1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年六月七日(水曜日)
午後一時四十二分開議
出席委員
委員長 矢野 絢也君
理事 小宮山重四郎君 理事 齋藤 憲三君
理事 中曽根康弘君 理事 福井 勇君
理事 石野 久男君 理事 三木 喜夫君
理事 内海 清君
池田 清志君 岡本 茂君
桂木 鉄夫君 佐々木義武君
世耕 政隆君
出席国務大臣
通商産業大臣 菅野和太郎君
国 務 大 臣 二階堂 進君
出席政府委員
科学技術政務次
官 始関 伊平君
科学技術庁長官
官房長 小林 貞雄君
科学技術庁原子
力局長 村田 浩君
通商産業省公益
事業局長 安達 次郎君
委員外の出席者
原子力委員会委
員 有澤 廣巳君
原子力委員会委
員 山田太三郎君
参 考 人
(原子燃料公社
理事長) 今井 美材君
参 考 人
(日本原子力研
究所理事長) 丹羽 周夫君
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
原子力基本法の一部を改正する法律案(内閣提
出第七二号)
動力炉・核燃料開発事業団法案(内閣提出第七
三号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/0
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001・矢野絢也
○矢野委員長 これより会議を開きます。
原子力基本法の一部を改正する法律案及び動力炉・核燃料開発事業団法案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。
この際、有澤原子力委員より発言を求めておられますので、これを許します。有澤原子力委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/1
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002・有澤廣巳
○有澤説明員 去る六月一日のこの委員会におきまして、佐々木良作委員の御質問に対する私の答弁のうち、一つ間違いがありますから訂正させていただきたいと存じます。
それは佐々木さんの御質問で、海外諸国で開発されたいわゆる実証炉の導入問題をどうするつもりか、こういう御発言がありましたときに、私がカナダのたとえばBLWというものが十分実証されました後には、電力会社にこの導入を要請するつもりであります、こう申し上げましたが、このBLWは、カナダのCANDU−PHW、加圧重水型炉の誤りでありましたので、その点の御訂正をぜひお願いいたしたいと思います。と申しますのは、このCANDU−BLWというのは、まだ開発されていないと申しますか、まだプロトタイプの、建設が始まるか始まらぬというような、これから開発されるところの炉でありまして、私がここでお答え申し上げましたのは、在来炉、いわゆるセミプルーブンといいますか、大体実証が半分くらいは済んでおるもの、そのセミプルーブンの炉としてPHWを申し上げたわけでございまして、そうでないと、もしBLWだということになりますと、たいへん誤解を招くおそれがありますので、この際ぜひ御訂正をお願いいたしたいと思います。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/2
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003・矢野絢也
○矢野委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。
ただいま議題といたしました両法律案審査のため、本日、原子燃料公社理事長今井美材君及び日本原子力研究所理事長丹羽周夫君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/3
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004・矢野絢也
○矢野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/4
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005・矢野絢也
○矢野委員長 両参考人には御多用のところ、委員会に御出席くださいまして、ありがたく存じております。
御意見の聴取は、質疑応答の形式で行ないますが、どうかそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。石野久男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/5
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006・石野久男
○石野委員 原子力発電のエネルギー政策に占める位置が飛躍的に拡大されていることは、だれも否定できないことだろうと思います。科学においても、技術においても、わが国は、先進国に比してはるかに劣っておるのであるから、動力炉を自主開発し、燃料サイクルを確立するためには、政府の原子力開発政策が一貫性をもって強固に遂行され、積極的に民間産業をリードすることがきわめて大切だと思います。高速増殖炉並びに新型転換炉の開発及び核燃料を開発するにあたって、民間産業の協力を積極的に結集しながら、その開発計画に一元化の方針を明確にする、国民経済的に投下資本の効果を拡大していささかもむだのないようにすること、そしてまた、全面的に科学と技術を結集するということ、それによって早期に世界の水準に追いつき、追い越す、こういう考え方を政府において持たなければ、この目的は達成されないだろうと思います。原子力の平和利用が絶対命令であるわが国の開発においては、軍事費にささえられて開発をしている米英その他の諸国の開発とは違う点があるのですから、政府においてこの観点から施策を打ち出して、財政的負担を積極的に行ない、人的、物的の大結集を行なって、国際協力に対処しながら国際競争にうちかつという明確な方針が必要だ、こういうふうに思います。私は、動力炉、核燃料の自主開発のために、政府が一元的な計画を、電力事業者の利潤追求本位の原子力発電計画に引きずり込まれないで開発方針を打ち出すこと、第二番目には、軍事費に支出したつもりで科学技術の予算を増額するという考え方、第三番目には、原子力委員会の権限を確立して民間産業資本を協力させながらその恣意を許さないというたてまえをとること、第四番目には、開発の成果を全体の成果として一個の会社企業のものにすることは許さない、このような立場を堅持していかなければ、日本の動力炉、核燃料の自主開発ということは、どんなりっぱな説明をしても、なかなかうまくいかないのじゃないかというように思うのです。こういう観点から、私は先日の質問に引き続いてきょうの質問を行なわせていただきたい、こういうように思います。
先日のいろいろな私の質問のあとで、あまりごたごたしたことはお聞きしたくないのですが、まず動力炉の自主開発、それから燃料サイクルを確立するという立場から、高速増殖炉を何としても早く自主開発するということができなければいけないのではないか、こう思います。そういう立場で、今度の事業団、あるいはまた、全体としてのエネルギー総合計画の中で見ておりまするそれとの見合いの中で持たれておる高速増殖炉の開発におよそ二十年間必要とするということになっておる。この考え方がどうもちょっとおそいんじゃないかという気がするのです。二十年なければどうしても開発できないものだろうかどうだろうかということを考えますので、まず最初に、二十年必要だというそのよってくる理由はどういうところにあるか、これをひとつ初めにお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/6
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007・有澤廣巳
○有澤説明員 高速増殖炉の開発をもっと早めることができないかどうかという御質問でございますが、むろんわれわれは、高速増殖炉が、原子力発電といいますか、原子炉といたしましては、燃料政策の立場から考えてみましても、これが本命である——いろいろの型の炉がありますけれども、高速増殖炉が本命である、こういうふうに考えておりまして、この点は、各国ともみなそういう考え方でこの高速増殖炉の開発に非常な力を入れておる次第でございまして、わが国におきましても、これに非常に大きな力を入れるつもりでおりますが、何と申しましても、高速増殖炉につきましては、技術的な面で、まだ困難なことが明らかであります。
それから第二は、その経済性が十分確保されるまでの技術的進歩というものが、まだまだだいぶ研究開発をしていかなければ確保されないという現状でございまして、したがって、各国におきましても、高速増殖炉が実用化される時期は大体一九八〇年か八五年というふうな見込みを立てておるようであります。したがって、わが国におきましても、その時期までには、おくれないで一局速増殖炉を開発したい、こういう考え方をいたしております。
この点は、アメリカのAECの一九六七年のサプリメント、これは一九六二年に大統領に対して出しました原子力発電に関する報告の付録といいますか、増補がことしの二月に公表されておりますが、そのアメリカの原子力委員会のサプリメントにおきましても、なお技術的困難性と経済性の確保の点において、まだはっきりしたことが言えないというふうに述べられております。ですから、これは技術の進歩にかかわることでございますから、いま困難と見えておりますものも、わりあいに早くこの困難を打開できることも考えられます。ですから、そういう場合には、おそらくもっと早く高速増殖炉の実用化の時代が来る、こういうふうにも申しておりますが、しかし、いずれにいたしましても、現在のところでは、大体一九八〇年から八五年が実用化の時代であろう、こういうふうな予測を立てておりますので、わが国におきましても、大体その時期までにはぜひ高速増殖炉を開発したい、こういうつもりで案を立てておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/7
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008・石野久男
○石野委員 炉の開発、特に原子力開発という問題について、わが国が世界の先進国からおくれていることは、自他ともによくわかっていることでございますが、このおくれを取り戻すといいますか、追いつき、追い越すということのためには異常な決心が必要であろうと思います。それで、世界各国で一九八〇年——大体これから十五年ほどかかるわけでございますけれども、それまでの間に、この高速増殖炉の経済的効用というものが全然出てこないかどうかというと、必ずしもそうじゃなかろうと私どもは思うのです。やはり日本が先進国のあとをいつでも追っかけているということでは、今度の事業団法をつくる意味はございません。したがって、事業団法をつくるということは、おくれはあるけれども、とにかく一歩でも二歩でも近づいていきたいというところにその意味があろうと思います。技術的な側面と経済的な側面で、日本の開発の期間はどうしても二十年は必要なんだ、こういう考え方は、率直に言って、日本の産業界または学術研究をやっておられる方々を含めてもう大体一致した意見なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/8
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009・山田太三郎
○山田参考人 いまのお答えにダイレクトになるかどうかわからないのですけれども、高速増殖炉がいつできるかというかぎを知っている人があったら、原子力計画は非常にやさしいわけでございます。新型転換炉の問題はもちろん解答が出てくると思うのですが、要するに、高速増殖炉というものは、御承知のとおり、電気を起こした一番初めの原子炉であります。一九五一年にすでに運転しております。しかし、増殖ができるということと経済的になるということで非常な差がございまして、二つの大きな問題を解決しなければならぬのであります。一つは、普通の原子炉と同じように大型化しなければならない。そのための新しい技術的な問題が出てまいりますとともに、高速増殖炉というのは、それ自体が経済的なものではございませんで、非常に高い燃焼度が得られなければならない。十万メガワット・デーというような非常に大きなもの、御承知のとおり、コールダーホールの東海村のが三千メガワット・デーでありますから、三十培程度の燃焼度が必要である、そのような非常に大きな技術開発が残っております。これが一般の空気であるかどうかというお話になりますと、イギリスあたりは非常に強気でございますから、八〇年前にできるといっておりますが、アメリカは慎重な道をたどって、これから材料試験炉までずっとやっていく、それが一九七四年に材料試験炉ができる、それから本格的にやるというようなことを考えておりますので、強弱いろいろございます。アメリカは非常に慎重であるというふうに考えられますけれども、実は、御承知のとおり、去年の秋にフェルミという原子炉が事故を起こしたわけですが、そういうようなことから考えてみてもそう簡単にはいかないのではないかという空気がアメリカには多いわけでございます。イギリスはそうじゃございませんで、強気でございますが、イギリスの見解は、イギリスも必ずしもプログラムどおり進まないのではないかということを考えておるようでございます。これが一般の空気であるかどうかわかりませんが、お答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/9
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010・石野久男
○石野委員 炉の開発の問題について、高速増殖炉がいつごろできるかということであります。はっきりしておれば原子力政策はきわめてやすいものだ、そのとおりだと思います。しかし、また同時に、それであるだけに、いま先に走っているものが一番先に取りつくとも限らないということも言えるのではないかと思うのです。問題は、そういう時点に、国が政府の施策としてどの程度の熱意と実質的な、それに対する具体的な政策を裏づけるかまえをするかという問題にかかってくるだろうと私は思います。したがって、二十年は長いということも言えるし、また短いということも言えるでしょうし、あるいはまた、二年や三年ということはちょっと不可能でございましょうけれども、しかし二十年という月日はかけなくとも、あるいは十年、十四、五年の間には、大体ほかの国と足をそろえることもできるかもしれないということは言える。問題は、やはりそういうような体制をつくるいわゆる日本の資金的な面や、あるいは人材といいますか、研究者が整うかどうかという問題だろうと思います。そういう問題について具体的に日本の人的、物的な側面からしてどうしても二十年という月日が必要なんだということになるのかどうかですね。あるいはまた、もっと総力の結集をすれば、思ったよりも早く各方面の知恵が集まって予想外な成果をあげるという可能性はあるのではなかろうか、こういうふうにも思ったりできます。そこで私は、いま政府がそういう方針をとったについての一番根拠になるものは、やはり推進本部がそういうことを考えて答案を出してきたということであり、原子力委員会がそれを打ち出したということだろう、こう思うのです。いまのような二十年という時間が必要だということについては、人的な側面では何か非常に足りないものがあったりしてのことなんでしょうか。その辺のところは、どういうふうになっていましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/10
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011・有澤廣巳
○有澤説明員 数字的には私はっきり申し上げることはできませんけれども、この高速増殖炉の研究は、従来わが国におきましても、ある程度力を入れてやってまいりました。これは主として原研でやってまいりました。原研ではようやく実験炉の設計、建設というふうな段階に現在立ち至っておりますが、しかし、原研以外のメーカー、民間における技術者というものは、高速増殖炉に対してはまだそれほど育っていないという現状であろうと思います。
それで、今回この事業団をつくるという考え方と同時に、アメリカのフェルミ炉に参加いたしまして、約二十名ばかりフェルミ炉のほうに民間や研究機関——原研も入っておりますけれども、各研究機関から日本の科学技術者を送りまして、そこで一方で勉強するとともに、また訓練も受けておる。また、原研は、ハルデンの研究炉の研究に参加いたしました。ここでも高速増殖炉に関する研究を進めるということになっておりまして、いまのところ、人材の面から申しますと、高速増殖炉にお金をうんとつぎ込みましても、にわかにその金を十分使いこなすだけの人材がまだ不足しておるという現状ではないかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/11
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012・石野久男
○石野委員 原研の丹羽理事長さんにお尋ねいたしますが、原研は実験炉の建設に携わってきておったわけですが、先日の委員会でのお答えでは、高速増殖炉に関する実験炉の建設を原研だけでやっておるという手はないのだから、これは多くに広げてやるべきだという意見で、私はやはりそれを原研だけでやるということは、まあやめさせた、とは言わなかったけれども、それをやる方向、方針を変えたというようなお話でございました。高速増殖炉に対する原研の過去の経験というのはあまり高く評価できないような実情なのかどうか、それとも、この過去の実績というものはどの程度に評価できるものなのか、そういう点についてひとつ理事長さんの御所見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/12
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013・丹羽周夫
○丹羽参考人 まず第一番に、原子力研究所にはいろんな専門家がたくさんおりまするが、人口的に、及び知能的といいますか、能力的に考えますと、やはり先ほども有澤委員長代理がおっしゃいましたように、一番最後のターゲットである高速増殖炉というものに自然向きたがるというような意味もあったかと存じまするが、現在では、原研に関する限り、高速増殖炉に直接関係を持っていろいろやってまいりました人口が一番多いのであります。しかし高速増殖炉人口と申しましても、いろいろな専門なり職種がありますので、ちょっと一口に言いにくいのでありますが、実は昨日も第三十回の推進本部会議を開きまして、最終的といってもいいくらいに、推進本部の専門分科会でいろいろ検討いたしました、これからやるべき研究テーマ、特に四十三年度は何をやるかというようなことをいろいろ審議した末、それを議決いたしました。いずれこれは、きのうも申し上げたのですが、原子力委員会へ提出して御承認を得てから実行に移らなければならぬと思っておりまするが、来年度は少なくともこういう研究テーマをやりたいんだ、そのためには、まず、原研の中だけにおるそういう研究グループのリーダーにはこんな人間を任命しよう、これは約二十名ばかりグループリーダーがおりますが、それを任命することを御承認を得ました。研究テーマのごときはおそらく三十前後あったと思います。そして、この間も、いま石野さんがおっしゃいましたように、たとえある研究テーマは原研の中だけで、原研の者だけができるといたしましても、それはいかぬ。少しでも外部から——研究テーマのグループはいろいろありますが、そこへもぜひ外部からなるべくたくさん参加していただいて、協力をしていただくようにしたいと思うというふうに決議をしていただいたのであります。したがいまして、予算さえつけば来年度の高速増殖炉に関する、特に実験炉に関するいろいろなことはすぐさまやれるような体制をしいております。ただ、昨日推進本部で決議をしていただいたグループリーダーは、とりあえずは原研の者だけに関して決定していただいたのでありまして、その他に、たとえばこのテーマは大学の先生にやっていただいたほうがよかろう、このテーマはメーカーのだれかにやっていただいたほうがいいだろうというものもございますが、それはまだ具体的には働きかけておりません。ただ、研究すべきテーマというものは、ほとんど十分ディスカッションした上できめられております。
それから、十分できるだろうかという御質問もあったように思いまするが、これは少ししょっているなとお思いになるかもしれませんが、原研では、昨年の初めくらいまでには、すでに百万キロワットの高速増殖炉の概念設計までを一応済ましております。いわんや実験炉に関するいろいろな設計的な、あるいは計算的な、あるいは実験的な仕事はずいぶんやってきております。ただ、遺憾ながら、ほんとうにものをつくって、そのものによって実際の試験をしたという点は、パーツ的には、部分的にはございますけれども、ほんとうにリアクターそのものは、御承知のように、まだできておりませんので、今日まで原研の者は、もう何十名と数えられるだろうと思いますが、たとえばドーンレーの実験炉、これはちょっとフュエルが違いますので、直接参考にならない点も多々ございますが、あそこの実験炉のセオレティカルデータは全部もらえるようになっており、かつ着々と入手いたしております。
それから、これはフランスの、どっちかと言えば、積極的好意によりまして、原研の者が一、二名フランスのカダラッシュのラプソディーですか、それの実験炉のクリティカリティーの瞬間に立ち会わしていただいておりまして、見学だけのつもりでおりましたところが、ある重要なる仕事の部分を主任的に請け負わされまして、非常にりっぱな成果をあげておる。あの者の滞在をもう少し延ばしてくれぬかというお話すらあるのであります。
その他、いまお話の出ましたように、エンリコ・フェルミにはすでに四名だったと思いますが、だいぶ前に行きまして、幸か不幸か、故障を起こしましたので、その故障の原因のアナリシスといったような点について十分に勉強いたしております。
なおまた、カールスルーエからも、どうだ一緒にやらぬかという申し出が私のほうにきておりますが、すでに一名は、これはほんとうの政府間の協定という意味ではなくて、あそこに留学していろいろな勉強をいたしております。
そのようなことで、まあいろいろな方面で、ナトリウムエンジニアリングということにつきましても、毎年のように開かれまする世界的な高速増殖炉の、何と申しますか、会議におきまして、ずいぶん貴重なといわれておりますが、おせじかもしれませんが、有益であったといわれておりますペーパーを読み、かつ十分なるディスカッションをいたしております。したがいまして、実際にナトリウムループなり、あるいは実験炉なりを目前に置いて、それをなぶってほんとうのデータをとったということが欠けておりますけれども、まあ紙上的と申しますか、データ的と申しますか、そのような知識は相当たくわえておるというふうに私は考えます。ただ、いま有澤先生もおっしゃいましたが、ものをつくるということは、この間もちょっと申し上げましたけれども、原研だけではとうていできない。おそらくマンパワーという点からいいますと、メーカーのドラフツマンあるいは詳細設計者といいますか、これらの手を通るパーセンテージが、下手すると五割前後要るのじゃなかろうかというふうにも考えます。まあ、根本的な、概念的な、イニシアルステージの設計なり、研究なり、計算なりの能力は相当持っておるというふうにお考えいただいていいのじゃないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/13
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014・石野久男
○石野委員 いま丹羽理事長さんからのお話で、原研の持っている研究者の能力というのは相当高く評価してもいいというふうにおっしゃられましたし、私たちもそれを期待したいと思うのです。問題は、そういうせっかくいい技術がありましても、実際に実験炉を前に置いて具体的に自分の腕をためすとかやるとかいうことができないところに、やはりなかなか確信が持てない、こういうことだろうと思います。
先ほど有澤先生からお話がありましたが、かりに金をどれほど積んでも、技術の面ではなかなか十分じゃないと言われた、その側面も私はわからないわけじゃございません。だけれども、やはりそれは日本だけじゃないのだろうと思います。世界のいずれの国も、みなそういう事情のもとに置かれているだろうと思います。でありますならば、自主開発をしようとするかまえは、やはりそういうことを悪い条件だというふうに見ないようにしなければいけないだろう。むしろそれを承知の上で政策を樹立して、そしてそういう悪い条件を克服するという体制ができなければ、自主開発というものは私はできないのじゃないか、こう思うのです。むろんこれは政策の問題になってくるから、長官のほうの問題になってき、あるいは総理の腹がまえの問題にもなろうかと思いますけれども、しかし原子力委員会がこういう問題について日本の技術に自信を持たないというようなことがありますと、これではとても開発するという政策も遂行できないのじゃないかと思うのです。たまたま、原研の方々が世界のあちこちに出て、そこでオブザーバーのような形でおったにもかかわらず、非常に重要な位置づけで招かれて任務を果たしておるというようなことなどを聞きますと、日本自身がそういうよその国でいろいろな仕事をしている、もちろんそれはむだではございませんけれども、それなら、もう少し内でそういうかまえをするということにしたらもっと成果があがるんじゃないかというような気がするのです。有澤先生、これは私のしろうと考えかもしれませんけれども、もう少し日本の技術者を一堂に会して総力を結集するというかまえをして、それに金の裏づけをして、たとえばアメリカやフランスに実習にやっている方々は、もちろんやっておいてよろしいのですけれども、同時に、日本独自で従来持っておる自分の技術的水準を土台にしながら、国際的な協力をしつつ、自前のものにもう少し力を入れる、こういう体制を具体的につくる必要がいまあるのじゃなかろうか。それをやることが、また開発の時間的な問題を縮めるということになるのじゃなかろうかと思うのですが、それもだめなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/14
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015・有澤廣巳
○有澤説明員 お説のとおりと私どもは考えておるわけで、今度事業団をつくりまして高速増殖炉を一つのターゲットとして開発するという趣旨のものは、ただいまお話のありましたように、日本における科学技術者の総力をそれにつぎ込んで、そして、できるだけすみやかに技術的困難を解決して高速増殖炉をつくろう、こういう趣旨のものなんであります。ただいま丹羽理事長さんのお話の、原研の方が各国のそういう施設におもむきましていろいろ勉強されているということも、これは何も向こうの施設に協力するばかりが能じゃない。事業団がこれから高速増殖炉の実験炉なり、さらに進んでは、その原型炉なりを研究開発するにあたりまして、習得しました知識なり経験を大いにこの事業団の事業に投入してもらおう、こういう趣旨なんでございます。したがって、現在各国におもむいている科学技術者の方々も、言ってみますれば、日本の高速増殖炉をなるべく早く建設を成就するために、その準備をいま盛んにやっておるという段階でございまして、事業団がいよいよできまして、研究開発計画を立てますときには、一方ではそういう大型の施設がだんだんつくられるようになりましょうし、その施設をつくるにあたりましては、こういう人々、また現在民間にいらっしゃる技術者の方々の協力も得まして、自主的にそういう大型の施設、実験炉なら実験炉、さらに進んでは高速増殖炉の原型炉を製作しよう、こういう趣旨なんでございまして、日本人は確かに能力的にはかなりすぐれた能力を持っておると思います。その能力を十分ふるい得るような場面、組織、それからむろん研究費が必要なわけでありますが、そういう組織と研究費をここにつけて開発を進めたい、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/15
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016・石野久男
○石野委員 事業団ができた趣旨は、まさに有澤委員のおっしゃるとおりでありますけれども、この事業団が大体予定しております開発の二十年の期限を置くということはおそきに失するんじゃないかということを私は問題にしているわけです。そこでもう少し早目にするということをやらないと、自主的な開発は、率直にいってできなくなりはせぬだろうかということで私は心配をするのです。それはどういうことかといえば、二十年間に原子力発電で出す電力が、昭和六十年のときに四千万キロワット近くまでいく。電力産業の予定で四千万キロワットをこえるわけですね。それを四千万キロワットのところまでもっていく間、ほとんどが軽水炉でやるということなんですね。なるべく軽水炉の国産化をはかるでございましょうけれども、しかし軽水炉は軽水炉ですから、したがって、その軽水炉が持つ燃料サイクルへの悪い条件などというのは、この長期計画がいっているとおり、いいわけじゃありません。しかし問題は、そういう二十年間軽水炉で発電をやっていく間、先ほど来問題になっております技術者の育成と結集という問題が思うように高速増殖炉の面にできるだろうかどうだろうかということ、その心配が私にはあるのです。これは、日本に原子力関係の技術者が非常にあり余るほどいる場合ならば問題ございませんけれども、おそらく私はそんなに潤沢じゃなかろうと思うのです。むしろやはり四千万キロワットもの原子炉が導入炉によって動いている場合、それに必要とされる原子力関係技術者というものは相当な量だろうと思います。そうなってまいりますと、非常に能力のある技術者でも案外にこの高速増殖炉の開発のために結集できないという結果が出てきはしないだろうか、この心配がなければけっこうなんですよ。そういう心配はないのかどうか、計画を樹立するにあたって、もちろんそういう検討はなさったと思いますが、その点はいかがでごいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/16
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017・有澤廣巳
○有澤説明員 おっしゃるとおり、私どもの考え方では、高速増殖炉と、そのほかにもう一つ新型転換炉がございます。この二つは、自主的に開発するというたてまえをとっておりますので、人材の面がたいへん重要であるということは、御指摘のとおりでございます。しかしながら、私ども考えましたところでは、この高速増殖炉と新型転換炉、この二つの炉を開発するにあたりましては、現在ある人材を十分有効に使う必要がある、むだな使い方をしますといいましょうか、あるいはダブった使い方をするということになると、不足をするおそれもありますけれども、これを有効に使うということを考えるならば、十分間に合うだろう、こういうふうに考えております。軽水炉の導入、これはもう技術的導入をしておりますので、その軽水炉がだんだん発展をしまして、三千万とか四千万とかいうふうにふえるということになりましても、だんだん後には——むろん軽水炉におきましても、改良ということは行なわれると思いますけれども、しかし、これはだんだん製作のほうがおもになってくるだろうと思います。ですから、製作の方面に従事する技術者と研究開発に従事する技術者で、われわれが必要とするこの二つの動力炉を開発するに必要とする要員は、この研究技術者と申しますか、そういう方面の人が最も重要なのでございます。いまのところ、最初はどうしても原研にいられる技術者——高速増殖炉はむろんのこと、新型転換炉の開発につきましても、原研におられる技術者、研究者が一つの重要な主力になると考えております。そればかりではむろん足りませんので、特にエンジニアリングの方面におきましては、民間の方々に御参加を願う、こういう趣旨の考え方でございまして、われわれが事業団を——この二つの動力炉の開発のための研究所あるいは公社といいますか、言ってみますれば第二の原研をつくらないという方針をとりましたのもその趣旨からでございます。もし人材が非常にたくさんあるようでございましたならば、いまの原研のほかに、動力炉の開発のための第二の原研といったものをつくることもできないわけじゃないのでありますけれども、そういう人材上の余力は全くないと私どもは判断をいたしております。したがって、この事業団におきましては、言ってみますれば、いわゆる参謀本部的な役割りを演ずることによりまして、その参謀本部の指揮統括のもとに、各方面にいられる技術者がそれぞれの部署において活動してもらう、研究開発をしてもらう、それを事業団が総括して、一歩一歩動力炉の開発を進めていく、そういう体制をとりましたのも、いま御指摘になりましたような人材の問題、人材を最も有効に使おう、こういう趣旨からそういう組織を考えておる次第でございます。どうか御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/17
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018・石野久男
○石野委員 御趣旨はよくわかるのですけれども、しかし、そのとおりいくかどうか心配しているわけですよ。問題は、率直に言いまして、人材が足りないわけですね。いま有澤先生から、場合によれば、高速増殖炉について第二の原研をつくってもいいというぐらいのお話がありましたが、この点にも実は問題があります。思いつきでおっしゃったのかどうか知りませんけれども、そういう考え方を基本的に持っておられるのか、あるいは思いつきでおっしゃったのかどうか知りませんけれども、ここにも問題があるのですが、それは他日またお聞きするとしまして、やはり人員を有効に使うということになりますと、これはよっぽどの体制がなければ私はできないと思うのです。この人員というのは、現実には、先ほど丹羽理事長さんからお話があったように、原研の技術者というのは非常に優秀な能力をもってこれに携わっておりますけれども、しかし、これだって足りないわけです。また、ある部面においては、全然力がない部面もあると思います。したがいまして、これは事業団自身が考えているように、原研を軸として民間産業も全部含めた体制で人材を有効に使うということなのでございましょう。これはことばの上では簡単ですけれども、各民間会社の営業政策がある、そういう営業政策とのからみ合いの中で人員配置ということをやるのには、相当な権力機構がなかったならば、これはなかなかできないだろうと思います。そう簡単なものではないと私は思います。そこで、人員を有効に使うという意味は、そのこと自体はわかりますけれども、有効に使う人員の員数と、それから所要の部署というものの関係ですね。これはやはり一応計算しているのでしょうか。昭和六十年度に向かって電力四千万キロワットを出す計画に基づく研究開発の人員の部署的な配置の状態と、それから現実に技術者がどの程度あるという人員計画、これがありましたらひとつお見せ願いたい。これに対するある程度の見通しというものを持たないで、ただ簡単に有効配置をするのだというだけでは私は納得できない。なぜなら途中で挫折する危険があるからです。それと同時に、あとで大蔵大臣が来たときに、また聞きたいと思っておりますけれども、資金的な側面から研究開発についてチェックをするというような問題なんか出てくる。国がそういうチェックをするということになれば、営利面においてそれよりもっと敏感な考え方をしておりまする財界の諸君は、もっと早く処置をするだろうと思います。体制固めをですね。そうなってまいりますと、資金の結集というものはある程度できたところで、また散ってしまうという形が出るのです。だから私は、人事配置については、相当長期にわたるところの計画、あるいは計画的技術者養成、そういうようなものを片方ににらみながら、片方ではやはり配置面において民間の要望をある程度規制するという体制が出てこなければ、有効な人事配置というのは可能だとは思わないのです。そういう御意図を持っておられるのですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/18
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019・村田浩
○村田政府委員 ただいま動力炉開発についてのわが国のマンパワーについてのお尋ねでございますが、先ごろ、長期計画を原子力委員会が策定されますときにも、最も重要な動力炉開発を含め、わが国の原子力関係の開発利用を円滑に進めるために必要な人材がどの程度養成されなければならないかということは当然検討していただいたわけでございます。それによりますと、現在わが国におります原子力関係、これは広い範囲に関しまして、放射線の利用まで含めてでありますが、科学技術者は約一万名でございます。これに対しまして、約十年後における需要数、これを各方面の発展を見通しまして計算したわけでございますが、二万七千ないし二万九千名が十年後には必要である、すなわち、その差として一万七千ないし一万九千名を今後約十年間に養成する必要がある、こういう結論が出ております。これは放射線利用を含めておりますので、ただいまお話にございました動力炉開発という方面、原子力発電、エネルギー関係でございますね、その方面に限って見てみますと、現在数約一万名のうち三千五百名がこの動力関係であります。残り六千五百名が放射線関係。この三千五百名の動力関係の人の十年後の所要数は一万七千ないし一万九千という見通しでございます。つまりこの十年間に約五倍くらいに人材をふやさなければならないという見通しになっております。
それで、今後の養成をどういうふうにするかということは、長期計画の中で具体的には触れておりませんが、ただ原子力関係の科学者、技術者といいましても、種々の広い範囲にわたる専門分野がございまして、その中核になるのは原子炉物理あるいは原子炉工学といいますか、原子炉自体に密着した科学技術者でありまして、これを原子力専門科学技術者と呼んでおりますが、この中核になる人につきましては、現在全国の六つの大学に原子力工学科あるいは原子核工学科というのが置かれておりまして、ここで現在年間二百人余りが卒業生として出ております。この卒業者を今後少なくとも三百名程度にはふやさなくてはならないかと思っております。それから、大多数は、いわゆる原子力関連科学技術者と呼ばれる分野でありまして、すなわち、大学における専攻は機械であるとか、電気であるとか、あるいは冶金であるとか、原子力工学科ではございませんけれども、このような関連した工学関係あるいは理学関係の学部を出られまして、原子力関係の勉強をされる人、こういう人たちのサポートが一番大切でありまして、そういう関係の方々の養成を文部省にお願いしなければならないわけでありますが、これは全体の理工学系の科学技術者の養成の計画の中で、毎年の卒業者の大体二・五%から三・五%を原子力関係の動力関係に持ってきていただけば一応この数は充足されるのではないか、このように見ております。そのほかに、もちろん、ただいまやっておりますように、すでにこれまで卒業された方々の中から、必要に応じまして原子力研究所等における研修に入っていただいていわゆる再教育を行なう、あるいはまた、先ほど来お話がございましたが、海外の先進諸国の研究所、開発機関に人を送りまして、いわゆる留学して勉強する、こういう人たちが加わるわけでございまして、大体アウトライン的に申しますと、そういうような線で人材の養成を考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/19
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020・石野久男
○石野委員 局長にお尋ねしますが、原子力のいわゆる専門的な技術者として約一万七千から一万九千、現在三千五百名の約五倍くらいの人を必要とするというのですが、この一万七千から一万九千という原子力関係技術者というのは、民間の、たとえば炉の開発に関連して昭和六十年度までにおける民間の原子力発電炉というもの、並びに新型転換炉及び高速増殖炉の開発に従事する者を全部含めてございますね。私は割り切ってものを考えるというような非科学的なことをあまり言いたくはございませんけれども、しかし主として高速増殖炉並びに新型転換炉に事業団として結集しなければならない人員はどのくらいでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/20
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021・村田浩
○村田政府委員 事業団に現実にどのくらいの科学技術者が必要になってくるかということは、ただいま原子力委員会で御検討いただいております基本方針の案あるいは基本計画の案ができまして、それに即応した人員計画というものをつくらなければならないわけでございますけれども、これまで丹羽理事長が議長をやっております動力炉開発臨時推進本部のほうで、約十年間にわたる高速増殖炉並びに新型転換炉の開発計画に必要な、つまりそのこと自身に実際にタッチするそういう人の数は年次計画として出してございますが、それは約十年間で延べにして八千六百名である。延べで八千六百名でございますが、ピーク時における一番多い人数は千二百数十名になっております。昭和四十八、九年ごろの予定でございます。千二百数十名というものが全部事業団におらなければならないのかといいますと、そういうわけではございません。先ほど来、有澤委員あるいは丹羽理事長からもお話がございますように、すでに研究機関あるいは民間等に、あるいはまた、大学等におられる方で動力炉の新型転換炉並びに高速増殖炉の研究に従事される方を動員しまして、総力を結集してやるわけでございますから、その中核となる事業団において千二百名全部を持たなければならないという考え方ではございません。実際にどの程度集中して事業団が持たなければならないかというのは、先ほど申し上げましたように、これからの問題でございますけれども、おおよその、私自身の見当になるかと思いますが、必要な人数としては大体最高千二百名おりますときの三分の一ないし二分の一程度が事業団におればよろしいのではないか、こういうふうに見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/21
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022・石野久男
○石野委員 人員の計画は、達成しようとする完成時の置き方によってずいぶん違ってくると思うのです。昭和六十年にそれをやり遂げようとするかまえと、もっと時間を詰めようというときでは、ずいぶんこれは違ってくるだろうと思う。そのことはまたあとでにしますが、ちょうど通産大臣がおいでになりまして、時間が限られておるようでありますから、通産大臣にひとつお聞きしたいのです。動力炉及び核燃料開発についての事業団が設定されるにあたって、総合エネルギー計画の中で示されておる原子力による発電、これがやはり事業団の設定を裏表の関係で非常に重要な位置づけをなしておる、こう思います。もしこの原子力発電が昭和六十年度において四千万キロワットの発電をしなければ日本のエネルギーが確保できないという事情であるならば、これはやむを得ませんが、しかし、私の見方では、動力炉の開発という側面から見ますると、導入炉によってあまりたくさんの電気を出していくことが、いろいろな面で、日本の動力炉並びに核燃料の自主開発に阻害を来たすだろうという見方を私はしておるわけです。そこで、原子力発電をもう少し少なくして、昭和六十年代におけるエネルギー総需要に対する火力、水力、原子力というこの割り振りの比率を変えるというようなことがあれば私の心配はなくなるわけなんです。そこで、この四千万キロワットの原子力発電というものを総合エネルギー計画の中で設定した理由はどういうところにあったのか、この点をひとつ通産省の立場で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/22
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023・有澤廣巳
○有澤説明員 ただいまの御質問は、総合エネルギー調査会の答申の線に沿っておると思いますので、調査会のほうの者として私からお答えさしていただきます。(石野委員「簡単にやってください。」と呼ぶ)
簡単に申しますと、日本における二十年、三十年後の電力需要をまかなうのにどうしても原子力発電がなければまかない切れないというものではないと私は思います。ただ、石油をどんどん輸入しまして、石油火力発電をつくれば、それはそれで発電ができると思いますけれども、しかしそうなりますれば、ますます石油のシェアが大きくなりまして、したがって、わが国においてのエネルギーの海外依存度がますます高まってくる。現にもう御承知のように六〇%以上が中近東から入れておる油でございます。でありますから、そういうふうに日本の石油の供給は、非常に片寄った供給状況でございまして、供給の安定の上から申しますと、まことに憂うべき状況であろう、こういうふうに思われます。そういうこともありまして、では石油にかわる発電用のエネルギーは何か。それは水力もあるにはありますが、しかし、コストの面から申しますと、やはり石油が最も有利であります。その有利な石油発電に対抗してなお発電ができるエネルギーとしては、この原子力発電があるわけです。この原子力発電もコストが石油発電に対して高いようでは、なかなかこれを無理無体に入れるというわけにもまいりませんけれども、幸いに原子力発電は最近非常に技術的進歩を遂げまして、その発電コストも著しく下がってまいりました。もうある地域によりましては、原子力発電は石油発電と十分対抗のできるような状況に相なったのでありますので、したがって、日本の発電の点からいいまして、エネルギーの供給になるべく安全な、安定した状態をもたらすためには、どうしても原子力発電を導入する必要がある、こういうふうに考えられるわけです。いまのところ、原子力発電で最も経済性のいい炉と申しましては軽水炉でございますので、その軽水炉で将来これからしばらくの間は、と申しますのは、われわれの考えております新型転換炉が開発されまして、コスト的に十分に対抗できるという状況になりますまでは、この軽水炉で原子力発電を進めていきたい、こういう考え方になっております。でありますから、言ってみますれば、日本のエネルギー政策の上から、この原子力発電を大いに活用しなければならない、こういう趣旨から、先ほどお述べになりましたような三千万ないし四千万キロワットの原子力発電を昭和六十年までには導入しよう、こういうふうな考え方でやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/23
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024・石野久男
○石野委員 大臣に私お尋ねしますが、総合エネルギー計画の中で、原子力発電にやはり負わなければ、重油、石油に非常にたよっておるだけでは危険だから、こういう趣旨が私わからないわけではございませんが、しかしこれは軽水炉で原子力発電をするということになれば自主開発を阻害しないかという懸念を私たちは持っておるわけでございます。この懸念がなくなれば、私はこういうことは聞かないのですよ。しかし、先ほど大臣が来るまでにもちょっと聞いておった、人員の問題だとか、その他やはり開発に必要な所要の要件というものは、導入炉をたくさん入れ過ぎてしまうとなかなかできにくいだろうという懸念を持っておりますので、私は、できる限りそういう懸念をなくさなければいけないと考えております。そこで、国の産業を育成するというたてまえから、通産大臣は、一方では生産を高め、一方では輸出入の関係でなるべく国際収支をよくしようというかまえをされるわけでございますが、エネルギーの総合計画の中で、外国の炉に依存してでも原子力発電をできるだけ出したらいいのだという、そういう考え方を大臣はお持ちなのでございますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/24
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025・菅野和太郎
○菅野国務大臣 原子力発電につきましては、外国の炉をそのまま持ってきてやるということよりも、やがては国産化と申しますか、あるいは新型なり、そういう新しい発電方法ができますれば、そういう方法でやっていきたいという考えでおるのでありまして、決して外国の炉をそのまま日本へ持ってきてやるという考え方で終始するわけではありません。できるだけ早く国産化したいという考えを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/25
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026・石野久男
○石野委員 先ほど有澤委員から、昭和六十年度に向かって原子力発電三千万ないし四千万キロワットの発電をするという事情の話がございましたが、私は水力と火力の発電——水力はやはり相当重要な拠点をみな開発しておることですから、非常に大きな開発の期待はできないと思いますけれども、火力発電について、もちろん石油が六〇%も輸入にたよっておるという状態でございますから、非常にむずかしいことではございます。ですけれども、やはりこの段階で、そういう火力発電、あるいは水力をまじえて、火力にはもちろんコストの関係や何かがあって、石炭を使うことは非常にむずかしいのかもしれませんけれども、石炭を使う専焼の火力発電もあるわけだし、しかも片方では、石炭の面では非常に行き詰まりが来ているというような事情もあったりする、産業政策上そういう諸般の事情を総合しまして、もっと火力に力点を置くというようなことでは、エネルギー政策の上でやはりまずい結果が出ると通産当局は思っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/26
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027・菅野和太郎
○菅野国務大臣 問題はやはり経済性という問題と思うのです。原子力発電のほうが石油よりも安くつくということであれば、これはおいおい原子力発電になっていくと思います。経済性ということ、それから、御承知のとおり、石油であれば海外からの輸入に仰いでおりますから、国際収支の観点からしてもできるだけ石油の輸入を少なくしたいという意味で、国際収支の観点と経済性の関係から、この原子力の発電という問題を考えていきたい、こう存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/27
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028・石野久男
○石野委員 国際収支と、それから経済性の問題ということになりますと、経済性の問題については、やはり原子力発電が導入炉でなく、国産のものになり、自主開発したことのほうがずっといいわけです。その自主開発を可能にするか可能にしないかという問題がいま実は問題になっているわけでございまして、その論議はいまのところは別な形でやりますけれども、私の感じでは、あまりたくさんの炉を導入し過ぎますと、研究体制、開発体制というようなものが脆弱になってしまって、予定どおりに研究が進まないという心配を持っているわけです。しかし政府当局はそういうことはないのだというふうにお考えになる、あるいはまた、通産省もそういう考え方をお持ちであるといえば、これは私は何をか言わんやですけれども、通産当局でも軽水炉をこれだけ導入して、六十年に三千万ないし四千万キロワットの発電をするというような状態にしておっても、わが国における新型転換炉または高速増殖炉の開発というものはスムーズにいくというお考えを通産大臣はお持ちでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/28
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029・菅野和太郎
○菅野国務大臣 問題はやはり日本の技術の開発いかんだと私は思うのであります。日本の技術さえ開発していけば、新型転換炉なりあるいは高速増殖炉が日本でもできるということになると思いますからして、要は技術の開発の伸び方いかんということに私はなるのじゃないかと思います。それで、そういう点においては、いまのところは、それだけの技術はありませんからして、したがって、現在アメリカの炉を輸入しなければならぬということになっておりますが、また今日、日本原子力発電会社もありますが、これも御承知のとおり経済性の低い炉でありますけれども、これは、一つはやはりそういう原子力発電についての技術家養成ということ、そういうような意義を持っておると私は思うのです。でありますからして、問題は今後この技術の開発をいかに進めるかということ、そこに重点を置かなければならぬ、そういう点において、政府としては今後原子力の発電について、その新型転換炉なりあるいは高速増殖炉の問題についても、そういうほうに開発のできるように政府が極力援助する、あるいはそれについて政府みずからが努力するという必要がある。それが先決問題ではないか、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/29
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030・石野久男
○石野委員 技術開発の問題については、やはり政府の政策の立て方によってずいぶん変わってくるだろうと思うのです。これは通産省が出したものじゃないのだけれども、科学技術庁の科学技術白書の中に、通産省の関係する技術輸出という問題が書かれておるわけです。この技術輸出というのは、あまりにたくさんの外国技術に依存しますと、研究活動というものが非常に弱くなって、自主開発能力が非常に弱まってしまうということが書かれておるわけです。特に、本来の意味で開発の源泉となるべき独創性ある研究が育ちにくい傾向をつくるおそれがあって、事実わが国における自主開発能力の不足は、技術貿易に端的に示されておって、わが国の技術輸出はいまだきわめて少ないこう、いうふうにいわれておる。これは結局、みな導入技術によっているからだということの裏を言っているわけです。通産行政の上からいって、こういうような体制は一日も早く改めなければならぬだろうと思います。そこで問題は、そういう技術開発の問題をここでは大臣に聞くのじゃないのですが、もう一度戻りますけれども、電力の開発にあたって、総合エネルギー計画の中で示されておる原子力発電というものについての通産当局の考え方は、炉の開発や何かもみな含めまして、先ほど有澤先生からお話があったような、そういう形でこの計画を進めていくのであって、この出されておるエネルギー計画は変更するとか、あるいは原子力発電をもう少し詰めていくというような考え方は全然お持ちではないわけですか。その点だけをちょっと聞いておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/30
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031・菅野和太郎
○菅野国務大臣 ただいまのところは、総合エネルギーの調査会の答申に従ってやっていきたいと考えておりますが、私個人から考えてみれば、私はこの原子力の問題をもう少し日本としては研究しなければならぬのではないか、したがって、原子力の動力炉の問題も、もう少しいままで以上に研究していく必要があるんじゃないか、こう私自身も考えておりますから、そういう点において、政府もできるだけそういう経費を多く今後計上する必要がございます。こう私自身は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/31
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032・石野久男
○石野委員 そういう意味は、結局あんまり導入炉にたよらないで、自主開発への積極的な政策を打ち出さなくちゃいけないというふうに私は受け取ります。それはまあそのとおりでございますが、問題は、発電をあまり導入炉だけによってしまうと、足をつつ込んだら抜こうとしても抜けなくなってしまうという危険性が出てきますから、こういう点ひとつ通産省のほうでもよくお考えになっていただきたいと思うのですよ。それさえなければけっこうなんだけれども、そういう点ではひとつ十二分に、自主開発の能力を失ってしまうことのないように、かりにそれがよくてもやはり経済性の側面からこれのほうがいいじゃないかというような意見が出てきたりすると、政策が吹っ飛んでしまうということがあってはなりませんから、そういう点を通産大臣としてはやはり真剣に考えてもらわなければいけないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/32
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033・菅野和太郎
○菅野国務大臣 お話のとおり、私もその問題については真剣に考えていきたい、こう存じております。
〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕
なお、しかし、日本は悲しいかな、戦後技術が劣っておったために、技術の導入ばかりやってきたのでありますが、しかし、その導入した技術をまたよくして、そして、かえって海外へ輸出をしておるものもあるのでありますから、したがって、この原子炉の問題も、導入ばかりしておったのではだめじゃないかというふうに、すぐには悲観する必要もないんじゃないか。むしろ当分は現在の原子炉を輸入して、そしてそれで発電をやるが、しかし日本人のことでありますから、また創意工夫をたくましゅうして、りっぱなものをつくっていくのではないか、こういうことを期待しておりますが、結局はやはり日本人の技術開発能力にかかわることだ、こう考えておりますので、そういう点においては、今度できます動力炉の事業団というものは、非常に意義のある計画だ、私はこう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/33
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034・石野久男
○石野委員 質問が中途になってしまいましたが、通産大臣にはまたあとで質問します。
局長にお尋ねしますけれども、先ほど十年間に人員の整備をするということについて大体ピーク時において千二百名、その二分の一か三分の一くらいを事業団が押えていればいいだろう、こういうお話でございました。こまかいこういう問題はともかくとしまして、私はこういう人を事業団に集めるような客観的な情勢があるかどうかという問題が一つあると思うのです。そこでこれは計画表がないままでいくら口で言っておっても、これは論議になりませんけれども、しかし人員の配置計画なり所要の人員を早急に出していただきたいと思うのです。事業団を推進するにあたって、炉の開発について新型転換炉については大体五年間にこれだけ必要、十年間にこれだけ必要、二十年にこれだけなんだということを出して、いただかなければ、ちょっと話が進まないと思うのです。これはぜひ資料として出していただきたいと思います。
それからまた前に戻りまして、これは有澤さんにお尋ねしますけれども、開発の計画を、二十年という期日を詰めるということは、もういろいろ検討の結果どうしてもだめなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/34
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035・有澤廣巳
○有澤説明員 どうしても二十年かけるという意味ではごうもありませんで、できるだけ短期間に早く実現したいと思っております。計画のほうも十五年ないし二十年、こういうふうになっておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/35
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036・石野久男
○石野委員 その計画を詰めていくためには、どういうことが必要なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/36
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037・有澤廣巳
○有澤説明員 これは計画を詰めると申しますか、動力炉、特に高速増殖炉におきましては、わが国において相当実験研究を積み重ねていかなければなりません。むろん海外との国際協力によりまして、できるだけデータその他のものを入手するようにはっとめますけれども、しかし何と申しましても、自主的研究開発をするということでありまので、わが国において実験を積み重ね、そして進んでいかなければならないと思うのです。ことに高速増殖炉におきましては、安全性の問題がかなり技術的な問題として重要でございますので、ただ何が何でもがむしゃらに走り、かけ出すというわけにはまいらないと思います。しかしそういう研究を積み重ねて、そしてできるだけすみやかに高速増殖炉の原型炉を建設する。原型炉ができますと、それの実用化、実証炉というものをつくることになりますから、そこへいきますと、もはや非常に容易になってくると思います。ですから、原型炉をつくるまでは、一方では慎重な進め方をしなければなりませんけれども、しかし慎重ばかりが能じゃない。むろんなるべく早く原型炉の建設を完了いたしたい、こういう所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/37
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038・石野久男
○石野委員 丹羽理事長さんは、先ほど、推進本部の会議を持たれて、とにかく高速増殖炉の開発のためというか、全体としての立場からの研究テーマはもうできる限りのものをそろえられた。問題は、そういうものに対して予算がつけば手をつけることができる状態にあるというようなお話でございました。それからまた、研究者の側面からしましても、完全とはいわなくとも、とにかくやれるだけの力を持っているのだというお話があったわけです。いま有澤委員からは、これは実験研究を積み重ねていくことによって、それを詰めることができる、増殖炉を早期に開発するという可能性が出てくるというようなことのお話でございました。長官、これはこういう事情のもとで、増殖炉をなるべく早くつくるようにしなければいかぬと思うのです。これをやろうとすれば、もう少し政府がそれを積極的にやるかまえをしなければいけないのだと思うのです。そうすると、資金の面、人の面、これが出てくると思うのです。だから、何も三千万キロワット、四千万キロワットの発電に私はこだわりません。それはそれでかまいません。やるならやってもかまいませんが、一方で増殖炉のできる時間を二年でも三年でも五年でも詰めていくという体制ができれば、導入炉の体制をすぐひっくり返して全部日本のものに置きかえるという、それだけの力ができればけっこうですが、ひっくり返してということばは間違いですが、問題は政府のそういう開発の体制ですね。これは資金的な裏づけとか、あるいはいろいろなそれを実行するための機構的な問題等があるのですが、長官はそういう短縮するということについて、どういうようなお考えをお持ちになられておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/38
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039・二階堂進
○二階堂国務大臣 これは大蔵大臣も見えたときにまた聞いていただきたいと思うのですが、国の政策として、いま石野さんがおっしゃったとおり、新型転換炉とかあるいは高速増殖炉という一つのターゲットに向かって開発を進めようというのは、これは国の一つの原子力に対する取り組み方の態度であります。したがって、こういう態度を政府が決定した以上、やはり二十年かかるものを十五年でなし遂げたい、こういうふうに努力することは私は当然だと思っておりますし、また、それがいろいろな面から考えて、国民の経済の発展向上に結びつくことだと思っております。したがって、そういう心組みでことしから第一歩を踏み出すわけですが、この新しい事業団をつくるに際しましても、もちろんそういう点について議論を繰り返し、また財政当局にもこの点について非常な問題を投げかけて議論をして、ようやくこういう事業団をつくってやれということで何がしかの予算がことしもついたわけでございます。今後もやはり、そういう姿勢で取り組む以上、もとより資金の面については万全を期していかなければなりませんし、また基礎的な研究、これも先ほど丹羽理事長から申されましたとおり、何十種類にもわたる専門的な科学的な研究開発を進めていかなければなりません。それに費用もかかる、また人の開発も私は同様だと思っておりますので、こういう人材養成の面についても、国がある程度の責任を持って、そうして官民一体、総力をあげて所期の目的を達成するような体制というものをつくっていかなければならぬと思っております。私は、この面から申しますと、政府の考え方がようやくいま申し上げたとおり方向をきめたわけでございますが、産業界におきましても、この取り組み方には非常に大きなバックを持っておると思っておりますので、こういう体制が、法律ができ責任体制ができますことによって、一そうそういう方向が促進されるのではないかと考えておりますが、何と申しましても、やはり政府の取り組み方の態度、それにいま申し上げたとおり財政的な裏づけをしていくという、こういう方向が何よりも大事であろうと私は思っておりますので、こういうことについて一そう努力を積み重ねてまいらなければならないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/39
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040・石野久男
○石野委員 高速増殖炉は、新型転換炉もそうですが、なるべく早く開発をするということは、お互いにみな意見は一致するのですよ。問題はそれをやるのに、いま政府は大蔵当局から財政支出を、二千億という金をいま一応予定はしておるわけですが、それの使い方についていろいろ問題はあるでありましょう。そういう金は出るのですが、いまのままでその金をずっと使って、二十年というのを十五年なり十七年なりに詰めていくということになりますと、少なくともやはり人事、技術者というものにすぐぶつかってくると私は思うのです。そういう意味で、私は先ほどから、人員計画というものがないと、これはちょっと信頼が置けないというふうに思いますと言っている。だから、これは人員計画というものをどうしても出してもらわなければならぬ。それを出してもらうと同時に、やはり人員計画についてのかまえ、政府がどういうふうに人員の確保ということをするのか、それをやはりはっきりしてもらわないといけない。そのとき、いまの発電計画、特に輸入炉によって原子力発電をやりますると、そこへはどうしても技術者を食ってしまうわけですからね。おそらく食うだろうと思うのですよ。それが人員配置の上で、技術者の配置の上で、そごを来たしはせぬかということを私は心配するのですけれども、この点はどうですか。局長、心配要らないのですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/40
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041・村田浩
○村田政府委員 先ほど申し上げましたように、動力関係に必要な科学技術者というものが十年後に約一万七千ないし一万九千と申しましたが、かりにこれを一万五千と踏みましても、ここで立てております動力炉開発計画自体に必要と考えられております科学技術者は、ピーク時において千二百数十名ということでございます。かりにこれを千五百名としますと、全体の中の約一割をこの動力炉開発計画に充てるということでありまして、その他の九割というものは、石野先生おっしゃいますように、原子力発電所の建設その他を含めまして行なわれる開発あるいは建設等に従事される、こういうことになるわけであります。したがいまして、この程度の、一割程度というものがはたして新型転換炉と高速増殖炉の開発プロジェクトにさけるかどうかという判断でございますが、この人材養成計画の推移にもよりましょうけれども、ただいま申し上げましたような数字からいたしますと、私どもは可能なことである、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/41
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042・石野久男
○石野委員 人員計画の面ではそれを達成することができるとこうおっしゃるわけですから、それは、もしそうであるならば、非常にけっこうなことなんです。だけれども、おそらく私はこれは非常にむずかしかろうと思います。その際、やはり人員のなには、いま局長の言うのは、大体二十年間の見通しの上でだいじょうぶだということの話ですからね。
〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕
だから、これを今度は十五年なら十五年というふうに詰めてくる場合には、技術者の養成は必ずしもそう簡単にはいかないだろうと思うのですよ。そういう問題も含めてでございますが、導入炉の発電というものが、やはりいま日本のエネルギーの確保の上ではそれだけ必要なんだけれども、導入炉というものは、実はいま原子炉を開発する上での実験炉的な要素を多分に持たすものなのでしょうか、どうなのか。たとえば、軽水炉を入れますね。この入れることは、高速増殖炉を開発していく上での技術者を育成するとか、あるいは新型転換炉のための人員をならすとかいう意味での必要性はございますか。それはもう全然ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/42
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043・山田太三郎
○山田説明員 日本で新型転換炉を取り上げる際に、どういう型のものを選ぼうかということを考えたわけですが、これは石野議員の御指摘のとおり、早くできなければいかぬ。それは将来非常によくなるかもしらぬけれども手がつかぬものではだめである。なお、もう一つ、日本に技術的基盤が若干なりとも存在しなければだめであるというような見地から、軽水炉の技術、特に沸騰水炉の技術は、ここに取り上げております新型転換炉の重水減速沸騰軽水炉と非常に似た技術でございます。したがって、軽水炉の技術は新型転換炉に非常に応用がきくわけでございまして、現在潜在人口で考えますと、新型転換炉関係については相当の人間があるということがいえると思いますし、まあその目的ではございませんが、軽水炉をやっていくことがこの新型転換炉の開発の上に役に立つということもいえると思います。
ただし、高速炉のほうについて申しますと、原子力発電所をつくると一般的な経験はふえますが、ナトリウムというものについては全然ございませんので、これは非常に努力をして、高速炉人口とわれわれ言っておりますが、その人口をふやす努力をしなければならないと思います。そのために、先ほど原研の丹羽理事長が申し上げましたとおり、世界各国の研究所と人員の交流をやっております。これは急速にこの人口をふやすということでございまして、先ほどのお話よりもっとたくさんのところに人を出す計画をしております。そういうようなことでございまして、軽水炉は新型転換炉のほうについては相当関係があるということは申し上げられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/43
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044・石野久男
○石野委員 軽水炉を入れるということは、新型転換炉をつくることついては非常に役に立つ。けれども、高速増殖炉の、特にナトリウムについての経験はそこから出てこないから、これはまた別なんだ。それはそうだと思います。そこで問題は、そうするとやはり発電の側でいうのは、これはもう完全に発電コストの問題で炉の導入が行なわれおるのであって、新型転換炉に役立つ炉の必要性というのは、別に四千万キロワットもしなくちゃならぬというわけではございませんですね。これはほんの二、三基あれば十分だと思います。ですから、やはり原子力発電というのは、六十年までは完全にこれは経済的な側面からだけだということははっきりします。そうでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/44
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045・山田太三郎
○山田説明員 もちろん経済的な面が非常に多いわけですが、もう一つ、有澤委員が指摘されましたように、エネルギーの安定性の問題も、これは油や何かと違いまして、備蓄その他が非常にきくという点からいいますと、経済性と安定性を兼ねるという意味が当然あると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/45
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046・石野久男
○石野委員 そうすると、安定性があるということは、結局濃縮ウランのいわゆる燃料確保についての安定性があるという意味なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/46
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047・山田太三郎
○山田説明員 濃縮ウランの安定性ということについては、これは海外依存でございますから、必ずしもそういう効果は十分期待できないために新型転換炉を開発しようとしておるわけでございますが、一たん入った燃料について見ますと、原子炉の中に一年ぐらい入っておるのでございますから、その間の補給その他は必要ない。あるいは多少補給をしようと思いましても、非常に小型な倉庫その他があれば石油なんかに比べてはるかに備蓄が容易であるという点がございます。しかし濃縮ウランの供給先はきまっておりますから、その意味の安定性は必ずしも完全ではございませんが、油よりも安定である。しかし、もっと安定にしるためには、新型転換炉によって自国内ででき上がるものですべて運転をしていこうというのが、新型転換炉の考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/47
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048・石野久男
○石野委員 そうすると、できる限り新型転換炉を持つことによって、濃縮ウランに依存することから脱皮しようという考え方は、やはり一貫してこの事業団を設定するにあたって持たれておる方針なんだ、こういうように理解できるわけですね。
そうすると、問題は、その新型転換炉の積極的な開発の問題になってくるわけですが、これはこの前の質問のときにもやはり保留されております。これは大蔵大臣の三年ごとのチェックというものが一つあるわけです。これはもうここで、大蔵大臣がいないのだからどうにもならぬ。委員長、これは大臣がいませんから、この新型転換炉の問題はあまり話できないのですよ。率直に言って、話してみてもぬかくぎみたいなものになりますから……。
そこで、問題は高速増殖炉のほうで、先ほど丹羽理事長さんからの話で、とにかくそれに手を触れるような炉が前にあってくれれば仕事は進むのだという話がございました。長官、これは外国へ行ってそういうものにばかり触れていないで、日本で早く触れさせるということのかまえですね、これをするような体制づくり、先ほどは大蔵省がそれをやってくれればというお話でございましたですね。財政的に支出がうまくいけばそれはできるだろうという話なんですが、これを早くやる考え方、そういうものをいまここではこの計画どおり二十年の中でずっと流していくということにしておるのか、それとも、もう少し詰めるために、せっかく原子力研究所のほうには技術者もおるし、そうして体制もそういうものをつくりさえすれば幾らでもやれるのだというかまえがあるというのだから、原子力委員会としてはそれをどういうように対処するお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/48
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049・有澤廣巳
○有澤説明員 高速増殖炉の開発を急いでやるというために、まっ先に高速増殖炉の実験炉をつくります。先ほど丹羽理事長さんが、この課題が三十もあるということを申しましたのは、実験炉の研究に関係してのお話だと私は考えております。ですから、実験炉をまずつくって、それが完成して、それの完成に基づいていろいろ実験炉で研究をして、その研究を土台にして高速増殖炉の原型炉をつくるというふうなやり方も考えられますけれども、それでは時間がだいぶかかる。したがって、われわれのほうでは、高速増殖炉の開発計画のタイムスケジュールといたしましては、まず実験炉をつくる。けれども、その建設と並行して、高速増殖炉の原型炉の建設といいますか、設計を始める。こういうふうな、つまりそこのところはちょっと並行して原型炉の設計を始める、そうして大体十年間ぐらいでいよいよ建設にかかる、こういう考え方になっております。ですから、まず実験炉の建設ということがまっ先に行なわれるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/49
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050・二階堂進
○二階堂国務大臣 さっき石野さんがおっしゃいましたが、こういう新しい法律を出して事業団をつくって、そうして開発に取り組むのだというこの姿勢は、これは政府全体の責任においてきめたことであります。したがって、この法律も政府全体の責任で御提案申し上げて、それについて御審議を願っておるわけです。先ほど石野さんのおことばの中に、大蔵大臣次第だ、こういうような御発言がございましたが、これはよけい金を出してもらうために、今後これは大蔵大臣にも、うんとがんばってもらいたいということを申し上げたのであって、大蔵大臣がノーと言えば、三年を過ぎればこれは消えてなくなるというふうに誤解をされると困りますから、これは政府の責任において方針がきまっておるわけですからして、大蔵大臣にもっと理解を願って、うんと金をつぎ込んでもらう、そして二十年を十八年なり十五年にするという方向でわれわれはひとつやっていきたい、こういうことを私は申し上げたのであります。また、大蔵大臣がこの前本会議で、チェックするのは二年か三年後ということばを使われましたが、あるいはまた、その模様を見て、場合によっては外国のものも取り入れなければならぬというようなことも発言されたことは速記録に載っておりますけれども、これは二年、三年してうまくいかなければ、外国のものをどんどん入れてしまったほうがいいのじゃないか、こういうふうにお答えになったのではない、この十ヵ年間に二千億の金が要る、この金をできるだけ効率的に、有効にこういう仕事に使わなければならぬ、こういうことで、金のことを非常に大事に思ってああいう発言をされたものであると私は理解しておりますし、また、政府としてもそういうふうに考えをいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/50
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051・丹羽周夫
○丹羽参考人 いま有澤委員とお打ち合わせしまして、ちょっと簡単に補足説明をさせていただきたいと思います。
昨日、動力炉開発推進本部におきましては、FBRの工程といいますか、タイムスケジュールを最終的に確認いたしました。先ほど来、開発の年限が十五年、二十年であるというお話が出ておりまするが、そのお話はたぶん実用に入る時期がそのころであろうという意味だと私は解釈いたします。なぜならば、まず原型炉のタイムスケジュールは、もはやわれわれはだいぶ前に一応見当をつけて定めておりまするし、この原子力局からお出しになりました原子力関係主要指標というものがございますが、それにも高速増殖炉等のタイムスケジュールの表が載っております。昨日も原型炉の工程に関しましては変更なしでいけるという認識をいたしましたが、それによりますと、まず設計完了が昭和四十七年の半ばごろであります。そして建設が昭和五十年の終わりになっております。したがって試運転開始は五十一年の初めから——こういうものは、原型炉といえども多分に実験炉的性格を持った点がございますので、諸外国の例を見ましても、たとえば、先ほどちょっと触れましたフランスのラプソディーでも、いまちょっとした故障が起こっております。したがいまして、これがすうっとうまくいくはずがありません。もしうまくいけば、もう五十四、五年ごろには何もかもできてしまうということになるのであります。ともかくも、試運転開始は、昭和五十一年初めということを一応のターゲットにしております。それからそれに必要だといわれまする実験炉のタイムスケジュールは、一年近く前に立てましたタイムスケジュールよりも、これは主として原研で大いに詳細に研究いたしましたが、約半年、設計なり建設なり試運転がおくれるであろう、そのおくれたことが原型炉に差しつかえないかという詳細な議論をいたしました。差しつかえなしという結果論を得ました。というのは、半年ばかり実験炉のほうはおくれますけれども、その試運転の最中にいろいろ得られまする経験なり実績なり、このうちで、いろいろな点がございまするが、特に燃料関係は実験炉の中に入れていろいろ試験をやったデータが、さっそく原型炉の建設とか製作とかいうものに反映できるという結論になりました。しかしながら、こういうふうに初めからきめてしまうと、たださえこういうものはおくれがちでありますので、もっと早める努力をしようじゃないか、これははなはだやまと魂的な話ですが、それじゃ私は引き受けた、私のハッパがはたしてきくかどうかわからぬけれども、ひとつ現場へ行って少しでもこのスケジュールが早まるように努力しよう、またその余地がなきにしもあらずというふうに私は思っております。したがいまして、もしこのタイムスケジュールが、これはおくれがちだといえばそれきりですけれども、ほんとうに原型炉をなぶり出すのが昭和五十一年の初めから、すなわち、いまから約九年後に原型炉はなぶり出されるということであります。それがもし幸いにしてうまく、いろいろな改造も必要になってきましょうけれども、いきますと、十五年くらいの間、あるいは二十年くらいの間には、少なくとも実用化ができはせぬか、こういうので、十五年、二十年というのは、実用に入る時期、開発時期じゃない——開発時期とも言えるかもしれませんが、そういう意味に私は解釈いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/51
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052・石野久男
○石野委員 まあ計画ですから、なるべく充実した資料で——あまり大太鼓をたたいたところでしかたがないのだから、着実にやらなければいかぬことはよくわかっておりますけれども、しかし増殖炉ができるまでの間、原子力の発電にあまり大きい期待をかけていきますと、せっかく開発してもそれの入る余地がなくなってしまうということも出てこないとも限りませんので、そういうようなことも考慮しつつ軽水炉の発電量というものの査定といいますか、計画的な線での政策面が出てこなければいけないだろう、こういうように思います。
いま丹羽理事長から、計画は大体スムーズにいくだろう、むしろ積極的にやるつもりだという話もあり、長官からも、財政的な措置などについていての政府の方針はもっと積極的なんだという意見もございましたが、それを裏づける大事な問題は、軽水炉の具体的な発電と関連しておりますから、人材養成の面で可能にするかどうかということを私は非常に危惧します。だから、この際は、原子力局長のほうでその人員計画を早急にひとつ出してもらいたい、これをお願いします。
そこで、問題は、そういう体制がかりにできました場合でも、一つの大きなプロジェクトと全精力を集中するということは容易なことじゃないと思うのです。有澤委員は、民間の積極的な協力を要請しているということを前の委員会でも言われたし、今度もまた、それをおっしゃっておられるのですが、民間の協力を得るということは、口では簡単に言えますけれども、非常にむずかしい。これは昔のような官僚統制ではなくて、やはりお互いに理解の上で行なわれる一つの一元化方式というものがなければならないし、ときには国が指導的な立場で積極的に民間の協力を強制的にでも要請しなかったら、おそらくこういう大きなプロジェクトを達成することはできないだろう、こういうように思います。そういうことについて、機構的にはいま事業団というものの運営にあたって事業団さえつくればいいんだというふうにお考えなのかどうか。私はこの前、やはりその上に原子力委員会のしっかりした力がなければいけないんじゃないかということを申し上げたのですが、こういう点についての所見をひとつ聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/52
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053・有澤廣巳
○有澤説明員 この事業団構想ができ上がりますまでには、この前もお話し申しましたように、約一年半ばかり各方面の責任者といいましょうか、原子力関係の責任者の方々としばしば会合、懇談会を持ちまして、そして、皆さんがこの事業団の構想で二つの動力炉を開発しよう。こういう話し合いに相なったわけでございます。むろんその場合にも、この動力炉を開発するのには民間の——民間ばかりじゃなく、原研や大学はむろんのことですけれども、民間の方々の協力もなければできないということを繰り返し申し上げまして、それを十分了承の上で、国が率先して事業団を設立して、RアンドDを進めていく、そうして二つの動力炉開発を推進するということであるならば、われわれも十分必要なものを供給いたします、こういう話になっているわけでございます。そういう話し合いの上でこの事業団構想というものが生まれてきているわけです。この点は先週もちょっと石野委員から御質問もありましたので、なお私は念のために、今度は民間の大きな会社の方々にお会いいたしまして、こういう問題があるのだがその点は確かか、だいじょうぶかと言ったら、われわれは自分たちがそういう形で推進をしようということを原子力委員会と話し合いをしてきめたのだから、必要なものは十分出します、人につきまして十分供給します、こういうお話でございます。その意味におきまして、私どもは長い期間そういう話し合いを積み重ねて、こういう構想ができ上がっておるわけでございますから、われわれが上からいきなりこういう事業団構想を打ち出したわけではなくて、事業団構想が生まれる過程の中に、民間の方々がわれわれの委員会に対する一つの大きな義務を負っていると私は考えております。また、われわれとしましても、それだからこそ何も権限がなくても十分人を出すように要請することもできると考えております。そういう形ででき上がっておるこの事業団構想でありますので、私は、原子力委員会といいましょうか、特に政府のほうがこのRアンドDについて、二つの動力炉の開発について、率先してこれを開発するのだというその政府の姿勢がまずなければならないと思います。これが実際行なわれますならば、民間の方々も十分これに積極的に参加していただけるし、またわれわれは参加を要請することができる、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/53
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054・石野久男
○石野委員 これをつくるまでの間の民間との話し合いは非常にスムーズにいっているし、民間はそれに義務を負っているのだからと言われるのだけれども、それが長い年月の間うまくいくかどうかということを心配するわけです。特に、こういう事業団の推進にあたって、当面している資本自由化の問題がございますが、資本自由化によって、各産業は疑心暗鬼の体制になっていると思うのです。そういう間に、はたして有澤先生がいまおっしゃられているような非常にぬくぬくとした気持ちで大勢がうまく進んでいくのかどうか。これは当面私は問題になると思いますが、資本自由化の問題がこの事業団にどのような影響を与えてくるだろうか。全然無関係に事業団が進んでいくでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/54
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055・有澤廣巳
○有澤説明員 資本自由化でいろいろ日本の産業界が動揺をしていることは私もよく知っておりますが、その動揺の中で一番大きな要因は、日本の企業が外国の大きな企業との間に持っておる技術的ギャップであろうと思います。これは何も日本の企業ばかりでなく、ヨーロッパの企業もアメリカの企業に対してこの技術的ギャップを非常に憂えている。また事実、技術的ギャップのためにヨーロッパの企業が乗っ取られていくというケースもあるわけであります。ですから、この技術的ギャップの問題につきましては、これはヨーロッパでもそうでありますが、特に日本におきましては、何と申しましても、政府が日本の技術水準を一段と高めるという姿勢をとらなければ、なかなか民間の力だけでは急速にこのギャップを埋めることはできなかろうと思います。ですから、先般の外資審議会の報告書の中におきましても、この技術的ギャップ、技術の立ちおくれという問題を政府が率先して埋めるように、立ちおくれを取り戻すようにという報告がなされておるわけでございます。この原子力技術におきましても、まさにそうなのでございまして、ヨーロッパの原子力企業におきましても、やはりアメリカの原子力技術に対する立ちおくれ、これを非常に心配しているわけでございます。フランスのように、特に大統領が格別の措置を講じているところもありますが、そうでない、自由化を済ましているような国におきましては、その問題が特に心配されております。ことに、アメリカの企業自身から申しまして、アメリカの技術が絶対有利な分野は原子力と宇宙開発、それから超音高速の航空機、この三つの面においては、アメリカの技術が支配的であるとさえ言っておるようであります。そういう状況にあるのでありますから、日本の企業、原子力関係の企業におきましても、技術導入はしておりますが、導入のままで済ましているということになれば、つまり自分たち自身が技術を持たないということになれば、あるいは自分たち自身が技術を開発しないということであれば、これはヨーロッパの企業が心配するような心配を当然せざるを得ないし、また、現にしているようであります。われわれがこの事業団を設立して二の動力炉、新型転換炉と高速増殖炉をみずから開発しようという決意をしましたのは、民間の企業におきましても、やはりこれに参加して自分の技術を開発する、推進する、こういう気持ちが非常に大きく働いておると私は思います。それだからこそ、われわれが懇談会で——これは決してスムーズな懇談会ではなくて、ずいぶん激論も戦わしてまいりました。しかし、その激論の中でだんだん形を整えてまいりましたのがこの事業団構想でございます。新型転換炉と高速増殖炉を自主的に開発しよう、そのための中核的な組織が要るのだ、しかし、その場合にはどうしても政府が——民間も、自分たちのできる協力はむろんするのだが、何と申しましても、RアンドDにばく大なお金もかかります。またRアンドDでございますから、それに伴うリスクもあります。しかも、その額がきわめて巨額である。そういう研究開発の投資を必要とするこの大事業に自分たちのなし得る協力、つまり人材の面とそれから建設費の一部、こういうものは協力をするにやぶさかでない。しかし政府自身が率先してこのRアンドDを進める、こういう意欲と申しますか態勢を打ち出してもらわなければ困るという話し合いにほぼなって、この事業団というものの構想が生まれてきたわけでございます。
ですから、長い間にはいろいろあろうかと思いますけれども、しかし私はその場合、特に民間の協力を引っぱっていくというのが、これは私は政府の態度、姿勢にかかわっているものだと考えます。政府の姿勢がぐらついておったならば、これはわれわれが要請をいたしましても、民間はしり込みをするということも起こり得るかと思います。
それで私は、資本自由化におきましても、政府が大型のプロジェクトについては率先してこの開発を進めなければいかぬ、こういうふうに考えますが、この動力炉の開発も、まさにこれは大型プロジェクトの中で最も重要なプロジェクトであろうと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/55
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056・石野久男
○石野委員 資本自由化が行なわれる場合でも、かりに日本の産業資本にいろいろ動揺があるとしても、政府の姿勢ががっちりしておればだいじょうぶだ、こういうお話ですが、私はそれは確かにそれなりに意義があると思いますし、またそうなければならぬと思いますが、ただ、政府の姿勢がということの意味は、結局財政投資を積極的にやって、そして大胆な計画を推進せよということだと思います。そうなれば、当然やはり先ほどからの話のように、大蔵当局の考え方も一つ出てくるし、金はたくさん出しますから、あなた方で自由にやってくださいというわけにもいかなくなるだろうと思います。したがって、やはり金は出す、だから民間も協力させるについての規律なり、一元的な成果をあげるような姿勢、そういう姿勢もまた必要なんじゃないかと思いますが、そういう点はあくまでも話し合いでやっていったらいいというふうに有澤先生は言われるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/56
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057・有澤廣巳
○有澤説明員 民間のほうの姿勢もむろんあると思いますが、それを何か規制をしてやるということは、かえって民間の協力の姿勢をくずすことになりはしないかということを憂えるわけです。せっかく民間もみずから進んでこの計画に参加しよう、こう自発的に乗り出しているのに、万一の場合には困るから、いまから何か歯どめをするとかあるいは規制を用意しておくというのでは、民間の善意といいましょうか、民間の自発心を疑ってかかるということは、この際いけないのではないか、こういうふうに考えておるわけです。ですから、要するに、私どもの考え方は、この大事業を遂行するのには、参加するものがみな自発的にこれに取り組まなければならない。つまり命令をされた部面の仕事しかしないというのではなく、むしろ自発的に創意を幾らでもどんどん出し合って、そしてこの仕事の完成をはかっていかなければならない、こういうふうな考え方を根本的に持っておりますので、いまのお尋ねのように、民間のほうの姿勢に対して何かの規制を考えるとかいうようなことは、この際は考えるのはよくないのじゃないか、私はこういうふうに思っておまりす。むろん、政府が積極的に推進しておるにかかわらず、民間の姿勢がくずれるようなことがありましたならば、また私どもは民間に積極的に要請を出すとか、あるいはもっと民間を説得するということもありますが、まだそれでも足りないときには、さらにまた次の段階を考えなければいかぬと思いますけれども、しかし、まっ先からそういう問題をあらかじめ考えて事を処していくということは、ちょっとこの場合不適当でないか、こういうふうに考えておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/57
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058・石野久男
○石野委員 事業団をつくるにあたって、民間が政府に積極的な協力を示す、その示す過程で、その善意と自発心が非常に貴重なんだから、それをこわさないようにせよという有澤先生の意図、これは大体わからないでもございませんが、しかし少なくともこのプロジェクトに対しては二千億という金を予定するわけです。こういうものに対して、もちろん全然無規律とは言いませんけれども、それが積極的な成果をあげるための指導なりあるいは体制固めというものをしなければなりません。事業団は、法案によりますと、きわめて少数人員で参謀本部的性格を持たしめようという意図によってつくられた、こういっておりますけれども、率直に言って、参謀本部という体制は事業団にはあまりないと私は思っております。むしろ事業団は、どちらかといえば実施部隊的な性格を持っているというふうに私は見ておるのですが、そうなってまいりますと、やはり大きな世帯をやりくりするにあたっての体制としては、必ずしも十分じゃないのだと私は思います。したがって、事業団を積極的に効果的な体制に固めていくためには政府の姿勢だ、こう言うけれども、結局政府の姿勢は、それでは金さえ出せばいいという姿勢なのかということになると、それではちょっと——民間産業の人たちはあまり規制を受けるのはいやでしょうけれども、その金を出す主人公である国民の側からすれば、二千億という金を出して、それに対してはっきりした規制もできないで、とにかく事業をやってあるところへいってぶつかったらやめだというようなことはおそらくなかろうと思いますが、そういうこともなきにしもあらずなんですよ。それは従来、たとえば増殖炉開発にあたっての原研なんかの研究テーマとして、半均質炉の研究テーマなんかもあったわけですね。これもくずれてしまいました。結局、それは経済性とかなんとかという意味もあったでしょうし、いろいろな意味もありましょうけれども、やはりいままで設定したいろいろなテーマというものが、次から次へ原研では、先ほどの委員会で丹羽理事長は、原研に一定の一貫した政策がなかったというような意味のことを言っておりましたが、そういうことの意味があるのだろうと思います。とにかく高速増殖炉についてのわれわれの期待は大きいけれども、しかし高速増殖炉も経済性の側面でやはりだめだということになれば、やまってしまうのですよ。とまってしまうのです。私は、この高速増殖炉に対して、いま有澤先生などがおっしゃっているように真剣に開発しようという人たちだけがあるのだとは思いません。中には、やはりもっと安いもので高速増殖炉の経済性のあるものができれば、それを導入してもいいんじゃないかというような考え方を持っている人もいると思うのですよ。たとえば原子力委員会の青木先生などは、これはもちろん開発のことも言っております。しかし、また側面においては、ウラン燃料の確保の観点からこういうことを言っておりますよ。このときまでに必要なウランの累積量は、高速増殖炉の導入が早ければ早いほどなくてよい、こう言っているのです。これは高速増殖炉を入れろということを言っているのですよ。導入が早ければ早いほど、開発と違うでしょう。——そういう意味で、違えばよろしいでございますが、そういうふうに読み取れるような、片方では開発の側面を非常に言っておりますけれども、また、こういうことを言っておりますと誤解を生みます。これはおそらく技術導入による開発という意味かもしれませんが、とにかくそういうふうに、これは私の読み方が間違っておれば別ですけれども、しかし経済人というのは、やはり自主開発ということを言っておりましても、あくまでも経済性ということが先行するわけです。自主開発によるところの将来の経済性よりも、今日の経済性を期待しておる。これはもう抜くべからざる経済人の生命なんですよ。そういうことになりますと、事業団というのは、多額の金を出しているけれども、大部分の運営は民間の方々にやってもらうのだという体制が出てくると思います。だから、そういうことでなくするためには、少なくとも政府がある時点でやはりがっちりと押えるという力がなければいけないだろう。そこまでもはずしてしまったのでは、とても私は計画の遂行はできないだろうと思うのです。だから、有澤先生が、せっかく民間の善意と自発心によってここまできたのに、ただ何か規制だとか統制だとかいうと、かっての官僚統制のようなことを思われるだろうし、ことに電力産業資本はかっての電発のようなことを考えておられるかもしれませんから、それがいやで、それでぱっと逃げてしまうのでは困る。だから、それはなるべく触れないでほしいと言う気持ちはわかりますけれども、そういう気持ちだけでは、やはりこういう一つの計画を先々、少なくとも二十年、二十五年の先まで見通した計画の樹立ということを、私たちは信念をもって論議することができなくなってしまうのですよ。だから、民間の方々は規制がいやなんでしょうけれども、しかし少なくとも国のプロジェクトとしてその効果を出すためには、ある程度国に協力しなければいけない。ただ民間の方々が規制をいやがるというゆえんのものは、結局民間企業はお互いに競争し合っていると思うのですよ。だから、抜けがけの功名をとられるということが一番いやなんですね。国の規制よりももっとそれのほうがいやなんだと私は思うのです。だから、こういう状態の中で開発されたものが、各企業間におけるところの競争力にへんぱなものが出てこないようにするというようなことをしていけば、同次元で、共同開発の次元が同じ形で共同利用ができるという形のものができていけば、私は民間の諸君はそこまでいやがることはなかろうと思うのです。だから、民間の協力というものについても、ただ民間の電力産業資本なりあるいは電機メーカーの諮意にまかせた形でこの運用をするということは、私は非常に危険がある、こういうように考えるわけなんです。有澤先生、そういうことはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/58
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059・有澤廣巳
○有澤説明員 先ほどの青木委員の高速増殖炉を導入するということばでございますが、これは海外から導入するという意味ではなくて、高速増殖炉の発電を発電体系の中に取り入れる、こういう意味の導入だと私は了解します。ですから、そうなればウランの所要量、需要量といいますか、そういうものはずっと減るのだ、こういうお考えでございます。これは私ももっともだというふうに思います。
それからいまの、長い間のことですから、民間というのは、何と申しましても経済性を第一に重んじているので、したがって、長い間には場合によってはこういう協力がいつの間にか不協力になるおそれもあるのではないか、こういうお話でございますが、しかしわれわれとしましては、この事業団で開発しました動力炉は、これは言ってみれば国民の金でつくった、開発した成果でございますから、これは日本の産業が十分平等に利用することができる、こういうたてまえのものだと思っております。ですから、これはいずれ特許の問題なんかも出てきましょうが、特許権につきましても、一定の特許料を払う者には、日本の人にはだれにも利用させるというふうな体制に当然ならざるを得ないと考えております。
それで、その事業団の運営、結局事業団は、先ほど来申し上げておりますように、民間ばかりじゃないですけれども、各方面の自発心と善意と協力、こういうものの総結集体でございますから、この結集体の事業団を運営する責任者、理事者というものは非常に大きな責任を持っておると思います。ですから、この事業団の理事者は、民間に対しましても、あるいは原研、各研究機関の協力する方々に対しましては、一方では協力のしやすいような配慮をしなければならぬとともに、場合によりましては、協力を要請するというような活動を、つまり運営をしていかなければならないだろうと考えております。その事業団の理事が十分うまく動けるように、われわれ委員会のほうはこれをバックアップする、また、政府におきましても、所要のお金をそれにつけてあげる、こういうふうなことでありますならば、私は、私の考えているような運営がわりあい力強くスムーズに、また活発に推進することができると思います。その点で何の心配もなく打ち込めるようなものとして、たとえばですよ、これは誤解を招くとたいへんまずいですが、たとえば第二原研というようなものも考える、つまり第二原研が自分で全部自分の手足を持って、そうして、言ってみれば、国の一つの機関、準国の機関というふうな、ちょうど原研みたいなものですが、そういう機関としてやるならば、これは民間がどうしようとも、どうあろうともどんどん開発をやれるということは一応言えますけれども、いまのような第二原研をつくるには人が十分でない、人が足りないということと、そして、おそらく民間の自発的な協力は得にくいということが言えると思います。民間ばかりじゃなく、大学のほうの先生方の協力も必ずしも得られるとは限りません。ですから、問題点は、各方面にある人材が、人材といっても必ずしも個人じゃないのですが、各方面にある人材がこのプロジェクトの遂行に自発的に協力をする、自発心をもってこれに参加する、この姿勢が肝要のものだと私は考えます。ですから、そういう形のものとして、われわれは事業団の構想を打ち出しておるわけでございます。その点で、なお不備な点もあろうかと思いますが、十分御審議をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/59
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060・石野久男
○石野委員 これだけ大きいプロジェクトを持って、長期にわたって、しかもいろいろな変動が目の前にある、こういう状態の中で、いま有澤先生がおっしゃられるように、善意に期待する、人々の自発的な協力に期待するというような姿勢でありますと、おそらくこの事業団の成果というものは非常に薄らいでくるだろう、とてもじゃないが、先生がおっしゃるように、そう簡単に成果を結集することはできないだろうと私は思うのです。率直に申しまして、人員計画の中で、どういう人員が出てくるか知りませんが、おそらくその相当な部門は、民間の協力を必要とするのだろうと思います。そういう民間の諸君が、何の規制もない中で、経済的な変動とかあるいは社内的な諸事情によって、やはり人員の供出はできないというような事情が出てきた場合、すぐその対策が必要になるわけだし、もしその人がたまたま重要なポストを持っていたりしました場合、これは研究がたちどころにとまってしまうだろう、こういうふうに私は思います。ですから、やはりそういうあらかじめ予想される悪条件に対して、それを防衛するという、そういう体制づくりというものは絶対に必要だろうと思うのですよ。有澤先生は、原子力の委員会がこの事業団の上部機構として、総理の直属でこれを管理監督することになるのですが、現在の原子力委員会の権限とか力、力量でそういう最悪の事態、いま私が申したような極端な事態が出た場合に処理する確信がありますか。その計画を遂行していく確信がおありでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/60
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061・有澤廣巳
○有澤説明員 いまのような、会社の都合であるA会社の都合で、そこから出ておる人をどうしても引き上げざるを得ないというような事態が起こらぬとは限らないと思います。しかしその人が絶対的であるかどうかということは別問題ですね。また、そういう場面におきましては、今度はB社ならB社から、それと同等の人に参加してもらうということも可能だと私は思うのです。ですからいまあげられた例は、まさにいろいろ、その場面その場面で、それを処理していかなければならぬ問題点だと思うのです。ですが、そうでなくて、石野委員の御質問の趣旨も私は非常によくわかります。長い間のことだから、いろんな変動、変化が起こるだろう、その変化に対応してやっていけないような場合が起こってきはしないかという御心配だと思います。どういう変化を予想するかにもよると思いますが、ただいま予想されたような変化だったなら、私はむろんやっていけると思います。しかし、民間からは何らかの事情で一斉に引き上げるというような事態が起こりましたならば、それは確かにこの計画の遂行に大きな支障を来たすということが起こり得ると思います。そうしますと、どうしてもこの計画の遂行がおくれるということに相なろうと思いますが、しかし、私は、そういうように民間の協力が一切得られなくなるというふうな事態は、よほど政府のほうがどうかするか、つまり政府のほうが非常に消極的になるとか、あるいは事業団の幹部、理事団の運営がきわめてまずいとか、そういうふうな事態で起こってくるとしか考え得られません。ですから、そのときには、そういう場面としてこれを処する道はあり得る、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/61
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062・石野久男
○石野委員 私は事業団の運営が——もちろんこれは運営の問題からくると思いますが、それ以上に世界的な経済情勢の変化だとか、あるいは海外資本と日本の資本との結合の状態が変わってくるとか、いろいろな経済的な事情があると思います。そういうことのために希望をつないでいくことができないことなどがあるために、ある一会社ではないのです。それはわかりやすく一つの会社を言っただけであって、私はそういうことを言っているのではない。全般的に見て、その事業に対して興味を失ったというような場合には、これは参加しなくなってしまうと思うのですよ。だから、こういう問題は、これはもう仮定のことでございますから、あまり論議はできませんが、しかし、ただ、計画を持ち、そして事業団を結成していくというときには、最悪の事態を予想しないで事業団などというものをつくるということは、これは全く子供のやることであって、少なくとも国会がそういうことをやるにあたって、一番警戒しなければならないことだと思います。国民の代表としてわれわれがものごとを判断するのに、悪い条件をなるべくよけていって、いい条件ばかりで法案をつくるなんということは許されることではございませんから、最悪の事態に対して対処する処置がなければ、もう法案なんてあってもなくても同じだと思うのです。率直に言って、そんな法案なんてつくる必要はない。やはりわれわれが予想する一つのアクシデントに対して、それをどういうふうに切り抜けていけるのかという方策を示してもらわないと、これについては私たちはあまり信念を持てないのです。論議していくという自信がなくなってしまう。だから、私は、民間の電力産業資本や電気機器メーカーがこの際積極的に協力しようという気持ちはよくわかるし、また、この人たちが協力することによって事業が開発されることを、いま有澤委員の言われるように期待したい。けれども、それは期待であって、事実は必ずしもそうはいかないのだということを、やはり知らなければいけないと思う。原子力委員十年の歩みの中で、少なくとも原研が十年間の歩みの中で、大きいにかかわらず小さいにかかわらず、設定された計画目標というものが、途中で挫折してしまったり何かしているゆえんのものは、みなそれぞれのそういう関係からきていると私は思っております、だから、やはりそういう悪い条件を予想してことさらに官僚統制をするとかなんとかでなくて、国がやはり一つの方向に向かってものごとをやろうとしておるときに、その国民経済の中にある民間産業が協力する体制というものは、もうおれは協力してやるのだから、よけいなことは言うなというような形では意味がないと私は思う。だから、これはある程度の、規制ということばがいやなのかどうか知りませんが、やはり一つの規律がなければいかぬし、指導精神がなければならないと思います。そういうものがなかったら成果があがるはずはないのですよ。有澤先生の言おうとしていることはよくわかります。もういやでいやでしかたがないことに触れてくれるな、こういうことだろうと思います。せっかくこうやって集まってきておるのに、それを散らさないようにしてくださいということだろうと思うが、やはりこれはそうじゃない。かりに長期ではありましても二千億という金を出すという決意をしておるのですからね。それはやはりもう少し何ですよ。電力資本の諸君に対しても、あるいは電気機器メーカーの人に対しても、淡々として受けてもらわなければいかぬですよ。同時に、有澤先生が所属しておる原子力委員会が、これに最大の責任を持っておるのですね。その責任を持っておる立場で計画を遂行し、完全にその到達目標にある時限のうちに、できれば一年でも二年でも早く入れようとするならば、もっともっと仕事のしやすいようなかまえをしていかなければならないだろうと思うのですよ。いま有澤先生の言っているような言い方でいきますれば、問題が出てきたときには事ごとに行き詰まりますよ。そんなことではいけないと思います。それは悪い意味の統制じゃなくて、目的達成のために必要な規律、そういう意味でもやはり力というものを原子力委員会が持ち、同時にまた、私はあえて弱体と言いますが、事業団というのはきわめて弱体です。そういう弱体なものを、言うなら、結局あちこちのを寄せ集めてコントロールするということなんでしょう。だけれども、ほんとうに企画を出していくだけじゃなくて、やはり企画しつつ自分がそれを配置していかなければならないという任務を持っているのですから、たいへんなことだと思うのです。一つの企業体の中で企画し、同時に、実施部隊をやるということは容易なことじゃないと思います。そういうことをこの事業団がやらなくちゃならないときに、ここにはそういう規制力はないのだ、指導的な一つのはっきりした体制というものを持っていないのだということになったら、とても私は事業団の趣旨、目的は達成できないと思います。有澤先生は原子力委員として、なるべくこれを固めるためにソフトにやっていきたい、こういうことなんでしょうけれども、これはそれだけではいかぬと思う。ある程度の原子力委員会の権限、それから事業団に対しての指導性、こういうものはやはりはっきりさすべきだと思いますが、それはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/62
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063・有澤廣巳
○有澤説明員 指導性とか規律、これは私もむろん必要なことだと思っております。ただ、その規律をどういう形で維持するか、正すか、あるいは指導性をどういう形で遂行するか、これを問題として私は申し上げておるわけでございます。ですから、かりにそれを権力的にやるということも一つの行き方でありましょう。また、話し合いでそれをやるということも一つの行き方でしょう。また、経済的といいましょうか、たとえば民間の場合でいえば研究をやってもらう。その研究にはなるほど利益はないけれども、全部の費用はこれをカバーする、そういうやり方、つまり民間のやる研究も、あなた方のほうにも少しプラスになるから金を少し自分で持ちなさいというような従来のやり方はとらないほうがいいんじゃないか、こういうことも考えます。そういうやり方はいろいろあろうと思います。そのようなやり方の中で、権力的に、何か法律的に規制をする、こういうことでは、せっかくの自発心を消してしまうんじゃないか、そういう心配を私はしているだけのことでございますので、やらぬのじゃない。規律も正す、規律も保持する、それもやります。また、一定の指導のもとに従わせるといいましょうか、指導に服して開発をやってもらうということもやるわけです。その点はやりますけれども、やり方につきましてはいろいろのやり方があるので、そのやり方を私は申し上げておるわけです。いよいよどうしても話し合いにも応じない、経済的な方法を講じても応じないというような場合になれば、これはもう最後の手段としてはそういう規制といいますか、権力的なことも出さなければならないと思いますが、しかしそれは私からいいますと、最も拙なるやり方であるから、それはもう最後の最後の手段として考えておるというだけのことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/63
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064・石野久男
○石野委員 私は、大きい仕事をするにあたってはこういうふうに思います。最初はゆるくやって、途中で事態によって強くぐんぐん押していくというやり方よりは、最初にきびしい規律を確立しておいて、その中で引き締めをして、短時間に積極的に効果を出させるというやり方をしなかったら、仕事というものはなかなか進まないだろうと思う。ことに炉の開発のごときものは、ただ研究さえしておればいいということじゃなくて、先ほどから何べんも言っているように、その経済性が時期的に発揮できなければいけないので、もう三年たてば経済性が出るのだといっても、三年前にある種の経済性のある同種のものが出てくれば、それに場をとられてしまう。だから、短時間に、一年でも二年でも詰める形で詰めていくというやり方をしなければいけないだろうと思う。こういう考え方は、われわれの立場よりも財界人のほうがもっときびしいと思うのです。その点は有澤先生がそういうようなことはちっとも心配されなくてもいいほど、彼ら自身、自分の企業を維持する上においてシビアーに考えてきていると私は思います。だから私は、こういう問題をやるときは、会社の幹部の方々が重役会を開いて、それぞれの部署の者を集めていろいろなデータを集める中で最も効率のいい、そうして最も優秀なものを最も短時日につくり上げようという努力をすると同じようなかまえをこの際しなければいけないだろうと思うのです。私はいま有澤先生の立っている位置というのは、率直に言えば、経営の立場で言えば、社長かまたは専務の役割りをしていると思うのです。そういう社長ないし専務の役割りをしている方がゆるふんでやっておったのではとてもとてもだめだ。これは引き締めていかなければいくまい、私はこう思う。その引き締めの中に参加できないような分子を最初から含めておいたら、途中でいよいよのときになったら引き締めるのだと言ったら、ますますこれはだめになってしまいますよ。私は、きびしい規律とか、非常にいやがっている官僚統制をどうこうせいということじゃないのですよ。開発研究をするために必要な体制固めのためにする規制というものはきびしく規定しておかなければいけないだろう、しかも、国民から二千億という金を出していくのですから、これはやはりゆるふんではいけないのだということを私は申し上げているので、ことさらに事業界に対して、いまここで私たちが社会主義の理論を持っているから、何でもかんでもそれに当てはめていこうというような意味で言っているのじゃないのですよ。私の言っている意味は、研究開発を効果的にするための規制というものはやはり必要なのじゃないか、その体制をつくらなければいけないのじゃないかということを言っているのです。いま有澤先生の言っている意味からすると、せっかくみなが協力してくれているのだから、みなの善意に期待しましょう、その自発心をそがないようにしましょうという意味でございましょう。それはよくわかりますが、われわれは国民の代表として二千億という金をつぎこんでいくのにそんなゆるやかなことじゃだめだ、これはなるべく短時日の間にいいものを安くつくることをしなければいけないのですから、それにはその役割りを原子力委員会が持ち、そうしてまた、事業団自身も、いまのままですればいわゆる寄せ木細工をするようなかまえでの調整役にしか過ぎないから、そうではなくて、もっとしっかりした指導性と、あるいは強制力と言ってはいけませんけれども、ああしてくれ、こうしてくれというような、そういう力量を持ったものにしていかなければいかぬ、私はそう思うのですよ。だから、そういうことをするためには、何よりもまず政府の姿勢と処置だと先ほどから言っております。政府の姿勢というのはどういうことかといえば、原子力委員会の態度なんですよ。だから、政府の姿勢即原子力委員会の姿勢であるとするならば、原子力委員会は民間産業資本の諸君の希望にこたえるために、あるときには財政的支出について強腰で取ってやることもしなくてはいけないでしょう。そういう姿勢をやはり要求するわけでしょう。そういうことについての原子力委員会の力がなければ、これはおそらく砂上楼閣の形になってしまう。私の言う意味は、ただ民間産業資本を規制しょうということだけを言うのじゃないのですよ。国に対してもこのプロジェクトのために必要ないわゆる発言を持てるようにしなければいけないだろう、こういうことを私は言うのです。そういう権限——国に対しても協力する、民間産業資本に対しても国民にこたえるような力量を持つ、そういう体制が必要なのじゃなかろうか。いまの原子力委員会ではそれができないと私は言うのです。そうじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/64
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065・有澤廣巳
○有澤説明員 確かにいまの原子力委員会は、形式的に言うと、一つの政府の諮問機関みたいなものでございます。いわゆる八条機関であります。ただ唯一の頼みは、原子力委員会の設置法の中で、原子力委員会の決定は総理大臣がこれを尊重しなければならない、こういう条文が入っているということであります。ですから、私どもの力というものはこの条文が唯一の力になっているわけでございます。そして政府に対しましては、総理大臣が委員会の決定を尊重しなければならないという条文を踏んまえて、政府に強く要望をするということでありますし、また、委員長は国務大臣でございますから、委員長が国務大臣の資格で、政府の中でわれわれ委員会の決定したことを実現するようにいろいろ御尽力くださる、そういう形になっておると思います。イギリスのAEAも予算の点がどの程度にどうなっているかということは私詳しくは存じませんが、日本の原子力委員会は、AEAみたいにはなっていない、こういうふうに思います。だから、その点が一つ。
それから、いまの指導の点につきましては、むろん、私どもは現在持っておる委員会の力をもってその指導に当たるつもりでおります。責任の点につきましても、その責任をもってこの事業団の活動を十分りっぱに遂行できるように尽力するつもりでございます。また、研究をなるべくすみやかに促進するような指導は、これは事業団の理事長がその職に当たると考えていいのではないかと思います。ですから、その理事長を私どもがお助けする、こういう形でこの事業団の仕事が推進されるように持っていくことになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/65
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066・石野久男
○石野委員 原子力委員会は政府に対して意見を具申して、それを政府は尊重するということだから、原子力委員会の仕事は一応できるんだ、こう言っておりますけれども、そういうかすかな期待を持っておるにもかかわらず、しかし実際には今度の法案を見ると、権限が実を言うとだんだんなくなってきていると私は思うのです。たとえば今度の法案は、これは燃料公社をなくして、そして今度は事業団にするわけなんですが、燃料公社のときのその理事長というのは、結局原子力委員会の意見を聞いてではなくて、その同意を得て任命しておったわけでしょう。ところが今度は、同じ格であるところの事業団の理事長は、これは「意見をきいて」ということになるわけでしょう。そうすると、原子力委員会の意見というのは、前は同意を得て任命しておったのです。ところが今度は、意見を聞いて処置するのですから、原子力委員会の政府に対する力量は全然弱まってしまっているんですよ。徐々にこういう形が出てきているのですからね。こういう状態では、とてもじゃないが、こういう大きなプロジェクトを遂行するための事業団に対して積極的な立場での仕事はできないだろう。ことに今度の法改正に伴ってこういう原子力委員会の権限が縮小されてきたというか、弱められたということは、前のときは、燃料公社というのは、率直に言えば、政府機関のようなものだったんですよ。だから、それはかりに原子力委員会の意見を聞いて任命しておっても、皆さんの力量は入っていったんですよ。ところが今度の事業団というのは、政府の関係の者もあるけれども、主として民間の人が多く入ってくる。その民間の人が入ってきているところに、そこの理事長というものに対する原子力委員会の権限というものは、その任命規定の中でもはっきり出ておるように、弱まってしまっている。自分の意見どおりに任命することはできなくなっている。そういうことでございますから、このプロジェクトを遂行するにあたっての原子力委員会の持っている力量というものは、そう高く評価できないと思うのです。それであるだけに、実は私はやはり先ほど来の心配をする。したがって、今度の事業団が一つの目的を達成するために、非常に膨大な予算をもって長期にわたって仕事をするにあたっては、一定の政府の姿勢というものが必要だ。この姿勢というのは、有澤さんの言った姿勢と私の言う姿勢とは内容が違うようです。有澤さんの言われるような姿勢というものを具体化するためには、私の言うような姿勢がまず原子力委員会になければ、有澤さんが期待するような姿勢は出てこない、こういうように私は思うのです。だから、この点はやはり仕事を一元的にやるというたてまえからだけでも必要なことでございますけれども、大きいプロジェクトであるだけに、そういうことについての原子力委員会の権限なり力量というものを高めるという裏づけがここになかったら、仕事の遂行はできないというふうに私は思います。この点、この私の意見は間違っていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/66
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067・有澤廣巳
○有澤説明員 その点は私も全く同感でございます。ただ、私が一つ心配しております点は、なるほど原子力委員会は、いま言ったような今度の事業団ができますと、その事業団に対しまして、非常に大きな責任がありますし、その責任と同じような力量といいますか、権限の強化ということが必要だということはむろん言えますが、他方におきましては、その権限の強化ということにおきまして私が一つ心配いたしますのは、原子力委員会はもう一つ、これは原子力委員会の設置法にもありますように、また基本法にもありますように、日本の原子力の平和利用、この確保という大きな任務を持っておるわけであります。ですから、この任務から申しますと、委員会といたしましては、政府の中に入った、つまり行政権とか行政力を持つということはまずいのじゃないかというふうに感ずるわけです。そこで、その要請といまの要請との間をどう調和するかということが、私の実は一等苦慮しているところなんでございます。その点ひとつ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/67
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068・石野久男
○石野委員 平和利用の問題があるだけに、私は、また他面においては原子力委員会が確固とした見地からそのことをやらなくてはいけないだろうと思うのです。たとえば原子力船におけるところの舶用炉の問題で、今度原子力船に据えつけようとする舶用炉が戦略用につながっているからだめだというような話がアメリカから出てきたりします。もしそういう形のものが出てきた場合に、民間産業だけで処理できるかというと、それはそうはいかぬのです。こういう問題になれば、やはり原子力委員会が平和利用の観点から、向こうからすでにそういうことを言ってきている場合には、なおさら原子力委員会は平和利用の立場で船舶用原子炉、そういうものに対する指示とかあるいは指導とかいうものをやらねばいけなくなってくると思うのですよ。だから平和利用という観点があればあるほど、原子力委員会は先ほどは行政的措置のほうに対して権限を持つことはよくないだろうということを言われました。私はむしろここでそんな行政的権限を云々するということではないのですよ。事業を遂行するにあたっての指導ですね。行政的措置はまたそれぞれの科学技術庁なら科学技術庁がやればいいんです。原子力委員会は何もそんなことにまで手を入れていく必要はないと思います。何もそんなことを危惧しなくても、立法上からいってもそういう規定は幾らでもできると思います。むしろ大事なことは計画を遂行するにあたって力量を結集するかなめがなければいけないということです。そのかなめは確かにその事業団にあるのです。しかし、事業団自身は御承知のような体制ですから、それ自体が民間産業資本をコントロールはできるかもしれないが、それを規律化することはできないだろうと私は思います。だから、そういうときに原子力委員会がそれに力を持たなければ、これはおそらく船は進んで行ったけれども、どうも気象通報がこうだからというのであっちに行こうと思ったら、いやこっちだということで船は方向転換さえもできないような状態になってくるのではなかろうか、私はそう思う。だから、原子力委員会は、こういう時点でもう少しこれに対する確固とした理念が確立され、指導性というものがなければいかぬと思うのですよ。有澤先生は、せっかく民間が協力してくれているのに、あまりそんなことは言わないでくれよ、こういうことなんだろうと思うのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/68
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069・有澤廣巳
○有澤説明員 いや、そういう意味じゃない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/69
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070・石野久男
○石野委員 そうでなかったら、有澤先生自身は、原子力委員会の委員長代行までやっておるわけですから、そうなれば責任を持たなければいかぬと思うのですよ。かりに二十年の間有澤先生が委員をやっておるとは思いませんけれども、しかし、いまここで出される方針に、代がわりをしたときに、いやもうちょっと力があればなあなんということになってしまっては困るのですよ。だから、原子力委員長の代行をする方が、だれがやっても、しまったということのないようにしておくことが、有澤先生のやっておくべき仕事だろうと私は思う。そういうことからするならば、これは原子力委員会がこの事業団に対する力量というものではっきりした関係づけ、見通しというものを持つことが大事だ。それは民間を規制せよということが本意じゃないのです。プロジェクトを遂行するための力量を結集するためにそれは絶対必要なんだという意味で私は申し上げているのですが、やはりだめですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/70
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071・有澤廣巳
○有澤説明員 その力量をつけなければならぬということは、私も全く同感です。その力量をどういうふうにつけるかということが問題点だと思います。ですから、私は、その力量は、いまの法律にある、総理大臣が尊重しなければならない、これは容易ならぬ一つの条文だと思っております。委員会がそれだけの決意をすればこの条文をもって十分な力量を発揮することができると実は考えられます。もしそれ以上に何かいい手だて、方法というものがあればひとつお教えを願いたい。私もその点は、全くそうありたいと思っておるのですが、何かいい方法があればお教えをいただきたい。
ただ、私が先ほど申しましたのは、原子力委員会が行政力を持てば力量がつくんじゃないかという説があるのです。そういうことを言われる方もあります。けれども、それについては、行政力というものを持つならば、これは政府の中にある一つの機関になる。政府の中にある機関が原子力平和利用の確保ということについて——これは判然としている。何も問題がないと思います。だれが見ても判然としている。こっちは軍事利用、こっちは平和利用ということになりますが、そうでない、ボーダーラインの決定が重要なんです。そのボーダーラインの決定のときに、原子力委員会はあくまでも政府とは離れた独立の機関である、このことが非常に重要だということを申し上げているわけです。ですから、そうだとするならば、行政力をそのまま持った委員会というものはどうも政府の中に入り込まざるを得ないんじゃないか。何か政府の中に入り込まない独立の機関で行政力を持ち得る道があるだろうか、こういうことを私は問題にしているわけです。そういう道がどうもわが国においては考えられない。そうだとするならば、いまのような形の委員会でやって、その委員会は、あの総理大臣が尊重しなければならないという条項を十分踏んまえて決定をするならば、相当の力量を発揮することができる、こういうふうに申し上げておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/71
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072・石野久男
○石野委員 きわめて重要だと私は思うのですが、原子力委員会の意見を尊重しなければならないということがあるんだからと、こう有澤先生はおっしゃる。もろちん原子力委員ですから、自分の出した意見は尊重してもらうということを信念として委員になっておられると思います。しかし現在、政府は、少なくとも意見を尊重しなければならないという法規定がありましても、率直にいいまして、なかなかそう尊重していないのです。特に現実的な問題で、現に多数の労働者諸君の賃金の問題を一つとりましても、人事院勧告は毎年尊重されないのですよ。そういう状態がございますから——人事院勧告と原子力委員会とは違うというならば、そういう意見はちょっと聞けませんが、原子力委員会が力を持つということは、何も行政機関にならなくてはならないということじゃないのですよ。原子力委員会が独自に判断をし、そして意見具申をするようなもっと確固としたスタッフを設ける、いまよりももっと大きなスタッフを持って、そうして、あっちやこっちの意見に迷わされないでやれるような体制をつくるということも権限なんですよ。その意見というものは、たとえばある場合には学者からの意見もありましょうし、財界からの意見もありましょうし、いろいろあるけれども、原子力委員会が出した意見というものは、財界が何と言おうと、学界が何と言おうと、総じて多くの人々の意見をまとめたものとして、信頼性があり、政府がそれにたよれるような意見を出せるような、そういう力量を持つということ、あるいはまた、原子力委員会がその自前のたてまえにおいて、予算要求についても、政府機関ではないけれども、政府に対して一つの要求を持つということもできると思います、それは法律の規定のしかたなんですから。私は、何も原子力委員会が一行政機関になってしまえなんということを言っておるのじゃないのです。そんなことをいうなら総理府の中に入ってしまえばいい。そうじゃない。やはりこれは有澤先生が言うように、平和利用に関して自主的な立場で、この国の平和利用の原子力政策を守り抜く、こういう形で原子力委員会ができておるのだから、そういう立場でできておる委員会の権限というものをもっと強くせいということの意味は、スタッフをもう少し多くしなさい、そうして自前でものごとの判断ができるようにして、あれやこれやの意見を聞かなくてもやれるようにしなさい。もう少し予算についても、大蔵大臣が何と言おうとも、自分たちの言ったことは、総理直属なんだから、話し合いができなければそれは応じませんよ、一たん話し合いができれば、厳然として予算の要求というものができるという、言うならば閣僚と同格くらいの力を持ってやっていけるぐらいの権限があってしかるべきだ、こういうことなんです。だから、いま有澤先生は財界の諸君の受け取り方がどうあるかというようなことだけ御心配なさって論議なさっておるようですけれども、そうじゃなくて、原子力政策を行なっていく上で、平和利用を確立する上において原子力委員会がいまやらなければならぬという立場から持たなければならない権限、そういう力量、これを私は言うのですよ。そういう意味でも原子力委員会の力づけというものがいま必要なんじゃないか、こう言っておるのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/72
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073・有澤廣巳
○有澤説明員 いまわれわれのほうはスタッフが十分でないということは、全く御指摘のとおりだと思います。しかし、これにつきましては、なお十分検討いたしたいと思います。
それから私が何か財界のごきげんをうかがっておるようなことを言われるのは、まことに私としても心外にたえないのです。そうじゃなくて、この懇談会の議事録をごらんくださればわかりますように、私はどれだけ財界と戦ったか、財界の考え方が間違っておるのだということを是正してきたわけです。そうして今日では、私どもと一緒にやりましょうというところまできておるわけなんです。だから、その総意をやはり私としては尊重したい、こういうことなんで、何も、変なことを言うと財界がそっぽを向くのを心配してまるくおさめるために事柄をそういうふうにやっていこうというつもりではないのです。この懇談会の一年半にわたる間の議論というものは、われわれ委員会が考えておるような議論に皆さんを結集させるその努力の過程だったのです。私は、そこでは、私自身が申し上げるとたいへんおかしなことになりますけれども、一つの統一的な意見をそこにつくり出すような指導を発揮したと実は思っておるわけです。ですから、その上に立った、いまの事業団ですから、私どもとしては民間の創意、自発心というものはこの際尊重すべきではないかという気持ちにどうしてもならざるを得ない。また、なるのが自然だと考えております。どうかこの点御了承願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/73
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074・石野久男
○石野委員 民間の善意や自発心というものはこれを尊重しなければならないし、それを何も踏みにじれということを私は言っているわけではない。そういう意味ではなくて、ただ長期にわたる計画の中で民間の協力を求めるということになりますと、財界におきましても、いまのトップレベルの方々は五年、十年の後にはみな代がわりしたり、いろいろなことになってくるのです。考え方も、場合によれば、前の社長さんとあとから来た社長さんとではがらっと変わってしまうようなことも出てきます。それが一人くらいならいいけれども、そのときの経済的な諸情勢によっておしなべてそういうふうになってしまう場合もあり得るのです。だから、そういうことがあるから私は申し上げておるわけです。これは別に有澤さんの言っていることに納得しておるわけでも何でもございませんが、しかし、いずれにしましても、一元化される中でこの仕事をやらないというと、仕事はできないだろうと思うのです。そういう体制づくりができなければいけないだろうと思います。そういう意味で、私は、原子力委員会の力量というものを、事業団との関係の中でも、どうしてももう一度検討を加えなければいくまい、こういうふうに思っております。このことについてはまたあとで論議しますけれども、ちょうど丹羽理事長は原研の理事長でもありますけれども、財界のやはり経験者でもある位置におる人ですから、これは財界人としての丹羽先生にお聞きしますが、ただいま申し上げたように、私は、いまの時点で財界の方々が積極的に協力しようとしている気持ちはよくわかるのです。だけれども、事情が急変するとか何かそういうことがないとは言えませんから、そういう事態になったときに、いまの協力体制というものは、ある長期の、二十年計画の中でいつもやはり事情変化のないような形で予定していけるものだろうかどうだろうかということを、原研の理事長でなくてよろしゅうございます。財界の経験者として、そういう場合でも財界はちゃんとやっていけるのだというようなあかしが立てられるものだろうかどうだろうか、これはざっくばらんにお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/74
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075・丹羽周夫
○丹羽参考人 先ほど来の御議論を拝聴しておりまして、私は実は質疑応答の形で会議が進められるということでありますので、発言したくても発言を押えておりました。幸いに御指名いただきましたので、しかも委員長はざっくばらんにものを言えとおっしゃいましたので、私はこれから簡単に申し上げますが、ことばが足らない話でありましょうから、これは原子力委員会にも若干差しつかえがあるかもしれませんし、その他いろいろな方に、きょう御列席の方々にも若干差しつかえがあるかもしれません。と同時に、いま石野議員が最後に私に質問ということでお尋ねになりましたことよりも、初めはちょっとそれますが、私、かつて岡さんが科技特の委員長であられたときにも、率直に原子力委員会の現状等々について意見を述べろ、こう言われたことがございます。そのときに申し上げたことをもう一ぺんここで繰り返さしていただきます。
いま石野さんがるる原子力委員会のオーソリティーに関していろいろなことをおっしゃいました。私、その点に関する限り一〇〇%同感であります。というのは原子力委員会の現状について率直に意見を述べろとおっしゃいましたけれども、こういう席でまさか人物月旦をするわけにはいかない。したがって、私は原則論だけを申し上げます、こう言って申し上げたことがあるのですが、たとえばイギリスのUKAEAあるいはフランスのCEA、イタリアのそれ、ドイツはブンデスミニステリウムなど、アメリカのAECはなおさらのこと、原子力政策を政府の一機関としてやっておりますが、そうでないのは日本だけだと思います。こんなことでこの大事な原子力政策というものができるであろうか、こういうふうに思います。原子力委員会のお仕事は、単に動力炉開発ばかりではなくて、動力炉開発は非常に大きな問題ではございましょうけれども、その他いろいろなことをやっておいでになることは御承知のとおりであります。したがって、私がそのときに岡さんに申し上げましたことは、私自身数年前原子力研究所理事長を拝命しまして、原子力委員会が行政委員会でない、あるいは政策委員会でないために、いろいろヒッチを体験しております。もし原子力委員会が政策委員会なりあるいは行政委員会であったならば、何を苦しんでこんな産みの悩みを悩みつつ新法人というものをつくる必要があるか。原子力委員会がもしUKAEA的存在であったならば、何も好んで新法人をつくる必要はない。原子力委員会が行政委員会に改められるのだという一行の法律改正をなすったならば、それでほとんど全部のヒッチが解決すると私は思います。その詳細は述べることを遠慮いたします。そうでないことにおいて私は非常に残念に思います。しかし、いまさらこれはぐちであろうと思います。かつて原子力委員会を立法された当時の方々二、三にも二、三年前に御意見を聞いたことがあります。いや、実はそういう事情もあったのだ、ところが一、二の方面の反対もあって、とうとういまのようなものになってしまったんだ、これは遺憾に思うという御意見を聞かしていただいたお方もあります。それで私思うのに、何か知らぬが、これも何か妙なことだと思いますが、行政委員会だとか政策委員会をふやすことはタブーであるというふうにも伺っておりますが、必要なものなら幾らつくったってかまわないのではないかと私は思います。私が今度の法律案の中でやれやれと思った点がたった一つあるのは、あの法律案どおりおきめになるかどうか知りませんが、新法人が業務を行なうについては、基本方針、基本計画を原子力委員会が議決して、それを総理が定められて、その方針に従って新法人は業務を行なわなければならない、こうなっております。これはやはり原子力委員会というもののオーソリティーが相当あるというふうに私は思います。が、やはり原子力委員会は——これもまた余談になって恐縮でありますが、長らく科学技術会議議員を私はいたしておりまして、その議員の中でいろいろ科学技術会議というものの性格論を戦わせました。なお佐藤喜一郎氏のやっておられた臨時行政調査会における科学技術行政改革の班に属していろいろ議論をいたしました。そのときに私及び私のみならずでありますが、原子力委員会というものは、あれは行政委員会だ、あるいは政策委員会であるぞというふうにまで考えておったときがあるのですが、原子力研究所の理事長を拝命しましてからしばらくたって、原子力委員会というものは単なる——単なるというと、はなはだ語弊がありますが、行政諮問機関だそうであります。その理由は、おそらくあの原子力委員会の規則の一番しまいのほうに、内閣でしたか総理だったか知らぬが、この答申を尊重しなければならぬということがありますが、石野さんの御説のとおり、私はほかのいろいろな審議会にも列席したことがありますが、尊重しなければならぬと書いてありますが、あまり十分に尊重された記憶は私はないのであります。現に今度の予算についても、あるいは方針につきましても、あまりに原子力委員会の御答申といいますか、それが尊重されておりません。したがいまして、私は、もしできれば原子力委員会はほんとうに政策委員会、行政委員会に改められたならば、ほとんど全部のことが解決する。すなわちUKAEA的になられたならば、どんなにしあわせであろうかというふうに私は思うのであります。私どもがきめた新しい案における科学技術会議というものは、完全なる行政委員会的性格を持つべしという結論になっておりますが、これも答申されたままで、そのままに放置されてあります。これはだいぶ余談になりましたが、私はそういうふうに思います。したがって、もしそれがそうなれば、そして十分なる予算がついたとなりますと、まあ人手の関係で、とてもせわしくて、協力したいけれども協力が十分にはできないという場合もございましょうけれども、産業界の協力なんというようなことは問題にならないとすら私は言いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/75
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076・石野久男
○石野委員 原子力委員会が力を持って——力というのは、いうところの悪い意味の力じゃございませんよ。仕事をする上でのそういう力量を持って、しかも予算がついてくれば、民間の産業界のことはそう心配しなくてもいいのじゃないか、これは私もそのとおりだと思うのです。だから問題は、そういうことが前提で民間の協力の期待は可能なんであって、もしそうでなくて、原子力委員会は力もない。それからもちろん財政的措置について国はある程度の金は出すけれども、しかしその金が、同じ金を出しても四方に散らばってしまえば意味がない。一つに固まってくれば値打ちが出てくるけれども、ばらばらになってくれば案外何年たっても効果が出てこないということもありますから、そのかなめになるのが原子力委員会だと思います。だから私は、いま丹羽理事長からお話のあった、原子力委員会、もう少ししっかりしろよということの意味は、やはり当面その席におられる有澤先生自身が痛感していることだろうと思う。実をいうと、痛感しているけれども、よう言えないんだというところに問題があると思う。だから私は、これはやはり有澤先生、あまりあちらこちらに気がねをしなくてもいいですから、国の政策をすっとやる意味で、原子力委員会がいまあらねばならないという立場ははっきりすべきだと思います。そして、そういう立場で私たちは国の基本法に示しておる平和利用に即して原子力の開発をしていかなければいかぬ。だから、平和利用に即して原子力の開発ということになりますと、政府の政策、特に総理大臣の考え方は——いま原子力開発というのは主として兵器産業とうらはらの形で進んでいっております。防衛産業とくっついた形で進んでおる。しかし日本には、防衛産業は具体的にはあっても実質はないことになっておるのだから、やはり予算措置については、軍隊につぎ込んだくらいの気持ちになって原子力に予算を預けてくれればいいのですよ。そうすれば、何も軍隊を持たなかったからうちの技術は発展しませんなんということは絶対にないと思う。やはりものは考え方にあると思う。そういう考え方をだれが出すのだということになれば、原子力の平和利用を軸にしているところの原子力委員会が出すべきだと思うのです。そういうものがなくて、ただ国家財政の中で、予算編成の上で発言権も何も持っていないから、平和利用をしなくてはならないところの原子力の開発というものは、やはり諸外国におけるところの兵器産業にしっぽを振ってついていっている、そのまたあとを追っかけているという形です。こういう形でどうして平和利用に即した原子力産業の確立とか開発ができるでしょうか、私はできないと思うのです。有澤先生が言われたように、原子力平和利用の線に沿ってほんとうに原子力委員会が任務を果たそうとするならば、それだけの力を持ってくれなければいけないのじゃなかろうかと私は思う。これは有澤先生一人の意見でもいかないと思うのです。特にこれは総理大臣の考え方にもあろうと思います。科学技術庁長官、この際ひとつ政府の立場で、どうですか、原子力委員会はこのままでいいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/76
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077・二階堂進
○二階堂国務大臣 先ほどから私もいろいろ石野先生の御高説、御議論を拝聴いたしておりまして、十分頭に入りましたから、参考にいたしたいと思いますが、私も原子力委員長でありまして、委員会の有力なメンバーの一人でもありますし、また同時に、閣僚の一人、政府の一員でもございます。この原子力委員会は、いろいろ御議論を承りましたが、ほかの委員会とは多少違った点があると私は思っております。普通の審議会のように、それが一諮問機関に終わって、答申をすればいいというものでもないし、審議をして決定するという条項も入っております。その決定を総理大臣が尊重しなければならない。それと同時に、委員会の委員長は私であるし、また政府の一員でもある。そしてまた、そのほかにいろいろ具体的な問題を検討して、たとえば安全審査の問題とか、法規に従ってそういう厳重な規制等もやる、こういうような、ほかの委員会、審議会と違った性格を持っておるというふうにも私は考えるのであります。ただ、先ほどの御議論を聞いておりまして、原子力委員会がいまのままでいいかどうか、あるいはもっと力を持てとおっしゃる。この力というものは、私は悪い意味の力じゃないと思っております。そういう議論も私もわからぬでもありませんが、現在の委員会にそれじゃ力がないかというと、十分いろいろな問題について、平和利用の原則にのっとって原子力のもろもろの計画というものを立てられて、そしてまた、安全審査の問題等についても慎重に検討されて、その意見どおりに政府はいろいろなことを措置をしてまいっております。こういう違った今日までの働きもありますし、また性格もございますので、ただいまある人数をさらに三十名にした、五十名にしたからといって、それが力になるものでもないと思っております。ほかのいろいろな委員会等のこともありますが、十分ひとついま承りましたことなどを参考にいたして勉強いたしてみたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/77
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078・石野久男
○石野委員 二階堂長官は政府の立場だから、現状をあまり否定しないような立場を主張されるのも無理はないと思います。しかし最後の、人員をふやしたから必ずしも力が強まるとかなんとかいうことじゃないという意味は、非常に重要なんですよ。私は、原子力委員会に結集される人というのは、少なくとも日本では、やはりその面でのエキスパートだといわれる人を集めると思います。だから、三人よりも四人おるほうが力が出てくるし、仕事の質もよくなると思います。また、そうしなければいけないだろうと思います。現在の原子力委員会がやらなければならぬ仕事はたくさんあるけれども、実際には人が少なくてなかなかやれない。有澤先生が器用にあちらこちらといろいろ渡りをつけてやってくださっているから、うまくいっているようなものだけれども、なかなかこれは容易なことじゃなかろうと私は思います。だから、長官が、原子力委員会の人員をふやしたからといって急に原子力委員会の行動が活発になるとか、あるいは力量が高まるとかいうこともなかろうと言う意味は、私は認識が違っているように思う。これはやはりもう少し考えていただきたいと私は思います。いずれにしましても、政府としては、原子力委員会はこれでいいと思っておりましても、外から見ている目では、ちょっとやはり原子力委員会の力量は足りないというのは、これはだれも言っていることなんだし、現にいま丹羽先生からもそういう話があった。しかもまた、原子力委員会が具申した意見は、必ずしもすべてがすべて通っているわけでもありません。それはやはり原子力委員会の政府に対する力の関係もあるわけですよ。ことに今度の法案なんか見ますと、事は簡単なようでございますけれども、たとえば事業団の理事長を選ぶにあたって、原子力委員会の意見を聞いてということと同意を得てやるというのとは違うのですよ。だから、こういうわずかなことでありますけれども、原子力委員会の持っている一つの力というか、権限といいますか、そういうものが対政府関係においても弱まってきているということは、ましてや一般のなにに対する力量も弱まってしまうのだから、これはもう少し考えてもらわなければならぬとぼくは思います。原子力委員会については、有澤先生がどういうふうにおっしゃられても、私たちはやはりいまのままでよくないと思うのす。もう少しこれは考えなければいかぬ。これはあとでまた私ども与党の皆さんと相談したり何かして、もう少しこれは考えてみないというと、もしこの法案がこのような形で成立するといたしましたとしても、問題を残すだろう、こう思いますから、これはあとでまた論議させてもらいたいと思います。
もう非常に時間も長くなってきてしまったので、私は最後に一つだけその後の事情をお聞きしておきたいと思います。エンリコ・フェルミ炉の問題でございますが、これは日本の委員会ができて、いろいろな計画に参画しているわけですが、あそこで昨年の十月に事故がございましたが、その後の状態はどういうふうになっているのでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/78
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079・村田浩
○村田政府委員 昨年の十月にお話しのとおりエンリコ・フェルミ発電所、これを運営しているAPDA、アプダというところでございますが、ここからの報告によりますと、原子炉室にいわゆるフィッションプロダクトが出てまいりましたので、それで内部に何らかの故障があるということで炉をとめて調査いたしましたところ、燃料の一部が溶けたらしい。そういうことで燃料を取り出して調べる必要がある。その後燃料を順次取り出しました結果、最終的に数本の燃料がなかなか取り出せない。取り出せないといいますのは、炉の構造もありまして、非常に大きな力をかけられないといいますか何といいますか、機械も十分使えないということもありますけれども、やはり内部で燃料の棒が曲がっておるとか、あるいは溶けて癒着してしまっておるとか、こういうことであろうと想像されるわけでありますが、これはこわしてしまうわけにいきませんので、非常に慎重にこれを取り扱って、とにかく最終的に燃料を抜きまして、そして抜きました燃料はある程度燃えておりますから放射能がございますので、これを鉛の箱に入れて、別の研究所に送りまして、いわゆるホットラボというところに入れて、どういうような原因でこの燃料がそういう癒着というような故障を起こしたのかということを検討しているわけでございますが、ごく最近の情報は私もまだ確かめておりませんが、まだ最終的な調査の結果というのは出ておらないようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/79
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080・石野久男
○石野委員 したがって、運転再開というのは、どういうふうになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/80
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081・村田浩
○村田政府委員 ただいま現在までまだ運転しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/81
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082・石野久男
○石野委員 事故の原因等については、あれこれここで論議する問題ではございませんが、このエンリコ・フェルミ炉の共同開発といいますか、共同研究に日本から二十名くらいの方が行っているわけですね。炉の開発ということに関連して、このフェルミ炉の共同研究のために行っておられる方々、これは五年間ということになっていますね。この方々が帰ってくると各社みんな、原子力研究所も三人ほど行っているわけですね。それから東芝さんとか日立さんとか全部行っておりますが、こういう方々はみんな会社がそれぞれ出しているわけですから、帰ってきた後に、この高速増殖炉あるいは新型転換炉というような、こういう開発への協力、事業団に対する協力、これはどういうふうに予定しているのですか、それともみなばらばらで各社散らしてしまうのですか、どういうような考え方でおりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/82
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083・村田浩
○村田政府委員 このエンリコ・フェルミ計画は、アプダの長をやっておりますシスラーさんからの話で協力関係ができたわけですが、その際に、国内の各方面から人を送りまして勉強してもらうということになりましたのは、やはりそこで国内では現在得がたい種々の技術的経験を得まして、数年の後に帰ってきました際には、日本の高速増殖炉の原型炉の計画が、先ほどお示ししましたようなプログラムでちょうど入っているわけでございます。その計画に直接ひとつ中枢の人になって働いていただきたい、こういう趣旨があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/83
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084・石野久男
○石野委員 重ねて承りますが、これは各社、相当の多くの社が入っておるわけですね。だから、そういう方々を全部、これは電力会社とメーカーがおるわけですから、事業団に集めて開発に努力させるように各社ともみんな了解がついておるということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/84
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085・村田浩
○村田政府委員 個人個人のいろいろな事情はまた別といたしまして、一般論としてはそのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/85
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086・石野久男
○石野委員 私は、このフェルミ炉というものについては、高速増殖炉として世界でも一番大きい発電をしたということで、昨年あたりはずいぶん人気を呼んでおったわけですね。そこへたまたまこういう事故が起きたのですが、事故が起きたことは別にその社の責任ではないと思います。これは全般的に見て、世界の技術の問題でございましょうから、どこの国もみなそういうような予想しない事態にぶつかる危険があるわけですね。開発にあたってそういうような予想なしで開発を進めていくことはできませんから、それに対するかまえを一応すると同時に、進んでおる国だからといって、もうどうにもわれわれは追っつけないのだという考え方にも立つ必要はないということを、ここでは示しておると思うのです。だから、私が最初にも言ったように、新型転換炉もできる限り早く開発をすべきである、それからまた、高速増殖炉も可能な限りやはり早く期限を詰めるようにすべきである、こういうように考えます。そのために、われわれはおくれているんだからということで、あとずさりするというようなことは絶対に許してはいけないことだと思うのです。したがって、私は日本の高速増殖炉——新型転換炉は別ですけれども、高速増殖炉を長期にわたって開発するにあたって、人員の確保というような観点からしますと、どうもやはり原子力発電に、いわゆる濃縮ウランを軸とした軽水炉への力点があまり多く入り過ぎておって、人員を結集するのに非常にまずい結果が出はせぬかという心配をしております。それで、あとでこの高速増殖炉についてある期間の予定に従って人員配置をする皆さんの調査をもらいますが、その調査の結果、人員の把握が確実にできて、そうして二十年という予定が予定どおりいくならけっこうですが、それがたとえば、こうすれば十八年でいく、それはできるかできないかわからぬにしても、とにかくプランとしてはそういうプランが出れば、それはやるべきだと思うのです。しかし、その十八年なり十五年に詰めていくというときに障害になるものは何かというと、おそらく軽水炉の据えつけ台数があまり多いために人員がなかなか集まらない、こういうような状態が出てくるのじゃなかろうかと私は心配をするわけです。それがなければけっこうですよ。もし、そういうような事態になりましたときに、私は総合エネルギー計画というものと、それから原子炉の開発というものとの両にらみをしまして、どちらに重点を置くかということなんです。私は、この際にはやはり発電ということよりも、動力炉開発というほうに重点を置くべきだというふうに思いますが、それは原子力委員会としてはどういうように考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/86
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087・有澤廣巳
○有澤説明員 人員の配置につきましては、なお十分詳細なものを調べてみたいと思います。おおよそのことはここに出ておりますけれども、いまの軽水にどれくらい、高速とかあるいは新型にどれくらいな配置になるか、その配置の数字はなお確かめて分析してみたいと思います。もしそれで、人員の面からいって、いまおっしゃるような、軽水炉の四千万というようなものを導入するというか建設するために、人員に支障を来たすようなことがありましたならば、私はむしろ動力炉のほうに人員をさいてもらうというふうな考え方をいたしておりまして、なお、それは結論のいかんによりますから、人員の計画について調べてみます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/87
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088・石野久男
○石野委員 だいぶ長い時間になってしまいまして、まだ質問はあるのですけれども、きょうはこれで私は質問を終わりますが、特に人員の、技術者の計画ということは、私は非常に大事だと思います。それで、これがはっきりしませんと、長期計画だとかなんとかいっても、結局絵にかいたもちのようなもので、食べることができなくなってしまいますから、やはりどうしても人員の計画について、もし足りないなら足りないように、文教政策の上でどういうようにするのだという方針までも示されないと、この計画を私たちは受けとめることができないように思います。この人員の、技術者の計画について早急にひとつ資料を出してもらいたいと思います。
あと、まだ、大蔵大臣とか総理に対する質問、こまかいことはまだありますが、きょうはこれでおかしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/88
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089・山田太三郎
○山田説明員 ただいまの石野委員のお話でございますが、研究者とそれから運転者というのは質が違うと思います。それと、もしこの高速炉なり新型転換炉を開発する計画が国として非常にはっきりして、しかもそれが研究の先端であるということになれば、優秀な人間がどんどん集まってくるということは当然であるというふうに私は思っております。その数の問題は、たとえばメーカーにいたしましても、一たんパターンができてくれば、優秀なエンジニアはそんなに要らないはずでございまして、だから数は幾らでも出てまいると思います。優秀な人間が集まることが絶対必要でありますが、四千万キロほどではそんな影響を与えるとは考えられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/89
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090・石野久男
○石野委員 そういうようなお話になると、これはまた、質問をおこうと思ったけれども、おけない。
それは、あなたは専門ですから、そういうことをおっしゃるのは無理はないと思うのです。私はやはり技術者というのは、そう簡単にできるものだとも思わないのですよ。それはただ炉の開発というだけで言うのならば、日本の大学や、あるいはすでに持った経験とか、現在の水準での技術を土台にして、所要の人員をかき集めることはできると思います。しかし、私が一番心配しているのは、これから先、皆さんはただ高速増殖炉を自主開発するのだ、こう言っておるけれども、財界は、いわゆる動いているところの日本の国民経済の中で、電力産業資本というものは、やはり利潤を追求するのですよ。だから、利潤追求ということになってくれば、国がどんなにいい炉をつくろうという意欲を持っておりましても、それに相当するものが外国で安くできてしまえば、そこへ飛びつくのですよ。そういう状態になってくれば、あとは、なるほど日本で一つのプロジェクトに対する方針を明確にしましても、どっちみち日本の資金量というものは弱いのですよ。だから、どんなに力をつぎ込んでも、たとえば日本でそういうものをやるそうだから、日本のものはつくらさないようにしようと思って、最も進んだアメリカならアメリカがもっと馬力をかけて、そして日本の技術者をどんどん高給で連れていったりしたら、どうなるのです。日本の財界だけで人が足りなくなるというのと違うのですよ。いまや経済は世界的に一つの輪の中にある。そういうときに、いま日本の優秀な数学者がみんなアメリカに出ていっているという事実をわれわれは見なくちゃいけない。優秀な学究の方々がみんな外へ出て行っているじゃないですか。そこでの意欲がわかなければ、原研においてさえも、給料は安いけれども基礎研究はむしろ大学へ行ったらいいというようなことで、いままで原研におった人で大学へ逃げていっている人もおります。だから、この人員計画というものは、よっぽどそういう経済の自然の動きに対する規制といいますか、あるいはまた人を散らさないような魅力というものをどこかに出さなければ、とてもとてもできない。同時に、そういうものをやるのには計画性がなければいけないと思うのですよ。計画性を持たないで、ただその時点時点でアメリカから人を集めてくるだけの財力は日本にないはずだ。そういうことであるならば、われわれは一つの計画を持って、その計画の中で足りないものを補うという方針を出さなければいけないし、具体的な文教政策の中で、大学の中では原子力工学の教室をあっちにもこっちにもつくらす、場合によったら私立大学にも国庫の補助金を出してでもやらせるぐらいの政策が出てこなければいけないのじゃないか。だから、人員の計画についてそんなに心配ありません、三千万キロや四千万キロぐらいのもので人員が足りなくなるようなことは絶対ありませんなんといっても、それで私は納得することはできませんよ。いまのお話はよくわかりますけれども、やっぱり人員の計画はどうしても必要だ。これは出してもらわなければいかぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/90
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091・有澤廣巳
○有澤説明員 それは出します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/91
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092・矢野絢也
○矢野委員長 両参考人には、長時間にわたり、まことにありがとうございました。
次会は、明八日木曜日午前十時三十分より理事会、十一時より委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。
午後五時十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X01219670607/92
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