1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年四月二十七日(金曜日)
午前十時四十八分開会
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委員の異動
本日委員山口重彦君辞任につき、その
補欠として藤田進君を議長において指
名した。
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出席者は左の通り。
委員長 松野 孝一君
理事
青田源太郎君
井川 伊平君
亀田 得治君
委員
井野 碩哉君
野上 進君
高田なほ子君
藤田 進君
辻 武壽君
国務大臣
法 務 大 臣 植木庚子郎君
政府委員
内閣官房長官 大平 正芳君
警察庁警備局長 三輪 良雄君
法務省刑事局長 竹内 寿平君
法務省訟務局長 浜本 一夫君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
説明員
法務省訟務局参
事官 杉本 良吉君
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本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
(労働関係事件における検察の運営
等に関する件)
○行政事件訴訟法案(内閣提出、衆議
院送付)
○行政事件訴訟法の施行に伴う関係法
律の整理等に関する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/0
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001・松野孝一
○委員長(松野孝一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
この際、委員の異動について御報告申し上げます。
本日付をもって山口重彦君が辞任され、その補欠として藤田進君が選任されました。
以上であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/1
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002・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
この際、亀田君から発言を求められておりますので、これを許可いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/2
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003・亀田得治
○亀田得治君 私は、この際、昨年度未における国鉄の労使間の紛争の問題に関しまして若干お尋ねいたしたいと思います。
最初に、今回の年度末手当に関する紛争の特色といいますか、そういう点についてただしたいと思うわけです。今回の年度末手当の交渉が国鉄と労組との間で何回も行なわれてきたわけですが、ちょうど三月二十六日にそれが起きまして、そのころ国鉄当局は国労を出し抜いて、動力車労組あるいはその他の小さな組合と先に妥結をするのではないか、こういったような情報等が流れたわけです。そこで、当日は、午後九時から二十七日の午前零時ごろまで団体交渉が行なわれていたわけですが、その団交を終わるにあたりまして、私が今申し上げたような小さな組合と先に妥結をする、そういう一方的なことはしない、そして国労との団交は翌日といいますか、当日は午前零時ですから、二十七日午前十時からさらに行なおう、こういうことで別れておるわけです。しかるに、それからわずか四時間ぐらいたったときに、国鉄当局は、ほかの小さな組合と妥結をしたわけです。妥結の条件は、昨年度よりも下回る額でありまして、〇・五カ月プラス千円、こういうことで妥結をしたわけです。この点につきまして、官房長官の見解を聞きたいわけですが、官房長官は、今回の問題でいろいろ奔走をされましたから、おそらく私が今指摘申し上げた点も十分お聞き下さっておると思いますが、国鉄当局の行なったこの行為は、国鉄労働組合に対しては非常な私は背信行為、それからもう一つは、約束を踏みにじったというだけじゃなしに、小さな組合と妥結をして、そうしてその線を大きな組合に押しつけていく、こういう組織上のこれは問題になるわけでして、国鉄労働組合としては重大なこれは問題にぶつかるわけなんです。そうなりますと、金額の多寡よりも、かくのごとき前例が作られること自身、今まではそういう前例がない、重大な問題に組織上なってくるわけです。で、国鉄の労働組合は、当日緊急中央執行委員会を開きまして、月末におけるこの戦術を決定しておるわけですが、官房長官の見解ですね。国鉄労働組合とそういう約束をしながら、しかも、従来の慣行を無視して、かくのごとき妥結を他の組合とした、こういうことが一体正しいと考えておられるかどうか。まあ本日は検察行政に関する問題を中心にしてお聞きする予定でありましたから、本来は、この点は国鉄当局あるいは労働組合、各当事者を呼んで、ここでお聞きすべき筋合いかもしれませんが、多少この論点、ねらいどころが違うものですが、しかし、その間の事情は、官房長官として十分お知りだったはずでありまするので、あなたひとつ御見解をまずお聞かせ願いたい。非常にこれは今後重要な影響がありまするので、確かめておきたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/3
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004・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) 私どもは、健全な労使関係の慣行が確立して参ることを念願いたしておるわけでございまして、労働運動に政府が介入しよなんという意図は毛頭ございません。健全な労使関係樹立につきまして私どもがなさねばならぬことは、管理者側の態勢がきちんと折目のついた態度でおることが大事だと思うのでございまして、私どもの内閣ができまして以来、累次各管理当局に対しましてお願いをしてきたわけでございます。で、今お尋ねの国鉄の中の国労と国鉄当局との関係でございますが、こういう個々の組合と管理者の間の関係は、国鉄の当局を信頼いたしまして、おまかせしているわけでございまして、一つ一つのアクションにつきまして内閣が御相談を受けたり指示をしたり、そういうことはいたしておらないわけでございまして、二十六日以後、今御指摘のような事態があったということを私も伺いましたけれども、そのことにつきまして、私は、御相談を受けたこともなければ、指示をいたしましたこともございません。問題は、管理者を信頼して、管理者が責任をもって適正な措置をすることを期待いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/4
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005・亀田得治
○亀田得治君 管理者の適正な措置というものを期待しておると言われることは、一応政府の立場としてそうあるべきかもしれませんが、しかし、はなはだしくこの期待をしておる相手が期待を裏切るという問題につきましては、これはやはり政府としても、その当不当の判断だけはやはりしてもらわないと困ると思うのです。その判断の結果いかなる指示をするかという点が、またこれは別でしょうが、ともかくそのことが大問題に実は組織内としてはなっておるわけですから、おそらく長官としても、その事態に対する見解は何らか持っておられると私は思う。非常に慎重におっしゃっているわけですが、普通ならば、その慎重でいいわけですけれども、御承知のように、国鉄の組合は三十三万です。ほかの組合も、まあ私たちも知っておる人もあるわけですから、別に比較して申し上げて、多少誤解を起こしてもなりませんが、ともかく量的には全然違うわけですね。これが四分六とか、いや七、三だといったようなものなら、また多少理屈のつけようも出てくるかもしれぬ。しかし、これは全然違う。労働組合法のたとえは第七条あるいは第十七条といったようなものにも、やはり一つの職場に組合がある場合に、多数者の組合というものが基準になって、この協約の拘束力の問題等もやはり優先的に判断されていくわけですね。またそうしなければ、これは秩序は保てませんから、それがあまりにも違う組織の間においてそういうことがなされた。しかもそれは、そんなことをしないという約束から四時間後です。前例がありません。これに対しては、まあひとつ管理者の適正な運営を期待するというだけでは私は済まぬのじゃないか労働大臣等の意見も聞きたいところでありますが。しかし、あなたが今回は一番いきさつ等をのみ込まれておると思いますので、実はわざわざ出てきてもらって、お聞きしておるわけなんですが、もう少しそこをはっきりおっしゃってもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/5
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006・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) 先ほ冒頭でお断わり申し上げましたように、私どもとしては、私どものほうの労働政策は、あくまでも労使の間で健全な慣行が成熟し、確立して参るということを念願いたしておるのでございまして、その間に政府が介入するというようなことは慎むべきことだと思っております。これは、ひとり民間の労働問題はかりではなく、官公労につきましても同様でございまして、あくまでも労使の間の団体交渉中心に、すべてのこの問題が平和裡に解決されて、りっぱな慣行ができて参るように期待しておるわけでございます。したがって、今お尋ねの件につきましても、私どもは介入すべきものとは思いませんし、また事実、国鉄の管理者当局並びにそれを監督いたしております運輸大臣からも、私どもに御相談はございませんでした。私どもは、監理者が私どもの方針に従いまして、責任をもって措置していただくということを期待しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/6
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007・亀田得治
○亀田得治君 労使間においていい慣行ができることを期待する、まさしく私たちも同じ意見です。それはせっかく、私が今指摘した問題につきましては、そういう主客顛倒したようなばかげたことは今日までなされないで、ちゃんとした慣行としてこれはもうでき上っておる問題なんです。それが破られたわけなんです。だから、これを国鉄労組としてそのまま見のがせば、一つの前例というものがそこにでき上がることになり、これは私は、国鉄の労働組合としては忍びがたい点だと思うのですが、長官、そういうふうにお感じになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/7
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008・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) 今、亀田員が御指摘されるように、国鉄の管理者側がとりました措置が適当であるかどうかという問題はあると思います。しかし、この問題は、やはり国鉄の管理者と国労の間の問題として、そういう慣行の是非というような問題につきまして、あくまでも労使の間でお話し合いをいたしまして、適正な解決方途が見出されるということが本筋だろうと思うのでございます。政府が介入して云々ということとは私は適当でない、労働政策というものが大事なだけに、そういう問題がございますれば、これまた労使の間の団体交渉において解決の方途を見出していくということが適切な方途ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/8
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009・藤田進
○藤田進君 関連して。官房長官は、労働関係の従来直接専門家としてやってこられていないので、そう法理的には私は追及しようとは思いませんが、それは、確かに支配介入は、ときの政府としては一連の労使問題についてしないという建前は、私は了承いたします。しかし、国鉄の当局という形、つまり公社、公団というシステムにおける責任態勢というものは、これはいろいろ利害得失はあるけれども、まず議会に対して直接の責任をとらないところであると私は思う。それでは、しからばどこが監督という立場になるかといえば、今も言われたように、国務大臣であり、主管大臣である運輸大臣、ひいては内閣の責任として議会に対しては責任をとっていただくシステムになっておると私は思う。その限りにおいて、公社公団が行なったことについて、まず政府当局として責任はあるわけです。責任の存在する以上、ここに指導し監督されるという立場はあるわけです。支配介入ということは、それは程度の問題でありまして、政府としては、特に労働省という、労働者に対する、発足当時からの趣旨は、サービス省としての設置法に基づく官庁を作られたわけです。しかし、そういう労働関係というものの面接執行をなさる労働省、それから、これには公労委なりあるいは民間等を含む中央労働委員会なり地方労働委員会ということで労使関係にタッチをされているシステムですね、現行。こういうことで、支配介入を政府においてしないかわりに、そういった第三者機関というものでおやりになるわけですから、この問題は、そこまでいかないうちに、労使直接の交渉の中に問題が生じてきておる。したがって、その経過については、資料に基づいてみても、しばしばわが党の首脳部とあるいは直接当事者と、官房長官も折衝を持たれてきているわけです。したがって支配介入という法律上許しがたい限度を越えたものは、これはなさるべきでないと思うけれども、内閣として日本国有鉄道に対する指導、監督の責任がある以上、この経営というものがただ単にその営業だけというわけでないので、その営業なり、円滑サービスが充実できるということの中には、労使関係というものは当然大きなファクターで入ってきておるわけですね。将来の事態を見通して、どうもよろしくないと思われる場合には、ある種のやはり指導なり監督の意味における適切なサーゼストをされてしかるべきだと私は思うのです。労働省といえども、公労法に基づく措置のない段階において、あるときには、中央労働委員会の所管の問題では、民間等ですね、これはそれぞれ労働委員会のほうの活動を促すとか、公労委の活動を促すとか、あるいはまた、直接しかるべき解決案が、議会開会中であれば、関係の深いそれぞれの党なり、当時者から官房長官のほうにも申し出でておるわけです。そういう形で、要は、国民の立場から見て、労使関係が円滑にいくことについて、今度のような事態が起きないように、未然に防いでいくというような大所高所から、官房長官としても会見をされて、そうして何とか円満にいかないだろうかということは努力されたのじゃないだろうかと私は思う。ですから、今ここで亀田君も聞き、私も聞くのは、なぜ支配介入しなかったという、法の限界を越えるものを聞いているのではなしに、組合の統制、当局が行なったところの第二組合と、それから動力車との間に先がけて妥結はしないという確約があるにかかわらず、当日夜、それとの解決をとられたといったようなところが、間々起きやすい労働問題の紛議の、労使間の交渉の本題である期末手当とかいったようなものに派生的なものが加わって、ああいった事態がやはり引き起こされてきておる。国労側から見れば、あのまま黙認していきますと、従来の慣行がやはり破れてくることになって、将来の組合としての活動に大きな支障も起こすというようなことは当然あり得ると思う。議会においても、古い慣行は守られてくる。先例を守られてくる。それがときとして守られないで、議運において、かりに議会に例をとれは、今、衆議院のほうで言えば、まあ大きく言えば三つ会派があると思うのです。参議院においても五つばかりあるのですが、しかし、このときに、自由民主党を無視して他の会派がほかのことをきめてみたところで、自民党が納得なさるわけもない。かといって、自民党が参議院において一番小さいどこかの会派とものをきめておやりになろうとすれば、他の会派はそれは反発をもちます。そういったようなことなので、ああいう国鉄当局が交渉の中で確約されているのにかかわらず、少数の一部組合と当局との間に妥結を見て、それを国労のほうにのませようという戦術的な措置というものは、これは、やはり平穏であるべき、安定すべき労使関係というものを乱している私は大きな原因であると思うのです。そういうときには、私は、従来あるいは自由民主党の労働対関係の人にとか、あるいは飛び越えて官房長官その他、従来はよく内々の内面的な連係は保たれてきていたと思う。そういうことを考えると、今度の場合、支配介入というようなことをなぜしなかったかというのではないのでありますから、この装置についてもっと忌憚のない、適当であったかないかというようなことも含めて、ひとつその所見を私は重ねて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/9
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010・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) 国鉄の経営という問題は、今御指摘のように、国民経済の上から申しましても、国民の生活の上から申しましても、非常に重大な問題であるということ、これは藤田委員と全く同感でございます。したがって、今御指摘の国労という強大な組合の動静につきましては、私どもも非常な関心を持っております。国鉄当局と国労との間の労使関係がうまく参るということは、日本の労働運動にとりましても、非常に大事な核心的な事実だと思いますので、これにつきまして重大な関心を持っておることは事実でございます。それからまた、社会党の幹部の皆さまとお目にかかったり、あるいは各界の方々からこの問題についていろいろな御要請、御批判等も承っておりまして、それは逐一国鉄の当局に御通知申し上げて、御考慮をわずらわしておるわけでございます。これは、今御指摘のように、支配とか介入とかいうことでなく、事実関係として私どもが職責上当然やらなければならぬことでございますので、それは細大漏らさず御連絡申し上げて参りました。問題は、国鉄の管理者当局と労働組合当局が全責任をもって問題を解決していただくという慣行がよろしいわけでございまして、今回国鉄当局がとられた措置が適当であるかどうかという判断、かりにこれが適当でないとすれば、これをどうするかというような問題につきましても、国鉄当局と国労当局の間で団体交渉を通じまして解決策を見出することが、労使関係のよき慣行を樹立する一番堅実な道であると思うのでございます。私どもは、そういうことを期待するがゆえに、各方面からの御意向も、それを御通知申し上げて、判断の資にいたしておるわけでございます。あくまで両交渉当局が全責任をもって解決していただくというようにありたいものだと思いますし、今後もそうあっていただきたいということを希求いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/10
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011・藤田進
○藤田進君 それは基本線でね。だけれども、あなたも、この過程に、しばしば申し入れを聞き、あるいは善処すべきものは善処すべきだと言われておる。その態度は、私はいいと思うんです。そのことは、今の言われていることからいえば、もう窓口で官房長官に会う、国労の問題だと言うと、いや、それは全部労使間の問題だから、われわれのほうはタッチしないから、まことに申しわけないとか何とか、知らぬけれども、とにかくそんな問題は、受け付けませんと言われましたでしょうけれども、そうではなしに、何とか円満にいきたいというお気持があればこそ、時間もかけて、またしばしば会見もされたように思う。私も、中労委等六年を通じて調停委員もいたしましたし、国鉄調停委員もやりましたが、私の経験では、むしろ当局側に支配介入があり過ぎて困ったことも知っております。ですから、そういう意味で、支配介入をして、一本譲っちゃいかぬとか、いや、他の影響がどうだとかいうようなことでおやりになった事態もあるわけで、それは少し越え得べからざる線を越えた支配介入はあったように思います。今度の場合は、事実認識においてそれはわれわれと違うかもしれないわけで、そこもちょっとただしてみたいんですが、私の記憶によりますと、二十六日の九時から夜中の零時ごろまで、当局と国鉄労働組合との間に団体交渉が持たれて、そうして当局側は、第二組合なり国鉄の中にある動力市労組との間に、別に先に約束を、妥結をしてということはしないから、明二十七日の十時ごろから再び団交をやろうという約束をして、それで、翌日の二十七日の交渉を両者とも解決について期待しながら持つという腹がまえで、当日の二十六日夜中に、零時以後は二十七日になりますが、別れているということは、その資料において確認をしておるわけですね。そういう約束をしているにかかわらず、事前に、二十七日の交渉を待たずに、動力車なり第三組合との間に妥結を見たという点は、従来の慣行あるいは将来に対する不安を国労側としては、圧倒的第一組合の大組合としては危惧を持つ、こういうところに今度の大きな問題の原因があると私は認識をしておるわけです。この点は、官房長官は事実問題としてどういう御認識でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/11
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012・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) 私は、二十六日から、今亀田委員や藤田委員が言われたような事実関係をフォローいたしておりません。国鉄当局から御相談がございますれば、乏しいながら判断したかもしれませんけれども、そういう御相談がございませんし、これは完全に御信頼して、全責任をもってやってもらいたいという基本の前提に立っておりますから、一つ一つの組合と当局との間の事実関係をフォローし、それに一々判断を加えるというようなことは従来もいたしておりませんし、今回の場合も、そういう私との間の交渉過程はございませんでしたから、私は、その事実関係がどうであったかということはつまびらかにいたしておりません。それで、先ほどのお言葉を返すようで恐縮でございますが、私が申し上げましたのは、あくまでも問題解決の全責任を持たれておるのは労使双方だということを尊重しておるわけでございまして、管理者当局から御相談がかりにありますれば、あるいは私の判断を申し上げるかもしれませんし、それからまた、各方面、社会党その他からいろいろお話がございました点は、その全責任を持って対処いたしておりまする管理者に逐一材料を提供して判断の資にするということは私どもの仕事でございますから、それはやっております。したがって、私ども申し上げたいのは、あくまでも第一義的に全責任を一持って管理者当局を信頼してやっていただくのが、こういう問題の処理といたしまして妥当ではないかという確信を持っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/12
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013・亀田得治
○亀田得治君 官房長官は、ちょっと時間お急ぎのようだから、もう一、二点急いでひとつお伺いしておきますが、結局、今私たちが指摘している点は、これは官房長官も、そういうことが行なわれるときには、もちろんそれは長官としてタッチされておるわけが、これは時間的に言ってもないわけですが、十分これはいろいろな人からお聞きになっている事実だと思うのです。そこで、そういうことがありまして、翌二十七、二十八日、これは、われわれ社会党としても大問題でありますので、衆参の各関係委員会、相当いろいろな委員会におきまして、国鉄当局も呼び、この点をただしておるわけであります。それに対して、ともかく誠意をもって解決すると、こういうことを総裁としては、まあそれ一点張りで答えて、引き下がっているわけなんです。ところが、まああなたのあっせんにだんだん時間が近付くわけですから、この点をお答え願えると思うのですが、しからばこの際に、誠意をもって解決するという、その解決の仕方ですね。どういうことがあるのだろうという点なんです。これは私は、この小さな組合がそういうことで妥結をした。それにプラスアルファ、何らかのものがつかなければ、これは筋が通らないと、思うのですね。つかなければ、そういう今までにない前例というものが作られてまかり通ることになるわけですから、もう問題は簡単だと思うのです。おそらく官房長官が、社会党の要請等もあったわけですが、その点はやはり理解されたので、小さな組合の妥結線にプラスアルファをつけるようにという見解を持たれて努力されたものではないかと、私どもは、そういう点で非常に官房長官のこの考え方に実は賛同をしているわけなんですが、そこの気持をお聞きしておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/13
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014・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) あのときに、ストライキがございました前夜十二時過ぎに、私の宅に社会党の幹部の方々がお見えになりましたことは事実でございます。それで、明日からこのままほうっておけばストライキに突入するかもしらぬ。そういうことになりますと、経済上はもとより、社会上も重大な事態になりかねないから、何とかこれを回避したいものだ、よくよくのお気持で来られたと思います。私といたしまして、全くそれは同感でございます。しからば、これを回避する方途はいかんということで、先方が申されましたのは、報労物資等で団体交渉をやるということはどうだというお話がございまして、それを私は国鉄当局に取り次ぎまして御相談いたしましたら、団体交渉はあらゆる問題についてやることになる建前でございますと、したがいまして、団体交渉をやるということがストライキをやめる条件になるということは理解できないというお答えでございました。しかし、とにかく団体交渉はやるということにしようじゃないかということでございます。で、そのようになったわけでございますが、亀田委員の言われるように、しからばその団体交渉は、何かプラス・アルファの実質を備えたものを予定いたしまして団体交渉をやるということではなかったわけでございまして、あくまでも原則に立ち返って、団体交渉でいろいろな労使間の問題を論議するのは当然の労使の慣行でございますから、団体交渉をやろう、その場合に、報労物資というようなテーマを交渉の題目、対象にして参るということも、これは労使関係としてあり得ることでございますから、そういうものを一つテーマにして団体交渉をやろう、それが、私や社会党の幹部の方々がごあっせんいたしまして、何がしかそこにプラスをつけるのだということを前提にして国鉄御当局がのんだものではないのです。一つの労働慣行でございますから、団体交渉はやりますということまでのお約束はちょうだいいたしたわけでございますが、その団体交渉で何をこの際前提にして期待するかというようなところの話は詰まっていなかったと思うわけでございます。いずれにいたしましても、そういう労使の間に問題があるわけでございますから、これを解きほぐす手は、与えられた団体交渉の場においてやっていただくということが適当だと思って、そのように申し上げ、国鉄もそれをのみまして団体交渉を私はやられたと記憶いたしておりまするし、その団体交渉で、今亀田委員が言われたよな成果が出ていないということも承知いたしておりますが、あくまでもそういう問題は団体交渉を通じて、その場においてやっていただくということが本筋であるという観点でさように措置いたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/14
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015・亀田得治
○亀田得治君 まあ報労物資をプラス・アルファとしてつけ加える、しかし、それは必らず出すということを予定してのむのではない、それは団体交渉できまるものだというふうな解釈のようでありますが、多少その辺に微妙なものがありますけれども、まあ今その問題を論議するためにやっているわけではないのですから、別といたしまして、とにかくこの小組合と妥結した以外に、報労物資をプラス・アルファとして考えて、そしてその点について団体交渉をやろうという条件が一つつけ加わったわけですね。だから、そのことによって、小組合がやったものを押しつけていくという前例はこわされているわけなんです。結論は出ていなくても、こわされているわけなんです。だから、そこに非常にやっぱり重要な意義があるわけなんでしてね。その後この団体交渉がなかなか軌道に乗らない、幾ら出すと、明確にいまだなっておらないようですが、国鉄当局としては、おそらくそういう大組合優先主義というものをくずしかけてきたわけなんです。だから、そこにいまだにやっぱり私は執着しているのだと思います。それはいずれにいたしましても、ともかくこの妥結のときの条件としては、一つの可能性でありましても、別個な条件が加わっていたということで、国鉄労働組合としての筋は私は通ると思うのです。で、問題は、今官房長官も言われ、私も指摘したこの報労物資についての団体交渉も、こういうことによって妥結をしたわけですが、しかも、それが額すらきまっておらないという解釈であるならば、それくらいの条件が、どうして国鉄当局においてあまり時間をかけないでのめなかったのか。実際に官房長官が、この報労物資というものは、中身としては、金額にすれば、たとえば千円だとか二千円だとか、そういうふうになっているんだという解釈なら、それは別ですよ。そうでないとすれば、なぜその程度のものが早くのめないのか、これは、私たち非常に遺憾に思っているのです。その点は、おそらく官房長官も、わが党の役員の諸君も、押しかけていったりいたしまして、だいぶあなた自身も立腹された点もあったようでございますが、あの事態を、その後引き起こしたことをあとから振り返ってみますと、その点はなはだ遺憾であったと考えておるのです。私は、こんな程度のことなら、もっと早く国鉄は官房長官の意見をいれて、そうして妥結をすべきが私は筋合いだと、その点は、あなたの努力にも直接密接した部分でありますから、忌憚のないひとつ御意見を聞かしてほしい。また、聞かしてもらうことが、今後労使いずれにしても、この程度のことはのまなければならぬと思っておるのに、それをけるというようなことをまた再びやらさないというためにも、やはりあなたの公平な御意見を聞かしてもらうことが私はいいと思う。この際、そういう点についてお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/15
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016・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) 先ほど私が申し上げましたように、団体交渉を持つということの意味が、亀田委員と国鉄当局との間、あるいは国労と国鉄当局との間に認識の相違があるのじゃないかと思うのです。それは、団体交渉を持つということは、労使関係で当然なことだと、どういう問題でございましても、問題がございますれば、団体交渉の場において解決の方途を見出していくというのが一般的なあらゆる場合における原則でございまして、国鉄は、それは労使関係における原則でございますから、仰せのように、団体交渉をやってようございますということでございました。亀田委員の今の御発言は、しかしこれは条件だというようなまあ感じ方が強いのじゃないかと思うのでございますが、国鉄当局の団体交渉に応じたというのは、条件でなくて、当然の労使関係の慣行上、そういう問題は団体交渉でやっていきましょうと、こういうことでございます。私も、私と会談されました方々には、その点はよく申し上げてあるわけでございまいます。この際、報労物資ということで何がしかを出すのか出さないのか、そういった問題は、団体交渉の場において解決すべき問題でございまして、事実それがずっと続行されておるように伺っておるわけでございます。で、私がお断わり申し上げておきたいのは、団体交渉を持つということは、先ほど申しましたように、何か実質的な中身を持って、それが前提となって、団体交渉を両当事者がやるというように約束したものではないということでございます。その点、誤解のないようにお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/16
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017・亀田得治
○亀田得治君 いや、その点は別に誤解をしていないわけです。〇・四カ月プラス千円、この小組合が妥結した線ですね。そのほかに報労物資について団体交渉をするということが、少なくとも可能性というものがある。これは、国鉄のほうは出さぬつもりかもしれぬ。しかし、こっちのほうはもらうつもりがある、やってみなければわかりませんけれども。ところが、そういうものがなければ、年度末手当については、〇・四プラス千円で妥結してしまうわけすから、だから、それはやはり条件ですよ。一種の条件というものは、必ずしも確定的な金額ときまらなくたって、そういう努力をする、お互いに団交をやる、これは、妥結してしまえば団交も必要ないんですよ。国鉄の言うのもちょっとおかしいんですよ。それは、当局のおっしゃるのは、そんな理屈はないんですよ。三月三十一日の年度末手当をどうしようか、こう言っているときに、別個に報労物資について団交するというものがなければないままで、それじゃそれで妥結するということになれば、それは小組合の額で妥結したということになりますけれども、はっきりこれは、竹内刑事局長おられますが、それは、解釈としてはそうなりますよ。それを条件というような言葉を使うか使わぬか、それは別です。だから、ともかく条件という言葉を使う使わぬにかかわらず、若干あとへ問題が残るのだ、こういう意味なら、これは事実関係そのままの表現ですから、お認めになると思いますが、ところで、その程度のことであれば、なぜもっと時間をかけないで早く妥結できないのか。この点、私たちが経過を振り返って、はなはだ心外なんです。官房長官自身も、その点ずいぶんあせられたことを私たちは報告で聞いておる。はなはだ遺憾なんですが、その点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/17
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018・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) 団体交渉に介入するなんということはいけないことでございますので、これは、国鉄当局のほうでどのように考えられておるか、お聞きいただきたいと思うのでございますが、私どもは、そういう交渉の場を持って、現に給すべきか給すべからざるかという問題があることは事実でございますから、これは団体交渉でひとつとっくりやってくれ、こういうことを申し上げたので、あとは国鉄当局と労組との間の交渉にゆだねてあるわけでございます。それ以上のことはいかんともできないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/18
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019・亀田得治
○亀田得治君 官房長官は、今言われたような意見を何時に国鉄当局に伝えられたか。そうして結局、最終的には何時に国鉄がそれをのんだか、その事実関係を明らかにしてほしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/19
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020・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) 社会党の皆さんが私の宅から帰られた時刻は二時二十五分です。そうして皆さんは国労の本部のほうに行かれて国労と話をしよう、私は直ちに電話連絡を国鉄当局にいたした、その直後でございますから、それで、お帰りになる前に、国鉄といたしましては、今私が申したように、これは、団体交渉は当然の労使双方の原権でございますから、団体交渉をやるにやぶさかではございません。こういうことは、お帰りになる前に、電話連絡の結果を関係者に私は申し伝えておきました。それから、帰られて国鉄の方々、労組の方々が当局と会われて、どういう経過をたどられたかということにつきましては、私は正確に時刻を把握いたしておりませんが、その点は、当事者のほうにお聞き取りを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/20
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021・亀田得治
○亀田得治君 当初、官房長官が社会党の江田書記長らに会いましたのは、三十日の午後九時ごろではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/21
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022・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) それはそうじゃございませんで、お目にかかったのは、ちょうど三十一日の未明にかかっておったと思います。十二時ちょっと過ぎでおったと思います。九時ごろは、成田君と私と電話連絡をしておったことは事実でございますけれども、会ってはおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/22
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023・亀田得治
○亀田得治君 九時ごろから、すでに小組合の妥結、千プラス報労物資についての団交という提案が出ていたわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/23
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024・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) そうではございませんで、報労物資という言葉が出たのは、私のお目にかかったあとでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/24
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025・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、三十日の十二時以後ですか。三十日の十二時ごろにお目にかかったそのときに出ていたわけですか、一つの提案として。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/25
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026・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/26
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027・亀田得治
○亀田得治君 それなら労働組合は納得させ得る、そういう意味だろうと思いますが、そういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/27
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028・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) 三十日の午後からひんぱんに接触がございまして、当初は、〇・四プラス千、プラス・アルファをどうしてももらわなきゃいけないのだというような意味のお話がございました。で、そういうお話がありますことも、逐一国鉄出局のほうには私は連絡をいたしておきました。その夜中になりまして、未明になりまして、二時間余りお話しを申し上げておる過程で、たとえばこういうようなお話がその間に出たわけです。このことも、当局のほうに私は伝えておきました。先ほど申しましたように、そういう問題があることは事実でございますから、それをどういうように取り上げて解決して参るかということは、団交という場でやるのが一般的な原則でございますので、そういうものがございますれば、団交やることにやぶさかではございません。こういう当局の返事でございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/28
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029・藤田進
○藤田進君 ちょっと私、ふに落ちないので……。私ども、ずいぶん案件を今まで処理してきておりますが、労使関係で、公的機関でやってきておりますが、よくそういうようなことがあります。一般産業で、通産省に関係あることは、通産大臣が夜おそく会ったりしてコメントされて、それがきっかけになって解決していく。官房長官は、夜二時になったりなんかして、いろいろ御苦労されたことは、私当時新聞で見て、官房長官たいへんなことだなと、実は思っていたくらいですよ。それで、二時過ぎ国鉄に電話しても、コメントされるときは、一つの話の糸口としてプラス・アルファというものを、報労物資というか、その解決の場はあくまでも団体交渉という形をとる。しかし何とか、そのコメントされた意味は、それを糸口として、内容の裏づけのあるもので、解決をすみやかにはかってもらいたいという気持から官房長官としてはやられたに違いないと思う。まあ団体交渉をそういったことで持つ、交渉するだけでいいんだから、あとはどうでもいいということじゃなかったろうと思うのです、事態が事態ですから。プラス・アルファというものを報労物資というテーマで交渉する。それにはある程度の裏づけ、それがどの辺かということが事前に話し合いがついてやる場合もありますが、この場合に、その報労物資は、金額にすれば幾ら幾らということはないまでも、官房長官としては、政府の大番頭がコメントする以上、そのものを糸口に解決する、報労物資の裏づけをつけて解決すべきであるという意味のコメントをされたと私は思うのです、心理状態については。それをやはりそのままに受けて当局は交渉しなければならぬでしょう。誠意をもって解決しなければならぬでしょう。それが非常に難航を続けているということは、私は、官房長官自身が、それを糸口に交渉さえすればいいのだ、そのうちに、時間がたてばおさまるだろうから、そんなものは中身がなくてもいいのだ、そんなことをあなたがされているような人とは思わない。お気持はどうだったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/29
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030・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) そういうぞんざいな気持じゃございませんで、団体交渉で出てきました結果につきましては、私ども、それを拒否したりなんかするつもりはございません。尊重していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/30
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031・藤田進
○藤田進君 そうじゃなくて、電話をかけられたのは、一方は労働組合のほうに、社会党のほうに行き、当局にはあなたのほうから電話をかけておられるようですが、そのときのお気持というものは、報労物資ということをきっかけで団体交渉もし、そうしてあわせてその団体交渉が実って解決するようにというお気持でかけられたのじゃないですか。交渉さえしていればいいのだ、もう裏づけなんというものはいいのだから、とにかくそういうことで交渉だけ続けておれという気持じゃなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/31
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032・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) 労使の双方に信頼がなければいけないわけでございます。交渉しておればいいので、あとはどうでもいいのじゃないかというようなぞんざいな気持は毛頭持っておりません。誠意をもって団体交渉をやっていただいて、その結果を私どもといたしましては最も尊重しよう、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/32
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033・藤田進
○藤田進君 時間が来たようですから、あと一つだけ。
さっきの事実問題で、二十六日の夜の団交、二十七日の団交を約束して、それが動力車労組ともう一つの単位組合といわれている組合と妥結をした。〇・四プラス千円ということで妥結をした。妥結しないという約束があったにかかわらず妥結をした。翌日の二十七日の団交を国労と持つ前に妥結をしたということがどうも事実のように思うが、その事実の認識が私どもと違えば幾論が分かれますので、聞いたところ、全然知らないと、あなたは先ほどおっしゃった。聞いてもいない。あれから後、この問題がかなり紛糾を重ねてきているのだし、支配介入しないということと、事実を、日本国有鉄道の理事者側との関係において緊密な情報を報告され、あなたがそれをキャッチされるということまで支配介入に入るわけじゃないのですから、それは電話され、いろいろそのこと自体にもあなた自身もいろいろ入っておられる。それは、解決したいという意味で入っておられると思うが、そうである以上、あのとき申し上げているように、先に妥結してしまったのだということをいまだに現在知らないというのは、私、不思議でならない。それは知っているのでしょう。ただ、私が言うような知り方かどうか、これは別ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/33
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034・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) 国労を除く三組合とこういうふうに妥結になりましたということの報告は受けました。それから、国労側と当局側がそういう約束があったということは、その当時も伺いませんでしたし、その後になりまして伺ってみますと、そういう約束はない、こういう話でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/34
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035・亀田得治
○亀田得治君 約束がないというのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/35
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036・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) そういう約束はした覚えはないということを国鉄当局側は申しておりますが、理事者側も参っておりますから、お聞き取り願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/36
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037・亀田得治
○亀田得治君 それでは、国鉄総裁を一ぺん呼んでもらって、約束しておいて、そもそも背信行為をやるわ、やったあと、今度はそんな約束もないのだと言うわ、そんなことでは、この問題というものはこじれる一方です。そんなことを政府側に対してどなたがおっしゃっているのか、官房長官にはどなたがおっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/37
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038・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) その担当の理事、局長、副総裁等と私はいつもお話はいたしておりますが、今、中村理事が参っておりますから、中村さんからお聞き取り願ったら、はっきりすると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/38
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039・亀田得治
○亀田得治君 官房長官にどなたがおっしゃったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/39
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040・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) こちらにおりまする中村常務理事であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/40
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041・亀田得治
○亀田得治君 それは、今お聞きになったんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/41
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042・大平正芳
○政府委員(大平正芳君) この問題が終わりました今月になって、この問題をいろいろ振り返ってみましてお話をした機会でございますから、四月の上旬であったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/42
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043・亀田得治
○亀田得治君 それはおかしいじゃないですかね。これほど世間で騒がれている問題につきまして、多少報労物資の解釈等については、お互いの思惑の食い違いというものは、私たちも想像もできますし、了解はできますがね。そんなあなた、国鉄労働組合が、二十六日の夜、その問題を当局と団交の席上で話したわけでしょう。これは、うっかり知らずにおればですが、知ったから話した。しかし、この問題は、話に出せば、国鉄はそういうことはしないと言わざるを得ない問題でしょうが、労働組合法が多数者原理でできてるんですよ。従来の慣行もそうなんですね。これはあなた、約束しとるのがあたりまえなんです。提案された以上は、それは、そんなことはしませんと言わざるを得ない問題なんですよ。組合は提案した、いや、そんな約束しなかった、約束しないで組合が引き下がるわけがないじゃないですか、論理的に言ったって。だから、そんな明確なことを、いや証文がないから、そんな約束したこともないと言ったような国鉄でしたら、それは、労使関係なんというものは絶対うまくいきません。いやしくも、これは官房長官の責任じゃないですが、官房長官にそういうことを国鉄の諸君が言っておるなんというのは、これはもってのほかです。私たち、そういう問題点等があるの、そういう点をよく検討の上で、検察当局にも一つの問題の扱い方というものを実は要望したいと考えておるのです。しかし、その基礎においてそういうことを言われるようですと、これはちょっと国鉄並びに労働組合の諸君も来てもらってそのときの団交の状態というものはやはり明らかにして、その上で、一体警察、検察の捜査方法というものが適当なのかどうかという点というものを明らかにしたい。きょうは、中村理事のほうは私は要求しなかった。そんなことは客観的に明白なことだと思いまして、警察、検察の問題に集中したいと思いましたが、ただ、若干出発点において、関係があるから、当初申し上げたように実は、官房長官だけにその間の事情を一応確かめた上で次に移ろうと思ったわけでして、中村理事が来ておられますが、そのようなことを言われるような理事さんには、これはちょっと聞くわけにいかない。労働組合の諸君もそろえて、そうして二十六日の晩の団交の状態というものはどういうものであったのか、具体的にこれは私は国会として明らかにすべきだと思う。はなはだ遺憾でありますが、法務大臣、わざわざお忙しいところを来ていただきましたが、あらためて国鉄当局並びに労働組合を呼んで、その点を確かめた後に、本論の質問をしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/43
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044・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/44
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045・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/45
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046・亀田得治
○亀田得治君 そこで、前提の問題が大へん時間を取り過ぎまして恐縮ですが、三月二十六日の晩に、国鉄当局と労働組合の間にそういう約束をして別れた。そういう事態についての認識は、法務省並びに検察当局としては、どのようにお考えになっておりますか。これは私たち、検事総長にもこの問題でお会いもし、公安部長には二回も事情の説明で会っております。非常にこの点が重大なやはり出発点なんでありまして、国鉄当局が今になってどんなうそっぱちを言いましょうとも、政府なり法務当局、検察当局の認識がきちっとしておるというなら、それでまた質疑が進められるわけですが、それはどのように理解されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/46
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047・植木庚子郎
○国務大臣(植木庚子郎君) ただいまの、先刻来の質疑応答にございました、三月二十六日の交渉の際に報償物資プラス・アルファ、それを団交にするかしないかというような問題等についての内容は、私ども当局はまだつまびらかにいたしておりません。そうした約束があったかないかということは、三月三十一日のあのストの状況、真相を調査いたします場合に、一つの材料にはなると思います。材料にはなると思いますが、われわれが、今各地におきまして違法性のあった行為が行なわれました、それを問題として捜査を進めておるのでありますから、直ちに今その問題が、約束があったかなかったかということが捜査に直接関係はないと、かように私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/47
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048・亀田得治
○亀田得治君 検察当局というものは、大体そういう答弁をしがちなわけでありますが、そういうことでは、やはりおさまらぬわけでして、三月二十六日にそういう約束をして、二十七日それを破る、こういうことをやれば、これは、当然国鉄労働組合というものに対して一つの強い戦術の決定というものをしいるものです。これは法律上も、期待可能性の議論とか、いろいろむずかしい議論がありますが、労働組合として、大組合がちゃんとあって、それが下がれますか。大組合の価値がなくなるのですよ。皆さんは、そういう月に千円、二千円程度の問題については、たいして関心を持っておられぬかもしれない。しかし、実際にわずかな給料によって生活をされておる立場の人から見たら重大な問題なんです。追い込められるわけです。黙っておれば、それが前例になるでしょう。私は、約束がなくてもこれは慣例を破る問題ですから、約束の点は、事実問題として別個に究明しましょう。約束がなくても、大きな慣例の違反でしょう。追い込められるわけです。そういうふうに追い込められた場合の人の立場というものは、一体法律的に判断してどうなります。重大な問題じゃないですか。それとも、もう一つは、先ほど来出ておりました報労物資のプラス・アルファの問題、これも、それほど重大な慣行違反をやった場合のあとの措置としては、その程度のことはのまなければ解決しないわけなんです。絶対解決するものでないですよ。私が組合の当事者でも、それは解決しませんね。それほど重大な問題とは思っていないのじゃないですか。そこにやはり認識の相違があるわけですね。したがいまして、この二つのことは、二十六日の約束は別としても、二十七日における慣行無視だ、この点ははっきりしているのですから、これと、そうしてそういう慣行無視の事態に対していかぬという反省があれば、あの程度のわずかな条件のものであれば、もっと早く妥結しておるべきなんです。国鉄労働組合としては、それ以上どうして下がれる。ぎりぎりの線ですよ。そういう場合に、追い込められた人間の犯罪性というものが一体あるのですか。そういう問題を抜きにして、ただ、現実に起きた事態だけがいろいろな刑法なり、そういうものに該当するというだけで、それを追及しているのだ、こういうことでは、多少といいますか、問題の扱い方として間違いがあるのではないかというふうに考えたわけですが、これは、第二次的、第三次的なつけ加えたような事情であれば、なかなかこういうものは勘案しておれないという検察当局の気持もわからぬではないが、そうじゃない。決定的な問題なんです。大臣は、そういうふうに先ほど言われましたけれども、こういう問題と切り離しておやりになっているのだというふうに、これを私は切り離す必要はないと思うのですが、もう一度御見解を聞きたい。それから、竹内さんにも聞きたいわけですが、あなたは刑事関係のりっぱな御専門家であるわけですが、そういうふうに追い込められた人の立場ですね。これは一体法律的にどういうふうに理解をしていいのか。私は、決して誇大に申し上げているつもりはない、この問題は。お二人からひとつ御見解を聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/48
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049・植木庚子郎
○国務大臣(植木庚子郎君) 重ねての御質問でございますが、私どもの立場といたしましては、お話のそういう約束があったかなかったかという、そういうような問題、あるいは二十七日の云々のお話がございますが、これらはいずれも、三十一日のあの行為を判定するにあたりまして、場合によってはそれが情状酌量の材料になるということは、これは考えられます。しかしながら、私どもが指摘したいのは、国鉄の職員が、いわゆる法令の定めるところによって、罷業行為をやってはいけないという建前になっております。その問題についての違反ももちろんでございますが、あるいはまた、この日における電電の発車をすわり込んでとめるとか、あるいは運転士、車掌等の正常な行為を妨げるとかというような、いろいろのことが各地で行なわれまして、それが、あるものは住居侵入の規定に該当いたします、あるいは暴力行為の取り締まりの処罰の法律に違反をしている、あるいは公務執行の妨害になる、あるいは業務妨害等の犯罪に該当するという疑いがありますので、それに従って、その疑いを明らかにしてこの問題の処理をいたして参らなければならない責任と義務がわれわれ当局にあるわけです。もちろん、先ほども申しますように、いろいろなその間の労使間の折衝の状況等が、真相を把握するために、あるいはこれに対していわゆる刑を量刑する場合におきまして参考になるということは、これは言うまでもないことと思いますが、私どもがいろいろ今回調べておりますのは、御承知だろうと思いますけれども、各地における電車の運行の阻止でありますとか、あるいは器物を破壊したとか、あるいは入るべからざる所に入って、そうしていわゆる住居侵入のようなことをやったというような、それらの問題を明らかにしたいというのが、われわれが今とっておる態度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/49
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050・竹内寿平
○政府委員(竹内寿平君) ただいま大臣がお話しになりましたことにつけ加える何ものもないわけでございますが、私の意見を述べよということでございますので、若干補足的に申し上げますと、この事件の的確な姿を把握いたしますためには、この事件の原因、動機、因由となりました事項につきましても、正確な材料、知識を持ちます必要がありますことは当然でございまして、先ほど来、二十六日、七日にかけての話し合いが、真相がどうであったかということには、検察当局としましても、すこぶる重要な興味のある問題でありまして、その真相をきめたいという気持を持つに違いないと私は考えておるのでございます。で、このような、すべて刑事学的に見ますると、無原因的な行為というようなものもないわけではありませんけれども、それはそれなりにまた学問上の対象になりますが、すべて、ある犯罪につきましては、その犯罪のよって来たる原因、動機、因由というものがあるはずでありまして、これは、犯罪成立の直接の問題ではないにしましても、その犯罪を生み出してきました意味におきまして、刑事学的に非常に価値の大きな部分でございます。この原因、動機が非常に犯罪と接着してきた場合に、御承知のように、これが緊急避難になったり、あるいは正当防衛になったりする場合もあるわけでございますけれども、本件のものが、このような、亀田委員のおっしゃるような意味においてかりに理解いたしましたといたしましても、これがすぐ犯罪の成否に関係のあるような緊急状態というふうに見るか、あるいは正当防衛的な権利の行使であるというふうに見るか、いろいろ見方はあろうかと思いますが、私ども検察当局としましては、それはそれといたしまして、現に行なわれました国労の違法争議、その違法争議によって生じたもろもろの公務執行妨害、暴行等の事犯につきましては、これは、それ自体として鋭意ただいま捜査しておるのでございます。この事件全体としての評価をいたします場合には、今御議論になっておりますような点も十分しんしゃくいたしまして、その価値を判断していかなければならぬというふうに、私、まだ真相をつかんでおるわけでございませんが、そういう考え方をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/50
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051・亀田得治
○亀田得治君 よほど今回の問題は真剣に考えてほしいと思っております。そうしませんと、労働組合を挑発しようと思えば、相手方がのめないような態度を使用者側が突きつけてくれば、いつでもそういう状態になってくるわけです。のめないような状態、金額の多寡でなしに、組織の抹殺という問題になったら、これはのめないでしょう。個人にしたら、もう消えてしまえと言われる、そんなら、黙って消える人がありますか。絶対ない。黙って消されるというような状態になった場合には、それは違法であろうが何であろうが、自分の命を守るために、必ず私はやると思うのです。それは三十二万の国労の組織としての問題であって、あなたのほうの見方が問題であって、各地でいろいろなことをやった人とは直接の結びつきにはならない、そういうふうなお考えだろうと思いますけれどもね。しかし、そうはいかないのですよ、それは。あちこちでいろいろなことをやった人が、何も自分たちの好みでやっているわけじゃないわけです。それは、二十七日のそういう事態に直面して、国労が緊急中央執行委員会を二十七日に開いて、こんな慣行ができてはたいへんだということで、相当強い戦術をきめているわけです。それは、切り離して考えられぬことはないかもしれぬが、そこは実質的には無理があるのです。形式だけをとっていけば切り離されるでしょう。だから、少なくともこの点は、私は、この普通の刑事学の理論から見ても、相当問題になり得る点だと実は考えるのです。あちらこちらで起きた現象をすぐそのまま私は是認するわけじゃないのですよ。是認するわけじゃないのですが、組織の抹殺というようなことはあまり真剣にお考えにならない、一般に。個人の命があぶないということは、これはたいへんな問題である。ぴんとだれでも来ます。だから、その点の認識を深めてほしい。きょう、いろいろ官房長官等々と質疑をいたしました過程において、若干でもそういう点のひとつ認識を深めていただければ非常にけっこうなわけですが、これは、再三われわれが最高検にも申し上げておる点ですが、それは公安部長も、重要な一つの問題点だと思うから、それ自身としては、その点はよく検討してみよう、これはもう率直に言われておるわけです。だから当然、そのような問題がやはり今あちらこちらで行なわれておる、やはり取り調べについても、ちゃんと頭に入っていてやってもらわないと困る。すぐそれで、無罪だ、放免だというところまで私は申し上げておるわけじゃないのです。だから、そんなこともかまわぬのだ、とにかくいろいろなことがあったから、それをやっておるだけなんだというのでは、どうしても納得いかない。そういうわけです。まあ法務大臣、私は最初は多少そういう感じを受けたわけですが、先ほどの御答弁ではそうでもないようでありましたが、これはひとつ十分検討してほしい。それから警察のほうも、もうすでに検察庁の段階に移っておるわけですが、これは時間もないから、お聞きをすることは省略いたしますが、そういう点はやはり幾分認識していただいた上でなおかつということでありませんと、どうも工合が悪いわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/51
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052・藤田進
○藤田進君 最近——この問題についてだけでけっこうですが、お答えをいただきたいのです。これは竹内さんにお聞きします。従来、この種労働問題に関する検察活動については、最高検あるいは法務省と緊密な連携協議の上で発動する場合は発動されてきたと思うのですが、各地検が任意に捜査し、勝手な執行ではなかったと思いますが、今回の場合も、そういう協議をされて、最高方針がきまって手をつけるということになったのかどうか。四つほどお聞きしたいのですが、これをまず聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/52
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053・竹内寿平
○政府委員(竹内寿平君) これは、労働事件はすべて最高検察庁が指揮をとっておるというふうではなくて、事柄が全国にまたがっておるような事件につきましては、処理がアンバランスになりませんように、公正に行なわれますようにという配慮から、各地で発生した事情、現象等を最高検に報告させまして、最高検で検討した上で、現地の意向を聞いた上で、やるべきものをやるというふうに、これは、現地がそうでないと言うものを最高検が命令してやらせるというのじゃございませんで、最高検はそういう意味においての調整をはかる、その間に法律上の問題等がございますならば、私どもも、場合によっては法律上の助言をするということがあり得るのでございますが、一般的に公安労働事件をすべてそうするというのではございません。ただ、公安労働事件が全国的にかなり一斉に発生する場合が多いので、従来そういうような取り扱いが多かったということは言えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/53
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054・藤田進
○藤田進君 国鉄の今度の問題はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/54
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055・竹内寿平
○政府委員(竹内寿平君) 本件につきましても、今のような、各地の状況を最高検に報告をしてもらいまして、最高検で検討した上で、検挙という処置に相なったと思いまするが、もちろん、この検挙をいたしますにつきましては、検察当局の意向もくんで、相談の上で決定したことと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/55
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056・藤田進
○藤田進君 ですから、この場合は、最高検あるいは法務省とも緊密な連携、協議をされて、検察活動に入るということになったんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/56
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057・竹内寿平
○政府委員(竹内寿平君) 法務省は、この問題につきましては、法律上の助言等はいたしておりません。あとから報告を聞いたのでございますが、検挙に際しましては、警察当局と現地検察庁、並びに現地検察庁を通じてそれらの情報が最高検にも来て、最高検で協議をした結果、するという方針をきめて処置したものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/57
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058・藤田進
○藤田進君 これは、われわれの感じでは、それはときどきの事案によって違いますけれども、何だか国鉄の当局側の検察庁のような印象を受けるわけです。それは、竹内さんも専門家でしょうが、労働関係法が特別法であり、今日の組合法も基本法であるということは、少なくとも国鉄営業法なり、一般商法概念でこれを扱われるべきではない。これはもう労働法として大事なところだと思うんです。したがって、お聞きいたしますが、原因の調査というようなことは、逮捕その他の活動をされた上で、その中で調べていきたいというような意味の法務大臣からの答弁がありました。違法性がある以上、そういう原因というものは一つの参考にすぎない。これは少し権威のない検察活動だ。検察活動をなさる以上、ある程度の起訴に該当するというめどをつけられておやりになる従来建前だったと思う。調べてみたが、起訴に値しない。起訴猶予とか不起訴とかいうものは、ものによってはあるとしても、しかし、当初の建前としては、違法性が濃厚であるという、したがって起訴に至るというめどがついているだろうと思うんです。しかし、その原因となっているものについてはまだ十分究明がないままに、最高検としては検察活動に入ることの意思を決定されているということになる。そこで、この種の労働問題について、過去の判決例等から見て、ものによっては正当防衛——この際は、われわれは非常に考え方が適当であろうと思われる点は、組織に重大な従来の慣行を破ってですね。労働組合というもの自体の存立意義というものは、個々の労働者では弱いから団結をする。したがって、憲法二十八条も、団結権を与えるということになっている。それが将来にわたって、今回のみならず、少数の組合、しかも、弱い強いはお調べになればわかりますが、比較的その団結の質において量において大きいものが当局との交渉においても力を持つというのが、これは原理ですね、労働組合の、もう「いろは」でしょう。それが少数組合、しかも質的にも比較的に相対的に弱いとみなされるものにまず妥結をさせて、そして自余の強い組合にこれを了解、妥結をさせるというふうな今度の二十六日の当局の背信行為というものは、組合としては、組合存立のその意義に全く反する。将来重大な影響を持つといったような意味からすると、正当防衛という議論は当然出てくるように思う。その正当防衛というものは、一応労働関係には、判決例その他から見てあると思われるが、そういうものは労働組合というものにはないと思われるか。私は、正当防衛の理論に基づく判決例というものは多々あると思うけれども、その点、どういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/58
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059・竹内寿平
○政府委員(竹内寿平君) 労働法の労働事件と申しますか、こういう問題につきまして深い理解を持って検察に当たらなきゃならぬことは、私どももそのとおりだと思っております。のみならず、これはなかなか一朝一夕に口で申しましてもできないことでございますので、私どもとしましては、労働専門に扱わせる検事を指名いたしまして、平素労働問題に関する豊富な知識を持つように訓練しつつある。そういう検事に、こういう事件が発生した場合に事に当たらせて、そういう点からの不用意な法の適用というようなことを避けしめるように努力をいたしておるのでございます。で、労働事件につきましていろいろ問題がございますが、その中の一つを今御指摘になったのでございまして、まあいろいろな言葉で表現されておりますのでございますが、判決例などにも、超法規的違法阻却事由というようなことで、違法性が阻却される場合があるのだということの下級審の判決もございますし、期待可能性の事由と申しますか、そういうような観点から、違法性を阻却するというような判決もありますし、まあこれは判決例ではございませんが、理論として、抵抗権の理論といったようなことも言われておるのでございまして、論ずるところ、私どもも寡聞でございますけれども、いろいろな議論を承っておるのでございますが、私どもの抱いております刑法に対するそういった違法性を阻却する事由というものにつきましては、そう軽々しく抵抗権の議論を振り回して、犯罪が不成立になる場合があるのだとか、あるいは超法規的違法阻却事由がみだりにそこら辺に幾らでもあるかのごとく喧伝されますことは、刑法を扱っております立場の者としては、さようには考えておらないのでございまして、判例につきましても、そのような意味において争った事例が大部分でございますが、それらは、上級審においていずれもくつがえっておるのでございまして、それらの法律上の扱い方の動きというものは、そういう点について、確立の方向には向かっておりますが、いまだ不動の状態にあるとも言えぬのでございます。私どもは、そういう解釈についてのすみやかな、確定的な意見というようなものをはっきりさせまして、法的安全に資して参りたいと考えておるのでございます。ただいま御指摘のような議論の存じますこと、並びに下級審の判決にも、そういう意見で無罪にした判例等もあるというようなこと等は関連があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/59
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060・藤田進
○藤田進君 でありますから、法務大臣が言われたように、捜査の過程でその原因等を調べればいいのだけれども、参考意見というものはあまりにも——犯罪があったとすれば、その動機なり原因ということをまず究明をされて、最高検においても、これは検察活動をしろという意思を決定される以上、その辺をもっと調査されているのがしかるべきなのであるにかかわらず、そのようなことは今後事態が明らかになるという、そんなことでいいのか、私は少し疑問に思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/60
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061・植木庚子郎
○国務大臣(植木庚子郎君) 私の表現の仕方によって、そうした御批判をいただくのかもしれませんが、私は、やはりこの国鉄の職員が一般的に申しまして争議行為を禁止されておるということ、あるいはそれが実際上行なわれて、多数の公衆に非常な迷惑を与えたということ、こうした現実の問題がはっきりあるのであります。その場合に、なるほど仰せのように、それが何によってこういうようなことが起こったのかということを事前に内偵といいますか、十分調べて、しかる後に本論に入って調べるというやり方ももちろんあろうと思います。私は先ほどこうした不当な刑罰法規に触れるような疑いがあったから、それで直ちに捜査を開始したというように、ややそのほうに強くお取りになったかと思いますが、それは、われわれといたしましても、前後の事情については、でき得る限りの調べはもちろん検察当局としてやっておることと思うのであります。しかしながら、あまりにもそこに現われたる争議行為そのもの、すなわち本来なすべからざる争議行為をやったという事実は厳然たるものがある。しかも、それが公衆に非常な迷惑をかけた、それがまた他の刑罰法規にも触れること明瞭なるものがあちらこちらで頻発したという場合には、ゆっくりと、それはなるほど、原因、動機等もすぐ内偵の上で調べて、それから手をつける方法もありましょうし、あるいは、ときによっては、検察当局といたしまして、その違法性に目をつけて、そしてこれに対して直ちに捜査に入る、捜査に入れば、もちろん先ほど申しますように、その犯罪の原因、動機等についてもあとう限り、しかも、労働問題に対して、でき得る限りよい慣行ができるようにという考え方で臨んでおる政府の労働関係の当局の意向も十分体しつつ、われわれは刑罰法令の施行に当たって参るということよりほかにないのでありまして、表現の方法が先になったかあとになったかという違いだけで私といたしましても、行為があったから、直ちにそれだけで何でもかんでも、ほかのものはほんのちょっとした参考にしかしないのだ、そういうようなつもりで申し上げておるのではない。もちろん私だって、そういう問題が起こって、それを調べれば、それについて原因、動機が情状酌量の余地があるかないか、あるいは政府委員の答えましたように、違法阻却の理由があるかないかという、そういう問題はもちろん十分調査いたしまして、その上で最後のいわゆる起訴、不起訴その他の処理をいたすることは、これは申すまでもないのでございますから、この点はひとつ、もともと私、説明がへたでございますけれども、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/61
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062・藤田進
○藤田進君 でも、本末転倒じゃないでしょうか。今の検察庁としては、個々の事件に個々に活動したのではなくて、あなたの監督をされる検察庁は、検事総長を初め協議した結果、検察活動をするとの決意になったと、これは事態が明らかになった、しかもその場合には、まあこれは起訴猶予か不起訴になるかもしれないが、とりあえず検察活動はやって捜査をしてみようという、そういう軽々なものでも、特に労働関係でもあるし、その一方に、ある意味では弾圧呼ばわりさえされるような実情ですから、活動される以上は、ある程度の見通し、めどというものをつけられ、その上で、結論として起訴猶予なり不起訴ということはあり得るとしても、当初の出発点においては、ある程度のめどがなければ意思の決定はされないと思う。一方、竹内さんも言われたように、労働関係においても、刑事罰の場合に、正当防衛の理論なりあるいは緊急避難なり期待可能性の理論というものは当然あるということであれば、先ほど他の委員から質問したように、二十六日の晩には、第二組合ないし動力車労組との間に先に妥結するようなことはしない、絶対多数である国鉄労働組合との関係の団体交渉を明二十七日に持つと言っている。官房長官は、そうは聞いておらない、そういうことはないと言われているくらいに、この問題が不明確なわけなんです。それはこうであったという答弁がこの委員会でできる程度に、この事態がはっきりされていなければならない。それが全然法務大臣のところにも来ていないでしょう。こういう重大な背信行為である、組織に将来大きな問題を残す労使関係の問題解決の本体を否定したようなことで事が進んでいくというような事態があるなしという議論が、今お聞きのように、官房長官との間にもあった、それを法務大臣としても全然お聞きになっていないということですか。事情を知らないと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/62
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063・植木庚子郎
○国務大臣(植木庚子郎君) その点につきましては、いわゆる原因、動機といいますか、その一つのよってきたるもとでありますが、それを一々私のところに報告は受けておりません。あるいは最高検におきまして、協議の際に、そうした問題についても、どの程度かわかりませんが、ある程度の理解を持っておったかもしれません。それはなお必要ならば問い合わせますけれども、今回のこの争議が初めて起こった争議ではございませんで、今まで労働争議というものは、こうした国鉄の電車の出発を押えるとか、あるいは車掌さんが大ぜいでもってその運転をじゃまするとかというようなことは、従来もあったことであります。したがって、検察当局としては、その原因は、もちろんある程度必ず私は関知しておったことと思いますし、のみならず、その現実に起こった事態を見て、従来のこうした場合における捜査開始といいますか、各種の経験がたくさんございますから、その経験にのっとって、この際捜査活動をしてよろしいという建前でこの捜査が始まったものと、かように私は考えているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/63
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064・藤田進
○藤田進君 この種の、これほど大きな問題だとされている最高検が意思をきめるために、個々に検察活動を開始しないという問題があるにかかわらず、法務大臣は、そういった原因等をまだ聞いていないということは、お忙しいとはいえ、私どもとしては非常に不満足です。しからば、事務当局は、竹内局長のところへそういうことを連絡されているかどうかをただしたい。それから、事務当局は聞いておられるかどうかということです。それから、法務大臣の何もあげ足をとるわけでも何でもないが、従来やっていたからそのとおりやっていると言われますが、その事案々々によって性格はそれぞれ違う。同じものもあります。今度の場合は今度の場合の特徴がある、原因がある、それを、マンネリズムに陥って、今までやったから、電車がとまったからやった。まるきりオートメーションの、自動化された機械みたように、何でもかんでもという、そんな態度では困る。これはこれとしての原因というものを十分把握された上でないと困る。原因は、特に二十六日の晩、当局との間にかわされた約束があるという、官房長官に聞くと、中村常務ですか、その人からの連絡で、そういう約束がないと、こういう状態の中で、検察当局からの報告等に基づくと、はたしてどうであったか、これを聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/64
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065・植木庚子郎
○国務大臣(植木庚子郎君) どうも私の申し上げ方が悪いのかもしれません。下手なのかもしれません。私は、検察庁当局がマンネリズムに陥って、そうして従来やったことがあるから今度もやれというな式でやったとは申していないのであります。先ほど申したのも、多年の経験の上にのっとって、そうしてこの事案については、いわゆる第一線から、検察庁から相談のあった場合、その場合に、全国的にながめて、そうやってよろしいという結論に達してこの捜査を始めたと、こう私は信頼しております。こう申し上げているのであって、何もただ軽々しくやれということでやったというわけではないのですから、どうも私の申しようがまずいのかもしれませんが、どうぞひとつ御了承瀬いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/65
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066・竹内寿平
○政府委員(竹内寿平君) 二十六日の交渉の経過等につきましての資料でございますが、これは、私も聞いておらないのでございます。したがいまして、もちろん大臣にも御報告申し上げていないわけでございます。私の考えといたしましては、それをどういうふうに理解して、検察庁が今度の事件の検挙に踏み切ったかというような点につきましては、それをふんまえての議論としては、私はここでできないわけでございまして、その点についても、検察庁の意向をただしてみる必要があろうかとは存じますが、この段階で、私ここへきて初めて今のような問題があるということを知ったわけでございまして、これも、今私の聞いた限りにおきましても、争いのある問題のように伺っておるわけでございますが、そういう問題を抜きにいたしまして、おそらく検察庁は、そういう点についての考え方を考慮しておるとは思いますが、どういう考慮をしたかということになりますと、法律的に申せば、そういう事情でありましても、そのことから法規的に公訴棄却をするとか、あるいは犯罪が不成立になるという考え方には立っていないということは、私、伺うまでもなく、申し上げられるのじゃないか。しからばこそ、現象をとらえまして、その違法なる状態を看過しがたしという考えから検挙に踏み切ったものと思うのでございます。その事情等をどういうふうに参酌して今処理を進めておるかということについては、これは、検察庁にとくと確かめてみないとわかりませんが、しかし、それを確かめてみた結果といたしましても、捜査の段階でございますので、十分申し上げ得るかどうか、これも疑問でございますが、いずれ捜査が済んだ上におきましては、ある程度お答え申し上げられるのじゃないかというふうに考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/66
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067・藤田進
○藤田進君 関連質問ですから、あとに譲りますが、あと一問。今の点の、仮説に基づいて判断されるということは、非常に問題があると思うのです。従来検察庁なり法務省とされては、この種労働事案につきましては、団体罰で行かれた場合もあるし、個人罰でお行きになった場合もある。あるいは団体罰、個人罰併用といった、まちまちのものもあるわけなのです。これは一貫していない。今度の場合は、どういう態度で発動されておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/67
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068・竹内寿平
○政府委員(竹内寿平君) 検察庁からの事案の報告を見ますると、団体罰とか個人罰とかいうような考え方で処置するというようなことは、私は実はあまり考えておらないのでございますが、その事案々々に即して、たとえばあおり、そそのかしというような行為のみを罰する罰条のあるものにつきましては、職員でありましても、それに参加いたしましても、そのこと自体は犯罪にならないわけでございまして、あおり、そそのかしという姿でとらえる。そうなりますと、あおり、そそのかした人というのは、何か団体の相当の地位の人ということになろうと思うのです。そういうのをもって団体罰的な扱い方だとおっしゃれば、それは、日教組の事件などは、そういう扱いをしたことになると思います。
それから、今回の事件のように、ストは禁止されており、その禁止されている人たちがストをやり、そのストの過程において、威力業務妨害ですわり込みをやったとか、あるは妨害を加えてけがをさせたとか、傷害を起こしたとか、集団で暴力を加えたとかというような、この行為をとらえていきますと、個人罰となりますが、今度の事件は、大体において個人罰的なことになろうかと思いますけれども、それは肝案によることでありまして、特に団体だけを罰しているとか、あるいは個人だけを強化するとかというような取り扱いの方針とか、やり方、考え方があるというものではないと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/68
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069・藤田進
○藤田進君 しかし、国鉄は国鉄の労働組合として規約というものがあり、おのずから統制というものがあり、それは、組合内部としてのそれぞれの罰条がある。組合の決議方針に反する場合はですね。しかし、国労自体がそれぞれ合議体として決議し、指令を出し、その指令の範囲内で行動をする。指令の範囲をこえたものについては、行為罰ということもありましょう。これは、国会でも、今なくなった末弘厳太郎博士あたりは、労働問題については団体罰が正しいという説をあの人はずっと持ち続けられておりました。したがって、その内部団体の規約等というものから照らして、あるいはこれに反すれば除名というようなことも最後的にはある。あるいは組合によっては、除名をされれば直ちに解雇という、ユニオンショップの労使間の協約があるというような場合さえあるわけです。したがって、指令の範囲をこえたものについては、行為罰というようなこともあるのです。どうも検察当局にしても、この理論が一貫していないように思う、その点についてはどう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/69
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070・竹内寿平
○政府委員(竹内寿平君) 先ほどお答え申し上げましたとおりでございますが、指令それ自身が違法であるというような場合に、その指令を出した人が、ある具体的行為の強化というふうに見られる場合には、やはり犯罪としては、個人的な色彩の強い暴行事件とかあるいは傷害事件とかというような、そういう事件に関与したということになるのでありまして、団体罰をきめた刑罰があるならば、その団体罰を適用したものについては、団体的な、団体罰的な扱いになるわけですが、現行法のもとにおきましては、そういうような刑罰類型はないようでございまして、刑罰として現われて参りますのは、個々の組合員の行為、それに上級の幹部なり何なりが関与しておりますならば、それが共犯という形になる。その他あおり、そそのかしというような特別な罪を設けておりますようなものについては、あおった者、そそのかした者でありまして、そそのかされた者、あおられた者は犯罪にならない、こういうことになっているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/70
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071・亀田得治
○亀田得治君 大体ひとつ結論に入りたいと思います。この今回の捜査は、本日問題になったようなところなどがあまり明確でないままに、各地区とも捜査に入ったのが真相のようです。私たち、その後最高検に対してこの点の説明もし、組合からも説明書等が出ております。現段階では、相当この点の認識は深まっていると実は考えております。もちろん、報労物資についての団体交渉の意味、そういうものなどについても、若干食い違いがあるでしょう。まあ質疑の過程で明らかになったように、あの約束の、あるなしの問題じゃないわけでして、その前に、むしろ慣行という問題がある。慣行に立っての約束なんです。だから、約束の点が不明確だからといって、何も国鉄のやったことが非常にそれで合法化されるというわけではないわけです。これはまあ竹内さんは、そういう点はよく分析して御理解願えると思うのですが、そういう点は、説明すれば、これはだれにでも了解願えるわけですが、なかなか地方の検察庁までそういうことが届かない。まあ公安部長も、地方に行かれた場合、なるべくそういうことをひとつ直接説明してくれぬかというような話までされていたくらいですが、われわれ、逮捕者などを出している所へ行けば、それは説明して回ります。回りますが、何分にも汽車が先に出てしまったのだな。出た汽車を引き戻すほどの理論にはならぬわけなんです。まあそういう状態にあるわけですが……。それで、もう一つは、今まで国鉄でいろんなストライキなり処分がありました。ここに全部表があるわけですが、三種類になる。一つは給与の問題、もう一つは、皆さんから言えば政治闘争と、そういったようなことで、特に許されないものだという見解を持っておられるようですが、ともかく警職法とか安保とか、そういう問題に関連してのもの、今まではその二種類なんです。今回初めて出たのが組織の問題です。全部組織問題がそういうふうにばっとぶっつけられたものはないわけなんです。だから、現象だけを見ておりますと、ああまたかと、こういう感じを持たれると思うのですね。組織の問題から来ている。だから、そういうふうに国鉄がしかけてきて、そして今までは待遇なり、そういう問題、あるいは警職法等の問題、労働組合から見たら、今度の問題がもっと重要なんですね、こちらにとってみては。その重要なやつに、しかも、起きておる事態としては、今までよりも決してそんなに強いものではないです。私たちも過去のやつは知っている。それに対して大量に行政処分等をやってきているわけですね、前代未聞の。検察庁も、それに乗って大量な検束をやっている、結果としてそういうふうに出ているわけなんです。この点が、全体を総合してみますと、はなはだわれわれとして遺憾に思っているわけでして、したがって、まあわれわれも要求しているわけですが、各地で捜査をしておる、その捜査の結果というものは、やはり最高検に集めて、そこで検討して、ひとつ起訴するかしないかですね。ばらばらでやっております、起きた現象自体でやっておりますから、そういうふうにやはり努力してほしい。諸般のそういう基本的な問題等も検討したが、なおかつやむを得ないというふうに、皆さんがそういう見解に立たれる場合は、それはまあ一つの立場ですから、しかし、それだけのやはり検討はなすべき私は事案だと思っておるわけでして、この点の要請にもなりますが、大臣のひとつ見解を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/71
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072・植木庚子郎
○国務大臣(植木庚子郎君) ただいまの御発言の趣旨につきましては、先刻来の質疑応答によりましても、御意向の存するところも十分拝察せられまするし、われわれとしても、事の重大性にかんがみまして、十分慎重に処理しなければならぬと思っております。したがって、最高検出局におきましては、地方の各検察庁との間の連絡を密にいたしまして、あやまちなからんことを期したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/72
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073・亀田得治
○亀田得治君 それから、これは刑事局長に一点お伺いしておきますが、私たちがいろいろなえらい人の問題をここで取り上げますと、刑事局長は、いつも、自白を求めるためだけに強制捜査をするわけにいかないと、なかなか筋の通ったことを言われるわけです。われわれ、ちょっとはがゆいなと思うから、私も、わかっておりながら、多少言い過ぎる場合もありますが、ところが、どうも今度の捜査の状況を見ておりましても、各地を私はできるだけ回りましたが、やはり自白を求めるためだけに逮捕をしておる。こういう事案等が相当あるように思うんですが、刑事局長、そういうことはないというふうにここで断言できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/73
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074・竹内寿平
○政府委員(竹内寿平君) これはもう、はっきりと私は断言いたしたいと思います。もちろん捜査でございますから、何がしかの供述を求めることは、捜査として当然なことでございますが、その述べられた供述が他の人たちにつうつうに漏れてしまわないように、そういう意味においての証拠の隠滅をはかられまいという考えが勾留の原因に私は大部分なっておると思います。今日自白を求めるための身柄の拘束なんということは、理論としてはもちろんでございますが、実際問題として、そんなことはできるものじゃございません。ただし、供述を求めることは、それは捜査でございますから、いろいろ手を変え品を変え、申しますならば、検察の限度をこえてはもちろんなりませんが、必要な供述を求めることは当然でございます。しかし、それを目して自白の強要だというふうな見方を私どもはいたしておらないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/74
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075・亀田得治
○亀田得治君 同じ事実でも、自白を求めておるのか、あるいはその証拠隠滅を防いでおるのか、そこの判断はきわめて微妙なわけですが、しかし、どちらかといいますと、犯罪が相当明白であり、しかも、ほうっておけばいろいろな証拠が隠滅される、打ち合わせもされるというふうな問題でありましても、えらい人の場合とそうでない場合には相当違いますね。これは抽象論じゃいけないわけですが、今回こう回ってみましても、やはりそういう感じを受けておるわけです。しかしこれは、個々のケースをここに出しまして議論しなきゃ始まらぬことですから、この程度にはいたしておきますが、これは、そういうことのないように、こういう本質的な問題をかかえている問題だけに、ひとつ御注意を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/75
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076・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/76
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077・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 速記を始めて。
他に御発言もなければ、本件については、一応この程度にとどめることにいたします。
午後二時まで休憩いたします。
午後一時四分休憩
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午後二時三十分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/77
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078・松野孝一
○委員長(松野孝一君) これより法務委員会を再開いたします。
行政事件訴訟法案及び行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
前回に引き続き、質疑を続行いたします。ただいま出席中の当局側は、浜本訟務局長、杉本参事官であります。御質疑のある方は、順次御発言下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/78
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079・亀田得治
○亀田得治君 最初に、現在の特例法と新しい法案の基本的な違い、そういう点について総論的にお尋ねをしてみたいと思います。
現在のこの特例法は、行政事件も本質的には民事事件と異なるものではない、もちろん、両者の差異がありますから、それに応じた民事の特例を規定する、こういうふうなきめ方をやっていると思いますが、そういう点は、局長はどういうふうに現行法を理解されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/79
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080・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 行政事件訴訟の法律的な性質については、いろいろ考え方もあるかと存じますが、ともあれ現行行政事件訴訟特例法は、戦後間もないころ、倉卒の間に作られましたので、立法者が立法当時どういう考え方をとっておったかは別といたしまして、できておりますものについて客観的に考えますれば、今、亀田委員がおっしゃいましたように、全般的に民事訴訟法によるという建前に立ち、わずかに十二カ条の特例を定めるという形で、その名の示すとおりに、特例法として成立をしているのであります。これに対しまして、ただいま御審議をいただいております行政事件訴訟法案を立案しますにあたりまして、私どもといたしましては、現在までの経験に徴しまして、十二カ条によるだけで、円滑に裁判所にその審理を願うことはとうていむずかしいと考えまして、このたびの法案では、行政事件訴訟というものの本質に着目いたしまして、特例としてでなしに、行政事件訴訟法という一つの体系を考えなければならぬという建前で臨んだのでありますが、できましたものは、御承知のように、四十数カ条でありまして、はたしてこれで、民事訴訟法と離れた一個の手続法体系として独立のものであるかどうかということについては、いろいろ観察なり御批判なりがあろうかと思うのであります。でありますから、できたものを結果から考えますれば、今御質問のような、はたしてどちらの態度をとっているのかという御疑問が残るかと思うのでありますが、立案する私どの気持は、今申し上げましたような気持であったのであります。ただ、わが国におきましては、御承知のように、行政事件訴訟も、普通司法裁判所において扱われますので、しかも、その独立の手続法を規定するといたしましても、きわめて民事訴訟に近い性質の手続法にならざるを得ませんので、本法案におきましても、やや詳しい手続をきめたとはいいますものの、やはり共通の部分については、しいて本法案に手続を網羅的に規定することなくして、共通的なものについては民事訴訟の例によるという、第七条によってまかなうという建前をとりましたので、できておりますものを結果的に見ますれば、中間的とも言えるかもしれません。言えるかもしれませんが、立案する私どもの気持といたしましては、行政事件訴訟の特質をとらえて、その訴訟法を一つの体系として定めたいという考え方をとっておったのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/80
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081・亀田得治
○亀田得治君 個々の条文につきましては、おいおいまたお尋ねをいたしますが、現在の特例法のもとにおいては、つまり、でき上がった法案あるいは現行法というものを一応抜きにいたしまして、事件そのものですね、行政事件民事事件、これに対する見方はどうかという点の見解を特に求めておるわけなんです。現行法では、もちろん行政事件と民事事件の違った点はありますが、本質的には同じなんだ、こういう考え方に立っておると解釈していいのか。したがってまた、今度の法案では、その点がどうなるのか、そこの見方なんですね。現行法上の見方と事件についての性格上の違いですね。法律じゃなしに、もちろん、法律を離れて御説明願うわけにはいかぬでしょうが、そこはどういうふうに理解すべきものなんですか。
もう少し私の質問の要旨を申し上げますと、たとえば、このあなたのほうの逐条説明の冒頭には、「行政事件訴訟が一般の民事訴訟と基本的には性格を異にする面があることにかんがみ、」云々と、こうなっておるわけですが、行政事件そのものの性格というものが、民事事件と基本的に違う。それだけだとはもちろん書いてないわけですが、そういう点も現行法よりも強く考える。事件そのものの見方に変化が出てきておるのかという点をお聞きしておるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/81
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082・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) きわめて理論的な問題でありまして、私がお問いに対する適切な答えをできるかどうかわからないのでありますが、私どもの理解する限りにおきましては、現行特例法は、やはり名の示すとおり、特例法という名前を持っておりますので、ややその本質は、民事事件もしくはそれに近いものだというふうに見ておるということが言えるかと思うのでありますが、少なくともこのたびの私どもの御審議願っております法案では、民事事件とはやはり違う、行政事件というものの特質を強調して、これについての一般法たる行政事件訴訟法を作るという建前で臨んでおりますので、学者が理論的にどう今後説明するかは私ども存じませんが、立案者といたしましては、この法案に関する限りは、行政事件訴訟というものを民事訴訟とは違った体系のもとに統一法を作るという建前で臨んだのは事実であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/82
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083・亀田得治
○亀田得治君 そういたしますと、本法は、相当大きなやはり現行法の建前の変更ということに関連しようかと思うんですね。現在の特例法も中間的なもの、あるいは新しい法案も、多少ニュアンスが違うけれども、少しそれを強めた程度、ということではなしに、相当行政事件に対する考え方というものをここで変更するというふうなことになるわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/83
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084・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 私は、現行法の立案には不幸にして実は参画していなかったのでありますが、まあ特例法という名前をとったところから、私、今申し上げましたようなことを申し上げておるのでありますが、私は、やはり現行法においても、事件そのものの見方は、本質的には変わらないと思うのであります。ただ、それを手続にのせる、手続を作るにあたってどう見るかというだけの問題でありまして、行政事件そのものが、本法案のもとにおける行政事件と、現行特例法のもとにおける行政事件とは、性質が違ってくるということは、私ども考える必要はない、また考えておらぬと申し上げていいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/84
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085・亀田得治
○亀田得治君 考える必要がないとおっしゃいますけれども、相当しかしこれは、基本的に重要な問題になるのじゃないか、私は疑問を持っておるわけです。考える必要がないという意味はどういうことでしょう。それは、行政事件を民事事件と本質的に変わらないと考えている場合、そういうふうに考えるか、あるいは非常に違うのだというふうに考えるかは、いずれの立場に立つかということによって、個々の条文がはたしてそれでいいのかどうかという問題にやはり直ちに関連してくるわけですね。考える必要がないということの意味ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/85
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086・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 考える必要がないということは、表現が少しまずいかもしれませんが、要するに、現行行政事件訴訟特例法における行政事件、それから、ここに示されております行政事件訴訟法のもとにおける行政事件というものは、性質が変わってくるわけではないのでありまして、ただ、それを民事訴訟との対比においてどういうふうに評価するかということは、それは、評価する人の個々の立場によって違ってくるかと思いますが、少なくとも両法のもとにおける行政事件というものがそれぞれ性質が違うという取り扱い方は法律はしておらぬという趣旨で私は申し上げておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/86
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087・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、行政事件というものは、性質は違わない。法律の規定の仕方は違う。そういう意味のようですが、法律の規定の仕方を違えてくれば、行政事件の見方というものは、当然これは変わってくるわけじゃないんですか。表裏一体のものと違いますか。法律の規定の仕方を違えましても法律上の性格に変更がないといったようなことは言えぬわけでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/87
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088・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 私の御説明申し上げようと思いますところを成文の根拠に基づいて申し上げますれば、現行行政事件訴訟特例法におきましては、「行政庁の違法な処分の取消又は変更に係る訴訟その他公法上の権利関係に関する訴訟」、こううたっておりますし、また、本法案の第二条におきましても、「この法律において「行政事件訴訟」とは、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟及び機関訴訟をいう。」こう規定をし、この抗告訴訟については、第三条に、「「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。」と、こういうふうに説明しておるのでありまして、私どもが理解する限りにおきましては、行政事件訴訟というものの根本は、公権力の行使に関する不服の訴訟なんであります。それを本法案の第三条の第一項のように表現するか、あるいは現行特例法の第一条のように表現するか、表現の仕方は異なりますけれども、その内容において出違わぬと、私はこう考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/88
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089・亀田得治
○亀田得治君 本来この法律が変わりましても、事件そのものは、これは同一なわけですが、ただ、その事件の規制の仕方、扱い方が違うのがつまり法律の改正ということでしょう。しかし、この行政事件をどのように取り扱うかということは、たとえばアメリカ方式、西独方式、これなんかは非常にはっきりしておりますね、おのおの。そういうわけでして、なるほど事件は一つには違いない。法律が変わったからといって、別な事件が突発してくるわけじゃないわけですよ、これは確かに。しかし、それを法律が規制するということは、法的な評価をするわけでして、その評価の態度というものは、たとえばアメリカ方式から西独方式に行ったら、非常に違うわけじゃないですか、はっきりこの場合は違ってきませんかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/89
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090・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) もちろん、アメリカ法、西独法は、違うことは違うのでありましょう。しかし、現行行政事件訴訟特例法とこのたびの法案との取り扱いの違いは、そのようなものではないと私は考えておるのでありまして、その意味におきましては、今おっしゃるような趣旨から言いますれば、取り扱いの根本は違わないと申し上げてもいいかと思います。西独方式になったわけでもありませんし、アメリカ方式になったわけでもありませんので、根本の考え方は変わっておらぬと御説明申し上げてもいいかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/90
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091・亀田得治
○亀田得治君 そういたしますと、現行法自体が多少あいまいな点もあるわけですが、それを多少敷衍したと、こういう程度になるわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/91
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092・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) そこは、その把握の仕方によって、表現はいろいろ変わってくるかと思いますけれども、そういうふうな説明でも一半は尽くしていると、私考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/92
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093・亀田得治
○亀田得治君 そうなりますと、この逐条説明の冒頭に書いてある事柄は、多少大げさ過ぎるような感じも受けるわけですが、ここでは、「行政事件訴訟が一般の民事訴訟と基本的には性格を異にする面があることにかんがみ、」えらいその点に力を入れておられるようです。そうして「現行の行政事件訴訟特例法におけるが如く、単に民事訴訟の特例を規定するのみにとどまるべきものではないとし、従来の考え方と異なり、」と、こうくるわけですね。何か非常にものの見方というものを相当程度変えていかれると、こういう感じを受けるわけです。私はなぜこれをお聞きするかと言いますと、やはり行政事件も、訴訟として考える場合には、これは被害者の立場というものが出発点だと私は考えるのです。これもまあ御意見を聞かしてもらいたいと思いますが、訴えるというわけですから、これは加害者があって、そして被害者がある。その被害者が出発点。裁判所に何とかしてくれと、こう言う。したがって、訴えは、あくまでも被害者の立場というものが根本に考えられる。こうなりますと、加害する人が個人でありましても、あるいは行政庁でありましても、加害者の救済をするわけじゃない、被害者の救済なんです。ただ、加害の態様などはもちろん違ってくるでしょう。それに応じた取り扱いの違いというものは若干出てくるでしょう。したがいまして、そうなりますと、やはり行政事件、民事事件というものを基本的に異なるというふうな見方をすることは間違いではないかという感じを持っておるわけなんです。したがって、そういう立場に立ちましても、現在の行政事件訴訟特例法が十分であるかないかということは、これはまた別問題だろうと思うのです。これは不十分な点が私あると思う、そういう立場に立っても、たとえば訴訟の類型にいたしましても、まあ今度の法案を見れば、相当はっきりしてきておる。だから、私のような立場に立っても、現行法でいいというのではないのですよ、そのままで。しかし、その点がだんだんこうぼやかされていくのだ、そういう考え方が。ということになりますと、これはやはり、今度の改正というものが、新しい法案というものが一つの新しい出発点になりまして、ぐんぐん行政事件の性格、扱いというものが民事事件と異なった方向に変化させられていくのではないか。そういうことになりますと、はたしてどの方向が一体正しいのか。どうもこの法案では、これははっきりせぬわけですが、しかし、方向というものは、一つ間違いますと、あとはぐんぐん間違っていくわけでしてね。そういう点を非常に懸念をするので、実はお聞きしておるわけです。どっちの方向を向いておるのか。根本としては、私は行政事件、民事事件というものは区別すべきじゃないと思う、本質的に。したがって、アメリカの方式というものが私は基本的には正しいのじゃないかというふうな気持を持っておるわけでして、そういう立場からお聞きしている。ちょっとお前の言うこと少し間違っているというような点等がありましたら、ひとつ御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/93
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094・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) きわめて基礎的な、根本的なものに触れておる御質疑でありますので、私の申し上げる答弁で御満足願えるかどうか、はなはだ危惧の念を抱くのでございますが、先ほど私が第二条、第三条の一部を読み上げましたように、行政事件訴訟も訴訟でありますから、訴訟という面においては、なるほど民事訴訟も同じ本質であります。また、訴訟でありますから、亀田委員のおっしゃるように、公権力の違法な行使によって損害を受けた者の救済をはかるものであることは、これはもう申すまでもございません。ただ、事柄は行政に関するものでありますから、ただ単に十分に被害者の保護だけをはかればいいというわけにも参らぬ一面がございますので、そこら辺に私どもが、行政事件訴訟の特質にかんがみ、というふうなところをとらえたものでありまして、やはり行政の円滑なる遂行というものをこの立法においては心がけざるを得ませんので、そういった説明を逐条説明においていたしておるのでありますが、もちろん訴訟でありますので、おっしゃるとおり、公権力の違法な行使による損害を受けた者の救済をはかるということが本質であることは間違いありません。私どもはさように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/94
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095・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、権利の侵害を受けた、そこを回復してやるのが訴訟なんだ、個人であろうが行政庁であろうが一緒だと、この点は、意見が一致ておるようでありますから、問題ないと思いますが、ところが次に、完全にその損害を回復してやるかどうか、こういう点になると、行政庁からの攻撃に対しては若干考えなければならぬ点がある、それが特質だ、こういう御説明のようです。しかし、そういう点は、あながち行政庁からの権利侵害、攻撃だけではないわけですね。個人間におきましても、たとえば、民法にもいろいろ規定があるわけですね。個人が個人に対して侵害をする、それを忍ばねばならない、がまんしなければならない、で、「不法行為」の章等にもそういう規定が若干ある、そういうわけでして、そういう点は本質的なものではないじゃないか、何かそこら辺の違いに本質的なものを求めますと、何か行政上の必要から来る権利侵害というものは特にこう許さねばならないというほどまで言うわけじゃありませんが、若干普通の個人からの攻撃よりもあまく見てくるというふうな考え方にだんだんこれが発展していくおそれがあるわけですね。そういうことはどうも思わしくないと、まあ参考人の御意見もありましたが、甘く見るかどうかという点は、むしろ公権力からの侵害があった場合こそ甘く見ちゃいけないんで、きつく見るべきなんだ、そういう意見すらもあるわけでして、それを、どちらを強く見るかということは別といたしまして、少なくとも権利侵害を忍ばねばならないことが行政問題についてはあるといたしましても、行政事件だけの特有な性格ではない。社会は、各個人が集まって、いろいろな連帯関係でできておるわけですから、個人間においても、そのことは法律上認められておるわけなんですね。だから、やはり権利侵害の態様等について行政事件の特質ということをお考えになっておるのであれば、これは私は、行政事件と民事事件の違いというものは本質的じゃない、全く本質的な点といえば、やはり侵害を受けた個人の立場であるわけですから、両事件というものは本質的にやはり同じなんだと、ただし、違うところがある、それに対するひとつ手当をしていく、このほうが筋が通るように思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/95
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096・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 事柄の把握の仕方によって表現がまちまちになるので、単に表現の違いになることになると、実は私は考えるのでありますが、民事訴訟と違います点は、行政訴訟におきましては、なるほど権利侵害を受けた者の側だけを見れば、亀田委員のおっしゃるとおりになるかもしれませんが、それを救済する手続におきましては、やはりその手続のいかんによって、行政目的と関連を持ちます点において民事訴訟と違うと把握すべきものであると、私ども考えておるのであります。その手続の仕組みによりましては、はなはだしく行政目的を阻害するような結果を来たさんとも限らぬという二面があるというところが、やはり行政事件が民事事件とは違うのであるというふうに私どもは考えておるのであります。もちろん、違法な行政庁の侵害を受けた者を保護するという訴訟の本質は同じかもしれませんけれども、その救済する手続の仕組みによりましては、著しく行政目的を阻害するような結果を来たさんとも限らぬという面があるというところが違うというふうに、私ども考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/96
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097・亀田得治
○亀田得治君 まあ行政といいましても、これは、基本的にはやはりそれだけが独立して動いておるものではないんで、やはり個人の不法な権利侵害ということは、これは行政の立場から見ても許されないことである。また、その個人の権利侵害を守るということは、これは非常に大きな公共の福祉に通ずる問題なんですね。それから、その救済の方式として、行政目的にあまり支障を来たさないようにしなきゃならないともいわれるわけですが、たとえば、総理大臣の異議の問題などが、直ちに具体的にはこれは関連して出てくる問題でしょう。そういうわけで、基本的な考え方をどこに合わしておくかということが非常に大事なんですね。救済の仕方はいろいろだと、侵害の仕方によって違うといいますが、それは個人の場合、個人が個人に対する攻撃の仕方が違ってくるから、民事訴訟としてもいろんな形態があるわけでして、何もその訴訟の形態が変わるから物質があるというふうに、簡単にそこへは私は持っていけないと思うんですね。で、私の率直にいって遺憾に思う点は、せっかく戦後新憲法の考え方に合わせて、行政事件というものを民事訴訟と同じように取り扱う、権利侵害という点に重点を置いて、そういう行き方であったことは、これは間違いない。ところが、いつの間にか、どうもその点がぼやけて、行政目的行政目的というような、まあそういうふうに意識的にやられてるわけでもないでしょうが、何かそういう感じが強く出てきて、そうしてこういう法案の中にも反映しているのではないか、こう思うわけですが、そんなものはあんまり反映しておらぬのですか。どうも現行法も新法も、あまりそういう点では割り切っていないわけですけれども、ただ、逐条説明では、ぐっと角度を切りかえていくような感じを受けるもんですから、はなはだ心配しておるわけなんですが、そんな心配は無用だというふうに考えていいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/97
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098・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 私どもは、率直に申し上げれば、さような御心配はいただかんでもいいように考えるのでありますが、何かもう少し具体的に、こういう点に現われているのじゃないかとおっしゃられれば、そういう点について、また私どもの考えを披瀝申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/98
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099・亀田得治
○亀田得治君 それじゃまた、もう少し進めた過程において、具体的に条文について触れることにいたします。
そこで、これは提案説明にも君かれておることですが、現行法の制定の過程に関しまして、「何分忽々の際に制定された法律でありますので」と、こういう説明の仕方があるわけなんです。しかし、戦後行政事件をどうするかという問題につきましては、浅い私たちの知識によりましても、相当関係者がみんな苦心をしたその結果、現行法ということに落ちついておるように私は考えております。もちろん、個々の問題点等を検討すれば、未熟な点等はあるかもしれませんが、そんなに粗末なものではないと私たち考えておるのですが、どうもこれは粗末だから、ひとつ早くこういうふうに変えるのだと言わんばかりに説明がされるようですが、それでは、あの当時、今までの非常に行政を重く見過ぎた行政裁判所的な行き方、それを破って、現行法にまでまとめ上げるのに努力した諸君の仕事というのをあまりにも過小評価するものであると感じておるわけですが、その点、どういうふうに皆さんはお考えになっておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/99
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100・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 亀田委員御自身が今御引用になったようなつもりで私ども立案したのでありまして、やはり現行特別法は忽々の間にできた、きわめて不十分なる規定しか含んでおらぬ。もう少し裁判所に適用しやすいような条文を、法体系を作らなければならぬという考え方で臨んだ結果が、この法案になったのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/100
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101・亀田得治
○亀田得治君 この現行法が欠陥があることも、それは、私ども考えておるわけですが、しかし、どこを欠陥と見るかという点になると、だいぶ意見が違うようですね。といいますのは、総理大臣異議の制度等を取り上げてみましても、これは、私たち、現行法においてすらすでに大きな欠陥だと考えておるわけなんです。これはもう成立の過程から見ても、はっきり断定していいと思っておる。それはしばらくあとにいたしますが、そう考えますと、そういう点の欠陥は考えられるけれども、ほかの点については、さほどそう欠陥があるという感じは持たないわけです。アメリカの行政手続法を拝見いたしましても、これはきわめて簡単なものです。しかも、はなはだ要領を得ております。日本の現行法と比較して、その詳しさという点から見たら、どちらがどうだかわからぬくらい簡単なものです。それにしても、多少抜けている点があるというふうにも思うわけですが、欠陥というのは、個々の条文をおっしゃるのじゃなしに、どういうふうな点を言われるわけでしょうか。総理大臣異議の制度などは、欠陥としては認めておられないわけですか。抜けておるものがあることだけを欠陥と言われるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/101
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102・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 総理大臣の異議の点については、またいずれ御質問があると思いますから……。私どもが欠陥と申し上げておりますのは、裁判所が訴訟手続を進めていく上において、これだけの手続法で足るかどうかという点を考えましたので、それにはずいぶん欠陥があるという考え方なんであります。総理大臣の異議が欠陥であるというふうに実は私どもは考えておりません。さればこそ、本法案ではやはり総理大臣の異議を残しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/102
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103・亀田得治
○亀田得治君 じゃ、このアメリカの行政事件訴訟というのは、裁判所が適用する場合に、ずいぶん欠陥があるわけでしょう。これだけのことがきちっと書かれて、そうしてあと民事訴訟法によってやっていくということであれば、もうそれでスムーズにやっていける、判例、学説等によって補っていけるわけですね。それほど欠陥があるようにも私は思わないのですが、そんなに欠陥がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/103
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104・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 私どもは、アメリカの手続を今実は言っておるのじゃありませんで、日本の裁判所が日本の民事訴訟法に基づいて行政手続を扱う上において欠陥があるというふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/104
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105・亀田得治
○亀田得治君 いや、日本の特例法が欠陥があるということが事実なら、アメリカの場合もそう言えるような、まことに簡単なものである、アメリカの場合も。だから、日本の行政事件の扱い方が民事事件と一体であるべきだということで、せっかくアメリカ方式を採用しながら、これが違った方向に行くことを私はおそれるから、そういう方向に行かないということの前提でならば話はわかるわけですが、ただ、総理大臣異議等を強化しておるわけですね、ある面一では。そういうところ等を見ると、これはやはり終戦後とられた考え方とやはり違っておる。この制度自体がGHQが押しつけたものではありますけれども、決してこれはアメリカの行政訴訟法の考え方じゃないわけですね。そんなものを温存されておるところに、はなはだ方向としてどうも納得がしにくい点があるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/105
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106・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) ただいまの点でございますが、アメリカの行政訴訟と、それから日本の行政訴訟と、やはりその歴史的な背景と申しますか、あるいは社会的な地盤が違った面があるのでございまして、アメリカのこの制度をまず申し上げますと、アメリカにおいては、やはり行政というものが、行政手続それ自身が非常に民主的に構成されてきているわけでございます。しかもそれは、国民の権利義務に影響があるようなものにつきましては、必ず行政委員会によってヒヤリングを行なって、そうして行政処分をする。こういうふうになっておりまして、その反面といたしまして、司法作用のほうは、むしろ日本と比べますと非常に保守的な面があるわけです。ところが、日本の場合について申し上げますと、日本においては、むしろこれは法制の継受という点もありますけれども、とにかく大陸系の行政手続というものを輸入いたしまして、その上に司法権というものが乗っかって、救済をはかっている。こういうことでありまして、行政手続の前段階であります行政政処分手続それ自身が、非常に権力的と申しますか、そういう構成になっておりますので、したがいまして、司法作用のほうは、むしろアメリカとは逆に、進歩的な機能を営む傾向があるわけでございます。そういったやはり制度の規定の仕方も、どちらがいいかどうかということの前に、その歴史的な背景なりあるいは社会的な地盤、そういうものを考えていかなければならないと思います。それじゃドイツにおいては、行政手続というのは民主化されていないかと申しますと、ドイツにおいては、御承知のように、行政裁判制度でもってこの種の行政事件について救済がはかられております。それはだんだんと、行政官による救済手続ではございますけれども、そういう制度を基盤としながらも、民主化されつつあるわけでございます。だからして、どういう制度を前提にして民主化していくかということがむしろ根本的でございまして、その民主化の手段は違いましても、その方向においては、そうたいして違わないというふうに思います。それから、現行の特例法が忽々の際にできたという点でございます。したがって、現行の特例法は不十分であるという御質問の点でございますが、一例を申し上げますと、現行の特例法の訴願前置の規定でございます。これは、十分当時各種の訴願の規定をよく洗いざらいにしてでき上がったというようなものではございません。したがいまして、現在の特例法の第二条の訴願前置の規定というが非常に非難されているゆえんでございます。そういった点で、現行の特例法は忽々の際に設けられた関係で、欠陥を暴露しつつある、こういうことのように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/106
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107・亀田得治
○亀田得治君 だいぶむずかしい話になりますけれどもね。たとえばアメリカの場合、行政が非常に民生化されている。そういう所においては、行政事件につきましては、行政庁の処分というものをもっと優遇しても私はいい。ところが、そのアメリカの制度は、行政そのものが民主化されているのに、なおかつ、きちんとそれを民事事件と同じように司法審査の対象にかけている。ところが、日本の場合は、今おっしゃったように、行政の面がアメリカほど民主化されておらない。そういう所においてこそ、私は、厳重に司法審査の対象にそれをしていく。行政の都合とか、そんなことに特質を大いに認めて優遇するといったような考え方は、日本のような所においてこそ、徹底的にこれはもう払拭していくべきである。筋からいって、そうなるじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/107
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108・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) それは、行政手続を現在のままにしておいて、そういう司法権というものを厚くしていくということになりますと、今度は行政のほうに、むしろその行政目的ということを破壊するような格好でもって現われる面が強うございますので、むしろ根本的に考えるとするならば、行政手続それ自身を民主化していく、こういう方向で行きませんと、今度はもう司法と行政とがまともに、ぶつかって、その間に相互に調和がとれたものでなくなるおそれがあるのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/108
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109・亀田得治
○亀田得治君 これは、行政の民主化ということも必要でしょうけれども、しかし、なかなか一挙にいくわけじゃない、これは。だから現実は、一挙にいかないのであれば、この行政に対する同法審査を強化していくということが行政に対するやはり一つの反省を与えることになるわけですね。それを甘やかしておったのじゃ、民主化されておらぬのが、いつまでたっても民主化しませんよ。それは逆に民主化していなければ、司法審査の対象になった場合に、そこに多少の摩擦が起こるということはこれはやむを得ないのじゃないですか。だから、そういう考えに立つということは、せっかく現在の特例法が持っておるいい点を私はぼやかしていくことになると思うのです。今の説明からも実は心配がされるわけですがね。行政が民主化されておらぬから司法審査をきつくやっちゃいかぬぞ、いざこざが起こるからと、そこですよ、問題は。そんなことを言うたら、行政から来る権利侵害を認めることになるでしょう。それでは、一番初めに問題になった訴えの本質は一体何なんだ、それと矛盾してきますよ。矛盾しませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/109
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110・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) 実は私も、そういう行政権が司法権を侵害するとか、あるいは司法権が行政権を侵害する、そういう姿にならないように、制度を根本的に考えるべきだということにおきましては、亀田先生と同じことでありますが、ただ、この訴訟というのは、やはり実体関係を反映するものでございまするから、この訴訟の面だけで、そういう根本的な問題の解決は十分ではない、むしろその鏡に反映する実体面をきれいにしませんと、どうしてもそういうきたないところが現われることになるのじゃないかと思います。ところで、そういうふうに根本的に洗うということになりますと、これはまた、そのわが国の行政訴訟制度が育った地盤を根本から改革するということになりまして、これは容易ならぬことでございます。ひとまず、その鏡に映し出される実体面は現在のままにして、しかも、国民の権利救済をはかり、それからまた、行政と司法との調整というものを十分に考えていこう、これがまあこの案の根本的なねらいと申しますか、そういったものでございます。したがいまして、その亀田先生のおっしゃるように、そういう英米法的な当事者訴訟的な訴訟制度というものからごらんになりますと、この案というのは理想的でないという線が出てくるのは当然であると思いますが、私どもも、そういう理想的な線は一応考えますけれども、この現行法の改正ということになりますと、その実体面が前提となっておりますので、そこまでは行き切れない。やはりこういう次善の程度にとどまらざるを得ない、こういうように考えているわけでございます。先生のお考えと私どもの考えております理想的な姿とは、矛盾は実はしていないような感じがいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/110
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111・亀田得治
○亀田得治君 現行法の成立過程について若干お聞きしておきたいんですが、敗戦後、行政裁判所を残す、こういう動きが相当一部に運動がありましたね。これが結局否決されているわけですが、その間の事情などを若干お知りでしたら、ひとつ御説明願いたいと思います。それが否決され、しからば行政裁判所じゃなしに、普通の民事事件と同じような体系で司法審査に服さしていく、その服させ方につきましてまた議論が相当あった。いろいろな案が当時出ております。そういう経過等につきまして御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/111
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112・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) 新憲法ができまして、従来行政裁判所が扱っておりました行政事件を司法裁判所が扱うというようになりましたその経緯につきまして、私は直接関与したものじゃございませんので、詳しいことは御説明申し上げることができないわけでございますが、その憲法の建前から申しますと、そういう従来のような行政裁判所、司法権のワクからはずれた特別裁判所は、これを設けることができないという規定になっておりますので、そういう面から廃止になったということでございます。それから次に、そういう事件を司法裁判所のワク内に移入したわけでございますが、そのときに、こういう一つ問題があったわけでございます。今、亀田先生からお話がありましたように、その際に、それを従来の民事訴訟と同じように考えていくのか、あるいは司法権のワク内におけるまた民事訴訟とは別の行政訴訟として考えていくのかという議論は確かにあったろうと思います。ところが、先ほどの話とまた関連をするわけでございますが、何分終戦後間もなくのことでございまして、当時の司法作用の体系といたしましては、民事訴訟と刑事訴訟、この二つの大きな体系があったわけでございます。それを根本的に、行政訴訟法というように、民事訴訟法、刑事訴訟法と別の一つの体系というものを十分に考えるいとまはなかったろうと思います。これは推測でございますけれども、その当時のそういうふうな事情から、従来行政裁判所が扱っておりました行政訴訟というものは、刑事訴訟よりはやはり民事訴訟に近いだろう、それからまた、そういう手続法が完備されていないとするならば、やはり民事訴訟法の定めるところによる、そういうような形でもって審理するほかはないんじゃないかというような、むしろ、本質論にまで入らないで、やはり一つの過渡的な便法として、現在の特例法の第一条のような姿になったのではないか。これは、はっきりと、こうであったというふうに御説明申し上げるわけにはいきませんけれども、その経過としては、大体そういうふうな状況ではなかったかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/112
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113・亀田得治
○亀田得治君 その当時の議論を見ますと、基本的な性格の点について相当の討議をやっているのです。従来の行政裁判所がだめになる。そして普通の司法審査になる。しからば、従来の行政裁判所に魅力のあった人が、そうなりましても、一例をあげれば、最終的に最高裁判所へ持っていけばいいんだろう。前段階においては、下級の行政裁判所なんか認められるじゃないかというふうな議論すら出ていたわけだ。しかし、そんなものは否決された。そんなものは否決されましても、しからば、行政事件の訴訟手続法をどうするかという段階になりましても、やはりこの行政権の立場を考えた立案、そして、いやもうそうじゃなしに、そういうことが憲法の新しい精神から見て間違っているという立場、こういう立場は、むしろ司法畑の人がやっぱり強かったのです。まあこれは多少なわ張り根性から出ているのかもしれませんが、ともかく相当そういう点では激しく論議をやっているわけなんです。これはもう根本問題でしてね。終局的には、その司法畑の意見というものが通っておるわけなんです。そして現在の特例法に結局なっておるんです。だから、そういう意味では、なるほど時間的に見れば、それは忽々であったかもしれませんけれども、柱をどこに立てるのかということで、当時の関係者というものは努力したわけなんです。その結晶なんですよ。だから、その結晶は、私は、どういう場合にあってもなくしちゃいけない。消しちゃいけない。技術的なこまかい点は別です。そういう点については、まあ忽々の間にありましてというようなことを言われてもこれは仕方がない点があろうと思います。そう思っておるわけなんです。ところが、そういう格好でできました案、これは昭和二十二年の十月二十八日、それから二十二年の十一月十一日、二つ案がありますが、これは、いずれも司法畑のそういう意見が通ってでき上がっておる、行政権の立場というものを押えて。大体アメリカ方式です。そういう立場ででき上がった法案ですね、これは。ところが、現行法はそうはなっておらないのは、それにプラスGHQの意見がついてきたわけです。その間の事情、これは非常に大事なことでしてね。そこまででとまっていたら、現在そんな総理大臣の異議の問題とか、そんなものは出てこないんですよ。事事の関係者がみんな、昭和二十二年十一月十一日の案、これで最終的にいい、こう認めていたわけなんです。それで、昭和二十三年初めにGHQとの折衝に入ってから、実はよけいなものがついてきたわけなんです。そういう経過などは、きちんとあなたのほうでつかんでおられるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/113
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114・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) その点につきましては、先生が非常にお詳しいようで、私たちよりも先生のほうが詳しいのではないかと思います。ただ、内閣総理大臣の異議の制度につきましては、私の知っております範囲におきましては、やや事情が違うようでございまして、内閣総理大臣の異議は、GHQのほうからもそういう意見が出たことはそうでありましょうが、また、日本の民事訴訟学者、あるいは行政訴訟学者のほうからも、内閣総理大臣の異議はあってしかるべきだという意見があったようでございまして、必ずしもGHQのほうから、こういう内閣総理大臣の異議を置かなくちゃいかぬ、あるいはまた、そういうサゼッションだけに基づいて異議の制度が設けられるに至ったというふうには記憶しておらないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/114
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115・亀田得治
○亀田得治君 あなたは、当時、何かそういう立案関係にタッチしておられましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/115
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116・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) 当時は立案にタッチしておりませんでした。しかし、最高裁判所の事務局におりまして、立案につきましての方向だけは、いろいろと聞いていたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/116
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117・亀田得治
○亀田得治君 実は、これは非常に重大な問題なのでして、当時は片山内閣ですね。昭和二十三年の一月十三日に、農林大臣の平野さんが追放をされたわけなんです。それに対して、平野さんのほうから、東京地裁に追放処分執行停止の申請をしたわけです。これは非常に政略的だという意味で、東京地方裁判所はそれを許したわけなんです。ところが、あのころの追放というのは、全部GHQとの連関においてやっておるのです。そこで、GHQのほうは、最高裁に直接連絡をして、当然報告等があったわけでしょうが、最高裁のほうでそれをGHQの耳に入れる、こういうことになっているのです。それまでは、GHQもそんなことは全然考えていない。総理大臣の異議というような制度は、第一アメリカの制度にそんなものはないのですから、その事件が契機になって出てきているのです。これはもうはっきりしているのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/117
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118・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) 今の先生のおっしゃる点は、十条の末項の問題についてというふうに私は記憶しているのでありまして、内閣総理大臣の異議の制度を置くか置かないかという問題とは直接関係ないように記憶しているものでございますけれども、面接に衝に当たったわけでもございませんので、はっきりしたことは申し上げられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/118
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119・亀田得治
○亀田得治君 そのとき、先方が出してきたのがやはり訴願前置だ。先ほど私が申し上げました日本側で立案しました最終案、昭和二十二年十一月十一日の案には、そんな訴願前置なんてないのですから、それもやってきているわけです。しかし、GHQの絶対に譲らなかったのは総理大臣の異議であります。これはもう歴史的にはっきりした事実です。こちらに、多少置いてもいいのじゃないかという意見が、それは、あるいはどなたか、そういう意見があったのかもしれませんがね。しかし、そういうGHQの指示で、そのような二、三の項目を入れられたということで、立案関係者はやっぱり気持よく思わないということで、国会提出もだいぶ放置されていたのですね。ところが、提出命令が出てきて、出したというようないきさつまであるわけです。だから、こういう事実関係をきちっと見ていきませんと、現在の総理大臣異議の制度の評価というものは、ほんとうにこれはできないのです。西独のような、行政権をどちらかというと尊重する所においてだって、そんなことはないわけですからね。むしろ逆ですわね、制度的には。こつ然とこういうものが現われておるわけなんです。これは、戦後の案がいろいろだくさんその当時のを見るとあります。最終的には司法畑の意見が勝っているわけですが、その前の行政裁判所的な感覚の強い意見で作られた案もありますが、その案にすらそんなものはないのですよ。日本の関係者は、そんなことは全然考えていません。大体日本の行政裁判所の時代にすらそんなものはないのですから、裁判所をばかにしている制度なんですからね、これは。裁判所の判断によって占領政策にけちをつけられてはかなわぬと、そういうところから出てきたにこれは間違いないのですよ。だから、この事実をはっきりさせておかなければ、まあ、本論に入って、一体総理大臣のこの問題をどうするのかという点、ほんとうにこれは論議ができない。それでお聞きするわけですが、局長は、そこら辺の問題を、どのように歴史的な事実をごらんになっておられますか、承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/119
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120・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 私は、現行の行政事件訴訟特例法の立案当時には、行政府にはおりませんで、かえって司法府に在籍しておりましたので、その立案の経過、沿革というものについてはつまびらかにいたしておりません。ただ、その後専門雑誌などへ出た程度においては、私も承知をしておりますので、今、亀田委員のおっしゃったことに類似するような経過があったようにも私は承知をいたしております。しかし今、亀田委員のおっしゃったそのとおりであるかどうか、私も実は承知いたしておりません。多少何かそういうGHQとの間にいきさつがあったということは、その後の出版物によって承知している程度であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/120
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121・亀田得治
○亀田得治君 その当時の経過等を法務省において明らかにする文献等はあるでしょうか。どうです、現在。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/121
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122・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) これは今、局長がお答えになりましたように、雑誌等に載っている程度しか、今のところ記録としては手元にございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/122
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123・亀田得治
○亀田得治君 雑誌等の記録でもいいわけですが、比較的これは信憑性があると思われるような記録等をひとつ整理して、資料として出していただけませんか。あるいは拝見さしてもらってもいい、ですが一々写すのもたいへんでしょうから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/123
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124・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) 先生にごらんになっていただきたいと思いますので、私ども、国会に提出するまでもなく、先生によく読んでいただきますれば、その間の事情はわかると思いますので、資料として提出するのではなくて、ごらんいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/124
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125・亀田得治
○亀田得治君 それから、昭和二十二年十月二十八日、それから二十二年十一月十一日の行政事件訴訟特例法案ですね。これはありますね、文献の中に。あなたのほうにはみんなそろっておるでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/125
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126・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/126
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127・亀田得治
○亀田得治君 こういうものは、ないわけですがね。これは、当時の司法法制審議会でずっと作業をやられたものなんですね。それからそのほかに、昭和二十二年一月十三日、行政事件に適用する民事訴訟法の特例に関する法律案、これもやはり司法法制審議会で作った案です。それから、引き続いて二十二年二月十九日、行政事件訴訟特例法、これは法制局の案ですね。こういうものは、あなたのほうの審議会ですから、残っておるはずです。それからもう一つ、二十一年の十月に行政訴訟に関する特則案要綱、これが出発点のようですね、まとまったものとしては。この特則案要綱を作って、それから以下、さきに申し上げましたような四つ五つの案というものがずっと作られていったようです。これをひとつ調べてみて下さい。当時の司法法制審議会というのがありましたね。それがずっと扱ったものなんですから、私もそれをきちっと見て、その上で、基本問題についての議論をもう少ししてみたいと思います。まあ一々これはプリントして資料として出すのはたいへんでしょうから、現物をそろえてもらえばいいです。できますな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/127
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128・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) その点につきましては、これは、今度の立案に際しまして、私どもも、現行の特例法のいろいろな資料を集めますときに、この法制審議会の資料として出すために、いろいろ探したわけでございますけれども、その当時立案に当たった人が、一部分だけは持っておるという方もございますし、それから、もう全然なくしちゃったということもございまして、資料としてまとまったものは、実際のところ私どもの手元には集まらなかったわけでございます。御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/128
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129・亀田得治
○亀田得治君 それじゃ、今度の立案作業の過程において、戦後いろいろ案が作られたわけですが、その中で、どれとどれを御参考にされたか、御参考にされたのだけちょっとお聞かせ願います。何年何月幾日のどの案とどの案は少なくとも参考にしたという点がありましたら、それだけひとつ明らかにして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/129
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130・杉本良吉
○説明員(杉本良吉君) 現行の特例法の立案の資料となった、そういった資料につきましては、ほとんど集まりませんでしたので、ほとんど参考にいたしませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/130
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131・亀田得治
○亀田得治君 しかし、これはやはり重大な問題でして、そういう点をよくなるほど私お聞きしてみれば納得いくわけでして、何分忽々の際に制定せられました法律でありますので、きわめて穴が多いですからというようなことを言わんばかりの表現は、そういうところから出てくるのですね。調査が十分できておらぬ。それは、やはり行政裁判所の行政権優位の考え方に対して司法関係の人が非常に抵抗をして、きちっとした柱を立てた、これはやはり大きな功績なんです。だから、その功績というものは、やはり長所を伸ばしていくように、この法改正をされるにあたりましても、私は、その点は間違わぬようにしてほしいと思っている。ところが、その過程を私たちが調べた限りにおきましては、そこでとまればいいのに、平野事件等を契機にして、GHQからの一時的な感情から出たそういう要求が付加された。ところが、そんな付加された事情というものをよく調べておらぬために、何かこのこと自体が相当有力なものであるかのごとく、今回の改正においてもまたこれが引きつがれたら、これは、私たちとして、この法案の、審議に参加したものとして、はなはだこれは汚名を後世に残すことになるわけでして、もうちょっとこれらの点を調べて、次回にきちんとした御答弁を願いたいと思います。ほんとうに日本の各関係者、専門家が、この総理大臣の異議などをここで置くべきだと当時の諸君が考えて置いたものではない。それは私も考えます。そうでないのならない、感じでなしに、よくお調べになって、はっきりこれはお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/131
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132・浜本一夫
○政府委員(浜本一夫君) 少し亀田委員の言にさからうかもしれませんが、私どものこの法案を立案する過程を御説明申し上げますと、法制審議会に諮問を総理大臣からされまして、そうして法制審議会で要綱を示されまして、その示された要綱に基づいて、その趣旨をはずれないように立案いたしましたので、事こまかに私どもが独創的なものを作ったものではございませんので、そういった終戦直後の全部の沿革を調べて、私ども独創のものを作ったという自負は私どもいたしておりません。法制審議会で示されました要綱案を理論的に組み立てたものがこの法案なんでありまして、私どもは決して独創を誇るものではありませんかわりに、そういった沿革について、多少調査漏れの点があるかとも存じますが、現在調べられる限りのものは調べた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/132
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133・亀田得治
○亀田得治君 法制審議会という一つのトンネルを通ってきておるのですから、責任がそちらのほうに行くような感じもするわけですけれども、しかし、実際に提案をされ、こうして審議をするのはここであるわけですから、都合のいいことは自分がやって、都合の悪いことはほかのほうだといったようなことでは、やはり工合が悪いと思うのですね。これは、あなたのほうにいろいろ資料があるはずです。だから、一ぺん調査部あたりにある資料がありましたら、次回までに、私出かけて行きますから、一週間ほど貸していただければいいのですが、これは審議のためにやるわけですから、協力してほしいと思います。こういう機会ででもないと、なかなかそういう勉強もできませんので、私、必要な勉強ですから、法案審議に、お願いします。
それではちょっと資料の要求をしておきます。それは、訴願前置の理由ですね。これは三つある。そうして、たとえばこの法律についてはこれこれというふうに提案説明がなっているわけですね。なっているのですが、約五十幾つ訴願前置を取り上げておる例外法律があるわけでして、その全部の法律について、その点の説明をひとつ承っておきたい。これは、口頭でこんな所で言ったんでは、とても長たらしい、聞いているほうもなかなか繁雑ですから、これは表にしていただきたいと思います。それと、もう一つは、約五十幾つの法律について訴願前置が採用されておりますが、その法律の中で、ある事項については訴願前置なとらない、ある事項についてはとる、こういうことになっておるのでしょうから、法律だけではなしに、その項目をひとつ整理してほしいのです、法律ごとに。これを表にしてもらいたい。そこへ簡単に、理由はABCくらいにして、AならAと書いてもらえばいい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/133
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134・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/134
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135・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 速記を始めて。
他に御発言もなければ、本案に対する質疑は次回に続行することとし、本案については、本日はこの程度にとどめます。
次回は、五月四日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X02519620427/135
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