1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年一月十八日(火曜日)
午後三時八分開議
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○議事日程 第六号
昭和四十一年一月十八日
午後三時開議
第一 理学博士朝永振一郎君のノーベル賞受賞
につき祝意を表する件
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一 理学博士朝永振一郎君のノーベ
ル賞受賞につき祝意を表する件
一、請暇の件
一、昭和四十年度における財政処理の特別措置
に関する法律案(内閣提出)、(衆議院送付)
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001・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
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002・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
新しき年を迎え、本年初めての議事を開くにあたり、一言申し上げます。
諸君におかれましては本年も、円満なる議事運営のため、さらに一そう御協力くださいまするとともに、民主政治発展のため、いよいよ御健闘あらんことを祈ってやみません。(拍手)
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003・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第一、理学博士朝永振一郎君のノーベル賞受賞につき祝意を表する件、
日本学士院会員、日本学術会議会長、東京教育大学教授朝永振一郎博士は昨年十二月十日、一九六五年度ノーベル物理学賞を授与されました。まことに喜びにたえません。(拍手)
つきましては、本院は、同君に対し、院議をもって祝意を表することとし、その祝辞は議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/3
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004・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
議長において起草いたしました祝辞を朗読いたします。
理学博士朝永振一郎君 君は量子力学の基礎的研究により千九百六十五年度ノーベル物理学賞を授与されました
参議院はここに君の偉大な功績をたたえ院議をもって心からの祝意を表します
〔拍手〕
祝辞の贈呈方は議長において取り計らいます。
これにて休憩いたします。
午後三時十一分休憩
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午後三時四十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/4
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005・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。
この際、おはかりいたします。
大谷贇雄君から、海外旅行のため十六日間、請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/5
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006・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/6
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007・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) この際、日程に追加して
昭和四十年度における財政処理の特別措置に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/7
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008・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長西田信一君。
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〔西田信一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/8
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009・西田信一
○西田信一君 ただいま議題となりました「昭和四十年度における財政処理の特別措置に関する法律案」について大蔵委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、最近における経済情勢に顧み、昭和四十年度における租税及び印紙収入の異常な減少等に対処するため、必要な財政処理の特別措置を定めようとするものであります。
本案の内容について申し上げますと、
第一は、昭和四十年度におきまして、経済活動が停滞し、二千五百九十億円の租税の減収が見込まれることに対処し、これを補うために、昭和四十年度限りの臨時特例として、財政法第四条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内で公債を発行できることとしようとするものであります。また、公債の発行限度について、国会の議決を経ようとするときは、償還計画を国会に提出しなければならないこととするとともに、この公債の発行は、昭和四十年度一般会計歳出予算の翌年度繰り越し額の範囲内で、昭和四十一年度においても行なうことができることとしようとするものであります。
第二は、交付税及び譲与税配付金特別会計への繰り入れ額の特例措置であります。この特別会計には、所得税、法人税及び酒税の収入見込み額の二九・五%を一般会計から繰り入れることとなっているため、これら三税の収入見込み額の減少に伴い、繰り入れ額が五百十二億円減額されることとなりますが、昭和四十年度については、地方財政の現況にかんがみ、特にその減額を行なわず、これを当初予算計上額どおりとするとともに、昭和四十年度分に限り、三税収入決算の増減による後年度精算を行なわないこととしようとするものであります。
第三は、昭和四十年度における地方公務員の給与改定に伴い、交付税及び譲与税配付金特別会計において、地方交付税交付金を支弁するため必要があるときは、三百億円を限度として借り入れ金をすることができることとし、昭和四十一年度以降七カ年度にわたり償還するとともに、利子の支払いに充てるための金額は、予算で定めるところにより、一般会計からこの会計に繰り入れることにしようとするものであります。
なお、これらの措置に伴い、国債に関する法律第一条を改める等、所要の規定の整備をはかることといたしております。
本案は、去る十二月二十日内閣より提出され、同月二十四日、本会議において趣旨説明がなされた後、大蔵委員会に本付託されたものであり、十二月二十九日及び昨一月十七日、さらに本十八日と審査を行ないました。
委員会におきましては、成城大学教授有井治君、全国銀行協会連合会会長岩佐凱実君を参考人として意見を聴取する等、慎重審査を行ないました。有井参考人からは、フィスカル・ポリシーの立場から見て、原理的にも実践的にも、公債発行に賛成であり、またこの法案にも賛成であるが、さらに財政法第四条を改正して赤字公債を発行できるようにすべきである等の意見が述べられ、岩佐参考人からは、公債発行は、国民経済の立場から、不況を克服し、安定成長を実現するために必要であるが、発行に際しては、市中消化を歯どめとし、慎重に行なうべきである。建設公債の原則を守り、財源を弾力的に運用すべきであり、公社債市場の育成等をはかり、金融市場への圧迫とならぬようにすることが必要である。本年度の公債発行はやむを得ない措置である旨の意見が、それぞれ述べられました。
委員会におきましては、福田大蔵大臣、藤山経済企画庁長官、永山自治大臣の出席を求め、質疑応答が行なわれましたが、そのおもなるものを要約して申し上げますと、「一千五百九十億円の大幅な歳入欠陥を生じた根本的原因は何か」との質疑に対し、「民間設備投資が四千億円減少するなど、本年度の経済見通しが狂ったのが根本原因であり、それによって大幅な租税の減収を生じたものである」旨の答弁がなされました。「公債発行がインフレにならないという論拠を明白にされたい」との質疑に対しては、「労働力、物、資金の需給状態及び国際収支に不均衡が生じないよう、財政規模の適正化、市中消化、公共投資の財源に限定するという、三つの原則を守る限り、インフレを招く心配はない」旨の答弁がありました。
また、「公債の応募者利回り六分七厘九毛五糸は従来の低金利政策に反するのではないか」との質疑に対し、「完全消化と国民負担の軽減という二原則を満たすため検討されたものであり、政府保証債等に対して低位の妥当な線できまったものである」旨の答弁があり、「市中銀行の引き受ける公債に対して日本銀行は担保貸し付けよりもオペレーションの対象として運用するというが、金融市場との関係をどのように考えるか」との質疑に対し、「国債発行が市中金融を梗塞するという見解は誤りである。公債は金融が緩和基調でなければ発行しない。そのために、まず大蔵省短期証券を発行し、緩和基調をくずさず、次第に国債に置きかえていく方針である」との答弁がなされました。
さらに、「公債引き受け団に参加している金融機関の中には、資金コストが高く、公債利子と逆ざやになるものがあるが、いかに考えるか」との質疑に対し、「金融機関の資金運用は、必ずしも高利回りのものに限らず、確実性と換価性の高いものである必要もあり、当面損益上の影響は多少あろうが、これらの機関には今後資金コストを引き下げるよう努力せしめる必要がある」との答弁があり、「今後公債の償還をどのようにするか」との質疑に対しては、「本年度の公債は満期の到来する昭和四十七年度に償還を実行する。今後の償還財源のあり方は財政制度審議会で検討して結論を出す」旨の答弁がありました。
このほか、既発債借りかえ条件の改定、資金運用部の公債引き受け、公債発行手数料の配分、物価への影響等について質疑がありましたが、それらの詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終わり、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して成瀬委員より、「二千六百億円近い赤字を生じた原因は、政府が不況対策を誤ったものであり、このために公債を発行することは、財政法に違反し、インフレに拍車をかけ、物価上昇を招くものである等の理由から、本案に反対する」との意見が述べられ、自由民主党を代表して植木委員より、「本法律案による税収不足補てんのための公債発行は、不況を克服する意味から見て適切な措置であり、地方財政対策の上からも不可欠の施策である。また、公債の発行は、財政規模の適正化、市中消化、公共事業費の財源に限定する等の原則が守られる限り、インフレへの懸念は杞憂にすぎず、新しい財政への転換の布石となる有意義なものであり、賛成する」との意見が述べられ、公明党を代表して中尾委員より、「不況をもたらした政治責任こそ追及さるべきであり、特例法による公債発行は先例となって、インフレへの要因となる。また、公債政策の導入は、産業資本のてこ入れ策であって、国民生活を困窮化せしめるものであって、反対する」との意見が述べられ、次いで民主社会党を代表して瓜生委員より、「本法案は、従来の均衡財政政策の変更を来たし、財政法の精神を踏みにじるものであり、また償還計画も明示されず、本格的インフレへの直を開くものであり、反対である」との意見が述ベられ、さらに日本共産党を代表して須藤委員より、「本法は財政法に違反し、将来軍事公債を発行しないと言いながら、政府は長期の発行を否定せず、インフレの招来は必至で、人民生活を圧迫する。また、国際的にはアメリカのベトナム政策に追従し、国内では反動政策を推し進める佐藤内閣の経済的準備にほかならないものであり、反対する」との意見が述べられました。
かくて討論を終わり、採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/9
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010・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。戸田菊雄君。
〔戸田菊雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/10
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011・戸田菊雄
○戸田菊雄君 私は、日本社会党を代表して、現在議題となっておりますところの「昭和四十年度における財政処理の特別措置に関する法律案」に対し、反対の立場から討論を行なうものであります。
まず、反対理由の第一は、この特例法案の制定そのものの違法性によるものであります。かつて、わが国の軍閥と財閥は、赤字公債発行による財源を軍事費に投ずることによって、無謀なる侵略戦争へと突き進み、亡国の危機におとしいれたのでありました。この歴史の教訓に対する反省の上に立って制定されたのが、憲法第九条と財政法第四条であります。すなわち、現行の財政法が制定されましたのは、新憲法制定直後の昭和二十二年三月であるが、この財政法は、周知のとおり、国の収入及び支出を取り扱う財政運営における基本原則を定めたもので、いわば財政の憲法とも言うべきものであります。日本国憲法の一番のかなめが、第九条の規定する戦争の放棄と非武装にあるように、財政法の最大のかなめは、第四条の公債不発行の規定であると言えましょう。まさに、憲法第九条と財政法第四条は不離一体の関係にあるのであって、一方を否定して他を語るわけにはまいらぬものであります。その立法趣旨にあっては、第一に、戦争への危険性を防止すること、第二に、特定の支配階級奉仕のための財政を排除して、財政の民主主義を保証すること、第三には、インフレと通貨の膨張を抑制すること、この三つの点を原則として、第四条本文では、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」として、一般に歳入補でん公債の発行を明確に禁止しているのでございます。このことは、公債発行を禁止することによって、平和的な国民生活の保障となしているものであり、憲法第九条の平和主義を財政の立場から裏づけているものにほかなりません。しかるに、福田大蔵大臣は、昨年の十二月二十四日、わが党の木村・成瀬両議員の質問に対し、「これは非常の特例として、今年度限り歳入補てんのための公債を出すんだということで、国会に御審議をお願いするのが筋であり、それこそが民主的な考えである」と答えているが、全く言語道断と言わなければなりません。かかる重要な平和憲法体制の一環をなす基本法を、特例法制定をもって実質的に骨抜きにし、今後の公債発行の先例をつくるがごときふるまいは、明らかに国民大衆に対する背信行為であり、みずからの行なった放漫財政の破綻を、巧言を弄して隠蔽しようとする以外の何ものでもないのであります。四十年度、赤字公債を発行するということは、戦後の均衡健全財政の基本方針を放棄する重大なる政策転換であり、国の財政が時の権力によって、かってに扱われてよしとするがごときこの行為は、憲法の理念に基づく財政民主主義の原則を、まっこうから否定するものであって、この一事をもってしても、国民大衆の審判を求むべき重大問題であると言わねばなりません。かかる観点に立って、私は、赤字公債発行は財政憲法の破壊であり、特例法制定それ自体、違法のそしりを免れることができないものと考えるのであります。(拍手)
反対の第二の理由は、特例法制定の持つ政治的陰謀と、その内容の不当性についてであります。
佐藤内閣は、この間、兵器の修理、LST乗員の派遣、医薬品の供給、さらには武器弾薬の製造輸出の黙認、原子力船隊の寄港承認などによって、間接あるいは直接的に、アメリカ帝国主義のベトナム侵略戦争に対し、積極的な協力を行なってきました。また、日韓条約のあのファッショ的強行採決と批准によって、東北アジア反共反社会主義軍事同盟の総仕上げを目ざしているのであります。これらの事実を証明するものの一つに、昭和四十一年度から始まる第三次防衛力整備計画があります。第三次防衛力整備計画において政府が最大の重点としているものに、バッジ・システム、いわゆる半自動管制装置の整備があります。これが完成すると、ある不明の飛行隊を、どこか一カ所のレーダーがキャッチした場合、直ちに半自動的に、日本、韓国、沖縄、台湾の対空戦闘体制が発動されるというシステムになるわけであります。また、アメリカの極東戦略の中で、日本の海上自衛隊に割り当てられる分野に沿って、対潜哨戒、対潜攻撃体制が大幅に増強され、全体として、自衛隊のミサイル装備等も、ナイキ等で周知のとおり、格段に増強されることになっている。そして、これらの一切の装備は、あるものはアメリカ等からの有償購入、あるものは日本の独占資本による武器国産体制の整備の中で、政府購入ということになるのでありまするから、防衛関係予算が急激に膨張することは避けられない状況になります。佐藤内閣の計画によると、昭和四十年度の防衛関係予算は三千十四億円で、国民所得の約一・三%程度であるが、第三次計画の終わる昭和四十五年度もしくは四十六年度には、防衛予算を国民所得の二%にまで拡大されることになっているのであります。二%といえば、約八千億から一兆円近くの巨額にのぼると考えられているのであります。政府は、財特法に定める公債は特例であり、四十一年度に発行しようとするものは建設公債であると名目づけをしているが、そこには何の区別も実際には存在するわけではありません。したがって、公共事業費は公債財源でまかない、いままでの租税財源中の公共事業費に充当されていた分が、防衛予算の拡充分としてスライドしていったとしても、何の不思議もなく、この建設公債は実質上の軍事公債の性格を持つことになるのであります。このことの結果として、日本国民をして、かつてのあの忌まわしい戦争の道に引きずり込もうとする政治的陰謀が秘められていることは、以上見たごとく明らかであります。特例法は、昭和四十年度における一般会計予算の二千五百九十億にのぼる歳入不足を純然たる赤字公債発行によって補てんしようとするものであって、そのこと自体が、第一に述べたごとく、現行財政法の基本精神を犯すのみならず、現下の政治状況のもとで、このような許すべからざる内容を持つものであって、平和を愛する絶対多数の国民大衆と日本社会党は、断じて認めるわけにはまいらぬものであります。(拍手)
反対する第三の理由は、歳入欠陥を生ぜしめた政治責任と、地方財政方針の無定見に関してであります。
昭和四十年度予算では、国庫へ入る租税及び印紙収入は三兆二千八百七十七億と見積られておった。ところが予定より約二千五百九十億の減収となったわけであります。その内訳のおもなるものは、法人税が一千三百九十五億円、酒税が二百四十九億円、物品税が一千百四十八億円、関税が三百三十一億円と相なっているのでありますが、こうした誤りは、まず第一に、政府の経済見通しと税収見通しとの誤りによるものであるといわねばなりません。しかも、根を探れば、もっと深いところにあると思います。それは、歴代自民党政府の過去数年来の財政政策そのものの中にあると思うのであります。すなわち、昭和三十六年から四十年までに例をとってみると、一般会計、財政投融資の規模が、毎年、前年度に比し約二〇%もの比率をもって膨張してきたのであるが、このことに明らかではありますが、高度経済成長、所得倍増の美名のもとに、毎年の租税の自然増収の考えられる最大限を歳入予算に取り込み、放漫なる財政膨張策を続けてきたその結果であります。歳出においては、大資本の要求に基づく産業基盤整備と名づけた無定見なる公共事業費の拡大、あるいは防衛関係費の拡大。金融面について見れば、自民党政府指導のもとに、日銀の通貨発行、貸し出しを激増させた。これらの金融財政政策は、総体として高度経済成長のための資金づくり政策として実施され、その結果生み出されたものは一体何であったでありましょうか。一つは、他の先進諸国には例を見ないインフレーションの拡大であり、一つは、過剰生産に基因する現在のこの不況である。経済不況は、当の政府の想像をはるかに越えて深刻であり、そのはね返りが国庫の租税収入を大幅に収縮させる結果となったのであります。このように、現在のこの事態を招いたものは、歴代自民党政府と佐藤内閣なのであって、佐藤内閣は当然総辞職をして、国民大衆の前にその責めを問わねばならぬところであります。ところが、佐藤内閣は、平然として、責任の所在を明らかにせず、赤字公債の発行によって、国民大衆の目先をごまかそうとしている。これは罪の上にまた罪を重ねている以外の何ものでもないのであります。加えて、佐藤内閣が公債発行に踏み切るについての経過を見れば、その姿は一そうみじめなものであります。佐藤内閣は、少なくとも第四十八回国会中、昭和四十三年度までは公債は発行しないと公言をしたのではなかったか。それがわずか二カ月後には、昭和四十年度の補正財源及び長期財政政策の一環として、早期公債発行を行なうことに態度を豹変してしまったのである。しかも、この無定見を、去る八月四日の衆議院予算委員会において、わが党の辻原議員に追及されると、佐藤総理は、当時田中蔵相から耳打ちされて、中期経済計画では四十三年度までやらないことになっているからというので、そのとおり答弁した、正直言って、逃げた答弁であった等と答えているに至っては、いやしくも一国の総理として、不見識もはなはだしいと言わなければなりません。このように不定見なる態度は、今後の佐藤内閣の公債政策、ひいては財政政策それ自体にまで多くの疑念を持たざるを得ないのであります。
福田蔵相は、九月九日、全国財務局長会議での訓示の中で、公債発行とインフレの関係について、「インフレになるか否かは政府の態度にあり、節度さえたしかであればインフレになることはあり得ない。」と述べたと、毎日新聞は伝えておりますが、わが国公債史を見ると、どの大蔵大臣も同じことを言っているのであります。それにもかかわらず、公債は一部独占と結びつき、戦費調達の安易な手段として利用され、軍備拡張の力となり、公債の強制消化とインフレーションを通じて、民主的自由を抑圧し、国民大衆の生活を破壊したのみならず、生命財産をも奪い去ったではありませんか。したがって、また、福田蔵相の、政府の態度や節度についてのもっともらしい訓示や答弁を、額面どおり受け取るわけにはまいらないのであります。
昭和二十四年のいわゆるドッジ・ライン以降とられてきた均衡財政主義と公債不発行主義が、いまや大きく転換されようとしているこの事実は、単にインフレとか財政技術等という経済問題に限られるものではなく、国民生活における、平和と民主主義とにかかわる重大な問題でありますが、かかる運命の分かれ道を、まだ一度も国民の審判を受けてはいない佐藤内閣がとり行なおうとすること自体、容認しがたいものであります。
反対の第四の理由は、赤字公債の発行は、インフレを招来し、国民大衆の実質生活を低下させることにあります。
政府は、節度さえ確かであれば、インフレなき公債発行は保証されると言うが、現在の日本経済のワクの中で、そんな器用なことができるとお考えでしょうか。財政法第五条には、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。」と規定されております。そこで政府は、何回か、公債は市中消化して、日銀には引き受けさせないと言明いたしておりますが、しかし、民間金融機関で引き受けた公債は、直ちに日銀に回っていく仕組みになっているではありませんか。このことは、従来、道路公団、住宅公団、国鉄公社、電信電話公社などの発行している政府保証債、興業銀行、長期信用銀行、農林中金、商工中金などの発行している金融債が、いずれも民間金融機関の引き受けを経過して日銀に集中している事実を見れば、明らかなことであります。根本的には、日本経済の体質や金融市場の特異性に基因するものであるが、佐藤総理、大蔵大臣、政府が、幾ら市中消化を叫び、節度ある公債発行を叫んでみたところで、それは一時のごまかしにすぎない。公債の日銀への集中を押える確固たる方法が政府にありますか。また、年を追って膨張せざるを得ない公債発行額を、どこかで歯どめする確実な手段を何か一つでも知っていますか。これまでの国会での討論の中で、それが出されたことが一度でもあったでありましょうか。全くのところ、一時しのぎの答弁と、できることなら、財政破綻を起こさない程度にしたいという願望が述べられたにすぎなかったのです。そのもたらす結果は、日銀通貨の膨張とインフレーション以外の何ものでもございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/11
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012・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 戸田君、時間が超過しております。簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/12
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013・戸田菊雄
○戸田菊雄君(続) わかりました。
いままでがすでにそうであったけれども、今後はいよいよそれが激しくなる。インフレーションの被害はあげて勤労大衆がこれをかぶること必定であります。昭和四十年度の消費者物価は四・五%の上昇にとどめるという政府の公約は、実質すでに八ないし九%の上昇という事実によってくつがえされておるのであります。加えて、いままた、米価値上げ、国鉄運賃、私鉄十四社の料金値上げ、郵便、電話、健康保険料等々の各種公共料金の大幅引き上げがとどまるところを知らぬげに暴れ回ろうとしているではありませんか。これは一体どうしたことでありますか。総理は、当面の緊急対策は物価対策だと言明はするが、言うことと実際の姿は全く逆じゃないですか。犠牲は勤労国民大衆にのみ向けられている。物価上昇に追いつくための労働者のささやかな賃上げ要求は、しごく当然なはずであるが、大衆奉仕を口にする佐藤内閣の政策は、それとは反対に、賃金ストップ、首切り合理化をもってこたえるものにほかならない。まさしく佐藤内閣は、左手に公債発行、インフレ促進のむちを振い、右手に賃金ストップ、首切りの「おの」をかざし、国民大衆をより困窮に追いやっているというのが、その偽らざる実体であり、悪政これにまさるものなしと言わざるを得ません。
それでは時間もまいりましたので、最後に、以上いかなる見地から見ましても、公債発行は、断じて、絶対多数の国民大衆の認め得ないところであり、その起点たる今回の財特法は、まさに百害あって一利なしと断ぜざるを得ないものであります。
日本社会党は、かかる無定見にして無方針、ただ国民大衆からの徴税強化と、地方財政の破壊、高物価インフレによる大衆収奪、ひいては平和で民主的国民生活の破綻をもたらすところの公債発行をせんとする財特法制定に関しては、断固として反対をいたすものであります。さらに、わが日本社会党は、国政における基本原則を誤り、かかる重大なる局面に国民大衆を追いやったところの現佐藤内閣が、すみやかにその非を知り、国会を解散し、もって国民大衆にその信を問うことの緊要なることを警告して、私の反対討論を終わりたいと思います。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/13
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014・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日高広為君。
〔日高広為君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/14
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015・日高広為
○日高広為君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております「昭和四十年度における財政処理の特別措置に関する法律案」につきまして、賛成の意を表するものであります。
わが国の戦後の財政は、ドッジ・ライン以来、常に財政収支の均衡が政策の重要な柱として運営されてまいりました。この方式によりまして、財政規模が急激に膨張することを抑制するとともに、財政が国民経済に過度の刺激を与えないようにし、企業並びに家計が自発的に拡大発展を遂げていくような成長のパターンを期待していたわけであります。そして、事実このような均衡財政のもとにあり、かつまた、その運営よろしきを得まして、日本経済が世界に誇る目ざましい復興と成長の足跡を残すことができたことは、あらためて申し述べるまでもないところであります。しかしながら、最近におきましては、企業利潤の極度の低下、あるいはまた、家計の消費支出が著しく伸び悩むなど、いわゆる低圧経済の様相は、まことに深刻なものとなっております。この現象は、従来までの均衡財政のもとにおきまして、国民経済の供給能力が急速に拡大して、その結果、供給力が有効需要の増加に追いついて、いまや、これを上回っている状態にあるのだと解釈できるのであります。したがいまして、かかる状況に到達した今日では、これまでの財政運営の指導原理であった収支均衡予算主義の原則は、すでにその使命を達したと考えられるのであります。しからば、今後の財政に課せられたる使命は何かといいますと、これまで立ちおくれていた社会資本の充実、あるいは社会保障の拡充をはかるとともに、他方におきまして、大幅な減税を実施することによりまして、政府みずから有効需要の拡大につとめ、かつ、家計における消費需要を喚起いたしまして、経済各分野の均衡のとれた安定的発展を実現し、豊かなる社会を築き上げるための基盤を形成することであると思うのであります。このような政策を実現するためには、今後の財政におきまして、公債政策を導入し、弾力性を強化することにより、初めて国民生活の安定向上に積極的な役割りを果たし得るものと確信するものであります。
ただいま議題となっておりますこの法案は、前に述べました深刻なる不況を反映いたしまして、本年度の租税収入が二千五百九十億円減少するという事態に対処するため、これを国債によって補てんすることが、その目的の一つとなっております。歳入不足という現象に対し、増税または歳出縮減の方策をとることなく、税収不足額に見合うところの公債を発行することとしたのは、現在における景気の状況が著しく低迷いたしておりますときに、まことに適切なる措置であると言い得るのみでなく、今後の財政のとるべき方向として当然の道だと信ずるものであります。しかるに、今回の国債発行は、財政法第四条に違反するとの見解や、国債発行が直ちにインフレにつながるとか、あるいはまた、戦争経済への足がかりになるというような心配をされる意見もあります。しかしながら、政府当局が財政法第四条ただし書きによって発行することとせず、税収補てんのための公債であることを率直に認め、特別措置をもって発行することとしておりますのは、むしろ財政法の精神を順守したからにほかならないものと考えられるのであります。また、佐藤総理大臣並びに福田大蔵大臣がたびたび言明されているように、今回の公債発行は、異常なる年度における税収不足補てんのためのものであり、今年度限りのものであって、その消化も極力市中においてなされようとの努力がなされております以上、これが悪影響を残すものではないことを確信いたすものであります。
また、昭和四十一年度以降の国債発行につきましても、財政法の精神にのっとり、その規模を公共事業費のワク内にとどめ、市中消化の原則を守ることが示されております。かくして、公債を抱いた新しい財政が健全財政としての道を歩む限り、インフレとは無縁のものであり、福祉国家実現へ、より一そう重要な役割りを果たし得るものと、大いなる期待と安心を持つものであります。
本法案は、また、税収の減少に伴い、地方交付税交付金が減少することを回避せしめるとともに、地方公務員の給与改定の財源に資するための借り入れ金の措置を講ずる等の、地方財政対策の一翼をになうものであります。現在における地方財政の状況から考えますると、交付税率の引き上げ等の長期的な対策もさることながら、当面の措置として、かつまた緊急を要する地方公務員給与改定の財源賦与のための措置を講ずることは、当然というよりは、むしろおそきに失したとも言えるのであります。
ともあれ、今回の一般会計における公債発行は、戦後これをもって嚆矢とするものでございまして、歴史的な新しい時代の新しい財政政策を示すものであります。昨年十二月二十四日、本会議において本案の趣旨説明がなされて以来、明年度から予定されております本格的な建設公債の発行を含めて、国家経済、国民経済等に及ぼす影響等について、真剣な検討がなされたのであります。特に野党議員諸君の議論にも傾聴すべき御意見が多く述べられましたが、私は、今回の公債発行がきっかけとなって不況からの脱出がはかられ、次いで本格的な公債政策の導入による経済の安定的拡大発展の道が形成されていくことを確信しつつ、この法律案に対し賛意を表するものであります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/15
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016・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 中尾辰義君。
〔中尾辰義君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/16
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017・中尾辰義
○中尾辰義君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました「昭和四十年度における財政処理の特別措置に関する法律案」に対しまして、反対の討論を行なうものであります。
まず、この法案の性格から考慮するならば、政府が今日までとってまいりました高度成長経済は、資本主義経済の欠陥を遺憾なく発揮し、景気の反動は設備過剰による長期の不況となってあらわれ、中小企業の連続倒産、投資意欲の減退、相次ぐ物価の上昇等、国民生活の多大の犠牲のもとに、ついに二千五百九十億円の多額にのぼる税収の不足を生じ、その穴埋めに、赤字公債の発行によって四十年度財政の収支を合わせようとするものであります。この失政は、全く政府のずさんな経済政策と無責任な放漫財政によるものでありまして、その政治的責任は重大であります。政府は、この法案の成立によってその責任をのがれようとするものでありますが、政党政治の今日であれば、いさぎよくその責任をとって退陣すべきであり、わが党はその政策の失敗を追求するものであります。
反対の第二点は、赤字公債の発行が財政法により禁止されているのは、過去の財政史に見るごとく、これがいかにも不健全であり、インフレの要因となり、財政の基本原則に反するからであります。総理は、今後このような特別立法による公債発行は今年一年限りであり、今回限りであると言明をいたしておりますが、今日の資本主義経済のもとでは、いままでは景気は循環をいたしております。再び深刻な不況が到来し、税収の不足を生じた場合は、またまた赤字公債の発行を考えざるを得ないでありましょう。そうなれば、今度の特例措置はその先例をつくることになり、財政法第四条の立法精神を破ることになるのであります。特別立法でやりさえずれば何でもできるという、政府の立法の趣旨を無視した考え方は、はなはだ危険であり、民主主義の原則を破壊するものと言わざるを得ないのであります。
反対の第三点は、今回の特例法には償還計画が全く示されてなく、簡単に、昭和四十七年度に二千五百九十億円の償還をすることだけを示されております。大蔵事務当局の補足説明によりますると、財政法第三十四条により、剰余金から繰り入れられた国債整理基金により償還を計画し、国償の償還に支障を生じないよう繰り入れ額の総額を決定すると言っており、しかも七年後における国民経済の規模が現在よりはるかに大きくなることを期待し、そのときは国民所得水準もかなり高くなるものと予想されるので、租税収入が相当増加するから、四十七年度において円滑に償還できると言っておりまするが、逆に、景気過熱の反動不況により税収の剰余金が減少した場合は、この計画は全く狂ってくるのであります。これでは償還計画とは言えないのであります。むしろ今後の国債の償還にあたっては、国民大衆の租税を充てるより、国債発行によってまかなわれた資本が投資され、その投資によって生ずる利益をもって償還に充てるべきであると思われるのであります。
反対の第四点は、公債発行とインフレとの関係であります。大蔵大臣は、国力が充実した今日、公債発行が直ちにインフレにつながるとは考えられないと、しばしばこのように言明をいたしております。しかし、今年度の二千五百九十億円の赤字公債の発行に次いで、四十一年度はすでに七千三百億円の公債発行を準備し、その他、政府保証債、金融債、事業債等を合わせますると、来年度は約二兆円にのぼるものと予想されております。また、明後年度は、設備過剰の現状から判断をいたしまして、おそらく国債だけでも一兆円程度にはなるでありましょう。その後、景気の上昇を見込み、税の自然増収を期待し、公債発行を漸減しようとはかりましても、最近における予算の特徴は、社会保障費、食管会計の赤字繰り入れ、公務員給与のベースアップ、その他の当然増経費の増加により、その歳出経費は硬直化し、税の自然増収はほとんどこのような当然増経費と減税に充当せざるを得ない状態にあります。したがって、一たび公債に依存した財政は、年々雪だるま式に膨張し、公債発行をやめることはきわめて困難であります。また、国債の消化については、日銀引き受けはやらない、市中消化の原則を貫けばインフレ防止の効果ありというが、今後発行する国債は公共事業の範囲内において建設公債を発行するにいたしましても、結局は現在の政府保証債と同様、日銀の買いオペの対象となり、日銀券の増発につながり、景気を過熱し、ひいてはインフレの道をたどることは必至と思われるのであります。そうして諸物価はさらに上昇を続け、国民生活を圧迫するものと思われるのであります。
要するに、本年度の二千五百九十億円の公債をはじめ、今後続くであろう多額の国債発行は、大衆を犠牲にして産業資本への強力なてこ入れを行なうというものであり、全く国民大衆不在の財政政策であると言わざるを得ないのであります。政府はこのような非難を避けようとするならば、物価安定に本腰を入れ、所得税の大幅減税を断行すべきであることを私は要望いたしましてこの法案に対し反対をいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/17
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018・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。
討論は終局したものと認めます。
これより採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/18
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019・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時三十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00619660118/19
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