1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年四月一日(火曜日)
午前十時四十二分開会
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委員の異動
三月二十七日委員井村徳二君辞任につ
き、その補欠として酒井利雄君を議長
において指名した。
三月二十八日委員酒井利雄君辞任につ
き、その補欠として井村徳二君を議長
において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 天田 勝正君
理事
江藤 智君
成田 一郎君
三木與吉郎君
大倉 精一君
委員
植竹 春彦君
平島 敏夫君
柴谷 要君
中村 正雄君
松浦 清一君
高良 とみ君
市川 房枝君
岩間 正男君
国務大臣
運 輸 大 臣 中村三之丞君
政府委員
外務省アメリカ
局長 森 治樹君
運輸省航空局長 林 坦君
高等海難審判庁
長官 長屋 千棟君
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本日の会議に付した案件
○航空法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
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001・天田勝正
○委員長(天田勝正君) これより運輸委員会を開会いたします。
まず、委員の変更について報告いたします。三月二十七日井村徳二君辞任、酒井利雄君補欠、三月二十八日酒井利雄君辞任、井村徳二君補欠、両選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/1
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002・天田勝正
○委員長(天田勝正君) 次に、航空法の一部を改正する法律案を議題といたします。
御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/2
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003・岩間正男
○岩間正男君 この前の委員会におきまして、航空法の改正の問題と関連しまして、二、三の重要点をお伺いしたんでありますが、その中で、どうしてもここで明らかにしてほしいことは、現在の日本の空の主権がどこにあるか、これと関連して日本の航空交通管制がどうなっているのか、具体的に申しますというと、米軍が日本にたくさんの軍事基地を持っておる。その中で航空機を発着さしているわけです。それとの関連におきまして民間航空の問題もいろいろ影響を持つだろうと、こういうような点からこの問題を明らかにすることは、このたびの航空法改正の問題を論議するに非常に重要だ、こういう観点から御質問を申し上げておるわけであります。
第一に、外務当局にお伺いしたいのでありますが、それはまず、現在日本の領空権はどうなっておるのか、非常に私、しろうとでありますから、しろうとくさい質問をいたすのでありますが、これについてお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/3
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004・天田勝正
○委員長(天田勝正君) 岩間君、ただいまの御質問はアメリカ局長に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/4
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005・岩間正男
○岩間正男君 それはアメリカ局長ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/5
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006・森治樹
○政府委員(森治樹君) 条約局長が外務委員会の方に出ておりますので、便宜私からお答え申し上げます。一国の領空に対する権利というものは、当然その領空下にある国の主権に属することでございまして、従いまして、日本におきましては当然日本が領空に対する排他的な主権を有しておるわけでございます。しかしながら、日米の間におきましては、御承知のように安全保障条約が締結されておりますので、この条約との関連におきまして航空法の特例等のあることはすでに御承知の通りでございます。すなわち安全保障条約におきましては、第二条におきまして、第三国の軍用機が日本に参ります場合には、米軍の許可を要することになっておる次第でございます。また民間航空と申しますのは、防空の責任等との関連におきまして密接不可分の関係にありますので、昭和二十七年に日米間において民間航空等に関する取扱いについて合意を見ておることはすでに御承知の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/6
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007・岩間正男
○岩間正男君 主権の存在は、これはむろん日本にある。この点は明らかなのでありますけれども、しかし、日本の空は現在、先ほどお話のように米軍の管制下にある。そこで、ほとんど主権というものが独自な権能を発動していない、こういう格好になっていると思う。そういうことによっていろいろな制約が出てきて、これが民間航空のやはり重要な発達のためにもいろいろの影響を持つのではないかというように考えられるわけですが、その前にお聞きしたいのですが、日本の空を米軍が今使っておる。相当自由に使っておるのですが、その法的根拠はどこにあるか、その法的根拠についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/7
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008・森治樹
○政府委員(森治樹君) 安全保障条約第三条に基く両国間の行政協定に基いて行使いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/8
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009・岩間正男
○岩間正男君 行政協定の条文を明らかにして、もっと明細に説明してほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/9
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010・森治樹
○政府委員(森治樹君) 米軍の航空機等の日本の飛行場等に対する出入の権利が、行政協定第五条に規定せられておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/10
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011・岩間正男
○岩間正男君 五条だけですか。これは出入りの問題ですが、空を使う権利、そういうものについてもう少し明瞭に行政協定内における関連条項をもっと明確にして下さい。第五条だけということでは非常に不十分ではないかと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/11
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012・森治樹
○政府委員(森治樹君) これに関連いたしましては、第一に、米軍に対しては施設を供与するわけでございまして、第二条、第三条等がアメリカ側に提供いたします施設に関する規定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/12
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013・岩間正男
○岩間正男君 それでは第三条についてお伺いしたいのですが、第三条「合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、使用、運営、防衛又は管理のため必要な又は適当な権利、権力及び権能を有する。合衆国は、また、前記の施設及び区域に隣接する土地、領水及び空間又は前記の施設及び区域の近傍において、」 「前記の施設及び区域への出入の便を図るのに必要な権利、権力及び権能を有する。」後略、というような、非常に難解な条文で書かれているのでありますが、この精神をあなたたち、かいつまんでどういうところにあるか、この点明確にして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/13
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014・森治樹
○政府委員(森治樹君) 安全保障条約におきましては、日本としては、国を防衛するため兵力を持たない、従って、日本に米軍が日本国の防衛のために駐兵する権利を認めるという建前になっておるのでございます。従いまして、この駐兵に伴いまして、米軍が必要とする施設を日本側で提供することになっておるのであります。しかして、その提供する条件、すなわち日本における米軍配備の条件というものは、安全保障条約第三条によって、行政協定にゆだねられておるわけであります。そこで、この行政協定におきまして、米軍配備の条件を規定しておりまして、その第二条によりまして、米軍に安全保障条約の目的を達成するための「施設及び区域の使用を許すこと」等に同意いたしまして、そうして第三条におきまして、これら提供せられた施設等に対する米側の権利の内容を規定しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/14
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015・岩間正男
○岩間正男君 どうも抽象的な説明になるのですが、具体的に言いますと、一体この施設、区域という中に日本の空は入るのかどうか。入るとすればどの範囲まで入るのかどうか。どうもこの条文の中では非常に不明瞭であります。それから、この条文の中で「隣接する土地、領水及び空間又は前記の施設及び区域の近傍において、」「前記の施設及び区域への出入の便を図るのに必要な権利、権力及び権能を有する。」というのでありますが、そうすると、この区域、施設というものの範囲が明確にならないと空の問題が明確になってこないのでありますが、これは施設、区域の中に空は入るのでありますか、入らないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/15
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016・森治樹
○政府委員(森治樹君) この施設の範囲につきましては、行政協定第二条に基きまして、米軍との間に提供される施設の具体的細目を規定した一つの了解があるわけでございます。この第三条の空間ということでございますが、この空間は、先ほど私が申し上げました日米間の了解の中には何ら言及されておらない次第でございます。そこで、この空間というものがどういう意味かということでございますが、この空間というものは、地上の施設を米軍が利用する際に、直接間接の影響のある空間を申しておるのでありまして、一般的なその施設上の領空とか、そういう意味ではなくわれわれは解釈しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/16
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017・岩間正男
○岩間正男君 そうしますと、まあ私お聞きしているのは、施設、区域の中には日本の空、領空——一部分か全部かそれはわかりませんが、それは入るのかどうか、この点のお答えがないわけですね。どうも今のあなたたちの解釈もなかなか明瞭を欠いている点があるし、どのようにも解釈されるようなきらいがなきにしもあらずだというように考えられるのですが、具体的にいって、こういう条文をあなたたちは研究されたと思う。これは現実とずいぶん遠い意味においても問題になったわけです。行政協定が今から六年前ですか、これが国会の審議にはかけられなかった。しかし、実際には安保条約というような、あんなみくだり半みたいなものを作っておいて、原則だけ作っておいて、一切の具体的なものは行政協定にまかす、しかも、これが当院の院議にはかけられなかった。しかし、これは予算委員会並びに外務委員会では相当問題にして、当時この問題について論議された。しかし、空の問題については、当時の論戦を見ましても、私の記憶では、あまり明確でないのです。従って、今日これは当然民間航空が非常に発達してきて、それから日本の空に対する軍事的脅威もこれは非常に現在問題になっているということは、アメリカでも御承知のように、原爆搭載機が今まで六回も落ちている。そうするとアメリカで、原爆搭載機がアメリカの空を動いておるならば、日本の空を動いていないというような保証もこれはあり得ないのじゃないか、こういうようなことになると、いつわれわれはどのような危険にもさらされないという、そのような保証があるとは言えない。そういうことになりますと、この空の問題というのは非常に今国民の関心の的になり、また、われわれ政治家としては、この問題を明確にするということが非常に重要になってきているのです。従いまして、これとの関連でこのように過去に結ばれたこのような行政協定によりまして、一体空の問題がどういうふうに明らかになるかということは、これは非常に民族的課題として今重大な問題である。従って、そういう点であなたたちの解釈を統一され、そうしてこれで明確な態度を維持していただきたい、こういう点からお願い申し上げているのですが、今の問題、いかがでございましょうか。つまり施設、区域というものの中に、これは空が入るのか入らないのか、まずこの点からお答え願いたい。その条文によって、もっとついてやって下さい、条文の論議を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/17
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018・森治樹
○政府委員(森治樹君) ただいまの御説明と同じことになって恐縮でございますが、この空間と申しますのは、米軍が地上の施設を利用いたしますに際して、直接間接に影響のある空間を意味しておるのでありまして、一般的な領空というようなものを意味しておる次第ではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/18
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019・岩間正男
○岩間正男君 そうすると、この空間には空は入らないとあなたはおっしゃるのですか、入るとおっしゃるのですか、どちらですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/19
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020・森治樹
○政府委員(森治樹君) ただいま申し上げましたように、直接間接に地上施設を利用するために必要な限度においては入るのでありますが、その以上に一般的な領空というふうに広い意味においては入らないと、こう解釈しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/20
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021・岩間正男
○岩間正男君 現在飛行基地の性格は大きく変っております。御承知のように最近の戦略体制の中では、ことにこれは原爆搭載機を発着させ、原爆基地という性格を明確にここ一両年の間に持って参っておるのであります。さらに、これはミサイル基地への再編ということも課題になりつつある、こういう体制を考えるときに、空からほとんどのものが持ち込まれ、そうして空からまた持ち去られる、こういうようなウェートが非常に大きくなってきているのです。これとの関連で、この行政協定の問題が果して現状に合うのかどうかという点を明瞭にしなくちゃならないのです。それから現在米軍が日本の空を自由に使っておるその法的根拠は、少くともこの行政協定にあるのだとすれば、この行政協定そのものの内容というものを、ここで明らかにするということが非常に重大なことだと思うのです。外務当局としても、こういうことについては鋭意努力されておるとは思うのです。もしされていないとすれば、これは非常な怠慢といわざるを得ないのでありますが、しかし、ただいまの御説明の範囲内では、どうもそこのところが非常にぼやけている。そうすると施設、区域の中にはこの空というものは入らないというふうに一応考えていいのですね。施設、区域に出入りするその空間の一部にやはり空というものがある、そういうふうにこれは解釈すべきなんですか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/21
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022・森治樹
○政府委員(森治樹君) お答えいたします。先ほどお答え申し上げましたように、昭和二十七年に、日本が当時まだ空軍を全然保持いたしません際に、また航空管理施設等も十分日本で運営し、あるいはこれを管理していく体制が整っていませんでした際に、日米間に一つの合意が締結されまして、米軍側でこれらの施設を運営していく、米軍に施設の運営等につきまして委託をしたわけでございます。ただその際にも、日本が領空に対して排他的権利を有するということは、これを認められておった次第でございます。その後昨年四月だったと記憶いたしておりますが、日本側の体制も漸次整備いたして参りましたので、この米軍に現在委託してあるところの体制を日本側にだんだん返還していくという日米間の合意が成立いたしまして、せっかく現在航空当局の方において、この管理を日本側に引き受くべく努力いたされておる次第でございます。一般的に申しますと、そういう行政協定のもとにおける体制は漸次日本側に帰ってきておると、こういう情勢にあると御承知願いたいのであります。
なお、ただいまの空間という、この第三条の施設に関連いたします空間という意味は、先ほど来申し上げておりまするように、地上施設の利用に必要な、そうしてその施設の利用に直接間接の関連のある空間を意味しておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/22
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023・岩間正男
○岩間正男君 そうしますと、この法的根拠というのは、行政協定にも一部はあるけれども、しかし、それでは非常に不十分でしょう。おそらくこれで完全なら要らなかったわけですから、これは不十分だと思う。そういうことで、あなたは御存じだと思うと言うのですが、われわれしろうとですから、よくわからないのです。二十七年に空間についての日米間の取りきめがある、合意に達したものがある、その要点は、日本の空の防衛を中心として、日本の空の管理については、これは一応アメリカ側に委託する、こういう取りきめがあって、それが現在法的根拠になっておるのじゃないですか。そうすると、あなたのさっきのお話によります行政協定だけにこれを求めるということは無理なように思いますが、そう解釈してよろしゅうございますか、その点一点。それからそれと関連して、それならその取りきめ、合意というものはどういうものだか、これは何という名前のものだか、それをここで明らかにしてもらいたい。われわれが知らないで、国民がつんぼさじきに追い込まれておって、外務当局だけが知っておるということでは、とても空の安全ということはわれわれ確保できないという心配を持ちますから、その点明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/23
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024・森治樹
○政府委員(森治樹君) ただいま岩間委員の御要求になりました昭和二十七年の日米間の合意というものは、行政協定から申しますと、第六条に根拠を有しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/24
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025・岩間正男
○岩間正男君 それは何ですか、何か合同委員会の航空分科会か何かの話し合いで、その合意、取りきめがなされたものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/25
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026・森治樹
○政府委員(森治樹君) 御承知のように、行政協定の運営にあたります機関といたしまして、行政協定第二十六条に基きまして、日米間の合同委員会というものがあるわけでございます。この下にはいろいろな専門的な事項を取り扱いまする下部の委員会がございます。この委員会におきまして、日米間に合意が成立いたしまして、それが日米合同委員会によって承認せられたのが、二十七年の日米間の合意でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/26
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027・岩間正男
○岩間正男君 その内容、これはもらえませんかな、お持ちですか。少くともそれが法的根拠になっておるとすれば、航空分科会の取りきめ事項……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/27
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028・林坦
○政府委員(林坦君) その資料は、資料として配付いたしてございます。航空交通管制に関する取りきめであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/28
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029・岩間正男
○岩間正男君 これが一切の根拠になっておるわけですか。しかし、この問題、これはまあわれわれもばらっと拝見したのですが、この問題で空の主権、つまり領空権、それからそれを実際運用する管理権、こういうものがこれで一切明確にはなっていないじゃないですか。非常にやはりこれだけでは不十分だと思うのでありますが、これはどうですか、どういう見解ですか。これは外務当局と運輸省からお聞きしますけれども、これで今の私の質問している中心問題に触れることができますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/29
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030・森治樹
○政府委員(森治樹君) 先ほど申し上げましたように、一般的には領空に対する主権というものは、その下に存在する国が主権を持っておるのでありまして、行政協定によってこの領空権を制限されていなければ、当然日本国がこれを保有しておるわけでございます。しこうして、この二十七年の取りきめにおきましても、念のための規定といたしまして、日本側が排他的な上空の空間に対する権利を所有しているということが記載されておる次第でございます。従いまして、行政協定でその空間に対する主権の行使の制限というものが特記せられておらない限りは、日本がこれを保有しておるわけでございます。しかして、行政協定でその日本の権利が一種の制約を受けておると申しますか、日本の領空に関するアメリカ側の権利が書かれておるのは、先ほど申し上げましたように第五条で、アメリカの航空機は特別にそのたびごとに運輸当局の許可なくして日本の飛行場に発着し得るというような一連の規定が存在する次第でございます。で、ただいま御指摘のように、この日米行政協定に基く航空交通管理に関する取りきめというものは、その一つでございまして、これはあくまで航空交通管理に関する問題に限定されておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/30
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031・林坦
○政府委員(林坦君) ただいまアメリカ局長から説明いたしました通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/31
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032・岩間正男
○岩間正男君 そうすると、あなたの御説明では、主権はあると、ちょうどこれは沖繩の場合をわれわれは想定すればよいと思う。主権はある、潜在主権はある。しかし、ほとんど空の管理権は米軍にゆだねておる。現状を見ましても、空の管理のセンターは入間川にある。入間川の了解なしに、入間川との連絡なしに、民間航空さえ動くことができない。これは私たちは、この前申し上げました通り、伊丹のコントロール・タワーではっきり見てきたわけであります。そういたしますと、実際は、主権はあるのだが、日本の空の実権、これはやはりアメリカに握られておる、こういうことに解釈していいのですか。幾分ずつ移譲されておると言う。しかし、依然として空の支配権は、実権はアメリカが握っておる。そういう統制下に現在日本の空は運営されておる。現状はそういうふうに思われるのでありますが、この点いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/32
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033・森治樹
○政府委員(森治樹君) 日本の航空交通管理体制等が十分まだ整備せられておらない時期において、アメリカ側にこの管理権等を日本側が委託したのでありまして、あくまで権利の根源は日本側にあるわけでございます。その意味におきまして、沖繩とは異なっておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/33
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034・岩間正男
○岩間正男君 それは、法文的に幾分の違いはあるけれども、実際はどうかというと、そういう関連になっておるのではないか、これが実情ではないか。その証拠には、なるほど管理の面においては幾分の緩和はされ、日本側への移譲はされておるが、しかし、一体最後の段階は——最後の段階というのは、一応非常時の場合というようなことも想定されるわけでありますが、そういう事態が起った場合にどういうことになるかということです。日本の空は、この問題とも関連しまして、先ほど申し上げました原爆塔載機を日本にパトロールさせるかさせないか、こういう問題とも非常に深い関係がある。日本側にはっきり主権が確認されて、しかも、空の主権がはっきりと回復されているということの中には、日本国民のほとんど全部の希望でありますから、こういうものの出現ははっきり断わることができる。しかし、現状においてはそうした格好になっていない。なるほど日本が一応委託したという形になっているけれども、日本が委託させられたのです、これは。実情はそういう形になっている。そういう格好で行政協定の実情を見ても、日本側が委託したという形でなしに、実際はそういう形をとらされた。そういう格好で日本の空というものはアメリカの支配下にあるという現状です。これはおおうことのできない事実です。当時からこれは明確にされておった問題です。そういう点から考えますというと、非常にこの問題やはり重要だと思うのですが、しかし、これは行政協定の条文を読んでもそういう点は実際ないのですね、ないのです。私もずいぶん探してみた。しかし、この領空権を日本が委託するという格好にはなっていない。それからこの取りきめを見ますと、この取りきめでは管理権、管理に対する取りきめなんだ。主権についての取りきめというのはこれはない。こういう点はどうなるんです。これは私は外交上のやはり非常に重要なポイントになっているのだと思うのですけれども、この問題はどうなんです。一体、はっきり日本政府は空の主権というものは日本にあるのだ、しかし、あるということは認めるが、実際の運用の面においては、これはアメリカ側に委託しているのだ、従って、完全な主権の行使というものはできないのだ、現在あなたたちはそういう形で日本の空の外交を進めておられるのかどうか。この点は、あなたは日米合同委員会の首席だそうでありますが、まあ最近かわられたでありましょうが、どういう一体考えをもってアメリカ側に対していられるか。これは日本国民としてお聞きしたいですね、あなたたちの腹をお聞きしたい。ちょっとお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/34
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035・森治樹
○政府委員(森治樹君) 先ほど申し上げましたように、行政協定で特段の規定がなければ日本国が領空に対する主権を持っておる次第でございます。従いまして、たとえば行政協定第五条のように、米軍の飛行機は——通常他国の飛行機が一国の領空を飛ぶ場合におきましては、その国の運輸当局の許可を得なければならないことになっておるのでありますが、米軍の飛行機はこの行政協定第五条によって、日本の飛行場に離着陸する権利を認めているわけでございます。その限度におきましては、日本の領空に対する権利というのが制限を受けておるのであります。しかしながら、かくのごとき特段の規定がない限りにおいては、日本国が主権を持っておる、こういうことになっているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/35
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036・岩間正男
○岩間正男君 もしもそういう関連にあるとすれば、なぜ一体入間川の米軍の航空管理のセンターの指示を仰がなければ、一体日本の航空機は運航できないのですか。あなたの今のような説明が正しいとすれば、なぜ、現状は違うじゃないですか。全部米軍の指揮を仰がなければ動かせないじゃないですか。ジェット戦闘機が飛ぶにしたって、それを待機しなければならないというのが日本の民間航空の実情ではないですか。当然これは日本がそういう主権を持って、そして米軍に、とにかく日本のあなたたちからいえば、日本の安全を守ってもらう、そういう範囲内において米軍の出入を許しておる、そして運輸当局の許可なしに出入することを許した、こういうような状態と、現状における空の支配の体制の現状というものは違うのです。あなた方が今説明しておられるのと違うのです。なぜ、そんなら現在入間川のセンターからすべての指示を仰ぎ、ここに連絡し、この許可なしに日本の空を飛行機が動くことができないか。一体その中心、その主権、権力はどこにあるか、そういう意味における権力はどこにあるか、このことを私は問題にしておるのでありまして、潜在主権がどこにあるか、あるはずになっておるという形の主権、つまり、いわば休止状態になっておる主権を私たちは問題にしていない。その点どうですか、その点の食い違いについて明確な答弁を求めたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/36
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037・森治樹
○政府委員(森治樹君) 私の言葉が足りなかったと思いますが、ただいま私は、日本の領空に対する権利は、行政協定で特段の規定がなければ日本国がこれを行使するということを申しまして、その制限の一つの例といたしまして、行政協定第五条の規定を申し上げたわけでございます。しかしながら、この日本側の領空権に対する制限というものは、ただ第五条で全部であるというわけではないのでありまして、ただいま御指摘のような問題は、第六条に基きまして、当時日本は航空交通管理に関する十分の体制を持たなかった、二十七年当時においてはそういう体制が整備されていなかったので、これを米軍に委託しておった、しかしながら、日本の体制が整備するに従って、これは日本側に移管されるということは、先ほど申し上げましたように、昨年四月にすでに米軍側との間に合意が成立しておるのでありまして、漸次日本側にその航空管理に関する体制が帰ってきつつあるという状況にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/37
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038・岩間正男
○岩間正男君 漸次帰っておると言うが、それは管理権ですね。管理権と主権というものは一応分離して考えなければならぬと思うのですが、一応そういうふうな、来年の七月まで入間川も日本に返還するというような話はこの前航空局長さんから伺ったわけでありますけれども、それなら安全に日本の空の支配、管理、こういうものは日本側の手にはっきり戻る、こういうふうに一体言うことができるかどうか、そういう段階でなくて、技術的な管理のいろいろな問題については、これは委託のなにがあったようでありますが、基本的な空の主権の問題については非常に不明瞭なんです。この点をはっきり今日明瞭にさせるというととは非常に重要な段階に来ておると思う。こういう点から実は質問申し上げておるのです。この点についてもっと明瞭なあなたの説明を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/38
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039・森治樹
○政府委員(森治樹君) ただいま御指摘のようにただいま、昨年の四月にアメリカ側から管理の体制が移管されるという対象になっておりますのは、航空交通管理に関する問題でございます。しかしながら、この領空に対する一般的な権利というものは、現在すでに日本が持っておるのでありまして、それが先ほどから申し上げておりますように、米軍飛行機の離着陸の権利等は、行政協定で日本の領空主権というものがその限度において制約されておるという状況にあるのでありますから、現存の体制というものは航空交通管理の面におきましては、漸次日本側のやり得る範囲が拡大していくし、その他の面においては、すでに現在持っておる体制が持続されていく、こういうことになる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/39
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040・岩間正男
○岩間正男君 一応あなたの御答弁は形式的な答弁になって実情とは必ずしも合っていないと思うのですが、日本に空の主権はあるんだ、従って、あくまで日本はその主権を行使することができる、ただし、米軍との関係においてある種の制約があるということですが、そういう形になっていないのです。私は、一つの入間川の例等をあげましてもそういう格好になっていない。また、われわれは過去に視察をした少い経験からでありますけれども、まざまざとそういう姿を見たのです。空の支配というものは依然としてやはりアメリカがやっておる、こういう点から見たそういうような根拠は、さらに今お話しになりますというと第六条にある、「すべての非軍用及び軍用の航空交通管理及び通信の体系は、緊密に協調して発達を図るものとし、且つ、集団安全保障の利益を達成するため必要な程度に整合するものとする。」云々と、こういうようなことが規定されているのでありますが、そうしますと、私は、今のあなたの言葉がその通りだとするならば、日本の主権は、とにかく大幅に空の主権は日本側にあるんだと、こういうことになりますと、当然民間航空の平和的な発展、もう一つは、先ほど申しましたこの軍用機の脅威、ことに原爆搭載機が日本の空を飛んでるんじゃないか、こういうような不安に対して、国民が非常にこれに対して不安を持ってるわけです。そうしますと、当然行政協定における第六条などという条文は、日本の主権を非常に制限する、当時からこれは非常に問題になったんでありますが、これを、ほんとうに日本の空の主権を回復し、文字通り日本側のものにするために、もうすでにこういうような条文というのは死んでると、こういうふうに解釈しなきゃならぬと思う。日本の現状に合わない、こういうふうに解釈しなくちゃならない。従って、当然これは外務当局としては、こういう問題について、アメリカ側と折衝をやらなきゃならぬと、こういう段階に私は来てると思うのでありますが、こういう点について、今までどういう努力をされたか。日米合同委員会なり、あるいは日米会談の中において、外務当局としてはどういうような努力をされたか、この点伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/40
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041・森治樹
○政府委員(森治樹君) 現在、行政協定第六条に基きまして、航空交通管理及び通信の体系等を米軍側に管理を委託しておるという体制は、一日も早く日本側に引き取りましてその限度において日本の領空主権というものをより実体化していかなくちゃいけないというので、昨年、わが方の体系の整備とともに、この体系を米軍側から返還を受くべく、日米間に合意を見ておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/41
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042・岩間正男
○岩間正男君 その次にお聞きしたいんですが、それでは領空権が日本にはっきりあって、そして管理の、現在管理権も大幅に日本に移譲されると、こういう事態が起った場合に、私はここでお聞きしたいのは、たとえば原爆搭載機のようなものが日本に入るということに対して、はっきりこれは断わることができるか、はっきりこの点を日本国民の意思として、明確にこれを貫徹することができるか、果してこれを断わったにしても、しかし、依然としてこの行政協定の条文が生きてる限りは、非常に困難な面があるんじゃないかというような点を考えるわけでありますけれども、これは現に入ってくる、こういうものについて断わることができるですか。たとえば、今のように、来年の七月からとにかく入間川のセンターはこっちに返される、そして管理権も相当大幅に日本に移譲される、つまり、あなたたちからいえば、空の主権が日本に相当、実際の運用面においても大幅に確立される、こういう体制の中では、米軍のそういう体制について、はっきり平和の立場からこれを拒否することができるのか。
もう一つの問題は、民間航空の自由な大きな発展のために、絶えずやはり米軍の管理権とぶつかってくるところがあると思う、現状においてもこれはやはりぶつかっておるんです。それから、もしも非常の事態が起った場合に、非常にそういうものが今後発生するわけですね、そういうときに、日本ははっきりそういう態度をとって、アメリカ側のそれに対する抵抗を排除することができるのか、はっきり日本側の主張というものを貫徹することができるのか、そういう体制にたとえば来年の七月からなるのかどうか、こういう点について、あなた方どういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/42
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043・森治樹
○政府委員(森治樹君) 後段の問題は、あるいは運輸当局からお答え願った方が至当かと存じますが、まず前段の、日本は原爆搭載機を拒否し得るやという御質問でございますが、この問題につきましては、二つの問題がただいまの御質問には含まれておるように拝察いたします。第一には、米軍の飛行機は、それでは日本の領空をパトロールし得るかという問題であって、第二は、それが原爆を搭載し得るやという二つの問題。前者の米軍の飛行機が日本の領空をパトロールし得るやということは、これは行政協定に基きまして、当然パトロールし得るわけでございます。原爆を搭載し得るやという問題になりますると、これは行政協定の問題を離れまして、総理もしばしば御答弁になっておりまするように、日米間の安保条約の運営というものは、日米間の協議でもって進めていく、これが日米共同声明の精神である。しかして、日本国国民の原爆の持ち込みを許さないということ、及び原水兵器に対する、核兵器に対する日本国民の気持というものは米国は十分これを知っているので、これを米軍が持ち込むということは考えられないということを総理も申しておられるのでありまするが、そういうことになりますれば、事実問題として原爆を搭載して飛ぶということはないことになるのでありまして、その意味におきまして、前者の米軍の飛行機は、パトロールはし得るけれども、原爆を搭載してパトロールすることはない、こういうことになる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/43
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044・岩間正男
○岩間正男君 それは岸総理が答弁されたことで、われわれ聞いておるのでありますが、それは希望的観測で、そういうふうに協議すると言ったって、今までの例から見て、たとえば今度原爆を積んであなたの方に参りますと、通告する義務はあるんですか。そういう義務でもあれば、必ず友好的な立場から、日本国民の意思を尊重してやるんだ、そういうことだったら砂川の問題だって、ジラード事件だって起らない、沖繩の問題も起きない。日本国民の大多数の希望はどこにあるのか。沖繩返還の問題だって、砂川の土地の問題だって……。ところがそういってない。日本国民の意思なんというものは完全にじゅうりんされている。じゅうりんされて一方的にやられているのが実情です。従って、岸総理の希望的な観測で、岸さんの希望としては……、苦しいこれは答弁になっているかもしれません。一方で原爆搭載機が入ってならないという協定とか、それから原爆搭載機を日本の空に飛ばせる、原爆を日本に持ち込む、そういうような事態のときに、当然それを通告する義務があるというようなことだったら別ですが、そういうものは現在何もないんです。何の保障もない、条約上の保障は何一つない。単に道義的な希望観測にすぎない。そういうことで、しかも、今まで日本の空の管理権というものは、なかなかこれは完全に日本に戻っていない。そうして入間川センターぐらいを返されただけで、完全に日本の領空権が日本に戻ると考えることは、とても甘い空想としか思えない。これはアメリカの戦略体制、最近の彼らのいろいろの言明の中で、それから世界において彼らが今やっている体制の中から考えて、日本だけにそれを緩和されるということはあり得ないと考えなければならぬ。そうすると、何の保障もない。保障のないことを、これをから手形みたいに国民の前に岸さんが話したという結果になる。あなた方はそのことをたてにして言っておられるが、そういう政治的な答弁は必要はないと思うんです、そんなことは国民が判断しておりますから。判断して非常に不安だから、またわれわれをしてこういう問題を今質問さしているのですから、これは国民の声なんです。そういう点でどうです。外務当局として、果してそういうような手続上の面からこれをはっきり拒否できるかどうかという事務的な面から答えていただきたい。私たちは政治的なそんな含みを、岸総理がどう答えたとか何とかということは、これは必要ありません。これはわれわれが判断します。こういう点でどうですか。あなたたちはこういう点の保障が、それから条文の裏づけがあるのかどうか、こういう点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/44
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045・森治樹
○政府委員(森治樹君) この問題はきわめて政治的な問題でございまするが、条文上の根拠ということになりますると、昨年六月岸総理渡米の際に発表せられました日米共同声明におきまして、米軍の日本における配備については、日本側と協議をする、で、岸総理もたびたび申しておられますように、この配備の中には装備を含む、原水兵器というものは、核兵器というものはこの装備である、従って、この件については日米間の協議になる、しかして、協議を受けた場合には、自分はしばしば声明しておるように、これを拒否する、ということでありまして、この日米共同声明によって処理し得る、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/45
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046・岩間正男
○岩間正男君 そこのところを私たちは——これは何ですか、今の条文なんか、日米共同声明というのは、そういう拘束力というものを持つものかどうか、これはまあ議論がございましょうが、今の説明のように実態になっていないと思う。たとえば、サイドワインダー一つをとったって、サイドワインダー持ち込みのときにはっきり拒否するんだと言われておったのが、どういう態度であったか。日米合同委員会でどういう態度をとったか。むしろこれを押しつけられた、それをのまされた格好になっている。それでもうすでに破れているのです。だから、そんな説明をしたって、これはあなたは岸さんのいろいろ委員会なんかで話された言葉を根拠にして言われるのでありましょうが、そういうことではやっぱりたよりにならぬ。現実に合わぬのです。そんなことを言ったって、なかなか承服できない。だから、もっと外務当局は、法制的にどうなる、事務的に一体どういう問題がある一そういう問題について、隘路があるならば、それをどう打開するかということが、日本国民の世論と照らし合せて考え、世論をほんとうに達成するという民主的な立場に立つならば、当然そういう態度をとらなくちゃならないと思うのです。ところが、どうも今の話では、岸総理のそういう答弁だけをたてにされておりますが、われわれは最初に断わりましたように、そういうものは求めてない。そういうものを求めたってさっぱりこれは役に立たぬ。全然裏表のことをやっている。実際口ではうまいことを言っているけれども、現実にはどんどんそういうことが進行している。だから、国会答弁と言うより教科書みたいなものです。修身教科書みたいなことを言っている。言っていることとは全然違ったことをやっている。そういうことですから、これはここで論議したってしようがない。ただ、外務当局として、ほんとうにこれは国民の立場に立つなら、私は当然そういう点で法制的にも、それからそういう隘路についても、もっと明確にされる必要があると思う。先ほど来、実はこれは突然にあなたに質問をしたんで十分な準備をなされなかったのかもしれませんが、どうも行政協定の問題について法的根拠をお伺いしたのですが、やっぱりもっとこういう総合的に、これこれこういう条文でこうなっている、明確な行政協定をたてに、それから問題によっては、合同委員会の分科会での取りきめはこうだ、そうしてここのところはこういうふうに足らないのだ、ここのところは漏れているのだ、ここのところは、今の問題は、たとえば原爆の問題は漏れるのだ、こういう点をもっと明確にしてもらわないと困る。何かつじつまを合せて、そうしてここでの質問について、そこのところで防戦をされているんでしょうけれども、そういうことだけでは非常に不十分ではないか。われわれは非常に今の御答弁を聞いておりまして少したよりなさを感ずる。これはどうもまかしておけないのではないか。空の問題はこれは重大な問題です。ことにあなたは日米合同委員会の日本側首席というような重要な地位についておられる。これは今後も安保委員会が持たれて日米行政協定、安保条約の改廃の問題が論議をなされる。まあ改廃をここでやるのだということにはなっているのです。しかし、実際はそうでないことは明らかであります。サイドワインダー一つをとっても、そうでなくて、むしろ日米共同声明を保護推進する機関に安保委員会はなっておるというような現状です。改廃の方向なんか論議されていない。逆に使われている。ですから、これもここで明らかにしなければならない問題ですが、少くともあなたたちは、日本国民の側に立つならば、日本国民の平和、それから日本の民間航空の自由な、そうして大きな発展を考えるなら、どうしたってこの問題にぶつかる、必ずぶつかる。現在の事態においては、これはそう明瞭になっておりませんが、何か事態が起った場合には、必ずこれは抵触するということを考える。そういう点からどうしてもこの問題を明らかにする努力をしないでいては、やはりわれわれとしましては、われわれの職責を全うすることができないという観点から質問申し上げておるのでありますが、どうもきょうの段階においての御答弁は、私は非常に不十分だということを認めざるを得ない。こういう問題については、岸総理並びに外務大臣にほんとうは直接にこういう段階では答弁を求める必要があると思うのです。
外務省の方に対する、森さんに対する質問は一応これで終りますが、これと関連して、中村運輸大臣にお聞きしておきたいのですが、大体今のような日本の空の実情、そういういわば米軍の支配下にある、そうして管理下にある、そういう中で認められる自由があるわけです。その自由の空間を実は日本の民間航空は動いているのだということがほぼ明らかになったわけである。これについて運輸大臣としては、平和的な民間航空の発展から、やはり閣議においても政治的に努力をされなければならないじゃないか。いつ日本の空が脅かされるかわからない。ジェット戦闘機一つ飛ぶためにも、民間航空機のコースを変えなければならない、時間を変えなければならないというのが日本の空の実情であります。これは一つの端的な例にすぎない。これはいろいろな点で米軍の空軍との間に関係が発生してくる。従って、ここは明確に規定するということが必要だ。私は少くともこの平和の立場に大きく立って、そうして今は世界の中で大きく動いている平和共存の体制の中に、日本民間航空をはっきり打ち立てるという努力なしでは真の発展はあり得ない、こう考えておる。今アメリカから許された翼のその許された自由、制限された自由、そういう翼のもとにおける小さい自由の中で、民間航空を確立しようといっても、はかない努力になってくるだろう。そういう点について、運輸大臣として、同時に岸内閣の閣僚として、あなたの御見識を承わっておきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/46
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047・中村三之丞
○国務大臣(中村三之丞君) 領空権の問題、行政協定に関する問題、これは外務当局より今答弁せられた通りであります。しかし、われわれは民間航空の発展ということは、これは運輸省として念願をし、また、そういうふうに推進していかなければなりません。従って、今後航空交通管制も漸次日本の手に移るようにということをわれわれは希望いたしておるのでありまして、先ほども外務当局から答弁せられましたように、一九五九年七月引き継ぐというセンター、ビルマー東京空路の航空交通管制局、センターといわれておりますが、これに引き継ぐということには、漸次われわれは努力しなければならない。しかし問題は、これにつきましては、やはり日本がだんだん引き継いでいくということになりますると、技術者の養成あるいは飛行場の完備というようなこともやらなければならぬのでございまして、これは相当時日のかかることは御了承を願わなければならないのでありまするが、われわれはかくして航空交通規則というものが日本の手において動かされる、そうして民間航空の発展に資するということの方向に努力することは申すまでもないことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/47
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048・岩間正男
○岩間正男君 私は具体的にお聞きしたいのでありますが、これはぜひ大臣も御検討いただきたいと思うのですが、行政協定第三条の二項、これは「合衆国は、前記の権利、権力及び権能を、日本国の領域への、領域からの又は領域内の航海、航空、通信又は陸上交通を不必要に妨げるような方法によっては行使しないことに同意する。」という一応規定はございます。ですから、これについてどういうふうに民間航空の自主権を確立するのかという問題が一つであります。しかし、そう言っておりながら、第六条の第一項には、先ほど私があげましたように「すべての非軍用及び軍用の航空交通管理及び通信の体系は、緊密に協調して発達を図るものとし、且つ、集団安全保障の利益を達成するため必要な程度に整合するものとする。」、こういうふうになりますと、この条項が生きている限りにおきましては、日本の民間航空というものは、自由に平和でそのような領域を完全に確保するということは困難なんじゃないか。絶えずやっぱり米軍の制約を受けざるを得ない。第六条の第一項の規定により、絶えず集団安全保障のために整合しなくちゃならない、話し合わなければならない、そうして協調してやっていかなければならない、そういうことになりますと、絶えず制約を受けるわけです。しかし一方においては、不必要な妨害をしないように運用しなければならないと言っていますが、この不必要の限界などについても非常に不明瞭でございます。ここまでは米軍が必要なんだ、だから、お前の方は下っていろと言われればそれまでのことです。不必要などという言葉があるいは不必要だったかもしれぬ。全くわからぬです、こういう言葉は。ですから、一応つけ足しにはなっているのですが、どうも第六条の方がほんとうに現実においては生かされておる、そういう点がある。従って、ほんとうに民間航空の完全な発展、それからその自由平和的発展、そういうものをほんとうに願うならば、私は運輸大臣も国務大臣として、このような条項は撤廃する、そういうことなしには真にあなたが今申されましたようなことを、裏づけのある施策を遂行することができないのじゃないかと考えておりますけれども、この点についてのお考え、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/48
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049・中村三之丞
○国務大臣(中村三之丞君) 撤廃の問題は、これは私が今ここで申し上げることは避けたいと思います。しかしながら、われわれといたしましては、さっき申しましたごとく、センターが返還されるということになって参りますならば、漸次航空交通管制は運輸省においてこれを取り扱っていかなければなりませんから、これによって私は民間航空の将来の発展の端緒は開かれてくるものと思います。ただ、繰り返して申しますが、操縦士の養成とか、あるいは技術員の養成、なかなかこれが一朝一夕にはできませんので、多少の時間もかかるということもこれは御了承を願わなければならぬのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/49
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050・岩間正男
○岩間正男君 日本の空の軍事的要素、こういうものをやはり払拭する方向に日本の国民の世論は動いておると思います。ことに今のアメリカの戦略体制の翼のもとにおびえておる日本国民の平和への願いというものを考えてみるとき、これは非常に重大な問題じゃないか。そしてまた、このことの関連なしに、私は真に民間航空の平和的発展は望まれない、こういう点からこれを私は御質問を申し上げておるのでありますが、それに対する大臣の御答弁は、やはり少し足りないのじゃないか、十分じゃない。運輸大臣として、また岸内閣の閣僚として、一体どういうふうにそこのところを努力されているか。岸総理がそういう態度を表明されておるから、それについて言えないという点もあるいはあるかもしれません。しかし、閣僚として、ことに民間航空をほんとうに拡大発展し、自由で平和的なものに大きく前進させる、こういうことをお考えになるのだったら、この立場からやはり現在の隘路というものを打ち破っていくという努力をされるのが運輸大臣のこれはお仕事の大きな一つの目標になるんじゃないかというふうに考えるわけですが、私はこのことを希望しておきます。
最後に、これと関連しまして二つの問題を聞きたいのですが、一つの問題は、この日ソ、日中の航空路がいまだに開設されていない。これにつきましては、この前航空局長さんの話を聞きますと、まあソビエトも中国も国際航空協定に入っていない、それからもう一つは、日本の利益という立場から考えなければならない、この二つの面から、この問題をまだ日程に上せるその段階には至っていない、こういうお話であったのでありますが、しかし、まあ今大きく動いておる世界の平和共存の体制、あるいはまた最近の日ソの国交回復、さらに通商協定の締結、こういう事態を考えますというと、これはもう今日の課題にはっきりなっているのだ、この問題をほんとうに今日検討する段階がもう明白に来ているのだ、こういうふうに考えますが、こういう問題についての見解はどういうふうにお持ちになっているか、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/50
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051・中村三之丞
○国務大臣(中村三之丞君) 航空局長が先日お答えをしたと思いまするが、やはり両国とも国際民間航空のあの大きな機構の中にも入っておりません。しかし、ソ連とはこれは今後航空協定を結ぶことができますならば——できるだろうと思いまするが、これも航空上の利益を保持するということが私は必要である、つまり航空上におけるところの、中共あるいはソ連に、よくいわれるところの平等互恵でなければならない、かりにハバロフスクまで日本の飛行機が行くにしても、それからシベリアはいかぬということになりますれば、これは平等互恵ではございません。羽田からモスクワに行く、向うからもモスクワから羽田に来るというならば、これは話がわかるのでございまして、この航空上における利益が激減いたしますならば、平等互恵ということにつきましても、われわれといたしましても、その態度を堅持しなければならぬと思います。それから中国につきましては、中国の国際航空上の重要な地位はこれも十分了承をいたしておるのでありまするが、ただ、中国との間にはなかなかまだ情報もわからぬのです。これは彼らが国際民間航空機構の中に入っておりませんから、どういう交通管制をやっておるのか、どういう飛行機を使っておるのか、こういうような技術的な面をまず第一に調べ、その情報を交換していくということになりますならば、道は開けていくと思います。私は特に中共に対しましては、今後通商がふえる、こういうことになりますと、人もまたひんぱんになるでござりましょう。今香港に行ってそれから一晩泊って杭州に汽車で行って、また杭州で泊って北京へ行くというような、そんなことよりも、あるいは福岡から直ちに上海、北京へ行けるというような、そういう航空路が開かれて参りまするならば、日本と中国との通商の上におきましても、大いに開かれる道はあると思いますが、そういう点には重大な関心を持っておりまするが、具体的の問題になりますと、相当のそういういろいろな問題を解決し、また障害を排除していかなければならぬというふうに私は考えておるのでございまして、御趣旨につきましては、これは私はほかの委員会でも申しておりまするごとく、中ソとの間にそういう航空路が開かれることを私は考えて、また希望を持っておりますが、何分まだ潮どきを一つ考えていかなければならぬと、こういうふうに私は思っております。最近レニングラード交響楽団がジェット旅客機に乗ってくる、これについて羽田に乗り入れさしてもらいたいということが、今外務省との話もございます。運輸省におきましても検討いたしました結果、まあ円満に、私どもはそうなるように希望をいたしておりますが、こういうような問題が本年から出てきて、両国の間に次第にそういう道が開かれてくるならば私は幸いであると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/51
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052・高良とみ
○高良とみ君 関連して。今、運輸大臣からお話を伺って、よく御趣旨わかったのです。ところが、その羽田の飛行場は拡張しないと大型のジェット飛行機は入らないように伺っておったのですが、さっそくにレニングラード交響楽団を乗せたソビエトのスピードのある航空機が入るのに、今の羽田の施設で十分なのでございますか、その点伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/52
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053・林坦
○政府委員(林坦君) 一九五九年ないし六〇年、六一年ころに出て参りますいわゆる大型の旅客ジェット機につきましては、現在の羽用空港は、常時いつでも離発着できるという状態ではございません。このたびのソビエトのジェット旅客機は双発でございまして、かつ、滑走距離も短かくて済みます。現在の羽田で間に合うと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/53
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054・高良とみ
○高良とみ君 関連して恐縮ですが、この前、インド航空と日本との協定が申し込まれましてから長いこと放置されておった。というのは、その間にいろいろな調査もあったのでしょう。仄聞するところによりますと、申し込みをしてから一年近くも決定がとられなかったことがあります。今後、こういうソビエトの飛行機を入れることは、向うからこれを要望してきました場合に、インド航空の例から考えまして、日印の外交上の善隣関係が開拓されて、後にも、時間をかけて許可になったというところから考えますと、ソビエトと日本の国交の善隣関係もまた開拓を要するでしょう。けれども、技術的な面であまり長引かずに協定に到達する可能性が考えられるのか。あるいはインドの場合も政治的な要素を含んで御取捨をなさるのかどうか、その点、運輸省としての御意見伺いたいと思うのです。インドの遅延した理由もついでに伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/54
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055・林坦
○政府委員(林坦君) インドの問題につきましては、私、今ちょっと詳細にここで存じておりませんので、どういう理由でおそくなったか存じませんが、いろいろ話が出ましても、それに関連して技術上の問題もあり、また、いろいろほかの国との協定をやっておりましたりなどいたしますと、こちらでそれを担当する者が実は非常に少いものでございますので、ほかの国との協定の都合上、どうしてもやむを得ず時期を延ばして、協定の時期を先にすることができないと、こういったような場合もたびたびございます。これはもちろん専門家を大ぜい養成しておけばよろしいのでございますが、なかなか航空協定となりますと、技術上の問題、また航空に関するいろいろな法律上の問題にしましても、あまり多く専門家がおりませんために、そういうことになっておそくなっておる場合もございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/55
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056・市川房枝
○市川房枝君 航空法は民間航空機の航行の安全と発展をはかることがおもな目的となっております。従って、操縦士とか航空士とか、機関士等の技能証明なんかについては詳細な規定があるわけです。しかし、客室乗務員であります、主としてスチュワーデスでありますが、何も規定がないようであります。しかし、航行の安全及び発展については、スチュワーデスの役割もある程度私はあると思うのですが、大臣はスチュワーデスについてどういうふうにお考えいただいておりますか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/56
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057・中村三之丞
○国務大臣(中村三之丞君) まあ正面の規則からいいますと、今航空局長の話によりますと、労働基準法の問題になるそうですが、しかし、このスチュワーデスの養成というのは、これはやっぱりその航空会社でやっていただくということは必要であります。また現に日本航空はやっておるようでございます。昨年の雲仙でございましたか、非常に沈着な行動をスチュワーデスがいたしまして、まあ私は僭越でございましたが、表彰などもいたしまして、感謝の意を表しましたが、スチュワーデスの養成、その訓練等につきましては、私は日本航空会社などに十分やってもらうように指示していきたい、やはりサービスでございますから、これはことに国際線において一そう必要であろうと思います。この点は航空会社を督励いたしまして、十分日本のスチュワーデスが世界的に非常に評判がいい、また事実よくやる、こういうふうに指示していきたいと、また努力いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/57
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058・市川房枝
○市川房枝君 日本航空会社は盛んにサービスの向上を宣伝しておいでになり、その結果、このごろ日本航空の業績もだいぶ上って、株の値段も上っているようでありますが、しかし、スチュワーデスのサービスということになりますると、あの人たちのまあ労働条件といいますか、が問題になってくる。非常に疲れてしまってふらふらになっているのじゃ、サービスも何もできないのでありますし、あるいは今大臣のお話しになりました雲仙号のときのスチュワーデスの乗客に対する避難のときの態度といいますか、それは大へんよかったとおほめにあずかったのですが、しかし、それもやはりスチュワーデスが疲れていたのではできない。そのスチュワーデスがほんとうに、いわゆる今大臣のお話のありましたような点について十分働けるということについては、今申しましたその労働条件が問題ですが、それで、これはまあ私ちょっと知っている人がありまして、本委員会で航空法が審議されるに関連して、実はその労働状態を聞いてみたのであります。今まで私どもはそのスチュワーデスの非常に派手な方面だけを新聞その他で見ておりました。そうして俸給も相当いいらしい、ずいぶん若い女の人たちの一つのあこがれの職業であるというようなふうな感じを持っておりましたが、私が調べましたところでは、非常に、最近といいますか、ここ二、三年来労働強化になっている、みんな非常に疲れているのだというような状態を聞いたのでありますが、そういう労働状態は、これは運輸省は関係はない、それは労働省の関係なんだと、こういうことになりますか、どうですか、これは政府委員からでもけっこうですが、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/58
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059・林坦
○政府委員(林坦君) ただいまお話のございました通り、スチュワーデスその他の職員の労働関係は労働省の管轄でございまして、私どもの方は直接的ではございませんが、やはりスチュワーデスの乗務状況その他につきましては、われわれも関心を持っております。従って、常にいろいろとその労働が強化になりはせぬかということについては考えておるのでありまして、日本航空その他に対しましても、それらについてときどき指示を与えたりなどいたしております。現実にスチュワーデスの勤務時間、だいぶ労働強化になっていはせぬかというお話でございますが、もちろん仕事の性質上、比較的この勤務時間が普通の勤務のように、たとえば一日に何時間というふうに非常に区切って服務するのでなくて、ときによってそれを少し延ばしてやらなければならぬという場合がございます関係上、疲れることはもちろん疲れる場合があるのでございますが、とにかくこの労務につきましては、大体一カ月の乗る乗務の時間は百時間程度を限度とするというように会社の服務の規則ではきめております。現実には、もちろんそれを連続して乗るような場合には、勤務表の作成に当りまして、それが、たとえば十二時間をこえないように勤務表を作成するとか、あるいは長距離の国際線その他に乗るような場合には、複式にいたしまして、今申しましたように時間によってこれを交代をさせるといったようなことも、もちろん考えてやっております。何といたしましても、婦人でございます関係上、やはり疲れるという場合はもちろんあるでございましょうが、十分休息等についても心を配るようにいたしまして、その辺の問題については、まずまず現在のところ、病気のために服務にたえられないといったようなことは、ほとんどございません。これは日航だけの問題でございますが、かつて一度、九州ぐらいで盲腸炎を起したというようなことがあるくらいでございまして、あまり服務の関係で病気になるといったような事例はまだないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/59
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060・市川房枝
○市川房枝君 航空局長さんでいらっしゃいますか。——まあ労働強化にはなっていない、十分に休憩というか、あるいは休日なり何なりを与えている、こういうお話なんですが、私の聞いているのとはだいぶ違うんです。航空会社の方の労務担当の方ももちろんおいでになりますが、これは監督は、さっき申しました通りもちろん労働省、直接には学働基準局が監督するわけでありますが、何んでも直接応待に出た方が、一体スチュワーデスにも労働基準法の適用がありますかというような——そういう点も御存じでなかったということもありまして、まあ労働基準法からいえば、深夜業だけは例外が認められております。ですから、それは国際航空で夜も乗っていることは、これは認められておるわけなんでありますが、それに関連してのいわゆる休憩時間とか、今の交代者を乗せるというようなダブル何とかといいますか、というようなこともあるいはあるらしいんですが、一体地上で休むというときと、航空機の運航している間で休むんじゃ、ほんとうに休んだことにならないのじゃないか。ことに最近は大へん御繁盛で、乗客も満員といいますか、お乗せになるそうです。そうすると、スチュワーデスのすわる所がないというか、結局おりるとき、上るときに皆ベルトをする、ベルトの数だけは乗せられる。スチュワーデスはときによってははばかりの中で休むというようなこともあるそうです。それから夜なんかも、ほとんど寝られないといいますか、これはお客の方も寝られないこともありますが、しかし、交代してやったって、機上でやっぱり休めないというふうな状態、あるいは機上に乗っている、機上での労働時間というものは、これは地上における労働時間とだいぶ違う。結局今の労働基準法そのものにつきましても、そういうような業態があまりなかった時代に考えられているので、やはり労働時間八時間というのも結局、地上の労働と同じことに考えられているのです。何でも、航空医学の方の意見でありますと、機上の生活を一年生活すると三年ぐらい年をとっちゃうというようなことをいわれているということを聞きますが、機上における労働条件というものを単なる機械的なものに考えないで一つ考えていただきたい。それで休みなんかも、毎週一日あることになっておりますが、しかし、四週について四日でもよろしいと基準法できめております。しかし、その四日は、その月の中で四日間とらなければならない、こういうことにきめられているのに、だんだん休みが繰り越しになっておりまして、たとえば一月の休みの人がやっとで三月になってとれたとか、だんだん繰り越して先へやって、結局休んでいないのです。それは私スチュワーデスの乗員の人数が今の航空機の数に比較して少い、足りないのではないかということもいえるのではないかと思うのですが、そういう規定なんかも実際はどこにも規定がないわけです。こういう状態、それから生理休暇なんかもやはり事務的な、地上で事務的な仕事をやっている婦人と違って、航空機なんかでは非常に苦痛を感ずる場合が多いというわけです。これは交通労働者の場合、婦人労働者の場合にもやはり同じことがいわれるのでありますが、ところが、航空会社は生理休暇の希望を出しましても、許してくれないといいますか、認めない。これは明らかに労働基準法違反でございます。もしも婦人労働者が要求したときには与えなければならないという規定があったはずです。そういう点も実は聞いております。それからサービスとして、会社は日本服をお着せになる、これは外国のお客にしても、見たところいいのですけれども、しかし、スチュワーデス自身からいえば、そういう服装のときに、もしも事故があったならば、やっぱり活動できない、非常にその点が心配だといいますか、あまり望んではいないらしいのですけれども、そのスチュワーデスに服装をかえさして、そうしてサービスをさせるというようなことをやっておいでになるようですけれども、こういう点も一体どうなのか。それから労働状態を言いますとまだたくさんありますが、賃金も私ども聞くと、あまりよくないし、たとえば夜間に対する夜間手当なんていうものもはっきり出ていない。乗務手当なんていうものも、一時間にして幾らとあるようですが、夜間手当、いわゆる深夜業に対する手当は、やはり基準法で二五%と、ちゃんときめてあるので、それも実際実施しておいでになるかどうか、ちょっとはっきりしないのであります。あるいはスチュワーデスの停年制を三十とおきめになっている。それから結婚したらやめる、やめなければならない、こういうことになっているそうでありますが、外国の飛行機会社についてみますると、もちろん就職のときには独身の者ということが採用条件になっているところが多いそうであります。しかし、途中で結婚しても、その理由でやめさせられることはない。それから、そういう停年制なんかはないのだということでありますが、日本航空は三十、三十といいますと、ちょっともう結婚適齢に少しおくれてしまっているのですが、そういう人たちは三十になるとやめなければならない。やめて、それから結婚するというわけにもいきませんし、非常に私はこれは不親切な規定だと思います。そういう点、なおいろいろありますが、これは私は労働省の方の政府委員でも来ていただいて伺った方がいいかもしれませんが、きょうは一応運輸省当局の私は注意を喚起するといいますか、そういう点も私は注意を払って下さらなければ、国際航空といいますか、民間航空の安全、あるいは発展はできない。今のところスチュワーデスのそういろう労働状態なんていうものは、表向きにはあまり実は知らされていないのです。いないのですが、もしこれがよくないということが私ははっきりしたら、希望者は少くなるし、あるいは日本の飛行機はそういう点でこのサービスを幾らしようと思ったってよくできないということになれば、その点で私は国際競争から置いてきぼりを食うことにななるのじゃないかと思いますので、これは一つ私の希望として申し上げておきまして、あとまた適当な機会にこの問題をもう少しほかの委員の方々も御参加いただいて御研究を願いたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/60
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061・林坦
○政府委員(林坦君) スチュワーデスの問題につきまして、非常に御心配いただきましてまことにありがたいのでございますが、日本航空の場合は、乗務員組合が非常に強力でございまして、従いまして、勤務条件等については、明確に定められております。従って、それが厳守されているのが実情であろうと私は信じております。また、スチュワーデスが席がなく便所にいたりというようなお話もございましたのですが、私はそういうことはあり得ないことであると考えておりますが、よく調べてみます。また機上で交代勤務をする場合には、大体仮眠の場所がきめてあるはずでございます。その他、今お話のございました休日等につきましては、もちろん休日は、日曜日と国民の祝日はそうでございますし、そのほか年末年始は七日間、それから会社の創立記念日、これが一日ございます。もちろんこれらにつきましては、交代勤務の関係上、お話のございましたように振りかえてとっております関係上、ある人の場合はちょうどそのすぐ前に休みをとっておったような場合には、あとに回って相当先になるという場合もあり得るかと存じますが、一応休日の数等については、そう不満足なものではないと存じております。また生理休暇を与えないというようなことを言われましたが、この生理の問題につきましては非常に気を使っておりまして、この編成をいたします場合に、生理関係で乗れないものは申し出ることになっておる、それを避けて編成するように大体やっておるはずでございます。もちろんそういうことがございますれば、私どもの方でもよく注意するつもりでございます。それからまあ和服の問題につきましてお話がございました。もちろんこれについては、いろいろ御意見のあることは私どもも聞いておりまして、ああいうことをするのがいいのか、あるいはそういうところまでやるのはどうかという点もございますが、一応まあ日本の和服を着ましたそのスチュワーデスの場合は非常にまあ外人のお客等にも珍しがられ、また喜ばれるというような点もございまして、営業の面からそういうことをやらしておるのでございますが、御意見のございます点、よくまたわれわれの方も考えてみることにいたします。なお、停年とか、結婚をしたらやめるとかいうお話でございましたが、これは要するにスチュワーデスという仕事が、結婚生活等と必ずしも——要するに家庭をあけておる場合が多い関係もございますし、またいろいろの関係から、スチュワーデスとしては必ずしも結婚した婦人は適当でない場合もございますので、これはまあ停年とかあるいは結婚をしたらやめるというお話でございますが、もちろんこれは職業を離れるという意味ではございませんので、乗務に服しないということだけでございます。ただ、現実にまだ仕事を始めましてからわずか五年ほどでございます関係もあって、そういうところまでいっておらぬのでございますが、もちろん結婚をしたらやめるというのは、スチュワーデスとしての乗務はしない、こういうまあ規則になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/61
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062・市川房枝
○市川房枝君 今、航空局長から強力な組合があって、組合の方でやっておるのだというお話で、なるほどあそこに組合があるようでございますけれども、まあ私が聞いたところによりますと、その地上の業務が従事員の方が多いのでありまして、機上には特別な操縦士とか機関士という、そういう人以外にはスチュワーデスだけです。スチュワーデスだけの組合の一つの分会というようなものがないので、なかなかスチュワーデスの問題が組合の問題として取り上げられないというか、もう一つは、これは何といいますか、一般社会がスチュワーデスに対して持っておる感じと同じように、非常に派手でそれで非常に月給もいいのだ、外国へも行ってこれるのだというような多少感情的な問題もあるやに聞くのです。そういう点でどうもスチュワーデスの問題が強力に組合として取り上げられるところまでいっていないのでありまして、これは組合自身にも考えていただかなければならないと思いますけれども、ただ組合があるから、組合の方との話の上で現在の労働状態が行われておるのだというふうにお考えになりますと、それは違うと私は思いましたので、ちょっと申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/62
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063・柴谷要
○柴谷要君 航空局長は何か日航の代弁者のようなことを言っておられるけれども、そういうことはいけない。今、市川先生から貴重な意見を提供されたのは、現実に直面しての問題ですから、あなたは勤務日報でも調べて十分準備をしておきなさい。次回にこの問題は取り上げて行います。きょうはこれで航空法を上げなくちゃいかぬから、一応打ち切りにして、この問題は十分に後日討議しなければならぬ。十分資料を整えておきなさい。そうしてかくあるだろうと、そういう想定ではだめだ、だから、こういうものを指摘されたら、そういう事実があるかないかということをきちっとあなたの方で調べておきなさい。しかも、今のような場合には、真剣にあなたが指示してみたって実際にやらなければ何にもならない。自後、そういう問題を十分あなたの方で研究されて資料を集めて用意しておいて下さい。
続けてですが、質疑も終ったようですから、本問題についての議事進行を一つ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/63
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064・天田勝正
○委員長(天田勝正君) 承知いたしました。
それでは各委員の御質疑のうち、不満足な点もあろうかと思いますが、それらは運輸事情等の調査の場合にさらに御質疑等を願うことにいたしまして、本法案の審議に当っての御質疑はこの程度で打ち切りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/64
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065・天田勝正
○委員長(天田勝正君) 御異議ないと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/65
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066・天田勝正
○委員長(天田勝正君) 御異議ないと認めます。
それではこれより採決に入ります。
航空法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の御挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/66
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067・天田勝正
○委員長(天田勝正君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成その他の手続につきましては、慣例により委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/67
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068・天田勝正
○委員長(天田勝正君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。
なお、報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は、順次御署名を願います。
多数意見者署名
成田 一郎 江藤 智
三木與吉郎 植竹 春彦
中村 正雄 大倉 精一
柴谷 要 岩間 正男
市川 房枝 高良 とみ発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/68
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069・天田勝正
○委員長(天田勝正君) 本日は、これにて散会いたします。
午後零時十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102813830X01619580401/69
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