1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年二月十五日(火曜日)
午前十時三十一分開議
出席委員
委員長 古川 丈吉君
理事 壽原 正一君 理事 關谷 勝利君
理事 田澤 吉郎君 理事 田邉 國男君
理事 山田 彌一君 理事 久保 三郎君
理事 肥田 次郎君 理事 矢尾喜三郎君
有田 喜一君 浦野 幸男君
小渕 恵三君 川野 芳滿君
木村 俊夫君 草野一郎平君
高橋清一郎君 中馬 辰猪君
南條 徳男君 増田甲子七君
松浦周太郎君 山村新治郎君
小川 三男君 勝澤 芳雄君
泊谷 裕夫君 野間千代三君
山口丈太郎君 内海 清君
竹谷源太郎君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 中村 寅太君
出席政府委員
運輸事務官
(大臣官房長) 深草 克巳君
運輸事務官
(鉄道監督局
長) 堀 武夫君
委員外の出席者
日本国有鉄道総
裁 石田 禮助君
日本国有鉄道副
総裁 磯崎 叡君
専 門 員 小西 真一君
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本日の会議に付した案件
国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一六号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/0
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001・古川丈吉
○古川委員長 これより会議を開きます。
国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
質疑の通告がありますので、順次これを許します。野間千代三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/1
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002・野間千代三
○野間委員 国鉄運賃の改正が行なわれますので、その件について二、三簡単に御質問をいたしたいと思います。
それでは初めに国鉄運賃の是正——これは総裁は是正と言っていらっしゃるわけですが、実際には値上げでありますが、値上げが物価に与える影響は、国鉄なり運輸省なりではたいしたことはないというふうに言っておられるわけですね。これは国鉄が出している「国鉄運賃の是正は物価・家計に響くか」という文書がありますけれども、それによってみますと、この前総理大臣もちょっと本会議の質問の際に触れていましたが、大体生計費に与える影響は〇・四%か〇・三%くらいじゃないかというふうに、これでもそうなっていますね。われわれは、国鉄の運賃が与える物価に対する影響は相当大きい。二%くらいまでになるのじゃないかというくらいに言われるのもあります。これは国鉄運賃と物価との関係というのは、なかなかそう簡単ではないと思うのです。ですから、簡単でないところに〇・三%くらいというのが出てくるのだろうと思うのですが、まず〇・三%程度だというふうに考えていらっしゃる根拠について、これは運輸省の算定のほうでもそういうふうに言っておられますが、運輸省の鉄監局長にひとつお答えをいただきたいと思います。大臣に答えてもらいたいのですが、大臣いないようですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/2
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003・堀武夫
○堀政府委員 物価にどの程度に影響を与えるかという質問に対しまして、経済企画庁の国民生活局長がこれで二、三回答えたように思うのですが、この物価に対する影響を算定するについて、経済企画庁が一番権威を持っておるというふうにわれわれは考えるわけですが、その経済企画庁の算定では、国鉄運賃の値上げでは〇・三二%というふうに算定をいたしております。消費者物価に与える影響でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/3
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004・野間千代三
○野間委員 経済企画庁の算定で〇・三二%、それからたしか国鉄から出している「国鉄運賃の是正は物価・家計に響くか」というやつの七ページによると、産業連関表で試算をすると、卸売り物価に対して〇・一七一五、消費者物価に対して〇・四二六六だというふうに出ておるわけですが、三十五年度の産業連関表による直接効果がそう出ておると言っておられるわけですね。これは運輸省のほうで計算しているのも三十五年の産業連関表によってやっておるようですね。大体政府のそういう傾向ですから、経済企画庁の算定の基礎も大体そういう算出の方法でやっているというふうに見ていいのではないかと思うのです。この産業連関表で物価に与える影響を算出をされておるわけですが、これでこの国鉄運賃が物価に与える影響は大体こういう程度だというふうに運輸省でも国鉄でも考えていらっしゃるのかどうか、ちょっとお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/4
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005・堀武夫
○堀政府委員 運賃の値上げがどの程度に実際に物価に影響を与えるかというのは、これは非常にむずかしい問題ではないかと思うのです。それで過去二回における運賃値上げをしたときに、物価にどういうような影響があったかということが、非常に重要な参考になるのではないかと存じます。そのときから見ますと、前二回の運賃値上げの直後、前後と比較しますと、この運賃値上げが直接物価に響いたというような形跡は見られないのであります。それで物価というものは物の需給関係その他いろいろな要素で動くのであります。単純に計算だけではなかなか推定がむずかしい面もございます。前二回の経験と申しますか、そういうものから見ましても、そんなに心配するほどのものではない、また経済企画庁なんかの理論的な算定から見ても、それほど心配することはないというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/5
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006・磯崎叡
○磯崎説明員 いま政府委員から御説明がございましたとおりでございます。私どもといたしましては、いまいろいろな角度から物価との問題を検討いたしておりますが、ただ非常に狭い国鉄という面だけの見方でございますので、必ずしも全般的なものとは思いませんが、一応私どもなりに計算いたしましたいろいろな方法がございますので、二、三申し上げてみたいと思います。
一つは、ただいま先生がごらんになっていただいておるこの資料でございますが、実はこれは三〇%のときの資料でございまして、その一番末尾の産業連関表の計算につきましては、実は私どもしろうとでよく——非常にむずかしい計算で、企画庁の専門家にこれはやってもらったものでございますが、これをごらんくださいますと、三〇%の場合に卸売り物価に対しまして〇・一七一五、消費者物価に対して〇・四二六六ということになっております。これは二五%でございますので、一応専門家に聞きますれば、大体これの六分の五と見てもよろしい、こういう計算のようでございます。そういたしますと、消費者物価に対しましては〇・三六弱ということになると思います。しかし、これは私こういうふうなものの専門でございませんので、いずれ経済企画庁のほうに直接お尋ねくだされば、もっと正確なお答えができると思います。私どもといたしましては、いま鉄監局長が申されましたように、なかなか理論上の問題としてはむずかしいものでございますから、やはり過去の、経済の正常化いたしました後の三十二年なり三十六年にやりました運賃改定の影響を実証的に見ること以外に私どもの方法がございませんので、その過去二回の現象だけを申し上げまして、御説明にかえたいと思うのでございます。
これは第一回の委員会のときに御説明申し上げました黄色い表紙の本に入っておりますが、三十二年に運賃改定をいたしました際には、ちょうど御承知の昭和三十、三十一、三十二年の、いわゆる神武景気の末期でございました。卸売り物価につきましては、三十二年と三十三年では六・五%卸売り物価がたまたま下がったときでございます。それから三十六年のときは、やはりちょうど岩戸景気といわれた時代でございまして、三十四年からずっと景気の上昇が高まりまして、三十六年度を契機といたしまして、三十七年度になりますとやはり二・七%卸売り物価が下がっております。これは運賃改定と卸売り物価とはおよそもう関係がないというふうなことの実証だというふうに私ども思っておりますので、運賃が上がったから卸売り物価が下がったなんてことではなしに、卸売り物価と申しますのは、輸出入の関係、その他物資全般の需給の関係で上下するんであって、国鉄運賃などというものの要素は非常に小さいということの証拠だろうと思っております。
次に、一番問題になります消費者物価のほうでございますが、消費者物価につきましては、ただいまお話しのとおりずっと逐年上がってきております。たまたま三十二年から三十三年にかけましては、やはりこれは非常に珍しい現象で〇・四%下がった。それから三十六年から三十七年にかけましては六・八%上がった年でございます。こういうふうに運賃改定と消費者物価の動きとは何ら直接な因果関係はないというふうに思っておりますが、ただそれを経済企画庁と総理府の家計調査によりまして、消費者物価が上がった際、たとえば三十六年と三十七年に六・八%消費者物価が上がった。その上がったことに対する寄与率という——ことばは非常に変でございますが、企画庁なりそういった方面では、物価上昇に対する責任の度合いと申しますか、それを寄与率という、物価上昇に対して寄与した——寄与という意味はおかしいんですが、物価上昇に対する原因の責任の度合いを明らかにした分析がございます。たまたま三十六年に運賃が上がりまして、三十七年が三十六年に対しまして消費者物価が約六%、五・三%から六・八%に上がっております。この上がったことに対する寄与率の内容から申しますと、上がった原因全体を一〇〇といたしますと、その一〇〇のうちの上がった一番責任の大きいのは食糧費です。これが五三先、それから住居費が七%、被服費が一一%、雑費が二七%でございます。交通費と申しますのは雑費の二七%のうち一%、これは私どものかってな計算でございませんので、経済企画庁の昭和三十八年度の国民生活白書並びに総理府の家計調査報告からとったものでございまして、国鉄だけがかってに申していることではございませんが、これをごらんくださいますと、たとえば三十六年のときの運賃改定の結果に対する寄与率といたしましては、食糧費並びに雑費、雑費の中でも一番上がっておりますのは教育費、それから娯楽費でございます。それから保健衛生費。交通費は一%という実績になっております。したがいまして、消費者物価は確かに三十六年、三十七年と上がっておりますが、その上がったことに対する原因といたしましては、交通費は上がったことのうちの百分の一の責任だけしかないと、こういう結果になっておるわけでございます。
それからもう一つ、これは先ほど鉄監局長も言われましたけれども、過去の二回における具体的な物資の卸売り物価の変動を見てみますと、これはほとんど運賃と関係なしに、先ほど申しましたとおり、物資全般の需給関係その他でもってきまっていることが大部分でございますが、貨物運賃につきまして見ますと、たとえば一番問題になります鮮魚あるいはきのう泊谷先生のお話にございましたくだものというものに対する運賃の割合というものが一つの問題だ。これはこまかい数字で恐縮でございますが、たとえば青森のリンゴでございますが、これの平均輸送キロ約千キロ、千キロ輸送いたしまして、全体の私どもが小売商店で買う際の値段の中の運賃の占める割合は約六%。距離によって多少違いますが、約六%。生産者の手取りが大体御承知のとおり三分の一でございますが、そのほかに、いわゆる市場の手数料あるいは荷づくり費その他いろいろかかっております。その中で国鉄運賃の占める割合は六%。それから、私どもがやはり魚屋から買いますアジ、サバ、これも大体三陸もの、あるいは以西ものでございますが、これは千五百キロぐらいの輸送キロになっておりまして、国鉄運賃の割合が全体の消費者価格のうちの四%。たとえばアジ、サバ一本三十円といたしますと、そのうちの一円二十銭だけが運賃であるというふうな、これは相当詳細な計算の積み上げでございますが、消費者価格を構成いたしますものをいろいろ分析いたしますと、運賃のウエートというものは、大体食料品につきましては平均五%以下ということになっているわけであります。したがって、もしそれが二〇%上がったといたしましても、ウエートは一%ふえる程度ではないか。これは計算上の問題でございますが、そういう計算が、旅客運賃にいたしましても、貨物運賃にいたしましても、一応出ております。ただ、私どもは実際運賃を値上げしていただくほうでございますので、過去の実績だけをとりましてこういう結果でございましたということを申し上げるだけで、理論上かくあるべきだというまでの確定的な数字を申し上げる立場におりませんが、過去の実績から申しますと、旅客運賃につきましても、貨物運賃につきましても、この程度の実績だという過去の実数だけを申し上げて、御説明にかえます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/6
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007・野間千代三
○野間委員 いま運輸省なりあるいは国鉄から過去の実績の計算上の影響ということで説明があったわけですが、実際の経済状態であらわれてくる物価の値上がりの状況は、ちょうどこの国鉄運賃の値上げが行なわれた三十二年には、前年の三十一年が〇・三%の消費者物価の値上がり、これが三十二年には三・一%になっているわけですね。それから翌三十三年にはこれが落ちているわけです。一方三十六年の値上がりの際には、三十五年には三・六%であったものが五・三%に値上がりをしているわけです。これは三十六年、三十七年、三十八年と物価上昇の非常に激しいときで、三十七年が六・八%、三十八年が七・六%で戦後最大の物価値上げになってくるわけですから、ぼくもこれ全部が国鉄運賃の値上げのためであるということは即断はしませんが、しかし、国鉄運賃というものが値上がりすることによって、消費者物価、生計費に与える影響は、いま副総裁が説明をされたように、機械的な計算から生まれてくるのではなくて、これは多岐にわたって影響を与える結果、消費者物価に大きな影響を与えるということは、この消費者物価の上昇の割合を見ても明らかじゃないかというふうに思うのですね。そこで、いま例をあげて説明をされている、経済企画庁あるいは運輸省で説明をされている卸売り物価や消費者物価に与えている影響の計算の方法が、先ほど申しましたように、産業連関表によって行なっているわけですね。ところが、役所で計算をはじいてくるものは、大体そういう計算をされるわけです。今回の場合の物価の影響をはじいている計算の基礎のやり方が、産業連関表による影響を出しているわけですね。ただこの産業連関表というのは、ぼくはこれはただ単に一つの新しい学説なんじゃないかというふうに思うのです。たしかハーバード大学かどこかのレオンチェフとかいう教授が新しい学説として出しておるもので、したがってこの学説そのものもまだ固定したものではないし、それに対して新しい同じ産業連関表によって算出をする方法であっても、そのやり方によっては変わってくるということを、すでに通産省なり何なりでは試算をしてみたりしておるわけです。たとえば通産省で試算をした分で見ても、この産業連関表で是正をしてみると、〇・八%なりあるいは二%くらいの上昇になるという計算もしているわけですね。このことから見ると、価格に対する波及の計算のしかたが、こういう計算の方法だけで、物価への影響はこれこれであるというふうに即断されるのは、ただ単に日本の経済の状況、物価の状況を学問的に把握をして研究するなら、それはけっこうです。しかし、実際に消費者物価に与えてくる影響は、そういうものではなかなか算出がしにくいのじゃないかというふうに思うのです。したがって、物価に与える影響というものを考える場合には、国鉄運賃が占めている割合が、計算的には、あるいはいま副総裁が言われるような計算が行なわれるかもしれないけれども、実際にたとえば今度の運賃値上げによってトン当たりのサバの運賃の例をとると、東京−八戸間がトン当たり八千円の運賃増になるというのですね。そうすると、それだけで一匹十円になるというのです。こういうふうになってくると、それがいろいろな品目に影響を与えてきて、消費者物価の上昇に非常に大きな影響を与えてくるというふうになるとぼくは思うのです。したがって、ただ単にそういう学問的な計算、研究段階のような計算だけで、物価に与える影響はこの程度であるから、国鉄運賃を上げることは物価に与える影響は少ないというふうに考えるのは少し間違いじゃないかというふうに思いますが、総裁何かございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/7
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008・堀武夫
○堀政府委員 私の申しましたことで誤解があるようですから、一つだけ申し上げておきますが、先ほど経済企画庁の算定によると〇・三二%という計算で消費者物価に影響を与えると申しましたが、これは産業連関表の計算とは別なんであります。産業連関表からの算定については、先生がおっしゃるような問題があると思います。経済企画庁がやっている消費者物価、CPIに与える影響については別な計算でございまして、各要素のウエートというものがありまして、それに値上がり率をかけて出す方法でございます。これは従来からずっと経済企画庁がとっている方法論でございまして、産業関連表の計算とは別でございますので、この点だけ申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/8
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009・石田禮助
○石田説明員 野間さんに申し上げますが、国鉄の運賃値上げというか是正というか、これが物価に及ぼす影響というものについては、単に数字的に考えたって、これは正当じゃない。これはすべての食料品、消費者物価にしても何でもそうである。やはり人気というものが、心理的な影響というものがある。これはやはりわれわれ考えなければならぬ。いわんや、最近のように、単に国鉄運賃の是正というか、値上げばかりでなくて、何もかも上がっているところへ、プラス国鉄の運賃値上げというものがくると、心理的に及ぼす影響というのは相当大きいと思う。この点はわれわれやはり考えなければならぬ。ただしかし、この問題はかすに相当の時をもってすれば、やはり落ちつくところへ落ちつくということに考えるべきじゃないかと私は考えるのです。
国鉄の今度の問題は、御承知のとおり、輸送力の増強、細密ダイヤの緩和、いわく何、いわく何ですが、結局国鉄の今度の運賃値上げによって国鉄の輸送力をふやすということは、流通機構のいまのひずみを是正するということなのです。これが物価に及ぼす影響というものは、私は相当なものだと思うのです。何といっても、物価を支配するものは物資の需要供給のバランスの問題であります。いまのような国鉄の輸送力が不足のときには、利用者側がこれを利用せんとするときに、それに必要な輸送力を供給することができるような弾力的状態にないのです。その一番いい例は、年末あたりになって貨物の輸送需要が非常に多いときに、貨車の配給ができぬ、一番需要の多いときに供給ができぬ、こうくる。この是正を、今度の輸送力増強その他によって是正するということになれば、これは根本問題として物価の上に及ぼす影響というものは相当のものがあるのじゃないか。要するに、いまのような国鉄の輸送力不足、輸送需要に応じ切れぬ、弾力性がないということは、物価の上から考えても、これはぜひとも是正する必要がある、こういうふうに考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/9
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010・野間千代三
○野間委員 総裁の言われる前半のほうはそのとおりなんです。これはぼくも実はあとから触れるつもりでおったのですけれども、国鉄運賃というものが物価に与える心理的な影響、これは非常に大きいと思う。これは、総裁が便乗値上げは困るというふうに言っておられたことがありましたが、それと同じなんですよ。したがって計算上とかだけではあらわれてこない。この国鉄運賃が、心理的なり、あるいは便乗的といいますか、物価に与える影響も確かにありますよ。したがって、さっき言われるように、たとえば経済企画庁の算出にしても、あるいは運輸省の算出にしても、通産省の算出にしても、どの算出にしても、それはただ学問的にその程度まではやはり上昇するわけです。それに加えて、いま総裁が言われるような影響が出てくるわけです。したがって生活に与える影響というのは非常に大きい。これは総裁の言われるとおりなんです。ですから、もし運賃を是正したり、あるいは設備投資をするために——ぼくは運賃を上げることがいいとは言っておりませんよ。言っておりませんが、これもあとで触れますけれども、この運賃を上げるときは、そういう影響がないような措置をしなければならぬと思うのです。経済上経済政策としてそういう措置が与えられて、いま政府の好きな歯どめなら歯どめというものがちゃんと与えられておって、そういう政策が行なわれておって、初めて国鉄運賃の値上げが認められると思うのです。そうではなくて、そういうものは全部ほっぽらかしておいて、そして心理的にも便乗的にも影響を与えることがはっきりしておって国鉄運賃が上がってくるというところに、国民が困るわけです。しかも、たとえば今度の場合平均二五%、お客さんは三一・二%ですか、お客さんのほうは確かに物価には与えないはずなんだけれども、やはりこれは与えますね。それから貨物のほうも一七・何%だ。しかし、実際にこの運賃値上げの構想を見ると、確かに平均はそうなんだけれども、たとえば通勤などは一一二%くらい上がるところもあったり何かして、さっきの、経済企画庁の言う上がったパーセントをかけていっても、これはそういうふうには影響があらわれてこないわけです。
そこで、ちょうど見えましたから、まず運輸大臣にお尋ねをしたいのですが、いま国鉄運賃が物価に与える影響についてお尋ねをしておるのですけれども、いま総裁の言われるように、国鉄運賃の値上がりは、卸売り物価あるいは消費者物価に単純に直接波及するだけじゃない。いろいろな要素がある。心理的にもいろいろな要素が重なってきて影響を与えるということを総裁も言っておられるのです。したがって、そういう影響が特に今度のように——これは三十六年、三十二年とは違うのです。これは副総裁、三十二年のときと三十六年のときの経済情勢といまの四十一年の経済情勢では全然違うということは、御存じのとおりだと思うのです。しかもいま、一月の一日から米の値段をはじめ一斉に上がっていますね。そういう中でいま、国鉄という国を縦断する経済機構といいますか、そういうものの根幹になっているところが上がるわけですから、総裁が前半に言われたようなかっこうで影響を与えることは明らかだと思うのです。
そこで、運輸大臣、したがってそういうことだから、国鉄運賃を上げなければならぬ、国鉄の財政上、上げなければならぬというふうに考えるならば、これが直接影響はやむを得ないとしても、これは上げることを前提にして直接影響だけでとどめるというふうになれば、あるいは鉄監局長の言うように〇・三%なり〇・四%にとどまるかもしらぬが、実際にはそうじゃないのです。したがって、その程度にとどめるような経済的な措置——これは運輸大臣の責任じゃないでしょうが、閣僚ですから、きょうは経済企画庁長官も大蔵大臣も来ておりませんから、運輸大臣に答えてもらうのですが、そういう措置を行なう必要があるのじゃないかということは政府も認めると思うのです。これは三十九年に値上げをしてくれというふうに国鉄が言ったときに、しばらく待ったといまの佐藤さんが言ったわけですよ。一年間がまんしたわけです。それが国鉄からの要請が三〇%に上がってきた理由でしょう。そうですね。つまりこれは政府自体も、総裁が前半に言われるように、国鉄運賃が与える影響を非常に警戒をされたんだと思うのです、佐藤総理が。したがって、警戒をしてそれが一年おくれるのではなくて、その間にそれが直接的な波及効果でとどまるというだけの経済的な歯どめが必要じゃないかと思うのです。これは非常にむずかしいと思うのです。しかし、そういうことをしなければこれは国民が困るだけで、恨まれるのは国鉄です。ですから、そういう経済政策をとらない限り、それがどの程度あらわれるか、これはやってみなければわかりません。しかし、そういうことが政策としてとられていなければ、これはぼくは、国鉄運賃が上がる、しかも戦後最大の平均二五%、実際には三十何%も上がるようなことをすべきではないと思うのです。これはどうですか。内閣ではそういう問題で経済的な歯どめの措置なり、そういうものは検討されておるのですか。二月十五日から上げたいと言っているのですから、もちろん検討していま実施の段階に入っていなければならぬと思うのですが、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/10
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011・中村寅太
○中村(寅)国務大臣 現在の政府がとっておりますあらゆる施策は、いわゆる物価の安定、生産の向上というようなこと、いわゆる経済政策全体がやはりなるべく物価を低く押えていくといいますか、安定させるというような方向でとられておるのでございまして、その具体的な問題は、これは多岐にわたっておりますので、あらゆる方法で経済企画庁あたりも万全を尽くしておるわけであります。あるいは今度の予算の編成に際しましても、やはり生産を高めて物価の流通を円滑にしていくというようないろいろな方策をとりまして、安定成長の方向に政治、経済の状態を持っていこうとしておるのが実情でございます。運輸省といたしましても、そういう線に沿っていろいろの面で考えておるのでございますが、国鉄の運賃の引き上げの点につきましては、これは野間委員もおっしゃるように、やはりできれば上げないに越したことはございませんが、非常な急角度で上昇します交通需要、いまの設備、過密化された交通事情等を勘案いたしますと、ある程度の引き上げはやむを得ない。そういうことから今回の値上げの方向になってまいったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/11
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012・野間千代三
○野間委員 確かに四十一年度予算の中で物価対策費というのが組まれていますね。それはいま運輸大臣の言われたとおりなんだけれども、物価対策費として内閣が組んだ予算は幾らですか。百四十億でしょう。そんなもんですね。役所の人員を三十何人ふやしたり、何かその程度じゃないですか。そういうものを全部足してみて、物価政策として政府が支出する金は総額でたしか百四十何億かですよ。国鉄が今度運賃の上がる分で期待しているのは、一年間に千六百五十億でしょう。そうですね。一日五億上がるのです。私鉄の運賃で幾らですか。総額三百億ですね。それからお米の値段もそうです。そういう公共的な料金が全部上がっておって、それに対して、それの歯どめの費用として政府が使おうというのは百四十億ですよ。私鉄の運賃ですら年間に三百億円上がるのです。それの半分にも満たないような百四十億の物価対策費で歯どめになるのですか、運輸大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/12
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013・中村寅太
○中村(寅)国務大臣 政府がとっております万般の政策は、やはり物価を押えていく、あるいは経済の安定を実現していくという方向でございまして、ただ物価政策の金というふうに限定して政府が調子を合わせておるのではございません。物価を安定させ、生産を向上する、あるいは流通の円滑化をはかる、それから公共企業等に十分の金をつぎ込みまして、そうしてこの不況におちいっております景気を挽回して、経済全体の調子を合わせていこうという政治のすべてが、やはりそういう問題につながっておると了解しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/13
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014・野間千代三
○野間委員 ここは予算委員会じゃないから、ぼくらは七千三百億円の公債発行がインフレになるという論議をいましょうとは思いません。思いませんけれども、いま政府がとっている四兆三千億円という膨大な超大型予算の性格は、それは運輸大臣が言うような物価を下げようという性格じゃないですよ。明らかにインフレになる危険性が非常に多いということです。そういうことで、それじゃ済まないから、百四十億ばかり出して、物価政策と名づけて発表したわけでしょう。それはいま運輸大臣が言われるようなことにはなっていかないですね。そこで、残念だけれども、国鉄運賃の値上げは消費者物価に与える影響が非常に大きい。ただ単に計算上にあらわれてくるようなものじゃないということは、いかに抗弁をされようとも明らかです。それに対して政府は歯どめ政策をとっておらない。これはだれが考えてもそう言わざるを得ないですね。いまはそういう実態です。それをそうだというふうにはなかなか運輸大臣も答えないでしょうが、実際はそうなんです。これは明らかにしておきたいと思います。
次に、総裁はときどき新しい説を出されるので、たいへん興味があるのですが、運賃値上げをして設備を強化するから、それがむしろ物価を下げることになるという、たいへんいい説を言われるので、実は感心しておるのであります。ただ実際に第一次、それから第二次の運賃値上げによって、二次にわたってすでに十年、長期計画を組んできたわけです。そうでしょうね。それが実証的にはたして物価を下げるだけの流通機構の改善になったかどうかというと、これはちょっと疑問じゃないかと思うのです。これはそういう新説、確かに新説には違いないけれども、そう中身のある新説じゃないというふうに考えるのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/14
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015・石田禮助
○石田説明員 野間さんは、私が先ほど申し上げた心理的の影響ということを非常に強調されておる。そのあとのほうのことについてはあまりお考えにならぬように思うのです。私の言うのは、心理的の影響を与える、しかしかすに相当の時をもってすれば、冷却して落ちつくところに落ちつく。株の値段のようなものですよ。これはあとのことを聞いてくださらぬと困るのです。
それから、いまの流通機構の整備、つまり国鉄からいえば輸送力の増強による供給の増加、これによって運賃を下げる力になる、こういうことを申したのでありますが、その点に関して、国鉄は第一次五カ年計画、第二次五カ年計画によって輸送力を増強したにかかわらず、物価というものは上がりこそすれ下がっておらぬじゃないか、こう言うのですが、第一次五カ年計画というのは、御承知のとおり輸送力増強じゃないんだ。あれはつまり修繕ですよ。第二次五カ年計画によって輸送力を増強いたしましたが、これははなはだ貧弱なる輸送力の増強であって、輸送力の増強よりは輸送需要のほうのふえ方が多かった。そこで需要供給の結果によって、一がいに下げる力にならないで、むしろ物価というのは上がったのだ。今度の第三次五カ年計画では思い切って輸送力を増強することになるのですが、その結果がどうなるかは、神ならぬ身の私が予言するわけにはいかぬが、まずまず好結果を及ぼすということを私は確信しております。その点は、今度は運賃を上げたからといって、物価が上がるというように心理的な影響だけを考えて結論を持っていかないで、もう少し長い目で見て結論を出していただきたい、こういうことが私の言わんとするところであります。御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/15
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016・野間千代三
○野間委員 確かにそういうことが言えるでしょう。これはあとの問題になるのでしょうが、今度の第三次長期計画は、まさに長期計画ですね、七年間でやろうというのですから。現在の輸送量の増に対しては、それはいい影響があると思うのです、七年間の後に。いま総裁が期待しておるような第三次計画による状態ですが、それはいま昭和四十一年、四十二年あたりの輸送量の増が求めているところですよ。七年間でやろうというのですから、これは経済の状態がいまのような状態でとどまっているなら、それはいま総裁が言われるように、長い目で見てもいいでしょう。しかし、経済の情勢は、そう長い目で見てはおれない、そういう実態です。したがって、いま総裁が言われるようなうまい調子、答弁のような調子には、そうはいかないのじゃないか、そう思います。しかし、物価の問題ばかりやっていても、総裁は物価の専門家じゃないはずだから、物価の問題はこの辺にします。
ただ、もうちょっと気にかかる問題があるのですが、一回締めくくりしましょう。いま申しましたようなことで、そしてもう一つ国鉄運賃が与える影響は、運賃を実際に上げる。つまりぼくが言うまでもなく、いま期待しておる二月十五日に上がるのじゃなくて、二月十五日の以前の一年間くらいに上がったり、あるいは二月十五日過ぎても上がる分があるというふうになるのですね。運賃というものはそういう影響を持っておるのです。ですから、そういうふうな広範囲にわたって、国鉄運賃あるいは私鉄もそうですが、運輸料金というものは物価に影響を与えてくる性格を持っておるわけです。したがって、さっき御答弁があったようなぐあいには、なかなか国鉄運賃の影響は過小評価するわけにはいかないというふうにぼくには考えられて、万般の施策をする必要があるというふうに思います。物価の問題は実際には運輸大臣が答えられたり、鉄監局長あるいは総裁、副総裁が答えられるようなことには決してなっていかないと私は思います。いま世情でもそういうことですね。したがって、答弁としてはそういうことが言えるでしょうけれども、実際のそういう経済情勢からくる国民生活に与える影響というものは非常に大きいということを、ひとつ念頭に置いていただきたいというふうに思います。
それからもう一つ、きのうもちょっと総裁が言われたのですが、物価に影響があるわけですが、国鉄の運賃は安いというふうになっておるわけですね。確かに安いに違いないけれども、国鉄運賃が非常に安いというのはどういうことですか。これはやはり石田総裁の新説なんですけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/16
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017・石田禮助
○石田説明員 国鉄の運賃が安いということは私どもの新説ではない。世の中の一般の人の考えることだろうと思うのです。現に数字がちゃんと証明しておるのです。たとえば電電公社なんというものは、昭和二十八年に一挙に上げて、昭和十一年に比べまして二百三十三倍、国鉄の運賃ことに旅客運賃なんというものは、昭和十一年に比べて、三十二年、三十六年と二回、運賃の賃率を上げておるにかかわらず、昭和十一年に比べてわずかに百六十一倍、この点は野間さんもちゃんと御承認くださると思う。二百三十三と百六十一とどっちが一体大きいか、こういうことで、これは心理的の影響じゃない。数字が物語っておる。これはちょっと説明を要するのですが、たとえばいまのような通勤、通学のああいう交通地獄をやっておいて、これでは運賃は安いのじゃないんだ、高いんじゃないか。ああいう貧弱なるサービスをもってして、これはごもっともなんですよ。これはだれがこういうことをやったかということになると、私はだれの責任ということは遠慮して言いませんが、しかしいわゆる商売上の原則をもってすれば、ああいうサービスを改善した後に運賃を上げるということが定石です。しかし、いまの国鉄の状態からいえばそろいうことはできぬ。やはり何とかしてこれを改善しなければならぬ。それではその金をどこから持ってくるか、そういうことになってきますと、借金でやるか、自己資金でやるかということで、結局われわれいま先行投資をやろうというのじゃない。せっちん詰めになっているので、そこから脱出しよう、こういうことなんで、少し逆手を使わざるを得ぬ、こういうことになるのです。国鉄の状態については私より野間さんあたりがよほど詳しく御存じだと思う。そういうことについては私は御異論がないはずだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/17
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018・野間千代三
○野間委員 総裁におこられたが、私も昔はつとめておりましたからね。総裁、そのころはよろしかったけれども……。総裁、確かに昭和十一年の物価と比較をすると、消費者物価は三百九十一倍だ。卸売り物価は三百四十四倍だ。ところが国鉄の運賃は、旅客は百六十一倍だ。貨物は二百十七倍だ。電話のほうは二百三十三倍じゃないか。これは幼稚園でも確かにそうですね。ただ交通新聞の去年の十月二十人目に、これこそ名前を言わないですが、国鉄ですよ。国鉄の営業部ですよ。昭和十一年ころの国鉄運賃は、今日の貨幣価値からすると、人キロ当たり四円二十二銭、トンキロ当たり六円四十四銭、現在に比べると約二倍の高い水準にあった、こう書いてある。さらに、国の歳入額の三〇%に当たる三十億程度を国庫に納入するほどの余裕があった、こう書いてあるのですね。つまり、十一年ころの運賃はこういう運賃ですよ。それを置いておいて、ただ単純に百六十一倍と言っても、それは聞こえませんよ。これは国鉄の人が言っているのですから、この論法からいけば、百六十一倍というのはその倍でなければならぬ。三百何倍ですよ。三百二十二倍ですね。この三百二十二倍は二百二十三倍よりも高いというのは、これはことばを返すわけではないけれども、総裁でもわかるわけですよ。だから、ただ単に当時のあれを比較して、国鉄運賃は総裁の言う過度低廉説ですか、過度に安い、過度に安いと言うのは、これはそうは言えないのですね、これは国鉄でもそう言っているのですから。ですから、いまの国鉄の運賃がそう安いというふうには実際には言えないのですよ。ですから、国鉄運賃はそう安くはないということの上で、かつ運賃値上げをしなければならぬというふうにいま国鉄はなっているというのが実態なんです。(關谷委員「安いよ」と呼ぶ)それは關谷さんは金持ちだから安いですよ。關谷さんは列車に乗らないのだから……。乗る人のことを言っているのですよ。そういうことですよ。ですけれども、これはこの程度にしましょう。国鉄運賃はそう安くない。ただ国鉄の方々にすれば、こういうことはあります。これは総裁を弁護する意味でちょっと言いますが、私の友だちの大工さん、岩手県なんですが、岩手県のいなかに帰るのに、昔は三日間働いた金でないと行かれなかった。岩手県までは三日間働いた労賃でないと行けなかった。ところが、いまの労賃でいくと、一日働いた労賃で行ける。これは安いと言う。そういうふうに言っております。しかし、ぼくが言っているのは、いまの運賃が安いということを言っているのではないのですよ。そうじゃないのですよ。いかに昔の運賃は高くつくられたかということなんです。そしてそのもうかった金が国鉄から全部国庫に納入されたのは、ここに書いてあるとおり。そして臨時軍事費に使ったりしたんですよ。そういう国の体系だったわけだ。いま総裁の言うように、その運賃をのいておいて、ただ単純にその当時の運賃の倍率をかけるから間違いだ。その大工さんの言っていることは、これは実は安いということではなくて、経済情勢が変わってきている。それは待遇も上がってきたでしょう。そういうことが総合されてきたわけですよ。だからただ単に国鉄運賃が安いというわけにはいかぬのです。(発言する者あり)しかもいま久保先生がやじっているのは、こういう意味だと思うのですよ。いつ行っても買えて、すわれて、そうしていなかに帰れる。しかもいま二十五分間に一回くらいずつ傷害事故があるでしょう。そういう事故がないということであれば、いま総裁の言うように、それは安いと言えるでしょうね。いまうちを出たら、水杯まではしないでしょうけれども、相当な覚悟でないとあぶない。(発言する者あり)いや、ほんとうですよ。ぼくは国鉄の出身ですが、国鉄の運転士は、実際にうちを出てくるときは、奥さんと水杯をしかねない勢いで出てくる。ほんとうですよ。そういうふうな状態ですから、これは安いとは言えない。そういうことも含めて私はそういうふうに思います。
その問題はその程度にいたしますが、それですから、国鉄運賃は正確に言えば安くなくて高いというふうに言うわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/18
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019・石田禮助
○石田説明員 これは根本問題ですから、私はもう一ぺん説明しなければなりません。それは確かに戦前における国鉄の運賃というものは安くなかったと思う。安くなかったがゆえに、実に七十億もの日本経済の発展の先行をなしていくだけの余裕があった。ところが不幸にして戦争のためにぶちこわされた。ぶちこわされたが、国はこれに対して何らの補償もしてくれなかったというようなこと、そうして百六十一倍というようないまの倍数が、これは昭和十一年における国鉄の運賃を土台にしたものであるのだが、昭和十一年における国鉄の運賃というものが一体正当なものであったか、高いものであったか、安いものであったか、こいつは私にはなかなか判断ができぬ。判断はできぬが、普通には、電話料にしても何にしても、昭和十一年というものを土台にしておる。そうしてざらにわれわれが国鉄の運賃は高くない、安いということの比較は、昭和十一年を土台にしても言えますが、同時に世界的に見て、国鉄の運賃というものは安いか高いかということになると、世界一安いのだ。そこをひとつ考えていただいて、昭和十一年を土台にすることが正当かどうかという問題は、これはなかなかむずかしい問題だ。むずかしい問題ですが、まあ昭和十一年を土台にすると、こういうことになっておる。電電公社あたりの二百三十三倍というのは、やはり昭和十一年を土台にしておるのですが、昭和十一年における電電公社の率というものは、国鉄と同じように一体高いものであったか安いものであったか、といつは私にはわからぬ。わからぬことはわからぬとしておいて、とにかく百六十一倍だ。こういうことで世界的にも安いのだ、こういう点をひとつお認めいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/19
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020・野間千代三
○野間委員 いま総裁が言われたお話は、りっぱな話です。りっぱな話の中で一番りっぱなのは、国鉄が戦前において非常にもうけた。そして国に対して非常な貢献をしたのだ。それがいま第一次、第二次、第三次と投資をしなければならぬのは、もうけておるうちに全然国がそれを拡充しなかったのですよ。経済の必要に応じて国がずっと拡充をしておれば、いまこれほど無理に拡充をする必要はない。設備を投資する必要はないのです。それが、電話なり他の企業はやや投資額が少ないせいもあるのでしょうが、投資をしてきておったから、料金をそんなに上げないでも、いま投資ができるような企業になっている。そこに国鉄が損をしている状態があるのですね。それを総裁も言っているのですよ。そのとおりです。だから、きのうから泊谷君の言っているように、国がほんとうは投資をしておかなければならなかったことを、いまこれから石田総裁にさせようとしているのだから、大臣、いま投資をすることは、もうけておる時代に投資をしなかったものをいまさせられているのだから、当然国がすべきものじゃないかということになるのですよ。どうですか、これは。総裁が言っているのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/20
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021・中村寅太
○中村(寅)国務大臣 国鉄の現在の非常に困難な状態は、これはいま野間委員の言われますように、長い間のうちにこういうことをやっておるということもありますが、最近における交通事情というものが非常に大きな伸びを示してきたということも、一つの大きな理由であると私は思います。そういう点で、第一次計画を進め、第二次計画を進め、第三次計画によってできるだけ交通事情を緩和しよう、こういうふうに計画を立てておるのでございまして、国が必ずしも放任をしておったということは、私は当たらぬのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/21
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022・野間千代三
○野間委員 それは問題だね。そんなことはないですよ。確かにそれは高度経済成長から輸送量がふえた点はありますよ。それはありますよ。しかし、高度経済成長政策がとられたときから、通勤電車が満員になったり、事故が起きたり、過密ダイヤになったりしたんじゃないですよ。これはぼくが国鉄につとめておったときからそうなんだ。したがって、高度経済成長政策によって生まれてきた輸送量の増、そういうものだけをこれからやらなければならぬというのは、それはわかりますけれども、基本的に国鉄の設備は、そのときどきの経済情勢から生まれてくる輸送量の増に追いつかない状態で、しかもさっき総裁の言われたように、第一次五カ年計画は老朽化を何とかしなければならぬということでしょう。そうですね。老朽化を何とかしなければならぬということは、その間何にもしなかったことでしょう。老朽さしてしまったのだから、そうでしょう。そういうふうなことをしてあったから、第一次五カ年計画のときに、すでに戦後の経済情勢に見合った輸送量増に対する輸送力の増加をするだけの設備投資をしておらなかったということで、それをただ単に老朽施設の修繕だけにとどまっておったところに、三十年、三十一年のころから急速に国鉄の輸送力が時の経済情勢に追いついていけなかった原因があるでしょう。運輸大臣、いまの答弁はなっていませんよ。納得はできませんよ。実際が実証しているのですよ。これはすでに泊谷委員やあるいはきのう山口先輩も触れておった点ですから、またあらためて触れてもしかたありませんけれども、いま総裁が苦衷を述べておられるように、ほんとうはいまの第三次計画よりも、第一次五カ年計画のときから、すでに国の投資によって、おくれておった、なまけておった国鉄の設備を、国が責任を持って輸送力の増強のための投資をしておく必要があったはずなんだ。それでひとつ運輸大臣、これは閣議でやっていらっしゃるでしょうけれども、もっと力説していく必要があるでしょう。そこでこれは総裁が言うのですが、実態がそうなんです。ところが、国鉄の皆さんはりっぱな方がたくさんいらっしゃるにもかかわらず、第一次、第二次、第三次と全部そういう主張をされました。私は総裁が言っていらっしゃったことは、たしか三千億円今度ほしいと言っておった小さなパンフレットを出していますね。そのとおりです。しかし、そういうふうに言っていらっしゃりながら、おれたちは大蔵省に弱いというふうに言って、三千億円もらえないで引っ込んじゃうのですよね。その石田総裁はたいへんりっぱな総裁です。ブレーンも非常にりっぱです。別におせじじゃないですよ。りっぱです。ただりっぱじゃないところは、三千億円とれなかったら、国民の国鉄にするためにもう一歩自分の責任を突っ込んで考える、そのくらいの決意になったら、ぼくはもう少し変わるのじゃないかというふうに感ずるのです。いまの佐藤さんは国鉄出身だから、もう少し考えそうなものだと思ったことがありますけれども……。
そこでぼくは石田総裁に言います。副総裁の磯崎さんも非常にりっぱな副総裁です。ずらっといらっしゃる常務さんも、みんないまの常務さんはりっぱな方ですよ。おせじではないですよ。しかし総裁、国民が困っておったり要求しておったりすることは、みんな総裁が言っておるとおりのことです。三千億円国が投資してもらわなければ困るということですよ。それを総裁が言っていらっしゃるのだ。だからこれが、もし内閣でそういうことをしてくれない、運輸大臣が承認してくれない、大蔵大臣がそれを承認しないのならば、総裁の進退をかけてやったらどうですか。そうしたらぼくは通ると思う。それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/22
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023・石田禮助
○石田説明員 三千億円をぜひひとつ国の投資でやってもらいたい。今日までにおける国の投資というものは、あとにも先にも金四十億円なり。しかも昭和二十五年です。戦前の四十億円ならば何をか言わんや、これは二十五年になっての四十億円です。これではあまり少な過ぎるのじゃないか。それで国有鉄道という名前をつけたが、これは民有鉄道なんです。こういう意味において、国鉄のいまの窮状を考え、国鉄の国の投資面が少ないということを考えて、三千億円というものをぜひひとつ投資として考えてもらいたいということを基本問題懇談会あたりでやったのですが、出すか出さないかということは、私がきめることではなくて、大蔵大臣がきめることです。私が自分の進退を賭してやるということは、そんなことは何でもないことです。いつでも運輸大臣に辞表を出しますよ。問題は、目的を達成するにはどうしたらいいか、こういうことです。進退の問題じゃないんですよ。それは野間さんが私の地位になって国鉄総裁になった場合に、あなたが進退を賭したって三千億が手に入りますか。入りませんよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/23
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024・野間千代三
○野間委員 それはことばの表現として、ものの言い方として、ぼくは進退と言ったんですよ。これが石田総裁が辞表を出したら三千億円になるというなら簡単です。だから何も総裁と言っておるのではない。国鉄の首脳陣がいまぼくの言ったような気持ちくらいになってやっていったらどうか。それで大臣、どうですか。ぼくがさっき言ったように、国鉄の設備は正直に言って国がさんざん食いつぶした。いま総裁の言うとおりに、いまの国鉄は民有ですね。これはぼくも書いておいたが、三十九年七月二十三日のNHKの婦人の時間に総裁が御婦人に呼ばれて——御婦人に呼ばれたから行ったのじゃないでしょうが、国鉄は国が投資したものは一つもない、全部運賃から生み出したものだ、こう言っていらっしゃる。そのとおりです。これがいまの実態ですよ。いま当然国が食いつぶしておったのを直さなければならないときに、また国民から金を召し上げるというのが、いまのやり方でしょう。こんなことはおそらく運輸大臣でも承服しかねると思います。ですから、これは総裁が要求されておるような国の投資によって、国鉄の輸送力増強の整備をする。整備をしたあとの経営は、これは確かに総裁以下の人によってりっぱにやっていただいて、そして収益をあげていくようにすればいいのです。その収益をあげていった分が今度は自己資金、それによって国が期待している以上にもっと輸送力の増強ができるはずですね。こうなって初めて総裁の言われる長い目で見て物価の下がり得るほどの国鉄になり得ると思うのですね。そうなってこなければ、そうはならぬです。どうですか、運輸大臣。そういうふうなことで、これはきのうから言っていることなんですけれども、このくらいでやめますが、もっと第三次七カ年計画と、それに基づく二兆九千七百二十億円の資金の調達方法は、すでに昭和四十一年度予算で佐藤内閣は出しちゃっているわけです。いま予算委員会で論議をしているでしょうけれども。ですから、これはなかなかむずかしいとは思いますよ。思いますけれども、しかし議会に審議権があるのですから、その議会の審議権に基づいて政府は考える責任があると思うのです。ですから、いまのうちにやっておかなければならなかったでしょうけれども、この予算審議の段階で、少なくとも、総裁をして、国鉄は国からもらったものは一つもないと言うようなことでないようなことにはならぬのですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/24
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025・中村寅太
○中村(寅)国務大臣 私は、国鉄の財源を国の援助によってやるということ、その考え方においては私も賛成いたしますけれども、ただ御承知のように、日本は戦争によって非常に大きな壊滅的な打撃を受けた。そのあらゆる面を国家は今日まで立て直しながら歩いてきた。そういう一つの大きな歴史的な過程の中で、私は国鉄というものに対する援助の手は、国はやはり尽くしてきた、かように考えるものであります。それで形から申しますと、これは非常に不十分であります。しかしそれは、いま言いますような国の今日まで置かれてきた実情というものがそういうことになっておったというふうに考えるべきではないか。それでもできるだけ国鉄というものには——これは考え方といたしましては、利用者は運賃が安いほうがいいことはきまっておりますので、安いようにしなければなりませんけれども、国のあらゆる点、財政事情等を勘案いたしまして、そうしてやむを得ない範囲のいわゆる利用者負担ということをお願いするというようなことになっておると私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/25
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026・野間千代三
○野間委員 きのうから泊谷委員や山口先生がもうさんざん言われたことですから、そうあまり同じ問題は言いませんが、国の経済情勢なり財政状態なり、そういうものから見てやむを得ないのだということですね、いまの答弁は、主たるところ。しかし、いま泊谷さんが言っているように、国の経済状態が国鉄に二千億や三千億どうして毛投資できないといういまの財政かということです。別に資金難で——道路の問題を出したり、あるいは山一証券を出したり、そういうことは言いません。言いませんけれども、七千三百億という公債も発行して、そうしてそれを社会資本をつくるために使うとか、そういうふうに言っておるけれども、この国鉄というのは社会資本の最たるものではないですか。そういうところにはびた一文出せない、利息のついた金を貸すくらいだというのでは、これはどんなに考えたって、いまの国の財政情勢、財政の内容を見てみたって、そういうことは出てこないですよ。まあいいです。答弁はもらいませんが、しかし国の経済の内容は、いま運輸大臣が答えられたようなことではないです、絶対に。びた一文も出せないということはないと思いますよ。
それから、さっき少し大きな声を出したのを忘れちゃったのですが、外国の運賃より確かに安い面もあります。たしかロンドンの地下鉄は、建設をするときの運賃が二ペンスで、そうしてつい一昨々年あたりにたしか三ペンスか何かだったというふうに聞いております。ですから、別に国鉄の運賃が特段に、世界から見ても、平均値や何かを見るとそうなんでしょうけれども、そうなかなか即断ができないのじゃないかというふうに思います。これはいいです、別にたいしたことはないのですから。
その次に、いまちょうど問題になってまいりましたので申し上げますが、いま総裁が言われるように、国鉄は出資は八十九億ですか、実際の現ナマの出資はたしか四十億でしょう。あとは見返り資金か何かの帳簿上のものじゃないですか、金はいっているには違いないけれども。ですから国が実際に資本として投資したのは四十億か何かですね。あとは全部いま資産が——ちょっと言ってください。国鉄の資産は幾らあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/26
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027・磯崎叡
○磯崎説明員 私のほうで公にいたしております貸借対照表によりますと、正味資産は、固定資産におきまして二兆二百十億。これは三十九年度末でございます。投資資産が二百九十八億。億以下は省略いたします。作業資産が三百六十一億、流動資産が九百八十四億、その他全部含めまして資産合計で二兆二千五百四十七億であります。そのほかに減価償却引き当て命が三十九年度末で一兆一千四百七十億でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/27
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028・野間千代三
○野間委員 いま副総裁が言っておられましたように、四十年三月末で二兆二千五百四十七億ですね、国鉄の資産が。これは評価のあれがあるでしょうから、あるいはもっとになるかもしれませんね。たしか三兆か四兆あたりになるかと思います。そうすると、この中で四十億というものやあるいは八十九億というもの、これは当時の貨幣価値や何かを換算をしていけば多少違うでしょうけれども、四兆円、三兆円にはとてもなりません。ですから、そこをお考えになって、総裁がさっき言われたように、これは民間のものだというふうに言われたと思うのですね。そこでつまり簡単に言えば、いまの国鉄に対しては、資本市場というのですが、にしても、あるいは国家にしても、投資をするという責任をとってないわけですね。そうですね。投資してないわけです。そういう責任を負っていない。したがって、ぼくは単純に考えて、出資をした者に当然権利があるのじゃないかと思う。株式会社だってそうでしょう。株主は権利があるから配当をもらう。株主でない者には配当はくれません。そうすると、これは簡単な話なんだけれども、ちょっと直観したのですが、国鉄に対して投資をしたのは主として国民ですね、一般大衆。これが二兆二千億円にのぼる資産をつくったわけですね。そうすると国民は配当を受ける権利があるのじゃないかというように思うのですね。(「それはちょっとおかしいな」と呼ぶ者あり)おかしくない。配当を受ける権利がありますよ、出資しているのだから。それの配当としては、料金を払って乗るというのが配当だ。そんな配当はないでしょう。じゃ聞きますけれども、銀行が金を貸せばちゃんと利子をとる。出資をすれば配当をもらう。これは直観ですから、もののついでなんですが、国民が出資をしたのだから、国民には配当があってしかるべきだと思うのです。それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/28
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029・石田禮助
○石田説明員 野間さんにお答えいたします。
国鉄の出資は昭和二十五年において四十億でありますが、あとの四十八億、つまり貸借対照表によると、政府の出資は八十八億であります。その四十八億というものが、これは意味深長なんです。これはつまり特別会計から移したものであります。特別会計というものは、これは政府がやっておったのです。ある意味において政府の出資ですが、しかしこれのもとをただせば、政府はこれに対して何もお金を入れているわけじゃない。これはやはり国民が払った運賃で、その利潤の積み立てが積もり積もって四十八億。これは戦前の四十八億ですからね。これはやはり名目は国のものなんですね。私が国有鉄道にあらずして民有鉄道なんだと言うのは、これはちょっと誇張的な言いあらわし方なんですね。これはもとをただせば、利用者から出てきているのですが、やはり名目は国の出資なんです。
それで、野間さんにさらに申し上げますが、さっきの三千億円をこえる出資をしている、こういうことを言ったのですが、これはそういうことを主張するものの、いまの国の財政状態を考えると、ねだるほうが少し無理じゃないかと思うのです。これは理論としてはいいかもしれぬが、実際の政府の台所を見ると無理な点があるし、これにかわるのに、じゃどうすればいいかというと、運賃の是正ということですが、問題は租税でもって三千億円出すか、あるいは利用者がこれを出すかという問題です。これはその間多少の差はありますよ。要するに、納税者の出した金によるか、あるいは利用した人の金によるかということで、納税ということになると、その間にはたくさん納税する人もあるし、少なく納税する人もある。その中から出す。利用者ということになれば、これは利用者はあたりまえに出すから、だいぶ違うと思うのですが、あまりたいした違いありません。だから、結局われわれは、利用者負担ということになると、運賃の是正というか値上げということは、はなはだどうもお気に召さないようなことになるのですが、やはり帰するところは、納税者が出すか利用者が出すかという、その差というものはそうたいした問題じゃない。これはやはり利用者という者が目をつぶって出すということが正当じゃないか。これもたいした問題じゃないのだ。そのくらいのことは、利用者としては、やはり今日の国鉄の運賃のいどころから考えて、出してもいいのじゃないか。これによってとにかく輸送機関というものが整備されて、そうして供給というものが潤沢に、早く、そして利用者が使うときには、いつでもその輸送機関を提供することができるということになれば、物価の上からいったって、供給がうまくいくということになって、長い目で見ればこれは決して国民のマイナスにはならぬ。こういうことから考えまして、今度の運賃の是正問題というのは、私は当然に、これはひとつ社会党としても御賛成くださるべきものだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/29
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030・野間千代三
○野間委員 いまの総裁が言っておられることは、こういうことなんです。利用者が負担をすることと、それから納税者が負担をすることは、金の出どころから見れば、それは同じ人なんだから、同じ人のさいふから出ているのだから、たいした違いはないのじゃないかというようにおっしゃるのだけれども、そういう論法でいけば、国のほうは何も考える必要はないのですよ。国鉄がここ数年来問題になっておりますのは、国鉄の運賃が値上がると、国民全体に影響を与える。それから国鉄の輸送力が増強するかどうかということは、国民の経済全体に確かに影響を与える。しかもそれが国鉄ができ上がってからずっと、そのときそのときの必要に応じてつくられてこなかった。したがっていまのような状況になっている。そこで運賃値上げが再三にわたって必要になっている。こういうことなんだから、国のほうで——税金には違いないけれども、政府という責任において国鉄に対する出資、投資が必要なんだというふうに言っているわけです。これは総裁が年来主張しているところですよ。ですからさいふの出てくるところが同じだかうという論法では、交通政策やあるいは経済政策、あるいは国鉄の本質的な問題を論議をする座標系が違いますよ。それは総裁、うまい御答弁のように聞こえますが、そういう考えでは違いますよ。
それからもう一つ、総裁の言っておられる——ぼくが言っているのは、いま総裁も言っているのだけれども、別に配当をよこせと言っているのじゃないのですよ。まけてくれとか、切符を買いに行って新橋の駅で、二十円を十円にまけろといってもしようがない。それを言っているのじゃないのです。つまり国鉄の公共性ということなんですよ。国鉄が持つ公共性に立脚をした、そういう企業になってくれというのが、出資をした者の希望なんです。そこには公共負担の問題とか、あるいは運賃の体系の問題とか、あるいは運輸大臣、交通政策といわれている、国鉄が過当な競争をさせられている、無理な設備投資をしたりしなければならないところもある。これはあとでまた別に問題にしますけれども、つまりそういうふうに交通政策によって、国鉄をもっと公共性に立脚した企業形態にすることが必要ですね。そういうふうにしていけば、たとえばロンドンの例をとって失礼ですけれども、たしかあれは全部一元化をして、そうして無理な競争をさせないから、たとえば地下鉄が、さっき言ったように、百何年もたってもたいして運賃を上げないで済むというふうになったり、あるいはやはりロンドンですが、バスの二階と一階があって、二階は定員どおり、つまり座席どおり、一階は三人か四人しかよけいに乗せないということで走っている。しかも終夜運転ですね。これは公共性ですよ。こういうふうな公共性に富んだ国鉄という企業にしてもらいたいというのが、出資をしている者に対する配当だ、そうでしょう。そういうことをしたいから第三次計画もするのでしょう。そうですね。公共性に富んだ、国民に利便のある国鉄にしたいから第三次計画をするわけでしょう。それでこれは国民が希望しているところです。そういうことをやってくれというのが出資者の希望であり、要求をする権利がある、そういう権利ですよ、出資者が持っている権利は。国鉄やあるいは政府は出資者に対して、そういう責任を持っている。利用者から要求が出ているから、それに今度はこたえてやる、つまり配当をしてやる義務があるわけでしょう。そういうことを言っているのです。ですからそういう意味でいけば、税金には違いないけれども、国家の予算の中からあるいは投資をしたり出資をしたり、それから交通政策によって国鉄を過当競争の場裏に置いたり、たとえば自動車輸送の部分が利益のある、つまり輸送が安い距離、これは三百になるかわからぬのですが、その距離の中で国鉄と自動車が競争しているわけですね。そうしたって、それは国鉄は勝てないと思う。それはやはり競争をさせられているからです。させられているから、国鉄に無理があるのです。
今度は東海道新幹線が山陽新幹線になりますね。つくろうとしていますね。飛行機と競争をしてどの程度の距離が勝てるのか。勝てると言っては語弊がありますが、どの程度までが国民から見て低廉であり、かつ便利であるかという距離と、航空機を使用することが低廉であり便利であるというところ、これはぼくはある数字が出てくると思うのです。それを無理に航空機と競争をしよう。航空機との競争は、長い距離になればなるほど国鉄がおくれるわけでしょう。そうですね。自動車との競争などは、距離が短ければ短いほど自動車のほうが有利ですね。ですから、そういう相関関係から計算すれば出てくると思うのです。それを、そういうことは全然放置をしてあって、一方では飛行機と競争をする、一方では自動車と競争する。そういうふうに置かれておるから、いまの国鉄が非常な無理をするわけです。
山陽新幹線をつくります。そうすると、東京から岡山まで行くわけですね。常識的に考えて、ある説によると、大体航空機との競争は名古屋くらいまで、あるいは大阪くらいまでが、国鉄のほうが有利だという計算をしておる人もおります。そうすると、それ以上のところになると、山陽新幹線、東海道新幹線によって航空機と競争する場合に、どういう運賃をつくったらいいのかということが問題になると思うのです。そういうふうな競争をいましているわけです。
そこに国鉄が、あとで触れますけれども通勤輸送には、第三次五カ年計画では一七・五%ですね。第一次五カ年計画では、何%か忘れましたが、たしか四・何%じゃないですか。第二次五カ年計画が六・五%ですか。たしかそんなものですよ。一〇%に満たないです。しかもそれが両年度とも五五%か六五%で打ち切られていますね。今度やっと一七・五%になったけれども、いままでの第一次、第二次五カ年計画で、非常に少ない通勤輸送に対する設備投資の金で、しかもそれが半分しか使われてなかったですね。五五%の達成率なんだ。そこへもってきて、第三次五カ年計画で一七・五五%といっても、これは実質的には一、二、三の長期計画を通算して考えてみると、一七・五%はひどく減ると思うのです。これは半分以下です。通勤輸送は、やはり第二次五カ年計画と同じような六・何%程度ですよ。通勤輸送のあり方の問題については、いろいろ問題がありますから、あとで触れます。つまり、主たる投資者、非常に大きな投資者である通勤輸送のお客さんに対しては、その程度でしか配当ができない。いうならばそれは国鉄が過度な競争の場裏に置かれているところに、そういうしわが寄ってくるというふうに見ても、これは過言じゃないと思うのです。そこで、ぼくが先ほど配当をほしいと言ったのは、運輸大臣の責任ですけれども、交通政策、つまり輸送市場、ほしがっているところ、必要としているところと輸送力、そういうものをちゃんと調整ができるような、調整をしたような交通政策というものをちゃんとつくっていかないと、国鉄が過当競争におちいってきて、いま世上でいわれている収益第一主義であるとか、そういうふうなことに運賃体系もしなければならぬということになってくる原因があると思うのです。ですから、これは運輸大臣のお答えになると思いますが、そういう意味での交通政策、そういうものを国民は希望していて、当然政府としては、国民、旅客、出資者に対する配当としてそういう政策をとる必要がある、いまはそういう点が全くないのじゃないかと思うのです。この辺はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/30
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031・中村寅太
○中村(寅)国務大臣 現在国民が要求をしておりますいわゆる交通需要に対応しまして、国鉄あるいは自動車あるいは飛行機等の航空企業との調整をはかりながら、日本の交通事情の緩和をはかっていきたい、かように考えてやっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/31
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032・野間千代三
○野間委員 これはなかなかむずかしい問題だとは思うのです。旅客にすればバス、ハイヤー、タクシー、それから国鉄、私鉄、そういうふうに非常に交通機関がたくさんありますね。貨物にしても、大トラックあるいは中小のトラック、大企業あり小企業あり、そうしてそれに国鉄があるということですから、これは容易なことじゃない。鉄監局長が腕を組んでいるくらいにむずかしいと思いますね。そのとおりです。しかし、そのとおりであるから、そういうむずかしい問題だからいま手をつけられていないわけですね。どうなんですか、もう一回聞いてみますけれども、ぼくがいま言っているようなことで、交通政策を整備するということは、内閣の問題として、交通政策としてどこかで検討しているのですか、検討している機関があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/32
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033・深草克巳
○深草政府委員 昨日もちょっとお答えいたしましたが、御承知のように、内閣に交通基本問題調査会というのがありまして、答申が出たわけでございます。それの骨子、これもきのう申し上げましたが、各利用者が、個々の経済的な価値判断によって自由に選択できるような輸送機関の整備をやりたいということと、もう一つは、投資の関係では、先生が先ほどおっしゃいましたように、それぞれ各輸送機関の機能がございます。どの程度は自動車がよろしい、どの程度は列車がよろしい、それからこういうものは内航海運がよろしいというような、それぞれの特質もございますし、ただ問題は、投資をする場合に、ほんとうに国民経済的にどれが一番安いかということが最終的には問題になろうかと思います。たとえば、道路の場合はほとんどが国費で通路ができております。その上を走る自動車は、これは各企業あるいは個人によってやっております。それを国鉄あるいはその他の鉄道に当てはめてみますと、道路に当たるものは路盤以下の施設だろうと思います。こういったものは鉄道の企業自体がやって、それを運賃その他の面で回収をいたしております。きのうも申し上げましたように、同一のスタートラインの上に立って考えろということは、たとえばかりに国が路盤以下の施設をし、その上を走る列車、汽車、こういったものは企業体がやる、こういったことに仮定した場合に、国全体の投資が、各輸送機関別に見まして、減価償却その他を考えてどれがコストが一番安いかということが一番問題になると思います。これは私ども運輸省で試算をいたしましたが、圧倒的に鉄道が安いという結論が出ております。ただそういったことで機械的にはまいりませんで、先ほど飛行機と列車の比較、競争というようなことでございましたが、冒頭に申し上げましたように、それぞれ利用者は自由な選択をやるということで、かりに鉄道が一番安いということで、日本国じゅう鉄道だけで、それで需要者が満足するかどうかというようなことが、これはあろうかと思います。したがいまして、需要の動向を見ながら、やはり道路も必要でございますし、飛行機も必要であるということであろうかと思います。
昨日も申しましたように、こういった輸送分野を、国民経済的にどれがいいかということからアプローチしましてきめることも大事でございますが、目下の急務は、各輸送機関ともにそれぞれ需要に対して供給力が足らないというようなことでございますので、当面私どもが考えております交通政策の基本は、それぞれ輸送の供給力をつけるということに全力を注いでおります。これはまあ、こういったことばはどうかと思いますが、ある程度各輸送機関に、飽和状態になる以前にそういったほんとうの調整ということが必要ではなかろうか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/33
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034・野間千代三
○野間委員 基本問題調査会で検討をして、そういう答申が出ているわけですね。それは不勉強ですけれども、多少は見たことがあるのですが、ただ問題は、その調査会の答申が出てきて、それがたとえばいま運輸大臣やあなたがお答えのようなことがどういうふうに実施をされるかなんですよ。確かに国民に選択権がある。だからそれは飛行機もあり、新幹線もある。これはいいですよ。しかし、その選択権のほうが主になって、現在調査会の答申の期待する方向でなくて、競争が激しくなっているというのが実態でしょう。実態はそうですよ。そこにこの間のような、これは牽強付会の説ではなくて、飛行機事故も起きてきたり、あるいは交通事故というものが絶えないという原因になっているわけです。ですからぼくが言いたいのは、いまお答えのように国民には選択権があるけれども、それは安ければ安いほどいいというのが国民の希望するところですね。たとえば遊ぶとか生活にはいろいろな条件があるから、その条件によって選択権が生まれてくるわけですね。ですから、国民が最も必要なときに、低廉に交通機関の利用ができるということを主体にして政策を立ててそれを実施することが、国鉄の場合には公共性の強化になるわけですね。これは、そんな理屈を言ったってしかたがありませんからやめますけれども、ぼくが言いたいのはそういう理屈ではなくて、いま国鉄が実際に置かれている状態は、過当競争で、したがって国民が期待をしているような方向に投資をされないきらいがたくさんある。たとえば一番極端な例が通勤輸送なんですね。そういうことですから、国鉄が公共性をもっと重視した、むしろ公共性に立脚した企業になれるような交通政策を樹立する必要がある。それを指導監督して実施させる必要があるということを申し上げているわけです。これはその程度で終わることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/34
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035・古川丈吉
○古川委員長 一時より再開することとし、暫時休憩いたします。
午後零時十六分休憩
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午後一時二十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/35
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036・古川丈吉
○古川委員長 これより会議を開きます。
この際、本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。
午後一時二十六分休憩
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午後三時三十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/36
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037・古川丈吉
○古川委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。
質疑を続行いたします。野間千代三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/37
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038・野間千代三
○野間委員 大臣が見えないようですから、ちょっと国鉄のほうへあと一つばかり……。
これは通勤輸送なんですが、午前中に基本的な考えといいますか、そういう点には触れましたからあと技術的な問題なんですが、いま国鉄のほうで、各線区にわたって「通勤のラッシュを緩和するために」というPRの資料が出ております。それで、これでまいりますと、もちろん地下鉄の建設が行なわれる、あるいはバスが増加をする、いろんな要素があると思います。あると思いますが、やはりいま勤労者が主として通勤にウエートを置いておりますのは、何といいましても国電が大きいですね。そういう意味でお尋ねをするのですが、今度の長期計画では、通勤に割り当てられました予定が一七・五%となっておったと思います。
〔委員長退席、山田(彌)委員長代理着席〕
それで、たとえば京浜東北線の場合、四十三年までに赤羽——大宮間三複線化による電車線と列車線の分離ですね。それから、入両編成運転を十両編成運転に増強をする、こうなっておりますね。同じように、山手線それから中央線が四十三年までの計画ですね。それから次に、四十七年までに東海道、横須賀線をどういうふうにするか、四十五年までに総武線をどういうふうにするか、四十七年までに常磐線をどうするか、こういうふうに通勤輸送関係としては分けてあると思います。それで、端的に申し上げまして、いまの通勤輸送の混雑状態というのは、ある資料によると、六十分くらい通勤時間を要しておると、エネルギーが四千九十二カロリーくらい消耗をするという計算が出るわけですけれども、非常なことです。そういう意味で、この設備投資計画による通勤輸送の状態は、いま国鉄が発表していらっしゃる内容によってはたして可能なのかどうか。総裁の答弁をたびたび引用して失礼なんですが、大体東京の場合に七%くらいずつ通勤輸送がふえてくる、これを七年間で消化をするというのは事実上きわめて困難だというふうに何かの機会に発表されておったような気がするのですが、実際のところはそんなふうな気がする。しかし通勤輸送が現在異常な混雑を来たしておりますので、何とかこれを解消することが第三次七カ年計画の重要な柱になっておるわけですから、はたして柱にしただけの効果があり得るのかどうかという点についてちょっとお尋ねしてみたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/38
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039・磯崎叡
○磯崎説明員 ただいまの御質問でございますが、通勤輸送につきましては、昨日も申し上げましたとおり、今回の全体の計画の中の一七・五%、金額で申し上げまして約五千百九十億の金を投ずることになっておるわけであります。このうち車両関係が約千二百億、設備関係に三千九百九十億という予定にいたしております。おかげさまで、現在時点で申し上げますと、東京付近でまず申し上げますと、すでに工事に着工いたしておりますものが中央線、東北線それから常磐線、総武線、南武線、横浜線等の線につきましては、すでに地元の御協力を得まして起工式も行ない、このうち特に中央線につきましては、来たる四月には地下鉄との相互直通ができるようになります。その他の地域につきましても、全体で今年度は、設備だけで約四百八十億くらいを消化したい、こういうふうに思っております。ただ現在まだきまっておりませんのが東海道線をもう一線つくる、私ども俗に第三東海道と申しておりますが、この第三東海道をどういうように敷くかということにつきましては、いろいろな関係がございましてまだ正式にきまっておりませんが、これもそう遠くない機会にぜひ路線をきめたいというふうに考えております。また大阪付近におきましても、片町線あるいは山陰線、福知山線、それから大阪外環状線というふうな線につきまして、着々工事を進めておりますが、ただいまの先生の御質問は、一体この程度で今後の増加する通勤客の趨勢に間に合うのか、こういう御質問だったと思いますが、今回の長期計画の中の通勤対策の非常に大きな特色は、第一次、第二次の計画におきましては、もっぱら車両だけをふやして、そして通勤輸送に当たる、実はこういう計画で、第二次計画でも大体年間百億から百二十億くらいの金を入れて、主として車両の増備に充てておったのでございますが、現在の東京付近の国電網と申しますものは、御承知のとおり大体昭和十年前後にほぼ完成したわけでございます。その後、たまたま先生の午前中の御質問の中にもございましたが、ほとんど昭和十年ごろにできましたあとは、東京付近の電車網は全然ふえておりません。その間約三十年というものは、ただ車をふやすことによって通勤客の増加に対処しておったというわけであります。したがいまして、御承知のとおり中央線などにおきましては、もう二分間隔、十両編成、一時間に十万人を運ぶという大輸送をやっておるわけでございますが、これは結局線路が一ぱいになってしまった。これ以上車両をふやしましても通勤輸送は楽にならない。こういう事態にまで追い込まれてしまったわけでございます。したがいまして、今回の第三次計画におきましては、根本的に考え方を改めまして、もう一本ずつとにかく線路をふやす。線路をふやす以外に通勤輸送を改善する方法はないということにかたく決意いたしまして、そして先ほど申しましたとおり、すでに東京付近の入線については工事に着手しておるわけでございます。したがいまして、今後もし現在私どもの推定している以上の通勤客の増加、あるいは都市の人口集中等がございましても、これからは当分の間は車両さえふやせば、また一応しばらくカバーできる、こういう事態になると思うのです。
現在では昭和十年前後の国電網がもう完全に飽和状態になってしまった。そこで思い切って各線について複線化あるいは複々線化をいたしますので、しばらくの間は相当線路に余裕ができるというふうに考えていいと思うのです。ただやはり朝夕のほんとうのラッシュの三十分なり五十分というものは、これはもうこれだけの都市の人口集中が起こりますと、どうしてもこれを完全に解消することは困難でございます。したがいまして、多少の時差通勤のお願いは後々までも残るかと存じますが、少なくとも現在の通勤時間帯の混雑は相当程度緩和できる。混雑が解消するとは申し上げられませんが、相当程度の緩和はできるというふうに申し上げていいと思います。線別に割合を申しますのはこまかくなりますから省略いたしますが、大体どの線におきましても二〇〇%、最高二百四、五十%、できれば二〇〇%前後にとどめることができるのではないかというふうに思っております。しかし幸いにしてこれらの複線化あるいは複々線化ができますれば、あとは車をふやせばとにかく相当程度の輸送増には追いついていけるという意味で、いままで三十年間ほうってございました東京付近のあるいは大阪付近の通勤輸送に対しては、相当抜本的というふうに申し上げていいと思います。抜本的な改善ができるというふうに思っております。
ただ、やはり何と申しましても、都市付近で用地を手に入れることが実は非常に困難をいたしております。現在中央線の工事を私毎日通勤者の一人として見ておりますが、ほとんど民家の軒下と一尺あるいは一尺二寸くらいの先でもって工事をしておりまして、非常に工事が難航いたしておりますが、幸い関係者の努力で事故もなしに無事にやっております。しかし何と申しましてもやはり用地を手に入れることが第一でございまして、現在鋭意用地の買収に努力中でございます。いずれも先生がただいまお示しくださった時点には、大体完成できるという見込みでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/39
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040・野間千代三
○野間委員 通勤輸送というのはなかなかやっかいと言っちゃ悪いのですが、たいへんな問題なので、しかもいま副総裁の言われるように、車両をふやすだけではどうにもならない。実はちょっと心配なのは、いまこの長期計画に出ている、副総裁の言う線増の計画としては、たとえば京浜東北線にしても、あるいは山手線なども特にそうですが、もっぱら通勤輸送ですね。通勤輸送の特色は非常に短時間にピークが非常に高いということですから、投資のしかたもなかなかむずかしいとは思うのですけれども、いま国鉄が示している線増計画では、どうも通勤輸送を緩和するだけの線増になり得るだろうかというような気がするのです。たとえば京浜東北の場合に、いま京浜東北を線増をすることは非常に困難だというのですね、実際には。そこで赤羽−大宮間の三複線化ができ上がるわけですね。京浜東北線はそうなっているわけです。現在の線の上に八両編成を十両編成にする、こうなっているわけですね。ですからこれを考えてみると、今度の、運賃ばかり申し上げて悪いのですけれども、運賃の額が、ぼくは横浜ですから、横浜から東京まで行くと二千八百九十円ふえるわけですね。そういう運賃値上げになるわけです。こういう関係ですから、通勤の方が運賃が上がったあと三カ月定期などを買った場合にびっくりすると思うのです。それでびっくりする割合に線増の計画も、そう言っては何ですが、ちょっとびっくりするのじゃないかという気がするのですよね。そういうことで非常にむずかしいとは思いますが、いまの計画ではなかなか二〇〇%にあるいは二五〇%になることは非常にむずかしいのじゃないかという心配をするわけなんです。そこで、いま副総裁の言われた一七%の、五千何億でしたかの資金を投入するのですけれども、これは年次的にはどういう投入計画になるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/40
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041・磯崎叡
○磯崎説明員 年次的に申し上げますと、昭和四十年、本年度は、五千百九十億のうち補正予算を入れまして六百八十二億。四十一年度、現在予定いたしております三千六百億が全体の工事費でございますので、そのうちの八百十一億、合計いたしまして二年間で千四百九十三億になります。割合から申しますと、前期のちょうど五六%くらいを二年でやってしまう、こういう計画でございます。車両施設費は省略いたしますが、やはり問題は用地が買えるか買えないかというところに非常に大きなポイントがあるわけであります。
先ほどちょっと申し落としましたが、こういった国鉄自体の線増のほかに、地下鉄との相互乗り入れがございます。現在計画して実施いたします予定のものは中央線でございますが、そのほかに常磐線も綾瀬から地下鉄を入れます。それから総武線は西船橋から現在の五号線に乗り入れるつもりであります。それからさらに総武線は両国から、これは国鉄の力で東京駅までやはり地下鉄で入れたい。その他ただいま先生のおっしゃった山手線の救済といたしましては、小田急なりその他私鉄が直接都心に入ってまいりますので、山手線のロードは相当軽くなると思います。また京浜東北線につきましても、宮城の逆の側と申しますか、神田側のほうにつきましては、やはり地下鉄でもって相当救済ができるんじゃないかというふうな考えを持っておるわけでございますが、いままで百億前後でしかなかった予算が、急に五百億以上になりましたので、その消化には全工事力をあげて当たっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/41
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042・野間千代三
○野間委員 もちろんお金ばかりあっても、工事能力のこともあるでしょうから……。それといま言うように他の交通機関とのあれもありますから、単純にこの計画だけでというふうにはならぬと思いますが、実はいろいろ問題がたくさんあるのであります。結局は、何とかして、この五千百九十億の資金を使う場合に、前半の年度になるべくたくさん使っていくというふうに重点を指向して、そして通勤緩和をしていく必要があるというふうに思うのです。特に東京、横浜などは、人口のふえる割合よりも通勤者のふえる割合のほうが多いですね。これが実態だろうと思うのです。そういう事態ですから、ぜひ第三次七カ年計画のときに通勤輸送の抜本的な対策を立てておかないと、これはもうやる時期がないと思うのです。そういう意味で、できればもう一歩通勤輸送が強化をされるように、計画なり実施の段階で考えていただきたいというふうに思います。特に線路の上を走るのもすでに限度にきておるでしょうしいたしますから、この点につきましては、そういうことをひとつお願いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/42
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043・磯崎叡
○磯崎説明員 ただいまの先生の御注意は私ども、実は総裁も小田原から通っておりますし、私も中央線の通勤族でございまして、身をもって体験しております。いままでとかく通勤輸送は何かもうからないからやらないんだというふうなムードがなかったわけじゃない。率直に申しますと、そういう空気があったかもしれませんが、今後は一切そういう気持ちなしに、総裁のことばを借りますと、肩にかかる火の粉を振り払う最小限の仕事として、これだけはぜひやっていきたいと思いますので、どうかぜひ御協力をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/43
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044・野間千代三
○野間委員 それでは、通勤輸送の問題は御努力を御期待申し上げることにして終わりたいと思います。
次に、時間がだいぶせかれておるようなんですが、重点的にちょっと伺っていきます。三十九年あたりから運賃値上げの問題がだいぶ騒がれておって、午前中出ましたように、一年間据え置きというふうになったわけですね。それで三十九年度が、つまりそういう意味では非常に重要な年度になっておると思います。四十年度からは実施の段階に入っていくわけですが、そういう意味で三十九年度は、承るところによると、国鉄は赤字になっているというふうに伺っておるんですが、三十九年度は赤字なのか黒字なのかという点について、ちょっと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/44
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045・磯崎叡
○磯崎説明員 三十九年度につきましては、すでに決算報告を国会に提出いたしておりますが、これは三百億一千九百五万六千円の損益の赤になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/45
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046・野間千代三
○野間委員 三百億の赤になっておる。三十八年度はたしか五百七十四億か何かの黒になっておったと思います。そうすると、ちょっとこれは直観的な問題なんですけれども、三十八年度と三十九年度と比較をすると、それを合計をした八百七十四億ですか、八百七十四億も成績が悪くなったということになるわけですね。これは一がいに三百億赤だでは済まない問題がありはしないかという気がするのです。三十八年度には五百七十四億という非常に大きな成績をあげておる。これが三十九年度には三百億の赤字になっておる。つまり合計八百七十四億の成績不振になるというふうになると思います。そうすると概念的に申し上げて、これほどの成績落ち込みというのはちょっとたいへんなことではないかというふうな気がするのですこういう問題は、日本国有鉄道なんというところは、これはいわゆる責任問題というのですか、別に責任問題ということにはならないで済むのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/46
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047・磯崎叡
○磯崎説明員 経営不振の責任問題に触れます前に、一応ただいまの八百億の原因をごく概略申し上げたいと思います。三十八年度と三十九年度と比較いたしますと、具体的な数字は省略いたしますが、運輸収入におきましては一〇五%の増加でございます。金額で大ざっぱに申しまして約三百億の増収があったわけでございますが、これに対応します経費におきましては一一九%、約七百六十億ほどの経費増になっております。そのうち人件費が一一九%、動力費が一〇五%、修繕費が一二五%、業務費が一一六%、租税公課が一〇六%、減価償却費、これは後ほど御説明いたしますが、これが一四六%、それから利子及び債務取り扱い、これが一五三%、利子と債務取り扱いだけで百十億の増加になっております。その他を含めまして、経費といたしましては全体で一九%の増。収入が五%しか伸びないのに、経費が一九%出た。これがただいまの八百億の原因でございます。
経営不振につきましては、私ども極力努力をいたしたのでございますが、やはり全般的な不景気と申しますか、景気不振のために収入が思ったほど上がらなかった。たとえば、三十七年度と三十八年度を比べますと、約七%弱増収しております。三十九年度の増収率が非常に低かったということと、人件費も、実は御承知のとおりの各三公社の差額を縮めると申しますか、そういう人件費の操作もありますために、一九%という相当な値上がりがあったということと、償却制度が変わったということ、大体三つがおもな原因で、経営不振については私どもとしてはたいへん申しわけなく思っておりますが、実際の数字から申しますと、収入の見積もり自身にも少し意欲的な数字が盛られ過ぎたのではないかというふうにも思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/47
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048・野間千代三
○野間委員 実際の収入は三十八年度比確かに三百億円の増収になっているわけですね。その増収の内容は確かに三十七、八年に比較をすると悪いわけです。それで営業不振になっていると言う。赤字が三百億になっている。つまりぼくの言う営業不振になっているじゃないか、成績が落ち込んでいるじゃないかという問題で、いま副総裁の言われるように主として人件費それから——これはパーセンテージで見ると、いままでの御説明で人件費、それから利子、それから修繕費、それから減価償却費などが主たる非常に多くふえたものですね。ちょっと私も見てみたのですが、全体的にふえているパーセンテージは、平均していろいろな経費の増が二三%くらいだったと思います。二三%以上の経費がふえたものは何であるかと見ると、人件費はいま言われるように一九%ですね。金額は相当な数ですけれども、いろいろ当時の経済情勢からして当然な数字といっていいんじゃないか。特にこの人件費の場合には輸送量は、人がふえなくなった三十年ごろから比べてみても相当な輸送量の増になっていますね。それにもかかわらず、職員は全く増加していない。四十五万九千何人ですかの定員でやってきておるわけですから、人件費の増についてはぼくはそう問題がないじゃないか。問題は一つは利子の問題である。一つには減価償却費の問題であるというふうに見ていいのじゃないかというふうに思います。修繕費の問題は、これは工事経費の区分とか、そういういろいろな問題はすでに整理が済んでおると思いますから、二五%の増には違いないけれども、そう問題は少ないじゃないか。ぼくは修繕をするということには、規定どおりに、耐用年数の延長になったり価格が上がったりしないということの範囲で、積極的に修繕をしておく必要があると思いますから、ぼくはいろいろ問題はありますけれども、一応置いておいてもいいのじゃないか。
そうすると問題になるのは、利子とそれから減価償却費が残るというふうになると思います。これは第三次七カ年計画でも、あるいはこれからの国鉄の経営の問題としても利子の支払いが非常に高くなっている。一日の収入がたしか二十二、三億になると思うのですね。そのうち四億くらいになるわけでしょう。利子等のやつが四億くらいになる。二十三億収入があってそのうちから四億返すのですから、これは全くお話にならないようなことなんで、これは午前中にも触れました国鉄経営、国鉄のあり方の基本的な問題になるというふうに思います。したがって、もしこれがこのままでいくと、あるいは地下鉄などに見られるような収入の半分は利子で返さなければならぬというふうになる可能性もありますね。したがって、基本的な問題として実はこの問題でいろいろ伺っておいたり、あるいは大臣にも要求したり何かしたいことがたくさんあるのですが、とにかくまだあとで先輩の方々もありますので利子の問題借り入れ金の問題、この問題については一度どこかで区切らなければいけないじゃないかとぼくは思うのですよ。たしかイギリスかフランスかで一兆何千億円かの投資をして、そうしてたな上げをしたことがありますね。こういう措置を一回しないと、これは国鉄の総裁以下四十何方、五十何万の職員が、年じゅう金利のために働くという結果になると思うのです。
そこで大臣、四十一年、四十二年の収入が将来の傾向を見て、そうして国鉄の収入、そういうものと考えて、もしこのまま第三次七カ年計画でまたふえてくる借金を考えてみると、その利子のために国鉄の経営がこの部分だけでも破綻に瀕すると言うのではちょっと大げさかもしれないけれども、これはそう言っても差しつかえないくらいのものになってくると思いますよ。したがって、いずれかの時期に、できればそういうふうになってくる基点になりそうなこの三十九年、四十年あたりに、あるいは四十一年ごろまでにきちっとした打ち切りをしておかないとたいへんな問題になりそうなんですが、今年度なりあるいは近いうちに、イギリスがやったように抜本的な対策を政府がとるという姿勢が検討されているのかどうかについて、大臣に承りたいと思います——では、どうです、副総裁。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/48
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049・磯崎叡
○磯崎説明員 利子の負担につきましては、ただいま野間先生のおっしゃるとおりでございます。昨年とことしと比べましても、すでにことしの予算、ただいま御審議願っています予算に計上しました利子は約八百五十億、四十二年度になりますと千億をこすわけでございます。去年一年運賃の値上げがおくれましたために、御承知のとおり特別債を千二百億発行いたしまして、これは無事に全額発行ができましたけれども、利子が七分五厘の非常に高い利子でございます。その分だけでも、ことし特別債の部分の利子の増が百億ということになっておりまして、今後七カ年間に払う利子の合計が約九千億でございます。したがいまして、今後の国鉄経営上の問題といたしましては、減価償却費は後ほど申しますが、これは資産にかわるものでございますが、利子は全く右から左に出てしまう金でございます。全く国鉄には一銭も残らない金でございますので、今後利子負担の増加ということにつきましては、経営上の非常に大問題があるということは十分認識はしておりますが、今後の問題につきましては、十分政府へもいろいろお願いすべき点はお願いするというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/49
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050・野間千代三
○野間委員 いまの問題は、国鉄の問題をいろいろ討議をする場合に出てくる非常に大きな問題だと思います。これは国鉄の役人さん方がどうしゃっちょこ立ちをして営業成績を上げようとしても、これをどうにかするということはむずかしいと思うのですね。したがって、これはむしろ運輸大臣以下われわれが考えなければならぬことではないかというふうに思うのです。もしこれを解決しないと、輸送量は増強はする、しかし国鉄の経営は成り立っていかないという結果になるわけですね。したがって、何とかしていまのうちに借金の問題についてどういうふうに解決をするかということをはっきりして、それをいついつやる、そういうふうに計画的にこれを処理する方針を立てておかないと、容易なことではないというふうに思います。したがって、その処理の方針について大臣の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/50
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051・中村寅太
○中村(寅)国務大臣 国鉄の経営の中に、金利が非常に大きな負担になっておるということは、これはやはり野間委員の言われたとおり重大な問題でございますが、政府といたしましては金利のつかない資金を少しでもふやしていくという方向で進んでおるのでございまして、それで今回運賃等の是正をお願いしておりますのも、金利のつかない一つの自己資本を強化していくということからでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/51
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052・野間千代三
○野間委員 金利のつかない金と言われたから、ですからこれは運輸大臣が払うのかと思ったら、それは国民に払ってもらいたい。国民の運賃は金利がつかないけれども、やはり限度がありますよ。むしろこれは運賃で解消する問題じゃないのです。
まず一つの問題は、今日まで累積している借金をどうするかということと、それから、これからふえてくる可能性のある借金をどうするかということになるわけですね。イギリスなどで、あるいはフランスなどでやったのは、今日まであった借金についてきちっとたな上げをするなりという処置をして、これからどうするかということは、これは運輸大臣の言う金利のつかない金も必要でしょう。この前社会党が提案をした整備緊急措置法では国の投資が三分の一、運賃が三分の一、借り入れ金が三分の一というふうにしていけば整備もちゃんとできるというふうになるだろうと思うのですよ。ところが、現在までにすでにある一兆一千百十一億にもなんなんとするこの借り入れ金ですね。借金あるいはそれによって支払うところの金利がたいへんなんですが、そういうものは一回区切りをつけないで、このままやはり運賃でやっていくというのでは、これはいまのような非常な危機を解消することにならぬと思います。ですから運輸大臣、いま四十一年度予算では残念ながらそういうことが考えられておりません。しかし、四十一年の時限に少なくとも何とか方針を出しておかないと、これはそのままの惰性で、ついに国鉄という企業が危殆に瀕するようなことになってくるのは、これは明らかにだれでも予測できるのですから、少なくとも四十一年度にどう実施をするのかというのがほしいのであります。将来に向かってどういうことでやっていきたい、解消していきたいというくらいの政策的な御答弁は、やはりいまのうちに出しておいて、具体的にどうするかということは、これはまだ検討してもけっこうでしょうけれども、少なくともそのくらいの決意なり方策なりは、運輸大臣としては持っていただかなければならないのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/52
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053・中村寅太
○中村(寅)国務大臣 国鉄経営の面を金利がなるべく圧迫しないような方向に万全の処置をしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/53
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054・野間千代三
○野間委員 ちょっと歯切れの悪いお答えですが、事実同じ資本主義の国でイギリスやフランスで実際に実施をしたことなんですから、日本の政府ができないということはないはずです。ですから、いま運輸大臣の言われている、将来そういうことのないようにしたい、その中には最初に言われた金利のつかない金という方法も運輸大臣に言われたが、そうではなくて、政府の財政的な責任において考えていきたいというくらいの気がまえは必要じゃないか、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/54
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055・中村寅太
○中村(寅)国務大臣 将来そういう方向でひとつ検討してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/55
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056・石田禮助
○石田説明員 さっきの御質問ですが、三十八年はプラス五百四十七億、四十年度においてはマイナス三百億、総計すると八百億以上の差がある、何がゆえにかくのごとき大きな差ができたのか、こういうことなんです。これに対する回答はきわめて簡単なのであります。要するに、減価償却費というもののあれを変えたために、三十八年度においては六百七十六億の償却費が、三十九年度においては九百八十八億、約三百億の違いです。そうしてその次の大きな問題は人件費です。これは三十八年度においては三千六億だったものが、三十九年におきましては三千五百六十一億、ここに五百五十五億の差が出てくる。合わせてちょうど八百億というものになる。そこへ収入というものがわりあい少なかったということが、大体の説明です。これで御納得いくと思いますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/56
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057・野間千代三
○野間委員 よくわかっております。それでぼくが最初言ったように、普通の会社ならたいへんなんです。これだけ大きな落ち込みなんだから。その責任はどうなのかというように聞いたのだけれども、しかし内容としては、いま総裁の言われたようなことだから、そこではたして責任が生まれてくるのかということをいまやっておるわけです。ですから、それは総裁の御答弁として承っておきます。
そこで、先ほど大臣の言われた借金の利子の問題については、処置をすることについて検討をするというふうに言っておられるので、一応大臣を御信頼申し上げて、近い将来に具体策が出ることを期待します。(「よし、よし」と呼ぶ者あり)いま自民党の皆さんもよしよしと言っておるのですから、与党も含めて実際に具体的にいついつどういうふうにするということが出てくるように、検討したまま何も出てこないということもあり得るのですから、そういうことにしてもらいたいと思います。
その次に、ちょっとはしょりますが、減価償却費の問題なんです。いま総裁の言うように、六百七十億が九百八十八億になったというように、これほど急激にふえたのはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/57
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058・石田禮助
○石田説明員 これは要するに償却費のいままでのやり方がきわめて不合理なんです。これを合理化したがゆえにかくのごとくふえた、こういうことに考えて差しつかえない。
それからさっきの利息の問題ですが、今度やる二兆九千七百二十億の中で、つまり通勤輸送の約五千二百億、それからさらに輸送安全施設に対するものを加えると一兆円以上に達するこういうものは金はかかるが収入はきわめて少ない。したがって、利息のつく金をもってしては、国鉄は将来借金の重圧に追われていかんともすることができない。あなたの御心配なさるとおりなんです。しかもほかの幹線の輸送力増強に関するものは、これは大体ペイしていくものである。これは借金をもってしてもいい。借金をしてペイしない通勤問題、それから輸送安全施設の一兆以上のものは、利息のつかない金をどこからか持ってこなければいかぬ。つまりどこからか持ってくるということは自己資金をつくるということ、自己資金をつくるにはどうしたらいいか、こういうことでわれわれの結論は、これはやっぱり運賃の是正、こういうことなんです。その結果、そういうことをやるためにわれわれは三割の運賃値上げということをあれしたのですが、政府の都合で、まず物価も考えて二割五分にしておけ、こういうので、われわれは泣く泣くこれに従わざるを得なかった。それでとにかく、もしも運賃の是正をしなかった日には、国鉄の四十三年度における借金が四兆四千億になる。それが運賃の是正をすることによって約三兆円で済む。約一兆四千億円の違いがある。まずこれだけのことをすれば大体いくのじゃないか。もちろんこの間に非常に人件費が上がるとか、物価が上がるとかいうようなことがあれば何をか言わんや、これはしかたがない。しかしそうでなくて、そういう異常なコストアップがなければまず大体やっていけるのじゃないか。どうせこれは五、六年先のことですから、神の身ならぬわれわれとしては予言ができないが、大体商売上の常識から考えて、これならだいじょうぶじゃないか、こういうわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/58
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059・野間千代三
○野間委員 総裁の言ったことは理路整然としておるのだけれども、結論がまずいですよ、途中で運賃値上げを言ってしまうから。それで一つ気になるのは、ペイしないところにはやらない、通勤輸送はペイしない、こうおっしゃるんだけれども、通勤輸送はペイしておるのです。カッカッ詰め込んで、たくさんあがっておるのです。これは副総裁が持っておるでしょうから数字はあげませんが、いま通勤輸送のときに申し上げたかったのだけれども、時間をこっちでせくものだからやめているのだが、通勤輸送で山手線、中央線、それから京浜東北線、全部これは通勤輸送が主ですが、何億というふうにもうかっているのですよ。もうかっている数字についてはめんどうくさいから申し上げませんが、もうかっているのですからね。
そこで減価償却の問題なんですが、不合理があったというのですね。ぼくは、これは不合理ということよりも、こういう方法もあるということで始めたと思うのです。これは三十六年でしたかに、定額法を定率法に変えた部分があります。今度は翌年のやつを翌月にしたり、それから取りかえのやつを半額にしたのがおもですね。この二つがおもですね。これは確かにそういう減価償却の方法がある。ただ減価償却が過重になるからその方法はとらなかったということが、今日までやらなかった原因だろうと思うのです。要素だろうと思うのです。いま私が二つあげたのがおもな理由でしょうが、その理由による分はどれくらいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/59
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060・石田禮助
○石田説明員 第一、通勤輸送がもうかるというようなことをあなたは言うけれども——久保君のような鉄道の権威者が言うに至っては私は驚くね、それは山手線のごとき昔安いときにつくったやつ、これはもうかっています。それじゃ増強することによってもうかるかといえば、こんなことをいま言うのは少し変だと私は思う。これはたとえば中央線にしたって非常な金がかかるでしょう。総武線にしたって非常な金がかかる。総武線のごときは、両国から東京まで地下を来なければいかぬ。だから山手線はもうかるが今後ももうかるというと、ザッツ・オールド・ストーリーだ。これはいかぬですよ。つまり輸送力を増強してはたしてもうかるかどうかという、つまり頭をかえてかからなければいかぬですよ。山手線はもうかるがゆえにどうとかこうとか言うが、国鉄の全体の状態を見てごらんなさい。八割というものは赤字線でしょう。もうかるところは二割です。そのうちにいまのところでは一部通勤輸送でもうかるところがありますが、国鉄の勘定というものはやはりどんぶり勘定でいかなければいかぬから、そういう意味において、通勤輸送だって五千二百億かけてやればもうかるところなんかありゃしませんよ。これはやはり頭をかえて考えていただく必要がある。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/60
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061・久保三郎
○久保委員 関連。
せっかくの名ざしでありますから……。
それはいろいろ見よう、考えようはございますが、現実には——こまかい点は別ですよ。総裁がおっしゃるのも、広い国鉄の分野でありますから、通勤輸送は設備を改良してももうけはない、ペイしない、こういう理論の立つところもありましょう。いなかのどこかの山の中の線、いわゆる通勤通学だけ用があってあとは乗らぬ、そういうところもあります。だから、山手線ばかりではありませんが、総体に私が申し上げたいのは、結局ペイするということと、もうからぬということとは、ちょっと違うと思うのですよ。これは理屈です。だから、もっとはっきり申し上げますならば、たとえば山手なら山手で三倍も三倍半も乗せているというのは事実であります。これはいい悪いとしてそういう意味でなく、そういう輸送をしている。だから、これをせめて大体一倍半くらいにしても、やはり運賃収入としては、輸送力をつけたから直ちに倍になるということはございませんでしょう。通勤ですからね。だから全体としてはやはりそれはもうかっているということにはなると思うのです。しかし、うんと輸送力がつき過ぎてしまって、大体平均して定員の半分しか乗らなかった、そういうときには赤字だと思う。だから私は、もうかるとかもうからぬという前に考えてほしいのは、そういう例を引いておやりになることは、どうも国民的立場からするとかちんとするのです、率直に言って。もうからぬけれども、いわゆる通勤輸送は改善してやるのだということばに、われわれに対して響くのですよ。だから、私は、それに対して抵抗を感ずる。しさいに分析すれば、あなたがおっしゃるとおりかもしれません。しかし、もうからぬけれどもやってやるのだというように聞こえることは、いかがかと私は思うのです。いまの通勤輸送は足が宙に浮いておるような輸送をしておるのですから、これはノーマルな輸送じゃない。だから、収支の問題を離れて、国鉄の使命としてやるということだと思うのです。だから、あまりペイするとか、赤字だ、黒字だと言うことは、この問題ではお互いにやめましょう。そうでないとどうもぐあいが悪いと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/61
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062・石田禮助
○石田説明員 私は、ペイせぬけれどもやってやるというような、そういう不届きな考えは持っていないのです。これは国鉄の公共性から考えて、ペイしようがしまいが、国鉄として当然の義務ですよ。義務だが、やはりペイしないところに対しては、その資金を調達する上において借金をもってするということはできない。利息の負担、償却の負担に追われて、にっちもさっちもいかなくなってしまう。そこはやはりそろばん玉で、ペイしないところに対しては自己資金をもってやるのだ。かるがゆえに政府の資金か、あるいは運賃の是正——こういうことに政府の資金を出してくだされば、われわれは喜んでちょうだいいたしますが、どうも資金を出してくれぬ以上は、やむを得ぬ。国鉄が独立採算制である以上は、自己資金を何とかしてとらざるを得ない。だからして、ひとつ社会党の皆さんは、国鉄に同情があるなら、政府を口説いて三千億でも五千億でも資金を出してくださるように御尽力を願う。さもなければやはり運賃値上げということにいかざるを得ぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/62
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063・磯崎叡
○磯崎説明員 それでは、償却費の増につきまして事務的に御説明申し上げます。
御承知のとおり、戦争前の国鉄におきましては、いわゆる償却ということばを使っておりませんでしたが、益金をもって取りかえを行ない、改良を行なうということになっていたわけでありまして、その後償却という名前ができましたのは昭和二十三年ごろでございます。実際にほんとうに償却制度を始めたのは、昭和三十年度からでございます。御承知のとおり、昭和三十六年度に一部車両、機械等につきまして、定額法を定率法に改めました。しかし、当時の資産から見まして、それだけでは非常に過小の償却である。よく民間会社で最近償却費を食って配当に回すとか、償却費を食ってよそに回すということがしょっちゅう問題になっておりますが、償却だけはきちっとしておきませんと、会社なり企業体の存立の基礎を危うくするということで、一応三十六年に一歩だけは前進したのでございます。
その後、何とか私鉄あるいはほかの企業体並みの償却をしたいということで、その問題点の二点が、先ほど先生のおっしゃった即時償却の問題と、取りかえ資産の償却の問題でございます。これにつきましては、会計上ほとんど異議のない点でございます。実は、私どももう少し早くやりたかったのでございますが、ちょうど昭和三十九年、一昨年の一年間かかりまして、御承知の内閣の基本問題懇談会が開かれておりました。ちょうどああいう懇談会の開かれておる最中に、国鉄が償却制度を変えるということはいかがかというふうに思いましたので、基本問題懇談会にも十分おはかりいたしまして、学識経験者の方々の御意見も承りましたら、まだそんな償却しかしていないのかというおしかりを実は受けたのでございます。その後、御意見を拝聴いたしまして、昨年の四月、運輸大臣から正式に御認可いただきまして、三十九年度の分から即時償却と取りかえ資産の償却を始めたわけであります。金額的に申しますと、即時償却の分が七十六億、それから取りかえ資産の償却の分が二百十二億、その他はいわゆる資産の増加でございまして、毎年約二千億以上の、三千億程度の増資をいたします。土地は償却いたしませんから、土地代だけを除きましたものを償却いたしますと、毎年大体百億から百十億くらいの財産増加に伴う償却の増がございます。
それと、いまの制度改正でございます。この制度改正につきましては、国鉄法の第四十三条に会計規程という章がございまして、こういった償却制度につきましては大臣の承認を必要とする、それから同時に大蔵大臣並びに会計検査院に対してそのことを連絡して、そうして了承を得ろ、こういう法律の規定になっておりますので、基本問題懇談会の終了後、諸般の手続をいたしまして、昨年の四月に、正式な四十三条によりますところの会計規程の改正という形で、償却制度の改正の御承認を得たわけでございます。したがいまして、ことしの予算におきましても千百九十八億の予算を計上いたしております。このうちの制度改正分が三百三十四億でございます。残りの分は制度改正による増加の分が三十億、一般の財産増加の分が七十億ということで、四十年度に対する増加が取りかえで百億でございます。これは制度も変わっておりますので、財産の増加だけということになっております。これら償却制度につきましては、実はまだ非常に問題が残っておりまして、過般ちょっと申し上げましたが、昨年一年かかりまして、今度は国鉄の公共企業としての財政制度、会計制度につきまして根本的に検討していただくということで、これは学校の先生方ばかりでございますが、現在の会計学の権威にお集まり願いまして、一年間かかってやはりこの問題の、そのうちの一つとして御論議願ったのでありますが、その結論といたしましては、まだ耐用命数が非常に長過ぎる、ことに最近の技術革新に伴って、現在の国鉄で使っている耐用命数は非常に長過ぎる、今後耐用命数の短縮について検討しなくちゃいかぬ、こういうことを決定してお示し願ったのでございます。たとえば現在の規程で申しますと、新幹線の車両も二十年償却になっております。とてもあれは二十年なんかもつわけはないので、実際には十年か十四、五年で償却をしてしまわなければならないものだというふうに思っておりますが、あれはやはり車両ということで、現在二十年の償却期間しか計上いたしておりません。こういったように非常に技術革新のテンポの速いときには、やはり財産の陳腐化ということを考えなきゃいかぬということで、私ども、今後、この償却制度につきましては、やはり国鉄財政を健全にし、そうして取りかえるべきものは取りかえるというようなたてまえから、償却制度についても今後十分検討してまいりたいというふうに思っております。現在の三十九年度に改めました償却制度では、まだ理論上不十分な点があるということだけをつけ加えさせていただきますが、御承知のとおり、減価償却費の経費で立てますが、翌年度、それは引き当て金として資産の貸方のほうにかわってくるわけでございまして、当然国鉄の資産にそのまま残るわけでございますので、減価償却費を適正に計上することは、即それだけ国鉄の財政制度の基盤がよくなるというふうに考えておりますので、十分この点につきましても将来検討してまいりたいと思っております。
〔山田(彌)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/63
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064・野間千代三
○野間委員 いまの御説明で、新しく制度を変えたためにふえた分が二百八十八億になりますね。それは、総額としては減価償却費として三百十二億三十八年よりも多く償却をしたわけですから、大体概算で言っても新しい制度にした分が非常に大きい。ほとんど新しくしたというふうになるわけですが、もちろん私どもも、償却を適正にすれば、それが回っていくわけですから、そういう点では別に否定はしないのですけれども、ただ、いまの国鉄の償却の状況を見ると、午前中から問題になっていた償却不足である、あるいは投資不足である、そういう面から生まれてきたものを、ここ一、二年のうちに、たとえば三十六年のときもそうですが、ここ二、三年のうちに一挙に取り返すということになってきているというふうに見えるわけです。これは、いかにまた設備投資に回るにしても、ちょっと財政のやり方として無理がありはしないか。しかも、これはちょっと勘ぐって悪いですけれども、それが運賃値上げが行なわれるときに限ってといいますか、三十六年もそうですし、三十九年もそうですが、そのころに赤字であるというふうに出てくる。したがって、総裁の論法でいけば、赤字である、足らない、運賃値上げというふうに国民は受け取りやすいわけですね。それは減価償却の持っておる制度の内容はそういうものでありますが、しかし、運賃値上げを要求するその年に、そういうふうに急激に償却費を増額するということには問題がありはしないかという、第二番目の問題が生まれてくるような気がする。ですから、償却費を適正にとるということは、これは適正の内容にもいろいろありましょうけれども、耐用年数の問題等ありますけれども、その適正という内容は、過当に償却費をとる、経営の内容から見てたくさんとる、これがはたして適正であるかどうかということになってくると思う。ですから、いろいろな監査委員会、あるいはいろいろな機関で検討をされるのでしょうけれども、そういう意味でひとつ検討する必要がありはしないかということと、もう一つは、私企業の場合の減価償却費の考え方と、それから公共企業としての企業が行なう減価償却費のとり方という点については、多少といいますか、考え方が変わる点がありはしないか。減価償却費のねらっている目的は、社会的に陳腐になる点をなくしたり、いろいろありますけれども、つまり利益を内部に保留して、そうして利益を得るために投資をしていくというふうにしていくのが、民間の減価償却費の基本といいますか、そういう問題であろうと思います。公共企業がそういうことを重点に考えて減価償却費を考えるということには問題がある。それは国鉄はそう思っていないでしょうけれども、それがいまのように急激に制度を変えたりなんかするということには、われわれとしてはそういうふうに解釈ができるような感じがしますから、もう少し減価償却の制度を変える時期なり、あるいは金額なり、そういう点について御配慮をしていただいたほうがいいんじゃないかというふうに思います。そういう意味も含めて、減価償却費の検討については、検討の一つの素材として、いま私が申し上げましたようなことも考えながら検討していく必要がありはしないかというふうに考えるわけです。
ほかにいろいろありますが、以上で大体質問を終わりますが、副総裁いまのことについて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/64
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065・磯崎叡
○磯崎説明員 一応、三十六年は運賃値上げの済んだあとでございます。今度三十九年にやりましたのは、先ほど申しましたとおり、基本問題懇談会の御意見を待っておったわけでございまして、そういう手続のために、たまたまいま先生のおっしゃったようなお疑いを受けたとすれば、非常に私ども遺憾に存じますが、今後、いまのお話の中で、公共企業体なるがゆえにということで、税法その他の適用はもちろん別に考えておりますが、過般の学者方の議論としては、とかく公共企業体だと、公共性の面から見て必要な工事を借金でやるのをいやがる。したがって、公共企業体の公共性を維持する面からいっても、減価償却費というものは確実に計上しなければいかぬ、こういう御意見が相当強かったというふうに了承しておりますが、ただいまの先生のおっしゃいました時期その他につきましては、十分誤解等のないように今後検討してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/65
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066・野間千代三
○野間委員 またいずれ機会を見て、残っている問題についてはお尋ねをしますが、最後に、第三次七カ年計画の内容については、わが党で提案をしております整備緊急措置法の内容でも、もちろん、久保先生が説明の際に申し上げましたように、たとえば山陽新幹線であるとか、そういう面については違いますけれども、とにかく通勤輸送、保安対策——この保安の問題についてはだいぶまだあるわけですね。たしかあれは四・何%か何かだと思いますが、そういう程度ですね。そういうふうに保安対策その他、これはもうからない——総裁の言うもうからない部分だから、借金でないところというふうになってくるのですが、もうからないところは借金でない金でということは、諸外国の例で見られるように、国が投資をやっておるわけですね。そういうことになってくる。いろいろ問題がありますが、第三次七カ年計画の柱になっている通勤輸送、保安対策、輸送力の増強、こういう面については、国民が期待をしておるところではあろうと思います。ただ、その実施の財源の取り方に、いま申しましたように多くの問題があるわけです。しかも、その財源の取り方の問題が出てくる焦点は、やはり借金であるとか、つまり運輸大臣の御答弁で、不足のないように国が当然措置すべきこと、そういうものについて、歴史上から見ても当然しなければならぬという、そういう面もあるくらいに多くの問題があるわけです。したがって、いま大臣なりが答弁されましたことについて、ただそのときの議会答弁ではなくて、国鉄企業というものを、真に公共企業として、国民が利便を得る、国民に対する配当が十分にちゃんとあるような国鉄になるように、今後十分な検討、施策をしていただきたいということをお願いして、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/66
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067・古川丈吉
○古川委員長 竹谷源太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/67
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068・竹谷源太郎
○竹谷委員 私は、運輸省並びに国鉄当局に対しまして、今回の国鉄運賃の値上げが一般の物価値上がりに対していかなる影響があるかということを、まずもってお伺いをいたしたいと思います。
きょうも野間委員の質問に対して、政府並びに国鉄は、過去の実績、すなわち昭和三十二年並びに三十六年の運賃の値上げの際に、卸売り物価及び消費物資の価格に対する影響はほとんど見られない、したがって、過去の実績から推しても、今回の国鉄運賃の値上げ、この程度の値上げの幅では、物価に対する大なる影響は起こらないと思う、こういう答弁がたびたびなされたのでありますが、一体この物価というものの形成の内容、その値上がりの原因等につきましては、非常に複雑多岐であって、昭和三十二年から三十三年に対する物価の値上がりは少ない、もしくは逆に下がった、あるいは三十七年には上がったけれども、少ししか上がらなかったというようなことでもって、今回の国鉄運賃の値上げが物価にさしたる影響がないと断ずることはきわめて危険千万である、こう考えます。
国鉄運賃の値上げは物価値上がりにいかなる影響を及ぼすかという科学的な数字は、いまのところ産業連関表、インプット・アウトプットの計算が一番確実と思われるのですが、この産業連関表から見ても、何%かの値上がりということは確実であって、そういう値上がりもないと一体国鉄は考えているのか。過去の実績から見て、昭和三十二年から三十三年の運賃の値上げのときには、逆に物価が下がっているではないか、こういうようなことを言いますが、この点どうお考えか。国鉄の意見をもってすれば、国鉄運賃はほとんど他の物価の高騰に影響がないというように聞こえるのだが、これは非常に国民に誤解を招くと思いますので、この点もう少し詳しく、合理的な、そして正確な御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/68
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069・堀武夫
○堀政府委員 けさほども野間先生から、物価に与える影響がどうかという、同じ趣旨の御質問があったのでありますが、運賃が物価に与える影響というのは、なかなか推定といいますか、しにくいのでありまして、物価というものは、物の需給関係その他いろいろ複雑な関係できまってくる問題でありまして、運賃がこれだけ上がったら物価が幾ら上がるかという、非常に的確な予想というものは、なかなかつきにくいのじゃなかろうかと思うのであります。しかし、経済企画庁がこの物価問題に対する専門の所管でありますが、経済企画庁の算定するところによりますと、けさほど申しましたように、消費者物価に与える影響というものは、運賃は〇・三二%、このように算定をしているわけであります。物価に与える影響として考えなければならぬことは、卸売り物価にどう響くか、それから消費者物価にどう響くか、それから家計にどう響くか、この三つの問題に注意をしなければならぬ。卸売り物価につきましては、前回の二回の運賃値上げの結果から見ましても、ほとんど横ばいということになっておりまして、ほとんど影響はない。消費者物価につきましても、若干の影響はあったようでございますけれども、それがこの運賃のためであるということはなかなか断言をしがたいのであります。それにしましても、前二回の経験から見ましても、運賃の影響というものはそれほど心配するものではないというふうに考えておるわけです。
それから家計に対する影響でありますが、これは先ほど副総裁からいろいろ家計に与える影響の御説明がありましたが、家計の中で占める国鉄運賃の割合というのは〇・七五%という程度でありまして、これがかりに三〇%上がったとしても、さほどのものではない。特にその消費者物価の値上がり率の寄与率というものから見ましても、運賃の与える影響、寄与率というものは、一%か二%であるということが計数として出ております。いずれにしても、それほど心配することはないというふうにわれわれは考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/69
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070・竹谷源太郎
○竹谷委員 計数の上でも、影響はないとは言わない、しかしその影響は少ないという御答弁、これは計数の上では、確実な合理的な数字を把握することは非常に困難なことではございますが、少なくとも、計数の上から見ましても、当然に四、五%以上の影響を与えるということは間違いがない。これは当然のことでございますが、しかしながら、この国鉄運賃の値上がりという問題は、先ほど国鉄総裁が心理的影響というものは非常に大きな関係があるということを申されましたが、私もそうは思う。米が値上がりする、あるいは電力料金、水道料金その他の諸公共的な料金が値上がりをする。そうした場合に、家庭の主婦なり、また一家の生計をささえなければならない世帯主なり、一家をささえて働いている主人公なり、そうした人たちに大きな影響を与えることはもちろんでありますが、国鉄運賃は、通勤をしておるむすこさんにも、また学校へ通っておる女の子にも、通勤通学の定期がまず値上がりする、じかに自分のさいふから、両親からもらって払わなければならない運賃が高くなるということになりますので、その額はたいしたものではなかろうけれども、国鉄運賃の値上げを直接身に感ずる人口が非常に膨大になる。これからは入学試験やその他で、学生諸君は非常にたびたび汽車に乗らなければならぬのでありまするが、そういう面から見まして、この計数の上では大なるものではなくても、その影響を受ける国民のパーセンテージが非常に高い。こういう意味からいたしまして、これは物価値上がりの直接、間接の大きな影響、あらゆる物価に関係を与えることは間違いないと思う。その上に値上がり便乗もたくさんできてくるわけでございまして、どんな物価も、上がることはあらゆる手段をもって抑制をしなければなりませんけれども、その中でも国鉄運賃はあらゆる物価に広範な影響を与えて、今日の物価値上げ抑制が国内政策としては最も大事だと思われますが、この物価抑制に最大の悪影響を与えるのがこの国鉄運賃の値上げではないか、こう思いまするが、運輸大臣はどのようにこれを認識されておられるか、御意見を承りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/70
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071・中村寅太
○中村(寅)国務大臣 私は、今日の交通の現状を見ますときに、過密ダイヤあるいは通勤通学の人たちが朝晩ほんとうに安全なという点から考えますと、非常な不安といいますか、交通のためにいろいろ不安な状態で、安全輸送というものがこわされるような現状を見ますときに、これはやむを得ない処置である、かように考えて今回の値上げ案を御審議願っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/71
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072・竹谷源太郎
○竹谷委員 朝晩の通勤ラッシュの際における交通の安全、これを確保することはもちろん大切なことでございます。これはやらなければならぬ。やらなければならぬから運賃をたくさんふんだくっていいという理屈は出てこない。しかし私はそのことを聞いているのではございません。この運賃値上げというものが、もろもろの物資あるいは料金の中でも一番広範に、計算上からいいましても、心理的な面からいいましても、経済界全体に対しましても、諸物価値上がりの影響を引き起こす、波紋が大きい、こう思うが、運輸大臣はどうお考えになるか。波紋は少ない、こうお考えかどうか、それを聞いているので、ちょっと答弁の内容が私の質問からはずれているので、もう一ぺん御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/72
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073・中村寅太
○中村(寅)国務大臣 国鉄運賃の値上げが物価に影響を与えるという点は、先ほどから政府委員が答えておりますように、いままでの経験等から考えまして、そう大きく影響するものでない。その点よりも、先ほど私が言いますように、交通緩和の実態を早くつくり上げることのほうが大切であるというような考え方に立って、今回の処置をとろうとしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/73
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074・竹谷源太郎
○竹谷委員 どうも私の質問に対して焦点をはぐらかして同じ答弁を繰り返して困るのです。非常に不誠意で、残念に思います。私はそうじゃないのです。いろんな物価、料金の値上がりのうちで、国鉄運賃の値上げは一番広範な、悪い物価値上げの影響を引き起こすのではないか、他の物価や他の料金に比べて国鉄料金は一番大きく影響を及ぼすのではないかどうか、それとも影響はないかどうかということを聞いているので、それに率直に御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/74
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075・中村寅太
○中村(寅)国務大臣 影響が全然ないというのではございませんが、先ほどから言いますように、過去の経験等からも大きな影響はないという結論に達しまして、今回の処置をとったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/75
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076・竹谷源太郎
○竹谷委員 先ほど鉄監局長から答弁もありましたように、この物価値上がりの原因は、物の需給関係やその他あらゆる経済上の素因、そして運賃値上げというようないろんなものがからみ合って物価上昇を起こすので、その値上げの内容において運賃値上げがどれだけ影響するかということはなかなか把握しにくい。しかし、科学的に見て、投入産出表から判断しましても、経済企画庁は相当の値上げを起こす、こういうことを言っておるのである。過去の影響といっても、昭和三十二年及び昭和三十六年といえば、三十二年は日本の経済が昭和三十年ころから非常な大きな発展の巨歩を踏み出したときで、生産は増強をいたしまして経済活動が盛んで、むしろ生産増大のために物価は値上がりを生じつつ生産の増強が行なわれた時代であって、これは国鉄運賃の値上げくらいで、そのような安定した非常な良好な経済状態をくつがえすことにならなかった。昭和三十六年もまだ日本の経済が非常に好調にある時代である。しかしながら消費者物価には非常な値上げが昭和三十六年から三十七年に起こっておるのでありまして、過去の実績でたいした値上げはなかったから影響はないということは——あまりにそのときの他の原因が大部分を占めるであろう物価というものを土台にして、国鉄運賃の物価値上げに対する影響は少なかったということは、はなはだ早計だと思うのです。科学的見地に立って経済企画庁は影響があるということを認めておるのであります。いま物価値上げが非常に国民を苦しめており、また、一般に利潤が少なくて、経済、産業に携わる人たちが少しでも利潤を多くしようというときですから、そのときとは全然時期が違う。こうしたときに今度はほんとうの結果があらわれてくるのではないかと思うのです。運輸大臣は、国鉄運賃値上げは、同じような値上げ率でも、他の物価よりも物価に対する影響が少ない、そう判断せられるのか、それとも他の物価、料金の値上げよりも影響が大きいとお考えか、それを聞いておるのですよ。それをもう一ぺん……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/76
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077・中村寅太
○中村(寅)国務大臣 私は運賃値上げによって物価その他に影響が全然ないとは申しておらぬのであります。企画庁等でも申し上げておりますように、ある程度の物価上昇に影響があることは認めますけれども、この運賃値上げによって輸送増強あるいは交通事情等が緩和されるという経済効率のほうが高いという判断に立って、今回の値上げをお願いしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/77
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078・竹谷源太郎
○竹谷委員 幾ら聞いてものれんに腕押しですから方向を転換しますが、委員会において諸外国の例などと比較しての答弁が当局のほうからたびたびなされた。日本の国鉄運賃は諸外国に比べて非常に安い、二分の一もしくは三分の一あるいは五分の一くらいかもしらぬ、だから上げてもいいのではないか、こういうのです。しかし、私も乏しい経験ですけれども、外国へ行って、旅客として向こうの汽車に乗った。そうすると、私のような小さいからだは二人くらい入るような大きなボックス、そして前のほうが長くて、ひざが窮屈で痛くなるということもない。そういうように十分に間があり、しかもすいていて、五〇%、七、八〇%の旅客しか乗っておらない、そういう汽車に比べれば、一〇〇%はおろか、百何十%も、あるいは定員の二倍、三倍もぶち込む。こういう日本における国鉄の乗客に対する取り扱いは、牛馬以下に人間を扱っておる。だから、それからいえば、何分の一ぐらい輸送の値打ちしかないので、その面からいうと、私は安いとは言えないじゃないか、そういう点はいかがでございますか。向こうの諸外国の運賃の三分の一だとか四分の一だとかいうほど、日本はほんとうに実質的に安いのか。そういう点をどうお考えか。国鉄のほうにお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/78
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079・石田禮助
○石田説明員 国鉄の運賃が安いか高いかということは、ただいま竹谷さんのおっしゃったように、比較というものはむずかしい問題だと私は思う。要するに、確かにそれはアメリカあたりの輸送運賃というものは国鉄に比べては高いのでありますが、しかしいわゆるサービスという点からいくと、これは比較にならぬほど日本は劣っておる。ただ問題は、竹谷さんに申し上げますが、日本とアメリカとは建設費が非常に違うのです。これは鉄道ばかりでなく、道路あたりでもそうです。日本の鉄道の現在における建設費というものは、アメリカあたりに比べたらおそろしく高い。たとえばアメリカあたりでいまもうかっておる鉄道なんというものは、敷くときにはまわりの十キロの土地をもらったというようなことがありまするからして、国鉄の運賃が安いとか高いとかいうことは、建設費だとか、いろいろのファクタースを考えて言わぬというと、むずかしい問題なんです。ただ手っとり早く言って、運賃面にあらわれてくるところからいうと、国鉄の運賃は安いということなんで、この点はどうぞひとつ誤解のないようにお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/79
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080・竹谷源太郎
○竹谷委員 戦前の国鉄運賃に比べて、現在旅客、貨物ともに値上がり率が非常に低い、一般物価が五百倍近くになっているのに、百六十倍とか二百倍、そういう面からも値上げをするのは当然だ、このようなお話ですが、しかし、小企業あるいは中企業等でやっておる産業と違いまして、国鉄は大企業で、能率もよいし、したがって生産品を安い運賃で輸送ができなければならぬと思うのです。国鉄でわれわれにくれた黄色い表紙の資料、新第三次七カ年計画の印刷物の中に、諸物価の戦前対比のグラフが出ておりますが、それを見ると、電灯料金は戦前の百二倍にしかなっておらない。国鉄は百六十ないしは二百倍以上になっておる。これはどういうわけですか。電灯料金のように戦前の百倍なら、いまの鉄道料金の半分くらいでいいということになるんです。黄色い表紙のグラフに出ているのでございますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/80
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081・石田禮助
○石田説明員 竹谷さんは国鉄より安いものを土台にしておるが、国鉄より高いものがいかに多くあるか、こういうところをお考えになっていただきたいと思います。全体的に考えて、国鉄の運賃の上がり方というものは非常に少ない、こういうことに結論づけて私は間違いないと思う。たとえば一番手っとり早い話が、電電公社は昭和二十九年において二百三十三倍になっておる。物価は三百五十倍にもなっておる。ことに最近における国鉄の人件費増なんというものは、国鉄の収入に比べて人件費は五五%を占めておる。鉄道における経営からいえば、人件費なんというものは五〇%以下でなければならぬ。それが五五%になっておるというようなことで、国鉄の運賃の値上げというものは、これをもしもやらなかった日には、借金でやらなければならぬ。借金でやった日には、にっちもさっちもいかなくなって、とうとうしまいにはまとめて政府が補助しなければならぬ。イギリスの鉄道のようなぐあいになってしまう。なるほど国鉄の運賃が上がるということは、心理的には物価値上げの要素にはなると思いますが、しかしこれは心理的影響が多いので、かすに時をもってして冷却期間を置いたならば、たいしたもんじゃない。ただ、問題は、何もかも上がっておるところで国鉄の運賃がさらに上がるということが、心理的に非常に悪い影響を与えておるんですが、これはそう驚くべきものでない。それよりも物価というものは需要供給のバランスだと思う。その点からいくと、供給の面にプラスになるものは流通機構の整備。国鉄が第三次計画によって流通機構において貢献するということがあれば、そのプラス面が将来——いますぐはいかぬが、輸送力が増強する場合においては、物価を下げる相当大きなファクターになるのじゃないか。ひとつ竹谷さんには、マイナス面だけを考えないで、こういうぐあいにプラス面をももう少し真剣にお考えになって結論をおくだしくださるようにお願いしたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/81
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082・竹谷源太郎
○竹谷委員 石田総裁は、値上げをやった電電公社等ばかりを例にとるのでありますが、国鉄企業の経営上、どうか電力のように値上げ幅をひとつ少なくして、できるだけ安く国民の運輸サービスをやるように、ぜひ心がけていただきたいと思う。値上げのほうのまねをしないで、値上げをできるだけ抑制して、国民の要望にこたえておるような、そういう電力のような企業の方向でひとつ運営していただきたいと思います。
なお、これからの質問を継続する必要から、私は次の二つの資料を明日までに提出してくださるようにお願いいたしたい。
一つは、先ほど野間君からも質問がありましたが、昭和三十九年度、昭和四十年度等において減価償却費が非常にふえておる。一応その理由等を書いた資料はちょうだいいたしましたが、もっと的確な数字をひとつ資料として御提供をお願いいたしたいと思います。
もう一つは、国鉄の経営上、昭和三十九年の三月に誕生をいたしました鉄道建設公団の運営、並びにこの鉄道建設公団から譲渡を受け、もしくは借り受けて汽車を走らせる国鉄に対して非常な影響がございますので、鉄道建設公団が今後建設せんとする路線、そしてそれが完成して国鉄が引き受けて営業をやった暁には、黒字になるのか赤字になるのか、各線についてその赤、黒の区別、それから現在鉄道建設公団はどのような仕事をしており、またすでに鉄道建設公団が、ある路線を完成して、国鉄に譲渡をするなり、あるいは貸し付けるなりして、営業が開始されている路線があれば、その路線についての国鉄と公団との関係や、売却値段あるいは譲渡値段もしくは貸し付け料、そういうような問題の事柄に関する資料を、ひとつあしたまでにぜひ御提出をお願いいたしまして、委員長、きょうは、質問を明日続行することを希望いたしまして、打ち切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/82
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083・磯崎叡
○磯崎説明員 先ほどの竹谷先生の御質問の電灯料金の点でございますが、ちょっと一言補足いたします。
ここに出しました資料は、いわゆる家庭用電力の代金でございまして、御承知のとおり、電力の需給の大勢は、戦前と戦後で全く変わっております。現に国鉄が買っております電力から申しますと、実は電気機関車用は昭和十年にキロワット当たり約十九銭であったものが、現在五十八円でございます。約三百倍以上に上がっております。また電車用につきましては、十銭七厘であったものが、現在六十五円三十銭になって、やはり約五百倍をこしておるわけであります。その点これは家庭用電力だけの資料でございまして、大口需用者につきましては、国鉄につきましてはその数百倍に上がっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/83
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084・古川丈吉
○古川委員長 次会は明十六日午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後五時三十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105103830X01019660215/84
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