1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年四月二十四日(火曜日)
午前十一時三十六分開会
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委員の異動
四月十九日委員大川光三君辞任につ
き、その補欠として野田俊作君を議長
において指名した。
四月二十日委員古池信三君及び井川伊
平君辞任につき、その補欠として西田
隆男君及び小柳牧衞君を議長において
指名した。
四月二十一日委員鹿島俊雄君及び小柳
牧衞君辞任につき、その補欠として西
田信一君及び井川伊平君を議長におい
て指名した。
四月二十三日委員亀田得治君、山口重
彦君及び赤松常子君辞任につき、その
補欠として野溝勝君、千葉信君及び中
村正雄君を議長において指名した。
本日委員野田俊作君、西田隆男君、加
藤武徳君、林田正治君及び井野碩哉君
辞任につき、その補欠として鈴木恭一
君、谷村貞治君、最上英子君、白井勇
君及び小山邦太郎君を議長において指
名した。
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出席者は左の通り。
委員長 松野 孝一君
理事
青田源太郎君
井川 伊平君
委員
小山邦太郎君
白井 勇君
野上 進君
最上 英子君
谷村 貞治君
千葉 信君
政府委員
法務省訟務局長 浜本 一夫君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総局行政局長 仁分百合人君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
説明員
法務省訟務局参
事官 杉本 良吉君
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本日の会議に付した案件
○理事の補欠互選の件
○行政事件訴訟法案(内閣送付、予備
審査)
○行政事件訴訟法の施行に伴う関係法
律の整理等に関する法律案(内閣送
付、予備審査)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/0
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001・松野孝一
○委員長(松野孝一君) ただいまより法務委員会を開会いたします。
この際、委員の異動について御報告いたします。
四月十九日付をもって大川光三君が辞任され、その補欠として野田俊作君が選任されました。
四月二十日付をもって古池信三君が辞任され、その補欠として西田隆男君が選任されました。
四月二十一日付をもって鹿島俊雄君が辞任れ、その補欠として西田信一君が選任されました。
四月二十三日付をもって亀田得治君、山口重彦君、赤松常子君が辞任され、その補欠として野溝勝君、千葉信君、中村正雄君が選任されました。
本日付をもって野田俊作君が辞任され、その補欠として鈴木恭一君が選任されました。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/1
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002・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 理事の補欠互選を行ないます。
去る四月二十三日井川伊平君が一時委員を辞任されましたため、理事に欠員を生じておりますので、この際、その補欠を互選したいと存じます。互選の方法は、慣例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/2
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003・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 御異議ないと認めます。
それでは、私より井川伊平君を理事に指名いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/3
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004・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 行政事件訴訟法案及び行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案、両案を一括して議題にいたします。
これより質疑に入ります。ただいま杉本参事官が出席されております。御質疑のある方は、順次御発言下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/4
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005・井川伊平
○井川伊平君 先に行政事件訴訟法案につきましてお伺いを申し上げます。
本法案は、行政事件訴訟を従来の民事訴訟法の特例から離脱して、独立の行政事件訴訟の一般法、統一法としての形で提案されていますが、本法案のごとく、行政事件と民事事件とを訴訟法上明瞭に区別しなければならない必要はどこにあるのか。この点につきまして簡潔にお答えを願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/5
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006・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) まず、現行法でございますが、現行法は、御承知のように、行政事件訴訟特例法という命題がありまするように、民事訴訟の特例を規定いたしておりますが、それはわずか十二条でございまして、これだけのわずかな条文では、とても行政事件の処理上、解釈上いろいろな疑義を生じまして、従来運用の面におきましてもいろいろ困難な問題が生じておりましたことは、処分理由書の中で御説明申し上げておりますとおりでございます。なぜそれでは、今度の法案のように、題名からして行政事件訴訟法案としたのかということでございますが、この点につきましては、先ほど申し上げましたことと関連するわけでございますが、どうしても、民事事件になりますと、私人と私人との間の法律上の紛争を解決する手続、こういう考え方が根本にあるわけでございますが、行政事件は、御承知のように、公権力の主体としての行政庁と、それからその処分を受ける国民との間の法律上の紛争を解決する、こういう雑色がございますので、従来のような民事訴訟法的な考え方では、どうもうまく手続上乗ってこないような諸問題があるわけでございます。そういった点と、それからもう一つは、現行法のように、行政事件訴訟特例法といったような、特例法という形式にして参りますると、これは、各行政法規にいろいろな行政事件に関する特殊な規定がございますが、それが何ら統一法に基づいて整理されないままに、てんでんばらばらに規定される、こういうことになってくるわけでありまして、この点からも、最初に申し上げましたように、解釈上いろいろな疑義が生じてくる。ひいては運用の面にもいろいろな支障を生じてくる、こういうことでございます。したがって、この法案では、ひとつ基本法と申しますか、統一法と申しますか、そういう基本的な訴訟法規というものを根本的に考え直して、そして先ほど申し上げました二点について、各法における訴訟法規を整備する、あるいはこの訴訟法それ自身における不備な点を解決していく、こういうことを考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/6
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007・井川伊平
○井川伊平君 国権の三権分立の考えからいたしまして、司法と行政とに各別の人が各別に当たるという根本的な観念に立って、司法裁判所と行政裁判所とを設けるというような観点に立って考えますれば、民間私人を当事者同士とする場合と、国家の公権に基づくいろいろの争いごとを審判するのとにつきましては、そこに訴訟法の行政訴訟法と民事訴訟法とをはっきり区別する必要があるということはよくのみ込めますが、現在の憲法のもとで、同じ司法裁判所が両方を行なうんだということにきまっておりまする上に立って、訴訟手続だけを別に区別するということは非常に理由が少ないのではないかと私は考える。なお、特例法によりまして、今日まで相当長い間事件を審理してきておる。お説のように、いろいろの困難な問題にも遭遇したであろうが、しかし、その困難な問題はそのつど解決をしてきておる。また、学説等によりましていろいろの論点はございましょうが、そういうものも引っくるめて、特例法の改正をすることによってそれらの目的は達し得る、今日までも相当長きにわたってとにかくやってきたことであり、欠点の点もあいまいな点も明白になっておるとすれば、それらは、特例法を改正することで目的を達するのではないか、同じ司法裁判所が行なうのに、同じ訴訟法を二つ全然区別するということは、そこに何らか割り切れないものを感ずるのではないか。同じ裁判所が行なうなら、同じ訴訟法でもいいじゃないか、やむを得ぬところだけ特例を設ければいいじゃないかという観念もありますが、そういう点につきまして、詳しくひとつ御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/7
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008・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) ただいまの点でございまするが、これは、おっしゃるような御趣旨はよくわかることでございますが、何分行政事件訴訟ということになりますと、同じ裁判所が事件を扱うということでありましても、その対象となっている実体法の分野におきまして、先ほど申し上げましたように、私法上の関係とそれから公法的な関係と、そこに差異があるわけでございまして、その実体法上の差異というものが手続上の差異となってまた現われてくる、これは当然のことではないかと思うわけでございます。どういう点に実体法上の差異が手続上の差異として現われてくるかと申しますと、これは、現行法でも十二カ条でその特色を規定しているわけでございます。ただ、それだけではまだ十分でない、こういう面があるわけでございまして、たとえて申しますと、抗告訴訟という第三条の規定でございますが、こういったものにつきましても、現行法のような規定の仕方では、まだ国民の権利救済としては十分でないと思われるわけでございます。それから、訴願前置につきましても、これは、別途に行政不服審査法案が提案されておりまして、今国会において審議されておりますが、その制度とも関係があるわけでございまして、こういったものは、行政事件訴訟法というものを根本的に直すにあたって十分考慮しなければならない点でもございます。それから、技術的な改定がそのほかにもいろいろございますが、とにかくこの案の趣旨としますところは、現行の行政事件訴訟特例法十二条だけでは、まだ民事訴訟法的な考え方でもっては十分にうまく手続を規定することはできない、なおいろいろ根本的に考えて規定を整備しなければならない、こういう考え方をしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/8
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009・井川伊平
○井川伊平君 お話の趣旨は、私ものみ込めないわけではありませんが、そういうような不便な点を特例法の改正だけではどうしてもできないのだという根拠がありますか。あるいは、そういう特例法の改正でもできないことはないけれども、本来行政訴訟とそれから民事訴訟とは性質を異にしておるんだから、独立したこういう法の体系を作るということがまあけっこうだといったような意味合いにすぎないのかをお伺いするわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/9
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010・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) 特例法の規定だけで済ますことはできないのかという御質問でございますけれども、行政事件というのは、やはり根本的に考えてみますと、先ほどから申し上げておりますように、民事事件とは本質的には違う点があるわけでございますので、現在の特例法のような、基本的な考え方として、行政事件も民事訴訟であるというような考え方では、根本的に規定を整備するということはできないわけでございまして、この案といたしましては、やはり行政事件訴訟というのは、民事訴訟とは根本的には性格を異にするということを前提にいたして、根本的に改正をはかろうとしているわけでございます。したがいまして、現在の特例法に、必要な条文をつけ加えるというような態度では済ますことができないというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/10
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011・松野孝一
○委員長(松野孝一君) ただいま浜本訟務局長が出席されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/11
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012・井川伊平
○井川伊平君 お答えは、どなたからでもよろしいのでございますが、ただいまのお話で、大体お答えの筋は了承できるわけでありますが、お答えの趣旨を通じてみますれば、司法裁判所の行なうところの民事訴訟と、同じ司法裁判所が行なっておるのであっても、行政訴訟とは本質を異にするというのでありますが、そういう観点をさらに一歩を進めてみれば、訴訟法だけを別にこさえるだけではもの足らぬので、実は、現在の憲法上の問題は別として考えるときに、裁判所も別にする必要があるのではないかという、ここまではお考えになりませんか。いかがですか。それは、憲法上できるできないの問題でなしに承っておきたい。本質的な問題として承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/12
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013・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 憲法理論的に申し上げますれば、終審としてでない限りは、特別裁判所を設立して、これに専門的に扱わせるということは、法理論上もちろん可能なんであります。旧憲法時代の行政裁判所のように、つまり司法裁判所でないような裁判所を作るというわけには参りませんけれども、終審でない限りは、さようなことは理論上少しも憲法違反のおそれはありませんからできると思います。でありますから、そういった方法によるか、あるいは通常の裁判所に、いわゆる本法案がとっておりますような建前で、通常の裁判所にあわせて取り扱わすほうがいいかということは、全く私は政策的な点に帰すると考えております。ただ、何分にも、現在までの十数年の経験からいたしますると、それほど膨大な数に事件そのものが上っておりません。上っておりませんし、またいろいろな観点から考えてみますと、そういった司法要員を二軍の組織に拡充するほど獲得することが現実の日本の今の情勢でできないということを考慮に入れざるを得ません。御承知のように、現在の機構のもとにおきましても、現在の定員を満たすだけのローヤーを毎年獲得することが事実上困難な状態にあるぐらいでありまして、かりに政策的に特別の裁判所を作ったほうがいいといたしましても、おそらくは竜頭蛇尾に終わってしまって、それだけの司法要員を獲得することができないということになることは、むしろ現在の司法行政あるいはその他の情勢から、火を見るより明らかのような状態になっておるわけでございます。でありますから、一方本国会に御審議願っております臨時司法制度調査会などで、そういった点を慎重に御審議願うような一つの制度を作っていただこうということに相なっておるような状態であります。
あるいはまた、観点を異にいたしますると、そういった行政庁関係の事件だけを特に扱う裁判所を設けるということが、国民の心理状態にどういう反映をするであろうかということを私は考えてみなければならないと思うのであります。統計によりますと、きわめて不備な現在の訴願法のもとにおきましても、訴願によって行政の不服が解決される数は必ずしも少なくはありません。その点では、非常に現在の状態におきましても、訴願というものが権利救済の実をあげているということが言えると思うのでありますけれども、それにもかかわらず、訴願前置はいけないという根本の国民の考え方は、やはり行政とつながっておるものによって行政に対する不服を解決することは、われわれとしては好ましくないという気持が国民にあるものと考えざるを得ない。でありますから、今言ったような、理論上可能であり、あるいはまた、政策的にも考えられるといたしましても、そういった特別裁判所を作るということが、また国民のそういった感情にもつながる一面があるように私は考えるのでありまして、やはり私個人から申しますれば、政策的な見地に立ちましても、現在の段階では、そういった特別な裁判所を作らぬほうがよろしいのではないかというふうに考えられるのでありまして、そういった諸般の考慮から、本法案におきましては、そういったことを前提といたしてはおりません。もちろん、本法に関する問題ではございませんから、私どもがかれこれ答弁する限りではございませんけれども、本法はそういったことを前提としては作られておらぬということを申し上げていいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/13
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014・井川伊平
○井川伊平君 御承知のように、今、衆議院等におきましても、内閣総理大臣の異議の申し立てが非常に大きな問題になっている。これが問題になるということは、法案を作る当時すでに十分の御理解があったことであろうと思いますが、終局判決前に、司法裁判所が行政訴訟を取り扱って執行の停止を行なう、この点であとで質問をしようと思っておりますが、とにかく終局判決以前である。終局判決をする裁判所は、今司法裁判所ではなくてはならぬが、その前の段階における訴訟については、司法裁判所でない裁判所を作ってもいいのだということだといたしますると、非常に非難の多い内閣総理大臣の異議の申し立てなどは、終局判決前の段階において、裁判をする場合に、それが必要であるかどうかというような点を問題にすることにすれば、内閣総理大臣の異議なども、今回のような大きな問題にならんで済んだであろうと思うが、こういう点につきましても御研究になっておると存じますが、そういう点については御研究になったかならないかだけお伺いいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/14
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015・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 本法案を現在の形でまとめるまでの期間に、実は、御承知のように、七年に近い日子を法制審議会の段階においてかけたので、その段階におきまして、御質問のように、内閣総理大臣の異議という事項も非常に重要な論議の対象となった一嘉項でありますので、今御指摘のような点についても、私ども十分考慮はいたしました。考慮はいたしましたが、かりにこの制度を認めるといたしますれば、今、井川委員が終局裁判とおっしゃいましたけれども、そうではありませんで、おそらく執行停止決定前ということだと思いますが、裁判所がまだ停止決定をしない前にだけ内閣総理大臣が述べることができるというようにしたほうがいいか、あるいは裁判所が一たん停止決定をした後におきましても、必要があれば内閣総理大臣が異議を述べることができるような制度にしたほうがいいのであるかということは、十分考慮をいたしたのであります。しかしながら、現在までの実情からいたしますと、裁判所が停止決定をいたしますには、きわめて短い期間、そうしてきわめて忙しいような関係で、行政庁に意見を求めてこられるのであります。具体的に言いますれば、三日以内に意見を述べろ、あるいは一週間以内に意見を述べろ、電話でもよろしいというような形での意見を求められるのでありまして、実は、その間に、この事件は内閣総理大臣に異議を述べてもらう必要があるのだというような考慮をかりに行政庁がめぐらすといたしましても、そういった期間では、手続上間に合わないのであります。もちろんそれが、行政庁と協議いたしました結果、内閣総理大臣が異議を述べるに及ばぬということになりますればそれでいいわけでありますが、間に合わない期間になってから、これは内閣総理大臣が異議を述べる事件であるということになりましたのでは、決定前でなければいけないというのでは、事実手続上間に合わないのでございます。さような観点から、事実上も必要がございまするし、また、それが憲法違反の非難を受けることなく許される制度といたしますれば、法規上決定の前後を理論的には問う必要がないという考慮から、二つの観点から、実は私どもは、現行特例法のもとにおきましても、決定後においても述べられるという意見をとっておったのでありますけれども、御承知のように、その点は、現行法の法文の字句からすれば、決定後にはできないのであるという趣旨で、現行法のもとにおいては、決定後はできないということに最高裁判所の裁判判例が確定したわけであります。でありますから、今度改正する段階では、むしろ今言ったような考慮のもとに、むしろ決定後にもできるということを明文で示す必要があるということで、明文で示すようにいたしたような事情であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/15
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016・井川伊平
○井川伊平君 私が終局判決前といいました、そう終局判決は、本案の終局判決ですから、私のほうは誤解はないつもりです。それから執行の停止は、停止決定の前後の関係につきまして私も了承しているから、その点についてはお伺いしようとは思わなかった。私の先ほどの言葉はそういう趣旨でございますが、それに基づいて、ただいまの御答弁が訂正する個所があれば御訂正願うし、訂正する個所がなければそれでよろしい。どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/16
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017・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) これは、そういう御趣旨でございましたならば、私の答弁をもう少し補充しなきゃならぬと思うのでありますが、もちろん、一審裁判所で事柄が起きます限りにおいては、いずれも終局裁判前であります。ただ、二審に至りまして異議を述べる必要ができます、これも考えられますから、第二審級においてそういった必要が起きます場合には、一応裁判所の終局裁判があった後にも異議を述べることが原則として起こり得ますし、また、異議を述べる必要のある事件も考えられます。でありますから、まあそういった特殊な場合——と申していいかどうかわかりませんが、そういった特殊の場合には、一応終局裁判が一応出た後でも異議を述べなければならぬし、また述べることがあるだろうと私思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/17
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018・井川伊平
○井川伊平君 この点で別に深く論ずる必要を私は少しも感じませんが、私は、本案の事件の終局の判決は、司法裁判所でなければ現在の憲法上できないのだ、それ以前の審級における本案の訴訟は、特別の裁判所、行政裁判所のようなものを設けることができるのだ、こういうような前提に立ちまして、総理大臣の執行の異議などは、普通の場合において一審、二審、こういうところで申し出があるのが普通ではないか、言いかえれば、執行の停止などは急ぐことであるから、終局判決の接近した際ではなしに、一審の本案あるいは二審の本案の時代において執行の停止などが行なわれることが多くないかと思われる。そう考えて見れば、総理大臣の異議を司法裁判所の行なう終局の審理においての異議を言わないで、行政裁判所、かりに名前をつけるとすれば、そうした司法裁判所外の裁判所と言ったほうが正確かも知れぬが、そういう段階においての一審、二審の本案の審理中に執行の停止等を行なうような場合に、それに総理大臣が異議を言うということは、別に各党派の人でも異存はなかろうと思うのだが、そういう点について深く考えなかったか、こう質問をしているのですから、どうぞ誤解のないようにお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/18
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019・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 質問の御趣旨がだんだんと明確になってきましたので、もう少し補充したいと思うのでありますが、おっしゃるとおり、一審、二審は司法裁判所でない裁判所で扱わせる、そうしてその特別裁判所にだけ内閣総理大臣の異議を認めるということにしますれば、あるいは理論的にもそういった反対が、おっしゃるとおり、あるいは絶無とは言えぬかもわかりませんが、きわめて少なくなり、また、私どもの答弁に苦しむ必要はそれほど大きくなかったのじゃないかということは考慮いたしますが、何分私どもは、特別裁判所に扱わせる前提に立っておらぬものですから、内閣総理大臣の異議と関連さしてその点は考慮したことは実はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/19
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020・井川伊平
○井川伊平君 お答えは、それでけっこうです。
次に、別のことをお伺いいたしますが、法案の三案の五項、「不作為の違法確認の訴え」、これにつきまして一、二お伺いをいたしたいと思います。不作為の違法確認の訴えは、行政庁が申請を受理しながら、じんぜん日をむなしゅうして、何らの処分または裁決をしないで、申請人に迷惑をかける場合の行政庁の違法の確認訴訟を新たに認めたものである、このように解釈をする次第でありますが、この種の訴訟を考えますると、少なくとも行政庁に必要な程度の作為を命ずると同様な結果を生ずる効果を持たさなければ実益がないと思われます。単に違法確認の程度では、実益、実効を期し得ないのではないかと思うのであります。それであればこそ、本法案におきましても、三十八条で取消訴訟の三十三条が準用されているのであろうと思われます。この三十三条を三十八条で準用する結果は、これは作為を命ずることになっておるのではないか。作為を命ずることになっておるのだという解釈をとるとすれば、確認の訴えでなくて、むしろ給付の訴えではないか、こういうような考えがいたしますが、この点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/20
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021・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 司法裁判所が行政庁に対して給付を命ずるような判決ができるか、あるいは給付義務の確認を求めるような判決ができるかということについては、今なお定説を持ちません。でありますから、私どもといたしましては、ここに、本法の改正におきまして、さような行政庁に対して給付を求めるような判決ができる、あるいはまた、給付義務の確認をすることができるような明文を置くという考え方は実はとっておりません。実は、どちらかといいますと、現在の段階におきましては、そういったものはできないという説のほうがむしろ多いのでありまして、そういった現在までの判例並びに学説の趨勢に一歩進めて、あるいは趨勢を無視して、本法で積極的に進んで、今言ったような裁判ができることを明文で示そうということは妥当を欠くものと考えまして、そういったものはここには類型としてはあげておりません。ただし、第三条が全体としてとっております構造は、決して抗告訴訟の二項から五項まで例示しておりますものに限る趣旨ではございません。これはあくまで例示にすぎないのでありまして、進んでそういった給付を求める訴訟あるいは作為違法確認を求めるような訴訟が将来許されるようになるかどうかということにつきましては、今後の学説並びに判例の健全な発達に待とうという態度をとっておるのでありまして、あるいは三条の文字は必ずしも明瞭でないという非難を受けることになるかもしれませんが、しさいにこれを御解釈願いますれば、現在のこの法案三条の文字からいたしましても、そういったものを禁圧する趣旨ではないということがお読み取り願えると思うのであります。したがいまして、五項にいいます不作為の違法確認の訴えというのは、今、井川委員がおっしゃいましたように、本質は給付義務を命じたものだというように私どもは解しておりません。ただ真正面に、正直に、判決の主文どおりに、何もしないということが違法であるということの効果を判決の結果生ずるというにすぎないものと、私ども思うのであります。しからば、その判決がどんな事実上の効果があるかということについては、あるいはお疑いかもしれませんが、間接的には非常に効果がありますのみならず、また面接的には、そういったことによって、かりに損害賠償の訴訟を起こす場合を考えますと、あとに起こります損害賠償の請求の訴訟の場合につきましては、前に長い間かかってなおかつ処分しなかったということが違法であるということについての前の判決が効力を持っておるのでありますから、その点については立証を要しないということになるのでありまして、理論上もそういった効果、また間接には非常に行政庁に大きな効果をもたらすということで、私ども、この五項の規定を新設したことは、非常にいい制度を作ったものであると、自画自賛をしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/21
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022・井川伊平
○井川伊平君 私も、三条の五項を設けたことには賛成なんです。そしてまた、司法裁判所が行政権を圧迫するような態度に出ることはおもしろくないという見解も、私もあなたと同じ見解々持っておるのであります。しかし、三十八条をごらん願いますると、「第三十三条及び第三十五条の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟に準用する」ということになっております。この不作為違法確認の訴えは、抗告訴訟の一つであることは言うまでもない。してみますると、三十三条にはどうなっておるかというと、「処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、当事者たる行政庁その他の関係行政庁を拘束する。」ということになっております。そうすると、不作為違法確認の訴え、その訴えには、作為を判決自体には求めていないけれども、違法であるということの確認をしたにすぎないが、それが行政庁を拘束するのだということになりますと、拘束する結果は、作為を命じたことになるのではないかという、その三十三条が三十八条で不作為違法確認の訴えに準用されるとすれば、この確認の訴えは、事実上において行政庁に、違法でない処分、裁決を命じたと同じことになるのではないか。同じことにならぬというのならば別です。同じことになるのではないか。同じことになるとすれば、給付訴訟としての本質を有するに至るのではないかと、こう聞いているわけです。三十三条の関係からひとつ御説明を願いたい。拘束の内容からひとつ御説明を下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/22
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023・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) たいへん問題がデリケートでありますので、杉本参事官からお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/23
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024・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) 井川先生の御質問の趣旨は、第三条第五項のような不作為違法確認の訴えというような形態でなくて、何らかの処分をなすべしという、そういう処分が出てくるような訴え、そういった意味の給付訴訟を端的に許してもいいのじゃないかという趣旨ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/24
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025・井川伊平
○井川伊平君 違うのです。そういう趣旨ではなく、三十三条が三十八条によって不作為確認の訴えの訴訟に準用されるという結果は、不作為確認の訴えで、給付を求める判決ではないといたしましても、その確認の訴え自体が三十三条によって行政庁を拘束するのだということになれば、形式は確認の判決のようであるけれども、内容は給付ではないか、給付を命じているのではないか、適当な処分あるいは裁決を命じたと同じになるのではないか、こういう意味です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/25
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026・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) 先生のおっしゃることがわかって、お答えしようと思っていたわけであります。三十八条でもって拘束力の規定を準用いたしておりますので、実際上は、先ほど申し上げましたように、何らかの処分をなすべしという判決があった場合と同じような効果は実際上は出てくるわけでございます。ただ、その出方が若干違うわけでありまして、拘束力をもって準用しております、その拘束力というものは、判決の理由中で示されたその判断に行政庁は尊重して従わなければならないという、そういう面から、申請に対してさらに何らかの処分をしなければならない、そういうことになるわけでございます。それから、一番最初に私から申し上げました、何らかの処分をなすべしという裁判の場合は、いきなり主文でもって、何らかの処分をなすべしということが出てくるわけであります。不作為の違法確認の訴えにおきましては、究極においては、実際上あまり違いませんですけれども、判決の拘束力を通して同じ効果が現われてくるということでございますから、先生のおっしゃる実際上の効果は同じようなことになるわけでございます。ただ、この法案では、いきなり何らかの処分をなすべしということは、今までの考え方から申しますと、裁判所が行政庁に対して何か処分をしろというようなこと、こういう形態の訴訟というものは望ましくないからして、不作為の違法確認の訴えという、そういう形態にしたわけでございますので、実際上の効果は、先生のおっしゃるように、同じことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/26
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027・井川伊平
○井川伊平君 頭隠してしり隠さずというようなことを今思い出すのですが、それは、判決自体は作為を命じてない、しかるに、作為の義務を行政庁は感ずる。それを、判決の結果ではなくして、法律の規定があるからだと言うんでしょう。そうしてみれば、判決には、これこれの作為をなすべしと、そう書いてない、確認の判決であるけれども、別の法律でそれに拘束されるのだということになれば、別の拘束する法律を是認しながらなすところの確認の判決というものは、これは作為を命じているのだということは判事の頭に浮かぶでしょう。頭隠してしり隠さず、司法裁判所が行政権の介入はおもしろくないというところのおしりを隠さないようなふうに私はお聞き取れるのですが、どうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/27
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028・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) 先生のおっしゃるようなことになると思いますけれども、ただ、その給付訴訟という形でいきなり規定いたしますと、従来の判決例なりあるいは学説上いろいろ問題がございますので、実際上の効果は同じことでございましょうけれども、この不作為の違法確認の訴えと、こういう形態のほうがまあ望ましいと、こういうことでございますので、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/28
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029・井川伊平
○井川伊平君 御苦心のほどはわかりましたが、皮肉を言えば別の皮肉も言えそうな筋のようであります。
次に、やはり同じ不作為違法確認の問題につきましてお伺いいたしますが、現実にその不作為違法確認の訴訟を提起するの、提起する当時においての不作為を違法として提訴するものであろうと思いますが、判決をする場合には、いつの時点における不作為の違法を認めるものか、この点をお伺いいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/29
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030・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) 今の点は、これは相当むずかしい問題でございますが、普通の抗告訴訟、つまり処分の取り消し訴訟におきましては、裁判所が違法かどうかということを判断する基準となる時期は、その処分をしたその時でございます。しかし、不作為の違法確認の訴え、その不作為が違法であるということを裁判所が判断する時期は、私どもといたしましては、裁判をする、その裁判時を標準としてきまるのだと、こう解釈をいたしておりますので、二つの訴訟の間で判断基準の時期が違ってくるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/30
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031・井川伊平
○井川伊平君 そういたしますと、訴訟を提起したのは、提起の時点における違法を訴えたのに、裁判は、その訴えに対するところの判決ではない、その後の時点における、訴えてないことについての判決をしたということになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/31
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032・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 結局、杉本参事官が述べたことと同じことに結果的にはなるかと思うのでありますが、井川委員のような御疑問を持たれるのでありましたならば、もう少し説明のしようも実はあるのでございまして、かりに訴え提起の時点における違法でありましても、その後にまた裁決のできないような、処分のできないようなことに事態が発生する場合を考えてみますと、前の不作為の違法が、今の訴訟理論でいいますと、治癒されたという形になった、こういうふうに説明できるかと思うのであります。いずれにいたしましても、やはりこの訴訟における裁判の基準時は、事実審の口頭弁論の終結当時の状態が基準になるということで私はいいと思うのであります。もし御疑問でありましたら、さような場合に、治癒されるという理論をとってくれば、事は説明されると思うのでありますが、そうとりましても同じことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/32
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033・井川伊平
○井川伊平君 私も、あなたの解釈のように、判決時において違法であるかないかという裁判をすることが正しい、そうあってほしいということを考えるのであるけれども、理論上は、訴訟提起時における違法を訴えているのに、その時期からずっと、極端に言えば、何年も後になって、裁判をする時期の違法を認めて裁判をするとなれば、ずいぶんそこに理論上の食い違いができるから、何か条文にそのことを一ことうたって、あなたのような御解釈のようにするようにすることが正しくないかという、こんな気持で聞いておるわけなんです。根本的に、そんな判決は違法な判決だから、許すべきでないなどという気持で聞いておるのではないのです。このままでも十分だというお考えなんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/33
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034・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) かりに井川委員のおっしゃるように、きわめて精密な訴訟理論をもちましても、私が言いますように、その場合に治癒論で助かると思うのでありまして、結果は同じになると考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/34
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035・井川伊平
○井川伊平君 その結果について、私も大体御同意を申しておるわけなんですが、そういうことになりますと、この不作為違法確認の訴えというものは、多くの場合に実効を失うのではないかという不安がある。言いかえれば、訴訟進行中の、いよいよ結審になりそうだぞというときに、行政庁がちょっと何か簡単な処分や何か付された場合には、この訴訟はおじゃんになってしまう、そういうことですね。そういうような意味合いで、行政庁にそこのコツをあやつられて、せっかくの訴訟が真の目的を達し得ないといったように、長い月日がかかり、つまりがゼロになるといったようなことの御心配はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/35
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036・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 実は、この不作為違法確認という訴訟によって達せられる目的というのは、おっしゃるように、むしろ行政処分を促進させる、これはもちろん、表からここの訴訟が目的としておるものではありませんが、本旨はむしろそういうところに、実用効果はむしろそこにありますので、処分させる、そうしてその処分に新たに本質的な訴訟を起こさせるということにあるのでありまして、まあおそくとも処分させれば、一応それでもって目的を達した形になると、事実上考えざるを得ないと思うのであります。そうしてそれまでやった訴訟がむだになる。形はむだになるのでありますが、さような場合には、新たに訴訟を起こすというのではありませんで、不作為の違法確認の訴えを、今度は、その訴訟の経過中になされた処分の取り消し訴訟の訴えに変更をすれば、若干は訴訟不経済が救済されるというふうに私ども考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/36
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037・井川伊平
○井川伊平君 それに切りかえできるわけなんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/37
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038・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 訴えの変更が認められる場合に当たります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/38
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039・井川伊平
○井川伊平君 その問題はその程度にいたしまして、次に、公法上の特別権力関係における自律権等の問題につきまして伺っておきたいと存じますが、公法上の特別権力関係、たとえば公務員関係あるいは国立または公立学校の特別関係における規律作用としての懲戒、懲罰等の処分に関しまして、抗告訴訟の対象として提訴ができるかどうか、お伺いいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/39
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040・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 原則といたしまして、私ども、そういった関係の懲罰問題につきましても、抗告訴訟を起こせるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/40
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041・井川伊平
○井川伊平君 次にお伺いをいたしますが、行政庁の行為が、公権力の行使ではあるが、法行為としてではない。たとえて申しますれば、精神病患者を病院に強制的に入院せしめる行為、あるいは死刑の判決を受けました囚人が死刑執行の方法に対しまして抗告の訴訟を起こし得るかどうか、こういうような事実行為に対しまして行政訴訟は起こせるかどうか、御説明をできるだけ詳しく承っておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/41
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042・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) いわゆる公法上の事実行為につきましても、この案の第三条の二項で、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とあります。この中に含める趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/42
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043・井川伊平
○井川伊平君 次に、行政処分が単に一個の行為によってのみ成り立ちます場合と、多数の行為が手続的発展を経て完結する場合とがあることは申すまでもありませんが、全段階の各行為、その一つ一つに対しまして訴訟を提起することができるか、こういう場合どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/43
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044・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) その点につきましては、各段階の処分が国民の権利義務に影響があるようなものでありますれば、これはいわゆる行政処分として訴訟の対象になります。たとえて申しますと、農地の買収手続、これは自創法時代の例でございますが、農地の買収手続は、買収計画、公告、承認、知事の最終的な買収処分、こういうように、連携した処分によってなされるわけでございますが、買収計画がありますと、現状を変更することができないということが法律の中に書かれております。その意味で、その買収計画に乗せられたということによって、被買収者にとりましては、自分の権利に影響があるわけでございます。そういったものでありますれば、いわゆる手続行為のある段階における処分につきましても訴訟を提起することができる、こういうことになるわけであります。しかし、そういう手続上の処分のすべてが訴訟の対象になるかどうかと申しますと、これは必ずしもそうは言えません。たとえて申しますと、今の例で申しますと、県、農地委員会の承認といったような行為は、これは内部的な行為でございまして、直接国民の権利義務に影響があるような行為ではございませんので、これは訴訟の対象にならないというのが従来の判例でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/44
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045・井川伊平
○井川伊平君 そうしますと、今の場合におきまして、最後的には、農地の問題とすれば、買収すべきものではないという決定を受けるかもしれないけれども、一たんその問題を取り上げたという行為は、そのときに、結果がどうなるかということが未確定なときにおいてすでに提訴ができる、こういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/45
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046・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) そうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/46
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047・井川伊平
○井川伊平君 その点、了承いたしました。
次に、訴願前置主義廃止の問題につきまして一、二伺っておきたいと存じます。訴願前置主義を廃止した真の理由はどこにあるのか。事実は非常にたくさんの例外を設けておる。あんなにたくさんの例外を設けるくらいなら、訴願前置主義の廃止ということは有名無実ではないか、こういうように考えられますが、そしてまた、国民の訴訟を提起することと審査請求をなすことの両方の権利があるときに、どちらの行使を先にしようかということ、あるいは両方同時にしようかということは、国民の意思の自由である。意思の自由は、すなわち自己の利害にどちらが大きいか、直接関係するか、あるいは決定的に問題を解決するか、いろいろ自己の利益の点から割り出したことであろうと思う。だから、前置主義廃止ということが国民の利益のためだというのならば、例外を設けないほうがいいのではないか、こうも考えられる。例外を設ける以上は、国民の自由あるいは利益というものを一部犠牲にしても仕方ないのじゃないかという考え方です。そういうことならば、例外を非常にたくさん設けるということになってきますと、これも、前置主義廃止というきれいな名前だけをとって、本質的にはやはり前置主義を置いてあるのだ。例外の点も申しましたが、訴訟提起の場合でも、訴訟を提起されたときに常に審査請求がなされており、なして以来三カ月を経過していない場合においては、裁判所はそれまで裁決を待つこともできるとありますね。こういう点は、訴願前置主義廃止というけれども、名前だけ与えて、本質的にはそこまで考えないのだといったようなふうにも見えるが、ほんとうの腹の底が、真実国民の利益のためだとすれば、その点を一般国民に納得のいくように御説明を願いたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/47
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048・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 御指摘の訴願前置の採否の問題も、先ほど申し上げました法制審議会の段階において長い間論議せられた重要ポイントの一つであります。もちろん、訴願前置にも非常に効用があるのでありまして、実は、私個人も、当初のころは、訴願前置を依然としてとるほうがいいという前提に実は立って、審議会に委員の一人として臨んでおったのでありますけれども、何分にも、訴願前置については、実務家並びに裁判所側も非常に反対が多かったのが実情であるのであります。しかしながら、訴願前置は、そういった反対を押し切ってでも、ある種のものについては前置のほうがいいということは、私ども今でもこれは確信しておるのであります。と申しますのは、もちろん、おっしゃるように、三カ月以内に裁決をしなければ訴訟を起こせるのでありますし、また起こしましても、裁判所は、場合によっては訴願の裁決があるまで訴訟手続を中止することができるのでありますから、大して違いはないと蓄えるのでありますけれども、何分にも、行政処分というものは非常に数が多いのでありまして、数ある行政処分について直ちに訴訟を起こすことを認めて、同時に、あらゆる処分について訴願の審査と訴訟とを並行させるということは、行政に非常な混乱を生ずるおそれもございますので、どうしても、訴願前置を廃止するという建前に立つといたしましても、ある種のものについては、やはり訴願前置を認めたほうがいいということが言えるのであります。そこで、法制審議会の段階におきましても、結局において、今提案しておりますような形で認められることになったのであります。それでは、例外として多数認めているんだから、表面だけいい顔をして、裏では前みたいなことをやっているんじゃないかという御非難を受けるかもしれませんが、実は、例外として認めておりますものは、全く無秩序、無理論で認めておるのではございませんので、そこには、法制審議会の段階でも認められましたような一定の理論的な根拠のある場合、事実上の根拠、合理的の根拠のある場合にだけ例外を認めようという建前でこの法案ができておるのでありまして、まず第一番に、大量的になされる処分、それから、専門技術的な事項にわたる行政処分、それからまた、訴願の裁決が行政庁から一応独立した第三者的な構成の委員会によってなされるような場合、この三つのカテゴリーに入るものだけについて例外を認めようということになっておるのでありまして、この整理法案においても、そういった観点から、多数とはおっしゃいますけれども、そのいずれもが必ずこの三つのいずれかに当たる場合だけに限っておるつもりでございます。したがいまして、今後新しい立法で処分される場合におきましても、その新しい立法では、やはりこの三つのカテゴリーに入るものでなければ訴願前置は認めないという建前で、将来の立法をもそれで規制をするという立場に立っておりますので、かりに今は数におきましては多少多いという感じを受けるかもしれませんけれども、やはり既存の法律はもちろん、今後新しくできる立法についても、そういった合理的な根拠のあるものだけについて訴願前置を例外として認めるという建前に立っておりますので、数においてはやや多いかと思いますけれども、私どもは、これで十分であるというふうに解しておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/48
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049・井川伊平
○井川伊平君 ただいまのお話で大体わかるんですけれども、ただ一点わからない点は、前置主義を認めたほうがいいと思うというのは、どういう観点からいいと思っているのか。国民の立場に立っていいと思うのか、お役所の行政行為を行なっていく便宜からいいと言うのか、いかなる立場からしていいと認めるのか。この点がお答えから漏れておるようですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/49
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050・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) ちょっと私、よけいなことを申し上げましたので、また御質疑を言い忘れた形でありますが、まあ行政手続法という法律ができまして、行政処分そのものがきわめて秩序のあるような形でなされるというような場合を考えますといいのでありますけれども、今の段階ではそうではございません。実を申し上げますと、行政処分は、非難をする側に立てば、きわめて軽率という言葉は悪いのでありますが、少し不合理な面があるるかもしらぬような状態でなされる。しかも、それが多数にわたるのでありまして、一応訴願の段階でそういったものを行政的に整理したほうが合理的であり、かつまた、訴訟もスムーズに行なわれる。ちょうど民事訴訟で準備手続が行なわれますように、準備手続で争点を整理した上で口頭弁論に持っていくのがいいと同じように、行政処分がなされた状態のままで個々ばらばらに行政訴訟が持ち込まれるよりも、同種のものについては、一応訴願の段階で整理した上で訴訟になるほうがいい。それが裁判所で行なわれる手続といたしましても、あるいは行政庁の行なう手続といたしましても、いずれも国家の行なう訴訟手続でありますから、そういった国家行為の経済的な原則とでも申しますか、そういった面から望ましいというふうに考えるのであります。なおまた、訴願前置を原則としてとるといたしましても、ここに現行法にもありますし、また、今回のこの法案にもありますように、三カ月以内にやらなければ訴訟を起こすができるというふうにも規定が整備できるわけでありますから、実際上はそうたいして国民の側に立っても苦痛はないんじゃないかという前提に立って、私どもは、もっぱら行政の便宜という面からではなしに、すべての面を総合的に考えて、訴訟前置にも非常に魅力があるというふうに私ども当初は考えたのであります。今でも、実はそういうような考えは持っておるのでありますけれども、そこらの利害を調整したところがこの法案に盛られた第八条であるというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/50
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051・井川伊平
○井川伊平君 先ほど、専門的な事項にわたるとか、第三者的立場の人が審査請求に対する審査を行なう、あるいは「大量の」と申されましたが、この大量というのはどういう意味でございますか。大量というのは、今日まで事件数が多かったというのではなしに、事件数のうちで訴願で解決をしたものが多かったという趣旨ですか。事件の数が多かったという趣旨ですか。この点はいかがですか。「大量」という意味がよく了解できませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/51
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052・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 現在までの経験で訴訟が多かったとか、あるいは行政処分が多かったとかいうことを考えておるのじゃありませんので、行政処分が性質上大量的にわたることがすでに法律で予定されておるような行政処分という考えであります。たとえて言いますれば、税金の事件などがそれであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/52
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053・井川伊平
○井川伊平君 そのお答えだとすると、国民には忠実ではないことになりますね。行政訴訟事件が多いから、多いとめんどいから、それで先に、国民の意思に関係なく、訴願のほうで整理をしていこうというなら、国民に忠実なわけでないですね。たくさんの事件が大体訴願の段階で片づくものが相当多いという見込みがあるからという、そこの多いということであるとすると、国民に対しても非常に忠実なものだと思いますが、その点は、今あなたがおっしゃったとおりでよろしいのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/53
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054・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) 訴願前置の問題につきましては、先ほど局長から、自分の考え方としては、訴願前置のほうが今なおいいと思っているというようなお答えでございましたのですが、これは、内部の答弁が矛盾するようで、たいへん恐縮でございますけれども、私としましては、理想的にはやはり訴願前置を原則として廃止する、このほうが理想的であると思います。それはなぜかと申しますと、裁判所に出訴することができるという国民の裁判を受ける権利というのは、これは国民の基本的な権利でございまして、その権利というものは、相当な理由がなくてはこれは妨げられてはならないと、こういうふうの考え方もあり得るかと思うのでございます。したがいまして、ただし書きを設けるにあたりましては、そういう態度で、基準を厳格にしぼったつもりでおります。井川先生は、先ほど、これはこんなにたくさんではというふうにおっしゃいましたのですが、私どもとしましては、すべての法律を個々的に審査いたしまして、できるだけしぼったつもりでおります。しぼりました基準といたしましては、先ほど局長から御説明申し上げましたのですが、大量的処分であって、行政の統一上訴願を前置することが必要であるという、そういう処分、それから専門技術的性質を有する処分、それから第三に、訴願裁決機関が第三者的構成になっている処分と、こういうふうに基準を立てたわけでございまして、この基準は、法制審議会においても大体是認された基準でございます。
第一の基準でございますが、大量的処分であって、行政の統一上訴願前置を必要とするものと申しますのは、単にその処分が大量的であるということも一つの理由ではございますけれども、行政の統一上訴願前置が必要であると申しますのは、個々的に裁判所に出訴されるということになりますと、その判断が、課税処分のようになりますと、判断がばらばらになってしまう、そういうことよりも、まず訴願機関がその審査をして、そうして誤りはできるだけ改めていく、こういうことにするほうがいいということでありまして、実際問題としましても、先ほど先生のおっしゃいましたように、税金訴訟あたりは、訴願における救済率というものは非常に高いわけでございます。そういう実際ともにらみあわせて、こういう基準というものを考えたわけでございます。
専門技術的処分と申しますのは、これは、理想としては、裁判所へ直接持って来るのが、先ほどから申し上げておりますように、国民の救済をはかるゆえんではございますけれども、しかし、その行政処分の中には、きわめて専門技術的なものがございまして、これは、裁判所にいきなり持って来られましても、鑑定とかその他によって時間が非常にかかる。それよりも、そういう技術に習熟しております訴願機関が当たったほうが国民の権利救済にとって妥当である、こういうふうな自主的な理由でございます。
それから、訴願裁決機関が第三者的構成と申しますのは、これは、現在の訴願法は、上級の行政庁が訴願裁決をするという建前になっております。それで、この点につきまして、同穴のムジナのような関係にある上級庁が訴願裁決をするのでは国民の救済は十分ではない、こういう非難がございます。それからまた、今国会に提出されて御審議を受けております行政不服審査法においては、手続それ自身は相当公正は担保されるようになりましたが、なおかつ、上級の行政機関が訴願裁決をするという点は、これは、訴願制度という名前を審査請求と変えようと何であろうと、これは宿命的なものでございまして、そういったものでは、これは訴願前置は認むべきじゃない。しかし、そういう訴願裁決機関が第三者的構成でもって公平になされるというような、そういうものであるならば、これは、国民の権利救済の点からいって、訴願を前置されるということも理由があるのじゃないか。また、むしろそのほうが国民の権利救済にとってよいのではないか、こういうふうに考えられるわけでございます。そういった基準に基づきまして、私どもとしましては、約三百の法律を一々検討いたしまして、これはここで申し上げるのはどうかと思いますけれども、行政庁のほうとしましては、訟願前置主義ということを非常に強調したわけでございますけれども、そのうちから三つの基準に照らして五十にまで整理をして参ったわけでございますので、この点につきましては、十分御了承を得たいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/54
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055・井川伊平
○井川伊平君 前置主義を廃止したほうがいいという立法でございますから、その説明の際に、局長さんが、今でも前置主義のほうがいいと思うというのは、個人のお気持を端的におっしゃったので、法案の説明外の言葉だと私は思いますので、そんなことは少しも気にしておりませんから、どうぞ御心配のないように……。
別のことを一つお伺いいたしますが、この法案が実施されるようになりました暁においては、裁判所の事件が急にふえるというお見込みか、お見込みでないのか。また、ふえるといたしますれば、それ相当の裁判所の受け入れ態勢、人的、物的にわたって必要であろうと存じますが、そういう点、並びに、それは予算の関係においてどのような見通しを持っておるか。このことをお伺い申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/55
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056・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 私どもといたしましては、実は、将来の見通しはそう確たるものを持っておるのではございません。まあ訴願前置が原則としてはずされたから、多少かえるのじゃなかろうかということも言えますと同時に、また、今井川委員のおっしゃったように、多くの例外を認めておりますので、それは現実的にはあまり変わらぬのじゃなかろうかという見通しも出てきますので、どうも確たる見通しは私どもございません。したがいまして、今のところでは、これは私どもが口幅ったい意向を申し上げるべき事項ではないかもしれませんけれども、新たにそれについて裁判所のほうあるいはまた行政庁のほうに、裁判機関として、あるいは応訴機関として、もう少し機構を拡充する、しなければならぬ、そのために予算をもっともらわなければならぬというふうな特段の考慮はいたしておりません。この法案を施行したその現実の趨勢を見て、またそういう手当が必要になれば、新たにその時期に至って、そういったお手当を願うよりほかあるまいかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/56
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057・井川伊平
○井川伊平君 そうすると、ただいまのお見通しによりますと、この法案は、そんなに国民に喜ばれて利用されるという率は非常に少ないのだというお見通しですね。今までのとおりだ、法律を改正しても、そんなに新たに利用するような国民はいないのだ、ありま価値のない法律を審議しておるんだ、こういう御趣旨ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/57
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058・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 今私の申し上げましたことは、決してそういったことを申し上げておるんじゃありませんので、実は、現在の状態で裁判所が行政訴訟を審議されておる実情を見ますと、訴訟の数にかかわらず、法案があまりに簡易に失しておるものでありますから、取り扱い上非常に不便であるのみならず、また、国民の側からいたしましても、訴訟の数にかかわらず、管轄が不自由であったり、その他いろいろな点で不自由を与えておりますので、この法案が施行された暁には、裁判所も取り扱い上御便利であるはずでありますし、また、国民もそういった点で非常な利便を受けるものであることは、私は確信をいたしております。ただ、そのために訴訟が多くなるかどうかという見通しになりますと、私は確たる見通しを持ち得ないわけでありまして、何とも申し上げかねるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/58
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059・井川伊平
○井川伊平君 お話はよく了承いたしました。
次に、原告の適格性の問題につきまして三、四簡単にお伺いをいたしておきます。建築法規違反の建設許可処分、建設の許可の申請をして許可にはなったが、しかし、その許可になった申請の内容には違反の事実があるんだ、そういうような許可があった場合に、その建築の施工におきまして、隣接の者が迷惑をこうむるようなことが生ずるかもしれない、かような場合におきまして、許可処分の取り消しを求める訴訟を隣接地の居住の者が申請し得る原告の適格性はあるか、こういうような問題をひとつお伺い申し上げておきます。これは、簡単なお答えでいいんです。疑問になりますから、あとで疑問の生じないようにという考えからお伺いするわけですから、お答えは簡単でけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/59
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060・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) ただいまの問題は、結局隣接者がその許可処分によって法律上の利益を害されるかどうかという法律解釈の問題でございまして、この法律上の利益が害されるかどうかということにつきまして、いろいろ判例がございまして、その場合には、それは単なる事実上の利益にすぎないんだと、いろいろ判例がございますが、ともかくそういう点は、これは現行法上もいろいろ問題でございますし、それから、今度の法案でも、その点までも立法的に解決することは、これはできませんので、判例によって次第に解決されていく問題ではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/60
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061・井川伊平
○井川伊平君 そうすると、私の今のお尋ねに対しましては、この法案のあずかり知らぬところである、裁判所にまかしておくのだというお答えですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/61
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062・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) その点につきましては、そういうことになるわけでございます。法律上の利益が、具体的の問題でございますから、その具体的な場合につきまして一々立法的に解決するということは、これは参りませんものですからして、そういうことになら、ざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/62
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063・井川伊平
○井川伊平君 その点、了承いたしておきます。
次の問題、買収農地——農地法の解放等で買収した農地が、依然として現在なお国が所有しておるものもあるようでありますが、それは元の地主のほうへ国は売り払えということを求めたいと考えておる人があると仮定する。国はその土地をあらためて他のものに売ろうとする、売却しようとする処分がある。こういう場合におきまして、それは自分に売り渡すべきであるのに、他のものに売り渡すということは不都合だというので、その他人のためにする行政処分に異議を言うことができるかどうか。この点はいかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/63
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064・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 今私、農地法なり自創法なりを持っておりませんので、ちょっとこまかい条文を記憶しておらぬのでありますけれども、その場合に、法律に、旧地主が先買権が認められておるというような場合でありますれば、原告として行政訴訟を起こせることになる場合が考えられるかと思いますけれども、そうでない限り、そういった他人の土地について国がどういう処分をするからといって、自分に害される法律上の利益があるとは言えませんので、起こせないのじゃないかと思います。法律上特別に旧地主に先買権が認められておるというような場合でありますと、起こせる場合が考えられるかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/64
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065・井川伊平
○井川伊平君 違法のある場合に限らぬでも、ある程度行政の部分につきましても裁判所は判断ができるものがございましょう。したがって、甲に売り渡す、元の所有者の乙に売り渡すという裁量は行政庁にあるといたしまして、その裁量が適当であるかないかということについての訴えを起こした場合に、裁判所は、その裁量についてもある程度の判断ができようかと私は考える。だから、そういう場合がどうなるだろうかと思いまして伺っているのでありますが、そういう点まで御考慮になりました上の今の御答弁でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/65
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066・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 今のおっしゃる事案についても、同じことが言えるのでありまして、裁量ではありましても、その裁量において、必ず自分のほうに先買権があるのだ、向こうに行かなければこっちに来るのだという先買権がなければ、訴訟が起こせないと私は考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/66
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067・井川伊平
○井川伊平君 一応そう承っておきましょう。
農地を数名のものが共有をして持っております場合に、その農地が買収処分にあう、こういう場合に、共有者の
一人がその買収処分全部について異議を申し立て、そしてそれについての提訴ができるものかどうか。この点も、簡単なお答えでけっこうでございますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/67
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068・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 御設例の場合につきましては、買収処分といたしましては、いわゆる持分の買収処分になるわけでありまして、他人の持分についてまでは訴訟を起こすことはできないと私考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/68
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069・井川伊平
○井川伊平君 別のことで、類似のことでございますが、行政処分後、同一の行政庁が、重ねて同一の事項について先の処分と相矛盾する処分をした、先のやつを取り消して、あとの、同じものについて別のことを処分をした、こういう場合に、前の処分の取消訴訟を提起する利益があると見るか見ないか。先の処分があった、それについては提訴をしようと思っておったところが、ふらっと変わって、また別の処分が行なわれたというときに、先の処分についての取り消しの訴訟を起こし得る利益があると見るか見ないか。これもお答えはごく簡単でよろしいのです、あとで苦情がなければいいと思って聞いておるわけですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/69
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070・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 御設例の場合でありますと、前の行政処分は、あとの行政処分によって変更されてしまったわけでありますから、前の行政処分に対して単独に訴訟を起こすことはできないものと私考えるのであります。前の行政処分ならば自分は満足である、あとの行政処分は遺憾であるということになりますれば、前の行政処分を取り消した処分がいかぬということで、それに対する行政訴訟を起こせるかと思うのでありますけれども、あとの行政処分ですっかり変えられてしまった、前の行政処分に不服だということで、前の行政処分を訴訟の対象として認める特段の必要はないように考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/70
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071・井川伊平
○井川伊平君 先ほどの私の質問について、先の処分が一応なされて後に別の処分がなされたが、先の処分によって損害をこうむっておる、損害は一部残っておる、こういう場合はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/71
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072・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 後に取り消されたにしろ、前の処分によって受けた損害が残っておりますれば、その救済は、別に国家賠償法に基づく損害賠償の請求で満足させられる以外にはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/72
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073・井川伊平
○井川伊平君 次に、行政の主体である国または地方公共団体その他の公法人、こういうものが原告になりまして、他の行政庁の処分により権利を侵害されたということによりまして取消訴訟を起こし得るものかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/73
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074・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 御設例のような場合は、個々の行政法規で、機関訴訟として認められておる場合以外には訴訟は起こせないものと私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/74
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075・井川伊平
○井川伊平君 私は、機関訴訟のところを十分に研究はしていませんが、あれは主として権限の争いなどが主になるのではないかと存じますが、今私が伺ったのは、権利そのものが侵害されておる、言いかえれば、普通の民間人が行政庁の処分によって侵害される、違法の処分であるというのと同じ条件の場合においてなし得るかいなかということを聞いているのでありますが、そういう点をお含みになって、一緒にしたお答えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/75
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076・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 行政訴訟におきまして、行政機関が当事者となりますのは、取消訴訟の場合だけでありまして、つまり被告になる場合だけであります。行政庁自身が、これは法人格も何もありませんから、本来の理論からいけば、みずからそれ以外の関係で訴訟当事者になる場合は考えられないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/76
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077・井川伊平
○井川伊平君 了承しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/77
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078・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 午後二時まで休憩いたします。
午後一時十一分休憩
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午後二時三十八分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/78
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079・松野孝一
○委員長(松野孝一君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
行政事件訴訟法案及び行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
午前に引き続き質疑を続行いたします。御質疑のおありの方は、順次御発言下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/79
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080・井川伊平
○井川伊平君 午前中お答えをちょうだいいたした最後の問題でありますが、行政の主体たる国、地方公共団体その他の公法人は、他の行政庁の行政処分により権利を侵害されたときに、取消訴訟を起こし得るやという質問でございましたが、結論はできないという趣旨の結論であり、そしてその理由としては、行政庁には人格がないという御意見がありましたが、これは、国として、あるいは地方公共団体は、それぞれ地方公共団体その他の公法人、いずれも人格はあるわけでありますから、他の行政庁の行ないました処分によっていわゆる権利が侵害されるということはあり得るのではないかと存じますが、それはあり得ないのか、あっても訴訟はできないのか、こういうような適確なるお話があれば、あらためて承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/80
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081・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 先ほど答弁申し上げます際に、ちょっと誤解しておった節がございまして、もう少し補っておきたいと思います。国といえども、やはり国民と同じ立場に立って行政処分を受ける場合がございます。さような場合には、やはり国も、一般の国民と同じく、個人と同じく、原告となって取消訴訟を起こすことができます、現実に、現行法の下におきましても、国が雇用者たる関係において、労働法関係に立ちます際に、中央労働委員会の処分に対しまして、国がみずから原告となって抗告訴訟を起こしている実例がたくさんございます。さような特殊の場合には、やはり国または地方公共団体も、みずから原告となって抗告訴訟の当事者となることがあり得ることを補っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/81
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082・井川伊平
○井川伊平君 補った答弁でなく、訂正したのとは違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/82
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083・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 私は、さきに、そういう場合を考えずに答えたと思いますから、国または地方公共団体を含めた意味で御答弁した趣旨ではございませんでしたので、ちょっと補っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/83
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084・井川伊平
○井川伊平君 了承いたしました。
次に、法文の十一条に関係すると存じますが、行政処分の権限の委任を受けた行政庁が、その委任に基づいて行政処分をしたという場合に、行政訴訟を起こすときは、委任によって処分したその行政庁を被告とするのであるか、本来の権利のある行政庁を被告とするのであるか、この点をお伺いいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/84
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085・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 御設例の場合には、やはり現実に処分をした行政庁を被告とすべきものであると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/85
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086・井川伊平
○井川伊平君 そうすると、初めの委任の範囲は、行政処分の委任をする場合には、それに基づく訴訟の起きた場合の被告となる点も委任してあったと見るべきでありますか。あるいは、そうではなしに、何か他の法規に基づいてそういう解釈をすることになるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/86
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087・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) その実体行政法には私は関係ないと思うのでありまして、やはりその点も、十一条の一項の本文できまってくるものと私は理解しているものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/87
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088・井川伊平
○井川伊平君 そうですか。一応そう承っておきましょう。
次に、行政処分不存在確認の訴訟、この訴訟においては、被告行政庁はどういうようにして確定するのであるか、お伺いいたしておきます。処分をし、裁決したものはないのですが、ないのであるのに、それがだれかが被告とならなければならないわけでありますから、だれを被告として訴えるか、そこに非常に疑問を生じてきますね。この点につきましてのお答えをお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/88
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089・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 不存在確認の訴えといいましても、全く無の場合、そういった訴訟が許されると私どもは解していませんので、行政処分があったと主張する処分庁がどこかにある場合に限ってそういう訴訟が問題になるであろうと思います。純粋に何もない場合に、そういう訴訟が許されるものと私どもは考えていないのでありまして、何か行政処分らしきものがあり、処分庁のほうでは、それを行政処分だと主張しておる、そこに争いがあるときに、そういう訴訟が出てくるわけでありまして、やはり処分をしたと主張する、その処分によって利益を害されたものが、その処分をしたというものを対象として訴訟を起こすべきものと私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/89
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090・井川伊平
○井川伊平君 今のお答えは、処分を求められた行政庁があり、裁決を求められた、審査請求を受けた行政庁があるはずだ、だから、それを被告とすべきだという御意見のように承るわけでありますが、しかし、そういう申請をいたしましたものが、当然にそういう管轄のあるところではない、とんでもないところに申請をしておった、だから、その行政庁としては処分及び裁決をすべき筋ではない、こういうようなことがあり得るかと存じますが、そういうことがあるかないか。あり得るとすれば、そういう場合における被告の取り扱いはどういうようにするか、こういう点についてお答えを願えればしあわせですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/90
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091・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 私は、今の行政不服審査法のほうをそこまでしさいに検討はしておらぬのでありますが、つまり処分をする権限のない行政庁に行政処分の申請をしたといいます場合に、権限庁に申請を移送することになるのか、あるいは移送せずに、自分のほうに権限がないというふうに却下をするのか、どちらかになると思うのでありまして、さような場合には、やはり自分のほうには権限がないといって却下をしておれば、権限があるのだと称して、あくまでも裁決を求める、自分に有利な裁決を求める者のほうからは、当該処分庁を被告にして、却下処分の訴訟を求める形になってくるだろうと思います。また、ほかに権限のある処分庁、行政庁がありまして、そちらのほうに移送になっておるとしますれば、その移送を受けた行政庁のほうで何らかの処分をいたすはずでありますから、そのなされた権限あると称される処分庁がやった処分について、その庁を被告にして訴訟が起きるものと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/91
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092・井川伊平
○井川伊平君 まあ一応、まだふに落ちぬところもありますが、的確にもなりませんから、一応御説明のとおり承っておきます。
次には、出訴の期間につきまして一、二承っておきます。農地等の買収計画と買収処分など、一連の手続を構成する数個の処分について、最終処分による法律の効果が確定するまで先行の各処分に対する出訴期間は満了しないのかどうか、先行の各処分は、その処分のときから出訴期間が個々に進行するものであるかどうか、ちょっとお伺いを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/92
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093・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 一連の継続した行政処分によって本来の行政目的を達するというような関係にある数個の行政処分につきまして、それぞれ数個のものが独立してそれぞれ訴訟の対象になるという場合でありますれば、個々の行政処分ごとに出訴期間は進行するものと考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/93
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094・井川伊平
○井川伊平君 もう一点、出訴期間についてお伺いいたしますが、行政庁がある処分をいたしました後に、その処分の一部を修正する処分をすることがありましょうが、そういう場合に、その修正をいたしました最初からの一連のれ分に対しまする出訴期間は、最初の処分のときから進行するのであるか。修正をいたしました処分のときから進行するのであるか。この点をお確かめいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/94
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095・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 行政庁が一たんなした行政処分を、自己の行政処分を後になってそれに変更を加え得るかどうかということについては、場合によっては異なる場合が考えられます。いずれにいたしましても、当初なされた行政処分に対する出訴期間は、その当初の行政処分のときから、それからあとに修正するような、つまり修正することが国民の側に不利益に修正された場合が訴訟の対象になるわけでありますから、その修正という修正処分を一個の独立した行政処分として、そのときから出訴権が生ずるものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/95
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096・井川伊平
○井川伊平君 一応形式的に納得はいくのでありますが、原案があり、原処分があり、それを修正されたときは、修正ともとの原案とが二つのものになっておれば、二つの出訴期間があるはずである。もしこれが修正されたものだから一つになっておれば、出訴期間は一つであるべきだと私は考える。ゆえに、そういう場合にどちらにするかというのでありますが、この点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/96
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097・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) その行政処分の効果といたしましては、合わせて一本になるわけでありますが、行政処分としては、理論上二つがあり得るわけでありますから、あとになって不利益に変更されたものでありますれば、その不利益に変更した行政処分だけを争えば事は足りるわけでありまして、効果が合わせて一本になるからといって、行政処分を一個であるというふうに考える必要は少しもないであろうと私は考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/97
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098・井川伊平
○井川伊平君 了承いたしました。
次に、別のことをお伺いいたしますが、二十四条に職権証拠調べの規定がありますが、この職権による証拠調べの性質、これをお伺いいたす次第であります。すなわち、職権探知主義をとるのであるか、そこまではいかないのであるか、これらにつきまして詳細なお話を承りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/98
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099・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 本法案の二十四条は、職権探知という言葉は用いておりませんが、やはり行政訴訟の特質からして、民事訴訟の例外として、民事訴訟とは異なった立場で職権で証拠証べをすることができるわけでありますから、それを理論上民事上の職権探知という概念に当たるかどうか、私、ちょっと正確に御説明申し上げることはできませんけれども、職権で進んで証拠調べをすることができる。ただし、その結果について、口頭弁論にそれを現出して、当事者の意見を聞かなければ、判決において証拠に引用することはできないという関係になるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/99
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100・井川伊平
○井川伊平君 そこまで二十四条を裁判所の権限内に入れて考えるということになりますと、裁判所は相当時間がかかり、手間取ることになろうと存じますが、もともと利害の関係があって、その利害の関係に立ちます者が自己の利益擁護のために主張することでありますから、大体は原告の申請したる主張と証拠に基づいて裁判していいんじゃないか。それを別の立場で、どこまでも、本人の主張いかんにかかわらず、公正を期さねばならぬという立場から、証拠を探究していくということは、これは事実上相当困難な立場に追い込まれるのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/100
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101・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) この職権証拠調べの規定は、実は、現行行政事件訴訟特例法にもございますのですが、現実にそれが利用といいますか、裁判所がそれにのっとって、その規定に基づいて、職権で証拠調べをされるという例は、今までの経験ではきわめてまれな場合でありまして、ほとんどなかったのじゃないかというふうに私記憶しておるのでございます。何かのときに必要があれば、もし裁判所が必要と考えればできるという、万一の場合に備えてこの規定を存置したのでありますけれども、今日までの訴訟の実例では、そういった実例はほとんどないと申し上げていいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/101
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102・井川伊平
○井川伊平君 そうすると、今までの実例にはほとんどないが、特にそのないのをあるようにしようという強い意欲に基づいてこれを設けたという趣旨でございますか。従来のとおりでよろしいという考えに基づいてこの法律は書かれておるものでありますか。いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/102
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103・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 立案するにあたって、特にこの規定に重きを置いて、今後は、従来と違って、裁判所におういに職権証拠調べをしてもらいたいというほどの気持は少しもありません。何か必要がある場合に、裁判所に自由裁量をゆだねておる意味で、法を変えないという趣旨のつもりで立案した次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/103
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104・井川伊平
○井川伊平君 了承しました。
次に、行政事件訴訟においても弁論主義が行なわれるという立場に立つとき、当然主張事実の責任の問題が考えられる。原告が処分の具体的違法来由について主張する責任を負うのであるか、あるいは被告行政庁が処分の要件事実を主張しなければならないのであるか、この点はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/104
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105・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 今の御質問の点につきましても、本法案と、それから現行行政事件訴訟特例法と、建前を異にしておるつもりはございません。今の論点に関する主張責任、立証責任につきましては、従来の学説判例でほぼ固まっているものがあると思いますが、多くの場合に、行政処分をした行政庁の側に、その行政処分の要件その他の主張、立証責任があるというふうに解されておるように私どもは理解しておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/105
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106・井川伊平
○井川伊平君 そうすると、現実に処分があったという事実を原告としては主張し、それが違法であるということを言えば、違法でないという主張をし、それから、違法ではないという証拠をあげる義務は被告側にもある。普通民事事件なら原告側にあるが、行政訴訟には、被告の側にもあるという御主張でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/106
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107・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 多くの場合に、さようになるものと考えまして、違法でないという——違法でないというふうな言葉を用いますと、何か消極的事実の立証責任のように考えられるのでありますが、そうでなくて、適法であるということの主張になる、立証責任になりますので、日本の学説の指導的意見は、やはり行政庁のほうに主張の立証責任があるというふうに解しているものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/107
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108・井川伊平
○井川伊平君 行政事件訴訟におきましては、比率訴訟法の自白に関しまする規定、これは適用になるのですか、ならないのでありますか。言いかえれば、被告たる行政庁が自白をなし得るかどうか、なした場合の効力、こういう場合につきまして御意見を承ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/108
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109・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) その点につきましても、実は、理論的にも非常にむずかしい問題を含んでおるものでございまして、今ここで私が一方的にお答えすることは不可能かと実は思うのでございます。学説及び判例に待つよりしようがないのでございまして、本法でその点を特に立法をもって解決したというものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/109
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110・井川伊平
○井川伊平君 しかし、被告である行政庁も、ひるがえって考えてみれば、行政庁のほうの誤りであったことに気がつく場合もありましょうが、そういう場合に自白し得るものであるかどうか。私はし得るものだという見解に立って、役所のやったこと、だから、役所がみずから、自分のやったことが違法であるということを認める、自白というものをなし得るかいなか、もし自白をしたならば、した場合に、その効力はどうかと一応考えてみたわけなのですが、もう少し詳しく御説明願えませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/110
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111・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 私は、抽象的に自白をここで論ずることは実はできないように思うのでありまして、その事柄によって違う場合があるかと思うのでありますが、お説のような場合に、自白をすれば、訴訟法上は有効であるというふうに一応考えられる余地は実はあるということも考えます。ただそれが、他の行政法規の上で、当該自白をした職員が法律上の責任を負わなければならないような事態が起きるかと思いますが、自白をしてしまえば有効とされる場合が多いのではないかと思いますが、事柄によってはまた違う解釈をしなければならない事柄があるのではないかと思いまして、抽象的なお答えをしかねると申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/111
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112・井川伊平
○井川伊平君 そうすると、今のお答えでは、自白を証拠にするとせぬとは、裁判所の自由だという御見解ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/112
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113・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 裁判所の自白と申しますよりも、個々具体的な場合によりますと、自白をいたしましても、法律上自白が無効だという場合が起きはせぬかを私は恐れるのであります。ですから、裁判所が出訴事項には自白できないものであると考えますれば、形式的に自白がありましても、その自白を採用することはできない関係になるかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/113
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114・井川伊平
○井川伊平君 自白を証拠にとることができるできないは、裁判官の自由裁量ではなしに、法規的な観点でそうだというなら、法規の説明を承りませんと意味がわからない。この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/114
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115・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 私は、抽象的にそういう法規があるということを申し上げているのではありませんので、自白の対象になった事項ごとに解釈せざるを得ないと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/115
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116・井川伊平
○井川伊平君 そうすると、結局、裁判官がそのつど自白を証拠にして判決をなし得るかいなかは個々の問題であって、抽象的に、一般的に統一した見解を今は述べられないと、こういう御趣旨ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/116
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117・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 全くさようであります。その場合々々によって裁判所が法規を解釈して、対象になっている事項が自白を許すかどうかを判断しなければならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/117
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118・井川伊平
○井川伊平君 別なことを以下お伺いいたしますが、すでに裁判になった上におきましては、普通の民事事件でありますと、裁判上の和解というようなこともあり得ることであり、また被告となりました、本法案で言えば行政庁になりますが、そういうところで原告の請求はこれを認めるという、認諾の判決も普通民心与件ならばできることでありますが、行政事件の訴訟においては、裁判上の和解をなし得るものであるかどうか、これは、行政庁が当市者としてなし得るも一のであるかどうか、及び原告の請求を認諾する、こういうことが行政庁である被告としてできるものであるかどうか、この点をお伺い申します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/118
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119・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) やはり認諾につきましては、あるいは先ほど来御質疑の対象になりました自白以上に実は問題があるのでありまして、私は、認諾は主として一般的にはできないと思うのであります。出該行政庁にそういう処分権はないものと私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/119
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120・井川伊平
○井川伊平君 もう少し何か、できる場合とできない場合がありまして、そういう場合を系統づけて、区別してお答え願えませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/120
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121・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 非常に広い事項にわたりますので、ここで一般的に、こういうものについては認諾ができないというふうにはお答えできませんので、むしろ私は認諾は一般的にできないというふうに従来考えておるのであります。自白のごときは、対象によっては割合にできる場合も考えられるかと思うのでありますが、認諾については、行政庁にそういう処分権はないものと考えますので、一般的に言って、認諾はできないと私考えていいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/121
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122・井川伊平
○井川伊平君 認諾の点につきまして、もう少し詳しく申しますと、行政庁も、人間のやりました行政の処分でございますから、原告から行政庁の処分の非を詳しく列挙して指示されて、訴訟になったという場合において、なるほどこれは自分のほうが間違いであったということが気がつくことが絶対にないとは言えまいと思いますが、そういう場合でも、認諾はまかりならぬという御意見でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/122
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123・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 行政庁は、その行政行為をすることについては、その方式について制限を受けるわけでございますから、もし訴訟になったあとになって、前の行政処分が間違っておったということに気づきますならば、やはり行政庁は、行政処分すると同じ形で、取り消しの行政処分をすればいいのでありまして、当該訴訟において相手方の請求を認諾するということで行政行為はできないというふうに考えるものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/123
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124・井川伊平
○井川伊平君 その点、了承しました。先ほど来申している中の一つである裁判上の和解ですね。これは、法規上の点については、行政庁といたし出しては、和解をする余地はないかもしれぬけれども、裁量に関しまする部分が含まれておるとすれば、行政庁にもある程度和解の権限を認めることにしたらどうかと存じますが、実は、今日まで、行政庁を被告とする事件で、裁判官等が、当然にこれは裁判上は和解すべき事件だという認定の上に立ちまして、和解をしたらどうかというようなあっせんをする場合もしばしばあるように漏れ承っておる。それであるにかかわらず、一方は官庁であるから、行政庁であるからという立場で、裁判上の和解ということを全然受け付けないというようなことにするのは、これは少しこだわり過ぎたようなふうにも見えるが、もう少しくだけた立場におきまして、裁量の点についての訴訟が起こされている場合等においては、その裁量の内容をある程度まで和解によって決定する、こういうふうなことはあってもいいのではないかと考えますが、この場合はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/124
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125・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 和解につきましてもやはり同じことが言えるのでありまして、行政処分に関する限りは、やはり裁量を許される範囲の行政処分でありましても、行政処分という形式によってしか行動ができぬわけでありますから、裁判上の和解という形でそれを調整するということはできぬ場合が多いだろうと思います。ある特殊なまれな場合を考えれば、できるような場合も考えられるかと思いますが、一般的に言えば、やはり行政処分であります以上は、あらためてやる行為がやはり行政処分という形式をとってしか行動できぬわけでありますから、裁判上の和解という形で行政処分をするということは、一般的にはできぬものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/125
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126・井川伊平
○井川伊平君 私は、これははっきりしておきたいという気持から申し上げるのですが、できる場合とできない場合があるようなお答えではおかしいのでありまして、こういう場合はできる、こういう場合にはできないと、はっきりそれは法律なり事例をあげましてお答えになるべきであると思う。できないという一本で来るのなら、それは、先ほど言ったように、請求の認諾も裁判上の和解も、結果から言えば、処分の訂正になるわけだから、行政庁として新たなる処分をすることによって目的を達するのであるから、裁判上の和解及び認諾には応ずべきでないと、はっきり言っていただいたほうが、後日間違いがなくていいと思うのですが、この点は、お考えの上で御返事願えませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/126
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127・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 私、実は抽象的に、理論的にのみ考えておるものでありますから、あるいはできるような事態が考えられやせぬかをおそれるものですから、そういうあいまいと申しますか、答弁をするのですが、私の現在の私見をもってすれば、一般的にできないと、今の段階で答えろと言われますと、できないと答えざるを得ないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/127
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128・井川伊平
○井川伊平君 私もそのほうが満足するわけです。
もう一つお伺いいたしますが、行政事件の訴訟に督促手続の規定、こういうものが、これは民事訴訟法四百三十条以下に規定があるようでありますが、これを適用される場合があるかどうかという問題であります。どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/128
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129・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) この行政事件訴訟としては、民事訴訟法の督促手続を適用すべき場合は、私はないものと考えます。督促手続は、御承知のように、金銭の支払いに限るわけでありまして、金銭の支払いを行政処分でやるといいます場合には、それぞれ行政法規に手続がございまして、その行政処分によってそれが執行力を持つわけでありますから、裁判所に督促手続を求めて、それによって執行するという必要は少しもございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/129
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130・井川伊平
○井川伊平君 こういう場合はどうでございますか。税務署が事実よりも過重な税額をきめ、そして取り立てをした。それに税金を納めた者が異議を言って、その趣旨が通った。したがって、納めた税金の一部は返還を受くべきものである、そういう場合に、なかなか税務署はきげんよくその税金を返してこない、そういう場合に、税務署に向かって払い戻しの督促手続ということをやろうとすれば、金銭の請求でできそうに思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/130
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131・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 私は、行政事件訴訟に限って今申し上げたのでありまして、おっしゃるような、純粋な金銭上の債権につきましては、国の側からも、あるいは当事者の国民の側からも、督促手続によることはできます。それは行政事件訴訟ではございませんで、一般の民事訴訟になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/131
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132・井川伊平
○井川伊平君 一般の民事訴訟と申しましても、公法上の権利に基づくところの処分に対する訴訟が進められて、その訴訟の続きでありますから、こういう場合は、やはり行政訴訟に関連しておると言っては間違いでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/132
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133・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 関連はしておるかもしれませんけれども、その場合は、事柄の性質は行政訴訟じゃございません。言ってみれば、行政訴訟によって損害賠償債務が国にあるという場合には、その損害賠償の債務の性質は、普通は民事訴訟上の債務なんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/133
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134・井川伊平
○井川伊平君 そう承っておきましょう。できるということだけで目的は達しました。
次にお伺いしますことは、先ほど不作為違法確認の訴えについて、その違法の時点はどこであるかという点についてお尋ねをいたしまして、きわめて明快なお答えをちょうだいいたしておりますが、不作為違法確認の訴え以外の取消訴訟等についても、行政処分の適否の問題は、いつを時点とすべきかという点について考うべきであると存じますが、これは、先ほどの不作為違法確認の訴えと同じようなお答えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/134
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135・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 適否を決する基準になるのは、処分時であるというのが原則であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/135
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136・井川伊平
○井川伊平君 そうしますと、不作為違法確認の訴えは、判決時におけることだというお答えでありましたが、その他の取消訴訟は、それとは全然違うのだということでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/136
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137・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 全くそのとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/137
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138・井川伊平
○井川伊平君 次にお伺いいたしますことは、判決の効力についてであります。取消訴訟における原告敗訴の確定判決は、被告行政庁に対する関係ではいかなる効力を生ずるか、こういう問題でありますが、もっと砕いて中しますると、取消訴訟において被告の行政庁が勝訴になった場合、原告が敗訴、被告が勝訴になった場合においては、その判決に行政庁は抱束されるかされないか。もし拘束されるとすれば、前の勝訴になった行政処分を訂正はみずからできないことになるのではないか。自分の自由に訂正もできるのか。判決では正しいと認定は受けたが、行政庁みずからは、考えてこれを是正した行政処分をなし得るかどうか。この問題をお伺いいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/138
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139・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 原告の請求が棄却された場合には、行政庁は、他の理由から、前にやった処分を取り消すことはもちろんできると私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/139
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140・井川伊平
○井川伊平君 他の理由というのは、その行政庁が、前の処分がその当時、先の処分をなした当時において間違っておったという観点に立てるかどうかです。そうでない別の——間違ってはいないけれどもこうするのだとか、あるいはその後のいろいろの法律、制度に基づいてこうするのだということができることだけは間違いないでしょうが、先の処分が違法であったということを自分で認めて、新たなる処分ができるかできないかということを聞いているわけであります。言いかえれば、先ほど申しました原告敗訴の判決の被告行政庁に対する効力いかんという問題です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/140
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141・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 原告の請求が棄却されただけでありますから、行政庁は、その点について何らの拘束を受けません。できると私考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/141
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142・井川伊平
○井川伊平君 次に二十五条関係、執行の停止の問題、二十五条三項の末段に、執行停止について、「又は本案について理由がないとみえるときは、」云々と、こういうことになっていますね。こういうような理由があるとかないとかという認定は、これは、終局判決以前の裁判であるわけでありますが、どの程度の調査と申しますか、主張の整理なり、あるいは証拠調べなりをした上でできるのか。主張の整理は格別としても、証拠調べなどはしないでも、そういう見込みだけでできるのか、あるいは、見込みだけではできないので、証拠の上から証拠調べを一応しなければできないのか。一応するとすれば、どういう程度のものをすればできるのかという問題です。見込みだけでできるかできないか。見込みだけでできないとするならば、どの程度の証拠調べをすればできるのか。終局判決に適していない事態のことであろうと存じますが、この点につきましての御意見を承っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/142
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143・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 御設例の場合には、まだ証拠調べは済んでいないわけでありますから、証拠判断を用いずして、おそらくは、その主張自体から理由はないように見えるという場合に限られるものと私考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/143
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144・井川伊平
○井川伊平君 執行の停止については、内閣総理大臣が異議を言うというような問題もあるわけでありまして、私は、あとからこれをその点についてお伺いをいたしますが、三項によりましても、「執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるとき」と、いろいろ書いてありますが、執行の停止をすることが、こういうふうに、公共の福祉に重大な影響があるかないかということを十分に調査をして見きわめをした上でなければ、その判事が、証拠調べも何もしないで、ただの思いつきで執行の停止をするというようなことが認められるということになるとすれば、行政の責任を背負う行政庁といたしましては、耐えられない苦痛になると思いますが、そういう意味合いにおきましてこの点をお伺いをしておるわけです。判事だから、裁判官だから間違ったことはないだろうと一応見られて、内閣総理大臣の異議に対しましては、それは認めないほうがいいという意見も相当強く出ておる今日であるが、裁判官が、証拠も調べないで、自分だけの思いつきで、重大なる影響がないと思ったとか、あるいは「本案について理由がないとみえるとき」とか何とかいう、そういうようなことを裁判官が勝手にきめるということになりますと、これはゆゆしき問題のように思うのでありますが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/144
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145・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) もちろん、その点につきましては、執行停止と終局判決、本案判決との相違からして、証明の程度が違うのでありまして、執行停止の必要の有無につきましても、一応は疎明という方法によりまして、双方でその程度の証拠はあげ得るわけでありまして、その双方からあげられたそれらの疎明方法を裁判所がしんしゃくして、停止の必要があるかどうか。すなわち、停止の条件を満たすかどうかということを考えて裁判所がなさるわけでありますから、裁判所は、全くの独断に基づいて、むやみな決定をなされるものと私どもは考えません。また、本法案もそういうことは予想いたしておらぬのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/145
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146・井川伊平
○井川伊平君 そうしますと、執行の停止を裁判いたしますときには、終局の裁判をなすに熟した程度でないことは、ただいまの御説明でよくわかりますが、終局の裁判をなすに至らない程度であっても、一応の疎明で執行の停止をするということができる。こういうことにいたしますると、終局の判決におきまして原告敗訴になる場合におきましても、この執行の停止の裁判をする、決定をするということはあり得ることですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/146
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147・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 前に執行停止についての裁判をします場合に、疎明によって執行停止をする条件があって執行停止をした、終局判決においては、原告が敗訴するという場合も十分考えられるのでありまして、だからといって、前の執行停止が誤判であったという関係には必ずしも私はならぬと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/147
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148・井川伊平
○井川伊平君 さらに、内閣総理大臣の異議の問題について、引き続きまして数点お伺いいたします。
行政処分が違法であるとしてすでに司法裁判所に提案されておる以上、裁判官は、憲法七十六条の三項によりまして、「良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」その他の拘束を受けないで行政処分の適否を判断することになっておりますが、この適否に関しまする判断は、終局判決だけでなく、執行停止の裁判すなわち決定、これにつきましても同様にいわれることのように一応考えられる。しかして裁判官は、その終局判決に至る以前において、先ほどいろいろ申しましたように、一応の疎明を調べまして執行停止の裁判をすることができるのでありますが、その執行停止の結果が、一応の疎明でそれを認める裁判官、それから一応の疎明どころではない、奥の奥まで研究をして立案をする行政庁、その行政庁の責任、こうした責任を守るという立場におきまして、法案の二十七条でございますか、規定が設けられておるように思いますが、これは三権分立の基本を乱したもののようにも見えるし、またそうではなく、そもそも行政処分には、司法権の介入は三権分立の建前からおもしろくないのだ、しかし、憲法の建前上、行政処分審査請求に関しまする訴訟を起こすことに、本案の行政訴訟ができておることは、行政処分に対する司法権の介入であるということは一応認める。認めるがゆえに、最後の行政処分の一線だけは、これは司法権に許さないというようなふうにも見えるのでありますが、三権分立の建前からいえば、一体どちらがどちらを侵しておるということになるのでありますか。司法権が行政処分に介入しておるというのか、行政庁なる総理大臣が司法権に介入しておるということになるのか、こうした点について基本的なお考えを相当明快に御説明を願いたいと思います。われわれはそこに迷いを生ずる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/148
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149・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 裁判所が行政訴訟において行政処分が違法であるという判断、その判断は、やはり憲法に基づきまして、実質的にも形式的にも司法事項でありますので、行政訴訟の形で、行政訴訟の終局判決として、行政処分が違法である、あるいは無効であるという判断を下すことは、司法の行政に対する侵害であるというふうに私ども考えておりません。ただ、今のお取り上げになった御質問の内容は、おそらくは、内閣総理大臣の異議が憲法違反と判断されるかどうかということに関係すると思うのでありますが、行政処分が行政訴訟において違法である、あるいは無効であるという判断を受けること、それ自体は司法の行政に対する介入ではないのでありますが、その終局判決前の処分として、裁判所が行政処分に、本来具有するところの執行力を停止する、つまり執行停止という制度は、これは本来は司法事項ではございませんで、事柄は理論上行政事項なのでありますが、行政訴訟の運用の全きを期するために、法に基づいて裁判所に特に委任された事項でありますので、つまり、形式的には同法事項ということができるかもしれませんが、本質的には、それは司法事項ではないと考えておるのであります。したがいまして、その執行停止の決定に対しては、法の根拠に基づいては、行政庁から異議の申し立てをし、その異議の申し立てに基づいて取り消さなければならぬというふうにいたしましても、行政の司法権に対する不当なるあるいは違法なる介入であるとは私どもは考えておりません。でありますから、執行停止決定の前後を問わず、内閣総理大臣は、本法に定められた条件のある限りは、異議の申し立てによって、さきになされた執行停止の決定あるいはこれからなさんとする執行停止の裁判所の権限をチェックすることができる、チェックすることにしても、憲法違反ではないと私どもは考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/149
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150・井川伊平
○井川伊平君 何だかわかってきたような気がするのでありますが、そうしますと、行政処分の適否を司法裁判所がきめることは、司法権の行政権に対する介入ではないとして、違法なものではない。違法でないことは明らかですが、介入とは認められないというのでありますが、一たんいたしました行政処分を停止するとか修正するとかいうようなことは全くの行政処分である。その行政処分の一つとして、執行の停止の場合を裁判所に委託してあるのだ、こういう考えなんですね。したがって、委託をしてあるのだけれども、単なる委託であるから、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある場合には、その委託を取り消して、本来の行政処分として、内閣総理大臣は自分の意見を述べることができるのだ、こういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/150
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151・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 全くそのとおりに私ども考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/151
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152・井川伊平
○井川伊平君 そういうようなお建前であるとすれば、この法案の建前に異存はないことになるわけでありますが、もう少し続けて参りたいと思います。
それは、結局のところ、「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある」という、この一つ問題について、本案の係属しておる裁判所の裁判官の見解と内閣総理大臣の見解の相違の場合においてのみこの問題は生ずる。これは言うまでも一ないことのようでございますが、そういう場合において、今申した法律上の、本来の行政処分の一部を委託してあるのだ、だから、委託だから、いつ何どきでも必要の限度において取り消しができるのだという法律上の根拠はそう承っておきますが、そうした法律上の根拠ではなしに、本来その公共の福祉に重大なる影響を及ぼすか、及ぼすおそれがあるかないかということの最後のけじめをつけるといいますか、最後のどちらがほんとうであるかという問題をきめるのについて、行政庁の責任者である内閣総理大臣のほうがふさわしいという見解をとるのか、あるいは法と良心によってまっしぐらの裁判をしているところの裁判官のほうが真相に触れると、こういうような見方をいたしますのか、法の関係ではなしに、実質に対しまする理解と責任の関係におきまして、あなたの、立案者の御見解を承っておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/152
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153・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 裁判所が停止決定をするにあたって考慮に入れます事項は、同じく「公共の福祉」云々と申しましても、裁判所は、原則としては当事者の提出する資料だけにその判断の資料が拘束を受けるわけでございます。もちろん、その点についてだけ職権証拠調べをすれば別でありますけれども、原則としてはそういった、裁判所は当事者が提出する資料に判断の拘束を受けるのであります。内閣総理大臣が異議を申しますにあたっては、そういった制限を受けませんので、諸般の政治情勢なり諸般の行政に対する円満遂行という見地から考えてするのでありまして、同じ「公共の福祉」といいましても、考慮する段階といいますか、平面といいますか違うように私ども考えておるのであります。でありますから、内閣総理大臣がこの異議を述べました場合には、もちろんその点に関しまして、内閣総理大臣の公共の福祉に対する観察のほうが優先した効力を本法上付与されてしかるべきものであり、また付与しておるものと私ども考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/153
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154・井川伊平
○井川伊平君 その考えの一部に含まれておると私は思いますが、こういうことについてはいかがですか。内閣総理大臣は行政の責任者であり、最後の最後まできわめておるのだ、それから、裁判官のほうは、終局の判決は後日だ、だから、公共の福祉に重大なる影響があるとかないとかいうことは、裁判に至る前の、終局裁判に至る前の段階だ、かつまた、仮処分を許しておいても、最後の本案の終局判決においては、それを取り消しても少しも差しつかえないのだ、そういう自由があるのだ、ところが、行政庁の責任者たる内閣総理大臣はそういう自由がない、立案者であるから自由がない、こういう点につきましては御考慮を払われましたか。いかがですか。承っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/154
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155・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) ただいまの御質問の点につきましても、この立案に際しましては十分に考慮を払ったつもりでおりますし、また、法制審議会の段階におきましてもそういう御意見も出たほどでございまして、十分に考慮いたしていると思います。それで、さらに敷衍して申し上げますと、結局のところ、先生のおっしゃるのは、内閣総理大臣が公共の福祉を判断するということは、これは、政治的な将来の見通しの問題が含まれているわけであります。ところが、裁判官というのは、先ほど局長が御説明申し上げましたように、資料に縛られて、しかも、その時点における公共の福祉ということを考えられるわけでございまして、そういう時期的な面においても違いますし、それからまた、内容的な面においても、政治的な立場でなくて、その裁判官というのは司法的な見解と公共の福祉との調和を考えるという、そういう司法的な判断という性質のものではなかろうかと思うわけでございますが、ともかく先生のおっしゃいましたような趣旨は、私どもとしては十分考慮したつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/155
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156・井川伊平
○井川伊平君 行政処分に対しまして、これを停止することが、執行を停止することが公共の福祉に重大なる影響を及ぼすおそれがあるかないかというような判断は、新聞紙その他を通じまして、世間で大きなこれは世論になる問題だと思いますが、その世論においての責任、言いかえれば、総理大臣が異議を唱えたから悪いのであるとか、あるいは、こういうことを裁判官がわずかな疎明によって、終局判決に至るだけの材料も収集しないでそういうような執行の停止をすることはけしからんとかなどというような世論というものが大きく沸いて出るだろうかと存じます。そういう場合に、その世論は、内閣総理大臣としては一身に負わねばならぬ世論であるけれども、終局判決をなすに至るまでの証拠を調べないで、その前、中間において、疎明だけを見まして処分をする裁判官にそうした責任を負わすことは、これは気の毒だ、あるいはそれは不相当だ、こういうような見解についての何かお考えがありましたかありませんか、承っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/156
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157・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) 先生の今おっしゃいましたような点につきましても、立案に際しまして、また法制審議会の段階におきまして、十分議論が出たところでございます。裁判官というのは、この段階のこういうような問題につきましては、政治的責任を負う立場ではない、むしろそういう政治的責任は内閣総理大臣が負うべきものだ、こういうような考え方でございまして、その点が端的に現われておりますのは、二十七条の第六項の後段でございまして、「内閣総理大臣は、異議を述べたときは、次の常会において国会にこれを報告しなければならない。」という点におっしゃいました点の思想的な表現があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/157
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158・井川伊平
○井川伊平君 全然別の観点からもう一点伺いますが、内閣総理大臣が執行停止の異議を言うた場合、その事件を裁判所におきまして終局判決をする場合にどういう影響をもたらすか。終局判決を裁判所がする場合でも、公共の福祉に重大なる影響がある場合の判決は、おのずからそうでない場合とは異なってくるでありましょうが、総理大臣のこの異議は、裁判官の終局判決にいかなる影響を及ぼすやという問題をひとつ承っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/158
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159・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 終局裁判には、内閣総理大臣の異議は何ら関係を持っておりません。原告の請求が棄却されますれば、行政処分は執行力を本来持っておるわけであります。また、原告が勝ってしまえば、行政処分そのものが取り消されてしまうのでありますから、執行停止云々の問題は起きてこない。効果的にも、あるいはその裁判に対しても、内閣総理大臣の異議そのものは何ら意味を持って参りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/159
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160・井川伊平
○井川伊平君 そうしますと、言うまでもないことですけれども、総理大臣の執行停止の異議は、その事件の終局に至るまでかりに効力があるだけで、その後は、裁判官が終局判決するまでには何らそれにとらわれないということをおっしゃったと思いますが、そのとおり理解してよろしいのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/160
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161・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) そのとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/161
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162・井川伊平
○井川伊平君 なお、内閣総理大臣の異議の問題につきましては、一、二承りたいこともありますけれども、きょうは最高裁判所の側がお見えになっておりませんので、本日はこの程度にいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02319620424/162
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163・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は後日に続行することとし、本日はこの程度にとどめます。
次会は四月二十六日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時四十六分散会
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