1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年三月十六日(火曜日)
午前十時十二分開議
出席委員
委員長 吉田 重延君
理事 金子 一平君 理事 原田 憲君
理事 藤井 勝志君 理事 坊 秀男君
理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君
理事 堀 昌雄君 理事 武藤 山治君
天野 公義君 伊東 正義君
岩動 道行君 奥野 誠亮君
鴨田 宗一君 木村 剛輔君
木村武千代君 小山 省二君
砂田 重民君 谷川 和穗君
西岡 武夫君 濱田 幸雄君
福田 繁芳君 毛利 松平君
渡辺 栄一君 渡辺美智雄君
佐藤觀次郎君 只松 祐治君
野口 忠夫君 平岡忠次郎君
平林 剛君 藤田 高敏君
米内山義一郎君 春日 一幸君
竹本 孫一君
出席政府委員
大蔵政務次官 鍛冶 良作君
大蔵事務官
(主税局長) 泉 美之松君
委員外の出席者
参 考 人
(全国銀行協会
連合会会長) 中村 一策君
参 考 人
(日本証券業協
会連合会会長) 福田 千里君
参 考 人
(武蔵大学教
授) 佐藤 進君
参 考 人
(税制調査会委
員) 松隈 秀雄君
参 考 人
(全国中小企業
団体中央会専務
理事) 稻川 宮雄君
専 門 員 抜井 光三君
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三月十六日
委員竹本孫一君辞任につき、その補欠として西
村榮一君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員西村榮一君辞任につき、その補欠として麻
生良方君が議長の指名で委員に選任された。
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三月十二日
証券取引法の一部を改正する法律案(内閣提出
第八九号)
同月十五日
入場税撤廃に関する請願(下平正一君紹介)(第
一四三八号)
同(倉石忠雄君紹介)(第一六七八号)
同(實川清之君紹介)(第一七六〇号)
同(辻寛一君紹介)(第一七六一号)
共済制度の改善等に関する請願(只松祐治君紹
介)(第一四七七号)
酒税法の改正に関する請願(井出一太郎君紹介)
(第一七〇一号)
バナナの輸入関税据え置きに関する請願(野呂
恭一君紹介)(第一七〇二号)
同(仮谷忠男君紹介)(第一七五九号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
所得税法案(内閣提出第八八号)
法人税法案(内閣提出第四九号)
租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第七八号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/0
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001・吉田重延
○吉田委員長 これより会議を開きます。
所得税法案、法人税法案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
本日は、お手元に配付いたしました名簿のとおり、参考人の方々が御出席になっております。
参考人各位には、御多用中のところ御出席いただきありがとうございました。
本委員会におきましては、昭和四十年度税制改正各案につきまして審議を行なっているのでありますが、本日参考人各位より御意見をお伺いすることは、本委員会の審議に多大の参考になるものと存じます。参考人各位におかれましても、何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。
まず参考人の方々より御意見をお述べいただき、そのあとに質疑を行なうことといたします。
それではまず中村参考人からお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/1
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002・中村一策
○中村参考人 ただいま御紹介にあずかりました中村でございます。本日は、当委員会から利子課税を中心とする税制改正について意見を述べるようにという御指示がございましたので、以下簡単に所見を申し述べさせていただきたいと存じます。申し上げる順序といたしましては、まず四十年度税制改正案について申し上げ、そのあと預金利子課税問題に及びたいと思います。
四十年度の税制改正案によりますと、減税規模は、初年度八百十二億円ということで、税制調査会の答申の線を若干下回っておりますが、財源難のわりにはそれほど小さくない規模であると思います。内容的には、消費者物価の上昇による家計の圧迫を緩和する意味合いもあり、所得税減税が中心になっておりますが、企業減税につきましても、法人税率が引き下げられ、内部留保の充実を促進するよう配慮されており、特に中小企業につきましては、税負担軽減のため、中小所得に対する税率の引き下げ幅を一般よりも大きくしたり、留保所得課税を軽くしたりするなどの措置を講じておりますことは、まことに時宜に適したものと考えます。ただ、このような減税措置にもかかわらず、四十年度の国民所得に対する租税負担率は三十九年度に比べて横ばいということで、税負担はさして軽くなっていないように思いますので、今後とも減税には十分に配慮していただきたいと存じます。
次に、租税特別措置について申しますと、まず配当所得課税につきましては、一銘柄について年間の支払い配当五万円までは申告義務を免除したり、源泉選択制を導入して源泉分離課税の道を開いたりしたことは、大衆投資家の需要喚起をはかる意味合いにおきまして、妥当な処置と存じます、また利子所得課税の面では、源泉分離課税の存続や、少額貯蓄非課税制度の限度額引き上げにつきまして御高配を賜りましたことは、貯蓄推進の重要性を加えている折柄、まことに時宜に適した措置と存じます。ただその反面、税率が五%から一〇%に引き上げられたことにつきましては、遺憾に思われるのでございます。少額貯蓄非課税制度は、手続の繁雑さなどもあり、預金者に十分利用されにくい面があることを考えますと、税率の引き上げに伴い、一般預金の実質利回りがこれまでよりも低下することになります。このところ消費者物価が毎年数%ずつ上昇し、これが貯蓄の元本価値や利回りを実質的に低下さしている結果になってきておりますだけに、今回の税率の引き上げが貯蓄増強に悪影響を与えはしないかと心配しております。一部には、これ以上税制面で貯蓄を増強する必要はないとか、利子所得課税に関する租税特別措置は貯蓄増強に直接の影響がないとか、あるいはこれらは租税負担公平の原則に反し、大口資産家を不当に優遇するものだというような御意見もあるようでございますが、私はそうは思いません。いまから二年前の昭和三十八年度に源泉分離課税が一〇%から五%に引き下げられましたが、今日はその当時に比べまして貯蓄増強の重要性は一段と高まっていると思います。第一は、開放体制の本格化に伴い、わが国産業の国際競争力強化が重要な課題になっておりますが、そのためには、企業の設備近代化や合理化、あるいは集約化を進めていかなければなりません。したがいまして、これに必要な資金は、安定成長のワク内においてできるだけ円滑に供給していかなければならないわけでございますが、目下のところ、株式市況は不振でありまして、増資ストップのやむなきに至っている情勢でございます。起債市場におきましても、個人消費等につきましてはあまり多くを期待できません。外資導入にしましても、米国のドル防衛政策上きびしく制限されております。したがいまして、産業資金の円滑な供給はどうしても銀行を初めとする民間金融機関の貸し出しにまつところが大きいと申さねばなりません。
第二に、昨年の経済政策の重要な課題は国際収支の改善でありましたが、ことしは物価なかんずく消費者物価の安定が焦点になっております。そのためには、財政金融政策の弾力的運営や労働力の流動化など、いわゆる構造対策が必要なことは申すまでもございませんが、貯蓄の増強は、消費の行き過ぎを是正し、物価の安定に寄与するところが大きく、また、これは中小企業の近代化資金の円滑な供給を通じて、その生産性向上に役立ち、物価上昇の根因を除去する上に欠くことのできないものと思います。ところで、一部には、わが国の貯蓄率はすでにかなり高いから、もうこれ以上税制面で貯蓄を優遇する必要はないという考え方もあるようでございますが、わが国のように経済成長のテンポが早いと、消費の伸びは所得の伸びに対して出おくれぎみになるのが普通でございますから、経済成長率の低い国に比べれば貯蓄率が高くなるのは当然であります。しかもわが国は戦争で過去の蓄積を失い、また社会保障制度が外国に比べますと、まだ不十分でございますので、国民はみずからの貯蓄をもって将来の変動に備えねばならないといったような事情もございます。それに貯蓄率は高いといいましても、個人の貯蓄残高はまだまだ不足しております。貯蓄増強中央委員会の調査によりますと、昨年六月における一世帯当たりの平均貯蓄目標額は二百八十万円でありますが、実際に持っている貯蓄残高は五十七万円にすぎません。これより見ましても、貯蓄の増強は国民生活の安定の上にかなり大きな意義を持つものと存じます。
次に、利子所得の源泉分離課税が、貯蓄増強にどの程度の効果を持つのかとうい点でございますが、日本銀行の統計によりまして全国銀行の個人預金の動きを見ますと、税制上の優遇措置を強化したときは、個人預金の伸びが大きくなり、反対に優遇措置を後退させたときは、個人預金の伸びが小さくなっていることがわかります。この点につきましては、それは所得水準の高低に関係があるのではないかという御批判があるかもしれません。そこで、同じ所得階層の人をとってみましても、やはり利子課税の優遇度が高まるにつれて貯蓄率が高くなっております。こうしたことを考えますと、利子課税の優遇が貯蓄増強に寄与することは明瞭であると思います。
最後に、利子所得の源泉分離課税は租税負担公平の原則をそこなうかどうかでございますが、公平を害するという考え方の背後には、利子所得は一部の大口資産家の占有物であり、これらとは全然別個に、給与所得や事業所得が存在するという思想がひそんでいるように思います。しかし現実には、今日戦前のような金利生活者はほとんど見当たらないのでございます。日本銀行の統計によれば三十九年九月末、全国銀行の個人預金の九七%は五十万円未満の預金で占められております。この点につきましては、預金者の側から見た総理府の統計にも同様の傾向があらわれております。三十八年末の銀行預金保有額は全都市、全世帯平均では約十四万円、勤労者世帯平均では約九万円にすぎません。すなわち今日の預金は一部の大口預金者の独占物ではなく、給与所得者や事業所得者がしし営々とためたものの集積でございます。つまり、そこでは利子所得と給与所得あるいは事業所得が同居しておるのでありまして、利子所得を優遇することがそのまま給与所得者や事業所得者を優遇することになるわけでありますから、これによって租税負担公平の原則が大きくそこなわれることにはならないと思います。私どもといたしましては、租税理論上の諸原則はもちろん尊重しなければならないと考えておりますが、租税政策は経済政策の一環をなすものでありますから、税制をどうするかということを考えるにあたっては、貯蓄の増強とか、企業の体質改善とか、あるいは輸出の振興といったような経済政策上の要請を十分に織り込むべきものであると思います。
そうした意味で、銀行といたしましては、もちろん自主的な努力を傾けながら貯蓄の増強につとめてはおりますが、皆さま方におかれましても、貯蓄増強に資するような環境や条件の整備につきまして、特段の御高配を賜わりますよう切にお願い申し上げる次第であります。
これをもちまして私の公述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/2
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003・吉田重延
○吉田委員長 次に、福田参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/3
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004・福田千里
○福田参考人 私は日本証券業協会連合会の福田でございます。本日は、税制改正案につきまして、参考人として本委員会にお呼び出しを受けましたので、配当所得に関する今回の改正案につきまして、私の考えておりますところを申し述べまして御参考に供したいと存じます。
私ども証券界では、御存じのとおり多年にわたり個人の受け取る株式配当所得につきまして、課税上利子所得と同様に取り扱われるよう要望してまいりましたところでございます。このたび四十年度の税制改正案において二年間の特別措置をもって配当所得については一銘柄五万円までの配当について、申告免除制度が採用され、また一定の範囲内において源泉選択課税制度が新たに設けられましたことは、利子所得の場合と比較いたしまして、依然開きは残されておるという点はありますけれども、私どもの年来の主張の線に沿った大きな前進でありまして、これは資本市場の国民経済的機能に対する各方面の御理解のたまものと存ずる次第でございます。
開放経済に対処して、今後のわが国経済の安定成長を確保するためには、企業の資本構成を是正して、その経営基盤の強化をはからなければならないのであります。しかるに、わが国経済をささえる企業の資本構成は、近年むしろ悪化の傾向をたどっておりまして、昭和三十八年度下期において、他人資本七四・六%に対し、自己資本は二五・四%に低下しておりまして、わが国の戦前及び欧米のそれに比較しまして著しく脆弱となっております。企業が借り入れ金に適度に依存することは、景気変動に対する抵抗力を弱めるばかりでなく、企業の自主性を欠くこととなり、その国際競争力の強化は期待し得べくもないのであります。
企業の自己資本の充実のためには、一般法人税率の引き下げ等、いわゆる企業減税により内部留保を促進することももとより必要でありますが、現在、高度成長から安定成長へ移行しつつあるとはいえ、世界に類のない成長力を示すわが国経済にあっては、企業がその必要資金を内部蓄積のみによってまかないきれるものではないのであります。したがいまして、内部留保の促進策とあわせて、株式資本の充実をはかることが、この際ぜひとも必要であると存ずるのであります。このためには、資本の蓄積、特に国民の投資意欲を高揚して、その貯蓄性資金を資本市場に導入し、長期産業資金の調達を容易にすることが緊要であると存ずるのであります。
しかしながら、現在の証券市場は必要最小限度の増資すら消化できないという状況でございまして、かかる事態は産業界に重大な影響をもたらすのみでなく、国民経済全般の立場から見ましてもまことに憂慮すべきことであると存ずるのであります。
証券市場がこのような非常事態におちいった原因は、端的には、わが国経済の高度成長のひずみが証券市場にしわ寄せされたことによるものでありまして、利子と配当との税制上の不均衡が、健全な投資市場としての証券市場の発達を阻害してきたこともいなめない事実であります。
すなわち、現在、預金利子に対しては、源泉分離を認めているにもかかわらず、配当所得に対しては総合課税の扱いとなっているため、たとえば表面利回り七分の株式でありますと、年所得八十万円程度の階層ですと税引き利回りは六分一厘となり、百二十万円クラスで五分六厘八毛となり、所得がふえるに従い低下して、課税所得六百万円クラスになりますと実に三分台に低下してしまうこととなり、利回り採算では、株式投資はできないということになり、勢い値上がり期待の不健全な投機が行なわれる結果を招いたものと考えられるのであります。
ことに、今後わが国経済が安定成長期に入りますと、株式投資はかつてのように大幅な値上がりを期待するわけにはまいりかねるのでありましてどうしても利回り採算を中心とした健全な株式投資の機運を醸成し、国民貯蓄の場として、また、長期産業資金調達の場として、資本市場の育成強化をはかることが特に緊要であると存ずるのであります。
今回の配当所得に対する税制改正案は、利子と配当との課税上の不均衡を是正する方向に大きく前進したものと考えられるのでありまして、間接金融の偏重を是正して、証券市場の機能を回復し、ひいては金融市場の正常化に資する上に、今後大いにその効果が期待されるのであります。
利子、配当所得に対して特別措置を講ずることにつきましては、税の公平論からあるいは御批判がある向きもあろうかと存じますが、資本の蓄積を緊要とする日本経済の現状から見まして、ここ当分の間は、国民の貯蓄や投資を優遇することが、開放経済体制のもとにおいて、経済の安定成長を確保するために、ぜひとも必要であろうかと考えるのであります。
以上、簡単に私どもの意見を申し上げましたが、われわれ証券業者におきましても、証券市場のにない手といたしましての責任を深く自覚し、社会的信用の向上につとめ、経営の合理化、投資勧誘態度の改善、過当競争の排除、証券事故の防止等あらゆる努力を傾倒する覚悟でありますので、皆さまの御理解と御支援を切にお願い申し上げる次第でございます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/4
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005・吉田重延
○吉田委員長 次に、佐藤参考人にお願いいたします。佐藤参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/5
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006・佐藤進
○佐藤参考人 武蔵大学の佐藤進であります。
所得税法、法人税法、租税特別措置法等の改正案につきましての意見を、財政学を研究している者の立場から申し上げたいと思います。参考意見を述べる順序といたしましては、これらの三つの改正法案の基礎になった税制調査会の二つの答申について申し上げ、次いで、税制調査会答申と今回の改正法案の関係に触れ、かかる後に、政府案の問題点と思われます利子、配当課税及び法人税、そして所得税の問題についての意見を順次申し上げたいと思います。
第一に、税制調査会のいわゆる長期税制に関する答申でありますが、これは財政学研究者の立場から見てきわめて興味深いものであります。その基本的な考え方には、いろいろな点で問題がないわけではありませんが、わが国の基本的租税制度を国際的評価にたえるような理論的、合理的な角度から改正しようとしている点は高く評価すべきであります。
第二に、昭和四十年度税制改正に関する税制調査会の答申でありますが、これは減税規模を切りつめたり、わが国税制の基本問題の最大のものである企業課税のあり方について、これを整備、合理化するのに失敗した点は不備でありますが、長期税制に関する答申を受けて、利子、配当所得に対する現在の過度の優遇措置を正そうとした努力は評価してよいと思われるのであります。
第三に、ところが今回の改正法の基礎となっている政府案になりますと、きわめて重要な点でいま申し上げた税制調査会答申の基本線が修正されており、今回の税制改正案ほど税調答申を無視したものはないと見られます。その主要な点は、言うまでもなく利子所得と配当所得に対する特別措置の取り扱いであります。
そこで、第四といたしまして、まず利子所得について見ますと、税制調査会四十年度税制改正答申では、源泉徴収率を一〇%に上げるほか、二〇%の税率による源泉選択制を採用し、利子所得に対する総合課税への足がかりをつくろうとしたと見られるのでありますが、政府案では源泉選択制が否定され、答申にない非課税貯蓄元本の五十万円より百万円への限度引き上げが行なわれております。非課税限度の引き上げは、高額所得優遇策にほかならないと思われます。
第五に、配当所得につきましては、税制調査会答申にない一五%の税率での源泉選択制が採用され、また、一銘柄五万円までは確定申告不要、支払い調書提出不要という措置が採用されることとなりました。この種の改正によりまして高額所得者は優遇される一方、源泉徴収率の五%から一〇%への引き上げによって、零細株主の多くは確定申告をしなければ増税となり、いままで以上に不利となります。これが株式市場の発展に貢献するかどうかは疑わしいといわなければなりません。
第六に、懸案の法人課税についての根本的解決が見送られたのはきわめて残念であります。法人税では内部留保税率の一%ないし二%引き下げが税制調査会四十年度改正答申どおり実現されることとなりましたが、国際的に見ましてわが国の法人税負担は高いとはいえず、また今度の税率引き下げが自己資本の強化と企業の体質改善に役立つとは考えられないのであります。法人税のあり方につきましては、先進諸国の立法との比較に基づいた抜本的改革が考えられてしかるべきであります。この観点からいいますと、法人の課税所得を人為的に削減するような特別措置の拡大は好ましくないのであります。今回の税法全文改正、特に法人税法の改正を契機として、法人の課税標準の算定のしかたがこれでよいのかどうかという点等をめぐって、理論的な論議が促進されることを期待したいのであります。
第七に、法人税との関連で見まして、一般所得税の減税に対する配慮が必ずしも十分ではないと思われるのであります。税制調査会答申は、所得税につきましては二千万人をこえるような納税人員には問題があり、そして基準生計費算定には改善すべき点があることを指摘しておりますが、政府の措置は決して十分なものとはいえないのであります。
以上でごく一般的な参考意見を申し上げましたが、最後に第八といたしまして、税制改正の基本的方向に関する私個人の意見を申し上げますと、課税所得のとらえ方につきましては、総合所得課税及び純資産増加説という法律のたてまえどおりに強化することが必要であり、また企業課税のあり方に関しては、法人擬制説、すなわち二重課税排除という立場に固執する限り根本的な解決はなされないといわざるを得ません。諸先進国におきましては、配当の二重課税が原則的に是認されていると見てよく、その前提となっているのは企業の社会的責任についての観念の確立であります。配当と並んで利子に対する優遇も、後進国である日本独自のものでありますが、いまやわが国も先進国の一員となったのでありますから、こうした税制の面でも次第に先進国化の体制を整備していかなければならないというのが、特に私の述べたい点であります。以上であります。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/6
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007・吉田重延
○吉田委員長 続いて質疑に入ります。通告がありますので、順次これを許します。佐藤觀次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/7
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008・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 最初に佐藤参考人にお願いしたいと思います。
いま中村さんや福田さんから利子所得、配当所得の問題で、分離課税の問題が大きな問題になっているのですが、こういう税の体系からいうと分離課税というのはおかしいと思うのですが、教授はどのような御意見ですか、これを伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/8
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009・佐藤進
○佐藤参考人 利子と配当に関する分離課税につきましては、現在の体制が始まりましたのは二年前、昭和三十八年からそれぞれ配当、利子につきまして源泉徴収は五%ということ、利子につきましては分離、配当については総合ということでありますが、五%の源泉徴収という体制になりまして二年間続くことになり、それが配当課税につきましては二年間を経過した現在におきまして、むしろ源泉分離という実質上の分離に近いような形に改正されることになり、私たちの考えでは優遇措置はむしろ強化されたと考えざるを得ないのであります。それらの議論の基礎になりましたのは、ちょうど二年前の三十八年のこの大蔵委員会におきましても、たしか税制調査会の会長である中山伊知郎氏が、当時問題になりました一般減税か政策減税かというような問題につきまして、一般減税が非常に不十分である、税制調査会の答申を無視して非常にけしからぬという不満を述べていたと思います。当時の利子、配当所得につきましての税制調査会の答申というのは、これらの配当所得についてはむしろ源泉徴収率を二〇%にするのが望ましい。それから利子所得につきましてはせいぜいあと一年だけ、三十八年だけ特別措置を延長する、そういうようなことになっていたわけですが、それがやはり証券業界並びに銀行業界の強い希望で二年間延長され、二年間延長されてそれが今度はもうなくなるかと思いましたら、これがさらに拡大強化されるような形で存続される。それらについてやはり私どもといたしましては、税制調査会の答申それ自体全面的に賛成ではございませんが、利子と配当に関する限りにおきましては、やはり税制調査会のこの数年来の答申の基本線というものは尊重するという方向にいかなければ、政府がそれに審議をまかせている税制調査会の権威をますます失墜する、そういうふうに考えるわけであります。利子及び配当の特別措置がなぜ悪いかというのは、財政学の立場から申し上げますれば、総合所得総合合算課税というのが所得税の基本原則であります。特に利子と配当に関しましては、これらは最も大きな担税力を持った所得である。それらについてはこれを特別扱いするときは所得の不公平がますます拡大するというようなことで、現在先進諸国のそれぞれの例を見ましても、配当利子についてこれほど優遇措置を施しているところはどこにもない。たまたまイタリアが配当分離課税を行なっているというようなことをいっておりますが、この場合でも源泉徴収率は三〇%というような高い税率であります。それ以外の国におきましては、すべて配当も総合合算して累進税率で納める、配当に対する優遇措置は行なわない、そういう点を考えますと、やはりこれをいつまでも延長するということは好ましくないので、少なくとも何かのめどをつけて廃止する、こういう時期に現在はきているのではないかと考えられるわけであります。簡単でありますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/9
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010・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 お隣に泉主税局長が聞いておられて耳が痛いと思うのでありますが、私らは、大体が税制調査会であれだけのことがきまり、この間中山さんが見えたときにも、今後は絶対そういうあれじゃないような御意図を言われたのですが、ほかの方法はあるとしても、やはり税の公平という立場から考えて、利子と配当のあれはあとでまた質問しますけれども、どうも不公平を拡大のではないかということが考えられて非常に遺憾に思うのですが、その点はどうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/10
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011・佐藤進
○佐藤参考人 それにつきましては、このたびの税制調査会のいわゆる長期税制に関する答申という文書の二十四ページにこのように書いてございます。読みますと、「利子配当課税の特例等資産所得に対する租税特別措置は、一部の高額資産所得者を著しく優遇するものであって、この措置に伴って生ずる弊害が大きく、しかもその弊害を償うに足るほどの政策的効果も実証し難いので、これを廃止すべきものと考えられる。」このとおりに私も考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/11
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012・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 中村さんにお尋ねするのですが、いままでこれは銀行業界からかなり強い要望があったと思うのですが、この貯蓄の増強ということが大事なことでありますけれども、しかし貯蓄のできないもっと悲惨な大衆があるということも考えていただきたいと思うのです。
そこで、このような分離課税がずっと認められていけばどんどん貯蓄がふえると思われておるのか、これは全体の比例からは、実際いまあなたが御説明になったように、なかなかこれはわからぬことでございますけれども、ただ貯蓄の増強ということばだけで、この税の不公平の問題を行なおうということは、どうもわれわれは気に入らぬわけですが、その点はどのようにお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/12
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013・中村一策
○中村参考人 先ほど公述で申し上げましたように、この前の五%のときに比較いたしまして、現在は一そう貯蓄の増強が必要になっていること、それからもう一つは、先ほど申し上げましたように、昨年は国際収支の改善ということに焦点があったのですけれども、ことしは物価の上昇をどういうふうに押えるかということが非常に大事なことになってきておるわけでございます。それで私どもは何とかして貯蓄の増強をしなくちゃならぬというふうに考えておるわけでございまして、分離課税をまた五%存続を特にお願いしたわけでございます。
それでいま、これをやれば貯蓄が増強するか増強しないかというようなお尋ねがございましたのですけれども、貯蓄増強については、税の問題その他いろいろな問題があると思うのであります。中でもやはり税の税制面からの優遇措置というものは、非常に大きな影響力があるものと私は確信しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/13
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014・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 それは税金を取られるより取られぬほうがいいにきまっているので、国民だってだれだって税金なんか取られたくないけれども、やむを得ず納めておるわけなんです。銀行はもともと貯蓄が原則でありまして、貯蓄しなければ銀行は成り立たないわけでありますから、それはそうでありますけれども、どうも私たち考えまして、これは高額所得者のほうに有利で、大衆には何も関係のない人もあるということを考えて、いま佐藤教授が言われましたように、税の体系からいってもおかしい。これは世界的に見ましても、日本のような場合は非常に少ないのでございますから、これは十分に検討していただきたいと思います。
それから福田さんにお尋ねしたいと思うのですが、何といってもいま証券界は不況で、われわれも同情しておるのですが、しかし、普通なら分離課税――今度配当所得が一〇%まけてもらえば証券界が急によくなるかということにはわれわれは自信を持てないのですが、いま証券が不況であるということはあなたからおっしゃったように、これは池田さんの失敗の結果だと思うのです。そういう点で、こういうような不公平な税金の取り方をやめても、せっかく証券のためにやっても、証券が急によくなるというようには思われないのですが、その辺あなたはどういうふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/14
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015・福田千里
○福田参考人 われわれが源泉分離、つまり源泉選択でなしに分離を要望したのは、全く利子所得に対する税制と同じようにしてもらいたいということからしたわけなんでありまして、なぜまたそういうふうにしなければいかぬかということの理由は、先ほど中村さんがおっしゃったとおり、これは利子所得の場合と同様でございます。
いまお尋ねの点は、これによって証券界が、それじゃ非常によくなるかどうかというようなお尋ねでございますが、これは現実の姿におきまして、まことに御承知のとおりの証券界は非常に不振な状態なんですが、昨年の場合とことしの場合とはちょっと違いますので、昨年はあくまでも需要供給の関係から供給過多というようなことで需要がこれに伴わない。むしろ需要が非常になくなってしまったといういうなところから不振をきわめた。そこで、供給過多を何か押える方策を立ててやったわけなんです。いろいろの方策を立てたんですが、ことしになりまして一応よくなりかけたんです。これにはいろいろの事情もありますけれども、税制の特別措置もまずそういうふうになる見込みだということが十二月の末ごろにわかったところから、それを先見して、確かにそれもよくなった一つの理由になっておるのですが、その後に昨今また悪いのは、これはいわゆる業績悪、いろいろな会社がつぶれるような、倒産するようなことが盛んにできてくる。これによって業績の不安というもの、それからそれへといろんな、配当も減配するんじゃないか、あるいは無配になるんじゃないかとか、いろいろなことを想像されるんで、そういう業績不安相場というものが出ておるんで、ここで昨今はまた再び悪くなっておるわけなんです。悪くなっておるというのは、つまり値が安い、高いというよりも、むしろ需要がこれに伴ってこなくなったということなんですが、そういうあんばいで昨今の情勢はちょっと悪いんですけれども、これはそういう別な理由で悪いんでありまして、ここでこの特別措置が国会を通りますと、必ずその効果はあらわれるものだということをわれわれは確信しておるわけなんです。決してこれが一向何も役に立たぬじゃないかというようなことはないと思うのです。全く大きな柱が立つものだとわれわれは思っておるわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/15
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016・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 もう時間の都合上で最後にしますが、ちょうど三年くらい前に、いまの中村さんのところへ金子さんがすわっておられて、隣に証券代表の小池さんがおられた。そのときには、証券よ来たれ、銀行よ去れ、そういうときがあったんです。そのときには配当の分離課税なんかなかった。だから、私は、それはやれば何か刺激にはなると思うのですけれども、こういうことによって必ずしも証券がよくならぬと思うのですが、その点をどう思われているか。あなたはいま非常に、会長としていろいろ苦労されておるということはわかりますけれども、私はそういうことだけでいまの証券がよくなるということを考えておりませんので、その点はどうか、最後にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/16
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017・福田千里
○福田参考人 証券がよくなるとか悪くなるとかということがこの税制の目的じゃないと思うのです、今度の改正のあれは。これはあくまでも資本蓄積の増強ということ、これが国民経済上必要だという観点からと思われますので、われわれもそういうふうに、何も証券界の商売が繁盛するとかしないとかいう問題とは違うんで、国民経済的な立場からこれが絶対必要だ、こういう資本蓄積の増強ということが大事なことであるというところからわれわれも主張しておるのでありまして、これは一証券界のためとかなんとかということじゃないと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/17
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018・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 そういうことを言うと一口言いたくなるんだ。あなたは盛んに大蔵省を追及して、陳情して、何とかしてくれということをやかましく言っておいて、あなたたちは、これは泉さんなんかにも言いたいんだが、税制調査会からどういう答申が出たということは御存じでしょう。しかるに、あなたのほうで、いかにも証券の側の人が大きな国家的な見地でやったなんて、これはうそですよ。そんなうそを言ったってだめですよ。そんなことを言わぬで、正直に、率直に言ったほうがあなたの立場としてはいいじゃないか。これは泉さんなんか苦しい立場に追い込まれて、われわれがこうやって質問すれば、いま佐藤教授が言われれば、腹の中ではつらいなと思って見えるんですよ。それをあなたが心臓強く、いかにも国家的な立場でやった、そんなうそは言わぬでほしい。率直に、こういうことをやってもらわなければ株が下がるし、困ると言ったほうがむしろ私は参考人として正直だと思うが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/18
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019・福田千里
○福田参考人 いや、それはわれわれの立場から申しましたけれども、これはあくまでも私どもは資本市場のにない手としての立場から申し上げておるんで、商売繁盛とかなんとかということは、それはむろん商売繁盛のほうにも結びつきますけれども、しかしわれわれの立場はあくまでも資本市場のにない手という立場から、株主、つまり資本市場の投資家の立場から申し上げていままでもまいりましたが、いままですべてのところで申し上げて要望してきたのは、そういう理由を十分に書いてやりまして、それでやってきたんで、経団連をはじめ、産業界の方々にもそれはそうだということで産業界の一員としてわれわれは声を大にしてこれを要望してまいりましたので、その点ひとつ誤解のないように……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/19
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020・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 もう一口言わしてもらいます。
どうもいろいろ回りくどいお話なんですけれども、あなた自体はやはり証券会社の社長をやっておられるし、同時にあなたは証券業協会の会長として、やはり自分の業界をよくしよう、発展をさせようということを考えなければ、やめてくれと言われますよ。やはり業界のことも代表して来ておられるのだし、われわれもそういう目で見ているのですから、あなたに抱負経綸があることをわれわれがここで問題にすることはないのですが、率直に配当の分離課税は、やはり業界にいいことがあればこそ言われているし、いろいろわれわれも知っているわけなんですから、そういう点であまり表向きのあれを言わないで、すなおに受けてもらいたいということを申し上げて、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/20
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021・吉田重延
○吉田委員長 堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/21
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022・堀昌雄
○堀委員 中村参考人に最初にお伺いをいたしますが、今度利子も御承知のように分離課税、一〇%に上がりましたが、残されております。今度は配当は、源泉選択の分離課税と、五万円までの確定申告不要という制度が取り入れられることになりました。私どもは実は分離課税全部反対でございます。分離課税全部反対でありますが、特に配当課税に反対してきたのは、利子と配当はやや性格を異にするという点、一日の差があるという考え方なんです。利子というのは、預金をした者に対しては定額の利子しかないわけですが、株式というのはキャピタルゲインがあるのですね。しかしそのキャピタルゲインは現在税法上では税がかからない。それからある程度の譲渡所得、キャピタルゲインを実際得るための、それが評価益を出すための譲渡の場合も、非常に多くの場合はかかりますが、大体においてはあまりかからない、こういう仕組みになっているわけですね。そこで、利子と配当を同じように分離課税にするということは、分離課税は反対だけれども、この二つだけを分離課税のワク内で見ても利子の側から見て著しく不公平な措置ではないか、こういうふうに思うのですが、銀行協会長として、要するに利子と配当の本質的な相違及び利子側から見た配当所得の不適正な部分についてひとつ御意見を伺いたい発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/22
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023・中村一策
○中村参考人 二年前に比べまして、利子のほうは五%から一〇%に後退をした、配当のほうは、先ほどお話がありましたように、ある程度前進をしたということは、これは事実なんです。ただ私はいつも考えているのですけれども、特別措置はあくまでも経済政策の一環として、そのときの情勢を十分に考慮し織り込んで考えていかなければならぬというふうに考えております。どうも利子と配当とは少しアンバランスではないかというような御質問でございますけれども、私は、先ほど申し上げましたように、経済政策の一環として考えれば、資本蓄積を増強する、それからまた証券市場、ひいては資本市場の育成という観点から見まして、これがアンバランスだと言い切れない面もあるように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/23
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024・堀昌雄
○堀委員 きょうは中村さん、銀行協会長としておいでになっておるのですから、私は、中村さんの御意見は、銀行の関係者はひとしく注目をして実は伺うことになると思うのです。ですから、やはりその銀行の人の立場は、理論的に明らかにしていただきたい。政策的な問題はこれは国の問題等でございますので、私はまず理論的に、税制というものは本来理論的な面がやはり一本筋が通らなければならない問題ですから、その点で実は池田総理に私は二回、当委員会及び本会議で質問いたしましたときも、池田さんは税制の筋を守ろうという立場から、利子はやむを得ない、自分は反対だけれども、現在の資本蓄積のときに利子はやむを得ないけれども、配当の分離課税はしませんということを、二回約束してきたのです。ですから、それは何かというと、いま私が申し上げたような、利子と配当というものは本質的に違うんだという角度に立っていたと私は思うのです。ですから、この点はやはり全国の銀行関係者がひとしく注目をする問題でございますので、ひとつ理論的にもう少し御解明をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/24
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025・中村一策
○中村参考人 先生のおっしゃるような点につきまして、利子と配当とは性格上違うということは、これは……。ただ、これをアンバランスかどうかということを理論的に説明しろと言われましても、まあ先ほどのお答えでごかんべん願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/25
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026・堀昌雄
○堀委員 具体的な例をあげて、私ひとつ非常にアンバランスな点を申し上げておきます。いまのキャピタルゲインなり譲渡所得の問題を離れまして、いまの税制上のたてまえから見ますと、実は夫婦子供一人の三人世帯で年収六十万円の人の課税状況を一応調べてみますと、全部が給与所得でございますと、所得税と住民税とで年間二万三千五百八十六円課税になるのです。農業の所得者でありますと三万六百七十四円、一万八千六百八十円という住民税がございまして、これが四万九千三百五十四円になります。これが商業所得者の場合には、事業税が一万八千円加わりまして、六万七千三百五十四円になります。配当所得だけの場合には、配当控除が作用いたしますから、わずかに千百四十八円という地方税だけになるわけです。そこで、配当のみを有する者の課税最低限というのは、三人家族でございますと百五十八万七千八十円になります。そこで、百五十八万七千八十円というものを給与所得者が取ったとすれば、二十七万三千三百十円の税、農業所得者ならば三十二万四千八百三十八円、商業所得者ならば三十九万二千百八十八円、配当だけの場合にはわずかに二万百二十円の地方税でございます。利子所得でございますと、これは十五万三千九百八円、同じ場合でかかるのです。ですから、利子所得は、少なくとも税制上配当控除のような制度を持っておりませんから、なるほど給与所得や農業所得に比べると著しく安い、半分くらいになりますが、しかし配当所得に比べれば、七倍の税金をやはり分離課税でも払うという仕組みにいまなっておるわけであります。ですから、これは利子と配当というものは、本質的に配当控除の制度があるだけでも非常な相違が実は税制上あるわけです。今度の制度は、配当控除はそれなりに認めるわけですから、配当控除をやって、その残りについて五万円の確定申告不要の制度を使って、ものによっては五十万円の一五%の分離課税も使えるんだ、三本立てで、ともかく税制の一番いいところをより取り見取りでとって、キャピタルゲインが入って譲渡所得はかからない。こんな税制は、実は税制ではあり得ないと思う。ともかく世界じゅうにこんな税制はないのです。これは私は、少なくとも銀行の側からごらんになったら、重大問題だと思うのです。それはなぜかといいますと、日本の貯蓄全体の問題というのは、実は税制上の問題としてはあまり問題になっていない。いま協会長は、税制の変更があったときには貯蓄が非常にふえているのだ、こういうお話でございますが、これは税制調査会のほうも資料を出しておりますけれども、昭和三十八年に一〇%から五%に分離課税がなりましたときに、なるほどこれは国民所得に占める個人貯蓄の割合というのは、ふえたわけです。しかし、これがふえたのは、税制のせいかというと、私はそうはあまり見ていない。これは証券市場が非常に不振になりまして、個人の貯蓄性預金の中身を見ると、日銀が資料にして出しておりますけれども、五年、六年は、もう非常な勢いで証券投資信託に金がいったものですから、銀行の貯蓄性預金は下がっておりました。これがまた返ってくるものだから、ここで非常に上がってきたという、そういう外的要因といいますか、税制上だけで問題は解決されない、こういうふうに見ておるわけです。
それからもう一つ、先ほどのお話の中で貯蓄の全体の問題についてお触れになったのですが、日銀の資料で見ますと、全国銀行の昭和三十九年九月末の定期性預金の口数は、十万円以下が千九百七十万口ぐらいございます。そして、それに対して無記名預金はわずかに八万五千口ぐらい。それから、十万円以上五十万円未満の口数が、千九十三万でございます。それに対して、無記名定期は十九万六千と、倍ぐらいにふえております。五十万から百万の口数は、今度は十分の一に減ってまいりまして、百九万ぐらいに、がたっと減るのでございます。今度の税制改正で少額貯蓄免税が百万円に引き上げられることになりました。ですから、一〇%の分離課税の恩典に浴するのは、百万円以上の貯蓄を持っている人でないと、恩典に浴さないわけでございます。百万円以下は少額貯蓄免税でございます。そうすると、百万円以上の貯蓄は、百万円以上一千万円までは、個人の記名預金が三十四万一千、無記名が二十万一千、五十四万口の人が初めて一〇%の分離課税の恩典に浴するわけです。それから一千万円以上は、四千二百口と千九百口でありますから、約六千口ぐらいが恩典に浴する、こうなるわけでございます。この中で、私はなぜ無記名預金の名前をあげてまいりましたかと申しますと、無記名預金というものは、高額部分というものが非常にふえてくるのです。低額の貯蓄のほうは、無記名というのは非常に少ない。ですから、例をあげますと、百万円以上のところは三十四万一千に対して二十万一千という割合で、約七割に相当するものが無記名預金になっている。同じようなことは一千万円以上についても言えます。これが五十万円以下になりますと、一千万口に対してわずか十九万口でございますから、二%ぐらいしか実はないのです。このことは、高額貯蓄者が源泉を秘匿する、要するに自分たちの所得がどこからきたかというものを秘匿したいということのあらわれだと私は思うのでございますが、源泉分離課税というものが、単に一〇%の分離課税にして税金を安くしてもらうという点ならば、まだ私は許し得るところがあるのですが、一番私どものおそれますのは、各種の脱税をされた預金というものが、源泉秘匿に名をかりて、分離課税としてこういうところに入ってくるというのは、これは私ども税制上いかがかと思うのであります。ですから、先ほどいろいろお話がありましたが、実際は五十万口ぐらいしかきかない。全部の口数は三千万口ぐらいあるわけですから、ごく少数のために分離課税が行なわれることは、私どもは、税の公平上からいかがであろうか。これは私は日本の貯蓄にそんなに大きな影響があるのでなくて、ディスメリットのほう、税の公平を阻害するほうがずっと多いのじゃないかという点を心配しておるわけですが、それについての中村さんの御見解をひとつ承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/26
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027・中村一策
○中村参考人 貯蓄の増強について分離課税の必要であることは先ほど申し上げたとおりでございます。ただいま無記名定期預金のことにお触れになったのでございますが、それは昭和二十七年から行なわれておる制度でございまして、当時は非常に復興期でございましたので、貯蓄の増強を優先すべしというふうな考え方から、この制度ができておったのでございます。私の申し上げることは理論的でなくて、どうも政策的に考えられるというふうな点もございますけれども、当時に比べていまも非常に貯蓄増強は必要なのでございますから、この無記名定期預金はもう少し大きな視野から認めていただければ非常に幸いだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/27
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028・吉田重延
○吉田委員長 春日一幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/28
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029・春日一幸
○春日委員 一、二点だけ中村参考人にお伺いをいたしたいと思います。
ただいまも佐藤教授からお述べがありましたように、やはり税制には財政政策上の要請と産業政策上の要請がある。しかし今回のこの利子所得にしろ、配当所得にしろ、特別優遇措置が、格段には産業政策上、これによってマイナスを生ずる財政政策上それを補うことができないように思われるという意見の開陳がございました。そこで、私はその点についてお伺いをしたいのでありますが、財政政策上の要請は、所得のある者には課税をなす。担税力強き者に重く、弱き者に漸次これを薄めていくという、この基本的な原則の上に立って、なおかつ特例として産業政策上これらの措置を講じよう、こういうところにあると思うのでございます。
そこで中村さんにお伺いしたいことは、お述べになったところによりますと、増資が抑制されておる段階において産業資金を供給するためには、金融機関のになうべき役割りが非常に重くなったと目すべきである。したがって、その供給する原資を調達するためには、どうしても貯蓄の増強をはからなければならない。こういう自負の上に立たれてこの要請が強くなされておる、こう私どもは伺うのであります。
そこで具体的に伺いたいことは、この特例が財政政策上の制約を押えてなおかつ要請されるのは、すなわちもっぱら貯蓄増強のためのものであるのかどうか、この点をひとつ明確にお答えを願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/29
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030・中村一策
○中村参考人 企業経営の健全化のためには、もちろん自己資金の充実が必要であります。自己資金を充実するにつきましては、増資その他の方法がございますけれども、現在の状態においては先ほど申し上げましたように自己資金の調達がなかなか困難な環境にあるわけでございます。中小企業が急に増資をするとかいうことはなかなか困難でございますので、どうしても銀行借り入れに依存しなくてはならないと私は考えておるのでございます。その意味におきまして、預金の増強が特に必要だというふうに考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/30
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031・春日一幸
○春日委員 産業政策上企業に対する資金供与の使命をになうものは当面金融機関である。したがって金融機関がその企業資金を供給するためには資金を持たなければならない。だから貯蓄増強が必要である。これだけの理由でこの特例措置を求められるものといたしますならば、そこで私はお伺いしたいのでありますが、この制度を存続することによって貯蓄量の増減には一体どの程度のものを具体的に見込まれておるのであるか、その額をひとつこの際お伺いしたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/31
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032・中村一策
○中村参考人 その額についてと言われましても、なかなかむずかしい問題でございますけれども、ちょっと付言いたしますと、この特別措置は先ほどは資金供給面から必要だということを申し上げておきましたけれども、また一方においては個人の生活の安定という点についても非常に必要であると考えております。現在日本のように社会制度が非常におくれているようなところでは、どうしてもしばらくは貯蓄が非常に必要であるというふうに考えておるわけでございます。金額が幾らということについては……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/32
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033・春日一幸
○春日委員 財政政策上の強い要請を押えて、産業政策的にあえて堂々とこのことを要求されるからには、少なくともそれだけの根拠がなければならぬ。またそれを実証するだけの論理が明確でなければならぬと思うのでございます。したがいましてこの制度を存続する場合とこれを廃止する場合と、やはり貯蓄の実額に影響がなければならぬ。影響があるから存続しろと強く要求されておるのでございますから、したがってその影響をするものとして大体推測される額はどの程度のものであろうか、私はその程度の推算なくしてこのような政策を要望されることは、いうならば不当なことであると思うのでございます。ただ漫然と多々ますます弁ずという程度のことならば、これは財政政策上の制約を乗り越えて特殊の産業政策としてこの主張をされるについて説得力が乏しいと思う。やはり実額はどの程度のものでどういう影響を持つのであるかということは、われわれが法案を審議する上において一つの大いなる賛否のキーポイントになると思われるので、この点おわかりでありますならば御明示を願いたい。全然おわかりでないならば、ムード的に主張しておるにとどまるものであるということがわれわれに理解できればそれはそれでよろしゅうございますから、いずれかをこの際明確にひとつ御答弁を願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/33
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034・中村一策
○中村参考人 金額的には申し上げることはなかなかむずかしいと思いますけれども、そのときの経済、金融の状況その他貯蓄対象の動向など、いろいろによって影響されるものでございます。金額的にはいまちょっと調べたものはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/34
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035・春日一幸
○春日委員 時間がまいりましたから、それでは結論的にちょっと福田さんにもあわせてお伺いをしたいのでありますし、また佐藤教授にもあわせて御意見を伺っておきたい。その御意見はわが敬愛する中村さんも聞いて帰っていただきたいと思うのでありますが、産業政策上特に企業に資金を供与しなければならない当面の使命を金融機関がにのうておる、だからその原資を多々ますます確保しなければならぬ、こういう意味合いのことを冒頭意見としてお述べになりました。そのことは、結局は、言うならば企業の金融依存度を増勢する形にはならないか、すなわち金融機関のオーバーローンと企業のオーバーボローイングを激化する結果になってはまいらないか。そこで、さて片方福田さんのお述べになりましたそれぞれの企業の資本構成、これは欧米のそれに比べて極端に悪い。自己資本が二五%で他人資本が七五%である、これはすみやかに改善改革をいたさなければならぬとお述べになったように、これは自民党内閣の数年にまたがりまする高度成長政策がわが国の経済をこんなふうにかたわにしてしまったのだとお述べになりました。自民党の諸君はこれをお聞きなって相当ざんきにたえない責任を痛感しているであろうとは思うのでありますが、だとすれば、産業政策と財政政策とここに二つを置いて考えまするときに、最もすみやかに企業における資本構成、資本の構造、これを改善、改革することが第一義の要諦と考えなければならぬと思うのです。だから私はこの産業政策上の立場に立って税制を案ずるならば、財政政策上の要請をこの際全然これを押えて、そうしてその資本構成をいかに改善改革をはかるべきであるかというこの一点に立って案ずるならば、結局は金融の依存度をなくして、そうして大衆の資本参加の道を容易に開いていく、すなわちこのことは、利子所得を不利にして、そうして配当所得を有利にしていく、こういう思い切った産業政策が税法上においてとられまするならば、極端にこれを――端的に言うならば、利子所得は全部廃止してしまって、そうして配当所得に対する優遇措置を多々ますます弁じていけば、結局は大衆の預金は減るけれども、減った分だけは証券市場に参加してくる、こういう形になってくると思うが、この点についてひとつ佐藤教授から御意見をお述べいただいて、これに対して福田参考人からも御意見をいただいて、中村先生はそれを御拝聴願ってその後に御意見をお述べいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/35
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036・佐藤進
○佐藤参考人 税制上の特別措置と、それから貯蓄増強にどういう関連があるかという問題につきましては、これはもう数年前から税制調査会のほうでかなり詳しい調査をし、それに応じた結論が出ております。それによりますと、個別的な利子所得の優遇というものは直接貯蓄の増加につながるということを実証できない。むしろ貯蓄の全体の増強というのは、国民所得の増大と、それから国民所得の中で可処分所得つまり個人が自由に処分できる所得、それの増大に応ずるだけである。そういう意味において個別的な優遇措置は好ましくないというふうに考えられるわけであります。これはそのとおりのことでありまして、ただいま質問者が申されましたように、利子所得を優遇すれば銀行預金はふえるかもしれないけれども配当は減る、配当が優遇されれば配当のほうに預金が移るというようなことで、全体としての預金の増加には何ら影響を及ぼさない、そういう程度のものではないかと考えられるわけであります。利子、特に銀行、それから配当それぞれの優遇が一年おきくらいに、一方では利子、一方では引き続いて配当ということになり、それと同時に企業の税負担、法人税改正におきましても同じような問題で、法人税内部留保分と、それから配当分の優遇、それぞれ去年は配当所得に対する法人税率は二%下がる、ことしは内部留保税率は一%下がる。それらの効率といたしまして、法人税を下げれば内部留保が減る、これは企業の体質改善に役立つ、それから配当を優遇すれば自己資本の強化に役立っ云々ということがいわれるわけでありますけれども、それらの基本的な方針ついて、政府のほうでは一体どちらを優遇しようとしておるのかという点がきまってない。内部資金でやるのか、外部資金でやるのかという点につきましても明確な方針がない。はっきりした政策、方針もなく、経済的効果も実証されないまま、全体として企業の負担がだんだんと縮小され、それが個人所得税なり何なりに転嫁されていくという形になっておるのではないかと思います。企業の体質改善あるいは資金ポジションあるいははオーバーローン、そういうものを是正する方法というのは、個別的な税制措置では速効を果たすことはできないわけでありまして、これを正そうとすれば、結局はやはり質問者が言われたような高度成長政策の問題になります。この際経済成長率が下がり、同時に設備投資に対する資金需要が下がれば当然借り入れ金が減り、それに従って自己資本の強化あるいは内部留保による産業資金の調達というノーマルな形になって戻っていく。これはもっぱら経済全体の推移、それに対する政府の経済政策に依存するところが多い、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/36
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037・福田千里
○福田参考人 先ほどの春日先生の御質問に、利子のほうの優遇措置を不利にして配当のほうを有利にするというようなお話がございましたので、たいへんおもしろく拝聴いたしましたが、私どもはそうは考えておらないので、初めから同じに――プールの中にある水を両方のポンプで吸い上げて、そのプールの水はそれきりなくなってしまうという考え方ではないと思うのです。利子所得にしても配当所得つまり銀行預金にしても、それから株式貯蓄にしても、あくまでも同じ貯蓄としての考え方で同等にやるべきではないか、やってもらいたいものだということで、いままで一方だけが優遇されておったのを、一方だけでなしに双方とも同じようににしてほしいということから出ておる考え方でありまして、何の形態にするかということはあくまでも個人の自由である、ですから貯蓄増強も必要だし資本蓄積も必要だし、両方とも同じように必要であるということに考えたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/37
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038・中村一策
○中村参考人 自己資本の充実ということはわれわれが当然考えることでありますが、現在の段階においては自己資金充実を急速に行なうということはなかなかむずかしいと思います。いま先生のおっしゃいましたように、片方を冷遇して片方のほうへ優遇すればいいじゃないかというような御指摘がございましたけれども、現在の段階においては先ほど福田さんのおっしゃいましたように、両々相まって、経済の安定をはかっていくのがいいじゃないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/38
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039・春日一幸
○春日委員 では中村さんけっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/39
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040・吉田重延
○吉田委員長 中村参考人には時間の御都合がおありのことですから、どうぞ御退席してけっこうでございます。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/40
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041・春日一幸
○春日委員 私は御両所がそういうふうな社交的な御意見をお述べになっておりましては、私の質問に答えていただいた形にならないのであります。私が申し上げるのは、利子所得、配当所得の問題は、やはり大衆資金のそれぞれ金融機関への導入、あるいは証券市場への導入というこの方法論の上に立って、いろいろと均衡論が基礎をなして論じられてまいったわけでございますね。こういう中では銀行へ預金がいっているけれども証券市場へ金が流れてこないのだ、だから均衡論の上に立っていままで論じられてきたのですね。ただ両々相まって同じようにという形になれば、産業政策的な意味をなさぬと思うのです。大衆の金というものは一個のものだから、片方へいけば片方へはいかないのでございますから、だからやはり両々相まってくるというような形を論ずるならば、やはり所得のある者には課税をなすという基本論にそれを戻さなければならない。大衆の金というものは一つのものである。これが預金にいくかあるいはしからざればこれが証券市場にいくか、二つのものでございますね。金というものはほかにはいかないと思うのであります。だからそういうような場合に、片方が有利、不利という形では困るから、均衡ある税法上の措置をとれということが、いわゆる金融機関の要請であり、あるいは証券業協会の御要請であったと思うのであります。平均してやっているということになれば、私はその基礎をなすもの、すなわちもとに戻らなければならない。同じことであるならば、すなわち所得のある者に課税をして、そうして担税力のある者に重く課税をなしていく、こういう税法上の基本的な理論に立って、執行されていかなければならぬと思います。そこで産業政策上の特別の考慮を加え、その効果をねらうとするならば、やはり資金がいずこへ流れて、そうしてその効果をいかにおさめていくかという、ここに問題が分かれてくると思うのです。だから私は、わが国経済というものが、経済活動というものが立体的に多元的にいろいろな要因によって動くものであるということはわかっておりまするが、ただ私がいま論じたいことは、わが国の産業構造をいま達観するならば、何といっても高度成長政策からさまざまなひずみが出てきて、その現象として集約されておるところは企業資本というものの構成を著しく病的なものにしておる。自分の資本でやっておるのか、他人の資本でやっておるのか、責任態勢も明らかでない。まずもってこの構造を改善、改革することが、これは焦眉の急でありとするならば、大衆資金が直接資本市場へ導入しやすいような道を開いていくことのためには、やはりそういうような一つの断層、流れやすい手段、方法を講ずることが一つの政策的な要請を満たすためには適当ではないか。これはまあ仮定の理論でございますから私は大胆にいうならばという前提で申し上げておるのだが、それにちょっと答えてもらえませんか。ただ両々相まってということならば、所得のある者に課税をしていけばそれでいいのであって、税法上の減免特別措置を講ずるということは、これは適当ではない。そういうような原則を越えてなおかつ特例を開かねばならぬとするならば、そこに産業政策上の要請と、またそれを行なうことによっての効果というものが期待されなければならぬ。両方とも同じことならば、同じように、一つの金は、大衆の金は、銀行へいっても証券市場へいっても同じことだというならば、何もそういう所得に対して特別措置を講ずる必要はないと思う。オーバーローンとオーバーボローイングを解消することのためには、そうしたことがいいことではないかと思うのだが、それについて大胆な意見を述べてもらいたい。御答弁はありませんか。なければけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/41
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042・福田千里
○福田参考人 先ほど申し上げたとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/42
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043・吉田重延
○吉田委員長 堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/43
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044・堀昌雄
○堀委員 銀行のほうが先にお帰りになるので預金利子のほうを先にやったのですが、配当課税の問題について、証券業協会長は、今度の制度で恩恵を受ける人たちというのは一体どのくらいあるとお考えになりますか、ひとつお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/44
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045・福田千里
○福田参考人 ちょっとただいまの御質問の正確な数字がわかりませんのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/45
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046・堀昌雄
○堀委員 大体の感じでもけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/46
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047・福田千里
○福田参考人 数十万という、きわめてばく然としていますけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/47
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048・堀昌雄
○堀委員 数十万というお話でありますが、実は私ちょっとここで証券業協会に敬意を表しておきたいと思いますが、「証券貯蓄の調査リポート」というのを二回にわたってお出しになっております。たいへんいいリポートでございます。これはこういう貯蓄性向上を調査しました中では、サンプル数が二万でございますから、総理府の貯蓄動向調査も大体五千、それから企画庁がやっております消費者動向予測調査も約五千、それに比べますと、このリポートはたいへんいいリポートを出していただいておる。ところがこのリポートがいみじくも正しく指摘しておりますのは、――これ協会長、せっかくお出しになっているのですがお読みになってないからこういう答弁が出たのですが、実は株式の保有世帯は大体一五%、三百十万世帯とここへ出ております。この三百十万世帯の中で五万円以上の配当を受け取っておるものというのは一三%しかないのです。ということは、約四十万世帯が五万円以上なんです。よろしゅうございますか。特に高額のほうへまいりますと、もうちょっとこまかくいいますと、五万円から十万円の間が七%、十万円から二十万円の間が三・七%、二十万円から三十万円の間が〇・八、三十万円から五十万円の間が〇・七、五十万円超〇・八、こういうことなんです。ですから高額の配当所得をもらっておる人というのはまず三%くらいしかないわけです。三%といいましてもこれは約二十五万円くらいから上の人が三%くらい、三百十万世帯の三%ですから約十万世帯ですね。十万人の人が、実はある意味でこの恩恵を受けますね。ところがさっき私が触れましたように、配当控除の制度というのがありますから、配当控除で大体現在は給与所得者の場合を考えてみますと、その所得の一割くらいが配当所得であると考えますと、配当控除で、申告をして配当控除を受けたほうが有利なものというのは、大体百八十万円くらいのところまでは申請したほうが有利なんです。配当控除が生きてきますからね。そうすると、百八十万円というのは計数上ありませんから、二百万円以上の所得者は一体日本にどのくらいあるかといいますと、これがやはり三十万世帯ぐらいしかないのです、いまの税の調査から見ますと……。だからどっちにしたって今度の税制の恩恵を受ける人は全国民の中でわずかに三十万世帯、一・五%なんです。一・五%の最も持てる人がこういう税金の恩典を受けて、株式を持っておる人の中でも三百十万世帯の中の二百八十万世帯は配当控除というような現行制度だけで十分な状態に置かれておるわけです。これはどう考えてみてもきわめて著しい一部の高額所得者に対する恩典にほかならないわけです。これを一つまず第一に確認をしていただきたいのと、もう一つは、これは福田さんにお伺いをしたいのですが、ことしの、最近の株価の状況でございます。この三月に入りましてから遂に八日には長い間四年半にわたって維持された旧ダウ千二百円の大台が割れました。現在ちょっと戻ってまいりましたが、千百八十円内外のところを低迷しております。出来高五千万株に低下をしてまいりました。私はいまのような状態が続けば証券業者はかなり多くの者が倒産をするだろうという感じを持っております。政府が共同証券に千九百億出し、日本証券保有組合に千三百億を出して、そうしてこれほどの三十万世帯しか恩典がないような税制上の不公平な措置を出しておって、そうして株価はいまのような状態である。一体あなたのさっきのお話の資本市場のためにいいとか、いろんなたいへんな御卓見が述べられましたけれども、そんなにいいものなら、株価が上がっていいのじゃないでしょうか。私はかねてから配当所得に対する課税上の恩典というものは、そういう意味では効果がないということを声を大にして言ってきた者なんです。制度のあり方としては、あなた方は配当にメリットをつけるのではなくて、銀行の分離課税のほうをやめてもらうという方向でやられることが私は筋ではないかと考えてこれまできたわけです。ところがいまのような状態になって、実は株の状況というものは決して望ましい状況にはないし、私はそれは単に配当等の税制の処置で救えるような問題ではない。もう一つ、さっき何か資本比率が日本では非常に低いので、ともかく借り入れ金が七五%で自己資本が二五%という状況は変えたいというお話もありました。しかしこの問題は配当課税のこっち側の問題ではなくて、企業側における配当の取り扱いの問題なんであって、そのほうの制度が改善をされない限り、企業の自己資本の比率が上がる可能性は非常に少ないわけです。ですから、こう考えてみますと、これは福田さん、何といってもごく一部の、全国民の中のわずか三十万世帯の人たちに対する特例の措置などというものは、少なくとも三百十万世帯の株式保有世帯全体に対しても必ずしも私はいいものじゃない、こう判断をするのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/48
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049・福田千里
○福田参考人 ただいまのお話で、税制だけでもって一体現在の株価が不振になっているのが救えるかということなんですが、まだ一般に公表といいますか――まだ国会を通っていないのですし、そういうふうになるらしいというだけのことであって、まだ一般に周知徹底されておらないために、現在の株式市場にあまりに影響してないと思われるのです。むろん先見性でもってそんなことないはずなんですけれども、一般にはまたこれが通ればわれわれのほうで大いにPRもして、こういう措置になったということを周知させるのですけれども、いまのところはそれをやっておりませんものですから、まだ税制のなにが今日の株式市場にはあまりに影響してないと思われるのです。今後出てくる問題だと思うのです。もっとも若干出ている面もなきにしもあらずなのは、いわゆるダウが千二百円を割ったとか言いますけれども、それはいわゆる値がさ株、いわゆる従来の投機株といわれておったようなものが下がっておるので、影響されているので、一流の、つまり何といいますか、利回り採算株というものは決して下がっておらない。のみならず昨年から比べるとだいぶ上がっております。これは確かに影響していると見てもいいのじゃないかしらと思うのです。こういうふうになって、利回り採算上こういうものは買えるのだという点が先見されておりますので、そういう点ではすでに影響しているのだと思うのです。ダウ平均は、あれは全部の何をしますから、いろいろな要素によって今日下がっておりますけれども、一流の、つまり何といいますか、利回り採算株と称せられるものは決して下がっておらないのみならず、むしろ昨年の安値から見ればはるかに上がっているというような状況でございます。
それからわずか三十万世帯だということ、これは理屈を申し上げるわけではないのですけれども、われわれの望むところはこれの恩典に浴するものが三十万世帯でない、その倍にも三倍にもたくさんの世帯がこの恩恵に今後浴するようにしていきたいというつもりなんです。現在こうあるからこうだということでなしに、将来していきたいものですから、それでこういう措置にしていただきたいというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/49
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050・堀昌雄
○堀委員 三十万世帯というと、ちょっと誤解があるといけませんから申し上げておきますが、それは急にはふえないのです。証券の問題ではないのですね。要するに、日本のいまの所得階層で二百万円以上の所得階層というのは実は三十万世帯しかないのですね。だから三十万世帯をふやそうと言ったって証券でふやしっこないのです、できないのです。これは国民の所得階層がふえなければできないのですね。その二百万円以下の人は配当控除で有利だということを言っているわけです。制度上の問題なんだから、あなたがさか立ちしてふやそうと言ったって、これは国民所得のふえる程度に従ってふえるだけで、三十万世帯以上は絶対にふえない、そういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/50
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051・福田千里
○福田参考人 いま三十万世帯というのはちょっと誤解しましたので、まことに申しわけないと思います。わかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/51
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052・堀昌雄
○堀委員 それからいまのお話で、ダウは下がったけれども、優良銘柄は下がっていないというお話なんですね。それは大衆投資家が買ったのだというお話のようでありますが、私はあまり大衆投資家が実は市場に出てきておるとは思わないのです。ですから、いまのお話を裏返しますと、ダウは下がったが優良銘柄は依然としていいから、まあこういう情勢でいいのだというふうに実は聞こえるわけですね。証券業協会長として、いまの情勢というのは私どもは望ましい情勢と思っていないのですが、大体それでいいような御見解もありましたが、もう一つ、時間がありませんから、ちょっと触れておきますが、私どもが非常に心配しておるのは、さっきもちょっと銀行の分離課税でも申し上げましたけれども、この分離課税とか、申告不要になる問題は所得の源泉が秘匿をされるために非常に実は脱税を促しやすい条件ができてくるわけです。特にちょっと皆さんに申し上げますと、昭和三十六年分の相続税を調べてみますと、人員では六十一人、そうして平均の一人当たりの金額が一億二千六百万円ほどあるのですが、その人たちの財産の中身を調べますと、有価証券が四五・七%も実はあるのです。これは高額所得へいくほど有価証券の保有率が高くなりまして、三百万円以下では二・八%、三百万円から四百万円の間が五・七%というような状態で、一千万円のあたりでも一五・四%くらいしか証券の保有状況がないのに、三千万円超になれば二四%くらいになり、一億円以上になれば四五%以上になる。要するにいまは高額所得者は非常にたくさんの株式を保有しておるわけですね。ですからこういうものが源泉が秘匿をされてくると、相続税のようなものですから実は課税がしにくくなるという問題が生まれてくるわけであります。ですから私どもは現状の問題として考えてみますと、配当分離課税というものはごく少数のきわめて高額の所得者にだけ優遇措置が働いてきて、皆さんの考えられておるような証券市場の問題であるとか資本市場の問題であるとか貯蓄を高めようとかということに本来的には働かない制度なんだ。だから私は、もっとこれらの証券市場問題というものは高度な政策的な問題、金融の正常化であるとか、企業の粉飾決算のようなものをやめさせる問題であるとか、あるいは今度免許制を提案されておるような証券業者の姿勢を正す問題であるとか、そういうその他の問題のほうに実は問題点があるのであって、税制によってこの問題は解決をしない、こう考えている。
以上の私の見解に対しまして、佐藤教授のほうからひとつ学識経験者の立場として、いまの分離課税、配当課税の性格その他について、約二千万人近い納税者と三十万人余りの一部の人たちの間の課税上の不均衡は、将来的に納税意欲の低下をもたらすおそるべき端緒になるのではないか、こういうことを心配いたすわけでありますが、まず佐藤教授の御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/52
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053・佐藤進
○佐藤参考人 堀さんの御質問の中で若干私の理解と違う点もございますが、それらについても一応私の調べました範囲での説明を申し上げ、それから今回の配当課税についての見方というものを私なりに述べたいと思います。
一つは、配当と利子の関係でありまして、配当についてはキャピタルゲイン課税及び配当控除の制度があるから利子と同じようには扱えないということで、配当のほうはもっと強化してもいいというふうなお考えに対しましては、現在問題になっている配当所得課税、ただいま取り上げられた限りでは個人の受け取る配当の段階においてこれをどういうふうに課税するかという問題、それらの税率については配当のほうがより強化すべきだということは必ずしも言えない。利子所得と配当所得との大きな違いは、利子所得については元本が保証されており、配当所得については必ずしもそうでないというような点があり、制度的に見ますと、わが国の所得課税の経験を見ましても利子所得のほうが高い税率を課せられております。これにつきまして現在の利子所得分離課税というものが始まりましたのは昭和二十八年からでありまして、それ以前、昭和二十二年から昭和二十四年まで、それから昭和二十六年から二十七年まで、二十五年に一たん中断されましたが、利子所得についての源泉選択課税が採用されております。その当時源泉選択の税率は利子所得において六〇%及び五〇%であります。ある意味でこれが一つの本来のあり方でありまして、もし源泉選択をするならば利子所得については六〇%程度、それはつまり利子所得については高額所得者に集中している関係上、上積み税率が当然高くなる。そこで源泉選択をする場合には当然五〇%台ないし六〇%というものが必要であると考えます。配当につきましては、これもいわゆる所得の不均衡な配分を最も促進するものでありまして、アメリカの例なんかにつきましても、所得の不平等をはかる場合、それらの所得種類においては配当所得が最も不公平を拡大するものであるということが載っておりまして、おそらくわが国でもそうではないかと考えるわけでありますが、これにつきましては先ほど触れました昭和三十六年当時税制調査会が利子配当課税についてかなり詳しい調査をいたしました。そのときの資料によりますと、配当所得はその当時の段階で年所得百万円以上の者が大部分持っておる、配当所得につきましては。それらの配当所得者についての所得税の上積み税率は約四〇%、三八・九%程度であるから、もし源泉徴収をする場合にはそれに近づける必要がある。現在日本の所得税法においては、利子においても配当におきましても源泉徴収をやる場合には二〇%であるということになっておるわけであります。少なくともこの本則に戻すのが正しいというふうにいっておるわけであります。それらが昭和三十八年改正以降、利子についても配当につきましても、源泉徴収は五%というような例外的な税率になったわけであります。しかし、配当について源泉選択というものが始まったのは、わが国の税制史上昭和四十年度改正が初めてでありまして、そういう意味で画期的な政策措置と見られるわけでありますが、その効果につきましては、これは質問者が申されましたように非常に問題がある。その問題は私が最初の冒頭の陳述で申し上げました点に即して申し上げますと、必ずしも証券市場の発達に役立つとは言えないのではないか。それは特にいわゆる零細株主におきましては、この際従来ならば五%の源泉徴収率で納めていればそれでよかったわけですが、今度は一〇%になる。一〇%になりますとそれを所得税の総合申告において取り戻すためにはどうしても確定申告をしなければいかなくなる、むしろ確定申告をしなければ、これらの階層には不利になるという条件が明らかであります。これらの階層というのは大体所得税率が約一五%から二〇%という税率でありますと、課税所得は八十万から百二十万円程度、八十万から百二十万円程度の課税所得の人というのは、おそらく所得税納税者の中では九割近くを占めるのではないかと考えるわけであります。大部分のいわゆる大衆投資家というものはこういう層であります。それらは確定申告しないとむしろ損になる。有利な層というのは、これはいろいろな証券業界の調査それから大蔵省の調査等ございますので、かなりはっきりしていることは、やはり百七十五万円ないし百五十万円以上の年所得の者が源泉選択制の適用によって有利である。そういうことはある程度証券業界でも認めておられる点であります。それらの世帯数が三十万世帯というような調査につきましてはただいま承ったわけでありますが、私の調べた限りにおきましても大体四十万人あるいは四十五万人というような人たちがこれにより有利になる、その程度のものである。その効果というものはあまり期待できないのではないか、こういうふうに考えるわけであります。
あと配当課税の問題につきましては、ただ個人の受け取る配当の段階でどういう措置をとるかという問題だけではなくて、企業課税、法人税及び法人事業税の中で企業所得のうちの配当分にどういう措置をとっているか、これを根本的に考え直さないといけません。ある意味においてわが国の法人税制は、昭和二十五年のシャウプ勧告以来法人擬制説というものを固執、確立するという方向で、それがだんだんと形骸化しつつありますが、なお二重課税排除ということにこだわって、税制調査会の答申ができている。それらの答申につきましてはあとで参考人から意見の開陳があるかと思いますけれども、配当所得の二重課税の排除、そういう考え方というのはある意味では時代おくれになっておる、これに固執する限り企業課税の根本的な整備、合理化というものはできないじゃないかというのが私の個人的な意見であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/53
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054・堀昌雄
○堀委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/54
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055・吉田重延
○吉田委員長 只松祐治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/55
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056・只松祐治
○只松委員 まず最初に、福田さんにお尋ねをいたします。
税制上の問題については、すでに特に当面の分離課税の問題を中心にしていろいろ聞かれたわけであります。これと関連いたしまして、福田さんがそうたびたびお見えになるわけでございませんので、お聞きをしておきたいことの一つは、手数料が高いのではないかということです。高い安いといったって、それを判定する基準というのもなかなかむずかしいわけですが、たとえば五十円以下で一円三十銭、百円で一円七十銭、百五十円で一円九十銭、二百円で二円、こういうふうにずっと見てまいりますと、五十円額面で一割といたしましても――一割なんかあまりないわけですが、年間五円、半期ごとについて二円五十銭、これは往復手数料を払いますと、相当の配当がありましても実際上株の配当が投資家の手に入る、こういうことにはなかなかなりかねるというわけです。この手数料の問題は先ほどから論議されました分離課税その他いわゆる課税問題とも必ずしも無関係ではないわけです。むしろ大いに関係があると私は思っておるのでございますが、その点について若干分離課税との関係もお考えでございましたらひとつ御開陳をいただきたい。それとは全然関係がないというお考えならけっこうですが、ただ高いか安いか、その点について御意見をお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/56
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057・福田千里
○福田参考人 手数料の問題についてお尋ねでございますけれども、これにつきましては常にいろいろ問題がありまして、そのときそのときにおけるいろいろなあれで、むしろ高過ぎやしないかという反面に、また安過ぎるので証券業者はこれじゃめしが食えないのじゃないかというような議論さえも起こっておりますし、いろいろのことを言われておるのですが、これはいま高いか安いかということは、ちょっと私としては何ともお答えができません。これは取引所のほうの問題でございまして、取引所のほうで常にそれについては検討しておるのです。しかしいま内部ではむしろ手数料を引き上げるべきじゃないかというような逆な話さえあるのですが、これは一般のいろいろなものに比較して検討しなければならぬ非常にむずかしい問題であるので、私どもは税制に関連して特に検討しておりませんのですけれども、常に税制に関係なしにでも取引所を中心としてこれは検討はしておるのです。現在それじゃ高過ぎるとかどうだとかいうことについては、私はいま何とも結論を持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/57
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058・只松祐治
○只松委員 私はここでお聞きしておるのも、先ほどから分離課税の問題を通じて、あとでお聞きもいたしますが、勤労者や中小企業者、したがって勤労所得税、事業税あるいは中小法人税、こういうものは非常に重いわけで、的確に把握されて徴収されていくわけですね。ところが、こうやって分離課税ができて、高額所得者というものは減免税をされてまいってきておるし、今度さらにそれが強められてきている。こういう納税意欲を阻害したり、あるいはこういう零細といいますか、弱小といいますか、徴税側として取りいい税金はどんどん取り上げられるが、こういう面はだんだん取らないようにしてきておるわけです。そうすると、もっと他の弱い国民に迷惑をかけたり負担を増大させている、こういうことでなくて、産業界は産業界、証券界は証券界、みずからの手でもっと自分たちが発展していく方向を切り開いていく努力をしなければならぬ。他に求め、みずから努力をしないということは、一番安易な道でございます。その一つとして租税特別措置やこういうものを強く働きかけて今日実現しそうな段階にきているわけです。これは税調の答申さえも無視してつくっておることは御案内のとおりであります。そういう面から一つのあれとして株の投機性というものに重点を置くならば、この手数料にある意味では安い、こういうことも言えるかと思うのです。しかし投機性ではなくて配当を重点に置いて安定した経済界のもとにおける株の大衆化ということを考えるならば、そしてほんとうに国民大衆に株を持ってもらうといいますか、愛してもらうということまでいかなくても、持ってもらうということを考えるならばたいへん高い。だからどこを基準にして手数料が安いか高いかということはなかなかむずかしいということを申しましたけれども、そういうものの見方も私はあると思う。そういう観点から安定した経済のもとに配当を中心にしていくならば、こんなに高い手数料を取られたのでは、よほど株でも上がらぬ限りは持つのはばからしい、こういうことになるわけです。だからそういう面から、私は初めはばく然と聞いたわけですが、配当面なり投機性にあまり重きを置かないならば、たいへん手数料は高いのではないか。こんなに手数料をたくさん取られたのでは配当率が非常に下がってくる。銀行利子その他と比較して低くなってくるわけです。そういうふうにお思いになりませんか、こう聞いているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/58
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059・福田千里
○福田参考人 いまおっしゃったように配当中心でいくと、いわゆる投機的でなくて、ほんとうの本来の投資的でいくというようなほうに向ける、税制なんかの今度のあれはそういうふうなことが一つの目的で、そういうふうに向けていきたいものだとわれわれ証券界としては常にそう考えておるところなんです。それに比較して手数料が高いとおっしゃるのですが、それらについて手数料の問題は、客観的に見てぼやっと高い、安いということをきめられるべき問題でもないのです。これはやはりこのごろのコストの問題もいろいろありますので、証券業者として、業としてやっていく上においてのコスト、これがかなり人件費その他で高くなっておるし、そういう面からもわれわれとして検討しなければならぬ面があるものですから、いまおっしゃるように、そういう面からこの税制にからませてきますと確かにそういうふうにも考えられますので、十分にそれは検討する一つの材料といいますか方向といいますか、そういうようなことをこれから考えていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/59
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060・只松祐治
○只松委員 さらにその問題で、たとえば共同証券で多分一月の終わりでしたか払った手数料が十億円ですね。共同証券の場合は何か半額だそうですがそれが十億円。去年黒字だったといわれておる野村ですか、これの利益がたしか十億くらいだったと思いますが、手数料というのは普通のところよりも半分になっておる共同証券でもこのくらい大きなものを払っておるわけです。私はさっき個々の一株の時価についての手数料をちょこちょこと引例したわけですが、全体的に見ましても、野村の利潤、もうかった額と、それから共同証券の支払った額というものはそれくらい大きいわけです。だからそういう点をお考えになりましてももっと手数料の問題――これだけではないのです。先ほどから言われているように、根本問題として高度経済成長政策なりあるいは産業界との関連というものが株に反映してくるわけでございまして、私たちは共同証券とか保有組合とか、そういう一時的なてこ入れによって株がほんとうに立ち直る、こういうことも思っていないと同時に、まして先ほど堀委員からもお話がありましたように、三十万前後の方々のみに特権を与えるこの租税特別措置というようなものを強行すべきではない、こういうふうに思っております。ぜひ皆さんのほうでもこういう面だけ強行するのではなくて、まあこまかい例を話せば、小さい証券会社でもゴルフにたくさん投資して、まあこれは会員という方もあるわけでしょうけれども、つまらない費用をたくさん使っておるのも私たちは知っておりますけれども、やはり自分みずから証券界を立ち直らせる、こういうことをお考えになるべきだと思います。そういうふうに御努力をお願いしたいと思いますが、どうです。そういう点に御異論ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/60
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061・福田千里
○福田参考人 冒頭の一番最後にも申し上げましたとおり、われわれはいまおっしゃるようなことで努力していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/61
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062・只松祐治
○只松委員 次に、佐藤先生に少しお伺いいたします。
政府は常に減税減税と繰り返し宣伝をしてくるわけです。これはあるいは与党として当然のことでございましょう。しかしわれわれ一般国民としては、真の減税というものはどういうものだろう、こういうことを常々疑問を持つわけでございます。ここで一番問題になってくるのは、よく論じられます物価上昇と減税の関係だと思うのです。泉さんもお見えですが、泉さんは参考人じゃないからあれですが、本年度の物価上昇とそれから表面減税、したがってその表面減税から物価上昇分を差し引いた真の減税というものは非常にわずかな額になってくるわけでございます。佐藤総理大臣も三千億減税と言いましたけれども、決してそんなものじゃなくて、二百億円をたしか割るのが実質的な減税になってくるわけでございます。佐藤先生はそういう物価上昇と減税というものについてどういうお考えをお持ちになっておるか。あるいは実際上本年度は、税調にもたぶんお出になっておるわけですが、税調のほうでお調べになったときに、真の減税というのは本年度幾らになるか。もしさらにおわかりでございましたら、地方税の中における真の減税というものをひとつお示しいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/62
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063・佐藤進
○佐藤参考人 減税の問題が、実質的に減税が行なわれたかどうかという点で特に問題になるものは所得税の減税の面であります。所得税の減税の面では、大体昭和四十年度税制改正に関する税制調査会の意見というものが通ったわけでありますが、その中で税率の改正というものが見送られ、その限りにおいて減税額が減ったというようなことがわかるわけであります。それで税率の改正というのは、特に物価上昇との関連において所得水準が次第に上昇いたしますと、それに対する税率が所得税の累進制度にかかって、そのままにしておいても負担がふえるというような意味での調整がなされていない。それらについてはやはり来年度というようなことを言っておりますが、問題があります。実質減税かあるいは形式的な減税かという点につきましては、結局いろいろ考え方があるわけでありますが、税の自然増収の部分を減税に回すということ。その何%かを減税に回すということだけでは何ら減税でない。ほんとうの減税というのは、現在三兆二千億ですか、そういうような税収がございますね。その税収が来年はたとえば三兆円に減るとすれば、その限りでは財政規模は縮小される。それに伴って租税負担も減るという限りにおいて、これがほんとうの減税、それが特に自然増収をもたらす基本的な原因となっている所得税の面における増収に還元されるというのが普通の考え方じゃないかと思われるわけです。ところがこの数年来の減税のやり方というのは、自然増収二〇%程度を減税に回すという程度で、いわゆる租税負担率というものはふえてくる。一つの基準はそういう租税負担率がふえるかあるいは下がるかという点につきましては、これはどなたかが申されましたように、本年度は前年度より減るというようなことはない。その限りにおいては全体として減税はなされていないというふうに考えることができる。その中でも、特に所得税の減税というのは十分なされていないが、所得税の減税につきましてはこれはいろいろな基準があるわけですが、税制調査会が新しく打ち出しました観点というのは非常にわかりやすいものでありまして、一つは納税者の数がふえるか減るかということ。それで見ますと、今度の税制改正で所得税の納税者数は二千万人をこえるということになります。所得税納税者数は二千万人、そのうち給与所得者が約千八百万人でございますが、その二千万人という所得税納税者の数というのは昭和三十四年当時に比べますと、当時は約千百万人であります。ここ数年の間に所得税納税者はやや倍増しているという形になります。現在ではこれらのいろいろな資料を見てもわかりますように、独身者にありましては二十万円が課税の最低限である。標準世帯におきましては五十六万円というようなことでありますが、たとえば独身者にとってみますと、二十万円の課税最低限というのは月給にしますとボーナスだとか手当、そういうものを全部含めまして一万六千円。一万六千円のサラリーというものは、現在では中学卒、高校卒の人もそれくらいは払わないと働いてもらえない、求人ができないというようなことでありまして、ともかく中学を卒業したり、高校を卒業したりするともうすぐ払わせられるというような点。これらを考えますと、やはり所得税のいわゆる大衆課税化というもの、これを否定することは――それがますます大きな形で拡大していることは否定できない、こういう点を基準にいたしまして、それからもう一つは、標準生計費の観点でありますが、これらを基準にして所得税減税の規模をはかる必要がある。標準世帯について五十六万円の基準生計費の計算の方法について、この委員会に資料が回されたということで私も拝見いたしましたけれども、一日の成年男子の食費が百六十円というような計算、これはやはりちょっとおかしいのじゃないかという点、それらをもう少し詳しい観点でいろいろこの委員会で討議していただきたいと思いますが、ここ数年来の税制改正の流れというものは、やはり全体としての所得税を中心とする一般減税と政策減税というものとの配分になっております。今回の改正におきましては、一般減税、政策減税というのは税制調査会の基本的な線に沿っておりますが、それらも十分には実行されなかった。そういう意味において、たいへん不十分なものだったというのが私の考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/63
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064・只松祐治
○只松委員 両先生午前中の約束だそうでありまして、たいへん申しわけございませんが、もう一つだけ佐藤先生に聞いておきたいと思います。
税調でも当初真の減税、むしろ減税というよりも増税をしていかないためには、自然増収の四分の一、二五%前後は減税していかないと、おのずから増税になっていく、こういう御論議があり、大体そういう考え方には一致された。当面いろんなことが、少なくとも二〇%は自然増収分を減税にしていこう、こういうお話があったように聞いておりますが、そこいらはいかがなものでしょうか。また先生としてはそういうお考えであるかどうか。さっき本年度は真の減税になっておらない、むしろ増税になっておるというようなお話がございました。減税分のパーセンテージを見ますと、いま言いましたようなことだと思いますが、大体そういうふうに考えて間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/64
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065・佐藤進
○佐藤参考人 それらにつきましては、私が直接調査した資料でございませんので、もっぱら大蔵省の関係の資料で見ても、大体自然増収の中での減税割合というのは二〇%を割っておる。一九%程度であるということになっております。この計算はおおよそ国税の自然増収四千五百億円から四千六百億円というようなことで、それからまた道路財源その他の揮発油税等を除いたものの二〇%だというようなことでいろいろ計算はされておりますが、まあ一九%程度を減税したのだというふうに言われておる。それついてはそうですがと言うほかないわけでありますが、やはり問題はルールを一つきめる、減税のルールというものをきめるということは非常に重要でありまして、そういう意味で税制調査会の考え方に賛成できるわけであります。たとえば二〇%減税をするなら二〇%減税の内容について、どういうふうにルールをきめておくかという点で、こういう点はかいもくわかっていないのであります。それついて一つの基準というのは、自然増収があった税目について、それの案分比例において減税をやるということでありましょうが、そういう形のものではもっぱらそれらの減税のそのつどの状況による配分という結果になっておる。これは非常に無原則の減税である。好ましくないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/65
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066・吉田重延
○吉田委員長 これにて福田参考人及び佐藤参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人には御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/66
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067・吉田重延
○吉田委員長 引き続き松隈参考人及び稻川参考人より御意見を伺うことといたします。
両参考人には御多用中のところ御出席をいただきましてありがとうございました。本委員会におきましては、昭和四十年度税制改正各案につきまして審議を行なっているのでありますが、本日参考人の方々より御意見を伺いますことは、本委員会の審査に多大の参考になるものと存じます。両参考人におかれましても、何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。
それでは、まず松隈参考人からお願いいたします、松隈参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/67
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068・松隈秀雄
○松隈参考人 ただいま委員長さんから御紹介のありました松隈であります。私税制調査会の委員をしておりますので、税制調査会の税制改正に関する答申を中心に概略を御報告申し上げて、あと御質問にお答え申し上げたいと思います。
御承知のとおり政府の税制調査会は、約三年間の調査の結果といたしまして、今回長期税制答申を提出いたしました。それと同時に、昭和四十年一度の税制改正に関する答申を提出したわけでございます。昭和四十年度の税制改正に関しましては、でき得る限り長期税制答申の線に沿うようにつとめたのでありますが、ものによりましては必ずしもその線どおりと言い得ないものもございます。
昭和四十年度税制改正につきましては、まず細目に入りますと、所得税の減税をいたしております。これは基礎控除の引き上げ、扶養控除の引き上げ、給与所得控除の引き上げ、専従者控除の引き上げ、税率の緩和、合理化でございます。政府案は大体において税制調査会の答申を尊重してこれを法律案として提案されておりますが、異なりました点は、すでに御承知のことでありますが、基礎控除が税調の答申では十四万円であったのを十三万円にいたしております。これは税率緩和を税制調査が提案しておりますのを見送ったこととも関連しておるわけであります。そのほかに医療費控除の限度額の引き上げを追加いたしております。
法人税におきましては、税制調査会は第一案といたしまして、現在の留保分の税率とそれから配当分の税率の二本立てになっているのを一本化する案を法人段階源泉課税説に移っていく前提として考えたこともあるのでありますが、これはなかなか議論が多くして結論を得がたかったものであります。そこで所得税減税と並んで企業減税の要望も強いこともありますので、法人税につきましては普通税率で三百万円超の部分が三八%であるのを一%引き下げる。三百万円以下の部分ついて三三%であるのを一%引き下げる。そのほかに中小企業の関係を考慮して三百万円以下の部分の税率をさらに一%引き下げる。したがってその部分は三一%になるわけでありますが、こういう趣旨の提案をしております。政府はそれをそのまま採用いたしております。
そのほかに、政府の法律案では留保所得課税の場合の控除ついて所得金額の限度を、現在二〇%であるのを二五%に引き上げております。これは税調の答申には全くないのではなくて、税調は同族会社の留保所得課税の廃止は理論的には賛成しがたいが、これを緩和することは一般法人との見合いにおいて検討すべきであるという答申をしておる。それを具体化したものと見ております。
相続税ついては、税調は答申を具体化しておりませんが、今回生命保険金の非課税限度の引き上げが政府から提案されております。
租税特別措置につきましては、税制調査会の案と政府の提出法律案との間には利子配当の部分に関して一番差が大きく出ております。すでに御議論がなされておるわけでありますが、税制調査会といたしましては、税制調査会との長期答申におきまして「利子配当課税の特例等資産所得に対する租税特別措置は、一部の高額資産所得者を著しく優遇するものであって、この措置に伴って生ずる弊害が大きく、しかもその弊害を償うに足るほどの政策的効果も実証し難いので、これを廃止すべきものと考えられる。
なお、これを廃止する際には、何分にも長年にわたる措置であるだけに国民に与える心理的影響等を考慮して、経過的措置を設ける等の配慮が必要であると認めた。」こう答申をしておりますので、それを受けまして利子所得に対しましては一挙に総合課税に変えることは困難である、かように認めまして源泉徴収税率を現在の五%であるのを一〇%に引き上げるとともに、新しく二〇%の税率による源泉選択制度を二年間に限って認めるという提案をいたしたのであります。
配当所得に対します源泉徴収率の特別につきましては、利子所得の源泉徴収税率と見合いまして同じく現行五%であるものを一〇%に引き上げることにいたしたのであります。
なお、株式配当金については、現在一銘柄年三万円までの配当については配当支払い会社が資料を提出しないでよろしいということになっておるのでありますが、これは納税義務者が納税を免れるということではないわけであります。したがって、その部分がわかれば課税になる、こういう不安定な状態にありますので、そういう不安定状態ははっきりさせたほうがよろしいというので、資料の提出されない限度であるところの一銘柄年三万円までの配当については確定申告を要しないこととする、したがって、確定申告をしないでおいてもそれは課税漏れとしてあとから追及されるようなことがないということに税目関係を明確にすることにしたのであります。そして三万円という限度について考えたのでありますが、これをあまり高めるということは、先ほどの長期答申にあります資産所得の優遇に連なるおそれがあるというので三万円にとどめて、そして確定申告を提出することを要しない、こういう答申にしたのであります。申し上げるまでもなく、確定申告書を提出することを要しないということは、提出したいという者の権利を奪うわけではない。確定申告をすることによって源泉徴収税率が戻ってくるというような人は申告をなさったらよろしい、こういう趣旨であります。
それが今回政府案によりますと、まず預金利子について源泉分離の現行制度を二年延ばすことになりました。そして源泉徴収税率は税調の答申と同じく五%を一〇%にしておりますが、そこのところが税調の案より甘くなったと申しますか、これがまた配当のほうにも響いてくるので、従来配当のほうが預金利子に対して不利であるという声はかなり高いのでありますが、そこで税調としては預金利子は源泉分離はやめる、経過的に源泉選択制度を置こうという程度にしてあったものが、そこが甘くなったのが政府の政策の結果でありまするけれども、あとに尾を引くことになって、さらに株式市場の育成等の緊急要請に応ずるという特別政策のために、配当につきまして一銘柄について年三万円でなく五万円までは確定申告を要しないということにし、さらにそのほかに、先ほどお話もありましたとおり、税制の上においていまだかつてなかったこの配当の源泉選択制度を税率一五%というような比較的低い税率で導入したというところにかなりの問題があるわけでございます。
次に、交際費の損金不算入割合でありますが、これは税制調査会でも不算入割合を引き上げるほうが現下の情勢から見て適当であろうという答申をしておりまして、現在三〇%であるのを四〇%程度を適当と認めたのでありますが、政府はさらにその点を強めて、五〇%までを損金不算入割合とする、こういう改正をしております。その他こまかい点については、大体租税特別措置について税調の答申と政府案とは合っております。
なお、政府案において新しく設けられました探鉱準備金制度の創設は、税調においても減耗控除制度を導入するかどうかの問題として検討したのでありますが、減耗控除制度は必ずしも税制の上で適当でない、これにかわるべきしかるべき制度があり、マイニングのほうの国際競争力を強化するというような見地から特に有効な手段があるならば、そういう制度は考えてもよろしいというような抽象的な答申をしておりますが、それが今回探鉱準備金制度の創設として出てまいったと思うのであります。
物品税の暫定軽減措置につきましては、税制調査会の段階においては、大体においてこれを創設した当時の目的が達せられたものという判定のもとに、三月三十一日で期限到来とともに廃止してもよろしいという答申を出したのでありますが、政府はさらに実情を考慮して、経過措置を設けて二年後に廃止というところに改正案を提出しております。
石油ガス税の創設について、税調もこれを認め、政府もこれを認めて税率等は同じでありますが、実施時期をずらしておるだけであります。
地方税につきましては、事業税の場合の事業主控除の引き上げ、それから電気ガス税の免税点の改正、さらに自動車税の増税等は税制調査会の案と大体全く同じであると申し上げていいと思います。
石油ガス譲与税につきましては、これは国税とするか地方税とするかを、政府の段階できめるように答申してあったものが国税で創設されました関係上、地方団体には石油ガス譲与税の形でその二分の一が分与されるということになったのだと思います。通観いたしまして、税制調査会の四十年度の税制改正答申は、地方税におきましては大体税制調査会の案と一致しているといえますが、国税については、所得税の部分、それから租税特別措置の部分である程度の相違があるということは認められます。
以上、時間の関係できわめて簡略に税制調査会の立場から昭和四十年度の税制改正についての一応の考え方、それから政府案との相違を申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/68
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069・吉田重延
○吉田委員長 次に、稻川参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/69
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070・稻川宮雄
○稻川参考人 私、全国中小企業団体中央会の稻川でございます。中小企業の立場から四十年度の税制改正につきまして意見を申し上げたいと存じます。
今回の政府案におきましては、いろいろの点におきまして中小企業の面に配慮がなされておることを私どもは感謝いたしておるのでございます。しかしながら、感謝いたしておるということは、決してこれに満足しておるというのではないのでございまして、いろいろな点におきまして、なお検討を要する点が少なくないように考えております。
まず、所得税の点から申し上げますると、基礎控除、配偶者控除あるいは扶養者控除等それぞれ一万円の引き上げであるという点につきましては、中小企業者は多く低所得者でございまするから、こういう控除の引き上げはたいへん歓迎するところでございます。特に専従者控除が、他の控除が一万円であるに対しまして三万円の引き上げになっておる。三十九年度におきましても二万五千円が引き上げられておりまして、四十年度におきましては三万円の引き上げであるということは、他に比較いたしますると相当大幅の引き上げでございます。こういう点につきましてもいろいろ配慮が行なわれておるということは、先ほど申し上げたようにわれわれの感謝するところでございますけれども、しかしながら、本来、この専従者控除というものは、控除の性質を持つべきものではなくして、専従者に対しまして給与をする、その給与を企業の中から損金に落とすべき性質のものでございまして、これを控除とするところに、現在でも青色申告二十歳以上の最高の場合でも年間十八万円ということにならざるを得ない一つの要素があるのではないかと存じます。十八万円ということは月で申しますると一万五千円でございます。今日のような賃金の上昇の際に一万五千円の給与ということは、これはあまりにも実情に沿わない点でございます。こういうような実情に沿わないものを控除として、損金とせずに控除されているところに、中小企業ことに個人企業の負担の重さが出てくるのでございます。そういう家族専従者の稼得分が事業主の稼得分に合算されまして、そして事業主におきましては総合課税を受けて累進課税を受ける、こういうような不合理が出てくるわけでございます。かつそれを基準にいたしまして地方税がかかってくる。あるいは事業税におきましては、二十二万円の事業主控除というものが二十四万円になりまするけれども、この二十四万円というものも月にすれば二万円である。こういうように本来勤労に対する対価として損金にすべきものが損金にされない、実情に合わない控除制度であるところにいろいろの不合理を生じてくる、負担の重くなる一つの大きな原因があるというように考えるのでございます。さらに申しますならば、家族従業員が働きました分の一部が事業主に合算されましてその所得となり、そしてそれが資産となった場合に、もし相続を受ける場合にはそれに対して相続税がかかる。いうならば家族従業員が自分の働いたものに相続税がかかる、こういうことさえも出てくるのでございます。こういう点につきましては、十八万円、三万円引き上げの専従者控除ということはきわめて妥当であるようでございまするけれども、あまりにも実情に合わない特に個人事業者の課税の負担というものが出てくると思うのでございます。なお事業主そのものの給与につきましても、これはやはり損金として考えていくということが今後配慮されなければならない。そうしないところに個人事業者がいわゆる法人に変わっていく、法人成りを生ずる大きな原因をなしておると思うのであります。政府の御調査によりますると、二百二、三十万円以下は個人のほうが得であって、それ以上は法人のほうが得である、こういう数字が出ておりますけれども、われわれの実感といたしましてはもっと低いところにこの数字があるように思うのでございます。
次は、法人税でございますが、法人税におきましては、従来の二段階の軽減税率、これが五%違っておったのでございますが、今回はこれが六%違うことになりまして、三百万円以下の所得に対しましては三一%、こういうことになった点におきましても、やはり中小所得の法人に対します配慮がなされておるというように考えるのでございます。しかしながら大法人においては租税特別措置の特典をたくさん受けておる、こういう点、いわゆる実効税率というものから考えました場合に、大法人と中小法人との実効税率の負担に相当の格差がございますので、なおこの程度では不十分である。できるならば、この二段階というものを三段階くらいにいたしまして、いわゆる法人擬制説をとっているたてまえから非常にむずかしいことを言うのでございますが、私どもは法人擬制説そのものに非常な疑問を持っておるのでございます。法人は実在しておるのでありまして、法人が擬制であるというような事柄自体がはなはだふに落ちないのでございますが、その問題はともかくといたしまして、この二段階というものを三段階あるいは四段階にいたしまして、所得の低いところにもう少し低い税率でいく、そういうことがいわゆる格差解消という意味においても必要ではないかというふうに考える。また実際の実効税率の上におきましてもそれが必要である、こういうように考えるのでございます。
次は、法人税の中における同族法人の積み立て課税の問題でございまするが、大法人におきましてはないところの積み立て課税が――同族法人はほとんど大部分が中小法人でございます。中小法人だけに特に積み立て課税が行なわれておることははなはだ不合理である。言うならば、今日の大企業と中小企業との格差、いわゆる二重構造というものは、こういう面からもつくられておるのではないか、こういうように言いたいのでございます。少しことばが過ぎるかもしれませんけれども、そういう感じがするのでございます。
なぜこのような中小法人、同族法人のみ課税が行なわれるかということにつきましてはいろいろ理由がございましょう。それは個人事業とのバランスの問題であるといわれますけれども、それは個人事業の所得課税が重いからそういうことになるのでありまして、そのバランスは個人事業の課税軽減という点においてバランスをとるべきものだと思うのであります。あるいはまた大法人は配当をしておる。同族法人は配当をしないで積み立てていくということをいわれますけれども、同族法人におきましても、中では配当をしておるものはあるのでございます。この配当しておる同族法人に対しては一体どのように考えていただいたらいいのか、大法人と同じように配当をし、しかも積み立てをする。その積み立てに対して課税が行なわれる。特別の課税が行われるということに対しては、われわれはどう説明していいかわからないのであります。もちろんそれに対しましては百万円あるいは二五%、いずれか高いほうを課税最低限度として課税しない、こういうのでございますけれども、今日の大法人の留保傾向、留保比率を見ますと、二五%というものは低きにすぎるのでございまして、この課税最低限度を大幅に引き上げるということが必要である。そういう点から申しますと、今回の案はいろいろ御配慮いただいておりますけれどもなお不満である、こういうふうにいわざるを得ないのでございます。
それから次は、租税特別措置法の関係でございますが、中小企業から申しますと、先ほど申し上げましたように低所得者が多いのでございますから、所得減税を歓迎するわけでございます。たとえば青色申告会のごときは所得減税を非常に歓迎しておるのでございますが、しかしながら中小企業も企業でございますから、そういう面から申しますと、やはり企業減税というものが必要でございます。また中小企業というものの現在の立場から申しますと、いわゆる政策的な減税というものが必要になってくるのではないかと存じます。したがいまして、私どもは所得減税が必要でありますと同時に、中小企業の面から申しましてもやはり企業減税、あるいは政策減税というものは必要である、こういう感じがしておるのでございます。しかしながらいわゆる政策減税というものが所得の高いところ、あるいは大法人に対する租税特別措置、こういうような形において行なわれる政策減税というものには、われわれははなはだ不満足でございまして、むしろ今日のこの二重構造、あるいは格差を解消する、あるいは中小法人というものの資本蓄積を可能ならしめるような、そういう意味における政策減税、いわゆる中小企業の革命的とか画期的とかいわれますが、そういうことを可能ならしめるようなそういう意味の政策減税あるいは租税特別措置というものをこの際考えていただくことが必要ではないか。どうも税の大家の方々は、税というものをそういう政策に利用するということに対してたいへんおきらいのようでございます。いわゆる税というものは公平にしなければならない、こういうことでありますが、公平ということは一体どういうことか、弱い人に対して負担を軽くすることこそ公平なのでありまして、むしろ税によってそういう格差を解消するというようなところにこそ税の近代的な意味があるのではないか、負担の公平ということについてはそういう見地から考えるべきではないか、そういう意味におきまして、私どもは企業減税なりあるいは政策減税というものをそういう面において実現していただきたいということを考えるのでございます。
具体的に申し上げますと、今回の特別措置法におきまして、近代化資金助成法による共同店舗でありますとか、あるいは共同給食の諸施設などに対しまして、特別償却制度が認められたということはたいへんけっこうに思っております。しかしこの程度でなくてさらに中小企業の近代化を、設備近代化を実現してまいりますために、近代化のために積み立てました積み立て金に対しましては、一定期間これを免税とするというような思い切った措置が必要ではないか。輸出のための市場開拓準備金でありますとかあるいは鉱山における減耗控除というような点から考えましても、こういうような積み立て金制度というものをこの際考えて、そうしていわゆる画期的な中小企業の近代化を促進していただきたい。中小企業の近代化には何と申しましても自己資本の充実ということがすべての先決問題でございまして、そのために税制上の特別措置が必要ではないか、こういうように考えるわけでございます。
さらに中小企業の零細企業のためには、企業合同というものをある程度推進していかなければならない、非常にむずかしい問題でございますけれども、好むと好まざるとにかかわらずこれを推進していかなければならない、こういう政策的な要求があるわけでございます。そのためには会社の合併には、いま近代化促進法による指定業種につきましては特別措置が講ぜられておりますが、そういう場合個人につきましてもこれを適用していくということが必要ではないか。
それからさらに、これは協同組合の問題でございますけれども、本年から協同組合に対しましては、その剰余金の一部につきまして留保されましたものに二分の一の非課税という措置が行なわれたのでありますが、これは今回また森林組合につきましてこれが拡大されておりますが、私ども中小企業の関係から申しますと、火災共済の協同組合でありますとかあるいは信用協同組合あるいは企業組合に対しましてはこれが漏れておるのでございます。どうしてこれが漏れておるのかわれわれには理解できないのでございまして、先般も大蔵省へ参りまして伺いましたが、それは保険会社と火災共済組合との均衡の関係がある、あるいは信用協同組合につきましては信用金庫とか銀行の関係があるのだ、こういうお話でありましたけれども、そういうほかとの均衡の関係がありますならば、農業協同組合に対しましても剰余金の非課税をするのははなはだおかしいではないか、そういうことをすると、一般商工業者にいろいろな影響を与えるのでございます。そういう方面の影響のことは考えないで、信用金庫とかあるいは保険会社とか大きな方面のことのみお考えになっておるという点についてはなはだ不可解である、こういうふうに考えるのでございます。
最後に、企業合同を促進し、そして零細企業というものが一緒になってこれからの近代化を促進してまいりますために現在ございます企業組合という制度、この制度に対しまして一般の協同組合のような特別法人扱いを受けてない、普通法人扱いを受けておる。こういうことは企業組合があたかも営利会社、株式会社と同じように見られておることからではないかと思うのでございますけれども、しかしながら企業組合は零細な弱い人たちの協同組合でありまして、それが株式会社とは本質的に違っておりますことは法律の規定なり実態を見ましても明らかでございます。こういう企業組合に対しましては、いろいろな制限が法律で置かれております。その制限が置かれておるということは会社ではない一つの証拠でございます。そういう零細業者の協同組合に対しまして一般法人と同じ扱いしか受けられないというところに企業合同の促進を阻害するものがございますので、今後零細業者の企業近代化という意味におきまして、そういう制度をもっと活用していただくような税制上の御配慮をお願いしたいというのが私どもの希望でございます。
以上でございます。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/70
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071・吉田重延
○吉田委員長 続いて質疑に入ります。
通告がありますので、順次これを許します。只松祐治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/71
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072・只松祐治
○只松委員 松隈参考人にお尋ねいたします。
ただいま本年度の改正案の概略の御説明がございました。こまかいことはけっこうでございますが、さっき午前中からずっといろいろな参考人の御意見を聞いて審議が進められてきておるわけでございます。そこの中で、特に配当の分離課税をめぐりまして証券界の方に御質疑が多くあったのです。こまかいことはさておきまして、本年度の答申案は、特に長期答申案との関連からも、いまポイントのところをお読みになりましたけれども、こういう租税特別措置というものは廃止、整理、統合していくのが基本方針なわけです。ところが逆に非常に強められてきておる。これはあとでお述べになりました稻川さんの中小企業の観点からとは全く異なる。これだけでなくて、私たちは、千八百万に及ぶ勤労者の所得税、こういう一般の観点からいわゆる公平応能の税体系を根本からくずすものである、こういう考え方を持っておるし、述べたわけですが、そういう意味では、個々の小さいたとえば所得税がどうなった、こうなったということではなくて、税調の答申が踏みにじられた、こう言っても過言ではない。委員としてそこまではなかなか言いづらい点もあるかと思いますけれども、私はそういうふうに思うのですが、第一点として、本年度の答申案は尊重されたかどうか、その点についてひとつお考えをお聞きしたいと思います。
次に、税制調査会でございますからこういういわゆる徴税上の法文、この問題だけの論議にとどまってはならないと思うのです。これは御承知のように税金の場合は法律案とともにそれから出るいろいろな政令やたくさんの通達、そういうものによって徴税業務が行なわれておるわけです。さらにその通達や何かは実際の調査を待って初めて基本的な税法が実施に移される、こういうことになってくるわけです。一言で言うならば、いわゆる徴税ということは税制の場合非常なウエートを持つ。むしろ法律関係よりも徴税の技術と申しますか、このものに非常に大きなウエートがかかってくる。たとえば本年度の予算と税収の関係を見ましても法人税は当初の予想を下回っておるわけです。ところが補正予算を組んだときに、六百五十億の補正予算が組まれたわけですが、その中で何と事業所得が二百五十億円組まれている。これはもちろんこの中に約四百億近い勤労所得もあるわけですが、勤労所得は、これは逃げ道がないのです。事業所得の場合には、いわば逃げようと思えば逃げられるし、取ろうと思えば取られる、こういうしぼり方ができるわけです。で、二百五十億の事業所得がしぼり取られるということです。これ一例を見ましても、これはいかに徴税技術によって――数字もできておりますし、私たちが実際上末端の税務署を調べたりあるいは税務署の職員に聞いてもそういう事業所得税を取るような内々の指令が来ておるということを私ら聞いておるわけです。現にこういう補正予算に組まれたら字から見ても、いわゆる零細事業所得者というものがいかに徴税を強化されておるかということがここで明らかになっております。とするならば、当然に税制調査会はこういう徴税の面にわたって御論議あってしかるべきだと思うのです。あるいはそういう面を配慮した法体系を考慮さるべきだと思うのです。私は、現在までそういう意見はきわめて少なかったと思うのですが、ぜひそういう点についてのお考えをいただきたいし、今年度だけでなく特に長期税制についてのいまからの御論議もあることでありますから、ぜひそういう点の御考慮をいただきたい。その点についてのお考えをひとつお聞きしたい。
それから、時間がないようでありますので、質問ついでに稻川さんのほうにも一言だけお尋ねしておきたいと思います。
それは、もう法案の内容というよりも、実は私が二週間くらい前の本会議でやはり日本のこういう複雑な産業構造あるいは経済構造のもとにおいては、法人税なんか少なくとも三段階、四段階くらいにすべきではないかということを提案し質疑をしておるわけですが、中小業者の方がやはりそういうお考えをお持ちになっておるということを私はたまたまきょうの説明を聞いて、なるほどと思ったわけですけれども、中小企業のそういう税についての御要望なり御意見を、もっと率直に強く出される必要があるのではないか。たとえば租税特別措置に関しましても、こうやっていまお聞きしましたように税調でさえも反対しているのが通る。これは言わずと知れた証券界その他いわゆる自氏党関係の強い圧力のある団体によってこれが通されておる。大蔵省にも強い圧力を持っておる。いわば、あなたたちがそんな強い要望を持ちながら大蔵省なんかにその意見が通らない。私どもも不勉強にして十分知らなかったわけですが、そういう点について、いろいろ御意見があるならば、もっとその反映をする方法をお考えいただきたいと思うのです。そういう点について、なかなかこういうことはきめ手というのはないわけですが、法案の内容というよりは、法案の内容はむしろけっこうです、賛成するところが非常に多いと思いますけれども、そういう運動の展開の方法について御要望等がありましたら聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/72
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073・松隈秀雄
○松隈参考人 ただいまの御質問の第一点は、税制調査会の答申は今回の政府提出法律案の中において尊重されたかどうか、こういう点でございます。これは見方にもよるわけでございまするが、先ほども申し上げましたように、地方税においてはほとんど相違ございません。国税において所得税の税率緩和が見送られたという点は遺憾な点だと思います。
それから、租税特別措置で資産所得であるところの利子所得と配当所得の租税特別措置が存続あるいは拡大された、これは税率を見送った以上に遺憾の程度は大きいと思います。しかし、見解の相違と申し上げますのは、租税特別措置は特別な政策、目的のためにある程度負担の公平は害してもやむを得ないという立場をとっておりますので、要するに政府が資本市場の育成とかいうような当面緊急な政策をどの程度重きを置いて遂行しようとするのか、また貯蓄増強というような政策をどの程度意欲的に押していこうかというその政策にかかる問題でありますので、その点政府の責任において政策的な決定をしたと言われれば税制調査会もまっ正面から反対はできない。税制調査会としては先ほども申し上げたとおりでありまして、租税特別措置を新設する場合には、政策目的自体の合理性の判定をまず第一にしてほしい。それから政策手段としての有効性の判定をしてほしい、そして付随して生ずる弊害と特別措置の効果との比較検討をした上判定して、その判定にパスしたものであれば政府が採用してもよろしい、こういう答申を出しておりますので、今度の新租税特別措置というようなものがこの政策に及第しているかどうかという判定にかかる問題したがってこれは見解によって異なる意見が出るんじゃないか、こういうふうに思います。(只松委員「だからあなたはどう思っているかと聞いているのです」と呼ぶ)私は遺憾に思うということを先ほど申し上げております。
それから第二点の税制は法令に書いたものであると同時に執行面が大事であるから、執行面まで考慮した上でなければ税制の完ぺきは期しがたい、したがって、税制調査会も執行面のことまでを考慮したかどうかということでありますが、その点についてはやはり税務行政上の実情を知るというようなことで国税庁の係官の出席を求めて、税務行政の実態についての質問を行ない、意見の交換もしつつ税務行政面についての配慮もいたしておる、こういうことが申し上げられると思うのであります。
それから議論の段階におきましては、ただいまは事業所得者が少し強く徴税されているというような御意見がありましたけれども、税制調査会ではむしろ給与所得者のほうがいじめられて――いじめられるということばは悪いかもしれませんが、給与所得者のほうが課税が徹底しておる。事業所得者のほうがそれに比較すれば漏れもあるということで、結局給与所得と事業所得のつり合いをもっととる必要があるのじゃなかろうか。世間で俗に九、六とかいって、給与所得は九〇%、場合によっては一〇〇%だ、事業所得に至っては六〇くらいしか把握されていないんじゃないか、こういうようなこともいわれておるが、そういう点やはりできるだけ公正な執行が行なわれるように、税務行政の上においても希望したというような意見は出ておりました。
以上簡単でありますが、お答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/73
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074・只松祐治
○只松委員 いまお答えになりましたけれども、勤労所得税が重いくらいのことはこれは百も承知しているわけです。そんなことを言っているのじゃない。ここにおいでになったならまともな答弁をしてもらいたい。そういうことじゃなくて、さっき言ったのは、法人に対して租税特別措置、そういうことと関連して事業所得が二百五十億出ておるじゃないか、大法人との関係で私は言っているのです。ところが勤労所得が重い、そんなら事業所得も取るというなら大法人もなぜ取らないか、こういうことなんで、ぼくはそういう論議をしているのではない。ただ事業所得の一例をあげて、こういうように重くなっているからもっと全体の徴税行政というものを税調でもお考えになる必要があるじゃないか、こう言っているのです。重いものを例に出してことばをごまかす、そういう答弁は必要もしない。そういう点でもっと実際の徴税面にこういう大法人なんか上がってきているけれども、中小法人の事業所得者は重い、こういう話をしているのです、誤解のないように……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/74
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075・松隈秀雄
○松隈参考人 補足いたして説明申し上げますが、大法人であろうと中小法人であろうと、また個人企業であろうと給与所得者であろうと、やはり適正な調査をして適正な課税をしていくということが徴税面で必要であることは申し上げるまでもないことであります。ただ税制上において現在どういう問題点があるかと申しますると、給与所得者は課税がはっきりしている上に、給与所得控除があるけれども、事業者の必要経費に比べるとまだ給与所得者が少ないという不平を持っている。それから個人企業者でありますと、先ほど稻川参考人のお話にありましたような専従者控除では満足できないのだ、事業主の給与を認めろ、それから専従者の給与を認めろというような不平がございます。それから中小法人になるとそれらの点はある程度解決するのですが、今度は相税特別措置が大法人のほうによけいあるから大法人に比べて不利だ、こういうようなことで、上を見れば切りなし、下を見れば切りなしというような、自分をある立場に置いてみると、自分よりもどうも得をしている者がある、自分よりも損をしている者がある、しかし税制上はそういう点はできるだけ直すべきだというので、法人企業と個人企業のつり合いの問題、それから大法人と中小法人との権衡の問題もぜひ解決しなければならぬという方向で検討はされております。ただ法人税の改正になりますると、法人税の政策等がなかなかきめ手がないものですから、正確な答えを出すまでに至っておりませんが、方向はおっしゃるような方向で税制調査会も検討しているということを申し上げられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/75
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076・稻川宮雄
○稻川参考人 中小企業の要望しておりますところが皆さま方に十分反映していないという点につきましては、私どもも常に意見を立てまして、政府はもちろんでございますが、国会、政党に対しましても要望しておるのでございまして、それぞれそれらのPRもしておるつもりでございますが、不幸にしてそういう点につきまして十分行き届いてないという点につきましてはわれわれも反省いたしまして、今後とも皆さま方の御理解をいただくようにお願いいたしたい、こういうふうに存じております。
なお、法人税の軽減税率の問題でございますが、現在二段階になっておる。これは租税特別措置の関係等からつくられたものだと思いますけれども、しかし租税特別措置の関係から見ましても、実効税率の点から見ますると、どうも私どもは二段階では十分でない、少なくとも三段階。したがいまして、現在三百万円で切られておりますけれども、五百万円以下はかりに三三%、それから三百万円以下は今度三一%になるのでありますが、これは三〇%あるいは二八、九%には下げていただきたい。さらに百万円以下につきましては二三%くらいの、これは腰だめでございまして、正確な資料のものでありませんが、そういうようなある程度の段階を設けるということが必要ではないか、もちろん法人税は比例税になっておりまして、個人所得のような累進構造をとるということは困難だと思いますけれども、少なくともこの程度の段階というものは負担のバランスの上におきましても必要ではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/76
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077・吉田重延
○吉田委員長 有馬輝武君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/77
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078・有馬輝武
○有馬委員 松隈さんにお伺いしたいと思いますが、三点だけお伺いをいたします。あと春日委員がおられますので、十五分程度でお伺いしたいと思います。それと、委員長が申し上げなければならぬことかと思いますけれども、僭越でございますが、実はせっかく参考人においでいただきながら、うちのほうの緊急代議士会がありまして、非常に重要な問題でありますので、私を除きまして席をはずしておりますが、その点は悪しからず御寛容いただきたいと思います。
第一点といたしまして、間接税の問題に触れられまして長期方針の中で現在間接税と直接税の比率については一応バランスをとっておるのではないか、そして現在の間接税については、きめのこまかい配慮がなされておるので、これ以上検討することはどうかというような形で税調の考え方を述べておられるように受け取れるのでありますが、実は松隈さんも御承知のように、田中大蔵大臣が最近間接税の増徴についてしばしば言明されまして、予算委員会の私の質問に対しましても同様のお答えをしておられるのであります。しかしながら私ども、間接税は逆進性が強いという意味で、これ以上ふやすべきではないという考え方に立っておるのでありますが、税調としても、私は、もしそういう御配慮があるならば、いま少しはっきりと書かれるべきではなかったかと思うのでありますけれども、何だか少し抜け道を残されておるように受け取れますので、この点について松隈さんの、また税調のお考え方をこの際はっきりさせていただきたい、このように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/78
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079・松隈秀雄
○松隈参考人 間接税につきましては、直接税との比率の関係を述べておりますが、直接税何%、間接税何%ということを第一義的にきめることは必ずしも適当でない。それならばいまのままほっておくとどうなるかと申しますと、どちらかといいますと、直接税の伸び率のほうが大きいから、もし減税をせずにおきますと、直接税の比率がますます拡大していく。これも好ましくないから、減税はむしろ直接税を中心に考えるべきである。しかし、それならば間接税は全然減税しないかと申しますと、間接税の減税も時期を見て考えるべきである。それは、間接税については毎年わずかばかりの減税をしましても、末端価格への響き方がほとんど出てこない。それよりは間接税は四、五年目にまとめて大幅な軽減をして、末端価格に反映させたほうがいい、こういうような考え方を持っております。
なお、どの間接税を下げるかということについては、それぞれの税金が、最近の国民生活の水準あるいは物価の点からいって適正であるかどうかという点を見て、個々に検討をすべきである、こういうような意見であると思います。
それから間接税増徴を積極的に考えるとした場合に、税調の考え方といたしましては、現在の間接税の主たるものは、御承知のとおり、酒、それからたばこは専売益金になっておりますけれども、これも間接税ですが、続いて揮発油税、物品税といったようなものでありますが、これは相当高い限度にきておるから、これを増徴する余地はきわめて乏しい。したがって、もし間接税を増徴するのであれば、一般売り上げ税を考えるほかないのではなかろうか。現に間接税の比率の高いフランスにしても、ドイツにしても、イタリアにしても、それは一般売り上げ税もしくはこれにかわるべき付加価値税というようなものを持っている国なんです。そこで、わが国の場合に売り上げ税というようなものを創設できるかどうかということは、税制調査会でも検討したのですけれども、これは現在の段階では非常にむずかしい、こういう結論を出しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/79
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080・有馬輝武
○有馬委員 次にお伺いしたいと存じますことは、所得税につきまして、課税最低限の問題について触れておられるのでありますが、これは毎年の答申が非常にポイントをついておられながらも、的確に言われなかったといいますか、あれがありまして、泉さんたちがくぐり抜ける穴をわざとこさえてあるようにしか思えないのであります。といいますのは、標準生計費の問題にいたしましても、これはしゃもじのおばさんたちだけではなくして、一般の人たちを見ますと、きわめて非合理で現実離れがいたしておりますが、そういう点について私はいま少し的確に答申の中でも指摘されてしかるべきではなかったかと思うのでありますが、この点についてお聞かせをいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/80
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081・松隈秀雄
○松隈参考人 所得税の課税最低限を引き上げますために、基礎控除を引き上げる、それから扶養控除を引き上げる、配偶者控除を引き上げる、また別の意味で給与所得控除を引き上げる、こういうようなことをいたしまして、独身者の場合には約二十万円、標準家族であれば、現在四十八万円ほどであるのを、年五十六万円程度まで引き上げるという改定を答申しまして、大体それが政府案において認められておりますが、税制調査会の段階におきましても、それでは満足できないという意見も相当強かったのでありますが、減税ワクの関係もありまして、三十九年度に比較しまして、四十年度の自然増収も比較的多くを望み得ない。一方、財政上の要請も強いということで、税制調査会がある程度遠慮したと申しますか、実現可能性の少ない案を出して、それを政府がほとんど認めないというよりは、政府も受け入れ得るだろうという見当をつけた案にしたほうがよかろうということで、圧縮をしたような形で答申を取りまとめております。したがって、御意見によっては、現在程度の課税最低限では生活費との関係は必ずしも解決しておらぬ、こうおっしゃるかもしれませんが、税制調査会の段階では、やはり大蔵省提出の資料等も参考にしつつ、かつ財源の点も考慮して、不満ではあるけれども、最小限これだけはやってほしいという趣旨で答申をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/81
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082・有馬輝武
○有馬委員 その点で、これは大蔵省だけではなくして、税調もなまじっかマーケットバスケット方式によるとかなんとかいうことで科学的な根拠を持たせるかのような印象を国民に与えて、むしろ不満を助長するという結果におちいっておるような感じがするのであります。でありますからそういった理論構成をするならば理論構成をするらしく、また現実にマッチさせるならば現実にマッチさせるらしく、それぞれ割り切った形の答申が、ぼくはむしろ国民に対しても親切ではなかろうかと思うのであります。オブラートに包んでありますけれども、そのオブラート自体がどうもということになりますと、かえってぼくはいま申し上げたような結果が出るのではないかと思うのでありますが、この点についていま一度お聞かせをいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/82
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083・松隈秀雄
○松隈参考人 大蔵省提出の資料も参考にいたしましたし、大勢も達観をいたしまして、ことに所得税の場合において、もし課税最低限を引き上げないということになれば実質増税になるとか、あるいは納税者が年に二百万人以上も増加するとか、あるいは新高卒で就職するとすぐ所得税を納めるような状態は行き過ぎであるとか、そういうような外的な状況も参酌したのでありますが、終局はやはり減税額と結びつきまして、基礎控除を一万円上げましてもすぐ二百億ほど響きますので、基礎控除、扶養控除等を合わせて標準家族で五十六万円は不満だから、これを六十万円に上げるということで四万円ほどそこに生み出そうとすると、これはなかなか財源が要ることであります。したがって、やはり政府の財政規模と申しますか、あるいは財源の振り分けをもう少し減税のほうによけい回わしていただくという見通しがつかない限り、税調もあまり多くを望んでも、結局答申がそのとおり受け入れられないということになるので、その辺を苦慮しつつ答申をまとめておるような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/83
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084・有馬輝武
○有馬委員 その点で税調と大蔵省が一オクターブずつおくれておるのではないか。少なくとも税調としては、基礎控除はかくあるべし、しかし現在はというような形にでもするかして、せっかく勉強の結果この長期的な答申が出されているのでありますから、やはり本来のあり方についてぴしっと出していただいて、がしかし、という形で、いまみたいにまとめていただくとよかったのではないか。いま松隈さんがおっしゃったことは、大蔵省がやる段階ではないかと思うのでありますが、その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/84
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085・松隈秀雄
○松隈参考人 税制調査会の中にも、基本問題を調査します基本問題小委員会というようなものも設けられまして、ことに学者を臨時委員に委嘱して検討しておりますので、ただいま有馬委員のおっしゃったようなことも、学者の見解等から理論的なものをまとめるということも必要だと思います。今後の一つの行き方であるというお教えをいただいたような感じがいたします。それで御同意願えるかどうか、一応私としては御意見ごもっともと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/85
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086・有馬輝武
○有馬委員 次にいま一点お伺いしたいと思いますが、それは学資金控除についてであります。愛知文部大臣が就任されまして、現在の学資金の異常な増加に対して、税制面でも配慮すべきだという大臣就任の第一声を、私、注意深く見ておったのであります。ところがこれは四十年度におきましては全然考慮されなかった。その点で私、予算委員会でも、税法上困難な面があるのでという大蔵大臣の答弁、また文部大臣の答弁には納得できがたかったのであります。税調ではいわゆる均衡論の立場から、この問題についていま少し考慮すべきだというような結論を出しておられるやに見ておるのでありますが、その均衡論を言うならば、現在の租税特別措置その他の税法上の配慮というもの、時限立法というものを、すべて根本から洗い直して初めていまみたいなことが言えるのであって、現在の時点においては、当然この均衡論を抜きにしても取り上げて、ほかのものと少しも不均衡というようなものは出てこないんじゃないか。すべてのものがならされている段階で税調がそういった結論を出されるなら話はわかるのですが、むしろ積極的にこういった面については取り上げてしかるべきではなかったかと思うのでありますが、この点についての御意見をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/86
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087・松隈秀雄
○松隈参考人 学資金控除の御要望があったことは、税制調査会でも承知いたしておりまして、中で検討をいたしました。ただ、これを答申に盛り込み得なかったのは、まだ結論を出すのにいろいろ研究すべき点があるというので、時間切れというような関係もございます。中で議論されたうちには、こういう点もあるのでございます。つまり均衡論であります。うちが生計が苦しいから高等学校でやめさせて就職させる。そうすると、先ほど申し上げましたように、最近の所得税法では新高卒でも所得税を納めなければならない。ところが、苦しいけれどもがまんして学校にあげて、そして私立大学等に入れますと何万円という学資金が出る。それを今度は所得控除するということになると、片方は、学校に行きたいのだけれども生活が苦しいからもう働きに出ているのだ、そういうところは税を納めろ、生活も苦しいけれども何とかやりくりして学校へ出したら、学資金控除で所得税が下がってしまった、こういうのははたしてどうだろうかということと、それから学資金控除の入れ方が、私立大学等の学費がなかなか高いものですから、一万円や二万円の控除では御期待に沿えるかどうかわからない。そうすると、一方において、たとえば生命保険料の控除なんていうものは、これは人間の命の償却を積み立てているようなものですが、それですら年三万四千円かで頭打ちなんです。学資金の控除というのでいきなり三万円とか五万円とかいうのを入れるということになると、生命保険料の控除なんていうのは、実に長年の努力というと語弊がありますけれども、沿革を経てやっと三万四千円になっているのだが、それらとのつり合いはどうだろうかというようなことで、確かにこれは検討はしたのですが、どうもまだ幾らくらいまではよかろうという踏み切りがつかなかった。それと、ある程度入れなければ意味がないし、財源の関係ももちろんありまして、これは慎重検討ということになっておりますので、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/87
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088・有馬輝武
○有馬委員 春日委員が次に質問されますので、私はこれで終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/88
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089・吉田重延
○吉田委員長 春日一幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/89
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090・春日一幸
○春日委員 時間が十五分ですから私も簡単に伺います。
それではちょっとひとつ関連として伺いますが、国民の可処分所得の行くえですね。通貨価値に格段の変化のありません場合は、可処分所得なるものは、一つは貯金にいくか、一つは証券投資にいくか、通例の場合その二つにしか行き得ないものと思いますが、松隈さんの御見解はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/90
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091・松隈秀雄
○松隈参考人 お説のとおりであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/91
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092・春日一幸
○春日委員 そうすると、わが国税制の基本的な原則となるものは、所得ある者に課税をなす、担税力の強き者に重く、弱き者に軽く、これはもう一個の貫いた原則だと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/92
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093・松隈秀雄
○松隈参考人 これもお説のとおり、所得のあるところに課税し、その所得の担税力にできるだけ正比例したような課税をすべきであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/93
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094・春日一幸
○春日委員 そういたしますと、午前中も佐藤教授から若干の公述がございましたが、財政政策上の制約があるといまおっしゃったような制約がある。ところがたとえば金融機関は産業政策上利子所得に対して優遇措置を求める。そのねらいは、貯蓄を増大せしめる手段として利子所得に対する優遇措置を求めておる、こういうことでございますね。それから片方証券業界は大衆の証券参加を求めるために配当所得に対する特別優遇措置を求めておるわけでございます。政府は今回両々相まってその要請にこたえようといたしておるのです。国民の可処分所得というものは一つしかないですね。一つしかないものを、金融と証券に対する、すなわち利子所得と配当所得に対する税法上の措置に、何らかここに断層がついておるならば、証券に流れるとか、あるいは証券は不利だから金融に流れるとか、産業政策の意図とその効果があらわれてくると思うのです。ところが公平に同じように措置をとっていけば、何にもそこに産業政策の効果はあらわれてこない。同じ水準ならば水は政策的にいずれかの道を力学的に選んでいくという結果はあらわれてこない、こう思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/94
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095・松隈秀雄
○松隈参考人 先ほど、国民の可処分所得というものは貯蓄なり証券に向かうということは御意見のとおりだと申し上げたのでありますが、国民可処分所得の全額が貯蓄、証券に行くわけではなくて、やはり消費される部分、再投資される部分と二つございます。これが産業政策によりまして、貯蓄奨励をどの程度に強めるか、それから証券市場の育成にどの程度力を入れるかで動いてくるわけです。今日はあまり例のたんす預金というようなものはなくなったと思のでありますが、そこの点が全然税制政策が資金の流れを変えることなしとは断定をできません。ただどれだけ税制を変えれば資金の流れが変わるかということについては、税制調査会でも検討したのです。現に貯蓄増強割合というものを毎年見まして、そして一方に税制改正が、あるときには、預金利子は全然非課税、あるときは源泉分離課税で、その税率は一〇%、あるときはそれが五%に落ちているというふうに、税制上の措置も非課税から源泉分離の税率の変更までいろいろありますが、そのカーブと必ずしも一致しているかというと一致してない。ですから、税制調査会の答申にも、預金利子の優遇をしても、それが貯蓄の増強にどれだけ効果があるかということを実証的に見ることは非常に困難だということは言っているけれども、心理的影響は必ずあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/95
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096・春日一幸
○春日委員 私が申し上げておるのは、たとえば人によってはそれぞれ趣味も嗜好も違います。たとえば貯蓄の好きな人もありましょうし、あるいは証券に投資して上がり下がりのスペキュレーションを楽しむ人もありましょう。だから人間の性向や好みによって、いろいろそれは違うが、そういうようなものを全然抜きにして、たとえば不肖春日一幸、これをただ一人と考えて、ここで私の可処分所得がある。消費もした、あとに残った金を貯蓄すべきか、あるいは証券投資すべきかという私が選択者になった場合、その所得の中で、税法上特別優遇されて金利所得のほうが有利な場合には、そちらを選ぶであろうし、そしてまた配当所得が有利な場合はそちらを選ぶであろう。ところが同じ場合は、一体どうなるか、こういう質問をしているのです。同じ場合では、その効果はあらわれてこない。同じならば、どっちを選ぶという積極的な刺激を受けないのだから、効果がない。効果がないとすれば、どういうことかといえば、所得のあるものに課税をなすという鉄則があるのに、その所得に課税をしないという、その特別な措置は産業政策としては何も効果がないじゃないか。何も効果のない産業政策を、財政政策の基本原則を全くじゅうりんして、特別にあえて行なわなければならない政策的な理由が乏しいではないか、こういうことを申し上げておるのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/96
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097・松隈秀雄
○松隈参考人 前提として利子所得に対してと配当所得に対しての税制が同じならばというけれども、全く同じではない。そこで差があるので、これは各人各人に、たとえば貯蓄をするときには、非課税の限度が五十万円であるのを百万円になったから、それをどの程度に利用するか。これは一方一人一金融機関に限らない。一方配当のほうは一銘柄五万円までは確定申告を要しないわけですから、たくさんの会社の株を一銘柄五万円の配当程度に持ったほうが得か、それから自分は非常に所得が大きくて限界税率が高いからそんなにこまかく分けるかわりに、源泉選択をしたほうがいいかということで、これはもう個人個人の判断によって預金利子をねらい、配当をねらうということで、ある程度の差は出てくると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/97
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098・春日一幸
○春日委員 要するに、冒頭にあなたが申し述べられましたように、可処分所得の行くえというものはいろいろなものがあるでしょう。宝石を買いたいものもあるでしょう、土地を買いたいものもあるでしょう。だから通例の場合は、預金にするか、あるいは株を買うかというような場合、そのときに両方に何か措置に格段の差がある。国全体として証券市場に大衆資本を導入せしめるような目的というようなもの、たとえば現在それぞれ企業資本の資本構成というものが自己と他人との非常なアンバランスを生じておるから、この企業資本の構成を健全化、改善化するためにはどうとかこうとか、当面した一つの政策目的があって、税法上その措置をとるというのであるならば、こまかくいまあなたのおっしゃったように、一銘柄どうとかあるいは基礎控除がどうしたとかいうようなことはやめて、預金と証券と、その投資を考えた場合――それは両方とも大同小異ですよ。同じような優遇措置が講ぜられておれば、選択するという形の刺激にならないのではないか。刺激になるかもしれぬが、それははなはだ乏しいのではないか。特に専門的知識を持つ者だけの刺激にしかならない。だとすれば、そのような局部的な部分的な刺激というものは、財政政策上の制約をほとんどじゅうりんしてまでそんなことをする必要はなくなるのではないかということを申し上げておるのでありますが、時間がありませんし、この問題は相当深遠な問題でありましょうから、日を改めて時間をかけてお願いしたいと思う。これはひとつ御検討おきを願っておきたい。
そこで、零細事業者に対する税制措置が今回何ら格段のものが実現を見ていない。これは先般来本委員会においても税制調査会の中山会長に対してわれわれはずいぶん申し上げたと思うのです。特にまた稻川さんは税制調査会の委員であられると思う。とにかく中小企業団体中央会の最高の責任者の一人でもあられる。そこで問題は、これはわが国経済がこういう高度成長をしたとは言いながら、大いなるアンバランスを生じて、零細企業には大きなおくれを来たしておる。だから中小企業基本法の二十三条の、やはり零細事業者に対して税法上金融上、特に税法上格段の措置を講じなければならぬと、これは訓示規定にしろ宣言規定にしろ、あるのです。あらば、この要請にこたえて、このような時点においてひずみ是正ということが政府の政策の大きな柱になっておる以上は、企業組合からの要請にこたえて、今回しかるべき何らかの改正措置がなされるべきであったと思うのです。わずか五万円までの少額雑所得についての不申告、このことが制度化しただけであって、企業組合から要請しておる特別法人にしろという問題、あるいはその利用分量の配当ですか、従事分量の配当ですか、これを損金算入にしろという問題など、全部不問に付されております。これは一体どうしたことか、私は相当の文書であなたのほうにも申し上げておると思いますが、事業協同組合は特別法人として二八プロでございます。ところがこの企業組合に対します税率は、これは一般法人と同じ扱いを受けておる。特別法人にはなっていない。ところが、組合としての実態は、中小企業等協同組合法によって――これは会社法によってできたものではない。中小企業等協同組合法によってできたところの政策的な一つの協同組織である。片方は二八%、片方は大会社と同じことであるということは、私は異様なことだと思う。その問題については対外的に対内的に、事業協同組合と企業組合の持っております機能がどういうものか。協同組合も対外的には力を合わせて、そしてそれぞれ組合員の利益をはかろうとする目的の機能を持つものである。対内的には、得た利益というものはそれぞれの組合員の所得に帰属する、全く同じものなんです。協同組合はそれぞれの企業が存在しておるけれども、しかしそれは一〇%なり三〇%なりあるいは九〇%なり、協同の事業を行なう。七の場合は特別法人。協同組合法の精神は、協同事業というものが行なわれること多々ますます弁ずですよ。九〇%まで協同事業をやるものは特別法人、理想的なスタイルとして一〇〇%共同事業を行なうものは会社と同じことになるということでは、政策的意図がそこに全く支離滅裂になってくると思う。私は、この問題は中央会の稻川理事などは十分把握をされておると思うし、少なくとも松隈さんは本委員会にもしばしば御出席をいただいておりますので、これらの陳情に対しても、政策論議に対しても、私は相当の御消化を願っておると思うのだが、今度の税改正の中において団体法、中小企業基本法のこういう要請があるにもかかわらず、なおそのことがなされていないということはきわめて不満である。一体どういうわけで今度はそういうことをなされなかったのか、この際伺いたい。それから稻川理事は税制調査会においてそのことを強調されたかどうか、強調されたその結果、一体いかなる反動どもがこれを抹殺したのであるか、その経過もつまびらかに御報告願っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/98
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099・松隈秀雄
○松隈参考人 四十年度の改正は長期税制答申の線に沿って取りまとめたということは冒頭申し上げたのでありますが、長期税制の観点におきまして、実は企業課税の問題が一番むずかしくて答えが出ない。所得課税のほうは基礎控除でも、給与所得控除でも、税率でもはっきり割り切っておる。ところが企業になってきますと、まず企業の一番中心である法人から結論を出そうやといって入ったのに、法人税の性格が擬制説なのか実在説なのか、そこらに議論がある。それから法人税が転嫁されるという議論もあれば転嫁されないという議論もある。したがって法人税率をどういじるかという基本の普通税率自体に対する答えが出ない。その間に特殊法人の協同組合をどうするだの、医療法人はどうするだのという特殊の税率ばかりいじってしまったら、基本の答えが出たときにとてもちぐはぐで突き合わない。そういう点でせっかくの問題でありますけれども、やはりこれは全体として企業のあり方、それは法人の性格から始まって、普通法人、特殊法人と分けていって答えを出すべきだ、こういうことのためにこんな中途半端な四十年度の改正しかできなかったのでありますが、問題は十分掘り下げて検討する用意はございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/99
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100・稻川宮雄
○稻川参考人 零細企業に対しまして、特別税制上の配慮をすべきであるということはお話しのとおり基本法にもございますし、また格差是正という意味におきましても、先ほど申し上げたのでございますが、ぜひ零細企業に重点を置かなければならぬということは、私も税制調査会においても強く主張してきたのであります。特にこの企業組合の問題につきましては、先ほどもちょっと申し上げたのでございますが、特に税制調査会におきましては四十年度の税制の委員会にも書面をもって提出をいたしまして、その書面をここに持っておるのでございますが、企業組合が特に特別法人扱いを受け得ないということに対する不合理につきましては十分述べまして、いろいろ御検討を願ったのででございます。要するに先ほどもちょっと申し上げましたように、企業組合というものは会社と同じように売ったり買ったりして、それ自体が営業の主体になっておるものである。だからそれは一つの営利機関である。こういう見地から会社と同じような取り扱いを受けておることははなはだ私ども遺憾でありまして、春日先生からお話のございましたとおり、売ったり買ったりする営利行為をやっておるのは農業協同組合も事業協同組合も全く同様でございまして、今日の市場経済につながっておる以上、当然売ったり買ったりして、その間にできるだけ多くの利益を上げていく、そしてこれを組合に分配していくのが協同組合の趣旨であろうと思うのでございます。そういう意味から、企業組合も一緒になって働いて利益を上げて、それによって生活の安定を得よう、こういうのでありますから、売ったり買ったりそこに利益を得るという点では会社と同じである。会社と同じであるならば他の協同組合も同じでありまして、そういう面ではなくて、内部的な構造ということから考えますと、あくまでも協同組合であり、非営利機関である、そういう見地からこの企業組合に対しては、特に特別法人扱いをすることが至当である、こういうことを申し述べておるのでありますが、なかなか御了解が得られない、こういう段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/100
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101・春日一幸
○春日委員 終わります。とにかく会社は申し上げるまでもなく資本の団体である。そしてその団体自体が利潤を追及するために活動するものである。ところが企業組合は、構成メンバーの団体であって資本の団体ではない。しかもそれは営利を追及するというよりも、むしろ構成メンバーの相互扶助を目的としたものであるということにおいて、会社とは全然異質のものである。そういう実態に全然目をふさいで、まるで観念的な答申が行なわれておるということは不当なことであります。これは非常な零細企業者に対する侵害であるのみならず、団体法、中小企業基本法の国に対する要請を果たしていない。泉君の猛反省と税制調査会の諸君の猛勉強を促しまして、これで私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/101
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102・吉田重延
○吉田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人には御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。
当委員会といたしましては、各参考人の御意見は、今後の法案審議に十分尊重反映せしめたいと存じます。ここに厚く御礼申し上げます。
次会は、明十七日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後二時六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X02019650316/102
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