1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年二月二十六日(金曜日)
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議事日程 第九号
昭和四十年二月二十六日
午後二時開議
一 地方交付税法の一部を改正する法律案(内
閣提出)及び地方税法の一部を改正する法律
案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
二 法人税法案(内閣提出)、租税特別措置法
の一部を改正する法律案(内閣提出)及び所
得税法案(内閣提出)の趣旨説明
三 日韓基本条約仮調印に関する緊急質問(大
柴滋夫君提出)
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本日の会議に付した案件
議員請暇の件
一 地方交付税法の一部を改正する法律案(内
閣提出)及び地方税法の一部を改正する法律
案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
二 法人税法案(内閣提出)、租税特別措置法
の一部を改正する法律案(内閣提出)及び所
得税法案(内閣提出)の趣旨説明
右の趣旨説明に対する質疑
三 日韓基本条約仮調印に関する緊急質問(大
柴滋夫君提出)
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
閣提出)
地方行政連絡会議法案(第四十六回国会内閣提
出、参議院送付)
午後二時七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/0
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001・船田中
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
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議員請暇の件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/1
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002・船田中
○議長(船田中君) おはかりいたします。
議員岸信介君及び同田中龍夫君から、海外旅行のため、三月三日から十日まで八日間請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/2
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003・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
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一 地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/3
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004・船田中
○議長(船田中君) これより、内閣提出、地方交付税法の一部を改正する法律案、及び地方税法の一部を改正する法律案の趣旨説明に対する質疑に入ります。華山親義君。
〔華山親義君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/4
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005・華山親義
○華山親義君 私は、日本社会党を代表いたしまして、趣旨説明のありました地方税制に関する二法案につき、政府の所信をたださんとするものであります。(拍手)
地方財政は、戦後の混乱期から財政再建の困難な時期を過ぎ、一時順調な経過をたどったのでありますが、この数年、政府の経済政策から生ずるひずみの深まりとともに悪化の徴候を示し、加速度的に進行しようといたしております。そして、この悪化は、さきの再建のときには、主として財政力の乏しい地方に生じたのに対し、近年の悪化は、大都市に生じていることが特徴的であり、悪質なものと断ぜざるを得ません。
すなわち、大都市においては、政府のほとんど見るべき施策のないままに、無軌道な人口集中によって生ずる過密化の当面のびほう策に追われて財政支出の膨張を来たし、中小規模諸地方において人口の流出、農業、中小企業の衰退によって財政収入の伸びの減退を来たして、政府割り当ての補助事業を消化するにきゅうきゅうとし、ほかのことは手をこまねいてなすところもなく、行政水準の向上を見ない実態であります。富めるものは、ただふりかかる火の粉を払うことに忙殺され、貧しきものは、貧しきままにそのやりくりに心を奪われて、ここに何ら地方自治としてふさわしい豊かな発展を見ないのであります。
政府はこの実勢にほとんど考慮を払うことなく予算を編成し、地方は政府の意のままに直轄事業、補助事業の負担金を押しつけられています。しかも、政府予算の補助金の不当に低い単価等によって、地方はこれを埋めることを余儀なくされ、いわゆる超過負担は八百億をこえ、明年度は一千億に及ぶであろうとさえいわれるのであります。
このような結果は、年々地方債は膨張し、国の直轄事業の負担金を地方債に求めるに至っては、国の健全財政の見せかけであることをここに如実に示すものであります。この地方債をもってなお足らない部分は赤字となり、年々その累積を増しております。一面、国の予算によって圧迫されるために、勢い地方自治の本旨である地方住民の生活福祉に密着する単独事業を圧迫する結果になります。かくて、いまや地方は借金を増しながら、国の補助機関、下請機関に堕し、住民のためにする固有の事業を失い、憲法にいう地方自治の本旨はまさに地に落ちんといたしておるのであります。(拍手)
政府は、今日、国税の大幅地方移譲を骨子とずる財源の配分、これに基づく国と地方との行政分野の確立、国の予算編成についての地方財政との関連等について、新たなる構想を持って、地方自治体をしてその本来のつとめに立ち返らしむることが肝要であると信じます。シャウプ勧告以来すでに十五年、経済社会は全く一変いたしました。税制にもこれに応ずる変革がなければならない。自治省においても、国税二千六百億地方移譲の構想があるやに聞いております。内閣総理大臣は、税制調査会、地方制度調査会を打って一丸とした大調査機構をもって、まずこの問題に取り組む考えはないか、お伺いいたしたい。
次に、地方税制について。
第一は住民税についてであります。
最近の物の値上がりは、米をはじめとして食パン、とうふ、野菜、魚類、学校給食、授業料、水道、バス、クリーニング、理髪、医療、便所くみ取り等万般に及び、庶民大衆の生活、台所に重大な恐怖を与えるものであります。総理大臣は、台所のことに無関心であることは政治ではないと言われたと聞くが、総理は、言われるごとく、物価の抑制に熱意を持たれても、打つ手のないのが実際ではないのか、私にはそう思われます。しかし、いま直ちにこれを押えることができないにしても、台所の負担を幾ぶんでも軽くすることができる。それは、低い所得、多数家族の所得に対し、思い切った税の減免を行なうことであります。地方税は、本来大衆的であり、累進課税の要素の薄いものであるが、地方税の負担分任性は、いまや自治体の本質減退とともに失われております。いま物価の非常事態においては、この考えを固執すべきではありません。都道府県民税における所得割りの比例税率を累進税率に改めること、扶養控除を少なくとも国税並みに引き上げること等につき、総理大臣は勇断をもって自治大臣に指示する意図はないか。これによって総理大臣の台所についての関心をいささかでも国民に示すことができると思うのであります。
第二は、固定資産税についてであります。
政府は、一昨年、固定資産の評価方法を改め、土地については売買実例価格といたしました。しかし、政府は、多くの経費と市町村吏員の多大の努力によって評価されたものを税額決定の基礎に採用し得なかったのであります。すなわち、土地の売買価格は、政府の無策によって経済の実勢とは無関係に高騰していたからであります。政府は、国民及びわが党の強い反対にあい、次の評価改定の時期までの暫定措置として、農地については三十八年の額をこえない額、その他の土地については三十八年の額の一・二倍をこえない額といたしたのであります。私は、経済実勢とは無関係に不当に高い売買価格をもって課税の基準とすることには根本として反対するものでありますが、次の評価の時期は二年後に迫っています。評価方法を変えるならば、今日からその研究用意をなすべきであります。また、二年後にこの暫定措置はどうなるか、国民は不安の念を持って迎えております。この不安にこたえる立場から、国民にかわり、自治大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。
なお、農業において、土地は最も基本的な生産手段であって、他産業と同視するわけにはまいりません。しかも、農業における土地の生産性は、他産業に比して低いのであります。したがって、多くの欧米諸国は、農地に対する課税について特別の措置を講じています。農林大臣は、このことは先刻御承知のはずであります。農林大臣は、今後政府内部において農地課税の特別措置の実現に努力される所存があるかどうか、お伺いいたしたい。
また、昨年、政府は、農地については三十八年度をこえない額とし、他の土地については二割増にとどめたのであるが、ここにいう農地とは、田、畑だけのことであって、採草地、放牧地等は含まれておらないのであります。このようなことは、選択的拡大の方針のもとに採草地、放牧地の造成につとめている農政の基本方針とは矛盾するものではないか。農林大臣はこれを知らなかったのであろうか、知っていてこれを認めたとするならば、まことに了解いたしかねるのであります。農林大臣の御意見をお伺いしたい。もし、土地台帳の地目の関係からという御答弁であるならば、これは課税技術として容易に処置し得るところであって、自治省の言うところに盲従されてはいけません。
第三に、電気ガス税についてであります。
わが党は、電気ガス税が大企業を中心とする特定の製造業種について減免されていることに強く反対し、その撤廃を主張し続けているのであります。しかも、これがあたかも既得権であるかのごとくに固定し、ここに安住するがごときやり方には絶対反対せざるを得ません。(拍手)政府は、その生産コストに占める電気ガス代の一定の割合をこえる業種について減免しているというのであるが、コストとその構成は時とともに変わるはずであります。法律に定むる業種の指定は一年間にとどめ、全部にわたって毎年更新し、議会の審議に付すべきものと信ずるが、自治大臣、通産大臣の所見をお伺いいたしたい。さらに、もし政府がこの減免の制度を持続するものであるならば、この減免はまさしく政策的減税であります。国の特定の政策に基づく移の減免は、地方税と遮断すべきことは、税に関する基本的な原則であります。したがって、この減免に該当する全額を国において地方に交付するのが当然であると信じますが、大蔵大臣の所見をお伺いいたしたい。この減免に伴う約二百億、さきに述べた不当な超過負担の八百億、合わせて一千億の財源を地方に与えるならば、当面の地方財政の危機は切り抜け得る大きな問題であります。
このような電気ガス税の膨大な減税が大企業に行なわれているのに対し、水道事業に使用されている電気については免税がない。イギリスの社会保障について、よく「ゆりかごから墓場まで」といわれますが、日本においては、うぶ湯から墓場の水まで税金がかかっております。この理由を政府にただしますと、電気ガス税の減免は、生産コストに行なわれるものであって、水道は消費だから減免しないと言われます。生産に関してはルーズと思われるほどの減免を行ない、消費には一まつの考慮をも払おうとしない、この思想こそが、今日の消費物価の高騰の根底をなすものではないか。(拍手)水道に課する電気税は少ないものではありましょうが、その底には、重大な見のがすことのできない思想があるのであります。水道は消費なるがゆえに、この電気税を減免しないという考え方をなお自治大臣は続けられるかどうか、この点をお伺いいたしたい。
第四に、自動車及び石油ガス税についてであります。
このたびの自動車税の増税は、自動車に対する需要を弱め、自動車産業界、特に中小下請業者に影響を与えることはないか。また、中小企業には小型乗用車を営業用に使用するものも見受けられるが、一般中小企業の経営に影響を与えることがないかどうか、通産大臣に承りたい。
また、新設された石油ガス税は、タクシー業界を刺激して、その値上がりムードを助長するようなことがないか、運輸大臣に承りたい。
最後に、今日、地方財政は、一般会計の悪化とともに、公営企業は御承知のごとく重大な問題をはらんでおり、国民健康保険会計赤字は全国市町村の最大の問題であります。政府は、真に、地方財政全般について思いをひそめて考慮すべきときであります。このときにあたって、交付税率の引き上げの僅少であったことは、国は真に地方のことを考えてくれているのかとの市町村当局に不満の声が充満いたしております。自治大臣は、この交付税をもって——わずかばかりの増額の交付税をもって、住民税減税補てんのための傾斜配分、地方格差是正のための傾斜配分、これによって、行政水準の平均的向上の万全を期し得る確信があるのかどうか、私にははなはだ疑わしい。後進地域には、この二重の傾斜配分をなし得る確信があるのかどうか、自治大臣の率直な御意見を承りたい。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/5
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006・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
国と地方との関係は、もともと対立するものではございませんで、これは一体となって国政をになうもの、また行政水準を高めていく、こういうことに相協力すべきものでございます。したがいまして、行政事務の配分あるいはその財源の配分ということは、これはもう適正でなければならないということはお説のとおりであります。しかして、地方自治体に対する行政事務、これは多分にいままでの社会的あるいは歴史的沿革によるものでありまして、必ずしも理論的だけではないようでございます。したがいまして、今日のごとく、社会、経済が発展してまいりますると、当然これは検討して、そうして十分その行政の配分、あるいは財源の配分等について考慮すべきだと思います。行政制度調査会あるいは税制調査会、これらの機関を通じまして、こういう点が十分検討される、政府もまたそれらを尊重して、地方と国との関係の協力関係を密にしたい、かように考えております。
第二に、私に対しまして、台所関係の物価、ことに減税、そういう点について、政府自身が積極的な考慮を払え、こういうことでありますが、お説はしごくごもっともなことだと思います。私も同一の考え方を持っております。今日まで、あるいは地方税におきましても、あるいは中小企業所得層の負担軽減、あるいは事業主の減額の問題であるとか、あるいはただいまお話になりました電気ガス税、あるいはまた住民税の所要の改正など、これはすべてお説の点について私どもが考えられる点、また今日やり得る点を行なっておる、かように御了承いただきたいと思います。もちろん今日の状況をもってこれで十分だと私は申すのではありません。これらの所要の改正を行なったその成果、それを見まして、さらに自治大臣におきましてもいろいろ検討してまいるつもりでございます。(拍手)
〔国務大臣吉武恵市君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/6
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007・吉武恵市
○国務大臣(吉武恵市君) お答えをいたします。
住民税を軽減できないかというお話でございますが、これは御承知のように、昨年から本文方式に改めまして、来年度におきましても百五十億の減税となっておるのでございます。
なお、電気ガス税につきましては、普通の住民に対しましては免税点を引き上げまして、従来の三百円を、電気については四百円、ガスについては五百円に引き上げておるところでございます。
水道についての電気ガス税をやめたらどうかと
いうお話でございますが、御承知のように、水道は、市町村が経営をしておりまするから、免税を
いたしましても取りましても、同じことになるからその必要がないかと思います。
なお、交付税の引き上げ〇・六%は低いじゃないかということでございますが、これによりまして百四十五億というものが増加になるのでございます。来年度の国の予算から見ますれば、これはやむを得ないかと思うのでごさいます。
なお、これにつきまして、農村の低開発地帯に対する傾斜配分をどうするかということでございますが、これは今後といえども、その点には十分考慮していくつもりでございます。
もう一つ、例の固定資産税について評価がえをした、それについて、農地についてどういうふうに考えるかということでございますが、御承知のように、固定資産税の評価は、全国的にこれを統一する意味におきまして、時価に評価がえはいたしましたけれども、御承知のように、農地につきましては、三年間据え置きになっております。宅地につきましては、三年間二割に押えるということになっておりまして、その後どうするかという問題は、税制調査会等の答申もございまするので、急激なる変化を与えないように考慮するつもりでございます。
以上、お答え申し上げます。(拍手)
〔国務大臣田中角榮君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/7
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008・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 第一の住民税につきましては、いま自治大臣がお答えをしたとおりでございますが、ただ、現行制度の中で高額所得者に累進的課税をとったらどうかということでございますが、御承知のとおり、税制調査会の答申にも、市町村民税につきましては、その性格にもかんがみ、現行の税率における累進度は緩和することが望ましい、こういう答申を得ておるのでありまして、政府も、そのような考え方に立っております。
電気ガス税につきましてもお答えがございましたが、これは生産コストにはねかえる率が五%以上というものに対して電気ガス税の減免を行なっておりますし、しかも、効果があがったものに対してはこれを随時はずしておる、改廃をいたしておりますので、現在の電気ガス税を大幅に変更するという考えはございません。
自動車税の増徴の問題、なお石油ガス税の創設等につきましても御質問がございましたが、自動車税につきましては、物価にはね返らないよう、また中小企業等の状態も十分考えまして、大型バス等、直接中小企業と関係のないもののみに限って値上げを行なうということにいたしております。また、石油ガス税の問題につきましては、現行のタクシー料金が石油ガスがあまり普及していない当時、石油ガスよりも燃料コストの高い揮発油が自動車の燃料とされておったのでございます。そういう状況を基礎として計算されておりますので、自動車用の石油ガス税を新設いたしましても直ちに自動車料金等にはね返るということは考えておりません。(拍手)
〔国務大臣櫻内義雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/8
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009・櫻内義雄
○国務大臣(櫻内義雄君) 石炭、肥料等に対する電気ガス税の減免措置は、国民経済上重要な基礎資材にとられておるのでございまして、企業の規模は考慮されてないと思います。この措置によって関連産業、一般消費者に利益を及ぼしておるので、現在取りやめる必要はないと存じます。
自動車税の引き上げについての、中小企業に対する影響等の答弁は、ただいま大蔵大臣のいたしたとおりでございます。(拍手)
〔国務大臣赤城宗徳君登君〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/9
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010・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 農地に対する固定資産税の問題につきましては、自治大臣が御答弁申し上げたとおりでございます。三十九年度の新評価をいたしました際に、三年間税額を据え置くということに相なっておるのは御承知のとおりでございます。なお、採草地や牧草地につきましては税額がのぼらないように、二割増しを限度として税をきめていく、こういうことにいたしておるのも御承知のとおりでございます。
今後、このあり方につきましてどういうふうに考えるかということでございますが、農業経営の実態、農業経営の動向等に関連いたしまして自治大臣が答弁申し上げましたように、税負担が重くないように慎重に検討していきたい、こう思っています。(拍手)
〔国務大臣神田博君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/10
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011・神田博
○国務大臣(神田博君) 大企業には電気ガス税を減免しているのに、水道施設には電気ガス税をかけているのは均衡を失するではないか、こういうようなお尋ねでございました。水道事業の性格から考えまして、電気ガス税は特に低率にするか、あるいは非課税にすることは十分考慮すべきものと考えられます。ただいま自治大臣等からのお答えもありましたが、他の地方公営企業との関係もあり、また地方税としての問題もありますので、今後自治省とも十分連絡をいたしまして検討してまいりたいと思います。(拍手)
「国務大臣松浦周太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/11
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012・松浦周太郎
○国務大臣(松浦周太郎君) お答えいたします。
ただいま大蔵大臣からガソリン税並びにガスのタクシー用のものについて御答弁がありましたが、私にお問いになったのは、LPGの新たな課税に対するタクシー料金の値上げはどうかという問題であったと思います。これはLPGに対する課税がタクシーの原価に対してある程度の影響を及ぼすことは否定できないものであります。これに対しましては、でき得る限り企業の合理化により吸収するよう、業界の協力を求めていきたいと思っております。なお、値上げ問題については、公共料金抑制の点もありますので、これらと見合いまして慎重に検討いたしたいと思っております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/12
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013・船田中
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
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二 法人税法案(内閣提出)、租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び所得税法案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/13
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014・船田中
○議長(船田中君) 次に、内閣提出、法人税法案、租税特別措置法の一部を改正する法律案、及び所得税法案の趣旨の説明を求めます。大蔵大臣田中角榮君。
〔国務大臣田中角榮君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/14
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015・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 所得税法案、法人税法案、及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
政府は、昭和四十年度の税制改正の一環として、国民負担の現状に顧み、中小所得者を中心とする所得税の負担の軽減及び企業課税の軽減を行なうとともに、納税者の理解を容易にする見地から、現行の所得税法及び法人税法の体系的な整備と平明化をはかるため、この両法について全面的な改正を行なうこととし、また、最近の経済情勢に応じ、当面要請される諸施策に対応する税制上の特別措置を講ずるため、ここに所得税法案、法人税法案、及び租税特別措置法の一部を改正する法律案を提出した次第であります。
まず、所得税法案の内容について、その大要を申し上げます。
第一は、中小所得者を中心とする所得税負担の軽減をはかることであります。
すなわち、基礎控除を現在の十二万円から十三万円に、配偶者控除を現在の十一万円から十二万円に引き上げることとするほか、扶養控除につきましても、十三歳以上の者の控除額を現在の五万円から六万円に、十三歳未満の者の控除額を現在の四万円から五万円に、それぞれ引き上げることとしておるのであります。
また、最近における給与所得者の負担の現状に顧み、給与所得控除について、定額控除を現在の二万円から三万円に、控除率二〇%の適用範囲の限度を現在の四十万円から五十万円に、最高限度額を現在の十四万円から十五万円に、それぞれ引き上げることとしておるのであります。
さらに、最近における一般的給与水準の上昇等を考慮しまして、青色申告者及び白色申告者の専従者控除について、それぞれ三万円ずつ引き上げることといたしておるのであります。
以上申し述べました諸控除の引き上げにより、所得税が課税されない所得の限度は、夫婦子三人の計五人家族の標準世帯を例にとりますと、給与所得者では現在の約四十八万円から約五十六万円に、事業所得者のうち、青色申告者につきましては現在の約四十三万円から約五十万円に、白色申告者につきましては現在の約三十七万円から約四十二万円に、それぞれ引き上げられることになるのであります。
このほか、医療費控除について、現在十五万円とされております控除限度額を三十万円に引き上げることとし、また、少額貯蓄非課税制度につきましても、非課税元本の限度額を現在の五十万円から百万円に引き上げることといたしておるのであります。
第二は、納税者の理解を容易にする見地から、規定の体系的な整備と表現の平明化を中心とする税法の整備をはかるため、現行所得税法の全面的な改正を行なうこととしたのであります。
この全面的な改正にあたっては、租税法律主義をたてまえとしつつ、同時に、一般の納税者にわかりやすい法令体系にするため、現在政令または省令で規定されている事項で重要なものは法律において規定することとするとともに、規定の配列、表現の平明化等についても理解しやすいものにするよう配意しております。
また、このほか、課税標準及び税額の計算並びに申告、納付及び還付の手続に関しましても、所要の整備、合理化をはかることといたしております。
次に、法人税法案の内容について、その大要を申し上げます。
まず第一は、中小法人を中心とする法人税負担の軽減をはかることであります。
すなわち、各事業年度の所得に対する留保分の法人税率を、普通法人にあっては、年三百万円以下の所得金額について現在の三三%から三一%に、年三百万円をこえる所得金額につきましては現在の三八%から三七%に、公益法人、協同組合等にあっては、現在の二八%から二六%に、それぞれ引き下げることといたしますほか、同族会社の課税留保所得を計算する場合の控除額を、現在の所得金額の二〇%と百万円とのうち、いずれか大きい金額から、所得金額の二五%と百万円とのうち、いずれか大きい金額に引き上げることといたしておるのであります。
第二は、所得税法の場合と同様、納税者の理解を容易にする等の見地から、法人税法の全面的な改正を行なうこととしたことであります。
次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案の内容について、その大要を申し上げます。
第一は、利子所得及び配当所得の源泉徴収税率の軽減措置につき、現在の五%の税率を一〇%に引き上げて、なお二年間存続することとする一方、資本市場の育成等に資するため、利子所得の分離課税の特例の適用期限を二年間延長することとなし、また、新たに、配当所得について次のような措置を講ずることにいたしておるのであります。
その一は、昭和四十年一月一日から二年間に支払いを受ける株式配当金のうち、一銘柄につき年五万円以下のものは確定申告を要しないこととすることであります。
その二は、昭和四十年五月一日から二年間に支払いを受ける株式配当金については、一銘柄の所有株式数が発行済み株式総数の五%以上の株式の配当と、一銘柄につき年五十万円以上の配当とを一除き、一五%の税率による源泉選択制度を創設することであります。
第二は、鉱産物資源の開発の促進等に資するため、探鉱準備金制度及び探鉱費の特別控除制度を創設し、昭和四十年四月一日から三カ年間に限り、これを認めることにいたしておるのであります。
第三は、国際競争力の強化等に資するため、技術等海外取引の特別控除制度の適用対象に、新たに対外支払い手段を対価とする建設請負、修理加工及び映画上映権の譲渡等を加えることとしております。
第四は、中小企業の近代化等に資するため、中小企業近代化資金助成法に基づく一定の共同店舗について、初年度十分の一の特別償却制度を創設することといたしておるのであります。
第五は、最近における交際費の支出の状況に顧み、法人の交際費の課税の特例について、その損金不算入割合を、現在の三〇%から五〇%に引き上げることといたしておるのであります。
第六は、農業協同組合等の留保所得の一部非課税措置の特例を、生産事業を行なわない森林組合及び同連合会についても適用することとしておるのであります。
第七は、山林所得に対する所得税の課税について、昭和四十年一月一日から三年間、再植林費特別控除を行なうこととするほか、山林所得の概算経費率の算定方式の合理化をはかることとしておるのであります。
なお、以上申し述べましたもののほか、外貨債の円滑な発行及び消化に資するため、特定の利付外貨債の償還差益を非課税とし、また、ブドウ糖の消費促進をはかるため、一定の規格のブドウ糖混和砂糖について、砂糖消費税の税率を軽減し、さらに、中小企業近代化資金助成法の工場等集団化計画の実施にかかる土地の所有権取得登記の登録税及び遠洋区域に出漁する漁船の所有権の保存登記等の登録税について、税率を軽減することといたしておるのであります。また、このほか、昭和三十九年度末に期限の到来する特別措置のうち、特定公共事業の用地の買収等の場合の課税の特例、事業用資産の買いかえの場合の課税の特例、農業生産法人に現物出資した場合の納期限の延長の特例、鉱業用坑道及び造林費の特別償却の特例並びに特殊の外貨借り入れ金等の利子の税率の軽減等について、なお二年間その適用期限を延長する等の措置を講ずることとしておるのであります。
以上、三法律案の趣旨について御説明申し上げた次第であります。(拍手)
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法人税法案(内閣提出)、租税特別措置法の一
部を改正する法律案(内閣提出)及び所得税
法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/15
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016・船田中
○議長(船田中君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。只松祐治君。
〔只松祐治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/16
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017・只松祐治
○只松祐治君 日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました所得税、法人税並びに租税特別措置法、いわゆる税三法について佐藤総理及び関係大臣に質疑を行ないたいと存じます。
今日、日本国民が山積した内外の諸問題の中で最も憂え、危惧し、不安の念にかられているのは、総理、一体何でしょうか。それは申すまでもなく生活の問題であります。すなわち、具体的には、とどまることなく高騰を続けている物価の問題であり、いま一つは、重く、不公平な税金の問題であります。
総理も、かつて野にあったときは、古来、同病相あわれむとか申しますが、苦悩する国民の心とよく通じ合ったとみえて、物価問題とともに、税金が重く、しかも、公平でないと述べ、さらに、池田前総理が税務官僚出身であるので、池田政府はそのような情勢にきわめて無関心であるかのようなことさえお述べになっておりまして、当時、私は同感を禁じ得ませんでした。そして総理は、三千億円の減税が必要であるとさえ公言されたのであります。ところが、その後、佐藤さんがせっかくこうやって組閣し、みずからの力で何でもやれる総理の立場に立たれながら、あとで私が述べますように、三千億減税どころか、かえって実質的な増税さえ行なわれようとしていることは、まことに遺憾なことであり、国民は単に佐藤総理に対する不信だけでなく、政治に対する信頼さえもなくしてしまおうとしています。したがいまして、私は、まずこの点についてお伺いをいたしたいと存じます。
すなわち、総理は在野当時と同じ心境で、税金はいまでも重いとお思いになっておられますか、それとも、お変わりになって、軽いものだとお思いになるようになりましたか。あるいはまた、総理になってみると、とても三千億減税などできるものではないとお考えになるようになったのか、端的にお答えをお願いいたしたいと存じます。(拍手)なお、物価はどんどん上がり、信用インフレ政策が推し進められているこの経済情勢のもとに、何年かの間に三千億減税をいたしますなどという、国民を愚弄するような答弁なら、私は答弁を必要といたしません。ひとつ誠意あるお答えをお願いいたします。
さて、本年度税制改正の質問に入りたいと存じます。
まず、所得税関係についてでございます。
現在、多くの国民が最も望んでやまないものは、所得税の大幅軽減であることは、大蔵大臣もつとに御承知のところであります。したがって、口を開けば、所得税の軽減を行なう、また行なったと宣伝にこれつとめられ、本年も八百二億円の減税を行なったと強調されていますが、はたして減税が行なわれたのでありましょうか。確かに課税最低限は、サラリーマンの場合、夫婦子供三人の標準世帯は四十八万五千三百六十九円から五十四万四千二百五十九円に引き上げられました。しかし、これには大きなからくりのあることを指摘しないわけにはいきません。池田内閣以来、五年間で約三〇%も高騰を続けてきた物価は、さらに佐藤内閣に至り急上昇を続けており、本年は、正月早々米価、交通費など大幅に引き上げられています。それに伴って名目賃金、収入も若干ふえてまいっています。たとえば、昨年度において、月五万円の月給取りは、賞与を四カ月分と計算し、年間八十万円の名目収入を得ていたことになります。苦しい春闘の結果、やっと名目賃金が一〇%上がったとすれば、八十八万円になります。本年度の所得税の改正により課税最低限が五万八千円程度引き上げられたとしても、なおかつ二万円余の課税対象賃金の増額となり、実質上の所得税はふえることになります。すなわち、名目賃金や名目収入の増大は、政府の減税宣伝にかかわらず、かえって年々所得税が急増しているのが実態であります。(拍手)三十九年度の所得税は、当初七千七百二十二億円であったが、補正後は、何と八千三百九十二億円と大幅に伸び、本年は当初予算においてすでに九千八百九十一億円となり、補正後は優に一兆円をこすと思われ、おそらくは法人税の一兆三百五十億円をさらに上回るものと予想されます。これはわが国徴税上ゆゆしい問題であります。また、納税人員も年々増大し、昭和三十年度の一千九十七万人を倍増し、二千万人にもなんなんとしております。これらの数字は、何よりも明らかに、政府の減税宣伝にもかかわらず、働く国民、特に給与所得の労働者、事業所得の零細中小企業者は、毎年実質的に税金が重くこそなれ、少しも軽減されておらないことを示しております。田中大蔵大臣の、物価高騰と名目賃金の上昇、これらと、いわゆる減税といわれる税の調整との関係について、きわめて常識的な解釈による、すなわち、国民に納得のいく答弁を求めてやみません。
政府が真に所得減税をはかろうとするならば、税調資料にも明らかなように、三十八年度において、わが国で五人家族七十四万円、アメリカ百二十万円、西ドイツ八十三万円、すなわち、本四十年度に引き直せば、課税最低限を八十万円にすべきだと思いますが、大蔵大臣は、この課税最低限を引き上げ、真の減税を実行する意思があるのかないのか、お伺いしておきたいと存じます。(拍手)さらに、本年度五人家族五十四万円の課税最低限を決定された科学的根拠をお示しいただきたいのでございます。
税調はまた、三百万円以下の所得者に対する税率の緩和と税率の合理化を答申しております。これは物価上昇に伴う名目賃金、収入の増大に対して当然の要請であります。この当然過ぎる税率の改正を行なっていないことは、所得減税を行なう意思のないこと、欺瞞的な減税の実態を暴露したものであります。政府はなぜ今回税率改正を行なわなかったのか、また、いつ行なおうとしておるのか、明確な答弁をお願いいたします。
また、個人事業所得税がいかに重く、不合理なものであるか。毎年三万件からの、いわゆる、とうちゃん社長の名目的な法人が設立され、わが国法人数が約七十二万件にも至ったことは、何よりこのことを立証するものであります。政府は、事業主給与、家族専従者の費用を大幅に認めるなど、現実の社会情勢に適応するように、個人事業税の不合理を抜本的に是正すべきだと思うが、政府の見解をお伺いいたします。
次に、法人税についてお尋ねをいたします。
昨年度一千万円以上の会社の倒産は四千二百件をこえ、三十六万枚に及ぶ不渡り手形が乱発され、株は暴落し、したがって、信託は額面を大きく割り、当然に証券、信託業界は混乱をもたらしました。これらの事実は、高度経済成長政策の失敗を立証してなお余りあるものであります。かねて企業減税を唱え執拗な活動を行なってきた経済界は、まさに好機到来と、政府、税調に強力な働きかけを行ない、ついに法人税の引き下げ、あとで述べる租税特別措置法の延長、新設に成功しました。確かに法人の性格、課税方法など、多くの論議があり、これらはまだ確定されたものになってはいません。しかし、わが国の法人税率は、表面税率でも世界各国に比して低く、さらに、三十六種、二千億円に及ぶ膨大な特別措置法適用後の実効税率は、きわめて低いものとなっています。しかも、政府、財界は、口を開けば、わが国経済は異常な発展を遂げ、世界先進資本主義国の中でも最も成長率の高い国であると自負し宣伝しながら、他方、課税については、現在でさえ低いこの税率をさらに下げることは、国民の全く理解に苦しむところであります。
政府は、法人税率を下げることは、企業の内部留保を増大させ、自己資本を強めるというが、現下の産業経済界の情勢では、一部、内部からも心配されているように、それはかえって再び設備投資意欲を増大させ、すでに過剰になっている設備にさらに過剰投資を招き、かえって経済界を混乱させるおそれなしとさえしないのであります。かかる際、なぜ大資本の税率引き下げをはかったのか、大臣の責任ある答弁をお聞きいたしたいと存じます。
さらに、わが国のように、零細企業から世界的な膨大な独占企業にまで及ぶ複雑な経済構造を持つ、すなわち、二重経済構造をなす国では、徴税技術士多少の繁雑さはあっても、収益の実勢に応じた超過利潤税の導入を含めて、多段階式、少なくとも英国のように三段階くらいにすることが現状に即したものと思うが、将来そのように進む意向があるのかどうか。もし、直ちにその意向がないとすれば、中小企業と大企業との課税率を変更して、少なくとも現行のように十億円で三一・一五%、一千万円で三二・四四%、三百万円で三〇・九四%などというように、巨大独占資本も中小企業も実効税率がほとんど同じであるというようなばかげたことでなく、アメリカなどのように、二万五千ドルまで三三・六五%、これをこえる部分は五四・五〇%と、大企業と中小企業の大きな格差をつけるべきであると思うが、御所見を承りたいと存じます。
第三に、租税特別措置法についてお伺いをいたします。
税調は、ことしもまた、特別措置が特権化しないよう、できるだけ短期に改廃するようにとの長期答申の原則に立って種々の勧告を行ないました。この租税特別措置法に対しては、政府は、さきの所得税に対する態度と全く相反して、この勧告を根本からじゅうりんし、本年期限切れになる特別措置法をほとんどすべて延長したばかりでなく、財界、証券界が長年待望していた配当分離課税を断行しようとしています。すなわち、一銘柄五万円までは確定申告を要せずとし、総株数の五%以下、一銘柄五十万円以下については源泉選択制度を創設しました。これによる減収は、初年度百五十三億円、平年度百七十億円にも達するのであります。また、貯金非課税限度を引き上げ、平年度二百十五億円もの減税をもたらします。これらは租税の応能、累進、公平の原則を根本から否定し、資産所得者優遇、すなわち、大金持ちには軽く、貧乏人には重い、全く世界的にも悪法の最たるものでありましょう。(拍手)政府は、何がゆえに国民の納税意欲を阻害するかかる悪法を強行しようとするのか。もし、政府の言うように、この措置によって暴落した株価を立て直し、混乱した株式市場を救済しようとするものであるならば、それは本末転倒もはなはだしく、失敗した高度経済成長政策に目をおおい、すなわち、働く労働者、農民、中小企業者の上にみずからの失政を転嫁し、大資本家の被害を少しでも軽くしようとする、卑劣きわまりない陰惨な手段といわざるを得ません。(拍手)かかる悪法は直ちに撤回すべきであると思うが、政府の御所見を伺いたいと存じます。
また、租税特別措置法は、特定の政策目的を行なうための全くの過渡的なもので、終戦直後ならまだそれなりの理由はあったとしても、戦後すでに二十年もたち、開放経済体制のもとでは、すみやかに特別措置法を撤廃すべきであります。少なくとも西欧資本主義国並みに合理化し、二、三百万円の中小資本家も、十億、百億の大法人もほとんど同率であるというような税率、税体系は直ちに改むべきであります。
以上の税法の諸点とともに、さらに国民にとって一そうの重大関心事は、税の調査、課税、徴税の方法であります。給与所得はほとんど一〇〇%確実に捕捉され徴収されます。事業所得も全くきびしい調査、徴税であります。ある税務署では、調査率が四五%、更正決定率九〇%、重加算税が何と二〇%にも及んでいます。一方、大資産家、大法人はほとんど確実な調査は行なわれておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/17
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018・船田中
○議長(船田中君) 只松君、申し合わせの時間がまいりましたから、なるべく簡単にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/18
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019・只松祐治
○只松祐治君(続) たとえばマンションなどに数十万円の生活をしているものは、いかなる収入に基づくものでありましょうか。公認会計士が黒字報告をした会社が間もなく赤字倒産するのは、どういうことでありましょうか。また、大法人の約七〇%は電気計算機を使用していますが、昨年まで、国税庁調査官で電気計算機を使用、解明できる人がほとんどなかったと報告されています。これで大法人の調査が完全にできたとでもお思いになっておるのでございましょうか。政府は、のがれることのできない給与、零細事業所得者の調査はしばらくやめても、かかる実態が不明で調査困難な大資産家、大法人を徹底的に調査すべきであります。その具体的な方策があれば、お伺いをいたしたいと存じます。
また、国民の納得を得て税務行政を円滑に行なうためには、税務白書の作成と、協議団を改組強化して、税務審判所のごときものを設ける必要があると思いますが、御所見を承りたいと思います。
最後に、本年は慣例的な税制改正だけでなく、所得税、法人税二法の文案の全面改正が提案されています。先ほどから申し述べましたように、税金は、わが国行政上からも、かつまた、全国民が強く関心を持つ重要な問題であります。したがって、その審議にあたっては、当然に慎重の上にも慎重を重ねて、国民の納得のいく税制にすることが大切なことと存じますが、いままでの税法は、専門家の税務職員、税理士さんたちでもたいへん難解でございます。また、法文はそうたびたび安易に改正すべきものではありません。政府は、決して改正案文を本国会で強行成立させることのないよう強く約束をするとともに、全国主要都市において公聴会を開くなど、広く意見を聞き、国民の納得を得ることが大切だと思います。総理並びに大蔵大臣の御所見を承って、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/19
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020・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 私が三千億減税を申しましたのは、今日の税のあり方から見まして減税をやりたいという気持ちを端的に表現したつもりでございます。来年度財源のたいへんきびしい際におきましても、平年度千二百四十億の減税をやる、かようにいたしましたのも、この線に沿って精一ぱいの努力をしたものでございます。
また、物価問題についていろいろお尋ねがありましたが、総合的観点に立って政府が物価問題と真剣に取り組んでおることは、よく御承知のことだと思います。減税もやはりこういう観点に立って総合的なその一端として実施しておるわけであります。なお、今後も財政事情の許す限り、国民負担の軽減とその公平化につとめるつもりであります。
さらに今回の税法の改正にあたりまして、税法自身が国民からこれを読みましてもなかなか理解しにくいものだ、かような意味で法文の平明化、同時に簡素化、こういう点に特に留意しておるつもりでありまので、十分御審議をいただきたいと思います。
また、税法につきまして公聴会を開けというお話でございましたが、私どもは税制調査会におきまして十分審議したつもりでありますし、ことに小委員会を設けまして十分一般の方の意見もこれに取り入れた、かように思っております。税制調査会の中の税法整備小委員会等で十分各方面の意見を調査いたしたと思いますので、今回重ねて公聴会を開く必要はないように思っております。(拍手)
〔国務大臣田中角榮君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/20
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021・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) まず第一番目は、このたびの税制改正は所得税の減税率が少ない、こういうことでございますが、間々申し上げておりますように、過去十年における減税額の単純累計一兆二千億にも及んでおるのでありまして、その八〇%以上は所得税の減税であるということは、わが党内閣が過去も現在も将来も所得税中心の減税を行なう姿勢に対しては御理解いただきたいと思います。(拍手)
それから四十年度の減税につきましても、皆さんも十分御承知だと思いますが、いまから半年くらい前の世論は大体四千五百億の自然増収のうちの二〇%、九百億の減税ができるかどうかということに対しては、非常に慎重であったわけであります。しかるに今年度の予算は、そのおおよその評価を裏切って、八百億も所得税中心の減税を行なっておる、こういう事実を御認識いただたいと思います。(拍手)
それから課税最低限を現在五十六万円という改正案でございますが、これを八十万円に上げてはどうか、私もそうありたいと念じておりますが、何ぶんにも限られた財源の中でございますし、なお財政歳出要求も非常に大きいのでありますので、四十年度は五十六万円、いま御審議いただいておる程度でがまんをしていただかなければならない、こう考えております。
それから第四点は、法人税率の引き下げをなぜやったかということでございますが、法人税率につきましては、ただ数字の上で外国の法人税率とだけ単純に比較できるものではございません。また、法人税率の引き下げを必要とする理由は十分御承知だと思います。それがどのような状態につながるかといいますと、開放経済体制下におきまして企業の体質改善、国際競争力の強化、企業の内部留保の充実という面につながり、国民全体の利益につながるものと認識をしておるのであります。
第五点は、法人税率の引き下げは、過剰設備投資をもたらすおそれがないかということでございますが、これはいまの企業の実情、資本市場の実情とか、金融の情勢から考えていただきますと、法人税率の引き下げ分は、当然借り入れ金の返済とか、資本構成の是正とか、より有意義に使われるものと思いまして、設備投資の直接刺激になる要因とは考えておりません。
第六点は、法人税率の構造について三段階制度をとったらどうかということでございます。これは本来から考えて、世界どこの国でも法人税率は一本であることが望ましい、こういう基本的な考えでございますが、現実的には大企業と中小企業がございますので、税負担の状況を考えながら二段階制がとられております。これを三段階制の採用によってより細分化する方針は、法人税率は一本であるべきという基本的な考えにもとるものでありまして、これを採用する考えはありません。
それから租税特別措置、特に配当に対する源泉選択制度の問題に対して御指摘がございましたが、私たちは、政府がこのような措置をとることは、真にやむを得ない事態に対処して、国民の将来長きにわたっての利益を確保するために、やむを得ない処置として、あえて御審議をお願いしておるのであります。税の公平論というものは、これは当然税に対しては基本的に考えなければなりませんが、国際的に日本の立場を考える場合と、国内的な理論とはおのずから別にして評価すべきであります。いま日本は、日本人がものをつくって、日本人がこれを消化してはどうにもならないのであります。膨大もない原材料を海外から輸入をしてきて、日本人の英知によって、これを輸出をし、外貨をあがなうことによってわれわれの生活のレベルアップがあるのであります。唯一無二の道であります。昨年の四月一日から開放経済に向かったわけでありますが、いま、戦前六一%の自己資本比率と比較をするときに、二三%を割る状態であります。このような状態で、一体国際自由競争場裏において太刀打ちができるかどうか。まさに民族の運命がかかっておるといっても過言ではありません。(拍手)そういう状態において必要なものとして、この制度を二年間にわたって採用したのでありまして、静かにものを考えられ、国際環境場裏においてみずからの利益を守るために必要な政策として御理解をたまわりたい。(拍手)
それから現行の徴税制度の面につきましては、中小企業にきびしく大企業には弱いということでございますが、執行に対しては逆な立場をとっております。実地調査の割合を申し上げますと、中小企業に対しましては三八・六%であります。大法人は五六・七%であります。なお実調の件数に対する更正決定の割合を申上げしますと、中小法人は八三・八%であり、大法人は九七・四%であります。でありますから、大法人に甘く中小企業に強いというようなことは絶対にありません。また、そんなことがあってはたいへんであります。
それから最後に、総理から税法の御審議は慎重にということを申されましたが、四月の一日からこれを適用したい。国民に、ささやかではございますがいいことをしたいという考えで御審議をいただいておるのでありますから、慎重かつすみやかに御賛同たまわらんことをお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/21
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022・船田中
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
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三 日韓基本条約仮調印に関する緊急質問
(大柴滋夫君提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/22
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023・船田中
○議長(船田中君) 本日の日程の三に掲げました緊急質問を許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/23
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024・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。
日韓基本条約仮調印に関する緊急質問を許可いたします。大柴滋夫君。
〔大柴滋夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/24
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025・大柴滋夫
○大柴滋夫君 私は、日本社会党を代表し、日韓会談を中心とする外交上の諸問題に関しまして、総理大臣並びに外務大臣にその所信たださんとするものであります。(拍手)
まず第一点は、椎名外務大臣は、去る二月二十日、日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約に仮調印をして帰国されたのでありますが、このような日本の将来を左右する問題を、国会開会中に、事前に何ら国会へはかることなく仮調印したことは、憲法第七十三条の精神をじゅうりんしてはばかならない非民主的態度として、きわめて遺憾の思を表するものであります。しかし、それにも増して重大なことは、仮調印された基本条約の内容についてであります。
その第一は、基本条約第二条において、旧条約の無効を確認しておるのでありますが、政府は、従来、サンフランシスコ条約で朝鮮の独立を承認することになった時点から旧条約は効力を失ったとの見解を表明してきたのであります。これに対し、韓国側は、過去のすべての条約や協定は日本によって強制されたものであり、最初から無効であると、一貫して主張し続けてきたのであります。基本条約は、この対立する主張を避けて「もはや無効であることが確認される」と、きわめてあいまいな表現を使っているのであります。このような基本問題が不一致のまま残され、双方が、それぞれ国内に向かって自由かってな解釈を振りまくようでは、何ら問題の解決にならないものと思うのであります。旧条約は、いつまで存在し、いつから無効になったのか、外務大臣の御見解を承りたいのであります。(拍手)
第二点は、総理大臣にお尋ねしたいのでありますが、基本条約第三条において、条約の対象たる韓国政府の合法性を確認し、さらに、その管轄権に及んでいる点であります。この韓国政府の管轄権については、いままで日本政府は、わが党の追及に答えて、「韓国政府は三十八度線以南に限られるものであり、北朝鮮にも別個の政権が存在する、これを念頭に置いて日韓会談を進める」と国会で答弁しております。しかしながら、一方、韓国政府は、大韓民国憲法第三条の「大韓民国の領土は、韓半島及びその付属島嶼とする。」との規定をたてに、あくまで北の朝鮮民主主義人民共和国政権の存在を否認し続けてきたのであります。これは、妥協の余地の全くない相対立する立場であります。しかるに、基本条約第三条は、「大韓民国政府は、国際連合総会決議一九五号に示されているような朝鮮にある唯一の合法的な政府である」と書かれているわけであります。本条約の最も根本的な条項が、このようなあいまいな表現では、今後、請求権の問題、李ラインの問題、文化財返還の問題、さらにまた、六十万在日朝鮮人の法的地位の問題など、その具体的処理に紛争の生まれることは十分予想できるわけであります。(拍手)この管轄権について、外務委員会における椎名外務大臣の答弁によりますと、合意点に達したのは第三項に書いた字句だけで、その具体的解釈は、日本と韓国では違うのではないかと思われるのであります。おそらく、韓国政府は、いままで言ってきたように、全朝鮮にまたがる唯一の合法的政府だということを日本政府は確認したという宣伝をしていることと思います。一体、佐藤総理大臣は、韓国政府は三十八度線以南を管理する限定政権で、その以北は管轄領域に入らない、北には、朝鮮民主主義人民共和国が存在し、その権威を認める、このような立場で今後の会談を進めるのか、あるいは、このような立場でなく、何か別のお考えを持っているのかお尋ねします。(拍手)
第三に、これも総理への質問でありますが、いわゆる李ラインについて、しばしば日本政府は、国際法上全く不法不当なものと確認してきたのであります。したがって、日韓会談妥結の前提条件として、この撤廃は当然のことであり、韓国もまた、この日本の態度を了承して会談を進めていると判断するのでありますが、総理の見解はいかなるものでありましょうか。明確かつ責任を持ってこの点をお答え願いたいのであります。(拍手)
第四に、これは椎名外務大臣にお尋ねしたい問題でありますが、現在もなお厳然として存在する朝鮮民主主義人民共和国に対する政府の方針についてであります。政府は、常に存在を認め、それを念頭に置いて日韓会談を進めるのだと述べてきたのでありますが、そうであるならば、一方で、南半部における韓国政府の合法性を確認しながら、他方で、北半部における朝鮮民主主義人民共和国に対しては何らの具体的措置、方針を示さないのは何がゆえでありましょうか。日韓会談は朝鮮の統一を助けるものであるべきであり、間違っても阻害するものであってはならないはずであります。現在、朝鮮半島に存在する朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国とは、現実の政治圏としては二つでありますが、民族としては一つであり、その伝統、文化、言語、風俗、習慣、いずれの点から見ても、その民族的統一性を疑うことも、奪うこともできないものであります。(拍手)日韓会談が成立することによって、何か北朝鮮に対しても、その統一のために具体的措置が考えられているのでありますか。たとえばの話でありますが、現在、在日朝鮮人で、北朝鮮に親子兄弟がいる人が大ぜいいると思います。これらの人の中で、一度親や子に会ってきたいと願っている人もたくさんいるだろうと思うのであります。しかし、何ゆえか、日本政府は、帰国の願い書は受け付けるが、実際の往来は、非人道的にも握りつぶしてきているのであります。これらの問題についてはどのような解決をする考えでありますか。あるいは、その他の点で何か統一のために考えているのでありましょうか。お考えがないとすれば、全く片手落ちであり、統一阻害の日韓会談と断定してはばからないと思うのでありますが、外務大臣いかがでございますか。(拍手)
最後に、私は、この条約とも関係があると思われるアジアにおける米国の態度について、佐藤総理大臣がどうお考えになっているかお尋ねしたいと思うのであります。
この条約は、昨年九月三十日、自由世界の親玉である米国務省のバンディ国務次官補の、「米国は日韓両国の国交正常化に慎重かつきわめて深い関心を払っており、相談にも乗るし反応を示すこともあるだろう」との東京声明にもあるとおり、米国の要請や、あるいはエマソン駐日公使の活躍で急がれたものと思われるのであります。しかも、このアメリカは、アジアにおいて一つの立場を堅持しているわけであります。中国封じ込め政策がこれであります。アメリカの言い分はこうであります。これはこの二月一日、琉球立法院における高等弁務官ワトソン中将のメッセージの中の自由世界の基地は必要という次のことばであります。「私たちは相変わらず危険で不安な世界に生活しているのであります。共産勢力は相変わらず世界革命をたくらみ、この計画を達成するためには、必要であれば武力の行使も辞さないという態度をとっております。このことは特に東シナ海を隔てて、琉球からちょうど四百マイル離れたところにある中共政権の場合、間違いのない事実であります。中共政府は隣国を支配して、自国の政治制度を隣国に強制しようとしているのであります。中共は相変わらず好戦的で、アジアの自由を愛好するすべての住民にとっては絶えざる脅威であります。中共の態度とその明白な意図こそは、アジアにおいて現在自由が脅かされているおもなる理由であります。」云々。
私が最も遺憾に思うのは、椎名・李共同声明は、まさにワトソン・メッセージの日韓版というべきものであります。共同声明によれば、日韓会談がアジアの平和を守るものだとか、自由世界全体のためになるものだとかいっておりますが、何か中国を敵視する日韓軍事条約、あるいはいうところのNEATO体制がこの次に位置してもおかしくないほど、はなはだその前文的にできておる点であります。
ワトソン中将のことば、椎名・李声明などの考えがこのまま進んでいくと、自由世界を守るということばの催眠術で、私たち日本人は、アジアにおいてアメリカの言うこと、やることは何でもよろしいということになるのではないか、たいへん心配するのであります。現に、世界で、北ベトナムに対するアメリカの攻撃を是とする独立国家はほとんどない国際情勢であるにもかかわらず、先日の国会で政府の答弁を聞いておりますと、北ベトナムに対するアメリカの攻撃を自衛権の行使として支持している日本政府の醜態さであります。(拍手)自由世界を守るということばの鎖につながれて、私たち日本人の血に連なる同胞沖繩百万の人々は、祖国に、戦後二十年も復帰できないのであります。二千年の親交を持った、同文同種の七億の人民を持つ中華人民共和国とは、その国交が何ら具体化されないのであります。日本の不幸、これに過ぐるものはないと思うのであります。
自由世界を守るという発想の根源は、中国が膨脹的であり、好戦的であるというアメリカの一方的見解であります。佐藤総理、あなたは、アメリカの言うごとく、中国は世界革命をたくらみ、必要とあらば武力の行使も辞さない国であると思っておられますか。中国は好戦的で、アジアの自由を愛好するすべての住民の脅威であると思っておられますか。また、今日、ベトナムにおけるアメリカの軍事行動について、これを是とする国際世論はどこにも見受けられません。そうして、紛争解決のため、フランス、イギリス諸国などは、精力的に話し合いを進めているのであります。日本が、この際、アジアの平和回復のために拱手傍観することは、断じて許されないと思うのであります。アジアの平和を守ることを平素強調しておられる総理は、具体的にいかなる措置をとっておられるのか、政治家として、日本の総理として、明快な答弁を期待して、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/25
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026・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 韓国の管理権がまず第一にお尋ねでございましたが、これは、椎名外務大臣も申しておりますように、また、条約案第三条に規定をしておりますとおり、国連決議を引用することによって明らかだと、私、かように考えております。
また、請求権、漁業等が今後の交渉になるわけでありますが、その場合におきましても、北の部分には、韓国はただいまの管轄権、施政権を及ぼしておらないということがございますので、十分この点を念頭に置いて、これから交渉すべきだと思います。今日、北の部分に事実上の政権のあることは否定し得ないところであります。しかし、これに対しまして、今日、私どもは何らの具体的措置をとろうとしておらないという状態でございます。ただいま申し上げます国連総会の決議、一九五の第三、先ほど引用になりましたとおりでございます。
次に、李ラインについての問題でありますが、私は、この問題こそ、もうこの機会に、私どもがあらためて、かねての主張を繰り返す要のないものではないか、社会党の方においてもよくおわかりではないか、かように思っております。しかし、お尋ねがありますので明確にいたしておきますが、いわゆる李ラインは、国際法上から見まして不法不当なものである、これがわが国の主張であります。この問題の処理は、具体的な会談によりましておのずから解決されるものだと、かように私は信じております。
次に、今回の問題につきまして、米国の政策、これに左右されておるのではないか、米国の意図を受けてやったのではないか、かようなことが言われておりますが、これはとんでもない話で、どうして社会党の方は、私どもが自主的にものごとをきめるということを賛成なさらないのか。(拍手)ことごとに、何かといえば米国を引き合いに出される。しかし、私は自主的な外交を進める、これをはっきり申し上げておきます。もちろん、米国自身が、日韓の正常化について希望しておる、早期正常化を希望しておることは、かねてから、しばしば申しておりますので、そのとおりだと思います。しかし、今回の交渉についてはアメリカが全然関係しておらない、このことをはっきり申し上げておきます。
また、ワトソン弁務官のお話を引き合いに出されましたが、私はワトソン発言なるものの詳細を云々することは、この際差し控えたいと思います。
ただ、私はこの際に、皆さん方も守ろうとされる日本の平和憲法、同時にまた、日米安全保障条約なるものが攻撃的なものでない。そうしてまた、この安保条約の性格は、どこまでも防御的なものだ、また、私自身が平和に徹する、かような声明をいたしております際に、いかにもこの憲法を無視し、同町に、また、安保条約の性格をも変えていくような、また、平和に徹すること自身を裏切るような、そういうような疑念を持たれるということは、まことに私は、残念に思う次第であります。この点ははっきりいたしておきたいと思います。(拍手)
ただいま、この質問に関連して、中共をいかに見るかというお話がございます。私は、中共自身の性格は中共自身がきめることだと思います。私自身は、たびたび申しますように、平和に徹する、こういう立場に立っております。どこまでも、すべてのものと仲よくしていく、この考えに変わりはございません。
また、ベトナムの問題につきましていろいろ御心配をしていらっしゃるようですが、ベトナムの問題がいつまでも今日のような状況であることは、私もまことに遺憾に思います。しかし、これは沿革的に見まして、ジュネーヴ会議の関係諸国がまずこの問題を取り上げるべきだ、これが本来沿革的に見まして、かくあるべきものだ、かように私は考えます。しかし、私自身は、日本の協力を求められれば、もちろん進んでできる限りの協力を惜しむものではございません。はっきり申し上げておきます。(拍手)
〔国務大臣椎名悦三郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/26
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027・椎名悦三郎
○国務大臣(椎名悦三郎君) 基本条約案にイニシアルをいたしましたのは、これは申し上げるまでもなく、事務的な手続にすぎないのでありまして、これが終局的に、法律的に政府を拘束するものではないのであります。一応の締めくくりでございますから、御了承願います。
基本条約第二条の、旧条約がもはや無効であるという表現があいまいである、何が無効であるか、その実態を明らかにせよという御質疑のように拝聴いたしましたが、これは、併合条約が無効となった時点は、同条約の内容と矛盾する事態が生じたとき、すなわち、大韓民国の独立が行なわれたという、その時点であります。
それから、併合条約締結以前に締結されました条約等につきましては、あるいはこれらの条約の定めるところに従って終了し、あるいは併合条約の締結によって失効したと、かように解釈しております。
それから、大韓民国のほかに、北方に一つの政権が存在するということはもちろん承知しております。これはすでに総理がお答え申し上げましたとおりでありまして、国連決議の中に勧告が掲げられておりますが、この国連決議の勧告の趣旨を尊重して、われわれは、北方政権に対しては何もいたさないという立場をとっておりますことはすでに総理から申し上げたとおりであります。これは、国連決議を尊重する意味におきまして当然の態度でありまして、あえて片手落ちと批判されることは当たらないと存じます。(拍手)
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裁判所職員定員法の一部を改正する法律案
(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/27
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028・海部俊樹
○海部俊樹君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
すなわち、この際、内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/28
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029・船田中
○議長(船田中君) 海部俊樹君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/29
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030・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/30
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031・船田中
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。法務委員会理事大竹太郎君。
〔大竹太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/31
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032・大竹太郎
○大竹太郎君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、最近における第一審の実情にかんがみ、その充実強化の方策の一環として、簡易裁判所における事件の審理及び裁判の適正迅速化をはかるため、簡易裁判所判事を十六人増員しようとするものであります。
本案は、一月二十三日当委員会に付託され、自来、慎重な審議を重ね、二月十八日質疑を終了し、二十三日、討論なく、採決に付しました結果、本案は全会一致をもって政府原案どおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党共同提案にかかる、政府は、裁判官その他裁判所職員の増員と充員等に関し、将来必要な予算的措置について格段の努力とくふうをいたすべき旨の附帯決議が付されました。
以上、御報告を申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/32
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033・船田中
○議長(船田中君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/33
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034・船田中
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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地方行政連絡会議法案(第四十六回国会内閣
提出、参議院送付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/34
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035・海部俊樹
○海部俊樹君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
すなわち、この際、第四十六回国会内閣提出、参議院送付、地方行政連絡会議法案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/35
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036・船田中
○議長(船田中君) 海部俊樹君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/36
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037・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
地方行政連絡会議法案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/37
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038・船田中
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員長中馬辰猪君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔中馬辰猪君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/38
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039・中馬辰猪
○中馬辰猪君 ただいま議題となりました地方行政連絡会議法案につきまして、地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、地方公共団体が、国の地方行政機関との連絡協調を保ちつつ、その相互間の連絡協同をはかることにより、広域にわたる行政の総合的な実施及び円滑な処理の促進をはかろうとするものでありまして、その内容は、
第一に、全国の都道府県を九つの地域に分け、各地域ごとに都道府県と指定都市とをもって連絡会議を組織し、連絡協議のための会議は、都道府県の知事及び指定都市の市長のほか、国の地方行政機関の長その他の関係機関の長で構成するものとする。
第二に、会議の構成員は、協議のととのった事項を尊重し、それぞれ担任事務を処理するようつとめるものとする。
第三に、連絡会議は、関係行政機関等に対し協力を求めるとともに、資料を提供し、意見の申し出をすることができ、関係大臣は、連絡会議の意見を聞くことができるものとする。
第四に、連絡会議の経費の負担、会議の結果の報告、その他会議の運営などに必要な規定を定めるものとすることであります。
本案は、第四十六回国会に提出され、以来、継続審査を行なってまいりましたが、一月二十九日あらためて政府より提案理由の説明を聴取し、熱心に質疑を続けてまいりました。
二月十九日質疑を終了し、二十三日、討論を行ないましたところ、日本社会党を代表して秋山委員、また、民主社会党を代表して門司委員より、それぞれ本案に対し、反対の意見が述べられました。採決の結果、本案は原案のとおり賛成多数をもって可決すべきものと決定した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/39
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040・船田中
○議長(船田中君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/40
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041・船田中
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/41
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042・船田中
○議長(船田中君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時四十三分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 佐藤 榮作君
法 務 大 臣 高橋 等君
外 務 大 臣 椎名悦三郎君
大 蔵 大 臣 田中 角榮君
厚 生 大 臣 神田 博君
農 林 大 臣 赤城 宗徳君
通商産業大臣 櫻内 義雄君
運 輸 大 臣 松浦周太郎君
自 治 大 臣 吉武 恵市君
出席政府委員
内閣法制局長官 高辻 正巳君
自治省税務局長 細郷 道一君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X01119650226/42
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