1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年四月七日(火曜日)
午前十時二十一分開会
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委員の異動
四月七日
辞任 補欠選任
牛田 寛君 小平 芳平君
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出席者は左のとおり。
委員長 青田源太郎君
理事
梶原 茂嘉君
櫻井 志郎君
森 八三一君
渡辺 勘吉君
北條 雋八君
委員
植垣弥一郎君
岡村文四郎君
木島 義夫君
北口 龍徳君
仲原 善一君
温水 三郎君
野知 浩之君
堀本 宜実君
森部 隆輔君
山崎 斉君
大河原一次君
小宮市太郎君
戸叶 武君
矢山 有作君
安田 敏雄君
牛田 寛君
高山 恒雄君
国務大臣
農 林 大 臣 赤城 宗徳君
政府委員
農林政務次官 松野 孝一君
農林省農林経済
局長 松岡 亮君
農林省農政局長 昌谷 孝君
農林省畜産局長 檜垣徳太郎君
事務局側
常任委員会専門
員 安楽城敏男君
説明員
農林省農地局管
理部長 小林 誠一君
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本日の会議に付した案件
○農業改良資金助成法の一部を改正す
る法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農林漁業金融公庫法の一部を改正す
る法律案(内閣提出、衆議院送付)
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001・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) ただいまから委員会を開きます。
農業改良資金助成法の一部を改正する法律案及び農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行なうことにいたします。
質疑のおありの方は、御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/1
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002・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 私は、きょうは、特に農業改良資金助成法の一部を改正する法律案を中心にお尋ねをいたしたいと思います。非常に計数的な、あるいは事務的な質問が中心でありますから、もっぱら担当局長にお伺いをし、なお関連して、政務次官にもお尋ねをいたしたい所存でございます。
まず、この提案理由の説明を伺ったのでありますが、三十九年度の貸し付け総額は四十五億五千万円を予定されておるわけであります。で、その四十五億五千万円という貸し付け予定総額というものは、その金額に至りました算出の基礎というものがあると思いますので、まず、それがどういう基礎によって三十九年度の貸し付け総額が四十五億五千万円に予定されたのか、その点からお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/2
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003・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 御承知のように、在来の改良資金助成法に基づきます改良資金のワクは、この制度が発足いたしました当時、補助事業として、普及の段階に急速に入れようとしておりました諸事業を中心に取り入れたわけでございます。その後、制度が軌道に乗りましてから、必ずしも補助事業、補助の必要が一段階進んで、改良資金によるというふうな場合だけでなしに、全く新しい技術につきましても、この制度によりまして新技術の導入をはかるという要素が加わって、積極的な活用がはかられてきたのであります。しかし、何さま、年々わずかな資金の増額にとどまって今日にきております。おおむね三億ないし三億程度の造成資金量の増額が年々行なわれてまいった。それで、三十九年度の予算を編成するにあたりまして、こういった期間は短うございますが、いわゆる無利子の貸し付けの制度が比較的に新しい技術の導入という面で活用されておりますものの、もう一段積極的に、たとえば特認事業のワクの問題にいたしましても、在来一割程度のものをもっと引き上げたらどうか、あるいは法律改正の直接の動機であります後継者対策、あるいは生活改善対策というものにも、この資金を活用していったらどうかということを検討した結果、かなり大幅にこの資金を引き上げようということになったのであります。その場合、一つ一つの中身の事業についての積み上げということだけでは、十分にふやせません場合もあるのでありますが、しかし、予算のことでありますから、新事業の内容にふさわしい、一つ一つの具体的な中身を盛り込むことも必要であるわけであります。せんだって御説明いたしました資料の九ページにありますような新技術を加えまして、こういった積算にいたしたわけであります。したがいまして、最終段階では、大臣折衝で最終的な結論が出たわけでございますが、そのとき、こまかく一つ一つの事業を、採択するとかしないとかということで御議論が行なわれたとは承知いたしておりません。おおむね国費を新たに二十億程度はふやしたいということが、最終段階の最高段階での御論議であったと思うのであります。しかし、事務的には、こういった経過をたどってこういうものが出てきた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/3
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004・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 最終的には、この貸し付け総ワクを四十五億五千万円とするには、大臣折衝の非常に次元の高い経過を経て、こういう提案の具体的な内容になったという御答弁でありますが、確かに、それぞれの内容の積み重ねでいいますと、おそらく四十五億というのは、期待をいたしている資金需要からいたしますと、きわめて低いものであるというふうに考えるわけであります。大臣折衝に移った場合に——きょうは大臣はまだお見えでありませんので、政務次官にお尋ねをいたすのでありますが、少なくとも、この国会が開かれる前に、あるいは総選挙を控えて、農業の革新的な近代化をはかる、そのためには、財政、金融の総力をあげてこれに立ち向こう決意であるという、池田総理の所信の内容の一部として、一般の農家としては、こういうかつて補助金であったものが貸し付けの制度に乗ったというもの、こういう農業改良資金に対しては相当の期待を持ったことは、これは事実なのであります。従来、補助金であったものを、これを融資制度に一応乗せているわけであります。
ただ、この性格は、衆議院における昌谷局長の解釈によれば、返還条件付補助金と、この性格を規定づけておりますが、私は、あくまでも、これは無利子の貸し付けである限りは、返還条件付補助金という性格ではない。異なった見解を持つものであります。
その性格の問題は別といたしまして、少なくとも、新しい技術を導入していこうという場合には、思い切った、ここに政府の財政金融の総力を結集する好個の場ではなかったかというふうに考えるのでありますが、それが、ふたをあけて見れば、わずかに政府の補助金が二十億足らずである、十九億そこそこであるということに、大きな失望と、期待を裏切られた不信感があるわけであります。なぜ、そうしたような、いまから見れば、大言壮語して、しかもこんなわずかな金額しかできなかったのか。経過的には、目的税であるガソリン税の、農林漁業資金に対する吸い上げた税金を、これを還元しても、優にこれは百億の財源があるわけであります。それを、赤城農政の特徴として、少なくとも、その百億の目的税以外に調達されておる税金を、農山漁村にこれを還元する、そうしてこういう農業改良資金等の財源にするということがなぜとられなかったかということについて、政務次官からお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/4
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005・松野孝一
○政府委員(松野孝一君) お答え申し上げます。御指摘の点、まことにごもっともでございます。われわれも、今年度、三十九年度におきましては、画期的な政策を農林漁業関係でとりたいというふうに努力いたしたのでございますけれども、結果においては、いま渡辺委員の御指摘のとおり、十分な御期待に沿い書なかったという点は、まことに残念でございますけれども、しかし、この改良資金におきましても、新たな項目といたしまして、後継者育成資金を加え、さらにまた、生活改善資金を新たに加えたのであります。それが一つの新しい点であると考えるものでございます。これらの資金に関しましては、まだ初めての試みでありますので、どの程度の金額が適当かということについては十分な資料を得られませんでしたので、農業改良普及ごとに、一、二カ所ずつというような観点から割り出したのであります。あとは技術導入資金、こういうふうになっております。そういう関係で、この経過にかんがみて、今後、四十年度等に、さらに積極的な増額等を考えていきたい、こういうふうに思っております。何しろ、今年度は初年度でありますので、その点は十分でないということは、いま申し上げた事情によるのであります。しかし、金額全体といたしましては、四十五億の貸し付けワクがありますので、前年度に比べれば格段の増額をいたしておるわけでございます。
なお、当初予算折衝におきまして、農業用のガソリン税は、大体見積もって百億以上に達するということでありますので、それを農林省のほうに、適当な方途でこれを農林省で使うようにという折衝も話したのでございますけれども、ガソリン税を農業用機械と他の用途に区別して使うということがなかなかむずかしいので、元来は免税が適当でありますけれども、免税も困難であるというので、今日まで延び延びになった関係もあります。そういうことがもとで十分検討を——まだ最後まで結着がつかなかったわけですが、われわれといたしましては、この取り扱いについてはさらに今年度も検討いたしまして、四十年度には何かの成案を得たい、これは資金とは別個に検討いたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/5
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006・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 どうも、三十八年に比べればかなり資金ワクが大きいということですけれども、三十八年自体が低過ぎるわけです。私たちから見れば。低過ぎるのに比べて多くなったということで、財政金融の総力をあげた予算ということには受け取りかねるわけです。いま政務次官が言ったことは、参議院の大蔵委員会等においても、大蔵大臣は、四十年からは農業用ばかりではなくて、林業用、漁業用のガソリン税についても、これを還元することを、国会で公約をいたしておるわけで、四十年はすでにもう問題が前向きに解決されておるわけでありますが、問題は、三十九年に農業近代化の革新的な施策をやると、あらゆる機会に総理なり主務大臣が言っておることが、なぜ具体的に予算に反映しないかということをお伺いするわけです。
ありていにいえば、農林省は、大臣以下、どうも大蔵省の力に立ち向かうだけのき然たる信念と決意と、それを実行させるという迫力に欠けておるきらいがあるのではないか。私は、そこから、農民感情としてこう言わざるを得ないわけです。したがって、四十年からは、すでにもう国会の審議を通じて大蔵大臣が明らかにしておるところであり、それをしも、いま検討し、まあできるだけ実現をするという、そういうあいまいな答弁では、せっかく大蔵大臣が国会で声明したことに、これは水をさすものではないかとすら考えざるを得ない。きわめて遺憾な答弁であると言わざるを得ません。いずれ、これは大臣が見えた際に、私はまた要点をしぼってお尋ねをいたすことにして、この点はこれ以上のお尋ねは遠慮をいたします。
次に、四十五億五千万という貸し付け総ワクは、先ほども昌谷局長の答弁にもありましたように、具体的な内容の積み重ねで出たものではないということでありますから、それ以上、算出の基礎をお伺いするわけにはまいりませんので、次に進みますが、ただ、いま政務次官が触れられましたように、四十五億五千万の貸し付けワクのうちに、新しい技術を導入するものとしては三十九億五千万、新たに項目を設定したものには、生活改善に対して一億五千万、後継者育成としては、新たに四億五千万というものが新規の貸し出し用途として設定をされたわけでありますが、私は、主題が、農業改良助長法であるがゆえに、新しい農業技術の導入というものに対して、その資金の手当てというものは、相当部分要請に対してこたえ得るワクがあって、しかる後に新しく生活改善なり後継者育成資金という用途ワクを設定することには、いささかの異論がないのでありますけれども、いたずらに窓を広げて、そうしてせっかくの基本的な農民の期待しておる、あるいは都道府県の期待しておる技術導入というものが、これらの新たなる用途とともに、非常にその普遍性が薄らぐことによって、せっかくの法律の主文が希薄になるおそれがあるのではないかと思うのであります。技術導入の三十九億五千万と、その他の新たなる生活改善一億五千万、後継者四億五千万のこのワクを分けた根拠は、一体どういうことであったかを伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/6
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007・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 先ほどもお答えいたしましたように、最終的にこういう金額になりましたときに、何を捨て何を取るという詳細な検討が、同時並行的に行なわれたかどうかという点につきましては、金額二十億プラスということがきまったというふうに申し上げたわけであります。しかし、もちろん、私どもも、事務折衝をいたし要求いたします段階では、それぞれについて一応根拠を持った新しい事業計画を前提にして予算折衝したことは、これは申し上げるまでもないことでございます。そこで、お説のとおりでございまして、農業改良資金はやはり農業の新しい技術導入というものを本来の任務として生まれておる制度でございますから、資金が増加されました場合、そちらのほうの需要を最優先的に考えて充当いたすということは、私どもとしても基本的にそういう態度で事業計画を編成した次第でございます。したがいまして、昨年まで約十八億弱、こういう技術導入資金関係の資金ワクを、まず各方面の需要を十分に取り入れまして、また新しくやりたいというものもそのまま十分取り入れて、そのほうをまず三十九億円ということで、一応それならばそういう需要にかなり積極的に応じ得るということで、まずそれをきめました。しかる後に、残りました約六億につきまして、後継者の場合、あるいは生活改善の場合についての資金のワクを、一応予定をいたしたわけでございます。後者の二つのものは本年度初めて行ないます貸し付けでございますから、どの程度に現地において十分こなして需要が上がってくるか等について具体的に確かめた上で所要額をはじくというようなことはできないわけでございます。一応のめどとしての資金の計画をつくって、用意をいたしたわけでございます。今後、実行過程におきまして、各府県等の御希望を十分参酌して、それらの間に弾力的な調整を行なって、それぞれ所要の向きをなるべく充足いたしていくというふうな運用で、ある程度は問題を弾力的に対処はいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/7
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008・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 では、この四十五億五千万の用途の三つの大ワクは、それぞれの現地の実態を勘案して、弾力的にワクの流動はあり得ると、こういう答弁でありますから、了解いたしました。
それでは、なお、計数に当たって二、三伺いますので、計数的にお答えを願いたいのですが、三十九年度に、この制度を運営していくために、都道府県の農業改良費金特別会計の新規造成所要額の二十九億というものが出ておるわけであります。この二十九億というものが県の所要額として算出された、その基礎はどういうことになっておるかを、まずお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/8
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009・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) ただいまの御質問でございますが、二十九億という計数は、ちょっと私承知いたしかねるのでございますが、重ねて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/9
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010・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 補足説明にうたってあるのですよ、政務次官が読んだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/10
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011・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 失礼をいたしました。これは都道府県の特別会計でございまして、都道府県の一般会計の立場で申しますと、国からの助成と県費の負担分等、まず府県の一般会計で予算計上していただきます。それを改良資金の特別会計への繰り入れという形で、県の一般会計で予算化をいたします。その国の補助を含めた県の段階での一般会計での予算計上所要額が二十九億円ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/11
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012・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 私は、その二十九億円の、一般会計から特別会計へ繰り入れるという、そういう経過を伺っているのじゃなくて、総体で、都道府県の特別会計が三十九年度に、国からの助成も含めて、私はそれも承知して伺っているので、三分の一は国の補助であることも、初歩的な知識を持って伺っているので、そういうこと、お答えになったことを伺うのじゃなくて、二十九億というその額が、全国の都道府県の特別会計において、どういう算出の根拠があって二十九億という総ワクが出たかの、その二十九億の根拠を伺っているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/12
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013・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 県で今度予算計上の所要額が二十九億と申しますのは、こういうことでございます。三十九年度の貸し付け資金としての所要額が四十五億五千万円ということになったわけでございます。その場合、その裏打ちの資金の計算として、前年度までに積み立てられました特別会計資金の中で回収が行なわれまして、三十九年度の貸し付け原資として活用できるものが約十六億円ございます。それから、府県の特別会計の中で、繰り越し金という形で繰り越します額が約五千三百万円ございます。その両者を含めました約十六億六千万円というものを所要資金量四十五億円から引きますと、新規に追加して造成しなければならない資金額として約二十九億円、正確に申しますと二十八億八千万というふうな計数を計算しております。そういう計算の過程でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/13
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014・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 そういうことだろうと思ったのでありますが、そこで、もっと具体的に、納得のいくために伺わなければならぬ。これは都道府県の特別会計の実態を、私は一、二の実例について調べた上でお伺いするのでありますが、四十五億五千万という貸し付け総ワクというものは、いま御答弁がありましたように、従来の貸し付けから償還された原資が十六億、あるいは県の特別会計の繰り越し五千万というものを差し引けば、どうしても県の特別会計としては二十九億を、ラウンドでいけば二十九億というものが要るから、これが特別会計の所要額ということになったことは、御答弁によって了解をいたすわけです。
そこで、少しこまかいようですけれども、その十六億という、過年度貸し付けをして、そうして三十九年度に回収される原資の、これの償還の時期というものが、実は現地では非常に問題があるわけであります。そこで、いま一つお調べになって御報告を願いたいのは、長いものは三年期限、あるいは二年期限という条件で融資をしておるのですから、長いものについては、三十六年に三年契約で貸し付けをしたものが、三十九年に一体月別に、四月から来年の三月末までの月例に、あるいは県別に、一体どれだけの回収を十六億の内訳として予定をしておるか。さらに、三十七年に貸し付けをして三十九年に回収になる原資が、月別に、県別に、一体どういう実態を把握しておられるか。なお、前年に貸し付けをして三十九年に回収になる、これも十六億の原資でありますが、月別に、県別に、どれだけの内容になっておるか、これをまずお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/14
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015・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 十六億につきましての、その原資の貸し出されました年度別の内訳は、後刻調査して申し上げます。
で、いま御質問の御趣旨でありますが、その回収金がどういう月別でこの県の特別会計に戻ってくるかという御質問につきましては、私どものほうで、三十七年度につきまして各県が立てました月別の償還の計画と、それからそれに対応いたします実績との調査がございますので、百分比で月別の分布を調べたものが手元にございますので、少しこまかくなって恐縮でございますが、ここで読ましていただきます。四月から始まる回収でございます。総体を一〇〇としての百分比でございますが、まず最初に計画を申し上げます。四月が〇・六、五月一・八、六月二・六、七月四・四、八月五・八、九月五・五、十月九・一、十一月一五・六、十二月三五・四、一月一二・〇、二月五・〇、三月二・二というのが府県で当初見込みました貸し付けの月別分布でございます。これに対しまして、実際の償還がどういうふうにずれると申しますか、実行されたかということを、これも少しこまかくなりまして恐縮ですが、対応して申し上げますと、四月が〇・五、五月一・九、六月三・〇、七月三・九、八月五・五、九月五・三、十月九・三、十一月一四・七、十二月三三・九、一月一一・九、二月六・八、三月二・三、それから計画にはございませんが、年度を越しましての整理期間中に、四月〇・五、五月〇・五、それぞれ〇・五ずつ整理期間中に回収になっておりますが、多少そういう意味においてずれておりますが、おおむね計画とほぼ見合った回収が行なわれておるように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/15
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016・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 それでは、いずれ、これは実数をひとつ後ほど資料でお出しを願いたいのですが、それはいただけますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/16
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017・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 先ほどの十六億の年度別の問題と、それから、御必要でありますれば、いま読み上げましたものと合わせて資料として御提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/17
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018・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 それでは、具体的には、その資料をいただいて、なお補足質問をいたしますが、きょうのところは、一応いまのその指数によってお尋ねをいたしたいと思うのであります。と申しますのは、ただいま御報告にありましたように、三十七年度の回収の月別の動向を見ましても、回収になる時期というのは、十二月が一番ピークになっておるわけであります。これは現実に、特に北陸あるいは東北等の単作地帯では、これらの償還は秋の収穫を待たなければ回収できない、償還できないという実態からも来ておるわけです。そこで、十一月、十二月、一月に、この資金の回収が集中的に行なわれておるということであります。そうしますと、新たに、この原資を期待して、新しい技術導入に資本を投下するために借り入れをするという場合に、少なくとも十六億のうちにかなりの部分が、これはその場に非常に合わないということが、従来の経過の中に共通的に出ておるわけであります。かなりそこに時期的なズレがある。しかしながら、現実には、いろいろな作目別の新規技術を導入するには、春耕の時期にこれを導入しなければならないということになりますと、その間に該当農家は、あるいは組合金融から融資を受けてその立てかえの手当てをしなければならない、あるいは自まかないをしなければならないということが通常従来行なわれておる。これは実態であります。そうなると、せっかくの一枚看板である無利子金融というこの制度が、かなりその機能が減殺をされておるという事態に置かれておるわけです。かなりの金利負担をさせられておる。したがって、どうも無利息という看板には似つかわない実態が現地では行なわれておるわけです。そういう点から申しますならば、この間において、それらの矛盾を解決するために、あくまでもその技術の導入が適期に必要であるものに行なわれるということについては、この看板に偽りなからしめるためには、一つの手段としては、各都道府県のこの農業改良資金の特別会計に、政府の一般会計からこれをつなぎとして投入をする、そうしてその一般会計から都道府県の特別会計に投入する資金の金利は、これは無利子にしてこれを出すという措置があって初めて、文字どおり、この農業改良資金の特別会計の機能が一〇〇%の効力を発揮するわけであります。そういう点は、私が申し上げるまでもなく、従来、しばしば各都道府県から要請が行なわれておる。そういう点を一体、どう前向きに対処されようとするのか、これは局長よりは、むしろ政務次官にお伺いをいたしたいのでありますが、そういう矛盾は現実にある。あなたのところの秋田だって同じです。私の岩手だって同じです。十二月にならなければ前年度の貸し付け償還はできない。しかしながら、新年度は、春先からもうこの技術導入の必要がある。その間のつなぎというものが、いろいろな形で、金利のかかる利子によって、農民が負担をさせられておる。こういう矛盾を解決するには、これは農林省としては最も適切な措置の一つとして、たとえば、私が申し上げたように、都道府県の特別会計に政府から、これは一般会計からつなぎ融資の措置をとる。もちろん、一般会計は、これはただの資金ではないわけでありましょうから、それはそれなりに利子補給の措置を講じて、つなぎを出す。回収された資金が出れば、それは政府へ、これは還流する措置があって初めて、完全な、偽りのない無利子金融が技術導入に、適期に、適切に、これが機能されるものと私は思うのでありますが、そういう前向きな措置を、政務次官としてはいかようにお考えになっているかをお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/18
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019・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 技術的な操作の問題がからみますので、私から先にお答えをさせていただきたいと思います。
確かに、在来の改良資金の運用の経過から見まして、御指摘のような点がやはりあったかと思います。と申しますのは、御承知のように、在来は、先ほど申しました新規造成資金が年々二億ないし三億程度が追加されてきております。ということは、当該年度の貸し付け計画の中で申しまして、その中で占める回収金に対する依存度というものが八割近くを占めたわけであります。先ほど御説明いたしましたような月別の回収を行なって、春の作業に間に合わせますための技術資金を貸し付けますためには、後ほど申し上げるのが適当かと思いますが、大体府県のほうでは十二月が回収のピークでございますから、一、二、三、特に三月中に、春先の準備のための資金の貸し付けば、おおむね三月中に終わるように貸し付けのほうの資金計画を組んで、いま御指摘のような点を少しでも少なくなるようにという努力はいたしております。しかし、何さま、全体の資金量のうちの八割以上が回収金を原資とする構成になっておりました関係上、ややその点が円滑を欠くということもままあったように思います。その場合、県といたしましては、県におきましても一般会計からの一時差し繰りをやりますとか、あるいはより根本的には、国の補助金の早期支出ということをあわせやりまして、しのいでまいりましたわけであります。今回資金ワクが大幅に拡充をいたされました結果、三十九年度に関する限り全体の支出計画四十五億の中で、償還金を財源といたします。つまり十六億円のウエイトはおおむね三七%程度であろうかと思います。したがいまして、そのような意味合いからは、資金量、新規造成ワクを大幅にふやしました関係で、三十九年度は在来の償還金に対する依存割合が著しく緩和されて、そういった面ではよほど県の資金操作は円滑を増してきたというふうに、私どもは想像いたすわけであります。
なお、御指摘の、国の一般会計から、そういう場合に、県に資金を供給したらどうであるかという御提案でございます。私どもも、今後、そういったことについても検討さしていただきたいと思いますが、一応現在考えておりますのは、府県の一般会計の中で、そういった差し繰りの操作をしていただくことで、府県の財政全体の金繰りの問題は、自治省の操作を通じて国庫との密接なつながりを持っておるわけでございますから、個々の事業ごとに、そういった操作を重ねませんでも、一般的な県財政の資金操作という点で一応しのげるのではなかろうかというふうにも考えております。なお、この点につきましては、私どもも十分検討したわけではございませんので、なお今後考えさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/19
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020・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 いずれそのことは、もう少し具体的に、この十六億のそれぞれの原資が県別に——県別というのは、県の特別会計に、月別に、一体どういう回収を予想しておるかという十六億の内訳の資料をいただかなければ、もっと納得のできることになりませんので、その資料をいただいて、補足的に伺うよりほかがないわけであります。ただ、実際考えられることは、まずこの二十九億というものに対して、国が一体いつごろ三分の一の十億程度を交付されるのか、その時期及び行政庁としては各都道府県に対して、特別会計に一般会計から十九億をどの時期に拠出させるような行政指導をされるのか、それとも関連しますので、この農林省の態度をまずお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/20
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021・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 私どものほうの準備といたしましては、すでに、各地方農政局ごとに、明年度の資金需要について、県別の希望聴取をほぼ終わっております。そこで、予算も通っておりますので、法律成立次第、各地方農政局ごとの年間の資金割り当てを、第一次的なものを早急に行ないたいと思っております。もちろん、先ほど申しましたように、年度途中で、各県別の調整等のこともございますが、一応現在引き取りました資料に基づいた配分をやるつもりであります。なお、過去の事例で、三十七年度の事例で、県の一般会計が特別会計に繰り入れていった時期を見てみますと、やはり資金需要が春先に重なるということ、あるいは回収金が十分に間に合わないというような事情を考慮したのだと思いますが、過去におきましては、県の一般会計から特別会計に繰り入れております年々の繰り入れ額のうちのおおむね半分程度が十二月以降ということになっております。これは先ほど申しました春先の資金需要というものを、回収金にたよっておったのでは円滑を欠きますので、新規造成資金の約半分をそちらのほうに振り向けておるという事情であろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/21
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022・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 だから、実態は政府も御承知のように、この回収の約定農地の一割以上は、大体一割の線ですが、一割以上は約束の年度に回収になっていない、翌年度以降にこれが延滞として戻ってくるということもあるのでありますから、そういう点の実態をやはり数字の上で考慮したものでないと、それ自体も十六億というものが狂いを生ずる結果になる。非常にこまかいようでありますけれども、このことが実際県でやる場合にまた資金を圧迫させている大きな原因になっているわけです。何といいましても、この十六億の、それぞれの年度の月別の回収予定という一覧表をいただきませんと、これ以上突っ込んだお尋ねはできないわけでありますから、その資料の提出によってお尋ねをいたしますけれども、ただ言えることは、私が言いましたように、特別会計に対して、都道府県の一般会計から必要な場合はこれをつなぎ融資をして、農業改良資金の看板のように、無利子にするための措置を講ずるということは、どうしてもこれは政府に善処をしてもらわなければならない一つの問題点なわけです。かりに、それができない場合でも、少なくとも四月早々にこれが融資をする必要がある場合に備えて、特別会計の総ワクの一割程度は、これをその都道府県の特別会計に保留させておくというような措置も、これは救済する一つの手段ではないかと思うのです。ただ、なかなか婿一人に娘八人というような状態で、資金の需要が旺盛でありますから、全体の特別会計の一割をリザーブして、翌年度早々にこれを役立てるということも容易ではないということになりがちであろうかと思いますから、そういう点について、これは局長ではなしに、政務次官は一体どういうふうにお考えになっておるかということを、いや、何といっても、農業の近代化には積極的な姿勢を示すという政府の所信の中に、それくらいは私は政府としては対応措置があってしかるべきだと思うので、政務次官に伺っておるのです。これはひとつ政務次官から率直な御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/22
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023・松野孝一
○政府委員(松野孝一君) ただいまの渡辺委員の御指摘はごもっともだと思います。これはただいま局長からも答弁されたように、いままでは、その面におきまして支障もあったのでありますけれども、まあ今後は、今度大きな資金が得られるように、国庫補助が出せるようになりましたので、回収金依存度もいままでよりは楽になったという面も、あなたの御指摘の点にまあ役立ってきていると思います。しかし、なお、これはこまかく見てみると、いろいろな支障もまだあると思いますので、そうかといって、県にばかりそのつなぎを考えてもらうというわけにもいかぬので、補助金の早期支出という点について全力をあげて善処したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/23
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024・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 それでは、次に移ってお尋ねをいたしますが、新たに生活改善の資金を、一億五千万円でありますか、設定をしたわけであります。ところが、これも農林省は十分御承知のように、生活改善の資金は、従来とも系統組合金融で融資しておる。したがって、新たにこれを農業改良資金として生活改善資金を融資するには、従来の、先行してこの機能を果たしておった組合系統金融との十分なる連絡協議というものがなければ、非常にこれは混乱を現地で招くことは必至なわけです。したがって、こういう生活改善資金というものを出すには、その組合系統金融と協議をするということを、運用の上で明確にしなければならないという問題が当然考えられるわけです。これを農林省の新たなる扱い上の方針として地方に示達をし、末端における混乱を未然に防止するお考えがあるかを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/24
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025・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 在来の技術導入資金の貸し付けの場合につきましても、先般御説明をいたしました資料の一〇ページに、この資金の貸し付け手続あるいは流れる手続を図表で御説明をいたしましたように、すべての窓口事務は、農協を通じましてそれぞれ市町村あるいは信連というふうにたどって運用をいたしております。その意味合いで、先生の御懸念のような点はおそらく回避が十分できるものと私どもは信じておりますけれども、しかし、新たなる資金のことでもございますし、また農協の非常に積極的な活動によって、住宅資金等の貸し付けが自主的に行なわれておるところも現にございます。そこらのところについてもそごのないように、脈絡という点については、在来以上に気をつけて指導をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/25
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026・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 新しく用途を、柱を立ててスタートをするわけでありますから、万全には万全を期して、その扱いについては、ひとつ通達等によって明らかにしていただきたい。これはいいですね。いいということを言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/26
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027・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) その点につきましては、新しい資金につきましては、特に注意を通達等において喚起をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/27
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028・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 それでは、技術導入資金の指定事業と、特認事業との扱いについてお尋ねをいたしたいのであります。これも政府の説明によれば、指定事業というものがある。これが全体の八割五分、融資の中で割合を占めておる。特認事業については一割五分、総ワクの中でこれを押し進めていくのである、こういう御説明でありました。私は、この指定事業と特認事業のその割り振りすること自体に問題を感ずるのでありますが、しかし、せっかくいままで、指定事業と特認事業という大ワクを設定してやってきた経過を無視するわけにはまいりませんので、その経過の上に立ってお尋ねをいたしたいのでありますが、なかなかどうも、特に水田単作地帯、北陸、東北等の地域においては、この指定事業というその項目の中に、八割五分を消化する該当事業がなかなか見当たらないのであります。たとえば、水田の保温折衷苗しろ等は、これは非常に大きな要素を占めたのでありますが、すでにこれはその期間が経過をして、三十九年度はこれは対象になっていない。新たにこれから指定事業として拾ってみても、そういう地帯においては、新たな技術導入によって、全体総ワクの八割五分を消化するというものがなかなか見当たらない。一方に、特認事業というものを見ますと、これはいまや百花撩乱のように、それぞれの問題が、需要が資金的にも、またその内容的にも出てきておる、それを、全体の一割五分を押えるということに非常に大きなこの農業改良資金の現地における矛盾が山積しておるのでありますが、まずこういう点について、あなたは、三十八年までは一割であったが、三十九年度からは一割五分にしたのだという、「五分」に力点を置いて御答弁をされると思いますが、私は、一割五分のときでも、こういう現地の切実な要請にこたえるワクではないというふうに考えるわけでありますが、まずこの点についてのお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/28
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029・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 特認事業が盛んに希望され、また、この資金を活用して、そういう地域地域の特性に応じた新しい技術が普及してきておるということは、私どもとしても、大いにそういう方向にこの資金の機能を伸ばしていきたいという点では全く同じように考えております。ただ、指定事業につきましても、それぞれ補助の必要を感じながら、補助から純粋な融資に切りかえる一つの過程として、いろいろぜひやっていただきたい仕事もありますから、これもまた一がいに、全く無用のものというわけにもまいらない。私も、率として、在来の一割が一割五分になった率で考えますと、決して十分なものではないように存ずるわけでありますが、先般の資料でも御説明いたしましたように、三十八年度は、特認事業と申しますものの絶対金額での貸し付けワクは一億六千万円であったわけであります。これが指定事業の一割という数字でございますが、に対しまして、三十九年度は一五%という率で申しましたのを、絶対金額で、支出ワクで申しますと、五億一千四百万円ということで、在来の一億六千万円に比較いたしますれば、かなりの絶対額としての大幅な拡充になっておろうかと思います。もちろん、これで十分であるとか、これ以上出さないとかという趣旨ではございませんので、先生のおっしゃるような、地域的な新しい技術についての需要がございまして、また一方逆に、指定事業については、ある程度頭打ち、あるいはもう普及段階を相当程度経過しておるという事情を、指定事業の需要に比して特認事業の需要が多くなれば、私どもはそういったことを十分考慮をして、その資金のワクの調整は、在来どおり積極的にやってまいりたいと思います。御参考までに三十八年度につきまして、一応ここに資料で御説明いたしましたのは、当初の貸し付け決定ワクでございます。で、一億六千万円と予算をいたしたわけでございます。現実に、三十八年度末に調整をいたしまして、各府県のほうで特認として貸し出しました実際の実行は一億八千七百万円ということに目下報告に接しております。率にいたしましておおむね二%程度でございます。指定事業に対しまして一一・四%ということになります。三十七年度はその率で申し上げますと、一二・八%という実行経過を得ております。そのように、従来も決して一割ということに固執をして、需要があるのに押えて、需要のない指定裏業を無理にやるというようなことではなしに、十分対応してきておると思いますけれども、今後も絶対金額としての五億でなおかつ足りませんときには、そのようなことを十分配慮してまいりたい。かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/29
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030・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 そうしますと、この一五%というものは固定的な割合ではなくて、二〇%でも、二五%でも、三〇%でも、実態に即して指定事業と特認事業との割合は弾力的に操作できる。それは一五%という説明があるから私がとらわれて質問するので、いまあなたの答弁のように、弾力的に実態に即応して、指定事業と特認事業のワクぎめというものはいかようにでもやれるのだと、こういうふうに理解していいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/30
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031・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) そのとおりでございます。指定事業の相互間、あるいは指定事業と特認事業の相互間につきましても、一応めどがございませんと各県も困ります。また私どものほうも困りますので、当初、前年度途中にブロック会議等をやりまして、府県の当初の一応の見積もりをとってやります。その場合には、特認ワクを一〇%とか一五%とかいうようなことで組んでおりますけれども、実行過程におきましては弾力的に調整をいたします。たとえば、先ほど三十八年度の特認の全国トータルでは、一一・四%というふうに御説明申し上げましたけれども、この全国平均二・四%という特認ワクも府県によってかなり大きな変動がございます。たとえば、東京都は少し極端に過ぎますから除きますが、和歌山県はミカン関係で、新しい落葉防止の技術が特認事業として採用され、その関係で、特認事業が指定事業に対しまして六割を占めております。それから、そういった果樹地帯、園芸地帯等では、特認事業が相当伸びて認めておるところもあります。一方逆に、特認事業が一割なくて二%程度というような府県もございます。その辺のところはかなり運用では弾力的にやっておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/31
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032・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 だんだんこの問題点が明らかになってまいったわけでありますが、たとえば、三十七年の指定、特認の割合、和歌山のごときは特認の占めるワクが全体の六割である、指定事業はしたがって四割である。そういうケースもあるということですか。違うならもう少し説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/32
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033・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) ちょっと私の説明ぶりが十分でなかったかと思います。
和歌山の場合で説明いたしますと、指定事業一〇〇に対しまして特認事業が六一・七、全国平均では指定事業一〇〇に対しまして特認事業が一一・四%であったわけであります。和歌山の場合は、指定事業一〇〇として特認事業六一・七ということでございます。一〇〇のうちの六一・七ではございません。ちょっと注釈いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/33
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034・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 そうすると、これは一つの例ですから、指定事業を一〇〇とした場合、特認が六〇のケースが和歌山にあった。もっと指定事業が一〇〇の場合に一二〇の場合もあってもいいわけですね。具体的にそういう必要があって、政府と都道府県の特別会計と話がつけば。そう理解していいのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/34
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035・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) そのとおりでございます。先ほど、極端な事例でございますからと言って申し上げませんでしたが、たとえば、東京都の場合を申し上げますと、東京都は指定事業一〇〇に対しまして、三十七年度は特認事業が二一五・五、三十八年度は一一三・二というように、特認事業のほうが逆に指定事業よりも多い。三十七年のごときは三分の二が特認事業であったというような、これは東京都の農業の実態を反映したものかと思いますが、そういう事例もございますので、県との御相談でかなり——かなりと申しますか、相当思い切って弾力的な計画にしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/35
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036・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 それでは、もう少し内容に入ってお尋ねしますが、指定事業あるいは特認事業の中に盛られていない項目で、技術導入として必要なものがまだ地方にはたくさんあるわけです。たとえば、私は一例を申しますが、たばこ乾燥室あるいはたばこ乾燥機というものがこれは必要なわけです。ただ、あなた方はその葉たばこについての乾燥なりあるいはその乾燥室、乾燥機というものも、これは専売法によって、大蔵省の所管だから対象にしないなんということを言われたんじゃ農民はたまったものじゃない。家はただひとりであって、ただ行政庁が分かれているだけです。もっと基本的にさかのぼれば、私は、葉たばこ耕作の行政指導も農林省にこれは一元化すべきであるという主張を持っておる。その議論をいまやろうとは思いませんけれども、そういう、地方においては葉たばこ乾燥室あるいは葉たばこ乾燥機というものを新たなる特認事業の内容として希望をしているむきが多い。そういうものが農林省の特認事業の内容には入っていない。そういう入っていないものでも必要であると認めたものは、農林省も認めるにやぶさかでなければ問題はないのでありますが、一つの例をあげて、私は、農林省のその問題に対する見解をお伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/36
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037・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 一般論として申し上げますと、特認事業につきましては、年々いままで扱ったことのない全く新規の構想が幾つかずつ入ってまいることはごらんのとおりでございます。別に、過去に特認として取り上げたもの以外は認めないというようなことではございません。ただ、先生御指摘の、特殊の具体的な問題として、たばこ関係の新しい技術をこの資金の対象とするかしないかという問題につきましては、私どもも現在検討中でございます。と申しますのは、来年度の資金需要の中に、県からの希望をとりましたときに、技術の内容は私十分承知いたしませんが、たばこに関連する新しい技術を特認事業としてやりたいというような御希望があったように聞いております。いまどうするかを私ども検討しております。検討しておりますと申します意味は、一般の金融でございますともう少し事情が違うかと思いますが、この制度は、無利子の貸し付け金が、観点を変えれば、返還条件つき補助金とすら称してよろしいような内容のもので、制度の本体は改良普及制度と表裏一体をなすわけでございます。改良普及員の活動を資金面からバック・アップをして、改良普及員の説得が農家に入りやすいようにというのがこの制度の本来のねらいでございまして、たばこにつきましては、先生御承知のとおり、改良普及事業としてたばこ耕作を対象といたしておりません。農業経営一般ということであれば、たばこを含めてどうしても農家の相談に乗らなければいけない問題でございますから、農業経営一般の改良普及事業というときには、もちろんたばこのことも頭に置いて御相談には乗るわけでございますけれども、しかし、具体的のたばこ耕作の技術、たばこ耕作という問題は、一応御承知のような別系列で行なわれる。そこで、私どものものの考え方からいたしますと、本体をなす改良普及のほうが取り扱えないものを、援軍である改良資金のほうだけで取り扱うというようなことは、ちょっとこの制度の本来の趣旨からいっていかがなものであろうかということで、いま検討中でございます。農家の借りたいというお気持、その技術がどういうものか私どもわかりませんが、新しい技術であれば農家が借りたいといわれる際に、私どもも資金に余裕があればそういうものに応じないというのもいかがかと思いますけれども、その辺もう少し専売公社のほうとの行政調整と申しますか、改良普及制度のあり方とも関連をいたしますので、検討さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/37
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038・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 その問題をまあレア・ケースとして取り上げたのでありますから、多少既往にさかのぼって問題が解決されなければ、なかなかこの制度に乗せがたいことはわかるのでありますが、受ける農家としては、同じ所有している畑のうちで、一つは農業改良普及員の指導を受ける、一つは専売公社の技術員の指導を受けるということに非常な素朴な矛盾を感じておるわけですね。だから、私はそういうたんぼと、畑を、農林省と、大蔵省が手分けしてやるなんというそんな愚劣なことはやめて、少なくとも改良普及としては、たばこ耕作についてもやるということで、私のかねての希望である田畑については、行政庁も一括してこれを取り上げるという方向がこれは望ましいと思うので、そういう意味においても改良普及の対象にこれを入れて、そうして、さしあたりはたばこ技術員と共同でもいいのでありますから、それを受けないと、きょうは改良普及員、あすはたばこ指導員、使うものもその系列の特殊なマークのものでなければ使ってはならぬといういろいろな強圧的な指導すら行なわれているということで、現地は混乱をしておるわけですから、これは例としては、三十九年度からすぐ取り上げてもらうというにはいささか問題があろうと思いますが、そういう前向きの姿勢でこれをひとつ検討していただきたい、たばこの問題については。
それからもう一つの例を申し上げますが、あるいは指定事業なり特認事業の中にはありませんけれども、水稲については省力栽培、多収穫栽培を目途として直播栽培というものが試験の段階にきて、すでに、現実にこれが行なわれておる。そういう直播栽培に対する直播機なりあるいは除草剤なりという、そういう一つの省力栽培に対してこそ、私は共同栽培による生産性の向上として大きなこれは技術的な課題であると思うが、そういうものはこれは少なくとも指定事業でなければ、特認事業として地方から要請があったらそれを認めるという方向をぜひこれはとるべきであろうと思うのでありますが、また関連して、最近はどこの地区でも、水稲の薬剤散布にはヘリコプター散布を使っている。そういうヘリコプターによる共同防除に対しても、これは特認事業として認めなければならない緊急な技術導入の課題であると思う。そういう前向きのものが何ら見当たらない。私は、意欲的にそういうものにも、政府は地方庁から要請があれば、ヘリ防除に対するそれらの事業を特認事業としてこの制度の対象にするということこそが、この法律の第一条に掲げる新しい技術の導入にこたえる道だと思うのですが、そういうものが、遺憾ながら指定事業あるいは特認事業にはない、いささかさびしい感を抱くのでありますが、そういうものが地方から要請があれば、それをお認めになる御意思があるかないかをお伺いいたしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/38
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039・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 前段お述べになりました、たばこの問題につきましては、私どもも農家の立場、あるいは農業経営という立場から申して、現在の制度が理想的であるかどうかについては、なお検討をする必要があろうと思っております。そういった検討との関連において、前向きで処理をいたしたいと思っておりますので、しばらく時間をおかし願いたいと思います。
それから水稲の直播関係の新しい技術でございますが、これはすでに、新潟県それから京都府の二カ所につきましては、三十八年度において特認事業として採用しております。おそらく他の府県についても、今後こういった面での新しい技術体系の導入に関連をして、改良資金の利用の要請というものは多く上がってこようかと思います。私どもとしては、他の一般の特認事業と同様、これらも積極的に取り上げてまいるつもりでおります。
それからヘリ防除の関係は不十分ではございますが、ほんとうにこれはまだ改良資金段階に移す前の新しい問題でもございますし、また補助を要します一番のポイントが、機体の長距離移動に対する経費を何とか緩和したいというのがポイントでございますので、そういった趣旨から、別途ヘリ防除につきましては、約八千万円近い補助金を、いろいろな乗員養成でございますとか、新しい技術の開発でございますとか、そういったもので別途補助金の対応がしてございます。したがいまして、個別の補助段階でのヘリ防除を受け入れる際の技術的な問題点として、何か改良資金の対象とするにふさわしいものが今後出てまいりますれば、これも検討するにやぶさかでございませんけれども、現状におきましては、補助段階での技術導入について資金的なバックを特に要するというふうにも聞いておりません。かような意味で、別途の助成はいたしておりますが、目下のところでは、そういう意味合いでの特認事業にふさわしい希望がまだ見当たらないようでございますが、これも別にやらないということじゃございません。将来そういった点での新しい技術的な工夫の必要があり、またそれが妥当なものであれば十分検討して取り上げてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/39
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040・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 まあ一例をあげれば、たとえば岩手ではヘリ防除として七千五百万の事業費を見て、これを六カ年でやろうという特認事業に希望を持っておるわけですが、具体的に、いまのような御答弁では、そういう要請が岩手だけに限らず、他の県から出ればそれを認めるということに承っていいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/40
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041・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 各地方農政局段階で、現在各府県の御要望をとりまとめてもらっておりますので、場合によりますれば、そういった御希望のある県から具体的な御相談を受けることがあろうかと思います。大体新年度からはできます限り地方農政局で全部の処理が片づきますように、私どものほうでは運用上一々本省まで持っていかなくていいような処理をいたすつもりでおりますけれども、その際、地方農政局の段階での対応の仕方として十分注意をいたしたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、ヘリにつきましては、各農家段階で、対応のための技術としてどういうものがあるのか、いまのところちょっとまだ思い当たらないのでございます。よく御希望を聞いた上で判断をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/41
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042・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 そういう具体的な事例はまだたくさんあるわけです。たとえば最近非常に伸びてきておりますところのホップについての乾燥機なり、あるいは摘花機なりというようなものも新しい技術導入としてかなり地方的には要請があると思います。要するに、この参考資料に出ておる三ページ、四ページのそれぞれの区分は一応の目安である。指定事業と特認事業の割合も一五%と、この委員会で説明したのも、一応の資金のめどをつけるために言うたのであって、東京都あるいはその他の例のように、確かにこの特認事業のほうが総ワクの比率を多く持って実行している県もある。あるいは、ここに区分されておるそれぞれの資金種目以外にもいろいろなものが従来でも取り上げられるのだから、必ずしもこれらの資金区分なりあるいは資金種目にとらわれることなく、地方の要請にこたえて、この法律の目的に沿うものであれば、これを積極的に弾力的に運用していく、こういうふうに総括的には理解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/42
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043・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) そのとおりでございます。ここにあげました特認事業についての種目も、御参考までに。三十八年度で特認事業としてどんなものが府県からあがってきたかということの例示のつもりでお示しした資料でございまして、これはあくまで限定的なものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/43
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044・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 それでは、この資金の扱いについてちょっと簡単にお伺いしますが、一〇ページにはこの貸し付けの手続の図解が出ておる。この資金の扱いについて、たとえば資金を末端へ流す、流した金を回収するという、資金操作の実務は、それぞれ都道府県にある県の農業協同組合の信用農協連ですね、信連にこの代理金融機関としてこれを指定して、総括して交通整理をする意味においても担当させることが、総体的にこれは前向きな措置であると思うのですが、そういう御意思はおありですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/44
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045・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) この資金の末端への貸し付け業務あるいは回収業務につきましては、仕事の実質的な内容が農協の本来の活動とも非常に関係が深いということが一点、それから農業関係の資金でございますから、やはりそういう系統金融機関の経路を活用して資金の授受をいたしますことが円滑であろうという趣旨で、制度発足の当初から県の出納業務の代行を県信連がやってきております。で、その手続のしかたとしては、今度地方自治法が改正になりまして、県金庫の業務の代理のしかたについての交通整理があるようでございますけれども、私どもとしてはあくまで、いわゆる指定代理金融機関として県信連が本業務につきましては県の出納業務の代理をいたすということで、従来の実際やっておりましたことを今後も引き続いて、そういう窓口で資金の授受をやるということにするつもりで、その点につきましては、なお誤解があってはいけませんから、近くそういった場合の契約例等もつけまして、そのやり方についての具体的な御指導を申し上げることに予定をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/45
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046・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 それでは、最後に、農業改良普及手当についてお伺いをいたします。
参考資料をいただきましたのではその内容がわからないので、さらにつけ加えた資料をいただいたのでありますが、この第二回にいただいた六ページによりましても、補助単価は割れば出るのでありますが、わからぬのでお伺いをいたしますが、この普及手当については、かねて四十三通常国会に法律が出まして、農業改良関係の特別手当が制定されたわけですが、その手当が制定されて、三十八年度が実行され、三十九年がいま予算に盛られておるわけですが、これが一体補助単価は一般普及員と専門員とでは月幾らになっておるか、一人当たりの補助単価をまずお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/46
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047・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 補助職員の補助単価につきましては、三十九年度は、専門技術員につきましては二万八百三十四円、それから普及員につきましては普及助長が一万六千四百十六円、特技普及員が一万二千九百八十一円、一般普及員が一万五百二十四円というのが、三十九年度の農業改良普及関係の職員についての補助単価でございます。それから、生活改善の関係につきましては、農業専門技術員については男子の場合と同様二万八百三十四円、生活改良普及員が一万五百二十四円というのが俸給補助単価でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/47
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048・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 私がさらにお伺いをいたしたいのは、この専門技術員とそれから改良普及員の毎月の給料の月額に対して特別手当が一体どの割合で予算に計上されておるかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/48
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049・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 改良普及員関係の普及手当につきましては、昨年度と同様、普及員につきましては給料月額に対して一二%を予算に計上し、それから専門技術員につきましては八%ということで計上をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/49
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050・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 これは、あなた方もよく御承知のように、農政局から出した法律で、私たちがこの委員会で審議をした際に、農業改良普及員だけが先行しておる経過も説明を聞いてわかったけれども、当時あななが所管しておった蚕糸局なり、あるいは水産庁なり、あるいは農地局なり、それぞれ同じ職種におる者がこれは置き去りにされておるということで、かなりその問題を整理をして附帯決議をした経過もあるわけです。そのことはまずさておきまして、この農業改良助長法の一部を改正する法律を昨年の三月七日にこの農林水産常任委員会で採決する際に、附帯決議の第一号に、「当面農業改良普及手当として専門技術員及び改良普及員等普及職員一率に給料の月額の百分の十六を支給するように努力し、差当って、専門技術員にあってはその給料の月給の百分の八を、また改良普及員にあっては百分の十二を支給すること。」として、さしあたりはもう政府の原案でやむを得ない、しかしながら、賃金管理研究所に委嘱をして、二百万以上の委託費を出してかなりの精力的な調査を実地にさせて得たその結論というものが、少なくとも同種の業種を担当しておる者から見れば、基本給において一五・四%低い。基本的にはそういう待遇々改善すべきであるが、それも容易でないということであれば、さしあたり特別手当としては、専門技術員たると一般普及職員たるとを問わず、一六%の特別手当を支給すべきであるというのが、賃金管理研究所のこれは農林省に対する報告資料に出ておる。この資料の一ページにそういうものを取りまとめた報告を出しておる。私たちは決してこのことを軽視するわけにはまいらぬで、少なくとも農業改良というものをもっと強化することこそが私は農政の浸透には大きな役割りを持つ。これはむしろわれわれが言うよりも、政府みずからが農業改良普及員というものをより以上重要視すべき立場にあると思う。そういう立場にあるものが、われわれの一年前の国会で決議したことを、依然として、三十八年はともかく、三十九年も専門技術員については月額の百分の八でございます。一般職員に対しては百分の十二でございますということは、一体国会の審議というものを那辺に考えておるか。
これはもうあなたにお尋ねをする問題ではない。これは農林大臣にお尋ねしなければならない問題だ。しかし、農林大臣も午前中はお見えにならないというので、私たちは政務次官が農林大臣だと思って、そうして質問しているのです。どうですか、政務次官。去年のこういう附帯決議というものをあなた御存じですか、第一。御存じであったら、一体こういう附帯決議をどう善処をされて、三十九年と同じような状態に定着をしておるのか、こういう点をまず——局長から聞かなくても、基本的な問題ですよ。あなたの感触でひとつ答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/50
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051・松野孝一
○政府委員(松野孝一君) これは私どもも、農業改良普及員とか、生活指導員その他についての手当については前々から考えておって、ようやく四十三国会には、専門員が八%、普及員が一二%の手当を支給するに至ったわけでありますが、御指摘である附帯決議の案の御趣旨も存じておるのでありますけれども、まずわれわれといたしましては、先ほどお話しの、同率に考えていく産業とか林業とか水産、開拓普及指導員とかそういう関係の問題も、やはりいまの農業改良普及員と肩を並べて考えなきゃいかぬ。今年度は、三十九年度はこの点に重点を置いて目下やっておるわけでございまして、まあ一六%に上げるということについては、存じておるのでありますけれども、まだその実現に至らないのであります。今後において十分検討いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/51
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052・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 これはどうも、その程度では納得できない問題ですので、これはひとつ大臣に私はお伺いをいたしますから、これ以上の御答弁は——その程度ではとてもこれは了解できません。また、この法律が役所の都合で、自治省の所管で内閣委員会に出されるということでありますから、またこの法律の提案があれば、そこでお尋ねをしなければならないことになると思うのでありますが、これはもうもっと基本的に大臣の考え方というものをお伺いをしなければならないので、いまの政務次点の御答弁は、まあそれなりに聞き流すよりほかないわけです。
私は、ここでもう一つ突っ込んで伺いたいのは、生活改善の新しい資金のワクを設けたこの去年の農業改良助長法の法案を通すときにも、生活改善普及職員の増員につとめるということを、大きく私たちは全党一致の附帯決議をつけておるのでありますが、この要請にはどれだけこたえておるか、予算の中で一体人員はどれだけ増員をされたか、そういう点にしぼってお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/52
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053・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 生活改善普及員の増員につきましては、逐年努力をいたしてきておりますが、三十九年度について結論を申し上げますと、百七十名の増員が実現を見たわけでございます。で、三七年千八百八十名、三十八年二千五名、三十九年度が二千二百二十名というふうな姿で、せんだっての予算でも御審議をいただいたわけでございます。
なお、蛇足で申しわけございませんが、専門技術員なり普及員についての手当の率の問題でございます。附帯決議をちょうだいいたしまして、私どももさらに検討もし、折衝もいたしたのでございますが、最近時点におきましての資料でとりますと、あの報告に出ております比較の方法、つまり比較年齢は普及員の平均年齢三十四歳、比較学歴は短大卒ということで、普及員の場合と研究職の農業試験場の職員の場合との俸給格差を見てみますと、それが二一・五%という結果が確認をされたわけでございます。なお、専用技術員につきましては、同様平均年齢四十六歳、比較学歴は特段の定めがございませんが、大体農業試験場と比較して差しつかえないように思いますので、これもまた現在の専門技術員と農試職員との対比で数字を出してみますると、八・六%という格差が検討の結果出ました。それらの事情もございまして、昨年は一六%あるいはそういった御趣旨での附帯決議をちょうだいいたしまして、私どものほうも検討したのでございますが、そういうような計数もあらわれてまいりまして、それらの事情から、本年度の重点的な改善項目としては、附帯決議の第二にございましたほうがより緊急ということで、そちらをまず実現し、普及手当の問題につきましては、なお今後、いま申しましたような基礎資料の整備をさらに重ねまして、一二%、八%と違った率の主張のできるような十分の材料を整えました上で、さらにまた検討をさせていただきたい、かように思います。はなはだ蛇足のようでございますが、念のために御承知を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/53
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054・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 普及職員というものは、これは勤務状況あるいはその業務内容、いろいろ資格条件というものを考えると、この普及職員の位置というものは行政職と研究職の中間に位するものだというふうに考えられるわけです。しかも、あわせて教育的な要素までがこの普及職には加味されておる。そういう特殊な任務を持っておるわけですね。しかも、その職務の状態というものは、夜昼を問わず、これは重労働にさいなまれておる。責任の度合いも激しい。疲労も非常に度合いが深い。勤務時間、勤労環境等において著しい特殊な環境の中に置かれておるので、あなたがいま事例に出されたような、その研究所の職員とこれを比較して、何か受けた感じでは、一六%を一律に上げなきゃならぬということに多少ブレーキ的な——蛇足と言うたから、蛇足的説明ですが、そうでなくて、あなた方が手にかかえて、最もその最先端になって触角として働くこういう職員を、ああいう劣悪な条件に甘んじさせて、はたして改良普及員の職能が十分に発揮できるかということを、あなた方はみずからがもっとあたたかい、血の通った見方で見て、単にわれわれは附帯決議にあげたのをやらないからけしからぬという形式論を言うておるのじゃなくて、実態が、ああいう普及職員に対する農林省のまず考え方というものは、これは前向きにやっていかなければ、この期待するような職務の完遂も困難であるという現状に置かれておるのですから、一六%以上出すなら問題はないけれども、一六%も出さないのにブレーキになるような蛇足的な説明は、これは私は聞く耳は持たぬ。これはいずれ農林大臣に率直に伺うということで、私の午前の質問はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/54
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055・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/55
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056・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) 速記をつけて。
これでちょっと休憩いたします。午後一応から再開いたします。
午後零時二分休憩
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午後一時二十八分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/56
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057・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) ただいまから委員会を再開いたします。
委員の異動について御報告いたします。
本日付をもって、委員牛田君が辞任され、その補欠として小平君が委員に選任されました。
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058・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) 農業改良資金助成法の一部を改正する法律案及び農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案を議題とし、午前に引き続き質疑を行なうことにいたします。
質疑のおありの方は、御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/58
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059・戸叶武
○戸叶武君 日本は本年四月一日から開放経済体制に入ったのでありまして、開放経済体制下における日本農業、生産、流通、加工の各部面を通じて生産性を向上させ、近代化を促進させることによって、国際競争力を強化しなければならない、こういう政府も考え方を持っているようでありますが、農業が世界的な経済変動のあらしの中にもまれているときに、これに対して革命的な施策が講ぜられなければならないということは、池田総理なり、赤城農林大臣がつとに提唱しているところでありますが、あらわれた結果というものは、必ずしもそれほど思い切った施策というものは、具体的に出ていないと思うのです。しかし、いずれにしても、赤城農相は、今回においては重点施策として農業金融の問題に力を入れているようですが、その重点施策に対するところの構想及びプログラムについて、まず第一に承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/59
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060・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) お話しのように、国内的に見ましても、国際的に見ましても、日本の農業はいろいろな面で風当たりが強いといいますか、もまれているような情勢であります。一方、国内的に見ますると、選択的拡大とか、あるいは機械化とか、こういう面で進めていかなくちゃなりませんが、何といってもその基本的な問題は、そういうことが軌道に乗り得るところの基盤が必要であるというふうに考えますので、土地改良等もそれに合わして大きく進めていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。同時に、それらを含めた構造改善の仕事、これは体質改善でございますので、そういう面におきましても、構造改善の事業をさらに進めていきたい。また、格価経済の中に入っていますので、流通格価対策、こういうものに重きを置いて、格価の安定及び生産の確保、こういうことにつとめていきたい。第四には、いまお話がありましたように、補助、助成というのにも限度がございます。でありますので、予算面等からも——なかなか予算面から保護的な助成面の金が十分出し得ない、こういう情勢でありますので、格価面からの流通対策と、あるいは金融対策等にまで力を一そう入れまして、財政、金融面においてできるだけ自立態勢が整うような、また、予算面において十分でない面を財政金融対策で相当補っていきたい、こういうつもりから、財政投融資あるいは金融方面に力を入れていこう、こういう四つの大体めどをつけて進めていきたい、こう考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/60
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061・戸叶武
○戸叶武君 赤城農林大臣は、財政、金融の総力をあげて革命的対策を行なうと言っておりますが、三十九年度の農林関係予算は三千三百六十億円で、国の予算に占める比率は一〇・三%でありまして、昭和二十八年の一六・五%の時代からだんだん農林予算のウエートというものが下がってきている。それをいまだに挽回できない状態であります。あの時代は、食糧増産を強調した時代で、土地改良の面、その他の補助金がふくらんだときでありますから、一六・五%になったのだと思いますが、予算面においてこのように立ちおくれている農業を保護しなければならないというふうな力点に立ちながらも、農林予算は一〇%前後で低迷しておってよろしいというふうに農林大臣はお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/61
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062・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 予算の裏づけが十分にあってこそ、考えている農林政策が推進されるわけでございますから、予算が多くあることを私ども望み、またそういう努力をいたしたのでございますが、いま御指摘のように、全体の予算から見れば一〇%程度、各省別に見ればそういうことでございます。また、各省関係の伸び率は、昨年に比較しますれば、平均一四%でございますが、一七%くらいに農林関係の予算は伸びておるわけでございます。でございますけれども、いまのお話しのように、私はこれで十分だなどということは、全然考えておりません。でございますので、重点的に考えて、有効にこの予算を使っていくということ、及び先ほど申し上げましたように、予算面における不十分な点を、金融の方面で相当見ていこう、こういうことで、予算そのものは、ことしの予算はできていると私は考えております。お話しのように不十分であるというふうには考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/62
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063・戸叶武
○戸叶武君 大臣は、日ごろ予算の裏づけとなる施策の第一は、農業金融の拡充にあるということを強調しております。これが、今回の赤城農政の特徴としてあらわれていると強調する向きもありますが、農林公庫資金の融資のワクが一千七十億円と、前年度より二百億円ふえ、農業近代化資金の利子補給のワクが六百億円と、前年度より八十億円ふえた程度にすぎないのですが、この程度の内容で、これが重点施策と言えると思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/63
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064・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 金融面では、重点施策ということばが当たっているかどうか知りませんが、金融面では、相当画期的にいまの資金のワクもふえておりますし、あるいは金利の面におきましても、低金利のほうに相当資金を回すということにしましたから、五分五厘平均のものが六〇%くらいになっているかと思います。あるいはまた、貸し付けの繁雑なものを相当簡素化している、こういうふうな点から見まするというと、私はこの面は相当推進しておるつもりでございます。また、実際面に借り受ける手続が、従来煩瑣であったり、あるいは時期が非常におくれたり、迅速に借り入れられないということで、消化がおくれたりしておるというような実際面もございます。そういう面を改めてきましたので、ことしは消化面から見ましても、この程度でも相当な推進をしてきたものだと、こういうふうに私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/64
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065・戸叶武
○戸叶武君 農林大臣の農政面に当たっている若干の努力ということは、私たちも認めないわけではありませんが、いま、日本農業が置かれている立場というものは、私は、この農業革命の時代であると思うのであります。そういう点において、農林予算の特徴というものが、貿易の自由化にどう対応して、そしてこの立ちおくれている農業の近代化をはかるかという点に力点が置かれなければならないと思います。しかしながら、この政府の高度経済成長なり、所得倍増計画の第二ラウンドに入ったと言いますが、農業基本法の四年目に入った今日において、農業の実態というものを率直に見詰めるならば、農業基本法で高く掲げた他産業との格差の是正というのは、ほとんど成功を見ていないと思うのであります。そういう点において、この農業基本法がねらった問題点というものをどうやって解決をつけていくかということが重要だと思いますが、そういう点からいきまして、赤城農相はどのようにこの点を考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/65
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066・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 確かに農業基本法の指向しておりますところの他薦業との格差の是正という面のテンポもおくれておりまするし、よくいっておらぬことは私も認めます。農業そのものは私は相当進んだと思いますけれども、高度成長下における消費経済の面が非常に拡大されておる。二面には消費ブームも出てきておりますし、高度成長下における他産業の、ことに工業方面の一時的な伸びが非常に強かった、こういう関係で、そのひずみといいますか、その余波が農業関係にもきておりまするし、同時に格差の是正というような点につきましても、是正が十分に行なえるような情勢でないようなことに相なっていることも、率直に認めざるを得ないと思います。しかし、この目標、格差の是正とか、あるいは生産性の向上とか、農家生活の安定、あるいは経営規模の拡大による農業経営の安定とか、そういう方向に対しましての農業基本法のねらいというものは、私はこういう開放経済下に入らなくとも、当然のねらいでございますが、入れば入るほどなお一そう進めなければならないというふうに考えます。そういう点につきましては、先ほどから申し上げましたように、急速に、一年に一回しか収穫ができないような、申し上げるまでもなく立場の、そういう農業の化産物が多いのでございますから、やはりある程度の年数はかけなければならぬと思います。かけなければならぬと思いますが、いまの基盤の整備強化というような問題等も、ことしは昨年度より七百七、八十億の予算も盛っておりますし、強く進めていきたいと思いますが、同時に、構造改善等の問題につきましても、いろいろ支障がないわけではございませんし、そういう面も、あらためてこれを進めていき、金融面にささえを移して、その面でやる面もあろうと思います。そういう面から、お話しのように、開放経済下における農業と他産業との格差是正というものは、思うようでございませんので、これをぜひ各方面からその目標に向かって進めていきたい。また、そのために、先ほどからお話がありましたように、十分の予算ではございませんが、そういう方向への予算あるいは金融、こういうふうに手当てをいたしまして進めていくつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/66
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067・戸叶武
○戸叶武君 二十世紀に入ってからの近代国家を形成する上において、非常にその国柄が似ているのは、西ドイツと日本だと思います。ドイツにおきましても、カウツキーが農業問題とまっこうから取っ組んだ時代、また、第一次欧州大戦に敗れた後におけるワイマール体制の時代に、フォン・ゼークトがドイツ再建の基本問題として農業問題に集中して問題を検討した時代、それからいまの西ドイツ連邦になってから、エアハルトの経済政策の繁栄の裏に農業の落ち込んだ状態を見つめて、いま大統領をやっているリュプケ博士が食糧農林大臣のときに、農業基本法をつくった時代、こういうように、ドイツは日本とかなり似た条件のもとにありますけれども、鉱工業が伸びたその裏に農業が落ち込んでいる、これをどういうふうに格差を是正していくかということについて、真剣に取っ組んでいると思います。私は、参議院の農林水産委員長の時代、一九五六年の八月、西ドイツ連邦をたずねて、当時の食糧農林大臣のリュプケ博士とも長い間懇談いたしましたが、やはりそのねらいは、赤城さんがいま受け取っているような考え方をもっと強めて、三〇%からのアンバランス、所得並びに賃金におけるアンバランスに落ち込んでいる農業を、国の財政的な、あるいは金融的な裏づけによってこれを均衡のとれるものにしていこうというのが、あの一九五五年につくられた農業基本法の趣旨であり、グリーン・レポートなり、グリーン・プランには、そのことが盛り上げられているのでありますが、日本は農業基本法ができた当初から、農業基本法がどうもつづり方教案のような、見てくれの作文であって、その予算的な、あるいは金融的な裏づけを欠いているところに、今日のように依然として格差がひどい状態になっていると思うのです。この問題に対しては、やはり私は戦時中食糧問題で悩んだイギリスが、補助金を国の予算の五%も出しているような、また、一九五五年から一九六一年のころまでずっとデンマークにおいては、あれだけ理想的といわれた酪農を主体とした農業が落ち込んでしまって、そして一九五五年代の西ドイツの状態のように、三〇%の所得並びに賃金のアンバランスが出たので、それを是正するために、酪農製品の輸出その他を奨励していかなければならない国柄もありますが、イギリスを上回る六%もの補助金政策によってこの農業をささえている。そういう努力から見ると、ただ日本では昭和二十八年代のMSA協定の受け入れ、アメリカの余剰農作物の受け入れの段階から、補助金を整理するのだという名目のもとにおいて、食糧の自給体制というものをくずしてしまって、安い麦やそれからいろいろなものを外国から買ってきたほうが日本としてはもうかるのだというような漫然たる思想のもとに、今日の農政の貧困を誘導してきたのだと思いますが、どうもいろいろな点において力は入れているというが、そのウエートが非常に低いところに問題があると思うのですが、この予算や金融の面において赤城さんは、いままでの農林大臣からみれば努力を払ったほうだと、いままでは払わな過ぎたから、その比較において若干ほめられておりますが、この農業基本法の趣旨なり、いまの日本農業が到来している現段階の深刻な状態を打開するのには、あまりにも私は何か物足りないものを感ずるのですが、これで精一ぱいと赤城さん思われているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/67
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068・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 西ドイツの事情、あるいはイギリス、スウェーデンの事情、全くお話しのとおりだと思います。それに比較して日本の力の入れ方が足らぬじゃないか、こういう御批判でございますが、実は、ことしの予算の編成前等におきましても、二面におきましては、農業基本法の考え方と逆に、二、三年来農業軽視というわけではございませんけれども、むしろ国際的な農業に入れば、自給体制というようなものはなくしてもいいんじゃないかというような議論が一部にございました。しかし、私はそういうことではいけないと、こういうふうに考えておったのでございます。したがって、予算の前等におきましても、御承知のとおり千何十億ぐらいの食管の会計がありますので、この繰り入れがあるので、農林予算などはそうつける余裕がないんだというような議論が相当あったのでございます。しかし、私といたしましては、いま戸叶さんの御指摘のように、農業基本法がせっかくドイツ等にならって日本の事情等を考えてつくっておっても、その推進が非常に鈍い、あるいは二面においては安いところから物を買ってくればいいんじゃないかというような議論があるし、しかし、それもまずい、間違っておると、あるいはまた補助金の整理でございますが、これは零細補助金が有効でないという面におきましては整理をいたしたものもございますけれども、やはり補助金ということばが、どうかわかりませんが、助成というような国がくぼいところに土を盛ってやる、こういうような形の助成というものは必要であろうというふうに考えて、少しく何となく農業を軽視して工業さえよくなればいいんだというような感じ方は、私は是正さるべきだと、こういう観点から予算の面等におきましても、私の考えておりますような方向で強く主張し、裏づけ等もいたすようなことに相なったわけでございます。でございますから、この予算編成前の状況から考えますならば、私は相当方向をまあ正常に戻すというようなことはしてきたと思います。してきたと思いますけれども、再々申し上げますように、これが精一ぱいとも考えておりません。これは逐次また来年度等におきましては重点的にもっとやっていかなくちゃならぬ面がございます。
それからまた制度の問題等につきましても、改めなくちゃならぬ問題等も相当含んでおります。でございますので、決して私はこの困難な事態に直面している農業、農村、農民対策が精一ぱいだというふうに考えておりません。なお一そう推進するつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/68
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069・戸叶武
○戸叶武君 いつも農林予算で問題になるのは、食管会計の問題ですが、なるほど日本の主要農作物としての米麦というものが、生産費所得補償方式によってささえられているというのは事実でありますが、どちらかといえば、この赤字の累積は、消費者保護というような社会保障的な政策のあらわれから来ているものであって、これを純然たる農林予算という形のワクに入れるのも問題点があるのじゃないかと思いますが、食管会計の赤字負担を強調して、そうして農林予算というものを圧縮しているのが今日の状況でありますけれども、あれを私たちはいま政府が言っているところの、政府は戦後米麦本位よりも酪農、果樹あるいは蔬菜、そういうふうに選択的拡大に転換しろというので、農民はその命に従って、そうして換金作物へ転換していったと思います。しかし、この換金作物の一番問題なのは、価格が常に不安定でありまして、政府が桑を抜けといえば桑を抜いたあとで繭が高くなってくるし、それから豚を飼えといえば豚が安くなり、今度豚をやめれば豚が高くなる。すべて政府と反対のことをやれば農民は金がもうかるというふうに、政府不信の声が農民の間にすらみなぎっておるのでありますが、私は政府がやはりこの新農業保護政策というものの中に、もう少し主要農作物の価格の安定というものに対して、確固たるやはり施策というものを出してやらなければならないのだと思いますが、米麦の問題でもよろめきを示し、それから乳価の問題に対してもあるいは豚の価格の問題に対しても、あるいは飼料の問題に対しても、何かたよりない感じを一般に与えているところに農民も見通しがつかない。ほんとうに、はたしてこれと取っ組んでいって、将来どういうふうになるのだろうかという不安感が常につきまとっているようでありますが、そういうふうな農民の不安感に対して、赤城農相はどういうふうにこたえようとしておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/69
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070・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) まあ米等につきましては、いまの消費面を相当いま重んじているような格好でございますけれども、やはり生産者に対しましての、生産者の価格を支持していく、こういう強い考え方でございますので、これは価格の額がどれくらいかということは問題がありましょうけれども、私は不安はないと思います。その他、一応御承知のように、繭にいたしましても価格支持をいたしておりますが、これも五、六年前に桑の抜き取りというようなことで、いまになっては残っていた人がよかったので、抜かないほうがよかったというふうな面も出てきております。出てきておりますが、これも大体需給関係が安定いたしてきたと思います。あるいはまた、大豆、なたね、でん粉、いろいろ価格支持対策がありますけれども、私は十分であるとは思いません。ことに飼料あるいは牛乳、実は牛乳等につきましては、私は相当問題があろうと思います。牛乳等は一種の生鮮食料品でありまするし、また一部の人にしか売れない。どこの市場へも自由に売れるというわけには、これは実際問題としてなっておりません、自由経済でありますけれども。その意味でおのずから販路がきまっておる、こういう関係でございます。そういう関係でございますので、いまのままの安定基準価格という一本やりでいけるものかどうか、こういう点につきましては、再検討を加える必要があろうと思います。何といたしましても消費の拡大でございますから、学校給食等になま牛乳を中心として向けていこう、こういうことで切りかえをことしからいたすことになっておりますけれども、同時に、価格面等におきましても、当事者だけの価格の決定というだけで事足りるかというと、非常にそれだけでは事足りないというような現状でございますので、この辺につきましては私は検討を加えて、来年度あたりには、もっと根本的な問題に触れて方向を出していかなくちゃならぬというふうに考えております。あるいは飼料の問題等につきましても、輸入飼料が大部分になってきております。もちろん、自給飼料も草地造成その他大麦等を飼料としての分野において増産を進めていくということは、当然やらなくちゃならぬ問題でございますから、やっていきたいと思います。濃厚飼料等外国に依存しておる、輸入に依存しておる面が非常に多い関係もありまして、その価格につきましても、外国の輸入の価格に左右されたりいたしております。ことに畜産方面におきましては、売るほうはそう高く売れないで買うほうのえさのほうが高くなるというふうなことでは困ると、こういう事情も十分承知しておりますので、こういう方面も一そう検討を加えて、採算がとれてやっていけるようなものにもっていかなくちゃならない、こういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/70
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071・戸叶武
○戸叶武君 大臣が牛乳や飼料の問題が重大であるというふうに認識されておりますので、この問題はあとから私は質問を行ないますが、その前に、この農業改良資金助成法の成果について承りたいのであります。いままでに国費が十九億三千万円、都道府県九億六千万円、造成資金額は六千二百八十九万円程度になる、貸し付け額は延べ百億円、事業費に換算すれば百五十億円に相当するというふうに政府は宣伝しておりますが、はたしてこれによって新技術の導入というものがどの程度までなされたか、その成果について承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/71
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072・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 御承知のように、ことしからは新技術の導入ばかりではなく、農家後継者対策等のほうにも使用できるようなことに考えてこの拡大をはかってきております。無利子の金融でもありますので、なお一そう進めていきたい。いろいろガソリン税との関係でいろいろ研究いたしましたが十分ではございません。新技術の導入がどういうふうであったかということについては、事務当局から御答弁申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/72
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073・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 制度ができましてからただいままでに、三十八年度までに、おおむね事業費として見ますと百五十億円相当の資材、物資等が新技術の実践ということで導入せられてまいってきておるわけでございます。この制度によりまして普及いたしました技術は多岐に及んでおりまして、いろいろいままでの種目につきましては、資料にも差し上げたと思いますが、たとえて申しますと、水稲の健苗育成技術の導入というのは、この制度が始まりましたころ一番資金的なボリュームとしても、重点が置かれておったものであったかと承知いたしております。この技術の導入によりまして稲作が安定をし、特に早植えというような技術とも関連をいたしまして技術の導入が行なわれたということは、現在の高い水稲の生産力水準をもたらした一つの有力なものであったかと思っております。なお、このほかたとえば野菜について申しますれば、ビニール等の活用によりましての不時栽培でありますとか、あるいは周年供給でありますとか、そういう季節はずれの野菜を供給することについては、相当の実践的な効果をあげたように考えております。また養蚕面で申し上げますと、現在新しい養蚕、近代的な養蚕の一つの中心的な手法となっております屋外条桑育、集団化された桑園と結びつきました屋外条桑育を骨子とした新しい集団飼育の方式、これもこの改良資金による援助が、相当の役割をその推進について果たしてまいっておると思います。なお、このほか果樹関係、蔬菜関係、それから花——花卉、球根のようなもの、なかなかいわゆる従来の補助金というような手段では扱いにくくて、普及員の単なる普及活動だけにたよっておりましたような新しい技術につきまして、普及員が農家の方々におすすめをして実際に踏み切っていただくという意味合いでは、そうなった特産関係、園芸関係、畜産関係等で相当の普及活動をささえる意味での成果を果たしてきたように、私どもは承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/73
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074・戸叶武
○戸叶武君 その面で成果があったことは認めるのですが、成果とともに非常に悲劇的な面は、この蔬菜類でもあるいは果樹の問題でも、いろいろでき過ぎて暴落してどうにもならぬといって東京近在のお百姓さんなんかも大打撃を受けているような状態、こういうようなのは、やはりいろいろな面において、そういう技術導入というだけでは解決つかないほど農業特有な問題がある。そういう問題をおろそかにして技術導入というような形だけではやし立てるんでは、そういうところに問題点があると思うのですが、そういう問題点に対しては、政府ではどういうふうに対処していこうとしていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/74
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075・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 確かに技術導入は一つの生産性向上という意味においての問題点でございますから、技術導入だけで農業出席面が解決するとは考えておりません。ことに生産したものが流通過程に入って十分金銭収入が得られるということでなければ、生産そのものも意味をなさなくなるわけでございます。確かに野菜はビニール等の技術の進歩等によって進んだと同時に、価格対策が十分でないというような面でそれほどの効果もあがっていない、逆の面の効果もなきにしもあらずと思います。ただ御承知のように、生鮮食料品の中でも野菜等につきましては、需要供給とマッチするような計画的な生産というものが十分行なわれておりません。統制経済時代におきましても、作付制限等いろいろやりましたが、それでも十分でなかったのでありますが、統制経済でない自由経済の場におきまして全く計画性といいますか、見通しなしにやったということになりまするならば、始終価格の変動にさらされるというような状況だと思います。でございますから、やはり生産につきましても、計画という厳格なものではございませんが、計画性を持って、どれくらいの生産がどれくらいの消費に見合っておるものであるか、種類別等にも相当指導いたしまして、生産の計画性、あるいはまた出荷の調整、こういう面を農業団体等とも協力いたしまして進めてきておりますが、さらに一そう進めていかなければならぬと思います。同時に価格面等におきましても、蔬菜の種類等によりましては、安定基金等を設けてそれに金を出しております。あるいはまた、農業団体等ともよく話し合って、値段の高いときの一部の基金をたくわえておって、値段が下がったときにこれを補っていく、こういうような制度等を行なっておる県あるいは地方等もございます。そういう面等をも一そう推進していかなくちゃならないと思います。そういう支持といいますか、計画的な生産あるいは出荷あるいは市場の問題もございます。こういう流通面と同時に価格の面におきまして安定する、安定的なものに持っていくということ、生鮮食料のうちでも種類が非常に多いので、全体的にやっていくということは、むずかしいのでございますけれども、蔬菜の種類等によりましては、そういう安定基金を設けて価格の安定をはかっていく、こういうことにいたしたいと思い、またその一部はそういうふうに実行しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/75
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076・戸叶武
○戸叶武君 政府のほうでも計画生産なり価格政策に対してもっと責任を持たなきゃならないという御見解を示しているようですが、この先ほどの説明の中に技術導入の面においては酪農のことに一つも触れられておりませんが、政府はあれほど酪農、果樹への選択的拡大等強調しながら、この酪農の面においてはどういうような技術導入を行なっておりますか、それを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/76
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077・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) ちょっと事務当局からお答えいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/77
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078・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 酪農面で技術導入、改良資金の活用状況を見てみますると、おおむね自給飼料基盤の整備、自給飼料の関係のそういった問題については、技術導入資金がある程度利用されるようでございますが、その他の問題につきましては、他の制度金融その他で畜産のほうは逐次整備を重ねております。また草地改良にいたしましても、自給飼料の作付増大にいたしましても、積極面についてはいまだ改良資金と申しますよりも、どちらかと申しますれば、助成の対象となる助成段階のものが比較的に多いように見受けられます。そのような関係で比較的にその酪農関係ではこの資金を直に活用するという道が比較的には少ないように見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/78
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079・戸叶武
○戸叶武君 自給飼料整備にいままでどのくらいの金が出ておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/79
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080・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 畜産の関係で、ただいま申しました自給飼料増産という項目がございますが、これは三十四年度から貸し付けを始めておりまして、三十九年度の予定分量まで含めましての貸し付けではおおむね一億五千万円、これが改良資金から貸し出された実績でございます。なお改良資金以外の助成につきましては、畜産局長のほうからお答えいただけるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/80
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081・檜垣徳太郎
○政府委員(檜垣徳太郎君) 農業改良資金以外に農林漁業金融公庫資金からも、草地改良関係の融資が行なわれておるのでございまして、三十六年度には補助残の融資、非補助融資を含めまして二億三千四百万、三十七年度が三億七千二百万、三十八年度もおおむね三十七年度を上回る程度のものが出るものと考えております。なお、草地の造成に関します助成につきましては、昨年度約、これは公共事業費に組みした助成額それから構造改善事業において助成されるものを含めまして、約十二億円、それに対しまして、本年度はその関係の資金で約十七億、その他の飼料増産経費等加えまして、合計二十三億円の予算を予定いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/81
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082・戸叶武
○戸叶武君 飼料の問題はまたあとに回しますが、農業改良資金助成法によるところの技術算入資金が、三十九年には三十九億五千万円、新たに設けられる農家生活改善資金が一億五千万円、農業後継者育成資金が四億五千万円という、この内容を見ますと、新しく農林大臣が強調している農家生活改善資金一億五千万円というので、これで何をやるつもりですか、この少しばかりの金を、手品の種というわけじゃないでしょうが、なかなかやるのもむずかしいと思いますが、どんなことをやろうとしておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/82
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083・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 事務当局から詳しく補って御答弁申し上げますけれども、従来生活改善の仕事等しておりまして、それに必要なものでございますけれども、特に改良資金の性格から見まして、後継者対策というような問題ともからみまして、そういう意味におきまして、生活改善資金なども住宅の改善等を主としていきたいと思います。住宅の問題におきましては、住宅金融公庫からも出ておるわけでございますけれども、あまり消化がよくないようでございます。そういう方面にかんがみまして、住宅の改良等主としてやっていきたいと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/83
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084・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 補足して申し上げますが、生活改善資金は、今度新たに道を開いていただこうと考えておるわけでありますが、従来の普及員活動の援軍と申しますか、うしろだてとして、こういった資金があることが、普及効果を一そう早めるだろうという趣旨でございます。そこで金額の測定でございますが、何ぶん初めてのことでもございますし、どの程度の資金需要が現実に上がってくるかというようなことについては、何と申しますか、現地の希望を積み上げて予測を立てるといったような十分の準備期間もございませんでしたので、一応全国に現在約千五百ございます改良普及所ごとに、平均いたしますと約十万円程度でございますが、まあ初年度の、しかも当初の計画ワクとしてはこの程度のことを考えたわけでございます。午前中にも申し上げましたように、この改良資金全体の資金ワクの調整の問題は、従来もそうでございましたし、今後もかなり弾力的に現地の要望に沿って、随時調整改訂していくつもりでおります。したがいまして、もし生活改善についての資金需要が非常に高いということでございますれば、その際は当面は全体の資金ワクのうちでの調整を立ててまいりたいと思います。なお事業の中身といたしましては、ただいま大臣がお話しになりましたように、住宅金融公庫の改修あるいは新改築というような、在来の制度金融の対象になっておりません比較的小口の住居の改善、個室の分離でございますとか、通風施設の整備でございますとか、そういった住居内の小回りの生活改善ということをまず主眼に置いております。なおそのほかに生活の合理化のために炊事場でありますとか、浴室でありますとか、そういった方面にもこういったものの指導が及ぶと思うのです。なお半面、共同的に生活の合理化、改善をしたいという、あるいはまたそういう指導を生活普及員もやっておりますので、農繁期におきます共同炊事でございますとか、あるいは共同託児所の施設でございますとか、そういったような共同で生活改善を行ないます場合の必要最小限度の施設の導入にも本資金を役立てたい、さように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/84
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085・戸叶武
○戸叶武君 この農家生活改善資金にしろ、農業後継者育成資金にしろ、農村から若者たちが流出するのを、どうやって防ごうかという一つの施策だろうと思いますが、三十七年度の統計を見ましても、他産業からの帰農者を差し引いた移動者数が七十一万人にも及び、また昭和三十二年から比較すると、五年間に二百万人の働き手が農村から流出している。これは池田さんの高度経済成長政策によって農村における若い労働力というものが都市に、工場に奪われているのを、如実に物語っているのだと思うのでありますが、ここでもって、ないよりはましでありますが、たとえば一億五千万円の金を四十幾つかの都道府県に分けたら幾らの金になるか。二階から目薬のような気休めのような予算でもって、小回りの生活改善だと遠慮深く言っておりますが、それほど成果があがろうとは思われない。しかし、私たちが地方に出張してみるときに、いつも私は気の毒だと思うのは、生活改善普及員の活動というものは、実に涙ぐましいものがあります。じみだけれども、非常な成果をあげています。ですから、これに対して、いま説明のように、少しでも何か予算なり資金の裏づけがあれば、もっとこれが効果があがるのだろうという思いやりの点は、私は納得するのでありますが、これは日本の土地問題に対するアンシャン・レジームの問題よりも非常に深刻なのは、農村の家族関係における封建性だと思います。若夫婦は隣りにおやじさんたちががんばっていて、息詰まるようなねやの生活を営まなければいかぬようなところには、これは実際いたたまれないものがあると思うのです。これを思い切ってもっと農家の中に伸び伸びとして若者たちが生活できるような環境をつくってやろうというところに、ねらいがあるのだろうと思いますが、この程度ではどこかをさすっている程度でもって、とても問題の解決にはならぬと思いますが、苦労人の赤城さん、この程度でよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/85
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086・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 全くお話しのとおりでございまして、普及員が一生懸命にやっておりますし、やっていくにつきましては、もっとやりいいようにいまの改良資金等の裏づけがありまするならば、より以上に効果が出ると思います。いまの古い制度等を少しずつでも直して若い人たちが安んじて、そうして安定して農業をやっていけるというところにねらいがありますことは、せっかくいま言われたとおりで、それにしてはまことに心細い金ではないかというお話でございます。まあ最初のことでもありますので、そうしてまた初めの計画を率直に申し上げますと、実はガソリン税を還元してその金でやっていくということで、相当張り切ってやって進めておったのでありますが、その面が思わしくうまくない。来年は免税ということになっていますけれども、こういう面などが農村に還元されるということになりまするならば、いまの考え方が、せっかく芽を出しておるのでございますので、これの資金の消化の状況等も考えまして、ねらいは御指摘のようなねらいでございますので、そのねらいを達成すべく、さらに一段のくふうを次年度等においてはこらしていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/86
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087・戸叶武
○戸叶武君 農業後継者育成資金四億五千万円の問題ですが、やはりこれは農家において、農家の家族ぐるみの農業経営の中において隷属しているような青年に、何か希望を持たせ、そうして農業技術を習得させて、何か農業面において新しい芽をふかせようという意図のもとに企てられているのだと思いますが、いなかではおやじに無断で金を借りるというのは、まことにやっかいなことであって、いま父子契約の問題なんかも先進地では起きておりますが、こういう問題一つでも、なかなかいなかの封建性においてはいろいろトラブルも起きると思いますが、そういう問題が起きたような場合に、どういう形においてそういう問題を調整していこうと考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/87
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088・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 何といいますか、一般的なトラブルのお話でございまするし、私も一般的にいろいろなトラブルがあると思います。このあと取りといいますか、後継者が何といいますか、独立して、自分も農村人なら農村人として独立してやれる、独立できるというような希望を持つ、それにはやはり経理といいますか、金の面でも自分で働いたものに対しての報酬を自分が自由にふところに入れて、そうしてまたそれは自由に使える、こういうようなことが必要であろうと思います。一面におきまして、何か家族間における賃金制度、みたいに、働きに応じて金を分配していく、こういうような方法をいまとっておるところなどもあるようでございます。農業団体等などにおきましては、そういうような指導をして、あるいは農協が金を預かっておって、農協のほうからその割り前を払い下げる、貯金にしておったものを払い下げるというような制度をとっておるようであります。要するに、自分も独立人だ、独立の農業人だ、経営者だ、万全の経営者でなくても経営者の卵である、こういうようなふうに、考え方もあるいはまた実際の経済面におきましても、そういうことになっていけるように向けていくことが、まあ妥当といいますか、必要だというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/88
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089・戸叶武
○戸叶武君 いま日本の農村のいろいろな農業構造の変化の中において、昔のように、自作農よりも兼業農家が多くなり、農家における収入においても、農業収入よりも農業外収入がだんだん多くなってくるというような傾向にあるので、日本のような都市と農村とが交錯しているような土地においては、農村の若者たち、農業に従事している人たちが何か非常に不安な、腰の落ちつかない思いをさせられるのは当然だと私たちは思うので、いま赤城農相の言われたように、金の面でも、自分で手に入れて自由に使えるようにさせなければならぬといいますか、日本のいまの農家制度における封建性の深さというものは、この面においても非常にむずかしい面があって、特に若者たちだけじゃなくて、嫁さんや何かにおいても、しゅうとめ等との争いなんかも、こういうところに非常にあって、農村に嫁入りしたくないというのは、こういう農家における窒息するような状態における空気に対する抵抗だと思うのですが、この程度の農業後継者育成資金で、農家の中に明るい光を入れることができると赤城さんは思っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/89
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090・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 先ほど申し上げましたように、初年度がございますので、もっと多い金を必要とするのでございますが、それほどに手当てができておらぬというのが現状でございます。こういう制度ができておるということを一般に知ってもらいまして、そうしてその目的のために十分利用するよう希望をいたしております。そして希望したとおりに、とても足らぬというような状態が出てくることを、私はまた欲しておるわけでございます。そういう意味におきまして、次の年度におきましては、一そうのくふうをこらしていきたいということを、先ほどから申し上げておるとおりでございます。そういう意味におきまして、消化の実情あるいは推進の方法等もとりまして、一そうくふうをこらしていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/90
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091・戸叶武
○戸叶武君 次に、農林漁業金融公庫法の一部改正に関連してお尋ねいたしますが、農業の生産性の向上、あるいは経営の改善ということを強調しておりますけれども、御承知のように農業というものが落ち込んでいるのは事実であります。これにはやはり池田さんが当初言ったような革命的な施策を行なわないと、私は一朝一夕では、年じゅうあとからのろのろと農業が追いすがってくるというような状態で、農業改革というものはできないと思うのですが、また、このような程度の施策では、一町五反なり二町五反以上の富農層の農民以外には、小農や零細農は、ほとんど恩恵にあずかることができないんじゃないか。構造改善事業というものが趣旨としていいと言いながらも、なかなかそこに協力関係ができ上がっていないのは、そういうところに問題点があるんじゃないかと思いますが、政府のほうではどのように見ておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/91
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092・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 確かにいま革命的、革新的な政策が必要だろうと思います。ただし革新的、革命的という政策がどういうことかということになりまするというと、非常に問題の検討が十分なされておらないんじゃないかと思います。たとえば革新的、革命的ということで基盤を整備していくということにつきましても、しかも耕地を国家管理というような形にでもして、なお私有に戻すというような形というようなことができ得るということであれば、これは革命的ということにも私は言えるんじゃないかと思いますが、現在の制度のもとで、検討は加えておりますが、なかなかそういうことはでき得ないんじゃないか。それじゃ別に予算をうんとふやすということが革命的、革新的かということにも考えられないわけでもございませんが、予算をふやすかふやさないかということは、制度を革命的、革新的にした上でのこれは裏づけであろうと思いますので、漫然といまの上に上積みをしたから革命的、革新的というわけにまいらぬと思います。でございますが、いずれにいたしましても、国内的に見ましても国際的に見ましても、非常に農山漁村全部でございますが、転換を迫られておるときでございますから、革新的といいますか、いろいろ思い切った施策を行なっていかなくちゃならぬと自分は考えております。そこで、ことしのいろいろな融資面等について改正も加えて、金利も安くしたり、ワクも多くしたり、種目も整理したりしておるけれども、小さい農家については、せっかく政府のいろいろな、こういう面も、恩恵ということばはあまりあれですが、いいことばじゃないと思いますが、利用されないというようなうらみがないではない、うらみがあるではないか、こういうことでございますが、私もそう思います。何としても、受け入れ態勢が整っておらぬということになりまするというと、どうしても受け入れ態勢の整っておるという方向へ資金等も流れるという傾向は、これは争えないと思います。でございますが、小さい農家等を無視していくということは、これはまた政治の面として許されないことでございます。そういう面におきましては、私は大きな農家の利用率は、こういう資金も多いと思いますけれども、小さい農家におきましても、一つの共同化といいますか、共同化というような線から、こういう資金の利用を行ない得るように、すなわち受け入れ態勢が整っていくような面、こういう面に力を一そう入れまして、この資金が、あるいはそのほかの施策等も、何といいますか、利用といいますか、浸透し効果あらしめるように努力いたしてみたいと強く考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/92
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093・戸叶武
○戸叶武君 この問題に関連して、やはり政府が推進している構造改善事業全体に対する再批判の段階にいまきていると思うのですが、政府では、これは功罪相半ばすというか、相当非難もあり、若干のところでは成功しているといいますか、大部分のところにおいて、やはり農民がその負担にたえかねて、ずいぶん不平不満も出ていると思いますが、この構造改善事業の現状について、政府のほうではどのように認識しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/93
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094・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) なお実態を検討して事務当局からも答弁させますけれども、私は、再三申し上げておりまするように、国内的から見ましても、国際的から見ても、日本の農山漁村の転換期である、その転換が、少ない労働力によって多くの生産及び効果をあげ、生活もよくなるということでなければたらないということを考えまするというと、いま、もろもろのお話がございまして、あるいは封建的な面などもありまするし、あるいは日本の農業の零細性等もありまするし、あるいは土地基盤の確立されていない面もございます。あるいは価格面、農産物加工、貯蔵面等の不十分だとか、そういう面、いろいろ考えてみまするというと、結局、変わり目であり、体質を農村自体として変えていかなければならぬその体質改善を、ほかのことばで言えば、農業構造改善だと、こういうふうに私は理解しておりますので、いまお話のように、農業構造改善事業が功罪相半ばしているといいますか、負担が非常に重くて思うようでないというような不満等もございまするし、また、非常に熱意を持って進めておる面、いろいろございます。しかし、根本的には私はどうしてもこの構造改善というものを、指定されたところばかりでなく、全国的に構造改善というものを、名前をつけるとつけないとにかかわらず、やっていかなくちゃならないのは、歴史的に見たいまの農村の現段階だと思いますので、まずい点がありまするならば、その点は、勇敢に改めながら、これを推進していくということをいたしたいと考えておるわけでございます。でございますので、ことし等におきましても、一地区当たりの助成の費用はふやしておりませんけれども、全体としては、助成費等も、予算面でふやしております。あるいは資金面等におきましても、単独融資のワクを一千万円ほど一地区当たりふやしております。あるいは、再三申し上げることでございますが、町村合併というような中での構造改善事業でございますから、一地区だけに仕事をやるということになると、他の地区においても、町の費用や村の費用、あるいは国の費用を、そこへだけつぎ込むということに対しまして、他の部落といいますか、旧町村等におきまして、不満等もございます。さりとて、全部これをやっていくかということになりまするというと、全部に、ゆくゆくは、名前があるとないとにかかわらず、やらなくちゃなりませんけれども、全部というわけにもまいりません現段階でございますので、町村のうちにも、非常に熱意のあるところは二つ地区を設けるというようなことも、道を開いておるわけでございます。そういう面から、何といたしましても、土地の私有のもとにできておるところの構造改善事業でございますから、なかなか、思うようにいかぬ面もございます。しかし、私は、これを国有とか公有とかいうふうにしろとかいうことを申し上げるわけじゃございませんが、私有の上に立って、いろいろ、構造改善をやっておりまするし、その人々の経済状況というものも、同じようではございません。そういう面からのむずかしさはございます。したがいまして、負担の面等につきましても、十分考慮をし、助成も実際には、七割近く、国と地方を合わせれば、なっておりまするし、単独融資の面も、相当多くしてきておりますので、私は、ほんとうに熱意を持ってやれば、その効果は見るべきものがあると思います。しかし、これに対するいろいろな支障等がございますならば、具体的に、その支障を取り除いていくし、また、国全体としての制度の問題としても、支障があれば、その支障は取り除きつつ、この構造改善というものは進めていく、こういう方針でやっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/94
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095・戸叶武
○戸叶武君 事務当局から、いま、大臣が言った支障を取り除きつつ進めていくと言うが、目下、構造改善事業で問題になっておる問題点というものは、どういうものか、具体的に御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/95
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096・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 当面、一番町村の計画作成段階でむずかしいと申しますか、調和のとりにくかった問題は、先ほど、大臣のお話しにありましたような市町村の中の、ある局部的なところが、この事業の対象として取り上げられて、かなりの部分が、一応対象とならない、資料的に申し上げますと、いわゆる地区外事業を含めまして、在来の基準補助額の中でやってまいりました事業では、町村の中の四分の一弱が受益しておるというような計数的な検討もいたしました。そこで、その点は、今回、第一次的な事業の効果を見ました上で、さらに、他の地区について、同じ程度の規模でこの事業をやる熱意があり、また、やる準備が整っておるというようなところについては手当てをいたしましたから、本事業についての、現地でも、一番やりにくかった点、つまり、ある特定のところへ集中しようとしますと、他のところを納得させることが困難である、それを気がねをしておれば、集中すること自体が困難になる。その一番現地の計画をおまとめになる方々が御苦労になった点は、一つの障害は取り除かれたように思うのです。それからもちろん欲を申せば、事業費のワクが多いほうがいいという御意見もありますが、これは一つの先駆的な事業としてやっていることでもございますので、他の農林省のいろいろな施策とも合わせるという意味で、今回は融資の補助事業をふやしたわけでございますが、これもいわゆる補助事業ということになりますと、土地基盤整備はもちろんでございますが、施設の関係につきましても数戸共同でおやりになる場合に、助成の対象になる同じような施設を、個人がやろうという場合には、補助金の対象としては取り上げられないという点での現地での不満等がございました。また、花とかそういった換金件物の場合には、助成対象とするのに適当な施設がなかなかない。そういったようなところでは、補助金よりもむしろ低利融資のあったほうが、切実な問題が解決をするわけでございます。その意味で、単独事業のワクをふやしたことで、そういった支障にこたえたつもりでおります。
なお、当面私どもが解決をしなければならないと思っております問題は、この事業は何と申しましても比較的に、平均的なと申しますか、平準的な、典型的な農村については、諸般の準備その他もほぼ見合って整うわけでありますが、立地的にと申しますか、主体的な条件がだいぶ違っておりますたとえば都市近郊の農村地帯、あるいはそれとまた事情を異にいたしますが主体的な条件が異なっておるという意味では、山村地帯の農業地帯における構造改善、あるいはもう少し幅広いことばで申せば、近代化ということでございますが、こういったいわば相当のまとまった地帯、要するに地縁的な広がりを持って構造改善なり、近代化なりをやれる横の広がりの持てる地帯と違って、都市にいたしましても山村にいたしましても、農業で自立していきたいという熱意のあり、また企業的な芽を出しておられる農家がかなりあるにかかわらず、それらの農家が地縁としては、要するに地域的な一つの単位としてはなかなかまとまりにくいといったような実情にあるのが、その両地域であろうと思います。これらのところで、いまの事業をそのまま当てはめてまいろうといたしますと、かなり作目選定の問題にいたしましても、それから事業の進め方の問題にいたしましても、一般的な、標準的な平場農村の場合とは若干趣を異にしているように思います。そこらのところについて、実施基準をある程度弾力化することによって、相当程度そういうところの構造改善事業にも現在の助成方法が妥当すると思います。現に各地方農政局でそういう観点から弾力的な運用によって、かなりの分量はこなしておりますけれども、やはり本質的には何らかそこにいまの事業の進め方と少し違ったものを求めておる、またそういうものがないと、ほんとうの意味で現地の希望に沿いがたいという点があることは認めざるを得ないところで、そこらの問題につきましては、今年度予算で調査の費用を組んでいただきまして、一年間かかって、みっちりそういった特殊条件にあるところの今後の構造改善事業の進め方についての手法の検討をいたしたいと思います。そのことは、原因的にはいま申しましたような個別農家がありますことと地縁的なつながりで、広がりで集団的にこういう事業を進めることとの調和がなかなかむずかしい、それをどういうふうにそういう地帯で展開をしていくかという問題が一番根本のように思いますけれども、いろいろ関連する問題も広うございますので、それらを調査して、明年度以降実施基準の改定なり、あるいは事業実施方法の転換なり、そういったことの資料として至急煮詰めたいというふうに思っております。
もう一点、土地基盤整備事業が、何と申しましても本事業の骨子になるわけでございますが、土地基盤整備事業につきましては、当初この事業を仕組みましたときは、総事業費の中の四割程度を土地基盤整備事業に充ててほしいということで、私どもは計画の予測をしたわけでございます。実行的には、土地基盤整備が全体の五二%程度を占めるということで、私どもが初め考えましたよりも、土地基盤整備に対する助成の立て方が、現地の御希望としては高いようでございます。このことは、構造改善事業の本来のあり方から見て、非常に好ましいことだと思うのでありますが、その反面、やはり交換分合でありますとか、換地でありますとか、個人的な私経済あるいは私有財産のもとでのそういうことでございますから、かなり強い公共的な認識なり、あるいは指導者のお骨折りなりが伴いませんと、なかなかどこの場所でも同じことを計画しても同じようにやれるというわけではない、そこに何と申しますか、人の問題と申しますか、そういう一方で非常にいいことができる実態がある反面、同じことを考えてもなかなかうまく軌道に乗らないという面では、主体的条件、にない手の問題ということが、やはり本事業の本質的な一つの問題ではないかと思います。それらの点については、盛り上がりを待ってといいますか、御理解をいただいた上で、気長に成熟を促進するということが肝要であろうかと、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/96
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097・戸叶武
○戸叶武君 構造改善事業の中でも、土地基盤の整備事業というものにウエートがかかっており、またこの対策は、平場農村においてそれがおもに行なわれているという御説明ですが、私は年少の時代に、大正末期の農業恐慌の時代、国会で自作農創設が問題になったときの下岡忠治氏、田淵豊吉氏なりの演説を記憶しておりますが、そのときに、すでに農業問題というものが平面的なとらえ方でなくて、平野農村の問題、山村、漁村の問題それらの条件によっておのおの違うのであるから、そういう対策を的確にやらなければならないという論戦が、その当時からすでになされておるのであります。いま政府の対策を聞いていると、ほとんど米作地帯の平場農村において恩恵にあずかっているが、ほとんど山村や漁村、いま一番苦しんでおるところは置き去りになっておるという傾きがあるのであります。そこでいま私は十五万戸の開拓者を持っている山村地帯におもに疎開したところの開拓者の問題に思いをはせたいのでありますが、このように利子を引き下げてやる、あるいは償還期限を延長してやる、据え置き期間を延長してやるというふうに、恩恵がこうむられている一面において、戦後の混乱期において開拓者たちが荒れ地に入っていって、非常に苦しい戦いをしながら、その三分の一くらいは私は脱落していると思います。開拓農協その他においては、旧債整理の問題で非常に苦しんでいると思いますが、こういう問題の中に施策の非常なギャップが出ていると思いますが、こういうことに対しては、政府はどういうふうに対処しようとして考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/97
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098・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 開拓者が戦後、食糧の増産等に寄与した実例は多いと思います。また、いまお話がありましたように平場ばかりでなく、山村方面を開拓していくという先べんをつけていったところの貢績も多いと思います。がしかし、いまのお話しのように非常によくいっておる開拓地と、また場所的にも恵まれなかったというような面もありまして、脱落するという開拓者もありまして、いま私のほうで整理するのじゃありません、自然的に整理段階に来ていると思います。でありますので、離農するということにつきましては、御承知のように見切りをつけるということでありますならば、離農資金等が十分に使え得るような形で離農資金を出すということで、この資金も増額いたしております。同時に旧債の償還といいますか、旧債から脱却いたしませんと先に進めません。そういう面でやはり旧債の整理もこの前に一度やったことがございますが、ことしもどうしてもその面の解決をしていかなければならぬ、そういう面でいろいろ検討を加えたのでございますけれども、それで新しく法律をつくってやるかという問題等もございました。あるいはまた、予算面においてそういうことをするかというくふうも実はいたしてみたのでございますが、最終的には法律等を設けないでもこの公庫の資金の自作農維持資金でございますが、この面を十分に活用いたしまして、旧債の処理等をはかるようにこれを向けていくということで、大体の方針ができてまいりました。なお、この点につきまして農地関係から少し補充的な説明を申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/98
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099・小林誠一
○説明員(小林誠一君) 開拓地の旧債の問題でございますが、先ほど大臣からお答えがありましたような点で、目下準備を進めておるわけでございます。御存じのように、昨年度に開拓地の振興のために積極資金を貸し出すということで振興計画を立てておるわけでございます。全国約六百地区の開拓地につきまして、その振興計画をとったわけでございます。ところが、その振興計画の中でやはり旧債がありますために、その旧債の重圧を取り除かなければ営農の振興が期しがたいという開拓者もおるわけでございます。そういう旧債の問題がない、積極資金だけ貸せばいいという開拓者に対しましては、昨年度中に認定をやるようにいたしまして、そういう問題のある農家につきましては補充をしろということで県に連絡をしているわけでございます。年度末、現在までのまだ結果が出ておりません、四月末になりますればその結果等も出てまいります。さらに実態等もわかります。それにつきまして旧債の重圧を取り除くことによって、経営の安定ができるという開拓者についての措置を、自作農維持資金の制度を活用いたしましていたしたいということで、現在内部でもいろいろ検討し、また団体とも話し合いまして、その準備を進めておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/99
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100・戸叶武
○戸叶武君 農林大臣も旧債を整理しないと前に進まないというふうに、開拓農協の実態をやはり見ているようです。私はやはり実態調査を早くやって、そして、古くから焦げついている救済整理のためには抜本的な、ちょうど大正末期の農業恐慌のときにモラトリアムを断行したように、私は思い切って敗戦の悲劇のしわ寄せがあそこに来ているのですから、いつまでもあいまいにしないで私は外科手術をやらなければだめだと思うのです。やはり前に伸びようとするものに、そば屋のかぜ薬みたいなとん服でごまかしておったのでは、なかなか私は進めることができないのだと思いますし、これはやはり赤城農相この辺で思い切ってやらないと、ずるずる官僚にまかしておくと、いつまでたっても煮え切らない、歯切れの悪い施策しかできないのですから、あなたあたりひとつなたをふるって、戦後十九年、ここらでやはりとどめをさしておかないといけないと思いますが、赤城さんどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/100
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101・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) その方法を、いま一つの例として、モラトリアムの例を、農業恐慌の時代の例をとられましたが、それでいくということを申し上げるわけにはまいりませんけれども、御趣旨は全くそのとおりで、ほんとうにこの辺で整理をして先へ進めるようにしたい、こういうふうに考えて目下準備をいたしております。そうしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/101
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102・戸叶武
○戸叶武君 私は赤城さんに、この前、農林大臣になったときに、大きく期待したのは、日本の農業収入の中でもって米の収入というものが五〇%近い。農業収入の首位を占めておりますが、この水田耕作地帯の農家、これは生産者所得補償方式の確立によって秋田なり、新潟なり、山形なり大きな恩恵を受けているけれども、赤城さんのいなかのような筑波山の下のような畑作地帯というのは、なかなかそういうふうにはいってない。政府が米麦本位から酪農、果樹という転換の中には、やはりこの畑作地帯の農民が恩恵をこうむれるような施策というものが躍動するのだと言って、筑波山下の村長の経験者としての赤城農政というものに大きな期待を持ったのです。しかし、現在において私は酪農、果樹へ転換した農民が赤城さんのところへ、私はそれほどのお礼まいりに行かないところを見ると、やはり、私はそこらに問題が残っているのじゃないかと思うのです。いま、私はお聞きしたいのですが、政府の言うとおりに、日本の国民というのは、わりあいすなおで、酪農、果樹へ転換したのです。この数年来の統計を見ましても、たとえば養鶏、それから乳牛なんかは三倍以上伸びる。豚の問題も一時けちがついたので、伸び悩んでいるのですが、三倍近い伸びだと思いますが、畜産関係の最近における現状というものは、どういうふうになっているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/102
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103・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 確かに御指摘のように、私も水田もちろん必要でありますが、畑地農業というものが立ちおくれている、その点にこの前力を入れまして、北海道の畑地の法律などが、その結果としてできたものだと思います。それがさらに展開いたしまして、酪農あるいは畜産、果樹というふうに向いておるのでございますけれども、畜産の現状はどうか、こういうことでございますが、実は、農林省におきましても、畜産局というのは古くからございましたが、御承知のように、初めのころは馬匹の改良というようなことが多かったのでございます。本格的に畜産へ力を入れたのは、ごく最近、十数年かと思います。そういう面で、率直に言いますと、畜産に関する統計といいますか、資料等も非常に不十分で、ここ一、二年のうちにようやく統計などもできてきている。その統計なども、まだまだどうも私もいい統計資料を持っているとは思わないのでございます。そういう意味におきまして、私が店開きが最近だなんと言うものですから、しかられるのですけれども、実は、本格的な店開きが最近でございまするし、そういう面でこの畜産方面に、一番農業の面で問題がたくさんあると思います。いまの農業関係で、ことに日本の農業そのものが申すまでもなく水田農業を主として、大陸等における畜産的な発達の過程を経ておらなかったというような事情がございます。そういう事情から、畜産につきましては、その畜産の育成につきましても、あるいは畜産物の価格面におきましても、いろいろ問題があると思います。しかし、この選択的拡大というようなことで、畜産とか酪農、果樹、みんな同じようなものでございますが、それを進めた一つの理由も、国民の食生活の変革もございます。それから米麦だけでは全くこの農家の支出がふえているので、一年に一回しか金をとれないというようなことですと、これは非常に生活が窮屈になります。支出は年中あるので、そういう面からいっても、常に日銭と言っては、ことばは悪いですけれども、常時金が入るような方向も考えませんと、農家が成り立たない、こういう面からも、畜産、果樹方面に力を相当入れていかなければ、農家が成り立っていかないというふうに考えまして、この方面を相当育成していくといいますか、力を入れていかなければならぬと思います。十分機構関係その他もまだ整っておるというわけではございませんけれども、畜産面につきましては、一そう力を入れていきたいと思っております。
現状どうかということにつきますると、現状につきまして、私、抽象的に申し上げただけで、どうもどういうふうかという御質問に対しましても、十分なお答えができないような次第でございますが、畜産局長、何か話があれば……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/103
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104・戸叶武
○戸叶武君 事務当局から。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/104
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105・檜垣徳太郎
○政府委員(檜垣徳太郎君) 畜産につきましては、ただいま戸叶先生からお話ございましたように、最近非常に生産の増大を見つつあるのでございまして、昭和三十七年の統計を見ましても、農業総産出額における畜産のウエートが一七・七%というふうに増大をいたしておるわけでございます。大体増加の傾向をたどっておりますのは、乳牛それから豚それから鶏でございまして、減少の傾向の著しいものが馬及び綿羊、ウサギの類でございます。和牛いわゆる肉牛につきましては、大体最近は停滞の傾向を示しておりますので、ごく最近やや微増の傾向を見せましたが、著しい増加の傾向はうかがわれないというような傾向でございます。大体牛乳、乳製品につきましては、学校給食問題を別にいたしますと、おおむね国内の需要を満たしておるという需給の均衡状態にございます。食肉につきましては、昨年の養豚の停滞という関係から、食肉の国内需要に対する供給力の不足という現象を見ておりますが、順次食肉の供給力も回復の傾向を見せておるのでございます。馬につきましては、これは役用家畜の必要性の減退ということから、今後も若干の減少を見るかもしれません。ほとんど減少の傾向があるか、あるいはやや微減という形をとるのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/105
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106・戸叶武
○戸叶武君 養鶏なり乳牛が三倍以上も最近伸び、豚もそれに近く伸びてきているというのも自給飼料が、飼料が足りないので、濃厚飼料を外国から買って、そうしてこれを飼育しているので、飼料も非常に伸びていると思うのでありますが、この畜産の伸びと飼料の伸びぐあい、この最近数年間の伸びぐあいはどんなふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/106
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107・檜垣徳太郎
○政府委員(檜垣徳太郎君) いま戸叶委員からのお話の中にもうかがえるように思われるのでございますが、最近の畜産の伸長が非常に著しいという反面、国内におきます自給飼料の生産は、畜産物の生産に伴いませんで、そのために輸入飼料が非常に激増いたしておるという形によってまかなわれておるということが事実でございます。三十七年度におきましては、輸入飼料は大体三百八十万トン程度でございましたが、三十八年度におきましてはほぼ五百万トン、三十九年度の見込みといたしましては五百四十万程度の輸入飼料を必要とするというような見込みを持っております。一方国内の自給飼料につきましても、もちろん畜産経営の合理化の努力というようなこと、あるいは政府としましてもできる限りの自給度の向上ということにつとめておるわけでありまして、従来からたとえば草地の改良事業につきましても、三十八年度までには、おおむね累積しまして十万町歩程度の改良草地で、飼料作物につきましても三十八年度にはこれは明確に統計が出ておりませんが、三十七年度が約四十二万町歩程度でございまして、年々五万町歩程度の増大を続けておるのでありますが、三十八年度は、おそらく四万町歩弱程度の飼料作物の増大ということになっておるものと考えております。いずれにしましても、国内の自給飼料の生産が畜産の増大に伴わないという結果から、外国からの輸入飼料に依存する度合いがだんだん大きくなりまして、流通の濃厚飼料のうち約五八%というものが、三十九年度の見込みにおきましても輸入飼料に仰がざるを得ないというような状況になっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/107
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108・戸叶武
○戸叶武君 いまの説明を聞きましても、国内の自給飼料の増産ということにつとめることも大切であるが、目下の急務というのは、この輸入を仰いでいかなければ、日本の畜産がささえられない、濃厚飼料、それが五八%も外国から輸入しているという現状でありますが、三十七年度において三百八十万トン、三十八年度において五百万トン、三十九年度において五百四十万トンと推定されるといいますが、五百万トンというと、約私は三億ドルぐらいになるのではないかと思うのです。千百二十七億円ぐらいになるのではないかと思うのですが、こういうふうな、いま外貨不足でもって、日本経済というものが非常に不安定な状況にあるときに、もうすでに私は畜産、果樹への転換のときから、乳牛を飼え、養鶏をやれ、豚を飼えというのと並行して、農林省というのは、牛はふえたが、えさ食わないでは育たないということはわかっているはずなんだから、そういう点に並行して農業政策というものは行なわれるべきではないかと思いますが、こういう状況というものはあまりに怠慢であるし、あるいは意識的怠慢によって、アメリカの余剰農作物なり、飼料の受け入れ態勢をつくるために停滞していたのか、その辺のところをもうちょっとはっきり説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/108
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109・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 意識的にアメリカのものを入れるという意味で、輸入がふえたということではないと私は考えます。何といたしましても、日本の大麦などをえさ用としてやっていかなかったということは、私は落ち度だと思います。しかし、トウモロコシ等につきましては、やはり日本の生産も少ないし、向こうのほうの価格のほうが安いものですから、どうしても価格面から輸入にたよるというような傾向になってきたと思います。大麦あるいはふすま、小麦等につきましても、食糧としての面からのみ、ことに大麦におきましては減産するようになりましたけれども、えさの面から特に考えますと、これは行き過ぎだったと考えます。特にアメリカから買うためにということではないことは、もう御承知だと思いますが、結果においては、そういうようなことに相なったのは、まことに遺憾でございますけれども、できるだけ国内自給をしていきたいと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/109
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110・戸叶武
○戸叶武君 私はえさの問題はきわめて重大であって、いま需要が年間二千二百億とまで言われるのが、昨年からことしにわたって、ふすまであろうがトウモロコシであろうが、いろいろな配合飼料が約一割づつ暴騰しておるのであります。それは需要供給のアンバランスからきているのかもしれませんが、いま物価問題で、とにかく消費者物価が七・二%なり七・八%上がったというのが、この二、三年来の物価論争の中における私は非常に大きな問題点だと思います。しかも、経済成長率の低い農民に対して、二千二百億の一割というと二百二十億もの負担が重なってくるというようなこのえさの飼料の私は重圧というのは、これは軽視できない問題だと思います。全体的な消費者を対象として物価問題が論争になっているときに、農家収入の少ない農民に対して、こういうような飼料の面で重圧が加わっていくことに対して、どういうふうな具体的な対策を施そうとしているか、その対策について承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/110
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111・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 政府の管理しておりますところの輸入飼料、この格価は一般飼料の価格に非常に影響いたします。輸入の価格等につきましては、いまちょっと御指摘がございまして、需給関係もあるだろうかというお話でございましたが、確かに昨年来の世界的な小麦の不作等から、自給がそういう不作の国々等へ、供給といいますか、非常に移っていった、あるいは船賃が高くなったというようなことで高くなっております。そこで、じゃ率直に申し上げますと、飼料の価格は成分によって均衡がとれていかなくちゃならぬというような形から、本年度の予算面等におきましても、昨年よりも政府管理の飼料の価格が予算の見積もり等において高くなっております。しかし、いまの畜産の現状及び牛乳その他との関係と、いろいろ私ども勘案いたしてみました。事務当局にも調べさせていたのでありますが、これは予算面では価格を上げであるけれども、実際これを放出する場合に価格を上げるというようなことは適当でないと、こういうふうに考えまして、いろいろ財政当局とも話し合いをいたしました。でありますので、現状以上に上げない。これは上げるまでは——実はこの前にここで申し上げたのは、こういうふうに申し上げたのですが、予算価格を下げて予定価格で放出する、しかし三十八年度と同じようなところまでにするというわけにはまいりませんと、こういうことをここでお答えを前にいたしております。しかし、上げるということをきめるまでは上げませんと、こういう回りくどい表現でもって申し上げておったのでありますが、いろいろ検討いたしました結果、六カ月ぐらいは上げないということをはっきり申し上げていいと思います。六カ月後におきましても、検討をいたしまして、私は上げない方針でございますが、一応六カ月くらいは上げないということをはっきり申し上げて、予定価格は、それから六カ月後におきましても、もう一度検討いたしますけれども、よほどの変化がない限りはいまのままで放出する、こういう態度で進んでおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/111
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112・戸叶武
○戸叶武君 さすが赤城農林大臣で、飼料は六カ月間上げないと断言されたので安心はしたようなものの、実際は足元がくずれているんじゃないかと思いますが、去年からことしにわたってすでに一割ぐらい値上がりしているんだと思いますが、トウモロコシ、それから飼料川マイロ、大豆かす、その他配合飼料、そういうふうな飼料の値段は去年とことしと比較してどのくらいになっており、どのくらい上がっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/112
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113・檜垣徳太郎
○政府委員(檜垣徳太郎君) 大臣からもお答え申し上げましたように、輸入飼料の原材料がお答えの中にありましたような理由で高騰をいたしまして、その反映として国内の流通市場価格が騰貴いたしておりますことは、事実でございます。ただふすま類につきましては、昨年十二月末の数字しか手元に持ってないのですが、それによりましても、なお最近の増加も同様でございまして、ふすまは値上がりをいたしておりません。少なくとも卸売り段階においては値上がりをしていない。ただ配合飼料等を見ますと、採卵をするようになります成鶏用の飼料で一〇二・六%、中雛用のえさで一・八%、若肉の鶏の肥肉用が一〇二・六%、乳牛用が三・一%、肉とん用が一〇四・〇%というような価格水準を示しております。ごく最近のものは、私の手元にはまだ資料ございませんので、昨年十二月末の数字を御参考に申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/113
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114・戸叶武
○戸叶武君 農協の大会等でも、昨年の十月からこの飼料の暴騰に対して決議が行なわれ、政府に要請が出ているはずですが、末端の生産農民が買っている飼料、飼料の値上がりに苦しんでいる農民の切実な要求というものを知らないで、池田さんが答弁するように、卸し値段はあまり上がってないというようなやり方では、農政をやる当事者としては、あまりにも迂遠ではないかと思うのです。これは時間がありませんから、私は一々読み上げませんけれども、農林省でも、正確ないまの飼料の値上がりの数字はわかっているはずです。一割程度値上がりしているんですよ。農民はそれがために非常に苦しんでいるんです。この問題は深刻ですよ。それと同時に、いまのふすまの問題も、もう足りないので、非常に問題になっていますが、ふすまの流通過程においていろいろな問題点があると思いますが、末端の畜産農家に安い値段で、ふすまなりその他の飼料が入るようにするのには、どういうような流通機構の改革なり処置をやったらよろしいと政府は考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/114
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115・檜垣徳太郎
○政府委員(檜垣徳太郎君) これは第一には、単体の飼料でございますれば、中間の経費が適正な経費、いわばマージンによって末端までとどくということを進めることが第一だと思います。そういう意味では系統団体による共同購入の形態といいますか、そういう形のものが進展をしてまいるということが大切であると思います。また同時に、ある程度の競争が行なわれるという体制もまた同様に必要と思われるのでありますが、現状から申しますればさらに系統購買という形の進展が行なわれることが私は大切であろうというふうに思われるのでございます。で、現在の流通市場の状態から見ますと、約五百五十万トンが配合飼料として流通をしておるのでございますから、配合飼料の流通という点につきましては、これは配合加工の合理化という問題から始まって、流通過程における適正なマージンの形成ということが行なわれることを、ただいま単体飼料で申し上げましたような方向で考えてそれを進めていくということが必要であるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/115
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116・戸叶武
○戸叶武君 まあ流通過程における適正なマージンの前に、配合飼料というものがいま健全な形で農民の手に渡っているかどうか。政府はこの飼料の検査に対して肥料飼料検査所といいますか、そういうものでときどき抜き取り検査をやっているという程度ですが、その検査なり試験所の機構というものがきわめて貧弱だと思いますが、監督当局としての政府はどのような形においてこの配合飼料の実態を観察しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/116
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117・檜垣徳太郎
○政府委員(檜垣徳太郎君) 飼料の、なかんずく配合飼料につきましての適正な品質の改善という点につきましては、二十八年に国会でお認めを願いました飼料の品質改善に関する法律に基づきまして、農林大臣及び都道府県知事によって品質改善のための検査取り締まりが行なわれておるわけであります。この法律の概要につきましては、もはや申し上げるまでもないと存じますので、その点には触れないで御説明申し上げますと、国の肥料検査の機関といたしましては、昭和二十七年までは東京に一カ所あったのみでございますが、その後肥料の検査機構とえさの検査機構と統合をいたしまして肥飼料検査所ということで、全国に六カ所の検査機関を設置をいたしておるのでございます。で、国の機関は、府県にまたがります流通が行なわれる工場製品についての抜き取りあるいは工場に対する立ち入り収取というようなことで、現物について登録肥料、飼料の表示と内容に食い違いがないかという点の検査をいたしますと同時に、また法律の定めております飼料メーカーの順守すべき事項についての現地指導等を加えてまいっておるのであります。一方都道府県におきましては、主として単体のえさもしくは府県内の流通が限られておるような配混合飼料の抜き取り検査、あるいは工場に対する立ち入り収取による立ち入り検査等を行ないまして、えさの品質保持についての指導的な検査を行なっておるのが、現在の段階でございます。現在三十八年から新しく肥飼料検査所として発足いたしました段階でございまして、今後さらにこの問題を実態に即し、また実態に合うように充実をしてまいる必要があるということを私どもは痛感をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/117
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118・戸叶武
○戸叶武君 問題は、その肥飼料検査所の実態ですが、全国に六カ所あるというが、職員は幾人おりますか、経費はどれだけかけておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/118
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119・檜垣徳太郎
○政府委員(檜垣徳太郎君) 飼料の検査に関しましては、現在飼料検査の関係の定員数は三十三名でございます。これは国の検査機関の虚数でございまして、人件費を除きます事業費予算は二千百三十八万八千円という予算に相なっております。これは二十八年に発足をいたしました当時は検査人員が十四名、予算額は四百十九万というようなことになっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/119
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120・戸叶武
○戸叶武君 先ほどの抽象的な説明を聞いていると、何か検査が、いまやっているように見えるけれども、この実態を見れば、三十三名で何やれるのですか、全国で。私は栃木県の事例を聞いてみましたら、肥飼料検査関係で所長合わせて三人で、飼料のほうは女の方が一人でやっておるというのですが、ばかにしたような話で、これは抜き取り検査も何もあったものじゃない。それがために、でたらめなえさが、農民の知識が足りないのに便乗して——えさが足りないのです。足りないのに、大体夏場においてはもう、えさ仲間でも言っているのですが、内容を落としちゃって農家でもっていろんな飼料を買うから、栄養価があまりなくてもごまかせるからというような形の操作までやっているくらいで、私は宇都宮大学の先生をやっておったこともあるので、あすこにも調べてもらったのですが、もう意外な事実が続出しているのです。これは私は政府の怠慢だと思います。また具体的な数字をあげていつか対決しますけれども、こんな形に——昔は肥料屋というものが農民を搾取して、都会の質屋と農村の肥料屋、これが太ったものです。今度は政府の選択的拡大に便乗して大メーカーのえさ屋が太りつつある。豚の豚ミールなんという大商社から出したのを大学の研究所でも調べてみたんですが、そのえさで、普通ならば豚が一日五百グラムふえなくちゃならないのが、百四十五グラムぐらいしかふえない。ですから、農家でもってはほんとうにひどい被害を受けているのであります。そういうものを農民は、一人一人がどれだけ栄養価があるえさかということを検討するだけの私は科学的な準備がないと思うのです。こういうふうに政府が米麦本位よりも畜産、果樹、選択的拡大へとしていながら、それに対応するところの飼料対策も確立せず、しかも、えさ屋のもうけほうだいに製品流がれていても、それに対するところの検査、調査もできないというような形は、明らかに私はこの政府の農政の怠慢だと思います。先ほどあげた飼料の品質改善に関する法律の中の第十一条においても、第十五条においても、第十五条の二においても、第十六条においても、第十七条においても、この品質が低下するような異物を混入してはならないという点から、政府は責任をもってこれを取り締まるような法の規定があるのです。われわれの国会に要請して法律はつくるわ、法律はできても、これを政府が何ら実行しないわ、そうしてえさ屋がもうけほうだいに農民を搾取するや、法が乱れ、われわれ立法機関としては法はどんどんつくっているが、政府が法をちっともそれを忠実に履行していない。こんなことでもって日本の農政というものが、今後信頼をかちうるかどうか。きょうは時間がありませんから、私は問題点だけを摘出しますが、もっと具体的に数字をあげて、いかに政府がその施策に対して怠慢か、われわれは立法行為を行なっているが、その法の行くえというものに対しては、執行機関というものが、法の精神というものを順法して、そうして生産農民の利益を擁護するために、忠実にやっていないという事実が明々白々になってきている。これは私は日韓会談だとか、あるいはソ連やカナダとの漁業問題で、赤城さん非常に苦労していると思うのです。しかし、あえて私が農林大臣に言うのは、いま国は貿易自由化のあらしの中に立って、日本の農業恐慌というものが目に見えない形において、底流において私はすさまじい勢いで進んでいるのです。これが爆発するのは、必ず私は畜産の面からだと思う、いわゆるえさの面からだと思うのです。なんだって腹がへれば、オオカミだってかみつくのですから、私はこの問題を軽軽に政府が責任を持って農業の選択的拡大の、米麦より畜産、果樹へと指導し、そうしてそれに見合うところのえさを食わせないで、畜産が成り立たないのに、えさに対する需給対策を、六百万町歩の未開墾地をせめて三百万町歩までは開墾しなければならないということを、われわれが数年来提唱しても、これに一向に耳を傾けず、しかも、いま濃厚飼料を海外から仰がなければ、日本の畜産が立ち行かなくなっているような状況のもとにおいて、しかもこういうふうなえさは、一年間に卸しはそう上がっていないなんて言っていても、農民にどこへ行っても聞いてごらんなさい、全国の農協が決議して、そうして政府に迫っているあの決議文を読んでごらんなさい。私はそういうふうな何といいますか、他人行儀な、どこ吹く風か、馬耳東風といいますか、馬がだんだん少なくなったというが、人間が馬にかわったのかどうか、とにかく馬の耳に念仏というか、そういう形において、どんどん馬よりも牛が伸びてきたときに、今度は牛が「モー」とも鳴くことができなくなってきたことは、私はこういう問題に対して、もう少し農政を担当している当局は、特に私は大臣より局長級の人が、もう少しふんどしを締めて、責任を持ってもらわなくちゃ困ると思うのですが、私に対する答弁だけじゃなく、農林大臣、この機会に農林官僚に対してもっと手きびしい私は一つの監督をやってもらいたいと思うんです。こんなことじゃ安心できませんよ。大問題ですよ、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/120
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121・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 私も、実際面の責任者として畜産の問題、飼料の問題等に直面いたしまして、お話のようなことを痛感いたしております。まだ、事務当局も先ほど申し上げましたように、店開きが最近のような情勢で、いろいろな面で欠陥といいますか、十分行なっておらない面が相当あると私も思います。でありますので、私はこの国会には間に合わないと思いますが、来年までには畜産関係等にも根本的に再検討を加えて、ほんとうにいい政策といいますか、方針を打ち立てるように、事務当局にも命じております。それができない場合におきましても、御注意の点等におきましては、しかと頭に入れて行政を進めていきたい、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/121
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122・戸叶武
○戸叶武君 やはり日本農業の転換期におきまして、私は一番問題なのは、赤城さんが直感するように、金融の問題と、もう一つは、私は畜産の面における格価の問題、飼料の問題、こういう問題が非常に大きな問題だと感じておるのであります。日本の農業にとって私はほんとうに革命的な一つの時代であるということを、私たちはほんとうに認識しなければならないと思います。いまの地価の暴騰の傾向にしても、ちょうど十九世紀末におけるイギリスでこの土地問題を中心として、アーサー・ペンテーやその他から土地社会主義がにじみ出たように、やはり大陸からきた剰余価値説よりも社会的関係の変化によって不労所得というものを、どうこれに対処していくかという問題が、政治の面で問題になりつつあるときに、農業全体において私は非常に大きな問題というものが、この立ちおくれている二・八%程度の経済成長率しかない、他産業の平均から見て、三分の一にも足りないこの農業というものをほんとうにささえていくためには、資本主義初期におけるところのフィジオクラットが考えたような、富国強兵主義に基づくところの重農主義とは違うけれども、この高度成長によって伸びていく工業なり、あるいはサービス部門なりと違って、落ち込んだ農業をどうやって新しい国の新保護政策によってこれをささえていくかということが、私は新方式というものが、農業保護主義というものが生まれてこなければならないときだと思うのです。農業問題は、赤城さんも御承知のように、日本だけじゃないのです。資本主義のアメリカにおいても、共産主義のソ連においても、中国においてもおおむね失敗しております。少なくとも非常に苦悩を続けております。ソ連の共産党の争闘史を見ても、おもにジノビーイフからブハーリンのあの論争時代を見ても、すべて農業問題に対して私は深刻な争いが端をなしていると思うのです。いまの中国だってそうだと思うのです。しかしいまの日本において池田さんも、赤城さんも当初の選挙のときだけは純真な気持ちで直ちに革命的な政策をやるといって、選挙になると今度革新的な政策になる、終わると政局の安定にあぐらをかいてしまって暫定的にというぐあいに変ってしまう。これではほんとうにあらしに対処していけないと思う。これは赤城さんあたりがほんとうにふんばってやらないとえらいことになるのです。日本におきましては、古代においては、赤城さんのいなかにおいても鹿島と言われるように、シカや豚やイノシシしか住んでいなかった。大陸から騎馬民族が入って初めて統一国ができた。シカが馬に追い飛ばされたというばかな話が昔はあった。今度は馬が牛に追いまわされて、ばか以上のほんとうに変な時代が私はきたと思うのです。こういうときに、ほんとうに私はこの革命的施策でなければ——革命ということばは政権移動だけじゃないのです。生活の上における、生産の上における変化が一番大きな革命だと思うのです。その上に私は一つの政治的な変化というのは誘導されるのだと思います。どうぞ鶏の問題だ、牛の問題だ、豚の問題だというふうにあまりばかにしないで、こういう問題に対して、もっと私は農林省全体が昔はとにかく米の品種改良さえやっておれば、農林省の役人は済んでいたという時代があったかもしれませんけれども、そんなとんまな時代は過ぎ去った。今日政府がこういうふうに一つの構造改善ということを打ち出しているけれども、その基調をなすものは、日本の農業革命の一つの流れだと思う。流れに沿うたやはり農業政策の施策というものが躍動しないと、こんなマンネリで、どじばかり踏んでおったのでは、私はとてもこの日本の農政の貧困の中に日本自体が私は埋没していかなくちゃならないと思うので、どうかその悲劇を打開するために、もっと正確な実態を把握して、そうしてこれに対する具体的な対処をしていただかれんことを、特に赤城農林大臣にお願いします。赤城農林大臣にこれも少し悪口を言い過ぎるのですけれども、私は時の権勢家にしか悪口は言えない。田中正造以来時の権勢に当たっていく野党精神というものが熾烈なものがなければ、政治の中に愛情が生まれてこない。われわれは世の中において気違い扱いをされてもいいから、ほんとうのことをやはり伝達するものがなければいいかげんにものことが済んでしまうのじゃないか、その悲願の上に立っておるのですから、どうか単なる悪口とは聞かないで、私はもっと日本の農政というものにまともにあなたの時代から取っ組んでいってもらいたいことを要請します。農林大臣の御決意を承ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/122
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123・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) すべて意あって策足らざることを反省しているような次第でございますが、御趣旨まことにそのとおりと私も痛感いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/123
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124・高山恒雄
○高山恒雄君 私はわずかな時間お借りして質問したいと思いますが、この農業改良資金の助成の問題に関連して私がお聞きしたいのは、この農業構造改革からくる補助的な改善をやっていこうということで出ておりますが、私がひとつお聞きしたいのは、農業経営を奨励するということで、その方針を立てておられますが、国としては、一体日本の耕作地等を含めて、農業の人口というものはどのぐらいと押えて自立経営というものができるのか、個々の農業そのものに自立経営ということを考えるならば、まず政府として日本の農地に対する自立経営をするためには、どのぐらいの一体農業人口が要るんだ、こういう面を、ひとつわかっておればお知らせ願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/124
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125・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) どのぐらいの人口であったほうがいいのか、形式的にはそろばんが出ると思います。二町五反に平均をやっていくのならば、何万戸とか就業人口とすれば、二〇%とかあるいは二五%でやっていけるというようなことであろうというような計算上は出ると思います。どこの国でも、初めから計算して減らしたというわけでもなく、歴史的に減ってきて、その減った人口で経営をしているというのが現状だと思います。でございますから、いま直ちにどれだけの人口でやっていくのだということを申し上げるわけにはまいりませんけれども、少ない人口によってやっていけるという限度はどの程度かということだろうと思いますけれども、もう少し検討してからお答えさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/125
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126・高山恒雄
○高山恒雄君 いや、私は、やっぱり自立経営の二町五反歩というものを中心にして、大体自立経営のワクの中に入るのじゃないか。一町五反でも、先ほどの酪農だとか、あるいはまた養鶏だとか、いろいろこの選択的拡大をはかれば、できると思うのですよ。しかし、そうした選択的拡大をはかって、日本の国内需要、輸出も考えて、日本全体から見た耕地に対する一体収容人員は何人か。それが出てこないと、私は、いろいろ生活改善をして後継者をつくろうということで四十万人補充しなくちゃいかぬということが出てこないと思うのですね。どこからそれが出たかということを私は疑うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/126
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127・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) いまのお話は、資金の、四十五億の資金の問題に関連してでございましたろうか、その命が。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/127
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128・高山恒雄
○高山恒雄君 いえそうじゃありません。これからの青年、青年の後継者ですね、四十万人補足しなくちゃいかぬというのでしょう、日本は。農業に青年の後継者を四十万人つくる、つまり補充しなくちゃいかぬと、その四十万人を出すには、日本の耕地、あらゆる拡大的な生産をやるにしても、何かその基準がないと、四十万ほしいとか三十万がいいとかいうようなことは出ないと思うのですよ。その基準がどこにもないわけですね。何を目標にして四十万人の一体後継者が必要なのか。こういう点が聞きたいのですがね。大臣じゃなくてもいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/128
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129・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) せんだって御説明いたしました資料で、農業人口の補充率を御説明いたしました際、四十万人という数値、おおむね四十万人という数値を分母に使って補充率を説明いたしました、その数値のことだろうと思います。この四十万人と申しますのは、あるべき姿というような意味合いでの四十万人ではございませんので、ただ過去においてずっと長い間日本の農家戸数はおおむね六百万戸多年にわたって維持、維持と申しますか継続してまいったわけでございますが、そういった六百万戸の農家が、継続して将来にわたって、世代の交代を経ながら六百万戸の農家が将来にわたって継続していくために必要なあと継ぎの戸数は、人数は、六百万戸を三十で割った二十万人に、男女一名という意味で二を掛けた四十万人というのを、この問題を論ぜられる、分析される一つの手法として関係の学者等がお使いになっておられますので、その数値をお目にかけているわけでございまして、これはしたがいまして、六百万戸将来にわたって農家戸数が要るということをいっておるわけのものではございませんので、ただ、いまのような子弟の残り方からすれば、この補充率を掛けた数値というものは、結局おおむね二割というものは、将来長期にわたって世帯交代の時期を平均して達観してながめれば、三十年で一世帯が交代するということを達観して言えますから、いまの補充率の状態が今後三十年も続けば現在六百万ある農家の戸数が、その二割程度のあと継ぎしかなくなって、つまり二割の農家しか、遠い将来にはこういう補充率が続けば農家が成り立たなくなるだろう、そういう意味合いの予測と申しますか、現在の評価をそういうふうになさるために使われた一つの資料でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/129
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130・高山恒雄
○高山恒雄君 そうなると、たいがいそうだろうと私は思っているのです。そうしますと、自立経営の方針というものは、政府は個々のいわゆる農業就業者にはそれを指導しているわけですね。ところが政府自体が日本の耕地に対してどのくらいの人口が、あの農業労働力が必要だということがもっと具体的に出てこなければ、自立経費というような方針にならないと思うのですね。六百万戸を中心にして、従来の数字の男女の比率をもって四十万人後継者が必要だという、こういう出方で、これが五百になり、三百になり、またそういうふうにするつもりで政府は信託方法を考え、譲渡方法を考え、いろんな方法を総合的に考えているわけですね。人員だけは、依然として昔のままの四十万人、後継者をどうしても必要とするのだ、こういう数字を一応出しておられるわけだ。ところが、その四十万人に対比して皆さん方の比較された今日の実態を見ると、各都道府県で、北海道を除いたほかはほとんど三%か、五%しかとどまってないわけですね、青年が。こういう点をどういうふうにお考えになっているのか。実際にはそれだけ必要だと、いまの現在では必要だとお考えになっているのでしょうか。実際には三%か、四%。特に一町以下の比率を見ても、一割いないんですからね、農村にとどまる青年は……。これはもう全く不安な状態だと私は思うのですよ、どういうふうにお考え……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/130
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131・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) ただいまお話いたしましたように、四十万人の後継者を分母として補充率を出しておりますことは、特に四十万人を確保いたしたいとか、あるいは確保する目標が四十万人というようなつもりで用いている数値ではございません。したがいまして、私どもがいろんな後継者対策等を考えます場合も、別段六百万戸が、将来にわたって維持できるための数としての四十万を政策の一つの対象、あるいは政策上の目標というようなふうに使っているわけではございません。ただ、では積極的にどの程度を目ざしているかということになりますと、これはまだ非常に技術の段階も、生活水準等も時代の進展とともに変わるわけでございます。固定的にそういった目標数値を置くことは、あまりにも大胆な予測に過ぎまして、私どもとしてもしかるべきよりどころを持った数値として、そういうものを申し上げられる段階ではないように考えております。補充率の問題でございますが、資料の補足的な御説明を兼ねて申し上げさしていただきますと、各府県別の補充率を出しておりますが、全体では三十八年三月末における新卒者の動向からくる補充率は、中卒、高卒を合わせまして男女合計いたしまして補充率という形でとらえますと、二二・四%というのが全国の数値でございます。つまり先ほどの説明で申さば、三十年間こういう状態が続けば、日本の農家戸数は百二十万、この面からすれば百二十万戸にしか保てないのではなかろうかということを一応推測するに足る資料という意味でございます。三%とか、六%とか申しますのは、その中で高校卒の人たちが、高校卒で農業に踏みとどまって後継者として残された人たちの数を、別に高校卒業者だけで、四十万人で割りますと、高校卒の人たちだけの補充率は全国平均で六・四、したがって高校卒のレベルの人で、将来こういう状態が続けば、農家戸数は三十六万戸程度しかなくなるのではなかろうかということを、非常に大胆に言えばそういうふうにこれを使えば使える資料ということに相なるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/131
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132・高山恒雄
○高山恒雄君 いや、その点はこの表に出ていますから、私も見ておるのです。男女の平均をとれば、あんたのおっしゃるとおり。しかし農業の中心をこれからやろうとすれば、やはり高卒の問題が中心になるのじゃないですか、後継者ということになれば。特にあなたはいま三十六万戸というようなことを、理想的なことをおっしゃったようですが、そういう状態からいえば、いま生活改善資金なり、あるいは家事共同化の問題ですね、こういう問題を取り上げておられますが、これで一体どのくらいのそういう後継者となる人をとどめる自信があるのか、どのくらいが一体とどまるのか、こういうことをやってふえてくると考えておられるのか、現状維持とあまり変らぬというふうにお考えになっておるのか、その点どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/132
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133・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 農業改良資金は、しばしば申し上げますとおり、農業改良普及事業あるいは生活改善普及事業の一つの活動の中の補助手段として、改良普及事業なり生活改善事業がより活発に円滑に農家に行き届きますようにという趣旨で持っておる制度でございます。したがって、と申しますか、私どもとしては、ここへ計上いたしました数個が、金額が何戸に適用になるから、そこでその行政効果としてはどういうふうになるというふうな計量的な目標を定めて設定した資金ワクではございません。したがいまして、これから直ちに何人の後継者がいままで以上にプラスして残るかとか、配偶者がより何名得られやすくなるか、そういう計量的な観点からの資金ワクの設定はいたしませんでしたので、そういう観点からは申し上げられませんけれども、やはりいま各地でこういった問題が、有能な後継者を農村で維持し、また配偶者を確保していくためにこういう配慮が必要だというようなことが識者の間で言われておりますし、また、そういったことが要望されていることも事実でございます。普及事業が、そういうものを素手で取り上げて説得いたしておりますよりも、やはりこういう具体的な一つの踏み切りのつかない方々に、こういう手段をもって踏み切りをおすすめするということが、何と申しましても、自然の成り行きにまかしておくことと比較いたしますれば、はるかに積極的な意味合いを持ち得るのではないか、そういうふうには考えておりますが、しかし計量的な事業効果あるいは計量的な目標を置いての計数をはじいたわけのものではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/133
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134・高山恒雄
○高山恒雄君 そうしますと、聞けば聞くほど全く何といいますか、このぐらいの程度のことをやっておけば、農村は喜んでやってくれるんだというふうにしかとれないのですね。いや、そうですよ、その目標がないのですから。これだけいま人員が足らない今日の事態に、現実はどうかというと、ほとんど三ちゃん農業になっておる、三ちゃんどころか二ちゃんになっておるのだというようなことまで最近は言われておるわけですね。そうすると、日本の兼業の、第一兼業といいますか、それを含めて約三分の二というものはほとんど兼業じゃありませんか。
そこで私は大臣に聞きたいのですが、いまのようなばく然とした考え方で、将来この青年の後継者を、こういう施策をやるためにこういう行政措置によって救えば何とかして後継者もふえるのじゃないか、こういうつもりでやったのじゃない、またそれに対する自信もないようですが、一体、そういうことで現実の足らない農村の実態から見て、しかも第二兼業を含めて三分の二という実態から見て、一体農業は年産がこれ以上上がるのか、上がらんのか、能率が上がるのか、上がらんのか。いわゆる生産が拡大していくのか、いかんのか、こういう点はどうお考えになりますか、これは大臣からひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/134
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135・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 私からちょっと前もってではございますが、補足的に答弁させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/135
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136・高山恒雄
○高山恒雄君 あなたの補足は要らないのだよ。私はあなたに質問したら、あなたはこういう改良助成金を出しても、それがいわゆる後継者がふえるということを前提にしているのじゃない、いままでの資料に基づいて、そうしてそういうふうに環境をよくする、整理する、こういうことが一つの方法だ、こういうふうにあなた言っておられる。ところが、現実には人が足らないわけです。しかも第二兼業というものを含めると、日本の兼業は三分の二になる。そういう人手不足の中で兼業者というものが、農業の主体になる人はいないわけです。だから一体拡大生産ができるのか、できないのか、大臣はこの点をどうお考えになっているのかということを聞きたい、できるのか、できないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/136
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137・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 農業就業人口は減っております。しかしながら、他産業との格差というような面から見れば、その格差の是正にはなっていません。しかし、生産そのものから言いますならば、生産は進んでいるわけです。毎年——昨年、一昨年よりも生産そのものは伸びています。ですから、これは縮小生産とか、拡大再生産とかということばが適当かどうか、これは非常にテクニックがあろうと思いますが、生産は伸びているのでございますから、兼業農家等がありましても、私は生産は伸びていく、現状では伸びていく、こういうふうに考えております。それが、先ほどお話しのようにどれくらいいったらどうなるかという限度というものを示せといいますと、それはこれからいろいろ検討をなお加えてみませんと申しかねますけれども、現状におきましては、生産はあらゆる面で伸びている、全体として伸びている、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/137
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138・高山恒雄
○高山恒雄君 それは何ですよ、成長率から見て、先ほども戸叶先生が言われたように、三%や四%のそれは能率が上がっていることは私も知っていますよ。しかし、そのことを私はいま聞いているわけじゃない。いまここに新しく予算を組んで、法を改正して拡大的な助成をやろう、こういうことで私ら聞いているわけですから、一方には兼業がふえてきた。兼業がふえてきているのに、一体労働力の主体性というものが婦人にかわってくれば、あるいは年寄りにかわってくれば、どうしても私は現状維持か、上がってもわずかのものじゃないかと思うのです。農業構造改善をやっておられますから、そういう面から能率が上がるということも多少は言えるでしょう。けれども人からくる面から見て、一体農業の生産というものに対しては、私は少なくとも政府は三%の基準を立てて予算を組んでいるのだ、五%の基準を立ててやっているのだ、企画庁がやっているような方法が、私は農林省にあってもいいと思うのですが、それがないとおっしゃるのでしょう。だから、上がるとか上がらないとかいわれても、その点はちょっと理解に苦しむのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/138
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139・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) いま御審議をいただいております後継者資金あるいは生活改善資金なりの資金ボリュームが、直ちにそういう計量的な成果と結びついていないということを申し上げましたことと、いま御指摘の問題とは幾分性質が違うかと思いますが、農林省と申しますか、現在検討中でございますが、所得倍増計画において、一次産業の十年間の成長を予測したものがございます。その予測値と、それから基準年以来、三十七年までの実績的な成果を比較して申し上げてみるのも、あるいはひとつの御説明かと思いますので申し上げますと、所得倍増計画では、御承知のとおり、四十五年までの年々の所得の伸び、これは所得でございますが、一次産業あるいは農業の所得の伸びの年率を二・九%というふうに予測しております。それに対しまして、就業人口、つまり労働力の点では逆に年率二・八%の割り合いで減少する。その二・八%ずつ減る労働力をもって年々対前年比二・八%増の生産をになっていくというわけで、目標年次までのいわゆる就業者一人当たりの生産性は五・六%の年率の伸びを示すであろうということを当時予測したわけでございます。それに対応いたします最近時点——三十七年でございますが、までの実績値をみますと、一次産業の年々の生産の伸び率は五・一%という成果が上がっております。これに対応いたします就業人口の減少年率は、これは予測値と一致をいたしておりまして、二・八%の年率で減少を示しております。したがいまして、就業者一人当たりの生産性の伸びといたしましては、八・一%という数値が一応実績という形では得られるわけでございます。もちろん、他の二次産業、三次産業等も所得倍増計画で予測をいたしました数値よりももっと早いテンポで伸びておりますから、大臣から先ほどお話がありましたように、比較生産性という観点からは、必ずしも所期の効果を、農業側に有利な効果を上げておりませんけれども、農業それ自体としては、より少ない人口で、より多い生産物を着実にあげる、この姿は、私どもとしては現在中間改定の作業中でございますけれども、今後に及び、将来にわたってこういうことが可能であると思っております。また、それを可能にするために、構造改善事業でありますとか、その他一般の土地基盤整備事業、あるいはいまお願いいたしておりますような種々の対策を、これを可能にし、あるいはもっと早いテンポで、あるいは農業側にもっと有利なテンポで、こういったことが実現いたしますようにということで、現存その方向を目ざして、各政策を展開しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/139
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140・安田敏雄
○安田敏雄君 ちょっと関連して。実は国民所得倍増計画の中間検討を昨年の十二月に経済審議会の小委員会でしたわけですね。それによりますというと、自由化が進んでいき、開放経済の体制の中で本格的に進んでまいりますというと、現在でも相当農産物については、なしくずし的に非自由化品が入ってきているわけです。そういう情勢を検討したのですが、国内の農産物についてみますと、牛乳が、加工用原乳は三十六年度の水準の大体五割から八割に値が下がる。牛肉が五割から九割程度に下がる、こういうふうに検討しているわけです。場合によると、半値ぐらいになってしまうかもしれないという結論を出しております。その中で、米は特殊性がありますから、大体三十六年度を基準として八割、九割ぐらいの価格に落ちつくだろうという報告をしているわけです。そうしますと、値段が最悪の場合に半値ぐらいになってしまうというと、勢いその中から生産量が急速に減少していくというふうに考えられるわけです。そうしますと、三十六年を基準にして、生産量は牛肉では三二%から四二%、牛乳が六二%から六七%、麦は五〇%から六〇%、米は九二%から九七%、こういうふうに生産が低下してしまう。そうすると、農産物全体として、金額で二千五百億円から四千七百億円程度に生産量が減少するということを経済審議会は検討して報告しているわけです。したがって、所得倍増の中間のこれからの計画を新しく立て直さなければならぬというような意をにおわしているわけでございますが、そうして将来、農業人口としては、現在の八割程度になるという報告をしているわけでございますが、この報告といまの報告とでは逆なんですよ、生産が伸びるという報告とは。この報告をどういうふうに検討しているかということをお伺いしたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/140
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141・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 経済企画庁のその作業は、非常に大胆な前提と申しますか、実際にそういった影響を計測することはほとんど不可能に近いことだと思うわけでございます。しかし、そういうことで、全く計量的にそういう検討をしないということでは、かえって、ものの考え方も考えにくかろうということで、かなり慎重に断わり書きがしてあったと思いますが、いまの国際価格で、また、いまの国内価格で、何も特別の人為的なと申しますか、政策的な措置を何もとらずに、かつ、農家の側でもいまのままで、何も対応策を積極的に講じないで、自然にと申しますか、自然という以上に、むしろ不自然なのかもしれませんけれども、そういう状態をかりに機械的にはじいてみると、国際価格に対応して、限界生産物から逐次つくらなくなっていくという法則がかりにきちんと働くとして、そういういろいろな条件を、直線的な条件を幾つかおいた上で、非常に乱暴にはじいてみられたのがその計測と申しますか、その検討の意味といいますか、内容だというふうに私どもは承知をいたしております。そこで、それはむしろ、したがって、今後の農業政策の重点が、従来、基本法以来いろいろ積み上げてまいりましたけれども、なおそういったことを考慮に入れると、いまのようなスピードと申しますか、スケジュールでやっていったのでは、なかなか対処がむずかしい場合も起こり得る。もっと構造改善なり、あるいは大臣が先ほどおっしゃいました農業全体の体質の改善なりと、もっと真剣に関係者が取り組まなければ、なかなか容易ならざる事態がくるであろう、そういうことを警告をするためのひとつの非常に乱暴な試算という意味でなさったものというふうに承知をいたしております。したがいまして、今後、実質的に検討されます政策目標としての検討ということになりますれば、先ほど申し上げました、かつてできました所得倍増計画をそういった最近時点の国際情勢、あるいは国内のその後の推移等を織り込んで、その所期の目的なり、あるいは農業、あるいは第一次産業の生産性をあげていくために、さらに講ずべき手段としてはどういうようなものを考えるべきであるかということを考える一つの糸口という意味で、こういうような見当であろう、そういう方向で今後検討は行なわれていくものというふうに承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/141
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142・安田敏雄
○安田敏雄君 しかしこれも経済審議会で、大胆な結論だと、こう言いますけれども、実際に農業構造改善を通じて選択的拡大の農産物を対象として、畜産であるとか、酪農であるとか、果樹だとか、たくさんあげて奨励しているわけですね。しかし、それらのものはおおむね非自由化品が多いわけです。ところが現実には非自由化品がなしくずしに入ってきているのですよ。脱脂粉乳にいたしましても、あるいはチーズ、バターにいたしましてもそのとおりです。これが本格的な開放経済体制へ移行しますと、これは完全自由化ということは時間の問題になってくる。そういう情勢の中で、特に日本がこれから開放経済体制の中で工業国として発展していこうというには、これは民間なり、それぞれのところが設備投資しますというと、これは工業製品をみんなつくるですよ。既存の労働力じゃ間に合わぬから農村からどんどん労働力を持ってくる、しかも低賃金の労働力を持ってくる、そういう工業製品を、今度は工作機械なり、あるいはその他のものをプラント輸出する、必ずそれは今度は東南アジアなりアメリカなりが、余剰農産物がありますから、勢い日本の中へ農産物どんどん入ってくるわけですよ。そうすると、農業に大きな危機がくるのは当然わかるわけであります。そういう情勢の上に立ってしているわけです。だから、政府がこういう結論を出しているわけです。政府が自由化されないところの脱脂粉乳だとか、そういうバター、チーズ、こういうものを入れないという施策を、農業基本法の十三条にあるように強力に講ずるならば、これは問題は別ですよ。ところが、農業基本法の十三条に対して何ら忠実に施策をしていない。ですからその問題がたくさん出てくるわけですね。私どもの本家の場合に、干しブドウの場合もそのとおり、今日ジャージー種を農地開発機械公団で入れたでしょう。盛んに宣伝やった。山梨県の知事さんなんというのは、まるで花嫁さんをもらうように宣伝した。農林省も推進した。ところが、今度はチーズの半製品が入ってきてから、ごらんなさい、八ケ岳山ろくの農民は七升や八升しぼっておっても、これは政府が奨励してジャージー種を入れたところがほとんど営農にはなりませんよ。そういう現実の事態がある、したがって、ジャージー種はあきらめなければならぬ、こういう事態になってきているわけですね。単にそういう抽象的な、あなたの言うことではなくて、現実にそういうものを踏まえて、一体生産が伸びるかどうかということはもっと慎重に考えなければならない、こういうふうに思うわけですよ。そこで私は、必ずしもこういう国際情勢の中では、はたして政府が考えているように、生産はこれから伸びていくんだ、農業人口が減っても生産は伸びていくんだと、こういうふうなことにはならぬと思う。今日、農業基本法で考えて、所得倍増計画の中に二兆二千億と昭和四十六年までに踏んでいる。そのうち百万円の粗収入のある農家を百万戸つくるんだ、こういう基本目標が構造改善を通じて推進されていますが、金融の問題だってそうでしょう、構造改善資金が七十億円も余っているのが現実じゃないですか、借り手がなくて、借りられないのですよ。そういう中で生産が伸びるなんというような、そういう抽象的なことであって私はならないと思うのですね。ですから、もう少し慎重に考えていくべきじゃないか。ただ単に生産が伸びるのだ、生産額は増大して上がっていくのだ、こういうことについては、経済審議会だって大胆にこんな結論を出せるわけじゃないのですよ。その点の食い違いをもう少し具体的に、これはきょうでなくてもいいですよ。大臣も慎重に私は考えてほしいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/142
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143・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) いまの経済企画庁の試算というものは、何らの措置もとらない場合における国際競争力を比較したものでございますから、いまの関税なども全部撤廃する、あるいは米などについては、いま価格支持対策で消費者の面もございますが、千億近くも繰り入れしています。そういうものの全部をやめてしまって、国際的なコストを比較するといいますか、競争力を比較するということになると、米は八〇%程度とか、あるいは牛乳等は半分の五〇%くらいだからして、とても全部取り払ってしまえば競争力として成り立たない現状を試算したものでございますから、それどおりに自由化していくのだ、こういう前提のもとではないことは御承知のとおりだと思います。いまチーズの問題なども出ましたが、これはずっと前にナチュラル・チーズとして自由化してしまったのが問題でありますけれども、いまの方針としては、再々申し上げておりまするように、米とか麦とか、あるいは酪農品、全部こういうものを自由化する気持はないのだ、こういう方針はとってないわけであります。いままでなっていなかったものです。いままでにそういう酪農品のチーズとか、そういうものはございますけれども、そういう面で何も施さなければそういうことになる。しかし、政策は価格支持政策もやっておりまするし、関税の政策もやっておりますのでございますから、あるいはまた農政としていろいろな問題もやっておりますので、何にもやらずにおったならば、そういう形になるという一つの試算でございます。決してそのとおりにいくことを目標として——あるいは捨てておいたらそういうことになるということの一つの試算でございますから、捨てないでいろいろな方法をとれば、私は決してそういういまの試算のようなことには、これは現在もなっておりませんし、将来もなることは全然ない。したがって、いろいろな政策面から言いますならば、私は生産を伸ばしていける、そう初めの所得倍増計画のとおりのテンポにはいかないといたしましても、私はやっていけるという見通しはしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/143
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144・安田敏雄
○安田敏雄君 ちょっと最後に。そこで、実際問題として、八条国移行で、日本が高度経済成長政策の中で、将来、輸出市場というものをますます拡大していけばいくほど自由化というものはしていかなければならぬ立場に追い込まれるわけですよ、日本がね。これは鉄則なんですよ。そうすると、勢い農産物の輸入というものは、自由化というものを認めざるを得ないという方向へ行かざるを得ない、現実の問題として。そこのところを踏まえて、今後農政については慎重な配慮を特に加えていく必要があるのじゃないかということを私は申し上げているわけです。その点はひとつ御承知願いたい、こういうことを申し上げて関連は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/144
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145・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) その点は私どもも十分慎重に対処していくつもりでございます。日本ばかりではございません。EEC等におきましても、そういう問題を相当はらんで検討いたしておりまするし、また自由化も無制限に自由化というわけじゃございません。自由化率も相当程度まで来ております。その中でも農産物は慎重に扱わなければならぬ。いまのお話しのとおりに私どもも対処していくつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/145
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146・高山恒雄
○高山恒雄君 関連。先ほどの私の質問に、人員は減少しつつあるし、成長率は三%七、八は上がるだろう、こういう大体考え方だろうと思うのです。そうしますと、私が聞きたいのは、一体いまの農業労働人口ですね、これは年齢別、たとえば十年きざみでもよろしい、五年きざみでもよろしいですが、労働の構成を検討したことがあるのかないのか、この点ひとつ、あればいいし、なければないでもいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/146
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147・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 統計調査部におきまして、センサスなり、あるいは年々の補充のための農業動向調査なりで、そういった農業就業者の動向は調査をいたしておりますし、また総理府統計局におきます労働力調査等におきましても、そういった方面の調査がございます。それらを見まして、年々の農業就業人口の推移、その他を年次報告等で御報告申し上げておる次第でございます。なおその間の年間の動態につきましては、統計調査部で農業就労調査というものをやっております。それによって年々の動態の把握はいたしておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/147
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148・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 関連して。安田委員が取り上げた経済審議会の中間報告、それをひとつ伺いたいのですが、もちろん安田委員が取り上げた中間報告の中の要素は、あらゆる条件というものを裸にしたという前提に立って試算をしておる、それはもうわれわれも承知をしておるのです。それを昌谷局長は無謀というような表現を使われておるが、当然、科学的にそういう条件を取りはずして試算をすることがなぜ無謀なのか、私はことばじりをつかまえるのではないが、大きなこれは警告と受け取るべきであると思うのです。実態は安田委員が指摘したように非自由化の自由化が強行されておるという現実、そういう中でこれがはたして無謀と受け取れるかどうか。私はこれは大胆な提案であることは同感でありますけれども、しかし、この中間報告をしさいに読み取れば、いま政府が農政に対して注いでおるあらゆる施策でも基本的な問題の解決はできない。社会資本の投下が従来よりも一回りも大きいものが農業に投下されなければならないことが中間報告の答申の最重点の項目になっておる。そこで、私は今国会の農水委員会冒頭に、大臣にそのことを最終的にお尋ねをしたのです。ところが、そのときは大臣は、社会資本の投下、特に農業生産基盤への投下がこの国民所得倍増計画の中でどれだけの比率を占めて進行してきておるか、これがさらに現状に基づいてどういう修正をしなければならないかということをお尋ねしましたけれども、大臣は、その比率については何ら明確な答弁をしなかった。ただ、農業自体の社会資本の投下は計画を上回って進捗しておるという答弁にすぎなかった。私の伺いたいのは、この国民所得倍増計画がスタートを切って、目標年次四十五年までに全体の社会資本の投下、これが十六兆余円を盛っておる中に、農業の生産基盤には一兆円のワクしか出ていない。中間報告では、この一兆円というものでは諸外国の農業と太刀打ちできるような生産性の高まりというものが期待できない、その政府による社会資本の投下が、従来よりも一回りも大きいということが中間報告の大きな問題になっておる。そういう点を一体大臣はどう考えるかということを私はお伺いをいたしたのでありますが、この機会に、資料も十分、大臣はその後検討されたと思いますから、十六兆円のこの国民所得倍増計画の中における一兆円という農業生産基盤に対する社会資本、国家資本の導入というものがきわめて不十分である。一体、農業の近代化を革新的に推進するためには、これはあらためて私は大臣に農業構造改善に関連し、あるいは土地改良の問題に関連して、詳細に基本的な方向を伺いますけれども、いま安田委員が取り上げた中間報告のこの問題に関連をして、一体どう農業の生産基盤には政府はその持てる財政投資を重点的に置こうとするのか。その度合いが列国の農業との太刀打ちができる体質改善につながるかどうかのこれはキー・ポイントだと思うのです。一体、大臣はその点をいかように中間報告を受け取り、これからの農業施策にどう対処されようとなさるのか。具体的な総体的の社会資本投下の中で、農業にはどう位置づけようとされるのか、この機会にお伺いをいたしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/148
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149・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 中間報告は、確かに裸で国際競争力を計算してみたのでございますから、どういうところに力を入れるべきかという方向がそれからわかるわけでございます。しかし、その報告そのものは、先ほど申し上げましたように、何らの施策も施さない場合の報告でございます。一つのこれからの方向づけの示唆になると思います。そこで、社会資本をどれくらいにするのかということでございますけれども、これはいろいろの政策からその試算について考えなくちゃならぬと思います。たとえば、社会資本ばかりでなく、先ほどから申し上げましたように、自由化の場合における関税率の問題とか、あるいは価格の支持対策というような問題等もおのずから出てくるわけでございます。国際的な競争力の弱いもの、高いもの、いろいろあるのでございます。そういう面が一つの基点といいますか、標準の一部分になると思います。でございまするから、あの試算から見て、直ちに社会資本を十六兆のうちどれだけ出したらいいのか、社会資本だけで、公共投資だけで、解決をそれのみに求めるべきものではないと思います。これが大部分だろうと思いますが、ほかの政策ともかね合いで立てていくものだと思います。そういう意味におきまして、社会資本をどれくらい、公共投資等を——一つの例をとりますならば、その大きな面である土地改良等につきまして、基盤の整備等につきましてどれくらいを必要とするかということは、この間質問がありましたけれども、いま申し上げるほどまだ煮詰めておりません。これはいずれ中間報告を煮詰めていく上におきまして検討する大きな問題でございますけれども、きょうどれくらいの社会資本、公共投資を必要とするか、こういう結論はまだ持っておりません。なお検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/149
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150・高山恒雄
○高山恒雄君 いま投資の問題から話がありましたが、私はさっきからの引き続きですが、私は人員の問題から心配しておるわけです。大体先ほどの就業人口は減ると、したがって能率は上がると、こう言われるんだけれども、いまここに人口の、「農業人口補充率の推移」とありますが、大体ここに二二%、二八%ですか、中学卒と高校卒と。こういう推移で大体農業は将来いいんだと、こういう確信があるのかどうかですね。その点ひとつ質問したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/150
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151・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 最近時点の数字といたしましては、補充率は、資料に差し上げましたように二二%というような数値をこの計算数値は示しておるようでございます。なお、最初に差し上げました資料で、それの年次推移を見ていただきますと、昭和二十七、八年ごろまではおおむね補充率という形で見ますと一〇〇%近い補充率を示しております。それが逐年下がりまして、最近では三十四、五年ごろに五〇%を割り、補充率という形で見ますと、一番青少年の農業へ残り方の少なかったのが昭和三十六年の数値のように思います。したがいまして、先ほど申し上げましたように、こういった年々の推移が今後どういうふうに推移するかというようなこと、かりに仮定を置きまして、二二%という補充率が三十年間かりに継続してそういう状態が続いたとすれば、農家戸数が二二%しか農家が維持できなくなるというふうになる。学者の方々がお使いになる数値なんでございますが、私どもとしては所得倍増計画で自立農家を将来なるべくたくさん、基本法のことばでいえば、できるだけ多くの農家が自立経営となることを農業基本法の一つの目標といたしております。環境条件の許します限りは、所得倍増計画が十年後の中間の数値として言っております百万戸という数字がありますが、これもなかなか実現、そう簡単なことではなかろうと私どもも思っておりますけれども、しかし、遠い将来の農業の理想といたしましては、なるべく多数の自立経営農家が日本においても健全に育ちますということを私どもの念願として、諸種の政策をやっておるわけでございます。その意味から申しまして、いまの補充率を好ましいとか好ましくないとかいうふうに、にわかにこの時点だけをとらえて評価することはいささか危険であろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/151
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152・高山恒雄
○高山恒雄君 これも目標がないわけですね。したがって、そういう目標なしに問題の総合的な改革をやるとか、構造改革をやるとかいわれるけれども、一体その過程がどうなるかという問題なんですよ。先ほど私は構成年齢を聞きましたが、その構成年齢のとり方でも、とっただけでは私はだめだと思うのです。一体、来年から昭和四十五年までに日本の高校卒業と新制中学卒業は何万ずつ減ると思っていますか、一年何万減ると思っているのですか。ひとつ知っとったら教えてください。私の調べた範囲では十万ずつ減ると思うのですが。将来の農業をどうしようとするのですか、具体策がなくて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/152
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153・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 私どもが農業基本法で掲げておりますのは、そういった目標でございます。したがいまして、お説のとおり、何と申しますか、計算上の数値が問題なのではなくて、年々いまの時点でのプロセスがまさに問題だと思っております。したがいまして、構造改善事業におきましても、その他各種の施策におきましても、できるだけ多くの農家が農業の生産性を上げて、労働の効率の高い、収益性の高い農業を、一歩でも前へ出る施策ということを積み重ねていくのが、結局できるだけ多くの自立経営農家を日本に育てるプロセスそのものだと思います。そこで構造改善事業におきましても、具体的に個別農家の経営規模の拡大というようなことは、現時点におきましては、構造改善の中でそういうことを村の計画の中へ仕組むということはまだ無理な段階でございます。したがいまして、具体的には大規模生産、大規模販売というような手段を通じて、将来の企業的農家、自立的農家が一軒でも多く村の中に育つということが、具体的なプロセスの問題としての私どもの課題ということになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/153
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154・高山恒雄
○高山恒雄君 むろんあなたのおっしゃるようにプロセスの問題になると私も考えるのですよ。その点私も否定はいたしませんが、ただ問題の焦点は、構造改革をいまっておられるわけですね。したがって、その目標が政府としては出てないわけですよ。むろん二町五反という一つの目標の、そういう農家を百万戸つくろうということだけは出ておりますよ。しかし、しからばそういう百万戸というのがいつ実現するかという過程もあるわけです。そうすると、これから年少労働者、早くいえば就業者、そういう農業をやろうという青年や婦人を一体求めようとしたら、これも基準は出ていない、軽率にはまだ言えない、こうおっしゃるわけです。そうしたら、その過程に、年々そういう人たちが十万人ずつ日本は減っていく、だから私はここにおけるところの二八%なり、高校が二〇%ですか、それから新中が二七%、こういうぐらいのいわゆる農業の就業予想ならばいいのかどうか。これも一つの目標もなしに、いつ一体そういうことをやろうとされておるのか、そういう構想なり計画的なものをやろうとされておるか。ただ単に百万戸の二・五ヘクタールのものを育成強化すればいいんだ、それがために構造改革をやるんだ、あるいは果樹園の奨励をやるんだ、酪農奨励をやるんだ、こういうことでは、これはあまりにも不安定な事態ではないかと思う。もう一つ私が心配いたしますことは、これは報告書にも出しておられたように、七十一万人の流動労働者がおるといわれるんですね、七十一万人といわれる。これが出っぱなしになるのか、これが帰ってくるのかどうかという問題も、やっぱり一つのつかみ方によってとらえておかなくちゃいかぬと思うんですね。その過程が、もし百万戸の農業が実現するときがいまから八年先だと、こういうことにするならば、そうして農業人口は非常に減ってきた、その過程における、それならば一体農業の生産が、人間は減るわ、構造改革は十分でまだないわという過程は、一体その過程の私は生産がプラスになるのか、成長がすぐできるのかできないのか、こういう点を私たちは知りたいわけです。こういう点を知りたいんですよ。どれを聞いてみても皆さんのほうでは、一つの試案です。それからその考える時期はまだ早いと、こうおっしゃる。ではいっそういうことをお考えになってやろうとされるのか、そういう点が聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/154
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155・昌谷孝
○政府委員(昌谷孝君) 倍増計画の中で、農業の数値を検討いたしますときにも問題になった事柄かと思うのでございますが、私どもは何と申しますか、計画経済と申しますか、個々の農家の気持を無視してと申しますか、そういう形であるべき姿というようなものを日本の農業に押しつけるというような意味合いで倍増計画の数値を予測したことは一回もないわけでございます。で、諸種の政策をよろしきを得れば、また農家の方々がそういう気持で一ふんばりも二ふんばりもしてくださるなら、日本の農業も将来にわたって、これだけの可能性と申しますか、十年後の中間過程でも自立経営農家といえるようなものが百万戸ぐらいはできる可能性があるのではなかろうか、そういう環境条件はありそうだし、そういうものを政策的にも一つの目標としてやっていくんだというのが、所得倍増計画のあの数値の意味合いであったように私は承知いたしております。したがいまして、現実に村で農業をおやりになる農家の方々のお気持、それからそれを周囲からもり立てる諸種の政策のあり方、そういうものがどう推移するかによってこの問題はいろいろの形をとると思います。私どもとしては、先ほども申し上げましたように、十年先のそういった数値よりも、年々の、ことしの、あるいは明年の農村における一歩でも二歩でも前進というのが、結局積み重なって、自立経営農家を、基本法が言っておりますように、なるべく多数日本に育成をする具体的な道筋なんだろうというふうに考えて、いろいろの施策を講じておるというわけでございまして、必ずしも何と申しますか、計画経済でないということと、あるいは少し意味が違うのかもしれませんけれども、そういう意味合いでいろいろの数値を申し上げておりますので、御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/155
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156・高山恒雄
○高山恒雄君 それは私たちは計画経済を立てるべきだということを主張するほうですけれども、政府がそういう計画経済を立てておられるということを前提にして私は聞いておるわけではないんですよ。政府は農業基本法に基づいて指導しなくちゃならぬ立場があるんですよ、行政指導の一つとして。それには政府のビジョンがなければいかぬ。そうして政府はそれに向かって一体どういう指導をするかということを各自治体に対して指示され、またそれを統一的な農業開発にせなくてはならぬのです。ところが何を聞いても、そのビジョンたるべき一つの目標的なものが政府にないじゃありませんか、農業労働人口の立場から考えてみて。だから雲をつかむような指導をしておられるといっても、これは私は過言じゃないと思うのですね。もししからば、その目標だけは百万戸の二・五ヘクタールを中心とした自営農家をつくる、こういうふうに言っておられるが、それは私たちが関知したところじゃないんだ、それは農民が勝手にやるんだ、こういうことにかりになったとしますと、しからば、それがいつ実現するかも大体目標もつかんでないわけです。それがもし五年先に実現もしなかった、半分もできなかった、三分の一も可能でなかった、こういう事態が来たときに、一体私が申し上げるのは、毎年この中高卒が十万人ずつ減るんだから、他の産業は拡大生産をとるためにその人を必要とするんだから、一体そういう事態になっても日本の農業は生産がとれるのか、成長するのか、これが聞きたいのですよ。大臣ひとつこの点、私はお聞きしたいと思うのですが、その点です。私が心配するのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/156
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157・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 計画経済じゃございませんが、一つの見通しあるいは計画性というものを持って、その線に沿うて計画を進めていくことはこれは必要だと思います。でございますから、何も持っていないわけじゃございませんが、こういう変動期でございますので、そういう目標等につきましてもさらに一そう検討する必要があろうかと、こう思っておるわけでございます。そういう検討をあらまししてみまして、人口は減ってくる、いろいろな面で農業の支障も出てきておるが、そういうことで生産は伸びるのか伸びないかということでございますけれども、私は現在の人口の減りぐあい、その他耕地面積の減少とか、あるいはいろいろ支障がございます。しかし、それを克服して、私は総体といたしまして伸びていく、心配はそうない、こう思っております。ただ伸び方が、再々申し上げておりまするように、他産業と比較いたしまして、他産業ほどにいかないという弱点はございますけれども、総生産は——個々の場合は別といたしまして、総生産は私は減退するような形にはならぬ、こういうふうに見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/157
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158・高山恒雄
○高山恒雄君 私はまあ生産がとれるという政府の回答でありますから、成長率はあるという回答でありますから、杞憂は私だけの心配かと考えるわけで、あまり追及しませんけれども、私はもっとこの高度な成長をするためのその機関ですね、いまの日本の農業地域というものはどういう実態かということを農林省はつかんでないと思うのですね。たとえば、ここに家事共同化ということをあげておられます。そしてそれにも助成することにしておられます。これをまずお考えになるなら、共同炊事施設、共同洗たく場の施設、集団住宅に付帯する総合生活施設、こういうものをお考えになっておるんですが、それまでに一体ほんとうに日本の農業の労働実態を見るならば、いま日本ぐらい福利施設のおくれておる、保育所のない国はないですよ、世界に肩を並べる産業立国としての日本が。東京都でもそうじゃないですか。幼稚園は幼稚園の希望者の四割しか入れないじゃないですか。しかも幼稚園が試験制度の状態ですね。そうすると、今度農村にまいりますと、保育所なんて全然ない地域が多いですね。だからこういう共同化を進める前に、そういう問題を、これは大臣の管轄とは違いますが、少なくとも私は大臣がこの問題を取り上げられて、保育所の建設をやらなくちゃいかぬと思う。それはつまり婦人の労働を助ける意味だ、こういうことが私は出てくるはずだと思うのですね。それをまた厚生省がやるべき仕事であっても、農林省がやったって決して——それを唱えても決しておかしくないと思うのですね。しかも、いまの保育所を地域の公共団体でやろうとすると、政府が約二〇%、県が一〇%ですか、これじゃ市町村ではなかなか建ちません。保育所はなかなかやれません。保育所をいまつくっても、それに対する保育係もなかなかおりません、養成しなくちゃ。こういう問題をやっぱり農業の一環として、この共同炊事場を設置するとか、あるいはまた洗たく場を設置するとかという、こういう金を出される前に、婦人の労働をもっとたやすくしてやるために、そういうものこそ現在必要じゃないか。それは何も労働大臣の管轄じゃなくても、労働大臣が閣議にはかって、日本はそれをまず進めるべきだ。そういうことも調べたことはないと思うのですね。幼稚園が一番完備しているのは日本では香川県であります。八〇%できております。その次は兵庫、その次は大阪、東京で四〇%、新潟でたった一〇%であります。こういう実態で農村の労働がいかに今日窮迫しておるかという事態から、その政府がビジョンとしておる百万戸の二・五ヘクタールを中心とする自営農家を育成するというその過程における困難性をどこで克服するか。このくらいのことは私はあってしかるべきだと思う。きょう質問しましたけれども、何らそれをつかむことはできませんが、大臣にお願いしておきたいことは、管轄は違っても、農業が婦人労働の兼業にかわっておるという事態から、私は大臣方が十分考えていただきたい。こういう希望意見を申し上げて私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/158
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159・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 就労人口の不足に対処する方法について御真剣な御意見があったわけでありますが、その一つとして保育所の問題、私のほう等の例を見ますると非常に普及しておるわけでございますが、寺等において相当やっておるので普及はしつつあると思います。しかし、全体として見まするというと、いまのようなお話と思います。そういう面等にはさらに、私のほうの農林省の管轄ということじゃないけれども、農林関係に非常に重大な関連がある問題でございますから、厚生あるいは労働各省ともよく話し合って進めていきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/159
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160・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 十分か十五分間お伺いしたいと思います。三つぐらい簡単にいたしますから、簡明にお答えいただけばけっこうであります。
農林金融、これは申すまでもなく農業あるいは農家の経営の特殊な性格から、農林金融自体も全体の金融の中で特殊な性格と立場があること、これは当然であります。しかし二面、広い意味の金融という観点から見れば、他の一般金融との間にある程度の共通性があり、お互いの間に関連性があるということもこれまた当然のことかと思います。そういう観点からお伺いしたい第一点は、日本の経済が非常な高度成長の過程において、従来もときどき景気の調整、調節といいますか、これが行なわれてきた。現にまたそういう経験なり体験をわれわれは経てきたわけであります。それで、経済のそういう面の調整をやる、この調整をやる一つの方法として、常に資金壁のある程度の規制と、それから金利の規制といいますか、が行なわれるわけでありまして、現に先般、公定歩合が二厘方引き上がったわけであります。これは相当の影響を経済の各方面に及ぼしておることは申すまでもないのであります。特に中小企業面には相当深刻な影響を及ぼしておりますことも、これまた周知の事実であります。そこで、私はその間の実態をよく把握をいたしておらないので大臣に伺うのでありますが、農家経済調査を見ますると、農家の貯金なり、預金等が、系統を活用して農協を通じていく面と、系統以外にいく面ともちろん二つあるわけであります。数字を見ますると、系統以外にいく数字のほうが御承知のように多いのであります。また農家が借り入れまする資金の面も、系統を利用する面——制度金融もそれに合わさるわけでありますが、その面と、それからまた系統金融以外の一般金融、地方銀行なり、相互銀行なり、信用金庫その他から資金を活用しておる数字も相当の数字に上っておることも御承知のとおりであります。したがって、二厘方公定歩合が上がりまして、非常に金融市場全体に一つの波紋を起こしておる現実のこういう場合において、過去にもそういう例があったのでありますが、農林関係にどういう影響を及ぼしておるのであろうかということなのであります。これは農林関係の特殊の事情、特殊の立場、特殊の性格から見て、それはそう影響はないのだというふうに見ていいのか、やはりいろいろの面で影響があるのだと見ていいのかという点についての大臣の見方なのであります。私は必ず影響はあると思うのであります。たとえば米の流通の資金にいたしましても、これは食管制度のもとで価格もきまっておりますし、したがって、流通面におきまする資金量のごときも、これははっきりしておるのであります。これは一般経済の過熱であるとか、そうでないとかということで影響を受ける筋合いのものではない。しかし、公定歩合の二厘方の変化というものは、やはりすぐに影響がくるのであります。流通資金におきましても金利は一厘ないし二厘方引き上げられる情勢にあるのであります。農業、あるいは漁業もおそらくそうでありましょう。そういう面を取り巻きまする金利の動きとか、資金量の動き、そういうものに変化があるであろう、こう思うのでありますが、そういう点はどうであろうか、どういうふうに農林当局は見ておられるのであろうかということをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/160
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161・松岡亮
○政府委員(松岡亮君) 金融引き締めの影響が農林漁業の方面にどういう形であらわれてくるか、またその深さはどうかという御質問かと思いますが、従来しばしば金融引き締めが行なわれました際に、農林省といたしましても、その影響をそのつどいろいろと検討してまいったのであります。しかしながら、いまもお話にありましたように、食糧代金の支払いは政府の食糧特別会計から常に円滑に安定して行なわれている。これは非常に農村への資金源としては大きいものでございます。それから最近におきましては、農協の系統資金が非常に多くなってまいっております。その結果としまして、直接的な影響は、少なくとも短期の引き締めの場合は、従来顕著にはあらわれていなかったのでございます。ただ同じ系統資金の中におきましても、たとえばコールレートが上がるために、系統からコールローンとして系統外に流出する、そういった影響が若干あらわれております。従来。それから漁業関係等につきましては、中小企業の漁業がございますので、その方面には一般の中小企業のように、引き締めの影響がわりあいに強く出ている。こういう状況だと従来見ておったのであります。おそらく今回の引き締めの影響は、さしあたりはそう強いものが一般の中小企業のようにあらわれてはまいらないと思いますけれども、しかし、これが長くなりますと、何らかの形の影響が出てまいる、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/161
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162・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 中金なり信連の資金の影響は、これは御説明ではっきりわかるのでありますが、信連のコールローンに振り向けられる資金はおそらく千億をこしておると思います。最近はおそらくまたそれを上回っているかもしれません。少なくとも千億台に上っておるだろうと思います。単協の分が一兆二、三千億あるのであります。もちろん系統に行っておる分もある。そうして貸し出されているものが七、八千億でしょうか、その程度。あの単協の貸し出し資金の中で、純粋の農業プロパー以外に相当出ているであろう、これは大体どの程度農業プロパー以外に単協の資金というものが、活用といいますか、出ておる、そういうのがわかっておりましたら、それを聞かしてもらいたいと同時に、そういう一般地方銀行なりその他金融機関の資金が非常に引き締まってきますというと、勢い農協の資金というものがそういう面に動いていく必然性を持っておるのではないか。つまり、いい悪いを私は言うわけではありません。実態というのはどうであろうかということをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/162
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163・松岡亮
○政府委員(松岡亮君) 先ほど申し上げたように、コールローンあるいはインター・バンクというような形の資金が流れ出ますことは、しばしば引き締めの際に起こるのであります。それは信連段階以上で多く見られるのでございますが、単協といたしましては、これはまた農協法の財務基準令で運用されている資金の二割以内で系統外に貸し出せる、これは関連するたとえば森林組合でありますとか、あるいはいろいろな組合形式の農業団体等に貸し出されているものが多いわけでございます。それからまあ銀行預金等になっている場合があるわけでありますが、この金融引き締めがだんだん強くなってまいりますと、単協の段階で銀行預金に吸収される例が従来しばしばございました。そのほかにも農村において関連した事業をやっている人々が農協に借りにくる。こういうようなことも起こってまいるのでございます。しかし、これは最近においては、そのために農林漁業者自体に強い影響を与えるというほどの状態ではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/163
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164・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 大きな影響がなければないでけっこうなんであります。ただ、農協の金融上の役割が非常に大きくなっておると思うのです。純粋の農村地帯におきましては、私はお説のように、そう問題はないと思います。しかし、大きな都市近郊の農協の信用事業は、この性格が相当変わってきておるのじゃないかと思うのであります。たとえば、東京あるいは神奈川等大きな町の近くの巨大な農協は何十億という金を擁しております。そういうのがこういう金融のある程度調整、規制をやるような場合に、一体どういう働きを現実にしておるのだろうかということに実は関心を持ったのであります。ひとつ今後も十分御検討おきをお願いしたいと思います。
いま一点、これも当面しておりまする日本の金融上の非常に困難な問題であるけれども、何とかこの際に妥当な一つの結論を見出して解決されなければならない問題は、これまた大臣よく御承知の歩積み、両建ての問題であります。これは都市銀行といわず地方銀行といわず、信用金庫にいたしましても非常な当面の大問題であります。一体この歩積み、両建てというものがすべて悪いというわけじゃないのです。どういう判断でいい悪いをきめ、どうしてこれを改善し是正するかということに苦慮しておるのが現実であります。しかし、そのしわというものは現実に中小企業に非常に強度に現われておることも、これまた御承知のところであります。私のお伺いしたいのは、主として系統金融関係になるでしょうけれども、あるいは制度金融も若干それに関連を持ってきましょうが、あるいはいまの改良資金とある程度関連性と影響があるかもわかりません。大体、農林関係の金融面において歩積み、両建て式な性格のものがあるのではなかろうか。私は歩積み、両建てがすべて悪いという考えは持っていないのであります。長年の一つの慣行であり、しきたりであって、金融上の信用力、いろいろな点からある程度それは是認されておる。ところが度をこえるとか、あるいはそれによってまた借りる方が非常に安い金利だけれども、現実にそれらを計算すると、とてつもない高い金利になるというのが、現実にこれも少なくない。そういう面が農林金融、広い意味の農林金融といいますか、そういう面にあるのかないのか。これは系統金融の点から言えば、普通のあれと逆でありまして、組合員から預かっている金はほとんど定期的な性格のものが多く、しかも貯貸率を見ますというと、貸し付けは貯金の半分以上見当である。非常に何といいますか、普通の金融機関の実態とは違った実態であります。しかし、そこに相当固定的な定期的な資金というものが系統金融に、ある意味においては寝ているわけですね。そして今度なかなか金利は安くない。そういう姿において、だから普通の金融機関とはもちろん性格が違うのですけれども、現実に歩積み、両建て式な問題というものがあるような気がするのですけれども、実態を私よく知らない。はたしてそれがあるのかないのか、そういう点については農林金融の面から言えば心配がないのか、是正すべき事柄があるのかどうかという点を一つお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/164
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165・松岡亮
○政府委員(松岡亮君) これが判断の点につきましてはともかくといたしまして、事実につきまして、これは私どもも全面的に調査できたわけではございませんが、事実だけについて見ておることを申し上げますと、大体、農業の系統金融においては、歩積み、両建てといわれる性質のものはないと申し上げていいかと思うのであります。ただ、林業とか漁業関係は、一般の中小企業とやはり同じような金融機関に接触いたしておりますので、そういった面でそういったものがあるということは考えられるのでございます。農業系統の機関におきましては、こういう例があるかと思うのであります。たとえば、農林中金が系統外の人に貸し出す場合に、農林債券を、またそれとすぐ見合いではなくても、引き受けてもらうという場合があるかと思うのであります。それから単協におきましては、組合員から当然貯金を受け入れる、また貸し出しもやるわけでございますが、その場合に、できるだけ組合員の貯金奨励をやる、それで貯金をしてもらえば、それだけ安心して金を貸せるというような、実際上、別に見合って歩積み、両建てが行なわれておるというわけではございませんが、系統組織の性格からいたしまして利用率を促進する、系統利用率を促進するというような形の運営が行なわれておることは、これは事実であると言えると思います。またそのほかに、系統利用を促進するという意味で、できるだけ組合の農機具を買ってほしい、そういう場合に融資をする、こういうような組合の本来的な性格からくるような、これは歩積み、両建てとはおよそ縁がないと思われますけれども、似たような形のものがあることは事実であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/165
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166・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 歩積み、両建てということば自体が、はなはだはっきりしないのでありますが、簡単にやはり農林関係において歩積み、両建てはありませんという言い方は、いささかどうかと思います。ただ、いまの系統金融の組合組織の協同組合のあり方、あるいは系統組織のあり方からいろいろの行き方はあると思います。一面、しかし金融という観点からいいますというと、まだそこに問題があり得るわけでございます。その二つの間に、何と申しますか、無理があっては、これは将来の金融の観点から問題であろうかと思います。できる限り系統組織として貯金を集める、しかも、それを系統的に利用していく、これはけっこうであります。しかし、それがものによって強制的になるということになってきますと、ある意味での両建て式な一つの弊害というものが出てこないとも限らない。私はいま非常に抽象的でありますけれども、そういう点は、金融というものが一つの今後の経済のある程度の調整をしていく役割が非常に大きくなってくると思いますだけに、ひとつよく御考慮おき願いたいと思います。
これは最後に簡単な問題でございますが、制度金融にいたしましても、それから改良資金のあれにいたしましても、制度的には、有資格者には全部貸し出す、融通し得る道が開かれておると思います。ところが現場におきましては、いろいろの環境の条件その他で必ずしもそれが円滑にそういう人々のほうにいかないようであります。ことに今般、制度金融の資金であるとか、あるいは改良資金が改善されて、新しく生活改善、先ほど来問題の後継者育成資金等につきましては、相当農村におきましても期待をいたしております新しい性格の金であります。したがいまして、適格な資格のある者については、やはり適正にそれが回るというふうに私はあるべきだと思いますし、まあそう希望をするわけでありますが、地方によりましては、どうもそれが手続の関係とか、あるいはいろいろの条件、取り扱います代行機関ですか、そういうものの考え方等で、そういう面にいかないというふうな点についての懸念といいますか、危惧の念を持っている向きもあるようであります。そういうことのないように私は希望いたします。御配慮をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/166
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167・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 十分御趣旨のとおり指導いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/167
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168・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02219640407/168
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169・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) 速記をつけて。
それでは、本日はこれをもって散会いたします。
午後五時二十一分散会
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