1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年四月七日(火曜日)
午前十時五十三分開会
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委員の異動
四月二日委員小柳牧衞君、大沢雄一君
及び紅露みつ君辞任につき、その補欠
として谷口弥三郎君、安井謙君及び上
林忠次君を議長において指名した。
四月六日委員上林忠次君、草葉隆圓君
及び安井謙君辞任につき、その補欠と
して紅露みつ君、中野文門君及び松岡
平市君を議長において指名した。
本日委員中野文門君及び松岡平市君辞
任につき、その補欠として草葉隆圓君
及び仲原善一君を議長において指名し
た。
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出席者は左の通り。
委員長 久保 等君
理事
勝俣 稔君
柴田 栄君
木下 友敬君
委員
有馬 英二君
草葉 隆圓君
紅露 みつ君
斎藤 昇君
谷口弥三郎君
仲原 善一君
西田 信一君
片岡 文重君
坂本 昭君
藤田藤太郎君
光村 甚助君
田村 文吉君
衆議院議員
八田 貞義君
国務大臣
大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君
厚 生 大 臣 坂田 道太君
政府委員
経済企画庁総合
計画局長 大來佐武郎君
厚生大臣官房長 森本 潔君
厚生大臣官房審
議官 小山進次郎君
厚生省医務局長 小澤 龍君
厚生省社会局長 安田 巖君
労働省職業安定
局長 百田 正弘君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
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本日の会議に付した案件
○保健婦、助産婦及び看護婦等の産前
産後の休業中における代替要員の確
保に関する法律案(片岡文重君外六
名発議)
○栄養士法の一部を改正する法律案
(藤田藤太郎君外六名発議)
○へい獣処理場等に関する法律の一部
を改正する法律案(衆議院提出)
○消費生活協同組合法の一部を改正す
る法律案(内閣提出、衆議院送付)
○派遣委員の報告
○国民年金法案(内閣提出、衆議院送
付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/0
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001・久保等
○委員長(久保等君) これより委員会を開きます。
委員の異動を報告いたします。四月七日付、中野文門君が辞任し、その補欠として草葉隆圓君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/1
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002・久保等
○委員長(久保等君) 保健婦、助産婦及び看護婦等の産前産後の休業中における代替要員の確保に関する法律案(参第一三号)を議題といたします。
提案理由の説明を願います。片岡文重君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/2
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003・片岡文重
○片岡文重君 ただいま議題となりました保健婦、助産婦及び看護婦等の産前産後の休業中における代替要員の確保に関する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
現在保健所並びに国立、公立の病院及び診療所に就業している保健婦、助産婦並びに看護婦、准看護婦及びこれらの者の補助をする職務に従事し看護助手その他の名称で呼ばれている女子の数は全部で約六万二千人を数えますが、このうち、年々出産する人々は、相当数に上っておるのであります。
国民の健康の保全のために、保健所、病院及び診療所においてその第一線に立ち、目々激しい勤務に従事しているこれらの女子職員につきましては、現在、国も地方もその財政事情に制約せられて余裕ある定員を確保することが困難な実情にあり、ために人命を預かり健康の管理に当るこれらの職務の性質上、勢い法によって保障される産前産後の休業の期間中も激しい勤務を受け持つ結果となっておるのでありまして、これは母体、胎児を保護する立場からまことに遺憾であり、さらにはこれらの者の担当する業務の正常な運営の確保が危ぶまれるに至っておるのでございます。
この点に関し、これらの女子職員が産前産後の休業をする場合において、その休業中、当該女子職員の職務を行わせるため代替要員の臨時的任用に関し必要な規定を設け、もってこれらの女子職員について、その母体の保護が促進されることを期し、ここに本法案を提出いたした次第でございます。
次に、本法案の内容のおもなる点について御説明申し上げます。
第一点は、保健所または国もしくは地方公共団体の開設する病院もしくは診療所において保健婦助産婦看護婦法に規定する業務をその職務としている保健婦、助産婦、看護婦もしくは准看護婦またはこれらの者の業務の補助をその職務としている女子が産前産後の休業をとる場合、任命権者は、その休業の期間を任用の期間とし、その者にかわって職務を行わせるに適する者を、臨時的に任用しなければならないことにいたした次第であります。
なお、現に国家公務員または地方公務員である者を、現在の職を保有させたまま、臨時的に任用することは許されないものといたしました。これは臨時的任用に際し、職務の補充が不十分であってはならないことに基くものでございます。
第二点といたしましては、関係法令の改正により、臨時的任用をされた職員は、職員の定員のワク外にすることを明らかにいたしました。
これは本法に定められました要件を満たす場合、任命権者は必ず任用するという建前から定員のワクをはずすことといたした次第であります。
以上がこの法律案を提案いたした理由であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/3
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004・久保等
○委員長(久保等君) 本案に対する質疑は、次回以降にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/4
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005・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/5
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006・久保等
○委員長(久保等君) 次に、栄養士法の一部を改正する法律案(参第一四号)を議題といたします。
提案理由の説明を願います。藤田委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/6
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007・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 ただいま議題となりました栄養士法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
まず第一の改正点は、現在栄養士の養成施設における養成期間の二年を三年とすることであります。これは、現在の二年間におきまして、合計二千四百時間を修習させているのでございますが、現在社会が要求している栄養士としての業務を遂行する上におきましては、なお不十分となりまして、いま少し教育を必要とするものと考えられますので、養成期間二年を三年に延長し、一般教養、栄養関係課目等を増加いたしまして、十分役立つ栄養士を養成し、もって社会の要求にこたえようとするためでございます。
第二の改正点は、栄養士養成施設の修了者に対して、国家試験を行うようにしたことであります。これは現行制度におきましては、修了する生徒の質に相当な幅があり、中には栄養士としての業務を遂行するに当って遺憾な者が見受けられるのが実情であります。これらの点より見まして、医家試験を行いまして栄養士のレベルの統一をするとともに、その向上をはかることが必要であると考えますので、国家試験の制度を設けたものであります。
なお、これに伴いまして、現在行われております栄養士試験は、廃止することとなりますが、現在栄養士になる目的でもって実務の見習いを行なっている者のために、昭和三十七年末までは従前通り、年一回の栄養士試験を行い、栄養士となる機会を与えるよう経過措置をいたしております。また、現在栄養士の養成施設に入所中の者については、従前通り、その施設において二年以上栄養士として必要な知識及び技能を修得したときは、栄養士の免許が受けられるよう経過措置をいたしております。
最後に改正いたしたい点は、罰則の整備についてであります。栄養士法に規定してあります罰則は、他の法律に比較しまして不均衡な点がありましたので、今回の改正により、これが整備を行い、均衡を失することのないようにしようとするものであります。
以上が、この法律案を提出いたしました理由であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/7
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008・久保等
○委員長(久保等君) 本案の質疑は、次回以降にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/8
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009・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/9
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010・久保等
○委員長(久保等君) 次に、へい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案(衆第六六号)を議題といたします。
提案理由の説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/10
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011・八田貞義
○衆議院議員(八田貞義君) ただいま議題となりましたへい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
畜舎等の取締りにつきましては、明治六年太政官布告で人家稠密の地で養豚を行なってはならないという規定があり、各都道府県におきましては、それぞれ都道府県規則を制定し、牛豚類の畜舎について人家稠密な地域におきましては、許可制かまたは届出制を採用し、特定地域におきましては、畜舎の設置を禁止しているところもあるなど主として衛生警察の観点から取締りが行われてきたものであります。
戦後になりまして、都道府県の規則は、昭和二十二年日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律によって自然失効し、これにかわるものとして昭和二十三年第二国会でへい獣処理場等に関する法律の制定を見たのであります。
この法律の中で都市における畜舎(牛、馬、緬羊、ヤギ及び豚)に対する衛生措置が畜舎の管理者に対して義務づけられ、環境衛生監視員が畜舎の衛生保持について、監視指導することとなりました。その後、家畜家禽の飼育増加に伴い、都会地並びに人家密集地域及びその周辺において畜舎の設置が増加してきたのでありますが、畜舎の構造設備につきましては、規定が全く欠け非衛生的な場合、単に取扱い方法の改善だけを指示するにとどまり、適切な指導が行いがたい状況にありましたので、昭和三十一年六月六日法律を改正して、畜舎の構造設備の基準を設定するとともに、届出制度とし、なお、犬、鶏、アヒルも一定数以上を飼養するものについても法の適用を受けることとしたのであります。
従来市及び人口五千人以上の市街的町村(旧警察法におきまして自治体警察を設置する市町村すべて)が適用地域でありましたのを、相当縮小し、特別清掃地域のうちからさらに一定の基準に従って知事がその地域を指定するということになり、また、畜舎については従来その衛生措置だけを規制しておりましたのを、新たに衛生措置を満たすため必要な最低の構造設備基準をも加えたのであります。
この法律改正による畜舎に関する部分の要点は次のようなものであります。
一、一定の種類及び頭数の動物を清掃法第四条に規定する特別清掃地域のうち政令で定める規準に従い、都道府県知事が指定する区域内で飼養または収容したときは都道府県知事に届け出ること。
二、畜舎の構造設備は政令で定める公衆衛生上必要な基準に適合したものであること。
三、一及び二に違反した場合、使用の制限もしくは禁止を命ずることができることとしたこと。
その後、畜舎等については単なる届出制度では実態の把握に困難性があり、すでにでき上っている畜舎の構造設備を改めさせることにも困難性が見られましたので、結局、都市の畜舎に対する適切な指導と措置が行いがたく、付近住民に対する環境衛生上の弊害を惹起いたしますのでこれを許可制度とすることが妥当だと考えられるのであります。
以上が本法律案の提案理由の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決せられんことをお願い申しあげます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/11
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012・久保等
○委員長(久保等君) 御質疑を願います。
別に御発言もないようですから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/12
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013・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、修正意見等おありの方は討論中にお述べを願います。
別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/13
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014・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
それでは、これよりへい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案(衆第六六号)について採決いたします。
本案を原案の通り可決することに賛成の方は挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/14
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015・久保等
○委員長(久保等君) ありがとうございました。全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、議長に提出する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/15
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016・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/16
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017・久保等
○委員長(久保等君) 次に、消費生活協同組合法の一部を改正する法律案(閣法第一八四号)を議題といたします。提案理由の説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/17
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018・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) ただいま議題となりました消費生活協同組合法の一部を改正する法律案の提案理由について、御説明申し上げます。
消費生活協同組合及び消費生活協同組合連合会の行う共済事業につきましては、最近急激にその発展を見せておりますので、組合員の利益の保護と共済事業の健全な発展を確保するためこの事業に対する規定を整備することとし、共済事業執行の基本となります点を規約で定めることとするとともに、これが規約の設定、変更及び廃止は行政庁の認可を受けなければならないこととし、共済事業の指導監督を強化いたしますほか、この事業の健全な運営をはかる上に最も重要な責任準備金の積み立てを法定化することとしたのであります。
以上がこの法律案の概要でありますが、何とぞ慎重審議の上、すみやかに御可決あらんことを御願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/18
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019・久保等
○委員長(久保等君) 御質疑を願います。
別に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/19
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020・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、修正意見等おありの方は討論中にお述べを願います。
別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/20
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021・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより消費生活協同組合法の一部を改正する法律案(閣法第一八四号)について採決いたします。
本案を原案の通り可決することに賛成の方は挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/21
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022・久保等
○委員長(久保等君) ありがとうございます。全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、議長に提出する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/22
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023・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/23
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024・久保等
○委員長(久保等君) 派遣委員の報告を議題といたします。
当委員会の決定に基き、愛知県及び宮城県に派遣いたしました派遣委員の報告を願います。最初に柴田委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/24
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025・柴田栄
○柴田栄君 本委員会の決議に基きまして四月四日に、愛知県において、国民年金法案に関する地方聴聞会を開催するため、木下、竹中、柴田の三委員が派遣されました。
当日の聴聞会は、現地において草葉委員も参加されまして、愛知県社会福祉会館の講堂において、私が座長を勤め、学識経験者、身体障害関係者、母子関係者、経営者、中小企業関係者及び労働者を代表する六名を意見開陳者として招致し、その公述を聴取して、熱心に質疑を行なったのであります。
意見開陳者各位の意見及び要望は、別に印刷して配布いたしておりますから、詳細はそれによってごらん願いたいと存じます。
公述の内容につきまして要約いたしますると、まず、保険料につきましては、適切とする意見、低所得者層にあっては拠出が困難であるという意見に分れましたが、積立金の運用については、被保険者の方面に還元融資してほしいとのことでありました。
次に、年金の給付額につきましては、総体的にその少なさが指摘され、各意見開陳者ともそれぞれの立場から、具体的な基準を明示されまして、増額の要望がなされたのであります。
次に、一番問題となりましたのは、援護年金の支給条件についてでありまして、全面的に、具体的にその緩和が要求されたのであります。
また、生活保護法との調整については、実質的に援護年金相当額が増額されるよう配慮してほしいという意見でございました。
さらに援護年金の名称につきましては、特別年金、助成年金等、明るい名称に変更していただきたいとの要望がなされたのであります。
それ以外の点につきまして、年金別に意見開陳者の要望をまとめてみますと、まず、無拠出の老齢援護年金につきましては、給付の開始年令を六十五才に引き下げること、次に、障害年金につきましては、第一に拠出制、無拠出制ともにそれぞれ六十五才、または七十才になると、老齢年金に切りかえられることとしているが、この規定を削除してもらいたいこと、第二に、拠出の障害年金については、年金額の増額のほか、受給資格の中に精神障害及び内臓障害を加えてもらいたいこと、第三には、障害援護年金につきましては拠出制と同様、障害等級の二級についてもこれを適用してもらいたいこと、また、母子年金につきましては、支給対象に祖母と孫との準母子世帯を加えていただきたいこと等の要望がございました。
その他、本法案によります福祉施設の運営につきまして、被保険者の代表を参加せしめる規定を設けること及び本法案による業務が、地方公共団体の財政を圧迫しないよう格別の配慮が必要であることなどの意見が述べられましたが、いずれもよりよき国民年金を制度化するため、参議院社会労働委員会の良識ある審査に期待するという意見でありまして、反対及び時期尚早の二つの意見を除きましては、いずれもすみやかなる成立を希望されたのであります。
今回の名古屋地方における聴聞会開催に当り、地元愛知県その他の御協力と、意見開陳者各位がきわめてお忙しいところを長時間御出席になりまして、熱心に意見の発表をいただきまして、所期の目的を達し得ましたことにつきまして、この機会に感謝をいたします。
簡単ながら以上御報告いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/25
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026・久保等
○委員長(久保等君) 次に、宮城県においでになった谷口委員にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/26
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027・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 簡単に御報告申し上げます。
第二班は、去る四月四日、宮城県議会におきまして、国民年金法案に関する地方聴聞会を開催するため、坂本、谷口の両委員が仙台市に派遣されましたが、当日の聴聞会におきましては、谷口が座長を勤め、地方における利害関係者及び学識経験者の六名を公述人として御出席を願い、その意見を聴取し、委員からも質疑を行なったのであります。当日の傍聴者は約三十名ほどでありましたが、報道関係者も多数出席し、最後まで熱心に傍聴されましたので、国民年金制度に対する関心の高きを知ることができました。
なお、公述人の開陳されました意見の要旨は、別にプリントして御手元まで配付しておりますので、それによってごらんを願いますが、公述されたおもなる事項について要約いたしますと、国民年金制度の早期確立については、いずれもこれを期待しておるのでありますが、その内容につきましては、なお多くの意見が残されているようであります。
まず、年金給付の種類については異議がないようですが、年金額については低額過ぎるとの意見が多かったのであります。
保険料については、大家族の農家などでは多額過ぎるとのことでありましたが、他面においては、裕福な国民層からはもっと保険料負担をしてもらって、年金額をふやすべきであるとの意見もありました。
要するに、貧富のいかんと、収入の多寡とを問わず、一律の保険料を徴収するという点に疑義があったようであります。
援護年金の名称については、生活保護のような劣等感を抱かせるものとして、福祉年金とでも改称してもらいたいとのことであり、母子援護年金については、年金の増額、給付条件の緩和等が要望され、準母子世帯に対する年金の適用を主張されました。
積立金の運用については、財政資金ばかりでなく、産業資金へ、特に中小企業の育成にも回してもらいたいとか、あるいは社会福祉事業にも融資してもらいたいという要望があり、五分五厘の予定利率が高過ぎるとの意見もありました。
年金制度は長期にわたるものでありますから、保険料の掛け捨てや、掛け損にならないように考慮し、他の年金制度との調整についても、不均衡の生じないように運営してもらいたいとのことであります。
結論といたしましては、将来生活の基盤を置けるものとしての希望を持てる年金制度を作り上げる必要あるので、この意味においては、内容的にも不備の点は免れないが、これは漸次充実改善するものとして、この際、すみやかに法案の成立を期待するとのことでありました。
以上御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/27
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028・久保等
○委員長(久保等君) ただいまの報告に対して御質疑はございませんか。
御質疑もないようでございますから、派遣委員の報告はこれにて終ります。
ちょっと速記やめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/28
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029・久保等
○委員長(久保等君) 速記起して下さい。
瞬時休憩いたします。
午前十一時二十四分休憩
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午後一時五十一分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/29
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030・久保等
○委員長(久保等君) 委員会を再開いたします。
委員の異動報告をいたします。
四月七日付をもって松岡平市君が辞任し、その補欠として仲原善一君が選任されました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/30
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031・久保等
○委員長(久保等君) 国民年金法案(閣法第一二三号)を議題といたします。
御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/31
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032・坂本昭
○坂本昭君 私の要求しておった大臣は、今大蔵大臣が来ましたが、労働大臣の都合の悪いことは聞いておりますが、労働省来ておりますか。それから経済企画庁長官も旅行中ということを聞いておりますが、責任者来ておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/32
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033・久保等
○委員長(久保等君) 委員長から申し上げます。労働省は百田職業安定局長、大島労働統計部長それから経済企画庁の方は、大來計画局長が見えておりますが、経済企画庁長官と、それから政務次官それぞれ東京には不在のようです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/33
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034・坂本昭
○坂本昭君 国民の待望している国民年金の制度がいよいよ参議院で審議の大詰めに来ております。われわれも衆議院段階においてわれわれ独自の案を出して、そうして審議を願ったわけであります。新聞紙上の伝えるところでは、きょうあす中に審議が終るであろうというようなことが言われておりますけれども、この国民年金の問題は、今後、百年以上、日本が永遠に続く限り残る問題であって、その第一歩が今印せられようとしておる大事な時であります。われわれとしては非常に慎重な気持とかつ真剣な気持で今審議をしておるにもかかわらず、政府与党の中から政府に対する批判の言葉が出るような非常に不謹慎な状態が政府の間に見られるということは、われわれとしては、はなはだ遺憾にたえません。特に衆議院段階の審議または当参議院における、各地における公聴会を通じても、国民の期待、さらに理解のもとにいろいろと将来のわれわれのあとに続く子供たちのことを思い、また、われわれの大事な年寄りたちのことを思い、この案についてのいろいろ悪い点について直していこうというそういう気風も、気分も起っておるときであります。まず、私は、大蔵大臣に、こういう大事なときに国民年金法の審議について無関心でおられるか、あるいは社会労働委員会に対し無関心でおられるか、大臣の御所見を明確に承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/34
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035・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 今御審議をいただいておりますこの年金法は、申すまでもなく、政府といたしましても最重要法案であります。また、国民もかく一日も早く成立することを期待し、また、これに対しては強く支持をしておることも、私も承知をいたしております。従いまして、この法案の制定に当りましては、大蔵省といたしましても十分内容について審議し、また、国民の期待に沿うように最善の努力をしたつもりでございます。ただいまこの参議院における社会労働委員会を軽視しておるのではないかというおしかりを受けておりますが、決してさようなことはございません。私ども最善を尽す考えでございます。本日の出席のおくれましたことは、私もまことに遺憾に思っておりますし、その間の連絡等において不十分な点がございましたので、将来十分注意するつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/35
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036・坂本昭
○坂本昭君 大蔵大臣の出席しておる時間が惜しいので、これから本論に入りますが、厚生行政の面、特に社会保障の問題については、何を言っても財政が一番の根本になります。でありますから、大蔵当局の皆さんが特にこの財政のことについて大所高所の点からはもちろんのこと、日本民族の将来のことからも十分慎重に考えていただきたい。私は、きょうは大蔵大臣の都合によって一時から二時までというつもりでおりましたが、一時間もおくれたということははなはだ遺憾であると思います。時間を繰り延ばしていろいろとお伺いいたします。もちろん大臣の忙しいということは承知しての上で、いろいろと基本的なことについてお伺いしていきたい。と申しますのは、先般来、厚生大臣、大蔵大臣といろいろ社会保障の問題について討論しましたが、どうもすっきりしない点がある。そういう点でやはり社会保障ということを一体厚生大臣、大蔵大臣がどういうふうに考えておられるか、そういうことをもう少し明確にして進めていかないというと、七十才以上千円でもいいのだ、あるいは生活保護と老齢援護と重なった場合には、一方ぶち切ってもいいのだというような考えが生まれてくるのじゃないか、そう思わざるを得ないのであります。今度の年金法については、小山審議官が非常に苦労をされて、あと厚生省の人たちが非常に苦労されたことは十分知っておりますが、私も前から小山審議官が厚生省において、いろいろと社会保障の書物を編集したり、書いたりしたことを知っておりました。もう五、六年も以上前からいろいろ私自身教えられてきました。小山審議官が前に編集された本の中に、社会保障というものをどういきます。保育所の問題は、これは一昨年以来、厚生省でも非常な苦労をして三十王年度の予算では、最初に非常に削られて、そしてあと保母さんたちが出てきて、陳情をやって復活した、こういう非常に苦しい予算を獲得したのであります。ことしの三十四年度については、そういう最初からぶった切られるということはありませんでしたが、それでも各保育所の保育料というものが上っている。ところが、こういう保育所の経営というものを、今の労働組合自身が管理をしている。こういうような一つの特徴があります。それからまた、イギリスについては、これはたびたび厚生大臣も言及されますが、私が一番感銘しているのは、あのビヴァリッジ案が作られた最初のきっかけになった時期はちょうどダンケルクの敗戦で、イギリスが滅びるかどうかわからないと言われたあのときに、ビヴァリッジ教授に命じてビヴァリッジ案というものを、草案を作らせた、最初の時期がそのダンケルクの敗戦のまっただ中のときだった。私は、こういうことを非常に感銘して、歴史的に観察しているものであります。特にベバンが、労働党のいわゆる厚生大臣のときに、めがねと入れ歯の代金を、あれを半額個人負担にさせた。そのときに、ベバン厚生大臣が憤然としてその内閣から飛び出てやめてしまった。私は、こうしたことの中に、イギリス式の社会保障のスピリットがあると思う。日本ではどうですか、橋本厚生大臣は、かなりなベテランであったにかかわらず、教育のベテランの坂田さんと交代して、非常にお気の毒ですけれども、ずいぶん初めてのことを勉強させられてしかし、一生懸命真摯に勉強しておられることは認めますけれども、われわれとして率直に申し上げて、はなはだたよりない点もある。また、隣の中国、皆さん方非常におきらいになっている中国、私はここ十年の間には、おそらく見直さざるを得ないだろうと思う。たとえば医療保障については、日本と同じように、健康保険の制度をとってきておりました。給料の百分の一に対して、国がこれを積み立てて、そして医療保障の基金にしている。そういうのが、人民公社ができると一緒に全部そういうやり方が変ってしまいました。今日では保険料の積立金というものは全然ありません。そしてそれぞれの人民公社の中で運営されている。しかし、共通して見られることは、所得保障の考えというものが、それぞれ資本主義の国、社会主義の国と、国の差異はあるけれども、所得保障的な方向へ向いているということです。たとえば資本主義の国では所得の再分配を通じて持てる者あるいは企業資本家、そういうものが低所得層の方に対してその所得を分けている。そういうことの中に新しい社会保障制度というものの精神が生まれつつある、あるいは中国の場合、人民公社の中で今生まれつつあるところのものは全人民所有制の問題であります。もちろん自分自身の私物を除いて、土地あるいは生産手段、そういうものに対して全人民所有制というものが人民公社の中に少しずつ生まれつつある。私はこれらを通じて、やはりこの一つの所得の配分、所得の保障に対するそれぞれの国の違いはあるにしても、行き方が生まれつつある、そういうふうに思うのです。それで実はこの間、最低賃金の問題の最後の晩に、中間報告の晩に非常に眠たいところで質問しましたので、十分な御意見を聞くことができなかったのですけれども、私は社会保障の基本は、医療の保障と所得の保障と、この二つが一番の柱だと思いますけれども、しかし、それに先立つものがある。最低賃金についてのあの中央賃金審議会が答申を出した中にも、社会保障との関連について触れていますけれども、どうもあの触れ方についての理解がどうも足りないと思うのであります。私自身はこう申し上げたつもりなんです。つまり所得保障あるいは医療保障の社会保障の前に賃金政策というものがなければならないんだ。これはきのうの公聴会で早稲田の平田教授も これはフランスのラロックという人がこの点非常に主張しておられる。平田教授も、社会保障のあとから続くものではなくて、社会保障の先決要件として賃金政策というものがなけりゃならない、実際に健康で働く人間がこの生活が保障される、そのために必要な賃金の保障ということ、これが先に立ってそれからあと不幸病気になった場合あるいは老齢になった場合あるいは身体障害がある、そうした場合に、その人の欠けた所得を補なっていく、あるいはその人が病気になった場合に、その医療を保障していく、私はこういうことで初めて社会保障というものの考えが明確になってくると思う。ところが、そういう点を明確にしないで、ただ国民が社会保障をやってくれ、やってくれと……、なるほどこの社会保障という言葉は、社会という言葉があって、何か皆さん方には社会主義に関係があると思われるかもしれませんが、これはルーズヴェルトが一九三五年に作り出した言葉です。従って、大体は資本主義の国から発達した言葉ですけれども、今日、社会主義の国も同じくこのソーシャル・セキュリティという言葉を使っている。ところが、それについての政府の責任者の皆さん方の考えがどうも明確にできてないじゃないか、厚生大臣に先日伺ったのは、あなたの所管であるところの生活保護法、その中には日雇いの人たちが、一応労働者としては正当な黄金と言われているところのもの、今日失業対策に対しては三百六円でとまっています。しかし、これで労働に対する正当な評価として支払われている。ところが、正当な評価として支払われているところの日雇い労働者の人たちは、なおかつ生活保護を受けている。こういう矛盾をあなた方どう解決されるのか、やはり皆さんがはっきりした——皆さん方は自由資本主義の立場、それはそれでけっこうです。われわれはそれと違う立場、しかし、それはそれとしても、日本の自由資本主義の考えはやはり前進してもらわなくちゃいかぬと思う。そういう点であらためて厚生大臣にもう少しあなたの掘り下げたお考えを聞かしていただきたい。そうしてその考えに立って国民年金というものも推進されていく。一つの法律が国民を引っぱっていくんじゃございません。法律というものは、われわれの考えの上に浮かび出てきたところの一つの表現であって、その底にあるところのもの、底を流れているものを通して民族というものも進むし、また、われわれの生活というものも作られていく。こういう点でまず厚生大臣に、あなたの社会保障についての明確な考え、特にこの際は、国民年金法を今審議しておりますから、この国民年金法という所得保障に関連して厚生大臣のお考えを承わって、また同時に、特にその財政的な責任者である大蔵大臣にも御意見を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/36
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037・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) 実は本委員会におきましても、木下委員の御質問に対しまして、社会保障に対する私の基本的な考え方を実は申し上げております。速記をお読みいただきまするとおわかりになると思いますが、これは社会保障という考え方が、今御指摘になりましたように、制度として生まれてきたのは、やはり何と申しましてもいろいろな沿革はありましても、第二次大戦以後のことだと私は理解をいたしておるわけでございまして、ことにこの日本におきましては、やはり戦争後、しかも最近になってこれが具体化をしてきたというふうに考えられるのでございまして、私どもの日本においては、最初はやはり憲法の第二十五条にいうところの社会保障というものは、やはり社会保険あるいは公的扶助というものをいう。さらにそれが進みましてソーシャル・ニードと申しますか、そういった必要を満たすもの、それに対してソーシャル・サービスをしていく。国がそれについてめんどうを見ていく。たとえて申し上げまするならば、衛生行政の面におきましても、むしろ予防行政というものをも含めてやはり社会保障というような内容を私は漸次持ってくるのではないだろうかというふうに思うわけでございますが、端的に申し上げまするならば、今御指摘になりましたように、一つの大きな柱としましては、厚生年金その他の公的年金制度もございますが、その前の医療保障というものが一つの大きな柱である、そうしてただいま御審議を願っておりまする所得保障である。国民年金あるいは厚生年金というような年金、所得保障というものが大きな次の柱であるというふうに思うのであります。それからまた、ただいま御指摘になりましたように、その前提となるべきむしろ賃金政策というものが、その前提に立たなければならないのではないかというような御説でございまして、これもやはり私はこういうふうに理解をいたしておるわけでありまして、やはり雇用政策というものが前提に立たなければならない。あるいは完全雇用の道へいかなければならない。こういう意味で前提だというふうに御指摘になったとするならば、しかもその雇用政策の中において、やはり最低賃金の問題あるいは賃金政策の問題、日雇い労働者の問題というものが考えられなければならない。それが確立して初めてこの医療保障なりあるいは所得保障というものが考えられていかなければならないのだというようなお考えであるとするならば、私も全く同感でございます。従いまして、そういうような考え方から、私どもは社会保障を実は考えておるわけでございますが、やはりこれは先ほどお話がございましたように、フランスはフランスなり、イギリスはイギリスなり、あるいはニュージーランドはニュージーランドなり、あるいはアメリカはアメリカなりのいろいろの事情によって、同じ所得保障につきましても、考え方は多少違ってきておるだろうと思うのであります。たとえばフランスにおきましては、非常に人口の問題が大きな問題である。出生率が非常に低下をしてきた。従って、やはり実族手当というものを中心にして、年金制度というものが組まれておる。あるいはまた、イギリスの場合においては、失業というものが非常に大きな問題であった。そのことから考えて、やはり所得保障というもの、あるいは年金制度というものが組み立てられてきた、こういうようなことでそれぞれのやはりソーシャル・ニードというものは、その国によって違ってきておる、あるいは同じ国におきましても、時間的に歴史的に違ってきておる。ただいまの日本の状況においては、やはり日本におかれておるいろいろの条件等を考えた場合において、やはり拠出というものを建前として、そうして経過的に、あるいは補完的にこれを無拠出の年金を考えていく、こういうような仕組みを考えておるわけでございまして、御指摘になりましたように、賃金政策、あるいはもっと大きく言うならば、雇用政策、完全雇用政策、そういったもので所得活動というものが国民のすみずみまで活発になる、所得水準というものが高まっていくという経済基盤というものを作るということが第一義であって、そういうことを前提とするならば、むしろやはりわずかな金であっても、その自分の、あるいは自分たちの老後の、つまり所得活動がなくなった場合に対してのことを考えて所得活動のある現在の段階において自分たちの保険料というものを積み重ねていく、それに加えまして国がその半分の二分の一を見ていく、こういうような仕組みから、むしろ基本的に私たちは拠出制というものを考えておる。そういうような意味から、われわれの今度の年金の仕組みが考えられておると思うのでございます。で、この間も木下さんのお話にあったわけですけれども、自分が将来の所得活動がなくなった場合において、その所得の一部をさいて積み重ねていく、老後のことを考えていく、あるいは不事の障害のことについて保険料を出していく、あるいは夫がなくなった場合について、その母子家庭を守っていくというような意味合いにおいて、国民の一人々々がそういうような社会連帯の考え方からやっていくという場合において、その自分というもの、国民の一人というものを考えた場合におきまして、それは単に物理学上の、あるいは原子核というような、そういった個ではない、国民の一人ではない、やはり人間の苦悩というものを持った個人である、いわばいろいろの性格を持っておる。金を持った方もある、あるいは金のない方もある、しかし、金を持ったものは、これは老後のことは心配要らないんだから、何も保険料は納める必要はないんだ、こういう考え方でなくて、やはり自分の出す一つのお金によって、金のない個人というものが、やはり社会連帯という考え方から救われていく、保障されていく、こういう相互扶助の考え方、同時にまた、一面において金のない、現在所得活動のないところの個人というものは、それぞれの免除期間がございましょうし、あるいは免除される道もございましょうが、しかしながら、その方々がもし所得活動に入った場合においては、すぐさまやはりその一部というものを出して積み立てていく、そしてこの社会連帯の考え方に参画していく、こういうような考え方がやはりわれわれといたしましては、この国民年金の立て方として意義があるのではなかろうか、それがほんとうの国民年金ではなかろうかというような考え方から、実は拠出制というものを一面においては財政的な意味におきまして、この全部を無拠出にせずに拠出制を基本とした考え方の一つの理由ではありまするけれども、もう一つの大きな理由といたしましては、ただいま申し上げましたように、国民の全部がやはりこの社会連帯の考え方に徹して、そうして所得のある人はそれを積み重ね、それプラス国のお金というものでもってその老後の、あるいはまた、障害を受けた場合においてこれを保障していく、こういうような実は構想を考えまして、実は年金制度を考えておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/37
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038・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまは坂本委員から大へん広範囲にわたりまして、根本的な御意見を聞かしていただきましてまことにありがとうございました。また、政府を代表して、厚生大臣から詳細にお答えいたしましたので、私から別に答えなくてもいいと思いますが、ただ表現を少し変えて申しますならば、政治の目標は、申すまでもなく、国民の生活を向上さし、もっと心配のない懸念の残らない幸福な生活ができるようにするということ、それに目的を詰めることができるように思うのであります。一部においては、たとえば自衛隊は要らないということを言いますけれども、やはり安全を確保するというような意味においてはこれまた必要な事柄だと思います。政府が考えておりますのも、あらゆる面において、税の面において、あるいは金融政策の面においても、あるいは産業政策におきましても、ただいま申し上げるように、国民生活の向上とその安全を、何らの不安のないようにするということを念願してやるわけでございます。ところが、生きものでございますから、どうしても努力によって避けられないものがある。結局一定の時期が来れば年をとってくる、いつまでも働く意欲がありましても年をとった者、これは生活自身について不安を持つことになります。また、生きものでありますから、ときに病気にかかることもある、あるいはまた、失業という問題もございます。そういうことを考えますと、生活を向上さし、不安を除くと申しましても、当然生きものである立場から、また、活動をしている経済の情勢から避けることのできない障害にぶつかっていく。そういうものに対してどういう処置をとるかということが今日問題になると思うのであります。基本的にお互いの生活の向上なり、不安を除くという意味において、まず第一に取り上げられますものが経済の発展でございます。これは社会主義の諸君はどう考えられるか知りませんが、われわれ自由主義の者から見れば、経済の発展、同時に経済の発展を通じて完全雇用、これを達成すること——ただいま最低賃金のお話が出ておりましたが、完全雇用のうちにやはり賃金をも含めての問題があり、活動のできる者についての万全の方法としての、そういう意味のゆがめられない社会を作る、そうしてただいま指摘したような避けることのできない事態に対しての国家的なこれに対する対策を講じていく、そこで社会保障の問題が必要になってくると思います。しかして同時に、かようなものに対する財政的な支出というか、あるいは財源、これをいかにして確保するかという問題があるわけてありまして、制度そのものについてだれも異議を申し述べる人はない。ところが、国がいろいろ負担していく、国が諸制度を設けて推進していくという場合におきまして、国の力というものは一体何なんだ、これは言いかえると、やはり国民の負担、国民の税だ、こういうことを考えて参りますと、この種のものについてやはり拠出制を基礎にしてそうして適当な年金制度を考えていく。そうして当然避けることのでき場ない障害に対する対策を立てていく、これが今日の社会保障制度の基本的な考え方だと私はかように信じておるのでございます。もちろんわが国の社会保障制度の全般を見ますと、そのつどそれぞれの必要によって生まれて——あるいは医療制度にしても、あるいは失業保険にしても、その他のものが、いわゆる各種の社会保険というものがばらばらに出る、その間に統制というか、一つの体系もないようにも批判されますが、大きな目標に向っての一つの行き方とすれば、ばらばらという感じもありますが、構想のうちには一つのものを描いている。そうして今御審議をいただくものが国民皆保険と同時に、あわせて当然起るところの老齢だとか、あるいは未亡人であるとか、あるいは身体障害者、こういう者に対する対策を講じていくということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/38
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039・坂本昭
○坂本昭君 今いろいろと言葉に出ました国民だとか社会連帯の問題、これだけを論じておったらどうも大へんなことになりますので、私は話を先へ進めたいと思いますが、どうも今伺っておりますと、やはりだいぶ根本的に皆さんと私たちと違いますね。これは違っていいと思うんです。これで切磋琢磨して進んでいくと思うんです。たとえば厚生大臣は原子核の例をとられましたけれども、きわめてドイツ文学的な表現でございまして、原子核というものはそんな孤立して存在するということはないはずでして、やはり中のプロトンも、エレクトロンもそれぞれ連帯して存在しているのであって、私はその点が皆さんの人生観をもってしても、同じようなふうにわれわれの国民のあり方というものをつかめるのではないか。そういうことは皆さんの論理の中には非常に社会保障に対する慈恵的な、恩恵的な、お恵み的な考えが私はあると思うのです。これは一つには、——あまりこっぴどいことを申しますと、あと進みませんからあれですが、私はこう考えております。資本主義社会における社会保障というものは、労働力の維持と、労働の秩序、秩序の維持にある。それは先ほど厚生大臣は、社会保障は第二次大戦後に生まれてきたと言いますけれども、私はそうじゃないと思う。やはり歴史的に申しますと、十九世紀に始まったところもあります。ありますが、やはり第一次大戦というものが非常に大きな契機だと思います。第一次大戦によって社会主義の国が初めて生まれた。第二次大戦で十二社会主義の国ができた。すでに社会保障という考えは、第一次大戦のときから生まれてきているので、その点を認識されないと、厚生大臣の御勉強がおくれると思うのです。もっとスピードを出してやっていただかないと困るのです。それはたとえば無拠出制のことについて、これを経過的、補完的というお考えですね。これは非常に疑問があると思うのです。きのう公聴会で言われた方の中に、朝日新聞の論説委員など、非常に政府の原案をほめているのです。ほめちぎっているのですけれども、この人あたりは、やはり無拠出というものが基本だと言うのですね。そういう人が一人じゃありません、現にデンマークなんという国は、一生懸命無拠出に終始しているのですね。ですからこういうことについては、単純に経過的、補完的というようなことで割り切られると、今度は生活保護との関係はどうなるか。ああいうところに皆さんの何か思想の矛盾が出てくるわけです。そして国会の審議を通して、まあそれは生活保護に対しては老齢加算を加えようとかいうふうなことでごまかしているわけです。これはやはりごまかしだと思う。そういうところに思想の根本的な私は矛盾が出てくる。たとえばこれは仙台の公聴会でしたけれども、こういう意見を言う人があったのです。あまり所得保障をやると、なまけ者ができるから、ほどほどにしてくれというような——皆さんの中にも案外そういう考えがおありなのじゃないですか。あまり所得保障をりっぱにやってしまったら、国民がなまけるようになる。私は今日、国民が要求しているのは、なまけたいというようなことよりも、自分の持っている能力と、労働力をフルに使って働きたい。そしてほんとうに大蔵大臣の言でもないが、生産を高めていきたい。大蔵大臣の言によると、生産を高めて初めて賃金が倍になるのだ。池田蔵相の賃金二倍論を、社会党は勝手に理解してもらったら困ると言われておりますけれども、私はなまけ者を作るというようなことを皆さん方は心の底に思っておられるのではないか。そして慈恵的な考えを持っておられるのではないか。とすれば、もう一次大戦と二次大戦を過ぎた今日の時点における社会保障というものは、根本的に違うと思うのです。これはちょうどイギリスのビヴァリッジのあの社会保障が一九四二年と、それから一九五八年とで非常に違ってきている。おととしこれに対して労働党は新しい対策を出し、それからまた、昨年イギリス保守党もこれに対して一つの新しい提案もしています。最初の均一拠出制、それから均一の給付制といったものを変えようとしてきている。私はそういうことの中にも、今、日本のとりつつあるところの拠出制ですね。しかし、これは三十五才で前とあととあるけれども、均一的な拠出制である。これらを貫いて、今申し上げたような、何か私はまだ厚生大臣の第二次大戦後起ってきたものだというところに、歴史的にも理解の誤まりがあるのじゃないかと思うのです。私は簡単に一つ御説明いただきたい。あとでまた話を進めたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/39
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040・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) 私の勉強が足りないことは御指摘の通りでございますが、ただ、私が先ほど申し上げましたのは、もちろん第一次大戦以後においてそういうような歴史的沿革をもって社会保障というものが進められたということは私自身も承知をいたしております。また、文献等も多少は読んでおるわけでございますが、しかし、制度的にやはり各国において社会保障というものが大きくクローズ・アップされてきたというのは、やはり第二次大戦以後ではないか、こういうようなつもりで申し上げたわけでございまして、たとえばニュージーランドにおきましても、一九三八年にすでにできておる。しかもこの沿革をたどるならば、少くとも一八〇〇年代にさかのぼらなければならない、こういうようなことも指摘をされておるわけでございますし、あるいはまた、イギリスについて考えてみても、やはりその思想をずっと考えて参りまするならば、やはり救貧法時代の考え方からずっと進んできているのではなかろうか。そして第二次大戦の戦争のさ中において、この社会保障というものが考えられてきたということも、やはりわれわれも承知をしておるわけでございますが、少くとも制度的に、一般の世界的な風潮と申しますか、そういった形で出てきたのは第二次大戦後ではないかということを申し上げたわけでございます。しかし、この点につきましては、私まだ未熟でございますので、坂本委員の御指導を仰ぎ、これからも御意見をよく拝聴いたしたいと考えておるわけであります。ただ、御指摘の中にございました基本的な考えとして、無拠出が理想案なんだ、こういう考え方に対しましては、私はどうも賛成しがたいのでございましてこの点については、遺憾ながら私は坂本委員の、あるいは社会党案と申しますか、社会党の方々の御意見と、あるいは違うかと思うわけでございまして、やはり先ほど大蔵大臣から申されましたように、どうしても自分の力では、あるいは老齢のために、あるいは身体障害のために、あるいは母子家庭のために働くことができない、所得を得ることができない、働こうと思っても働くことのできない、そういった方々に対しては、国がこれを見ていかなければならない。国が見ていく責任がある、義務がある。こういう考え方であるけれども、しかしながら、所得のある人は、やはり自分の老後の生活、あるいは不時の場合等におきましても、やはり自分が守っていくセルフ・ヘルプの考え方というものがやはりその基本の中にはある。社会連帯の考え、及びそういった、どうしても所得活動のできない人に対しては国が見ていくけれども、所得のある人たちには、やはりセルフ・ヘルプの考え方を基本に持っているのであります。そうして、たとえば所得活動に入らないような人は免除期間があるけれども、しかし、一たんその方が所得活動に入った場合は、やはりその一翼をになっていくという考え方の方が社会としてはむしろ健全ではなかろうか、国民年金としてはむしろあるべき姿ではなかろうかというような考え方から、実はこういうふうな建前をとっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/40
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041・坂本昭
○坂本昭君 今、私は無拠出が理想案だとは決して言ってないのです。それからちょっと大臣、困るのです。社会党の国民年金法も少し勉強して下さい。あの中には、もちろん計算上のずさんな点もあります。われわれは政府を持っていませんから、厚生省のたくさんの役人も持っておりませんし、電子機械もないものですから、悪い点もあるのです。しかし、あの中には非常にすぐれた点もあるということを私は自負しております。社会党の原案は決して無拠出を理想案としてはいません。厚生大臣ともあろう方がそういう理解ではもう一ぺん、何度も何度も出して理解してもらうようにやらざるを得ないと思うのです。
ただ、そこで今度は大蔵大臣、私は第一次大戦から——特に皆さん方、アリカを非常にお手本にしておられますから、それでは私も繰り返してニュー・ディールのことを申し上げて、これについては、また総理とも一つ意見を聞きたいと思っておりますが、私は何もニュー・ディールというものを突然持ってきたのではなくて、あの第一次大戦後に起った、一九三〇年から起ったところのパニックというものを私は過剰生産恐慌であるというふうに見ておるし、大体これは定説になっておると思う。そうして、日本のおととしあたりから起ってきたところの現象も、同じような意味で過剰生産的な、パニックまで行かなかったとしても、過剰生産的な状況で、やはり第一次大戦後のアメリカに起ったような一つの経済的の状態が日本にも起ってきたのではないか。従って、そういう点で、対策として非常に似たものがある。これは大蔵省の中にもやや似たような御見解を持っておる方がおられると思う。池田賃金二倍論なども、若干そういう点に私は触れているじゃないかと思う。だから、そういう点で、あの一九三五年の社会保障法、アメリカの社会保障法というものを、日本は日本なりに、過去の一つの実験として理解すべきではないか。私はそういうふうに理解し、そういう面で、あの当時に、一番最初にルーズヴェルトが憲法を無視して最低賃金を強引にやった。あとであれは違憲裁判になって、結局大統領が負けたような格好になったんですね。しかし、あのときにルーズヴェルトのやったやり方が、労働基準法としてアメリカの今日の最低賃金法の出発点を作った。しかも、あのルーズヴェルトのやったやり方は、減税と賃上げと、それから社会保障、この三つの方法によってあの過剰生産恐慌というものを乗り越えたのではないか。私は、そういう点で、今の日本のおととしぐらいからの状態は確かに過剰生産の状態だと思う。これに対して施すべき方策として、あのルーズヴェルトのやり方を、減税面、あるいは賃上げの面、あるいは社会保障の面で取り上げるべきであるか。ただ皆さん方の中では、厚生大臣は今の社会保障の面だけで一生懸命やっている。それから大蔵関係の人は賃金二倍論というような賃上げの論をやっておる。それから佐藤大蔵大臣は減税々々とやっておる。どうもそれぞれみなばらばらの気がする。衆議院の討論などをちょっと読んでみましても、大蔵省と経済企画庁と厚生省とちっとも一緒にやっておらない。みなてんでんばらばら。こんなことでは日本の政策というものは打ち出されることができないじゃないか。特にこの際は、やはり景気問題が中心になるので、大蔵大臣に一応あの当時の一九三〇年ごろのパニックに対する見方と、今の日本とをどういうふうに見比べておられるか。その中で、社会保障、減税、賃上げの問題をどういうふうに大蔵大臣として見られるか。それを一つ承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/41
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042・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 御指摘になりますように、やはり経済の活動、あるいはそれによる財政力というものが基幹をなすこと、これはもう御指摘の通りであります。今一九三〇年時分のアメリカのニュー・ディールのお話が出ておりますが、このアメリカの生産力、過剰生産力という問題と、日本が今当面しておる過剰設備投資という問題は、これなどは実はほとんど比較にならない状況でございます。御承知のように、大戦に勝ち抜いたアメリカ、戦時中に非常に膨張した設備そのものをフルに持っておるアメリカと、日本などは戦争で負けて、すべてのものを荒廃に帰し、今ようやく再建途上にある、ある程度片づいた、こういうようなものとは、およそもうその規模においても性格においても違っておると思います。従いまして、アメリカのニュー・ディールに対して、あの緊急な非常措置とは、およそ事柄が違う。でありますから、昨年なりあるいは三十二年なりのわが国の経済に対する見通しなり、あるいは対策というものは、小さい規模であり、小さいものとしてそれぞれの対策を講じてきた、そういう意味では大体よく成功しておりますので、あまり御心配をかけなくても済むのではないかと思います。先ほど来の年金制度の創設にいたしましても、わが国の社会保障制度がばらばらであったということも、これは結局わが国の経済力なり財政力が、その自分たちの理想とするもの、目標とするものの実現が不可能であったという一語に尽きると思うのであります。で、基本的な考え方で私どもはその順を追うていくというか、それぞれの順を追うて制度の改善を実はいたしております。で、今の社会主義の国家のやり方と、われわれ自由主義諸国のやり方とはその意味では根本で違っておると思うのであります。先ほど来のお話でも、たとえば社会保障制度は労働力の確保なり労働秩序の維持というものがやはりねらいじゃないかという御指摘でございます。これはやはり自由主義の国で労働力を確保し、労働秩序を維持する場合におきましては、やはり産業の拡大なり産業活動の発展ということを実は考えております。しかしながら、社会主義の国におきましては、あるいはソ連において、あるいは中共において、とにかく仕事の量自身をまあノルマの形においてとにかくしいている。そういうしいる力は一体どこから出るか、およそ自由主義の国ではそういう方法はとれないものだと思うのであります。私はこれは行き方がいいとか悪いとか申すわけではなくって、幸いにして、坂本さんは各方面のとってきた対策を一々詳細に御披露になりますので、根本に考え方がそこに違っている、その違いがある。その違いから出てくるいろいろの処置が、やはり制度としてはあるいは不徹底である、あるいは段階的だと考えられるものが多分にあるだろうと思う。これは自由主義の諸国においてとりますものは、そういう意味では段階的であり、程度が低い、こういうような御批判はもちろん受けるだろうと思います。しかしながら、この自由主義の国としてやっていく場合には、先ほども申すように、順次その段階を追うていくという方法をとっていくというのが私の考え方であります。しかしながら、そういうような平素の考え方ではございますが、非常緊急事態になりますと、自由主義の国においても、かつてルーズヴェルトがとったような減税も断行するし、一面、同時にまた、賃上げもするし、あるいはまた、社会保障制度も拡大して内需を非常に喚起する、こういうような緊急の措置をとるべきでございます。しかしながら、その基本はやはり自由主義の建前できているということだけは見のがせない根本的な相違として御理解をいただきたい。そういう意味でごらん願いますと、今回の年金制度にいたしましても、いろいろ今後工夫を要するものがあるでありましょう。また、いなかにおいて七十才以上の人が月千円というのは相当魅力であるかもわかりません。しかしながら、相当生活の高い都市においてはそういうものは魅力でないかもわからない。あるいはまた、当然のことですが、先ほど来言っておるセルフ・ヘルプとでも申しますか、みずからがみずからの生活を規律していく、それがまず第一だというのは、これは申すまでもなく、自由主義の政治のあり方を建前にしておる者の当然の道なんであります。そういう意味のことを考えますと、やはり力のある者はみずからはみずからでやっていく、同時に、そういう自分の余力を持ってお互いが助け合っていく、こういう考え方が、これはもう普通の私人間においてもございますが、国の場合においても当然そういうものが考えられる。これが税の形において国自身がこれを支持していく、これは絶対にいわゆる慈善事業、慈恵的なものとしてこれをやるというような考え方で社会保障制度など推進はできないと思います。これはもう当然、冒頭に申しましたように、りっぱな社会、安心のできる社会を作る、こういう意味のその考え方に徹して初めてやれることで、だけれど、そういう場合においてやはりその受益者というか、当然の負担というものをやはり持っていただくという考え方で進めていきたい、まあ基本的なものの考え方としては、私個人の考え方ですが、基本的なやはり自由主義の政治形態をとっておるという建前から、結論的あるいは出てきている表現がそれぞれ違っているのじゃないか、こういうふうに思います。これは非常にくどいことを申しますが、冒頭に申した労働力の確保という点など、これは非常にはっきりしておる。この一事を御留意願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/42
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043・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は関連して大蔵大臣にお尋ねしたいのです。
大蔵大臣のさっきと今のお話の基本的というのは、経済の発展、国民の幸福な生活、完全雇用、こういうものを建前にして社会保障を進めていく、こういうお話でございます。この問題は、そういうお話で、今の政府の経済計画を見ますと、大体年間六・二%ですか、という成長率を含んでおられる。それで見て七十才以上の方々に千円の無拠出年金をやられる、三十六年から四十年間の拠出年金をして三千五百円、こういう構想で五年ごとに調整するのだと言うけれども、法律の中では、明確に貨幣の価値の変動や経済変動における明確なスライディング・システムというものが表われていないのである。そうすると、一つにおいては経済の成長を、一応当るか当らないかは別といたしまして、ここ五年か十年の経済計画というものを大体そういう目標に置いておられる。置いておられて、一面においては、幸福な国民の生活というものをやるにしては、四十年かけて四十五年後に三千五百円ということで、要するに年金の規制というものをされるということと、大きな矛盾がありはせぬかということが私のお聞きしたい一つでございます。
それからもう一つの点は、先ほどアメリカのニュー・ディールの話が出ましたが、私はニュー・ディールの産業復興が、その当時のあの現状と日本と今直ちに対比して私は議論をしたくはございません。しかし、少くとも今日一兆二千三百億円の資金運用部資金を持っておられる、そこから上って来る資金の大半というのは国民から、一つは貯蓄があるでありましょう。一つはやはり社会保険から蓄積されてくるものが大きな財源になっておると思うのです。そういう大きな財源をもって運営をされているわけでございますけれども、日本のそれじゃ経済回転の問題はどうか。大きく過剰生産への議論が昨年、一昨年あたり相当されておる。昭和初めの戦前ベースと比べてみて、今日二八〇か三〇〇くらいのところに生産力があるということが報告されておる。しかし、設備の面から見ますと、私は四〇〇%越えておると私は思います。生産という面から、そうすると、そこには二割とか三割とか生産をコントロールして価格カルテルというような議論が出るというような格好で、生産力は大企業に独占されて少数の会社が国民に高い負担で消費物資を押しつけていくという形も一つの現象には現われておる。中小企業が非常に困難な状態におるというのも現実の姿でございます。
もう一つ、私は大蔵大臣に指摘したいことは、完全雇用という問題でございます。完全雇用というのをどういう工合にして把握されているか、どうしようとしておられるかという問題が重要な問題だと私は思うのです。生活水準の高いところから見て、日本の潜在失業者はどこに置くかという問題であるとか、いろいろ議論があるでございましょう。しかし、所得の水準、一定の所得水準以下潜在失業という格好で文化的な生活というものと対比して見るときには、非常にたくさんな潜在失業という問題が出てくるでございましょう。しかし、私は、今日潜在失業の問題をまず横に置くとしても、労働力の調査の結果出てくる五十万や六十万という失業者が今日の失業者であるかどうかということが大へんな問題だと私は思う。たとえば職安の窓口に登録しておる人でも六十万をこしておる。失業保険をもらっておる人も五十万近くある、これを単純に合しても、小学生でもわかるように、百十万以上の完全失業者、その他農業労働者から雇用労働者への転換や、または自家就労に落ちておる学卒の問題を計算いたしますと、失業者という概念に入るだけでも二百万をこえる。そこにおいて五反歩以下の季節労働であります農民労働者を含めて千二百万もあるのでございますが、千八十万くらいの農業労働者が平均五反歩かそこらの反別を耕してお互いに乏しい生活で食い合っておるという現実が一方にあるわけでございます。片方は、オートメーションにおいて人間が要らなくなるといって生産がどんどん上れば、そこからは労働者はだんだんあぶれてくる、こういうふうになってくると、どういう問題が出てくるかというと、時間短縮からくる労働力の配置再編成という問題が私は近代国家の姿の中に出てくる。老年には社会保障という形において購買力を満たす問題が出てくる、それがあわせて経済発展への購買力、経済発展の問題からニュー・ディールという問題は一つおくといたしましても、日本の経済計画の中にそういう問題が具体的に出てこない限りにおいては、さっきのこの年金法案の四十五年もたって今の価値で三千五百円の年金を上げたいというようなことを言っておることと、今現在行われている政府の経済政策とは同じような生かす殺さず、そうして結局慈善や恩恵によって格好だけは社会保障であるということを言われても私はしょうがないじゃないか、そういうところに経済政策をおき、この社会保障の考え方をおかれておると思う。そこで私は、公聴会で先日も少し議論をしましたが、日本の賃金は格差がある、格差が非常に大きいから上の賃金を押えておるのだという議論がある、しかし、私も外国の工場を見て、日本の工場はオートメーション化しておる、工場の設備、能力を見ても同じ状態にあるじゃないか、これは特殊なものであります。それではせめて欧州なみの賃金にあるかというと、これはとんでもないことであります。そういう状態で格差がはなはだしいから上の賃金は押える、そうして業者間だけできめる、最低賃金の問題でもああいう法案が出てくる、これはみんな関連しておると思う。だから結局は、壮年者にあなたの言われる完全雇用というのは、勤労の喜びの中に人生を全うしていくという物の考え方で仕事を与えるという方策、老年だとか働けない方々には社会保障で購買力を与えて、国全体の仕組みの中で生活を守っていく、そういう形の中での福祉国家というものを今日世界各国が競っておる。ですから年金であるとか、医療保障であるとか、社会保障の中心になるこの施策について特に近代国家といわれる国は非常に大きな力をつぎ込んでおられる。日本も六大産業国であるとか十大産業国というものにだんだん発達しておる。発達しておる日本の国において千円、四十五年後三千五百円という年金を計画して、それで真剣に社会保障を考えておるのだということは、国内では通用するかもしれないけれども、今日の国際環境の中で国際的に進んでおるものと対比してみるときに、そういう具体的な問題とあわせて、社会保障というものの高遠な理想のもとに、国際共通の問題の中で認められる実態の法案であるかどうかということが私は出てくると思う。長くなりますから、まだまだそれに関連してありますけれどもやめます。そういうことについて、大臣はどういう工合に、経済との関係、完全雇用との関係で社会保障というものがどういう姿であるべきかということと、今度の法案に出てきている問題との関係をもう少し説明をしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/43
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044・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 藤田君と労働問題なり労働政策について論議をしておるとこれは時間が際限もないわけでございます。それで、大体その点は労働大臣が参りましたら、一つ十分御意見を交換していただきたいと思いますが、私どもの考え方は、先ほど来申しますように、経済全体を繁栄さすということが結局生活を向上さすゆえんであろう。そこで、そう思っても、やはり失業もあるだろうし、病気もあるだろうし、老齢というような避けることのできないものもある、そういうものに対して適当な保障の制度を立てていく、それを所得保障とおっしゃろうが、あるいは医療保障とおっしゃろうが、それはいずれでもけっこうですというのが私どもの実は考え方であります。そこで、問題になりますのは、この四十五年先の三千五百円、いかにもそれは少額じゃないか。四十五年先になると、今の長期経済計画から見れば毎年六・五%ずつ伸びていくということを考えれば、給料も三倍以上になる時代でございましょう。そういうことを考えると、それは非常に生活自身も向上している時期じゃないか。まあことに日本の労銀は安いという点を御指摘でございますが、この労銀そのものは一面生産性と関連のあることはこれはもうだれも異存はないだろうと思いますが、同時に、諸物価といいますか、生活自身が床どういうふうな状況にあるか、他の物価との関係も多分にあるわけでございますから、賃金だけが先に進んで、諸物価が高騰して名目賃金は上ったが、実質賃金は依然として苦しいという状況では、いわゆる賃金を引き上げたということの意味はあまりないだろうと私どもは考えるのであります。そこで、一面この経済政策の基本は産業拡大はしていくが、通貨価値の安定ということがもう一つの条件でもございます。従いまして、今日は二万円近い平均給与になっているといいましても、一体今の貨幣価値と戦前の貨幣価値と比べてみるとこれは問題にならない数字なんであります。まあそういうことも一つ考えなければならない。ドルの話が出ましたが、私どもちょうどこのニュー・ディールの実施直後にアメリカに参りましたが、その時分は一ドルが非常に都合のいいときで三円五十銭とか、非常に悪くても五円以内でとどまっておるときで、非常に生活が楽だった、三百六十円前後の今日のドルとはおよそ違っている。だから、通貨価値が不安定である限り、また、名目賃金はどうであろうと、また、収入がどうであろうと、そういうことはいけない。やはり実質的に生活にゆとりができるような物価政策なり、社会生活の実態でなければならぬ、そういうことを考えて参りますと、いわゆる豊かな経済活動ということがこれはもう必要になってくるのであります。ただいまオートメーションのお話も出ている、能率が向上する、あるいは働く人は必要なくなりやしないかということを言われますが、一日八時間労働がこれは最も適当な労働時間で、それだけはフルにやるが、それでも足らぬから超勤までやると、こうまで考えなくても、非常に設備なりあるいは技術が進んでくればそれはもう六時間でけっこうだという時代だってくるだろう。現にアメリカなどの生産施設その他から見れば、土曜、日曜は休んでいるというようなことも現にやっている。しかし、それで賃金カットなどはやっておらない。こういうのが真の生活向上、充実した生活ということを意味するものだ、かように私どもは思うのであります。そういうものをとにかくやっていく、完全雇用だとか、あるいは失業者の実態はどうして把握するのだ、こう言われますと、なかなかそれは困難なことでございましょう。非常に経済の活動力のあるアメリカにおきましてもこれは相当の失業者は出ておる。しかしながら、総体といたしまして、いわゆる町に餓民がないような、飢餓の民がないような形がおそらく経済政策としては当然だ、そういうことをやっていこうというのが私どもの実はねらいなんであります。そこでお尋ねになります四十五年後の三千五百円、これはずいぶんひどいじゃないかというお言葉、四十五年先になりましてあるいは今日考える三千五百円の価値が非常に変っておるかもわからないし、また、四十五年後の国民の生活水準というものは相当高くなっておるに違いないと思います。それはまた向上させなければならない。そこで、今回御審議をいただいております法律案の第四条というものが、そういうものに対する救済案、救済策を立てる条項じゃないかと、私かように理解をいたしておるのでございます。今日、それかと申しまして、全然、四十五年光のことを一応の想定で、あるいは生産指数がどうなり、生活はどの程度まで向上する、そういう場合に一体どうなるか、そこまで考えていくのも親切なやり方でございましょうが、むしろ四条の規定によりまして、これを適当に修正していくことがより望ましい方法ではないかというのがこの基本的な考え方でございます。御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/44
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045・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 どうも大臣は、私はとにかく名目賃金が上ったからいいのだとか、これはそういう私が認識の上に立って言っておるというのは、これは認識不足ですよ。そういう誤解のもとに議論を進めてもらっては私は困る。今日の私の言っているのは、問題は、社会保障を、ほんとうに今の国際的な社会保障というものの概念を、私はもう繰り返しませんけれども、そういう形で進んでいくということは、一面、経済の面にはね返ってくると、国内における経済回転に重要な意義を持つのじゃないかということを言っておる。そういう意味からいって、経済の成長率が今のような計画であるとすれば、今の失業者がこういう状態である、それを完全雇用するとおっしゃるけれども、労働省と議論いたしますと、今の労働力の調査から出てくる五十万の失業者、これを完全に対策を立てる、今半分立てているのだから、外国から見ていい方だ、こういう認識で失業者を把握したり、潜在失業者を把握したり、一千百万から出ている、厚生白書からくる生活に困っておるボーダー・ライン層問題というものをそのままにおいて、あらゆる経済政策の恩典というものが、大企業や独占企業につぎ込まれていく、あなたの言っている経済政策というものだけでは、今出されている法案と対比して見たら、とにかく余った金でつじつまを合せておこうという社会保障です。いかにそこでりっぱな社会政策の概念を言われても、われわれには理解ができないのじゃないかということを言っておる。だから、その拠点はどこにあるかというと、労働政策というのは経済政策です。経済の政策からくる労働の対策というものを立てなければ、労働問題を幾らさわってみたところでどうにもなる問題ではない。だから、労働対策の根本は、国の経済計画、経済政策をどう立てるかによって労働者で保護されるか保護されないかという問題。社会保障もそうです。そういうことになって参りますから、今の政府がもくろんでおられる成長率の中における、この貧困な人たちに対する政策はどうしてやっているかという話がここへ出てこなければならないと私は思う。大臣はこういうふうな政策——経済発展と完全雇用をするのだと言われるけれども、それはわれわれは受け取れないのです、実際に。今の現実について具体的な施策の手が伸べられていない。同じような格好で、年金も、今のような格好で進むような年金法案が出てきて、四条の貨幣価値や経済変動のときにどうするという明確な処置を立てないで、そういうものは五年ごとに調整を考えるからというだけでは、今、国内経済政策としておとりになっているやり方では、貧困の生活や失業に苦しんでいる方々をそのままにおいて産業は進んでいくでございましょう。しかし、そういうものの状態と同じようなものの考え方でこの問題と取り組もうとしておられるのじゃないか、だから、今の工業化、生産化、こういう中において、今の日本の労働力をどう配置して、貧困生活者をどう救っていくかという具体的な経済政策というものをお立てにならないと、この問題は、結局品で言われるけれども、われわれは理解できませんということを言っておるのです。御所見を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/45
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046・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 私も、賃金論で、藤田さんに、名目だけ上げればいいじゃないか、こういうことを言ったわけじゃございませんし、また、あなたがそういう意味でお話になったとは思わない。大事なことは、あなたと同様に、実質賃金の上ることが必要なんだということを私は申し上げたかった。そういう意味で、その点は誤解のないように願います。
問題は、経済成長の率から申せば、先ほど申すように、年々六・五%の成長計画をいたしております。また、今日、ことしなどは六・一%といいますか、今までの成長率が、経済より以上に上回っておりますので、今日までのところは、大体長期経済計画の線を実はたどっております。順調に私は伸びておると思うのであります。一時的な停滞はございますが、総体としては、当初計画された線の方向で伸びております。そこで、就労人員の計画なり、あるいは失業人員の計画なりも、数字的に大差はない、非常な大きな狂いはない、こういうような見方をいたしておるものでございます。そこで、各産業につきまして、今後は近代化が非常に大きく取り行われることだと思います。この近代化を行います場合に、一面においてやはり低物価政策ということは言われておりますものの、弱い者いじめ、それの負担において低物価が維持されるということでは、これは適正な物価政策だとは言えないと思います。どこまでも生活の向上をはかり、能率的な経営合理化によって、賃金カットなどしないことによって、やはり低物価の方向に物が生産される。その努力を進めていくべきじゃないか。こういうふうに思います。これも一国だけの物価ではなくて国際的な物価水準というものがございますから、大体の基準になるものがあるので、非常にきつい経営合理化をしいる、こういうことはなくて済むのじゃないかと私は思います。問題は救済、その問題は第四条で、政府当局といたしましては、御指摘になりますような点については、救済の道が開いてあるというのが私どもの考え方でございます。それは一部において、先ほど来の御意見のような、四条の救済では足らない、これは不十分だ、こういう御意見はあるかもわかりませんが、私どもはこの四条で十分だ、こういう考え方でただいま審議をお願いしておる。この事情にございますから御了承いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/46
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047・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 四条には、生活その他の事情においてということだけしか書いてないのですね。大臣お読みになったと思います。そこで、たとえば、貨幣価値の云々というような問題、物価の変動した場合にどうするのだということを、足りるというのはあなたの主観であって、法律というものは、その法律に書かれたものが動いていくわけですね。たとえば、先日もここで議論がありました戦前の郵便年金三千何面億円というのは、そのまま払う方法がなくて、戦争が終ったとき、貨幣価値が変っておっぽり出されているという問題がここで出ました。それからいくと、今の条項だけでは、あなたがどういう工合に、総理大臣といつどういう格好で、具体的なものを、変えるなら変えるという明確なものがないと、これだけでは不安定じゃありませんかということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/47
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048・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 「国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、」まことに日本語は便利な「その他」という表現を使ってあります。ここでただいま御指摘になるような問題は、もちろんこれに入る、かように私は理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/48
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049・坂本昭
○坂本昭君 私は、先ほどの私の議論を進めて参りますが、ちょうどたまたま四条の言葉が出ましたから一言。日本語は大へん便利だというのですが、第四条一項の「保険料の負担を伴うこの法律による年金の額は、」とありますね。そうすると、この保険料の負担を伴わない年金の額は調整を加えないのですか。これは厚生大臣と大蔵大臣と両方にお聞きしたい。第二項のところは「保険料の額は、」「所要の調整が加えられるべきものとする。」と書いてある。ところが、一項の方は「年金の額は、」じゃなくて、その頭に形容詞があるのです。日本語は非常に便利です。「保険料の負担を伴うこの法律による年金の額は、」と、保険料の負担を伴わない年金の額は、これはもう調整しないか。これはちょうどたまたま今出てきましたからお尋ねするわけです。どちらからでも。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/49
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050・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) この保険料の負担を伴う場合は、第四条ではっきり書いてある。それからこの保険料の負担を伴わない場合は、この規定では、ございません。これはもう常識的に見まして、この今のような事態が、先ほど御指摘になるような場合がございましたら、それはもう政策的な観点に立って処置されるのが当然だろうと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/50
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051・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) ただいま大蔵大臣が答弁いたしました通りでございます。そういう意味に理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/51
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052・坂本昭
○坂本昭君 主管大臣、もう少し責任ある答弁をして下さいよ。そうしたら、保険料の負担を伴わないとすると、無拠出ですね。無拠出の場合は、これはもう常識をもって調整するわけですか。一体どんな常識で調整してくれますか。厚生大臣にお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/52
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053・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) やはりこれは、一般生活水準の問題、あるいは生活保護法等の問題等々いろいろございますので、それらの問題等もあわせ考えまして、処理したいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/53
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054・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 今厚生大臣が言われる通りでございます。これはその生活保護の場合に、一体その金額はどこに書いてあるか、あるいは恩給の場合一体どこに書いてあるか、こういうことが当然今のような御疑問からは続いて出るわけです。そういうものについては、これはそのときの経済情勢なり、また、政治的な考慮からちゃんと判断をしてそれぞれきまると、かように私ども理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/54
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055・坂本昭
○坂本昭君 なかなかけっこうな御判断で、こうなるともう法律など要らなくなってくるのですが、これはどうも私は一つの大きな問題点じゃないかと思いますね。もうすでにこの「著しい変動」ということについての調整の問題が今までずいぶん議論されてきておる。その中で、無拠出についての規定をはずしているということは、なるほど無拠出の方は経過的、補完的で、もうなくしてしまうという前提に立っておられるかもしれませんが、今度出発するのは無拠出から出発するのですからね。現にイギリスの場合あたりは、二年ぐらいでもう調整していますよ。調整している。そうしますと、これを今のような常識でやるというようなことでは、これは国民がなかなか承知しないと思います。厚生大臣は、大蔵大臣の答弁の通り、大蔵大臣は、厚生大臣の答弁の通り、そういうことでよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/55
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056・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) これは前の委員会でも申し上げました通りに、今日社会保障というものが非常にクロース・アップされまして、近代国家としてならば、どうしたってこの社会保障というものを進めていかなければならないというような前提に立っておるわけでございまして、そういった立場から考えていくならば、今答弁いたしましたようなことで私は十分これはできるものであるというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/56
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057・坂本昭
○坂本昭君 この今の形容詞をおのけになったらいかがですか。のけられても私は文意が通ずると思うのです。何も書かれたのにいつまでも拘泥する必要はないと思うのです。私はまだきょうは本論に入らないのですけれども、たまたま問題が出てきたものですから、そこで、ここで大蔵大臣に御注意を促したのですが、きょうはこれはあとに回します。私もあとでおもなところについてお尋ねしたいと思っていましたから。ただ皆さん方が、おれの作ったものは理想案だというふうな態度でもし終始せられたとすれば、非常に問題だと思います。それでは衆議院も参議院も要らないのです。私たちも慎重審議して、この疑問と思われる点、直したらいい点、予算の中でもまかない得る点などについてはできるだけ直して、国民が安心していくような方法をとっていただきたいと思うのです。で、まあこれはまたあとに譲るとして、大事な本論にこれから入りたいと思いますが、先ほど来、大蔵大臣の言葉の中に、だいぶいろいろと合点のいかない点がある。社会主義の国では労働が強制だとか、自由主義の国だけがほんとうに自由な労働だとか——これはまた日をあらためて議論することにして、ただこのことは言えますね。日本の社会保障は、厚生大臣言う通りに、第二次大戦以後じゃありません。もう三十年の歴史があるのですね。ところが、この出発点が労務管理からきているということ、労務管理からきているのであって、必ずしも自由な立場で労働者を守ってきたのではないということは、これはもう常識だと思うのです。
そこで、これからの本論は、まず大蔵大臣に、年金制度というものが、私は非常な経済的な効果がある。そうして、この年金制度の経済的な効果をどういうふうに考え、どういうふうに持っていくかということが、むしろ今日諸外国においては非常な問題になっているのです。イギリスの場合にも問題になっているし、アメリカの場合にも問題になっている。特に積立金の問題を中心として、ちょうど私今ここに、アメリカの最近のロバート・コマイヤーズという人の発表の中にも、「多額の準備金をもつべきであれ、あるいは、ただ一時の危急に見合う基金をもつだけでよいにせよ、主たる考慮が給付と被保険者に対して払わるべきであることが、最も重要なことであって、準備金に対する財政問題は第二次的な問題である」というふうな特別な意見も出ておるのです。で、私は、この点を中心にして、年金制度の経済的効果がどんなふうに現われるか。これは一番よくわかるのは、賦課方式と積立方式を並べていくと非常にはっきりしてくるのであります。で、先ほど第四条の問題がだいぶ出ましたが、きのうも公述人の中の朝日新聞の論説委員は、調整が加えられる、その調整もずいぶん幅の広いことを考えられておる。積立方式をくずしてしまって賦課方式にする。それも一つの調整だという、そういうことになると、全く無計画だ。あまり無計画で、そういう点で、経済効果についてはこの際特にわれわれとして腹をきめておいて、場合によれば賦課方式に移らにゃいかぬかもしれないし、そのためにはどういうふうに準備をしていけばいいか。あるいは経済企画庁、大蔵省、厚生省が、三者寄って十分な検討を加えていく必要も出てくると思う。
そこで、まずこの年金の中で、賦課方式の一番典型的なものとして、厚生省で、官房の企画室でいろいろと検討した中に、久保まち子さんの久保構想というのがあります。詳しいことは存じませんが、簡単に申し上げますと、久保さんは、老齢人口を五百三十三万、そうして、これに対してさしあたって年額一万円——将来はこれを少し上げるのですが、さしあたって三万円。これを計算すれば、千六百億くらいのつまり年金が必要になるわけですね。この千六百億くらいの年金に対して、全納税者の総所得の二・三ないし二・五%を年金の拠出として出す。これで計算しますと、拠出された年金の額は、九百三十九億。ただしこの場合、これは昭和三十五年について計算をして、国民の所得の成長率を五%と見ているのです。五%と見て九百三十九億。従って、約千六百億とこの九百五十九億との差額が一般税収入から補給しなければならない額になってくるわけです。約六百億ですね、この六百億について賦課方式をとってやっていこうというのが久保さんの一つの非常にはっきりした賦課方式の立場、もう一つはこの積立方式であります。これはすでに厚生省の国民年金委員検討試案というやつですね、この試案の中で出されているのは積み立てていくやり方であります。で、この場合は積立金がだんだん積み立てられていく、そこで厚生省自身で検討された結果によると、経済的効果が一番出てくるのは十年から十五年、制度が始まって十年か発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/57
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058・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) これは非常にむずかしい問題でございまして、あるいは詳しいところは審議官の方からお答え申し上げたいと思いますが、まず第一に、やはり最初の段階といたしましては、無拠出の年金が十一月から行われるのでありますから、今年度といたしまして、この百億というものがいわば老齢者、あるいは障害者、あるいは母子世帯という方々のいわゆる低所得者層に対しまして、この百億というものが流れていく、まあ平年度化するならばこの金が三百億流れていく、こういうような形におきまして、相当に消費水準というものが高まる、あるいは購買力が出る、こういうようなことが一番最初に出てくる経済的な影響だというふうにまず考えます。しかしながら、何と申しましても次の段階、つまり無拠出でなくて、拠出の段階になりますると、最初の間はこれまた、いわゆる母子世帯であるとか、あるいは身体障害者であるとか、そういうような方々に対して行くわけでございまして、そう経済的な影響は高く見るわけには参らぬというふうに思います。それにいたしましても、三十六年度におきましては、拠出金が二百五十二億円、あるいは国庫負担金が百二十六億円、利子収入その他を合せますると、大体三百九十億円の積立金が出るわけでございまするが、これがまあ、相当な経済効果を持つだろうというふうに思います。将来、またさらに進みましては、お説の通りに、積み立てられましたところの金というものが、いわゆる預金部資金に入るとか、あるいはそれによって産業の投融資が行われるという形におきまして、一応の景気の調節作用も出てくるでありましょうし、あるいは経済成長に影響を与えていくと思いますが、まあ、われわれ厚生省の立場といたしましては、これらの保険、少くとも保険料を納めた額ぐらいは、やはりこれをその預金部資金の運営でなくて厚生省自身の運営、これはもちろん審議会等ございまして、民主的な運営というものをやるわけでございますが、そういうような形におきましてこれが運営をされる、あるいはまた、その中の一部というものは、老人ホームであるとか、あるいはまた、病院であるとか、その他の、いわゆる保険料を納められた方々の社会福祉の関係に還元をしていくという形においての一つの影響をも持っていくだろうと思うわけでありますが、私どものところでこれは計算をいたしましたわけで、これはいろいろの計算の仕方があると思いまするけれども、大体三十七年度におきまして六・五%の経済成長率があると見ますると、大体これに対してこの影響が六・七%、つまり〇・一%というふうなことが計算をいたされるわけでございまして、さらに五十年度におきましては、二〇%の増加というものが、所得効果が出てくる、こういうような計算が一応なされておるわけでございます。この計算方法等につきましては、いろいろなやり方もございましょうし、見方もあるわけでございまするけれども、われわれといたしましては、一応こういうような計算の上に立っておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/58
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059・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 積立方式と賦課方式、それを採用した場合に、経済的効果、影響いかんというお話でございまするが、御承知のように、今の積立方式をとりまして、十年後には大体五千億をこすでしょうし、二十年後は一兆円をこすという、まあ大へんな積立金になると思います。そこで、賦課方式のように、実際に給付の必要を生じたときに出すというのも一案じゃないかという議論でございますが、そのときに支出するものは、非常に、やはりこの年金そのものの支出は経済を刺激する効果のあることは見のがせないと思います。いわゆる積立金の運用そのものもさることですが、その必要によって出します場合、そういうような点も一応考えの中に置かなければなりませんのと、もう一つは、せっかく年金制度を設けたが、一体政府は何をしているのか、いざ出すというときになれば千六百億とか二千億というような金は出せるのか、年金制度に対する信頼性を持つ意味からも私はやはり積立方式の方が望ましいのではないかという感じがいたしております。そうしてやはりなしくずしと申しますか、平均しての積み立て支出をしていくということが財政的にも可能な方法のように考えます。先ほどお話しになります久保方式のように、他の一般の納税者が幾ら幾ら出せばそのくらいの金は出るじゃないかという計算ですね、また、経済の発展を見越してのお話しもございますが、これはやはり国民と政府とが一体になってこの制度を運用していくと、こういうことになりますると、やはり積立方式が望ましいではないか、かように私どもは考えております。それからこの積立金の運用そのものについては、衆議院におきましても附帯決議がついておりますけれども、十分両院の御意向というものを念頭に置いて忠実にやはりこの運営の衝に当っていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/59
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060・坂本昭
○坂本昭君 今両大臣は思わずしてほんとうのことを言われたのです。厚生大臣は、この新しい所得保障の形で、〇・二%とおっしゃいましたがね——しか成長しない。それから大蔵大臣は全然経済に大した影響がない。ならば、何のために所得保障としての国民年金制度を作るのですか。所得保障としての国民年金制度を作る以上は、それがはっきりと何パーセントか出てくるものでなければ私は意味がないと思うのですよ。そうでなければ、全然意味のない年金制度ということに私はならざるを得ないと思うのです。これは非常に大事なことですから、せっかくこれだけのことをやって金を集めたって、大蔵大臣はほくほくしているかもしらぬけれども、国民の所得としては大した影響はないということでは困るのですよ。やはりそれに対して計算がほしいのです。私は経済企画庁あたりでも何か計算の根拠があれば説明をしていただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/60
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061・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) やはり所得保障の第一前提といたしましては、やはり生活権の保障というものが第一であると思います。その効果というものは、それは三十七年においては〇・二形というわけでございますが、これが成長いたしまして十年後、二十年後あるいは四十年の後においては相当な私は効果が現われてくるわけでございます。ただいまわれわれが計算いたしました短かい十年、三十七年において〇・二%、こういう計算を申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/61
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062・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 私は影響はないとは言えない、影響があるということを申してそれで積立方式をとることがその影響を緩和さすのだ、こういう意味で積立方式の方を望み、賦課方式をとらないのだということを実は申したのでございます。ことに拠出制に基く年金の方は効果が——運用部資金としての効果ということでございますが、同時に、無拠出制による年金は年に平年度三十三億ということになりますから、これは確かに効果があるということでございますし、そうしてあとの方の運用部資金の運用、これが同時に経済に対していろいろ影響を持つ、ことに十年先、二十年先というような多額な金額になったときを考えますと、その運用は十分気をつけなければならぬ、かように申しおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/62
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063・坂本昭
○坂本昭君 国民年金制度の建前からいきますと、あくまでやはり国民所得保障が樹立されないといけない。そういう点から言いますと、私は明らかに賦課方式の方が影響は大きいと思うのです。今大蔵大臣が言われた通り、あまり影響が大き過ぎるからむしろそれを積立金方式によって緩和しているのだ、こういうような説明をされたのです。それで、私はその点で非常に注意して厚生省のあなたの方での計算を見ますというと、久保構想を導入した年の総消費需要の成長は、年金制度の導入に基因するそれと、それから国民所得の成長に基因するそれとを合して概略一五・五%ほどになる。非常に大きいものです。そうしてこの一五・五%になった場合に、これはかなりに大きな消費需要の増であって、これがインフレ的な影響を非常に与えるだろうと思われる。それで、大蔵大臣はむしろ積立方式の方がいいとおっしゃっておる。ただ、これで厚生省の調査では昭和二十七年における消費増が一六%であった。確かに昭和二十七年という年は戦前戦後を通じて異例に消費の増加した年で、これはいつも標準にするわけにはいかないでしょう。しかし、昭和二十八年の経済白書には、昭和二十七年の消費財の供給がこの需要増に適応しておる。つまり日本経済における消費財の供給能力はかなりに高い。従って、一五・五%というこの久保構想による数値も決して実現不可能ではない、インフレの危険があるものではない、これくらいやったっていいと、こういう結論なんです。むしろ私は、大蔵大臣は国民の所得をふやしてよくしてやろうということよりも、積立金をできるだけ取っておいて、なるたけこれを使ってやろうという所存がおありだとしか思えない。そうではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/63
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064・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 非常に悪意にとられるとそういうことでございまして、それも私の平素の行状が悪いということになるのでございますが、絶対そういうようなものではございません。これはやはり十年先、二十年先の経済成長というものを考えて参りますと、それは金額的にどういう計算をなさいますか、先ほど藤田委員からも御指摘になったように、一体三千五百円でいいのかどうか、こういう問題が出てきますから、三千五百円のままの計算で言われることは私はどうも異なように思うので、やはりこの種の負担は国の負担として考える場合に、やはり平均をとっておるということが最も堅実な方法であるというように、かように思います。一つは財政的な見地もあるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/64
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065・久保等
○委員長(久保等君) ちょっと速記をやめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/65
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066・久保等
○委員長(久保等君) 速記を起して。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/66
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067・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) 先ほど経済成長と所得効果の問題について私が申し述べました中におきまして、そのデータというものは、公けの厚生省の機関を通してやったのでないということを御了承いただきたいと思いますが、民間の一私人に命じまして、そうして一応の計算をいたさせたということを御了承をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/67
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068・木下友敬
○木下友敬君 非常に大事な、議論のあっておるところですが、私は大蔵大臣に会うことが、めったにお目にかかることができないから、一点だけ具体的な問題をお聞きしておきたいと思うのです。
表にも出ておりますように、二十年後には積立金は一兆何千億ということになる。そこで大蔵大臣は一体この金をどういうふうに使うていこうと思っておられるか、具体的に構想だけをちょっと示しておいてもらわぬと私は不安を感じる。これを今まで通りに大きな会社——電源開発などもけっこうですが、ときによっては選挙のときはどんどん資金を供給をしてくれるような大きな会社に貸してやるというようなこと、ばかり依然としてやられると、どうも私どもは困るから、そういうことでなくて、一体この莫大な金をどうするかということを、大まかな構想を一つお聞きしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/68
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069・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたしますが、申すまでもなく、この積立金は特別会計を作りますから、特別会計として十分御審議をいただくでございましょう。その特別会計は財政投融資の資金としてやはり運用することに大部分がなるだろうと、こういうふうに思います。このいずれもが御審議をいただく対象でございますので、政府自身が勝手に使うようなことはございません。先ほど来申し上げておりますように、有利にして堅実にして、しかも還元的な融資方法、これを十分考えていきたい、さらにまた、衆議院においてもすでに附帯決議がついております。この点も十分尊重していきます決意でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/69
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070・久保等
○委員長(久保等君) ちょっと速記をとめて、
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/70
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071・久保等
○委員長(久保等君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/71
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072・木下友敬
○木下友敬君 そこで、今の非常にざっとしたお答えでしたが、厚生省は厚生省としてこのお金をどうしようかということの腹案があるでしょう、それはすでに経済企画庁とか大蔵省とか御州・談になっておるはずだと思うのですが、この前の委員会のとき小山さんからも一応の話はありましたが、厚生大臣としては、一体この金をどういうふうに持っていこうかというようなお考えであるか。今大蔵大臣がお答えになったものとの間に私は違いがありはしないかとも思うのですが、一つお答えを願いたい、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/72
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073・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) 私どもといたしましては、先ほども坂本委員の御質問にちょっとお答えをいたしたつもりでございますが、やはりこの零細な保険料を細められたその額、つまり国庫負担分を除きましたいわゆる保険料程度は、やはり厚生省の自主的な運営をやりたいというふうに第一段として考えておるわけでございます。それにつきましては、やはりわれわれ役人だけでこれを運営をするということはよくないと思いまするので、やはり審議会を設けて、その中には、財政経済ともに分ったような方々、あるいはまた、保険料を納められる方々の意向が十分に反映する方法をその中に入れたい。そうしてまた、その運営の方向といたしましては、やはりその保険料を納められた額程度の一部は、やはり直接的にその保険料を納めた人々の補助事業、たとえば老人ホームであるとか、あるいはまた、病院であるとか、その他のいろいろな施設に還元ができるようにしていきたい、こういうふうな考え方を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/73
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074・木下友敬
○木下友敬君 今の大臣のお答えは、この前のとちょっと違うようですが、この前のはたしか積立金の七割程度を資金運用部に持っていって、あとの三割についてはこれは利子も安くして、そうして保険料をかけた人の福祉にはね返ってくるようにしたいと思うというような答弁だったと思いますが、今のは逆になりますが、かけた方くらいは保険者の福祉のために使い、そうでない部分は資金運用部に持っていく、これは違うように思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/74
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075・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 前回大臣並びに私が補足して申し上げましたのは、全体のうちで国庫が拠出する分でございますね、全体の三分の一はこれは当然もう資金運用部に預託をして、残りの三分の二についてどうするかということを目下大蔵、厚生両省で検討しております。その場合に、党の特別委員会でいろいろ出ております意見をもとにして私どもが研究して、こういうふうになってくれればいいがということで考えております案は、その三分の二のうちの七割程度は、やはり資金の性質上、どういうルートを通ずるかは別として、やはり公けの資金として使っていくということが必要であろう。残りの三割程度については、いわゆるその還元融資というようなことで、今まで考えられてきた使途にもう少し積極的に振り向けていくことが望ましい。まあしかし、これは厚生省でのもくろみでございまして、こういうことを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/75
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076・木下友敬
○木下友敬君 ちょっとそれじゃ私が読んで聞かせましょう、こういうふうに言っておられますよ「それから資金の運用の大よその割り振りといたしましては、七割程度のものは、何といってもこれは巨額な資金でございますので、日本経済の基礎をつちかっていくような使途で、しかも被保険者にとって有利になるような使途を選んでいくような気持でやりたい。」その先を実は私は聞きたい。だから話が途中で滞っておるわけだけれども、ついでに聞きますが、「その七割のうちで、なおある程度の部分は、物価の変動に対し比較的対応性の強いもの、多くの場合株式ということになると思いますが、」、こういうことでこの株式に引っかかったんです。これは一体株式をこういう資金でお買いになるかということをお尋ねしたいというのでこれは言い出したことなんですが、この七割、三割の割り振りもすでに話が違っているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/76
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077・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) ただいまの先生のお話しは、前回申し上げた通りでございますが、二つのことが重なっているわけでございます。もう一回繰り返して申し上げますと、全体の三分の一、つまり国の拠出分は無条件に資金運用部に預託する。このルートはもう既定のものと考えていきたい、残りの三分の二についてはどういうルートにするかということを今後検討いたしたい。しかし、その三分の二の使途についても、そのうちの七割程度のものは公けの使途を中心にした運用を考えていかくちゃいけない、ただし、そのルートをどういうふうにするかということは今後の問題だ、こういうわけでございます。それからその三分の二のうちの残りの三割程度のものは社会福祉的な使途に積極的に使っていく。今先生がお話しになった株式云々の問題は、公けの使途に使っていくという場合、従来は一つのきまりがありますが、その場合にさらに積立金の実質的な価値を維持するということで、そういうふうな道が考えられればということが研究されているので、その点を研究していきたいと思いますと、こういうふうなことを申し上げたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/77
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078・木下友敬
○木下友敬君 資金運用部の条項を見ますと、資金を運用する場合はそう勝手なところに使ってはいけない、今書き抜きを持っておりませんが、株を買うというようなことは、これはむしろ買ってはいかないということの規定があるはずですね。もしこういう莫大な資金を持っているものがこういう資金で株式に手を出すようなことをしてもらっては財界に変動を起すと思う。これは株を上げようと思うときには、この資金でどっと株を買う前に一つこういうしかるべき人に、今度は株を買うから今のうちに買っておけと、一言言っておいてもらえばたくさんの金をもうける人が出てくるということになる。政府の資金と申しますか、国民大衆から集めた資金で株を買う、「多くの場合株式ということになると思いますが、」、こういう考え方は、私は大へんな間違いだと思うのですが、どうですか。何か私の解釈の間違いであれば仕合せだけれども、文字通り解釈すれば株式に手を出すということになる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/78
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079・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) どうも私の説明の不十分のところから起った問題のようでございますが、そういうこともつまり広く含めてこれから研究いたしたいと思います。こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/79
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080・木下友敬
○木下友敬君 いやしくも国会の委員会で、その資金の運用の、これから先どうしていこうかというとき答えたことを、こういうことを研究しておりますなら研究しておりますというべきであるが、「多くの場合」ですよ、あるいはじゃなく、「多くの場合株式ということになると思います」というが、私はこういう資金で、いやしくも株を買うというようなことに少しでも頭を動かすことがすでに間違いだと思う。大へんな経済社会に大きなこれはショックを与えるだけでなく、これは大きな間違いを起す。おそらくそういうことから汚職も起ってくると思う。これはもう政府の名前において、こいつを一つ改めてもらって、こういうことは毛頭考えていけないことだと思うが、大蔵大玉はどう思うか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/80
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081・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) この積立金の運用については、厚生省は、まだ政府として意見がきまっておるわけではないんで、案をただいまも説明しておられるのでございまして、積立金のうち三分の一は国が出すのだから、当然資金運用部資金だが、残り三分の二は、自分の方で積み立てたのだから、どんなルートでやるかは別として、こういうように考えておるのだ、こういうことを今言っておられますが、まだ政府部内で、この点は意見は一致いたしておりません。この点は誤解のないように願いたいと思います。で、今私どもが考えておりますのは、先ほど申しましたように、特別会計をとにかく作る。これは今のところでは、三十六年度から発足することになります。特別会計に入りました金は、資金運用部の資金として、これを通用して参ります。そういう場合には株式など買うことは絶対にございません。御指摘の通りです。政府の指定する公社債はございますが、いわゆる株式というものには手は染めては相ならない、こういうことでございますから、その御懸念はないように願いたいと思います。そうして衆議院におきましても附帯決議がついておりまして、衆議院においては「積立金の運用については、一部を資金運用部資金として運用するほか、一部は被保険者の利益の為に運用する方途を講じ、努めて被保険者にその利益が還元されるよう特段の配慮を加えること。」こういう附帯決議をいただいております。今言われますように、全体のうち三分の一は、当然資金運用部資金だ、残りの三分の二のうち、これはどんなルートを通ずるかは別として、その七割は公的機関の方へ使いたい。その三分の二の三割程度を還元融資だ、こういうような厚生省のお気持のようでございますが、この辺はもう少し十分政府部内として検討いたしまして、この委員会において政府が右だとか左だとか言わないで、醜態をさらさないようにいたすつもりであります。いましばらく時間をかしていただきたいと思います。ただいま申すように、衆議院の附帯決議もございますから、十分心してこの運用に当って参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/81
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082・木下友敬
○木下友敬君 でははっきりさしておきますが、この前の答弁ですね。この資金をどうして運用していくかということについての御答弁は、あれはまだ政府部内では何も話し合いがなくて、厚生省は厚生省で考えたことを言われたことであって、これから大蔵省とは、けんかしてやらなければならぬ。厚生省では自分のなわ張りだから、自分でよけい使おうと思うし、大蔵省では、やはり資金運用部へよけいとっていってわがままをしたいと思う、こういうことでまだ何も、山のものとも海のものともつかない、非常にわれわれ国民は不安を感ずるということに認識しておいて差しつかえないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/82
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083・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 前段はしごくけっこうでございます。その通りでございますが、国民が不安とおっしゃいますけれども、三十六年度に特別会計ができるのでございますから、そのときはっきりいたしますし、別に不安感など国民が持たないようにお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/83
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084・坂本昭
○坂本昭君 ただいまの積立金の問題は、これは一番私は大きい問題だと思っていますが、大事なことは、これは大蔵省の金でもなければ厚生省の金でもないんですよ、これは国民の金だということを頭によく入れておいていただきたい。このことについては、明日、総理列席の上、もう一ぺん私は確かめようと思いますから、一応これはあずかっておきまして、やはりこの最初の積立金の問題ですが、この積立金がこうしてたくさんできてくるということは、結局積立方式をとっていくやり方、これはある意味では、国営の保険会社を作るような格好になるんです。私はこういう点で、やはり非常に問題が残ってくると思う。むしろこの点については厚生大臣が、所得保障という立場で、もっと明確な考えを持っていただきたい。それは所得一再分配の効果は、どの場合により多いかということ、ほんとうに所得保障としての実をあげるものはどっちかということ、これは何といっても私は賦課方式を加味すればするほどよくなる。そうして今の久保構想のようにやれば、それは初年度から非常に分配的な効果が出てくる。これについてはいろいろな折衷案も入ってくると思います。また、このインフレ的な効果については久保構想の場合非常に強いが、日本の場合ならば、これも十分防ぐことができるのではないか、日本の経済の実力でいえばそういうことも考えられる。ことに最後の積立金の問題は、積立方式をとる以上は、どうしてもこうなってくる。しかもこれは四十五年、ずっとあとのこと、国民が求めているのは間近のことです。先ほど成長率の問題も出ましたが、衆議院段階の議論を読みますというと、最初は六%ぐらい、あと五%になり、あと四%、とうてい四十五年という後は計算ができ得ない。従って、私はこういうあとのことよりも、もっと近いところに確実な基礎を置くところの財政運用を考えることが、これが国民に対して私は忠実な道だと思う。そうしますと、結論的にはやはりこの賦課方式というものがどこかで入ってくるんじゃないか、あるいは今から五年たった後にもうすぐに入ってくるかもしれない。それぐらいの心がまえをしておらなければいかぬじゃないか。現にイギリスのビヴァリッジ案ができてから、一九四二年ごろにはすばらしいものだといわれたものが、今日ではすでに均一拠出、均一給付でなくて、比例保険、比例給付というような、そういう制度に変ろうとして、イギリスの政府自身が意見を述べておる。すでにイギリス自身がだんだんと、この長い体験を通じて変りつつあるし、これはイギリスだけじゃありません。ヨーロッパの国々が保険主義からだんだんと、われわれのいう社会保障主義へ変ってくる。きのうの公聴会の論説委員は、調整が加えられるという、この調整の中には、積立方式はやめて賦課方式に変えることも調整の一つだと、こういうことになってきたらこの計画はこわれてしまう。私はそういう点について、この明確な見通しをある程度——見通しというよりも腹がまえを持ってほしい。先ほど厚生省でやられたんじゃないと言われましたが、非常にこまかいこの計算であってこの中ではこういうことも言っていますがね、積立方式というのは賦課方式の実施を延期して、その間の資金を投資に運用するということにならざるを得ないように思われる。つまり賦課方式の実施をひたすらあとへ延ばしていって、その間に投資に重点を置く、そういうものが積立方式の実際的なあり方だ、そういうような見方もできているんです。そこでもうこのことについては、今さら議論してもこれは水かけ論になりましょうから。ただ、大蔵大臣お急ぎのようですから申し上げますが、衆議院の附帯決議もある、一体この附帯決議ですね、附帯決議の責任はだれがとってくれますか、まずこのことを承わりたいと思います。あの衆議院の附帯決議は、責任は大蔵大臣がとってくれますか、厚生大臣がとってくれますか、どういうふうにこれを具体化していただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/84
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085・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) この衆議院における附帯決議というものは、これはわれわれ行政府といたしましては、政府としてこれを考えなければならない問題だというふうに考えますが、第一義的にはやはり私の所管でございますので、私の方でまず考えたいと思います。責任を感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/85
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086・坂本昭
○坂本昭君 それでは、そういうふうにいつも行われておったらよろしいのですが、実は厚生年金保険ですね。これについて一番新しいのは昭和二十九年の三月二十九日の第十九国会で、厚生年金保険法案が出たときに、衆議院でも附帯決議がつきました、参議院でも附帯決議がつきました。この附帯決議の中には、従業員五人未満の事業所に拡張するよう直ちに調査準備すること、それから老齢年金の支給開始年令を男子六十才を五十五才、また、老齢年金基本額の定額分を三万六千円に引き上げる、それから保険給付費の国庫負担金を増額する、特に今おっしゃった厚生年金の積立金については、これを民主的、効率的に管理運用するよう特別の措置を講ずること——もうすでに昭和二十九年に当参議院において附帯決議ができておる、この附帯決議を今まで怠っておったのはだれです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/86
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087・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) この附帯決議の第一番目の従業員五人未満の事業所に拡張するよう直ちに調査準備すること、これにつきましては、厚生省におきまして昭和三十年十二月に、社会保険基礎調査としてその調査を行いましたが、その調査は断面調査でありましたために、従業員の作業状況、異動状況等の動態的な状況は把握はできておりませんが、なお調査研究が必要であると考えておるわけでございます。現在におきましては、五人未満の事業所に就業する従業員の雇用の形態や、賃金の実態から見まして、事業所負担に包括することはむずかしい、これを包括すれば事務員が飛躍的に増大をしてくるので、当面といたしましては、やはり把握できるものは任意適用の活用によって捕捉したい、こういうような考えでおるわけでございます。その他いろいろの附帯決議がございますが、これはやはりわれわれといたしましても尊重はいたしますが、その後のやはりいろいろの経過もございまするので、その個々につきましては尊重するつもりで、また検討して参りたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/87
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088・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) この附帯決議につきましては、政府として責任をもちまして十分考え、御趣旨に沿うように最善の努力をするつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/88
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089・坂本昭
○坂本昭君 昭和二十九年のときも何もされていない。だから私は信用しないから、もっと明確な形で出しておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/89
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090・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 大いに努力して参った結果でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/90
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091・坂本昭
○坂本昭君 大蔵大臣お急ぎのようですから、それじゃ大蔵大臣の質問はこれであしたに延ばします。あした欠席されたら私たちもこれ審議やめますよ。ちゃんと必ず出席していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/91
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092・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 大蔵大臣ちょっと待って下さい。今附帯決議は大いに努力しますというけれども、この附帯決議というのは、大体元来与党も野党も一緒になってきめる、政府をもっている与党も野党も。それが二十九年にやったのが今までそのままだから、そこで附帯決議というのは、ここでせっかくきめても信用ならぬような結果になるということを言っておるんです。だから、努力しますということじゃなしに、明確にしておいてもらわぬと、附帯決議はしたけれども、しっぱなしということで、ずっとそのままでは困る、その点をもう少しはっきりして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/92
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093・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 附帯決議は両党話し合いの上でできた、しかして両党とも御賛成をいただいておるのだ、ところが、まま附帯決議がついたけれども、社会党が反対されたりしておる場合も他の委員会にございますから、そういうことのないように願っている、ぜひ全会一致でしていただきたい。私ども大へん申しわけのない話をするようですが、政府としても責任をもってこの執行に当るということを実は申し上げておるのであります。その意味において、先ほど来も話が不十分だと言われておりますが、ただいまこの段階において明確にできないものもございます。御承知のように、先ほど御議論のありました三十六年度からできる特別会計というような問題は、この段階では明確にできない、こういうものもございます。そういう点はお許しを得たいと思います。私ども熱意がないように思われることは非常に申しわけがないのですけれども、十分熱意のあることを御披露いたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/93
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094・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) ただいまの坂本委員の御要望全くこれはわれわれといたしましても、責任を感じているわけでございましてたとえばあの中におきまして生活保護法の老齢加算の問題等については、直ちに大蔵大臣もあるいは総理大臣も、はっきりこれを認めるということを明言されているわけでございますから、おそらくこのことだけでも、いわば附帯決議の趣旨を尊重したということになるかと思いまするので、御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/94
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095・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 あすまた来ていただくのですから、あすは明確に、そういうところを、そういう答弁だけじゃなく明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/95
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096・久保等
○委員長(久保等君) 速記とめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/96
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097・久保等
○委員長(久保等君) 速記起して。
あす大蔵大臣はぜひ出席を願うようにお話ししておきますが、さらに予算委員会の方と連絡をとって、ぜひ出席願うように手配しておきたいと思います。
どうぞ質問続けて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/97
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098・坂本昭
○坂本昭君 大蔵大臣が席をはずされましたので、先ほど問題になりました第四条の点ですね。第四条の点について、もう少し検討して御説明いただきたいのであります。別に今から逐条審議をやろうというつもりじゃありませんけれども、若干いろいろな問題点がありますので、先ほどこの四条が出ましたから、この四条の第一項の「この保険料の負担を伴うこの法律による」というところはむしろ除く方が、いろいろと常識だとか何だとかいうものを振り回さなければならないので、その方がいいのではないか。何か特にこれをつけた積極的な理由があるならば、これは政府委員でけっこうです、御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/98
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099・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 第四条の第一項に、特に「保険料の負担を伴うこの法律による年金の額」というものをつけました趣旨は、拠出制の年金におきましては、保険料の拠出ということと、給付率との間に一つの対応関係を設けておりますので、これだけをもし機械的に将来とも墨守することになりますと、たとえ将来年金の額を引き上げるということが別の見地から望ましい、あるいは必要だという事態になりましても、その人がかつて拠出しておったものがこれだけしかない。これにこれだけしか利子がつかぬ。そうすると自動的にこうならざるを得ないというような、普通の任意保険のような扱いになるおそれがあり得るわけでございます。それでは社会保障年金としての意味がなくなりますので、その意味で、特に拠出制の年金制度では、こういうことを明らかにしておく必要がある、こういう趣旨から設けられたものでございます。先ほど先生がおっしゃった無拠出の年金につきましては、これは一般財源から出るものでございまして、この額はもっぱら生活の事情と申しますか、それとそのときの国の財政状況というようなことできまって参りますので、これはたとえば失業とか、生活保護の基準とか、児童保護の基準とか、いわばそれらに通ずる一般的な扱いがあるわけでございます。そういうもので当然処理される。特にその原則を明示するという必要がない、こういうようなことと、もう一つは、保険の給付額を拠出制において変えました場合に、保険料をそれに応じてある程度操作する必要があるということで第三項が設けられておりますので、そのことからいたしまして、拠出制の年金制度についての、いわば保険料と給付の額、両者についての原則をこういうふうに明らかにした。こういう趣旨からかような規定になったのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/99
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100・田村文吉
○田村文吉君 関連して。今の四条でありますが、四条の「国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合」——この間もちょっと質問があったようでありますが、この問題と、これに対して調整を加えるということがございますが、これはもし例をあげて御説明いただければ非常に私わかりいいと思うのです。調整の方法等はどういう方法でできるのか、それをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/100
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101・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) ただいま田村先生が仰せになりました調整の方法でございますが、これは、多くの場合、やはり保険料の引き上げの結果として伴うことになりますので、たとえば五年たちました場合におきまして、前にきまっております年金の額と、それからその当時ありました一般の生活水準との関係が、次の五年間の場合に非常にくずれてきているというような事情がありますれば、当然年金額の引き上げをするということが必要になって参るわけでございます。その場合に、引き上げに伴います措置といたしまして、問題が二つ出て参るわけでございます。一つは、そのときまでにすでに年金権の発生しておる年金の額をどうするかという問題、それからもう一つは、まだ年金権は発生していない、ちょうど進行途上であるというようなものについてどうするか、こういうことでございます。
あとの進行途上のものにつきましては、比較的技術的に年金額の引き上げ調整というものは行われやすいわけでございます。ちょうど、たとえて申しますならば、報酬比例の方式をとっておりまする年金制度で、十年間だけ、たとえば一万円なら一万円という標準報酬でやってきた、それに対応する保険料がかりに四百円なら四百円であった、こういうような関連がありましたのが、次の年度においてこの保険料が四百五十円くらいに上げられる程度の標準報酬になった、こういう場合に行われる報酬比例の年金制度における年金額の計算方法がありますが、それと同じような要領で、すでに経過した分については低い保険料に対応する低い年金額、その後引き上げられました保険料に対しましては、それに対応する高い年金額ということで調整が行われます。
それからすでに年金権の発生いたしましたものをどうするかということが一つ問題になるわけでございますが、この解決をしようといたしますならば、どうしてもそのときにより多くの国庫の負担を持ち込むか、あるいはその年金の引き上げに要する財源負担を、そのときの被保険者に持ってもらうように操作するか、どちらかの道を選ばなければならぬわけでございます。これをどういう方法で調整するかということは、そのときの事情によってきめらるべき問題でございますけれども、まあいずれにしても、その場合には全然知らぬといったような解決の道はとり得ない。かように相なるものと予想しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/101
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102・田村文吉
○田村文吉君 つまり、貨幣価値が変動した場合には、それに伴って変化していく、実害を被保険者に与えない、こういうようなお気持で考えられている調整であるか。そこまではよう考え切れないが、そういうこともあるだろうから、政治的に、そのときになったらそのときのようにやる、こういう御意思であるか。私どもは、もしできるならば、絶対に被保険者を保護するという考えから言えば、貨幣価値の変動に伴ってあるいは言いかえれば、物価が変動したならばしたように変えられていくということがこの拠出年金の場合における一番正しい方法だと思うのであります。それにつきましてそれをお伺いすると同時に、一体こういう例は、ドイツでもイギリスでも、かなりインフレーションにあっている、そういう場合にどういう処置をとったか、こういうことについてお知りの程度を簡単に御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/102
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103・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) ただいま仰せになりました問題を一応二つに分けて申し上げたいと思うのでございます。一つは、かりに貨幣価値が動かないといたしましても、経済が順調に成長いたします限り、国民の生活水準は逐次上昇して参るわけでございます。国民の生活水準が逐次上昇して参りますならば、かつてきめられた年金額というものの持ちます意味はかなり違って参りますので、どうしてもある時期におきまして貨幣価値の変動がないといたしましても、国民の生活水準の変動に対応して年金額を調整する、具体的には引き上げる、こういう必要が出て参るわけでございます。特にその必要は、均一拠出、均一給付という建前をとっておりますこの年金制度の場合におきましては、特に多いわけでございます。これについてどうするかということが一つでございますが、これについては、五年ごとに検討される機会に十分調整をはかっていく。しかし、これは何といっても生活水準の上昇に対応する年金額の調整でございますから、この調整の場合には、被保険者が相当保険料を負担をするという建前は原則として堅持していかなければならぬ、かように考えるわけでございます。
それからもう一つの問題は、貨幣価値が非常に動く、こういう場合でございますが、この場合における措置につきましては、衆議院ですでに総理大臣以下厚生大臣からもお答えを申し上げたのでございますが、およそこの種の社会保険の年金制度におきまして、はなはだしい貨幣価値の変動がありました場合の処置の責任は、何と申しましても、これは国が中心になってとらなければならぬのでございまして、おそらくそのときは、その解決のために国が大部分の財源を投入する、そうしてそのときの被保険者には、その後における年金額の引き上げに対応する保険料を持ってもらう、しかし、若干は過去の分についてもそのときの事情で許すならば持ってもらうことはあり得る、しかし、それはそのときにきめらるべき問題でありますが、原則としては国が責任を持って解決をするという建前をとらなければならぬ、かように相なると思います。
それから外国のことでございますが、これは別に用意いたしました資料をお配りいたしたいと思いますけれども、かいつまんでイギリスの例を申し上げますと、イギリスが、先ほど来お話に出ましたビヴァリッジの案に基きまして、いろいろと国民保険制度を行いますときに、実は一つの大きい踏み越しをしてしまったのでございます。ビヴァリッジは、イギリスの年金制度の構想を立てます場合に、目標といたします年金額をきめまして、この年金額は、そのときのイギリスの事情からすると、一度にそこまで到達することは無理だということで、二十年間の間に二年ごとに一回ずつ逐次年金額を引き上げて予定しておった年金額まで到達をする、こういう趣旨の案をまとめておったのでございます。ところが、そのときの政府はそれを思い切って踏み切ってしまいまして、二十年後に予定をされておりましたところの完全年金の額をスタートのときにおいて実施をしたわけでございます。ところが、戦後のことでもありましたので、そのようなかなり雇い年金でスタートはいたしましたのでございますが、その後イギリスにも物価の騰貴があり、また、戦後生活状態が整って参ると同時に、逐次生活水準も上昇して参る、こういうようなことがありまして、今日までのところ、おそらく五回くらいずつかなり大きざみの年金額の引き上げが行われたのでございます。この場合の財政的な処置がどうなったかということがこの問題に関係するわけでございますが、結論をかいつまんで申しますと、そのときの引き上げは、すべてそれ以後の分について被保険者に持ってもらうというだけの引き上げをした、従ってそのときまでにすでに年金権の発生しておった人々に対する引き上げ分は、あげて結果的には国が負担しなければ解決のつかないような状態で、年金の財政が今日に持ち越されている。これを解決いたしますために、先ほど坂本先生のお話にも出ました通り、一昨年労働党が一つの対案を発表し、昨年政府が一つの対案を白書で発表し、かようにいたしております。それで今後これをどういうふうにするかということについては、イギリスで特別の委員会を設けましていろいろ研究をいたしまました結果、今後における年金額の引き上げ及びこれに対応する財政的処置については、今後こういうふうに再び財政危機を招かないように、年金の引き上げをしたならば完全にその始末がつく程度の年金額の引き上げ、それからそのときに国の負担をきめるならきめるということをして対処していくようにする、こういうような原則をその委員会は答申しております。しかし、結論としてはどうもこの問題については一つの原則によってきちっと割り切ることをしないで、とにかく現状を続けていっては非常に危険が多いから、もう少し保険料額も引き上げると、こういうことで、まあとりあえずのところ、十年なり二十年の間財政的の破綻を生じないように処置をする、こういうような筋道で今後の対策が講じられるというような進行状況になっております。
それからドイツにおきましては、これは一番インフレーションを経験した国でありますので、いろいろ論議の過程があったようでございますが、ドイツの年金制度の中枢にすわっておりまするところの労働者の年金制度におきましては完全な賦課式をとってしまいまして、保険料及び保険金額並びに財政を含めて十年ごとに徹底的に検討する、その場合にきめる保険料額というものは、十年間における収支のバランスを維持し、それからなお一年分だけよけいの給付ができるようなものを見込む、それを積立準備金として持つ、非常に俗な言い方になりますけれども、つまり給付の面においては、十一年分だけの給付を計算上見込みまして、それに必要な保険料及び国庫負担というものをきめていく、こういうような仕組みをとっておるわけでございます。これならば非常にそのときどきの事情に対応しやすいわけでございますが、その仕組みをとって参りましたために、ドイツの労働者の年金制度の保険料率は非常に高くなって参りまして、現在の想定では千分の百二十八程度、しかし、民間の数字の専門家は、とても政府が予想している千分の百二十八で済むはずはない、千分の百三十五程度とらなくちゃならぬというふうな批判をしておりますけれども、とにかく日本ではちょっと想像できないような高い保険料というものを必要とするというような事情になっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/103
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104・田村文吉
○田村文吉君 わかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/104
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105・坂本昭
○坂本昭君 先ほどの四条一項についての御説明を通して、無拠出という考えと生活保護という考えと全く同じように考えておられるというふうな何か結論が出たのでございますが、つまり拠出の方は保険料と給付費等の対応において調整をしていく、しかし、無拠出についてはそういう義務を国としては感じないから、生活保護、そういうものとの比較の中において常識的にこれを解決していく、そうすると、一体この無拠出の年金の意味と生活保護の意味とはどういう区別ができてくるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/105
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106・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 先ほど申し上げましたのは、無拠出の年金の財、源が全部国の負担に依存しておる、従って、財政状況に非常に大きく制約されざるを得ない、そういうふうな事情からいたしまして、生活保護やあるいは恩給等と同じような考え方で、現実の問題としては処理をされていく、その原則そのものはそれで変りがない、まあこういうことを申し上げたわけでございます。その場合、それじゃ先生仰せの通り、生活保護と無拠出年金とはどう違うのかということになりますれば、生活保護と無拠出年金の違いをこれはどこに求めるかということについては、いろいろの考え方があるようでございますけれども、この法案がとっておりまする考え方は、無拠出年金も国民年金も一つの幹をなすものでございますから、一定の要件をきめましたならば、その要件に該当する限り、必らず権利としてその年金がもらえる、その点生活保護のように、その人々の現実の生活の必要というものを調べた上で出す、こういうものとは違う、こういう組み立てになっておるわけでございます。ただそういう本来の組み立てをかなり大きくゆがめておりますものとしてまことに残念なことでございますが、所得による支給停止の措置があるわけでございます。ただ、生活保護と違います点は、この場合に行なっております所得の支給の停止は金の多い人に遠慮してもらうという趣旨の所得の停止でございまして、生活保護の必要のある人だけを具体的に調べてその人だけに年金を出すんだという意味での所得に基く支給の停止ではないわけでございます。そういうふうに考えてこの法案は一応整理をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/106
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107・坂本昭
○坂本昭君 だいぶこれは議論の問題の点が出てきたと思いますが、そうしますと、援護年金——あなたの方で援護年金と呼んでおるが、私はこの援護という言葉も、これなども直したらいいのじゃないかと思うのですが、援護年金について所得の制限が十三万円でできている、これについては、非常にあちらこちらで反対の要望が強いのです。これを何とかしてもらいたいという声が非常に強いのですが、まず私は、原則的に十三万円で切らなければならない、もちろんこれは例の均等割の線になるのでございますけれども、これで切らなければならないとしたこと、さらに、これはきのうあたりの公述人の御意見では二十万円にしてもらいたいという希望が非常にある。これを二十万円にした場合に、まず援護年金について、身体障害者それから母子家庭、この援護年金の対象にした場合、一体、予算がどのくらい違ってくるか、人員がどのくらい違ってくるか、多分御調査になっていただいたものと思いますが、その御説明をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/107
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108・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) お手元に差し上げました国民年金法案参考資料の十四ページをもとにして今の関係を概略申し上げたいと思います。この十四ページの第十表のうち、援護年金の支給に当って設けた各種の財源措置が実際上どういうふうに響くかということの推定を掲げたのでございますが、老齢年金については、本人の所得が十三万円以上というふうに推定しましたのは七万八千人でございます。それから障害年金におきましては、本人の所得十三万円以上と推定いたしましたものが一万でございます。母子年金の場合では……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/108
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109・坂本昭
○坂本昭君 ちょっと待って下さい。どこに書いてありますか、一万、七万八千というのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/109
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110・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 人員という項がございまして、その上から見ていただきますと、七十才以上の老齢者が三百十万六千人、その下に控除とありまして、控除のハ所得制限というところがございます。その所得制限の(イ)のところに本人所得十三万円以上というのがございます。これが七万八千人、金額にいたしまして九億三千七百万円でございます。それから障害年金が同様に所得制限ロの(イ)本人所得十三万円以上一万人、一億七千九百万円でございます。それから母子年金の場合は、控除の日本人所得十三万円以上四万人、五億五千四百万円、これだけのものが十三万円以上という制限条項でございますと該当するわけでございます。ただいま仰せの二十万円以上としたならばどうなるかということについては、直接これに該当するような目じるしが今のところつかみにくいのでございま参すが、ごく達観的に申しまして、今までいろいろと資料をいじくってきた経験から行きますと、この数は、おそらく二十万円以上ということにいたしますと、三分の一程度に減ると思います。従いまして、老齢年金について申しますならば、七万八千人という人数がその三分の一の二万九千人程度、ほぼ三万人弱という程度に減るであろう、これは大へん恐縮でございますが、一応の推計を見当でつけますと、そんなことになりはしないかという判断をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/110
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111・坂本昭
○坂本昭君 そうしますとですね、正縦に計算をしたわけじゃありませんが、今の十三万円と二十万円との間の人を救うとすれば、約五億程度ですね、五億程度あれば十三万円以下という所得制限を二十万円以下にすることができる、これはまあ腰だめで計算したのですが、十億以上ではありませんね、数億というところですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/111
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112・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 大体十二億程度だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/112
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113・坂本昭
○坂本昭君 同じような問題を少しお伺いしたいのですが、老齢援護年金を受ける場合ですね、老夫婦のある場合、三千円減額されますが、これを減額しないとすればどの程度の金額になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/113
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114・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) ただいまの資料の口夫婦受給の場合の減額の十七億二千五百万円というのが大体それに当ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/114
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115・坂本昭
○坂本昭君 それはこの三千円減額しないときのトータルになりますか、十七億というのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/115
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116・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 減額しなければ十七億多く予算が要る、言いかえますと十七億多く予算があれば減額しなくても受給できると、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/116
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117・坂本昭
○坂本昭君 同じような問題ですけれども、今の援護年金の受給権者の配偶者の所得が——これは本法でいくと六十六条の第四項に当る項なんですが、この「所得税法の規定により計算した前年分の所得税額があるときは、と、この「所得税額」というのを三十万円の所得とした場合、この計算できますかしら、どのくらい必要になるか、もし大よその計算ができたら教えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/117
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118・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 腰だめで大へん恐縮でございますが、三分の一から四分の一程度に落ちるであろう、こういうような見当でございます。支給制限を受けます者がその程度になるであろう、従って、逆に申しますと、三十万円に引き上げることによって制限を受けなくなります者が三分の二から四分の三程度ふえるであろう、こういう見当でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/118
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119・坂本昭
○坂本昭君 そうすると、大へん恐縮ですけれども、あまりあちこち表があるものだから計算できないので、金額を教示して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/119
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120・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 所得税納付者の配偶者ということで控除されますものは、老齢年金の一万二千人、一億四千二百万円という金額でございますから、かりにこれが三分の一に減じたといたしますと、約四千五百万程度になるわけでございます。従って、差額の一億足らずという金があれば、そういう人々は該当しなくなる、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/120
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121・坂本昭
○坂本昭君 いろいろこまかいことをお尋ねしますが、障害援護年金の場合に、現在は一級該当者だけ支給することになっていますけれども、これに二級該当者を入れた場合、これは私の今ちょっと調べたのでは十七万人で、これに払うとすれば三十二億四千万円程度要るということですが、大体そのような数でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/121
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122・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) ただいま先生仰せのごとく、この国民年金法案の別表の二級をかりに援護年金の支給対象に含める、こういうことにいたしますと、ここにあげられておりまする人数の四倍が加わりますので、人数としては、ほぼこの人数の五倍になる予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/122
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123・坂本昭
○坂本昭君 そうすると、金額の点はどうなりますか。あちらこちら表があるものですからね、少しおっしゃっていただきたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/123
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124・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 二級を支給対象に入れました場合に、かりにそういう人々にも一級と同じように月に千五百円差しあげる、こういう前提に立ちますと、ここにありまする差引所要領の三十二億の五倍、つまりこれが百五十億程度にふくれる、こういう計算になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/124
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125・坂本昭
○坂本昭君 これもいろいろと一般から要望があった一つの問題ですが、七十才以上の身体障害者の老齢援護年金の問題、これについては老齢援護年金を支給することになっておりますけれども、この障害援護年金を支給した場合の金額の増はどの程度になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/125
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126・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) これは計算はできませんけれども、おそらく、この分ならば予算上ほとんど問題にするほどの額にはなるまいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/126
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127・坂本昭
○坂本昭君 やはりこまかい問題になってきますけれども、母子援護年金の場合の支給要件の中で、義務教育修了前の子のある場合というふうになっております。これは非常にあちらこちらで厚生省が間違ったのじゃないだろうかというような極言さえもあるのですが、これを十八才未満の子及び二十才未満の身体障害または精神障害の子を有する母子世帯とした場合、特に二十才未満の身体障害または精神障害の子供を持っている母子世帯というのは一万世帯くらいではないかと思うのですが、そうすると、こういうふうに扱いを変えた場合に、どの程度の金紙の増を見込まなければなりませんか、御教示をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/127
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128・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 二十才までの身体障害児を扶養しておる母親を母子援護年金の支給に加えました場合の見込み数は、先生御質問の通り、大体一万程度ふえる見込みでございます。十六才未満を十八才未満に広げました場合には、これはちょっと調べさせていただいて、後刻報告させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/128
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129・坂本昭
○坂本昭君 次に、やはり母子援護年金の問題ですけれども、これも月一千円というけれども、これはお母さんと子供なんだから、もう少しこれをふやしてほしいという意見がだいぶありますが、かりにこれを月千三百円とした計算でいきますとどのくらいになりますか、ちょっとお教えいただきたい。最初の一子がはずれているのを、それを第一子三百円とした場合ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/129
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130・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 十二億程度を見込まれます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/130
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131・坂本昭
○坂本昭君 それでは、先ほどの身体障害の子供を持っていることについては、後ほど計算して出していただくことにして、労働省の職業安定局長は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/131
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132・久保等
○委員長(久保等君) います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/132
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133・坂本昭
○坂本昭君 せっかくおいでになりましておそくなって大へん恐縮ですが、身体障害者の年金の問題、こうして初めて一般的な問題となってきて、私たちもいろいろ苦心をしております。そこで、伺いたいのは、特に雇用関係について、あなたの方で身体障害者の中で労働力を持っている人で、どの程度雇用の状態にないか、特に身体障害者については、最近の傾向としては、いわゆる身体障害者福祉法の別表に規定されておった者よりもだんだんと範囲が広くなってきております。これはもう世界的な共通の現象であります。従って、先ほども一般の身体障害者のほかに精神障害者の問題も出ておったのですが、その広い意味において、労働省においてはどういうふうにつかんでおられるか、御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/133
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134・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) ただいまのお話の身体障害者の労働力の状況でございますが、これは昭和三十一年の総理府の職業構造基本調査及び厚生省でお調べになった身体障害者の実態調査によりますと、実数といたしまして、身体障害者の総数七十八万五千に対しまして、労働力人口が四十八万九千、非労働力人口が二十九万六千、こういうことになっております。そこで、ただいまこれは厚生省のいわゆる身体障害者福祉法の対象となる者でございますが、お話のように、現在いろいろ雇用について問題になりますのは、あるいは精神薄弱者の問題、あるいはまた結核回復者の問題とか、いろいろあるわけでございます。そういうのが現在非常に大きな問題になって参っております。労働者といたしましては、御承知と思いますが、数年前から職業安定所におきまして身体障害者の任意登録制というものを実施いたしておるわけでございまして、それで現在身体障害者の任意登録を実施しておる数が七万八千程度あるわけでございまして、現在まで——昨年の暮れまでに就職しておる者が、そのうちの五万一千人、こういうことになっておるのであります。われわれの対象といたしましては、今お話のように、身体障害者福祉法の別表にある者のみならず、雇用促進の関係といたしましては、結核回復者につきましても、その他の者につきましても、同様にこの任意登録の対象といたしておるのであります。ただ、実際問題といたしまして、結核回復者の場合に、これをどこで区切るかというむずかしい問題がありますので、これをはっきりした数として今御報告申し上げるわけに参りませんが、労働省の安定所の窓口といたしましては、この全部を対象としてやっていく、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/134
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135・坂本昭
○坂本昭君 きょうあなたは最初からおられたと思いますから、私たちが厚生それからまた大蔵大臣を通じて、この社会保障の議論をしたときに、別に空想的な観念的な議論をしておったのじゃなくして、あのときにはっきりしたのは、やはりこの雇用の問題が一番先だ、賃金政策が社会保障の先にならなくちゃいかぬ、そういうことが非常に大事な問題としてわれわれは議論したわけです。従って、このたびの年金は、所得保障、特にこの所得保障の中で一番恵まれないのは身体障害者、母子家庭、もちろん老人もそうですけれども、特にハンディキャップの点で私は、身体障害者の場合はわれわれの想像以上のものがある。たとえば所得制限も一律に十三万円になっているのです。しかし、この十三万円を得るために、母子家庭のお母さんが十三万円獲得するのと、手のない人が十三万円獲得するのでは非常な苦労の差があるのです。従って場合によると、身体障害者の場合は、もっとこれを考慮しなければならないと思う。しかし、それよりも先に考慮しなくちゃならないのは、やはり雇用の問題です。それで、われわれが最低賃金制の問題について夜中までずいぶん議論しましたが、やはりこの雇用の問題で、特に賃金の問題、そういう点がほっぽらかしにされたまま、ただ障害者の年金というものができても問題は解決にならない。ただ慈恵的な、お恵み的なものにしかすぎない。そこで、私たちとしては、さっきあなたは七十八万五千という数をあげておられましたが、なるほど、結核をどういうふうにつかむか、現在毎年一応結核から回復したといわれる人間で再発する人間が十万人ぐらいいるのです。まあ手術して、あとまだアフター・ケアの時期にある人、いろいろな者を含めていくと、ほんとうのところ、確実な数はおさめることはできません。しかし、一応まあ回復者の中で再発する人がその年に十万人おる。それから七十八万五千人のこの統計によるいわゆる身体障害者、それからさらに精神薄弱者、この精神薄弱者の数も、これも非常に押えにくい点がありますが、その中で労働力の人口として数えるもの、まあ私は六十万くらいと一応見て、その六十万と、それから結核の回復者の十万、それから身体障害者の、皆さんの調査による七十八万五千と、この中にも労働力の人口の中に入るべきもので漏れているものがあるわけです。だから実際は百万くらいじゃないか。それで、それらをつき合せますと何百万には上らない、しかし、まあ百万人はこえるだろう、そうしてその中で、先ほどあなたは雇用率のことを言っておられましたが、この押え方も実は労働省の抑え方と厚生省の抑え方と少し食い違いがあるような気がしているのです。まあきょうはこの点が主題でありませんので、別の日に検討することとして、百万人をこえる身体障害者の労働力がある。で、これを少くともまあ三十万人ぐらいは何とか一つ働かしていきたいというところで、この前、身体障害者雇用法というものを作って、まあ簡単に申しますと、一般官庁には五%、吾人以上の民間事業所には三%、そうして賃金について、その同一職場における同一職種の少くとも八割の賃金をやれと、しかし、八割もやれないと、とてもそんな能力はないと、五割しかやれないと、そのときにはその差額を国で見てやろう。そうして幸いにして今度この国民年金法ができまして、障害年金もつく。そうすれば五割までは事業所の雇い主がくれる、それに今度は障害年金がこれにくっつく。そうするとあとの八割との差額が幾らか出てきますね、それを一つ国で見てやろうじゃないかということで、そこで、今度の国民年金法の提案とともにわれわれ考えてきておるのですが、労働省御自体としてどういうふうなお考えを持っておられるか承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/135
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136・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) ただいま先生のお話しになられた身体障害者雇用法につきましては、先般私も先生の提案理由の説明をお聞きしておりまして、その内容についてもよく承知いたしております。労働省といたしましても、今お話のように、できるだけこの身体障害者の雇用という問題につきましては、これを積極的に従来から実は重点事項の一つとしてやってきたところでございます。従ってまた、先ほど申し上げましたように、任意登録制もとり、特にこれによりましての雇用の促進をはかって参りますと同時に、身体障害者の職業訓練所を全国八カ所に作りまして、これによりまする職業訓練を実施いたしておるわけであります。幸いにいたしまして、この成績も、昭和二十八年当時就職率が七〇%程度であったものが、三十二年には九〇%、その五カ年間の平均で約八四%ということになっております。われわれ、ますますこの内容を充実させて参りたいと思っておりますが、私ども、今お話がございましたけれども、身体障害者の雇用促進に関しまして、一番重点的に、また啓蒙運動の一つの重点として考えておりますのは、身体障害者を雇用するということは、身体障害部分を使うのじゃないのだ、身体障害のない部分を生かして使うというふうに、そうすると、通常の能力を持っている人と同じような待遇をやれるということになるというふうな考え方でやっておるわけであります。特に重度の障害につきましては、労働能力も劣るということもありますから、特別に保護雇用的な面を加えていかなければならぬ。一般的には、われわれは、手でやる仕事ならば、足の障害は何らこれには障害はないわけであります。ハンデキャップとならぬわけであります。ただ、わが国の現在の事業、雇用の慣習と申しますか、同時にまた、労働市場の状況から見て、なかなかそうした従来の雇用慣習から抜け切らないという点に非常な困難を感じておりますけれども、われわれとしては、この点を積極的に第一線の努力によって現在進めつつあるところであります。しこうして、われわれの目標といたしますところは、少くとも一般の労働力人口の場合の雇用率と同じ程度まで引き上げて参りたい、こういうことでいろいろ、場合によっては私は立法措置を必要とするかと思いますが、そういう方向で現在努力をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/136
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137・坂本昭
○坂本昭君 先ほど私たちが申し上げた通り、身体障害者の問題については、年金によって解決されるのでなくて、雇用によって解決されるというのが建前だと、その点については根本的にあなたとそう違わないと思います。従って、ここまで年金の問題が出てきて、障害者に対する障害年金が出てきているのですから、政府としては責任を持ってすみやかに立法化すべきだと、私はそう思っております。ぜひ、すみやかにおやりになることをわれわれとしても要望しておきます。それで、いつ立法化されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/137
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138・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) 私どもといたしましては、事務当局といたしましては、いろいろな法案の用意は実はいたしております。積極的にこの雇用促進がはかられるような措置は今後一段と強めて参りたい、こういうように考えております。時期の問題につきましては、ただいま明言するわけには参りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/138
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139・坂本昭
○坂本昭君 次に、だいぶ法案の中に幾つも問題点がありますが、せっかく御準備をしていただいたと思いますので、今度の年金を実施する上においてのスタンプ方式という説明が出ておりますが、これが私たちでさえも具体的なことはよくわかりません。各市町村長あたりもよくおわかりになっておらぬと思う。特に御準備願いましたはずでございますので、具体的にどういう格好で、どういうふうに窓口で扱うか、デモンストレートしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/139
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140・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) ただいま坂本先生がお話しになりましたスタンプ方式に関する条文は第六章、費用のところの九十二条以下で規定してありますことに関係しているのでございますが、実際上これをやりますのは、かねてから申し上げておりまするように三十六年の四月一日でございますので、ただいま仰せの、どういうふうなものにするかということの最終的な決定はいたしておりませんが、およその現在まで研究されておりますことの概略を申し上げたいと思います。
これは、国民年金の被保険者の届出がありまして、資格の確認をいたしました場合、都道府県知事が発行いたしまして、市町村長を通じまして国民年金の被保険者に交付いたすことにいたしております。これは大体五年分くらいの台紙を張った手帳を予想しております。一枚の台紙には十二カ月分の印紙が張れるような欄を設けるということを予定しております。この台紙にそれぞれ所定の印紙を購入してもらって張りました場合、三月に一回ずつ市町村に提示して検認を受けてもらう、この場合、印紙をどうするかということが一つの問題でございまして、きわめてありふれた単純な方法は、郵政当局の発行する収入印紙を考える、ちょうど日雇いの印紙と同じように百円と百五十円のものを考えるという方法が一番普通に考えられる方法でございますが、それにしてしまうか、そうでないものにするか、特にこれは市町村当局等から別の要望が出ておりまして、印紙の売りさばきというようなことも市町村の手を通ずるようにいたしたいという申し出もありますので、この間を目下研究しておりますが、しかし要は、同時に買う人が非常にたやすく手に入って、いつでも買えるような仕組みを考えていきたい、いついつでないと買えないということにいたしますと、スタンプ方式の利便が失われますので、いつでも金ができて買いたいと思うときに必要な分だけが買えるような方法を考えていきたい、従って、郵政当局の発行いたします収入印紙の場合でも、これは当然第一線の印紙売りさばき店が取り扱えるようにしたい、でき得れば、さらに県の金庫なり、あるいは農協その他のところにも販売の委託ができるようなことを考えていきたい、こういう考えでございます。そうして被保険者の人に必要な分だけを余裕のあるときに買ってもらって、三月に一回ずつの検認をいたします。この検認は強制はいたしません。もっぱら被保険者の人が張って検認を受けた場合には、主張する利益だけを認めるようにいたしたい。これは法案におきまして、たとえば障害年金の支給等の場合におきまして、障害の発生する前何年間というような規定がございますけれども、直近の時まで主張しようといたしますならば、これは市町村当局で三月ごとに検認を受けております。そうすると、起算点が、御自分がなられた非常に近いところまで主張できる、こういうことになるわけであります。三月ごとの検認は強制いたしませんけれども、年に一回貼付済みの分を市町村当局を通じて国の方に出していただく、これは社会保険出張所を経由して国の方に設けられると思いますところの記録帳に送られて、そこで整理をされて記録に記入されるはずでありますけれども、これは一つ確実にやってもらう、従って、そのときまでに提出がない場合においては督促あるいは必要に応じてその後一定の手順を踏みましていろいろな行政手続が進む、かようなことに予定をしております。
大体現在まで考えております荒筋はそんなものでございますが、なお、このスタンプを張りますことを、すべての場合に機械的にやりますことが必ずしも適当でない場合があるようでございます。特に農村地帯等におきましては、むしろ一括して、しかるべき機関を通じて代納してしまうという方が工合がいい、生産物の売りさばきをすべて農協を通じて行なっているというような地帯におきましては、農協に納入を委託する、そうして一々スタンプなどを張らないということで済ませたいというような場合もあり得ると思いますので、このような場合につきましては、九十二条に予定しておりまする厚生省令でそのような例外をきめます。この場合にはスタンプを張らなくとも、農協が現金で一括をして委託を受けた人々の分を納めたならば、それを納入として扱っていく、こういうふうなことを現在のところ予想しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/140
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141・坂本昭
○坂本昭君 そうすると、今のそのスタンプの台帳というものが必要になってきますね、そのスタンプの台帳の保管の責任者というのはどの機関になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/141
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142・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) これは肝心な点を申し落したのでございますけれども、せっかくスタンプを張りまして検認を求めましても、一年ごとにそれが全部出てしまいまして、被保険者の手元に一つも残らぬということになりますと、被保険者があとで主張する場合の手がかりがなくなるおそれがあるわけでございます。従って、手帳の作り方におきまして工夫をこらしまして、切り取り線で切って半分だけを市町村を通じて送ってもらう、これは今の厚生年金で申しますならば、たとえば年金業務室で保管しておりますような、あれを研究いたしましたような記録帳を設けまして、そこに送り届けてもらってしかるべき方法で被保険者全部のものを保管し記録をする、従って、保管し記録をする責任はもちろん国にございますけれども、同時に、国のやっておりますことに万が一間違いがあるという場合に、被保険者が主張しやすい手がかりは被保険者の手元に残しておきたいというので、手帳の中に被保険者の分半分だけが切り取り線として残っておる、こういうふうにいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/142
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143・坂本昭
○坂本昭君 そうしますと、その手帳を被保険者に配付したり、また被保険者の所得制限の問題だとか、いろんな調査をやったりするのは各市町村でやりますね。そうすると、市町村の今度の配賦予算では無拠出については一人五十円という予算がたしか出ておったはずですね。これは今度の四カ月分についての予算ですか、それとも一年分についての予算ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/143
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144・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 本年度の予算に組んであります五十円というのは、無拠出の年金についての取扱い分でございます。これは四カ月というふうな期間ではなくして、一件当り幾ら、こういうふうにきめることに予定しております。それから先生仰せの、この手帳の交付を取り扱ったり、あるいはいろいろな被保険者の届出を処理したりというような仕事あるいは保険料の徴収の場合に、所定の時期に台紙を提出しないような人々に対する督促をしてもらう、あるいはその他のいろいろな勧奨をしてもらう、こういうような仕事についての事務費は、これは当然別に計上して市町村に委託交付をする、かような仕組みになるはずであります。
〔委員長退席、理事木下友敬君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/144
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145・坂本昭
○坂本昭君 そうしますと、今の五十円というのは無拠出についてですが、拠出についての将来の単価ですね、これは幾らにされる予定ですか。それから今のように保険料の納付の義務を怠ったような場合は、国税の徴収の例にならって徴収をする、かなりきついことが九十五条に書かれてあります。こうした場合の費用、これなどは大体どの程度に考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/145
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146・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 前段の拠出制に伴う委託事務費をどの程度にするかということについては、いろいろ昨年来検討しておりますけれども、まだ確定した金額を関係省の間できめる、予想するというところまでは至っておりません。大よその見当としては、やはり現在の国民健康保険で考えられておりまする事務量と、それから国の事務費の基準というものを頭に置きまして、無理のある点は直すようにするというようなことできめていきたい、こういう考え方でございます。
それから保険料を所定の日にちまでに納めなかった人々に対する措置については、もちろん一番きつい方法として国税滞納処分の例によるということもありますけれども、むしろ今度の案での特徴は、できるだけ実情に即した緩和の措置がとれるようにいたしたい、先生御承知のように、現在のいろいろな会計法規の仕組みから申しますというと、百円、百五十円という保険料がきめられ、この納入が義務づけられますというと、この法律による免除の措置がとられておりません限り、そのままほうっておきますと、途中でこれが少し納めるのが無理だというような実態になったといたしましても、実はしゃにむに取らなくちゃならぬというような仕組みになってしまうわけでございます。ところが、零細な被保険者に対してそういう態度をもって臨むことが非常にむずかしい。ところが、現在の会計法規で、それでは途中でそれをやめるような措置をとろうとしますというと、実は非常にむずかしいいろいろな条件があるわけでございます。なかなか型にはまったような工合に、もうこの人からは取るのは無理だからやめるというようなことが行われがたい、こういうようなことがともすれば事務上の処理としては未解決のまましかし、そうかといって強制執行もできずというふうに中途半端にとりまして非常に第一線の人々を困らせ、また被保険者にも必要以上の不安を与える、こういうことになっておりますので、今度はかりに納めない場合でありましても、さらにそこで実情を調べてみまして督促をするかしないかということで一つ区切りをつけたい、これはもう納められるはずだ、納められるはずであるのに納めないのだという見定めがついた人だけには督促をする、この督促を始めますというと、これはもう現在の会計法規の定めるところに従いまして自然に納めてもらうか、あるいは強制執行するか、あるいは進行途上においてどうにも納められぬのだというむずかしい証明をしまして債権の免除をするか、この道をとるより仕方がありませんが、それはそれでいく、しかし、そうでない、どうも考え方によって、取れぬということは言い切れないけれども、しかし取るという前提で考えるのは無理が若干残る、こういう階層が案外多いと思いますので、こういう人々に対しては督促をしないで待ってみる。この法律でも特に「督促することができる。」と規定して「督促しなければならない」という規定を置かなかったのは、そういう事情からでございます。督促をしなかった場合にどうなるかと申しますというと、現在の会計法規の仕組みで申しますと、かりに督促をしなくとも公けの債権というのは納入の告知をしただけで実は時効が中断されますので、いつでも強制執行ができ得る状態に相手方が置かれるわけでございます。これでは工合が惑うございますので、特にこの法律では時効の点に特例を設けまして、納入告知をしただけでは時効を中断しない、従って、そういう人々にはときどき納入告知をして納められるなら納めてほしいという通知はいたしますけれども、二年間たちますと自動的に両者の関係が確定する、こういうような仕組みにいたして、御指摘のような無理のかからないような解決に持っていける道を開いておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/146
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147・坂本昭
○坂本昭君 今、御説明のあった通り、非常に複雑な事務取扱いですが、この間うち公述人の方も、特に市長さんでしたか、八十五条、八十六条についてかなり問題にしておられました。今のような非常に複雑な事務処理並びにあとの責任の問題を通じて、この八十五条、八十六条に書いてあることだけではなかなかようやらない、特に国民健康保険の今までの例をあげて、これは私は厚生省として一番いい例だと思うのですが、厚生省が今までやった中で国庫の扱いについても事務費は必ず見ると言いながら見てくれない。この間の市長さんは、九十五円くれるけれども、実際出費は二百四十五円でしたか、半分もくれていない。これは私は重大な問題だと思うのですね。
〔理事木下友敬君退席、委員長着席〕
特にこの中で拠出制が始まったら非常に複雑になってきますが、すでにこの無拠出はこの十一月から始まる。実際の支給はあなた方の御説明によると来年の三月から四月ごろになりそうだということですが、非常な複雑な要素を持っておるのに対して、この八十五条の特に三項には「予算の範囲内で、」「費用を負担する。」、この「予算の範囲内」というのは、非常にこの地方自治体としては困るんですね。これについてどういうふうな御方針を立てていかれるおつもりですか。これは厚生大臣から、これはもうすぐ始まる問題ですので、御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/147
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148・坂田道太
○国務大臣(坂田道太君) 今後この拠出年金が始まります場合におきまして、特にこのような日本においてはまあ初めてなスタンプ方式をとるわけでございまして、もちろん日雇い等におきまして若干やってはおると思いますけれども、おそらく習熟しておらないと思います。こういうような点につきまして、今後単に徴収のみならず、この国民年金を国民の方々の一人々々に周知徹底する上から申しましても、また今度の年金がほんとうに実のあるものになり、かつ国民の方々からほんとうに信頼を持ち得られる年金にしていく上から申しましても、特に市町村長さん方に対しまして非常に御厄介にならなければならないのでございまして、その意味から申し上げまして、われわれとしては、必要な事務費については十分これを見てあげなければならないのではないか、そうでなかったならば、やはりこれはこの徴収がうまくいかない、徴収がうまくいかなければ、この年金財政そのものが実はくずれて参るわけでございまして、この点につきましては、とにかくこの画期的な法案でございますし、また取り上げました方式が新たなスタンプ方式でございまするので、十分われわれといたしましては、この費用等については確保をして参りたいというふうに考えておるわけでございます。なお、この法文等の問題につきまして、小山審議官からちょっと御説明を申し上げたいと思います発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/148
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149・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) ただいま坂本先生がおあげになりました八十六条は、国民健康保険法とほぼ同趣旨の規定でございますが、何分従来の当局側の実績が実績でございますので、地方団体の不信をかっておるわけでございますが、条文といたしましては、これは義務規定でございまして必ずこれは国が負担しなくちゃいかぬという趣旨を明瞭にしているわけでございます。
それから八十五条の第三項の方は、これはちょっと性質の違う条文でございまして、この年金制度における事務費の負担区分を規定したものでございます。現在はあまりこの規定は意味がございませんが、特別会計を作ります場合に、国の負担する部分として、事務費は国の一般会計で負担をするのだ、特別会計のうちの保険料の拠出分というものは事務費には一切使われないというような原則を第三項は明らかにした条文でございますが、地方公共団体との関係はこの条文ではなくて、八十六条の方で処理される、かようなことになっております。
なお、先ほど御報告申し上げることを待っていただきました十八才未満の子供のある母子というふうに、もしした場合にはどうなるかということでございますが、こういたしますというと、対象が十二万人増加いたしまして、費用として十八億程度増加いたします。
なお、大へん恐縮でございますが、先ほど錯覚で一つ肝心なことを間違って申し上げましたのでお許しをいただきたいと思いますが、障害年金の対象、現在一級となっておりますのを二級に直しました場合に、一級と二級の関係が一対四であるから五倍になりますということを申し上げましたが、これは非常な錯覚で恐縮でございますが、これは二倍にふえるという程度でございます。つまり二級に広げました場合に、広がる部分は一級とほぼ同数、従って、金額としてはほぼ二倍になる、こういうふうになるわけでございます。ですから百五十億見当になりますというふうに申し上げましたのは六十五億見当になりますというふうに訂正さしていただきたいと思います。(藤田藤太郎君「三十億ふえたんですね。」と述ぶ)三十二億ばかりふえるということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/149
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150・久保等
○委員長(久保等君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/150
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151・久保等
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
本日はこれにて散会をいたします。
午後五時二十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114410X02519590407/151
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