1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十三年十二月二十二日(月曜日)
午前十一時三十二分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第五号
昭和三十三年十二月二十二日
午前十時開議
第一 繭糸価格の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
第二 公共用水域の水質の保全に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
第三 工場排水等の規制に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00519581222/0
-
001・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00519581222/1
-
002・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、繭糸価格の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず委員長の報告を求めます。農林水産委員長関根久藏君。
〔関根久藏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00519581222/2
-
003・関根久藏
○関根久藏君 ただいま議題になりました繭糸価格の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
この法律案は、すでにとられた措置にかかわらず、その後の繭糸の需給が好転するに至っておらないので、かような事態に対処して、夏秋蚕繭について、生産者団体が企図している約三百万貫の棚上げの実施を円滑にするため、その棚上げされた繭の日本輸出生糸保管株式会社における買い入れ価格について、特例を設けようとする趣旨によって提出されたものでありまして、繭糸価格の安定に関する臨時措置法による日本輸出生糸保管株式会社の繭の買い入れ価格は、一貫当り千四百円となっておりますが、一万一千二百五十トン、すなわち三百万貫以内の一定数量の繭については、特別の価格、すなわち一貫当り千二百円とするとともに、会社が同法によって買い入れ等を行なって取得した生糸または乾繭を政府が買い入れる場合の買い入れ限度を、五十億円増額して、二百億円とするのがその内容であります。
委員会におきましては、政府から提案の理由その他この法律の対象となっている乾繭の買い入れ手続等について説明を聞き、さらに参考人として全国養蚕農業協同組合連合会当局の出席を求め、繭価協定及び協定繭価の状況、協定繭価とこの法律の措置による繭価との関係及びその調整、生産者団体における乾繭の保管状況とこの法律による売り渡し対象数量、並びに政府の買い入れ限度の当否等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に護ることを御了承願いたいと存じます。
かくして質疑を終り、次に東委員の提出にかかる、「買い入れの一定数量について特別な価格を定める規定を削除し、政府の買い入れ限度を二百五十億円に増領する」ことを内容とする修正案を議題とし、東委員から日本社会党を代表して、春蚕繭と夏秋蚕繭とは同じ取扱いにすべきであるとの理由によるものである旨、これが趣旨の説明が行われ、しかしてこの修正案は予算を伴うものでありますので、国会法の規定によって内閣の意見が求められ、修正は適当でない旨の意見が述べられ、続いて討論に入り、清澤委員から、本年産繭については、春蚕及び夏秋蚕を一貫した措置を講ずべきであつて、修正案に賛成するものであり、なお、原案が成立した場合においても、乾繭の買い入れについては公平を期すべきである旨が述べられ、他に発言もなく、討論を終り、採決に入り、まず、東委員提出の修正案を問題にし、賛成少数で否決され、次に、原案全部を問題にし、賛成多数で、この法律案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
右、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00519581222/3
-
004・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 本案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。八木幸吉君。
〔八木幸吉君登壇、拍手」〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00519581222/4
-
005・八木幸吉
○八木幸吉君 私は本案に反対でございます。その理由の第一は、本案が何らの根本的対策とならずして、滞貨を増加し、かえつて蚕糸等の将来に悪影響を与えるからであります。
本案は、保管会社の生糸または乾繭買い入れ限度を五十億円増額して、二百億円となし、夏秋蚕のうち三百万貫を千二百円で買い入れんとするものであります。しかしながら、夏秋蚕の値ぎめは、すでに全国を通じて八割以上、平均貫当り千百円見当で済んでおり、新たに共同保管乾繭に対し千二百円で値ぎめをすれば、すでに値ぎめの終つた養蚕家との間に不公平を生ずるのみならず、繭は残らず、金は余る結果となります。春繭でさえ十八億円余つておるのであります。さらに、生糸の棚上げについて考えてみますと、現在、政府手持ち生糸の数量は四万九千五百俵であり、現行法で保管会社が買い入れ、来年五月末政府が肩がわりする高は、百三十二億円、生糸換算六万一千俵、また改正案によって予定の通り繭が買えれば、生糸換算三万俵、合計すると十四万五百俵が棚上げする計算になります。この数字は、本年の生糸の年産額三十一万俵の四割五分三厘、生糸年間需要予想高の二十六万俵の実に五割四分に当るのであります。かくのごとく本案は、現在の巨額の棚上げにさらに拍車をかけるものであります。
第二の反対の理由は、本案が、国費、血税を乱費する結果となることであります。前述の通り、百三十二億円の買い入れ分と前年度から繰り越した分との合計約十一万俵の棚上げ生糸の価格が、十九万円を二割下つた現在の相場で計算いたしますと、四十二億円の損失となり、さらにこのほかに金利、倉敷料等の国庫負担額は、年間約二十六億円になるのであります。生糸価格にして年産五百億円、繭の値にして三百数十億の規模の蚕糸業に対して、国庫より三百億円を支出し、六十億円以上の損失を来たし、実需年額の五割以上に及ぶ棚上げ滞貨を作つて、しかも、何ら抜本案とならざる血税の乱費は、無謀と言うよりほかございません。蚕糸業の根本対策は、実勢と遊離した高値政策ではなくして、絹織物の原料としての適格性を持つ、味のある、腰の強い生糸のための品種の改良であり、養蚕、製糸の合理的コストの引き下げであり、絹加工業者、問屋、輸出商との一致の努力であり、また、海外における思い切つた消費の宣伝、販路の開拓であります。かくしてこそ初めて、化学繊維の脅威、中共、イタリアとの競争にも耐え得るのであります。現在世界の生糸消費高の全繊維に対する比率はわずかに千分の二にすぎず、技本的の対策さえ講じますならば、その前途は悲観する必要はございません。来年度の桑園の整理改植の予算は七億四千八百万円、品種改良と生糸の海外需要増進等の費用に至っては、わずかに一億三千数百万円にすぎないのであります。価格支持政策のため巨額の国費を乱費する実情と考えあわせるときに、真に政府が蚕糸業の恒久的繁栄を考慮しているかどうか、疑わざるを得ないのであります。
私は、政府の反省を促して、私の反対討論を終るものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00519581222/5
-
006・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00519581222/6
-
007・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00519581222/7
-
008・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第二、公共用水域の水質の保全に関する法律案、
日程第三、工場排水等の規制に関する法律案(いずれも内閣提出、衆議院送付)、
以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00519581222/8
-
009・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。商工委員長田畑金光君。
〔田畑金光君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00519581222/9
-
010・田畑金光
○田畑金光君 ただいま議題となりました二法案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
まず、公共用水域の水質の保全に関する法律案について申し上げます。
この法案は、汚濁水規制についての各種行政法規に対する基本法的な地位を占めるものでありまして、その要旨は次の通りであります。
すなわち、第一は、経済企画庁長官が、河川とか湖沼とかのいわゆる公共用水域のうち、水質の汚濁について、一定の要件を備え、問題の多い水域を、指定水域に指定するのであります。この指定水域に排出される水の汚濁度を、水質基準として、同じく経済企画庁長官が定めなければならないことになっております。
この水質基準は、汚濁水規制の各種行政法規の運用統一の基本ともなるべきものなので、この水質基準設定並びに指定水域の指定については、各方面の学識経験者及び関係行政機関の職員よりなる水質審議会の議を経なければならないことになっております。この水質審議会は、経済企画庁の付属機関で、このほかに、公共用水域及び地下水の水質保全に対する基本的事項について調査審議することになっております。
要旨の第二点は、水質汚濁による被害の紛争について、いわゆる和解の仲介制度を規定してあるのであります。これは、公共用水域に排出された水や廃棄物によって水質が汚濁し、被害があって紛争が起きたときは、当事者が都道府県知事に和解の仲介を求めることができ、都道府県知事は、この場合、第三者的立場にある仲介員により和解の仲介を行わせ得るようになっております。
以上が政府原案の要旨でありますが、衆議院において修正されております。その要点は次の通りであります。
第一点は、経済企画庁長官は、公共用水域の水質についての調査のため基本計画を立案し、水質審議会の議を経てこれを決定し、公表する規定を新たに追加したこと。
第二点は、関係行政機関の水質基準の尊重義務を追加したこと。
第三点は、仲介員の指定について紛争の申し立てが二以上の都道府県知事になされた場合、これら知事は、協議して仲介員を指定することができる場合を追加したこと。
第四点は、指定水域の指定要件中「おそれの高いもの」とあるを「おそれのあるもの」と改めたこと。
以上であります。
次に、工場排水等の規制に関する法律案について申し上げます。
前に述べました水質保全法案による水質基準の適用を受けますものといたしましては、鉱山、下水道、水洗炭業等の法文でいわゆる製造業等に対しまして今まで何ら規制していなかったので、今回これを規制しようとするため、この工場排水等の規制に関する法律案が提案されたのであります。この法案の要旨は次の通りであります。
第一は、製造業等の用に供する生産施設のうち、汚水等を発生するものを、制令で特定施設として指定し、およそ特定施設を設置している者が、指定水域に工場排水等を排出しようとするときには、この特定施設の設置または変更について届出を要し、その使用方法ないし汚水等の処理方法の変更を行う場合にも、事前に主務大臣にその計画を届け出ることといたしております。主務大臣は、その届出を検討した末、問題があれば、、汚水等の処理方法の計画の変更や、特定施設に対する計画の変更とか廃止とかを命じ得ることといたしておるのであります。なお、新たに特定施設が定まった場合等においては、既存の特定施設について経過措置としての届出をさせることにしております。
第二に、現に指定水域に排出されている工場排水等がその水域の水質基準に適合していないときは、主務大臣は、汚水等の処理方法の改善、特定施設の一時停止その他必要な措置を命令できることとしてあります。
第三には、特定施設を設置するものに対しては、汚水処理施設に対する固定資産税を免除するとともに、国として、汚水処理施設に対し、資金の確保や技術的な助言その他の援助に努めること等の助成措置を講じておるのであります。なお、このため、三十四年度一般会計予算に十一億円、開銀融資五億円を要求中であります。
この法案にも、衆議院において修正がありましたが、その内容は、前の水質保全法あの修正に伴う字句上のものであります。
以上が二法案の概要でありますが、この審議に当りましては、農林水産、建設の両委員会と連合審査会を開くとともに、関係各省の大臣または政府委員の出席を求め、いろいろな立場から熱心に検討したのであります。その審査の詳細については会議録に譲りますが、論議の中心となりましたおもなる項目のみを申し上げますと、第一は、水質基準をどういうように、またどのように定めるのかという、具体的な設定方針の問題であります。これにつきましては、個々の事業場に対する許容限度とその水域における水質基準の関係、指定水域の定め方、さらには賠償の問題等にも波及して、活発な質疑応答が展開されたのであります。
第二は、水質保全に関する行政の一元化の問題でありまして、特に水質に関する試験研究をいかに整備充実するかという点であります。
第三は、和解の仲介制度については、ボスの介入などがあって、公平妥当な運営が行われない懸念があるのではないかという点であります。
第四は、船舶の廃油に対する規制をいかにするかという点で、これはおもに農林水産委員の方々から問題が提起されたのであります。
第五は、いわゆる除害施設や下水道に対する国の財政金融あるいは税制上の援助が十分かどうかの点であります。これについては、特に大蔵省より、現在要求中の予算に対しては、極力趣旨に沿うよう努力するとの見解が披瀝されたのであります。
以上のほか、二法案全般にわたり、熱心な質疑応答のあつたことを申し添えておきます。
このようにいたしまして質疑を終了し、二法案一括して討論に入りましたところ、まず栗山委員より、日本社会党を代表して、「公共用水域の水質の保全に関する法律案」に附帯決議を付し、両法案に賛成するとの発言がありました。
附帯決議案を朗読いたします。
政府は本法施行に当り、次の諸点に関し、特段の努力をなすべきである。
一、水質に関する科学的試験研究期間を整備充実すると共に、必要に応じ、一元的試験研究機関を設立し、もつて水質保全の万全を期すること。
二、水質汚濁防止の実行を期するため、除害施設、下水道等に関し、財政、金融並びに税制上の諸措置を強力に講ずること。
三、地下水の汚濁防止について更に検討を加え、適切なる措置をとること。
四、船舶の廃油等による水質汚濁についても、その防止に遺憾なきを期すること。
以上であります。
さらに栗山委員は、「法律の実効を期するためには、予算措置に十分なる配慮を払うこと。水質基準を定めるに際しては、慎重にしてかつ科学的な態度で処すること。汚濁水規制の実施法については、その運用に当り、各省間の縄張り争いにならぬよう総合的な調整をはかり、日本の淡水対策の円滑なる運営を期待して賛成する」と付言されたのであります。
次いで上原委員より、自由民主党を代表して、「水質汚濁防止が、私企業の負担のみに期待することなく、国の強力な援助の上に行うという覚悟をもって両法案を運用されたい」と意見を述べて、両法案及び栗山委員提出の附帯決議案に賛成されました。
次に、無所属クラブを代表して大竹委員より、「従来、水質汚濁問題を都道府県の処理にゆだねていたのを、国の問題として取り上げたところに意義を認めるが、この際、企業者にいたずらに畏怖の念を起こさせぬよう法律の運用に当るべきである。さらに、屎尿処理については、下水道の整備を十分はかるべきことを要望して賛成する」との発言があり、両法案及び栗山委員提出の附帯決議案に賛成されたのであります。
以上で討論を終り、採決いたしましたところ、両法案とも、それぞれ全会一致をもって、衆議院送付の原案通り可決すべきものと決定いたしました。次いで、栗山委員提出の附帯決議案を採決いたしましたところ、これも同じく全会一致をもって委員会の決議とすることに決定した次第であります。
右、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00519581222/10
-
011・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両法案の採決をいたします。
両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00519581222/11
-
012・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって両案は全会一致をもって可決せられました。次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時五十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103115254X00519581222/12
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。