1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年三月十日(火曜日)
午後一時四十五分開会
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委員の異動
三月七日委員田中啓一君、大沢雄一
君、平島敏夫君、江藤智君及び植竹春
彦君辞任につき、その補欠として井上
知治君、青木一男君、梶原茂嘉君、岡
崎真一君及び林田正治君を議長におい
て指名した。
三月九日委員島清君及び椿繁夫君辞任
につき、その補欠として小酒井義男君
及び岡田宗司君を議長において指名し
た。
本日委員岡田宗司君、青木一男君及び
林田正治君辞任につき、その補欠とし
て椿繁夫君、松野孝一君及び稲浦鹿藏
君を議長において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 加藤 正人君
理事
土田國太郎君
山本 米治君
大矢 正君
平林 剛君
天坊 裕彦君
委員
稲浦 鹿藏君
岡崎 真一君
木暮武太夫君
迫水 久常君
西川甚五郎君
廣瀬 久忠君
松野 孝一君
宮澤 喜一君
小笠原二三男君
小酒井義男君
椿 繁夫君
杉山 昌作君
国務大臣
大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君
国 務 大 臣 世耕 弘一君
政府委員
大蔵政務次官 佐野 廣君
大蔵省主税局長 原 純夫君
大蔵省管財局長 賀屋 正雄君
事務局側
常任委員会専門
員 木村常次郎君
説明員
大蔵省主税局税
制第一課長 塩崎 潤君
大蔵省主税局税
関部長 木村 秀弘君
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本日の会議に付した案件
○接収貴金属等の処理に関する法律案
(内閣提出)
○災害被害者に対する租税の減免、徴
収猶予等に関する法律の一部を改正
する法律案(内閣提出、衆議院送
付)
○日本国とアメリカ合衆国との間の安
全保障条約第三条に基く行政協定の
実施に伴う関税法等の臨時特例に関
する法律の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/0
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001・加藤正人
○委員長(加藤正人君) ただいまから委員会を開きます。
委員の異動について御報告をいたします。本日付をもちまして、委員青木一男君、林田正治君が辞任せられ、その補欠として松野孝一君、稲浦鹿藏君が委員に選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/1
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002・加藤正人
○委員長(加藤正人君) では、接収貴金属等の処理に関する法律案を議題といたします。
前回に引き続き、質疑を続行いたします。御質疑のある方は御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/2
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003・平林剛
○平林剛君 接収貴金属等の処理に関する法律案は、御承知のように、その第一回目の政府案が昭和二十八年十二月から開催された国会に提出をせられたのであります。それから今日まで約五カ年、五回にわたって継続審議、審議未了という形になっております。その間、この法律案は今日までずっと同じ内容の法律案になっております。一部変ったところはあります。それは付則がつけられまして、政府が百円銀貨の地金に使うたときや、今後予想されておるIMF等の出資金に使えるような措置を、使っても差しつかえないような備えを法案の中につけ加えられただけでありまして、ずっと同じ内容のように私は記憶しておるのでありますが、何かはかに変ったところがあると大蔵大臣は御理解なさっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/3
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004・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま御指摘の通り、この法案、なかなか難航でございまして、ずいぶん長い間毎国会に出、今回も御審議いただいておりますのですが、御指摘のように、その内容におきましてはほとんど変りはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/4
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005・平林剛
○平林剛君 政府が議会にこの法律案を提出した基本的な考え方においても変りがないと理解いたすのでありますが、さようでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/5
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006・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/6
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007・平林剛
○平林剛君 それでは、質問をいたします。政府提案による法律案は、その第一回の政府案を提出したその初めから、接収貴金属の処理に関する国会の意思に違反しておるのではないか。もしそうであれば、本委員会で審議中の法律案は、政府も十分反省して、内容全般について再検討すべきではないか、こういう要望を含めまして質疑を行いますから、十分慎重に的確な答弁をしていただきたいと思います。
接収貴金属等の処理に関する法律案が初めて政府から提出されたのは、昭和二十八年十二月、第十九国会のことであります。これより前、昭和二十八年五月、衆議院の行政監察特別委員会におきまして、主として接収ダイヤモンドについて審査が行われたことがございましたが、これは昭和二十七年五月、衆議院議員世耕弘一さんから、接収貴金属並びにダイヤモンドの品質、数量に関する調査要求書が提出されたことから始まっておるのであります。その要旨は、政府が第十三国会に提出した接収貴金属等の数量等の報告に関する法律案の審議に当って、大蔵省が発表した接収解除貴金属等の品質、数量がきわめて不正確であるから、その真相の究明を要請したものであります。そして第十四国会、第十五国会、引き続いて、あるいは証人を喚問したり、参考人を呼んだり、調査を行いまして、問題のある点を指摘して、最終的結論として行政監察特別委員会は五つの要綱を衆議院の本会議に上程をし、満場一致承認されることになったのであります。すなわち、当時、接収貴金属等の処理に関する国会の意思があったと認められるのであります。政府は、このときの国会の承認することになった処理要綱を御存じでありますか。だんだん、いろいろ質問をしていきますから、まずその処理要綱を知っておるかどうか。弁解的なよけいな答弁はつけないで、私の質問に的確に答えてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/7
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008・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 一通りは知っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/8
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009・平林剛
○平林剛君 一通り承知しておるということでありますから、つけ加える必要はないと思いますが、念のため、行政監察特別委員長が報告をして満場一致承認をされた五つの処理要綱は、次の通りであります。「一、接収解除ダイヤモンドの所有権は国家に帰属せしめること。二、交易営団及び中央物資活用協会等が当該物件買上げのため受けた損失については、これを立証せしめた限度内において補償すること。三、国家の所有に帰したこれらの物件は適宜に換価処分すること。但し、現品の評価についてはそれぞれの専門家によって再調査すること。四、換価処分による収入金をもって特別会計を設け、その資金を戦争犠牲者等のために支出すること。五、これが資金の支出については、国会議員、学識経験者をもって構成する委員会を設置し、これが審議を経て、政府機関をして執行せしめること。以上は、ともに立法措置を講ずることが必要であり、かつ法律によって」所有権を国家に帰属させても、「違憲の問題も起らないことが、各学者の意見によって明らかとなったのであります。なお、本立法措置は議員立法によることが適当であるとの意見があったのであります。」、まあいろいろそういうことが述べられまして、五つの処理要綱が定められて、私は、これが接収金属処理に関する国会の意思と考えられ、ただいま提案をされ審議中の法律案はこの処理要綱に対して忠実な履行がなく、かつ違反しているところがあると認めるのでありますけれども、政府のお考えはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/9
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010・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま読み上げられましたように、行政監察特別委員長の同委員会における調査の報告というものが、ただいま御指摘になりました五つの項目であると思います。これは主として接収解除ダイヤモンド、これを一でうたっておりますように、ダイヤモンドを特に取り上げたように、当時、私どもは理解いたしております。この五つの問題に基きまして、いわゆる中野四郎君の中野私案なるものが一時出たことがあったと記憶いたしております。また、この報告の中にあるのでございますが、「ダイヤモンド以外の貴金属については、さらに調査を継続して、それぞれ適切なる方途を講じたいと存じますが、一応従来の経過を報告いたす次第であります。」ということで実は結んであるのであります。
この戦争直後における接収の問題は、各方面においてもいろいろ論議された問題でございますので、議員立法もさることでございますが、やはり政府自身が、行監のこの報告を骨子といたしまして、立法することが望ましいであろうということで、今回立法いたしておるのでございます。まあ、大体一と二の程度は、今回の法案にも一応取り上げられたように思いますが、四と五等の点については、私どもも十分これを考えていかなければならないものだと思います。そういう点も考慮に入れまして、今回の法案を提案いたしておるのであります。
問題は、いずれにいたしましても、一応国庫の収入になるわけでございますから、収入になりましたものを区分いたします場合にどういう方面に使うかという、そういう点を十分工夫して参りたいという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/10
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011・平林剛
○平林剛君 ただいま私があげました第十六国会における接収貴金属等の処理要綱に政府の提案が違反しておるのではないかということにお答えがありました。その中で、四と五は十分考えるというお話であります。四は「換価処分による収入金をもって特別会計を設け、その資金を戦争犠牲者等のために支出すること。」、五は「これが資金の支出については、国会議員、学識経験者をもって構成する委員会を設置し、これが審議を経て、政府機関をして執行せしめること。」、これはまあ考えていかなければならない問題であるというお答えがあった。私は、考えていかなければならない問題であることを今後政府がどういうふうに具体的にするかということは、後ほど質問をいたします。
しかし、先ほどあげました前の点においては、明らかに違反しておると言いたいのであります。ただいまお話がございまして、議員立法にするか政府案にするかは、私はまだこの点は程度が軽いと思うのであります。しかし、接収貴金属等の処理は国家に帰属せしめることという趣旨というものに違反をしておるということに対し、大蔵大臣は、それはダイヤモンドのことだ、ダイヤモンドを主として審査をしたのだ、まあこういうふうに御弁解をなされておったのでありますけれども、ダイヤモンドの処理について、このたび提案をされておる法律案はどうなっておるか。ダイヤモンドは、御承知のように、全部で七十二億円ある。民間に帰属するものはわずかに二億円程度あるかもしれません。しかし、少くとも第十六国会における議会の決定了承事項は「接収解除ダイヤモンドの所有権は国家に帰属せしめる」と、こう書いてある。これは、政府の提案は、ダイヤモンドもやはり国家に帰属せしめるとは書いてない。やはり民間に返還をする。と書いてある。ですから、これは国会の議決に違反をしておる。こう思うのであります。ダイヤの審査であるから国会の議決に違反していないということに、ただいまはっきり読み上げましたように、これもはっきり違反しておる、こう思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/11
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012・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 違反とおっしゃることはちょっと私にはわかりかねるのですが、この供出ダイヤについての問題と、それから接収されましたダイヤと申しますか、やはり一通り性格がある。民間のものは民間に返すという考え方は、これは貫いていいと思いますが、その後の処置は、これは別にこの報告に違反はしていないのじゃないかと思います。先ほど申し上げましたのがどういう点が違反しておるとおっしゃいますか、接収ダイヤモンドという言い方をいたしておりますが、この報告の前文にもありますように、民間のものは民間に返すというのが方法ではないかと思います。今の報告書の前のページでございますが、これに「この供出ダイヤは国民の愛国の至情の結晶にほかなりませんから、この処分も、国民が真に納得し満足するような方法によって処分さるべきと考えられます。」と、こういう表現をいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/12
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013・平林剛
○平林剛君 先般、私は、この点について慎重な答弁、的確な答えができるようによく勉強してきてもらいたいと大蔵大臣に注文をつけたのであります。今あなたはまことに自信がなく、前のページの方に書いてあると、こう言われますけれども、はっきり読めば、そういう結論ではないのです。少くとも明らかに、いろいろの議論があった、いろいろな議論があったけれども、「接収解除ダイヤモンドの所有権は国家に帰属せしめること。」と、はっきりしているのですよ。だから、それをこの法案は受けて、少くとも接収ダイヤモンドについては国家に帰属せしめるというように書かれなかったのならば、この処理要綱にそむいているのじゃないか、こう思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/13
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014・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま問題になっておます資料そのものは——れは報告であるから、どうこう申すわけではございませんが、いわゆる決議というほど強いものではない、第一点は、これは御了承いただきたいと思います。同時にまた、先ほど触れました中野私案そのものが、過去において議員立法の一つのものでございますが、その中におきましても、民間の永のは民間に返したらどうだ、こういう意見が出ていたように思いますし、当者等の意見を聞きましても、これらの点は比較的、所有権のはっきりしているものは返すという建前であるようでございます。その意味で、その一の、供出ダイヤは国家に帰属せしめることというこの考え方を非常に限定的に考えることは、実態の点から申しまして、私ども賛成しかねるのであります。しかしながら、この骨子はやはり採用すべきものだ、さように考えておりますので、今回の立法にもそういう点を条文化しておる、さように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/14
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015・平林剛
○平林剛君 第十六回における行政監察特別委員会の報告は決議ではない。それなら、賛成も反対もないじゃありませんか。やはり当時世論を沸かして、大問題になっている。このことについてはいろいろな疑惑があるから、正しい結論を出さなければいけない。注目のうちに委員会が開催され、審議を何回も続けて、その結論として特別委員長が報告をし、これを承認したものを、決議でないからどうだとか、いわんや私はこれに賛成しないなんというようなことは、まことに適当ではない。政府はやはり国会の意思に従うというのが行政府の立場じゃないか、こう思うのですが、あなたの答弁は適当ではありません。もう一回お答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/15
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016・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) いや、その点は相当ゆとりのあるお答えを実はいたしたつもりでございます。ただ、決議となってはっきりしたもの、抜き差しならないものではございません。これは、ただし報告でありますし、それを了承したものでございますから、そういう意味でその趣旨を取り入れております、こういう意味でございますから、国会の意思を尊重しないと言われることは、私としてもまことに不本意でございまして、そういうようには私も考えておりませんし、十分国会の意思を尊重して参る考えでございます。この点は誤解のないようにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/16
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017・平林剛
○平林剛君 尊重しますと言うけれども、具体的に法律案にはそのことが書いてないのじゃないですか、こう言っているのですよ。
繰り返して説明しましょうか。「接収解除ダイヤモンドの所有権は国家に帰属せしめる」。しかし、それは書いてない。それから「換価処分による収入金をもって特別会計を設け、その資金を戦争犠牲者等のために支出すること。」、これも書いてない。いろいろ資金の支出についても、国会議員を含む委員会を作れ、こう書いてあるが、それも出ていない。ちっともその趣旨を尊重して実行に移しておらない。この私の疑問であります。それに一つ答えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/17
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018・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) この第一の「接収解除ダイヤモンドの所有権は国家に帰属せしめること。」はないように思いますが、二の「交易営団及び中央物資活用協会等が当該物件買上げのため受けた損失については」云々は、これは二十条に出ているのでございます。問題は、国の帰属になりますと、一般にこの換価処分による収入金は、これは全部が国の歳入になるわけでございますから、この歳入になりましたものが、特に「特別会計を設け」云々と非常に確定的には書いてございますが、問題は使途について十分の考えをしろということのように私どもは考えるのでございまして、非常に限定的なものだと考えますと、これはいろいろ議論があると思います。しかし、その趣旨を十分尊重したいというのが先ほど来の答弁でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/18
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019・平林剛
○平林剛君 そうすると、お話のように、第二の「交易営団及び中央物資活用協会等が当該物件買上げのため受けた損失については、これを立証せしめた限度内において補償すること。」、これは法律案の中に大体書いてあるから、その趣旨は尊重されているのである、第四の「その資金を戦争犠牲者等のために支出すること。」、それから今後の活用について「支出については、国会議員、学識経験者をもって構成する委員会を設置し」、こういうことは今後十分考える、こういうのだから、あなたの今の意思はそういう方向に向っておるようだけれども、法律案自体は、まだこれに明確にしていない。これはあとで、私は、その趣旨が通るように政府において処理しなければならぬということを強調するつもりでありますけれども、問題は、「接収解除ダイヤモンドの所有権は国家に帰属せしめること。」ということが、私は重大だと思うのです。
これは、ダイヤモンドを国家に帰属せしめることという結論を出したのは、あなたがこの国会に来ていつも説明した、接収は没収ではない、個人の所有権は尊重するという考え方と、全く違う議論を採用して、この結論を出しておるんですよ。すなわち、この結論を出したのはどういう根拠によるかというと、少くとも行政監察特別委員会は杉村参考人の意見を取り入れているわけです。ちょっと読み上げます。「接収を国際法上の見地からの没収でなく、管理に外ならないとしても、占領軍による接収ダイヤの管理の実情は、果して占有権の効果として説明しうるものであろうか。即ち接収ダイヤの一部を一方的に掠奪品として関係国へ返還した行為、民間に払下げた行為等の如きは占領軍がダイヤに対して管理権以上の権利を持っていたものと解しなくては説明できないものではなかろうか。」。事実、イギリスとかオランダとか、あるいは中華民国とかいう国に対して、これは略奪品だというふうに占領軍は勝手にきめて、一方的にそれを返還してしまったり、一部を民間に払い下げたりしたということであって、これは接収ということは管理権以上の権利を持っていたと解さなければ理解できないぞ、こういう理論的根拠に立っていたわけであります。そして「真実の所有者が判明すればこれに対して返還する意思をもっていたものと推定せられる」、これだけは認めております。そしてこれは「一部についてはこれを実行したわけである。しかし混合によって何人の所有に属するか判明できなかったものについては結果において所有権までも占領軍に帰属せしめたことになる。」、そういう理論に立っているわけであります。「なぜならば所有者は自己の所有物たることを追求することができないからである。即ち接収はダイヤの所有権を剥奪しうる状況において占領軍が物件を管理することを意味するものに外ならない。」「だから結論として混合により私有財産として識別され得ない状態におかれたダイヤの所有権は連合国に帰属し、接収解除によって日本の国庫に帰属したとみることは必ずしも困難でないように思われる。要するに接収の性格及び実際より接収ダイヤの所有権の国家にあることを論証することが最も無難な途のように思うと同時に右の見地にたって具体的な立法措置がとられることが望ましい。」、この参考人の意見を採用して「接収解除ダイヤモンドの所有権は国家に帰属せしめること。」と結んでいるんですよ。
そうなると、少くとも従来政府が、接収は没収でない、私有権は尊重しなければならぬという建前に立って、強引にどこまでも考えを捨てず、四十六億円は民間に返す返すと、こう強調しているけれども、この行政監察特別委員会の結論とは全く相反した理論に立つ。また、国会の意思は、むしろ、私が述べた理論に立って、ダイヤモンドは返還すると国家に帰属せしめてもよろしい、それが国会の意思である、こうきめているわけなんです。だから、今まで説明をされてきた理論根拠は、全く第十六回国会の意思に違反をしておる。今だれだれの意見がこうだと言いましたけれども、結論から読み直してみれば、この意見を採用したのである。
従って、政府は、今度の提出にも、接収貴金属は国家の所有に帰するという結論を出すべきだ。少し飛躍しているかもしれない。ダイヤモンドだけだからそうはなりませんというけれども、それなら、私は、接収ダイヤは国家に所有することが理論づけられて、他の金銀はどうやって区別するのか。金や銀だってやつぱり国家に所有せしめる。金とダイヤとは違うのだという理屈があれば、教えてもらいたい。その理論的解明ができない以上は、やはりそれは今後、他のダイヤ以外の貴金属は後に適切な措置を講ずるというけれども、金や銀は、ダイヤモンドとは全く違うような方向に結論づけるというようなことは、これはとても想像できない。ダイヤモンドも国家に帰属せしめるというなら、同じ条件、同じ団体、同じ方法で接収をされた金銀も国家の所有に帰してよろしいという結論が当然つけられると思うので、今の政府が提案をしておるようなことにはならぬのじゃないか。ダイヤと金がどう違うか、一つ理論的に御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/19
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020・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 御承知のように、また御指摘になりますように、この報告書は「接収解除ダイヤモンド」というまあ一つの表現をいたしております。この表現をいたしますまでにいろいろの議論のあったことは、ただいま御指摘の通りでありまして、いわゆる供出したものもありますし、同時に、占領軍によって強制的に取り上げられたものもある。そういう比較的はっきりいたしたものが、ダイヤモンドについて区分いたしておりますように、二億円程度のものがあるということでございます。もともと、一括いたしまして、所有権を認めないという考え方ももちろんおありだと思います。おありだと思いますが、私どもは、比較的帰属が明白なものはその帰属に従って返してやるというのが、まあ一つのこれまた行き方ではないかと思うのであります。この行政監察委員会の趣旨を無視するわけではございませんし、あえて反対するつもりはございませんが、この結論が出ております前のいろいろの論議等を経てみましても、まあそこらに少し大まかな取扱い方があるのじゃないか、こういう感じも受けるのであります。と申しますのは、この報告を受けて作りました中野私案そのものの中にも、やはり民間のものは民間に返すというような条項があったやに伺うのでありますが、そういう点を、やはり政府が処理するといたしますれば、今回明白にしたらどうか。特にわかっておるものまでも、その旧所有権者の意思に反してまで国の帰属にする、法律で片づけることはいかがかというのが、私どもの本来の考え方でございます。
そこで、ただいま参考人の学者の考え方もいろいろ御披露になりましたが、横田参考人なども、やはり、供出とはいっているけれども、内容的に見て二通りのものがあるのだ、こういうことを指摘しておられますし、それを、やはりそういう区別があるなら、その区分に従っての処理をするというのが当然の結果ということに実は相なっておるのであります。私は、この点では、もちろん平林委員のような御議論もおありだと思いますが、こういう戦争直後、終戦の際の問題といたしましては、総体が非常に不明確であると、こういう意味で、大所高所に立って国に帰属さすというのも一つの行き方だと思いますが、その所有権の非常にはっきりしておるものについては、その区分をしての処理をすることも、これまたりっぱな処理の方法ではないか、かように考えて、今回は政府は法律案にその点を区分して提案いたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/20
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021・平林剛
○平林剛君 私はどうも、私どもがこう考えたと、こう言うけれども、その点が納得できないのです。まあ、あなたは今そう考えておられるかもしれないが、国会の意思とは違っている。横田参考人の意見も、行政監案委員会の報告では披露されております。今政府がとられた説も、確かにこの報告書の中では明らかにされておる。しかし、その前に、杉村参考人の意見が述べられているわけです。今私はこう思うとか、あなたはどうだとか、中野私案がどうだって、そんなものは私案だ。接収は没収でよろしいという平林意見だってある。そういう議論は別ですよ。私はこう考えるという議論は別だ。ただ、私の言わんとしておるのは、第十六国会の行政監察特別委員会の報告、満場一致国会はその報告を了承した、その国会の意思と違反をしているではありませんかと、そう聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/21
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022・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 問題は、この行政監察特別委員長の同委員会における調査の報告というものが、これが非常に確定的な内容を持ち、国会の意思でと、こういってその考え方を貫くか、大体の処理方法はこの監察委員会の報告、それを骨子にしてやるべきだと、こういうことで、少しそのゆとりがあるか、非常に言葉の一字一句これに忠実にやるかというところの相違じゃないかと思いますが、私ども、その国会の意思を無視するとか、あえて反対するという考え方ではございません。ございませんが、その「接収解除ダイヤモンドの所有権は国家に帰属せしめる」というこの表現自身は、なるほど非常に明確なようでございますが、しかし、立法措置といたしましては、具体的にはなお、先ほど来申し上げますように、その所有権がはっきりしておるというか、出たところ非常にはっきりしておるものについて、また、それが供出というような方法でなくて出されておるというようなものについての考慮は、国としてやはり払うべきが適当ではないか、こういう考え方をいたしておるのであります。そういう点は国会において十分御審議をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/22
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023・平林剛
○平林剛君 私は、どうもそのあなたの答弁は承知できない。世耕さん、あなたは今の私の質問応答をお聞きになって、古い話を少しずつ思い出されたと思うのであります。先ほど私が申し上げましたように、この問題については、世耕さんが議員として、接収貴金属等の品質と数量に関する調査要求を提出せられましてから問題になりまして、そうしていろいろ議論をされた結果、ただいまのような報告が国会で承認をされた。政府はそれに向って処理すべきものとして意思が確定しておったのであります。ところが、今お聞きのように、何と弁解しようとも、この意思に違反をしておる。佐藤大蔵大臣はこまかいことをよく知らないから、しきりに、だれの所有権かわかっているものは返すのだと、わからないものをどうするかと、わからないものは国家に帰属せしめるのだ、こういうことになっているので、佐藤大蔵大臣は、その点は、言葉が足りないのか、それともだれの所有かわからないものは国家に帰属せしめるという私の意見に同調し、法律もそうなっていると誤解をされているのかわかりません。しかし、いずれにしても、ダイヤモンドはだれの所有かわからないようになっているから、そういう点からいえば、国会の決議に反していると考える。ところが、政府の方では、これはそんなに厳格なものじゃないのだと言われますけれども、当時、世耕さんがこの問題を取り扱ってお考えになっていたことは、ただいまのような政府の態度でよかったか。現在は岸内閣の閣僚の一人だから、お立場は大へん御同情申し上げますけれども、やはり社会正義のため、国会の意思というものが尊重されてこそ、初めて民主政治のある建前から、御正直な人柄を見込んで、特に一つあなたに正しい御見解を披瀝していただきたい。お願いをいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/23
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024・世耕弘一
○国務大臣(世耕弘一君) 隠退蔵物資摘発当時のことを思い出して説明をせよという御注文でございますが、相当年数がたっておりますので、あるいは記憶の誤まりのところがあるかもしれませんが、逐次御指摘を願って訂正すべきところは訂正さしていただきたいと思います。あらかじめ御承知置きを願いたいと思います。
まず第一に、ダイヤモンドの問題を取り上げますと、ずいぶんダイヤモンドの問題はあとを引いているのです、発生して以来。そこで接収が——当時、接収というよりも、むしろダイヤモンドを供出した当時の実情から実は御理解をいただかないと、ダイヤモンドの本質がおわかりにくいのではないかと思います。当時ダイヤモンドを供出したのは、戦争に勝たなくちゃならない。兄弟も、親戚も、親も、子供も、みな戦場に出ているんではないか。勝つためにはどうしてもダイヤモンドが必要だというので、そうしてみなある意味においては強制的に最後は供出したというのが実情です。人によっては、一晩、二晩まくら元に置いて、(笑声)そうして別れを惜しんだというくらい。これはほんとうのことです。そういうような思い。それはなぜそう思うかというと、親代々引き継がれた指輪にはまっているダイヤ、それすら出した。また、女の人によっては、長い間勤めあげてためた貯金で買うたせっかくのダイヤモンドが、いわばむぞうさに供出しなければならない、供出しなければ非国民になるというように責め立てられるから、やむを得ず出したと、こういうような実情があるわけであります。そこで、問題がさらに分かれてくるのですが、供出の方法によって、中には、感激して、もう代金をいただかないでそのまま供出した人があります。中には、代金をいただいて供出したというのは大部分じゃないかと思います。
で、大部分その中で代金をいただいて、領収書をそのまま保存した人が、今なお残っておる人が相当あります。で、それはなぜかと申しますと、当時一カラット、普通は二千円くらいだった。ところが、現在の価格は、まあ上中下もありますけれども、大体二十万円から四十万円いたしております、一カラット。そういたしますと、そうすると、今返してもらったらあるいは一財産ができるというて、斜陽族の中には、幾つも持っていた人が、返してもらえるなら返してほしいという願いを出してきた人が相当ありました。そういうような関係と、それから出すのが惜しくて、もっともっとというて供出を延ばしていた人たちが、最後に出したときは戦争終了間際であって、出したことは出したけれども、領収書をもらわないで、そのまま代金ももらうこともできないで終った人もある。これも相当の額に上る。そうすると、同じダイヤモンドを供出した状況でもいろいろな種類があって、領収書をもらった人だけは返してやるが、領収書のない人は返さぬということになると、非常にここに不公平なものが出てくるんじゃないか。しかも、愛国心を持った人をむしろむぞうさに排斥して、領収書だけにこだわって公平を期するということは、私は立法を扱う立場からいえば、はなはだ不公平じゃないかということも当時考えた。
それともう一つは、これもつけ加えて申し上げたいのは、なぜ私はダイヤモンドに最初目をつけたかというと、私の当時ねらったダイヤモンドというのは、少くとも六十万カラット以上、日本の国内になくちゃいけないという計数を出した。その六十万カラットのダイヤモンドを通じていろいろな問題が起りました。中には、アメリカのマレーという大佐のごときは、日本の銀行の保管のものの中から一部分を魔法びんに詰めて、そうして逃げ出したような事件もあったのです。そういうような関係から私はマッカーサー司令部と交渉しまして、日本の敗戦の行き詰まっているこの際に、日本の宝物を持ち出すというような不都合なことがどうして道徳的に許されるのか、私はむしろこのところを改めてほしい。こういうようなふうで、マッカーサー司令部と交渉しますと同時に、当時横浜に憲兵総司令官がありましたが、総司令官のところにねじ込みまして、日本人が敗戦の結果経済的に行き詰まって、国家に所属すべきものすら横領するような事態が出てくることは不都合であると同時に、アメリカさんが進駐してきて悪いことをすることも、私として見のがすわけにいかぬから、摘発するがいいかということを言ったら、大いにやれという。おれの憲兵を貸してやるという激励をいただいて、実はこれの摘発にかかったわけであります。
それでダイヤモンドばかりでありません。貴金属全般にわたって私はやったわけでありますが、長くなりますから、この程度に一応とどめておきますが、そこで、国家に帰属していいか悪いかという結論はなかなか出しにくいのです。いろいろな事情が伏在しておりまして、おそらく、大蔵大臣にあなた御追及なさっても、大蔵大臣の当時のそういうことを御存じにならない事情からいうと、答弁が、おそらく困難な答弁だと私は思います。そういうようなことで、せんじ詰めてみますると、現在の接収貴金属処理に関する法律案はまず妥当な法案ではないかということが、私の結論として申し上げられるわけであります。むろん、この処理については、なお大蔵大臣は権限を持っていますから、この権限に基いて最終的決定を慎重にやっていただくとするなれば、私は、この法案はまず妥当な法案であると、こういうふうに了解をいたしておりますが、なお、接収の当時の実情等に関してお尋ね下されば、私の記憶のある範囲で、御納得のいくところまで御説明申し上げたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/24
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025・平林剛
○平林剛君 古いお話をお尋ねしてはなはだ恐縮でありますが、大体沿革についてお話をいただいて、まあ、相当記憶力についてははっきりしているというふうに感じました。
そこで、私は、ただいまの法案が大体妥当だという結論をいきなり一足飛びにおやりになったけれども、おそらく新しい法律案の内容は関心を離れて御存じないから、そういうことに飛ばれてしまった。古い方はなかなか御記憶のようでございますけれども、新しい方はまだはっきり御存じのないようにお見受けしました。しかし、現在の法案は妥当になっていないですよ。ただいま私が読み上げました古い五つの要綱は、お聞きの通りであります。しかるに、その問題については、大蔵大臣は四と五の問題については今後これを十分検討する、こういう御答弁をなされました。決してこの行政監察特別委員会の報告、すなはち国会の意思を無視するというわけではないのだ、今後もやる。ただ、逆にいえば、今までの法案はどうもその点が盛ってなかったということを表わしているのでありますから、そういう点では、違反とまできつく言わなくとも、まだ実施はしていないということだけは明らかであります。ところが、肝心の第一項については、相変らずまだこの委員会の意見を尊重しておらないのでありますけれども、私は、はっきり国家に帰属させると、こう書いてあるのでありますから、厳格な気持で当時報告され、その処理が国民の意思ときまったものと理解しておりますが……。今は別ですよ。今はあなたが感想として妥当であると言うなら別ですが、当時の国会の意思は相当厳格なものではなかったかと、こういうふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/25
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026・世耕弘一
○国務大臣(世耕弘一君) 飛躍的な説明をして、おしかりを受けて申しわけございませんが、結論だけを先に申し上げたから誤解を受けたかと思いますが、先ほどお話があったように、この問題を提起したのは実は私がその当事者なんです。
それで、これも少し古い話にわたりますが、昭和二十二年というのは日本の危機だといわれていたのです。むろん、新聞、ラジオ等はもちろんのこと、ゼネストは起る、新聞社は輪転機に砂をかける、おそらく二十二年の春は日本は破産するだろうというところまで追い込まれてきたのです。そのときに、私は実は内務省の政務次官として就任したようなわけです。それから、あまりにも世の中が騒々しいけれども、国民は食うや食わずで、はだしで歩いているというような現状だった。そこで、私は都内を巡視した。どういうような日本の国内の実情か、まず目で様子を見てみようと、見ましたところ、上野あるいは浅草、新宿、渋谷等の盛り場で、われわれが日常ほしくてならぬくつ、あるいは手袋、シャツというような衣料品が山のように積まれてある。しかもそれが市価の何百倍とされている。それもこまかく聞いて、見てみますというと、みんなそれは軍用のものであった。軍の所属のものであったということが実はわかったのです。これではいかぬと。これは必ずどこかに出どころがあるのだ、どこにしまって保存されているところがなくちゃならぬというので、内務省へ役人を集めて調べたところ、約当時の金にして六千億円の物資が計算になって上ってきた。その材料を、資料を持ちまして、マッカーサー司令部へ私が乗り込んで、この物資があるから、日本がつぶれるということは私は考えられないが、あなた方が占領して日本の行政権を握っているのだから、あなた方の見込みはどうかと言うと、おれの方もあると思うのだ、お前やる気があるならやれと言うので、それならやりましょう、そのかわり協力してくれるかということで、実は話し合いがついて、筋が乗ってきて私が仕事にかかった、こういうわけなんです。
そういう関係で、ダイヤモンドは、もちろんのこと、持ち逃げする第三国人もありますし、これはダイヤモンドばかりじゃございません。金のごときは、パイプにしたりあるいはメダルにしたり、相当多額のものが海外に流出することを私は突きとめたから、強力な手配を実は打ったような実情なんです。が、こういうようないきさつから見まして、ほんとうをいうと、これは自慢を申し上げることになるかもしらぬけれども、流れ出す、散乱する、海外へ持ち出される、それを食いとめて、少しでも日本に敗戦後に宝を残したい、そして日本の復興に役立たせたいという私の愛国心から、かなり当時インチキだ、あるいは彼はでたらめ言うて売名だという非難を受けながら、この場合には命を投げ出して摘発にかかったような実情であります。
そういう気持から申しまして、いろいろないきさつがあってこの法案ができ上ってきたと思いますが、この法案ができ上るまでにもいろいろな経過をたどってきております。もしこの法案が今日日の目を見るというなら、少しぐらいは不満足であっても、私は早く通してあげていただいて、そうして日本銀行に寝ておる宝物を有効にそれぞれの方面で使っていただくことがいいのじゃないかと、こういうふうに考えて、先ほど飛躍的だというおしかりを受けたのでありますが、まず、この法案によって処理していただければけっこうだということを申し上げたような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/26
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027・平林剛
○平林剛君 どうも、私の質問に答えてくれないものだから……。あなたには負けたですよ。(笑声)肝心のところをちっとも答えてもらえないのですから。
今、あなたのお話をお聞きの皆さんは、それは明らかに当時の結論と違っておるということは、良識をもって御判断ができるのじゃないかと思います。世耕さんは同じ岸内閣の閣僚ですから、隣りに佐藤大蔵大臣を置いて、この決議に違反しておるとは答えにくいものだから、回り回って、山手線みたいに、ほかの話をされて、結局肝心の質問に答えられない。心中察してまことに余りあるものがあります。
私は、やはりこの行政監察特別委員会の意思に違反しておる法律案であるということは、他の同僚議員の皆さんにはおわかりになったと思う。これは政府が何と言おうとも、国会の意思を尊重させるのがわれわれ議員の建前でありますから、そういう意味では、誤まりがあったならば直すというのがほんとうでなければならぬ。いわんや、ただいまの五つの要綱について、大蔵大臣も特に四と五については、これは今後処理する、尊重するようにしなければいかぬ、こういう点を説かれました。その点を、どうぞ他の議員もお聞きの上、善処することを要望いたしておきたいと思います。
世耕さん、もう一つ聞きますが、接収貴金属の処理をめぐり、終戦直後に疑惑がたくさんありました。その疑惑の一つに、中央物資活用協会が保有する金、銀、白金、ダイヤモンドなぞの没収を免れるために、中央物資活用協会の理事長の松原久人という人と理事の青木正という人、その他金融課長等が相談をして、埼玉県の共和村の青木理事の家に疎開することになった、こういう報告があります。第十三国会の衆議院大蔵委員会に、この青木理事が参考人としてこの事実を認めておるのであります。この青木正というのは現自治庁長官、国家公安委員長青木正議員のことではないかと思うのでありますけれども、その同一人であるかどうか。また、この青木参考人は、一たん埼玉県共和村の自分のうちに疎開することになったと証言をしながら、数日後は、私の記憶違いであったといって疑惑を投げたのであります。これについて、世耕さんは、当時のことを顧みてどういうようにお考えになりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/27
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028・世耕弘一
○国務大臣(世耕弘一君) 御指摘の点は、自治庁長官が当時の人ではないかというお話は、私もそうではないかというふうに感じます。(笑声)同時に、その持ち逃げだかあるいは運んだかというようなことに関しましては、非常に大事なことですから、どうぞ当時の速記録を見ていただきたいと。はなはだお手数でございますが……。事実にかかわることでございますから、もし私が不用意に申し上げてそれが間違いがあるといけませんから、当時の速記録にははっきり載っておりますから、あの当時の事情は速記録についてごらんを願うことが正確だと、かように考えますから、どうぞ御了承願いたいと思います。先ほど申した青木という人は同一人ではないかという御指摘は、私も同様なふうに感じられます。これもどうぞ速記録によってごらんをお願いいたしたいと思います。はなはだ恐縮でございますけれども、さよう御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/28
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029・平林剛
○平林剛君 私も大体、これが自治庁長官、それから国家公安委員長の青木正議員が当時の青木理事であるというふうに想像——大体これは当てはまると思うのであります。そうなると、岸内閣のもとに、接収貴金属の処理に対して当時疑惑のあった青木議員ですね、それからそれと正反対の立場で正義感に燃えて摘発をなさったあなたと、二人がくしくも岸内閣の閣僚になっている。従来は、この法律案はすでに五回の審議を経ましたけれども、単に少数の法人と少数の個人に行くものだから、法案成立にあまり熱意を持つ人がいなかったんで、ほんとをいうと。いろいろ早く通してもらいたいという希望はありましたけれども、何しろ四十六億円の金がだれのところへ返るかというと、十の法人と十の個人で三十三億円行ってしまうんです。民間に返る数字は法人が百四十六だとか、個人が百八十九だとかいって、数ばかり多いように言っておりますけれども、十の法人と十人の個人で七五%占められておる。こういうふうに特定の人に渡る法律案でありますから、これは与党の議員さんも——これは一部の人以外は、世間の人もわかりません。ところが、今回は、岸内閣にお二人閣僚で出て、これはいろいろその結びつきは違いますけれども、今度の政府のやり方というものは大へん積極的になった。あの手この手を使う。百円銀貨の地金に使うからどうしても通してくれと言ってきて、百円銀貨を作ってしまうと、今度は昭和三十四年度の予算に世界銀行、あるいはIMFに出資をするようになるから、そういう国際的な信用上の問題があるから早く通してくれと、非常にからめ手の方から巧妙に法案成立の促進をはかることになっておるのが、岸内閣になってからの特徴なんです。
私は、世耕さんはこの法案の推進積極派のお一人ですか。反主流の代表というふうになられておるから、必ずしもそうではないと思うのでありますが、積極的に、促進で閣内においても御発言になった方ですか。もう一つ、閣内のことをお聞きするのはどうかと思うのでありますが、青木さんは一体どういう立場をとっているか、これも正直のお人がらを見込んでお尋ねする次位であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/29
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030・世耕弘一
○国務大臣(世耕弘一君) 他人のお気持を申し上げることは差し控えたいし思いますけれども、やっぱり私的の生活をする場合と公人としての立場とは、おのずから心がまえが違うと思います。だから、私的で活動している当時のことを引用なさって御批判下さることは、私は差しつかえございませんが、ほかの方の問題に対して、私から心境を申し上げることはお許しを願いたいと思います。
なお、この法律が妥当であるというのは、ただ単純に、岸内閣の閣僚の一人だからこれを支持するというふうな、そういうけちな考えで申し上げたのではないんです。むしろ、あの眠っている貴金属を一日も早く国家社会のために使っていただく機会を早めてもらいたいというのが、私が摘発した当時の実は理想であった、夢であったわけです。こういうふうに考えて、この法案の促進を実は望んでおるのであります。もし、この法案をめぐって、御摘のような不正な問題が現われたならば、私の政治的生命をもって、私はこれに善処していきたい、かように考えております。
なお、お前は反主流派の代表で入閣しているんじゃないかというような御指摘もありましたけれども、私は、岸内閣に入るときに、反主流派を代表して入ったのではない。私は、ひもつきでございませんがということを、岸総理にお答えいたしております。その当時に、また岸総理にも、あなたに閣僚にしてもらったからというてあなたの御意思通りは動きませんが、それでもよろしゅうございますかと、私は念を押している。これは実際の話です。そうして岸総理は、私はそれが望みなんだというから、それならお引き受けいたしましょうというてお引き受けしたいきさつもございます。もし、かような問題に触れて御指摘にあるような不都合な点がここにございましたら、それは私の良心に従って政治的信念で善処いたしたいと、かように思いまするのと、もう一つは、私に特に入閣をお勧め下すった総理は、一あまりにも世間でやかましい汚職とかいろんな問題があるから、一枚私を加えたら何とかいい方法もありはせぬかというふうに、むしろ汚職の空気をなくする、総理自身の三悪追放のほんとうの本念から出たのではないかというふうにも、私はうぬぼれであるが考えている。そういう次第でございますから、どうぞ法案に対してもそういうつもりで一つ御審議なりお取扱いを願えれば、本懐の至りと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/30
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031・平林剛
○平林剛君 接収貴金属をめぐるいろいろな疑惑につきましては、今日もなお解明されておらないことは、私ども委員会の質疑その他で承知いたしております。ほんとうであれば、従来ありました行政監察特別委員会のようなものがあって、そしてこの本会議に報告した通り、引き続いて調査を続行し、それぞれ適切な措置を講じて解散をしたならば、今日なお国民に疑問が刻みつけられて残るということはなかったのではないか。しかるに、どういうものか、行政監察特別委員会は途中で自然解散ということになってしまいまして、もう古い話になるから、これらの疑惑を解く方法がなくなってしまった。私もいろいろ、この委員会にかかってから、人をたずねたり、各方面をやってみましたけれども、古い話だから、どうしても本筋をつかむことができなくて、まことに残念に思っているのであります。いろいろな話の中には、この行政監察特別委員会等の事務局の職員のごときは奇怪なる自殺を遂げた、こういうような事件などあって、先ほどあなたは摘発するために命をかけたと言うたが、実際に死んでしまった職員もいるわけですね。自殺と見せかけて他殺かどうかわかりませんけれども、とにかく黒い影が流れたいわくつきの法律案であるということだけは間違いないのです。ここで私は、行政監察特別委員会のようなものがありますと、もっとかゆいところに手が届いて、国民の疑惑を解明することができたのではないかと思うのです。当時、一体どうしてこの行政監察特別委員会がなくなってしまったのか。御自分が提案をなさっただけに、その行く末については関心を払われておったと思いますから、なぜこれが解消されていったかということを思い起して、お聞きかせ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/31
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032・世耕弘一
○国務大臣(世耕弘一君) 私は、やめたのは内閣がかわったのでやめたと思います。そのあとを社会党の加藤勘十君が引き受けてやられて、それからそのあと塚原君のほかにもう一人社会党のどなたかおやりになっておられたように記憶して、私は資料をずいぶんお貸しして審議にお手伝いはいたしたけれども、そういうように委員長が数人かわっております。その間に経過したというふうに考えております。そういうような事情から見まして、ここまでこういう法案が一応できたということは、まあよかったと、私はむしろそういうふうに感じているような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/32
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033・平林剛
○平林剛君 大蔵大臣に戻りますけれども、私は先ほどのあなたのお答えでは、他の議員も同様だと思いますけれども、納得できないのです。しかし、せめて大臣がその中で答えられた、四と五はこれは十分考えなきゃいけない、こうおつしゃられましたけれども、具体的にはどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/33
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034・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど申しましたように、四と五はこの法案に盛ってない、こういう点は今後考えていかなきゃならない、こういうことを申したのでございます。で、四の点でございますが、これは非常に、使途を明確にということでございますが、歳入にいたしまして、歳入の中に織り込みますと、これは一般財源として考えますので、どの金がどういうことでもないように思います。私どもは、この金の使い方というものが、ただいま申される、ここに書いてありますような方向に使われるということ、そういうことを考えろという御趣旨でございますので、こういう方面の支出につきましては特に考えて参りたいという気持でございます。
第五の問題につきましては、この委員会云々の問題については、私、この通りがいいかどうか、まだもう少し研究いたさないと、直ちにそうい結論にもならないように思うのであります。と申しますのは、予算に関する事柄は衆参両院、国会において十分御審議をいただくようになっておりますので、この屋上屋を重ねるような機関もどうかと思いますから、こういう点は預からしていただきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/34
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035・小笠原二三男
○小笠原二三男君 ちょっと、今の質問に関連してお尋ねしますが、過去の衆議院の意思として報告されたことが了承になって、その報告の内容は、この接収ダイヤモンドですが、接収貴金属の処理方針という一つの大綱が報告になって、国会の意思が——意思と申しますか、結論を得た。あとは望ましい議員立法なり政府提案の立法措置でこの処理方針が生かされるということが、やはり国会の意思であったろうと思うのですね。ところが、大蔵大臣のさっきからのお話ですと、全部国に帰属するということと一部所有権者として明確なものを返す方が適切であるということが、物量的に大同小異のものであって、国会の意思を尊重しておることには変りはないんだという形の答弁なんですね。ところが、国に帰属するということと、一部返還するということとは、これは考え方の上で本質的に全然別個のことなんです。別なものなんです。ただ量的に大同小異であるというような形のものではないんです。そういう平林議員に対する御答弁では私は満足しない。それは大同小異であるというような形ではなくて、その当時の国会の意思はそうであるということはその通り認めます、認めますが、その後の諸情勢、それからもっと適切な処理方針としてはこれが正しいと行政府は思うんだ、従ってこう提案しているならしているのだと言う方が、かえって筋が通る。かえってわれわれも議論しいい。ところが、尊重はしておりますが、中身はこういうことであるということならば、念ばらしにどこまでも追及しなくちゃならぬ。
〔委員長退席、理事山本米治君着席〕
これは国会におけるこの種のものの処理方針はきまったんです。その当時においてきまっておるんです。それが現段階において合わないなら合わない、従ってこうやるならやるんだということでなくちゃいかぬと思う。いまだ大同小異で意思尊重しておるんだ、処理方針はそのまま尊重しておるんだとお話しになるわけなんですが、この点……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/35
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036・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 実は、なお私もつけ加えさしていただきたいと思っていたところを、今小笠原さんから御指摘になっておるのであります。もちろん、当時の意思が、この文字に書いてあるところは非常に明確でございます。その一に書いてあるのは「国家に帰属せしめること。」はっきりなっておりますが、この条項を受けて、号の当時作りました中野私案というものが、おそらくこれは中野四郎君が代議士であり、同時に行政監察委員会の委員であったと思いますが、これが私案を作った。これがおそらく当時の国家の意思を無視したところのものではないに違いございません。私は、一応その点は中野四郎君は十分尊重して考えたものだ。そういう例もありますから、私どもは、今回接収貴金属のうちその区分をした考え方をすることも、これは一応御納得がいきゃしないかと思います。
ただ、問題は、非常に古い時期に報告をされました、二十八年に報告されましたこの監察委員会の報告、この当時の国会の意思がどうであったとか、こうだとかいうことが、今議論になっておると思いますが、今、小笠原さん御自身が御指摘にもなっておりますように、
〔理事山本米治君退席、委員長着席〕
いろいろ時間の経過とともに、事柄も相当明確になっておると思います。おそらく、二十八年当時でありますと、接収貴金属をめぐりましていろいろなうわさが立っておったと思います。先ほど世耕長官からは、この日の目を見ないものをとにかく使いたいというか、明るみに出したいというお気持ちが多分にあった、こういうお話でございましたが、当時はこの貴金属をめぐりましていろいろのうわさの立っておった際でもございます。これは別に返還するわけでもございませんが、戦後の混乱の際にはいろいろなこともあったろうと思いますが、この行政監察で取り上げまして、その前でもありましょうが、もうこの当時になりますと、接収貴金属の範囲というものは非常にはっきりして参りまして、そうしてその後の調査等によりまして、一そうその区分が明確になってきた。こういうところから、実情に応じた処理方法ということで、今の法案を提出いたしておるのであります。
しかし、これはその当時の国会の意思を全然無視して別なことを考えておるのじゃないか、こういう御意見のようにも伺えますが、確かに当時とは幾分考え方は変っておる。これは私がいかように申しましても、皆様方も御指摘になる通りでありまして、これは確かに変っておると思います。しかし、その変り方は、その当時においてすら中野四郎君の中野私案の中にも取り入れられていた事柄だ、かように考えて参りますと、非常に国会の意思を頭から無視したというほどきついものでないことだけは御了承いただきたい、これを重ねて、私、申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/36
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037・小笠原二三男
○小笠原二三男君 さっきから中野私案ということをよく言いますが、ものにならないから私案に終ったのであって、それが国会の大方の意思であるというふうな例証は私はおかしいと思う。そういうことはおかしいと思う。やはり当時の国会の意思は、返すべきであるという議論もある中に、国に帰属するということを処理方針として認めた以上は、その要綱が基本になってこの立法の性格、骨子ができなければならぬものだというふうに私は思うのです。それで、その骨子と国に帰属するという精神、骨子、根拠、そういうものと、この今回出ておる立法の精神一というものが、大臣がおっしゃるような関連があるかどうかということになると、私は必ずしもそういうことにはならぬと思う。先ほど長官は、富を活用したい、すみやかに活用したいということでしたが、たとえば、すみやかに活用するという精神からいうて、一部返還するならするとしましても、そのインフレによる評価額が違っておる、当時とは。従って、国庫へ納付する金などというものも一割くらいを得て、そうして国がその納付によって何か有益な仕事をするということ、民間の個々の返された人方がそれらの金で仕事をやるということ、これは精神的にいうなら国に帰属するということとはまっこうから対立する観念で、もしも国に帰属するというならその精神からいうても八割くらいの納付金をとって、一部返すものは返すとしても、評価の納付金は国がとって、国に帰属するという精神のもとに、国がまとまった財源で戦争犠牲者の処遇の一部に充てるというこの要綱に照らした金の使い方をすべきである、こういう議論も成り立つと思うのです。そういう意味からいって、その国に帰属するということと、一部返すのだということは、観念的には同じ立場で処理できない、この法律案は。変っているのですよ、本質的に。
しかも、これは最近に出た法律案でなくて、さっきから何回も言っておる通り、二十八年ごろの時期において出てきておる法律案なんです。そうしてちっとも骨子が変らないで、繰り返し繰り返し出ている法律案なんです。そういう意味からいうと、私は、もう少し大臣が、国会の意思が尊重される、一部返還もやむを得ないということであるなら、その一部返還もやむを得ない姿の中に、やはり国に帰属するという精神が生かされるような立法をすべきでなかったかという感じを持つのです。一割くらいの国庫納付金ということで、いろいろな戦争犠牲者もあれば、長官の言うような愛国心に燃えて、もう全面的に供出したような、いろいろな混淆したような事情によってこのダイヤモンドが使われ、またそれが残分として残ったものなんですから、単に所有権者が明確であるからということでその者に返すということだけで、事足りるものでは断じてない。戦争中、あるいはいろいろな、国に対しての忠誠心から多数の人がいろいろな行為に出た、その集積が今日残分として残ったものなんですから、だから、もっと精神が生かされる。具体的にいうなら、納付金などというようなものでもう少し処理要綱の四なり五なりが生かされるような方法を講ずべきである、こういう考え方も私持つのですが、大臣の御意見いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/37
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038・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど、これは別にとらわれるわけではございませんが、中野私案という言葉を使いましたが、中野君の提案によりまして、十九国会に提案された法律案があるわけであります。その法律案は一応、先ほど申すように、区分のできるような処置を実は明定いたしております。これはしかし、当時もこの法律案自身が審議未了になっておりますから、どういう理由で審議未了になったか十分考えてみないと、あるいは御指摘のように、行政監察委員会の報告と違うからということで審議未了になったのかもわかりませんし、そこらのことはしばらく預からしていただきますが、私案という言葉が全然日の目を見なかったというか、審議を受けなかったのじゃないということだけは、これは訂正さしていただきます。
そこで、ただいまの点でございますが、この法案を提案いたしまして、もう毎国会、最近は引き続いて毎国会これが衆議院が通って参議院が審議未了になったり、あるいは審議未了だとかというようなことで、いろいろまずい結果になっておる。政府といたしましては、いろいろ各条項についての御批判はおありでございましょうが、その気持から申しますと、この処理を何とかして早く始末をつけたいといいますか、処理したい。大体、法律によってその処理方法もきめようという、その基本的な気持に立っての処理をしようということで、毎回法律案を出しておる次第であります。
在来におきましての一割国庫納付金というものも、これは実費弁償というような意味で私どもはそういうものを考えて参ったのでございます。しかし、もう期間的にも相当長くなっておりますから、その一割がいいか、これは相当疑問があるだろうと思います。そういう点もあわせて御審議をいただきたいと思います。ただ、一たん供出したものだからとか、あるいは先ほど世耕長官が言われるように、非常に愛国的熱情から出たんだというだけでは、今後の処理といたしましては十分の思いやりができていないということじゃないか。やはりこういうものを処理することに当りましては、旧所有権者の気持にも応ずるような処理方法をとることが結局あたたかい処理ではないか、こういうことで、ただいまのような法案を出しておるのであります。御指摘になりました点につきましては、私どもも、相当の期間経過しておる今日でございますから、実費弁償といたしても、一割が適当であるか、なお審議の余地はあろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/38
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039・小笠原二三男
○小笠原二三男君 それでは、ちょっと、大蔵大臣の今お述べになった精神をだんだん演繹して、具体的な例について、じゃあ、この場合どうだということをお尋ねしたいことがあります。そのために、まず政府委員の方に、当時の処理方針がどうであったかということを、別の問題でちょっとお尋ねしたいと思う。
それは、もうさまざまな形で政府所有になった動産、不動産が当時あるわけなんです。一例として申し上げますと、占領軍がやって来て、終戦処理方針としてですか、たくさんの国内にあった軍国的な諸団体が解散を命ぜられた。その中に、たとえば大日本武徳会というのがある。ところが、解散を命ぜられた大日本武徳会の所有財産は、あげてこれは国に帰属した。これは私わからぬので聞きますが、占領中何かの法律でそういう処置をとったのか、占領軍の方の何かの指令でそういう措置をとったのか、一応その手続をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/39
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040・賀屋正雄
○政府委員(賀屋正雄君) お答え申し上げます。武徳会等の御引用がございましたが、解散を命ぜられました団体の財産の没収の国庫に帰属しました点でございますが、沿革的に申し上げますと、昭和二十一年一月四日付でもって、連合国最高司令官の覚書が出ております。ある種の政党、協会、結社及びその他の団体の廃止に関する件という題名でございますが、これによりまして、軍国主義的あるいは超国家主義的団体の解散が命ぜられました。この覚書に基きまして、政府はいわゆるポツダム勅令を制定いたしております。昭和二十年勅令第五百四十二号でございまして、政党協会其ノ他ノ団体ノ結成ノ禁止等ニ関スル件、この勅令によりまして、国内法的にこれらの団体が解散させられたわけでございます。次いで昭和二十三年三月一日に、やはり最高司令官から覚書が参りまして、解散団体に属する財産の処分に関する件、こうい題名の覚書が参りまして、これに基きまして、やはり国内的には、政府は解散団体の財産の管理及び処分に関する政令を制定いたしまして、解散させられたこれらの団体の財産を国庫に帰属せしめたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/40
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041・小笠原二三男
○小笠原二三男君 大日本武徳会が性格上どうであるとかこうであるとかいうようなことは、批判の対象として除きます。一般例示として言うことなんですが、新しい日本の憲法による議会の法律をもってして、国に帰属したのではない。占領行政、占領の方針としてそういう形が出たものなのです。で、このダイヤモンドその他が、やはり占領軍がいつかは返すものとして、管理するために——ただこれは没収したものでは断じてない。これは何度もこのことは繰り返された議論ですから、省きます。性格上は同じものです。大体同じものです。ところが、一方、この武徳会の持っておるたとえば武徳殿というようなもの、こういう建物は国に帰属して、今日も帰属しておる。ところが、この武徳殿というものは、地元の市町村等の公共団体並びに関係篤志家の寄付等でもってこれは建てられた沿革の多いものなのです。ところが、これが国のものとなり、地元へ、われわれの出した金のものであるから、こういうのを占領解除になった今日においては返してもらいたい。あるいは地元に無償払い下げをしてもらいたい。
お話をして下さい。大前提を言っているのですから、耳うちをしなくとも、ははんと大臣わかっているのですから、こまかいことを聞いているのではない。
それで、そういうものを無償で払い下げてもらいたいと言っても払い下げない場合、市においては国に帰属させられて、逆に県の教育委員会等が年間数十万の賃貸料を払って、これを借用して使用しておるとかというふうな、非常な逆な、国民感情として承服できないようなことが平然として行われている。こういうものの始末は何らしないで、そしてこの貴金属だけは、所有が明らかなんだから、何とか返してやらなくちゃならない。これは国の温情としても片ちんばなことではないかという疑問を私は持っているのです。それは返すべからざるものもあるかもしれませんが、しかし、多数のものの寄付その他地方自治団体等が財政負担をしてやった実質、内容、経過を持っておるようなものまで、国の帰属だというので、かえって寄付したものを賃貸料を払わせて使わせておるというようなことは、これはおかしいと思うのです。
それで、処理方針としては、こういう接収貴金属の問題にからんで、一切抜本的にその種の占領下においてゆがめられた接収方式、国に帰属したそのものに対して、何らか対処せられる方針があるのかどうか。これが一部でも対価が払ってあればいいんですけれども、そういうことは全然ないのですから、まあ基本的な今後の考え方として大臣のお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/41
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042・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 御承知のように、占領下にいろいろな問題が起つておりまして、その取扱いによっては非常な禍福を見ておるのであります。たとえば、今占領中国に帰属させられたこういうものは、もう処置が済んでしまったということでございます。それから、この接収貴金属の場合のごときは、その後講和条約締結の後にこういうものが返されてきた、それでその処置の方法をどうするか問題になってくるということでございまして、いろいろその扱い方で幸、不幸があるように私ども感じております。
ただいま御指摘になりました武徳殿の問題も、最近各地とも武徳殿を返してくれというような話が出ております。ただいま無償でというお話がございますが、もう有償でけっこうだからという話で、そういうような話も進んでおります。私ども、これを無償ということはいかがと思います。これは適当な方法でやはり考うべきじゃないかと思っておりますが、現実の問題として、国がいつまでも持っておりましても、事実いかがなものか。ただいま御指摘になりましたように、県や市等が、団体等が家賃まで払っておる、こういうことはあまり適当な方法じゃないじゃないかと思うので、まあ無償という点については、なお私ども直ちに賛成いたしかねておりますが、これは適当な、武徳殿が本来の目的を達するように、十分使われるように、これはやはり工夫したいものと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/42
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043・大矢正
○大矢正君 大臣に一点質問いたしたいのですが、大臣御存じのように、この法律案が提案されましてからは、すでに池田大蔵大臣、あるいは一萬田大蔵大臣という二人の大臣の手を経てもなお通過することができなくて、今日に至っている問題です。しかも、七百億円になるというような膨大な貴金属の帰属をきめる問題でありますから、長い年月かかったこともまた当然と言わなければならぬと私は思うのでありますが、特に今度は参議院先議でございまして、衆議院に送ってやらなければならないという事情もありますから、私ども、今日まで十分審議してきたつもりでありますが、私どもは、とにかく法理論は別にして、国民感情の立場から立てば、この際返す必要はないのじゃないかと、こういうふうに考えるわけですが、これは政府に言わせると、感情論としてはわかるけれども、法理論としてはまだ清算がついていないものであるから、この点については明らかにしなければならぬし、当然返さなければならぬ、こういう言い分でありますから、この点については私、伏せておきたいと思うのでありますが、ただ、先ほど平林委員の質問にもあったのでありますが、問題は、帰属が明らかになった以降の処分の仕方でございますが、これらの金については、できる限り戦争犠牲者もしくはこれに類似した立場にある人々や団体のために使用すべきではないかという、こういう考え方でありますが、この点について大臣の答弁は、非常に何というか、ぼけたような、検討してみようというような程度で、あまり誠意のある、法律案通過の裏づけになるような御答弁でもないように思うのでありますが、私どもも、たとえ反対はするにしても、この法律案が通るという点については責任を負わなければならぬ立場が生まれて参るかと思いますから、最後に大臣に特にこの際念を押してお尋ねしておきたいと思うのでありますが、
先ほどの大臣の答弁の中にも、この中には一般会計に帰属する部分もあるし、もちろん、日銀に行く場合もあるし、あるいは交易営団その他にも行く場合もあるというようなことで御説明があったように思うのでありますが、日銀あるいは一般会計に帰属する部分については、これはまた別でありますけれども、私ども考えてみて、たとえば交易営団や物資活用協会に形として行っても、それが将来において国の帰属になるわけでありますが、そのものについては、御存じのように、戦前では、戦争を遂行するために、確かに本人と政府との間に、あるいはその団体との間においては、経理上あるいはそれらの整理はなされておりますけれども、当時はほとんどが戦争のさなかでございますから、国債でもって実施をされたというような経過から、国債が換金がされないというようなことから、実際に買い上げられた価値通りには価値の発揮はされていないというのが実態でありまするし、さらにそれが、戦後になってインフレが盛んになり、政府が、そういう個々から買い上げたものの金額以上の評価が今日できておるわけでありまするから、そういう立場から考えると、一般会計の帰属分あるいは日銀その他のものは別といたしましても、交易営団であるとか、あるいはその他物資活用協会におきまして、特に国民の個々を対象として、当時のまあ、言うならば強制的な力をもって吸い上げたものについては、これは私どもが主張するように、今日なお戦争の犠牲として残っている人々やそれらの団体にそれらの金を分けてやることによって、あるいは補助をすることによって、その償いをすべきではないかと私は考えるのでありますが、先ほどの大臣の答弁を聞くと、どうもやってくれるのだかやってくれないのだか、さっぱりわからぬ。これから検討してやろうということでは、この法律によってできたものに対する私どもの最終的な判断をするわけには参りませんので、もし、たとえ私どもが出さなくても、議員の中から、やはり一般会計の帰属分やあるいは日銀のものは別としても、交易営団やその他物資活用協会等における直接大衆から吸い上げたものの内容については、まだ相当金額がございますから、これらのものについては、戦争犠牲者それらの関連する団体や、そういう人々に使うと、こういうように、たとえば、議員の中から付帯決議というものが出された場合、大臣としてはこれに対してどうお考えになるか。もちろん、付帯決議をつける場合には、政府の御意見の発表も承わらなければならないことになっておりますから、もしそういう提案が議員の中から、この法案の通過に当って出るような段階に、大臣としてどうお考えになるのか、その点、承わっておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/43
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044・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) この処分いたしましたその収入を支出する場合に、これは先ほどもお答えいたしたものでございますが、国会において十分御審議をいただくことでございますから、予算の問題としては、私、十分の御審議をいただきたい、かように考えますので、第五の点は一応方法といたしまして、なかなか……。国会第一に考えて参ります場合に、この種の委員会を設けることは、これはちょっと機構としてダブるのではないかという感じがいたしております。ただ、審議会等の問題につきましては、国に帰属するものについては審議会の規定が法案にあるのだと、かように私理解をいたしておるのでありますが、貴金属の処分、この方についても、少し正確を期するようなことが必要かと、先ほど来のお話を聞きまして伺っておるのでございます。
で、問題は、四に書いてありますように、「換価処分による収入金をもって特別会計を設け、その資金を戦争犠牲者等のために支出すること。」と、こういう問題が、特に先ほど来の論議の中心かと思いますが、この戦争犠牲、あるいはもっとどこかに、社会保障の方面に使えというような御意見も強く出たことがあるのじゃないかと思っております。問題は、そういう支出の面の予算を十分御審議をいただくことによりまして、これはこの種の歳入もむだなく使われるということではないかと思いますので、支出の方の項目について、特に御審議をいただくということで目的が達せられるのではないかというように、私ども先ほど来は考えておった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/44
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045・大矢正
○大矢正君 これはまあ、そういうことになると、来年の予算ができてからでないと、実際は効果を上げたかどうかということは不明なのですね。従って、私どもは、そういうことでなくして、たとえば原爆被災者に対する特別の措置をやっている現状に対しては、これに関連をする部分として、現状よりはより多額の予算をつけるとか、あるいはまた、全然現状としては補助や助成が行われていないものに対して、この際新たにこの金をある程度見合いにおいてつけるとか、そういう現実的なものが今の段階において大臣から発表されないと、明年度の予算の中では十分考えるからという、結果として出てきたところを見ると、一般会計の中でちょろちょろごまかされているということでは、付帯決議の効果ということは一つも現われてこないと思うのですがね。もちろん、別会計でやれといっても、なかなかこれは事実上実際問題として困難性もあろうということは、私どもある意味ではわかりますけれども、そういう点についての人一倍頭脳明晰な大臣なんだから、すぐおわかりだと思う。それじゃ、こういうことでこういうようなというお考えがあったら、この際御発表願いたいと思います。私どものいう付帯決議というようなものが生かされるような方法があるのかないのかということを、もっと現実的な立場から答弁をしていただけないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/45
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046・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま非常に御理解をいただいておるお話を伺っておりまして、私どもも予算の際におきましては特に考慮を払うつもりでございますが、ただいま御指摘になりましたような付帯決議そのものにつきましては、付帯決議をつけていただきました場合に、具体的にどうこれを扱っていくかということの一応の見当がつかないと、付帯決議についてのいい悪いというか、せっかくつけていただいたのに、御趣旨に沿わないということがあっては申しわけがないように思うのであります。総体の問題といたしますと、やはり歳入としての一括した処分をするというのが本来の建前でございますから、この歳入については特別にこういうことに使うということを限られることは、政府といたしましては非常な窮屈な思いもすることでございまして、この付帯決議の御趣旨を活すことは非常に困難であろう、こういう感じがいたすのであります。
しかし、先ほど以来お話のありました、御意見のございましたように、戦時中の接収貴金属等の問題でございますから、この接収貴金属を処分したこの全収入分について、十分活かすというか、戦争に関係あるような方面だけとか、あるいは社会保障だとか、あるいは学術振興だとか、こういう点について特に重点を置いてこの金を使え、こういうような御趣旨はそのまま私どもも了承はできるのでございますが、しからば、予算の面で幾ら幾らをそちらへ回したとか、こういうようなお話になりますと、説明が非常に困難ではないかと思います。問題は、この種の収入分について特に社会保障や学術の振興等の経費を増額する、その財源に充てろ、こういうような抽象的な御意見だと伺いますならば、もちろん、私どもその御意見に異存を唱えるものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/46
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047・小笠原二三男
○小笠原二三男君 今のお話、また念ばらしですが、大臣としてはそれ以上の答弁はないと思います。ただ、私らの願いは、大臣もさっきお話しになりましたが、この種の納付金が有効に使われるということが、活かされるためには、国民感情として、きれいな形でこの金が使われてもらいたい。そのためには、予算項目の中では全体として小さなものであっても、この金が引き当てになって、財源になってこういう美しいことがもう一つ国として行われるのだということで、国民を納得させる、そういうような予算措置がほしいということなんです。ただ、何々費というものが二十億であったものを二十二億にしました、従ってその中にもこれが相当部分入っておりますというような、そういう答弁で来年度以降処理されるということでは、国民感情の上からいって、それは容認できない。たとえば、ふえているならふえているのでも、それはきれい事できちっとそこにさらけ出したものがあって、納得をさせる方途を講じてもらいたいということなんです。あるいは戦争犠牲者の問題でも、まだ行き足らぬものも、予算要求しているところもあるでしょうが、この程度なら適当のものであろうというようなものに、きちっとこれらの金が、一部なり全部なりが引き当てになって、こういうことにしたのでございますという答弁が、国民の前にきちっとできるようにしてもらいたい。これがもう、しりの話なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/47
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048・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) もう御趣旨は非常によくわかっておりますので、私も先ほど来苦心をいたしておるのでございます。全然新しいものでも、その項目が起せるような状況だと非常にけっこうでございますが、今直ちにそういう考え方も生まれて参らないものですから、先ほど来のようなお話をしておるのでございます。
ただ、今、小笠原さんのお話しになりましたような御趣旨が皆様方の御意向でございますならば、私どもの方でこれは十分考えさしていただきたいと思います。ただいまもお話しになりますように、全部の金をというわけでもないし、その内訳をどうこうというわけでもないし、その辺は十分考えろというような御趣旨でもございますから、とにかくこういう付帯決議がつきました場合に、将来の予算面でこういうものは新しくこういう財源だというような説明がつきますれば、大へん仕合せでございますが、そういうものが今すぐに右から左に、こういうものがございますと、御披露するまでに、実は至っておらないものですから、大へん御趣旨はよくわかっておりますが、私もその返事にちょっと困りかねて、先ほど来のようなお話をしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/48
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049・平林剛
○平林剛君 私は、先ほど、行政監察委員会の四項、特に四項については十分考えるということであったが、これは考えるどころの騒ぎじゃない、もう実行に移しておらなければいけないというのが私の主張なんです。だから、十分考えるということだけで満足しないで、もっと強いことを考えて実行に移すのが当りまえだ。先ほどから、最初提起したように、この処理要綱に忠実でない、履行をしておらないということを指摘しておるのでありますから、十分考えるだけでは満足しない。やっぱり、これをすみやかに処理するとして、そういうふうに処理するということが私のつとに要求するところであります。その点を一つ明確にしておいてもらいたい。
それから、私は、ほんとうであれば、処理要綱を忠実に履行していないというこの法律案については、これでストップして、お互いに考えるということでなければいけないんですよ。ところが、政府は、ただ、これについて中野私案というものがあるというようなことを言うので——私は中野私案というのは内容を読んでいないからわからない。もし、中野私案があるからということが唯一の理由で、そうしてただいまのような法案になったとすれば、中野私案というものを検討してみなければならぬのであります。中野私案というのは多分あれでしょう、未確定のものと確定したものとを区分して、確定したものは返してやるけれども、未確定のものは国家の帰属にするというふうに提案になっておるのでありませんか。それからもう一つは、処理要綱にありました四項の、換価処分による収入金をもって特別会計を設けまして、その資金を戦争犠牲者等のために支出するということも、多分書いてあるんじゃないかと思うんですが、もし書いてあるとすれば、少くともこの二つについては法律案の中で修正をするのが当りまえだ。そうでなければ、政府は国会の意思にそむいて忠実でない、履行していないということに対する追及をかわすことができない。従って、われわれも、これ以上この問題は審議できないんじゃないかというほどの重大な性格を持っておるんです。中野私案とは、私が指摘したようなものが入っているんじゃないですか。入っているとすれば、これは頭を下げなさい。大蔵大臣は、まことにその点は申しわけない、こういうふうに下げべき性質のものだと私は思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/49
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050・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) どうもその、都合のいいところだけ私が援用したというおしかりを受けておるようです。確かに都合のいいところだけを援用したようでございまして、中野私案全部が今回の法律案に入っておるわけではございませんので、前言はそういう意味で取り消させていただきます。都合のいいところだけを採用したということでございます。そこで、その点はただいまのように訂正いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/50
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051・平林剛
○平林剛君 委員長は一体、どう判断されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/51
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052・加藤正人
○委員長(加藤正人君) なかなか複雑ですから、即座にお答えするわけには参りませんが、しかし、この間うちからの質問を全部拝聴していますと、だいぶ長い歴史を持った法案でありまするから、いろいろとあなた方の御主張は十分徹底していると思いますから、この辺で政府側の希望通り可決させていただきたいと委員長は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/52
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053・小笠原二三男
○小笠原二三男君 可決させてもらいたいなんという、可決という言葉は、わかっていて、そういうことを言うのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/53
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054・加藤正人
○委員長(加藤正人君) それは、今委員長個人として……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/54
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055・小笠原二三男
○小笠原二三男君 そういう方向に進行させたいということならわかるけれども、可決するなんというて、どうなるかわからぬことを。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/55
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056・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 個人の意見を聞かれたように今承わったので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/56
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057・平林剛
○平林剛君 委員長は、本来、政府が国会の意思に反しているこういう法律案を出したと認めるときは、これは委員長の立場としては、政府に猛省を促して、再検討しなさい、こういうことを言うのが国会役員の立場だと私は思うのです。大蔵大臣がちゃんと答えてくれれば、私は委員長なんかに言いませんけれども、大蔵大臣は、今日、国会の意思に反した法律案を出して、反したとは言わないが、幾らかまあ悪かった点は認めておられるのですけれども、まだこれを忠実に履行するという発言はない。そういう段階では、委員長は国会の役員として政府に猛省か促すように……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/57
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058・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 委員長は大蔵委員になったのは今度初めてであります。今までにこの法案の審議の経過を承わっておりますと、もう今日は十分あなた方のおっしゃるところが徹底しているように思っておりますし、政府も、ああ申しながらも、十分あなた方の御意思をくんでいるように見ております。それで、もうあなた方の言われるところは十分に徹底しているように思われますので、可決とは申しません、この辺でいい結果をもたらすようにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/58
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059・平林剛
○平林剛君 大蔵大臣が反省していたいので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/59
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060・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 大蔵大臣が反省しているかどうかを、簡単に大蔵大臣に答弁を委員長は願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/60
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061・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど来いろいろ御意見を伺い、またお尋ねをいただきましてお答えをいたしたのであります。国会の意思は十分尊重するつもりでありまして、ただ、先ほども申し上げましたように、当時から見ますとだいぶ情勢も変っておりますので、国会の意思を無視するとか軽視するとかいう考え方はございませんが、十分尊重いたしまして、現状に即するような原案を出しているのでございますし、なおまた、今後の扱い方等につきましても、先ほど来いろいろ御高見を拝承いたしておりますので、十分肝に銘じまして、将来の措置についても善処して参りたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/61
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062・小笠原二三男
○小笠原二三男君 何か採決でもしそうな話ですが、私、まだ質問したいこともあります。それは、さっき平林委員のお話の中に出ておりました、中央物資活用協会のかつての理事であった青木自治庁長官の問題ですが、この方が現内閣の閣僚であり、しかも、この法案を提出した一連の内閣の閣員であります。しかも、この法案によると、中央物資活用協会に対して、この法律が通過の暁は、直接関係する部分が出てくるわけですが、そういう関係については、かえって青木さんからも当時の事情を積極的に明快にお話しいただいて、中央物資活用協会においてはいささかも疑惑がないのだという点が明らかになってこの法律案を通すということが、望ましいように私は思うのです。そういう意味で、青木自治庁長官の出席を委員長から求めていただきたい。時間がかかるようなら、暫時休憩をしまして、その間処理方針をその時間でお考えになってやっていただきたい。その方が議事の進行は早いと思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/62
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063・大矢正
○大矢正君 委員長、済みませんが、休憩して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/63
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064・加藤正人
○委員長(加藤正人君) それでは、このままで休憩したいと思います。
午後三時四十二分休憩
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午後四時十七分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/64
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065・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 休憩前に戻りまして、これから再開いたします。
他の御発言もないようでありますから、これにて質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/65
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066・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 御異議ないと存じます。
これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、修正意見のある方は、討論中にお述べを願います。
〔小笠原二三男君「私の要求については断りなしに、直ちに採決というのは何です」と述ぶ〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/66
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067・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 先ほど、青木国務大臣の出席を小笠原委員から要望されましたが、とっさのことで、今役所のどこにおるかわからないということで、出席できかねるということになりました。以上、お答えをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/67
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068・杉山昌作
○杉山昌作君 私は、ただいま議題となっておりまする接収貴金属等の処理に関する法律案につきましては、修正の上で賛成をいたすものでございます。
まず、修正の案文を朗読いたします。
接収貴金属等の処理に関する法律
案の一部を次のように修正する。
第十六条第一項中「百分の十」を
「百分の二十」に改める。
以上であります。大体、この接収貴金属等の処理に関する法律案は、第十九国会から今日まで、五回の国会にわたり、五カ年の日子を要したという、非常な難航をして参ったものでありますが、われわれ委員といたしましては、この間終始非常に熱心にやって参りました。
問題は、この法案自身の持っている、非常にむずかしい性格といいますか、見方といいますか、そこにあったように思うのでございます。一方におきましては、所有権をあくまでも尊重するという理論上の問題があります。また、一方におきましては、国民感情として、戦争中にほとんど全部の国民は、ダイヤモンド、貴金属等を国家のために供出してしまったのだ。終戦後、占領軍に接収されるようなものが一体民間にあるはずはないじゃないかということから、従って、この接収されたものが返った以上は、これはやはり国家が全部取る方がいいのではないかというふうな、これは国民感情の問題もございますが、この両方の問題がございまして、法理にもどうしてもそむきたくはない。しかし、今申し上げましたような国民感情ということも、これは絶対に無視できない。また、その方にも何とかしたいというふうな気がしましたので、われわれ委員といたしましては、良心的であるし、熱心であればあるほど、その板ばさみとなって今日まで参ったものでございます。
しかし、今日すでに戦後は終ったというようなこともいわれておるときに、五年もなおこれの決を見ないということは、非常にわれわれ委員としても気持の上でも心苦しいし、かといって、一方あれだけの貴重な財産がいたずらにいつまでも活用されないでいるということは、国家的に見ても大きな損失である、何とかここらでめどをつけたいということを考えて参ったものであります。幸いただいまいよいよ採決の段取りになりましたことは、われわれ非常に感慨無量なものがございます。
私は、そういう意味から考えて、法案全体としては原案でよろしいと思いますけれども、今言ったような国民感情等を考えますと、やはり政府における取り分をもっとふやすのがいいじゃないかということも、一方考えたのであります。しかし、これを腰だめで取るというようなことは、これはやはり所有権の侵害にも相なるかと思いますが、幸い、われわれ保管の現状等を実際に見たり、また政府委員との質疑の間でだんだんわかってきたことでありまするが、政府が今民間の所有者から徴収しようとしておる保管料は、容器預かりの形態で計算されておりますが、日本銀行における実際の保管の状況を見ますと、民間の保管業者に個別預かりの形態で保管を依頼した場合に比して、何ら遜色ない状態で、安全かつ確実に保管されているものと認められます。このような実情にかんがみ、保管料の料率ももっと引き上げていいのじゃないか。また、保管の期限にいたしましても、ようやくこれから法律が通ろうとすれば、今後まだ一両年は始末にかかるだろう。そうすれば、この保管の期間も若干政府で考えている計算よりも長くなるのじゃないか。これらをしさいに積算いたしますると、大体におきまして民間返還見込み額に対して二割をちょっと上回るような数字に相なるのでございます。そこで、私は政府原案の「百分の十」というのを「百分の二十」と、こういうふうに修正をしようとするものでございます。
以上において修正点の説明等を申し上げましたが、なお、私はつけ加えまして、この案につきましては付帯決議をつけたいと思うものでございます。それは、今も申し上げた通り、国民感情等の関係で、これは民間に返すものについては非常に気持の上で割り切れないものもありますので、従って、先ほど来小笠原委員あるいは大矢委員と大蔵大臣との質疑の間にも熱心にありまして、われわれそれで政府の意図も十分そんたくされるわけでありますが、この接収貴金属等を処分した収入は、これは一つ戦争犠牲者等の援護に充てるような、大体そういった意味の費用に充てるようにすることが、国民感情をやわらげる意味からいって適切な措置ではないかと考えるものでございます。その趣旨で、次のような付帯決議をつけたいと存じます。朗読いたします。
付帯決議
接収貴金属等の処分に伴う純収入のうち交易営団等が戦時中に回収した貴金属等の処分収入については、戦争犠牲者に対する援護等の経費に充てるよう政府において措置すること。
右決議する。
以上であります。御賛同を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/68
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069・大矢正
○大矢正君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました接収貴金属等の処理に関する法律案に関しまして、ただいまから反対の討論を行います。ただ、実はきょう直ちに採決されるものとは思っておりませんでした関係上、反対の討論の内容をまとめておりませんでした関係もございまするが、しかし、数国会にわたって懸案の事項でありまするし、わが党のそれぞれの委員からもそれぞれの立場から質問をされておりますので、細部の点については十二分に私どもも述べるべき点は述べたと思いまするので、大体三点に要約をして反対の理由を述べたいと思います。
まず、第一点は、衆議院の行政監察特別委員会で満場一致で採択された付帯決議に対する処置の仕方でありますが、この面につきましては、残念ながら、今日政府から提案されている接収金属等の処理に関する法律案では、これら満場一致の付帯決議が何ら生かされていないというところに、まず、私は第一点の反対理由を求めたいと思います。なお、この点につきましては、先ほど来平林委員と大蔵大臣及び世耕企画庁長官との論争の中で明らかでございますので、この点に対する細部の問題については省略をいたしたいと思います。
次に、第二点として反対をいたします理由は、本貴金属の所有権というものは、あくまでも、法理論上これは国に帰属すべきものではなくて、それぞれの民間返還分については、特に個々の財産権として今日まで保有されておるから、従って、そういう法律論的立場に立って返さなければならないという主張が、特に政府、大蔵省からなされておるようでありますが、しかし、私たち、今日まで検討する中におきましては、政府が言う接収は没収ではないという議論には賛成いたしかねるものがあります。特に平和条約が発効いたしましてから日本政府に返されてきているその書簡の内容にも、必ずしもこれは返せという文書はついていないはずでありまして、もしも政府が個人所有のものについて返したいという場合には、計画を立てて返してもよろしいという文書でありまして、個人の財産権の範疇にわたる問題であるから必ずしも返さなければならないんだという明確なものではない。それから、さらに、終局的には、この接収の貴金属というものは賠償物件として処理さるべきものであるということも明らかでありまするし、先般、私は、当委員会において、もし賠償として充当された場合においては、政府はこの処置についてどうするのか、こういうような質問をいたしましたけれども、明らかではございません。従って、政府の法律解釈それ自身におきましても異論のあるところでありまして、単に私ども委員の間の異論だけではなくて、多くの法律学者の間においてもいろいろ批判と意見のあるところでありますので、政府の主張している法律的立場と、それから接収は没収ではないという議論には、賛成をいたしかねるわけであります。
さらに、第三点として述べなければならないのは、国民感情との関連でございます。御存じのように、戦時中は戦争遂行のために、政府が強制的に貴金属を低い価格で評価をして、当時の国債を押しつけて、換金のできない国債を押しつけて取り上げておるわけでありまするが、残ったいわば一部の人人の貴金属のみが今日無条件で返される、わずか一〇%や二〇%の管理費だけ引かれて返されるということは国民感情としてとうてい理解しないところでありまして、私どもとしては、こういう国民感情の立場においても、この法律案に反対をいたすところであります。
最後に、私どもの立場を述べまするならば、これら接収貴金属につきましては、その大部分を国の帰属にし、さらに、その国の帰属になったものを戦争犠牲者の援護の経費に充てるなり、これと類似する人々や団体のいわば助成、補助等に充てるべきである、かように考えている次第でございまして、以上、簡単でございますが述べまして、私の反対理由を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/69
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070・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 他に御意見もなければ、これにて討論は終結したものと認めて差しつかえございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/70
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071・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 御異議ないと認めます。
これより、接収貴金属等の処理に関する法律案の採決に入ります。
まず、討論中にありました杉山君提出の修正案を問題に供します。杉山君提出の修整案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/71
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072・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 多数でございます。よって杉山君提出の修正案は、可決されました。
次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/72
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073・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 多数でございます。よって本案は、多数をもって修正すべきものと議決されました。
次に、討論中に述べられました杉山君提出の付帯決議案を議題といたします。
杉山君提出の付帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/73
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074・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 多数でございます。よって杉山君提出の付帯決議案は、多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/74
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075・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまの付帯決議につきまして、政府は、審議の経過にかんがみまして、この付帯決議の御趣旨を十分尊重して善処するつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/75
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076・加藤正人
○委員長(加藤正人君) なお、諸般の手続等につきましては、先例によりまして、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/76
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077・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 御異議ないものと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/77
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078・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 次に、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
直ちに質疑を行います。質疑のある方は御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/78
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079・大矢正
○大矢正君 一点だけ質問いたしておきたいと思うのでありますが、この法律の改正を行うわけでありますが、従来までの経過をながめてみますと、所得税法の雑損失控除の適用者は非常に多いわけですけれども、どうも改正を提案している減免法の適用者というものは、数字の上においても、金額の上においても、比較的小さいわけです。その理由は一体どこにあったか、この点だけ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/79
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080・塩崎潤
○説明員(塩崎潤君) ただいま大矢委員のおっしゃいましたように、災害者に対します救済制度といたしまして二つあるわけでございます。一つは、昭和二十五年からでき上りました雑損失控除の制度でございます。もう一つは、古くからございますところの災害減価法に基く救済制度でございます。
御承知のように、雑損失控除の制度の方はきわめて合理的でございまして、担税力に見合ったところの救済制度となっております。制度の内容は、総所得金額の一割をこえるところの災害によるところの損失がございますと、その超過部分を所得から控除する、こういった制度でございまして、きわめて担税力に合った制度かと私どもは考えております。これは基本的なものと考えております。一方、災害減免法によりますところの減免法は、非常にラフと申しますか、減免の仕方が大ざっぱでございまして、住宅、家財等につきまして半分以上の損害がございますると、所得金額が二十五万円以下のときは全部を。五十万円以下は半分、五十万円をこえますと四分の一といったような控除の仕方になっておりまして、そこに段落があり、必ずしも所得の担税力に応じましたところの軽減の仕方ではない。こういうことがございましたので、昭和二十五年以来、その雑損失控除を設けましたので、むしろ、これを中心に考えて参りまして、災害減免法によるところの軽減のベースでございますところの所得階級部分につきましては、昭和二十七年から据え置きであったわけであります。その関係で、控除が毎年々々引き上げられました関係上、だんだんとこれによりますところの軽減の思典を受ける者が少くなり、ほとんどは雑損失に食われる。御承知の通り、今回の改正によりますと、事業者ならば夫婦と子三人の世帯で二十五万円以下は最低限となりまして、この災害減免法をそのままにしておきますと、ほとんど適用がないということになります。
そこで、この災害減免法の存在理由は、ただいま申し上げましたように、ラフな、特に一番この実益がございますのは、全免、半分、四分の一というようなことになっておりますので、最後の確定申告で精算するまでの徴収猶予の制度としまして、非常に簡単に運用できる、全免なら一年分全部まけてよい、半分なら半年分微収を猶予してよい、こういうふうな形で運用されてきたわけであります。今回この制度を提案するというので、十分私どもは審議したのでありますが、やはり長くある制度でありますし、これによって今申し上げましたような救済制度も置かれていると申しますならば、残していこう。残すといたしますれば、ただいま申し上げましたように、課税最低限が、事業者ならば二十五万円、給与所得者が三十二万八千円になるような状態でございますので、これの限度を引き上げまして、これによっても一方救われるような体制を整える。私どもとしては、雑損失控除の制度はやはり基本的なものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/80
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081・大矢正
○大矢正君 この減免法と雑損失控除の場合と比較して、できたら、どちらが得になるのか、そういうような最後のまとまった意見というものはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/81
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082・塩崎潤
○説明員(塩崎潤君) ただいま申し上げましたように、二つの制度におきまして、雑損失控除の制度の方が合理的でございますが、一方、災害減免法によります救済の方が得な場合もございます。たとえば、災害減免法でございますと、住宅、家財の半分以上の被害を受けたときには、この適用の対象になります。従いまして、所得がある程度多くて財産が少いような場合、その財産の半分がやられたという場合にはこの適用になりますので、雑損失の場合ならば、その損害額が総所得の一割をこえない場合に適用がない。従いまして、所得が多く、しかも財産が多くて、被害金額が所得の一割をこえる場合には、雑損失の方が適用になる。こういうような状況でございまして、おのおの適用になる対象の面は若干異なっている点はございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/82
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083・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 他に御発言もなければ、これにて質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/83
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084・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 御異議ないものと認めます。
これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もなければ、これにて討論は終局したものと認めて差しつかえございませんでしょうか。
〔「異議なし」と呼者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/84
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085・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 御異議ないものと認めます。
これより採決に入ります。災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/85
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086・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、諸般の手続等につきましては、先例によって、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/86
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087・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 御異議ないものと認めます。さよう取り計らいます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/87
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088・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 次に、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う関税法等の臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行うことといたします。
御質疑のある方は、順次、御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/88
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089・大矢正
○大矢正君 米軍の構成員とか、軍属とか、その家族という人々が特にまあ中心になるのだけれども、これらの人々がアメリカから入れる場合の品物で、なかなか税関当局としては捕捉しづらいものが非常にあるのじゃないかと思うのですね。なぜそういうことを言うかというと、今の行政協定に基く関税法の特例の措置というものは、現状のような質問検査権の内容をもってしては、そのもとで押えようという気持があっても、なかなかそのようにやれないのではないかというような気がするのですが、そういう面で、当面矛盾を感じないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/89
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090・木村秀弘
○説明員(木村秀弘君) 今仰せになりましたように、実際問題として、行政協定上は、軍が部隊として行動する場合には検査権を免除されております。また、個人として輸出あるいは輸入する場合には検査権はございますけれども、しかし、軍の飛行場あるいは横須賀のような軍の基地等を通ずる場合におきましては、十分な検査を行うことが非常に困難な実情にございます。ただ、税関といたしましては、できるだけ現在の協定上認められております権限は十分に活用いたしまして、その間非行為等の起らぬように現実の行政を行なっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/90
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091・大矢正
○大矢正君 参考のために、この際承わっておきたいのですが、行政協定の中の特にこの関税の部分について非課税になっているいわば関税の総額というものは、どの程度になるか。もちろん、これは軍が実際に使用しておるものは、これはまあ除きますが、その構成員や、軍属や、家族等が使用しているもので、関税を免れているものの関税の総額というものはどのくらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/91
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092・木村秀弘
○説明員(木村秀弘君) ただいま手元に持っております資料では、軍が直接輸入いたしました物品に対する関税と、軍人あるいは軍属が個人として輸入しました物品に対する関税額との合算額しか持ち合しておりません。御参考までにそれを申し上げますと、昭和二十八年が免税額が二百五十四億八千万、昭和二十九年が二百十六億七千九百万、昭和三十年が百五十三億三千万、昭和三十一年が百五十二億六千五百万、昭和三十二年が百十八億五千四百万、昭和三十三年は四月から十一月までの八ヵ月間しか出ておりませんが、六十一億三千三百万という数字になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/92
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093・大矢正
○大矢正君 政務次官にこれはお尋ねしておきたい。何か安保条約と行政協定は変えなければならないということで、四月までにやろうというお話で、おたくの与党では一生懸命やっておられるようだが、特にその行政協定の中の関税の部分については、行政協定の中に盛られた関税に対する非課税やそれから質問検査権等については、非常にアメリカを優遇し過ぎておるのじゃないかという意見が日本の国内に多いわけなんですがね。実際問題として、そういうものについて政府としてはどう考えておるか、修正をこの際やろうとお考えになっておるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/93
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094・佐野廣
○政府委員(佐野廣君) 寡聞にして、まだ私、不勉強で、聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/94
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095・大矢正
○大矢正君 この法律の改正は、特に自動車に対する課税価格のとらえ方が中心になって考えられておりますけれども、こういう実例もあるのです。自分が無関税でもって自動車を入れて、そうしてこれを日本人の自動車を使いたい人間に、名儀は本人のままで、外人の名儀のままで貸して、二年間、三年間という期限を切って貸して、もちろんナンバーは、当然それはこちらの日本の国のナンバーになって、全部日本人と同様な取扱いを受けるわけですね。そこで、関税を受けないで利益を荒かせぎやろうという人がふえてきて、これに対するまたブローカーというのが最近出てきておるのですがね。こういうものは一体どうするつもりですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/95
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096・木村秀弘
○説明員(木村秀弘君) ただいまおっしゃったような事例、存じております。実は、現在の規則のもとでは、一年以上使用しており、二年以上型式が古くて、三年以内にその当該軍人が日本人に対して自動車を払い下げたというような事例がないというような場合に限って、その譲り渡しを認められておるわけでございますが、今の制限にひっかかる車につきましては、いろいろこれをのがれるために、軍人のナンバーのままで使用する場合、あるいは区役所等で仮ナンバーをもらいまして、それで乗り回しておる事例等が相当ございます。昨年も税関で、全国的にこれらの自動車の一斉取締りを行いましたが、なかなか、取り締った当座はそういう車が引っ込みますけれども、またしばらくするとすぐ出てくるというようなことで、実はこの取締りには非常に頭を悩ましております。
今回の法案が成立いたしますというと、今までブローカーなりあるいは軍人が得ておった異常な利益の大部分を吸収いたしますので、そういう意味からもたくさん余分のものを輸入して、余分のものを払い下げるというような事例は、次第に少くなってくるんじゃないかというふうに予想をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/96
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097・大矢正
○大矢正君 どうも、あなたの答弁聞くと、返すようで悪いんだけれども、私の言うことには答弁にはならぬように思うんですがね。それは、今この法律改正をやろうとしているのは、課税価格のとらえ方が、以前の入港当時の課税価格を現在に引き直して、言うならば、引き上げて、とにかく課税価格にしようと、こういうんですから、その面について何も私は問題を言っているんじゃないんです。ただ、実例として、今言ったように、かえって、むしろこの法律が通って課税価格が高くなって、そして関税というものをよけいとられるというようになれば、なお、もぐりというものが激しくなりゃしないか。そのもぐりが激しくなる一部の現象として、名義を変えないでそのままの形で途中期間だけ使われると、こういう行き方が出てくると。これも一種の明らかないわば脱税行為になるし、これは直接あなたの方には関係がないかもしらぬけれども、課税価格だけ引き上げれば、確かにそれは自動車を売買しているブローカーはあなたのこの法律によって相当いじめられるし、無理がないように思うけれども、途中でそうやっているものをとらえる方法はなくなるんだがね。そういうものをかえって激化しやしないか。そしてまた、そういうものが出てきた場合に、実はどうするんだということを私は聞いているんだが。わからなきゃわからないで、しょうがない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/97
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098・木村秀弘
○説明員(木村秀弘君) ただいまの、多少説明が不十分でありましたが、実は、仮ナンバーでもってブローカーあるいはユーザー等が使用している車、あるいは軍ナンバーのついたままで借り受けて使用しているような車、そういうものは、税を納めるのがいやだからそういう形でもぐっておるというよりも、むしろ、さっき申し上げました三条件を満たさない場合には、譲り受け行為そのものを認めないという仕組みになっておりますために、もぐっておる車が非常に多いわけであります。もちろん、今手元に納税するだけの余裕がないということでもぐっているものも若干はございましょうけれども、しかし、主としては、今の告示違反になるために、たとえ税関へ持ってきて納税しようという意思を表示しましても、税関としてはその税を受け取らない、告発をするという段取りになりますので、そういう理由からもぐっているものが相当ございます。従って、今回の課税価格の引き上げが直接に響いてきて、それでもぐりの車が多くなるというふうには、われわれは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/98
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099・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 大矢君、いいですか……。
他に御発言もなければ、これにて質疑は尽きたものと認めて差しつかえございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/99
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100・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 御異議ないと認めます。
これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もなければ、これにて討論は終結したものと認めて差しつかえございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/100
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101・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 御異議ないと認めます。
これより採決に入ります。日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う関税法等の臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/101
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102・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、諸般の手続等につきましては、先例によりまして、これを委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/102
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103・加藤正人
○委員長(加藤正人君) 御異議ないと認めます。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時五十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103114629X01519590310/103
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