1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年四月二十八日(水曜日)
午前十時三十一分開議
出席委員
委員長 松澤 雄藏君
理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君
理事 藏内 修治君 理事 齋藤 邦吉君
理事 澁谷 直藏君 理事 河野 正君
理事 八木 昇君 理事 吉村 吉雄君
伊東 正義君 熊谷 義雄君
倉石 忠雄君 小宮山重四郎君
坂村 吉正君 田中 正巳君
竹内 黎一君 地崎宇三郎君
中野 四郎君 橋本龍太郎君
藤本 孝雄君 松山千惠子君
粟山 秀君 山村新治郎君
亘 四郎君 淡谷 悠藏君
井手 以誠君 伊藤よし子君
小林 進君 多賀谷真稔君
滝井 義高君 八木 一男君
山田 耻目君 本島百合子君
吉川 兼光君 谷口善太郎君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 神田 博君
労 働 大 臣 石田 博英君
国 務 大 臣 高橋 衛君
出席政府委員
内閣官房長官 橋本登美三郎君
大蔵政務次官 鍛冶 良作君
大蔵事務官
(理財局長) 佐竹 浩君
厚生政務次官 徳永 正利君
厚生事務官
(大臣官房長) 梅本 純正君
厚生事務官
(年金局長) 山本 正淑君
労働政務次官 始関 伊平君
労働事務官
(大臣官房長) 和田 勝美君
労働事務官
(労政局長) 三治 重信君
委員外の出席者
大蔵事務官
(主計局給与課
長) 秋吉 良雄君
大蔵事務官
(主計官) 船後 正道君
専 門 員 安中 忠雄君
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四月二十八日
委員小林進君及び山口シヅエ君辞任につき、そ
の補欠として岡良一君及び井手以誠君が議長の
指名で委員に選任された。
同日
委員井手以誠君及び岡良一君辞任につき、その
補欠として山口シヅエ君及び小林進君が議長の
指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
厚生年金保険法の一部を改正する法律案(内閣
提出第二号)
船員保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
第三号)
労働関係の基本施策に関する件(公共企業体等
における労働問題)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/0
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001・松澤雄藏
○松澤委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/1
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002・八木一男
○八木(一)委員 厚生年金保険法の一部改正案につきまして、厚生大臣並びに政府委員に御質問を申し上げたいと思います。
まず第一に、昨日、厚生大臣に御質問を申し上げた際、五人未満の事業所の労働者に対して、厚生年金を適用すべし、この問題について厚生省が非常に怠慢である、即刻心を入れかえてきょうの質問までに、その問題についてはどういうふうにしたらできるかという研究を重ねてきて、またそれについて大蔵大臣あるいは総理大臣に交渉をして、本委員会で与党野党がそれを変えようとするときに、政府側は計算その他で協力をするという態勢をつくっておかれたい、そういうことについて昨日要望を申し上げておいたわけであります。それについて厚生大臣はいかなる努力をされたか、いかなる結果になったか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
〔委員長退席、井村委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/2
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003・神田博
○神田国務大臣 八木委員からの昨日来の引き続いた御質問、いわゆる五人未満の事業所に対する厚生年金の適用の問題でございますが、いかにも厚生省に誠意がない、怠慢だというようなことについては、私は御賛成を申し上げるわけにいかぬ。誠心誠意やってまいったことは事実でございまするし、また自民党の、与党からも早くやるようにという強引な要請のあることも事実でございます。社会党からも八木さんのような御熱心な方がしばしば言われたことも、これは昨日来から繰り返したとおりであります。そこで昨日もたいへん御熱心な御要望でございまして、私どもといたしましても、できる限りその御要望に沿いたい、当委員会の空気を察知いたしまして、そのような方向にまいりたいと思って努力いたしました。しかし、御承知のように、昨日も予算委員会でたいへんおそくなりまして、なかなか本朝にかけまして、いろいろ所要の打ち合わせをいたすべく努力いたしたわけでございますが、どこもここも委員会その他の所要の事項がございまして、顔がそろうことが困難でございました。これはもうはっきり時間的の問題でございますから、御了承いただきたいと思います。しかし、御要望の点は、われわれといたしましては、これはもう昨日来お答え申し上げておるとおり賛成でございますので、私どもといたしましては、五人未満事業所に対する適用については、健康保険、失業保険等、他の社会保険と同時に、できるだけ早くひとつ機会を選びまして、強制適用に踏み切りたい、こういう一つの考えを再確認と申しましょうか、強い申し合わせと申しましょうか、そういうことをいたした次第でございます。そういうようにひとつ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/3
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004・八木一男
○八木(一)委員 いまの御答弁は、表向きにはかなり誠意が見えているようでございますが、表向きに誠意を披瀝された御答弁をされて、実際はそれが怠けられて、じんぜん目をつぶしたり過ごしていることがいままで事例としては大部分でございますので、そのままに私どもは信用するわけにまいらない。昨日、予算委員会が午後もございましたことも存じておりますから、本日までに、たとえば神田厚生大臣が大蔵大臣あるいは佐藤内閣総理大臣とひざを突き合わせる機会が物理的になかったということは、ある程度了承いたしますけれども、といってきのうのきょうこの御返事ができなくても、一両日中にこの御返事ができないということになれば、これはいまおっしゃったことがうそだということになる。いまの御決意を必ず強く固められまして、この厚生年金保険法の審議のちょうど中ごろに至るまでの間に、必ず大蔵大臣並びに内閣総理大臣とこの話をつけて、次の臨時国会には五人未満の事業所に強制適用するこの法律を必ず出す、大蔵省は完全に理解をした、理解をさせたという答弁をしていただくようにしていただかなければならないと思います。その場合に、もしそれができなかったならば、神田さんがその職をやめられるか、あるいはまた大蔵大臣が非常に頑迷にして、この点に理解がないということを証言せられるか、あるいは内閣総理大臣が社会開発などと称しても、全然そういう問題については誠意がないという事情であるか、この問題をそのときに明らかにしていただきたいと思います。ただ努力をしたけれどもまだできませんという返事ではいけないと思います。少なくとも今週中に、あなたの努力が足りなくて、あなたが厚生大臣としての資格がないのか、あるいはほかの大臣が非常に無理解であって、社会保障に逆行する思想を持っておるのか、少なくともそれを進める思想を持っていない。それを今週の末までに明らかにしていただきたいと思います。その点についてお約束をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/4
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005・神田博
○神田国務大臣 ただいまお尋ねのございました件でございますが、政府といたしましては、これはしばしば申し上げておるとおりでございまして、五人未満を適用したい。そのことにつきましては私ただいま御答弁申し上げたように、さらに検討を加えまして、そして健康保険、失業保険等の問題とあわせて、ひとつ強制適用をすることに踏み切りたい、こういうことを申し上げているわけでございます。
そこで八木さんいろいろ御心配されて、それはひとつ大蔵大臣と、総理大臣とみな相談してくれ、こうおっしゃるわけで、おっしゃられる気持ちは私もよくわかります。できるだけそういうような配慮をいたしたいと思いますが、御承知のように役所の仕事というのは下のほうからいろいろ踏んでまいるものでございますから、きょうのところは八木さんとひとつ政治的な話し合いといいますか、高い立場に立ってこれはやるのだ、やり抜きたいのだという私どもの考えを率直に申し上げたことで御了解を願いたい。そこで、くどいようでございますが、あなたのおっしゃる気持ちは私もよくわかっておりますから、できるだけ関係大臣、あるいは総理にもこれらの委員会の空気を、また私どももさように考えておりますから、申し上げまして、そしてこういうところこそむしろ大事だということにつきましては、もう基本的な考え方は一致しているのだ、なぜできないのかということは、いろいろ事務的折衝だとか、物理的にあります。そういうことはこれを除いていかなければならぬことでありますが、しかしやる以上は漏れるようなものがあってもいかぬわけでございまして、補足すべきものは全部補足するということが、やはり政治は一律平等ということが不可欠のものであろうと私は思っておりまして、 そういう趣旨でひとつ御了承を願いたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/5
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006・八木一男
○八木(一)委員 いまおっしゃいましたけれども、いろいろ事務的にどうするとかこうするとかということは、有能な公務員がたくさんいるわけす。そのキャップもそばにいるわけです。そんなものができないような人ではないわけです。できないと言うなら、それはなまけている。厚生省でなまけて仕事を進めないような人は職をかえてもらわなければならない。それだけの能力は十分にあります。それは厚生年金だけではありません。健康保険の問題がありますから、保険局長の問題もありましょう。労働省のほうにも労働大臣が来たら申し上げますけれども、失業保険の問題もありましょう。それはやろうと思ったらできると思うのです。ほんとうはそういう人たちの怠慢というのも半分あるかもしれないけれども、むしろこれは厚生大臣なり労働大臣なり大蔵大臣なり内閣総理大臣に決意がない。やるんだ、やるための準備をこれまでに完了せよと命令すればすぐできます。それだけの才能ある人がそろっている。あなた方が意思を固めないから、そして固められないのを、事務的にまだ準備ができておりません、捕捉ができませんというような妙なことで逃げようとするから問題が進まない。責任は大臣にある。やんるだ、やるための準備はこれまでに完了せよと命令をする、その意思を完全に固める、それを国会を通じて国民に約束をする、そういうことを誓わなければならないと思う。そういうことについていま申し上げたように、はっきりと内閣としてやるという御答弁をあなたからいただきたい。もしあなたができない場合には内閣総理大臣に出ていただいて、その点について彼がほんとうに無理解なのか、あるいは厚生大臣の努力が足りないのか、あるいは大蔵大臣が横車を押すのか、その原因を探求して、その問題に最もブレーキをかけている人間を徹底的に追及を行なわなければならないと思う。しかし責任のなすり合いではいけませんから、あなたが努力したけれどもほかがいけないのか、あなたの努力が足りないのか、それをごく短期間にはっきりさしていただきたい。その覚悟で一両日を当たっていただきたいと思います。
その次に、労働省のだれか来ていますか。——いまの質問の続きで労働省に一言。いま厚生大臣に申し上げたことは、同時に労働大臣に申し上げなければならぬ。労働大臣は失業保険のことだけを考えて、あるいは労災保険のことだけを考えていればいいという問題ではありません。健康保険の問題なり、厚生年金保険の問題は労働省の問題でもあります。厚生省だけにこの問題をまかせておいて外でぼやぼやしているようなことでは、労働大臣の職務はつとまらない。労働省の公務員としての職務はつとまらないということになる。いま厚生大臣に申し上げたことをそのまま労働大臣の出席があったら申し上げますが、それについて十分にあなたもよく聞いておいて、そういうことをしなければならない。労働大臣がだれにかわってもそういうことができないような労働大臣はおやめなさい、あなたは資格がないというようなことであなた方が問題を進める、このような決意をしてもらわなければならないと思う。それについて官房長の意見を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/6
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007・和田勝美
○和田(勝)政府委員 ただいま先生の御趣旨については私ども全く同じような考えでございますが、ただ労働省としましては、所管の法律が労災と失業保険でございまして、労災につきましてはすでに改正法案をいま国会で御審議いただいておる中に、二年以内に調査、研究をいたしまして一定の結論を出す、その方向は五人未満をできるだけ早く強制適用にするという方向で法案を出しているようなわけでございます。失業保険につきましてもいろいろ問題がございますが、労災と同じような考えに立って五人未満の強制適用をやっていきたい、こういう考え方でございますので御了解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/7
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008・八木一男
○八木(一)委員 ちょっとくらいの努力のことを報告されても困る。二年以内なんという問題じゃない。ことしじゅうにやらなければならない。このようなことでいいと思ったら困る。それから労働省は労働省の問題を考える、あなたは官房長だからそれでいいけれども、労働大臣に伝えておいてもらいたい。労働大臣は国務大臣である。厚生大臣にまかせて外でぼやぼやしていてはならない、一緒に進めてもらわなければならないということを伝えてほしいということを言ったわけです。それを確実に伝えるようにしていただきたいと思います。もう一回はっきり御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/8
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009・和田勝美
○和田(勝)政府委員 大臣には先生の御趣旨を十分お伝えをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/9
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010・八木一男
○八木(一)委員 その問題について大蔵省に質問をいたしたいと思います。労働省のほうはそういう管轄を持っているので、幾分そういうことについての御答弁の準備があろうと思いますが、大蔵省のほうも担当の主計官が来ておられるので、その問題については十分わかっておられると思うけれども、一応趣旨を言って理解をしていただきたいと思う。本日は厚生年金保険の問題からこの問題に入ったわけですが、健康保険の問題にしても、失業保険の問題にしても、労災保険の問題にしても、すべて五人未満の事業所の労働者がそういうような社会保障を最も必要としている。最も必要としているところに、たとえば一部事務組合で適用の制度があろうとも、強制適用という制度が完全に及んでおらないので、一番必要な人に一番必要な給付がいかないというような事情になっている。これは政治の一番のひずみであります。そのひずみを直すために厚生省、労働省が一生懸命に推進をしなければならない。それに対して、大蔵省が少なくともこの問題についてブレーキをかけるような態度であってはならないと思うわけです。後ほど田中角榮君にこの問題について質問をし、理解を示せばいいけれども、そうでなければ徹底的に追及する予定でありますが、あなた方も大蔵大臣を補佐する立場として、こういう問題については最も積極的に大蔵省としては各省の要求に協力をしなければならないということを理解し、大臣を教育し——大臣を教育というと語弊がありますが、大臣の補佐を十分に果たしていただきたいと思います。それについての主計官の御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/10
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011・船後正道
○船後説明員 五人未満の事業所の社会保険の強制適用について、八木先生の御意見につきましては方向として全く同感でございます。ただ、この問題は先生も御指摘のとおり、厚生年金、健康保険、それから失業保険、労災保険、各保険倒産にわたる問題でございます。三十七年八月の社会保障制度審議会の答申でも、各保険制度がばらばらの対策を講じないでやってくれ、また各保険制度は、たとえば標準報酬のとり方にいたしましてもばらばらである、こういった問題を解決した上でこの問題をやるべきじゃないか。先生御承知のとおり、五人未満の事業所の数は五人以上の事業所の数よりも多いというような実情でございます。これを強制適用するにつきましては、事務機構というか、事務手続というか、そういうところに実は隘路があるわけでございまして、これをいかにスムーズにやるか。これを一度間違いますと、各制度がばらばらになりますと、非常に徴収手続がかかる。これはひいては事務費負担あるいは保険料の負担になりますので、私どもといたしましては各保険制度がばらばらではなく、最も合理的な方法で、しかも能率的にこの五人未満の事業所に対する強制適用をやっていただきたい、こういう方向で、かねてからこの方山の調査費も労働、厚生両省につけまして、研究を進めておるところでございます。
各省の状況は、ただいま厚生省、労働省からお伝えになりましたとおりでございまして、それぞれ鋭意研究を進めておるところでございますので、今度その方向に向かいまして、われわれ財政当局といたしましても十分この問題には積極的に考えていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/11
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012・八木一男
○八木(一)委員 いま主計官から言われたこと、その片側においてはある程度の理屈があるように思いますけれども、往々にしてそういう理屈をたてにして実際の適用がおくれるわけであります。標準報酬を一緒にしろ、いろいろな基礎を一緒にしろということを審議会で一部言っております。理想的に言っておりますが、いまたとえば失業保険と健康保険あるいは厚生年金というものは、そういう基礎の立て方が違っております。一方は標準報酬が基準で、一方は賃金が基準である。もとの母体自体が違っておる。五人未満の問題だけではなしに、その問題を解決しなければならない時期が来るでありましょうけれども、そのような、根本的な解決ができなければ五人未満が発足できないという考え方をもしするならば、五人未満はいつまでたってもなかなかできないことになる。少なくとも厚生年金と健康保険は、ともに標準報酬を計算の基礎としております。その問題を一緒に五人未満を取り上げることは、その趣旨を十分に尊重した立場においてもすぐできるわけです。問題はこの五人未満の事業所の労働者に最も必要とするこのような保障を早く適用するということが第一前提であって、そのときの事務手続というものは第二、第三、第四、第五くらいの次元の問題であります。その第五の次元の問題を解決して同時にやることは、もちろん私ども反対いたしませんけれども、第五の次元を解決しないからといって、第一の次元そのものでじんぜん日を過ごすことは政治としては許されない問題であります。そういう問題について、これはおもに厚生大臣なり労働大臣なりそういう人たちの責任でありまするけれども、そういう人たちが第一から第五までの次元を一ぺんに解決できないけれども、第一の次元については、少なくとも第五の次元を解決することを阻害しない方法によりまして段階的に第一の次元を解決したいという案を出したときに、大蔵省は観念的に第五の事務的の統一という問題だけをたてにして出発をおくらせるようなことがあってはならない。大蔵省の狭い考え方で政治の本道を曲げる、本道を進めることをゆっくりさせる、そういうことになろうと思います。船後さんは厚生、労働のことをよく研究しておられますから、このことについては御理解があろうと思いまするけれども、理解をもっと深めていただかなければならないし、主計局の局長も深めていただかなければならないし、大蔵大臣にまずもってこの理解を深めていただかなければならない。問題は第一の五人未満の事業所の労働者に適用を早くする、それが第一だ。早くするために事務手続を急ぐことは差しつかえないけれども、事務手続がそういう事務手続でなく、直接の認定手続が必要としても、各社会保険の総合的事務手続の構想がおくれることでその発足を延ばすということは許されないということをぜひ理解をし、大蔵大臣に示唆をしていただきたいと思うわけです。それについて、ひとつ決意のほどを伺わしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/12
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013・船後正道
○船後説明員 八木先生のおっしゃるとおりでございまして、各保険には、保険料算定基礎にはそれぞれいろんな問題もございますし、それぞれの理論もあるわけでございまして、これを統一するということが五人米満の適用の前提ではありません。ただ、私どもが問題といたしておりますのは、事業者保険を通じまして、どれ一つとりましても、五人未満の事業所の従業員につきましては重要なる問題でございますので、厚生年金、健康保険もまた失業保険も労災も、すべて五人未満の事業所に適用にならなければならない。こういうように各保険制度が歩調をそろえましてこういう方向に踏み切る。同時にこういう方向につきましては、ばく大なる事務費を要するわけでございますので、現在のよりな機構、事務につきましても、もう少し合理化、簡素化という方向がある。これによりまして、税金なり保険料の節約ということを考える必要がある。こういう方向で事務的な検討も早急に進める、こういうことで将来は全面的な適用に持っていきたい、こういうふうに考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/13
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014・八木一男
○八木(一)委員 前向きにすべてを進めていただけばけっこうであります。ただ、もう一言申し上げておきたいことは、たとえば厚生年金保険においては二百数十万人の五人未満の労働者の未適用がある。この問題を単独でやろうとすると、ある程度の事務費が要ります。しかしその事務費の総額は、私どもとしてはスズメの涙ほどと思うが、大蔵省としてはかなりの金額だと考えておられるかもしれない。しかしその対象が三百数十万になれば、その人たちの大事な問題を進めるために大蔵省として、たとえば二十億ないし三十億の事務費が要ると考えても、そういう問題はごく些少の問題であって、それは国民のために当然国がすべきサービスの費用として出さなければならない問題であるというふうに理解しなければならないと思います。そういう点が進むように、事務費その他の支出については最も勇敢に厚生省や労働省が要求したよりも大蔵省はそれを進めるために倍出しましょう、大蔵省は逃げるばかりが商売ではない、実際の大事な行政を進めるために、その財政の責任を果たすために、いいものを進めるためには要求よりも倍出すこともある、そのような考え方でやっていかなければならぬと思うのですが、その点についての船後さんの決意のほどを聞かせておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/14
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015・船後正道
○船後説明員 先ほどから繰り返して申しますように、この五人未満の事業所の強制適用につきましては、私どもも前向きに考えておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/15
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016・八木一男
○八木(一)委員 それではもとに戻りまして厚生大臣に御質問いたします。五人未満の事業所の適用の問題をきのうから申し上げましたけれども、そのほかに類似の非常に大事な問題があるということについて、厚生大臣は御認識であろうと思いまするが、厚生大臣の御答弁をひとついただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/16
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017・神田博
○神田国務大臣 お答えいたします。
そのほかの問題というと、日雇いの問題じゃなかろうかと思っておりますが、十分このような点につきましても考えておりまして、何らかの方法で促進をしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/17
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018・八木一男
○八木(一)委員 厚生大臣はいろいろと私が御質問するときに、ときどき質問をそらしてほかの宣伝をされることがあるわけです。ですから、五人未満の問題で一生懸命に取っ組むという答弁をされたならば、五人米満の問題のみではなしに、日雇い労働者についても適用させるために一生懸命やりますということを言われるだろうということを期待しておった。ところがこっちが言い出すまではちっとも言い出さない。ということは、日雇い労働者については一生懸命考えていない証拠である。そういうことではいけないと思うのです。日雇い労働者の厚生年金の適用について、これは非常に熱心に考えていただかなければならない。技術的に五人未満よりむずかしいことは私も承知をしております。むずかしいといっても、これはやろうとすれば必ず技術的な解決ができる。いつかは技術的な解決をしなければならない。五年後にしようと、いましようと、その困難は同じであります。早くその困難を解決して、それを適用することによって——非常に不幸にして日雇いという不安定な職業につく機会を持たざるを得なかった、低い賃金で苦しい生活を送らざるを得なかった。したがって老齢なりあるいは障害なりあるいはなくなったときの遺族の場合に蓄積がないために厚生年金保険の給付の必要の度が、五人未満と同様に現行法の適用者より以上に必要の度の多い人が早く適用されるようになることは非常に大切なことであります。そういうことについて、もっと積極的に考えていただかなければならないと思いまするが、これにつきましても五人未満と同じように少なくとも一年後には適用されなければならない。そのときになって、研究したけれど技術的にまだ結論が出ておりませんということではいけませんので、即刻その問題については準備に入って、少なくとも一月後くらいには大体のあらましの結論が出て、方々の折衝ができて、五人未満の事業所については次の臨時国会、日雇い労働者については来年の通常国会に必ず法律案を出すという努力をぜひともなさる必要があると思いますが、それについての厚生大臣の決意のほどを聞かせておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/18
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019・神田博
○神田国務大臣 五人未満の事業所に対する年金の適用の問題を考慮する場合に、もちろん日雇いの問題についても考慮しなければならないことはおっしゃるとおり私も当然だと思っております。そういう考え方でものを進めてまいりたいと考えております。それでいま御例示がありましたように、五人未満の事業所については次の臨時国会にやれ、日雇いは来年の通常国会にやれという御要望でございますが、私はこれは早いにこしたことはないと思います。十分ひとつ調査いたしまして、その調査が間に合うかどうかはここで即答はできませんが、考え方は、ものの運び方については、そういうことを前提としてひとつ努力いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/19
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020・八木一男
○八木(一)委員 それでは日雇い労働者に健康保険法を適用するという意思ははっきりと表明をしていただいたものと理解をいたしますが、それでよろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/20
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021・神田博
○神田国務大臣 ちょっと伺いますが、日雇いには日雇い健康保険法が適用になっておりますが、年金のお間違いじゃなかったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/21
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022・八木一男
○八木(一)委員 厚生年金保険法です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/22
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023・神田博
○神田国務大臣 そうですね。それならわかりました。十分そういう趣旨で考えたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/23
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024・八木一男
○八木(一)委員 日雇い労働者に厚生年金保険法を適用するときには、技術的に解決をしなければならない問題が相当あります。それについて、これは事務局でけっこうです、山本年金局長はどのような方法でこのシステムを組むかという腹案がすでにあってしかるべきであろうと思います。それについて腹案があったら教えていただきたい。なかったら私の腹案を申し上げますから、それを手本にしてすぐ準備にかかってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/24
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025・山本正淑
○山本(正)政府委員 日雇い労働者の実態につきましては、八木先生、一番よく御存じのところでございまして、御承知のように一般に日雇い労働者といっております失対事業の日雇い労働者というものももちろんあるわけでございますが、もう一つの問題といたしましては、たとえば建築業のごとき、実質的には常用と変わりないような形でありながら日雇い労働者という雇用形態を持っているというものもございますし、それからまた日雇い労働者の中には、会社に雇われるのでなしに、個人個人の家に雇用の機会のあるつど雇われていくといった関係の左官さんとかなんとか、そういったような人もあるわけでございます。そういう日雇い労働者の実態というものが非常に複雑であり、その意味におきまして雇用形態というものも近代化されるべきものであるにもかかわらず、されていないという種類もあるわけでございます。本来ならば、建築業のごときは、雇用形態が近代化されれば、当然厚生年金なり健康保険に強制適用されるといったような実態を備えておるものもあるわけでございますが、そういった日雇い労働者のそれぞれの雇用の実態に即しまして、一度に日雇い労働者という一般的な概念で適用していくということが非常にむずかしい、記録上の問題あるいは保険料の徴収の問題、移動が非常にはげしい、一律雇用であるといったようなことでむずかしいといたしますれば、そういった常用労働者の実態を備えているものから適用していくというような方法も考えられるのではないかというふうな考え方はあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/25
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026・八木一男
○八木(一)委員 年金局長、もっとしっかり考えていただかなければ困る。そういうふうにやりやすいことからやればやりにくいところが残る。やりにくいところに厚生年金保険法の資格期間を早くつけることが一番必要なんです。ですから、日雇い労働者を適用するときに、一部分が残るようなやり方をしたら、また技術的な困難をしなければならないし、また一番気の毒な人が残ります。そうじゃなしに全部が入る、そのような方法がありますよ。私が大体申し上げますから、そのとおりにすぐ一週間ぐらいで起草してやられればいいわけです。日雇い労働者といえども、これは賃金をもらって食べている。賃金のところで人間をつかめばいいわけです。賃金のところで保険料をつかめばいいわけです。その例は、日雇い労働者健康保険法やあるいはまた失業保険法でそういう例があるわけです。これは一つの方法ですよ。それ以上りっぱな方法があれば、どんな方法でもいいですけれども、少なくとも一人も残らず、こぼれがないという方法ではそういう賃金のところでとる方法が一番いい。そうすると、結局因子になります。したがって、自動的にその因子のところで、いままでのように十二段階とか二十三段階とか、あるいはわが党の案のように三十二段階というようなことはとれないでしょう、しかし日雇い労働者というのは、永久に二十年、三十年日雇い労働者ではない。これは労働省が努力して常用労働者にしなければならない。また本人も一生懸命努力してなるでしょう。ですから、その期間、短期間であるべき日雇い労働者の期間は何段階に分けなくても、ある程度大ざっばに二段階か三段階に分けて、そうして低額の保険料を徴収するというような方法でやるわけです。
その次に、その厚生年金保険の資格通算期間等の計算の問題については、二十五日稼働として、たとえば五百円の日額の賃金であれば、二十五日稼働とすれば一万二千五百円、一万二千五百円の標準報酬の常用労働者と同じにその期間を通算すればいいわけです。これはおわかりだと思うのに山本さんが言わないからこっちで言っておるのですが、そこまで言えば私は言わない。
その次に、二十五日としても、日雇い労働者は二十五日働くとは限らない。十七日の場合もあれば十四日の場合もあるという問題もあります。全国平均としては二十二、三日だと思いますが、これから政府の雇用努力、いろいろな努力によって少なくとも二十五日にならなければならない。ですから、二十五日として全部計算をする。たとえそれが二十二日であろうと二十三日であろうと十八日であろうと、本人は職があれば二十五日くらい働きたいのです。ですから、それが働けないのは政治の責任である、政府の責任である。働けないために低賃金で生活が苦しい人は当然社会保障制度においては底上げが考えられてしかるべきだ。したがって、それが何日であろうと二十五日として計算をする——逆選択のおそれはない。そのような資格通算期間よりも、毎日食べる金が必要である。だから、十四日働いて二十五百分として計算してもらえるからなまけるということは絶対にあり得ない。二十五日働く機会があったら働く。働く機会がないのは政治の責任である。そういう政治の責任で、そういう保険料が少ない点については、政府がその責任を負ってそれを底上げするという考え方でやれば、しごく簡単にこれが厚生年金保険に適用できるわけだ。ただし、その問題として、ではたとえば、一月に何日以下ならこれはどうなるという問題があります。何日以下の問題は少なくともいまの、たとえば健康保険法において二カ月二十八日、すなわち一カ月十四日間、またもう一つ六カ月七十八日、一カ月十三日平均という問題、そういう問題を基準として、それ以上は国として見るというような方法を考えてもらわなければならないと思う。もう一つの考え方として、労働省の考えている中小企業退職金の問題で、期間通算の問題があります。その方法も一つの方法だろう思います。しかしながら、私の考え方では、いろいろな観点から、こっちはこの点欠点がある、あっちはこの点欠点があるという問題がありますが、厚生年金保険法の問題では、これは社会党の統一した考え方ではありませんが、不肖八木一男の考え方では、前段に申し上げた考え方のほうが一番より適しているというふうに考えているわけであります。そういう問題を申し上げておきますから、そういう問題を参考にされて、少なくとも半月か一月くらいにこういう方法でやろうというような事務局の原案をつくってもらいたい。さらにいいものにしていただくことはけっこうでありますが、そういう準備を即刻進めて厚生大臣を補佐をしていただく。厚生大臣はいみじくも言ったように、五人未満と同じように臨時国会にこの法案を出せば最もいいわけです。それに出すのに問に合うような決意で事務的な準備を進められる必要があろうと思います。それについての山本年金局長の決意のほどをひとつ聞かしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/26
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027・山本正淑
○山本(正)政府委員 八木先生に具体的な方法を教えていただきましてありがとうございました。
確かに、日雇い労働者につきましては、雇用の実態が違っておるということによりまして、これを各種の社会保険の厚生年金なりあるいは日雇い健康保険もございますが、健康保険というのに適用するといたしますれば、そういう特に雇用の実態に即した方法を考えなければならないという点は、私もさように考えるわけでございまして、従来の一般の労働者と同じような方法によって適用するということは不可能に近い。そうすると、いまも一案として御提案になりましたような便法といっては失礼でございますが、そういった形の方法を考えなければ適用困難であると考えております。そういった意味におきまして、従来の通用方式にこだわらないで、いまの御高説も参考にいたしまして、私どもとしても積極的に研究いたしたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/27
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028・八木一男
○八木(一)委員 もちろん山本さんですから、十分に理解されての上だろうと思うのですが、それは厚生年金保険法の中にきちっと入っているその日雇いの期間だけそういうような保険料を徴収せられて、それから標準報酬算定方法をとる。それが常用に変わって、一万二千五百円が一万五千円になれば、標準報酬が続くというふうになるわけです。それについてもう一回簡単に、そのとおりと考えていいかどうか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/28
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029・山本正淑
○山本(正)政府委員 八木先生の言われましたのは、そういった便法を講ずることによって、現在の標準報酬の各級別のいずれかに当てはめていって適用するという趣旨であることはわかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/29
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030・八木一男
○八木(一)委員 いまは五人未満の事業所と日雇い労働者の問題を申し上げました。これは労働者でありますから、ぜひとも厚生年金保険を早く適用しなければならないという問題で申し上げたわけであります。
次に、全部の国民との対比においてこの厚生年金保険法の問題を考えてみたいと思います。
この厚生年金保険法をいわゆる一万円年金、内容にはずいぶんインチキな点がありますけれども、とにかく非常に反動的な点と、それから前進すると見せかけているところでも非常に乏しい、インチキな点がありますけれども、それは別といたしまして、とにかくある程度の給付をふやすというような案をいま提出をしておられるわけです。それに対して、国民年金について同時に当然その給付の内容を改善すべき法律が提出をされなければならない。それをなぜおくらされたか、なぜ出されなかったか、それについて厚生大臣の御意見をひとつ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/30
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031・神田博
○神田国務大臣 厚生年金の改定と同時に国民年金の改定も行なうべきものじゃないか、なぜ一緒に出さぬか、こういう御趣旨であります。私どももこの両保険が二本立ての大事な保険でございますので、そういう考えもないではなかったわけでございますが、御承知のように国民年金の改定期がちょうど来年になっておるものでございますから——まず厚生年金の改定期にあたりましたので、これをひとつ先に改定して、そして来年また国民年金のほうをひとつお願いいたしたい、こういう自然の姿に沿ってお願いしている、こういうことでございます。来年は必ず御審議願いたい、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/31
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032・滝井義高
○滝井委員 関連。さいぜんの五人未満のところですが、できるだけ早くおやりになるということをるる御答弁されたわけです。そこで、さいぜん労働省の答弁は、今度の労災法改正では二年をこえざる範囲においてやると言う。したがって、当然労災も失業保険もそうなると思う。そうしますと、できるだけ早くやると言っておったって財政の事情その他があるんですが、労災はすでに法律で二年をこえざる範囲において五人未満をやりますとなっている。先般予算をつくるときに、これは共同の調査をおやりになったはずです。五人未満については、厚生省も労働省も健康保険や労災その他失業保険について、事務を共同でやるほうがいいだろうということで、共同調査をおやりになった。そこで、八木先生は直ちにやれ、こういう御主張ですが、これはやはりどこか歯どめをかけておかなければいかぬわけです。厚生年金についても健康保険についても、労災と同じように二年以上にならない、二年以内には必ず五人未満にも全社会保険を適用する、こう理解して差しつかえないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/32
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033・神田博
○神田国務大臣 私はそういう考え方で御答弁申し上げたのであります。ただ、八木先生からひとつなるたけ早くやれ、こういうふうにおっしゃいますから、できるだけそういうことにいたしたいということを申し上げておるのでございまして、これは池田内閣の予算査定の際にも実は私から申し上げまして、五人未満の厚生年金それから健康保険の問題はひとつ解決しなければならぬ問題ですよということを池田総理に申し上げた例もございます。総理からもそれは当然だ、ひとつ検討してください、自分も賛成だ、これは前から言っているのだというじきじきのお話もございました。ただ、おくれましたのは、例の健康保険の赤字問題がございまして、基盤をやはりきちんとしないといかぬじゃないか、そうしてやろう、こういうようなことで基盤のほうに先に手が回った。でございますから、いまお尋ねがございましたように、労災のほうが二年間でやるのに、そのときにこちらは残しておくということは、政府としては一体でございますから、そういう不合理なことはしたくない。最終としてもその辺での足並みをそろえるといいますか、頭をそろえるといいますか、そういうことにいたしたい、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/33
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034・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、できるだけ早くやりたい、こういうことです。しかし、これはわれわれとしても最低の歯どめはかけておかなければいかぬわけです。いま大臣の御答弁もありましたし、それから労災のほうはそういう条文があるわけですけれども、今回の厚生年金の改正案には五人未満のことは何も書いてない。そこで、われわれはいまの御答弁によってあとで与党とも話し合いまして、これに二年をこえざる範囲内において五人未満も適用する条文を入れたいと思う。これは異議ないわけですね、大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/34
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035・神田博
○神田国務大臣 これは皆さんのおやりになることでございますから、私のほうでとやかく申すべき筋でないと思います。予算関係の伴う問題といたしまして、財政当局に相談すればこれはまた別問題でございますが、そのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/35
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036・滝井義高
○滝井委員 大蔵省にお尋ねしますけれども、これはこういうことになると主計局長に来てもらわぬと、船後さんでは荷が重いかもしれぬが、二年をこえざる範囲において——二年をこえざる範囲においてというのは労働省のおはこなんですよ。港湾労働法も二年をこえざる範囲においてという点でわれわれはずいぶんやかましく言った。やはり二年をこえざる範囲でというのは労働省のおはこなんで、大蔵省もお認めになった、こういうことからきておるわけです。いま神田さんも、池田さんが総理のときに早くやれと総理じきじきおことばがかかっておる、そこで、これは当然できるだけ早くやりたい、こう言っておるのですから、私はこれは土俵をきめておかなければいかぬ、二年というワクだけははめておきたい、そうすれば、二年をこえることはないわけですから。そうすると、八木さんが言うように、次の通常国会にこういうことで出してもらえばさらによろしいわけです。しかし、それがまた大臣がかわったり何かしてぐずぐずして二年が三年になっては困るので、二年をこえざる範囲において労働省の得意とする場面を厚生年金にも入れて——労働省、厚生省一体になって足並みをそろえて前進をいたしたい、神田厚生大臣はそういうときにまさかわがほうだけが落ちこぼれるわけにまいりません、足並みをそろえますと言っているわけですから、厚生、労働両大臣の意見の一致を見たものを、しかも池田総理のお声がかりである、いまはやめておりますが、しかし前から続いておるのですから、これは大蔵省異議ないでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/36
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037・船後正道
○船後説明員 労災保険の今回の改正法案でございますが、労災保険は厚生年金保険と違いまして、事業の種別ごとに強制適用する、しないという問題が別にあるわけでございます。五人未満の事業所だけでは——いろいろの事業の種別によって適用範囲の相違がある。その他厚生年金と労災保険とは様子を異にするわけでございまして、なおまた労災保険におきましては、任意適用の拡大その他で種々従来から研究も積んでおりますし、その態勢もでき上がっておるわけでありますから、厚生年金のほうでこの問題をどうするか、これはいま御質問いただきましても、私即答いたしかねる問題ではございますけれども、方向といたしましては先ほどから申しておりますとおり、労災のみならず、厚年、失保にいたしましてもこういった方向ですみやかに強制適用の範囲を広げるべきだという考えを持っておるということを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/37
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038・滝井義高
○滝井委員 それは船俊さんちょっと勉強不足です。今度労災が年金化されたのです。私、実はここの質問はしてないので、しなければならぬ。そして、今度は厚生年金と労災とが連結することになった。だから無関係ではない。厚生年金が労災の分を五七・五肩がわりする、その面が出てきたわけです。いままでは局部的であったけれども、今度相当大きく肩がわりする面も出てきた。そこで、これはこれ以上答弁を求めませんけれども、そういう重要な関連があるので、私たちはいま大臣の御答弁もありましたし、あなたもすみやかにやるということについては意見が同じようなことですから、ひとつそこだけは歯どめをかけさせておいていただきたい。そうすると、八木さんへの答弁がもしだまかしたような場合でも、今度は法律はだまかせぬ。法治国家だから、八木一男君はだまかせても、法律はだまかせません。こういうワクになるわけですから、ぜひ承っておきたいと思います。これは労働省と厚生省と意見の一致を見た問題ですから。関連質問ですから、これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/38
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039・八木一男
○八木(一)委員 同僚滝井委員の関連質問で、問題がちょっと戻りましたけれども、厚生大臣がちょっと参議院の本会議に行っている間、さっきの厚生大臣の答弁に関して、山本局長にかわってひとつ質問をしたいと思います。
いま厚生大臣は再計算の時期のことを言ったけれども、いまあなたのほうの幹部の人に聞いたけれども、それは非常に間違っていると思うのです。五年ごとにと書いてある。五年ごとにだから、昭和四十一年だという解釈らしいけれども、それはそういう解釈があれば去年しなければならぬ。というのは、国民年金法が成立をしたのは昭和三十四年、拠出制の年金の発動したのは三十六年であることは知っている。知っているけれども三十四年のときに保険料なり、年金額を決定したわけだ。ですから、それから後の世の中の変動を考えれば、三十四年からの変動を考えなければならない。したがって三十九年はいわゆる厚生大臣がいまふわっとして言った再計算の時期にあたるわけです。それをなまけて二年間すらそうとしている。そういうことではいけないわけだ。しかもその法律の中には「少なくとも」と書いてあるだけであって、五年ごとでなきゃいかぬとは書いてない。一年ごとにやっても、二年ごとにやっても、三年ごとにやってもかまわない。それよりも短くすることを志向している。ですから、来年が厚生省の一方的な解釈で再計算の時期だとしても、これはその前にやることがより望ましいわけです。私の解釈によれば三十九年に再計算をしなければならない。ところで厚生年金保険という、労働者——被用者のほうのこの年金制度がこれだけの小幅とは言わない、中幅くらいの改正をしようとしておる。当然これと同時に、国民年金法の拠出制を含んだ改正案が提出をされなければならない。それについて年金局、厚生省は非常になまけておる。それについての反省と、それからどういう事情でそうなまけたか、この事情について伺わしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/39
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040・山本正淑
○山本(正)政府委員 国民年金法第四条第二項に「保険料の額は、」とありまして、飛びまして「少なくとも五年ごとに、この基準に従って再計算され、その結果に基いて所要の調整が加えられるべきものとする。」これを私どもはすなおに読んでおりまして、「保険料の額は、」ということでございますので、もちろん拠出制の年金、こういうふうに読むわけでございます。ただ、先生のおっしゃられたのは、拠出制の年金も三十四年に法律が通って方針がきまっているのだからそれを起算点とすべきではないかという御解釈のように思います。私どもは拠出制の年金が実施されました昭和三十六年を起点といたしまして考えるのが当然である。五年というのはさような解釈をいたしております。ただ、先生御指摘になりましたように、そうであっても「少なくとも」と書いてあるじゃないか、何も五年以内だって差しつかえないし、また熱意があるならそうすべきではないかというおしかりのように承ったわけでございます。私から申し上げるまでもなく、国民年金の被保険者の構成というものはこの数年間非常に変動をいたしておるというふうに理解いたしております。特に農村人口の老齢化現象と申しますか、そういった諸要素につきまして非常に変動の激しい時期である、かように理解いたしておりまして、その意味におきましてもこの拠出年金の数理計算というものが非常に困難である。これは実態をつかむのが困難という意味じゃなしに、将来の見通しを立てることが非常に困難であるというふうに考えているのでございます。もとより国民年金でありましても、厚生年金でありましても、老後の生活保障という観点に立ってものを考えなければならぬわけでございます。厚生年金の改正を中改正とおっしゃられましたが、私どもは大改正と思っておりますけれども、その改正につきましても相当な期日を要しまして、なかなか意見の一致を見ない点がございまして、この法案を提出いたしまして国会の御審議をわずらわすといたしましても、各種の御意見が出ていろいろむずかしい問題がある、そういった意味も含めまして、その結果に基づいて厚生年金が通過したということに基づいて国民年金を考えるというのが手順として適当だと考えたわけでございます。なまけたというおしかりをこうむりますればおしかりに従いますが、そういった事情もお察し願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/40
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041・八木一男
○八木(一)委員 厚生年金法でいろんな意見があって、何とかというのは、後に当然一番中心の事項として追及しますけれども、調整年金といりようなとんでもないまざりものをほうり込んだということがそういうことになっているわけです。年金の額だとか保険料くらいだったらもっと簡単に済んでいるわけです。そういうようなことをやるからこういうことになった。そういうことはとんでもないことです。
それから、いま言った法律の解釈は、厚生省は一方的解釈をしておられるけれども、これは昭和三十六年の保険料徴収時期からというようなことは一つも書いてないのです。どこにも書いてない。こういうふうに改定さるべきものとするというのは、世の中の生活水準とか物価とかそういうものが変われば変えなければならないということです。そういうものはごくあいまいもことした程度の低いスライド規定に準ずるようなものです。そういうような関連の条項です。そういうことで、とにかく年金額や保険額のきまったのは昭和三十四年です。それを三十六年を想定してきまったなどということはおっしゃらないほうがよろしい。というのは、あの社会保障制度審議会の年金の勧告、あれは社会保障制度審議会の勧告としては一番できの悪い勧告である。できの悪い勧告ではあるけれども、しかしその勧告がいい悪いは別として、そこで算定された三千五百円というのは、そのときの生活保護水準の二千円という問題とも関連があった。文章をお読みになればわかる。政府のほうでも検討されたときに、その関連毛検討されているわけです。ですから、あの年金額は、一番ぎりぎりでも昭和三十四年、ほんとうは三十三年の基準できめられたものなんです。五年ごとに改定されなければならない精神に従えば、昭和三十八年に大改正が行なわれなければならない。形式的にいえば三十九年に行なわれなければならない。それをそんなかっては解釈をして、しんどいから来年でよかろうなんていうことでつじつまをつけるようなことは、三十六年に保険料をやったから、五年目は四十一年だ、そういうことではいけない。年金局長は大蔵からもっと予算をたくさんとって、陣容を倍にして、主計局からどんどん出すよりにしなければいけないという事情もあろうけれども、それは別として、いまはいまで任務があったら、そういう任務にほんとうの意味で熱心に当たるということであれば、三十九年に出さなければならない、三十八年は前の局長ですから。もっとしっかりがんばっていただかなければいかぬ。そこで、少なくともそういうことになったら、私の解釈では——これは絶体に正しいのですが、三十九年に出さなければいけないのが一年なまけていた。厚生省の解釈は間違っているけれども、その立場に立っても、少なくともこういう条項があるから四十一年でなければいけないという理由は一つもない。三十八年でも三十九年でもいいわけです。それのほうが熱心だということになる。しかも、厚生年金という被用者年金の中程度の改正があったときに、国民年金のほうは小改正もしなかった。福祉年金の改正が出ていることは知っていますか。これは専門家だからおわかりだろうが、いま言ったことの対象は拠出年金のほうである。これに関した改正案は出していない。それでほったらかしておる、そういうことではいけないと思うのです。そういう点では非常は怠慢だと思うのです。それについてお認めになりますか。
〔井村委員長代理退席、小沢(辰)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/41
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042・山本正淑
○山本(正)政府委員 国民年金の改正もまた容易でないということは私も予想いたしておるのでございまして、その意味におきまして、これは言いわけをするわけではありませんけれども、国民年金審議会は昨年の春以来、厚生年金法の改正については非常にむずかしい要素が出るので、どういう角度からものを考えていくかということで御相談をして、意見を出しているところでございますが、それは別といたしまして、ただ先生の御見解では、もっと早く改正をやるべきであるということで怠慢を責められたわけでございますが、確かに法律をどう解釈いたしましょうとも、準備が整い、可能であるならばできるだけ早くやるというのは何も差しつかえないし——差しつかえないじゃなしに、やるべきであるという点は十分検討して今後やってまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/42
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043・八木一男
○八木(一)委員 国民年金審議会の話が出ましたけれども、もっと法制的にしっかりした基盤に立っている社会保障制度審議会のほうを忘れてしまっては困る。社会保障制度審議会もたまにじょうずでない答申を出すことがございますが、それは年金勧告だけです。あとは九十点くらいです。あれは私の観点からいうと六十点くらいです。ところがそのあと総合調査の勧告のときに国民年金の金額のことにも触れている。この勧告を出したのは三年くらい前です。さらに程度の高いところで出しているのですから、国民年金審議会というようなことをおっしゃらないでもらいたい。これは社会保障制度審議会の勧告に従っていない。この点について不十分であったということを率直に認められなければならない。そういう点をひとつ進めていただきたいと思います。これは年金局長がどんどん進められるとともに、厚生大臣をその気にならせなければいけない。神田さんに十分理解していただくよりに、教育と言っては失礼ですけれども、あまり神田さんは御存じないと思うので、十分教え込み、研究してもらわなければならぬと思う。後に厚生大臣はかわると思いますけれども、かわってきた厚生大臣も、大臣になって選挙区に錦を飾るといりようなことを考えないで、年金のことについて朝から晩まで耳がたこになるほど教えてもらわなければ困ると思う。それでないと、大体大臣が一年でやめると半分くらいわかったときにやめてしまうことになって、大臣は社会保障について一つも推進力にならない。ですから一年でやめるとすれば、なったとたんから年金の問題も健康保険の問題も猛烈に講義をして、頭に入れてもらわなければならないというようなことも十分理解して、これは小山君にも薬務局長にもよく言って、新しい大臣はすべてその日から猛烈に勉強をする。故郷などに帰らない。そしてその問題を責任を果たすまで推進してやっていくようにお願いしたいと思います。それについてお考えを伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/43
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044・山本正淑
○山本(正)政府委員 御趣旨の点は十分考えてまいりたいと思います。
〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/44
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045・八木一男
○八木(一)委員 本格的な問題に入る前に、大臣が来ないからちょっとほかのことを伺います。
きのう社会党の厚生年金保険改正案の提案理由の説明をしたわけでありますが、厚生大臣に聞いていただきたいと思ったけれども、医療費の問題で予算委員会へ出られて、そばにおられないので残念でしたけれども、それについて大臣は十分読んでおられるかどうか。年金局長、御存じだったら教えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/45
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046・山本正淑
○山本(正)政府委員 大臣も非常に御多忙の身でございまして、昨日の提案理由につきましてまだ大臣にその趣旨を説明する機会を得ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/46
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047・八木一男
○八木(一)委員 そういうことを説明する任務は、官房長ですか、年金局長ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/47
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048・山本正淑
○山本(正)政府委員 私でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/48
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049・八木一男
○八木(一)委員 いけませんね、それは。特にこの提案理由などはしろうとが見てもわかるようにちゃんと書いてあるのです。政治家であればこれを読んで十分くらい考えれば、いかにいい法律であるか、これは政府案よりいいから政府案を撤回しようかという気持ちになるようにわかりよく書いてある。そういうようなことはすぐ大臣に連絡していただかなければいかぬと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/49
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050・山本正淑
○山本(正)政府委員 昨日の八木先生の提案理由を大臣に説明する機会を得ておりませんが、先般社会党の法案が提出されましたので、法案の趣旨は御説明を申し上げてあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/50
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051・八木一男
○八木(一)委員 大臣は十分理解したようですかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/51
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052・山本正淑
○山本(正)政府委員 理解されたかどうか、私どもと違いまして非常に御理解の早い方だから、理解されていると思いますけれども、お忘れになっているかどうかは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/52
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053・八木一男
○八木(一)委員 年金局長もっと十分に説明してもらわなければいけないと思うのです。というのは、昨日大臣に厚生年金保険の問題で、現行法はいろいろ欠陥が多い、その問題について、重要な諸点についてどうお考えになりますかと大臣にわざと言ったわけです。そうしたら、大臣はちょっと年金局長に聞いて、まず年金額のことを言った。そのほかに何かありませんかと言ったら、山本局長が耳打ちをして、五人未満という話をした。その次に何かありませんかと言ったら、耳打ちをして、日雇い労働者を言った。まだたくさんあるわけです。これを一回読んでいれば、また御説明があれば、これは天下の定説であると思うけれども、少なくとも社会党の考えておる重要問題はこういうところにあるというくらいの筋は五、六件は頭に入っていなければいけない。それが大臣自体から出てこない。非常にこれは理解の程度が少ないと思う。神田さんがいないところで勤務評定をしては気の毒ですから、神田さんが来てから理解しているか聞きますが、多分十分に理解しておられないのじゃないか。それは理解させる努力をもっと熱心にしていただかなければならない。今後も、神田さんだけに限りません、すべての人に野党のりっぱな案について理解をしてもらう、それでほんとうに大臣が勇敢なら、野党の案のほうが、われわれが考えている政府案の草稿よりもいい、野党の案と同じものを、社会党に断わって拝借をして、政府案として出そうじゃないかというような大臣があらわれるように、ひとつ教育をしていただかなければならない。それについてひとつ熱心な努力をされるかどうか。それから後任者——年金局長がまたほかの局長にかわったときにも、後任者にもなお申し送りし、熱心にやっていただけるかどうか。それを伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/53
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054・山本正淑
○山本(正)政府委員 もとよりこの厚生年金の案に限りませず、やはり国会でかような大きな問題として——かりに法律案というものが出ないにいたしましても、そういうような重要な事項につきましては、やはりその考え方を大臣に御説明申し上げ、かつ、政府、厚生省といたしまして考えておるところの違いを、そしてまた、将来の展望といったようなものにつきましては十分に御説明申し上げるべき筋であろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/54
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055・八木一男
○八木(一)委員 それでは本題に移ります。大臣がおられないのは残念ですが、それはあとで…。
年金制度の中で、大臣と違って年金局長は専門家ですから、そういう試験まがいのことはいたしません。その年金の問題、あるいはこの厚生年金保険だけにとどまらず、いわゆる長期の所得保障の問題で一番相対的に重要な問題というのはスライドの問題であろうと思います。それについて年金局長も同感であろうかと思うけれども、ひとつ伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/55
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056・山本正淑
○山本(正)政府委員 年金制度というものは、申し上げるまでもなく、老齢年金を中心としたものでございまして、しかも、一般的には職場から離れた老後の生活保障のいわば唯一のささえでございますので、年金につきましてその実質価値を維持するということは一番大事な問題である、年金額と同時にその実質価値を維持するということは大事なことである、かように確信いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/56
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057・八木一男
○八木(一)委員 それは前任者の小山君が年金局長のときに、政府の国民年金法案の特に拠出制の部分の施行があったという場合に、いわゆる国民年金反対運動というのが世の中で展開されました。また、大幅修正されるまでの凍結運動という、実施延期運動というようなものが行なわれました。その中にはいろいろなもの、りっぱな主張もあり、あるいはごくわずかの誤解もあったようであります。しかしその根底に流れるものとしては、戦争中戦後を通じて国民が、こういうような年金制度じゃなくてもいろいろな点で貯金をし、あるいはとにかく金銭類似の財産を持っておったものが、これが非常に猛烈なインフレによって実質価値が低下をした、老後に備えてあるいは病気のときに備えて準備をしていたこのような財産が無に化した。だから、そういう長期間の先のことについては一切信用ができないというようなことが、この年金に対する批判運動の根底の一つの大きな流れであった。その流れであることを厚生省や年金局はしみじみ感じられたと思う。国民年金拠出年金制度は不完全きわまるものであります。その後幾分の修正があって欠点が少し直った点もあります。不完全きわまるものであったけれども、厚生省としては年金局としては、ないものを発足させるためにある程度善意で一生懸命にやったという自覚を持っておられると思う。ある程度善意で一生懸命やったにかかわらず、国民がなかなか理解してくれない、その根底はこのインフレ問題である、スライド問題にあるということは、しみじみ感じられたと思う。それにもかかわらず、このスライド問題について、厚生省関係の問題あるいは内閣全体の関係の問題について積極的な前進が見られないということは、非常に残念なことであります。またこの中心である厚生省のあるいは年金局のこの問題の進め方が非常に鈍いことはあなた方の責任であろうと思う。それについてどのように考えておられるか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/57
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058・山本正淑
○山本(正)政府委員 年金額の実質価値を維持するというのは一番大事な問題でございまして、今回の改正に際しましてもいろいろの議論があったわけでございますが、一応昭和二十九年の現行の厚生年金の体系ができましてから以降における物価の推移ということによります実質価値というものは、当然維持する意味における引き上げをする、これは当然のことでありまして、単に昭和二十九年からの物価の推移ということによる実質価値のみならず、さらに他の要素、賃金水準、生活水準というものも考えまして、今回の一万円年金ということを構想したわけでございまして、しかもこれはもちろん既裁定の年金にもさかのぼるという方法を講じまして、この実質価値の維持が今回の改正におきましては実現している、かように確信する次第でございます。ただ、将来の問題としてそれじゃどうするかという問題があるわけでございますが、この問題につきましては制度審議会の三十七年の勧告にも一番重点を置かれて述べられておるところでございまして、特にインフレ懸念あるいはインフレに対する措置といたしまして、スライド制ということを非常に格調高く述べられているわけでございます。その関連におきましても、実質価値の維持というものをどういう方法でやるかということにつきましては、大ざっぱにいって二つの方法が考えられるじゃないか。一つは何らかの指標に従って自動的にスライドしていくという方法がございます。それからまた必要なつど政策的に実質価値を維持する方途を講じていくという、こういう二つの方途が大ざっぱに考えられるわけでございます。そのいずれをとるかという問題、これはいずれが適当であるかという問題ともからむわけでございますが、今回の改正に際しましては、この改正の時点におきましては、過去の分についても含めて実質価値を維持する措置を講じまして、今後の問題といたしましては、このいわゆるスライド問題については各種の制度を通じての問題でもあるし、かつまたそのスライドに伴う原資負担といったものについても明確な方針というものを確立する必要もあるということからいたしまして、いわゆる自動スライドといったような規定は設けないで実質価値を維持するということの姿勢を明らかにして、これは将来の問題として残したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/58
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059・八木一男
○八木(一)委員 いま年金局長が今度の法案の内容でスライドの、実質的な点について考えた点はわかります。十分ではないけれどもある程度わかります。だけれども、根本的にスライドというものをはっきりさして、国民にこのような所得保障制度について非常な信頼を集めるというような点については少しも前進がない。いままで厚生年金保険法にはスライドの規定がなかった。今度の改正案ではつくった。前進だと言われるかもしれないけれども、先回りしてそんな答弁をする必要はない。そんな条文は三十四年の国民年金法にできた条文と同じです。あの国民年金法の三十四年の討議において、このようなものじゃだめだ、もっとはっきり書けということが十分討議をされておるわけです。それが六年たって同じような古証文みたいなものを書いて、そしてスライドについて一生懸命考えておるというようなことは、いただけないと思う。それについて山本さんのひとつ御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/59
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060・山本正淑
○山本(正)政府委員 先ほど申し上げましたように、実質価値を維持する姿勢を明らかにしたということでございまして、決してあれでスライド規定であるというふうに考えておりません。先ほど申しましたように、スライドの問題につきましては各制度間の問題でもありますし、かつまた追加費用という大きな問題がございますけれども、そういったものを含めましてやはり明確に議論をして、そうしていわゆる自動スライドというものがいいのか、自動スライドということになりますと、どうしても外国の例にもございますが、おおむね物価というものが基準にとられるわけでございますが、現在の日本の変動期におきましてそういった物価のスライドということがいいのか、あるいはもっと政策的にある時点までは政策的にその他の要素も含めながら必要のつどベースアップしていくほうがいいのかといった問題も含めまして、将来の問題としてこのスライドをどうするかということを考えたい、こういうことを御答弁申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/60
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061・八木一男
○八木(一)委員 少しぼやっとして、前向きな点はありますけれどもあいまいな御答弁です。一つの要素の問題、物価だけでいいかどうかという問題は大事な問題ですから、またあとで十分詰めます。物価だけではいけません。あなたの御答弁のように当分の間なんというものはほんとうの御答弁じゃない。物価と国民的な配分を両方を考えなければならない。それは恒久的に考えなければならない。当分の間なんということは許されないのだから、そういう問題についてあとの厚生大臣に知ってもらわなければならないから、厚生大臣の前であなたと論戦をいたしますけれでも、その根本的な内容の問題はひとつ楽しみに置いておいて、これからあとに出しますが、大体いまの国民年金法のときのスライド規定、あれはいままで条文としてはとにかく初めて出てきた規定です。それでわれわれはこんな不十分なものではだめだと言ったけれども、厚生省は、とにかくここで画期的にこういうものを出したと、あのときは自画自賛された。ところがその自画自賛をされた国民年金法でスライド制の規定が一つも動いていない。五年ごとの再計算ということも、そんなものは再計算というものはスライド制というものと関連はありますけれどもぴたっと一致した概念ではありません。そういうことはやる気であればできる。それには「著しい」という実にけしからぬ文言が入っている。「著しい」という文言によって、この「著しい」というものをかってに行政解釈でやるから、それがある点において非常に変動があっても、まだ著しくないと言えばほっておくことができる。そんなものじゃだめです。ほんとうに何%の移動があった場合にどうするかということをはっきりしなければスライド規定とは言えないわけですが、それを四年前には年金の点についてみんなぼやぼやしておって、初めて「著しい」が出てきたから、入れただけまだましだ。五十一点くらいだった。それは将来政府の努力によって八十点くらいのものが出てくると思った。ところが六年たっても五十一点のものを出している。そういうようなことでは前進がない。少なくともそこに率をちゃんと定めたものを書くというような姿勢がなければならないと思う。それについて、そのような企画をされたのか。されたけれどもどこかで横やりが入ってだめになったか。全然される気がなかったのか。そういう経過をひとつ明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/61
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062・山本正淑
○山本(正)政府委員 おっしゃるようにいわゆるスライド制あるいはスライド制の規定といいますのは、現在国民年金法に書いてあるそれをスライド制の規定というふうに言うのは、厳格にはむずかしいと思います。それはそういった実質価値を維持する改正といいますかプリンシプルだ、かように私は理解いたしておるものでございます。その点は八木先生と同じじゃないかと思います。そこで、スライド制と先ほど来申しますように、自動スライドということになりますと、何かの指標をとりましてその指標が一定の率で変動した場合にはその率だけ年金額がふえる、こういうのが自動スライドと言われておるわけでございます。それからまた、そういった諸指標の変動というものを政策的に実施していくという慣例をつくることによりまして、別に法律上規定しなくともそういう慣例をつくることによって政策的に実施していくという方法も、これはスライドと呼んでいいのじゃないかと思います。イギリスあたりはそういう慣例になっていて、そういう方式で実施しておると私は理解をいたしておりますが、そういう意味におきましてスライド制をどういうふうな方法で考えるかということにつきまして、今回の厚生年金の改正に際しましては、私どもといたしましてもいろいろの角度から案をつくってみまして、実は事務当局案として一つの案は考えたわけでございます。それはいま申し上げますが、厚生年金はたまたま定額部分と報酬比例部分と組み合わせになっておる。そうして賃金の上昇というものは何がし報酬比例には反映するのだ、定額部分には反映しないということで、さしあたり定額部分をつかまえて定額部分につきまして物価を基準にしたスライド、自動スライド、一定の変動がありますれば厚生大臣が告示をしてスライドしていくという自動スライド制を考えてみてはということも案として一つ持ったわけでございますが、しからば現段階においてとにかく厚生年金を引き上げ、既裁定のものに及ぼすという今回は措置を講ずるのだから、スライド問題というものは厚生年金だけの問題でなしに非常に大きな問題であるから、その根本的な解決は将来に譲って十分検討いたしたい、かようなことに相なった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/62
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063・八木一男
○八木(一)委員 自動スライド、政策スライドということばは内容は理解できますから、一応かりにそういうことばを使っていきますが、スライドはあくまでも自動スライドでなければ、これはいけないと思うのです。でないと、政策スライドでは政策担当者の熱意不熱意によってほんとうに被保険者の権利が実際上に侵害されることになります。ことに現在の政権を担当しておる方々は熱心にやっていられる点もあるけれども、国民全体からいえば物価の問題や何かでは非常に不満を買っておられる。しかしそれについて十分に不満を解消するだけのことをやっておられないというようなことになると、もう政策スライドについては非常に疑問であります。ことに厚生省の行政については、またほかの問題に厚生大臣が徹底的に国民の怨嗟の的になっておる、追及の的になっておる、そういう人が、残念ながらいま厚生大臣になるような時代でありますから、そんな政策スライドなんというものは非常に不安定なものであります。これはどうしても自動スライドでなければいけない。厚生省の事務当局がもし行政政策をりっぱに行なわれるとしても、自動スライドであってならないということは一つもないわけであります。ですから、これはあらゆる意味で自動スライドという考え方で進めていくことが正しい。それについて、原案はそうであっても、いまの純粋な気持ちでそれのほうがいいと思われるであろうと思いまするが、それについての山本局長の率直な御答弁をいただきたい。いまの研究の経緯などどうでもいい。それに固執をしないで、いまの情勢の過程において自動スライドのほうが正しいという考え方をぜひ披瀝をしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/63
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064・山本正淑
○山本(正)政府委員 年金が定額部分一本でございますれば、まさに先生のおっしゃるとおりだと私は思います。ただ、厚生年金のように、あるいはまた共済制度におきましては、最終賃金の幾らというふうになっておりますので、これはまあ厳格な意味においては、既裁定年金だけを考えていいわけでございまして、既裁定年金のスライドという意味におきましては、やはり自動スライド的なスライドというものが、適当な方法があるならば、それがいいのじゃないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/64
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065・八木一男
○八木(一)委員 おっしゃることはわからないわけではありません。既裁定年金、それから定額分については、少なくとも自動スライドがいいという考え、標準報酬比例部分については別の要素があるということは私もわかります。賃金ベースアップによって標準報酬の段階があるということもわかっているけれども、しかし、いまの貸金の上昇というものは、当然上昇すべきものが上昇しておらない。物価の値上がりにも及ばないという点がある。それからまた、その中に格差があるという問題がある。でありまするから、標準報酬比例部分についても、当然に定額分と、要素について別に研究することは絶対にいかぬとは言わないけれども、そういう要素を考えていく必要があろう。それで、よく政府側の言うような、技術的に、事務的に一括のほうがいいという考え方であれば、これは標準報酬比例部分を同時に自動スライドにしても、その点は当然必要で、いいのではないかというふうに考えるわけです。しかし、そのほかの要素があって、これこれで標準報酬比例部分についても、賃金ベースアップによってカバーされない部分については、これこれの方法があって、的確にこれについてこういう方法でスライドができますという結論をお出しになるのであれば、これはまた伺ってみてもいいと思いまするが、それがないならば、ベースアップがあるからこの部分は自動スライドがなくてもいいという議論には賛意を表するわけにはいかない。それが、そういう技術的な方法ができないならば、同時にこれは自動スライドになるというふうに思うわけです。それについてそのような方向で努力をされなければならない。自動スライドが両方ともに行なわれるような方法で努力をされなければならぬというふうに思う。それについてのひとつ前向きの御答弁を伺いたい。うしろ向きの答弁なら、答弁は要らぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/65
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066・山本正淑
○山本(正)政府委員 スライド制を考える姿勢といたしましては、そういった方向で考えていくべきだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/66
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067・八木一男
○八木(一)委員 それでは、スライドの二要素、物価及び国民的な配分の問題についての重大な論争が残っていますけれども、労働大臣が来られたし、厚生大臣はまだ来られないので、この問題は一時お預けにして、労働大臣のほうにお尋ねいたします。
労働大臣にひとつ御質問申し上げます。いままで厚生年金保険法の問題について、滝井委員が質問条項の五分の一ほどをやりましたし、私が十分の一ほどやったわけでございますが、労働大臣は今度初めて御出席になった。厚生年金保険を管掌されているのは厚生省でございますが、その厚生年金保険の関係者は労働者、その点について労働大臣は厚生大臣とともに最も熱心にこの問題を考え、よい方向にいくように推進されなければならないので、それについての総括的な労働大臣の決意のほどを聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/67
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068・石田博英
○石田国務大臣 厚生年金の加入者は仰せのとおり勤労者でありまして、私どもの所管するところであります。したがって、厚生年金の運営は、その勤労者の老後の生活の保障という意味において、私ども非常に深い関心を有するところであります。したがって、厚生年金の運営あるいはそれに関連する政令、規則、その他の施行については、両者緊密な連絡をとって行なうという了解のもとにやっておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/68
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069・八木一男
○八木(一)委員 実は厚生年金全体の問題について全部労働大臣に関係があります。それについて、さらに、きょうは二十五分しかないそうですから、私ももちろんですが、各委員徹底的に労働大臣の見解をただされるであろうと思う。それについて、きょうはだめだとか、きょうは都合が悪いとかいうようなことのないように、今後ずっと心準備をしておいていただきたいと思います。
そこで、きょう論議をされた問題について労働大臣に伺っておきたいと思いますが、厚生年金保険法の改正案についての審議で、五人未満の事業所の労働者が適用されておらない、日雇い労働者が適用されておらないという問題が、昨日の午後から本日にかけて大いに論議をされているわけであります。その問題について労働大臣はどのように考えておられるか、これは厚生年金保険の問題として、一般的な問題として御答弁を願いたいと思います。労働省の関係の失業保険あるいは労災保険との関係の問題はまた後日、または関連で滝井さんからお聞きになりますから、一般的な問題としてお答え願いたい。
〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/69
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070・石田博英
○石田国務大臣 一般的には、できるだけ早くすべての人々がこの適用を受けるようにすべきものだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/70
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071・八木一男
○八木(一)委員 五人未満の事業所の労働者あるいは日雇い労働者というのは、労働大臣も十分御理解のとおり、いろいろな社会保障の必要な度の一番多い人たちです。この人たちが取り残されているという問題は、日本の社会保障の一番欠点であって、恥であります。ところが、その問題については、今まで厚生省、労働省が関係が深かったわけでございますが、捕捉が困難である、あるいは技術的に困難であるというようなことから、じんぜん日を送られているわけであります。そういう問題については、関係各法案がこの十数年闘いろいろ出されたときに、必ず各法案のあとで附帯決議が衆参両院でつけられておる。また各種の審議会においても、この意見が積極的に出されておるわけです。それが非常に長い間放置をされている問題について、現内閣の閣僚として、また少し飛び飛びになりましたけれども、何回も閣僚になられた石田さんとしては、それを実現する御努力がまだ十分でなかったというふうに思います。労働省自体についても十分でない点がありますが、厚生省の問題についても、国務大臣として、労働者に重要な関係のある問題については積極的に推進されてしかるべきでございましたのに、まだその成果が明らかに出ていない点について、労働大臣は責任をどのように考えておられるか、伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/71
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072・石田博英
○石田国務大臣 私は、勤労者諸君の老後の保障というものは、ヨーロッパ等で行なわれておりますように、あらゆる企業、あらゆる産業、あらゆる地域を通じまして、その職域の移動と関係なく、一定年限働いた人に対してはその老後を共通の条件のもとに保障するという制度の確立が望ましいものだと思っております。現在のところわが国の社会保険制度というものは主として労働、厚生両省に行政上分かれております。しかし両省の緊密な連絡をとることによりまして、この問題の理想的な目標に近づけるように努力をしてまいりたい。所管の問題もあり、それからいろいろ困難な問題があってなかなか思うような速度を持ち得ないことは残念でございますが、今後も努力していきたいと思っております。労働省所管の失業保険、労災保険については、今度の労災保険法の改正にも二年以内において五人未満のところにも適用できるように法文の中にも書いて、その決意のほどを表明いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/72
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073・八木一男
○八木(一)委員 先ほどこの問題について厚生大臣及び関係の政府委員に私も質問いたしましたし、同僚の滝井委員から関連質問があったわけであります。そこで結論がついたことは、労働省関係の少なくとも二年以内ということは、これはもう絶対に各種のこういう社会保障制度にやらなければならぬ。いまの法案で二年以内でありますから、来年出る法案には必ず一年以内ということにならなければならない。それは最低であるけれども、厚生大臣はさらに積極的な姿勢を示して、五人未満の事業所に対しては、今度の臨時国会においてそれを適用させるだけの法律にするための最善の努力をするという決意の表明をされました。それを推進しなければならない責任を私は追及をいたしました。もしそれができない場合には、厚生大臣の努力が足りないのだ、足りなければ直ちにあなたは辞職をなさい、もし一生懸命努力をしたけれども、大蔵大臣が抵抗してこれをしない、総理大臣が無理解でこれをしない、その問題について数日中に明らかにしてもらいたいということを申し上げました。そういう点で私は厚生大臣の努力を期待して、数日中に政府全体としての、この問題をいつから実行する、そのためにいつ法案を出すというはっきりとした御答弁をいただくお約束を厚生大臣といたしました。もしそれがお約束できなければ、この責任は那辺にあるか、大蔵大臣にあるか総理大臣にあるかはっきりしていただいて、このような無理解な態度をもし総理大臣や大蔵大臣が示すならば、国民のための社会保障を前進させるために、当人に対して徹底的な追及を行なわなければならない、責任の所在を明らかにしてもらいたいということを申し上げ、お約束をいただいたわけであります。その問題について厚生大臣は決意を持って当たられると思いますけれども、同様に責任のある労働大臣としてそのような努力をされるかどうか。さらにまたその責任が那辺にあるということを労働大臣からも明らかにしていただきたいと思います。それについての御答弁をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/73
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074・石田博英
○石田国務大臣 厚生大臣の御答弁、私は自分で聞いておったわけではございませんが、できるだけ早くその実現をはかろうということはけっこうであると存じます。むろんそういう方向については、私は同僚としてあるいは勤労者をお預りしておる者として努力をいたします。ただ直接の所管の大臣が隣におられるのでありますから、隣のほうへひとつバトンを渡したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/74
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075・小沢辰男
○小沢(辰)委員長代理 十二時半に休憩に入りますから、そのつもりで御質問願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/75
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076・滝井義高
○滝井委員 関連して。石田さんは他人事のように言われるけれども、あなたのほうにもこの厚生年金というのは重大な関係があるわけです。それは第一点は、あなたのほうが二年をこえざる範囲内において五人未満にも適用するということを労災で規定をしたわけです。そしてその労災法は、障害年金については今度厚生年金と連結をされたわけです。その連結のしかたがきわめて不均衡なんですね。実はこの労災の傷病給付のやり方というのは六つあるわけです。これはAが第一種の障害補償費、Bが第三種の障害補償費、Cが傷病給付、Dが第一種の障害給付、Eが第二種の障害給付、これだけあるわけです。そしてそれらのものはみんな厚生年金に関係があるわけです。ところがこれか三十五年の労災法の改正で、附則の十五条の第一項で、当分の間は厚生年金の障害年金と連結をしてやるのは第一種の障害補償費と傷病給付と第一種の障害給付、この三つだけして、他の三つについてはしておらぬわけです。五七・五をその三つについては減ずることにした。他のものについてはしていない。そうすると今度は、厚生年金の側からはどういう形をとったかというと、いまのAに当たる第一種の障害補償費とDに当たる第一種障害給付については、厚生年金の側から規定を書いたわけです。他のものは書いてない。そして労災の側はいまのA、C、Dについて規定を書いているわけです。全部不均衡です。だからこれは非常にわかりにくい。この障害年金について、お互いに年金をやるのだから、全部についてやはり工作をする形をつくってもらわなければならない。犬の頭が東に向いて尾が西を向いているというような形では困るのです。しかもあなたのほうは、二年をこえざる範囲において五人未満にもやりますといっておる。和田さんのほうは、その法律にはこれは書いていないのです。五人未満については何にもいうてないのです。そして去年から事務については、これは合同の調査をやって事務的にも一貫したものにしなければならないといって、意思統一をして予算を取ったはずなんです。あなたのほうは書いておるから、いま神田さんに言ったら、私のほうもできるだけ早くやりたい。それでは法律に書いたらどうだ。これはどうも一財政当局の関係もありますからと言ったのだが、まあまあ無理に押し込んで、とにかく早目にやるということになった。ところがうしろにおられる船後大蔵省主計官は、これはすみやかにやるということでどうもこの条文に書くことは……、こうなんです。労働大臣のほうは、重要な障害年金の分が関係あるにもかかわらず、二年以内にやると書いておる。片方は書いてない。こういう内閣の社会保障立法に対する不統一では困るのです。五人未満の労働者というものは、労働省では恩典を受けるけれども、社会保障の本家本元の本尊では恩典を受けぬということではおかしいと思うのです。だからこれは労働大臣が、それはわしの所管じゃない、神田さんのほうだ、こうおっしゃられてもしかたかないことなんです。神田さんのほうが手落ちをしておるから。ところが実際は、これは手落ちをしてはいけない。今度同じく審議する労災保険というものが年金化されてきておるわけですから、あなたのほうの五七・五というものとの関連においてこれは密接に結びついたのです。胴体が続いたのですよ。頭が東に向いて尾が西に向いておったって、胴体か両者連結される関係ができてきておるのですから、もう少しそこらは意思統一をしてもらいたい。私は障害年金のことは、私の質問の番がなくなったから、厚生省の年金では言えぬから、労災でもう一ぺん詳しくやりますけれども、密接に関連があるのです。そしてどちらもそれについては、法律を出しておきながら、不均衡のままでほおかぶりをしていこうとしておるわけです。だからこの点は、石田さん、話し合って、神田さんのほうにも、おまえのほうもひとつ五人未満もすみやかにやってくれ。そんな唇歯輔車の関係にあるものが、片っ方は進んで、片っ方はいかぬというようなことは困る。これは五年に一回の法律だから、このときに五人未満もやっておかなければ話にならぬわけです。だから、私はいま修正をこれにつけてもよろしいかと言うけれども、神田さんはイエスとは言い切らない。こういうときこそイエスマンになってもらわなければならぬ。これは石田さんのほうからまずハッパをかけてもらって、両者が握手をして大蔵大臣に言って、やはり足並みをそろえてやってもらわなければいかぬですよ。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/76
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077・石田博英
○石田国務大臣 これは五人未満のところまで適用することになりますと、その対象物を捕捉するという問題、それから保険料の徴収事務、支払い事務、そういうものは、たとえば厚生年金にいたしましても、私どもの失業保険にしても、労災保険にしても、対象物は同じなんです。ですから、これをまず合理的にやるためには——同じような仕事について、二つの官庁で別々に保険料を取りに行くというようなことはほんとうをいえばむだな話でありまして、私のほうではなるべく一緒にやりたいと思って厚生省のほうへ働きかけをしております。しかし、まず隗より始めよで、労働省のほうとしては労災保険と失業保険とはこれから一本にやります、そして二年未満にその目標を造成するということは、法律に書いて決意を明らかにしたところであります。厚生省のほうにおかれても同じところを相手にしておることでありますから、これから話し合いをいたしまして、いままでもしておりますが、歩調を合わせるほうが料金を取りやすいし、一人の人間が行けばいいことです。両方で行く必要はないことなんでございますから、そういう点も合理化を進めていくべきものだと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/77
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078・神田博
○神田国務大臣 滝井さんのお尋ね、先ほどもお答え申し上げましたとおり、いま労働大臣からもお答えがあったわけでございますが、私も歩調を合わせてやる、こういう基本的考えを明らかにいたしておりますから、そういうような詰め方を今後やっていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/78
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079・八木一男
○八木(一)委員 労働大臣と厚生大臣、いま滝井さんとの応答の中でよく理解していただきたいのは、取りに行くのに一緒に行くということで事務費を節約するとか便利にするということはわれわれは否定しておりません。それはいいです。ところが、失業保険の算定基準とそれからこっちとは違うわけです。片一方は標準報酬で、片一方は賃金です。ですから、厚生年金保険法と健康保険法を一緒にすることは、それはぱっとすぐできます。ところが、失業保険は賃金で、こっちは標準報酬、それを直さなければできないというようなことを言ったら、これは間違いですよ。五人未満に適用するということを急ぐことが第一前提、事務的なものは要素ではあるけれども、第二、第三、第四、第五番目ぐらいの前提なんです。ですから、たとえば賃金で計算した失業保険料を徴収に行く。それから標準報酬で計算したこっちのほうのものを一緒に取りに行く。両方で計算したものを持って一緒に取りに行く。そういう点で事務的に合わせるのはいいけれども、この問題で基本的な点で全部合わせなければ五人未満を発動できないという考え方に立っては絶対にならない。時刻が少しもおくれないで両方を合わせることは差しつかえありません。しかし、いままでのマンマンデーの官僚機構では、これを一年間にきちっと合わせるということは私は困難ではないかと思う。ですから、一年間で標準報酬と賃金を合わせた体系に、厚生年金、健康保険、失業保険全体を合わせるというような名目のもとに、これを二年、三年ずらすということは絶対に許されない。一緒に取りに行く、これを合わせることはいい。ですから、とにかく一番大事なことは、五人未満に各社会保険を直ちに適用するという問題です。それで最小限の出発はいま滝井さんの言ったことであれですけれども、石田さんや神田さんが社会保障に熱心であるならば、少しでもそれよりも前になることはちっとも差しつかえない。また、労働省がまずわれから始めたということを言われるなら、厚生省がそれに負けておる必要もない。だから、厚生年金保険法は次の臨時国会で改正案を出すなり、それからまたわれわれが、改正案を出すときに協力をして今国会で五人未満に適用するということを決定することはちっとも差しつかえありません。それを制度で今度取りに行くときに同じ人が取りに行く、同じ書状で取りに行くようにする、それは研究を重ねて至急にそういうふうに事務的に便利になるようにしたらいい。ですから、話し合いを進めることはいい、協力をすることはいい、事務的なむだをなくするようにすることはいいけれども、その中でいささかもそれを理由にして五人未満の事業所に適用をおくらせるというような考え方はあってはならないと思います。厚生大臣も労働大臣もそうではないと思いますが、その五人未満の事業所の労働者にできるだけ至急に適用するということを一生懸命進められる御決意であろうと思いますので、それをひとつはっきりしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/79
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080・神田博
○神田国務大臣 ただいまの八木委員のお尋ねでございますが、これはもう昨日来私しばしば申し上げておるとおりです。私もその考え方、またそういうものの運び方についても同感でございますので、そういう趣旨で進めてまいりたい、これに変わりございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/80
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081・石田博英
○石田国務大臣 私のほうは初めから五人未満にすみやかに適用するようにという意思表示をしておるのでありますから、そういう意図で努力をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/81
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082・小沢辰男
○小沢(辰)委員長代理 八木委員に申し上げますが、十二時半ということでひと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/82
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083・八木一男
○八木(一)委員 質問を続けますが、先ほど年金局長とやっておりましたことについてちょっと申し上げたいと思います。
所得保障について一番大事なことはスライドだということであります。スライドについて今度の改正案にはっきりとした規定を出しておらない。非常に怠慢だということをいま追及いたしております。山本年金局長もすなおに怠慢であったことを認められました。厚生大臣も認められました。いままで怠慢であった以上は、これをただいま即刻からの努力でその怠慢を取り返さなければならない。したがって、この厚生年金保険法の改正案において、具体的なスライドの点は、不十分な点はよくするとして、その基本的な方向を示す条文が非常に不十分であって、努力のあとが認められないということについて御認識をいただき、与野党通じての本委員会におけるこの方向をただそうという努力に対し厚生省が一生懸命努力されるという決意をひとつ表明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/83
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084・神田博
○神田国務大臣 厚生年金にスライド制をとるということは社会保障制度審議会の答申にございまして、私もまた考え方といたしましてはとるべきものだ、こう考えております。御承知のように物価の上昇、賃金の上昇等に伴いましてスライドをとるという必要はそれだけ考えても当然だと思っております。なぜとらなかったか、怠慢じゃないかという御注意でございましたが、結果からいうとそういうおしかりも受けると思いますが、しかし、これは言いわけではございませんが、官庁は官庁なりの準備に日数がやはりかかっておったということで御了承願いたいと思います。
そこで、いまの改正案にすぐ織り込むがいいかどうかということでございますが、これは私がお答えする筋のことでないのじゃないか。私どもといたしましては、そういう考え方については十分努力してまいったが、今回は間に合わなかった。これは将来の問題として十分検討に位することでございまして、そうあるべきものだということについては、事務当局もそういう考え方を持っておることを明らかにされたところだろうと思います。私もそういう持論でございますから、そういうことで御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/84
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085・八木一男
○八木(一)委員 いまの答弁はまだ不十分であります。それから山本君とのあれで、さっきの答弁に関連して、ほかの制度の関連というような非常に退嬰的な考え方があります。厚生年金保険が所得保障の中心であるという理解を少し薄められたような消極的な話がありました。そういうことではいけないので、次の質問はそういうところから始めますから、ひとつ覚悟をきめられて御答弁を願いたいと思います。このスライドの問題から午後は始めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/85
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086・小沢辰男
○小沢(辰)委員長代理 午後一時まで休憩いたします。
午後零時二十九分休憩
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午後一時五千分開帳発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/86
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087・松澤雄藏
○松澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。井手以誠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/87
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088・井手以誠
○井手委員 公労協の賃金紛争がきわめて重大な段階になってまいりまして、きのう政府は第二回の回答を行なっておりますが、あまりにも低額のために、公労協の組合員はこぞって怒りのことばさえ発しておるのであります。私は三十日公労協がストをかまえておるというこの段階でございますから、やはり公共企業体の職員を持っておる政府としては、最大の誠意を示すべきである。お互いはまた努力をもって最悪の事態を解決するようにはからねばならぬという立場から、私はただいま社会党を代表して政府の所信をただしたいと思うのであります。
まず第一に、きのう出された第二回の回答を含めたベースアップは幾らであるか、その数字を承りたい。
それとともに、労働問題では見識を持っておられる労働大臣でございますから、定期昇給を含めることは私は見当違いであると考えておりますが、どういう意味で六・五%という数字を出されたのか、まずこの二点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/88
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089・石田博英
○石田国務大臣 各公社、現業はどういう数字になっておるかは事務当局から説明をいたさせます。
政府といたしましては、公共企業体の労使関係の処理にあたりまして、昨年の四月十七日に行なわれました池田・太田会談の中にあります当事者能力の問題について、関係次官会議を開き、いろいろ検討をいたしておりましたが、労使関係の処理ということだけの見地から立ちますならば、これは労使双方が自主的に話し合ってきめるということが原則であります。ただ、公共企業体及び政府関係機関は予算上、資金上、政府の予算編成権、国会の予算審議権その他との開運もございます。したがって、これについていま根本的な解決をにわかにするというわけには、いろいろな困難な問題がございますので、その恒久的な解決はILO八十七号条約批准案件に関連をいたしました公務員制度審議会において御検討を願うと同時に、それまでの経過的措置といたしましては、現行法の効果的な運用によってでき得る限り処理してまいりたいという方針を立ててまいりました。したがって、この方針に基づきまして、まだ民間関係の賃金問題について何らの回答が行なわれていない二月の時限において有額回答を出したのでございます。
その後調停に移行されまして、そうして現在調停が進行中でございますが、その間、次第に民間の賃金の決定の動向もあらわれてまいりました。その他と勘案をいたしまして大体民間の賃金の、いわゆる今回の賃金紛争に関連をいたします動向と見合って、鉄鋼がこれは定期昇給を含んで六・三%というような回答が出ていることその他を勘案をいたしまして、六・五%という数字が大体の方向として出て、それに基づいて公社、現業が大体その基準で回答をいたしたのであります。公共部門における賃金の問題は、やはり民間の動向その他との関連においても行なわれなければならない性格もございますので、政府といたしましては、その辺が公社、現業その他の実情として適当ではなかろうかと勘案してそういう種頭のあっせんをいたした次第であります。
定期昇給を含む、含まないの問題でございますが、定期昇給もやはり賃金の中に十分含まれておるのでありまして、各企業あるいは民間、公共等の関連において定期昇給がいろいろ違います。定期昇給の多いところ、定期昇給の少ないところ、これはやはりベースアップの率も違ってくるのはある程度やむを得ない。やはり全体としての賃金の上昇ということは定期昇給も含んで考えるべきものではないか。定期昇給が全く同じであれは別でありますが、定期昇給が違うならやはりそういう観点でいくべきものではないかと私どもは思っておる次第であります。
それから、もう一つこれは明らかにしてまいりたいと思うのでありますが、やはり現在公共企業体関係労働法というものはりっぱに生きておるのであります。この法律の精神に従って政府は労政の筋をできるだけ通すべく努力をしてまいりました。したがって、公共企業体関係労働法に違反する行為を前に公然といわれる、それと関連を持っていろいろな努力をしたわけではございません。政府としては、労使関係の筋を通すための努力をいたしたのでありまして、法律違反行為は厳に自重されることを望みます。そういう法律違反行為を振りかざされてどうこうという態度はとりたくない、私はこう考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/89
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090・秋吉良雄
○秋吉説明員 数字的な御質問でありますから数字的な点についてお答えいたします。
基準内賃金におきまして六・五%を引き上げたということでございまして、その六・五%の中におきましては、すでに回答した分の金額と定昇分を含めまして六・五%の給与の改善を行なうということでございます。
数字で申し上げますと、全体を平均いたしますと約二千五十円の引き上げということになりまして、すでに回答した部分が、平均でございますが、四百六十五円という数字がございます。それから定昇分の引き上げが約千四百円でございます。そういたしますと、今回のさらに上乗せ回答と申しますか、差し引き回答と申しますか、その数字は約二百円、こういうことに和なるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/90
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091・井手以誠
○井手委員 大臣から最後に法律云々というお盾がございましたが、そういう事態をおかしてでも戦わねばならぬという公共企業体関係の職員の生活の実態についても、政府はやはり慎重に考えねばならぬ。自分のしなくてはならぬことはたなに上げて相手を責めるということは、私はかねがね見識を持っておられる労働大臣のことばとは受け取りかねるのであります。
経済企画庁長官にお伺いいたしますが、四十年度における勤労所得の伸びは幾ら予定されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/91
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092・高橋衛
○高橋(衛)国務大臣 国民所得の計算におきまして、昭和三十九年度と四十年度の比較におきましては、一三・二%の勤労所得の増加と相なっております。ただし、これは勤労者の雇用の増加も同時に含んでいることを御了承願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/92
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093・井手以誠
○井手委員 四十年度における勤労所得の伸びは一三%、政府みずからが昭和四十年度には十三%の所得の伸びを予定しておるのに、職務の内容と責任を持たねばならぬ公共企業体の職員に対するベースアップが、定期昇給を含んでわずかに半ばにしかすぎないということはどうしたことでしょう。——いや、企画庁長官、あなたは答えないでもいいのです、わかっていますから。あなたには数字だけ聞いたのですから、いいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/93
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094・松澤雄藏
○松澤委員長 長官、あとで発言を許しますので、ちょっと待ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/94
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095・井手以誠
○井手委員 労働大臣、政府みずからが一三%の勤労所得の伸びを予定して経済の計画を立てて予算を編成しておるのに、いま申しましたように、責任を持っておる公共企業体、その職員に対してはわずか六・五%しか認めないというのはどういうことでございますか。労働大臣から伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/95
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096・高橋衛
○高橋(衛)国務大臣 先ほどの答弁を補足させていただきたいと存じますが、先ほども申しましたとおり、一三%の増というのは勤労者全体の所得の増加でございまして、この中には雇用者の総数の伸び四・一%を含んでおります。したがって、雇用者の伸びを差し引いて考えた場合に、初めて一人当たりの賃金の伸びが出てまいるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/96
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097・石田博英
○石田国務大臣 いま経済企画庁長官の御説明のように、勤労所得全体の数字であります。それからその場合、またほかの場合、低額所得者、うんと低い低額所得者が高率に伸びるということも考えなければならないと存じます。そういうような勘案をいたしました場合、それからもう一つは、公共部門における貸金というものは、やはり民間の賃金の動向ということも考えなければなりませんし、格差縮小の努力はむろんしなければなりませんが、同時にそういうような関連を考えなければならず、六・五%程度が適当であろうと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/97
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098・井手以誠
○井手委員 給与をきめる場合に一番大事なことは生計費ではございませんか。公共企業体の職員として職務の内容——先刻も申し上げました。その責任を持つために必要な給与でなくてはならぬということが規定をされてある。それは体面を保つためにも責任を遂行する上にも必要である。そうであるならば、やはり生計費を中心として給与を定めねばならぬのでありますから、物価がどんどん上がっておる今日、また政府みずからが二三%の給与所得の伸びを計算しておるときに、六・五%が妥当な金額であるとはどうしても考えられません。石田労働大臣、それは政府の示される最大限の誠意ではないと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/98
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099・石田博英
○石田国務大臣 政府としては民間の賃金の動向その他を勘案いたしまして、先ほど申しましたとおり、六・五%の回答をしたことが現次元における最大の誠意と考えておりますが、しかしながら、それだからと申しまして、不幸にして調停段階で話がまとまらなかった場合においては、やはり仲裁はこれを従来どおり実施するというたてまえを堅持いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/99
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100・井手以誠
○井手委員 経済企画庁、長官にお伺いいたしますが、この一月から三月までにおける全都市の消費者物価指数は、前年に比べて大体おおむねどのくらい上がっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/100
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101・高橋衛
○高橋(衛)国務大臣 三月分の全都市はまだ、もう二、三日後にならぬと数字がはっきりいたしませんから、一月、二月分と、三月は東京の分だけをお答え申し上げます。一月分におきましては、前年比で七・三%、二月分におきましては七・〇%、それから東京の三月分におきましては七・四%になっております。ただ、その内容において特に申し上げておきたいことは、この一番大きな原因になっているものは野菜の値上がりでございます。野菜が一月から二月、三月と、三八%、三五%、特に三月になりましてからは野菜の伸びが六七%というふうに、本年の天候の不順のために野菜の価格が非常に高騰しておるという季節的な原因が非常に大きく影響しているという事実は、ただいまよくおわかりであるということでございましたので、あえて繰り返しませんけれども、その点は特に頭に遣いでいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/101
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102・井手以誠
○井手委員 高橋さん、野菜も生計費のうちですよ。別ですかそれは。うちでしょう。何を言いますか。
労働大臣、いま経済企画庁長官から、最近の物価値上がりが一月から三月まで七%をこえておるという答弁がございました。七%の物価値上がりに対して、定期昇給は、これは御承知のとおり年功によって給与総額に予定されたものでございますから、これはベースアップの問題とは別です。そうでありますならば、一・九五%ですか、大体二%の値上がり。七%物価が上がって、それに対して二%しかベースアップしてくれないというこの政府の態度、生計費を中心にベースアップの紛争が起こっておるのに、物価は七%上がっておるのにわずかに二%しかベースアップしてくれないというこの態度はどうですか。生計が保っていけぬじゃないですか。公共企業体の職員としての体面が保っていけぬじゃないですか。それでもなお妥当な数字だとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/102
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103・石田博英
○石田国務大臣 生計費指数は一月から三月の前年比七%、これはいま経済企画庁長官がお話しのとおり、季節的要因を非常に含んでおります。通年にいたしますと四・八%と承知をいたしておるのであります。したがって、政府としてはそれを含んで、また、民間の賃金の動向もまたそれを含んでおるわけでありますから、私は、現在の次元において六・五%というのは政府として十分誠意を示したものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/103
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104・井手以誠
○井手委員 論議いたします前にもう一ぺんはっきりしておきたいのは、定期昇給というのは年功によってきめられたものでしょう。ベースアップの賃金の紛争とは別でしょう。一緒ですか。定期昇給もさせないから紛争が起こっておるのですか。これは別じゃございませんか、はっきりしておいてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/104
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105・石田博英
○石田国務大臣 定期昇給もいろいろ企業によって違います。たとえば鉄鋼の場合は九百五十円から千円くらいと承知しておりますが、公共企業体の場合は企業によってまちまちであります。予算ではたしか三・五%を組んでおりますが、実際運営にあたりましてはそれよりかなり上回って定期昇給が行なわれております。多いところでは千五百円くらい、少ないところでも千二、三百円くらいになるのじゃないか、詳しい数字は覚えておりませんが、なるのじゃないかと思うのでございます。そういうふうに差がございますから、ベースアップと申しますか、賃金問題を処理するときに、その定期昇給の状態というものは当然勘案しなければならない、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/105
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106・井手以誠
○井手委員 民間給与との比較の話じゃございません。公共企業体の職員の場合についてお尋ねをいたしております。いま起こっておる公労協と使用者との賃金紛争は、定期昇給とは別でしょう。定期昇給は紛争が起こらぬでも当然使用者は規定に従って定期に昇給させなくちゃならぬものじゃございませんか。一緒ですか、別ですか。それだけはっきりしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/106
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107・石田博英
○石田国務大臣 規定に従って行なう部分よりは、予算単価以上行なわれておるのであります。それから公共企業体部門における賃金の問題は、やはり民間との関連においていつでも議論され、また勘案されなければならぬ性質のものであります。したがって、実際賃金の問題を扱う場合は定期昇給を含んで考えるのが妥当だろう、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/107
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108・井手以誠
○井手委員 私はそれに対しては反対の意見でございますが、意見でありますからこれ以上申し上げません。問題は生計費の問題であります。経済企画庁が計算をしておる数字というのは、生活の実態とはかなりかけ離れていることは常識になっております。四・五%の場合に、飲食費を中心とする物価の値上がりを考えてまいりますと、生活に響く物価の値上がりは大体倍に予定をされておる、倍くらいは見込まれるわけであります。いみじくも経済企画庁長官は野菜の値上がりを盛んに強調された。事ほどさように生計費に比重がかかっておるのであります。そういたしますと、定期昇給は定期昇給、残り二%のベースアップ、一方においてはかりに経済企画庁の言うとおり五%近くの物価値上がりにいたしましても——そんなことはあり得ませんよ。うんと上がります。上がりますが、かりに五%近い物価の値上がりにいたしましても、それに対してわずか二%のベースアップということは、それでも妥当だとおっしゃるのですか。それでも生計費に差しつかえないとおっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/108
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109・石田博英
○石田国務大臣 さっきから申し上げておるとおり、現在の時点における消費者物価の高騰は季節的要因を非常に多く含んでおりますから、やはり通年したものとして考えるのが妥当だろうと存じております。それから、昇給率というものが高いところと低いところとはおのずから違うのでありまして、他のベースアップの率にも関連して考えなければならない。公共部門における昇給率は、先ほども申し上げておりますように、民間の一般の昇給率よりは高いのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/109
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110・井手以誠
○井手委員 大臣もなかなかむずかしい問題ですから、明確なおことばができぬだろうと思います。これは問題は明らかです。物価の値上がりの何分の一にした達しないようなベースアップというものがいかに不当であるかは、申し上げるまでもないのであります。そこで、中間でございますが、先刻仲裁のお話がございました。しかし、調停の権威ということを考えてまいりますならば、また労働大臣や官房長官が先日談話をなさった趣旨からいきましても、また常識からいっても、やはりこういう賃金紛争というものはなるべくすみやかに最大限の誠意を示して解決をはかるのが私はほんとうの姿であると考えるのであります。労働大臣は、さらに努力をして最大の誠意を示して調停段階における解決をはかられるお考えがおありになるかどうか。仲裁に移せばいいということではございません。解決するものならば調停の段階において解決することが私は筋だと思う。どうですか。
〔委員長退席、井村委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/110
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111・石田博英
○石田国務大臣 むろんできるだけ早く、団体交渉の段階ででも解決することが望ましいことでございます。それが不可能ならば、調停の段階で解決することが望ましいのであります。ただ、先ほどから申しましたように、公共企業体及び政府関係機関におきましては、いろいろ他の問題がございます。と同時に、民間の賃金の動向との関連もあるのでございます。したがって、それらを勘案しつつ、困難な問題があり、あるいは時間的な経過を必要とすることがあったことも、やはり御理解をいただかなければならぬのじゃないだろうかと存じます。政府といたしましては、六・五%という回答をいたしましたのは、調停段階で話がまとまるための最大の努力をしたつもりでありまして、これからさらに公労委の御活動、御努力によってできる限り調停段階で話がまとまるように希望いたしますが、それが不幸にして不可能な場合には、仲裁裁定については従来の政府の態度を通してまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/111
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112・井手以誠
○井手委員 労働大臣は先刻来民間給与との比較を盛んに強調されております。もちろんそれも私どもは必要であると考えておりますから、あとでお伺いいたしますが、しかし、民間給与がきまらないから政府関係公共企業体においても延ばさざるを得ないという態度がはたして妥当であるかどうか、予算を握っておる政府としてはたしてそれが正しい立場なのかどうか、これは深甚にここで考慮してもらわなければならぬ問題だと私は考えております。民間給与がきまらないから公共企業体のほうも早期にはきめかねるということは、私は政府の立場としては納得できないことばであると思います。なぜならば、生計費については政府の資料において私は数字は出てくると思う。生計費ということになれば、政府として独自の計算ができるはずであります。また民間給与についても、大企業を中心とする会社の収益その他によって見当はつくはずであります。私はその点についてあとでお伺いいたしますが、民間給与がきまらないから延びるということは、私は政府としてとるべきことではないと思う。最近までのいわゆる大会社の決算なり、あるいは四半期ごとに統計があらわれてまいります大企業の法人統計なり、いろいろなものを見てまいりますと、民間給与の基礎となるものが明らかになるはずですから、その妥結がないから公共企業体の職員の給与もきめかねるというのは、私は政府として不見識ではないかと思う。労働大臣の見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/112
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113・石田博英
○石田国務大臣 賃金はむろん生計費との関連において考えなければなりませんが、同時に、それはやはり生産性の向上の分け前としても考えなければなりません。ところが、政府関係機関の場合はいろいろの事情から申しまして、単純に生産性から賃金というわけにはまいらないのでありますから、生産性と賃金との関連で生まれてくる民間の賃金の動向というものを参考にし、それを基準としてきめられるべき性格が強いと思います。したがって、ある程度民間賃金の動向を見ておく必要があると考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/113
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114・井手以誠
○井手委員 公共企業体における労働生産性、業務量の問題などについては、これまた数字が出てくると私は思う。国鉄あたりは一〇%近い労働生産性があがっておる数字を私は持っておりますが、それよりも私がここで申し上げたいのは、それでは民間企業の経営はどうであるか。人事院の最近調査いたしました民間給与実態調査によりますと、三十九年度は一〇%の上昇であるという統計が先般発表されました。九・五%から一〇・四%、生産性向上本部の発表によりますと、生産性は一四・三%あがっておるのに、三十九年度の賃金の上昇は一〇・八%という数字を発表されておる。鉄鋼においては、いまあなたがおっしゃった申告所得において、この三月期は軒並みに上昇している。業績はきわめて良好であると言われております。またこれは経済企画庁長官にも関係がありますから聞いておいてもらいたい。あなたのほうの総大将の佐藤さんは何とおっしゃっているか。冬来たりなば春遠からじ、六月ごろからは景気が回復するであろうということをおっしゃっておる。また、きょうの新聞によると、経済企画庁の発表によれば、月例経済報告によると、経済は明るくなっておるという発表が行なわれておる。これらの数字を全部見てまいりますと、民間の給与が幾らくらい出せるか、出さねばならないのか、その点は明らかになると思うのです。このように民間給与は昨年よりも上回もっていいだけの数字を民間企業は持っておる。鉄鋼は、労使間の戦いいかんによって昨年を下回ったようでありますけれども、しかしその基礎となる企業の経営実態はきわめて強化されておる。これらを政府機関、その他権威ある機関の発表によれば、民間企業の業績がよくなっておりまするならば、当然それを参考として、いや、鉄鋼がきまったから、何かきまらなければやれぬということではないでしょう。そんな不見識な話は私はないと思う。常識家であり見識家である石田労働大臣が、民間給与がきまらないからまだ解決されないというようなことばは言うべきではないでしょう。私はあなたからそういうことばを聞きたくない。どのくらいのベースアップが正しいかということは、それは要求どおりいけない場合もあるでしょう。それは使用者と労働者の立場において意見の違いはあるでありましょう。しかし物価は昨年よりも七%も上がっておる。民間企業の経営基盤はますます強化されておるという数字が明らかであるならば、政府は進んでベースアップの基準を示すくらいの熱意を持つべきであると私は考える。そこに初めてストライキとかその他の紛争を未然に解決する道があると信じている。それが労働大臣の任務じゃございませんか。お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/114
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115・石田博英
○石田国務大臣 昨年度経済の一般賃金の上昇率に比べて一〇%、したがって、昨年度の仲裁裁定もたしか国鉄は九・六%くらいの裁定があって大差はございません。それから昨年三十九年度だけをとりますと、これは確かに賃金の上昇率は生産性の上昇率より下回っておりますが、三十六、七、八年は賃金の上昇率のほうが高くなっておるのであります。したがって、三十六年、七年、八年、九年と通算をいたしますと、必ずしも生産性のほうが賃金より上回っておるとは言えないであろうと思います。生産性と賃金との関係を考えますと、からますべき問題ではむろんございますが、その切り方によっていろいろ議論が出てまいると思います。
もう一つは、生産性の上昇の分け前は全部賃金に回せという議論も少しむずかしいのではないか。生産性上昇の分け前は、やはりそれに関与した力、むろんこれは勤労者の諸君の協力によることは言うまでもないのですが、それと同時に技術の進歩、設備の改善、資本の投資、いろいろなものがございます。あるいはある部分は消費者にも還元しなければならないものもあるだろうと思うのであります。そこで、特に公共部門におきましては、いろいろな他の制約がございますから、単純に他の民間企業のように生産性と賃金とからませで処理できませんので、したがって、これはやはり民間賃金の動向というものが賃金と生産性、これの関連において参考になるべきものだと考えておる次第でありまして、公共部門における賃金決定には、民間の賃金の動向をやはり見ていくということが必要であると私は考えておるのであります。
それからもう一つ、政府が賃金のベースアップの基準を示せという御議論でありますが、政府がそれを示して民間がそれに従うというような制度が確立されることはこれは考えられません。賃金というものは、原則として労使間の話し合いできまるべきものであります。したがって、政府が示すというようなことは、労使関係の賃金決定の原則と違ってまいる、こう考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/115
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116・井手以誠
○井手委員 大臣、三十六年からの平常時の生産性と賃金のことをおっしゃいましたが、どんどん工場を建てる設備投資の場合と平常の運転の場合は迷うのですよ。それは子供でもわかることですよ。三十六年ごろからどしどし設備投資をやったときと、それが稼働を始めた平常経営の場合とは、これはたいへんな開きがあるのですよ。そうすると、私はいまの政府のお考え、あくまでも民間給与を見なくては政府は決定できないというれことばでありまするならば、いまの公労委のあり方、六十日という期限があるのにほとんど作業が進められておらないという、そうしてやむを得ず仲裁に持ち込むというこの賃金決定のあり方というものは変えなくちゃならないのじゃないですか。民間給与の実態を比較しなくちゃ公共企業体の賃金がきめられないという考え方は、これはどうしても納得できませんよ。もっとあっさりした方法はないのですか。もっと権威のある方法はないのですか。その点は大事ですから重ねてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/116
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117・石田博英
○石田国務大臣 三十六年から三十八年の賃金と生産性との関係について、いま井手さんのおっしゃるような議論は当然成り立つと思います。成り立てばこそ私はそれぞれの一年とか二年とかいう区切りで議論をするのは問題が残る、こう申し上げたのであります。
それから、公共企業体における賃金問題の処理、これにいろいろ問題があることはむろん承知しております。あればこそこれは公務員制度審議会において根本的な御検討をいただこう、こう思っておるのでございますが、政府は今回従来に見ない、これは不満はむろん残ると思いますが、民間がまだ何らの回答をしていないときに、団体交渉の段階で有額回答をし、調停段階においても弾力性のある態度をとりましたのはそういう方向に向かっての努力の一つだと御理解をいただきたい、こう思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/117
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118・井手以誠
○井手委員 大臣、それは苦しい答弁ですよ。そんな話はありませんよ。
そこで、それでは努力をしておるとおっしゃいますが、ことしの一月二十八日でございますか、関係次官会議において、現行法制のもとでこの当事者能力の問題を合理的に活用していこう、根本的には審議会の答申を持つといたしましても、その間については弾力的運用をしようといまも大臣がおっしゃった。その当事者能力について十分なる能力が発揮できるように政府はなさいましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/118
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119・石田博英
○石田国務大臣 十分ということにはいろいろ問題がございますから、それは公務員制度審議会等においてやってもらいたいというのでありまして、現行制度の運営の中であとう限りの努力をしたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/119
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120・井手以誠
○井手委員 六十日を過ぎた今日、やっとおしるしばかりの第二次回答が出た。それがあとう限りの努力をしたということになるでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/120
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121・石田博英
○石田国務大臣 いろいろ比べてみなければわからぬことでありますが、去年から比べればずいぶんあとう限りの努力をしたと私は思っております。また、私は労働行政を担当いたしておる者といたしまして、現在の制度運営の中においては私は良心にかけて最大限の努力をした、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/121
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122・井手以誠
○井手委員 昨年よりも若干有額回答をしたことについては進歩です。しかし有額回答といっても、それは給与のベースアップの名に値する内容でなくてはならぬはずです。百円でも二百円でも有額回答だから誠意を示したということは、ほかの人ならいざしらず、労働行政を担当する労働大臣としてはいささか聞こえない話じゃございませんか。
そこで、次にお伺いいたしますが、この公労委の運用であります。聞くところによると、相当日にちがたっておるにもかかわらずまだほとんど活動らしきものをしていないようであります。これでは公労委の権威をそこなうものであると考えるのでありますが、一体いつごろから十分なる活動をしておるように労働大臣はお聞きになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/122
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123・石田博英
○石田国務大臣 一々具体的な報告を聞いておるわけではありませんが、公労委としてはでき得る限りの御活動をしていただいておるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/123
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124・井手以誠
○井手委員 毎年のことではありますが、ことしは特にスローモーだという定評がある。どの程度運営したかどうかについては私は多くは申し上げません。ここで私は最終的に、大臣もお忙しいでしょうから、特にお尋ねいたしたい。
先刻もちょっとお聞きいたしましたが、あとう限り調停の段階で解決すべきである、それが筋であり、精神であると私は考えております。やむにやまれぬ公共企業体の職員諸君が三十日にストライキをやろう、この問題についての見解はあるでしょう。しかし、だれでも喜んで進んでストライキをする者はございません。これは事実です。これだけは言えます。そういうきわめて重大な段階を目前に控えて、調停の段階でつとめて解決しようというのであるならば、私はその点について労働大臣の格別のお骨折りが必要であると考えるのであります。ちょうど官房長官も見えました。私は長く質問申すのが木片ではございません。長官、きのうの第二次回答に公労協の諸君はきわめて不満である。われわれが考えてみたって、わずか百五十円か二百円のベースアップ、会社はどんどん景気がよくなっておる。政府みずから言っておる。民間の有力な百八十社の昨年一月から十二月までにおける営業利益は前年に比べて一割二分もふえておる。八千九百億円が一兆円をこえておる。そういうときに、定期昇給を含んでわずか六・五%の回答ではだれだって満足するものではございません。不満どころかおこるのは当然だと思う。その怒りからやむにやまれず三十日にはストライキをやろうというきわめて重大段階にあたって、官房長官も労働大臣も先般調停段階で解決をはかろうという談話を発表された。いままで私は公労委のあり方について論議いたしました。公労委のあり方について私はこれ以上は申し上げませんが、この重大な段階でございますから、この事態を解決しなくちゃならぬ立場にある政府として私は格段のお骨折りが願いたい。私は最大限の誠意を示してもらいたいと思う。ただ違法呼ばわりばかりで解決するものではございません。私は何回も申し上げません。どうせ上げなければならぬ問題、いままで物価の問題も申し上げました。民間企業との格差を縮小せよというのが池田・太田会談で申し合わせた一項でございます。すべてを考えてみても、定期昇給をはずせばわずかに二%にしかすぎないベーアップで解決するものとは絶対に考えられません。この考えられない公共企業体の賃金紛争に対していかなる誠意と努力をなさろうと政府はお考えになっておりますか、長官並びに労働大臣からお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/124
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125・石田博英
○石田国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、政府といたしましては調停段階で話がつくことを期待いたし、努力もしてまいったのであります。したがって、政府としては調停段階で話がまとまるというようなことに期待をかけ、公共企業体等労働委員会の御活動を待っておるのであります。先ほどから六・一五%の数字が出ましたが、予算上昇給財源は三・五%であります。しかし実際は四・五%あるいはそれ以上の昇給が行なわれておるのも事実でありまして、それを単純に引いて二%云々というのも必ずしも妥当な——予算には三・五%でありますが、現在実際行なわれておるのが四・五五%で、その実際は民間の一般の昇給よりは五割くらい高いのであります。それもやはり考えなければならない問題であろうと思うのでありますが、政府といたしましては、現在の制度下においては最大の努力をいたしまして、でき得る限り調停段階で話がまとまることを期待いたしますけれども、不幸にしてまとまらないで仲裁に移行された場合、仲裁裁定は従来のとおり完全に実施する方針であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/125
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126・橋本登美三郎
○橋本政府委員 ただいま労働大臣からお答え申し上げましたとおりでありますして、この問題はおそらく労働大臣からもるるとお答えがあったと思いまするが、政府としては従来にない、というとはなはだ失礼でありまするけれども、この春闘問題には昨年暮れから真剣に検討に検討を重ね、御承知のような措置をとってまいったのであります。
もちろん、おっしゃるように今日のごとき労働条件で十分であるかという御質問であれば、これは日本の総生産願に対する国民所得から考えましても、その他の条件から、いろいろまた十分満足し得ない状態であることはお互いに了解ができる問題ではありますけれども、御承知のようにこの問題の処理にあたっては、従来も御説明申し上げましたが、運用上行なえる範囲と、どうしても法律的な措置を考えなければできない面とがあるわけであります。
そこで、今回の第一回といいましょうか、最初に申し上げました有額回答をいたしますということから、五百円以内の回答がそれぞれの企業によって出されましたが、せんだっての、先ほどお話がありました総額で六・五%という回答につきましても、この調停段階で行ない得る運用上の力というものは、やはりこの範囲以上は出がたい。これでもって全部が解決したとも考えておりませんけれども、先ほど来労働大臣が御説明申し上げましたよりに、もちろんできれば調停段階で解決することが望ましいのでありますけれども、しかしながら従来もるる御説明申し上げておりますように、法律上、何といいましてもいわゆる予算上の制約を三公社五現業は受けておる。その予算上の制約の範囲内で答えようといたしますれば、なかなか最終的な、いわゆるお互いに満足し得る段階にはいかないきらいもあるだろうと思うのであります。しかしながら、その間においてもできるだけ両者の御努力によって解決を期待したわけではありまするが、今日なかなかむずかしい状態にあろうとも思いまするけれども、ただ先ほど労働大臣がお答え申し上げましたとおりに、もし調停がつかずして仲裁裁定に持ち込まれるようなことがありますれば、政府としてはその時点においては法制的に予算的措置ができるのでありますから、その場合においては政府は誠心誠意仲裁裁定を実施する決意でおるわけであります。
ただ問題はそれだけではなくして、おそらく井手さんからの御質問は、こうした労使関係の問題はそういうような政府の法的な措置だけじゃなくて、できるだけお互いの労使慣行としての問題として解決すべき性質のものではなかろうか、したがって、将来についても現段階においても同様であるが、特に将来においてはこの方針のもとに十分の努力をせよという激励の意味にも受け取れるわけであります。この点われわれといたしましても、将来りっぱな労使慣行をつくると同時に、昨年池田・太田メモで、いろいろお話がありましたような格段の努力をお互いにしましょうというこの精神はあくまで生きており、今後ともによき労使慣行をつくるために政府としては最善の努力をいたしたい、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/126
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127・井村重雄
○井村委員長代理 山田耻目君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/127
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128・山田耻目
○山田(耻)委員 時間がございませんから、井手さんの質問に関連をいたしまして、きわめて簡潔に大切な一点だけお伺いしたいと思います。
特に官房長官、労働大臣並びに田中大蔵大臣、御三人で二十日の日に御相談になりまして、調停がいい結論を見出すように期待をし、われわれも努力をするのだ、こういう回答を社会党にお示しになりましてから、昨日、当事者能力の範囲もお考えになって六・五%という政府の見解をお示しになったわけであります。この点は井手さんの御質問に対して、民間の動向を考慮に入れた、鉄鋼の六・三%に若干の見合いをつけて六・五%にしたのだ、これか今日の段階では一応の数字だと思うけれども、よりベターという立場に立つならば公労委の良識を待ちたい、こういう話がただいままで労働大臣からあったわけであります。その企業自体の生産性なり、持っておる労働者の要求なり、あるいは物価の上昇なり、民間の動向なり、それらは非常に相関的な関係を持っておるのでございますが、特に今日の段階における春闘の賃上げ闘争は、一つの民間の相場という言い方が最近ではされるくらい、初めにきまったところがウェートを持つわけであります。それなるがゆえに鉄鋼の六・三%というのはあなた方の判断をきめさせるのにかなり大きな有力なものになっていたのだろうと、私はこれは推測をするわけです。
そこで、本朝来私鉄の諸君がストライキに入りました。全国で約三千万の国民大衆の足がストップをされております。ゆゆしい事態だと思っておるのであります。この労働争議を受けまして三十日には私鉄並びに公労協全体がストライキに突入いたしますので、おそらくきょう足どめを受けておる国民の倍近い人々の足がとまるのではないだろうか、これは日本の戦後労働運動史上きわめて類例を見ない大きな争議に発展をしようとしております。この段階において、本日の一時に、労働大臣も官房長官も御存じだと思いますが、私鉄に対して約一〇%、三千円の調停案が中労委から示されております。これもあなた方が十分考慮に入れなくてはならない民間の動向でございます。本来なら、鉄鋼より先にこの私鉄の結論が出ておりましたら、あなた方が考慮なさる民間の動向というのは、この部分がステップになって考慮されて、三公社五現業に対して指示された内容にイコールされるものだと私たちは判断をしておるのであります。しかし、これについてはあくまでも一つの推測の状態でありますが、三十日を控えましてきわめてゆゆしい事態に直面をすることが、いまのところ、条件が変化をしなければ、ほとんど確定的なものと見られます。それだけにあなた方も、きのう示されました六・五%というものを至上のものとお考えになっていないという前提があるのでございますから、私鉄のそういう動向等もながめられまして、三公社五現業に対しまして——なお調停は今日明日と就いておりますから、調停委員会が問題を処理する上にきわめて有効な判断ができるような示唆を与えられることをお考えになれないであろうか。そのことを今日お持ちになるのかどうか。あなた方のいままでお述べになりましたいろいろな、俗に言う良識の尺度に合った具体的な措置だと井手さんに答弁になりましたことに対する具体的な解決策だと私は思うのでございますけれども、そういう政府側の意向を明らかにされる意思はございませんかどうか、これを一点まずお伺いいたしたいと思うのです。
二番目には、調停委員会それ自体というものは、この調停案が出ましても拘束力を持ちません。そのことにつきまして、拘束力がないから仲裁に持っていこうではないかという議論は、これは少なくとも暴論でございます。私はことしの予算委員会におきまして、石田労働大臣、田中大蔵大臣にお聞きしましたときに、労使間協定というものによって、資金上、予算上不可能の場合の国会承認、仲裁裁定は労使を拘束するけれども、そのことが実効を生む国会承認も公労法十六条によってのみ取り扱うのである、こういう法的な解釈からいけば、調停で調停案が出る、それを労使が受けて労使間協定にした場合と仲裁裁定の場合と効力が同じであるという立場が確認をされておるのでございますだけに、調停段階で結論が出ましても、それを労使が受諾できますと、十六条に基づいて国会で承認を求める案件になるわけでございますので、その限りにおいては手続は仲裁と同じでございます。そういう意味で調停段階においてまとまることを、事後の措置において手抜かりのないという立場を理解願って二番目の措置がとれるという判断が労働大臣におありになるかどうか、この二点だけをこの段階でございますので、ざっくばらんにお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/128
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129・石田博英
○石田国務大臣 前段の、私鉄の争議について中労委の動きというものは承知いたしております。ただ、これはまだ組合側に問題が残っておると聞いております。しかし、ここに出ました数字というものはやはり公労委の御検討の材料になるだろう、私はこう考えております。
〔井村委員長代理退席、委員長着席〕
それから先ほどから申しましたように、政府が調停段階で話がつくことを期待するということを政府の見解として申しました以上、調停段階で話がつきますれば、それは仲裁と同じように取り扱う考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/129
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130・松澤雄藏
○松澤委員長 この際、暫時休憩いたします。
午後二時五十分休憩
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午後四時二十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/130
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131・松澤雄藏
○松澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
内閣提出の厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/131
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132・八木一男
○八木(一)委員 引き続きまして、厚生年金保険法の一部を改正する法律案に関連する問題について御質問をいたしたいと思います。
午前中にちょっと質問しかけたときに、厚生大臣が答弁だけしてほかに行かれました。その問題の続きをちょっとやって、それから本題に移ります。
この五人未満と日雇いの労働者を適用しないことはけしからぬということを申し上げて、厚生大臣が命がけで近々それを至急にやるということで決意を表明されたということがありました。それからその次に、関連して、国民年金の改定をしていないのはけしからぬではないかということを申し上げました。ところが、厚生大臣は、再計算期が来年だから来年にやるということを言われて、それで参議院に行かれたわけです。その後、山本年金局長とこの問題を詰めましたところ、来年やるというのに非常な怠慢であるということがはっきりわかりました。それを反省せられまして、これは少なくとも、次の臨時国会あたりに、それと国民年金の拠出制の改定をなされる必要があるということになるわけです。五年ごとの改定期という問題について、この法律の条文——国民年金法ですよ、これには少なくとも五年ごとにということが書いてある。そういうことで五年ごとでなければいけないということは一つもなくて、二年でも三年でもいいということが一つと、それからもう一つは、改定をされるというのは、年金額やあるいは保険料が、世の中の生活水準や物価やいろんなものが動いたために改定をされるということになるわけですね。ところが前の国民年金法の拠出年金は、昭和三十四年に法定をされている。そのときにすでに法定をされているから、その時点から勘定すれば三十九年が五年目にあたるわけです。保険料の徴収は三十六年だけれども、年金額と保険料が確定をされたのが昭和三十四年です。したがって、三十九年に再計算をしなければいけないのに、歴代の厚生大臣も局長もなまけておる。いままでほったらかしているということは非常な怠慢であるということをはっきり御認識になって、このおくれを取り返すために、次の臨時国会においてはそういうものを再計算する案を、スライドを実際にする案を出される必要があろうと思います。それについての厚生大臣の決意のほどを伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/132
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133・神田博
○神田国務大臣 午前中に私がお答えいたしました国民年金の改定期でございます。五年ごとにということを申し上げましたことは、いま八木委員からも質問になりましたように、少なくともということでございまして、少しことばが足らなかったようてございますから、この点は訂正しておきます。八木委員のおっしゃるとおり、こういうふうに考えております。そこで、この年金改定の時期でございますが、私はこういうふうに思っているのです。
正直に申し上げますと、国民の側からいたしますと、年金制度は大別として二本立てになっております。厚生年金、国民年金と、こういうことでございますから、これはできれば一緒に肩を並べて、そして均衡のとれた改正をすることが私は一番望ましいと思います。この点については、八木委員もそういう趣旨で質問になっておると私も受け取っておりますが、それが一番いい。なぜそうなったかという問題でございますが、それには政府委員からもいろいろ答弁があったと思います。
〔委員長退席、井村委員長代理着席〕
事務能力の関係もあれば、あるいはまたそれぞれの、厚生省だけでは解決しないというよりな問題もあり、あるいはまた立法上の技術的な問題もあるというようなことがございまして、両方まとめるといって厚生年金がおくれたのではいかぬ。一つでも早くしたほうが所要の効果をあげることに役立つのではないか。こういうような厚生年金の御審議を願うということは、それなりの努力とそれなりの善意から発したことでございまして、十分努力をしてここまで持ってきた、こういうこだと考えております。将来といたしまして、それはいまお述べになったとおり、また私どももかように考えておりますから、いずれかの機会に鼻をそろえて、りっぱな年金としてもり立てていきたい、こういう所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/133
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134・八木一男
○八木(一)委員 厚生大臣のいつものくせで具体的になるとぼやけてしりすぼみになるわけです。そういうような考え方で反省をしておられるというならば、反省の実をあげてもらわなければならない。その反省の実についてはっきりしたおことばがなければ、言っておることばはじょうずに国会議員を通じて国民をごまかすためのことばだということになるわけです。反省があればことばの言い回しはへたでもかまいません。それを取り返すために必ず来年はしっかりやる。それでは足りないので、今度の臨時国会にやるというようなことを表明されなければ、ほんとうに反省の実はあがっていないわけです。そういう点でその時期ですね。どんなにおそくても来年度にはしっかりとしたスライドを内容とした改定案を出す。それから、厚生大臣がさらにいままでおくれたことについても一つと重大な責任を痛感しておられるならば、当然それ以上に積極的に臨時国会に出すというような考え方をお述べになっていただく必要があろうと思います。それについて再度はっきりした御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/134
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135・神田博
○神田国務大臣 いま八木委員から非常な御熱意のある厚生年金の問題、また来年私申し上げております国民年金の問題につきましてもっと早くりっぱなものを出せという御要望でございました。これは私もそういう気持は変わりないのでございます。しかしまた、役所には役所のいろいろ仕事の連絡等もございまして、来年の前に、次の臨時国会まで私がそういう心がまえでやりましても、はたしてうまくいくかどうかということについてここではっきりしたことは申し上げかねますが、来年度はひとつりっぱなものを出したい、こういう熱意であることを申し上げまして御了承をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/135
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136・八木一男
○八木(一)委員 りっぱなものがほんとうに必要であります。いまのように保険料に対して五割、たくさん出しているように見えるけれども、給付に対しては三分の一ですね。あんなちょっぴりしたものでは国民年金の拠出年金の場合には年金額が上がるときに、保険料が上がって、国民が現実的にさらに苦しむということが起こる。国庫負担は、もう大蔵省が何と言おうとも、保険料に対しては十割、給付に対しては五割というところまで上げていかなければ、十分なもので保険料負担を増大したいということはできないと思うのです。それから積み立てにおいても免除制度はあるけれども、免除制度の適用になったものは年金額が減る。保険料も免除されなければならないような人は年金の必要度が一番多い。そういうような人たちが完全な年金が保証されるような体系にならなければならない。また国民年金、拠出年金の中では保険事故という間違った考え方を取り入れているために、たとえば二十歳で加入して二十一歳で非常な不幸な事件によって両眼失明とか両手切断とか、一級障害を受けたという人は一級障害年金がもらえるけれども、十九歳でそのような障害を受けた人は国民年金、障害年金の給付を永久に受けられないということ、このような間違ったことが行なわれるのは、保険事故というようなつまらないもののためにそういうものができなくなっている。そういう問題もこの機会に直さなければならない。管理運営の問題も、スライドの問題も、そういう問題については十分に論議されているので、われわれのりっぱな考え方も御存じのはずですからよく勉強になって、今度出すときには厚生年金保険法のような、毒と薬がまざって、薬の部分が不十分で、問題の部分には無用な法律でなくて、さすが厚生省はいいものを出した、佐藤内閣はこの点については感心だというようなものを出される、そういうような決意で至急に準備をされるというようなことをしていただかなければならないと思うのです。急ぐとともに、内容をりっぱなものにするというようなことについて、もう一ぺん御決意を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/136
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137・神田博
○神田国務大臣 八木委員のいろいろ指摘された問題等々、これはきわめて重要な内容を持っております。私どもといたしましてもこれらの問題を考慮に入れて、そして新しい心がまえでりっぱなものをひとつつくりたい。国力の限度というものもございますけれども、とにかく国民の熱望でもございますから、そういう声も十分反映できるような方向を向いた方途を講じたい、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/137
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138・八木一男
○八木(一)委員 国民年金については、拠出年金のほかに福祉年金の問題がいまの時点として非常に市大であります。しかし、福祉年金については法案が提出をされているので、いまのような二百円プラスというような貧弱きわまるものではなしに、少なくとも三千円くらいプラスのものにする。老齢年金も七十歳というようなけちなことを言わないで、六十歳くらいから支給するということにしていただかなければいけないと思うのです。しかし、これは国民年金の審査のときに十分指摘していきたいと思います。これは次のときにはこんな不十分なものについては直して出されるというような決意をしていただかなければ困ります。
本題に戻ります。次に、スライドの問題でございますが、そのスライド問題で、山本局長は先ほど、他の所得保障制度その他のからみもありますしということをおっしゃいました。そういうことではいけないと思います。このような年金制度の一番の中核は厚生年金保険であります。厚生年金保険でりっぱなスライド個々一とれば、ほかの長期、たとえば共済の長期、その他の船員保険、このような年金部門、そういうものがひとりでに右へならえをするわけです。ほかのもののからみがありましてというようなことではなしに、厚生年金制度でぱしりとりっぱなスライドをつくる。政治的スライドでなしに、政策的スライドでなしに、自動的スライドというものをばしりときめる。そのスライドの条件はほんとうにこまめにできるようにする。どんなに大まかにいっても一〇%の変動があった場合には必ずきめる。さらに自信があったら五%でよろしい。二〇とか三〇という数字は断じて許されるものではない。そういうような観点のもとにこの問題に対処してもらわなければならぬと思うのです。厚生年金保険でスライドを確立することがすべての所得保障に及ぶのだ。これを今日のこの時点でりっぱなものにしなければならない。そのために厚生省、そして年金局は、ほかのほうでごじゃごじゃ雑音が入っても、われわれはやり抜くんだという決心でやってもらわなければならないというふうに考えるわけであります。これについて、答弁の関係がありまして局長に一応最初伺いますが、厚生大臣の決意のほどを伺わしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/138
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139・山本正淑
○山本(正)政府委員 午前中いろいろ御注意を伺いましたり、また御意見があったわけでありまして、スライド問題ということは、要するに年金の実質価値を維持するということがきわめて重要な問題であるという点は十分認識いたしておりまして、御趣旨の線に十分沿いまして、積極的にこの問題は検討してまいりたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/139
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140・八木一男
○八木(一)委員 厚生大臣いかがですか。いま年金局長のお話を聞いておられなかったのですが……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/140
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141・神田博
○神田国務大臣 いま山本政府委員の述べられたとおりであります。私も大いに格段の熱意を持って善処いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/141
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142・八木一男
○八木(一)委員 厚生大臣は聖徳太子じゃないから、半分聞いておられなかったと思いますけれども、よくあとで勉強されて一言残らず覚えておくようにしてください。
その次にスライドの本題に入ります。スライドの問題で、先ほど局長のほうからいろいろありましたけれども、スライドというものは二つの要件で、二つの要件ともに考えなければならない。一つは物価であり、一つは生活水準ということばであらわしてもいいし、またいろいろなことばであらわしようがあろうと思いますが、経済成長による生産の増強、それに対する国民的な分配、たとえばこの分配の問題は、そのときにはすでに生産年齢人口になくても、昔生産に従事をした日本国民全体に及ぼす、そういうことが必要であろうと思います。先ほどそのような考え方を山本さんはちょっと出された。ところが残念ながら当分の間という妙なことをつけたけれども、当分の間でなしにこれは永久的な問題です。ことにその分配を老齢者に全部及ぼすという問題は、政府がぼやぼやした政策をとらないで物価が完全に安定された場合には、その問題はスライドの本質であります。スライドというのは物価だけを考えればいいと思っている人たちが多いようでありますが、それはまだ研究不足であります。物価の問題が自動的に完全にスライドしなければならない。それと同時に物価が安定されていて、国民全体に生産費の分配が行なわれているときに、いま働いている人だけでなしに、すでに前の社会に貢献していた人にもその分配が及ばなければならない。必ずそのことは恒久的、永久的に、完全にりっぱな形でスライドして確保されなければならないわけであります。その点について厚生大臣と局長からはっきりした御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/142
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143・山本正淑
○山本(正)政府委員 おっしゃられるように、実質価値の維持ということにつきましては、年金制度を考えます際には静態的に考えておりますから、いわゆる物価の上昇ということは考えていないわけであります。したがいまして、現実の問題といたしましては物価の上昇があるわけでありますが、物価の上昇については他の面において実質価値を維持する方途を講じなければならないということは言えると思います。
それから、分配の問題としておっしゃられましたのは、現時点として考えましてこの年金を引き上げるということは、やはり現在の年金受給者である老齢者というのは、今日の経済繁栄の功労者であるといった政治的な観点というものが入っておるわけでございまして、さような意味におきましては分配の問題として配慮をなさなければならない、かように考えておるわけであります。
それから、先ほど私が当分の間と申しましたのは、そういう意味じゃなしに、今回の改正の一万円年金ということのもととしましたのは、単に物価にスライドするという範囲をこえて、実質的に年金の内容をよくする、こういうことで、年金の制度が充実するまでの間、当分の間は政策的なそういった配慮というものが必要であるという意味において申し上げたつもりでございますので、ことばが足りなかったならさよう御了解願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/143
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144・神田博
○神田国務大臣 いま山本政府委員からお答えのとおりでございます。なお私からふえんいたしますと、八木委員のおっしゃるように、年金の厚みを増せ、十分な、しかもりっぱなものをつくれという御趣旨だと思いますが、御承知のように、究極の目的は、これは福祉国家の完成だと思っております。また日本国民の優秀な勤勉努力と申しますか、創意くふうと申しますか、いろいろそういった形によって積み重ねられた国力というものは私は、やはり無限なものがあるだろうと思います。そういう度合いに応じまして、そしてこれをりっぱな年金として還元していく。そしてまた、これは国民が等しく天命を全うする、そして長寿を受けるということでございますから、そういうような考えでこれを育成していきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/144
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145・八木一男
○八木(一)委員 いまの大臣の御答弁も局長の御答弁も、両方合わせてプラスすると大体それでいいと思うのです。そういう問題ですが、そこでまた欠点があるわけです。たとえば、政策的なものを当面の形でやられた。善意に解釈してその趣旨はわかりますけれども、そこでごちゃごちゃ合わさなければならないという点に問題があるわけです。はっきり分けて、そして両方とも自動スライドという形をとらなければ、これは時の為政者の熱心、不熱心によって国民が非常に保障されるかいなかがきまることになる。ですから、法律的な制度としては両方とも、物価のスライドもきちっときまる、そしてその分配のほうのスライド、これもきちっときまる、こういう形にしなければ、既裁定年金の問題にしても、いま言ったような分配の点で考えられた部分としても考えられることができるし、前にその人たちが納められた保険料が実質価値が高かったから、その点でスライドしたという説明もできます。あいまいもことしているわけです。ふえること自体悪くありませんよ。あいまいもことしているので、為政者が不熱心であり、大蔵省が金を出ししぶるという場合には、これがこっちが百あって、こっちが百やらなければならないのを、足して五十くらいでごまかされる、二言やらなければならないところが五十でごまかされるということが起こる。ですから、そういうことではいけない。はっきりと、物価に対してはきちっと自動スイドラをする、生活水準の上昇についても自動スライドする、そういうことが年金のスライド規定として大事なわけです。また、そういうことをしたならば、年金制度に対する信頼が高まる。厚生年金にしろ、国民年金にしろ、国民が喜んでそれに協力をする。それがあるから老後の問題はこれで安心だということで、いろいろな生業にいそしむことができるということになるので、それを今回の機会にきっちりしていただきたかった。ところが、年金局長には話しましたが、これからは厚生大臣。このスライド規定については、非常に政府全体がなまけておって、不備だと思う。ところが、国民年金法ができたときに、わずかにこのスライド規定——山本さんが言われるならスライド基本規定、具体的にいうと再計算になりますね、そのスライド基本規定みたいなものが国民年金に入る。それじゃいかぬじゃないか。こんなあいまいもことしたものじゃどうにもならないじゃないかということを私は、時の山川さんや高田君に徹底的に追及した。小山君にも徹底的に追及した。そうしたら、これでだいじょうぶですと言いながら、それは発動しておらないわけです。国民年金の金額がきまってから六年間たってもほったらかされておるということになる。すでにほかのものが済みまして、国民年金の六十五歳になってもらえる金は、四十年間その金を納めて、五年間待たされて、そうして入る金が一カ月三千五百円。東京の生活保護基準が今度一人平均四千五百円。四十年払って、五年待たされて、それから六十五歳から受け取れるものが、いまの生活保護水準よりも少ない。そんなものが大体魅力があるはずがないでしょう。そういうふうになっているのは、政府がたとえば政策スライドをどんどんやらなかった責任が一番重い。しかし、政府がなまけておっても、法律的にしなければならないという、その法律が、基本スライド規定がしっかりしていなかった。ここに根本がある。それをしっかりしておけば、どんなになまけた人が来ようともせざるを得ない。そういうところに基本規定の大切さがあるわけです。そういうことになりますね。ですから、今度は基本規定をりっぱなものにしていただけるであろうと考えておったところが、調整年金というような同居みたいなものを入れるのに夢中で、基本的な問題についてはそういう努力がされておらない。六年前の、さんざんわれわれがこんなものじゃだめだと言って、しかも実効がはっきりしていない、その条文をそのまま入れただけだ、同じ条文だ、そういうことです。厚生大臣はおわかりだと思います。これについては、政府案は出てしまったけれども、非常に乏しかった、いまからでもわれわれは変えたい、しかし撤回して、それを修正して出し直すことは技術的に困難であるから、自由民主党なり、日本社会党なり、民主社会党なり、日本共産党なり全部にお願いして、何とか国会で御修正願えないかということを運動すべきだ。それについて厚生大臣どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/145
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146・神田博
○神田国務大臣 厚生省の考えていることがどうもそのとおりいかなくなって、国会に運動してひとつやらぬかという応援のふうにも聞こえたわけです。八木先生はなかなかこのほうの大家でございまして、しかも年金の問題に御熱心で、われわれ教えられるところが多いわけです。考え方は先ほど来お答え申し上げておるとおり、方向その他われわれといたしましても同感の点がきわめて多いわけでございます。そこで、それじゃひとつこちら側から立法府のほうに陳情してやったらどうかという御親切な御発言でございますけれども、政府は一体でございますので、国会の尊厳という問題も考えまして、そういうことはひとつ国会のほうで——国会御自身の問題でございますので、私のほうではあまりそこに触れることはいかがと存じますので、この辺のところでひとつがまんをしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/146
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147・八木一男
○八木(一)委員 くだいた話をしているのですよ。政府のほうはほんとうに国民の生活を考えないで、メンツというような変なものがあるんですよ。それからまた、よくそういうことをじっくり考えていない人は、やはり厚生大臣の責任で出された法案について、変えたら厚生大臣気分が悪かろう、そういうような遠慮もあるわけです。内閣総理大臣の佐藤君も気分が悪かろうというような変ちくりんな遠慮が残念ながらあるわけです。だから、あなたのほうは、これは失敗である、この点間違いだ、これはいま撤回して出し直してもいいのだけれども——そうしてもいいのですよ。あなたは撤回されてもいいのですよ。ここで撤回することを議決することをお願いになって、そしてそれを出し直されることもいいけれども、五月十九日までの会期であまり迫り過ぎているから、そうじゃなくても、ここにはりっぱな自由民主党の社会保障に熱心な先生もおられるのですから、おれメンツというよりも、ほんとうに国民のためを考えたいのだ、間違いだけれども、間違いを改めることは政治家の一番大事な任務だ、だから、自分の間違いを与党の理事諸君が直してくれないか、野党の河野さんやそれから吉村さんも直してくれないかと言われれば、われわれも十分な努力をしやすくなる。そうじゃなくてもわれわれはやりますよ。しかしあなたがそう言われれば、与党の方は、厚生大臣がメンツを捨てても頼んでいる、もっと熱心にやろうじゃないかということになる。そういう点で、そういう紋切り型ではなしに、直す努力を払う必要があるわけです。
そこで、直す内容でありますけれども、その直す内容は、ここには「国民の生活水準その他の著しい変動が生じた場合には、」ということが書いてございます。まず第一に、その「著しい」というのを省かなければいけません。「著しい」というようなことではごまかされるわけです。「著しい」の判定は、これは形式的に厚生大臣がなさることになる。それで事務官僚がすることになる。その事務官僚が熱意があっても、その問題をやるについては大蔵省という、こういう問題についてはすぐわかってくれるかどうかわからない、相当実質的権限のあるものがいるというようなことで、これで一生懸命やってみてもなかなかうまくいかないのだ。まあことしはやめておこうかということになってしまっているわけです。実際上そういうふうになっているわけです。これは船後さんもよく聞いておいてください、あなに関係あるのですから。そういうことで、国民のほんとうの権利が侵害されておるわけです。ですから、そういうことでなしにきちっと法律に書いておけば、これは大蔵省の船後さんだって、法律に書いてあるんだから出さざるを得ない。すぐやりなさい。田中大蔵大臣が反対してもそれはいけません。法律に書いてあるんだから反対されるのはいけません。そういうことにするために、これを直さなければいかぬ。「著しい」というのは省く。そうしたら、今度は判定はどうするかといえば、判定については、まあ私は五%と言いたいけれども、いま政府の政策が悪くて、いろいろなことが変動が過ぎるから、何回も、一年に五回も直すのではそれはたいへんだろうと思うのです。物価の安定については政府のほうで一生懸命努力することを期待いたしまして、少なくとも一〇%の変動があったならば必ずその変動の割合に応じて改定しなければならない。変動の基礎はどうするか。これは統計局に資料があります。わが党の案、お読みになりましたか。どうもさっきお読みになっていないようでしたが、あれにはちゃんと書いてありますからね。あなた方御苦労要らない、そのとおり書けばいい。そういうことで、ちゃんと一〇%前後の変動があったら必ず改定しなければいかぬというふうに書く。そういうふうに直すことが必要であります。厚生大臣はそれについて、私の言っていることは間違いであるかどうか。間違いでなければ賛成をされなければならない。賛成をされた中で国民のためにいいことであれば、それを実現するために最大限の努力をされなければならない。それについての厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/147
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148・神田博
○神田国務大臣 先ほど来お答え申し上げているとおり、りっぱな福祉国家をつくろう、こういうことが大きな課題だと私は思います。そういう観点に立って考えますと、八木委員のお話のことは非常にけっこうな考え方であり、私どもも共鳴を感ずる点が多々あるわけでございます。
そこで現実との問題でございますが、これは御承知のように一昨年成案を得まして、そして昨年の国会にお願いした、これは審議未了になった。またこれをいろいろ再検討していると提出の時期を失するおそれがある。むしろこれはこの段階では国会の御審議にひとつゆだねて、そうして慎重審議をしていただく、こういうことがよかろうじゃないかというようなことで、今回、昨年の提案したのと同じものを御審議願っているようなわけでございます。でございますから、私もこの案がこの時点において十分だということで申し上げているのではないのでございます。ただ問題は、しからばここはこうしてあそこはこうだということになりますと、決してメンツにこだわるわけではございませんが、政府側として、ここはこうだああだということは国会の権威に対して容喙がましいことにも触れてまいるわけでございますから、その辺は国会の皆さん方でひとつ御判断をお願いいたしたい、こういうことを先ほど来申し上げているわけでございまして、決して熱意がないとかあるいはひきょうだというのではございません。むしろ奥ゆかしい気持ちで、謙虚な気持ちで私は申し上げておるわけでございまして、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/148
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149・八木一男
○八木(一)委員 わかりました。私が言ったことに全面的に賛成。それで政府のほうの案は不完全であったことをお認めになって、国会の努力でそれが直ることを心ひそかに奥ゆかしく非常に期待をされているということと理解をいたします。このように修正の努力をいたしますから、その事務的な手伝いについては、十分に政府委員を手伝わせるようにしていただきたいと思います。
五時から大臣はどこかに行かれるそうでありますけれども、それで実は厚生大臣、あと五分しかありませんけれども、質問したいことはまだこれからたくさんあるわけです。たとえば、あと年金額の定額部分が少ないという問題、それから定額部分のプラスアルファが三十年でとまっているというような問題、国庫負担が三〇%ぐらいにしなければならないのに、国庫負担を一つもいじくらないで、このような中改正をしよう、そういうようなとんでもない案であるというような問題もあります。それから、積み立て金というものはどういう性質のものであるか、これは明らかに労働者のものであります。それを政府筋や神田厚生大臣もまだ少し間違っておられると思う。積み立て金というものは、完全に労働者のものです。厚生年金保険というものは、国庫負担については、その賦課方式で最後に出ますから、これは積み立て金には関係ございませんけれども、似た制度である政府のほうの国民年金の拠出年金では、国庫負担が積み立て金として入っております。それから厚生年金保険においては、事業主負担が払われておる、それが積み立て金として入る。しかしながら積み立て金というものは、これは事由が発生したならば老齢年金として、障害年金として、遺族関係の年金として、労働者または労働者の遺族に必ずくるものであります。ただ、その事由が発生しない間、大事な金でありますから、大事に管理が行なわるということになるわけです。積み立て金というのは、本来この厚生年金保険は労働者の保険でありますから、この年金に関する限りは純然たる労働者のものであります。その労働者のものが、労働者が管理、運用について権限を持っていない、非常な間違いであります。それが今度は、いま国の管理ということになっているわけです。国の政治が、労働者よりも資本家のほうにはるかに比重がかかっているということで、労働者の権利がそこで非常に圧迫されているという問題があります。しかしながら形式的には国の管理でありますから、政府がその誤った態度を変えるならば、救われる道がございます。しかしながら、その一部が民間の管理に移されようとしている、こういう重大な問題があります。それから調整年金のけしからぬ問題についてもだんだんと論及しなければなりません。そういう問題もあります。管理、運用の問題、それから調整年金の問題等、厚生大臣と非常に質疑応答しなければならない問題を多分に含んでいるわけであります。そういう問題について、どのような点がわれわれとしては断じて賛成できないか、どのようにすべきかということは、わが党案に相当に書いてございます。提案理由の説明には、頭のいい厚生大臣なら読まれたらすぐわかるように書いてあります。きのう提案理由の説明をしたのに、先ほどお読みになっていらっしゃらない。いまはお読みになっていらっしゃると思いますが、それをさらに研究されまして、今度私がその重要な問題について質問をいたしますときに、能率的に、効率的にりっぱな審議が行なわれて、お互いに意思統一が行なわれて、この政府案の決定を直そうという決意を厚生大臣が固められるということになるために、どうかひとつ御研究を願いたい。その御研究を願うところだけでけっこうであります。その前にいろいろかやくをつけて答弁をされますと、また続けて厚生大臣をくぎづけにして言わなければなりませんから、わが党案を十分に今晩中にしっかりと御研究くださるというお気持ちだけを御披瀝願いたいと思います。
〔井村委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/149
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150・神田博
○神田国務大臣 ただいま八木委員から、社会党案を読んでおるかどうか、それと政府案と比べて非常に進歩的じゃないかというような意味のお尋ねがございました。私も拝見いたしまして、社会党の案の内容もいささか存じておるわけでございます。厚生年金にいたしましても国民年金にいたしましても、これは財政の許す限り、諸般の情勢の許す限りできるだけ厚くすることが、私、先ほど来申し上げておるとおり、福祉国家に向いていくという方向からいたしましてけっこうなことだと思います。そういう意味においてはわれわれももっともっと考えもあったわけでございますが、御承知のような今日の段階ではこの程度でひとつ十分慎重御審議をお願いいたしたい、こういうことでお願いしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/150
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151・八木一男
○八木(一)委員 何か厚生大臣の御都合が変わったそうでありますから、引き続いてお尋ねいたします。
まず、年金額のほうに入ってまいろうと思います。年金額について今度二万円年金——非常に乏しい年金だと思うのであります。待ちに待ったというもので、一万円年金ということは乏しいし、特に定額部分が非常に乏しいと思うのです。その定額部分と生活保護との関係についてどのように考えておられるか、厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/151
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152・神田博
○神田国務大臣 先ほど来八木委員からもお話がございましたように、生活保護費が上がってまいりました。これは物価上昇による当然のことでございます。そこで年金額との差が接近してまいったといいましょうか、そのバランスがとれていないじゃないかという御趣旨じゃないかと思います。ここずっと生活保護の基準が上がってまいっておりますから、そういう問題をそういうふうにとらえてお尋ねになると、そういうあらわし方も私は理解できます。しかし、御承知のように年金は長期見通しでやっておりまして、物価の変動等がありますれば、これを直していくという前提で考えておるわけでございます。ことに厚生年金はいま御審議願っておりますが、国民年金については来年度においてひとつ御審議願いますというたてまえのことを、私、るる申し上げております。そういうことは、裏を返せば物価の上昇もあり、また改定年度も来ておる、バランスがとれてないということを言いあらわしていることだ、こういうふうに御理解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/152
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153・山本正淑
○山本(正)政府委員 年金額といたしましては、厚生年金に関する限りにおきましては、定額部分と報酬比例の合計額が老後の生活保障として適当な額であるかどうかというのをそれぞれの時点に立って考え、検討し、また改善していかなければならないものと考える次第でございます。生活保護基準と年金の定額部分の関係につきましては、これは昭和二十九年の改正におきまして、政府原案は定額部分千五百円でございましたが、国会の御修正によりまして二千円となりまして、その後年金のほうが通りましたあとにおきまして、たまたま二千円というワクが当時の生活保護の二級地の扶助額と大体同額でございましたので、定額部分は生活保護に合わしたのだといったような説明も、法律が通過したあとにおいてはあったのでございますが、基本的には生活保護の額と年金の定額部分というものが同じ額でなければならぬというふうな固定的な考え方は持っていないのでございます。やはり年金としてはあくまでも各受給者がもらう年金が老後の生活保障にふさわしいかどうかという角度から考えなければならないし、また定額部分と比例部分との割合というものは、定額部分というものが所得再配分の要素というものを強く持っておりますので、やはり賃金体系がどうなっているかといったような、その時点における諸般の情勢を考えまして、賃金格差の非常に多いというときには定額部分のウエートをやはり高めていくという考え方が必要でございましょうし、賃金格差が減ってまいりますれば必ずしも定額部分ということにそれほど重きを置かなくとも同じ効果が出るという議論も出てくると思います。ただ、社会保障の見地という点がもう一つございますので、そういった点も総合して定額部分の割合なり額をきめていくべきもの、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/153
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154・八木一男
○八木(一)委員 いまの年金局長の御答弁でけっこうです。別に生活保護とリンクをする必要はないのです。リンクをする必要はないし、リンクをするのは間違いであろうと思います。ただ、この定額部分が生活保護よりも少なくてはおかしいということは当然言えると思います。少なくとも生活保護よりも大きくなければおかしいということについて同感であるかどうか御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/154
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155・山本正淑
○山本(正)政府委員 生活保護と定額部分が同額でなければおかしい、定額部分が生活保護を下回るとおかしいという考えでなければいかぬじゃないかという御意見と拝聴いたしましたが、今日の時点におきましてはほぼ同額になっておりますが、先ほど来申しましたような諸事情の上に立って、それぞれの時点において考えるべきものであるから、その点は必ずしも固定的に考える必要はないのじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/155
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156・八木一男
○八木(一)委員 あまり警戒しないで、縦のものを斜めにする必要はないでしょう。少なくとも、いろいろな観点はありますけれども、生活保護の水準と定額部分を比べて、定額部分のほうが多くなければおかしいじゃないか、それはすべての観点を総合する結論としてそう思うのですが、山本さんはどう思われますか、ひとつすなおに答えてください。警戒おさおさ怠りなく言うのじゃなくて、すなおに実感を言っていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/156
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157・山本正淑
○山本(正)政府委員 現在の時点におきましては、やはり生活保護基準と厚生年金の定額部分というものは見合ったものが適当であるということで、さような何がし上回った線で定額部分をきめたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/157
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158・八木一男
○八木(一)委員 ところで生活保護水準については、社会保障制度審議会の答申と勧告があって、厚生省から年がら年じゅう御答弁があって、昭和四十五年までに昭和三十六年の実質三倍でなければならないという勧告どおりやるということはしばしば確認をされておる。それが少し怠けて形式的に三倍の線に、ルートに乗っていくように見えながら、物価の変動を入れていないから、実際、実質三倍のルートにいっていないわけです。これは社会局長の大怠慢で許されないことです。厚生大臣、あなたにも責任があるのですよ。社会局長がいなくてもよく開いてもらいたい。そういうことで実質三倍でなければいけない。それはそう信用しますということは、歴代の厚生大臣が答弁して、内閣総理大臣も答弁しているのです。それにもかかわらず、実質ということを抜きにして、物価の変動をいれない三倍ルートをいって、この計数でいけば、昭和四十年には三十六年の三倍になりますというようなことを言っているわけです。そこに少しインチキがありますけれども、とにかく政府のほうは三倍にするということを言っているわけです。昭和四十五年に完全に一万円をこします。四十五年にあわてて五年目だから、そこで定額部分を一万円にしますという御答弁をなさって、つじつまを合わせられる気かどうか知らないけれども、それまでにいまから定額部分をふやしておかなければ非常におかしなかっこうになる。五千円なんという定額部分ではほんとうに恥ずかしいと思う。五千円というような低い定額部分じゃなしに、いまの観点から、五年後に直せますから、いま一万円にしなくてもいいですが、八千円くらいにしておかなければ、五年目に一万円生活保護になった場合に、一万五千円にするのにぐあいが悪い。いまから八千円くらいの定額部分にしておかなければだめです。何で五千円なんというおよそわけのわからぬ数字を出したか、なぜ八千円にしなかったのか、厚生大臣の御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/158
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159・山本正淑
○山本(正)政府委員 定額部分をなぜ五千円にしたか、もう少し上げるべきじゃなかろうかという御質問の御趣旨と承りました。定額部分は現行法では二千円でございますので、二千円を五千円と二倍半にしたわけでございまして、相当大幅に引き上げた、かように私どもは考えておるわけでございます。
それから、社会保障制度審議会の勧告は、当時の数字では昭和四十五年度六千円、かように相なっております。これも承知いたしております。これは今回五千円にいたしましたのは、相当大幅な引き上げであると思っておりますが、その上になお、現行法には年数加算ということはないわけでございますが、二十年以降につきましても年数加算を設けて、三十年勤続の場合は七、千五百円、かような措置をいたしました。これは通常の勤務状態からいたしますれば、行く行くは三十年なりあるいは三十五年勤続というのが常態になってくるという趣旨もあるわけでございまして、定額分の四十五年までの引き上げにおきましては、さらに、制度審議会の勧告の線に沿って考えるべきもの、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/159
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160・八木一男
○八木(一)委員 いろいろな数字をあげて調べられて、ずっと反駁をされても、そういうことをすると時間がかかりますから……。
四十五年度六千円というのは、物価をあげれば一万円になるのですよ。物価のことを入れて話しているのですから、入れない数字はおっしゃらないでいただきたい。一々それを説明しても、私は決して負けませんからね。負けたようなかっこうで言われると、勝つまで言わなければならぬので時間がかかります。六千円は私の言ったように一万円になるのです。
それから、いま大幅に上げた理由はわかります。上げた事実はわかるけれども、いままでは少なかった。そういう大幅に定額部分を上げたことが政府部内で通ったのは、定額部分を上げなければならぬことが一つの筋道であるということが理解されておるわけです。その筋道を強く通すのを、ある程度にとどめることでとまった。筋道は関係各方面も定額部分をふやしたらいいということで通っているわけです。ですから、もっと勇敢に、五千円でとまって、それで十分だと言わないでやっていただきたいと思う。それから、三十年が七千五百円に定額ふえるのは知っております。そいつのほうはあとで言いますけれども、とにかく三十年については七千五百円にとまっている。二百五十円加算は途中ストップ、そういう中途はんぱです。最低保障といえば、二十年のところの定額部分ということが、一つ大きな要素を持っておるわけです。ですから、五千円で論議をしておるわけです。その五千円を、私どもは八千円、八千円ができなくても、五千円よりはさらに上回る数字が必要でなかったかということを申し上げたいわけです。それについての厚生大臣の御答弁を伺いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/160
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161・神田博
○神田国務大臣 その点につきましては、いま山本政府委員からもお答えしたとおりでございまして、私はそのように理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/161
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162・八木一男
○八木(一)委員 この年金構成は非常にむずかしいのです。むずかしいから、たとえば、各団体のいろんな意見があって——年金という問題は非常にむずかしいので、団体でも専門家おられますけれども、大ぜいの人がいるから、関心を十分持った人もいれば、そうでない人もいるから、総括の意見としては、わりに遠慮がちな団体の要望を中心とした問題で審議される。審議会は、またそれに支配をされるわけです。審議会の答申を重んじなければいけないことは当然でありますが、審議会の方向に従って、政府がより以上に熱心に努力することは、一切かまわないわけです。審議会は、大蔵省がチェックをするから、政府に対して遠慮しているわけだ。これは船後さん、田中角榮君によく言っておいてもらわなければいけない。私は社会保障制度審議会で長年委員をやっており、それに全部参画しておるが、当然こうあるべきだということでみんなの意見が一致しても、これはなかなか政府がやり切れぬだろうということで引っ込める。審議会のとおりやったらいいという問題じゃないのですよ。審議会の方向に従って、審議会の答申したよりもっとよくする、これは政府の責任であります。国会はそういう立場に立って論破しなければならない。ですから、審議会を最低のものとして、それまでは絶対やらなければいかぬ。その方向でやらなければいかぬ。しかし、それがあったから、それより下でいい、同じでいいというような隠れみのに使ってはならない。そういう問題として理解していただかなければならない。ですから、定額部分について社会保険審議会で五千円の答申が出たということは私らもやっております。しかし、それは各団体の遠慮がちの意見の収録であって、五千円では足りない、定額部分はさらに六千円、七千円、八千円とできるだけ多くしなければならないというのが、社会保障の筋であります。これについての厚生大臣の御意見をひとつ伺いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/162
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163・神田博
○神田国務大臣 いまお述べになりましたように、それぞれの審議会の意見を尊重することは、もうこれは政府の考え方であることはしばしば申し上げておるとおりであります。
そこで、問題は、政府の考え方として、審議会の答申以上にやるべきではないかということにつきましては、これは政府においても、それは当然そういう考えであることは間違いないところであります。ただ、問題は、現実の問題となった場合、やはり諸般の事柄がございまして、それになかなか沿いかねるというようなことで、ときに下回ることもあるわけでございまして、それは決して審議会の答申を無視するとか、軽く見るというようなことではございません。上回るだけの意欲を持ちながら、なおそれに近くなかったということがあるとすれば、それはいま申し上げたように、努力をしてやったが、いろいろそれを妨げる事情があってできなかったということで、むしろ政府に同情するというか、鞭撻していただくというか、そういう問題ではないかと思います。私も、先ほど来お述べになりましたように、昭和四十五年度までにという社会保障制度審議会のあの答申、これは私は貴重なものであって、あの御努力、あの展望というものは、大いに尊重して、国力の限度というものが、もしもっと上回ることが許せるなら、それを十分上回って、そうしてこれにこたえなくちゃならぬ、こういうことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/163
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164・八木一男
○八木(一)委員 それでは厚生大臣御所用があるようでございますから、十分にいま言ったことを御研究になって、また次の日にやるときには厚生省として五千円では足りなかった、もっとよくやるようにしなければならない、国会の御努力をひとつ期待しましようというように御答弁がなるように十分に御研究を願いたいと思います。先ほど申し上げました社会党の案について十分御勉強になって、これからたとえば国庫負担の問題なり、それから積み立て金の管理運用の問題なり、特に一番重点である、この政府案の非常な悪い点である調整制度というものをはずす、こういうものはやめる必要があるという点について十分な質問をいたしたいと思いますから、ひとつそれについて御研究をいただきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/164
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165・松澤雄藏
○松澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる三十日金曜日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。
午後五時二十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02519650428/165
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