1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年二月十三日(火曜日)
午後二時二十七分開会
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委員の異動
二月八日委員野上進君辞任につき、そ
の補欠として西田隆男君を議長におい
て指名した。
二月九日委員迫水久常君辞任につき、
その補欠として野上進君を議長におい
て指名した。
本日委員大谷瑩潤君及び林田正治君辞
任につき、その補欠として加賀山之雄
君及び鍋島直紹君を議長において指名
した。
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出席者は左の通り。
委員長 松野 孝一君
理 事
井川 伊平君
増原 恵吉君
亀田 得治君
委 員
青田源太郎君
鍋島 直紹君
大和 与一君
赤松 常子君
辻 武壽君
加賀山之雄君
政府委員
法務省訟務局長 浜本 一夫君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
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本日の会議に付した案件
○行政事件訴訟法案(内閣送付、予備
審査)
——————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X00619620213/0
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001・松野孝一
○委員長(松野孝一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
この際、委員の異動について御報告申し上げます。
二月八日付野上進君が辞任、西田隆男君選任、二月九日付迫水久常君辞任、野上進君選任、二月十三日付大谷瑩潤君辞任、加賀山之雄君選任、以上であります。
——————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X00619620213/1
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002・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 行政事件訴訟法案を議題といたします。
本案については、去る二月一日の委員会において提案理由の説明を聴取しておりますので、本日は逐条説明を聴取することといたします。
なお、ただいま出席の政府側は、法務省浜本訟務局長です。
逐条説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X00619620213/2
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003・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 逐条説明を申し上げようと思いますが、その前に、お手元にお届けしてあります資料に、ミスプリントを発見いたしましたので、便宜御加筆御訂正をお願いしたいと思います。
二十四ページの終わりから五行目に「現行の特例法第六条」とありますが、これは「第八条」の誤りであります。それから四十四ページの初めから八行目、「関係上、この法律の施行前に訴訟期間を」とありますが、これは「訴願期間」の誤りでありますので、御訂正を願いたいと思います。不行き届きで申しわけございません。
それでは逐条説明を申し上げることにいたします。
まず、第一章総則におきまして、本法と他の法律との関係における基本的適用の問題を第一条及び第七条において規定しております。すなわち、この行政事件訴訟法案は、行政事件訴訟についての一般法たる性格を持つものであることを明らかにいたしますとともに、行政事件訴訟が一般の民事訴訟と基本的には性格を異にする面があることにかんがみ、現行の行政要件訴訟特例法におけるがごとく、単に民事訴訟の特例を規定するのみにとどまるべきものではないとし、従来の考え方と異なり、行政事件訴訟についての統一的な法律としてこれに関する規定を設けようとしているのであります。本法を題名において行政事件訴訟法、特例という文字を取りましたのも、この趣旨の現われであります。
次に、総則における第二の問題といたしましては、第三条ないし第六条において定義規定を設けることにいたしましたことであります。すなわち、現行の特例法は単に行政事件を行政庁の違法な処分の取り消しまたは変更を求める訴訟その他公法上の権利関係の訴訟といたしてあるにすぎないため、行政事件たる性質を持つ訴訟の範囲並びに各種の形態の訴訟についていかなる範囲でどの法規が適用されるかが明確を欠いておりましたが、本法は、行政事件訴訟を第二条ないし第六条に規定しておりますように、その訴訟の形態を類型化して明確にすると同時に、第二章以下の規定によってそれぞれの訴訟に適用される規定の範囲を明らかにし、従前の疑義を明らかにしたのであります。
以上二つが総則の規定における根本的趣旨であります。以下、総則の各条について御説明申し上げることといたします。
第一条は、ただいま申しましたこの法律が行政事件訴訟について一般法であることを明らかにしたものであります。したがいまして、行政事件訴訟について私的独占禁止法その他各種の行政法規に訴訟に関する特別の定めがあります場合には、まずそれらの規定が適用され、その他の事項についてこの法律が適用されることとなるのであります。
次に第二条は、先ほど申し上げました趣旨の訴訟の類型化といたしまして行政事件訴訟を抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟及び機関訴訟に大別いたしたものであります。これらの訴訟の定義につきましては、次の第三条以下においてこれを明らかにすることといたしました。
次の第三条は、そのうちまず抗告訴訟に関し規定することといたしたものであります。
まず、第一項に抗告訴訟の一般的意義を明らかにしております。この抗告訴訟のうちには、さらに各種の類型の訴訟が考えられますので、第二項ないし第五項において四つの訴訟を取り上げ、その意義を明らかにいたしておりますが、抗告訴訟を単にこれら四つの訴訟に限定する趣旨ではありませんでそのために第一項の抗告訴訟の定義はきわめて包括的に規定いたしてある次第であります。そして第二項以下の四つの訴訟以外に公権力の行使に関する不服の性質を持つ訴訟が認められるかどうか、認められるとすればどのような訴訟が考えられるかにつきましては、現在判例学説上一定いたしていないところでございますが、もしこのような訴訟が認められるといたしますれば、その訴訟は、これを抗告訴訟といたす趣旨なのであります。
次に、第二項の処分の取り消しの訴えにつきましては、現行法では行政庁の違法な処分の取り消しまたは変更を求める訴訟としておりますが、その変更の意味はすでに学説判例上一部取り消しの趣旨に解されておりますので、ここでの定義としては単に処分の取り消しの訴えといたしたのであります。さらに第二項におきまして、現行法と異なり、「その他公権力の行使に当る行為」の文字を付加いたしましたのは、精神病患者の即時強制収容等いわゆる事実行為をこれに含める趣旨であります。
次に、第三項で現行法と異なり特に裁決の取り消しの訴えを別の類型といたしましたのは、第八条、第十条第二項等において処分の取り消しの訴えと裁決の取り消しの訴えとを分けて規定する必要があるからであります。
次に、第四項の無効等確認の訴えに関する規定は、従来この種の訴訟が抗告訴訟か当事者訴訟か学説判例上疑義がありましたので、これを抗告訴訟といたすことを明確にしたものであります。なお、この無効等確認の訴えがいかなる場合に提起することができるかにつきまして第二章第二節第三十六条においてこれを明らかにしております。
第五項の不作為の違法確認の訴えにつきましては、行政庁が、法令に基づく申請に対して相当の期間内に何らかの処分または裁決をすべきにかかわらず、これをしないときには、それは法律上の争訟として違法の問題と考えられるのでありますが、現行法上はこの種の訴訟がはたして認められるべきものかいなかが必ずしも明らかではありませんので、この訴えが許さるべき要件を明らかにするために、ここに明記することにいたしたのであります。でありますから、この訴えは何らかの処分をなすべきであるにかかわらず、これをしないことが違法であるというのでありまして、具体的にある特定の処分をなすべきことを請求することを許す趣旨のものではなく、処分をしないことが違法であるということが判決によって確認されますと、何らかの処分をなさなければならないという拘束力が生ずるのであります。
さらにこの訴えの要件について若干補足いたしますと、法令に基づく申請権がある場合に限られるのでありまして、しかもこの訴えは、第三十七条で規定しておりまするように申請をした者のみに許されるのでございます。また、ここに相当の期間内といたしましたのは、各種の行政処分について一律に期間をきめることが適当ではないからでありまして、結局は裁判所が事案の性質等を個々的に判断してこれをきめることにするほかはないからであります。なお、行政庁が申請を拒否したり、あるいはまた、特定の行政法規にありますように一定期間内に処分しないときは、これを拒否または承認したものとみなす趣旨の規定があります場合には、この訴えによるのではなく、第二項の処分取り消しの訴えの形で不服の訴訟を提起いたすことになります。
次に、第四条は、当事者訴訟として二つの形態の訴訟を規定いたしております。まず、前段の訴訟につきまして、たとえば行政庁が決定いたしました損失補償や買収対価等の額の増減を求める訴訟のように行政処分を不服として、これを争う性質の訴訟でありましても、多くの行政法規で規定いたしておりますように、行政庁を被告とせずそれに直接の利害関係がある起業者その他の実質上の当事者を被告といたしておりますものは、訴訟の形態として抗告訴訟と異なるものでありますので、これを当事者訴訟として規定いたした次第であります。したがいまして、この訴訟に当たるものと認められるためには特に法令において実質的当事者を被告とする旨が定められておる場合に限られるものであります。後段の訴訟は、たとえば俸給の請求が争われる訴訟のように、実質上の当事者間において公法上の法律関係が争われる訴訟を規定したものであります。
次に、第五条で民衆訴訟に関する規定をおいております。これは選挙訴訟のように自己の法律上の利益に直接かかわりのない者から提起ざれる訴訟でありまして、したがいましてこの訴訟は第四十二条に規定いたしておりますとおり、法律で特に認めている場合に許されるのでありまして、また、どの範囲の者が、かような訴訟を提起することができるかも特別の法律で定めることといたしておるわけでございます。
次に、第六条の機関訴訟につきましては、地方自治法等に規定されている職務執行命令訴訟のように機関相互間の訴訟でありまして、それには国または地方公共団体その他の公共団体の内部における機関相互の権限争訟及び国の機関と公共団体の機関との間の権限争訟を含む趣旨であります。この訴訟は、その性質に照らし、第四十二条で規定いたしておりますように特に法律の明文がある場合においてのみ許される訴訟であります。
第七条につきましては、すでに冒頭において述べましたところでありますが、本法は行政事件訴訟についての統一的一般法といたす趣旨でありますが、民事訴訟法に規定されておるすべての訴訟事項を本法で規定いたしますのは、かえって無用の複雑を来たしますので、本法に規定してない事項については民訴の規定を準用してこれをまかなうことにいたしたのであります。
次に、第二章において抗告訴訟に関する規定を設け、そのうち第一節で取消訴訟に適用されるべき事項を規定いたしております。
まず第八条におきまして、現行の特例法のとっております訴願前置主義を原則として廃止することにいたしております。従来、訴願前置主義に対しましては、国民の権利の伸長に支障を与える面が少なくないとの見地から、種種の批判があったわけでございます。もちろん、その批判は別途本国会に提案いたされておりまする行政不服審査法により取り除かれる部分もございますが、しかしなお、国民が訴訟によって権利救済を求めようとする際に訴願を経てからでなければ出訴できないとして、訴願をすることを強制いたしますのは妥当でないと考えられるのであります。もちろん、訴願前置を必要とするについてそれ相応の理由のある場合もございますので、それについてはそれぞれ例外を認むべきでありますが、一般的には、今申しましたように、訴願前置を必要要件とすることは国民の権利伸長の見地からこれを廃止することといたしたのであります。したがいまして、この結果、国民において行政処分に対し不服がある場合に行政不服審査法による不服申し立てをするか、本法の取り消し訴訟を直ちに提起するか、いずれの道を選ぶかを国民が自由に決定することができることになるわけでありますし、また、これら二つの申し立てを同時にいたすことも可能に相なるわけであります。
第一項は、右に申し上げましたように、原則として訴願前置主義を廃止し特に訴願前置を必要とするような処分についてはその旨をそれぞれ特別法で定めることにしたものでございます。なお、その訴願前置主義を規定するのを法律に限定いたしましたのは、命令、条例等でかかる事項を規定するのは適当でないからであります。
第二項は、訴願前置主義をとる場合でもそれによって生ずる弊害を取り除く必要があるのでありまして、しかもこのことは各特別法で訴願前置を規定する場合に共通する事柄でありますので、ここに一定の事由がある場合には訴願を経なくてもよい旨を定めたのであります。この趣旨は現行の特例法第二条ただし書きと同じであります。
次に第三項は、原則として訴願前置を廃止しました結果、訴願と訴訟が同時に並行する場合が多くなることが予想されますので、これら二つの手続の調整をはかったものであります。すなわち、裁判所において、さきに訴願に対する裁決をなさしめるのが相当と考える場合には、その裁量により訴訟手続を中止することができるといたしたのであります。
次に第九条の原告適格の規定につきましては、現行の特例法にはこれに関する規定はなく、一般の民事訴訟の原則によっておるのでありまして本条もその原則を明らかにしたにとどまるものでありますが、ただ本法においては民衆訴訟及び機関訴訟を規定しておりますので、それとの関係において、このことを特に明記したものであります。
カッコ書きの個所は、従来、たとえば免職や除名などの処分の効果が、任期の満了その他の理由でなくなった場合に取り消し訴訟の利益が失なわれるかいなかにつきまして解釈上疑義がございますので、その場合でも俸給や歳費請求権の行使などなお回復すべき法律上の利益がある場合には利益がある趣旨を特に明らかにしたものであります。なお、当該処分によりこうむった損害の賠償は、別途訴訟において解決せらるべき問題でありまして、これがあるからといって、ここにいう回復すべき法律上の利益あることとはならないのは解釈上当然と考えられます。
次に第十条の第一項は、取り消し訴訟においては自己の法律上の利益に全く関係のない手続法規違反等の違法事由はこれを主張することができないことといたしております。かかる主張はそのことにより排斥できることといたしたのでありまして、このことは従来の学説判例の考えに沿ったにすぎないものであります。
第二項は処分の取り消しの訴えと裁決の取り消しの訴えとの関係を前者を中心として調整を規定したものであります。現行法上はこの点について何らの規定がございませんので裁判所の取扱が区々になっておりまして、処分を維持した裁決の取り消しの訴えにおいて原処分の違法をも主張する場合が少なくなく、訴訟経済の上からいかがかと存ぜられますし、また、原処分の取り消しの訴えと裁決の取り消しの訴えとが別々の裁判所に並行して提訴され、しかも実質上同じ違法事由が主張され審議されて、裁判所の判断が抵触する場合も生じまして、これら両訴の取り扱いについて現在困難な事態になっております。それで原処分の取り消しの訴えと原処分を維持した裁決の取り消しの訴えとを提起することができる場合には、原処分の違法は処分の取り消しの訴えにおいてのみ主張することができるものとし、裁決の取り消しの訴えにおいては裁決の手続上の違法その他裁決固有の違法のみを主張することができることにしたのであります。なお、海難審判法等の特別法において、原処分については取り消しの訴えを許さず、裁決についてのみ取り消しの訴えを許すことになっているものについては、本項の規定の適用はないことは申すまでもありません。
次に第十一条は、現行の特例法第三条の建前を維持することにしたものでありまして、ただ従来解釈上疑義がありましたので一項ただし書き及び第二項等を新設してこれを明らかにしたものであります。
次に第十二条の管轄の規定について申し上げます。取り消し訴訟は、一般管轄としては被告行政庁の所在地の裁判所の管轄に属するとしたものであります。現行の特例法第四条は、被告行政庁の所在地の裁判所の専属管轄となっておりまして、訴えを提起する者にとって不便を生じておりましたので、この管轄の専属を廃止することにしたのであります。したがってこの結果、民事訴訟法の応訴管轄、合意管轄その他移送等の規定が適用されることになるわけであります。
次に第二項及び第三項において、国民の権利救済を容易にするため二つの特別管轄を認めることといたしております。第二項の不動産または場所の所在地にしても、また、事案の処理に当たった下級行政機関の所在地にしましてもこれらにかかる処分の取り消しの訴えと密接な関連を持つものでありますから、その地の裁判所に管轄を認めるのが相当と思われるのであります。なお、第二項の特定の場所にかかる処分とは、たとえば四国におけるバス路線にかかる運輸大臣の不許可処分のごときを言うのでありまして、この不許可処分の取り消しの訴えは、第一項によって東京の地方裁判所の管轄に属すると同時に本項の規定により四国のその地の地方裁判所の管轄にも属することになります。また、第三項の事案の処理に当たった下級行政機関とは、たとえば九州のある省の出先機関が大臣の免職処分について必要な調査をし、これを具申したような事案の場合におけるその出先機関を言うのでありまして、この場合には、東京の地方裁判所のほか、当該機関の所在地の地方裁判所にもその処分の取り消しの訴えを提起することができることになるのであります。
次に第十三条は、取り消し訴訟とそれに関連する請求とが別々の裁判所に係属している場合に、訴訟の経済と事件の迅速処理との観点から関連請求の係属する裁判所から取り消し訴訟の係属する裁判所に事件の移送を認め、一つの裁判所においてこれを審理することができるようにしたものであります。この移送は、右の趣旨に基づくものでありますから、関連請求が取消訴訟の係属する裁判所に管轄がない場合においても特にこれを認めたものであります。また、関連請求事件が簡易裁判所に係属する場合に取り消し訴訟の係属する地方裁判所に移送することを認める趣旨でもあります。しかし、ただし書きにありますように、取り消し訴訟または関連請求訴訟が一審または控訴審として高等裁判所に係属する場合には、審級の利益を奪うことにもなりますので、右の移送はこれを認めないことにいたしております。
次に本条において関連請求の範囲を各号に掲げて、できるだけ明確にしておりますが、これは現行の特例法第六条が、単に原状回復または損害賠償その他関連する請求と規定しておりまして、解釈上の疑義があったからであります。さて第一号は、現行法の表現と同じでありますので、別段補足説明を要しないと考えます。第二号は、滞納処分や土地収用の手続のように一連の段階を追って数個の処分がなされるような場合には、その手続中の個々の処分の取り消しの訴えは相互に関連請求となるとの趣旨であります。第三号は、原処分の取り消しの請求に対しその訴願裁決の取り消しの請求が関連請求であること、また、第四号は逆に訴願裁決の取り消しの請求に対し原処分の取り消しの請求が関連請求になることを明らかにしたものであります。第五号は、一つの処分または訴願裁決に対し数人の者から提起される処分または裁決の取り消しの請求は互いに関連請求であることを明らかにしたものであります。第六号は、関連請求は右の各号には限られないので概括的に規定したものであります。
次に第十四条は、第一項において、現行の出訴期間六カ月を三カ月にしております。その趣旨は、出訴期間が長期に過ぎることは行政上の法律関係の安定に支障を来たすことも少なくありませんし、諸種の立法例においても六カ月のごとき長期の出訴期間を認めておるものはなく、また、一般法たる本法において出訴期間が長期に失しますと、かえって各種特別法規において、より短期の出訴期間を定める傾向を生じ、その間不統一を生ずる弊害があるわけであります。他方、従来の出訴の状況に照らしましても、また、この出訴期間は、原告が処分を知った日から起算されるものであり、かつ、これを不変期間といたしておるのでありますから、現行の出訴期間を短縮いたしましても出訴権を制約するような支障は生じないものと考えられます。このような諸種の事情を勘案いたしまして、その出訴期間を三カ月とするのが適当と考えた次第であります。
次に第三項におきまして、現行規定における疎明を落としましたのは、出訴期間が訴訟要件である点にかんがみますと正当理由があることを疎明することにしている現行の規定は適当ではないからでありまして、一般の訴訟要件と同様に証明することにしたのであります。
次に第四項で、行政庁が誤って審査請求をできる旨を教示した場合の出訴期間の起算日について新らたに規定を設けましたのは、現行法の解釈として審査請求が不適法であるときはこの出訴期間の延長の利益を受けることができないとされているのでございましたが、行政不服審査法案において教示の規定が設けられ、行政庁が誤って教示した場合について特に救済の規定を設けることにいたしております趣旨に従いまして、出訴期間についても特段の考慮をいたすことにしたものであります。
次に第十五条は、原告が被告とすべき者を誤った場合の救済を定めたものでありまして、その趣旨においては、現行の特例法第七条と同じであります。ただ、現行法におきましては単に被告を変更することができるとのみ規定しているに過ぎませんので、変更後の被告は正当かどうかに関連して訴訟当事者の地位が不明確となり訴訟手続の安定を害していますので、本条におきましては、裁判所が被告変更の許否を決定するという建前をとってこれを明確にすることとしたわけであります。この許否の決定のうち、被告の変更を許す決定に対しましては、その性質上新旧両被告は不服を申し立てることができないこととし、その決定によって直ちに被告は従前の者から新被告に変わることとなるのであります。なお、第六項において、被告変更の申し立てを却下する決定に対しては即町抗告ができることとし、また、第七項において、上訴審で被告変更の決定をしたときは、その訴訟を管轄裁判所に移送しなければならない旨を明らかにしたのであります。
次に第十六条ないし第十九条に各種の併合について規定をいたしておりますが、これは現行の特例法第六条が簡に失して解釈上疑義がございますので、これをそれぞれの場合において分けて規定することにいたしたものであります。
第十六条の請求の客観的併合の規定は、取り消し訴訟には、関連請求に限り、訴えを併合することを認めたものであります。
第十七条の共同訴訟の規定は、関連請求に限って共同訴訟を認めることを明らかにしたものであります。
第十八条及び第十九条は、原告または第三者が取り消し訴訟の口頭弁論の終結に至るまで関連請求に限ってその取り消し訴訟に併合して提起することを認めた規定であります。もちろん、これらの追加的併合におきまして、追加される請求が出訴期間の経過等により本来不適法であるものを併合することによって適法な請求となることを認める趣旨ではございません。なお、第十九条に第二項の規定を置きました趣旨は、第一項による追加的併合が認められるかどうかにかかわらず、民事訴訟法の規定による訴えの変更の要件を満たしておる場合には、それが許されることを念のため明らかにしたものであります。
第一下条は、第十条第二項で御説明申し上げましたとおり、原処分を維持する裁決の取り消しの訴えにおいては、その原処分の違法を理由として取り消しを求めることができないことにいたしておりますので、この制限によって原告に不測の不利益を与えないように、裁決の取り消しの訴えが控訴審に係属いたしております場合においても、処分の取り消しの訴えの被告の同意を得ることなくして裁決の取り消しの訴えにこれを追加的に併合することができるようにいたしますとともに、また出訴期間の順守につきましても裁決の取り消しの訴えを提起したときに処分の取り消しの訴えの提起があったものとみなすことにしたものであります。
次に第二十一条は、取り消し訴訟の請求を国または公共団体に対する損害賠償その他の請求に交代的に変更することを認めたものであります。現行法には、これに関する何らの規定がありませんので、判例も区々にわたり解釈上一定いたしておりません。と申しますのは、行政事件を民事事件に変更することはその訴訟手続を異にするものに変更するわけでありますので、民事訴訟法の建前からは許されないことであり、また、この変更により被告は行政庁より国または公共団体にかえられることは、通常、当事者の任意的変更を認めない民事訴訟の建前に反し、しかも訴えの変更となりますと、旧被告の当該訴訟における訴訟状態を承継し、これに拘束される関係にあるからであります。しかし、かかる訴えの変更を認めないことば、原告の保護に欠くるところがあるとのそしりを免れませんので、本条によりこれを容認することとしたわけであります。なお、本条におきまして、この訴えの変更は、先ほど申しましたような性質のものである関係上、第三項においてあらかじめ裁判所が当事者及び新被告の意見を聞くこととし、また、第四項により訴えの変更を許す決定に対しては即時抗告を認めますが、これを許さない決定に対しては不服申し立てを許さないこととした次第であります。
次に第二十二条と第二十三条の訴訟参加につきましては、現行の特例法第八条が第三者の訴訟参加と行政庁の訴訟参加とを区別することなく規定しておりまして、それぞれの参加入の訴訟法上の地位が明らかでありませんので、それら二つの訴訟参加に対応して規定を分けてその趣旨を明らかにすることにしたものであります。
まず第二十二条の訴訟参加は、第三十二条において取り消し判決の効力は第三者にも及ぶといたしております関係上、その訴訟に参加した第三者については民事訴訟法第六十二条を準用して必要的共同被告の地位に準ずるものといたしております。また、かような性質の訴訟参加でありますので、当事者またはその第三者の申し立てによる参加の道を開くことにしたのであり、さらにその第三者は、訴訟参加の申し立てを却下する決定に対して即時抗告をすることができることにしたのであります。なお、その訴訟参加前の事項につき民訴六十八条の規定を準用して所要の調整をはかることにしております。
次に第二十三条の行政庁の訴訟参加につきましては、その参加の趣旨にかんがみ、その訴訟上の地位につき、民事訴訟法第六十九条の、補助参加に準ずるものといたしたのであります。なお、この訴訟参加につきましても、現行法と異なり、職権のほか、当聖者またはその行政庁の申し立てによる訴訟参加の道を開くことといたしております。
次に第二十四条は、現行の特例法第九条の規定と同じ趣旨であります。ただ、「公共の福祉を維持するため」という表現は、不適当かつ不必要でありますので、これを削除いたしました。
次に第二十五条の規定は、いわゆる執行不停止の原則、裁判所による執行停止の要件、執行停止決定の手続並びに執行停止決定に対する不服申し立てを定めたものであります。
まず第一項は、現行の特例法第十条第一項の執行不停止の原則を維持することにしたものであります。ところでこの執行停止につきましては、現行法はただ単に執行の停止という用語を用いているにすぎませんが、その意義につき従来疑義が少なくなかったのであります。それで、本条においては、これを処分の効力、処分の執行または手続の続行の全部または一部の停止ということにその概念を明確にいたしますとともに、裁判所の行なう執行停止決定においては、処分の効力の停止は、その効果が広く、かつ、強いものでありますので、本条第二項ただし書きにおいて処分の執行または手続の続行によって目的を達することができない場合においてのみ許されることといたしました。
次に現行法は執行停止の要件として「償うべからざる損害を避けるため」と規定しておりまするが、これを「回復の困難な損害を避けるため」と改めることといたしましたが、これはこの制度の本来の趣旨からいたしまして、金銭をもって償うことができないというのよりは広く、回復の困難な損害を避けるためという趣旨であると考えられますし、判例でもそのように解釈されてきましたので、本制度の趣旨に沿って、その字句を修正いたすことにしたのであります。さらに第三項において執行停止の要件として公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、執行停止ができないことといたしておりますのは現行法どおりでありますが、従来の判例学説が認めているところにのっとり、本案訴訟について理由がないと見えるときにも同様に執行停止ができないことにいたしております。なお、現行法においては職権による停止決定を認めておりますが、従来その実例もなく、事の性質上不必要なものでありますので、この際、この点は削除いたすことといたしました。
次に、執行停止の手続におきまして、要件事実が疎明に基づいてなされることにつきまして現行法はその規定を欠いておりましたので、第四項においてこのことを明記することといたしました。
最後に、執行停止の申し立てを却下する決定に対しては、判例上、不服申し立てをすることが許されると解釈されております。しかるに、執行停止をする決定に対しましては、現行の特例法第十条第五項において不服を申し立てることができないとされておるのでありますが、これは両者の均衡を失するのみならず、執行停止をする決定に対し不服を申し立てることができないとするのは妥当を欠くものと考えられますので、本条第六項におきましては、右のいずれの決定に対しましても即時抗告をすることができる道を開きました。ただし、執行を停止する決定に対する即時抗告に対し、民事訴訟法の一般原則により原決定の執行を停止することは執行停止の実効性を奪うことともなりますので、この即時抗告につきましては、本条第七項により原決定の執行を停止する効力を有しないものとしたのであります。
次に第二十六条は、現行法では裁判所はいつでも職権で執行停止の決定を取り消すことができることになっておりますが、先ほど申し上げましたように、この法律では執行停止の決定に対して不服の道を開くことにいたしましたので、職権取り消しの規定はこれをやめて、民事訴訟の仮処分制度の事情変更における取り消しの申し立てと同じ建前を採用いたすことにしたのであります。そして、この申し立てに対する決定及びこれに対する不服について、本条第二項において所要の規定を設けております。
次に第二十七条におきまして、内閣総理大臣の執行停止に対する異議を存置し、その異議は執行停止の前後を問わずこれを述べることができるとするとともに、この異議が不当に行使されないよう配慮した規定を設けることといたしました。
この執行停止の裁判は、本案の訴訟における終局判決と異なり、判決前の暫定措置としてなされる行政処分的性質のものでありますから、これに対して制約を加えても差しつかえのないことは、純然たる司法作用に対する場合におけるそれとは異なるのであります。他面、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすにおいては、行政府として無関心たり得ないのでありますから、その首長たる内閣総理大臣においてその政治的、行政的責任にかんがみ、裁判所に対し異議を述べる道を開く必要があるのであります。しかも、この異議は執行停止の裁判の前後を問わずその道を開く必要があるわけでありまして、このことは、執行停止決定後になって公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかになることがあり得ることに徴しても当然のことと思われるのであります。
現行法におきましては、内閣総理大臣が異議を述べた場合の裁判所の処置について規定を欠いておりますが、これは従来一般に解釈されておりましたとおり、本条第四項において、決定前に異議があれば、裁判所は執行停止をすることができず、また、停止決定後に異議があれば、裁判所はその決定を取り消さなければならないことといたしました。なお、停止決定後の異議を述べるべき裁判所については、本条第五項により、これを明らかにすることといたしております。
しかし、もとよりこの異議の制度が国民の権利救済を不当に阻害するようなことが万一にもあってはなりませんので、まず第一に、異議を述べるについては理由を付さねばならぬこととし、しかもその異議の理由においては、処分の執行をしなければ公共の福祉に重大な影響が及ぶおそれのある事情を具体的に示すものといたしております。そして前者の異議の理由が付されていないときにはその異議の効力はないわけであります。後者の事情の明示をかりに欠くことがあっても異議の効力には影響ないものとする趣旨において規定いたしております。さらに本条第六項におきまして、内閣総理大臣は、やむを得ない場合でなければこの異議を述べてはならないこと、及び異議を述べたときには次の常会において国会にこれを報告しなければならないことといたしました。かような処置により内閣総理大臣の異議がいやしくも乱用にわたることのないことを期し、かつ、異議を述べることについての政治的責任を明らかにすることといたした次第であります。
次に第二十八条は、現行法上執行停止またはその決定の取り消しを申し立てる裁判所がどこであるか明らかでありませんので、これを明らかにいたしたものであります。
次に第二十九条は、裁決の取り消しの訴えの提起があった場合の執行停止に関し、前四条を準用することにいたしたものであります。この規定は、裁判の内容によってはその裁決の執行停止を必要とする場合もありますし、また、特別法でいわゆる裁決主義をとっているものにつきましては、裁決の取り消しの訴えの提起があった場合において、原処分の執行を停止し得る道を開いておく必要がありますので、これらの必要に応じて設けることにいたしたものであります。
次に第三十条は、いわゆる裁量処分につきましては、行政事件訴訟の裁判の特質にかんがみ、行政庁にその裁量権の範囲を越えまたは乱用があった場合に限り、裁判所は、これを取り消すことができるとしたものでありまして、このことは、学説、判例を通じ、
一般にすでに認められているところであります。
次に、第三十一条のいわゆる事情判決を定めた規定について申し上げます。現行の特例法第十一条は、本来、たとえば河川の使用許可に基づき大規模なダムが建設せられた後に、その許可が違法であるとして取り消された結果、公の利益に著しい障害を生ずる場合等特別の場合に対処する処置として規定されたものでありますが、その要件の表現が必ずしも適切ではないため、従来の裁判例のうちには、この制度の趣旨に沿わないと思われるものも見出されるのであります。それで、まず第一項において、その要件の趣旨をできるだけ明らかにし、誤解を生じないように改めることといたしました。次に本条第一項に基づいて、違法であるが請求を棄却する場合、現行の特例法第十一条第二項では処分が違法であることを判決で示さなければならないことを規定するにとどまりますが、判決の効力を明確にするために、主文において違法であることを宣言しなければならないこととしました。
次に第二項は、現行法の認めない新しい制度を導入いたしております。すなわち、裁判所は、事案の性質上、相当と認めるときは、終局判決前に、判決をもって、処分が違法であることを宣言することができることとしたのであります。かような裁判を認めました趣旨は、終局判決前に裁判所が違法の判断を示して、行政庁側において損害の除去、補てんがなされることを期待し、これを勘案して、終局判決をいたすことによって事案について妥当な解決をはかろうといたしたものであります。この違法宣言の判決は、訴訟法上は、民事訴訟法の中間判決とは異なる特殊な中間的裁判でありまして、これに対しましては、独立して上訴はできないものと解しております。なお、第三項の規定は、判決書の記載において無用な手数を省くためのものであります。
次に第三十二条は、取り消し判決の効力は、当事者以外の第三者にも及ぶことを明記いたしたものであります。これはいわゆる判決の形成的効力に関するものでありまして、判決の既判力に関するものではないのでありす。ところで現行の特例法は、これについて特に規定を設けないで、解釈理論にゆだねていたわけでございまして、取り消し判決の効力も通常の民事訴訟と同様に当事者間にのみ及ぶにすぎないものと解すべきであるとする説もございますが、取り消し判決の効果、すなわち処分が取り消された場合の効果が訴訟の事事者と第三者との間で区々になることは、法律秩序の維持の見地から適当とは思われませんので、学説、判例に従って、終局取り消し判決の効力は、訴訟の当事者以外の第三者にも及ぶことにしたわけでありす。そしてこれに関連して第二十四条の第三者の訴訟参加の規定を整備いたしましたことは、すでは御説明申し上げましたとおりであります。なお、本条第二項で、この規定を執行停止の決定またはこれを取り消す決定に準用することにいたしておりますが、これも右同様の趣旨であります。
次に第三十三条は、取り消し判決の拘束力を定めたものでありまして、第一項は、現行の特例法第十二条と同趣旨であります。まず、第二項は、たとえば申請を却下した処分が違法であるとして判決によって取り消され、その判決が確定した場合、その申請に対する行政庁の取り扱いは、従来必ずしも一定しておりませんでしたので、第一項の拘束力を具体的に明らかにする意味で、処分行政庁は、判決の趣旨に従って、あらためて申請に対する処分をしなければならないことを特に明記することにいたしたものであります。また、第三項は、たとえば審査請求を認容した裁決をその内容の違法を理由として取り消す判決が確定いたしますれば、そにによって不服申し立ては、その目的が達成されるわけでありますので、一般的にはここで取り上げる必要はありませんが、しかし認容裁決を手続上の違法を理由として取り消す判決が確定した場合については、行政庁がいかなる拘束を受けるかを明らかしておきませんと不服申立権の保護に欠けるおそれがありますので、前項の規定を準用して、これを明らかにすることにいたしました。なお、第四項は、執行停止の決定についても関係行政庁を拘束する必要がある場合が考えられますので、第一項を準用することにしたものであります。
次に第三十四条は、先ほど申し上げましたように取り消し判決の効力は、第三者にも及ぶといたしましたので、もしその第三者が自己の責めに帰すべからざる事由によって訴訟に参加ができず、したがって重要な攻撃防御を尽くすことができなかったような場合には、この第三者の利益を保護する道を講ずる必要がありますし、また、その道は決して閉ざされてはならないものであります。そこでかような第三者には特に、かつ、例外的に、再審の訴えを提起することができる道を開いたものであります。なお、第二項で確定判決を知った日から三十日以内というのは、判決が確定したことを知った日から三十日以内の趣旨であります。
次に第三十五条は、一般に取り消し訴訟において訴訟費用の裁判が確定すれば、その裁判の効力は、本来、国または公共団体に帰属すべきものと考えられるものでありますが、この種の訴訟においては、形式上は行政庁が当事者または参加人となっておりますので、訴訟費用額の確定申請をだれが、また、だれにするか、また強制執行法上の当事者はいずれであるか等について、従来、取り扱い上疑義、不便がございましたので、特にこの点につき明文を設けることとしたものであります。
次に第三十六条は、無効等確認の訴えの原告適格の特例を定めたものであります。従来、行政処分の無効確認訴訟の性質につきましては、種々の疑義があることば、さきにも触れましたところでございますが、行政事件訴訟を類型化してその適用法規を明らかにするためには、どうしても訴訟の性格をまずもってすっきりとしたものにする必要があるわけでありまして、この訴えのごときは、その代表的なものであります。ところで、現在、行政処分の無効確認訴訟の形態に属するものとして考えられておりますものの多くのもの、たとえば農地買収処分の無効確認訴訟は、その実質において、買収処分の無効であることを前提とする所有権確認訴訟にほかならないので、過去の法律関係の確認という訴訟法の理論にも反することともなるこのような行政処分の無効確認訴訟というような形態のものを維持しなければならない必要性も理論的な根拠はどこにも見出せないのであります。そこで本条は、無効等確認を求める訴えは、当該処分もしくは、裁決の存否または効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによっては目的を達することができないような場合において、これを提起するにつき法律上の利益を有する者のみがこの訴えを提起することができるわけでありまして、たとえば、買収計画の無効確認等一連の手続中の先行処分の無効確認の訴えとか、許可申請に対する却下処分の無効確認の訴え等がこれであります。
次に第三十七条は、不作為の違法確認の訴えの、原告適格を定めたものであります。この種の訴えは、だれにでも提起できるといたしますのは、不相当でありますので、申請をした者に限って、提起することができるとしたのであります。
次に第三十八条は、無効等確認の訴え、不作為の違法確認等取り消し訴訟以外の抗告訴訟に取り消し訴訟に関する規定の準用する範囲を明らかにいたしたものでありまして、これらは、学説、判例の趣旨に沿ったものであります。
次に第三十九条は、第四条前段の当事者訴訟が提起されたときは、裁判所は、当該処分または裁決をした行政庁に出訴の通知をするものとすることを定めたものであります。この趣旨は、裁判所が当該当事者訴訟の対象となっている法律関係に関係の深い行政庁に出訴を通知して訴訟参加の機会を与えようとするにあります。なお、本条は訓示的なものでありますから、この通知をしなかったとしても訴訟手続に違法を来たさないと解します。
次に第四十条第一項は、各種法令に出訴期間の定めがある当事者訴訟について、不変期間とすることを定めたものであり、第二項は、このような当事者訴訟に第十五条(被告を誤った訴えの変更)の規定を準用することにしたものであります。
次に第四十一条は、当事者訴訟に抗告訴訟に関する規定を準用する範囲を明らかにしたものであります。
次に第四十二条は、民衆訴訟及び機関訴訟については、その特殊性にかんがみ、法律にこれを許す旨の定めがある場合において、法律に定める者のみが提起することができるとしたものであります。
次に第四十三条は、民衆訴訟または機関訴訟の特殊性にかんがみ、単に訴訟の対象の類型に従って、たとえば選挙訴訟のように処分の取り消しを求める性質のものについては、取り消し訴訟に関する規定を、地方自治法第二百四十三条の二に規定する納税者訴訟のうち行政処分の無効確認を求めるものについては、無効等確認の訴えに関する規定を、また損失補てんを求める納税者訴訟については、当事者訴訟に関する規定準用するというように、抗告訴訟または当事者訴訟に関する規定を概括的に準用することにいたしましたものでありまして、これらの訴訟については、他の法令においてそれぞれ必要に応じて性別の規定があることを前提とするものであります。
次に第四十四条は、現行の特例法第十条第七項と同じ趣旨でありますが、この規定の趣旨としますところは、公権力の行使を阻害するような仮処分をすることはできないというのでありますから、規定の位置を移し、補則のところに、これを規定いたすことにしたものであります。
次に第四十五条は、私法上の法律関係に関する訴訟において、行政処分の存否または効力の有無が争われている場合には、その訴訟は、性質において本法にいう行政事件訴訟ではなく、民事訴訟と解されておりますが、その争点が行政処分に関するものであることにかんがみ、かつ、無効等確認の訴えとの均衡を考慮して、行政事件訴訟に関する規定のうち、若干の条項、たとえば行政庁の訴訟参加の規定(第二十三条)、出訴の通知の規定(第三十九条)、職権証拠調べの規定(第二十四条)及び訴訟費用の裁判の効力の規定(第三十五条)を準用することにいたしたものでございます。
最後に、附則について申し上げます。
附則第一条は、この法律の施行期日を昭和三十七年十月一日といたしております。
附則第二条は、現行の行政事件訴訟特例法を全面改正して本法案を提出いたすこととなりましたので、これを廃止することにいたしたものであります。
附則第三条は、この法律の施行についての経過措置に関する一般原則を掲げたものでありまして、通常の例にならったものであります。
以下、事項ごとに特別の経過措置を定めております。すなわち、
附則第四条は、第八条(処分取り消しの訴えと審査請求との関係)との関係上、この法律の施行前に訴願期間を経過したものにつきましては、この法律施行後も、なお、旧法第二条の例によることといたしております。
附則第五条は、この法律の施行の際現に係属している裁決の取り消しの訴えについては、第十条第二項の取り消しの理由の制限の規定を適用しないことにしたものであります。
附則第六条は、第十一条(被告適格)の規定との関係上、この法律の施行の際現に係属している取消訴訟の被告適格については、なお、従前の例によることにいたしました。
附則第七条は、第十四条(出訴期間)第一項、第三項、第四項に関する出訴期間の経過措置であります。
附則第八条は、取消訴訟以外の抗告訴訟に関する経過措置でありまして、第一項は、第九条(原告適格)及び被告適格(第十一条)に関するものであり、第二項は、第十条第二項(取り消しの理由の制限)に関するものであります。
附則第九条は、第三十九条(出訴の通知)の規定は、この法律施行後に提起された当事者訴訟についてのみ適用することにしたもので裁判所の負担を考慮したものであります。
附則第十条は、民衆訴訟及び機関訴訟に関する経過措置でありまして、この訴訟で処分または裁決の取り消しを求めるものについては、今申し上げました取消訴訟に関する経過措置に関する規定、すなわち、附則第四条(訴願前置に関する経過措置)、附則第五条(取り消しの理由の制限に関する経過措置)、附則第六条(被告適格に関する経過措置)及び附則第七条(出訴期間に関する経過措置)を準用し、また、この訴訟で処分または裁決の無効の確認を求めるものについては、無効等確認の訴えに関する経過措置、すなわち、附則第八条(取り消し訴訟以外の抗告訴訟に関する経過措置)を準用することにしています。
附則第十一条は、この法律施行の際現に係属している処分の効力等を争点とする訴訟については、第三十九条(出訴の通知)の規定は、この法律の施行後に新たに処分の存否または効力の有無が争われるに至った場合にのみ準用することにいたしておりますが、これは附則第九条で申しましたのと同じ趣旨であります。
以上をもちまして本法案の逐条説明を終わります。
なお、説明の不十分な点につきましては、御指摘により補足して御説明申し上げることにいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X00619620213/3
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004・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 以上で説明は終了いたしました。
本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本案については、本日はこの程度にとどめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X00619620213/4
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005・松野孝一
○委員長(松野孝一君) ただいま委員の異動がございました。二月十三日付、林田正治君辞任、鍋島直紹君選任、以上であります。
次回は二月十五日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時二十一分散会
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X00619620213/5
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