1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年三月三日(火曜日)
午後一時十八分開会
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委員の異動
二月十七日委員斎藤昇君辞任につき、
その補欠として井上知治君を議長にお
いて指名した。
二月十八日委員高野一夫君及び中山福
藏君辞任につき、その補欠として草葉
隆圓君及び島村軍次君を議長において
指名した。
二月十九日委員井上知治君辞任につ
き、その補欠として斎藤昇君を議長に
おいて指名した。
二月二十日委員島村軍次君辞任につ
き、その補欠として中山福藏君を議長
において指名した。
二月二十四日委員草葉隆圓君、紅露み
つ君、斎藤昇君、西田信一君及び阿具
根登君辞任につき、その補欠として小
山邦太郎君、松野孝一君、林田正治
君、森田義衞君及び光村甚助君を議長
において指名した。
二月二十五日委員林田正治君、森田義
衞君及び吉田法晴君辞任につき、その
補欠として斎藤昇君、西田信一君及び
小柳勇君を議長において指名した。
二月二十六日委員松野孝一君、小山邦
太郎君、小柳勇君及び光村甚助君辞任
につき、その補欠として紅露みつ君、
草葉隆圓君、大和与一君及び藤原道子
君を議長において指名した。
二月二十七日委員小林英三君辞任につ
き、その補欠として松野鶴平君を議長
において指名した。
二月二十八日委員松野鶴平君辞任につ
き、その補欠として松岡平市君を議長
において指名した。
本日委員藤原道子君辞任につき、その
補欠として光村甚助君を議長において
指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 久保 等君
理事
勝俣 稔君
柴田 栄君
木下 友敬君
委員
有馬 英二君
草葉 隆圓君
紅露 みつ君
斎藤 昇君
西田 信一君
松岡 平市君
片岡 文重君
藤田藤太郎君
光村 甚助君
竹中 恒夫君
衆議院議員
八木 一男君
国務大臣
厚 生 大 臣 坂田 道太君
政府委員
厚生大臣官房長 森本 潔君
厚生大臣官房会
計課長 山本 正淑君
厚生省公衆衛生
局長 尾村 偉久君
厚生省医務局長 小澤 龍君
厚生省社会局長 安田 巖君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
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本日の会議に付した案件
○国民年金法案(内閣送付、予備審
査)
○国民年金法案(衆議院送付、予備審
査)
○国民年金法の施行及び国民年金と他
の年金等の調整に関する法律案(衆
議院送付、予備審査)
○社会福祉事業法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
○社会保障制度に関する調査の件
(昭和三十四年度厚生省関係予算に
関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/0
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001・久保等
○委員長(久保等君) ただいまより社会労働委員会を開きます。
委員の異動を報告いたします。二月十八日付をもって高野一夫君が辞任、その補欠として草葉隆圓君が選任されました。二月二十四日付をもって阿具根登君が、また、二月二十五日付をもって吉田法晴君が辞任されました。二月二十六日付をもって大和与一君及び藤原道子君が選任されました。二月二十七日付をもって小林英三君が辞任されました。二月二十八日付をもって松岡平市君が選任されました。三月三日付をもって藤原道子君が辞任し、その補欠として光村甚助君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/1
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002・久保等
○委員長(久保等君) 国民年金法案(閣法第一二三号)、国民年金法案(衆第一七号)、国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案(衆第二六号)以上三案を一括議題といたします。
提案理由の説明を願います。
まず、閣法第百二十三号から願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/2
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003・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) ただいま議題となりました国民年金法案につきましてその提案の理由を御説明申し上げます。
御承知のように、わが国の公的年金制度には、厚生年金保険制度を初め、恩給、各種共済組合による年金制度などすでに幾つかの制度があるのでありますが、これらはいずれも一定の条件を備えた被用者を対象とするものでありまして、国民の大半を占める農民、商工業者、零細企業の被用者などはいまだに年金制度から取り残されたままになっているのであります。
翻って最近のわが国の人口趨勢を見まするに、国民の死亡率は激減し、平均余命は戦前に比べ飛躍的な伸びを見せ、その結果老齢人口は絶対数においても、また、国民全体の中において占める比率においても著しい増加の傾向を見せております。しかるに一方、これら老齢者の置かれております生活状態は戦前に比べむしろさびしさを加えているのであります。このことは程度の差こそあれ、身体障害者や母子世帯の場合にも同様と言えるのであります。
このような事情からいたしまして、社会保障制度の一環として全国民に年金制度を及ぼし、これを生活設計のよりどころとして、国民生活の安定をはかってまいります体制を確立いたしますことが国民の一致した要望となってきたのであります。
与党たる自由民主党におきましても、かねてからこの問題について研究しておったのでありますが、ついに昨年春の衆議院議員総選挙に際し、国民年金制度の創設を国民の前に公約いたしたのであります。社会党におかれましても、この問題を多年にわたって研究され、すでに数回にわたり国民年金法案を国会に御提案になっておられるのであります。
政府といたしましては、このような各方面の要望にこたえるため、昨年六月、内閣総理大臣の諮問に応じて行われました社会保障制度審議会の国民年金制度に関する答申を参考とし、鋭意国民年金制度の企画立案を急いで参ったのでありますが、ここにこれがわが国の現状に最も即応し、かつ、実現性の強いものと考えましてこの法案を提出した次第であります。
次に、国民年金法案の基本的な立て方について申し上げます。本法案におきましては、拠出制の年金を基本とし、無拠出制の年金は経過的及び補完的に併用していく建前をとったのであります。拠出制を基本といたしましたのは、第一にみずから掛金をし、その掛金に応じて年金を受けるという仕組みをとることによりまして、老齢のように予測できる事態に対しましては、すべての人が若いうちからみずからの力でできるだけの備えをするという原則を堅持して参りたいと考えたからであります。年金制度におきましてこのような建前をとりますことは、制度が将来にわたって健全な発展を遂げて参りますための不可欠の前提と考えられるのでありまして、イギリス、アメリカ、西ドイツ等諸外国における多年の経験もこのことを明らかに示しているのであります。さらにまた、わが国のように老齢人口の急激に増加して参ります国におきましては、無拠出制を基本とした場合、将来における国の財政負担が膨大になり、それだけ将来の国民に対して過度の負担を負わせる結果となるわけでありまして、これを避けますためにも拠出制を基本とした積立方式をとり、積立金及びこれから生ずる利子収入を有力な財源として給付費をまかなっていく仕組みが必要となるのであります。しかしながら、拠出制のみでは現在の老齢者、身体障害者または母子世帯あるいは将来にわたって保険料を拠出する能力の十分でない不幸な人々には年金の支給が行われないこととなりますので、これらの人々にも年金を支給いたしますために、無拠出制の年金を併用することといたしたのであります。
次に、本法案の内容について、その概略を御説明申し上げます。まず基本的なものである拠出制について申し上げます。
第一に、その適用対象でありますが、これは二十才から五十九才までの全国民であります。現行公的年金制度の適用者及び受給者は適用除外とし、また、その配偶者及び学生につきましては任意加入を認めることといたしました。しこうしてこれらの者に対する将来にわたるこの法律の適用関係につきましては、国民年金制度と現行公的年金制度との関連を考慮して引き続き検討することとしたのであります。これは国民年金制度から現行公的年金制度の適用者等を除外いたしますと、本制度と現行公的年金制度との通算調整、さらには現行公的年金制度相互間の通算調整を行わなければ、各制度の被保険者でありながらその間を移動いたしますと年金を受けることができないという者が多数生ずることになり、国民年金制度の意義が減ずるおそれがありますので、これについて具体的方策を講ずべきことを法文に明記いたしたのであります。なお、本制度の拠出制が発足いたしますときにすでに五十五才をこえている者は、たとえ六十五才まで保険料を納付したとしても年金を受ける資格を得ることができませんので適用を除外し、五十才から五十五才までの者は、希望すれば保険料を納付して拠出制の年金を受けることができるよう任意加入の道を開いたのであります。
第二に、保険料でありますが、これは二十才から三十四才まで月額百円、三十五才から五十九才までは百五十円としたのであります。この額は、国民の大部分が負担できるものと考えてきめたものでありますが、生活保護を受けている者とか、その他この保険料を負担する能力の乏しいと認められる者については保険料免除の道を開く等、低所得階層に対する特別の措置を考慮いたしました。
第三に、年金給付についてでありますが、年金給付の種類は老齢、障害、母子、遺児及び寡婦の五種類といたしております。まず、老齢年金でありますが、これは保険料を二十五年以上納付した者が六十五才になったときに支給するものであります。しかしながら、さきに申し上げました保険料を負担する能力が乏しい者につきましては、十年間だけ実際に保険料を納付しますれば年金を支給することにいたしました。また、提出制が発足いたしましたときにすでに一定年令をこえていて二十五年以上の保険料を納付する期間がない者につきましては、この者の年令に応じてこの期間を十年ないし二十四年に短縮いたすこととしております。年金の額は、保険料納付の期間に応じて保険料を二十五年納付した者には年二万四千円、二十才から五十九才まで四十年間納付した者には年に四万二千円を支給いたすことにしております。
次に、障害年金でありますが、これは一定期間保険料を納付した者が日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度、すなわち、片手とか片足を失った程度の障害になったときに支給し、その額は保険料の納付期間に応じて二万四千円から四万二千円までとしております。これより重度の障害、すなわち、両手とか両足を失った程度の障害になった場合には、これに年額六千円を加算することにいたしました。
次に、母子年金でありますが、これは妻が一定期間保険料を納付した後、一家の働き手である夫に死に別れて十八才未満の子を扶養しているような場合に支給するものでありまして、年金額は保険料の納付期間に応じて一万九千二百円から二万五千二百円までであります。なお、子が二人以上あるときは、これに第二子以降の子一人につき四千八百円が加算ざれることになります。また、遺児年金は父母いずれにも死に別れた十八才未満の子に支給し、年金額は、保険料納付期間に応じて七千二百円から一万五百円までとしております。この額も子が二人以上あるときは、これに第二子以降の子一人につき四千八百円が加算されることになります。寡婦年金は、婚姻後十年以上経過した妻が老齢年金を受けるに必要な期間保険料を納付した夫と死別したときに六十才から六十五才まで支給し、年金額は夫の受けるべきであった老齢年金額の半額としております。
次に、無拠出制年金について申し上げます。初めに申し上げました通り、本制度は拠出制を基本といたすものでありますが、制度発足のとますでに七十才以上である者はもちろんのこと、このときすでに五十才以上である者も原則として拠出制の年金を受けることができないのであります。制度発足のときにすでに身体障害とか、母子世帯の状態にある者につきましても同様であります。これらの者に対しましても年金を支給いたすことによりまして文字通り国民皆年金の実をあげますために、無提出制による老齢・障害・母子の三つの援護年金を経過的に支給することとしたのであります。
まず、老齢援護年金についてでありますが、これは先ほど申し上げました通り、制度発足のときすでに五十五才以上である者、五十才以上五十五才未満で任意加入の道々選ばなかった者または将来にわたって保険料の負担能力が乏しいため拠出制の老齢年金を受けるに必要な保険料の納付を行い得なかった者に対し、七十才から一万二千円を支給いたします。障害擁護年金は、制度発足のとき、二十才以上の者であって、すでに両足とか両手を失った程度の廃疾の状態にある者または保険料の負担能力が乏しいかまたは二十才未満でこれと同程度の廃疾になることにより拠出制の障害年金を受けるに必要な保険料の納付を行い得なかった者に対して一万八千円を支給いたします。また、母子擁護年金は、制度発足時すでに夫と死別して十六才未満の子を扶養している者または保険料の負担能力が乏しいため拠出制の母子任命を受けるに必要な保険料の納付を行い得ずして夫と死別し、十六才未満の子を扶養している者で、いずれも二十五才以上の子のない場合に一万二千円を支給いたします。なお、子が二人以上あるときは第二子以降の子一人につき二千四百円を加算いたすことになっております。
これらの援護年金は、拠出制年金のように自分であらかじめ拠出しておいた者に対して支給するものではなく、すべて一般財源から支出するものでありますので、すでに現行公的年金制度による年金を受けている者でありますとか、一定程度以上の所得のある者など比較的恵まれた状態にある人達に対しましてはこの支給を制限いたすことになっております。
次に、この援護年金と生活保護制度との関係についてであります。本制度による年金は、その建前上、生活保護法による被保護者に対しまして毛当然支給されるのでありますが、この年金を支給いたしましても生活保護制度の運用において特別の措置を講じませんと、その人の受けまする年金のすべてが収入認定の対象となり、従って、被保護者にとっては何ら実質的な意義がないという結果になりますので、この点不合理のないよう措置いたす心算であります。
第四に、年金財政について申し上げます。本制度におきまする財政運営方式としては、積立式をとることにいたしておりますが、これは財政運営方式を賦課式といたしました場合、わが国の現状におきましては、年金を無拠出制のみとした場合と同じように、将来の被保険者に対しまして過度の負担を負わせる結果となるからでございます。なお、本制度の積立金は制度の発足当初から次第に増加することになるのでありますが、これが運用はきわめて重要な問題でありまして、今後とも慎重に研究いたして参りたいと考えております。
次に、国庫負担でございますが、これは、毎年度の保険料収入総額の二分の一に相当する額を負担することにしております。このような国庫負担割合は、従来の社会保険特に年金制度には見られないほど大きいものでありまして、これを見ましても、国民年金制度の維持育成に対する熱意を肯定していただけるものと考えております。なお、援護年金の給付に要する費用は当然のことながら全額国庫で負担いたします。また、事務費につきましても、これを全額国庫が負担することといたしております。
最後に、実施の時期でありますが、援護年金の支給につきましては昭和三十四年十一月一日から、拠出制年金につきましては昭和三十六年四月一日から保険料の徴収を開始いたすことといたしております。
以上で国民年金法案の提案理由の御説明を終りたいと存じます。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/3
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004・久保等
○委員長(久保等君) 次に、衆第十七号、衆第二十六号の御説明をお願いいたします。
発議者の衆議院議員八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/4
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005・八木一男
○衆議院議員(八木一男君) 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題と相なりましたわが党提出の国民年金法案、国民年金の施行及び国民年金と他の年金との調整に関する法律案に関して、一括して提案の趣旨理由並びに内容の大綱を御説明申し上げるものでございます。
この二法案は、大蔵委員会に付託になるべきわが党提出の一般国民年金税法案、労働者年金税法案、国民年金特別会計法案と一体をなすものでございまして、従って、御説明中、以上三法案の内容にわたる点にも触れますことをあらかじめ御了承いただきたく存じます。
戦後わが国国民の平均寿命は大いに延び、さらに延びつつございます。大勢の人が長生きすることができるようになりましたことはまことに喜ばしいことでございまするが、老後に安定した楽しい生活ができるのでなければ、この喜びは激減をいたします。長くなった老後の楽しい安定した生活に関して、精神的な面は別といたしましても、物質的な面のみで考えますると、子供たちの孝養あるいは本人たちの貯蓄ということのみにたよることはまことに不安定なものであり、さらに大多数の大衆にとっては至難のことでありまして、この問題の解決のため、老人の所得保障、すなわち社会的な孝養という制度が全国民に対して至急に確立されることが絶対必要でございます。
一方、母子世帯においては、年収十八万円未満のものが全体の九〇%も占めており、まことに困難な状態のもとに子女の保育が行われております。
身体障害者に至っては、障害のため特殊な出費があるにかかわらず、所得の機会にはほとんど恵まれないで、その大部分が最低生活の維持すら困難な状態でございます。このような事態を救い得る制度が年金制度でありますることは申すまでもございません。ところが、わが国の年金制度は一部勤労階級に適用されているのみで、大部分の国民はそのらち外に放置されております。勤労者の場合も、恩給資格者と公共企業体共済組合適用者のうち、高給者であるものを除いては、厚生年金等すべてがはなはだ程度の低いものであり、また、通算がほとんどないという不備なものでありまして、老後を安心させ得るものではございません。このような状態にかんがみまして、昭和二十五年、社会保障制度審議会の勧告が出たわけでございまするが、自後歴代の保守党内閣が、何らの推進もされなかったことは、まことに残念なことでございます。
わが党は、以前より年金制度の必要痛感し、その完成を主張して参りました。昭和三十一年呼び水の意味で慰老年金法案、母子年金法案を提出したのでありますが、一昨年全国民のための総合的な、根本的な年金制度を研究決定し、その基本法として国民年金法案を昨年の第二十八、第二十九、第三十国会に提出いたしたのでありまして、さらに幾分の修正をなし、提出いたしましたのが本国民年金法案であり、即時実行し得るよう手続上の具体的な内容を決定しているのが関係四法案であります。
本国民年金法案等を作るに当りまして、私どもは国民年金制度が完成までに長期間を要する性質のものであることにかんがみ、創設当時より完全な目標に向って進まなければならないと考えました。そしてその目標は、すべての国民に憲法で保障された健康で文化的な最低限度の生活を維持できるようにすることに置いたわけであります。
以上の目標を達成するため、具体的には、まず第一に、制度の完成した場合の老齢給付の最低限度を現在の貨幣価値の月七千円、すなわち年八万四千円と決定いたしました。第二に、この年金をすべての国民が支給されるものとするため、拠出困難あるいは不可能な期間、年金税を減額あるいは免除することとし、減免を何回受けたものでも年金額は完全に全額支給すべきだと考えました。第三に、過渡期のものもできるだけ早く月七千円の線に近づくようにし、第四に、無拠出年金については、必要の度の多い人に対する年金に厚みをかけ、また、生活保護と併給することにしてその目的に沿うよういたすべきものと考えたわけであります。
このような完全な考え方で国民年金制度を作ることによって、所得保障という本来の目的を果すとともに、他の重要な面に非常に大きな影響を与え得るものと考えております。国民年金制度を通じての所得再配分によって、国民生活の不均衡が相当程度是正され、これによって継続的な有効需要が確保されることによって諸産業の振興安定に資するところ大なるものがあると考えられます。このことは、雇用の増大と安定を招来するものでありますが、さらに、完全な所得保障によって不完全就労が減少し、労働力率化が低下するという好ましき効果の面を加えまして、完全雇用への道を進めるものと信ずるものであります。さらに、十分な年金制度は、雇用労働力の新陳代謝を促進し、鉱工業生産力を増大せしめるとともに、農業、中小企業の経営権を若き世代に移すことによってその近代化への原動力と相なります。
以上のごとく、完全な国民年金制度は、所得能力少き国民に完全な所得保障をすることによって国家がその責任を果すという本来の効果のほかに、現代わが国における内政上の重要課題のほとんどすべてに解決の道を進める制度であると断言してもあえて過言ではあるまいと信ずるものでございます。
以上の観点からりっぱな国民年金制度を作り上げることに決心をしたわけでありますが、現在の国家財政、個人経済の状態から、そのことの実現のため多大の工夫を必要といたしました。その結果、国民年金には、積立金方式のほかに賦課方式を取り入れることに踏み切ったわけであります。現在年金を必要とする人々に無拠出年金を支給し、現在生産年令にある人々の年金を完全積立方式とすれば、現在のゼネレーションが二重負担になり、年金のための負担は限界に達します。この障壁を乗り越えるために、われわれは、われわれの親たちに親孝行をする、そのかわり、その分だけ子供たちに親孝行をしてもらうという考え方で、一部賦課方式を採用してこの困難を乗り越えることにいたしました。そのほか、収入の多いものに年金税を多く負担させること、累進課税で取る分の多い一般財源からできるだけ多くの国庫支出をすること等に踏み切ってこの法案ができたわけであります。
以下膨大な内容を、要点を抽出して御説明いたしたいと存じます。本法案は、大分けにして、特別年金と普通年金の二つの部分で構成されております。特別年金は、現在直ちに年金を必要とする老人、母子家庭、身体障害者に対して、無拠出、すなわち一切の掛金、負担金なしに年金を支給して、これらの人々の生活を援助する制度であります。普通年金は、現在の青壮年、さらに以後続く国民に対して、拠出、すなわち国民が年金税を納入して特別会計に積み立てる資金と、一般財政よりの賦課方式による大幅な国庫負担金とをもってその老齢、廃疾あるいは遺族に対する完全な所得保障をする制度であります。
まず最初に、特別年金の方から御説明いたしますと、これはさらに養老年金、母子年金、身体障害者年金の三制度に分れております。養老年金は、本人の年収十三万円以下の老人に支給されるものでありまして、六十才から支給を開始するものであり、六十五才から倍額にして、自後一生涯毎年同額を支給することにいたしております。年収十八万円未満の家庭の老人には、その金額は六十五才以後に年二万四千円になり、従って老夫婦の場合は、毎年四万八千円が支給されることに相なります。年収十八万円から三十六万円の家庭は右の半額が支給されるわけであります。
母子年金は二十才未満の子女を有する母子世帯に対するものでありまして、年収十二万円未満の母子家庭に年額三万六千円を支給し、子女が二名以上の場合は、第二子から一名につき年額七千二百円の加算をいたすことになっております。年収十二万円以上十八万円未満の母子家庭は、基本額、加算額ともにそれぞれ半額を支給することにいたしております。なお、配偶者のない祖母、姉等が子女を保有する場合も支給いたすことにいたしております。
身体障害者年金は、廃疾の程度によって支給金額が異なっており、年収十二万円未満の身体障害者に対し、一級の場合は年額四万八千円、二級の場合は年額三万六千円、三級の場合は年額二万四千円を支給し、配偶者並びに子女に関して支給される加算は、等級にかかわらず家族一名につき年七千二百円ずつ支給することに相なっております。年収十二万円ないし十八万円の世帯の身体障害者に対しては、基本額、加算額ともにそれぞれ半額を支給することにいたしております。
以上、養老、母子、身体障害者の三年金、すなわち特別年金の制度を全般を通じて申し上げておくべきことは、まず、三年金とも、収入により給付を制限いたしておりますが、最初に適用されなくとも、後に本人または世帯の収入が不幸にして減少した場合は、そのときから適用されるわけでありまして、その意味で全国民のものということができると考えておるわけであります。
次に、この三年金は全然税金の対象といたしておりませんので、以上の年金が完全に対象者の手に入ることになり、また、生活保護と完全併給をいたすことにいたしておりますので、生活保護を受ける人々は扶助と年金を両方とも全額支給されることに相なるのであります。
さらに三年金に関して世帯収入の境目について、不均衡が起らないよう細目の規定をいたしております。すなわち所得三十六万円の世帯の老人が一万二千円の年金を受けた場合、その世帯は三十七万二千円の総収入になるわけでありますが、それでは所得が三十六万円をわずかにこえる老人世帯の方が総所得が少くなることになりますので、それを避けるため、総所得三十七万二千円に達するまでは世帯所得三十六万円をこえても年金を支給することにいたしております。三年金のすべての境目に同様の配慮をいたしておるわけでございまして、従って、言いかえれば、本案によれば養老は所得三十七万二千円、母子は所得十九万八千円、身体障害者は所得二十万四千円未満の世帯の対象者まで支給されることになるわけでありまして、扶養家族を入れますると、この限度はさらに高まることに相なるわけであります。
以上で特別年金の説明を終り、次に、将来に備える根本的な普通年金について申し上げます。
この制度は、一般国民年金と労働者年金に大別され、それぞれ養老年金、障害年金、遺族年金の給付があります。主として老齢年金給付につき御説明申し上げることにいたし、まず、一般国民年金より御説明申し上げます。
この制度は、農漁民、商工業者、医師、弁護士等のすべての自営業者と労働者の家庭も含めました全家庭の主婦等、すべての無職者に適用されるものであり、言いかえれば労働者本人以外の全国民が対象となるものでございます。年金額は全部一律で、六十才から一名につき本制度が完成された暁には、年八万四千円ずつ、一生涯支給されます。従って、老夫婦の場合は十六万八千円に相なるわけであります。この場合、もし本人が六十才より早く、あるいはおそくから支給を受けたいと希望する場合は、五十五才から六十五才までの間において希望の年からそれぞれ減額あるいは増額した年金を支給できることにいたしております。国はこの八万四千円の年金給付の五割、すなわち年金保険料の十割を一般財源より負担し、支払いの年に特別会計に払い込みます。また別に、特別会計で積み立てておくため対象者の属する世帯より一般国民年金税を徴収いたします。拠出期間は二十才から五十四才までの三十五年間、税率は一般国民年金税法案第十条に規定してございまするが、大体一名平均月百六十六円に相なる計算であります。国民健康保険税の場合と似た方法で均等割五、所得割三、資産割二という割合で徴収することになっておりますので、収入の少い人はずいぶんと安くなる見込みであり、さらに納入困難、あるいは不能の人については、減額あるいは免除をすることにいたしております。何回減免を受けた人にでも、年金を支給さるべき際には無条件で他の人と同じ年金を支給するという社会保障に徹底した考え方に立っておりますることを重ねて明らかにいたしておきます。障害年金の場合は、一級は老齢年金と同額、二級はその四分の三、三級は二分の一に相当する金額を支給いたすことにいたしております。以上の障害年金は拠出年金制度に入った障害者は直ちに右の金額を支給されるものであります。遺族年金は老齢年金の半額、子供一名につき年一万四千四百円の加給をつけることにいたしており配偶者が拠出制度に入った後死亡した場合は、経過した期間がたとえ一月であっても支給することに相なっております。
以上で、特に申し上げておかなければならないことは、年金について課税の対象としないこと、並びに年金額がスライドすなわち物価変動に応じて改訂されることであります。この場合一般国民年金もスライドされることは当然でございます。
次に、労働者年金について申し上げます。本制度はあらゆる職種の労働者本人に適用されるものであって、五人未満の事業所の労働者、日雇い労働者、山林労働者等にも適用をされます。老齢年金は六十才から支給されることが原則でございまするが、炭鉱労働者、船員、機関車労働者等は五十五才開始といたしておりますることは現行厚生年金保険と同様であります。老齢年金額は制度が完成した場合、一般国民年金と同額の年八万四千円を基本額とし、それに標準報酬額に比例した金額が付加されます。その金額は現存の賃金水準で平均六万三千円になる計算でございまして、合計平均年十四万七千円に相なります。従って、将来賃金水準が上った場合には、この平均額は上昇をいたします。労働者年金税法案に規定されている労働者年金税は、もちろん標準報酬の高低に従って定められております。一般国民年金の場合よりも年金額が多いのでありまするから、年金税は当然高額に相なりまするが、この場合、使用者が半分以上負担することに相なっておりまするので、労働者負担はあまり多くなく、平均して月額二百円程度であります。低質金労働者は標準報酬が少いため右の平均額よりはるかに少額になることは当然であります。拠出期間は一般国民年金と同様二十才より五十四才までの三十五年間であります。この労働者年金の特徴は、異なる事業所間はもちろん、農林漁業、商工業、家庭の婦人等、一般国民との間にも完全通算をすることでありまして、基本給の基本額の八万四千円は、何回職業が変っても完全に確保され、平均六万三千円の標準報酬比例部分は、二十才から五十四才までの間に労働者であった期間だけの割合で、それがたとえ一年であっても加算されるわけであります。労働者年金への国庫負担率は二割であります。これは十四万七千円に対する二割でありまするので、八万四千円に対しまする割合に換算いたしますると三割五分になり、将来貸金水準上昇を考えると、完成時には大体五割程度となり、一般国民年金と実質上同程度のものと相なるわけであります。その他繰り上げ減額年金、繰り下げ増額年金制度、非課税年金及び年金税のスライド、年金税の免除、また、廃疾遺族給付については、一般国民年金と同様の内容、あるいは仕組みに相なっております。
以上、一般国民、労働者両制度について申し上げましたが、その年金額は完成時のことを申し上げたわけでございまして、拠出期間が三十五年に満たない人はその期間に応じて年金額が定められていることは申すまでもございません。御参考に途中の年金額を申し上げますると、施行時三十五才の人の年金額は一般国民年金では年四万八千円、労働者年金では年八万四千円に相なる計算であります。
以上が本国民年金制度の内容の大綱でございます。
実施に当っての既存年金との関係は、国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案に規定いたしているわけでございまするが、既得権、期待権の尊重に十分の配慮を払うとともに、完全なる持ち分移管方式を採用して、途中で制度が変る人、あるいは途中転職者の利益を完全に保護することにいたしました。制度の上では、厚生年金保険、船員保険の年金部分、農協役職員共済年金等は直ちに労働者年金へ統合、恩給、国家公務員、地方公務員、公共企業体等の各共済組合等は、新規採用者より労働者年金を適用することに相なります。施行期日は昭和三十四年四月一日、年金の支払い及び年金税の徴収開始は同年十月一日からであります。
国民年金法施行に要する一般会計よりの経費は平年計算にいたしまして、その第一年度約一千二百十二億円であり、うち養老年金約七百九十八億円、母子年金約三百十六億円、身体障害者年金約四十五億円、国民年金税減免補てん分約四十四億円、労働者年金の国家公務員並びに地方公務員に対する国の直接、間接の負担額、これは二十才以上の新規採用者分のみでありまするが、約一億円、年金支払いに要する事務費約八億円と相なっております。
別に労働者年金税法、一般国民年金税法施行に要する経費、すなわち年金税徴収事務費はそれぞれ約八億七千万円、約四十三億四千万円、計約五十二億一千万円であります。以上のごとく国庫支出は相当額に達しまするが、国民年金制度に対する全国民の非常なる期待、前段に申し述べましたように完全な国民年金制度のきわめて大きな意義より見まして、断固として踏み切るべき金額であると信じます。
国庫支出は賦課方式でございますので、自後漸増をいたしまして、本年金制度完成時すなわち三十五年後には、約四千二百億になるものと推定されまするが、それ以上は、増加を停止し、平準化するものと推定せられます。このことに対して、私どもは心配はないものと考えております。その理由は、わが国の経済が、逐年拡大し得るからであります。かりに最も控え目に考えて、明治以後のわが国の平均経済成長率四%と同率をもって今後の経済が拡大するものといたしますれば、三十五年後には四倍に相なります。
同じ率以上で財政が拡大し得ることは当然でありまして、かりに少く見て同率と見て五兆六千億という仮定が成り立ちます。そのうち実際には四割が減税に回されたといたしましても、なお、三兆三千億以上の財政規模に相なるわけでありまして、そのうち四千二百億程度の支出はこの制度が全国民に対する完全なものであります以上は、国民も双手をあげて賛意を表されるものであると固く信ずるものであります。
以上で本二法案の説明を終るわけでありますが、何とぞ建設的に御審議の上、すみやかに御可決下さいますることを心から御要望申し上げる次第であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/5
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006・久保等
○委員長(久保等君) それでは次に、社会福祉事業法の一部を改正する法律案を議題にいたします。
御質疑を願います。
別に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/6
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007・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めることに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/7
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008・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
それではこれより社会福祉事業法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案を原案の通り可決することに賛成の方は挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/8
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009・久保等
○委員長(久保等君) 全会一致でございます。
よって本案は全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、議長に提出する報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/9
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010・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/10
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011・久保等
○委員長(久保等君) 速記を起して。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/11
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012・久保等
○委員長(久保等君) 次に、社会保障制度に関する調査の一環として、昭和三十四年度厚生関係予算に関する件を議題といたします。
御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/12
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013・木下友敬
○木下友敬君 私は山口県の埴生療養所の問題についてお尋ねしたいと思うのでございますが、この問題につきましては、過日この委員会で阿具根、小柳両委員からも御質疑があって御答弁をいただいておりますが、私は、その御答弁でまだわからないところがあるから、続いてお尋ねをしたいと思うのでございます。
埴生の療養所とは、きわめて規模の小さい療養所ではございますが、しかもそのわずか数人の医者がおればいいところを、約一年間も医者がいなかった。常駐の医者が得られないからという理由のもとでいなかった。患者も次第に減る傾向であったのでございますが、ことしの正月でございましたか、やっとのことで所長さんもきまり、付近にあるところの山口医科大学の応援も得まして、医員の先生方もおいでいただいたのでございますが、所長が赴任してから約一カ月の後に、突然としてこの療養所を閉鎖するという命令が出たのでございます。地元は以前からこの病院が存続されることを希望しておりましたが、だんだんさびれていくので、実は心配しておった。しかし、所長も来たし、お医者さんたちも充足されたので、これで一安心だといって安心しておるところに突如として閉鎖命令を出されたということは、私どもから見れば、地元に陳情の機会を与えずにばっさりやったというような感じを受けるのですが、これは一体どうであるかということを一つ私は聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/13
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014・小澤龍
○政府委員(小澤龍君) 御指摘のごとく、埴生療養所につきましては、かなり長い期間、専任医員が得られませんで、入院患者はもちろんのこと、その地方の方々に大へん御迷惑をかけましたことは大へん恐縮に存じます。たしか昨年の冬と存じまするけれども、やっと専住所長が得られまして、現地に派遣いたしました。足らざるところを周辺の施設から医師の応援を得まして、今日はともかくも診療を継続しております。ただ、私どもの考え方から申しますと、今回はどうにか所長が得られまして診療の継続ができるのでございますけれども、今後長期にわたって果して優秀な医者をわれわれの望む程度に確保ができ、りっぱな診療が継続できるかどうかという点につきましては、非常に心配でございます。従いまして、現在医者が得られているかいないかということのほかに、結核療養所というものはいかにあるべきか、特に結核治療医学が非常に進歩し、それを果すためには相当りっぱな施設を整備するとともに、その施設を使いこなせるだけの医師並びに医療従事者をあわせ得なければならないという、今後及び将来の結核医療というものと考え合せまして、果してこの種の療養所を長く存置していくことが結核対策上適当であろうかどうかについて多大の疑問を持っておるのでございまして私どもといたしましては、できればある程度の規模の療養所にこれを集中して強化していくという方針をこの際出していった方が適当でないかと、かように考えておるのであります。埴生療養所につきましても同様な基本的な考え方からいたしまして、廃止の方針を実は決定したのでありますが、当時——私どもがきめた当時におきましては、地元の方もさして御反対の様子もなし、入院患者についてもさほど強い反対があるということは実は承知してなかったのでございます。最近、地元からも相当強い廃止反対の陳情もございましたので——等の関係からいたしまして、私どもの方針についてそれでいいかどうかということについては、埴生の現状につきまして、もう一度その事実を調べるということは必要ではないかと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/14
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015・木下友敬
○木下友敬君 医師の充足がまことに困難な現状にあるということは、それはわかるのです。わかるけれども、私はこの問題に最初から地元の一人として関係しておりますが、山口医大の方その他と一緒に集まりまして協議しましたときには、もし人事面などもある程度責任を持たしてくれるならば山口医大でやってもいい。そのときには、現在お見えになっておる所長さんもオブザーバーの形でおいでになった。で、私は山口医大があれほどの好意を示すならば、むしろ所長も山口医大からとれるし、わざわざ千葉から御赴任にならぬでもできると思ったけれども、突如として今の所長がお見えになっておる。そうして一カ月後には閉鎖ということになれば、私は厚生省のある人が——こういうことは委員会で言っていけないかもしれぬけれども、不用意に話された中に、最初からあそこは閉所するつもりで、閉所するとき所長がいないというような場合に、閉所もできないので、とにかく閉所の事務処理のために所長は任命されたものだというような印象を受けている。事実そうでなければ、閉鎖する一カ月前にたれでも喜んで赴任する人はないし、おそらくその内意を承わって御当人は赴任されたものと、こういうふうに心得ております。こういう点はどうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/15
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016・小澤龍
○政府委員(小澤龍君) この前の委員会におきましてもお答えを申し上げましたが、実はこの療養所は、初めというか、もう開所以来、九州大学の方から特別な御協力をいただきまして九州医大のお医者さんが赴任せられて診療所に来ておったのであります。それが昨年の初めに九州大学からもう医員の派遣はできないといって断わられたわけでございます。従いまして、私どもは直ちに九州大学に重ねて医師派遣方を懇請いたしまして、ついに派遣してやるという返事をいただけずに終ったのでございます。そしてやむを得ず、地元の山口医科大学にお願いしたのでありますけれども、その当時は県立山口医大といたしましても医師を派遣することはできないというて実はお断わりをいただいたわけでございます。その結果、やむを得ず、実は関東地区から所長を選定して赴任さしたのでございますが、その後ただいまの木下先生のお話しによりますというと、山口大学が協力して下さるということでございます。これはわれわれといたしましては、最近にはっきりした事実でございますので、この点も山口医科大学にお話しをし直しましてさらに大学からこの御協力をいただくのは、ひとり埴生療養所のみならずいろいろな療養所においていろいろ御協力をいただかなければなりませんので、合して山口大学と話し合い、各種の御協力を実は懇請するという考え方をいたしておる次第でございます。
所長の赴任につきまして、廃止を目的として所長を赴任したかどうかというお尋ねでございましたけれども、かような状態なので、せっかくあなたに行っていただいても、埴生療養所は継続することが困難かもしれない、いろいろ助力してみるがという程度の話し合いは療養所課長と本人との間にいたされたということを聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/16
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017・木下友敬
○木下友敬君 今のお話しでは、山口大学から断わられたけれども、最近に至って御協力をいただくことになったから、あらためてさらに御協力をお願いするというようなお話しのように承わったのですが、この点と、さらにそれから所長が赴任するときはすでにもう約一カ月か、あるいは長くとも二カ月、三カ月以後には命令が出るだろうということを予想されておったということは、六月三十日でもうこの療養所が閉鎖されるということでございますが、もう赴任せられた以後というものは新しい患者を入院さすことを非常に制限しておる。これは統計が示しておる。一カ月後に閉所命令が出るという予想がないならば、今までのテンポで入院患者というものは来たはずです。だけれども、その入院患者はそのときに制限して——またもちろん、閉所命令が出たあと患者を入れないということについてはこれは問題がございましょうけれども、議論の余地もあると思う。そういう命令のこない前からもうすでに入院患者を制限していっておる。そうしてだんだんさびれた状態に持っていったということは、もうあらかじめ近い将来に閉所命令を出すのだという、そういうことのために特に赴任さしたというように受け取らなければ理解ができないのです。どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/17
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018・小澤龍
○政府委員(小澤龍君) 国立病院の療養所のことにつきましては、ひとり埴生療養所のみならず、各病院療養所について、各地にあります大学からそれぞれの御協力を仰がなければならないのであり、現在も仰いでおるのでございます。今回埴生療養所につきまして山口大学が非常な御好意をお持ち下すったということを聞きましたので、私は埴生療養所のことのみならず、国立病院、療養所全般の運営について山口大学とお話し合いをして御協力をお願いする考えでございます。ただ山口大学といたしましても、ただ漫然と協力するということではないと思うのであります、協力するからには病院、療養所側に、かくあってほしいというような希望もありましょうし、また、協力の質と冠につきましてもいろいろなお考え方もございましょうし、こういうことを全面的にお話し合いしませんというと、具体的に協力態勢というものはでき得ませんので、これらの問題をあわせて山口大学とお話し合いいたしたいと考えておるのでございます。植生療養所につきましては、山口大学は応援すると申しておられますけれども、どの程度の応援であるか、現在だけのことであるか、将来についてもであるか、あるいは埴生療養所に応援を出すにいたしましても、現状のままの埴生療養所でいいのか、将来かくあるべしということを前提としていうのか等々、将来のいろいろ複雑な要素が含まれておりまして、それぞれ大学当局とお話し合いしてお互いの協力態勢を将来確立していきたい、今後さような考え方でお話し合いをいたしたいと考えておるのであります。それから昨年来だいぶ医者が得られないで、私どもといたしましては、埴生療養所の運営については非常な苦心をして、非常に手をあげたといったような状態にまで実は追い込まれておるのであります。従いまして、やっと所長を見つけて現地に派遣いたしましても、所長一人であれだけの療養所の運営ができるものではない。いろいろな要素、同時に、先ほど申しましたような結核療養所全体に関する考え方もありまして、将来廃止する場合もある旨はあらかじめ療養所課長から本人に伝えてあったということを了解しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/18
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019・木下友敬
○木下友敬君 埴生の療養所というのは、あれは下関市、小野田市、宇部市というような工業都市のちょうど中間にありまして、療養所の位置は交通の便利もいいし、そうしてなくてはならないところなのであります。食糧その他の点からいきましても、また、環境からいっても埴生の療養所というのは、山陽方面でも最もいいところなのであります。そういう必要で、かつ、非常に適当な療養所をこういうふうに閉鎖しなければならないような形に持ってきたというのは、これは長年にわたる厚生省の故意にされたものだと思う。というのは、この十年間埴生療養所に出された営繕費というものはもうきわめて少額なんです。それは雨漏り一つ、あるいは屋根から流れてくるといの修繕すらできないようなわずかの金しか出していない、いやしくも国立の療養所というのはそういうことができないくらいでありますから、研究設備というのは非常におくれていたわけなんです。九大が拒絶したのも理由はそこにある。そこで山口大学から協力するといっても、条件があるだろうと言われるのはむろんそのことでございまして、やはり若干の条件はつくものだと思いますけれども、山口大学にしても別に結核病棟というものは持っておりませんから、こういうものに協力するということは向うの方でも喜ぶことなんです。今お話によりますと、そういう点については大学とよく今後話し合って協力していくというお話でございますから、そういうお言葉であればこの療養所も必ずしも六月三十日でおやめになるつもりはない、一度出したけれども、あらためて今から事態が変化を来たし、また、山口大学の協力というような新しいニュースも入ったんだから、今後一つよく協議しようというようなお話であれば、私どももまあ一縷の望みはあるものだというように理解したいと思うのでございます。あの周辺は大体最近の統計によりますと、二万四、五千の結核患者が登録されております。入院を必要とする者でも八百以上じゃなかったかと思うのですが、多少数字は違うかもわかりません。これを当局のお考えではもう部埴生の療養所を閉鎖すれば、現在入院している患者も山陽荘に移すし、それから今八百数十人という入院を要する患者も、それぞれ山陽荘なり、あるいは小串の療養所、あるいは下関の国立病院等に移すつもりだと言っておられますけれども、単に患者につきましても現在六十数人に減っておっても、その中のパーセンテージを見ますと、六十数%はこれは生活保護者なんです。そうしますと、東京などと経済の規模も違いますし、交通あるいはそういう点からいっても直ちに生活保護者の方々を四十キロも離れておるところの山陽荘まで行って入院してもらうということは、家族にとっても非常に困ったことであるし、これはもう言うべくしてできないことなんです。一番困る問題は私は生活保護の患者さんだと思います。ところが、現在においてどうです、いろいろの方面から生活保護の患者たちに、今のうちに一つ君たちは病院をかわってくれという圧力が加わって退院している疑いが十分ある。この六十二人に減ったというのも最近のことなんです。これは非常な私は生活保護というような気の毒な人たち、そういう人たちは非常に圧力に弱いのです。そういう人に陰の圧力を加えて、だんだん退所させていくというような、こういう好ましくないことはやめてもらいたい。それから従業員にしましても今五十数人です、これを四十キロも離れた山陽荘に移すということはこれはとうてい不可能です。これは汽車で行くかあるいはバスで行くのですけれども、どちらも乗りかえをしたりして一時間半は少くもかかります。大体土地に居住のある人が勤めておるのでございますが、あのいなかで六十数人の患者あるいは五十数人の従業員を処理するということは、これは東京にたとえますならば、人口の比率から言うならばおそらく一万数千、従業員にしても一万五千人、患者にすれば一万八千人、それを東京の中心地帯で処理すると同じような比率になるのです。いなかじゃそれだけのものを処理することはとうていできない。あなた方東京におって、六十人や七十人の患者はどうにでもなる、五十人や六十人の従業員を処理することはどうにでもなると思うけれども、いなかじゃそうはいかない。東京ならば一万八千、二万人の人間をどうするかという問題になる。そういうことも勘案してもらえば、そういきなりばっさり閉所するという考えは一つ改めてもらいたい、こう思うのです。今私はお言葉の間から、今後山口大学と一つ協力態勢については話し合ってというようなお言葉だったから、多少は閉所ということについては考えを新たにするというお気持があるのじゃないかと思う。その点一つ御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/19
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020・小澤龍
○政府委員(小澤龍君) 先ほど来申し上げているように、結核療養所の今後の運営については、従来の大気安静療法に基いて配置され、設備されているところの療養所では間に合わなくなっておりまするので、現代医学に適応するがごとき施設に再整備しなければならぬということは当然でございます。しかるに埴生療養所では、局所的に見ればなるほどある程度便利がいいかと思いますけれども、現在のあの小さな埴生療養所を、現代医学に適応するがごとき施設にまでこれを作り上げていくことは、非常に巨額な国費を要するのでございます。私どもといたしましては、現段階においては、それほど自信がないのでございます。現に山口県には埴生療養所のほかに、山陽荘とか、湯田療養所とか、小串清風荘とか、柳井療養所とか、総計五カ所の国立結核療養所がございます。全国の平均から比べて、比較的多く国立の施設が存在しているわけでございます。従いまして、山口大学の御協力は今後とも得たいと存じますけれども、大筋の方針といたしましては、やはりそれだけの能力のある施設に整備統合していくという考え方を改めることは困難ではないかと思うのでございます。従いまして、方針といたしましては、埴生療養所をこの山陽荘に統合していくという考え方は持たしていただきたいと考えるのでございます。しかしながらこれをやるに当りまして私どもは機械的にやっては相ならぬということは重々心得ております。第一に患者の一人々々について、それぞれの住居地との関係、生活保護法との関係、万般の御関係があげられることと存じます。また、病状等もいろいろあることと存じます。さような患者の一人々々の御都合、職員の方の一人々々の御都合ということはよく勘案いたしまして、かつまた、今まで長くお世話になりました地元の町のお気持、お考え方も十分そしゃくいたしまして、慎重にこれを運ばにゃいかぬ、従いまして、六月末ということは目標でございますけれども、六月末日に必ずこれを強行するということは絶対にございません。さようなことをまずわれわれは考えの中に取り入れまして、慎重に事を運ぶようにしていきたいと考えている
のでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/20
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021・木下友敬
○木下友敬君 それじゃ六月三十日きりじゃなくて、それ以後も診療を持続していく考えだと、延期が可能であるというようなお考えだと、私理解いたしましたが、そうすると、それについての予算等についても、十分お考えになる御所存ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/21
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022・小澤龍
○政府委員(小澤龍君) ベッドの総額はいずれにしても変りませんので、予算等についてはだからといって何ら影響をこうむることはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/22
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023・木下友敬
○木下友敬君 私は結核患者に、現在においてはその病状からいって大まかに分けて二つ考えられると思うのです。二つも三つもありましょうけれども、手術可能なものと手術のできないものとある。御承知の通り、山陽荘のはほとんどというより、もう全部手術の目的のために今日まで収容しておる病院です、療養所です。ところが、埴生の療養所というのはこれは特徴がございまして、手術はできない、しかし、重症ではあるというのが集まっている。で、手術できない患者というのは手術可能な患者の間に挾まれますと、自分だけが不治の病人だという非常に劣等感を持つ。きのうも私は病院へ行って参りましてそこで会ってみますと、自分たちはもうここを死にどころときめてこのからだをまかせたのだから、手術のできる楽しみ、希望のある患者さんと一緒に生活することはできない、こういうことを、これが自分たちの最後の悲願だということを述べておる。そうしますと、当局側としては、あの患者の方々が大へんお気の毒だけれど、逐次なくなっていかれるまでは、あの方々を手をとって引き出すことはとうていできない、こういうこともあらかじめ承知していただかなければならない。きのうはまた、地元の厚狭町では、近隣の町村代表者あるいは市町村の代表者たちがたくさん集まりまして、この埴生療養所の存続の期成同盟会が結成されまして、私も要請されてそこへ行って参りましたが、その地元並びにその周辺のこれに対する熱意というものは大したものです。もし当局がしゃにむにこれを閉鎖するということであるならば、これこそ当局が暴力だと言っておる。しかもだんだん調査して参りますと、一体厚生省はあそこを閉鎖するということについてどれだけの調査をしておるか。私は調査疎漏の点がたくさんあると思います。しかもこれは、こういうところで話しちゃ悪いけれども、お尋ねすると、調査は口頭で報告なされたということです。少くも国立の療養所一つ閉鎖するのを、これを調査報告が口頭でなされたとおっしゃったことを、こういうところできょう申し上げることは非常に遺憾である。そんなことはない。それじゃ調査書があろうから見せてもらいたいと言っても、ついに見せていただけなかった。また、病院へ行きまして閉鎖証明書があるかと言っても、言を左右にして見せてもらえない。こういうのは、何か自分たちでこそこそするような、少くも国立の療養所を閉鎖するという問題であるならば、堂々とやってみせればいいのに、報告書も、調査書も見せない、こういうことは、何か、あなた方は、なぜそういうことをされるか。どうか、この際これを閉鎖するということを一旦お取りやめ願って、一つ再調査をしてもらって、十分な再調査をして、そしてどうしても閉鎖しなければいかぬということであれば、それはまた考えも変ってこなければなりませんが、現在の建物は、非常に腐朽しておる、あるいは設備も悪いとは言いましても、そう大した金をかけぬでも埴生の療養所としての面目あるいは実力を発揮していくことはできると思います。それをあなた方が厚生年金病院を作るとか、国立病院を作るような何億という金をかける、そういう病院と比べれば、非常にこれはだめな病院だ、腐朽した病院と言われるけれどもあの土地柄にまかなっていくだけの病院ならばそう大した理想的なことを言われなくてもいいと思います。ことに療養所というようなものを大きな所に合併々々といっていくよりも、やはり経済規模とか、人口の密度あるいは交通、住居の問題等を勘案しますと、
やはりいなかにはいなからしいものが、離れても存在するということがいいわけで、ちょうど無医村の問題と同じように、無医村に大きなものを作ってもしようがない。だから山口県のあの地区には、あれくらいのものがあって、あれにやや手を入れていけば、これはお医者さんも来るし、ことに環境もいいから患者も集まってくる、こういうふうに考える。ぜひ私はこの際、一つ御相談いただいて十分な再調査をして、人の前に出せる調査をしていただきたい。あなた方は調査の結果をお見せにならぬ。それからまた、療養所一つ閉鎖するというのには、あなた方本省から一ぺんぐらい見に行かなければならない。だれが見に行っておりますか。どんな所か知っておる人がありますか。あるいは、われわれ委員会からでも委員を派遣して、この療養所をどうするかということをきめるくらいの慎重な態度をとらなければならない。いやしくも国立の施設を単なる口頭の報告でこれを取りやめるというようなことは、これは責任ある厚生省の当局としてやられるべきではない。御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/23
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024・小澤龍
○政府委員(小澤龍君) 御指摘のごとく、山陽荘は手術を主体とする療養所でございます。山陽荘の従来の経営方針は手術可能の患者を主として入れておるという傾向のあったことは否定できません。また、結核患者につきましては、いかに医学が進歩いたしましても、すべてが手術できるものじゃございません。従って、化学療法の患者は化学療法の患者、あるいは手術のできるような患者は手術のできるような患者、あるいは手術もできぬし、化学療法も及ばない患者、しかも重症の患者はそれぞれの県の療養所があった方がいいのじゃないかという御指摘はまことにごもっともであります。この問題につきまして、実は終戦直後、厚生省といたしまして結核対策を取り上げましたときに、結核療養所の効率的な運営という角度からそれぞれの性格の療養所を別々に作って、医者や看護婦の配置その他医療設備の整備等はそれに準拠してやればいいのじゃないかという考え方があったのでございますが、種々検討した結果、たとえば手術を盛んにやるような療養所につきましては、もうたくさんの医者がいなくても……。単に患者さんのお守りだけしかできかいのだという患者さんだけ集めたのでは結局有能な医者が得られないのじゃないか、考え方としては成り立つけれども、運営上非常に困難ができるのじゃないかというので、実は取りやめたというような事情もございます。今回、九州大学から埴生療養所が敬遠されたということは、お医者さんをせっかく派遣いたしましても、お医者さんの修業ということにはあまりプラスにならないという観点から、九州大学が私どもに断わって参つたのでございます。この意味合いにおきまして、やはり療養所はいろいろの性格の患者さんが入れられる複合した療養所にした方がいいのじゃないかということがただいま私どもが考えておる考え方でございます。それから施設の統廃合ということは御指摘のごとく、まことに重大な問題であります。これを単に人から聞いたぐらいのことでもって決定するというのは当然軽率のそしりを免れないのでございます。ただ、患者の数とか、職員の数とか、その他こまごましたものを定例的に報告を徴しております。しかしながら、地元の意向とか何とかいうものは、それは本省の職員がたまたま出張したときに土地の人と話し合う、また、当面の問題を中国医務出張所の職員が出張した場合にその意向を徴するということが目頭なり、あるいは文書なりで報告があるのでございますので、各療養所の実態、内容そのものは数字的立場で絶えずわれわれは文書による報告を受けておるのでございます。なお、私どもはこれを実施するに当りまして、単にこれで一方的に実施するという考え方はございません。出張所からさらにしばしば人を派遣いたしまして実情をなお精査いたさせます。それから本省から人を派遣して実情も十分調べ、できるだけ皆さん方に完全な御納得をいただきまして、これを障害のないような状態において実施するように進めたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/24
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025・木下友敬
○木下友敬君 私がこの際、特に一つお願いしておかなければならぬし、お考えをお聞きしておかなければならぬことは、現在新しく入院したいと言ってきた患者を拒否していることですね。これは閉所するという大きな目的があるからこれを拒否しておる。しかし、せっかく気の毒な人がここに入りたいと言ってきておるのです。山陽荘まで行くのに遠い、下関まで行くには遠い、家族の見舞いも得がたいというので、わざわざ来たものを連日これを拒否しておる。私はこれは人道上の問題であり、また、医療法から言っても診療を拒否するということはよろしくないことだと思う。私は、これはさっそく本省の命令で診療拒否はやめさしてもらいたい。これは、ぜひやってもらわないと、これは私は承知できません。診療を拒否して入院したい者を入院できないとおやりになったようであったら、私はこの問題はもっと重大な態勢をしいてあなた方に迫らなければならぬ、この点について明確に一つ御答弁を願っておきたい。これは大臣においても病院の施設が——訪ねて来た患者の入院を、ベットはあいているのに、看護婦の手もあるのに、医者も備わっているのに、これを拒否するということは私は絶対許せない。先に閉所がきまっているからといっても、まだ、六月末日ですよ、あなた方が目標とされておる六月末日、それを今から連日拒否されるというのは納得がいかない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/25
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026・小澤龍
○政府委員(小澤龍君) 新しい所長が赴任したとたんに入院を拒否せしむるような指示をしたことはございません。ただ、過般、この廃止の方針を決定いたしまして通知をした場合には、この廃止に伴う患者の移転の場合を考えまして、新しい入院患者をとらないようにという通知を、指示をいたしました。しかしながら、それをしも人道を無視してこれを行うということは、これはもってのほかだと思うのであります。患者さん一人々々につきまして少くとも診察を求められているなら、診察はしなければならないと思うのであります。それで、患者さんの一人々々の御都合によりまして、どうしても埴生でなければ困るというような患者は、当然人道上の立場から埴生に入れるべきであり、また、患者さんの立場から山陽荘なり下関なりの他の施設でも十分であるという人ならば、埴生に入れないでそちらの方にごあっせん申しあげると、こういう措置をとらしめておるのでありまして、何でもかんでも埴生療養所に入るのがだれでもいけないというのではございません。患者さんのお一人、お一人の御都合によって患者さんのためになるようにこれを処置させられるような考え方であります。この点につきまして、よく現地に誤解があるといけませんので、私の方から重ねてただいまの解釈を連絡いたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/26
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027・木下友敬
○木下友敬君 あらためて現地にそのことについて、そういうむちゃをしないように御指示があるということでございますから、その点は省略いたします。ぜひはっきりしてもらいたい。
最後に、私はあなた方の結核に対する考え方が間違っていると思う。今日、結核という病気は非常に治療法が進歩しまして、死亡率は確かに減っております。しかし、御承知の通り、患者数は減っていない。そして、入院しなければならない患者は、まだたくさんあるわけなんです。ですから、今の方針でいけば、ベッド数は減らさないと言われますけれども、たとえば医者が得がたいというような口実のもとに、療養所というものをだんだん、だんだん圧縮していこうというような気配が見える。これは早過ぎる。そうであれば将来はそういうことを考えなければいかぬでしょう。たとえば医者が得がたいというのも、光が見えるお医者さんが、今まで結核希業者が非常に多かったのが、ほかの病気の方に、老人病の研究の方に回られたことが、これは先を見てのことだろうと思う。それもわかるのです。しかし、一つの国として結核という病気を考えた場合に、今から結核というものはもうなおる病気だというような考えのもとに病床の増築をやめたり、あるいはあるものを縮小するという方向に向っていくとかいうような考えは、これはよくない。また、先ほど申しましたように、今日では無医村ということがやかましく言われているのに、いなかにあるところの療養所が小さいからというのでやめていくというようなことも、これは結核対策としてはもう一ぺん考え直してみにゃいかない問題だと思う。こういうことを総合いたしまして私は大臣に御希望申しておきますが、特にこの埴生の問題については、決して広島の出張所長にまかせないで、一つ本省から責任のある局長さんなり、あるいは療養所の課長さんなりを派遣してもらってどうしても大臣をしてこれを閉鎖しなければならぬという決心を大臣に与えるようなものであれば、それは私ども言うことをやめましょう。だから、はっきりした調査をとるために責任のある人を派遣してもらいたい、こういうふうに思いますが、大臣、一つお約束が願えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/27
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028・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) ただいま木下委員のお話をずっと聞いておりまして、いろいろわれわれの方でも調査の点等において不十分な点があったようにも見受けられますので、事が国立療養所を廃止するか、あるいは存続するかという問題は、これは非常に大きな問題である。木下委員の御指摘の通りだと思いますので、私どもといたしまして、適当な時期に適当な人を派遣いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/28
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029・木下友敬
○木下友敬君 大臣の御答弁、私は非常に満足に思うのですよ。ずっと厚生省におられた方は、もう惰性で、あるいは大まかな見当で、これはやめよう、これは存続するというようなことをもう今までほとんどきめたようにしておられたのが、厚生省に今度おいでになって、新しい目でごらんになれば、なるほどこれは調査不十分であるというような、あるいはこの方針はやらなければならぬというのがかえってはっきりおわかりになったことと思うのですよ。そういう意味で、あらためて十分調査しようというようなお言葉をいただいたことは、私非常に感謝いたしますから、どうぞ一つよろしくお願いいたします。私の質問終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/29
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030・久保等
○委員長(久保等君) 速記をとめて。
[速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/30
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031・久保等
○委員長(久保等君) 速記を起して。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/31
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032・片岡文重
○片岡文重君 時間がないのではなはだ遺憾ですが、保健所の運営について、ということは結局公衆衛生の問題であります。この点について、私は大臣の御所見をこの際明確にいたしておきたかったのですが、時間がありませんので、次の機会までに一つ十分に御研究をいただいて、将来の方策を自信を持って御説明できるように研究していただきたい、これをきょう御要望申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/32
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033・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 健康保険のことですが、いいですね、一言これに関連して。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/33
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034・久保等
○委員長(久保等君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/34
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035・久保等
○委員長(久保等君) 速記を起して。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/35
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036・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 政府管掌の健康保険で、最近家族が五人とか三人とかあると、二人までは入れけ、やるけれども、あとの二人はいかぬとか何とかいう、そういう制限をしているというから、厚生省、私はどうなのかと聞きたい。これは宿題にしておきますから、健康保険組合で家族の多いやつだけはれろと、保険経済の面から。こういうことがどこの法律に書いてあるかと僕は思うのだが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/36
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037・森本潔
○政府委員(森本潔君) ただいまの御質問でございますが、そういうことはないと実は存じておりますが、なお、詳細、省に帰りまして調べましてからお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/37
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038・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 保険局長さん、この次でよろしいから。京都でそういうことで制限をしているという例がたくさんあるそうだ。だから、これはよく調べて今度返事をしてもらいたい。今のちょうど木下さんの御質問を聞いていて、私は次に言おうと思ったけれども、ちょうど同じような問題だから、一言だけ。ではやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/38
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039・片岡文重
○片岡文重君 私はこの際、保健所の問題で少しお伺いしたいのですが、政府御出席はどなたですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/39
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040・久保等
○委員長(久保等君) 尾村公衆衛生局長が見えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/40
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041・片岡文重
○片岡文重君 それではお伺いいたしますが、最近、公衆衛生局の名において配られました、これは最近でもないのですけれども、まあ私どもいただいた資料としては一番新しいと思うのですが、この保健所の現状とその対策についてという。パンフレットがあるのですが、これを拝見すると、国庫負担の対象職員というものは、昭和二十九年度において二万五千六百七人、三十年度には二万二千八百三十八人、三十一年度には二万一千二百七十四人、三十二年度が二万八百十四人、三十三年度になると実に二万七百十四人ということで、大幅に二十九年度から比べますと五千人以上の職員が実に五分の一、二十九年度の五分の一以上の職員が減っていることになる。これはこの保健所等に勤務することのできる資格がある者がこのように減少しておるのかどうかということを見ると——これは厚生省から出されました厚生白書です。これも十分局長は御承知になっておられると思いますが、お医者さんでも、それから保健婦でも、助産婦でも、看護婦でも、現に勤務している職員の数から見れば数倍の多きに達しているわけです、有資格者が。にもかかわらず、この保健所に勤務しようとする者が少いということは一体どこに原因があるだろうか。ちょっとやそっとの原因ではこんなに大幅には私は減ってこないと思うのです。で、資格者を見ても、たとえば保健婦のごときは、今、保健所におられる保健婦の数は万一千八百二十一人だという。ところが、有資格者は四万四千六百二十六人、この厚生白書に書いてある。助産婦も五万一千七、百人の現職員に対して有資格者は十三万六千人、看護婦は十四万五千に対して三十四万四千人からの有資格者がいるわけです。これだけの人たちがおって、なおかつ保健所に勤務しようとされない。これは何か非常に大きな私は原因があると思う。で、保健所対策については十分努力をしているような御答弁がいつの委員会でもなされるのですけれども、この実績から見れば、一体どういうところに、この保健所の対策に努力されてこられたのか。従来の具体的な方策と、それから現在どういう方法でこの保健所の衰微しつつある状態を回復されようとされるのか。また、将来は再びこういう事態に陥らないようにするためにどういうお考えを持っておられるのか。まさにこれは厚生省の大きな政策の一つですから、大臣とも十分御相談の上、答弁をされるべきものと思われますけれども、大臣はまだかわったばかりであって、おそらくこの方策は、局長が主役を演じてこの方策を立てられるのでしょうから、一つ、御所見というよりも抱負のほどをこの際まずお伺いをいたしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/41
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042・尾村偉久
○政府委員(尾村偉久君) 私の方で、ただいまお読み上げの、これは発行しておりながら今この内容につきまして趣旨上の訂正を申し上げるのは申し訳ないのですが、今のお読み上げの二十九年二万五千六百七人が三十三年三月、二万七百十四人という工合に約五千名も減少したようになっておりますが、これは実はこのうちの大部分が現在交付税の対象になっておりまして、国庫補助の対象になっておらない環境衛生の監視員、食品衛生監視員というものを保健所の方から、といいますより、府県からの集計のときにこれを一切保健所の専任職員というような形で従来報告されておりまして、それの当時の数がかようなふうに含まれて多かったのでございますので、これは実質的には国庫補助の対象でございませんので、また、現にその当時国庫補助の対象として補助はいたしておりません。ただ、この保健所の統計をとる場合に、保健所がいかにも充実したごとく、いわゆる専任職員が充実したごとく報告されるものでございますので、これを逐次まず専任で環境衛生、食品衛生をやっている者ははずすということをやり、さらに併任になっておる者、これを年々正確に整理をさして参りまして、現在ではかくのごとく減っておりますが、これはもう前年ともそれが整理できた結果がこういうふうに落ちついたわけでございます。従いまして、これは実質的には交付税対象職員としての資格が現に残っておりまして、それが保健所に実際には配分されておりまして、人間はそこにいる。国庫補助ではありませんが、監視業務をやっておる、こういう形でございますので、数字の上はさようなことで、実質的なマイナスではございません。ただ、それにいたしましても、二万七百十四人という現員は、保健所法が制定されましたとき、各保健所でこのくらいが必要であるということでA、B、Cに分けまして予定いたしました定員を積算したのは大体三万になるのでございます。それと比べますと、所要定員に対して確かに三分の二というようなことで、非常に保健所の職員の充足率は悪い。こういうことでございます。これはやはり保健所の業務が、全国の地区を必ず保健所の地区に分けまして衛生行政の第一線の中核としてやるためには非常にこれは不便をいたしておるわけであります。ただこの中で一番困っておりますのが、いつも御指摘を受けております医師とそれから保健婦というような技術職員でございまして、その他の事務職員等は、これはむしろ定員を組みますればいつでも充足ができるという状況でございますが、これは保健所の性格からむやみにふやす必要はないので、これはかような形でむしろ押えておるわけでございます。医師が半数に満たないというようなことが、一番これが難点でございます。で、三年前から修学資金の制度をしきまして現在約三百人弱の者に修学資金を貸与いたしまして、卒業したらぜひ保健所に行ってもらう、こういう形でこれも採用に努めておりまして、今卒業生が出だしまして、出た者は幸いなことにほとんど大部分がそれぞれ保健所に赴任をいたしておりますが、これを年々続けてためていきますと幾分改善をいたしますが、それにいたしましても、この五〇%程度の欠員というのをこれだけで埋めることは困難でございますので、やはり大学なりあるいは他にもうすでに医師としておる者も募集しなきゃならぬということでございまして、これは待遇の問題、それから指定の都会地に派遣しての教育の問題とか授業というような、これは総合的にいたさぬといかぬのでございまして、それを個々にできるものからぜひ実現していくということにいたしておりまして、三十四年には結核対策と兼ね合いまして結核の特別対策をやる。四分の一に該当する保健所には従来の単価よりも約二割高い医師を雇い得る国庫補助の単価を始めて見ております。しかし、これは全部に及ぼさなければならぬわけであります。三十五年以降を期しておるわけでございます。研究設備の方も、従来よりも少しこれもふえた、こういう形でございましてまだまだ不足でございますが、やはり第一は、この保健所の医師の獲得、それから保健婦、それにつきましては保健婦の獲得に総合的ないろいろな対策を一つずつ、あるいはまあ一挙に望ましいのでございますが、一挙でなくともこれは次々と満たしていくという、かようなことによりまして、まず指導能力をつけるのを先決と、かように考えております。
そのほかに、それが全部満ちるまでといいましても、保健所の業務というものは日々これは非常にあるわけでございますので、今までの保健所の業務をもう少し整備をいたしまして、全国一律に、都会の保健所も農村部の保健所も一応同じような組織機構を準則できめましてやっておりますが、人口を分けますと四千五百万人と四千五百万の農村部と都市にある保健所業務というものは非常に異なっております。農村では主として環境衛生といいましても蚊とかハエの方が問題でございまして、下水道とかあるいは飲食関係というようなことは少いのでございます。むしろ農村の農民の健康保持に必要なような業務に当るような組織にいたす、能力者もさように合わす。都会では都会生活者のためのこれは業務がだいぶん違います。こういうふうにまず編成がえをしようというようなことから始めまして、保健所の内容をできるだけ重点的に実態に合ったようにしてこのさしあたり足らない職員をフルに使っていきたい、かようなことを並行して今考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/42
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043・片岡文重
○片岡文重君 国庫負担の対象職員が今私の読み上げた数字であって、実質的には減員しておらないというふうなお話でしたが、あなたのところで出されました資料を見ても、「なお環境衛生監視員、食品衛生監視員、環境衛生指導員、そ族昆虫駆除員の職員費は、国庫負担の対象とはなっておらず、地方交付税交付金の対象となっているが、その充足状況もまた極めて悪い。」ということで、この国庫負担の対象職員でないということをあげてありますから、局長が御注意いただくまでもなく、今私が最初に申し上げたのは、これは国庫負担の職員である。しかもこれが減っておって、あわせてこの地方交付税の対象になっておる、職員も充足率が悪いということになる、従って、総体的にはみなこれは悪いのだということになってしまうでしょう。それを一体どうして——これを充足するについてはもちろん頭を痛めておられるでしょう——これはきょうこのごろの問題ではないでしょうから痛めておられるでしょうけれども、その割には大へん失礼だけれども、予算の面にもあまり出てきませんし、それから数字の上にもなるほど改善をされたわいという結果もお見受けできない。そこでこの際、何とか一つ挽回をしなければという方策がもうそろそろ私は確立されてもいいのではないか、こう思うわけです。この点については、先ほどわが党の木下委員からだいぶ坂田厚生大臣に期待をかけられたようですけれども、これはまあ皆さんに申し上げてもせんないことだと思うのですが、大体私はこの岸内閣のやり方はけしからぬと思います。これは社会保障関係に対する、社会保障制度に関し、また、公衆衛生に対してさらに言えば厚生行政一般に対してはなはだ軽視しておるものです。今回の内閣改造のやり方は、少くとも自他ともに厚生行政の権威だと自認しておるところの橋本さんを、全くのしろうとだとみずから称しておられる文教に回して、われこそは文教の専門家だと自負しておられる者をわざわざ厚生行政へ持ってきて、そうしてどういう構想をもっておかえになったか知らぬけれども、おやりになる。このやり方は文教行政もないがしろにしておるし、厚生行政を軽視するもはなはだしいものだと言わなければならない。従って、これはその任命された大臣各諸公に罪があるわけではありますまいけれども、やっぱりそれではということでまあ一つ憤然と席を立ってくれるくらいの私は熱がほしかったんだが、そういうことは望んでもむだですから、私はこの際、大臣もかわられたことでありますから、たとえ岸内閣はどうあろうとも、公衆衛生局長として、この大臣のかわったところを機会として、あるいは青年大臣に一つその意欲を持たせられる意味からも、この際、この機会に一つ乾坤一擲の方策を立ててほしいと私は要望してやまない。医師、歯科医師、薬剤師等についてはなるほどおっしゃられるような措置が一昨年ですかとられました。本委員会においてその法案の審議がなされたのですから、これは私どもも記憶にまだ新たなところです。けれども、ここに出されておる厚生省の資料を見れば、なお医師は定員に対して四八%、保健婦等は若干上回っておりますけれども六六%です。しかも先ほど申し上げましたように、有資格者は数倍する人々がおるのですから、これらの人々はさぞかし——全部とは言いません、これは会社に勤めておる者もおるでしょうし、いろいろな機関におられるでしょうから全部とは言いませんけれども、市井陋巷におって脾肉の嘆をかこっておられる人が多数おられるに違いない。従って迎えるに報をもってすれば迎えることのできないことは断じてないはずです。必ずあるはずです。そこで私お尋ねしたいのだが、一体どのような待遇を保健所の職員にされておるのか、これを一つお互いに反省をしてみる必要があるのじゃないか。特に問題は僻陬の地でありましょう。都市の勤務者については特別手当等もあって、相当の足らずながらも諸手当が考えられておる。ところが今日の生活経済の面から言いますれば、むしろ僻遠の地の方が物価も東京とは変りませんし、子弟の教育等も考えればこれは当然世帯も二つにしなければならず、また、自分の居住地等からすれば、交通費等もバスなどによれば、これは回数券というもので定期券ではないのですね、その交通費も相当高くつくということで、生活費が高い。逆に諸手当はつかない。こういう状況に赴かれておるのですから、僻遠の地における保健所等の職員に対しては十分な手当をしなければ、今伝えられておるような安い給料ではとてもこれは望む方が無理だと思う。しかし、これは政府のやることであり、法律であるからということで、この諸給与を依然として押えていかれるおつもりなのか。あるいはこれは地方の問題であるからということで、手が出ないというお考えであるのか。少くとも保健所の経費については、申し上げるまでもなく、地方交付税の対象になっておるのであるし、さればといって再建団体といえどもこれの運営拡張等については別に規制の中に入っておるわけでもない。従って、もしやろうとすれば、かなり自由にこれは貧困な地方団体といえどもやれるはずです。従って、厚生省としてもっと熱を持ち、そうしてこの職員を招聘できるような具体的な方策を立て、その方策よろしきを得るならば私はもっと充足されるものだ、こう考える。この点について局長はどのようにお考えになっておられるか、御所見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/43
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044・尾村偉久
○政府委員(尾村偉久君) 保健所の職員の充員策でございますが、これはただいまの御指摘のように、国もそれから当該の地方公共団体両方が熱を入れませんとできない問題でございまして、ただいま第一に手当いわゆる報酬の問題でございますが、これはやはり一番関係がございますが、会、大体の県が国家公務員の給与を大体見習うということになっておりますので、現在、国立病院、療養所等の公務員の中での医師の待遇が、やはり非常に民間と比べて工合口悪いというのと同じ問題が本俸においてはあるわけであります。ただ保健所につきましては、幸いに、現在少いのでございますが、研究手当というのを、これは国庫でも補助を組みまして、現在のところこれはA、B、Cによって若干差はございますが、保健所の規模によって違いますが、平均いたしまして年に一人頭三万円、月に二千五百円程度の単価になりますが、これを俸給のほかに組んでおります。しかしながら、これに基いて県が組んでおりますのは実際にはこれをはるかに上回りまして、多い県では月に一万円、所長については一万円という県が若干ございます。概して五千円程度というものを研究手当として組みまして、従って国の補助よりは上回っておるわけでございます。それでさえやはりとりにくいということがございます。従いましてわれわれとしては、国庫補助はこれは平均額でとりまして、一挙にこの俸給額に近いようなものを手当で、研究という名目でございますが、取りにくいので、今のたとえば北海道とか僻遠の方は平均よりこれをはるかに上回るように指導はいたしております。従いまして、地方の当局がそのつもりになりますと、年々これもふやしておる傾向にございます。それでさえ現在のような五〇%ということで、医師だけにつきましてはとてもこの報酬、手当だけでは何としても片づかぬ問題がございます。そうかといいまして、若い者に会社等が莫大ないろいろな形で出しておるものを上回って、公共団体なり国が最初から表向きとるということは、これはなかなか不可能に近いものでございます。従って、若い医師を充員するためには、修学生の制度をできるだけ拡充していくことと、それからもう一つは、やはり指導を受けながら研究意欲を満たすということが非常に必要でありまして、これにはいろいろな研究をいじれるような設備を公けに検査室等にもっと充実していく。ことに最近でございますと、ビールスを少しいじる。これはまた現に地方でも若干スクリーニング程度は必要な事態が各地に起って参りましたので、それらの新しいものを若干いじるので、何かスクリーニングいたしますれば、地元の大学等に直ちに連絡して正規にやるということになりますと、これは非常に研究意欲がわく。あるいは放射能関係の灰の降下量を各地でつかまえる。これも各地でやっておりますが、こういうようなことで研究意欲を満たすということがもう一つである。さらに赴任した場合に、下宿等の一間に自分の費用でいるということになりますると、これはすぐ退屈して、環境が悪いものですからいやになって逃げてしまう。そこでやはり公舎というものを設置してもらうということで、これも若干ずつ国でも地方でも作っておるわけでございますが、これをもっと促進するというような総合対策を、今度の三十四年ではいろいろな関係でそれが延びましたが、これもわれわれ自身もこれではとても大きくは飛躍せぬということは十分心得ておりますので、この形を急速に年次的に伸ばしていきたい。これはやはり地方庁の意欲もかき立てませんといけない。といいますのは、所要定員は形の上では三万になっておりながら、地方の条例できめる場合には、三分の二は地方庁の負担になるのでございます、交付税はいくといいましても。従いまして、地方庁で押えてしまう、十分な定員条例をとらないということになりまして、充員ができないというのが一つのやはり盲点になっておりますので、やはり地方に保健所の重要性をもっと考えていただきまして所要定員に近いものを各県でとる。それさえとられまして、定員が入れば、これは国庫補助の方は必ずいけるのでございますから、欠員が多いために予算上もあまり差のあるものをあらかじめ用意するわけにいかぬ。こういうような堂々めぐりになっておるような現状でございますので、さような形で強化をはかっていきたい。かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/44
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045・片岡文重
○片岡文重君 御説明の限りではよくわかるのですが、たとえば一例としてあげられました所長一人一万円ないし五千円というような研究費を出される。これは所長さん等の高級幹部になったらなるほどそうでしょうが、保健婦とか、助産婦、看護婦等になったら、おそらくそれはそうでないでしょう。問題となるのは、将来のことを考えてみれば、たとえば修学資金等も、これは医師とか、歯科医師とか、薬剤師でしょう。保健婦、助産婦にはないはずです。問題になっているのは、所長さんも大事お医者さんも大事です。けれども、それの補助的な、しかも重要な役割を果す保健婦、助産婦等の定員も、これもまたきわめて大事だと思うのですが、それらに対する諸手当というものはおそらくそうは出ていないでしょう。
それから、大体採用するときには、国家公務員並みかあるいはその地方地方における地方公務員の基準に従って採用はするでしょう。従って、初任給だけはそう差がない。ところが地方公務員になる、あるいは国家公務員になった諸君は、半年なり一年でどんどん昇給していきます。保健所勤務の者は何年たっても昇給しないのです。結局同期に卒業して三、四年たってみるとえらい違いが出てきてしまっておる。こういうことが、もうその差のないということの方がきわめてまれであって、大部分はそういう状態におかれているわけです。きわめて言ったように昇給が少いものですから、とてもその給料だけで地方へ行って、一人で下宿をしてなどということの余裕はありません。それは逃げ出したくなるのは、さびしさとかいうような生活環境もありましょうけれども、むしろ経済的破綻に追い込まれるということの方が私は大きな問題だと思うのです。従って、こういう点については、なるほどそれは保健所法によって国の負担率も、地方の負担率もきまっておるわけです。けれども、きまっておるだけに、それだけ国としては慫慂もしやすいのです。督促もしやすいのです。少くとも予定された予算が使いきれないというようなことでは、私は失礼ながらまだ督促不十分ではないか。もっと地方の意欲をかきたてて、厚生省の組んだ予算が大幅に不足を来たすような事態にまで急速にやっぱり持っていっていただかなければいかぬと私は思いますので、ぜひそのような御努力を一つ委員会答弁だけでなしに具体的に立てて、こういう方策を立てたがどうだという一つ御自慢を近い将来に私は拝聴したいと思う。
そこでさらにお尋ねしたいのだが、今保健婦それから助産婦、看護婦等の充足状況を見ると、厚生省から出された資料でさえ総体的に見て六六%だと、そうすると、これは総体的に見ての話ですから百パーセントあるところもあるでしょうが、この六六%をはるかに下回るところも相当あると思わなければならない。そういうところに勤めておる保健婦なり助産婦等が、これは有夫の場合、妊娠等の場合、産前産後の休暇を、これは御承知のように、労働基準法によって必ず与えなければならないということになっておるわけです。で、この産前産後の場合に、この半数内外しか定足数がおらないで、ふだんから相当労働過重になっておるのに、しかもこれが五十人、百人というものの中から人数が抜けていくなら、これは割り当てられる労働もその割ではないでしょうけれども、たとえばBクラスをとってみても、これは全職員が四十七人ですか、定数は。そうすると、その中に占める保健婦、助産婦というものはわずかに数名にしかすぎない。五、六人でしよう。その中から、かりに六人あったとして五人しかおらない、三人しかおらない、その場合に一人休んだ、こういった場合に、少くとも五〇%の労働負担をオーバーするわけです。二人の者が事実これを人が得られないからいうことで、そのまま見送っておるというようなことでは、はなはだ私は残念だと思う。これはまさしく人道上の問題にも発展してくると思うのです。はなはだしいのになると、休んだその百に出産をしたという例もあるようです。つまりぎりぎりまで休めないという状態、これは母性保護の上からいいましてもゆゆしい問題であると思う。ところが、これはやはり五分の二が地方負担であるからということで、十分に予算措置もとれない。それから代替要員を見るということも今まではあまりやっておられないのです。幸いにして国立病院、療養所等については、三十三年度の予算からだいぶめんどうを見ておられるようですが、三十四年度もだいぶ考慮をしていただいたようですが、これとても庁費の中における人夫賃とか屎尿処理費とかあるいは除草費等の名目で、代替の費用としては見ておられたい。しかし、これは実質的にとにかくできるだけの予算措置を講じておるということを言明しておられます。一方、ところが公立の病院、療養所並びに特に保健所等に至っては全然といっていいくらいに厚生省としての措置がとれないのじゃないか、こういう点について将来もこのまま放置されたのではゆゆしい問題だと思う。で、現実に有資格者がおらないというのならともかくとして、これは厚生省から出されました資料を拝見しても、数倍の有資格者がおるのですから、これは採用の方法を考えられれば、必ず代替要員は得られると私は確信する。従って、そういう方策をこの際研究をしていただきたいのですが、これについて何らかのやはりよりどころが私はなければいかぬのではないか、厚生省として何らかの措置を講ずるか、法律をもって定めるか、あるいは省令をもって定めるか。何か聞くところによれば、同じ厚生省であっても、国立病院等については代替要員は、必ず申請あり次第に代替要員をとれということで、書面通達をしておられるやに聞いております。保健所等についても、これは病院、療養所以上にやはり手を尽してもらわなければ私はならぬと思うのですが、今日そういう点について何らか具体的な措置がとられておるのかどうか、その点を一つお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/45
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046・尾村偉久
○政府委員(尾村偉久君) 県立保健所の保健婦の、助産婦、看護婦も含めますが、これの産前産後の代替要員につきましては、従来、文書では明確な指示をいたしたことはございませんが、実際には、毎年の予算上、人件費としての積算基礎と、それから年間を通じての現員というものにまだ幅がある。ことしはこちらももう千人ほどよけいとれるという見込みで、大蔵省に無理を言いまして、補充率というものを増加をかけましてとるのでありますが、しかし、現実にはその差がなかなか縮まらないという現状でございますので、人件費の補助申請の場合の特別承認という形で、病気とかあるいは産前産後というようなときには、各県別の申請のときに相談がありますれば、これは今まで一切押えない、できるだけ見てやるという方針をとっておる。といいますのが、そういうような意味で、代替要員がとれますれば、お産が終ったからその代替要員をまた離してしまうのでなくて、この充員率の悪いところにせっかく来てくれたのだから、これ幸いと本物に採用すると一番問題が解決するのでありますから、これを押えるどころでないのです。従って、われわれとしては、そのチャンスに代替としてといろ考えでなしに、いい種があったという形で、新採用というくらいに考えておるのです、これは資格者でありさえすれば。従いまして、それが実際に行われませんのは、一つにはなかなかそういうものがないのでございまして、地方の保健所に簡単に二月だけ臨時に来てもらうという有資格者というのはなかなか得られないのでございます。得るとすればいわゆる家政婦的な頭数をそろえる、これでは保健所の業務としては全然役に立たない。そういうような事務職員の代行補充ということはこれは極力避けております。さようなつもりでございますので、これはむしろそういう有資格者がおりさえすれば、われわれの方では全部受けさせたい、こういうことでございます。
ただ、今の御指摘のように、県によりまして県の費用の問題から、国では補助するつもりでおりましても、抑える点があるといけないので、三十四年度は交付基準を通達する場合に、これを文書である程度指示をしよう、こういうつもりで今いたしております。これは五月になりますと、これを出しますが、新予算の成立後。こういうふうに考えて、なお万全を期したい、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/46
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047・片岡文重
○片岡文重君 有資格者がおりさえすれば、いつでも採用したいとおっしゃいますが、さっきも言う通り、あなたのところで作られたこの資料でさえ、有資格者が何倍かおるわけです。ところが、実際に臨時人夫で採用される場合は、これは人件費ではないようですね。庁費等の物件費でやっておられる。しかも物件費で採用される人夫賃の一日の日給はどのくらいかといえば、二百八十五円から三百円せいぜいでしょう、これで、たとえば東京の人が松戸なり、あるいは大宮なりに採用されたといってみたところで、往復してくれば向うに行って昼飯も食えないという状態になるでしょう。まずこの人夫賃の、言葉は悪いですが、ニコヨンの諸君と変らない、もしくはそれ以下の賃金でこれをやらそうと、しかもその採用される期間がわずかに五十日か六十日、早い者は三十日でしょう、それから四十日。これで、ないないと騒がれるのは、これは採用しないための口実だと言われても私はやむを得ぬと思うのです。従って、これは法をごまかすということは決して賛成するものではありません。これは法は厳格に守らなければならぬし、国家の定められた問題については十分に守らなければならぬ、しかし、現実に世相を見るということは、生きた政治ですから必要でしょう。今日二百円や三百円で、少くとも高校を卒業してから相当年数の収穫を得、経験を経た者を、少くともニコヨンの諸君と同じ程度のもの、あるいはそれ以下の給料で採用しようというところにむしろ非常識な措置があるのではないか、もしこれを適当な、少くとも今日の時勢から見て、まずまずと思われるような初任給で採用できるならば、おそらく私は喜んで来るだろうと思う、それに少し研究費等が加わる、さらに将来木採用ざれるということになったら、これは場合によっては志願者が多過ぎて困りますよ、そういう措置がとれないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/47
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048・尾村偉久
○政府委員(尾村偉久君) これは国の場合は、直轄でございますといろいろの制限があると思いますが、今の府県でございますと、これは府県の条例で今の賃金等はそんな厳重なものではなくて、われわれの方はそういうような定数が確保されておれば、補助金は先ほどから申し上げますように、国から出す道はこれは用意がございますので、むしろ御指摘のように県——を各県ごとに事情は違うと思いますが、県をわれわれもう少し指導をいたしまして、給与の条例ないしそういう臨時職員をとる場合の単価というものを高くとらすようにとっても、国としては困らぬのでございます。これはむしろ充員ざれるならばそれにこしたことはないのですから、さようにいたすのが一番大事かと思いますが、これは十分文書も必要だと私は思っておりますので、この新年度のいろいろな示達につきましては、できるだけ県が高い保健婦の充足率ができますように、今のような産前産後を含めまして指導をいたしたい。ただ先ほどから申し上げますように、われわれとしてはほんとうに有資格者が、県がある程度の給与改善等をいたしましてきたものならば、むしろ臨時でなくて、あとをのがさぬで、そのままあとに落ちつけてもらいたいというのが一番われわれの希望でございまして、さように指導いたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/48
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049・片岡文重
○片岡文重君 これは地方の問題だからということを再三おっしゃられますけれども、少くとも保健所法によって、法律によって地方にこういうものを設けろということを命じてあるのですから、当然これの指導監督の責任は厚生省におありになるはずです。従って、新規採用等の定員補充については、これは十分積極的に私は督促もし、忠告もするむしろ義務がある、そのためにとらるべき措置については、厚生省としてお考えになられる限りの方策を指示し、実施せしめるだけのやはりこれまた義務があると私ども思います。従って、これは地方庁の条例にのみ依存するのではなくて、場合によればその条例は、なるほど地方議会によって制定されるでしょうけれども、少くとも適正な条例の制定がなされるような行政機関に対しての働きかけは、私は当然なされてしかるべきである、そういう点について十分な御処置をいただきたいと思うのですが、今日この公衆術中局において把握しておられますところの保健所の問題については、大体今までの質疑に対する御答弁でおよそわかって参り、ましたが、公立の病院とか、療養所等について医務局長にお尋ねするわけですが、職員の充足状況等について把握しておられまするならば、この際一つ御説明を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/49
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050・小澤龍
○政府委員(小澤龍君) 公立全体についてさような統計資料はただいま……。帰って調べて御返事申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/50
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051・片岡文重
○片岡文重君 それでは一応この問題についての本日の質問は以上で終りたいと思いますが、重ねて両局長に強く要望申し上げておきますことは、さなきだに要員不足で困っております状態であるのですから、これらの人々に一そうの労働の負担がかからないように、特に産前産後の休暇、あるいは生理休暇等、基準法に定められた休暇等の請求については、十分な配慮がなされると同時に、この休暇を請求をする職員諸君が、気がねなしにできるような措置を積極的におとり下さるように、強く、要望申し上げまして、きょうの質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/51
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052・小澤龍
○政府委員(小澤龍君) ただいま御要望の筋の中で、医療法で規定しておりますところの職員でございますが、たとえば医師とか看護婦、これは全国の私立病院にわたって調べてございます。ただ定員が何ぼであって、それに対する従業員の数の割合はどれくらいであるかというもとになる定員は調べていないのでございます。現状はわかりますので、その資料は差し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/52
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053・勝俣稔
○勝俣稔君 保健所の予算の問題について私から関連事項として申し上げたいと思いますことは、保健所の補助の率が少い、これを毎年多くしてくれろという要望を各種団体からお話がございまするが、大蔵当局としては、平衡交付金の中へそれを入れたいということを毎年言うてきておる。もしこれが入った場合においては、おそらく厚生省の方の要求はもちろんのこと、片岡さんの御要望にも沿わないようなことに、知事さんの考えでなりはしないかというように私どもは常々考えておるのでございます。大蔵当局としては、私は交付金のないところは交付金の中へ入れてしまうと出さないでいい、たとえてみれば、大阪であるとか、東京であるとかというところへは出さないでいいのだ、こういう考えから発足しておるのじゃなかろうかと私は思うのでございますが、そのために日本全国の保健所というものが、財政的な非常な圧迫を受けてきて、そうして機能が麻痺するというようなことが考えられるので、私ども在職当時にもそれには極力、反対をしておったのですが、現在もそうであろうと私は思います。これは当委員会でも、その点は十分にお考えいただいてその線に私は進んでもらいたい、特に片岡先生にはそのことをお願いいたしたいというように私は考えておるのです。実際交付金の方に回されるということになれば、保健所というものはもう縮小以外にはないのではなかろうか、こういうことを私は心配しておるものでございますから、ちょっとつけ加えて、私の心配のところだけを申し上げて、今後厚生省側といたしましても、その点については委員会の意向も十分くんでいただきたいというように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/53
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054・尾村偉久
○政府委員(尾村偉久君) ただいま勝俣委員の仰せのところが一番大事な点でございまして、今後府県と国との、今のおっしゃる通り、従来のほかの種目の補助金が交付になった場合の実績等にかんがみましても、いわんや、かように人件費、いわゆる設置要員を中心とした補助金が交付金になったならば、おそらくこれはもう県によりましては壊滅してしまうのではないか、衛生当局がほんとうに必要とする保健所の人員確保等はまずまずほとんどだめになってしまうのではないかというような県さえ、今すでにそうなったらばという心配の県がある程度わかっておる状態でございます。従いましてこれはむしろ補助率を引き上げてでも強化しなければならぬというふうに存じておるわけでございまして、交付金になれば保健所行政は多分これはもう非常に工合が悪くなる、こういうことでございますので、われわれといたしましても、将来はこの補助率も上げるという方向にぜひ希望しておる状態でございましてさような形で府県が強化する大事な形となっておりますので、この点は交付税になりませんように、委員会にもいろいろと御協力をお願いしたい、かように存じておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/54
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055・久保等
○委員長(久保等君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/55
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056・久保等
○委員長(久保等君) 速記を始めて。本問題に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
[「異議なし」と呼ぶ者あり]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/56
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057・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時四十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X01219590303/57
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