1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年三月三日(火曜日)
午前十一時八分開議
出席委員
委員長 松浦周太郎君
理事 大野 市郎君 理事 吉川 久衛君
理事 本名 武君 理事 赤路 友藏君
理事 石田 宥全君 理事 芳賀 貢君
安倍晋太郎君 今井 耕君
倉成 正君 笹山茂太郎君
高石幸三郎君 綱島 正興君
永田 亮一君 八木 徹雄君
保岡 武久君 足鹿 覺君
角屋堅次郎君 神田 大作君
久保田 豊君 栗林 三郎君
實川 清之君 中澤 茂一君
中村 時雄君 西村 関一君
出席政府委員
農林政務次官 石坂 繁君
農林事務官
(振興局長) 増田 盛君
林野庁長官 山崎 齊君
委員外の出席者
農 林 技 官
(農地局建設部
長) 清野 保君
専 門 員 岩隈 博君
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三月三日
委員倉成正君、保岡武久君、久保田豊君及び永
井勝次郎君辞任につき、その補欠として林唯義
君、福井順一君、堂森芳夫君及び日野吉夫君が
議長の指名で委員に選任された。
同日
委員林唯義君及び福井順一君辞任につき、その
補欠として倉成正君及び保岡武久君が議長の指
名で委員に選任された。
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二月二十八日
海岸砂地地帯農業振興臨時措置法の一部を改正
する法律案(内閣提出第一七二号)
農山漁村電気導入促進法の一部を改正する法律
案(内閣提出第一七三号)
畑地農業改良促進法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一七四号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
海岸砂地地帯農業振興臨時措置法の一部を改正
する法律案(内閣提出第一七二号)
農山漁村電気導入促進法の一部を改正する法律
案(内閣提出第一七三号)
畑地農業改良促進法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一七四号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/0
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001・松浦周太郎
○松浦委員長 これより会議を開きます。
去る二十八日本委員会に付託になりました内閣提出、海岸砂地地帯農業振興臨時措置法の一部を改正する法律案、農山漁村電気導入促進法の一部を改正する法律案及び畑地農業改良促進法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題に供し、審査に入ります。
まず三案の趣旨について政府の説明を求めます。石坂農林政務次官。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/1
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002・石坂繁
○石坂政府委員 ただいま上程されました海岸砂地地帯農業振興臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして提案理由を御説明いたします。
この法律による海岸砂地地帯は、わが国の海岸線の随所に存在し、その面積はおおむね二十四万ヘクタールにも達するのであります。そこで、これらの海岸砂地地帯の潮風または飛砂による災害の防止のための造林事業及び農業生産の基礎条件の整備を促進するため、昭和二十八年三月この法律の制定を見た次第でありまして、この法律施行以来昭和三十三年度まで、農業振興計画に基きまして、防災林造成、土地改良、小団地開発整備、農山漁村建設総合施設に、総額事業費で約二十六億円、国費で約十三億円の事業を実施し、また海岸砂地試験事業を行い、相当の実績をあげて参りましたが、その進捗度から見まして、今後なおなすべき事業が多く残されている実情であります。
しかるに、この法律は昭和三十五年三月三十一日限りで失効いたしますので、この際、この法律の有効期限を、他の特定農業地域法の有効期限等をもあわせ考えまして、とりあえず二カ年延長いたしまして、この地帯の農業振興を促進しますとともに、その間なお改善を要すべき点に検討を加え、この法律制定の所期の目的を達成するよう努力いたしたいと存じます。
以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願いする次第であります。
次に、農山漁村電気導入促進法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。
わが国の農山漁村の実情を見ますと、未点灯または電気の供給が不足しているため文化の恵みを受けることのできない農山漁家が今なお相当数存在し、その解消をはかりますことは、このような地域の農林漁業の生産力の増大と農山漁家の生活文化の向上のために緊要なことは言うまでもないことでありまして、昭和二十七年に農山漁村電気導入促進法の制定を見ましたのも、このような趣旨に基くものであると存じます。農林省におきましては現在、一般農漁村に対しては農林漁業金融公庫資金の融通により、また開拓地及び離島につきましては国庫補助によりまして、未点灯または電気供給不足の農山漁家の解消に努めて参ったのでありますが、開拓地及び離島と同様に経済的におくれており、農山漁家の所得水準が低いいわゆる僻地につきましては、農林漁業金融公庫の融資のみにたよっている状況でありますので、このような未点灯の農山漁家の解消を一そう促進するためには、僻地の農山漁村も開拓地及び離島と同様に取り扱うことが必要であると存ずるのであります。従いまして、来年度より僻地における電気導入の国庫補助をいたすこととしました機会に、農山漁村電気導入促進法の一部を改正することとしたのであります。
この法律案の改正点を御説明いたしますと、第一に、国の補助の対象につきましては、従来は開拓地及び離島振興対策実施地域に限られていたのでありますが、新たに、これらの地域のほか、経済的におくれており、電気の導入に関する条件が著しく悪いため農林漁業金融公庫からの資金の貸付のみでは電気を導入することが困難であると認められる地域における農林漁業団体の行う電気の導入事業について国が補助を行うことができるよう規定を整備いたしました。
第二に、電気導入事業の円滑な推進をはかりますために、都道府県知事が都道府県農山漁村電気導入計画を定めます場合には、電気が導入されることとなる地域を管轄する市町村長の意見を聞くことといたしました。
以上がこの法律案の主要点でありますが、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願いする次第であります。
最後に、畑地農業改良促進法の一部を改正する法律案につきまして提案理由を御説明いたします。
御承知のごとく、わが国の耕地面積六百万ヘクタールのうち、畑地面積は、二百七十万ヘクタールにも及び、水田面積にも匹敵する面積として広く全国に分布しているのであります。そこで、これらの畑地地域の農業改良の促進をはかるため、昭和二十八年八月この法律の制定を見た次第でありまして、この法律施行以来昭和三十三年度まで、農業改良計画に基きまして、県営畑地灌漑、団体営畑地灌漑、区画整理、客土等の耕地整備、小団地開発整備、新農山漁村建設総合施設に、総額事業費といたしまして約二十八億円、国費にいたしまして約十二億円の事業を実施し、また畑地灌漑研究、土地改良試験事業を行い、相当の実績をあげて参りましたが、その進捗度から見まして、今後なおなすべき事業が多く残されている実情であります。
しかるに、この法律は本年三月三十一日限りで失効いたしますので、この際、この法律の有効期限を、他の特定農業地域法の有効期限等をもあわせ考え、とりあえず三カ年延長いたしまして、各般の関係事業をますます促進いたしますとともに、その間なお改善を要すべき点に検討を加え、この法律制度の所期の目的を達成するよう努力いたしたいと存じます。
以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。何とぞ、慎重御審議の上、これまたすみやかに御可決下さいますようお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/2
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003・松浦周太郎
○松浦委員長 これにて三案の趣旨説明は終りました。
次に、三案に対する質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。足鹿覺君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/3
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004・足鹿覺
○足鹿委員 畑地農業改良促進法の一部を改正する法律案並びに海岸砂地地帯農業振興臨時措置法の一部を改正する法律案の両案を一括して、両案を中心に畑地農業について政府の方針をまず伺いたいと思うのであります。
海岸砂地立法並びに畑地改良促進法等のほかに、まだ急傾斜地帯とか特殊土じょう改良関係とか、畑地関係の議員立法が数々あることば御存じの通りでありますが、これはいずれも昭和二十七、八年から九年にかけて当委員会において発議され、議員立法として通過をし今日に至っておるのであります。われわれは、国が一たん作った法律は、議員立法たると政府提案たるとを問わず、国の法律には変りはないと思うのでありますが、従来ややもすれば議員立法を軽視するような傾向がなかったとは言えないように思うのであります。
今日までの海岸砂地地帯農業振興臨時措置法並びに畑地農業改良促進法及びその他の特殊立法に対するところの計画とその進行度合いはどういうふうになっておりますか、まずその計画と実績に対する現状を資料として御提示を願い、大体についての経過を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/4
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005・石坂繁
○石坂政府委員 ただいま足鹿委員の御指摘の通りに、今まで各種特殊土壌地帯に関する立法が議員立法によって成立いたしておりますることも、私も承知いたしております。そうして、それぞれ議員立法で提出されるにはそれぞれの事情があったことと推察いたしておりますが、政府といたしましては、これが内閣提出であろうと議員立法であろうと、いやしくも国会を通過いたしました法律でありまする点におきまして、これを尊重する点には少しも甲乙があってはならぬと考えております。そこで、ただいま足鹿委員から御要求の、各地畑作振興のための特殊立法についてのその後の事業の経過並びにその成果のあらましを話すようにという御指摘でありましたが、いろいろの点にわたっておりますので、私はそれを一々承知いたしておりませんので、できるだけすみやかに資料として取りそろえ提出いたしますが、後刻当該局長が参りましたらなお一応答弁させることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/5
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006・足鹿覺
○足鹿委員 あとでその状況を承わって、さらに具体的な御質問を申し上げたいと思いますが、現在の農業政策の状態を見ますると、政府も農林白書等ではっきり指摘しておりますように、農林水産業と他産業との発展の不均衡、またはその生産性を中心としましての較差が急速に拡大しておるということが言えると思うのです。これは農林水産業と他産業との比較の場合に当然言えると思うのですが、まずその他産業との均衡を得せしめるということも大局に立って必要ではありますが、問題は、農政内部の較差の問題をもっと強く指摘し、これに対する施策を講じなければならぬ。それがすなわち畑地農業問題だろうと思うのです。言いかえますならば、水田農業と畑地農業との間には、農林水産業と他産業との発展の不均衡以上の大きな較差が拡大されて現在横たわっておることは政府も御存じの通りであります。最近、農業新政策なるものを政府は発表をし、一応畑作の発展をその題目に取り上げておりますが、農業生産力の今後の問題は、もっと畑地に重点を集中して、畑地農業の生産性を高め、畑作農家の所得の増大をはからなければならぬことは当然でありますけれども、この特殊立法にも見られますように、各個ばらばらであります。すなわち、施策の総合性が著しく欠けておる。また、財政措置も、先ほどちょっと触れましたように非常に僅少に押えられておる。で、一応問題を取り上げてはおりますが、従来の水田偏重と申しますか、一面畑作を軽視しておるかのごとき政策の基本は一つも改められておらないことを私どもは遺憾に存ずるのであります。そういう点から、今回従来の議員立法で提案されたものが政府提案によってなされたということについては、何か政府にも期するものがあってこのような形態をとられたのか。従来、議員立法で提案されたものの期限が切れた場合は、議員立法においてこれを延長し、あるいは適当な他の措置を講ずるのが例となっておるし、われわれもそれにやぶさかでなかったはずだ。それを特に政府提案としてここに提案をされるについては、相当の用意と覚悟があるのではないかとも推測しておるのでありますが、その間における政府のお考えを承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/6
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007・石坂繁
○石坂政府委員 足鹿委員御指摘の通りに、戦後日本の農業は各種技術の研究あるいは営農方式の進歩等が農民の勤勉と相待ちまして著しく生産を上げて参りましたが、なお今日他の産業と比較いたしますると相当の較差があることも御指摘の通りであります。しかも、足鹿委員の御指摘の通りに、単に他の産業との間の較差のみならず、農林漁業間においてもいろいろの較差があるということも私ども認めております。しかも、従来の日本の農林行政がややともいたしますると水田偏重に傾いたきらいは免れないのであります。一昨年の秋出しました農林白書によりまして、農林省は過去の農政を反省し新たなる農政の課題について検討いたして参っておるのでありますが、その後の方策の一つといたしまして、提案理由にも申し上げました通りに、二百七十万ヘクタールもある畑地帯に対しましての畑作振興ということは、これは大きな柱として打ち立てて参っております。私的なことを申し上げまして恐縮でありますけれども、私自身が実は畑地どころの百姓のせがれであります。私は、畑作農業の生産性の低さ、所得の低さをつぶさに痛感いたしておる一人でございますから、畑作振興につきましてはその後大いに力を入れていかなければならないと強く感じておるような次第であります。政府は、畑作振興の柱を押し立てまして、畑地灌漑の試験あるいは耕地の整備、小団地開発整備等努力いたして参りましたが、さらに、本年度、畑地の土壌改良、あるいは土壌線虫の駆除等につきまして意を用いる方策を立てておるのであります。しかるに、議員立法であるこの法律を政府が特に期限の延長をすることにつきましては、何か特別の決意あるいは理由があるかというお尋ねのようでありますが、これは、提案理由にも御説明いたしました通り、畑作振興の諸施策が必要であり、この法律によりまして今日まで相当の事業をやりましたけれども、いまだ十分でございませんので、なおこの後残された問題につきまして逐次解決して参りたい、こういう考えで今回この法律の期限の延長をお願いするようになった次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/7
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008・足鹿覺
○足鹿委員 畑作の問題につきましては、耕種技術の点におきましても非常におくれておりまして、畑作独自の経営技術とでも申しますかあるいは輪作営農体系とでも申しますか、そういった耕種、経営両面にわたる研究というものが水稲に比べますと非常におくれておることは目立っておりますし、この問題が解決されないうちに農産物全般にわたっての世界的な過剰傾向が顕著になり、また国内的にもこの傾向と相まって価格の低落が著しいのでありまして、わずかに米作の場合は、米の統制と価格支持制度等があるためにようやく恐慌状態から免れておりますが、現在の農業恐慌寸前のその内容は畑地において特に顕著であるのであります。特に、麦類の自然減反、これは昭和二十五年以来十数万町歩に及んで非常に目立っておりますが、最近は、葉タバコの減反、あるいは今国会にも他の法案として出ておりますが、桑園の一万三千町歩の整理減反というような、政府がみずから国家で管理しておる葉タバコの問題につきましても減反政策を打ち出しておりまして、そういう点においては、政府みずからが大きな責任を持って、代作物の研究とか、それを中心とする諸施策が講じられなければならぬはずでありますが、それについては何ら目立った動きがない。こういう点について今後農民の要求にどうこたえていかれようとしておるのか。聞くところによりますと、政府与党は、振興局に特産部とかあるいは何か特殊な機構を設けて、果樹を中心に一つの振興政策をやろうというような動きもあるように聞いておりますが、そういう局部的な問題では解決がつかぬのであります。問題は、畑地農業振興の基本的な問題をどう処理していくかという根本に立って、その一貫として果樹があり、あるいは養蚕があり、葉タバコがあり、その他蔬菜がある、こういうことにならなければならぬと思うのでありますが、その間の動きについてはどういうふうになっておりますか、もう少し具体的に御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/8
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009・増田盛
○増田政府委員 畑作農業の刷新の問題につきましては、ここ一両年、省内に畑作委員会という研究会を作りまして、いろいろ研究して参ったのでございます。基本的な方向といたしましては、第一は生産基盤の確立。これは、土地改良が中心になりまして、これに土壌改良あるいは農地の集団化を含めまして、畑地に関しましては水田よりもこういう関係におきましてきわめておくれておるわけでありますから、畑地におきます生産基盤を拡充強化する、こういう方向が一つ。それから、もう一点は、耕種の改善方策に関しまする対策でございます。それから、第三は、畜産を、特に酪農を適正に伸ばしていく。こういう三つの方向でいろいろ研究して参ったわけでございます。
それで、振興局の所管といたします耕種改善に関する方向について申し上げたいのでございますが、まずこれに関しまして、従来も畑作振興対策といたしましていろいろな予算が組まれておるわけでございますが、特に三十四年度から、畑作土壌生産力がきわめて低位であるということに着眼いたしまして、これに対する改善をはかっていきたい、かように考えておるわけであります。この畑作土壌の改善の場合に最も基礎になりますのは、やはりこの際日本全国の二百七十万ヘクタールに上る畑地土壌を科学的にもう少し検討を掘り下げていく、そしてその畑地土壌の生産力を具体的に調べ上げていく、そうして、この調査が完了したならばこれの改良事業を実施する、こういう方向で、三十四年度から畑地地方の保全・改善に関する調査を実施することにいたしてあります。さらに、畑地・土壌の生産力に関連いたしまして、農作物の生育をはなはだしく阻害いたしておりまして従来問題になりました土壌線虫、これの防除にも新しく手をつける、こういうことになっております。それから、さらに、土壌改善で取り上げましたのは、従来と引き続きまして、寒冷地並びに暖地におきます心土耕、混層耕用の機械力の使用による改良でございます。いわば土壌改良、こういうものを引き続き興す、これが土壌生産力に対する対策でございます。
第二に、畑作経営の刷新対策といたしまして、有用な畑作物の普及に関しましては前年と引き続き実施して参るわけでありますが、特に大きく取り上げて参ったのは、ビート、テンサイの生産の拡大でございます。御存じの通り、従来は北海道に限定いたしましてビートの生産が行われておったわけでありますが、これを北海道以外の地域にも拡大していく、それは東北地方並びに暖地でございますが、特に東北地方に関しましては、これは試験研究は二年ほど前から国の補助で実行しておるわけでございますが、これを引き続き実施すると同時に、三十四年度より青森、岩手の両県につきまして施策を実施していく、試験研究の段階からまず普及に至るまでの階梯といたしまして施策を数年間続けていくということで、それぞれ予算を計上いたしたわけであります。なお、暖地に関しましては、西南暖地におきます水田裏作に着眼いたしまして、これの早期栽培を、数年前より実施いたしております水稲早期栽培のあと作物ということで、従来も試験をやってきたのでありますが、今度はさらに従来の研究を地域的に広げていく、と同時に、畑地帯に対してもこれを試みていくということで、暖地帯の十県を選びまして、これに対して試験研究の補助をする、こういう事業をやって参りたいと思っております。さらに、耕種改善につながってくる問題といたしましては、機械力による深耕を強化するために、従来通りホイール・トラクター等を用いまして深耕を継続していくということであります。さらに、主要な畑作地帯に畑作総合指導施設を設置して、普及事業を拡充いたしまして、集中的な指導をやっていく、これに対しては農業改良資金を裏づけていくということで新しい予算を計上しております。
最後に、第三点でございますが、畑作の拡充振興をはかるためには、どうしても、おくればせでございますけれども、やはり試験研究に待つところが多いわけであります。この点にかんがみまして、国の試験研究体制をまず整備することが必要でございますので、前年度より地域の農業試験場に新しく三つの畑作部を設置する方針がきまっておるのでございますが、三十四年度はこれの完成をはかりたいということで、それぞれ予算を計上しております。
以上が畑作振興の具体的施策として取り上げたものでございますが、特に、御指摘の麦、果樹、あるいはタバコ、桑園等の問題、いろいろ畑作物に関しましては外部の影響が大きいために問題が山積しておるわけでございます。特に麦類の対策に関しましては、いろいろ私どもも研究を重ねておるわけでございますが、今後大きく取り上げて参りたいと考えておりますものは、三麦の中でも特に飼料用として利用されます大麦、こういうものの作付をもう少し拡大すること、さらに、三麦の中で小麦に比して試験研究あるいは品種改良のおくれております裸麦あるいは大麦に対する育種の面をもう少し強化していくという点であります。なお、三麦を通じまして、これのコストが高い原因になっております労働力、こういうものに着眼いたしまして、最近試験研究の結果が実っておりますドリル播き栽培が試験的にようやく芽を出してきておりますので、これの急速な普及をはかって、これによって生産費の低減をはかっていく。なお、何といいましても、やはり戦中戦後の事情によりまして、麦作をやる場合に限界地帯に対しても相当作付面積が伸びてきておるということが考えられますので、こういう点におきましても、この麦作の限界地帯におきましては他の有利な作物に転換していく、たとえばビート栽培なども将来考えられるわけであります。このような有利な作物に逐次転換して参ることが必要ではないかというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/9
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010・足鹿覺
○足鹿委員 ただいま一応現在手をつけておられる問題についてお話を聞いたわけでありますが、きわめて部分的であり、施策と申しますよりも、大きな畑地政策としての進展の面から見ますと、あまりにも内容がこれに伴っておらぬように思うのであります。私の見るところによりますと、畑地に対する土地改良の問題を一つとってみましても、もっと土地条件の整備、畑地灌漑の施設の大幅推進という面から見まして、この二つの立法が一つの窓口をあけたという意義はありますが、ただいまいただいた資料によりましても、長期計画に対する事業の進行度は半分にも達しておらぬ状態でありまして、これを水田関係の土地改良予算との対費をとってみますと、昭和三十二年の土地改良予算を一〇〇とすれば、畑地灌漑予算は一・三にすぎない。昭和二十三年を一〇〇とした場合に、わずかに向上して畑地灌漑予算が一・六、こういう状態であります。しかも、現在畑地の土地改良を必要とする面積が二百万町歩にわたっておる。そのうちで畑地灌漑の可能地として技術的に確認された面積にしましても五十八万七千町歩が大体推定される。そのうちで手をつけられたのはわずかに一万三千町歩にすぎない。その経費の対比の面から見ましても、また実際の畑地灌漑の可能地と実施された実績との対比を見ましても、全く問題になりません。こういう状態にいつまでもこれを放置するということは、現在の農家が困っておる実情から見まして、畑地対策というものにもっと大きな集中的な施策が講ぜられなかったならば、問題の解決はつかぬのであります。振興局なり農地局が問題の所在を突きとめて、一応これに対して形式的に手をつけたという程度であって、これを大きく政策的に推進していくという点におきましては、何ら本年度の予算について見ましても見るべき予算もついておりませんし、ただ前進の方向を示したにすぎないと思うんです。これは農林大臣にとくと伺わなければならぬのでありますけれども、もっと国土の開発的な構想のもとに大幅な国費投入が行われなかったならば、この問題は前進しないと思う。現在畑地面積は総耕地三面積の四五・五%を占めておると農林白書は指摘しております。米の販売農家は全農家のうちの四〇%であり、その中で米の商品化農家はわずかに二〇%にしかすぎない。そうしますと、それらの他の農家は何によって生計を維持しているかといえば、畑作に依存せざるを得ない。こういう実情にあるにもかかわらず、土地改良予算について見ても百対一・六ないしは百対一・三というような現状をこのまま放置することは許されないと思うのです。もっと政策の転換なり畑地対策というものが大きく国の施策として取り上げられなければならぬ段階に来ておると思うのです。そういう点について政府がもっと積極的な態度をとるのかとらないのか、どういう方向へ持っていこうとしておるのかということを私は聞いておるのであります。こういう状態を何が阻害しておるかといいますと、土地条件の整備問題にしましても、現行の補助体系そのものが畑地農家にとっては重荷であります。たとえば末端五町歩の切り捨ての問題にしてみましても、補助体系そのものを変えていく態度を政府がとらない限り、この問題はいかに口でその重要性を説かれても前進はしないのであります。この畑作農家は非常に貧困な農家が多い。特に開拓地などはその典型的なものでありますが、現行補助体系のもとにおきましては農民は負担に耐え得えないのが現状であることは御存じの通りだと思う。従って、利子の補給の問題にしましても、融資制度の拡充改善にしましても、あるいは補助体系の改革にしてみましても、もっと土地条件の整備を行なって畑地灌漑をやりたい、やれば倍以上の収穫が上ることはわかっておっても、事実上において現行の補助体系によっては手がつけられない。この畑地農業振興法なり海岸砂地立法に基く長期計画と実績との大きな開き、当初計画したものの半分も実績が上っておらないというのは、そういうところに隘路があるからだろうと思うのです。これらの隘路に対してどう手を打っていくかということが、当面した問題として経営技術なりあるいは耕種技術あるいは土壌の研究等ももちろん必要でありますが、それ以前の基本的な生産力の基礎条件の整備問題として重要な点だろうと思うのです。その点について政務次官の御所見を承わりたいと思うのです。特に補助体系をどうするか、あるいは利子補給の問題や融資制度についてどうこれを改めて、今私が指摘したような現実の畑作軽視の是正をはかられようとするのか、問題はそこにあると思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/10
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011・石坂繁
○石坂政府委員 政府は畑作振興の問題を取り上げておるけれども、当面の施策及び昭和三十四年度の予算面にははなはだ不十分ではないかという御指摘でございましたが、確かに足鹿委員御指摘のような批判があり得ると思います。われわれも、昭和三十四年度の農林予算全般から見まして、また、ただいま問題の畑作振興に対する経費の点からいたしまして、これが十分であるとは思っていないのでありますが、しかし、昭和三十四年度の予算面では、ただいま御審議を願っておるような程度でやむを得なかったのであります。しかしながら、われわれといたしましては、この乏しい予算のうちにおきまして畑作振興に関するいろいろな施策を今まで講じて参っておるのであります。たとえば、御承知の通りに、北海道の畑作に対しましては、昭和三十三年度には北海道の畑作振興要綱を決定いたしまして、その線に沿うて努力いたして参りましたが、昭和三十四年度におきましては新たにそれを法制化することによって、一段と北海道寒冷地畑作の振興をはかりたいと考えております。その他、いろいろ施設につきましては、先ほど私からも答弁し、振興局長からも答弁いたしましたうちにいろいろ具体的の問題に触れておりますが、かような各種の問題を積極的に十分に推進することによりまして、現在の程度においてのできるだけの畑作振興に努力いたしておるつもりであります。あるいは、生産基盤の整備の問題につきまして、畑地の交換分合等が従来阻害されておりました一つの原因は農道の問題でありますので、この農道の整備に対する補助のごとき、あるいはまた、養蚕飼育地においての畜産に対する転換、たとえば綿羊を取り入れる政策のごとき、これは、御承知の通りに、養蚕と綿羊とをタイアップしますことは経営上非常に便利でありまして、御承知の通り、養蚕の蚕糞、蚕沙は綿羊の非常にいい飼料であります。ことに、桑の枯れかかった桑葉でもりっぱな飼料になる。その他、養蚕の桑園の整理転換の際に草資源のための牧草を植える、こういうことも政策を立ててやっております。あるいはまた、畑地灌漑の問題は、この畑地の生産、条件を進める上において最も重要なことだと考えますが、これは、いきなりただいまの表面地上の水を誘水いたしますことはいろいろ水利権等の関係からめんどうでありますが、政府は、深層地下水の開発ということに着眼いたしまして、今試験の程度でありますけれども、テスト・ボーリングをやって相当の成績を上げております。かようにいたしまして、いろいろの施策を逐次講じて参っておるのでありまして、積極的に畑地振興の意思があるかどうかという点でありますが、もちろん、畑作振興につきましては今後も努力して取り上げていかなければならないということの熱意を持っております。各種補助金の問題、金融機関の整備等の問題についてもお触れになったのでありますが、これにつきましても、足鹿委員御指摘の通りの御意見もありますし、世上この点に関するいろいろの意見のあることも私も耳にいたしております。しかし、今日ただいまのところで今の各種補助金をどうするかという、あるいは金融機関の整備等をいかにするかという具体的のお答えをする段階にまでなっておりませんが、しかし、これは十分に検討いたさなければならない重要問題だと考えております。
いずれにいたしましても、家族労働を主とした日本農業、きわめて零細な経営である日本農業のこの後の生産性の向上と所得の増加という問題になりますが、これにつきましては、第一には、農業の国民経済の中に占める地位及び農漁村各関係事業の問題等も十分に検討いたしまして対策を立てなければならない問題だと思いますが、かような問題を総合的にかつ同時的に政策を樹立いたすということが最も望ましいことだと思います。従いまして、政府は今農林漁業の基本問題につきましての調査会設置のために御審議を願っておりまするが、さらばというて調査会の答申を得るまでわれわれは手をつかねて無為にして過すというつもりはないのであります。可能な限りにおきまして最善の努力をいたして参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/11
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012・足鹿覺
○足鹿委員 生産基盤の整備の問題ですが、私がただいま指摘しておりましたように、畑作農家にはその負担力が著しく乏しい。従って、現行の補助あるいは助成融資の体系のもとにあっては非常に困難だ。特に、畑地における生産基盤の整備の問題については、これは全部新規事業なのです。水田の場合とはそういう点において著しく異なっておるのです。そこに問題があるわけです。これは政府が畑作研究会で検討した結論においても正しく指摘しておるのです。あれを読んでみますと、問題の所在は的確に把握しておりながら、ただ把握したというだけで、それが一つも前進しておらぬ。また、前進の度合いが非常に緩慢でぬるい。そこに問題があるわけなのです。これは農地局関係の人もおいでになっておると思うのですが、実際面を担当しておる事務当局としてはこれをどうされようとしておるのか。ただ単に問題の所在を突きとめて一応文献としてそれを楽しんでおってみたところで問題は解決しない。やはり、現行補助体系のもとにありては、畑地の灌漑を一つとってみましても、やろうとしてもその基礎条件を整備することができない。これをどう具体的に打開するのかという具体案の検討が示されない限り、私は前進しないと思うのです。それを私は聞いておるのです。次官、ないとは言わぬ、強力にやるのだとおっしゃいますが、その準備はどういうふうに進んでおるのか、その準備についてもう少し具体的に方針を明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/12
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013・石坂繁
○石坂政府委員 具体的のいろいろの準備に関しましては、担当局長から答弁いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/13
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014・清野保
○清野説明員 土地条件整備に関する具体的な御質問でありますので、私からお答えいたします。
御質問になりました、新しい振興対策の中での最も重要と思われますところの畑地灌漑が水田事業に比べて費用負担が多い、従ってその畑地灌漑事業が伸びない、それにはどういうふうな具体策をとっておるか、こういうような御質問でございました。事実昨年度までの補助体系は水田と比べますといささか低いというようなことを言わざるを得ないような状態でごさいました。三十四年からは、少くとも従来やっておりますところの水田の土地改良と同じような補助率、同じような補助体系をとるというような方針に改めまして、県営事業の畑地灌漑の場合の従来四割の補助率を五割に上げました。そうして農民負担の軽減をはかる。なお、団体営につきましては、団体営の耕地整備あるいは灌漑排水と同じように、基幹工事であるところのポンプとかあるいは水源工事、そういうものの費用につきましては、従来四割の補助率を五割に上げまして、極力農民負担の軽減をはかるようにいたしております。
なお、かねてから問題になっておりました末端の制限の問題につきましては、従来耕地整備の区画整理事業を併用いたしましてそれによって仕事を進めようという点を主張して参っておりますが、これを行うことによりまして水田の区画整理事業量が減りますので、三十四年度からは末端の制限を撤廃いたしましてこれを補助にするというような制度につきましてはほぼ大蔵当局と話し合いがついておりますので、三十四年度からは以上申し上げましたような補助体系を改善することにより、畑地灌漑事業が以前よりももう少し進展するだろう、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/14
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015・足鹿覺
○足鹿委員 若干の改善が行われるようでありまして、まことにけっこうでありますけれども、たとえば北海道等の寒地畑作の振興についても、融資の問題で七分の利子の問題が今問題になっておることは御存じの通りであります。北海道の先般の冷害の際等の技術者の意見を聞いてみましても、排水不良地がひどく冷害にやられておるということは、技術者の見解が一致しておる。そういうところの農家は経済力もまた著しく弱く、二重の被害を受ける。そういうものに対しましては、利子補給問題が一面に伴わなければ、法律そのものが何ぼきめようと、何歩をきめようと、一応それが一つの金融体系上の変革で困難とするならば、別途に利子補給なら利子補給の新しい制度をもってこれを補うとか——いわゆる低位生産農家というものは大体畑作農家です。河川に面する豊穣な地帯は水田として開発し尽され、だんだん土地条件の悪いところに畑地の開発が行われあるいは開田が行われておるのでありますから、そういう実情にはまたそれに即応したような政策がとられなければ、開発は行われず、土地条件の整備もうまくいかないということになっておる。これはあなた方が検討を加えた結果明らかになっておるのです。ただ、それにどう施策の手を講ずるかということで、補助体系の点については四〇%を五〇%に、三十四年度から十%引き上げるということであります。けっこうでありますが、でき得れば、国土開発的な構想のもとに、もっと大幅なものがわれわれは好ましいと思うのです。しかし、現在の段階としてそれが困難とするならば、利子補給制度についてもっと検討すべきじゃないかと私は思うのです。金利そのものを法律によってこのたびもきめておる。かりに安く改めることをどうしても困難とするならば、それにかわるべき措置を一面考えていかなければならぬ。たとえば、一千億の農業投資をやる。七分の利子として七十億です。その半額を国費が持ったとしましても、三十五億で一千億の大きな事業が行われるような財政措置が一面においてとれるわけでありますから、補助についても限界があり、金利についても一応の限界があるとするならば、新しい一つの方向としては利子補給の問題をもっと大きく取り上げて検討すべき段階が来ておるんじゃないかと私は思うんです。そういうようなものがいろいろ累積されて農民負担の軽減となり事業の振興となって現われなければ、絵にかいたもちに終るのではないかと思うんです。そういう点についてお考えはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/15
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016・清野保
○清野説明員 排水不良地の冷害に対して農民負担を軽減する意味で利子補給等の方法を講じたらどうか、こういうような御意見と拝聴いたしましたが、従来、北海道における例の土地改良の低利融資制度は、門戸は開いておりますが、現在ではほとんど適用がない。この点につきましては、北海道といろいろ相談いたしまして、農民の希望がある場合にはそういう方法を講じようというような措置を現在しておりますが、遺憾ながら、現在のところ、われわれの指導もあるいは不十分かと思いますが、北海道からはそういうような要求がないのでございます。しかしながら、補助政策といたしましては、北海道の寒地農業に対する土地改良方面の補助率は、内地の補助率に比べまして約一割五分程度上げて、極力農民負担を軽減するという方法をとっておりますが、なお、お示しになりました利子補給の問題等につきましては、ただいま申し上げました三分五厘の低利資金の問題等とも関連がありますので、今後なお十分検討いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/16
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017・松浦周太郎
○松浦委員長 質疑は午後続行することとし、暫時休憩いたします。
午後零時十三分休憩
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〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103105007X01619590303/17
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