1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年三月二十五日(金曜日)
午前十一時二分開議
出席委員
委員長 植木庚子郎君
理事 足立 篤郎君 理事 小山 長規君
理事 坊 秀男君 理事 山下 春江君
理事 山中 貞則君 理事 佐藤觀次郎君
理事 平岡忠次郎君 理事 廣瀬 勝邦君
押谷 富三君 黒金 泰美君
竹下 登君 西村 英一君
濱田 幸雄君 福井 順一君
細田 義安君 毛利 松平君
石村 英雄君 加藤 勘十君
神近 市子君 久保田鶴松君
堀 昌雄君 横山 利秋君
大貫 大八君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君
出席政府委員
法制局参事官
(第一部長) 山内 一夫君
大蔵政務次官 奧村又十郎君
大蔵事務官
(主計局次長) 佐藤 一郎君
大蔵事務官
(主計局法規課
長) 小熊 孝次君
大蔵事務官
(主税局税関部
長) 木村 秀弘君
大蔵事務官
(管財局長) 賀屋 正雄君
林野庁長官 山崎 齊君
建設事務官
(河川局次長) 曽田 忠君
委員外の出席者
大蔵事務官
(国税庁調査査
察部長) 竹村 忠一君
専 門 員 抜井 光三君
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三月二十二日
委員大貫大八君辞任につき、その補欠として中
崎敏君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員中崎敏君辞任につき、その補欠として大貫
大八君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十五日
委員大貫大八君辞任につき、その補欠として中
崎敏君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員中崎敏君辞任につき、その補欠として大貫
大八君が議長の指名で委員に選任された。
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三月二十三日
国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律
案(内閣提出第一〇九号)
国有財産法第十三条第二項の規定に基づき、国
会の議決を求めるの件(内閣提出、議決第一
号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案(
内閣提出第八号)
国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律
案(内閣提出第六六号)
国有財産法第十三条第二項の規定に基づき、国
会の議決を求めるの件(内閣提出、議決第一
号)
交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改
正する法律案(内閣提出第三九号)
関税定率法の一部を改正する法律案(内閣提出
第五一号)
関税暫定措置法案(内閣提出第五二号)
治水特別会計法案(内閣提出第七〇号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/0
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001・植木庚子郎
○植木委員長 これより会議を開きます。
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去る二十三日付託になりました国有財産法第十三条第二項の規定に基づき、国会の議決を求めるの件を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/1
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002・植木庚子郎
○植木委員長 政府より提案理由の説明を求めます。大蔵政務次官奧村又十郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/2
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003・奧村又十郎
○奧村(又)政府委員 ただいま議題となりました国有財産法第十三条第二項の規定に基づき、国会の議決を求めるの件につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
本案は、両陛下の御住居を皇室用財産として皇居内吹上に新営しようとするものであります。現在御住居となっております御文庫は、戦時中防空施設として作られたもので、御住居としては適当でないと考えられますので、御文庫に連接して鉄筋コンクリート作り二階建延べ四百十坪の御住居を増築しようとするものであります。その間取り及び設備は、一階には居間、書斎及び書庫、食堂、談話室等のほかサンルームを設け、二階には御寝室、御召しかえ所、納戸等を設け、また南面してバルコニーを設ける設計でありまして、装備としては、冷暖房設備、電気電話設備、ガス設備等のほかエレベーターを設備する予定であります。
以上御説明申し上げました通り、皇室用財産の取得の必要があるわけでありますが、そのためには国有財産法第十三条第二項の規定により国会の議決を経る必要がありますので、ここに本案を提案した次第であります。何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛成の議決あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/3
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004・植木庚子郎
○植木委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/4
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005・植木庚子郎
○植木委員長 関税定率法の一部を改正する法律案、関税暫定措置法案、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案、治水特別会計法案、交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案及び糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案の六議案を一括して議題といたします。
質疑の通告があります。これを許します。堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/5
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006・堀昌雄
○堀委員 ただいま議題となっております関税定率法の改正に関連をいたしまして、本題はあとで触れることといたしまして、過般来、当委員会におきましても、あるいは参議院の大蔵委員会におきましても、問題となっております関税定率法第二十一条に関連する問題について、少しお伺いをいたしたいと思います。
本日は、法制局にもお越しを願っていろいろと論議をいたしますが、大臣が私どもの論議を聞いていただいた中で、一つ大臣としての見解を明らかにしていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。
まず最初に、現在輸入映画につきまして何らかの検閲類似行為が行なわれておるということは、すでに昨年の委員会におきまして、その取り扱いを慎重にするようにという決議がされておるのでありますけれども、一体これはどういう法律的根拠に基づいて行なわれておるかを、一つ説明員でいいですから聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/6
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007・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 輸入映画につきまして検査をいたしておりますのは、関税法第六十七条に「貨物を輸出し、又は輸入しようとする者、政令で定めるところにより、税関に申告し、貨物の検査を経て、その許可を受けなければならない。」というのがございまして、この関税法第六十七条の規定に基づいて検査をしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/7
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008・堀昌雄
○堀委員 そういたしますと、関税法六十七条の規定によってやっておる検査の内容といいますか、それはどの範囲にわたるのか。たとえば申請されたものがそのものであるということを認定するための検査であるのか。その申請されたものに該当しておるかどうかというような認定も入るかと思いますけれども、検査というものは、はっきりした一つの線があって、これに該当しておるか該当していないか、こういうことを行なうのが検査だと思いますが、大蔵当局はそういうふうに理解しておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/8
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009・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 関税法にいう検査と申しますのは、その物品が申告されたものと同一の品名、同一の品物であるか、あるいは数量に間違いはないかどうか、あるいは価格が申告された価格相応のものであるかどうかというようなことを主といたしまして、そのほかには、たとえば他法令に触れる品物でないかどうかというような検査も含むわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/9
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010・堀昌雄
○堀委員 法制局にお伺いいたします。ただいまこの問題は関税法六十七条による検査行為として問題を処理しておるという答弁がありましたが、その検査行為というものは、私が今申し上げたように、それがそういう申請したものに該当するかいなかを決定するだけの範囲しか権限はない、というふうに私は理解するのでありますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/10
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011・山内一夫
○山内(一)政府委員 その点は、今木村政府委員からお答え申し上げましたように、他法令で輸入を許可されないものがあるのでありますが、当該の輸入を申請されたその貨物の内容が、他法令で輸入を禁止されておるものに該当するかどうかも、六十七条の許可をする際の検査の対象になると私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/11
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012・堀昌雄
○堀委員 他法令という表現よりも、関税定律法第二十一条第一項の規定に当てはまるか当てはまらないかという、ただそれだけですよ。イエスかノーかということにしか運営できない非常にシビアなものだと考えますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/12
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013・山内一夫
○山内(一)政府委員 定率法第二十一条一項の各号の要件というのはシビアに解する、当該物件がそれに該当するかどうかをシビアに解するという堀先生の御意見は、私もそのように了承しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/13
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014・堀昌雄
○堀委員 私がシビアにと申したのは、一つの線がどっかにあって物事を判断するのですから、検査というのは判断事項ですから線がある。この線の上か下かということをシビアにきめるのであって、幅がないのだということを私は言いたいわけですよ。イエスかノーかということだけが検査行為だ、こういうふうに私は理解するが、法制局はさように理解されるのか、こういうことをお伺いしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/14
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015・山内一夫
○山内(一)政府委員 イエスかノーかということをもう一度お伺いをいたしたいと思いますが、定率法第二十一条一項各号に該当するかどうかについてのイエスかノーかという、そういう意味での御質問なら、今おっしゃた通りだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/15
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016・堀昌雄
○堀委員 そこで、もう一つ法制局にお伺いをしておきたいことは、法律の適用については行政行為は厳に法律の範囲を越えてはならないと思いますが、これはしょっちゅうここでも論議をするし、文教でも論議をしてきましたが、そこはあなた方の方はやはり幅の狭いものと考えておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/16
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017・山内一夫
○山内(一)政府委員 そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/17
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018・堀昌雄
○堀委員 そういたしますと、これは仮定の事実になりますけれども、ある輸入会社がある映画について輸入の申請をして、これが税関で六十七条によって検査を受ける。そうすると、検査を受けた場合に、皆さん方の方では、特に問題になっておりますのは、「公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品」というものを輸入してはならないという第一項の規定によって検査をして、これは風俗を害するという判断をしたといたしましょう。そうすると、あなた方の方は、東京税関長達によってできておるところの輸入映画審議会規程というものを持った審議会にかける。この審議会は目的の第一条が「この規程は、輸入映画の関税定率法第二一条第一項第三号該当の有無に関する判断を適正ならしめることを目的とする」こういうふうに書かれまして、そうして五条に、「税関長は、輸入映画が関税定率法第二一条第一項第三号に該当するおそれがあると認めるときは、同条第二項の処置をとる以前において、審議会に諮問するものとする」こういうふうに書かれている。法律上も、関税定率法二十一条は「左の各号に掲げる貨物は、輸入してはならない。」これは禁止規定です。二番目は「税関は、前項各号に掲げる貨物で輸入されようとするものを没収して廃棄し、又は当該貨物を輸入しようとする者にその積みもどしを命ずることができる。」法律によって定められておる行政行為の範囲は、該当するかどうかという判定が行なわれた後において許されておるのは、第二項に基づいて没収して廃棄するか、もしくは当該貨物を輸入する者にその積み戻しを命ずるか、この二つしかない。それ以外の行為は法律によって全然認められていない、私はこういうふうに理解するが、よろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/18
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019・山内一夫
○山内(一)政府委員 そこは若干の説明を要しますが、今の関税法六十七条の許可制というのは、先ほど申し上げましたように、関税の賦課の実効性を確保するところの検査以外に、他法令で輸入を禁止されたところの物件がある場合に、その当該の輸入申請のあった貨物がそれに該当するかどうかを六十七条によって検査をする、該当すればそこで六十七条の線で不許可処分をすることになるわけでございすまるが、そこで、今の堀委員の御質問は、二十一条二項の行政処分がどういう形で出てくるかというように私は理解するわけです。そこで、二十一条二項の処分は、今お読み上げになりました通り、非常にそこに裁量の幅ができるというような表現で出ておるようでございまするが、私どもといたしましては、これは没収して廃棄し、またせっかく港に来ましたものを積み戻しを命ずるという、非常に相手方にとって不利益な処分を与える権限になっておると思います。そこで、その権限と申しまするのは、六十七条で通常のルートによって輸入してくれという許可申請をして不許可処分があった場合には、それは自発的に持ち帰る、こういうような普通の輸入者の手続に乗ってくるところの品物につきまして、二十一条二項の、あえて言えばドラスチックな処分を直ちにするということはできない。二十一条二項の処分といいまするものは、関税線の許可を受けないで突破する危険性のあるものについてのみ、二十一条二項の処分が緊急的な事態に対応するための措置として認められると私どもは理解をしておりますから、そういう限度にしか二十一条二項の処分はできない、かように考えておるわけであります。先生の御質問とちょっと違った面でお答えいたしましたので、はたしてお答えになっておるかどうかわかりませんが、重ねて御質問があればお答えいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/19
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020・堀昌雄
○堀委員 今のお話は、だいぶ私は理解できないのです。大体行政行為は法律にある規定の範囲で行なうというのが限度だ。そうすると、まず第二十一条で規定をしておるものに該当するかどうかという判断は、なるほど関税法六十七条の検査によって行なう。そこまではよろしい。該当するという認定が一応出た、認定が出たら、次に、前項各号に掲げる貨物で輸入されようとするのは——片方は輸入しようとする意思を持ってやっておるんです。——輸入されようとするものは没収して廃棄し、または当該貨物を輸入するものにその積み戻しを命ずることができるとあるだけで、その他のことをやってもよろしいということは書いてない。それをはさみを入れて適当にやれということは全然書いてない。そうすると、この間もここで行なわれた論議ですが、要するに法律において何も書いてなかったから何でもできるということにならないで、行政行為というものは少なくとも法律に書かれた基準の範囲において行動する。そうなると、憲法問題というのはあとにあるんですが、憲法問題の前に、現在の輸入審議会におけるこの行為は、関税定率法二十一条を適用しておるのではないということに、今のお話の中からなる。ということは、一項ではっきりきまったものは、二項の行政処分をするということが関税定率法二十一条の趣旨です。これがいいか悪いかということは別問題で、あとで論議しますが、この法律がある限りは、そういう解釈をしなければならないのであって、今あなたがおっしゃったように、これは密輸その他正当なルートを通らないで出てきたものに対してこの処分があるという、そんな法律解釈はない。左の各号に掲げる貨物は輸入してはならない、さらにそれを輸入するものはこうするのだと書かれているので、これは密輸だったら適用するが、正常ルートの輸入には適用しないということは、この法律のどこにもないのです。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/20
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021・山内一夫
○山内(一)政府委員 それは、六十七条で「貨物の検査を経て、その許可を受けなければならない。」というふうに書いてございますので、その検査の結果、輸入してはならないという品物に該当すると見ますれば、税関は不許可処分を与えるということは、六十七条の解釈から当然出てくるわけでありまして、それで不許可処分がありますれば、これは国法上入れない品物だなということを申請者が考えまして、そうしてその輸入の意思を放棄しまして、それで普通は、元の積荷港と申しますか、外国なら外国に帰っていくわけであります。こういうものについて追っかけていって、定率法二十一条の二項の処分を直ちにするのはいかにも条理に合わない、そういう意味で私は申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/21
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022・堀昌雄
○堀委員 そういたしますと、関税法六十七条で許可をしない。許可をしないということは当然自動的に帰るということであって、あなた方の方は、処分をして帰すということじゃないけれども、自動的に帰るのだ、こういうふうに確認してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/22
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023・山内一夫
○山内(一)政府委員 もちろん、その不許可処分に対して異議がありますれば、関税法の訴願手続、あるいはそれに不服の方は裁判所に行政事件訴訟を提起いたしますけれども、その税関の不許可処分に納得がいく輸入者というものは、普通は持って帰る、こういう意味で持って帰るというふうに申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/23
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024・堀昌雄
○堀委員 そうすると、ともかくも業者の方がそういうことで輸入ができないのだということになれば、あくまで輸入したい場合はもちろん裁判もありましょう。しかし、ほっておけば行政行為としては積み戻しなんだ。いいですね、それは間違いありませんね。自然に帰るのだ。業者が無理にやるときは裁判をやる。しかし、やらないときは、不許可になれば積み戻しだ。そうなると、行為として積み戻しになるものを、おい、ちょっと待てといって、税関が——さっき私は達を読み上げましたけれども、達にはこういうふうに書いてあります。「税関長は、輸入映画が関税定率法第二一条第一項第三号に該当するおそれがあると認めるときは、同条第二項の措置をとる以前において、審議会に諮問する」こういう達を出している。あなたの話は、不許可になれば自動的に積み戻しなんです。ところが、関税の達は、おそれがあると認めるときは、第二項の措置をとる以前において、審議会にかけるといっている。明らかにここでは第二条の審議会にかけるのだという意思を明らかにしておるじゃないですか。この達が日煙っておるのですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/24
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025・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 これは、輸入映画審議会にかけます場合は、公安風俗を害するフィルムであるかどうかということを確認するのに、慎重を期する意味でかけるわけでございまして、かけた結果公安風俗を害するフィルムだということが確定されますと、税関といたしましては、もちろん不許可処分にして、積み戻しを命ずることができるわけでございますけれども、しかし、もし輸入業者の方で税関の認定に間違いないということを納得しまして、そうしてこれをみずから積み戻すなり、あるいはそこで廃棄してしまうということがございましたならば、そういう業者の発意による処分というものをも任意的に税関としては認めているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/25
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026・堀昌雄
○堀委員 今のは答弁にならない。第五条に「輸入映画が関税定率法第二一条第一項第三号に該当するおそれがあると認めるときは、同条第二項の措置をとる以前において、審議会に諮問する」と書いてあることは、要するにこれは第二項の措置をとるということが前提であって、今法制局の部長が言われたように、不許可になったら自然に積み戻しをされるという問題とここはつながらないのです。この達の内容は、明らかに関税定率法のこの思想に基づいて処分をする前に、ここで調べますといっておる。あなた方の答弁はどこか食い違っておるのじゃないですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/26
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027・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 もちろん法律によりましてそういう積み戻しを命ずることはできるわけでございます。しかし、公安風俗を害するという認定がなされました場合に、税関としては必ずそういう処置をとるのだということでございませんで、業者が自発的に積み戻しをするあるいは廃棄をするという申し出がありました場合は、それをも慣例上認めておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/27
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028・堀昌雄
○堀委員 それでは答弁にならないと言っておる。この達が間違っておるなら、あなた間違っておると言いなさい。それでいいじゃないか。こういう達を出したことが間違っておる。あなたの方は、関税法六十七条に基づいてあとの処理をするためにかけるというなら話はわかるけれども、こういう間違ったことを達で出しておいて、ここでそれをごまかそうとしたって、私は絶対にごまかされぬ。それでは、法制局に、私の言っておることが正しいのか、政府委員が間違っておるのか正しいのか、聞かしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/28
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029・山内一夫
○山内(一)政府委員 実は、今定率法の二十一条の一項三号に該当するものが現実問題として輸入できないという事態は、先ほどから申し上げました通りに、不許可処分というような通常のルートが一つあるわけでございます。それからもう一つは、そのルートに乗ってこないで線を突破して入るという、その二つの考え方がある。そこで、今の通達は、線を違法に突破して入るものについても、これについては先ほど申し上げました第二十一条二項の処分権限が発動できますけれども、その前についても今の審議会にかけるという、その面をおそらくは言っておられると思う。もう一つ普通のルートに乗ってきまして、不許可処分をやる場合についても、今の審議会にかけるという——現実に税関がかけておられるわけでございまするが、その点で一方の部分しか書いてない。その意味において、審議会にかける部分が二項の処分だけに限定するように読み取れるということは、私は確かに不備だと思います。ですから、普通のルートの不許可処分をする場合にも、むろん今の審議会にかけるという趣旨に通達は読むべきであろう、かように考えるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/29
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030・堀昌雄
○堀委員 実態を申し上げると、あなたがおっしゃるように問題が二つある。密輸を目的としたわいせつの映画というものがある。これと、芸術品というか、一般のものであって、たまたまその内部にこういうものに該当する部分があるものがある。正式のルートで入るものと、密輸の格好で入るわいせつを目的としたものと二つある。あなたは、その二つとも輸入映画審議会にかかるから、こういう規定が設けられておるのではないかとお答えになった。ところが、事実わいせつを目的とした密輸の映画は輸入審議会に全然かけないのです。そうして正規のルートによるところの映画しかかからない。要するに、あなたが言った六十七条の検査行為によって不許可にするという範囲で、それ以上行政処分をしようという積極的な意図を持たない部分だけがここにかかるということになっておるにかかわらず、規定はこういうことになっておるということになれば、この達はおかしいのじゃないか。あなたは今二つを含んでおるからこういうこともあり得るということですが、肝心の密輸を目的としたわいせつの映画はこの中に入らないということがはっきりしたら、こういう達は誤りじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/30
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031・山内一夫
○山内(一)政府委員 今の堀委員のおっしゃった、明確にわいせつである、こういうものと、チャタレイ裁判なんかで御承知のように非常に認定がむずかしいものと、わいせつ物につきましても常識的に言って二色あると思いますが、非常に明確にわいせつであるというものは、私が税関当局の今のお取り扱いを伺っている範囲におきましては、これはとてももうわいせつであってだめだ、こういうふうに言われて、それで不許可処分という意思を表示された。それで、これはなるほどそうだというので、輸入してこようとされる方が放棄されるなり何なりして、そこでもって問題は解決するように私は考えております。だから、明確にわいせつのものが六十七条の不許可処分の対象になっていることは私は現実だと思う。それからもう一つ、やはり認定のあるものについては、実際問題として税関当局のお取り扱いで一番問題になりますので、そういうものについては特に審議会にかけているというわけだろうと思うのでございます。それで、明確であるかどうかというのも、現実問題としてはかなりそこでは争いの起こる問題だろうと思います。ですから、やはり輸入者がこれはわいせつに該当しないんじゃないかというふうに主張されれば、税関のお取り扱いとしては、やはりそれも審議会にかけるべき筋合いのものではなかろうかというふうに、私は考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/31
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032・堀昌雄
○堀委員 私の質問に答えてもらいたい。私はそんなことを聞いてない。あなたはさっき、この第五条に、第二項の措置をとる以前において審議会にかけると書いてあるのは、明らかにわいせつであるというものも含んでおると思うから、輸入映画審議会にかかると思うから、そういうものに対してこういうような条項があるのじゃないかと答弁しているわけです。だから、そういうものは輸入映画審議会にはかからないのだ。これははっきりしているんですよ。常識で考えたって、どこの国でも、いわゆるエロ映画というようなもの、それを目的としたものが正当なルートで輸入されるはずはないじゃないですか。だからこれは密輸でいくものです。これを発見した場合には、これまでこの輸入映画審議会にかけてないということを説明員から私は前に聞いている。ここにかけているのは、一般の興行用の映画に入るものについて疑わしきものをかけております。あなたはそういう疑わしきものについての部分は検査行為の方で不許可にして、それはその形で積み戻しになるという形態であって、第二条を発動する意思は初めからないのだ、そう言っているにもかかわらず、そういうものしか扱わないのに、達は、第二項の措置をとる以前において審議会に諮問するというふうな扱い方をしておる。これは法律的におかしいものだということを言っている。法律的におかしいのか、おかしくないのか、そこだけ答えて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/32
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033・山内一夫
○山内(一)政府委員 二十一条の二項だけを引用したのは、私もやはり引用条文としては足りないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/33
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034・堀昌雄
○堀委員 足りないのではないんじゃないですか。二十一条の第二項の措置をとる以前において審議会にかけるというこの書き方は、誤っているんじゃないですか。足りないんだったら補足するんですか。補足するならどういうふうに法制局は補足するか言って下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/34
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035・山内一夫
○山内(一)政府委員 不許可処分にする場合または定率法二十一条二項の処分を発動する前にこういうふうにやるのが一番正しい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/35
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036・堀昌雄
○堀委員 どうもおかしいですね。あなたそうこだわることはないじゃないですか。ほかの委員もお聞きになっていたらわかると思うのですが、私は一つも無理を言ってない。ともかくもあなたは初めから順序で聞いたら、定率法第二項というものは当然わいせつだと思われるものに対してやるのであって、それ以外のものは、できるだけそういう形でなしに関税法六十七条をやって、そうして自発的な処置を求めるのだとあなたが言っている限り、自発的処置を求めるような品物しかここでかからないのに、それに関税定率法第二十一条第二項を措置する以前においてやるのだということをここに書く必要は何もないのであって、それはすなおな形で法制局はこれはおかしいと言うのが当然だと思う。私は去年、一昨年文教でもやっているけれども、これはそういう点で白いことは白い、黒いことは黒いと言ってもらわぬと、常に何か付録がついているわけだな。悪いように思うけれども、しかし何とかでございます。——そういうことでなくて、やはりいいことはいい、間違っていることは間違っていると筋道を通すのが、私は法律の解釈じゃないかと思うのですが、どうでしょうか。あくまでもやはりこれがなければいかぬですか。この第二項の措置をとる以前において、これがなければいかぬですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/36
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037・山内一夫
○山内(一)政府委員 本流と申しますか、確かにそれは私は六十七条の不許可処分に対して審議会を開くべきものだと思います。ただ二十一条二項の線が全然出ないかというと、やはりそこに若干は、二十一条二項の処分をとる場合が、どうも私はあり得るんじゃないかというふうに思いますので、根拠としては、もしも審議会を活用されるという大蔵省御当局の方針でありますれば、やはりこう解釈した方がいいんじゃないか。もう一回申し上げますが、本流はやはり六十七条の不許可処分が本流だ、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/37
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038・堀昌雄
○堀委員 まあ、ここだけ論議したってしょうがないから、ここのところはやめて次にいきますが、私はこれはおかしいと思うのです。ということは、私はありていにこの関税定率法二十一条を読んだんですね。読んだら、これはやはり問題が起きたものは没収するか積み戻しするという規定になっているんですよ。なっているんなら、これはこれでいいと思ったんだ。ところが、聞いてみると、これでやりませんと言うんですね。六十七条でやりますということを、税関部長の方では言うわけだ。六十七条でやるということになったら、今度こっちがおかしくなる、こういうことであって、どっちかこれは筋道を通さなければいかぬですよ。法律に基づいて、その範囲内で行政行為として行なえということを言っておることは、どっちの筋なのか。それを、こっちの筋でもあるようで、こっちの筋でもあるようで、適当に答えようなんという態度は私はとらぬ。だから、シビアにずばっとこういうことを最初から聞いているわけです。だから、私は、これを書いた建前は関税定率法によるという建前で書いた、しかし、これが論議をされてきて、どうも実態との関連で見ると、六十七条を適用しているという形の方が無難じゃないかという、あなた方の見解に基づいてそういう答弁を最初にするから、ここでひっかかってくるということになるんじゃないか、私はこう思うのです。これはよろしい。
次にもう一つ、これは法制局の方に伺いたいのは、検閲というのはどういうことを検閲というんでしょうか。一つ法律的な解釈を教えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/38
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039・山内一夫
○山内(一)政府委員 これは、ある思想といいますか、ある内心の考え方をものに表明したものを社会にずっと広める、その場合に行政機関がそれをいいか悪いかという形で見て、そうして悪いと思うとその頒布を差しとめる、そういう制度——この現実の制度は多少方法が違いますけれども、大ざっぱにいいますと、そういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/39
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040・堀昌雄
○堀委員 そうすると、検閲というのは、行政機関が表現の自由に関して承る制限を加える場合、こういうふう理解してよろしいですね。そこで、憲法第二十一条第二項に「検閲は、これをしてはならない。」こういう規定がある。第二十一条「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」二項「検閲は、これをしてはならない。」そこで、まず表現の自由の問題は、これは憲法解釈としていろいろ問題があるところだと思うのですが、表現の自由というものには私は表と裏があると思うのです。だれか作者が何かの思想なりいろいろなものを表わすという形の表現の自由がある。しかし、これはだれもいないところで、一人も人間のいない島の中で幾ら表現の自由をやってみたって、だれも見る者がなかったら、それは表現じゃないんですね。自分一人でやっているんじゃだめだ。これは見る人があって、それを見るなり聞くなり読むなりする相手方があって、表現というものは成り立つのです。そうすると表現の自由の中には二つある。製作者というか、作者の側の表現の自由と、その表現の自由を受け取るこちら側の自由をも含めて、憲法は「表現の自由は、これを保障する。」こういうふうに規定をしておると私は考えますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/40
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041・山内一夫
○山内(一)政府委員 堀委員のおっしゃる通りだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/41
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042・堀昌雄
○堀委員 そういうことになりますと、映画が輸入されてくる。ちょっと論旨を整理しておきますが、密輸その他の目的で、要するに明らかにわいせつを目的として入ってくるものは、私は論議しない。そんなものは表現の自由ということにはならぬと思う。これは厳密に法律的にはどうか知りませんが、常識的にはそこまで憲法が表現の自由を保障しておるとは私は思わない。常識の範囲として、一般のものが輸入される。そうすると、今は行政官庁がそれに対して明らかに制限を加えておる。制限を加えて、ものがそこでカットされて入るという行為、これは憲法二十一条に抵触しないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/42
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043・山内一夫
○山内(一)政府委員 結論から申し上げれば、私はこの場合はしないと思います。その御説明はかなり長くなるから、最初は簡単に申しますが、今、先生は映画を例におあげになりましたから、それについて申しますが、わいせつであるかどうかということは、国内法でも刑法百七十九条でございますか、これによって制限されておる。わいせつの中には、だれが見てもわいせつだというものと、見方によって、ある人は芸術作品である、また他方の人はわいせつであるというふうに、認定に困難な問題もあると思います。これはチャタレイ裁判なんかを通じて御承知の通りだと思います。そこで、わいせつであるということは一つの認定の問題でありますから、これを税関が関税法六十七条で不許可処分の形でチェックすることは、確かにおっしゃるように検閲に該当するのではないかという疑問が起こるのは当然で、われわれもそれを非常に重視してはおるわけでございます。そこで、どうして今みたいなこういう制度になっているかと申しますると、輸入というものは当然国外から行なわれるわけですが、国外から行なわれる場合におきまして、国内のわいせつ物なんかの頒布とは違った事情があるわけでございます。と申しますのは、外国に対してはわれわれの統治権は及んでおりませんから、どこでわいせつ物が作成され、いつ日本のどこにそれが入れられるからということについては、われわれの捜査関係というものは全然予測がつかないわけでございます。つかないから、わいせつ物ならわいせつ物に該当するものの輸入も、検査制度を設けないといたしますれば、非常に容易になるわけであります。もう一つは、輸入される場合には、関税定律法二十一条一項の罰則の予防的効果というものは、外国にあるものに対してはわが国の警察権は全然及びませんから、及ばない。それから、もう一つは、外国にあるわいせつ物に対しては、差し押えなり没収ということは、国内の場合と違って全然及ばないわけでございます。そこで、定率法二十一条一項の禁止規定を前提とする限りにおきましては、どうしても検査制度というものを設けまして、入ってくる品物が二十一条一項各号に該当するかどうかということを検査せざるを得ないわけです。検査をした場合に、行政処分として不許可にするということは、行政機関がそこで表現の自由を押えたのではないかという疑問が出てくるわけでございますが、税関で検査をして、これがわいせつ物に認定したと考えられます限りにおきまして、これをそのまま入れるということをいたしますれば、入れてすぐ二十一条一項に対する罰則を適用する、考え方としてはこういうふうになってくるわけであります。というのは、検閲をしないという考え方で入れておいて、それを罰するというような法律の体系を作らざるを得ないと思うのでございますが、もしかりにそういう制度にいたしますと、輸入者は非常な危険をもって関税線を突破したときにつかまえられるということになります。ですから、一応検査するということを前提といたしますれば、そこで一応不許可処分にしておいて、その不許可処分の違法であるか適法であるかを裁判所で争うという制度が、輸入者の方にとって負担が軽くて危険がない。そういうことを前提といたしますと、今の六十七条の不許可処分ということは私は違憲ではない、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/43
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044・堀昌雄
○堀委員 大蔵大臣にお伺いをいたします。
法制局の今の答弁は私は答弁になっておらぬと思うのです。なぜかというと、表現の自由というものについて、法制局は明らかに見る者の表現の自由を認めている。作る者の表現の自由と見る者の自由、それは外国から入ってこようと何しようと、われわれ国民はある一つの表現物を見る自由が憲法で保障されている。検閲行為というものは、そういう表現の自由に対する行政官庁のある一つの制限行為だということがはっきりしておれば、憲法二十一条は検閲してはならないと書いてある。どっちにしても、この問題は、憲法上の論議としては、この前参議院でいろいろお答えになっているものを私はずっと読みましたけれども、その後御検討を十分されていると思いますが、この規定は憲法二十一条との関連ではきわめて不十分な規定であるというふうに考えます。今、通してしまったら困るじゃないかということに対しては、わが国では、映画につきましては映倫という機関がありまして、国内の映画も外国映画もすべてここへかけて、風俗を害するおそれのないような取り扱いを自主的に行なっております。そうすると、一回税関がはさみを入れようと入れまいと、映倫が自主的に処理をして大衆のところへ出すという制度があるにかかわらず、この規定を常に適用して、どうしても検閲行為をしなければならぬかどうかということは、事実問題として私は疑義がある。法律問題としても疑義があり、憲法上の問題としても疑義がある。こう、きわめて疑義の多いものについて、現在の憲法の精神というものは、国民の自由なる意思によって、いろいろお互いが話し合って、そういうことを制限することを妨げていないわけです。行政官庁がそういうことについて介入することを強く否定している。この憲法の精神から見ても、私は自主的な機関にまかせるという形にこの法律条項を改正さるべきだというふうに考えますが、大臣のお答えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/44
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045・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 先ほど来質疑を伺っておりましたが、私も法律家でないものですから、どうもお話の点がぴんとこないものもあるのです。法制局からは専門のお答えをしたように思いますが、そこで、実際の問題として、今大蔵省が出しております政令、これが一体どういう役割を果たしているのか。この政令の第五条についてのいろいろの御意見でございましたが、第一条で申しておりますように、この達の使命とするところのものは「この規程は、輸入映画の関税定率法第二一条第一項第三号該当の有無に関する判断を適正ならしめることを目的とする。」この目的のもとに実は設けたものであります。従いまして、成規の手続をとって輸入の許可の申請をした、税関吏がこれを見まして、これはやや問題がある、こういう場合に、自分一個の判断でなしに、やはり設けられておる委員会にかけて、委員会の審査の結果二十一条第二項の処置をするかどうかをきめるということを実は達できめておるのだ。この達自身は、そのまま表現の仕方で、二十一条第二項をする前にとかということが適当かどうか、それは別でございますが、この達の目的は、はっきり第一条で明示しておるこの趣旨にほかならないのでありますから、実際の処理としては、法律でどう書いてあろうと、これはやはり、当該官吏だけの独断でなしに、第三者を交えての学識経験者の判断に待って、しかる上で第二十一条に該当するかどうか、これをきめるべきが適当な実際の処置ではなかろうかと思います。
ところで、ただいま御議論になっております憲法上の問題でございますが、憲法における自由というものは、自由に関する規定は、ただいま御指摘になりました二十一条ばかりではないと思います。あるいは十二条、十三条等の規定もございますが、おそらく公共の福祉という制限はいかなる場合においてもあることだし、またいかなる場合においても権利の乱用をしてはならないということだ、かように私どもは憲法を理解しております。従いまして、ただいまの輸入映画についての御意見などを聞いて、そうして、検閲をしてはならない、表現の自由を拘束してはならない、これだけの御議論で憲法を解釈されることは、少し疑義があるのじゃないか。賛成しかねる。これは、私自身憲法学者じゃございませんから、その点は、最初お断わりしたように、やはり十三条、十二条の精神、権利の乱用は認められないという原則があり、やはり公共福祉のためには制約を受けるという問題がある、この二つはいかなる場合においてもあることである、かように私は解釈すべきじゃないか、かように考えます。
ところで、先ほど来のお話を聞いて、いわゆる密輸入をするわいせつ映画、これは問題はないのだ、こう言われますが、密輸入という形のために、これは問題はないと言われるのか、その映画自身が、これは密輸入までするのだから、わいせつなのだ、こういうふうにおきめになっているのか、私は法律的には議論の余地があるのじゃないかと思う。あるいは偶然密輸入になる場合もありましょうし、最初から密輸の目的で特別な映画を持ってくる場合もありましょうが、その映画自身は明らかに公共の福祉あるいは風俗を害するような意味で作られたというものじゃなくて、やはりもうかるとかいって作ったに違いない。その場合に、表現の自由ということをどれだけ作者なりが主張し得るかどうか、またそれを見た人が、とにかく密輸までしてあんな映画を取り扱わなくても、あれなら堂々と入れたっていいじゃないか、こういう見る人の表現の自由の立場からの議論もあるかもわかりませんから、私は、密輸云々というだけでは、それはもうわいせつにきまり切っておるのだと断定はできないのじゃないか、実はかように思うわけであります。おそらく、この映画についての扱い方も、作者には作者の言い分があるだろうし、見る人も十人十色でございますから、そういう意味ではいろんな議論が出てくるだろう。表現の自由というものが適正に保護されるというためには、やはり法律で書いてありました場合に、その当該職員が独断でそれをきめることは、私は非常にあぶないことだと思う。やはりこういうような達によってそういうものが慎重に扱われてしかるべきじゃないか、私はかように思いますので、先ほど来のお話を聞いてみまして、どうもふに落ちない点も多々ありますし、あるいは堀委員のお尋ねにまともに答えてないような点があるのかもわかりませんが、私は、ただいま申し上げるようにすなおに見まして、実際の取り扱いとしては、今日その種の達は必要だし、また、憲法の解釈そのものから見ましても、十二条、十三条等とあわせて考えてみると、ただいま引例になりました条文も、そういう完全な無制限な自由というものは保障されてない、私はかように考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/45
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046・堀昌雄
○堀委員 私も無制限に自由があるとは言わない。ただ、映画については映倫という自主的な機構があって、国内で上映する以前において、これらの関係者が、自分たちの手で自主的に判断をして規制をしておるという段階があるのにかかわらず、さらに憲法のこの規定を、無制限とは言いませんが、大体において表現の自由を守れ、検閲はこれをしてはならないという規定があって、うしろに何もなければ、私は今の大臣の意見に賛成をいたします。しかし、すでに自主的にそういうことはやらないという制度がある上に、さらに行政権力によってこれを制限しなければならないかどうかということについては、これはやはり、大臣のお言葉ですが、私はそういうふうには理解をしない。今の憲法の精神というものは、いろいろなものは自主的にやれ。この前私、文教委員会でも、文部省が図書目録を選定する、文部省が選定しなくても、そういう出版関係者がみずからやればいいことで、ことごとに政府がそういう表現の自由の制限に関するものに手を出すべきでないという基本的な思想を私は持っておる。そういう意味においては、自主的なものがあるなら、それを育てるという方向が正しいのであって、検閲はしてはならないという規定があるのにかかわらず、政府がみずから手を出す必要はないではないか、こういうのが私のものの考え方なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/46
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047・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 その点は一つのりっぱな御意見だと思います。しかし私全面的に賛成するという意味ではございませんが、これは非常に筋の立った御意見だと思います。私どもただいま申し上げる方から考えてみますと、ただいまの映倫そのものも、これは自主的にやっておりますが、映倫は、自主的機関である。その特質から申しまして、強制権はない。おそらく映倫自身で判断をいたしまして、これは自粛すべしだ、こういうことを申しました場合に、これを自粛しないといった場合、一体どういう処置がとれるのかということを考えてみますと、外国映画等の輸入にあたって、税関吏がきちんとものごとを片づけるという意味から申せば、これは税務官吏自身の一つの権限でありますが、それを独断専行せず、民間にある映倫等の自由な機関といいますか、自主的な機関、それの協力のもとに一つの強制的措置をとるということが、最終的には望ましいのじゃないか、実はかように思います。映倫自身がやりまして、映倫の協定破りということはおそらくないだろうとは思いますが、しかしながら、映倫自身が、自主的な機関でありますだけに、強制権のないものだ、かように私は考える。しかし、映倫で判断することは、これは各方面の人が入っておりますから、おそらく公正を得た意見に違いない、実はかように思います。今回の税関で設けます特殊の審議会等におきましても、映倫の関係者を入れたりして、映倫との十分な連携のもとに最終的な判断を下す、そうして、その判断の結果、二十一条一項の第三号に該当する、こういうことになれば、今度は、税関としては、この条文に基づいてあとの処置をとっていく、こういうことになるわけなのでございますから、その自主的機関でやられることを私反対するものではありませんが、法律的あるいは行政的措置としては、ただ民間に団体があるからそれにまかしておけというだけでは相済まないのじゃないか、かように思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/47
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048・堀昌雄
○堀委員 この問題についてはこれで終わりますが、私どうも納得できないのは、いろいろ映倫の方にも映画館関係の方にもお話を伺いましたが、映倫を通ったものが国内において刑法の摘発を受けたことはないという事実は、少なくとも現在の映倫というものが相当に自主的な力を持っておる、こう判断をする。もしそういうことが起これば、それは国内法で論議をすべきことであって、関税定率法の建前は、本来税金をかける問題なんですよ。あなたがおっしゃるように、映画の内容をどうこうするために関税定率法が置かれているわけじゃない。だから、私は、それは輸入映画何とか法というような建前の法律でそういうことがあるならば、また話は別ですけれども、関税定率法というこの法律でもって、そこまで、映倫が自主的にやっておるのに、それの統制力がどこまであるかわからぬから、官憲が行政権を常に発動して、そこできっちりしたものにしなければならぬということは、関税定率法という問題の中ではいささか理解いたしかねるのですが、これは御答弁はけっこうです。
それで、本題に入ります。現在提案をされております中のラードの関税の改正の問題でちょっとお伺いしますが、これまでは従価一〇%であったものを、今度は従量一キログラム十五円に関税を変えたい、こういう御提案でございますが、このラードについてこういうことをやった場合は、一体どういう影響が起こるか。大体今度の問題は米国製の精製ラードが必要以上に国内に流れ込むのを防ぎたいという御趣旨だろうと思うのですが、そういう場合には価格の上ではどういうことになるのか、ちょっと御説明をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/48
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049・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 ラードの輸入価格と国内の生産者価格の関係について御説明申し上げます。国産の精製ラードと申しますと、結局アメリカから粗製ラードを入れまして、それを国内の精製業者が精製いたします。そのときの価格がトン当たり十二万三千円強でございます。それに対しまして外国から入ってきます精製ラードが大体トン当たり十万八千円くらいであります。そうしますと、その間にトン当たり一万五千円くらい、キログラム当たりにいたしまして十五円という価格差があるわけであります。従って、今度全地域AAにいたしまして精製ラードを自由に輸入させるということに相なりますと、国内のラード精製業者あるいはマーガリン精製業者が非常な危険をこうむりますので、この輸入価格と国産価格の差額を保護税率として盛りたいという趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/49
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050・堀昌雄
○堀委員 今おっしゃった外国製精製ラードは、主として現在オランダ製だと思いますが、どこから入っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/50
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051・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 仰せの通り現在はオランダ製のものがおもでございます。結局、オランダは、アメリカから原料ラードを入れまして、それを精製して日本に持ってくる。と申しますのは、現在日本はドル地域に対してはFA制をとっておりまして、オランダ等の地域に対してはAA制、自由に入れるシステムをとっております。それで、今回こういう差別待遇を廃しまして全地域AA制にするということになりますと、オランダの高い値段の精製ラードは今後はおそらく入ってこまい、アメリカの安いものが入ってくるだろうということが予想されます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/51
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052・堀昌雄
○堀委員 では、アメリカの精製ラードというのがもし入るとしましたら——今も入っているのかもしれませんが、価格はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/52
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053・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 アメリカのピュア、ラードがトン当たり十万三千円でございます。それからオランダのラードが十万九千円強、十一万円近くでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/53
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054・堀昌雄
○堀委員 今あなたは精製ラードが十万八千円と言われたが、今度は十一万円ということになった。これはどういうことでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/54
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055・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 十万八千円と申し上げましたのは、現在いろいろなところから入ってきておりますので、これの平均価格を出しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/55
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056・堀昌雄
○堀委員 そうすると、アメリカのラードは十万三千円ですね。それに今の従量課税をすると大体十一万八千円くらいですね。それで国内価格はあなたのおっしゃった十二万三千円だから、まだかなりな開きがあるわけですね。それはそれでもいいのですが、AA制にすれば今度は幾らでも入るわけですね。価格がトン当たりまだ五千円ばかり違うということでも、大体それでやれるような見通しがあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/56
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057・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 これはやはり品質の違いもございまして、日本製のものは品質は非常にいいわけでございます。従って、この程度の差であれば、国産品を喜んで使うという方もございますので、この程度の差は問題ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/57
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058・堀昌雄
○堀委員 そうすると、今度はAA制をアメリカに広げた場合には、オランダからはほとんど入らなくなるということになりますね、そういうふうに理解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/58
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059・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 全然とは申し上げかねますけれども、ほとんど入るまいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/59
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060・堀昌雄
○堀委員 そうすると、このラードはガットの譲許品目の一つになっておりますね。今度譲許品目の修正をするなら、主要締結国はおそらくこの場合にはアメリカでしょうと思いますが、当然今度はオランダの了解を得なければならなくなるのですね。これに対して、あなたの方になるのか通産省になるのかよく知りませんが、政府は一体どういう見通しを持っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/60
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061・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 もちろん現在五%のガット税率がついております。それでこれを十五円の従量税に直しますにつきましては、日本に対する主要供給国との協議を必要といたします。ところで、現在日本に対してラードを輸出しております国と申しましては、先ほど御指摘のございましたアメリカとオランダでございますが、オランダは現在ガット三十五条の援用国でございまして、日本とは正式のガット関係を結んでおりません。従ってアメリカと交渉をいたすことに相なります。来年に入りますと一般的な関税交渉がございますので、その際にこれを持ち出しまして、それで譲許税率の撤回をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/61
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062・堀昌雄
○堀委員 私もまだ不勉強なのでよくわからないのですが、そうすると、三十五条を援用しておる国とは、ガット二十八条の譲許表の修正についてはもう一方的でいいという理解をしていいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/62
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063・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/63
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064・堀昌雄
○堀委員 アメリカとガットの交渉をする場合、これが第一の問題になるし、次は大豆も問題になると思います。大豆もガットの譲許品目だと思います。そこで、これはちょっと大臣にお伺いをいたしたいのですけれども、これからわが国は貿易の自由化をやるということになって、何にしましてもAA制を全体に広げていくのだということになる。他方ガットの加盟国としてお互いに関税率は下げていかなければならないという一つの方向があって、そのガット加盟国としての責任も果たしていくという方向の上で、わが国の貿易政策は推進をしていかなければならない。ところが、貿易の自由化の問題が起こってきて、国内産業保護ということで、今度は関税を少し上げて保護をしたいという問題がここに出てくる。そうすると、この考えとカットの考えというものは基本的には相反することになるわけですね。政府は、なるほどこのガットの譲許品目についての各種のきめ方が過去にいろいろ問題があったかもしれないけれども、いろいろな当時の情勢によって問題があったにしても、それはそれで相当低くきめてある。さらに、日本の関税率は全体としてベネルックスと同様非常に低い国だということになっている。そういうふうに非常に低い国としてなっておって、これから貿易自由化だから上げますよということが、ガットの精神との関係で、はたして諸外国がそのようにすなおにそれを認める方向にあるのかどうか、ここを一つ、大臣から一体どういう心がまえでこれからこの関税政策をおやりになるかを承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/64
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065・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 これは基本的な問題でございます。貿易の自由化をいたします場合に、いずれの国でも自国産業に利益になるような貿易自由化しか考えておりません。また、自国産業の発達に益するという点は、ひいてはそれが国際経済を拡大するゆえんだということで、理論的には結びつけておると思います。従いまして、究極の目的から申せば、国内について特殊な保護もしないで、完全自由な形態というのがいい。だから、ガット加盟国がとにかく関税を下げていこうじゃないかということを申しておるのも、実はそういう意味だ。だから目標は非常にはっきりしております。また、貿易の自由化にいたしましても、完全な貿易自由化、これを実施している国はどこにもございません。今回のこの貿易自由化の議論でも、非常に割り切った考え方をみんなしておられる。たとえば、今もガットの精神に反しはしないか、あるいは、貿易自由化といって、特殊なものについて、それをより抜いて、それを保護の状態にとどめることが可能なりや、こういうような議論が出ておりますが、いわゆる貿易の自由化にいたしましても、これを漸を追ってやるということ、これは当然のことであります。ことに農産物等については、おそらく農産物という特質からもくるのですが、いずれの国でも最後までこれの自由化には抵抗を示しておるという状況でございます。従いまして、わが国のような、今日までの貿易の実態なりまた関税の実態等が特殊な為替管理の方式で経営されてきたものが、今度貿易、為替を通じての自由化の方向へ踏み切るとして、それが一部関税率を修正したりあるいはまた関税品目を整備したりすること、これはもう私は必ず了承してくれるものだと思うし、またもし了承しないようなところがあれば、当然私どもも強く主張して納得をいかすつもりでございます。この自由化ということを申しましても、私どもは、やはり国際協力の拡大に自由化が役立ち、同時に自国産業を拡大することに役立つ、こういう一つの原理とでも申しますか、その原則を貫いていくという立場においての自由化でございますから、ただいま御指摘になりましたような点は、私別に矛盾があるとは思いません。ただ究極の目標としてそういうところへ持っていく。だから、段階的に一時関税が高くなりましても、これは当然当方としては主張すべきことであるし、そういう意味では納得さすべきものだ、かように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/65
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066・堀昌雄
○堀委員 大臣は非常に楽観的な見通しをお話しになっておりますが、来年行われるガットのいろいろな交渉の経過としては、わが国がやはり何か一つのものを上げるについては、ガットとしては私もあまり十分勉強していませんが、何らかの補償的なものをもって、どちらかを下げなければならないいろいろな条件がついておる、新たに譲許品目を来年はふやさなければならないような情勢になっておるように——私は、本で読んだことなので、どこまでが事実かわかりませんが、そういうふうに理解をいたしておるわけです。そうすると、なかなか実際問題として、アメリカ一つとってみても、アメリカは何とかして輸出をふやしたい。要するに、問題は、アメリカが輸出をふやしたいということが、私は今度のAA制に切り変わってくる理由だと思う。そういうふうにふやしたいといっておるところへ、今度は逆に——なるほどそれは為替管理がはずれるから関税率を上げるんだということになるかもしれないが、為替管理をはずして関税を上げることになるなら、同じことになるのじゃないか。それが有効にきかないような上げ方なら、これは上がったとはいわないんだから、為替管理をやるのと同じ程度な作用を起こすようなきめ方をするということを、主要締約国であるところの、国除収支が赤字になりつつあるアメリカが、そう簡単に、はい、よろしゅうございますということにはいかないのではないかという基本的な考え方が一つございます。
それから、もう一つ、ここに問題があるのは、オランダは三十五条の援用国だから、とにかくそこから輸入はシャット・アウトしてもいいのだというような考え方、これは、税関部長、こういう国会の発言として、もうちょっと慎重でなければいかぬ。国際的な外交及び貿易の問題について、諸外国は一体どういう関心をわが国に対して持っておるかということは、特にあなたが税関部長という、そういう国際的な問題の中にあって、きわめて軽率な発言だと思う。ともかくも相互の貿易を広げていくという前提に立ってものが考えられるということであるならば、表現にも多少弾力があってしかるべきであって、それは三十五条の援用国でございますけれども、少なくとも了解を得るように努力すべきだという程度の発言があってしかるべきである。三千五条の援用国でございますから、輸入はされなくてもけっこうなんだ、というような態度をこういう国会で言うなんてことは、私はもってのほかだと思います。ともかくもその他の西欧諸国を含めて、これはなかなか問題がある。イギリスだって問題があるわけです。
特に一つ問題があります点は、西欧諸国は現在日本を低賃金国だという観念でものを見ておるのです。これは相当に大きな問題です。ところが、ラードを見てわからないのは、アメリカから原料ラードをオランダが輸入をして、賃金の高いオランダで精製をして、オランダからまた船に積んで日本まで運ぶのですよ。その運んで来るものが、十万八千円ぐらいで同じようにアメリカから原料ラードを輸入して国内で精製する。調べてみたら、この油脂関係の業者はみな低賃金です。その低賃金でやっておる国内精製ラードがはるかに高いのですよ。また船に積んで来る船賃を除いても、なおかつ一万七千円も高い。そうすると、この一万七千円高いというものがはたして正当なコストかどうかということは、ちょっと問題が出てきやしないかという感じがする。あなたの方も、貿易の自由化という問題については、やはり国内産業が正当な形で発展することを推進するという考え方が基本にある。ところが、国内の十二万三千円の精製ラードの価格というものはきまった価格なんだ、これが正しいのだという理解の上に立って、そこで従量十五円、従価一〇%というものを何の検討もなくきめられているように私は理解する。オランダの精製ラードがこういう格好で安いというのは、じゃどこに基因するのか、私は専門家でないからよくわかりませんが、これは一体どういうふうに政府は理解しておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/66
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067・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 先ほどの、日本が関税を上げたら相手方もそれに対してやはり関税を上げるだろう、こういう問題があることは御指摘の通りであります。これは一国だけで自由にできない。そこで、関税を改正いたします場合には、二百七十六品目につきましては、税率改訂の場合にはガットの加盟国に対して協議をすることになっております。そういう場合に、君の方がそういうように上げるのなら、君の方から入るものについてはこういうようにしたい、こういうものが必ず出てくるのでございます。そういう点があるからこそ、関税の扱い方なり自由化の扱い方については非常な注意をしなければならない問題であります。為替で管理しておれば関税の問題がないから楽ではないかということでありますが、為替で管理をしている限り、やはり同じような考え方が相手国にはあるわけです。ともかく、お前の方は数量的に制限をしているじゃないか、しかし数量的な制限をどうしていつまでもするのか、こういう議論になってくるので、これは今の形態を持続し得るかどうかというところに一にかかっておるのでありまして、為替で統制をとりましても、また関税率で左右いたしましても、その結果は相手国に与える考え方は同じだ。ただいま私どもが申しておりますこの自由化は、もしも自由化をしないで今のままでいったら一体どうなるのか。今の国際的基調は自由化の方向だと申しておりますが、自由主義の諸国は相互協力ということを非常に強く言っている。だから、今すぐできるわけのものではございませんが、頭の中に描いておるものを見れば、いわゆる経済的な分業というようなことを一応考えることになるのだろうと思います。しかしながら、今の状態から直ちにそこまでは言えない。国内産業に対する保護も十分していかなければならない、こういうことに実はなるわけであります。従いまして、今回関税率を整理するとか、あるいは関税品目をふやすとかいうような場合におきましても、加盟国についての二百七十六品目についての扱い方は、ただいま申し上げるような意味において十分考慮も必要といたしますが、わが国自身の立場から申しますならば、わが国産業が使います原材料、原料や材料というようなものは、原則として無税あるいは軽減すべきことが筋だと思います。しかし、外国から入ります原材料と申しましても、直ちに国産品とぶつかるものがあります。たとえば今問題になっておる大豆は、外国から入ってくると、国内産の大豆と価格が非常に違っている、農民自身の所得に大きな影響を与えるというので、農民所得の確保という点をまず第一に考えますが、同時にこの大豆が原材料として使われておる、たとえば製油業者あるいはみそ、しょうゆというようなところまでも考えて、その第二次製品の面に非常な高い関税をかければ悪影響のあることは当然でございますから、そういう意味でこの大豆の扱い方は非常にむずかしいものになるわけです。でありますが、とにかく第一は農民の保護を考え、第二次製品の面において、やはり国際競争力を増し得るような措置を考えざるを得ないのではないかというので、今農林や大蔵、通産あるいは党等でいろいろ具体案を練っております。
同時にまた、第二の問題として、先ほど三十五条援用国云々の問題が出ておりますが、オランダとの貿易を拡大しないということを申しておるわけではないのでありまして、これは三十五条のこのガットの加盟国としての規定から申せば、オランダに対して協議をするとか、了解を取りつけなくてもいいことでございます、ということでございます。それで、ただいま問題になりましたラードについて、ただいま自由化の必要の面におあげになりました理由が直ちに入ってくるわけでございますが、わが国の国産のラードは、アメリカから原材料を取ってきたものが十二万三千円になる。オランダはアメリカから買って、そうして遠いところをぐるぐる回ってきても十万八千円だ。大体十一万円だ。こういうことになると、これは一体どういうことなのかというところが問題になるわけです。言いかえますならば、わが国のラードの精製業というものがまだ十分発達していないという証拠なんです。ただいま、それを、低賃金であり、しかもこういうような遠隔の地から来てもなおかつ日本よりも安いというのは、業者自身が非常にもうけているのではないか、いかにもそういうようにとれるように聞けるお話でございますが、国内産業として精製ラード業というものはまだ育成されておらない。これはひとりラードばかりじゃございません。ミルクだとかあるいはチーズ、バター等においても同じことが言えるのではないか。従いまして、今回のキロ当たり十五円という関税にいたしましても、大蔵省自身がこれは勝手にきめるべき筋のものではございません。農林省と十分相談をいたしまして、また通産省等とも相談をいたしまして、適正な率ということにきめたわけでございます。これは現在あります国内産業が順次国際競争力を増していくということにしなければならないのでありますから、合理化は経営者自身に一つ考えてもらう、その実が十分上がるまでは、関税等によってある程度の保護を続けていく、こういうことで、私は別に矛盾はないと思います。
ただ、もう一つつけ加えて申しておくことは、ただいまラードが問題になっておりますが、ラードあるいは皮革、大豆、銑鉄等でありますが、これはいわゆるドル地域に対してはFA方式である。しかしながらドル地域外のところはAAでございますから、アメリカから直接粗製ラードが日本にくる方がどれだけ便利かわからないが、オランダがまずアメリカから粗製ラードを買って、オランダで精製して、これはドル地域外ですから自由に日本に入ってくるというので、ただいまオランダから入ってきている。本来の貿易経路から言うと、ずいぶん間違った形をとっておる。今回の十品目についてAAをとったというのは、ドル地域外はこれはAA方式、たとえば大豆ですが、大豆などはアメリカからくるものはFAです。今満州大豆が日本に直接入ってくるわけはございませんが、香港産等の形でときに私は満州大豆が入っておるのじゃないかと思います。原産地をはっきり表示しなければならないのですが、そういうものが入ってくるならば、これはAA方式で自由に入ってくる。だから、在来のようにポンドやあるいはフランやマルクやリラが交換性を持たないときならば、国際決済の通貨としてはドルだ。だから、ドルの保有は国内にも進めるが、ドル以外のポンドその他を持つことは、なるべく為替政策あるいは外貨保有の面から見ても避けるような処置をとってきたこの際は、このドル地域に対する貿易のあり方というものが、わが国国際決済上大きな影響があるというので特に注意した。そこでドル地域に対しては特別の方策をとってきた。しかし、最近のごとく、もう外貨がそれぞれみんな交換性を回復した今日になりますと、ドルといわゆるポンド地域と区別することは意味がなくなってきておる。そういう状態でもある一面、御指摘のように、アメリカ自身も、日本からうんと品物が入っているのに、アメリカの品物に対して日本が為替の制限を加えておることは好ましくないじゃないか、日米間の貿易拡大の上に役立たないじゃないか、こういうことを指摘していることも事実でございます。わが国の方から見ると、ドルとポンドとの間に差等を設ける理由はなくなっておる。そういう差等を設けておると、ただいま申し上げますように、通常のルートを通らない、変則的なルートで貿易が行なわれる。しかもそれがわが国の精製ラード業者の自立発達をおくらしておるということになるわけであります。
自由化の面から見ますれば、非常に簡単に考えれば、安いいい品物があれば、どこからでも買える、それがわが国の産業に役立つ、同時にわが国民生活を向上さすことに役立つ、結論はこういうことなんです。しかしながら、そういう結論に到達するまでには、わが国産業を育成強化して、国際競争に負けないようにわが国産業を育てていく、その責任があるわけです。そういう意味で、この関税率のきめ方にしても、あるいは品目の追加にしても、非常に慎重にしていかなければならぬ。ただいま堀委員の御指摘になりますような点がありますので、自由化を決意いたしておりましても、その具体的成案を得るまでに相当の時日を要する。ただ目標の時期を明示しておかないと、業界におきましても準備が十分できないということにもなりますので、政府といたしましては、まず自由化の時期を明示し、それまでに所要の準備を遂げていくという措置をただいまとっておるわけであります。それで、これは自国産業を育成強化するということが同時に大きな目標でもございますから、自由化というだけで、勝手な、単純な理論だけを遂行する考えは毛頭ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/67
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068・堀昌雄
○堀委員 関税の問題は、今後貿易自由化の問題との関連で、これは各国の注視の的である。まだいろいろ問題がありますが、きょうは時間がありませんから、次に移ります。
最後の締めくくりでありますが、今度の関税暫定措置法案の問題でありますけれども、鉱油関係について一部税率が変わっておる形のものが提案をされて参っております。そこでちょっとお伺いしておきたいことは、これは時限立法で、この法律は一年置きに動くという法律の性格です。ところが、関税政策というものは、本来一年置きで関税率が変わったりするということになれば、国内産業は輸入との関連で非常に混乱を起こす可能性がある。だから、今度ここで鉱油に関しては一応の改正がされるわけですが、これははたしてどの程度継続する意思があるのかどうか。そこがはっきりしないと、一年ぽっきりというようなことで関税率がしょっちゅう変わるのでは、受け入れる側の産業機構としては対処のしょうがない、こういうふうに考えます。もちろん、これは時限立法だから、今から三年やるというわけにはいかぬでしょうけれども、考え方としてこれはちょっと承っておかないと、今後の混乱のもとになると思いますから、そこを一つ承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/68
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069・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 お説の通りであります。関税率などを、そう簡単に一年ぽっきりだとか、短期間にやるべきじゃないことは、もう御指摘の通りであります。ただいま政府といたしましては、関税率の全面改正といいますか、全面的な調整、同時に関税品目の整理——整理というのは結局数をふやすのでございますが、そういう処置をとる。そこで委員会等を設けてこれを実施するつもりでございます。従いまして、これをことし一ぱいには出すつもりでございますから、ただいま御指摘のように、数年にわたって暫定関税を行なう考えではございません。この全面的整理改定のときまでと、かように御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/69
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070・堀昌雄
○堀委員 それはわかりました。そうすると、今度の暫定法で決定をしたこの税率、免税になっているものを免税を取った、あるいは部分的に取った、こういうものがずっとあるわけです。これについては、ことに鉱油関係については、今後関税の法律を新たに通常国会にお出しになるかどうか知らないが、その中でそういう規定をして、それをそういうふうにずっと継続する意思なのか。それが出ても、基本税率はきまっていて減免措置をしているわけなんだから、この減免措置などという形である限りは、政府が任意に一年ずつで適当に変えることができるというのか。それでは困るので、ちょっと私の申し上げておる意味と御答弁が違っているのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/70
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071・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 全面的に再検討するのでございます。これは大へんな大事業でもありますし、ことに大蔵委員の皆様方には積極的な御協力をお願いしなければならない、かように考えております。先ほど来ちょっと話が出ました貿易の自由化に備えるためには、全面的に再検品し、同時に品目も追加するという考えでございます。そこで、今日まできまったものあるいは暫定措置のもの、これは減免等を含めてのものも全部再検討する、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/71
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072・堀昌雄
○堀委員 それは再検討なさるということでけっこうなんですが、今輸出については輸出リンクだとかあるいは特別外貨割当制度とか求償貿易とか、いろいろな形で輸出を奨励する方策をとっている。これは、ずっとAA制になってきた場合には、こういうものは何らかの形で転換しなければならなくなると思うのです。FAだからできるものがかなりあるわけです。一体こういうものに対しての将来の判断というか、どういう考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/72
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073・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 理論的にはただいまより楽になるはずでございます。そこで、貿易の自由化ということとあわせて、並行して為替の自由化を計画いたしております。為替の自由化の具体的方法でもうすでに実施に移したものもありますし、まだ今後手がけなければならないものもあります。結局、最終的な目標は、やはり円の交換性を回復するというところまで持っていかなければいけない。国内金融の面における輸出金融その他は在来と同じような考え方でいいのだと思いますが、為替の自由化を全面的にやはり並行して考えていくということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/73
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074・堀昌雄
○堀委員 そこで、最後に一つお伺いをしておきたいことは、最近、自由化に踏み切ってみると、国内産業の体制の整備が、通産省もどうも思ったほどになかなか整っていないというような判断があるのか。私どもが新聞で拝見しておる通産大臣のいろいろな所見を伺っておると、貿易自由化を大蔵大臣は三年でやるという表現をお使いになっておられると思いますが、必ずしも三年にこだわらないという格好を通産大臣はとっておる。そういう問題が片方に出ると、また大蔵大臣は、いや三年でやるのだということが新聞で伝えられておる。どうも、私は、その点に政府の中において見解の不統一があるのではないか、こういうふうな感じがしてならないわけです。そこで、私どもの考えでは、早い話が今のラードの関税の問題にいたしましてもそうでありますけれども、ラードの問題一つをとってすら、なかなか大へんな問題なのです。その問題がこれからずっと相当あって、まずラードをやってみた、その経過というものの上に立たないと、一体AA制をやってみてどうなるかということが、そんなきっちりそろばんに出てくるものじゃないのじゃないか。経済的な問題である以上は、やってみたあとでの関連の問題を見ていくと、私は、三年以内に自由化を終わるのだとかなんだとかいう表現がはたして適切かどうか、この点は相当問題があるのじゃないかと思うのです。だから、やはり経済の実態と世界全体の経済の問題、貿易の問題、いろいろな問題があると思うのですが、そういうこととの関連の中で、やはり国内におけるいろいろな問題というものが整備をされる順序に従わない限り、三年のワクを設けるなどという形の方が、問題の提起の仕方としては無理がある、こういうふうに考えますが、大臣、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/74
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075・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 ただいま堀委員の言われることは私も理解ができるのです。今一番問題になっておると思いますのは、三年の期限というのがずいぶん論争の種になっているようであります。これは私もその点は認めます。ところで、今それでは自由化において取り上げたものは一体何だ、かように申しますと、まず第一はドル地域に対する十品目、ことしの一月から実施したものがラワンあるいは石こうその他でありますが、そういうものがあるし、それから四月、五月のころにスクラップその他をやるが、今のラード等も入るわけです。それから十月に大豆と銑鉄を目標にしている。もう一つ、自由化で大きな目標の定めてありますものが原綿、原毛、これは来年の四月といっている。それ以外の品目等については、展望なり計画なりをまだ明らかにしておらないという実情でございます。ただ否定的に、政府の所信を明確にいたしたものとしては主食、これはやらない、また酪農製品も当分やらぬ、こういうものははっきり出ております。ところで、そういうものを二年のうちにやるのかと言われると、それはもちろんやりませんと申し上げます。今三年の期限で全品目について三年を目途にしてこれはやられている、というようにもし御理解がありますなら、それは大へんな誤解でございますから、私もつつしんでその三年の期限というものは取り消していいと思いますが、今やらないというものを除いて、比較的軽微なものについて、一応の目標を三年くらいで考えたらどうか。しかし、そういううちに、たとえば石炭はどうなるとかあるいは油はどうなるとかと、こう言われると、まず三年では、そういうものはむずかしいでしょう。それで、今非常に誤解を受けておると思いますのは、政府が一段階として三年くらいの間に幾らのものをやるという計画を、この五月時分までには、企画庁を中心にして政府の計画を発表する考え方で準備をただいま進めております。おりますが、一面、民間の団体で自由化についての検討を続けられたものがある。それによりますと、四年で米まで自由化する案が発表されておる。また完全な円の交換性を回復した案が出ている。こういうところから、民間でも四年なんだ、政府はそれを三年というのはとんでもない話じゃないかと言いますが、内容も全然違っておりますし、ただいま申し上げますように、自由化でも大筋がきまって動き出して参ればよろしゅうございますが、そうでない場合に、いつまでもじめじめ自由化々々々とやっていることは、私は経済のためにあまりいいことではないと思う。だから、三年くらいでやれる目標をまず第一に立てて発表すべきじゃないか、そうして、その他のものについては、もう少しじっくりかまえて、その経過を見るべきじゃないか、かように実は思っております。ただいまの取り上げております品物の対ドル地域のものは、なるほど数量的にはアメリカが原産地であり主要産地であり、そういう意味では非常な大きな意味を持ちますけれども、他の地域に対しては、先ほど申しますようにAAでやっている。対ドル地域だけがFAだ。しかもドルとポンドの間にはもう差をつけて考える筋のものではなくなった。こういう意味から、まず対ドル地域において特別扱いをしたものだけ本年内に片づける、こういうことで今の目標を出しておるわけであります。しかし、それにいたしましても、たとえば大豆等についていえば、おそらくこれは法律を必要としたり、あるいは、結論の出し方いかんでありますが、予算措置を必要とするような結論が出るかもわかりません。そういうことを考えますと、今十月を目途としておりますが、この国会中にそういうことが審議できないとなれば、審議が終わらないとなると、これは臨時国会その他がそれじゃ開催されるのかとなりますと、ここらにはややむずかしい問題がある。しかし、問題を提起いたしておりますし、ことに自由化の問題でありますだけに、私どもとしては、この大豆の問題はそういう意味で真剣に取り扱ってみたい。一応十月ということを目標にしたことも、今年産大豆の収穫時期をはずしているというところも一つのみそであると思いますが、できるだけ早い機会にやりたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/75
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076・堀昌雄
○堀委員 そこで、私、自由化の問題になってきましたから、もう少し伺いますが、たとえば原綿、原毛を来年の四月からAAにするということになりまして、最近の実情を見ると、各紡績関係は急速な設備投資をやり始めた。貿易収支の方も、最近の機械の輸入というものが著しく激増してきて、一月、二月を通じて必ずしも国際収支はそう楽観を許さないのじゃないかという感じを私は持っておるわけであります。実は、この前から、私の考えとして経済企画庁は、本年度の貿易収支は一億五千万ドルの黒字だ、そういう計画でいろいろな資金計画も発表されておりますけれども、私は、これは少し甘過ぎるのじゃないかという判断を個人の意見として持っておる。そこで、今の三年の問題は、そういう国際収支の状態がずっと悪化をしてくる中でもやれるかどうかという問題があるわけですから、常に私はこの問題は国際収支の関連とにらみ合わせなければいかぬ。そうすると、今の、来年の四月から原綿、原毛を自由化するということになるために、ここでどっと設備投資がきて、ともかくも今度は内部で競争をやるのだ。内部の競争はけっこうですけれども、そういうことで輸入がぐんとふえてきて、一時的にはどうしても貿易収支が変わってくる。当面そういう設備投資をした以上は、AA制になったら、ともかくもその設備をフルに動かさないことに、その投資が生きてこないという企業の状態は、またさらにどうっと輸入を増加してくるということになれば、これはどうしても私は国際収支にとってはいい影響を与えないのじゃないか。だから、この段階的に行なわれる中で、それの影響はそこへこなくて、国際収支の面ではあとへずれてくるという問題との関連で見るならば、私は、今大臣がおっしゃっためどの三年という問題は、めどをどこに置くかはもちろんありましょうけれども、特にそういう重要なものについての判断がはたしてどのくらい正確かどうかということがないと、いたずらな混乱を起こさせるもとが経済界にありはせぬか、こういう判断をしておるわけです。この点はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/76
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077・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 それはただいまお話しになるような点が露骨に出てくれば、大へんなことなんです。ところで、今紡績の投資がふえたと、こう言われますが、紡績の投資は最近ふえておりません。というのは、操短をやっておったものを、操短を緩和している程度でございます。しかも、この自由化ということを発表してから、糸の方は安くなっている。昨年物価が大体横ばいだというのも、この糸並びに鉄が弱いといいますか、少し下がったということが物価を横ばいに保っている、こういう結果になっております。ところで、この紡績についてもう一つ申し上げておきますが、糸は安くなったが、製品が高いのです。だから、原料安、製品高ということで、中小企業の方々は主として織物の方をやっていますから、織物の関係の方は、今回の原綿、原毛の自由化を発表した結果は、今仕合わせしておられるのじゃないか、かように私は考えております。ところで、むしろ送に、今度は織る方が設備増加をはかりはしないか。そういう結果になると、ちょうど三年前に非常な生産過剰を来たして、製品安で弱っておって、いわゆる機械の買い上げをいたしましたが、そういう結果になりはしないかということを実は心配しておる。同時に、原綿、原毛の自由化の場合には、もう一つ化学繊維といいますか、化繊の関係が非常な影響を持つということでございますので、この化繊と原始繊維との関係の調整ももちろんはからなければならない。化繊の方から申しますと。パルプだとか硫黄だとかソーダというものが原材料として自由に入ってこないと、ただいまのなにはうまくいかない。ところが、今のパルプ産業そのものから見ますと、外国パルプがどんどん入ってくれば、おそらく国内産のパルプに相当な影響を与える。そういう意味で、この原綿、原毛の自由化をはかる場合には、化繊とのにらみ合い、しかもその原材料の提供についての自由化のにらみ合い、同時にまた中企業者に対する影響を考えるということで、比較的長い期間をとっておりますのも、そういう意味合いでございます。この通産省が原綿、原毛の自由化に踏み切ったというまでに、業界各方面の意見を十分打診し、そうして最終的にこれを踏み切っているということでございます。これは私は非常に楽観しておるようになりますが、実は楽観はいたしておりません。非常に重大な問題であり、よほど気をつけなければならないと思っております。ことにこの自由化が国際収支に非常な影響がある。従いまして、月々の傾向なども十分見ていく。最近の一月、二月は悪いじゃないかと必ず言われるだろうと思いますが、これなどは、ユーザンスを拡大したとか、あるいは支払いの時期をそういう意味で延期しているとかというようなことがございますので、輸出の伸び自身から見ると、心配はないというのが今の状況であります。
ところで、過去において私どもは苦い経験を持っておる。いわゆる神武景気の際に一度自由化の計画を進めた。先ほど来議論になっております大谷自身は、そのときはやはり十月に自由化するということで、そのときの国会に関税の一割をかけるという法律案を作って出した。しかしながら夏から秋にかけて非常に国際収支が悪化した。そういう意味で自由化を取りやめざるを得なくなった。こういう苦い経験があるわけであります。今回もまたそういう結果になっては相ならないので、今日の貿易のあり方なり、また今後自由化を拡大していく場合に、ただいま審議しております外貨予算のつけ方などについてもいろいろ工夫をいたしまして、直ちに自由化になって、非常に今日までは制限を受けた、それがいきなり制限のない状態でいくということのないように、外貨予算なども相当余裕のあるようにつけている。この移り変わりを円滑にするように、もうすでに準備をはかっておるという状況でございます。御指摘の点は、自由化について、当然私ども政府が考えなければならない重要な問題点ばかりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/77
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078・堀昌雄
○堀委員 最後に、大豆の問題は、これは次の問題で、今取りかかっているわけではありませんが、巷間伝えられるところでは、瞬間タッチというような方式を通産省がとるとかいろいろありますが、私は、こういうものは、アメリカがすでにやっておるタリフ・クォータというのですか、ああいう自然な形がやはりとらるべきであって、ある程度までは安く入る、しかし、そこから越えて国内産業の農民を圧迫するような状態に対しては、高い税率がかかるのなら話はわかるけれども、あまりに不自然な処置がこういう場合にとられるということは、貿易自由化という思想と相反するのじゃないか。だから、やはり物事を今後とられる場合においては、私は、貿易自由化という一つの基本的な思想の上のあり方でなければならぬと、こういうふうに思います。これについては、やはり将来のことですが、ちょっと念のために一つ聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/78
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079・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 それは、もう、ただいま言われるように、自由化といいながら、関税を上げたり、あるいは瞬間タッチをやったり、いろんなことをして、そうして高いものにするのは意味がないじゃないかということは、御指摘の通りであります。そういう意味で基本的な考え方がございます。それかと申しましても、国内産業の大豆というか、生産業者を保護しないわけにもいかない。それはどういう方法で保護するかは別といたしまして、やはり国内産業の保護は一面考える。また外国から入ってくるものは安くあって、第二次生産業者に悪影響を与えないように、そういう面もやはり考えなければならぬ。そうすると、どこが損失を負担するのかという問題に結局なってくるわけです。そういう点がいろいろ議論がありまして、まだ最終的な結論を出しておらない、こういうのが実情でございます。今お話しになりましたタリフ・クォータ、これはアメリカでやっておると言われますが、わが国の場合にこの方法がいいかどうかなかなか議論がありまして、専門的な問題にもなりますから、今結論には——賛否はもちろん私申し上げませんが、大豆の一つの問題がおそらく自由化についての大きな試金石みたいな問題じゃないかと、かように思いますので、私どもその意味でも慎重を期しておるという実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/79
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080・堀昌雄
○堀委員 今私も自由化の方向でどんどんやれということを言っておるわけじゃなくて、やはりことに農民の問題などにつきましては、慎重にやってもらわなければならぬということが前提でございますけれども、しかし、その慎重なやり方が、やはり公平といいますか、全体というバランスのとれたものでないと、あまりに手を加えた形のものをやるということはどうかという気持がしておるわけです。これは将来の問題でございますから、けっこうでございますけれども、やはり全般を通じて私はこの問題を慎重にやっていただくという方向が望ましい。だから、三年でやるとかなんとかいう問題もありましょうけれども、基本はやはり国内の評事情を慎重に一つ見きわめる形でやっていただきたい。これは要望でありますが、以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/80
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081・植木庚子郎
○植木委員長 午後二時再開することとして、この際暫時休憩いたします。
午後零時五十五分休憩
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午後二時二十八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/81
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082・植木庚子郎
○植木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案及び治水特別会計法案の三法律案を一括して議題といたします。
質疑の通告があります。これを許します。神近市子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/82
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083・神近市子
○神近委員 ただいまの三つの改正案あるいは法律案について、主として行政、面のことでいろいろ伺いたいと思います。
これは国有林と民有林と問題が二つに分かれると思うのですけれども、最初に国有林の戦前、戦後の状態について少し伺って、主として大臣にこの行政面におけるいろいろの調整あるいは助成というようなものをお願いしてから、私の質問に入りたいと思います。大体国有林は、全国を歩いてみても、日本の大きな財産の一つだと考えるのですけれども、一体、二千四百万ヘクタールの全林野の中で、国有林の占める比率はどの程度でございますか。それを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/83
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084・山崎齊
○山崎政府委員 森林の面積は国土の約三分の二を占めておりまして、二千四百万ヘクタールの森林があるわけであります。この中で国有林の面積が七百五十万町歩で、森林面積の約三分の一が国有林だという状態になっておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/84
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085・神近市子
○神近委員 その中で、今度この管理なんですけれども、これは私ども今まで決算報告でずいぶん管理の状態を聞いておるわけなんです。それで、戦争中あるいは戦争後、この山林の伐採あるいは整理というふうなものが行なわれておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/85
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086・山崎齊
○山崎政府委員 戦前、戦後をかけまして、毎年継続いたしまして国有林は伐採を続けておるわけでございまして、最近におきましては、薪炭林あるいは一般の建築等に使います木材という形の用途に充てるために、年々国有林におきまして約七千万石弱のものが伐採せられておるという状態でありまして、わが国全体の山林の伐採量二億七千万石に対しまして、約四分の一程度のものが国有林から供給されておるという現状であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/86
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087・神近市子
○神近委員 よく外国の人が笑うのですよ。日本は薪炭として木材を切る高が多過ぎる、洪水が出るとか、あるいはいろいろの災害のもとが、大体切り過ぎるから出るんだということなんです。その伐採される木というものは薪炭用のものが多いのか。それとも木材として建築その他の用途に使われるのが多いのか。それでもし薪炭用に切られたあとには植林をしておいでになるか。また何を植林をしておいでになるか。それを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/87
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088・山崎齊
○山崎政府委員 先ほど申し上げましたように、森林の伐採が毎年二億七千万石程度伐採されておるのでありますが、そのうちで、薪炭に使われますものが約八千万石という状況であるのであります。この薪炭としての伐採は、三十三年度あたりから漸次減少を見ておるというのが現在の状態でありまして、私たちといたしましては、プロパンガスその他電気などの普及に伴いまして、漸次減少していくものだというふうに考えておるのであります。なお、薪炭に伐採いたしましたあとの山につきましては、約三分の一程度のものが人工造林をせられておる状態でありまして、杉とかヒノキ、カラマツ、あるいは北海道におきましてはトドマツというふうなものが植林をせられておるという状態であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/88
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089・神近市子
○神近委員 戦争直後に非常に乱伐があったように私どもは聞いているのです。いろいろうわさとしては、たとえば盛岡の営林署で石一円で払い下げがあったとか、あるいは栃木のどこかで払い下げが非常に不明朗に行なわれたとか、はなはだしいのになると、年末の忘年会費をかせぐために、出先の役人とそれから出入りの木材商が談合で、五十石なら五十石というふうなものを払い下げてもらって、そして許可をもらうと、自分でそれを切ることなしに、その権利をよそへ譲渡して、そして七十万くらいの金を手に入れて、それで盛んな忘年会をやった。そういうふうな決算報告を見ると、国有林あるいは国有財産の不法な使用が盛んに行なわれている。私は、この問題は——十年間に一兆五百億くらいの金で治山治水の用途にお使いになる、この金がどうっと流れ出たならば。この国費のむだ使いというものは目に余るものが起こるのじゃないかということを憂えるわけです。そこで、大臣にお願いしたいことは、この使い道について、あるいは綱紀の粛正——ともかく出先の人たちのことがいつでも問題になっている。それで、その点について、大臣はどの程度の決心をもってこれにお当たりになるつもりか、そこらを伺ってみたい。大体十年間に一兆五百億といえば、国家予算に近い金をお使いになるということですから、これは国土の保全のためには非常に大事なことで、私ども決して不賛成ではないのですが、ただこれをなさる方法あるいは手段あるいは状態というものについては無関心ではあり得ない。それでどの程度の決心をもってお当たりになるつもりか、最初にそれを伺わしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/89
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090・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 国有林の管理並びに処分等につきましては林野庁で仕事をしておるわけでございますが、ただいま御指摘になりますような綱紀紊乱の事実等につきましては、かねてから林野庁も十分注意し、監督を強化して参っておるのでございます。また、大蔵省といたしましても、国有財産の処分に関することでございますから、そういう意味で深い関心を持っておりますし、いやしくも間違ったことあるいは不正を摘発されるというようなことがあっては、国民に対しましても申しわけないことだと思います。そういう意味で、今後も一そう私国有林の管理運用等につきましては注意して参るつもりでございます。同時にまた、この治山治水の問題に関連をいたしてでございますが、ただいまの砂防並びに国有林整備、民有林をも合わせてのいわゆる治山計画というものは、いろいろ膨大な計画も持っているわけでございますが、同時にそれらの財源獲得、また相当緻密な計画のもとに遂行いたしませんと、工事が乱に流れるということで、せっかくの計画が十分効果を上げないということになっては、これまた相済まないことでございますから、そういう意味におきまして、ただいま農林、建設両省とも、計画の遂行にあたりまして、いやしくもその不適正な点等を摘発されることのないよう十分注意して参るつもりであります。ただいまのお話の一兆五百億にいたしましても、これは同時に農林、建設両省の所管の分についてのお話だろうと思います。そういう意味で十年計画、ことに前期五カ年計画の遂行に万遺憾なきを期す考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/90
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091・神近市子
○神近委員 今の日本の政府の行政の一番のガンは綱紀紊乱で、これはここでお話しすることではないと思うのですけれど、非常にこれが一つのガンであるということ、そうしてこの山林なんていうものは、非常に遠隔の土地にあって、政府の目も届かない、また国民の目も届かないところで取引されるということで、非常に綱紀紊乱が起こりやすいという点を私は御注意願いたいということを今申し上げたのですけれど、その次にもう一つ、この仕事の問題は、農林あるいは建設との共同作業になるわけです。それが、ちょっと私四国に参りましたときに、やはり川に橋がかかって、橋げたが三つか四つ、吉野川の下流でしたけれども、できていて、そして鉄骨なんかさびているので、あれはどうしたのだということを聞きましたところが、予算が通らなくて、あと一年か二年であそこへ橋ができるのだというふうなことを言われたことがあったのです。それと同じようなことが、これは三十二年度の決算報告なのですけれども、やはり出ているのです。これは問題は違うようですけれども、十津川と紀の川、これに猿谷堰堤というものを作った。そのうち農業水利の負担分を二十三億七千数百万使ってやったところが、農林省と地方公共団体とがこれに補足する仕事をしないので、それがまた雨ざらしになって、何の役にも立っていないということが指摘されているのです。こういうことが——これは一例で、非常に顕著な例で金高も大きいので取り上げましたのですけれども、こういうことがこれから随所に起こるのではないか、この一兆五百億という金を使う場合に、これが随所に出てくるのではないかというような危険が、私どもには非常に感じられるのです。大蔵大臣は党内でも閣内でも有力な方ですから、そういうことはなかろうとは思いますけれども、なかなか利潤を追求するという業者の気持というのは非常に強いので、これに災いされるということがあるということ、それで建設大臣と農林大臣と大蔵大臣というこのチーム・ワークがうまくいかないというようなことになると、せっかくたくさんの国帑を払って国土の保全に最善の努力をなさろうというのが挫折しやしないか、せっかくかけた金が何も生きてこない、そういうようなことが起こりはしないかということを——これは、よく、何も初めからそういうことを問題にする必要はないじゃないかというようなことを言われますけれども、そうではないのです。ものは、かかるときに、しっかり腹をきめてかかっていただかないと、でき上がってから、あそこがどうだ、ここがどうだという不正や不当が摘発されても、ああそれはいけませんでした、これからはいたしません、子供のあやまりのようなことでおさまるのが今までの私どもの経験で、まるで子供だましのようなことをやって、譴責、解職、あるいはひどい不正をやるならば免職ということもあり得るけれども、大体行政罰で済むでしょうから、悪いことをして、すればし得というような変なことになる。私は、そういう意味で、このチーム・ワークが十分にうまくいく。また同じ部署においでになるとも限らないし、また建設大臣や農林大臣も人が変わるというふうなときに、一体どこへ筋を置いて、——私どもから言えば簡単です。国土と国民の利益のためということで筋を通せばいいのですけれども、筋が方々から出てくる場合に、この監督をだれが一体するのか。大蔵大臣が半永久的に今の部署においでになれば、おれがやるとおっしゃることができると思うのですけれども、一体そういうところの調整をどういうめどでおやりになるのか、それを一つお伺いしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/91
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092・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 いろいろお尋ねの点は含んでおるように思います。御承知のように、まず第一は予算の査定の問題になりますが、各省から出て参ります事業計画につきまして、私ども予算費目とにらみ合わせて適正な予算をつけるわけであります。そういう場合に、一省の関係だけについて先に申しますれば、その予算規模が一年の間に十分につかない、こういうような場合、先ほどの吉野川の橋のような問題ですが、そういうような予算をなるべく作らない、言いかえますならば、重点的にその予算を運用していくというようにまず心がけなければならないことであります。ところで、先ほどは業者の関係があって工事の口が幾つも立つのではないかというお話でありますが、むしろ業者の関係から工事の口が幾つも立つのではなくて、地方の実情等からその事業があと回しになかなかできない場合がある。そのためにどうしても工事が分散するというような状態が起こりやすいのであります。そういうことがありますと、吉野川の橋について申されたように、工事のあく時期が出てくる、こういうことのないように、十分予算編成のときに考え、また実行の衝に当たるものもその工事の期間をあかないように注意する。たとえば一年ででき上がる橋にいたしましても、予算は一年につけてあるものでは約半分だ、かように考えますと、まずその工事の開始時期を年の終わりころに始めれば、翌年の予算と合わして完成する、こういうことになって、工事について手を抜くことのないように、みっともない格好をしなくて済むだろう、かように実は思います。そういうような予算の編成並びに運用について心がけなければならない点がまず一つあると思います。
また同時に、ただいまの治山治水というような事業になって参りますと、農林、建設との関係が相対応しないと困るとか、あるいはまた地方の団体の協力がなければその工事の遂行が思うようにいかない、こういう場合がございますので、治山治水緊急措置法という法律案を今回提案いたして御審議をいただいておりますが、その中にこういう条項が特に入っております。これは、ただいま御指摘になりましたような点から、特に注意いたしておることだと思います。「農林大臣及び建設大臣は、第一項の規定により治山事業十箇年計画又は治水事業十箇年計画の案を作成しようとするときは、治山治水事業の総合性を確保するため、あらかじめ相互に調整を図らなければならない。」あるいは「農林大臣又は建設大臣は、第一項の規定により治山事業十箇年計画又は治水事業十箇年計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ経済企画庁長官に協議しなければならない。」、相互に企画庁長官を中心にしての連携を緊密にする、こういう実は措置をとることにいたしております。御指摘のように、治山と治水がばらばらになっている、川の方の工事はしているが、治山あるいは砂防工事の方は非常におくれておるということになりますと、これはその工事の総合性を失うことになりますから、そういうことのないように注意するとかいうような、それぞれの処置をとっていく必要があるのではないか。ただいま、そういう意味から、神近さんはそこまでの御指摘はございませんが、あるいは一つ何か新しい機関でも作ったらどうか、そうすると、各省にまたがるものを一カ所で遂行するので、うまくいくようになりはしないか、こういうような御意見すら実は出るわけであります。私どもは、新しい機構はなるべく作らないことで、現在の機構を運用いたしまして、そうしてその総合性をそこなうことのないように、十分連携を緊密にし、また調整をはかる場合においては——ただいま企画庁が調整費等を持っておりますのも、そういう意味なんですが、やはり企画庁が調整に当たる。また、基本的には、予算を編成いたします場合に、大蔵省自身が農林あるいは建設ばらばらに出て参ります治山治水計画を、やはり予算の面では総合的に見てそして査定する、こういうことによって御指摘になりますような不都合を生じないようにいたしたいものだ、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/92
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093・神近市子
○神近委員 私が申し上げようと思ったのもその点で、私どもしろうと考えでは、そんなに新しく法律を作ったり条文を作ったりするよりも、仕事にもっと熱意を持って、そしてほんとうに国民と国土の保全のためを考えてやられればいいじゃないかということで、今のそういう御熱意を持って当たっていただくということだったら、私はその点では満足して、ぜひ実行において国費をむだに——私どもは女ですからけちんぼうだと見えて、国費をむだに使われるのが一番頭にくるんです。ときによると、決算報告なんか見ていると、税金を納めたくないぐらいに感じることがあるんです。一つ能率的にまた効果的に事業を遂行するという点にぜひ熱意をお持ちいただいて、そして企画庁なり、あるいはあり合わせの役どころの方々の協議体というものはどうせお作りになるんでしょうけれども、それで十分御検討をいただいて、能率的にやっていただきたい。
少し行政面のことについてこまかくお伺いしたいと思うのですけれど、今度民有林野を植林なさって治水事業の効果を上げようとなさっておる。これは行政官の方に伺いますけれども、民有地に政府側が何らかの工作をした、あるいは植林あるいはその他を監督するということは今まであったのですか、今度新しくお始めになるというのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/93
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094・山崎齊
○山崎政府委員 民有林に対しまして治山事業を行ないました場合、すなわち土砂の流失を防ぐような簡単なダムを作るとか、あるいはまた、崩壊しました場所を平らに直しまして、そこに木を植えるというような仕事を治山事業としてやるわけでありますが、そういう工事をいたしました個所は、森林法に基づきまして保安林というものに指定いたしまして、それの伐採ということにつきましては森林法に基づく制限をして参る。その制限いたしましては、場所によっては伐採を禁止するとか、あるいは一本々々抜き切りするような方法を法律できめるとか、そういうことによりまして、そのあとの管理について国なり県が監督するという制度をとっておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/94
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095・神近市子
○神近委員 そうしたら、その保安林を持っている人たちはどういうふうにして山から収益を上げましたか。自治体なり政府なりで補償する、保安林に対する賠償というかあるいは給与というか、そんなものは出ていたんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/95
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096・山崎齊
○山崎政府委員 保安林といたしまして伐採を制限するわけでありますが、その場合に伐採につきまして強い制限をする。と申しますのは、伐採の禁止であるとか、あるいは一つの固まった面積で切ることを許可しないで、一本一本の木を抜き切りするようなことを強制するというふうな場合につきましては、保安林に対する損失補償ということで、年々金銭補償をするという制度をとっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/96
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097・神近市子
○神近委員 大体これで十カ年計画をお始めになって、五カ年くらいで国土が荒らされるのが半額くらいになるだろうというふうなことがいわれているけれども、一体植林をしまして——佐久間ダムのところに明治時代金丸何がしという有名なキリスト教徒か何かいて、あそこがだいぶよく植林されておりますが、あの森林を見ますと、あれは十年や二十年のものじゃありませんね。三十年か四十年くらいのものじゃないかというふうに考えられる。非常にりっぱな保安林になっているんですけれども、あの程度のものでなければ、私はまだ効果は生まれないだろうというふうに感じるんですけれども、その五年という期限に半分の効果が生まれるだろうというふうな査定は、どこから一体生まれてくるんでしょうか。どうもそんなもので、それほど根に水分の吸収力があるように思われないのですけれども、それは何年くらいが有効な年限だとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/97
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098・山崎齊
○山崎政府委員 治山事業を行ないまして、くずれたところを直すわけでありますが、その場合には、その下流の適当なところにダムを作りまして、土や砂が下の方に流れ出すのを防ぐという第一の工事を実施いたしまして、第二といたしまして、くずれた個所を平らに直しまして、そこに木を植えるという仕事をやるわけであります。その木によりまして、もちろん根が地下、地表面に張るわけでありますから、そういうことによって再びそこがくずれるというようなことのないような効果を持つわけであります。さらにまた、お説のように、十年あるいは二十年というふうに年数がたつに従いまして、いわゆる水を根にたくわえると申しますか、そういうものの能力が増大して参りまして、四十年以上になれば一つの森林として十分なだけの機能を持つという形になるわけであります。この治山事業を五カ年間やったということによりまして、そういういわゆる保水的な機能まではそれによって期待するということは困難なわけでありますが、山が再びくずれて土砂がどんどん流れ出すということはなくなるというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/98
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099・神近市子
○神近委員 そうすると、今度の十カ年計画でお始めになるのも、その保安林をもう一ぺん新しく更新しようというのですか、それとも、今度の法律によって、まるで別個の、もう少し政府の監督権が及ぶようなものを作ろうとなさるのか、どちらなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/99
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100・山崎齊
○山崎政府委員 この治山治水の緊急措置法によりまして事業を行ないますのは、荒れた山に対しましていわゆる堰堤を作りまして、土砂が流れ出すということをまず第一に防ぐということ、第二といたしまして、そのくずれた山を平らに直しまして、そこに木とか、あるいは木の植わらないところには草を植えまして、再びそれがくずれないような形にするということをやろうというふうに考えておるわけであります。その個所々々で工事が終わりますと、その工事した個所はすぐまた保安林になるという形になるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/100
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101・神近市子
○神近委員 それでは、大体今数え上げられている、あるいは予定されている地区というものがあるわけでしょう。たとえばせんだっての伊勢湾台風によって荒らされた愛知県あるいは岐阜県、あの地区のほかにも予定されている地区は——この緊急措置は北海道にはなにしないというふうにあったと思うのですけれど、大体予定されている地区はどういうところがあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/101
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102・山崎齊
○山崎政府委員 緊急措置法によりまして、治山の事業について申し上げますと、現在荒れております個所、これを面積にいたしますと約三十万町歩ぐらいなものが荒れておるわけでありまして、その地域は、北海道から鹿児島まで、いわゆる現在の日本というものの全部の地域に及んでおるという状態であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/102
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103・神近市子
○神近委員 北海道から鹿児島まで——北海道は見ませんが、鹿児島はずいぶん私は見たことがあります。大体この範囲が非常に広いのですけれども、初めは一ぺんにそれができるわけじゃないし、重点的にどこどこをおやりになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/103
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104・山崎齊
○山崎政府委員 治山事業の十カ年計画は、先ほど申し上げました、全国で現在三十二万町歩に近い荒廃地があるわけでありますが、この中で一般のいわゆる住宅とかあるいは市街地、道路、港湾、そういうふうな国民一般のいわゆる経済活動あるいはまた国民の生活というようなものに直接重大な関係を持つ、たとえば、ほうっておきますと、その荒廃地がだんだん大きくなって、農耕とか住宅等の安全にも重大な影響があるというふうなところを選びまして、この十カ年間に三十二万町歩の約七割程度のものを、重要な個所から実施していこうというふうに考えておるのでありまして、前期の五カ年間におきましては全体のうちの三割、後期の五カ年間に四割、合計いたしまして七割程度をこの十カ年間に修築、復旧等の工事をやりましてよくして参りたい。そういたしますと、その結果、国土の保全という面で、最近までで最も安定しておったと考えられます昭和初期の状態にまで、災害地をなくしていくことができるじゃないかというのが、この治山治水の十カ年計画の骨子であるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/104
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105・神近市子
○神近委員 あなた、私のお尋ねしたことには答えなかったのでしょう。今重点的にどこをお考えになっているかとお尋ねしたので、あとのことはこっちにはわかっていたことなんです。まだ今はどこも考えていない、白紙の状態で、大体十カ年計画を七カ年ぐらいでやろうというふうなお考えなんですね。それでは、私の伺いたいのは、今年の予算は幾らなんですか。この中のどこかを見ればわかっていると思うのですけれども、伺った方が早いから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/105
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106・山崎齊
○山崎政府委員 民有林の治山事業につきましては工事費で約八十七億円、国有林につきましては三十二億円が、治山事業の経費として計上されておる分であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/106
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107・神近市子
○神近委員 そうすると、ことしの予算をもってのこの事業計画は、河川審議会とか森林審議会というものをこれからお作りになって、審議員を任命なすって、そうしてその審議にかけておきめになろう、こういうのですか。これは大臣でもけっこうなんですよ、多分審議員にはどういう人をというふうなことも脳中には描いておいでになるのでしょうから。これからやる。そうすると、これだけの予算を使い切れますつか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/107
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108・山崎齊
○山崎政府委員 お説の河川審議会それから中央森林審議会、これは、それぞれの法律によりまして数年前からできておりまして、成立しておるのでありますが、私たちといたしましては、先ほど申し上げましたように、本年の事業、あるいは五カ年計画、十カ年計画というものを実施いたしますためには、やはり建設省の治水計画というものと十分総合的に付加された計画を持たなければならぬことはもちろんでありまして、現在におきましても、各県ごとに主要な流域ごとにいわゆる県庁の林務関係、土木関係というものが協議会を持ちまして、三十五年度はどういう事業をどこでどれくらいやるのか、その両者の調整がいいのかどうかというようなことを具体的に打ち合わせをして計画をするわけでありまして、五カ年計画、十カ年計画につきましても同様にやっていこうというふうに考えておるのであります。また、中央におきましても、林野庁と建設省が常時緊密な連絡をとりまして、河川の流域ごとに、あるいは必要な場合は町村ごとに、また個所ごとにも両者の計画を持ち寄りまして、重複をしたり、また建設が大きい工事をやるのに、荒れておる山がさっぱり工事をやらぬというようなことがないように調整をはかって、十分な案を現在相談して立てつつあるわけでありまして、それをそれぞれ審議会なりそういうものに早急にかけて決定して、事業を進めて参りたいというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/108
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109・神近市子
○神近委員 特殊多目的ダム、それから普通のよく電力事業で出てくる多目的ダム、この区別なんですけれども、今あなたは、森林の溢水を食いとめるためのダム、こうおっしゃった。私は例をたくさん知りませんが、小仕掛のダムですね。電力事業にこれを利用することはあとでお伺いしますけれども、利用するものが水利事業を主体としてのダム、これが特殊多目的ダムになるのですか。たとえば例をあげれは、愛知用水の一番上のところに牧尾ダムというものができておるはずです。あれはどっちに属するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/109
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110・佐藤一郎
○佐藤(一)政府委員 ダムにつきましてはいろいろな種類がございまして、たまたま愛知用水の関係のダムを御引用になりましたから、私が答弁申し上げますが、御承知のように、水利を調節するためのダム本来のものがございます。その際にあわせて電源の開発とかあるいは灌漑用水の供給であるとかいうような、種々の目的に同時に行使する目的のものを多目的ダムと申しております。それからまた、今林野庁長官の御説明に一応ございましたが、いわゆる治山の目的を持って山川の渓流のきわめて上流の方に小さな堰堤を——大体小さなものが多いのですが、堰堤を作りまして、そしてそこに土砂をためて参る。そうして山腹のつまり土砂がくずれるのを、先ほどの説明にありましたように、草や木を植えて防ぐ。同時に川の上流からくるところの土砂をそういう堰堤をもって防ぎとめるという、いわゆる治山の目的を持つ堰堤と、いろいろございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/110
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111・神近市子
○神近委員 そのいろいろ目的があるということはわかりますけれども、電力事業とタイアップするというときが、私大へんむずかしいのじゃないかと思うのです。それはこの特別会計によって行なう事業が主体となるのか。そして電気事業を導入するときの経理、あるいは費用の分担、あるいは保管費の分担、そういうことは相当むずかしいものじゃないかと思うのですけれども、そのとき主体はどっちにあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/111
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112・曽田忠
○曽田政府委員 お答えいたします。ダムの種類につきましては、先ほど佐藤次長から御説明がありましたように、上流の方は砂防ダム、これは土砂の流出のみをとめるという目的でございます。それから、多目的ダムでありますが、建設省で所管いたしております多目的ダムは、主体はまず洪水の調節をはかるというのが目的でございまして、同時に、それとあわせまして、発電の水に使うとか、あるいは灌漑用水、水道用水等に使う、そういう洪水調節とその他の目的とが一緒になりまして作られるダムを、法律上多目的ダムと見ておりまして、建設省の所管になっております。これが一般の、たとえば電力の場合の単独のダムと違います点は、洪水の期間におきまして、この多目的ダムにおきましては、ダムの一部をからにしておく。従いまして、からになっております部分に洪水が入って参りまして、それが洪水調節の役に立つ、そういうことでございます。
この多目的ダムにつきましての費用の分担の方法でございますが、これはいろいろ方法がございます。たとえば治水のみでこのダムを作る場合に幾らかかる、あるいは電力のみでこのダムを作る場合に幾らかかる、そういうふうな計算を出しまして、その按分比によりまして、実際にかかるダムの費用を按分してお互いが持つというやり方がございます。それから、別の方法といたしまして、洪水による被害を減少できるわけでございますが、減少するために、どの程度の投資をすることが必要であるか。それから、電力を何万キロワット起こすために、大体それと見合うような施設はどの程度の投資規模が必要であるか、そういうような、専門の言葉で申し上げますと、妥当投資額、前に申し上げましたのは身がわり投資額といいますが、そういうような計算をいたしまして、その割合を実際に必要であります工事費にかけまして、治水が幾ら持つ、電力事業者が幾ら持つ、そういうふうに費用の分担をきめております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/112
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113・神近市子
○神近委員 言葉はわかりますよ。妥当投資とか身がわり投資とか、それはよくわかりますけれども、それを実際に行なうのは大へんではないかとお尋ねしているのですよ。それはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/113
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114・曽田忠
○曽田政府委員 この点につきましては政令等においてもきまっておりまして、たとえて申し上げますと、洪水の減少額がたとえば十億といたします。そういう場合におきまして、そのためには大体幾ら投資したらいいかというような計算をします。その場合におきましては、年利息と減価償却費が、ダムの場合におきましては両方合わせまして六分二厘五毛でございますが、それを割りましたものが大体妥当投資額、そういうような計算をやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/114
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115・神近市子
○神近委員 今のところをもうちょっとよく説明していただきたい。十億の損害に対してとおっしゃったのですが、その損害は現実でなくて予想でしょう。それをもうちょっとよく御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/115
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116・曽田忠
○曽田政府委員 お答えいたします。
今の洪水によります被害がどの程度あったかというものを出します場合におきましては、過去十年間の平均の年の被害額を出します。ある一つの例をダムについて申し上げますと、利根川の薗原ダムによりまして年平均の被害の減少額というものが約二億九千万円、これを先ほど申し上げました資本利子と減価償却費と合わせますと六分二厘五毛でございますから、この二億九千万円を六分二厘五毛で割りますと四十六億四千万円、この二億九千万円の被害の防除に対しまして四十六億円の投資はしても妥当である、そういう推定をいたしておるわけであります。それから、電気の場合におきましては、年間の発生電力量、キロワット・アワーでございますが、これに対しまして大体三円程度かけましたものが、その年間の償却費になるわけでございます。それから、年間の維持管理費、これを差し引いたもの——ダムの発電の場合におきましては資本利子が九分、減価償却費が二分、それ以外に固定資産税の税率がございますが、そういうものの合計を割りまして、これに対しまする妥当投資額を出す、そういう計算をやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/116
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117・神近市子
○神近委員 なかなか緻密な計算で、しろうとが批評をはさむ余地はないと思います。一つその線ではっきりとやっていただけるならばいいと考えます。結局この目的によって行なわれる特殊多目的ダムというものは、治山治水を実体としてやるのであって、電気事業というものはおまけ事業といってはおかしいのですけれども、そういう性質のものですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/117
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118・曽田忠
○曽田政府委員 治水事業と申しますのは、先ほど林野庁長官からもお話がありましたように、一つの水系を一貫いたしまして、上流は治山、それから砂防、それから河口に至るまで一貫した計画をもった事業を進めるわけでございますが、特に最近におきましては、工業用水あるいは水道用水等を含めまして水の需要が非常にふえて参っております。かたがた現在のいろいろ地形等から考えてみますと、ダムを作る地点といいますのは相当限定されて参っております。従いまして、治水の場合におきましても、あわせて水の利用、逆にいいますと国土開発というようなものもあわせまして治水事業として考えた方が適当ではないかというふうに考えております。従いまして、治水対策におきましても、そういうふうな観点に立ちまして、たとえばできるだけ下流の川幅を広げる、あるいは堤防を高くするといいますのも限度がございますから、できるだけ上流の方にダムを作りまして、洪水調節を行ないますとともに、あわせて利水につきましてそういう多目的の用途に使うということが適当だと考えております。従いまして、ねらいはもちろん洪水調節でございますけれども、利水の方が必ずしも従であるというようにはわれわれは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/118
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119・神近市子
○神近委員 地すべりが今問題になり、また埋め立ても問題になってきているのですけれども、せんだって私は九州の炭鉱地方へちょっと行ってきたのです。この治水あるいは治山事業の中には、炭鉱のボタ山の整理というものも入っているように読んだのですけれども、その点、今の炭鉱対策と考え合わせて、ボタ山の整理——私の郷里は炭鉱地なのですが、たんぼの小さな道一つ隔てたところに、ほとんど小さな山くらいのボタ山を作っております。その炭鉱の坑口がちょっと小高いところにあるものですから、それを自分たちの地はずれに積み上げて持ってきたのが山になっている。雨やその他のときにはくずれがきて危険であるということが一つ。それから、あれは炭鉱が整理するのがあたりまえだと思うのですけれども、それがなされない。この問題は一体どういうふうに解決したらいいのか。私が聞いたところによりますと、北海道のごく海浜に近いところには、埋め立て工事にたくさん使っているということがある。海岸ならそれが可能だと思うのですけれども、そのために一人の炭鉱主が非常に膨大な土地を獲得したということも私は聞いております。この事業の中にはボタ山の整理というのもこの説一明書の中にうたわれていたように思うのですが、これはどういうふうに整理なさろうというのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/119
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120・曽田忠
○曽田政府委員 今先生のお尋ねのように、この治水事業計画におきましては、ボタ山施設の災害の防止事業というものも考えております。しかしながら、政府といたしましては、ボタ山の災害防止事業を取り上げますのは、ボタ山の所有権者が不明であるというような場合を主として考えております。こういう石炭の掘さくに伴いまして一般的に被害を与えるというような場合の防止措置につきましては、これは鉱山保安法等におきまして鉱業権者の義務とされておると考えております。従いまして、政府といたしまして特にボタ山防止事業というものを取り上げます場合におきましては、ボタ山の所有権者がわからない——おそらく相当古い時代にできたものにそういう例が多いと思いますけれども、そういうものにつきましてのみ政府として考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/120
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121・神近市子
○神近委員 この水利事業の整備は大へん必要でもあり、戦争の跡始末という意味でぜひされなければならなかったことで、今日伊勢湾台風の災害を契機としてこれを思い立たれたということは、私ども大へんけっこうだと思います。今水利事業に関するいろいろの意図があり、また多目的ダムが随所にできるというようなことで、私どもに連想されることは、何といっても地元の山の奥のことでありますから、いろいろな不明朗な事態が起こってくるのです。多目的ダムが今の特殊性のものと電気事業のものとの別がありますので、その危険は少なかろうと考えますけれども、愛知用水の牧尾ダムの事情を聞いてみましても、一番高いところにできる。あのときの事情を考えましても、非常に買収にてこずって、金だけでなく、かえ地を上げてもまだ話のつかないところがあった。ところが、そういう事態に今度は便乗しまして、その土地の買収を先にしておく。ここにダムができるから、これがなければどうしてもそのダムができないというようなことが随所に起こっておるようですけれども、そういう場合、妥当な値段で買収するというようなお考えは大臣は持っていらっしゃらないのか。今土地の問題がいろいろなことで起こってきております。これは特殊な山奥の土地だから、都会地における問題とは別でありますけれども、ここにも一つ事例があって、これは決算委員会で多分取り上げることになるだろうと思うのです。ダムのできるという見込みのところを買い占めておいて、そして非常に不当な値上がり、数百倍の値上がりというふうなことが予想される。できるときまればこれを買っておくというふうなことが随所に起こっておるのですけれども、そういうことについては何とか打つ手はないものでしょうか。特に今度のこの事業は純粋に国土の保全と国民の利益を守るための立法であれば、金もうけに利用されるということは、私どもは何としても承知できないのです。その意味で、今日の土地収用法とも違った、もう少し民主的な公共の目的というものを強調して、そしてその土地が必要であるということによって、村民なりあるいは町民なりに納得させるという方法はないものでしょうか。そういうことは行き当たりばったりでは私は困ると思うのです。どういうふうに考えていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/121
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122・曽田忠
○曽田政府委員 お答えいたします。
先生のただいまお話しのように、公共事業に伴います土地の収用につきましては、いろいろむずかしい問題が存在しておるわけでございます。私の所管といたしましては、特にダムが問題でございますが、われわれといたしましては、特にその事業の公共性といいますものを、たとえば水没する皆様方によくお話しいたしまして、まず第一にその水没そのものにつきましての御納得をいただくということに、まずもって主力を注いで参ります。その次は、具体的に補償の交渉に入るわけでありますが、これにつきましては、建設省といたしましては、一応の基準を作りましてこれを下部機関に流しておりまして、この基準によっていろいろ具体的な補償の額をきめておるわけでございます。結論とするところは、要するに最終的にはその付近の時価といいますものを基準といたしまして、必要がありますれば若干の感謝料という程度のものはダムにつきましては出しておりますけれども、大体そういう付近の時価というものを基準といたしておるわけです。特にダムにつきましては、現金をもらうよりもかわりの土地がほしいということが特に最近大きく希望が出ておりまして、われわれといたしましても、この現金の補償にかえまして、代替地を造成いたしましてそこに移ってもらうというようなことで、お話を進めて参っております。今までのところ、当初におきましては公益性の御認識の点におきましていろいろ問題がございましたけれども、大体今までの経過から見ますと、水没者の方々に納得していただいておりますという現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/122
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123・神近市子
○神近委員 大体お話はわかったように思うのですが、なるほどボタ山の所有者のなくなった土地というものは、私どももわかるような気がいたします。たとえば工場地帯で遠浅か何かの海岸にめったやたらに捨てたようなところを放棄してしまったあと、今考えれば大へんな地価になるというふうなことがあるかもしれないけれども、それは所有者がわからなかった。それを整理しようとなさるのが一点ですね。
それから、地すべりですけれども、地すべりは、たとえば新潟とかあるいは東京の江東地区のようなところ、それから尼崎、それから利根川の流域というふうな四、五カ所ひどいところがあるのです。それをも整理しようとなさるのですか。山奥のこの治山のための山の地すべりということが、ここでうたってある地すべりなのか。それはたとえば尼崎とかあるいは新潟とかあるいは荒川とか利根川というところまで含みますか。それをちょっと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/123
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124・曽田忠
○曽田政府委員 お答えいたします。
最初の地すべりの問題でございますが、これは、治山関係におきましては地すべり防止工事がございますし、治水関係におきましても地すべり防止工事がございます。これは、全国的に見まして、先生のお話のように、たとえば新潟あるいは長野というところに多く発生いたしまして、これにつきましても、十カ年計画におきましては重点的に取り上げて参りたいというふうに考えております。次は東京の江東地区あるいは尼崎地区等の地区におきましては、いわゆる地盤沈下という現象が起こっております。また、御存じのように、新潟地区におきましては相当大きな地盤沈下が起こっております。これらにつきましては、特に経済企画庁におきまして地盤沈下対策審議会が設置されておりまして、これは昨年から新しく設置されたわけでございますが、この審議会におきまして、目下慎重に、その原因なりあるいはその対策等につきまして結論を出すべく、いろいろ御審議をしている最中でございます。根本的な地盤沈下対策につきましては、その結論によりまして、われわれといたしましては具体策を講じていきたいと考えております。特に新潟の問題につきましては、非常に大きな問題になっておりますが、その他の江東地区あるいは尼崎地区等におきましては、要するに工業用水を地下水からくみ上げる、それがあるいは一つの大きな原因ではないかというふうにも考えられますし、それに対応いたしまして、地下水から工業用水をとらないように、多目的ダムによりまして工業用水を補給するということも、われわれは考えなければいかぬというふうに考えております。また、具体的な地盤沈下につきましても、現在におきましては、今まで考えておりました計画を早急に完成いたしたいと考えております。なお、昨年伊勢湾等の台風によりまして非常な高潮が起こったわけでありますが、こういう新たな事態が起こる場合の対策等につきましては、三十五年度におきまして約二千万円の調査費をいただいておりまして、これによりまして大きな災害に対します具体策をどうするかということの調査を進めて参りまして、この調査が終わり次第具体的な計画を実行したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/124
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125・神近市子
○神近委員 大体皆さんの御構想がわかったような気がいたします。どうしてもこういう治山治水の事業に大きなパーセントを占める仕事は堤防であり、あるいは道路が含まれるかどうかそれはわかりませんが、道路といっても、山道その他山道式のものはもちろん含まれるだろうと思います。大体において堤防が非常に大きなパーセンテージを占めるだろうと思うのです。ところが、大臣お聞きをいただきたいことは、堤防だの下水のコンクリートあるいは道路の厚さというふうなものは全部ごまかしてあるのです。会計検査院は大体一〇%以下の調査しかしていないのですけれども、行って寸法をとってみれば、必ず一メートルのところはその半分しかない。七〇%の厚さがあれば上等だ。道路なんかのセメントが、やはり上質のものを指定されているのに悪いのを使って、しかも厚さが見えない。コンクリートを敷いてしまえば、一センチあっても一メートルあっても外からわからないのですから、必ずごまかしてある。私は堤防を中途半端な状態に置くということは一番困ることだと思うのです。四、五年前にオランダで堤防がくずれて大洪水が起こったことがあります。そして日本から技師が行ってその堤防の技師と話し合っているところを、何かで私は読んだことがあるのですけれども、大体オランダは北海の堤防によって国が保たれているということはいえますけれども、大体何年を目安に堤防を建造しているかということを尋ねたら、大体五百年の間耐用するという目途をもって今やっている、政府が五〇%予算をふやしてくれれば、私は千年耐用するだけの堤防を築く自信がある、もう五〇%の予算がほしいという話をしているのを私読んだことがあったのですけれども、千年といえば相当のものです。大体歴史の二こまくらいは——今までの歴史でもこれは二こま、三こまの歴史でありますから、ほとんど永久的という言葉を使ってもいいことだと思う。それだけのものはできる科学的あるいは技術的な研究が進んでいる。それが毎年々々補給しなくてはならないような堤防をわれわれが作ってもらっているということは、どこにガンがあるかということをぜひ考えていただいて、そして堤防は、あそこもここも手をつけないで、重点的に最も大事なところに最も堅牢な堤防を築く、そういうようにやっていただけば、二年や三年は災害を受けて文句をつけるところがあるかもしれませんが、ほんとうに誠意を持ってやって下さるなら、私は国民はわからないことはないと思うのです。ぜひ耐久的な堤防、この仕事にあなたがあるいは今の閣僚が手をおつけになったのはさすがによかったというふうなものを作っていただきたい。私はその希望を申し上げて質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/125
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126・石村英雄
○石村委員 神近委員の質問に関連して少しお尋ねします。
治山特別会計というのが今度できることになったのですが、多目的ダムの特別会計がこれに切りかわったのだといえばそれまでなんですが、問題は、近ごろとかく特別会計というものがどんどん乱設される傾向にあることは、その一つ一つを取り上げていえば、しいて問題ではないかもしれない。しかし、それが集積されたときに問題が起こってくるということになると思う。そこで、その点大蔵大臣もよく御承知のことですから、しいて論議しませんが、この治水特別会計を今度どうしても作らなければならぬという積極的な理由はどこにあるか、お尋ねするわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/126
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127・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 お答えいたします。
前段は御指摘の通りでございます。幾つも特別会計を設ければ、予算制度というものの根本に触れるということでございます。従いまして、私どもも、特別会計を設置するについては慎重でなければならない。これは御意見通りに考えております。ところで、今回治水特別会計を設けました。その際に多目的ダムを吸収して治水特別会計にいたしたわけでありますが、やめられるものはやめたらいいじゃないかというお話だと思います。御承知のように、今回の治水計画を本格的に長期計画のもとにこれを遂行しよう、こういう考え方から見ますと、やはり計画の総合性を保ち、また経理を明確にしておくということも必要でございますし、また今回は地方負担金を財源に取り入れるという特別財源を見つけましたので、そういう意味とあわせて、今回特別会計を設けるということにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/127
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128・石村英雄
○石村委員 私の質問とほぼ同意見だ、こうおっしゃるのですから、あまり難くせをつけようとは思いませんが、ただいまの御答弁ではやはり答弁にならないのじゃないか。そうすると、一般会計でやると経理がわからなくなるのですか。そんなことはないでしょう。一般会計だって、経理がでたらめでございますなんということはない。この法律をお出しになった理由というところを見てもさっぱりわからぬ。この間も私この理由に文句をつけたのですが、理由としてお書きになるならば、理由らしいものを書いてもらいたい。これも「政府の経理を一般会計と区分して明確にするため、」と書いてある。区分しなければ明確にならないのかという疑問が生まれるわけです。こんなことじゃ理由になりませんよ。どうしても治水特別会計を作らなければ治水事業がうまくいかないという積極的な理由をここに書いていただきたい。一般会計の方はでたらめだという前提に立てば、これも理由になるかもしれないが、そういう常識はずれなことをわれわれは考えているわけではありません。一般会計もおそらく明確に経理されておると思うのです。だから、理由は理由らしいものを書いてもらいたい。ただいまの御答弁もこの理由書をお読みになったような御趣旨ですが、これでは困る。大いに大蔵大臣の御説に賛同したいと思いますが、これじゃ幾らなにしてもしようがない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/128
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129・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 問題は、長期工事といいますか、長期計画の遂行、こういう意味なんです。一般会計で処理しておりますものは、大部分が単年度の事業でございます。その単年度の事業はもちろん明確になっております。しかし、今回の長期計画におきましては、その長期計画の遂行においての明確さをこの特別会計を設けることによってはっきりさせる。この点は一般会計が単年度の事業の予算だという特殊性がありますので、今回の特別会計で経理するものとは性質が違っておるわけです。そういう点から、提案理由なりその他が、あるいは舌足らずでそういう意味が明確でなかったかと思いますが、こういう意味でこれは必要なことだ、ことに補助事業ともあわせて総合的計画を遂行するためには、この特別会計が最も好ましい形態だ、かように私どもは確信しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/129
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130・石村英雄
○石村委員 残念ながら今ここに予算書を持ってきておりませんから、私が勘違いしてお尋ねすることになるかもしれませんけれども、この特別会計では十カ年間の計画を立てるということになっておる。そうすると、十カ年同の計画に伴うた継続費でも出ているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/130
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131・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 別に継続費を計上したわけではございません。十カ年計画というものをこしらえまして、毎年計画を遂行していくわけであります。けれども、やはり計画遂行の面から見まして、その計画をはっきり取り上げておる、こういう意味において、私どももこの前期五カ年計画を計画通り遂行したいと強い意欲に燃えておることが、この特別会計で一そう明確になるということを申し上げますれば、御了解がいただけるのではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/131
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132・堀昌雄
○堀委員 ちょっと関連して。
今大臣は、十カ年計画を計画通り遂行するための今度の特別会計だと言われる。そうすると、文教予算の中で不正常授業解消五カ年計画というものがある。これもやはり十カ年と性格が同じものだ。しかしこれは単年度予算の中で処理されておる。これも非常な必要があるということになっておるが、こちらの方は特別会計だ。それでそういう不正常授業解消五カ年計画というものは一般会計だ。それではちょっと説明が食い違ってきやしないかと思いますが、いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/132
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133・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 本来申せば、特別会計を設けます場合は、特殊の財源ということが明確になっておると思います。今の文教計画の場合は明らかに一般歳入の財源でございます。特殊な財源ではございません。多くの場合、こういう特別会計を設ける場合には、ある程度の起債の権限が与えられるとかいうようなことが間々あるといいますか、そういうのが本来だと思います。むしろ今回の特別会計の設置においても、特殊財源の確保というような強い要望があったと思います。思いますが、私どもは、先ほど来申します地方分担金の範囲において、その財源を確保できる、こういう意味においてはこれは特別会計を作るのに、財源の点からは今の文教の場合とは違う、実はかように考えておるのでございます。長期計画という観点だけならば、文教の施設もあるいは治水計画も同様だということが言えると思いますが、引き当て財源の範囲が違っておるということでございまして、そういう意味でやはり特別会計を設けて収支を明確にするということに相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/133
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134・石村英雄
○石村委員 そこが実は問題になるのじゃないかと思うのです。財源が問題だとおっしゃる。この治水特別会計は、このままではまだ起債というようなことは入ってないと思うのですが、そうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/134
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135・佐藤一郎
○佐藤(一)政府委員 ちょっと大臣の御説明を補足申し上げます。
今回の特別会計設置の根本の理由は、もちろん財政法に基づくのでございますからして、国が特定の事業を行なうという場合に該当しておるために、特別会計を設置するということになったわけであります。直轄事業を中心にして、相当大きな計画を遂行する必要がございます。それらはまさしく財政法上のいわゆる特定事業の遂行ということになるわけであります。その際にあわせて補助事業も行なうということは、どうせ治水事業全体の経理を行なう以上は、一体にして経理するのが便利ではないかという便宜論もあわせまして補助事業も含めましたが、そのもともとの出発点は、国が特定事業を行なうというところから参っておるのでございます。しからば、特定事業を行なうものすべてが特別会計かと申しますと、やはりそこには、おのずから事の重要性とかいうことによって、それぞれの政策判断が行なわれるわけでございまして、今回はたまたま治水治山につきましては特別の大きな計画を立ててこれを推進していこうというので、十カ年計画が樹立せられたわけであります。けれども、法律上はこの十カ年計画と特別会計の設置には直接不可分の関係はございませんが、そういう考え方で、今回十カ年計画を樹立した際でもございますし、従って治水計画の重要性というものは格段に認識せられたわけであります。そういう意味で、国が特定事業を行なおうというので、特別会計を財政法に基いて設置するということになったわけであります。そこで、結局その特別会計の構成でございますが、地方の負担分につきまして、従来直轄事業の分担金を交付公債でやっておるわけでございます。それで、他の特別会計にもすでに例がございますし、分担金は交付公債の発行によってやっておる関係上、一ぺんに入って参りません。それで、資金運用部から金を借りまして、あらかじめそれを借りて工事を円滑に進捗させていく。これは今回の特別会計に限りませんで、道路の特別会計その他にもすでに従来の例があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/135
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136・石村英雄
○石村委員 財政法の特定とは何かという定義問題もあると思いますが、大体私はあまり必要がないと思われるこの特別会計をお作りになったねらい、含みというものは、将来起債でもこれにやらせて治水事業を大きくやろう、大へん景気のいい話、そういうねらいが含まれておるのではないかと思います。そうでも考えないと、特にこんなことをする必要はないように思われるのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/136
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137・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 いろいろ議論のあることだと思いますが、政府はただいまのところこの特別会計で明示している財源で治水計画を遂行して参るつもりでございます。いろいろ御意見などはあることだと思いますが、私どもは、財政法でも許されておることだし、特別会計を作ることはむしろ望ましい、かように実は考えて作って御審議をいただいておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/137
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138・石村英雄
○石村委員 私の聞いていることをそらして、望ましいなどというような御答弁は少しずるい御答弁でありますが、とにかくこれには起債をするということがないようですから、現在のところは関係ありませんと言われればそれまでであります。問題は将来どうかということになるわけでありますが、先のことをあまり論議しても、われわれがこれをいいと判断するか悪いと判断するかにかかることだと思う。関連質問ですから、この点はこのくらいにしておきます。
次に、林野の特別会計ですが、最近林野の特別会計は、業績というか何というか、いいようですが、大体これからの将来の見通しはどんな見通しなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/138
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139・山崎齊
○山崎政府委員 国有林野事業特別会計の経理でございますが、昭和三十三年度におきましては損益計算上の利益も十二億ばかりでございますか、出たのであります。われわれといたしましては、三十四年度におきましても大体その程度の利益金が生まれるものというふうに予想しておったのでありますが、本年度は伊勢湾台風等の関係によりまして、長野、岐阜という方面を中心といたします七百万石に近いような風倒木の発生を見たというような関係からいたしまして、三十四年度としては三、四十億の決算上の赤字になるというふうな状態にたまたまなったのであります。三十五年度以降におきましては、そういうふうな事態が発生しない限り、やはり三十三年度を下らないような程度の剰余金も生まれるような経理の見通しが持てるというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/139
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140・石村英雄
○石村委員 特殊な異変が起こればそういうようなことも起こりましょうが、お話によると、大体黒字で進み得る見通しだと思う。
そこで、ごく小さなことをお尋ねするようですが、国有林のある村の農民といいますか、国有林が大きく占めておるそこの村の農民は薪炭林にももちろん事を欠く。国有林で全部埋められて、農業用の下草をとるというようなこともなかなか許可してもらえない。今日低所得者が問題になっております。どこでも低所得者は困るわけで、言うまでもありませんが、沿岸漁民の問題、それから山村の、このような山の中にいて、山林を所有していない、耕地もまた同時に非常に少ない、ほとんど自分の耕地なんてないというような人の生活というものは、極度に逼迫しておると思います。それが国有林なるがゆえに、一木一草たりといえどもどうにもならぬというようなことで、非常に困っておると聞いておるわけです。国有林のそうした人に対する間伐というか何というか、下草をとらせるというか、そういうことはどういう方針でおやりになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/140
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141・山崎齊
○山崎政府委員 国有林の現在の経営という面におきまして、地元の山村民の経済生活との関連をどういうふうに考えていくべきかという点についての御質問であると思います。現在におきまして、先ほど申し上げましたように、七百五十万町歩程度の国有林を持つわけでありますが、その国有林に対しまして、御存じの通り放牧、採草等に国有林を使わすということ、あるいは薪炭林等を地元に計画的に継続して供給していくということ、そういうふうな面、あるいは下草とかキノコとかいろいろなものを採取させるというふうに、これをいわゆる共有林の程度ということでいっておるのでありますが、そのほか国有林の貸付使用、その他いろいろな角度から地元の利用に国有林を供するという制度は積極的にとっておるのでありまして、現在におきましては、七百五十万町歩の国有林に対しまして、四百七十万町歩程度の面積にわたりまして、そういう面のいわゆる利用権の設定なり貸付使用というふうないろいろな方法を講じまして、地元の利用に積極的に寄与させるということをやっておるのであります。今後ともそういうふうな制度は質的にもそれを向上させ、量的な拡大もはかって進むというふうに考えて参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/141
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142・石村英雄
○石村委員 方針としては問題の解消のような方法をとっておるという御答弁ですが、私は大臣と同じ山口県の者ですが、大臣も御承知のように、山口県はほとんど国有林はありません。例の滑の官林くらいなものです。しかし、あんなわずかしかないところでも——大蔵大臣は滑の官林の中においでになったらわかりますが、あの地域内に住んでおる農民は、自家用の薪炭あるいは芝草というようなものに困っておる、かように聞いておるのです。これは大蔵大臣がお調べになればすぐわかることだと思うのです。林野庁の方としては、そういう方針でおやりになるか知らないが、それはどちらに責任があるとかないとかは申しませんが、政府のやり方に対する方針が末端になかなか徹底しないというようなこと、先ほどおっしゃるような方針が十分にやられておるとすれば、そういう問題は起こらないはずですが、やはり起こっておるということを聞きますと、不徹底な点があるのじゃないか、あるいはなかなかむずかしくきびしい条件がくっついておるんじゃないかというようにも考えられる。私は、何も、詳しいことを調べて、けしからぬとかなんとかいう意味で聞いておるわけじゃありません。そういう方針がとられておるとすればけっこうなことです。それを徹底させ、しかも有意義にそれを活用させるように指導していただきたい、このように考えます。これは大蔵大臣ももちろん御賛成とは思いますが、大臣としての御答弁を聞いておくと、これは林野庁も大いに本気でやらなければならぬということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/142
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143・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 同じ場所で同じような問題を経験しておるものでございます。ただいま林野庁長官からお答えいたしましたように、制度としてはりっぱに設けられておる。また現実に山口県下の官林の場合にそういうことになっているかどうか、私どもも実情をよくつまびらかにいたしませんが、ただいま石村さん御指摘のような点がございますれば、十分林野庁においても地元の要望にこたえてもらうように、せっかく制度があるのでありますから、そういう処置をとっていただきたい、かように私も思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/143
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144・石村英雄
○石村委員 私は山口県の例を引きましたが、山口県がきわめて不十分だとかなんだとかいう特定の意味で申し上げておるわけではありませんから、何も山口県だけ調べればそれでいいということをお考えにならずに——山口県はほとんど国有林がないところです。しかし、東北地方のような国有林がほとんど林野の何割というものを占めておるようなところでは、もしこういう事実があるとすれば、そこに住んでいる人は相当困っているのではないかと思います。だから、むしろそういう国有林の多いところの実情を林野庁はお調べになって、せっかく設けられている制度がりっぱに生きるように、御指導を重ねてお願いしておきます。
それから、関連質問でばかに多くなりましたが、これは今議題となっている直接のものではありませんが、やはり国有林野の特別会計に関する問題です。これは昨年の話ですが、今度の三十五年度の予算にもありますが、農林漁業金融公庫に七億円の金を出して造林させるという問題がありますね。それが、昨年でしたか、夏ごろになっても、農林省と自治庁とがその運用についてまだ意見が一致しないために因ったということですが、それはどういうふうに解決しておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/144
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145・山崎齊
○山崎政府委員 御説の通り、三十四年度の分につきましては、だいぶ両者の意見調整が手間取ったのでありますが、十一月だったかと思いますが、それから貸し出しを具体的に始めたという段階にあるのでありまして、三十五年度につきましては、もうすでに両者の意見が一致しまして、この四月から継続して貸し出しを始めるということに考えておりまして、今後はもうスムーズにいくものだというふうに確信しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/145
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146・石村英雄
○石村委員 恐縮ですが、その一致した意見というのは、どういうものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/146
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147・山崎齊
○山崎政府委員 これは、市町村等に貸し出しを行ないます場合は、自治庁の起債ということが一番重要な因子になるわけであります。そういう点からしまして、公営企業金融公庫というものを農林漁業金融公庫のいわゆる事務を委託する取り扱い機関だということにすることにいたしまして、市町村が借り入れたい場合は、具体的に申し上げますと、県の林務課あるいは県の地方課というところに話を出してもらいまして、いわゆる林業という面でその計画が適当かどうかということを検討し、県の地方課におきましていわゆる財政という面から検討を加え、両者の意見の一致したところで自治庁に起債の申請が出て、自治庁が起債の申請許可をしたものを、市町村から公営企業金融公庫に申し出るという形で、具体的な貸し出し事務を行なうことにしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/147
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148・石村英雄
○石村委員 そうすると、非常にやっかいですね。まず県の地方課と打ち合わせ、そうして意見が一致したら、今度はまた直接農林漁業金融公庫ではなしに、公営企業金融公庫の方に回る、そうして公営企業金融公庫から農林漁業金融公庫に回って出てくる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/148
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149・山崎齊
○山崎政府委員 公営企業金融公庫は、農林漁業金融公庫から貸し出しについての事務の委託を受けてやるわけでありますので、公営企業金融公庫へ行けば、一切問題は解決するということになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/149
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150・石村英雄
○石村委員 そうすると、農林中金なんかを経由するのと同じような意味で公営企業金融公庫が中に入る、こういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/150
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151・山崎齊
○山崎政府委員 その通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/151
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152・植木庚子郎
○植木委員長 横山委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/152
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153・横山利秋
○横山委員 先ほど神近さんから、本問題につきまして、国有財産、国有林野事業等の汚職の問題についての言及がありました。私はそれに関連していろいろ発展をいたしますが、一つ、二つ前提として大臣にお伺いいたしたいのですが、大蔵省関係の脱税だとか汚職だとか、そういうあなたを主管大臣としての責任の管下にある問題は最近どういう傾向を示しておるか、大臣としてそれに対してどういう措置をなさっておられるか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/153
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154・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 管下の問題でただいま検察庁に起訴されておるものが二、三ございます。一つは、国有財産の処理について不正ありという横須賀を中心としての問題、あるいはまた地方の広島の国税局における汚職の問題だとか、私まことに遺憾しごくに思っておる次第でございます。ただいま起訴あるいは検束中あるいは勾留中、こういうような関係で実情をつまびらかにできないものもございますが、いずれ身柄が自由になりました上は、できるだけすみやかに実情を精査いたしまして、直ちに処分をいたしますことはもちろんでございますが、同時に一般の事務遂行におきましても一そう厳正に取り計らうように、十分注意するつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/154
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155・横山利秋
○横山委員 そういう問題は、あなたの管下におけるその種のまずい問題は、最近特に多くなっておるのか、それとも少なくなってきておるのか、一般的な傾向はどんなものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/155
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156・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 国有財産の処理についての出題は、私が大蔵大臣を拝命いたしましてから今回が初めてのような感じがいたします。また、国税庁関係では、係の者からの話では、最近この種の件数は減りつつある、かように実は伺っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/156
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157・横山利秋
○横山委員 査察部長もおられるのですけれども、この資本蓄積に名をかりた脱税というのはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/157
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158・竹村忠一
○竹村説明員 御質問の趣旨が十分理解できませんが、私どものやっております仕事の方面におきましては、経済界の状況が必ずしも一定の方向をたどらない、たとえば、将来不況になるかもしれないから、そのときに備えて所得の若干のものを横にのけておくというような事例がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/158
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159・横山利秋
○横山委員 その資本蓄積に名をかりた脱税というのは最近多いのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/159
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160・竹村忠一
○竹村説明員 私がお答えいたしました意味におきましての資本蓄積に名をかりた脱税は非常に多うございます。と申しますより、むしろ、私どもがそういう方々にどういうわけでかようなことをなさいましたかということを伺いますと、ほとんどの者が、先ほど申し上げましたように、将来の不況に備えるためだというようなお話があるような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/160
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161・横山利秋
○横山委員 大臣の考え方としては、一般的には二、三あるけれども少なくなっておるという話を聞いてから、おかしいではないかと言うのは、どうもだましたようで悪いのですけれども、やっぱり去年と同じことがまた起こったという気がするわけです。それといいますのは、二十三日に井野法務大臣が全国の財政経済係検事五十八人を招集して訓示をなさっておられる。ちょうど去年でありましたか、おととしでありましたか、同じようなときに話がありまして、本大蔵委員並びに大蔵省としてもまさにびっくりいたしたような訓示をなさったわけです。私がそのとき大臣に御存じでしたかと言ったら、いや実は何の御連絡もなくて、私も新聞記事を見てやや意外に思ったという返事がありました。そういうことではいかぬのではありませんかと言いましたら、いやその通りに思うからということで、たしかあのとき、一ぺん法務大臣を呼んでという話があったと記憶しておるわけですが、二十三日の検事会同において井野法務大臣が訓示いたしましたところは、まさに経済並びに主として大蔵省関係の汚職、脱税等であります。
ここにその一節を引用してみますと、「最近の財政、経済事犯の大勢をみると資本蓄積に名を借りた巨額の脱税事犯があとを断たず、またたくみな方法によって貿易および外国為替管理の規制をのがれる悪質事犯も多く、さらに金融の正常化を妨げる悪質な金融関係事犯も広く行なわれている。これらの犯罪に対する厳正な検挙、処理は現在の検察の重要な課題の一つというべきである。」こういうふうにまことに強硬に、しかも、単に脱税のみならず、外国為替管理の規制、それから金融関係の問題等広範に、まさに大蔵大臣の所管事項を中心にして、最近こういう問題が広く行なわれておると指摘されておることは、私ども大蔵委員としてもやや意外に感じ、われわれの知らざるところがそんなにたくさんあるのかというふうに、遺憾にも感じたところなんであります。
素朴に大臣にお伺いをいたしてみますと、どうもやっぱりこの訓示も御存じないようですし、また井野法務大臣が指摘をしておるような感覚を大臣がお持ちになっておるとも見られない今の素朴な御答弁でありました。これは一体どういうことでありましょうか、その間の事情をつぶさにお伺いをいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/161
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162・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 先ほどは大蔵省職員の汚職というお話でございましたので、汚職の件数は減りつつあるという意味でお答えいたしたのでございます。ところが、ただいま民間の脱税事件は一体どうなっておるか。——これも私は検察当局で言われるように非常にふえているとは必ずしも感じておりません。同時に、法務大臣がかような訓示をいたしましたゆえんは、たまたま会同いたしました検察庁の職員諸君、検事諸君が経済担当の諸君だったというところで、経済事犯についての主要な点を指摘して、注意を特に喚起した、かように私は理解をいたしております。これは、一般の検察庁の検事に対しまして、特に経済事犯だけについて目をつけた指示だ、かように考えますと、いろいろ誤解があると思います。その担当の検事当局であるという点に思いをいたされますならば、法務大臣がこの種の指示をいたしますことは当を得たものだ、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/162
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163・横山利秋
○横山委員 そうなりますと、また部長の御答弁に矛盾が生ずるわけであります。部長は、資本蓄積に名をかりた巨額な——巨額なとは言いませんが、脱税事犯が最近とみに多くなっておるという返事をさっきなさったのであります。私があなたにお伺いをしましたのも、職員という言葉は毛頭申した覚えはございません。大蔵省関係の脱税——脱税というのは大体職員が脱税するのではありませんから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/163
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164・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 汚職です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/164
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165・横山利秋
○横山委員 汚職は申しましたけれども、脱税にしても、大臣としての所管に関するさまざまな問題でまずいことはないか、というふうにお伺いをいたしたことでございますから、その点は一つ部長の返事とあなたの見解との間に矛盾が生ずるようであります。井野法務大臣がこのような訓示をいたしておりますことは、単に経済関係の担当検事が集まったのであるから、それらしく話をしただけのことであって、さまで特別な問題として今議論をする必要はないのだというような大臣のお答えについては、それだったら井野法務大臣に一ぺんおいでを願う必要がある。その資本蓄積に名をかりた巨額な脱税事犯が一体どのように現在あるのか。「たくみな方法によって貿易および外国為替管理の規制をのがれる悪質事犯も多く、」なっておる実情は何か。「さらに金融の正常化を妨げる悪質な金融関係事犯も広く行なわれている。」という証拠は一体何があるのか。それらは今日少なくなってきておるというのに、なぜわざわざ財政経済係担当の検事を集めたのか。それとも、特にこの必要があるから、そういう者を集めたのかという点をさだかにする必要があると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/165
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166・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 法務省では時おりそれぞれの検事諸君の会同を持っておるようであります。たとえば暴力事犯についての検事諸君を集めるとか、あるいは経済担当の検事諸君を集めるとか、こういうことがあるわけであります。経済担当の検事諸君を集めたときに、最近は暴力事犯が多いから取り締まるというのも、これはどうもぴんとこないでしょうし、暴力担当の方の連中に経済事犯の話をしてもぴんとこないでしょう。だから、そういう意味に私どもは理解をいたしております。また、法務大臣が訓示をいたしました諸点は、おそらく抽象的な問題として一応考えられるケースを指摘したのだ、かように思います。また、先ほど私どもの政府委員が説明いたしましたことについて、これも私は相当誤解がありはしないか、この脱税の件数は、おそらく最近は少し減少しておる、かように私自身が感じておるのであります。しかし、減少はいたしましたが、その脱税の理由にどういうものが多いかというと、資本蓄積に名をかりた脱税事犯が多い、こういう意味でありまして、別に矛盾はしていないのだ。ただどうももう少し私も落ちついてお尋ねにお答えすれば、重ねてお尋ねをいただかなくても済んだことだろうと思いますが、最初は汚職と言われますので、取り締まりの役所でありますだけに、ぴんと自分のところの職員から出たことについて、最近気のついた横須賀の問題あるいは岡山県の問題、そういうものがぴんときたものですから、その点を御説明申し上げたのですが、一般の脱税の傾向はただいまのような形にあります。最近のように税の自然増収がふえております場合に、一面苛斂誅求もやっているのではないかというような一部の批判もあろうかと思いますし、また一面において、もう少し厳正に取れば、もっと金額がふえるのではないかというような問題もあろうかと思いますし、いろいろの御批判はあろうかと思います。税の問題でございますから、どこまでも適正な扱い方をしておるという実情でございます。大へん失礼をいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/166
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167・横山利秋
○横山委員 大へんよくわかりました。
それでは、委員長に一つお願いをして、理事会で私の要望を協議願いたいのでありますが、本委員会として、本委員会の主要な任務であります税制と、それから貿易為替管理の制度、それから金融の正常化を妨げる悪質な金融関係事犯というものを、特に井野法務大臣が、今日全国の検事に対して、きわめて簡単ではありますけれども、何と申しますか、そのものずばりと訓示をたれたということでありますと、これによって及ぼす影響というものはきわめて大きいと思うのです。大臣のおっしゃるようなことでは相済まぬと思うのであります。そういうことで、もし最近法務大臣が指摘をしなければならぬ事実があるといたしますならば、われわれ大蔵委員の職責上いかなる状態にあるかということを法務省側から知る必要があると思いますので、法務大臣の出席を求めたいと思います。その点一つ理事会で御協議をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/167
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168・加藤勘十
○加藤(勘)委員 今の横山君の質問に関連して、一つ大臣にお伺いをしたい。
今ここで聞いていますと、資本蓄積のために脱税事犯が多くなった。これは今お答えになった。あなたの答えられるのは、全体としての脱税問題は減っておるけれども、その減っておる中でも、特にそういう資本蓄積を目的とした脱税はふえておる傾向にある、こういう御答弁であって、それはわれわれは資料をもらわなければわかりませんので、ぜひ資料をもらいたいと思います。
それから、もう一つ、今井野法務大臣の出席を横山君が要求しましたけれども、そのことに関連しまして、大臣、経済事犯担当の検事の会同であるから、法務大臣はそういう訓示をした、こういう御答弁でしたけれども、これはとんでもないことだと思うのです。脱税であるとか、為替管理違反であるとか、金融の正常化を乱す悪質の金融事犯であるとか、こういうものが漸次増大しつつあるというようなことを法務大臣が言われることは——これはもし大してふえてもいないのにそういうことを言うとすれば、これは国の恥辱を大臣みずから言うたことになるのです。こういうことは閣内の不統一で、少なくともそういう経済事犯について言うならば、大蔵大臣なりあるいは通産大臣なりの意向も聞いて、そうしてから初めてそういう訓示をすべきであって、それを大蔵大臣も知らないというようなことで、大蔵省関係に関する、ことに今言うような事犯をあげて訓示をされるということは、もしあなたが言われる通りの実情であるならば、僕は非常に大きな国の恥辱だと思います。これに反して、もし法務大臣の訓示に値するような事犯が実際に多いとするならば、あなたはぼんやりなんだ。あまりぼんやりし過ぎる。ほんとうに笑いごとじゃないのだから……。そこで、ぜひ一つ法務大臣を呼んで、そうしてその訓示をされた根拠となった、現実にふえておるという事犯を数字的に示してもらいたい。これだけ聞きたいのです。あなた返事して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/168
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169・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 今のお話でございますが、全体の脱税の件数といいますか、その傾向は、先ほどお答えしたように、私どもは確信をいたしております。その脱税の理由はいろいろあるわけでございますが、その理由は、先ほど言うように、最近は資本蓄積に名をかりた脱税というものが多いということであり、同じ脱税と申しましても、そういう理由であるということであります。
それから、先ほどの法務大臣の話でございますが、先ほど来申し上げるような会同でございますので、大蔵省からは、国税並びに税関部の諸君も立ち会っておるわけでございます。一般的な話がされたと思います。ただいま言われますように、非常に内容的な批判のあることだと思いますが、私どもも訓示の打ち合わせを受けたわけではございませんし、これは法務大臣の考えでなされることだと思いますが、私どもなお原稿を十分精査いたしまして、実情に反するようなことであれば、これは国民に対しましてもずいぶん失礼な言い分でございますし、あるいはまた、検事の今後の働き等についても特別な示唆を持つというような心配もございますから、訓示をされました当時の状況は、私自身も法務大臣について直接伺ってみるつもりでおります。ただ、私は、一般的な問題として非常にこういう意味の犯罪が多いというような言い方ではないだろうと考えます。関係の諸君とすれば、こういう点の傾向があるから、そういうことを気をつけろ、そういうような話だろうと考えますけれども、なお、具体的にその訓示の内容を見たわけではございませんので、私自身も十分調べてみることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/169
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170・加藤勘十
○加藤(勘)委員 今大蔵大臣がお答えになったことは、僕は、それはそうだろうと思うのですよ。またそうなければならぬと思うのだ。法務大臣が、経済担当の検事の会同であるからというて、ことさらに誇張して、そういうありもしない犯罪事実の増大を誇示するがごときことは、いやしくも大臣としてあるべからざることなんです。そうでしょう。ほんとうならば、そういう訓示をするような場合は、閣議において、了解事項として、あなた方だってほんとうは一ぺん目を通しているはずです。少なくとも関係大臣の目を通すぐらいのことはあり得ることなんだ。なされなければならぬことなんです。それがなされていないということは、あなたが現在の状況をそんなに重大に思っておらぬからだ。ところが、法務大臣は非常にそれを重大に取り上げておる。もしそれが事実に反して検事を鼓舞激励するためにそういうことを誇示したとするならば、これは法務大臣許せないですよ。ほんとうに国の恥辱を大臣の口から暴露するようなものです。だから、この点は、私は、この委員会としても、法務大臣に来てもらい、一つその根拠を明らかにしてもらいたい。同時に、大蔵大臣は、大蔵大臣として適当に法務大臣からその原稿の根拠をお聞きになって、やっぱりこの委員会にその法務大臣と話された結果を報告していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/170
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171・植木庚子郎
○植木委員長 ただいま、横山委員並びに加藤委員から、委員長に対して御発言、お申し出の件につきましては、追って理事会に諮りました上で処理いたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/171
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172・横山利秋
○横山委員 それでは、その法務大臣に関する件は、加藤さんからもお話がありましたから、それで私のその問題の質問は終わります。
次は、私は、これに関連いたしまして、端的に大臣の所見を伺いたいのですが、大臣も、すでに、この間本委員会で二回にわたって議論がありました小型録音機の問題はお聞き及びかと思いますが、私ども日本社会党といたしましては、このような小型録音機が、いわゆる秘密に納税者に使われるということについて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/172
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173・植木庚子郎
○植木委員長 ちょっと横山君、御発言中ですが、その問題におわたりでしたら、関連のあまりに縁が遠くなりますから、お約束に従って法案を通して、そして新たに税制に関する件を議題として御発言を願えませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/173
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174・横山利秋
○横山委員 これは汚職関係が少しあるわけです。大して時間はとりません。
この点についてお聞き及びかと存じますから、もうそのものずばりと大臣にお伺いをいたしたいわけでありますが、片一方で、お話のように広島や追浜や東京の汚職があり、そうして反面において納税者に対して小型録音機を使用する。しかもそれが秘密に使用される場合、それから秘密でなくとも、納税者の前へどんとマイクを据えて、さあ話すか話さぬかというふうなことは、何といっても心理的な強圧を与えるというように私どもは断じて、絶対にこれは納得ができぬと言っているのです。最近政府側の御答弁が変わって参りまして、小型はやめて普通の録音機にすること、そうして普通の録音機にして、相手の前に明示をして、もちろんこれはわかるのですから、だから了解をしてほしいというような御返事がありました。これは非公式な話でありますから、それが公式なことであるかどうかというのが質問の第一点。
それから、第二点としては、私はそれに対しましても反対をすると申し上げておるのです。それは、大臣おわかりと思いますが、われわれ政治家や、お役人や、権力の上にあるような人たちは、マイクを前に出して見せれば喜んで話したがるくらいだ。けれども、一般の納税者の人は、目の前にマイクを突きつけられて、さああなた話すか話さぬか、何とか言って下さいと言えば、そのことだけでもおずおずしてしまう。従って、これは心理的な強圧手段に使われる。そういう点からいって、こういうことはおやめになった方がよろしい。税制は、あくまで合理的に科学的に、納得、説得を通じてやってほしいということを強く要請をいたします。これに関する大蔵省及び国税庁の答弁は、二転、三転、四転をいたしたわけであります。これはほんとうに何転もいたしたわけであります。そして最後に、普通録音機で相手に明示をして——それに対するまた反論じゃありませんけれども、こういう言い方もあるわけです。それは、小山委員の御意見でございましたか、とにかくそいつは納税者側にも証拠になるから、場合によっては有利な場合もある、そういう意見もありました。けれども、今度は、それじゃ移動できない録音機ですから、国税局の中に設置される。国税局へ来た納税者に対して使用するかせぬかということになる。やっぱり役所の中で、納税者が、税務職員の目の前で、さあしゃべりなさいと言われたときの雰囲気というものは、一体どういう環境のもとにあるかということを考えますときに、この録音機の使用を納税者にするということは、これはおやめになった方がよろしいではないか。(「悪質な脱税者だ」「納税しなかった者だ」と呼ぶ者あり)ただでさえ相当の自然増収、苛斂誅求になるという雲行きのときでありますから、これはさっぱりおやめになった方がよろしいという観点をとっておるのでありますが、大臣の御見解をお伺いいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/174
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175・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 今度は最近はやりの何とかの統一解釈を申し上げますが、私もテープレコーダーのお話はいろいろ伺って参りました。過去の経験から申しまして、事務当局もいろいろ御批判をいただいたというだけではなかなかやめないというようなお話もありました。いわゆる小型録音機というものは、いろいろ誤解も受けるだろう、ことに秘密にそういうものを使うことは、どうも公正でない感じもするということで、小型はとにかくやめよう。今までもあまりそういうことはないそうですが、とにかくいろいろ批判のあるときでございますから、小型はとにかくやめよう。中型といいますか、大きいものにつきましては、二十七年以来使用いたしておりますので、今日までの経験か。申しまして、さしたる不都合もないように考える。ただ問題は、おそらく税務署だとか警察署だとかいうところは、それだけで感じのいいところでございませんから、そういうところへ呼び出しを受けるだけでも、なかなか同じ立場で話せないという話もあるかもわからぬと思います。私は税務署へ行くことはございませんけれども、やはり私どもが法律を知りませんために、あとで税務署でいろいろ問題にされることもございますので、進んで人を派して実情をよく聞かしておりまして、みずからが聞くのとはだいぶ違って参ります。やはりいろいろ法規、手続が複雑でありますだけに、税法をどんなに簡単にしようと申しましても、なかなか難解であったりということで、今までも問題があったと思います。そういう意味で、税務署の職員にも、とにかく親切第一に御協力申し上げるように執務するということを、絶えず注意しておるわけであります。ただ、今言われましたように、特別な場合において事態を明確にする方法として、もちろん速記をそばに置きましても問題でございましょうし、最も簡単な方法はテープレコーダーだと思います。先ほどのようにいろいろの見方があり、非常に心理的にこれが威嚇を与えておる、どうも平静を失って困るという話もありましょうし、しかし、同時にまた双方の主張が明確になって、あとで聞き取り書を作るよりも、それはその方がいいという場合もありましょうし、いろいろな見方がありますが、しかし、いずれにしても何かと問題がありますから、今までは十分注意をして、使って参ります場合は相手方の同意を得た上で使っているということでございます。また今後も、そういう方法で十分注意をいたしまして、問題の起こらないようにこれを処理していきたい、かように考えております。従いまして、在来一部にありましたように秘密なものをやるのじゃないかということは、秘密兵器は一切使わない、そういう考えでおるので、御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/175
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176・横山利秋
○横山委員 小型は使わない、秘密にはしない、相手に明示して許可を得て使う、こういうことでございますね。実はその三つの点についてもなおかつ私は反対をしたいわけです。それは、重ねて申しますけれども、納税者に対して——先ほどヤジが入って、納税者じゃない、脱税者だとおっしゃったが、これは明らかに税務官吏が陥りやすい心理でありまして、納税者を見れば、みな何か脱税の疑いがあるというふうに見ておると思うのです。それは脱税しているかどうかまだわかっていない段階です。そのわかっていない段階に、調査に際して録音機を目の前に置いて、あなたがいやだったらいいですよ、こう言うのですね。それを拒否すると、何かあなたはいやなことがあるから拒否するのでしょう、こういうふうになる。これはたくみな誘導尋問です。私は、ある事犯の関係をいたしまして、検事と会談をしたことがあります。ところが、その検事といい、国税局の人といい、誘導尋問は実にうまいのです。そう言っては失礼だけれども、いい意味でも悪い意味でもうまいのです。そういう人たちが録音機を使っていいですかと穏やかに言って、いやです、何でいやですか、こういうことになるのですね。自分のうちでもないし、すでに話し合いのべースじゃないのですよ。ちょっと国税局へ来て下さいという場合は、話し合いのベースじゃないのです。自分がまるきり白であっても、調査をされるという雰囲気というものは特別なものがあります。思いもかけない自分の間違いが指摘されるのではないかという雰囲気があります。そのときに、使っていいのですかと言えば、断わるということは何かうしろ暗いという感じがするから、まあいいですとかりに言います。それでは、これはどうですか、あなたはこの間うちを作った、あの金はどこから出ましたか、こう言うのですね、さあそれは、こう言う。自分の思いもかけなかった質問ですから、少し迷う。どうして黙っていらっしゃるか、こう言います。あのお金はもうけた金ですか。借りた金です。だれから借りた金ですか。親戚の者です。親戚のどなたですか、こう言ったら、その借りた親戚に調査が行くことになるから黙る。なぜ黙っていらっしゃるのですか。こういうやり方が実にうまいのです。私は何回も体験もしています。別に悪い意味じゃありませんけれども、体験もしていますし、別な角度で自分もやったことがあるのです。録音機を使っての間というものが、いかに相手方に対する心理的な効果を与えるかということを痛感をするわけです。ですから、私、それじゃその録音機を証拠になさるのですかと言ったら、これは法的な証拠にはしないとおっしゃる。じゃ何にするのですかと言ったら、録音をとって、あとで整理して、今度もし聞き取り言や何かを作るときに、それを参考にする、こう言うわけです。証拠にはしない、参考にするというところに、これまたきわめて危険なものを感ずるわけです。なぜかと申しますと、証拠にはしないと言っているけれども、税務署としては、これは納税者が事実言ったものであるから、動かしがたいものとして腹の中では考えているわけですよ。自分は動かしがたいものとして考えている。けれども、証拠にはしないということですから、納税者と税務官吏の間でべースが違うのです。証拠にするというならば、まだ私はいいくらいに思っていたら、証拠にはしない、参考にすると言う。そういうところに、私は、効率表、標準率表と同じように、税務署の職員のポケットの中にそういうものを隠しておいてこれを見ながら相手の方に、あなたはうそだ、うそだ、うそならうそと言ってくれ、いやうそだろう、こう言っておる。効率表、標準率表をポケットに隠しながら言っている。その効率表、標準率表を出して、納税者に対して、標準から言うとあなたのところは三割のもうけじゃありませんか、この計算にどこに間違いがあると言って——それを出してやったらどうだというと、それは絶対に出せないのだ、そういう秘密兵器ですよ、効率表も標準率表も。その秘密兵器がある上に、証拠にしない証拠を、今度は録音機で心理的な効果をねらうとしか見れないのです。最初は小型録音機でしたが、これは携帯用に便利だというのですから、まさにほんとうに秘密兵器です。けれども、後退をして今度は普通の型にするから、それはよろしい。それから相手の許可を得る。それもよろしい。形式的には私は差しつかえないと思うのです。けれども、納税者と税務署の職員、税務署と納税者との関係というものは、対等に考えるところに間違いがあるわけです。だから、今までの権力主義や密告主義というものからはずれて、これは合理的な説得と納得の方向に回ってもらわなければ困るといって、どのくらいやかましく言っているかわからないのです。
先年淺香小委員長が出された中間報告でも、今の査察調査のやり方にはいかぬところがだいぶある。第一のいかぬところは何かというと、まだ権力主義的なにおいがある。第二番目にいかぬところは、大口所得者をねらわずに、中小企業、同族会社ばかりを結果としてはねらっているということ、第三番目にいかぬところは何かというと、かりにその人が白であったにしても、白であったところに救済の手段がない。十数人もかかって、二日も三日も査察をやったとしても、法律上はそれに対する救済手段がないのです。もう五十円でも百円でも黒は黒には違いない。けれども、それによって失われる資力、信用というものは一体どうなるのだ。同時に、そこばかりでなく、関連の取引先、銀行にずっと網が張られ、それに関連の下請や親企業に対して調査が行った。そこで、そこを調査された人は、自分のところもやられたような気になってしまって、もう口を緘して語らない。また波及する。そこも二日も三日もやられると、それで関連の白のところは一体どういう救済の手段があるか。何もないというわけです。ですから、この調査、査察については、淺香報告では、この際今の調査査察の制度について改革をすべきだ、少なくとも廃止をするか、それでなければ査察的なものはとれ、調査的なもの、合理主義、納得主義、説得主義の調査的なものにして、大企業中心のものにすべきだという意味の答申をしているのです。ところが、それがちっとも実行に現われていないわけです。しかも、今録音機で心理的な強圧手段をねらうというのは言語道断だと私は言っている。小型録音機一つを本委員会でも私は三回も問題にしているのです。問題は小型録音機そのものも問題だけれども、それによって今の調査査察制度について転換してもらわなければ困るというのが私の意見なんです。いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/176
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177・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 御意見は、納得のいくところもありますし、また、立場を変えてみますと、なかなか全部に賛成もしかねる点もございます。私は、問題はこの種の事柄、納税の正確を期するという意味では、やはり何と申しましても国民の積極的な協力を得なければならないことだと思います。納税者の方々の積極的協力が必要だ。また、税務署の職員といたしましては、これは厳正公平でなければならない。これもよくわかります。その立場において、ただいま納税という事柄の重要性ということに思いをいたして参りますと、いろいろの弊害を生じないようにして、そして厳正公平な課税が行なわれるように、これを遂行することが望ましいのじゃないかと思います。従いまして、先ほど来お話のありました、何だか会えば相手方を脱税者と目すとか、あるいは何か不都合なところがあるというような先入観で扱うことは、厳に戒めなければならないことだと思います。また同時に、納税者の方々も、納税の重要性に思いをいたされまして、その点では率直簡明に納税についての御協力が願いたい。この点がもしも絵にかいたように双方がフェアでありますならば、おそらく何を使われようと何も問題がないはずです。しかしながら、何だかテープレコーダーを使う、しかもそれが秘密なものであるとか、あるいはないしょでやるとか、こういうことでございますと、そこにいろいろ威圧を加える、あるいは誤解を受けるとか、ことにテープレコーダーをあとでかけ直してみて、この間に間があるじゃないか、この間に考えたのじゃないかというような話では、いろいろな問題が起こるだろうと思います。しかし、私は、基本的な問題から申せば、双方がフェアな扱い方ということが望ましいのでありまして、そういう意味の御理解と御協力を切に要望してやみません。また、税務署の職員等が人が見れば脱税者と思うということですが、もしそういうような不都合な考え方とか先入観がありましたら、それこそ私どもの責任として十分直していくつもりでございます。十分個人の自由なりまた権利は尊正しなければなりませんが、ただいま申し上げるような問題でございますから、同時に、納税はいかに重い義務であるか、それについてはどうか十分の理解と御協力を望んでやまないものであります。従いまして、先ほど来私が申しますように、何らかの疑念を持たれて、そしてその説明を求められた場合に、おそらくこれは聞き取り書を作るのだと思いますが、聞き取り書は相当の時間話し合った後に作成するものでございますから、十分の成果を得ない場合もある、そういう意味で、聞き取り書作成の上から見ましても、ただいまのようなテープレコーダーなど非常に便利なものではないか、私はかように思います。そういう意味から申しまして、先ほど来いろいろ御心配の点もございますが、税を扱います税務署の職員についての注意もさることでありますが、国民の皆様方からの税についての御理解と御協力、これはやはりぜひともお願いしなければならぬこと、かように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/177
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178・横山利秋
○横山委員 抽象的ではありますけれども、大臣の気持の点はよくわかりました。皮肉を言うわけではありませんけれども、あなたがおっしゃっているにかかわらず、今あなたの傘下の役所で、汚職や脱税が先ほど指摘をされておりましたように増大しているということは、まことに私は遺憾なことだと思う。しかも、広島の中心的な人は調査査察の調査課長さんですか、そういうような話を漏れ聞きまして、だからこそ言わぬことじゃない。その原因等を考えてみますと、私どもが指摘しておりますことがなおさら明確になって参るような気がいたすわけであります。時間がありませんから、あまり多くは申しませんけれども、どうぞ一つ今大臣がおっしゃったような趣旨が徹底するようにしてほしい。私も役職柄税務署の諸君の行動についてはよく承知しておるわけでありますが、私は出身が国鉄でありまして、国鉄の機関士が全乗客の生命を預かって、全責任がその一身にまかされているのと同じように、一人の税務職員は、納税者と対で話をして、その納税金額がどのくらいであるかをきめる相当の裁量と責任を持っているわけであります。この責任を持っている人たちの処遇というものがある程度考えられなくては、これは百日の説法へ一つであります。誘惑と危険が常に存在しておりますから、その誘惑や危険に陥らないようにするためにはどうしたらいいかということが痛感されなければならぬのであります。先般私は運輸委員会に行きまして、小牧の村手管制官のことについて大臣とやりとりをいたしたのですが、社会党の私どもが言う前に、自由民主党の皆さんや大臣から管制官の給料が驚くほど安い、これはいかなんだということをこもごもおっしゃるわけであります。そういう見方をなさるならば、あにこれ管制官の給料ばかりではありません。誘惑と危険、人命の尊重の点からいいますならば、私は今においてそういうことをおっしゃるのがおかしいと思うのであります。けれども、これはいろいろの見方があるでありましょう。今の税務職員の処遇について、大臣としてどういうふうな見解を持たれるか、これを最後にお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/178
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179・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 今一般的に給与が適正なりやいなやという問題がございますし、また一般的な問題でなしに、特殊の職種についてその給与が適正なりやいなや、こういうような御意見また御批判があるわけでございます。先ほどの小牧の官制官の問題、あるいは税務署の職員は特に責任が重いとか、あるいは国鉄の機関士はどうだとか、こういう問題はあると思いますが、一般公務員につきましては、人事院が従来民間の給与との比較をいたしまして、そうして給与の適正化をはかっております。政府といたしましては、この人事院勧告を忠実に実施することに今日までも努力して参っておりますが、また今後におきましてもその考え方には変わりはないわけでございます。私、非常に特殊の職種については——この税務署については、今日まで税務特別職階というものがございます。これは一般公務員とはそういう意味では別な見方をいたしております。これがなお不十分だということだと思いますが、そういう点については、人事院の勧告を受けました上で、私どもも十分考えて処理していきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/179
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180・横山利秋
○横山委員 委員長並びに大臣に、議事進行についてのお願いがあるのですけれども、実はきょう私どもはきわめて不愉快な感じがいたしたわけでございます。それは、おわかりのように、大臣が本委員会に出席をなさるということは、予算委員会やその他の委員会の都合もございますけれども、全くまれでございます。まれな大臣がたまにおいでになったときに、私どもの党はもとより、民社の皆さんにおいても質問者が非常に多いのであります。それで待ってましたというように、みんなの質問があるわけでありますが、その間を縫って、本日食事と称されて運輸委員会にお出かけになった。それだけならば私どもはとやこうは申しませんけれども、本委員会は、理事会の決定をもって、運輸委員会に日鉄法に関する合同審議をお願いをしてあって、それがいやだといわれて、そうして私どもとしては、腹の中で、それではしょうがないから、本委員会は世銀借款にも非常に関係もあるから、われわれにも審議の際に発言の機会を与えてもらうようにというふうにお願いをする考えでおりました。そういうわれわれの要望は一切考慮されるいとまもなく、食事と称して、委員長は私個人とお約束も無視されて、運輸委員会に大臣も出席をされたわけであります。そういうことですと、まことに私どもとしても遺憾千万でございまして、たまにしか御出席がなく、しかも大蔵委員会には一番たくさん法案があって、早くやれ、早くやれという政府並びに与党の皆さんの御要望があるのにかかわらず、その私どもの要望が考慮されぬということでは、先ほども実はあの際に隣室で相談をいたしたわけでございますけれども、こういうことではどうも私どもとしてはまじめに審議するわけにもいかぬではないか。しかも社会党はそれぞれやはり今日の税制なりいろいろなことについて要望がございまして、前理事会を通じて政府与党の皆さんに検討をお願いしている七項目の要望があるわけです。その要望もすでに理事会三回にわたって何ら誠意ある回答もなく、審議だけはどんどん促進をされる、大臣は出てこられない、出てきた大臣はよその委員会に協力をする、委員長もそれに協力をされるということでは、何をもって私どもがまじめに審議することができるであろうかということで、実は隣室で相談をいたしたわけであります。本日はどうしてもよんどころない所用があって、わが党並びに民社の理事の皆さん方は退場なさっておられるのでありますけれども、その退場もその間の事情を物語っておると言って、言えないことはないと思うのであります。私どものような人間がこういうことを申し上げるのはまことに遺憾でありますけれども、どうぞ、それは政府与党並びに委員長におかれても、われわれの心理もある程度くんでもらわなければ、比較的委員会においていつも審議に協力をしておる私どもも、あれは何だということで、国会対策委員会にしかられる。これでは困るのであります。とくとこの際私は大臣や委員長や与党の皆さんにも、われわれの心理を了とせられて、(「しない」と呼ぶ者あり)しないならしないで方法がある。私どももやむを得ぬと思うのです。これはやはり私はこの際議事録にわざわざ残るように申しておるのでありますから、私どもの気持も十分にくんで善処していただきたい。これは特に要望しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/180
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181・植木庚子郎
○植木委員長 委員長としてお答え申し上げます。
本日の議事の経過等につきまして、ただいま横山委員からのお申し出の件につきましては、委員長ふなれのために、はなはだ行き届かない点があったやに感ぜられます。つきましては、今後十分に反省を加えまして注意をいたしたいと存じますから、御了承をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/181
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182・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 予算委員会はもちろんでございますが、大蔵委員会、これはもう私の最も大事な委員会でございますから、私は、大蔵委員会には事欠かさないつもりで、今後とも出席するように努力いたすつもりでございます。
本日の問題は、いろいろ問題があったようでございますが、ちょうど休憩に入りまして、その休憩中の時間を私他に参ったのでございまして、大蔵委員会の御審議には支障を来たさなかった。私自身所要の時間には参ったように考えております。従いまして、二時再開ということでございましたから、二時にはちゃんと再開を待っておったような次第でございますので、御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/182
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183・植木庚子郎
○植木委員長 ただいま議題となっております三法律案のうち、糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案及び国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案の二法律案に対する質疑はこれにて終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/183
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184・植木庚子郎
○植木委員長 なお、右の両案につきましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。
採決いたします。両案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/184
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185・植木庚子郎
○植木委員長 御異議なしと認めます。よって、両案は原案の通り可決いたしました。
ただいま可決いたしました両法律案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/185
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186・植木庚子郎
○植木委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。
次会は来たる二十九日午前十時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。
午後五時九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103404629X01419600325/186
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