1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年三月十一日(水曜日)
午前十時二十七分開議
出席委員
委員長 園田 直君
理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君
理事 八田 貞義君 理事 小林 進君
理事 五島 虎雄君 理事 滝井 義高君
川崎 秀二君 齋藤 邦吉君
中山 マサ君 柳谷清三郎君
亘 四郎君 伊藤よし子君
大原 亨君 岡本 隆一君
多賀谷真稔君 堤 ツルヨ君
中村 英男君 八木 一男君
山口シヅエ君 吉川 兼光君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 坂田 道太君
出席政府委員
厚生事務官
(大臣官房審議
官) 小山進次郎君
出席公述人
都立大学教授 磯村 英一君
川 口 市 長 大野 元美君
全日本労働組合
会議福祉対策副
部長 小笠原文三君
国井年金制度研
究所長 国井 国長君
評 論 家 田中寿美子君
全国未亡人団体
協議会会長 中村 発子君
全日本農民組合
中央常任委員
日本農民組合長
野県連合会長 平等 文成君
専 門 員 川井 章知君
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本日の公聴会で意見を聞いた案件
国民年金法案(内閣提出第一二三号)
国民年金法案(八木一男君外十四名提出、衆法
第一七号)
国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等と
の調整に関する法律案(八木一男君外十四名提
出、衆法第二六号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/0
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001・園田直
○園田委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の国民年金法案並びに八木一男君外十四名提出の国民年金法案、及び国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案の三案について公聴会を開会いたします。
御出席の公述人は、都立大学教授磯村英一君、川口市長大野元英君、全日本労働組合会議福祉対策副部長小笠原文三君、国井年金制度研究所長国井園長君、評論家田中寿美子君、全国未亡人団体協議会会長中村発子君、全日本農民組合中央常任委員、日本農民組合長野県連合会長平等文成君、以上の各位であります。
この際、公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
本日は御多用中にもかかわらず、当公聴会に公述人として御出席下さいましたことを厚く御礼申し上げます。申すまでもなく、近年社会保障制度の一環として年金制度を樹立し、これを生活設計のよりどころとして、国民生活の安定をはかる態勢を確立することが国民の一致した強い要望となっているところであり、なお近代文化国家の政治の一大核心であるといわれているところであります。政府提案にかかるものも社会党提案にかかるものも、ともにかかる見地より長期にわたり検討を加えた結果、今回提案の運びとなったものでありまして、国民的関心及び目的を有するきわめて画期的な重要案件であります。従いまして本委員会は、これらの法律案についてあらゆる角度から慎重に検討を進めておりますが、本日は直接本問題に関心を有しておられる方々、あるいは学識経験者の方々の御出席を願い、それぞれの立場から忌憚のない御意見を伺いたいと存じます。公述の時間は御一人十五分程度といたし、その後委員よりの質疑にお答えを願いたいと存じます。
なお、念のために申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、公述人の方々が発言をなさいます際には、委員長の許可を得なければなりませんし、発言の内容については、意見を聞こうとする問題の範囲を越えてはならないことになっております。また委員は公述人に質疑をすることができますが、公述人の方々は委員に質疑をすることができません。以上お含みおきを願います。
次に、公述人の方々が御発言の際は、職業並びに御氏名をお述べ願いたいと存じます。なお発言の順序は、勝手ながら委員長においてきめさせていただきます。
それではまず公述人に公述を願います。都立大学教授磯村英一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/1
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002・磯村英一
○磯村公述人 このような問題について関心を持っている者といたしまして、このような機会を与えていただきましたことをお礼申し上げます。
国民年金の問題はかなり久しく問題になっておりましたが、いよいよ国会におきましてこのような形でもってわれわれ国民の前に論議をされますことを非常に幸いに思います。ただ私が申し上げますことは、自分の専門に関連しました数点について意見を申し上げたいと思います。
第一は、私の立場は社会問題についての病理的な分析、それに対しまして現在の社会保障はどのようなあり方が適当かという観点に立ちまして、私どもがいろいろな日本の社会の病理的な現象につきましての分析をいたしまする場合におきまして、最も重要な問題は、いわゆる生活の貧困ということを、経済的な意味におきましての貧困ということばかりでなくて、それ以外に生活の安定、不安定という問題につきましての生活の変化ということが非常に大きな問題になっているということでございます。自分の専門からいたしまして、私は最近におきまする日本の主として青年階層の自殺並びに親子心中の現象からこの問題に触れたいと思うのでございまするが、こういったような日本の社会の最も谷間といわれるような問題はどういうところから起きるかと言いますると、そのような自殺あるいは親子心中といったような、およそ文化国家にとりましては最も恥かしいと考えられますようなことが起る問題は、経済的生活水準の上下という問題ももちろんあるのでございまするが、その生活が安定をしているかいないかという問題でございます。最近その意味におきまして、こういったような青年あるいは主として女性を中心にしまする社会病理現象が、主としてこのボーダー・ラインといわれまする社会保障の谷間において発生をしているということは、これは私どもの研究からはっきり出てきていることと思うのです。その意味におきまして生活保護によりまして、たとい一定の期間でありましても国家の保障があるというような階層には、案外今申し上げましたような病理的現象の発生が少いのであります。また同様な現象が青年の階層におきましても、就職した後と就職以前といったような問題におきましても、やはりそこに一つの違いが出ております。また学生が学校を卒業いたしまして就職をする場合に、どういうところに就職するかと申しますると、社会保障のあるようなところ、具体的には健康保険のあるようなところを希望するというようなことからいたしましても、いかに国家によりまする生活の保障というものが大事であるかということがわかってくると思います。従いまして今回いずれの案を問わず、何らかの形によりまして国家がそのような谷間に対しまして一つの安定的な方策、特に老後あるいは障害あるいは母子の問題につきまして——特に母子の問題につきましての一つの安定的な方策が得られるということは、これは最も望ましいことと思います。
〔委員長退席、山中(正)委員長代理着席〕
しかし一昨日の夜のNHKの教養放送にもございましたように、今回あげられました法案の具体的な施策というものが、その方法としましては安定の方法をとっておりましても、内容としましては必ずしも国民の要望に沿えないということは、これはやむを得ないことではないかと思うのでございます。無拠出の場合におきまして、援護年金の場合におきまして一月千円の標準ということは、これはいかなる面からいたしましても、今日の生活の場合におきましては基礎的な保障の手がかりにはなるのでございますが、具体的にそれが援護の年金になるかという点につきましては、これは考えなければならない第一の問題ではないかと思います。
それに関連しまして、かりにその問題は現在のいろいろな事情からやむを得ないといたしましても、次の二点だけはどうしても考えたいと思うのでございます。その一つは、いわゆる援護年金の場合におきまして、母子の援護年金というものが必ずしも私どもが考えまするような問題ではないということでございます。これは老齢年金というものと母子年金というものが考えられる場合におきまして、少くとも老齢年金以上のものが母子年金に与えられるのが妥当ではないかという考えでございます。これは現在の日本の家族制度というものが、依然としてその大部分というものは家族が解体をいたしました場合に、母親の責任、妻の責任というものが現実に起きまして、かなり過重な責任というものを母親に与えているということでございます。従いまして今日の状態からいきましたならば、この法案、特に政府の法案に盛られましたような程度の金額におきまして、無拠出の場合に母子年金というものがこの程度であるということは、もう少し考える必要があるのではないか。私どもの方の女子学生がこういうことを申しております。結婚とは完全なる就職であるとさえ割り切っていることでございます。もしかりにこういったようなことが考えられるとしましたならば、夫を失い、そのまま子供をかかえたということは、いわゆる完全失業の状態になるわけでございます。その場合におきまして、現在の程度の無拠出の年金状態というものが果して妥当であるかどうかということにつきましては、これはお考え願える余地があるのではないか、このように考えるのでございます。
次の点は何であるかと申しますと、これはいわゆる年金の実施に伴いまして生活保護法との関係がどうなるかという問題でございます。二つの法案におきましておのおの御意見が違っているように拝承いたしますけれども、現在の生活保護法によりますると、生活保護というものは、すべての生活の資源というものがなくなった場合において保護を行うということが条件になっております。その場合において与えられた年金というものがどういったような形になるかということは、私はかなり大きな問題だと思うのです。これは現実の生活保護法の中におきましても一つの問題でありまして、かりに現在三千円の生活保護を受けている人が、千円の収入がかりに内職であったとしましても、これを控除して二千円の生活保護になるというのが現状でございます。この問題は現実に生活保護を受けまして、その生活から立ち上ろうとする人にとりまして最もつらい現状と思うのでございます。現実におきましては何らかの措置によりまして、しばらくの間はそのような収入がございましても、これを控除されないで、そうして生活の立ち上りの場にしているということは、それだと考えられるのでありますが、そのような意味から考えますと、これは原則としましては、私は併給的なお考えが願えないものかということを考えたのでございます。当面としまして、あるいは加算方式ということも審議会で考えられておりますけれども、これについてはぜひ一つ老人、あるいは母子世帯という問題を現実の家族制度のあり方から救うという意味におきましてお考えが願いたい。
最後に、時間でございますのでもう一つつけ加えまするが、私はこういう御委託を一昨日受けて、そして比較的若い者たちの意見を聞きましたのでございまするが、その場合に、国民年金というものが何らかの形で、今度の国会の御審議を得て、そして国民の前に具体的に現われることにつきましては、若い者もあるいは年輩の者も、双手をあげて歓迎しておるものでございまするが、ただ一言、今回この年金によりまして得られました、蓄積されまするところの年金の運用に関しましては、これはぜひ社会厚生の方面に御使用を願いたい。かなり巨額のものが、これによって国家に蓄積されるということを国民は考えております。そういう蓄積されまするものは、ぜひ国民の厚生の方面に御使用を願いたいということ、これが期せずしてすべての集まりました者の意見でございましたということをつけ加えまして、私の公述を終りたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/2
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003・田中正巳
○田中(正)委員長代理 次に大野公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/3
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004・大野元美
○大野公述人 私は全国市長会を代表いたしまして、現在衆議院において御審議になっております国民年金制度に関して意見を述べる機会を得ましたことを皆様に厚くお礼申し上げる次第でございます。
まず国民年金の制度について申し述べますと、本制度の実施に当り無拠出制のみで事業が運営できますならば、これは最も理想的と考えたのでございます。外国における制度について見ましても、スエーデン、ニュージーランド等では、無拠出制のみで年金事業を実施しているそうでありますが、残念ながらわが国の現状では、これから発足しようとするこの制度が、一挙に無拠出制のみにより、すなわち一般財源から年金給付を行うことのみにより実施し得るとは、われわれとしても考えられないのでございます。従いまして、拠出制を原則とすることは、この制度が現在多くの国民から待望され、今やいかにして実施すべきかという段階にきていることを考えるとき、やむを得ないとわれわれは思うのでございます。
また、近時地方公共団体が独自の構想において、微力なる地方財政の中から養老年金制度及びこれに類する条例を設けて、地域住民の生活を保障する必要を感じている点からみても、国民年金制度の早期創設に対して賛意を表するものであります。
〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕
しかし、諸外国の例によりますと、拠出金の拠出期間がわが国で現在立案中のもののごとく長期間にわたる制度はないとのことでございまして、また一般材源より一定率をもって年金財源に繰入れが行われているとも聞いておりますので、わが国においても、国の予算に占める社会保障費を増額して、拠出金は極力低額にすべきであると考えるものであります。このことは、最も年金の受給を必要とする階層の負担能力が低いことを考えるならば当然の措置と言えると思います。
本制度は、長期にわたり国民に拠出金の支出をしいるものでありますので、国民の本制度に対する理解のあるなしは、直ちに拠出金の徴収成績面に現われると思われますので、水制度を実施するに当っては、十分なる広報宣伝を行い、この制度が、国民全体の共同連帯により成り立つものであることを理解せしめる必要がありましょう。
本制度を円滑に運営するためには、市町村長が熱意をもって事務の執行に当るかいなかが、絶対的な要件となると思われます。もし市町村長が、単に国から委任された事務であるとし、形式的に事務の執行に当るのみであるならば、完全なる成果は望み得ないと存じます。従って、国が市町村長に事務を委任する場合は、自主的に事務の執行をできるよう大幅に権限を与え、市町村長が事務の執行に熱意を持つことができるよう配慮すべきであろうと思います。すなわち、住民と市町村は直結している関係等を無視して、一部の便宜的事務のみを市長に委任することは、必ず市民に対するサービスの欠陥となって現われることを余儀なくされ、住民の不満を買う結果となるおそれが多分にあるのであります。あくまでも市町村は一貫して事務処理をなし、住民に対してすベてのめんどうを見るように配慮することが緊要と思われます、
本制度が国の責任において実施すべきものであることは当然であると思われますが、前述の通り市町村長の積極的な協力がなければ、この新しい制度を運営することは困難でありますから、事務機構を複雑化して、市町村長の事務執行に関する意欲をそぐがごときことは避け、中央機関は総括的に監督するのみとし、特に国の出先機関を設けるがごときは控えるベきであると思います。
都道府県の段階において一次的に市町村を監督し、さらに中央が監督するがごとき方法は、経費の増大を招くのみで何ら実益はないのでありますから、二重監督の弊を避けるため、中央より直接市町村を指導監督することとし、経費の合理化をはかることが肝要と思われます。
本制度の運営上、最も困難が生ずると思われますのは、拠出金の徴収でありましょう。徴税の現状を見ましても、市の納税組合等を極力活用してすら、思うような成果が上らない状態でありますから、スタンプ方式をもってしては、とうてい徴収成績を上げることはできないと思われます。従って、徴収は市町村がその納税組合あるいは行政上の実績による住民とのつながりを活用して徴収に当る以外にはほとんど方途がないと思います。また、年金の給付についても、市町村長に行わせるならば、市町村長は住民の生活内容等には最も詳しいのでありますから、適切な支給方途がとられるものと思われます。この場合いずれにしても事務執行の困難性は解除されないと思われますので、複雑な徴収方法等はできる限り避け、法律には簡単な基準を示すのみとし、徴収及び減免、給付制限の認定等については、市町村長の裁量にまかせるべきであると思われます。
年金積立金は、数十年間は拠出者に直接還元されないのでありますから、これを地方に還元して、間接的に住民の福祉に寄与するよう配慮されたいものであります。また、積立金の運用についても、資金運用部資金に繰り入れるがごときことは避けまして、これを独立して積極的に運用し得る方途を講ぜられたいのであります。
市町村における事務の執行運営に要する経費及び年金事務を行うために市庁舎を拡充するための経費等は、すべてその実質的金額を国庫において負担すべきであると思われます。従来の例を見ますと、建前は全額国庫負担でありながら、実質的には所要経費の六〇%というようなことが、国民健康保険事務費においても見られますので、国の委任事務が地方財政を圧迫することのないよう特段の配慮を願いたいのであります。もし市町村に事務を委任することが、経費を大幅に節減することとなるという考え方のみによるものであるならば、事務の円滑な執行は望み得ないと思われます。
本制度を創設することにより、わが国の社会保障制度はさらに一歩前進することになるのであり、また国民もこの制度の実現を待望しているのでありますから、すみやかに今国会において本法案を成立せしめられるよう希望いたしますが、前述の諸点については慎重に御検討いただき、極力お取り上げ下さることを望むとともに、本制度の確立後においても、制度の足らざる面を漸進的に改正していくことを期待するものでございます。
以上をもちまして私の公述を終りたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/4
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005・園田直
○園田委員 次に小笠原公述人にお願いいたします。小笠原文三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/5
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006・小笠原文三
○小笠原公述人 全日本労働組合会議の福対部を担当いたしております小笠原でございます。私は本日、主としてこの国民年金が賃金労働者にとってどういう影響をもたらすか、あるいは賃金労働者としてこの国民年金に対してどういう考え方を持っておるか、こういった観点でお話を申し上げたいと思います。母子年金、障害年金につきましては、それぞれ専門の方が後ほど公述をなさることと存じます。
現在、賃金労働者には、厚生年金、船員保険その他いろいろな年金があるわけでござでいます。今度、特に厚生年金の場合におきましては、昭和二十九年の改正からちょうど本年が五年目に当っておりまして、料率その他の改正をいたす年に当っております。船員保険法等一部改正法案ということで今国会にも出ておるわけでございますが、この審議の過程に当りましても、国民年金がどうなるかということが、現に年金を受けておるもの、あるいは近い将来年金を受けようとするもの、つまり年金の適用になっておるわれわれ労働者に非常に大きな影響を持って参っておるということでございます。特に金額的には、厚生年金保険の場合でございますと、固定部分が二万四千円、これに報酬比例部分というものがついて参りますが、われわれは現実に労働者に適用されておる年金では食えない。その現われとして、定年になっても、あるいは年金の対象年令になっても、なかなか職を退くことはできない。現に船員保険の場合におきましては、あるいは炭鉱労働者の場合におきましては、年金の該当者が相当出ております。しかし該当になっておるのにかかわらず、現在の職務にかじりついていなければならぬ。このことは、現にあるわれわれ労働者に対する年金の額というものが非常に少いことを意味する。その現象は、つまり労働力の新陳代謝というものを非常に大きく阻害して参っておりますし、そのことが日本の労働生産性をはばんでおるといったような悪循環、それと失業問題、このことにも大きな関連を持って参っております。従ってわれわれ労働者といたしましては、老後が完全に安定とまではいかなくても、とにかく食えるという最低の保障がなされるならば、あえて定年を延長して、あるいは定年を過ぎてまで現在の仕事にかじりついておろうといったような気持は持たないでしょう。従って、現実にある就職難の問題、失業の問題、こういった問題についてもこの年金制度というものが非常に大きな影響を持つということをわれわれは考えなければいけないのではないか。従って、今度の年金の場合におきましてはその額が非常に少い、その額が少いということが、先ほど申し上げましたように労働者に現に適用されておる年金の内容の改善をしようとする場合に、非常に大きなブレーキになっておるわけでございます。しかも、これが三十年、四十年先の目において見た場合、月最高三千五百円、こういった額でございます。現実ただいまの額ではございません。少くとも日本経済の伸長というものを、政府自身もおっしゃっておりますように期待するならば、少くとも、われわれは将来の年金の目というものを三十年後、四十年後の目の高さにおいてその年金額というものを決定しなければいけないのではないか、こういうふうに私たちは考えるわけであります。もちろん、そのことは保険料という一つの被保険者の負担がございますから、従って、現実ただいまの国民のふところ工合というものを無視するわけには参らぬでございましょう。しかし、今の政府の案によりますと、あまりにも保険主義にこだわり過ぎておりはせぬか、むしろ損益計数やら運営といったものを中心に考えますならば、主として事務的な面に重点を置いて考えますならば、保険主義というものはやりやすいにきまっております。しかし国民全般を対象といたしまして、将来これで老後の安定を得させよう、こういう目的を持った年金を考えます場合に保険主義にこだわり過ぎるということは、私たちははなはだ遺憾とするものでございます。
〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕
もう一つ適用範囲の対象の問題でございますけれども、政府の案によりますと被用者というものを完全にはずしておられる。それはお前たちには現実に年金というものがあるのだからいいではないか、こういう考え方ではないかと思うのでございます。しかし国民年金と銘打つ限りにおいては、やはりこの年金の網の目からこぼれ落ちる者がない、こういう考慮というものが当然払われなければいけないのではないか。現実に厚生省から出ております資料の中に脱退残存表という表がございます。お前たちには年金が現にあるからいいのではないかということで、賃金労働者というものをこの年金からはずしてしまっておる。特にその家族、配偶者というものをはずしてしまっておる。このことは将来年金に非常に大きな穴があくということでございます。これは先ほど申し上げましたように、この残存表によりますと、かりに十万人を対象にしてとってみました場合に、年金の適用を受けてからわずか五年後におきましては、女子の年金適用者というものは半減しております。また国鉄従業員の共済組合の年金適用者におきましても半減をいたしております。十年後の線を見ますと、女子の場合は、十万人の被保険者がわずかに一万四、五千人に減っておるということでございます。従って十五年、二十年、三十年の長い掛金をかけなければならない現在の厚生年金その他の年金におきましては、年金は確かにございますけれども、最終的に年金の恩恵を受け得る者というものは非常に少い数でございます。これを現在の年金からはずしてしまう、適用を除外してしまうということになりますと、この人たちは一体どういうことになるか。社会党の案におきましては、この点使用者と被使用者ということで明確に区分いたしております。このことの配慮というものは当然なされなければいけないのではないか。特に現在公的年金の適用を受けておる者の配偶者におきまして、遺族年金その他の関係から見まして、この脱退残存表が示しておりますように、このことをもっと今回の年金におきまして明確にしておかなければ、名は国民年金ではございますけれども、これの適用を除外される者が相当数出て参るということをわれわれは懸念をいたすわけでございます。
なお通算の問題が、今度の政府の案におきましてははなはだ不明確でございます。先ほどの、現在適用を受けております年金との関係もあるわけでございますけれども、一体この通算問題をどうするか。このことをまず年金の発足いたします場合に明確にしておかなければ、これは発足いたしますとその日から直ちに出てくる問題でございます。こういう重要な問題をたなに上げておいて、この年金制というものを、ただ単に金額その他で論議をすることははなはだおかしい。確かに政府案は、名前の上では国民年金ということで、現在の公的年金を適用されておる者、しからざる者、こういう形で見ますと、名前の面におきましては確かに年金というものが国民的な広がりで適用されておるかのように見えますけれども、現実には今申し上げましたように、現に適用を受けておる者の配偶者、これに非常に将来大きな穴があく。それから現に適用を受けておる被保険者本人、これも今の通算の問題を一体どうするか、このことが明確にならなければ、この年金の本来の使命というものは、むしろ国民年金にあらずして半国民年金と申しますか、不完全国民年金と申しますか、そういう形で残っていくのではないか。しかも年金というものは、皆さん御承知の通り一度発足をいたしますと、これは途中であとずさりのできないものでございます。そういう点から考えましても、この通算問題は確かに技術的にはむずかしいいろいろな面を持っておると思いますけれども、しかし現に厚生年金と船員保険との間には法律によって通算が可能になっておる。その他、これは検討いたします場合に十分考慮が払われてしかるべきじゃないか、こう考えるわけでございます。
それと金額の問題になりますけれども、これは先ほども申し上げましたように拠出年金あるいは援護年金もそうでございますが、年金という名に値しない金額、こう私たちは考えざるを得ないわけでございます。しかもこれの財源の措置におきましては、保険料という形でとっておるわけでございますけれども、保険料という形でとる限りにおきましては、当然これは保険主義というものがやはりおもな手段になってくる。従って社会保障的な性格というものが非常にぼやけてしまう。なお百円、百五十円という金額におきましては一見安いかのような感じを受けますけれども、現実にボーダー・ライン層というものが相当膨大におる現在におきましては、この百円、百五十円というものの負担がそれらの階層にとりましては相当大きな負担になって参るのでございましょうし、特に農村におきましてはそれがはなはだしい現象となって現われてくるのではないか、こういうふうに私たちは考えるわけでございます。従ってこの保険料を納め得ない、あるいは納めることに非常に困難な階層に対してどういう幅を持たせるか、このことはやはり一つ大きな課題として考えておく必要があるのではないか、こう思うわけでございます。この点はやはり社会党の案その他出ておりますけれども、これは政府案、社会党案ということではなくて、むしろ金額や財源措置の問題についてはいろいろ考え方の相違はございましょうけれども、国民年金を発足させる、そういった基本的な理念におきましては、やはりいいものはいいものとして取り入れていく、こういうことを率直にやらなければいけないのではないか、特に私たち公的年金の適用を受けておりますものにとりまして、この完全積立方式が今度の政府案においてとられたこのことは、また非常に大きな脅威でございます。社会党の案におきましては若干それが折半という形で幅がございますようでございまするが、少くても今現に年金を受けよう、あるいはこの二、三年の間に年金を受ける立場にあるわれわれ賃金労働者にとりまして、過去の、終戦以後のあのインフレというものが身にしみて生活の大きな脅威になっております。今の若い人たちにはこれから先がございますけれども、現在年金を受ける年齢になっておる年ごろの者といたしましては、過去の営々と蓄積をいたしました貯金、そういったものは一文の価値もございません。しかも現在定年制が相当きびしくしかれてございます。そうなりますと年金あるいは保険、そういった長期の積み立てを要するものに対して、これはあえて賃金労働者だけではございませんが、一般に貯金という形で蓄積をされてきた方々あるいは私的な生命保険会社、そういったものに入っておられる方々におきましても、これはしごく影響を身をもって感じておる問題だと思うわけでございます。従ってこの完全積立方式というものは、やはりインフレの脅威というものを一体どうするか、このことを少くとも積立方式を考える場合においては法律の上に明確にしておかなければ、われわれ国民といたしましては、この年金に対して金額的には非常に大きな不安を持つばかりでなく、自分たちがこれから二十年、三十年、四十年と保険料を掛けること自体に、非常に大きな不安を持つわけであります。政府の案によりますと、ただ単に著しい経済的な変動があった場合には調整する、こういう表現になっておりまするけれども、少くとも三十年、四十年という積み立てを、将来に向って乏しい財布の中から国民が掛ける場合には、当然保険者の立場にある政府といたしましては、このインフレに対する明確な保障というものを法律的に明示していくことでなければ、国民のこの年金に対する期待や不安というものはなくならないのではないか、この点当然この法律の上に明記しておくべきである。確かにこの法案の中にはそれらしい表現を使ったものがございますけれども、一体、著しいとか、調整とか、そういった言葉というものは、そのときどきの判断によって変るわけでございまするから、この点を明確にしておいていただきたい。そのことが年金額のさらにより高い給付と同時に、インフレに対する対策、自分たちの持っておる財産の保安、こういうことに対して国民に安心感を与えるという意味で、この点は最も重視して明示しておく必要があるのではないか、こう私は考えるわけでございます。
時間が参りましたので、私の公述はこれで終らせていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/6
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007・田中正巳
○田中(正)委員長代理 次に国井公述人にお願いいたします。国井国長君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/7
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008・国井国長
○国井公述人 私は国井年金制度研究所長の国井でございます。社会保障、社会福祉の問題を研究いたしておる者といたしまして、本日こういう機会をお与えいただきまして大へんありがとうございます。
国民年金制度を創設いたしますために、いろいろと関連の条件にまだ未成熟な点があります中に、ともかくも全国民を対象とすることを目標にしての年金制度が、まさに実施されようといたしますることは、自由民主党並びに日本社会党及び政府当局に、社会保障に非常に御熱意のあられる方々がおられることによってこれができることであろうと、私は深く敬意を表するものでございます。
このたびの政府の国民年金法実を拝見いたしますると、いろいろと問題点があるのでございます。まず第一点といたしましては、国民年金とは申しながら、現行の公的年金の未適用者の部分に重点が置かれまして、国民年金が国民年金としての基本制度、全国民を対象とするところの老齢、身体障害、母子に対する所得の最低保障としての位置づけが明確でないのでございます。公的年金との通算の問題あるいは調整の問題は、必ず行うことになっておるようでございまするが、この国民年金制度ができる機会に、ぜひこの点は明確にしていただきたいのでございます。もちろんこれにはなかなか簡単にできないいろいろの要素もあるのでございまするが、どうしてもこれをやりませんと、将来における年金制度が、今までのようにばらばらに不均衡に推移することになると思うのでございます。国民年金は、全国民の社会連帯の理念に基いて運営されるのでありますから、当然国民が保険料あるいは税の形式で、この年金の給付に対する費用を負担するということになります。特に老齢年金の場合にとりましては、国民の自助の原則に立ちましての拠出制を基本とするということが、私は今日の段階では正しいと思うのでございます。それゆえ政府案あるいは社会党案も同様でございますが、拠出制を基本として、経過的あるいは補完的に無拠出制で補うということは、正しい筋であると私も考えるのでございます。これは今日の段階においてであります。しかしながら、政府案では保険原理にこだわり過ぎまして、社会保障の理念が若干後退したきらいがあるのでございまして、そのために防貧性よりもむしろ救貧的なにおいがすることを指摘しなければならないのでございます。そして年金の実質価値の維持につきましては消極的な規定がございますが、さらにこれはもっと明確に規定いたしまして、ILOの社会保障の最低基準も規定しておりますように、国民がこの国民年金制度を十分に信頼して、これをりっぱなものに守り育てていくことができるように、明確な規定をしてほしいのでございます。
給付の内容におきましては、国民年金として最低の内容であるといわなければならないのであります。財政上の諸制約もありますので、理想に近い年金額を期待することは、今日では可能性が乏しいとは思いますが、今回の給付条件あるいは年金額につきましても多々問題があるのであって、老齢年金については将来の経済成長と見合ってて、これはいろいろと改善していただかなければならないのでございますが、身体障害あるいは母子遺族についても、今日直ちに無拠出制の方は給付が開始されますので、当面は緊要度が高く、しかも対象人員が比較的多くないために僅少な経費でまかなえます障害年金及び母子年金にまず重点を置いて、給付内容をよくしてほしいのでございます。政府案では社会保障制度審議会の非常にきびしい答申の線を勘案いたしまして、障害年金及び老齢年金についていろいろと配慮されたその御努力は、認めることはやぶさかではないのでございますが、しかしこの案の内容は非常に不十分な点が多々あるのでございます。
障害年金について申し上げますと、障害等級表の策定に当りましては、現行公的年金の等級表の不備、不合理を是正いたしまして、合理的な基準を取り入れたその努力は多とするのでございますが、給付の対象を、いわゆる外部障害に限定いたしまして、結核などによるところの内部障害、これは症状が完全に固定して、しかも重度の障害の者に対しても、無拠出制はもとより拠出制もこれの対象にしていないというのは、はなはだ不可解であります。さらに精神薄弱につきましても、給付の対象外となっておるのでございます。さらに厚生年金の二級程度の者の中には、両眼が失明に近い準盲でありますとか、あるいは両手の親指と人さし指がなくなって、代償機能の期待されない者、あるいは両足をリスフラン関節から失った者などがありますが、そういったような重度で労働能力が著しくそこなわれ、生活能力も多く損傷しております者が無拠出年金の対象からはずされておりますために、これらの二級に該当いたします約十八万人の者は、今回の年金の恩恵にあずからないのでございますが、この点はぜひ御検討いた、だきまして、直ちに支給の対象にしてほしいと思うのでございます。
さらに母子年金の問題につきましても、他の公述人からお話があると思いますが、もう少しこれは支給の制限をゆるめて、一段とあたたかい思いやりを示してほしいと思うのでございます。
障害年金、母子年金の場合には、老齢年金と違いまして、生活設計の途上におきましてこの事故に会うものが多いのでございますので、障害年金、母子年金につきましては最低保障額をお設けいただきまして、最小限度の、最低生活費とまではいきませんが、最低生存費くらいは保障できる程度の年金に御修正を願いたいのでございます。もちろん政府案におきましても、障害年金、母子年金につきましてはある程度の最低保障をされました御努力は多とするのでありますが、原案程度ではまだ不十分でございますので、特に御配慮をいただきたいと考えるのでございます。
次に財政の方式でございます。政府案が完全積み立ての方式をとりましたことは、非常に堅実と申しますか手がたいと申しますか。その点ではその考えは一応わかるのでございますが、将来の貨幣価値の減価ということを考えますると、十五年後の昭和六十年には積立金が約一兆、昭和九十年には積立金が三兆になり、しかも昭和九十年の年金の支給額は約二千六百億でございますので、私はこの際、将来の貨幣価値の減価を考えますと、インフレに対する弾力性を持たせるためにも、一部賦課方式を併用いたしまして、国庫負担につきましては給付時に給付費の二分の一につけるというように、お直しを願いたいのでございます。こうすることによりまして、当面の国庫負担が少くなりますので、この分をもちまして、当面最も必要でございますところの既発生の老齢、身体障害、母子世帯に対します無拠出年金の支給の改善にお充てを願いたいと考えるのでございます。この保険料が政府案によりますと、三十五才以上百五十円となっておりますが、高年令の人々は年金に対する期待が大きいので、拠出意欲はあると思いますが、国民年金の対象者の約二分の一は無業または低所得者でございますので、百五十円とすることによりまして、かけ切れないものが相当数出て参りますので、さしあたりは百円均一で出発いたしまして、将来国民年金が国民に十分に理解され、かつ国民の経済の状態もよくなりました際に、年金額、特に老齢年金の給付内容をよくすることとともに、この保険料額を引き上げるというふうな御措置をお考えいただいたならばよろしいのではないか、こう考えます。さらに積立金の予定利子を三五分五厘といたしておりますことは、おおむね妥当でございますが、積立金の運営につきましては、現行の厚生年金その他につきましてもいろいろと問題があるところでございますので、これらにつきましては、やがてできます国民年金の審議会あるいはその他の意見も十分に尊重いたしまして、これが民主的に運営されて、零細な拠出者の意向が十分に反映されるようにお考えをいただきたいと、こう考えるのでございます。
さらに国民年金は、特に自営業者、農民、漁民その他の方々を対象にいたします、国民に対するサービスの事業でございます。特に国民年金の対象は、現行の被用者年金の対象と異なるのでございますので、これは非常に手のかかる仕事でございます。しかるに国民年金の事務機構は、われわれの見ているところによりますと、もう少し十分にして、これが制度の発足を完全にするようにお願いをいたしたい、こう考えております。
さらに、社会党でお出しになりました国民年金法案は、高い水準で国民の所得保障をしようという案でございまして、しかも全国民を対象にするものでございますので、将来の年金制度としてはぜひこういうふうなあり方が望ましいのでありまして、イギリスの国民退職年金プランとも考えあわせまして、この八木構想は非常に意義のあるものであると考えるのでございますが、遺憾ながら現在におきましては、この国民年金のほかに、結核対策の問題あるいは医療保障の問題、その他社会保障、社会保険、社会福祉の、いろいろと国庫支出の競合する問題などもございますので、今直ちにこれが十分な形で実施できるかどうかにつきましては、若干私はちゅうちょせざるを得ないのでございますので、将来こういった構想が実現することを希望いたしまして、この際は社会党案のよいところをとりまして政府案の不備を補うということで、よりよい年金制度を発足さしてほしいと思うのでございます。このような見地からいたしまして、両党並びに政府の御当局のさらに一般の御配慮によりまして、よりよい国民年金ができまして、全国八百万の老齢者、百五十万人の身体障害、結核、精神薄弱、あるいは百十五万人の母子世帯に、明るい希望をお与え下さいますことをお願い申し上げまして、私の公述を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/8
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009・田中正巳
○田中(正)委員長代理 次に田中公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/9
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010・田中寿美子
○田中公述人 私は目下審議中の国民年金法案につきまして、社会福祉政策を熱望しております一人の国民の立場から、社会党の提出しております国民年金法案を支持するという立場で公述したいと存じます。
昨年の総選挙に際しまして、自民、社会両党とも、国民年金法の制定が選挙公約となっております。また政府でも、長い間社会保障制度審議会を設けて、学者その他の意見を聞いて研究しておられたのであります。それで一般国民は政府案が一刻も早く出されることを長い間待っておりましたけれども、なかなか出て参りませんでした。その意味から、いずれにせよ選挙公約に掲げたことによって自民党も政府も法案提出の義務を迫られたということは、国民にとっては幸いな結果と効果をあげたと思っております。
家族制度が崩壊して老齢人口が次第に増加して、失業と貧困、災害や疾病が充満しております今日の日本で、広範な総合的な社会保障制度の必要なことはもはや議論の余地がないのでありまして、その一番の根幹となりますところの国民年金制度を政府与党が本年十一月以降から踏み出す決意をせざるを得なかったというのも時代の流れであろうと思います。こういう意味からしまして、本国会に拠出されておりますところの政府の国民年金法案に対しましては、私はすでに三十四年度予算に国民年金のための予算がわずか百億余ばかり計上され、平年度三百億というのが発表されましたときから全く失望させられたのでございます。今ここに内閣提出の国民年金法案に対しまして社会党提出の国民年金法案を比較してみまして、政府案への不満を述べ、また社会党案を支持する理由を述べたいと思いますが、もっとも社会党案も、私の考えでは理想案ではないと思っております。ただ現実に立って可能な最もよい法案であると思っておるのでございます。
第一に、国民年金は根本的に社会保障制度として考えられなければならないのであります。それは福祉国家建設のための大切な柱でなければならないのでございまして、政府案の第一条の目的の項にも、憲法第二十五条に規定する理念に基くと書かれておりますが、健康にして文化的な生活をすべての国民が与えられるためには、日本国に生まれてきた者は、みんな死ぬまで生活が安心していられるという状態でなければならないのであります。最低生活がすべての国民に保障され、望むものは、子供はみんな高等教育が受けられ、健康な者はすべて正当な職業と労働条件が与えられる。健康を失った者、災害にあった者、夫を失った者、親を失った者などは、すべて医療や生活の保障が与えられる、こういうのが社会保障の観念だと思います。この理念に向って国民の生活の福祉の向上をはかるためには、具体的に有効な措置をとっていくことこそ目下の急務なのであります。この点からしままして、国民年金は本来すべての国民に一律に無拠出で与えられるべきものであると私は考えております。自分がかけた掛金を将来受け取るというのは、社会保険の考えであります。保障といいます以上は一律に平等にだれにでも与えられるものである。そしてその上に掛金をした積立方式を加えていくのが私はほんとうだろうと思います。ただでやるのだから、これは貧乏人のためだというのは救貧の考え方でございます。救貧であってはならないのでありまして、まず第一にその点で政府案は国民年金とはほど遠いものであると思われます。むしろ不完全な救貧法といえるのじゃないかと思います。政府案が発表されました当時、ある新聞がこういうことを発表しておりました。今回の政府案は非常に多くの制限をつけて、その対象者の数を極度に減らして、七十才以上の老人約二百五十万ほどにあめ代にすぎないものを提供する、これは無拠出年金のことですけれども、そういうことを書いておりました。これは社会福祉の考え方ではなくて、救貧の考えか、でなければ各地方にこのごろはやっております敬老年金なんて申しまして、八十八才くらいになりました老人に金一封を与える。年に五百円から三百円くらいを進呈するのと大差ない考え方に立脚しているんじゃないかということを新聞紙が論じておりました。私もその通りに思います。昨年の末に厚生省当局が発表いたしました厚生白書によりますと、減税より社会保障を強調しております。国民年金その他の社会保障制度を完全にすることによってこそ所得の再配分ができ、国民の購買方を高め、雇用を増大し、健全な景気対策になるであろうと述べております。にもかかわらず、七百億の減税に対して、わずか百億余の国民年金費を計上している今回のような法案をもってごまかすのは、面子のなめかあるいは選挙対策のためではないかというふうな疑いを持つのでございます。(拍手)
第二に、社会等の積立方式と賦課方式の折半の形式なのですが、私がさっきも申しましたように、理想的には、社会保障というものは無拠出で、生活できる各種の年金を必要である者にみな与えるということであると思うのですが、そうすることには非常な財源が必要で、一兆円も財源が必要だろうといわれておりますが、こういうことは日本の国民全体がほんとうにそういう覚悟がなければなかなか簡単にはできませんので、過渡的には社会党案の掛金積立方式と賦課方式の折半方式がよいのであると思っております。つまり所得能力のない者のためには、特別年金制度によって無拠出年金を早急に実施し、一般国民及び労働者に対しては、普通年金制度によって半額を国庫負担にして、半額を年金制の積立方式によるのであります。こうすることによりまして、理想的に申しますれば、今の国民がみな一緒になって今の日本の老人や困った人たちのめんどうを見るという考え方であるべきでありますけれども、今の折半方式によって一部そういうものを負担し、一部将来自分たちのむすこ、娘の時代に自分らを見てもらうということになるのであります。
次に今回の法案で大事なことは、ほんとうに必要とする者に与えるということなのでありますが、政府案によっては非常に除外が多い。先ほどの公述人もそういう話をなさいましたけれども、提案されております二つの法案によりますと、政府案では、明らかになるべく対象者の数を少くした結果、必要な者をうるおわさない結果になっております。この点は社会党案の方がはるかにすぐれていると思います。たとえば拠出制の方では、老齢年金の給付開始年令ですが、政府案では六十五才、社会党案は六十才となっております。六十五才では現在の日本の事情では実はおそいのでありまして、農村などでは非常に老衰が早い。それだけでなく日本の人口構成は、さきにも厚生白書をちょっと引用しましたけれども、厚生白書によりますと、生産年令人口が激増しておりますし、老齢者が相当出ておるわけなんですが、その一方オートメーションが急速に進んでおります。三十年、四十年先の日本の人口に対しては、なるべく早く老齢年金を与えて労働力の新陳代謝をはかるようにしなければならぬ。六十才になったら必要なのであります。そうして若い者が生産活動に従事し、そうして年とった者は、文化、政治、社会活動の方に回るというようなことが望ましいのであります。
それからまた金額においても、政府案は、六十五才三千五百円、年四万二千円。社会党案は、六十才で七千円、年八万四千円ですが、実は七千円でも私は多くはないと思っております。健康で文化的な生活をすることのためには足りないのであります。しかし現在の国家財政から見て最大限の計算になっているものだと思います。
掛金では、政府案は、二十才から三十四才まで一人月百円、三十五才以上五十九才まで百五十円、これで計算しますと、合計して六万七千円ばかりをかけることになるわけです。社会党案の方では、一人平均百六十六円というので、掛金が多いように見えますが、これは三十五年間で平均で、計六万八千円、多少掛金が多くなっておりますけれども、六十四才で死んだ場合を仮定いたしますと、年八万四千円で四十二万円受け取ることになります。政府案で六十四才で死んだのではゼロであります。六十七才で死ぬと、八年間で七十万円近く社会党案では取るのですが、政府案では三年間ですから十二万六千円というわけです。なお社会党案の掛金は平均百六十六円ですけれども、収入に応じて違えてあります。その比率は、均頭割五、収入割三、資産割二というふうに違えてありまして、非常にこまかい配慮がしてあります。ですから収入の少い者は最低では九十円ぐらいしかかけないでいいということになっております。ボーダー・ラインの者も減額あるいは免除の制度もあるのでありまして、つまり必要度の多い人のためにこそこういうものがあるべきなのであります。そういうことが社会保障であると思います。で政府案では完全にかけた者で、四十五年間かけて月三千五百円、二十五年かければ月二千円、十年から二十年で千円、十年未満ではゼロということになりますと、先ほどの公述人も言われましたけれども、ボーダー・ラインの者はこの適用を受けない心配があります。
それから遺族年金ですが、社会党案では母子、父子、寡婦、鰥夫、弧児みな含めて遺族年金の対象になっておるのであります。政府案では母子年金、遺児年金、及び寡婦年金、三種類になっております。この点、必要とする者が相当オミットされている。社会党の場合、おばあさんが孫を養っている場合も、姉が幼い弟妹を養っている場合もこれに入ってくるわけです。
それから障害年金は政府案が一級と定めております重症者のみで、これは先ほど障害年金について詳しくお話がありましたように、非常に障害者ほど必要なのでありますのにもかかわらず、障害者に対しては大へん手薄い感じであります。
次に無拠出年金の方ですが、必要な者に与えるという点で、この無拠出年金で最も大きな欠陥を政府案は持っております。老齢援護年金は七十才から開始されて年一万二千円、たくさんの所得制限がついておりますが、所得制限は、本人十三万円以上の者には支給されませんし、それから配偶者が十九万円以上持っていたら本人には支給されないということであります。また世帯収入五十万円以上の者には支給されない。それから夫婦とも老人で、七十才以上で受給の資格がある場合には両方から二五%ずつ差し引くのですから、千円が七百五十円になるわけです。大へん少くなっていくのです。こういうふうにして対象者がずいぶん減らされております。今日平均寿命は六十六才ですから、大体七十才で政府の言う無拠出年金をもらうまでの六十九才までに死ぬ人が相当あるのではないか。まことに必要な貧しい者のためにもっとその点を考えていただきたいと思います。社会党案にも制限がありまして、本人の所得十三万円、それから世帯所得三十六万円の制限がついております。しかし十八万円以上三十六万円の間は非常に手厚くなっているわけです。六十才で千円、六十五才で二千円ということになっております。こういう制限をあまりにつけますと、農村地方なんかでは土地家屋なんかを世帯主が持っておりますので、その世帯主にもこの老齢援護年金というものがいかない場会合が多いし、また妻はほとんど養老年金をもらうことができないということになると思います。
次に母子援護年金ですが、政府案ではこの母子年金においてまた非常に不合理がございます。多分あとで未亡人会の方もそれをおっしゃるのではないかと思いますが、社会党の案で月三千円、政府案は千円なんですが、子供二人以上あるときには、一人をのけて第二子の加算が、これが社会党案では年七千二百円、政府案では二千四百四、つまり月子供一人の費用として二百円というのはあまりにも少いのではないかと思います。母子世帯の必要度というものが最も大きいのでありまして、老齢年金よりもさらに大きいはずだと思います。子供の加給二百円というのは非常に少い。それから準母子世帯、ボーダー・ラインの者への適用が政府案では非常に不完全である。社会党案では十八万円の収入のある母子家庭でも、三人の子供があると母子年金一万八千円にプラスして、一人の子供について三千六百円、二人分をもらえるわけですから、二十万五千円というわけなんです。十八万円以上の境のところでも、年金をもらえないで損にならないようなこまかい配慮がしてあるわけです。
障害年金は政府案が一番、先ほども言われましたが、非常に欠陥を出しているところであります。一級障害の場合社会党案では四万八千円プラス二万八千円、さらに内科障害が政府案では一切考えられていない。つまりはっきり所得能力のないということがわかっていても適用されない気の毒な人たちがたくさんあるのではないか、これこそ必要な人たちであると思います。
次に生活保護法との関係で大へん重大な欠陥がありはしないか。老後安らかに母子を路頭に迷わさないようにというのでありますならば、生活保護の給付から差し引くべきでないと私は思います。ある母子家庭の例ですけれども、六人の家族で七千円の保護費をもらっておりますが、この場合母子年金として受け取るところの千八百円、つまり千円プラス子供五人のうち四人に二百円ずつかかるとして八百円、千八百円になるのですが、その千八百円もらう分、七千円から差し引き、プラス、マイナス結局七千円ということで、これは少しも年金になっておらないわけです。こういう人々に実に冷たい案であると言わなければなりません。これは社会党案では母子年金も身体障害者年金も扶助と別に併給することができるということになっておりますので、母子の福祉を願う立場からこの点、社会党案の方が望ましいと思います。
時間がありませんけれども、男女平等な取扱いの必要性からちょっと簡単に申し上げます。厚生省の試案として発表されました国民年金法案で、最初夫婦の場合に妻を除外してありました。今度は入っておりますけれども。社会党の労働者年金では妻も強制加入になっているということは、男女平等の立場から大切なことだと思います。これはぜひ婦人の立場から申し上げたいと思います。
それから、そのほかいろいろありますが、労働者年金についても、これは特に普通の一般国民年金だけの取り分にプラスして、さらに掛金が加わって多くなっておりますのは、これは農村の農民のように土地を持っていなかったり、商工業者のようにものを持っておらない立場からこういうものは非常に必要であろう。こういうことを申しますと、理想案でできないという言葉をすぐにおっしゃいますけれども、ほんとうに社会保障制度を実施しようという気があるならば、私は財源はないことはないと思います。その点は決断次第でありまして、政府も三百億を計上していらっしゃるのですから、それはあるはずですし、毎年自然増収というのがだいぶふえているようですから、ああいうものもそれに向ける。私たちは、自衛隊の費用なんかだいぶカットしていいのじゃないか、それから防衛庁のむだづかいなんかを十分にこっに向けていただいて、ほんとうに実施する決意を持っていただきたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/10
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011・田中正巳
○田中(正)委員長代理 次に中村公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/11
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012・中村発子
○中村公述人 御紹介いただきました中村でございます。いつも母子福祉会のためにいろいろ御配慮をいただきましてありがとうございます。今日こういう席を持たしていただきまして、少しでも皆様方に母子福祉会の方の立場としてお願いすることができるのを心から喜んでおります。
私どもは長い間国民年金が実施されることを希望いたして参りました。またその願いの達成のために実践運動も続けていたして参りました。ほんとうに私どもの素朴な願いがどんな形で、どんな内容で示されるかということを常に関心を持っておりました次第でございます。いよいよその国民年金もこの秋から発足されるということを承わっておりますが、私どもの一番うれしかったことは、私ども自体の申し合せが一つございました。それはいつも申し上上げることでございますが、老齢、障害、母子の三つを同時に取り扱っていただきたいということを再三にわたってお願いいたしました結果が、そういうふうに実行に現われたということは、私ども三者にとりましてはこの上もない再びの一つでございます。それから初めからいろいろこの問題について必要の場合にはそれぞれに陳情なり請願なりをいたして参りましたのでございますが、社会保障制度審議会の答申よりはだんだん、わずかでございますけれども、上昇してきておるということも、これも一つのうれしいことのような気がいたします。
国民年金の根本的な考え方に及びますと、政府案といたしましての拠出、無拠出の二つの方向づけというものは、先ほどからのお話にございますように必ずしも当を得ているものではないとは存じますけれども、現段階におきましては、先ほど身体障害の点で国井先生の方からも御発表がございましたけれども、私どもは私どもなりに考えておりまして、またいろいろの問題はございますが、でき得ない分もあるということを一つ申し上げておきまして、やむを得ないと存じております。
先ほども田中先生の御発表にございましたが、政府案の中に妻も夫と独立した被保険者として、独立した年金を支給しようとしていることにつきまして、ちょっと触れさしていただきたいと思います。夫の所得が夫婦の協力によって得られたものであり、妻にもこれを利用する権利があるという考え方は、従来の考え方と違いまして妻の地位、婦人の地位を相当に評価したもの、これは女の立場から申し上げたいと思います。けれどもこれはあくまで拠出のできる階層の人々のことでございまして、漁村とか山村とか、また都会の谷間に生活している者は依然としてこの問題には浴さないのではないかというような考えを持っております。
年令について申し上げさしていただきたいと思います。母子年金につきましての年令については、答申当時よりは引き上げておりますが、これにつきましてなお私どもの立場から要望を申し上げさしていただきますならば、ただいまは拠出の方が十八才、無拠出が義務教育終了前と、子供の年令をだいぶきびしかったものからゆるめて参っておりますが、私どもの要望は、無拠出もどうぞ拠出と同様に十八才までに上げていただきたいと思います。それは義務教育が終了いたすと申しますと十五、あるいは十六でございますが、その年令におきましてはまだまだ親の手も離れることもできませんし、また夜間の学校へ参りまして昼間働く場合がありましても、それはまだまだ母子世帯にとりましては欠陥がたくさんございますので、ぜひこれは社会党さんも力を合していただきまして、自民党の方でも入れていただきまして、十八才まで延ばしていただきたいと思います。
それからもう一つ、政府案の方は援護年金は二十五才以上の子のいる場合は支給されないことになっているというふうに掲げてございますが、先ほどからのお話にございましたように家族制度が非常に変遷いたしておりまして、二十五才以上の子供がありましても必ずしも母子世帯の母と子供が仕合せになり得ないのでございます。だんだんと生活がきびしくなって参りますし、ただいまの現状を見ましても、結婚いたしますと子供たちは次々と離れてしまいます。そうすると、母親は小さい子供をかかえましていつでも同じ状態を繰り返している現在でございます。どうぞこの制度はやめていただきたいと存ずるのでございます。そうして拠出制度母子年金につきましても、将来はその金額を老齢年金の七割くらいまでには引き上げてもらいたい希望を持っております。
それから先ほど来ございましたように、老人と母子との年金の比較でございます。いただくものがほんとうに千円でございます。老人一人の場合は千円でございます。それを母と子二人でおりまして千円というのはちょっと考えていただきたい。ちょうどこの時代の子供は、母親よりはもっと食べるものは食べますし、それから牛乳——おっぱいの出ない場合には、保護法の場合にはこれは別でございますけれども、やはりそれ相当のものがかかりますので、これは御考慮いただきたいと思います。そういうわけで、母と子が一人の場合でも母子加算を認めていただきたいと、これは政府案に申し上げるわけで、かりに社会党さんのように三千円もいただけまするならば、これは何とか一家の生活設計でやり繰りできると思いますけれども、そういうわけでございますので、どうぞ折衷案をおとりいただきたいと思います。
〔「妥協しちゃだめだ」と呼び、その他発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/12
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013・田中正巳
○田中(正)委員長代理 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/13
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014・中村発子
○中村公述人 どちらにも属しておりませんので……。
次に、先ほどからおっしゃられておりますように、生活保護法との関係でございます。これは母子世帯にとりましては非常に現実の問題でございますので、何とか早急に政府案の方でも、社会党さんの方でも——もう案が立ててあるようでございますけれども、これも適当にお考えいただきたいと存じます。
それから先ほどからもお話がございましたが、おばあちゃんが子供を育てている場合、これも考慮の一つに入れていただきたいと思います。これは実際問題でございます。
それから所得と年金の場合も、行く行くは御考慮願いたいと存じます。たとえばそういうふうな年金制度が制定されましても、一度病気になりましたときのことを考えたら、これはどうなることでございましょうか、深く思いをいたしております。またそういうふうな問題が国民皆保険で解決する場合がございましょうとも、現状のような工合でなしに、もう少し高度のものを考えていただきたいと思います。
これにからみまして就労の問題があると存じます。年金の問題と就労の問題とは、何か切っても切れないような関係があるように考えるのでございます。一般の問題もさることながら、私どもの母子世帯の母は、生活設計と子育ての二つの大業を背負っておりまして、働こうと思いましてもなかなか適職がないのでございます。できるだけ母子世帯のお母様が働ける適当な職業をお与え下さるように、少し横道かもしれませんけれども、これも考えていただきたいと存じます。
それから最後に名称でございます。援護には相違ございませんけれども、これは私なりの考えでございますが、何かそれでなくてもお金をもらうということは、こういうふうな世帯にとりましては何か少しはじらいを持っておるわけでございます。それで内容も貧しくて——名称も援護には相違ございませんけれども、何とかその辺のところを潤いのある言葉にしていただきましたらけっこうではないかというように、これはいただく方の立場からお願い申し上げる次第でございます。
簡単でございますが、私どもの方はそういうふうな要望を申し上げます。大へんつつましい要望でございまするが、これは百五十万世帯の母子の最小限度の願いでございますので、どうぞ目的が違成されますように、政府案に社会党案の豊富なありがたい数字をお入れいただきまして、世の中が明るくなりますように、どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/14
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015・田中正巳
○田中(正)委員長代理 次に平等公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/15
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016・平等文成
○平等公述人 御紹介いただました全日農の平等でございます。
私は結論といたしまして、今回準備されております国民年金法につきましては、社会保障の原則に基いて実施していただきたい、かように考えます。従いまして必要とする者に最も厚くしていただく。さらにこの実施に当りましては、現情勢ではいろいろな困難がございましょうけれども、この年金法というものはこれは国家百年の大計でございますので、あらゆる困難を克服してその実現に努力していただきたい。特に最近の社会不安は老齢者のみならず、青少年に対しましても大きな影響を与えておりますので、生活の安定を保障するという国家の保障をぜひともこの際打ち立てることが必要であろうと思います。特に私は今回意見を農民の立場に立ちまして申し上げます。
わが国の農民は人口におきましては約半数を占めておるのでございますけれども、実情といたしまして今の農村、農家、農民の問題は政治の谷間であります。また経済の谷間であります。ましてや社会問題の谷間になっておるのでございます。こういう点から考えますのに、今回の年金の制定に当りましても、おそらく農民の実情が政府案においては完全に反映しておらないように考えられるのでございます。私はこれからその問題を申し述べたいと思いますが、その前に私は農民の国民年金問題を考えるに当りまして、現在の農村問題と申しますか、農民の現実を本質的に一、二申し上げておきたいと思います。
農業につきましての認識は、私に言わせますならばまだ封建的な思想がわれわれの間に残されておると思います。そういう点から私どもの農村に対する認識が非常に欠けておるということは、これは社会党の方々にも申し上げたい。ましてや自民党の方々にはよく考えていただきたいのであります。
その第一は、農業は自営者として取り扱われておりますが、自営者であることは当然と思いますけれども、さらに農民の問題の中には大きな労働問題がひそんでおるということ、しかもその労働問題は都会の労働者より以上に過酷なる条件のもとにひそんでおるという問題でございます。従いまして年金制度を考えますには、単なる自営者として、商人あるいはその他の中小企業の人たちと同じには考えず、非常に残酷なる労働をしいられておるものであるという上に立って農民の年金問題は考えていただきたい、私はかように考えます。
第二の問題といたしまして、これら農民の奉仕的な労働は現在ほとんど無価値に近いという問題であります。賃金労働者は賃金問題を解決しております。非常に不十分ながら徐々にこの解決に向っておりますが、今日農民の労働価値という問題は何ら解決に向っておらない。それは価格問題という形で隠されておりますけれども、たとい牛乳をしぼろうと、あるいは野菜を出荷いたしましょうとも、あるいは米を作りましょうとも、これらの価格の中には十分なる労働価値というものは払われておらないということであります。さらにこれら面接民の労働というものは、封建的な考えによりまして、国家に奉仕するものである、農民が働くのは当りまえである、つまり無報酬もやむを得ない、それがけっこうな仕事である、かような封建的な思想が為政者の間にもあるのではないか。そのために現在の農民には社会保障制度がほとんど及んでおりません。今社会保障制度には医療その他いろいろな問題がございましょうけれども、農民にはほとんどその手が及んでおらないというのが現実でございます。さらに生活保護の法律さえ、これは営業者、経営者であるという観点から除外されておる例が非常に多いのであります。これは開拓者の場合のように、非常に貧困な生活に甘んじておりながら生活保護が与えられておらないのであります。さらにもう一点申しますと、農民の病気の問題でございます。これはすでに現在の近代医学の中で農夫病の研究をしておられる学者がたくさんございます。これはどうしてそういう名前が出るか。農民独特の病気が今日あるのでございます。これはいわゆる独特の病気が発生したのでなくて、農村にのみ解決されずに残されておる病気でございます。リューマチ、神経痛、中気、トラホーム、肺病、これが農夫病といわれるものでありまして、これを見ましても現在農民の健康状態が非常に悪い条件に置かれておる。しかもそれに対しまする政府の手というものは速く及んでおらないということがいえるのであります。
さらに大事な問題が一つございます。これは老人、すなわち年寄りの労働ということがございます。都会におきましては年寄りがそれほど働くことはございません。しかしながら現在の日本の農村におきましては手が足りません。人口は多いけれども、収益に対する手が足りない。つまりうちじゅうおじいさん、おばあさんあるいは小学校の子供までが野ら作業をしなければならぬという状況でございます。その結果、農村の老人は七十になっても八十になっても、つまり中気、神経痛の人たちまでが野らに出なければならぬという現状がございます。しかも一方におきましてはこれらの老人は同時に経営者の責任まで負わされておる。これはあとで申し上げますけれども、老人が自分で働きつつ、しかも七十幾つになってまでも経営の責任をとらざるを得ないというのが農村の現状であり農家の家族制度であります。これはもちろん封建的なものでございます。
さらに最近の農村の生活は完全に自給自足経済が破れております。よくある学者たちのグループでは、農民は自給自足しているではないか、米や食うものを持っておるから生活は楽ではないか、こういうような説がございますが、これは全く今日の農村経済を、知らないものであります。なるほど米と野菜は手に入りますけれども、今はみそ、しょうゆ、すべて買う世の中でございます。しかもこれらの消費財の価格というものは、むしろ都会生活者の消費費用よりもかかります。値が高いのであります。従いまして今日の農村の消費生活というものは都会の人と同じ消費生活の中に陥っておる、こういうことがはっきり言えるのでありまして、過去における農民が自給自足しておるというような考え方は、現在の資本主義社会におきましては根本的な誤まりであります。
次の問題といたしまして、農家経済の窮迫と兼業化があります。今日はその原因につきましては申し上げませんけれども、野菜を出荷しましても肥料代、箱代、輸送貨も出ないような価格で買いたたかれる、あるいは牛乳の値段も皆様御承知の通りであります。こういうような経済の窮迫、収入の不足というものはどういう形になって参っておるか。なるほど農民は死んでおりません、農家もそのまま続いております。しかしながら農業それ自体は破壊しつつあるということであります。つまり農家が農民、人間としての生活を営むためには、農業以外の収益をほかからとらなければならぬ、つまり兼業化でございます。現在の農林省の報告によりましても、約七割近くの日本の農家は兼業せざるを得ない。長野県のごときは七割五分が兼業いたしております。兼業と申しますのは、後に申しますことと非常に関係があるのでございますが、ほとんどが労務者であります。さらにその他の勤労者でございます。こういうような兼業化いたしておりますということは、これは農村の経済、私どもが年金問題を考える際、基本的な条件として考慮しなければならぬ、こういうことでございます。
さらに最後に申し上げたいのは、これらの関係がいかに農村の青年たちの心を虫ばんでおるかということ、つまり農業は斜陽産業であるということを農民たちは言っておる、青年は村を離れることを望んでおる、娘さんたちは農民のうちには嫁に行きたくない、かようにおそるべきことがわが国の食糧の基本産業をやっておる農業の中に非常にびまんしておるということ、これは非常に重要な問題だと思います。従いましてこれらの農業における、農民における大事な問題を解決するには、一に年金制度の合理的な設定が必要である、かようなことでございます。
具体的に問題を取り上げて参りますると、まず給付開始の年令の問題がございます。私は先ほど農民が非常に過酷な労働をしておるということを申し上げましたが、皆さん御承知のように、この過労というのは、冷え込みそれからさらに栄養失調ということを伴いまして、ついに農民の多くがいわゆる早老的な状況に陥るのでありまして、五十才になりますると、都会の人たちとは少くとも十才あるいは二十才近い差が体質的に出て参るのであります。これは年金施行上非常に大事なことだと思います。こういうような年令に達し、早老に達しておりながら、なおかつ農村の老人たちは男も女も働き続けなければならない。こういうようなことが今までの社会制度の、不備からしいられておりまして、この点を考えますと、今回の年金制度の政府案七十才ということは、農村においては全く不合理であるということを申し上げたいのであります。さらに社会党案の六十才に対しましても、私はこれではまだ足りない、かように思います。私どもは厚生年金で、機関車労働者あるいは船員あるいは鉱山労働者のような重労働をしている人たちは五十五才から年金の開始があるように開いております。しからばそれ以上の労働をしている農民になぜ五十五才の年金開始が行えないのか。はっきり申し上げますけれども、農民の労働は、学校へ行かなければ十五才あるいは十二才から始まっておるのであります。しかも五十才のときには力尽きておるのが農民の現状であります。しかも平均労働時間を御研究になればわかりますが、十四時間、十二時間労働といわれております。これ以上の重労働はございません。その農民に対しまして七十才の開始年令を制定するということは、これはあまりにも現実を無視したやり方である、かように考えます。これは社会党の方でも御努力をお願いいたします。
さらに年令問題と家族との関係がございます。先ほど申し上げましたように、家族制度ということが、老人がいつまでも世帯を持っておらなければならないということから発生している点が非常に多いのであります。つまりおじいさんになっても世帯を譲れない、営農しておる、これは農村の社会構成、家族構成あるいは政治構成に非常に大きな影響があるのでございます。つまり経営権を子供に譲りますと、現在の制度では家を建てて隠居することもできないのが現在の農民でございます。従いまして、おじいさんが病気になる、六十才で中気になる、神経痛になった場合に、家督を讓ってしまったのでは自分の老後の保障ができない。子供や孫がどれほど見てくれるか保障がわからないわけでございまして、そのためにいつまでもじっと営農権を戸主として握っておりたいという苦心は、これはやむを得ないところでございます。これは皆さん御承知の農村にありがちな家庭騒動のもとになる。嫁に来た者はいつまでたっても家督がとれない。五十才になって米びつを預けてもらったというような例はしょっちゅうあることでございまして、そういうことから起ります問題は、若い者が生産意欲を欠くことになるのであります。じいやん、おとっつあんがいつまでもがんばっておっておれの言うことを聞いてくれない、そのために農村の近代化、生産意欲というものが非常に阻害されておる。日本の農村が近代化し、かつ進歩いたしましてほかの産業同様に向上いたしますためには、三十代あるいは四十代、この若い人たちの農業産業に対する熱意というものと生産意欲というものがなければならぬ、かように考えるのでありますが、現在の家族制度ではとかくそれが破れがちなのであります。そこで農村が明るくならない。農村に何となく暗い影がただよっておる。そうして斜陽産業であるとか、あるいは農民は非常に考えが古くて、なかなか近代的な産業形態がとれない、かようなことが起ってくるのでございます。農村の近代化、農村社会の建設を考えますためには老人を解放する。これは老人の労働からの解放のみならず、私はこれは家族制度からの解放であるし、またそれが日本の農村を新しく、また明るくしていく基盤になる、かように考えるのであります。
さらに第二の問題といたしまして保険と申しますか、掛金と申しますか、拠金と申しますか、それの出し方について農村の立場を申し上げます。農民は非常に窮乏しておるということを申し上げたのでございますけれども、政府の保険料と申しますか、政府案によりますとこれが画一的になっております。農民の場合にはこの画一化ということは不合理でございまして、社会党がやっております均等割五、所得割三、資産割二、この形が農民には当然合理的でございまして、収入が少い者には少い掛金になる。生活困難な者に対しましては減額あるいは免除の制度というものが農村においては当然必要でございます。特に農村には災害というものがございます。一般の産業にはないことでございます。天災によりまして、霜あるいはあらしによりまして収入が皆無に陥るところさえある。まして半額あるいは三割以下の減額になることはしょっちゅうでございます。かようなときに農民の掛金を画一式あるいはその他の一般の従来の方法でやられますならば、農民にとってはかけられないというときが必ずくるのでございます。そういうことのためには私は一時掛金の免除ということ、あるいは減額という措置が当然農村にはなければならぬと思います。ところがそれを行いまして、もしも保険的なやり方でございますならば給付金の方に影響がいくのではないかと思いますが、これは社会党案によりますと、いかに免除、減額がございましても与えられる金については変りがないという案がとられておりますが、それはまことに至当であると思います。
さらに払い込みの問題でございますが、政府案は年三回という工合になっているように記憶しておりますけれども、これは社会党案はたしか月割でございました。さらに要望があるならば農民は春秋の二回に分けてもいいというようなことになっている由でありますが、農民としまして収益の上りますのは御承知の二期であります。これ以外はたばこ銭もないというような状況もあるのでございまして、当然米の取り入れどき、あるいは野菜、麦などの取り入れどきに納入をさしてやる、これが親心であろうと感ずるのであります。
第三番目には給付金の金額の問題でございますが、政府案によりますと、完全実施されましたときに三千五百円、こういうことでございます。しかしこれはたびたび先ほどから御議論がありましたように、三千五百円で果して健康で文化的な生活が維持できるかどうか、これは将来のインフレーションのことを考えなくても現在明らかでございますが、特に農村におきましては私はそれでは不足である。なぜかと申しまするのに、今までの間にすでに農民は社会の谷間に置かれておる。経済の谷間に置かれておる。農民の日常の生活は都会の一般生活に比べまして非常に低いところに置かれておるのであります。もしも百姓は貧乏になれているから安いのでいいのだとおっしゃるならば、それは徳川家康の思想でございます。農民とても当然都市の生活者と同等の生活水準を要求しているわけでございますし、また農民が従事しております職業は当然これに報いてやるべきところの性質のものだと思います。従って農民に対する給付は、三千五百円の給付では当然不足でございますが、この点はほかの立場の職業の方と同じであろうと思います。
さらに労働者年金の問題に関連いたしますと、農民は被用者年金の問題とは関係ないようにお考えと思いますが、農村の現実は逆でございます。先ほど私は農家の兼業化が非常に進んでいるということを申しました。七割の農民か日雇い者あるいは半日雇い者——これは出かせぎ労働者、季節労働者として働いておることを申し上げたのでありますが、従いまして農民は、農業を営むと同時に労働者としての性格を最近は強く持ってきておるのが特徴でございます。従いまして初めから次三男はあるいは長男すらもが、すでに農業以外の仕事に従事することが多いのでございますが、こういうような他の職業に従事した人、労働者になっていた人たちが帰村した場合、政府案によりますと、過去における労働者としての掛金あるいは年金の権利というものは消失するようにできておると思います。これは大へんな誤謬でございまして、農民が一年あるいは二年間、さらにまた農業を続けまして四、五年の間、飢饉その他で出かせぎせねばならぬ状況が起った場合、これは私は当然厚生年金も国民年金の中に入れておいて、農民もその恩恵に浴すべきものである、こういうことがはっきり言えるのであります。
さらに配偶者の問題、配偶者制限の問題、所得制限の問題がございます。これが不当な制限であることは他の公述人からもおっしゃられたところでございますが、特に配偶者の所得制限の問題について農村の立場から申し上げます。配偶者制限は、十九万以上の収益のある夫の妻には年金がおりないようになっておると思いましたが、農村の場合には先ほど申し上げましたようにおじいさん、つまり妻の夫であるおじいさんが、いつまでも戸主権を持っておるのでありますが、この戸主権を持っておるために、これはその家の収入ということになるのであります。従いましてこの老人の妻は十九万以上の収益のある夫の妻ということになりまして、妻に対する給付はないということになります。これは大へんな矛盾でございます。
さらに病気の問題がございます。病気の中に、特に先ほどの御指定のありました身体障害者の年金の問題でございます。身体障害者が自民党案では一色である。社会党案では三級に分れておる。この点が御説明ありましたが、これは除きますけれども、この身体障害者の部類の中に内科の障害者が入っておらない、これが政府案のように思いますが、先ほど申しましたかんじんの農夫病というもの、つまり農民が早い人は四十過ぎからなるのですが、四十を過ぎ、さらに五十、六十になりますと、ぶらぶら病、あるいは胃病とか肺病とか眼疾、その他の内科の病気が非常に起ってくるのが農民の特徴であります。ところが内科障害に対しては年金が渡せないということになりますと、農業あるいは農業関係の農民の病気に対しては年金が出ないということが非常に大きなケースとなって出て参るわけでありまして、医療施設のない非常に乏しい農民にとっては大きな脅威でございます。その点はどうしても改めていただかなければならない、かように考えます。
さらに掛金の問題の作り方、あるいは未亡人、母子、身体障害者等に対するいろいろな問題は、農民もまたほかの方々と同様にいろいろな修正を望んでおりますけれども、これは省略いたします。
最後に結論といたしまして、私は現在の政府案は、人口の半分を占めております農民の立場から見て、ぜひともこれは御改正を願いたい。そのために私は社会党案、これも完全でないと言えますけれども、政府案よりははるかにすぐれた社会保障の線を打ち出しておるものでございまして、今後の努力によりましては、理想的な百年の大計となる基礎のものでございますので、私どもはこれを支持する次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/16
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017・田中正巳
○田中(正)委員長代理 以上で公述人の公述は終りました。質疑の通告がありますので順次これを許します。八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/17
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018・八木一男
○八木(一男)委員 公述人の皆さん方には、おせわしいところを時間をおさき下さいまして貴重な御意見をお述べいただきましたことを、私ども非常にありがたく存じております。皆さん方の御意見をそしゃくいたしまして、さらに国民年金制度推進のために私どもやって参りたいと思います。今後とも一つよろしくお願いいたします。
まず公述人の磯村英一先生にお伺いしたいことがたくさんあるわけでございますが、途中で中坐されまして、あとからおいでになるそうでございますので、その点は省きまして、ほかの公述人の方に光にお伺いをいたしたいと思います。お一人お伺いいたしますのと、それから同じ問題についてお二人なりお三人なりにお伺いすることもありますので、大へん恐縮でございますが、その点で御協力をお願いいたしたいと思います。まず最初に田中寿美子先生にお伺いをいたしたいと思います。先ほどの公述を承っておりまして、私ども非常に御高見に傾聴いたしたわけでございますが、時間の関係で全部お述べになり切れなかった点があるのではないかと思います。その点、一点だけお伺いをいたしますが、政府案の中に、インフレに対する対処が第四条に幾分ばく然として述べてございます。そこには、国民の生活水準その他の事情が著しく変動した場合には調整をするというような、非常にあいまいな文句で書いてあるわけであります。ところが国民年金制度というものは非常に大事なものでございます。それに対する国民の一番の心配は、昔の貯金とか、生命保険とか、あるいはまた国債のように、貨幣価値が変動した場合に無価値になってしまうのではないか、長い間払い込んだ金が実際に役に立たなくなるのではないかということが非常に大きな心配ではないかと思います。それが国民にほんとうにそうではないという信頼が持たれなければ、協力される程度が足らなくなって、この制度がうまくいかないのではないかという心配がございます。ところが政府の方はこの点について非常にあいまいな規定で、これに対処するように見せかけて、ほんとうはどうも対処しないのではないかという心配な状態があります。一番の心配は、貨幣価値が半分になった場合には年金額が倍になって、約束されたと同じだけの所得保障がされるということが必要である。物価変動の割合に応じて年金額を改定しなければならないというふうにはっきりと規定すべきであると私どもは考えておりまして、日本社会党の案ではそれの規定をいたしております。ところが政府の方は、生活事情あるいは著しいといった形容詞を使っております。著しいということは幾らでも認定のしようがあるわけであります。また生活事情というのは、物価変動にやや関係はございますけれども、直結はいたしておりません。極端にいうと生活事情ということで、物価が上っておるのに年金額を下げる、これを逆にストップするとかマイナスにすることだって、今までの政府が憲法の解釈を無理やりにしたような例からいくと、そういうおそれすらあるのですから、どうしても政府の方は物価の変動によって変更する意思があるということを言っておるのですから、政府案としては、政府あるいは与党である自民党自体が、物価変動の割合に応じて改定するという文言になさる必要があると思いますし、またそれ以上に、物価変動がなくても、年金額をふやす意味があるという厚生大臣の答弁がそのままでありましたならば、それにつけ加えて、生活水準の変動により、年金額の増加という言葉を使うか、年金制度の改善という言葉を使うか、一般的によくなる方向のみを規定した文言にする必要があると私は考えております。社会党はそのような考え方で規定をしておりますが、それにつきましての田中先生の御見解を一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/18
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019・田中寿美子
○田中公述人 実は今御質問にあずかりました点を最後に申したかったのですけれども、時間が切れまして省いたのでございます。今おっしゃいましたように、貨幣価値の変動が起る心配が十分ございますので、その点については法文に明確に出しておくべきだと思いますし、また生活水準の変動に応じても増額していくということを明記していただきたいと思っているのでございます。
ついででございますが、先ほど言い残しましたことで、社会党案の中で年金に対しては課税をしないという点なども、非常に大切な点だと思います。政府案のように、年金額に課税して、実際に手にとるものが少くなるようなことにならないことも、つけ加えて希望しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/19
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020・田中正巳
○田中(正)委員長代理 委員諸君に申し上げます。大野公述人は、よんどころない御用で午後一時までしか出席できませんようでありますから、大野公述人に対する質疑を先に各委員からやっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/20
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021・八木一男
○八木(一男)委員 委員長のお申し出について、ちょっと意見がございます。きょう鳩山一郎氏の葬儀その他いろいろの事情で、また公述人の方もお忙しいので、全体の時間はできるだけ長くしていただかなければなりませんけれども、しかし相当に限られておると思います。七人の公述人に対して申し上げるときに、一人だけ順序をつけますと、その人だけの質問で、あと時間切れになるおそれがございますから、委員長のお言葉には御協力申し上げますけれども、やはりほかの公述人に対する御質問も、そういう御協力する立場でやりますので、一つ御了解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/21
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022・田中正巳
○田中(正)委員長代理 ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/22
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023・田中正巳
○田中(正)委員長代理 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/23
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024・八木一男
○八木(一男)委員 それでは大野公述人に御質問申し上げます。
大野公述人の御意見として、私の聞き間違いであればこれは改めますけれども、政府案に対する大体の御意見はあったが、社会党案に対する御意見を承わらなかったように思うのです。社会党案に対する大野公述人の御意見を、簡単でけっこうでございますからおっしゃって下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/24
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025・大野元美
○大野公述人 私といたしましては、社会党案については、一昨日お送りを願いましてから研究をいたしましたので、ただ読んだ程度でございまして、御批判をすることははなはだ僣越かと存ずるのでございますが、私ども理想案といたしまして、大へんによい案だ、かように考えておるわけでございます。ただ現実の場合といたしまして、私ども市長という立場からいろいろ財源関係を持っておりますと、それに近寄るということ自体に対しては希望いたすものでございますが、現在のところ政府案を至急にやっていただくということが、市長りとしての考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/25
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026・八木一男
○八木(一男)委員 大野公述人のさっきの御意見を拝聴いたしますと、社会保障主義、国庫負担をふやせというような御意見、共同連帯の観念に立てという御意見、それから運用の地方還元の問題、それから事務費の問題がございました。その大部分について、社会党業も不十分だと思いますけれども、政府案よりは、大野公述人の主要な御希望に沿うておるように私どもは考えております。でございますから、これは川口市の市の行政をやられ、また財政上の苦しみをせられる方として、現実的にいいと思うけれども、まあできるかどうかわからぬというお考えでございましょうけれども、もし国家の方がやると決心してできれば、社会党案の方がよりよいものとお考えになっておられるのではないかと思うわけでございますが、その点、抽象的でけっこうですから、一つおっしゃっていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/26
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027・大野元美
○大野公述人 もちろん、ただいま八木委員のおっしゃる通りでございます。私ども現実の問題として、他の問題を多く扱っておるものといたしましては、なかなか無理があるんじゃないかということも、あわせ考えておるものでございます。国家財源がさような形で許すことができるならばという、淡い希望を持っておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/27
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028・八木一男
○八木(一男)委員 次に、事務費については同僚の滝井委員から詳細の御質問があると思いますから、内容には触れませんが、政府は市町村に事務を委託しながら、非常に少しの金額しか予定しておらない。そのために、おそらく市町村の方は財政のしわ寄せを受けられる心配を持っておられると思う。ところが社会党の方では、いろいろ案が政府案より複雑で、中の項目がいろいろ違っておりますが、事務費総体として、一年間六千億ぐらいのものを組んでございます。そのように事務費の十分なる配慮をしたという点において、政府案よりも、はるかに地方財政の点についての配慮をしているつもりでございますが、事務費の点だけでけっこうですが、両案を対照しての御意見をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/28
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029・大野元美
○大野公述人 事務費でございますが、私ども従来何の仕事をいたしますにつきましても、政府がわれわれにやらせるときには、全額国庫負担だということを申しながら、実際には半分ぐらいしか来ないというのが現実でございます。今回の場合もその轍を踏むんじゃないかというので、われわれは非常に心配しておるわけでございます。社会党案を見ますと大へん膨大なものを組んでありますが、しかしながら私ども、国民年金法案の説明、また新聞紙上でお伺いいたしますと、その点については非常な反対をしておるのでございます。たとえば年金の受付だけをやる、また年金証書を渡すだけだというような、まことにもってわれわれ市町村長の立場というものを理解せずに、そういう扱い方のみをしろということになりますと、われわれは今回の事務費というものについては、やってみなければわかりませんが、それのみをするということになればそんなに心配する必要もないのじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/29
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030・八木一男
○八木(一男)委員 事務費については滝井委員が十分な御用意がありますから、私の申すことと同じだろうと思いますけれども滝井委員の方にお譲りして、大野さんに対する質問は打ち切りますけれども、大野さんが終りましたら引き続いてほかの公述人に質問をさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/30
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031・田中正巳
○田中(正)委員長代理 滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/31
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032・滝井義高
○滝井委員 大野さんに、お急ぎでありますので一、二点お伺いしたいのですが、実は昨日政府との間に年金の事務機構について質疑応答をやったのですが、この年金の事務機構の末端をつかさどるのが郵便局と市町村になるわけです。従って市町村の事務が円滑にいくかいかないかということが、私は結局日本で国民的な規模で初めてできる年金制度の今後の運命を決定するのではないかと思うのです。そこで私たちがこの制度の発足にあたって参考にすべきものは、国民健康保険の問題だと思います。多分川口市は国民健康保険をやっておられると思いますが、そうしますと、過去数年の実績を見てみますと、市町村が一般会計から国民健康保険の特別会計に相当の持ち出しをやったわけです。ここ数年来、二百四、五十億の地方自治体の赤字が累積して参った。ところがこの二百四、五十億の赤字の累積の主たる原因は何であったかというと、ここ数年来国民健康保険の特別会計に一般財源を百十億程度注入した、すなわち二百四、五十億の赤字のうちの四割をこえるものは実に国民健康保険の赤字に山来したものであったということは、自治庁も厚生省も大体認めておるところなんです。そうすると、その百十億程度の赤字の原因は一体どこにあったかというと、市町村が国民健康保険をやった事務費というものを、実際に必要とした事務費だけのものは法律では全額国庫で見ると書いてあるが、大野さんが言われたように、くれなかったということなんです。今度この国民年金を実施するにあたって、政府は、昭和三十四年度の国民健康保険の事務費を被保険者一人当り九十五円支給することになっているが、その五割程度に当る五十円を出すことになったわけです。そして総額一億五千五百万円になったのですが、一体こういうことでやっていけるかいけないかという点でございます。これは、われわれ経験を持っておるのは国民健康保険以外にないわけです。事務量を国民健康保険の五割程度に見たから五割の金をやったのだと思いますが、実際これは事務的には国民健康保険よりも、まずAならAという人間が一体所得制限のついておる、たとえば本人が十三万円以下であるとか、あるいは世帯が五十万円以上の所得があるとか、配偶者は二十一万円そこそこになるでしょうが、二十一万円あるとかというような認定というものは、やはり末端の市町村の意見というものが都道府県知事の決定の重要な材料になるだろうと思うのです。そうしますと、それらの一つ一つの認定というものを市町村がやることになると、そこに非常にむずかしい問題が出てくると思うのです。いわんや拠出の事務が始まりますと、その事務というものはますます輻湊してくるだろうと思うのです。こういう段階で、一体市町村に一人当り五十円程度でやれるだけの見通しがあるのかどうかという点が一つ。今までの国民健康保険をやるについても、あなた方自身の自治体のいわゆる一般財源を相当持ち出してやられておるのだろうと思うのですが、そういう点との関係で、過去の御経験から見て、新しい年金制度を実施するにあたって、今年無拠出だけで一億五千五百万円でございます。しかし政府が当初予定したときは、相当膨大な事務費というものを厚生省当局は大蔵省に要求しておった。人数も四千七百人程度要求しておった。ところがそれが約三分の一の千八百人に削られるという事態もあったわけです。そういう点も御参考にしながら、市町村の代表としての大野さんの御意見を率直に聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/32
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033・大野元美
○大野公述人 ただいまの問題でございますが、私も先ほど意見として申し上げました通り、政府が考えている市の窓口というその事務量についての考え方にあると思うのでございまして、この点については、私どもの聞いた範囲では非常に認識が不足だ、かように考えているわけでございます。われわれ末端の行政をやるものは、果して政府の考えているようにただ受付、配付というようなことでございますと、ただいまの委員さんがおっしゃられましたような認定、またそれらに対する指導というものを何ら持ち合さないということでいいかどうかということにおいて、私どもはこの国民年金制度に対しての広報活動、今後の運営について非常に心配しているものでございます。従来から考えますと、国民健康保険におきましても多大の赤字を持っているような状態でございまして、われわれとしては政府の意図しているようなことでありますならば、その通りに行えというならば、私正直に申して、本年度においてはどうやら中以上の都市においてはできるのじゃないか、しかし小都市、町村においては不可能だ、かように考えているわけでございます。いずれにいたしましても、私は事務量の問題で政府が考えているようなふうにはできないということをまず先に申し上げたい、かように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/33
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034・滝井義高
○滝井委員 非常に貴重な御意見でございます。中程度以上の都市というものは入場税その他いろいろ財源がありますので、何とかやっていけると思うのです。しかし中以下の都市においては、事務量がどの程度になるかによって非常に不安定なものになるということは、私はあなたと全く同意見です。
そこで、実はもう一つこういうことがあるのです。保険料の納付の方法は、大体四月から十二月分までのもので四月三十日までに納めるものはスタンプ押しでいくわけです。国民年金印紙でいきます。ところがそれ以降のものになりますと、今度は市町村に全部提出することになる。そういう問題が一つある。それから市町村の事務というものは適用関係の事務と、徴収関係の事務と、そのほか住民の一切の窓口になる、こういうたくさんの事務がそこに出てくるわけです。それで、御存じの通り年令的にいって二十才から三十四才まで十五年間は百円、それから三十五才から、五十九才までの二十五年間は百五十円とってくるわけです。それが三十六年に拠出が始まりますから、えんえん四十年続いていく、国家とともにあるという形の年金ができる。そして当面政府の見るところでは、拠出の年金の対象者が二千六百万人程度と見ているわけであります。その中の七割に当る千八百万というものが強制の対象になる。それからあと共済組合や厚生年金に加入している配偶者、こういう人たち、それから五十才から五十五才までは任意加入になるが、それらの人が九百万から一千万人いるわけです。その中のおそらく三分の一が加入するだろうと政府は見ております。合せますと二千六百万人程度がこれに加入してくるわけです。そしてその二千六百万人を対象にして今のような事務をやるわけです。徴収、滞納処分一切やっていくことになるのです。そうしますと、これは今の国民健康保険とほとんど同じことをやることになるわけです。毎年、七十才になって給付をやる老人もどんどんふえてくるわけです。母子家庭、身体障害者も出てくるのです。それらのものを一つ一つ選んできちんと整理してやっていくことになれば、これは相当な事務費が要るし、市町村にも相当の機構を整備しなければならぬ。政府の答弁によれば、主として民生関係の部課でやってもらいたい、県の社会保険の機構も、今百前後ありますが、それをもう倍の百前後ふやす、こういうことなんです。そうすると、今の市町村の機構が倍にふくらんでいくということになった場合に、市町村の機構はとても今の人員でお茶を濁すというわけにはいかぬと思うのです。これは少くとも相当のものを増加しなければならぬと思うのですが、そういう点をあなた方はどうお考えになっておるのか。十一月から無拠出についてはすぐ始まるわけなんですが、全国の市町村長の皆さん方が一体どういう形で受け入れ態勢をお作りになりつつあるのか、これを一つお示しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/34
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035・大野元美
○大野公述人 私どもといたしましては、ただいま徴税に対する滞納整理その他に関する部面は厚生省がじかに、県または社会保険出張所の方でおやり下さるというような話で、本年度のみにわれわれは事務費を考えておるわけであります。しかし本年度のみを考えましても、先ほど申しました通り、非常に心配をしておるわけでございますが、私ども市長会の全般の意見といたしましては、民生課を窓口としてそこに事務担当者を置くという程度にのみ考えざるを得ないと思うのでございます。しかしこれはほんとうの市民サービスとなり得るかどうかということに対して、非常に心配をしておるわけでございます。でございますので、私どもも先ほど出しました通り、これを始めましてからその運営を考えていきたいというのでございまして、大へんに御心配をわずらわしておるようでございますが、われわれも同一な心配の中に今あるということを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/35
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036・滝井義高
○滝井委員 これは末端の皆さんのところの窓口というものが、いわば厚生年金という龍を描いて、そうしてその目になる部分だと思うのです。これがうまくいかぬ限りにおいては、年金制度というものはうまくいかぬだろうと思う。従って発足の当初からやはりそこらあたりを固めることが私は必要だと思うのです。従って一つ、でき得べくんばあなたの方でも十分市町会等で御討議いただいて、そうして国会に、こういうような市町村の事務機構と財政上の負担になるような予想が立つ、この程度の財政処置なり、こういう方針でやってくれという御希望がまとまりますれば、できればこの法案が国会を通るまでくらいに何か出していただけないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/36
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037・大野元美
○大野公述人 私どもといたしましては、国民年金につきまして事務担当者その他委員会を持ちましてやっているわけでございますが、中以上の都市においては千人に一人の人間が必要だ、またそれ以下においては五百人に一人というような線が出ておるわけでございます。ただ事務量そのものにおいて非常に簡単にお考えになっております政府当局とわれわれとの間には非常な差があるわけでございまして、私どもとしてもこの点は再三にわたりましてその担当である厚生省に向っては申し述べてあるわけでございます。しかし御要望がございますので、早急に取りまとめまして今国会中に御提出申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/37
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038・滝井義高
○滝井委員 どうぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/38
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039・田中正巳
○田中(正)委員長代理 午前中はこの程度として、午後一時三十分まで休憩いたします。
午後零時五十五分休憩
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午後二時九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/39
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040・滝井義高
○滝井委員長代理 休憩前に引き続き公聴会を再開いたします。
公述人に対する質疑を続継いたします。八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/40
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041・八木一男
○八木(一男)委員 国会側の不手ぎわでお待たせしましたことを非常に申しわけなく思っております。
〔滝井委員長代理退席、五島委員長代理着席〕
私どももそういうことで、公述人で質問申し上げたい方が時間の関係でお帰りになって非常に残念でございます。実は磯村公述人が基本的な点についてお触れになりませんでしたので、それについて磯村公述人に御質問申し上げたいと思いましたけれども、残念ながら御退席でございますので、お待ちいただきました公述人の方に、磯村教授に対する御質問を五人の方にさしていただきたいと思います。磯村教授は学識経験者であられまするけれども、各界の代表である皆様方の五人の御意見の総合点が、一人の学識経験者の御意見よりもはるかに権威のあるものと私ども考えておりますので、そういう点でお残りの方々に根本的な点についてお伺いをいたしたいと思います。
社会保障制度というものの中の国民年金制度の問題でございまするが、社会保障というものは、日本の法律上の立場で見ますと、憲法二十五条の立場から関係があるわけでございます。健康で文化的な最低の生活をすべての国民に保障するということ、それからすべての国民がそれを持つ権利を有するということ、それからそれを具現化するために社会保障とか公衆衛生を政府がやらなければならないという義務がはっきり明記をされておるわけでございます。でございまするから、そういう制度は社会保障に徹底した考え方に立っていかなければならないと思います。ところが私どもの提出いたしております日本社会党の案は、その努力を最大限にいたしておりますけれども、公述人の方の平等さんの御意見にもございましたし、それからまた田中寿美子さんの御意見にもありましたけれども、この案とても完全にりっぱな案とは言い切れないと思います。それに比較いたしまして政府の方の案は、これは社会保障に徹底した国民年金とは言えないで、国民年金の名前に値しないといってもいいくらいな貧弱な内容ではないかと私どもは考えております。
まず、いろいろの部門がありますが、その基本的な骨組みといたしまして、各党ともまた各審議会も拠出制をとっておりますので、拠出制の中の老齢年金というものがすべての基本になっていると私ども考えております。その老齢年金の額及びそれに関連した事項について申し上げますと、政府案は六十五才から三千五百円という金額を基本といたしております。しかもその三千五百円にはいろいろと要件がついておりまして、四十年間完全に保険料を納めた場合にそういう適用があるわけでありまして、二十五年間しか保険料を納めていない場合には二千円になる、年二万四千円になる、十年間の場合には一千円で年一万二千円になる、あるいはそれ以下の場合には減額年金もないというような、さらに三年未満の場合には保険料すら返ってこないというようなことになっているわけでございますが、とにかく一番大きなところで六十五才、三千五百円。社会党の方は労働者年金と一般国民年金の二つの制度がございますが、その金額の少い方をとりましても一般国民年金の八万四千円、六十才開始、月にいたしますと七千円になります。それとの比較で御意見を拝聴したいと思いまするが、政府案の月三十五百円というものは、健康で文化的な最低生活というものには達していない非常に乏しいもをあると私どもは考えております。特に現在の時点で、国民生活があまりにも貧困でありまして、国民があまりにも人がいいものでございますから、それでも少しいいではないかと考えがちの人がおありのようでございまするけれども、この制度が完成するのは四十年後であります。四十年後には世り中が非常に発展し、国民生活もよくなって参らなければなりません。従って文化的な生活、健康的な生活というものも発展しているわけであります。もしいろいろの医療法が発達したならば、たとえば脳溢血もすべてなおる、ガンもすべてなおる、あるいは老衰もしない、若返りもできるということになった場合、当然そのようなことを受けたいというのが健康で文化的な生活を要求する国民の権利である、ところが現在のような、もしガンがなおる方法ができても、それは現在金がかかるからしてやらないというのでは、健康で文化的な生活を保障することにはならないと思う。健康的ということも文化的ということも発展するわけです。現在ですらよく考えると三千五百円というのははなはだ少い金額です。ところが四十年後に三千五百円、これでほんとうに憲法の条項に沿うということは断じて言えないと思うのであります。これは磯村先生にお伺いをしたかったわけでありますけれども、御退席でありますから、御在席の五人の権威者の方々にこの点について、端的でけっこうでありますから、一つ御意見を承わりたいと思います。
それに関連いたしまして、今度六十五才開始の点であります。平等公述人の御意見にございましたように、日本の農民階層は非常に老衰が早い、六十才でもおそ過ぎる、五十五才にしろというお話がございました。私ども傾聴をいたしております。とにかく基本的な年金で六十五才、無拠出年金で七十才というようなことでは、ほんとうにそういうような人たちの老齢保障とは言えないと思います。これは農民だけの話ではなしに、すべての勤労者、すべての国民に同様に言えることだと私どもは考えております。欧米諸国の例でも、六十才のもありますが、たまにそこに六十五才のものもあり、欧米諸国でも六十五才だから、日本も六十五才でいいというような間違った理論が政府案の根底になっております。また学識経験者といわれる人でも、私どもは間違っていると断定しているけれども、そういう議論を吐いている人たちがあります。しかしそれは間違いであって、わが国のようにいろいろの社会保障を必要とする国においては、欧米諸国より以上な社会保障をしなければならないという原則的な立場にありますし、そのほかに日本人の体位は、非常に貧困な生活で苦闘しておりますから、早く老衰をいたします。そうなりますと、欧米諸国においてたとい今六十五才で労働能力、所得能力があるとしても、日本においては事情がはるかに違うので、その点で低い年令にしなければ目的に沿い得ないと思う。
次にもう一つは、将来の問題であります。これは田中公述人のお話にございましたけれども、今科学が大いに進歩しておりますが、工業、商業あるいは農業におきましても、すべてのサービス部門を含めましてオートメーション化の時代に入っております。そういうわけでオートメーションの急速に進行しつつあるのは、ここ数年来の話であります。ニュージーランドとかイギリスというような国が社会保障の見本のようになっておりますけれども、このオートメーションという要素を入れてニュージーランドなりイギリスの社会保障は作っておられないわけであります。ニュージーランドの社会保障の発足したのは二十数年前であります。イギリスのも非常に昔であります。でありますからオートメーション化の進行しつつある現在の時点において考えるときには、それを要素に入れて考えなければならないと思います。その場合に、そのように進行したならば国民の働く時間が総体的に少くなっていい、少くならなければならない時代になるのです。もちろん労働時間の短縮も行われるのでありましょう。そういうことが行われるといたしましても、六十才以上の人が働くというようなことになったら若い人の働く場がない、そういうことになります。少くとも、ともかく六十才からは保障でゆうゆうと老後を送ってもらう必要がある、そういうことをあわせて年金を作らなければならないと思います。これについては反論があります。六十才を越しても元気だ、働きたい、だからそういうものを働くところからたな上げされてしまっては困るというような一部の人たちの意見がある。しかしその人たちは教育面であるとか、政治的な面であるとか、あるいは文化面であるとか、そういう点で堂々と働いていただいたらいいのでありまして、生産とか雇用に関係のあるところは若い人だけでやっていただけばいいのではないかと私どもは考えているわけであります。その点で六十才開始が至当であって、基本的に六十五才開始というのは間違いであると思います。現在の時点では日本人の体位が老衰が早いというところから見て、これは明らかにまた下げなければならない。どっちから考えても開始年令は低くならなければならないし、また金額は高くならなければならないわけでございます。その二つの、年令と金額につきまして、一つ率直な五人の公述人の方々の御意見を承わらしていただきたいと思います。右の方から順番にお答えいただければ非常に幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/41
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042・小笠原文三
○小笠原公述人 ただいまの金額の点でございますけれども、これは御質問にあった通り、少くとも社会保障と銘を打つ限りにおいては、健康で文化的な最低限度の生活というものが保障されなければならない。それと現時点においての見方から見るのではなくて、やはり三十五年、四十年という先の老齢保障である限りにおいては、その時期において、日本の経済発展の成長率、そういったものを考え合せて、年金というものが当然作られなければいけないのではないか。そういう点から申しますと、経済成長率を少くとも一年に六%、あるいは六・五%、こういったように現政府自身がおっしゃっておる点からいきますれば、その計算からすれば、むしろ現在の社会党の七千円よりも、もっと高い数字が出てこなければいけないのではないか。その辺に、政府の今度の案というものが、年金という銘は打っておるけれども、年金の役目を果していない、そういう点でわれわれは大いに不満を感じているわけでございます。
それと年令の点でございますけれども、われわれ労働者から申しますと、厚生年金の中でも、坑内夫、船員保険、これの年金開始の年令は五十五才でございます。それと、ほとんどの企業におきまして、近年定年制というものが非常にシビアになってきた。五十五才をさらに引き下げようという情勢でございます。そうなりますと、定年でやめまして、しかも退職一時金、そういったものの額は非常に少い。ましてや、日本のような低賃金におきましては、ふだんの老後のための蓄積というようなものは、ほとんどできない。ましてや、現行の厚生年金その他の現行年金制度におきましては、その額は老後を養うに足りない、こういうことになりますと、当然定年その他の関係から見ましても、六十五才というような年令は何を基準にして出されたのかわかりませんけれども、最低でも六十才——これは欧米の例といいますけれども、欧米の場合は、当然ふだんの賃金が高い、それと老後の福祉施設といったものが非常に完備されておる、そういった現況とにらみ合せることでなければ、欧米の例というものは引けないのではないか。こういう点から見ましても、政府案の六十五才というものは、これは不当に高い。最低でも六十才という線を堅持しなければいけないのではないか、こう思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/42
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043・平等文成
○平等公述人 私の意見はこの前公述のときに申し上げた通りでございますが、今の公述人のお話のように、大体日本の場合でも、六十才では、もうすでにこれは老年に達しておりますので、当然六十才以上は年金の対象になるべきものだと思っておりますが、先ほども申しましたように、特別の過労の生活をしている者、つまり重労働をしている者たちにとっては、六十才からではすでにおそいという感があるのでありまして、現在厚生年金においてすでに施行されておりますように、農民も加えて、非常に重い労働をしております者たちには、少くとももう五年くらい早い年金制をしいていただくのが至当であろう、こういう工合に考えます。
また金額に対しましても当然でございまして、三千五百円という金額では、とうていこれは生活を維持する段階ではないのでありまして、子供にお菓子を買ってやるとか、自分のたばこ代をかせぐというような意味の年金であるならばいざ知らず、いわゆる文化的な生活、最低の文化水準を維持するという意味のものであるならば、三千五百円では、当然これは少な過ぎる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/43
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044・国井国長
○国井公述人 健康で文化的な最低生活を保障しまするためには、政府案の三千五百円では、とうていその目的を達することができないのではないか。この点につきましては、政府案も、提案理由の中に、三千五百円というのは老齢者が世帯一の一員として、共通消費の部分だけ除いて、個人の生活として見ておるのだ、こういうことでございますので、私は当面やむを得ないのではないか、こう思うのでございまするが、政府案も、将来におきましては、現在イギリスの国民保険が行き詰まりまして、新しい年金制度に移行すると同じように、やはり将来におきましてこの給付内容の改善をするであろう、こう期待いたしまして、当面国民年金の手がかりと申しますか、完全な国民年金への第一歩としまして、やむを得ず承認する、こういうことであります。
それから、支給開始年令につきましても、七十才の老齢年金は老齢年金にあずかる年令層というものは非常に少いのでありますし、拠出年金の六十五才も、これは非常に高い年令の者でなければ受けられないのでございますので、将来は、当然拠出制につきましても、無拠出制につきましても、六十才程度に下げるべきであろう、こう私は考えておるのでございます。特に女性の場合には男性に比較いたしまして老衰に入るのが早うございます。それから社会党案では、障害年金は三級程度、障害率大体四〇%くらいのものも支給対象になるのでございますが、政府案によりますと、拠出制の方で障害率六〇%程度、無拠出制の方は一〇〇%以上の障害のものでなければ、支給対象にならないのでございますので、身体障害者あるいは内部障害者、こういったようなものにつきましては、老衰の度合いと申しますか、生活能力が衰えます度合いというものは早いのでございますので、当然支給開始年令というものは将来引き下げてほしい、こう考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/44
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045・田中寿美子
○田中公述人 私はやはり先ほど公述しましたことを繰り返すことになりますので、ごく簡単に申します。六十五才、三千五百円というものは、憲法の二十五条の理念に沿わないという意味で、これは生活保護の四千円以下であるということを申しておきたいと思います。社会党の七千円も、将来三十年、四十年先では低いんじゃないかと思っております。
それから年令の方は、六十五才開始、これは拠出と無拠出で、無拠出の方は七十才となっておりまして、ここに差をつけるのもおかしいと思います。さっき八木委員のおっしゃいましたニュージーランドやイギリスなどは、世界でも有数の生活程度が高い国でございます。そういう国でとっております制度をまねるという行き方は、非常に不適当だと思います。ことに、オートメーション化だけでなくて、日本は人口が毎年々々非常な勢いでふえるのでございますから、人口対策としても、どうしても六十才、少くとも最低六十才になったら、一応生活が保障されていくというふうにしたいと思います。もし六十才になりましても、なお生産座活動で元気に働ける人は、それは社会党案の中にありますように給付を延ばしておくこともできるのでございますから、そういう方法によってやっていくべきだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/45
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046・中村発子
○中村公述人 私は、老齢の場合に、どうして拠出と無拠出の差をつけるかということです。そうすると貧乏人は、受ける場合に何か妙な感じがいたします。持てる者は六十才でよい、あるいは六十五才でよい、そうすると貧乏人だけは非常に長生きをするということにならなければ、その辺の焦点がはっきりしないのではないかと思います。ちょっとお時間をちょうだいして恐縮でございますが、御存じだと存じますけれども、大島で私は未亡人会を作りましたときに、歩いておりますと、林の中で年寄りの腰の曲ったような方方が木を切っております。たきつけを取っております。また畑へ参りますと、おばあさんが草取りやら何かをいたしております。大島というところは、長男が結婚いたしますと、その翌日からもう別居することになっております。それでいろいろのわずらわしいしゅうとめだとか、妻だとか、嫁だとか、そういう問題は割合にないと思いますけれども、そういうふうなところにおきまして、私は老齢年金というものは大島のために考えたのじゃないかというような気持を持って帰って参りました。そうして私がその人たちに質問いたしますと、若い人は、私たちはよく年寄りのめんどうを見ておりますとはおっしゃっておりました。それはあたたかいものでもこしらえれば、おじいさんやおばあさんのところへ持っていくことも事実だと思いますけれども、第三者の目から見ました場合に、上流階級は存じませんが、働かなければ生きていかれない階層のことを考えました場合に、何とか考えてあげなければならないというふうに考えて参りました。そういうふうなわけで、できるだけ年令は低く下げていただきたいというような考えを持っております。
それから給付の点でございますけれども、先ほどから皆様方がおっしゃいますように、全体といたしまして、けさほどもお願いいたしましたように、文化生活どころではございませんで、食べていくのにも精一ぱいになるかならないかという線でございますので、もちろんこれも考えていただきたいと存じております。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/46
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047・八木一男
○八木(一男)委員 大へんけっこうな御意見を皆様から伺わせていただいて非常にありがたいと思います。その点で、ちょっと国井さんに今の問題に関連をしてお伺いをしたいわけでございまするが、将来において金額をふやしていけばよい、あるいはまた年令を減らしていけばよいというふうな具体的な国井さんのお話がございました。国井さんのさっきの公述を控えておりましたが、あまりたくさん控えたのでちょっとわからなくなりましたけれども、国井さんは無拠出が年金の根本的な制度であるべきだというお考えを持っておられるのではないかと思います。私も根本的にはそうであるべきだと思っておりますが、年金制度を無拠出で完全にやるためには減税を一切ストップして、増税までやらなければりっぱなものができません。そこで仕方がなしに拠出制ということになったわけであります。政府案は拠出制であって積立金であります。そうすると将来直すときに非常に不合理が起るわけであります。積立金ですと開始の年令がおそくて、小さい金額のために、今から積み立てられておる。十年後に今度直そうとする場合に、前にさかのぼって直さなければならぬということが起ります。そうなると、目標をきめたものは、四十年先、三十年先のものは将来において直すということは非常にやりにくいことが起ります。今から四十年後、三十年後の目標を立てて、それでりっぱな所得保障をする制度を作るべきだと思う。ただし全部無拠出あるいは賦課方式でやりますと、これは国井さんのおっしゃる通りになります。財政の余裕ができたときにやればよいということになります。そういう意味で、政府案がもっと無拠出の要素を入れた賦課方式を取り入れるということが一点、そうでなければ今から積立金方式にしろ、もっと国庫負担をつぎ込む決心を強くして、今から完全な目標に向って進む、政府案が完全でなくても、やや完全に近い目標を持って進むということに今からかからないと、将来直しにくくなると思う。その点、国井先生のお考えを一つ伺わしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/47
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048・国井国長
○国井公述人 八木先生御指摘の通りでございまして、私も根本的には年金は社会保障に徹底するものといたしまして、無拠出年金であるべきであると思うのでございますが、それはいろいろな条件があるのでございます。この際特に強調いたしたいことは、現在年金制度につきましては、一般国民には軍人恩給その他の考え方がだいぶ強いのでございまして、年金といえば国から一方的に支給されるものである、自分が何らの負担をしないで支給されるものであるというふうに素朴に考えがちな方が多いのでございますので、それでは私は年金制度はとうてい維持できない、こう考えるのでございますので、やはりこれは税の形式なりあるいは保険料の形式なりで、国民がそれぞれ応分の負担をしなければ年金制度は維持できないものである、こう考えまして、現在におきましては拠出制を建前とするものをとっているのでございます。ただ完全積み立ての方式にいたしましても、日本の年金制度におきましても、あるいは先生御承知のように諸外国の年金制度におきましても、拠出金と保険給付との間の対応関係というものは——緩慢なインフレあるいは生活水準の向上その他によりまして、対応関係というものは、御承知のようにだんだん薄れて参りますので、どの年金をとりましても、だんだん将来は賦課方式的な色彩が強くなって参るのでございます。しかしながら最初から無拠出年金によりますところの賦課方式を作りますと、将来万一それが失敗いたしましたときに直すような手段はないのでございますので、私の考えといたしましては、社会党八木構想のように積立方式と賦課方式を併用したものにすることによりまして、財政負担というものがある程度時代的に水平にと申しますか、均衡できる、当然現在におきまして国民年金を一挙に実施いたします場合に、実施当初におきます非常に大きな財政負担というものが緩和できるのであると私は考えているのでございます。その意味におきまして、今度の政府の案によりましても、無拠出年金につけまする国庫負担が約三百億でございますが、これは昭和五十年ごろからだんだん減ってくるように思っておるのでございますが、一方拠出に対しまする国庫負担は、拠出時に収入保険料の二分の一をつけることになっております。この方はただいま申し上げましたように、給付のときに給付費の二分の一をつける、こういうことにいたしまして、時代的な財政負担の均衡をとっていただくということにしていただけば、当面の給付内容ももっとよくなるのであると考えるのでございます。社会保障の国庫負担の問題につきましては、年金のみでなくて結核対策の問題でありますとか、その他いろいろの問題もございますので、私の乏しい勉強では昭和三十六、七年ごろが非常に国庫負担の金繰りと申しますか、これが今のままでは苦しくなるであろうと考えますので、諸先生方におかれましても、国民年金を中心といたしまして、社会保障費の財源確保、そういったような問題につきまして、いろいろとお考えをいただければ仕合せである、こう存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/48
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049・八木一男
○八木(一男)委員 国井さん、時間の関係がありますから、まだ伺いたいことがありますけれども、一般的な点に戻ります。無拠出年金の点につきまして、ここにお待ちいただきました方々はかなり触れていただいたわけけでございますが、実は磯村先生にお伺いしたいと思ったのですが、御当人がおられませんので、それ以上の権威として四人の方に伺いたいと思います。無拠出年金というものが、社会党案にしても初年度、平年度計算で千二百十二億、政府案は平年度に直すと三百億ちょっと、これはたくさん出さなければいけないことは自明の理でありますが、とにかく一定の金額に限られたとして、今度は何か制度を組まなければならない。そのときには普通の年金概念と離れなければいけないと思う。年金はすべての対象者にやるというのが基本的な概念ですけれども、そのもとには所得のない人に所得保障をするのが最初の概念、そうして所得のない人、能力のない人全部にやるというのが第二の概念。ところが無拠出年金のときは金額が限られているのだから、第一の概念に戻って所得保障をすべき度の多い人にたくさんするという組立て方にしばなけれいけないと思う。ところが公述人の御指摘もありましたように、これは磯村先生からも御指摘がありましたけれども、バランスが逆転をしております。もっとも所得保障という概念は、生活保護の点を別としまして、趣旨からいいますと障害年金であります。その次は母子年金であります。その次は養老年金、政府案は別な名前になっておりますけれども、とにかくそういう年金であります。わが党では身体障害者年金、政府では障害援護年金、わが党では母子年金、政府では母子援護年金、わが党では養老年金、政府では老齢援護年金という名前になっております。そういう順序であるべきだと思う。ところが逆転をしておる。特に二級障害者には一文も出さない。一級内科障害者には一文も出さない。それから障害者に対しては政府は家族加給をつけない。母子家庭にはつけている。そういうような間違いがあります。次に母子家庭が結局老齢年金と同じだ、こんなとんでもない話はありません。ずっとたくさん必要なはずであります。そういうふうに逆転をしている点がいけないと思う。それをひっくり返して考えていただかなければいけないし、それからおのおのの種類の中でも、政府案のように一律にしていれば、そこに必要の度の厚い人にたくさんするという要素が消えてなくなります。わが党の案でも十分ではありません。わが党の案では養老でも母子でも障害年金でも、みんな二段階でございますが、ほんとうに親切にしてやれば、これは五段階でも十段階でも分けるべきだと思う。しかしながら事務その他があるので、わが党の案をどうぞおしかりいただいてけっこうでございますけれども、わが党の実は全都二段階にいたしました。ところが政府案はそれを一律でほったらかしておる。そうすると老齢の方の、所得五十万の人はもらえるけれども、五十万の人がもらうのと所得十万の人がもらうのと同じというような、そんなでたらめな話はないと思う。母子の方でもそうだ。結局母子は十三万、それに加算がついて、ある場合にはちょっとこえますけれども、十三万までしかくれない。ところが十四万の母子には一つもくれないということがあるほかに、七万しか収入のない母子家庭と十三万の母子家庭も同じだ。そういうことではほんとうの配慮が少ないと思う。そういう逆転した点が明らかにいけないのであって、政府でできるだけたくさん金を出すと同時に、必要の度の厚い人に厚くするという方式をとらなければいけないと思う。それの極端な例が生活保護の併給をしてくれないという点です。一番貧しい階級の身体障害者なり母子家庭なり老人なりがこの年金を受けない。政府案の法律だけでは年金は出ることになっていますけれども、公述人の御指摘の通り、その金額だけ収入認定から減らされますから、実際にもらう金額は同じだ。私どもの考えでは、生活保護階級のこういう老人とか障害者とか未亡人には、ほかの人よりも倍も三倍もあげてもいいと思う。少くとも同じにしなければ意味をなさない。それが法律案には一切盛られておらない。社会党の追及によって坂田厚生大臣は、保護家庭についても加給をつけることによってカバーしたいと言っておる。坂田厚生大臣というのは非常に人格者で、純情でいい人でありまして、その人の気持としては間違いないと思う。ところが政府は全部そういう純情な人ばかりではないのです。金持ちのごきげんばかり伺っておればいいという人が政府にはたくさんいるわけです。ですからこれをはっきりさせなければ危なくてしようがない。ところが坂田厚生大臣の方は、結局これは告示でやるという考え方です。社会党は法律で生活保護法に明記するか国民年金法に明記しなければいかぬということを言ったら、それは考えますというところまで前進をされました。しかし坂田さん一人の御意見では、内閣はひっくり返らないおそれがあります。公述人がこぞってけしからぬとおっしゃっておられますけれども、その主張が強く反映されましたならば、その点についての頑迷な人も幾分悟るところがあって、そういうことが法律に明記されることになると思う。
それともう一つは、金額が今のところでは千円の老齢援護年金、これに対してどういうふうに考えておられるかわかりませんけれども、千円までの考えしか今のところ持っておられません。母子年金についても障害年金についても、それと少くとも同額、むしろそれ以上ということにしなければ意味をなさないのです。そういう点についても簡単な御答弁でけっこうでございますけれども、どうか四人の方々から率直な御意見を伺わしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/49
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050・小笠原文三
○小笠原公述人 ただいまの御質問、まことにその通りでございまして、少くとも社会保障をやる場合におきましては、より多く負担できる能力のある者がより多く困っている人を見て、やる、これが基本的な考え方であって、それは所得の再配分という一つの役目を果すわけでございます。そういう意味から言いますと、確かにその点での配慮がほとんどなされていない。特に無拠出年金の援護年金の場合において、配偶所得を十九万円で政府案は押えておる。社会党案は配偶所得に制限はありません。それと世帯所得におきましては政府案は五十万円、社会党案におきましては三十六万円。そうなりますと、五十万円という金は月に直すと四万円でございます。四万円の所得のある者が世帯におる場合にはやって、そして夫婦二人で十九万円、これには制限を加えよう、こういう考え方というものは、端的に申しますと、今言ったいわゆる援護年金というものは何か今度の選挙に人気取り的な役目を果すようなにおいを非常に強く感ぜざるを得ない。この点はぜひ今言った、より多く困っている者により多く与える、限られた金の中で社会保障を考える場合は、当然そういう配慮があってしかるべきではないか、こう考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/50
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051・国井国長
○国井公述人 今度の政府案の援護年金の所得制限が非常にきびしいのでございますが、その前に、援護年金という名前は受給者にとりましてはなはだありがたくない名前であります。身体障害者及び母子世帯は、身体障害者なるがゆえに、あるいは母子世帯なるがゆえに、生活保護世帯に落ち込まないために歯を食いしばって努力しておるのであります。今度無拠出年金ができましたのは貧困を給付の原因としないで、労働能力の損傷あるいは生活能力の減退を事由といたしまして、それに対する保障としての意味の年金が創設されたと私は考えるのでございますが、せっかくのこの、金額は乏しいけれども、身体障害者、母子世帯を明るく励ます年金が、生活扶助あるいは扶助年金を連想しまする援護年金という名前はまことに不適当でございますので、これは社会党案のように特別年金あるいは別の名称では福祉年金というふうな名前をお考えいただければよろしいのではないかと考えます。
それから所得制限の問題で、特に身体障害者の場合に、政府案は無拠出年金の対象を非常にしばりまして、ほとんど労働能力がなくて介護を必要とする一級に限定いたしております。この身体障害一級の両眼失明あるいは両腕のない者が所得を得まするためには、一般の五体健全な者と違って特別の費用を要しますが、これも老齢者と同じように十三万円でしぼったということは、身体障害の特殊事情を全く考慮していないといってもよろしいと思いますし、さらに所得制限を本人、世帯及び配偶者の三段に強くしぼった点も問題でありまして、身体障害者の配偶者にたまたま所得がありましても、これが両眼失明でありますとか、両腕がない、あるいは両足がないというふうな身体障害者の配偶者が所得を得まするためには、他の補助を要するとか、そういったふうな特別の所得を得まするための出費がありますので、この点も緩和をいたしまして、障害年金、これは母子年金、老齢年金も同様であろうと思いますが、特に障害年金の場合に本人の所得制限は十三万円、それから配偶者の所得制限は所得税納付程度となっておりますが、これは少くとも三十万円以上の所得がある場合と、このように緩和することによって、ややこれが身体障害者の潤いになるものである、こう考えるのでございます。
それから生活保護を受けまする身体障害者、老人、母子は、今度の援護年金の政府案によりまするところの受給者二百五十七が五千人のうちに約十九万占めておるのでございますが、これに対しまする実質的な無拠出年金の支給は、告示でなくて、そういったふうな行政措置でなくて、はっきりと法律に明記してこれを保護して下さいますように、この点ぜひ日本社会党、自由民主党並びに政府当局の御高配をいただきたい、こう考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/51
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052・田中寿美子
○田中公述人 私は先ほども述べましたけれども、やはり社会保障ということの考え方が、何かお上からいただくとか、あるいはくれてやるという考えのものであってはならないと思うのであります。すべて国民として生まれる者は、全部死ぬるまで安全に生活できるという精神にのっとるべきものだと思います。それですけれども、先ほど八木委員が言われましたように、第一番にはまず所得収入のない人から救っていくという手を打たなければならないのでして、その点で、無拠出年金を受ける人たちに対して最もつれない政府案であると思っております。それで、政府の老齢援護年金についての所得制限だけでなくて、配偶者十九万円までの制限、ああいうことに対しても、私はとってしまっていただきたいと思います。それから母子援護年金についても、家族加給なんかを当然つけるべきものだと思います。一律にいたしますと、ほんとうに必要な人の手にいかないという心配がありますから、何段階かの配慮をして、一番ボーターのところで受け取れないような人ができないような考慮を十分していかなければならないと思います。
それから生活保護との関係の差引の問題は、先ほどもちょっと例をあげて申しましたけれども、やはり生活保護法にはだいぶいろいろと欠陥があるようでございまして、現在保護を受けている人のうち内職などいたしました収入が差し引かれたり、あるいはその子供が高等校学へでも行くようでありますと保護がもらえないといういろいろな問題を持っておりますが、今回のこの無拠出年金も、生活保護をもらう人に対しては全くプラス・マイナス・ゼロになるようなものであって、少しも役に立たないことになりますと、社会保障の一番最初の段階で手をつけなければならない人たちをオミットしていくことになりますので、この点で生活保護法を改正するか、あるいは国民年金制度の中に明確な条文を入れて、年金を受け取れるような考慮をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/52
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053・中村発子
○中村公述人 先ほど無拠出の年金給付のことにつきまして、八木先生からのお話がございましたように、バランスの逆転はもちろんのことでございますが、私が初めから疑問に思っておりましたのは、ほんとうに給付の対象というものが、人間としての価値の転換というものがそこいらにあるんじゃないか、一体この問題はどういうふうに政府の方では考えているか、もちろん経済的の面もあろうと思いますけれども、八木先生に御同調申し上げるものでございます。
それから所得の場合にも、母子世帯と申しましても十三万というものに一応線を引いておりますので、それをもっと高度のものに、できるならば三十万、あるいはもう少し上げていただきたいという感じがいたします。
それから保護法の規定場合いでございますけれども、これは非常に問題がございます。私事を申し上げて非常に恐縮でございますが、ただいま私の仕事は、あるいは御存じない方もいらっしゃるかと思いますが、最下層を構成いたしておりまする母子を八百名ほどお預かりしております。子供が三百名、親が三百何十名かおります。ところがその世帯は、いろいろの条件、社会の世相が複雑になっておりますので、母子には違いありませんけれども、死別というものはほとんど少うございまして、告別が三分の二近くくらいのものを含んでおります。今回の場合は死別ということになっておりますので、それも一応御無理でないとは存じますけれども、この生別というものに対しましては、死別よりはもっと見るに忍びないものがあるのでございます。手続の方を存じませんので、籍を取るとかなんとかいうようなことは、主人が姿をくらましておる場合もありますし、またいろいろの理由で別居いたしております場合がございますので、今日は簡単に申し上げますが、母親が私どもの施設におるということがわかりますと、しばらく姿を消しておりました主人が帰り道を持ちまして、母親の収入を持っていく、ひどい場合には、血を売ってこい、そういうような現象も間々ございます。今さっそく生別の問題を取り上げていただきたいとは申し上げませんけれども、何とかその辺のことを考えていただきまして、あるところまでの線をお引きになりまして、できるだけ早くこれも考えていただきたいと思うのでございます。
それから、ほとんど母子家庭ばかり扱っておりますものですから、今の限界におきましては、保護世帯の者はとうてい更正は認められないような厳格な収入認定を与えられております。多少よくなりました者に対しまして、私どもが考えておりますことは、何とか理屈を設けまして、一日のかせぎ高からせめて五円でも十円でも貯金をさせれば、これだけの苦労がこれだけのものに実った、それだからできるだけ早く寮を出て、そうして一般の市民としての生活をするようにというふうに指導はいたしておりますし、いたして参りたいと思います。けれども、少しでも収入がございますと、もうきびしい認定がございまして、これはもう認められないというふうなことになっておりますので、先ほどもお話がございましたように、今度の国民年金はほんとうにだれでもが受けられる権利であるというふうな気持でこれを処理していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/53
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054・八木一男
○八木(一男)委員 今の問題について四人の公述人から大へん貴重な御意見を拝聴さしていただいて、非常にありがたいと思っております。
中村公述人が最後におっしゃいました点は、生活保護法自体と年金との関係の点もそうですけれども、それ以外の点も改正しなければならない問題であろうと思います。私どもの日本社会党におきましては、自立更正のために、生活保護を受けておられる方が、自分の努力である程度の取入を得られた場合に、それが全部引かれるようなことがないように、弾力性を持つような方法について今いろいろと検討いたしまして、ことしじゅうにこれを決定いたしまして、政府にも御相談をいたしますので、その点進めて参りたいと考えておるわけであります。
次に、四人の公述人の方々に総括的にまたもう一点だけお伺いして、あとから個々にお伺いいたします。公述人の方々の御意見を拝聴いたしますと、非常に僣越でございますが、社会党の案が、完全でないとしても、いろいろの点で配慮がしてある点、それからまた勇敢に打ち出している点について御同感の意を表明していただきまして非常にありがたいと思っております。この点で、対照しまして政府案が非常に乏しい点について強い御批判があったものと私どもは理解するわけであります。そこで、わが党の案を実行する場合に、一般には非常にその金額が多い、いろいろの条件がいいから実行がすぐできないのではないかというふうにお考えになる向きがありがちでございます。そうではないのでございまするけれども、ありがちのようでございまするから、少しく立場を申し上げまして、公述人の方々の御意見をまた伺いたいと思います。
わが党の案は、千二百十二億、最初に要るわけでございますが、最初の半年間は六百六億円でございます。それから次の年になると、千二百十二億ということになるわけであります。いろいろとこれを実行することは、ほんとうにしようと思えばどうでもできるわけであります。たとえば増税をしたら幾らでもできるのでありますが、増税ということは世の中でまたそれに対して反対もございますから、今の財政ワクに大体なぞらえて、それでやってもごく簡単にできる内容だと私どもは考えております。一般的な税金の面ではありませんけれども、個別的な税金の而も関係はありますけれども、たとえば租税特別措置法という法律がございまして、非常に大きな会社、大きな金持ちに減税が必要以上にされている状態でございます。租税特別措置の中には、ほんとうに働く大衆に必要な部分もございます。というのは農民の方々が早場米を供出されたときの特別減税であるとか、商売人の方々で青色申告をされた方の減税であるとか、あるいはお医者さんで、診療担当者が単価が少くても医療に邁進しておられるその埋め合せとして、医療費としての特別減税であるとか、そういう必要な部分もあるわけであります。必要な部分もありますけれども、その大部分は金持ちが必要以上にもうけるようになっておる。普通の税金を取られても何億というような利益が上るのに、特別に減税を多くしてしまって、さらにその利潤を高めていくという点がある。それを全部非常によく直しますと、少くするとか、なくするというようなことをしますと、私どもは七百億円くらいの財源はすぐ浮いてくると考えております。それに対しまして、そういう生産会社の金を取り上げてしまうと、工場とかいろんなものを作る資本がなくなるから、生産活動に困るじゃないかというようなことを金持ちの味方の人は無理にこじつけて申すようであります。しかしそれではそうでもないと思います。それだけ取り上げても十分にもうけのあることは明らかであります。いろんな大会社の株が増資というので猛烈に高くなっている点でも一般的にわかります。またほかの例でいきますと、日本の大会社の今主部の交際費が九百億円であります。交際費なんというのは、そんなに要るはずはありません。普通に紅茶でも飲んでまじめに話すのだったら、それの百分の一、千分の一で済むわけです。九百億もかかるのは、いわゆる料亭で、自分の会社だけがもうけようとして、インチキなことをやる交渉をする。そのために猛烈なぜいたくなごちそうをする。そうしてそれに便乗して、社員が社用族というようなことでぜいたくをする。そうして帰りがおそくなって奥さんを心配させる。自分もからだを悪くする。世の中の風紀も悪くなる。そういうような悪いことをしている点があるのです。ですから、もし七百億円大会社から取り上げても、大会社がそういうむだな金を使わなければ、ほかの活動には一切差しつかえないわけです。極端に言えば、国民年金制度がよくならないのは、あるいは医療保障制度がよくならないのは生活保護制度がよくならないのは、そういう一部の特権を利用した社用族、公用族がめちゃくちゃなぜいたくをしている、そういうどんちゃん騒ぎをしているために、方々では一家心中をする人もあれば、ほんとうに世の中を恨み抜いて死ぬ人もあるというようなことになる。そういうことを考えれば、こういう問題はもっと勇敢にやってしかるべきものだと私どもは考える。それをやれば、一年目でも六百六億円というお金は、余りがあってできるわけです。それからそのあとはどうするか、御承知の通り、毎年税の自然増収というのがございます。少くとも数百億ございます。石橋さんの一千億減税、一千億積極施策のときには二千億以上の自然増収があった、ということになりますと、六百億円は最初の年度でありますが、次にそれをつけ加えましたならば千二百億円なんというのはわけもない金額です。それに加えて医療保障に金をつぎ込んだり、生活保護をもっとよくするということもできるわけです。そういうことで千二百十二億という数字を、今まで政府の施策があまり乏しいために、これは花形の数字のように見えますけれども、これがほんとうであって、政府の今までの出し方がまあまり少かった、あまりおそかったということであります。千二百十二億を、むしろそんなに少くては社会党は恥かしいじゃないかという御批判をいただいてもしかるべきだと私どもは考えておるわけであります。次に初年度千二百十二億円だといたしますと、私どものは賦課方式をとっておりますが、だんだんに支出の金額がふえておるわけであります。ピーク時になりますと、年金制度の完成するときには、三十五年後には四千二百億という概算をいたしております。それから後は大体並行して、尻上りに上らないで、大体四千二百億でずっと同じようなレベルで続くわけであります。ですから財政的に見ると、三十五年後が一番苦しいわけです。その一番苦しいときでも一つの心配のない計算をいたしております。といいますのは私どもは日本の経済成長率が四%ずつは少くともふえるという計算に立っておる。一年に四%ずつ経済が拡大する、国民所得がふえるということに相なりますれば、三十五年後には四倍に経済規模がなるわけです。
次にそういうふうに経済が拡大したときに財政はどうかといいますと、財政は大体比例していきますけれども、政府のやり方でいくと、経済拡大度よりも財政を広げ得るという見解を持っておるわけです。予算委員会で井手以誠君が佐藤大蔵大臣と質疑応答をして、新聞紙上に非常にりっぱな質問であったと批評されたわけでありますが、ほかの方は経済成長率が五・五の増収を見込んでおる、ところが勤労者に関する限りは五・五の経済成長率を見ながら二五%の増収を見込んでおる、アンバランスではないかというような質問でございます。佐藤大蔵大臣はいろいろと答弁をしてごまかしたわけでございますけれども、しかし政府の方はすべて経済の成長率以上に税収が上るという建前に立っておられるわけであります。そうなると、経済成長率と同程度に財政が容易に拡大し得ることは当りまえであります。歳入歳出とも今の一兆四千億何がしの予算規模であります。三十五年後になると五兆六千億という財政規模は容易に達成できるわけであります。ところが減税がいいという世論が多うございますから、自民党も社会党もその世論に引きずられがちであります。これは政党としては態度を少し改めなければならぬと思いますが、ただ減税がいいというような考え方が世の中にびまんしております。それを極端にいたしますと、税金を全部なくしたらどういうことになるか、そうはできない。教育はできない、社会保障はできない、汽車は動かないということになる。税金というものはよく使われたならば多いのを喜ぶべきものだと私どもは考えております。ところが世の中では、今まで悪く使われておったために税金は払いたくない、自分たちには戻ってこないために払いたくないという思想が世の中にあるのは当然であります。そういうような状態でありますから減税はなお行われるでありましょう。それで五兆六千億のうち四割減税が行われたとしたならば、残りは三兆三千億の財政規模になります。このうち四千二百億というのはわずかに一〇%ちょっとこえる金額であります。そうして私どもの年金は全国民が一人残らずであります。朝鮮から帰化された人も、山窩といわれる人が日本の国籍を新たに受けた人でも、たとえば犯罪人であっても、すベての人が一人残らず受けられるという制度であります。そうなると普通の公務員の恩給であるとか、軍人恩給に対しては、一部の人だからという不平が起りますけれども、全国民に予算の一一〇%ちょっとこえる額を所得保障、生活保障として支給するということは、国民の方々はだれも反対はされない、双手をあげて賛成されると私どもは確信を持っておるわけであります。そういう立場で考えますと、この財政についても私どもの案は実に少な過ぎると思う。安全度を見過ぎると私どもは考えておるわけです、ちなみに、経済成長率がもとになりましたから申し上げますと、御承知のことでございますが、政府の長期経済計画は、六・五%平均で経済を拡大する計画であります。日本社会党が政権をとりました場合には、計画経済でより以上の経済拡大の経済政策を進めるつもりであります。日本の明治以来の経済伸長率は四%であります。終戦後の日本の経済成長率は一二%平均であります。そうなりますと、四%というのはほんとうに少な過ぎる数子であります。それでありますから、わが党の意見は絶対にこれはできる、これをできないというのは、することを欲しない人か、しないつもりの人で、いろいろの議論をひん曲げて言っている人であります。政府ができないといっても、ほんとうにこれに取っ組んでいない、所得保障や医療保障や生活保障のすべてに取っ組んでいないからでありますが、そういう点では経営者側である皆様方のほんとうに率直な御意見をぜひ承わらせていただいて——この程度だったらできる、できるからやれというような御意見を承わらせていただきましたならば私どもほんとうにありがたいと思うわけであります。どうかその点について率直な御意見を、もし社会党の考え方が間違っておりましたら御指摘下さってもけっこうでございますが、どうか一つ率直な御意見を伺わしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/54
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055・小笠原文三
○小笠原公述人 率直に申し上げて、社会党案が何か国民一般からいわゆる理想案だ、これは考え方としては非常にいいけれども、果して実現ができるかという、その点で国民から理想案、こう言われておる。従って今八木先生のおっしゃったように、これが現実の国の財布の中でやる気になればできるのだ、こういうことが明確になり、そのことが数字の上の、こまかしではなくて、やはり一つの基礎的な数字の上に立った計算から出た答えであるならば、その点をもっと社会党としては国民一般にPRをして、国民全体の支持というものをと今度の国民年金全般を通じて受ける、こういうことでなければならぬということを一つ社会党に注文をつけておきたいと思うのです。実際社会保障の場合はやるかやらないか、それが口の先ではなくて、具体的に現われてくるのが国の予算の面でございます。税金というものは、われわれ国民から考えれば当然国民に返ってこなければならない。道路となり、学校となり、そういった国民に直結した税金がより多く国民に返ってくることが、政府の施策がいいか悪いかという判断をわれわれにさせるわけでございまして、その点で一番明確になるのは、やはりこの社会保障費がどうなるかということが国の予算の面で国民に直結した政治であるか、国民のことをより多く思った政治であるか、そういうことが数字に現われてくるわけでございます。従って現在の基礎的な数字の上からこれはできる、その点では私も内容の構成その他についてはいろいろ疑問があるにしても、現在の国が持っている財布の中で一方はできるという、一方はそれは理想案だという。しかしその点では現在財布を握っておる自民党さんは社会党の意見をもっと率直に聞いて、しかも三十年、四十年先の社会保障の金額についてはもっと長い目で見るべきである。一方においては経済成長率を五・六%あるいは六%といったような数字を政府自身は出しておられるのですから、そういう面でもっと検討すべきである。われわれとしてはむしろ社会党にこの基礎数字というものを国民にもっと知らしてほしい、そういう注文をつけておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/55
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056・国井国長
○国井公述人 社会党のお出しになっております年金プランは非常にけっこうな案でございまして、まさに将来国民の健康にして文化的な最低生活を保障するためにはどうしてもこの程度のものを実施していただかなければならないのでありますし、全国民が努力いたしまして、将来経済が成長しますならば必ず実現するであろう、私はこう考えておりますので、今日この際まさに国民年金ができようとするときに、こういうふうなりっぱな青写真が社会党から示されましたことは私は社会保障を研究するものとして、またそれを推進しているものとして非常にうれしく思うのでございます。しかしながら私はまだ勉強がはなはだ不十分でございますが、今日この段階におきまして、率直に申し上げますれば、まだ完全雇用は今日におきましてははなはだほど遠いのでございますし、最低賃金制の問題もまだ目鼻がつくかどうかわからないような状態であり、かつ国民皆保険もようやく実施の段階につきましたが、これはとうてい予定のように三十五年あるいは三十六年にはできないでありましょうし、できましてもほんとうに名ばかりの名目的なものになりかねないというふうな状態でございますので、一方におきましては非常に外くの社会保障あるいは社会保障に関連の経費の支出が多く要るでしょうし、一方におきましては国民の総生産は年率六・五%程度でふえてはおりますが、そこにまたいろいろな問題があるのであろう、こう考えますので、確かに社会党のプランを実施してほしいとは思っておりまするが、まだこれが今日直ちに実施できるという点は、他と競合する関係もありまして、私自身といたしましてははなはだ不勉強かもわかりませんが、やや疑問に思うのでございます。特に現在でもまだ社会保障より減税というふうな議論も相当強いように聞いております。政府におきましても、一昨年の選挙のときにも減税に重点を置こうというふうな御議論があったように聞いておりましたが、当時の堀木厚生大臣の御努力で減税と社会保障の二本立ということになったというふうに聞いておりますし、今日国民年金を実施する場合にも、この国庫負担の問題につきましていろいろの御議論が聞かれておるというような現状におきましては、この理想案を今直ちに実施することにつきましてはかなりの抵抗があるであろう、私はこのように思わざるを得ないのでございます。そこで社会党の案を将来実現するにいたしましても、そこに到達するような道筋を今度できます政府案の中にできるだけ織り込みまして、将来はよい年金制度ができるように今から関係方面の方々にお考えいただければ大へん仕合せである、このように考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/56
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057・中村発子
○中村公述人 ただいまの問題でございますが、これは税金とからんでくると思いますけれども、私は知るということは一番愛情を感じる初めだと思います。その点につきましては私、社会党さんの案に大へん勉強が足りませんでしたことは、今度の案につきましては自民党さんの方からは何回か呼ばれまして、お前たちの希望はどうかというふうに聞かれまして、年令も実は見ていただきましたようなわけでございますし、初めは世帯本位でありましたものも、子供さんの加算も不本意ながらあれほどになったというような経過も経ておるのでございます。私どもの方からすっと進みまして社会党さんの方にもその勉強にも伺えばよかったのでありますけれども、いろいろ不勉強というようなわけで、勝手に考えておりました。自民党さんの方からはお呼びかけがございまして、お前たちの要求はどうだとお聞きになるのに、一体社会党さんはどうしていらっしゃるのだろうかというふうに思いまして、二、三の方々にも、一体社会党さんの方ではどうしていらっしゃるのでしょうか、少し勉強さしていただきたいと思うのだが、ということは三回くらい申し上げたわけでありますが、一昨晩書類をいただきまして、お恥かしいながら初めてむずかしい帳面を繰り広げて見ましたような次第でございます。そうして大体わからしていただき、今日でも非常に勉強させていただきましたのでございます。もとへ戻りますが、やっぱり知るということはお互いが愛情を感じるもとでございますので、税金の問題、いろいろございましょうと存じますが、知ればそれほど文句はマスコミも言わないのじゃないか。いいということになれば、この辺でいいことをやってきてもらおうじゃないか。国会といえば何かこう汚職とか妙なことばっかし伺うけど、社会党さんも国政の一半をになっておりますので、やればこういう美しいこともやれるぞというようなことをお示しいただきましたならば大へんありがたいことだと存じます。御無理かとも存じますけれども御健闘を祈っております。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/57
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058・田中寿美子
○田中公述人 社会党の案にありますような計画を実施しますのに大へんたくさんのお金が要るということで、普通マスコミ機関なんかでも、みんなこれは理想案だというふうに、いつも一言のもとに言ってのけているきらいがあります。今中村公述人のおっしゃいましたように、やはりこういうことをもっとよくみんなに知らせていただきたいと思いますが、この財源のことは、やはり何を第一番に考えるかということ、それから社会保障制度をほんとに実施する、一歩進めるのだという考え方に立ちませんと財源も出てこないのだろうと思います。それでさっき言われましたような租税特別措置法の中からも浮いてくるということが考えられますし、それから自然増収も数えられると思います。政府の計上している三百億も入れられると思いますし、私どもがよく新聞紙上で見ております防衛庁などのむだ使い、ああいうものを倹約する、つまり節約して国民みんなのための政治をすればもっと浮いてくるに違いないと思っております。それはやはりそういう気にならないとできませんので、そういう立場に立つならば、さっき、言われたような予算も決して無理ではないだろうと思います。減税を望むと申しますけれども、ことしの七百億減税でも、やはりそれがほんとうに大衆のための減税にはなっていないのでございまして、最下層の者には及んでおらないわけですから、今度の国民年金法も一番困る者に及ばないような計上の仕方をしているという点について、もっとはっきり、減税はどうなっているかというようなこと、それからほんとうに税金が国民大衆全部のためになるものだということがわかれば、つまり自分に戻ってくるものだということがわかれば年金税も喜んで出すようになると思いますので、やはり社会党は長い具体的な計画を立てられましたら、それを私どもみんなによくわからせていただきたいと思います。このような非常に画期的な制度を実施いたしますときは非常な抵抗もあることでございますから、なお一そうその点で努力していただきたいと思いますし、これは国民自身の問題でもありますので、学者、政治家、社会事業家、官庁の非常に知恵のある方たちたくさんいらっしゃるのですから、みんなが知恵を合せればこのくらいの財源を見出せないはずはないと私も思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/58
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059・八木一男
○八木(一男)委員 どうもありがとうございました。ほかの委員の方がお待ちですから、あとごく簡単にいたします。非常にありがたい御意見を拝聴いたしましたが、この点について、社会保障制度審議会の答申というものをもとにして政府案を作ったということを厚生大臣がしばしば言われるわけであります。ところが社会保障制度審議会は私の考えでは非常な誤りを犯しているのです。たとえば前にも指摘されましたように、障害年金、母子年金についての答申はあいまいもこといたしております。それから気の毒な人に厚みをかけようという点については一つも配慮がされておりません。無拠出年金を永久に続けていくという点は今の政府案よりも社会保障制度審議会の方がよろしいですけれども、とにかく制度審議会の答申自体は非常に不十分で不満足なものであります。その不満足なもののある部分を政府が勝手にいいように取捨選択して作ったのが政府案です。ところが社会保障制度審議会は、私その特別委員の、一人をいたしておったわけでありますが、今まで医療保障勧告をやった場合に、十分の一ぐらいしか政府がやらない。そういう立場で、たくさんやってもやらないから、少しいいかげんなものを出しておいたらやるだろう、そういう気分が横溢して、そういう条件の中において出た案なんです。これははっきりと私知っておりますけれども、そういう案ではいけないと思うのです。またそういう経過は厚生大臣も全部知っているわけなんです。ですからほんとうに自由民主党なり政府がやる気だったら、そういう立場を排除して、ほんとうの社会保障制度審議会の精神に従ってやられるのが制度審議会の答申尊重ということなると思うのです。制度審議会の根本的な一番の間違いは、経済成長を、明治以後の経済成長率ということから始まりまして、無理に押えて、安全に安全を見て二%と見、さらに資本蓄積その他を一・五%と見てあの答申案が組み立てられてあるわけです。三十年後、四十年後となると、二と四の違いはこれは二倍ではありません、十何倍になります。複利計算になりますからものすごい違いが出てくるのです。そのような根本的な誤まりをしているわけです。自民党の政府自体が、六・五までいかない場合があっても、平均して完全に六くらいまでいけると明言しておるわけです。自民党が倒れたときに政権を取るべき社会党は、それ以上の経済伸長をさせるような計画を完全に用意しておるわけです。そうなれば、社会保障制度審議会の学者の人々は、社会保障についての組み立てや何かの概念についてはその意見を尊重させらるべきものであって、その基底になるベきものについて根本的な間違いを犯しておるのです。ですからその根本的な門違いを修正して、そうしてその修正したもので、政府がほんとうにその精神を尊重して組み立てられなければならない。ところが政府が尊重しない事情——制度審議会の人がそういう事情から出した誤まった弱い答申、それを唯一のたてとしているわけです。こういう間違ったたては排除して、ほんとうの立場に政府が立たなければならないと考えておるわけでございますが、その点についてごく簡単でけっこうでございますから、お三人の御意見を承わらしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/59
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060・小笠原文三
○小笠原公述人 これはもうまことにその通りでございまして、そういう点では先ほど私申し上げましたけれども、政府のPRの方が——つまり社会保障制度審議会その他相当学者等も集まっておられるわけでございますが、むしろ社会党よりもPRの面では勝っておったのではないか。そういう点は確かに、社会党の方は今後一つ確信のある数字の上に立った場合には、これを全国民にPRする努力を大いにしなければならぬ。それともう一つは、やはり社会保障費というものを従来何かそのまま使ってしまうのだ、こういう面で考えておるところがある。私はやはり社会保障というものは今後国内の経済というものをその面で高めていく、従来のように非常に低い金額でそれをきめた場合には、なるほど、雲散霧消してしまうかもわからぬけれども、それがほんとうの意味で所得の再配分という役目を果すほどの金額になるならば、むしろ国内の経済というものがその面で拡大強化されていく、つまりいい面の循環が行われる、そういう点でももう一度この金額を直検討する必要がある、その点について、社会党はもっと具体的な数字を国民に示して、PRを大いにやっていただきたい、こう思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/60
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061・国井国長
○国井公述人 社会保障制度審議会が経済の成長率を年率二%と見ましたことは若干のあやまちを犯しておると思うのです。それならば一体経済の成長率は長期的に見てどのくらいに見るべきかということになるのでございますが、技術革新の問題その他によりますれば経済の成長率は非常に伸びるでございましょうが、日本の場合には、西欧その他の非常に資本主義の進んでいる国とおくれている国との間のちょうど中間のような、両万の要素が混在しておりますので、今ここでどのくらいが妥当であるかということは、私まだ申し上げる確信がないのでございますが、少くとも二%をもととして将来の年金をきめたということは、非常にそこにあやまちがある。しかも社会保障制度審議会の年金の保険料率は九回も途中で料率を変えまして、将来到達する場合の負担能力の限度に達するものと見ておりますので、その点無理があると思うのでありますが、政府案は、将来の年金の給付内容の向上とあわせて保険料負担を、これは将来どうせ増額することになろうと思いますが、そういった手直しをするような余裕を残されているという点では、少し検討してもよろしいのではないかと考えておるのでございます。いずれにいたしましても、年金は国民の生産いたしました総生産物によってこれがまかなわれるのが当然でございますし、また年金の目的としては所得の再配分でありますので、特に所持階層間の所得の再配分を強化することによって、社会保障の目的が達成されるのでございます。そういう点では、政府案にいろいろと修正してもらわなければならない点が多々あるのでございまして、その点は先ほども申し述べた通りでございますし、またこれから申し上げたいと存じますが、その点はぜひこの際はっきりと国会での御議論を願いまして、単にそれぞれの国民の年代的な働ける時期と、働けなくなった時期との間のそういった所得の再配分ばかりでなくて、もう一つこの年金制度を通じて、所得階層間の所得を再配分というものをいたしませんと、日本におきまする多数の低所得階層の生活というものはいつまでも非常に低いところに押しつけられたままで、社会的なアンバランスは除かれないと思います。その点、残念ながら、今後の政府の法案では、私冒頭に申し上げましたように、国民年金として所得保障の最低基準あるいは年金の最低保障としての位置づけが非常にぼやけておるのでございます。これは政府案でも、今後の通算なりあるいは調整等のときに考えると言っておるのでございますが、この点は制度が実施されますただいま、十分に諸先生方に御議論を願いまして、この制度の発足が誤まらないようにお願いいたしたいと存じます。
それからもう一点、これも若干の関係があるのでございますが、特に障害年金の問題につきましては、先ほど来申し上げました通り、いろいろな点で不備がありますので、最小限度の政府案の修正をお願い申し上げたいと同時に、身体障害者の問題は、障害年金によります所得保障の問題、同時に身体障害者の職業更生の問題等、総合的に実施していただくことによりまして、これがよりよく解決されることになるのでございます。伝えられるところによりますと、本年この国会に、身体障害の雇用促進法をお出しになるやに伺っておったのでございますが、これが出ますれば、政府も言っておりますように、国民年金の負担もある程度合理的に調節されまして、私はいいものができると思って期待いたしておったのでございますが、諸般の御事情もあったように伺っておりますが、この国会に全国の身体障害者が大きな期待を持っておりました身体障害者の雇用法案の提出が見送られたということは、非常に残念でございます。昭和三十五年は、身体障害者福祉法が昭和二十五年に両党の議員さんの共同提案によって成立、施行されて、ちょうど十周年になる記念の年でございますし、明年の三月からは障害者の無拠出障害年金も支給されるときでもございますので、一九五五年のILOも勧告いたしておりますように、身体障害者の雇用法もぜひ本年中、国会でお取り上げ願いまして、明年からこの障害年金にあわせて実施されますように、特に両党の先生方並びに政府当局の御配慮をお願い申し上げたいということを付言いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/61
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062・田中寿美子
○田中公述人 社会保障制度審議会は、もう設置されましてから十年くらいになるかと思います。その中間では非常に元気な意見が発表されていたように私は記憶いたしておりますが、最終段階でどうしてこのように、経済成長率など政府の計算しております五・五%よりもまだ低く見るというようなことになりましたのか、非常に私は疑問に思っておるわけなんでございます。戦後、政府の各機関には審議会が設けられまして、学識経験者の意見を開く制度ができたのでございますけれども、学級経験者は政府当局がその範囲でできないようなことでも、相当奔放なところまで理想的なものを言ってもいいのではないかと思うのですが、最近の審議会は、ほとんど政府機関がこういうふうに言ってほしいと望むことを答申いたしております。(拍手)私は、こういうことは、今回のこれについて行われたかどうか、事情は存じませんけれども、少くとも一生縣命に社会保障を考えておられる厚生省当局は、もっとそれ以上、審議会以上に進んだ考えを持っていらっしゃるのではないかと、私は疑っているわけです。どうしてこういうふうになりましたのか。どうか審議会というものは、もっと権威を持って高いところで鞭韃する立場に立ってほしいというふうに、私は考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/62
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063・八木一男
○八木(一男)委員 ただいまの田中先生の審議会に対する御批判と、その前に減税というものでは、税金を納められない人はその恩恵に浴せないという御高見は、非常に私どもの心に刻みつけるべき問題として伺ったわけであります。また小笠原公述人と国井公述人が、こういう社会保障制度の問題をそれのみのことで考えずに、それによって所得再配分が起る、それによって産業の振興安定が起る、雇用の増大安定が起る、それから労働力の新陳代謝が起る、農業や零細企業の近代化、共同化が促進される、そういう大きな見地からもこれを考えるべきであるという御高見も、非常に大事なものとして拝聴いたしたわけであります。
まだまだお伺い申し上げたいことはたくさんあるのでございますが、同僚議員がお待ちかねでございますので、私一人では恐縮でございますが、ただ一つだけ特別な点で、小笠原公述人にお伺いしたいと思います。それは労働者の年金の問題であります。国民年金という以上は、労働者も農民も漁民も無職者も全部含めたものでなければ、ほんとうはいけないと思う。ところがイージー・ゴーイングなやり方をして、労働者には今までの年金があるから、それ以外の者にそういう年金を作るんだというような、非常にいいかげんなやり方をされて作られた政府案です。社会党はそんないいかげんなやり方をしない。一般国民年金と労働者年金というもので全国民にかぶせて、その間に完全に、一年間であっても通算ができる、保険料は一切損しないというような方式をとってあるわけでありますが、そういう方式がもしとられなくても、政府案のときに労働者の年金についてもっと考えられなければいけないと思うのです。厚生年金保険法の改正が政府で今審議をされているようでございますが、労働者年金の中核は厚生年金保険法——あるいは船員保険法の年金部門とか農協の職員の年金とか公共企業体の年金、地方公務員の恩給、いろいろな制度はございますが、中核はあくまでも厚生年金保険法であろうと私どもは考えております。厚生年金保険法の基準は今の支給の平均は月七千六百円、国民年金の基準は、これは最高でありますけれども三千五百円、やや似た金額であります。厚生年金保険法の国庫負担をいじくろうという考えは、政府には今のところなかなかないようであります。厚生年金に対する国庫負担は一割五分でありますが、国民年金に対する国庫負担は、政府は保険料に対する五割というような、しろうとが間違えるような言い方をしておりますけれども、給付に対しては三分の一であります。これは比較的に申し上げますと、給付に対しては政府は三分の一、社会党は五割、保険料に対すると政府は五割、社会党は十割というようなバランスになっておるわけでございます。そうして厚生年金は一割五分でとどめる。厚生年金給付金額が多ければ、名目的に一割五分であっても、それは実質的に年金に統合される点、三割五分とか三割に近いということになる。違いが多くないわけです。今度の改正案でも一割五分とか二割の給付の引き上げしか目途しておられないようであります。そうすると明らかに労働者のみがほかの人よりも国の老後に対する手当、障害手当あるいは遺族に対する手当というものが少いということになる。今のところ労働者の方には雇用主が半分出すという制度が今までに発達しているがために、それを悪く利用をされて、労働者が圧迫を受けているわけであります。農民には使用者負担がない。だから負担が苦しいであろうという意味で国民健康保険には平均二割五分の国庫負担がある。そうして健康保険はない。つまみ金である。そのうち一番低賃金の人たち、日雇い労働者の健康保険だけわずかに高い国庫負担がある。平均したらわずかに二%か五%ぐらいになってしまう。そういうふうな労働者を圧迫する方法をとっている。といって農民諸君がいろいろな社会保障の恩恵を受けられることはわれわれ大賛成である。国民健康保険というものは給付が半分しかないから、これを高めなければならない。国民健康保険が二割五分の出庫負担じゃ足りない。社会保険の中の結核医療費は国庫負担でさらに三割負担しろというわけですから、これをすると国民健康保険では五割、六割の国庫負担をしろというのがわれわれの態度であります。これは世の中には理解がなくて、三割だけと社会党は言っているというふうに思っている方がございますけれども、そうではない。五割、六割というものは国庫負担に、総合してそういうことになるわけです。そういうふうに考えておりますが、労働者をそのままほったらかしにされてはいけない。失業保険の会計が黒用字になったからといって、失業保険の給付期間が三カ月、六カ月、九カ月というものは短かいものである、そうして給付の六割というものは少いものである、給付のもとになる賃金が少いものである、そういうようなことをたなに上げて、失業保険の金が黒字になったからその金をほかの社会保険に回そうなどというインチキなことを政府は考えておる。失業保険はまだふやさなければなりません。ほかの社会保険をよくすべきであるならほかのところから金を持ってきてよくすべきであります。それを、そういうインチキなことを考えるような政府でありますから、非常に警戒を要するわけであります。そういうことでありますから、結局厚生年金の問題をもっと政府にわれわれがどんどん指摘しないと、労働者は一割五分でいいのだというふうにほったらかされると思う。年金に関する限り必要度は幕本的には全国民同じであります。ところが基本的には同じでありまするけれども、国民年金が月二万円平均に全部出るのなら、農民だって労働者だって全部ほうり込んでいいのです。ところがそれが非常に少い。社会党案ですら七千円です。労働者の場合には一万二千二百五十円である。それから政府案は三千五百円、厚生年金は三千六百円である。そういうような時点においては、労働者の方がある意味では年金の必要の度が多いと私どもは考えております。それは生産手段を持っておらないからです。農場を持ち、あるいは商店を持ち、あるいは工場を持っておりましたならば、老齢になっても障害になっても、ある程度の収入を上げ得る余地がございます。身体障害者で足のない人であっても、非常に繁盛するたばこ店を持っていたら収入が上るという例があります。そういう労働者が生産手段を持っていないという点で、老齢になって職を離れたならば、年金の必要な度はほかの人よりも、現在の時点においては多いと思います。将来そのようなことがあってはいけない。どんな人でもみな同じで、多いものが必要でありますが、しかるにもかかわらずそれの逆の方法がとられておる。そういうことは少くとも直していかなければならないと思います。そういうふうに労働者軽視の傾向が政府にございます。これは制度の複雑なものに便乗して、労働者は半分使用者負担があるからいいじゃないかということで国民をごまかしていって、労働者を圧迫する。農民でも苦しい人があれば労働者でも苦しい人がある。しかし低賃金労働者の苦しみは特にひどいものであろうかと思います。そういうことと、それからもう一つ労働者の配偶者、これは小笠原公述人と田中公述人両方にお伺いをしたいと思いますが、労働者の配偶者が強制適用から排除されている。これは非常にけしからぬものであろうと思います。国民の全部が年金の支給を受けるべきである。そこで公的年金であるから一般の人だけにした、それまでは百歩譲ればまだがまんしてあげてもいいのです。一つ一つの制度が別になっても、それがよければ別に統合だけが一番でなくて、制度自身が全部よくて、通算が完全にいけばこれは制度が分立しても、そこをさかさまになって反対するというようなことはいたしませんよ。しかし国民の一部にはねられる人があります。しかもこれは学生を排除したという点があります。学生ならばまだ若い特殊な立場にありますから、まだまだかんべんし得ないこともないのですけれども、一般の配偶者、三十、四十の奥さんが排除されることは、国民年金ではない。任意年金で適用の道を開いていると言われるが、これは全然日本の家族制度の実態を御存じない証拠だと思います。奥さんというものはまずだんなさんのことを考え、また子供さんのことを考える。医療保障の場合に、自分が気持が悪いからお医者さんに見てもらった方がいいと思っても、子供の授業料が必要だ、給食費が必要だったらそっちに先に金を回してしまって、今の健康保険制度のように、一部負担がある場合には金がないから診断を受けるのを差し控えるということになる。それで病気が重くなって命にかかわるというようなこともあるし、病気が長くなって、金が個人も要るし、政府も要るのですけれども、政府が近視眼的な見方をして、そういうことを一部負担で、半分負担で締めようとしておる。そういうことをやっておる。そういう状態でありますから、年金についても任意適用だったら、よっぽど理解がある主人がいない限りこれは適用されないということになる。主人が、おれと二人は両方とも長生きしたいのだ、両方とも年金をもらってともに楽しく暮そうではないかということをよく考える人なら、奥さんの年金を入れるでしょう。ところがそういうことを考えつかないような——また世の中は全部そういうことを知っておりません、つかないような人は、おれがいるから大丈夫だ、おれにまかしておけというようなことでやる。ところがまかしておけといって、老齢になったら奥さんの年金がないから、奥さんはそれだけいい生活ができない。まただんなさんによっているから遠慮しなければならない、男女平等になりません。そういうことになります。遺族の給付があるからいいということではいけないと思う。だんなさんが死ぬことを奥さんが決して欲しているはずはない。百万人に一人ぐらいのだんなさんと仲の悪い人はそうかもしれませんけれども、普通の奥さんはだんなさんを愛しておられて、それで両方とも長生きをしたいわけだ。そのときに、両方年金があればと思います。また遺族年金だけで片づけようという政府の考え方はとんでもない間違いだと思う。その点につきまして、前段については小笠原公述人の、後段については小笠原さんと田中さんのお二人の御意見を伺わしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/63
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064・小笠原文三
○小笠原公述人 厚生年金の関係におきましては、私当初お話した通りで、何か錯覚があるのですね。というのは、今の被用者には厚生年金があるではないか、こういうことをおっしゃる。ところが当初私が申し上げたように、厚生省から出ておる資料に脱退残存表というのがございます。これはどういうものかといいますれば、かりに十万人厚生年金の被保険者であったものが、五年たったら一体どの程度抜けてしまうか、十年たったらどの程度適用がなくなるか、こういう表ができております。これで見ますと、現在の厚生年金は、坑内夫や船員をのかした以外は全部二十年が大体期間でございます。従って十万人当初厚生年金の適用を受けておった者が、実際に年金をもらう二十年後になったら一体どうなるか。これは一般の厚生年金で半分になってしまう。五万五千人でございます。それから女子の厚生年金に至っては、十万人が二十年後まで被保険者である者がわずかに五千人、こういう驚くべきことです。国鉄の労働者の場合をとってみますと、大体十万人の者が二十年たつと一万八千人より厚生年金の適用を受ける者がおりません。このことを考えてみますと、お前たちには厚生年金がある、あると、こうおっしゃっておられますけれども、実際厚生年金を受ける者が一体幾らあるかということになりますると、今言ったような数字で非常に大きな穴がある。これは一体どうするのか。このことは直ちに現在の現行厚生年金その他年金制度の被保険者の配偶者に直接な関係を持って参ります。今の遺族年金その他をもらう場合でも、当然被保険者期間というものが非常に大きな要素になって参ります。従って遺族年金をもらう者も非常に限られてくる、しかも額が少い、こうなりますと、当然国民年金と銘を打つ限りにおいては、その点を明確にしなければ、先ほど言ったように国民年金にあらずして半国民年金になってしまうおそれが多分にあるわけです、通算の問題は別にいたしましても、従って特に現行厚生年金その他の年金の被保険者の配偶者については国民年金に入れるという強制適用を明確にしておかなければ、将来非常に大きな適用外の国民が圧倒的に多くなる。それだけではございません。任意適用という制度は、現行厚生年金その他の制度の中にも五人未満の労働者は任意適用になっております。しかし現実に一体任意適用になっておる五人未満の労働者が厚生年金の適用を受けておるかといえば、ほとんど受けておりません。これは明らかに任意適用というものの持つ性格、むしろ任意適用で入れるかのごとく門を開いておるようではあるけれども、実際には入れないというのがこの任意適用の制度でございますから、ほんとうにこの国民年金を国民年金たらしめるためには、まず非常に大きな数字である現行厚生年金の適用者の配偶者、それと特に私は女子の処遇、配偶者並びに女子の処遇というものは今度の国民年金において通算その他で明確に考えることでなければこの国民年金というものはほんとうの意味の国民年金になり得ない、この点で政府案というものは任意適用ということでうたっておりますが、これは明確にすべきである、これは疑う余地はないと思うわけでございます。
大体以上のように、ほんとうに国民年金を国民年金たらしめるためには、まず当初の法律においてこれを明確にする、ということは、通算の問題も同じですけれども、現に厚生年金の適用を受ける者は女もそれから奥さんも任意適用ということになれば、この国民年金が始まったその日からその問題が起きてくるわけですから、しかもこれは昭和三十六年からやろう、こういう計画になっておる。これほどの基本的な問題をこの法律の中で明確にうたわないということは、そこに何か大きなごまかしがあるようにわれわれは感ぜざるを得ない。
それともう一つは現行のこの労働者の年金でございますが、これは現に七種類か八種類ございます。これはわれわれからいわせれば、やはり何か社会保障の面で労働者の分断政策というものが明確に現われているような気がしてならない。もしこれが一本であるならば、日本の全労働者というものは社会保障に対する声というものが一本になる。現在の年金制度は、年金制度とはいいませんが、その他の制度におきましてもいろいろな種類に分断をされている。従って労働者としてあげる声というものが一本になりがたい、そういう政策がとられておる。それは給付の内容も違います、保険金も違います、特に健康保険組合なんかやっている場合には付加的な給付が非常に多い、そういうことで同じ健康保険の戦い一つとってみましても、何かよそごとのような感じで戦われておる。特にこの国民年金を考える場合に、当然将来の問題として現行の年金制度というものの整理統合というものを合理的に考えてという前提を今からやはりお考えになっていく必要があるのではないか、そういうことを明確にしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/64
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065・田中寿美子
○田中公述人 労働者年金の配偶者の任意加入ということは、やはり今八木委員がおっしゃいましたように、私はどこまでも同様に扱って強制加入にしてほしいと思います。それは今日の憲法を初めとしてすべての法律の上で男女平等でして、今日では女も扶養の義務も同じように持っております。それですから、やはりどんな場合にも差別しないであるべきだと思います。年をとりましてもなかなか女の人が今職業につきまして離れられない一つの理由は、やはりそういう家庭に入ってからの保障のないということも非常に大きな理由でございます。それですから、ぜひこれは男女同じように取り扱うべきであると思います。
それから先ほど小笠原公述人が触れられたことでありますけれども、現行の厚生年金を積み立てております職場に働いている婦人の中に、退職金以外には厚生年金を受け取らないで、そのままかけ捨てになってしまうような人がずいぶんあるわけですから、これが家庭に入ってからも労働者年金として継続できるような通算ができること、これが非常に大事だろうと思います。私はやはりこの国民年金は、労働者といわず農山漁民、商工業者、自由業者、家庭の主婦を含むところのすべてを平等に扱う立場に立ったところの年金であってほしいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/65
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066・八木一男
○八木(一男)委員 ありがとうございました。今の通算の問題について小笠原さんと田中先生から言われました点、私どもも完全に同感でございまして、今の、途中でやめた人は脱退手当金はある程度の人はもらえる、ところがこの脱退手当金は自分の納めた分に利息をつけたくらいのものにしかなりません。それから年限が短かければ、女子の場合には脱退手当金ももらえないわけであります。あまりひどいということで少し直した点がございましたけれども、基本的には直っておりませんので、紡績工場に勤めておられる婦人労働者は非常に低賃金で身体をすり減らして働きながら、そこで強制適用で無理やりにとられた厚生年金の保険料を、仕合せの人に持っていかれてしまうという非常に不合理な状態があるわけであります。そういうことを直すために社会党では、全部労働者間の通算は困難でありますけれども、家庭に帰った場合、農業に変った場合、商業に変った場合、完全通算もできるように労働者年金を組み立てるように一生懸命に対処したいと考えております。それから今社会党の国民年金ができるという場合に、今まで厚生年金を七年なり五年なり持って、そのままかけ捨てでほったらかされておる人もその金額を換算いたしまして、しかも被用者分も当然その人の権利として換算して、それを持っていって国民年金に通算をするという考え方を持っておるわけでございますが、政府の方も少くともそういう考え方に立たなければいけないと考えておるわけでございます。これは両先生と意見が同じでございますから、さらにお答えを承りますことは時間の関係上避けますけれども、ほんとうに小笠原さん、国井さん、田中さん、また御退席になりましたけれども中村さん、平等さん、磯村先生には残念ながら御質問できませんでしたけれども、貴重な御意見を伺いましたことを非常にありがたく思っておるわけであります。私どもの社会党の案もまだ不十分な点がございますので、皆様方の貴重な御意見を参考にいたしまして、さらにいいものにしたいと思うわけでございます。いいものにしましても、小笠原さんのおっしゃったように情報宣伝が欠けておりますために、国民の方々にすっかり理解していただいておらない、いいものを持ちながら、それを押し上げる力が足りない、国井さんのおっしゃったようにそのために抵抗が起るというようなことになっている、そういうことにならないようにしたいと思うわけでございますが、社会党は人と金に制限がございまして、一生懸命やっておるわけでございますが、力が足りませんので、どうか諸先生方のそういうところの御協力をお願いしたいと考えておるわけでございます。
きょうは先生方お忙しいのにたくさんしゃべりましたのは、この機会に新聞紙上で報道されまして、それが今のような目的にかなうということを考えまして、皆様の御迷惑をかえりみず長い御質問をいたしましたことをお許し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/66
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067・五島虎雄
○五島委員長代理 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。
この際一言ごあいさつ申し上げます。公述人の方々には、御多用中のところ、長時間にわたり種々貴重な御意見をお述べいただき、本案審査の上に多大の参考となりましたことを厚く御礼申し上げます。
これにて公聴会を終了いたします。
午後四時散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104423X00119590311/67
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