1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年三月十一日(水曜日)
午前十時三十八分開議
出席委員
委員長 長谷川四郎君
理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君
理事 中村 幸八君 理事 南 好雄君
理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君
岡部 得三君 岡本 茂君
木倉和一郎君 始関 伊平君
關谷 勝利君 中井 一夫君
野田 武夫君 細田 義安君
渡邊 本治君 板川 正吾君
今村 等君 内海 清君
勝澤 芳雄君 小林 正美君
出席国務大臣
通商産業大臣 高碕達之助君
出席政府委員
通商産業事務官
(大臣官房長) 齋藤 正年君
通商産業事務官
(通商局長) 松尾泰一郎君
通商産業事務官
(企業局長) 松尾 金藏君
通商産業事務官
(石炭局長) 樋詰 誠明君
委員外の出席者
専 門 員 越田 清七君
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三月十日
委員伊藤卯四郎君、滝井義高君及び多賀谷真稔
君辞任につき、その補欠として鈴木一君、永井
勝次郎君及び水谷長三郎君が議長の指名で委員
に選任された。
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本日の会議に付した案件
硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法の
一部を改正する法律案(内閣提出第一一五号)
輸出品デザイン法案(内閣提出第一三一号)
工場立地の調査等に関する法律案(内閣提出第
一三五号)(参議院送付)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/0
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001・長谷川四郎
○長谷川委員長 これより会議を開きます。
硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法の一部を改正する法律案、輸出品デザイン法案並びに工場立地の調査等に関する法律案、以上三案を一括して議題といたします。
審査を進めます。
この際通商局長より発言を求められておりますので、昨日の田中武夫君よりの質問に対する答弁を許可いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/1
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002・松尾泰一郎
○松尾(泰)政府委員 昨日田中先生から御質問がありまして、明快なお答えができませんで、はなはだ申しわけありません。少し分析をいたしましてお答えを申し上げます。
まず第一の場合でございますが、Aが特許庁と本法による認定機関双方にデザインの登録の申請をした。その場合に、特許庁におきましては登録をされなかった。認定機関におきましては登録をされたという場合でありますが、この場合がまた二つに分れるわけでありまして、まず第一に特許庁が登録しなかった場合として考えられまするのに、他人Bがすでに意匠権を持っておるということで、他人Bの意匠登録に類似しておるということで登録をしなかったという場合がまず第一であります。その場合、認定機関が登録をいたしました理由としては、もちろん他人Bの登録意匠に非類似だということで登録をしたかと思うのであります。その場合には、まずBといたしましては、自分が意匠権を持っている、それが認定機関の方でAに登録を許したという結果になりまするので、Bは本法第四十一条の異議の申し立てができるわけでありまして、認定機関といたしましては、その異議の申し立てによりまして、登録を取り消すという措置をいたすのであります。その場合は、異議の申し立てがBからかりになくとも、認定機関の方で明白にそういう事態がわかりますれば、職権によりまして登録の取り消しということもできるのであります。それから次のそういう取り消しに至るまでは認定機関の登録なり、あるいは認定は有効でありまするので、Aは輸出を続けることができるわけでありまするが、BはAに対しまして自己の意匠権を主張し得ることは当然でありまして、損害賠償その他の請求もできようかと思うのでありますが、認定機関の責任といたしましては、認定機関において故意、過失、及び違法な権利または利益の侵害があれば賠償責任は生じますが、そういうことでなければ責任は発生はしない、こういうふうに考えます。
それから、いま一つの特許庁で登録をしない理由の場合といたしまして、公知意匠に類似をしているという判断のために特許庁が登録はしなかったが、本法の認定機関においては、公知意匠に非類似だということで登録を、した、こういう場合であります。その場合は、意匠権の侵害の問題は起らないと思うのでありますが、もし認定機関がAからの申請により、それを登録をしなかったといたしますれば第三者の人は輸出ができたはずでありますが、Aの登録を認定機関がしたというがために、その他のものの輸出の認定が受けられないということの結果になるわけでありますので、利害関係人であります不特定多数の者は異議の申し立てができるわけであります。さようなことになりますと、当然認定機関は登録を取り消すことになるのであります。この場合は、最初の場合と違いまして、不特定多数の者の意匠権というものもなかったのでありまするので、Aに対する不特定多数の者からの意匠権に基く主張というものはできないかと思うのでありますが、認定機関の責任につきましては、第一の場合と同様に、故意、過失、及び違法な権利、利益の侵害があれば別でありますが、なければ、認定機関の責任はない、こういうふうに考えるのであります。
それから先生があげられました第二の設例の場合、たとえばAが特許庁及び認定機関にそれぞれ登録の申請をしたが、特許庁においては登録を受けたが、認定機関におきましては登録を受けられなかった場合、この場合が第一の例の場合と同様に二つに分れるわけであります。
まず、特許庁におきまして他人Bの登録意匠に非類似だとして登録をした場合がまず第一の場合、認定機関におきましては他人Bの登録意匠に類似だということで登録をしなかったという場合でございます。この場合は、もちろん特許庁で登録をされたのでありまするので、時間的な時差は出て参りますが、Aが認定機関に再申請をすれば、当然に認定機関において登録を受けられるわけであります。また、かりに再申請をしまして認定を受けませんでも、特許庁のそういう登録というものは随時認定機関の方に連絡がございまするので、事実上登録を受け、また自分だけが輸出の認定を受けるという結果になろうと思うのであります。また、この認定機関において登録をされなかったことに対する異議の申し立ても、もちろんできるかと思うのであります。その場合におきます現実の利害の問題でございまするが、Aは特許庁において登録をされるまでは認定機関の方におきまして登録をされておりませんので、輸出の認定が受けられない、すなわち、輸出が認められないということになろうかと思うのであります。これはやむを得なかろうと思うのであります。認定機関の責任につきましては、最初に申し上げましたように、故意、過失及び違法な権利または利益の侵害がなければ、認定機関の責任はないと判断をいたすのであります。
それから最後の場合は、特許庁が登録をして第二のケースとして、公知意匠に非類似だとして登録をし、認定機関は公知意匠の類似だとして登録をしなかった、この場合でありますが、本法上の処理といたしまして、先ほども申しましたように、特許庁の登録がありました後は、もちろん再申請によって認定機関の登録を受けることもできるわけであります。また事実上の連絡によってそれと同様の効果を上げることももちろんできるかと思うのであります。なお、その場合における現実の問題といたしましては、Aが登録をされるまでは、公知意匠としてたれでも輸出認定が受けられるのであります。それまでは何人にも意匠権はまだ存在しておりませんので、意匠権等の問題は起らない、こういうふうに考えます。
やや複雑でございましたが、以上お答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/2
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003・長谷川四郎
○長谷川委員長 質疑の通告がありますから、これを許可いたします。田中武夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/3
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004・田中武夫
○田中(武)委員 私の質問いたしました。それから二の場合二つずつに分れる。そこで、かりにお答えを一の(一)、一の(二)というように区別してお伺いしたいと思います。
一の(一)の場合は、これはBならBという人が自分の意匠権を侵されたのであるから、その人から異議の申し立てをやるだろうと思います。一の(二)の場合は不特定多数、いわゆる利害関係者からの異議の申し立てがあると思う。もしなかった場合に職権をもって取り消すということはあり得るかということです。それが一点。
それから二の(二)の場合、この場合認定機関に故意または過失がなかった場合には、もちろん責任はありませんが、たとえば他人がすでに意匠としての登録を特許庁の許可を受けておる、すなわち他人の工業所有権を侵した、あるいは二の(二)の場合の公知の事実である、公知の意匠であるということを、認定に当って認定機関が知ることについて過失があった場合、この場合はやはり認定機関に損害賠償の責任があるのではなかろうか、こう思いますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/4
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005・松尾泰一郎
○松尾(泰)政府委員 まず第一の御質問の場合でありますが、不特定多数の者からの異議の申し立てがあった場合に、登録を取り消すという場合、職権によって取り消しをするのかどうか、こういう御質問だと思いますが、もちろんそういうことが明白になりますれば職権取り消しはいたすのであります。しかしながら特許庁の連絡も、登録があれば登録をしたという連絡がすぐ認定機関にございますが、非登録の場合には、現実問題として連絡がないためにわかりにくい。そこでわかればもちろん職権取り消しはいたすのでありますが、そういう第三者からの異議の申し立てがあって初めてわかる場合が多いのではないか、こういうふうに考えるわけであります。わかりますればもちろん職権取り消しもいたしますし、異議の申し立てがあればそれに基く登録の取り消しもやります。
それからその次の問題でございまするが、いかなる場合におきましても、認定機関の損害賠償責務というものは、故意または過失というもの及びその行為の違法性があって初めて損害賠償の理由になり得るのであります。従いまして三、四の場合におきましてこの認定機関の責務ということになりますと、この最初の場合と同様に解釈すべきである、こういうように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/5
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006・田中武夫
○田中(武)委員 設例一の場合には異議の申し立てがあれば当然その事実はわかる、異議の申し立てがなければわからないから、異議の申し立てのあるまで待ってやる、これはわかるのですが、かりに異議の申し立てがなくとも、認定機関においてそういう事実がわかれば、当然職権取り消しをするということですね。
それから設例二の場合ですが、故意——故意の場合は当然でしょうが、故意または過失及び違法性、これ以外のときには損害賠償責任はない、こういうことですか。そうすると過失の事実認定なんです。他人の工業所有権を侵す、すなわちすでに特許庁の方において認定を受けておるということ、おそらくそういうことは事実上ないだろうと思うんですが、それは知ろうと思えば当然知ることのできる事実ですね。ところがそれを知らずにやったということにおいては過失があったと思う。あるいはまた公知の意匠であるかどうか、これはその人の認識の問題になろうと思いますが、社会通念といいますか、常識的に考えて当然公知の事実であると思われるものに対して認定をしたという場合、ここにも過失ということが問題になってくると思うのであります。ここで過失とは何ぞやということになるわけなんですが、そういう点について、もうちょっと深く知っておきたいと思います。
それからもう一つ、この違法性というような場合は、たとえばそういうことが当然公知の意匠であり、公知の事実であるということがわかっておるが、はっきり言ってわいろでももらってやった、こういう場合になるだろうと思います。そういう場合は当然責任問題が起ると思います。この過失の場合、大体普通の常識で考えて公知の意匠である、公知の事実であるというような場合に、なおかつこれを認定した、こういうような場合には過失として考えられると思いますが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/6
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007・松尾泰一郎
○松尾(泰)政府委員 今の御質問はごもっともと思うのであります。また非常にむずかしい問題なんでございまして、故意、過失の立証責任というものは、やはり利害関係人からなされるわけでありまして、最終的には裁判所の決定する問題と思います。問題は、他人Bが意匠登録をしている、それを知らずに認定機関において登録をするというような場合は、これは過失になろうかと思うわけでありますが、実際はそういう場合ではございませんで、類似、非類似の概念の判断の差になってくるかと思うのであります。特許庁では類似だ、認定機関の方では非類似だと思うというようなことでありまして、ぴったりと類似かどうかというふうに割り切れぬ場合が、現実の問題としては多いのではないかというように考えられるのであります。従いまして、故意、過失の問題も現実に当ってそれぞれ判断をしなければ、一がいには言いにくいのではないかと思います。
それから公知意匠の場合のごときは、今先生設例のごとくに公知の意匠を知らずに、ある申請人に対して登録を許すというようなことは、これはやや過失になろうかと思うのでありますが、これも公知意匠に類似か非類似かという判断の非常にきわどい差で問題が起ってくるかと思うのであります。従って故意、過失の認定は、実際問題として非常にむずかしいのであります。裁判所の問題でもございまするので、一がいに結論的なことは申し上げにくいのでございますが、たとえばもうすでにある人間が輸出をしておるというようなものは、これは公知の意匠であります。それを知らずに認定機関が非類似として登録をするということは、まあ実際は私はなかろうと思いますが、もしありといたしますれば、これは明らかに過失でもありますし、もし認定機関がそういうAならAの登録認定をいたさなければ、善意の第三者が輸出をできたものをとめられるという格好になるわけであります。こういう場合には過失もあり、違法性もあるのではないか。従って認定機関の損害賠償義務というようなものも出て参るのではないか。そういう明らかな場合もございますが、実際問題として非常に判断のむずかしい問題かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/7
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008・田中武夫
○田中(武)委員 この認定機関の認定は行政処分ですね。そうするとそれに対することは結局民事訴訟になると思うのですが、それじゃその相手方が通産大臣になるのか、認定機関の責任者となりますか、行政処分なら通産大臣と思いますが、その点どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/8
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009・松尾泰一郎
○松尾(泰)政府委員 やはり認定機関そのものを相手方として損害賠償責任を請求する。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/9
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010・田中武夫
○田中(武)委員 私の先ほどから言っている損害賠償のことになると、結局は民事訴訟問題になる。そうすると、相手方の問題ですが、この認定機関の行う認定は、行政処分でしょう。何です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/10
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011・松尾泰一郎
○松尾(泰)政府委員 これは認定機関の処分でありまして、行政的処分でありますが、政府そのものの処分ではないわけでございまして、従って認定機関が相手方とされる、こういうわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/11
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012・田中武夫
○田中(武)委員 そうすると、訴訟の場合の相手方は、認定機関になるわけですね。通産大臣から指定を受けた認定機関、そういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/12
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013・松尾泰一郎
○松尾(泰)政府委員 はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/13
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014・田中武夫
○田中(武)委員 けっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/14
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015・長谷川四郎
○長谷川委員長 この際お諮りをいたします。三法案について質疑を終局するに御異議ありませんか。
〔「異議なし上と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/15
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016・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
次に、ただいま質疑を終局いたしました三案につきましては、いずれも討論の通告がありませんので、これを行わず、直ちに採決いたすことに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/16
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017・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
それでは順次採決いたします。
まず、硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法の一部を改正する法律案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/17
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018・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。よって、本案は区原案の通り可決をいたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/18
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019・長谷川四郎
○長谷川委員長 次に、輸出品デザイン法案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。
[「異議なし」と呼ぶ者あり]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/19
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020・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認め、よって、本案は原案の通り可決をいたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/20
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021・長谷川四郎
○長谷川委員長 次に、工場立地の調査等に関する法律案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/21
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022・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認め、よって、本案は原案の通り可決をいたしました。
なお、ただいま可決をいたしました各案に関する委員会の報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/22
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023・長谷川四郎
○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
本日は、これにて散会をいたします。明日は、午前十時より委員会を開会いたします。
午前十一時五分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02719590311/23
4. 会議録のPDFを表示
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