1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年三月八日(火曜日)
午前十時二十九分開会
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委員の異動
三月一日委員大矢正君辞任につき、そ
の補欠として大森創造君を議長におい
て指名した。
三月二日委員大森創造君辞任につき、
その補欠として大矢正君を議長におい
て指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 杉山 昌作君
理事
上林 忠次君
山本 米治君
大矢 正君
天坊 裕彦君
委員
大谷 贇雄君
岡崎 真一君
木内 四郎君
木暮武太夫君
西川甚五郎君
林屋亀次郎君
堀 末治君
野溝 勝君
原島 宏治君
須藤 五郎君
政府委員
大蔵政務次官 前田佳都男君
大蔵省主税局税
関部長 木村 秀弘君
大蔵省銀行局長 石野 信一君
大蔵省為替局長 酒井 俊彦君
事務局側
常任委員会専門
員 木村常次郎君
説明員
大蔵省銀行局保
険課長 中嶋 晴雄君
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本日の会議に付した案件
○理事補欠互選の件
○船主相互保険組合法の一部を改正す
る法律案(内閣提出)
○関税定率法の一部を改正する法律案
(内閣送付、予備審査)
○関税暫定措置法案(内閣送付、予備
審査)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/0
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001・杉山昌作
○委員長(杉山昌作君) ただいまから委員会を開会いたします。
まず、理事の選任について御報告いたします。去る三月一日付で大矢君が委員を辞任されましたが、翌日ふたたび委員に選任されました。つきましては、委員長はこの際、前例に従い、理事に大矢君を指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/1
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002・杉山昌作
○委員長(杉山昌作君) これより、船主相互保険組合法の一部を改正する法律案を議題として、補足説明を聴取いたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/2
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003・石野信一
○政府委員(石野信一君) 御審議をお願いいたしております船主相互保険組合法の一部を改正する法律案について、補足説明を申し上げます。
船主相互保険組合法という法律は、昭和二十五年に施行されたものでございます。この法律に基づきまして船主責任相互保険組合というものがございまするが、それは船舶の所有者及び船舶の賃借人を組合員といたしましてこれらの組合員が船舶の運航に伴いまして事故を起こしました場合に、負担する費用と責任を相互に保険する組合組織でございます。このような制度はイギリス等諸外国で発達して参ったものでございまして、通常損害保険会社が行なっております保険、すなわち船舶そのものに対する船舶保険、船舶が沈みました場合にはそれに保険をつける、また積荷に対して荷主が保険をつける、こういう船舶保険、積荷保険等の通常の損害保険会社が行ないません部分、その通常の損害保険会社が行ないますものに含まれない危険を担保するものでございます。たとえば、船舶の所有者といたしましては、運航に伴いましてはしけにぶつけた場合の損害賠償であるとか、それから運送人として荷物を運んでおってその積荷に損害を与えた場合の損害賠償というようなものについて、保険の必要がありますのにつきまして、相互に組合組織で保険をやっておるわけでございます。
このわが国の船主責任相互保険組合は、その設立の当時におきましては船舶の運営会というものがございまして、運航形態が船舶運営会の用船形式によっておったのでございます。従いまして、用船関係は全部船舶運営会がやっておりましたために、用船者としていろいろ事故が起きたという場合の費用、責任は、船舶運営会というものが負担しました関係で、この組合としての業務の範囲を、船舶の所有者、それから賃借人であるところの、その所有または賃借する船舶の航海に伴って生ずる事故による費用及び責任のみを填補するものといたしております。すなわち、ここで提案しておりまする他から用船して海上運送に従事する場合に事故による責任及び費用を填補することは、当時は必要がなかった。従って、現行法では用船者については規定をしてなかったわけでございます。
ところが、その後船舶の運航形態が変わって参りまして、船舶運営会は廃止されましたし、これに伴いまして各船会社が自主運営をすることになりまして、わが国の海運界の特殊の事情もございまして、今日では用船形式による船舶の運航が全体の三分の一を占めておる状態でございます。すなわち、昭和三十四年の十月末現在におきまして、総運航船舶、これは百トン以上のものでございますが、千三百九十五隻、八百五十万重量トンの中で、定期用船は四百七十隻、二百六十五万重量トンでありまして、隻数において三四%、重量比において三二%を占めております。すなわち約三分の一が用船形式になっておるのでございます。従いまして、これら用船形式による船舶の運航の際に生ずることのあるべき事故によりまする費用及び責任は、現在は損害保険の方でも取り扱っておりませんので、無保険になっております状態で、これに保険をかけます場合は海外で付保するほか道がない状態であるわけであります。従いまして、この際、組合員が用船によって船舶を運航する際にも、この組合保険にも付保できるように措置することが必要と考えましてこの法案の御審議をお願いいたしているわけでございます。
それから、組合員が船舶の回航を請け負う場合、たとえば、引き揚げた沈船、あるいは解体船、新造船の引き渡し等のために、ある港から港へ船を回航する、その回航を請け負うということが行なわれるのでありますが、そういう場合につきましても、同様にその回航を請け負う場合に運航に伴って生ずる事故による費用、責任というようなものについても保険の利益を受けられるように、あわせて同様の改正をお願いする、こういう次第でございます。
船舶の運航に伴って生ずる事故の場合の費用及び責任は、きわめて複雑で種類も多いのでございますが、大別いたしますと、船舶の運航者としての責任、それから第二は船員の雇用者としての責任、第三に積荷の運送人としての責任というふうに分類できると思うのであります。このうち、第一及び第二の費用、すなわち船舶の運航者としての責任、それから船員の雇用者としての責任、これに関する費用及び責任は、船主または船舶の賃借人の負担すべきものでありまして、用船者は負担いたしません。従いまして、現在の法律のもとにおいて十分填補し得るものでございますが、第三の運送人としての責任は、これは船主、船舶賃借人のみにとどまらず、用船者も海上運送人の主体として負うへき責任でありますので、第三の運送人としての責任につきまして、今度用船者も海上運送人を主体としてこういう保険の利益を受け得るようにいたしたい、こういうことでございます。従いまして今回の改正によって用船者がこの保険に付し得ることになるのは、ただいま申しました第三の運送人としての費用及び責任でございまして、例を申しますと、運送契約上の義務違反によりまして積荷の損傷、不足等が生じた場合の賠償責任、それから船積み、船おろしの際に荷役人夫等に死傷者が出たというようなことで、これに対して費用及び責任の賠償を取られる、そういうような場合に保険をかけると、こういういうことでございます。
以下逐条説明を申し上げるべきかと思いますけれども、実はこの条文は非常に複雑——非常にということもございませんが、ある程度複雑な形をとっておりますけれども、条文の内容といたしまして実質的な意味がありますのは、第二条第三項のみでございまして、第二条第三項で、ただいま申しました船主責任相五保険組合は組合員の用船または回航の請け負いを行なう場合に生ずる費用及び責任についての保険も引き受けられるようにするという点だけが実質的な分でありまして、その他は、一つは運用されております法律が昭和二十五年以後において変わりました関係で条文を整理いたします分、それから昭和二十五年当時と用語の例示が変わって参りましたりで用語例を整理いたしました分、それから、ただいま申しました第二条第三項で用船、回航請負を行なら場合に生ずる費用及び責任についての保険も引き受けられるように改められるにつきまして、関係の条文を整理いたしましたもの、そういう意味におきまして実質的なものが二条三項だけの改正でございまして、あとは条文の整理に属するものと申し上げることができまするので、必要がございましたら、さらに補足して御説明いたしますが、一応補足説明を終わらせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/3
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004・杉山昌作
○委員長(杉山昌作君) それでは、質疑に入りたいと思います。質疑のある方は御発言願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/4
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005・野溝勝
○野溝勝君 簡単に御質問したいと思うのですが、ただいま御説明によると、今度の改正案の特徴は、船舶運航に伴って生ずる船主または賃借人並びにその費用及び責任に限られているが、最近における海運界の現状について従前のみの内容では足らず、運航船舶の相当部分が用船によっている実情である。運航船舶の相当部分が用船によるからといいますけれども、今までもそういう事態があったのではないか。特に今回これを強く打ち出したのはどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/5
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006・石野信一
○政府委員(石野信一君) 確かに、御質問ごもっともと思います。確かに運航用船は最近急に生じた現象ではございません。しかし、従来もそこのところは不便があったわけでございましてやむを得ないのは外国のやはり同じような組合等に付保をするというようなことでやっておりましたし、また所有者の方の運送人の責任にしましても、まあ従来はそうこれを取り上げてやっておらなかったのでございますが、昨年の四月でございましたか、それを取り上げることに相なりまして所有者が運送人としての責任を負うという点につきましてこの組合を活用することに相なりましたので、これに伴いまして用船者とのバランスの関係も出て参りまして、ぜひ用船者についてもやるべきであるという要望が出て参ったわけでございまして、おっしゃる通り、もっと早くやっておるべきではないかという点では、やっておった方がよかったかと思うのでございますが、要望が強くなって参りましたという点で、今回になったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/6
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007・野溝勝
○野溝勝君 私は、早くやっておけばよかったと、こういう意味で質問したのではないのでございますが、すでに前にもこういう事態が発生しておったじゃないか、それをここに新しいものが生起したごとく打ち出す必要はどういうわけか、という意味の質問をしたわけでありますが、今の御説明でわかりました。
本案中、船主相互保険組合法の完璧を期そうということでございますが、実際問題としてお尋ねします。たとえば下関中心の用船が竹島あたりに出動し、韓国との間に拿捕事件が起こった。相当危険の率も多くなっておると思うわけでございますが、こういうようなことに対しては、事業経済等あらゆる角度からこれは検討してみて、移動性の多い用船相互保険組合をつくることについては将来運営上完璧を期すると、こう思っておられたのでございますか。これらの点について検討したならば、検討した一つ理由をこの際お話を願いたいと思うのです。さらに、用船に対しましては貸借上の条件があり、船体の危険が相当多いと思うのです。そういう点について、検討してみたかと、こういうのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/7
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008・石野信一
○政府委員(石野信一君) ただいまの御質問を十分理解しておらないかもしれませんが、お話の点は主として漁船の関係かと存じまするが、この法律との関係を先に申し上げさせていただきますと、これは法律の運用に木船と木船以外の分と、まあ二つの組合を規定しております。今回の分は木船以外の分の規定に関する部分でございまして、さらに、その木船の中から漁船につきましては、また別に漁船の関係を別の法律で保険関係を規定いたしておりまして、漁船損害補償法という法律で別途規定されておりますので、この法律には直接関係はございませんでございます。
従いまして、お尋ねの問題につきましては、これはまあその漁船損害補償法等につきまして、いろいろ検討研究いたすべき問題が多いと存じまするのでございますが、私どもの方の所管と直接関係がございませんので、この法律に関係がございませんので、その問題につきましてのお答えはちょっと私の方として申し上げかねるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/8
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009・野溝勝
○野溝勝君 提出されました船主相互保険組合法の一部を改正する法律案第二条第二項中「漁船保険法」と書いてその内容が保険法の中に規定されてあるんですね。保険組合法の中にたとえば漁船「総トン数千トン未満のもの」に、あるいは「所有又は賃借する船舶」、こういうことで引用されておるのでございますが、それとの関係はどうなるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/9
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010・石野信一
○政府委員(石野信一君) 第二条第二項、御指摘の通り、漁船関係の規定がございまするが、これはただいま申しました木船相互保険組合の定義に関する部分でございまして、さっき申し上げましたように、木船の相互保険組合と、それから木船以外の分の船主相互保険組合とが規定されております。木船相互保険組合の部分のところで、漁船は別途、先ほど申しましたように、保険関係がございまするので、これを除くわけでございます。その除くのにつきまして、法律の改正がございました関係で、ここで条文を整理いたしておりますので、漁船以外の木船に関する相互保険組合に関して規定いたしておるわけでございますが、漁船につきましては別途漁船保険法がございまして、木船相互保険組合の対象から除外されておる。そこで、除外するにつきまして、漁船保険の対象となる漁船の定義をここでいたしておるんでございますが、現行法においては漁船保険法を引用しておるのでございます。
ところが、その漁船保険法、引用されております漁船保険法が、昭和二十七年の改正によりまして、漁船損害補償法というふうになったわけでございます。この漁船損害補償法におきましては、漁船の定義につきまして漁船法を引用いたしておりますので、今回の改正を機会に本法律におきましても漁船の定義につきまして漁船法を直接引用することに改めようとするものでございまして、内容は全然前と同じでございまして、単なる条文の整理でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/10
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011・野溝勝
○野溝勝君 御説明で少しはわかったような気がするのでございますけれども、確かに局長さんのおっしゃる通り、なかなか複雑で、区別がはっきりできないので、この解釈には苦しんでおるのでございます。
そこで、それではお伺いいたしますが、いろいろ特徴があって、こういうふうに区別をしなければならぬのでございましょうけれども、そうなると、漁船法にあるところの漁船の登録とか検査とかいうものとの関連は、どういうふうに一体扱われるのでございましょうか。なかなかこれは複雑なことだと思うのでございますが、この点はどう扱うのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/11
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012・石野信一
○政府委員(石野信一君) 保険課長から具体的な説明をいたします発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/12
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013・中嶋晴雄
○説明員(中嶋晴雄君) ただいま御質問にあります点は、木船相互保険組合の定義と、漁船損害補償法でカバーする面との区別の点だと存ずるのでございますが、ここで規定しております点は、ただいま局長からも御説明いたしました通り、この木船相互保険組合に加入できるものの範囲を、どういう船が加入できるか、どういう船主が加入できるかということの範囲を規定したものでございます。そこで、この規定によりますと、漁船法第二条第一項に規定しております漁船で総トン数が千トン未満のもの、これは漁船と見る。それ以外のものの木船につきまして木船相互保険組合法が適用される。かように、千トン未満ということで区別をしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/13
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014・野溝勝
○野溝勝君 課長さん、その程度は今の御説明でわかったのですが、私の聞いたのは、漁船法にある漁船の登録、検査ですね、こういうものと、今回の木船による保険ですね、これがどういうふうに一体扱われていくのでございますか。その点を一つ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/14
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015・中嶋晴雄
○説明員(中嶋晴雄君) 実は漁船法の所管は私の方ではございませんので、的確な御答弁ができますかどうか危ぶんでおりますが、漁船法の趣旨は、今先生のおっしゃいましたように、漁船の所有者に対しまして、その漁船の登録制を施行して、そうして適正な漁場の確保とか、不正操業を防止するという点で、適正な措置をとろうということにあろうと思います。ただ、この法律が規定しておりますの、損害保険、責任保険の分野だけの問題でございますので、千トン未満の漁船についてはこの法律の適用がないというだけを規定しておるわけであります。従いまして、漁船法に申しております、漁船法の趣旨でございますが、いろいろな立法措置、あるいはこれに基づきます行政措置は、この木船相互保険組合法の規定しておりますいろいろな業務とは、おのずから範囲が異なって参りますので、直接の関係はないかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/15
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016・野溝勝
○野溝勝君 最後にお伺いしておきたいのでございます。最近幾つもの損害保険組織ができるのでございますが、保険事業というものは、被保険者に対して安心感を与えなければならぬ事業だと思うのです。それには経済的にも人材等信頼のできる内容というものが整備されておらなければならぬと思うのでございます。その場合、こういうように漁船主は漁船組合としていく、木船用船木船組合として損害保険事業体の組合ができ、職層別はあるでしょうけれども、まことに乱雑であり、無政府的であり、保険制度への信頼を高めるどころか、不安が大きいが、どうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/16
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017・石野信一
○政府委員(石野信一君) 御質問はごもっともと存じますが、いろいろの保険がいろいろの制度によっており、また、所管もいろいろになっておるという点につきましては、できるだけこういうものを整備いたすといいますか、統一いたすといいますか、そういうふうに持って参った方がいいとは思うのでございますけれども、ただ、実際問題といたしまして、たとえば漁船の場合につきましては、国の再保険がある。また、先ほどもお話のありました検査とかその他につきまして、所管の農林省が関係があるというようなことで、制度としてやはり別の制度ができるという点もやむを得ないかと思うのでございます。
それから、この組合につきましても、やはり一つの歴史的な面がございまして、外国でもこういう制度がPIクラブというようなことで、やはり同じよらな形ができておる。それは、普通の保険会社で取り扱いますと、たとえば、先ほど申しましたようないろいろのこまごまとした、船主としての費用とか責任とかということについて、内容が非常に複雑であるので、組合組織で組合員が、お互いの業務内容とかあるいはお互いを十分よく知っているというような関係者だけで組合を作ってやるという方が便利であるというようなことから、歴史的にこういうものが発達して参ったものであると思います。そういう意味におきまして、御質問の御趣旨に、できるだけいろいろの制度を、ばらばらな形でなしに統一していくべきであるという御趣旨は、私どもとしてもごもっともと感ずる点もございますけれども、現実の問題としては、これを直ちに統一するというふうにも参りません点は御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/17
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018・野溝勝
○野溝勝君 これは、私、質問よりは、委員長に強くお願いをしておきたいのでございますが、今もお話がありましたごとく、事業関係者、組合員の強い要望があって作るということは、それは一応考えられますが、本事業は何としても経済的な裏づけが信頼の基礎になると思うのです。そういうときに、国が、ただそういう希望があるからということだけでこうしたものをすぐ取り上げるということは非常に危険だと思うのです。実施する以上は、経済的に安心できるか、さもなければ、国自身が相当その裏づけに対する責任を持たなければならぬと思うのです。そういうことについては、この組合法にはまだ完全に示されておらないのです。
少しくどくなるが、この機会に今の社会通念として一言したい。生命保険に入るなんということよりは、火災保険、損害保険に入るというのが多くの人々の考え方だと思うのですね。われわれなども、始終この委員会で申し上げていますけれども、生命保険なんて入っておらない。そんな死んだ後のことまで心配できない。しかし、生存中のことは、心配でございますから、火災保険に入っている。だから、それほど現実生活には絶対に必要な制度として、この損害保険というものについては、職場は何にあろうとも、そういう意味で慎重を期してほしい。損害保険法一部改正法律案中いろいろの名前、たとえば共済組合制度とか出現し、被保険者は迷っている。実際かようの事態に陥っておるわけなんです。以上申したごとく希望があるからといって、損害保険組織を野放しに作っていくということに対して、政府は、それじゃ、これに対する監督なり、心配がないという保障制度があるのでございますか。この点を一つお開かせ願って、私は質問を打ち切りたい。
さらに、委員長に、こういうように損害保険制度がたくさんできてまばらな状態においては、これは私は行政上おもしろくないと思うのです。この点は、委員長から理事会に諮って、損害保険制度というものに対する、私はもっと統一されたる見解なり方針なりを政府に至急打ち出すように御検討を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/18
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019・杉山昌作
○委員長(杉山昌作君) 野溝君の委員長に対するお話は、承知いたしました。後刻そういう取り計らいをいたします。
なお、政府に対する質問については、石野銀行局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/19
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020・石野信一
○政府委員(石野信一君) この法律の中にございます木船の方の部分につきましては、これは国が再保険をいたしております。今回、改正をお願いいたしまする船主責任保険の方につきましては、これは大きな船舶の所有者でございまして、大きな船会社が組合員になっておりまして、その保険料等についても追徴するというようなことになって、純民営でやっておるわけでございます。収支等につきましても保険課の方でこれを見ておりまして、これを今回改正いたしまして、用船及び船舶の回航について、これを加えることによりまして別段収支に危険を生ずるようなことはない。純民営でやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/20
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021・大矢正
○大矢正君 私、しろうとでよくわからないから、参考のために聞いておきたいのだけれども、賃借人ですね、船主というのはよくわかるのですが、賃借人というものと、それから用船というのと、回航請負人というものの区分というのは、どういうような定義があるのか。その点、ちょっとお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/21
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022・中嶋晴雄
○説明員(中嶋晴雄君) お答え申し上げます。船主と、船舶賃借人、あるいは船舶の用船者、この三つの概念でございますが、船舶の賃借人は、船腹を他の所有者から借りまして、自分で船長、船員を雇用いたしまして、自己の責任において船舶を運航し貨物を運送する、そういう事業主体が船舶の賃借人でございます。俗に裸用船者、こう申しております。それから用船者の方は、これはいろいろな形がございますが、おもな形態を申し上げますと、船、長、船員付きの、人を一部または全部借りまして、貨物を運送する。その貨物を運送する海上運送事業の主体になるものが用船者でございます。従いまして、区別の要点は船長、船員をみずからの責任において雇用するかどうかという点の違いにあろうかと思います。それから、申し忘れましたが、回航請負人につきましては、これは新造船あるいはスクラップ化する船舶を海外との間に回航するというような場合がおもでございますが、この回航請負人は警負契約でその船を回航、運航するわけでございましてその地位はみずから船員を雇って運航するわけでございますので、船主あるいは船舶の賃借人と同じような、大体それに準じた法的な地位に立つものというふうに理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/22
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023・大矢正
○大矢正君 そうすると、この保険に入るのは、組合に入るのは、その賃借人というものとして入るのか、それともどういうことになるのですか。用船の部分、あるいはまた請負人の部分は、一体だれがこの組合に入るということになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/23
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024・中嶋晴雄
○説明員(中嶋晴雄君) この組合員の資格は、今回改正をお願いいたしておりまする後におきましても、やはり船主または船舶の賃借人、すなわち船主またはこれに準ずる地位にあるものだけをこの船主責任保険組合の組合員に予定いたしておりまして、組合員の資格は拡充を考えておりません。ただ、こういう組合員が自己の所有しまたは賃借りする船で運航する場合だけでなく、そういう組合員が用船をしたり、あるいは回航請負いをしたりする場合におきましても、保険に付し得るように業務の範囲を拡充したいということでございまして、組合員の資格はそのままにいたしまして、業務の範囲を広げたい、かような趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/24
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025・大矢正
○大矢正君 たとえば、自分で船を持っておる場合に、この船を持っておるのが組合員。そこで、回航を請け負わせる他の人に船を逆に貸すことになるわけですね。その場合には、回航請負人は今度組合員になってやるわけですか。それとも、船を貸した所有者がやるのか。そういうところはどういうふうに……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/25
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026・中嶋晴雄
○説明員(中嶋晴雄君) これは請け負う方の側が組合員でなければならない、かような趣旨でございます。貸す方は組合員であるなしにかかわらず、借りる方が組合員でなくちゃならない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/26
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027・大矢正
○大矢正君 この保保険には加入していない部分も相当あるわけですが、それはどのくらいあるか。全体はどのくらいで、実際に加入しているのはどのくらいというふうに……。わかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/27
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028・中嶋晴雄
○説明員(中嶋晴雄君) 的確な数字はつかんでおりませんが、大体九割程度は、この船主または賃借人の九割程度はこの組合を利用しておるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/28
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029・大矢正
○大矢正君 これは相互保険であっても、政府が何らかこれに補助なり助成なりというものはあるわけですね。そういうものはないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/29
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030・石野信一
○政府委員(石野信一君) ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/30
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031・須藤五郎
○須藤五郎君 私もこれはちょっとわからないのですが、だから、最近のこの組合の現状、それから、何といいますか、最近いろいろこういう場合があったというような実例をまぜて一つお話しして下さいませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/31
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032・石野信一
○政府委員(石野信一君) 組合の現状でございますが、今組合員数は二百六十四人でございます、三十四年度の加入を申しますと。三十三年度は二百四十九人。出資金が八百三十二万五千円、加入船舶の数が千百二十、重量トン数で六百九十九万五千トン。
保険の利益といいますか、対象といいますか、どういうことのためにこういうものが必要かということを御説明申し上げたら、ある程度概念がおわかりいただけるかと思うのでありますが、さっきも申し上げましたように、船舶の所有者、賃借人、それから用船者、回航者等につきましての損害事故において、どういう場合にこの保険にかけておくと利益があるかという点を、御説明申し上げればいいのじゃないかと思います。
たとえば、その船舶の所有者が、これは自分で船長を雇っておりますし、船員を雇っておるわけでございますが、それが運航して参りまして、港の施設にぶつけたというような場合には、その損害賠償をしなければならない。そういう場合に、保険をかけておくと、その損害賠償の金が保険でとれる、その金がもらえるというというようなことになるわけでございます。それから、たとえば、船員が急病したためにそれをば陸の上に上げなければいけないから、予定以外の港に着けるとかというようなことで費用がかかるとか、それから運送人としての責任で船おろしのときに荷物に傷をつけたから損害賠償を払うというような、非常に複雑で多種多様なんでございますが、ある意味で、こまごまとした、船全体がぶつかって沈んでしまうとかということは、損害保険会社でやっておりますけれども、ほんとうに船会社で、お互いがどういう場合にはどういう事故が起こるということをよく知っている連中で組合を作りまして、そうして今言ったようなこまごまとしたいういろいろな事故による費用とか、それから損害賠償というようなものを保険にかけておいて、その組織でかけていって、そうしてそういうものについての保険を受け取って払うという制度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/32
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033・須藤五郎
○須藤五郎君 先ほど野溝さんも言いましたが、そういうこまごまとしたことは損害保険の中で扱うということは、それは不可能なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/33
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034・石野信一
○政府委員(石野信一君) その点が、先ほども申しましたように、外国でも歴史的に、損害保険の方は実情もわからないということだと思うのでございますが、保険会社同士でやった方がずうっと内容がよくわかることがあるのでございます。損害保険の方で扱いませんで、PIクラブ——プロテクション・アンド・インデムニティ・クラブという同じようなものができておりまして、こういうものがやっておって、こういう損害保険の方で扱っておらないめに不便だから、そこをお互いに内容を知っている連中でやろうじゃないかというようなことから発生したものじゃないかと思いますが、歴史的に発生した関係もございまして、今は損害保険の方では扱わないという常例になっているものでございますから、従いまして、そのことをここで付言させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/34
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035・須藤五郎
○須藤五郎君 大体、一年で保険料はどのくらい払っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/35
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036・中嶋晴雄
○説明員(中嶋晴雄君) 現在、この法律に基づきまして日本船主相互保険組合というものが全国単位で設立されておりますが、三十三年度のその実績で申し上げますと、収入保険料が一億七千二百万円、その中から支払う保険金が九千九百万円になっております。損害保険率は五七%強ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/36
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037・須藤五郎
○須藤五郎君 この委員会としての調査室での資料と、今の数字と、少し違っているように思うのですが、こちらは三十四年度十二月末現在ということで、あなたの方は三十三年度末ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/37
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038・中嶋晴雄
○説明員(中嶋晴雄君) 途中一年間の業績でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/38
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039・大矢正
○大矢正君 僕はどうもわからないので、これは頭が悪いせいかもしれぬが、船の船主はもちろんいいのだが、賃借人が責任を云々ということになると、用船ということと、それから回航請負というものが賃借人の中に入るんじゃないかりと思うのですが、その点、どうですかね。結局、賃借りしている船が事故を起こした場合ということで、用船の場合にあるいは回航請負人として船を動かした場合も入るように感ずるのですが、理屈からいってそういうことは入らないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/39
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040・石野信一
○政府委員(石野信一君) これは用語の問題だと思うのでございますけれども、一般的に使われている用語として、船舶の賃借人というものは、船を借りまして、自分で船長なり船員を雇って運航するわけでございます。で、用船の場合は、これは船主が、船の所有者が船長も船員もみな持っておりまして、そういう用船者は、その船をどこに運航してどういう荷物を扱うという、関係が違うわけでございます。そういう点で、裸用船と定期用船の相違でございますから、今まで賃借人というものは裸用船の場合でございまして、定期用船の場合を今度ここに入れていただくということに相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/40
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041・山本米治
○山本米治君 この場合の保険料ですがね、一トン五百五十円が標準とか言っておりますが、これはあれですか、政府が認可することになっているのですか、その組合が勝手に作るのですか、どういうことになっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/41
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042・中嶋晴雄
○説明員(中嶋晴雄君) 政府が認可することになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/42
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043・山本米治
○山本米治君 ここの資料によりますと、収入保険料が一億五千三百万、支払い保険金が七千二百万、つまり支払い保険金が約半分で、だいぶもうかっておるのですね。そうすると、これは組合ですから、まあ最後には組合に帰属するものですが、こんなにもうかるなら料率を下げるということが当然考えられるのですが、そういうことについてはどういうふうに政府は指導行政をなさるか。やっておられるのですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/43
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044・中嶋晴雄
○説明員(中嶋晴雄君) 仰せの通り、この組合は、大きな事故がございませんでしたために、ここ一両年は割合いい成績をおさめております。ただし、いつどういう事故が起こるかわかりませんものですから、これは入って参りました保険料の相当部分は責任準備金という形で積み増しをいたさしております。従いまして、内部留保の充実に充てさしておるわけでございますが、しかし、非常に長年にわたってそういう状態が続くということが起こりますと、組合保険でございますから、料率の引き下げという話も組合内部からも起こってくるであろう、こういう工合に考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/44
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045・須藤五郎
○須藤五郎君 大きな事故といいますと、いわゆる大きな事故は大体損害保険の方に入っておるのじゃないですか。これで大きな事故というのは大体どういうことなんですか、どういう程度なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/45
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046・中嶋晴雄
○説明員(中嶋晴雄君) 先ほど局長から御説明しましたように、もともと、たとえば他の船舶に衝突してその他船内の多数の人命に損傷を与えたとかいうような場合が、この組合の負担する責任としては大きいと思いますが、そのほかは、局長から説明のありましたように、船員の送還費用でありますとか、ちょっとした積荷の損傷とか不足とかいうような、わずかなものがたくさん集まっておるのでございます。そういうようなものでございます。ただし、たとえば岩壁に損害を与えたとか、他船内の多数の人命に損傷を与えたということにつきましては、かなり大きなことも考え得るのじゃないか。あるいは海上企業の常といたしまして、年々の損害のフラクチュエーションもかなりございますものですから、一年あるいは二年程度の損害卒ではなかなかはっきりした実態がつかめないというのが、私どもの見方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/46
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047・杉山昌作
○委員長(杉山昌作君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/47
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048・杉山昌作
○委員長(杉山昌作君) 次に、関税定率法の一部を改正する法律案及び関税暫定措置法案を議題といたしまして、政府から、補足説明にあわせて関税の問題と為替の自由化の問題について説明を聴取することといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/48
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049・木村秀弘
○政府委員(木村秀弘君) 関税暫定措置法案の内容につきまして、簡単に補足説明をいたします。
まず第一に、意性灰白髄炎ワクチン用のサルがございますが、これは現在基本税率が二〇%になっております。このサルは東南アジアに産しますいわゆるカニクイザルあるいは赤毛ザルと称するものでございまして、小児麻痺などのワクチンを製造するために必要なものでございます。国民保健の見地から、これを免税いたしたいということでございます。
次に、原油及び粗油につきましては、現在基本税率が一〇%でございまして、それに対して暫定的に今年度一ぱい製油用のものを二%、その他を六・五%にいたしておりますが、改正案におきましては、製油用のものを六%、そのほかを一〇%の基本税率に戻すという趣旨でございます。A重油につきましては、現在基本税率が一〇%、暫定税率で免税をいたしておりますが、これを改正案におきましては、農林漁業用のものを免税いたしまして、そのほかのものは基本税率に復するということでございます。B、C重油につきましては、基本税率が一〇%、現在暫定的に六・五%の税率を用いておりますが、これを基本税率に復するということでございます。次に、揮発油、灯油及び軽油につきましては、基本税率が二〇%、暫定税率が現在一〇%でございますが、これを基本税率の二〇%に戻すということでございます。潤滑油につきましては、現在基本税率が三〇%、暫定税率が二〇%、これを改正案におきましては基本税率に戻すということでございます。ただ、この潤滑油につきましては、日本がガットで譲許しております税率二二・五%がございますので、今回の改正が実現いたしますということ、ガット税率に戻るわけでございます。
次に、ニッケル・コバルト・クロム触媒、シリカ・アルミナ触媒につきましては、現在基本税率が二〇%でございますが、これは石油化学工業用の触媒でございますし、かたがた国産も全然ございませんので、免税をいたしたいということでございます。次に五酸化バナジウムにつきましては、現在基本税率が二〇%でございますが、合金鉄の原料になりますので、国産のございません点等にかんがみまして、これを免税いたしたいということでございます。
次に、電子計算機につきましては、基本税率が一五%で、現在暫定的に免税をいたしておりますが、このうち国産のできる、すでに国産のある部分、すなわち中型及び小型の本体部分については基本税率に戻しまして、その他のもの、すなわち大型の全体と中型、小型の付属部分を免税いたしたいということでございます。
次に、関税定率法の一部を改正する法律案について補足説明をいたします。
御承知のように、ラードは現在ドル地域に対してのみFA制をとっておりまして、その他の地域に対してはAA制をとっておるという、非常に変わった形になっております。これを今回、全地域に対してAAにするということに伴いまして起こった問題でございます。現在、ラードは基本税率が一〇%でございまして、これをガットで譲許いたしておる五%に据え置くということを約束いたしております。このままで自由化いたしますというと、国内のラード・マーガリン・ショートニング工業に打撃を与えますので、この税率を輸入品の価格及び国産品の価格を比較検討いたしまして、大体従価一五%、すなわち、従量税にいたしまして、一キログラム十五円程度の従量税を盛りたいということでございます。
次に、御質問のございました自由化に伴う関税政策でわれわれがどういうふうに考えておるか、計画しておるかということを、簡単に補足説明申し上げまして、御批判をいただきたいと思います。
御承知のように、最近貿易の自由化ということが相当やかましくいわれて参りまして、できるだけ早く、逐次あらゆる物品について自由化していきたいということで、先般の閣僚会議におきまして、この五月一ぱいで大体のスケジュールをきめて、そうして実施できるものから実施していくという御決定がございまして、その計画の一環といたしまして、私たち関税面を分担いたしておる事務当局といたしましては、できるだけ、その線に沿って貿易が自由化されましても、関税の機能を生かすことによってマイナスの面ができるだけ出てこないように措置をいたしたいということを考えております。
関税面につきましてそれではどういう措置を考えておるかと申しますと、大きく分けまして二つございます。第一点は、現在の関税品目分類表を今全面的に改訂しようということでございます。第二点は、関税率そのものを全面的に再検討いたしたいということでございます。
第一点の関税品目分類表の改訂につきましては、御承知のように、現在の税表は明治四十三年の非常に古いものを踏襲いたしておりまして、もちろん当初より若干は変わってきておりますけれども、基本の分類につきましては、この古いものを踏襲いたしておるわけでございます。その結果、いろいろな方面に不自由、不都合な面が起きて参っております。一つは、現在の税表分類では、不必要な品目が非常に多いという点がございます。昨年におきまして、税表には分類特掲されておりながら、全然輸入の実績がなかったような品物が百五十品目以上もございまして、こういうようなものは時代とともにもう特掲する必要がないというようなものが、相変わらず掲げてあるわけでございます。反対に、必要な品目で掲げてないものが相当ございます。これは御承知のように、最近の電化学工業、ことに通信機、石油化学工業等の発展によりまして、予想しなかったような新しい商品類が続々できてきております。こういうものは必要がありながら、現在の税表にはございません。次に、現在の税表は、非常にどちらかというと荒っぽくできております関係で、個々の品目についても当該品目がどの分類に当てはまるかということについて、非常に疑問の多いものがあるわけでございます。疑問を生ずるたびに、税関側と業界との間にいろいろその分類をめぐって争いが起きるというような事例も相当ございます。従って、できるだけ詳しい、疑問の余地のない分類に直していくという必要がございます。
それから、現在の税表はいわゆる国際性に非常に乏しいということが言えます。これは最近御承知のように、関税は国内面のみならず、国際面で国際交渉の対象になる部面が非常に生じておりますので、でき得れば、外国と交渉する際に、ある品目なら品目について確実な共通の税表を持つということになりますならば、交渉が非常にスムーズにいくということが言えるのでございますが、現在のところではそういう共通性がないために、交渉上非常に不便を生じております一方、分類が非常に包括的でありますために、かりに外国が一品目譲って、日本が一品目譲るということになりますと、非常にたくさんの品目がその中に包含されるおそれがあるわけでございまして、それを避けるためには特契をしなくちゃならぬという不便が生じて参ります。
こういうようないろいろな不便な事情にございますので、これをどうしても関税品目分類表を全面的に変えていかなくちゃならぬという時期に立ち至っております。しからば、この品目分類表をどういうふうに変えていったらよいかということになるわけでございますが、これはモデルといたしまして、一九三七年に、前の国際連盟でございますが、そこで作りましたジュネーブの関税品日表というのがございます。次いで、一九五〇年にブラッセルで、ヨーロッパ関税同盟研究団が作りましたブラッセルの関税表というのがございます。この前者のジュネーブの関税品目表につきましては、現在これを世界で採用している国が十数カ国ございます。また、このブラッセルの品目表を採用いたしております国が約十八カ国ございます。われわれといたしましては、できるならばこのブラッセルの関税品目分類表を採用していきたいというふうに考えております。
と申しますのは、この分類表の特色といたしまして、品目の分類が科学的合理的にできておる点が一つございます。それから、もう一点は、この分類表にこまかい解釈がついておりましてほとんど、全部とは申しませんが、ほとんど疑問の余地のないような詳しい説明書がついております。それから、今申し上げましたように、世界の主要十八カ国が採用しておりますので、国際性と申しますか、共通性を持っておるわけでございます。これを現在わが国が採用いたしております分類と比較してみますというと、わが国の現在の表は九百四十一品目でございますが、このブラッセルの表は、大分類が二十一、中分類が九十九、小分類が千九十六という非常に詳細なものでございまして、なお、この下に各国がそれぞれの利害あるいは得失に応じて再分類を持つわけでございますが、この関税表を採用いたしております各国の実情を見てみますというと、再分類といたしまして二千ないし六千の品目を持っておるわけでございます。こういうふうに非常に進んだ表でございますので、今後改訂する場合にはぜひこのブラッセルの関税表に準拠いたしまして、しかもなお、わが国の特性なり利害に応じまして必要な再分類を加えていきたいというふうに考えておるわけでございます。
第二の、関税率の再検討でございますが、これは御承知のように、現在の税率がきめられましたのは昭和二十六年でございまして、その当時の状況を簡単に申し上げますと、終戦後貨幣価値が低落いたしまして、従来の従量税率というものがほとんど無価値にひとしくなったというような状況によりまして、従量税を全部従価に切りかえたという点が一点でございます。次に、昭和二十六年までは、いわゆる旧法時代は、最高税率が一〇〇%でございました。これはいわゆる奢侈関税あるいは禁止関税と申しますか、そういうような種類のものでございまして、奢侈品、不要不急品に対して一〇〇%の従価をいたしておったわけでございまして、もっともこの時代にたばこが例外でございましたが、それ以外の品物について今申しました一〇〇%の課税をいたしておったわけでございますが、昭和二十六年にこれを最高五〇%に切り下げまして、そして最高五〇、最低をゼロ、その中を適当な率で刻んだわけでございます。
こういうふうなことをいたしまして現在に至っておるわけでございますが、この二十六年改正当時の事情といたしまして、一つは、占領下でございまして、必ずしもわが国の意向を一〇〇%生かすというのには若干の問題があったようでございます。また、当時の事情といたしましては、日本はガットに加盟をする必要がある。そのためには、できるだけわが国が低税率であるということを標傍する必要があるというような、思惑と申しますか、がございまして、それでできるだけ低くしなければいかぬじゃないかということになったわけでございます。また、もう一つの点といたしましては、これは現在も続けておりますけれども、為替なり、貿易の管理がございまして、税率というものが、いわゆる保護関税というものがほとんど用をなさない。不必要なものであれば為替の割当をしなければいい、必要なものだけを割当すればいいというような事情もございまして、必ずしも関税率の作用によって輸入の操作をするという必要がなかったわけでございます。そういうような次第で、かなりあるべき税率というものと比べまして、現在の税率は理想的にはいっておらない。なお、当時と比較して、産業なり貿易の構造が、御承知のように、相当変わってきております。重化学工業の発達によりまして、当時の繊維中心の時代から見ますというと、かなり状況が変わっております。そういうような事情がございますので、現在の税率をもう一回見直さなきゃいかぬじゃないかという機運になってきたわけでございます。
それで、現在の税率をしからばどういうふうに変えていくのかという問題でございますが、それはとりもなおさず、現在の税率の一番弱い点、欠点をついていけばいいわけでございまして、現在の税率は、まず第一に非常に画一的に過ぎるという点があげられるわけでございます。これは、先ほど申し上げました税表分類の問題と表裏をなしておることでございまして、現在の税表分類で、たとえて申しますならば、薬品を一つあげますというと、現在の分類でございますと、その他の薬品ということで、全部二〇%ということになっておりますが、最近の各国の分類を見ますというと、大体一品目が百五十から百七十品目ぐらいに分かれるわけでございます。ホルモン剤とか、ビタミン剤とか、あるいは四エチル鉛であるとか、そういういろいろな品目に分かれるわけでございましてそのおのおのが、国内の生産あるいは国際価格等から見まして、持色を持っておるわけでございます。ところが、現在はこういう画一的な範疇に入れられます、いわゆるバスケット・カテゴリーというものに入りますために、全部二割ということになりまして非常に実情に即さないわけでございます。従って、先ほど申し上げました品目分類を細分いたしますというと、こういう欠点が次第になくなってくるということが言えるかと思います。
次に、第二点といたしましては、現在の税率が今のわが国の産業なり貿易の実態にそぐわない面があるわけでございます。たとえて申しますと、昭和二十六年当時は、日本では合っ成ゴムというものの生産は考えられませんので、これは将来ともアメリカあるいはカナダから輸入しなくちゃならぬだろうということで、無税にいたしまして、しかも、これを御丁寧にガットでもって据え置きを約束しておるわけでございますが、最近、国内の状況を見ましても、日本ゼオンとか、あるいは日本合成ゴムというような会社ができまして、合成ゴムの製造がようやく今後本格的になろうとしつつあります。こういうような事情。それから、また逆に、塩化ビニールとか、酢酸ビニールとかいうようなものは、当時といたしましては今後助長、育成していかなくちゃならぬというので、三〇%の課税をいたしたわけでございますが、今日に至ってみますというと、もうすでに生産が十分できて、国際的にも競争し得るような態勢になって、現在はむしろ日本は輸出国だというような状況になっております。これはまあ一例でございますが、こういうふうに、産業の実態にそぐわないような税率が現在ございますので、高過ぎるものは低くする、また今後育成しなきゃならぬようなものはむしろ税率をつけていくというふうに、直す必要があるわけでございます。
そういうふうな事情にございますので、今後税率改訂の方向といたしましては、今申し上げましたように、産業構造に合致したものに直していくと。いわゆる農業あるいは中小企業のように、そのものの基盤自体が非常に弱いものにつきましては、保護税率をつける。あるいは外国から入ってくる品物と同種類の品物を製造しており、しかもその生産が外国品に対して割高である、しかしながらある程度の時期保護すれば外国品に負けないものになり得るというようなものにつきましては、それぞれ適度な合理的な税率を配するというような必要があるわけでございます。また、いわゆるぜいたく品であるとか、あるいは不要不急品であって、一部の人しか使わないというようなものにつきましては、今の五〇%の税率というのは、あるいは少し低過ぎるのではないか、もう少しそういうようなものは上げていってもよいのではないかということも考えられるわけでございます。さらに、戦前は全品目のうち大体六割程度が従量税でございましたが、現在は砂糖と映画用フイルム、それから今度提案いたしております精製ラード、この三つを除きましては、ほとんど全部が従価税になっております。これは負担の公平という点から見ましても、あるいは保護の趣旨を百パーセント生かすという点から見ましても、不適当でございますので、でき得る限り従事税に切りかえていく必要があるかと思います。なお、最近新聞等に出ております弾力関税、あるいは緊急関税、あるいはタリフ・クオーターというような問題につきましても、今後研究を進めていく必要があるかと思っております。
大体以上がわれわれの現在考えて作業をいたしておる点でございます。
なお、税表分類につきましては、第一次草案が完成いたしまして現在第二次草案に着手をいたしております。税率自体の検討につきましては、これは通産、農林を初め各省の御協力を得なくちゃなりませんので、まだ具体的な税率を出しておるという段階ではございません。なお、関税率審議会等も強化いたしまして、現在需要者代表が非常に多い傾向にありますので、生産者代表あるいは消費者代表も入れまして、均衡のとれた審議会にいたしまして、今後できるだけ頻繁に開いて、審議会の意向等を十分取り入れまして研究を進めていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/49
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050・杉山昌作
○委員長(杉山昌作君) 引き続き、酒井為替局長にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/50
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051・酒井俊彦
○政府委員(酒井俊彦君) それでは、為替・貿易自由化の一般的な考え方なり、今までやりましたことにつきまして、ごく簡単に申し上げます。
一般論といたしましては、大蔵大臣その他からすでにしばしば意見が表明されておりますので、あまり詳しいことは差し控えたいと思いますが、日本としましても、為替・貿易の自由化につきましては、かなり前からいろいろ緩和の手続をはかってきたわけでありますが、一昨年末に西欧の各国が通貨の交換性を回復いたしまして、その後、為替のそういう自由化のみならず、貿易の自由化を着々と始めたわけでございます。すでに、ドイツ、それからイタリー、オランダ、この三国が、IMFから、国際収支の回復によって為替管理を続ける理由はないというふうに判定されております。それはガットの東京総会以来、非常に各国の自由化は進みまして、ちょっと御参考までに申しますと、ヨーロッパ各国におきましては、最低のところでも九一%、最高のイタリーは九九%、貿易を自由化いたしております。ドル地域に対しましても、オランダが八六%、これは農産物の関係で若干低くなっておりますが、大体九十数パーセント、スイスあたりが九九%という自由化をやっております。それからなお、最近、オーストリアにつきましても、ドル地域からの輸入制限を全面的に自由化するというようなことが伝えられておるわけであります。
そういう世界の大勢にあります際に、日本としても、従来の為替管理というような人為的な保護策によってゆがんだ経済構造を持っておりましては、これからの国際競争にたえられないということがありますので、わが国としても一そう自由化のスピードを速めるという必要が生じてきたと思うのであります。すでに昨年の三月、関係閣僚の懇談会におきまして、大体の方針が打ち出されまして、それに沿って昨年中に若干のものを自由化したわけであります。本年の一月十二日に自由化の閣僚会議を開きまして、とりあえず、まだ残っておりますAA品目のうちの対ドル差別品目六品目の四品目については四月一日から、あとの二品目については少なくともこの下期から自由化するというような決定をいたしたわけでございます。この自由化の方向理念と申しますのは、IMFの規定におきましてもうたわれていることでありまして、これは国際分業による利益、つまり資源、資本、技術、労働といった諸条件から考えまして、各国の最も適した産業を伸ばす。そして世界全体が能率的な形で、生産も雇用も伸びていくというような状態を想定いたしておるわけでございます。日本といたしましても、従来、さっき申しましたような為替割当というような人為的な保護のもとにできておりましたゆがんだ経済構造というものを、できるだけ早く直して、温室に慣れた経済を国際競争で負けぬようにという方向に持っていく必要があると思います。それには、産業の体質改善とか企業の合理化というようなことも別途必要でございましょう。
要するに、自由化によりまして消費者大衆がいい、安いものを手に入れる。それから、そういうことによって貿易も発展し、所得が増大していき、経済全体が発展するというような格好が必要だと思います。もちろん、これは抽象的な理念でございまして、その実際の進め方の過程におきましては、なかなかいろいろな問題が出て参ります。しかし、考え方としては、そういうところに基調を置いておるわけでございます。
ところで、今の日本経済は、非常に長い間為替管理というような人為的なものによりまして、一つの、よかれあしかれ、経済秩序が立っておる。これをいきなり全部はずしてしまうということは、あまりにも摩擦が多いということは当然でございまして、自由化への移行の時期、方法等につきましては、たとえば過当競争の防止というような面についてどういう手を打つかというような、いろいろな処置を考えながらやっていきたいと思うのであります。
また、これは各国ともそうでありますが、農業生産物につきましては、これはなかなか各国とも自由化ができない。ことに日本のように、おもに零細な農家所得の問題でございます場合に、将来長い方向といたしましては、これは農業の過剰人口を近代的な集約構造に直していくということは必要であろうと思いますが、あまりに急激に行ないますと、そこに社会問題が出てくるというようなこともございまして、これは進め方は慎重でなければならぬ。ただ、あまり慎重にやって、非常に保護に力が入って参りますと、今度は国際競争におきまして日本の競争力が非常に弱まるというような点がございますので、そういう点を十分に認識しながら、できるだけ早く、しかもそのテンポを誤まらないように進んでいきたいというのが、私どもの基本的な心がまえでございます。
それから、それでは、今日本の外貨保有額は十三億二千百万ドルでございますが、この程度で自由化して大丈夫かというような議論もときどき回かれます。しかし、これは実は外貨の保有額自体が幾らだということの問題よりも、常に国際収支が黒字基調を維持しておる、あるいは安定しておるということが大事なんでありまして、十三億だからできる、あるいは二十億なければできぬというようなものではないと思います。もちろん、これから自由化を進めていきます場合に、外貨準備というものはできるだけたくさん持っていた方がいいということは事実でありますけれども、十三億はむずかしいが二十億あればできる、そういう問題じゃないと思います。
ちなみに、ヨーロッパ各国の例を見てみますと、これは数字を比較いたします関係上、昨年の九月の末になっておりますが、一年間の輸入を月に平均いたしまして、その月平均に対して何カ月分くらいの外貨を持っておるかということを見ますと、オランダにつきましては四カ月と二四、フランスは四カ月と三八、ドイツは多少多くて六カ月五三、それからイタリアは十一ヵ月八八と、ほぼ一年分をまかなえる額を持っておりますし、スイスは一二・八二と一年以上も持っております。これに対しまして英国は三カ月半、日本の場合は、九月で計算しますと、四カ月と一二、別に、外貨の輸入に対する割合から申しますと、それほど遜色がないわけであります。
要するに、私どもといたしましては、外貨の問題は、経済全体の基調を健全にして日本経済が安定的に発展し、黒字が出ていくというところが大事なんでありまして、現在の外貨保有額が幾らだということによって、これが左右されるべきものではないというふうに考えております。このいい例がフランスでありまして、御承知のように、ヨーロッパの病人と言われておって、外貨も底をついたあのフランスが、ドゴールのような非常な権力的な背景があったにしても、ピネーが思い切った緊縮政策をやって建て直した。その結果、現在フランスはおそらく十六、七億の外貨を持つようになったと思いますし、ヨーロッパでも非常に安定した通貨を持つようになった。しかも、その自由化率は九十数パーセントと非常に高いという率でありまして、私どももちろん慎重に考えなければなりませんが、外貨によって左右されるという考え方それ自身はとらないところでございます。
以上、貿易・為替についての大体の心がまえでございますが、為替面に限りまして今後の為替自由化の順序というものを考えてみますと、もちろん貿易面の自由化に即応しまして、歩調を合わせて為替の自由化をやる必要があります。為替、貿易と切り離して考えますと、為替の管理の目的は、最終的には資本逃避を押えて、そうして同時に外国資本の激しい流入、いわゆるホット・マネー的なものによって国内金融が撹乱されるということを防止し、そうして結局円の価値安定ということを目的とするわけでございます。ですから、ちょうど戦前に為替管理を統制したのが、御承知のように、昭和八年に資本逃避防止法ができまして、昭和十一年から輸出貿易についての統制が始まりました。これは無為替輸出を初め、形を変えた資本逃避の防止というものを意味しているわけでございますが、次に、昭和十二年から編入統制が始まり、そうして戦争に入って厳重な為替管理に入っていったということでございます。解除の仕方は、これと全然同じだとは申しませんが、順序といたしましては、大体それを逆に裏返したような方向でいくべきじゃないかというように考えております。
で、現在の為替のはずし方といたしまして考えられますことは、抽象的には、まず為替管理には居住者と非居住者というものがございます。それから、取引につきましても、経営取引と資本取引という二つがございます。まず、西欧各国で着手いたしましたのも、その非居住者の経営取引の自由化でございます。そこで、われわれとしても、まずその点から手をつけまして、それから次に居住者関係の経営取引の制限を緩和する。その次に資本関係に入りまして、非居住者の資本取引の自由化ということになってくる。居住者の資本取引が自由になったときは、これはすべて為替上の管理は不必要であるという事態になろうと思います。もちろん、こういう段階が一々截然と区別されまして、経営勘定が全部自由になって、さあこれから資本勘定だと、こういうことではございませんで、英国の例を見ましても、ヨーロッパ各国の例を見ましても、それはその途中においてやって、順次体制を整えているということでございますから、もちろん截然とした区分はございませんけれども、大体気持としては、そういうような段階で進めなくちゃならないというふうに考えておるわけでございまして、これを先ばしって、自由化だといって、資本勘定も経営勘定も一緒にして、資本勘定まですっぽり自由化してしまえということは、これは資本取引の自由化でどんどん国際収支が撹乱されますと、結局、経営取引の方の自由化もあぶなくてできなくなるというふうな点もありますので、その手順は誤りないようにする必要があると思っております。
そこで、そういう意味でこれまでにやりましたことは、昨年の為替相場の弾力化というようなものを別にしまして、最近におきましては、海外渡航の場合も持ち出し外貨の制限を緩和いたしました。たとえば、沖縄に渡航いたします場合には、二百ドル以内であれば制限免除で許可を要しない。それから、一般に海外に出られる場合には、三十五ドル以内であれば、これはかまわない。今まで四段階にしまして、十九ドル何セントだとか、二十一ドル何セントというように、その人その人の資格によりましてきめておりました。それを全部撤廃しまして、三十五ドル以内ならば許可する。もちろん、未成年者と学生は二十五ドルにとどめております。
それから、次に、海外駐在員事務所の経費の送金制限緩和でございますが、これは、従来海外に駐在員を持っております場合に、まあその人の給料が幾らで経費が幾らというふうに査定をしておったのでございます。一カ所一カ所査定しておりましたが、今度はもうそれを標準化しまして、単価を上げますと同時に、一事務所幾らとやりまして、同時に、今まではニューヨークならニューヨークというふうに査定をいたしておりましたけれども、今度は、世界全体の駐在員事務所の数を必要経費にかけまして、その中でどういうふうにやりくりされてもかまわない。たとえば、バンコックが必要になったら、ちょっとニューヨークを削ってバンコックへ回すというようなことを、勝手におやりになってかまわないというふうにゆるめました。
それから、交互計算制度の対象商社の拡大でございます。これは、海外に出ております支店、従来は十九社だけを認めておったのでございますが、海外に支店を持っている以上は交互計算を全部認めてもいいじゃないかということで、支店を持っているものについては全部認めまして、その数は三十五に拡大いたしました。
それから、海上積荷運賃、海上積荷保険契約、これは自由にいたしました。それから、商社のいわゆる持ち高集中制、これも御承知のように、四月一日からやるということで、すでに受付を始めております。それからまた、輸入ユーザンスにつきまして、従来は六十品目ぐらいに限定して認めておったのですが、これも国際的な慣習でございますので、不要不急品と称しておりますが、それを除きましては、全部自由に使ってよろしいということにいたしたわけでございます。
こうやりまして、貿易外の自由化率は五三%に相なったわけであります。そのうち、貿易に伴う貿易外支払い、これはまだ自由化率は若干低いのでありますが、その以外の、貿易に伴わない貿易外の自由化率はほぼ七七%にあれしたわけでございまして、あと残っておりますのは映画関係、外国用船、あるいは渡航について、これはある程度人数を制限していく。もちろん、相当緩和して参りましたが、若干制限するということにいたしておるわけでございます。
次に、資本取引でございますが、この点につきましても、さっき申し上げましたように、一挙にこれをはずすということはなかなかむずかしいのでございますが、日本経済のためになる発展に役立つような、しかも定着するような資本取引につきましては、漸次これを緩和してきておりますが、今後もそういう方向で進みたいと思っております。ただ単に、さや取りと申しますか、ホット・マネー的なもの、あるいは東京証券市場等に投資いたしましてもうけたやつをずっと引き揚げる、ホット・マネー的なものは、これはなかなか自由化はできない。ただ、それも現在は、御承知のように、制限業種については五%、それ以外は八%という程度に押えております。このパーセンテージあたりももう少し広げていっていいのじゃないか。実際には平均いたしますと一・何パーセントという非常に低い率になっておりますが、中には七%もかっちり確保をしておるものもありますし、それほど神経質に押える必要もないので、若干今よりゆるめてもいいのじゃないかということを考えております。
今後の進め方といたしまして、結局、為替の面におきましては、さしあたり、円為替をどうして導入するかという問題が非常に大きな課題になってきます。まず、私どもといたしましては、非居住者の自由円勘定という勘定を作りまして、それに貿易外の経営取引の勘定を入れて円を使わせる、ドル見合いの円を、その勘定を通じて円をコンバーティブルにしていく、ちょうど西欧各国の一昨年末の状況のようなことにするということを考えております。ただ、この場合に、勘定を聞きまして、ドルを持ってくる。そういたしますと、その、かわり円というのは、その勘定はありますが、実際の金は国内に放出されるわけでございますが、いつでもこれは海外に送金を要求される外貨と同じ性質を持っておる。ところが、入ってきた円自体は国内で普通の円として動くということになりますので、この辺の金融調節をどうするかという技術的の問題、それから円為替を入れました場合に、貿易金融は相当優遇いたしておりますが、この優遇措置をどうするかというような問題もありまして、これは慎重に検討を要するかと思います。
要するに、今後の為替関係の自由化につきましては、そういったような意味で、金融政策、財政政策ということが非常に重要になるわけでありまして、今まででも実は、為替管理をしいておりましても、実際に経済が過熱いたしますと、なかなか為替では押え切れない。結局、国内の態勢を建て直して健全に安定するという以外に方法がないのですから、これはいわゆる神武景気のときにそういうことを経験したわけでありまして、今後、特にこういうような点が重要な問題になるわけであります。そういう意味で、現在、為替相場、先物は自由にしておりますが、先物相場というものの動きが、日本経済の実態に相当反映してくる。六カ月先の日本経済はどうなるだろうかというようなことが、為替に反映してくる問題じゃないかと思うのであります。国内におきましては、貨幣の購買力としての物価の問題というようなものに現われてくると思います。まあそういう指標をつかみながら、金融財政政策を適正にやっていく、そういう基礎の上に今後の為替管理の自由化を考えていきたい、かように考えておる次第であります。時間がちょっと超過いたしましたが、申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/51
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052・杉山昌作
○委員長(杉山昌作君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/52
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053・杉山昌作
○委員長(杉山昌作君) それでは、速記をつけて下さい。
本案に対する質疑は後日に譲りまして、本日は、これにて散会いたします。
午後零時二十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103414629X00619600308/53
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