1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年十二月二十七日(月曜日)
午後零時五十四分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 仲原 善一君
理 事
山崎 斉君
武内 五郎君
渡辺 勘吉君
宮崎 正義君
委 員
青田源太郎君
小林 篤一君
櫻井 志郎君
田村 賢作君
高橋雄之助君
任田 新治君
野知 浩之君
森部 隆輔君
八木 一郎君
和田 鶴一君
大河原一次君
川村 清一君
鶴園 哲夫君
中村 波男君
森中 守義君
北條 雋八君
国務大臣
農 林 大 臣 坂田 英一君
政府委員
農林政務次官 後藤 義隆君
農林省蚕糸局長 丸山 文雄君
事務局側
常任委員会専門
員 宮出 秀雄君
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本日の会議に付した案件
○繭糸価格安定法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
○日本蚕糸事業団法案(内閣提出、衆議院送付)
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001・仲原善一
○委員長(仲原善一君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
繭糸価格安定法の一部を改正する法律案、日本蚕糸事業団法案を一括議題とし、まず提案理由の説明を聴取することにいたします。坂田農林大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/1
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002・坂田英一
○国務大臣(坂田英一君) 繭糸価格安定法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
繭糸価格安定法の目的といたしますところは、生糸の輸出の増進及び蚕糸業の経営の安定をはかるために、繭及び生糸の価格の異常な変動を防止することにあるのでありまして、このような観点から、政府保有生糸については、申し込みに応じて最高価格で売り渡すこととしているのでありますが、最近における生糸輸出の状況を見ますと、わが国生糸の輸出はきわめて不振であり、これに反し、海外市場における他国産生糸の進出がきわめて顕著な現状であります。これはわが国における糸価の変動が激しかったこと、一方海外の需要者において糸価の変動に対応する力を欠いていること、他国産生糸が比較的低い価格水準で輸出されていること等がそのおもな原因と考えられるのであります。
このような事情を考えますと、今後わが国においては、糸価の変動をでき得る限り小幅にとめることが輸出の増進のためにぜひとも必要であり、このような点をも勘案の上、別に日本蚕糸事業団法案を提案し、御審議を願うこととしているのでありますが、これとともに、政府保有生糸につきましても、生糸の価格の騰貴により生糸の輸出が減少しまたは減少するおそれがある場合において、生糸の輸出を確保するため、特に必要があるときは、一般競争入札等の方法により売り渡すこともできることとすることが必要であると考えられるのでありまして、このような観点から繭糸価格安定法の一部を改正しようとするのがこの法律案の提案の理由であります。
なお、この法律案は、さきの第四十九臨時国会に提案し、前国会において審議未了となりました同一の題名の法律案と同一の内容のものでありす。
何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
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次は、日本蚕糸事業団法案につきまして、その提案の理由及びおもな内容を御説明申し上げます。
近年における生糸の需要は着実に増加しつつあり、今後なお長期的に見てかなりの需要の増加が期待されるのであります。このような情勢を考えますと、今後繭生産の増大をはかるべき余地もまたきわめて大きいと考えられます。
また、養蚕経営の面におきましても、近年、技術の開発普及に伴い、その労働生産性の向上がきわめて顕著でありまして、これが生産の振興をはかることはわが国農業の発展をはかる上にきわめて肝要なところであると考えられるのであります。
しかるに、最近における需給の動向を見ますと、内需につきましてはすこぶる堅調でありますが、輸出はここ数年間における糸価の大幅な変動等の原因により極度の不振におちいっているのであります。いまさらいうまでもないところでありますが、生糸の需要の増進と繭の生産増強のためには、何よりも繭糸価格の適正な水準における安定が必要であります。政府といたしましては、従来繭糸価格安定法、日本蚕繭事業団法等の運用、あるいは生糸取引所に対する指導監督等の措置を通じまして、これについて最大の努力を傾注してまいったのでありますが、遺憾ながら、必ずしも十分な成果をおさめるには至っていないのであります。繭糸価格安定法がその目標といたしますところは、糸価の異常な変動を防止するところにあるのでありますが、養蚕農家の生産音欲を振起させ、一方生糸の需要、とりわけ海外における需要を確保するためには、繭糸価格の異常な変動を防止するにとどまらず、さらに一歩を進めて繭糸価格の変動をより小幅な範囲にとどめ、適正な水準に安定させるための努力が必要であると考えられるのであります。
このような観点から、日本蚕繭事業団と日本輸出生糸保管株式会社とを統合し、さらに民間出資を加えまして、日本蚕糸事業団を設立し、繭糸価格安定法の最高価格と最低価格の中間における適正な水準に糸価を安定させる目標のもとに生糸の買い入れ及び売り渡しの業務を行なうほか、繭の取引が適正な水準以下の価格で行なわれるおそれがあると認められる場合には、委託を受けて乾繭の売り渡し等の業務を行なうことにより、適正な繭価水準の実現をはかり、繭糸価格安定法の運用と相まって、繭糸価格の安定を一そう強化し、もって蚕糸業の経営の安定と生糸の輸出の増進を達成しようとするのが、この法律案の目的とするところであります。この法律案は、このために必要な日本蚕糸事業団の組織、業務、財務等に関し、所要の事項を定めたものであります。以上がこの法律案を提案する理由であります。なお、この法律案は、さきの第四十九臨時国会に提案し、前国会において審議未了となりました同一の題名の法律案と同一の内容のものであります。
次に、この法律案のおもな内容について御説明申し上げます。
第一に、事業団の組織等につきましては、政府及び民間出資の法人とし、その資本金は、日本蚕繭事業団及び日本輸出生糸保管株式会社から引き継ぎます資本金と、養蚕業者が組織する農業協同組合等及び製糸業者の出資金を合計した金額とするとともに、必要に応じて資本金の増加ができる
こととしておりますほか、役員の定数及び任免、運営審議会等につき所要の規定を設けております。
第二に事業団の業務に関する規定であります。
まず業務の範囲につきましては、生糸の買い入れ及び売り渡し、委託による乾繭の売り渡し、加工、生糸との交換等を行なうほか農林大臣の認可を受けて、繭または生糸の生産流通の合理化をはかるための事業に対する助成事業を行なうことができることとしております。
なお、生糸の買入れ及び売り渡しにつきましては、事業団はあらかじめ農林大臣の認可を受けて買い入れ価格及び標準売り渡し価格を定めることとしておりますが、これらの価格は、繭糸価格安定法の最高価格と最低価格の安定帯の範囲内において、生糸の生産条件及び需給事情その他の経済事情から見て、適正と認められる水準に生糸の価格を安定させることを旨として定めることとしております。また、事業団が生糸の買い入れを行なう場合には、出資者たる製糸業者からの申し込みにより買い入れるのでありますが、当該製糸業者は、繭の生産条件及び需給事情その他の経済事情から見て、適正と認められる繭価水準の実現をはかることを旨として事業団が定める基準繭価を保証する業者に限ることとしており、これによって適正な繭価水準の維持をはかることとするよう配慮しているのであります。
第三に、事業団の業務及び会計につきましては、事業計画、予算等についての農林大臣の認可、借り入れ金等について所要の規定を設けております。
その他の規定といたしましては、繭の売買取引が基準繭価に達しない価格で行なわれるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、農林大臣は製糸業者に対し、繭の買い入れに当たって基準繭価以上の価格によるべきことを勧告することができる旨の規定、事業団に対する農林大臣の監督、罰則等の規定等を設けております。
以上のほか、附則におきまして、事業団の設立に関し必要な手続規定、日本蚕繭事業団及び日本輸出生糸保管株式会社の解散及びこれらに伴う経過規定、関係法律の一部改正等の規定を設けております。関係法律の一部改正のうち、繭糸価格安定法の一部改正といたしましては、政府は、輸出適格生糸を確保するため必要があると認めるときは、事業団が買い入れて保管する輸出適格生糸のうち、政令で定める期間を経過してなお保管しているものを買い入れる旨の契約を締結することができることとしているのであります。
以上がこの法律案の提案の理由及びおもな内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/2
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003・仲原善一
○委員長(仲原善一君) それでは、ただいま議題となっております二法案について、一括して質疑を行なうことにいたします。
質疑のおありの方は、御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/3
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004・八木一郎
○八木一郎君 私は、本法の提案が、今日まで三たびの国会を通じて審議に入るこれまでの経過についてはよく承知しておる立場におります。したがって、すみやかに本法律案の通過成立をはかりたいという意欲的な立場から、若干の質問を試みたいと思うのであります。
私は、蚕糸業は目下重大時局に当面しておると思うのであります。そこで、政府蚕糸当局は、この認識についてどのように見ておるかという、この点を最初に伺いたいのであります。
今月の十三日の朝のNHKのテレビ放送でも、先月の生糸の輸出は、わずか七百七十六俵で、戦前戦後を通じて最低を記録しました。また、年間を通じても、一万六千俵程度と、去年のおよそ半分に減り、これまでの最低になる見通しです。生糸は、戦前一年間に五十八万俵も輸出され、日本の輸出総額の三六%も占めていましたが、このように輸出が減ったのは、生産量の九〇%までが、訪問着などの高級和服を中心とする国内の需要に向けられ、業者の輸出意欲がなくなったこと、また、中共や韓国などの割り安な生糸が、アメリカやフランスなど、日本の伝統的な市場に進出したことなどによるものです。このため農林省では、このままでは、日本は生糸の輸出市場を失うことになると心配しており、輸出対策を検討することにしていますという、この放送を聞いた国民は驚き、かつなぜこのような事態になったかということを深刻に考えさせられておるのでありまして、蚕糸業は近い将来輸出産業ではなくなるかもしれぬ。蚕糸業が輸出産業として養蚕農業、製糸工業、貿易商業と、農・工・商各部門を通じて国民各階各層の御支援を得て、シルク日本の世界的な名声を博し、国民経済の発展や国民生活の向上に寄与してきたのでありまして、そこにはうるわしい伝統と歴史があるのでありますが、事ここに及び、政府はこれからの蚕糸業は国内産業として育成指導するのか、それとも万難を排して徹底的に輸出産業として発展させていくのか、政府の基本的な考え方を、国民の前に率直明快にまずお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/4
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005・後藤義隆
○政府委員(後藤義隆君) 最近の製糸の輸出事情を見ると、国内需要が活況を呈し、これに伴って国内糸価が高水準に推移しつつあること、また、中共並びに韓国等の製糸が安値で、国際市場に進出したこと等もありまして、不振をきわめております。しかし、国民経済の上から輸出振興は重要でありまして、また、国内養蚕農家の経営の安定をはかる見地からも、海外需要の維持、開拓はどうしても必要であります。政府といたしましては、今後ともわが国蚕糸業を輸出産業として育成することにつとめてまいりたい所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/5
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006・八木一郎
○八木一郎君 次に、私はあらかじめ資料要求をしており、すでにその提出をみておりますので、時間を節約し、その資料のうちで特にただしたい点を申し上げてみます。
お手元に配っていただいております要求1の資料、そのうちのB表によりますれば、最近十年間の内需の足取りは、年に十八、九万俵、総生産高の三十万俵の六割程度であったものが、三十八、九、四十年と年々ふえてまいりまして、ついに内需が九割を占め、輸出はわずかに一割の線を切れ込むかもしれないという情勢に迫っております。他方、この資料のE表により、海外市場の状況を見てみますと、前年対比で半減、欧州市場のごときは壊滅寸前に迫っております。一方、要求の2の資料に見るごとく、中共生糸の輸入の問題に当面しております。日本へ外国の生糸が入ってきたのは歴史的に非常な刮目されている事実であります。先月はわが国生糸の輸出高をオーバーするほどこの糸が入ってきておるのであります。政府はこれらの情勢に対処して、腹を据えて、ほんとうにいまおっしゃったようにがんばれば、海外市場の剥奪を目ざす蚕糸輸出振興施策が伸展していくのだという自信があるのかどうか、具体的に述べてもらいたいのであります。要求4の資料では、緊急措置の必要性はよくわかりまするが、この資料を読んでみますると、可能性についての実行具体策に乏しいように見えまするので、時間が許せば、突っ込んだ三、四の点をさらに答弁を受けた後にお伺いすることにいたします。なお、要求の資料によりまして、海外事務所活動の状況を詳細に知ることができました。詳しく御報告をいただいたこれを吟味いたしました私の感覚では、政府が輸出増強に施策の重点を指向するという決意があるならば、それは旧来の政府、綿業協会の行なってきた宣伝事業は、特に海外宣伝事業はマンネリ化したように見受けられます。そこで、綿業協会に対する国の予算を活用しまして、今回新たに設立する事業団の別動隊ともいうべき機関の一つとして、生糸輸出振興会、まあかりにこういう名前をつけますが、このような機関を設けて、養蚕製糸を主体とする事業団の役職員がこの業務を執行し、現地の活動員は貿易商社の役職員の出向を求め、これらの適材を迎えて、機動的にあっせん活動に乗り出していただくこととし、この協会の主力を輸出増進において、直接生糸の輸出あっせん事務を行ない、日本生糸の海外市場を奪還する積極的な活動を開始する用意があるかどうか。この機構は、ジェトロと自転車輸出振興会海外事業部の場合より得たヒント、その他の私の調査いたしました結果に基づいて、これを参考にいたしたものでありまするので、当局においてはすみやかに御検討の上善処されたい。直ちに実行の決意があるかどうか、右に関する蚕糸局長の所感を伺っておきたいと思います。
政府は、本年四月十六日に、蚕糸業振興審議会の答申を受けて今日にきております。四月以来今日まで長い期間この答申を受けっぱなしでありまするけれども、一体何をどのように進めていこうという意図を持っておられるか、この点もお聞かせください。
次に、もう一点伺います。最近における内外蚕糸情勢の変化、特に中共生糸の輸入問題などに対応いたしまして、私思いますのに、世界の蚕糸生産国が提携協力して、生糸の潜在需要を喚起するような国際的にも対処する道があるのではなかろうか、適当に措置することが必要ではなかろうかと思うのであります。たとえば、アジアの蚕糸諸国が、友好を深め、技術を交流し、ともに携えて世界の生糸市場における潜在需要を喚起するということにつとめるなど、国際的にも対処する方途があろうかと思うのであります。また、生糸の輸入につきましても、糖価安定法により、わが国農産物の甘味資源を保護しているように、生糸も入管の関門でタッチするような方式で、輸入税プラスアルファの徴課金をとるというような措置を考えられやせぬかと思うのでありまするが、当局では、輸入が自由放任されておる生糸に対し、何らかの適当な具体策について検討しておる事実があればお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/6
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007・丸山文雄
○政府委員(丸山文雄君) 御質問の第一点の、輸出体制についての問題でございますが、輸出問題につきましては、ただいま御質問の中にもお触れになりましたように、事業団構想というものについての関係者の御研究のときに、同時に、一つの方法として提出されておるものがあるわけでございます。その後、まあわれわれといたしましても、輸出体制につきましては、現在検討いたしておりまするし、まあその中の当面の問題というものについては、遠からず具体化したいと思っておるわけでございますが、問題は、御存じのとおり、その答申の趣旨にありますることも、国内価格とそれから輸出価格の差を、関係業界、場合によれば政府も含めまして、差額を補充するような方法で輸出の促進をしたらどうかという点でございます。この点につきましては、当然のことながら、いろいろ時の糸価にもよりますけれども、業界の負担も伴なうことであり、従来の検討の結果では、まだ関係業界ともに、何ぶんにも御指摘のとおり、国内価格が非常に高くて、国内で十分売れるという、当然のことながらそういう認識があるもんですから、なかなかそこまで踏み切る事態にはまだいっておりません。しかしながら、とにかくその本格的な対策といたしましては、これは若干時間をかけることにいたしましても、少なくとも四十生糸年度の残り、つまり来年の一月から五月末になるわけでございますが、その間におきまして多少は手ぬるいにしても、何らかの方法でこの減ってきた輸出を漸次回復する方法ということで現在やや成案を得たものがございますので、年が明けましたならば至急業界に提示いたしまして、できるだけその改正の一つの骨子になるような方向で話をまとめていきたい、こう考えております。
それから第二点につきましては、綿業協会の問題があると思いますが、絹業協会につきましては、御指摘のとおり、実質的に十年ぐらいたっておりまして、ややマンネリズム化しておるということにつきましては、御指摘のとおりわれわれも考えております。ただいまいろいろ各種の例をお示しいただきまして、今後の方向を示唆していただいたわけでございますが、現地ニューヨーク、リヨン、それから日本の本部、こういうものにつきましても、今後のあり方につきまして大ざっぱな方向といたしましては最近一つの方向が出ておりますので、今後御質問の趣旨も体しましてできるだけ新しい角度から輸出振興に直結するような方向で進んでまいりたい、こういうふうに考えております。
それから第三点の、輸入体制の問題につきましては、これも御存じのとおり、現在輸入防遇と申しますといささかオーバーでございますけれども、生糸につきましては、関税が一五%かかっております。それから繭につきましては一キログラム当たり百四十円か百五十円、正確な数字ちょっと記憶いたしておりませんが、百四十円ないし百五十円の関税がかかっているはずでございます。それと輸入の実態といたしましては、日本のいわゆるいい生糸と競合するようなものは現在のところまだ入っておりません。いわば一例を申し上げますと、たとえば、着物の裏地であるとか、あるいは帯であるとか、あるいはネクタイであるとか、そういうものに使われるもの、まあ日本の格づけからいたしますと格外に属するものでございます。これは大体日本の繭の品質から見ますと、今後なかなか国内的にも、ある面から見ますと国内では生産されないような悪いものではございますが、しかし、需要はもちろんあるわけでございます。現在はそういう状況でございますので、いままでの数字そのものを見た場合には、それほど国内産業にたいへんな打撃を与えるというほどの認識には立っておりませんけれども、一般の空気あるいは今後の問題を考えますと、御質問のような問題があろうかと思いますので、それにつきましても今後の成り行きを見まして、場合によれば将来蚕糸事業団の機能等も拡充の必要があるというような事態にも立ち至るかもしれません。そういう角度から十分に御指摘の点につきまして研究を進めてまいりたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/7
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008・八木一郎
○八木一郎君 政府、農林省は事業団に十億円追加するという、こういう問題がございます。これはから手形になってしまったのか、一体どうなったんだということが、国会において蚕糸に関心を寄せております方面から長い間尾を引いている問題であります。これは福田大蔵大臣が当時農林大臣であった際に、記録によりますると、国会を通じて国民に言っておることばの中に、その部分だけ摘出しますると、「それから、さらに、いきさつから申しますと、これも、私、十億円を追加するということを考えております云々」とあるのであります。ここで大臣が「いきさつ」と申しておりますことは、あの三十三年われわれ蚕糸議員がさんざんな目にあった年として記憶に新たな、それ以来蚕糸の道は非常に難渋をして今日にきておりまして、今面のこの事業団法によって面目一新、心気一転、一新された行政を期待しておる。この三十三年の応急対策の際に、繭及び生糸の価格の大暴落に際しまして、繭糸価格安定法に基づいてきめられた政府買い上げの最低価格を改定して、結果としては、農民は繭一貫目の基準価格を下げられてしまったのですから、二百円を政府に預けているようなものである。これを一人一人に分けてしまったのでは意味がないからということで、一千万貫分三百円相当額二十億円というもので一つの機関をつくろう、二度と再びこの大きな金額を、国費を出す必要のないようにしようということになっておったのに、いよいよ発足するときは十億円であったといういきさつであります。これは佐藤大蔵大臣、その当時でありますから、総理も知っておるはずであります。私は当時の国会内外のこの事情をよく承知している一人として、いわば生き証人である、こうもあえて申し上げてよいと思うのであります。今回蚕糸業のこの重大な時局に、先ほど御答弁のような御認識の上に立っておるとすれば、この事態、時局を背景に事業団が生まれるのでありますから、当然十億円は追加すべきだ、こういうふうに思うのでありまするが、政府、農林省はこの異常の時局を認識しておる証拠として、あるいはまた真剣な態度で臨んでおるのだということを国民に了解していただくために、百万言の説明を聞くよりも、この一つの公的事実の実行を期待しておると申しても過言ではないと思うのでありますが、本件をどのように考えておられるのかお伺いをいたしたいのであります。歴代の大臣、蚕糸局長の更迭、こういう際にはこのような問題は政府不信の事実にも連なりまするから、当然引き継ぎ事項として新たな記録の上に更新をされながらここに及んでいると思いますので、この点はあわせていま認識の、また経過の事情とともに、これから蚕糸の政策の中には、蚕糸行政の大事な仕事の中にはこういうことがあるということを引き継いでいただけるかどうかも言明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/8
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009・後藤義隆
○政府委員(後藤義隆君) ただいまお話もありましたように、当時の福田農林大臣から御趣旨のような御答弁がありましたのでありますが、その後そのままになっておったわけでありますが、農林当局のいままでの事情をいろいろ聞いてみますと、その後その発言をほごにしたわけでは決してないのでありますが、蚕糸事業団については、たまたま設立以来その資本金の増額を特に必要とするような差し迫った事態も生じなかったようであります。そこで、新しく蚕糸事業団でありますが、これにつきましては、現在二十億余円の資本金を持っておりますのでありまして、これを財源として融資の道をつくれば、当面事業団がその目的とするところの事業を遂行することは考えられるのでありますが、しかし、今後生糸の需給事情が変化いたしますなどのことがあって、蚕糸事業団が資本金を増加する必要が生じた場合には、さきの農林大臣、現在の大蔵大臣でありますか、の発言の趣旨を受け継いで十分に措置を考慮してまいりたい、こういうようなふうに考えておりまして、決してそれはほごにしたようなふうな気持ちではありませんから、その点を特に申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/9
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010・八木一郎
○八木一郎君 この問題は、衆議院の審議過程におけるやり取りも吟味させていただいておりまするが、これは非常に大切なことだと思うのです。特に、輸出振興に重点を指向して、海外の市場を奪還しよう、積極的に乗り出そう、これだけの気構えでこれからやっていただこうという国民の期待には、やはり先立つものが具体的に出てこないと、真剣な、まあ笛吹けど踊らずということになりかねないと思いまするので、ぜひひとつ、ただいま言明をいただきましたように、お取りはからいをいただきたいと思います。
それから、輸出蚕糸振興施策として、事業団の業務にも関連して、特段の措置を講ずべきだという私の考え方に立ちますと、いろいろ思いつくことが多いのです。いまもお話がありましたが、二十億といえば、そこから受ける収益は年々何億という金が浮いてくる。そういうものを活用して、輸出一本に増進施策をとる、こういうことを初めとして、いろいろあると思うのですが、時間は限られておるので、思いつきを二、三申し上げまして、当局のお考えをこの際承っておきたいと思います。
一つは、取引所の問題です。生糸が輸出不振となって、外国生糸に海外の市場を奪われておるばかりか、輸入生糸が国内市場に入ってきまして、御説明のとおりです。しかし、取引所の生糸相場を動しておる仕手関係、投機的な市場撹乱の裏にはいろいろな——かんぐった情報かもしれませんけれども、私の看取するところでは、この取引所問題について政府の措置は、直接な行政手段がいろいろ考えられるが、一体、商品取引所法の改正ということについて、繭と生糸を取引所に上場しております当局は、さしあたり何を考えているか。いまやっておることは蚕糸局長の説明でけっこうでございますが、証拠金の増額で取引所の正常化をはかる。こういうことで、事実上停止に近い証拠金をとってしまう。そうすると、それで過熱に水をかけた結果として、沈滞になるというようなことをお考えのようでありますけれども、そうすることは取引所のよい面の、保険作用を堅持するところの、まじめな、現物を持って生糸輸出事業に携わる人のつなぎは、その停止的な措置のためにやれなくなりはせぬかということですから、これは親心を持って考えなければならない課題と、私は思いまして、検討を事務当局にはお願いしておりまするけれども、何か、糸価の高い場合、いまの時点は非常に糸価が高いわけです。本来ならば、この三十三年の暴落にこりて、底値は買えない。安くなったときの対策が、まず大衆に直接ですから、考えてきたのですけれども、高いときも、また、その反動がこわいので、何か一つ、今日の事実を見まして、適当なことがなければならぬということを、事務当局の検討の経過と結果に対する決意のほどをお聞かせを願いたいと思います。
次に、保管会社の問題ですけれども、輸出生糸保管会社が生まれたときの、あれをつくったときの経緯にかんがみますと、こういう際にこそ、水をぶっかけるために、政府が買い上げた生糸を保管会社に持たしておいて、最高価格がきたらこれを操作する。そこで頭を押える。つまり取引所で仕手関係にやられても、実力がないから、こちらは実力をもって応ずる、こういうきめ手となるべき保管会社であると了解しておるのでありますが、一万俵近くあった保管会社の生糸は、聞くところによると、もうなくなっている。そうして、五千五百円という天井の値段がきたら、こういうときには機動的に水をかけるような、過熱防止的な操作が必要だと思いますけれども、そうできなかったということは、制度が悪いのか、運用が悪いのか、一体、これはどうなっているのであろうかと思う。もし保管会社で持っておった生糸が売り払っているとすれば、相当もうかっていると思う、安く買って持っている生糸ですから。売り戻しは認めているとはいっても、もうかっていると思う。その特別収入ともいうべき金額はどの程度あるかということ、そうして、もしそれがあるとするならば、これをひとつ新設事業団に引き継いで、その新設事業団の、先ほど私も申しましたような、輸出振興の特別行動に必要なほうに振り当てる、こういう考慮があって当然だと思うのでございますけれども、一体どうなっているかということをお聞かせ願いたい。
その次に、蚕繭事業団の収益は一体どういうふうに使われているかということを私、取り調べてみますると、実体的に事業補助として、指導員の、あるいは桑園の、あるいは乾繭設備の助成事業に充てているようでございますけれども、これらの使途は、新しい事業団が生まれて、事業団設立以後は輸出優先重点主義にのっとって、輸出生糸原料繭に対する購繭資金の利子補給、購繭資金を、輸出する原料についてはめんどうをみてやる、こういうような考え、あるいは輸出が安くて国内が非常に高いから、内需ばかりになっているわけですから、いま局長の御説明のように、二重価格の差になる、輸出と内需の差になる部分について、特段な考慮を払って、何とかして輸出用原料繭が、特約して輸出適格生糸工場に入っていくように、私は適当な措置が考えられると思うのでありますが、新たに輸出促進に何とかかんとかして——三割あったものが一割が切れているのですから、そうすると、もう相撲で言ったら剣が峯に足がかかっているわけです。輸出なき蚕糸業は、もうこれはどういうことになるかということを思いあわせまして、真剣にひとつ具体的な細目についても、この際検討をされた事情について、まだ結論に達しなくてもよろしゅうございますから、お答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/10
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011・丸山文雄
○政府委員(丸山文雄君) 第一点の、取引所の問題それから取引所の操作にからみます製糸工場つまり売り手、売りつなぎの立場との関係で、何らかの優遇措置がないかという御質問だと思います。
取引所全般の問題といたしましては、御承知のように、また御質問にありましたように、われわれとしましては、とにかく証拠金を上げていくということで、目下第三段階、相当きつい金額でございますが、そういうものをかけて、できるだけ過当投機を抑制していくということで進めてまいっております。それにからみまして、そういう状態のときには、当然製糸会社のほうがまあ売りに出てまいりますれば、売りつないでまいりますれば、具体的に物が市場に出回るのでございまして、いわゆる取引所に対するヘッジ作用ということで売り手の促進になるわけでございますけれども、現在でも、現物を取引所に提供した場合におきましては、製糸会社のほうからは金を取らないということはいたしております。ただそれ以外の場合、現物とは無関係に売りつなぐという場合におきましては、これは一体そのどのものが製糸会社からきたものであるか、あるいは一般のいわゆる大衆と申しますか、そういうものからのものであるかということについて、取引所自体におきましても、現段階においては、なかなか区別する技術的な問題が、非常に困難な状態になっておるわけでございます。まあこれも、もし現実の仲買い人その他を通じて何らか明確にできますならば、御説明の方法も、まさにその市場に対する現物の出回りを促進するという意味で、非常に検討の価値ある問題と思いますので、なお検討の時間を与えていただきたいと考えるわけでございます。
それから、二番目の、現在の輸出生糸保管株式会社が持っておる生糸、これは全部、ほとんど大部分が政府に肩がわりしてございまして、今回放出しましたのは政府手持ちということで放出されておるわけでございますが、大体この放出は、本年十月ごろ、相場が高くなってきましてから始まりまして、現在、その当時七千八百俵前後持っておりましたのが、累計で、昨日現在くらいのところで六千五百俵ぐらいが市場に放出されております。これは、現在の制度で申しますと、安定法の趣旨におきましても、最高価格で買い入れの申し込みがあれば売るというのがまず前提でございます。ですから、ここだけを見ますと、とにかくいろいろ条件をつけるのは非常にむずかしいということになっております。ただ、まあもう一つ、輸出適格生糸の場合には輸出になるような売り方をしてもよろしいという二つの条文があるわけでございますが、まあこの二つの条文をいまから見合わせまして、われわれとしましては、最高価格で申し込みがあった場合には、これはどのみちはやらざるを得ませんけれども、売り方に優先順位をつけまして、申し込みが競合した場合においては、とにかく輸出になることを第一条件、それからその次には絹織物として輸出するものを優先させる。それから第三番目には輸出絹織物の加工をするものを優先させる。そういうまあ順位をつけてございまして、それによって売り渡しておるわけでございます。実績から見ますと、先ほど申しました、十月からの累計六千五百俵中、大体半分ぐらいは第二次優先順位ないし第三次優先順位まで、つまり輸出に何らかの関係があるというものの数字が、大体三千五百俵ぐらいになっております。現状はそういうことでございます。あと、それからよって来たるもうけでございますが、これはただいま申しましたように、保管会社から政府が引き取りまして、政府が売ったものになるわけでございまして、こまかい計算は、それぞれの価格その他違いますので、全部分析してみなければわかりませんけれども、おそらくは四億六、七千万ぐらいの益になるのではないかというふうに考えております。
この益はどうなるかと申しますと、糸価安定特別会計法によりまして、これは積み立て金として積み立てまして、それでその次にまたそういう買い入れに出るときの資金になるたてまえになっております。したがいまして、保管会社自身が直接売れる制度になっておりますれば、その保管会社が事業団に吸収されるときに、この益をどうするかという問題起きますけれども、一ぺん政府の会計を通るものでございますから、あくまでも政府の金として経理されまして、ただいま申しましたように、特別会計の益金として積み立て金に回る、こういう現状になっております。まあそういう意味におきまして、事業団に保管会社からそのまま利益が回るということは、現在の制度では困難でございますし、むしろ今後こういう政府の特別会計に益金が出た場合に、それを一体どういう形で融資なり何なりに、政府の予算として回すかということが問題になるのではなかろうかと、こういうふうに考えております。
それからもう一点の、購繭資金の問題を中心に御質問でございますが、今度の事業団ができますれば、蚕繭事業団の益金はこれは引き継ぎます。そういう関係で、お話にございましたように、蚕繭事業団といたしましては、まあお配りしてあります資料の二十二ページにも書いてございますが、またお話のとおり、いろいろ巡回指導施設あるいは稚蚕共同飼育室、桑園整備機械、乾繭施設、桑園の設置事業というようなものに蚕繭事業団として益金を助成してまいりました。今後は、大体はこの種の事業も、大体われわれといたしましてはほぼ一段落ついたのではないかということがありますので、今後できるだけ、特に新事業団につきましては、養蚕の経営の安定のみならず、輸出の振興ということも目的にしておりますので、そういう輸出振興対策に関連するような方法で、できるだけ益金を活用してまいりたいというように考えております。具体的には、御指摘の点も一つの案だと思います。その点につきましては、いろいろな案を総合いたしましてまた最終的な結論を出したい、こういうふうなことに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/11
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012・八木一郎
○八木一郎君 いまの最後の御答弁ですが、できるだけ新しい事業団についても、事業団自身が生み出す収益経理、あるいは今回のような手持ち保管生糸、繭の処分益、そういうものが生じた際には、できるだけというのではちょっと不確実ですから、その必要性をお認めいただければ、これを可能にするには、法律改正に及ばなくてもできそうにも思えるのですが、まあ早い話が、私は、輸出適格生糸を五千五百円になったからずるずるべったりに出してしまおうというのでは、価格操作の意味は何もない。このときこそ、今回設立する事業団は、どこまでも過熱防止の操作を考慮して取り扱うような運営をしてもらわなければいかぬと思うのですが、これは済んでしまったのですから、まあ済んでしまったことを言ってもしょうがないですから、この浮いた金が四億もあれば、先ほど政務次官からお答えをいただいておるように、十億——政府の不信になろうかどうかというところです。そういうこともあるのですから、もっとこれは努力すれば、当局の努力によれば、あげて輸出振興重点、かつ、その集中的にものを見て、またそれに向けるということで、善処できそうに思いまするが、いかんともなしがたいと、こう消極的に役所が金庫番をしているような気持ちでこういう問題の処理に当たられては、、これは困ると、こういうふうに思うのですがいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/12
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013・後藤義隆
○政府委員(後藤義隆君) 御趣旨はごもっともでございますが、現在の法律制度でもって直ちにこれが事業団のほうに繰り入れができるかどうかというのも非常に問題だと思いますから、十分それは検討してみまして、それから先ほどお話のありましたように、いまこういうようなふうに事業団の行為によって利益を得たときに、直ちにこれが事業団の資金とすることがよいかどうかということも十分検討してみますが、もしそれで足りなければ、政府がそれに対してそれ相当のものを出資の形ですれば、あるいはまがりなりにもいけるんじゃないかというように考えられますから、その辺のところはよく検討してみたいと思います。どうぞ御了承をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/13
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014・八木一郎
○八木一郎君 現に蚕繭事業団——現在の事業団ですよ、これが設立のときにやはり無理だというわけで、法律は通した、運用してみると果実が一億も二億も生みますから、これは事業振興のために、特に養蚕家の預かった金が十億借金があるんだからこれを使ったらどうかという政治配慮によって、これを今日では幾らかくずして、いま御説明のようにしているわけです。ですから、この事業は新しい事業団に当然引き継ぐとこれは了解していいわけですね。そうしますと、この保管会社の事業を八千万ということにした、出資を三千万政府はこちらへ入れる、五千万は製糸家の出資としている。その機関の活動によって生じた金も、これはどうもちょっと紙一重だけれども、新しい事業団ができるのが少しおそいから引き継ぐことは相ならぬということは、そういうしゃくし定木ではやはりいかぬと思うのです。農民大衆の金が、当時の福田農林大臣のいきさつの問題がなければ言いませんけれども、そんな大きないきさつがあるのにこれは見送るということは、私は蚕糸事務当局の怠慢だと、こう思うのですが、これはいかなるくふうと努力をしても、いま申し上げるような政治配慮もこれあり、ぜひ実行をする決意の上でひとつお引き取りいただくということを要望いたしまして、次の問題を申し上げて、私の質疑を終わらしていただきます。
今日の生糸はまた六千円にも差し迫ろうとしている、土曜日はたしか五千八百円にいっている。きょうは幾らか聞いておりませんけれども、こういうような非常なばか値が通常、いま大臣の説明の中で言われていることばではわかりにくいのですけれども、常識的にいえば、キロ五千円中心だ、下が四千円、上が四千五百円だ。五千円なら安定した形で全世界の市場に出せますよということを、その点、蚕糸局長は胸を張って言っているんです。それだけ責任があるのです。その五千円が六千円に近づこうというんだから、もう最高値をオーバーしている。こういう事態がきておりますから、私は、三十三年大暴落の反動として、三十八年の六月にあの出現をしてきた、一度谷に落ち込んで山へ上がった、あの反動時を思い起こします。三十八年六月のあたりからまた谷が深くなってきて、ここらでまた上がってきたという足取りを承知いたしておりますから、どうも皮肉なことには、この安定法を、事業団を設立するための法律を通過させようというきょうの事態はそういう事態なんです。だから山が高いというと谷がある。山高ければ谷あり、これが常識でございますが、繭をつくる、額に汗して働く農民の立場からすれば、もう繭を出してしまった。いかになろうとわれわれの繭は二千五百円で手を離れている、いまなら三千円、三千五百円、もう千円も違っているということを横目で見ているわけです。そういうことを直すということが、事業増進のほかに、養蚕農家を守ってやろうという配慮もあるわけでございますから、私はこのうなぎのぼりに沸騰するような相場を見て、繭を手放した農家は、また来年の春、自分たちが蚕を飼う時分になると、今度は安くなってくるだろう、だれかがどこかでてこを入れて何とかしておるんじゃないかというほどに過敏に神経をとがらして自分らの生業をいまやっているんです。こういうことを考えますと、これはなかなか容易でない仕事と取っ組むわけです。実際に。しかし、やらねばならない必要性が非常に高いから、これをぜひ可能な状態に持っていこうという安定努力というものは、これはいわば過去の三十五年以後の足取りと思い合わせますと、口では簡単に言えますが、実際の政府の生糸輸出施策をやっていくのは私は容易でないと思う。こういう容易でない蚕糸業界には、やはり平穏なときはほとんどないのです。今日の状況を言えば、もう予想以上に、二千円台の繭が三千円台になった。そうして売れて売れてしかたがない内需だが、ふところがあたたまるということだけを見ると、天気晴朗でございますが、また波は高いと思います。天気晴朗なれど波高しという時点にあると思います。これを乗り切っていくことは、私は事業団の人の問題だと思います。団という蚕糸丸を運転してくれる船長は一体どういう人が出て来るかということに結局帰一すると思う。
けさも熱心な同僚議員の二、三の方から特に私にそういう注文をつけられまして、私もそのように考えておりますが、十六条で理事長は農林大臣の任命、そうして監事も大臣の任命、理事は大臣の認可を受けて理事長が任命、官選です。官選したいわゆる役員によってこの蚕糸丸は航海を始めるわけです。この事業団は全体としては役所的な機構にならざるを得ないことは了とします。しかし、消極的にその日暮しの事なかれ主義の役所のような気分の人が入って働いておったのじゃ、これは目的が果たせぬと思います。極論すれば。こういう意味で安定法や事業団法、あるいは保管会社というところに働いている人は、私は決算委員会のほうで調べてまいりましたが、これを調べてみますると、ここに資料もありますが、直接関係のある蚕繭事業団、直接関係のある輸出生糸保管会社、直接関係のある、繭糸価格——従来の安定法の特別会計、こういうような人事、人のつながりのために、私は少し見当が違った人がやっているのじゃないかと言わざるを得ない。海外の輸出生糸事務所にしても、いま絹業協会の事務所ですが、そこで国の補助によって働いている。これはやはりその日暮しの、そう言っちゃ悪いが、事なかれ主義で、勇退をした、退職した人がやっている。そうでなく、海外の人は輸出商かエキスパートで生きのいい人に出向してもらって、そうして費用もノルマで出して、そうして自転車振興会のように、私は申し上げておりますが、あるいはそういったように切りかえるか、あるいは今度できる事業団設立の人事についてもこの考慮を払うとともに、これは任命権がございますから、法律を通してしまうと、これは大臣の権限だということで、行政権でみんな任命してきめていくということは残念だと思います。もうここまできているのですから、蚕糸業の事態が重大なところにきているのですから、この点はひとつ農林省の退職の局長、課長という力がこういうところに——私の友だちも五、六人いるのですが、その人たちをどうこう言うのじゃないが、制度そのものが消極的に、金の番をしているような消極的な形で監督を非常に厳重にしている。しかし、積極的な手を打たにやならぬ仕事があるというのですから、団の別働隊、事業団の外郭団体というものに——これはできると思うのです——そういうもので実質的にはひとつ運用の妙によってやっていただいて、公務員を——公職を去った、勇退した方のおば捨て山だなんと世間から言われないように、今度は事業団の人事についてはぜひひとつ、せっかくここまで——いままでないことですから、養蚕、製糸が一体になって、気持ちを一つにしてやろうと立ち上がって、金まで出して、政府の公的支出があるにかかわらず、みずから政府と同額を出して事業団の設立を期待しておるという、こういう真剣な取り組み方に対しまして何とか御配慮を願いたいということが、私はこのためには、何と申しますか、重要事項も積極的に措置し得る適格者を選任することが絶対必要だ。それで、もう運営委員会を、十五人も置いて、そうして会議をしておる。輸出振興問題を会議しておる。もうずっと、四月から答申をして一向進まない。進まないわけです。利害対立するわけですから。売り手と買い手です。どなたが売り手で、買い手——みな蚕糸業の中でなっておるのですから、そこを切り開いていくのですから、どうかひとつ、この人事は天下国民の中から広く有能な人材を求めて、適切円満な運営が信頼を得てやれると、こういうことに遺憾なきを期していただきたい。そうして高い次元で、世界的な視野からも、アジアの諸国とも技術交流その他友好関係を保持しながらこの蚕業をやっていくと、こういう配慮のほどを強く、きつく指摘をいたしまして要望をし、この問題に対する決意を伺いまして、私の質問は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/14
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015・後藤義隆
○政府委員(後藤義隆君) 事業団の役員の重要性につきまして、ただいまいろいろ話を伺ってみましたが、なるほどそのとおりでありまして、私は、今度できますところの事業団の役員は、よほど慎重な態度できめなければいけない。これはもちろん適材適所ということでありまするが、だれが適材であるかというようなことは、よほどこれは考えなきゃいかぬということを、さらにいまそういう意を強くいたしましたから、特にその点につきましては注意してやっていきたいと思います。どうぞ御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/15
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016・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 若干の資料要求をします。
昨年の九月に、臨時行政調査会で各般にわたる行政についての意見を出しておりますが、その中で、現在提案されておる二つの法案に関係のある部分について、抜粋して資料として御提出をお願いしたい。
それは第一は、行政機構の統廃合に関する意見、この中に蚕糸局その他のものが意見として出ております。その部分だけでけっこうですから、抜粋をした資料の提出を第一。
次は、同じく臨時行政調査会で、公社、公団等の改革に関する意見で、この蚕繭事業団について触れております。そういう関係のある部分を抜粋した資料、第二点。
それから、この蚕繭事業団、従来のこれの役員の氏名、経歴、現報酬、それの一覧表を、第三点。
第四点は、日本輸出生糸保管株式会社の同じく役員氏名、その経歴、現報酬。
それから、日本絹業協会、これも同様の内容の資料を要求します。
それから、この法律に基づいて施行せられる省令、政令案というもの、これをひとつ、出ておればあれですが、私ちょっと見たところないようです。その政、省令案というもの、それをお出し願いたい。
それから、全養連で、三十八年五月に発行しております「蚕作の安定と経営の合理化」という小さいパンフレットがありますが、これが委員に渡ってない。全養連のほうで手持ちがあれば、それをひとつ、これからの審議に貴重な意見等が出ておりますから、それを御提出をお願いいたしたいわけであります。
なお、かねてお願いしておった日本絹業協会の過去三年の事業計画並びに報告書、こういうようなものも、まだ出ておらぬようでありますから、これも明日までにひとつ——所管は通産省ですか、あればそちらのほうを通じて、委員長から提出をさしていただきたい。
それから、糸価安定特別会計の内容について、少しわかるような資料がほしいのでありますが、昭和四十年の蚕糸年鑑ですか、あれを見ますと、三十九年についての、この糸価安定特別会計についての詳細な解説があります。それを、四十年について、柱は四つありますが、糸価安定特別会計の予算案。
第二の柱は、予算の概要。歳入、歳出に分けて。
第三の柱は、予算の実施上必要な措置として、六項目に分割して、内応がわかるようなものがほしいわけです。
この予算の実施上必要な措置の第一点は、買い入れまたは補助の契約の限度額。第二点は、糸価安定特別会計の資本。第三点は、生糸買い入れ資金としての一般会計からの繰り入れ。第四点は、歳入、歳出予算の弾力条項。第五点は、証券の発行及び借り入れ金等の制度。第六点は、経費の交換の移項に関する特別措置であります。
大きい第四点は、糸価安定特別会計における事業の実施概要。
これをひとつ、あすまでに御提出を願いたいのでありますが、委員長、提出できるようにお取りはからいを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/16
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017・森中守義
○森中守義君 ちょっと委員長、追加。
輸出入業者の会社名、所在地、代表者、それから農林省から海外に派遣されている出先国、派遣国、それからそれらの職員の所掌内容、それから十五条審議会の二カ年間に及ぶ会議録。それだけ追加しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/17
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018・仲原善一
○委員長(仲原善一君) ただいまの渡辺議員並びに森中議員、両議員からの資料要求の点、農林省のほうで、よろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/18
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019・丸山文雄
○政府委員(丸山文雄君) はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115007X00219651227/19
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020・仲原善一
○委員長(仲原善一君) それではあしたまで、ひとつ御苦労でも御提出願います。
本日はこれをもって散会いたします。
午後二時十分散会
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