1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年六月二十一日(火曜日)
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議事日程 第四十三号
昭和四十一年六月二十一日
午後二時開議
第一 日本勤労者住宅協会法案(井原岸高君外
三十名提出)
第二 野菜生産出荷安定法案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
飼料需給安定審議会委員の選挙
日程第一 日本勤労者住宅協会法案(井原岸高
君外三十名提出)
日程第二 野菜生産出荷安定法案(内閣提出)
入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関
する法律案(内閣提出)
地方公営企業法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
雇用対策法案(内閣提出)
都道府県合併特例法案(内閣提出)の趣旨説明
及び質疑
午後三時三十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/0
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001・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) これより会議を開きます。
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飼料需給安定審議会委員の選挙発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/1
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002・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 飼料需給安定審議会委員の選挙を行ないます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/2
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003・海部俊樹
○海部俊樹君 飼料需給安定審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/3
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004・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 海部俊樹君の動議に御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/4
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005・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。
議長は、飼料需給安定審議会委員に湯山勇君を指名いたします。
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日程第一 日本勤労者住宅協会法案(井原岸高君外三十名提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/5
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006・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 日程第一、日本勤労者住宅協会法案を議題といたします。
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007・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 委員長の報告を求めます。建設委員長田村元君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔田村元君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/7
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008・田村元
○田村元君 ただいま議題となりました日本勤労者住宅協会法案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、勤労者の蓄積した資金をその他の資金と合わせて活用し、勤労者に居住環境の良好な住宅を供給するための制度を創設することを目的とするもので、おもな内容は次のとおりであります。
第一に、協会は法人とし、労働金庫、労働金庫連合会、消費生活協同組合、消費生活協同組合連合会または勤労者のための福利共済活動その他経済的地位の向上を目的とする団体でなければ協会に出資することができないものとすること。
第二に、協会は、勤労者のための住宅及び利便施設の建設、賃貸その他の管理及び譲渡並びに宅地の造成、賃貸その他の管理及び譲渡等を行なうことができるものとすること。
第三に、協会は建設大臣が監督し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができるものとすること。
第四に、国、地方公共団体は、国税、地方税を通じて税制上の優遇措置を講ずることとし、住宅金融公庫、年金福祉事業団は、協会による住宅及びその宅地の供給が円滑に行なわれるよう、必要な資金の貸し付けについて配慮し、労働金庫及び労働金庫連合会は、協会に対する資金の貸し付けの業務を行なうことができるものとすること。
第五に、協会は、財団法人日本労働者住宅協会の一切の権利及び義務を建設大臣の認可を得て承継するものとすること。であります。
本案は、六月九日本委員会に付託され、翌十日提出者より提案理由の説明を聴取し、直ちに採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
右、御報告申し上げます。(拍手)
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009・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/9
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010・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第二 野菜生産出荷安定法案(内閣提出)
入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/10
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011・海部俊樹
○海部俊樹君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
すなわち、この際、日程第二とともに、内閣提出、入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律案を追加して両案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/11
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012・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 海部俊樹君の動議に御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/12
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013・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
日程第二、野菜生産出荷安定法案、入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。
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014・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 委員長の報告を求めます。農林水産委員長中川俊思君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔中川俊思君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/14
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015・中川俊思
○中川俊思君 ただいま議題になりました内閣提出の二法案について、農林水産委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
まず、野菜生産出荷安定法案について申し上げます。
本案は、最近における国民の食生活向上に伴う野菜消費の需要増大に対処して、大消費地域に対する主要な野菜の生産及び出荷について、安定的な供給を確保し、もって野菜農業の健全な発展と国民消費生活の安定に資せんとするものであります。
本案は、三月二十八日提出され、四月十九日、本会議で趣旨説明が行なわれた後、本委員会に付託されたものであります。
本委員会におきましては、四月二十六日提案理由の説明を聴取した後、六月二日以降数次にわたり慎重審査を進め、六月十日、質疑を終了し、採決いたしましたところ、賛成多数をもって可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案に対しては、自民、社会、民社三党共同提案によって、野菜指定産地の指定、生産出荷近代化計画の樹立と実施については、系統農業協同組合の活用をはかるとともに、十分その意見を徴することなど六項目にわたる附帯決議が付されましたことを申し添えます。
次に、入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律案について申し上げます。
本案は、入会林野及び旧慣使用林野の開発が、これらの土地について存する旧来の権利関係に妨げられて進展していない現状にかんがみ、これらの土地の農林業上の利用を増進することを目途として、その権利関係の近代化を助長するための措置を定めようとするものであります。
本案は、去る三月十日提出され、同月二十二日、本会議で趣旨説明が行なわれた後へ本委員会に付託されたものであります。
本委員会におきましては、四月六日政府から提案理由の説明を聴取して以来数次にわたり質疑を行ない、その間、参考人の意見を聴取し、また、現地調査を実施する等、慎重審議を重ね、六月二十一日、一切の質疑を終了いたしましたところ、自民、社会、民社三党共同提案によって、市町村長が旧慣使用林野整備計画を定める場合すべての旧慣使用権者の意見を聞くこと、及び都道府県知事が旧慣使用林野整備計画を認可する場合、一部の者に対し権利の集中その他不当な利益をもたらさないようにすることを内容とする修正案が提出され、討論を行なった後、引き続き採決に付し、修正案並びに修正部分を除く原案をいずれも賛成多数をもって可決し、結局のところ、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。
なお、本案に対しましては、自民、社会、民社三党共同提案によって、旧慣使用林野の整備を進めるにあたっては、関係住民の意思を十分尊重すべきであるなど七項目にわたる附帯決議が付されたことを申し添えます。
以上、報告を終わります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/15
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016・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 両案を一括して採決いたします。
両案中、日程第二の委員長の報告は可決、他の一案の委員長の報告は修正であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/16
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017・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり決しました。
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地方公営企業法の一部を改正する法律案(内
閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/17
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018・海部俊樹
○海部俊樹君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
すなわち、この際、内閣提出、地方公営企業法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/18
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019・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 海部俊樹君の動議に御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/19
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020・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
地方公営企業法の一部を改正する法律案を議題といたします。
地方公営企業法の一部を改正する法律案
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/20
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021・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員長岡崎英城君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔岡崎英城君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/21
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022・岡崎英城
○岡崎英城君 ただいま議題となりました地方公営企業法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、地方公営企業の能率的かつ合理的な経営を促進するため、管理者の自主性を強化するほか、地方公営企業の特別会計と一般会計との間の負担区分を明らかにする等、地方公営企業制度について所要の改正を行なうとともに、地方公営企業の財政の再建に関する措置を定めようとするものであります。
本案は、四月二十六日本委員会に付託され、翌二十七日永山自治大臣から提案理由の説明を聴取し、以後本案及び別途日本社会党より提案されておりました地方公営企業法の一部を改正する法律案外二法案について審査を重ねてまいりましたが、五月十二日及び十三日には本委員会に参考人を招致して意見を聞くとともに、また、六月六日には札幌市に、八日には横浜市に、それぞれ委員を派遣して各界の意見を聴取し、さらに、十日には運輸委員会との連合審査会を開くなどして慎重に審査を行なったのであります。
本二十一日、質疑を終了しましたところ、本案に対して渡海元三郎君外二名より、三党共同提案にかかる修正案が提出され、渡海委員の趣旨説明の後、本案及び修正案を一括して議題に供し、討論に付しましたところ、自由民主党を代表して大石委員は修正案及び修正部分を除く政府原案に賛成、日本社会党を代表して島上委員及び民主社会党を代表して門司委員は、修正案に賛成、修正部分を除く政府原案に反対の意見を、それぞれ述べられました。(発言する者あり)
採決の結果、修正案は全会一致をもって可決、修正部分を除く政府原案は賛成多数をもって可決、よって、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。
修正点は、財政再建債に対する国の利子補給の拡大、償還年限の延長等地方公営企業に対する財政措置の強化、並びに職員の給与、赤字企業に対する自治大臣の財政再建勧告権及び企業債の制限等の規定に関するものであります。
なお、本案に対し、三党共同提案により、水道事業及び地下鉄事業に対する国の財政援助措置の強化、公営企業金融公庫への政府出資増額等による企業債貸し付け条件の改善、並びに国の公共料金抑制措置に伴う財源補てん措置を内容とする附帯決議を付することに決しました。
以上、御報告申し上げます。
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023・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 討論の通告があります。これを許します。島上善五郎君。
〔島上善五郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/23
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024・島上善五郎
○島上善五郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま上程されました地方公営企業法改正案に対し、反対の討論を行なわんとするものであります。(拍手)
この法案を提出するに至った理由として、政府は、近年著しく増大した地方公営企業の累積赤字を解消し、企業の健全なる発展を続けるよう、地方公営企業制度調査会の答申の趣旨に基づいて所要の改正を加えると申しておるのでありますが、私は、以下数点にわたり、この改正案によっては累積赤字の解消、企業の健全なる発展を期し得ないことを明らかにしつつ、その基本的な誤りを指摘いたしたいと存じます。
その第一は、累積する赤字の現象面にのみ目を奪われ、赤字のよって起こる原因を十分に究明していないこと。したがって、赤字解消の対策もきわめて不十分であるという点でございます。
地方公営企業の赤字の原因は、政府の説明によりますれば、人件費、資本費等のコストの増加、料金改定の遅延、合理化の不徹底にあり、基本的には、企業の管理体制、給与制度、料金の決定方法などの現行制度にもあるとしておりまするが、これは現在の地方公営企業の実情、その累積赤字の真の原因を正しく把握しておらず、この改正案を合理づけようとする一方的な皮相の観察といわざるを得ません。
高度成長政策によって拍車をかけられた人口の過度の都市集中は、都市構造に大きな変化を生み、あらゆる面にひずみを生じておりまするが、なかんずく都市交通においては、交通戦争、交通地獄のことばさえ使われるほど、極度の混乱と渋滞となっているのであり、これが企業の経済性に致命的打撃を与えていることは明らかな事実であります。この混乱、渋滞を解消するために、地下鉄建設が時代の要請となってはおりまするけれども、膨大なる建設費を要し、今日のようなスズメの涙にひとしいような政府補助では、企業の経済性を保つことはとうてい不可能であります。水道においても同様で、急激なる人口増その他の社会的要請による需要増に応ずるためには巨額の投資を必要とし、これまた独立採算はとうてい不可能であります。起債の元利償還の重い負担が収入の大部分、ところによっては収入をオーバーするような状態で、企業の経済性を保持することができるはずはございません。その上、政府の経済政策の失敗に基因する物価の著しい値上がりは、企業経費の急増を来たしており、また、公共負担的性格の経費も、近年とみに増大しつつある反面、公共料金なるがゆえの抑制政策より起こる膨大なる収入欠陥という矛盾に板ばさみとなっている事実も、また見のがし得ないのであります。
これを要するに、赤字の最大原因は外的条件であって、企業内努力によってはいかんともしがたいものであります。この外的条件は、おおむね政府の施策の失敗もしくは当然政府が負うべき責任の回避によるものであって、この根本にメスを加え、政府の負担を明確にすることなく、企業と地方公共団体にのみ不当な重荷を負わそうとする本案によっては、とうてい地方公営企業の公共事業としての再建と発展は期待できないのであります。(拍手)
この法案の財政再建策は、地方公営企業の今後の必然的拡大に関する考慮もなく、性格の異なるかつての一般地方財政再建の方策をむぞうさに踏襲したものであって、拡大の中ではたして再建ができるかどうか、逆に拡大を阻止することになりはしないかと、その危険を心配しないわけにはまいりません。一体、なぜに答申の中に示されている国の負担を明らかにし、確立しないのであるか。答申によりますれば、「水道、地下鉄に対して、道路等公共施設に対する国庫負担制度を勘案の上、国が負担する制度を確立すること、並びに国の物価政策によって抑制して生じた収入欠陥に対して国が措置すべきである。」と答申されているのにこれをしないのは、政府がいままでもよくやった手でございまするけれども、都合のよいときは答申尊重、都合の悪いときは答申無視というかってなやり方であって、断じてこれは許すことはできません。(拍手)
第二に申し上げたい点は、経済性のみを強調して、公共性を忘れ去ろうとしている点であります。
現行法におきましても、経営の基本原則として「常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない。」とうたっております。これは従来もしばしば議論されたところでありまするが、われわれは、本来の目的が公共の福祉にある以上は、住民の日常生活に欠くことのできない水道や交通事業、健康保持に必要な病院事業など、現にそうでありまするように、独立採算がきわめて困難な場合、あるいは不適当な場合など、当然公共性を優先さすべきであると考えます。しかるに、この法案はこの点ほとんど考慮を払うことなく、独立採算制を強調しており、利潤追求の経済性を本来の目的とする私企業的な思想によって貫かれているといわなければなりません。また、料金決定にあたって、原価主義をとる結果、一般物価や住民の生活への影響などは考慮されない高い料金値上げをもたらすであろうことは必然であり、経済性が優位に立って、公共性の影は次第に薄れ去ろうとしておるのであります。
第三に指摘しなければならない点は、この法案は、地方公営企業における労働者の存在を全く無視した、というよりは、むしろ、労働者に対する挑戦的な内容すら持っているということであります。
もともとこの法改正の前提となりました地方公営企業制度調査会に、企業に働く労働者の代表を一人も加えず、労働者の意見に耳をかさなかったことの片手落ちが問題であり、誤りの第一歩でありまするが、その結果として出た答申には、「職員及び労働組合も企業の発展に協力を惜しむべきではない。」と命令口調でいっているのでありまするが、労働者に対する思いやりなどはみじんもないのであります。これを受けたこの法案も、労働者の当然取得すべき労働基本権や生活権に対しては何らの配慮もなく、反対に、既得の権利さえもこれを取り上げようとしているのであります。地方公務員の身分を有する企業職員の給与に、能率給、経営の状況等の観念を導入したことは、国家公務員の身分を持つ現業職員の給与規定にはないところであって、自治省が常に主張しておりまする地方公務員は国家公務員に準ずるという従来の方針に反するばかりでなく、この改正によって、逆に国家公務員の現業職員にもこれを及ぼす突破口となる危険性を感じないわけにはまいりません。また、給与規定をこのように改正するならば、当然労働基本権の拡充、ストライキ権の復活がなされなければならないのに、反対に、この法によって、労使が自主的に行なうべき団交に強い一定のワクをはめ、さらに再建計画の承認にあたっては、自治大臣が団交の結果を否認し得るような、おそるべき労働権否定の落とし穴さえ用意されているのであります。
この法改正は、最近、そうでなくてさえ合理化によって、物価上昇の中に賃金低下の攻勢を次から次へと加えられて苦しんでいる地方公営企業労働者に、権力をかさにした一そう強い合理化攻撃をもたらすであろうことは明らかであり、その結果は、公営企業再建に労働者の協力を一そう必要としている時期に、労使関係は絶え間なきどろ沼的紛争となるおそれがあるのであります。これでは断じて地方公営企業の再建などはできるものではございません。
第四に指摘申し上げたいのは、地方自治の侵害についてであります。
今日、地方公営企業は地方公共団体の重要な事業であり、今後ますます重要性を増し、拡大する機運にあるとき、地方の首長と議会の権限を縮小するこの改正案は、企業の利用者であるとともに所有者でもある地方住民の企業に対する発言権を奪い、住民自治の基本を破壊するものであります。その反面、管理者の権限を強めて、自治大臣がこれに関与、介入する権限を強めていることは、明らかに政府による地方自治の侵害であって、われわれの断じて反対するゆえんであります。東京都議会をはじめ多くの地方議会が、自民党の諸君を含めてこぞってこの点に反対していることを、よもや御存じないはずはないと思います。
最後に申し上げたいのは、これまた答申にありまする交通事業の一元化の問題であります。
本来、都市における交通は、地下鉄をも含めて一元的に運営さるべきものであることは、おそらくどなたも異論のないところ、東京の場合などは昔からの懸案の問題であり、調査会でもすみやかに解決すべきものと答申しているのに、今回は、たとい関係法律は違うといっても全くこの問題を置き去りにし、将来その方向で努力するという程度のあいまいな大臣答弁で問題の解決を回避しているのは、われわれの断じて納得できないところであります。
申し上げたい点はまだまだありまするけれども、私は、時間がきたと催促を受けましたので、以上申し上げまして、反対の討論といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/24
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025・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/25
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026・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
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雇用対策法案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/26
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027・海部俊樹
○海部俊樹君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
すなわち、この際、内閣提出、雇用対策法案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/27
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028・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 海部俊樹君の動議に御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/28
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029・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
雇用対策法案を議題といたします。
雇用対策法案
右
国会に提出する。
昭和四十一年三月三十日
内閣総理大臣 佐藤 榮作
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/29
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030・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 委員長の報告を求めます。社会労働委員長田中正巳君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔田中正巳君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/30
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031・田中正巳
○田中正巳君 ただいま議題となりました雇用対策法案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、今後の雇用情勢の推移に対処して、国が雇用に関する必要な施策を総合的に講じ、労働力需給の質量両面にわたる均衡をはかり、国民経済の発展と完全雇用の達成に資することを目的とするものでありまして、そのおもなる内容は、
第一に、国は、雇用対策基本計画を策定し、雇用に関する施策の基本となるべき事項を定めること。
第二に、労働大臣は、雇用情報の収集、整理、活用並びに職業に関する調査研究を行なうこと。
第三に、求職者及び求人者に対する指導、関係者に対する必要な助言その他の援助を行なうこと。
第四に、技能労働者の養成確保のため、職業訓練の充実をはかり、技能検定制度を確立すること。
第五に、求職者等に対し職業転換給付金を支給することができること。
第六に、中高年齢者等の雇用を促進するため、雇用率の設定、適職の選定等の必要な措置を講ずること。
第七に、大量の雇用変動のある場合の届け出義務等必要な規定を設けるほか、関係法律について所要の整備を行なうこと。等であります。
本案は、四月二十二日本会議において趣旨の説明が行なわれ、同日本委員会に付託となり、自来熱心なる質疑応答が行なわれたのでありますが、その詳細は会議録において御承知願いたいと思います。
かくて、本日の委員会において質疑を終了いたしましたところ、炭鉱離職者対策、駐留軍離職者対策等について必要な改善措置を加える旨の修正案が提出せられ、討論の後、採決の結果、自由民主党、日本社会党、民主社会党三党共同の修正案は多数をもって可決せられ、本案は修正議決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/31
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032・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/32
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033・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
————◇—————
都道府県合併特例法案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/33
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034・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 内閣提出、都道府県合併特例法案について趣旨の説明を求めます。自治大臣永山忠則君。
〔国務大臣永山忠則君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/34
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035・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) ただいま議題となりました都道府県合併特例法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
この法案は、最近における社会、経済の発展に対処するため、地方制度調査会の答申の趣旨に従い、都道府県の自主的な合併が容易に行なわれ得るようにするため、所要の特例措置を定めようとするものであります。
第一に、この法律は、関係都道府県の発意に基づく合併の方式として、関係都道府県議会の議決による申請に基づき、内閣総理大臣が国会の議決を経て処分する方法を規定しております。
第二に、都道府県の合併の実施を円滑ならしめるため、国会議員の選挙区、合併都道府県の議会の議員の定数、地方交付税の額の算定等について特例を設けることといたしております。
第三に、合併都道府県の建設を促進するため、補助金の交付及び地方債についての配慮等について規定いたしております。
なお、この法律は、十年間の限時法とすることといたしております。
以上が都道府県合併特例法案の趣旨でございます。(拍手)
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都道府県合併特例法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/35
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036・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。阪上安太郎君。
〔阪上安太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/36
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037・阪上安太郎
○阪上安太郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま説明のありました都道府県合併特例法案について、順次質問を行ないます。
率直に申し上げまして、われわれ社会党は、現在の自治行政、特に都道府県行政が必ずしも十分な成功をおさめているとは考えていないのであります。しかしながら、その原因は、制度にあるのではなく、その運営にあると指摘するものであります。
都道府県制度については、在来より二つの異なる見解の対立がございます。すなわち、その一つは、現行の府県制度を廃止して、それにかわるに官治的な道州制か、または国家機関的な性格の強い府県制度へ再編成しようとする主張であります。そして、いま一つは、基本的には現行府県制度をそのまま維持しながら、まず府県の自主性を回復し、そこに大幅に中央各省の権限を委譲すべきであるとする主張であります。
この二つの主張からこれを見るときに、今回の特例法案は、明らかに前者の立場に立つものでございます。そうして、このことは、過去に世論の反撃を受けて挫折したあの道州制をあきらめることができない新中央官僚の執念であり、これこそまさに道州制の亡霊であるといっても過言ではございません。(拍手)この亡霊が、このたびは国家の出先機関としての性格の強い府県制度再編成に変装してあらわれたのであります。そして、これをあやつっているのが財界であります。このことは、今日、三、四府県合併論の急先鋒が東海道メガロポリスに所在するところの関西財界であり、同時に中京財界であることよりいたしまして、きわめて明白でございます。
さて、政府・自民党は、在来より中央直結の地方自治を主張してきたのであります。このことは、地方公共団体を国の出先機関化し、地方自治を中央の支配下に置かんとする意図であります。九割をこえる委任事務を押しつけられて、三割程度の自主財源、地方交付税の配分と地方債の認許可で金縛りにいたしまして、千二百億を上回るところの超過負担、四千六百億を上回る公共事業の地方負担、しかも、先ほどありましたところの理不尽きわまる地方公営企業の単年度独立採算制度、こういったことによりまして、地方公共団体をして極度の栄養失調に落とし込んでいるのでございます。それでもなお中央に追随しない地方公共団体にてこずりまして、一本釣りではなまぬるしといたしまして、今度は網で三、四匹ずつまとめて引き寄せようとするのが今回の合併特例法案であります。もちろん、すくい上げた魚は、いわゆる独占のえじきに供せられるのでございます。
申すまでもなく、憲法は、その八章で地方自治を保障いたしております。このことは、明治年来一貫して官僚支配の常套手段であった中央集権により全く窒息せしめられていた地方自治を、官僚の根強い拘束から解放し、その徹底した自主性を定着させようとしているのでございます。ところが、先刻からの説明を承っておりますると、その合併の目的、立法手続等において明らかに憲法の趣旨にもとるのであります。ことに、府県合併に名をかりて、実は中央集権制へのリバイバルの臭気がふんぷんといたしておるのであります。そして、その合併のかなたには、先ほど申し上げました道州制がちらほらと見えておるのであります。もちろん、私どもは、近代地方自治が国と全く独立して存在するなどという素朴な考え方は持っておりません。しかしながら、それだからといって、都道府県が国の出先機関となることにつきましては、断じて許すことができないのであります。(拍手)この際、憲法が保障するところの地方公共団体とは一体何か、そして、地方自治のものさしであるところの「地方自治の本旨」とは一体何か、これを国民の前にあらためて明らかにする責任があると考えるのであります。
そこで、総理は、都道府県、市町村の二段階構造をもって憲法の保障するところの地方公共団体と考えておられるかどうか。もしそうであるとするならば、今後ともこの構造に変革を加えることはないか。そして、都道府県を廃止して国と市町村との間に新たに中央政府の出先機関を設けることは違憲であると確認するかどうか。まずこの点を明らかにされたいのでございます。
次に、都道府県は国の出先機関ではなくして国と市区町村との中間団体であることを再確認し、そのためには、現在の委任事務をこの際解消して、その事務を、国、都道府県、市区町村に再配分し、かつこれに見合う税財源を配分する決意があるかどうか、これを明確にお答え願いたいのであります。
なお、これにつきましては、大蔵、自治両大臣からもとくとひとつ承りたいのであります。
また、地方自治の本旨につきましては、しばしば本院において質問いたしたところでありまするが、いまだかつて具体的な御答弁を得られなかったのであります。地方自治は民主主義の学校であるとか、あるいは国づくりは地方自治から始まる、このようにもいわれておりますが、ともに私どもは至言であると考えております。それだけに、為政者で地方自治の本旨がわからないようでは政治を担当する資格はない、このように考えるわけであります。
申すまでもなく、憲法は、その九十二条で、地方公共団体の組織並びに運営に関する事項は地方自治の本旨に基づいて法律で定める旨を規定いたしております。この合併法案は、この組織並びに運営に関する基本的な事項であります。したがって、そのことは、いやしくも趣旨説明のような広域行政論のごとき今日的な問題だけを理由にいたしまして、しかく簡単に処理すべきものでないと考えるのでございますが、この点総理の確たる見解を承りたいのであります。
さらに、この際、この法案提出に至るまでの経緯についてお伺いいたしたいと存じます。
まず、法案の直接の動機となったところの阪奈和合併論につきましては、地方制度調査会の現地調査報告によりますると、大阪府当局は時期尚早、さらに昨日の大阪府議会におきましては特例法案反対の議決を行なっております。また、奈良県当局は反対をいたしております。同じく東海三県合併論につきましては、岐阜県当局は反対であると承知いたしております。このように肝心の自治体当局がまちまちであるのに、何がゆえに合併の機運が随所に固まるなどと即断したのか。また、政府及び自民党内では連合方式と合併方式をめぐりまして激しい論争があったことを私どもは承知いたしております。一体、いかなる論拠によって合併方式に統一調整されたか、伺いたいのであります。
さらに、この種重要法案が会期末に提出されることについて、わが党より山口議長に国会軽視を訴えたところ、議長より、この提案時期は国会運営上好ましくない旨政府に警告が発せられたにもかかわりませず、これを無理やりに押し切った政府の態度は、またぞろ政府の国会軽視であり、はなはだしく不穏当であると考えまするが、以上の諸点について、総理より納得のいく説明を伺いたいのであります。(拍手)
さて、私ども日本社会党は、地方自治の本旨を具体的に次のごとく理解しております。
それは、一つ、地方自治は住民自治である。このことは当然団体自治に優位する。一つ、地方自治は、その機関は直接代表制である。このことは任命制を排除する。いま一つ、地方自治は、その事務は固有事務が主である。このことは委任事務を制約する。
以上の三つの要件が同時に満たされることが地方自治の本旨であるとするものであります。
そこで、この地方自治の本旨に基づいて、ただいまのこの特例法案を検討いたしますとき、そこには俗受けのする区域問題にかこつけて、実は自治体としての府県制度そのものを骨抜きにしようとする政府の意図が察知されるのであります。
そこで、以下さらに具体的にこの点をただしたいと考えるものでございます。
今日の都道府県制度は、政治、経済の現状から見て、広域行政団体としては不適当である、こう説明されたのでありますが、すでに述べたように、今日の都道府県は、固有事務では一割自治、自主財源では三割自治でございます。そのため、いまや全く国の出先機関となり、住民の意思に基づき地方の事務を行なう余地は全くないのであります。これではとてものことに憲法が考えている地方公共団体とは言いがたいのであります。
合併により幾ら区域が広くなっても、府県は依然として府県である。むしろ、広がることにより、逆に国のコントロールが一そう強化される反面、これまで以上に住民のコントロールが及ばなくなるのであります。これでは地方自治の本旨にもとる。
今日、都道府県が広域行政の役割りを果たし得ないのは、何も区域の広い狭いの問題ではないのであります。それは、委任事務を強制されていることと、さらに、各省の出先機関、すなわち農地局や建設局等を通してのリモートコントロールに災いされていること、それにも増して、地域の総合化を妨げている最大の原因は、中央各省の権限争いによるものであります。(拍手)このことは、合併で解決できるものではなく、むしろ現行縦割り行政の弊害をなくすることと、先刻述べた委任事務を解消するための事務の再配分以外に道はないのであります。
要は、制度を現状に近づけることではなくして、現状を制度に近づけることであります。この点、自民政府のやり方は全く本末転倒と申しても過言ではございません。(拍手)
ことに、この点で最も期待された地方制度調査会が、当初に諮問を受けたところの行政事務の再配分の答申を府県合併のあと回しにしたこの不見識は許されないのであります。政府は今後この問題とどう取り組むつもりであるか。これは今日の地方行財政危機打開の糸口でもあるので、総理大臣、大蔵大臣、自治大臣より、誠意のある回答を求めるものであります。
また、本法提案の理由の根拠となっている広域行政とは、主として開発行政でございます。ところが、その中核をなす地域開発は、不況と産業公害と国の財政援助不足により行き詰まり、スローダウンと計画縮小のやむなきところまで来ているのであります。しかも、開発関係法律は、各省のなわ張り根性で依然として統一総合性を欠いているのであります。この開発行政の行き詰まりが広域行政に困難をもたらしているのであります。この状態を国は放置しておいて何の府県合併ぞと問いたいのであります。(拍手)この点、地域開発関係各要請大臣は一体いつまで沈思黙考を続けておられるのか、代表して経済企画庁長官より答弁を承りたいのであります。
また、今日、新産都区域にしても、工特区域にいたしましても、低開発区域にいたしましても、地域開発の区域はそのほとんどが都道府県内の一部の区域に限定されているのであるから、そのための合併論は、これは理由にならないのであります。もちろん、首都圏、近畿圏、中部圏及び各ブロックの開発、整備等、数府県にわたるものがあるが、これらはすべてその区域内の一体性確保を目途に開発、整備を進めておるのであります。しかるに、その区域の中で富裕府県を中核とする三、四府県が統合するなどということは、せっかく進行しつつある共同処理方式に水をさし、その一体性をそこなう結果となることは、火を見るよりも明らかでございます。現行府県の区域を越える広域処理で、必要ならば、水系ごとに、路線ごとに、港湾ごとに、それこそ国が直轄すればよろしい。
以上、建設大臣の御意見を伺いたいのであります。
次に、合併で府県の財政力を集中して、強力な財政基盤をつくり、ひいては地域格差を是正する、こういう説明でございます。
一体、都道府県の適正規模も定めないで、かってな統合を許すならば、数少ない富裕府県を中心に、三、四府県の合併するケースのみが予想される。そうなると、残余の弱小団体との格差はますます広がるばかりでございます。なぜならば、ゼ口足すゼロはゼロであるからでございます。
昨年十月一日の国勢調査の結果は、二十五県の人口が減少して、その増加した人口は、いわゆる東海道メガロポリス、巨帯地域に過度集中いたしております。わが国の富裕府県は、現在この巨帯地域に存在しているのであります。これら三、四府県の合併は、今後一そうこれらの地域に人口と産業の過度集中をもたらし、その大都市はいわゆる爆発する都市となり、今世紀の末には取り返しのつかない過密の弊害を集積することとなるのであります。
一体、今日われわれは何のために地域開発や整備を進めておるのか。なるほど、府県合併は、一見わが国産業の大都市圏への求心的構造を遠心的構造に改革する役割りを果たすかのごとく見えるが、しかし、企業はしかく単純に立地するものではない。しょせんは大都市の過密の弊害を地続きに拡大する結果となるのであって、東京都に近接する埼玉県や神奈川県を見れば、このことは明白であります。われわれは、ここで国連調査団が東海三県に残したことばを教訓としなければならない。すなわち、「コイと金魚を一緒にすれば、金魚はコイに食われてしまう」ということであります。
以上、厚生大臣、経済企画庁長官の御所見を承りたいのであります。
さて、いままでは趣旨説明に対する反論のごときものでありましたが、私はここで、この特例法案が重大なミスをおかしておる点につきまして問いたださなければならないのであります。
すなわち、その一つは、府県の合併論なるものは、むしろ府県の存在をみずから否定する結果となるということであります。
言うまでもなく、都道府県の機能は、補完、広域、調整の三つであります。そうして、このうち最も本来的な任務は、基礎的地方公共団体であるところの市区町村を補完する役割りであります。この市区町村のめんどうを見る補完行政こそは、何ものをもってしてもかえることのできない都道府県独自の機能でございます。そうしてこの機能は、区域が広くなればなるほど弱められ、市区町村に対するきめのこまかい行政の展開を困難にし、ついには都道府県本来の存在理由を失うことになるのであります。明治年来府県制は変わらない、こういうことをおっしゃいますが、その内容は大きく変化しておる。今日の都道府県は憲法の保障する自治体であります。ましてや、かつての郡制を廃止した以後における現在の都道府県こそは、郡にかわって市区町村の補完に徹する任務があるのであります。都道府県が補完行政に徹するためには、その区域におのずから限度がある。この点、今日の広域合併論者はたいへんなミスをおかしているのであります。
いま一つのミスは、この立法手続に関するものであります。
すなわち、憲法九十二条及び九十五条を受けて、地方自治法第六条は、「都道府県の廃置分合をしようとするときは、法律でこれを定める。」としている。そしてその法律とは、地方自治の本旨に基づき住民投票で決する特別法であることは、今日の定説であります。また、「しようとするとき」とは、まさにしようとするそのときに、つど特別法をつくることである。ところが、今回の特例法案は、将来の合併を予想しての一般的、普遍的な規定となっております。もちろん、地方自治法が市町村合併について特別法を必要としないたてまえをとったのは、市町村は、元来、基礎的地方公共団体としてその住民との結びつきがきわめて強固であり、住民意思の反映が容易であるからであります。ところが、都道府県は、そもそも中間的地方公共団体であるので、市町村ほどに住民との結びつきが強固でない。したがって、府県合併という重大な事件については、特別に住民投票により住民意思を確認する方式を採用したと解すべきである。この点、住民投票を省略するこの特例法は、明らかに憲法違反のそしりを免れることはできないのであります。
以上、二つの重大な誤りについて、内閣総理大臣の責任ある御答弁を求めるものでございます。
いまや府県はこの立法により一つの岐路に立たされておるのであります。すなわち、広域行政に偏向して独占奉仕の道具となるか、補完行政に徹して市区町村住民の福祉を守り抜くかのせとぎわであります。しかし、この相反する流れを一つにする道はある。それは連合方式等の共同処理方式であるとわれわれは考えております。そして合併よりは、行政事務の再配分による府県の体質改善と、その縦割り行政の是正が先決である。われわれは、せっかく定着しつつある住民自治の芽をつみ取るところのおそるべき反動立法は粉砕しなければならないと考えるわけであります。
ここに、政府の猛反省を促しまして、この質問を終わるものであります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/37
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038・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
数点についてお尋ねがございましたが、まず第一は、都道府県、市町村、この二段構成を認めるかどうかというお尋ねであります。
私が申し上げるまでもなく、今日の地方公共団体というのは、ただいまの二段構造、このたてまえを堅持しておるのでありまして、今回の合併につきましても、この二段構造のたてまえでいろいろくふうしておるわけであります。いろいろお尋ねがありまして、政府は出先機関をふやすような考えがあるんじゃないかとか、あるいはこの際道州制を採用するような考えを持っているんじゃないかというお尋ねでありますが、ただいまさような点についての具体的な構想は全然ございませんから、御安心をいただきたいと思います。
次に、この地方公共団体の権限、機関委任事務についてでございますが、御承知のように、地方制度調査会の答申を政府は尊重いたしまして、委任事務の再配分、同時にまた、これに見合う財源の配分等を今後とも実施していくつもりでございます。
次に、第三の問題といたしまして、広域行政と地方自治体のあり方との関連についてのお尋ねであります。
いろいろ今日問題を起こしております広域行政の必要なことも、他面においてこれは国民の要望でもあります。しかし、地方自治体の機能を拡充強化する、そのことがまず第一に自治の本旨から申しましても政府に課せられた責任だ、かように私は思っておりますので、この広域行政の問題も、ただいまの地方自治体の能力の拡充強化、こういう意味において解決さるべきものだ、かように私は思っておる次第であります。
次に、この法案の提出に至りますまでの経過についてのお尋ねがあります。
財界からも、また産業界からも、また自治体等からもいろいろの議論が出ておりますことは御指摘のとおりであります。これらの議論をまとめまして、政府は、今日ようやくこの合併法案を御審議いただく、こういう結論になったのでございます。それらの経過については委員会において詳細にまた説明する機会もあろうかと思います。
ことに、お尋ねになりました連合方式と合併方式、その議論のありますことも、これもおそらく社会党においても同じような議論があるだろうと思います。私は、この合併方式と連合方式は必ずしも矛盾するものだ、かように思っておりません。府県の合併について合併方式をとるし、同時に、事務の共同処理方式としてはこの連合方式をとるべきものだ、かように思っておりますので、市町村の事務あるいは都道府県の事務等におきましても、共同処理方式の一つとしてこの連合方式をとることが今後一つの問題ではないか、かように思っておりますので、そういう意味で検討を続けていくつもりでございます。
また、この重要な法案が今日出されたということは国会軽視のことではないかというおしかりでありますが、私どもは、地方制度調査会の答申を尊重するたてまえでございます。昨年の九月に答申が出た、それに基づいてこの実現をはかるべく政府は努力してまいりました。この法案も以前に早く国会に提案いたしたのであります。しかし、今日ようやく本会議で審議をいただくということは、私まことに残念に思っておりますが、こういう点につきましては、国会軽視でないということだけはっきり申し上げて御了承を得たいと思います。
次に、委任事務の制限やまた縦割り行政の弊害ということについてお触れになりました。私も阪上君と同じような考え方を持っております。これをやっぱり是正していくこと、これは、先ほど申しましたように、地方自治体の機能を強化していく、拡充していくということでこの問題も解決すべきではないか。今後の努力をそういう方向に傾注するつもりであります。
次に、今日のこの提案は憲法違反ではないかという議論でございますが、いずれ委員会におきまして詳細に審議されることだと思いますけれども、ただいまも自治大臣から御説明いたしましたように、本法案による府県合併、これは法律の形式によるものではございません。これは国会の議決を前提として内閣総理大臣の処分の方式をとるものでありまして、いわゆる憲法九十五条の一つの地方公共団体のみに適用される特別法、こういうものでないこと、これは御承知のことだと思います。これとは全然別のものでありますので、憲法違反ではございません。
また、住民の意思を無視するのではないかというおしかりでありますが、御承知のように、この種の問題は自治的に解決されることが望ましい。したがいまして、関係府県議会において自由意思でその議決によってきめていくことが最も望ましい方法だと私は考えておりますが、しかし、三分の二以下、三分の二以上取れない、こういうような場合におきましては、直接住民投票に訴えるのでありまして、そういう意味では住民の意思を十分に尊重されておる、かように私思いますので、憲法違反ではないということをはっきり申し上げておきます。(拍手)
〔国務大臣永山忠則君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/38
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039・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) 総理大臣より答弁がございましたので、重複を避けて御回答を申し上げたいと存じますが、お説のように、住民自治の精神に徹しまして、絶対に中央権力政治にならないようにするということが本法案を提出いたしました本旨でございます。したがいまして、中央権力縦割り政治になりましたり、あるいは出先の権限争議等がありましては、十分な地方自治の本質を全うすることができないのでございますので、ここに府県の行政能力を向上いたし、広域行政の実をあげるための府県合併でございますから、したがいまして、市町村に対する手厚い補完行政が十分できるものであると考えるのでございます。同時にまた、思い切って財源の移譲、事務の委譲をすることもできるのでございますから、本法案こそは、住民自治に徹する、民主主義の精神に徹した地方行政を推進することになると、深く信じておる次第でございます。
一応御答弁申し上げます。(拍手)
〔国務大臣三木武夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/39
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040・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 私どもの関連する産業行政、これは、府県の単位では、もう府県の区域においては処理できない問題ばかりであります。産業立地、あるいはまた公害問題、資源の開発、あるいはまた工場の移転、こういう問題を考えたときに、行政区画はどうあろうとも、既存の行政区画にとらわれないで、広域行政といいますか、広域経済という観点から問題を処理しないと処理できなくなっておるわけでございます。そういう意味で、府県の単位が拡大されるということは実情に沿うものだと考えておる。それができないまでも、やはり既存の行政区画にとらわれないで、もう少し広い範囲内でこの産業上の諸問題は解決していくよりほかにない、これが実情でございます。そういう点で、この立法というものがそういう実情に沿うことになるものと期待をいたしておるわけでございます。(拍手)
〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/40
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041・藤山愛一郎
○国務大臣(藤山愛一郎君) 三十七年に作成されました全国総合開発計画は、御承知のように漸次進んではまいってきておりますが、お話がございましたように・公害の問題でありますとか、あるいは地方財政の困難の問題でございますとか、そうした問題が出てきておりますので、われわれもこれに対して再検討の必要がございます。したがって、経済審議会の地域部会におきまして、望ましい地域社会のあり方等について検討をいたしておりますので、それらを含めまして、今後総合開発計画について再検討をいたしてみたいと考えております。
なお、国土総合開発法が二十五年に制定以来、地域開発の立法がたくさん出てまいりました。したがって、その法律の中には、おのずから多岐にわたった内容になっておりますものもあり、あるいは相互に入り組んだようなことがございます。したがって、これらのものを総合的に調整をしてまいるということが必要の段階になってきておると思っておりますので、国土総合開発審議会におきまして、これらの問題について調査、御審議を願っております。それらの問題につきましての結論が出ましたならば、われわれといたしましてもそれを参考にして進めてまいりたいと、こういうふうに考えております。
なお、この府県合併によりまして過大都市がますます過大化するのじゃないかという御質問でございますけれども、しかし、過大都市の過密化を防止していくという意味においては、府県の範囲が広くなります。と自体が過大化防止に非常に役に立つのでありまして、疎開その他の方法をとりましても、最も有効にそれらが利用されることになりますので、その心配はないと考えております。(拍手)
〔国務大臣瀬戸山三男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/41
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042・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 広域行政の大きな要素は、あるいは道路、河川等、いわゆる建設行政の関係が多いのじゃないか、そういうものは当然に広域的にあるいは全国的な視野でやるべきものであって、必ずしも府県の合併ということは必要でないのじゃないか、あるいは弊害があるのじゃないか、こういうようなお尋ねでありますが、もとより、建設行政は、全国的に見まして、なお広域的な見地でやらなければなりません。けれども、この特例法は、御承知のとおりに、あるいは自然的に経済的に、あるいは社会的に、一体的に発展をする、また将来発展すべき可能性がある、こういうところを自主的に合併する特例を設けておこう、こういうことであります。したがって、建設行政の実態とこの法律のねらいとは別でありますので、私ども、必ずしも矛盾するものではないと、かように考えております。(拍手)
〔国務大臣鈴木善幸君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/42
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043・鈴木善幸
○国務大臣(鈴木善幸君) 大都市の過密化によって生じてくる生活環境の悪化を防止いたしますために、厚生省といたしましては、生活環境施設の整備並びに公害防止対策の推進に努力をいたしておるところであります。
生活環境施設の整備につきましては、すでに御承知のとおり、緊急整備五カ年計画を実施してまいりましたが、明年度からさらに新たな五カ年計画をつくりまして、万全を期したいと考えております。
また、公害防止につきましては、通産省や気象庁と緊密に連絡をとりまして事前調査をいたしますと同時に、いままで現にやっておりまするばい煙規制法あるいは水質汚濁防止法、こういうものでただいま個々の工場等を規制いたしておるのでありますが、それがたくさん集まりまして、大気の汚染や水質の汚濁を来たしておる現状にかんがみまして、これらを強化することを検討いたしております。また、自動車の排気ガスでありますとか、あるいは騒音等の未規制の公害につきましても、今後生活環境を整備するために十分検討を進めてまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/43
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044・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 都道府県の中間自治団体としての地位、また委任事務の再配分等につきましては、総理から明快にお答えいたしましたので、省略をいたします。
中央政府の都道府県に対するなわ張り争いといいますか、権限の争いが地方自治体の運営を大きく阻害しておる、こういうお話でありますが、私も、この点につきましては、さような傾向なしとしない、かように考えます。この点は深く反省いたしまして、是正をはかっていきたい、かように考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/44
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045・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/45
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046・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後四時五十一分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 佐藤 榮作君
大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
厚 生 大 臣 鈴木 善幸君
通商産業大臣 三木 武夫君
労 働 大 臣 小平 久雄君
建 設 大 臣 瀬戸山三男君
自 治 大 臣 永山 忠則君
国 務 大 臣 藤山愛一郎君
出席政府委員
内閣官房長官 橋本登美三郎君
内閣法制局長官 高辻 正巳君
農林政務次官 仮谷 忠男君
自治省行政局長 佐久間 彊君
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X06619660621/46
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