1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年二月三日(火曜日)
午前十一時二十七分開議
出席委員
委員長 長谷川四郎君
理事 小泉 純也君 理事 小平 久雄君
理事 中村 幸八君 理事 南 好雄君
理事 加藤 鐐造君 理事 田中 武夫君
理事 松平 忠久君
新井 京太君 岡部 得三君
鹿野 彦吉君 木倉和一郎君
坂田 英一君 關谷 勝利君
中垣 國男君 野田 武夫君
山手 滿男君 渡邊 本治君
板川 正吾君 今村 等君
内海 清君 勝澤 芳雄君
小林 正美君 鈴木 一君
中嶋 英夫君 永井勝次郎君
水谷長三郎君
出席政府委員
通商産業政務次
官 中川 俊思君
通商産業事務官
(大臣官房長) 齋藤 正年君
通商産業事務官
(重工業局長) 小出 榮一君
通商産業事務官
(鉱山局長) 福井 政男君
通商産業事務官
(石炭局長) 樋詰 誠明君
通商産業事務官
(公益事業局
長) 小室 恒夫君
通商産業事務官
(中小企業庁振
興部長) 川瀬 健治君
委員外の出席者
議 員 田中 武夫君
通商産業事務官
(通商局次長) 中野 正一君
専 門 員 越田 清七君
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二月三日
理事中垣國男君同日理事辞任につき、その補欠
として南好雄君が理事に当選した。
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一月三十一日
プラント類輸出岸促進臨時措置法案(内閣提出
第一〇一号)
二月三日
硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法の
一部を改正する法律案(内閣提出第一一五号)
特許法案(内閣提出第一〇八号)(予)
特許法施行法案(内閣提出第一〇九号)(予)
実用新案法案(内閣提出第一一〇号)(予)
実用新案法施行法案(内閣提出第一一一号)(
予)
意匠法案(内閣提出第一一二号)(予)
意匠法施行法案(内閣提出第一一三号)(予)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
理事の互選
軽機械の輸出の振興に関する法律案(内閣提出
第三〇号)
下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法
律案(田中武夫君外十三名提出、衆法第一〇
号)
中小企業の産業分野の確保に関する法律案(水
谷長三郎君外二十三名提出、衆法第一四号)
官公需の中小企業に対する発注の確保に関する
法律案(水谷長三郎君外二十三名提出、衆法第
一五号)
百貨店法の一部を改正する法律案(水谷長三郎
君外二十三名提出、衆法第一六号)
中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律
案(内閣提出第六二号)
特定物資輸入臨時措置法の一部を改正する法律
案(内閣提出第六〇号)
商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案(
内閣提出第六一号)
航空機工業振興法の一部を改正する法律案(内
閣提出第八五号)
プラント類輸出促進臨時措置法案(内閣提出第
一〇一号)
新潟地区地盤沈下に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/0
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001・長谷川四郎
○長谷川委員長 これより会議を開きます。
まず理事の互選についてお諮りいたします。理事中垣國男君が辞任をいたしましたのでこれを許可いたし、その補欠選任に関しましては委員長より指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/1
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002・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議ないものと認め、そのように決定いたします。
南好雄君を理事に指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/2
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003・長谷川四郎
○長谷川委員長 去る一月二十六日に当委員会に付話されました内閣提出の特定物資輸入臨時措置法の一部を改正する法律案、同じく商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案、同じく中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案、去る一月二十九日に付託されました内閣提出の航空機工業振興法の一部を改正する法律案、一月三十一日に付託されました内閣提出のプラント類輸出促進臨時措置法案、
以上五法案を一括議題とし、審議に入ります。
まず五法案について、中川通商産業政務次官より順次趣旨の説明を求めます。中川通商産業政務次官。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/3
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004・中川俊思
○中川(俊)政府委員 特定物資輸入臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
わが国の国際収支は、その改善への努力が結実して、最近かなりな程度に改善を見ましたが、わが国の経済構造から見れば、なお当分の間は外貨資金割当制度を存続する心要がある実情でございます。
この場合、不要不急物資につきましては、現き続き輸入数量が制限されること等により、わが国における需給の不均衡が生じ、これら物資を輸入すれば、通常の利益以上の利益が反射的に生じてくるものと思われるのであります。
すなわち、現在特定物資に指定されておりますバナナ、パイナップルカン詰、腕時計、スジコ、コンニャクイモにつきましては、なお、当分の間、輸入によって通常生ずる利益をこえて異常な利益を生ずると予想されますので、引き続き特定物資輸入臨時措置法に基いて輸入することが適当であると考えられるのであります。
また、これらの物資以外の物資につきましても、必要な際には、そのつど、政令により特定物資に指定し、よって法の弾力的運用をはかりたい所存であります。しかしながら、特定物資輸入臨時措置法は、三年間の限時法でありまして、昭和三十四年六月四日限りで失効することになっております。
従いまして、政府としてはこの際、特定物資輸入臨時措置法の有効期間を六年に改めて昭和三十四年度以降も存続させることといたしたく、ここに本法案を提案いたした次第であります、
以上が本法案の提案理由及びその概要でありますが、何とぞ慎重御議の上、可決せられるようお願い申し上げる次第であります。
ただいま提案になりました商工組合中実金庫法の一部を改正する法律案の提案の理由及びその概要を御説明申し上げます。
商工組合中央金庫は、中小企業者を主とする団体の系統金融機関でありまして、最近の情勢にかんがみますとき同金庫が中小企業の振興のために果す役割はいよいよ重要となってきておりますので、この際商工組合中央金庫法の一部を改正して、その機能の強化、拡充と業務の円滑化をはかり、もって中小企業の組織化をさらに推進して、その一そうの振興に資することといたしたいと考える次第であります。
次に本法律案の概要を御説明申し上げます。
第一は、政府の商工組合中央金庫に対する出資金を増加することであります。すなわち、商工組合中央金庫に対する政府出資は現在約二十六億円となっておりますが、これを今回さらに十二億円増額することであります。
御承知の通り、商工組合中央金庫の貸出金利は最近の数次にわたる引き下げ措置にもかかわらずなお割高な現状にありますので、これを極力引き下げることによって中小企業者の金利負担の軽減に資することが当面の重要な課題であると考えられる次第であります。このためには、もとより金庫自身の経営の合理化に期待するところ大なるものがあるのでありますが、政府といたしましても、その最も有効な手段として、昭和三十四年度において政府出資の増額を行い、もってその金利引き下げに資することとした次第であります。
第二は、預金の受入先を追加することであります。現在、商工組合中央金庫が預金を受け入れることのできる範囲は、中小企業者を構成員とする団体及びその構成員、公共団体その他営利を目的としない法人並びに主務大臣の認可を受けた銀行その他の金融機関に限定されておりますが、同金庫の貸出業務及び債券発行業務の円滑な軍用を期するため、今回新たに次のような頭金受入先の追加を行おうとするものであります。
すなわち、その一は、中小企業者を主たる構成員とする団体またはその構成員の事業の発達をはかるため必要な施設を行う法人であって金庫が主務大臣の認可を受けて余裕金の短期貸付を行なったものからの預金の受け入れができるようにすることであります。これは、余裕金の貸付業務に付随して必要とされる預金業務をもあわせ行うことによって貸付先の利便をはかるための措置であります。
その二は、商工組合中央金庫の貸付業務にかかる債権を保全する必要がある場合は、当該債権にかかる債務者のうち命令をもって定めるものからの預金の受け入れができるようにすることであります。
その三は、商工債券の発行を円滑にするため必要がある場合は、その応募者または買い入れをしようとする者からの預金の受け入れができるようにすることであります。
第三は、商工債券の保護預かり先を追加することであります。現在商工債券の保護順かり先は、所属団体またばその構成員のみに限定されておりますが、商工債券の発行機関としては、当然他の金融債発行機関と同様、その所有者の利便をはかるため保養預かりができるようにし、もって債券発行による資金調達を一そう円滑にする必要があると考えられますので、今回新たにその業務を追加することとする次第であります。
第四は、出資もしくは株式払込金の受け入れまたは配当金の支払いの取扱い先を追加したことであります。現在、出資もしくは株式払込金の受け入れまたは配当金の支払いに関する受託業務の対象は、所属団体だけに限定されておりますが、本来これらの業務は、実質的には預金に付随するサービス業務と考えられますので、同金庫の貸付及び預金業務に関する主たる取引先である所属団体の構成員にまでその範囲を拡大し、もって所属団体の構成員との取引についても一そうの緊密化をはかり、あわせて預金の増強にも資せしめるため、今回新たに所属団体の構成員をその事務の取扱い先に加えようとするものであります。
第五は、商工組合中央金庫に対する出資日数の最高限度を引き上げることであります。現在商工組合中央金庫に対する所属団体の出資口数の最高限度は一万口とされておりますが、この結果、有力組合の同金庫に対する出資の額も勢い抑制され、金庫の民間出資増額に関する計画も円滑に達成されがたい上、持ち分の譲渡等にも困難を来たし、比較的小規模の組合に出資の負担がかかる懸念もありますので、相互扶助の理念によりまして負担能力の大きい有力組合が出資を負出する道を開くため、従来の一万口を五万口に引き上げようとするものであります。
なお、このほかに商工組合中央金庫の運営を円滑かつ適正にするため、金庫の自己持ち分の取得についてその道を開くとともに、環境御生同業組合について所属資格の範囲を限定するための措置を講じております。
以上が本法律案の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、可決せられますようお願い申し上げる次第であります。
次に、ただいま提案になりました中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案の提案の理由及びその概要を御説明申し上げます。
御承知の通り、中小企業信用保険公庫は、昨年七月政府出資八十五億円と旧特別会計の承継資産約二十六億五千万円、合計約百十一億五千万円をもって発足し、信用保証協会の業務上必要な資金の貸付業務とその保証に対する保険を中心とする保険業務とを行なって着々その成果をあげております。このうち、信用保証協会に対する貸付業務のため、同公庫はその基金のうち三十億円を充当してその保証業務に必要な資金の貸付を行なっており、その貸出残高は、昭和三十三年十二月末現在、すでに三十億円に達しており、これによりまして信用保証協会の保証規模の拡大、保証料率の引き下げ等諸種の面におきまして顕著な効果をおさめつつあります。しかしながら、最近におきましても、中小企業の資金需要は依然として旺盛であり、これとともに保証需要も大幅な増加の傾向にありますので、信用保証協会の保証原資をさらに大幅に増強して保証能力の拡充をはかる必要があると考えられるのであります。
このため、政府といたしましては、昭和三十四年度におきまして中小企業信用保険公庫に対し、産業投資特別会計から十億円を出資し、これを同公庫から信用保証協会に貸し付けることとし、その保証能力の拡充をはかると同時に、その保証料率の引き下げをも促進し、もって中小企業者の負担軽減に資することとした次第であります。
次に本法律案の概要を御説明申し上げます。
第一は、中小企業信用保険公庫に対する政府の出資金を十億円増額し、これを融資基金に充てるため同公車法の資本金及び融資基金に関する規走を改正しようとするものであります。
第二は、今回の中小企業信用保険公庫に対する政府出資が産業投資特別会計から支出されることとなりますので、これに伴いまして必要とされる国庫納付金に関する規定を新たに設けようとするものであります。
すなわち、同公庫の毎事業年度の損益計算土利益が生じた場合はその利益の額の百分の五十を、資本金の減額がなされているときは、当初の資本金に達するまでその利益を資本金に組み入れれ、なお残余があるときはその残余の額の百分の五十に相当する金額を国庫に納付することにしております。
以上が本法律案の概要であります。何とぞ慎重御審議の上可決せられますよう御願い申し上げる次第であります。
次に、今回提出いたしました航空機工業振興法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び法律案の要旨について御説明申し上げます。
航空機工業振興法は昭和三十三年五月に制定されましたが、この法律は輸送用航空機等の国定化を促進するための措置を講ずることにより、航空機工業の振興をはかり、あわせて産業の技術の向上及び国際収支の改善に寄与することを目的としたものであることは御承知の通りであります。
この法律施行以来すでに一年近くを経過いたしましたが、この間同法に基いて設置された航空機工業審議会において、中型輸送機国産化促進方策について調査審議した結果を参考とし、その具体的措置として官民共同出資による特殊会社日本航空機製造株式会社を設立し、本会社を中型輸送機その他輸送用航空機の国産化促進のための中核体とすることを目的として、今回法律を改正しようとするものであります。
中型輸送機の国産化につきましては、昭和三十二年度以来財団法人輸送機設計研究協会が中心となり、昭和三十二年度三千五百万円、昭和三十三年度一億二千万円の政府補助金の交付を受けて、YS—一一型の設計研究を進めて参っておりますが、このたび設立されようとしている会社は、この研究を実質的に引き継ぎ、YS—一一型の設計、試作等を行い、試作機完成後はさらに量産、取売を行うことといたしております。このための予算的裏づけといたしましては、昭和三十四年度においては本会社に対する政府出資金三億円、政府補助金六千万円が計上される予定になっております。
次に本法律案の要旨を御説明申し上げます。
第一には、本法律により日本航空機製造株式会社を設立することとし、本会社は輸送用航空機の没計、試作、製造その他輸送用航空機の国産化を促進するため必要な事業を行うことを目的とするものといたしました。
第二には、政府は予算の範囲内で本会社に対して出資することができることとし、その特殊会社としての性格を明らかにいたしました。
第三には、会社の社債発行について、その発行限度を商法に規定する制限の二倍まで認めることとし、また会社が成立後五年間に支出した輸送用航空機の設計、試作及び試験の費用を繰り延べ経理することを認めるとともに、成立後五年間は利益配当の制限をすることといたしました。
第四には、特殊会社としての性格上、会社の取締役の選任等の決議を通商産業大臣の認可にかからしめたほか、財務等について所要の監督を行うことといたしました。
以上本法律案の提案理由並びにその内容の概要について御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上御賛同あらんことを切望する次第であります。
次に、ただいま上程されましたプラント類輸出促進臨時措置法案についてその提案理由を説明いたします。
戦後における世界の貿易構造は、東南アジアを初めとする低開発諸国の開発計画の進展に伴い、重化学工業品の輸出に重点が移りつつあることは御承知の通りであります。このような情勢に即応して、今後わが国の貿易規模を拡大するために最も有力なものは、プラント類の輸出であると確信する次第であります。すなわちプラント類の輸出は、一件当りの契約規模が巨額であること、技術の輸出を伴うものとして、外貨手取率、付加価値率ともにきわめて高いこと、相手国に与える経済協力効果、市場開拓効果がきわめて大きいこと等の理由から、その意義はきわめて重要であります。
このようなプラント輸出の重要性にかんがみ、政府はすでに日本輸出入銀行による協調融資、輸出保険制度の運用、租税特別措置法による輸出所得の控除、延べ払い条件の緩和等の措置を講じ、プラント輸出の促進に努力を傾注してきたのであります。それにもかかわらず、わが国のプラント輸出の比率は米、英、西独等に比しなおきわめて低い現状であります。
このようなプラント輸出不振の原因は、日本のコンサルティング体制が弱体であるため、相手側から過大な保証条件を要求される場合が多く、そのリスクのために契約をちゆうちよする例がきわめて多いこと及び生産能力、性能等の保証と、これに伴う違約金の支払いについての保証リスクをコストの中に算入するため、国際競争上不利となる結果を招いていることによるものであります。
この法律案の骨子は、以上申し述べましたようなわが国のプラント輸出体制の根本的弱点を是正するため、プラント類の輸出に伴う保証損失を補償する制度を都立せんとするものであります。すなわち、輸出者が海外における工場等の建設、設備の輸出あるいはこれらについてのコンサルティングを行う場合、政府と保証損失補償契約を締結し、所定の補償料を国庫に納入することによって輸出者の負担すべき保証損失のうち、いわゆるコンサルティングの欠陥に基く保証損失の一定割合を政府が補償しようというものであります。
またこの制度の運営は高度の技術を要しますので、業務の一部を過当な機関に委託し得ることとし、本制度の円滑な運営に遺憾なきを期したい所存であります。
なお本制度の実施に伴う予算措置といたしましては、昭和三十四年度一般会計予算案におきまして、予算総則に、政府が保証損失補償契約を締結できる補償金巨額の総額の限度を六十億円と定めるとともに、支払い補償金として百万円、業務委託費として百万円をとりあえず計上しております。これによって昭和三十四年度におきましては、約四百億円に上るプラント類の輸出にかかる補償契約の締結が可能となる見込みであります。本法律案はわが国のプラント輸出体制を急速に確立するため、一応四年間の限時法といたしております。
繰り返して申し上げるまでもなく、プラント類の輸出の伸長こそ今後におけるわが国貿易規模拡大のかぎであります。このような事情をおくみ取りの上何とぞよろしく御審議のほどをお願い申します。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/4
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005・長谷川四郎
○長谷川委員長 次に去る昭和三十三年十二月十六日に当委員会に付託をされました出中武夫君外十三名提出の下請代金支払遅延等防上法の一部を改正する法律案、同日付託の水谷長三郎君外二十三名提出の中小企業の産業分野の確保に関する法律案、同じく官公需の中小企業に対する発注の確保に関する法律案、同じく百貨店法の一部を改正する法律案、以上四法案を一括して議題とし、審査に入ります。まず提出者より順次趣旨の説明を求めます。田中武夫君。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/5
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006・田中武夫
○田中武夫君 ただいま議題になりました社会党議員提出、下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案、中小企業の産業分野の確保に関する法律案、官公需の中小企業に対する発注の確保に関する法律案及び百貨店法の一部を改正する法律案につきまして、提案者を代表いたしまして提案の説明を申し上げたいと存じます。
まず最初に下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案について申し上げます。
去る二十四国会で成立を見ました下請代金支払遅延等防止法の施行後の経緯を見まするに、最近における経済不況の深刻化とともに、下請代金の支払い遅延はますます増大し、また下請代金の額が不当に低く押えられ、不況のしわはもっぱら下請事業者に寄せられる結果となっているのであります。
すなわち、公正取引委員会が従来行なった悪質会社への勧告は、三十一年度に十九件、三十二年度には八十六件、本年度は十二月末までに七十件が確実視され、年度末には昨年度をはるかに上回ることが予想されています。その増加のテンポはきわめて急激であります
これは一昨年の金融引き締めから大企業が中小企業にそのしわ寄せを行なってきた結果と見られるのであります。しかし、悪質会社に対しては単に勧告措置にとどまり、遅延に伴う直接の損害は親事業者に及ばず、その間もっぱら下請事業者が泣き侵入するままに放置されているのであります。そのため、法律施行後、その効果はほとんど認められず、親事業者は全く法を無視し去っているのであります。さきに述べました公正取引委員会の勧告の実績は、如実にそのことを示しているのでありまして、年々勧告無視の傾向が増大しつつあるのであります。従いまして、現に行われつつある、かかる法を無視した親事業者による下請事業者の圧迫を排除し、下請取引の公正を確保せんとするものであります。
本法律案の内容は次の通りであります。その一つは、親事業者が下請事業者に対し交付する書面には単に下請代金の額だけでなく返品の条件、検収期日、支払い手段を明記させることといたしたのであります。次に、下請代金の支払いが不当に遅延することを防止するため、検収期日を物件の引き渡し後十五日、支払い期日を検収後六十日と規定することにしたのであります。
さらに、これらの明日を経過して、なお検収、支払いを行わない場合、親事業者に対し、遅延に伴う損害の賠償と利息の支払いを行わしめ、もって単なる現行の勧告措置から一歩進めて、下請事業者の不当な損害を救済し、あわせて、親事業者の支払い義務を強化せんとするものであります。
これによって、従来骨抜きとなっておりました法の内容を充足し、その本来の目的の達成をはからんとするものであります。
次に中小企業の産業分野の確保に関する法律案について出し上げます。
本国会にわが社会党が提案しております幾多の立法の一環として、特に中小企業の適正な経営を確保し、大企業による不当な進出を抑制するために、本法律案を提案するものであります。日本における今日の独占資本の形成が中小企業、農業を犠性とし、労働者の低賃金を基盤として行われてきたことは今さら言うをまたないのであります。中小企業が過度競争に悩み、失業のたまり場となって、重大な社会問題化しているのも、わが国経済の顕著なる特徴であります。当面する中小企業の過度競争は、さらに大企業による中小企業分野への進出によって拍車をかけられております。大紡績による既製服、ワイシャツ等の大量生産、鉄鋼大メーカーによる二次製品の加工等々、その進出はあらゆる部門に著しくなって参っております。この過程において中小企業は、いつまでたってもその後進性を回復することができず、中小企業問題は日本産業の構造的欠陥として、ますます大きく社会問題化せざるを得ないでありましょう。わが社会党は、こうした矛盾を克服し、中小企業を近代化して、日本の産業構造の中で、適正な地位を与えるため、総合的な経済政策を用意しているのでありますが、その安定した地位を確保するに至るまで、当面の中小企業の困難を打開するため、大企業による中小企業分野への進出を防止しようとするものであります。
そこで、本法律案の内容を御説明申上げます。本法律案は以上のような理由から、国民経済上、中小企業の産業分野として適切なものを指定し、その安定をはかるため、その分野への大企業の進出に必要な規制を行なって、経済秩序の確立をはかることにその目的を置いているのであります。そして、まず第一に、製造業、建設業、サービス業に属する業種のうち、中小企業者が五分の四以上を占め、また過去一年間の生産実績の三分の二以上が中小企業によって占められるものについて、その経営が中小企業形態による方が経済的にも社会的にも適切であると考えられる業種を、主務大臣が指定することといたしたのであります。
そして第二に、その指定業種に属する事業については、大企業が新規に開業したり、設備の拡張を行うことを禁止しているであります。さらにまた、現に当該指定業種における大企業の活動によって中小企業が著しい悪影響を受けている場合にも、それを緩和するため、大企業に規制命令を出し得ることにしているのであります。
第三に、以上の諸制限を回避し、大企業が系列支配等、資本的、人的な支配関係にあるものに、同様の事業活動を行わせる場合も十分に予測され得るので、かかる脱法行為をも、あらかじめ禁止したのであります。かかる脱法行為があった場合、その排除措置をとり得ることは言うまでもありません。
第四には、かかる法の運営の実をあげるには慎重を要し、かつ中小企業者の意見が十二分に反映されねばなりません。そのため、従来の審議会の構成を改め、各産業分野の代表を法文の上に明託することといたしたのであります。
次に官公需の中小企業に対する発注の確保に関する法律案について申し上げます。
戦後の経済復興過程を通じて、保守党政府の一貫した独占資本擁護の経済政策によって経済の集中は促進され、独占資本は再建されましたが、それは一方において、中小企業を犠性として、初めて可能であったのであります。中小企業は残されたわずかばかりの市場をめぐって、相互間の過度競争は激化するばかりでありまして、さらに最近は経済の不況に加えて、大企業による中小企業分野への進出は製造、販売その他あらゆる部門において顕著となり、中小企業者の存立に重大な脅威を与えているのであります。
今日、中小企業問題は、単なる経済問題としてばかりでなく、重大な社会問題化しているのであります。こうした中小企業問題の解決は、根本的には国の財政、金融その他が般に及ぶ総合的な施策を待って初めて可能であることは言うまでもありません。その一つの施策として、中小企業の事業活動の分野を可能な限り確保していく措置がとられる必要があると信ずるものであります。中小企業の産業分野を確保するための措置については、ただいま申し上げた通りでありますが、かかる主要問題に対しては、まず国及び公共企業体等が卒先してその範をたれるべきだと考えるものであります。中小企業問題が日本ほど深刻でないアメリカにおいてすら、国防省の予算のうち一割以上を中小企業に発注しなければならないと規定が実施されております。このことは、わが国における官公需の発注が大企業に偏し、中小企業はほとんど顧みられていないのと比べて、特に重視されねばなりません。昭和三十二年度における国及び公共企業体、並びに地方公共団体等の物件費の総額は優に九千億をこえる膨大な額に達しております。かりにこのうち一割を中小企業に確保するとしましても、毎年一千億に上る需要が保証されることになるのであります。そこで、まずこの膨大な、国及び公共企業体等のなす物資の調進、工事の請負その他の契約について、中小企業に一定の割合書を確保せんとするが、本法律案の目的なのでございます。
この法律案の内容の大要は次の通りであります。まず第一に、学識経験者を中心として構成された、中小企業官公需確保審議会において、国及び公共企業体が中小企業者となすべき官公需契約の割合を調査審議せしめ、その答申に基いて、内閣総理大臣がその割合を公表することといたしたのであります。第二に、各関係機関にその公表された割合に達するよう努力する義務を負わしめ、その割合を達成せしめるために必要ある場合は、契約の特例を設けて、中小企業者だけに競争入札を行い得ることとしているのであります。第三に、毎会計年度において中小企業者となした官公需契約の実績について、主務大臣または内閣総理大臣に対して報告をなさしめ、加えて定められた官公需契約の割合を達成するため、主務大臣または内閣総理大臣に必要な勧告を行わしめることといたしているのであります。
最後に、百貨店法の一部を改正する法律案について申し上げます。
去る二十四国会におきまして、特に百貨店業の事業活動を調整して、中小商業の事業活動の機会を確保するとの目的をもって、一応政府提案による百貨店法の制定をみたのでありますが、施行後の経過を振り返って見まするに、当初の法律の目的は完全に踏みにじられ、逆に既存の百貨店を保護するように運用されて参ったのであります。すなわち、法律の施行後、本年九月現在まで新設、拡張の行われたものは百四十八件、その売場面積は約四十万平方メートルに達しております。これは小売商店の平均売場面積が約三十平方メートルとして、実に小売商店約一万三千軒に相当し、これを少数の大資本が支配しているのであります。こうした法の目的を逸脱した運用を危惧して、当時、特に衆参両院において付帯決議を行い、公共団体の土地または施設の利用、並びにターミナル施設の設置を禁止し、また中小商業者の利益を阻害するような不公正な事業活動を厳に戒めたのであります。しかしこれらの付帯決議は保守党政府によってほごのごとく捨て去られ、百貨店の激増を許可したのであります。政府は、むしろ積極的に既存百貨店の保護育成に努力を払い、公正なるべき百貨店審議会また百貨店業者の利益を代弁する機関に堕してしまったのであります。さらに最近、百貨店業者は中小商業者の反対を回避するため、別会社組織による、いわゆるスーパー・マーケットの設立に力を注ぎ、実質的に、百貨店法の脱法行為を公然と行なっているのであります。政府並びに百貨店審議会は、スーパー・マーケットによって死活を問われる中小商業者の猛烈な反対の声に対し、全く耳をかすことなく、これを黙認し続けているのであります。また、百貨店による割賦販売は、日本信販等の組織と結びついて急速に伸び、資本力のない中小商業者を著しく圧迫しつつあります。こうした百貨店業者の不当な事業活動に対し、政府は法律の目的に沿って中小商業者の利益を擁護するため、効果的な措置をとるべき義務を課せられているにもかかわらず、故意に、法の公正な運用をサボタージュしているのは、きわめて遺憾なことであります。
そこでわが党は、ここに百貨店法の一部を改正する法律案を提出することによって、法の本来の目的を達成せしめんとするものであります。すなわち、百貨店業者による不公正な取引並びに営業行為、百貨店法の目的に逸脱する行為等を法律に明確に規定することによって、百化貸店業者の行き過ぎた事業活動を規制し、不当な店舗の拡張を制限し、もって中小商業者の公正な利益を確保せんとするものであります。
その内容のおもなるものは次の過りであります。まず第一に、店舗の床面積について従来の物品販売業を営むもののほかに、飲食店営業または喫茶店営業を営むものも加算することとし、百貨店の不当な売場面積拡張の手段を封ずることにいたしたのであります。
第二に、割賦販売、積立金組織による予約販売その他特定の営業方法に関し、その内容と方法において、中小商業の利益を著しく害するおそれがある場合は、通産大臣は許可を行なってはならないこととしているのであります。
第三に、百貨店がその優位な立場を利用して、仕入先たる中小企業者に対し、返品、値引きその他不公正な仕入れ行為を行うことを禁止しているのであります。
第四に、百貨店審議会の公正な運営を期すため、学識経験者のほかに中小企業者を代表する委員の任命を明記し、中小企業者の利益を公正に反映させる道を開いているのであります。
第五に、国及び地方公共団体など政府関係機関の所有する土地または施設を百貨店業の店舗の用に使用させることを禁止しているのであります、
第六に、百貨店業者の別会社組織による百貨川類似行為についても、本法による規制の対象といたしたのであります。そして最後に、百貨店業者の不公正な販売行為、仕入れ行為を効果的に規制するため、特に公正取引委員会にその判断をゆだねることといたしているのであります。
以上がわが社会党提出の四法案についての内容の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、早急実現のため御賛成あらんことをお願い申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/6
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007・長谷川四郎
○長谷川委員長 以上政府提出五法案、社会常提出四法案についての趣旨の説明は終りました。
なお、これらの法案についての質疑は、後日に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/7
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008・長谷川四郎
○長谷川委員長 次に軽機械の輸出の振興に関する法律案を議題とし、審査を進めます。
本案につきましては、すでに質疑も終了していると存じますが、本案についての質疑は終了したものと認めるに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/8
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009・長谷川四郎
○長谷川委員長 それではを本案についての質疑は終了いたしたものと認めます。
ただいま委員長のもとに、自由民主党及び日本社会党共同提案にかかる本案に付する修正案が提出されております。
まず本修正案の趣旨の説明を聴取することといたします。中村幸八君。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/9
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010・中村幸八
○中村(幸)委員 私は、自由民主党並びに社会党を代表して、本案に対し修正案を提出いしたいと思います。
まずその修正案につきまして朗読いたします。
軽機械の輸出の振興に関する法律案に対する修正案
軽機械の輸出の振興に関する法律案の一部を次のように修正する。
附則第五条中「附則第三条」を「附則第四条」に、附則第七条及び附則第十条中「附則第五条」を「附則第六条」に改める。
附則中第二条を第三条とし、以下順次一条ずつ繰り下げ、第一条の次に次の一条を加える。
(廃止)
第二条 この法律は、施行の日から五年以内に廃止するものとする。
この修正案に対する提案の理由を御説明申し上げますると、この修正案の骨子は、この法律を五年以内に廃止することとするものでありまするが、その理由は、ミシン及び双眼鏡の業界については、既存の工業組合に経済事業を行わしめ、その事業として輸出振興業務を行わしめればよいわけでありまするが、輸出振興は刻下緊急を要する問題でありますので、この際まず輸出振興事業協会の運営に待つこととし、その間に工業組合の民主的な育成指導を行い、業界の安定をはからしめんとするものであります。
よろしく御審議をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/10
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011・長谷川四郎
○長谷川委員長 本修正案についての御質疑はありませんか——ないものと認めます。
それでは、本案並びに本案に対する修正案を一括討論に付します。討論の通告があります。これを許します。松平忠久君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/11
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012・松平忠久
○松平委員 ただいま議題となりました軽機械の輸出の振興に関する法律案につきまして、諸君の同意を得まして対論をいたします。以下私が申し述べることを含みといたしはして、この法律家に賛成をするわけであります。
御承知のように、ミシン並びに双眼鏡の輸出を振興すると、非常な過当競争をして、品質が低下するおそれがあるので、これをどうして正常化して、この輸出をもっと振興させるかというのが、この法律案のねらいであると思うのでありますが、大きな柱としまして、この法律案には、登録制度をしくということと、それから軽機械輸出のための振興協会というものを作って、一手買い取りをする、その一手買い取りをして、輸出をするのでありますが、それに付帯したもろもろの仕事を協会にさせるというのが、この骨子であります。
登録制度につきましては、後刻、附帯決議も提出される予定になっておりますので、その際に譲ることといたしまして、私は主としていわゆる輸出振興協会、これに関しまして、今まで委員会並びに理事会に起きました議論のやりとりということを、ここで明らかにしたいと思うのであります。
御承知のように、日本のあらゆる輸出というものが、ことに対米輸出に関しまして、雑貨類というものは非常な過当競争であります。その過当競争の結果値がたたかれる。その一番顕著なものが、所君も御承知のように、真珠類であったわけです、宝石であったわけであります。この真珠が非常に過当競争になりましたために、これは困るというわけでもって、政府が他の民間の団体とともに考えられたのが、いわゆる団体法であります。そこで、私どもはいわゆる中小企業の団体組織法という法案を提出しておりましたために、両者の共同修正によりまして、中小企業団体組織法というものができて、そしてそういう過当競争というものは、調整機能とともに経済行為をもあわせて行わしめていくという民間の自主的な組織をもってこれをやめさせて、経済の秩序を立てていくというのが、今までのわれわれの考え方であったわけであります。
ところが今度はそれを飛び越えまして、いわゆる官僚統制に非常に近いような、表面そういうふうに見えるところの輸出振興協会というものを作っていくというにとは、われわれの今まで考えておった自主的な計画、自主的な統制というものを一挙に飛び越えて、官価統制にミシンと双眼鏡が行ってしまうというふうに考えられるわけであます。そこで、民主主義は皆さんも御承知のように、そういう自主統制をさして、相当訓練をさしていかなければならない。板橋における双眼鏡の連中あるいは大阪におけるミシンの連中というものは、がりがりが非常に多くて、そうしてこの連中は、なかなか自主統制ができないというので、政府案はこれを飛び越えて、官僚統制をしなければならぬという説明であったわけであります。しかし民主主義の原理から言いますと、そういう人たちをも何とかして指導をして訓練をさして、これをして自主的な経済活動の規制が彼らの手によってできるようにしてやるというのが、私は民主主義の訓練の段階にある現在とるべき態度であろうと思っておったわけでありますが、政府提案というものはそうではなくて、それを乗り越えていったために、この法案の今日までの一審議の段階において、いろいろな議論の焦点がここに合わされてきたのであります。
そこで社会党といたしましては、御承知のように、協会というものをやめて、そして中小企業団体組織法によるところの商工組合、これは工業でありますから名前は工業組合となるわけでありますが、この工業組合に調整機能と経済行為とをやらさして、もしそれがだめなら、もう心しこれを補強して、負担金その他をとりやすくしてやるというふうにしてやる、そういう意味の修正案を出したわけであります。
ところが、理事会におきましていろいろもめました結果、それは一つ質疑応答の間において、なるべく早くそういう仕組みに直していこうじゃないか、社会党からそういう質疑があれば、政府当局といたしましては、一応右寄りの官僚統制のにおいのあるものを作るけれども、なるべく早い機会にそれを解消しまして、そうして自主的な工業組合にその機能を持たしていくということを政府が答弁をする、こういうことでどうかというような委員長のお話もあったし、ただいまこの作正案の提案理由を説明した中村理事並びに小川理事からも、そういうような発言があったわけであります。しかしそれではどうも困るというようなことで、その後自民党側の方から、時限立法にしたらどうか、こういう話がありまして、両党の間に一致を見まして、それぞれの機関を通じて両党の意見が確定をいたしまして、ただいまのような共同提案になった、こういういきさつであったわけであります。従って五年以内ということでありますが、われわれとしてはなるべく早い機会において、これを自主的な工業組合に組織がえをするということが必要である。今聞いておれば、中村委員の発言の中にも、なるべく近い機会にこれを自主的な経済組織の方向へ切りかえていくというような発言があったわけでありまして、私どもこれを聞きまして、これはきわめて満足に考えておるわけであります。さような意味でこの時限立法というものは成立いたした、こういう次第でありますので、私は、ここに政務次官もお見えになるけれども、今私が申しました点については、一つとくと頭に入れておいてもらって、そうしてこれを早い機会においてほんとうの正常な方向へ戻していく、こういう努力を一つしていただくことを、ここで言明してもらいたいわけであります。
なお、この運営につきましては、今申しました官僚的な統制、こういうことで、この二つの業界だけが突っ走ってしまうということで、ほかの事界からは離れていくような格好になるわけでありますから、これが運営というものは、かなり気をつけて運営をされると同時に、ほかの過当競争で困っておるようなものが、次から次へとこういうような官僚統制の機構に走っていってしまうことになりますと、せっかく皆さん方も努力して作られた団体組織法というものの精神はまるっきりくずれてしまう、こういうことになることをおそれるわけでありますので、その点を特に申し上げます。
以上、注意までに申し上げて、本案に賛成の意を表するものであります。どうぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/12
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013・長谷川四郎
○長谷川委員長 以上で討論は終局いたしました。
採決いたします。最初に、自由民主党及び日本社会党共同提案にかかる修正要求を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/13
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014・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、本終正案は可決をいたしました。
次に、ただいまの修正部分を除く原案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/14
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015・長谷川四郎
○長谷川委員長 御提議なしと認めます。よって、修正部分を除く原案は可決されました。これにて本法案は修正議決すべきものと決しました。
次に、本案に対し、自由民主党及び日本社会党共同提案の附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、田中武夫君よりその趣旨説明を聴取することといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/15
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016・田中武夫
○田中(武)委員 ただいま可決せられました軽機械の輸出の振興に関する法律案につきまして自由民主党の委員各位の御了解を得まして、自由民主党、社会党を代表いたしまして、附帯決議を提案いたしたいと存じます。
まずその案文を朗読申し上げます。
軽機械の輸出の振興に関する法律案に対する附帯決議案
政府は、本法の立法の趣旨にかんがみその運営を民主的に行うとともに特に左の点に留意すべきである。
一、輸出振興事業協会に対し、その目的達成に必要な財政上、金融上特別の措置を講ずること。
二、登録の基準を定めるに際しては、関係者の意見を充分尊重して決定すること。
三、本法施行により、関係事業の従業員の整理労働の強化と賃金の低下を来さないよう、厳重に指導監督すること。
以上でございます。
続いて若干の補足説明を申し上げます。先ほど松平理事から賛成の討論の中でも申し上げましたように、できるならば業界の自主的な運営によってこの輸出が振興せられることが最も望ましいのであります。だが、いろいろの事情もあり、軽機械の輸出の振興のためにやむを得ないということで、われわれもこの法律案に賛意を表したのであります。従いまして、その運営に当りましては本法の審議に当りましてその質疑の間において十分に意見が述ベられたように、官僚統制に偏しないように、できるだけその業界の自主性を重んじ、その運営は民主的にやってもらわねばならないと思うのであります。
まず第一項について申し上げますが、本法案を見ましたときにだれでも感じることは、輸出振興という大きな題目を掲げて大上段に振りかぶっておるが、その内容を見ましたときは、一面の統制指導というような面が強化せられており、その裏づけとなる面について十分でないという点が、この法案を見てだれも感じる点であります。もちろんその財政あるいは金融上の措置等について法文にこまかく書くことはできないかもしれません。しかしながら、この法律の目的によりまして、この趣旨にかんがみまして、輸出振興のために、この業界に対し、あるいは輸出振興事業協会に対し、必要な財政上、金融上の措置を十分講じてもらわねば、一面統制のみが強化せられ、業界はそのためにかえって衰微するというようなことになるのではなかろうかと思うので第一項目を特に掲げた次第であります。
第二項について申し上げます。これも本法審議の際の質疑の中において十分申し上げた点でございますが、この登録基準を定めるに際しまして、十分関係者の意見を聞き、その業界の動きを見て定めていただかなければ、いわゆるこの適用業界に対して、通産省と申しますか、通産官僚と申しますか、これが生殺与奪の権を握るというような結果を私たちは一番危惧いたしておるのであります。従いましてこの登録基準を定めるに際しましては、関係者の意見を十分に尊重してきめていただくことを特に申し上げたいと思います。
第三項目につきましては言うまでもございませんが、本法施行の結果が、いわゆる零細業者に対してそのしわ寄せがくるのではなかろうかということが考えられます。そういうような場合にその企業に働くところの労働者、従業員の整理あるいは労働強化または賃金の低下等を来たすようなことがないかということをおそれております。従いまして、これは当然のことではございますが、特にこういう点につきまして、すなわち従業員の整理、労働の強化あるいは賃金の低下を来たすようなことのないよう、十分な指導監督を要望いたします。
以上が附帯決議の提出の理由でございます。どうぞ御賛同あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/16
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017・長谷川四郎
○長谷川委員長 ただいまの動議についての御質疑はありませんか——それでは採決いたします。
本動議を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/17
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018・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって本動議は可決され、附帯決議を付することに決します。
なお、本案に関する委員会の報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任願うことに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/18
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019・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
なお、この際通商産業政務次官に発言をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/19
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020・中川俊思
○中川(俊)政府委員 ただいま御可決になりました修正によりまして、ミシン及び双眼鏡を対象とするこの法律は五カ年という時限立法になったのであります。これはミシン及び双眼鏡の輸出振興が、国民経済上から見ましても、特に緊急を要するにもかかわりませず、諸種の事情がこれを妨げておりましたので、この法律によってこれを解決する必要があると判断されての措置と拝察されるのであります。従いまして通産省といたしましても、この御趣旨を体して、ミシンと双眼鏡については所定の期間内に所期の目的を達成するよう鋭意相努める所存であります。なお、この法律はあくまで工業組合の健全な運営を前提にしてこそ、その円滑な施行が期待されるものでありますので、工業組合が、業界の安定と発展のためにも、先ほど来松平、田中両委員からるるお話のございましたように、自主的な機関として一そうの発展を遂げるように、私どもといたしましては、今後とも力を尽したいつもりでございますから、今後これが運営に当りまして、先ほど来御心配になっておりましたような、通産官僚において出過ぎた点がございましたならば、どうぞ一つ御遠慮なく御指示をいただいて御協力を願うということにいたしたいと思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/20
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021・長谷川四郎
○長谷川委員長 次に新潟地区地盤沈下の実情を視察してこられました岡部得三君より説明を聴取することといたします。岡部得三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/21
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022・岡部得三
○岡部委員 ただいま委員長から御報告ありましたように、新鴻地区の地盤沈下状況の視察に、一昨日、日曜日朝から参りまして、今朝六時に帰って参りました。その御報告を申し上げます。
新温地区の地盤沈下の問題について昨年暮れから当委員会に対して視察を要請されておりましたので、私と木倉和一郎君、田中武夫君、内海清君の四名をもちまして現地に参りました。現地におきましては地盤沈下の現状を詳しく視察いたしましたほか、新潟県並びに市当局、第一港湾建設局から説明を受け、また被害者の方々、ガス業者の方々から十分に意見を聴取して参りました。以下簡単に視察の結果を御報告いたします。
新潟市周辺の地盤沈下は明治年代より年約三ミリ程度ずつ沈下していたようでありますが、昭和二十六年には七ミリ、昭和三十年には十二ミリ、昭和三十二年には三十三ミリとこの数年間に急激に加速されてきており、最近におきましては最も沈下のひどい信濃川河口において、昭和三十三年二月から十月までの八カ月間の最大沈下量は三百二十七ミリを示しております。このような沈下量は大阪、尼崎、東京都の江東地区の沈下よりははるかに大きな数字を示しております。新潟地区は信濃川のデルタ地帯にあって、元米地盤が低く、海抜一メートルの区域が多かったので、今ではひどいところでは海面すれすれのところがある状況となっております。従いまして雨が降ると床下浸水となり、高潮や大雨の際は市の相当部分が水浸しとなる危険さえあるのであります。また工場の作業を不可能にするばかりか、鋳物工場や電気炉等は爆発の危険さえあるということでありました。
港湾の被害は最もひどく、突堤は防波場の役をなさなくなったため、岸壁の土に壁を作っております。このほか新潟鉄工や昭和石油等では沈下に伴って岸壁を継ぎ足しております。工場敷地は海面すれすれとなっておりまするために、下から水が吹き上げてくる状況でございまして、ポンプでこれをアップして排水しておるという状況でございます。一般住民も戦々きょうきょうとしており、移転するものも出始めているような状態であります。
このように予想した以上に被害状況は深刻であり、われわれ一行も至るところで熱心な陳情を受けたのであります。このような地盤沈下対策として、その原因調査もさることながら、まず応急対策として昭和三十三年度は国費四億円が支出され、炭壁の改修並びにその他のことに使用されたのでございますが、七億二千万円の応急対策事業が行われております。また昭和三十四年度の予算案には国費五億二千万円が計上されており、九億円以上の事業が計画されております。
沈下原因調査については昭和三十三年度七千万円を支出して観測井を掘り、現在調査を行なっておりますが、昭和三十四年度にはさらに三千八百万円を計上し観測井を掘る計画がなされております。またコスモス・プランによる地下水のくみ上げと地下水面の変化の調査も行われております。
地盤沈下の原因調査については、官民及び学識経験者よりなる地盤沈下対策委員会が中央と地方に設けられて、鋭意この検討を続けておるのでありますが、さらに明年度には地盤沈下対策審議会の設置が提案される予定となっております。
今日まで判明しました調査の結果を簡単に申し上げますと、コスモス計画による調査結果では、大体ガス水のくみ上げの過多が沈下原因の五割ぐらいではないかと言われ、これを大きく見ているようであります。
観測井による調査で現在二百メートル、二百六十メートル、三百八十メートル、六百十メートルの各層を調査した結果、六百十メートル層において最も沈下が激しいことが判明しております。これらのデータに基きまして地盤沈下対策委員の意見を現在取りまとめ中ということでありまして、近く中間報告が行われる予定になっておりますが、これらの意見のおもなるものは、天然ガス採取に伴う地下水のくみ上げ説、地殻の変動説、また地下水による堆積物の移動説、港湾の浚渫説、また大河津分水による信濃川下流の堆積士砂の減少説、また蒲原平野の乾田化による地盤の収縮説等があると考えられます。
現地における意見を申し上げますと、被害者団体の方々は、天然ガス採取による地下水くみ上げを急激に行なったことが沈下の原因に間違いないと主張しております。
この地下水のくみ上げは一日五十万トン、年に二億トンにも上るといわれ、東京の五千万トン、大阪の三千万トンに比べると膨大な水量であり、狭い地域からこのような膨大な地下水をくみ上げれば地盤が下るのは当りまえだと常識的に信じられており、観測井の六百十メートルの地盤が最も下っているのは天然ガス採取と一致するではないかと主張しております。昭和三十年ごろから天然ガスの採取量の急激な上昇と並行しまして、地盤沈下が激しくなった事実がこの主張の強い裏づけになっておるようであります。被害者は市民大会を聞いて、ガス水くみ上げを全面的に即時停止すべしとの決議を行い、市民の生活権の確保を強く叫んでおります。
この考え方については、第一港湾建設局も強く支持しており、ガス水くみ上げ悦以外の説は理論的根拠が認められないものとして反駁しておりました。
一方、大然ガス業者はガス水のくみ上げ説に対して、今日までの調査結果では何らガス水のくみ上げが原因であることを立証する根拠は現われていない、このような反駁を行なっております。地下水くみ上げは地下のれき層を主としているのでありますが、地下水くみ上げによってこのれき層付近の粘土層が圧密されることによって地盤沈下が起るというのが地盤沈下学説である、しかしながら新鴻の場合は、東京、大阪等が地下三十メートルくらいのやわらかい層から地下水をくみ上げているのとは違って、六百メートルも深い層からくみ上げているのであり、粘土層も非常にかたく、ほとんど圧密を受けないことが立証されておるのであります。また地下水をくみ上げてもその大部分は他の広い地域から補給されることが立証されておる。つまりくみ上げたところ真水に置きかえられつつあるというものである。またガスを多量に採取しているところと沈下しているところが一致していない、全然ガスを採取していないところも沈下している。新潟地区の地下は断層があり、ガス採取が遠く離れた地域の他盤沈下とつながっているとは考えられない等等、いろいろな点から反駁しております。しかしながらガスが沈下の原因かどうか、理論的根拠を示してもらうことを強く望んでおり、常識的にはガスにのみ責任を全部負わせることは不当であり、調査の結果がはっきりすれば十分なる対策を講ずる旨を表明しておられました。ただ世論が激しくなったので二月三日、といいますときょうからでございますが、きょうの正午からガス井戸六十本、全体の量にいたしますと一日十三万五千立方メートルのガスの採取を中止するということを業界の方では申しております。
天然ガスは原料としてまた燃料としましてもすぐれておりまして、時代の脚光を浴びていることは今され申し上げるまでもございません。天然ガス採取業者また天然ガスの利用業者としましても、天然ガスの供給減少は非常な損失をこうむるものでありますから、業者自体でも観測井を掘る等慎重な調査を行なっております。天然ガス業者と被害者の対立は、以上のような理論抗争を続けておりますが、やや感情的な対立となっているようであります。
一方、新潟県また新潟市当局は、今日まで天然ガス開発、工場誘致を促進してきたあとでもあり、対策に苦慮しているのでありますが、最後に新潟県及び新潟市からの陳情書を簡単にお読みいたします。
一、原因の早期究明のため国で積極的調査を実施願いたい。
沈下の原因を早期に調査究明し恒久対策の樹立が焦眉の急務であるが、高度な技術 と科学的な機能を必要とすることにかんがみ、国において積極的に調査を実施願い
たい。
二、地盤沈下対策に関する単独立法の制定を促進願いたい。
地盤沈下対策事業は沈下量に対応して増大の一途を迫ること必至であるが、地方財 政の極度に窮迫している現状からして、国庫補助又は負担率を大巾に引上げることを 主目的とする単独立法の制定方を関係方面に強く要望していることにかんがみ、速か に実現願いたい。
三、産業育成の見地から国で特別措置を願いたい。
近時新潟市周辺における産業、とりわけ化学産業の進展は著しいものがあり、我が 国庫業経済の発展に寄与するところ少くないが、地盤沈下の影響により大きな被害を 蒙りつつある現状にかんがみ、原因の究明と併行し、産業の育成助長、港湾機能の復 元などに対し国において特別の助成措置を願いたい。
新潟県知事 北村 一男
新潟県議会議長 岡田 幸平
新潟市長 村田 三郎
新潟市議会議長 瀬谷 照これらの人から委員長あてに陳情書が出ておるのでございます。
以上で、簡単ながら報告を終りたいと思いますが、当商工委員会といたしましても、民生の安定、産業育成の見地から、また鉱業と公益との調整という見地から、この問題に対して強い関心を持ち、可能な限り早い機会によりよい解決をもたらすよう適当な措置をとっていただきたいと私は思うものであります。
以上報告を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/22
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023・長谷川四郎
○長谷川委員長 本日はこれにて散会いたします。
次会は、明日午前十時より開会いたします。
午後零時四十三分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X00919590203/23
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