巻淳之輔君
委員外の出席者
厚生事務官
(保険局次長) 小山進次郎君
専 門 員 安倍 三郎君
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四月二日
委員武藤運十郎君及び阿部五郎君辞任につき、
その補欠として片山哲君及び木原津與志君が議
長の指名で委員に選任された。
四月一日
石炭手当及び寒冷地手当増額に関する陳情書
(第七六四号)
老齢者の軍人恩給増額制限撤廃に関する陳情書
(第七六五号)
戦没者遺族の公務扶助料増額等に関する陳情書
(第七六六
号)
旧軍人の恩給加算制復元に関する陳情書外二件
(
第七六七号)
金鵄勲章年金復活に関する陳情書外十二件
(第七七一号)
建国記念日制定に関する陳情書外二十一件
(第七七二号)
同外十七件
(第八二二号)
文部省保健体育局設置に関する陳情書
(第
八〇五号)
定員外職員の全員定員化に関する陳情書外一件
(第八一七号)
英連邦軍関係労務者に対し特別給付金支給に関
する陳情書
(第八二三号)
法制審査機関の改善に関する陳情書
(第八四五号)
駐留軍労務者の基地内職業補導費の予算措置に
関する陳情書
(第八四八号)
旧軍人の恩給加算制復元等に関する陳情書外四
件
(第八六六号)
北陸地方建設局設置に関する陳情書
(第八九四号)
を本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出第
九四号)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/0
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001・福永健司
○福永委員長 これより会議を開きます。
恩給法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。稻村隆一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/1
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002・稻村隆一
○稻村委員 私は軍人恩給に対する基本的な問題について、政府の御所見をただしたいと思います。私どもは決して旧軍人の生活を救済することに反対するものじゃないのです。それからまた恩給制度は一般の国民年金制度から区別さるべきものであるというふうにも考えております。しかし、今社会の変革によってなくなったところの旧軍人階級を現に存続さして、一般公務員と同じような範疇のもとにおいて恩給を給付することは、理論上明瞭に誤まりだと思っております。これはやはり軍人恩給だけは一般の公務員の恩給制度と切り離して、国民年金制度の中に加えるべきものであると私は思っておりますが、それに対する政府の御見解を総務長官から承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/2
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003・今松治郎
○今松政府委員 旧軍人恩給の問題に関する御質問でありますが、昭和二十八年に旧軍人恩給が、従前の軍人恩給と変った観点から復活したのでありますが、この軍人恩給を国民年金に溶け込ます、こういうような点に関する御質問のようであります。国民年金がどういう形で発足いたしますか、まだきまってない状況でありますので、国民年金と旧軍人恩給との関係をどうするというようなことを、ただいま申し上げる段階でないと思いますので、国民年金の問題と一般の軍人恩給の問題に何か将来調整を必要とするような問題がありましたならば、そのときに一つ検討していきたい、こういうように現在としては考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/3
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004・稻村隆一
○稻村委員 私は原則的な問題を聞いているのですよ。個々のせんさくは原則的な問題がきまらなければできるはずはないのです。この前岸総理も本会議におけるわが党の質問に答えて、軍人恩給は将来国民年金制度に加えてもよろしい、こういうことを答弁されておるのであります。あなたの考えはどうですか、原則的なことを聞いているんですよ。ただそういう国民年金制度がどうなるかわからぬから言えないというふうなことは、これは言いのがれだと思うのですが、原則的な問題ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/4
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005・今松治郎
○今松政府委員 ただいまの軍人恩給の問題は、国家が補償の立場におきまして恩給を給与しておるような次第でございまして、一般社会保障的の意味の国民年金とはその出発点を異にしておるのでございます。従ってこの問題を統合して一つにするということは、私の考え方としてはちょっと困難である、こういうように考ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/5
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006・稻村隆一
○稻村委員 それは全然間違っておると思うんだ。ちょうど明治維新のときに武士階級に恩給を払うのと同じなんです。滅びた階級に——現に存続している、国家の仕事をしている者に対して、国家は当然恩給を払うべきであるが、滅びた武士に対して明治維新に恩給を払ったか、あれだけ恩給を充実した明治政府において、官僚国家において。滅びた軍人に対して恩給を払うということは理論上間違っているんだ。これは救済しなければいかぬけれども、救済するにはほかの方法で救済したらよろしい。それには国民年金制に加えて、そしていろいろな点を考慮して軍人の生活を救済する。理論上間違っていますよ、あなたの考え方は岸さんと違うようですね。根本的に間違っておる、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/6
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007・今松治郎
○今松政府委員 お説でございますが、私どもの考えといたしましては、軍人恩給というものは国家補償の立場に立って国家が給しておるものでありまして、生活が苦しいというようなものに対しまする社会保障の観念とは全然別個のものである、こういう考えをいたしております。従いましてただいまの稲村さんの御趣旨とはちょっと異っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/7
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008・稻村隆一
○稻村委員 あなたは岸さんと全然考え方が違うですな。岸さんは一般国民年金の中に軍人恩給は将来加えることを考慮してもよろしいということを本会議ではっきり答弁しておられる。全然あなたと考えが違いますよ。滅びた階級に、今ない軍人に対して恩給を払うということは、これは実際的に、理論的に間違っているのです。救済する方法は他に幾らでもあるのです。岸さんの考えとは全然違うのですか。岸さんははっきりそれを言っているのです。あなたはそういう考えはないと言う。政府部内でおかしいじゃないですか。そういう問題を担当するあなたがそういう考えがないというのはどうもおかしいじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/8
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009・今松治郎
○今松政府委員 岸総理が国民年金に軍人恩給を溶け込ますというような御答弁があったというお話でございますが、私はそうではないのじゃないかと思っております。一応速記録を拝見してまた申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/9
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010・稻村隆一
○稻村委員 速記録を調べたあとで、御質問することにいたします。
日本の年金制度は百五十万人の官吏と百五十万人の旧軍人、それに百万の公務員その他の共済制度、一千万人の厚生年金保険制度。そういたしますと、現在こうした恩給もしくは厚生年金保険制度並びに共済組合によって恩恵を受けている者は家族を合せて四千五百万人がその対象になるわけです。ところが九千万の国民の中の残りの半数である四千五百万人、こういう人々は老齢及び死亡に対してはわれわれ国会議員もそうですが、何らの保護も加えられていない。こういうことは憲法にうたわれた福祉国家の何たるかも理解しない、文明国家としては私は非常な恥辱だと思うのです。封建時代は武士だけが生活を保障されておった。それから明治以後は官吏だけが生活を保障されておったわけであります。こういうふうな考え方が封建時代や明治時代の感覚なんです。総務長官の考え方も、先ほどの答弁でやはりそういう古い考え方に支配されているような気が私はするんです。私はその点総務長官並びに厚生省の方にお伺いするんですが、政府は国民年金制度に対してどのような案を持っておられるか。もうすぐ実施しようとして現在社会保障制度審議会にもかけておられるが、政府としてはどのような具体案を持っておられるか、大体のことを私はお聞かせ願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/10
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011・小山進次郎
○小山説明員 ただいま稻村先生が仰せられました国民年金問題についての現在の進行状況でございますが、お話のように、現在厚生年金とかあるいは各種の年金制度の適用を受けておらない者が、おあげになりましたように、非常に多いわけでございますので、これらの人々に対して早急に年金制度を及ぼしていこう、こういうような考え方のもとに、昨年政府におきましては内閣に設けられておりまするところの社会保障制度審議会に対しまして、どういうような方法で年金制度を施行したらよろしいであろうかということを御諮問申し上げておるわけでございます。
当時の状況といたしましては、各国の例もそうでございますけれども、この種の年金制度の創設ということは容易ならぬ大問題でございまするので、少くとも一年半か二年は結論を出すのにかかるであろう、こういったような見込みのもとに御審議をお始めになったわけでありますが、その後年金制度の早急な実現を要望いたしまする声が非常に強くございましたので、政府におきましても、そのような事情を審議会に対しまして再三にわたって申し上げました結果、審議の速度を急速に早めていただきまして、五月の半ばごろまでには一応中間的な結論をお示し願うというような段階まで、現在運んでいるのでございます。
審議の大筋を申し上げますと、将来の最終的な姿をどうするかという議論に入りまする前に、ただいまおあげになりましたところの、現在年金制度の適用の外に置かれている人々に対して、年金制度をどういう形で適用していくかということについて、まず第一次的な地固めをしてみる。それが固まりました後におきまして、厚生年金その他の年金制度を含めてどのように調整するか、あるいはそのような制度を全部取り込んで一本の制度にするか、この点を次の段階の問題にする、こういうようなことで、現在は未適用の人々に対して年金をどのようにするかということを御研究願っておるのであります。
発表されております案の概略を申し上げますと、農民とかあるいは中小の企業主あるいは零細企業の従業員といったような人々、およそ一千五百万前後を対象にいたしまして、年金制度を考えていく。その場合に一つの問題点は年金年令と申しまして、何才になったならば年金の支給をするかということが一つの大きな問題になるのでございますが、この点について、現在論議されております案によりますと、一応六十五才ということをめどに置いて論議をいたしております。御承知のように、現在日本にあります年金の年令は現存するものはすべてこれより低うございます。一番高い厚生年金におきましても六十才になっておるのでありますけれども、自営業者等を考慮の中に置きます場合には、この六十才の年令というものがやや低きに過ぎはしないだろうか、これは財源ともからみ合っておることでざいますけれども、一応そういうことで六十五才ということをめどにして考えておるようでございます。しかしこれについてはさらに引き下げができないかということが目下論議をされているわけでございます。
第二の問題点といたしましては、一体どの程度の年金を出すことができるか、この問題でございますが、これにつきましてはいろいろの条件がございまして、ただいま論議されておりまする案によりますと、三十才から毎月百円の醵出をいたしまして、年金年令に達した場合には毎月三千五百円の年金の支給を受け得るようにする。しかし過渡的には一挙にそこへ持っていくわけには参りませんので、二千円から始めまして、経済の成長率とにらみ合せまして、逐次支給額を高めていき、完全な姿になった場合には三千五百円まで持っていくということが、年金の額及び醵出の保険料については論議をされておるわけでございまして、この三つの問題を中心にいたしまして、未適用の人々に対する年金を一応考えてみる。しかし現在すでに相当の年令に達しております人々にはこのような醵出をもとにした年金制度では、その実益が及ばないということになりますので、こういうちょうど過渡期にあります人々の解決のためには、これと別建ての無醵出の年金というものを考えてみよう、その場合は醵出と違いますので、一応年令を七十才と押えまして、毎月の支給額を千円にする、こういうような案にいたしておりますが、この金額では低過ぎるという意見と、七十才という年令が低きに過ぎるという意見と、これでは高きに過ぎるという意見と両方あって、これを議論している。要するにただいま申し上げました醵出制のほかに、無醵出制もしくは無醵出という形をとりませんでも、これは年金の方では整理資源という言葉で現わしておりますけれども、醵出料を完全に積み立てなくとも醵出が受けられるというような意味での、無醵出に近い、何らかの補充的な道は考えていこう、これが第二の大きな問題点でございます。
第三の問題といたしましては、お話のように、老令のほかに廃疾というようなことで、生活に苦しむという場合が現実の問題としてあり得るし、また家の働き手でありますところの夫を失って、小さい子供をかかえるというような事情のために困っておりまする、いわゆる母子世帯というものが現在非常に多くあるわけでありますが、こういう人々に対するものとして、母子年金なりあるいは身体障害者の年金というものを考えていく必要があるだろう。この場合はどうしてもこれは事の性質上無醵出に近い内容のものにならざるを得ないだろう。こういったような、きわめて荒筋を申し上げたわけでありますが、そういったことを中心にして、目下社会保障制度審議会では慎重に、しかも五月の中旬ごろまでには何とか中間的な結論を出そうということで、御論議をしていただいている次第でございます。従いまして政府といたしましては、この中間的な御答申をいただきましたならば、すぐにそれに応じまして、これを実際に実施する場合のいろいろな手段あるいは問題についてさらに消化をいたしまして、一日も早い実施を期したい、こういうことで目下準備をいたしているというような段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/11
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012・稻村隆一
○稻村委員 私は、非常にけっこうなことだと思います。一日も早くそういったことを具体的に一つ促進していただきたいと思うのですが、私は念のためにお伺いしたいのですけれども、現在日本では老人世帯は幾らあるのでしょうか、それから母子世帯の数、これをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/12
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013・小山進次郎
○小山説明員 老人につきましては六十才以上を老人と考えますと、現在わが国には七百二十万程度の老人がおります。これは男女を含めての数字でございます。それから六十五才以上を考えますと、四百七十万程度になります。この老人の数は、すでに御承知の通り逐年割合を増しつつあるという状況でございます。
それから母子世帯の数では、現在世帯数で申しますと百五万程度あります。これは十八才未満の子供をかかえております母子の世帯でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/13
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014・稻村隆一
○稻村委員 そのうち生活保護を受けている者はどのくらいですか、老人、母子の全体の何分の一くらいか、それをお聞かせ願いたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/14
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015・小山進次郎
○小山説明員 老人の世帯と申しますと、これはただいま申し上げました六五才以上の数をもとにしての場合でございますが、総数の一八%程度の世帯が生活保護を受けております。母子世帯は一五%程度が生活保護の適用を受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/15
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016・稻村隆一
○稻村委員 これは私どもしょっちゅう陳情を受けて実にかわいそうな実情にあるわけです。たとえば親類なんかでも、多少の縁故がありますると、そこに無理に引き取れというようなことを言うて援助しない、こういうふうなことがずいぶん行われている。残酷なものも私は見ておるわけであります。親子なら別ですけれども、親子でも今非常に生活が困るからなかなか問題があるのです。特に最近の肉親の争いというものは道徳が頽廃したとか何とか申しますけれども、実際は日本国民全体が貧乏になった、こういうことが肉親の争いになっているのです。親子ならまだしもですけれども、多少の肉親に対しても、地方ではそれを押しつけて生活保護というものをなるべく少くするというようなことがずいぶん行われているわけです。それが非常に悲惨なことになり、それが非常な刑事問題を生んだり、自殺者を出したりしているわけなんです。こういうことは非常な重大な社会問題なので、私は政治とか何とかいうけれども、こういう点を最も重大に考えて解決するのが政治じゃないかと思うし、また政府の仕事じゃないかと思うのですが、それがきわめて冷淡に扱われておるわけです。そういうことを冷淡に扱っておって、人道主義を幾ら言ったところで、あるいは道徳をとやかく言ってもだめなんです。今日の道徳頽廃というものは実に生活のみじめさにあることは明瞭であります。そういう点からいって、少しちょっとした考えを持てば、こうした悲惨なことを多少でも緩和する手段は現在の財政状態においても可能だと思っておるのです。扶助金をわずか一割引き上げても、被保護世帯の総数というものは現在の六倍となると私は思うのですが、そういう点に対して厚生省の見解を一つお聞きしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/16
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017・小山進次郎
○小山説明員 この問題は先生御指摘のように非常に深刻な問題でございまして、生活保護の適用の場合に、民法上の扶養と申しますか、そういう広い意味での扶養というものをどの程度当てにしていくかということが、実は生活保護の運用における一つの大きな問題点でございます。この問題は、実は運用上の問題として論議をいたします前に、制度この立て方においてどのような関係づけをするかということが一つの大きな問題であります。諸外国の例を見ますと、このような公けの扶助を適用する場合に、当てにいたしまする扶養の程度については民法でいいまするところの最も狭い意味での扶養、つまり親子と夫婦の扶養だけはこのような公けの扶助に優先しなくちゃいかぬ、しかしそれ以外の扶養は優先させないという制度の立て方をいたしておりまする国と、それから現在わが国がやっておりまするようにもっと広い意味での扶養、従って民法上にいいますところの生活保持の義務といわれるところの範囲のものは当然優先させまするし、さらにこれと準ずるような関係にあるものは同様に優先させる。そのように周囲からの援助はすべて当て込んだ上で、及ばないところだけを国の扶助で問題を解決する、こういうふうな建前をとっているものに二つの型があるのであります。どちらかと申しますと、世界の大勢としては逐次あとから申し上げました型から、前に申し上げました型に移りつつある、こういうような状況でございます。万、日本の現状といたしましては、申し上げるまでもなく非常に強い家族制度がありましたので、そういう条件のもとにおきましては当然広い意味の扶養を公けの扶助に優先させるという建前が運用上においても実情に適しておったわけでありますが、戦後の実情から見ますと、そのような建前を貫いていくということにかなり無理ができてきている。そういう無理のできてきている幾つかの事例が、おあげになったような形で現われている、こういうことになるわけでございまして、ちょうど現在転換期にあるわけでございます。運用上の問題としては、実はそういうことを十分に考慮の中に置きつつ、建前としてはできるだけ広い範囲の扶養を期待するけれども、しかしぎりぎりのところ、強行手段をもってもやり得るというものはやはり民法上でいっておりますところの生活維持の義務に該当する範囲にとどめるべきであろう、それ以外のところは話し合いによって解決していくという態度でなくてはなるまい、こういうことで臨んでいるわけでありますが、事が何分にもそういう性質の問題でありますので、最初の三月なり半年の間は約束しておった通りに親戚縁者が応援してくれておった、それがだんだん行われなくなった、一方扶養を受けておった方としては、そういうことをよそに言って回るということが非常に心苦しい、こういう事情から、そこに実際上の問題としてギャップができがちであるというようなことがあるわけでありますので、お話しの考えに私どももまったく同感なのでございますが、運用上においては努めてそういうギャップのないようにして参りたい、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/17
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018・稻村隆一
○稻村委員 それで厚生省当局にぜひともお願いしたいのですが、そういうふうな国民年金制度を立案するに当って、日本でも家族制度というものはもう事実上崩壊している、こういうふうに考える。それを日本には家族制度があるからというふうなことを言って家族制度を復活さして、お互いに助け合うということが非常に美点だから、そういうふうにしたいという考え方が一部にありますが、それはただ幻影なんです。実際問題になったらすべてそういうことはできない。だからあなたのおっしゃる通り、全然家族制度というふうなことを念頭に置かないで、国民年金制度の問題は立案をしてもらいたい。それだけを私は厚生省にお願いをしておく次第です。
次は年金の額の問題を先ほどあなたはおっしゃいましたが、今問題になっているのは一人当り千円ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/18
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019・小山進次郎
○小山説明員 無醵出の場合です。保険料を納めてやる方は三千五百円です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/19
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020・稻村隆一
○稻村委員 保険料を納めない場合は千円ですね。私は今の日本の財政においては、保険料を納めない場合は千円、百円納めた場合は三千五百円、このくらいはやむを得ない、そのくらいは仕方がないと思っているのです。ただ国民年金というのは国民全部を対象とするから、できることなら保険料金を徴収しないで一般歳入からこれをまかなうのが理論上私は当然だと思う。しかしただ個人の責任ということを自覚させる意味からいって、やはり多少の保険金を納めることは望ましいんじゃないかと思うのですが、そういう点に対してもっと具体的な考えを一つ聞かしていただきたい。どのくらい国家が負担すべきであるかということ、それからどのくらい年金を受ける者が納めるかというふうな点、そういう点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/20
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021・小山進次郎
○小山説明員 ただいま先生がおあげになりました数字をもう一回申し上げますと、醵出制、つまり保険料を納めまして年金をもらうという場合は仰せの通り三千五百円でございます。それから金を納めないでもらう場合、つまり無慮出の場合の案は、現在審議会で論議されておりますものは千円でございます。
次に、このような醵出をしないでいくということの可能性についてのお話がございましたが、確かに仰せのような考え方も一つあるわけでございまして、そういう考え方も論議されております。しかしどちらかと申しますと、現在出ておりまする論議の大勢は、やはり将来老齢人口の割合がぐんぐんふえていくというようなことを考えると、今のうちからある程度応分に積み立てていく、そうすることによって老後における、国民的な規模における扶養の負担を軽くしていくということを考えていくことが適当であろう、こういうようなことからいたしまして、積み立て式と申しますけれども、このように保険料を積み立てて参りまして、将来年金の支給を受けるというときに備えるような方式が適当であろう、こういうふうな考え方の意見が強い大勢を示しているわけでございます。
それからこのような案でいった場合、一体どの程度の国庫負担を考えなければならぬかという点でございますが、実はその年金の場合のむずかしさは国庫負担のつかみ万にいろいろな考え方があり得るのであります。年金制度を始めましても、急にすべての人が年金の支給を受けるわけじゃない。従って当座の場合を考えれば、非常に少い国庫負担で間に合うから、それでスタートしていったらどうか、こういう考え方もありまするし、しかしそれでは末広がりに広がっていくところの受給者に応じ切れなくなるから、やはり今のうちから相当な国庫負担をもらってこれも積み立てていかなくちゃいかぬ、こういうような考え方もあるわけでありますが、今のところ審議会で論議されております国庫負担と申しますか、あるいは国からの援助の規模は、大体五百億から六百億程度のことを頭に置いて論議しておられるようであります。しかしこれはまだ全く論議の段階でございまして、別に確定的にそういうものがきまっているというわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/21
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022・稻村隆一
○稻村委員 国民年金制度がもし実施されるといたしましたならば、既存の制度によって保護されている者、こういう者はそれを除くつもりですか。あるいは文官恩給、それから厚生年金保険とかあるいは生活保護とか、こういうものとの関係はどうするのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/22
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023・小山進次郎
○小山説明員 生活保護の関係はこれは申し上げるまでもなく、なるべく生活保護を受けないで済むようにしようというのが年金制度を要望しております一つの事情でもございますので、そういうことでなるべく生活保護の適用を受ける老人が少くなるようにしていきたい、これは自然に少くなるようにしていきたい、こういうことになるわけでございます。
それからそれ以外の年金制度との関係につきましては、これをどのようにまとめていくかということが、次の段階の問題として審議会でも心組みをしておられるわけでありますが、結論としてどなたも言っておられますことは、現在出ております年金額がこのために低くなるようなことは絶対にあらすべきではない、こういうことになりますと、どうしてもただいま申し上げました年金制度の額よりも多い額を出しております年金制度は、何らかの形において併存していく、あるいは基本的な部分が国民年金に吸収されて、つけ加わった部分が残っていくという形をとりますか、あるいはそれぞれの制度として形の上では併存しつつ共通部分について、通算その他の措置でできるだけ年金を受けるべき人々が受ける機会を多くするように仕組んでいくか、この点はまだ結論は出て参っておりませんけれども、そういうような方向で現在御論議がされているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/23
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024・稻村隆一
○稻村委員 今自民党の一部で考えていることが、新聞か雑誌に伝わっておりましたが、三十四年度から月額二千円の年金を六十五才以上の四百六十万人に支払う、そして十八才未満の子供をかかえた四十万の母子家庭に月額三千円を支払うというようなことが伝わっております。そういたしますと、年額は千二百四十八億になるわけです。これは軍人恩給が千百億ですから、それと幾らもかわらないのです。その三割を国が負担すれば三百七十四億になるわけです。ちょっと考えてみますと、これは見かけは非常に大きく見えるのですけれども、国民年金は軍人恩給のことしの総額をわずか三百億ほど上回っているだけなんです。こういう点に対しましても、今の政府の社会保障制度に対する考え方は実際なっていない。実際問題としてこういう点は財政とかなんとかいう問題ではないのですよ。三百七十四億を負担しただけでもって、これだけたくさんの、千四百六十万人の人が、二千円つつ養老年金をもらえるのです。それを無視して、軍人恩給を三百億円増額している。これは私は悪いとかなんとか言うのじゃない。こういう点に対しても、全然政府は考え方がなっていないのです。社会保障制度とかなんとか口に言うけれども、そういう点に関して、総務長官、どうですか。あなたは軍人恩給の問題を問題にされたとき、そういう問題はちっとも考慮しなかったのですか。それを私はお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/24
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025・今松治郎
○今松政府委員 軍人と限りませんが、今回恩給是正の問題を考えましたときに、社会保障の問題を考えなかったか、こういうお話でございますが、私どもといたしましては戦後処理の重要課題であります、戦没軍人の遺族の方々の公務扶助料、傷病軍人の恩給ということを、今までのようにほっておくことは、現在の社会情勢、経済の情勢から見て不適当であると考えまして、いつかこれの是正をはからなくちゃならない、こういうことは数年来の問題であったのであります。この問題を今回ほぼ解決することができたわけでありますが、そのために三百億の増額をいたしたわけでありまして、この問題と社会保障の関係の問題とは私どもは別個に考えていたしましたが、社会保障の問題は、これは将来の問題としてぜひやらなくちゃならない問題でありまして、政府部内においても、ただいま厚生省の方から申された通りに、鋭意検討いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/25
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026・稻村隆一
○稻村委員 社会保障の問題は、これは将来の問題じゃない、現在の問題なんです。私ども、なるほど軍人さんの困っている人を救わなければならぬということは、百も承知、よくわかっておる。すぐしなければならぬ。この前言いましたように、傷痍軍人が乞食をしたり、そういうようなことはどこの国にもないのですから、そういうものはすぐ救わなければいけない。前線に行って苦労した人や、あるいは死んだ人の家族は、無論救わなければならぬ。それと同時に、国内において爆撃されて、そうして主人を失なった者、あるいは親を失なった子供たち、そうした悲惨な人たちを救わなければいかぬ。将来なんて、そんなのんきなことを言っておれるものじゃないのです。軍人のけがした人、あるいは戦争未亡人を救うと同時に、銃後において爆撃の被害を受けた人々の遺族、家族を救うことも、一緒にやらなければならぬのです。その後にいろいろ恩給の問題を解決すべきなんですよ。それを、まず軍人の恩給を片づけて云々というふうなことを考えるから、私はもう社会保障に対する考えが全然なってないと思うのです。今後は無論恩給制度も、われわれは十分考慮しなければならぬ。これも社会保障制度の一つだから……。けれども、そうした社会の一番困っている人を助けるということを十分考慮に入れて、それと同時に解決つけるような方針を、今後はとってもらいたいのです。私はまずそのことを要望して、私の質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/26
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027・福永健司
○福永委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午前十一時四十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102804889X02519580402/27
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