1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十四年三月十日(火曜日)
午前十時二十四分開議
出席委員
委員長 堀川 恭平君
理事 木村 守江君 理事 佐藤虎次郎君
理事 瀬戸山三男君 理事 二階堂 進君
理事 南 好雄君 理事 中島 巖君
逢澤 寛君 井原 岸高君
砂原 格君 橋本 正之君
服部 安司君 松澤 雄藏君
石川 次夫君 塚本 三郎君
武藤 武雄君 山中 吾郎君
山中日露史君
出席政府委員
建設政務次官 徳安 實藏君
建設事務官
(大臣官房長) 鬼丸 勝之君
建 設 技 官
(住宅局長) 稗田 治君
委員外の出席者
専 門 員 山口 乾治君
—————————————
三月十日
委員松澤雄藏君及び兒玉末男君辞任につき、そ
の補欠として寺島隆太郎君及び柳田秀一君が議
長の指名で委員に選任された。
—————————————
同日
委員寺島隆太郎君及び柳田秀一君辞任につき、
その補欠として松澤雄藏君及び兒玉末男君が議
長の指名で委員に選任された。
—————————————
本日の会議に付した案件
公営住宅法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一二二号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/0
-
001・堀川恭平
○堀川委員長 これより会議を開きます。
公営住宅法の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。まず本法に対する補足説明を聴取することといたします。
稗田住宅局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/1
-
002・稗田治
○稗田政府委員 ただいま議題となりました公営住宅法の一部を改正する法律案につきまして、逐条的に御説明申し上げます。
まず第二条の定義の改正について申し上げますと、第二号から第四号まで中「賃貸する」という従来の表現を、より的確なものとするため、これを「賃貸するための」に改めることといたしました。
次に、第十一条の二の改正につきましては、これを公営住宅の管理の章の最初に、管理の基本理念として新たに入れることとしたのでありますが、従来ややもすればなおざりにされがちであった公営住宅の管理につきまして、事業主体は積極的にその適正かつ合理的な運営を行うように努めなければならないことといたしました。
第十二条の改正は、家賃の決定方法についての改正でありまして、従来は、土地の取得または宅地の造成に要する費用を償却するものとして算出した額を、家賃の限度の算定の基礎の中に入れておりましたが、用地費については、従来の償却という考えをやめ、かわりに自己所有地及び借地の場合をも含めて、地代相当額として算出することとし、それを家賃の限度の算定の基礎に加えることといたしました。
なお、土地の取得もしくは使用または宅地の造成につき、国または他の地方公共団体から補助その他の援助を受けた場合の地代相当額については、政令で定めるところにより算出した額を控除することとし、また地代相当額全般についての具体的な算出方法については政令で定めることといたしております。
次に、同じく家賃の決定方法についてでありますが、第三項の家賃の減免に関する規定につきまして、その事由を明らかにし、入居者の収入が著しく低額である場合等において、事業主体が家賃の減免を行うことができることといたしまして、収入のごく低い者に対する家賃減免の措置を容易にしようとするものであります。
第十二条の二の改正につきましては、敷金に関する事項の規定をここに一括したのでありますが、第一項は現在の第十四条のただし書きの規定をそのままここに移した規定であり、第二項は、敷金の運用にかかる利益金につきまして、新たにその使途を規制した規定であります。すなわち敷金を事業主体が運用いたしまして、その運用による利益金がある場合には、これを入居者の共同利益のために還元するのが妥当であると考えられますので、そのような利益金につきましては、事業主体は今後これを共同施設の建設に要する費用に充てる等、公営住宅の入居者の共同の利便のために使用するように努めなければならないことといたしました。
次に、第十三条の改正についてでありますが、今回新たに家賃を変更する場合の合理的な限度を設け、事業主体がこの限度以内で家賃を変更する場合には、事業主体が家賃決定の限度以内で家賃を決定する場合と同様、公聴会を経ることを要しないものといたしました。この家賃変更の限度は、第十二条の家賃決定の限度——この限度は公営住宅の家賃の一般的な限度として妥当なものとされておりますが、この限度を、物価の変動状況を考慮して算定し直したものでありまして、一般的には同じく家賃の限度として、妥当なものと考えられるのであります。
この家賃変更の限度の算定につきましては、建設大臣が、住宅対策審議会の意見を聞き、建築物価の変動を考慮して、地域別に定める率を、補助以外の建築費に乗じて得た額を基礎として、第十二条の家賃決定の限度の算定方法と同様な方法で行うことといたしております。
第十三条の二の改正は、家賃または敷金の徴収猶予につきまして、家賃減免の場合と同様に、その事由を明確にいたしたものであります。
第十四条の改正は、従来は、事業主体が入居者に対し、公営住宅の使用について、家賃及び敷金以外の金品を徴収することができないこととなっておりましたが、右以外に不当な義務を課した事例が見受けられましたので、今後は、事業主体は、公営住宅の使用に関して、入居者に不当な義務を課することができないようにするものであります。第十七条の改正につきましては、過去において事業主体が行なった修繕の実情などを考慮した結果、その修繕義務の範囲を拡大することとし、事業主体は、家屋の外部の付帯施設で、建設省令で定めるものについても、修繕しなければならないことといたしました。第十六条の改正につきましては災害、不良住宅の撤去等の事由により、事業主体が公募によらないで特定の者を公営住宅に入居させることができる場合は、従来そのような目的のために公営住宅を建設した場合に限定されておりましたが、今後は、このような場合に限らず、公営住宅が途中で空家になったような場合でも、右のような事由のある者について公募によらないで、当該公営住宅に入居させることができるようにいたしました。
第十七条の改正につきましては、災害公営住宅について入居者資格を緩和し、災害発生後三年を経過したときは、罹災者以外の者でも入居することができることといたしました。第十九条及び第二十条の改正は、事業主体が第十七条に入居者資格として定められている条件以外の条件をさらに定め、または変更した場合についての規定でありますが、事業主体の長は、このような条件を定め、または変更したときは、一カ月以内に建設大臣に報告しなければならないこととするとともに、建設大臣は、その条件が著しく適正を欠くと認めるときは、事由を示して、当該事業主体に対してその変更を命ずることができることといたしました。
次に、第二十一条の二の改正について申し上げます。先ほどの提案理由の説明にもありましたように、公営住宅の入居者で、その収入が政令で定める基準をこえることとなった者が、国などの補助金額を考慮して、特に低額になるように算定された家賃でその公営住宅に入居していることは、適当と認められませんので、次のような措置を講ずることといたしました。
すなわち第一としまして、公営住宅の入居者は、当該公営住宅に引き続き三年以上入居している場合において、政令で定める基準をこえる収入のあるときは、当該公営住宅を明け渡すように努めなければならないこととし、この場合において、事業主体は必要があると認めるときは、当該入居者が他の適当な住宅に入居できるようにあっせんする等、その明け渡しを容易にするように努めなければならないことといたしました。
第二に、割増し賃料の徴収としまして、事業主体は、公営住宅の入居者が右に該当する場合において、当該公営住宅に引き続き入居しているときは家賃変更の限度の額、家賃がその限度をこえている場合においては、その家賃の額でありますが、家賃変更の限度の額の第一種公営住宅にあっては〇・四倍、第二種公営住宅にあっては〇・八倍に相当する額以下で、入居者の収入に応じて政令で定める額を限度として、条例で定めるところにより割増し賃料を徴収することができることとし、なお、この場合の割増し賃料については、家賃の場合と同様に、その減免または徴収猶予をすることができることといたしました。
第二十二条の改正につきましては、事業主体の長が入居者に公営住宅の明け渡しを請求することができる場合の明け渡し事由として、家賃のみならず割増し賃料を三カ月以上滞納した場合をも追加いたしました。
第二十三条の二は、収入状況の報告の請求等についての改正でありますが、すでに述べたような家賃の減免、徴収猶予または収入超過者に対する他の適当な住宅へのあっせん、割増し賃料の徴収等の措置を行うにつきましては、まず公営住宅の入居者の収入の状況を把握しなければなりませんので、事業主体の長は、必要に応じて、その入居者の収入の状況について当該入居者もしくはその雇い主、その取引先その他の関係人に報告を求め、または官公署に必要な書類の閲覧もしくはその内容の記録を求めることができることといたしました。
第二十四条の改正は、公営住宅等の譲渡に関するものでありますが、事業主体は、特別の事由のある場合でなければ公営住宅等を譲渡することができないこととするとともに、その敷地をも譲渡しようとするときは、その敷地の譲渡についても、建設大臣の承認を得なければならないことといたしました。
第三十条及び附則第四条の改正はそれぞれ第二十条の家賃等の変更命令及び第十二条の家賃の決定方法の改正に伴うものであります。
最後に、改正法律の附則について御説明いたします。
まず第一項においては、この法律は、公布の日から起算して一カ月を経過した日から施行する旨を規定いたしております。
第二項においては、事業主体が、第十七条に入居者資格として定められている三つの条件以外の条件をこの法律施行前に定め、または変更した場合については、そのことについて、事業主体の長は、改正後の第十九条の規定による建設大臣に対する報告を行わなくてもよいことといたしております。
第三項について申し上げますと、これは、改正法律第二十一条の二の収入超過者に対する措置についての経過措置でありますが、この法律施行の際現に公営住宅に入居している者につきましては、賃借期間の定めがないとき及びこの法律施行の際における賃借期間の残存期間が三年以内であるときは三年の猶予期間を、その残存期間が二年をこえるときは、その残存期間に相当する期間の猶予期間を置くことといたしました。
以上、本法案の概要を御説明いたしましたが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/2
-
003・堀川恭平
○堀川委員長 質疑の通告がありますから、これを許すことにいたします。山中日露史君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/3
-
004・山中日露史
○山中(日)委員 私、公営住宅法の一部を改正する法律案についてお尋ねをする前に、政府に住宅政策の基本的な考え方等について若干お尋ねをしてみたいと思います。
政府は、道路政策に対しましては非常に積極的に整備五カ年計画を樹立せられまして、一兆億円の予算で着々と実行に移しつつありますことは、大へんけっこうなことだと私ども考えております。反面住宅政策につきましては、戦後十三年たっておるのでありますけれども、道路との関係を見ますと、まだ住宅政策については非常に積極的なものを見ることができない点があるように思われるのであります。戦後の住宅問題と申しますると、御承知のように、戦災で多くの家屋を焼失いたしましたので、とりあえずこういう家のない人たちに住宅を建てる、こういうことが根本となって住宅政策というものが行われてきたわけです。最近におきましては、住宅難はまだ緩和されておりませんけれども、大体住むに家なき人というのはなくなりまして、どうにかこうにか住むだけの家はあるという形にはなってきておりますけれども、実際住むにふさわしい家、こういうような考え方からいいますと、ただ住むだけの家はあるけれども、まだまだ住宅としてふさわしい住宅政策というものが行われておらないような感じがいたすのであります。申すまでもなく、この住宅政策というのは、大体勤労階層の住宅難を緩和すると同時に、やはり勤労者がその住宅に住んで、あすへの生産の意欲をその住宅の環境の中から感じて、そうしてあすの労働生産性を向上していく、こういうようなことに住宅というものの重点が置かるべきであって、ただ戸数さえふやしていけばいいというようなことではいけないのではないか。つまり言いかえまするならば、今後の住宅政策というものは、ただ住む家だけを作ればいいというのではなしに、一つの社会保障的な、社会政策的な意味の住宅政策というものが行われていかなければならないのではないか。つまり先ほども申し上げましたように、勤労者が住むにふさわしい家に入って、そうして住居というものに対する安定感を持ってあすの労働に従事する、勤労者あるいは低額所得者のいわゆる社会政策的な方向に住宅というものを考えていく、こういうふうに持っていかなければならないものではないかというふうに考えておるわけですけれども、こういう点について、政府の方では、将来の住宅政策というものを、ただ家さえ建てればいいんだというだけの考え方で、やはり住宅難緩和というだけの考え方でいくのか。さらにもう一歩進めて、そういった一つの社会保障的な意味の住宅政策というものを考える、こういうお考えでおるのか、この辺についてのお考えはどうかお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/4
-
005・徳安實藏
○徳安政府委員 ただいま御質疑の点につきましては、先般大臣がこの委員会において明らかにしたと思いますが、従来とても社会政策的な見地に立って、相当そうした気持を織り込んでやっておりましたことは、御承知の通りでございます。しかし今日になりましては、もっと今お話しのような社会政策、社会保障という面を十二分に織り込んだ政策を打ち立てねばならないという考え方で、再検討の時期にきておるということを、先般大臣が申しておりましたが、私もそういう気持で今後は検討いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/5
-
006・山中日露史
○山中(日)委員 そこで、最近の住宅難は大体どのくらいの戸数があるかといいますと、これは新聞その他の発表、あるいは統計等を見ますと、大体において現在では、約二百三十万戸くらい戸数が足りない。こういうようなことがいわれておるわけであります。ところで昭和三十四年度の住宅政策によりますと、本年は五十六万戸ということでありますが、そのうち公庫あるいは公営あるいは公団、こういったつまり政府の資金の入っておりまするいわゆる公共住宅というのが、大体三十四年度では二十一万一千戸、あとの三十四万九千戸というものは自力建設ということになっておるわけですが、公共住宅が大体二十一万一千戸ということで、それだけ国の力でもって住宅を建てていくというわけでありますけれども、御承知の通り毎年々々災害がありまして、災害の結果家屋が流失をする、あるいは滅失をする、崩壊をする、こういうようなことで、だんだん家屋が災害のためになくなって参ります。また家屋が非常に老朽化して参ります。こういうふうなことで、これを補うために建てなければならない戸数というものが、大体二十万戸ぐらい毎年あるというようなこともいわれておるのでありますけれども、そうしますと、結局積極的にその住宅難を緩和するために、二十一万一千戸の計画はいいにいたしましても、毎年々々そういうふうに災害その他老朽とかいうことで、そういう消極的な面で建てなければならぬというようなことが毎年起ってくるのであります。こういった場合に、今の政府の政策で、果して今の二百三十万に達する住宅難緩和ということができるのかどうか、こういう点についてのお考え方はどうなっておりますか、一つお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/6
-
007・徳安實藏
○徳安政府委員 ただいまの御質問でございますが、大体年々人口の増加その他によって自然的に必要を生じて参りまするもの、及び先ほどお述べになりました、あるいは災害あるいは火災等によりまして滅失するもの、そういうものを長い間の統計をとりまして、その期間のそうした数字を基礎にいたしまして、現在不足しておるものと年々自然的に不足を生ずるものを合計して勘案した数字が、すでに示してある数字でございまして、その内容につきましては、住宅局長から御説明申し上げるようにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/7
-
008・稗田治
○稗田政府委員 お答え申し上げます。三十三年の四月現在で、住宅の不足戸数が二百八万戸というふうに数えてあるわけであります。それでそのほかに、ただいまお述べになりましたような災害による滅失、それから新たな世帯増というようなことで、約年間二十万戸の新規需要があるわけであります。それで、政府の今後の住宅難解消に対する計画といたしましては、これらの新規需要を充足しつつ、三十二年度を起点といたしまして、国民経済の伸びに応じて、おおむね五カ年で安定させようという方針に基きまして、三十四年度の戸数計画も立てられたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/8
-
009・山中日露史
○山中(日)委員 そこで、この民間の自力建設の分でありますけれども、昨年は三十二万一千戸という計画で、三十四年度は三十四万九千戸、こういうことになっておるのでありますが、一体この昨年の三十二万一千戸の自力建設は、実際にはどういうふうに建設されておるのか、その実情はどうか、こういう点を一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/9
-
010・徳安實藏
○徳安政府委員 大体想定いたしております数字は、やや満たしておるように統計ではできておりますので、そうした数字的なことは、局長から御説明申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/10
-
011・稗田治
○稗田政府委員 三十三年度の民間の自力建設でございますが、昨年の十二月までの統計によりますと、前年度を上回っておりますので、三月までには、大体予定しました戸数は建設されるのではないかというように考えておるわけでございます。前年度と対比しまして、十一月末でございますが、約一割の増加となってございます。従いまして、年間では三十二万戸の見込みの戸数に達するのではないかというように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/11
-
012・山中日露史
○山中(日)委員 私の方で調査いたしました資料によりますと、昭和三十三年度、つまり昨年度の自力建設の目標は今申し上げましたように三十二万一千戸であったわけです。ところが実際に建った建物は、約三十八万戸であった。結局昭和三十二年度における実績というのは、計画による民間自力建設三十万戸に対して約二十八万戸であったということで、計画よりも下回っておるのではないかと思う。なお今お話のありました昭和三十三年四月から十一月までの計算によりますと、新築、増築合せまして二十一万七千四百戸というような数字があるのですが、このような状態で参りますと、果してこの昭和三十四年度の二十四万九千戸はこなせるかどうか。もうすでに今月は三月に入っておるわけですが、こういった建設の進捗率から見ますと、自力建設というのは、非常に目標を下回るのではないかというようなことが懸念されるわけでありますけれども、そういう点についてはいかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/12
-
013・稗田治
○稗田政府委員 お答え申し上げます。仰せのごとく、三十二年度の民間の自力建設におきましては、当初見込みを立てましたときは、年間三十万戸建つのではないかというので計画を立てたわけでございますが、実績におきましては、これが二十八万三千戸になったわけであります。先ほど申し上げました三十三年度の四月当初の不足戸数と計算しました二百八万戸の中には、その計画のズレを見込んで二百八万戸というふうに申し上げたわけであります。三十三年度の自力建設の見込みにつきましては、四月から十一月末までの実績は二十一万七千四百八戸でございますが、前年度の同月の建設戸数と対比いたしましてその伸び率を考えますと、三月末までには三十二万戸程度の自力建設は予想されるというように見込んでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/13
-
014・山中日露史
○山中(日)委員 最近、民間においても家を建てて貸すという、いわゆる借家営業というものは非常に成り立たない。特に家賃の値上げ等につきましても、いろいろな制限がございまして、そして借家は、昔は投資事業として相当採算がとれたのですけれども、最近はもう家を貸してしまうと、なかなか採算がとれないということで、借家業というようなものがだんだん少くなってきておる傾向があると思います。そういう傾向を見ますと、果して民間の自力建設というのは、特殊な人は別としまして、一般の人は、そういう借家を建てるということはなかなかないのじゃないか。そういう点から考えてみますと、この自力建設というものはだんだん戸数がふえていくというよりも、むしろ低くなっていくのじゃないかというようなことも懸念されるわけでございますが、そういう点についてのお見込みといいますか、そういう点は、どういうふうにお考えになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/14
-
015・稗田治
○稗田政府委員 民間の自力建設につきましては、もちろん仰せのごとく、いろいろの経済状態によって変動が多いわけでございますが、ことに賃貸住宅として供給される量というものは、あまり今日の住宅難の解消には期待できないものもございますけれども、従来の実績から考えますと、やはりいろいろ経済情勢の影響はございますけれども、大体国力の伸張といいますか、そういった大きな方向に向いまして、やはり年々戸数はふえていっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/15
-
016・山中日露史
○山中(日)委員 私は、その点非常に心配いたしておるのでありまして、それは公庫住宅その他でもって補っていくということではありましょうけれども、自力建設というものにあまり大きな期待というものは、将来は持てない。従って今後の住宅政策については、自力建設ということにあまり期待を持たないで、もっとやはり国の助成その他に力を入れてやっていく必要があるのではないかということを痛感しておりますので、その点だけ申し上げておきます。
次に、建設省では一千円くらいの家賃の住宅を五千戸くらい建てるというような計画がおありになって、大蔵省に予算を要求した、それがだめになったというようなことも聞いておるのですが、それから同時に公団住宅、これは御承知の通り非常に家賃も高いのでありまして、しかも入居資格も非常に高い基準をつけておりまして、二万円とか二万五千円の収入がある者、あるいは三万二千円くらいの人では、なかなか今の公団住宅の方へ入るということは困難だと思う。そこで今の公団住宅の高い家賃——先般聞いたところによりますと、私の知った人で、どこの公団住宅かよくわかりませんけれども、六畳、四畳、三畳、これで家賃が八千二百円、それで四万五千円以上収入がなければ入れないというようなことだそうです。そうすると、公団住宅にそういう高い家賃で入る人は少いわけです。従って一千円という低家賃で入る住宅と、それから公団住宅でもそういう高い家賃でなしに、その中間くらいの家賃で入れるような計画というものもあったように聞いておるのですけれども、それは一体どういうふうになったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/16
-
017・稗田治
○稗田政府委員 御質問の通り、予算要求の段階におきましては、公営住宅においても、大都市の市街地の密集地区に住んでおるごく低額所得者、これらの方を救済するためには、職業とか生活事情からいきまして、やはり郊外には移れないという方が大部分でございますので、そういう方を救済するためには、密集地区内に公営住宅を建てなければならない。そうしますと、地価が高いものですから、これを高度利用しなければならない。高度利用いたしますと、御承知のように、日本は地震を心配しなければならないものですから、建築費も非常に高くなって参るわけでございます。従いまして、家賃がまた高くなるという非常に妙なめぐり合せになるわけでございます。そこで、われわれが考えましたのはこれを高率の八割補助にして、なお地方の事業主体の方も、家賃計算におきまして、従来の公営住宅の計算の仕方とは別な方法で計算していただくというので、千円程度の家賃の、土地を高度利用した形の、つまりアパートでございますが、そういうものを建てて、密集市街地に住んでおるごく低額所得者を救済しようというように考えたわけでございます。それから公団の方におきましても、公団の一部に中堅層の下の部分に対する施策として、公団の資金コストを三分といったようなもので、公団の乙種住宅を考えたわけでございますけれども、いろいろ財政等の事情もございまして、残念ながら要求したことは、予算上は実現しなかったわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、大都市の密集市街地に、そういう非常に貧しい、所得の少い方が住宅に困っておるという現状は、否定できないものでございますから、三十四年度におきましても、公営住宅の第二種の一部をさいて、事業主体の方と打ち合せをしまして、小都市では千円くらい、大都市では千五百円くらい、生活保護世帯の住居費の補助等とのにらみもございまして、そういう程度で中層耐火の、土地を高度に利用した公営住宅を供給しようというように現在計画を進めておるわけでございます。
それから公団住宅の方でございますが、公団住宅の乙種住宅も、実現はできなかったのでございますけれども、これも、公団の実施の面においていろいろ工夫をしまして、たとえば新婚世帯用の住宅を、従来のよりも多少規模は小さくなるわけでございますけれども、家賃の負担力等を考えまして、実際の家賃が少し安いような家賃を計画いたしておるわけでございます。
なお、公団の住宅におきまして、八千円であるとか、非常に高い住宅が間々あるわけでございますけれども、それは公団としましては、市街地の便利なところに公団住宅を建てるために、足貸し、げたばき住宅等を建設するわけでございますが、土地の非常に高いところにできて参りますので、高さも非常に建物を高くする、従って鉄骨等も使いますので、やはり建築費そのものも上ってくるというような関係で、ときどきそういう高い家賃のものがあるわけでございますけれども、全体の公団の賃貸住宅の中に占める割合はごくわずかな。パーセントでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/17
-
018・山中日露史
○山中(日)委員 ただいまの建設省の計画は、残念ながら大蔵省で予算措置がとれなかったということで、まことに残念ですけれども、何か聞くところによると、大蔵省の方では、単に財政上の問題でなしに、何かそういった収入の階層別の調査が十分にできておらぬ、そういうものを十分に調査した上でというようなことで、予算措置がとれなかったのだというふうに聞いておるのですが、そうではなかったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/18
-
019・徳安實藏
○徳安政府委員 ただいまの山中委員のお説の通りに、私どももそうした気持には一つも変りはございませんで、同感でございます。従って予算編成に当りましても、その方針で大蔵省ともしばしば折衝したのでありますが、急に転換することのできなかったことは、まことに残念だと思っております。ただ、先ほどのお話のような点につきましては、昨年の十一月に住宅の調査を総理府がやったそうでございまして、その結果がことしの六月、七月ごろには判明するそうでございます。そうした綿密な調査に基いてから考えてもいいではないかという意見もございまして、すべてはその後に譲ろうというようなことに話し合いがついたのでございますが、ただいまのようなお話は、私どもも、もちろん大臣も同感でございますから、極力転換をいたしまして、そうして住宅政策の根本的な再検討を、その住宅の調査と相待ちましてやりたいという考え方を持っておるわけでございますから、御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/19
-
020・山中日露史
○山中(日)委員 金がないからできないといえばそれまでのことですけれども、そういうことでなしに、調査云々ということで大蔵省が渋ったとすれば、私はおかしいと思うのですよ。大体建設省は、住宅局もあって、そういう調査は専門家ですよ。ですから、あなたの方で十分に調査して、これだけの階層のものがおる、これだけの収入のものがおる、その場所はこういうところなんだ、こういうことは、もうあなたの方は専門家で、十分に調査ができておるわけなんです。その調査に基いて、先ほどお話しのように、それぞれ大蔵省に要求されるわけだと思うのですが、大蔵省の方で、調査云々というようなことを一つの理由にして、その予算措置をとらないというような考え方は、私はおかしいと思うのですが、その辺は、実際どうなんでしょうか。ただ金がないからということなのか、金はあるのだけれどももっと調査してから、こういうことに言うのですか、その辺がちょっと私どもは理解できないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/20
-
021・徳安實藏
○徳安政府委員 もちろん財政方面においても十二分でないことも、事実でございましょう。あるいは、先ほど申し上げましたように、住宅政策に対する根本的な再検討ということが確立をいたしますれば、今の予算内におきましても、先ほどお話のありましたように、低所得者の方に相当大幅に振り向ける方法もとり得ると思います。でありますから、金額ばかりでなしに、この政策面において、やはり建設省の考え方と大蔵省の考え方と多少の食い違いもございますし、また調整にも困難な点がございまして、遺憾ながら私どもの希望通りに目的が達せられなかったということでございますが、しかし、今のお説のようなことは、ほとんど何人もが承知しておることでございますから、もうこの程度で住宅政策を再検討をして、そうしてもっとより強い社会政策面の精神を織り込んだ政策を立てねばならぬということには、大体みんなの方向が一致しておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/21
-
022・山中日露史
○山中(日)委員 ぜひ一つ今お話しのように、一千円あるいは乙種公団住宅というものは強力に推進をして、実現できるようにお願いしたいと思います。
次に、公営住宅の問題に入るわけでありますが、政府の方では、昭和三十三年度から三十五年度まで公営住宅三カ年計画というものを承認されておるわけですが、ことしはちょうど第二年度目に当るわけで、この三カ年で建てまする計画は、十五万七千戸ということになっておるようであります。そこで初年度が、昨年度は四万七千戸今年度は四万九千戸こういうことになっておりまして、三年目、つまり残る年度は、六万一千戸ということになるわけなんで、こういうような実績から、この計画で、果して公営住宅三カ年計画というものが予定された三カ年の間に消化できるのか、こういう点についての御計画なり見通し、どういうふうになっておりますか、これをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/22
-
023・稗田治
○稗田政府委員 お答え申し上げます。お説の通り、第三期公営住宅の三カ年計画におきまして、十五万七千戸が決定されておるわけでございますが、三十三年度は四万七千戸、三十四年度は四万九千戸でございますので、三十五年度は六万一千戸が残っておるということになるわけでございます。それで政府の住宅政策におきまして、従来とも公営住宅がその根幹をなしておったわけでございますが、さらに、先ほど政務次官からも御答弁申し上げましたように、低額所得者のための公営住宅を重点的に、本年の六、七月ごろ出て参ります統計等の資料にもよりまして、住宅政策の質的転換も行おうということでございますので、この六万一千戸という戸数をぜひとも確保したいというように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/23
-
024・逢澤寛
○逢澤委員 関連して。先ほど住宅政策の根本について検討すべきだというお話があったのですが、私もぜひ必要だと思う。特に今質問者の方からいろいろの御質問があるのを拝聴しておりまして、現行の住宅政策というものに非常に欠陥があるのではないかということを痛感しておるのです。それは、今質問者のお話の中にもありましたように、自力建築というものはきわめて困難であるということをいっておる。特に戦前の貸家といいますか、貸住宅というものについては、相当日本では特に大都市では発達した歴史を持っておる。ところが戦後の今日で、いろいろの政策の上から貸家というものの普及がきわめて困難である、こういうことを指摘せられておる、これはその通りである。それは、いろいろの政策がしからしめておるところである。そこで、住宅政策を再検討して、需給のバランスの調整がとれるようにするにはどういうようにするかということが根本的に必要である。それは、政府の公的力だけに依存するところに私は欠陥があったと思う。これはもう七、八年も十年も前からこの委員会では論議されておるところなんです。従って、政府の公的力だけに依存するところにこの住宅政策の大きな欠陥がある。だから、これを解消するには——われわれ与党の者がこの席でそんなことを言うのはおかしいと思うのですが、やはり民間のそうした貸家に対する助長をするというような政策をとる必要があると思う。そうすれば、今質問者の方から指摘せられたようなことも解消してくる。ただ政府の限られた財政の中で、それだけでこれを完遂しようと思うところに、私は若干の欠陥があると思う。従って政策によって、投資した資金に対しては所得税をどういうようにするとか、あるいはいかなる方法をもってしても民間の建築を助長するというような政策をとる必要がある。助長が旺盛になってくると、投資者もまたそれに関心を持つ、こういうことになってくると思う。しかるに今まで住宅政策に対するいろいろの質疑応答を拝聴いたしておりましても、ただ政府の資金によって普及をする、これのやり方がどうも緩慢ではないか、こういうところにだけ論議が集中しておるのでありますが、今政務次官からのお話のように、住宅政策は根本的に是正すべきである。再検討すべきである、こういうお話から考えてみると、今後は政策によって、自立建設に対する助長を遂行するというようなことも、若干住宅政策の中に考えていただいて、あるいは与党もそのことを政府に対して進言していただいておるとは思いますが、一そうそれらのことも関心を深くしていただきたい。そうすれば、両々相待って、ただ限られた政府の公的資力だけでなしに、一般の民間における住宅建築意欲を高揚する、こういうところからこの問題が解決してくると思う。要は、建築が多くできれば、だれがやってもいいのだ。人口は九千万なら九千万という限られた人口なんだから、その人口の中で絶対数が不足するからこの問題が起っておるのですから、だれが建てても、増加すればそこに普及されてくる、充実してくるということになるのです。こういうようなことに対しての住宅局のお考えなり、あるいはまた将来、そういうような民間住宅に対していろいろな政策によってこれを支援し、そうしてそれを促進するというようなお考え方があるかないかということを、ちょっとお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/24
-
025・徳安實藏
○徳安政府委員 ただいまのお説、まことにごもっともでございまして、自力住宅、あるいは国民の力によってできる住宅の建設をできるだけ促進するようにというお説は、私どもも同感でございます。従って再検討するに当りましては、まだ全部が固まっておるわけではございませんが、国家の力でやりまする住宅政策はできるだけ社会政策的な見地に立脚いたしまして、そうした精神を強く織り込んだものにする。一般のものに対しましては、できるだけ自力住宅を建てていくというような二本立の方針に変えなければいかぬのではないかと考えておるのでありまして、それには、いろいろの矛盾も過去においてはございまするし、ただいまもお話しのように、国税、地方税等の減免等の問題ももちろんございましょう。あるいはまた現在も残っておりまする、過去の地代家賃統制令等の問題もすでに解決しなくちゃならぬ時期にきておると思います。これらかいろいろな関係で取り残されたままで放置されていることは、まことに残念でございますので、住宅問題に対する再検討とからみ合って、こうした問題も近く根本的に解決せねばならぬ、かように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/25
-
026・逢澤寛
○逢澤委員 今そういうようなお考えがあるということを聞きまして、私ども意を強うしておるのですが、特にこの機会に御注文申し上げておきたいことは、住宅をこしらえるにはどうしても金が要るのだから、税の問題ももとより必要でありますが、金融の面においても、ある程度の考慮を払うということになりますると、私は相当促進ができると思いますので、参考までに申し上げておきます。この点につきましても、一つ御考慮をいただきたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/26
-
027・山中日露史
○山中(日)委員 次に公営住宅法の一部を改正する法律案の内容についてでありますが、この不均衡是正というのと収入の増加による割増し賃料というのと二つの問題があるわけですが、まず第一に、規定の賃料のほかに割増し賃料をとるという観念と家賃の変更とは、同一なのか違うのか、それを一つお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/27
-
028・稗田治
○稗田政府委員 お答え申し上げます。まず割増し賃料の性格でございますが、これは公営住宅法の第十二条または第十三条の規定による家賃と同様に、公営住宅の利用の対価という考え方でございます。従いまして、一般的には、私法上はこれは家賃と同様でございます。しかし公営住宅につきまして、この家賃と割増し賃料と言葉をかえておりますのは、公営住宅は、御承知のように低額所得者のために低家賃で住宅を供給するというので、国庫補助等を入れて、本来公営住宅に入居すべきその階層を目的とした家賃、それを公営住宅の家賃という表現を使っておるわけでございます。従いまして、割増し賃料も、私法上は家賃と同様でございますけれども、公営住宅の本来の目的のための家賃と区別するために、割増し賃料という言葉を使ったわけでございます。従いまして、家賃の変更に該当するかどうかという点でございますが、公営住宅法の十二条の家賃の限度あるいは十三条における家賃の変更の限度でございますけれども、これは、やはり本来公営住宅に当然入居すべき低額所得者の階層のための家賃の一般的な妥当な額という限度を示しているわけでございますから、収入がふえて、もはや公営住宅にそのまま低家賃の使用料で入居しているのが適当でないと判断される方につきましての割増し賃料は、十三条による家賃の変更には該当しないというように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/28
-
029・山中日露史
○山中(日)委員 公営住宅法という一つの特別の法律がありますので、特に家賃の割増しという言葉を使われたのだと思いますけれども、私は、やはりこれは本質的には家賃の変更だと思う。手続上の問題——公聴会を開くとか開かないとかいう問題とも関連しますけれども、要するにすでに定まった賃料に割増しをとるのですから、結局それだけ家賃が上ったことになるわけですから、家賃というものの本質的な考え方からいえば、やはり家賃の変更だと思います。
そこでお聞きしたいのは、この不均衡是正でもってでこぼこをためるという根拠は、結局公営住宅法の十三条ですか、物価の変動であるとか、あるいは公営住宅間の不均衡、いろいろな家賃変更の客観的条件というものが出てくるわけです。そういうことから公営住宅間の家賃のでこぼこを是正していくということは、公営住宅法に法的根拠があるわけです。これは公営住宅法があってもなくても、民法の規定でも、比隣の家賃に比較して特に安過ぎるとか、こういった場合においては、一方的に家賃の変更増額ができるわけです。それを公営住宅法では、さらに明確に十三条で規定しているわけです。ところがその家賃というものは、申すまでもなくその建物の建設費だとか地代とか、あるいは税金、そういういろいろな要素をひっくるめて、それを何年間に償却するかを見る。こういうようなことが大体家賃をきめる基礎になっておる。ところが問題は、なるほど低額所得者を公営住宅の方にできるだけ入れて、そうして収入の上った者をほうり出していくということは、政策的には私どももうなずけるのですけれども、ただ問題は、その収入が上ったから家賃を上げるんだ、こういう一つの観念というものは、私は非常に問題だと思う。先ほど申し上げました通り、家賃というものは入っている人の収入いかんによって上げたり下げたりするものではないのであって、そういった客観的ないろいろな家賃増額の条件というものが備わって、初めてその家賃というものは変更されていくわけなのです。入っている人の収入が幾ら上ったからといって、大家さんが家賃を上げる、それではふえ工合が悪くなったら下げるかというと、そうじゃない。本質的にはふえ工合によって家賃を上げ下げするものではない。そうすると、これは政策的には、なるほど収入が上ったから、お前はそこから出ていって、高い家賃の方に入れ、収入の少い人を入れてやるという考え方はわかりますけれども、基本的には、収入が上ったからお前は出ていけ、出なかったならばそれだけ家賃を上げて取る、こういうことがつまり家賃の観念の中にもし入るとすれば、普通一般の民間の家賃に対する考え方というものに大きな影響を来たすのではないか。これは、公営住宅という一つの公共的なものは加味されておりますけれども、国がやっておるところの公営住宅とか、あるいは地方のやっておる公営住宅で、収入が上ったということで家賃が上るんだ、名目はどうであっても上るんだということになりますと、今一般民間の家主というものは、家賃を上げたくても、いろいろ借家法その他制約がありまするし、なかなか上げられない。そうすると、あいつは近ごろ景気がいいからということで家賃を上げる。政府の方でも、この通り収入が増加していれば、家賃を上げることになっているじゃないか、こういうような家賃に対する考え方というものが、一般民間の家賃というものに対して非常に大きな影響を来たす、こういう点を私は非常におそれるのです。ですから、私は今の割増し賃料というものは、言葉は違っても家賃の変更増額には違いないのです。そういうふうに、家賃というものの基本的な考え方が、入居者の収入の増減によって家賃を上げたり下げたりするということは、間違っていないか、こういうふうに私は考えるが、その点についてどういうふうにお考えになるか、承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/29
-
030・稗田治
○稗田政府委員 お答え申し上げます。収入増加者に対する割増し賃料の徴収が民間の借家等に影響があるのではないかという御趣旨かと思いますが、この割増し賃料の措置は、公営住宅が一定額以下の収入階層のものを低廉な家賃で入居させるということを本来の使命としていることを考えまして、とられた措置でございます。すでにこのような階層でなくなったものにつきまして、そのままの家賃で、低い家賃でおることが適当でないと考えられましたので、本来家賃から控除されておりましたその補助金の一部を、補助金分によりまして低額になっておった一部を徴収するということにしたわけでございます。従って、民間の家賃の増額とは、その本質が異なっておるわけでございます。と申しますのは、割増し賃料を加算いたしましても、公営住宅の家賃に〇・四倍なりあるいは〇・八倍の家賃を加算いたしましても、一般の建設費として家賃の利回りを考えますと、公団住宅程度並みに、金利が四分と四分一厘といったようなところで家賃が決定されるようになっておるわけでございます。それが最高の限度にいっておるわけでございます。従いまして、一般の民間家賃よりもなお低い家賃でございますので、本質的にも違うと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、御意見のような点につきまして、一般に誤解を招くおそれはあるかと思います。従いまして、あらかじめそれらの趣旨並びに内容につきまして、周知徹底に十分われわれとしましては努力をしなければならぬというように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/30
-
031・山中日露史
○山中(日)委員 そこで、割増し賃料を取るという考え方は、これは別に収入を上げるというのがねらいではないと思いますが、結局この割増し賃料を取るねらいというのは、そういう人は出ていってもらう、こういうところにねらいがあると思う。そこで、一生懸命働いて収入がいくらかよけいになってきて、どうにか生活にゆとりもできたというとたんに、今度は高い家賃の方に出ていけということになるわけです。三年間の据え置きはありますけれども、出ていくわけです。そこで問題は、結局努力義務を与えているわけですから、一生懸命努力はするでしょう。しかし明けないという場合、明けないから割増し賃料を取るということになると、割増し賃料さえ払っておれば、そこをのいてもらうという強制力というものは全然ないわけです。そうすると、結局低額所得者を入れるという考え方は、割増し賃料を取るということによってとまってしまう。実際問題として、今入った人は、そう簡単に出ないと思う。ねらいはそこを出てもらってほかの者を入れるという、そういう強制的に明けるという方法があるのですか、割増し賃料を払わないからといって強制力があるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/31
-
032・稗田治
○稗田政府委員 入居基準をこえた収入の者に対しまして、この法案をわれわれがいろいろと研究いたしましたときも、明け渡しの請求ということをここに入れるべきかどうかということは、十分論議を尽したわけでございますけれども、今日の住宅事情におきましては、明け渡しの請求をするというのは、必ずしも今日の実情に合っていないというので、明け渡しの努力義務を課するということにしたわけでございます。従いまして、割増し賃料を払っておれば、引き続きおれるわけでございますけれども、割増し賃料を払っておりましても、努力の義務は常に課せられておるわけでございます。そういうふうにわれわれは考えておるわけでございます。なお割増し賃料そのものを納めないというような場合は、これは公営住宅の家賃と同様でございまして、滞納を長く続けておれば、当然明け渡しの請求ができることになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/32
-
033・山中日露史
○山中(日)委員 きまった家賃を払わなければ滞納ですから、明け渡しできることは当然なことですが、問題は、この法律のねらいは、結局低額所得者を入れる、そうして収入のふえた者は出てもらう、こういうことをねらいにして、それを何とか実現させるように努力しようということだと思うわけです。ところが、今申し上げた通り、実際には困難だと思う。努力義務といっても、これは道徳的な一つの義務ですから、強制力はないわけです。そうすると、結局割増し賃料さえ払えばそこにおってもいいという考え方になるわけです。事業主体としては、出てもらいたいというのですが、向うにすれば、強制力がないわけですから、そこにいる。それはどうすることもできない。そうすると、結局法律を改正して出てもらいたいというねらいは、実質的にはその効果はないということになりはせぬか、ですから、私の言いたいことは、そういう割増し賃料を取って金を高く取る、それでいやなら出ていけ、これは、割増し賃料を取るということで、間接的に明け渡しを強要するというような考え方に立っていると思う。収入を上げることが主ではないのですから、割増し賃料を出すのはいやだったら出ていけ、結局明け渡しというところにこの割増し賃料を取るというねらいがあるわけです。ところが、それは強行できない。そうすると、結局これはただ従来の家賃より高い家賃を事業主体がとっておる、収入がふえたというだけの結果に終ってしまう。そうすると、政府のねらっておる明け渡しということは実際的にはできない。ですから、私どもの言いたいのは、そういうような政策よりも、先ほど申し上げたように、そういう人たちに出ていってもらうという考え方の前に、そういう人たちの入り得る、いわゆる乙種住宅であるとか、そういった新しい住宅を建ててやるというところに積極的に政府は努力すべきじゃないか。そういうようにこそくに、収入が上ったから出ていけということだったら、割増賃をとるということだったら、そこにそのままおさまっていいわけです。こういうことでは、結局政府の考えておる低額所得者を入れるというねらいは、割増賃をとるということ自体において目的が達せられないのではないか。こういうふうに考えられるわけなんですが、その点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/33
-
034・稗田治
○稗田政府委員 割増し賃料によって明け渡しを促進するという意味ではないわけでございます。少くとも低額所得者のための低家賃のままでそこにおるのは適当でない、従って、そういう補助金が入ったような形の家賃そのものでおるというのは、住居費の負担能力から考えても適当ではないというように考えたわけでございます。なお、われわれが今日の住宅事情から考えまして、いきなり明け渡しの請求という方法をとらなかった理由は、たとえば公団住宅等につきましても、今日は問題地域だけに限られて公団住宅の供給が行われておるというような場合でございますので、それで、全国的に公営住宅法を適用する場合等を考えますと、公団住宅の家賃が必ずしも高過ぎない場合もあるわけでございますけれども、全国的にこの法律を実施していきます場合に、いきなり明け渡しというのは、やはり実情に合わないのではないかというように判断したわけでございます。
それからなお、こういった努力義務を課しても、明け渡しの実効が上らないのではないかというお話でございますが、実は公団住宅であるとか、あるいは住宅金融公庫の融資による協会の賃貸住宅等におきまして、省令等を改正いたしまして、この公営住宅から収入が上ったために退去していく者については、優先的な入居ができるような措置もあわせて考えたいというように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/34
-
035・山中日露史
○山中(日)委員 この問題は、いろいろ議論になりますから、この程度で差し控えておきますが、まだ私としてはちょっと納得がいかぬ点もありますので、これは後日に譲ります。
次に、公庫住宅のことについて、関連してお聞きしたいのでありますけれども、この貸付の限度が法律上八割までということになっておるのだが、実際は七割五分しか貸し付けない、従って頭金二割五分を調達しなければならないということになっておる。これは、何とか八割までということにいかぬものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/35
-
036・稗田治
○稗田政府委員 御質疑の通り、鉄筋の耐火構造のものにつきましては八割五分、それから木造等につきましては八割まで貸せるようになおってるわけでございますが、現在公庫住宅の融資におきまして七割五分で実施しておりますのは、希望者が非常に多い、従って多くの住宅困窮者に融資をしたいというので、七割五分でやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/36
-
037・山中日露史
○山中(日)委員 なるべく多くの人に公庫の金を利用させたいという気持は、よくわかるのですけれども、実際問題としては、どうも二割五分の頭金というものは調達が容易でない。それからまた用地取得について——今度は、政府の方で用地取得については考えておるようでありますけれども、この頭金と用地取得についても、やはり何割かの補助しかないわけですから、せっかく公庫から金を借りたいと思っても、そういうものの調達が容易でないという人が相当おると思うのですよ。ですから、これは八割までは何とか貸すように、法律がそうなっているのですから、これはあなた方の考えでできるのですから、ぜひこれはそういうふうにしていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。
次は、土地担保の制度といいますか、これが昨年一千六百戸というものを考えておったのが、三十四年度は八百戸に減ってしまったということになっておるようでありますが、このように土地の所有者が自分の土地に建物を建てて、それを賃貸するというような場合においては、その建築費については全額補助というようなことで、このいわゆる土地担保というものをもう少し助成していくというふうな方向にいくべきじゃないか。それを、どうして今年度より来年度はそういうふうに減ってしまったのか、その辺を一つお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/37
-
038・稗田治
○稗田政府委員 土地担保の融資につきまして、多少戸数が減ってございますのは、同じような施策が金融公庫の中高層の融資で行われておるわけでございます。若干の違いがあるわけでございますが、そういう土地を高度に利用する、また土地を持っている方に、住宅のついた高層建築を建てるというような中高層の融資が片方にございますので、若干融資の利率等について違う点はございますけれども、多少需要が減って参った。毎年そういうような需要を勘案しながら、多少の動きがあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/38
-
039・山中日露史
○山中(日)委員 その点は、ただお聞きした程度でけっこうです。
それから次は、公庫で増築の場合に融資をするということになっております。その増築融資を、来年度は大体三万戸見込んでおるわけですね。ところが昭和三十年、三十一年の計画とその実績、それから三十二年、三年の計画とその実績、こういうものを見ますると、ずっと計画よりも下回っておるわけですね。ところがまた今度三万戸というものが出ておるわけなんで、それはどういうふうな見通しでこういうふうに実績からまた上回ったことをやっているのか、その辺の見通しというか、計画はどうなっているのか、これも一つお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/39
-
040・稗田治
○稗田政府委員 お答え申し上げます。三十四年度の金融公庫の計画におきまして、増築が五千戸伸びてございますのは、御質問の通り、増築資金の融資を当初開始しましたときにおきましては、増築資金の融資につきまして、なかなか周知徹底ができておらなかった。従って、利用者があまり気がつかずにおったという点があったわけでございます。最近におきましては、増築融資の制度が非常に普及いたしまして、実は三十三年度の増築融資におきましても、もう全部十月末程度で出払っておるようなわけでございます。そうして申請がたまっておるという状態でございますので、三万戸程度の増築融資は、十分消化できるという見込みで、ふやしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/40
-
041・山中日露史
○山中(日)委員 私ばかり聞いておったのでは恐縮ですから、大体次会に譲りますが、最後に、公団住宅の問題についてお尋ねしたいと思います。
最近、新聞の報道によりますと、住宅公団の汚職事件というようなものが出ておるわけです。荻窪、阿佐ケ谷ですか、あそこの二団地を、公団が用地を買収するについて問題があったわけです。内容は、私どもはつぶさには承知いたしておりませんが、この新聞の報道によりますと、結局支所の調査係長というのがブローカーと結託して、不当に高い土地を買わされた。実際の土地所有者に渡った金というのは坪について四千五百円か五千円である。ブローカーが公団から受け取った金というものは、実際には一坪について九千百五十円あるいは九千五百円、倍額にひとしいところの金をとったわけです。そのさやをふところへ入れたということであります。結局国民の税金をそれだけブローカーの手にとられたという内容の事件であります。公団が用地を買収する場合に、一体どういう手続でどういうことをやっておるのか、それらについて建設省は、監督官庁としてどういうような監督を行なっているのか、こういうことをあらかじめ一つお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/41
-
042・徳安實藏
○徳安政府委員 ただいま御指摘を受けました案件につきまして、まことに私どもも遺憾千万だと思っております。従来から公団の宅地の取得につきましては、しばしば注意を与えておりました。私自身も多少のうわさ等を聞きまして、こうした不正事件がないようにということを、注意をしたこともございます。今回の事件につきましては、新聞等に伝えられますると同時に、内容の調査を命じまして、関係者を招致してその実情等を聴取したわけでございますが、この買収につきましては、私どもが得ました報告によりましても、まことに遺憾の点があるやに見受けられます。と申しますことは、審議会を設けまして、価格の点におきましては、近隣等の価格を比較検討をして、どこからも非難を受けないような価格でやったということを主張いたしておりますが、その点につきましてはただいまお話しのように、あるいは四千円で買えたものを九千円で売りつけるというような点が、新聞に出ておりますけれども、これはただいま建設省が取り調べ中でございますので、果して公団から参りました金が、どの程度搾取されておるかということにつきましては、その調書を待とうということで、今その調書のくるのを待っているわけでございますけれども、各人々々に対する詳細な金額の取引に対する明細書というものは、ただいま持ち合せておりません。しかし、この買い上げにつきまして、公団の方では、一応個々の地主にもその旨は伝えたと申しておるのでありますけれども、もし伝えたとすれば、ああいうことに承知をするはずはないと思うのですが、一応の委任状を持っておるブローカーが参りまして、一括して相談をしたというところに、今回の事件の大きな原因があるようでございます。そうした行き方が一体いいのか悪いのか、これは常識で考えましても、ああいう大きな土地を買い取るのでありますから、そうしたブローカーを入れることが便利であろうとも、やはり公団と地主とが直接の折衝をし、かりにまた一本のまとめ方によって話をするにいたしましても、各地主にはその価格等が明らかになるように処置をすべきであったと思いますが、そういう処置については、したとは申しておりますが、多少遺憾な点があったではなかろうかと思うのであります。
なお、買収に当りまして、ブローカーが一般の地主から公簿面積で買い取り、そうして公団は、実測の面積で買ったというような点もあるそうでございまして、そうした点につきましても、公団の方では、実測で買いますということを各地主には伝えたと申しておりますけれども、これももしそれを伝えたならば、地主の方が公簿面積で買い取られることを承知するはずはないだろうと常識上考えるのでありまして、こうした点が今司直の手に入っておるわけでございますから、そうした取り調べによりまして明瞭になると思います。先般も関係者等を呼び出しまして、私からも大臣からも、厳重に今後のことにつきまして注意をするように申し合せをいたしますと同時に、この案件につきまして、詳細な調査を命じておるのでございますが、数字的なことにつきましては、局長から御答弁を申し上げたいと思うのでございます。まことに遺憾なものでありまして、おそらくああしたやり方というものは、今後は改められるかと思いますし、最近聞きますと、ああしたブローカーを相手にしてやったのは東京だけでは、ほかは全部そういうことをやっていないという報告を受けておるわけでございます。しかし万一にも間違いがあったらいけませんから、この点については十二分に注意をいたしておるわけでございます。確かに、この事件につきましては、公団の方にも相当手落ちがあるのではないか、また従って、私どもの方の監督も十分しておるように思っておりましたけれども、やはり欠くるところがあったのではないかと思います。ただいま調査をいたしておりますから、詳細なことは追って御報告申し上げますけれども、ただいまわかっておりますところの数字的なことにつきましては、局長から御報告を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/42
-
043・稗田治
○稗田政府委員 お答え申し上げます。問題となりました土地は、二つの団地でございまして、杉並区成宗一丁目二百三十六番地の阿佐ケ谷団地というものと、杉並区西田町一丁目五百七十一番地の荻窪団地と称するものでございます。それで、公簿面積は、阿佐ケ谷におきましては一万二千九百二十八坪、荻窪におきましては一万七千二百三十九坪でございまして、実測面積は、阿佐ケ谷が一万二千七百六十六・九坪でございます。それから荻窪が一万九千八十七・二坪でございまして、関係地主は、阿佐ケ谷が二十名、荻窪が三十名でございます。あっせん者は八木昌徳という武蔵野土地有限会社の社長でございまして、いずれも売却の申し込みは三十一年に行われたものでございます。阿佐ケ谷につきましては、売却が昭和三十一年十月二十六日に申し込みがありまして、また荻窪におきましては、三十二年三月二十日にあったものでございます。それで、阿佐ケ谷につきましては坪九千百五十円、荻窪につきましては九千五百円という額で契約が結ばれたものでございます。総金額は、実測精査によるとなっておりまして、阿佐ケ谷が一億三千五百十一万七千百三十五円、荻窪が一億八千百四十二万四千四百四十五円ということに相なっておるわけでございます。公団におきまして、価格の決定に際しましては、固定資産税の評価額と実際に取引されておる地価との比率、それから近傍類似の取引された実例、そういうものを勘案して定めたわけでございますが、なおそのほかに、公団等に売却する場合には、所得税等におきましても多少の有利な点もございますので、そういう点を考えまして、多少割引して、推定された価格よりも低く買ったわけでございます。価格評定の場合の近傍類似の実例を申しますと、阿佐ケ谷の方におきまして、三十一年の九月に坪当り一万二千円で取引されておるのと、三十年の三月に九千円で取引されたのと、三十一年十一月に一万一千円で取引されております。それから荻窪におきましては、三十一年の九月に一万二千円、三十年三月に九千円、三十年一月二十九日に八千八百円、二十一年の十一月二日に一万二千円、二十九年の四月に二万円というような売買価格の実例があるわけでございます。なお一部新聞等に報道されたもので、非常に安く手に入れた実例があるようでございますが、東京都は、御承知のように緑地制限をかぶっておるところがございます。そういうところでございますと、土地の坪数の一割くらいしか建物を建ててはいけないという制限がかぶっておるわけでございます。安く買収が行われたという実例として新聞等に報道されました個所につきましては、大体そういうような、公団が住宅用地として利用するのにはいずれも不適当な土地であったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/43
-
044・山中日露史
○山中(日)委員 私も別に詳しくその内容を調査したわけではありませんので、よくわかりませんが、今お話しのように、問題になった土地は低い湿地地帯で、ほとんど安いところらしいのですが、その金額は果してどのくらいだったか私もわかりませんけれども、新聞報道では、先ほど申し上げたように、四千円から六千円くらいのところが九千五百円とか九千百五十円ということで取引されたということになっておるわけです。まあこれはよく調査してみなければわかりませんが、一つ十分に調査した上で、あらためて御報告を願いたいと思います。
そこで、公団が用地を買収する場合には、今まではブローカーの手を経てやっておる場合と、そうでなく、直接地主から買う場合もあると思うのです。どちらが割合に多いのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/44
-
045・稗田治
○稗田政府委員 大体件数にしまして三割程度が、今日までの実績では、ブローカーのあっせんによったように聞いております。しかしいろいろこういう事例にかんがみまして、できるだけ地主と直接、あるいは地方公共団体を通じて話をまとめる、そういう方向に向っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/45
-
046・山中日露史
○山中(日)委員 ブローカーの手を経て買う場合に、ブローカーは、申すまでもなく宅建法によって成規の手数料というものをおそらく売主、買主から相当取ると思うのです。公団がブローカーの手を経て取引した場合に、公団としては、宅建業者に対して成規の手数料を払っているのかどうか、この点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/46
-
047・稗田治
○稗田政府委員 宅地建物取引業関係の手数料でございますが、これは、東京都の方で額はきめておるわけでございます。売却した者と買収した者と両方の合算で取引金額の何パーセントというようにきめられておるわけでございます。それで、公団があっせん業者に対してあっせん料を払ったかどうかという点でございますが、現在までの取引においては、払っておらないようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/47
-
048・山中日露史
○山中(日)委員 払っておらないというのは、請求がないから払わないということですか、請求されれば払わなければならないのじゃないのでしょうか。その点はどういうことになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/48
-
049・稗田治
○稗田政府委員 これは、地主の代理に本人がなっておるわけでございます。従いまして、全権を委任された代理者として扱っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/49
-
050・山中日露史
○山中(日)委員 問題はそこだと思うのです。つまりこれが正式なブローカー的な行為、つまり双方の売買のあっせんをするということであれば、割合にこういう問題は出てこないのです。ところが、いわゆるブローカー的な行為でなしに、つまり土地所有者の委任者で代理人という形でくるものですから、公団の方では、代理人と契約すれば、それで本人との間に契約ができたのと同じだという、法律的な効果だけを考えてものを処理している、こういうことになっているのです。ですから、私どもは、少くとも公団がこれだけの大きな土地を莫大な金で買うのですから、先ほども次官のおっしゃった通り、そんな単なる代理人というような人——いわゆるブローカーが代理人になっているわけです。代理人ならば、土地の所有者というものが代理人になって、そうして土地の所有者の代表として交渉するのならいいのだけれども、ブローカーが代理人という形でくるわけです。公団の方では、それを法律的には地主の代理人と見てやっても有効でしょうけれども、そういうところに不正が起ると思う。そういうブローカーが代理人ということになると、ブローカーと土地の所有者との間の取引関係は、結局公団の方では知る由もない、また知ろとしないわけです。ですから、そこにそういう差額がとられる。地主の方では、一定の限度をきめて、四千円から六千円ぐらいということでまかしてあるわけです。ブローカーが公団の方に高く吹っかけて、そうして差額をとって、地主の方には言っておらない、こういうことでやられているわけです。ですから、今後は必ず地主と代表者というものとの話し合い、あるいは個々の話し合いというものが行われなければ、この不正は私はなくすることはできないと思う。同時に今度の問題にしても、地主に対して公団は、坪幾らで買うのだということは、全然知らしめておらないらしかった。知っておれば問題になりますから、次官の言う通り、知らなかったらしい。地主に知らせないような取引をしているというところに、こういった大きな問題があっと思います。これは、新聞も大きく取り上げておりますし、今後公団が公団住宅を建設して貸す場合におきましても、こういう問題が公団の方にあったとすると、今度公団の家を借りる場合におきましても、家賃の問題、あるいはいろいろの問題で、入居者はこういう問題を頭に置きますから、不当な家賃ではなかろうかということが念頭に置かれるわけです。ですから、今後の公団住宅の政策の上に大きな影響を来たすと思うのです。私は、別にあなた方のこの問題に対する責任を追及するという強い考えを持っておりませんけれども、ただ今までのこういった汚職とか不正事件におきましては、そういう行為をやった者は、刑事上、司法上の責任もむろんとらされます、同時にまた行政上の措置として、あるいは懲戒免職その他の処置はとると思うのですけれども、どうも上の、直接もしくは間接の監督の任にある者が責任を負う場合が少いように思うのです。むろん行政上の服務規律の関係はよくわかりませんけれども、やった行為の軽重によってはその上の責任も私はあると思う。あるいは譴責とか、あるいは減俸とか、あるいは免職、こういうものがあると思うのですが、どうも実際には、そのやった人間だけが処罰をされて、そうしてその上の人は、どうも監督不行き届きで相済まなかった、今度から十分に気をつけます、こういうことだけで終っておる。ですから、一般にこういう不正を警戒するためには、ただそういうことだけではいけないのではないか。やはりそういう上の監督の地位にある人は、直接の刑事上の責任は、共犯関係がない限りはないわけですけれども、一つのやはり行政上の、あるいは政治上のといいますか、そういった面で責任をとらなければならない。そういうことによって、私はこういう問題を将来防止することになると思う。つまり実際に悪いことをした者だけを罰すればいいのだということでなしに、そういうことをしたために、その上の人までがこのような責任を負わなければならぬのだ、従ってこういう不正ということは自分だけでは済まないのだ、こういうような観念を植えつけることが、こういった汚職などの問題を未然に防ぐために、私は当然とるべき処置だと思うのです。どうも今まではやった者だけが処分をされる。上の人は、監督不行き届きで相済まなかった、今後気をつけますということだけでは、やる者は、もし見つかったら、自分だけ責任を負えばいいのだというような甘い考えでこういう不正をやる。自分の行為のために、上の人にまで迷惑をかけるのだ、また現に上の人がその責任をとったのだ。こういうことにならなければ、私はこういった汚職とか行政上の不正行為を将来防止することにはならないと思う。それこそ私はこの公団の汚職事件に限らず、すべてそういうふうに、いわゆる政治的な責任というものがやはり強く要請されなければいけないのではないか、こういうふうに考えておるわけです。この問題につきましては、まだ検察庁で調べておりまして、どの程度まで発展するかわかりませんけれども、そういうことが明白になった場合におけるそういった監督上の責任については、一体どういうふうにお考えになっておるか、これをお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/50
-
051・徳安實藏
○徳安政府委員 ブローカーの手によって土地取得の手段にしておったという行き方につきましては、私どもも、今度内容を聞きまして初めてわかったわけでございますが、先ほど局長が申し上げましたように、三割くらいはそうした手段によっておったものもあるようでございますけれども、あの事件以来は、私どもも厳重に警告いたしまして、そういうものを相手にする取引は、今後やらないという方針に切りかえて参りたいということを強く指導してございます。昨日も大阪に参りまして、ついでに大阪の支所の模様を聞いて参りましたが、大阪の支所あたりでは、全然ブローカーは相手としていないそうでありまして、初めからそういう方法には出ていないという説明を聞きましたけれども、東京ではどうしてああいうことをやったのか、私どももまことに遺憾千万であったと思いますので、今後は、今申し上げましたような線に沿いまして、再びこうした事件が起らないような処置をとりたい。従って売買につきましても、十分直接地主に周知徹底させて、お互いに理解の上で、その間に無用の搾取者がないような取引をさせるということに全面的に切りかえるように指導いたしたいと考えております。
なおただいまのお説の問題でございますが、これは、ひとり刑事被告人となりました者の処置ばかりではなしに、もしこの事件の全貌が、上司にも当然責任を負わすべき道徳上の責任、こういうものを強く要請されるような事態でございますれば、決してこれを見のがしてほっておくようなことはいたさない。これは、大臣もすでに十分当該関係者には忠告もしてございますし、私どもも、先ほど申し上げましたように、多少そうしたうわさも耳にいたしましたので、かつては調査を命じたこともありますけれども、そういうことはないという報告を受けまして、その後日ならずしてその事件が起きたというようなこともございまして、多少公団の中にゆるみがあるのではないかというようにも考えられますので、ただいまの事件の全貌がわかりましたら、その責任の所在等も十二分に検討いたしまして、さらに責任の問題につきましても、決してこそくな方法でなしに、十二分に掘り下げて、再びこういうことがないように戒めをいたす手段を講じたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/51
-
052・塚本三郎
○塚本委員 関連して。ちょっと今の御意見ですけれども、今政務次官はほかの地方にはないようなお話でありますけれども、実は私どもも身近にそういうことを聞いておるわけでございまして、土地を取得する方法はいろいろあろうと思いますけれども、たとえば私どもにこういうことを言ってきておる、公団にまとめて売るためには、よけいな土地でなければならないのだ、従ってあの一帯は千五百円だから、お前の方も千五百円にしてくれ、こんなことでもって、ブローカーが個々の農家を渡り歩いている。こういう実例は、私たちの近々に起っております。だから、それがどういうふうに売りつけるか、そういうことについて、詳細に私どもは検討はいたしておりませんけれども、こういうブローカーの暗躍というものは、他の地方においても、今政務次官はないというふうな言明でありましたけれども、これはあやまちを防ぐ意味においても、全国的に私どものような事例はあるとみなさなければならぬのではないか。私の町自身で、そういうことがごく最近行われたのですから、この点、御注意をこれからしていただきたいということです。ちょうどその意見が出ましたので、関連して申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/52
-
053・徳安實藏
○徳安政府委員 私ども十分注意をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/53
-
054・堀川恭平
○堀川委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は十三日午前十時から開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104149X01619590310/54
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。