1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年六月二日(木曜日)
午前十時五十分開議
出席委員
委員長 中川 俊思君
理事 大石 武一君 理事 倉成 正君
理事 田口長治郎君 理事 舘林三喜男君
理事 本名 武君 理事 赤路 友藏君
理事 東海林 稔君 理事 芳賀 貢君
池田 清志君 宇野 宗佑君
金子 岩三君 小枝 一雄君
坂村 吉正君 笹山茂太郎君
田邊 國男君 高見 三郎君
綱島 正興君 中川 一郎君
丹羽 兵助君 野原 正勝君
野呂 恭一君 藤田 義光君
森田重次郎君 江田 三郎君
兒玉 末男君 千葉 七郎君
松浦 定義君 森 義視君
湯山 勇君 玉置 一徳君
林 百郎君
出席政府委員
農林政務次官 仮谷 忠男君
農林事務官
(園芸局長) 小林 誠一君
委員外の出席者
専 門 員 松任谷健太郎君
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六月二日
委員西宮弘君辞任につき、その補欠として久保
田鶴松君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員久保田鶴松君辞任につき、その補欠として
西宮弘君が議長の指名で委員に選任された。
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六月一日
昭和四十一年産なたねの基準価格引上げに関す
る請願外二件(森田重次郎君紹介)(第五一四二
号)
同外一件(竹内黎一君紹介)(第五二二四号)
同(中馬辰猪君紹介)(第五二二五号)
同(床次徳二君紹介)(第五二二六号)
同(二階堂進君紹介)(第五二二七号)
同(床次徳二君紹介)(第五二七二号)
同(池田清志君紹介)(第五二八四号)
低毒性有機燐製剤の価格引下げに関する請願
(松平忠久君紹介)(第五二七三号)
農産物価格安定法の一部改正に関する請願(池
田清志君紹介)(第五二八三号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
野菜生産出荷安定法案(内閣提出第一三一号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/0
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001・中川俊思
○中川委員長 これより会議を開きます。
野菜生産出荷安定法案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許可いたします。舘林三喜男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/1
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002・舘林三喜男
○舘林委員 お許しいただきまして、ただいま上程されております野菜生産出荷安定法案につきまして、御質問申し上げたいと思います。
ただ、内輪のことでございますけれども、この質問につきましては、昨日夕方突然に理事さんから質問するようにとの御指示をいただきましたので、これから申し上げます質問も、全く一夜づけの内容でございまして、まことにお粗末でございますけれども、ただ御答弁のほうはぜひひとつ完ぺきなものをお願いいたしたいと思います。また、かようなことを申し上げてはどうかと思いますけれども、昨年の七月まで農林省にお世話になった者として、その当時、すでに野菜生産出荷についてのいろいろの施策が行なわれておる最中に関係した者として、私自身が質問するのは、たいへんおこがましいような気がいたしますが、だからといって、万事賛成だけの質問もできませんし、とにかく問題になっているところにつきましては、私の意見を率直に申し上げたいと思いますから、この点御了承いただきたいと思います。
さて、昭和四十一年の国内における経済的な最大の問題は、今日当面しておりまする不況をどうして克服するかということ、と同時に、物価の安定をはかること、この二つに帰することは申すまでもないことだろうと思います。しこうして、不況克服の問題は、四十年の追加予算、補正予算、あるいはまた四十一年の新予算に十分に盛られておりまして、その予算の執行とともに、着々不況克服は成功いたしまして、漸次景気は好転しておるような事実でございまして、一応不況対策は完成したとはいえませんけれども、相当進捗しているような事実があるわけであります。したがいまして、今日当面の問題は、不況対策の問題よりも、すべての重点は、物価対策に移ったということは申すまでもないことであります。しこうして、物価対策の問題は、昭和三十七年ごろから、政府といたしましても相当重点的にやっておいでになりましたけれども、なかなかこれは成功していません。やはり物価問題そのものが、経済の全体の集中的な顕現でありますし、個々の対策をどうきめてみても、なかなかきめ手というものはない。また単に現象的な問題じゃなくて、経済の構造的な問題にも相当入っておるわけでございますから、物価対策そのものを完ぺきに実行することは、私は非常にむずかしいと思います。しかし、今日唯一の残された問題でございますから、どうしてもこれは成功させなくちゃならない。さような立場から今日まで物価対策のいろいろな施策が講じられてきておるわけでございまして、ことに中小企業とかあるいは個人サービス業の合理化を進める、また公共料金の抑制をできるだけやるとか、あるいは今日日本の経済界の一番の問題であります流通機構の整備、合理化をはかるとか、独占禁止法を運用して、価格形成の場において自由競争の原理を最大限に導入するというような政策、そんなものがどんどんとられておるわけでございます。もちろん、そんな政策が非常に重要だということは当然でございますけれども、しかし、今日、物価対策の立場から一番大事なきめ手は何かというと、食糧に対する物価政策だろうと思います。昭和四十年の対前年度の物価の上昇の寄与率から考えますと、食糧が全体の六一%となっている。すなわち、物価対策のうちで、食糧に関する政策が成功いたしましたならば、物価政策の六割は成功したということになるわけです。たくさんの物価政策の中で、食糧に関する政策が成功するということが、それほどまでに大きな重点を持っているわけです。しこうして、食糧全体の上昇の寄与率が六一%のうちで、当面問題になっております野菜につきましては、一四%の寄与率がある。そういたしますと、もしも幸いにして、野菜に対する消費者物価政策が成功いたしますと、物価政策のうちの一割五分近いものが成功するということが言えるわけです。そんな意味で、私は、当面提出されておりまする野菜の生産出荷安定法案を完ぺきに実行されるかどうかということは、非常に政治的に大きな意味があるだろうと思います。
現在、率直に申しまして、よく解散の時期はいつだろうと言われる。それは結局不況対策、物価対策を成功さした時期だろうということは、常識的に言われておるわけです。それほどまでに庶民の感覚として物価に対する考え方は非常に強い。ことに主婦とか婦人の食糧あるいは野菜の価格に対する感覚というものは、非常に鋭敏になっております。そんな意味から申しましても、やはり政治の今後の情勢から考えましても、どうしても政府としては、物価対策の中の食糧、特に野菜対策につきましては、ぜひとも成功させなくてはいけないという感じがいたすわけであります。
さような立場から、大臣がおいでになりませんから、仮谷さんにお伺いいたしたいと思いますけれども、農林省としては、食糧に関する物価対策という大きな責任を持っておるわけであります。特にその中の野菜について大きな責任を持っておいでになりますが、この野菜に対する物価対策についての認識と申しますか、あるいはまた決意と申しますか、その決意のほどにつきまして、ひとつ政務次官の御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/2
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003・仮谷忠男
○仮谷政府委員 御説の点、舘林先生と全く同感であります。今日の物価問題の一番の重点は、何といっても生鮮食料品でありまして、なかんずく野菜の価格の変動ということが物価の面に大きく影響しておることは、お説のとおりでありまして、したがいまして、これと真剣に取り組んで、この問題に何らかの解決をいたしたいというのが、今度の野菜生産出荷安定法案を提出いたしました大きな理由であることは御承知のとおりであります。したがいまして、今日の野菜の状態を見ますと、御承知のように、野菜生産というものは、きわめて零細農家が多いということ、天候に支配されるということ、あるいはまた貯蔵性に乏しいということ、そういった面から野菜の価格が非常に変動が激しいということは、これは周知の事実でありまして、その価格を安定せしめるというところに重点を置くことが、生産者対策にもなり、あるいはまた消費者物価対策にもなることは、これは当然であります。そういう意味において指定産地を設けまして、生産、出荷の安定をはかっていこう、こういうのが本法案のねらいでありまして、せっかく本法案が成立をいたしますなれば、法案の趣旨に基づきまして、全力をあげて生産の安定と、さらに物価の安定に努力をいたしてまいりたい、かように存じておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/3
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004・舘林三喜男
○舘林委員 野菜に対する物価対策についての農林省の決意のほどを承りましたが、ぜひひとつ、いま申し上げましたように、政治的にも経済的にも、非常に大きな意義と重要性を持っておるわけでございますから、いまお話のような考え方で、ひとつこれから進めていただきたいと思います。
それで、いま申し上げました物価対策でございますが、物価対策を推進する場合に、一つの目標というか、基本的な方向というものをどこに置くべきかということは、非常に大きな問題だと思うのであります。消費者の立場からだけ申しますと、野菜は安ければ安いほどいい。ただならなお望ましいということは言えるだろうと思う。また、野菜生産者の立場、農家の立場から申しますと、幾らでも高かったら高いほどいいということが言えるだろうと思う。したがいまして、物価対策という立場から野菜を考えますと、一面、野菜が安ければ安いほど成功だ。したがって、安ければ安いほどその基本方向として望ましいのだということが一応言えるような気がする。しかし、私は、それは非常に近視眼的な見方で、やはり長期的な見方で物価対策の基本的方向をきめなくちゃいけないという感じがいたすのです。ことに野菜の場合には、天候に非常に左右され、季節に左右される。それだから、あるときは非常に価格が高い。そうすると、たちどころに、価格が高いことに刺激されて、周囲の野菜作の農家が増産をする。増産をすれば、直ちにそれが価格の暴落を招く。それで暴落を招けば、生産量が減りますから、直ちにそれが暴騰する。すなわち、減産と暴騰と増産と暴落ということを絶えず時期的、期間的に非常に正確に繰り返しておるというのが、今日の実情だと思う。したがいまして、やはりそんな立場から考えますと、野菜については、ことに安ければ安いほどいいという立場だったら、やはり一時は安くいたしましても、生産者が生産意欲がなくなってくる。そうすると、作付面積が減ってくる。そうすると暴騰するということだから、結局、長い目で見ると、野菜に対する物価対策の目的を達することはできない。したがいまして、安ければ安いほどいいというのが野菜についての物価対策の基本方向であるべきじゃなくて、やはり野菜というものはある程度長期にわたって安定するということが、私は野菜対策の基本だと思う。しこうして、この安定するということは、横ばいの状態というか、それも望ましいと思うのです。しかし、やはり経済が高度成長ではなくて、安定成長いたしまして、たとえば経済成長率が五%か四%になる、それに応じまして、野菜の物価もやはり一年に二%か三%くらい徐々にとにかく高まっていく、それがむしろ生産を刺激し、経済活動を活発にするという方向でいいのじゃないか。それだから、私は、野菜に対する物価対策の基本的の方向は、安ければ安いほどいいということは絶対反対である。また、できましたならば、横ばいの水準よりもやや二%か三%程度ずっと上がっていくと、も刺激する、経済成長に応じて購買力を増すというかっこうが、私は一番望ましいような気がいたしますが、ちょうど提案されております野菜の基本法の第一条の目的の中にも、「野菜農業の健全な発展と国民消費生活の安定」ということを書いてあるのは、そんな意味だろうと思うのです。したがいまして、私がお伺いしたいことは、いま申し上げましたように、とにかく野菜に関する物価対策のいわばめどと申しますか、水準というものをどの程度に置くか。あるいは農林省としてはもう消費者の立場から見て、安ければ安いほどいいとお考えになるのか。あるいは生産者を保護するたてまえから、高ければ高いほどいいと思われるか。じゃなかったら、私申しますように、徐々に少しずつ上がりながらの安定的な方向に水準をきめるというほうに進むことを基本方向とされるのか。そのあたりにつきまして、仮谷次官の御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/4
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005・仮谷忠男
○仮谷政府委員 よく、この法案は生産者のための法案か、消費者のための法案かということが、いろいろ巷間でも議論をいたされておるようでありますけれども、結論的には、両方に利益をもたらさなければいかぬというのが法の趣旨であります。安ければ安いほどいい、そういう観点に立ってこの法案を進めていく、助成をしていくということは、私は適当でないと思います。やはり生産者のいわゆる経済を安定せしめるという観点に立って、しかもその価格を安定して、消費者にも影響を与えるということにならなくちゃならぬじゃないかと思います。そういう意味において、集団指定産地を設けて、これにいろいろな近代的な助成を与え協力をし、そうしてそれに基づいてまず生産を安定させる、そうして出荷態勢を整えて、いわゆる生産、出荷というものを近代的に安定して進めていくことによって、初めて消費者対策になるのだ、こういう考え方で私どもは進めていかなくちゃならぬと思いますから、そこの限界をどこに置くかということになりますと、これは非常にむずかしい問題かと思うのですけれども、要するに、今日のように野菜価格の変動が非常に激しいということ自体が、生産者にも消費者にも大きな悪影響を及ぼしているということは間違いないわけであって、まず価格を安定せしめ、生産者の経済も安定せしめ、消費者物価も安定せしめていくという形において進めていかなくちゃならぬじゃないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/5
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006・舘林三喜男
○舘林委員 最近非常に全般的な物価の値上がりから、ことに消費者の側から申しますと、すべての生産物というものが下がれば下がるほどいい。したがって、物価対策というものは、下げるということにまず起点が置かれているような感じがいたしますけれども、私がいま申し上げましたように、また仮谷次官がお答えになりましたように、農産物を下げるだけが私は万能の物価対策じゃないと思うのです。ぜひそんな意味でこれからも野菜に対する政策を進めていただくことをくれぐれもお願いするわけであります。
それで、今日までの野菜に対する対策の経過を考えてみますと、申すまでもなく、昭和三十五年ぐらいまでは、物価というものは、ほとんど消費者物価は安定してきておる。卸売り物価はなおさらのことでございます。それが三十五年を契機として、日本の高度成長政策の段階から急速に物価が上昇して、ことに消費者物価が上昇してきている。それで、野菜の場合にも、三十七年から考えますと、三十五年を一〇〇とすると、三十七年はすでに一五〇になっている。五割も上がっているわけなんです。それで、農林省としての対策としては、私の聞くところによりますと、各府県には青果物の価格安定事業を奨励する、行なわせる。あるいは農林省としては、野菜の指定産地制度の実施とか、あるいは野菜の価格が暴落する場合価格補給金制度というようなものを行なわれていて、たとえば三十七年にはタマネギ、それから三十八年にはカンランというようなものについて、補給金制度を実施されてきたわけなんです。それは私の一応の感じ、知識ですが、園芸局長にお伺いしたいのでございますけれども、それだけとにかく三十五年から急速な勢いで野菜の値上がりがあった。それについて、いま申し上げましたようなことの政策を行なわれてきたについて、園芸局長としての立場から、いままでの政策というものをかいつまんで、重点的に御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/6
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007・小林誠一
○小林(誠)政府委員 先ほどお話がございましたとおり、三十五年から非常に野菜価格が上がっております。この野菜の価格は、消費者の小売り物価の段階におきましても、卸売り物価の段階におきましても、農家の庭先価格の段階におきましても、大体三十五年に比べまして約二倍近くまで上がっております。この点につきましては、非常に野菜作というものは労働の投下量が多い。しかもなお、流通機構においても相当手間がかかるというような問題がございまして、労賃の上昇という傾向が各段階において行なわれたのが、その原因でないかと思われるわけでございます。
したがいまして、数年来この野菜の対策といたしまして、価格安定制度、カンランあるいはタマネギというものにつきましての価格補てんを中心といたします安定制度というものを一つ実施しておったのでございます。これにつきましては、従来は試験実施ということで実施いたしていたわけでございますが、今回この法改正を契機といたしまして、それを法律に基づきます資金協会というものにこれを統合いたしまして、これにつきましてさらに本格的に取り組んでいきたいというふうに考えているわけでございます。したがいまして、本年度からさらに、先ほど申しましたカンラン、タマネギのほかに、京浜市場向け白菜についても、その対象といたしたいというふうに考えているわけでございます。
それから、先ほどお話のございました指定産地制度でございますが、これにつきましては、すでに昭和四十年度までに百九十八産地の指定を行なっております。その対象といたしておりますのは、カンラン、白菜、トマト、キュウリの四種類についてでございますが、さらに本年度から大根、タマネギの二品目を加えまして六品目にいたしますと同時に、本年度末までに指定産地につきましては、三百十の指定産地を指定いたしたいというふうに考えておるわけでございます。ただ、従来はその指定産地の制度はございましたけれども、これに関します助成措置というのは非常に微々たるものでございまして、一指定産地当たり補助額におきまして、約三十万くらいのモデル的な機械施設の補助というものを行なっただけでございます。そういう意味におきまして、やはり先ほどから申し上げましたように、労働生産性を高めて、農家の所得を減らさずに、しかもあまり価格を上げずに生産が行なわれるためには、やはり土地の生産性を高めるということと、野菜につき.ましては非常に気象的な影響が大きいものですから、たとえば干ばつでございますとか、あるいは病虫害というものによって年々の作柄も非常に変動いたします。それを全部防止するということはできないわけでございますけれども、でき得る限りそういうものを防止するということにおきまして、その指定産地におきます土地基盤整備でありますとか、あるいは生産関係のものでございますとか、そういうものの施設について補助を行ないたいということで、都道府県知事が立てます生産出荷近代化計画というものに基づきまして助成を行なう、いろいろそういうことをやりたいと考えておるわけでございまして、それらを総合いたしまして生産、出荷というものの安定をはかることが、野菜価格の安定あるいは農家所得の安定をはかるために一番重要なことだというふうに考えて、いま鋭意それを検討し、進めようとしておる段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/7
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008・舘林三喜男
○舘林委員 三十七年から今日法律案を提出されるまでの農林省の施策につきましては、いろいろ承りましたが、さような施策にもかかわりませず、野菜の消費者物価はどうかと申しますと、三十五年を一〇〇といたしますと、三十七年は一五〇、三十八年は一六六、四十年には実に一九六までも野菜が高騰しておるわけでございます。そういたしますと、いま局長が弁話しになりましたような政策そのものがほとんど効果がなかったのじゃないかと、失礼ながら考えざるを得ないのです。もちろん、もしもさような政策をやらざりしならばもっと上がっていただろうということは言えるだろうと思うのです。しかし、そんな政策をやりましたにもかかわりませず、わずか五年の間に二倍に上がっているということから考えますと、やはりこれから先打って出されるところの対策というものは、単にいままでの通牒による政策を法律に変えたというだけじゃなくて、いままでの成否にかんがみまして、そこに何か新しい新機軸というものが当然出てこなければならないという気がするのです。そういたしますと、従来の政策と新しく法律案の内容に盛られているところから比較いたしますと、私が大急ぎで勉強したところによりますと、たとえば農林大臣が需要見通しをつける、これは新しい政策ですね。それから生産者補給金の対策、これはいままで白菜とタマネギについて二つの団体でやった、これを一つにする、これは一歩前進ですが、画期的な改革だということは考えられない。そういたしますと、大臣の需要見通しというものが新しいのと、それから生産出荷近代化計画を立てるということ、この二つが私は一番大きな改革点だろうと思うのです。それ以外は、たとえば消費地域にいたしましても四地域、品目にいたしましても六品目ということになってくると、そうたいした改革ではないじゃないか。一方においてはどんどん野菜は上がっておるということから考えますと、あとでこまかく承りますけれども、従来の計画で必ずしも成功しなかったのに、ただ法律に変えただけであって、どこに新味があるかということについては、私は率直に申しまして、相当疑いを持っておるわけなんです。それで局長のほうで、新しく画期的な意義があるというものがありましたならば、率直にお知らせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/8
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009・小林誠一
○小林(誠)政府委員 お答えいたします。
この法律に盛られております内容につきまして、従来からの施策とあまり新味がないのではないかというお話でありますが、先ほどお話ございました生産出荷近代化計画につきましては、従来は、指定産地というものが、これは指定ということと、先ほども申しましたような国からの少額な助成を行なうということだけが行なわれておったわけでありまして、今度この法律によりまして、知事が指定産地につきまして生産出荷近代化計画というのを立てまして、それに基づきます事業につきまして、土地基盤整備については農地局に計上してございますものを優先的に使う、それから生産、出荷の共同施設につきましては三分の一の助成を行なうということで、しかもその規模も、一指定産地当たり、将来のものもトータルいたしますと、千三百万あるいは千五百万にはなるのではないかと思いますが、そのような助成を行ないまして、そこの生産を安定させるというところに本格的に取り組んだわけでございます。
もう一つは、価格安定事業でございますが、これは任意財団法人によって行なわれておったわけでありますが、これをこの法律に基づく法人ということにいたしますと同時に、野菜指定産地というものと価格安定事業というもの、従来はタマネギにつきましてはそれが結びついておらなかったわけでありますが、それを結びつけるという点におきまして、指定産地制度及びそれの近代化計画、それに基づきます助成、それからまた、価格が暴落いたしましたときの価格の補てん事業というものを総合的に結びつけていくということにおきまして、従来実験的にやっておりました事業を本格実施をするという点につきまして、従来と大いに違っておる点があるというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/9
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010・舘林三喜男
○舘林委員 従来の通牒というか、そんなものでやっておったものを法律に変えた場合に、私はあとでも直間いたしたいと思うのですが、生産出荷近代化計画というのは、非常に大きな意義を持っておるだろうと思う。ただ、いまおっしゃいました安定資金協会の問題は、これは民法上の法人を法律上の法人に変えたというだけで、私はそうたいした成果はないだろうと思う。むしろ、少し角度を変えて、こんな点が欠けておるのではないかという点を一、二点申し上げたいと思う。
第一は、流通過程の問題です。この法律は、もちろん生産及び出荷に関する法律でありまして、流通過程あるいは小売り過程についての問題は何も触れてない。しかし、私は、この法律案というものは、野菜についての総合的な基本法的な性格を持つべきではないかという気がする。単に生産、出荷ではなくて、流通から小売り過程までの全過程に関する法律であるべきではないかという気がする。と申しますのは、一般に日本の生産物はそうでございますけれども、ことに野菜につきましては、生産者価格と小売り価格との間に非常に大きな開きがある。これは東京都でございますが、経済企画庁の野菜についての価格追跡調査、価格をずっとトレースして、どこでどう上がったかという追跡調査によりますと、小売り価格が一〇〇の場合に、生産者価格は四〇ということになっている。すなわち、出産者が大根なら大根を四十円でつくると、それが小売り価格の場合には百円になっているというように、しかもその中で、小売り段階の利益というものが大体そのうち三〇ということになっているわけです。そうすると、百円の野菜というものが、生産者の手取りは四十円で、小売り店の八百屋さんの手取りは三十円になっている。それ以外に、運賃とか包装とか、あるいは団体の手数料等ありますけれども、とにかく生産者の価格と小売り価格との間の開きが非常に大きい。これが私は物価政策の問題の中心の一つであるべきだと思うのです。したがって、たとえば千葉とか埼玉あたりで白菜がただのようになって、東京へ持ってくるのはばからしいということで、お百姓さんは捨てている。それだけ白菜が暴落したにかかわらず、東京の八百屋さんの野菜は必ずしも下がっていないというところに、私は野菜の物価政策の大きな問題点があるだろうと思うのであります。
それで、この点につきまして質問を繰り返しますが、この法律の体系から申しますると、生産と出荷について限られたということは、今日の段階ではやむを得ませんけれども、さらに進んで流通過程から小売りの問題につきまして、やはりこれに触れなかったならば、いわば画龍点睛を欠くと申しますか、ほんとうにかゆいところへ手が届くということにならないのじゃないかと思いますが、この点につきまして農林省としての御意見はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/10
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011・小林誠一
○小林(誠)政府委員 お説のように、生産者価格と消費者価格との間に相当の開きがあるということは事実でございます。これは時によっていろいろ違うわけでございますけれども、場合によっては一〇〇に対して二〇ということもありますし、非常に野菜が不足いたします場合は、一〇〇に対して六〇というようなときもあります。また品目によってもいろいろ価格の差があるわげでございますが、どうもいろいろ分析していきますと、この卸売り市場から小売り市場までの間の経費というものは、最近人件費が上がっておりまして、上昇はいたしておりますけれども、比較的固定的でございます。したがいまして、その卸売り市場の価格が非常に変動することが消費者価格の変動に通じておるということでございます。したがいまして、本法案におきましては、生産、出荷の安定ということ、卸売り市場までの点を規定しておるわけでございます。それによりまして卸売り市場に対します生産、出荷が安定いたしますれば、消費者価格も安定するのではないかという考え方に立っておるわけでございます。もっとも、最近の情勢といたしまして、非常に人件費等も高騰いたしまして、流通各段階におきまして非常にそこの経費が増高しておるということも事実でございます。したがいまして、その点につきましての改善ということは行なわなければならない点だとは存じます。この点につきましては、単に野菜だけではございませんで、生鮮食料一般の問題でございまして、その観点から農林省としても鋭意改善に努力しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/11
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012・舘林三喜男
○舘林委員 日本の物価安定対策の一番の勘どころの一つは、いま申し上げましたように、私は、流通段階から小売り段階、これをどうして合理化するかということに重点を置かれなくてはいけないという感じがいたすわけであります。やはり日本の特殊な社会機構から、流通段階というのは、過剰労働力の掃き捨て場所というか、吸収場所ということになっているわけです。しかし、日本の経済がますます成長いたしましょうし、完全雇用の段階に漸次近づくということは申すまでもないと思うのです。さようなわけで、流通過程を合理化するのには一番ふさわしい条件が整えられつつあるということが言えるだろうと思うのです。そんな意味で、農林省としては、当然生産、出荷の過程について正面から取り組むと同時に、どうしてもこれから先は流通段階にも取り組んでもらいたい。やはり農林省というものは、ややともすれば生産というものがどうしても中心に置かれてくる。しかし、今後は、生産はもちろん中心であって、増産をやらなければいけませんけれども、同時に、流通とか加工段階に相当のウエートを置く農林行政が非常に必要だという感じが私はするわけなんです。さような立場から、実は一昨年農林省から提出されて、去年とうとう参議院によって握りつぶしになりました食料品総合小売市場管理会法案というものがありましたが、私はあれにちょっと関係いたしましたけれども、私はあの中身が必ずしも悪いとは思わない。ただ、管理会法なんという名前そのものがいかにも悪い。政治家とかそれから庶民の感覚からいうと、管理ということばほどいやがられるものはない。そして東京でちっぽけな場所、わずか数十カ所の総合小売り市場をつくって、それを管理するのに管理会という大きな組織をつくるということは、実はこっけいな感じが私は内心いたしておったのです。またスーパー法案だと略称で言われておった。スーパーというととは、小売り業者としては一番毛ぎらいすることばなんです。そんなことで、管理会という名前とかスーパーという名前で、あの法律が葬られた大半の原因があるだろうと私は思うのです。しかし、実態としてはあれは悪くないと思う。したがいまして、法律で大だんぴらを振るってやらないで、補助金だけどんどん出して、総合小売り市場をやればいいわけです。そこでモデル的な、模範的な小売り市場を開く。そういたしますと、そこで他の小売り店はこの模範的なものをまねしながら、漸次小売りというものが合理化されましょうし、またそこに消費者が出入りして、消費者の立場からいうと、なるほどかようなかっこうで買うのが一番合理的な消費生活だということがわかってきて、いわば消費者の生活も合理化できるだろうと思うのです。そんなことで、あの法律が否決され、成立しなかったことは私は残念でございますけれども、本質的な考え方は、あの問題は私は正しいと思いますので、あんなものをひとつ今後再現して、補助金だけの政策としてやられる意思があられますかどうか。この問題につきまして、これは園芸局長ではなくて、経済局長でございますけれども、経済局長の出席は私は要らぬと申しましたけれども、もし御意見がありましたならば、園芸局長あるいは仮谷さんから御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/12
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013・仮谷忠男
○仮谷政府委員 小売り価格が農家手取りの三倍から四倍になっている事実は確かであります。これは時期的にもいろいろ関係しますし、価格にもいろいろよるのでありますが、やはりそういう実戦はあるわけでありまして、おっしゃるとおりに、流通過程というものに大きなメスを入れていかなければ、根本的な物価対策にならないということは御意見のとおりだと私どもも考えております。したがいまして、この問題については、先ほど局長からもお話し申し上げましたように、近代化計画に基づきまして、たとえば選果とか荷づくりあるいは大口出荷とか規格とかいったような、そういう生産出荷体制を十分に整えていって、いわゆる荷づくり経費とか運賃とか、そういうものはできるだけ合理化していくということが必要であると同時に、さらに市場の整備を考え、あるいは取引の改善を考えていくといったことにも大きな努力をしなければならぬことは当然であります。
さらに一歩進めまして、小売り段階において、いまおっしゃったように、これを改善していくことは当然の問題かと思うのでありまして、したがいまして、昨年あの総合的な小売り店と申しますか、あの趣旨については、私どもも積極的に進めるべきだと思っておりますが、ただ、それが十分にPRも足りなかったと申しますか、説明不足と申しますか、そういうことでああいうふうに終わったということは、まことに残念なことだと思うのであります。ただしかし、この問題は、生産体制というものがいわゆる生産県において相当積極的に考えられると同時に、小売り問題は、消費都市においても相当積極的に考えてみるべきじゃないか、こういうふうに考えます。そういう意味において、たとえば東京を例にとるならば、東京都自体でもこの問題には積極的に乗り出すべきじゃないか。そういうような点を考えますと、やはり国と消費都市とが十分にそういった面の連絡をとり合って、そしてこの総合的な小売り問題の解決に努力をしていく、そういう方向で当然進むべきではないかという考え方を私ども持ち、そういう方面に努力を進めてまいりたい、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/13
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014・舘林三喜男
○舘林委員 生産、出荷の面も非常に大事でございますけれども、流通小売りの段階につきまして、ぜひひとつ大きなウエートを置いていただきたいことを特に希望する次第であります。
次に、今度の法律の大体の構想につきまして、一つの意見がありますが、それは、今度の法律案の中では、指定野菜を指定産地から農協という出荷機関を通じて出荷させるということが大体のスケールのようでございます。そうすると、六品目の野菜を五百二十の指定産地から四つの消費地域に農協の機関を通じて送るということでございます。そういたしますと、それが野菜の全体の需要量のどれくらいかと申しますと、資料を拝見すると、大体七五%だという。私は、七五%がこの法律案の対象になるということは、非常に意義は大きいと思うのであります。そんな意味で、七五%の価格の安定が成功いたしましたら、私は、その意義は非常に大きいということは認めざるを得ないのでございます。ただしかし、野菜については少し性格が違うのではないかという気がする。先ほども申し上げましたように、野菜は季節的に非常に敏感であり、また天候の良、不良によって非常に影響される。経済企画庁の調べによりますると、野菜の入荷量がかりに一%変化するという場合には、わずかの一%の変化だから直ちに価格においても一%の変化があるかというと、そうじやない。入荷量が一%だったら.野菜の消費者価格は二・三%の変化をするという。すなわち、わずかの入荷量のちょっとした違いによって、価格のほうは、ぴんと大きくはね上がったり急落するというのが野菜の性格なんですね。ことに野菜の入荷量が一%はおろか、三%、五%減ったということになりますと、価格が三%、五%ふえるのではなくて、一〇%も二〇%もふえているというのが今日の実情なんです。まるでじんましんにがかったようなもので、ぴんと敏感に響いてくる一種の異常体質のようなものが野菜だというふうな感じがいたします。そうなってくると、七五%だけに限って、これだけ成功したらいいのだというだけでは、私は必ずしも割り切れないという感じがする。それだけでいいのだろうかという感じがするわけです。
それで、私は意見がある。とにかく、たとえば六品目の指定野菜だけに限るというだけの政策でいいかどうかということです。六品目以外で、たとえばその次に大きな出荷量になっているのは、ニンジンとかバレイショのごときはその次に非常に大きな出荷量を示している。あるいは最近は外国野菜のレタスとかピーマンというのが非常に大きな出荷量を示している。そうすると、六品目だけでわが事終われたりと考えただけでいいだろうか。先ほど申し上げましたように、ちょっとした入荷量の変動によって価格がぐっと違ってくるということを考えますと、六品目以外のものが減った、ふえたということによって、全体の野菜の価格に大きな影響を与えやしないかということを考えざるを得ないわけであります。
それだから、第一点の質問といたしましては、はたして今後、農林省としては、六品目だけの指定に限られて当分の間いかれるか、あるいは機動的に、バレイショもニンジンも直ちに指定を追加するとか、あるいはレタスとかピーマンのようなものも必要になったらいつでも追加しましょうという、弾力的な態度に出られるかどうかということをお伺いしたいのが第一点です。
第二点といたしましては、さっきも局長さん言われましたように、いままでの指定が百九十八カ所だったのを五百二十カ所にふやされる。私は非常に賛成だと思うのです。しかし、五百二十カ所だったら、もっと財政的にも許されたらどんどんふやされたらどうか。とにかく来年度までに五百二十カ所指定して、それに限られるおつもりなのかどうか。この二つのところをお伺いしたい。
とにかく七五%までこぎつけたということは、それが成功いたしましたら、非常に成功だと思う。しかし、野菜の場合には、七五%がよくいきましても、その他の分子の影響によって非常に敏感な影響をするということは、いま申し上げたとおりでございますから、七五%だけに満足する政策だけでは、必ずしも物価政策というものは満足できないのではないか。したがって、もっと指定野菜の範囲と指定生産の範囲を広げるということが、今後の政策としては非常に必要ではないかということを私考えますが、この点についての御意見はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/14
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015・小林誠一
○小林(誠)政府委員 お説のとおり、この六品目に限りまして本年度の予算は計上してございます。ところが、ニンジンでありますとか、あるいは長ネギでございますとか、これに続く重要なものがございます。そういうものにつきましては、将来は対象をふやしまして、消費生活の安定に資したいと考えておるわけでございますが、その年次計画等は、まだ予算編成をいたしておりませんので、その点についての具体的な計画はいま持ち合わせていないわけでございます。
また、五百産地ということでございますが、これにつきましても、当然、対象品目がふえますれば、その産地の数もこれをふやしていかなければならぬというふうに考えておる次第でございまして、やはりその点につきましては、今後の消費の動向というものをにらみながら、逐次その対象品目をふやし、あるいは産地の数をふやしていくという方法で進みたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/15
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016・舘林三喜男
○舘林委員 六品目以外には、指定品目を追加するということについて、予算の関係もあるからというお話と承りましたが、これはあとで申し上げますけれども、冒頭に私申し上げましたように、野菜に対する物価対策の成否というものは非常に政治的に大きい。それだから、五十億、百億、二百億ぐらい出すということは、気軽に出すぐらいの決意がなかったら私はよくいかないだろうと思う。それだから、たとえばニンジン、バレイショをふやすには、それに予算が伴うというぐらいの重要さではないだろう。もしもニンジン、バレイショを追加することによって野菜の安定というものが期せられるということだったら、私は幾ら金を出してもいいという気がいたします。それだから、予算なんかあまり拘泥されないで、私は、もっと積極的にこの範囲の拡大については取り組むべきだと思いますけれども、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/16
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017・仮谷忠男
○仮谷政府委員 お説のとおりであります。ただ、六品目だけに限って、あとをどうするかという問題でございますが、六品目で大体七五%程度を占めておりまして、これが大衆野菜としてほとんど大部分消費されておる状態であります。大体野菜の品目を聞いてみますと、百二十品目ぐらいある。あと二五%がその他ということになってきますと、大体六品目の野菜の動向というものが価格を決定するのじゃないかということで、一応六品目を取り上げたわけであります。ただ、ニンジンとかジャガイモといったものを当然考えなければならぬ時期がくると思うのでありまして、これは決して予算という問題ではなくして、いままず六品目で出発して、今後の動向を見てさらに指定追加していく、こういう考え方で、決して予算というものを考えて六品目にしぼったという考え方ではありません。
先ほど局長言い残しましたが、指定産地を弔う少しふやすべきじゃないかという御意見、これは本年度百十二をふやして三百十地域、四十二年度さらにふやして約五百地域を指定しようということでありまして、これは単に指定するだけでなくて、指定すれば、さらに集団産地としての生産体制をつくり上げていかなければなりませんから、これはその県、その地区とも十分連絡をとりながら、充実したものをつくり上げていくという点で、ただ一挙に数をふやすという点については、いまのところ、私どもそれのみにこだわってはならないという考え方を持っておりまして、十分充実して、その上に今後の動向を見てさらに考えていく、こういう考え方を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/17
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018・舘林三喜男
○舘林委員 野菜の指定品目の増大につきましては、ぜひひとつ、さような意味で弾力的にやっていただきたいと思うのです。それから、もちろん指定産地につきましても、準備も整わない、また条件も整わないのにふやせという意味では何もないので、今後として、私は次に申し上げますように、消費地域の拡大と相応じまして、当然ふやしていただかなくちゃいかない点があるだろう、そんな意味で申し上げておるわけでありますから、この点につきましても御考慮いただきたいと思います。
そこで、いま申し上げました次の問題でございますが、指定消費地域というものは四地区に限られている。京浜と名古屋と阪神と北九州、それはもちろん日本の動脈の中心でございますから、四地域の野菜の消費者物価の安定ということが成功いたしますと、これは非常に大きいと思う。他の地域に及ぼす波及効果も非常に大きいし、野菜対策もほとんど大半は成功したということが言えるというような感じもいたすのです。今日、もちろん野菜の価格というものは非常に平準化されている。いなかだから野菜が安いということは言えないような感じがする。高物価のままで平準化されているということが今日の実情だと思うのです。高く買っているところに野菜がどんどん流れていくというかっこうで今日まできているわけです。そんな立場から考えると、一応四大消費地域だけでたくさんだという気もいたしますけれども、冷静に考えると、それはおかしいじゃないか、もっと拡張すべきではないかという気がいたします。たとえば仮谷さんの四国あるいは中国、北陸、東北、北海道、こんなところは、野菜の生産出荷安定法の対象には全然触れていないわけです。しかし、中国とか四国、北海道、東北、北陸あたりにしても、野菜の値段が高いので悩んでいることは事実なんです。そうしますと、やはり重点は四大消費地域に置かれなければいけないことは当然でありますけれども、私は、四大消費地域というものをもっと拡大するということが非常に必要じゃないかという気がいたしますが、この点について、次官あるいは局長の御意見はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/18
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019・小林誠一
○小林(誠)政府委員 いまの予定では、指定消費地域は、お話のように四大消費地域に限る予定で作業を進めておるわけであります。なぜ四大消費地域に限るかと申しますと、これは非常に人口の集中度が高くて、しかもそこに入ってまいります野菜というものの相当大きな部分が、旅荷といいますか、遠距離からの輸送、その県内あるいはその地域内で生産されるものではなくて、他の県から搬入されるものが多いわけでございます。また、そういう関係上、そこの四大消費地域で形成されました価格というものが、その他の市場の価格を指導しているといいますか、引きずっているというような関係もございまして、したがいまして、その量から申しましても、大体この四大消費地域の中央卸売り市場あるいはその類似市場というものを含めますと、約三百万トンくらいの量になるわけでございます。三百万トンと申しますと、大体売られている野菜が八百万トンくらいだと思いますので、その中の三百万トンで、非常に大きなウエートを占めている。したがいまして、そこを対象にやっていきたいというふうに考えておるわけでございまして、その他の地域につきましては、その供給が大体自県産の中で行なわれているというのが多いわけであります。そういう意味におきまして、当然その地域の中の野菜農家の振興あるいはその県の消費者の問題ということで解決できる面も多いだろうと思いますが、なお今後、その点につきましては十分検討の上、将来の方向につきましては十分検討いたしたいというふうにいま考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/19
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020・舘林三喜男
○舘林委員 この非常に有意義な安定法案の恩恵を受けるのは四大地域だけということにつきましては、私何となく割り切れないものがあるわけです。すでに、先ほど一番初めに申し上げましたように、各県で自主的に生産者補給金を渡している制度を持っているところが三十四県あるということを考えますと、四大地域以外でも、野菜の価格の安定を非常に切望しているのじゃないかというような気がいたすわけです。ことに交通が非常に便利になって、輸送が便利になって、高物価の形で全国平準化しているということはいま申し上げたとおりです。一応これでやられるにいたしましても、今後としてはなるべくこの地域を広げていただく。できましたら、人口五万以上の都市が二百八十くらいあるそうですか、全部にそれを適用する。あるいはそれができなかったら、中央卸売り市場の設置が認められている十五万以上の都市くらいは、思い切って漸進的にこれをやるというくらいの決意を持っていただきたいということが私の希望でございます。
それで、時間がありませんから、簡単にあと一、二の問題を質問いたしたいと思うのですが、次に、野菜指定産地の指定の要件でございます。この法律の中では、四条の二項に、作付面積その他いろいろの条件があるようでございますが、何か参考書を見ますと、カンランについては五十ヘクタールとか、トマト、キュウリは三十ヘクタールというような作付面積の制限があるということでございます。これにつきましては、私は次のような考えを持っておるのです。たとえば、よく草地の造成をやれと盛んに奨励されておる。しかし、やはり補助の採択基準というか、許可の基準というようなものが、草地なんかについては非常にたくさんのもの、三十町歩、五十町歩要求されておる。土地改良についても、最小限二十町歩が補助の対象になっておる。あるいは構造改善についても、相当広い面積、十町歩、二十町歩というようなこと、そんな採択基準から考えますと、山村あたりの非常に行き詰まっておるところは、ほとんどそんな恩典に浴することができないというような感じがいたすのであります。やはり霞ケ関の農林省にいたり、あるいは国会のこの場にいますと、五十町歩とか百町歩と一言で言いますけれども、現地に行って、その五十町歩、百町歩というものがいかに広いものであるか、あるいは五十町歩、百町歩というものを一括して求めるということがいかに困難であるかということを私ども非常に如実に感じるわけであります。だから、ぜひ私がお願いしたいことは、野菜指定産地の指定の要件というもののうちの基準、そんなものについてはなるたけひとつあまり厳格にやっていただきたくない。なるべく地元が希望するならそれを入れてやろうというような気持ちで、要件、基準をきめていただくということをお願いいたしたいのでございますけれども、局長のこれに対する御意見はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/20
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021・小林誠一
○小林(誠)政府委員 指定産地の指定基準の場合の作付面積の問題でございますが、これは土地改良の採択基準とは多少異なっております。土地改良の採択基準でございますと、団地としてまとまっていなければならないということがあるわけでございます。しかし、この野菜の指定産地の場合の要件の作付面積というのは、それが団地としてそこにまとまっているということを必ずしも要件といたしておりません。したがいまして、数カ町村にまたがって行なわれる場合が多いわけでございます。そういう意味におきまして、特にこの土地改良の採択基準とは比較はできないと思いますけれども、この作付面積その他の点につきましては、これは今後その実情に合うように、十分これは弾力的に検討いたしたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/21
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022・舘林三喜男
○舘林委員 もちろん、土地改良の採択基準と違うことは私としてもわかっているわけです。ただ、私が言いましたことは、採択基準とか要件をきめる場合に、三十町歩とか五十町歩ということを東京で机上の空論できめるということについての危険性を私は特に言いたいのです。実際三十町歩、五十町歩というと、決して小さいものではないのです。現場に行ってみると、非常に広いのです。それだから、県庁とか農協とか市町村でも、その場所の選定ということについて非常に苦労しておるわけなんです。役所のほうで簡単に基準を紙の上できめられることが、それを実施する過程においては非常にむずかしいということをひとつ考えていただいて、指定基準をきめていただくということを私はお願いしたいわけであります。
それで、その次の問題は、生産出荷近代化計画の問題でございます。私は先ほど言いましたように、この法律の中で、この近代化計画というものは非常な重要性を持っておると思う。もちろん、それは計画が重要でなくて、計画に基づいて実施される場合には非常に重要だという意味なんです。と申しますのは、この法律の五十九条で、出荷について大臣、知事が勧告することができるという規定があります。しかし、出荷については勧告の規定がありますけれども、生産については勧告とかそれに似た規定というものは何もない。そうすると、生産面をどうして刺激するかというと、生産を刺激する要素としては、価格が暴落したときに、保証価格と実際の価格の差額として生産者補給金をやるという規定があるだけなんです。それだけでははたして十分に生産を刺激することができるかどうかということについて、私は疑問を持つのです。だから、むしろ生産を刺激するという観点からいたしますと、生産出荷近代化計画の完全な実施ということこそ、私は大きな生産の刺激になりはしないかということを言いたいのです。そんな意味で、生産出荷近代化計画というものがこの法律の中で持っている意義は非常に大きいというのはその点なんです。そういたしますと、生産出荷の近代化の推進といたしましては、いただきました資料によりますと、近代化の施設としては、七十五カ所で一億四千万円、それから基盤整備としては、やはり七十五カ所で一億七千二百万円を計上しておられる。そして土地改良とか、作付地の集団化とか、農作業の機械化とか、その他各種の共同化を行なおうということがあるわけです。私は、このねらいとか構想というのは非常にいいと思いますけれども、はたして三億一千万くらいのわずかな金で十分に目的が達するかどうかという問題。たとえば農地局の予算のごときは、ことしの農林予算全体が四千五百億ありますが、そのうちで一千億は農地局の予算、土地改良とか基盤整備というものの予算として注がれている。そうすると、野菜の出荷近代化のための基盤整備としてわずか一億七千二百万円しか組んでないというようなことに、実は私はちょっとこだわりを感ずるのです。それで、もちろん、予算もきまったときですから、ことしはどうといきませんけれども、私は、生産出荷近代化計画というものは、この法律の持っている意義が非常に大きいのでございますから、ひとつこれにずっと予算的なウエートを置かれることが非常に必要じゃないかということを特に強調いたしたいのですけれども、この点につきましての局長あるいは次官の御意見はいかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/22
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023・小林誠一
○小林(誠)政府委員 お説のとおり、今年度の野菜対策の経費でございますが、これは六億三千万円、農地局計上分を入れまして八億円程度でございます。これは本年度計画を立てまして、その承認をいたしまして、さらにそれを事業の実施に移すということは、予算のたてまえといたしまして、なかなか早急には実施できない。この七十五産地については、三カ年計画でこれを実施するということで、三、四、三で実施するという計画を立てておりまして、その三分を計上してあるわけであります。したがいまして、七十五産地で三億何がしという予算ではございませんので、将来その予算の増額、補助の増額ということは当然行なわれるわけでございまして、今後私たちは、この法律に基づきます生産出荷近代化計画が軌道に乗りますれば、それにつきましての予算の裏づけといたしましては十分努力いたしたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/23
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024・舘林三喜男
○舘林委員 くどく申し上げますが、私は生産を刺激するということが非常に大きな問題だと思いますが、それをやるには、単に生産者補給金というだけでは足りない。法律の条文の構成からいっても、生産者補給金のことが一番条文に多いのですけれども、重点は、むしろ生産出荷近代化計画が充実するということに私はあるだろうと思うのです。ぜひそんな意味で、せっかくいい構想を立てられたわけですから、この内容の充実につきましてなお一そうの御努力をお願いいたしたいということでございます。
それで、最後に、あと二点だけ御質問申し上げたいと思いますが、全体としてこの法律案を考えてみますと、第一は、大臣が需要の見通しをやる、そして大臣が指定消費地域とか指定野菜とか指定産地の指定をやる、それから知事がいま申し上げました生活出荷近代化計画というものを樹立される、それから最後に、野菜生産出荷安定資金協会が生産者補給金を支出する、これが全体の法律の体系になっているわけですが、いかにも体系化されて整然としているようでございますけれども、冷静に考えてみますと、何となくどこかかすんでいるという感じがする。大事なくぎが一本抜けているのじゃないかという気がいたすのです。ほんとうにこれは失礼でありますけれども、そんな感じを免れることができない。はたしてこの法律によっていま一番重要な政治問題であります野菜の生産、出荷の安定が期せられるかどうかということについては、私はほんとうに与党の立場から心配しているわけなんです。はたしてこれでいいだろうか。そんなことから考えますと、どこに一本くぎが欠けているかというと、私のしろうと意見では次のような点なんです。
それは、やはりそれだけの体系の中でこれを強力に推進する一つの機関というか、そんな力というものを入れることが必要じゃないかということなんです。実際、いまこの法律だけの立場から申しますと、出産数量も予定どおりいくだろうか、出荷数量も予定どおりいくだろうかということになりますと、私はなかなかむずかしいと思う。野菜作農家というものは五百六十六万農家のうちで二四%もある。しかし、それは全体としては非常に零細経営であって、何か平均すると七反四畝というのです。そんな零細農家がつくった野菜について、目先でもすぐできたものを売らなくちゃいけないという場合に、はたして生産、出荷の軌道に乗っていけるかどうかということについては、私は非常に疑問を持たざるを得ない。ところが、現在では、そんなものを強力に推進する役割りとして、一応しいてあげると、農林省の指導下にあります全国の青果物の流通改善協会というものがある。それから農政局ごとには地域の流通改善協議会というものがある。また県ごとには青果物の出荷調整協議会というものがある。それでやっていっているわけでございますが、そんなものが当然流通改善とか出荷調整の強力な機関であるべきにもかかわりませず、それが単に情報交換だけの機関になっているというような気がいたすのです。それだから、さような既存の機関にほんとうの筋金を入れて、この法律全体を強引に押しまくるような力を与えるととができないかどうか。これは私はしろうとだからよくわからない。あるいはまたこれを推進するための一つの別の強力な機関が必要じゃないかという感じがするわけです。とにかく私の感じとしては、この法律自体はいかにも整然としているようだけれども、どこかかすんでいて、一本くぎが抜けている。それに魂を入れて強力に推進される活力を与えるにはどうしたらいいかということについては、私は案がない。ただ、これについては、私の率直な意見として、何となくかすんで見えるが、これでいいだろうかという問題を投げかけて、ひとつ局長の御意見を承りたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/24
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025・小林誠一
○小林(誠)政府委員 この野菜の問題は非常にむずかしい問題でございます。したがいまして、この法律ができたからといって、すぐ野菜問題が解決するというふうにはわれわれは考えていないのでございます。この法律にも、農協等によって設立します資金協会というところに、随所に農業協同組合が出てくるわけでございます。この農民の自主的な共同組織というものが野菜の生産、出荷の安定に果たすべき役割りは非常に大きいと考えておりまして、私たちは、そういう農家の皆さん方がつくっておられます団体の自主的な活動というものに対しまして、いま非常な期待を持っておるわけでございます。それに対しまして国としてはこれだけのお手伝いをする。両々相まちませんと、この法案の成果というものはなかなか出てまいりませんので、率直のところ、舘林委員のおっしゃいましたように、この法案ですべてが解決するということは毛頭考えていない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/25
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026・舘林三喜男
○舘林委員 率直な御意見を承りましたが、私も全く同感でございます。ただ、とにかく物価政策そのものを振り返ってみますと、過去六、七年政府は全力をあげて物価政策に取り組んできたけれども、なかなか成功しない。やはりこれは当面の表面的な、皮相的な政策ではどうしても乗り切れない構造的な問題になっているわけなんです。
そんな意味で、私は、この法律案はたくさんの欠点を持っておりますけれども、とにかく野菜政策についての一歩前進だということはもうはっきり言えると思うのです。そんな意味で、私の最後にお願いしたいことは、これにはいろいろ欠点がある。しかし、とにかくやらないよりも私は非常な前進だと思うのです。それだから、どんどんこれをやっていただいて、もしもその間にいろいろ欠陥がありましたら、どんどんためていただく。また追加しなければならない点があったら、どんどん気軽に追加していただく。いわゆるトライアル・アンド・エラー、とにかくトライアルすることが一番大事だ。あくまでも欠陥をどんどんためていただいて、完ぺきな野菜対策をつくっていただくことをお願いいたましす。そんな意味で、一里塚としてこの法律案の存在価値があるということで、私は賛成いたします。賛成の討論に入るのはまだ早いのでありますが、これで一応私の質問は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04419660602/26
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027・中川俊思
○中川委員長 この際、暫時休憩いたします。
午後零時一分休憩
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