1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年四月十三日(水曜日)
午前十時五十分開議
出席委員
委員長 八田 貞義君
理事 上村千一郎君 理事 小沢佐重喜君
理事 谷川 和穗君 理事 南 好雄君
理事 八木 徹雄君 理事 川崎 寛治君
理事 長谷川正三君
大石 八治君 久野 忠治君
熊谷 義雄君 坂田 道太君
床次 徳二君 中村庸一郎君
長谷川 峻君 高橋 重信君
鈴木 一君
出席国務大臣
文 部 大 臣 中村 梅吉君
出席政府委員
文部政務次官 中野 文門君
文部事務官
(大臣官房長) 赤石 清悦君
文部事務官
(社会教育局
長) 宮地 茂君
文部事務官
(文化財保護委
員会事務局長) 村山 松雄君
委員外の出席者
議 員 長谷川正三君
専 門 員 田中 彰君
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四月十三日
委員重政誠之君及び松山千惠子君辞任につき、
その補欠として長谷川峻君及び内海安吉君が議
長の指名で委員に選任された。
同日
委員内海安吉君及び長谷川峻君辞任につき、そ
の補欠として松山千惠子君及び重政誠之君が議
長の指名で委員に選任された。
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四月六日
学校給食法の一部を改正する法律案(二宮武夫
君外二十一名提出、衆法第三一号)
同月七日
公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数
の標準に関する法律の一部を改正する法律案(
長谷川正三君外九名提出、衆法第三二号)
同日
なぎなたを中学校以上の女子に正課として採用
に関する請願外十八件(押谷富三君紹介)(第
二五八一号)
同(加藤高藏君紹介)(第二五八二号)
同(菅野和太郎君紹介)(第二五八三号)
同外九件(黒田壽男君紹介)(第二五八四号)
同(毛利松平君紹介)(第二五八五号)
同(森下國雄君紹介)(第二五八六号)
同外二件(吉田賢一君紹介)(第二五八七号)
同(山下榮二君紹介)(第二五八八号)
同外二件(小山省二君紹介)(第二六二二号)
同外一件(菅野和太郎君紹介)(第二六四五
号)
同外二件(長谷川正三君紹介)(第二六四六
号)
同(渡辺美智雄君紹介)(第二六四七号)
同(有田喜一君紹介)(第二六七九号)
同(山下榮二君紹介)(第二六八〇号)
同(登坂重次郎君紹介)(第二七三七号)
同外三件(臼井莊一君紹介)(第二七五五号)
同外一件(田中榮一君紹介)(第二七五六号)
義務教育における習字教育振興に関する請願(
佐々木義武君紹介)(第二六二三号)
同(正示啓次郎君紹介)(第二六四八号)
同(岡崎英城君紹介)(第二六八一号)
義務教育における珠算教育強化に関する請願(
河野密君紹介)(第二七五七号)
学校図書館法の一部改正に関する請願外一件(
堀昌雄君紹介)(第二七五八号)
は本委員会に付託された。
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四月八日
私立大学に対する国庫助成に関する陳情書
(第二四七号)
学校保健に関する陳情書
(第二八〇号)
埋蔵文化財(遺跡)の保存等に関する陳情書
(第二八一号)
公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数
の標準等に関する法律の改正に関する陳情書
(第二八二号)
在日朝鮮公民の学校教育に関する陳情書
(第三〇九号)
奈良県に国立青年の家設置に関する陳情書
(第三一〇号)
養護教諭及び事務職員の必置に関する陳情書
(第三一六号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数
の標準に関する法律の一部を改正する法律案(
長谷川正三君外九名提出、衆法第三二号)
国立劇場法案(内閣提出第五七号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/0
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001・八田貞義
○八田委員長 これより会議を開きます。
長谷川正三君外九名提出の公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/1
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002・八田貞義
○八田委員長 提出者から提案理由の説明を聴取いたします。長谷川正三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/2
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003・長谷川正三
○長谷川(正)議員 ただいま議題となりました公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(以下標準法という)の一部改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概略を御説明申し上げます。
今日、世界の科学、産業、文化の進展はめまぐるしいものがあり、国際社会におけるわが国の地位の向上をはかるためには、その基礎となる教育の振興について格別の努力がはかられなければならないことは論をまたないところであります。
しかるに現状を見ますと教育条件の整備は決して十分とはいえず、施設設備の貧困にも増して学級編制基準並びに教職員の配置基準については劣悪な状態にあると言わねばなりません。
試みにわが国の学級編制基準を諸外国の編制基準と比較してみますと、各国より十人ないし十五人を上回っているのが現状であります。また教職員の配置基準についても全く同様なことがいえます。
今日、週四十時間制の実施は世界の趨勢であり、いち早く社会主義諸国、欧米資本主義の先進諸国においては実現をみているところです。ところが現行教職員定数の配置基準では、週三十時間をこえる授業時間さえ生じています。さらに授業前準備、事後処理、雑務等を加えますと、実におびただしい超過労働を行なっており、文部省が先に調査した教職員勤務量調査の結果においても、週十一時間余りの超過労働となっております。
以上のような悪条件を改善し、教育水準の向上をはかるため、昭和三十三年に標準法が制定され、さらにさきの第四十五国会において同法が改正され、一学級五十人の学級編制標準を四十五人にするとともに、教職員定数の算定標準を改善したのでありますが、いまだもつて十分なものということはできません。
よって、この際、学級編制及び教職員定数の標準の、なお一そうの適正化をはかるため所要の改正を加え、もって国際水準に近づけることはきわめて適切な処置であると考える次第であります。
次に法律案の概要について御説明申し上げます。
第一は、学級編制に関する標準について、一学級の児童または生徒数を四十名とすることであります。
第二は、教職員定数の標準について、学校の総数に二を乗じて得た数を加えるとともに、学校規模別の乗ずる数を改善する等、所要の改正を行なうことであります。
特に、養護教諭、事務職員はこれを必置することとし、なお、新たに学校給食事務職員を確保しようとするものであります。
本案を昭和四十一年五月一日から施行することによって、教職員定数は約十二万五千人の増加となりますが、もちろんこれらにつきましては、教員養成機関における養成可能人員を考慮したことは申すまでもありません。
なお、この法律施行に要する経費は、初年度約百十四億円、総額は約二百四十六億円の見込みであります。
以上が法律案を提出いたしました理由及び内容の概要であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/3
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004・八田貞義
○八田委員長 以上で提案理由の説明は終わりました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/4
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005・八田貞義
○八田委員長 次に、国立劇場法案を議題とし、質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、これを許します。長谷川正三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/5
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006・長谷川正三
○長谷川(正)委員 国立劇場法案が提出されまして、わが国の古い、しかも価値ある芸能が保存されるということはけっこうでありますが、しかし当初からこの劇場の設置が各方面から要望され、そのために種々の手続がとられて、本法案が提出されるに至ります経過をいままでもいろいろと伺ってまいったのでありますが、少なくとも国立劇場というそのことばから受ける国民の一般的なイメージから申しますと、これはわが国の芸術の伝統的なものはもとより、現代におきましてのあるいは将来に向かっての国の芸術の非常にすぐれたものがここに集中的に育てられるというようなことをイメージとして持つと思うのであります。もとより芸術の基礎には真に自由な創造的活動というものが根底になくてはなりませんから、芸術そのものは、何も国が一つの国の権力を持ってこれを統制したりあるいはこれを特殊な方向に育てるというようなことは、これは厳に戒めなければならないことと思いますけれども、しかしながら、反面また、国立劇場というからには、非常に広い分野の国民の期待にこたえ得るものでなければならないという一面もまた見落としてはならないと思うわけであります。そういう面から見ますと、今回いよいよ煮詰まって出てきましたこの法案は、伝統芸能というような意味も非常に狭く厳密に限定された解釈のもとに、劇場の設置なり今後の運営が考えられておるようでありまして、この点についてすでにこの法案の内容が明らかにされますと、各方面から非常にそれに対する不満、批判というものが起こり、また将来に対しての心配がわき起こっておるというのが現状ではないかと思います。そういう点につきまして、どうしても私どももこのように狭くしぼったことについての理由が十分胸に落ちませんので、それにつきまして、すでにかなりの論議が尽くされてきておると思いますけれども、再度担当者並びに大臣のほうから、要約して本法案をこのような形にした意義をお答えいただきたいとともに、現在起こっておりますたとえばもう少し広い分野を含むような考え方がないのかあるのか、その点について具体的に明確にお答えをお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/6
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007・村山松雄
○村山政府委員 経過につきまして、簡単に御説明申し上げます。
すでに経過概要につきましては資料も差し上げてございますとおり、この問題は、話の発端は明治にさかのぼるわけでありますが、今回の国立劇場の設立計画といたしましては、大体昭和三十年ごろそのための調査費が計上されてから始まるものでございます。
調査費が計上されまして、まず昭和三十年に芸能施設調査研究協議会という事実上の懇談会をつくりましていろいろ相談いたしまして、次に翌年の三十一年の四月に国立劇場設立準備協議会というものが閣議決定によりまして審議会に準じた組織としてつくられまして、これから話がだんだんと具体的に検討されるに至ったのであります。
そこで最初に問題になりましたのは、何をやるべきかということと、敷地をどこにするか、どういう構想の建物をつくるかというようなことを中心として検討されまして、最初にまとまった考え方が出ましたのは、三十一年の八月にその準備協議会の中間答申といたしまして、大小二つの劇場をつくる、これはいずれも伝統芸能を中心としたものであったのであります。これに対しまして、伝統芸能だけでは国立劇場としては不十分である、現代芸能、洋楽、洋劇等も入れるべきであるという議論が起こりまして、それらを含めて検討されました。並行的に敷地の検討がなされたわけであります。敷地といたしましては、昭和三十三年の十一月に、現在の千代田区隼町に約三万二千平方メートルの敷地が、国有財産中央審議会できまりました。
敷地がきまりましたので、準備協議会におきましても、やや具体的に内容の検討をしたのでありまして、このころから現代芸能を加えるべきだという意見がかなり強く前向きになってまいりまして、三十四年の六月には、現代芸能を含めた四つの劇場を含む一番大きい計画が協議会によって答申されたわけであります。これを敷地に当てはめていろいろ検討してまいりますと、建築基準法その他の関係で、そういうものは技術的に現在きまっておる敷地ではできない。それからそもそも国立劇場のあり方につきましても、何を重点的にやるか、いかなる理念でやるべきかというようなことがいろいろ論議されまして、最終的には三十六年二月に、まず伝統芸能を主体とする大小二つのホールを持つ国立劇場の設立案がきまったわけでございます。
そこで、この準備協議会の決定案に基づきまして、建物の建築計画につきまして公募いたしまして、案がきまり、大蔵省と予算の折衝をいたしまして、現在見られるような建物の設立計画が三年計画で行なわれることにきまりまして、必要な予算が計上されて、本年の九月には建物は竣工する。建物竣工を待って業務を開始すべく関係の法律案が提案された、こういう経過になっておるわけであります。
そこで問題は、三十六年に現代芸能関係を当面の国立劇場計画からはずした以後どうするかという問題でありますが、これをどうするか十分決定せずに、とりあえず伝統芸能で発足するということになったと私どもは承知しておりまして、現代芸能の取り扱いにつきましては、これはもちろん振興につとむべきものでありますが、いかなる形で振興するかというようなことにつきましては、将来の研究課題として残されるに至ったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/7
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008・長谷川正三
○長谷川(正)委員 ただいまの事務局長からの御答弁は、すでにいままで何回か御説明のあったことの繰り返しであったように承ったわけであります。私が特に伺いましたのは、すでに三十四年の六月、準備会の答申では、先ほどお答えがありましたように、一から四まで、現代芸能を含めまして構想が立てられた。ところがそれが建築基準その他の関係で、予定された敷地ではできないということで、三十四年の九月八日の結論と申しますか、二つ案がありまして、その第一案のほうも、現代芸能を伝統芸能と並べて、むしろ現代芸能のほうが二千人収容の案を出しておる。それがだめな場合には第二案として伝統芸能の二つというのが答申され、その後さらに修正されて最終的にいまのような形になったという御経過でありますので、この落とされた部分が敷地の制約というところからきているのか、予算の制約というところからきているのか、あるいは基本的な方針の変更というところから、考え方の相違からきているのか、この点をまず明らかにしていただきたいことと、もしこれが敷地並びに予算等の制約できておるとすれば、当然将来について、最初の大きい構想を十分生かすという考え方がこれになければならないと思うのです。そういう点はどうなのかということをもう一ぺん局長並びに大臣の御決意も含めて伺えたら伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/8
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009・村山松雄
○村山政府委員 現代芸能まで含めた非常に大きな国立劇場の創設計画は、設立準備協議会の答申としては提案されたわけでありますが、それを受けまして、文化財保護委員会を含めまして文部省においてどうこなすかという段階になりまして、そういうものまで含めた国立劇場をつくるべきであるという方針がきまったことは、私は承知していないわけでありまして、文部省として、国立劇場設立計画として最終的にきめたのは、現在のような形の伝統芸能を主たる対象とする国立劇場案である、かように承知いたしておる次第であります。
そこで、なぜそうしたかという問題につきましては、一つは何と申しましても敷地や予算の制約の問題があろうかと思います。現代芸能のほうは、つくるとすれば、小さいものでは極端にいえば意味をなさない、かなり大きいものでなくてはならぬ、こういう御要望があったわけであります。そこで、ざっくばらんに申し上げれば、伝統芸能のほうが比較的小さいもので済むという点が
一つあったように聞いております。それから伝統芸能と現代芸能が同時にできないとすれば、どっちがより緊急であるかという、これは比較考量の問題でありますが、それにつきましては、何と申しましても手を伸ばさなければ衰亡するであろう伝統芸能のほうが先であるということ、これは現代芸能の関係者も含めまして了承された線であるというぐあいに承知しております。
そこで最後の問題は、現代芸能というものを保存、振興、育成というような面で伝統芸能と全く同じに扱うのかどうかという点でありますが、その点につきましては必ずしも十分解明されないで、どちらかといえば敷地の制約とか、それから取り上げやすいほうを取り上げるとか、それから、より切実なものを先にやるというようなことから、まず伝統芸能をやるというぐあいにきまったものと、私はかように承っておるわけでありまして、その線で現在の計画が進められております。
そこで、いま法案の問題で、議論としてあったものをなぜ痕跡も残さないようにのけたかという問題であります。まあこれは法案の性格でありますが、何と申しますか、基本法的なものあるいは憲章的なものであれば、これは将来の構想まで含めた立法をなす例もありますが、国立劇場法案は、何と申しましても特殊法人である国立劇場の設置、それからそのなすべき業務を中心とした法案でありまして、その法案の表現は、現在やろうとしておる業務を忠実に反映したものでなければならないわけであります。現在考えておりますのは、伝統芸能の自主公演、伝承者の育成、調査、研究というようなことでありまして、それ以外のことは付帯業務として考えておるわけでありまして、主たる業務のほうを目的にも掲げて、付帯業務のほうは目的に掲げるまでもなく、実際上の運営の問題であるということで、法案の表現の中では出ておらないわけであります。さればといって、現代芸能を全くシャットアウトするような考えは毛頭ございませんので、でき得る限り現代芸能の利用にも供するように運営をはかっていく所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/9
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010・中村梅吉
○中村(梅)国務大臣 参議院のほうから迎えに来ておりますので、一言私からもお答えを申し上げて、暫時退席をさせていただきたいと思います。
いままで山村局長からるる御説明申し上げてまいりましたし、また資料としてもお配りしてございますような経過をたどってきまして、そして昭和三十六年のころに伝統芸能を中心とする国立劇場にしようという結論になったわけであります。ここに至るまでには、いろんな御承知のような経過があったわけです。したがって、新劇というものを忘れておったわけではないということは、過去の経過を見ても明らかだと思うのです。ただ場所等の関係、あるいは建蔽率等の関係で、どうしてもこの程度の設備しかできない。そうだとするならば、やはり、ほうっておけばだんだん衰亡して、伝承者もなくなってしまうだろうというおそれのある伝統芸能を中心とした劇場にしようということになって、そう結論づけられたのが昭和三十六年ですから、新劇も一緒にあそこでやれというのだったら、そのころから運動なり声が起こらなければならなかったのですが、そのころの協議会には新劇関係の方々も代表者が入っておりまして、議論を尽くした結果、どうもこれでしかたがない、さしあたりはやはり何といいますか、文化財保護のような意味で、ほうっておけば古いわが国の伝統ある芸能というものが消えてしまう、これはやはり自主公演をやったり、伝承者の養成をやったりして保存をするほうが先決問題だろうということに全体の意見が一致して、この国立劇場の構想が固まり、すでにその構想で建築も完成をしてきたという現状であるわけでございますから、この劇場としては、やはり自主公演をする劇は伝統芸能を自主公演する、あるいは伝承者の養成をする。しかしあいた日もできるわけですから、まあ大体いまの構想では、多分三分の一くらいになっておるのじゃないかと思うのですが、そのくらいはあいた期間ができますから、その期間は新劇等にも、舞台が活用できる限りは活用して使用をさせる。しかし自主公演ということはやはりこういう経過にかんがみまして、伝統芸能だけの自主公演、特殊法人の責任を持って主催をするものは伝統芸能にしよう、こういうことになっておりまするわけでございまするから、私どもも新劇関係については、この経過等から見ても、今後引き続きひとつ世論あるいは関係者の熱意等を聞きながら、慎重に検討さるべき問題であろう、こう思っておるような次第でございます。
なお、間もなく本会議が終わりましたら、後刻参りますが、一応それだけお答えをいたしまして、失礼いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/10
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011・長谷川正三
○長谷川(正)委員 大臣が退席されましたから、ごく基本的な方針についてはまた大臣がおいでになってから御質問しなければならないと思いますが、その間時間があるようですから、少し御質問を続けさせていただきたいと思います。
そこで、いまのお話を伺いますと、要するに今回の国立劇場は国立劇場という名ですけれども、これは国立古典劇場と申しますか、伝統芸能劇場、そういう名前はあまり適切な名前じゃないでしょうが、まあいわば内容にふさわしい名前を冠すればそういうことになるのじゃないかというふうに考えるわけであります。そして新劇その他の現代芸能につきましては、これはまあ会場があいたときに使わしてやるという程度であって、無視していないといっても、これは中心の対象としてはこの国立劇場からは全然除外されておると率直に言ったほうがはっきりするのじゃないかと思うような御答弁でした。あくまでこれはきわめて厳密に限定されたところの伝統芸能の保存、公開、養成のための劇場であるというふうにとれるわけでありまして、そういうふうに割り切るとすれば、そのこと自体を私は頭から否定する必要はちっともないのであります。ただ国の大きな芸術に関する政策の基本的な方針として、国立劇場というものはもうこれでいいのだというお考えに割り切ったともいえないし、はっきりそうではない、将来は大きく他の分野についても国立劇場を、たとえば第二劇場をつくるなり、そういう構想は持っておりますのかというとそうでもない。その辺がどうも歯切れの悪い御答弁なんですが、これはどっちなんですか、そこのところをもう少し明確にお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/11
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012・村山松雄
○村山政府委員 新しいものに対する態度は、御指摘のように、率直に申し上げますと、歯切れの悪い実情であります。シャットアウトするつもりもございませんが、さればといって、何かやるとすればどうやるのだという御質問に対しましてお答え申し上げる具体的な問題は、現在のところ持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/12
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013・長谷川正三
○長谷川(正)委員 そこで私は、この今回の法案で対象とされておる伝統芸能以外のもう少し広い分野のわが国の芸能についてどうするかということを、こういう法案を審議する機会に、少なくとも将来の展望を明確にしておいていただきたいということが一つあるわけです。これはこの劇場設置に至る経過の中にもすでにたくさん出てきておったことなんですから、当然、もし今回のこの法案の中でその部分は切り捨てられるとすれば、これについてもあわせて明確な方針を出しておいていただきたかった、また少なくともこの法案審議の中でこれを明確にしておかないと、将来もう一ぺんこういう問題を取り上げるということが非常に遠回りをするのではないかという心配があるわけです。ですからその点を、これは大臣からほんとうは答弁いただきたいわけですが、政務次官からお答えいただいてもいいし、また後ほど大臣からも伺おうと思うのですが、それはこれ以上は押し問答になりますから一応保留いたしまして、今度伝統芸能の問題について少しお聞きしたいと思うのです。何か宮地さんおっしゃりたいことありそうですか、何かありますか。——それじゃ一応ここで質問ということにして答弁を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/13
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014・宮地茂
○宮地政府委員 古典芸能以外の現代芸能といわゆる古典でないほうの芸術関係の演劇につきましては、文部省といたしましては芸術文化の振興という点から従来からこれにいろいろな施策をしてきておるところでございます。たとえば芸術祭のような催し、金銭的にはわずかではございますが、すでに二十年近くの伝統を持つ芸術祭等を通じての演劇振興をいたしておりますし、また数年前からでございますが、特に創作活動等を中心にいたしましてそういう演劇関係の団体に助成金の交付をいたしております。そのほかいろいろな顕彰、選奨といった、主としてそういう関係者のいままでの努力に対しましても精神的な報いというようなことで、金銭的にはわずかでございますが、そういった一連の芸術振興策を打ち出しております。もちろんこれで十分ではございませんし、まだまだこうしたことはもっともっと努力しなければならない問題と思います。と同時にその関連におきましてそういう方々に対する劇場ということも一つの関連する大きい問題かとも思います。したがいまして、先ほど大臣も答えましたように、今回の国立劇場は主として古典芸能の保存、振興、ということが中心になっておろうかと思います。したがいまして主催公演等はされませんが、三分の一程度あいておるときには古典でないものも積極的に取り入れていただくようにいたしたいと思いますし、また独自のそういう劇場ということにつきましては、従来からの経緯もございますし、また関係者の熱意、希望、意見等を勘案して十分将来の問題として検討していくべきだ、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/14
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015・長谷川正三
○長谷川(正)委員 ただいまの御答弁はそれとして、広い分野に文部省として十分関心を持っておるという意味での御答弁はよくわかります。しかし国立劇場をつくりましたについては、いま御答弁のあったようなところからさらに一歩を進めてこういう劇場がつくられた、こういうふうに私どもは前向きの姿勢で解釈をしております。そういう意味でさらに伝統芸能以外の分野の芸能につきましても前向きの姿勢の施策をこの際あわせて明確にしておいていただきたいということを再三申し上げておるわけなんです。
そこで、その問題については一応保留しまして、伝統芸能というほうの問題に限って少し論議を進めてみたいと思うのですが、伝統芸能が、確かに今日のいまの世の中の芸術を国民が迎える実態の中で、このままにほうっておけばそういう古典的なものが滅びていく。もう非常な危機に瀕している。これは再三指摘されたところです。これをこの際国家が国立劇場をつくり、その中でこれが十分保存されるように、こういうお考えはわかるのですが、しかしこれとても予算の裏づけや今後の管理運営をよほど適切にしませんと、私は、なかなか口で言うようにうまくいかないんじゃないかと心配するわけです。
まず第一に、私は芸能人でもありませんし、そのほうの深い研究家でもないのですから、しろうとでありますけれども、その考えから見ましても、この伝統芸能をまず保存するということの中には、すでに現在もう事実としては失われているようなものを研究、発掘して、そうして再現をして、江戸時代にはこうであったのだということを明らかにして、それをもう一ぺん保存して、いつでもそれが見られるような役者の状態も、大道具、小道具もつくっておくという、こういう面が私はあると思うのです。これはそのときの時代の国民生活と直接関係なしに、歴史的事実としてこういう古典があり、非常にこれは歴史的に見てすぐれておる。しかしこれは直ちに現代の国民生活にすぐすべて大衆的にアピールするしないということを一歩離れて、すぐれたものとして保存するということが一つあると思うのです。
それともう一つは、古典の中のすぐれたものがいろいろ他の芸術に影響をしていくという面がありますが、これはこの劇場ではあまり取り扱う部門じゃない。たとえば能率のすぐれたものの精神なり形式の一部が映画の中へ取り入れられていくということは、従来も幾つかあったと思う。そういう意味で野心的な監督がいろいろ日本の古典の中から学び取ったものを映画として、それを近代芸術の中に再現している、あるいはそれを開花、発展させている、こういうような問題があると思います。そういう分野はここでは扱わないと思いますが、古いあるがままの古典芸能をそのままに再現し残すということとともに、古典そのもの、民族の精神、そういったものをいまの生きた時代と結びつけて古典としてそのまま発展させるという面があると思うのです。それにはやはりすぐれた伝承者があり、すぐれた俳優なりあるいは創作家なり、そういうものが十分に動員されてやらないと、これはなかなかうまくいかないのではないかと思うのです。そういう点について、この法案ではどの程度まで掘り下げて考えておられるのか。それは数字的に具体的にこういうふうに役者の生活を保障する、あるいはその古典をさらに前向きに創造していくような作家というものについての養成についても、このくらい考えている、——学校が併設されるというようなことは出ておるようでありますけれども、そういう点について、その伝統芸能を公開しあるいは伝承者を養成し、調査、研究をする、こういうふうにここにうたっておりますが、これ自体もこの法案の中で十分はたして保障されるのかどうかという点について、私はまだ非常に危惧を抱くのですが、何かなるほどと私の胸に落ちるような御答弁がいただければありがたいと思うのです。そういう点についてのお考えをひとつ掘り下げて承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/15
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016・村山松雄
○村山政府委員 国立劇場ができまして、従来のやり方と抜本的に変わったような新しい演劇の上演方法を直ちにとれるものではないと存じます。私どもは、伝統芸能は重要でありますが、長い伝統の中に好ましからざる面が膠着していることも承って知っておりますし、それからすたれておって掘り起こさなければ日の目を見ないようないろいろな脚本だとか、それから上演の様式だとか、振りつけだとか音楽だとか、そういうものがあることも承知しておりまして、そういうものをある程度復活上演をするというようなことも国立劇場の重要な目的の一つになると承知しております。それから御指摘のありました大道具、小道具、装置その他につきましても、承りますと、現在の劇場における様式は、伝統といってもせいぜい明治以後ぐらいにできたものを踏襲しておるのでありまして、江戸時代の様式に至ってはほとんどわからないといっても差しつかえないような状態でありまして、そういうものを調査、研究して掘り起こすことも必要である、かように考えております。しかしそれらを一挙にやるということはとうていできないのでありまして、いろいろなやり方を、伝統を生かし、伝統にまつわる弊害は除去しながら、さしあたっては大体いままで歌舞伎なら歌舞伎がやっておりました線を修正しながら延長してやっていくというようなつもりでおります。具体的に申しまして、たとえば俳優の出演様式などにつきましても、国立劇場というからには、専属の俳優を持たなければ意味がないという御議論があります。それは正論だと思いますし、おいおいはこういう方向に努力はしなければならぬと思いますが、いま直ちに専属俳優を持てということは、現在どこかにおる俳優を引き抜くということにほかならないわけでありまして、そういうことはやらないつもりであります。俳優につきましては、大体現在、他の劇場に出ておる出演料とほぼ見合う出演料によって、他の劇場に出演しておる契約と大体似たような方式で契約をしてやっていきたい、かように思っております。
ただ自主公演の場合は、上演に必要な企画、制作、演出、照明等のスタッフはもちろん国立劇場の専属の職員として用意するわけでありまして、国立劇場が用意した職員と、それからこれも御説明申し上げました評議員あるいは専門委員等の意見に従いまして企画、制作をする、俳優は契約でいく、大道具なども、現在専属の道具製作会社を持っておる劇場もありますが、国立劇場といたしましては、さしあたり既成の業者と契約することによって用意をする、そんなぐあいに考えております。
伝承者の養成の問題も、これはまさに重要な問題でありますが、初年度の事業としては、とにかく幕をあけることが先決問題であるということからいたしまして、二年度以降の問題としてとりあえず小規模のものからおいおい育てていきたいというぐあいに考えております。
その他さしあたりは、とにかくスタートをさせて、国立劇場にふさわしいあり方、運営の問題は、評議員、専門委員その他関係識者の方々の御批判、御指示を受けながら改善をはかっていきたい、こういうぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/16
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017・長谷川正三
○長谷川(正)委員 これは、始めるとなれば非常に御苦心の要ることだと思いますし、なかなかいまのお話を伺っても私自身何となくいろいろな不安を率直にいって感ずるわけなんですが、いまの専属の俳優を置く置かないという問題、もちろんいま直ちにといえば、これは引っこ抜いてくるということになりますので、そういうことはなさらないということはよくわかるのですが、将来において、これは正論であるというおことばがありましたけれども、これはどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/17
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018・村山松雄
○村山政府委員 たとえば国立劇場で自主公演の対象と考えております歌舞伎、文楽、雅楽といった芸能の実態を考えてみますと、一番まとまっておるというか、一つしかないというのは雅楽でございまして、これは宮内庁の雅楽部として、宮内庁の職員として存続しておるわけであります。こういうものにつきましては、宮内庁がお手放しにならない限りは、宮内庁で身柄のほうは預かっておいて、上演の機会を国立劇場で提供するということで当分はよろしかろうと思います。
それから文楽の問題は、これは数年前に文楽協会というほぼ一本化した団体ができまして、そのほかにたとえば徳島県のほうには民間の人形浄瑠璃があるようでありますが、そういうものを除きますと、文楽関係では一本化いたしました。そこで国立劇場で自主公演をやるにいたしましても、これを直ちに形式的な専属にしないでも、文楽協会と話し合って、国立劇場に文楽関係のわかる企画担当者を置いて企画製作すれば、専属俳優を持った自主公演と実態的にはほとんど変わりなかろうと思います。
問題は歌舞伎でございまして、歌舞伎は、もう御承知のように、現在ほぼ松竹と東宝がそれぞれ二対一くらいの割合で俳優を持っておりますし、それから公演もやっているわけであります。将来専属俳優を持つか持たぬかということで、クリティカルなデリケートな問題を起こすのは、おそらく伝統芸能の範囲では歌舞伎だろうと思います。これにつきまして、将来の理想としては、専属俳優を持つべきであるということは、現段階でも申し上げてよかろうと思いますが、それをどういう時間的テンポで、どういうぐあいに実現していくかということは非常にデリケートな問題が起こりますので、東宝や松竹のお考えもありましょうし、国立劇場発足後の情勢を見定め、現実に俳優を持っておられる松竹や東宝の御意見なども聞き、もちろん識者の御批判、御意見は承るわけでありますが、ざっくばらんに言えば、関係者が相談づくで伝統芸能の保存という観点から歌舞伎はこうやったほうがいいという線が、おのずから出てくるのではないかと思いますので、そういう線に従って善処をはかっていきたい、多少あいまいなお答えで恐縮でありますが、そんなぐあいに考えております。
それからこの三つ以外の伝統芸能の分野は、邦楽、邦舞、民族芸能、こういうことになりますと、これは必ずしも専属というようなことばにこだわらぬでもよろしいのではないか、とにかくりっぱな満足すべき舞台装置のある公開の場所を提供していけば、さしあたりはよろしいのではないか、その余の問題はおいおい考えていってよろしいのではなかろうか、こんなぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/18
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019・長谷川正三
○長谷川(正)委員 現段階でのお考えはよくわかりました。おそらくどなたがやっても、やはりそういうところからやらざるを得ないだろうということはうなずけるのです。そこで伝承者の養成というのは、いまのように各部門ごとに違った様子にあるわけですが、これはそれぞれ伝承者の養成というのは、国立劇場としてはどういうふうにおやりになる方針ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/19
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020・村山松雄
○村山政府委員 当面の問題とて、伝承者の養成にまず着手いたしたいと思っているのは、歌舞伎の分野でございます。それ以外の分野は、さしあたり国立劇場としては考えておりません。情勢によって考えたいと思います。
なお、歌舞伎を取り上げるということでありますが、歌舞伎は何と申しましても、質の点は別といたしまして、量的に伝統芸能の主たる部分を占めておりますし、伝承者の問題といたしましても、非常にむずかしい問題を含んでおりますし、また歌舞伎俳優を養成すると、他の演劇分野にもプラスになるのじゃないかと思われますし、また歌舞伎関係者の中で伝承者の養成に関してかなりの熱意の高まりがあり、現実にある程度おやりになっておるわけであります。歌舞伎関係者は現在それぞれ所属はいろいろございますが、歌舞伎を保存、振興をはかりたいという目的のもとにおきましては、歌舞伎保存会という団体を結成して一本化しております。この歌舞伎保存会におかれまして、現在すでに伝承者の養成計画を始めておられます。これは学校というものよりは、むしろ勉強会といったようなものが主体になるわけでありますが、ついせんだっても東京の農協ホールで第一回の勉強会をやりまして、かなり好評を博しておられました。そこで、国立劇場におきましてもそういう伝承者の養成のための養成所の施設を提供いたしまして、生徒の募集して自主的にやりますが、それの指導者は、国立劇場でむしろ専属の指導者をかかえるよりは、歌舞伎保存会の方の熱意を拝借したらどうかというぐあいに考えております。現に先日この委員会でも三津五郎さんが参考人としてお述べになりましたように、保存会の方々も、必要だ、できたら自分らはぜひやってやろうという御意向を表明されております。国立劇場では場所や経費や事務を担当して、指導者のほうは歌舞伎保存会を中心にお願いして、関係者協力して伝承者の養成をはかっていきたい。その規模内容等は、小規模からスタートして必要に応じて拡大をはかっていきたい、そういうぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/20
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021・長谷川正三
○長谷川(正)委員 先ほどあいている期間を他の芸能、伝統芸能以外の分野に開放すると申しますか、できるだけ便宜をはかって使ってもらうということがありましたが、それと関連しまして、この伝統芸能のほうもこれを保存し公開し、あるいはよき伝承者を養成していくというためには、これは相当のけいこというようなものが要る。この間の参考人のお話にもたしかあったように思うのですが、けいこというものは、相当要るのであって、つまり自主公開というようなことをしている以外の時間を、ただ舞台に登るのでなくて、裏の楽屋のようなところか教室のようなところで、本舞台並みの大声で練習するのがほんとうのけいこであるのに、そのありのままのけいこはほんのわずかしかやらずに実際上演してしまう、こういうような悩みを訴えられておったように聞いたのですけれども、そういう点から見ると、あいているというような期間をやはり相当——伝統芸能そのものに限りましてもこれはほんとうに、公開はするわけですけれども、保存したり伝承者を養成したりというようなことの中に、そのことを本格的にやり出せば、そんな余裕がはたして出てくるのか、こないのか。そういう点は、これは専門家をさらに招いていろいろ聞きたいと私は思うのですけれども、現在はそういう点では非常に演劇が薄っぺらになっているということが嘆かれていますね。興行中心になってきておるから。本番でのけいこということをほとんどしないまま、初日のふたをあける日が本格的なけいこの最初の日だというような上演のしかたが非常にあると聞いておる。そういうことを救って、本格的なものをつくり上げていくというのが、やはりこういう国立劇場の大事な使命じゃないかと思うのです。そういう点から考えますと、さっきの公開するということと非常に矛盾が起こってくるのじゃないかというふうにも思うのですが、そういう点について一体どういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/21
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022・村山松雄
○村山政府委員 まず付帯業務として、他の企画に対する場所の提供でありますが、それはあいている場合には使わしてやるというのではなくて、計画上は計画的にあけておくつもりであります。ほぼ年間の三分の一程度といまのところでは予定しておりますが、これは実情に応じて伸縮があろうかと思います。したがって、その他の劇団にもすでに、法律はまだ通りませんですけれども、国立劇場の準備室のほうで、使う計画の有無等につきまして御相談に入っております。十分計画的に便益を提供したいと思っております。
それからけいこの問題でありますが、これは国立劇場における自主公演につきましても、一般の劇場の場合よりも十分なけいこの時間をとりたいと思っております。ただ中に、俳優の方で、けいこというのはやり過ぎても気分がだらける、長過ぎるのも考えものだというお考えもあるようでありますので、長過ぎても困りますが、必要にして十分なだけのけいこはやるようにいたしたいと思っております。
それから、自主公演以外の企画に対するけいこの場所の提供でありますが、そのためにもこの国立劇場には舞台の裏のほうに、けいこの場所は一般の劇場よりは潤沢にとってあります。非公開の勉強会などにも場所の提供をはかるつもりであります。そういう点につきましては現在すでに予備的なお話をしておりますが、発足後はさらに十分関係者に御連絡をいたしまして、便益の提供をはかっていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/22
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023・長谷川正三
○長谷川(正)委員 次の質問者も控えていますから、私まだ聞きたいことがありますが、そろそろ終わりにしたいと思います。
これの運営の経費は、資本金は政府が出し、その後必要があればさらに政府が出す、こういうことになっているのですが、全体の管理運営について、将来また、公営企業じゃないけれども、独立採算制みたいな考えがだんだん入ってきて、なるべく収益をあげるようにというような、そういう方法にいってしまって、一番大事なものが圧迫されていくような心配がないかどうか、この点についてひとつ明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/23
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024・村山松雄
○村山政府委員 国立劇場の経営は独立採算という考え方はとっておりません。しかしながら、赤字が出れば無条件で埋めるというような約束ももちろんないわけであります。これは営利はもちろん目的といたしておりませんけれども、やはり劇場で入場料を取ってやるからには、できるだけいいものを出して多くの観客を集めて、収入も合理的にあげられる限りは努力して確保して、それで足らないところを国が補助する、こういうかまえでおるわけであります。収入をあげんがために本来の目的を曲げるというようなことがないようにすることは、まさに国立劇場関係者の重大な責任、使命だと考えます。これができますれば、国立劇場の役職員が運営するわけでありますし、文化財保護委員会は予算その他の面で援助をするという立場になるわけでありまして、関係者が一致しまして努力するべき課題であるというぐあいに考えております。法律の上で明確に、赤字は必ず補てんするというような字句こそございませんが、そういう精神で運営してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/24
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025・長谷川正三
○長谷川(正)委員 ただいまの御答弁で一応わかりますけれども、やはり入場料を取ってやるというようなことになってきますと、なるべく収益をあげて、足りないところは国が補助する、国が出す、出発当初からこういうような姿勢ですと、おそらく、これは大蔵大臣なんかに来ていただいてこの審議を十分聞いておいていただかないといけないのじゃないか、将来できるだけ金を少なく出して、そこで独立して経営できるようにするというような政治的圧力の中で、本来の趣旨が大きくゆがめられていくのじゃないか、こういうことを私は心配するのです。出発にあたって真にすぐれたものが育ってくることが、おのずから収益があがるかあがらないかは別として、価値も認められるし、国が金を出してもまた出さなくても、どんどん収益があがることになるかとも思いますけれども、ともかく最初からそういうところにひっかかっていますと、非常にゆがめられていくおそれがあることを強く強調しておく必要があると私は思います。こういう点につきましてさらに大臣がお見えになりましたら深めたいと思うのですけれども、一応あとの質問者もありますから、私の質問はこれで終わっておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/25
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026・八田貞義
○八田委員長 川崎寛治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/26
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027・川崎寛治
○川崎(寛)委員 議論の蒸し返しになるかもわかりませんけれども、この設立の経過についてさらに詰めてみたいと思うのです。
ただいま長谷川委員あるいは先般落合委員からもいろいろ質問されてまいった点でありますが、先ほどの村山局長の答弁は、みずから歯切れが悪いと言っておられますが、確かに歯切れが悪い。その点は、しかし単なる歯切れの問題か、根本の問題かということになってまいりますと、この法案の第一条の関係、目的、そういうものとの関連からいきますと、単なる歯切れの問題では済まされないのじゃないか、根本的な、プリンシプルの問題にも入ってくるように思うわけです。それは当然大臣に言ってもらいたいわけでありますけれど、参議院の審議の関係でやむを得ませんので、この点は後ほど大臣に追及いたしますが、具体的な経過でお尋ねしたいと思うのです。
先ほどの局長の答弁も、建築上の問題で現代芸能をはずした、こういうことでしたが、そのとおりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/27
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028・村山松雄
○村山政府委員 建築の問題がきめ手となったのは事実でありますが、それのみであるということは断言できないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/28
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029・川崎寛治
○川崎(寛)委員 この経過の概要を読んでみますと、一ページのところに、当初伝統芸能と現代芸能を含んだ第三劇場までつくる案があったわけでありますけれども、これが建築基準法等の関係で不可能になった、こういうことで三十五年九月二十二日に修整検討することになり、三十六年に修整可決、こういうことになっておるわけです。つまりこの修整可決になったときの根本方針は何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/29
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030・村山松雄
○村山政府委員 国立劇場をいよいよつくるということになりますれば、建築の問題ももちろんでありますが、あり方の問題、それから運営方式の問題を総合的に判断して方針をきめなければならぬ筋合いのものだろうと思います。ところが、三十四年ごろの一番大きくなった計画は、まずもって建築の面から客観的に不可能となりましたので、自余の問題は必ずしも十分検討を尽くさずして、とにかく伝統芸能を先にやるということが三十六年にきまったように承っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/30
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031・川崎寛治
○川崎(寛)委員 とりあえずという言い方ですとだいぶ違ってくるのですね。いまのあれは建築上の理由からとりあえず伝統芸能になった、こういうお話ですが、修整可決をして、その答申を受けて文部省は具体的な建築の計画にかかったのだ、こういうことになりますと、国立劇場法案も、法案として出てきた第一条の目的、基本目的というのはこのときにきまった、こういうふうに見るべきだと思うのでありますが、そのとおりでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/31
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032・村山松雄
○村山政府委員 そのときにきめたという具体的な証拠はございませんが、精神においてはそのときにきまったと申し上げてよろしいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/32
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033・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そこが、現代芸能関係の皆さんが、特に先般千田是也さんがお見えになられてお述べになられたときに、参考人として出るについて、資料を受け取って初めてその第一条の目的というものがはっきりわかった、こういう点でたいへん憤激をされておるわけです。そういたしますと、三十六年の二月のときに基本方針がきまっておるということになれば、それまでの間、現代演劇の関係の方々も、国立劇場設置のためにいろいろと一緒に御努力になってきており、あるいは委員として参加してこられてきておるわけです。それが建築上の理由を主にして、こういう方向の方針転換といいますか、それが三十六年になされたわけでありますけれども、当然そのときに、この設立にかかる国立劇場は伝統芸能のみを対象とするものだという方針がここで明確になり、そうしてそれらは、関係の方々に対して十分に連絡をされ納得をされてしかるべきだと思います。先ほどの大臣の御答弁では納得されたというふうな意味にとれたわけでありますけれども、その点はだいぶ事実と違うような気がいたすわけであります。そういう点について、この取り扱いについて、具体的な措置の上においてこういう手落ちがなかったのかどうか。あるいは基本方針を進めていくについて、これまで関係してこられた皆さん方が、伝統芸能だけでやむを得ない、つまり国立劇場というものは文化財保護の立場から伝統芸能だけだということについて十分に御了解の上で、そういう方針を決定しながら自後の作業が進められた、こういうふうに理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/33
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034・村山松雄
○村山政府委員 三十四年ごろの現代芸能を含む計画は計画案としてはございましたけれども、文部省の方針としてそのような方針を立てるに至らない段階で、建築上の問題を主たる理由といたしまして、計画案そのものが縮まっていって、文部省の方針としてきまりましたのが、伝統芸能の現在の形の国立劇場案であったと申し上げてよろしいのではないかと思います。その間において関係者に対する御説明が御納得がいかなかったとすれば、私どもの手落ちでありまして、その点はおわびを申し上げなければなりませんけれども、方針としてきまりましたのは伝統芸能だけでありまして、一たんきめた方針を曲げたということにはならないのではないかと思っております。
主たる理由であるからにせよ、伝統芸能を主とするという器まで一たんきまりましたので、法案としては、これは基本法や憲章的なものであればいざ知らず、特殊法人設立を主たる内容とする法案としては、器にふさわしい目標を掲げた。新しい問題は次の課題というぐあいに申し送った次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/34
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035・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そこのところが歯切れが悪いのです。つまり法律案になってみて、国立劇場というものは文化財保護だけだ、そういう立場でこういうことが明確になってきておるわけですけれども、将来の問題として残されておるのだというふうなことは、当然にこの修整可決で一つの基本方向がきまるというときに、あわせてその展望もなければ、それまで走らされた現代芸能の関係の方方は納得をされなかった。それらの方々は、引き続くものとして理解をしておられたから、今日まで一応伝統芸能を中心にやるということについて異存なくまいられたと思うのです。しかしこの国立劇場法案として出てきておりますこの法律の精神というのは、これは全く伝統芸能だけを対象に考えておる、こういうことであって、そのときの何とはなしにもやもやと移っていった移り方とだいぶ違うのですね。だからそこらがこの国立劇場設立のために御協力なさり、また努力をしてこられた皆さん方について、十分な説得というか、その辺の御納得の上でこういう方向に踏み出したというふうに受け取れないわけです。どうですか、その辺、たいへんくどいですけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/35
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036・村山松雄
○村山政府委員 弁解を申し上げるようで恐縮でありますが、三十六年以前におきましては、現代芸能の問題は、方針としてそういうものは入れないんだということではもちろんございませんが、入れるんだという方針も確立していなかったわけでありまして、三十六年の段階で、最終的な腹をきめまして、その経過につきましては、当時準備協議会に御出席でなかった方もございますので、文書で御連絡申し上げて御了解を願ったと考えておったわけでありますが、それが不十分であったとすれば、私どもの手落ちでありまして、その点はおわびを申し上げなければなりませんけれども、経過として、何かきまっておったものを曲げてしまって、ペテンにかけたというようなことでは決してないんじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/36
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037・川崎寛治
○川崎(寛)委員 つまり、三十六年のこの方針がきまるときに、関係の方々は引き続くものとして理解をしているわけですね。皆さん方は、そこで切れているんだ、切れているというか、その前がまだ全然方針でないんだから、この三十六年で初めて基本的な方針になったんだ、こういうふうに皆さん方は計画の過程の中ではいわれると思うのです。ところが関係してこられた方々は、そもそもの出発からの運動経過がずっとあるわけです。当然にその中で切れたものとしては考えていない。しかしそれが皆さん方は、そういう方針を変更したんだとかあるいはペテンにかけたんではないんだ、こういうふうにいわれるけれども、そこの理解のしかたはたいへん違うわけですね。
〔委員長退席、八木(徹)委員長代理着席〕
そうしますと、ここで現代芸能関係の皆さん方は、十分に了解をされたものとして出発したものではなかったらしいということは、いまの時点で感じられるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/37
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038・村山松雄
○村山政府委員 私どもとしましては、御連絡も申し上げましたし、御了解願ったと考えておった次第でありますが、そうでなかったとすれば、やはり努力の不足であった、率直におわびを申し上げなければならぬと思います。また現代芸能の問題は、三十六年の時点で、今度はやらないということになったわけでありますが、いままであれだけ議論しておって、今度はやらないということであれば、引き続いた問題であると当事者の方がお考えになることは、いまから考えますと無理からぬことのように思われます。そこら辺でもっときっぱりした言い方をしたほうがよかったのかどうか、だいぶ古い話でありますので、私も申し継ぎとして承っておることを御説明申し上げておる次第でありまして、いまあらためて今回はこれで御了承願いたいとお願いするほかないわけであります。
さらに蛇足を加えますと、今回の案につきましては、二月に法案が内定しました段階で、関係者をお招きしまして御説明申し上げました。そのときに千田是也さんもお招きしたのですが、実はその際にお見えになりませんでした。新しい芸能関係者の方も若干お見えになりましたけれども、御説明に際して、実は法案そのものはお示ししなかったのでありますが、法案の背景をなすところの考え方の要綱を御説明申し上げまして、特に新しいものをぜひ入れろという御意見も出ませんでしたものですから、今回の問題としても、私どもは御了承を得ておると考えてやってまいった次第でありまして、その点はいわば見通しが甘かったということになるわけでありましておわび申し上げますが、現在の時点としましては、るる申し上げましたように、現代芸能をどうするかという問題は、将来の課題としてやるとしても、この法律を改正して取り込むのか、別途何かやるのか、いろいろ検討しなければならぬ課題があまりにも多過ぎますので、今回の国立劇場法案とからめてやることは御容赦願いたいというのが、この法案を提出しております。直接事務を担当しております文化財保護委員会事務局の考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/38
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039・川崎寛治
○川崎(寛)委員 二月の十日に準備室のほうから国立劇場運営の基本的な考え方というものについてお示しになられて、それが了承された、こういういまの御答弁だと思うのです。実はこの国立劇場運営の基本的な考え方という刷りものは、資料としてよこしてくれと言っておいたのですが、これは手元にはきておりません。そこでどういう内容なのか、いまの説明以外にはわからぬわけですけれども、その際に国立劇場そのものの運営のしかた、たとえど三分の二がこうで三分の一は貸し劇場にします、こういうような説明のしかたであり、あるいは組織はこうなるのだ、こういうふうな説明の程度じゃなかったのか、こう思うのです。つまり国立劇場なる法律をつくる、その法律の基本目的が今回提案をされておりますこういう法律だ、そして業務内容はこういうものだという形で御説明になられたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/39
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040・村山松雄
○村山政府委員 実は二月十日には関係団体の方々をお呼びしたわけでありますが、その際に御配付申し上げた国立劇場運営に関する基本的な考え方というプリントは、この委員会にも御配付申し上げた資料とほぼ同じ内容のものでございます。実はこれは直接関係者でございますので、もう少し詳しいものを差し上げまして御説明した次第でありまして、劇場の目的、事業内容、当委員会に提出しました資料よりもう少し詳しく書き、説明も加え、御了承願った、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/40
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041・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そうしますと、私は第一条の法案そのものに入ってみたいと思います。「国立劇場は、わが国古来の伝統的な芸能の公開、伝承者の養成、調査研究等を行ない、その保存及び振興を図り、もって文化の向上に寄与することを目的する。」こういうふうに明確に伝統芸能だけを対象に考えておるわけです。先ほども、将来の問題として現代芸能についても慎重に考えたい、現在はまだそれに対する考え方はないというふうにたいへんうまく逃げておるのでありますけれども、その点はいかがですか。国立劇場と銘打つからには、当然に現代芸能も含んだものが考えられるのか、あるいは文部省の根本方針として、国立劇場というのは伝統芸能だけをやっていけばいいのだ、こういう考え方なのか。その点を、きわめてあいまいに将来の問題として残されているのだという形で、先ほど来大臣も局長も答弁しておられますけれども、その辺は、日本で文部省が考えておる国立劇場というものは伝統芸能だけ、こういう考え方ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/41
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042・村山松雄
○村山政府委員 国立劇場とは何であるかという議論をしますと、いろいろな議論があろうかと思います。ただ法案としては、そのような議論を網羅的に取り入れたような定義、目的を掲げるわけにはまいりませんので、具体的にいま建てておる国立劇場の建物を中心とする事業活動の理念を忠実に書く必要があるわけであります。そこで、書けばこのような形になる。これは過去、未来にわたる国立劇場のあり方の一切を規定するのだというようなつもりは毛頭ございません。現在つくり、そこでやろうとする事業をやってまいる目的、理念はこういうことであるということを忠実に書いたまででありまして、その意味で、この第一条はこの点はたいへん割り切っておるわけであります。割り切ったのでかえってまた、割り切り過ぎて御批判をこうむっておるというのが現状だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/42
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043・川崎寛治
○川崎(寛)委員 しかし、その割り切るところにこれは問題があると思うのです。そこに現代芸能関係の皆さん方が非常に気を使われる問題が出てくるわけであって、国立劇場の基本目的としてあるべきものが書かれ、そしてその中に三宅坂に建てられつつあるそのものについては当面これなんだ、こうくればわかるわけです。あるべきものは何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/43
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044・村山松雄
○村山政府委員 るる申し上げますように、あるべき国立劇場に関する議論はどうも討論が終結しておらないのじゃないかと思います。それを書こうとしておりますと、たいへん恐縮でありますが、国立劇場はなかなかできないということになりますので、今回はいま計画しております国立劇場を中心といたしましてこの目的を書いたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/44
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045・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そうすると、考え方はあるのですか。固まっていないと言いますけれども、含んでいる考え方はあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/45
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046・村山松雄
○村山政府委員 抽象的、観念的な国立劇場としてはいろいろな考え方があると思います。しかしこれは特殊法人国立劇場として、三宅坂に建物を建てて、その建物を中心として展開する事業の指導理念としての目的でありますので、こういうことになったのでございます。抽象的理念としての国立劇場というものは、別途十分論議に値する事柄だろうと思いますけれども、それをこの特殊法人の目的として掲げるわけにはまいらない、こういう事情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/46
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047・川崎寛治
○川崎(寛)委員 つまり三宅坂にできつつある建物にかぶせる特殊法人としての国立劇場法だ、こういうことになりますね。そうしますと、なぜそれを明確にうたわないのですか。たとえば国立伝統芸能劇場とか……。ナショナル・シアターとして「国立劇場は、」と、こううたっているわけでしょう。だからあるべきものは、この国立劇場の設立経過の中でも、あるいは三十二年の七月の本委員会における決議その他等のあれからいけば、当然に現代芸能等も含んだものが考えられてきておるわけです。しかしそれが先般来るる説明されておるような理由で、伝統芸能だけを含むことになった。それであるならば、それにふさわしい名前を当然書くべきじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/47
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048・村山松雄
○村山政府委員 名称の問題としては、国立劇場というのはいままでなかったわけでありまして、今度できるとすればこれが唯一のものであります。唯一のものに国立何々という名称を冠することは、他にも立法例が多々ございます。目的が多岐にわたる段階になりますれば、その段階で法律の修正をすべき課題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/48
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049・川崎寛治
○川崎(寛)委員 だからそのときに国立劇場になればいいわけですよ。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/49
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050・村山松雄
○村山政府委員 この問題はちょっと御説明の範囲を越えて、意見の問題になりますが、国にその種のものが一つしかない場合には限定する形容詞を入れないで国立何々、たとえば国立競技場あるいは国立青少年センターといったぐあいに、一般的な名称をかぶせております。たとえば大学ですと、商船大学というのがありますが、これが一つしかないときには、何も形容詞を入れないで商船大学というのがあったわけであります。神戸にもう一つできた際に、神戸を神戸商船大学とし、東京の分を東京商船大学と、あとで地名を入れて限定したわけでございます。法律の立法の形としては、特別のものがいろいろできる段階で直せばよろしいのじゃないか、私どもはかように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/50
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051・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そうしますと、現代芸能の問題については三十六年でぷつんと切れているのですね。切れているというよりも、ここでほうり出された、こういうふうに見たほうがいいと思うのです。それで今回国立劇場というようなことで伝統芸能を扱う、こういうことになります。将来の問題だ、将来の問題として考え方は固まっていない、こういうことですが、どのように扱おうとしておるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/51
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052・宮地茂
○宮地政府委員 文化財のほうとしましては、いわゆる古典芸能が文化財の所管になっておりますので、その他の問題について文化財のほうでお答えいただくのは恐縮に存じますので、私かわって答弁させていただきます。
これは先ほど長谷川委員からの御質問もございましたが、私ども現代芸能を含めまして芸術の振興助成ということを考えておりますが、その場合、現実に行政として行なっておりますのは、芸術家の方々の優遇と申しましょうか、顕彰、それから国民に対しての芸能の普及、もう一つは芸術関係団体への助成といったようなことを現実の問題としていたしております。したがいまして芸術行政をやります場合に、劇場をつくっていくということも一つの問題であろうかと思いますが、現時点においてはまだ具体的に現代芸能の国立劇場をつくるという構想は明らかになっておりませんが、関係者の熱意もございますし、また国立劇場設立の経緯もございますので、将来の問題として十分に検討したい、そういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/52
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053・川崎寛治
○川崎(寛)委員 将来の問題としてといっても、将来ということばは時間のあれがないわけです。一応の前のプロセスがあったわけだけれども、三十六年に現代芸能を明確にはずした。そして伝統芸能だけのものを四、五年かかってつくってきたわけです。その間になぜ当然含めるべきものとしての検討はできなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/53
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054・宮地茂
○宮地政府委員 この国立劇場につきまして、先ほども申しましたように、芸術行政をいたします場合に、やはりいろいろ問題はございますが、私ども取り上げます場合に、緊急度といったようなことも一つの大きな要素になろうかと思います。また予算という限られた財源ということも大きい問題になろうかと思います。したがいまして先ほど申しましたように、現時点において現代芸能等に対する行政上の扱いは、先ほど申したとおりでございます。しかし劇場をつくるかどうかということにつきましては、これは別の問題として検討はもちろんいたしておりますが、すぐそれを予算化していくという段階までの検討に至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/54
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055・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そうしますと、その検討というのは、財政当局との具体的な打ち合わせその他までの煮詰まりは別として、建てたいのだ、建てるのだという方針はあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/55
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056・宮地茂
○宮地政府委員 建てるという方針はまだ決定いたしておりません。ただ芸術行政をいたします場合に、現代芸能等においていま直ちに何をすべきかということで、たとえば顕彰とかあるいは優遇とか団体助成とかいったようなことをいたしておりますので、まだ建てるのだという意思決定を見るまでの検討はいたしておりません。まだ検討いたしておりませんというよりも、その段階まで煮詰まっていないというふうにお考えいただいたほうがいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/56
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057・川崎寛治
○川崎(寛)委員 大臣にお尋ねしますけれども、実は先ほど来古い経過をいろいろと事務局長との間にやりとりをしておりました。それは大臣おられないので十分におのみ込みできないかもわかりませんけれども、三十六年に伝統芸能だけ、こういうことで国立劇場の設立の基本方針がきまったわけです。先ほどの大臣の長谷川委員に対する御答弁では、現代芸能関係の、一生懸命この設立まで努力をしてこられた皆さん方に対しては、十分に御了解いただいたんじゃないだろうか、こういうふうに御答弁になっておられるんですけれども、実はそれは決してそうじゃないと思うのです。そういう理解は関係の皆さん方にはされていなかったように思うわけです。そこで問題は、今回上程されております国立劇場法案の第一条の目的の中に、国立劇場は伝統芸能、こういうことで、完全に現代芸能関係はシャットアウトしているわけです。そこで先ほど来局長に対しても御質問しておったのですのですけれども、そもそもの出発点においては現代芸能を含んでおった。しかし一応具体的に国立劇場そのものが出発をするときには、現代芸能ははずして伝統芸能だけで基本方針を立てて出発をしてきた。しかし本来国立劇場というのは、前の経過からいたしますならば、現代芸能関係も含むべきだ、こういうふうに大臣はお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/57
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058・中村梅吉
○中村(梅)国務大臣 実はこの経過を私どももうろ覚えでございますが、昭和三十四年のころに、今日も問題になっておりますが、審議会、調査会、協議会というような、こういったたぐいのものを整理すべきだという議が起こりまして、そしてこの国立劇場設立準備協議会というのも、大体最終段階にきておりましたので、整理の口に入って、そしてこの国立劇場の協議会はこの国立劇場の最後の案ができるまでに途中で廃止になったと思うのです。そこで協議会は廃止になりましたが、そのメンバーはあるわけですから、メンバーには逐次お集まりをいただいて相談をしながら、三十六年に最終的に、敷地との関係、建蔽率の関係等も含めた具体案を検討して、最終的に伝統芸能の保存あるいは伝承者の育成を中心とした国立劇場、こういうことになったわけです。その間には、新劇関係の方々も、なるほど全部は御了承になっていないと言えばいないかもしれませんが、その代表的な格式の方はこの協議会に入っておりまして、協議会は廃止になりましたが、引き続きそのメンバーには御相談をして、みなしかたないだろうということで了承を得て、今日に運んできて、建築にかかってからでももう数年たっておるわけですから、その間伝統芸能を中心としたものであるということは、おそらく新聞その他を通して世間周知であったと思うのです。しかし今日この法案の審議の段階で、新劇関係の方々が、やはりそういうものを考えるべきだ、こういう議論が起こってきたのは、私どもはそのころの経緯から見ればおそきに失するような感もしますが、しかし言うきっかけだから言う、こういうことだろうと思うのです。
そこで問題は今後の研究課題でありますが、研究していく上にはいろいろ問題点があると思うのです。伝統芸能の場合には、御承知のとおり伝統歌舞伎保存会という統一された伝統芸能についての保存組織、団体がありますから、ここと一本に相談すれば、自主公演というものはすぐできるわけです。新劇になりますと、派もたくさんあるし、いろいろな系統がありますから、こういうものとの関係をどういうふうに調節をしていくか。あるいは新劇関係の劇場をつくるとしても、それは一体国なり公共機関で自主公演をするのかしないのか。また可能なのか不可能なのか、こういうようなことも今後十分に掘り下げた上で検討をすべきものではないか、こう実は考えておるわけでございます。
最初のとにかく国立劇場をつくろうという話から、いろいろ検討した段階では、伝統芸能も新劇もと、こういう時期もあったのですから、これはわれわれも全然そういうものは無関係でございますとは、決して今日も考えておらないわけであります。今後の課題としていろいろ関連する事項が多うございますから、研究してまいりたい、こう思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/58
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059・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そうしますと、まだ考えは固まっていない、将来の検討事項だということでありますが、これまでの経過からすれば、当然に含むべきものだ。そうなりますと、国立劇場というものは、その建物とかあるいは扱いその他いろいろ具体的な方法については固まっていないかもしれないが、プリンシプルとして現代芸能を含む。国立劇場というからには、現代芸能を将来は含むという考え方があるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/59
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060・中村梅吉
○中村(梅)国務大臣 いま御審議いただいております国立劇場には、含む考えはございません。ただ伝統芸能の使用期間がせいぜい三分の二、こう仮定しますと、残りは新劇にももちろん共用をしてけっこうなことでございますから、これは考えていくつもりでございますが、国立劇場自体の、国立劇場が自主的に行ないます公演、仕事、こういうものは、今回の場合は、設備もそうなっておりますから、伝統芸能だけに考えてまいりたい。ですから新劇関係については、国会の御意見あるいは世論等の盛り上がりとか、そういうものも、われわれ行政をやる立場の者から申しますと考えて、そしてまた先ほども私ちょっと触れましたが、新劇関係の国立劇場のようなものをつくるとすれば、そのやり方等についてはかなり問題点が多い。それをやはり民間の方々や方々の知識を集めて掘り下げた検討をしませんと、われわれだけでやりますとか、やろうとかいうことには、ちょっとまだ踏み切れないものがあるんじゃないか、こういうように考えますから、世論等も聞き、またそういうような諸般の関係事項は今後これとは別の問題として検討すべき課題ではないか、こう思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/60
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061・川崎寛治
○川崎(寛)委員 事務局長にお尋ねしたいのですが、この国立劇場を建てていくについて、外国のいろいろなものを出向いて具体的に調査されたことはあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/61
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062・村山松雄
○村山政府委員 事務局の職員が出向いたことはございませんが、いろいろ御協力願いました方に、ついでに御視察を願いましたり、場合によっては特にお願いして調査していただいて、資料などもちょうだいしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/62
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063・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そうしますと、根本的なプリンシプルの問題として大臣にお尋ねしますけれども、全く現代芸能の問題は将来の問題だ。だから、国立劇場と銘打つこれも、第一条の目的からすると、伝統芸能劇場とか古典劇場、あるいは国立古典劇場という名称がふさわしいと思う。そういうもので、先ほど言われたような将来の問題として含んだときに初めて国立劇場、こうしてこそ名も体をあらわしてくると思うのです。ところが、あえて国立劇場、こういう形で打ち出されたその根本には、要するに国立劇場においてはそうした現代芸能を含むという考え方は、ここ当分ないというふうに理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/63
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064・中村梅吉
○中村(梅)国務大臣 いま名称の問題について御指摘がございましたが、将来新劇関係の劇場を別につくる時期がくれば、そのときにはやはり古典芸能を中心としたこの劇場との関係もありますから、名称の問題等を考慮しなければならぬ時期がくるかと思うのでありますが、現段階では、ずっと長年かかって煮詰まってき、そういうことで建設ができ上がったわけですから、やはりこれはこれでいって、そしてもう一つは、この国立劇場で古典芸能の自主公演、あるいは伝承者の養成等をやりますほかに、せっかくこれだけの劇場ができ設備があるんだから、新劇の方々も使いたいという希望があれば、それはそれぞれの運営委員会ができたら運営委員会で、そういう方々に使わせるのに、申し込み順や何かもあるでしょうから、そういうものをどういうふうに整理して提供するか、これは運営委員会で御審議を願って、きめていただいて使っていただくことになりますから、そういうような使い方をして、いろいろ次の段階のしぼりができてくるということを見ながら、並行して検討していったら今後よろしいんじゃないだろうか。
それと同時に、そういうことをやっておりますうちに、新劇関係もいろいろな派がたくさんあるようですから、これが一体どういうふうに力を統一して、次の新しい劇場をつくらせる方向へいこう、あるいは協力をしよう、こういう態勢も次第に醸成されてくると思いますから、そういうものをにらみ合わせて今後やっていったらいいのじゃないだろうか。とにかく今回の場合は、長年かかってこの方向へきてしまったものですから、——もっとも協議会があり、そうして協議会がいろいろな機関の整理の関係でなくなりましてからも、そういうメンバーに御相談をしてきましたから、その段階でとんでもないことだと言っていきり立ってまとまらないできておれば別ですけれども、一応まとまってしまって、いまの形のものをつくろうということででき上ってしまったものですから、とにかくこれでスタートして、そして古典芸能のほうでも、そういうふうに文化財保護のような気持ちで古い日本伝統のものを保存し、生かしていくということと、新劇関係もそれに織り込んでやっていただくことはやっていただきながら、そして次の段階を生み出す、あるいは具体化する、こういうことになるのが順序ではないか、私はとらわれない気持ちでそう思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/64
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065・川崎寛治
○川崎(寛)委員 その将来の方向についてもう少し明確な方針を示してもらいたい。ただ将来の問題として、現代芸能関係については慎重に検討しよう、こういうばく然とした検討事項なんですが、もう少し明確な方針は出ませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/65
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066・中村梅吉
○中村(梅)国務大臣 これはどうも私のほうから明確にするよりか、行政機関というものはやはり世論や関係者の要望やそういうものをにらみ合わせて歩くのがほんとうですから、こっちが先に、先の方針はこれでございますと言うことはいかがなものだろうか。むしろ国会なんかが、国会の意思はこうなんだ、おまえらもこういう方向で考えろとか、こういうことなら別でございますけれども、まだそれも承らないうちに、全体の意思がはっきりしないうちに、私のほうからこの方向でいきますとはちょっと言いにくいというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/66
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067・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それじゃひとつこまい問題を局長にお尋ねしますけれども、この法案の附則の第十一条、入場税法の一部改正がここに出てくるわけです。これは実は社会党の大蔵委員会の理事諸君とも打ち合わせをしておるところでありますけれども、入場税法の一部改正が大蔵委員会のほうで扱われずに、この国立劇場法案の中で扱われておるわけですね。これは大蔵省に聞いてみますと、従来の文化財の公開の場合には入場税が免税になっておったわけです。そうすると、この判断は文化財保護委員会が持っておる、つまり文化財保護委員会が判定をしたものが無税、こういうことになってくるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/67
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068・村山松雄
○村山政府委員 これは個々に判定するわけではございませんので、文化財として指定をされたもののみを公開する場所ということに相なっております。したがって、有形の文化財であれば国、重文のようなもののみを公開する場合に入場税が無税になるのでありますし、それから無形文化財の場合には、無形文化財として指定された保持者のみが公開をする場合に免税になっておったのであります。今回、国立劇場につきましては、「伝統芸能のみを公開する場所」というのを指定文化財のみに限定せず、若干広げたというのがこの改正でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/68
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069・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そうしますと、伝統芸能といいましてもいろいろ定められますね。そして出しものについても定められてくる。こういうふうになってきますと、公認の伝統芸能と非公認の伝統芸能、そういうものが出てくると思うのです。その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/69
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070・村山松雄
○村山政府委員 公認、非公認と申しますよりは、この条文にありますように、「国立劇場が国立劇場法第一条に規定する伝統芸能のみを公開する場所」でございまして、これもほぼ客観的に明らかでありますので、文化財保護委員会が認定するというよりは税務当局のほうで認定することになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/70
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071・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そうしましたら、ここのところを伝統芸能のみでなくて、国立劇場で上演されるものは無税、こういうふうにはできなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/71
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072・村山松雄
○村山政府委員 これは大蔵省主税局と折衝の結果、こういうことで落着したわけでありまして、事務的にこれをさらに変更することは不可能でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/72
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073・川崎寛治
○川崎(寛)委員 事務的に変更することは不可能、考え方としてはあったわけですか。やろうとしたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/73
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074・村山松雄
○村山政府委員 文部省としましては、芸術振興というような観点から、芸術的なものはなるべくその入場税も非課税にしてほしいという一般的な希望がございます。国立劇場の発足に際しましても、でき得れば、少なくとも国立劇場に関する限りは一切非課税にしていただけばけっこうでありますし、そのようなことで折衝もいたしましたが、大蔵省の考え方としては、やはり非課税というのは重大な問題でありまして、ほうっておけば滅びるようなものの助成として明確に線が引ける場合に限定したいという気持ちがありまして、折衝の結果、こういうところで落着したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/74
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075・川崎寛治
○川崎(寛)委員 これは、入場税というのは撤廃すべきだと思うのです。しかし、せめてこうして国立劇場でやられるようなものについては当然無税にすべきだ。大臣、どうですか。せめてこれくらい、ひとつ政治力を発揮して、財政当局とももっとやってもらいたい。方向はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/75
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076・中村梅吉
○中村(梅)国務大臣 これは事務当局としては法案をつくります際に、関係省とは十分に練りましてでき上がるわけでございますので、この税関係については、大蔵省主税局と十分に折衝をして落ちついたところがここになって、——まあ御承知のとおり、どの法案にいたしましても、政府案として出します場合には、まず次官会議で、関係各省次官が集まって了承する、その全員の了承を得られたものが閣議にあがって、閣僚が了承するということになるわけでございますから、政令にしても法律案にしても、次官会議、閣議の議を経るものについては、一人たりといえども、一省たりといえども異論を唱えたものはあがってこないわけでございますので、ですから、異論のないものに煮詰めませんと、上にあがらないわけでございます。この法案にいたしましても、入場税関係についてはそういうような過程をたどって、そうして煮詰めた結果、大蔵省もこれならばよしということで同意が得られて、それぞれの機関の満場一致の議を経てきたわけでございますから、どうも私どもいまここで文部省だけの感覚で移動をするということは事実上不可能、この点はひとつ御了承をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/76
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077・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それじゃ事務当局は、将来この問題でさらに所信を貫こう、こういうことでやられる御意思はありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/77
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078・村山松雄
○村山政府委員 私どもは、先ほども申しましたように、文化的、芸術的な催しに関しまして、できるだけ入場税を非課税ないし軽減してほしいという希望を持っております。将来の課題としては、税法の問題は、私どもの立場だけではいけませんで、やはり公平やバランスを考えてやるわけでありまして、時々改正もあるわけでありますから、そういう際には十分御趣旨を体して努力はいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/78
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079・川崎寛治
○川崎(寛)委員 大臣にお尋ねしますけれども、そもそもこの国立劇場の関係の問題は文化財保護委員会で扱ってきた、ここに出発の問題があるし、限界もあったと思うのです。文化財保護という立場が基底になって貫かれてまいっておるわけです。やはり芸術なり文化なりというものを振興さしていく国家の役割りとしては、いろいろとこれについては問題もあります。自由を束縛してはいけないし、そういういろんな問題もあるわけでありますけれども、フランスにおいては文化省、あるいはドイツにおいては科学芸術省、こういうことで広く国民文化の創造、発展のために努力しておるわけであります。そういう立場からいたしますならば、今日の文部省におけるこの種の問題の扱いとしては、やはり機構上の問題もあるんじゃないか、こういうふうに思うわけです。ですから文化省の独立といいますか、今度は文化局ができたわけですが、そういう方向に発展をさせていく考え方はないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/79
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080・中村梅吉
○中村(梅)国務大臣 これは御承知のとおり、もうすでに御意見が尽くされましたように、こういう経過を経てこの結論に到達しましたので、現在の国立劇場、この法案による国立劇場としましては、やはり文化財保護の精神が基盤でございまして、そのほかにもなるほどせっかくつくった施設ですから、活用することはけっこうでありますが、中心は文化財保護の観念の上に立っておりますので、やはり文化財保護委員会が主管してもらうのが妥当であると思っております。今後、先ほど来御議論のように新劇のみを中心とした国立劇場がつくられるような時期がくれば、これは今度文部省にも文化局という新しい局ができましたから、これは文化関係の一環としてそういう機関との関係で所属関係をきめていくべきで、今日の段階ではやはり文化財保護委員会が所管をして進めるのが、知識も十分持っておりますし、材料も十分持っておりますし、そういう点で一番最適である、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/80
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081・川崎寛治
○川崎(寛)委員 初めて国家が演劇や文化について保護をしよう、こういうことで出発をしていくわけです。たいへん大事な問題になるわけですけれども、そういう意味では、文部省といいますか、政府といいますか、それのこうした演劇や文化に対する保護、創造していく、発展をさせていく、そういう意味での大きなビジョンというものが根本においては欠けておると思います。ですから、最初出発したころからいたしますと、だんだんしりつぼみになってきて、伝統芸能になり、そうしてそれに固執して、からの中に閉じこもってしまって、将来の問題は遠い将来の問題として慎重にやりましょう、こういうことに後退をしておるわけです。ですから当面やむを得ないにしても、それは大きなビジョンの中の一部として位置づけをされなければならぬ。ところが、この法律案に出てきておる精神、あるいはそのプロセスを見ますと、最初は大きく出ながらだんだん小さくなってきて、ここでからの中に入ってしまう、こういう実態だと思うのです。その点、大中村文部大臣の大きな抱負を示してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/81
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082・中村梅吉
○中村(梅)国務大臣 そこで、今度は幸か不幸か、こういうふうな諸般の事情で分かれたわけでございますが、考え方としましては、やはり伝統芸能の場合は保護という立場に立ち、新劇等の場合には奨励という立場に立たなければいかぬと思うのです。全体国家のように国が劇場をつくって統制をするとか、あるいはどの都市に一つつくる、どの都市に一つつくるという行き方と違いまして、やはり民間の創意くふうによって新しい演劇なりそういうものが発達していくわけですから、これはやはりいろいろなものの考え方の人、同じ劇をやってもこの劇の表現はこういくべきだといういろいろな流派ができるのと同じように、考え方も相違があると思います。これらを全体主義国家のように統合してやるのじゃなくて、むしろそれを助長奨励をする、こういう立場になるべきだと思うのです。ですから、奨来そういう方面の盛り上がりなり、あるいは意思の統一なり、世論なりにもっとよくタイアップして新しい新劇の劇場をつくるということになれば、そのほうはもっぱら奨励というほうに回るので、やはり保護という観念とはよほど観念が違ってくるのじゃないか。そういう意味からいえば結局一つ場所に二色できればよかったのですが、一つ場所で一色しかできないということになって今度これがスタートしますが、将来やはり場所も違い施設も違うので……。そういう大体の本質の方向が違いますから、そういう意味でこの落ちつき方もいたし方ない落ちつき方であると私どもも考えておる。協議会の中にはいろいろなメンバーが入っておったわけですが、いろいろな具体的に詰めた議を練った結果、この国立劇場としては伝統芸能の保護、それから、伝承者というものも、ほっておけばあんなばかばかしい古いことにはやり手はないということになっても困りましょう、もしくは日本古来の芸能というものが末長く伝承されて生きていく必要がある、これはほかの文化財保護と同じ観念でございますが、そういうわけでありますから、ビジョンとすればやはりこれは方向が違うわけでございます。これはこれとしてスタートをさせるというのが、いままでわれわれの前任者の方々が数代かかってあれだけの施設をしてきたという経過であろうと思いますから、私どもとしてはこの形でこれはこれでスタートする、別途また意味の違うものは違う意味で研究をして、そうして時代に即応した進め方をしていくというように相なるべきじゃないか、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/82
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083・八木徹雄
○八木(徹)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。
午後零時五十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01719660413/83
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