1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年四月十四日(木曜日)
午前十一時二十五分開議
出席委員
委員長 永山 忠則君
理事 大石 武一君 理事 田中 正巳君
理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君
理事 八木 一男君 理事 堤 ツルヨ君
池田 清志君 加藤鐐五郎君
川崎 秀二君 齋藤 邦吉君
早川 崇君 古川 丈吉君
柳谷清三郎君 赤松 勇君
伊藤よし子君 大原 亨君
河野 正君 五島 虎雄君
中村 英男君 本島百合子君
出席国務大臣
労 働 大 臣 松野 頼三君
出席政府委員
労働政務次官 赤澤 正道君
労働事務官
(職業安定局
長) 堀 秀夫君
委員外の出席者
労働事務官
(労政局労働法
規課長) 辻 英雄君
専 門 員 川井 章知君
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四月十四日
委員多賀谷真稔君辞任につき、その補欠として
河野正君が議長の指名で委員に選任された。
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四月十三日
母子福祉資金の貸付等に関する法律の一部を改
正する法律案(内閣提出第一二〇号)(予)
同日
医療施設不燃化等の建築費助成に関する請願(
濱野清吾君紹介)(第二二七二号)
同(富田健治君紹介)(第二二八二号)
同(小川半次君紹介)(第二三五二号)
身体障害者の治療及び救済機関設置に関する請
願(池田清志君紹介)(第二二七三号)
動員学徒犠牲者援護に関する請願外二件(池田
清志君紹介)(第二二七四号)
同外十三件(佐々木盛雄君紹介)(第二二八一
号)
同外四十三件(大坪保雄君紹介)(第二三七五
号)
同(河野孝子君紹介)(第二四三八号)
同(古井喜實君紹介)(第二四六三号)
酒癖矯正施設設立に関する請願(黒金泰美君紹
介)(第二二八〇号)
同(武知勇記君紹介)(第二四三六号)
社会保障制度確立に関する請願(小松幹君紹
介)(第二三三一号)
酒害対策費に関する請願(櫻内義雄君紹介)(
第二三七四号)
同(受田新吉君紹介)(第二四三七号)
日雇労働者健康保険法の改善に関する請願(五
島虎雄君紹介)(第二三八二号)
同(加賀田進君紹介)(第二五〇一号)
市町村、労働組合等の行う職業訓練に対する経
費負担に関する請願(五島虎雄君紹介)(第二
三八三号)
同(加賀田進君紹介)(第二五〇二号)
一般職種別賃金の即時廃止に関する請願(五島
虎雄君紹介)(第二三八四号)
同(加賀田進君紹介)(第二五〇三号)
一般職種別賃金の増額に関する請願(井出一太
郎君紹介)(第二三九七号)
国立和歌山病院の閉鎖反対に関する請願(田中
織之進君紹介)(第二四〇〇号)
同(山口喜久一郎君紹介)(第二四六四号)
国民年金制度の運営等に関する請願(星島二郎
君紹介)(第二五一八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
身体障害者雇用促進法案(内閣提出第五五号)
労働関係の基本施策に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/0
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001・永山忠則
○永山委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の身体障害者雇用促進法案を議題として審査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。本島百合子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/1
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002・本島百合子
○本島委員 それでは、大臣が見えましたらまた大臣に対して質問させていただきます。
そこで、新しい試みとして、これだけの法律案が出たわけでありますが、この身体障害者雇用促進法が制定されるということは、その関係者の人たちはもちろん、国民一般も大きな喜びであると思うのです。ところがそれだけ大きな期待を持っております割合に、ここに書かれております内容というものが、非常に薄氷を踏むというのでしょうか、そういう感じが非常に強く受け取れるわけなんです。そういう意味で、もう少しはっきりした法文であってほしかったという期待を私ども持つわけだし、また直すものならばそういうふうにしてもらいたいと思います。
順次御質問いたしますが、まず第一番に、身体障害者の福祉法が制定されましてから十年という歳月がたっておる。それからILOで一九五五年の六月に割当雇用あるいは指定職業の優先雇用、重度障害者のための保護雇用を内容とする身体障害者の職業更生の勧告、こういうふうなことが採決されて、ずっと見て参りますと、今回の法律案を提出されるときには、これは必ず割当雇用になるものだろう、こういう感じ方を私たちは持っておったわけです。それがそうでなくて、今回のは雇用奨励ということに重点が置かれておるように感じられる。これは漏れ承るところですから、役所同士でどういう話であったか私どもは知りませんが、漏れ承るところでは、もともと厚生省では、これは割当雇用にしなければいかぬじゃないか、そうしなければ身障者の雇用というものはうまくいかない、こういう主張があったように聞いております。ところが労働省の力は、現在の資本主義社会の中ではそれはむずかしい、努力義務程度でちょうどじゃなかろうかというところに落ちついての、この法案提出だと聞いたわけですが、それはどうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/2
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003・堀秀夫
○堀政府委員 この法律案を作成するにあたりまして、厚生省を含む内閣の関係官庁には全部協議をいたしまして、その結果としてこの法案を作成したわけでございます。ただいまお話しの点につきましては、割当雇用という形が法律形式としては一番割り切れた徹底した形ではあると考えますけれども、ただいまの日本の実情から考えまして、この初めての試みであるこの法案を策定するにあたりましては、割当雇用式な形で罰則を伴うというような形でこれを実施する、あるいは国が民間の経営者とかわって雇用契約的なものを締結するような措置を講ずるというような点は、わが国の実情には合わないのじゃないかという考え方で、そこまでは制度をとらなかったわけでございます。ただし単なる努力義務ということでは、これはまた法律推進のための原動力としては響きが薄いと考えますので、この法案にいうように国家の機関、それから地方公共団体及びそれに準ずるような機関におきましては、一定の雇用比率を達成するために必ず計画を作成して実施しなければならないということにいたしましたし、また民間の事業所につきましては、職業安定所長が必要と認める場合には、身体障害者の雇用計画の作成の命令をすることができるということにいたしたわけでございます。厚生省のお話がございましたが、厚生省からは割当雇用にした方がいいじゃないかという御意見はわれわれ伺っておりません。今回の法案の作成につきましては、このわれわれの作成した法案の内容について異議は厚生省からはございませんでした。これを強制雇用的なものにさらに強めるべきであるというような御意見は、われわれ承知いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/3
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004・本島百合子
○本島委員 日本の現状からして強制割当ということはむずかしいだろうと考えられた、どういう点でそういうふうに考えられるのか。戦争があるたびに大量的に出てくる身障者というものは、戦争の犠牲者が一番多いわけであります。今までは廃兵だ廃兵だ、仁丹売りだ、私ども子供のときからこう言われておった。終戦後は御承知の通り音楽をやったり、それから箱を置いたりして金を集めておる。それから今日それはやってはいかぬということになりましてからも、列車の中、電車の中にまだ残っておるようであります。こういう人たちに聞いてみますと、やはり生活が不如意であるということ、そういう点でやむを得ないのだということ、それからもう一つは、いつまでもこういうことはできないから、自分たちは何とかして更生できるだけの資金を集めたい、こう言われるわけなんであります。そういう言葉を聞いていると、無理もないことだと思うわけです。それがやっとこういう雇用促進法という法律が出てきたということによって、今後はそういう人がなくなるだろう、またなくさなければならない。なくするためには、職業というものがほんとうに確約されなければいけないのじゃないかと思うのです。今まででも身体障害者をいろいろ指導していられる方々の話を聞いてみますと、医学的な施策というものがうまくいき、そしてその環境がよければ、身体障害者もまた普通の健康体の方々と同じ程度の仕事ができる、こういうことがはっきり言われているのです。ただその中で一番むずかしいのは職業だ。職業につければ苦しみは減るのですが、職業がないということで身体障害者というものは非常にみじめな暮らし方をしてきた、こういうことから、割当でやっていいじゃないか。ただこれは予算の裏づけがないものですから、大会社や大工場に、これこれでこれだけ雇って下さい、こう言ってみたところで、そのために会社の設備の改造をしたり、あるいはこの人々を普通の力と同じように働かせる。その待遇を与えるためには多少不足するというような点、こういう点の裏づけが一つもないものですから、労働省としても腰が弱くなって結局割当雇用というところまで踏み切れなかったのじゃないか、私はそう感じるのです。それはどうでございましょうか。予算の裏づけさえあれば割当雇用でぴしゃっといったのじゃないか、そういう気がするのですが、どんなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/4
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005・堀秀夫
○堀政府委員 割当雇用につきましては、なるほどお話のように、法律形式としてはその形式で参りますのが一番割り切れた方式でございます。しかしいろいろ検討いたしますと、結局この身体障害者の雇用促進というような問題については、二つの大きな基盤が必要であろうと思っております。一つは、身体障害者御自身がやはり自立自営して積極的に道を開拓していこうという意識が局まるということでございます。それから第二番目には、いわゆる世の中の経営者が身体障害者というものを何か健康な人と差別待遇するというような偏見がありますから、それを除去して、身体障害者はやはり身体障害者に適した職場に積極的に雇用していく、このような考え方が経営者全体に行き渡るということが必要だと思うわけでございます。そこで今度初めての試みといたしましてこの法案を制定して実施するわけでございますが、やはりこの実施にあたりましては、一般の経営者が身体障害者の職場というものを開いて、これを積極的に使っていこうという気分を盛り上げていくことが大事であると考えるわけでございます。その場合におきまして、何か罰則をもって強制したり、あるいは国が経営者にかわって契約を締結するというような方法をとることは、せっかくこの身体障害者の雇用促進について、経営者全体に進んでこの身体障害者を雇おうという気分を盛り上げようと思っている際に、何か国が強権をもって強制するんだというようなことで、使用者側が消極的な気分になりますことは避けなければならないと考えるわけでございます。この点につきましては、この法案を制定する際に使用者側ともいろいろ突っ込んだ話もいたしました。率直に申しまして、この問題についてはまだ消極的な考えを持っておられる経営者も相当あるわけでございまするか、いろいろわれわれ話しまして、結局この法案については進んで協力をしよう、こういう空気になったわけでございます。そういうような空気からいたしましても、やはりこの法案の内容については、今のような強制雇用あるいは国が雇用主にかわって契約を締結するというような方式は避けて、使用者が進んでこの身体障害者の職場を開くという気分をしみ通らしていくという方法がいいのではないだろうか。ただ、それも単なる道徳的な義務というようなことではもとより実行することかできませんので、特に国、公共団体等の機関においては、率先垂範の意味で必ず雇用比率を達成する、そのために計画を必ず作らなければならないということに義務づけましたし、また民間におきましても、職業安定所長が計画の作成命令をすることかできるというような点もこの法案に織り入れたわけでございます。この方式で身体障害者の雇用促進をはかっていくことが、われわれは当面の段階としては最も適当ではないかと思います。
それから予算の面につきまして、今回の法案につきましての裏づけといたしまして、相当額の予算は計上いたしましたけれども、われわれはこれで必ずしも十分だと思っているわけではございません。特に御指摘のように、私どもはたとえばいろいろな設備の改善であるとか、身体障害者の雇用の際の補助具の問題であるとか、こういう問題については今後も国としてもできるだけ予算の裏づけをもって関係者を指導できるというような態勢を作りたいと思っております。ただ法案の中には、国はそのようなことを行なう義務をきめてありますが、予算の裏づけについては、われわれは現在の予算では必ずしも適当であるとは思っておりません。今後われわれの大きな努力目標としまして、この方面の予算の裏づけの充実をはかりたいと考えておるわけでございます。予算の裏づけの問題と今の強制雇用の問題とは、われわれは一応別個に考えております。予算の裏づけについては、今後ともさらにこれを拡充するためにわれわれは努力していきたいと考えております。しかしそのために、予算の裏づけがないから割当雇用、強制雇用を行なわなかったということではなくて、われわれの考えとしては、やはり一般の経営者に対して積極的にこの運動に協力を求めるという見地から、この法案のような形式が適当であると考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/5
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006・本島百合子
○本島委員 予算の裏づけのことはあとでまた申しますが、この間の御答弁の中にもあったと思うのですが、大体身障者の生産年令人口は八十一万一千名はかりある。その中で労働意欲を持っておる者が六十二万と言われたと思うのです。私、いろいろ聞いてみましたところが、現在働いておる人でも労働条件が非常に悪いということで転職希望をしている人が九万五千人ある。それから完全に失業をしている人か六万五千人はかりある。それからいま一つはどうしても職業につけられないという人たち、これが七割程度ある、こう言われたのです。そうしますと、この促進法が出て、この前の御説明からずっと判断していきましたときに、大体今日働いている人の倍だけは雇用できる、こう言われたのですが、現在劣悪な条件の中で働いておる、そして転職を希望する人、こういう人たちは一体どうなっていくだろうか、こういう不安が出てくるのです。ということは、皆さん方も御承知であろうと思いますが、ついこの間、四月の六百くらいの新聞に、東京都の中小企業者たちの従業員というものが非常にみじめだということが出ておったのです。大体身体障害者の雇用されておる職場というものは中小企業が多いし、零細業者に多いといわれるのです。そういうところですから、なおさらこういう九万五千というような多数の人々が転職をしたいという希望になって出てくると思うのですが、この転職を希望する人たちについて特に調査をされたことがありましょうか。またその調査をされたとすれば、大体どういうことであるから転職希望者がこういうふうにたくさんあるのかということをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/6
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007・赤澤正道
○赤澤政府委員 実は私も労働省に入って気がついたのですけれども、不完全就労の実態というものは十分な調査ができていないということは事実なんです。特に身体障害者の中できわめて不利な雇用条件で今おられる方々が中小企業、零細企業よりは大企業の方へ転職したい、もっと労働条件のいいところへ行きたいという希望を持たれるのは当然だと思うのです。そこで局長の方でその調査ができておると思いますから、局長から数字の御説明を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/7
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008・堀秀夫
○堀政府委員 労働省で昨年の中ごろに身体障害者の現状につきまして調査をいたしました。それによりまして推定いたしたところによりますと、身体障害者で本法案の別表に該当するような欠陥を持っておる方は大体九十六万人、このように考えております。そのうち労働の意思と能力を持つ、いわゆる労働力人口に該当する方が六十二万人、そのうち五十五万五千人は就業者でございます。従って五十五万五千人につきましてその内容を見ますと、自営業者が二十二万六千人、家族従業者が八万七千人、常用雇用者が十六万九千人、臨時日雇い雇用者が三万四千人で、その他が三万九千人、このような数字になっております。そしてこの失業者的な存在と、それから就業しておりましても追加就業、転職等を希望するというような方は大体九万人程度でございます。このようにわれわれは推定しておるわけでございます。そしてこの調査によりまして、大体どういう理由であるかというお尋ねでございます。これはわれわれの算出といたしましては、あまり詳細な突っ込んだ調査までいたしておりませんが、一応われわれの方で調査した内容を申し上げます。これは追加就業、転職希望者約千四百名程度について、その理由が何であるかということを調査いたしましたところによりますと、やはり仕事がむずかしい、あるいは収入が少ないというようなものが七百名程度で、約半分でございます。それから仕事が障害部位に悪いからという理由によるものが約二百程度でございます。それからあと大きなものを申し上げますと、事業の将来に見込みがないからというようなものが百六十、健康が不安だからというような理由に基づくものが五十人程度、これは非常にばくとした調査でございますが、大体われわれの方で抜き取りまして、転職、追加就業をなぜ希望するかということをお尋ねいたしますと、今のようなことが理由になっておるというふうにわれわれは推定いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/8
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009・本島百合子
○本島委員 ただいま御報告になったところを見ましても、身障者に適応した職業でないということですね。それから収入が大体労働者より平均二五%ぐらい低いという話がこの前あったと思うのです。このときの調査ではございませんでしょうが、それにも書いてあるようですが、一般の人が平均賃金として一万五千五百円ぐらいもらうものでしたら、身体障害者大体一万一千六百円ぐらいにしかならないというようなことで、標準から非常に低くなっておるということです。それからいま一つは、過日の東京都の調査を見てみましても、零細業者が非常に多くて、その零細業者の中には、賃金が安いとか労働時間が長いとか、それから家事労働まで手伝わさせられるとか、多角形な仕事で一般の人でも非常に困難だというような状態に置かれておる企業体が非常に多いわけなんです。ところが身体障害者はそういうところでしか雇ってもらっていなかったというのが今までの状態のようです。どうして大企業体が身体障害者を使わなかったのだろうか、こういうふうに考えまして、方々聞いてみましたところが、従来働いておった人で身障者になれば、それは組合がしっかりしておりますからやめさせるわけにはいかぬということで、ポストはそのまま残されておるので、大体の率は、大企業の方にはかなりいますということですが、新規採用の面でいきますと、大企業はほとんどない、こういうわけです。零細業者の中にこういう身障者が入っているし、また生きるためにはそういうところでも働きに行くわけです。ですから自分のからだに合わない、収入も少ない、だから今回のような法律が出れば転職をさせてくれというふうに希望されるのは当然だと思うのです。そこでこの前の御説明でも、官公庁あたりにおいては〇・六九%くらいしか使っていないけれども、今回は一五%くらいにしよう、こういうことをはっきりとおっしゃったわけなんですが、ことしの採用の中にはこれはもうないわけですね。来年度ということになると思いますが、そうすると、この間大臣が大へん自慢しておっしゃったことは、次官会議で、二十七年のときの次官通牒ですか、あれでやりまして、非常に雇用率が高くなっておりますと、こう言われた。はっきりした率を忘れたのですが、多分〇・三八%くらいしかなかったのが〇・六九まで上がったのだ、だから非常によかったのだとおっしゃったのですが、それは二十七年のときですから、上がったのは二十八年くらいのことだと思うのです。それからずっと今日までの間にその倍加率でふえてきているのかというと、ふえていない、とまってしまった形になっているのです。一昨年官公庁で採用した新規採用者が大体十六万人ぐらいある、その中で七百二十三人くらいしか採用されていない、こう言われているのです。そうすると、非常に少ないということがわかるわけですが、これだけ次官通牒でハッパをかけられても、なおかつ官公庁での採用率が低いということは、どういうところに原因があるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/9
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010・堀秀夫
○堀政府委員 ただいまお尋ねが二点ございますが、一つは、民間におきまして零細企業における身体障害者の雇用率が高いというお話でございます。これはその通りでございまして、大体十人以上の事業所についてその身体障害者の雇用率をとってみますと、〇・六五%ぐらいでございます。ところが十人未満の事業所におきましては一・七%程度で、相当高率を占めておるわけでございます。これはやはり大規模な企業は雇用者を採用するにあたりましてえり好みをいたしまして、身体障害者をなるべく避けるというような気分があることに基づくのであろうとわれわれは考えております。今回の措置によりますると、十人以上の民間の事業所については、大体これを今の倍程度、一・三%程度まで上げたい、六万人程度を新しく雇用をさせたい、このような考えでおるわけでございます。十人以上というところに特に重点を注いで、われわれとしては大規模手業に対しまして身体障害者というものを雇用してもらう、そのために計画も作ってもらう、このやり方で進んで参りたいと思っておるわけでございます。
次に、官公庁等におきましては、昭和二十七年に事務次官会議の打ち合わせによりまして、事実上各官庁でなるべく身体障害者を雇おうじゃないかという申し合わせをいたしまして今日に及んでおるわけでございますが、初めの私の説明があるいは足りませんで、やや誤解を招いた点があると思いますが、その当時におきましてはやはり〇・三八%程度でありましたけれども、昭和三十四年の調査によりますと、これが国の機関では〇・六九%くらいまで上がったということを申し上げたのでございます。二十八年に上がって、あとは横ばいだということではなしに、二十七年から三十四年までかかって約倍だということでございます。これも一応の成績といえば成績でございますが、われわれはこれでは満足しておりません。この申し合わせ等によりまして率は高くなっておりますものの、これでは不十分である、やはり官公庁においては、このような大きな運動を展開するにあたりましては、率先作動して身体障害者を雇用する、こういう気がまえでいかなければならないのに、今のような状況ではやはり増加率が非常に少ないとわれわれは考えております。そこで、官公庁等におきましては、われわれはさしあたり大体一・五%程度を雇用するということを目標にしてやって参りたいと思っております。今までなかなか進まなかったという点につきましては、事務次官会議がやはり単なる事実上の申し合わせでございましたので、実は労働省におきましても、各官庁の採用計画等を審査する、意見を言うような態勢ができておらないわけでございます。従いまして、今までのところでは各官庁がみずからやろうということで、その計画は各官庁にまかせておるわけでございますが、やはりそれではいけないという考え方で、今度の法案によりますると、各官庁は一定の雇用率以上にするために必ず計画を作成しなければならないということにいたしまして、そうして、その計画の作成につきましては政令で定めるということにいたしましたが、その政令の中におきまして、各官庁が身体障害者の採用計画を立てる際にはあらかじめ労働大臣に協議もしくは通報するというような措置をとらせたいと思っております。そうして労働省におきまして各官庁の採用計画というものを事前に通報を受けまして、それに対しまして事前に意見を言うということができるようにいたしました。
それからもう一つは、この十一条によりましても明らかなように、各官庁は雇用率を達成するようにしなければならないという義務を負うことになっております。この法律の裏づけによる義務ができてきたということ、それから今の採用計画等を作成するにあたりまして、あらかじめ労働省にも連絡をさせて、労働省は意見を言う、それからそれが不適当である場合には、事後についても意見を言うことができるような制度になりましたので、今までのような、単なる事実上の申し合わせと異なりまして、法律の裏づけによって積極的に推進することができると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/10
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011・本島百合子
○本島委員 この間の五島先生の質問にも、きのうの齋藤先生の質問にも今のような答弁があったのですが、私はどうして各官庁はこんなに率が悪いのかということを考えたのです。そうしますと、国家公務員でも、地方公務員でも、試験を受けるのに資格が要るのです。私きょう人事院の規則を調べてみたけれども、任用資格というものは何にも書かれてないようです。ですけれども、現実には新卒の者であるとか、あるいは一年間くらいの浪人程度の人しか今採用しないわけです。そうすると、身体障害者の場合に、同格の資格と同格の試験ということになってきた場合に、幾ら割当をお作りになってもこれは採用されないんじゃないだろうか、こういう気がするんですが、その点どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/11
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012・堀秀夫
○堀政府委員 官公庁等におきます採用につきましては、御承知のように、一定の資格を持つ公務員につきましては試験制度があるわけでございます。ただ、事実上の事務補助員的なものにつきましては必ずしも試験は要らないということになっております。われわれといたしましては、官公庁において常時雇用するという形で、身体障害者の雇用率は一・五%程度にしてもらうということが必要である、数にいたしまして約二万三千人程度を増加させたいと思っておるわけでございます。この形は、今のような試験を受けて入る公務員もありますし、それから試験がなくて採用される公務員もあるわけでございます。試験の要るものにつきましては、われわれの考え方は、身体障害者なるがゆえをもっての差別は絶対にさせないという基本観念でございます。ただし、一般の人よりもその資格をはずして優先的に採るということは試験については考えておりません。やはり身体障害者の方でありましても、試験制度がありますものについては試験を受けていただくことが必要であると思います。その試験に合格しなければいけない。ただ、その試験というものが、身体障害者では不利になるような試験ではいけないわけでございます。身体障害者と一般の人と差別しないような試験を実施することが必要である。その結果試験に合格した場合には、身体障害者と一般人とは全然区別せず、しかもその割当雇用比率に達するように身体障害者というものを採用してもらうということが必要である。ただ繰り返して申しますが、試験につきましてはやはり受けていただく、こういう考え方でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/12
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013・本島百合子
○本島委員 そうしますと、今の試験を受けない人というのは身分的に臨時雇いか何かになるのですか。それでさっきも言いましたように、転職希望者が非常に多いということは、身分が安定してないから不安を持っているという、そういう心理が強く動いていると思うのです。せっかく役所で使って下さっても、やはり臨時職員というと三ヵ月で切りかえてしまう。雇用は継続的に今あまりしないと思うのですが、そういう点はどうなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/13
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014・堀秀夫
○堀政府委員 公務員の制度の問題につきましては、根本的に検討を要する問題がいろいろございます。これについては内閣全体でただいま検討しておる段階でございます。その検討が済みました上で根本的な改善をしなければならないと考えますが、現在のところでは、今のような事務補助員的なものでありましても、事実上は継続して雇用されておる方が御承知のように非常に多いわけでございます。そういうような方々につきましては、一般の事務員程度の方でございまして、これはわれわれ聞いてみましても、決してそのために転職、追加就業を、希望するというようなことはございません。事実上、やはり引き続いて雇われておられる方につきましては、身分、形式が不安定だから、追加就業もしくは転職を希望するというようなことは出ておりません。われわれといたしましてはそれがほんとうの臨時職員では困るわけで、やはり引き続いて雇用されるという形で雇用率を達成してもらうことが必要であると思います。国家公務員制度の今のようなあり方が適当かどうかという点については、いろいろ問題がございます。これは内閣全体として根本的に検討をしておりますから、その際身体障害者を今度どういうふうにするかということについては、それとあわせてまた検討したいと思います。われわれ現在のところは、今の制度にあわせましてただいまのような考え方でおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/14
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015・本島百合子
○本島委員 今の御答弁は、役所がルールを破る見本みたいな気がするのです。今臨時職員なんというものは三月以上ということは絶対許されていないはずです。それから定員法があって、定員で押えられておるというような形ですから、そうしますと今言われた成規の試験を受けないで入っている人たちというのは非常に不安定だということははっきりしておると思う。それからもう一つは、給与が臨職の方は日雇い労務者よりも、国家公務員でも地方公務員でも低いはずです。大学を出ていらっしゃっても七、八千円くらいじゃないでしょうか。そうします、と、この線でもやはり、官公庁が垂範をいたしますと、こうおっしゃるのですけれども、そういうところにはめ込んでいくと、さっき言った零細業者の中に入って、労働条件の悪い、賃金の悪い体系の中で働く者が多い、それと同じような形のところへまた役所がやる、こういう気がいたしますが、そういう点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/15
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016・堀秀夫
○堀政府委員 官公庁につきまして、その採用について試験が要るというものにつきましては、やはり試験は受けていただかなければならないわけでございます。ただいろいろなハンディキャップを考えまして、なかなか受けられないというような点もあると思います。これは事実問題としてあると思います。私どもはそこでいろいろな方から御意見も伺ったわけでございますが、簡易な講習制度というようなものも今後設けまして、そうしてその試験を受けて成規の資格になってもらうことを促進する、われわれとしてもそういうようなことをこの法案とあわせて実施していきたいと考えておるわけでございます。要するに官公庁におきましては、一般の健康者と身体障害者とは、身体障害者なるがゆえをもって差別待遇をすることは絶対にしないという基本観念で率先垂範することが必要であると考え、それを積極的に実施していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/16
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017・本島百合子
○本島委員 さっきから私がくどいように聞くのは、身体障害者というものが日の当たる産業、恵まれた場所、こういうところで働いていなかった。だから九万人からの転職希望者もあるわけだし、現実に働くところもないという人たちがあるのでしょうから、今回の雇用促進ではそういう点の差をなくしてもらたい、それが願いで言うわけです。しかも官公庁で多くをとっていかなければ、民間へとれ、とれといったって、なかなかとりはしないという心配があると思うから、くどいように聞くわけです。
そうしますと、大体新卒で成規の資格がある人は試験を受けて入られる、そうでない者は事務補助あるいは用務員というのですか、そういう形において一・五%程度やりたいという御希望ですから、それだけを補っていくという、こういう考え方ですか。正規の職員にはなかなかなれないのですよ、一般の人でも試験はむずかしいのですから。そういう意味でいけば、結論的に官公庁がそれだけの割当で採用していきたいという御希望なんだから、そうすると、どうしてもそういう正規の職員でない形の人がうんとここに出てくるということを感ずるわけです。だからそういう点で、明確に身分の保障ということ、それから随時昇給もあるんだ、それから年をとれば家族手当もこうこうだ、一般の臨時職員のような形における待遇でない、そういう保障があるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/17
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018・堀秀夫
○堀政府委員 国家公務員につきましては、われわれは今のような不規則な形におきまする職員を正式の職員に切りかえていくという方向で検討しなければならないと考えております。ただこれは一般の人についてはいろいろな問題があります。現在の試験を受けること自体が、一般の人についても非常にむずかしいことは御指摘の通りであります。制度の問題についてはわれわれは今後根本的に検討をして、その国家公務員制度の根本的検討とあわせて身体障害者の問題も解決していかないといけない、このように考えておりますけれども、今のような情勢で、現状におきましては、われわれは一方においてこの試験を受けやすくするというために、身体障害者等については、あるいは特別の講習というようなものを設けるという考え方をとる、その方面の促進をしていきたい。それから試験に受かれば、とにかく身体障害者というものは官公庁もこの雇用比率が設定されるわけでございまして、それを達成することに努力するわけでございますから、身体障害者の人が相当採用されるということが出てくると思います。それとあわせまして、事務補助員的なものにつきましても、これが常時雇用されるような形態の者については、身体障害者をなるべく多く入れていくのとあわせまして、雇用比率を達成させていくという方向に考えを進めていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/18
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019・本島百合子
○本島委員 今官公庁の話をしたのですが、民間の方で、この間の新聞に出ていたのをちょっと要約してみたのですが、大体給与体系を確立してない事業所、そういうものが零細業者の中に二割七分もある。家族手当を出しておるのは三分の一しかないという状態である。それから失業保険なんかかけてないところがある。大体が十五人以下の弱小企業体、こういうことになっておったようですが、そうしますと、身体障害者が多く働いておったのは、民間ではこういうところに多かった。今度は官庁公の方で相当のパーセンテージで、現在の倍にするといわれますから、倍にする限りにおいては、今の点を是正して、身分の安定と賃金の安定を考えてやらなければ、こういう零細業者に行っておる身体障害者と何ら変わるところがないじゃないか。入ったらすぐ出たくなるということにもなるのじゃないか、こういうことになるわけだと思うのです。ですからこの法律文を読んで見まして、これは大臣に承りたいのですが、最初に質問したいのは、これは強制義務でないためにこういう文章になっているかもしれませんが、非常に文章があいまいになっておるようです。たとえば十四条のところでも「命ずることができる。」などということになっているし、3でも「勧告することができる。」となっている。文章を全体的に見ていると全部そうなっている。どこか責任のがれをしているという感じがするのです。最初に言われたように、義務制でない、罰則規定もない、そういうものであるからこういうふうにやわらかくしたのだと言われても、私どもが受け取る感じからは、何だかこういう法律を作らなければならないから作ったのだということでのかれているという気がしてならないのですが、この点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/19
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020・松野頼三
○松野国務大臣 雇用の法律及び労働問題の雇用関係で、強制を与えているものは一つもありません。やはり雇用の自由の原則ということを貫いておりますので、強制的に与えているものはございません。ただ事業法の中には事業のためにございますもの——ここは社会労働委員会ですが、かりに言うならば、薬剤店を開く場合には薬剤師を置かなければならぬ。これは事業の特殊性から薬剤師というものを置かなければならぬのであって、それは別に雇用の問題ではございません。雇用関係の日本の法律すべてにおいて、強制的にしているものは一件もございません。従ってその原理原則のもと、今日の憲法下においての雇用促進はこれが限度だと存じます。一番はっきりしておりますものは、失対労務者を何パーセント雇わなければならない、これも一つの基準を示しております。そういうものが次に強い法律で、その他にはないのです。従って雇用者を雇い入れなければいけないときめるのは非常に無理なところがある。同時に、今日の雇用形態がすべてそういう慣習と状況じゃない。受け入れ側の立場も考えませんと、ここにいきなり何パーセント雇えと義務づけることは非常にむずかしいのではなかろうか。また義務違反をしたときには罰則を適用するといっても、雇用条件の賃金までは罰則を適用できません。そうしてみると、こういうふうに義務として雇わなければ罰するといってみても、それじゃ賃金はどうだということになると、賃金の決定までは今日の法律ではできない。いろいろ考えますと無理なところが出てくるのです。従って今回は、今まで道の開けていなかったワクをまず求める。そのワクというのは、雇用の幅をここで与え、それに応ずる諸般のものを総合的に、適応訓練するとか、業種を指定するとか、そういうことでワクをずっときめていくということから始めることが現実に合うのじゃなかろうか、こういう意味でありまして、すべての日本の法律は特に義務づけたものはないのです。また義務づけてはたして実行できるかどうか、先々を考えますと、それが雇われる者あるいは雇う者の幸福かといえばそうでもないのです。従って今回はっきり、それならば何人雇え、賃金は幾ら払え、仕事はこういうものを与えろ、こうすれば、あるいはそういうものが出てくるかもしれません。しかし日本の現状ではそういうことはできない。またそういうものはございません。従って身体障害者の今日の立場は、今までワクがなかった、まず雇用の幅を与えることが大前提だ、その他においてはいろいろな問題を総合的に考えるべきだという意味でいろいろな問題が書いてあるわけです。適応訓練、あるいはそのためにある程度の補助金も出す、そういうことからずっとやっていく、総合的に、やはり日本の慣習の上からやっていくべきではなかろうかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/20
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021・本島百合子
○本島委員 そうしますと、私ばかりじゃないと思うのですが、何となく不安な気がするのです。ということは、もう一度さっきの採用のときの話に返りますが、過日、どこの入社試験でも内規みたいなものがあって、身長が幾らなければならぬとか、目はどうだとかいうように規定づけられております。たとえば学校の先生なんかでも、身体障害者であっても学校の先生になれる資格のある人はずいぶんあると思うのです。ところが障害者であるということで採用されていない。それはどういうわけたということを確かめましたが、東京都の場合は身体検査の基準というものがあって、胸部疾患はだめだとか、あるいは容貌の怪異な者はいかぬ——私みたいな者はみんないけないかもしれません。あるいは神経系統の者はいかぬとか、視力が〇・七以下はいかぬ、色盲はためだ、こういうことになっているのです。学校の先生というものに対してなぜこれたけの基準をはめるのだ、地方と比較してどうなんだと聞いたら、東京都は一番志望者が多いから厳格かもしれませんが、全部大なり小なりこういうものできめてある、こう言うのです。学校の先生というものは、教育指導力があればいいわけなんですから、そうした場合にどうして身障ということで差別をつけられなければならないか、これはどういうわけたと聞いたら、非常時の場合、何か災害が起こった場合に児童を救うことができない、みずからができないからだ、こう言うから、これはおかしいと言ったのです。当然身障者の中でも適職の方はあるのだから、そういう方々には率先してなってもらう方がいいのだ、多角的な職場よりは、むしろこういう頭脳労働者としてりっぱに果たせるわけなんだからいいんじゃないか、こういうことを言ってみたのですが、まずだめなんです。先生方ばかりでなくて、どうしてもはずされる職業がだいぶあるようです。こちらでもそういう職業に対しては特に割当をきめてどうこうするなんということが書いてあるようですけれども、こういう場合どうなさいますですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/21
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022・松野頼三
○松野国務大臣 既存のものはすべて身体障害者なら入れないような、どっちかと言うと門を締めておるわけであります。今回この法律ができますと、各省各庁に当たりまして、その仕事の内容の中においても、身体障害者でも雇えるものがあるじゃないかという話を、労働大臣及びこの法律に基づいて、いたします。そうすればおのずから何らかの道が開けてくるのではないか。それは身体障害者といいましても、いろいろな身体障害者がおられる。手の不自由な方もおられるだろう、足の不自由な方もおられるだろう、目の不自由な方もおられるだろう、そういうものを当てはめて、職種別に考えるならば、おのずから——かりに教員といわれましても、教壇の中におのずからやはりいろいろな先生がおられる。家事の先生もおられれば体操の先生もおられるだろう、あるいは社会科の先生もおられるだろう、それに適応するような、職種に応ずるようなものを今回はこの法律に基づいて各省別にずっと削り出していけるわけであります。それかなければ、おっしゃるように教員という身分、今日の、何かによって閉ざされておる門、それが今回開かれる、こういうことをこの法律はねらっておるわけであります。従って、これはいろいろな御議論があり、受け入れる方の方も議論がありましょう。しかしこの法律成立後は、この法律に基づいて、精神に応じて、各受け入れ方とも十分交渉ができて身体障害者雇用の基準をきめさせるということができればこの法律の大きな前進であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/22
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023・本島百合子
○本島委員 そうしますと、今回の新規採用の場合には間に合わなかったが、来年度からはということになるのでしょうから、大体のプランがおありになると思うのです。そういう職種上閉ざされた門が非常に多かったと思うのですが、こういう点はこういうふうで、こういう点はこういうふうで、大体こういうものでいけるという確信がおありになる点がありましたらお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/23
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024・松野頼三
○松野国務大臣 こういう場合は、さっそく来年からこの法律を実施いたします。しかしいろいろな場面で長期的にわたるものもございます。かりに言うならば、養成所に入らなければ資格を得られないという方は、まず養成所に入ることが先決問題だということもありましょう。従って来年から全部一ぺんにできるとは私は思いません。しかし資格のない方は資格を取得するもとの方から身体障害者の方を養成しなければならぬ、そういう方は時期がかかるかもしれない。あるいは資格を持っている方ならいいじゃないかという場面が出て参ります。従ってこの実施は、この法律ができますと三十六年から実施できると思っております。全部一ぺんにやれるか、それはその職種々々に応じて資格のための講習年限が要るというようなものは年次別にやらなければいけない。一ぺんにできるかできないかということは、法律が通ってから初めてこの問題と取り組みますので、教員の場合はどうか、資格のある方がおられるなら来年から実施できるでしょう、その方は。しかし養成をしなければならぬというものは、身体障害者の養成所に入るという期間も考えなければならない、そういうことで、年次別になるものもございます。一ぺんにできるものもございましょう。これはその職種々々に応じてやらなければならないことだと私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/24
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025・本島百合子
○本島委員 それでは法文について少しお尋ねいたしますが、適応訓練については、これまた新しい制度だとおっしゃって、当初は五百人とする。そうして一人に五千二百五十円ですか、それを出す。それから身障者に対しては一カ月千円を出す、そうして大体六カ月の訓練を委託する、こういうふうに説明されたと思うのでありますが、この場合にこのお金は当人にいくわけではないのですね。当人にいく分は千円だけでしょう。五千二百五十円というのは事業主の方にいくのですね。そうしますと、事業主はこれをもらって何をするのでしょう。お宅のプランを聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/25
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026・堀秀夫
○堀政府委員 法律の形式は、ただいま先生が言われましたように、事業主に委託して実施するということになっております。その際に適応訓練を実施するための補助といたしまして、国が半分、都道府県が半分ずつ負担しまして、一人一ヵ月五千二百五十円を補助する。それから手当といたしまして、直接身体障害者の本人の方には一人月に千円というものをお渡しするという考え方でございます。従いまして、この五千二百五十円というのは、事業主が身体障害者を受け入れまして、それに対して標準的な職場環境に適応させるための訓練を六ヵ月にわたって行なうわけでございますから、このための施設の整備、あるいは指導員等に要する費用に充てられるわけでございます。ただ実際問題といたしましては、われわれは次のように考えております。すなわち適応訓練と申しましても、最初の一ヵ月くらいは労働の成果は上がらないわけでありますけれども、六ヵ月もやっておりますと、二ヵ月目くらいからは労働の成果というものも、やはり事業主に対して出てくるわけでございます。従いまして、事業主の方から身体障害者に対しまして、やはりそれに対応するだけの報酬を支払っていくということは当然予想されるわけでございます。われわれといたしましては、この法案が通りましたならば、審議会をすぐ設けることになっておりますから、この点を審議会等にお諮りして、委託する条件として、条件をどのようなことにするかということについて、御審議を願ってやっていきたいと思っておりますけれども、これは直接国、都道府県の方から渡される一人千円のほかに、事業主の方からも事実上の報酬が本人に対して渡されますように、われわれとしてはそういう点について適当と認められるような基準をきめまして、その基準に合致するような事業主を選んで、それに対して適応訓練を委託する、こういうような形でやって参りたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/26
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027・本島百合子
○本島委員 その場合に、受けた事業主が、その人の身障に合わせて機械なり何なりを働けるように直さなければならないだろうと思うのです。こういう費用はこの金で見てくれ、こういうことですか。もしかすると、こんなものではやれない場合もあるのじゃないかという気がするのですけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/27
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028・堀秀夫
○堀政府委員 お話しのようにいろいろな道具の整備等をやってもらうことが必要でございますから、今のような補助を行なうという考えでございます。しかしそれではやれない、もっと大規模な整備を行なわなければいけないというような事業場もあると思います。そういうようなところは不適格ではないかと思います。われわれとしては、このような補助を受けまして身体障害者にこの適応訓練を六ヵ月やりまして、それからさらに、われわれの考え方としては、事実問題として、その事業場で六ヵ月適応訓練が済んだ後におきましても、引き続いて雇用してもらうというようなことが期待できるような事業場に委託したいと思っております。長い目で見ますと、長期にわたってずっと使っていけば、最初は多少費用がかかっても、あとになってやはり事業主にとってもプラスになるという面が出てくると思いますので、そういうような点を勘案いたしまして、今のようなことでやれるような事業場を選定して参りたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/28
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029・本島百合子
○本島委員 これは二分の一国庫負担のようですが、都道府県で赤字財政のところでは、母子福祉貸付金でさえも返上をされるというようなところがかなりあるのです。これだけ見ていけば、五百人なんですから各県に割っても十人そこそこだ、こういうことになるので、わずかの金じゃないかと言われるのですか、いろいろなことで負担率というものがきめられて出させられているのです。そうしますと、大体こういう法案が通って、お前の県で何名というふうにしないかと言ったときに、県はやすやすと受けるでしょうか、その点どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/29
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030・堀秀夫
○堀政府委員 さしあたり本年度におきましては、これは支障なく実施できると考えております。ただわれわれといたしましても、さらに適応訓練の規模、それから人員等もだんだんと拡充して参りたいと考えております。将来の問題としては、大規模になっていきますれば、今のような御懸念の点も出てくるところがあると思います。従いましてわれわれといたしましては、まず本年度テスト・ケース的にこれを始めるわけでございまするから、この実施状況を見まして、それから自治庁等とも必要があればさらに相談をいたしまして、今のような御懸念のないようにいたしまして、この適応訓練というものの実施を見ながら、さらに拡充発展していけるように、各官庁との間で密接に連絡をとりまして、相談をして参りたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/30
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031・本島百合子
○本島委員 もう一点お聞きいたしますが、たまに補導所なんかへ行って感じるのですが、かりに身体障害者で手が片一方ない。しかし何かちょっとした機械みたいな、そういうものを使えはできる人かある。そうしますと、本人の器具も必要なわけです。それから機械も左とか右とかで合うとか合わないとかということになってくると思う。その場合に本人のものを直すのはどういうふうにされるのですか。多少の手を加えてやれば、こういう簡単な仕事はできるんだという面があると思うのですが、そういう場合に本人に対しては、千円ではどうにもならないと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/31
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032・堀秀夫
○堀政府委員 それはこの法案を実施いたしまするときに審議会でいろいろその実行方法を御検討願って、それに基づいて実施したいと思っておりますか、厚生省その他の関係官庁の方もこの審議会には入ってもらう予定になっております。そうして身体障害者福祉法等の補助具の支給等の制度もございます。またわれわれ労働者の力でも、あるいは労災関係の福祉施設等におきましても補助呉の支給というようなこともできることになっております。それらの制度もあわせて活用いたしまして、所得がないような方について、金がないためにせっかく用意された制度も利用できないというようなことのないように、われわれとしては今のような制度をからみ合わせまして、活用して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/32
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033・永山忠則
○永山委員長 午後二時まで休憩いたします。
午後零時三十分休憩
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午後二時二十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/33
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034・永山忠則
○永山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
休憩前の質疑を続行いたします。本島百合子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/34
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035・本島百合子
○本島委員 私が適応訓練を先に聞いたのは、その前にある四条のところに、職業安定所は「その作業の環境に適応させるため必要な指導を行なうことができる。」となっている。この場合の指導はどういうことをなさるのかということと、五条に「身体障害者の雇用に関する技術的事項について助言することができる」。となっているのですが、この点はどういうことをなさるのか。このあとの適応訓練と関連をして、この前の方はどういうものであるのか、こういうことを具体的に説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/35
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036・堀秀夫
○堀政府委員 第四条の就職後の指導の問題でありますが、これは就職した身体障害者が作業環境に適応しておるかどうかを確めて、必要がある場合には身体障害者に対していろいろな心理的あるいは肉体的に不安定をもたらしておる原因を除去するための相談に応ずる。あるいはそのいろいろな原因がある場合には、医師等の診断を受けるとか、あるいは福祉事務所等と相談していろいろな助言を行なうとか、あるいは雇用主の協力を得まして身体障害者が就労するにあたっての注意を与えるというような措置を、その就職後においても行ないたいと考えておるわけでございます。それから五条の技術的事項と申しますのは、雇用主に対しまして、障害者を雇用するにあたっての能力検査をどのようにすることが適当であるか、あるいは作業配置についてはどのようなことを行なうのが適当であるか、あるいは作業の標準動作、あるいは作業設備の改善、補助具の使用というような、身体障害者を適職につけましてその能率を発揮してもらうために必要な技術的事項につきまして、雇用主に対して相談に応じ、助言を行なう、こういうことを行なおうという考え方でございます。この四条、五条は、一般的にこのような考え方で参るわけでございますが、特に第三章として適応訓練という章を設けましたのは、これは今のような一般的なそのときに応じての助言あるいは指導ということだけでは十分でないので、やはり半年くらいかけまして、専門の人に頼みまして、作業環境に適応させるための基礎的な計画的な適応訓練をみっちり行なうことが必要であると認められるような方につきましては、特に適応訓練という計画を設けて事業主に委託して実施してもらおう、それで六カ月くらいかかって作業環境に適応させる条件を作っていこうという考え方がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/36
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037・本島百合子
○本島委員 現在、職業補導所というのでしょうか、そういうような身体障害者を特に補導していられるのは全国に八カ所あると聞いたのですが、その中に現に千百八十名くらいいらっしゃる。そうしてこういう人たちは今度の法律に基づいてやはり外へ出していくという形をとるわけでしょう。この人たちの訓練期間は大体国で見ていられると思うのですが、全然有料の方もあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/37
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038・堀秀夫
○堀政府委員 現在職業訓練所は各地にございまして、全体で約五万一千名、本年度におきましてはさらにこれを拡充して五万七千名くらいにする予定でございますが、これは一般的なものを入れましての話でございます。そこで一般の職業訓練所におきましても身体障害者の方をなるべく入ってもらうようにしたいと思っております。その中で特に身体障害者専門の職業訓練所は御指摘のように八ヵ所ございまして約千百名程度収容することになっております。これは訓練を約一年間のコースを設定いたしまして無料で行なうことにいたしております。それから必要に応じて手当等の支給もできることになっております。大体の考え方といたしましては、基礎的な身体障害者に対する職業訓練は職業訓練所の方で行ないます。それからこちらの適応訓練というのはそうではなくて、もう民間の事業所にとにかく就職できるという段階であるけれども、やはりそれになれるまでに若干の期間が要るというような方を、定着をよくするという目的で事業主に委託して実施していこうというわけでございまして、今の一般の職業訓練それから身体障害者特別の職業訓練所それから事業主に委託して行なう適応訓練、これをからみ合わせて実施して参りたい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/38
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039・本島百合子
○本島委員 そうしますとこういうものが二種類あるわけですね。二十三条で「調査、研究及び資料の整備に努めるものとする。」こうなっているのですが、この方は一体何をなさるのでしょうか。こういう作業設備、作業補助具の研究施設というようなものが民間では今一つあると聞いておるのですけれども、政府機関ではそういうものがない。そうするとこの二十三条でなさろうとするものは一体何だろうか、こういうふうに感ずるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/39
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040・堀秀夫
○堀政府委員 二十三条でこのようなことをきめましたのは、労使その他の関係者に対しまして身体障害者に適当な職業、作業設備、作業補助具その他の問題について政府としては権威のある資料を整備し、それから調査、研究を行なって関係者に対する相談指導を実施して参りたいということを考えたわけでございます。現在東京、大阪に職業適性相談所というものがそれぞれ一ヵ所ずつございます。これらの機関等にも委託して実施して参りたい。それからあるいは労働省の付属で労働衛生研究所のようなものもございます。それから産業安全研究所というものもあります。これらのところでそれぞれの専門事項に応じましていろいろな調査、研究をやっておりますが、これらの研究所等にも委託いたしまして、身体障害者に適当な職種はどのようなものがある、あるいはそれを作業させる場合にあたって、作業設備についてはどのような方法を講じたら適当であるか、作業補助具については適当なものがどのようなものがあるかというようなことにつきましては、なるべく権威のある、関係者にとってたよりになるような資料を整備いたしまして、そしてこれを求めに応じまして相談に応じあるいは指導をしていくという考え方をとって参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/40
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041・本島百合子
○本島委員 そうしますと個々の機関で、たとえば特殊な身体障害者の場合には相当の訓練をしなければならぬ、それに装備もしなければならぬ、そういうものが今言われたような場所で研究して作られていき、それを本人に与え、職業訓練の場合にそれをすぐ適用させていく、こういう形に持っていく考えがこの二十三条できめられた場所だということになるのですか。これは一体予算はどのくらいあって、どの程度のものができるようになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/41
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042・堀秀夫
○堀政府委員 本年度は当初のことでありますのでまだ不十分でございますが、この関係で大体百万円程度の予算を計上しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/42
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043・本島百合子
○本島委員 百万円で大体どんなことができるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/43
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044・堀秀夫
○堀政府委員 これにつきましては、初年度といたしましては、上肢それから下肢の不自由な方に対しまするところの作業補助具、これはどのようなものが適当であるかという点について専門的な研究をお願いして、これが適当であるというものをきめていきたいと思っております。なおそのほかに、本法案が成立いたしましたならば、さっそく審議会を開きまして、その御意見を聞いていろいろ実施して参りたいと思っておるわけでございますが、それらの御意見によりまして、さらにこういうことを検討したらいいじゃないかという問題がありましたならばそれも入れて参りたい。この関係についてはわれわれは今後もさらに拡充して参りたい考えでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/44
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045・本島百合子
○本島委員 そうしますと今度の予算で職業安定所の職員が百名増加になった、その百名増加になられた職員の方というのは主としてこの法案に基づく仕事をなさる方でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/45
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046・堀秀夫
○堀政府委員 今回の予算では一般職員の増員のほかに、職業安定協力員の制度ができました。全国で約二千人程度を協力員として安定所において御委嘱申し上げていく予定でございます。これらは一般的に職業安定行政の拡充のためにお願いしたいと思っておるのでございますが、新しい仕事でございまするので、これらの増員になります方の相当部分をやはり身体障害者の関係で御委嘱申し上げるようにしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/46
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047・本島百合子
○本島委員 私は百名ばかり特別にこういう関係の方で採用されたというふうにこの前聞いた気がしたのですけれども、そうじゃないのですか。今言われた二千名の中で操作するということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/47
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048・堀秀夫
○堀政府委員 百名という数字につきましてあるいは申し上げたかもしれませんが、正確に申し上げますると、増員については、大体五、六十人程度を職員として増員しております。しかしこれは一般的な問題として増員しておるわけです。それから職業紹介官を、これは待遇をよくしまして、窓口に知識と経験に富んだ職員の方がつけるような体制を設けていきたいということで、五百名職業紹介官というものを格づけして参るための制度を実施したいと考えております。そのほかに民間等におきまして職業安定に関して知識、経験、熱意のある方が全国で二千名、これは身体障害者のためということではございませんが、職業安定行政に協力を求めるという意味で、全国で二千人の力を御委嘱申し上げたいと思っております。このうちの相当部分の方は、身体障害者の関係について知識、経験、熱意を持っておられる方の適任者を御委嘱申し上げるようにして参りたい考えでおります、。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/48
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049・本島百合子
○本島委員 今の御発表でいくと、法案に基づくこういう特殊な人々のための特別な窓口というのはないわけですね。私ども考えてみますと、従来の職業安定所なんかに行くと、ごった返しで、われわれが行っても神経質になりそうな気がするのです。そういうところにからだの悪い身障者の方々がおいでなったときに、それに専門に当たって下さる方がないということですと、これは大へんなことじゃないかと思う。そういう思いやりのある措置というものはできないものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/49
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050・堀秀夫
○堀政府委員 これは安定所の場所によっても違いますが、私のただいまの考え方としては、身体障害者——対象になる方が相当おられるようなところにつきましてはぜひ専門的な窓口を作って参りたい。今東京でも、たとえば飯田橋というような大きなところでは専門的にいろいろ御相談に応じて、専用の窓口を作っております。これに準じまして、身体障害者について専用の窓口というものを重点的に置きまして、親身になって御相談に応ずることができるような態勢をぜひ作りたい考えでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/50
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051・本島百合子
○本島委員 大体私もこの程度にいたしますが、先ほどから大臣がいらっしゃるときにも申し上げたように、この雇用率をきめていく、作成しなければならない、こうなっておるのですが、さてそれを大企業に持っていく気持であるのか。それとも先ほどは何か中小企業の方にというようなことを言われたような気がするのですが、身障者の能力からいえば、大企業体で分業になっている方が、多角経営的な仕事でない面の方がその人の能力に適応していくような気がするのです。そういう点で、もしこちらが作成なさるときに、大工場に対して、お宅は二名なら二名、五名なら五名、こうしてくれないか、こう言われたときに、向こうがすなおに受けるでしょうか。その受けるという見通しはありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/51
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052・堀秀夫
○堀政府委員 これは現状から見ましても、大企業における身体障害者の雇用率というものは高くない。むしろ十人未満くらいのところが雇用率は非常に高いという状況なのです。やはり大企業は求人するにあたりましてのえり好みというようなものがあるような気がするわけです。現に五百人以上の事業場では〇・七%程度、それから百人から四百九十九人の事業場では〇・五二%程度の低い率になっております。われわれはこの法案を実施するにあたりましては、これらの大企業におきまして適職というものは相当あると考えるものでございます。ぜひこの方面に身体障害者の方々が雇用されるように持って参りたい。そのため必要がありますときには、必要に応じまして身体障害者の雇い入れ、採用計画、これを命令することができるごとになっておりますが、この方法も活用いたしまして、それと同時にわれわれはこの法案が通りましたならば経営者団体にも強く呼びかけまして、そうして大企業において身体障害者を適職につかせるようにぜひ協力を求めて参りたい。法案の実施の面と、それから今のような一つの国民運動的な形で機運を盛り上げていく、両々相待ちまして私は大企業の適職に身体障害者の方の雇用が促進されるような態勢を積極的に盛り上げて参りたい、このような考えでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/52
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053・本島百合子
○本島委員 その計画で促進される雇用は今言われたようなことでいいかもしれませんが、今度は入った人が解雇される場合があり得るのじゃないか。働く方にしても、いい職場であればあるほどそういう不安を持つと思うのですが、解雇制限の規定というようなものはない。それからさっきも罰則はつけない方がいいんだというようなことを言われたのですが、そういうような問題が起こってきた場合はどうなさる。雇うだけ雇ったが、あまりうまくなかったということで何となく働きづらくなってきたというような場合が起こると思う。そういう場合はどうなさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/53
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054・堀秀夫
○堀政府委員 これにつきましては二つの面があると思います。一つは、身体障害者を適職に配置するという方面の研究が不十分でありますために、せっかく職業を得ましても必ずしも適職につけない。それからもう一つは、身体障害者の方でもそれに応ずるだけの準備態勢ができておらない。その方面の心がまえが不十分であるということのために非常に不安定になるという問題が出てくると思います。これらの面につきましては、労働省が中心になりまして関係者に呼びかけて、今の適職の問題、それから作業環境の問題、作業設備の問題、それらの問題について積極的に関係者を啓蒙して参る。それと同時に適応訓練それから一般の職業訓練等を活用いたしまして、作業環境に適応するような態勢を作って参りたいと考えております。
それから第二の問題といたしまして、何か身体障害者に対して偏見を持って、この人たちに対して一般の人間と違った待遇なり、取り扱いをする、このために不安定になるという面が出てくると思います。これは身体障害者福祉法にもありますように、身体障害者なるがゆえをもっての差別的取り扱いは法律をもっても禁ぜられておるところでありますから、われわれはこの就職後の指導におきましても、身体障害者なるのゆえをもっての差別待遇はしないという方向で、関係者を厳重に指導して参りたい。要するに、これは単に法律だけでもってできる問題ではなくて、先ほど私が申し上げたように、身体障害者に対して偏見を持たず、適職に身体障害者を使っていこう、こういう考え方を特に事業主が持つ、この考え方が各方面に浸透することが最も大事なことであると考えますので、私どもといたしましては、この法律が成立いたしました機会に、このような考え方を事業主団体に広く行き渡らせるためにPR活動を強力に推し進めて参りたい考えでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/54
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055・本島百合子
○本島委員 身体障害者の勤続平均は、大体一年か一年半くらいだというふうに報告されたような記憶を持っておるのですが、そうじゃなかったでしょうか。何か非常に短いと思うのです。これは、最初に申しましたように、大産業あるいは官公庁というところの雇用率がうまくなかった、そこで零細業者の方へ行ったから自然そういう形が出てきたのだろうと思う。この法律ができたということは、そういうことがないということが先決問題じゃないかと思うのです。何といっても身分の安定ということが一番望ましいことであるし、その身分の安定と同時に、賃金が一般の労働者と二五%も開きがあるというようなこと、こういう点などについて是正していかなければならぬだろうと思います。そのためには、やはり国が相当のバック・アップをして、医学的な改善をし、それから技術的な面で相当の訓練をすれば、単純な労務であればかなりやっていけるということが医学的に立証されておる今日ですから、そういう面では、雇用の計画をなさるときに相手方、雇用主に対して相当の協力といいますか、むしろ強制に近いくらいの折衝がなければ、将来とも不幸が起こってくるのではないか、こういう気がしますが、そういう点で、各職安の所長さんあたりが雇用促進をなさるときにできるでしょうか。それで現在考えていらっしゃる——先ほども聞いて御答弁がなかったようですが、現在一体どういう線をねらってなさろうとしておられるのか、ある程度のプランがあるのではないかと思うのでありますが、その点はどうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/55
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056・堀秀夫
○堀政府委員 計画の作成につきましては、これはやはり産業、それから職種に応じまして、いろいろな速いが出て参ると思います。われわれの方でこの法案が成立いたしましたならば、さっそく各方面の権威者を集めまして、あるいは労働者関係、使用者の関係、身体障害者の関係、それから専門の技術的あるいは医学的な知識を持っておられる方々にお集まり願いまして、これらの御意見を伺った上で、政令等によりまして指定して参りたいと考えておるわけであります。
そこでこの身体障害者が適職を得た場合においても、やはり安定性がないというお話であります。これはある程度事実でございます。これは先ほど申し上げました技術的な面についての研究が関係者にまだ十分行なわれていないということ、それから何か身体障害者に対する偏見がまだ残っておるという事実が相待って今のような結果になっておると思うわけでありますけれども、この法律ができまして、特別に就職後の指導その他関係者に対する援助指導というような面についての根拠規定も出て参ったことでございますから、各職業安定所長に対しましても、私は今先生の言われましたような気分で関係者に対して十分啓蒙を行なうように指示する考えでございます。
なお御参考までに申し上げますと、一般の雇用希望者につきましては求職のカードを職安へ出させまして、それによって就職あっせんをするわけでございますが、これらは大体三年程度で廃棄する予定になっておるわけであります。しかし身体障害者につきましては、われわれは任意登録制度というものを従来もテスト・ケース的に実施しておりますが、この際全面的に職安において実施いたしまして、身体障害者の方が求職のために職安に出てこられました場合には結納にカードに登録いたしまして、その方がどこに雇用されたか、あるいは雇用されたけれども不幸にしてまた解雇されたような場合には、全部その職安においてずっと永久的にフォローして相談にあずかれますように、永久保存というような考え方でこの任意登録制度を実施したいと思っております。そのようにいたしまして、身体障害者の方については一般の健康者と違いまして特別に取り扱い、相談については特別な配慮を設けて参りたい。このようなことによりまして、就職した後におけるところの問題につきましても、職安としては親身になって、御本人が労働市場からもう隠退されるというまでは御相談に応ずるという態勢を作って参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/56
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057・本島百合子
○本島委員 最後に私の希望ですが、この間から説明されたような雇用率をもっと引き上げるということ、それからその雇用に際して、たびたび言っているようにその身障者に適応した装具というのですか、そういうものの支給、それから雇い入れる方のいわゆる改善費、こういうものを見てやっていかなければなかなかうまくいかないだろう、雇い主の方の条件でこちらをはめていくということはできないのですから、こちらの身障者の条件にはめて向こうを探して、その方が長く勤められるという形をとらなければいけないだろう、こういうふうに考えるわけです。従って午前中、予算の面、雇用率の面、これは毎年もっとずっと上げていくつもりだと言われたのですが、ことしの追加予算か何かでとるという意思がございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/57
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058・堀秀夫
○堀政府委員 本年度におきましては、この雇用促進法の本来の関係で一千万円程度を計上しておるわけでございます。それから身体障害者の職業訓練所につきましては前年度一億三千万円程度でございましたが、今回は約五千万円を増額いたしまして、一億八千万円の予算を計上しております。初年度でございまするので、われわれとしては本年度はこの予算でやって参りたい、あとは本年度の実施状況を見まして、さらに今後身体障害者の雇用を促進するために必要な裏づけ措置というものについてはわれわれ大いに努力して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/58
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059・本島百合子
○本島委員 私がなぜこういうことを言うかと申します。と、雇用主に合わせていくわけではなくて、障害者に合わせて雇用主を探すわけですね。そうしますと、それの方にも相当費用が要るし、またそれの研究が十二分にできてない。そのためにはどうしても研究を委託されるか——先ほど大阪、京都にもあると言われたのですが、たとえば目黒の鉄道弘済会ですか、何かそれの関連しているところでやっていらっしゃる、ここは一番うまくいっているということを聞くのですけれども、そういう研究がなされておるから、鉄道弘済会あたりでは非常な高い率で身体障害者を雇っていられる。それは身障者に合わしてものを作っていく、そしてそれを働かしていく、こうなっているからうまくいっているのだ、こういうふうに聞いておるのです。そうするとやはり役所の仕事もそこまでいかなければうまくないだろう。そうするための専門的な機関は今のところないと思うのですが、どうでしょうか。それで私は、費用が相当かかってくるだろう、またかけなければうまくいかないだろう、そういう意味で追加予算をとってでもやる意思がありますかと聞いたわけなんですか、その点はどうでしょうか。うまく間に合っていかれるというお気持でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/59
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060・堀秀夫
○堀政府委員 初年度のことでございますので、本法案が成立いたしましたならば、さっそくまず関係者の最も知識、経験、熱意のある方々を選定いたしまして御委嘱申し上げて審議会を作り、これに御意見を伺って、各官庁と連絡をとりまして政令等をきめるという段取りになるわけでございます。それから委託研究につきましても、今のようなことでまず第一歩を進めていくということでございますので、まあ初年度のことでございますから、われわれとしては本年度の予算はまずこの範囲内で一つやって参りたい、それにつきましてもこの法案をなるべく早く成立さしていただきまして、われわれが準備態勢に早く取りかかれますように一つよろしくお願いしたいと思うわけでございますが、われわれとしては、第一年度としては相当増額もされた予算でございますから、この範囲でできるだけやってみたい。またその実績を見まして、来年度の予算についてはさらにわれわれ努力し、拡充して参りたい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/60
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061・本島百合子
○本島委員 イギリスやその他の例を見せていただいたわけですが、そういうところは非常に雇用率も高いし、ある程度の義務づけになっておるというようなことで、身体障害者の失業者は一人もない、こういわれておるわけですね。そういう点から見れば、今度倍にはなるけれども、その倍という中でも割合軽い人かなられて、重度障害者というのでしょうか、こういう人は置いてきぼりを食うという危険が非常にあると思うのです。ですから私どもはできるだけ将来ともそういう線で、取り残されていかれる人たちを先にやって、人生に重い十字架を背負っておる人たちがいつまでも暗いところに呻吟しないようにさしてもらいたい、これが私の希望です。
以上のようなことで質問を終わりますが、どうかこの法案が成立しました暁においては、先ほどからたびたび言っているように、日の当たらない産業で労働者としても非常に低い状態に置かれるということのないように、一般の方々よりはむしろ優遇されてよかったというような実施をやっていただきたい。今回のこのための予算というのは非常に少ないようですから、将来は十二分に予算をとって、そういう面にみんなの不安かなくなるようにがんばってもういたい、このように希望して質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/61
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062・永山忠則
○永山委員長 八田貞義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/62
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063・八田貞義
○八田委員 だいぶ同僚委員からいろいろ質問がありましたが、簡単に与党議員として問題点を質問させていただきます。
まず第一に、身障者の犀川促進法とされまして、どうして雇用安定法というようなものにされなかったか、この点ちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/63
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064・堀秀夫
○堀政府委員 雇用安定法という考え方も一つの考えであると思います。ただ先ほど大臣も申し上げましたか、雇用された後において解雇制限するというようなところまで今の労働法制のもとで踏み切ることはどうかという考え方もありまして、そこまでの規定は設けておりません。その内容の重点は、一つは雇用の比率を設定して、その雇用の比率を達成させるようにするということと、それから第二は、適応訓練というものを実施するということが大きな柱になっております。そのほかにいろいろな事項がきめてありますけれども、そういう観点からいたしまして、身体障害者の雇用の促進をはかるという方か、端的にこの内容にも沿うゆえんではないかと考えまして、雇用促進法という名前にしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/64
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065・八田貞義
○八田委員 雇用促進法についていろいろとこれから質問を進めて参りますが、この法律の内容が、現在の職業更生対策、これによる行政指導とどの点か違っておるかというのです。それから少し進歩しているか。たとえばこの行政指導を単に法文化したにすぎないのじゃないかという見方が出ておるわけですが、この点に対して私はできるなら雇用保障という面から雇用安定というようなものに進んでいかなければ、西ドイツとかイギリスあたりの立法とは非常におくれておるというような印象を受けるわけです。実態はそうなっておるわけです。そこでこの雇用促進法という法律の中で、身障者を対象にしてこれから促進していくのですが、その場合に雇用主と、それから今度は被用者になる身体障害者、それから国民と政府と、この四者のつながり、認識というものが十分でないと促進という面が出てこないわけです。ですからその面におきまして、今身障者が求めておる大きな目的の内容、それをどういうふうに当局としてはお考えになっておるか。午前の委員会では、促進法の内容はこういうふうに二つに分けて一応考えておりますというような答弁があったわけです。それをもう一度一つお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/65
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066・堀秀夫
○堀政府委員 身体障害の雇用の現状につきましては、一般の国民と比べまして、やはり失業率も高いし、それから雇用率が低いという点が最も問題であると思います。これにつきましては、私先ほども申しましたが、やはり身体障害者を適職に雇用して、その管理よろしきを得るというその知識が関係者にまだまだ欠除しておるということが第一点。それから第二点は、身体障害者というものは何かもう全然使えないものだ、使ったらロスになるので、こんな者はなるべくなら排除していきたいというような偏見が特に事業主の関係において残っておる。こういうことが大きなガンになっておるのじゃないかと思うわけでございます。そこで今回の法案におきましては、まず第一に考えましたことは、雇用比率を設定するということでございます。この雇用比率の設定につきましてはいろいろな議論があるわけであります。あるいは比率というものは法案にはっきり書いた方がいいんじゃないかというような御意見もありますが、私はこの雇用比率というものはやはり段階的に高めていく筋のものである、このように考えます。従いまして、そのために法律を直すということでなしに、やはり政令等できめていく、ただその政令をきめるにあたりましては、関係者を網羅したところの審議会に諮りまして、その御意見によってきめていく、こういうしぼりをつけてやっていけば、われわれの考えておるだんだんと発展さしていくという考え方にも沿うのではないか。その際に特に国、地方公共団体等の公共機関においては率先垂範する、こういう考え方が大事だと考えまして、雇用比率に達しさせるということを義務づけまして、また計画を作成するということも義務づけたわけでございます。それから計画作成の場合には、事前に労働大臣に協議もしくは通報するというような連絡措置も政令の中に書きたいと思って実は検討しておるわけでございます。それから民間につきましては、これは罰則をもって強制すべきであるという議論もありますけれども、現在のわが国の労働法制では、そのような例もございませんし、また私が先ほど言ったように、民間の事業主が根本的に、適当な知識を持って、身体障害者に対して偏見をなくして、積極的に受け入れようという気分を醸成することがまず大事なことであると考えまして、いたずらに罰則をもって強制するよりは、本法案のような形の程度がよいのじゃないか。ただしその場合にも、必要に応じて職業安定所長は計画の作成命令を出せることになっております。この関係でその推進の実をあげていったらいいのじゃないかと考えておるわけでございます。それか第一の柱でございます。なお、これにつけ加えまして、重要障害者に対しては適当な職種を指定いたしまして、これは特に高い比率で重度障害者に対する適職を指定して参りたいと考えております。
それから第二の柱として一般の職業訓練、これは今後さらに積極的に拡充していかなければなりませんが、それとあわせまして、本法案では身体障害者を作業環境に早く順応させるわけで、事実上委託して適応訓練を行なってもらって、事業場に定着させるというようなねらいを持ちましてこの適応訓練の制度を設けました。これが第二の柱でございます。
あとは国の義務、審議会の関係の問題などいろいろありましたが、大体以上のような基本的な考え方を持って本法案を作成したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/66
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067・八田貞義
○八田委員 身障者の対象にとられたのは福祉法の対象者と全く同じなんですね。ところが福祉法に対しまして今までいろいろと問題がありまして、たとえば結核等の内臓障害者とか神経系統の障害者というものを対象にすべきではないか、こういう議論が出ておったのです。ところがこの雇用促進法にもこういったものを除いてしまって、「身体上の欠陥がある者」というふうに規定されてしまった。そうしますと、こういった結核等の内臓障害、あるいは腎臓とか肺臓とかいう内臓障害者、神経系統の障害者というものは福祉法でも取り上げられていないのですね。ところが結核等の内臓障害であっても、十分に適応訓練をさせれば、これを雇用して仕事を進めていくことができるわけです。こういう者を対象外にされたお考えを一つお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/67
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068・堀秀夫
○堀政府委員 この法案の別表を定めるにあたりまして、いろいろ既存の制度を検討したわけであります。ただいまお話のように、身体障害者福祉法の別表、これは当然入れるという考え方でございます。なお身体障害者の福祉法に出ておりませんものでも、たとえば身体障害者福祉法では、一、二の例をあげますと、目についても両眼ともに故障がないと入らないわけでございます。それから耳についても同様なことになっております。しかし一眼あるいは一耳の障害でありましても、程度の非常に高い者は、片方が健全でありましても、やはり入れた方がいいのではないかということで、そういうものはここに入れてございます。また指の関係等につきましても、身体障害者福祉法をもう少し広げまして、大体現在の恩給法の第三款症以上の身体障害者は入れるようにしたいと考えまして、独自の別表を実は作ったわけでございます。なおその際におきまして、ただいま御指摘の内腹部臓器の障害をどうするかという点が検討の対象になったわけでございます。ところが現在までの恩給法その他の制度を検討してみますと、どうもこれをそのまま取り入れるのはやや問題があるように考えます。この関係が、一時金もしくは年金を支給するというような観点から範囲をきめてあるというような関係に基づいているものもあると思いますが、必ずしも現行のものをそのまま入れるというのも適当ではないのじゃないか。しかしただいまお話のように、内腹部臓器の障害でありましても、それが作業能力に結びついておるというものにつきましては、私どもといたしましてはやはり入れるようにした方がいいのじゃないか。ただその際におきまして、もう少し医学的な検討を十分に積みまして、そうして指定する方がいいのじゃないか。短時日の間でちょっとそれが間に合いませんでした。そこでこの別表の第五にこのような規定を設けたわけでございますが、身体障害者雇用審議会にお諮りをいたしまして、——身体障害者雇用審議会には医師の方も入っていただきます、それからそのほかの技術関係者も入っていただきまして、医学的、技術的な御検討を十分に願いました上で、均衡をとりつつこの第五号によりまして労働省令で指定できるという道を開いたわけでございます。ただいまの先生の御意見もわれわれごもっともだと思いますので、そのような考え方で第五号に基づいて審議会の御検討を得た上で、均衡を保ちつつ労働省令で追加指定し得る余地をつけてございますので、それによって措置して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/68
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069・八田貞義
○八田委員 身障者が一番願っておるものは社会復帰なんです。しかも身障者と簡単にいってみても、これを障害種別に分けると、五つの部門に分けられる。肢体障害、視力障害、聴力障害、言語機能障害、中枢神経機能障害、この五つの部門に分かれる。ところがこれをさらに発生原因とかあるいは症状固定時期、あるいは先天性、後天性などを考慮に入れて細則すると、実に三十数部門かに分かれてくる。こういうふうに三十数部門に分けられる障害者、こういった人々はそれぞれ心理曲線とかあるいは社会的、経済的条件も異なっているわけです。ですからその活動目標や要望も違っておるわけです。非常に内容は複雑であります。ところがこういったように内容複雑なものでありながら、いろいろな要望の頂点に立っておるものは社会活動への復帰だ、こう言っているわけです。ところで一体社会復帰というものが身障者の要望の頂点に立つものであるというに考えて、そうして現在を見てみますと、身障者が現在に生活しておるのだということは、その度合いにいろいろな格差があっても、何らかの形で社会活動の一端をになっておるのだ、こういう見方もできてくる。こういうふうな社会活動の一端をになっておる身障者でありながら、しかもなお社会活動への復帰を訴えるというのは、その底流に一体何があるのであろうかというと、身障者の究極の願いというのは、身体上の障害者であっても、仕事上の障害者ではないのだ、こういうところに身障者の叫びがあるわけです。すなわち職業について生活をし、社会の発展に寄与し、人格の成長を逐げるのだというほんとうの叫びがここにあるわけです。ところがこういった身障者の叫びをほんとうに具現するためには、一体どうしていけばいいのかと申しますと、身障者の更生に困難な問題というのは、職業訓練よりも社会の受け入れの問題だ、こういうふうに言いたくなるわけです。身障者も適当に配置され、適当に訓練され、そうして適当な職場に配置されるならば、たとい身体的には障害者であっても、決して仕事の上の障害者ではなくなるのだということを社会の人々に理解をしてもらわなければならない。この点が非常に欠けているのです。先ほどこういった面についてPRのことを盛んに言われましたが、こういったPRにつきましての具体的な方法ですね。はっきり言いますと、一般社会の人が身障者を非常に特別な目で見ておって、やはり仕事の上の障害者ではないというふうには見ていないのです。これをどういうふうにして今後一般社会の人々の啓蒙を行なっていくのか、具体的におっしゃっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/69
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070・堀秀夫
○堀政府委員 ただいまのお話の御趣旨は、私ども全く同感でございます。そこで身体障害者につきまして、これを受け入れていくという機運の醸成をはかるために、やはり積極的なPR活動はぜひ必要であると考えます。身体障害者雇用審議会をこの法律に基づいて設置いたしますが、これには関係各方面の代表者に集まっていただきまして、まず中央においてはこれを中心にして機運を盛り上げていく、それからこれを通じまして、まず使用者側においては各産業別に経営者団体を通じまして、身体障害者受け入れに関するところの機運の醸成をはかりたい。それからさらに地区別に、都道府県に関係者をもって構成する雇用促進のための協議会のようなものを設置いたしまして、関係者が集まることによりまして、この機運を盛り上げていくというようなことを考えて参りたいと思います。また職業安定所ごとにこのような懇談会その他集会を設けましてPRをはかるという考え方をとりたいと思っております。それから身体障害者の雇用促進週間というものを本年からぜひ積極的に設けて参りたいと考えまして、この週間を通じて雇用促進の運動をはかる。今のような考え方で関係者に対するところの啓蒙、それから協議会、懇談会、それから雇用促進週間というようなものを通じてのPR活動というものを積極的に盛り上げていく、大きな言葉で申せば、一つの国民運動的な形でこういうような機運を各方面に浸透させて参りたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/70
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071・八田貞義
○八田委員 PRの具体的な方法を今伺ったのですが、なぜそういうようなことを特に念を押して置くかと申しますと、できるなら、ほんとうは政府、雇用主と、それから身体障害者、それから一般国民、こういうものに対して一つの義務規定を設けなければならぬのです。そうしないと、実際はこの雇用促進法という言葉でのがれて、ほんとうは職業の安定に進んでいかなければならないのだけれども、それができないというので、先ほどの大臣の答弁でも、義務規定は置きたくない、雇用の義務を課した法律はわが国にないのだから、こういうことを言われましたが、これは答弁としては、はなはだ紋切り型の答弁であって、実際は西ドイツとかイギリスあたりの雇用法を見れば、そのような立ちおくれの日本の現実をそれでいいのだというふうに言い切ることは、私は非常に問題であろうと思います。ですから、この法律に政府、雇用主、身体障害者の一般的な責務とか、あるいは国民の協力義務、こういうものを規定しておくことが一番正しいのですけれども、これができない以上は、やはり一般国民の協力態勢を深めていくようなPRというものが一番必要なわけです。ところが、この身体障害者の雇用を促進していく場合に、身体障害者の種別群に対してその適職部分を決定しようとする試みのもとに、身体障害者適職早見表という表があるのです。これは一体身体障害者適職早見表というものを今後とも使用されていくのか、一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/71
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072・堀秀夫
○堀政府委員 労働省におきまして実は速急に検討いたしまして、関係者にわかりやすく周知をはかろうということで表を作ったことがあります。おそらく御指摘のものはこの表のことだろうと思います。私どもも、むずかしいことも大事でございますが、まずこの問題についての熱意を深め、関係者にわかりやすく知らせるという意味において、そのような方法をとることが必要だろうと思います。まだ早急のことでございますので不十分な点もございますから、これらにつきまして関係者の御意見を伺った上で、さらによいものにいたしまして、これを職安窓口等を通じまして関係者に徹底させるというような方法はぜひ考えていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/72
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073・八田貞義
○八田委員 身体障害者適職早見表というものは、これは職業選択を簡素化して、懐疑的な雇い主に自信を持たせる教育的な価値はあるのです。ところがいろいろ欠点があるのですね。というのは片目の人、片腕の人、それから片足の人、こういった人たちを一つの範疇に入れてしまってあるのです。ところが同じ片腕の人であっても、その切断の位置によって残存能力というものは違ってくるわけですね。こういった欠点があるわけです。もう一つは、障害群と特殊な職業範囲を結びつけますので、この表は、労働の機会を広げるよりはむしろ制限しておる、こういうような欠点を持っておるわけなんです。こういった身体障害者適職早見表というものは、非常に教育的な価値は持っておるけれども、しかし機能の面から見れば、むしろ雇用の範囲を狭めておるという欠点があるわけです。そういった欠点は十分に認識していただいて、もしもこれを是正してお使いになる場合には、相当学識経験者の意見を聴取して、今申し上げましたような欠点が是正されるようにお願いしたいのであります。
ところで、この第三条に関連いたしまして、身体障害者の職業指導の面で、次の点が非常に必要ではないかと思うのです。というのは、今の身体障害者適職早見表と結びつけましてこの職業指導というものを考えて参りますと、機能障害の現状のままでこの範囲の職業を選択するのではなくて、更生施設や義肢や義足の装具、代謝機能の開発などの結果を予想して選択すべきだと私は考えるわけです。こういったことにつきまして、実際に代謝機能の開発ということをまず考えて職業指導をやっていくのだ、それは適応訓練というようなものでやっていくのだというふうにこの法案からは考えられて参るのですが、そういうふうに了解して差しつかえないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/73
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074・堀秀夫
○堀政府委員 第三条の運用につきましては、これは一般的な事項として規定してあります適応訓練は、ごく特殊の場合について行ないたいと考えておりまして、従いまして、この第三条の一般規定と必ずしもこの第三章の適応訓練とは結びつかないという考え方でございます。お話しのような第三条についての指導の問題につきまして、これは現在労働省に適性相談所がございます。その適性相談所等にも十分聞きまして、また身体障害者雇用審議会等の専門家の方々に十分一つ御意見を伺いました上で、妥当な指導をするように心がけて参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/74
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075・八田貞義
○八田委員 妥当な指導を直接やる人、そういう人はどういう人なのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/75
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076・堀秀夫
○堀政府委員 各安定所に職業紹介官を配置いたしまして、職業紹介官は、若いような人ではなくて、こういう問題についての知識経験を豊かに備えている職員に委嘱いたしまして、これを窓口に置いて相談事務に携わるようにいたしたいと思っております。なお身体障害者の非常に多いようなものにつきましては、現在も専用の窓口も設けております。こういうものも今後拡充して、要所々々に置きたい。この面につきましては、あるいは心理関係の技術者等も配置いたしまして、これで職業安定行政の指導等が十分とは申せませんが、その中には、できるだけこういう適正な指導ができるような人を選定いたしまして、専門の窓口を作って参るようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/76
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077・八田貞義
○八田委員 結局第三条の方は、公共職業安定所は求人者に対して、身体的条件その他の求人の条件の緩和等について指導する。四条は、就職後の指導ですね。こういう場合に、やはり現在の職業安定所に、代謝機能の開発などの結果を予想して職業指導をやっていくというような専門的な知識のある人が現在おられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/77
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078・堀秀夫
○堀政府委員 現在安定所によりましては、そのような知識を持った職員もおりますが、必ずしも十分であるとは申せません。そこでわれわれといたしましては、職業適性相談所、これには専門の方がおられます。こういうようなところで指導についての基準等の検討を求めまして、これを策定して参ると同時に、職業紹介官の研修等を通じまして、ただいま御指摘の医学的あるいは心理学的な立場から、どのように適正な指導を行なうかということについての研修を実施いたしまして、そのレベルをできるだけ高めていくという方向に努めたい考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/78
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079・八田貞義
○八田委員 本年度はそういった特別な職業更生指導官と申しますか、あるいはそういった指導官を置くような予算というものはとっていないわけですね。現在おられる人を集めて研修をして、そういった指導官みたいな人を養成していくのだ。その養成していくのだという御計画があるわけなのですが、実際これが一番必要なのです。そうしますと、そういった予算の裏づけ、これは明年度においてやられるお考えなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/79
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080・堀秀夫
○堀政府委員 職業紹介官の研修計画は立っておりまして、それに必要な予算の裏づけはとっております。また適性相談所等に対する予算の裏づけもとっております。まだ不十分でありまするが、われわれとしてはこの予算を活用いたしまして、第一線の相談所におる職員の水準向上に努めて参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/80
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081・八田貞義
○八田委員 この適応訓練と機能回復訓練と、どういうふうに違うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/81
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082・堀秀夫
○堀政府委員 これは先生よく御承知のことと思います。実はこれは共通面もありますし、違った面もある。一応定義はこのようにしておりますが、共通面もあります。まあいわゆる機能回復、リハビリテーションの問題につきましては、これは現在各地にございます労災病院にリハビリテーション施設を拡充いたしまして、要するに病気あるいはけが等が治癒した後においての社会環境に即応できるという準備をつけさせるという意味で実施しております。これがいわゆるリハビリテーションの施設でございます。従いましてこのリハビリテーション関係におきましては、医学的な訓練というものが非常に表に出て参るわけでございます。それから適応訓練というのは、便宜このような名前をつけましたが、これは第三章にありますように、身体障害者が「その能力に適合する作業の環境に適応することを容易にすることを目的として、適応訓練を行なうものとする。」要するにその事業場に参りましても、そのままではなかなか定着できない、その環境に適応することが容易でないわけでございますので、これに対しまして、都道府県が事業主に委託をいたしまして、適応訓練を実施するということでございまして、これは標準的な職場を選びまして、その職場にどのように技術的にあるいは心理的に適応していかせるかという点を中心にしての指導を行なうわけでございます。一応今のように分けておりますけれども、まあその事柄の性質上、重複する面もございますが、われわれがここで呼んでおります適応訓練と申しますものは、今のように、都道府県がこの法律に基づいて事業主に委託して、作業環境に適応することを容易にすることを目的として行なう訓練、これを適応訓練と呼んでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/82
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083・八田貞義
○八田委員 更生指導所ですね、リハビリテーションのあり方なんですが、これは実際いろいろ考えて見ますと、問題点がたくさんあるわけなんです。合目的な手術に成功したとしましても、あるいはまた精巧な義手義足が作られましても、十分な訓練が行なわれなければ効果というものが現われてこないわけです。代謝機能の開発も同様であって、医学療法とか運動療法が機能回復訓練として職業準備訓練や職業訓練とともに十分に行なわれなければならぬわけなんですが、この訓練の期間が非常に私は少ないように思うのです。こういったところにつきまして、リハビリテーションの中に問題点があるわけなんですから、これは更生指導所に対して今申し上げたことにつきまして十分に御注意をお願いいたしたいと思うのです。
それから適応訓練から前に戻りますが、第五条のところで、雇用主に対する助言といたしまして、「能力検査、配置、作業設備、作業補助具その他身体障害者の雇用に関する技術的事項について助言することができる。」技術的な指導の助言だけで、作業設備とか作業補助具、適応訓練などの能力補強に要する費用というものの国庫補助というものはないわけなんですね。実際にこういう助言だけでもって、作業設備とか作業補助具、それから適応訓練などの能力補強ができるかどうかという問題なんですね。この点についての行政指導を、どうでしょう、これはやはり助言だけでは実際に効果が上がるかどうかが問題点なんですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/83
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084・堀秀夫
○堀政府委員 更正指導所におけるところの訓練の方式等につきましては、御趣旨の点まことにごもっともだと思いますが、今後厚生省とも十分連絡いたしまして、改善に努めて参りたいと思います。
次に助言の問題でございますが、第五条、それからさらにあとの第二十三条等に基づきまして、政府といたしましては作業補助具その他の問題につきまして、どのようなものが適当であるかということについての調査、研究を専門家に委託いたしまして、そしてそれをもとにして助言、指導を行ないたい考えでございます。そのための予算の裏づけ措置が、不十分でございますが百万円程度認められておるわけでございます。ただそれをさらに突き詰めまして、もう少し事業主自体に対しては援助を行なうための裏づけが必要なのではないかという御趣旨もごもっともだと思いますが、実は本法案につきましても、いろいろ政府部内においても検討いたしましたが、残念ながらまだその辺の裏づけを認められておらないわけでございます。今後におきまして一つのわれわれの大きな努力目標といたしまして、その方面も努力いたしたいと考えております。さしあたり本年度におきましては、今のような専門家に委託しての調査、研究を行ないまして、それをもとにして助言、指導を行なうという考え方をとりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/84
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085・八田貞義
○八田委員 身障者を雇用していく場合、技術革新に伴って第二次産業部門に雇用していくことを考えてみますと、今までの雇用状況を見ると大企業は少ないわけです。第二次産業といっても、大企業のような資本集約的な産業と、中小企業の中の労働集約的産業と、その中間に位する産業とに分けることができます。そうしますと身障者については国及び民間なんかに雇用率を設定されておられるのですが、一体この資本集約的な産業に身体障害者を入れていく場合に、平均されたら一・五%の雇用率、この場合、大企業にどれくらいな伸びができてくるか、どうも労働集約的産業の方にだけたくさんに高まって、平均されたら一・五%というような結果になりはせぬかというような考えを持つのです。それからもう一つは、継続雇用率というのを見て参りますと、非常に低いんですね。しかもこの促進法には、不当な解雇を制限するというような規定はどこにもないんですね。そこにもってきて、産業の構造というものを資本集約的産業と労働集約的産業とその中間のものとに分けてみて、一体割り振りをどうしていかれるか。適応訓練によってその職場を見つけていかれるわけなんですが、一体こういった身体障害者を労働集約的な産業に持っていかれる考えなのかどうか。それから不当解雇に対する問題、この点について一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/85
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086・堀秀夫
○堀政府委員 大体われわれの考え方といたしましては、現在の身体障害者の雇用率をさしあたり倍にするという考え方で参りたいと思っております。従いまして国、地方公共団体等におきましては大体原則として一・五%程度、それから民間におきましては一・三%程度というところまでさしあたり高めて参りたいと考えておるわけでございます。その線におきまして、作業の種類、産業の種類等によりまして、身体障害者に向く職場の多いものとそうでないものとの別がございまするので、原則に対して例外的に多少の幅はつけて参りたい考えでございますが、考え方といたしましては、民間につきましては事業所単位に雇用率をきめて参りたいと思っております。従いまして労働集約的な産業でございましてもあるいは資本集約的な産業でございましても、現在身体障害者をどの程度雇っておるかを見まして、それを大体倍増するというような考え方で、事業所単位に雇用率をきめて、そうしてそれに達するような計画を立てて採用してもらう、こういう方法をとりたいと思っております。なお詳細につきましては、民間の労使その他の関係者にこの雇用審議会にも参加していただくことになっております。それからそのほか専門の方を専門委員として御委嘱もすることになっておりますので、この審議会において具体的な計画についてさらに御検討を願った上で、そうして定めてこれを実行さして参りたいと考えております。
それから第二番目に、解雇制限の問題でございますが、一般的に解雇制限の規定を設けることはいたしませんでした。しかし身体障害者なるがゆえをもっての不当な解雇は、これは差別取り扱いになるわけでございます。これは明らかに身体障害者福祉法に違反する問題になりまするので、われわれとしてはそれは身体障害者福祉法に違反する問題であるという観点から、この方面の指導を行なって参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/86
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087・八田貞義
○八田委員 事業所別に、雇用の割当ではないでしょうが、そういったことを考えてやっていかれるということですが、今までの身障者の雇用事業所を見ると、労働集約的産業が非常に多いのですね。ですからできるならば雇用の安定、雇用の保障ということから見ると、大企業方面に伸ばしていくのが一番好ましいわけです。その点についても十分審議会に諮っておやりになるそうでございますが、その点の配慮を十分にされるようにお願いしたいと思うのであります。
それからもう一つは、第九条で、「予算の範囲内で、その経費の一部を補助することができる。」とあるが、これは定額補助になっていくのですか、それとも補助率で出していくのですか。「予算の範囲内で、その経費の一部」ということはどういう意味でございましょうか。ただ定額である金額出していくのか、あるいは補助率を採用して出していかれるのか、どちらでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/87
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088・堀秀夫
○堀政府委員 先ほどの、大企業方面に身体障害者の雇用吸収をはかるべきであるという御意見につきましては、われわれも同感でございます。資本集約的な産業でございましても、あるいは看視というような業務というものは相当ふえる。従いまして、この方面に身体障害者の適職というようなものを見つけることは、これは不可能ではない。従いまして現在大企業の雇用率というものは非常に低いわけでございまするから、この方面への吸収をはかっていくという考え方はわれわれ同感でございますので、実施にあたっては、そのような点も十分配慮いたしたいと思います。
それから第二番目に、第九条の問題でございますが、これはわれわれの考え方は、都道府県に対しまして、国が費用の二分の一を補助するという考え方でございます。ですからこの適応訓練に要する経費について、国が半分、都道府県が半分という負担になるわけでございます。なおそれに応じまして本年度の予算といたしましては、金額も一応基準をきめております。すなわち身体障害者一人につきまして一カ月五千二百五十円を、この適応訓練の経費に出したいと思っております。それからなおそのほかに身体障害者自身に対しまして、一人一ヵ月千円の手当を支給するようになっております。これも二分の一国が負担、あと二分の一は都道府県が持つ、このような考え方で進めて参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/88
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089・八田貞義
○八田委員 第十条のところで「この章に規定するもののほか、訓練期間その他適応訓練の基準については、労働省令で定める。」この基準についての必要な事項、これについて内容をちょっと知らせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/89
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090・堀秀夫
○堀政府委員 これにつきましては身体障害者雇用審議会にお諮りをしまして、労働省令で基準をきめる考えでございます。従いましてその御意見によってまたいろいろ中身を練り直したいと思っておりますが、われわれの考え方といたしましては、大体その委託する事業所につきましては、作業環境が標準的なものであると認められる事業主に委託をいたしたい。それから訓練の期間は原則は六ヵ月程度といたします。準備訓練と実務訓練に分けまして、準備訓練は約一ヵ月、それから実務訓練を約五ヵ月。準備訓練におきましては心理的な適応指導、すなわち職場生活への適応能力についての自覚を喚起する、仕事に対する関心を喚起するというような指導を行ないたい。それから身体的な適応の指導といたしまして、作業時間、作業条件等への身体的適応、それから身体動作をならす、それから作業の基本動作と障害による動作との調整方法の工夫というような点につきまして適応指導を行ないたい。以上をもって大体準備訓練といたします。あと五カ月は実務訓練にいたしまして、その内容といたしましては、服務の心得及び職務に関する基礎的な知識、これは商品的な知識、工程的な知識を含めまして、これを修得させる、それから労務機械の使用方法、作業手続の習熟、工程内の単純作業の習熟、工程内の基幹産業についての計画的習熟というようなものを内容にいたしまして、大体五カ月程度で実務訓練を行なって参りたい。大体基本的に申しますと以上のような考え方でございます。
なお、さらに具体的には審議会の御検討を経まして、そうして内容を練って固めて参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/90
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091・八田貞義
○八田委員 こういった高度な実務訓練とか準備訓練をやる場合に、先ほど申し上げましたように、やはり専門の人はこれはぜひとも設ける必要があるんですね。この点について大いに努力されるようにお願いいたします。
それから、もう時間もありませんから一応これで最後にいたしますが、第十五条のところで、身体上の欠陥の程度が著しく重いために、通常の職業につくことが特に困難である重度障害者の特定職種における雇用について定めたものが十五条なんです。この場合に、盲人の特定職種の指定について、たとえば盲学校の場合、職員としまして全盲者と半盲者と半々に組み合わせたような雇用というものが考えられないか、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/91
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092・堀秀夫
○堀政府委員 十五条の重度障害者について、これはいろいろな対象が出てくると思いますが、さしあたりはただいまお話の盲人の方を重度障害者としてまず第一に指定したいと考えております。大体その特定職種としては、病院とかあるいは保健所、保健関係の施設におきまするマッサージ関係の職種あるいはあんまの職種というようなものを指定して参りたい。ただいまお話の盲学校におきましてどのようなことに取り扱うかという点につきまして、まだ結論が出ておりません。文部省と相談いたしまして、それから身体障害者雇用審議会の御検討も願いまして、一つ結論を得て参りたいと目下検討中でございまして、まだ結論は出ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/92
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093・八田貞義
○八田委員 重度障害者の雇用の場合、一人を二人に換算して雇用の促進をはかる。そうしていかなければ重度障害者の雇用という面の開拓は非常にむずかしいのですが、一人を二人に換算するというやり方、三級以上の重度障害者、こういうことについてどういうふうにお考えになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/93
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094・堀秀夫
○堀政府委員 重度障害者一人を二人に換算するというような立法例は、ただいま御指摘のようにあります。外国にはそのような例もあるわけでございます。これにつきまして、われわれといたしましては、重度障害者指導といたしまして、やはり重度障害の方が一番お気の毒でございまするから、なるべくこの方を優先して、こういうような人を優先的に扱っていくという方向に指導はいたしたいと思っておりますが、雇用比率の計算のところに法律上はっきり書く点につきましては、いろいろ問題はあると存じまして、実は書かなかったわけでございます。ただこの運用につきましては、今のような考え方もあるわけでございます。われわれとしては重度障害者をなるべく優先的に取り扱っていくという方向は、これは先生と同感でございます。これを計画を作成する際にどのように運用して認めていくかという点につきまして、これは身体障害者雇用審議会等に十分お諮りいたしまして、御意見を聞いた上でわれわれとしては基本的に今のような考え方で運用して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/94
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095・八田貞義
○八田委員 これで一応きょうの質問は終わりますが、今の点ですね、たとえば先ほど申し上げました内臓障害への適用、それから重度障害者の一人を二人に換算する、こういったものを政令とか労働省令に規定して効果を上げるように努力してほしい、この点一つもう一回お願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/95
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096・堀秀夫
○堀政府委員 ただいま御指摘の問題につきまして、われわれも御趣旨ごもっともだと思います。御趣旨の点を十分尊重いたしまして、検討して実現させる方向に努力したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/96
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097・八田貞義
○八田委員 一応あとの質問を保留しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/97
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098・永山忠則
○永山委員長 大原君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/98
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099・大原亨
○大原委員 いろいろと質問があったのですが、他の国の法律を見てみますと、ずいぶん罰則がついています。たとえばユーゴスラビアでも、あるいはオランダでも、イタリアでも、あるいはイギリス——イギリスは罰金または三カ月の拘禁、こういうようについているのですけれども、この規制力というのは、やはり近い将来、法を改正してやらなければならぬと思うのですが、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/99
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100・堀秀夫
○堀政府委員 現在、御承知と思いますが、身体障害者について、雇用促進のための雇用率を設定しておる国が大体十七ヵ国でございます。その中で罰則を設けている国が六ヵ国という状況でございます。この法案の作成につきまして、罰則の点も検討はいたしたのでございますが、現在のわが国の労働法制に、雇用義務につきまして罰則をつけておる例はないわけであります。なお、ただいまこの法律を新たに実施する段階といたしまして、先ほど来御答弁しておりましたように、やはり身体障害者に対する事業主の偏見というものを是正して、積極的に受け入れていくという態勢を浸透さしていくことが、まず最も大事な問題である、そのように考えております。従いまして、罰則について規定を設けていきますよりは、この法案のような思想によって、今のような積極的な気分を盛り上げていくという方向が大事じゃないかということで罰則は設けなかった、こういう経緯でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/100
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101・大原亨
○大原委員 民間の大企業その他に対しましてそれを勧奨するためには、倫理規定だけでなしに、たとえば租税特別措置法というのがありまして、日本では一千億円以上も、大きな企業に対しては、貸し倒れ準備金とか退職金の積立金とか渇水準備金とか、そういうものに対しましては免税措置をしておるわけですね。そういうような税法上の措置をすべきじゃないですか。そういうふうにすればこの倫理規定も、反面においては生きてくる、こういうふうに思うのですが、そういうことをやはりやって、そしてこの法律の実効が上がるようにしていく、こういうことにしないと困るのではないですか。大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/101
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102・松野頼三
○松野国務大臣 税法上の特別措置というのは、御承知のように大体大企業の中でも電気、鉄、中には農業あるいは医師というものも入っておりますが、主として公共性のある大企業というものが一番多いものじゃなかろうか。ただ今回のこの税で雇用の問題をからめると、大企業といえば、じゃどこまでを大企業にするか、はたしてそういう雇用が現実に円満にいくだろうかというと、なかなか税でこれをやるとなれば、ほかにもいろいろ問題がありはせぬか。早い話が母子家庭の就職をどうするとか、いろいろ考えれば私は問題が大きくなりはしないかと思う。従って今回は身体障害者の雇用ということに限って、しかも今日の実情に沿う限度においてやるべきではなかろうか。基本的にいえば今おっしゃるようにいろいろ問題が出て参ります。しかしそれにはちょっと問題が相当基本的になり過ぎる。従って今回はそういうものでやる方がよかろうというので今回の立法をいたしました。もちろん将来いろいろな面において改正すべきことはございましょう。しかし今回は最初でございますから、一番現実的なものから、取り上げていこうということから入ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/102
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103・大原亨
○大原委員 あとの質問は一応保留しておきます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/103
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104・永山忠則
○永山委員長 次に労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。大原亨君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/104
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105・大原亨
○大原委員 簡潔に御質問申し上げますから、一つ簡潔にお答え願いたいと思います。いろいろと政府与党の中においても、ILOの八十七条約批准をめぐりまして論議があるようでございますが、最近では次官会議あるいは閣議においていろいろと論議をされているようです。ILOの八十七号条約の批准につきましては、労働大臣がやはり国際的な舞台におけるILOの総会や各機関、あるいは国内における各官庁の労働政策の一つのかなめのような立場にあると思うのです。
〔委員長退席、八田委員長代理着席〕
そういう労働運動の歴史的なものでもあるし、国際的な問題でもあるわけですから、労働大臣はそういう観点から一つはっきりした見解を持って、ILO条約八十七号の批准について推し進めていただきたいと思うのですけれども、八十七号条約を与党やあるいは政府機関において討議されております、そういう際における労働大臣の立場なり、あるいは所信を、今の段階におきまして最初にお話しいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/105
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106・松野頼三
○松野国務大臣 八十七号条約は、政府としましては三年前に労働問題懇談会にこの問題を諮りまして、昨年二月十六日に答申が出まして、その答申を受けて昨年二月二十日に閣議決定をいたしております。これが今日までの政府の態度で、その後一貫して国内法の整備、よき労働慣行、この二つの問題がございまして、よき労働慣行の中には全逓の問題も一応条件に入っておりました。全逓も団交権について仲裁裁定を受けて、一応その問題についての解決は前進をいたしました。あとは国内法の整備であります。従って国内法の整備というとは、一月以来早急にピッチを上げまして今日まで鋭意やっておるわけであります。目下次官会議、閣議、あるいは党との連絡を週に数回、相当連続的に、各省にまたがる広範囲なものがありますので、それらについても議論しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/106
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107・大原亨
○大原委員 その国内法の整備という問題は、労懇その他で討議されまして、この二、三年来の懸案なんですけれども、これは今になって整備ができぬというようなことは、ずいぶん怠慢な話だと思いますが、今まで国会におきまして、総理大臣初め労働大臣からも、批准について四月上旬という方針をしばしば言明されたわけです。若干時期も過ぎたようでありますけれども、これはきびしく言えば食言になっておると思います。これはどういうことなんですか、いつごろお出しになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/107
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108・松野頼三
○松野国務大臣 私は四月上旬を目途に整備をいたし、その上で批准手続をとりますということを終始繰り返して申し上げたのであります。従って四月上旬を目途に今日まで調整をはかったことは事実でございます。しかしその調整が、事、広範囲であり、あるいは各般の問題がありますためにおくれておりますことは、食言でも何でもありません。目途に努力するということをたびたび申し上げておったわけで、努力をしております。今でもその通りでございます。その状況においては、困難性があって今日までおくれておりますが、今日でも鋭意努力をいたし、本日も数回会議を開いてやっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/108
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109・大原亨
○大原委員 見通しはいつなんですか。法案の審議につきましては、微力ながらわれわれ野党も社会労働委員会においては協力しておるわけです。それは政府与党内においては、ILOについて安保にからめるとか、いろいろなことについて言う力もあるようですけれども、私どもは社会労働委員会においては、少なくとも法案につきましては、与党の要請に従いまして、慎重に審議しながら円滑に進めておるわけです。だからやはり与党の方でやるべき、言明なさったことはてきぱきやっていただくことが当然であって、そういうことがないと議会というところはスムーズにいきませんよ。そういう意味において八十七号条約を、いつ承認を求めるために国会に上程をするのだ、こういうことを、形式上は外務大臣になりますが、労働大臣は実質的な責任者といたしまして、その時期について御言明になることは当然だと思うのですが、もう少し具体的に、いつごろは必ず出す、こういうふうに言明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/109
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110・松野頼三
○松野国務大臣 労働大臣の所管の公労法につきましては、すでに三月の初旬に一応原案を閣議に諮りまして、概略の要綱については大体進行しております。その原案をもって各省にお示しをしております。党にももちろん御相談をしております。しかし公労法に関する限りは、大体そんなに時間のかかるものじゃございません。ただ関連のある国家公務員法は労働大臣の所管じゃございませんので、もちろん私もその進行に参画はしておりますが、私はその所管というわけじゃございませんので、国家公務員法はいつごろ調整ができるということは申し上げかねるのです。公労法に関しては私の所管でございますから、大体順調に今日は進んでおります。四月上旬を目途に調整をいたしております。ただ公労法の中に国家公務員法との関連の一項目がございます。この問題が解決しないために、公労法の仕上げができない。この公労法の一条に、国家公務員法に関連のある同じ条文が入っております。これがどう解決するかによって、公労法の書き方がそこだけ変わってくるわけであります。その一つを除けば、労働大臣所管の公労法の、御承知のごときILO八十七号に関する限りは、大体審議というものはもう終結に達しつつあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/110
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111・大原亨
○大原委員 いつごろですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/111
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112・松野頼三
○松野国務大臣 ただその問題が、一ヵ条国家公務員法との関連があるものですから、国家公務員法の問題を今日一緒に出すために待っているわけです。その問題が解決すれば、私の方は大体順調に提案ができる、こういう段階に来ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/112
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113・大原亨
○大原委員 公労法と地方公営企業労働関係法と、それから今のお話によりますと、これに関連をする、右へならえする国家公務員法、これの十点が問題となって、準備はほとんどできたのだが、最後の点で問題になっているんだ、こういうふうな具体的な御答弁であります。時期につきましては、ぜひ私は具体的に明らかにしてもらいたいのですが、公労法の関係条項は、公労法の四条三項と地方公営企業労働関係法の五条三項、この二つですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/113
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114・松野頼三
○松野国務大臣 この二項ばかりじゃございません。まだ関連するところはございます。四条三項、四条一項、十七条、そういうところが関連がございます。従って条文の数としては、そう大きなものでもございません。内容についても、そんなに大きな問題じゃございません。ただ国家公務員法との関連が一ヵ条ありますから、その問題が国家公務員法の内容決定に関連をするために、その条文だけがまだきまってない。このために公労法の全文がまだきまらないというだけであって、公労法そのものは、大体そういうところで一応の草案を得ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/114
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115・大原亨
○大原委員 公労法は具体的にそういうふうに条文を指摘されまして、公労法と地方公営企業労働関係法については、一応政府部内においてはまとまっていると言われるのですから——これは今まで四月上旬を目標にされて、しかもそれがいわば食言の形で延びておる、こういうことについていろいろ御説明があったわけですが、そういう具体的な内容について、今の段階において誠意のある御説明なり御答弁がある、そういうことはまことに当然のことであり、またそういうふうにしてもらわなければいかぬと思うのですが、公労法四条三項の削除の問題と、四条一項並びに一項に関係した二項の問題、この四条の一項、二項の問題は削除になるのですか、どういう内容なのですか。ついでに、十七条の改正されますお考え方についても、一つこの際御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/115
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116・松野頼三
○松野国務大臣 四条一項は、使用者の利益代表がいかなる場合にも労働組合を結成し加入することができない旨の四条一項ただし書きを削除するという方向で検討しております。なお、この答弁は、まだ政府部内で草案を得ておりませんから、一つの試案という意味でお聞き取り願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/116
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117・大原亨
○大原委員 二項はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/117
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118・松野頼三
○松野国務大臣 二項も、これは関連して検討中で、まだ最終的に問題はきまっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/118
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119・大原亨
○大原委員 私はそういう八十七号条約に抵触するのを削除されるということについては賛成なんですけれども、これは党内においても大体議論のないところだというふうに、私は御答弁をお聞きしたのですが、これは大体お話のように固まっておる、こういうふうに考えてもよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/119
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120・松野頼三
○松野国務大臣 先ほど申しましたごとく、部内では今日大体案を固めておりますが、まだ閣議において正式に決定をしておりません。党もまだ正式にきまっておりません。従って、本日の御説明はあくまでも一つの試案という形でございませんと、とにかく私たちが一々説明するわけにはまだ参りません。従ってそういうようなところが管弁として明確にできないが、方向としては大体固まっている、こういう意味でお聞き取りが願いたい。今日、一条々々議論されるのであれば、私の方はまだその段階ではございませんと言う以外にありません。しかし、そういう水くさいことを言わずに、お互いの仲ですから、一つの試案としてこういうものもあるということできょうの質疑をやっていただくのが無難じゃなかろうか。あるいは政府の最終閣議決定前に変わるかもしれません。しかし労働大臣としての私の善意で、今日御答弁できる範囲で御答弁をいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/120
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121・大原亨
○大原委員 労働大臣のお考えとして私も了承しておきます。私どもは無理を言わないのですから、現在どういう準備段階かということについては、今までの約束もあることですから、できるだけ誠意を持って御答弁をいただきたい、こういう趣旨から、できるだけ御答弁をいただきたいわけです。
十七条につきましては、大体今のようなお考えで参りますと、どういう点を修正削除いたしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/121
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122・松野頼三
○松野国務大臣 これは石井報告の中に、「十七条後段は、「職員」に対して争議行為の共謀、教唆、煽動を禁止しているが、公労法第四条第三項を削除することによって、職員以外の者も組合員又は役員となることができることとなることに対応して、右の行為を行うことを禁止されている者の範囲に「組合の組合員及び役員」を加えることが必要である。」とあります。私の方はこのことを受けて、十七条というものに触れるべきものである、こういうわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/122
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123・大原亨
○大原委員 これはまた後日十分討論いたしますけれども、十七条の「職員及びその組合は」、こういうこと以外に、組合の役員を入れて、教唆、扇動、こういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/123
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124・辻英雄
○辻説明員 ただいま大臣の申し上げましたのは、御承知の労働問題懇談会におきます石井委員の報告いたしました点に書いてありますことを、問題として検討いたしておる旨を申し上げたわけでございますが、その内容は、ただいま先生お話ございましたように、職員以外の者も組合員になれるので、そういう変更をすることが必要であるということを石井委員が指摘しておられまして、そういう方向で検討をしておるということを、大臣から御答弁申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/124
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125・大原亨
○大原委員 この問題につきましては、あとで本格的に議論いたしますけれども、きょうは私どもの簡単な意見を申し上げておきたいのですが、ILO条約の八十七月その他にいたしましても、批准に際しまして、これに便乗したり、その機会に江戸のかたきを長崎で討つようなこと、いわゆる既得の労働基本権を骨抜きにするようなことはいけない、こういう趣旨が労働憲章の十九条にあるのです。だからこの問題はよほど慎重にやってもらわなければならぬ。それから、たとえば個人の労働を中心といたしましていろいろな問題が起きた場合に、これに対する罰則を適用する、事業法を適用するというのは、原則的にはいいのです。しかし、集団的な労使関係に対して簡単に罰則を強化いたしましたり、いろいろなことをいたしましたら、これは今申し上げたようにILOの精神に反するし、悪法の精神にも反する。そういたしますと、委員長にいたしましても、書記長にいたしましても、個人にいたしましても、集団的な労使関係の中に発生してきておる機関の決定で動いておるのですから、これはまだ固まっておらぬようですけれども、この問題は団結権の問題とも関連しておるということを指摘しておきたい。
もう一つ御質問いたしたい点は、国家公務員法について問題となっておる点が一カ所ある、これは論議をしておるところなんで、一応の論議がまとまれば提案するのだ、こういうふうに言われるのですが、これはどういう点なんですか。今の公労法に準じているというお話ですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/125
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126・松野頼三
○松野国務大臣 その条項は専従問題であります。これは公労法、国家公務員法の中に同じような趣旨の問題があります。従って公労法では七条に関連するわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/126
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127・大原亨
○大原委員 つまり専従制限の問題ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/127
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128・松野頼三
○松野国務大臣 専従制度の問題であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/128
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129・大原亨
○大原委員 現在まで休暇制度であった、そういう専従休暇の制度を休職にする、こういうことを含めましてお宅の方でA案というのができておるらしいですね。B案は在籍専従を全廃したのですね。この問題は関係しておるのでしょう。ですから専従制限でしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/129
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130・松野頼三
○松野国務大臣 今の専従制度というのは、専従制度を置くか置かないか、置く場合に制限するのか、こういう問題がありますから専従制度と申し上げたわけであります。全廃ということは専従制度そのものを基本的に変える、これはゼロなんですから、制限という言葉を使えば、百パーセント制限か、あるいはある程度の制限かということになるわけであります。従ってそういう問題を合わせて専従制度そのものを検討するという問題が残っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/130
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131・大原亨
○大原委員 私は端的に一つだけ質問いたします。労働大臣は、与党や閣議において論議されます際に、やはり筋を通さなければいけないと思うのです。そうしないと、国際的な舞台において、ILOの総会とか理事会におきまして、また日本の労働代表が全逓問題と同じように問題を持ち出していきます。ILOというのは、国際的な労使関係の中から、経験の中から出てきたのですから当然です。そういたしましたら、ここで違った一つの裁定が出てくるというような問題があるのです。だから労働大臣は、そういう国際的な視野から、あるいは歴史的な経験に照らして、労働運動の原則に反しないように筋を通さなければないけい。労働省の皆さん方は筋を通すために相当努力されておるということはいろいろな角度から聞いていますけれども、そういう点で筋を通してもらわなければいけない。これは単なる刑罰的なあるいはいろいろな行政上の制裁を加えるとかなんとかいうことで解決できる問題ではない。労働基本権の問題は生存権の問題ですから、憲法上も、ILOの精神からいいましても大問題です。これは一般民間組合や公共企業体においても一つの同じような原則だと思いますが、日本はいわゆる企業内組合というのが現実です。そこで、今まで論議されております政府の公務員法改正の考え方を見てみますと、職員の範囲については非常にきびしくしておるようです。いわゆる企業内組合です。職場組合に限定しておるわけです。職員以外の者については加盟できない、こういうことなんです。職員については、若干の係争中の者等については云々ということになっておるようです。
これは二年前でありましたが、私初めてこの社労委員会に出席いたしましたとき、今委員長席にすわっておられる八田委員が、倉石労働大臣に対して非常に賢明な質問をされたことがある。それはどういうことかといいましたら、日本の労使関係を安定させるためには企業内組合を、いわゆる企業を越えた産業別の組合に、そういう組織方針なりそういう方策なりを、ずっとそういう方向に向けていかなければならない。これは今の日本でいえば海員組合みたいなものなんです。八田さんがそういう組織論を言われたことがあるのです。これは与党の委員といたしましても非常に敬意を表しておる。私はいまだに覚えておる。八田委員はその点非常にりっぱです。国際的な知識を持っておられて、ちゃんと労働問題について筋を持っておられる。このように八田委員は質問なさったことがある。私はその点は非常に敬服いたします。しかしながら、日本は、遺憾ながら企業内の組合で、国家公務員、地方公務員にいたしましても、今度ILOの改正にいたしましても職員というふうに非常にきびしくしておきながら、今度は専従につきましては、組合の役員に、団結権の一つといたしまして、自由に役員に選出されたために月給を払わぬ。ノー・ワーク、ノー・ペイでよろしかろう。しかしながらその人が出たために不利益な扱いをする。つまり休暇であれば退職金とか恩給とか昇給等、いろいろあるか、そういう既得権を尊重する扱いをしないわけです。フランスなどでは専従制度のあるものを考えてみると、一たん退職するとか休職するとかいたしましても、返るときにはもとに返してしまう、不利益に扱わせない。そういう点から考えてみますと、休職の問題は、専従制限の問題の一つとして休職というものを扱う上には、将来国際的にも、国会においても大問題になります。それは理路一貫しない。あらゆる法律とか施策というものを、労働組合の団結権を制限する方向に向かってやっておるという一つの立証になってしまう。特に国際条約集にも載っておりますが、国際労働機関憲章の十九条第八項には、「いかなる場合にも、総会による条約若しくは勧告の採択又は加盟国による条約の批准は、条約又は勧告に規定された条件よりも関係労働者にとって有利な条件を確保している法律、裁定、慣行又は協約に影響を及ぼすものとみなされてはならない。」こういうことが各国の実情を尊重する、あるいは労働者の既得権を尊重する、労働基本権を尊重するという原則の上から出ておるのです。これは国際的にも将来大問題になる。事業法における罰則の強化の問題、基本的な労使関係の問題、集団的な労使関係の問題といたしまして罰則規定、刑罰規定を設ける問題、専従制限の問題の日本における実情、そういう問題を考えてみまして大問題である。こういう点を今問題として論議されておるというのですから、指摘をいたしておきたい。労働大臣として、もしありましたら御所見をお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/131
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132・松野頼三
○松野国務大臣 この八項は私たちもよく存じております。この八項に触れるということは、今回の専従問題を取り扱うのには全然関係がございません。なぜかというなら、基本的に今回は四条三項的なものを削除いたします。四条三項的なものを置いて専従制限をすれば不利益でしょう。今度は基本的に四条三項的な制限を撤廃しますから、従って専従制度、専従制限を今までよりも変えることになる。何らILOに異論はございません。またそういう不利益なものではございません。ただ利益か不利益かという考え方によって、これは不利益という御議論もわからぬわけでもないのであります。しかし公平に見て、専従制度を変えたから不利益ということは今回はございません。基本的な四条三項的な制限、基本を撤廃します。団結権に何ら影響もありません。私はこの条項が、今回専従問題をいかように改正するといたしましても、ILOから将来ともに指摘を受けることもなければ、指摘される論拠もなければ、何らこれは影響なしと信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/132
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133・大原亨
○大原委員 今この点については論争いたしませんけれども、私が指摘をいたしました、たとえば組合員の範囲を職員に限定するとか、そういう問題との関連において不合理を追及いたします。これはいろいろな国際的な経験もあると思います。そういう企業内在籍専従という問題ができておるという日本の特殊な現象があるのです。これは原則的には、八田委員が発言された通り私は賛意を表しておきます。組合というものは、そういう原則で労使関係の安定をした方がいい、こういうふうに思っております。それはまた基本的に論争することがありますが、とにかくこの問題はやはり鉄道営業法における罰則強化の問題ですね、こういう問題と一緒に大きな問題である、こういう点を申し上げておきます。
それから労働大臣に念のために、私は認識されておると思うのですが、条約と、法律とかあるいは人事院規則とか、あるいは各府県の条例とかいうようなもの、条約とそういう国内の諸法令とはどちらが優先するか、これは条約が優先する、こういうふうに考えてよろしいかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/133
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134・松野頼三
○松野国務大臣 条約と国内法とはどちらが優先するかという、優先順位をきめることは私は必要ないと思います。条約があるならば当然その批准のときには国内法を改正しなければならない。条約を批准したら、当然その問題というのは国内法と同じように取り扱われる。どちらが上だ下だという問題ではないと私は思う。条約を批准したら、同じような意味でこれは当然国際的には条約で束縛されるし、国内的には法律で束縛される。だからその条約が法律よりも上だ下だというんじゃない。私は同じ意味にこれは取り扱うベきだと考えております。また批准をする場合には国内法の整備をして批准する。もしも批准して国内法とそごがあった場合には国内法を改正するということが必要でありましょう。あるいは批准した、今度は別に国際的に条約を修正するかどちらかをしなければならない。上か下か、先かあとかということは私は関係ないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/134
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135・大原亨
○大原委員 その点はあなたの答弁は労政局長の答弁と違うのですよ。労政局長の答弁と法制局の答弁と違いますよ。つまり国内の諸法令を整備をした上で批准をするという方針はいいんですよ、これは政策ですから。それは私も原則としては一応了解する。しかし条約と法律命令その他が抵触しておる場合に、たとえば裁判所なんかへ持っていけば、条約が優位になるというのは学説ですよ。抵触している場合には条約が優先適用になるのですよ。それは学説で、それをひっくり返す学説はありませんよ。これは労政局長の答弁を見たって、あなたの答弁は違いますよ。私はここで二回ばかり言っている。最近の政府あるいは一部の与党の中におけるいろいろな動きを見てみますと、憲法と条約についての論争はあるのですよ、どちらが優位かという論争はある。しかし条約と法律においてはそういう認識を持っていない人があるんじゃないかという疑惑があるから、この点は法令を整備しておいてから条約を批准するということの方針はよろしいけれども、今までの記録を私は調べてどこでも私は申し上げる。文部委員会においてもそういう答弁をしておる。法制局の人、公務員制度調査室の人はしている。文部大臣もしている。労政局長もしているから、これは念のために申し上げておく。これは労働大臣、訂正してもらわなければいけませんよ。そういう認識で——これは国際的にも条約についていいか悪いかという、適正であるかないかということを含んで判断する機関がある。そういう問題についてはきびしく解釈しておくことが、国際舞台の上において、国際信義を上げるゆえんである、こういうふうに私は思うのです。そういう点についての与党の諸君の動きの一部ではどうも疑惑かあると思うので、労働大臣としてはこの点を一つ十分に御注意いただきたい。前の議事録を持ってきて私が質問をいたしますとよくわかるのですが、これは労働大臣は今のお考えを補足して一つ訂正してもらいたいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/135
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136・松野頼三
○松野国務大臣 いずれ私の議論が違っておりましたら法制局長官からあらためてこの問題を御審議いただけばわかります。私は条約も法律も、条約が上だとかという考えは持っておりません。同じであります。条約も法律も同じであります。国内的に束縛を受ける。条約が優先するんだ、法律が先へいくんだということは私はないと信じております。なお、あえて速記録をお調べになるよりも、あらためてこの問題は一つ法制局長官をお呼びいただいて御審議いただくことが私は今後明快にする——従って労政局長が何と申しましたか、それは前後の質疑ですからわかりませんが、私はそう信じております。従ってどちらが優先だとかあとだとかいうこと、そのものがおかしい。同じ力であるということの上に私は立っておる。ただ問題は、あとからできたか、いわゆる新法は旧法にまさるという、これは問題はあります。これは国内法であろうが国際条約であろうが同じ意味で取り扱う。それから新法は旧法にまさるのだという考えでお話しになるなら、これはまた別な議論、従って私は条約と法律と同じだと今でも信じております。なおこれはあえて私がここで言ってもとかく議論になりますから、これは法制局長官をお呼びいただいて、今後の問題のために私もよく再検討いたしますから、大原委員ももう一度再検討して、この議論は後ほどにしていただきい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/136
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137・大原亨
○大原委員 念のために申し上げておきますが、新法と旧法という関係で、ILO条約を現在の段階で批准された場合に、ILOの八十七号条約と抵触しておる法律や命令があった場合には後の新法が優先するのだ、こういうことも一面です。一面ですけれども、条約というのは国内的に規制する以外に国際的なプラスがあるのです。それはやはり学者が論議しています、基本的に。だからそういう面から言いまして、特にILOのようなものは三者機構で国際的に論議されるのですから、そこで一つは審判されるのと、日本の裁判でやる場合には、これは条約を優位に置いてやるのですから、それは権利を主張する人が出てきたら、関係者が出てきたら、こういう問題は明らかなのですから、そういう前提の上に立ってやはり筋を通していただく。こういう点を私も研究いたします。研究するのでなしに、この点は別の機会に確かめたい。政府においても一つその点は十分考え方を統一してもらわないと——労働問題というのは便宜的、政策的に考えると混乱するんですよ。労働問題を好きとかきらいとか、虫が好くとか好かぬという問題があるけれども、原則をはずしてはいけない。その中で考えていかなければいけない。これがそうでなかったら南の李承晩政府のようになってしまう。馬山の暴動、きのうは女学生がやった。おとといは高等学校の学生がやっている。そうなってしまう。原則がある。それは国際的な問題、そういう点は一つ冷静に筋を通して考えてもらいたい。そういうことを含んで、すみやかに労働大臣は断固として責任をもって批准をしてもらいたい。そういう点について最後にあなたに決意を一つ具体的に、いつごろまでにやる、そういうことについて御答弁いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/137
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138・松野頼三
○松野国務大臣 私の所管ばかりでございませんが、政府としてはすでに総理大臣からも答弁をいたしておりますので、誠心誠意努力をして早期にこの問題の解決をはかりたい。いつごろだという時期は、これは私の所管以外のこともございますし、ただいままだ進行中でございますから、あるいは早急にできるかもしれない。あるいは暫時時間がかかるかもしれません。これは誠意を持って努力するという方向を私は明快にしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/138
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139・大原亨
○大原委員 大体いつごろまであなたは今の段階においてやれるという見通しなのですか。公労法と地公労法の関係がほとんどですよ。それに準じて国家公務員法があるんですよ。他の方の問題については、これは自衛隊法とかその他をからましたら徹底的におかしいのであって、これは今まで論議してきたのとは別個の問題です。だからそういう点から言うて、もうほとんどが終わっているのに、八十七号条約はきちんともう条文にできておるし、みんなずいぶん討論も済んでいるのですから、これはもう少し具体的に——今まで四月上旬ということを言われた。言われたけれども、もう上旬は過ぎている。十日過ぎている。そういうことをされると国会の審議が各方面にわたってうまくいかぬですよ。これは当然ではないですか。一方的に政府が多数を持っておるからといっても、やはり言明したことについてはやってもらわなければいけない。やはりそういう面についてもう一回大臣、答弁して下さい。大体どのくらいまでにおれはやるんだ、こういう主体性を持って御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/139
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140・松野頼三
○松野国務大臣 時期はただいま申し上げましたように、四月上旬を目標に鋭意やって参りました。しかし諸般の問題というものが非常に広範であったために、あるいは国家公務員法に対する議論が非常に多かったために、残念ながらその四月上旬の提案は今日時期を過ぎましたけれども、なお継続して努力をしておりますから、そうすぐ何月何日ということはいろいろな問題で言えません。しかし一生懸命努力をしておるのですから、一つもうしばらく待っていただきたい。なお法案要綱が決定しましたら、やはり法制という時間も多少ございます。きょうも実は総務会をやり、政調会をやって審議をしておるのです。この審議も今週続けてやっていただきますが、やはり党の動きあるいは国家公務員の各省の問題をからめて広範ですから、国家公務員に関しては関係のない役所は一つもない。また地方公務員もございます。そういう広範なものですから、私の所管だけならばいつごろまでにという明約もできますけれども、他の問題については労働大臣としては所管外のことであります。私はILOという精神にのっとって、最大限各省を督促し、努力をしておるのです。何月の何日と言うことは、神様でなくてはできません。しかし努力の目標というものは私もきめておるのですから、もうしばらくお待ちいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/140
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141・大原亨
○大原委員 前のときに滝井委員が御質問になりまして答弁になったと思うのですが、lLOの八十七号条約を国会に出す手続といたしましては、これは外務委員会にかかるわけですね。そういたしますと、関連法規、公労法その他はここへ出るわけですね。大体一応の骨子ができて、要綱ができて、準備ができたら、八十七号条約批准について外務委員会に提案する、そうしてここへも出してくる、こういうふうに閣議決定をして、大体同じようにそろえて、あとは国会の問題だ、こういうふうに言いましたね。そういう基本的な態度が大体決定次第、本会議から外務委員会に出す、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/141
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142・松野頼三
○松野国務大臣 滝井委員にそういう答弁はいたしておりません。国内法の整備をして閣議決定をして、それからILOの批准手続をするということを申し上げた。それじゃその時期がそんなにずれちゃいけないじゃないか、そんなに悪意でずらすことはありませんということで御答弁申し上げたわけです。国内法の整備の上ということが閣議決定でありますから、その上ということで、閣議決定が済んでから、では批准だけ先に出す、そういうことは答弁いたしておりません。あくまで原理、原則は閣議決定の国内法の整備の上提案する、それでそのとき滝井委員がなお突っ込んで、整備とは何だ、衆参両院を通らなければいかぬのか、こういう御質問でしたから、いや、そんな形は考えておりません、国内法を整備して提案をする、それから批准の手続をとる、こういう意味であって、国会審議のことは国会でおきめいただくのですから、そこまで政府は関与いたしません、これは大体時間的にそんなにおくらせるとかそういう意味ではございませんということを御答弁申し上げたのです。(「同時にやると言われたでしょう。」と呼ぶ者あり)それはつけ加えますれば、最高同時ということが一番望ましいことでございましょうということで申し上げたので、それはいろいろな質問のあとの話で、原理、原則は国内法整備の上にやると申し上げたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/142
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143・滝井義高
○滝井委員 関連して。きょうの松野さんのお話を聞いていると、僕か国会対策その他から報告を受けたこととだいぶん違ってきているわけです。と申しますのは、昨日でございますか、三党の国会対策委員長会談があって、条約の承認を求める件、それから同時に国内法の整備、いわゆる法律の問題ですね。少なくとも条約の承認を求める件というのは、今松野さんが御説明のように、国内法が整備できて国会に出すならば、できれば同時に条約の承認を求める件も国会に出したい、この前こういう御答弁でございました。しかし岸総理は四月初旬に国会に出したいと、参議院の予算委員会その他を通じて何回も言っているわけです。その岸総理の言明を受けて、昨日の国会対策の委員長の会談では、今週中に出してもらいたい、こういう主張が行なわれているわけです。そこで、趣旨はわかりました、こういう形になっているのです。そうしてでさらに今度はそれを受けまして、官房長は、多分昨日の議運であったと思いますが、議運でわが党の方から、できたものから出してもらいたいと申し入れた。今あなたの言うように、これは国家公務員関係が一条で関連してくるというなら、私はその一条は原案のまま出して、あとで話がまとまれば与党修正でできるではないかと思うのですよ。たとえば今お出しになっているのに、あなたの方はじん肺法と労災法の一部を改正する法律をお出しになったわけです。ところが船員関係はうかつにも厚生省は一緒に出さなかったのですよ。そして今ようやく出してきた。こういう場合もあるわけです。ほんとうは一緒に出さなければならないのだが、うかつにも他のものとの話し合いがつかなかったとかなんとかで、同じような内容のものをあとから出してきた、それで今度またわれわれが同じことをここでやることになる。こういう場合もあるわけで、労働問題懇談会が政府に答申をしたときには、公務員関係の検討は実はやられていなかったのですよ。これはおおうべくもない事実なんですよ。それでその後政府がやってみたところが、松田文部大臣その他から非常な異論が出る、それから特に大蔵省の国税関係の組合の問題もあって、これはどうも大へんだというのでハチの巣を突いたようになっているのが現実です。労働問題懇談会から出ているあの答申を見ても、そう公務員関係にこだわっていないですよ。あれはむしろ読み方としては政府の考え方次第だ、やってもやらなくてもいいのだというような考え方なんですよ。ところが客観的に見ると、公労法の改正よりかむしろあの方が今大問題になってきているわけですね。こういう状態でだんだん法制的な問題が次から次に出てくる、この際八十七号を批准すればいろいろ問題が起こるから、一挙にこの際それらの問題も片づけておけという格好では私は困ると思うのですよ。そういう意味から議運では官房長官は、今週中に出せという要請に対して、ここで百パーセントということはできかねますけれども、できるだけ今週中に出す努力をいたしましょうという答弁になってきている。今の松野さんの御答弁では、これは時日も言えないのだ、できるだけ努力するけれどもというように、官房長官より主管の大臣の答弁がぼやけてきたわけです。これではわれわれ国会対策で聞いて、きょうの国会対策の報告その他を了承しておったのですけれども、今の松野さんの御答弁では、いつ出すかわからぬ、まだこれから閣議にもかけなければいけないし、党の調整もやらなければいけない、総務会にも諮らなければならない、政調にも諮らなければならないということでは、今週どころではないですよ。来週もうまくいくかどうかわからない。法律も全部できて、その上でこれこれのものは出すのだからと、こういうことになりますと、僕ら帰ってあしたの国会対策で、あなたのこの委員会における答弁を報告せざるを得ない。こういうことでは僕も納得できないのです。国会対策の一員としてそういう報告を受けて、そうしてきょう了承しておったのです。そこで官房長官は、これは百パーセントとは言えないが今週中にできるだけ努力いたします、こういうような答弁になっておる。ところが労働大臣は、日にちは言えないのだ、こういうことなんですが、日にちは言わなくても、今週中と言えばきまっておる。きょうは木曜日ですから、金曜、土曜とあと二日しかないわけでしょう。どうですか松野さん、主管大臣として一番あなたが主役を演ずるわけですが、見通しは、官房長官は、百パーセントと言わなくても努力したい、こうおっしゃったのですが、あなたとしては、今週中にその見通しはつきませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/143
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144・松野頼三
○松野国務大臣 一番問題は、先ほど大原委員にも答弁しましたように、国家公務員法であります。国家公務員法の主管は内閣であります。従って内閣の官房長官が今週中に出せると言われるならば、おそらく国家公務員法がそういうふうに進むということだろうと思います。従って、国家公務員で一番今問題が多い。その問題が解決するという話であれば、私の方はそれにおくれることはございません。公労法がおくれることはございません。要するに、国家公務員法よりも公労法がおくれることは、私はないと思っております。これは申し上げられる。しかし、国家公務員法がいつなんだということは、これは私の所管じゃないからわかりませんということで、今日答弁をやっているわけであります。従って、いわゆる国家公務員法の調整がいつごろできるということがきまれば、私の方は、もうそれとほとんど同時にきまるわけであります。その意味であって、私は、官房長官と同席をしておりませんし、その報告を受けておりませんから、官房長官がそういう報告だというなら、官房長官の力さえその通り促進されれば、私の方は少しもそれにおくれるようなことはせずに、一生懸命やります。まだその調整ができていないから、今大原委員と質疑応答したように、非常に不明確な答弁をしたわけであります。まだ官房長官からその報告を受けておりません。実は私は滝井委員のおっしゃったようなことを聞いていないのであります。帰ってさっそく聞きますけれども、そういう意味で、私は国家公務員法の問題がまだ終局に至っていないという報告を受けているものですから、その報告の内容に公労法を私は合わせているわけであります。ですから、言葉がどうのこうの——思想が違っているわけじゃありません。所管の内閣が国家公務員法はいつごろだ、こういう話ができれば、私どもはおのずから明瞭にそれを言える。私どもの方がブレーキをかけているわけじゃありません。国家公務員法の方がおくれているのですから、おくれている方が早くなれば、公労法はもっと早くなる、こういう意味で、答弁の精神はそこにあるのです。私の方がおくらすのだとか、お前の言うことは不明確じゃないかということは、国家公務員法の方さえ明確にしてくれるならば、私の方は明確になる。そちらの方は内閣でございますから——内閣は官房長官でございましょう。官房長官の進行というものが私の方にはまだ報告が来ていない。それで私は時期の明言を避けたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/144
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145・滝井義高
○滝井委員 それは私は、孤立した閣僚ならば、他と何も相談のない閣僚ならば、その答弁できょうは了承するのです。ところがきょうは、この委員会に来るのも、あなたがおくれておるというのは、私の方の報告には、大臣は今ILO条約についていろいろ党内の調整をやっておりますからという報告で、それで大臣はおくれます、こういうことだったのです。それから閣議も、あなたはいろいろ討議をして進行中だ、こうおっしゃるわけです。しかも国家公務員のもろもろの問題というものは、あなたの公労法関係に重要な一条についての関連を持っておる。こういうことなんですから、だから、当然あなたとしては、これは一番大事な労働問題の担当大臣として、党との話、あるいは閣議でも、一体いつきまるか、おれの方は君の方のきまり方によって、この一条だけできまるのだから、いつきまるかということは、当然あなたはお聞きになることが常識なんです。ほかがきまるまではわしの方は知らぬ、それは内閣の主管だからわしの方は関知するところではないということはいわれないと思う。というのは、重要な公労法、それと国家公務員法の一条について、それが関係が出てきておるわけですから、連鎖反応です。連鎖反応ということは、主管大臣は、他と連絡をしたり、催促をしたり、他の意見をきちっと確認をする必要があると思うのです。今のような答弁では私はこれは納得できない。そうなると、ここに官房長官を呼んでもらわなければならぬ。そうして官房長官の意見は一体いつなんだ、労働大臣はすぐできると言っておるのだが、あなたの方はどうだと、こう言わざるを得ないのですが、あなたが行って聞くよりか、八田さん、これは大事な問題ですから、官房長官を呼んで下さい。それはわれわれはそういう報告をきょうは受けているのです。それで、わが党はみな安心しておるのですよ。これはうまくいった、これで大体ILO八十七号の批准は、岸総理大臣も食言をやらなかったことになったのだ、あれだけ閣議でも強い発育をしたということが新聞にも出たのだからという、こういうことで、僕らはきょうは、それはよかったということで、国会対策の幕を閉じたのですよ。ところが今のあなたの答弁では、あなたにはまるで通知もなかったということでは、議運なり国会対策の委員長会談では、われわれはまるでペテンにかかったことになる。ですから一つこれは呼んで下さい。呼んで、松野さんはまだ連絡を受けていない、自分の方としては見通しがつかぬ、こうおっしゃるのですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/145
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146・大原亨
○大原委員 では見えるまで。労働大臣、一々私は申し上げませんが、ただ国家公務員法で問題となっているのは、A案、B案という専従制度の問題だ、こういうことです。A案、B案というのは、どっちが賛成か反対かということまでは言わぬけれども、しかし専従制度の問題について私が言ったら、あなたは専従制度についての制限の問題はILOには関係ないと言った。ILO批准に関係ないものについて延ばす理由にしておるということになる、逆に言いますと。私があげ足をとりますとね。これでもおかしいですよ。政府はずいぶん広範に関係しておる、関係しておるというので、ずいぶん、この機会に何とかしようというようなことが、ありありとあちらこちら見えておるから、労働大臣としては筋を通してもらいたい。そういうことでおくれるのだったら、労働大臣としても責任があるわけですよ。私はきょうはあげ足をとろうとは思わぬけれども、ちょっとおかしいですよ。専従制限の問題はILOの、どこにも関係しておりません、こういうことを言いながら、この理由によっておくれているのだということは、結果的に変じゃないですか。これはおかしいじゃないですか。労働大臣、あなたの答弁は語るに落ちるというわけで、あちこち、ずっと問題になっていることが一ぱい頭にあるものだから、ごっちゃになっていると思うのです。自民党の党員としても労働大臣としてもごっちゃになっているのだろうけれども、おかしいですよ。私の質問に対しては関係がないと言い切っておきながら、そうしてあちらを突き、こちらを突き、一ぱい突くから、労組の問題よりも広くなってしまったわけです。そのために批准がおくれておる。食言になっている。上旬というのは十日ぎりぎりですよ。初旬、中旬、下旬、こう言いましたらね。これはもう二つ食言じゃございませんか。私はあちこち聞いてみると、やはり官房長官というのは、大体どっち向いてものを言うのかわからぬけれども、状況からいったら、おそらくそれに対して、私は社会党、民社党の方も誤解したんじゃないかと思いますが、そういうことはいけませんよ。これは信義の上に立って——社会労働委員会、せっかくこんなにおそくなるまで協力をして、たくさんの問題を抱えて一生懸命やっておるのに、ああいうりっぱな委員長がすわっておるのに、いかぬじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/146
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147・松野頼三
○松野国務大臣 今専従の話で私答弁しましたが、専従をかりに改正してもILOの違反じゃない、私はそういうことをはっきり言ったのです。関連がないというのじゃない。あなたが、それじゃILO八項に違反じゃないか、こうおっしゃったから、それは絶対違反じゃありませんということを言い切ったわけです。従って関連がないじゃありません。関連というものは相当関連する、基本に触れております。四条三項的なものが基本ですから、これが専従問題に影響してくる。従ってその基本が影響するのですから——ただ私はそのILOの条項に違反じゃないのだ、こういうことを強く申し上げたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/147
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148・大原亨
○大原委員 労働大臣はまた大へんな答弁をしておられるのだな。ILOの八十七号条約を批准する際に、じゃあ専従制限を八十七号に抵触して、あるいは関連して、そうして八十七号批准の準備といたしまして、これに関連する国内法を整備するという原則の上に立って、専従がどこに理論的にも政策的にもつながってきますか。八十七号批准ということも、団結権の問題に関連して、どこが抵触してきますか、専従問題に。そういう問題は、あなたは逆の答弁をされているけれども、逆に私が質問したらあなたは説明できませんよ。自民党の中で政治的な問題として、実際にやられたことは知っている。しかしそれは八十七号条約を批准するために国内法を整備することには、論理的な関連はどこにもありませんよ。どこにありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/148
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149・辻英雄
○辻説明員 事務的な観点から関連を御説明いたしたいと思います。御承知のように、公労法について申しますと、公労法に四条三項がございまして、これは職員でなければ役員にも組合員にもなれない、こういう規定でございます。従来はそういう規定がございますので、部外から役員が出ることが法律上できないことになっておったわけでございます。そうでありますれば、いかなる意味におきましても、在籍のままの専従制度というものがなければ組合活動が実際上できない状態であったわけでございます。ところが今回、公労法について申しますならば、条約を批准するために四条三項を削除するということに相なりますれば、役員はどこからでも出られるということになるわけでございます。従来外から絶対にはいれなかった状態と、今後は中からでも外からでも自由に選び得る状態ということの違いが出て参るわけでございます。そういうことから専従制度というものが置かれた意味合いなり趣旨について検討を加える必要があるということは申し上げることのできることでございます。検討の内容の議論は、本日は別にいたしまして、検討を加えるべき余地を生ずるということだけは、これは間違いのないことであろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/149
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150・大原亨
○大原委員 あなたの言うのは、それは詭弁ですよ。そんないいかげんなことを答弁したってごまかせませんよ。そんなでたらめな答弁はないですよ。在籍専従というのは企業内組合から出た原則なんですよ。これはずっと制度的に見たらわかるんだ。GHQのやった制度で、わかるんですよ。役員を規制したりやったのはわかるんです。職員即組合員という原則にしても、政府は規制しようと思っているんだ。原則からいっても経過的にいってもそうですよ。そういうことをやりながら、ことさらこういう問題を持ち込んでいるんだ。つまり今でいえば、在籍者が組合役員をやった場合においても、組合活動をしたがために原則として不利を与えてはいけない。これは不当なる団結権の侵害になる。団結権の一つとしての役員の選出権に対する侵害になるんですよ。そういう議論も成り立つ。それはともかくといたしまして、組合の役員は職員でなくてもあってもよいというのがこれからの法則なんです。そうすれば、これは、専従制度の問題について八十七号条約を批准する必然性をもって論議しなければならぬということはないのですよ。これと並行してあるいは政策的にやるのは、これは別ですよ。この点についての問題は論議はいたしますけれども、八十七号条約を批准する際に抵触する法律といたしましては公労法、これは最小限度指摘しているんですよ。そのほかに登録とか団体交渉についていろいろ議論はありますけれども、今までの解釈は変えなければいけませんよ。その点については私はきょうは触れませんけれども、それはおかしいんです。八十七号条約を批准する際に専従を現状よりも制限しなければならぬ、あるいは廃止しなければならぬ、休暇を休職にしなければならぬという必然性は、どこにもないですよ。どこにありますか。国内における公務員の労働基本権の問題として、これはまだ議論する余地が十分あるのですが、そういう議論はどんな人がやったってありませんよ。今自民党の中で政策的に問題になっているのはわかりますよ。それで労働大臣は政党人でもあるから、頭を混乱さしているのはわかるが、労政局長がそういう政策的なものを持ち込んだりすることは審議を渋滞させますよ。一応別個に分けて政策なら政策の問題として論議しなさいよ。批准の問題に関連して論議しようとしたら混乱してしまいます。そうすると悪い議事録ができて、国際舞台において禍根を残すんですよ。あなたらのために注意しておくけれども、そういう議論は、議事録に載ったら困るんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/150
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151・辻英雄
○辻説明員 専従をどういたす、こういたすという内容を私の立場でただいま申し上げられる時期でございませんので、内容について申し上げることは考えておらないわけでございます。私が申し上げましたのは、専従をいじらなければ条約に違反する、いじったら違反するということでないということは、先ほど大臣からも御答弁申し上げておるわけでございますけれども、そうじゃなくて、四条三項を削って、従来は部内の者だけしか役員になれなかったという状態が、部内からも部外からも役員になれるという状態になったので、関連して検討の余地を生ずるということを申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/151
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152・大原亨
○大原委員 こういうように理解していいですか。ILO八十七号条約を批准するに際して国内法を整備する、そういう八十七日号条約に必然的に抵触する法令、準備段階として整備する法令ですね、そういうものに直接は関係ないけれども、これに関連して議論がなされているのだ、こういうように考えてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/152
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153・松野頼三
○松野国務大臣 ILOの批准の最小限度は、四条二項、五条三項の削除は絶対必要だ、その他これに関連する法規というのが答申の骨子であります。絶体に必要なのは四条三項と五条三項の削除だ、そのほかにこれに関連する国内法の整備、これが答申の二つの条項であります。これに関連するという、範囲の関連性というものがここで議論されるわけでございます。それが政府としては、専従もここでの関連だという判断をしておるわけであります。従って最小限度何だといえば、四条三項、五条三項及びこれに関連する法規なんです。その関連という中に専従が入るか入らぬか、政府としてはこれは当然入るのだという判断をしておる。労懇で入ってはいけないという議論はちっともございません。これは関連する中に入るのは当然であります。それで今回審議していただく。当然入るのです。入った結果どうなるかということ、これは結論が出ていない。入ることは当然専従問題が入るのです。入った結果、現状をどう変えるかというのは次の議論であります。そういう意味であって、全然関連がない、入ることがおかしいのだという論拠はどこにもありません。労懇の答申、審議の経過、どこにもありません。これは、当然入るのです。入った結果どうなるか、これは次の問題であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/153
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154・大原亨
○大原委員 最小限度の絶対的な条件の中には入らないけれども、関連をしているのだ、こういうお話なんですね。そういたしますと、まだあるのですよ。登録の問題とか団体交渉の手続の問題とか、これは具体的に条文に抵触するのです。今までの解釈をうんと変えなければいかぬわけです。きょうは基本的な論議はしませんけれども、むしろその方が関係するのであって、専従制限問題はILOのどこにも関係しないですよ。今言うたように、人事院の職員団体の登録とか団体交渉の問題等については、登録したものだけにそういう利益サービスを国が与えるというふうな問題に関しては、国の権力というものが不当に介入してはならぬという原則にも反するし、その他の条項にも抵触するのです。これはやはり抵触するというふうにいえる。解釈を変えるか法律を改正しなければいけない。将来抵触の問題が起きてきて、この問題は当然問題になってくる。しかし、専従制限の問題はどこに関係いたしますか。八十七号条約のどの条文に関係いたしますか。批准する八十七号条約からいってごらんなさい、具体的にどう関係がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/154
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155・松野頼三
○松野国務大臣 八十七号のどこに抵触するかといえば、四条三項、五条三項がどこに抵触するかということが議論の焦点であります。四条三項、五条三項が抵触するのならば、当然専従問題は抵触すると思います。そこで議論になるのは当然のことなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/155
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156・大原亨
○大原委員 どういうことで抵触するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/156
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157・松野頼三
○松野国務大臣 四条三項、五条三項の今日置かれておる制限というものは、専従と非常に密接な関係があるわけです。四条三項、五条三項があるから専従という問題にも関連があるのであって、四条三項、五条三項か八十七号のどこに抵触するかという議論を突き詰めていけば、当然専従が抵触する、抵触するという言葉は不穏当でありますから関連法規の中に入る、関連の中に入るということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/157
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158・大原亨
○大原委員 労働基本権はみな関係がありますよ。あるけれども、八十七号条約で具体的にきめておる問題に四条三項、五条三項は抵触するのです。専従制限の問題がどこに抵触しますか、具体的に言って下さい。具体的に課長から言ってごらんなさい。大臣の答弁は政治的な答弁です。これは学者もいろいろ論議したのだけれども、この問題は政策上の問題ではあるかもしらぬが、批准には関係ないですよ。私はその点についてはきょうははっきり答弁を聞きます。局長のかわりに課長が説明に来ているのだから、はっきり説明してごらんなさい。条約のどこに専従制限問題が関係するかということを言ってごらんなさい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/158
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159・辻英雄
○辻説明員 先ほどから申し上げておりますのは、四条三項を廃止することになれば、役員が部外からも部内からも入れることになるので、これに関連して専従の問題を検討する余地が生じてくるので検討をいたしておるということを申し上げておるわけでございまして、専従の規定とILO条約との規定の直接の関係はどうだという次の御質問がございましたので、ILO条約について、またその点今の問題とは若干離れますけれども、関連して御答弁をいたしたいと思います。
〔八田委員長代理退席、委員長着席〕
これは労使関係の自主運営、相互不介入ということをILO条約の趣旨というふうに労働問題懇談会の答申でも指摘をいたしております。そこで、そういう角度からも専従の問題が議論になってくるのは当然のことだというふうに理解をいたしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/159
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160・大原亨
○大原委員 あなたの答弁の趣旨は大体わかりました。わかったけれども、今までのやりとりを議事録で調べてみてやったらおかしいのですよ。四条三項、五条三項が抵触しているというのは、結社の自由及び団結権の擁護に関する条約の二条、三条の各条に抵触するのです。たとえば三条第一項には、「その規約及び規則を作成し、完全な自由の下にその代表者を選び、その管理及び活動を定め、並びにその計画を立案する権利を有する。」という条項へ抵触するのですよ。専従制限というものは自由に、自主的にやるという問題については抵触しないのです。むしろ組合活動のために代表者を選ぶというのは団結権の一つだから、仲間をだれにするか、自分たちの代表者をだれにするかということを権利の干渉なしに自主的にやらなければならぬというのが団結権の擁護に関するILO条約です。それに対して、専従制限をするというふうな問題は、他の国の労働慣行からは一応いろいろな議論は出てくる問題です。政策上の問題です。しかし、それはどこの条項に抵触するかというと抵触するところがないのです。あなたの言われる趣旨はわかるが、二段階に説明したから、その点については政治問題として、あるいは政策問題として論議されているところがあるのです。だから、そのために批准がおくれているというようなことについては、われわれは当然野党の立場からこれを法理解釈して、論理的に解釈していくから、国際問題としても当然やっていくから問題になるのです。大臣の答弁が前の答弁とあとの答弁がおかしいのじゃないか、こういうことを指摘したのだ。あなたの説明は条約に即していないのですよ。条文に即さないで、政治上、政策上の問題を役人が言っちゃいけませんよ。——それで官房長官はまだ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/160
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161・永山忠則
○永山委員長 今呼んでいるのですが……。
ではその間に、堤ツルヨ君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/161
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162・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 ちょっと労働大臣にきょうは私御要求をしたいのです。この前私が発言したときに、大臣がおられたかおられなかったか、私の記憶に明らかでないのですが、実はこういうことを基準局長にお願いしてあるのです。それは料理屋や料理旅館——大臣おられましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/162
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163・松野頼三
○松野国務大臣 おりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/163
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164・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 それから遊興飲食を中心とした歓楽街に働く女の人、それからバス・ガール、それから家事手伝い、女中さんと言っておりましたけれども家事千伝い、こういう人たちが全国で総数どれだけあるかということを、非常に見当はむずかしいでしょうけれども、基準局が出先の都道府県の監督署に指会をしていただいて、町村単位にまとめていただきましたら、大体管内の見当がつくと思うのです。その総数をまとめ上げていただくことと、それからもう一つはこの人たちが——なぜそういうことをお願いするかといいますと、今の労働基準法のもとでは、どうもその労働条件や賃金の問題において人権侵害とさえいわれるような悪条件のもとにある。これは一番わかりやすく例を申し上げますと、旅館に働く女中、これは夜明けの三時に起きている女中がございます。たとえば東京の上野、神田あたりの女中さんなどでは、修学旅行の集団か何百人と泊まっている。弁当を持って出かける、朝御飯を食べさせなければならぬ、こういうので、朝の三時に起きて、そうしてゆうべは夜中の二時に寝た。これはどうかというと、オール・ナイトでマージャンをするお客さんがあって夜食を出さなければならぬ、間食を持っていかなければならぬ、お茶を持っていかなければならぬというので、外国のホテルなんかと違って、日本の男性がしたいほうだいをなさるものですから、これは仕方がない。そこで、かといって、今までやっておった夜間の営業をさせないというわけにはいかない、女中さんたちを寝さしてしまって。ということになりますと、これは中小零細企業に入りますから、この人たちの水揚げを少なくしてしまってつぶすようなこともいけない。そういうことになりますと、どうもこれはいつまでたっても連続で、これは大臣も旅行先などで痛感していらっしゃると思いますが、私は全国至るところでこの十年間女中さんたちに聞いてみましたけれども、ひどいものです。このような条件で、働きながら昼何時間か昼寝ができるか、こういう質問をしてみますと、洗濯と掃除に追われて昼は寝るどころの騒ぎではない。給料はどうかと聞いてみると、最低の固定給がないところが八〇%、ほとんどはチップ制でございまして、観光シーズン——シーズン・オフになったようなときには、低いいなかの小都市では二、三千円の収入しかないときがある。多くて一万円、こういうような始末で、料理旅館の女中さん一つを例にあげてみましても、拘束時間はまさに二十時間をこえるのじゃないかというような労働条件のもとにある。この間労働省からちょっといただいた東京、神奈川を中心とする一万四千人の人たちの拘束時間のトータルを承ってみましても、大体十七時間拘束、これはひどいものでして、私は何とかしなければならぬと思う。少なくとも五十万以上は今申し上げたような婦人の勤労者がいると思いますが、この人たちを、窓口がないからといって、今働いている姿のままで捨てておくということは非常に問題だ。私どもの党といたしましては西尾委員長が非常にこれに関心を持ちまして、私も幾たびか相談をいたしまして、もし今の労働基準法の中で、この人たちの労働条件を人たるに値する、せめて労働基準法の基準のところに持ってこられないなら、賃金の問題にいたしましても、たとえば最低賃金の業者間協定、これを最低の線として、最低の固定給くらいは女中さんやあらゆる人たちに持っていけるような方法にいけないのならば、一つ単独立法をしなければならないのじゃないか、うちの党の婦人局で研究して、社会党、自民党の方々にも御同調を願えるように努力して一つわが党がやろうじゃないか、こういうようにやかましく言われておりまして、私どもといたしましては労働省からいろいろなデータをもらい、どうしても今の基準法の中ではやれないのだ、そしてほんとうにひどい境遇に置かれているのだという状態がはっきりして、救いようがないのならば、一つこの婦人週間に何とかしたい、こういう計画を持って資料をお願いしておるのでございますけれども、なかなか局長からこの資料が出てこないのです。私はこれは非常に大事な問題でございますので、一つ何とか労働省でも真剣に考えていただいて、かくかくしかじかの方法でこの人たちの賃金はまあまあとうなずけるものに持っていく。それからまたこの人たちの労働条件は、たとえば八時間拘束、実働六時間というふうに何とかきめさせるように業者に指示をする。それから女中さんや使用人を寝さしておる休憩場所のようなものにいたしましても、あらゆるところで増築、新築、改築をいたしておりまして、観光ブームに乗ったところなどではずいぶん派手にやっておるのでございますから、たとえば増室を二十室いたしますときには、その一室分を一年間その旅館の従業員の待遇改善に充てる。またもっと違う方法をいえば、二十室できた中の一室は、せめてよい部屋を従業員の寝室に充てるとかいうふうに、何か具体的な策が講じられないと、なかなか解決がつかない問題じゃないか。こういうふうに私は考えて資料を要求いたしておりますけれども、もうすでに婦人週間に入りまして、私が要求いたしましてからもなかなか出て参りません。これは婦人週間に時間を節約しようとか、やりくりしようといったところで、二十時間近くも拘束されておるような勤労婦人が、日本の社会に大体五十万から百万もあるのではないかと思いますが、これは非常な人権問題だと思う。真剣にこれは労働省でも考えていただいて——これは労働省の立場を攻撃するのでなしに、相寄って、国会と両方で何とかこの弱い人たちを持っていきたい、こういう気持でおるわけでございます。たとえば、バス・ガールの問題にいたしましても、幾たびか質問が出ましたけれども、バスに乗ってゆられておる時間だけが労働時間だと思いますと、これは大へんな間違いでございまして、前後に車を洗車いたしまして、金の勘定をして家路につくまでには、すでに十六、七時間たっておるような過激な労働に従事しておる人もあるということ、これは見のがせない問題でございます。家事手伝いをも含めて勘案いたしますときには、私は全国に百万はあるのではないかと見ておりますので、これは日本の大きな問題でございます。十八才未満の子供をかかえた未亡人、母子世帯が、大体百十五万世帯あるといわれておりますけれども、私はこれらの悪条件のもとに、特殊技能がなく、これより食っていく道がないというのでやむなくこの仕事に従事しておるけれども、とてもこの条件では人たるに値する生活ができないという条件のもとに置かれております。それから、もう一つつけ加えますと、歓楽街、たとえば銀座裏のバーだとかナイトクラブでありますとか、あるいはレストランなどに働いておる人たちの例をとってみましても、ことにバーなどに働いております人たちが、過労でいざ病気になって倒れた場合に、医療代はどうなるか、雇用の問題はどうなるか、それから非常に低いチップしかなかったときにどうなるか。こういうことになって参りますと、売春禁止法は通過いたしましたけれども、やむなく売春と結びつけなければ生活をしていけないというところの未亡人もあり娘さんもある。こういうような始末で、これがざる法であるといわれておるところの売春禁止法の実施を困難ならしめる一つの理由にあるいはなっておるのではないか、かように考えるわけでございまして、これらをひっくるめた人たちの数字などというものは、基準局長が全国に指令を出しますならば——私なら一週間あったら完全にまとめてみせるといって帰ってもらったのでございますけれども、いまだにその御報告がございません。かくかくしかじかの方法で労働省はしばらくやってみて、この人たちをこういう方法で今の法律の中で救ってみせるからという具体的なあれと、今までのトータルと実数を示してもらったら、私たちもあながち労働省いじめをするのではない。それから法の上に法を作るような悪い習慣を作っていくのじゃないから、救われるかどうかということについて一つ明確に答えてもらいたい。これはお願いしてあるのですが、参りません。婦人週間は一週間しかありません。きょうは十四日でありますので、これは労働大臣直接に督促をいただきたいと思います。この働く五十万ないし百万になんなんとする最も悪条件な、労働省が発表いたしておりますように、家族一人に対しまして三千円以下の低収入、つまり五人家族がございましたら、一万五千円以下のボーダー・ラインの人たち、低額所得者というものが大体百万世帯以上もある。こういうような現状を考えますときに、低い人たちをいかにして上げてくるかということが、私は完全な社会保障制度を作っていく前になされなければならぬところの基本問題だと思っておる。ですから、この谷間に残された人たちに属する婦人勤労者を、一つ労働省はことしは真剣に考えていただきたい。何年婦人週間をやってもらいましても、婦人週間に集まれるのは有閑マダムや非常に余裕のあるところの特定のインテリ婦人だけであって、実際は婦人週間であろうが何であろうが関係のないところの日の目を見ない人たちがあるということを、真剣に私たちも考えていきたいと思いますから、一日も早く提出されることを要求しておきたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/164
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165・松野頼三
○松野国務大臣 基準局長もちろん準備しておると思いますが、何せこれは統計的に非常にむずかしい問題でございます。しかしせっかくの御要求ですから、まとまった範囲内でも提出できるように、基準局長を督促いたします。全国は一週間や十日ではできないと思いますが、しかしまとまった範囲で、御報告できる範囲で、あるいは小部分かもしれません、一地方になるかもしれませんが、何らかまとまった範囲だけでも、急いで督促をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/165
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166・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 厚生省の環境衛生の方から出たところの、旅館営業組合あたりを中心としたデータから出された、よその省からもらわれた四府県を対象とした、東京、茨城、埼玉くらいでしたか、入っていましたが、これはあるのです。しかしこれはやっぱり全国的な分布というものを考えないといけませんので、一つ何とかよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/166
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167・滝井義高
○滝井委員 官房長官の出席要求をいたしましたが、行き先がわからぬそうでございます。われわれとしては、内閣はILOについては誠意がない、こう認めざるを得ないのです。そこで、私は今日の松野労働大臣の答弁を国会対策にも一応報告をして、なお必要とあれば、火曜日でももう一回官房長官の出席の一要求をして、批准の提出の時期等を明らかにしたいと思います。きょうは、政府の誠意のないという点だけを確認をしてやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/167
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168・永山忠則
○永山委員長 本日はこれにて散会いたします。
午後五時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404410X02919600414/168
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