1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年四月七日(火曜日)
午前十時四十四分開議
出席委員
委員長 早川 崇君
理事 足立 篤郎君 理事 坊 秀男君
理事 山下 春江君 理事 石野 久男君
理事 平岡忠次郎君
内田 常雄君 加藤 高藏君
鴨田 宗一君 木倉和一郎君
高橋 英吉君 武知 勇記君
濱田 幸雄君 福永 一臣君
藤枝 泉介君 古川 丈吉君
増田甲子七君 村上 勇君
毛利 松平君 春日 一幸君
久保田鶴松君 松尾トシ子君
山下 榮二君 山本 幸一君
出席政府委員
大蔵政務次官 山中 貞則君
大蔵事務官
(主計局法規課
長) 小熊 孝次君
大蔵事務官
(管財局長) 賀屋 正雄君
大蔵事務官
(銀行局長) 石田 正君
大蔵事務官
(為替局長) 酒井 俊彦君
委員外の出席者
大蔵事務官
(大臣官房財務
調査官) 大月 高君
大蔵事務官
(理財局総務課
長) 澄田 智君
大蔵事務官
(管財局接収貴
金属監理官) 池中 弘君
専 門 員 抜井 光三君
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四月四日
委員鴨田宗一君及び藤枝泉介君辞任につき、そ
の補欠として池田勇人君及び一萬田尚登君が議
長の指名で委員に選任された。
同日
委員池田勇人君及び一萬田尚登君辞任につき、
その補欠として鴨田宗一君及び藤枝泉介君が議
長の指名で委員に選任された。
同月七日
委員荒木萬壽夫君、小西寅松君、進藤一馬君、
竹下登君、中村梅吉君及び西村英一君辞任につ
き、その補欠として村上勇君、木倉和一郎君、
増田甲子七君、武知勇記君、犬養健君及び高橋
英吉君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員犬養健君、木倉和一郎君、高橋英吉君、武
知勇記君、増田甲子七君及び村上勇君辞任につ
き、その補欠として中村梅吉君、小西寅松君、
西村英一君、竹下登君、進藤一馬君及び荒木萬
壽夫君が議長の指名で委員に選任された。
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四月一日
国家公務員退職年金制度に関する請願(保科善
四郎君紹介)(第三一六二号)
同(宇田國榮君紹介)(第三一八二号)
同(田中武夫君紹介)(第二二一〇号)
同(八木徹雄君紹介)(第三二一一号)
公共企業体職員等共済組合法の一部改正に関す
る請願(松永東君紹介)(第三一九一号)
揮発油税等引上げ反対に関する請願(久野忠治
君紹介)(第三二五九号)
同(小西寅松君紹介)(第三二六〇号)
同(丹羽兵助君紹介)(第二二六一号)
同(早稻田柳右エ門君紹介)(第三二六二君)
同月六日
漁業協同組合に対する課税適正化等に関する請
願(鈴木善幸君紹介)(第三二九五号)
酒類の減税に関する請願(池田清志君紹介)(
第三三一七号)
揮発油税等引上げ反対に関する請願(鍛冶良作
君紹介)(第三三二七号)
テレビジョンキット等の課税反対に関する請願
(内藤隆君紹介)(第三三二八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
賠償等特殊債務処理特別会計法の一部を改正す
る法律案(内閣提出第一八〇号)
接収貴金属等の処理に関する法律案(内閣提出
第二五号)(参議院送付)
国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に
伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案
(内閣提出第一八一号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/0
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001・早川崇
○早川委員長 これより会議を開きます。
賠償等特殊債務処理特別会計法の一部を改正する法律案、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、接収貴金属等の処理に関する法律案の三法律案を一括して議題といたします。
質疑の通告があります。これを許します。石野久男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/1
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002・石野久男
○石野委員 管財局長にお尋ねいたしますが、接収貴金属の問題は長いこと本国会では問題になっていることでございまして、この問題について私たちがいろいろ問題にする点は、何といってもこの接収貴金属というのは、戦争が終ったあとに貴金属を所有していた者に対して、占領軍がこれを接収したということから起きてきた問題でございます。私どもが問題にするのは、この接収された貴金属と、戦争中に国民が供出したいろいろな貴金属との関連性の問題が、まず第一番に非常に国民的な感情の問題からしても大きい問題を残しておる、こういうように考えております。そこで、接収貴金属の問題についてはいろいろな資料が出ておるのでございまするが、なおこの接収貴金属を今日返還を受ける人々の中で、政府が接収した貴金属を、いろいろ作業上の——当時のやはり軍の作業とかなんとかで、個人に対して貸与しておるとか、あるいは材料として給与しておったが、そういう人々はその個人の中にはたくさんおりますかどうか、その点を一つお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/2
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003・賀屋正雄
○賀屋政府委員 接収貴金属の総量は六百七十四億に上っておりまして、そのうち民間に帰属すると推定されます数量は四十四億と推定されておるのでございますが、そのうち、回収と申しますか、戦時中供出されました貴金属が旧陸軍省あるいは軍需省等から民間に払い下げられまして、そうして今回この法律が通りまして民間に帰属するものがどれほどあるかという点でございます。これは明確な数字は証拠書類等が残っておりませんのではっきりはいたしませんが、先ほど申し上げました四十四億の中には、これは含まれておらないと申し上げることができるのであります。法文の上で申し上げますと、二十条にはっきり規定してございますように、軍需省あるいは陸軍省等が民間にその軍需品生産の目的でもって貴金属を払い下げた場合がたくさんあるわけでございますが、その場合に、払い下げの方式によった場合と、委託加工という形でもって作業をさせた場合とあるわけでございまして、委託加工の場合は、軍需省あるいは陸軍省、つまり国が所有権を保留いたしておりまして、それに手を加えさせる、こういう形でございます。ところが、一応その経理関係等、材料保管の責任を明確にさせるという意味から、経理上は一応売買の形をとりまして、民間に払い下げた格好にいたしまして、そしてそれを使って軍需品の生産をさせまして、でき上ったものを納めさせるという形にしておりました場合があるのでございますが、その場合に、払い下げを受けてまだ手を加えないうちに接収されたという例があるのでございます。そういう場合におきましては、これは委託加工の場合と実質上何ら変りはないということで、この法律におきましては、軍需業者がそういった場合所有権を一応形式的には持っておりますが、その軍需業者には返還しないで、国に帰属させる、こういう措置をとることにいたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/3
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004・石野久男
○石野委員 民間の所有で今返還を受ける対象になる四十四億の中に、そうした払い下げをしたものはどのくらいあって、しかも、払い下げの売買契約が成立して入っておるものと、それから、もうこの四十四億の中には、その払い下げのいろいろな契約が成立しないで、保有がまだ軍なり政府にあったというものは、全然除かれておるのか。その二つの点を一つはっきりしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/4
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005・賀屋正雄
○賀屋政府委員 先ほど申しました四十四億の民間に返ると予想されます分の中には、ただいま申し上げました分は入っておりません。ただ、国から払い下げたものは全然ないかと申しますと、たとえば歯科医が持っておりました金でありますとか、そういったものは若干あると思うのでございますが、その点は明確に数量をあげることができません。これは当然民間人に返ることになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/5
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006・石野久男
○石野委員 政府が払い下げをして民間の所属になっているものが若干あるが、その数量は明確でないということでありますけれども、しかしその数量は四十四億の中でどの程度におよそなりましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/6
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007・賀屋正雄
○賀屋政府委員 民間に返ります分は法人で約三十九億、個人が約二億でございます。これの業種別の内訳を見ますと、貴金属の売買加工業でありますとか、あるいは鉱山業、電気機械工業、その他写真でありますとか、いろいろあるのでございます。これの中にはいわゆる軍需業者というものは除かれておるのでございまして、ほとんど払い下げを受けたというものはなくて、前から持っておったものと推定されるのでございます。個人につきましては、先ほど申しました医者でありますとか、あるいは貴金属の売買加工業、あるいは機械の製造修理業といったものでございまして、やはり前から業務用に持っておったものと推定されるのでございます。若干医師、歯科医師等は、当時の貴金属の統制からいたしまして、政府から合法的に払い下げを受けておったようでございます。そういったものが手元にあって接収されたというものも含まれておると思うのでございますが、これはごくわずかであろうというふうに存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/7
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008・石野久男
○石野委員 法人の場合でも、個人の場合でも、現在返還を受ける四十四億の中には、政府の払い下げで本人の所属に帰しておるものというのはごくわずかだということでございまするが、これは、ごくわずかという抽象的な問題だけでは、私どもとしてはなかなか考えがはっきり出てこないわけでございます。その数は大体政府の方の書類を調査すればおわかりになってくると思いますが、四十四億の中で何割程度くらいのものはそういうふうになりましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/8
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009・賀屋正雄
○賀屋政府委員 この四十四億という推定をいたしました根拠は、昭和三十七年に接収貴金属等の数量等の報告に関する法律という法律を施行いたしまして、これに基きまして被接収者から接収されました貴金属の数量、種類それから接収当時の経緯といったようなものを報告をとりまして、その報告に基きまして、現在政府が保管しております連合国司令部から引き継ぎを受けました接収貴金属と対比をいたしまして、そうして一定の推定を加えて、この四十四億というのを出したわけでございます。この法律に基きます接収されました方々の報告の中には、そういう払い下げを受けたといったものはないのでございまして、従いまして、この中には、先ほど申しましたような医師が持っておりましたものも若干あるという推定の程度でございまして、先ほど申しました軍需業者等に形式的には所有権はあるが、この法律の二十条によりまして国に帰属させるという分は、この四十四億のほかの、政府に帰属いたします交易営団の分等、いわゆる回収された貴金属がまだ軍需目的に使われないうちに接収されましたものといたしまして百十四億を推定いたしております。この中に今申しました分があるわけでございまして、これも数字的にはっきりいたしませんが、一応四億程度という推定をいたしております。それは政府に帰属いたします交易営団等の分の百十四億の方に含まれておるのでございまして、民間の分はそれには含んでおらないのでございます。しからば全然払い下げしたものはないかといわれますと、歯科医等の持っております貴金属とか、そういうものが若干あるというふうに推定をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/9
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010・石野久男
○石野委員 四十四億というこの民間所有者に返還するという金額は、今の局長の御答弁から推察いたしますると、ほとんど政府が民間から強制供出をさせた貴金属を払い下げたものはないのだ、ほとんどのものはもう戦争中に所持しておって、戦後依然として所持しておったものだ、こういうふうに見てよろしいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/10
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011・賀屋正雄
○賀屋政府委員 私どもそのように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/11
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012・石野久男
○石野委員 民間所有者の中で、たとえば清算法人とか閉鎖機関等に返還すべきものがございますが、こういうものを政府としてはこの清算機関とかあるいは閉鎖機関等に渡した場合に、その金額はどういうふうに処理され、またどういうふうな人々に帰属するとお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/12
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013・賀屋正雄
○賀屋政府委員 御指摘の通り、今回の法律が施行されまして閉鎖機関に返還される分が相当あるわけでございますが、閉鎖機関の場合もすでに特殊清算を完了いたしております分もありますし、まだ清算を完了しないで、この法案の通過を、従って接収貴金属の返還されるのを待っておるものもあるわけでございます。いずれにいたしましても、これが返還されますれば、整理が完了しておらない場合におきましては、最後の弁済等に充てまして、なお残ればこれは当然出資者に返る、それから、清算を完了いたしております場合におきましても、それぞれのもとの出資者に追加して返される、こういうことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/13
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014・久保田鶴松
○久保田(鶴)委員 ちょっと関連して伺いますが、先ほど、局長は、法人と個人と両方に分けて四十四億になるとおっしゃった。もう一ぺん法人はなんぼ、個人はなんほか言って下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/14
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015・賀屋正雄
○賀屋政府委員 法人に対して返還されます分として約三十九億、個人に返還されます分が約二億、この両者を合せて四十一億でございますが、日本銀行が戦時中に売り戻し条件付で民間から買い上げました貴金属が約三億ございます。これはその当時の契約によって当然民間に売り戻す契約上の義務があるわけであります。この三億の追加を加えまして、合計四十四億という推定をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/15
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016・久保田鶴松
○久保田(鶴)委員 もう一つ答えてもらいたいのですが、法人は何という会社、個人はどういう人に返すか、これを一ぺん報告して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/16
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017・山中貞則
○山中政府委員 個人の財産に関する件でもありますので、参議院の審議におきましては秘密会の取扱いをもって答弁いたしておりますから、秘密会の取扱いではいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/17
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018・久保田鶴松
○久保田(鶴)委員 これは、ここで法案を審議して、しかも四十四億を返してやるというようなことについて、それが公けに発言できないという、そんなことではここでまじめに審議はできない。私はいつも申しておるのですが、もともと返して上げなければならない人に返されない。いいですか。金の帯どめとか、かんざしとか、時計の側とか、あるいは指輪とかいうようなものを、戦争に勝つためにというようなことで国民に出さした。それが金の延べ棒になってしまった。そのうちの四十四億を返すというが、ほんとうに返してやらなければならない人には返してやれない、返してやらなくてもいい人に返そうというのがこの法案だ。返してやらなくてもいい人に返すのだから、われわれは、国民の代表として、どういう人に返すのかということをここではっきりしておかなければならない。それを答えてもらいたい。それを答えられないならば審議できませんよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/18
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019・早川崇
○早川委員長 お諮りいたします。国会法第五十三条第二項の規定により、これより秘密会といたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/19
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020・早川崇
○早川委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。
それでは傍聴人の方々及び関係政府当局以外の政府当局は御退席を願います。
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〔午前十一時三十九分秘密会に入る〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/20
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021・早川崇
○早川委員長 この際、審査の便宜上、秘密を要しますので、速記をとらず懇談に入りたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/21
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022・早川崇
○早川委員長 御異議なしと認めます。よって、これより懇談に入ります。
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〔午前十一時四十分懇談会に入る〕
〔午前十一時五十八分懇談会を終る〕
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023・早川崇
○早川委員長 これにて懇談を終了いたします。
〔午前十一時五十九分秘密会を終る〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/23
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024・早川崇
○早川委員長 秘密会を解き、本委員会を続開いたします。
久保田委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/24
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025・久保田鶴松
○久保田(鶴)委員 それでは、大体、秘密会で発表されました方々、この人たちに返されますのについて、どういうような場所、どういうような会議等でおきめになって返すようにされたかということを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/25
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026・賀屋正雄
○賀屋政府委員 先ほど秘密会で申し上げました数量は、先ほど申し上げましたように、昭和二十七年、接収貴金属等の数量等に関する報告という法律を施行いたしまして、それに基きまして、被接収者から、どのような貴金属を、いつ、どこで接収されたかということの報告を徴したわけでございます。それに基きまして、大きい順番に二十五を申し上げたのでございまして、これがそっくりそのままの数量が今度返還されるとは限らないわけでございます。一応報告でございますので、もちろん有力な参考資料でございますが、今度法律が通りますれば、それのみによりませんで、接収されましたときの領収証でありますとか、いろいろな証拠書類を出していただきます。そしてまた、日本政府の方でも、連合国司令部が管理しておりました時代のCPCの記録を引き継いでおりますので、その記録等ともよく照合いたしまして、そして現物が被接収者の報告とぴったりと合うというものは、そのまま返し得るわけでございますが、御承知のように、占領軍が管理中に溶解等いたしまして、形の変っているものもあるわけであります。そういったものは、一定の方法によって、この法律の規定に従いまして、はっきりしている程度によって按分してお返しするということになるわけでございますから、それらの一々の書類はすべて法案に規定しております接収貴金属等処理審議会に付議いたしまして、それによって処理するということにいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/26
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027・久保田鶴松
○久保田(鶴)委員 接収貴金属ですから、接収されまするまで、この人たちは戦争兵器を生産していた人であるとか、あるいはそんなことを何にもしておらなかった人であるとか、その点お調べになりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/27
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028・賀屋正雄
○賀屋政府委員 先ほど申しましたように、業種はわからないようでございます。中には兵器の下請等をやっておった業種もあるように見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/28
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029・久保田鶴松
○久保田(鶴)委員 ようでありますというたよりない答弁を局長はされておるが、ようでありまするというようなたよりないことで、われわれ真剣に審議はできないのです。
そこで、私は特に申し上げておきたいと思いまするが、戦争中に各府県等において武徳殿というものがございましたね。これらは、みんな、その地方の財源で、寄付その他によって戦争中建てたものである。それをまだ返してない。これを今地方で使っておるが、国が国有財産として家賃を取っている。そんなことをほっておいて、なぜこれを返すかということの問題、もう一つは、これを賠償に充てるんだというような話がありましたが、もしも賠償に充てられておったら、これはどうするのか。こういう問題がある。賠償に充てられておっても、これは接収貴金属として返すのか、そういうようなことをどう考えられてこれを返すようにされたのか、その点を明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/29
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030・賀屋正雄
○賀屋政府委員 武徳殿のお話が出ましたが、あれは戦時中、軍国主義的なと申しますか、そういう作業をしておったということで、いわゆる解散団体ということで、司令部の指令によりまして強制的に解散を命ぜられた。そしてその持っておりました財産を国に没収する、こういうことになったわけでございまして、占領中でありますので、超憲法的な力でもって国に所有権を移してしまったわけでございます。従いまして、今日においても引き続きその法律関係をそのまま認めまして、財産は国の所有でございますので、それをお使いになるときは、貸し付けてお金をいただくということになっておるわけでございます。ところが、この接収貴金属は、そのような没収と申しますか、所有権を国に帰属せよという指令は一度も占領中に日本政府は受け取っておらないのであります。その他の、あるいは賠償に充てろというような指令も受け取っておらないわけでございます。それどころか、講和の発効とともに、これは日本政府に返して参りました。そうして、返すときの覚書にも、それぞれの民間の所有者に返還する計画を立ててよろしい、こういう指令をつけて返したわけでございます。従いまして、これは国に帰属させるという理屈は合いませんで、もともと個人の持っておりましたものでございますので、憲法の所有権の尊重という建前から、これをもとの所有者に返そうということでございまして、全然ケースが違うわけでございます。
それから、もしこの接収貴金属等が賠償に充てられておったとしたらどうかという御質問でございますが、これは仮定の問題でございますので、ここで御答弁いたすのはいかがかと思うのでございますが、一つの考え方としては、賠償といいますのは国として責任を負担すべきものでございまして、それをたまたま接収貴金属を持っておった人たちに限って負担を負わせるということは、どうも合理的じゃございませんので、やはりこの場合には、現物が返りませんで賠償に充てられたとすれば、その所有権を持っておったと認められる人々に、今度は金銭でもって補償するというような措置がとられたのではなかろうか、これは私の推定でございますが、そういうふうに感じるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/30
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031・久保田鶴松
○久保田(鶴)委員 武徳殿とか、あるいは賠償に充てられたらどうかとか、私はそれに対する答弁を求めようとは思っていない。それは答弁してもらわなくてもよろしゅうございます。そういう問題があるのに、この問題をどうして出したかということを私は聞いておるのであります。それはそれでいいですが、そういうことから、今お答えになりました没収ということ、これは接収貴金属等に対しまして、戦争が済んで一年以内に届け出た人、要するに、受け取りがありましても、それを届け出られた人だけに対してこれを返す、一年以後届け出られた人があってもそれは没収ということになる。そういうことをお調べになりましたか。隠退蔵物資当時から私はこの問題をいろいろ調べてきた。その後においていいかげんなことをでっち上げた。その当時の書類からいいところだけ抜き取った、ほんとうにでたらめの書類です。この間正示さんに聞いても、その通りですと言っておる。その資料に基いて四十四億返してくれ。当時は足立さんが政務次官だったから、足立さんはよく御存じです。だから私はこの問題はくさいと言うんだ。四十四億という金額を、ほんとうに出した人に返さずして——兵器を生産しておる人でありましたら、これは国民から集めた金で、あるいは空軍、陸軍、海軍の兵器生産に投じていた分がある。そこで戦争が済んだ。済んだというか負けた。それを接収貴金属と言っているが、その当時の会社はパージにかかっているし、その当時の重役もパージにかかっている。そんなものは返す必要はない。それを今ごろいいかげんに、あなた方が前の資料からいいところだけひっこ抜いてこんな資料を出してきて、今日までもめてきておる。特にこの問題については、五項目にわたって行政監察委員会で本院に報告して、満場一致で可決され、承認されている問題なんです。その承認された問題を、また大蔵委員会で、四十四億だけ返してやるんだというようなことで、本院の決議を無視して審議されている。私はそういうところに大きな疑問がある。そういう点から突っ込んでいって先ほど尋ねましたら、あなた方は公開はできないと言う。非公開でなければ報告ができないようなでたらめなことなんです。でなかったら公開したらいい。その非公開にしてくれというのがくさい。それをはっきりしなくちゃいかぬということなんです。ほんとうに正しく返してやる人たちがあるというのなら、公開したらいいじゃないですか。なぜ非公開にしなくちゃならないか。参議院の申し合せがあるから非公開にしなくちゃならない——非公開にする必要はございませんよ。そのくさい点をくさくないように明らかにして、委員会を通すものなら通したい。それをきょうは質疑を打ち切って通そうというようなことは、委員長それは無理です。
私がこの問題についてこういうようなことからいろいろ尋ねて参りますと、切りがございません。しかし、関連質問でございますから、石野君がやられまして、そのあとで私はまた聞くことにいたしますが、今申しましたようなことにつきまして、局長わかっていますか。あなた方首を振ったってだめですよ。石野君が問いまして、間違っておったら、私はここで聞いておりますから、また関連質問で聞きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/31
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032・石野久男
○石野委員 今秘密会で法人と個人について返還さるべきものの順位二十位までを一応お聞きしましたが、法人の中には当時軍管理工場とかその監督下にあった工場が相当あるように、この名前を見ると承知いたします。私どももこの会社には相当出入りしたことがあるものがたくさんある。しかもこの中に相当大きな金額があるわけでございます。もちろんこれは会社自体が持っていたものもありましょうけれども、相当程度は、管理工場等の関係から、払い下げ等に関連するもの、あるいは支給材料というような問題との関連性もあるのじゃないかというふうに思われるわけです。特に、戦争中に回収された貴金属は、ほとんど電波兵器とか航空兵器として使われましたので、その当時会社としてはなかなか自分の手では材料を入手できないという関係で、ほとんど軍がその仲介をし、あるいは官給材料として支給しておったと思います。従って、私は、この秘密会で発表されたものの中で、特に軍管理工場であったものが幾つあったかということを、ここで管財局長から一つお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/32
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033・賀屋正雄
○賀屋政府委員 法人の中で軍管理工場が幾つあったかという調べはただいま手元にございませんので、残念ながらお答えできませんが、軍の仕事をしておったと推定されますような会社があることは確かでございます。しかしながら、それが持っておりました経理等は、これから、当事者の出しました報告、それから今度の法律が通りまして出します返還請求書等をよく審議いたしまして、審議会におきまして衆知を集めて決定し、これは二十条に該当するものであるとか、これは軍需業者が持っておったとはいえ、正式に所有権を認められておったものであるというような点を判定いたしまして、返すことになるわけでございます。先ほど秘密会で申し上げましたのは、一応当事者の報告を基礎といたしまして、大きなものを二十申し上げたわけでございまして、これは民間に返る分として三十九億の中に入れておるわけでございますが、これはあくまでも一応の推定にすぎないということを御承知おき願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/33
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034・石野久男
○石野委員 私が今お聞きしたのは、さっきあげられた二十の法人の中で、どれだけのものが軍管理工場になっておったかということですが、今資料がないと言うけれども、これはじきわかることだと思います。ぜひ一つお調べの上、この委員会で御発表願いたいと思います。
こういうように貴金属を返還するという問題について、特に私どもがなぜそういうことを聞くかといいますと、先ほど、管財局長は、大体払い下げの物資なんというものは、これらのものの中にはほとんど入っていないんだ、届け出たそれぞれの法人ないし個人の本来の所有に帰するものだという推定なんだということでありますが、われわれは、そういうことについて、当時の事情などから見ますと、相当程度国家が供出をしいて、それらのものを隠して持っていた者がある、そういう推定を持っておるわけです。その場合に、一方では戦争が終った後に占領軍が来て接収されるような対象のような状態で所有しておったから、こういう問題が出ておりますが、当時戦争中に強制供出をしいられた人々に対しては、政府は一顧だに与えていないわけです。しかも、接収貴金属を返還するに当っては、憲法に明示する所有権を尊重するという立場からだといって、戦争中に強制供出をしいて、本人はいやだけれども、当時の事情から供出せざるを得ないようになって供出した者、それに対して若干の対価を与えたものもあるし、与えないものもあると思います。それらの者に対しては、憲法上正当に考えてやらなければならない私有権の問題がほとんど考慮されていない。そういうようなことを考えますと、接収貴金属というものは、実際的に申せば、戦争中に供出さるべきはずであったものが供出されなかったのです。実を言うと、自分が私有しておったのです。法人の場合は事業のために必要だとかいい、あるいはまた個人の場合、さっき出た二十人の人々にあっても、これらのものは当時供出を強制された物件の中に入っておったものがみなそうなんです、この金額とこの品名は。だから、当時戦争に、ほんとうにまじめに国の要請にこたえておれば、これらのものは供出されておるべきはずのものだ。ごくわずかしか持っていない人々も当時は供出してしまったのです。この人たちは、当時は政府の要請には全く不誠実に、むしろそれに非協力の態度をとった。だから、占領軍が来た後に、たまたま持っておるというので接収の対象になったのです。当時政府の要請に対してきわめて非協力であった者に対して、今日最も有利な態勢でこれをかばってやる。しかも、これは憲法のいう私有権の立場でかばうのだというわけです。私たちは戦争そのものには反対です。しかし、政府のやることについて国民が協力をしいられていたときに、ある人はまじめに協力し、ある人は非常に巧妙に非協力の態度をとってそれらの財を隠匿した。そして戦後にそれらが出てきた。出てきたものに対して、政府は、憲法の私有権という立場からそれを守るという態度をとられては、これはきわめて不公平な処置の仕方だと思います。こういう問題をもっと政府が考えなかったら、国民は承知しません。これは、先ほど久保田委員からも言われたように、当時戦争が終った後一年の間に届出をしたものと、一年後に届出ができなかったものとの差別というものが、いろいろ混乱しておった。それらのものが、いろいろ不明朗な中で、こういう状態にあったのだということを言われておりますが、当時のいろいろな事情から考えますと、まじめな者が損をして、ふまじめな者がかばわれるというような法律を、戦争が終って十数年もたってから出してくるということは、きわめて不合理です。政府はこういう問題に対して、基本的にはどういうふうに考えておるか、この点は一つ大臣に聞きたいのですが、今山中政務次官がおられるから、山中政務次官に聞きたい。特にこの問題は、私がこの前も申し上げましたように、スキャッピンの七四四三のAというものを根拠として、こういう処理の態勢が出てきたものでございますから、その他のものに対して何らの根拠がないという理由で放置しておくということはないと思います。山中政務次官は非常に公平な立場で物事を考えられるのだが、こういうような不公平な立場をあえてここで戦後十数年たった後にやらなければならない理由はどこにあるのか、またそういう問題を政府はどういうふうに考えているかということを、率直に意見を聞きたいし、また、そういうような戦争中強制供出をしいられた者に対して、これを全く放置しておくという考え方でおられるのかどうか、そういう問題を一つ明確に御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/34
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035・山中貞則
○山中政府委員 この問題は、法案といたしましてもたびたび国会で審議をされておりますし、以前におきましても隠退蔵物資もしくは行政監察等において種々議論がなされてきたところでありまして、その間において、石野委員の言われますような見解は与野党を問わず述べられ、しかもまた、それらの見解からいたしますると、終戦直後の接収時のどさくさ、もしくは管理のどさくさ等によりまして、種々の好ましからざる疑い等もあったわけであります。しかしながら、それらはいずれも事実をはっきりせしめることが、国会の特別委員会等においてもできませんで、結局そういう問題と切り離しまして、実際に証拠書類等によりまして帰属の明らかなものは先ほど来局長の申しておりますような憲法の立場に立って、この際処分を明らかにしようということでありました。それらのいきさつから考えまして、参議院におきまして先般接収貴金属の処分に伴いまして附帯決議がなされております。それは
接収貴金属等の処分に伴う純収入のうち交易営団等が戦時中に回収した貴金属等の処分収入については、戦争犠牲者に対する援護等の経費に充てるよう政府において措置すること。
右決議する。ということになっておりますので、せめてそういう決議の趣旨に沿うことによりまして、この不幸なできごとの処理をおさめていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/35
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036・久保田鶴松
○久保田(鶴)委員 ちょっと今の石野委員の質問の中で、一年以内に届け出たもの、出なかったものということが誤解されているようでございますが、一年以内に届け出た人は一人もなかった、従ってこれは全部国に没収すべきである、こういう意味のことを、私は言葉が足りませんでしたから、つけ加えておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/36
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037・石野久男
○石野委員 今政務次官からの御答弁がありました中に、とにかく当時強制供出をしいたようなものは援護事業等に使うのだということで一応処理しておるから、こういうことでありました。それは当時われわれがそういうふうにすべきだということを要請したわけです。私の聞きたいのは、この接収貴金属の問題は、スキャッピンによって返せという指令通達があった、それで日本憲法の私有権に基いてこれを返すのだということになっているわけです。その中には、当時戦争中に強制供出をしいられてまじめに供出した人と、それからふまじめな立場でこれを供出しなかった者がこの接収貴金属の対象になって出てきているのが多分にあるわけです。作業上当然所有しなければならなかったものと、そうでない、個人において誠意をもって供出すれば、現在個人の立場とすれば当然こういうものは所有さるべきものではなかったと思われるようなものが所有されているわけです。そういう問題についての不公平な問題を、それじゃ政府はどういうようにお考えになっておりますか。そういう問題は不問に付するという考え方でございますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/37
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038・山中貞則
○山中政府委員 政府の立場は先ほど申しました通りでありますが、個人あるいは法人にいたしましても、戦争中に、その当時の社会環境によりまして、あるいは国家意識等の高揚されているときでありますから、自発的に国民のほとんど全部が協力いたしました中で、自分だけが非協力であったために、すなわち戦争に協力しないために隠匿して持っておったものであるか、もしくは昭和二十五年あたりまで引き続き行われました接収の期間等から顧みましても、医師等の歯科技工のために、もしくはその他の職種のために自分が持っていたものであるか等の判然とした証拠が実はないわけでありまして、そこらの点につきましては、打ち切りという気持ではありませんが、何分にも証拠を明らかにする方法がありませんので、やむを得ないことだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/38
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039・石野久男
○石野委員 私はこれはあまりしつこくほ聞きたくないのですが、しかしまじめな者がばかを見て、ふまじめな者が非常に有利な立場になるということは、許さるべきことではないと思うのです。政治の立場からも、そういうことは許してはならないと思います。戦争が終って後こういう接収が行われるまでのごく数年の間に、今日返還さるべきものとして、個人の場合には、最高位に属する人は約一億数千万のものを返還されることになるのでございまするが、この数年の間に、どうして戦後にそういうものを確保したかどうか。もちろんこれは戦後に確保したものではなくて、戦争中に保持しておったものだと思います。その人はどういう事業をやっておって、当時供出しなくてもよいような状態のもとに所有しておったのかどうかわかりませんけれども、少くとも、私が見るところでは、きわめてふまじめな立場でそういうものを保有しておったと思うのです。こういう人々に対して、私は戦争に協力しなかったからどうとかいう意味で言うのではありません。そうではなくて、国の要請に対してきわめてふまじめな態度をとってこういう保有をしておったということに対しては、私たちは——今回の場合、接収貴金属の問題の出できた根源というものは、戦争を通じて出てきたことです。戦争を通じて出てきた行為の跡始末でございますから、これは占領軍が接収したか、あるいは戦争中に政府が供出を強制したかという問題いかんにかかわらず、戦争行為の結果として出てきた一連の事件である、こういうように私たちは見ているわけです。そういう一連の事件を一方においては全く放置される形で、もうやむを得ないのだという形で、片方は憲法に私有権の条章があるからこれを尊重しなければならないというので、しかもこの人々を非常に尊重する立場でこの法案を出そうとしておる。そして、私たちが今つぶさに考えてみますと、こういう返還を受ける人々は、戦後において非常に生活が困窮している人ではないのです。むしろこういう人々は正常以上の生活をしている人々になるわけでありまして、供出してしまってそれに対する代価を得られないような人々は今日では生活が非常に苦しい人々です。だから、戦争中におけるふまじめな態度や、戦後における非常に不公平な態度が出ておる者を、むしろ政府や国会が守ってやるという立場が出てきて、これは非常に奇妙な形になってくると思います。政治の公明さが失われる形になると思いますので、こういう問題については、政府なりあるいはその関係の諸君は、まじめな態度でこれを見なければいけないと思うわけです。私は、そういう立場で、政府にそういうものをどういうように考えるかということをお聞きしたわけです。山中政務次官の、そういう問題に対するまじめな所見を承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/39
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040・山中貞則
○山中政府委員 私も、行政監察委員として、先はどの久保田委員その他と一緒に、同じような角度から追及をして参った立場にあったものでありますが、石野委員の表現するところによると、大体は協力しなかった者が持っていたんだということでありますが、実はそれが進駐軍の手によって接収された経緯等もありまして、どうしてもはっきりとさせることができない。従って、今後に残された問題は、審議会等を設けて、今これらの人々の申請を一応受け付けておるだけでありますから、果してそれが真実に証拠、証票その他によって裏づけされるものかどうか、そこらの点をより慎重に運営していく以外にはなかろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/40
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041・石野久男
○石野委員 これは考え方の問題でありますから、もしこういうような考え方が普遍化していきますと、ますます政府に対する国民の信頼が失われてくると思うので、国会としてはよほど注意して論議しなければならぬ問題だと思います。先般の参議院のこの法案審議の過程で、政府の提案しました納付金の問題についての比率の改正が行われております。この比率の改正が行われますと、ああした二〇%というものでいわゆる納付金を取りました場合、全体として返還を受ける人は、返還されるべきものについてどれだけの税を納めることになるか。それを一つ各税、たとえば所得税とか法人税あるいはその他いろいろな問題について、どの程度の比率でどういうふうになっていくかということを、個人と法人の両方についてこの際お話しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/41
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042・池中弘
○池中説明員 まず法人から計算したところを申し上げてみたいと思います。ただ、お断わりしておきたいと思いますが、これは、個人の場合におきますと累進税率になっておりますので、非常にでこぼこがありますし、法人の方は累進が一段階でございますので、大体同じでございます。
まず、法人で百万円の例を申します。そうして二割の納付金を取るということになりますと、たとえば百万円に対しまして、売却したときに法人税が二十六万四千円、事業税が七万円、住民税が三万五千円、税額の合計が三十六万九千円、手取りが四十三万円で四三%ということになります。これは百万円の人の例でございますが、たとえば一億円の場合でございますと、法人税が三千五百万円、事業税が一千一百万円、住民税が四百万円、合計五千百万円、手取りが四千百万円、率は三五%ということになります。
それから、個人の場合でございますが、百万円の人の場合、所得税が——この所得税の計算につきましてもいろいろ仮定がございまして、ほかの所得との合算になりますので、ほかの所得が、主税局から出しておりますところの三十三年度租税及び印紙収入予算の説明に書かれておりますところの納税者の全国平均の所得がある。すなわち、銀や金を売りました所得以外に、総所得が三十六万五千円あるという仮定のもとに計算したわけでございます。そうしますと、百万円の個人の場合に、所得税が二十一万四千円、事業税が七万八千円、住民税が六万円ということになります。それで計算をしていきますと、手取額が五〇・八%ということになります。
二割の納付金は見ておりますけれども、この現物が返りましたときには経費には見ないわけですが、売りましたときには経費に見ますので、その二割は売却したときには経費として落ちるわけでございます。法人や個人が現物を返してもらったときに、二割の納付金を納めましても、それは経費に見ないで、取得価格に加算するだけであります。従って損益に関係ございません。しかしながら、これを売りましたときは、それだけ取得価格がふえておるものですから、経費に落ちるわけでございます。ですから二十万というものは経費に落して計算してあるわけです。
それから一億六千万円の一番大きなのでいきますと、所得税が八千六百五十一万三千円、事業税が一千六十万三千円、住民税が二千四百二十二万四千円ということになります。手取りが六・七%ということになります。ただこれは一度に売ったときの計算で出しておりますけれども、返還するのに特定物、不特定物で全部は一度に出ませんし、その人の都合で売る時期なり数量が違うことになりますので、実際にかかる税金はどれだけかということは、具体的な事例によらなければわからぬわけでございますが、かりに一億六千万の人が一度にその物を売ったと仮定しますと、こういう結果になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/42
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043・石野久男
○石野委員 そうしますと、法人の場合は、二〇%の納付金を納めて、その他の税を全部差し引いた残りが、一億円の場合であれば三九%であり、百万円の場合では四・三%になる、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/43
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044・池中弘
○池中説明員 一億円の場合は三五%手取りがあるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/44
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045・石野久男
○石野委員 この法律が施行されましてから、先ほど審議会を設けて審議をするということでございますが、今度この法律ができます場合に、現在四十四億円の金に対して、これからあと、たとえばおれもこうだったんだというようなことで要請があったりしました場合、それはどういうふうに取り扱いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/45
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046・賀屋正雄
○賀屋政府委員 先ほど来申し上げておりますように、四十四億といいます数字は、昭和二十七年の接収貴金属等の数量等の報告に関する法律によって提出されました報告を基礎として推定を加えた数字でございます。今回この法案が成立いたしました場合には、あらためて返還請求というのを出していただくことになるわけでございますが、それが前に出されました報告と必ずしもそっくりそのまま出されるとは限らないわけでございますので、前に報告しなかった方々が返還請求を出されるというケースもあろうかと思いますが、その返還請求には必要な証拠書類をつけて出していただくことになっておりますので、でたらめな返還請求を出されましても、当然はっきりいたすわけでございます。また、政府の方におきましても、連合国占領軍が管理中からのCPCの記録もかなり精細に記録されておりますので、それとの照合等をいたしますれば、はっきりしてくる問題だと思います。これはいずれも審議会にかけて決定するというふうにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/46
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047・早川崇
○早川委員長 石野君に申し上げますが、理事会のお約束の採決の時間が大体一時という予定になっておりますが、久保田君からも御質疑があることになっておりますので、その点お含みの上、一つお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/47
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048・石野久男
○石野委員 先ほど、民間に返還する金が四十四億で、全体として政府が所有しておるところのいわゆる接収貴金属というものは六百七十四億と言われておりましたが、これらのものを含めて、今政府が所有しあるいは日銀が所有しておる金というものは、今どのくらいあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/48
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049・賀屋正雄
○賀屋政府委員 お尋ねは、接収と関係なしに、政府が持っております金あるいは日本銀行が持っております金全体の数量でございますか。それでございますれば、関係部局が違いますから、その方から答弁をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/49
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050・酒井俊彦
○酒井政府委員 政府と日銀が持っております、いわゆる中央準備といっておりますが、そういう金について申し上げますと、二一・三トン、これを時価に直しますと二千四百万ドルばかりになっております。これは貴金属特別会計に属しておる金でございます。それから日本銀行といたしましては八四。ニトンということでございます。それから、そのほかに、接収貴金属の金が八十五トンございますが、これは評価をいたしておりません。今申し上げました八四。ニトンというのは、日銀が海外寄託金ということで準備のために買いましたものであります。金額にいたしますと大体九千四百七十四万ドル。そのほかに、日銀の勘定といたしましては、証書分というのが四十四トン入っております。これはすでにお話があったと思いますが、戦時中に北支において綿糸布を買うということで日本銀行が正金銀行に売り、そうしてそれを現送した金でございまして、この金については後日政府の方で処置をして日本銀行に返してやるという約束になっております。これが証書分といって金に整理されてございますが、現物はございません。そういたしますと、日本銀行の合計が二百十四トン、これは証書分を含んでございます。そのうちの四十四トンは実際には現物がないという数字でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/50
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051・石野久男
○石野委員 今度接収貴金属の返還に関するこういう法律ができまして、その中から政府に帰属するようなもの、あるいは日銀等に入るようなものを含めますると、どの程度ふえますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/51
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052・酒井俊彦
○酒井政府委員 日本銀行の接収貴金属は今申し上げましたように八十五トンございます。それから、貴金属特別会計の分のうち、接収関係が解除されて、これは政府に帰属すべきものであるという、はっきりした結論が出ました場合には、約七トン別に接収貴金属の方から貴金属特別会計に入ってくるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/52
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053・石野久男
○石野委員 いろいろ質問したい点はございますが、とにかく政府のこの接収貴金属に対する考え方の基本的な点で、どうも問題の考え方に片寄った考え方があるというふうに思います。そういう観点からいたしますと、問題はもう並行線になっておりまして、質問をしても答えが同じことになってくるので、私の質問は接収貴金属についてはこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/53
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054・早川崇
○早川委員長 久保田委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/54
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055・久保田鶴松
○久保田(鶴)委員 政務次官にお伺いしますが、接収貴金属に対しまして、返還する人たちのことなのですが、これは今申請受付中と先ほどお答えになりましたが、これに間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/55
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056・山中貞則
○山中政府委員 先ほど来賀屋局長が答弁いたしておりまするように、法律に基いて報告を取っておるのでありまして、これから法律がもし両院において可決成立をいたしますならば、審議会においてあらためて具体的な書類等を整えさせて、申請を受け付けるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/56
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057・久保田鶴松
○久保田(鶴)委員 そうではなしに、今申請を受付中だとあなたがお答えになったのですが、受付中ですか。それをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/57
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058・山中貞則
○山中政府委員 申請中という言葉を使ったかもしれませんが、しかし、実際は、局長が申し上げておりまする通り、法律に基いて報告を取った数字であるということを申し上げたので、今受付中だということは申し上げていないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/58
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059・久保田鶴松
○久保田(鶴)委員 それは速記録を調べればよくわかるのですが、先ほど石野君が私の質問に対して十分のみ込めなかった関係か、あるいは私の言葉の足りなかった点もあったか、戦争が済んで一年以内に申請した者には返す。その後申請した人には返さない。これがそのときにはなかったのです。そのようなことで私がいろいろ伺って、それに対して石野君が問われたが、あなたの答えは、今申請中である、こう申された。うまくあなたは逃げられたが、それは速記録をお読みになればそれに間違いなし。そういうことでありますから、今申請するならこれは返してもらえる、こういうことで有力な自民党の代議士さんの方にいろいろ運動している。私は、そういうような意味合いから、この問題を次々と質問をして参りますと切りがありませんし、いろいろ時間の関係等もございますので、あまり申しませんが、実際は局長にしたってわかっていないのです。だから、資料によってこれは間違いございませんと、あなた方はそう申さなければならぬから申している。ところが、これは全くでたらめな資料に基いて作られたものであります。ですから、こういうものには私は賛成できない。いろいろ質問もございますけれども、同僚議員もいたしておりますから、自民党の諸君も賛成して下さい。これは大がいにしましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/59
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060・早川崇
○早川委員長 ただいま議題となっております接収貴金属等の処理に関する法律案に対しまして、平岡忠次郎君外十三名より修正案が提出されております。この際提出者の趣旨説明を求めます。平岡忠次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/60
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061・平岡忠次郎
○平岡委員 ただいま議題となりました接収貴金属等の処理に関する法律案に対する修正案について、提案の理由を御説明申し上げます。
案文はお手元に配付されておりますので、朗読は省略いたします。
修正の理由を申し上げます。本案は、接収貴金属の返還につきまして、戦時中半ば強制的に貴金属を供出した者との間の均衡を考えるときに、国民感情がこれを納得しなかったため、過去数国会にわたって審議未了となったものでありますが、他面、憲法上の財産権尊重の建前からは、もとの所有者に返還することはやむを得ない措置でもありますので、国民感情と憲法上の観点との両者を彼此勘案いたしまして、ここに納付金を百分の二十から百分の五十に改めることが、やがて税金等を含め総額の八割方が国に収納されますので、本修正案を提出する次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/61
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062・早川崇
○早川委員長 これにて各案に対する質疑は終了いたします。
続いて、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、接収貴金属等の処理に関する法律案、及び接収貴金属等の処理に関する法律案に対する修正案の三案を一括して討論に入ります。
石野久男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/62
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063・石野久男
○石野委員 今議題に付せられました二つの法案の原案に対して反対、修正案に対して賛成の討論をいたします。
接収貴金属等の処理に関する法律案は、国会におきまして数回審議未了の形で流されてきたのであります。その理由は、当時戦争中国民が愛国の至情に燃えて貴金属を積極的に国のため供出しました。そういう人々は、ほとんど今日の段階で、これを買い戻すことも、あるいはそれに対して何らの処置を受けることもできないのであります。しかし、戦争中供出しなかった諸君が、戦後において占領軍が日本に進駐して、その占領軍のもとにそれらのものを接収された。その接収されたものを今ここで返してやるということなんです。しかもまた、私どもの見解によりますると、当時占領軍が日本の政府に対して出されたスキャッピン七四四三のAによりますと、「貴省は平和条約発行後裁判により確定された私人の利益を調査し補償する計画及び私人所有の財産であることが判明した個々の物件を返還する計画を立てることを認められる」、こういうふうに指示したあとにさらに、「貴省はさらに平和条約の発効に伴って起ってくるであろうすべての関連事項の処理のために必要な準備をすることを認められる」、こういうふうにあるのであります。これの理解の仕方はいろいろありまするけれども、私どもの理解する限りにおいては、平和条約の発効に伴って起ってくるであろう関連事項の処理のための処置は、当然この接収貴金属の処置と同時的に取り上げられるべき筋合いのものであろうと思っております。その建前からしますると、当時戦争中に積極的に国に協力し、愛国の至情に燃えて自分の財貨をなげうってまで国に協力をした人々に対するそれらの処置というものは、全然考慮されないということが明確になってくるのでございまして、この点からいいましても、このスキャッピンの解釈の仕方についてはわれわれ疑義があります。
それと同時に、私どもは、ただスキャッピンだけの問題でなく、戦争の間国のいろいろな行為に対して国民が積極的に協力した者に対して何一つとしてあたたかい処置がなされないで、むしろ戦争の間供出をしなかったという者に対して、人によれば一億円以上のものがここで返ってくるというような状態であります。こういうことは、とうてい国民感情的にいってわれわれは忍び得られるものではないと考えます。私たちは、そういう建前からだけでも、この法案を認めることはできないのでございまするが、たまたまこれらの返還されるべき法人、個人、特に法人等を見ます場合、返還を受けるべき会社の第二十位までの多くのものは戦争中国の管理工場または監督工場等に属した工場であると理解されます。従って、そういうようなところには、相当程度当時戦争中に国民が協力し供出した貴金属等がその中に入っているだろうと思うのでございます。もちろん経理監督上の立場から明確に国に所属するものと、それから所属しないものとのなにはありましょうけれども、今日このいわゆる返還されるべき貴金属の中に、そうした当時の国民が至情を持って供出した貴金属が、延べ棒になったりなんかして、素材あるいは原材料として、それらのものに安い値段で払い下げをされておったものと理解されるものが多いのでございます。そういたしますると、当時国民は国のためだといって供出したものが、その当時の軍関係の諸君には、非常に安い値段、ただみたいな値段で帳簿上の処理は形式だけで払い下げられておった、そういう現物が今日非常に高価な形で返ってくるということ、きわめて不合理であり、不当所得をここでわれわれはむしろ国会の決議によって認めてやるというような結果が出てくるのであって、こういう点からいいましても、実にこれは不公平きわまるものでありまして、私どもとしてはとうてい容認することができないのであります。また、こういうような貴金属を返すことによって、それらのものに対する国民の政治に対する不信の問題を一面考えてみますると、これは実におそるべきものがあると思います。まじめに国のために協力する者がいつもばかを見る、そうして非常にふまじめでずる賢くやっている者がもうけ、かつ有利になるということで、これは戦後非常に常識化されておりまするが、そのことをこの接収貴金属等の処理に関する法律を通過させることによってわれわれ国会が容認するがごとき、裏打ちするがごとき立法行為をするということになって参りますので、われわれとしては、国民に対してきわめて気の進まないようなものが出てくるわけでございます。
社会党は、こういうようなものの考え方に立ちますると、接収貴金属の処理につきましては、あくまでも本来的にはやはり国がこれを接収すべきである、そうして、それらのものは、やはり戦争のために今日非常に苦しんでいる諸君、そういう人々のためにこれを使うべきであるということを強く主張して参ったのでございまするが、しかし、私どもは、この接収貴金属等に関する問題に関連して、憲法上の私有権等の問題を尊重しなければならぬというような理由を一面に考えるといたしましても、それはやはり多く形式的に考えて、むしろ戦争行為の中で出てきた強制供出の問題と、それらの供出をしなかった者が戦後接収されたという貴金属との関連性の問題において、ただ形式的にそれを一応認めておくべきである、そうして多くのものをやはり国に帰属され、それを戦争による犠牲者のために使うべきであるということが筋であると思うのでございます。そういうような建前からしまして、参議院におきましても、わが党の議員は積極的にそれに対する意見を開陳しておったようでございますが、われわれは、本委員会におきましても、そういう趣旨を含めて、ただいま平岡委員から修正提案のありましたように、納付金の比率を五〇%に引き上げることによって、実質的にはその人々に対してできる限りその返還というものが少くなっていく、そして実際には、当時強制供出をさせられた人々との均衡のとれるような形で、戦争の中で受けた多くの人々の私有権に対する非情な無情な政府の態度をそこで是正していく、こういうような考え方をしていきたいと考えているわけでございます。そのゆえに、私たちは、接収貴金属に対しましては、原案の政府提案に対しましては反対いたします。
そして、これは自民党の皆さん方にもお願いしたいのでございますが、あの当時の国民の、積極的に勝つまではというようなつもりで、一切のものをなげうって供出した人々の気持、そういうものをくんで、今日接収貴金属の返還を受ける人々に対しては、できる限り不公平の残らないような処置をとるような社会党の案に対して、ここで賛成していただくように切にお願いしたいのでございます。
また、国際通貨基金関係の問題については、この立法の趣旨が主としてIMFの増資やあるいは世銀の増資に対しての処置でございますので、それらの点についてはわれわれは決して拒むものではございません。しかし、本委員会にかけられております接収貴金属を一応評価がえして、その金を出資に引き当てるというやり方については、接収貴金属の処理が判明しないときに、政府が国の立場におけるものだけをそういうことで処理し、個人に対する問題を不明確なままで処置することは、われわれは反対である。そういう立場から、この法案における処理の仕方については反対でございます。
以上三つの案につきまして、原案二つに対しては反対し、修正部分については賛成の意見を開陳いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/63
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064・早川崇
○早川委員長 足立篤郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/64
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065・足立篤郎
○足立委員 私は、この際、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました接収貴金属等の処理に関する法律案原案に対しまして、賛成の討論を行います。同時に、社会党提案の修正案に対しまして、反対をいたすものでございます。
時間がございませんので、きわめて簡単に結論だけ申し上げたいと存じますが、ただいま石野委員の社会党を代表しての討論を拝聴いたしました。非常にまじめな御議論でありまして、傾聴すべき点が多々あることを私も認めます。しかしながら、私どもとしては、この法案にもはっきりいたしております通り、新憲法下におきましての私有権の尊重という点をどこまでも守らなければならぬという考え方から、従来幾多の歳月を経て問題になって参りましたこの法案を、この際片をつけたいという考え方でございます。もちろん今石野さんの言われたようないろいろな問題が伴って参りますので、この法案が通過いたしました際におきましては、政府におきましても慎重に取り扱いまして、万遺憾なきを期していただきたいと考える次第でございます。
特に、本日の最終質疑の段階におきましてもやはり石野委員から御質問のありました点、特にこの法案に盛られております二十条の規定の適用を受けるか受けないかという点につきましては、国民感情的な立場もございまして、これはよほど慎重にしかも勇気を持ってやっていただきたい。今日におきましては、当時の日本軍の書類等はおそらく残っておらぬと思います。従って、証憑書類によってのみこれを断ずるということは、正しいことには違いありませんけれども、その形式的なやり方の陰に隠れて、はっきり申し上げれば、戦争中に軍から三束三文でもらった、言いかえれば国民が供出した貴重な貴金属を二束二文でもらっておった。これは確かに所有権は形式的には移っているわけでありますが、二十条の規定はこれを除外して、国の所有に帰するということに相なっておりますから、これがおそらく混合して参ると思うのであります。その場合の処理につきましては、審議会で権威を持ちまた勇気を持ってさばいていただかなければ、私はこの法案の処理に当って間違いを起すのではないかという点を憂慮いたすものでございます。この点は、本来ならば附帯決議等で明らかにすべきでありますが、私は、自民党を代表して、特に政府に、この法案通過後における審議会の運営について慎重を期すると同時に、この辺の主張は私は正しい主張だと思いますから、勇気を持って処理に当られんことを希望としてつけ加えておく次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/65
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066・早川崇
○早川委員長 これにて討論は終局いたしました。
続いて採決に入ります。
まず、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/66
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067・早川崇
○早川委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決いたしました。
次に、接収貴金属等の処理に関する法律案及び同案に対する修正案を一括して採決いたします。
まず、修正案について採決いたします。本修正案を可決するに賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/67
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068・早川崇
○早川委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
続いて原案について採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/68
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069・早川崇
○早川委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決いたしました。
次に、賠償等特殊債務処理特別会計法の一部を改正する法律案に対しましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。
採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/69
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070・早川崇
○早川委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決いたしました。
この際お諮りいたします。ただいま可決いたりしました三法律案に関する委員会報告書の作成並びに提出等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/70
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071・早川崇
○早川委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。
なお、この際お諮りいたしますが、去る二日懇談会を開き、接収貴金属等の処理に関する法律案につきまして協議懇談をいたしたのでありますが、当日の懇談の内容につきましては、種々参考になることもあると存じますので、速記録を印刷して委員各位に配付いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/71
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072・早川崇
○早川委員長 御異議なしと認めます。よって、さように取り計らいます。
本日はこの程度にとどめ、次会は追って公報をもって御通知することとし、これにて散会いたします。
午後一時十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X03119590407/72
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