1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十四年二月十八日(水曜日)
午前十一時二十六分開議
出席委員
委員長 園田 直君
理事 田中 正巳君 理事 小林 進君
理事 五島 虎雄君 理事 滝井 義高君
亀山 孝一君 藏内 修治君
河野 孝子君 齋藤 邦吉君
谷川 和穗君 中村三之丞君
中山 マサ君 二階堂 進君
古川 丈吉君 柳谷清三郎君
亘 四郎君 伊藤よし子君
大原 亨君 岡本 隆一君
河野 正君 堤 ツルヨ君
八木 一男君 吉川 兼光君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 坂田 道太君
出席政府委員
厚生政務次官 池田 清志君
厚生事務官
(大臣官房審議
官) 小山進太郎君
厚 生 技 官
(医務局長) 小澤 龍君
厚生事務官
(児童局長) 高田 浩運君
委員外の出席者
議 員 八木 一男君
専 門 員 川井 章知君
—————————————
本日の会議に付した案件
児童福祉法の一部を改正する法律案(内閣提出
第二一四号)
国民年金法案(内閣提出第二二二号)
国民年金法案(八木一男君外十四名提出、衆法
第一七号)
国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等と
の調整に関する法律案(八木一男君外十四名提
出、衆法第二六号)
厚生関係の基本施策に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/0
-
001・園田直
○園田委員長 これより会議を開きます。
去る五日付託になりました児童福祉法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。
まず趣旨の説明を聴取いたします。厚生大臣坂田道太君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/1
-
002・坂田道太
○坂田国務大臣 ただいま議題となりました児童福祉法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
改正の要点は、骨関節結核にかかっている児童に対する療育の制度を設けることとしたことであります。御承知のように、骨関節結核の療養は非常に長期間にわたるのでありますが、特に児童については、心身の発育途上にあることにかんがみ、適当な生活指導のもとに、医療と教育とをあわせ受けることができるようにすることが必要であると思うのであります。このために、これらの児童を教育及び生活指導面においても適切な態勢にある病院を指定してこれに入院させ、医療の給付及び学習に必要な物品の支給を行い得ることといたしたのであります。
以上がこの法律案を提出いたしました理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/2
-
003・園田直
○園田委員長 以上で説明は終りました。
なお本案についての質疑は後日に譲ることといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/3
-
004・園田直
○園田委員長 次に、去る十二日付託になりました内閣提出の国民年金法案、八木一男君外十四名提出の国民年金法案及び国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案、以上三法案を一括して議題とし、審査に入ります。
まず順次趣旨の説明を聴取いたします。坂田厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/4
-
005・坂田道太
○坂田国務大臣 ただいま議題となりました国民年金法案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
御承知のように、わが国の公的年金制度には厚生年金保険制度を初め恩給、各種共済組合による年金制度などすでに幾つかの制度があるのでありますが、これらはいずれも一定の条件を備えた被用者を対象とするものでありまして、国民の大半を占める農民、商工業者、零細企業の被用者などはいまだに年金制度から取り残されたままになっているのであります。
翻って最近のわが国の人口趨勢を見まするに、国民の死亡率は激減し、平均余命は戦前に比べ飛躍的な伸びを見せ、その結果老齢人口は絶対数においてもまた国民全体の中において占める比率においても著しい増加の傾向を見せております。しかるに一方これら老齢者の置かれております生活状態は、戦前に比べむしろきびしさを加えているのであります。このことは程度の差こそあれ、身体障害者や母子世帯の場合にも同様といえるのであります。
このような事情からいたしまして、社会保障制度の一環として全国民に年金制度を及ぼし、これを生活設計のよりどころとして、国民生活の安定をはかって参ります体制を確立いたしますことが国民の一致した要望となってきたのであります。
与党たる自由民主党におきましても、かねてからこの問題について研究しておったのでありますが、ついに昨年弄の衆議院議員総選挙に際し、国民年金制度の創設を国民の前に公約いたしたのであります。社会党におかれましても、この問題を多年にわたって研究され、すでに数回にわたり国民年金法案を国会に御提案になっておられるのであります。
政府といたしましては、このような各方面の要望にこたえるため、昨年六月、内閣総理大臣の諮問に応じて行われました社会保障制度審議会の国民年金制度に関する答申を参考とし、鋭意国民年金制度の企画立案を急いで参ったのでありますが、ここにこれがわが国の現状に最も即応し、かつ実現性の強いものと考えましてこの法案を提出した次第であります。
次に国民年金法案の基本的な立て方について申し上げます。本法案におきましては、拠出制の年金を基本とし、無拠出制の年金は経過的及び補完的に併用していく建前をとったのであります。拠出制を基本といたしましたのは、第一にみずから掛金をし、その掛金に応じて年金を受けるという仕組をとることによりまして、老齢のように予測できる事態に対しましては、すべての人が若いうちからみずからの力でできるだけの備えをするという原則を堅持して参りたいと考えたからであります。年金制度におきましてこのような建前をとりますことは、制度が将来にわたって健全な発展を遂げて参りますための不可欠の前提と考えられるのでありまして、イギリス、アメリカ、西ドイツ等諸外国における多年の経験もこのことを明らかに示しているのであります。さらにまた、わが国のように老齢人口の急激に増加して参ります国におきましては、無拠出制を基本とした場合、将来における国の財政負担が膨大になり、それだけ将来の国民に対して過度の負担を負わせる結果となるわけでありまして、これを避けますために毛拠出制を基本とした積立方式をとり、積立金及びこれから生ずる利子収入を有力な財源として給付費をまかなっていく仕組みが必要となるのであります。しかしながら拠出制のみでは現在の老齢者、身体障害者または母子世帯あるいは将来にわたって保険料を拠出する能力の十分でない不幸な人々には年金の支給が行われないこととなりますので、これらの人々にも年金を支給いたしますために、無拠出制の年金を併用することといたしたのであります。
次に本法案の内容について、その概略を御説明申し上げます。まず基本的なものである拠出制について申し上げます。
第一にその適用対象でありますが、これは二十才から五十九才までの全国民であります。現行公的年金制度の適用者及び受給者は適用除外とし、またその配偶者及び学生につきましては任意加入を認めることといたしました。しかしてこれらの者に対する将来にわたるこの法律の適用関係につきましては、国民年金制度と現行公的年金制度との関連を考慮して引き続き検討することとしたのであります。これは国民年金制度から現行公的年金制度の適用者等を除外いたしますと、本制度と現行公的年金制度との通算調整、さらには現行公的年金制度相互間の通算調整を行わなければ、各制度の被保険者でありながら、その間を移動いたしますと年金を受けることができないとい三者が多数生ずることになり、国民年金制度の意義が減ずるおそれがありますので、これについて具体的方策を講ずべきことを法文に明記いたしたのであります。なお、本制度の拠出制が発足いたしますときにすでに五十五才をこえている者は、たとえ六十五才まで保険料を納付したとしても年金を受ける資格を得ることができませんので適用を除外し、五十才から五十五才までの者は、希望すれば保険料を納付して拠出制の年金を受けることができるよら任意加入の道を開いたのであります。
第一に保険料でありますが、これは二十才から三十四才まで月額百円、三十五才から五十九才までは百五十円としたのであります。この額は、国民の大部分が負担できるものと考えてきめたものでありますが、生活保護を受けている者とかその他この保険料を負担する能力の乏しいと認められる者については保険料免除の道を開く等、低所得階層に対する特別の措置を考慮いたしました。
第三に年金給付についてでありますが、年金給付の種類は老齢、障害、母子、遺児及び寡婦の五種類といたしております。まず老齢年金でありますが、これは保険料を二十五年以上納付した者が六十五才になったときに支給するものであります。しかしながらさきに申しあげました保険料を負担する能力が乏しい者につきましては、十年間だけ実際に保険料を納付しますれば年金を支給することにいたしました。また拠出制が発足いたしましたときにすでに一定年齢をこえていて、二十五年以上の保険料を納付する期間がない者につきましては、この者の年令に応じてこの期間を十年ないし二十四年に短縮いたすこととしております。年金の領は、保険料納付の期間に応じて保険料を二十五年納付した者には年に二万四千円、二十才から五十九才まで四十年間納付した者には年に四万二千円を支給いたすことにしております。
次に障害年金でありますが、これは一定期間保険料を納付した者が日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度、すなわち片手とか片足を失った程度の障害になったときに支給し、その額は保険料の納付期間に応じて二万四千円から四万二千円までとしております。これより重度の障害、すなわち、両手とか両足を失った程度の障害になった場合には、これに年額六千円を加算することにいたしました。
次に母子年金でありますが、これは妻が一定期間保険料を納付した後、一家の働き手である夫に死に別れて十八才未満の子を扶養しているような場合に支給するものでありまして、年金額は保険料の納付期間に応じて一万九千二円から二万五千二百円までであります。なお、子が二人以上あるときは、これに第二子以降の子一人につき四千八百円が加算されることになります。また、遺児年金は父母いずれにも死に別れた十人才未満の子に支給し、年金額は、保険料納付期間に応じて七千二百円から一万五百円までとしております。この額も子が二人以上あるときは、これに第二子以降の子一人につき四千八百円が加算されるととになります。寡婦年金は、婚姻後十年以上経過した妻が老齢年金を受けるに必要な期間保険料を納付した夫と死別したときに六十才から六十五才まで支給し、年金額は夫の受けるべきであった老齢年金額の半額としております。
次に無拠出制年金について申し上げます。初めに申し上げました通り、木制度は拠出制を基本といたすものでありますが、制度発足のときすでに七十才以上である者はもちろんのこと、このとぎすでに五十才以上である者も、原則として拠出制の年金を受けることができないのであります。制度発足のときすでに身体障害とか、母子世帯の状態にある者につきましても同様であります。これらの者に対しても年金を支給いたすことによりまして、文字通り国民皆年金の実をあげますために、無拠出制による老齢・障害・母子の三つの援護年金を経過的に支給することとしたのであります。
まず老齢援護年金についてでありますが、これは先ほど申し上げました通り、制度発足のときすでに五十五才以上である者、五十才以上五十五才未満で任意加入の道を選ばなかった者または将来にわたって保険料の負担能力が乏しいため拠出制の老齢年金を受けるに必要な保険料の納付を行い得なかった者に対し、七十才から一万二千円を支給いたします。障害援護年金は、制度発足のとき二十才以上の者であって、すでに両足とか両手を失った程度の廃疾の状態にある者または保険料の負担能力が乏しいかまたは二十才未満でこれと同程度の廃疾になることにより拠出制の障害年金を受けるに必要な保険料の納付を行い得なかった者に対して一万八千円を支給いたします。また母子援護年金は、制度発足時すでに夫と死別して十六才未満の子を扶養している者または保険料の負担能力が乏しいため拠出制の母子年金を受けるに必要な保険料の納付を行い得ずして夫と死別し、十六才未満の子を扶養している者で、いずれも、十五才以上の子のない場合に一万二千円を支給いたします。なお、子が二人以上あるときは第、一子以降の子一人につき一千四百円を加算いたすことになっております。
これらの援護年金は、拠出制年金のように自分であらかじめ拠出しておいた者に対して支給するものではなく、すべて一般財源から支出するものでありますので、すでに現行公的年金制度による年金を受けている者でありますとか、一定程度以上の所得のある者など比較的恵まれた状態にある人たちに対しましてはこの支給を制限いたすことになっております。
次にこの援護年金と生活保護制度との関係についてであります。本制度による年金はその建前上生活保護法による被保護者に対しましても当然支給されるのでありますが、この年金を支給いたしましても生活保護制度の運用において特別の措置を講じませんと、その人の受けまする年金のすべてが収入認定の対象となり、従って被保護者にとっては何ら実質的な意義がないという結果になりますので、この点不合理のないよう措置いたす心算であります。
第四に年金財政について申しあげます。本制度におきまする財政運営方式としては、積立式をとることにいたしておりますが、これは財政運営方式を賦課式といたしました場合、わが国の現状におきましては、年金を無拠出制のみとした場合と同じように、将来の被保険者に対しまして過度の負担を負わせる結果となるからでございます。なお、木制度の積立金は、制度の発足当初から次第に増加することになるのでありますが、これが運用はきわめて重要な問題でありまして、今後とも慎重に研究いたして参りたいと考えております。
次に国庫負担でございますが、これは、毎年度の保険料収入総額の二分の一に相当する額を負担することにしております。このような国庫負担割合は、従来の社会保険特に年金制度には見られないほど大きいものでありまして、これを見ましても、国民年金制度の維持育成に対する熱意を肯定していただけるものと考えております。なお、援護年金の給付に要する費用は当然のことながら全額国庫で負担いたします。また、事務費につきましても、これを全額国庫が負担することといたしております。
最後に実施の時期でありますが、援護年金の支給につきましては昭和三十四年十一月一日から、拠出制年金につきましては、昭和三十六年四月一日から保険料の徴収を開始いたすことといたしております。
以上で国民年金法案の提案理由の御説明を終りたいと存じます。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/5
-
006・園田直
○園田委員長 八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/6
-
007・八木一男
○八木一男君 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となりましたわが党提出の国民年金法案、国民年金の施行及び国民年金と他の年金との調整に関する法律案に関して、一括して提案の趣旨理由並びに内容の大綱を御説明申し上げるものであります。
この二法案は、大蔵委員会に付託に相なっておりますわが党提出の一般国民年金税法案、労働者年金税法案、国民年金特別会計法案と一体をなすものでございまして、従って御説明中、以上二法案の内容にわたる点にも触れますことをあらかじめ御了承いただきたく存じます。
戦後わが国国民の平均寿命は大いに延び、さらに延びつつあります。大勢の人が長生きすることができるようになりましたことはまことに喜ばしいことでございまするが、老後に安定した楽しい生活ができるのでなければ、この喜びは激減をいたします。長くなった老後の楽しい安定した生活に関して、精神的な面は別といたしましても、物質的な面のみで考えますると、子供たちの孝養あるいは本人たちの貯蓄ということのみにたよることはまことに不安定なものであり、さらに大多数の大衆にとっては至難のことでありまして、この問題の解決のため、老人の所得保障、すなわち社会的な孝養という制度が全国民に対して至急に確立されることが絶対必要であります。
一方母子世帯においては、年収十八万円未満のものが全体の九〇%も占めており、まことに困難な状態のもとに子女の保育が行われております。身体障害者に至っては、障害のため特殊な出費があるにかかわらず、所得の機会にはほとんど恵まれないで、その大部分が最低生活の維持すら困難な状態であります。このような事態を救い得る制度が年金制度であることは申すまでもありません。ところが、わが国の年金制度は一部勤労階級に適用されているのみで、大部分の国民はそのらち外に放置されております。勤労者の場合も、恩給資格者と公共企業体共済組合適用者のらち、高給者であるものを除いては、厚生年金等すべてがはなはだ程度の低いものであり、また通算がほとんどないという不備なものでありまして、老後を安心させ得るものではございません。このような状態にかんがみまして、昭和二十五年、社会保障制度審議会の勧告が出たわけでありますが、自後歴代の保守党内閣が、何らの推進もしなかったことは、まことに残念なことであります。
わが党は以前より年金制度の必要を痛感し、その完成を主張して参りました。昭和三十一年呼び水の意味で慰老年金法案、母子年金法案を提出したのでありますが、一昨年全国民のための総合的な、根本的な年金制度を研究決定し、その基本法として国民年金法案を昨年の第二十八、第二十九、第三十国会に提出いたしたのでありまして、さらに幾分の修正をなし提出いたしましたのが本国民年金法案であり、即時実行し得るよう手続上の具体的な内容を決定しているのが関係四法案であります。
本国民年金法案等を作るに当りまして、私どもは国民年金制度が完成までに長期間を要する性質のものであることにかんがみ、創設当時より完全な目標に向って進まなければならないと考えました。そしてその目標は、すべての国民に憲法で保障された健康で文化的な最低限度の生活を維持できるようにすることに置いたわけであります。
以上の目標を達成するため、具体的には、まず第一に、制度の完成した場合の老齢給付の最低限度を現在の貨幣価値の月七千円、すなわち年八万四千円と決定いたしました。第二に、この年金をすべての国民が支給されるものとするため、拠出困難あるいは不可能な期間、年金税を減額あるいは免除することとし、減免を何回受けたものでも年金額は完全に全額支給すべきだと考えました。第三に、過渡期のものもできるだけ早く月七千円の線に近づくようにし、第四に、無拠出年金については、必要の度の多い人に対する年金に厚みをかけ、また、生活保護と併給することにしてその目的に沿うよういたすべきものと考えたわけであります。
このような完全な考え方で国民年金制度を作ることによって、所得保障という本来の目的を果すとともに、他の重要な面に非常に大きな影響を与え得るものと考えております。国民年金制度を通じての所得再配分によって、国民生活の不均衡が相当程度是正され、とれによって継続的な有効需要が確保されることによって、諸産業の振興安定に資するところ大なるものがあると考えられます。このことは、雇用の増大と安定を招来するものでありますが、さらに、完全な所得保障によって不完全就労が減少し、労働力率化の低下という好ましき効果の面を加えまして、完全雇用への道を進めるものと信ずるものであります。さらに、十分な年金制度は、雇用労働力の新陳代謝を促進し、鉱工業生産力を増大せしめるとともに、農業、中小企業の経営権を若き世代に移すことによってその近代化への原動力と相なります。
以上のごとく、完全な国民年金制は、所得能力少なき国民に完全な所得保障をすることによって国家がその責任を果すという本来の効果のほかに、現代わが国における内政上の重要課題のほとんどすべてに解決の道を進める制度であると断言してもあえて過言ではあるまいと信ずるものでございます。
以上の観点からりっぱな国民年金制度を作り上げることに決心をしたわけでありますが、現在の国家財政、個人経済の状態から、そのことの実現のため多大の工夫を必要といたしました。その結果、国民年金には、積立金方式のほかに賦課方式を取り入れることに踏み切ったわけであります。現在年金を必要とする人々に無拠出年金を支給し、現在生産年令にある人々の年金を完全積立方式とすれば、現在のゼネレーションが二重負担になり、年金のための負担は限界に達します。この障壁を乗り越えるために、われわれは、われわれの親たちに親孝行をする、そのかわり、その分だけ子供たちに親孝行をしてもらうという考え方で、一部賦課方式を採用してこの困難を乗り越えることにいたしました。そのほか、収入の多いものに年金税を多く負担させること、累進課税で取る分の多い一般財源からできるだけ多くの国庫支出をすること等に踏み切ってこの法案ができたわけであります。
以下膨大な内容を、要点を抽出して御説明いたしたいと存じます。本法案は、大分けにして、特別年金と普通年金の二つの部分で構成されております。特別年金は、現在直ちに年金を必要とする老人、母子家庭、身体障害者に対して、無拠出、ずなわち一切の掛金、負担金なしに年金を支給して、これらの人々の生活を援助する制度であります。普通年金は、現在の青壮年、さらに以後続く国民に対して、拠出、すなわち国民が年金税を納入して特別会計に積み立てる資金と、一般財政よりの賦課方式による大幅な国庫負担金とをもってその老齢、廃疾あるいは遺族に対する完全な所得保障をずる制度であります。
まず最初に特別年金の方から御説明いたしますと、これはさらに養老年金、母子年金、身体障害者年金の三制度に分れております。養老年金は、本人の年収十三万円以下の老人に支給されるものでありまして、六十才から支給を開始するものであり、六十五才から倍額にして、自後一生涯毎年同額を支給することにいたしております。年収十八万円未満の家庭の老人には、その金額は六十五才以後に年二万四千円になり、従って老夫婦の場合は、毎年四万八千円が支給されることに和なります。年収十八万円から三十六万円の家庭は、右の半額が支給されるわけであります。
母子年金は二十才未満の子女を有する母子世帯に対するものでありまして、年収十二万円未満の母子家庭に年頻三万六千円を支給し、子女が二名以上の場合は、第二子から一名につき年領七千二百円の加算をいたすことになっております。年収十二万円以上十八万円未満の母子家庭は、基本額、加算額ともにそれぞれ半額を支給することにいたしております。なお、配偶者のない祖母、姉等が子女を保育する場合も支給いたすことにいたしております。
身体障害者年金は、廃疾の程度によって支給金額が異なっており、年収十二万円未満の身体障害者に対し、一級の場合は年額四万八千円、二級の場合は年額三万六千円、三級の場合は年額二万四千円を支給し、配偶者並びに子女に関して支給される加算は、等級にかかわらず家族一名につき年七千二百円ずつ支給することに相なっております。年収十二万円ないし十八万円の世帯の身体障害者に対しては、基本額、加算額ともにそれぞれ半額を支給することにいたしております。
以上、養老、母子、身体障害者の三年金、すなわち特別年金の制度の全般を通じて申し上げておくべきことは、まず、三年金とも、収入により給付を制限いたしておりますが、最初に適用されなくとも、後に本人または世帯の収入が不幸にして減少した場合は、その時から適用されるわけでありまして、その意味で全国民のものということができると考えておるわけであります。
次に、この三年金は全然税金の対象といたしておりませんので、以上の年金が完全に対象者の手に入ることになり、また、生活保護と完全併給をいたすことにいたしておりますので、生活保護を受ける人々は扶助と年金を両方とも全額支給されることに机なるのであります。
さらに三年金に関して世帯収入の境目について、不均衡が起らないよら細目の規定をいたしております。すなわち所得三十六万円の世帯の老人が一万二千円の年金を受けた場合、その世帯は三十七万二千円の総収入になるわけでありますが、それでは所得が三十六万円をわずかにこえる老人世帯の方が総所得が少なくなることになりますので、それを避けるため、総所得三十七万二千円に達するまでは世帯所得三十六万円をこえても年金を支給することにいたしております。三年金のすべての境目に同様の配慮をいたしておるわけでございまして、従って、言いかえれば、本案によれば養老は所得三十七万二千円、母子は所得十九万八千円、身体障害者は所得ニト万四千円未満の世帯の対象者まで支給されることになるわけでありまして、扶養家族を入れますると、この限度はさらに高まることに相なるわけであります。
以上で特別国民年金の説明を終り、次に、将来に備える根本的な普通国民年金について申しあげます。
この制度は一般国民年金と労働者年金に大別され、それぞれ養老年金、廃疾年金、遺族年金の給付があります。主として、老齢年金給付につき御説明申し上げることとし、まず、一般国民年金より御説明申し上げます。
この制度は農漁民、商工業者、医師、弁護士等のすべての自営業者と労働者の家庭も含めた全家庭の主婦等、すべての無職者に適用されるものであり、いいかえれば労働者本人以外の全国民が対象となるものであります。年金額は全部一率で、六十才から一名につき本制度が完成された暁には、年八万四千円ずつ、一生涯支給されます。従って、老夫婦の場合は十六万八千円に相なるわけであります。この場合、もし本人が六十才より早く、あるいはおそくから支給を受けたいと希望する場合は、五十五才から六十五才までの間において希望の年からそれぞれ減額あるいは増額した年金を支給できることにいたしております。国はこの八万四千円の年金給付の五割を一般財源より負担し、支払いの年に特別会計に払い込みます。また別に、特別会計で積み立てておくため対象者の属する世帯より一般国民年金税を徴収いたします。拠出期間は二十才から五十四才までの三十五年間、税率は一般国民年金税法案第十条に規定してございますが、大体一名平均月百六十六円に相なる計算であります。国民健康保険税の場合と似た方法で均等割五、所得割一三、資産割二という割合で徴収することになっておりますので、収入の少い人はずいぶんと安くなる見込みであり、さらに納入困難、あるいは不能の人については、減額あるいは免除をすることにいたしております。何回減免を受けた人にでも、年金を支給さるべき際には無条件で他の人と同じ年金を支給するという社会保障に徹底した考え方に立っていることを重ねて明らかにいたしておきます。廃疾年金の場合は、一級は老齢年金と同額、二級はその四分の三、三級は二分の一に相当する金額を支給することにいたしております。遺族年金は老齢年金の半額、子供一名につき年一万四千四百円の加給をつけることにいたしております。以上、廃疾、遺族年金は要件は全くなく、拠出年金制度に入った人は、一年後にその状態に達しましても、廃疾、遺族年金を受け取ることができるようになっていることを明らかにいたしておきたいと存します。
以上で、特に申し上げておかなければならないことは、年金については課税の対象としないこと、並びに年金額がスライドすなわち物価変動に応じて改訂されることであります。この場合一般国民年金税もスライドされることは当然であります。
次に労働者年金について申し上げます。木制度はあらゆる職種の労働者本人に適用されるものであって、五人未満の事業所の労働者、日雇い労働者、山林労働者等にも適用をされます。老齢年金は六十才から支給されることが原則でありますが、炭鉱労働者、船員、機関車労働者等は五十五才開始といたしておりますことは現行厚生年金保険と同様であります。老齢年金額は制度が完成した場合一般国民年金と同額の年八万四千円を基本額とし、それに標準報酬額に比例した金額が付加されます。その金額は現在の賃金水準で平均六万三千円になる計算でありまして、合計平均年十四万七千円に相なります。従って、将来賃金水準が上った場合には、この平均額は上昇いたします。労働者年金税法案に規定されている労働者年金税は、もちろん標準報酬の高低に従って定められております。一般国民年金の場合より年金額が多いのでありますから、年金税は当然高額に相なりますが、この場合使用者が半分以上負担することに相なっておりますので、労働者負担はあまり多くなく、平均して月額二百円程度であります。低賃金労働者は標準報酬が少いため右の平均領よりはるかに少額になることは当然であります。拠出期間は一般国民年金と同様二十才より五十四才までの三十五年間であります。この労働者年金の特徴は、異なる事業所間はもちろん、農林漁業、商工業、家庭の婦人等、一般国民との間にも完全通算をすることでありまして、基本給の八万四千円は、何回職業が変っても完全に確保され、平均六万三千円の標準報酬比例部分は、二十才から五十四才までの間に労働者であった期間だけの割合で、それがたとえ一年であっても加算されるわけであります。労働者年金への国庫負担率は二割であります。これは十四万七千円に対する二割でありますので、八万四千円に対する割合に換算いたしますと二割五分になり、将来賃金水準上昇を考えると、完成時には大体五割程度となり、一般国民年金と実質上同程度のものと相なるわけであります。その他繰り上げ減額年金、繰り下げ増額年金制度、非課税年金及び年金税のスライド、免除、また廃疾遺族給付については、一般国民年金と同様の内容、あるいは仕組みに相なっております。
以上、一般国民、労働者両制度について申し上げましたが、その年金額は完成時のことを申し上げたわけであり、拠出期間が三十五年に満たない人はその期間に応じて年金額が定められていることは申すまでもありません。御参考に途中の年金額を申し上げますと、施行時三十五才の人の年金額は一般国民年金では年四万八千円、労働者年金では年八万四千円になる計算であります。
以上が本国民年金制度の内容の大綱であります。実施に当っての既存年金との関係は、国民年金法の施行及び国民年金と他の年金との調整に関する法律案に規定いたしているわけでありますが、既得権、期待権の尊重に十分の配慮を払うとともに、完全なる持ち分移管方式を採用して、途中で制度が変る人、あるいは途中転職者の利益を完全に保護することにいたしました。制度の上では、厚生年金保険、船員保険の年金部分、農協職員共済年金等は直ちに労働者年金へ統合、恩給、国家公務員、地方公務員、公共企業体等の各共済組合等は、新規採用者より労働者年金を適用することに相なります。施行期日は昭和三十四年四月一日、年金の支払い及び年金税の徴収開始は同年十月一日からであります。
国民年金法施行に要する一般会計よりの経費は平年計算にいたしまして、その第一年度約一千二百十三億円であり、らち養老年金約七百九十八億円、母子年金約三十六億円、身体障害者年金約四十五億円、国民年金税減免補てん分約四十四億円、労働者年金の国家公務員並びに地方公務員に対する国の直接、間接の負担額、これは二十才以上の新規採用者分のみでありますが約一億円、年金支払いに要する事務費約八億円と和なっております。
別に労働者年金税法、一般国民年金税法施行に要する経費、すなわち年金税徴収事務費はそれぞれ約八億七千万円、約四十三億四千万円、計約五十二億一千万円であります。以上の如く国庫支出は相当額に達しますが、国民年金制度に対する全国民の非常なる期待、前段に申し述べましたように完全な国民年金制度のきわめて大きな意義より見まして、断固として踏み切るべき金額であると信じます。
国庫支出は賦課方式でありますので自後漸増いたしまして、本年金制度完成時すなわち三十五年度には、約四千二百億になるものと推定されますが、それ以上は、増加を停止し、平準化ずるものと推定せられます。このことに対して、私どもは心配はないものと考えております。その理由はわが国の経済が、逐年拡大し得るからてありますかりに最も控え目に考えて、明治以後のわが国の平均経済成長率四%と同率をもって今後の経済が拡大するものとすれば、三十五年後には四倍に相なります。
同じ率以上で財政が拡大し得ることは当然でありまして、かりに少く見て同率と見て五兆六千億という仮定が成り立ちます。そのらち実際には四割が減税に回されたといたしましても、なお、三兆三千億以上の財政規模に相なるわけでありまして、そのらち四千一百億程度の支出はこの制度が全国民に対する完全なものであります以上は、国民も双手をあげて賛意を表されるものであると固く信ずるものであります。
以上で本法案の説明を終るわけでありますが、与党の各位が広やかな気持をもってわが党提出の本二法案を建設的に御審議の上、すみやかに御可決下さいますることを心から御要望申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/7
-
008・園田直
○園田委員長 以上で趣旨の説明は終りました。
なお、三法案についての質疑は後日に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/8
-
009・園田直
○園田委員長 厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の通告がありますので、これを許します。河野正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/9
-
010・河野正
○河野(正)委員 時間がございませんから簡明に要約して御質問申し上げたいと思います。すでに大臣も御承知のように、医療機関の適正配置というような点につきましては今日厚生省が強く指摘をいたしておる点でございますし、なおその中でも無医村地帯の解消等につきましては私どもも奉直にその基本方針については賛意を表するものでございます。しかしながら、この医療機関の適正配置に基きまして統廃合の問題等をめぐっていろいろ具体的に各地において紛争等を生じておる点も否定するわけには参らないと考えます。いずれ時間がございまするならば、そういった医療機関の基本的なあり方等について御質疑を申し上げたいと思いますが、本日は時間もございませんから一つ具体的な当面する問題について御指摘を申し上げ、大臣その他当局側から率直な御答弁をお願い申しあげたいと考えます。それは九剛における基幹病院、具体的には福岡に設置されますこの基幹病院は、当初の構想によりますと、国立福岡病院が中心となって基幹病院が設立されるということでございますから、人員その他はむしろ拡大されるという方針でございましたけれども、中途でその方針が変更されて、福岡病院と筑紫病院とを統合して基幹病院が設立されるというような方針の変更が行われて、それに伴いまするいろいろな諸問題が起って参っておるようでございまするが、まず、局長がおいででございませんから、その以前に、大臣としてこのような医療機関の適正配置——と申し上げますのは、せっかく医療機関を適正に配置しようというような親心で作られましても、それが現地従業員の協力を求められない、あるいは現地公私の医療機関、具体的に申し上げますならば医師等の協力が求められないというような形になりますると、せっかく設立されました医療機関というものが私生子的な存在になって、結局将来の発展性というものが期待できないということになるようになりますと、これは厚生省の方針にももとることだというふうにも考えますので、医療機関の適正配置というような点についての大臣の率直な御所信をまず承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/10
-
011・坂田道太
○坂田国務大臣 お答えをいたします。医療機関が科学技術の進歩に伴いまして、あるいは医療技術の進歩に伴いまして漸次整備されていき、また医療そのものにつきましても非常に総合的な診療というものが行われますことは、これは当然でございます。しかしながら一面におきまして、御指摘の通りになおかつ公的、総合的な医療機関がない地区等もあるわけでございまして、われわれ厚生省といたしましては、この無医村地区の解消ということも同様に今後推し進めていかなければならないわけでございまして、特に昭和三十五年度には一応国民皆保険の制度を完成をいたしたいというような考え方からいたしますれば、それらの制度ができましても、もし無医村地区がございましたならば実際的に医療を受けることができない、こういうようなことでございますので、やはり私たちといたしましては、二面におきましてこれらの無医村地区の解消ということにつきましても努力をいたさなければならないことは御指摘の通りだと考えております。なおまた現在ありまするところの公的医療機関、あるいはまたその他のいろいろの病院、あるいはまた診療所等々がございますが、日本全国の各地区を見回した場合において、それが何らの計画性もなく配分をされるというようなことになりますと、今申しあげました国民皆保険の制度が完成する裏づけとしてのいわゆるよりどころというものがないわけでございますので、やはりその点を考慮いたしまするならば、どうしてもこれの適正配置をいたさなければならないということになるかと思うわけでございます。しかしながら、やはり適正配置をするにいたしましても、現在あるところの病院あるいは公的な医療機関というものが一体現実にはどうなっておるかということを十分把握しなければなりませんし、また既存の病院が建ちましたにつきましても、それぞれの理由もあったでございましょうし、必要もあったであろうかと私は思うのでございまして、これから新たに病院を建てます場合においてはそれらのことも十分検討をいたしまして、なおその地区の住民の人たちの考え方というものも十分聞きましてやらなければならないのではないかと思うのでございます。たとえばある一定の地区におきましてその統合整備ということが必要になったとしましても、なおかつそこの病院等に働いておられる人たち、あるいはまた患者さんの人たち、あるいはまたその人たちをめぐる住民の気持というものを十分に考えた上で進めていかなければならないのではないか、やはり地方住民なり、その病院に働いておられる方々なり患者の気持というものも十分に考えた上で私はこの問題の解決をいたしたいという気持でおるわけでございます。筑紫病院の問題につきましても、そのような気持で私はいきたい、かように考えておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/11
-
012・河野正
○河野(正)委員 ただいま大臣の答弁を承わりまして、大臣のいわゆる医療機関の適正配置に対しまする基本的な方針なり、あるいはまた具体的にその問題の推進にあたってどういう態度で臨むべきかというふうな態度につきましては了承をいたしますし、またぜひとも今後そういう態度を堅持して実施に移していただきたいと考えます。
そこで具体的に入りたいと思いますが、ただいま出て参りました筑紫病院あるいはまた福岡病院を統合して基幹病院を設立するということになりますと、福岡病院の二百ベッド、筑紫病院の七百五十ベッド、合計九百五十ベッドございますが、今回設立を計画されております九州基幹病院は五百五十ベッドでございまして、従って算術計算的に申し上げますと四百ベッドが縮小されるということになりますので、それに伴いまして、医師、看護婦その他の従業員が大幅に配置転換ないしそれぞれ整理されるというふうな結果になってくると思いますし、勢いそういった点からも従業員の立場から強い意見が出て参りましょうし、また先ほど申し上げましたように医療機関の適正配置ということでありますけれども、それに伴う利害関係から、現地の医師会その他等から強い意見も出て参りましょう。ところが先ほど申しましたように、せっかく作っていただく基幹病院でございますし、厚生省のおやりになることでありますから、従ってその機関というものは将来大きく育てていただかなければならぬ。育てるためには当局側の熱意、御好意によることも当然でございますけれども、それの周囲の関連を持っております医療機関ないし現地の従業員等の協力がなければ、円満な発展を期待することはとうてい困難であることは当然の事柄であります。ところがただいま申し上げましたようないろんな事情から、実は昨年の参議院の委員会におきまして筑紫病院は廃止するのだというような御答弁等もございまして、もしそういうような形で参りますと、ただいま大臣が仰せられましたような御趣旨に対しましても、現地の方々が心配しておりますように莫大な人員の出血その他等が起って参る。それに伴って今日いろいろ実力行使等の派生的な事態が起っておるというようなことでございますので、そういう点に対します当局の率直な御答弁を願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/12
-
013・小澤龍
○小澤政府委員 昨年私、参議院におきまして答弁した当時は、実はこの筑紫病院、福岡病院の跡始末に対する調査なり検討なりが不十分であったのでございます。その後だんだん調べてみますと、昭和三十年ごろに当時アメリカの駐留軍に接収されておりました簡易保険局の庁舎が接収解除になるということがあったのですが、厚生省といたしましてはその庁舎を有償で譲り受けまして基幹病院に転活用しようという計画があったのでございます。その当時、筑紫病院、福岡病院の跡始末——ただいま御指摘のように約四百ベッドのものが減るわけでございますが、その跡始末をどうするかということが医務局内部でもかなり検討されたのでございます。その検討の中には、その当時は筑紫病院、福岡病院には結核患者が非常にたくさんおりましたので、跡始末としては筑紫病院に結核療養所として四百ベッド程度を残すことが最も適当ではないかという考え方で、当時の医務局の内部でも進んでおったのでございます。私がその後就任いたしました当時は、当時の関係者がほとんどおりませんで、そういった事情がわかりませんために、実は参議院において廃止をする考えであるということを申し上げたのでございますが、その後いろいろ調査いたしまして以上の事実がわかりました。なお現在の筑紫病院の付近の各種の医療事情等を調査した結果、やはり四百病床程度のものを残すことの方が適当であるという結論に達しましたので、実は昨日も参議院における御質問に対しまして、昨年十月の答弁を取り消したわけでございますけれども、現在はさような考え方で筑紫病院の跡始末を進めていきたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/13
-
014・河野正
○河野(正)委員 残すということは、ただいま御訂正願ったわけでございますが、これは単に職長が整理されるとか、あるいは配置転換が不可能であるので、従って自然退職をしなければならぬというような事情のみにとどまらず、先ほど現地の事情等も今日においてはつぶさに調査したのでというような御答弁もございましたが、御承知のようにこの地区は療養所は二カ所ございます。しかしながら今日筑紫病院は一般国立医療機関でございますから、その他の専門科目が設置されている。ところがただいま申し上げましたように療養所は二カ所ございますけれども、一般医療機関はあの地区には乏しい。従ってこの国立病院を利用するという患者が非常に多いということにもなりますし、なおまたすでにこれも調査されましたから御承知のところと思いますけれども、あの地区は隣接町村の伝染病のセンターになっている。そこで従業員の問題、あるいは関連いたします私的医療機関、医師会等の問題もございますけれども、ただいま申し上げますように一般医療機関であるという特殊性を持っているということ、それからまた隣接町村の伝染病のセンターであるというような一つの特殊性を持っているということ、そういう点からも当然私は残さるべきであろうと思いますし、なおただいま四百床程度は残すべきだとおっしゃいましたが、その点はそのまま確認してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/14
-
015・小澤龍
○小澤政府委員 御指摘のように単に従業員の問題でなくして、付近における患者の医療に関する福祉の問題、これを最も大きく取り上げなければならぬと存じておるのでございます。そこで残さるべき筑紫病院の施設はどういう性格のものにするかということにつきましては、私どもは私どもなりに研究しておりますけれども、なお県その他地元の方々に現在の医療事情、将来の医療事情というものを加えて、どういう形に残すことが一番望ましいかという意見を実は聞かしていただくようにお願いいたしてございます。至急にそういう資料を取りまとめて、慎重に新しい病院の性格を決定したいと考えております。なお四百病床程度残すということは、だんだん検討した結果、お約束申し上げることができます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/15
-
016・河野正
○河野(正)委員 率直に申し上げて、先ほどの答弁の中で四百床程度残すべきではなかろうかというような結論に達したということでございましたので、その通り確認していただけば私は非常にけっこうだ。ところが方針はそうであるけれども、確約することはできないということでございましょうけれども、その方針程度には確認してよろしゅうございますか、その点をあらためてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/16
-
017・小澤龍
○小澤政府委員 御承知のごとく、これは実施にあたりましては財政法の定めるところによりまして大蔵省と事務的折衝をして、その承認を得なければならないことになっておりますので、厚生省の方針としては四百床程度残す方針であるということをお約束申し上げることができるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/17
-
018・河野正
○河野(正)委員 そこでさらに一、二点重ねてお尋ねをしておきたいと思いますが、御承知のように今度の予定されております敷地は五千坪余りでございます。ところがその筋の専門家の言によりますと、この五千坪の敷地に近代的施設を有する病院の、しかも五百五十床を設けるということは非常に困難だと言っております。ところが御承知のように、これはメディカル・センターの性格上からもそうだと思いますが、これは医療機関として最先端をいくものだ、最高水準をいくものだというふうに私どもは理解をしているわけであります。そうなりますと今日の科学の進歩、医療の進歩と申しますか、そういう点から考えて参りましても、当然将来は、一例でございますけれども、原子力医学というものが導入されるというようなことも考慮されましょうし、これは厚生省のやることでございますから将来発展的な方向をとっていただかなければなりませんけれども、発展するといたしますと、ただいま申し上げますように新しい科学というものが導入される。そういたしますと、今日の五百五十床の病床を持つ医療機関を五千坪の中に入れるということは、専門学的に非常に困難だといわれておるような情勢でもございますし、なおまた今日までこの敷地の問題等につきましては、文化財が破壊されるというようなことで、教育委員会の諮問機関等が非常に反対して参ったというような実情がございますから、今日でも五百五十床の近代的設備を有しまする病院を設置するということは、この敷地の関係上非常に困難性があり、さらに将来大きな発展を期待しなければならぬ、しかもその敷地の拡大ということは文化財等の関係もございまして、なかなか困難だということになりますと、将来近代医学の粋を集めていただかなければなりませんが、ただいま申し上げますように将来精展拡大の可能性というものが非常に問題になるということになりますと、私は、筑紫病院を将来残していただくということが厚生省の方針でございますならば、この筑紫病院というものをむしろ基幹病院の一環として残していただいた方が、財政の上からもまた将来この基幹病院としてのセンターとしての特殊性を生かしていくという上からも、きわめて合理的ではなかろうかというふうな感じがいたすわけでございますが、それらの点に対してどのようにお考えになりますか、御意見を承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/18
-
019・小澤龍
○小澤政府委員 実は福岡にメディカル・センターを建てる場合に、現在の筑紫病院の敷地内に建てたらどらだということが問題になりまして、私どもは、また前任者は、これについて非常に慎重に検討されたのでございます。ところが長期療養を要するような療養所と違いまして、総合病院でありまするから比較的急性疾患の患者が多い、患者の出入りも多い、また基幹病院でありますと、単に患者の診療のみならず医療従事者の再教育とか訓練などをいたしますので、関係者の量も非常に多いのでございます。多少敷地が狭くとも、少しでも交通の便のいいところがバターであるという結論から現在の場所を選んだような次第でございます。そして現在の場所を決定するまでに県並びに市等と非常に深く御交渉申し上げ、御相談申しあげまして、多数の関係者が力を合せて今日の決定を見たような次第でございまして、かような事情から、今日はやはり当初の方針通り現在の敷地の中でこれをやっていきたい、こら考えておるのであります。
それからただいまお話の将来原子力医学等を採用した場合において今の敷地では足りないのじゃないか、現在でさえ狭いのに将来なお足りないのじゃないかという御指摘でございました。これにつきましては、実は病院のスケールというものは、大体入院患者の数によって採用されることは、先生は御専門家でいらっしゃるから御承知の通りであります。私どもの病院運営の経験から申しますと、小さ過ぎてはこれはむだが多い、また大き過ぎては一人の院長が管理者としてこれを運営するのに非常に困難な場合が多いのであります。大体この程度が一番運営しやすいマキシマムではないかという考え方からベッド数を決定したのでございます。それから御指摘の点は、原子力医学を採用した場合の治療の場としての狭さでありますが、これは将来原子力医学というものはいろいろな治療方法を採用ざれると思いますけれども、治療の場としてはそんなに大きい場所は多分必要としないのじゃなかろうか、これはその時代になってみないとわかりませんが、大体今までの経験から申しますと、現在の敷地でも設計上若干拡張の余地が敷地内にございますけれども、大体間に合う、かような見当で計画したような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/19
-
020・河野正
○河野(正)委員 現状に基いては、御当初の計画があることでございますから、それで確信を持ってやっておられるわけですから私は差しつかえないと思いますけれども、しかし将来を考えた場合には、なかなか困難な点が生じてくるのじゃないかということを私は考えておるわけです。いわゆるメディカル・センターという性格上、医学の最高水準をいっていただかなければならぬわけですから、もし最高水準をいかないようなセンターでありますならば、今日開業医の諸君が反対しておるような実態も起っておるのでございますから、当然最高水準をいっていただくものでなければならぬと考えます。そういたしますと、当然今日のように、日進月歩というよりも、それ以上のテンポをもって進んでおる科学でございますから、従ってどうしても私は将来発展せしめていただかなければならぬし、発展する宿命というものがあるというふうに判断をいたします。そういたしますと、なるほど局長がおっしゃいますように、急性疾患ばかりであるのでというような話でございますけれども、御承知のうように今日医学の焦点というものはガンの問題だとか、あるいは高血圧の問題であるとかいうふうに、必ずしも急性疾患のみには限っておらないと思うのです。そういたしますと、今日の医学の方向というものはやはり将来拡大する、要するに急性疾患でなくて、別なところでもやれるというような問題については、やはり筑紫病院なら筑紫病院というものが今日国立であるわけでありますから、それを「元に置いておいて基幹病院の一環として運営していただくということになりますれば、将来のことについてもきわめて安心して運営できるのではないかという考え方から、これは現地の従業員の諸君とか、あるいは関係医療機関の意見でなくて、私どもは純粋の科学者の立場からそういったことを建設的に申し上げるわけでありますが、その点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/20
-
021・小澤龍
○小澤政府委員 御指摘の点、まことにごもっともでございます。私も同感でございまして、筑紫病院を残した場合におきましては、ある程度の敷地を確保いたしまして、もしも非常に広い施設を要するような場合には、その方面においてこれは考慮して参りたい。なお、運営に当りましては基幹病院と筑紫病院と一体的運営ができるような、そういう行政措置を加えていきたい。ただ本院、分院の関係にあるかどうかというような組織上の問題になりますと、またいろいろ意見がございますけれども、連単の面については、一体として実効を上げるというふうに努力して参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/21
-
022・河野正
○河野(正)委員 時間がございませんから、なるたけ結論に移りたいと思いますが、大体残すという方針、それからまたどういう方針で今後具体的に進めていくかというふうな基本的な態度につきましては、ただいま明らかにされましたから御了承申し上げます。
そこで、さらに突っ込んでここで御答弁願っておきたいと思いますことは、残すという方針がきまり、それからさらに具体的な今後の態度というものが一応表明されたわけでございます。そこで私はやはりそういう方針なり態度についての裏づけというものが当然考えられなければならぬと思う。たとえば具体的に申し上げますならば、三カ年後にいよいよメディカル・センターが発足をする。そうすると三カ年後に今日の筑紫病院をどう取扱うかということが当然考えられなければならぬおけでございます。センターができた、そこで既存の筑紫病院をどうするかということでは間に合わぬことは当然でございまして、そういうふうに今日の医療機関というようなものを軽率に取り扱ってもらっても因るわけであります。そこで残すという方針がきまり、どういう形でやろうかという方針が明らかにされました以上は、今日からそういう方針なり態度に向ってもろもろの準備というものが行われなければならぬと思う。そのために私はこの新年度から予算の裏づけをしていただいて、そうして三年後に残すための準備をしていただくということは当然必要になってくると思うのでありますが、そういう点に対してどのうようにお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/22
-
023・小澤龍
○小澤政府委員 まことにごもっともと存じます。三年後に突然整備ができ上るわけではございませんので、私どもは来年度から実際の予算面の実施に着手いたしたい、さように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/23
-
024・河野正
○河野(正)委員 来年度から実施に着手するということでございます。従って私はここで、たとえば基幹病院の一環として残すのか、あるいは独立した機関として残すのか、独立した機関として残すとするならば、療養所でやるのか、あるいは精神病院でやるのか、あるいは一般の病院としてやるのか、いろいろな点があろうかと思います。そういう点ここで即断を求めることはなかなか困難であろう、かように私は考えますけれども、しかしながら、新年度から予算を裏づけとして実施するというふうなことになりました以上は、早急にきめていただかなければならぬ。きめたところで大蔵省折衝等もやっていただかなければならぬということになると思うのです。そこで一つこの点は大臣から率直に承わっておきたいと思いますが、早急に、すみやかにただいまの方針について決定をし、そして新年度から予算の裏づけをやる。でき得べくんば、大体どのくらいの程度でやりたいという御方針か、お漏らし願えればけっこうだと思います。それらの点についての大臣の一つ御所見を承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/24
-
025・坂田道太
○坂田国務大臣 ただいま局長から答弁をいたしました通りでございますが、三十五年度の予算におきましては、本格的にその実施計画に基きまして予算要求もやらなければならない、三十四年度、来年度の予算におきましても、大体基本方針を早くきめまして、実施される程度のことはぜひやりたいというふうに考えておるわけでございます。何を申しましても、どういうような性格にするかということは、先ほど私が申し上げました通り、やはり厚生省内部においても慎重に検討いたさなければなりません。しかしながら、慎重に検討はしなければなりませんけれども、やはり早急に私たちとしては方針を決定いたしたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/25
-
026・河野正
○河野(正)委員 大体方針等につきましては、率直に御答弁いただきましたので、了解するにやぶさかではございません。そこで一つ、これは利害関係が伴うことでもございますが、先ほどもいろいろ指摘申し上げましたように、作る、作った以上は私生子的な存在にならしめてもらっては困る、やっぱり育ててもらわなければならぬということになりますと、先ほど申し上げましたように、従業員の諸君の協力も必要でございましょうし、あるいは関連いたしまする私的、公的医療機関の協力等も必要であろうかと思います。今後このメディカル・センターの性格いかん、あるいは運営いかんによっては、私はやはり関連いたしまする私的、公的医療機関の協力を得るということが根本だということになって参るかと思います。そこで将来の三年後のことでございますけれども、しかしその以前からやはり将来に対する運営方針等については、いろいろ検討されるというように考えますので、私は何も二年後に運営するのだから、三年後からそういう点については考慮すればよろしいということではなかろうと思います。そこで今日から、将来の通学等については、現地と関連いたしまする私的、公的医療機関、具体的に申し上げますなら医師会等の意見も十分尊重し、あるいはまた現地の従業員等の意見も十分尊重して、将来の運営に対して遺憾なきを期する諸策というものが当然必要になって参ろうかと思います。たとえば医師会からもすでに要望書が出ていると思いますけれども、将来診察室、試験室、手術室及び入院室の診療設備を開放してもらいたい、いわゆるオーブン・システム方式をとってもらいたいというような意見もございますし、またいろいろ各科が一般国立病院のような診療方式をとってもらっては困るというような意見もありますし、将来の発展なりあるいは運営の円滑を期するためのいろいろな要望、意見等が出て参っておると思います。これは例でございますけれども、そういった将来の運営を円滑ならしめ、それに基いてこのメディカル・センターの本来の使命を遂行し、なおまたそのメディカル・センターが設立されまする所期の目的を達成するためにも、私は将来の運営については非常に慎重を期さなければならぬ、そのためには運営委員会あるいはまた運営協議会等を設置して、そういった将来に対しまする運営を適切ならしめ、そして所期の方針に基いて、この基幹病院というものが円満に円滑に発展するというふうな方式をとっていただかなければならぬと考えますが、そういう点についても最後に御所見を承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/26
-
027・坂田道太
○坂田国務大臣 お説の通りでございまして、せっかくわれわれがメディカル・センターとして基幹病院を作るわけでございまするので、十分地元の関係各位と御相談を申し上げ、それを参考といたしまして、その趣旨に沿うように私たち努力をいたしたいと考えておる次第でございますが、河野さんも御出身地のことでございまするので、この上とも一つ御協力のほど私からお願いを申しあげておく次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/27
-
028・園田直
○園田委員長 次会は明十九日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時四一六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X00819590218/28
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。