1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年二月二十六日(木曜日)
午後一時四十五分開会
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委員の異動
二月二十五日委員斎藤昇君及び増原恵
吉君辞任につき、その補欠として林田
正治君及び木内四郎君を議長において
指名した。
本日委員林田正治君及び青木一男君辞
任につき、その補欠として大谷藤之介
君及び川村松助君を議長において指名
した。
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出席者は左の通り。
理事
土田國太郎君
山本 米治君
平林 剛君
天坊 裕彦君
委員
大谷藤之介君
岡崎 真一君
川村 松助君
木内 四郎君
木暮武太夫君
迫水 久常君
塩見 俊二君
西川甚五郎君
廣瀬 久忠君
政府委員
大蔵政務次官 佐野 廣君
大蔵省主税局長 原 純夫君
大蔵省理財局長 正示啓次郎君
大蔵省管財局長 賀屋 正雄君
事務局側
常任委員会専門
員 木村常次郎君
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本日の会議に付した案件
○企業資本充実のための資産再評価等
の特別措置法の一部を改正する法律
案(内閣提出)
○株式会社の再評価積立金の資本組入
に関する法律の一部を改正する法律
案(内閣提出)
○接収貴金属等の処理に関する法律案
(内閣提出)
○昭和三十三年産米穀についての所得
税の臨時特例に関する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
○酒税法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/0
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001・土田國太郎
○理事(土田國太郎君) ただいまから委員会を開きます。
本日は加藤委員長が都合に依りまして登院できませんので、私がかわつて委員長の職務を勤めさしていただきます。
企業資本充実のための資産再評価等の特別措置法の一部を改正する法律案、株式会社の再評価積立金の資本組入に関する法律の一部を改正する法律案、以上二案を一括議題として、質疑を行います。
質疑のある方は、順次、御発言を願います。——質疑がございませんようですから、明日に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/1
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002・土田國太郎
○理事(土田國太郎君) 次に、接収貴金属等の処理に関する法律案を議題として、質疑を行います。
質疑のある方は、順次、御発言を願います。
本日は御質疑がないようでありまするが、私から簡単に、ちょっと管財局長にお伺いしたいことがあります。簡単に一つ、要点だけの御答弁を願います。
まず、お聞きしたいことは、貴金属が接収された状況について、どういうような工合でおやりになつたか、その一、二の実例を、御承知ならば簡単に一つ、御説明願えればけつこうだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/2
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003・賀屋正雄
○政府委員(賀屋正雄君) 終戦後連合国占領軍が国内の貴金属を接収いたしましたときの経緯でございますが、この点につきましては、昭和二十七年の接収貴金属等の数量等の報告に関する法律という法律に基きまして、接収された方々から報告をとりまして、その報告の記載事項の中に、接収の経緯というところがございまして、そこにそれぞれ書いていただいのでございまして、ちようどそれを写したものがございますので、一、二その例を読んでみますと、これはある会社でございますが、ある会社から出ております報告に、接収の実情といたしまして、このようなことが書いてございます。「昭和二十一年九月二日午後、接収担当官米騎兵第二旅団本部某騎兵大尉外四名、拳銃を携行、小型ジープ及び小型トラックをかつて当社北品川工場に到着、銀の引き渡し方を要求されたので、社員立ち会いのもとに、重量測定の上、受領証引きかえで銀塊三十個、銀棒三十三個を引き渡した。」。それから、次のまた別の会社でございますが、それの報告には、「昭和二十年十月二十日、米兵約二十名突然本社に侵入し、倉庫、金庫、工場、店舗等を占拠したので、営業中止のやむなきに至つた。十月二十五日、何らの予告もなく、装甲自動車隊とともに接収担当官来社、軍関係貴金属及び本社所有貴金属一切を連合軍において接収する旨通達された。受領証引きかえで直ちに接収された。」。こういうふうに、ジープでありますとか、装甲自動車をかりまして、時には拳銃を持ってある程度威嚇をいたしまして持って行つたようでございます。
今の二つは会社でございますが、個人について二、三例を申し上げますと、「昭和二十一年四月十四日朝、連合国占領軍接収担当官某中尉の指揮する米軍兵士により接収が行われた。接収は、米軍兵士がピストルを擬して、強制的に接収を行なつたものである。
大体大同小異でございますが、そのようなことが記載されておりまして、相当強権力を発動して接収をしていったというようなことが記載されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/3
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004・土田國太郎
○理事(土田國太郎君) 今、提案されておりまする法律は、民法の基本原則に立って立案されていると思うのですが、もし接収貴金属の処理を民法の規定だけで行うとすれば、どのような不都合が生ずるか、この点、わかりやすく簡単に御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/4
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005・賀屋正雄
○政府委員(賀屋正雄君) 法律的な問題についてのお尋ねでございますが、お説の通り、接収貴金属は没収されたものではない。従って、所有権はもとの所有者が持っておる。従いまして、民法の基本原則に立ってこの法案ができておるわけでございますが、なぜ特別に、民法だけにまかせておかないで、法律を作る必要があるかという点でございますが、民法の規定だけによりますと、次に申し述べますようないろいろな不都合が生ずるのでございます。
簡単にというお話でございますが、法律問題でございますので、ややわかりやすく述べますと、やや長くなるわけでございますが、まず第一の問題は、これまでたびたび御説明いたして参りましたように、接収貴金属等は、接収されましたあとで、占領軍の手によりましてインゴットでありますとか、一部の美術品を除きまして、大部分のものは溶解混合されておるのでございます。私どもはこのような接収貴金属をいわゆる不特定物と呼んでおるわけでございますが、このような不特定物は、法律的に申し上げますと、民法二百四十五条で規定しておりますいわゆる混和の状態にあるわけでございます。今、かりに民法の規定だけによりましてこれを処理しようといたしますと、いつまでも紛争状態が際限なく続く、問題がいつまでたつても完全に処理がつかないという点でございまして、と申しますのは、民法の規定によりますと、このような不特定物を処理するためにはそのものの所有権のある人たち全部、いわゆる共有者全部の間でどういうふうに分けるかという分割の協議をさせまして、その協議が成立したところによって分けるわけでございます。ところが、被接収者は相当数も多いことでございますし、あるいはまた時間的にも相当長い期間を経過しておりまして、その間に所有権の移転等もございますので、共有者は結局全国に散らばつておるというような事情もございまして、一体、協議をしようにもどの人とどの人とが集まつて協議をするのか、そのことが本人たちにとつてはわからないわけでございまして、実際問題といたしまして共有者全部の協議が成立するということはほとんど考えられない、不可能に近いと思うわけでございます。こういう事情がありますから、共有権を主張する者が、結局は、その人たちで訴訟を共同して提起するということにならざるを得ないと思うのでありまして、結局、問題を裁判所に持ち込むわけでございます。そういたしますと、訴訟が提起されますと、裁判所としては何らかの結論を下さざるを得ないわけであります。そこで、共同訴訟の当事者に対しまして、ある方法によりまして不特定物を分割する結論が出たといたします。ところが、御承知のように、所有権は絶対的な権利でございますので、たとえそのような訴訟で判決が確定いたしましたあとでも、漏れた共有権者がまた自分もこれを主張するというようなことで、訴訟にあとから、参加しそこなつた共有権者があとから名乗りを上げてくるというようなことも当然考えられるわけでございます。そうなりますと、裁判のやり直しをするというようなことで、非常に繁雑なことを繰り返す。あるいはまた、共有者が前の裁判によって分割を受けました者を相手にいたしまして、不当利得の返還請求をするというようなことも考えられるわけでございまして、このようにいたしまして際限もなく紛糾状態が続くということでございます。このように紛争状態がいつまでも続くということは、もちろん、民間の者にとりましても、政府にとりましても、裁判所にとりましても、非常に時間的にもロスでありますし、多大な経費もかかるというようなことを考えますと、決して当を得た措置とは言えないと思うのであります。
それから、第二の点でございますが、民法の規定だけによって処理を行うといたしますと、不特定物の分割について裁判にかりになつたといたしまして、どのような不都合があるかといいますと、もう一つこれから述べますような不合理が生ずるのであります。それは不特定物につきましては、さきに申し述べましたところによりまして、かりに裁判が行われたといたしましても、この場合については民法の二百五十条の規定がありまして、共有者の一人々々の持ち分がはっきりしておらないという場合には、この民法によりますと、各共有者の持ち分は相ひとしいものと推定いたしております。この規定によって裁判を行うわけでございます。接収貴金属等の中には品位等の不明なものもありますので、裁判所といたしましても、各共有者の持ち分の正確な割合を確認できない場合が多いと思われるわけでございますが、そういう場合には、ただいま申し述べました規定によりますと、国全体が一つの当事者になり、それからABCDEと民間の多くの方々、それがそれぞれ当事者といたしまして、国は一本として相ひとしいと、各個人と相ひとしい持ち分として推定されるということになりまして、非常に不合理な結果が生ずるわけでございます。ただいま接収されております貴金属のうち不特定物だけをとつてみましても、大体国の持ち分と民間の持ち分を比較いたしますと、民間は約一割見当にすぎないと思うのでございまして、そのような一割が非常に多くの人に分れておりまして、国は九割持っている。ところが、おのおの持ち分が判明しないときには相ひとしいもの、一対一の取扱いを受けるというような不合理な結果が出てくるわけでございます。
それから次に、民法の規定だけで処理を行うといたしますと、それじや、特定物はどうなるかというわけでございますが、これも特定物全部を片づけることが非常に、何と申しますか、先ほど申し上げましたように、所有権は絶対的な権利でございますので、あとからあとから、自分のものも特定されるんじゃないかというようなことで、訴えが出て参りますと、結局、特定物と不特定物とを截然と分離するということはいつまでたつてもできないというようなことになるわけでございます。
従いまして、以上申し述べましたような関係から、不特定物につきましても、特定物につきましても、完全に最終的な処理をするということは、この民法の規定にまかしておいたんではできないということから、ただいま御審議を願つておりますように、特別の法律を出しまして、それによって一定の期間、返還請求を所有権に基いてしていただく、そうして処理の対象者をはっきり確定させた上で、方法をきめまして処理を進めていくということにいたさざるを得ないというふうに考えるわけでございます。
以上、くどくど申し上げましたが、大体、特にこの法律が必要だというゆえんを御説明いたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/5
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006・山本米治
○山本米治君 今のことに関連して、ちょっとお伺いしたいのですが、この接収貴金属のうち、特定したもの、特定しないものがあるわけですが、その特定したものについて、政府はまあいろいろ勝手な処分をしておる、こういうような議論があつて、それじや、特定したものと特定しないものとを分けて、特定しない分だけについて法律を作つたらいいんじゃないかという議論があるわけですが、しかし、これに対して政府当局としては、それはなかなか法律上、技術上困難だ、それで、特定したものもしないものも、全部を対象にして作つたのだという答弁で、これはまあ了承しております。これについて、今のこの接収貴金属法の対象となっておるものの大ざつぱな状態、現状を知りたいのです。特定しておるものといっても、これは時間が進むにつれて、いろいろ証拠書類等で特定したものがふえてくるわけですが、現在、最近のところで、どの程度特定しておるか、していないのか。この接収貴金属の総額は七百三十億といわれておるのですが、これは金額のことですから、このうち、数量は少くても金額が高いものがあるし、金、銀、ダイヤモンドくらいに分けまして、たとえば金のうちどれくらい現在特定しておるのか、どれくらいが不特定なのか、あるいはダイヤモンドはどうかというようなことを、詳しい数字でなくていいんです。金、銀、ダイヤモンドぐらいに分けて、大ざつぱな現状というものを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/6
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007・賀屋正雄
○政府委員(賀屋正雄君) ただいまの御質問につきましては、先般、平林委員の御要求によりまして、資料を提出いたしておりまして、その第一の中に、接収貴金属等のうち国及び日本銀行所有の特定物と認められるものの数量というところに数量を記載してございます。参考にまあ民間の分も掲げまして、ただいまの山本委員のお答えにかえたいと思うわけでございますが、これでごらんいただきます通り、接収貴金属のうち、何が特定し、何が不特定かということを、截然と、ただいまこれは不特定、これは特定と、現段階において分けるということはできないのでございますが、まあいろいろな接収関係の記録、あるいは証拠資料あるいは被接収者の持っております領収書、こういったものによりまして、大体政府で今特定したものを選び出すとすればどのくらいかという見込みの数量が、ここにあります通り、まあ金と銀でございますが、ダイヤモンドはほとんど特定分がないのでございます。そこで、銀につきましては、一般会計に帰属すると見込まれるものが二百三十トン、それから貴金属特別会計に帰属すると見込まれる銀が一・七トン、金は、貴金属特別会計に帰属する見込みのものが約二トン、それから日本銀行に返る見込みの金が約六十二トン、これを合計いたしますと、二百八十二億ぐらいになるわけでございます。それから、民間の分は、備考に書いてございますように、銀が約二十二トン、それから日本銀行の売り戻し条件付の金製品が〇・七トン、これが約五億ぐらいになりまして、この両方を合せますと、二百八十七億と。六百七十四億のうち二百八十七億程度は、ただいまのところの調査で特定すると見込まれておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/7
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008・平林剛
○平林剛君 きよう、私は黙つているつもりでいたけれども、今、土田理事とそれから山本理事の発言に対して答弁をしたことに不服な点がありますから、関連して質問をいたしておきます。
先ほど、民法上の取扱いからこの法律案を見たとき、民法上の取扱いにしたならばどういう不合理が出るかということに対する御説明がありました。質問の設定がそこにあったのでありますから、答弁も限られたものと思いますけれども、あたかも、政府当局の説明は、少数の所有権者に対して、裁判所における処理困難の理由を説明をされて、法律の合理性を述べられたのでありますが、私は、この問題の全般的な見地から立って、なぜ政府が少数の所有者だけに特に親切にしてやる理由があるか、まして、民法上の裁判訴訟を起せば相当の経費と相当の日数がたつにかかわらず、なぜ一割程度の納付金しか納めさせないような法律にしているか、いろいろ不満な点があるのですけれども、これはさておいて、私がお尋ねしたいのは、この裁判所における処理困難ということは容易に想像はできます。今のお話で想像はできますが、何かあれですか、正式に裁判所側の方から、これは困るからぜひ政府の方でこうしてくれという正式な申し入れがあったかどうか、これが一つ。
それから、ただいま山本理事の質問の原則に立っているのは、この法律案を民間のものとそれから国家所有のものと切り離すことについてお尋ねがあったのでありますが、その質問の前提は、この二つのものを区分することは困難である、それを私は承知しておるがということでお尋ねしております。それに対して、あなたは何とも言わないで、資料の説明をされましたが、これは衆議院で言っておられるあなたの答弁は、衆議院のこれは大蔵委員会で答弁をされたのですが、技術的にいえば、国のものと民間のものと切り離した法律を出すことは理論的には可能である、こう言っているのです。今それと反対の前提に立って山本委員が質問したのに対し、あなたはそれをほおかぶりして、それを黙つているのはけしからぬ。やはりここは衆議院の大蔵委員会で説明されたように、技術的にいえば、国のものと民間のものと切り離した法律を出すことは理論的には可能だ、こういうことをやはり反対的に説明しておかなければ、これからのわれわれの審議に支障を来たす。その点を明らかにしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/8
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009・賀屋正雄
○政府委員(賀屋正雄君) まず第一の、民法の規定によると非常に不合理な結果が生ずるので特別法を出したということに関連いたしまして、裁判所から何かそういうような正式な要求があったかという点につきましては、そういうものはございません。政府が考えまして、この法律が最も妥当であるという結論に基いて、提案をいたしたのでございます。
次に、先ほど資料について御説明いたしましたのに関連しまして、御質問の点だけについてお答え申し上げましたので、言葉の足らかった点もあろうかと思います。その点について、なお若干補足して申し上げますと、衆議院でもお答えいたしておりますが、技術的にと申しましたか、ちょっとまだ速記を見ておりませんが、むしろ理論的には、観念上、そういう政府のもの、民間のもの、あるいは特定物、不特定物というものを切り離した法律ということも考えられる、可能であろうと思うのでございますが、むしろ技術的には非常にこれは困難だというつもりで申し上げておるのでございまして、この点もう少しかみ砕いて申し上げますと、
特定物と不特定物を切り離して処理したらどうかという点でございますが、先ほども申し上げましたように、元来特定物、不特定物ということは、接収に関するいろいろな証拠資料等をしさいに検討いたしまして、いわば結果的に出てくる事柄でありまして、今日段階において接収貴金属の全部を特定物と不特定物に截然と区分することは、ほとんど不可能であると思うのでございます。また、接収された方々、返還請求をされる方々の立場から見ましても、自分のものは果して政府の保管しておる中で特定しておるのか、不特定しておるのかということは、わからないわけでございます。従いまして、どうしても処理の仕方といたしましては、あらかじめ特定物と不特定物に分けまして、それぞれを対象とした法律を作り別々な処理の仕方をするということはできないと思うのでございまして、結極、接収されたその全体を対象として、被接収者にまずその返還請求を出させ、いろいろな証拠資料を提出させまして、そしてそれをよく審査いたしまして、全体的に統一的に処理するというのが最もいい方法だというふうに考えているわけでございます。
もちろん、現在の段階におきましても、特定しておるものが全然ないというわけではございません。特定しておるものも、先ほど申しましたようにあるわけでございますが、しからば、それが特定物の全部かと申しますと、そうではないわけでございまして、これから法律に基いて返還請求——いろいろな資料をつけて返還請求を出していただいて、それを審議会にかけまして、いろいろ資料を持ち寄つて審議いたしました結果、特定する、不特定するというものも出てくるわけでございます。そういうような観点から、法律の形といたしましては、どうしてもこの全部を対象とした法律にならざるを得ないというように考えるわけでございます。
それから、もう一つ見方を変えまして、国と民間の分とを別々に切り離して、それぞれ違つた法律を出すということにしてはどうかという議論もあり得るわけでございますが、これもまあ衆議院で答弁いたしましたように、まあ理論的には可能であろうと思うのでございますが、しかしながら、先ほど不特定物について申し上げましたように、混和した状態になっております部分につきましてはどうしても特別な処理の仕方を定めなければならないという点、それから国のものが民間で接収されたり、民間のものが国に、たとえば造幣局に鑑定のために持って行っていた間に接収されたというふうに、その接収の経緯が非常に入り組んでおるというようなこと、あるいは法律関係が入り組んでおるというようなことも容易に予想せられるところでございまして、従って、法律の形としましては、やはり国と民間の所有物を全部を対象といたしまして、返還請求の出そろったところでそれぞれの帰属を定める、特定物について按分するなり、不特定物について按分するというような処理の仕方を定める、結局今御審議願つておるような法律にならざるを得ない、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/9
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010・平林剛
○平林剛君 なるべく簡単に答弁をするようにという委員長の御指摘でありますから、簡単に答弁を願いたいと思います。まあ、ただいまのことで裁判上における処理困難の理由については裁判所側から何ら正式の申し入れがなく、政府の発意によって少数の所有権者だけにこの取扱いをするということが、よくわかりました。
それから、議事録を調べなければわからないとお話しがありますが、昭和三十四年二月六日の衆議院の大蔵委員会において、佐藤觀次郎委員の質問に答え、賀屋政府委員は、「戦後においてはとかくいろいろな風評も立っておつた。こういうような問題でございまして、これを処理するにつきましては、一つはとにかく国会の御審議を経た法律によって処理するのが妥当ではなかろうか、こういう政治的な理由からいたしまして、」云々と、こう書いてありまして、そこに「技術的に申し上げますれば、もちろん国のものと民間のものを切り離した法律を出すということも、理論的には可能」と、こういう答弁があるわけなんです。これはまあ後日また実際問題——区分することが可能か不可能かということについては、あらためて質問をいたします。本日は私はこれだけを指摘しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/10
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011・土田國太郎
○理事(土田國太郎君) 最後に、ちょつと手続のことについてお尋ねしておきたいのですが、かりにこの法律案が成立したような場合には、貴金属の返還請求はどのような書類を、どういうふうに出すか、あるいはどこへ出すかということを、簡単に御説明願つて、参考にしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/11
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012・賀屋正雄
○政府委員(賀屋正雄君) お答えいたします。返還請求書の様式等、あるいは手続につきましての詳細は、大蔵省令で定める予定にいたしておりますが、ただいま考えておりますところは、大体被接収者は、法律にありますように、法施行後五カ月以内、被接収者が請求しない場合には所有者が七カ月以内に返還請求を出すわけでございます。これには接収貴金属等の種類、形状、品位、数量、それから接収先、あるいは場所、接収当時の状況等を詳細に記載していただく。同時に、受領証等の証拠資料をつけていただくわけでございますが、まあその申請の手続といたしましては、各府県にございます大蔵省の出店であります財務部に出していただくという考えでございます。ただ、財務部がございません財務局の直轄地域につきましては、財務局へ出していただく、こういう手続になることと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/12
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013・土田國太郎
○理事(土田國太郎君) 本案につきまして、ほかに御質疑の方はございませんか。——では、御質疑も本日はないようでありまするから、接収貴金属等の処理に関する法律案の質疑につきましては、いずれ明日に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/13
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014・土田國太郎
○理事(土田國太郎君) これより昭和三十三年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案及び酒税法の一部を改正する法律案を一括議題として、順次、補足説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/14
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015・原純夫
○政府委員(原純夫君) 御説明を申し上げます。
まず、昭和三十三年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案でございますが、これは従来とも毎年のように、その年、その年の米穀につきまして同様な特例をお願いして参りましたのを、三十三年産の米穀についてもその措置をとりたいという趣旨の法律案であります。
もう細目を申し上げませんでも、御存じのことでありますから、省略いたしますが、石当り平均千四百円を非課税とする。この千四百円が、時期によりまして、早場供出の段階によりまして石当りの額が違うようなことになっておりますが、これは農林省の方できめておりますので、早場米の格差と対応させたものであります。また、供出を促進するということを現地の実情に合せていろいろ考えられましたために、地域的に若干一般の原則から特例を設けるというのが、法律案の三ページ以下にございますが、そういう趣旨のものでございます。
なお、これにつけ加えまして申し上げなければいけないと思いますのは、今回昭和三十四年度の予算を組みます場合に、三十四年産米についてどうするかという問題につきまして、政府としては、三十四年産米についてはこの特例を設けないでいきたいという考えをとりまして、従いまして、この三十四年度の税収におきましては、別途差し上げております税収見込みの中に所得税、申告所得税の農業の分につきまして、この特例がなくなるものとしての税収予算をあげております。しかし、一方で、木措置が発生し継続いたしました経緯にかんがみまして、いわゆる税の公平論からいって、これをやめるというだけの簡単なことではいきませんので、一方で、これによって農家が受けておりました減税額、受けることになります減税額に当る金額は、これを米価に、予約加算金のいわばこぶとして石当り七十五円というものを盛りまして、これを還元する。全体の供出米価にその利益を及ぼすようにいたしまして、今や農家の中で一割にも満たない課税農家だけにこの利益が行くというのは、予約供出を奨励する措置としてもいかがかと思われますし、税金面できわめて不公平であるというのは、これはもう年来いわれたことでありますので、政府としては減税額は所得税では増収になる。しかし、一方払います米価の方では、同額と申しますか、むしろ地方でこの増収になります住民税の分まで米価に織り込んで払うということにいたしておるわけであります。ちょうど昭和三十四年度につきましては、所得税一般につきましても減税を別途お願いいたしておる。その減税の仕方は扶養控除中心の減税でございます。これは端的にいいますると、各業態の中で一番農業所得者に有利な減税であります。そういうような条件もある時期でありますので、この際、年末税制調査会その他で整理を要望されておりましたものを、そういうふうにいろいろな措置をとつて、三十四年産米についてはやめていきたいというふうに考えて、それを予算編成の基礎といたしておるということを付言して申し上げます。
それから次に、酒税法の改正について御説明を申し上げます。
昨年は下級酒について一割前後の減税をいたしましたんでありますが、今回は実質的な減税問題はほとんどございません。主として技術的な整理であります。実質的な減税といたしましては、みりん甲類の減税があるだけでございます。
そこで、整理と申しましても幾つかあるわけでありますが、まず第一に、尺貫法がメートル法になる。それで、新年度におきましては、メートル法単位に切りかえるということにいたしております。そのために、この酒税法に、たとえば税率にいたしてましても、一石幾らというふうに盛つてありますのを一キロリットル幾らというふうに直す。その他酒税法には、免許の場合の制限石数と申しますか、そういうようなものとか、石数等の計量単位が多々出て参りますので、これを直すというのが第一点であります。大体、キロリットルに換算いたしまして、百円未満の端数を切り捨てるということでやつております。条文としては、中心的なものは第二十二条の税率の規定、これをただいま申しましたようなことであんばいいたしておる。その他各条にあります石数等の計量度合いを示しますものを新しい制度に置きかえるということであります。
それから、初めの方にはいろいろ、しょうちゅうというような字は、今まで「しよう」は漢字で「ちゆう」はひらがなで点が打ってあるというようなのが、今度はひらがなでそのまま「しようちゆう」というようなことに改めていますが、そういうようなやり方になって参りましたので、そういう意味で書き方をずっと改めたというようなことがございます。
なお、第三に、若干技術的になりまするが、十一条に「免許の条件」ということで、酒の製造免許、販売免許をいたします場合に、製造または販売数量とかあるいは酒類の種類というようなものについて条件を付する、あるいは卸、小売の別について条件を付することができるというふうになっておりますが、これらについて、たとえば、臨時に即売会を設けて、まあ一週間ならば一週間ある展覧会の一角で即売したいというような場合に、期間の条件をつけられるかというような点に若干の疑問がある。実際にはそれに当ることをやっておるのでありますが、もう少し免許のやり方について、そういう点が法律でも合理的に読めるようにというようなことを整理したいという点、これが技術的な意味での第三点でございます。
しからば、実質面に参りましての減税、これは本みりんだけであります。と申しますのは、法律案の二十二条みりん甲類というところにおきまして、現在はみりん甲類は一石当り四万五百円という税率になっております。これが今度キロリットルに改めますと、換算いたしますと一キロリットル二十二万四千五百十二円という数字になるわけでありますが、今般これを十四万円というふうにいたしたいということが入っております。石当りに直しますと二万五千二百五十五円ということになります。この趣旨は、いわば酒の税率というものは、御案内の通り、戦争中、また戦後にかけまして、重なる財政需要をまかなうために非常に重くなっておりまして、一時は特価酒というような制度で重い上にいろいろ工夫をこらして、これで税収をあげるということをいたしておりました。そのために、酒の税率全般が相当重い。重い中でございますから、なかなかこまかいきめをつけての調整が実際上困難であった。これは私としては言いにくいのでありますが、そういう事情がございました。で、だんだん減税も、酒税についての軽減も、近ごろはだんだん行われるようになりましたが、そういう際も酒類の間のバランスというものを大きく動かすということがなかなかできにくくて、いわば沿革的な形での酒税の各酒類間のバランスというものがあるわけであります。その問題は全酒類についていわばあるのでありますが、今回このみりん甲類についてのそういうアンバランスがきわめて顕著であるということを考えましたので、かつ、税額にもほとんど影響がないという部類でありますので、これをぜひ今回お願いしたいと考えたわけであります。
その趣旨は、みりん甲類はどういうふうに使われるかといいますと、まず調味料として使われる。かば焼のたれに使い、いろんなお料理の味つけに使うというのがもうほとんどでありまして、飲用に供する——ごく一部地方に、じかにこれを飲用に供するというのがあるように聞きますが、大体はお正月のとそに使うというのがまあせいぜいのところで、どう見積つても、全体の一割になるかならぬかであろうというような感じであります。そういたしますと、いかにもこの四万五百円というのは重い。ただいま実際には。これが重過ぎるために、清酒——まず二級の清酒でありましよう、石当り二万五百円の税率のかかっております二級清酒を使い、甘みを必要とすれば砂糖を入れるというようなことになっております。戦前には大体、清酒、それからみりん、こういうものは全部一本で、石当り四十円という税率であったというようなこともあつて、いわば、戦後、みりんは割合にお米をよけい使わなければならぬというようなことがあって、お米が足りない時分に米をよけい使うものはというような意味もあって、かなり重い税率がそのまま残つているというようなことがありますので、ただいま申しましたような、調味料に主として使われるというような事情を考え、しかし、まあ調味料だからこれをはずしてしまうというわけにもいきません。やはりアルコール含有飲料としての性格もあるので、全体のバランスから、ほかの酒類とのバランス、あるいはただいま申しました二級酒でやった場合との比較というようなことを考えて、ただいま申しましたような税率を考えたわけであります。
以上が酒税法についての御説明でありますが、なお付言いたしたいと思いますのは、別途御審議願いまする租税特別措置法におきまして、この清酒、合成清酒の低アルコール酒というものについて、軽減税率を適用するということをお願いいたしております。これはまあ冷用酒というような形で皆様にもお目にかかっておるかと思いますが、必ずしも冷用酒に限らず、清酒、合成清酒については、十五度ないし十六度という正規の度数でなくて、十三度ぐらいにして、そして冷やで飲むというような用途が、今後開拓し得る用途として考えられ得るのではないかというような意見が非常に強い。われわれも、そういう面の用途を大いに開拓するのはけつこうではないか。つきましては、現在では、清酒は特、一級が十六度、二級が十五度というような規格でありますのが、かりに、酒屋さんがそういうものを売ろうといって十三度のものを出すという場合には、税額は一石当り同じ税額を納めなければならないというようになっております。この辺のところは、新しくそういう用途を開拓するということであれば、アルコール度数で比例した軽減税率を盛るということぐらいはすべきじゃないかと考えて、租税特別措置法の八十五条の次に八十五条の二というのを入れて、度数の比例で軽減できるような措置を租税特別措置法でお願いいたしております。それを付言させていただきます。
以上、簡単でございますが、御説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/15
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016・土田國太郎
○理事(土田國太郎君) これより両案に対し質疑を行います。質疑のある方は、順次、御発言を願います。——質疑ございませんか。もしなければ、残余の質疑は後日に譲りたいと思います。
明日は午後一時より委員会を開会いたします。
これをもって散会いたします。
午後二時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01019590226/16
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