1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年三月二十五日(水曜日)
午後二時三十二分開会
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出席者は左の通り。
委員長 久保 等君
理事
勝俣 稔君
柴田 栄君
木下 友敬君
委員
有馬 英二君
紅露 みつ君
斎藤 昇君
松岡 平市君
片岡 文重君
小柳 勇君
坂本 昭君
藤田藤太郎君
光村 甚助君
田村 文吉君
国務大臣
厚 生 大 臣 坂田 道太君
政府委員
厚生大臣官房審
議官 小山進次郎君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
参考人
衆議院議員 八木 一男君
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本日の会議に付した案件
○公聴会開会に関する件
○委員派遣承認要求の件
○結核医療法案(坂本昭君外九名発
議)
○国民年金法案(内閣提出、衆議院送
付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/0
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001・久保等
○委員長(久保等君) これより社会労働委員会を開きます。
この際、公聴会の開会承認要求に関する件をお諮りいたします。国民年金法案(閣法第一二三号)は、一般的関心及び目的を有する重要案件でありますので、利害関係者及び学識経験者等から意見を聞いて審査の参考に資するため、公聴会を開きたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/1
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002・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。公聴会の日時、問題、並びに公述人の数、及び選定その他の手続等は委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/2
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003・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認め、国民年金法案について公聴会開会承認要求書を議長に提出することにいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/3
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004・久保等
○委員長(久保等君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。国民年金法案(閣法第一二三号)審査上の参考に資するため、地方の実情を視察し、本案に対する意見等を聴取するため、委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/4
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005・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。よって、委員派遣承認要求書を議長あて提出することに決定いたしました。
なお、派遣地、派遣委員の数及び人選、日時、調査硬目並びに手続等は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/5
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006・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。よって、委員長は理事と協議の上、進めることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/6
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007・久保等
○委員長(久保等君) 結核医療法案(参第九号)を議題といたします。提案理由の説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/7
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008・坂本昭
○坂本昭君 ただいま議題となりました結核医療法案の提案理由を御説明申し上げます。
結核がわが国の国民病といわれるほどに蔓延し、その害は単に各個人にとどまらず、社会全般に及んでおり、ひいては国民経済にまで悪影響を与えておりますことは、すでに御承知の通りであります。今これを数字的に見ますならば、結核による死亡者は、昭和十八年に十七万人をこえたのが、昭和三十一年には四万四千人、昭和三十二年には四万五千人、昭和三十三年には三万六千人と著しく減少はしているものの、現在における医療結核患者数は依然として、三百四万人の多数に上っており、結核の国民経済生活に及ぼす直接間接の損失は、推計年間約三千億をこす巨額に達し、真にはかり知れないものがあると存ずる次第であります。
特に最近におきましては、膨大なる結核の医療費負担のため、健康保険その他の社会保険は、その健全なる運営が著しく阻害せられ、生活保護費の半分は結核医療に消費せられ、わが国における医療社会保障制度確立のためには結核対策が基本であることがいよいよ明白になってきているのであります。
結核の予防及び医療のために現在結核予防法を中核とし結核対策が推進せられ、相当な成果を上げておりますが、結核対策のうちでも最も重要な部分を占める結核医療の観点から現在の結核対策を顧みますとき、それはなお不十分であるといわざるを得ないと考えるのであります。結核予防法におきましては、適正なる医療の普及及び結核患者の医療費負担の軽減のため、都道府県は、一定範囲の医療に要する費用の二分の一を負担することができることとしてありますが、これだけでは現在の窮迫せる地方財政の実情のもとでは、十分なる効果を期待し得ないと考えるのであります。
従いまして、結核の問題をこの際抜本的に解決いたしますためには、国の全責任において結核の全医療を行う以外には適切なる方途は存在し得ないと信ずるのであります。昭和三十一年度の資料によりほぼ明かになっておりますように、国民の結核総医療費は、六百数十億円でありまして、国は、すでに結核対策費、生活保護費、社会保険費等を通じてほぼ半額に及ぶ三百数十億円を結核に対して負担しているのであります。本法律案はこのような状況にかんがみ国の全責任において、結核の全医療を行うことによって、結核患者に対する医療の普及及び徹底をはかり、もって結核の急速かつ徹底的な減少を期そうとするものであります。
次に、本法律案の内容の概要を御説明申し上げます。
まず第一に、国は、国の全責任において、一医療を要する結核患者に対し、必要なすべての医療の給付を行うことを明確に規定いたしております。すなわち、貧富のいかんを問わず、全結核患者が必要な医療の給付を国から受けることができるものとしております。このことは、現行の結核予防法と比較して画期的意義を有するものと考えます。しかして、その一医療の給付は、指定医療機関に委託してこれを行うものとしております。また、その行います医療の範囲は、現在の結核予防法におけるがごとく一定の範囲に限定されることがなく、入院中の食事及び対症療法に至るまでおよそ結核の医療のすべてにわたっております。また、結核の医療の給付を受ける手続といたしましては、受給者の便宜を考慮して、現行結核予防法におけるごとく、事前に都道府県知事の決定を受ける必要がなく、医療を必要とする場合において、直ちに指定医療機関においてその給付を受け得るものとしております。また、国の、医療の給付を適正ならしめるため、各保健所に結核診査協議会を置き、医療を要する結核患者であるかどうかの認定を行わせることといたしております。
第二に、国がその責任において結核の医療を行うことに伴いまして、健康保険法その他社会保険各法に規定する保険者または共済組合は、結核の医療については、給付をなすことを要しないものといたしております。この措置によりまして健康保康その他の社会保険の健全なる運営が期待し得るものと考えます。また、結核の医療については、生活保護法の規定による医療扶助は、これを行わず、すべて本法の適用を受けるものといたしております。
なお、結核療養所の設置及び拡張の勧告及び結核療養所の設置、拡張及び運営に要する費用の補助につきましては、現行の結核予防法通り、これを行うものといたしております。
以上が、本法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
何とぞ御審議の上、すみやかに可決せられんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/8
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009・久保等
○委員長(久保等君) 本案に対する質疑は次回以降にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/9
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010・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/10
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011・久保等
○委員長(久保等君) 次に、国民年金法案(閣法第一二三号)を議題といたします。御質疑を願います。なお本日は、政府関係者のほか、八木衆議院議員にも御出席を願い、参考意見をお聞かせ願うことになっておりまするから、順次御質疑をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/11
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012・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は、今度の政府の年金法案に対して質問をいたしいと思います。
今度政府がお出しになりました年金の案を見てみますと、一つの面からいきまして、どうもわれわれは国民年金をやるのだという国民への訴えと内容を見てみますと、この年金そのものが、たとえば額におきましても、それから今後積み立てる年金の制度の中からくる最終的な額におきましても、これがほんとうに今日世界で行われている年金制度としての問題とあわせ見まするときに、非常にかけ離れていると思うのであります。で、本来、今、近代国家のコースとして各国が行わなければならぬことは、やはり一つの面では国民がみんなが楽しめる生活をしていごう、その方法の中には完全雇用、そして生活水準を上げるという施策の問題もございましょう。一面から見ますると、社会保障そのものを、制度を確立して、たとえば非常に困った生活をしておられる方々、それからまた、年寄りで働けなくなった方々はその近代国家の中で生活を見て、人生を全う1国の制度の仕組みの中で人生を全うしてあげていくというのが、今日だんだんと移り変っていく世相ではなかろうか、そういうところに各国が努力をしているのじゃなかろうか、その社会保障の基本になるのは、何といっても私は医療制度と、それから年金制度だと思います。昨年厚生省がお出しになった厚生白書の結論を見てみますと、私は非常に大胆に、今の貧富の差、拡大されていくボーダー・ライン層が千百十三万人もおる、これが減少するどころか拡大の傾向にある、これにはどうしても社会保障の柱である医療制度と年金制度というものを、よいものを作り上げない限りその解消する道はないというような結語を出しておられる、私は非常にいいことをお書きになったと心の中では思っているわけであります。そういうものから私は、今度の国民年金を施行しようというお考えが出てきたと推察をするわけでございます。そうなると、この国民年金というものがその貧富の差がはなはだしくなっていく、その柱が医療制度と年金制度だ、その医療制度の問題ももっともっとよくしなければならぬ段階にきていますけれども、お出しになった年金制度を見てみると、私はもう少し血が通っていないような気がするわけです。世間では一つの面では、これは防貧の対策でない、救貧の今まで流れてきた結局慈善や恩恵によって、社会保障制度を組み立てていくという、こういう考え方から抜け切っていないのだ、そういう思想のもとに、社会保障というものがほんとうに今日の国際的な関係から見て、そういうものでよいのかどうかという議論や批判がたくさんあるところだと私自身はそういう工合に考えております。ですから、私はきょうは質問の一番最初に、外国の年金制度がどういう工合にしかれているかということをぜひわれわれもこの法案審議のために知りたいと思います。そういう意味において、われわれが今審議している政府の出しておられるものと対比してそして考えてみたい、だから外国のおもな国でけっこうでございますから、ぜひ一つ、この今行われている制度の問題、それからその制度がどういう歴史をもってできてきたか、こういうものを一つ御説明を願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/12
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013・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 外国の制度についていろいろ研究をすることは非常に必要でございまして、これについては私どももいろいろやっておるわけでございますが、一口にこれを申し上げるというのはなかなかむずかしい問題でございますので、後刻資料をもちまして、おもな国の年金制度について、たとえば対象がどうなっているか、支給開始年令がどうなっているか、金額がどういうふうになっているかというような、おもな事項をまとめたものを差し上げるということにさしていただきたいと思います。なお、個々の国の事例につきましては、特にお尋ねがありますれば、私どもが承知している限りお答えをさしていただくということにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/13
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014・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 わかりました。だいぶ前にもらった資料だと思うのですけれども、こういう資料を出しておられますね。こういう資料を今お持ちじゃないですか。これはおもな国としてイギリス、アメリカ、フランス、ニュージーランド、スエーデン、西ドイツですか、これだけと、日本との法案作成の段階において、外国の方は変らない。日本の方はだいぶ変っている。こういう資料が出ている。で、これについてはどうですか。御説明を願えませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/14
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015・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 手もとに持ち合せておりませんので、たとえば先生の方から、イギリスの、これはどうだというようなふうに引き出していただければ、ここですぐ申し上げられると思いますので、そういうふうにさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/15
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016・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私はその資料を見まして、たとえばイギリスの例をとりますと、八千七百六十九円から一万二千四十六円、アメリカの例を見ますと、一万八百円から三万九千六十三円、フランスの例を見ますと、一万一千三百四十三円、こういう工合に、最低が大体八十円、上は一万円から三万円というのが、今日行われている年金の額ではないかと私は思うわけでございます。ところが、私の聞きたいのは、この額のところだけ見るのではなしに、こういう年金制度というのはどういう沿革の中で生まれてきたかということが聞きたいわけです。これではそういう条項がないわけであります。で、非常に残念なわけでございます。だから、今御存じの程度のフランスの、ここに書いてありますけれども、フランスの例を一つ、フランスとイギリスの例をちょっと、詳しいことは資料が出てからお聞きしますけれども、お聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/16
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017・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) 私もそう詳しく勉強したわけではございませんけれども、沿革等を考えた場合に、たとえばイギリスのビバリッジ案に織り込まれましたのは一九四五、六年ごろからだと思うわけでございますが、そのもとになるのはむしろニュージーランドにおけるところの社会保障制度ではないかと思います。しかもそのニュージーランドにおきましては、一九五八年ごろから、少くともイギリス本国よりも先んじて出発をしている、そういうようなことを考えると、ニュージーランドは、第二次大戦以前すでにもう始まっている。大体しかし世界の傾向といたしましては、社会保障制度がほんとうの国民のものとなってきたのは、やはり第二次大戦以後ではないかというふうに思います。しかしながら、今、御指摘になりましたように、各国ともいろいろそれができましたについては、その国のいろいろの事情によって、その立て方におきましても違ってきているのではなかろうか。あるいは無拠出制をとっているところもあるし、あるいは拠出制をとっているところもある。あるいはスエーデンとか、あるいはフィンランドとか、ああいうような非常に人口の少い、そうして割合に国民生活水準の高い国におきましてどうだというような議論も出てきておるし、あるいはフランスにおきましては、御承知のように、人口問題というものが非常に大きな問題になってきておって、いわばその人口が、だんだす出生率が落ちていく、これでは国としてどうもよろしくない、何とかしてある程度出生を高めていかなければならないという事情によりまして、年金を組みます場合におきましては、家族手当というものに中心点を置いて年金が組まれているというように私は聞いております。また、イギリスにおきましては、ちょうど失業問題が非常にやかましいときでございまして、失業問題というような観点からこの年金が生まれているというようにも聞いておるわけでございます。あるいは日本の——私たちが御審議をわずらわしている問題については、むしろ日本の将来におけるところの老齢人口というものが非常に多くなってきている。こういうような観点からいたしまして、社会保障制度審議会の答申におきましても、どちらかというならば、むしろ老齢者に対する年金ということを中心として、つまりウエートを置いて御答申になっておるやに聞いているわけでございます。われわれが提出いたしておりまするところのこの法案におきましては、その社会保障制度審議会の気持も一面において聞きますと同時に、さればといいまして、母子家庭なりあるいは身体障害の方々というものも全然ウエートを置かないというわけには参りませんので、これとのバランスをとって実はやったというようなわけでございます。従いまして、その年令開始の問題、あるいは給付の額等につきましても、これはそれぞれの国におけるところの生活水準なり、あるいはまた、国民所得なりあるいは経済力なりというようなものからおのずからきまってくるものでございまして、この点の詳細につきましては小山審議官から御答弁を申し上げたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/17
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018・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) ただいま大臣がだいぶ詳しく申し上げたのでありますが、ややかいつまんで系統的に申し上げますと、御承知のように、世界の年金制度は、一八八三年のドイツの退職年金法から始まっているわけでございまして、歴史的に申しますならば、年金制度というのは、まず被用者に関する年金制度として発達して参ったわけでございます。これは現実の必要から見ましても、働ける時代はその人の労働によって生活をしていく、年を取るというと働いて所得を得るということができなくなりますので、それに対する何らかの対策が必要になってくるという現実的な必要から出て参ったわけでございます。そういうような事情からしてドイツに発達をいたしました年金制度が、ややその後。ころからイギリスの友愛組合の系統で発達をいたしましたところの共済組合的な制度に応用されて参りまして、ただいま大臣が申し上げたような工合に、イギリスで発展して参ったわけでございます。従って、今日までできておりまする年金の組み立てなり、ものの考え方というのは、非常に被用者的な要素が強いわけでございます。ニュージーランドに作られました年金制度は、その意味におきまして、そのときまで主として被用者にしかなかった年金制度からいわば脱皮いたしまして、国民全般というものを対象にするような年金制度に発達をしていき、それがイギリスにさらにいわば再輸入されまして、今日の年金制度の基いをなしたというようなことになっているわけでございます。
お尋ねのフランスの年金制度も、大体同じような足取りで、まず軍人とか、あるいは公務員とかに関する年金制度として発達をし、それがさらに一般の雇用労働者に広まるというような過程をたどっているわけでございます。そういうような事情がございますから、これまでの年金制度では、大体支給開始年令はおおむね五十五、六十、六十五というようなところに分布をしているわけでございますが、今日までのところでは、どちらかといいますと、支給開始年令は五十五ぐらいのところから逐次高まって参りまして、大十と大十五ぐらいの間におおむねおさまっている、こういうような状況になっております。
それから、年金の額の方から申しますと、これについては必ずしも一般的な基準があるわけではございませんけれども、まあ大体世界の重立った国の年金制度をながめでみますと、その国の年金の対象者になるべき人々の生活費の六割から少くとも大体四割ぐらいのところへおさまっているようなものが多いように見受けます。ただし、農民等の一般の自営業者等を対象にいたしました制度は、その数もあまり多くありませんし、それからそういうものには無拠出が多うございますので、必ずしもその範囲に入ってくるということはございませんけれども、まあおよそ老齢年金の額を被用者を中心として考える限りは、少くとも四割から六割ぐらいのところにおさまるようにというふうに考えるのが世界的な傾向であろうと思います。大体の事情はさようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/18
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019・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そうすると、たとえば、今日行なっているイギリスの一般の国民年金というのは、どれくらいの額で一般国民に施行されているのか、そういうことはおわかりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/19
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020・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) イギリスの年金制度の支給額でございますが、これは月に直しまして百七十四シリング程度になっております。円に直しますと、これはそのときの事情で若干違いますけれども、八千七百七十円程度ということになっておるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/20
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021・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 八千七百七十円程度。イギリスではこれは何年度でございますか、今実行しているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/21
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022・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) これは、ただいま実施しているものでございます。
なお、肝心なことを申し落しまして恐縮でございますが、これは年金を受けます人、当人と、妻と、それに子供一人があるというような前提での計算でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/22
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023・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 イギリスの年金の歴史を見ますと、相当私は古いと思います。それで、イギリスが今の保険制度をこしらえるときには、ちょうど五十年から七十年くらいの計画を立てて、段階的に非常に大きな国家の財政支出というものを予定して、最後の段階では全支給額の七割幾ら、八割近くも支給をする、こういう計画のもとに、年金は申すに及ばず、あらゆる制度というものが仕組まれてきていると、私はそう考えているわけでございます。これは社会保障全般に対する——医療制度からその他みな含むのでありますから、きょう審議しているのは年金でございますけれども、しかし、そういう工合にして国民の生活を上げていこう、また、そういう貧困な人はあらゆる総合的な制度の中で守っていこうという、その守っていこうという思想の中では、国民の自治生活、相互の連帯責任体制の中でそういう施策が貫かれていっている、そういうことだと私は理解をいたしております。そうなって参りますと、今日の段階でどれくらいになりますか、国家支出の問題を、ちょっと本年度あたりの問題を私は調べておりませんけれども、そういうやはり大きな将来への希望、それから国の仕組みをそうやっていこうという中から生まれてきて、今行われているのが八千七百七十円ですか、こういうものが各個人に支給をされている。こういうことになると、政府の今度の案を見ますと、まあ援護年金は七十才以上、それから拠出年金でございましても、三十年も三十五年も先に月三千五百円にしかならない。今日、日本は六大産業国といわれている一つでございます。それから今度の白書を見ましても、昭和九十一年の標準ベースを中心にして三十二年度生活水準が二一五%にふえた、こういう工合に書いております。しかし、それじゃ国の生産力、生産設備の問題はどれだけふえておるかというと、今は、今日の経済状態の中で不況という字のもとに、国民生活、国内における購買力の回転、この問題が一つでございましょう。それから貿易の問題もこれは議論すると長くなりますからいたしませんけれども、そういう問題からくる操業度合いというのは二八〇ですから、大体三〇〇%ぐらいが今日の生産性操業度合いだと、そういうことになってきますと、私は非常に経済政策の中にも問題が国としてはある、これは宝の持ちぐされてなしに、国民がその生産力においてよい生活を享受していく、そういう施策がなぜ生まれてこないかという、われわれは非常に追及したい問題だと思っております。しかし、いずれにいたしましても、そういう状態の中で、今直ちに支給する年金が千円、三十五年という相当長い。日本はもっともっと経済繁栄、経済成長をしなければならぬ途上にあるのに、三千五百円だと、こういう構想と世界の年金、社会保障制度をやっているというこの関係から見てみたら、私はどうも本腰を入れてこの社会保障制度をよりよいものにしていく、老後の生活、母子、身体障害者の生活を、守っていく年金をよくしていこうというかまえが私はあるようには思えない。実際問題として、それじゃこれで生活という問題に、今度は具体的な問題に入って参りますと、生活の援護、それは千円なら千円になるでございましょう。しかし、そういうことでよいのかということになると、今のボーダー・ライン層や、貧富の差が激しくなる、よりよく社会保障を貫く、その柱は年金制度と医療制度なんだ。厚生省が国民に訴えられていることと、この法案との関係を見てみると、私は非常に食い違いがあるのじゃないかという感じがするのです。だからこういう状態が進んでいったときに、ほんとうに社会保障によって国民の生活を守るとか、福祉国家にしていくという考え方というものがこの法案にどういう格好で貫かれておるのか、私はそれを一つお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/23
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024・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) 非常に大きなお尋ねでございますので、あるいは的確なお答えができないかと思いますが、しかしながら、やはり日本の国が今後、社会保障制度というものをほんとうに実のあるものにしていかなければならない、そうすることによって、現在厚生白書で示しておりますような百四十万世帯、千何百万人かのボーダー・ライン層というものを解消していきたい、この方向というものはこれはいかなる内閣ができ、いかなる党の内閣にとりましても考えていかなければならない方向だと思うわけでございます。しかも現実のそのような国民生活の実態というものは、厚生白露において示した通りの実態があるわけで、それを満たしていく場合においてすぐ直ちにこの一年で、あるいは二年でその解消が行われるということは、これはなかなかできがたいものである、これはよその国の例をとりましても、やはり五年なりあるいは十年なりの、制度を、それを運営するところの政府あるいは国民の側の御協力、こういったことによって、不断の努力によってこれらのものが充実されていく、こういうふうに考えるわけでございまして、とにかく社会保障というものの言葉がほんとうに実のあるものになって参りましたのは、先ほど御答弁を申し上げましたように、第二次大戦後のことであります。ことに日本のように、戦争という苦い経験をいたしまして、そうしていろいろの諸制度、経済力は破壊をされ、そうしてこの十年の歳月を経ました。この中において社会保障制度を強く打ち出さなければならない事情にあるということはまた御指摘の通りでございまするが、その年金の、つまり社会保障の一つの前提となるものはやはり医療保障であるし、国民皆保険を三十五年度において一応国民全体のものとしたいという考えのもとにおるということは、実はその辺にあるわけでございます。その第二の柱として年金法案の御審議をわずらわしておるわけでございますが、もしわれわれが希望するような理想的な案を立てます場合におきましても、やはり日本の現在の置かれておる経済状態、あるいはまた、その保険料を出し得る能力、あるいはまた、国民所得、あるいは財政経済というものに幾分でも制約を受け、ざるを得ないような立場も認めざるを得ないわけでございまして、大いなる望みとあるいは希望とを持ち得る法案というものを一方に掲げながら、それについてはやはりわれわれの努力によってこれを充実していくという方向でやらなければならぬという意味におきまして、たとえば支給額につきましても、あるいは援護年金における給付額につきましても、確かに御指摘の通りに満足すべきものであると私たちは考えておりません。従いまして、この制度が将来日本の経済が発展する過程において、これが充実されていくところの余地は残していかなければならない。従いまして、開始年令等につきましてもこれを引き下げるべき段階に逃したならば引き下げていこう、あるいはまた、障害等につきましても、今は外部障害に限られておりますけれども、これを内部障害にも及ぼしていこう、あるいは援護年金等についての各種の所得低減等がございまするけれども、これも漸次考えていきたい。しかも今日の日本の経済の将来を考えた場合においては、やはりこの諸要求、われわれの希望というものは満たし得るくらいの経済的な力というものは持っておるというふうに私たちは考えます。そういうような段階にきた場合において、この制度そのものがコンクリートのものであって、一歩も給付額というものは上げられない、あるいは内部障害等についてはいれない、あるいは所得低減等を緩和できないというものであっては、これはまことに申しわけないわけでございまして、それらのことを包含し得る——しかしながらただいまとしては、この地道な、そうして現実的な形として援護年金については千円、あるいは国民年金につきましては三千五百円という額を考えたわけでございまして、これで私たちは、将来においてこれは動かしがたきものであるというふうには考えておらないわけであります。しかしながら、今、それならばそれで十分なのか、それでもって憲法に保障されておるところの最低生活が保障できるのかというお尋ねでございますと、なかなかこれは満足なお答えが実はできないわけでございます。しかしながら、制度の立て方といたしましては、将来においてわれわれの努力次第ではそれらのものを包含していくことができるというような気持を持っておりますし、また、そういうことになっておると思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/24
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025・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 お話がありましたが、私は今の外国の例を引いてお尋ねしたのですけれども、今の日本の政府がおやりになろうとするこの法案は、額においても、私は国民に訴えられたこととは非常に大きな違いがあるんじゃないか。それから計画性においても、また、イギリスの例をとりますけれども、三八年、四八年、五八年という工合に、十年ごとに一つの構想を立ててやっていく。こういう社会保障制度の問題が持ち出されていく。それは裏に返してみると、私はやはり国の経済計画、経済成長の問題とうらはらだと思うのです。ですから、経済の成長を今このままの経済力で停頓していいというほどの意欲の人は、私は一人もないと思う。今の政府の、大蔵大臣の説明を開くと、実質六・二%の成長になっているんだということを言われる。そうしてまた一つの面からいくと、五カ年計画、十カ年計画という計画を立てて、そして経済の成長というものをもくろんでおられる。為政者として当然のことだと私は思う。だから、そういう工合に経済の成長の度合いでやって、そして今私の言ったようなことを考えるんだと言われるけれども、それではどこに、その計画性というものが法律案に出てきているか。私は非常に大事な問題だと思う。どこに出てきているか。今大臣がおっしゃいましたいろいろな構想は、その時限時限において考えていくんだとおっしゃいましても、この法律案のどこにそのニュアンスが打ち出されているか。あなたは経済の成長に見合って社会保険年金というものは伸びていくんだと言うが、それでは法文のどこに盛り込まれているかということが、私には納得できない。そういうことから考えると、いろいろ批判が出てくるわけですから、そこら辺を一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/25
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026・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) まず、イギリスの年金制度について申し上げますけれども、これは結論の方から申し上げますと、先生がおっしゃるような工合に、将来を見通して大過なきを期していくということではなくして、むしろ結果から見ますというと、ある程度無計画な経過措置をやり過ぎまして、このままにしておきますならば、イギリスの年金制度は破綻するということで、これは与党野党を通じまして、いかにこれを解決するかということが現在問題になっております。これはすでに御承知のことでありますけれども、いち早く野党であります労働党は、一昨年、これに報酬比例制を取り入れることによりまして、イギリスの年金制度にもう一回弾力性と内容の充実を与えなければいけない、そうしないというと、伸びていく国民の生活の水準に追いつけないし、結果的にはイギリスにありますところの国民保険による退職年金制度以外の特殊年金制度と非常に差が生じてきまして、年金を受ける側でも二つの大きな格差が生まれていくということで、一つの貴重な提案をされたわけであります。同様な事情からいたしまして、昨年政府におきましても、白書を発表いたしまして、構想は、非常に労働党提案のものに根本の考え方は近いのでありますが、やはり報酬比例制を取り入れることによりまして、一面においては財政を健全化していく、他面においては内容を充実していく、こういうようなことに相なっておるわけでございます。
それから伸びていく生活水準の上昇にどういうふうに対応する規定を盛っているかという問題でございますが、これはおっしゃるように、年金制度としては絶えず考えていかなければならぬ問題でございますけれども、これを制度なりあるいは明文の形で表わしている例は私どもの承知しているところでは非常に少いようでございます。イギリスでは明文をもってそういうような規定を設けてはおりません。これはこういうような事情があるわけでございます。確かに、将来における生活水準の上昇を考えますというと、年金額がそれに応じて上っていくということは望ましいことでございまして、そのことだけを考えますならば、ある程度立法化する事項になりそうな気がするのでございますが、反面、必ずこれは保険料の増収を伴うわけでございます。五年くらいの範囲でありますならば、あるいはイギリスの昨年の政府の提案は十年くらいまでの間に二回という考えを入れた提案になっているようでございますが、そのくらいでありますならば、国民の納得さえ得られますならば、五年たったならば保険税を幾らに引き上げる、十年たったならば幾らに引き上げる、そういう前提で年金額だけはこういうふうにしておくということも実際問題としてあり得るわけでございますけれども、これが二十年、三十年ということになりますというと、計画としてなら別といたしまして、現実に権利、義務を発生する法律の規定として年金額は確実にこれだけ出す、そのかわり将来にわたって税はこれだけ上げるのだ、必ず取るのだぞということはなかなか組み合せがむずかしい、こういうような事情からいたしまして、多くの場合、やはり五年目ごとにそのときの実情に応じて調整を加えていく、こういう仕組みをとっておるわけでございます。今回の政府案におきましては、考え方は全く同様の考え方をとっておるわけでございます。生活水準の上昇に対応して弾力性を絶えず持たしていきたい。それにはあらかじめ将来の保険料の引き上げをも予見して、それに見合うような規定をしておくということにするわけにはいかぬ。従って、五年なり九年なりたちまして、そのときの事情からいたしまして、生活水準も上昇して年金額はもっと引き上げよう、また、それに対応して国ももちろん出すべきでありますが、被保険者なりあるいは一般国民もある程度負担がふえるということは当然のこととして受けていこう、こういうような考えがそこでまとまりますならば、そのときに調整を加えていく、こういうことが実際の問題としては今まで重立った国の年金の改訂の仕方として出て参っておるわけでございます。政府案の第四条の規定は、およそそういうような考え方をもとにした規定になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/26
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027・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私のお尋ねしたのは、生活の問題も一つの要素でございますけれども、経済成長と見合って社会保障を推進していくという、全体の責任のもとに推進をしていく。保険料とか保険税の調整ということも一つの問題でございましょうけれども、しかし、計画性ということは国の経済計画に応じて国がどれだけ社会保障を伸ばしていくかということに基本がなくてはならぬと私は思う。そこをお尋ねしておるわけです。
それからイギリスのお話しが今出ましたから、これは資料をもって説明していただきたいと思いますけれども、しかし、イギリスの生活水準に応じて今の十年々々という段階的なものでは云々という、そこに異見が出てきたというなら、今の年金の支給額そのものをベースにしてどれだけ今日のイギリスの国民の生活にマッチしようかというところに、今の比例配分ですか、何とおっしゃいましたか、比例保険金ですか、報酬比例ですかに応じて云々ということが出てきたけれども、やはり目的は——説明を聞かなければわかりませんが、国民の生活水準にこの状態ではマッチできるかできないかというところから議論が始まったと思っておるわけです。今の支給額を下げようというところから出てきておるものではないと思う。だから、そういう意味で、結局各国が競って努力しておるところは、やはり福祉国家や近代国家への努力の中でどう社会保障を伸ばし生活を守っていくかというところが私は基本だと思う。だから、そういう構想というものからくるなら、最大限今日の経済力の中で、そういう方々の生活を守っていくというところが出てこなければならぬと私は思うわけでございます。ちょうど今八木参考人が見えておりますから、いろいろと衆議院で論議をされた社会党案を出された八木参考人からそういう経済力とそれから社会保障推進、そういうものの関係において年金の構造というものはどう持つべきかという御意見がありましたから、一つお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/27
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028・八木一男
○参考人(八木一男君) 藤田委員の御質問にお答えをさせていただきたいと存じますが、それに先立ちまして、この年金の関係で私にいろいろ参考意見を聞く場を持っていただきました参議院の社会労働委員会にお礼を申し上げたいと思います。
藤田委員からお聞き下さいましたことの背景でございますので、少し藤田委員と坂田厚生大臣並びに小山審議官との間で先ほど応答なさった問題にも少し触れさせていただきたいと存じます。何と申しますか、年金額が少いということを藤田委員が御指摘になりまして、これは非常に私どもも同感で。ございまするが、政府案の方に第一条に、憲法の事例をあげまして、憲法の精神に従ってということが書いてあるわけでございまするが、どう考えても憲法の第二十五条の精神にございまする健康にして文化的な生活というものを保障する金額と、三千五百円というものはマッチいたさないと考えます。特に最高額が月三千五百円で、その完成するのが四十年後で、支給開始が四十五年後でございまするから、現在でも最高三千五百円、まん中辺で月二千円くらい、そのくらいのものが健康で文化的な生活を保障する金額とはどう考えても言えぬと思います。まん中辺の二千円というものは大体生活保護の限度に立ってなされた下着が一枚というような基準で計算される、そういうものが文化的な健康的な生活とはだれが何と言ってもできないと思います。しかもそれが四十五年後の目標であって、こんなことは、いかに政府側が弁明されましても、筋が通らないと私どもは考えております。それにつきまして藤田委員が御指摘になりましたように、政府の方がいろいろの経済の問題、国庫負担の問題、個人負担の問題、そういう問題で、まあこの程度しかできない、やむを得ないような御発言がございましたけれども、藤田委員の御指摘になるように、経済の成長その他を見はからつてこういう問題はきめるべきだと思うのです。というのは、特に根本の柱でございます拠出年金は将来の問題でございまするから、いろいろな負担も将来に大部分がかかっておりまするので、将来の見通しの上に立ってやるのが当りまえだと考えております。政府案のおもな参考にされましたのは社会保障制度審議会の年金に対する答申でございます。その審議会の三千五百円という答申を出しましたのは経済成長率をわざわざ一・五%に見まして、それを根底にしてこういうものを、三千五百円程度の答申をしたわけでございます。その点につきましては社会保障制度審議会は根本的に誤まりを犯しておると思います。その他の点については相当傾聴すべき意見がございまするけれども、これは社会保障制度審議会は社会保障の仕組み、組み立てについては相当の権威がありますけれども、経済成長率については権威をそう認め過ぎてはいけないと思うのです。政府の権威ある経済企画庁が六・五%の長期経済計画をしておられまして、藤田委員が言われましたように、最近計画は少し狂いますけれども、現在でも六・二というようなことを明らかに答弁しておいでになりますし、また、世の中が変りまして、自民党にかわる政党としての社会党が政権を握りました場合には、当然これ以上の経済拡大をはかることは藤田先生も私どもも決心をしておるわけでございまして、党の方針としてもきまっておるわけでございます。どんなに少しでも六%以上の経済伸張をすると見ていいんじゃないかと私どもは考えております。それなのに一・五というような答申をしたようなものをもととして政府案を作られた。政府が大事をとられるにしても、少くとも一・五じゃなくて、これは四くらいの計算で目標を立てられなければいけないと想います。それに対して政府の方は、あとから変えるからいい、あとから変えるからということをよく言われますけれども、政府案の内容は完全積み立て方式でございまするから、あとで変えることは非常に困難でございます。十年後に年金額を上げてもいいというふうに認識をせられましても、その後の国庫負担なりその後の保険料は、それでそのとき上げればそれで埋まりまするけれども、十年以前にさかのぼって三千五百円の目標を六千円にした場合には、さかのぼってそこで整えなきゃならぬ。被保険者から取らなければならないし、国庫負担で埋めなければならない。政府の組み立てだとそういうことになります。それでは困難だから、そのとき六千円にしようと考えても、それをまぜこぜにしてしまって、これは四千五百円でいいというようなことが必ず起る。見通されている経済の目標の中で安全度は見積ってもいいですけれども、最低できるという見積りのもとでこの計画を組まれるのが当然であろう。少くとも四%組まれなければならない。一・五が、社会保障審議会の答申であれば、四%であれば、少くともその答申の精神は、この間違いの点だけを修正いたしますると、月一万円くらいの見当に少くともなるべきである。それも非常に少な過ぎると私どもは考えております。制度審議会はしかもそういう精神がありましても、政府が非常に今まで審議会の勧告、答申を、十出せば一くらいしかしないという事態に立って、それで具体的に政府にやらせるために非常に弱い答申を出したのは、その経過から見ても明らかであります。でありますから、制度審議会の答申にあるからということで政府が御弁解になることは、ほんとうは筋が通らないと考えております。制度審議会のほんとうに拡充したいという意思、その基底になった間違って作った経済伸張率を修正をして、その立場に立って政府はほんとうに尊重して政府案を組まれなければならない。それを組んでおらないところは非常に遺憾だと思うわけであります。
それから第四条の規定で、生活事情の変更その他によって改訂するということを書いてあることを、今小山審議官から積極的ないい意味の方に言われました。きのうも坂本委員の御質問を拝聴しておったわけでありますが、非常に問題であろうと思います。生活水準が上ったら上げるという意味であればそれはそれでいい。一項目はっきり書かれて、年金額を上げるとかあるいは改善するとかいう文言が書かれるべきであると思いますし、物価変動に対するスライドという意味であれば、これは別の項ではっきり書かれないと、こういうふうに二つの重要問題をごちゃまぜに書かれると、物価が倍になって貨幣価値が半分になったときに年金額を倍にしなければならない要素と、それから経済が伸張して年金額がふえなければならない要素を同時に考えられて、物価変動に対する措置を十にしなければならないのを二ぐらいにごまかす、それから片っ方の前進しなければならない要素を十にしなければならないのを二ぐらいにごまかすということで、両方ごちゃまぜにして、これだけ上げたのだからいいじゃないかということを必ず仰せられると思うのですが、物価変動に対する措置と、今少いけれども、将来発展させると言われるなら、その点の措置もはっきり区別して書かれるべきであると私どもは考えておりますが、そのときの政府委員の御説明の中で、社会党の条文と比較して、ある意味では社会党よりもいいじゃないかと言われましたけれども、これは非常に当を得ていないと思うのであります。といいますのは、社会党の方は、標目はすでに三千円から一万一千二百五十円という目標を立てているのでありますから、生活水準に対する発展の要素は少くとも今の時点では九十九点ぐらいの点数の内容のいい案でありますから、その点は心配ない。物価変動に対しては生計費という言葉を使って、生活水準というあいまいもことごまかしたそういう卑怯な言葉は使っておりません。でありますから、物価変動に対しては生計費を変えるということをうたっておるのでありますが、その点では政府案といろいろ違うので、きのう政府案がある意味では言われましたけれども、不当に社会党を批判をされましたので、一言この場合に付言しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/28
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029・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そこで問題になってくるのは、今の第四条の問題、生活水準云々というところからくると思います。で、私は今問題にしたいのは、やはり経済成長率とそれから計画性の問題、社会保障推進という形の問題が非常に重要な、私は社会保障を進める年金の問題としては重要な課題だと思っておりますけれども、その問題についてはなかなか答弁が得られぬわけです。私は、やはり少くともそういうところに基本的な問題がおかれて、片一方では経済政策の発展をこいねがっている国民全般です。担当しているその行政府がそれを延ばしているということと見合って、この問題を考えていくということでなければ、私は年金の肝心の骨というものがなくなっていくのじゃないか、ただ要らぬことを言うなということになるかもわかりませんけれども、たとえば失業保険の問題もその通りでございます。失業保険が昨年五百六十四億ですか、ことし六百億という黒字が出たら、とたんに政府負担の三分の一を四分の一に下げて、個人に支給するのは前とは変らないのだという理屈で政府負担を減らしている、こういうことになりますと、この今の年金でもそういう理屈がたとえば将来つくとしたら、私は大へんなことだと思うのです。そんなら先ほど大臣や小山審議官がお答えになったお考えとは全く逆な方向に法律が勝手に一人歩きをして出る、それを、本来、今の大臣がお答えになったようなお気持でこの年金を作られても、法律はそれと離れて、勝手にその年金の年金経済だけに応じて炊いていく、対象が要するに国民生活を守るとか、老年とか母子、身体障害者を守るという本来の目的から離れて保険経済に終始していく、維持しているのじゃないか、こういう格好にいっては私は大へんだと思うのです。ですから、何といっても年金をお立てになって、私たちは額においてはこういうものではとても困ると思っております。それから将来の見通しもそうであります。今日の額においても困ると思っておりますけれども、困っていますけれども、なおその先へ、お答えになったような計画や見通しに応じてこの法律が進んでいくという、年金そのものが、進んでいくという計画がないということが非常に私は残念だと思うのであります。だから、単に四条の生活云々ということでなしに、もっと大胆に、この日本の社会保障を進めていくためには、経済の問題とあわせて計画を何年ごとなら何年ごとに立てるとか、そういう具体的な計画はないのでございますか、それを一つこれに関連してお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/29
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030・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 先ほど申し上げたことがあるいは言葉が足りなかったのだと思いますけれども、第四条で申し上げていることは、五年ごとにその問題を検討する、こういうことでございますので、その意味では絶えず五年ごとに先々のことを見通した見当をつける、必要な措置をつける、こういうことになるわけでございます。もう一つ今の問題に関連して、実は衆議院の御審議の際にいろいろ御検討願いました問題の一つに、一体政府提案の国民年金法案はフラット制をとっているけれども、将来ともそうする考えなのか、あるいはそうすることが正しいと思っているのかというような御検討があったのでございます。この際に政府側から御説明申し上げましたことは、私どもも将来の姿としては所得比例を考えたいと思っています。しかし、所得比例を取り入れますためには、いろいろむずかしい条件がございます。これは主として条件についてはいろいろの先生方から具体的なお尋ねがありまして、まあ大体両者ともおおむね条件としてにらむべきものとして一致いたしましたのは、現在市町村民税の所得割の賦課については、御承知の通りいろいろのやり方がございます。多くの場合は、市町村当局が市町村住民の所得をじかにつかまなくとも、いろいろな格好で税が課せられる、こういうことになっているわけでございますが、一面また地方財政の面からの要請として、やはり将来の望ましい姿としては、各市町村とも同じ仕組みでもって所得割をとっていくことが必要である。そのためには、市町村当局がじかに市町村住民の所得をとらえていくことが必要であるというような角度から、地方税の改正問題というのがここ三、四年来論議されております。なかなかむずかしい問題でございますので、にわかに実施できるということにはなっておりませんけれども、最近の情勢からいいますと、そういう論議があります場合には、大ていもう賛否両論同じぐらいになるという程度で、もう少したつならば、やがてそういう方向への踏み切りができようという期待を持っている人々がふえてきているわけでございます。もしそういうことが実現いたしますならば、国民年金におきましても、国民健康保険におきましても、所得に応じて妥当な税なりあるいは保険料をとるということができるわけであります。そういうふうになりました場合には、それに対応いたしまして、年金額もある程度所得比例の要素を取り入れていく、これはもしできますならば、生活水準のある程度の動きに対しては所得比例というものが、十分ではございませんけれども、ある種の役割はしていくのであります。五年ごとにこの所得比例の保険料のきめ方、年金額のきめ方を調節して参りますと、おそらく具体的にはその最高限を引き上げ、最低限を引き上げる、こういうような方向であろうと思いますけれども、そうすれば、生活水準の上昇に対してこの制度が比較的スムーズに調節をしていくことができる、こういうようなことがあり得るわけでありまして、実はこれはもう私ども立案者としてはしたくてしたくてしょうがないことなんでございますけれども、これをやるための条件は今申し上げたように非常にむずかしいことと、先ほど申し上げました昨年九月のイギリスの白書におきましても、イギリスのような歴史の古い国においても、先ほど申し上げました報酬比例は一般の被用者についてだけ行うことにいたしまして、自営業者につきましては特にこれは技術的に非常にむずかしいからということで、フラット制を維持することにしているわけでございます。その程度のむずかしさの問題であるということを考えますならば、私どもの現在の準備の状況でそこへ踏み切ることは、いかにも準備不足で条件の整備が足りない、こういうことで、できるならばこれを次の五年たった際の改訂のときには何とか盛り込んでいくように努めたい、こういう気持でいるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/30
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031・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 今私がお尋ねした第一の問題は、将来の計画性の問題なんです。五年ごとに調整するとおっしゃいますけれども、それは、ここに出てくる生活水準その他「著しい変動が生じた場合」ということは何を意味している、たとえばインフレ時または物価変動時というようなものが明確にこのその他の事情というところに入っているのかどうかということです。そういうことも私はやはり重要な問題の一つだと思うのです。
それから今のフラット制の問題をおっしゃいましたけれども、今の国民健康保険は均等割、所得割、資産割という、皆保険といわれて、三十五年までには全部実施される、国民健康保険には均等割五割、所得割三割、資産側二割、そういう格好にしているわけです。だから、今小山審議官がむずかしいとおっしゃって、イギリスがこうだとおっしゃったことと、国民健康保険と年金とは少し思想が違いますから、これが同じだとは言いませんけれども、そういう問題は大いに今後議論をする問題だと思います。だから、その問題の一点になりますとの、その他の事情というのは何を意味しているか、これを一つお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/31
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032・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) その他の出精という中に、先ほど先生がおっしゃいました物価価値の著しい変動というのは当然含まれると、そのことを意識してこれが規定されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/32
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033・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そうすると、きのう坂本君がここで質疑をしておったん、だが、郵便年金の問題が、今の物価価値にして四千何百億というのがほってきぼりにされている、これに何ら打つ手がないということが現実行われているわけですね、きのうの質疑の中から。大臣や小山さんもお開きになっていたと思う。そういうものが片一方にあるわけですね。片一方にあって、これは今言うように、物価の価値の変動はここに入るのだとおっしゃいますけれども、実際問題として、そういうことをおっしゃるなら、なぜ物価価値の変動がきたときにはスライドするならスライドすると法律にお響きにならなかったか。何かはかに意図があるのですか、それをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/33
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034・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 意図は全然ございません。ただ、法律の規定といたしまして——現実の問題としてインフレーションのようなことがありますことは、これはやはり、どうしても否定することのできないことではありますけれども、一応、制度を組み立てます場合においては、順調に経済が推移して、そういうようなものがないという表面の前提を匿いて規定する、これがやはり多くの場合、普通の例ではないかと思います。で、昨日も御引用願いましたけれども、単に物価の動きということだけを検討してみましたところ、イギリスとかアメリカというような、比較的順当な経済の発展をいたして参りました国の場合には、物価水準そのものはそうひどく動いていない。しかし、これは、動かないと見ることはもちろん誤まりでございまして、むしろ現在では経済の順調な発展というものは、まあ一種の微熱状態のもとにおいて起るというのが大体普通の考え方のようでございますから、生活水準はもちろん非常に上って、物価水準も微弱ながら上りぎみの状態を続けていく、これが一番望ましい経済の発展の姿だとされておりますから、そのことは当然起り得ると考えなくちゃいかぬと思います。しかし、いずれにしても、年金制度を企画する場合に第一に頭に置くべきことは、やはり生活水準の上昇ということに対応して、そのときに予想してきめた年金額というものがどういうふうな意味を持つものになっているかということを念頭に置かなくちゃいけない。しかし、あわせて物価価値の——物価水準の非常に激しい変動があるということも当然、特に日本の場合には考えておかなくちゃいかぬ、こういうようなことがありますので、それもあわせて含めると、まあこういうようなことでこのような表現にしたわけでございます。
それから、昨日の郵便年金との関係につきましては、これは昨日も大臣から申し上げましたように、一方は、国が経営はいたしておりますけれども、これは任意年金でございます。今度の国民年金は、国が経営しているだけではなく、国はこれを国民に強制するわけでありますGで、昨日、坂本先生が最初におっしゃったように、一体、共同連帯ということの具体的な意味は何かということで、二つおあげになったのですが、実はもう一つ、やはり強制適用ということが共同連帯ということの具体的な特徴の一つとして出てくるわけであります。強制適用ということは、共同連帯ということを前提にしなくてはどうしてもこれは正当化されないことなのであります。そういうふうにして、国はいわば、あるいは好まないかもしれないような人々——おれにはそんな年金は将来とも必要はないんだというふうに考えるような人々に対しても強制するのでありまするから、当然それは、今度反面の事柄といたしまして、将来において非常な物価変動等がありました場合には、当然、責任においてそれを解決していかなくちゃいかぬ、こういう関係に相なる、かように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/34
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035・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 だから、他意はないけれども書かなかったということになって、生活水準ということとの関連においては、物価価値の変動という問題も、その他の事情というところに入っておるということですね。そういうことならそれで理解ができますけれども、そんならなぜそういう工合にお直しにならないかということが言いたくなるわけですね。そうした方がより明確ですね。回りくどい説明をせられなくても私はいいと思う。まああらためてこの関係の問題についてはお聞きいたしたいと思います。
もう一つ私は聞きたいのですが、今度の年金は、今の何らかの制度のあるというものを省いて年金をおやりになる、こうなっておるわけですね。しかし、外国の歴史を見て、被用者年金——軍人ですか、そういうところから年金が出発してきて進んできたのだ。一般的な国民年金というところまでは歴史の経過の中からそういう工合に発展してきたのだ、これはそういう御説明がございました。しかし、政府が第一番に公的年金といわれますか、そういう年金がある中でその残ったところをとろうということになるわけです。だから、国民全体を対象にする社会保障制度という概念の中で年金制度という概念を貫いていくということになれば、私は九千万の国民おしなべて年金という一つの筋の通ったものが出てこなければ意義がないと思うのです。そういう点は、まずどういう工合にお考えになっておるか。今度の法律では公的年金をはずしておられる、その構想を聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/35
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036・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) 確かにこの御指摘の点につきましては、頭で考える場合においては国民全体にこの年金が及ぶというわけでございますが、これは頭の中で考える場合においては、既存のもの、既存の公的年金というものを一ぺん御破算にして、そうして全部の国民に及ぶというような形でやることが一つの方法かと思います。ただ私どもの立て方といたしましては、今度提出いたしました法案、しかもその年金の支給額あるいは支給資格条件等につきましては、将来は別といたしまして、現在の段階におきましては、今までございますところの公的年金の条件あるいは支給額等よりも実は低いわけでございます。そういうような関係で、われわれといたしましては、現在公的年金制度を有利に受けておられる方々までも強制にこの新年金に移しかえるということはどうかというような関係で、実は、全然今それらの年金の対象になっておらない中小企業の方であるとか、あるいはまた、零細企業の従業員の方であるとか、あるいはまた、農村の方々であるとかというようなことを対象として、むしろこの年金制度を組んだ。しかしながら、これらの問題については将来においてやはり、この現在ございますところの公的年金制度にもおのおのその沿革なり目的がございますけれども、しかしながら、いやしくも年金制度——国民年金制度というものを打ち立てる以上は、この公的年金という制度における通算の道はもちろんのこと、これからわれわれが打ち出しましたこの国民年金との通算の措置というものを考えていかなければいけない、こういうような考え方で進んだわけでございます。たとえばイギリスにおいては、私の聞くところによりますと、今御指摘になりましたように、一応御破算にして、そうして出発をしたというふうに聞いておりますし、フランスにおきましては、既存の年金制度というものを尊重しつつ、新たにこの農業者やあるいはその他の人たちを対象として、そうして通算の道等を考えて組んでいるというような事情にあるかと思うわけでございますが、やはりこの立て方等につきましては、いろいろ国の事情等によりやはり変ってくるのではなかろうかと思うわけでございまして、私どもといたしましては、やはり現在ある制度というものも幾分尊重しながら漸次改善をしていく、あるいは将来一本にまとめていくという、そういう漸進的な態度で臨んだわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/36
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037・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そういうことになりますと、この妻とか、除外任意規定がありますね。今、年金の恩恵を受けていない全国民に施行するためにこれをやるとおっしゃるなら、要するに奥さんその他おのずから拠出年金には年限の段階がある。十年までかけぬでおいて、十年分一ぺんにかけたらというようなものじゃないと思うのです、この政府の案を見ると。そうすると、奥さんその他もだんだん年が寄っていく。二十才からかけるんだけれども、任意規定ですからかけない人もある。この人がやはりお年寄りになったら、今の額はともかくといたしまして、一定の年限がきたときには年金を受けるのだが、その人は受けられないということになりますね。そうすると、そういう人の生活というものはどういう格好でそれでは保護するということになるのか、生活保護という点から一つ年金というものを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/37
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038・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) ただいま先生が御指摘になった問題が、実は今後どうきめるかという大きい問題になっているわけでございます。多少事情を申し上げますと、それについては現在二つの考え方がございます。一つの考え方は、現在の被用者年金における老齢給付なり、あるいは遺族給付の改善によってこれを処理していく。御承知の通り、現在の各種公的年金制度における配偶者の扱いは、二色あるわけでございます。恩給、国家公務員共済組合年金等におきましては、夫だけが年金受給者として老齢年金の場合は登場する、妻は片りんだに現わさない、こういうことになっております。これに対しまして、厚生年金の保険の老齢年金におきましては、夫が老齢年金をもらう際に、妻については加給金として、ちょうど扶養手当と同じような額をつけたものを受け取ると、こういうことになっているわけであります。この姿が、いずれにしてもそのままで、社会保障と申しますか、将来の年金のあるべき姿から見て適当でないということについては、おそらくそれほど異論はないと思いますが、この点についても、実は若干異論はあることはあるのであります。生産年令当時に働いて得ておった報酬の中には、妻子を養う報酬も入っていたんだから、それを基にして三分の一とかなんとかということできめた老齢年金の額の中には、いわば妻を養うもの、言いかえるならば妻の分というものも若干入っているはずだ、だからそれでいいんだという極端な議論もあることはありますけれども、まあ、いずれにしても、そのままでいいという考えはそう有力にはなり得ないと思います。それではどういうふうに処理するかということを考えます場合に、二つの考え方があるわけでありまして、イギリスの退職年金制度のように、夫の年金の際に、夫の分幾ら、妻の分幾とこういうようにして年金をきめると、こういう考え方が一つあるわけであります。これをもし日本の被用者年金系統の年金に適用するといたしまするならば、夫が老齢年金をもらいます場合に、妻の分幾らと、現在の加給金というような非常に中途半端になっているものがもっとはっきりした格好になって、額も大きくなる、こういう行き方が一つあるわけであります。もう一つの生き方は、そういうことはなかなかむずかしい、夫の職場の移動その他を考えてみると、妻は妻としてやはり独立に持てるようにしておいた方がよろしいと。日本の被用者年金の系統、夫の分幾ら、妻の分幾らというふうにするなんということは、理論としてはあり得たとしても、とても、実際問題としてそこにいけるはずのものではない。そうすると、結局理論倒れになるから、実際上の対案としては、妻は全部国民年金のような制度に直接入れて、そこで老齢保障をやっていく方がよろしい、こういう考え方もあるわけであります。この二つの考え方の長短は、実はそれぞれあるわけでありまして、私はどちらかというと、ここにおいでの八木先生もあとの立場をとっておられますので、むしろ自省する意味で前の立場の利点を申上げますというと、前の立場が非常にきれいに貫けますと、実は保険料なり保険税の負担において、被用者自身が負担するほかに、事業主も負担するということがそのまま適用されますから、妻のもらいます分の年金についても、結果的には事業主負担が一部反映していくと、こういう利点があるわけであります。従って、そういう角度から、被用者のためにはそちらの発展をとる方がいいじゃないかというような考え方を持っておる学者がかなりおるわけであります。そういうようなことで、この二つの考え方は、私どうも一がいにわれわれが今まで考えておったことがいいというふうに言い切ることは反省しなくちゃいかぬ。よく両者の考え方を検討して参りまして、いずれこれは社会保障制度審議会で最終的に結論を調整してもらうべき問題だと思いますが——十分に論議を尽した上で調整してもらうべき問題だと思いますが、その結論に従って、いずれにしても妻の任意加入という形は、そのときにはきれいに整理をつけていきたいと、かように考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/38
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039・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そこで、今政府のお出しになっているのは、一般国民の被用者とは離れたところでございますから、それで私は妻その他ということを論議しているわけでございます。そうすると、たとえば任意ということになりますね。それでは任意ということは、もっと深く言ってみれば、かける人もかけない人もできると、こういうことだと私は思うのです。そうすると、Aの人はかけている、Bの人はかけていない。強制適用の年金、国民おしなべて老齢になったら生活を守っていくということになると、非常に矛盾してきやしませんかね。私はそう思うのです。だから、さっきの遺族年金その他でまかなうという思想があるなら、たとえば今の公的年金は、または恩給ですか、これは本人の半額を妻がもらう、こういうシステムだと私は記憶いたしておる。それで、夫婦二人のところが、一人が死んで、半分もらって一人があと生活をする、こういう一つの額を目標にしておやりになるならともかくとして、妻の場合は遺族年金その他でまかなうという思想があるなら、なぜ任意にここに出てくるか。奥さんの方は任意でかけておられる。そうしたら、ある一人の男の人が、政府の案でいくと三千五百円もらう。その奥さんがかけておられる。この人も三千五百円もらえる。そうすると、そのだんなさんが死んで遺族年金というものどんな格好になるかと、そういうことになってきやしませんかね。遺族年金の思想で守っていくとおっしゃるなら、任意という格好なら、一人前かけている人より以上に奥さんという人はもらうということになりやしませんかね、四十五年後に。そういう思想の割り切り方はどういう工合に割り切っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/39
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040・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 私が途中で御説明申し上げるのを省略してしまったわけでありますが、先ほど申し上げたのは老齢給付における問題であります。ただいま先生が御指摘になった遺族給付につきましては、問題として私ども感じておりますのは、額の点よりも、むしろ現在の各種の公的年金における受給要件の方に問題を感じておるのでございます。一番ひどい例は困窮でございますが、本人が公務員になって、自分の老齢の際の恩給をもらうようになる期間勤めていないというと、それまでの間に途中で死んでしまうというと、これはもう遺族給付が全然出ない、こういう制度になっているわけでございます。最近にできて参ります制度は、この点が逐次改善されておりますけれども、十年程度の在職期間を要求しておるものが大部分でございます。ところがそれでは、十年にならないうちに不幸にして配偶者に死なれてしまったという場合には、これは残された妻及び子供というのは非常に困るわけでございます。これを何とか解決していかなくちゃいかぬ、解決する道としては、一つの道は、できるならば十年というような長い在職を要求しませんで、たとえばILOの条約等でも示しておりますような程度、三年程度に縮めてもらうということになりますならば、それでも非常にお気の毒な人は三年未満で夫に死に分れてしまうということはあり得ますけれども、それならば大体被用者年金の方で適用を受けている人々の遺族給付の問題は、実態としては大体解決がつくと、そういう方向の解決をとってもらうか、それがどうしてもそれぞれの年金制度の事情からしてできにくいということでありますならば、どうしても今度は被用者年金の適用を受けている人の配偶者は、この国民年金の強制適用者にいたしまして、そうしてこちらの方で母子年金を出していくか、いずれかの道で、とにかく穴だけはふさぐようにしなくちゃいかぬ、こういう問題を感じているわけでございますけれども、現在のところ、まだ先ほど申し上げましたような基本問題について、これから社会保障制度審議会で論議するような状況でございますので、そういう問題をある程度解決する方法といたしまして、任意適用という道を今側開いたという次第でございまして、いずれにしてもこういう道が終局的な解決でないことは、先生仰せの通りでございまして、先ほどの老齢給付の場合と同様に、この問題もいずれはもう少しすっきりした解決をしなければいかぬ、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/40
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041・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そういう問題を今論議をして参りますと、どうしても適用除外の問題が議議の対象になってくるわけですね。イギリスは一ぺん御破算にしてということのお話がありましたけれども、それじゃ今、共済年金とかその他御破算にできるかどうか。今享受している今の実体を下げることができるかというと、私は下げられないと思うのです。なかなか下げられない、また下げては困ると思います。そうすれば、どこで年金のレベルを合わしていこうか、将来の目標として、被用者年金と一般国民年金とのバランスをどこでとっていこうという計画がなければ、九千万国民に押しなべて年金制度をしいていこうという考え方は、私はやはり片手落ちになりはせぬかという気がいたします。だから、今の被用者年金の概念というのは、厚生年金あり、共済年金あり、恩給があるという格好ですから、その他にもたくさんありますけれども、だから思想としては、年金制度ということになれば被用者年金なら被用者年金、一般被用者でない国民年金なら年金という形の筋が大筋に立って日本の年金制度という、統合といいますか、一貫したそういう年金制度というものが生まれてこなければ、私は国の政策として、社会保障の柱としての年金の意義というものがだいぶ薄れてくるのじゃないか。今、率直に大臣は、額が低いからどうにもならなかったのだと言われた、これは率直な言葉だと私は思います。そういう率直な言葉、額が低いからどうにもならなかったと、気持の上においてはやはり年金の統一といいますか、一般九千万国民、被用者についてはどう、一般国民についてはどうという年金の思想があっても、額がどうにもならなかったという問題になって参りますと、さっきの一番最初の議論に戻ってくるわけですよ。何といっても、それほど年金というのは私は大事なものだと思う。だからやはり統一、統合発展していくという将来へのきざしというものが、私はどの制度を作るにしてもやはり努力をして、それがにじんでいなければ、年金制度の意義というものが私は非常に薄れていく、私はそう思うのです。この点についても八木議員の意見を一つ聞きたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/41
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042・八木一男
○参考人(八木一男君) 年金制度の今の被用者が抜けている点でございまするが、これは政府案の非常な欠陥だと私考えております。公的年金制度が非常に多いという政府側の御発言でございましたが、非常にたくさんございまするが、少くともその中の形態の違う恩給とか、それから公共企業体の年金であるとか、そういうものは、新しく入った人から、まとまったいわゆる被用者年金、労働者年金に入れるということでいいと思いますが、その根幹である厚生年金保険とのちゃんとした統合くらいは、当然考えられなければいけないと思うのです。それと同時に、統合が考えられないということには、制度がむずかしいから統合しないということのほかに、労働者の方の年金に対して、国民年金と比較して同じような措置をとるとしたならば、政府の金がたくさん要るから損だという概念がひそんでいるのではないかと思う。それがひそんでいなければ、当然厚生省に坂田厚生大臣あり、小山審議官がおりますから、まともな案くらいできるわけであります。金を出す気持がないから、それができないということになるわけです。それで厚生年金保険は改正案が用意されておりまするけれども、現在の標準は月三千六百円平均であります。二割増しの改正案でございまするから、それにしましても、四千円ちょっとこえたくらいであります。これが通りましてもそういうことになります。三千五百円という年金であって、それで国庫負担が一割五分でございます。この政府案の国民年金は、保険料に対する五割の国庫負担がございまするが、これは給付に対しましてなら三分の一になりまして、三割三分三厘強でございます。で、農漁村の人々に対して三割三分三厘の国庫負担をし、そうして労働者の、低賃金労働者に対して一割五分の国庫負担でいいというこの思想は、非常に間違った思想であろうと思います。何といいますか、先ほども藤田委員と政府委員との間の応酬にありましたように、被用者の年金が先に発足しましたのは、生産手段を持っておらない労働者が、そういう老齢に達するということになった場合に、ほかの店を持っている人や農地を持っている人みたいに収入をあげ得ないので、より年金の必要度が多いということが、そういう沿革も示しておりますし、藤田委員の御意見あるいは政府委員の御答弁中にも、はっきりそれが認められているわけでございます。でございますから、そういうふうに労働者の側が年金の必要度が多い。その必要度の多い労働者に対して、必要度のややそれより少いと見られるものに対する手当よりも半分くらいでほっておく、こういう間違ったやり方はないと思う。それをしかし合せようとしましたならば、方法は幾らもございます。たとえば、労働者年金の厚生年金保険のフラット分が二千円だ、それを三千五百円なら三千五百円に合せるということで完全通算する道もございますし、方法を考えれば、外履二重加入ということをやれば簡単にものは片づくわけであります。そこにただ、被用者の負担が逃げられないような措置をすればいいわけであります。そういうようなことは考えればすぐ小山さんみたいな頭のいい人だったら考えられると思うのでございますけれども、それを考えていないのは、労働者の一割五分を三割何分にしたならば大蔵省が言うことを聞かない、岸さんがそういうような決断は自分の貧乏追放の言に反してなさらないということで、そういうふうになったということであります。そういうことでありますから、これはもう断じていけないと思います。厚生年金保険が改正案が出されているのですから、そこに別な制度であっても三千六百円平均を二割増しではなしに、七千円か八千円ぐらいにすることがあれば、一割五分の国庫負担であっても政府案の国民年金の三千五百円に対しては、三割三分ぐらいになれば、バランスがとれますから、それはいいのですが、ところが、八千円ぐらいまで上げる御意図はない。それならば、三千七百円、あるいは三千六百円あるいは四十円にとどめておいても、国庫負担一割五分を別に三割前後に上げなければ、バランスがとれない。そういうようでほったらかされている点に非常にいけない点があると思うのです。通算調整の問題を言われましたけれども、通算調整の問題については、九月の四日にすでに社会保障制度審議会に政府から諮問をされまして学者連を初め私どもも三日間ほど徹夜にひとしい審議をしてそういうことを出しておる。出してちゃんと答申は出ている。それが、今度の法に盛っていない通算調整の方式は、政府の方ではじゅずつなぎ方式という名前で言われておりますが、制度審議会では凍結方式という名前で呼んでおりますが、同じものであります。そこで、いろいろの方式が論議されまして、持分移管方式と、二重加入方式の外履と内履と、今の凍結方式という、四つの方式が論議されたわけでございますが、最終的に凍結方式がよかろうというような答申が出されているのをまだ尊重してこの法案の中に入れておいでにならない。そういう準備は整っている。そういうことは二年後までに考えるということでは、非常に怠慢であろうかと思います。
それから、配偶者の問題でありますが、配偶者の問題につきましても、九月四日か七日ぐらいでしたかの答申の中に、少くとも妻の老齢給付について、国民年金の中においてでも被用者年金の給付の中においてでも、どちらでもいいけれども、妻の老齢給付について考えなければいけないという答申を出しておる。その考える時期は国民年金の発足と同時にしなければいけないという答申を出している。国民年金法はまだ発足いたしておりませんが、発走させるためのこの法案が出ておるわけです。当然それまでに国民年金法案に入れるか、あるいは、同時に出しておられる厚生年金の改正法案に入れなければ、妻の問題を答申通りやったとは言えないわけです。どちらの方法によるのがいいかということは、小山審議官の説明の通りであります。大勢上は一般国民年金に入れるのが当然だ。しかし、被用者年金に入れておけば、被用者負担によってカバーされるという利点がございます。しかし、カバーされる方は、当人の年金額を三千五百円ぐらいじゃなくて一万月ぐらいまで引き上げなければなりませんし、そちらの方で使用主の負担を吸収することは十分にまだこれから幅があるわけでございますから、そちらで考えてもいい。これは、どっちの方法でもいいわけでございますけれども、とにかく勤労者の配偶者が年取ったときに、だんなさんが年金がある、妻はない、年金をもらおうと思ったらだんなさんに死んでもらわなければもらえない、こういうことは、御婦人はだれも望んでいないわけであります。当然両方が老齢給付がもらえるようにならなければいけないと思うわけでございます。この点で、藤田先生や、ここにおられる先生方や、私どもが作りました社会党案は、完全に労働者を一本にして、一般国民年金と八万四千円の線で通算が完全にできるようにして、非常に完全にできておる。こういうような手本がありますから、政府が決心すれば、手本通りやれば、すぐできるわけでありまして、二、三日でできるわけであります。りっぱな手本を差し上げたわけでありますから、勇敢にやられなければいけない。あとは、結局、金を出す、一割五分と三割三分をならす、三割三分に一割五分を上げるというふうな決心さえつけばすぐできることであります。
それから特に通算調整で考えられなきゃならないことは、小山さんの言われましたように、途中脱退者が非常に不利になっていることであります。厚生年金では、二十年たたなければ結局年金がもらえない。それまでは脱退手当になる。脱退手当金になれば、自分の払った保険料にちょっと利息がついたくらいしかもらえない。使用主の払った分はもらえない。国庫負担の方はもちろんもらえない。そういうような途中転職しなければならないような不幸な人が、自分の分を仕合せな人に持っていかれてしまうという非常に重大な結果になります。これは、共済年金においても恩給においても、現実としては同じような形式である。これは、小山審議官がその点を心配しておられるのは非常に当を得ていると思うわけであります。当を得ている考え方を持っておらるる厚生大臣や厚生省の当局が、それを直すのに勇敢になられなければいけないと思う。これは即刻に直すために勇敢になられる必要があると私は考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/42
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043・坂本昭
○坂本昭君 八木さんにちょっと伺いたいんですけれども、今御説明の中で、厚生年金保険の今度の改正のことにも少し触れられましたですね。その中で、フラット部分の二万四千円ですね、あの二万四千円の問題が、先ほど来出た物価の変動に関連してくるんですけれども、あの二方四千というのは、昭和二十九年にきまったフラット部分なんですね。そうして、先ほど来、一番最初に物価変動の問題が出てきましたが、今の小山審議官は直接に厚生年金保険の改正についてはおそらく関係がないかもしれませんが、やはり政府側として一連の共通のイデーをもって当っておられる点から見まして、私は、二万四千円のフラット部分の昭和二十九年の額が今度の改正の中でも全然持ち出されていない、相変らず二万四千だということは、先ほど来いろいろな事情によって物価の変動のことも考えられるという、るる説明がありましたけれども、何かこういう現実にある厚生年金保険の実情を見ましても、ほんとうに変動に応じて二万四千冊を改訂する——二万四千円なら、今ならかなりな額になると思うんですが、どうも今御説明の中で二万四千円の点について疑問を持つんですが、そういう点いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/43
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044・八木一男
○参考人(八木一男君) 坂本委員の御質問の趣旨に私全く同感なわけであります。二万四千円というフラット部分をそういう世の中の変化に従って上げなければ、実質上、低賃金労働者の年金は下ってくることになると思う。総体として高給者は損じゃないかと言われるけれども、これは言われるかもしれませんけれども、こういうような社会保障の一環の制度では、同じように賃金標準報酬比例で保険料を取っても、もらう年金ができるだけ最低のものを維持できるようにフラット部分は高くなるべき性質のものであって、これは当然変動がなくても二万四千円をもっと上げるべきだ。しかも、変動があったときにそれをそのままにしておくというようなことは、本来の趣旨に非常に反したやり方ではないかと思うわけでございます。
それから大へん恐縮でございますが、先ほど小山さんの御説明の中に、私の記憶とちょっと違う点があるわけであります。これは国民年金の似た問題でございます。国民年金に一率制をやめて賃金標準報酬比例とかという収入比例にするという点を考えておると言われることです。これは、一面においては合っている。私ども衆議院で追及いたしましたときには、国民年金の百円、百五十円という額は、住友吉左衛門が入っても百五十円、ボーダー・ラインも百五十円、これではいけない、そこに収入比例制を作るべきだと追及しまして、それはもっともだ、そういうことを考えるべきだと考えておりましたけれども、事務費その他で調査があれだからすぐには考えられない、将来において考えたいというような厚生省側の御答弁。そこで、少くとも私どもの追及では、年金額を収入によって変えろという主張は一回もしたことはない。これは取る保険料は負担能力によって変えなきゃならないが、年金額は、今の定額制と同じように、下に厚くなるように、そんなものに比例をつけるようなふうに変えるべきではないと思う。先ほどの御説明だと、われわれが保険料のフラットを変えることを主張したと同時に年金のフラットを変えることを主張したように誤解されますので、そういうことは断じてないことであります。そういうことを言っておりませんので、小山さんもおそらく言葉が少し足りなかったのじゃないかと思いますけれども、そういう点がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/44
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045・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そこで、今の適用除外の問題を集約いたしますと、お聞きした範囲では、一つの問題は、保険等を九千万におしなべて要するに年金制度をどういう格好でつけていくかという問題が大きな課題であり、その中で、被用者年金とそれから一般年金との関係をその中でどうするかという問題がある。それからその次の問題として、今の、妻その他任意適用という格好がよいかどうかという問題がここへ出てくるわけでございますね。この三つの問題については、先ほどからのお話ではなかなか的確なお答えが出ない。将来の研究課題だ。将来ではこれは問題にならぬわけですから、本来なら、この法案を出すときに割り切ってここできめていくというのが本来の姿だと思いますけれども、まあきょうのところは十分に大きな課題として考えていくということをおっしゃったわけです。これはまだ来月までやるわけでございますから、この三つの問題については、ぜひ一つ何らか厚生省でこの問題、適用除外、公的年金との関係、むろんそこには通算の関係も出て参りましょうが、そういう問題で御検討してきていただきたい。何らかの御意見をぜひ私は承わりたいと思います。これは将来の課題だということだけでは私はいささか問題があるんじゃないかと思いますから、だからぜひ一つよくお考えになりまして御意見をお聞かせを願いたい。これはお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/45
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046・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 私非常に控え目に申し上げたので、あるいはまだ検討していないというふうにお受け取りになったかと思いますが、私はかなりはっきり申し上げたつもりなんであります。
第一に、現在存在する各種の年金制度を御破算にするというような考え方は、今後の国民皆年金の構想を進める場合にこれは全然ございません。むしろ各種の年金制度を存置しつつこれとの調整をはかって、結果において国民皆年金という実が上るようにしていく。これはもう非常にはっきりしている考え方であります。
それから第二の問題について、被用者年金と一般国民年金にまとめるかどうかという問題については、両者について一つの目標を定め、いわば最低基準みたいなものを意識しつつそれに合せるように努力をしていく。これは現在すでにみんなの考えていることであります。
それから次に、被用者年金をそれじゃ単一の年金制度にまとめるかどうかということについては、むしろ大体政府部内での感じ方は、単一の制度にまとめるということにはなるまい、現在あります制度のうちで、たとえば先ほどもお話に出ましたけれども、国家公務員の共済とか、あるいは地方公務員の共済とか、公共企業体の職員とか、こういうようなものは仕事の類似性あるいは勤務の類似性等がありますから、これを将来一本にまとめるかどうかということは議論としてはあり得ると思いますけれども、おそらく一本の制度にまとめるという方向よりも、相互の間の仕組みを努めて同じようにしていくという発展をたどるだろうと思います。それから厚生年金保険を中心にした被用者年金は、これをもとにして、できるならば途中で分立して参りましたところの農業共済等も、条件が許すならばまた復帰できるように考えていきたい。しかし、これらの厚生年金を中心にした年金制度で一番考えていかなくちゃならぬ問題は、これは八木先生おっしゃったように、年金額の充実をはかっていくことでございます。およそ近代的な年金制度という観点から見ますならば、現在の厚生年金はこれは非常に低いランクに置かれるという姿になっております。これはぜひよくすることを考えていく、ただ、よくすることについては遺憾ながら保険料の引き上げということを一部伴うわけでございますが、この点については比較的理解をしてくれている方も多いわけでありますが、一面なかなかそういうことの理解がむずかしいというような事情で、今回提案をいたしまして御検討願う改正案でもその点の趣旨が十分に現われ切らないのでございますが、大よそ世界の年金制度を見回してみまして、保険料が千分の三〇、四〇というところで低迷しているような制度はないのでございまして、これはできるならばやはり相当程度引き上げをしていくということを考えてもらわなければならぬ。同時に、年金額も、現在の三千六百円平均なんということじゃなくて、おそらくこれはほんとうに私八木先生のお言葉通りだと思いますが、現在の日本にふさわしい年金額としてみても、これの倍ぐらいのところを目標にして、いかにそこへ持っていくかという努力を、これは労使双方——国はもちろんでございますけれども、労使双方考えていかなくちゃならぬ。これは実はもう大体議論としては検討済みのことでございまして、ただ、なかなかそこへ持っていくための道行きが十分にでききっておらないという問題でございます。
それから第三の被用者年金の適用者の配偶者をどう扱うかという問題は、これは文字通り検討問題でございまして、これは個人としての意見はもちろんいろいろあるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、社会保障制度審議会におきまして十分検討をしてもらいまして、それに基いた調整をはかっていく、これはおそらく調整はとても一カ月や二カ月というわけにはいかない。ある程度時間をかけて問題の所在を十分に国民に理解してもらうような形で審議会で論議をしてもらって、いずれにしてもそれぞれの方法には一長一短があるわけでございますから、こういう長所と短所があるけれども、やはりこの方がいいというだけの議を尽しまして、その上で踏み切れるものは踏み切っていくようにいたすべきだ、こういうふうに今日までのところでは議論としては整理しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/46
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047・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私の申し上げましたのは、被用者年金と今の一般国民年金というものが、国の九千万に対する年金としてもどうしても二本立にせざるを得ないのじゃないか、こういうものの考え方について、この相互の計算や、被用者年金なら被用者年金、いろいろあるのをどういう工合に統合していくか、それと一般国民年金との将来は、要するに老齢期における生活の問題だから、そのバランスをどうとっていくかというところにそういう構想というものは、その内容がそうあっても統一した年金制度、国の年金の仕組みということになりはせぬかということについての御意見が今小山審議官からありましたけれども、私はそういうものでいいかどうかということは今のお答えだけでは少し納得がいかぬわけですけれども、まあそういうものを一つ課題にして御研究や、あるいはお考えを一つお聞かせ願いたいと思います。
だんだん入っていくわけですけれども、私はきょうはこの辺で終らしていただきたいと思います。二つの問題しか尋ねる時間がなかったことを非常に残念に思います。
それから、この次の審議のときには、先ほど外国のお話が少しありましたが、資料とあわせて一つ説明をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/47
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048・坂本昭
○坂本昭君 今の資料要求のことに関連して、イギリスの場合の年金の基金の使い方……、この間私少しマーシャル・プランとの関係に触れましたが、これはぜひお調べおき願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/48
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049・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 私の記憶では、おそらくこのイギリスの基金について、実は日本の学者もわれわれ実務家も、あまり正確なことを知っておらなかったような気がいたしますけれども、なお当ってみまして、あります限りの資料をもとにして御説明申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/49
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050・坂本昭
○坂本昭君 ちょっと念のために……。なかなか卓抜した頭脳の方が厚生省に多いのでして、都合のいい資料ばかりお集めになって出される傾向がありますから、都合の悪いものも、日本の将来のために、ぜひおそろえいただきたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/50
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051・久保等
○委員長(久保等君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/51
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052・久保等
○委員長(久保等君) 速記を始めて。
本案に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/52
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053・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
本日はこれにて散会をいたします。
午後四時三十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02119590325/53
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