1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年三月五日(木曜日)
午前十時五十九分開議
出席委員
委員長 園田 直君
理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君
理事 八田 貞義君 理事 藤本 捨助君
理事 小林 進君 理事 五島 虎雄君
理事 滝井 義高君
小川 半次君 亀山 孝一君
藏内 修治君 河野 孝子君
齋藤 邦吉君 志賀健次郎君
谷川 和穗君 中村三之丞君
中山 マサ君 古川 丈吉君
柳谷清三郎君 山下 春江君
亘 四郎君 伊藤よし子君
大原 亨君 岡本 隆一君
多賀谷真稔君 堤 ツルヨ君
中村 英男君 八木 一男君
吉川 兼光君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 坂田 道太君
出席政府委員
厚生政務次官 池田 清志君
厚生事務官
(大臣官房審議
官) 小山進次郎君
委員外の出席者
専 門 員 川井 章知君
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三月四日
社会福祉事業法の一部を改正する法律案(内閣
提出第六六号)(参議院送付)は本委員会に付
託された。
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本日の会議に付した案件
公聴会開会承認要求に関する件
国民年金法案(内閣提出第一二三号)
国民年金法案(八木一男君外十四名提出、衆法
第一七号)
国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等と
の調整に関する法律案(八木一男君外十四名提
出、衆法第二六号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/0
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001・園田直
○園田委員長 これより会議を開きます。
この際、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。内閣提出の国民年金法案、八木一男君外十四名提出の国民年金法案、国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案はいずれも重要な案件でございますので、公聴会を開き、広く利害関係者及び学識経験者などから意見を聴取し、委員会の審査の慎重を期したいと存じます。つきましては議長に公聴会開会承認要求をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/1
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002・園田直
○園田委員長 御異議なしと認めます。よって公聴会開会承認要求をいたすことに決しました。
なお議長の承認がありました際、公聴会開会の日時、公述人の選定及びその手続等に関しましては、委員長に御一任願いとう存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/2
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003・園田直
○園田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/3
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004・園田直
○園田委員長 次に内閣提出の国民年金法案、八木一男君外十四名提出の国民年金法案及び国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案の三案を一括議題とし審査を進めます。
質疑に入ります。質疑の通告がありますのでこれを許します。八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/4
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005・八木一男
○八木(一男)委員 私は政府提出の国民年金法案について御質問をいたしたいと存じます。
社会保障制度が完成されなければならない日本の国におきまして、一番取り残されておりました年金制度について、これを国民全体に広めるべしという世論が高まって参りましたのを受けまして、政府におかれましても今回国民年金法案を提出され、またわが日本社会党においても国民年金法案、同関係法案四案を合せまして五案を提出するような運びになりました。この審議がこれから本格的に行われますことを私どもも非常にうれしく思うわけでございます。政府案につきまして十分に拝見をいたしたわけでございますが、その条文の各一項々々に、作られた方のいろいろの御努力の跡を見受けまして、その御努力に対しましては非常に敬意を表したいと思うわけでございまするが、国民年金制度に対する総体的な考え方、あるいはまたそれを実施しようとする心がまえ、そういう大きな問題点についても私どもの非常に失望せざるを得ない内容がたくさんあるわけでございます。そういう点につきまして忌憚なく私どもの意見を申し上げますので、その意見に対して政府の方の反応を示していただきたいと思うわけであります。私どもは国民年金制度をよくしたいという一念に燃えてこういうことを御質問いたすわけでございますから、何と申しまするか、政党間のいろいろのかけ引きというようなことは抜きにいたされまして、年金制度を国民全体のために進めるという立場で一つ率直に御答弁を願い、また私どもの質問の中に加わっております意見についても御参考にしていただきたいと思うのであります。
質問に入らせていただきまするが、政府案の国民年金制度の第一条に「国民年金制度の目的」という項目がございます。この項目は、読み上げますると「国民年金制度は、日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き、老齢、廃疾又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。」と書いてございます。この文言を拝見いたしまして私非常に喜ばしく存じたわけでございます。国民年金制度につきましてはこのような考え方でもって参らなければならないということにつきましては、私も全面的に賛成でございまして、政府がその目的の第一条にこのような目的を掲げられたことにつきましては、非常に敬意を表するものでございまするが、この目的をほんとうに実現するために、本腰にこの国民年金法を作るに当ってかかっておられたかどうか、一つその点につきまして所管大臣の坂田厚生大臣から御決意のほどを承わりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/5
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006・坂田道太
○坂田国務大臣 お答えを申し上げます。私もこの国民年金法案を提出いたしまして皆様方に御審議をわずらわすわけでございますが、ただいま八木委員から御質問がございましたように、私どもとしましても、現在の日本の置かれておりまする経済財政の許す範囲内において精一ぱいの努力をいたしまして、この法案を提出いたしたようなわけでございますけれども、しかしながら理想的なものということを考えました場合におきましては、十分満足をするということにはあるいはならないところもあるかとも思いますけれども、今後皆様方の御審議の過程を通じまして、御意見等を拝聴いたしまして、もし改められるところがあるならば改めていきたい。この国民年金制度というものは、一片の法律をもってこれが充実整備をし、また社会保障制度というものが国民全体に及ぶわけのものではなくて、長い期間におきまして、そして国民全体の御援助と御協力とを待ってこれが完成するものと私は考えているわけでありまして、法文の第一条の目的にそのような意味合いにおきまして、国民が老齢、廃疾または死亡によってその生活がそこなわれることを防止いたしまして、健全主な国民生活の維持向上に寄与することを目的とするということをはっきり打ち出したような次第でございまして、国民が生活に困窮する状態に陥りました場合には、その最低限の生活を保障し、さらに老齢、癈疾、死亡、疾病、失業等、国民に生活の困窮をもたらすような事故が起りました場合におきましては、あらかじめ何らかの手段を講じてそれを未然に防止いたしますことが、福祉国家として当然の責務である、このような考え方からそのような目的を明記いたしたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/6
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007・八木一男
○八木(一男)委員 今の厚生大臣の御答弁中に、いろいろな意見をいれて、特に野党の意見もいれてこの問題はどんどん進めていきたいというお話を承わりまして、非常にけっこうだと思うわけであります。今後とも野党の意見も、よいものは十分御参酌になりましてこの制度をよくしていただきたいと思うのでございます。まず憲法第二十五条の精神によってやるということでございますが、御承知の通り憲法第二十五条には、健康で文化的な最低生活を維持するということを規定してあるわけでございます。端的に申し上げますと、この国民年金法案の内容でございますが、根本的な拠出制度の方の一番完成した大きな額である老齢給付が、最高で月三千五百円、年四万二千円ということに相なっております。いろいろのデータをあげなくとも、月三千五百円の生活が健康で文化的な生活を維持できるものであると言えないことは明らかであると思いますが、それについて厚生大臣のお考えを承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/7
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008・坂田道太
○坂田国務大臣 お答えを申し上げます。もちろん御指摘になりましたように三千五百円で最低生活が得られるというふうには思いませんけれども、しかしながら三千五百円をもらわれることによって、やはり老後の生活に対して相当のゆとりを持って参るということは言えるかと思うのでございまして、この点につきましては、もちろん多いのにこしたことはございませんけれども、われわれといたしましては、現実に即した、そして実行可能な国民年金制度を打ち出すという意味におきましては、今度の場合におきましては、三千五百円というふうにいたしたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/8
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009・八木一男
○八木(一男)委員 三千五百円では健康で文化的な生活が維持できないということをお認めになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/9
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010・坂田道太
○坂田国務大臣 その点につきましては、三千五百円で維持できる人も——別に俸給その他生業を営んでおられる方について三千五百円がおりる場合においては、やはりこれで健康で文化的な生活を営める方が大部分だと思うのでございますが、非常に貧しい方々において、これだけで健康にして文化的なということになりますと、やはりそういうことはなかなか今日の段階ではむずかしいのではないかというふうには考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/10
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011・八木一男
○八木(一男)委員 三千五百円で維持できないということがおわかりでございましたら、なぜ三千五百円をもっと、たとえば社会党案の七千円まではいかなくても、五千円とか六千円とか、そういう目標でもっと大きな努力をされなかったのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/11
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012・坂田道太
○坂田国務大臣 まあ現在の建前といたしましてはこの程度で精一ぱいのところであるということで、この程度に落ちついたようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/12
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013・小山進次郎
○小山(進)政府委員 三千五百円をもって現在の年金給付の場合の目標にいたしました事情を簡単に御説明申し上げたいと思います。
〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕
ここ一、二年の国民の成人の平均消費支出は、大体月に直しますと四千円強程度になっております。従いまして現状において考えますならば、この程度が国民の平均的な生活水準、こういうふうに一応考えられるわけでありますが、このうち一般に老人その他の生活の実態を考えますと、いろいろ共通経費に属するものを、家族内で生活をするということになりますと、子供なりあるいはその他の者に依存することができる、こういうような前提を置いて考えますと、そのうちからおよそそういう共通経費として考えられるものをあげますと四分の一程度になりますので、それを控除いたしますと大体三千五、六百円というところが今日の状態における平均の消費支出の実額、こういうことになるわけでございます。そういうような事情からいたしまして、大臣も申し上げましたように、今日の生活の実態を前提にいたしまして、まずこのぐらいのところを目標にしてスタートする、かように相なったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/13
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014・八木一男
○八木(一男)委員 ただいま厚生大臣と小山審議官のお答えでございまするが、小山さんの御答弁ではっきり正直にさらけ出されたわけでございますけれども、今日の標準で、それも無理やりにつじつまを合せた統計を出してきて、それが三千五百円ぐらいだ。ところが政府の年金の完成は、これは言うまでもなく四十年後です。四十年後で、世の中が進歩する、あるいは生活が向上する、当然そういうことがなされなければならない。これは自民党内閣が何年続こうとも、社会党内閣が来年からとってかわろうとも、これは必ずそういうふうに世の中がよくなるように政治を進めて参る。そういうふうにいたしますと、これは最低限度の、ただ食うための、生きるための生活ではありませんで、憲法で保障されたのは健康で文化的な最低限度ということになっております。文化的ということが明らかに入っております。健康ということも、医療が進歩したら、金がかかってもその医療で病気になってもなおれるという要素も入っている。ただおかゆを食って、細々とやせ衰えながら数年間生きていくという生活ではないのです。健康で文化的な生活ということでありまして、それは発展しなければならない。四十年後まで発展がないという考え方では、これはもう実に情ない考え方であります。自民党といえども四十年間日本の国民生活をそういう健康的な点で、文化的な点で発展させないつもりで政治を動かすという考え方は毛頭ないと思う。その意味で三千五百円というのは、実に貧弱な内容だといわなければならないと思います。特に三千五百円のつじつまが現在なら合うような御説明をなさいましたけれども、これも計算上無理につじつまを合わされたのであって、現在の三千五百円がいろいろのデータをあげなくても、健康で文化的な生活であるとはだれも言えないわけなんです。そういうことではなしに、ほんとうにもっと健康で文化的な、憲法の精神に準拠するようなそういう程度まで引き上げるような努力をもっとよくされなかったか。この前、昨年の十月の上旬でございましたか、橋本さんにはそれをさんざん申し上げまして、厚生省第一次試案では国民年金の名前に値しない、だから職をなげうってでもそれを高めるような努力をしていただきたいということを申し上げたのですけれども、技術的なこまかい点の配慮はずいぶんなさっておられます。ですけれども、ほんとうの骨組みがしっかりなるような、骨組みが伸びるような努力は一向にされておらない。それについて坂田さんは、最近この職におつきになったわけでございますが、現在のこの国民年金法案の提出の責任者でありますから、最近の一番重大な責任を持っておられるわけです。なぜ三千五百円というような程度の低いものをもっと高める努力を強くされなかったか。もう一回坂田さんの御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/14
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015・坂田道太
○坂田国務大臣 私が就任いたしましたのは、すでに予算案がきまったあとでございまして、この点につきまして実は努力しようにも努力ができなかったことは八木委員も御承知の通りでございます。ただしかしこの出されました範囲の中におきまして、いろいろ手を加えたことはございます。しかしただいま御質問のございました憲法との関連におきまして、健康にして文化的な最低限を保障する、こういう憲法の精神というものは、単にこれは、もちろん所得保障の大きな柱ではございますけれども、これだけでもってこの健康にして文化的な最低限を維持するというわけ合いのものではないのではないかというふうに考えておりますし、これと並行いたしまして、やはりこの貧乏というものの中で一番大きないわば悪魔と申しますか、そういったものは病気でございますので、医療保障という面におきましても、つまり皆保険の制度によってこれを充実することによって、その最低限を保障していくという考え方も一面においてはあると思います。さらには日本の経済というものは、単に固定的なものではなくて発展的なものであるということは八木委員も御承知の通りでございまして、それにおきましてたとえば減税政策であるとか、あるいは失業対策であるとか、あるいは完全雇用の道であるとか、あるいはさらには基本的には経済基盤の強化というような一連の関連におきまして、やはりこの憲法の精神というものを満たしていくという努力をお互いにしていかなければならないのではないかというような考え方からいたしまして、ただいま提出いたしておりますところのいわゆる国民年金の額というものは、ただいま審議官から答弁をいたしました通りに、実は今日の段階では三千五百円というふうにいたしたような次第でございます。この点につきまして小山審議官から簡単に御答弁を申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/15
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016・小山進次郎
○小山(進)政府委員 ただいま八木先生からおっしゃいましたように、およそ一つの年金制度を組み立てます場合においては、これに発展を持たせていかなければならぬという点は、もう基本的な問題でございます。私どももその点おっしゃる通りだと思っております。この発展の持たせ方については、これは八木先生自身が非常にお苦しみになった点でございますが、たとえば社会保障制度審議会のように、将来の三十年なり四十年なりを基礎といたしまして、年率を一・五%に押えるということも一つの方法ではございましょうけれども、一体三十年も四十年もの先について一・五%でいくんだという考え方は、個人の一つの意見としてならば別でありますけれども、国民的な規模の制度として考えます場合には、現在のところいろいろの条件からいって、それでよろしいとはなかなか言い切れない。その点はむしろきわめてすなおに、将来の発展は一応いろいろな角度から予測はいたしますけれども、経済の発展があり、国民生活の上昇がありましたならば、それに応じましてきわめて弾力的に年金の額を調整していく。そういう場合に調整しようと思っても、将来のいわば財源を先食いしてしまいまして、どうにもならぬというようなことに年金制度を置きましたのでは、当初の建前は非常に美しく見えますけれども、実際においてはもう国民の年金制度にならなくなっていく、かようなことが今回の政府案を先ほど申し上げましたようなものにさせているわけでございまして、むしろ政府案の発展を予想し、その場合にいつでもそのときの状態において必要な措置がそのときの国民の判断によってとり得る、こういうことにしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/16
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017・八木一男
○八木(一男)委員 御答弁者が二人ありましたから、一つ一つについて申し上げます。
結局、坂田厚生大臣が医療保障の点などについてお触れになりました。私もこれが非常に今脚光をあびているからといって、年金制度だけに夢中になって、ほかの医療保障をほったらかしにしていいとか「あるいは救貧政策をほったらかしておいていいとかいう意見は持っておりません。むしろ今までの防貧政策が不十分であったために、現在貧乏に陥っている人の救貧政策の方が至急にやらなければならないことだと思います。また医療保障の問題もその次に大事だと思う。たとえば今政府が非常に格段に生活保護の基準を上げる、あるいは医療保障を国民健康保険の二割五分平均というようなけちな案ではなしに、結核は全額医療費を国庫で負担して、結核以外のものは実質は五割、六割を担負する。国民健康保険の七割、八割、十割というようなりっぱな社会保障政策をとっておられるならば、年金制度はここ一、二年はこのくらでもやむを得ないというような考え方になるかもしれない。ところが医療保障はほったらかしであります。結核医療の全額国庫負担すべしということは、三年前に社会保障制度の医療保障勧告で明らかに出ておるわけです。それはほったらかしになっている。昨年は厚生省で結核医療費の、これは食費を除いたインチキなものでありますけれども、全額国庫負担という案を用意されたが、大蔵省の反対でつぶれた。本年はそれを百分の一くらいに縮小した案を出して結核対策をしているというようなことをいっている。そういうふうにほかの方をほったらかして、年金案をたくさんやるんだと宣伝して、年金の中身を見るとがらくたのような中身だ。そういうことではいかぬと思うのです。世の中を惑わすものである。医療保障や救貧政策をやるために、年金は今このくらいでいたし方ないというならば、医療保障全部十割給付という案を並行して出されればいい。また現在の貧乏な人のために、そっちの方が急務であると言われるならば、生活保護の基準をいきなり倍にするとか、そのくらいのことは考えて、それでこの年金案を並行して出されるならば、それについても異論はありますけれども、政府の御説明としてはある程度当を得たものと言えましょう。しかしそういう大事なことを全部ほったらかして、公約した年金の中身もがたがたで、それでそのがたがたの理由に、ほかのことをやらなければならないから、このくらいでがまんしてもらいたいということでは筋が通らないと思う。社会保障に関する限り、日本は一番進んでいかなければならない。われわれ社会党の国民年金法案というものでも、私は完全だとは思っておりません。非常に乏しい案だと思って、おる。しかし苦心して作った案を出すについて、医療保障も完全にする、救貧対策も完全にするということを並行してやることが前提であります。政府の方はわれわれの案よりも実質的に五分の一ぐらいの年金法案を出して、医療保障対策はほったらかす。救貧対策もほったらかす。実際上五%くらい上げるような答弁では、われわれ承知しませんから、そういうことはおっしゃらない方がいいです。そういうことでほったらかしておいて、この程度しかほかの関係があるからだめですというようなことではいけないと思う。これは坂田さんの責任でも、あるいは小山さんの責任でもないかもしれない。岸内閣自体の責任、大蔵省、大蔵大臣の頭を切りかえなければいけないし、大蔵省の主計局の頭を全部切りかえなければいけないし、岸内閣総理大臣にもっと活を入れなければいけないということになる。社会保障に関する限り、ほかの国より先行しなければいけない。日本の国は貧乏が多い、あるいはまた疾病が多い、あるいはまたこれから老人人口がふえていくという状態のもとにおいては、ほかの国よりもこういうような面に対しては進んでおらなければならぬ。ところが政府全体の考え方は、たとえば外車を自由に使用するというような点だとか、あらゆるぜいたくな点では世界の水準をはるかに破った世の中を許しておきながら、こういう問題になると、諸外国が百くらいの程度だったら、日本は国力がないから五十くらいでがまんしてもらいたいというのが政府の常套手段だ。それではさかさまなんです。貧乏な国は、貧乏な国に対する対策は、ほかの国が百なら二百も三百もやらなければならぬ。病気が多ければ二百も三百もやらなければならぬ。そういう根本的なはき違いがあるために社会保障が進まない。厚生省としては努力はしておられることは認めますけれども、しかし努力をしておられても、いかに良心的であっても、その方々自体の努力には敬意を表しても、世の中の貧乏人や、病気で苦しむ人や、年寄りはそれでは助からない。そういう衝に当られる方は、自分の今までのやりにくい伝統の中で一割ほど努力をしたということで甘んじてもらっては困る。世の中の大ぜいの困った人のことを考えて、勇気を持ってやってもらわなければならぬと思う。そういう点で坂田さんの医療保障関係に籍口した御説明は、これはちょっと困ると思う。ほかの問題を完全にやられたら、その理由によってといわれても、ほかの問題はほったらかして——就任間もない坂田さんに大きな声を出して失礼でありますけれども、しかし、ほんとうに結核対策というようなものは完全に後退しておる。大蔵大臣に前も申しましたけれども、一つ坂田さんから教育をしてもらいたい。大蔵大臣という人は財政を考える人だ。財政を考える人でも、〇・一くらいの近視眼的な見方で財政を考えてもらっては困る。結核対策は医療上完全になおる方策ができておる。ですから結核が根絶できない、なおり切らないのは経済的な理由であります。そこで全額国庫負担をほうり込んで、五カ年間でほんとうに結核がなくなるようにすれば、六年以後の結核に対する財政負担は激減するわけであります。そうすれば長期の観点よりすれば、財政的にもその方がいいわけです。医療保障対策もそうです。一部負担をとったり、いろいろの診療の制限をするというようなことをして診断がおくれるようになったり、診療が完全になおらないようにするから、病人があとまであとまで続く、病気がだんだん多くなってくる。そして医療保障の金をたくさんつぎ込まなければならぬ。財政的に見てもそういうものには一挙にたくさんほうり込むがいい。そういうことを大蔵省の人たちはわからない。佐藤君にそういうことをあなたからけんかごしでもいいから、どなりつけてもいいから教え込んでいただきたい。社会保障に大きな金を最初からつぎ込むことは、結局長い目で見たら財政方針にも合う。あなた方の小さな頭で考えるからいけないので、もっと大きく考えれば財政はもっとよくなるということで大蔵省の連中を啓蒙していただかなければならぬ。そういう考え方で今後の社会保障も年金も考えていただかなければならないと思うわけであります。
そういうことで、大へん大きな声を出して失礼いたしましたが、三千五百円ということを私はあっさり出した。ところが三千五百円というのは最高です。最高が三千五百円、二十五年しか保険料が払えない、あるいは免除期間がないという人は年に二万四千円くらいに下る。それ以下の人はまた下る。それ以下の人は年金ももらえないというようになっておる。最高が三千五百円、それでこの最高が今言ったような情ないものである。これは最高が六千円くらいになっておれば私はもっと声をやわらげますけれども、三千五百円で、しかもまだまだずっと下るようにできている。そうしたら下った人は一体どうなるのか。三千五百円でも健康で文化的な生活は維持できないということは、厚生大臣お認めになった通り。ところが今の政府案全部を見れば、免除規定は相当に過酷である。そうして免除がなくて、ボーダー・ラインは納めないからなまけ者だという言い分をなさるかもしれません。しかしほんとうに納められない人はたくさんある。納められなかったら年金額は減る。ですから実際に平均したら三千五百円でなしに二千円平均になってしまう。だから現在の生活保護の水準と同じように、下着が一年に一枚しか買えないんです。買ってはいかぬというような生活保護の基準と同じようなもので四十年後の文化的、健康的な生活が維持できる、そんなものではないはずです。そうなると三千五百円をここで思い切って少くとも社会党の七千円に上げればいいけれども、それができなくとも、六千円くらいまでは上げられなければ国民年金法案とは言えない。社会保障の一番の根本である所得保障制度とは言えないと思う。その点でもっと大きくなされなければならないと思うのですけれども、政府自体自民党にも働きかけて、現在の原案である三千五百円の組み立て——組み立てはいろいろ工夫してありますが、その骨を太らす、伸ばすということで自民党から修正案が出る、修正案が出せなかったならば社会党とも御交渉になって、われわれの知恵もおいれになって、そうしてこの年金案を成立させるときに三千円が七千円とか、少くとも六千円という案になさるというような御意向を表明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/17
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018・坂田道太
○坂田国務大臣 ただいま八木委員から活発な御意見を承わりました。三千五百円では最低限の生活を保障できないんじゃないかというお尋ねでございますが、私が先ほどお答え申げましたように、実は単にこの年金だけで最低生活を保障するのではなくて、やはり医療制度なりあるいはその中におけるところの結核対策なりというものを推進することによって、健康にして文化的な生活を保障していく、こういう考え方には八木委員も少くとも御同意をいただけたと私は了解をいたしておるようなわけであります。ただ日本の貧乏というものの認識につきましては、確かに八木委員の御指摘の通りでございまして、私は予算委員会の席上におきましても、どなたかの御質問に対しまして答弁をいたしたわけでございますが、たとえばアメリカのような国民所得の多い、そして生活水準の高い国においてすら、一九四八年の調査でありますが、上院、下院の合同調査委員会において、アメリカのボーダー・ラインというものがどれくらいあるだろうかと調査したところが一二・六%もあるということを指摘をいたしておるわけでございます。
〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕
しかもその一二%のボーダー・ラインとは称しながら、アメリカにおけるところの保護基準というものは実に驚くなかれ二千ドルという額である。しかも一般生活水準に対してその生活保護基準の定め方というものは、国民所得の生活水準に対して六割だということを聞いております。そうしますと日本におけるところの生活保護基準というものは、国民所得あるいは一般生活水準に対して二割あるいは三割にしかすぎない。しかもなお日本の国民所得とアメリカの国民所得を比較いたしますと、日本の国民所得はおそらく九分の一か十分の一ではないかと思います。そういたしますると結局貧乏の度合いというものは、同じ一二%というものが日本のボーダー・ライン層というふうにして、二百四十万世帯というものがあるというふうに厚生省で発表いたしておりまするが、かりに一二%のボーダー・ラインがあるといたしましても、その貧乏の程度というものは実に十八分の一かあるいはまた二十七分の一かの貧乏だということです。そこで結局貧乏の意識というものが非常に違う。アメリカにおいてならば、働こうと思えば大体働ける。そしてなおかつ貧乏に転落する者は、アメリカにおいてはなまけ者だということが一応言えるかもしれない。しかしながら日本の状態においては、働く意思があって、相当な才能があって、しかも五体がそろっておってなおかつ働けない実情にある。こういう国におけるところの貧乏の意識というものは非常に違う。そういう社会的現実があるということは八木委員が御指摘になります通り、私もこれを認識しておる一人でございまして、ここに日本の貧乏追放という、岸内閣が打ち出しております意義が、実は非常に重大なものを持っておると思うわけであります。そこでそういうような意味合いにおきまして、私どもといたしましては誠心誠意を持って国民皆保険の制度に乗り出し、さらにまた社会保障制度の所得保障であるところの国民年金というものを実は打ち出したわけなのです。従来はおそらく考えられなかったようなこういった一連の、ほんとうに国民生活に影響を及ぼしていき、充実していく、あるいはボーダー・ライン層を何とかして助けていこう、あるいは社会保障を何とかしてやっていこうという気持は、八木委員にしてもお認めいただけると思うのでありまして、その意味におきまして私は、国民年金というものは一年や二年で完成するものではないと思いますし、また一年や二年で完成すると思ったら大間違いだと実は思うのでございます。たとえばこの間ニュージーランドからナッシュ総理大臣が見えました。この方がかつてのニュージーランドにおけるところの社会保障制度を打ち立てたそのメンバーの一人であるということを聞いておるわけでございますが、ニュージーランドの歴史をひもといてみましても、おそらくこれは一九三八年に社会保険を始めておって、今日のようなりっぱな社会保障制度を打ち立てておる。少くとも第二次大戦前においてニュージーランドはこの問題についてやっておる。さらにイギリスにおいては、このニュージーランドの社会保障制度というものをつぶさに検討した上において一九四五、六年でございますか、第二次大戦が済みましてから社会保障に乗り出しておる。そうして十年の経過をして今日のようなりっぱな保障制度というものが打ち立てられておるわけでございまして、私どもといたしましては、この所得保障を打ち出したというこの意義だけは非常に高く御評価を願いたい。しかしながらその充実につきましては、まだまだ至らざるところもございまするので、冒頭に申し上げましたように皆さん方の御意見等も参考にいたしまして十分これから検討をいたしまして、ほんとうに国民の方々に喜んでいただけるような年金に仕上げていきたいというのが私の気持でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/18
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019・八木一男
○八木(一男)委員 坂田さんの御誠意は、人柄から感じとれるわけでございますけれども、御誠意はわかるとしても、岸内閣なり自民党の誠意は実はちっともわからないのです。それで困るのです。岸内閣が貧乏追放ということを掲げられたことは知っていますが、実際は何もやっていないと同然だと思う。貧乏の問題がほんとうに日本はひどいですから、これを解決するために社会保障制度を完成しなければならぬというのは国民的な世論になっておるわけです。国民的な世論になるまでは社会保障制度の拡充であるとか、完成であるとか、福祉国家の完成であるとか、そういうことは保守党の人はほとんど言われなかった。世論が無視できないような状態になったら、これはやはり選挙その他の関係もありますから、そういうことを言い始められた。おそくともいいです。言い始められて、おそくてもいいですから、それなら本腰に完全にやってもらえばかまわないのですけれども、あとから入って言い始めて、それで貧乏を追放する、社会保障を完成するというようなことを言って、ほんとうはしないとすると、社会保障というのは制度上非常に複雑な問題ですから、一つ一つについてこれは不十分であるということは身をもって体得しても、国民全部がけしからぬじゃないかという理論的な根拠を持って攻撃するまではいかないわけです。そういう状態に便乗して、やらないくせにやったようにする。そうすると国民の方は、そのうちにわかりますけれども、やってもらえるのかしらんということで、自民党を支持なさる。ほんとうの国民の願望である貧乏の追放とか、社会保障の完成は一向に行われない。それでは日本国民が悲劇だと思う。自由民主党の諸君が、私のこの言い方に憤激をされまして、しゃくにさわる、社会党の倍くらいの案を出してやろうということになって下されば国民の仕合せですけれども、幾らばり雑言しても、そうはなさらないで、今のところはこのくらいの程度だということでごまかして、社会保障は、ほんとうはこのくらいのスピードの傾斜でいかなければならないところが、このくらいになる。そうすると完成するまでがおくれた間の国民は、不幸なままで苦しんで死んでいかなければならぬ。社会党や自民党はどうなったってかまわないが、その間の国民の不幸というものは、政治を担当する者として黙っているわけにはいかない。そういうところは岸内閣の閣僚をしておられますからお芳しい立場なんですけれども、坂田さんの個人的な良心とは別に、岸内閣というものは、社会保障の看板だけ掲げて中身は何にもない。ほんとうの動きを、そのから看板のためにとめているということをはっきり御認識になって、そうして憤慨なさったならば、その憤慨は岸君か佐藤君に向けられて、それでほんとうによくなるようにしていただかなければ困る。こういう場で、岸内閣はこうやっているという御宣伝をなさいましても、どんな言葉で言われましても、私どもは断じてそれは承知をいたしませんから、今後岸内閣の御宣伝は、答弁中にはなさらない方がいいんじゃないかと思います。
それから一年、二年で完成するものじゃないということを言われました。社会保障制度、特に年金制度というものは長期間の問題だから、完成までに時間を要するわけです。それだから最初からりっぱな目標を持ってもらいたいということを特に申し上げたい。政府が全部無拠出年金に踏み切っておられるならば階段的でよろしい。ところが政府は拠出年金制度を根本にしておられる。拠出年金というのは、今から積み立てて、それから後にでき上る。一部賦課方式も採用しておられない。完全積立金方式でやっておられる。それだったら最初から完全な目標に進まなければ、途中で困ったことが起る。それを一切やめて、同じだけの財源を全部無拠出に出すという制度に変えられるならば、一部分そういうような階段的ということも理由が成り立つでしょう。積立金方式をとっておられて、拠出方式をとっておられる。それならば目標は完全に最初から定めておかなければ、そのままでとまってしまう。ニュージーランドやイギリスの例など右顧左眄する必要はない。ニュージーランドやイギリスは一九三八年ですか、そういうような二十年前にやったもので、これは時代おくれだ。イギリスが社会保障の完成した国家だと思い込んでいる方は、時代おくれの考え方なんです。イギリスがどうあろうとも、ニュージーランドがどうあろうとも、日本はそれ以上のものを、貧困の状態からして作らなければならぬ。しかも今の時点でイギリスかニュージーランドか、そういう制度を作ろうと決心したならば、そのニュージーランドやイギリスの今の制度よりもはるかに高いものが作られるべきだ。昔の古くさいイギリスやニュージーランドの例でそういうものを判断しては、社会保障はとまってしまいます。日本が今初めてこれを作るのですから、世界じゅうが日本の例にこれからならっていくのだ、そのような勢いで作らなければいけない。それに三千五百円が最終目標だ、しかもそれは完全に納めた人だけで、普通は二千円くらいの平均だ、納められない人は年金がない、労働者の年金はほったらかしておく、そんなような年金では話にならない。ですからこの国会中に——予算は通ってもかまいません。拠出年金の方は二年後に実施でしょう。二年後ではおそいから、来年くらいから実施してもらわなければなりませんけれども、予算案なんかというような形式的なことにこだわらずに、厚生省自体で動かれまして、厚生省で出し直すというのが面子上工合が悪かったら、自由民主党から出されてもよろしいし、社会党と共同提案でもよろしい。とにかく六千円や七千円の案で出される意思があるかどうか。いろいろな意見を承わりましたという意見があった以上、当然それについての御配慮があってしかるべきだと思います。それについての御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/19
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020・坂田道太
○坂田国務大臣 今予算案は衆議院を通過したばかりでございまして、ただいまこれを変更するような法案あるいは修正というものを政府としては考えておらないような次第でございます。なおまた私がこユージーランドの例を引き、あるいはイギリスの例を引きましたのは、やはりこれらの先進国がなしとげて参りました一つの過程、経験というものは、日本が今日打ち立てようとする年金につきましては私は八木委員と違う考えを持っておりまして、十分検討をし、研究をして、これにおきまして取り上げるべきところがあるならば取り上げていくということでなければならないというふうに私は考えております。たとえばイギリスの最初の案で申しますると、フラット制で、つまり掛金も同じフラットでいく、それから給付も同じフラットでいくというようなことでございます。御承知の通りでございます。ところが最近になりまして、むしろそういう考え方では今日の実情に合わない、従ってある程度高い給付を考えるならば、やはり金に余裕のある人はそれだけ高い掛金を出すというような案に変りつつある。そういうことが労働党の中においてもあるいはまた保守党の内部においても考えられておる。むしろ私たちはこの経験を生かしまして今度の年金法を作っておるということを申し上げておきたいと思うのでございます。この点は八木委員も御了承をいただけるものと思いますし、ニュージーランドの場合におきまして、こんなけちくさい、というようなお話でございますけれども、私はニュージーランドが打ち立てたところの社会保障制度というものはけちくさいものではない、これは相当に見習うべき点があるというふうに考えます。しかしながらニュージーランドは御承知のように二百万の人口、しかも土地は日本と同じくらいで、しかも国民生活水準は高い、こういう国に比べて、人口が九千万から一億になんなんとするところの日本におきまして、どうやってこの年金法案を打ち出していくかというところのわれわれの苦心ということも一つはお考えをいただかなければならないので、ただいま提案いたしておりますところの法案というものは、それらの国々のいろいろ参考にすべき点を参考にし、しかしながら日本の置かれておるところの実情というものを見きわめ、あるいは財政状態、将来にわたるところの財政の伸びというようなものも考えまして今日のような法案に織り込んだような次第でござりいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/20
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021・八木一男
○八木(一男)委員 今おっしゃった点、まあ三分の一くらいは了承してもいいのですけれども、あとは了承できないのです。さっきニュージーランドの例をあげられたときは、中の仕組みではなしに、程度の問題で申し上げたわけです。ニュージーランドでは二十年も前に作られた。それから社会保障というものが大事だということは認識されているのですが、程度の問題として、今発足するならばもっと高くなければならない。ところが、ニュージーランドが面積は狭いけれどもいろいろの国民生活が豊富であるという点はございます。これは政府は完全に計算済みでありまして、ほかの国はこうだ、日本の経済力はこうだから日本はこのくらいということを計算済みでやっておられるわけです。そういうことも頭に入れて、そういうように向うが豊かであるからこっちはこのくらいということだけをとられるのじゃなしに、ニュージーランドは二十年前にこのくらいの勢いでやったら、日本でこれから完成するときには、二十年たった進歩した世の中としてやっているわけですから、もっと高いものをしなければならない。そういうような国と国のバランスなんということは考えてはいけないことだけれども、政府は小さくするためにどうしたってお考えになるにきまっているのです。そういうことはいけないけれども、とにかく私の申し上げたのは時点です。二十年前にニュージーランドがあのくらいの元気でやった。だからそれといろんなバランスを考えられることはある程度いたし方ないとしても、二十年前にそれだけの元気でやったならば、今二十年後にやるときにはそれ以上の元気でやらなければならない。そういうことで、時点の問題をそういう問題にすりかえられては困る。
それからもう一つ制度の問題で、参考にするのはいいのです。しかし事情が違う点があるから、そのまま参考になりません。今おっしゃった例は逆なんです。収入の高い人にはたんさん負担してもらおうという考え方がイギリスの労働党にある。ところが政府の案は、保険料はフラットです。今の案は逆なことをやっている。そういうふうにニュージーランドやイギリスの例を都合のいいときだけ持ち出して、向うの進歩した点を入れなければならぬ点ははねのける。政府はいつでもそうなんです、外国の例を取り入れる場合は。そういうふうにニュージーランドやイギリスの都合のいいところだけをとって、都合の悪いところはほっといて、しかも向うは収入の高い人はたくさんとらせようという傾向にあるという例をあげて、出している法案はフラット、そんなことじゃ困るのです。ニュージーランドやイギリスはどうでもいいのです、日本の社会保障制度すですから。
そこで本論に入りますけれども、結局政府としては、ただいま案を差しかえる意思はないと一応言われました。坂田さんの良心的な点が現われた、ただいまという言葉をつけられた。それで政府の方でも、自民党にも熱心な方がおられる。それじゃ少いじゃないかという議論が出たら、当然、政党内閣ですから、閣議でやりかえるということもあり得る。また二年後の拠出年金ですから、一年くらいに早めてもらわなければならぬ、来年には必ず財政支出をするということを大蔵大臣が了承する、それならば今から法案を変えておこうということだってあり得るわけです。そういうことになったら閣議をやり面して、それで出されるということもあり得ると私は認識して進めたい、ただいまのところという御答弁ですから。自由民主党の方も当然修正される案を出されるとか、社会党案に全面的に賛成されて政府案を否決されるとか、そういうようなこともあり得る、そういう考え方で一つ坂田さんもお聞きになっていただきたいと思う。それからさっき小山さんがおっしゃいました、この前十月に橋本さんとやりとりの間に出た文言を利用してやられたんですが、社会保障制度審議会では十五%という経済伸張を考えてあの答申を出した。社会保障制度審議会というものは非常に権威のある審議会ということになっておりますが、この年金制度の答申に関する限り、私をして言わしめれば非常に間違った答申だ。とんでもない答申です。世の中の年金がりっぱにでき上る態勢を、あのとんでもない、いくじのない間違った答申でストップさしてしまった傾向がある。政府が社会保障制度審議会の答申を尊重するということは、設置法で内閣の義務なんです。ところが今まで制度審議会の通りぴちっとやった例は一つもない。特に医療保障勧告なんてものは十分の一もやっていない。そういうことはいけないことで、やってもらわなければなりません。しかし社会保障制度審議会の具体的な答申を上回ることを、やることは、答申の精神とは一つも背反しないのです。今まではそれを下回る、十分の一くらいのことをやっても、これでも尊重しましたなんということを総理大臣はぬけぬけと言って回っているような状態です。制度審議会を上回る案を出されることには一つも遠慮は要りません。そういう点で、制度審議会の案にとらわれる必要はない。制度審議会の方は経済伸張率を一・五%と見ておる。こんなものは小山さん言われました通り、とんでもない話で、これは社会保障制度審議会が自由民主党を、あるいは日本社会党を、あるいは日本の政治家全体をばかにし切った答申です。政府の方は、長期経済計画で六・五%という計画を進めておられる。ところが、おととしあたりにはちょっとへっこんだけれども、大体においてはそれに近いようなものができるということを方々で答弁しておる。社会党は来年度で、すぐことしでも政権をいただければ、計画経済をやって、政府の、今の自民党以上の経済伸張をやるつもりです。ところが今のところは自民党か日本社会党かどっちかが政権をとる態勢にある。〇〇党なんというのは政権をとる可能性がない。緑風会がとるとか、無所属がとるなんということは今のところあり得ない。そうすれば自由民主党か社会党ということになる。その両党とも、そのくらいの経済拡大をする意気込みでやっているわけです。それについては政府の方は企画庁の専門家が一生懸命計算をはじいて、それで理論闘争をして、それでこういった計画ができておる。大ぜいの知識のある人が全部やって計画をしているわけです。それを社会保障制度審議会で、社会保障だけに専念している人がそういうような根本的な問題を一・五と押えている。一・五と押えてあの答申が出ておる。これを四と押え、五と抑え、六と押えたらあんな答申は出なかった。それは制度審議会も、四と押えれば四が絶対できる、五が絶対にできるということで、根底において諮問を出し直したならば三千五百円なんて出てこない。一万円くらいに出てくる。そうすると社会保障制度審議会のほんとうの意思は、政府の経済拡大計画を根底にすれば、それ以上の社会党の拡大計画を根底にすれば、一カ月に少くも一万五千円くらいのものを全国民に保障するという意思があるのです。前の橋本さんは、制度審議会の意思を尊重したい、そればかり言っておられましたけれども、これは小山さんも、従って坂田さんもお読みになれば十分わかる。それですから保障制度審議会のほんとうの意思は、経済拡大率がこれ以上に上回った場合には、全国民に月一万円くらいのものを全部保障するという案でなければならない。ほんとうに制度審議会の意思を尊重するとすれば、三千五百円というものは非常に少い。その点で制度審議会の答申に固着した考え方を、これからでもおそくはありませんから捨てて、それで出し直す、また政府の面子があったら来年出し直すということを確約するというようなことをなさる必要があると思う。それについて坂田さんのお考えを承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/21
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022・坂田道太
○坂田国務大臣 ただいま社会保障制度審議会の経済成長率の見方につきまして御質問があったわけでございますが、しかし何と申しましても、御承知の通り社会保障制度審議会のメンバーの方々というものは一流の方々であると思いますし、会長の大内先生はその方のいわば権威者だと思いますし、またその中には八木委員のごときりっぱな方もおられるわけでございますので、それらの答申というものは、私は非常に権威のあるものだというふうに承知をいたしております。やはりこれに対して十分これを尊重し、これを参考として政府案を組むということが、私はいわば行政をやっていく場合の心がまえでなければならないのではないか、その過程においていろいろの御議論があったということは私は承知をいたしております。しかしながら、出されましたところのいわゆる案というものに対しましては、やはりこれに対して尊重していくという建前が私は妥当な考え方ではないかというふうに考えておるわけでございます。しかしそれだからといって、それじゃ社会保障制度審議会できめられたものをコンクリートにして、全然動かすべからざるものであるというふうには私どもも考えておりませんので、多少事項等によりましては社会保障制度審議会の答申よりも上回ったようなことをやったこともあるわけでございまして、それらの点については、あるいはお尋ねがございますならば小山局長から御説明を申し上げたいと思う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/22
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023・八木一男
○八木(一男)委員 大きな声を出すのは控えまして、社会保障制度審議会は、年金特別委員会から総会から全部、私去年の四月の初めまでは出ておりました。その中で一番わあわあ言った方ですから、経過は全部よく知っております。そこでは、ほんとうは大内会長もほかの委員の人たちも、りっぱなものを作りたいという考え方があったのです。だけれども、岸内閣は医療保障勧告をあれだけ踏みにじって、十分の一もやらない。そういうような岸内閣では、これはしようがないという気分が横溢しているわけです。ですから岸内閣——今までの岸内閣ですよ。これから改心なさったら別ですが、せいぜい岸内閣が努力して最大限度のところがここらだという意見が相当多かったわけであります。そう出さなければいいものを、出したら医療保障勧告みたいに十分の一くらいでほったらかすだろうということで、社会保障制度審議会の本来の使命である学者的にほんとうに検討した意見を出すのではなしに、やや政治的に、岸さんというような社会保障に不熱心な人が政権をとっている以上は、それくらいに出しておかないと引き出しにくいだろうというところからあの答申が出たわけです。もし岸さんがそういう人でなくて、ほんとうに熱心な人であれば仕合せです。少くとも坂田さんはそういう学者連の批判よりもっと熱心だろう。そういう経過は明らかになっています。これは絶対にうそではありません。大内さんを呼んでも、今井さんを呼んでも、末高さんを呼んでも、だれを呼んでもけっこうです。そういうような空気の中で、岸内閣から引っ張り出すということであれが出た。現に岸内閣からあれが引っ張り出た。それはいいのです。その効果はあったわけです。それに近いものが引っ張り出たということです。ほんとうならば政党は学者にそんなにばかにされてはいけない。これくらいしかあれはやる能力がなかろうからこれくらいで出しておこうということで、学者に答申を出してもらっているのでは困る。それは学者が悪いのではなくて、今までの岸内閣が悪かったから——医療保障勧告をあれだけしても十分の一しかしないでほったらっかしておく、そういうことは改めなければいけない。形式的に社会保障制度審議会の精神に大体沿っているからというような御答弁をなさるとしたならば、これは社会保障に対する熱意がないと見る。もし岸さんがなさったら、この看板は偽わりであるということになる。ほんとうの事態を把握されて——これは八木委員がでたらめを言っていると思われたら、幾らでも参考人として社会保障制度審議会の委員を全部呼んでいただいてもけっこうです。明らかにそういう事情です。岸さんがばかにされ切ったわけです。自民党さんは怒ってしかるべきだ。何をなまいきなことをやる、政治はわれわれがやるんだ、ほんとうにやるべきことを答申したらいいじゃないか、やってみせるというような勢いで、参考人として呼んで追及されたらいいです。ですからあんなに限定された考え方をされてはいけません。
それからもう一つ、私は解散のとき委員ではありませんでした。がんばり抜いて、三千五百円ではいけない。少くとも六千円くらいにしなくちゃいかぬ。六十五才ではいけない、六十才でなければいかぬ。遺族や障害者がほったらかしにされてはいけない。労働者年金が入らなければ国民年金ではないというような根本的な点で突っ張っているときに解散になった。解散になってから六月の初めに答申が出た。私が社会党から推薦されて、当選したならばまた帰ってくることは大体において見通されたわけですが、そういうじゃま者がいない間に、ああいうインチキな答申が出された。社会保障制度審議会に関する限りは、答申については私は責任がないわけです。そういうことですから、とにかく社会保障制度審議会の答申に固着して考えないでほしいと思う。おまけに社会保障制度審議会の答申のいいところは省いておられる。減額年金は五年からしなければいけないというけれども、政府は十年からです。社会保障制度審議会の答申を尊重する、尊重すると言いながら、都合の悪いところはほったらかしにしておく、そういうことでは困ると思う。内科障害では障害年金をやらないといけないというのに、それを省く。さっきの外国の例でもそうです。政府の答弁はいつでもそうです。都合のいいところは全部とって、同じあれでも都合の悪いところは全部捨てておる。そういうことではほんとうの政治の動きはできないと思いますし、ほんとうの社会保障の伸展はできないと思う。足りないところは率直に足りないと認めて——政府がそうなったら自民党がそれでは承知できないということになるでしょう。政府がそういうことはできなくてこれがいいのだということになれば——自民党さんはもちろん聡明な方々でありますけれども、年金法を隅から隅まで全部読まれたわけではない。読んではおられるでしょうけれども、一条一句までそらんじておるわけではない。自民党の熱心な先生方はみな政府にごまかされておる。これでは国家のために困る。正直にこれをとられて、いい点はいい、なまけたところはなまけた、とった点はとった、とおっしゃればいい。いい点だけとったとおっしゃいましたね。よくない点もあります。そういうことで、ほんとうにもっとよくしていただかなければならないと思うんです。何回繰り返しても何ですが、これからほかの委員の方もそういうことを御追及になると思いますが。政府案に固着した考え方でなしに、今国会で法案を直す。財政との関係があれば——拠出年金は二年後になっておりますからこれは一年後にしていただかなければいけないけれども、それはことしの財政とは関係がない。無拠出年金については予備費その他もありますし、参議院で予算を直すこともでき得ます。そして衆議院に回ってくることもあり得ます。それですから固着しないで考えてもらいたい。少くとも来年から予算をふやすということは完全にできるわけです。法案を変えていくこともできるわけですから、法案をことしこのまま通してしまいましたならば来年、再来年は怠けてしまって——坂田さんが副総理大臣になられて、厚生大臣を離れられるかもしれない。岸内閣がぶつ倒れてどうなるかもしれないということになりますから、今の時点から直せるものはできるだけ直してよくやっていただきたい。さような御決意でやっていただきたいと思いますが、それについて坂田さんに御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/23
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024・坂田道太
○坂田国務大臣 ただいまこの法案を出しておりますのに、これを修正をしろというようなお話でございますが、これは政府といたしまして国会に提出をしておるわけでございまして、これを国会がどういうふうにおやりになりましょうとも、私たちとしてはどうにもやりようがないわけであります。われわれ政府といたしましては、ただいまのところ遺憾ながら、非常に御熱心なお話でございますけれども、ただいまこれを修正するというような意思はないことをはっきり申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/24
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025・八木一男
○八木(一男)委員 私の説明の仕方が悪くて坂田さんにぴんときていないようですので、さらに私申し上げますが、ほかのもっと聡明な委員の御追及によって坂田さんがこれは間違った案であったとお考えになったら——ただいまはそうであっても、二、三日後にはそうお考えになられる余地が十分あるという理解のもとに、これから一生懸命申し上げたいと思います。
次に、そういうことをなさる方法として、政府がよくする方法で——やはり大蔵省あたりのいろいろの抵抗もあるでしょう、抵抗があってもそれを排除してよくやっていただかなければならないけれども、そのシステムを考えることによって、抵抗が少くてよくできる方法があると思う。これは坂田さんは十分御承知だと思うのですが、いわゆる賦課方式の採用であります。そういうことについて一つ坂田さんのお考えを伺わしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/25
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026・坂田道太
○坂田国務大臣 ただいま私どもとしては、やはり拠出制をやります場合には積立方式というものをやっていくわけでございますから、賦課方式はとれないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/26
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027・小山進次郎
○小山(進)政府委員 年金制度をどういうふうに組み立てていくかという場合に、先生がおっしゃるように賦課方式を取り入れますことが不健全な考えであるといったような考え方は、今日はもうだれも考えておりません。その意味合いにおきまして、積立方式と賦課方式をどういう関係に置くかということは、十分これは研究に値する問題だということを私ども十分承知した上で、今回積立方式をとったわけでございます。先ほど来お話がありましたように、やはり将来の発展を考えます場合はどうしても年金制度に相当な弾力性が残されていなければならぬというようなこととか、あるいはこれは八木先生よく御存じのように、積立方式に幾分の賦課方式を加えていくという発展は、これはきわめてなだらかに出て参るのであります。ところが無拠出方式なりあるいは賦課方式に積立方式を入れるというようなことは、これは発展ではなくして、年金制度としては、そのままに放置しておきますと破綻を生ずるおそれがある場合にやるというようなことになるわけでございます。それやこれやを考えまして、少くとも今日の日本で国民的な規模におけるむずかしい年金制度を発足させます場合においては、まず安全第一ということで制度をスタートさせたい。これが軌道に乗りまして、そのときの経済的な条件あるいは社会的な条件から見まして、そのときにまた考える余地が出て参りましたならば、そのときの事情においてそのときの国民に考えていただくようにしよう、こういうのが今回の政府案の考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/27
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028・八木一男
○八木(一男)委員 厚生大臣に端的にお伺いしますので、小山さんでなしに厚生大臣にお願いします。方法は可能であって、現在の岸内閣の財政方針は直してもらわなければいけないけれども、その直す範囲も含めまして、そう最近の支出を変えないで制度がよくなることがあったら、これは厚生大臣としては検討を進められなければならないことだと思いますが、それについての率直な御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/28
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029・坂田道太
○坂田国務大臣 御質問の趣旨がちょっと私にわかりかねたわけでございますけれども、しかしながらやはり年金制度というものをよくしていくという努力は絶えずやっていなければならないのではないかというふうに思いますし、もし現在組んでおります予算の範囲内においてベターな案がありましたならば、その点については、私はこれをベターなものにしていくということを努力するのにやぶさかではございませんし、また将来にわたりましてそのような賦課方式をとることがいいというような段階になりまするならば、やはりそのようなことはそのときの国民あるいは国民の代表である衆議院の人たちがおきめをいただくということになろうかと思いますけれども、現在はただいま提案をいたしておりますような積立方式を堅持をしていくということがいわば堅実な方法ではないかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/29
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030・八木一男
○八木(一男)委員 この賦課方式と積立金方式は——自民党の特別委員会で積立金方式をとるといわれたそのもとは、おそらく厚生省の年金特別委員会——長沼委員会だと思うのです。長沼委員会のメンバーというのは保険会社の協栄生命か何かの人が入っておられて、保険会社の考え方が非常に入っているわけです。その長沼委員会の答申と、社会保障制度審議会では積立金方式か賦課方式がだいぶ論議が分れた、そして両々相譲らなかったのですが、賦課方式の論者は私以外にもあった。ところが一番なまいきでうるさくてやかましいやつがいなくなった間に積立金方式が勝ってしまった、そしてそれが出た、そういう経過は御存じのわけですね。長沼委員会というのは大蔵省のただそろばんだけきちきちやる人と、保険会社の積立金方式以外に頭のない感覚の人、失礼ですけれどもそういう人が考えたものだ。これはほんとうの将来の社会保障を考える意味においてそう大した参考にならない。社会保障制度審議会では両論があった。そこで完全な賦課方式ということは私は問題があろうかと思いますが、積立金方式と賦課方式を混合するという方式は当然考えられていいじゃないかと思う。ところが長沼委員会の影響と社会保障制度審議会の表に出た形式的な影響、それから厚生省で大体そういうような状況下で作業された建前で、積立金方式でなければならないというふうに、根底の完全じゃないくせに、そういうことになってしまった。それでは国民の不幸だと思う。もし賦課方式がほんとうに悪いということであればこれは別ですけれども、それをやはり検討されて、それでやられるべきだと思う。賦課方式をとる必要のある理由といいますのは、完全積立金方式なら今のゼネレーションが二重負担になります。今の老人や未亡人や身体障害者にはどうしたって一般財政からの無拠出年金を上げなければならない。無拠出年金の財源は何であるか。これは税である。税外収入も幾分はありますけれども、とにかく一般税の形にしろ保険税の形にしろ目的税の形にしろ何にしろ、今の働いている人々のふところから出る。その場合に、金持ちからはたくさん取るとか貧乏人からは取らないという形はありますけれども、総体として完全積立金方式をとれば今の働いている人が、自分の老齢に対するあるいは障害に対するあるいは遺族に対するそういうものを自分たちで全部積み立てなければならない。政府の方は、国庫負担の方も完全積立金方式なんです。これは一般税で取られたものから配分になる。とにかく今このゼネレーションが全部自分の将来の用意をしなければならない。それで今の年寄りにも全部親孝行をしなければならない。そうすれば時代的な完全な二重負担になる。自分の用意をすることも親孝行もいいことですから、それだけ言えばだれも文句は言いません。これはけっこうなことだ、やりましょうということになっておる。なっておるけれども、そこで政府のお考えになるような限度がくるわけです。たくさんの大きなものにしたいけれども、一般財政負担もこれこれでぎゅうぎゅうだから、あるいは保険料もこれ以上げたら負担できないだろうからということになって、限度がくるわけです。限度をずらさなければどうしたって壁に突き当るわけです。壁は少し幅がありますよ。その同じ方式をとっても社会党がやればもっと金持ちからたくさん取るということもできますから、その壁の中のゆとりは別として、とにかく自民党のワク内、岸内閣のワク内でもそういう考え方を改めたらよくなる方向があるわけです。政府は、ピーク時は六百億とかなんとか言っておられますけれども、ことしは無拠出が百億ちょっとあって、これは三分の一ですから、平年度には三百億をちょっとオーバーするわけです。残りの三百億というものは、今の働いておる人の将来のための積立金として国庫から出されるわけです。それを積み立てないで将来の国民にゆだねたならば、これは残りの三百億円は無拠出なり過渡的な拠出の足りない分にほうり込めるわけです。そうすれば七十才からとか、いろいろな所謂制限をやって、七十才の老人しかやれないというようなけちな案ではなくて済むわけです。六十五からやれるとか、金額はもっと厚くするとか——男女両方のときには二割五分ずつ引いてしまうとか、あんなむずかしい、そうしていじましい操作をしなくてもできるようになるわけです。そういうことで踏み切ったらいいわけです。それを学識経験者、といっても社会保険の普通の連中に言わせれば、保険会社の頭を抜け切れないわけです。頭が古いわけです。何でも積立金でなければいけないと思っておる。積立金でなければいけないというのは保険会社の考えです。保険会社はいつつぶれるかわからないから、つぶれたときに責任準備金がなければ払えない。だから保険会社の人に言わせれば絶対に積立金だと言うわけです。ところが日本の国家は保険会社じゃない。社会はずっと続くわけです。逆行することはない。もし逆行して、共同連帯と書いてありますが、そういう共同連帯のような精神がなくなるような政治になるような時代だったら、これは封建時代に逆行するか、めちゃくちゃな搾取時代に逆行する。そういうことになれば、これは国民年金どころではなくて一大騒動が起る。とんでもない状態になる。そうじゃないのです。少くとも社会は前進する。どんなに悪い政府がとっていてもそんなに逆行しないものです。岸内閣でも逆行しておる点は、労働者の弾圧だとか、人権の問題だとか、平和の問題は逆行しておるけれども、国民生活の上ではそんなに逆行していない。そういうことで、とにかく社会は進歩するわけです。保険会社みたいにつぶれるということは考えなくてもいいわけです。日本という国が世界共和国の一つの州になったって、その単位として残るわけです。社会が続くとすれば、今のゼネレーションが親たちに親孝行をするのだ、自分の方は子供たちに今の時代のように親孝行をしてもらってこれは当然なんだ。それで賦課方式をとれば無拠出制度をとることと同じように——提案理由の中にあるように、将来国民に過重な負担を与えるからとらない。これを逆に考えて下さい。そういうことは現在の国民に過重な負担がかかっておる。現在の国民は、日本は完全に現在いろいろな計画ができていないし、配分がめちゃくちゃに上下の差があるから非常に苦しんでおるのです。将来の国民は日本が発展するからいろいろな配分がよくなって、もっと仕合せになるわけです。その苦しんでおる現在の国民が二重負担だ。自分の当然の負担をするのは一応置いていい。ほんとうは、今は苦しいのだから、自分の方の負担もほかの者にしてもらってもいいのですが、自分の分だけ負担するというのならまだ話がわかる。自分たちは親たちに親孝行をして、自分は全然親孝行をしてもらわないつもりで自分たちの用意にするという、こんな案の立て方はない。保険会社流の会計がどうの将来の見通しがどうの、そんなけちな事務的なことでほんとうの制度を考えてもらっちゃ困るのです。それで賦課方式をとれば案をそんなにいじくらなくてもいいのです。坂田さんも岸さんも面子をそんなに失しなくても済む。将来出す六百五十億円は減らしてもらったのでは困るのです。六百五十億円はこれを固定しておいて、これは絶対に出すことにして、賦課方式をとれば給付が上るのです。無拠出も拠出も上げることができる。だけれどもうっかりそれを言うと、佐藤さんあたりに、それじゃ六百五十億円はそれで減らせるじゃないかとすりかえられたら大へんです。そのときは命がけでぶんなぐり合いをしてもとめてもらわぬと困るけれども、とにかく六百五十億円は完全に出すとして、それを賦課方式に変えれば上げられるわけです。そういう方法があることは、坂田さんは御就任になってから——もちろん聡明な方ですからそういうことはわかっておられるでしょうけれども、前に坂田さんが厚生大臣であれば、そういう案ではなしに賦課方式も入れようじゃないかとお考えになったんじゃないかと思うのですけれども、きまってから御就任になったから立場は楽であり、苦しくなったということである。楽だけしてもらっちゃ厚生大臣としては困るから少し苦しんでもらって、そういう方式を入れてよくするというふうにしていただきたい。これは小山さんの御答弁はちょっとなしにしていただいて、厚生大臣のお考えを承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/30
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031・坂田道太
○坂田国務大臣 私といたしまして国民のために苦しむことには一向やぶさかではございませんけれども、ただいままで御答弁を申し上げました通り、社会保障制度審議会においても積立方式を答申されておりますし、われわれ事務当局といたしまして練り上げまして結論に至ったものも、実は積立方式という方が少くとも現在といたしましてはよろしいというように結論が実は同じになったわけでありまして、今直ちにこれを変えるというようなことは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/31
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032・八木一男
○八木(一男)委員 今直ちにとおっしゃいましたけれども、あしたでも変えてほしいのです。実はその改正の点はいろいろな点があるから、しかしながら国民のためによくすることにやぶさかではないとさっきおっしゃったが、それがいけないというのは事務当局やなにかがいったり、年金委員会がよけいないことをいった。それを変えるのが大臣の役なんです。大臣、それでなければかわった値打はないです。それを考えていただきたい。今直ちにないとおっしゃいましたけれども、大臣は事務局の答弁は別にして、なぜいけないか、なぜ賦課方式を取り入れられないか、おそらく財政の見通しがはっきりわからないというようなことだろうと思う。それ以外の理由はないはずと思いますが、それについて大臣ほかに理由があったら一つおっしゃっていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/32
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033・坂田道太
○坂田国務大臣 何度も同じようなことを繰り返すわけでございますけれども、日本の経済発展というものをかたく押える、そしてこの年金を出発する、もし出発をしてあとで困るというようなことがないように手がたくやっていくということが私はいいと考えておるわけでございまして、とにかくそういうような国民生活に非常に影響を及ぼす法案でございまするので、出発はした、ところがあとではその財政がどうにもやりくりがつかないということでありまては、まことに国民の方方に対して申しわけないというような考え方から、実は積立方式をとっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/33
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034・八木一男
○八木(一男)委員 企画庁長官は来ていただけませんか。朝から御要求しているのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/34
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035・園田直
○園田委員長 今マ連絡をとります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/35
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036・八木一男
○八木(一男)委員 それでは今の問題は企画庁長官の御意見を伺わないといけないので、ちょっとその問題はこのままでおいておきまして、次の質問に入りたいと思います。
今次の問題でよくしていただきたいことは、とにかく三千五百円が最高であって、あとは平均二千円くらいのあれしか作られていない。それはいろいろ今御答弁のようなことで出発したんだからかんべんしてくれとか、なんとかかんとかいうお話ですが、それならその作り方を根本的に改める必要があると思う。ほんとうに健康で文化的な生活が維持できる額であれば国民全部にやったらいいけれども、そうじゃなければ、非常に少いものであって国庫負担も相当部分お入れになるのだったら、そういうほかの働きと年金と合わして生活できるような人よりは、ほかの収入のない人に厚みをかけるというような考え方をしないと、社会保障の精神に合わないことになる。多いものだったら一律でいい。多いものでないものを一律に配分したら、収入のない人にとってはこれは意味のないものになるわけです。ところが政府の拠出年金、基本年金の方の考え方は、社会保障的には組まれない、社会保険的に組まれておる。そういう点が根本的な誤まりだろうが、あれでも金額が高ければ一部修正すれば相当のいい案になりますけれども、金額が低い、おまけに社会保険的に組まれるということでは困ると思う。これは憲法の条章をうたってありますから、社会保障を進めなければならないという第二段のここにかかってくるわけです。健康で文化的な社会生活——社会保険的にとこの憲法はいってない、社会保障的にといっておる。ところが国民年金は完全に社会保険的にできておる、そういうことは間違っておると思うのですが、坂田さんのお考えを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/36
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037・坂田道太
○坂田国務大臣 これが社会保険的であるかどうかということには議論があることだと思います。しかしながら私どもといたしましてはやはり拠出制を建前とし基本としていくという考え方、これは日本のような経済状態のところにおいてはこの方が現実的な年金法ではなかろうかというふうに私どもは考えておるわけでございまして、諸外国の例を見ましても、一、二のところは別といたしまして、大体拠出制を建前としていくということになっておろうかと思うわけでございます。そのような組み方をいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/37
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038・八木一男
○八木(一男)委員 拠出制をとるということと社会保険的ということは、これは一致させなくてもいいのです。保険会社の連中にやらせれば一致させます。これは政府のやる社会保障であって、保険会社の経営じゃない。ですから拠出制と社会保険的ということをきっちり同じ不即不離の問題だと考えていただいたら困るわけですけれども、それについて坂田さんのお考えを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/38
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039・小山進次郎
○小山(進)政府委員 仰せのように社会保障の理念を実現していきます一つの技術的な手段が社会保険でございますので、社会保険の内容の仕組みを考えます場合にも、昔の時代に考えられておったようなあり方をしゃくし定木にやっていくのではなくして、これにいろいろな工夫を加えていくということは当然あっていいことであるだけでなく、なければならぬことだ、かように私どもも考えております。いろいろ先生がおあげになった具体的な問題について、それではその点はどうかということになりますと、これは私どももいろいろ説明させていただきたい点があるわけでございますが、特にお尋ねがございませんために、その点には触れませんけれども、趣旨はさように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/39
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040・八木一男
○八木(一男)委員 ある程度努力しておられる、こう見受けられるのです。けれどもそれはある程度であって、年金準備室の許された範囲における最大の努力をしておられることは、小山さんの御努力に対しては敬意を表してもいいと思うのです。年金準備室の努力は認めるけれども、岸内閣としては非常に努力が足りないわけです。厚生省もその責任を免れることはできないと思う。坂田さんにお伺いしたいのですが、結局保険料が納め方が少かった人は、二十五年しか納められなかった人は二万四千円になるわけで、月二千円になってしまう。制度審議会が五年までは減額年金を適用しろといっても、十年か九年、極端にいうと一文も入らない人がいるわけです。ところが年金保険料をなまけた人は別ですけれども、免除規定は、これはわれわれの案も御参考いただいたと思いますが、免除規定を作られたということは相当の進歩だと思います。免除規定自体も今までの政府の運用だと、それが完全に果されるとは思いません。ほんとうに困る出せない人だけであって、ボーダー・ラインまで及ぶとは考えられない、あの規定の文言を見ると。そうなるとボーダー・ラインの人は納められなかったときには年金は減る、激減する、なくなるということになる。そういう人たちが年寄りになったときには、納められる人が年寄りになったときよりも所得保障の必要度は高いわけです。そういう人が少ししかもらえない、一つももらえないということであっては、これは社会保障ではない。そんな案だったら保険会社を合理化したにすぎない。保険会社で満期保険金に年金支払計画をつければ年金になるわけです。保険会社は一割、一割五分も回していながら四分しか利回りをしてくれないから損です。国庫負担は損です。けれどもそういう分は別といたしまして、制度としては保険会社と同じわけです。保険契約をたくさんやった人が保険金をたくさんもらう。それに年金条項をつければたくさんの年金をもらうということになるわけですから、保険会社を国営にしたようなものです。それではほんとうの社会保障とは言えないわけです。この第一条に憲法の条項を持ってこられた決意、これには十分敬意を払いますけれども、決意と実際とが全然離れている。大体社会保障でない社会保険を社会保障と言う言い方が間違いであって、社会保険というのは普通の保険をちょっと合理的にしたものです。ほんとうは社会保障でなければならない。まあ社会保険形態でもいいですが、社会保障をやるということを第一条、憲法第二十五条に書いてある。そうしたら、形態は社会保険であっても、ほんとうに社会保障に徹した内容にしてもらわなければならないと思う。ところがそういうように年金の一番必要な人には年金が少ししかもらえない、あるいは少しももらえない、そういう組み立てになっておる。それでいいと思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/40
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041・坂田道太
○坂田国務大臣 普通の場合において二十五年間納めれば年金がもらえる。しかしながら、ただいま御指摘のありましたように、各段階を設けまして、うちが非常に困ってどうしても払えないというような方々につきましては、最低限十年というものを納めるならば年金がもらえるというような仕組みにいたしましたことは、やはり八木さんが御心配になっておるようなことを実はわれわれの方で配慮をいたしたことだと御了解を願いたいわけでございますがしかしその額が非常に小さいというようなことを御指摘になるのじゃなかろうかと思うわけでございます。確かに社会保障制度審議会におきまする答申におきましては、これを五年というふうに答申をされておるようでございますが、一面におきまして、やはり私たちが拠出制を設けておるという場合においては、先ほどお答えを申し上げましたように、老後の生活というものについて、自分が生産し所得がかなりある時代からこれを積み立てていくという考え方から実は出発をしておるわけでございます。この十年というものを五年というように下げますることは、その基本的な考え方から実は遠ざかるのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。しかしながら、貧しくてどうにもならないという方々、これらの方に対しまして配慮をするということはやはり当然でございまして、それが客観的に見てどうしても払えないという方は、少くとも十年ということでこれを切ったわけでございます。これを五年とかあるいは三年とかいうふうにあまりにも短かくいたしますことは、それこそほんとうに困って、まじめに積み立てようと思っても積み立てられない、掛金をかけようと思ってもかけられないということではなくて、拠出する意欲というものを、それならばもう五年かければいいのだというような安易な考え方でもし出発するといたしますならば、この年金財政に及ぼす影響、あるいは将来におけるところの年金制度の充実ということも、むしろ考えられなくなるおそれがあるのじゃないか、こういうような考え方から、五年という答申がございましたけれども、むしろわれわれといたしましては十年というものを一応考えたわけでございますし、またさらに申し上げますならば、これを年金財政の面から考えましても、やはり十年ということが適当だという結論に実は到達いたしたようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/41
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042・八木一男
○八木(一男)委員 五年、十年の点もそうですが、それはその中の部分的な点です。結局納め得なかった人全部が少くなる、それでは困るということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/42
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043・坂田道太
○坂田国務大臣 ただいまの御質問に対しまして私うっかりして御答弁しなかったわけでありますが、つまりどうしても十年も納められないという方々に対しましては、援護年金をもらえるという建前になっておりますから、全然受けられないという方は実はないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/43
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044・小山進次郎
○小山(進)政府委員 八木先生が問題にしておられます事柄は、おっしゃるように非常に根本的なことでございまして、おそらく政府案について私どもが考え、かつこれから申し上げようとすることも、しょせん程度の問題ということに相なろうと思いますけれども、先生のおっしゃる社会保障の理念を実現しようとしていかに考えているかということをもう一回お考え願う意味合いにおいて項目だけを申しますと、第一に被保険者のあり方につきまして、おそらくこれは単に社会保険ということだけを考える人々でありますならば、これは先生方の方の案はもちろんのこと、政府案についてもああいうような考え方は出て参るまいと思います。申し上げるまでもなく、社会保険を考える場合に、保険料を納めるということが従来の考え方からいえば基本的なことでございますので、保険料の納入を強制いたします以上は、当然被保険者とされる者に所得がなくちゃならぬ、かようなことになるわけでございます。また事実先生も御承知の通り、今までの議論の段階にも、一部のその方面の専門家といわれる方々にそういう意見が強くて、所得のない、従って保険料の納入を強制することが適当でない者は、むしろこの際年金制度の外に置くべきじゃないろだうか、こういう考え方があったわけでございますが、この点は政府案におきましても、いろいろ検討いたしました結果、やはり保護を加えていくという必要の点を考えれば、かえって所得がないとされておるような人、あるいは家庭の主婦を含めまして、そういう人々こそ年金制度で抱きかかえていかなければならいものじゃないかということで、実は従来の保険理論とでも申しますか、おそらく理論というほどのものでもないと思いますが、やや鉄則に近い考え方としておったものを完全に踏み切りまして、まず全部の人を被保険者にする、こういうふうにしたわけでございます。
次に、そういう所得がないという人々を取り入れましたことによって、従来保険の仕組みで解決のつかない幾つかの問題が出たわけでございますが、これについてはすでに御承知をいただいておりますように、突然にけがをするとか、あるいは配偶者を失うというような予測することがほとんど不可能な事故に対しては、保険料を納めておる、あるいは納めてない、あるいは納めることができなかった、納めることができたということの違いをなるべく反映させないようにする。言いかえますならば、何か非常に意識的な意図を持って保険料の納入を怠らない限りは、障害年金や母子年金がいくたようにする、かように組み立てたわけでございまして、この点は従来の社会保険の考え方から見れば非常に異例の、ワクをはずした考え方ということに相なるわけでございます。
それから、そのほかに今大臣が申し上げましたように、いろいろな方法を用いまして一生のうちで保険料を納め得る期間を努めて活用して年金が受けられるようにしていく、そのような方法を用いましても、どうしても年金が受けられないというような方に対しては、将来にわたって無拠出の年金を残していく、従いまして先生のおっしゃいますように、額そのものにつきましては、おそらく将来にわたってそのときの事情において検討をされ考慮さるべき問題は十分に残っておると思いますけれども、仕組みといたしましては、まずこれだけの仕組みを考えますならば、少くとも意識的になまけるという態度をとらない限り、おそらく法案について御検討下さった結果お知り願ったと思いますが、人間の常として、ある場合に多少起ってくる怠慢という程度のものは努めてこれを問題にしないで、よほど意識的に長期にわたってなまけない限りは年金がいくように、かように仕組んでおるわけでございますので、まあこれは先ほど来繰り返しております言葉をまた繰り返すわけでございますが、今日の段階においては考えられる限り社会保障的な理念を社会保険を通じて体現をしていく、かようにしたつもりでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/44
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045・八木一男
○八木(一男)委員 小山君の御説明の内容はすっかりわかっています。今までの政府の出してこられたいろいろの案の中で、そういう点についてはワク内で相当に努力されたことははっきり認めてもいいと思います。実によく研究してあります。私も全部条文を拝見したし、経過も知っておりますけれども、それだけでは事が済まない。ワクがある。だから小山さんの御答弁はあまりしてもらいたくない。そのワクの中で小山さんは相当努力されたことは認めるのです。だから坂田さんに申し上げたいのです。坂田さんは御苦労はまだ短期間なんです。半年か一年、小山さんは小さなワク内でめちゃくちゃに御苦労になった。そのワクをはずす御努力を坂田さんにしてもらわなければならない。そういうことで、小山さんの御答弁はなさらなくても内容はわかっています。わかっているけれども、相当にとか、今までのそういう形式をはずしたと言われる、それは程度の問題なんです。今申し上げたことはおわかりでしょうけれども、とにかく払いにくい人は少ししかもらえない。払えなかった人は減額年金ももらえないという部分があるわけです。今遺族のことや何か言われましたけれども、傷害年金ですよ。援護年金じゃない。傷害年金は結局一番下のところで三年間払わないともらえない。これはほかのものとして、逆選択なんか考える必要はないと思うのです。強制適用ですから、日本中が全部入るのです。ちょっと入ってちょっともらうというようなことを、私的保険では逆選択で初めは締めるということがありますれども、強制保険であるからそういう要素は一つもない。たとえば年金制度に入って、交通事故で手足両方ともなくなった、いわゆるだるまさんというような非常に不幸な状態に陥ったというときでも、二年ちょっとした保険料を払ってなければ傷害年金は入らぬ。老人のことをよく、自民党さんは選挙の札が多いから老人心々と言われるけれども、坂田さんは——大丈夫、その通りです、ちゃんと調べてありますから。老人々々と札が多いから老人のことばかり一言っておられますが、傷害者には実に過酷なのです。何にもその人が悪くなくて、交通事故でだるまさんになった。保険料は今までまじめに払っていた。二年五カ月ぐらいちゃんと払った。一つもなまけない。ところが、だるまさんになったら収入がないから払えない。そのとき傷害年金は入らない。一級中の一級です。それでは社会保障ではないと思う。小山さんの御苦心の跡はわかりますよ。それもわけのわからぬ人が三年を五年にという考えもあったのです。それを三年にされた努力は私は知っておりますが、それは小山さんの年金準備室の範囲内のことであって、内閣としてはほんとうにそれでは困るからよくしようと思ったらできるはずです。それを大蔵大臣がわけがわからなかったり、岸さんの腰が弱かったり、坂田さんが御就任間もなくで、まだほんとうの潜在されている馬力を発揮されていないからそこまでいかないだけの話で、ほんとうに事務局としての努力は認めていいと思いますが、その努力に厚生大臣がおんぶしてもらっては困る。これだけ努力してこれだけやったからかんべんしてもらいたいということでは厚生大臣の責任はとれない。厚生大臣はそのワクを突き破る努力をしてもらいたい。そういう部分があるのです。今までまじめに払って一つもなまけはしないで、たとえばだるまさんになって傷害年金がもらえない。その人はまだ何十年生きていかなければならない。傷害者の人は結婚するのは当然ですけれども、傷害者の人は収入がないから結婚はおくれますが、そういうことは、そうでないように傷害年金をしなければならない。それは別として、現在その人が結婚して子供をたくさん持っておる。そこのところに交通事故でぱっとなった。それで今までまじめに、年金で将来やろうと思って払っていた。それが入ってこない。こんなものでは社会保障ということは言えない。そういう部分があるわけです。そういう部分をなくすために厚生大臣に御努力になっていただかなければならないと思う。ただいまのところ政府は直す意思はございませんとさっきおっしゃった。ところがほんとうにそれを考えられたらどうか。そういうところは、こっちがそれでいいと言っても、政府が私の方から直しますと言われてもしかるべきところなんです。そういう点があることをお考えになって、事務局が半年、一年努力したから事務局の顔を立てて、ちょっとでもいじったら申しわけないとか、内閣できまった以上は壁になってどうにも動きがとれないとか、自民党の議員さん全部が言ってもなかなかわかってくれないとか、そういうことがあっても、ここにおられる方々は社会保障に熱心な方ですから、そんなことは取っ払えと言われるにきまっている。与党の方々を動かせば閣員が動くのですから、準備室のあれだけの御努力をもっと成果あらしめるためには、今のまま一つもいじくらないということでは厚生大臣は困るのですから、その点は十分考えて、いじくるべきところはいじくる、そしてよく直すという御答弁をはっきりと今こしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/45
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046・坂田道太
○坂田国務大臣 これは皆さんの御熱意は非常によくわかるのでありまして、もし将来におきましてこのような点で改正できるような点がございましたならば私たちは考えなければならない問題だと思いますが、当座といたしましてはやはりこの程度で御審議を願いたいというふうに思っております。また社会保障制度審議会の答申も、御承知の通りに実は傷害者の方々に対しては五年だという答申でございましたけれども、この点はただいま年金局長から申しました通りに、三年ということに努力の結果なっておるわけであります。これは何でもないとおっしゃいますれば何でもないようですけれども、それらを計画せられる方々のことを考えられれば、やはりこの点について非常に配慮した気持がにじみ出ておるのではないか。そういう意味におきまして、社会保障制度審議会答申というものを決して私どもがそのままうのみにしたということでなくて、できるだけこの答申は尊重はいたしますけれども、政府案といたしましてはこれらのかわいそうな方々に対してできるだけあたたかい手を差し伸べるべきであるという考え方から、このような五年を三年にいたしたわけでございまして、こういうような積み重ねということがあって、やはり国民年金制度というものが国民の方々に喜んでいただけるものだと思うのでございます。八木委員の御熱心な御主張に対しましてはありがたくこれを拝聴いたしまして、私もでき得るだけの努力をいたして参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/46
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047・八木一男
○八木(一男)委員 社会保障制度審議会に五年という原案を出されたというのが、五年ではけしからぬということ、なしにしろということを言った。ところがみないろいろなことで少くとも三年でなければいけない、そういう答申になって、答申をその意味で尊重されたことは認めます。ところが社会保障制度審議会の答申だけ認めて国会の論議を認めないということでは困る。国会は最高機関でしょう。社会保障制度審議会のことで、悪いと思った点を直されるというその素朴な率直な態度を国会の論議に対してもとらなければいけない。われわれ社会党の委員というのは国会議員で、社会労働委員がそうあるべきだと言っている。それについて坂田厚生大臣もその必要があることを認めておられるわけです。だから社会保障制度審議会で三年と言ったものを三年にされたのだから、ここでこれをなしにしろとか半年にしろと言ったら、やはり国会の論議でそういうふうにする努力をされなければいけない。政府の変な面子はもうやめになさったらいい。これは政府が出したから、変えたら面子にかかわるという態度がある。だけどこれだけの大法案を出して、一部分を国会の論議で変えて出されたら、これは日本の政治史上非常にいいことを残されると思う。私どもも野党でありますけれども、その点については岸さんがなさったら、坂田さんがなさったら全面的に賞賛しようと思う。出してもその点で欠点があるということを認めたならば、それをやりかえるという方式政治上のそういうやり方を打ち立てるということは、今の自民党がどうの社会党がどうのということでなしに、日本の議会政治を発展させる意味において非常なプラスになる。ですからそれをぜひやっていただきたい、そういうことなんです。政府の面子とか事務局の今までの努力もあります。だけど事務局の小山さんだってよくしたい気持に燃えておられるわけです。ワクにこうなっているだけの話なんです。政府だって——岸さんがほんとうに熱心に聞いていられたならばと思うのですが、残念ながら参議院の予算委員会に出ていて来られないけれども、これはもう一回聞かなければなりませんが、政府でも一たん出したものが悪いと気がついたら直す努力をすべきだと思う。直したら、岸内閣なり、自民党なり、坂田さんが、日本の憲政史上やるべき一つの常道を打ち立てたということで大きな功績にもなります。そういう個人的な功績はどうでもいいですけれども、日本の政治に非常にいい道を開きますから、そういう点で、政府案を出したからただいまのところ変える意思はありませんということを言わないで、直すように努力していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/47
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048・坂田道太
○坂田国務大臣 何度もお答えを申し上げて恐縮でございますけれども、私どもといたしましては、国会というものと政府というものとを一応考えておるわけでございまして、政府案はただいま申し上げましたようなことで参りたいと考えております。国会でどういうふうになりますか、これは慎重審議をしていただかなければならぬわけでございます。ただわれわれといたしましては、御承知のように常識的に申し上げまして、やはり予算案とわれわれの案というものは符節が合っておるわけでございまして、私どもの内閣といたしましては一応その程度の法律案をやっていただくというつもりであることに変りがないことを御承知おきを願いたいと思います。しかしながらいろいろなこれからよくしていこうという御熱意というものは、私も十分これは参酌いたしまして、そうして今度の予算を編成いたす場合におきまして、あるいは将来におきましてそのような意思がもし反映させることができるといたしまするならば、反映をさせて参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/48
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049・八木一男
○八木(一男)委員 この問題については後の機会に岸総理大臣にただしますので、厚生大臣だけ追及しても何ですから、そういう熱意でやっていただきたいと思います。
それで申し上げておきたいことは、基本年金は二年後開始ですから、ことしの予算とはそんなに関係がないわけです。ですから予算と関係がないという点では、佐藤さんが言われました迷夢をさましていただきたいと思います。
それからもう一つは、政府案が出されたからといって、国会の手続として、政府案撤回とか、あるいは再提出という手続もある。手続があるということは、必要があったらそういうことをすべきだということなんです。それを今まで完全な案を出してこられたからやっていないということではないと思う。不完全な案を出してこられても、面子で多数党の威力で押し切ったということ、そういう間違った政治のやり方を直していただかないと多数独裁になる。多数独裁から起るいろいろな将来の国民感情の激突ということも考えられると思う。この一つの法案からでも、面子とか、一回予算を組んじゃったとか、そういう形式的なことにこだわらずに、間違っておったら撤回して出し直す、あるいは時間的に無理だったら、与党に働きかけて、それだけの修正案を出していただく努力をしていいと思うそういうことを今あなたにだけ答弁を求めても無理ですから、岸さんなり、佐藤さんなり、そういう人たちに言いますから、ぜひ一つ御努力を願いたいと思います。
それでは時間もないようでありますから、小さな問題を一問だけお伺いいたします。実は六十五才開始の問題の不当な点について、これからまた大きな範囲について御質問申し上げたかったのですけれども、それについては昼の間に御準備願いたいと思います。さっきそういう問題と関連して、母子年金の点でちょっと小山さんが触れられましたが、この母子年金については、堤先輩その他があとで十分御追及になると思いますから、こまかい点には入りませんけれども、母子年金と遺児年金の金額は非常にバランスを失しているわけです。これは非常に頭をしぼって考えられて、母子年金は母親本人の保険料がどのくらい納まっているかということが要件になっている。遺児年金は父親または母親の保険料納入が要件になっているというように、変に制度を別にしている。そこには幾つかのほんとうの理屈立てもあるし、またそういう点に対する追及への配慮もあるのでしょうけれども、そういうような技術的の両方の配慮のやりとりは抜きにして、非常にバランスを失している。母子年金は母樹と子供がある。遺児年金はみなしごが二人か三人ある——少し悪口を言いますが、こういうことを言っておられた自民党の方がある。政府案は母子年金と遺児年金と寡婦年金があるが、社会党はそういうものはないのでしょうと言っておられた方があるが、とんでもない間違いである。社会党は遺児年金であっても、母子年金であっても、寡婦年金であっても、全部遺族年金になっている。それを母子年金とすりかえて、社会党はみなしごを考えないのですか、それから子供のない未亡人のことは考えておられないのですかというような間違ったことを言っておられる方がある。ですから、そういう間違いのないように、世の中の公明のために与党の一部の方の不理解を改められるように御啓蒙を願いたいと思うのです。社会党はみなしごも、子供のない未亡人もみんな入れているわけです。社会党は遺族ということでみんな同じような給付をしている。子供に対する加算は別に基本的には考える。ところが政府案は母子のときには多い金額を与え、孤児のときにははるかに少い金額を与えており、寡婦年金にも非常に差別をつけている。母子年金と遺児年金では、同じように月四百円の加算はありますが、遺児年金は片方の三分の一しかありません。ですから、みなしごが三人残されたのと、お母さんと子供二人の三人が残されたときのバランスを失している。片一方は三倍です。母親の残った子供の方がずっと多い。女の人でもどんどん働かれてかせがれることもあります。弱い方もあるでしょうけれども、とにかく子供ばかりよりもましなわけです。少くとも精神的に母の愛情があるだけでもましなわけです。そういう母と子供の組み合せの場合には高い方の年金をやる。孤児の場合にはその三分の一か四分の一でほうり出される。そんなことでは組み立て方が変だ、ところがそういう組み立て方にした。それはなるべく少くしょうという概念が入って——これは小山さんの責任であるかどうかわかりませんが、もとがインチキな大ワクだからそういうことになっている。そんなバランスを失したものはない。少くとも同じにすべきだ。年金が非常に低いのですから、ほかの人がかせいで入れるという部分がないとすれば、母親というかせげる人がいる方が楽なはずです。年金がここで月一万円ずつあるというのであれば、きっちり同額にできるわけです。ところがそういう条件でなくて、月千円くらいの低い年金だということになったら、母親のない子供の方を高くしてやらなければならない。それが四分の一か三分の一になる。少くともこれは同じにしなければ政府の法律として恥かしいと思うそれについて坂田さんの御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/49
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050・小山進次郎
○小山(進)政府委員 遺児年金の額が少いという御意見でございますが、この点は根本的にはさように考えているわけでございます。ただ母子年金と遺児年金との関係についてのお考えは、若干私どもの考え方を申し上げたいと思いますが、結局今度の年金がこれを受ける人にどういう役割を持つかという考え方の違いから参っているわけでございます。母子世帯のような場合には、もちろん生活の需要の大部分を満たすような年金が出ることが一番望ましいのでありますけれども、ある程度よそから継ぎ足される部分があれば、それでまず社会的な生活ができる。その意味において年金というものが最も必要でもあるし、役立つ存在であるわけでございます。ところが遺児年金の対象になりまするような小さい子供だけというような場合は、実のところ年金を出しましただけでは問題はどうにも片づかない。むしろ本来の施策として考えますならば、完全な孤児でありますならば、それはどうしても親戚縁者が引き取って世話をしてあげるとか、あるいはそういう手配が十分でない場合には、公けの児童福祉施設あるいは児童福祉の施策の方で考えていかなくちゃいかぬ。お金をあげるだけではどうにもこの問題は片づかぬ、かような実態に相なるわけでございます。従って、そういう場合に受けます年金としては、もちろん多いことが望ましいわけでございまするし、またあの金額で十分だとは思いませんけれども、気持としては、親戚縁者に世話になるにしても、せめて、たとえば将来高等学校に行く場合の学費が、お世話になっている先で出してもらわなくてもいいようにできるとかなんとか、何か一つそういうふうなよりどころを与えたい、いわばそういう痛々しい気持がそのような制度になって現われたわけでございまして、両者のつり合いから考えますならば、現段階において考えますならば、母子年金の充実ということを第一にして、遺児年金はやはり次の問題として解決を考えていくべきだ、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/50
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051・八木一男
○八木(一男)委員 これは審議官の苦しい答弁ですが、それなら徹底してやってもらわないといけない。遺児年金をなくしても——そういうみなしごについては、完全に公的なほかの点で保障するというなら、なくしてもいいのです。それを一つもやってないのでしょう。やってないで年金制度で出すとなれば、これはやはり母親のいない子供の方が気の毒だ。ですから、それを同じにしなければいけないわけです。小山さんの苦しい操作はわかります。だから厚生大臣に答弁を伺いたいのです。あれだけ頭のいい人があれだけ熱心にかかって作っても、あんな苦しい答弁をしなければならないような内容なんです。その内容になるもとは、このけしからぬワクです。それを小山さん、新任だからというのでたやすくかまえていちゃ困る。それを取っ払って、遺児年金が少くとも母子年金と同額になるように、それがもしみなしごをほかの公的なことでやるというなら、即刻、一週間以内にそういうような法律を出すか、どっちかにしてもらわなければ困るわけです。それについて坂田さんの御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/51
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052・坂田道太
○坂田国務大臣 ただいま審議官から答弁いたしました通りでございまして、現在の段階ではやはり非常にかわいそうだとは思いますけれども、一応そのしようにいたして参りたいという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/52
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053・園田直
○園田委員長 午後一時半まで休憩をいたします。
午後一時三分休憩
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午後二時十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/53
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054・園田直
○園田委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。
国民年金法案等三案についての質疑を継続いたします。八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/54
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055・八木一男
○八木(一男)委員 先ほど論議の過程から幾分各論のようなところに入りましたが、またもとへ戻りまして総論的なことを御質問申し上げたいと思います。
最高三千五百円では健康で文化的な生活が維持できないという点について、厚生大臣もそうだということはお認めになって、現状ではいろいろな事情でこのくらいで、というような御答弁でございましたが、それだけではないことは厚生大臣も御承知の通りであろうと思います。三千五百円というのは金額の点でございますが、年金制度で給付が多いか少いかに一番関係の多いのは、金額よりもむしろ開始年令の方が関係が深いわけであります。たとえば六十才開始と六十五才開始ということは大きな問題になります。政府案の最高が適用された人といたしましても、六十才から開始をされれば、六十四才には結局十二、三万のものが入っていくけれども、六十四才で死んだ人の場合に、今の政府案ではそれがゼロになるということになります。そういう点で、この年令をもっと下げることが必要ではないか。それは制度としても必要でありますとともに、ほんとうに年金を厚くという意味で、どうしても下げることが必要であると思いますが、なぜ六十五才開始というような非常におそい開始年令をとられたか。それについて、御答弁を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/55
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056・坂田道太
○坂田国務大臣 ただいま八木委員が御指摘になりましたように、給付の内容ということも非常に大切であるけれども、一方また開始年令ということが非常に重要な問題であることは、私どももさように考えておるわけでございますが、私どももいろいろ研究をいたしまして、また諸外国の例等も考えまして、同時にまた社会保障制度審議会の御答申等も勘案いたしまして、大体日本におきましては六十五才で始めることが適当であるというふうに考えまして、六十五才にいたしたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/56
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057・八木一男
○八木(一男)委員 給付の大きさ、それからそれに関連する国庫支出の大きさということは、この開始年令に基本金額がからんで考えられなければならないことであります。開始年令が六十五才開始ではおそ過ぎると私ども思うのでありますが、それは一応おきまして、六十五才という開始年令では、六十四才以下の人の方で国庫の負担が少くなるわけであります。さらにそういう点を考えれば、三千五百円ではまだ少くなる。さっき申し上げた理由以外に、そういうことであったら少くともこれは七千円くらいにしなければならないということになるわけでございますが、そういうふうに開始年令を高くして金額も少くしておったのでは、ほんとうの社会保障という意味にはならないと思いますが、それについてもう一回御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/57
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058・坂田道太
○坂田国務大臣 やはり年金を押し進めて参ります場合には、一面におきまして年金財政というものを考えなければならないことは御承知の通りでございまして、老齢者の人口が急激に増加をいたしますわが国のような場合におきましては、特にこの点も注意してかからなければならないと思うわけでございまして、おそらくこの六十五才を五才引き下げますことによって、その支給されますところの額は倍額になるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。この点等も考えあわせまして、実は六十五才というふうに定めたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/58
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059・八木一男
○八木(一男)委員 結局六十才に引き下げると倍額になる、倍額以上になるのではないかと思いますが、一応倍額としても、それだけ多くなるということになります。ところで、日本社会党の案を十分御検討下さったと思います。日本社会党の案は、基本的には六十才開始であります。それから最低が年八万四千円であります。そうすると、政府案の最高と、最低を比べて、同じ時期でくれても倍である。ところが六十才開始でありますから、ほんとうをいうと、これは数倍、七、八倍の内容になるわけであります。極端にいえば、社会党案であれば、六十四才でなくなられた場合には、八万四千円の五年分でありますから、四十二万円の現金が、利息計算は別にいたしましても、その人の生活のたしに入る。ところが政府案では六十四才の時期におきましては一文も入りません。ということは、日本人の平均寿命が統計上少しずつ変っておりますが、もしそういう点で考えまして、六十七才の例をもってしましても、政府案では三年しか入らない。社会党案は八年間入る。社会党案の金額でかけてみると、結局七十万円くらいのものはふところの中に入る。政府案の方は十二、三万円しか入らない。これは一番多い人です。社会党案では一番少い人が七十万円、政府案では一番多い人でも十二、三万円、こんな格段の相違があるわけです。社会党案ばかり自画自賛するわけじゃありませんけれども、野党もそれを作るときには、財政だとか国民経済とかを一生懸命考えて作っておるわけです。政府側から言わしめれば、いろいろずさんの点があるというようなことをおっしゃいますが、野党内でも最善の努力をして、いろいろ配慮いたしましてそういうような案を作っておる。
そこで今社会保障に熱心である、国民年金に取っ組むという政府が、野党の七分の一とか八分の一とか、場合によっては無限大分の一というような案では非常に恥かしいと思うのです。恥かしい気持になられるはずであろうと思うが、それについてどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/59
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060・坂田道太
○坂田国務大臣 確かに社会党さんの御案を拝見させていただいて、少くともその形に現われました面を見ますればお説の通りだと思うわけでございます。ただそれが果して現在の日本の経済から支給できるかどうかという問題について、私どもとしましては非常に無理ではなかろうかと思うわけでございます。しかしこれは日本の経済の成長率というものをよくお考えの上、しかも自民党内閣ならばできないけれども、社会党は計画経済を立ててやるからできるのだ、こういうことでこれはお組みになったのだろうとは思いますけれども、私どもはそれにいたしましてもこれはなかなか無理ではなかろうかと実は考えておるようなわけでございまして、先ほどお話のございましたように、六十五才を六十才に引き下げますと、それだけでも約倍額になる。あるいはまた八木先生の方では傷害年会悪等につきましては、いわゆる普通の傷害年金だけでなくて、内部傷害をも含めていらっしゃるわけでございまして、この点を考えるならば、これまた数倍の額になるので、われわれざっと計算いたしましても、四千二百億の二倍か三倍となりますと、ピーク時においては一兆円をこえるのではなかろうか。これだけのことが果して日本の経済でやれるだろうかということについて、われわれとしましては少し疑問に思っておるわけでございますけれども、八木さんは社会主義経済でやればそれもできるというようなお考え方だと私は思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/60
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061・八木一男
○八木(一男)委員 いろいろ政府側としての御批判、自民党側としての御批判はあると思いますが、とにかくピーク時に一兆円になるというようなお話はでたらめであって、四千二百億ということは私どもなりに根拠を持っておりますので、一つそういう点については御理解を改めていただきたいと思います。さっき厚生大臣は、そうはおっしゃってもとかいうようなことを言われましたけれども、私も同じ言葉を言いたいのです。社会党案については、自民党並びに政府として立場が違う点がおありになるといたしましても、政府案はあまり貧弱過ぎるではないか。社会党案は七、八倍である。そうしたらそれは社会党でなければできない、少し夢みないじゃないかとおっしゃるかもしれない。そうはいたしましても、それの七分の一とか、場合によっては無限大分の一とか、そういうことではあまりに政府案としては恥かしいのじゃないか。そういう点でもっとしよくなさる必要がある。六十五才開始という点でありますが、これは金額との相関関係だけではないのです。諸外国の例ということをおっしゃいましたけれども、そんなところで諸外国ということを参考になさるときには、よく気をつけていただきたい。ニュージーランドとかイギリスとか、デンマークとかあるいはフランスとか、そういう国が相当進歩しておることは私どもも知っております。知っておりますけれども、ニュージーランドは二十年前に制度を作っておる。英国だってだいぶ前です。フランスは調整して作ったのは最近ですけれども、それでもかなり前です。ところがここ十年間非常に、産業の形態が変ってきている。これは鉱工業だけでなくて農業も変っている。御承知の通りオートメーション化が激しく進行しているわけです。そういうことになりますと、大ぜいの人間が全部働かなくてもいい。ある程度の労働力の少い人間はもう休んでもらわなければ、世の中の工合が悪い時代になる。機械が勝手に働く時代になる。薬品が勝手に働く時代になる。そうして、ほんとうに若い元気な人たちが働くことによって全世界が生活できるという時代に急激に進行しつつあるわけです。ところがニュージーランドは社会保障に熱心かもしれないが、二ュージーランドの発足したときにはまだオートメーション化はそう急速に進んでおりません。イギリスの場合もそうです。ですから、この新しい時代に今制度を立てるときには、そういう諸外国の違った状況において立てられた制度をそのままうのみに参考にされるのではいけないと思う。ところがそういう傾向があります。日本の有名な学者諸君にすらそういうことがある。学者がそう言われるから学者のが一番いいという考えはもう捨てなければいけない。学は学者として尊重しなければいけないけれども、ほんとうに政治に取っ組むのは政治を担当する者の責任であります。ほんとうに国民の声を聞いているのは政治家であるわけです。ですからどの学者がどう言ったということでごまかしてはいけないと思う。そういうオートメーション化のこと、これは社会保障をやっていない人にはピンと来ません。ところが内閣の閣僚である坂田さんは、企画庁の意見も聞いておられる、通産大臣の意見も聞いておられる、自民党としての長期経済計画のことも知っておられる。ですからそういう観点においてこれを考えて下さらなければいけない。オートメーション化が進む、しかも政府の国民年金制度が完成するのは四十年先ということを考えると、六十五才から年金ということでは、六十二、三才の人は年金がなければ職にかじりつかなければならないということになる。そこで完全雇用の問題とぶつかってくるので困る。ですから少くとも、ほんとうは五十五才くらいからでもいい。その点で社会党案は手ぬるいと皆さんが元気をつけて下されば、私どももそれを考え直して五十五才にするかもしれない。とにかく六十五才という年金案は、今から作る制度としては話にならない。六十五才を六十才に開始年令を引き下げる御意向があるかどうか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/61
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062・坂田道太
○坂田国務大臣 ただいまのところはそういう考えを持っておりません。ただ、先ほどお話がありましたように、イギリスにおきましても、御承知のように男子は六十五才、女子が六十才、ところが最近の状況において、イギリスにおきましてもオートメーション化が進んでおりますけれども、そしてイギリスの経済というものは内容を見ましても相当な力を持っておられますけれども、この女子の六十才ということが年金財政に及ぼす影響が甚大であるために、むしろ六十二才に引き上げなければならないという声が出ておるということも聞いておるのであります。そういうようなことを考えました場合におきまして、われわれとしては手がたくいきたいというような考え方で、実は六十五才ということにしたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/62
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063・八木一男
○八木(一男)委員 ほかの国の悪い点をまねなさる必要はないのでありまして、今申し上げたようなことでオートメーション化が四十年後には激しく進んでいくであろう。その場合に六十五才までの人が働いておられたのでは、みんなが働くのに完全雇用に工合が悪いし、量的に完全雇用されても、質的に賃金の配分が減るということになる。そういうことでは困るので、やはりそういう時代には五十五才以上、少くとも六十才以上年金でその人が暮せるというふうにしなければいけない。この制度は今から作り上げて四十年先に完成するのですから、今作るときに長い見通しに立って作らなければいけない。無拠出でどんどんふやしていくならばその通りやったっていいでしょう。ところが拠出制度で、積立金制度で途中から変えようと思っても、それまでの年金保険料を追徴するといえば、国庫負担を改めて組み直すこともそのときになってできないのです。最初から四十年後の見通しに立って組まなければならない。そういう点で六十才開始がただいまのところは無理であっても、あしたになれば無理ではなくなる。皆さんが一生懸命にやられて、制度は二年後に開始することになっておりますから、少くともそれを下げる最大の努力をされるかどうか、それを一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/63
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064・坂田道太
○坂田国務大臣 われわれといたしましては、ただいまのところは六十五才ということにいたしておりますが、将来日本の経済が非常に伸びて参りますならば、また考えなくてはならないのではないかとは思いますけれども、ただいまのところは六十五才でいきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/64
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065・八木一男
○八木(一男)委員 自民党や政府の方で、社会党のが非常に開始年令も早いし金額が多い。それはいいけれども多過ぎるのではないかというふうな考えがあるらしく伺っております。しかしその案ですから私どもはいろいろの見通しに立って立てております。この見通しについては、この前の衆議院の本会議で、政府の長期経済の見通しの責任者である世耕さんが、われわれは、という言葉を使って認めておられるわけです。社会党の方の見通しの一番低目に見た、安心度を極度に高めた、そのことについて認めておられるわけです。ですから、見通しは立っているんです。これは坂田さんは、今あんなことをおっしゃったけれども、企画庁長官は立てておられるわけです。同感なわけです。そういう見通しがついているのに、将来見通しがついたらということでは、政治を担当せられる資格はない。見通しがついたら、見通しに従ってほんとうにいい制度を作らなければならない。それについての御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/65
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066・坂田道太
○坂田国務大臣 企画庁長官が見通しについて申し上げました事柄と、それから私たちが年金制度を打ち立てていく場合に考えました経済の伸びというものは、やはりその関連においてきめたわけでございまして、やはりわれわれ政府といたしましては、その一つの経済成長というものを基本として、この年金制度を打ち立てておるわけでございまして、それらの間に何ら私は矛盾はないというふうに考えておるわけでございまするから、八木委員のお説をとるとするならば、もう少し社会保障という形で、ことに年金については、経済成長率がああいうふうに見通しが明るいのであるならば、もう少しこれに重点を置くべきではないか、ウエートを置くべきではないか、こういうことではないかと思います。われわれはわれわれなりの一つのバランスのとれたものだということで、今度の年金を立てておるわけでありまして、それによりまして、実は年令等の開始におきましても、六十五才を適当だというふうにきめまして、御審議をわずらわしておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/66
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067・八木一男
○八木(一男)委員 世耕企画庁長官の御意見によれば、うちの方の一番遠慮がちに出したものを認めておられる。そういう立場はあるけれども、坂田さんのお考えによれば、政府は政府なりに考えて今回の案を出したということになれば、たくさんいいものができるのに、政府の考え方でこのくらいのものしか出さないという、そういう態度になると思います。それでよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/67
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068・坂田道太
○坂田国務大臣 今度の法案を出しましたのは、やはり政府全体として責任を持って、そうしてこの年金制度でいくということでございまするが、私どもこれにつきましてはこれは責任を持ってやるということに御了解をいただきたいと思います。
〔委員長退席、大石委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/68
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069・八木一男
○八木(一男)委員 そうなると、重ねて申し上げますが、よくできるのにこの程度でとどめておくということで、ただいまの政府のお答えはそういうことであります。そういうことになれば、岸さんの言われた貧乏の追放とか、その前の石橋さんの言われた福祉国家の建設とか、その前の鳩山さんの言われた社会保障の拡充とか、そういうことは全部うそだ、できもしないで、いいかげんにととどめておくんだということを政府が認められたことになりますが、それでよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/69
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070・坂田道太
○坂田国務大臣 非常に違うのでございまして、実は貧乏追放という裏ずけといたしまして、国民皆保険の制度とこのたびの所得保障の年金制度を打ち出したわけでありまして、これは岸内閣が掲げております貧乏追放の非常に大きな前進であるというほうに私ども考えております。これは非常に小さい、影響の少いというふうにお考えになるかと思いますけれども、何を申しましても、本年度におきまして援護年金が出発をいたしまして、これが四カ月分で百億、さらに平年度化しますれば、これが三百億という金が、少くともボーダー・ライン層に入るということは非常な前進である、保守党内閣としては画期的なことであるというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/70
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071・八木一男
○八木(一男)委員 保守党内閣としてはということを言われましたので、保守党内閣としては画期的とは言えないけれども、しかし前進であることは認めます。ということは、保守党内閣というものは社会保障にはこれっぽっちかやれない内閣である、大きな看板を掲げる資格はない内閣であるということを自問自答でお認めになったということになるわけです。
それで国民皆保険を言われましたけれども、医療保障勧告では、結核は全額国庫負担にする、これは社会保険に関係の部分についてもそうするという答申がありましたけれども、答申の何分の一しかやっておられないということです。年金の方は答申が貧弱であるから、大体それに見合うに近いくらいになっておりますが、とにかくそういうことで、各省の次官も委員になっておられる、与党の方は野党よりはるかにたくさん委員になっておる。そういう審議会でやったことも、医療保障勧告ではほとんどやっていないということで、熱心にやったということは、保守党の立場ということを前提に置いても、言えないと思う。これは坂田さんは今社会保障の主要部分である厚生省の責任者であるから、苦しいお立場にあられますけれども、私たちは、自民党の信用が落ちたり、自民党は悪い政党でである、岸内閣は悪い内閣であるということを言いたいのにやっているのではない。問題は、国家がよくなる、国民生活がよくなる、社会保障が拡充されることで、自民党が脱皮していただいても、これっぽっちしかできない内閣である、看板がから看板であるということよりも、ほんとうの看板にしていただいた方がいいわけです。ですからそういうことで、ただいまのところというようなことはおっしゃらずに、よく直すようにしていただきたいと思う。
同じことを何回も繰り返しましたが、そういうことはそのくらいにいたしまして、坂田厚生大臣十分御承知と思いますが、この所得保障制度というものは、ほんとうに所得保障が必要な人々に国家がいろいろの手当をする、あるいは共同連帯のいろいろな制度をするということで、そういう人たちの所得保障を完成してやっていくという本来の目的が一番大事なものであります。ところがその本来の目的に沿っていない。それは先ほどの質疑応答で明らかになりましたけれども、もう一つ大きなもののあることは御承知の通りであります。何と申しまするか、いろいろな意味の国の要請事項を進める点に役立つ、たとえば産業の振興であるとか、産業の安定であるとか、完全雇用、雇用の増大であるとか、雇用の安定であるとか、あるいは中小企業の近代化であるとか、農業の近代化とか、あるいはまた過当競争の排除であるとか、そういうすべての面に関係があるわけであります。釈迦に説法で恐縮でございますが、六十才で十分な年金があれば——これは政府案は被用者は抜かしておられますけれども、労働者が退職金をもらった場合に、それが五十万円もらうか百万円もらうか、あるいは二百万円もらうかわかりませんけれども、それなりに退職金だけでは暮せないわけであります。三万円の生活をしておられる方が百万円の退職金をもらった。そのつままでは一土年でなくなってしまう。そういうことでは心配なので、結局商売なり事業なりをして三万円の生活をずっと続けるようにしようという考え方が、今の世の中では起るのは仕方がない。ところが武士の商法でそれはつぶれてしまって、一文もなくなって、あとは路頭に迷うというようなことがずいぶんある。またそれを事業として成り立たせるためには、非常に過度の競争をしなければ無理です。しにせを持っている人とは競争はできません。だからむちゃくちゃな安売り競争もやる。三十円床屋を始めるというようなこと、そういうことでもしなければお得意がとれない。そういうことになれば、今の零細企業の過当競争というものがさらに激しくなる。そういうことがなければそういう問題が排除されぬですね。それからまた、そういう人たちがそういうこともできなかったら、たとえば職員でやめた人が、門の受付でもいいから雇ったもらいたいというような、気の毒なことを頼まなくちゃならぬ。そういう人たちが安心して年金で老後を送ることができるならば、その職場で若い世代の人たちが就職することが工合よくなる。工合よくなるだけじゃなしに、その人たちが若い活気で生産意欲に燃えて、生産に従事するということで、日本の鉱工業生産あるにはサービス業、そういうものが内容が非常によくなる。それからもう一つは老人が、農家の老人はなかなか昔の概念が強くて、経営権をむすこさんに渡しません。今でも死ぬまで経営権を持っている人が多いわけです。そういうことで年金が十分なものが入れば、安心して楽隠居しよう、奥さんとともしらがで温泉に行こう、そういうことになれば、若い人に安心して経営権をゆだねる。若い人は若い意欲で農村の近代化をやる、共同化をやるということになる。ところが今はそうじゃないので、お年寄りが昔から何十年とやってきておるので、近代化といっても、機械はだめだ、そんな薬は使ってもしようがない、共同化をやっても自分の財産のようなものでなくてはやる気がしないというようなことで、近代化がはばまれる。零細企業でもそうです。そういうことになる。また非常に大きな年金で所得が再配分されますと、これは購買力がふえます。浮き沈みしない固定した圏内購買力、消費力がふえるわけです。そうなれば、景気の変動によって経済界が混乱するというようなことは度数が減ってくる。産業も振興し、安定するわけです。それによって今度雇用が増大し、安定するわけです。また遺族年金や障害者年金の完全なものができれば、そういう人たちが子供を寝かしつけておいて働きにくいというようなこととか、足が不自由なのにびっこをひいて苦しい仕事をしにいくということもしないで済むということになり、そういう不完全就労ということが減ってくれば、それだけまた職場がふえる、完全雇用の道に通ずるわけです。産業の振興安定、雇用増大、完全雇用、過当競争の排除、中小企業、零細企業の近代化、またその新しい労働力で生産をやることによって、貿易面にも国際収支にもいい影響がある。すべての面に影響があるわけです。そういう点を考えたら、もっと勇敢でなければいけないと思う。しかもどうしてもできないことであれば別ですけれども、そういうふうな経済の見通し——私どもの経済の見通しが粗雑であるという御批判はあるかもしれません。粗雑であるというふうにいわれるかもしれないけれども、私どもとしては最善の努力をしてその安全度を極端に見て考えるわけです。それを世耕さんも承知しておられる。ですから国務大臣としての坂田さんは、厚生大臣としてだけじゃなしに、ほんとうに産業の振興のために、完全雇用のために、すべてのことのために年金がもっと大きくならなければいけないのだ、こんなものでは年金のほんとうの効果が上らないのだという立場をとっていただいていいと思うこれは非常に恐縮な、潜越な言い方ですけれども、国民年金を審議されるときに、おそらくは閣議において、それだけの背景について十分な御討議はなさっておられないと思う。ただ拠出年金を積み立てた金を運用することがどうなるかというような、今の既成概念にとられて、資本蓄積になるとか、減った、ふえたとか、そういう部分だけを考えて論議されたかもしれません。しかしすべての産業面や雇用面、そういう点についての論議は十分にはしておられないのではないか。そういうことをやはり閣議で繰り返してやられたならば、それはもっと多くやろう、社会党の案はこれはちょっと違うけれども、少くとも六十才開始にして五千円くらいにしようじゃないか、六十二才開始にして六千円くらいにしようじゃないか、このくらいの意見が出てくると思う。ですから、今までの論議は狭い社会保障、所得保障だけに限られた論議で組み立てられておる。ところが自民党の先生方には、産業の振興とか雇用の増大とかには熱心な方が多いはずであります。ですから、そういうことで新しく練り直されましたならば、もっと元気を出そうということになると思います。また大蔵大臣も、その元気を出す方法が賦課方式を使えばできるということになれば、きん然として賛成されることになるんじゃないか。そういう御努力が今までなされておらないように私どもは思いますので、なされておりましたら失礼でございますから陳謝もいたさなければならないと思いますが、私の感じでは十分には行われておらないと思う。そういう点で練り直して、よくしていただきたいと思います。今の、ただいまのところではという形式的な御答弁はけっこうです。今の厚生大臣のお立場はわかります。けれども、これが実施されるのは、基本年金については二年後であります。それから、今からでも予算の組みかえをできないことはない、提出できないこともない。ただいまのところではということは聞き飽きました。もうけっこうですから、そういうふうに推進していただけるかどうか、そういうことを御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/71
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072・坂田道太
○坂田国務大臣 将来にわたりまして国民年金というものが国民から喜ばれるものにしなければなりませんし、そういう意味合いにおきまして私は努力を惜しむものではございませんので、全力をふるってこれを充実していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/72
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073・八木一男
○八木(一男)委員 労働大臣はおいでになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/73
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074・大石武一
○大石委員長代理 今、労働大臣は参議院の社会労働委員会に出席中だそうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/74
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075・八木一男
○八木(一男)委員 実は労働大臣と御一緒のところで厚生大臣に伺いたいことがたくさんあるのですが、残念ながら倉石さんまだ見えていませんから、順序はちょっと工合が悪くなりますが、それを抜きにしまして、もう少し問題を進めて参りたいと思います。
さっき社会保障主義、社会保険主義の点がございました。これは今まで申し上げました点は給付される方、国民の受け取られる方の部分についてです。ところが徴収の方ではそういうような配慮が非常に少いと思います。私、年金案を十分承知しておりますから、免除のことで形式的な御答弁は必要ありません。そういうことでなく、基本的な保険料について百円、百五十円というような一律方式になっておる。たとえば五百万円くらいの中小企業の経営主もこれは百円なり百五十円でボーダー・ラインで十円の金にも困る、あす子供が給食費を持ってきてくれといわれても、隣に、借りなければならないという家庭では、百円、百五十円というものではほんとうに困ると思う。社会保障費が一つも入っていない。そういう点、どうしてこういう年金保険料の取り方についてもっと上下の差をつけなかったか、その点についてお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/75
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076・小山進次郎
○小山(進)政府委員 私から先に技術的な御説明だけを申し上げます。保険料の徴収において、フラット制をとっております点については、先生おっしゃいますように、これが非常にいい方法で、これだけが唯一絶対の方法だというような考え方は、現在においても私ども持ち合しておりません。できますならば、保険料の徴収においてもある程度報酬比例的な考え方が入る。それから給付におきましては、これはまたいろいろ意見のあるところではございますけれども、多少の報酬比例に応じた給付の違いを生じさせる。たとえば労働者の年金について、現在多く行われておりますようなものを考えていく、あるいはまた思い切って給付のり面においてはフラットにするという考え方もあろうと思いますが、いずれにしても何らかの意味において、所得に応じて保険税なりあるいは保険料を徴収し、給付において、またそれに応じたものを控除するということができるならば、それはやはり最近のわが国の経験からいたしましても、あるいは世界の経験からいたしましても、どうもこういう方が望ましい、こういう考え方は今なお私ども立案者としても持ち合しているのでございます。ただ実情としては八木先生もよく御存じのように、今度新たに国民年金制度の対象になります農民層なりあるいは零細企業の企業主なりあるいは従業員等を考えますれば、概して言いますと、非常に所得が低くて、従来の徴税機構においては、多くの場合、税の徴収を免除されるという形で所得税を取られておらない人々が非常に多いのであります。現在のところ国税の徴税機構においては相当多くのものがとらえられております。町村の方ではどういうことになるかといいますと、これはまた御存じの通り、必ずしもそれが十分に行われておらない結果、市町村民税のうちで所得割というものがかなり不安定な、信頼度のかなり薄いものになっている、こういうような実情であったわけでございます。従ってこういうような状態において、報酬比例的な組み方をしていこうということになりますと、相当大規模な、たとえば現在の国税庁をもう一つ作るとかいう程度の、非常に大きいかまえをもって臨まないと、現状においては成り立ちにくい。片方御承知のように、市町村民税の改革の方向といたしまして、現在所得割についていろいろ行われておりまする方式を改めまして、全国一本の方式を作りたいというような考え方も、地方行政に関係のある人々の間からはしばしば出ておりまして、税制改革の際等におきましても、これがきわめて有力な問題として論議されておる。こういうようなことを考えますと、やはり年金の徴収において報酬比例的なものを取り上げていきますためには、それに先行するものとして、どうしても全国一本で国民の所得を公けの力で把握をしていくという事務的な機構の整備が必要になって参るわけでありますが、これにはまだ相当の地ならしが要る。とてもここ三年や五年で手をつけられるような条件は今の日本ではまずむずかしい、かように判断せざるを得ないような実情でございますので、かような組み立てをしたわけでございます。将来の問題としては、技術的な条件が整備して参りますならば、改善なりあるいは改革の方向としては、お説のようなことが当然いつの日にか入ってくるということを期待しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/76
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077・八木一男
○八木(一男)委員 今の小山さんの御意見、ある程度の御苦心のほどはわかるのですけれども、ほんとうにやる気があったらできると思う。まず二つの方向があると思う。一つの方向は、負担力のない者には思い切って少しの保険料をとってやるという考え方に徹底すれば、国庫負担をふやせばいい。国庫負担は一般税収入から入る。それは累進課税になっている。政府の方はうまい言い回し方で、保険料の五割を国庫負担しておりますと言っておりますけれども、国民はわからないで、ただ五割国庫負担だと思っている。給付であれば三分の一です。ところが、社会党は正直に五割を出している。給付の五割だから、保険料に対抗すれば十割国庫負担です。はっきり言うと、社会党案は十割国庫負担であって、政府案は、それに対応した言い方で言えば五割国庫負担だ。社会党が五割国庫負担だと言えば、政府案は三割国庫負担だけれども、政府の宣伝よろしきを得て、同じように思っている国民の方々が多いようでありますから、それをこの機会にはっきりしておきたいと思うのです。
そういうことで、とにかく国庫負担を多くすれば、百円、百五十円を、五十円、七十五円にだってできるわけです。そこに踏み切れば、小山さんが御苦労をせられなくてもこれはできると思う。またそっちの方が何らかの事情で工合が悪いのだったら、これはそういう制度を整備して、事務費がかかるというような俗論に惑わされずにやっていけば——事務費はかかった分だけは市町村にちゃんとやらなければいけません。この案を見ますと、政府の事務費はなってない。ですから、そういうことでは市町村は困ります。十分なものをやっても、そう大した金額にならない。それで、長沼委員会というのですか、国民年金委員会で、何か一件当りか、千円か何かの事務費の計算を出されたことがある。これは社会保障制度審議会でやったら、それの五分の一なんです。ところが、長沼委員会の宣伝よろしきを得て、事務費々々々というものが国民年金制度より以上に大事なものみたいに宣伝されてしまったわけです。複雑なものをやったら事務費がよけいにかかる、それは国費の損耗であるというような、実に間違った意見が宣伝されておる。それに賢明なる自民党も惑わされている。長沼委員会で作られたのは、生命保険の全国的な団体の人がおもに作られた。生命保険とか郵便貯金の徴収の事務費、これは新加入募集奨励費を含んでいる。生命保険は明らかに含んでいる。募集奨励費や事務費が非常に多くなっている。保険会社は、募集人がほかにいますけれども、集金人に募集をやらせている。そういうような間違った制度の人の出した答申を頭に入れて、間違った、散らされた議論をもとにして、それでむずかしい事務は簡単にしなければ事務費がかかって、国民年金制度自体がぐじゃぐじゃになるというような間違った観点で議論されている。有名な社会保障学者でもそういうことがある。そういう間違ったところは直していただきたい。ほんとうにやる気があったら、緻密な制度でもできます。緻密な制度をやることによって、ボーダー・ラインの、百円の金にも困っている人人は、怠けた意味でなしに、ほんとに自分も一生懸命に用意して、政府の方の補助もいただいて、年金をもらいたいと思っている。それを事務費々々々ということで一カ年もほっておいて、一番年金の必要な人が年金からはずれてしまう。もちろん免除規定はあります。これは条文でいろいろ議論を戦わしてもいいのですが、相当研究はしてある、相当努力の跡は見えますけれども、完全なものではありません。それから完全なものであっても今までの厚生省の行政、それから歴代保守党内閣のやり方は、完全なものをひん曲げて解釈しておるわけです。生活保護や何かでそういうことがずいぶんある。ですからそういう条文自体が不完全であって、行政が完全に行われるとは思えない。そうなればボーダー・ラインがほんとうに排除されてしまう。排除されないように、免除をもっとしっかりしなければいけません。年金保険料にそういう差等をつけるのが事務的に困難であっても、それを乗り切るということでなければ、年金制度のほんとうの意義がなくなってしまう。そういうことがありますので、一つ差等をつける努力をしていただけるかどうか、厚生大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/77
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078・坂田道太
○坂田国務大臣 ただいま小山審議官から申し上げました通りでございますが、将来において、もしさような段階になりましたならば、われわれといたしましてもそういうことに踏み切りたいと考えるわけでございます。ただやはり八木委員も御了承いただくことであると思うのでございますが、実際この年金の保険料の徴収ということは、口で言うならば非常に簡単なことのように思いますけれども、この年金制度がうまくいくかいかないかということは、一にかかってこの徴収がうまくいくかいかないかということだと思うのです。その意味において、今度は徴収料というもの、つまり保険料というものが問題になってくると思うわけでございます。従いまして私どもとしましては、これがほんとうに理論的にいいものであっても、実際現在の機構なり組織なりあるいは習慣等を考えた場合において、やれるかやれないかという見通しを持ってでなければ、踏み切れないと思うのであります。そういう意味から、また年金制度というものはいわば国民一人々々の御協力によってでき上ってよくなっていくというような意味合いから申し上げましても、非常に身近なもの、簡単なもの、そしてやりやすいものでなければならない。そういう観点からいろいろ総合いたしました結果、ただいまのようなことに実は決定をいたしたようなわけでございます。八木委員の御指摘になった点もわからないわけではございませんけれども、しかしながらただいま小山審議官から申し上げましたように、やはり相当にその機構というものが私どもが考えておりますよりも膨大になり、また繁雑になるのではなかろうか、そういって果して徴収というものがうまくいくだろうかということを考えました場合におきましては、むしろ現実的な方法としては、ただいま私たちが提案を申し上げておる方がいいのではないかというふうに考えておるようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/78
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079・八木一男
○八木(一男)委員 厚生大臣の言われた理由そのままで、政府案がいかぬと思うんですがね。何といいますか、ほんとうに国民の方に協力願う。取りやすくするということは、安くすることが一番根本なんです。百円じゃなければ覚えられないから払わないという人はないのです。百円より六十円になった方が、だれしも喜ぶのです。おつりをもらうのがめんどうくさいから、百円でなければ協力しない、そんな国民はいないのです。四十円助かるわけです。ほんとうは困った人たちにとって安くなる——年金の財政全般がありますから、そうじゃない人に少し高くなってもしようがありません。しかし困った人にとっては安くなるということが、国民の協力を得ることなんです。また徴収を可能ならしめるためにも、困った人には困った人なりの少ないものでいいような制度にしなければ、徴収は不可能です。厚生大臣のおっしゃったお気持そのままで、それを直さなければならない。ですから厚生大臣の信念に従って直していただきたい。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/79
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080・坂田道太
○坂田国務大臣 実は少しニュアンスが違うわけなんでございまして、確かに階段的に、お金をたくさん持っておる人はそれに応じた額を保険料として払う、あるいはまたそうでない非常に困った方々に対しては保険料を少くしていくというこの考え方自体につきましては私は異論があるわけじゃございませんし、この点については八木委員と私は何様に考えておるわけなんです。ただ実際上の徴収技術というような問題を考えた場合に、今小山審議官から申し上げました通りに、国民の所得の把握というものが、観念的あるいは概念的には考えられますし、正確だということがいえるのでありますけれども、実際上の問題としては非常に把握が困難ではなかろうか、そういった場合においてなかなかむずかしいということを実は申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/80
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081・八木一男
○八木(一男)委員 前にも一般質問のときに申し上げましたけれども、そういう点を厚生省の中で切りかえていただきたいと私は思う。そういうふうにこまかくしたら、認定上国民がごまかすのではないか、それをごまかされないように調べるのに時間がかかるというようなことが一つの根底になっている。ところがそういうことのために、安くしていいものが安くできないということであってはゆゆしき問題だと思う。善意の、ほんとうにいい国民が、一部そういう人があるかもしれないという危惧——それはほんとうに神経衰弱くらいに多過ぎると思うのですが、そういう危惧のために、善意の、ほんとうにひたむきに、誠実に働いて暮している人たちが、保険料滞納とかそういうことなしに協力できるような態勢がとれないということがあっては困ると思う。今までの、厚生省のみとは言いませんけれども、健康保険の例や何か見ましても、厚生省では、そういうことを担当している人が、国民はどろぼうであるというような気持で行政をやっているわけです。そういう気持で行政ができるような法律を出される傾向がある。これはいけないと思う。間違いを切りかえてもらわなければならない。たとい一万人の国民の中に一人インチキな人がいて、収入があっても収入がないといって減額をされても、残りの九千九百九十九人のそういう人たちがよりよく救われるのだから、その道をとるべきである。国民を犯罪人扱いにして、十万人に一人くらいの犯罪人のために残りの大多数の国民が迷惑になる、そういう行政のやり方、そういう行政をしなければならないような法律の作り方であってはならないと思う。そういう基本的な問題について伺いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/81
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082・坂田道太
○坂田国務大臣 一人の間違った考えを持った方がおられるために全都の人たちの気持を踏みにじるというようなことであってはならないことは八木委員の御指摘の通りでございまして、私もそのように考えております。特に厚生省という省の仕事としては、そういう方々をも何とか善意に導き、あるいはまたそういうことをなからしめるということでなければならないというふうに私は心得ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/82
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083・八木一男
○八木(一男)委員 それならばそういうふうにしていただきたいと思う。大体調べるのがむずかしいということは、結局インチキにひっかからなければならないということで、人がたくさん要るとか、人が少ければ粗雑になるとかいうことが根底になっておるわけです。一万人に一人くらいそういう人が出ても、残りの九千九百九十九人のためにそういうことをやっていくという考え方になられたならば、これを組みかえることができると思う。だから組みかえていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/83
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084・坂田道太
○坂田国務大臣 ただいま私が申し上げましたことは、基本的な考え方を申せと、こうおっしゃいましたから、そのことについての基本的な考え方を申し上げたわけであります。先ほどからのお尋ねに対しましては、ただいままで私が申し上げた通りでございまして、お説のようなことを取り上げるとするならば相当に人員も必要でございましょうし、あるいはその機構、組織というものが拡大をされていく。しかしながらこの機構を拡大し、必要な人員を確保いたしますためには、やはりそれだけの公務員等をたくさんふやさなければならない。しかしそれに対する予算措置というものもまた十分に考えていかなければならないということは、一面においてやはり税金というものをもってまかなわれておる職員がふえることでございまして、その辺のところをも勘案いたしまして、私たちの考えで、ただいまの現実的に可能な範囲内において決定しましたのがこの案であるということを申し上げたいわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/84
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085・八木一男
○八木(一男)委員 仕事があれば、その仕事を担当する人がふえなければならないということは当然であります。仕事があるということは悪いことではないのです。そういう気の毒な人が少くとも保険料が安くなる、そういうことはいいことです。いいことをやるために仕事があることはかまいません。仕事があってその道での雇用がふえることはかまわない。ただそれが無尽蔵にふえたら困るということをおっしゃるのでしょう。だけれどもそこのところで、今言っているのは、神経衰弱のような、国民をどろぼうと思うようなこまかいことをやらせようという気持でなければ、ふえるのはある程度ふやせばいい。そう大した金額にならないということを申し上げたわけです。ですから結局そういう配慮をなさって事務の系統を作られる。そこで神経衰弱みたいな、国民が全部どろぼうに見えるようなそういうことをやらないで、そこのところで小山さんのいい頭を発揮して、一番簡便な方策を立てれば、費用はそんなに多くならない。そこのところにこそ頭を使ってほしいのです、ほんとうのところ。そういうことでやれば組みかえられると思う。厚生大臣御就任後間もないのですが、聡明で熱心な厚生大臣ですから、ほんとうに政府案に膠着した考えはおやめになって、そういうことで練り直していただきたい、そういうことです。そういうことで御努力願えるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/85
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086・坂田道太
○坂田国務大臣 お気持は非常によくわかるわけでありまして、その辺のところは、国民にそういう人が一人でもなからしめるように努力することに私はやぶさかではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/86
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087・八木一男
○八木(一男)委員 これは具体的な方法として免除と全部取るものと、二つ分れております。免除が非常にたくさん、ゆるやかに広範にやられるのであったら私はそう心配はないのですが、どうもあの条文を読んだ——これから坂田さんや小山さんがやられれば、非常に熱心にやられるでしょうけれども、いつ坂田さんが総理大臣になられたり、小山さんが大蔵省の次官になられたりというふうに変ってしまうかもしれませんから、そういうことではやはり心配なわけです。熱心な人がいるときはいいけれども、だんだん移り変りますから、この免除は非常にたよりない規定である。規定自体としてもしあるといたしましても、現在の厚生行政のやり方では足りないということになる。そうなればその間に具体的にそういうあやまちを犯さないように、免除と全部取るというのではなしに、減額というようなことも考えてもいいのじゃないか。これは小山さんのいい頭だったら、また切りかえて、一カ月免除して、その次は全部取るというふうにしたら半分減額したと何じだというような理屈を言われるかもしれませんが、そういう方法もあるでしょう。そういう方法もあるでしょうけれども、その月苦しかったらゼロ、その次は全部取るというふうに、ボーダー・ラインの家計は一ぺんに収入があったりなくなったりなんてしないのです。ずっと苦しいのですから、そうなったら百円のものを五十円にするとか三十円にするとか、そういう減額という配慮、それでさらに苦しくなったら全額免除という配慮もあっていいのではないかと思いますが、そういうことについて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/87
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088・小山進次郎
○小山(進)政府委員 八木先生が今おっしゃったような仕組みでございますが、実際の仕組みの上でそれをどういうふうにしておるかと申しますと、御承知の通り一定の基準を設けまして、その人については申し出を待ち、あるいは法律上当然保険料の免除をする、これは大体三割程度見込んでおるわけでございます。それから今おっしゃったように完全に免除しなくても、減額すれば足りる、また減額するならば納められるという者についての配慮が十分でないじゃないか、まさしくこの点も私ども運用の上において一つの基準を設けて考えたいと思っておる問題でございます。それで、一体それじゃそういうふうに立案の際に考えておったとしても、実際の運用の面においてそれが確保できるかどうか、こういうことであるわけでございますが、この点はおっしゃるようにそれぞれの町村によりまして違った運用がされますことは、国民の側としては非常に不公平になって、迷惑なことでもございますので、これはことし一ぱいさらに実態をきわめまして、運用する場合においては、やはり個々の実情に応じてというだけではり、どうしても運用がばらばらになって、おっしゃるように、そのときの財政状況がうまくないときつくなりがちだ、こういう傾向が生じますので、基準に類するものは省令で明瞭にきめて、行き過ぎのないようにいたしたい。なおそういう気持でおるとしても、保険料なりあるいは保険税というものは国の債権である関係上、どうしても徴収に無理ができるじゃないかということが——これはこまかい問題のようで実は非常に大きい問題でございまして、現在の会計上の法規をそのままにしておきますと、実はもう徴収に取りかかったあとで、どうもこれはとことんまでいくことは無理だ、かように実務に当る者が判断いたしましても、とにかく差し押えまでいきまして、差し押えるものがありませんでしたとか何とかということにしないと、今度は徴収の任に当る者が職務を怠ったということに形式上なる仕組みになっております。このことが結果的には非常に無理な軍用をさせる因子になりますので、今回の法案におきましては、この点、大蔵省その他の十分な同意を得まして、この場合におきましては、督促をしない限り自然に時効が進展していく。従って実際に徴収に取りかかってみても、どうもこれは相手の実態から見て無理だ、あるいは一年分全部を納入するように要求することが無理だというような場合におきましては、そのままの状態において、個別的にいろいろ勧奨はしますけれども、それ以上の手続は進めない。そうしますと、二カ年間で自然に時効が完成いたしまして、相互の間に無理のないようにする、こういうふうなことで、実際の運用に当っては無理のないように配意されている、こういうようなことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/88
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089・八木一男
○八木(一男)委員 そういうような御配慮をしていただくのはいいのですけれども、省令じゃなしに法律に定めるようにしていただきたいと思います。
各論のときにまた申し上げるとして今のお考えでは、百円、百五十円の基準、それを下げる方だけお考えになっておられる。これは、片っ方はその基準から上げてもいいと思うのです。中小企業といっても五百人くらい使っておる大工場の社長とか、何千万円と収入のある人がいる。そんな人に月百円なんということは要らないわけです。ですから、それは限度はありますが、比例でぐっと取る。累進で取った方がいいと思うけれども、それは無理として、比例で取っても大きな金額になります。今の社会保険のいろいろな概念があるから、その壁を突き破ることはむずかしいだろうけれども、少くとも百円、百五十円に固定させなくとも、収入の多い人はたくさんにするということをすれば、減額をする範囲もふえますし免除をする範囲もふえるわけです。また国庫負担は給付自体を上げる、あるいは開始年令を下げる、あるいは傷害やあれの要件をもっと緩和するということにも使えるわけです。そういうこともやらないと、下の方だけ考えたのでは、これは国庫負担を、三分の一しか出ていないのを、飛躍的に社会党並みぐらいにしていただければ別だけれども、それでなければ会計はバランスが合わないわけです。そういう点、そんなにそういう金持におもねる必要はないと思う。極端に言えば、これは住友吉左衛門から百円しか取らない、そんな変な社会保険はないですよ。少し上の方も考えれば下の方もワクが出てくる。ただ下げろ下げろと言ったって、これは大蔵省の頑迷固陋な頭がありますから、国庫負担をそれだけつぎ込ませるには、ずいぶん努力が要りましょう。そっちの方はそっちの方で努力してもらわなければならないが、制度自体としてもそうなるように考えてもらいたい。そうなれば、百円、百五十円を、下だけではなしに上の方も御配慮があってしかるべきだと思う。これについて坂田さんの基本的な考えを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/89
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090・坂田道太
○坂田国務大臣 八木さんのお話はわからぬわけではないのでございますけれども、やはりただいまのところは、と申してお叱りを受けるかもしれませんけれども、ただいまのところはこの程度に考えておるわけでございまして、ただいま審議官からも御説明を申し上げましたようにこまかい配慮をし、運営等については考えておるようでございますので、御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/90
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091・八木一男
○八木(一男)委員 ただいまのところでは——それについてはわざわざ言いませんが、二年間ありますから、その間にそういうことを直すように御配慮なさるかどうか、そういうことについての検討について努力なさるかどうか、それについて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/91
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092・小山進次郎
○小山(進)政府委員 先ほど来大臣なり私から申し上げましたように、この問題については八木先生のみならず、実は政府当局も、条件が許しさえすればしたいのであります。ただ傾斜の程度については、これはいろいろ意見があると思いますけれども、方向としては何とかそういう方向にいきたい。この点は私ども制度の発足の後におきましても絶えず念頭に置いておる点でございます。ただ困難さの点におきましては、どうも八木先生は事務当局が少しさぼってというお気持を持ってお考えのようでございますが、これは非常にむずかしい問題でございまして、またこれを申し上げますと先生お怒りになりますけれども、イギリスのようなこの制度の先進国におきまして、今度報酬比例制を大いに取り上げるという政府白書を発表しておる国におきましても、自営業者の分だけはむずかしいから従来のフラット方式を残していくよりしようがない。むずかしいということはやはり所得の把握でございます。そういう意味合いにおきまして、何とかそういう方向へ踏み込みたい。しかしあまりにも技術的な障壁が多くて、これを突き破っていくのにやはり五年や十年の時間的余裕はいただかなくちゃなるまい、こういうような事情でこの点の判断が違っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/92
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093・八木一男
○八木(一男)委員 年金法案を作られたときに、諸外国の未発達な状態を突き破る努力をされたことは十分認めたいと思いますけれども、その努力があるのに、さっき言った政府の方針なりさらに背景に対する理解の足りなさが幾分あられる、そういう点でワクがきまっちゃって、このワクをもう少し広げていただくことにもう少し一生懸命やられるわけですが、これは厚生大臣の仕事です。厚生大臣の考えも小山審議官の御意見と御一緒だと思う。ワクを広げる、そういうような既成概念でなしに、日本の実態に合った状態で変えていくという御努力を、今五年とか六年とかおっしゃったが、そんなことでなしに、もっと短時日に御努力を願うというようなお気持を持っていただきたい。これについて御所見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/93
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094・坂田道太
○坂田国務大臣 年金の出発いたしますのは三十六年度からでございますから、この二年間というものは非常に大切な時間だと思います。よく十分研究いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/94
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095・八木一男
○八木(一男)委員 それから、先ほどから徴収困難ということが非常に言われております。そういうことが論議のまとになっておりましたけれども、健康保険料あるいは健康保険税の徴収困難の例をあげてそういう心配をなさる方が世の中に多いが、これは根本的にちょっと違っていると思う。ほんとうは医療保障でも所得保障でも、重大性は変りありません。いずれも大事です。残念ながら今の国民の国家保障に対する認識の程度では、医療保障の場合には、自分も病気になる危険性を多分に持っていながら、自分は病気をしないのだ、病気をしている弱い者の負担ばかりやらされたのではたまらない、保険料が高いというような間違った概念が浸透しておる。ところがこの間違った概念が、逆に年金の場合には徴収可能にならしめるようになる。早く死ぬ人もあるかもしれないが、自分だけは長生きするつもりでみないるわけです。だから、長生きしたときにたくさんもらえるからたくさん積んでおくのだと言えば、そういう要素として非常に徴収しやすくなる。短期保険の徴収しにくい要素をこのままほっとけというわけではない。これは徴収できるように理解が高まるようにしていただかなければなりません。短期保険のことが完全にわかったら長期保険のこともわかる。これはとにかく平均であって、自分だけ長生きするから得なんじゃない、自分もひょっとすれば若死するかもしれないんだということが理解されてきて、そういう誤まった利点はなくなるかもしれませんが、そうなったらそれでかまいません。社会保障が完全に国民に理解されて、医療保障も所得保障も同じような理解が高まるならそれでかまいませんけれども、現在の現象としては医療保障にとっては理解が少いために、徴収上不利な立場がある。ところが所得保障についてはそういう徴収上有利な立場がある。理解が高まって同じになることは望ましいのですけれども、現在は有利な点がある。それをまだやってないから、今までやっていた不利の方の例をあげて徴収困難、徴収困難ということをいっておられる。それではいけないと思う。徴収困難論に対する反論を厚生省で展開をしていただいて、それで制度を高める努力をぜひしていただきたいと思う。それからもう一つは徴収困難論——困難じゃない、有利な点があるといっても、しかし国民の理解は薄いのであって、なかなか保険料にしろ、われわれの年金税にしろ、取られるものはいや、もらうのはできるだけたくさんほしいという気分が横溢しております。横溢しておりますから、出すものは出ししぶる人があるでしょう。しかしそれは制度がりっぱなものであればあるほど協力しやすいわけです。世の中の俗論では、負担能力が少いから従って年金額は下げなくてはならない、低くしてがまんしておかなければならないという俗論があります。ところがそれとは逆に制度が完全であれば、それが理解されれば徴収は楽になるわけです、不完全で足りないために、そんなものくらいじゃ足りないからということで、余った金は貯金に回そうというのなら堅実でありますけれども、株に投資をして大もうけしようとかそういうことになってしまうそれは大ていうまくいかないわけです。完全なものであれば、株に手を出すなどというよけいなことを考えないで、いなかの農業をしていられる方がそういうわけのわからない経済新聞を一生懸命読んで、わけもわからないのに一生懸命株でもうかるかしらと考えるようなことはしないで、結局年金で安心するということになるわけです。そういうことで、いいものを作れば徴収が楽になる、これも政府全体に理解さしていただかなければならない部分なんです。なかなか通りにくいぞとか康健保険の例を見ろとか——だから坂田さんなり小山さんが一生懸命やられても、そんなことは夢みたいな話だからこのくらいにしておけということになる。坂田さんや小山さんぐらいに閣内の人やその他の人が全部完全に理解しておられたら、それで自民党の国会議員の方が、ここにおられる国会議員の方くらいに皆さんが御熱心であれば、こんな貧弱な案は出てこなかったと思う。ところがそれが全部に行き渡っていないから、そういう構想になったと思う。これからの御努力でいい案ができると思う。それが理解されていたらこんな案が出てこなかった。そういう点で、取りにくいからということで、この年金にブレーキをかけようという間違った傾向に対して、厚生省は断じてそれを打ち破っていい方向に導いていただきたいと思う。
それから労働大臣は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/95
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096・大石武一
○大石委員長代理 労働大臣はまだ向うの委員会があかないので、ちょっと見当がつきませんが、経済企画庁長官は三時半過ぎには向うは終るでしょうから、終ったら出て参ますという返事でした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/96
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097・八木一男
○八木(一男)委員 それでは労働大臣が来られてからまた重ねて同じことを申し上げることになりますけれども、その点は御了承願いまして、今度は被用者年金の方にちょっと入らしていただきたいと思います。国民年金という言葉は、普通に考えれば、全国民のものでなければいけません。それから憲法の条項にうたってありますから、これはすべての全国民にということになっております。全国民でなくちゃいけません。それを農漁民だけにとどめたということは、政府としては非常に優柔不断な態度で、実はなっていないと思います。この点について厚生大臣の御所見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/97
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098・坂田道太
○坂田国務大臣 今度の場合におきましては、御承知のように公的年金制度というものを除外いたしまして立案をいたしておるわけでございます。と申しますのも、実を申し上げますと現在公的年金制度で受けておられる方々と、われわれが今度発足いたしますところの国民年金制度というものとでは、その内容等において、やはり厚生年金等において受けられておる方がむしろ有利であるというような観点からいたしまして、これを直ちに国民年金の方へ全部お入りを願うというようなこともどうかというようなことを考えまして、実は公的年金制度を受けておられる方々は一応除外をいたしたというわけでございますけれども、しかしながらこの国民年金制度が非常にりっぱに成長して参ります過程におきまして、これらの公的年金制度を受けておられる方々とわれわれの国民年金制度と調整を、通算の道を開いていくということは当然やらなければならないことでございますし、またこの法案にも明文をもって三十五年度までにはこれをやらなければならないというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/98
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099・八木一男
○八木(一男)委員 労働者年金の方が高いから、国民年金にそのままお入りになったら不利になるだろうということの御答弁でございました。もちろん当然そういうことです。そういうことですが、結局労働者に今まで退職年金制度があったのでございます。退職年金制度があったということにはそれだけの理由があったわけです。ですから労働者というような生産手段を持たない者、人に雇われなければ暮せない者、これは年金の必要度が生産手段を持つ農民であるとか、その他の自営業者よりもはるかに高いという状態にあったわけです。それともう一つは、これは賃金とからめてはいけないのですが、賃金が少いというようなこととからみあってしまって、そういうことで退職年金が先にできた、ですから結局労働者の方が年金の必要度が多いわけです。多いわけですから、一般の国民にこれだけのものを、非常に乏しいものでございますが、政府の言を借りていえば、ある程度のことができたときに、労働者はそのままほうっておいたんでは、労働者が今まで年金の必要度が多いということが全然無視されたということになる。それではいけないので、やはりこの程度労働者も上げなければいけない。それについての厚生大臣の御意見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/99
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100・坂田道太
○坂田国務大臣 確かに従来公的年金制度を受けておられる方はやはりそれぞれの目的とそれぞれの沿革とがあるわけでございまして、このことを直ちに国民年金制度ができたからというてこれを無視してしまうというわけには参らぬと思います。しかしながら私たちが国民年金を始めます場合におきまして、何と申しましても公的年金制度では一応老後の生活のよりどころというものも認められておるし、また障害を受けられた場合においてもあるいはまた母子家庭につきましても、それぞれの保障がなされておるわけでございますけれども、今日国民の中の非常に大きな部分、しかもそれが農業というような、日本の食糧という重大なやはり生産手段、生産に従事しておられる方々に対しては何らの老後のよりどころとするものがないという点で、あるいは中小企業につきましても同様のことがいえるかと思うのでございますが、これらの方々に対しまして今回国民年金制度を打ち出しますことによりまして、ほんとうの意味の社会保障というものが全国民に及んでいくという考え方からこういうような立て方をいたしたわけでございますけれども、しかし今八木委員が申された通りに、現在公的年金を受けておる者は、自分のかけ金あるいはまた事業主の分担費用というものでもってこれが保障されておるにすぎないのであって、これらに対して国が何も見ないのはけしからぬじゃないかというような御議論もまた指摘されるような意味もあるかと私は思うのであります。その意味におきまして、通算制度を考えますことはもちろんでございますけれども、今御指摘の点等につきましても、将来私は考えていかなければならない大きな問題だと考えておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/100
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101・八木一男
○八木(一男)委員 今今度は厚生大臣でも小山さんでもけっこうですが、今の厚生年金保険法の平均給付額、それから今度改正案を出されるか出されないかよくわかりませんけれども、改正された後における平均額、それをちょっと教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/101
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102・小山進次郎
○小山(進)政府委員 現在の厚生年金保険で受けております年金額は、現在の人は、戦時中の不利なものがございますので、御承知の通り低くなっておりますが、大体月三千六、七百円程度になっております。今度改正を予定しておりますものでは、少なくともこれが二割程度近くまで引き上げられるというような見込みでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/102
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103・八木一男
○八木(一男)委員 公的年金制度について、恩給あるいは国家公務員共済組合、公共企業体の共済組合、それからまた地方公務員の恩給もありますが、地方公務員にはいろいろの、種類がありますけれども、それは大体本人分としては、今の普通の国民年金に比較すると、かなり高度のものになっているということは私どもも存じております。しかし公的年金制度といわれますけれども、言葉が非常にわかりにくくて、公的かどうかわからないけれども、勤労者の年金制度の中核は、船員保険法もありますけれども、厚生年金保険法ということになるわけです。この中核が今小山さんの御答弁にありましたように、現在においては月三千六、七百円ということですが、改正案が出されるかどうか、通るかどうか別問題といたしまして、厚生省で考えておられても、それはわずか二割増しの四千何百円、そういうことではバランスが合わないと思う。というのは、厚生年金保険法に対する国庫負担は一割五分であります。こちらの方の国庫負担は、これは結局外輪にしないで内輪にすると、三制三分三厘の国庫負担をほかの国民にはする。国民の一部であるはずの勤労者、公共企業体なんかは別として、勤労者の厚生年金の適用者には一割五分しかしない。それが片方はベースが非常に高く、倍以上の、たとえば、七千円とか八千円とかいうものであれば一割五分でも実額は同じだということになる。ところが現在では三千六百円、それで一割五分、片方は結局三千五百円で三割三分三厘、バランスが合わない。これについてどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/103
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104・小山進次郎
○小山(進)政府委員 おっしゃるように、国民年金の国庫負担率と現在の厚生年金なりあるいはその他の被用者年金制度との間に違いが出ておりますが、これは御承知の通り、国民健康保険の際にも論議されておりますように、今度の国民年金制度によらなければ年金制度に入れないような人々、言いかえますと、農民とかあるいは零細な企業をやっている人とか、それらの従業員というような人々を年金制度に取り入れて参ります場合に、被用者保険のように事業主負担というものを制度上どうしても予定することができません。そういうような事情もありますので、そこのところはやはり肩がわりとして、相当国の方で多く持たなくちゃいけまいということが、今度の負担を踏み切らしたおもな事情になっておるわけでございます。従って、年金制度全部につきまして、もう少し国庫負担を上げることがいいかどうかという議論は、先ほど来のお説のように、これは十分あり得ると思いますけれども、実態から見ますならば、大体両者の間ではこの程度でつり合いがとれている、かように申せるかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/104
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105・八木一男
○八木(一男)委員 これは小山さんの丹念な御答弁ですけれども、そのままにするわけにはいかない。非常に根本的に間違っておる。国民健康保険と年金制度とのたとえをとられましたけれども、そのときにはその目的の違いを把握しておられると思うのですけれども、やはり把握した立場において御説明願わなければいけないと思う。大体健康保険制度というものは、医療は結局同じものをやらなければならない。だから大体同じものでなければいけないから、結局片方を高めようとすると、片方は使用者負担があるが、片方はないから、それだけ埋め合わせるということは、その点だけにおいて成り立つわけです。そのために国民健康保険を健康保険よりは国庫負担の厚みをかける。基本的に別な点では間違っておるのですけれども、その点で現在そういうような事情にあるということは私どももわきまえておる。それはいいのですけれども、今度は短期給付で、医療給付と違うのです。所得保障ということになると、これは労働者の方がはるかに必要だという現象が多いわけです。自営業者であって、農村の人であって農地を持っていれば、六十六歳になっても、ある程度耕せば収穫はできる。店があれば、廃疾者であっても、繁盛するタバコの店を持っていれば収入を上げることはできる。ましてや中小企業の社長であって、何も仕事をしなくても報酬が入るというで人あれば、これは何でもない。そういうことですね。そういうことでありますが、労働者の場合には、あ程度の年令になると職を離れる。職を離れると、そういうような工場とか商店とか農地とかいう生産手段を持っておらない。持っておらないから、所得保障がより必要だという状態にあるわけです。これははっきり御認識を願いたい。明らかに労働者の方が必要度が多い。必要度が多い労働者の年金に、必要度の少ない人よりも少ししか国庫負担をしないということではバランスがとれない。恩給の人は、後によくすべきだけれども、現行制度は悪くないから、まあまあいいとして、厚生年金保険の例で見れば少ない。三千六百円標準の一割五分、三千五百円標準の三割三分三厘、明らかに非常な差がある。そういうことではいけない。それを埋め合わせるものとして使用者負担があるではないか、自分の負担が軽いじゃないかというのですが、使用者負担があり、それから労働者負担がそれだけ半分で済むということは、これは健康保険の関係や社会保険のすべての関係から出てきたのですが、健康保険が先でありましたでしょう。結局工場法の時代からそういうことについては全部使用者が見るという部分がある。それを少し範囲を拡大した、そういうことから今度は折半ということになった。これは歴史的な沿革がある。ある意味では、それをからませてはいけないのだけれども、使用者の方の巧妙なる方法によって、賃金なり労働条件とからまされておる。そういう労働条件とのからみ合いにおいて、社会保険の使用主と労働者の折半負担という原則がある。原則折半負担では困るので、使用者の方がもっと多くなければ困りますけれども、一応そういうようなことになっている。厚生年金保険も、そういうような関係からそういうようなことになっておる。それは賃金が少ないとか、労働条件が悪いとか、ほかのことが悪いということの埋め合わせなんです。ですからそういうものは負担があっても、その負担のもとになる払うべき賃金が少ないということで相殺されなければならぬ。それがイージー・ゴーイングで、負担があるから、年金だけについては、健康保険だけについては楽だというが、その生活全体は中小企業の社長より労働者は苦しい、そうでしょうそういうことになれば、この使用者負担ということで、それがあるから国庫負担が少くていいというような理屈は、どんなに岸内閣の立場でも、自由民主党の立場でもそういうことは言えない。しかも言えないはずなのに健康保険の方だけは制度全体が進んでいない。命にかかわる問題で、同じ給付をしなければならないのに、健康保険の方だけはつまみ金でほったらかして、国民健康保険の方は二割五分になった。しかしこれにはわれわれは反対しない。もっと多くしろということでは反対したが、少しでも前進すればよいということで、前進自体にはちっとも反対していない。国庫負担が上ることについては反対はしていない。そういう点は短期給付ということの特殊性があるから、それで今の事情を考えてほんとうに親心でそういうふうにしたわけです。ところが所得保障になったらもとの問題に戻らなければならない。それを同じように考えて、所得保障で一割五分見るというような考え方では、もうほんとうに社会保障を語る資格はないと思うそれを埋め合せる方法としては、厚生年金保険法を今度出されて国庫負担をふやすというが、妙な失業保険の国庫負担をして社会保障の調整だというようなインチキきわまるような、社会保障を無視したような態度を改めて、もっと前進させて、それで足りないところは単独前進させるということで、厚生年金保険法の国庫負担を増進した案を出さなければバランスが合わない、こういうように私は考えるのですが、バランスに合った国庫負担をふやされる案を今国会中に出されるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/105
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106・小山進次郎
○小山(進)政府委員 私の申し上げたことを、八木先生違ったようにおとりになったようでございますが、厚生年金保険の給付額が現在程度でいいかどうか、あるいは今度改正を予定している程度でいいかどうかという問題につきましては、大臣以下私ども厚生省事務当局全部の考えといたしましても、さしあたりはそうであるとしても、これは時期を見てどんどん高められていくべき性質のものだと思います。被用者年金の年金額が平均四千円を下るといったような状態にありましたのでは、これはお説の通り、ほんとうに十分な役割を果しませんので、将来被保険者の負担力の増加とか、あるいは事業主の負担力の増加、国の負担力の増加、これらをにらみ合せつつなるべく早い機会に、世界の進んだ国が持っておりますような工合に育て上げていく、この点はそういうふうに考えているわけでございます。その場合、国の負担は一割五分きめてありますから、当然自動的に額としてはふえていく。問題はその一割五分ということと、それから給付に直して三割三分ということとの関係でございますが、これは大体そんなものじゃなかろうか。実は先生方の案自身も、片方は五割、片方は二割というふうに、やはりバランスをそういうふうにおきめになっておるわけでございまして、大体今のところそのくらいに考えていただくべきじゃないだろうか、かように申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/106
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107・八木一男
○八木(一男)委員 今のことについて厚生大臣のお考えはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/107
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108・坂田道太
○坂田国務大臣 ただいま小山審議官から申し上げました通りでございます。そこの考え方については、いろいろこれは御議論があると思いますけれども、私どもといたしましては、ただいま審議官の方から申し上げました通りでございます。先ほど保険料等について、高額所得者に対しては高額の保険料をやるべきではないかというお尋ねでございましたが、その趣旨は、むしろ事業者負担というような形に出ておるとも見られないことはないと思います。その意味からいうならば、その事業主負担というものと国庫負担というものとあわせ考えて、一応私どもとしては今度はバランスをしておる、こういう立場に立っておるわけでございます。まあここのところについては、おそらく議論の分れるところでございまして、八木さんのお考え方とわれわれの考え方と多少あるいは違うかもしれませんが、私どもとしましては、そのような考え方を持っております。
〔大石委員長代理退席、大坪委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/108
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109・八木一男
○八木(一男)委員 小山さんは二割と言われましたけれども、うちの方の案を一時点だけでとらないで御答弁願いたいと思います。二割ということは、国民健康保険に換算すれば、現在の時点において三割五分になる。こういうことは小山さんも十分に私どもの案を御承知になっておるはずです。それからもう一つは、賃金水準が引き上ることによって当然五割のタイ、タイになるように組み立ててあります。組み立てようはもう一つございまして、今度は八万四千円を五割に割って標準報酬部分を別の年金にして八万四千円の年金に積み重ねれば、そういう点で楽であります。楽ですけれども、そういうことになれば、下の方の部分で国庫負担という名前に隠れて使用者の負担の分が逃げられてしまうおそれがあるし、使用者負担分をたくさんさせるという労働運動上のことが膠着してしまう点があるので、ああいうシステムをとっておるということは小山さん十分御承知だと思います。この点について言われるときには、そこまで言わなければだめで、半分だけ言って半分だけほったらかすということになると、とんでもないことになる。そういうことで、われわれの方は全国民に八万四千円に対する五割、五割の負担をさせよう、こういう観点で案を作った。ところが政府案の方はそういう観点がない。三割三分三厘と一割五分、ただし厚生年金の金額を早く直されれば実質上三千五百円標準として三割三分三厘になり得ることがある。それでさっき今度の改正案の内容を伺った。ところが今度の改正案は二割しか上っていない。それではそうならないので、それで前からそういうことの標準で伺ったわけでありまして、口でごまかしても年金額が二割しか上らないので、国庫負黒割五分ではバランスが合わない。それを直されるよう、国民年金制度でほんとうの拠出制度が始まるまでに、少くともバランスが合うように、今のままの二割増しの水準でされるならば、国庫負担を二割五分くらいにしなければバランスが合わない。それを飛躍的にもっと高く七千五百円くらいにしないとバランスにならない。そのくらいにされるならば政府としても説明が立ち、つじつまが合うと思いますが、二年間に七千五百円まで上げられる意思があるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/109
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110・坂田道太
○坂田国務大臣 その点は十分に研究いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/110
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111・八木一男
○八木(一男)委員 そこで通算の問題についてはまた別の機会にこまかく申し上げますが、昨年の九月に社会保障制度審議会に政府から、通算調整を無理に急いでやってくれるという御要請があって、大ぜいの人が夜おそくまでまる二日もかかって、けんけんがくがくのけんかをし、末高先生が激高されるほど激論を戦わして、それで通算調整の答申を出した。ところがそれが組み入れられておらないというのはどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/111
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112・小山進次郎
○小山(進)政府委員 これはかねがね申し上げております通り、国民年金制度を形の上でどのように組み立てましょうとも、実質において通算の問題を解決する用意がないと、結局これは画龍点睛を欠くことになるわけでありまして、この問題はぜひとも解決しなければならぬ。これは先ほどお話があったように、八木先生が審議会で非常に強く力説なさっておったことでもあり、実は私どももその点は同様に考えておったわけであります。ところが不幸にして昨年の六月に出て参りました社会保障制度審議会の答申案は、この問題にあまり積極的に触れておりません。あの答申をあのまま受けて制度化いたしますると、いかにも通算調整の問題をたな上げしてしまって、とりあえず手っとり早く器用にまとめ上げることだけをやればよいというような運びになってしまう懸念があったわけであります。そのような意味合いにうきまして、通算調整の問題は一つぜひ結論を明らかにし、てもらいたい、その結論の出方によりまして、実質的なねらいは同じであるといたしましても、国民年金制度のさしあたりの組み立てをどうするかが違って参るわけでございます。私どもは当時いわゆる二重加入といわれる方式を一応考えてみまして、もしもこういうふうな方式をとるとすれば、どうしてもこれは形の上で即座に国民全部を入れてしまう、現在被用者年金の対象であるものも入れてしまうというところまで制度を踏み切らないと全体の構想が成り立たぬように思うけれども、それより道がないものかどうかという意味で問うたのであります。答申をいただきましたものは、御承知のようにいわゆるじゅずつなぎ年金と称せられるものでございまして、形の上では制度が別々であっても実質的につなぎ合せることよって国民皆年金の実が上げ得るんだ、こういう答申であったわけでございます。従ってそれをもとにしていくならば、通算調整の問題も解決できる有力な寄りかかりができてきたということで、その後の作業を二段に分けまして、社会保障制度審議会の答申にありますように、さしあたりは未適用者を対象にした組み立てにする。しかして通算調整の問題は必ず解決をする。これは三十六年の四月に保険料の徴収を開始しますときまでに、その問題の解決をつける、かようにしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/112
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113・八木一男
○八木(一男)委員 厚生大臣も一つ通産調整の問題はしっかり考えていただきたいと思います。じゅずつなぎ方式と言われましたものは宮尾君が出した凍結方式ですね。凍結方式がきまりましたことは、小山さん聞いていられて経過を知っておられるはずだと思うが、ほんとうは私並びに私と一番正反対の主張を持っておられる日経連の代表の斎藤君が持ち分移管方式。内容は違いますけれども斎藤君は持ち分移管方式、私は完全な持ち分移管方式、それと宮尾君が凍結方式のじゅずつなぎ方式、それから末高君が外ばき二重加入方式、それからそのほかに内ばき二重加入方式という方式があった。その中で一番楽な方式は外ばき二重加入方式であります。内ばき二重加入方式というのはぐしゃぐしゃになってどうにもなりません、外ばき二重加入方式が一番わかりやすくてすっきりした方法である。しかし一番完全な方式は、完全なる持ち分移管方式である。ただ事務的にできにくいということで厚生省がお手を上げられるかもしれないけれども、しかしほんとうにやる気だったらできないことはない。問題は数字計算がむずかしいだけであって、数字計算は表を作ってしまえば、あとは事務陣が表を活用すればできることであって、一番いい。そこで問題の焦点は何かというと、厚生大臣はよく御存じでしょうが、厚生年金保険で途中脱退したときには、ある程度の年限のときには脱退手当金しかもらえない。このときには使用者の出した分は消えてしまう。本人の出した分の利息計算をしたものしか返ってこない。使用主は当然半分くれている。国庫負担の分はもちろん人にとられてしまう。それより前にやめた人はてんで何にももらえないわけです。それで厚生年金保険料を払っておる。その昔女子労働者において非常に問題だった。勤めたら結婚したときにたいていやめる、そういうような紡績工場や何かの低賃金の女子労働者が厚生年金保険料、これは強制適用ですからいや応なしに差し引かれる。それが高賃金の男子労働者に使われているということで、これではあまり問題が大きかったので、女子労働者だけは脱退のときによけいやるというように一部修正して行われておりますけれども、完全なものではない。そういうふうに途中脱退者には非常に不利な制度です。ところが途中脱退者というのは非常に不幸な人です。同じ職場でずっと働き続けるということができないというのは、非常に待遇が悪いか、健康が悪くなったか、何か家庭的な事情でその場所におられないで流転しなければならなかったかという条件がもとです。ですから途中脱退者は非常に不幸です。その不幸な人が自分のもらうべき分を搾取されて、仕合せな人の筒持ちをしておるという、実に厚生年金保険法というのは間違った制度です。厚生年金保険法を直してもらわなければいかぬけれども、今度は通算という問題に一番大きくそれが現われておる。厚生年金保険を死ぬまでかけてやめたという場合にどういうふうにするかということをよく考えないといけない。そこで日経連の斎藤さんは、今の方式のままで脱退手当金にちょっと水増ししたものを持っていけばいい。そうすればその人は使用者からもらう分を損するわけです。国庫負担分もその人は損する。それだけで国民年金を幾ら払ったということで数字計算をする、だからそういう不幸な人がしぼられる。それではいけないというので、われわれの考え方は、それに使用者の分、それから国庫負担の分も国庫負担が新しい制度で出れば二重になりますから、それはとめてもいいのですけれども、とにかくもらうべきものを全部自分のものとして、その入っている間に身体障害者が出たり遺族が出たということで、当然その人が分担して払わなければならない分だけ減らしますけれども、ほんとうにその人の持ち分を持って、それで国民年金に入るということでなければ、不幸な人が救われないということで、われわれは完全持ち分移管方式を主張した。ところが斎藤さんは今の構成を変えることができないからということで、脱退手当金だけ持って、それだけではあまりかわいそうだから国庫が一割か二割か水増しする、日経連の斎藤さんだって悪い点は知っておられるから、少しは色をつけるということであった。そういう論議の過程で宮尾君という人が——健康保険組合の理事長ですか委員長ですかしておられる人で、非審に社会保障に熱心だった。それと同じような考え方で凍結方式、完全持ち分の要素を入れたもので、厚生年金保険なら厚生年金保険、あるいは公共企業体の保険あるいは国民年金に入ったり保険に入ったとして、途中で転換してもそれだけの持ち分はあるとしてずっと続けていって、六十五才なり五十五才なり六十才なり各種年金制度で支給を受けるときに、たとえば三千円のものだったら、ちょっとしか勤めていなければ千五百円、それから二千円のものだったら千円というようなことで、それを出せば少くとも六十五年以後には全部同じになるということを提案されたわけです。そういうことで非常に論議が沸騰して、各人々々の意見でまとまらなかったので、最終的に、大乗的に譲って宮尾方式の答申が出たのです。凍結方式、小山さんの言われるじゅずつなぎ方式、これは私どもをして言わしむれば、非常に巧妙に考えた案ですけれども、ほかの案よりましですけれども、ちょっと卑怯なところがある。いつまでたっても制度が統合されない。何十年、何百年たってもそのままなのです。それでは困るのです。将来は統合されなければならない。そのむずかしい問題を将来に回避しようという点が欠点であります。しかし途中の脱退者の権利が保護される点においては優秀な点がある。その一番大事な点が入っているので、私の、自分では一番いいと思っている案も譲歩をして、その点で賛成したわけです。ほかの方はほかの方なりの考え方で自分の考え方と食い違っているけれども、その点においていいとかなんとかいうことで大乗的にまとめるために——これは厚生省がつきっきりで今日じゅうに出してくれとかなんとか言われましたのでそういうことになった。非常にいい案ですけれども、そういうことでありますから完全無欠ではない。それで私にとるべき方法と言わせましたら、完全なる持ち分移管方式が一番いい。ただし事務がめんどうくさいだけです。将来は問題なくなるわけです。将来は非常に助かる。けれども将来の人にめんどうくさいことを押しつけようという考え方だったらそれはできない。もう一つは制度の統合の問題ということが方々で言われますけれども、そういう問題よりも実質があればいいという考え方であれば、宮尾方式が二番目にいい。そういう方式もみんなめんどうくさいからあっさりやろということで外ばき二重加入方式というものをとって、国民年金は労働者であろうが何であろうが全部適用する。労働者の年金は別に作り、上にかぶせるということをすればまたあっさりいく。ところが厚生省の考えられている内ばき二重方式なんというのは、これはここでは長くなるからあまり悪口を言いませんが、とんでもないぐじゃぐじゃなことになる。その三つが今考えられる一番いい案です。どれがいいといって、一長一短がありましょう。私どもの案が一番いいと思うけれども、事務的にめんどうくさいという点は少しあります。そういう点で宮尾方式が至上のものであって、それ以外は考えられないということでは厚生省の自主性はない。そういう論議の過程を小山さんは御存じであるから、持ち分移管方式がいいといわれたら、それに踏み切られることも考えていただきたい。形式的に制度審議会が出したからそのまま盲従するというなら、厚生省はなくてもいいはずです。それならば制度審議会に厚生行政をまかせたらいいわけですから、そういうふうによりよくするために、審議の経過は全部御存じなのすでから、形式的な文言だけでなしに、そういう点を考えてやられて、途中転職者の利益を完全に守るということが絶対至上の目的であるということなのです。どういう方式でもそれが守られなければいけないわけです。そういう点について通算調整が法律にうたってあって、これからですから、厚生大臣、これは今度は全部坂田さんの責任になりますから、断じて変なものを作らない、いいものを作るという御決心を——将来のことは、ただいまのところなんということは必要はありませんから、御決心を一つ明快に御披瀝願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/113
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114・坂田道太
○坂田国務大臣 この点につきましては非常にうんちくのあるお言葉を賜わりまして非常にありがたく感謝を申し上げる次第でございますが、もし私が二年間大臣になっておりまするならば、りっぱな法案、通算方式を打ち出しまして、そして八木さんにも一つ応援をやってもらいたいと考えておるような次第でございます。大いに努力いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/114
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115・八木一男
○八木(一男)委員 非常になまいきな質問に対しまして謙虚な、熱心な御答弁をいただきまして非常にありがとうござました。恐縮でございます。どうか一つよろしくお願いいたします。
次に被用者年金について、またあとで各論でゆっくり申し上げますけれども、一番けしからぬ点は配偶者が強制適用になっていないという点です。これはほんとうに恥かしい案だと思うのです。けれども、厚生大臣にその点についての考え方を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/115
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116・小山進次郎
○小山(進)政府委員 この問題は八木先生も十分御承知のように、実は年金制度の立て方の基本に関する問題でございまして、八木先生の御批判ではございますが、少くとも現在の日本の社会保障学者といわれている人々がある種の考え方を持っていることは御承知の通りでございます。率直に申しますと、実は私どももこの問題についてはかなり八木先生に近い考えを持っているわけでございまして、被用者であるから現在の被用者年金の系統だけで事足りるのだ、主婦とか家族というものはいつでも陰に隠れておればよろしいのだという考え方が、あたかも無上絶対のものであるかのごとく考える考え方はどうも修正を要するのじゃないか。やはり何らかの意味におきまして実際上主婦も夫と同じようにそれ自身の権利として保障されるような制度に現在の制度を発展させていく方向で少くとも議論をすべきもじゃあるまいか、かように考えてはおりますけれども、何分御承知の通りそうでない意見の方が日本の社会保障学者には圧倒的に多いわけでございまして、八木先生ともども非常に苦戦をしておるような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/116
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117・八木一男
○八木(一男)委員 厚生大臣、今のような事情なのです。学者の中にほんとうに敬意を払うべき学者もいますけれども、学者という方は、欠点としては政治家より勇敢ではないのです。人の案に文句をつけることはできるけれども、実際にほんとうに役に立つ案を作るという熱意が——全都ではありませんけれども、そういう人は少いのです。従って学者がそうであっても、間違ったことはどんどん直してやっていただきたい。この点について小山さんのおっしゃった通り、日本の社会保障学者の一部の考え方には、実に社会保障を語る資格がないような間違った態度を示しておられる方がいる。遺族給付でいいというような考え方で——だれも御亭主が死ぬことを希望しているわけじゃないのです。二人とも長生きして、ともしらがで一緒に過去を語り、孫のことを語り、温泉に行く、それが人生の目的のはずです。ところが御亭主が死んだ場合だけ遺族給付としてもらえるから、こんな人は年金は要らないだろうこんな間違った考え方はないので、学者であろうがだれであろうが、そんなことをはねのけて、ほんとうに配偶者も年金をもらえるように一つ御努力願いたいと思いますが、厚生大臣の御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/117
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118・坂田道太
○坂田国務大臣 その点はやはり八木委員と同感でございますので、十分協力したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/118
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119・八木一男
○八木(一男)委員 そういう点で坂田さんや小山さんみたいに熱心な御答弁を聞くと、そういう点でばり雑言しなければならないのに言えなくなって困るのですが、それは別として、御熱心な御答弁は非常にけっこうですが、これを排除するのにもやはり大蔵大臣なり総理大臣に決心をしてもらわなければなりませんので、その点については大蔵大臣なり労働大臣なり総理大臣にお聞きすることにいたしますけれども、どうか一つ二年間にうまくいくようにしていただきたいと思います。任意適用があるからいいじゃないかということを半わかりの人が言うかもしれませんが、日本の事情はそういうものではありません。任意適用だったらばんやりしてしまうし、配偶者の場合は奥さんが多い。奥さんというものは歯を食いしばってだんなさんや子供たちのことばかり考えるという醇風美俗といいますか、ある点では時代おくれな考え方があるわけです。医療の方でも、ほんとうは自分が苦しいから診断を受けなければならないと思っても、御事主の仕事が忙しかったら、その間歯を食いしばって何も言わない。見てもらったときには重くなっているというときがある。自分の診察料の方が必要であると理論的には考えても、子供が何を買ってくれと言えばそっちに金を渡してしまってお医者に見てもらわないというような条件もある。そういう条件があるからつ、自分の老齢年金ということについてもおそらく主張はしまいと思う。だんなさんがはっきりと奥さんを熱愛しておる人ならば、奥さんが言わなくても入れ言うにきまっておりますけれども、そんなに将来までわかる見通しを立っておるだんなさんばかりではない。その場で飲むことを先にするだんなさんも多い。おれは丈夫だから大丈夫だと言っているうちに老いぼれてしまって、何も収入がなくて奥さんと細々と暮さなければならぬということになるわけです。だから奥さんが任意年金に入りたいのですがということをだんなさんに言わなくてもいいように、強制適用にしなければならない。日本の現在の家庭の状況では奥さんだけが排除されてしまう。任意適用の方が入りたい人は入ればいいし、入りたくない人は入らぬでもいいというのは俗人ですから、そういう俗人の人にそれを理解させていただいて強制適用に持っていくように、また方式としてもほんとうは国民年金は強制適用が大事だと思いますけれども、ここは制度が前進すればあまりむずかしいことは言いません。厚生年金保険で遺族給付のほかに、家族の配偶者の老齢給付という点を考えてもこの問題はある程度片ずくわけであります。しかし基本的には国民年金の方がいいと思いますけれども、そういう経緯でそっちの方がいいということになれば、厚生年金保険とか船員保険とか農協の職員の共済保険とかあるいは公共企業体、すべての年金で一斉にそういう配偶者の老齢給付もその中で考えるということならば、そんなにかみつきはいたしません。しかしほんとうは国民年金に入れる方が筋が通ると思います。それはどっちであってもいいと思います。老齢給付さえ実際でき上ればその人たちが助かる問題でありますから、形式はあえてこだわりませんが、そういうふうに配偶者の老齢給付ができるようにぜひ御配慮を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/119
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120・大坪保雄
○大坪委員長代理 ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/120
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121・大坪保雄
○大坪委員長代理 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/121
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122・八木一男
○八木(一男)委員 労働大臣と大蔵大臣と企画庁長官が来ないことは非常に遺憾であります。今大坪さんが委員長代理でいらっしゃいますけれども、大坪さんなりまた園田委員長から、参議院予算委員会偏重の弊を改めていただくように強硬な申し入れをしていただきたい。朝からずって要求しているのに、倉石君なり世耕君が引き続き答弁をしているということは絶対にあり得ない。おもに総理大臣か大蔵大臣が答弁をしていると思うが、衆議院の社会労働委員会が、その権能を発揮することが非常に弱くて、こっちに大臣を呼べないということであっては社会労働委員会の権威にかかわる。今後こういうことのないように委員長にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/122
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123・大坪保雄
○大坪委員長代理 了承しました。督促をさせることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/123
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124・八木一男
○八木(一男)委員 次に、問題が前後しまして大へん恐縮でございますが、基本的な年金の物価変動によるスライドの点についてお伺いをいたしたいと思います。
政府案の第四条には、「保険料の負担を伴うこの法律による年金の額は、」これは拠出年金のことであろうかと思いますが、「国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるための調整が加えられるべきものとする。」というふうに、年金額を変えるべき点の規定がございます。第二項においては保険料の方に触れておられるわけでありますが、第一項について伺いますと、これでは、物価変動に対して年金額がスライドされて、ほんとうに国民の期待する、また予定をいたしております年金額が実際上の年金として入ってくるということになるには非常に不確かな条文だと思いますけれども、それにつきまして厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/124
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125・坂田道太
○坂田国務大臣 こういうような年金制度を打ち立てました場合におきまして、経済の変動が非常に大きい場合におきましては、その受けますところの給付内容が非常に低くなってくることは理の当然でございまして、これらに対しまして何らかの措置をとるということは当然考えておかなければならない点だと思うわけでございます。そういうわけで、実は五年ごとにスライド計算をいたしまして、積立金を実質価値で判断をしていくというような立場をとっていこうというふうに考えておるわけでございます。何を申しましても、御承知のようにこの年金制度は国家的な制度でございますので、それらの問題が起りましても、国家的制度であるという建前から、これらに対して十分の備えをしていくというつもりであるわけで、これを受けられる方々に不安がないようにわれわれは考えていかなければならないというふうに思います。
それからまた経済変動の問題でございます。インフレーション等の影響といつうものを考えなければならないのでございますけれども、日本は不幸にいたしまして戦争の結果相当なインフレーションに悩まされたことはわれわれの記憶に新たなところでございます。しかしながら世界の経済の動向を見て参りました場合におきましては、そのようなインフレーションの影響は漸次その幅が狭められてきているというようなことも一面においては言えるわけではございまして、長い目で見るならば、安定した形においていくということも言えるかと思うわけでございます。そういう意味から申し上げまして、このような規定を設けまして、そしてこれを受けられる方々あるいは保険料を納めておられる方々に不安をなからしめたいというふうに考えているようなわけでございます。なお補足的に審議官から御答弁を申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/125
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126・小山進次郎
○小山(進)政府委員 八木先生の仰せになっておることは、おそらくただいま大臣がお答え申し上げたようなことを十分御承知の上で、そういうような手段をとることを確保する意味において、もう少し基準を明確な形で規定すべきではないかというお考えに立っての御質問だと思うのでございます。私ども、実はできればそのような基準を明確にすることが望ましいという考え方は持っております。ただ、これは先生も御存じのようにいろいろの意見はございますけれども、どうもだれでも納得するというようなものはございません。おそらく先生もいろいろ御苦心になった結果、一〇%以上の変更を認める必要が生じた場合にはこういう手続をとれというような基準を御考案になったものと思うのでございますが、この場合でも年金の額を一〇%以上引き上げる必要があるかどうかの判定そのものについて何かスライド方式をとるということになると、なかなかそこまで踏み切れない、こういうような事情が出てきてああいうふうな仕組みになさったものと思うのでございます。私どももそのような意味におきまして、基準を明確化することは望ましいけれども、一義的につかむわけにいかぬ、しかしこの制度そのものはそういうものなんだということは、ぜひとも制度発足のときに明瞭にしておきたい。これは単に実施に当り行政庁に課せられた義務であるだけでなく、広く国民全部に対して、この制度はそういうものなのだということを明らかにして措置をいたしていくようにいたしたいというので、あのような規定にいたしたのであります。それで実際上の目安といたしましては、おそらく五年ごとに保険料その他財政の再検討をいたすことにいたしておりますので、果して年金額その他が、発足をするときに予想しておったような条件その他の事情と比べてどうかということがあらためて検討されていくというようなことで、規定そのものでは一義的に明確にしてはございませんけれども、いろいろの事情を勘案して調整をされる、かように相なるものという期待をして、あのような規定にいたしたようなわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/126
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127・八木一男
○八木(一男)委員 具体的な問題について、五年刻みにするか十年刻みにするか、そういうことは技術的にお考えになったらいいのですが、第四条第一項というのは抽象的に原則みたいなものを書いておられるわけです。原則みたいなものを書いておられるときに、物価変動の割合に従って年金額を変動させるということがなければ、これはほんとうに骨抜きになってしまうわけです。こういうところの具体的なことは結局十年に一ぺんは必ずしなければならない、著しい変動があったときにはもっと早くしなければならないという考えに立っておる。著しい変動もあるわけです。その著しい変動のある点を抜かされておりますけれども、そういうことになるわけです。あまり変動がないときにはそんなことをしなくともいいのですが、そういう技術的に関する問題は、しぼって考えていただければだれでも同じような結論になると思う。物価変動の割合に応じて年金額を改定するということにしておかないと——このような国民の生活水準その他の諸事情に、しかも著しいという形容詞がついております。こういうことであれば、小山さんが総理大臣になられて二十年間ずっと続けられれば間違った解釈もされないでしょう。だが残念ながら、小山さんは総理大臣になれるかもしれないが、二十年間も続くというわけにはいかない。そういうことですから、そういうあやまちがないようにやはりやっておかなければならない。これは別に予算に関係があるわけでも何でもない。ですからこれをすっきりさせるということは今からでもできる。これは何だったら自民党の面子のために、藤本さんかだれかに修正案を出してもらって御可決になればそれは変るわけです。物価変動の割合に応じて年金額を改定するということにならないと、年金そのものが骨抜きになる。これは予算に関係ないから、佐藤さんは文句を言われないはずです。その点で坂田さんにぜひこの文言を、物価変動の割合に応じて年金額を改定するというふうにはっきりと規定をするように変えていただきたいと思います。それについての坂田さんのお考えを伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/127
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128・坂田道太
○坂田国務大臣 これはただいま私の方で立案をいたしまして御提出を申し上げておるわけでございまして、その点をどういうふうに修正するかということは——またわれわれの方ではこの案で参りたいと思っておるようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/128
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129・八木一男
○八木(一男)委員 政府としては結局今の年金、これは非常に貧弱なものでありますけれども、それは確保したいという考えで出されておると思う。ところが貨幣価値が半分になればあの年金は半分になってしまう。貨幣価値が半分になれば名目賃金もふえるし、それから名目賞与もふえる。それだけ税収入もふえる。今の御決心はひん曲げて、こういうふうに変えてこういうことをやると言っておるけれども、将来はずるずる実質的に減らしてしまうというお考えがあるんだったら、これは非常に上手なことです。そんな間違ったインチキな考え方はおそらく持っておられないと思う。ここにあるものだけは国民にやろうという考えであるならば、これは何ら右顧左眄する必要はない。そういうことになれば名目的な財政収入は多くなる、保険料の方は間違いなしに五年目に切りかえてあげるということが書いてある。財政には一つも関係ない。ですから結局貨幣価値の変動の割合に応じて年金額を改定するということを承知なさらないならば、国民年金は、今選挙宣伝に出して、実質的にはあとはインチキで中身のないものにしてしまうということになる。これは普通のばり雑言とは違う。ほんとうにそうなる。財政的には一つも関係ない。この点だけは物価変動の割合に応じて年金額を改定するというふうにはっきりと出していただきたい。それについて、形式答弁でなくて、ぜひそうしていただきたいと思います。私も坂田さんにはずいぶん、言葉は荒いけれども、儀礼を守って申し上げておるので、これだけはぜひ坂田さん責任を持って変える、政府案に面子を持っているとすれば自民党に働きかけて、自民党の幹部として自民党から修正案が出るように、社会党からいろいろの案が出たらそれに賛成するように、そういうように一つしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/129
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130・坂田道太
○坂田国務大臣 私どもが出しましたこの案によりまして、今仰せの物価変動に応ずることがなし得るというふうに私は考えておるわけでございまして、八木先生のおっしゃるように法案を変えなくとも、少くとも八木先生が考えておられる目的は達するのではないかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/130
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131・八木一男
○八木(一男)委員 答弁によりますと、私の申し上げた目的を達し得る、さっきの御答弁も今の御答弁も、私の考えた目的に厚生大臣は反対ではない、ただこの文句でなし得ると思うという御答弁なんです。ところがなし得ないという疑問が非常にたくさんあるわけです。それで、変えて悪い理由は一つもない。あるとすれば政府原案を政府自体いじくったという面子の問題だけである。面子の問題で国民にそういう大きな心配をさしてもいいという態度であってはいけないと思う。年金の徴収がむずかしいではないか、高くすればいろいろの無理解な意見も起るじゃないかという一つの理由は、インフレーションによる過去の一つの非常な損害から来ている。貯金にしても何にしてもみんな実質価値がなくなってしまった。それでこりているわけです。国民はこういう貯金だとか、年金というようなものを積み立てることにこりているわけです。それで年金制度に協力させるためには、それが絶対に心配ないんだということにしなければ、国民の協力も得られないのでありましょう。ほんとうの年金制度の発展もできない。そういう大きな問題なんです。そういう大きな問題を、ただ政府案の面子だけで、それはできないということでは——坂田さんはそういう形式的な政治家ではないと思う。岸さんだって、欠点だらけでほかの点は工合が悪いことばかりする人だけれども、せめてこういうことを話したら、岸さんだってこのくらいのことはうんと言われる。ですから坂田さん、それをぜひ直していただきたい。一つ御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/131
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132・坂田道太
○坂田国務大臣 何度も同じようなお答えになると思いますけれども、私どもは今申し上げましたような内容で、インフレーションあるいは物価変動等に十分処していけるものだという確信を持っておるわけでございまして、おそらくこのことがはっきり国民の前に明らかにされまするならば、国民の方々も安心して御協力をいただけるものだというふうに思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/132
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133・八木一男
○八木(一男)委員 ほんとうにからを破っていただきたいです。先ほどいろいろの意見を聞いて、いろいろ考えていきたいと言われた。野党も一生懸命考えているのです。野党のここにいられる堤さんも僕も一生懸命考えている。一生懸命考えて、これだけはほんとうに大事な点じゃないかと思っておる。野党といえども国民の三分の一以上の支持は受けているわけです。そういうことでやはり国民の相当部分は心配があるわけです。政府は何でもいいことをやるというような封建思想と申しますか、政府がいいんだとおっしゃればそれは大丈夫と安心する人もありましょう。だけれども少しでも過去のインフレの損害をこうむっている人は、何といっても心配でならぬ。そんなくだらぬものに保険料を納めるよりは、自分で貯金したり、自分で運用してもうけようというような考え方で、国民年金制度に対する協力が薄れる危険性がある。そういうことを変えたからといって、政府は一つも困ることはない。面子以外には一つもない。坂田さんの面子が幾ら多くても、岸さんの面子が幾ら多くても、国民がほんとうにこの制度に協力することによって仕合せを得るということに比べると、どんな大きな面子も捨てていただきたいと思う。ですからただいまのところとか、これでできると思いますというような形式的なことじゃなしに、今日こそほんとうの勇気をふるっていただきたいと思う。厚生大臣はえらい強がりをおっしゃいません。それで非常にまじめな、熱心な、良心的な政治家であると思いますので、ダイナミックな点が少いように感じておりますが、だけれども、ほんとうにまじめな、ほんとうに熱心な人が決心されたときには、わあわあ言う人よりもほんとうの力は強いはずです。そういう点を私は今度の坂田さんに期待をしたいと思います。これはそんな大きな勇気は要りません。私たちは坂田さんにそれの百倍くらいの勇気を期待しているわけです。せめてこれだけの勇気を持って、そういうふうにするというお答えを願いたい。ほんとうに国民のために勇気を持っておられる、自由民主党とか岸内閣というワクよりも、国民の方が大事だというお考えを持っておられるというところをぜひ示していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/133
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134・坂田道太
○坂田国務大臣 私が考えておりますることは、国民のためにどうするかということで御答弁を申し上げておるわけでございます。この点は八木委員も御承知をいただけるものと存じますけれども、しかしながら、ただいまわれわれが考えておりまするような点を、八木委員のようにしたからというよりも、もっと私は国民年金財政というものが一体国民にどう受け取られるか、あるいは現実的にそれが可能だということがほんとうに国民の方々にわかるかということが大切であって、その方が確立をし、日本の経済の見通しが国民全体によくわかっていきますならば、私はこの問題はそう大きな問題ではなくて、八木先生のように訂正しなければならないほど重大な問題ではないというふうに考えております。私は、十分インフレーションその他経済変動に対処していくだけの条文になっておるものと確信をいたしておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/134
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135・八木一男
○八木(一男)委員 国民年金の財政についての国民の心配とか言われましたが、こんなことが心配な人はない。財政を語らなければ知識人じゃないように思っておる連中が、知識かぶれの連中が、財政々々と言うだけで、国民が財政のことを全部知っておるわけじゃない。大多数の素朴な国民は財政のことなんか言ってない。政府が、物価変動に応じた改定をしてやろうといえば、そんな財政のことなんか心配するはずはない。財政論になれば、心配はないはずです。名目的な貨幣価値が減ったらどうしたって名目的な収入はふえるわけです。ふえなければならぬはずです。自営業者の人も雇用労働者の人も、国家の財政収入だってふえる。国庫負担だって名自的に多いものを出すことは平気なわけです。保険料だって名目的に高い保険料が取れる、実質的に同じ保険料なんですから。こんなことは経済のいろはです。財政を語る人だったらそれはわかるはずです。財政なんか心配しない人としては、そんな財政論なんか抜きにして、政府が貨幣価値が半分になったら倍にしてやるぞということを期待している、素朴な国民は。財政なんか語る半わかりの連中は——本わかりの連中ならそういうことをしゃべったってわかるでしょうから、こういうことを、ほんとうに、うそじゃなしにやるのだ、どうしてもこれはそういうふうに物価変動の割合に応じて改正するということにしていただかなければならない。もしどうしてもしていただけないというのだったら、政府はインチキを考えておる。こういうふうに条文で「著しい」という副詞を入れておいて、物価変動においての割合ということを入れないで、諸事情ということでごまかして、国民からしぼりとったお金をそれだけ返さない。実質的なお金をそれだけ返さないで、国民が計算がわからないのに便乗して、一〇〇にしなければならないものを八〇くらいにとどめて、ほかの二〇は自分たちの都合のいいような大資本の方にやろう、国民の社会保障を無視しようという考え方があるとしか考えられない。そういう考え方がないなら、なぜそういうふうにできないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/135
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136・坂田道太
○坂田国務大臣 たびたびお答えする通りでございまして、今日われわれが国民年金制度を打ち立てていく場合において、その物価の変動に応じた条文等もちゃんと入っておるわけでございまして、こちらが故意にそれを国民のために悪くするというようなことであってはならないことは当然なことでございます。少くとも八木委員の御指摘になるようなことが、この法案においても盛られておるというふうになぜ私は御了解がいただけないだろうかというふうに思うわけでございます。すなおにこれをお読みいただけますならば、このような不安というものはないものだ、かように確信を持っておるようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/136
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137・八木一男
○八木(一男)委員 今お話になった、たとえば坂田さんとか小山さんのお気持は今の御答弁でちょっと信頼できなくなりましたけれども、今までのところはまあ信頼してもいいかと思ったのです。信頼してもいいかと思ったけれども、人がかわるのです。坂田さんだって厚生大臣で二十年いるわけじゃない。人がかわったら、どんな人がその責任者になるかしれない。皆さんの内閣がつぶれて社会党内閣にしてもらえばこれは安心ですが、来月社会党内閣ができ上るという情勢でも、残念ながらないわけです。どんな人が出てくるかわからない。そのときに、これだったらどんなことでもできるわけです。合法的々々々ということを岸内閣はよく言われる。法律に従ってやりました、著しい変動がありました、著しいというのは幅は幾らでもっけられます。貨幣価値が十分の一にならなければ著しいことにならないのだということで、ほうっておこうとしてもできるわけです。生活水準ということであれば、貨幣価値と生活水準とは直接結びついたものではないというような逃げ道があるわけです。そういうことが明らかに行われるのですよ。ですからほんとうに言葉でいっていらっしゃるように、そういう不安を起すべきでない、そういうようにならないと思うというのなら、言葉を変えるだけで、たった言葉を変えるだけですよ。印刷して、ちょっと出して、ここでさっと起立するだけで変るのです。それだけで国民の大勢の人の長い間の心配が解けるわけです。厚生大臣がちょっと面子を失墜する、ちょっと印刷をするということだけで、多くの老人がこれをやって、ほんとうにそういう生活ができるのかどうかという一生涯の心配と、その手続を対応して見ればいいのです。それが全国民の考えです。そのくらいのことができないようではいかぬですよ。厚生大臣はそのくらいのことをなさる決意を持っていなければいかぬです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/137
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138・小山進次郎
○小山(進)政府委員 先ほど来八木先生がおっしゃっておられることは、私どもよくわかるのでございますが、ただこの第四条の条文の趣旨につきましては、先生がお考えになっているのと若干違うのでございます。私どもが立案に当って考えております一番の主眼点は、年金制度においては発展がなくちゃいかぬ。たとい積立方式をとるといたしましても、国民の生活水準がその間にぐんぐん上ってきたならば、当然生活水準の上昇に応じたように、積極的に年金の額がふやされていかなければならぬ。これは何といっても年金制度において絶えず考えられなければならぬ点である、かように考えているのであります。その場合になお先生がおっしゃるように過去の不幸な経験としてインフレーションなるものがあったし、また年金論議におきましても絶えず、長期の制度でもあるから、もし途中でインフレーションが起きた場合にはどうするのかということが論議になる。御承知のように社会保障制度審議会においても、この点はいろいろ論議になりまして、結局あまり対案はない、そのときそのときの状態において善処していくより仕方があるまいというような結論であったわけでございます。従ってこの条文といたしましては、まず第一に、積極的に年金の額というものを生活水準の上昇に合せていくようにすべきものだということを表現したい。なおそれでは不幸にして今のようなマイナスの条件ができた場合にどうするのかということについても、あわせて対処しなければならぬように組み立てておかないといかぬというので、かような表現にしたわけでございまして、大臣が繰り返し申しておりますことは、つまりこの表現で先生がおっしゃることが全部表われているということを申し上げているわけでございまして、私どもも現在のこの表現が、今申しましたような考え方なり思想を表わすものとしては一番適当だ、かように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/138
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139・八木一男
○八木(一男)委員 この前も小山さんに個人的にお目にかかったときに、実にいい文句を考え出された。実際は物価変動に応じた改定をしないで済むし、それで文言だけ見ると物価変動以外に、生活水準によって積極的に変えていかれるように読める。だから実に巧妙な、知恵をしぼった条文だということを個人的に申し上げました。今この見解がまた出てきたわけです。それならそれで、そういう積極的な意欲があるなら、文句は幾らでも考えられるわけです。坂田さんがお考えになっても、小山さんがお考えになっても、何なら私が考えて差し上げてもけっこうです。物価変動の割合に応じて年金額は改定しなければならない。そのほかに、調整じゃないですよ、生活水準が上ったときにはさらに急速に年金額を高めることをしなければならないというふうに変えれば、印刷文言もほとんど同じ程度で入る。そんなもので両面解釈はできる。僕にぎゃあぎゃあ言われて苦しい答弁をしなければならぬような条文にする必要は一つもない。文句をちょっと変えれば、どうです政府もこのぐらいやったでしょう、社会党もならえというぐらいのことは言えるわけです。そういうことが入っていないところが問題でもあるわけですから、そういう方の面で、生活水準が上ったときに年金額を積極的に上げる、今の貨幣価値の変動じゃないですよ、上げるということ、将来の発展を残す意味は賛成です。これは残しておかれたらいいでしょう。区切ってやる。貨幣価値の変動の割合において年金額は増額しなければならない。その中に生活水準その他の、著しいを抜きまして、生活水準が上った場にはそれに従って基本的な年金額を急速に上げけなければならない。むろん調整という言葉を使わないで、日本が貧乏になったら下げていいんだなんて言わないで、生活水準が上ったなら上げなければならないということだけ、一方的にしておく、それから著しいというような、こういう逃げ道を作らない。考えれば幾らでもあるのです。そういうふうな生活水準ということを入れていただいてももちろんけっこうです。ですから今の貨幣価値の変動の割合に応じて年金額を変えなければならないということを入れて、それから生活水準の点も入れて、それで文言を変えていただきたいと思います。それについての御答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/139
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140・坂田道太
○坂田国務大臣 ただいま小山審議官から補足的に御説明いたしました通り、私の答弁はそれをも含めているわけでございまして、八木委員の御質問の趣旨にも合うかと思うわけでございます。そのように御理解をいただきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/140
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141・大坪保雄
○大坪委員長代理 ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/141
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142・大坪保雄
○大坪委員長代理 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/142
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143・八木一男
○八木(一男)委員 今のお言葉でございますが、そういうお気持であれば変えていただけると思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/143
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144・坂田道太
○坂田国務大臣 ただいままで御答弁申し上げましたように、またただいま小山審議官が申し上げましたように、八木委員の今まで御質問いただきましたその内容を包含する言葉といたしまして、あのような条文に実はなっておるわけでございますから、むしろそのことをも含めておる。生活水準が高まっていくに応じて給付内容も変えていくという意味も含まっておる。一面においては経済変動があった場合においては、それに応じた改定をやっていくということ、この二つのことがこの案文に盛られておるということであるならば、八木委員も御了承いただけるのではなかろうか、こういう気持でございますし、先ほど来お話を承わっておりますと、大臣でもすぐやめてしまうわけだから、あとになったらどういうやつが来るかわからぬ、こういうお話でございますが、少くとも今後厚生大臣になられる方あるいは内閣を組織する方々が、この国民年金制度に対して十分の理解と、あるいはまたこれに対する推進というものを考えないようなことであっては、おそらく国民の負託にこたえられないと思うのです。少くとも私は前進していくものだと信じております。従いましてそのような意味において、そのような規定でございましても十分私はインフレーションに対しましても処していけると思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/144
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145・八木一男
○八木(一男)委員 外柔内剛の大臣でいらっしゃいまして、非常に丁寧に熱心にお答えを願いますけれども、直すということになりますと、てこでも動かぬということになると因ると思うのです。言ったことは、意見は一致しているわけです。物価変動に応じて直すべきだという御意見、それからそのほかに生活の変動に応じて、直すべきだ。それだけ完全に意見が一致して、問題は、手続や印刷をちょっと直して出して、みんながちょっと立つということだけです。それで何千万人が何十年間安心できるということがなぜできないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/145
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146・坂田道太
○坂田国務大臣 私はこの問題はそう八木先生がおっしゃるようなことにならないのではないか、一応これは安心していただけるものだというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/146
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147・八木一男
○八木(一男)委員 安心できないから、先ほどからしつこく申し上げているのだけれども、きょうはどうしてもやるという答弁をなされない決意でがんばっているらしいので、今晩よく考えて下さい。今晩よく考えて、岸さんや何かと御相談になって、それじゃ変えよう、それから手続は、政府が撤回して出し直すのは面子があれば、それは岸総裁の方から自民党のこの熱心におられる社会労働委員の方に言われて、自民党の方から修正案を出すことに御要請になれば、熱心な先生方はそのくらいすぐなさると思います。そういうことで今晩よく考えて、そういうふうになさっていただきたい、そういう御努力をしていただきたいと思います。それについて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/147
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148・坂田道太
○坂田国務大臣 私、今夜も一生懸命御趣旨を思い出しまして研究をいたすつもりではおります。しかしながらおそらく私から申し上げますと、八木委員のおっしゃることも私どもの考えていることも同じで、しかも八木委員のおっしゃる内容をこれに含むといたしますならば、八木委員の方でもこれを御了承いただいてもいいのではないだろうか。何でもかんでも八木先生のおっしゃる一言一句がすべて正しい、こういう考え方も一面において、私むろん研究するつもりでございますけれども、実はどうかと思うわけでございまして、少くとも八木委員の仰せられておることの内容を政府案において包含いたしておるのでございますならば、それを改めたらいいではないかという御議論はむしろ私の方から八木委員に申し上げまして、その内容を含んでおりますのでこの程度で一つ御了承を願いたいわけでございまして、八木委員におかれましても今夜ゆっくりお考えをいただきまして、御理解をいただきたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/148
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149・八木一男
○八木(一男)委員 私も儀礼上はゆっくり考えますけれども、ほんとうにゆっくりお考えになるように努力していただきたいと思います。私の方はあくまでもこのままの文言では了承できない。変えていただかなければ了承できないということになるわけでございます。
労働大臣も企画庁長官も来られませんでしたので、それでは時間の許す範囲で無拠出の方にちょっと入らせていただきます。無拠出年金のことにつきまして今まで一つも触れておりませんでしたが、その中の最も大事な点だと思われる骨組みについてちょっと伺いたいと思います。無拠出年金というものについて、厚生大臣どういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/149
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150・坂田道太
○坂田国務大臣 提案理由を御説明いたしました場合に申し上げました通りでございまして、基本はあくまでも拠出制度で参る、しかしながら現在この拠出制度で参ります場合におきまして、現在老齢であられる方々、現在傷害を受けておられる方々、あるいは母子家庭であられる方々、これらの方々をこの恩恵からはずしてしまう、あるいは何らの恩恵を与えないということは、せっかく国民年金制度を打ち立てました趣旨から申しましても、これはまことに残念なことでございますので、その経過的な措置といたしまして援護年金という、いわゆる無拠出制度を実は経過的、補完的に考えるということで、今回そのような考え方から立案をいたしておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/150
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151・八木一男
○八木(一男)委員 政府案の方も、私どもの社会党案の方も、拠出年金を建前にしておりますけれども、無拠出年金というものはいけない制度ではないと思う。ほんとうは無拠出年金制度で徹底することが社会保障の一番いい方法だと思う。ただその制度を今から始めるときに難儀があるわけです。そのためにそういう実態に即して、仕方なしに拠出制度をとった。何十年も前から始まっておれば無拠出制度が一番すっきりしていいわけです。そういう点で無拠出制度をあまり無視されてはいけない。そういう点で拠出制度をとりましても、過渡的、補完的に必要だ。過渡的、補完的という意味は薄く考えていただいては困る。政府の援護年金と称するものは、過渡的に見ましても補完的に見ましても、少し薄過ぎるように思いますので、その点について御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/151
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152・坂田道太
○坂田国務大臣 これは国民年金制度を拠出制でやるかあるいは無関拠出制でやるかということについては、これはいろいろ議論があると思いますし、また歴史的に見ましてもあるいは世界各国の例を見ましても、これはいろいろあるかと思います。しかしながら日本の現状から考えますならば、基本はあくまでも拠出制でいかなければならないというふうに私どもも考えておりますし、また社会保障制度審議会におかれましても、そのように考えておられるように承わっておるわけでございます。しかしながらただいま申し上げましたように無拠出制というものも経過的にはどうしても私は必要であるかと思うわけでございまして、これらの方々に対しまして当然国がまるまる見ていくというこの無拠出制度というものを、私たちも決して重要でないものだというふうには考えておらないのでございまして、やはり非常に意義のあるものだというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/152
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153・八木一男
○八木(一男)委員 無拠出制というものをやはりそんなに重要視しておられないと思うのです。ほんとうは無拠出制の方がずっといい社会保障制度だと思う。無拠出制で完全なものにするために国庫支出がよけいになるということが一つの隘路であります。よけいになるときに、まだ国民がそれになれておらない。徳川時代からこういう制度があってやっておれば何でもない、みんなに無拠出制度というものがあれば……。ところが今始めるから、ふわっとえらい国軍支出が出るので、みんなえらい惑乱して、とても大へんなことだ、無拠出なんかできないという気分が全体にあるわけです。それで無拠出制度が取り上げられなかっただけで、本来社会保障制度は無拠出制度であるべきだ。拠出制度は妥協です。それで拠出制をとるということは何かといえば、累進課税による一般財政で無拠出制を全部するのが妥当であるのに、それに対して、そういう年金制度を理解しないために、いややっぱりそれが多過ぎる、従って一般税負担が多過ぎるという議論があるので、拠出制ということで、自分の将来について自分が用意するという要素を入れまするならば、今のただ財産権に関する固着した考え方を持っている国民にも浸透ができて、自分のことを用意するんだからいいという考え方で、そういう今の社会保障に対する国民の理解の程度ということを考えて、今ではやはり拠出制へ持っていくという部分がなければ、大きないいものはできない。無拠出制に概念的に賛成しても、こんな税負担になっては困るということで、小さいものになって、いけない。だから、そういうものを大きくするために、現在の民度から見て、理解の程度から見て、自分の将来は自分でという概念を入れなければならないということで、いろいろの学者も仕方がなしに現在では拠出制でなければいけないということになり、私どももそういう考え方に現在の時点としてはなり、政府側としてもそういう考え方になられたと私は理解しております。政府側の方は理解しておるだけだが、ほかはそうです。その通りです。そういうことですから、結局さっきの論議を御承知になりましたけれども、無拠出制であれば負担能力の少い人に保険料は少くすべきであるとか、納められない人でもやはりやらなければいけない——これは坂田さんも基本的にそういうようにしてやりたいということに賛成しておられたが、そういうものは無拠出制だったら、完全に解消するわけです。一般税だったら累進税だから、特に所得税を納めるだけの範囲に入り得ない人は完全に自動的に免除にする。国家財政を通じての年金保険制度と考えれば、一般財政から全部の給付の金が来るとすれば、所得税以下の人は直接税も間接税も全部免除、ただし、たばこの税金だとか酒の税金でとられますけれども、大体基本的に免除とか軽減ということになる。そういうことで、保険料の操作は必要なくなるわけです。それから、国から出るという形式論理で、保険料を納めたからたくさんやらなければならないという間違った社会保障的な考えは一切排除する。国から出すのだから、みんなにたくさんの金額をやってよろしいということになる。社会保障に徹底するとすれば、無拠出で徹底しなければならない。ところが、そういう概念は賛成する人もいるけれども、それにしても年金制度に対する、社会保障に対する認識が薄いために、と言っても、月に一万円や二万円のものを全国民にやることは大へんだ、それに対する税金は、所得税を三倍にしなければならないというようなことが起りますから、自分のものは自分でやるという国民のそういう既成概念、これを活用しなければならないという点で、拠出制というものが現段階として必要なんです。そういう点で組まれているのが、少くとも私どもの案です。それから社会保障制度審議会における論議もそうです。ただ政府案は、今坂田さんが首を横に振っておられましたから、坂田さんに関する限りそうではないと思います。しかし僕は小山さんはそういう考え方だと思っております。坂田さんが最高の責任者ですから、首を振っておられてもけっこうですけれども、そういうことだと私どもは理解しております。そういう理解について首を振っておられるならば、これはいけないという点を指摘していただけば、私どもの考え方の参考にさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/153
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154・坂田道太
○坂田国務大臣 私は、やはり国民年金制度を日本に打ち立てる場合におきましては、拠出制が基本であるということは当然なことであるというふうに思います。ただ、現実を離れたものとして、無拠出がいいとか、あるいは拠出がいいとかいうようなことは言われないのではないかというふうに思いますし、また、日本のように、社会保障制度につきましても、終戦後、しかもこの近年になってこれが問題になってきたような国においては、特に自分の老後は自分で見ていく、そういう予想されるところのいろいろの所得の削減、将来にわたる削減ということに対して、自分の力で、自分に所得がある間においてこれをみずから積み立てていく、こういう国民の一人々々の積上方式がなかったならば、国民年金制度というものは実を結ばない、あるいは充実をしていかない、私はこの点だけは確信をいたしております。日本の現状において、無拠出制でよろしいなどというような考え方をもし学者の方方がなされるとするならば、それこそ——先ほどあなたが、学者の方々の中にはどうもあまり信用のならない人たちが多いとおっしゃいましたけれども、私はこの点に関してはさように確信をいたしておるようなわけでございまして、先進国におきましても、大部分の国においてはこの拠出制度というものを打ち立てておる、この歴史的、経験的なことの実態をお考えいただくならば、私の言うことがそう間違っておらないということを御理解いただけるものだと私は思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/154
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155・八木一男
○八木(一男)委員 私、前提を申し上げましたので、質問の前提でお答えを願いたいと思います。
そういう理論的なことを申し上げましたわけで、現実には社会党も現在の年金制度に対する理解から出て、拠出制をとるべきであるという結論を出してそういう法案を出している。学者の方々もそうなんだ。政府案もそうです。その現実の点だけを持っていって御答弁になると、私の質問と食い違う。根本的にどうあるべきかということでさっき申し上げたのです。拠出制ということを、たとえば政府の特別会計であるとか、あるいは公社であるとか、あるいは民間の公的公共企業というような、そういうようなことで限定して考えられる必要は一つもない。拠出という言葉を保険会社的に考えられる必要は一つもなくて、国家財政というものが一つの特別会計と考えてもいいわけです。所得税というものは、それはほかの道路にも使われるし、教育にも使われますけれども、そのうちのある部分が年金制度をまかなう会計の役をなすと当然考えられるわけです。そうなりますと、所得税なりほかの税金なりのある部分が保険料であり、年金税である。そういう部門を通じてやれば、国の今の態勢から見て、今度はみなに、納めたからたくさんやらなければならないという既成概念を離れて、必要な人に必要なものをやるということに国家の機構を通じてやれば、何らいろいろの制度上の間違った点が起らない。国の政治としてやる。税金の形でとった保険料の部分はあるわけでしょう。国のほんとうの一般財政にほうり込めばいかに分けようとも、これは政府が原案を提出し、国会が決定することにゆだねられている。そういうことで、ほんとうに必要な人に必要なだけやるということが徹底できるわけです。とり方は、税金としてのとり方であれば、当然負担能力が大きい人が累進的にたくさん負担するということができるわけです。国家財政を、年金の特別会計なり公社の特別会計としてお考えいただくならば、無拠出制でやった方がはるかにほんとうの趣旨に従うように徹底的にできるという理屈が成り立つわけです。ただし、現状においてはそういう理屈は成り立つけれども、少しだったならば無拠出でも納得する人が多いけれども、大きなものになれば、一兆四千億の財政ワクをそれだけでも非常にふやさなければならぬ。今まで年金制度がない、年金制度のありがたみを実際に味わっておらないという国民がある以上、そういうことはなかなか理解は困難だ。理解が困難だという現状において、さっき坂田さんがおっしゃったところの、自分の将来は、自分のかせいだもので入れて用意するという概念、その概念を取り入れなければ年金制度の大きなものを作れないという現状から考えて、社会党案を作り、制度審議会の大多数の学者もそういう考え方になっておる。政府もそうだ。その点で、坂田さんの後段の意見と私の意見は同じである。基本的な点を申し上げたから質問と答弁が食い違ったわけです。そういうことであって、無拠出制というものは拠出制よりも制度として不適当であると断定すべきものではない。現状の段階において、拠出制がより適当であるということは政府も自民党も社会党も同じです。だけれども、無拠出制の重要度ということは、拠出制をとるということによって消え去るものではないということを一つ御理解になってお考えになっていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/155
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156・坂田道太
○坂田国務大臣 その点については残念でございますけれども私は八木委員と意見を異にしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/156
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157・八木一男
○八木(一男)委員 年金法案の審議に、根本的な年金の考え方ばかり言ってもあれですが、少なくとも根本的な点は別として、現実に拠出制をやっていく、しかし拠出制をやったからといって無拠出が忘れられたり軽視をされてはならないものであるという点について、私どもはそう思っております。それについて御意見はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/157
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158・坂田道太
○坂田国務大臣 その点はまことに私どもも同感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/158
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159・八木一男
○八木(一男)委員 そういたしますと、政府案の無拠出は軽視さるべきじゃないというのに、非常に軽視され過ぎておると思う。今の無拠出制度というのは現在の老人、現在の未亡人、現在の身体障害者の所得保障をやるために国民年金という名前を使われて、しかも過渡的に何才から何才までは国民年金にして、ほかの年金は適用しないという形において今の人たちに対する無拠出ということを作られた。ところがたとえば老人に七十才から千円、身体障害者の一級の外科傷害、外部傷害だけ千五百円、それから母子世帯に千円である。加給がほんのちょっぴりつくということでは所得保障という名に値しないと思う。今までの老人が何か非常に国民としての努力を怠ってきたならともかく、今までの老人というのは一生懸命やってきたのですよ。戦争の間違いを起したけれども、これは為政者の責任です。戦争の惨禍を受けたのは国民です。それで一生懸命やってこられた、その間老後のために一生懸命貯蓄した。国債までがんがん買わされた。ところがインフレでぽかっとなくなってしまった。ほとんど実質価値がなくなってしまった。ですから国民の今までの御努力に対して当然もっとしっかり考えなければいけない。急にできない事情は私どもにはわかりますけれども、あまりにも少ない額です。あまりにも開始年令の少ない、あまりにも所得制限が多過ぎるという状態ではないかと思う。拠出制度を坂田さんが言われる現状で作っていくということは大事です。しかし拠出制度が大事だからということを強調せられることによって、無拠出というものは小さくてもいいんだ、ちっぽけでほうっておいてもいいんだということですりかえられては、今の老人はたまったものじゃない。われわれは親孝行ですから、坂田さんもそうですが、やっぱりわれわれは親たちに対してそういうインチキな親孝行でなしに、ほんとうにできるだけ誠意ある親孝行をしたい。そういう点で無拠出制というものは非常に乏し過ぎると思いますから、それについての御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/159
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160・坂田道太
○坂田国務大臣 私は無拠出制というものを大事に考えないというようなことは実は考えておりません。しかしながら仰せの通りその給付内容等について、これで理想的なものであるというふうにも実は考えておらないわけでございます。できることならばもう少し増額してあげたかったわけであります。しかし遺憾ながらこれは財政上のこともありまして、実はこういうような形になったというわけでございます。たださりながら社会保障制度審議会の答申におかれましても、大体においてこの給付内容等については、今御指摘になったような答申が出ておることを考慮してございますので御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/160
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161・八木一男
○八木(一男)委員 社会保障制度審議会のことは十回ほど言いましたけれども、とにかくあの答申は不十分な答申であって、それを尊重したということにとどめられるべき答申じゃない。もしそれだったら大内さんを呼んできて下さい。ほんとうに乏しい予算です。そんなものに籍口しないで下さい。そういうことで親孝行しなければいかぬ、また助け合いをしなければいかぬというお気持であられるならば、もっと制度上も御努力があってしかるべきだったと思う。平年度三百億ちょっとです。このくらいの金額では少ないと思いますが、これについては拠出年金でいろいろ金の問題を申し上げましたから、もう一度各論で申し上げるとしましてもきょうは差し控えますけれども、それくらいの乏しい金額で無拠出年金を始められるならば、当然もっとその中に必要の多い人——親孝行はみんなにしたいけれども、仕合わせな観たちにはほんとに申しわけないけれども、仕合わせに暮しておられるからがまんしていただいて、不仕合わせな親たちにもっと厚みをかける。また不仕合わせな人たち、未亡人や身体障害者にもっと厚みをかけるという配分がなされてしかるべきだと思う。ところが、その配分が全然さかさまになっております。そういうことが自民党の特別対策委員会で方針がきまってしまったそうです。制度審議会に籍口することはやめにして、自民党として——政府案もそれがもとになって作られた。ところがこれは私どもにも絶無とは言えませんでしょうけれども、政党の得票をつかみたいという心理がある。何とかいろいろいいことを、薄く広くやって、それで私どもはこれだけたくさんいたしました、だから自由民主党なり日本社会党に御投票下さいというような立場があるわけです。これは政党政治の、ほかのいい面はありますけれども、その点における一つの欠点です。政党政治家としてはそれは直していかなければならないと思う。皆さん方の年金案は、非常に必要の多い階層である老人に薄く、実質的に何もならないものをふわっとたくさん分けた。老人であれば旅行の機会もある。よその方方とお茶を飲んで話す機会もある。そういう人たちに、岸さんは貧乏追放といっても何もしてくれないと思ったけれども、今度ちょっとましなことをしやはったなという話が伝わる。親孝行の息子さんがまたそういうことを言う。そういうような恵まれた家庭の息子さんであれば社交が多いでしょう。また奥さんも婦人会なんかで活動されるということで、ふわっと老人に渡した方が得票が多いのです。身体障害者であるとか未亡人であるとか、それからごく貧困で困っておられる老人であるとか、そういうような人たちの票よりは得票の絶対数が多いのです。そういうことが反映して自民党特別対策委員会では、三百億円しか出さないその大切なお金を、ふわっと、わけ方をめちゃくちゃにして変な国民年金案を作られたという経過になっておる。それを坂田さんは今度厚生大臣になられたので直していただかなければ国民に申しわけないと思う。政党の利己心でほんとうの大事な政策を変えてしまったら、それは国民に申しわけないと思う。自民党ばかりだとは言いません。社会党は自民党の百分の一くらいしか欠点を持っていないつもりです。もちろん社会党だって絶無とは言いませんけれども、私どもはそういうことをなくするために渾身の努力を払っていくつもりです。自民党も大政党としてそういうことを直していかなければならないし、自民党の政権である岸内閣も直していかなければいけないと思う。この配分がめちゃくちゃに間違っておる。必要な人に厚みをかけるという配慮が抜けていると思うのです。その点についてどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/161
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162・坂田道太
○坂田国務大臣 二大政党になりまして、特に超党派的な社会保障制度の問題について国民に対して公約をして、そうしてその実質的な問題について競争するということは私は望ましいことであると思います。そこでわれわれといたしましても社会党さんに負けないような、ほんとうに国民の信頼の待てるような年金にいたしていきたいと考えておるわけであります。従いまして先ほどから私がたびたび社会保障制度審議会の答申ということを申し上げますけれども、しかしながらこれをうのみにしたわけではございませんので、相当の配慮をいたしておることは八木委員も御承知の通りでございます。たとえば傷害年金にいたしましても、社会保障制度審議会の答申におきましては完全廃疾という者だけしかこれの恩恵に浴させないというふうにしてあったものを、われわれの方におきましてはこれを一級程度の傷害者に変えております。あるいはまた母子年金等につきましても、社会保障制度審議会よりも若干前進をしておるという、ふうに申し上げていいかと思うわけでございます。さらには所得制限等につきましても、私が就任いたしまして以来、これはわが党の中におきましてもそういうあたたかい心づかいを持つべきである——全体の予算はきめられておるけれども、なおかつその予算の範囲内においてあたたかい親心を示すべきであるという論もございますし、私もまことにそれには同感でございましたので、たとえて申し上げまするならば、所得制限の項におきますところの均等割等につきまして、実は今までの案でございますると、大体老齢者について十三万円以上所得のある方はもらえないということになっておった。それが単に老齢者一人の場合ならばまだいいといたしましても、この人に扶養すべきところの子供があった場合は非常に影響が多いということで、一人の子供さんに対して一万五千円、二人あった場合は三万円、三人あった場合は四万五千円、そういたしますと少なくとも十七万五千円ということをやっておるわけでございまして、こういうようなところは、やはりわれわれにそういう気持があるというふうに御理解をいただけるかと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/162
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163・八木一男
○八木(一男)委員 坂田さん、今言われた点なんか全部知っております。いろいろな点をちょっとずついじくられたことは知っています。だから坂田さんなり小山さんなりの善意はわかるのですが、ところがちょっぴりで、ほんとうの骨組みは変わっていないのです。骨組みは自民党特別対策委員会長野田君の委員会が作ったのです。野田君という人は卑怯未練な人で、本会議のときに自分で作った案に自分で質問して、反対側の案には質問しない。質問しなければ、おとなしくしていればいいのに、社会党の案については何とかかんとか捨てぜりふだけ言っておる。ああいう卑怯未練な人が作った、政党利己心だけでこりかたまったような人の特別委員会の結論、これはもう考え直して、政府と特別委員会とは違うのですから、作らなければいけないのです。そういうことです。結局今小さなことをいじくられたのは、制度審議議会の一番最初の答申ではごちゃごちゃ言ったのを直されたことも少しあります。これは一月の何日。それから制度審議会は六月に貧弱きわまる答申を出した。それは構成も少し変わりましたし、われわれが文句をわあわあ言ったので、最終の段階においては立て直しをして、少しいいことをやったことがある。その一部分をおやりになった点はありますが、そんなのは当りまえで、言ったことの三倍も四倍も政府自体で上げられたらいいのです。そういうことです。こまかい点で御説明になっても、私も知っていますから、そういうことで御宣伝になっても、それ以上に悪い点、どんどんたたく点がありますから、あまり御宣伝にならなくてもけっこうです。そういう点で、結局廃疾者には一級障害に千五百円、政府の廃疾者の廃疾の条項とわれわれの考えている条項と少し食い違っていますから、われわれの概念通りではありませんけれども、一級障害に出して二級障害に出さない。二級障害でもほんとうに相当の障害です。それには一又も出さない。一級障害の人が幾ら家族をかかえておっても、どんなに低収入であっても、その人がそれ以外に病気を持っておっても、一文も出さない。それである程度仕合わせな、親孝行のむすこさんとお嫁さんに仕えられて仕合わせに余生を送れる、こういう人にはお金を出そうとなさっている。お年寄りに親孝行するのはわれわれ賛成です。かまいませんけれども、政府が限られた三百億であれば、やはり必要の度に応じた配分をしなければならぬ。それは少しは配慮されたけれども、根幹は変わっていない。その根幹は野田委員会で作った。野田委員会の構想に政府が縛られる必要はないわけです。政府と自民党は違うとさっき言われたけれども、そういうところで政府と自民党が違う点を出していただきたい。必要なところで出さないで、不必要なところで政府と自民党は違うというようなことを言われては困る。必要なところで政府の特殊性を出して、自民党でそう言われても政府が検討したらその方がいいのでそれで出す、それで賛成していただきたいと自民党に低姿勢で頼めば、それは同志のよしみをもって自民党だっておこられやしないと思う。そういうことで直していただきたい。身体障害者には実に過酷であります。母子に対しても過酷であります。一つ一つについては滝井先生も堤先生も各論で言われるし、私も各論で言わしてもらいますが、非常にあれであります。
それからもう一つ、形式的に流れ過ぎる。世帯所得制限ということばかり強調しておられる。政府が選挙対策上社会党の案を二年間ながめ尽して、何か一ついいところを作ろうということで、五十万世帯制限ということを作られたわけです。アリの一穴を作ろうということでそういうことばかりやっておられるけれども、六十九才までの老人はほったらかしている。貧乏で年金の必要な人は、六十から六十九ぐらいは大体老いさらばえて、ほかの収入もなくて困っている人が多い。七十まで生きられる人、その中には不幸な人もあるけれども、総体的に栄養豊かな、若いときからいい生活をして、親孝行のむすこさんが十分な月給をとり、社長さんになられるむすこさんにかしづかれている人が多い。七十以上に限定されたことは間違いだと思う。六十五ぐらいでまだまだ生きたい、また子供や孫が心配だと思いながら死んでいかなければならない人、それまでに一つも楽しみをしない人が六十五でも六十七でもある。なぜ形式的に七十でぶった切ったか。そこに工夫の足りなさがある。排除した老人の数は四百二十五万人ある。その老人を排除して、選挙対策上頭をひねって野田さんが考えられた三十六万から五十万の差、二十五万人はほんとうに仕合わせな老人です。月給四万円以上の家庭です。そういうインチキな選挙対策上の方針をとられていると、将来の国民年金制度上悪いと思う。ほんとうに国民の立場に徹した案に差しかえられるべきだ。はっきり言えば政府の案は選挙対策年金だ。選挙対策年金では国民に申しわけがない。うちの案でも八田さんなり藏内さんの御質問で、ほんとうに悪いと思ったら修正案を出すなり、出し直す決心がありますが、政府もそういうお気持になって、ほんとうに悪いところ、改めるべきところは改めるということで無拠出年金を組みかえていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/163
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164・小山進次郎
○小山(進)政府委員 先ほど来お話しになりましたことのうちに、やや政府案の根本に触れる点がありますので、御説明申し上げたいと思います。先ほどお話がありましたように、かりに無拠出年金を考えます場合に、どういう考え方を持つか、たとえば三百億の金を使う場合に、これを先生の言われる厚みをかけてやるか、あるいは今の政府案のような考えでやるか、こういうような問題があるわけでございますが、この案は考え方から言いますと、先生のお考えと反対の考え方に立っております。これは私どもそうあるべきだと考えてやっているわけでございまして、かりにこの三百億という金をいかような使い方をしてもよろしいということでありますならば、これはまた議論は別になると思いますけれども、そういう年金制度というルートを使って出します以上は、やはり年金制度の年金制度たるゆえんは、できるだけ一定年令とかあるいは一定程度の廃疾という条損に基づいてもらえるという——そこにまたさらに立ち入って、その人の所得がどうであるとか、あるいはその人の所属する世帯の状態がどうであるとかいうようなことを考えますことは、実は年金制度としてはこれは最もとらざるところであるわけでございます。望ましい点から言いますならば、むしろ所得制限とかその他の制限をはずしてすっきりすることが、およそ年金制度の道をとります以上は、これは考えるべきことであるわけでございます。ただ何分現在の財政事情その他がございますので、特に恵まれたというような状態にある人々には一つこの際は目をつぶって御遠慮願うというのが、現在の政府案の考え方になっているわけでございます。
それで先生のおっしゃる階層、たとえばその人の家族の収入が合わせて三十万とか四十万とかいうようなところとか、あるいは政府案でも同様でございますが、夫婦の収入合せて二十万前後というようなところについて実を言うと厚いとか薄いということを論ずることに、どちらかというと少し無理がある。ほんとうをいえば、この線というものはもう少し高い線に引かれるべきである、こういうふうな考え方を持っているわけなんでございます。従ってどうも全体の規模として、三百億なり三百十億が適当であるかどうかという議論はもちろんございますけれども、これをやる以上は、やはり形式上の所得の制限というものをあまり煩瑣にしないで、将来の方向としては逐次すっきりしたものにしていくということが、国民年金制度の発展から見るならば望ましい。ただしかし、これは日本の現状からいって当分はできかねる、こういうような考えがもとになっているわけでございまして、決してそれ以外の考慮が加わっているわけではないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/164
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165・八木一男
○八木(一男)委員 厚生大臣も同じ考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/165
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166・坂田道太
○坂田国務大臣 そうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/166
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167・八木一男
○八木(一男)委員 その考え方は根本的に改めていただかなければならないと思います。これは政府とか自民党とか社会党という立場ではなしに、私の意見が悪ければそれは私の方が改めなければならないかもしれないけれども、あなた方の意見の方が根本的に誤まりであると思う。年金というものを曲論でやるのだったら、ほんとうの筋であれば、無拠出年金で、すべての所得保障をすべき人に月に三万円ずつくらい一律にやったらいい。それができない。今の現状ではそれができないから拠出制度をやるのでしょう。拠出制度でやるということだから、拠出制度を根本的にやる。ところが拠出制度の場合には、完成するまでに時間がかかる。その場合には補完的補足的に無拠出制度をやるということになる。補完的あるいは過渡的に無拠出制度をやるとしても、それが相当の金額に達して、たとえば月四千円くらい老人とかなんとかに全部配分できるのであれば、それは一律でよろしい。ところがそれだけの勇気も政府は出していない。三百億というような小さなつまみ金で、事を解決しようとしている。だから勝論でいえば厚生大臣があとで了承された意見でよろしい。それから小山さんの言っておられる意見でよろしい。ところがそれをやるための千億とか二千億のものを出す勇気がないわけだ。なかったら、三百億という金であれば、これは必要な人に上げるという考え方に立たなければいけない。ということは、政府自体が所得制限をしておることは明らかです。理論でいくのならば、そういうことがいいと思われるのだったら、所得制限を撤廃して、百万ずつに全部なさい。それをしないでおいて、そういう筋論でそれが正しいんだというようなことを言われては、良心的に年金制度を考えるといけないことだと思う。ほんとうにやるならば、無拠出で徹底的にやる。それを、妥協して拠出制でやるのならば、今度は無拠出制はできるだけ出して、これくらいやりましたからというのならば話はわかる。全国の所得保障をする人に月四千円くらい、未亡人であろうが老人であろうが全部やればいい。そうじゃなくて、三百億くらいの金を出すのならば、あなた方でも所得制限をやっておるのじゃないのですか。そういうものをやっておりながら、所得制限というのは筋に合わないということを言われるのでは、あなた方は実にずるい。筋に合わないというなら、大蔵大臣をひっぱりだして、筋に合ったほんとうの年金制度を出させばいいでしょう全部年金一律でけっこうです。それもできないで、ことしは百億しか出さない。筋の通っていない状態において、苦心をすべきときに大切なことはやらないでおいて、筋論で対抗する、そんな卑怯なにとが世の中にありますか。あなた方は原資に限度がある場合に、住友吉左衛門に無拠出年金をやった方が筋に合うのだということは考えていられないのでしょう。五十万という所得制限を加えられたのは、年間に三千万くらいの所得のある人に、国民の税金の無拠出の、ただのものを今やれる状態にはないということをあなた方考えられて、所得制限をされたわけだ。それなのに、所得制限をしないのが正しいのだ、そういうような理屈に返るのならば、二千億でも三千億でも出してそれでやられたらどうですか。勝手なときに勝手な理屈を使って、それでごまかそうというような考え方はいけません。そういうことなんです。程度の問題であるとおっしゃるでしょうけれども、その程度が断じて了承できない程度なんです。さっきも言った。何回言わなければならないのか。耳をほじくって聞いて下さい。筋に合わないような答弁はこれからしないで下さい。二級の障害者であって、ほとんど収入がなくて、子供がたくさんあって、本人が病気をしている人でも、一文も渡さない。そうして五十万の収入があって、親孝行のむすことお嫁さんにかしずかれて、ゆっくり老後を楽しんでいる老人——お年寄りは大事にする気持はありますけれども、そういう人に上げて、片方に上げない。全部上げられるなら文句は言いません。全部上げられないくせに、そんなに苦しんで一家心中でもしようかという人はかまわない、年金の筋論のためにそれは死んでもかまわないというような考え方で、社会保障制度を論ずる資格はない。筋論を通すなら筋論を通したらいいでしょう。具体的に平年度三百億しかないという現在の状態で考えるならば、社会保障の精神に徹底して考えなければいけない。無拠出ですよ。ただですよ。国民の税金ですよ。そういうものでやっているときに、皆さんも考えてやられなかったけれども、住友さんにそんなただのものをやれますか。みんなにやれるなら住友さんにだってやったらいい。それをやらないで、所得制限をしなければならない、一部の人にはがまんをしてもらわなければならないという状態があるとみずから認めておかれながら、その点を追及されると筋論で対抗する、そういうような不まじめな態度ではいけない。年令についての御意見があると思うが、年令についても七十才がいいかどうかというようなこと、社会保障制度審議会の例などとっていただきたくないけれども、七十才の所得制限が三十万か、四十万か、五十万か、その範囲は議論があります。だけれども、そう点厚みをよりかけるかどうかということについては、必要なところに厚みをかけなければならないということは明らかな事実です。その過渡的な組み合せばどこにも不公平が起ります。ですから、これは社会党がそう考えても自民党はそうは考えない。所得制限がどこで、年令が何才でとかという考えはあるでしょう。そういう点の抗弁は言っていただかなくても、私も年金案で苦労したのだからわかります。そういうことではなしに、ほんとうに必要な人に厚みをかけるということが必要であるということを根本的に認めていただかなければ、これはとんでもないことだと思う。これは坂田さんにお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/167
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168・坂田道太
○坂田国務大臣 少し誤解があったのではないかと思うので、実は速記録を読んでいただけばはっきりすると思うのですが、私は援護年金についての御質問がありました際に冒頭に御説明申し上げた通りでございまして、確かに無拠出年金というものは決して私は軽視しておらないということを申し上げたつもりでございます。しかしながら御承知のような状況において、あるいは財政状況において、実は本年度百億、平年度にいたしましても三百億、この点につきまして、その給付が非常にわずかであるということについては、もう少しやりたかったのであるけれども、現在のところはこういう段階になったのでございますということを申し上げたわけでございまして、しかもまた所得制限等につきましても、その建前からいうならば仰せの通りに所得制限等をやるべきではないにかかわらずやらざるを得なかったのだ、こういうことを申し上げておるわけで、この点については首尾一貫いたしておると思うわけでございますから、御了承をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/168
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169・八木一男
○八木(一男)委員 まだ一番承わりたい点の生活保護階級については実質上何もないという点について触れたいと思いますが、これについては本会議の御答弁で大体政府の御意思はわかっておりますけれども、非常に不十分なことをさらに追及したいと思いますが、だいぶおそくなりましたし、うちの理事からも区切りをつけたらどうかというお話がございましたので、よろしゅうございましたらきょうまでの区切りをつけて、また続いて質問さしていただきたいと思いますが、きょうはこれで終らしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/169
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170・大坪保雄
○大坪委員長代理 次会は明六日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後五時四十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104410X01419590305/170
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