1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年五月十一日(火曜日)
午前十一時四十二分開会
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委員の異動
五月八日
辞任 補欠選任
日高 広為君 館 哲二君
斎藤 昇君 山本 杉君
五月十日
辞任 補欠選任
鈴木 強君 久保 等君
五月十一日
辞任 補欠選任
山本 杉君 村山 道雄君
館 哲二君 近藤 鶴代君
久保 等君 鈴木 強君
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出席者は左のとおり。
委員長 藤田藤太郎君
理 事
丸茂 重貞君
杉山善太郎君
藤原 道子君
委 員
亀井 光君
川野 三暁君
紅露 みつ君
近藤 鶴代君
佐藤 芳男君
竹中 恒夫君
村山 道雄君
小柳 勇君
鈴木 強君
小平 芳平君
林 塩君
衆議院議員
発 議 者 八木 一男君
修正案提出者 松澤 雄藏君
国務大臣
厚 生 大 臣 神田 博君
政府委員
厚生大臣官房長 梅本 純正君
厚生省医務局次
長 大崎 康君
厚生省児童家庭
局長 竹下 精紀君
厚生省保険局長 小山進次郎君
厚生省年金局長 山本 正淑君
厚生省援護局長 鈴村 信吾君
運輸省鉄道監督
局国有鉄道部長 深草 克巳君
事務局側
常任委員会専門
員 中原 武夫君
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本日の会議に付した案件
○厚生年金保険法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
○船員保険法の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
○厚生年金保険法の一部を改正する法律案(衆議
院送付、予備審査)
○議案の撤回に関する件
○社会保障制度に関する調査
(優生保護法の一部を改正する法律案に関する
件)
○戦傷病者特別援護法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法案
(内閣提出、衆議院送付)
○戦病傷者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
る法律案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/0
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001・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) ただいまより開会いたします。
委員の異動について報告をいたします。五月八日、日高広為君、斎藤昇君が委員を辞任され、その補欠として館哲二君、山本杉君が選任されました。また、五月十日、鈴木強君が委員を辞任され、その補欠として久保等君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/1
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002・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 厚生年金保険法の一部を改正する法律案(閣法第二号、衆議院送付)及び船員保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から、両案に対する提案理由の説明を順次聴取いたします。神田厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/2
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003・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいま議題となりました厚生年金保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
厚生年金保険は、昭和十七年に発足して以来今日まで二十有余年を経過し、千七百万人にのぼる民間被用者を包含する年金制度でありますが、現行の給付体系、すなわち、定額部分と報酬比例部分の二本立てによる年令給付の体系が整えられたのは昭和二十九年の改正によるものであります。その後、昭和三十五年には、給付及び保険料について若干の手直しを加えたのでありますが、この改正がきわめて幅の小さいものであったため、厚生年金保険の給付水準は、昭和二十九年以後の著しい経済成長、これに伴う生活水準の大幅な上昇に取り残され、労働者の老後の生活を保障するものとしてははなはだ不十分な状態に置かれているのであります。また、年金財政をまかなうため労使が負担する保険料率も、他に例を見ない低い水準のまま推移しているのであります。
以上のような事情にかんがみ、本年度は保険料率再計算の時期でもあるところから、政府としては、この機会に、今日までの経済成長、生活水準向上の実態に即して厚生年金保険の大幅な改正をはかることが適当と考え、一昨年以来準備を進めてまいったのであります。今回の改正の趣旨とするところは、まず何よりも、人口老齢化の趨勢がいよいよ明確化し、年金受給者も増加して厚生年金保険が成熟期を迎えようとする時期において、労働者の老後の生活を保障するに足る老齢年金として平均月額一万円年金を実現することを中心として、制度の内容を大幅に改善し、これに伴う所要の調整を加えるとともに、給付の引き上げ、賃金水準の上昇に応じて、保険料負担についても適正な水準にまで引き上げようとするものであります。同時に、最近普及しつつある企業年金と、改正後の厚生年金との機能や負担の競合を調整し、老後の生活保障を、企業の協力により、一そう充実強化し得るよう、両者の調整を労使の合意によって行なう道を開くこととしたのであります。
以下、改正法案のおもな内容につきまして、逐次御説明申し上げます。
第一に、基本年金額の引き上げについてであります。まず、定額部分につきましては、現行の月額二千円を五千円に引き上げ、さらに被保険者期間二十年以降三十年までは一年につき二百五十円を加算することとし、これによって三十年では月額七千五百円となるようにいたしております。また、報酬比例部分については、現行の平均標準報酬月額に被保険者期間一カ月当たり乗ずる率千分の六を千分の十に引き上げることといたしております。
第二に、老齢年金の支給につきまして、現行では退職しない以上は年金が支給されない仕組みとなっておりますのを、高齢労働者の生活安定の趣旨に沿って若干緩和することとし、六十五歳に達したときは在職中でも老齢年金の八割相当額を支給することとしております。
第三に、障害年金及び障害手当金の額の引き上げについてであります。一級障害年金につきましては、現行の基本年金額に月額千円を加算する方式に改め、基本年金額の百分の百二十五相当額に引き上げ、三級障害年金につきましては、現行の基本年金額の百分の七十を、百分の七十五に引き上げるほか、さらに月額五千円の最低保障を設けることとし、また、障害手当金につきましては、現行の基本年金額の百分の百四十を、百分の百五十に引き上げることといたしております。
第四に、遺族年金につきましては、妻についての年齢制限及び若年停止を撤廃し、さらに年金額については月額五千円の最低保障を設けたことであります。
第五に、任意継続被保険者について、新たに被保険者期間中の事故に基づく障害年金、障害手当金及び遺族年金を支給することとしたことであります。
第六に、年金額の調整についてであります。年金の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、すみやかに変動後の諸事情に応ずるための調整が加えられるべきものとしたことであります。
第七に、標準報酬につきましては、最近の賃金水準の上昇等の実情に即し、現行の三千円から三万六千円までの二十等級を、七千円から六万円までの二十三等級に改めたことであります。
第八に、保険料率の引き上げについてであります。今回の給付の大幅改善に伴い、保険料の負担につきましても、相応に増加すべきことはやむを得ないところでありますが、厚生年金保険におきましては、従来いわゆる修正積み立て方式のたてまえをとっており、五年ごとに再計算することとして暫定的な料率を採用しておりますが、今回もこの方式を踏襲いたし、急激な負担の増大を避けるため、とりあえず第一種被保険者、一般男子についは、現行の千分の三十五を千分の五十八に、第二種被保険者、女子については、現行の千分の三十を千分の四十四に、第三種被保険者、坑内夫については、現行の千分の四十二を千分の七十二に、第四種被保険者、任意継続被保険者については、現行の千分の三十五を千分の五十八にそれぞれ引き上げ、さらに、これらの料率については、将来にわたって段階的に引き上げていくこととしたのであります。
第九に、既裁定年金の引き上げについであります。現に支給中の年金が、所得保障の趣旨から見て著しく低水準にあるところから、既裁定年金につきましても今回の改正方式を適用いたし、改正後の計算例によってこれらの年金額を大幅に引き上げることといたしております。
第十に、旧陸海軍工廠の工員などの旧令共済組合員であった期間を厚生年金の被保険者期間に算入し、通算老齢年金に準じた特例老齢年金を支給することとしたことであります。
第十一に、厚生年金の老齢年金及び通算老齢年金のうち、報酬比例部分につきましては、民間職域において設立されたいわゆる企業年金で一定の要件を備えるものについては、申請により厚生年金基金を設けてその代行給付を行なう道を開いたことであります。
厚生年金基金は、事業主及び被保険者で組織される特別法人とし、一定数の被保険者を使用する事業主がその被保険者の二分の一以上の同意を得て規約をつくり、厚生大臣の認可を受けて設立することとなりますが、その行なう事業は、厚生年金の給付のうち、老齢年金及び通算老齢年金の報酬比例部分の代行として少なくともそれを上回る額の年金給付を行なうほか、任意給付として、死亡または脱退に関して一時金の支給を行なうことができるものとしております。
また、厚生年金基金は、信託会社または生命保険会社と給付の支給を目的として、信託または保険の契約を締結しなければならないほか、その事業に要する費用に充てるため、掛金を徴収することとしたのであります。
なお、国庫は、年金給付に要する費用のうち、老齢年金及び通算老齢年金の報酬比例部分相当額に要する費用の一五%、坑内夫たる加入員期間に対応する部分については、二〇%を負担することといたしております。
第十二に、厚生年金基金は、厚生年金基金の中途脱退者にかかる年金給付を共同して行なうため、厚生年金基金連合会を設立することができることといたしております。
最後に、実施の時期につきましては、諸般の準備等もあり、主たる部分については、昭和四十年五月一日からといたしております。以上がこの法律案の提案理由でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/3
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004・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 次に、両衆議院送付案中、修正にかかる部分につき、修正案の提出者、衆議院社会労働委員長松澤雄藏君から説明をそれぞれ聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/4
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005・松澤雄藏
○衆議院議員(松澤雄藏君) まず、厚生年金法の一部を改正する法律案に対する衆議院の修正部分について、その内容を御説明申し上げます。
第一に、保険給付費に対する国庫負担率の引き上げについてであります。現行の国庫負担率は、一般男子及び女子一五%、抗内夫二〇%となっていますが、これをそれぞれ五%ずつ引き上げ、一般男子及び女子二〇%、抗内夫二五%としたことであります。
第二に、保険料率の引き下げについてであります。国庫負担率の引き上げとの見合いにおいて改正法案における保険料率を引き下げることとし、第一種被保険者(一般男子)については千分の五十八を千分の五十五に、第二種被保険者(女子)については千分の四十四を千分の三十九に、第三種被保険者(抗内夫)については千分の七十二を千分の六十七に、第四種被保険者(任意継続被保険者)については千分の五十八を千分の五十五に改める等、それぞれ引き下げの措置を講ずることとしたことであります。
第三に、年金額の調整に関する規定につきましては、「国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、すみやかに改定の措置が講ぜられなければならない。」と、その規定の強化をはかることといたしたのであります。
第四に、女子に対する脱退手当金の特例支給についてであります。今回の改正法の公布の日から起算して六年以内に被保険者の資格を喪失した女子に対しては、従前の例により、脱退手当金を支給することとしたことであります。
第五に、厚生年金基金の設立にあたっての労働組合の同意についてであります。適用事業所の事業主が基金を設立しようとするときは、被保険者の二分の一以上の同意のほか、新たに当該事業所に使用される被保険者の三分の一以上で組織する労働組合があるときは、当該労働組合の同意を得なければならないこととしたのであります。
最後に、改正法は、原則として公布の日から施行し、昭和四十年五月一日から適用することとし、厚生年金及び厚生年金基金連合会に関する部分は、その施行を昭和四十年十一月一日からとしたことであります。
次に、船員保険法の一部を改正する法律案の修正につきましては、厚生年金基金に関する部分を除き、国庫負担率の五%の引き上げ等、厚生年金に準ずるものでありますから、内容の説明を省略させていただきます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
最後に要請を申し上げたいと存じますが、御承知のように、衆議院のほうにおきましても委員会は目下継続中でございますので、今後各委員の御質疑等に対しましては、私みずからが出席を申し上げまして御答弁申し上げるのにやぶさかではございませんが、いま申し上げましたような事情でございますので、衆議院の社会労働委員長指名の理事を代理に出席させますので、あらかじめ御了解を得ておきたい、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/5
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006・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 本日は、両案に対する提案理由の説明、及び、衆議院の修正部分の説明の聴取のみにとどめておきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/6
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007・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 厚生年金保険法の一部を改正する法律案(衆議院議員八木一男君外三名提出、衆第二六号)を議題といたします。
まず、発議者、衆議院議員八木一男君から、本案に対する提案理由の説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/7
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008・八木一男
○衆議院議員(八木一男君) 私は、ただいま議題と相なりました日本社会党提出の厚生年金保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由並びに内容の大綱につき御説明申し上げます。
社会保障制度の発展、確立は近代国家の趨勢であり、その要件であります。わが国は、その経済力に関しては世界有数の域まで達しておりながら、社会保障制度に関してはその制度に欠陥が多く、その内容が不十分であり、総体的に見てきわめて不完全なものであることははなはだ遺憾であり、憲法第二十五条第二項の義務を全うしていない歴代の保守政権の責任はきびしく追及されなければならないと信じます。ことにその傾向は所得保障制度、なかんずく老齢を主軸とする年金制度に濃厚であり、その中核であるべき厚生年金制度は全く不完全なものであります。その欠点は数多くありますが、そのうち重要な諸点をあげて見ますと、
第一に、年金額がきわめて貧弱で、現在支給されている年金額の平均は現在の低水準の生活保護の一級地の一人当たり平均額より下まわる状態であり、所得保障としての機能をほとんど果たし得ないことであり、
第二に、国庫負担がきわめて少なくその他の部分は積み立て金方式をたてまえとし、かつ、労使折半負担であるため、給付の低額であるのにかかわらず、労働者負担が過重になっていることであります
第三に、スライド制が確立していないため、物価変動により、この制度を通じて実際上の収奪が行なわれていることであり、
第四に、五人未満事業所の労働者や日雇い労働者が適用されておらず、最も所得保障の必要度の多い人たちが労働者でありながらきわめて低水準の国民年金制度の中に放置されていることであり、
第五に、その積み立て金の管理運用について労働者が関与できず、労働者の福祉のために運用されている部分は九牛の一毛にしかすぎないことであります。
このような諸欠点をなくし、本制度を真の所得保障制度とするよう改正することの緊要なことにかんがみ、わが党は本改正案を提出いたしました次第であります。
まず第一に、年金額については、今日までの急速な経済成長、生活水準向上、物価上昇の実態に則し、人口老齢化の趨勢を体して、労働者の老後の健康で文化的な生活を保障するに足る老齢年金として平均月額(平均標準報酬二万五千円被保険者期間二十年の場合)一万六千円(同じく四十年の場合月額三万二千円)年金の実現をいたそうとするものであります。
第二に、国庫負担率を二倍に引き上げ(第一種被保険者の場合現行一割五分を三割に)さらに積み立て金方式を修正し、賦課方式をさらに多く取り入れることにより、給付額の増大に対する保険料引き上げを最小限度にとどめ、さらに現行の保険料の労使折半負担を改め、使用主七割、労働者三割とすることによって低賃金と物価高に悩む労働者の保険料を引き上げることなしにこの年金額引き上げを実行しようとするものであります。
第三に、スライド規定を物価並びに消費支出水準の両面につき明確に規定し、物価変動による労働者の実質上の損失をなくし、かつ、生産力増大による国民的配分増加を老齢者を中心とする年金受給者に及ぼそうとするものであります。
第四に、五人未満事業所について直ちに強制適用とし、日雇い労働者の厚生年金制度適用についてはすみやかに検討、別に法律の定めるところにより実施されるべきものとしようとするものであります。
さらに、積み立て金については、わが党は、本来労働者のものであるとの見解に立ち、その管理の方法を変え、その運用については労働者代表を過半数の委員とし、残りを学識経験者と関係官庁代表者をもって構成された強力な権能を持つ審議会において方向を決定し、主として労働者の福祉のために活用せられるべきものであるとの見地に立っているものでありまして、右に関しては別の法律案を提出いたすことを考えておりますことを明らかにいたしておきたいと存じます。
以下、さらに具体的に本法案のおもな内容について、すでに本国会に提出を見ております内閣提出の同名の法案と対比しつつ御説明申し上げたいと存じます。
第一に、基本年金額の引き上げについてであります。まず、定額部分につきましては、現行月額二千円を八千円(政府案では五千円)に引き上げ、さらに被保険者期間二十年以降は一年につき四百円(政府案は二百五十円加算は三十年まで)を加算することとし、これによって三十年では月額一万二千円(政府案七千五百円)四十年では月額一万六千円(政府案三十年と同じく七千五百円)となるようにいたしております。
また、報酬比例部分については、現行の平均標準報酬月額に被保険者期間一月当たり乗ずる率千分の六を千分の十六(政府案千分の十)に引き上げることといたしております。
第二に、老齢年金の支給につきまして、受給期間を満たしているもので受給年齢(第一種第四種六十歳、第二種第三種五十五歳)に達したものには被保険者であっても老齢年金を支給することといたしております。政府案では、六十五歳以後老齢年金額の八割を支給しようとするものであり、在職中年金支給に関しても、本案のほうが完全になっております。
第三に、繰り上げ減額年金制度並びに繰り下げ増額年金制度については、すみやかに検討された上、別に法律の定めるところにより実施されるべきものといたしております。政府案においては、前者につき同様の内容がございますが、後者についてはございません。
第四に、障害年金及び障害手当金の額の引き上げについてであります。一級障害年金につきましては、現行の基本年金額に月額千円を加算する方式を改め、基本年金額の百分の百二十五相当額に引き上げ、三級障害年金につきましては、現行の基本年金額の百分の七十を百分の七十五に引き上げるほか、さらに月額八千円(政府案では五千円)の最低保障を設けることとし、また、障害手当金につきましては、現行の基本年金額の百分の百四十を百分の百五十に引き上げることといたしております。
第五に、遺族年金につきましては、妻についての年齢制限及び若年停止を撤廃し、さらに年金額については月額八千円(政府案では五千円)の最低保障を設けたことであります。
第六に、任意継続被保険者について、新たに被保険者期間中の事故に基づく障害年金、障害手当金及び遺族年金を支給することとしたことであります。
第七に、スライド制に関してであります。年金額については、総理府統計局において作成する毎年の家計調査年報における消費支出の総額の年平均または総理府統計局において作成する毎年の消費者物価指数の年平均が年金額が定められた年の前々年に比して一割以上の変動があった場合は遅滞なく改定されなければならないといたしてあります。政府案はわが党案の年金額の改定という明確な表題に対して、年金額の調整という字句を用い、かつ、内容に関してはわが党案のごとく、放置怠慢が絶対に許されない明確な表現とは異なり、行政解釈によってスライドの実施が放置される危険性を多分に含んだものであります。
第八に、標準報酬につきましては、最近の賃金水準の実情に則し、現行の三千円から三万六千円までの二十等級を七千円から十万円(政府案六万円)までの三十二等級(政府案二十三等級)に改めたことであります。
第九に、国庫負担率の改定であります。現行法第八十条第一項に規定されている保険給付に対する国庫負担の率をおのおの倍にしようとするものでありまして、一例をあげれば、その第二号に規定される最も一般的の場合の国庫負担率が一五%でありますのを三〇%にしようとするものであります。政府案においてはこの国庫負担増率を含んでおらないわけであります。
第十に、保険料率についてであります。本案の給付の大幅改善は、国庫負担の大幅増額を同時に行うものでありますが、それとともに、従来の修正積み立て方式に対し、大幅に賦課方式を取り入れ、保険料の引き上げは最少限度にいたしたいと考え、第一種被保険者(一般男子)については現行の千分の三十五を千分の五十八に、第二種被保険者(女子)については現行の千分の三十を千分の四十四に、第三種被保険者(坑内夫)については現行の千分の四十二を七十二に、第四種被保険者(任意継続被保険者)については現行の千分の三十五を千分の五十八にそれぞれ引き上げることにいたしますが、保険料の労使負担割合について現行使用主五割、労働者五割でありますのを、使用主七割、労働者二割と改めますもので、労働者の保険料は現行とほとんど同じ割合に相なるわけであります。たとえば第一種被保険者の場合、現行法では労働者の保険料が千分の三十五の五割、すなわち、千分の一七・五であるのに対し、本案では千分の五十八の三割、すなわち、千分の一七・四に相なります。
さらに、五人未満の被保険者を使用する事業主については、その保険料負担分の七分の二を免除することとしております。政府案においては、給付金額増額が本案よりはるかに少ないわけでありますが、国庫負担増率並びに賦課方式大幅導入に踏み切っておらないため、本案と同率の保険料引き上げの内容であり、労使の保険料負担区分変更をいたしておりませんため、低賃金、高物価に悩む労働者に約七割増の保険料値上げをすることに相なるわけであり、さらに五年ごとに料率の引き上げを予定いたしておるわけであります。
第十一に、既裁定年金の引き上げについてであります。現に支給中の年金が所得保障の趣旨からみて著しく低水準にあるところから、既裁定年金につきましても今回の改正方式を適用いたし、改正後の計算例によってこれらの年金額を大幅に引き上げることといたしております。
第十二に、旧陸海軍工廠の工員などの旧令共済組合員であった期間を厚生年金の被保険者期間に算入し、通算老齢年金に準じた特例老齢年金を支給することとしたことであります。
以上で本案の内容の主要な項目の御説明を終わるわけでございますが、対比して御説明をいたしました政府案には、いわゆる調整年金制度の諸規定がございますが、本案にはございませんことを明確にいたしおく次第でございます。
政府案にございます民間企業年金との調整制度は、所得保障制度の根幹をなすべき厚生年金保険の半分に当たる標準報酬比例部分を民間の管理に移し、所得保障の将来を大きく誤るものであります。この制度の実現によって将来莫大な金額に達する厚生年金保険積み立て金の約半額が信託会社または生命保険会社を通じ間接に事業主資本家の事業資金として利用されることになります。この制度がなければ、政府が運用すべき莫大な資金がなくなることになり、さらにわが党が前々から主張いたしております本来労働者のものであるべき莫大な資金が資本家の実際上の支配下に持ち去られることになり、全く不当なことであると考えるものであります。この調整制度を実現をいたしますと、事業主は事業資金借り受けの利益を得るため企業年金の創設に異常な関心を示すことになり、その結果、現在労働者の具体的に必要としている退職一時金制度が圧迫される結果を招来し、さらに全額使用主負担である退職一時金が労使負担をたてまえとする企業年金に代替されることになって、労働者の負担増加という結果を招来することが憂えられております。また、企業年金制度が労働者の権利を抑圧する労務管理の目的のため悪用されるおそれがあり、さらに年金給付の格差が増大し、年金保障拡大への意思が分断され、厚生年金全体の発展が阻害され、さらに将来の大きな課題である公的年金制度の一元化がますます困難になるわけであります。
わが党案がこの調整制度のような公的年金の方向を大きく誤るものを含まず、純粋に厚生年金制度のほんとうの所得保障への道を進めようとするものでありますことをぜひ御理解をいただき、熱心に御審議の上、衆議院より送付の上は、すみやかに満場一致御可決くださることをお願いを申し上げまして御説明を終わる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/8
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009・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 本日は、本案に対する提案理由の説明聴取のみにとどめておきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/9
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010・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 議案の撤回についておはかりいたします。本委員会に付託されております優生保護法の一部を改正する法律案(参議院一〇号)について、発議者から撤回の申し出がありました。これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/10
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011・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 御異議ないと認めます。よって本案は、撤回を許可することに決定いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/11
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012・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 社会保障制度に関する調査中、優生保護法の改正に関する件を議題といたします。
本件につきましては、丸茂君から委員長の手元に、優生保護法の一部を改正する法律案の草案が提出されておりますので、この際、まず、提案者から草案の趣旨について説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/12
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013・丸茂重貞
○丸茂重貞君 ただいま委員長から御報告のありました優生保護法の一部を改正する法律案の草案の趣旨について御説明申し上げます。
草案の趣旨は、すでに本委員会において御審議願っておりました同名の法律案と全く同一のものでございまして、念のため、その内容を申し上げますと、都道府県知事の指定を受けて、受胎調節の実地指導を行なう者が避妊薬等の販売ができることの期間を、昭和四十年八月一日以降、さらに五カ年間延長しようとするものであります。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/13
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014・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 本草案に対し、御質疑、御意見等がございましたら御発言を願います。——特に御発言もなければ、本草案を優生保護法の一部を改正する法律案として、本委員会から提出することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/14
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015・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。なお、本会議における趣旨説明の内容につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/15
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016・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
暫時休憩いたします。再開は午後一時といたします。
午後零時十六分休憩
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午後一時十九分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/16
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017・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) ただいまより再開いたします。
戦傷病者特別援護法の一部を改正する法律案、戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法案、及び、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を一括議題といたします。
右三案に対し、これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/17
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018・小柳勇
○小柳勇君 まず、第一は、戦傷病者特別援護法の改正について質問いたします。
質問の第一は、終戦後すでに二十年でありますが、いまあらためて戦傷病者相談員を設置しなければならない理由をお聞きします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/18
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019・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいま小柳委員のお尋ねでございます、戦後二十年になったのに、いま相談員を設置するのはどうかということでございますが、これは御承知のように、なかなか地域が広うございまして、いろいろ引き揚げてまいったことでございまして、引き揚げ者の処遇または帰還者、それから戦病者の処遇、いろいろ問題がやはり錯綜してございます。戦後二十年でございますが、どうしても相談員のような制度を立てまして、そしてきめのこまかい手を打たないと最後の総仕上げというものがむずかしいんじゃなかろうか、いよいよ総仕上げに入ったんじゃなかろうかと、かように考えておりますので、そこで、きめのこまかい手を打ちたいということで相談員を置くと、こういうことを考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/19
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020・小柳勇
○小柳勇君 現在把握されておられる戦傷病者の数、相談員四百六十人の人たちが相談にあずかるであろうと予想される戦傷病者の数はどのくらいなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/20
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021・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) お尋ねの数でございますが、十八万二千五百六十三人というのが戦傷病者の総数であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/21
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022・小柳勇
○小柳勇君 現在まで相談員的な仕事はどこでお世話してこられたんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/22
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023・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) 従来は、中央におきましては、全体的な問題としては厚生省の職員が御相談にあずかり、それから、やや地域的な問題としては現実に県の職員、さらに市町村の第一線の職員がそれぞれ御相談にあずかっておった、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/23
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024・小柳勇
○小柳勇君 十八万二千五百の戦傷病者に対して四百六十名の相談員でどういうことをやるか想像してみますと、非常に遺憾な点が多いのではないかと思いまするが、十八万二千五百の中で、ほんとうに身の上相談、就職相談、職業訓練など、実質的に活動しなけりゃならぬものはどのくらいに考えておられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/24
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025・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) 戦傷病者全体の数の中で、現実に傷病恩給等を受けておる人が約十四万ございます。したがいまして、主としてこういう傷病恩給等の受給者が一番やはり相談員が親身になって相談にあずかる対象になる方ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/25
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026・小柳勇
○小柳勇君 いままで各民生委員などでいろいろお世話になったのでしょうが、何かおっとり刀で、木に竹をついだような印象です。しかも、月に五百円手当を出して四百六十人の人で相談にあずかって戦傷病者のめんどうをみたいということのようですが、いままでの民生委員などは名誉職的なものがありまして、われわれは民生委員に対して非常に敬意を表しておりまするが、どういうものを想像しておられますか、相談員になる人を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/26
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027・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) 法律案の第八条の二に書いてございますが、「戦傷病者の更生等の相談に応じ、及び戦傷病者の援護のために必要な指導を行なうことを、社会的信望があり、かつ、戦傷病者の援護に熱意と識見を持っている者に委託することができる。」、こうありまして、要するに、こういうような相談業務につきまして、一方において社会的信望があり、また、他方におきましてほんとうに戦傷病者の援護に熱意と識見を持っておると、こういう方々にお願いしようということでありまして、いまおっしゃいました民生委員が広く一般の社会福祉関係のお仕事をやられるのに比べまして、これはこのような特殊な業務のいわば民生委員的な存在として戦傷病者のお世話をしてあげる方と、こういうふうに考えておる次第でございます。具体的には各県の知事さんの推薦によりまして、ほんとうに適当な人をお願いしたいと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/27
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028・小柳勇
○小柳勇君 戦傷病者の方は十八万人と厚生省で把握しておりまするが、全国的な団体などの組織がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/28
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029・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) 全国的な団体といたしまして、中央に日本傷痍軍人会というのがあります。現在でもこの傷痍軍人会の方々が現実には相当戦傷病者のお世話をしていただいてるということであります。そこで、厚生大臣が委託いたします場合に、現実問題としては、かなり現在そういうお世話をしておられるような方がなられる場合が多いと思いますが、その他の方がなられる場合もあるだろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/29
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030・小柳勇
○小柳勇君 組織がありますならば、そういう組織に対して直接指導するというほうがよくはないか。相談員は四百六十人ですから、各県十人くらいですね。一県十人くらい相談員がばらばらに置かれても、もちろんこれは全国組織に連絡をとってやられることでしょうが、金額を見ますと百五十八万六千円しか予算がついていない。要するに、参議院選挙前だから、何かこういうものをつくってやるかというような、あまりほんとうの親身の血が通っていないというような気がするのですが、どうですか、厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/30
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031・神田博
○国務大臣(神田博君) そういう意図は持っておりません。御承知のように、十八万有余の戦傷病者の問題の最後の仕上げをしたい。最後の仕上げをするには、やはりいままでのやり方では欠けるところがあるのだ、先ほど申し上げましたような、きめのこまかいところを詰めていかなければならぬじゃないかと、こういうようなことでございます。と申しましても、また、そういう方に多額の金を差し上げたからといっていい人が集まるとも限りません。やはりほんとうに戦後のあと始末に何らかの形で協力していただけるというような、有為な、しかも、りっぱな方でないとお願いしにくいわけでございます。そこで、いろいろ考えた結果、いま四百六十人でございますかの方々をひとつ委嘱したい。実際問題としては、そういう方を県からひとつ推薦していただいて、そしてきめてまいりたいと、こういうことでございまして、参議院選挙に間に合うようなことであったら、おそらく去年あたりやったのだろうと思いますが、そういう意図はなく、今年は二十周年を迎えておりまして、なおかつ、手のつかないところがあるから総仕上げをしたいと、かようなことでございます。非常に役所としては、私は、こまかいことまで気を使った親切心ではなかろうか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/31
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032・小柳勇
○小柳勇君 次は、療養手当の問題ですが、療養手当を二千円から三千円に引き上げるというが、それに該当する人が、この資料によりますと三百七十三名の人が手当をもらう。増額の分で予算がわずか四百四十七万六千円。療養手当の対象になる三百七十三人の人の生活実態は一体どんなものでしょうか。具体的に一、二例をとってお話を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/32
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033・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) これは法律の規定がございまして、恩給等の給与を受けておる方にはいかないことになっておりますので、そういう恩給等の給与を受けない方で、一年以上の療養を続けておられるということでございますので、ほんとうに比較的生活が苦しいと申しますか、援護の対象になるような方にいっていると、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/33
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034・小柳勇
○小柳勇君 厚生大臣、全国でわずか三百七十三人の人が三千円の療養手当を受けるわけですが、恩給も受けない人、非常に生活が苦しいだろうし、療養しなければならぬということはよくよくのことでありましょうが、わずか三千円くらいのことで療養手当とも言えましょうかね。全国的な手当で予算がわずか四、百四十七万円、いい自動車一台分ですよ。そんなことで療養手当を増額しますなんて、法律改正と言えましょうかね。どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/34
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035・神田博
○国務大臣(神田博君) いまの小柳委員のお尋ねは、これはいまの物価に考えますとそういう私は御配慮も意見としておありになることは当然だと思います。ただ、私どもといたしましては、従来二千円であったものを、この際、五割といいますか、千円ふやして三千円にして、そしてとにかくあたたかい気持ちをあらわしたい。これはよけいにこしたことはないのでございますが、いろいろな折衝の過程におきまして、また、他の振り合い等の関係もございましてその程度にとどまったわけでございまして、これでずっと縛るという意味ではなく、また、そのつど必要に応じまして考えてまいりたい、かようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/35
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036・小柳勇
○小柳勇君 私は、戦争のための戦傷だからということでございませんで、戦傷病者特別援護法という法律があって、それで全国でわずか三百七十三への人が戦傷のために現在なお療養中である、そういう気の毒な方に対して三千円の療養手当ではあまり少な過ぎはしないか、せめて人間が最低生活をするくらいの国がめんどうをみて、その上でちゃんと療養していただくというのがほんとうの特別援護法の趣旨ではないかと思うんですが、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/36
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037・神田博
○国務大臣(神田博君) そのお考えは私どもも同感でございまして、そういう考えでやったわけですが、御承知のように、療養費は別にこれは出るわけでございます。療養費以外の日常の小づかいと申しましょうか、身の回り品と申しましょうか、そういうのが二千円出ていましたのを、それを五割上げた。五割上げたということは、はなはだいまお話のとおり、私ども満足ではございませんが、そういう性質なものでございますから、たくさんあげるわけにいかなかった、こういうことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/37
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038・小柳勇
○小柳勇君 他の問題の関連がありますから、この問題はあとにして、先に進みますが、次は国鉄バス——国鉄無賃乗車証の発行範囲拡大が、四千八十八名に対して範囲拡大になりましたが、運輸省の国有鉄道部長に質問しますが、現在、戦傷病者でて国鉄の無賃パスを持って旅行しておられる方はどのくらいあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/38
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039・深草克巳
○政府委員(深草克巳君) お尋ねの資格者でございますが、十三万六千六百四十三名でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/39
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040・小柳勇
○小柳勇君 これらの人については、厚生省から若干の金を国鉄に納付するわけなんですかね。どうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/40
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041・深草克巳
○政府委員(深草克巳君) 現在のたてまえは国が負担ということになっておりまして、国鉄に交付いたしますのは、運輸省の予算から交付しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/41
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042・小柳勇
○小柳勇君 戦傷病者に対して無賃、パスを出されることについては反対はいたしません。それで、ここに四千八十八名という、そういうそのパスの使用者の拡大があるということですが、その理由を聞いておきましょう、ひとつ厚生省に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/42
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043・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) 御承知のように、従来は恩給法による給付を受けておる方にしか対象はいかなかったわけでございまして、援護法による障害年金等を受けておる方には無賃パスの恩典等が与えられていなかったわけでございますが、今回そういう恩給法以外の援護法等による給付の適用者にも無賃パスを拡大しようということで、その対象が四千八十八名、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/43
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044・小柳勇
○小柳勇君 列車などで戦傷病者の方々が楽器などを持って車内を回られて、非常に注意されておったというような事態もありますが、まあ最近はほとんど見当たりません。そういう問題についても、範囲拡大のときに特に厚生省から御注意などあってしかるべきだと思うが、その点のお考えはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/44
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045・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) 実は、そういう白衣の募金等の問題につきまして、昨年の秋にも国鉄当局とも御相談いたしまして、なるべくそういう行為がなくなるようにということで、関係の傷痍軍人団体等ともいろいろ御相談いたしまして、若干の運動を展開したわけであります。で、かなり減ってきておるようでありまして、中には、いわゆるにせの白衣と申しますか、傷痍軍人でない方でやっておる方もあったようでございますが、最近いずれにしても減ってきておるように考えております。で、もちろん今後もそういういまおっしゃるようなPRの運動と申しますか、趣旨の徹底につきましては、関係の団体とも十分連絡いたしまして、趣旨の普及につとめてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/45
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046・小柳勇
○小柳勇君 いま国鉄のほうでは、できるだけパスの発行を少なくしようと努力しておるようでありまして、目に余るような、パスを持っているために汽車の中で自由に商売的な行為をやられるとお客のひんしゅくを買いますので、特別援護法の趣旨にも反すると思いますので、特にこの点は御注意願いたいと思います。
第二の法律は、戦没者等の遺族に特別弔慰金を支給するという新しい法律です。これも思いまするのに、戦後二十年ですね、厚生大臣は二十周年記念でありますからとおっしゃいますけれども、二十年のいま、新たにこの特別弔慰金支給の法律をつくられるその意図並びにこの特別弔慰金の性格についてお考えをお述べ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/46
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047・神田博
○国務大臣(神田博君) 特別弔慰金の性格の問題でございますが、これは去る大戦におきまして公務のため国に殉ぜられた戦没者の方々に思いをいたしまして、この時点において弔慰の意をあらわしたい、こういうことでございます。そこで、一体どの程度がそれならばいいのか、一万円がいいのか三万円がいいのか、五万円がいいか十万円がいいか、いろいろ議論がございました。議論がございましたが、財政上の都合もございますから、いろいろ勘案いたしまして三万円ということ、こういうようなことにきまったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/47
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048・小柳勇
○小柳勇君 戦没者の遺族に特別弔慰金を支給することについては、われわれも心から賛成をいたします。しかも、この恩給、年金などをいま受けておられぬ方に対する弔慰だと、ところが、三万円を十年に分けて三千円ずつやって、しかも、これは国債で無利子、まことにどうもお粗末というか何というか、あまりにもごまかしではないか。いままで二十年間ほったらかしておいて、これから年に三千円ずつ上げます、それを特別弔慰金ということはあまりにもどうも愚弄しておらぬかと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/48
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049・神田博
○国務大臣(神田博君) まあ金額の大小ということから考えますと、いろいろこれは議論が私はあると思います。先ほどもお答え申し上げましたように、一体幾らがいいのかということは、なかなかこれは私は人によって考えを異にいたしまして、また、見る人によって思いが違いますから、いろいろな議論があると思いますが、私どもといたしましていろいろ財政折衝をいたしました結果、まあ三万円というところに落ちついたわけでございます。しかも、国債で個人に交付するわけでございますから、これは利子をつけてやるのが普通のたてまえでございます。それも利子をつけないのはおかしいじゃないか。十年間の年賦でちょうど差し上げるような形になります。そういう御非難も実は検討したわけでございますが、まあいままで手が届かなかった。しかし、まあ戦後二十年を記念して、ひとつささやかではありますけれども、やはりこれをやるということも相当な英断がなくてはできなかったわけでございます。それから、また、この種の問題といたしまして、先般国会を通過いたしました戦没者等の妻に対する特別給付金の関係がございまして、これが無利子というような前例もございましたので、今回もその例に従いまして、そして額面金額を三万円で十カ年の無利子、こういうことにいたしたわけでございます。弔慰金の使途は、一ぺんに三万円を使っていただくよりも、十年間あたたかい気持ちでその霊を安らかにしていただくというような気持ちでいろいろ考えていった結果こういうことになったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/49
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050・小柳勇
○小柳勇君 対象として考えておられる遺族は何名ぐらいなんでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/50
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051・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) 約四十一万人というふうに把握しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/51
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052・小柳勇
○小柳勇君 これの予算は幾らですかね、今度計上されている予算は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/52
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053・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) 公債の額は全部で百二十三億円になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/53
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054・小柳勇
○小柳勇君 いま特別弔慰金支給法案が決定されようといたしておりますが、金額は少ないけれども、きめこまかい国の援助だとおっしゃいます。そこまではわれわれも反対ではありませんが、ごまかしだという印象は払拭できませんから、もう少し別の角度から、次の法律にも関連してまいりますけれども、社会保障的な——国家補償か社会保障かという問題がありまするが、別の角度からそれらの人たちの生活を保障するのだ、たとえば年に三千円やっておるじゃありませんか、三万円の国債やったじゃありませんかということで弔慰の気持ちが消えるということについて非常に憂えるわけでございまして、それがありませんように、また、これで済んだということになりませんように期待いたしまして、第三の法律の質問をいたします。
第三の法律は、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部改正でありますが、この改正する法律の精神、性格ですね、そういうものについて御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/54
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055・神田博
○国務大臣(神田博君) 遺族援護法の性格いかんということでございますが、この戦傷病者戦没者遺族等援護法の第一条には「国家補償の精神に基き、軍人軍属等であった者又はこれらの者の遺族を援護することを目的とする。」と法律の目的が定めてありまして、これを基本理念といたしますと国家補償であると考えられるわけであります。しかし、これは国家補償だけで行なうというだけではなく、「国家補償の精神に基き、」そして「援護する」、こうきめておるところから見ますと、その意味は、やはり社会保障的な色彩が加味されておることは否定できない、すなわち、国家補償のたてまえのみに立脚して恩給法の対象になり得ない範囲の傷病あるいは遺族、たとえば内縁の妻、別戸籍の父母等を遺族援護法の対象にしていることによってもその趣旨がうかがえるのではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/55
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056・小柳勇
○小柳勇君 私が性格論を言っておりまするのは、いまから二十何年前の軍人軍属及び準軍属などという、身分の相違によって、一方は遺族年金になり、一方は遺族給与金になる。しかも、遺族給与金に至っては半分である、そういうような、かつて軍国主義日本の時代の軍人軍属及び徴用工など、いわゆる準軍属というようなことで、終戦後すでに二十年たちました現在、なお身分によって遺族年金、遺族給与金の金額が、しかも、二分の一だ、こういうふうなことは、いま大臣がおっしゃった遺族援護の精神に反するのではないか、そう私は考えるのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/56
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057・神田博
○国務大臣(神田博君) これは小柳さんが自分のお考えを述べられたわけでありますが、そういう考えをお持ちになることも私にはよくわかります。しかし、この立法当時のいきさつを考えましても、あの戦争のいきさつ、また、戦中における軍人軍属その他の身分等を考えますると、やはり十ぱ一束と申しましょうか、すべてを一本でやるということには踏み切れなかったというところの差が出ておったわけでございます。その差が、いま二十年たっておりますが、やはりついておるということはそれぞれの理由がありまして、そのことを順奉してまいっておる、こういうことじゃなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/57
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058・小柳勇
○小柳勇君 その過去はいいんですが、こういう法改正のときにその思想というものを漸次払拭して変えていくことが新しい時代に沿う厚生行政ではないかと思うわけです。二十年前の厚生大臣ならそれでもよかったかもしれません。軍人と軍属及び準軍属というものが身分によってちゃんと分かれていた、そのときはそれであやまちもなかったわけでしょう。ところが、それから二十年たちまして、現在二十年前のそういう身分でいまなお遺族年金は七万一千円が九万二千円になる。遺族給与金は三万五千五百円が四万六千円になる。法案は、いずれにしろ改正前は半分、改正後も半分です。こういう考え方自体が間違っていませんか、時代錯誤ではございませんか、私はこう言っておるんですよ、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/58
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059・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) ただいまの御発言の点でございますが、われわれも、なるほど法律のたてまえは大臣がいま申し上げましたようなことでできておるわけでございますが、やはり準軍属についてもさらに援護内容を改善して、なるべく軍人軍属の線に近づけるということが適当であろうということで、その努力をいたしておるのでありますが、遺憾ながら、財政上の制約等もありまして、十分まだ目的を達しないわけでありますが、将来できるだけいまおっしゃるような趣旨に沿いまして、準軍属の援護の内容も逐次改善してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/59
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060・小柳勇
○小柳勇君 遺族年金を適用される人の数と遺族給与金を適用される人の数、概数でいいから御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/60
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061・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) いまお尋ねの数でございますが、遺族年金は十九万四千八百四十二人、それから、遺族給与金が三万五千五百四十七人という数になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/61
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062・小柳勇
○小柳勇君 これは悪い考えですけれども、数がうんと少ないから、六分の一くらいしかないから二分の一でもうしょうがないわい、こういうようにとれるわけですね。いま政府も自民党も、非常に圧力団体に弱いものですから、圧力団体が強いとうんと金額を上げてやるんだけれども、数が少ないとないがしろにするという傾向がなきにしもあらずととれるわけですが、私が聞きますと、遺族給与金の方々はいま五割ですが、せめて六割にしてくれと言う。私はそれすら反対ですよ。やるなら一緒ですよ、遺族年金と遺族給与金となぜ違いますか。徴用工で南方に行った、片一方は準軍属、片一方は軍人軍属、軍人と軍属は一緒だ、準軍属だけは二分の一ということは、これはちょっといまの時代では通りませんよ。私はすぐ改正してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/62
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063・神田博
○国務大臣(神田博君) いまの遺族年金、また、遺族給与金の差をそのまま維持していくのは、どうもあまりにも身分に拘泥していやせぬかということ、また、圧力団体の強弱によってこういうことになっているんじゃないかというような御質問でございますが、決して圧力団体の強弱によってやったわけではございません。私ども率直に考えますれば、いまお話の気持ちはよくわかるのでございまして、ことに年数もたっておりますから、そういう線で考えていこうという基本的なことには変わりないのでございますが、今後また三十年、五十年というようなときにひとつ十分検討いたしたいと思いますが、先般の際にはいろいろな事情がございまして、いかなかったことをまことに遺憾に思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/63
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064・小柳勇
○小柳勇君 この問題は次の早い機会に検討していただくことにしまして、年齢で差をつけるのはなぜですか。七十歳以上は幾ら、六十五歳以上は幾ら、六十歳以上は幾らと、年齢で差をつけるということは私は解せないのですがね。いまたとえば七十歳以上の方は早く死ぬとか、あるいは六十歳以上の人が早く死ぬという、そういう簡単な定義づけはいかぬと思うのですが、これはどういう理由でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/64
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065・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) 金額は九万二千円に一律に上げるわけでございますが、ただ、実際の実施時期を若干ずらしていくということでございます。たとえば七十歳以上の人は直ちに全額引き上げるけれども、年齢の若い方は若干段階をつけて引き上げる、こういうようなふうになっておるわけでございます。ただ、その際に、六十五歳未満の方でありましても、妻とか子供とか、あるいは不具廃疾の父母等につきましては、さらに一般の年齢の方よりも考慮するというようなことを考えております。結局、社会保障的な見地から見まして最も緊急を要するというような見地から実施の段階を区別しておる、こういうことでございます。これは財政上の制約等もございまして、やむを得ない措置だと思いますが、比較的年齢の高い方はやはり援護の程度も早くしてあげることが社会保障の精神にも沿うのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/65
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066・小柳勇
○小柳勇君 社会保障ならば社会保障にがちっと合わなければなりませんが、はっきり社会保障の精神になっていないものですから問題なんです。
そこで、金額の問題はいろいろありまするが、財政上の問題ですね、何億かを節約しようとする国のみみっちい考えがここにあらわれておると思うわけですよ。こういうものこそ——それは一体何億でしょうかね、適用しましたら全部で何億かかるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/66
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067・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) 本年度の今度の改正に伴います増が四億八千万円になっておりますが、これを平年度全額適用になりますと、約三十億かかります発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/67
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068・小柳勇
○小柳勇君 六十歳から差をつけないと幾ら差がつくのですか、全部一律にしましたら。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/68
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069・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) 今度のいわゆるべースアップによります必要経費でありますが、この政府案でまいりますと今年度四億八千万円要るわけでございますが、これを一挙に差をつけないでやったとすれば、平年度三十億というふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/69
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070・小柳勇
○小柳勇君 いやいや、平年度でなくて、いま四億八千万に対する差をつけない金額は幾らになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/70
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071・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) 直ちにやったといたしますと、三十億かかります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/71
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072・小柳勇
○小柳勇君 三十億ですか。そうすると、差が二十六億円ということですね。二十六億円といいましても、飛行機にしますと五台くらいですからね、飛行機五台分ですよ。そういうものをちゃんと例をとって話しますと数字がよくわかると思うのですよ。こういう点も不満でありますが、次は、未帰還者留守家族等援護法の一部改正でありますが、現在六十一人だと聞いておるのですが、未帰還者の留守家族というのは何名あるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/72
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073・鈴村信吾
○政府委員(鈴村信吾君) いまお話しの留守家族手当を受けておる者が六十一名という数字でございますが、ただ、いわゆる未帰還者と申しますのは六千人余りあるわけであります。この未帰還者留守家族等援護法によります手当を受けるのに、年齢上の制限、生計上の制限、いろいろございますので、手当を受けておるのは六十名程度でございますが、未帰還者としてはまだ六千人以上ある、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/73
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074・小柳勇
○小柳勇君 その未帰還者の六千名の調査、現在なお調査しておられると思うが、調査の実態、先般、藤山代議士がソ連に行かれて、フルシチョフ氏ともいろいろ話しておられたようですが、各国の各地区における未帰還者の現在の実態についての詳しい調査はできておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/74
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075・神田博
○国務大臣(神田博君) 昭和三十九年十二月一日現在、政府が氏名を把握しておる未帰還者は六千六百七十七人となっております。その大部分は中共地域関係でありまして、これら未帰還者のうち、生存していると推定される者はそのうちの約半分と、こう考えております。それから、残るその半分は、その大部分がすでに死亡しているのじゃなかろうかという推定でございます。
次に、夫帰還者の調査究明についてでございますが、これは国内的には帰還者等の情報提供に基づき、未帰還者の消息をその行動経過に従い追求し、収集し得た諸般の資料を総合しまして、その未帰還者に関する最終的な状況を明らかにするという方法をとっております。そこで、このため、政府は、状況の不明な未帰還者各人について、昭和二十年八月九日以降の足どりを検討し、これと同一の行動をとったと思われるなるべく多くの帰還者から、未帰還者の消息資料の入手につとめており、その資料入手の方法は、通信により照会すること、帰還者を厚生省または都道府県に招致すること、厚生省または都道府県の職員をもってその帰還者のもとに派遣すること等によって調査いたします。
また、対外的には次のような手段を講じております。まず、ソ連政府に対しては、三十年、ロンドンにおきましての日ソ交渉開始以来、しばしば未帰還者の消息調査及びソ連地域内における死亡した者の墓地の状況等の通報方を申し入れており、これに対しては九百八名の死亡者と十九カ所の墓地の状況、埋葬者三千三百二十九人の通報がありました。さらに、三十九年十月には、未帰還問題の協議会の会長藤山愛一郎氏が訪ソした機会に、約三千人の未帰還者名簿(戦時死亡宣告のあった者を含む)、これをやりましてソ連政府に手渡したわけであります。消息調査を要求しましたところ、調査の上、四十年十月ごろまでに回答する、こういう約束でございます。ことしの十月ごろまでには御返事をいただけると思います。
それから、次に、中共政府でございますが、これはもっぱら民間団体、それから赤十字ルートによって夫帰還者の安否照会を行なっております。これらの照会に対しては、約七百人の消息について中国紅十字会から回答がありました。
次に、北朝鮮関係については、三十五年二月以来、二回にわたりまして、日本赤十字社を通じて、合計千十一人の名簿を北朝鮮赤十字会へ送付しまして、安否調査を依頼し、その後たびたび回答方を督促しておりますが、今日まで何らの回答に接しておりません。
以上が今日まで政府が調査究明についてとってきた措置でありまして、すでに戦後二十年を経過し、未帰還者問題の早期解決を願うおりから、国の内外にわたる調査を一そう強力に推進し、この問題を解決していきたいと、かように考えております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/75
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076・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 委員の異動についてお知らせいたします。
本日、久保等君が委員を辞任され、その補欠として鈴木強君が選任されました。また、館哲二君、山本杉君が委員を辞任され、その補欠として近藤鶴代君、村山道雄君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/76
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077・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 小柳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/77
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078・小柳勇
○小柳勇君 時間がありませんから、これで質問を終わりますが、最後に私の意見を申し述べて質問を終わりたいと思いますけれども、先般の本会議で、紀元節法案が出たときに、わが党の小林委員がいろいろ代表質問をいたしました。それと若干関連いたしますが、私ども、この原則論ですから、皆さん御承知のとおりですけれども、愛国心を横糸にして、それから軍国主義を縦糸にして各国の帝国主義というものがだんだん成長していくんだと、それが戦争へその国の政策を追い込むのだということをわれわれは言ってきている。いまこの法律をわれわれが論議いたしまして、ここにこの法律案が成立するでしょうが、二十年前の戦争のあと始末ですね、そのあと始末をいまやるとき、いまですね、この愛国心の鼓舞、それから、これの軍国主義的なそういう思想、そういうものが戦争を何でもないような方向に持っていきはせぬか、何でもないような考えを持ってきはせぬかと、これは日本がすぐ帝国主義政策をとって東南アジアに向けて侵略政策をやるなんということは言いませんけれども、そういうものを感じ、かつ、それが非常に最悪の情勢として、もし参議院選挙の選挙対策などに考えられるなら、私はこれは非常に遺憾だと言わざるを得ません。この法律自体については、われわれはまだこれは国としては不十分だと思う。したがって、結論的に言いますならば、こういう部分的な戦争処理の手直しではなく、ちゃんと社会保障制度の拡充によって、戦争犠牲者を国が社会保障制度の中でめんどうをみてまいるのだと、国家補償で部分的な補償は私はもうやるべきでない。これはいま過渡期ですからしかたないでしょうが、近い将来に社会保障制度の中で完全にそういう戦争犠牲者が救われるように、それには軍人軍属とか徴用工だけでなくて、国内における戦争犠牲者もたくさんありますから、いま農地報償法案などを通して時代逆行のそういう政策をやらないで、農地を没収され、あるいは売り払ってみじめな人があったら、それは社会保障でめんどうをみるべきであって、時代逆行の農地報償をやるなんというのほとんでもない。それに類似したような思想でもしこの法律改正をやるなら、私は反対せざるを得ない。しかし、いまの大臣、政府の答弁によって、そうではないということを私は理解いたしまして賛成はいたしますが、そういうことを私はちゃんと議事録にとどめておいて質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/78
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079・鈴木強
○鈴木強君 ちょっと関連して。ただいま未帰還者が六千六百七十七名おられるという大臣のお話ですが、もう戦争が終わって二十年間たっております今日、自分の肉親を失った家族の人たちはどんな気持ちだろうと私は思います。私も四年ばかり戦争にいってきましたが、生き長らえてきた一人ですが、そういうなくなられた人たちの最終的な姿を私は見ているだけに、何かしら心の中に六千六百七十七名まだ帰っておらぬのか、一体政府は何をしているのだという気持ちがわいてきたのです。まあ推定のお話ですからよくわかりませんが、そのうち半分は生存、半分は死亡というようなところまでつかんでいるわけですね。ですから、私は、もう一歩厚生省当局はこの未帰還者の問題について力を入れてもらいたいと思うのですよ。そうして二十年もの長き間どうなったのかわからない人、死んだのか生きているのか、それすらもわからない気持ちでおられるような遺族の人たちのことを思うにつけて、私は、もう一歩厚生省は積極的に力を入れていただきたいと思うのです。相手のあることですから、調査も、いまお話しのように、北朝鮮などは全然返事もないという、そういう不誠意な態度を示しているのですから、相手のあることですからむずかしいことだと思います。しかし、先般の南方群島の遺骨収集などを見ましても、現地を視察した人の別の話によると、せっかく行ったその遺骨収集団がその地へ行けなかった。そしてまだ風雪にさらされて、とうとい命を失った人たちの遺骨がごろごろしているというお話を聞きまして、私はまことに憤激をしたのです。幾ら金がかかりますか。滞在日程がどうとかこうとかいうことは、これは理屈にならぬと思いますね。もしやるなら、もっと徹底的に遺骨の収集もやってもらいたいと思うのですよ。そういうふうな一連の戦争処理の問題について一生懸命やっておると思いますけれども、まだ足りなさを感じましたものですから、私は、この際、ひとつ大臣に決意を促して、もっと積極的にこの未帰還者の帰還問題については誠意を持ってやってもらいたい、これを要望し、大臣の決意を期待します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/79
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080・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいま鈴木委員からお述べになりましたことは、もうまことに同感でございまして、私もその趣旨で督励して調査を進めておる次第でございます。まだ三千数百人の人が大体これは消息をつかんだままでございますが、そのままになっておるということは実に遺憾でございまして、特に本年度は、先ほど来からもお答え申し上げておるとおり、戦後二十周年にもなっておりますので、ことしはなお一そう未帰還者の調査、それから、また、帰還促進を徹底的にひとつ努力いたします。
なお、また、この遺骨の収集でございますが、これもいろいろ計画を立てておりますが、なかなか相手国が入所をこばんでいるところがございますので、それらの関係で手のとどかないものも残ると思いますが、できるだけひとつそういう措置をとってまいりたい。きょうもブーゲンビルでございますか、来年運輸省の船がまいることになるような相談をしております。これは六師団関係で四万ぐらいの遺骨があるのじゃないかといわれております。十分ひとつ留意いたしまして、国民の期待に沿いたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/80
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081・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 他に御発言がなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/81
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082・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 御異議がないと認めます。
それでは、これより三案を一括して討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/82
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083・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 御異議ないものと認めます。
それでは、これより採決に入ります。
まず、戦傷病者特別援護法の一部を改正する法律案(閣法第六六号)を問題に供します。本案に対し、賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/83
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084・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって衆議院送付案どおり可決すべきものと決定いたしました。
次に、戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法案(閣法第六七号)を問題に供します。本案に対し、賛成の方の挙手を求めます。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/84
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085・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって衆議院送付案どおり可決すべきものと決定いたしました。
次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案(閣法第六八号)を問題に供します。本案に対し、賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/85
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086・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、右三案とも委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/86
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087・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
別に御発言もなければ、本日はこれにて散会いたします。
午後二時七分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814410X01719650511/87
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