1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年四月四日(木曜日)
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議事日程 第十四号
昭和四十三年四月四日
午後二時開議
第一 所得税法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
第二 法人税法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
第三 物品税法等の一部を改正する法律案(内
閣提出)
第四 租税特別措置法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
第五 日本開発銀行に関する外航船舶建造融資
利子補給臨時措置法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
第六 皇室経済法施行法の一部を改正する法律
案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
議員請暇の件
東北開発審議会委員の選挙
科学技術会議議員任命につき同意を求めるの件
社会保険審査会委員任命につき同意を求めるの
件
ジョンソン米大統領のベトナム和平演説に関す
る緊急質問(大平正芳君提出)
北爆停止及びジョンソン米大統領の次期大統領
選挙不出馬表明に関する緊急質問(勝間田清
一君提出)
ジョンソン米大統領の演説に関する緊急質問(
西村榮一君提出)
米北爆停止に関する緊急質問(竹入義勝君提
出)
ジョンソン大統領のテレビ演説に関する緊急質
問(川上貫一君提出)
日程第一 所得税法の一部を改正する法律案(
内閣提出)
日程第二 法人税法の一部を改正する法律案(
内閣提出)
日程第三 物品税法等の一部を改正する法律案
(内閣提出)
日程第四 租税特別措置法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
日程第五 日本開発銀行に関する外航船舶建造
融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
日程第六 皇室経済法施行法の一部を改正する
法律案(内閣提出)
午後二時六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/0
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001・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
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議員請暇の件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/1
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002・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) おはかりいたします。
議員三ツ林弥太郎君から、海外旅行のため、四月十三日から二十一日まで九日間請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/2
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003・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
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東北開発審議会委員の選挙発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/3
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004・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 東北開発審議会委員の選挙を行ないます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/4
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005・山村新治郎
○山村新治郎君 東北開発審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/5
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006・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 山村新治郎君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/6
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007・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
議長は、東北開発審議会委員に米内山義一郎君を指名いたします。
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科学技術会議議員任命につき同意を求めるの件
社会保険審査会委員任命につき同意を求めるの件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/7
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008・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) おはかりいたします。
内閣から、科学技術会議議員に兼重寛九郎君、杉野目晴貞君を、社会保険審査会委員に川嶋三郎君を任命したいので、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/8
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009・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えるに決しました。
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ジョンソン米大統領のベトナム和平演説に関する緊急質問(大平正芳君提出)
北爆停止及びジョンソン米大統領の次期大統領選挙不出馬表明に関する緊急質問(勝間田清一君提出)
ジョンソン米大統領の演説に関する緊急質問(西村榮一君提出)
米北爆停止に関する緊急質問(竹入義勝君提出)
ジョンソン大統領のテレビ演説に関する緊急質問(川上貫一君提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/9
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010・山村新治郎
○山村新治郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
この際、大平正芳君提出、ジョンソン米大統領のベトナム和平演説に関する緊急質問、勝間田清一君提出、北爆停止及びジョンソン米大統領の次期大統領選挙不出馬表明に関する緊急質問、西村榮一君提出、ジョンソン米大統領の演説に関する緊急質問、竹入義勝君提出、米北爆停止に関する緊急質問、及び川上貫一君提出、ジョンソン大統領のテレビ演説に関する緊急質問を順次許可されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/10
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011・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 山村新治郎君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/11
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012・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
まず、大平正芳君提出、ジョンソン米大統領のベトナム和平演説に関する緊急質問を許可いたします。大平正芳君。
〔大平正芳君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/12
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013・大平正芳
○大平正芳君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ベトナムの和平をめぐるジョンソン声明を中心に、政府の所信をただしたいと思います。
三月三十一日の夜、ジョンソン米大統領は、ベトナム紛争の解決につき、これまでの政策を思い切って修正した新しい提案を行ないました。すなわち、それは、ベトナムの早期和平を促進するための第一歩として、北ベトナムに対する爆撃を、大幅に、一方的に、かつ即時に停止するという内容のものでありました。これは昨年九月のいわゆるサンアントニオ方式を越えた大胆な措置であります。しかも、ジョンソン大統領は、その提案と時を同じゅうして、次期大統領候補に指名を求めないし、また受ける意思もないとして、ベトナム和平の達成に、一切の個人的、党派的念慮を排して、全精力を傾ける決意を表明いたしました。このことは、今回の措置に一段の真剣味と迫力を加えたものと思われます。(拍手)
ベトナム国民は、戦後長きにわたって平和の青空をかいまにさえ見ることができなかったのであります。ようやくにしてでき上がった一九五四年七月のジュネーブ協定さえも、相対立する勢力の思惑に利用されることはあっても、平和への指針として真剣に活用されたことはなかったのであります。相互の憎しみと不信の増大、さらには、激しい軍事行動のエスカレーションはあっても、紛争の収拾と建設的な平和への前進は、世界あげての願望にかかわらず、一向に見られなかったのであります。どちらの側かが、いつの日か、この解きがたいもつれを、大局的展望に立った勇断をもって断ち切ることが期待されておったのであります。
ジョンソン大統領は、ついに、一方的にみずからの決意と行動をもって和平への第一歩を踏み出したのであります。しかも、みずからの栄光を犠牲にして踏み出したのであります。私は、高邁なステーツマンシップの結晶として、彼の英断を高く評価するものであります。(拍手)また、この英断が実りある成果を生み出すことを、平和のために心から希求するものであります。(拍手)佐藤総理におかれても、おそらくは異常な感動をもってこの報道を耳にされたことと思います。総理の率直な感懐を、まずもってお伺いいたしたいと思います。
ジョンソン大統領の今回の措置は、全世界の多くの国々から、和平に対するかつてない真剣な提案であるとして好意と期待が寄せられておるようであります。しかしながら、その反面、南ベトナムやタイ国等の反応には微妙なものが見られるようであります。アメリカをはじめ当事国における国内の動静には、なお流動的な面がないとはいえません。しかし、肝心の北ベトナムが、昨夜、今回の提案がその要求したところからなお相当な距離があり、したがって、これを激しく非難しつつもアメリカとの会談に応ずる用意がある旨表明いたしましたことは、われわれを強く勇気づけるものがあります。
私は、この提案こそは現在考え得る唯一の和平への踏み台であると思います。また、このチャンスを逸すれば、ベトナムにより大きな不幸を招き、世界の人々、とりわけアジアの人々の切なる願望を将来長きにわたって踏みにじることになることをおそれます。それだけに私は、北ベトナムがこの呼びかけに応ずることになった以上、勇気と英知をもって和平への道を忍耐強く切り開いていくことを強く望むものであります。(拍手)同時に、南ベトナム等各国の大局的見地に立った自重を切に希望するものであります。また、アメリカとしても、一たんその権威にかけて踏み切った以上、いかなる困難があろうとも、これを基点として和平達成のため不退転の努力を傾けることを希求してやまないものであります。(拍手)
一方、ジュネーブ会議の議長団を構成する英ソ両国が、当事者の間を周到かつ熱心にあっせんされ、全世界の期待にこたえて、和平の招来に貴重な貢献をなされることを強く希望するものであります。とりわけ、私は、北ベトナムに影響力を持つソ連の出馬に大きい期待を寄せるものであります。もとより、前途は多難であり、幾多の紆余曲折が予想されます。しかし、ジョンソン大統領の決意は異常にかたく、強いものであると思われます。かつ、ベトナム内外における和平の機運もようやく熟しつつあるときであるだけに、私は、世界の世論を背景として、この措置が和平への前進に決定的な契機になり得るものであることを希望し、かつ期待しておるものであります。
政府は、この措置の成否につき、いかなる評価をしておられますか。総理並びに外務大臣の御所見を伺いたいと存じます。あわせてこの措置と、北ベトナムの声明の発表以来、当事国をはじめ世界各国がどのような反応を示しつつあるかについても、この際、お示しをお願いいたしたいと思います。
日本政府は、あらゆる機会にベトナムの和平が、相互の話し合いによって、すみやかに招来されることを希望してまいりました。また、その立場において、可能な限りの努力を傾けてきたのであります。しかし、率直に言って、アジアの平和を願望する日本国民は、そこに若干の不満ともどかしさを感じておったに違いないと思います。私は、その間の消息をよく理解できるものであります。ただ、日本の立場はベトナム紛争の収拾につき、主導的役割りを果そうとしても果たし得る国でないことを認めざるを得ないのであります。また、日本は、アメリカとの間に安保条約を締結し、それによる利益を享受し、みずからの平和と繁栄を追求する反面、これにまつわる数々の義務を背負っております。たとえば、米軍の日本における兵たんの補給は、安保条約第六条によって、直接に出撃する場合を除き、条約上当然の義務としてこれを拒否できる立場にはないのであります。したがって、日本政府は、ベトナムにおける和平への努力と、国際信義の尊重という二面の要請にこたえて、均衡のとれた、かつ、きめのこまかい配慮を加えなければならない立場にあります。われわれは、日本の国益を守るために、国際信義に忠実であらねばならぬと同時に、アジアにおける隣邦の平和と福祉に、可能な限り、協力しなければならないのが日本の立場であると思います。(拍手)
そういう状況のもとにおきましても、日本政府は、紛争当事者間の誤解を解き、信頼を回復すべく、できる限りの努力をするかたわら、戦禍を受けた無辜の住民に人道上の援助の手を差し伸べてきたのであります。また、相互保障による休戦の方式を、ジュネーブ協定関係国に精力的に訴えてきたのであります。これらのことは、日本がその立場において行なった精一ぱいの努力であり、日本の平和への熱意を内外に示すものであったと思います。(拍手)幸いに、和平へのとびらは、ジョンソン大統領自身の決意と、これに対する北ベトナムの前向きの反応によって開かれようとしております。
政府は、すでに英ソ両国に対し、和平あっせんへの努力を公式に要請したとのことであります。なお、今後の事態の推移に応じて、アメリカに対する建設的提言をはじめとして、日本の果たすべき役割り、日本に期待される仕事は、決して少なくないことが予想されます。私は、政府が、さらに一そうの熱意と緊張をもって、その外交機能をフルに動員して、平和の達成に協力し、日本国民の期待にこたえられるよう切望するものであります。総理並びに外務大臣の御決意のほどを承りたいと思います。
世上一部に、ジョンソン大統領の不出馬の声明を受けて、ジョンソン政権と親密な関係にありました佐藤政権の退陣を云々する向きがあります。これは、このたび米国のとった措置を国内の政争に利用しようとする術策であるとしか思われない牽強付会の言いぐさであるといわなければなりません。(拍手)佐藤政権の命運は、他国の政変とはかかわりなく、一にかかって世界政局の新局面に立って、日本国民の負託にこたえるみずからの能力にかかっておるからであります。(拍手)
ジョンソン大統領の今回の決断は、見方によってはアメリカの世界政策の限界を予告するものであるとも考えられます。戦後の世界に、そのヘゲモニーを誇示してきた米ソ両国は、すでに昔日の指導力を弱め、世界は複雑な多極化の時代を迎えました。ヨーロッパの復興と自主性の高まり、イギリスの後退、東欧圏における対ソ自由化の動向、アジアをはじめとする発展途上国におけるナショナリズムの台頭、さらには中ソ関係の悪化等は、その端的なあらわれと見ることができます。かくて、世界に名誉ある市民権を主張しようとする国々は、その大小強弱を問わず、イデオロギーや発展段階の相違にかかわりなく、みずからの力とみずからの分別をもってその生存をかちとるべく、険しい道を歩もうとしております。佐藤政権は、かかる時代の潮流に対処して、日本の生存と名誉と繁栄のため、懸命かつ弾力的な対応力を発揮しなければなりません。
また、ジョンソン大統領が今回の挙に出た背景には、そうした世界の新たな潮流とともに、近年とみにその信用を問われ出したドルの防衛というきびしい課題があると思われます。もとよりドルの未来は、アメリカの国民の努力と能力に加うるに諧調のとれた国際的協力にかかっておりますが、その前途はなお多難が予想されております。南北の問題も、いよいよ山のような圧力を世界に加えつつあります。このように、きびしさを増した国際経済の環境の中にあって、円の未来を安泰に導き、日本経済の健全な成長を実現するため、政府はその政策によろしきを得るとともに、国民に一そうの自重と協力を求めなければなりません。佐藤政権が今後引き続き国民の負託にこたえてまいりますためには、そういう要請に対処し、聡明な政策的力量を発揮しなければなりません。
さらに、ベトナムの戦火がおさまりましても、アジアの平和と繁栄の前途は遠く、かつ険しいものがあります。事態の収拾と戦禍よりの復興は、まことに容易ならざる事業であります。ベトナムをはじめアジアの諸国民の生存に必要な最小限度の経済力の充足は、それ自体がすでに大きな課題であります。いわんや、その後進性よりの脱却には、絶望的とも思われる困難が横たわっております。まさに今回のできごとは、暗い戦闘の終わりを予告するものであるとともに、多難な未来の始めを告げる警鐘であるといえましょう。アジアにおける唯一ともいえる先進国日本の責任と役割りは、想像を越えて大きいものがあります。
佐藤政権は、こういう課題に大きい責任をになっておるのであります。内外にきびしい課題をかかえて日本の政局に処する佐藤総理の御決意のほどを伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/13
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014・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) ジョンソン政権の課題は、私がこの機会に申すまでもなく、偉大な社会の建設とベトナム問題の解決にありました。したがいまして、ジョンソン大統領は、大統領就任以来五十数カ月、世界で最も責任の重い大統領として、世界平和の維持に心魂を傾けてきたことは世界周知のことであります。去る三月三十一日のジョンソンの演説は、ジョンソン大統領のベトナム和平にかける情熱のあらわれとして、私も、大平君同様、その決断に深い感銘を覚えたものであります。(拍手)
私は、御承知のように、昭和四十年一月、また昨年十一月、二度にわたってジョンソン大統領と会見して、ジョンソン大統領の、アジアのみならず、国際間の緊張緩和と国際平和達成のため、並々ならぬ献身と努力の姿を私は理解することができました。特に、三十一日の演説において、ジョンソン大統領が、その政治生命をかけてベトナム和平を達成するために、従来のサンアントニオ方式を一歩越し、即時かつ一方的に、人口のほぼ九〇%に当たる地域の北爆停止を宣言したことは、勇気ある政治家のあり方として感銘を覚えたものであります。(拍手)これは、まさしく、アメリカ国民の若さを意味するものであり、アメリカの伝統的、民主的決断であると考えます。願わくは、このジョンソン大統領の決断が、国際政治の舞台において、正しく評価され、アジアにおける永続的な平和につながることを心から期待するものであります。(拍手)
ジョンソン提案を契機として、ベトナム和平の機運は、急速に盛り上がるものと思われます。ジョンソン声明の持つ意味は、北ベトナムのグエン・ドイ・チン外相が、ことしの一月行なった和平提案に対し、米国がボールを投げ返し、ベトナム和平について北ベトナム側にげたを預けたこと、また一九五四年のジュネーブ会議の共同議長国であるイギリス、ソ連に対し、その国際的責任の遂行を要請したことにあると思います。この提案に対し、北ベトナムが、真剣に耳を傾ける態度を示し始めていることは、喜ぶべきことであります。(拍手)少なくとも、和平への糸口が開けるのではないかと期待されるのであります。
しかし、これをもって直ちに南ベトナムにおける戦闘が急速に終結に向かうと見ることは、ただいまのところまだできません。したがいまして、今回の提案が実りのあることを願いつつ、今後事態の推移を慎重に見守りたいと思います。そして、日本の果たす役割りがあれば、和平達成にできるだけの協力を約す決意であります。(拍手)
アジアの平和と繁栄がそのまま日本の平和と繁栄につながるわが国としては、政府はもとより、国民ひとしくベトナム和平を希求しております。この国民的要請にこたえるため、政府は、これまでもできる限りの和平への努力を行なってきましたが、今後はさらに一そうその努力を積み重ねる決意であります。特に、アジアの先進工業国であるわが国に対し、軍事力を背景とせず、他国の内政に干渉しないという各国の理解も深まりつつありますので、今後のアジアの情勢の変化については、わが国は独自の役割りがあるものと考えます。
私は、すでに、施政方針演説におきまして、民族の理想達成のために、常にきびしい現実を直視し、歴史の推移に柔軟に対処し得る時代感覚を持つと同時に、いかなる時代にも生き抜くたくましさを持たねばならない。かように述べました。日本民族の二千年の歴史は、まさしくこのような民族の活力のたまものであります。
第二次大戦後の国際政治は、東西二大陣営の冷戦から、緊張緩和、平和共存政策、中ソ対立等、刻々に変化してまいりました。そして、いま、ジョンソン大統領の和平提案によって、アジアの緊張の緩和の糸口が見出されるかもしれないという期待が芽ばえつつあります。ジョンソン大統領の劇的な立候補不出馬宣言も、平和の手がかりをつかもうとする努力のあらわれであるとともに、国論を二分しないという国内政治的な配慮や、ドル防衛に対処するあらわれでもあるといえましょう。われわれは、このような国際政治の変化を冷厳に直視しなければなりません。問題のポイントは、激動の中にあって、日本自身のあり方、国家利益の追求を見失わないことであります。私は、これまで以上に、アジア情勢、特にベトナム情勢の推移を注意深く見守り、わが国の進むべき方向を誤らない決意であります。
以上の観点から、私は、わが国外交の基本政策を変更する必要はないと考えております。(拍手)幸いにしてベトナムに平和がもたらされた暁には、わが国の果たすべき役割りは、単にベトナムのみならず、アジア全体にとってはかり知れぬほど大きなものがあると考えますので、これらに適切に対処する考えであります。大平君御指摘のように、ベトナム和平を契機として、国際情勢は今後一そう流動的になるものと考えられます。私は、日米相互信頼の基礎に立って、わが国の安全を確保するとともに、国際社会において名誉ある地位を占めるべくこん身の努力を重ねる決意であります。(拍手)
当面、最も重要な問題である沖縄施政権の返還に向かって、最善の努力を行ないます。また、従来に引き続き、物価安定と国際競争力の強化につとめ、円の価格維持に全力をあげ、わが国経済の健全な発展をはかってまいる考えであります。
重ねて申し上げますが、ベトナム戦争に和平の糸口が見出されたことは、われわれ日本人にとってきわめて喜ぶべきことであり、この平和の芽を守り育てなければならないと思います。(拍手)私は、この際、特に注意深く国際情勢の推移を見守り、わが国の前途をあやまちなきよう、各般の施策を進めてまいる決意でありますから、国民各位の御協力を切望する次第であります。(拍手)
〔国務大臣三木武夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/14
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015・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) ベトナム和平に対するジョンソン大統領の提案に応じて、ハノイ政府が、本格的な話し合いではないまでも、話し合いに応じようという同意を与えたことは歓迎すべきことであると考えます。
ベトナム戦争は、複雑な背景を持った戦争であり、一挙に解決するほど単純な問題ではありませんから、今後話し合いが始まっても、解決に至るまでの間には紆余曲折があると思います。しかし、われわれとしては、この提案がこれを契機として話し合いの実を結ぶことを切に期待するものであります。(拍手)日本としても、この間、和平達成のために全力を傾けて協力をいたす覚悟であります。
また、世界各国のジョンソン提案に対する反応について大平君はお尋ねでございましたが、世界各国が必ずしも公式の見解を述べている国ばかりではありませんが、大多数の国々は、アメリカの提案に応じて今後ハノイが話し合いに応じ、そして、一日も早くベトナムの戦争が平和的に解決することを期待するというのが、総じて今日世界のジョンソン提案に対する反応でございます。
お答えをいたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/15
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016・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 次に、勝間田清一君提出、北爆停止及びジョンソン米大統領の次期大統領選挙不出馬表明に関する緊急質問を許可いたします。勝間田清一君
〔勝間田清一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/16
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017・勝間田清一
○勝間田清一君 私は、日本社会党を代表し、先般行なわれたジョンソン大統領の声明をめぐるベトナム問題並びに国際情勢に関する佐藤内閣の方針について、総理にその所信をただし、あわせて私の所見を述べたいと思うのであります。(拍手)
今回のジョンソン声明は、アメリカの世界支配の政策が崩壊し始め、世界の歴史がいまや新しい局面を迎えようとしていることだと思うのであります。(拍手)そしてこのことは、とりもなおさず、戦後二十余年、特に単独講和を強行して以来、ひたすらアメリカに追従してきた歴代自民党内閣の外交基調が破綻し、わが国の内外政策の転換をはかるべききわめて重大な段階に立ち至っているものと確信いたすのであります。(拍手)いまや明らかに、正義と社会進歩と、そして民族自立という大きな歴史の流れにさからって、武力をもって民族が民族を支配しようとしたアメリカのベトナム侵略戦争が完全に破綻したことを、全世界の人民の前に暴露したのだと思うのであります。(拍手)また、昨年来、佐藤総理とジョンソン大統領との間で取り結ばれた日米共同声明も、数カ月を待たずしてその誤りが天下に露呈し、その権威もまた失墜いたしておると考えるのであります。(拍手)
今回のジョンソン声明が公表された直後、佐藤内閣は、いまさら、「ベトナム和平の早期実現は佐藤内閣がかねてから希望し、そのために努力してきたところであり、歓迎する」と言っておるのでありますが、国民も、世界の人々も、佐藤総理のこのことばを真実なものとして、はたしてこれを何人が受け取ることができるでありましょうか。(拍手)
そもそも政府は、これまでベトナム戦争の早期解決のために、日本民族が誇りと思えるような努力を、はたしてどのように払ってきたというのでありましょうか。共同声明に明らかなように、ひたすらアメリカの不正義の戦争を無条件に支持してきたにすぎなかったのであります。(拍手)沖縄を含む在日米軍基地をベトナム侵略戦争のために自由に使用させ、エンタープライズや原子力潜水艦を自由に日本に寄港させ、さては日本国民の反対を押し切って、南ベトナムを訪問する等、参戦国を激励して回り、ついには日米共同声明でベトナム侵略戦争を公然と支持してきた佐藤総理の一連の行動は、総辞職に値する政治的責任といわざるを得ないのであります。(拍手)ベトナム民主共和国や南ベトナム解放戦線はもとより、世界の平和愛好諸国民は、佐藤総理、佐藤内閣こそが、アメリカのいずれの同盟国よりも最も忠実に戦争政策に協力し、いまやベトナム侵略戦争の共犯者と見ている事実を、佐藤総理は直視すべきであります。(拍手)
総理がどのように言おうとしましても、ベトナム戦争は、ベトナム民族にとっては、独立と自由とそして国家主権を守るための民族的抵抗であり、正義の戦いであるのであります。アメリカはこれを武力で封殺しようとしている侵略者であるのであります。(拍手)次期大統領選挙に立候補しているロバート・ケネディすら、北爆の停止と平和交渉を主張し、前駐日大使ライシャワー教授も、ジョンソン大統領のベトナム政策をきびしく批判し、その根本的転換を要求いたしておるのであります。このような反戦平和の声がアメリカ国内においてもますます高まっていることは、先般行なわれたニューハンプシャーにおける大統領予備選挙の結果をまつまでもなく、すでに明らかであります。侵略しながら平和を唱え、北爆を行ないながら和平を説くこの二枚舌外交が、ジョンソン大統領を破滅に導いたのであります。(拍手)同じ二枚舌を使っている佐藤総理も、同様の運命をたどることは必至といわなければならぬと思うのであります。(拍手)昨年の日米共同声明の一方の責任者であるジョンソン大統領がいまや退陣をする以上、他方の責任者である佐藤総理もまた、当然やめるべきであると確信いたすのであります。(拍手)
北ベトナム政府は、三日夜、ハノイ放送を通じ、特別声明をもって、米国の北爆などすべての戦争行為の無条件停止を確認するため、米国代表と接触する用意ある旨を発表しました。ベトナム民主共和国は、いままでと同様に、いずれの国の干渉も受けず、自主的に戦争終結につき検討する用意のあることを明らかにしたのであります。
ここにおいて、また、ジョンソン政権の重大な欺瞞政策を指摘せざるを得ないのであります。何となれば、ジョンソン大統領は、いまなお一万三千五百名の増兵、五十一億ドルのベトナム戦費の追加、さらに、北緯二十度線に至る広範な地域に対して、依然として北爆を続行しているからであります。しかし、私は、ジョンソン提案がいかに不徹底であり、いかに欺瞞に満ちたものであっても、もはや、ジョンソンの力の政策は、再び退勢を挽回させるものでもなければ、ましてや、平和への激流をささえ切ることは断じてできないと確信いたすものであります。(拍手)アメリカは、軍事的に、経済的に、政治的に重大な限界に直面しただけでなく、世界から孤立いたしたのであります。そして、いまやジョンソン大統領は、ベトナム戦争の失敗によって、政界からその姿を消そうといたしております。
友人である佐藤総理が、真に友人として最後になし得ることは、ジョンソンが中途はんぱな姿勢をとらず、いまこそ、北爆並びに南ベトナムの戦闘行為を完全に停止し、ジュネーブ協定の原則に立って、ベトナム問題を全面的に解決し、最後を全うするよう、ジョンソン大統領に率直に進言することだと確信いたすのであります。(拍手)佐藤総理にはたしてその決意があるかどうか。
また、この重大時局の転換にあたって、沖縄問題についても、あらためて総理にお伺いいたしたいのであります。
私は、先般、党の調査団を率いて沖縄を再び訪問し、県民の皆さんと文字どおりひざを交えて語り合い、沖縄の即時全面返還の決意をさらに新たにいたして帰ったものであります。私たちの同胞百万が、憲法で明記された基本的人権すら保障されず、国政に参加することも許されないで、戦後二十三年間にわたって直接アメリカの軍政に支配され、そして、いま、べトナム侵略戦争の出撃基地として、生命の不安にさらされていることを、一億国民の共同の責任としてこれを受けとめ、みずからの痛みとしてこれを取り払うことに、政府も国民も全力を尽くすことが、いまこそ、われわれの最大にしてかつ緊急の責任であると確信いたすものであります。(拍手)
総理は、両三年内に返還の時期について合意できると言っております。しかし、これは日米共同声明でも明らかなように、総理の一方的理解であって、ジョンソン大統領も確約しているわけではないのであります。ましてや、そのジョンソン大統領が、政府の指導的地位をいま去ろうといたしております。また、総理の一方的信念が、次期大統領を拘束するものでないことも明らかであります。したがって、総理は、新しい情勢変化の中で、いかにして沖縄の早期返還が実現できるのか、その確信ある根拠と方針を、この際、あらためて明確にせられたいのであります。(拍手)
本来、沖縄問題は、総理のようにアメリカのベトナム政策支援の中でアメリカに懇願して、正当な解決が期待さるべき性格のものでないと思うのであります。世界の歴史が示しているように、領土の返還という民族的悲願の課題は、正しい根拠に貫かれた強力な民族的主張にささえられた、それに貫かれた強い外交の交渉によってのみ実現できるのでありまして、政府と国民が一体となって、平和条約三条は無効であるとの国際法上の正当な立場を貫いて、対米交渉を強力に行なって初めて実現できるのであります。
政府は、沖縄県民をはじめ国民の真の世論に、今日まではたしていかに耳を傾けてまいったというのでありましょうか。沖縄における核基地を国民に承認させるために、あらゆる術策を弄してきたというのが今日までの政治ではなかったか。沖縄返還そのものに真正面から取り組まなかったのが佐藤総理の実体ではないか。(拍手)そして、今日、政府のやろうとしておる一体化なるものの実体も、現状を固定化する以外の何ものでもないことが明らかではないか。(拍手)私は、憲法に保障された日本国民としての権利を、沖縄県民に正当に回復させることが、真実に沖縄と本土との一体化をはかるものであると確信して疑わぬものであります。(拍手)アジア政策の再検討を迫られておる今日、沖縄返還を再検討し、全面無条件返還に対して強力な外交をすべきときであると思うのであります。総理の見解をお伺いいたしたいと思います。
また、沖縄には、いま緊急な課題が起きております。B52戦略爆撃機の沖縄常駐がそれであります。立法院は、直ちに沖縄のB52出撃基地化に反対し、その即時撤収と、沖縄を巻き込む一切の戦争行為の即時中止を要求する決議を、沖縄自由党も含めて満場一致で採択いたしておるのであります。(拍手)また、沖縄問題等懇談会の政府委託の調査団ですら、B52撤収を総理に進言いたしておるのであります。それにもかかわらず、今日の段階でアメリカに撤収を申し入れる考え方はないというがごとき佐藤内閣の態度は、全く言語道断であり、沖縄同胞の怒りを買うのは当然といわなければならぬと思うのであります。(拍手)佐藤総理は、こうした沖縄県民の焦眉の関心事となっているB52の撤収について、いまなおアメリカに向かって要求をするつもりはないのであるか、ここに明確にお答えを願いたいのであります。
私は、この際、中国との関連についてもお尋ねしたいと思うのであります。
かつてフランスのドゴール大統領は、アジアの問題は中国を無視しては論ずることができなと言って、中国との間に国交関係を樹立いたしました。好むと好まざるとにかかわらず、事態は彼の予言のとおりになりつつあります。そして、このことは、ベトナム戦争をめぐってアメリカがアジア政策の再検討を迫られている今日、いよいよ大きくクローズアップされてきているのであります。早晩アメリカも対中国政策の転換を迫られ、中国との平和共存の道を探求しなければならなくなるでありましょう。なお、いまにして政府がこのことに目ざめなければ、アメリカが日本の頭を飛び越えて中国との直接交渉の挙に出て、日本が中国問題で孤立化する危険性を持っていることは、現在の南ベトナム軍事政権の例が最もよくこれを示していると思うのであります。(拍手)
いまこそ、日本は、政経不可分、一つの中国の原則に立って、日中関係の改善、国交回復への自主的外交を展開すべきときであります。しかしながら、一貫してアメリカの中国封じ込め政策に加担し、なおかつ、日米共同声明で露骨に中国敵視の姿勢を打ち出した佐藤総理には、対中国政策を転換できる資格のないことは明らかであります。(拍手)いな、むしろ、いまやベトナム戦争におけるアメリカの敗北を中心とするアジア情勢の急変の中で、佐藤総理のような反共戦略一辺倒の指導者ではなく、新しい指導者の登場を日本国民は要求いたしておると確信いたすのであります。(拍手)
この際、日本は、アメリカの核のかさ、ドルのかさから脱却して、領土主権の尊重、不侵略、不干渉、平等互恵、平和共存のいわゆる平和五原則に立った非武装、中立の外交を積極的に展開し、対米依存の貿易構造を大胆に転換し、中ソ等社会主義諸国並びにアジア諸国との経済交流を全面的に開放発展さすべきであります。
かくして、総理に私は次のことをお尋ねいたしたいと思うのであります。
すなわち、総理は、ジョンソン声明にもかかわらず、従来の政策を変更する必要はないと言っているのでありますが、今日の段階でもなお従来の中国敵視政策を続けていくおつもりかどうか。日米共同声明で中国の核脅威に共同で対処する体制をつくるといっているのであるが、この考え方は今日でも依然として変える必要はないということであるのかどうか。そして、そのような考えは、ジョンソン声明にもかかわらず、アメリカの対中国政策には今後とも変化がないと判断してのことかどうかをお伺いいたしたいのであります。
また安保条約、安保体制との関連であります。
佐藤内閣は、依然として日米安保条約を長期にわたって堅持し、アメリカの核戦力に依存して、日本の平和と安全を維持していく決意を捨てておりません。ところが、実際には、ベトナムをめぐる情勢の発展は、自国の運命を他国の軍事力にまかせることがいかに危険であるかを如実に示しておるのであります。南ベトナムの軍事政権はもちろんのこと、アジアにおけるアメリカの同盟諸国は、ジョンソン大統領の一方的不出馬声明に驚くと同時に、アメリカの力の政策に依存することの危険性に目ざめているに違いないと思うのであります。(拍手)ベトナム戦争は、強大な核戦力を背景とするアメリカの軍事力をもってしても、ベトナム人民の民族解放の戦いを屈服させることができなかったし、世界を支配したアメリカのドル経済もついに破綻せざるを得なかったのであります。われわれが主張してきたように、アメリカの核戦略は、その本質において他国を防衛し、救済することはできなかったのであります。いかにアメリカが核兵器を発動しようとしても、今日の国際情勢は、それを許さないほどに平和を求める勢力が強大になっていることを知らなければならぬと思うのであります。(拍手)核兵力を使用すれば、それは必ず全面的な核戦争に発展し、自国の壊滅を免れることはできないし、また世界世論から人類に対する犯罪者として、永遠に指弾を受けるでありましょう。アメリカの核のかさによって、日本の平和と安全を守ろうとする佐藤内閣の考え方は、現実を離れた幻想であるばかりでなく、万が一それが使用されたとしても、日本は核戦争の渦中に巻き込まれ、致命的打撃を受けることになることは明らかであります。
いずれ、南ベトナムの軍事政権も、かつてのゴ・ジン・ジェムのように、結局はアメリカからも見放され、自滅の運命をたどることは必至であります。(拍手)欧州においてはフランスの脱退によってNATOは弱体化し、アジアにおいては、フランスの脱退、イギリスのスエズ以東からの撤収、そしてこのたびのアメリカの敗北によって、SEATO体制は危機に瀕しておるのでありすす。
日本も、今日、私たちの目の前に起きているこの歴史的教訓を学び、他国の軍事力に依存して、国家の安全を維持することを目的とした日米安保条約を直ちに解消すべきであります。(拍手)平和を愛する諸国民の公正と信義に依拠して、国家の安全と生存を保持すると決意した憲法の精神と規定を尊重して、内には国民生活の安定をはかり、外には国連憲章を尊重して、平和友好の国際関係を樹立し、非武装、積極中立の自主外交を進んで展開すべきであると思うのであります。このことは、特に異なる社会体制の諸国家を隣邦として持つ日本として、何よりも重要なことであると確信いたすのであります。特定の国を仮想敵国として敵視するのではなく、相互の社会制度を認め、平和的に共存していくのが、今日の国際社会におけるわれわれのつとめでなければならないのであります。特に、今日、日本が、中ソ等アジアの社会主義国に敵対する安保条約をやめて、隣邦諸国と平和条約を締結し、平和五原則を基調とする友好関係を樹立し、発展させることは、完全に可能なのであります。(拍手)問題は、佐藤内閣をはじめとして、歴代の保守党内閣が、アメリカに追随し、憲法の精神をじゅうりんして、再び武力をもって国を立てようとすることにのみ専念していることであります。世界の大勢を正しく洞察せず、平和への努力を全く怠ってきた外交の基本路線を改めることを、私は強く要求せざるを得ないのであります。(拍手)
私は、ジョンソン声明は、戦後二十四年にわたるアメリカの世界政策の重大な転換、具体的には世界戦略の戦線整備を余儀なくされたことを意味しているものと思うのであります。また、ベトナム戦争で、アメリカの核を含む抑止力に依存して、自国の安全をはかるという考えは、完全に破綻したのであります。したがって、日本の安全にも役立たないと考えるが至当だと考えなければなりません。このような情勢の重大な変化にもかかわらず、総理は、安保体制を今後とも維持していくつもりかどうかを、この際明らかにせられたいのであります。(拍手)
要するに、私は、アメリカの核、ドルのかさに日本がしがみつけばつくほど、わが国の国際的地位は低下し、安全はそこなわれ、経済的危機は深まり、逆にアメリカの核とドルのかさから脱却して、その外に立てば立つほど国際的地位は高まり、安全は保障され、経済的繁栄をもたらすのだということを、いまほど明らかに示したときはないと思うのであります。(拍手)それでもなお総理がこのことに気がつかないとすれば、そして改めないとするならば、国家のため、国民のため、その責任を追及し、指弾しなければならないのであります。(拍手)
最後に、私は、佐藤総理に一言いたしたいのであります。
いまから八年前、総理の令兄岸信介氏は、国民の強い反対を押し切り、新安保条約に調印し、アイゼンハワー大統領の日本訪問への贈りものにしようとして批准を強行し、その結果、大衆運動の大波の中でついに歴史の舞台から葬り去られました。その弟であるあなたは、今度は、ジョンソン大統領と日米共同声明に調印したが、早くもアメリカのベトナム政策の転換に直面し、ジョンソン大統領はいま政府の座から去ろうといたしております。ここにおいて、なおかつ、従来の政治態度を根本的に改めないならば、佐藤総理の目前にあるものは、岸元総理を待っていたと同じ運命であると思うのであります。いな、日本国民は、あなたを岸元総理と同様に総理の座から必ず引きおろすであろうことを確信して、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/17
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018・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 勝間田君にお答えをいたします。
米国の和平提案に対しまして北ベトナムが柔軟な反応を示しましたことは、きわめて喜ぶべきことであると考えます。完全な休戦が実現し、和平がもたらされるまでには、なお幾多の困難が予想されますが、平和を希求する世界人類の願望をもとに、世界各国とも、和平実現に側面から協力することが必要であります。
米国のベトナムにおける幾多の努力は、領土的な野心に基づくものではありません。むろん、南ベトナムの自由と独立を助けることにあることは明らかであります。したがって、今回のジョンソン声明は、米国が新しい角度から、米国のベトナム和平の実現をはかろうとしている熱意のあらわれと見るべきであります。北ベトナムがこれに対して柔軟な反応を示しつつあることは、ジョンソン大統領の和平に対する熱意を北がくみ取ったものといえます。
わが国は、また私は、一貫して和平を探求し、公正な平和がもたらされることを主張し続けてまいりました。また私は、昨年の日米共同声明におきましても、南ベトナムの自由と独立を助ける米国の努力を支持し、双方がすみやかに話し合いに入ることを主張したのであります。ただいま御指摘になりましたように、戦争行為を支持した覚えはございません。(拍手)現在の姿は、われわれの希望と合致しています。いずれにせよ、私は、ベトナムに一日も早く平和がもたらされることを切望しており、今次の米国によるイニシアチブと、北側のこれに対する柔軟な反応を歓迎するものであります。
先ほど来、勝間田君のお話を聞いておりますと、友好国アメリカの大統領の批判がやや過ぎはしないだろうかと私は心配しておるものであります。私自身、日本の総理に対する御批判は御自由であります。しかし、この点は、やや慎まれたほうがいいのではないだろうか、私はかように思います。
ジョンソン大統領が次期大統領選挙に出馬しないとの決意を表明したことは、ベトナム和平にかける大統領の誠意のあらわれであり、勇気ある政治家の決断として、深い感銘を覚えるものであります。(拍手)ジョンソン大統領は、「米国の若者たちが遠く離れた戦場にあり、米国の将来が国内で試練を受けており、平和に対するわが国の希望と世界の希望が毎日不安定な状態にあるとき、いかなる個人的な、党派的目的にも、また大統領職に伴う厳粛な責務以外のいかなる責務にも、私の一時間を、私の一日をさくべきでないと確信する。」かように述べております。これこそ、世界の平和に最も大きな責任をになっている米国大統領の姿であると考えます。(拍手)
しかしながら、申すまでもなく、私は日本の総理大臣であり、日本国民の生命、財産を保護し、国の発展に最高の責任を持つものであります。私の進退は、日本国民がきめることでありますから、勝間田君のように米国大統領の進退と結びつけて考えるわけにはまいりません。(拍手)私は、重ねてはっきり申しますが、独立国日本の総理大臣であります。米国大統領の進退と何らの関係はありません。勝間田君のせっかくの御提案、御忠言ではありますけれども、これに沿うわけにはまいりません。はっきり申し上げておきます。(拍手)
沖縄問題の取り扱いは、私の一方的な信念ではございません。両国政府の最高責任者の申し合わせであります。したがって、ジョンソン大統領が引退し、私が現職を去ったとしても、この両国間の申し合わせば変わるものではありません。国民各位は、この点誤解のないよう、この機会に明瞭にしておきます。(拍手)
また、野党各派の再三のお尋ねにもかかわらず、沖縄返還交渉に臨む私の態度がただいま白紙であることを申し述べている趣旨が御理解いただけると思います。私は、国際情勢の変化、科学技術の進歩、世論の動向を注意深く見守りながら、沖縄問題に対処すると述べてまいりましたが、べトナム和平の曙光が見えてきたことは、沖縄問題にとって大きなプラスであります。今後とも国際情勢を注意深く見守り、最も国益に合致する方向で沖縄問題の解決をはかる考えでございます。米国政府に対しまして、ただいま問題になりましたB52撤収の問題をも含めて協議を続けてまいる考えでございます。
次に、中国問題についてお触れになりました。中国情勢の安定なくしてアジアの安定があり得ないことは、言うまでもありません。その意味から、米中関係の緊張緩和は、われわれの最も希望するところであります。わが国としても、国際情勢の変化に伴い、慎重に中国問題に対処してまいらなければならないと思いますが、当面、いままでの政経分離政策を変更する考えはございません。私は、この機会にはっきり申し上げておきますが、アメリカのいわゆる封じ込め政策に賛成した覚えはございません。またわが国は、一国に対して、またある市場に対して、敵視政策をとったようなことも全然ございません。(拍手)はっきり申し上げておきます。
次に、社会党の主張する中立論、非武装、積極中立では、国の安全を確保できないことは、しばしば申し述べたとおりであります。日米安全保障条約によって国の安全を確保するという、私の考えには変わりはありません。(拍手)しかしながら、平和に徹するわが国としては、あらゆる国と仲よくすることが外交の基本方針であり、今後ともこの方針を維持してまいります。特に、経済交流は、それがたとえ国交のない国であっても、政経分離の方針のもとに、相互主義の原則に基づいて、活発な経済交流を行なう考えであります。
また、安定した国際通貨体制があってはじめて、世界貿易、経済の安定的発展が期待できるのであります。したがいまして、現行国際通貨体制のもとで、世界通貨としての地位を持つ米ドルの信任維持に、可能な範囲で協力していくことは、国際社会の一員として当然であり、わが国の国益にも合致するものでありますから、これをもって対米偏重外交のあらわれというなど、かような御指摘は、的はずれといわざるを得ません。(拍手)
安全保障についての重ねてのお尋ねなのでお答えいたしますが、今日、いかなる国家といえども、一国だけで国の安全を確保することができないのが現実の姿であります。世界の中で、四十にのぼる国が、米国と相互または集団安全保障条約を結んでおります。また十数カ国が、ソ連と同様の条約を結んでいる事実を、勝間田君といえども無視はなされないと思います。(拍手)われわれ日本国民は、核時代に生き抜くために、自由と民主主義を信条とする米国との間に安保条約を結び、政治的な選択をしております。この選択が正しかったことは、戦後二十三年間、われわれが一度も戦争に巻き込まれず、平和と繁栄を享受しているという歴史的事実によって証明されているのであります。(拍手)この事実に目をつぶり、いたずらに安保体制による危機感をあおることは、国益に合致するものとは絶対に考えられません。(拍手)しかるがゆえに、賢明なる国民大多数の支持を得ているのが現状でございます。私は、国の安全に最高の責任を持つものとして、社会党のいわれるような非武装、積極中立では、国家の自立は達成できないことをはっきり申し上げておきます。(拍手)
最後にまた、いろいろ私に対する御忠告また御意見がございました。これらに対する批判は、私は差し控えておきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/18
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019・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 次に、西村榮一君提出、ジョンソン米大統領の演説に関する緊急質問を許可いたします。西村榮一君。
〔議長退席、副議長着席〕
〔西村榮一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/19
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020・西村榮一
○西村榮一君 私は、民主社会党を代表いたしまして、今回のジョンソン大統領の重要発表に基づく緊急事態について、佐藤総理の所信と今後の方針をお尋ねいたします。
まず冒頭に、私は、今回のジョンソン提案が、ハノイ当局の対米会談の応諾によって、二十年戦争の終結への端緒を切り開こうとしていることは、平和を念願する世界人類の期待にこたえる本のとして、まことに喜びにたえない次第でございます。(拍手)ベトナム戦争の早期終結を目ざすジョンソン大統領の苦悩に満ちた決意は、これまでわれわれがしばしば警告してきたとおり、米国がベトナム和平の実現を願う限り、いつかはとらねばならなかった必然の道であります。それはおそきに失したとはいえ、勇気ある決断として、率直に私は賛意を表するものであります。(拍手)
しかしながら、その後、制限地域外における北爆が行なわれ、国際的に失望と危惧の念を与えておりましたが、このたび、北ベトナム政府の決断によって、その不安がある程度解消されたことは、これまた、喜びにたえない次第でございます。(拍手)ここに、北ベトナム政府に対し、深甚なる敬意を表するものであります。(拍手)
同時に、この際、アメリカ側においても、北爆の無条件完全停止が和平を促進する唯一の道たることを自覚し、すみやかにその措置をとるべきことを、日本政府はこの際アメリカに要求すべきであると私は考えます。(拍手)
しかし、今回のジョンソン大統領の決定と、それに基づくベトナム情勢の変化は、単にベトナム和平という問題にとどまらず、今後の世界政治全体並びに日本の進路に重要な影響をもたらす点に、われわれは注目しなければならない多くのものを含んでおります。すなわち、今回のジョンソン大統領の決断が意味するものは、次の四点にあると私は考えます。
第一に、それはベトナム戦争に対する米国の軍事的勝利の放棄を示すものであります。換言すれば、もとよりそれは共産側の軍事的勝利を意味するものではなくして、自主と独立を求めるアジア民族主義の潮流を率直に認めざるを得ない結果というべきであります。(拍手)
その第二は、これを契機にアメリカは、これまでの極東政策の是正と極東戦略の転換を必至ならしめたことであります。
その第三は、その当然の帰結として、アメリカのアジア政策の再検討と極東におけるアメリカの防衛ラインの後退は今後不可避となり、これに伴って、わが国は新たなる視点に立って、自主外交、自主防衛、自主経済の三つの課題とともに、真剣にこれらと取り組まねばならぬ事態に立ち至ったということをわれわれは銘記しなければならないと思います。(拍手)
そして第四には、当面の課題として、日本はアジアの先進的立場にある国家として、この両者の決定を契機に、ベトナム和平の実現のためにあらゆる努力を傾注し、これを現実のものとすること。
以上の四点がそれでございます。
佐藤総理は、昨年十一月の日米共同声明において、日本政府としては、北爆の停止には、ハノイによるそれに対応した措置が期待さるべきであると述べ、北爆の停止をきっかけとするベトナム和平に背を向けるがごとき態度を明らかにしたのであります。これによって、当時すでに国際世論の大勢となっていた北爆の停止一つすらアメリカに進言できず、アメリカをして失敗への深入りをせしめた責任は、日本政府も一半負うべきだと考えるのであります。(拍手)すなわち、日本外交の戦略の欠如と外交努力の怠慢、そしてアメリカに対する真の友情の欠如が、今日のアメリカのアジア政策の失敗を助長したものというべきであります。
すでに私は、今日あることを憂え、去る一月三十一日の総理の施政演説に対して、次のことを具体的に提案いたしたのであります。
第一に、日本はアメリカの真のパートナーとして、いまこそ米国政府に対し、北爆の停止をきっかけとする和平行動を真剣に求むべきこと、第二に、ベトナム和平への具体的措置として、日本は、ソ連、イギリス、インド、カナダなど、ジュネーヴ協定の議長国、監視国などからなる国際的和平あっせん団の結成を提案すべきこと、そして第三に、ベトナム和平推進のために、この際、佐藤総理みずからソ連を訪問し、ソ連が和平に乗り出すための準備工作を推進すべきこと、この三点がそれでありました。
この私の提案に対して、佐藤総理は、「北爆だけをつかまえてこれをやめろということは意味をなさない」と言い、さらに、「いまの時点でソ連に出かけることは困難だ」と述べられまして、事実上私の提案に耳を傾けなかったのであります。
しかし、いまや、あなたが私に対して行なった答弁は、ことごとくその見通しと判断が誤っていたことは、今回のジョンソン発表並びにハノイ政府の回答において完全に明らかにされたのでありまして、これ、日本外交の痛恨事と申さねばなりません。(拍手)佐藤内閣はその責任を痛感すべきでありますが、私は、ただいま自由党代表大平さんの質問に対する総理の答弁を伺っておりました。総理は、大平さんの質問に対して、わが自民党内閣は和平に対してあらゆる努力を傾注すると答弁されたのでありますが、しからば問題は、従来の経緯にかんがみ、従来佐藤内閣が行なった外交方策にかんがみ、この際、多くの不安を感ずるのでありますが、もしそれ今日といえども和平に対する努力をすると言われるならば、その具体策をこの際ここに明示していただきたいと存じます。(拍手)
今日のごとき自主性を欠いた無為無能の外交を今後もとり続けるならば、日本は、アジア諸国はもとより、世界各国から、その無能と無定見をばかにされた孤児になりかねない状態に直面しております。日本は、これまでの自主性なき安易な態度を真剣に反省し、アジアにおける日本の役割りと対米関係のあり方について、この際、根本的な再検討を行なうべきであります。
私は、ベトナム和平と、これに伴う米国の極東戦略の転換から生まれる当面の変化は、次の三点だと想定いたします。
第一は、安保を主軸とするこれまでのわが国の防衛構想は、根本的に再検討を余儀なくされ、日米安保については、その改定が不可避となりつつあります。すなわち、日本は、みずからの国民によってみずからを防衛するという自主防衛の体制を確立し、その補完的役割りとしての地位づけが、安保体制による将来の外交方策といたしまするならば、この見地から、私はアメリカに対して、駐留と基地の原則的撤廃を基本とする安保条約の改定を正式に要求すべきであります。(拍手)
第二に、米国の防衛ラインの後退とベトナム戦争の縮小ないしは解決は、沖縄の基地の性格を変え、その返還は客観的には早まりつつあります。日本としては、この事態に直面して、本土並み返還という形で沖縄問題の早期解決を米国に要求し、もって沖縄住民の悲願にこたえるべきであります。(拍手)
第三に、アジアの緊張緩和のために中共対策の根本的転換を推進すべきであります。すなわち、アメリカ極東戦略の変化というこのチャンスをとらえ、積極的に米中の平和共存、日中友好の確立はアジアの平和達成へのかなめであるという点を重視して、わが国外交の力点をここに置くべきであります。
以上の三つの課題は、今後日本が取り組まなければならぬ具体的重要課題であり、もし日本が今日の事態に立ってなお外交努力を怠るならば、わが国はもはや、自主性ある独立国家として、今後アジアに貢献し、国際舞台において発言権を確保することはとうてい不可能だと確信いたします。この点に関する佐藤総理の御所見を伺いたい。
私は、今後のアジア、なかんずくインドシナ半島は、重大な政治的転換期に入るものと考えます。それは米国の軍事力の後退は、必然的に政治的影響力の後退をもたらすものであります。わが国は、このような展望に立って、いまこそアジアの一員たる立場を自覚し、これら諸国の貧困の解消と経済安定のために、平和主義の立場から経済技術の面で積極的に協力し、もってアジアの政治、経済の苦悶の解決に努力すべきであると考えます。(拍手)
このようなアジアの歴史的転換期に際会し、日本の使命と役割りについて、佐藤内閣は、どのように自覚し、今後のわが国の外交の進路を定めようとするのでありますか。経済政策ではドルと心中し、外交面では米国に追随し、安全保障面では米国のかさのもとに保護を求めてやまない佐藤内閣に、なお従来の方針を堅持していかれるのか、それとも名実ともの自主独立の体制を確立し、もってアジアの平和と繁栄に貢献せられる決意がおありかどうかを率直にお伺いいたしたいと存じます。(拍手)
最後に、私は、ベトナム和平実現に対する日本政府の当面の努力について一言しておきたいと存じます。
今回のジョンソン発表と、これに対する北ベトナムの反応に対する国民の率直な期待は、これを機会にベトナム和平をぜひとも実現させてほしいという一言に尽きると存じます。したがって、私は、この段階で日本外交の果たすべき使命は次の三点でなければならないと考えます。
その第一は、たとえ交渉の妥結が長引くとも、そしてその交渉の過程において思わざる障害が出現しても、これを口実に米国が北爆を再開し、報復的エスカレーションに突入するの愚を断固阻止して、北爆の完全停止を約束せしめるべきであります。(拍手)
その第二は、真に自主的な立場に立って、イギリス、ソ連、なかんずくソ連の和平あっせんへの努力を極力要請すべきであります。
第三には、日本の総理みずからが行動をもって和平に乗り出す体制を確立すること。
以上の三点が、ベトナム和平に対するわが国の緊急の課題だと考えますが、佐藤総理の御所見はいかがでありますか。
いまや一九七〇年は、日米安保条約の改定期を迎えるといった単純な時代ではなく、アジアの政治的転換と、国際経済の構造変化という世界の重要問題の解決を迫られておる時期であります。そして、この世界的転換の中で、わが国の外交、経済、安全保障の基本方向をどう定めるか、それこそわれわれが当面する国家的重要課題であります。すでに、アジアに流れる傾向は、多年にわたる大国支配から脱却し、自主路線を確立する潮流へと大きく変わりつつあります。この流れは、もはや何人も変えることのできない歴史の怒濤であります。この中にあってひとり日本政府は、なおこの世界の潮流たる自主と独立に背を向けて、アメリカのふところにその安住を求めようとするのでありますか。そして政治と国民との間の信頼のギャップをさらに深め、わが国の政治混乱を助長しようとするのでありますか。私は、この点に関する佐藤総理の御所見をお伺いいたしたいのであります。
佐藤総理は、このたびの新情勢によって、わが国は何らの政策を変更する必要はないと強調しておられます。しかしながら、米国政府がベトナム政策を契機としてアジア政策の大転換を行なっているとき、この大きな変化の中にあって、どうして日本だけがこの歴史上の大きな変化に背を向けて済むとお考えになっておられますか。(拍手)もし、佐藤総理が、この新情勢に対して何ら国策の変更なしとお考えになるならば、それは従来の政治的失敗を隠蔽するための強がりか、あるいは時勢の変化に対する盲目か、さらに政治的見識の欠如によるのか、いずれかでありまして、(拍手)眼光鋭く識見をもって時勢の変化に着目せられるたらば、この際、率直なる見解を国民に訴え、一億民衆とともに、激しく動かんとするアジアの動乱に対処するの勇断と見識が必要であります。
この点について、政治家として、かつ一国の宰相として、見識と誠意ある答弁を求めまして、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/20
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021・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 西村君にお答えいたします。
私は、西村君のただいまの御質問を聞いておりまして、少なくとも対話を求めるその姿勢のうちに、国民的な一つの合意を得ようとしておられるという、そういう点でその意欲を感じまして、ただいまの質問に対し、心から敬意を表する次第であります。(拍手)
その御指摘のうちにもありましたが、ジョンソン大統領の声明を勇気ある発言として受け取っておられることにつきましては、全く私も同感であります。先ほど私も率直に大平君にお答えしたところであります。
私がしばしば述べておりますとおり、問題の本質は、ベトナムにおける戦争を終結し、和平に導くことにあるのでありまして、具体的な個々の戦闘行為にあるのではありません。日本国民は、アジアの平和と安定が自国の平和と繁栄に直接つながることをはだで感じているからこそ、ベトナムの平和確保に大きな関心を寄せているのであります。
昨夜来のニュース、新聞報道等に見られますように、北ベトナムがジョンソン提案に真剣に耳を傾ける態度を示しておりますことは、まことに喜ぶべきことであり、北ベトナム指導者もジョンソン大統領に劣らない、これと同様な英知と勇気ある決断を示したものといえると私は思うのであります。しかし、真の和平実現までには、今後幾多の紆余曲折が予想されますが、少なくとも和平の糸口が開かれたことは事実であり、明るい希望を持つことができます。これまで話し合いをはばんできたのは相互の不信感であると考えられますが、当事者は、これを機会に不信感を払拭し、互譲の精神に基づいて、ベトナム全域に公正かつ永続的な和平をもたらすよう、粘り強い努力が期待されます。
私は、昨年の日米共同声明におきまして、ベトナム紛争の正当かつ公正な解決を求めるため、いつでも話し合いに入る同意のあることを明らかにしたジョンソン大統領の提案を歓迎し、できるだけ平和探求に努力するという日本の決意を再確認いたしました。また、北爆の停止には、ハノイによりこれに対応した措置が期待されるべきだとの見解を表明いたしましたが、今回のジョンソン提案によるハノイの柔軟な反応は、われわれの主張を裏づけるものである、かように私は歓迎するものであります。
ジョンソン大統領の和平提案は、今後ともあらゆる角度から検討されるでありましょう。西村君の分析のように、これがアメリカの極東戦略の大転換であり、防衛ラインの後退を意味するかどうかは即断することはできませんが、私は、米国の極東政策の大転換という表現にはちょっと同意できません。米国がこれによって孤立主義の方向をたどるとは見ておりません。イギリスが一九七〇年代にスエズ以東から撤退することを予定していることと、米国の和平提案を同列に見ることは妥当でないと私は思います。ジョンソン大統領のベトナム和平提案を米国の極東戦略の大転換と結びつけることは、必ずしも正しいとはいえないと私は思います。すなわち、これによりまして米国がアジアの平和と安定に果たしている責任をみずから放棄することはないといえます。ジョンソン提案は平和を志向するものとして歓迎すべきであって、これを危機感として受けとめることには同意できません。私は、今回のジョンソン提案のような重大決定をなし得るところに、米国が世界国家として興隆したかぎがあると見ています。いわゆる失敗だとは考えておりません。平和を求めることは栄光を求めることであって、これによって米国が屈辱を受け、失敗したとは私は考えておりません。
さきの本会議における西村委員長の提案は、私もこれを慎重に検討いたしました。しかし、今回和平の糸口が開けたのは、あくまでも米国自身のイニシアチブによるものであることを認識していただきたいのであります。これまでの過程においてわれわれの努力が必ずしも十分でなかったという御批判は、これは御自由でございますが、政府としては、可能な限り今日まで努力はしたと自負しております。また、さらに今後とも平和のために最善を尽くしてまいる考えでございます。
日米関係は協力と信頼の基礎に立っている。私は、今後ますます日米間の意思疎通をはかり、緊密の度合いを深めたいと決意しております。したがって、安全保障条約は今後とも堅持する考えであります。民主社会党の主張される駐留なき安保、あるいは基地の撤廃等につきましては、すでにしばしば私の考えを申し述べていますので、この際は特に申し上げません。
対中共関係は、従来どおり政経分離の原則を貫く方針であります。いま直ちにこの基本方針を変える考えはありませんが、国益に沿って常に注意深く見守っていく方針であります。
基地問題を含め沖縄問題の解決、これは百万の現地同胞のためにも、また一億のわが日本国民のためにも最善を尽くし、可及的すみやかに実現したい、かように私考えております。先ほどお答えしたとおりであります。
アジア諸国の自立を助け、その民生安定と国民生活の向上に寄与する方針は一貫しております。特に、ベトナム紛争が終息すれば、アジア全体が恒久平和達成のために経済繁栄への道を進むものと思われますので、アジア唯一の先進工業国であるわが国の役割りは、ますます重大になるものと考えております。この点は西村君御指摘のとおりであります。
わが国はアジアの一員であり、アジアにあって自主独立の大道を歩んでいる。しかしながら、アジアの諸国は、戦後独立した国が多く、その真の独立達成のために国際的な協力を必要とする国が多いのであります。いわゆる南北問題の解決は、世界の先進国の共通の課題でもあります。わが国は、アジア唯一の先進工業国として、世界の先進国に対し国際協調を呼びかけ、国際間の協力によってアジア諸国の民生安定と経済発展に資する考えであります。これが、申すまでもなくわが国の平和主義の立場でございます。
ジョンソン提案を実らせるための西村委員長の御提案は、政府としても真剣に検討してまいりたいと思います。幸い、北側の反応もきわめて歓迎すべきものでありますから、ベトナム紛争は逐次終結に向かうことが期待されます。また、ジュネーブ会議の共同議長国である英国、ソ連とも前向きでこの問題に取り組んでおりますが、わが国も、外交ルートを通じていち早く英、ソ両国に対して、積極的にこの問題と取り組むよう、側面から働きかけた次第であります。
また、西村君から御指摘になりましたように、今後の和平への道はたんたんたるものではないので、幾多の困難が予想されるが、その困難にくじけることのないように、積極的に和平への努力を続けていけという、これは御指摘になったとおり、私もその御意見に賛成であります。
私は、わが国の役割りは、今日よりも、この戦時中よりも、軍事的な介入をしていないわが国の役割りは、和平実現後にあると考えます。二十年間に及ぶベトナムの混乱は、ベトナム全域にわたって、極度の疲弊と破壊をもたらしております。わが国もまた、アジア平和建設に積極的な貢献を行ない、このための国際協力を強く推進する考えであります。
国際政局は常に流動します。御説のように、歴史はその流れをとめることはできません。私は、きびしい国際環境に常に柔軟に対応し、国の安全と独立を確保し、発展をはかってまいる決意であります。
以上、お答えをいたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/21
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022・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 次に、竹入義勝君提出、米北爆停止に関する緊急質問を許可いたします。竹入義勝君。
〔竹入義勝君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/22
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023・竹入義勝
○竹入義勝君 私は、公明党を代表して、ジョンソン演説に関する緊急質問をいたすものであります。
四月一日、テレビを通じて放送されたジョンソン大統領の演説は、全世界に電撃的に反響を与えたのであります。しかしながら、その後の推移を見守る世界の人々は、大きな失望を味わったのであります。すなわち、九〇%の部分停止といわれた北爆停止が、演説後北緯二十度線以北に限り停止するという事実を知り、実際、連日北爆が続けられたことについて、ジョンソン大統領の真意、すなわち平和を探求する意図がいずれにあるのか理解に苦しんだのであります。
それにもかかわらず、北ベトナム政府は、アメリカ側の誠意を疑いつつも、北ベトナムに対する戦闘行動を無条件に中止する確認をとるための代表を送るとの態度を発表いたしました。この北ベトナム政府の声明は、ベトナム戦争の終結、和平実現のための意思を示すものとして、公明党はこれに歓迎の意を表するものであります。(拍手)さらに、アメリカがこの機を逸せず、この北ベトナム政府の回答に対し誠意を持って臨み、すみやかに北爆を全面的に停止するとともに、直ちに和平交渉に入るべきであると強く要求するものであります。(拍手)
そこで、まず、私が申し上げたいことは、昨年十一月、総理の沖縄返還交渉のため、アメリカ訪問に先立って、野党の意見を求めたいと党首会談を要請されたときのことであります。私は、その席において一沖縄返還のため訪米される総理の労は多としながらも、決して、防衛力増強の義務等のいわゆるお荷物を持って帰ってはならない。また沖縄返還のめどをしっかりつけてきてもらいたいと心から要望をいたしました。そして、さらに次のように申し上げたのであります。すなわち、いまやベトナム和平は世界の希求するところであります。米国内にも反戦気分が強くみなぎり、またベトナムにおける作戦も行き詰まった感があります。わが国は、平和憲法を誇るアジアの先進工業国として、アジアの平和と繁栄に重大な責任があります。総理はそのとき、すでに北爆を支持し、アメリカのベトナム戦争を肯定するかのような発言をしておりましたが、それに対し私は、それは全くの誤りであり、訂正すべきであると強く総理に要望しました。さらに私は、アジアの平和の旗手として、この訪米の好機にジョンソン大統領に、総理の口から、アジア人の目で見たアジアの情勢、特にベトナム戦争についての日本国民の希望を説明し、エスカレートするアメリカのかたくなな態度を再び改めるべきであると訴え、及ばずながら日本としても、ベトナム和平のためあらゆる努力を払う用意があると、平和日本の基本姿勢を明確に内外に宣言すべきであると私は総理に真情をもって進言をしたのであります。
しかし、まことに残念ながら、それに対する総理の回答は冷淡そのものでありました。北爆の支持については、総理はこのように説明されました。すなわち、地上において北が南に浸透している、だから空において米空軍が北爆を行なうのはやむを得ないというものでありました。さらに、和平あっせんの私の提案に対しては、北爆停止に対する北の保障がなければ無理だろうと、一顧だにも与えられなかったのであります。
当時、アメリカのドル危機の徴候は顕著にあらわれ、財政的にも行き詰まり、その原因が膨大なベトナム戦費であることは、アメリカ国民のひとしく不満とするところでありました。ベトナム派遣兵員数の激増に伴い徴兵忌避の反戦運動が活発となり、国際的にもアメリカのエスカレートに対する批判が高まり、いわばジョンソン大統領は四面楚歌の状態でありました。そしてそれは、すべて現実となって、今日あらわれているのであります。(拍手)これぐらいのことは、何も私に限らず、大方の知るところでありました。
ところが総理は、そのような大方の判断とは逆の方向、すなわち、ジョンソン大統領をして、最近これほどの話の合った気分のよい会談はなかったという意味の賛辞を言わしめるほど、総理はジョンソン大統領に迎合をしたのであります。それは日米共同声明を見れば明らかであります。総理大臣は、紛争の正面かつ公正な解決を求めるという米国の立場に対する支持を表明するとともに、できる限り平和探求に努力するとの日本の決意を再確認した。総理大臣は、また、北爆の停止にはハノイによるそれに対応した措置が期待さるべきであるとの見解を表明した。キャンベラにおける記者会見の話も同様であります。さらに、十一月十六日のニューヨークの夕食会で、東南アジアの諸国は、米国が現在ベトナムで払っている犠牲と努力の意義を正当に理解している、等々、これを一言にしていうならば、アメリカのアジア政策に対する盲従、追随以外の何ものでもないではありませんか。(拍手)さらにいうならば、アメリカの中国封じ込め政策に対する無定見な迎合、すなわちこの日本列島をアメリカの中国敵視戦略の前線基地、防波堤たらしめる日米共同体制以外の何ものでもないといわざるを得ないのであります。
総理、よく聞いていただきたい。日本政府はベトナム戦争の平和解決のために何一つやっていないのであります。(拍手)のみならず、さらに、やってならないことをあなたはやっているのであります。無為無策、何も平和のために貢献しなかったことは、私がここで申し上げるまでもなく、あなたがよく御存じであります。これは、アジアの先進国家として、平和憲法を世界に誇る日本として、重大なる怠慢というべきであります。しかも総理は、ジョンソン大統領に、東南アジアの元首はすべてアメリカのベトナム政策を正当に評価していると言った。これは追従以外の何ものでもありません。さらに、北爆を支持するに至っては、言語道断というべきであります。
私は、ここで、やってはならないことを総理がやった事実を列挙しているのであります。動く核基地といわれ、ベトナム沖で北爆作戦に従事したエンタープライズの寄港承認、沖縄のB52の常駐の黙認、さらに、日本にある米軍基地をベトナム戦争の補給兵たん基地として提供し、あまつさえ事前協議を形骸化し、いわんや経済界にベトナム特需の名のもとに経済協力を慫慂した等、数えあげれば枚挙にいとまがないのであります。これらはすべて平和国家としてのわが国がしてはならないことであり、世界のベトナム戦争終結への希求と逆行する戦争協力以外の何ものでもないと思うのであります。(拍手)
そこで、伺いたいのでありますが、総理はなぜ和平あっせんの努力を惜しんだのか、あまつさえ戦争協力をせざるを得なかったのか、この点についてしかと伺いたいのであります。
思うに、それは、日米安保体制という大ワクに縛られた日本の対米従属の姿勢から来る必然のものであったのであります。日米安保は、言うまでもなく、米軍に基地を提供し、日本の安全保障という美名のもとに、アメリカの極東戦略を可能ならしめる危険な条約であります。しかもそれは、今日、日米共同声明に見られるとおり、アジアの紛争に対する日米共同責任体制という形に発展し、アメリカの核戦略体制に対応して、不可避的に核安保となっているのであります。私は、ジョンソンの北爆部分停止演説とそれに対する北ベトナム政府声明という劇的なこの数日の平和への模索を見るにつけましても、つくづくとわが国の置かれている立場、日米安保のもとにおけるわが国の外交不在の姿を、あらためて国民とともに考えねばならぬときが来たと訴えたいのであります。(拍手)
ジョンソン大統領は、この行き詰まったアメリカの現状から、その責任を強く感じて、今秋の大統領選挙に不出馬声明をいたしました。ジョンソン・佐藤路線という強いきずなをもって結ばれ、必要以上にジョンソン路線に同調してきた佐藤総理は、日米安保体制が、日本の将来にとってきわめて危惧すべき状態をかもし出すおそれをひしひしと感ずる現在、日米安保体制の堅持というこの方針が誤りであることを率直に認め、その責任を明らかにするため、みずからの進退をいさぎよくされるべきであると思うのであります。(拍手)
なお先ほどの答弁で、総理がみずからの進退は国民が決定するというならば、この際、解散をもって信を問うべきではないだろうか。(拍手)それもできないならば、総理のいう国民に進退をまかせるということは、いたずらに遁辞にすぎないと思うのでありますが、この点明確に答弁を願いたいのであります。(拍手)
総理は、沖縄の返還について、さきの国会答弁の中で、ベトナムについてのジョンソン大統領の新しい方針の提示は、沖縄にも幸いすると確信していると述べておられます。沖縄返還について、今回のアメリカの提案が好ましい影響を与えることを是認されたのであります。
かねて総理は、沖縄返還のときの基地の態様を決定する要素として、三つの条件をあげていたのであります。すなわち、その一つは極東の軍事情勢の変化であり、二つには科学技術の進歩、三つには国民世論の動向であります。沖縄の固定基地を不必要とする科学技術の進歩は、すでにICBMあるいはポラリス潜水艦等によって達せられているといっても過言ではありません。これはライシャワー前駐日大使をはじめ、数々の有識者が指摘するところであります。したがって、第一の条件である科学技術の進歩による沖縄基地の価値の低下は充足されていると見るべきであります。また、国民世論の動向については、幾多の世論調査が示すとおり、国民の大多数は沖縄の核基地の撤去に圧倒的な支持を与えていることは、すでに御承知のとおりであります。
このように、三つの条件のうち、科学技術の進歩と国民世論の動向の二つの条件は、すでに満たされたと認めるべきであります。あと一つの極東情勢の変化は、今回のジョンソン演説によるベトナム情勢の好転によって、新たなる展開を見るでありましょう。もはや北ベトナム政府の姿勢からいっても、さらに中国政策の前向きの取り組みによって、極東の緊張は大幅に緩和されることは当然の成り行きであります。ここに、総理みずからが提示した沖縄の核基地抜き返還の三条件はほとんど満たされることになるわけであります。またB52の沖縄常駐も、ベトナムの北爆停止の事態においては、その必要がなくなるのであります。自主平和外交に徹し、き然として沖縄返還の対米交渉を実現すべきであると確信するものでありますが、総理は、この際、従来の白紙論を撤回して、沖縄の核抜き返還を国民の前に確約する考えはないかどうか。この点もしかと承っておきたいのであります。(拍手)
また、佐藤総理が事あるごとに強調してきた、日米の責任あるパートナーシップとは何をさすのか。今回の突然のジョンソン演説によって、その実体が明らかとなりました。今回の演説については、ジュネーブ会議の共同議長国たるソ連並びにイギリスに対しては、事前に協議並びに了解が行なわれたことは、演説内容からして明らかであります。同時に、ベトナム参戦七カ国に対してもその通告が行なわれ、それは少なくともわが国に対する演説一時間前の通告よりも早かったことは、疑う余地はないのであります。いうなれば、日本はつんぼさじきに置かれたものと判断すべきであります。まさに日米パートナーシップの評価については、日米間に大きな格差のあることを思い知らされたというべきであります。真のパートナーシップとは、是を是、非を非として、相互の自主性を侵さないところにあると私は思うのであります。アメリカの恣意的な外交方針あるいは軍事方針に盲従することではないのであります。
ジョンソン演説は、アジア政策の基本をなす対中華人民共和国政策についても、一言も言及していないのでありますが、当然、事の成り行きより判断して、今回のベトナム新政策に重大な関連を有する中共に対する態度は、アメリカも無視することはできないものであろうと存ずるのであります。アメリカの対中共政策に変化ありとするかいなか、総理の見通しをこの際伺いたいのであります。
今回、日本をつんぼさじきに置いた結果から見ましても、ある日突然に米中対話が行なわれ、中共の承認まで発展することもあり得ることであります。わが国がアメリカに気がねをして、対中共政策をあくまでも政経分離という中途はんぱな態度で終始し、国際外交の孤児となることのないよう、いまこそわが国の中共政策を独自に確立すべきであります。すなわち、わが国が中共を承認し、国交を回復する考えはないか。また、中共の国連加盟について重要事項指定方式を排除する考えはないか。これらを含めて新段階に処するわが国の対中共政策の基本方針について、総理の所見を伺いたいのであります。
最後に、かつてアメリカのケネディ大統領は、一九六一年九月第十六回国連総会の席上、ボタン戦争であるといわれる核戦争の恐怖について、「偶発、誤算、あるいは狂気によっていまにも切り落とされそうなごく細い糸でつり下げられたダモクレスの核の剣のもとで、すべての男、女、そして子供たちが暮らしている」と述べ、全世界の危機を排除することを現代政治家の最大の課題として直視し、今日の世界が核の脅威に直面している容易ならざる事態について深く心を砕き、そこに、核兵器の絶滅に一切の政治行動の規範を置こうとしたのであります。ダモクレスの剣のもとに立たされた核大国の指導者の苦悩とともに、非核保有国の不安と焦慮も見のがすことのできない事実であります。このような核競争時代に置かれた世界の人々は、核を持つ、持たざるにかかわらず、恐怖と戦慄からのがれることはできないのであります。まさに人類は運命共同体としての危機に立たされているのであります。そして人々は、全世界の平和と安全が一日もすみやかに実現される日を待望しているのであります。
わが国は、唯一の原爆被爆国として、その悲惨なる体験をもとに全世界の平和推進のために立ち上がるべきであります。総理は、直ちに非核三原則に基づく率直明快な非核宣言を本院においてなし、決議することを与党総裁として決意し、世界の平和の宣言をすべきであると思うのであります。(拍手)さらに、核兵器全面撤廃のため核大国の最高首脳会議開催を提唱すべきであると思うのでありますが、この点について総理の決意を伺いたいのであります。
以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/23
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024・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 竹入君にお答えいたします。
自民、社会、民社各三党の代表の方に、外交の基本方針はるる説明をいたしましたから、重ねて申し上げる要はないかと思いますが、特に、竹入君にももう一度申し上げてみたいと思います。
御承知のように、わが国の外交基本方針は、自主的な判断に基づいて、日本独自の外交を展開しております。戦後の日本は、武力を背景とせず、経済力を背景とした外交政策をとっております。他国の内政に干渉せず、他国に脅威を与えないというわが国の行き方については、近来とみに諸外国の理解が深まり、わが国の国際的信頼も著しく増大しております。わが国の行き方が民主主義的かつ平和主義であるだけに、ときにはもどかしさを感ずる向きもあると思いますが、多くの人が指摘しているように、大戦後のわが国の行き方は、国際社会において独特のものであり、また、その独特の役割りが高く評価されつつあるのであります。われわれ日本国民は、世界のどの国にも増して平和を探求しており、政府の外交方針は、このような国民的願望を背景とした平和外交である点を、十分御認識いただきたいと思います。
ジョンソン声明について、その直前に米国側から連絡を受けております。何らの事前の協議がなかったのはおかしいという御指摘でありますが、日本は参戦国ではありません。また、戦争の当事国でもありません。この二つをどうも皆さん方はお忘れになっているんじゃないだろうか。お話を聞いてみますと、いかにも日本が参戦国であり、軍事的介入をしておるかのような、そういう当事国であるかのような話がなされております。私は、この点に基本的な間違い、認識を欠くゆえんがあるのではないか、かように思います。(拍手)
そこで、何にもやっていないじゃないか、なぜやらなかったか、こういうことをしばしば言われます。これが、私が言う参戦国であったり、当事国であったら、皆さん方も目に見えるようなはっきりしたやり方があるだろうと思います。私が、参戦国でない、当事国でないと言うのは、こういう点でも皆さん方の御理解をいただきたいのであります。米国が決定的な戦争拡大に踏み切るというならばともかく、ベトナム和平に向かって重大な一石を投じたのでありますから、われわれの希望に合致するものであり、日米信頼関係をゆるがす、そういうような問題ではありません。事前に、前もって、あらかじめ協議がなかった、こういうことでただいま言われるような信頼関係をこわすようなものでないことを重ねて申し上げます。(拍手)これをもって日本が対米追随外交、破綻というような言い方は、これは当たらない。私は、皆さん方も同時に、日本がりっぱな独立国である、そういう意味で追随外交だというようなことはしない、独自の道を歩んでおる、みずからの国をさげすむようなことはひとつ差し控えていただきたい。(拍手)
米国の対ベトナム対策の基本は、南ベトナムの要請に基づいて、その自由と独立を確保することにあります。米国はこのような基本政策のもとでベトナム紛争の平和的解決に努力を重ねており、軍事的対決政策はその基本ではありません。北爆のほぼ全面停止と、これに見合う北側の柔軟な対応は、平和を願う両者の歩み寄りが始まったと見るべきものであります。北ベトナムの人口の九〇%に当たるその地域は北爆から除外されておる。この事実を十分御理解していただきたいのであります。
今度の米国の和平提案、これに対する北側の反応は、公明党の和平提案の趣旨にも沿うものと私は考えております。ただし、現段階では話し合いの糸口が開けたというだけであり、最終的な和平が来るまでには、まだいろいろな事柄があると思います。われわれとしては、まず米国とハノイの接触を注意深く見守り、せっかく芽ばえた和平の機運を大事に守り育てることだと思います。交渉の形式、場所等については、当事者間の話し合いにまかせるべきであり、いま第三者がとやかく言うことは差し控えるべきだと、かように思います。
また、日米関係は、かつてないほど友好と信頼の基礎が確立していると思います。また、今後ますます日米友好関係を増進するという政府の基本方針には変わりはありません。その意味で、政府の外交基本方針を転換する考えは今日ございません。
中国問題に関しては、いろいろ御心配のようで、あるいはバスに乗りおくれるなとか、一夜にして置き去りになるようなことのないように、こういう御注意でございますが、今後長期的には国際情勢の変動に即応して誤りのないよう対処していくべきことは言うまでもありません。当面は、現在の政経分離政策を変更する必要はない、かように考えております。
今回のジョンソン演説は、米国の和平努力と誠意を示すものとして、これを高く評価しております。特に、ジョンソン大統領がその政治生命をかけて困難な問題に真正面から取り組んでいる姿に、深い敬意を表します。と同時に、ハノイの指導者が、このようなジョンソン大統領の決意と米国民の和平意欲を見誤らず、柔軟な対応姿勢を示していることについても同様であります。今後は当事者同士が一歩一歩信頼関係の樹立につとめ、恒久的な平和に持ち込むよう、忍耐強い努力を重ねるよう心から希望してやまないものであります。
すでに前者の質問でお答えしたとおり、わが国の役割りはベトナム和平実現後にあることは明らかであります。
責任をとって総辞職せよという竹入君の発言がございますが、いささか私は的はずれではないかと、かように思います。私は、今後とも、責任ある者として、国民に対する責任を遂行する考えであります。総辞職などはただいま考えておりません。これははっきり申し上げておきます。
また、解散をしたらどうか、こういう御意見でございます。私は、これは公明党の御意見として伺っておきます。
沖繩問題については、西村委員長の質問にお答えしたとおり、今後ますます国際情勢の推移を注意深く見守り、最も国益に沿う方針で解決をはかってまいります。ただいま核抜き返還云々のお話がございましたが、私は沖繩の米軍基地についての考え方はまだ白紙でございます。また、日米安全保障条約を堅持する方針にはこれまた変わりがありません。
次に、核兵器撤廃について核保有国の首脳者会議をあっせんする考えはないかとのお尋ねでありますが、核軍縮を行ない、究極的に核軍備を撤廃するにあたっては、現在の世界における軍事的均衡を破壊しないよう留意しつつ、通常兵器の軍縮と並行して有効な国際管理のもと、一歩一歩着実に実施することが必要であります。したがって、核軍縮の具体的措置について関係国間で十分に話し合いをし、周到な準備をしてからでなければ、首脳会談を開催しても何ら実質的な成果を期待し得ないと思います。わが国としては、実行可能なところからじみちに一歩一歩核軍縮を進めていくことが必要であろうと考えており、さしあたって公正な内容の核兵器不拡散条約の実現に努力する考えであります。
この際、核三原則を含む決議をしろというお話でありますが、これにつきましては、私が今回の予算委員会におきまして私の態度をはっきり申し上げましたので、今日それと変わりのないことを申しまして、お答えといたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/24
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025・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 次に、川上貫一君提出、ジョンソン大統領のテレビ演説に関する緊急質問を許可いたします。川上貫一君。
〔川上貫一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/25
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026・川上貫一
○川上貫一君 私は、日本共産党を代表して、ベトナム問題について佐藤総理に質問をいたします。
周知のように、昨夜ベトナム民主共和国政府は重大な声明を発表しました。これについて佐藤内閣は、この声明がジョンソン米大統領の演説に応じたものであるとされて、ジョンソン大統領の提案を生かして解決をはかる以外に道はないという見解を発表されました。これはベトナム問題の正しい解決にとって重大な問題でありますから、以下、具体的に総理の答弁を求めたいと思います。
そもそも、ジョンソン大統領の演説は、アメリカが、ベトナム人民の民族独立を目ざす正義の戦いと、アメリカを含む世界人民の非難と反対によって、もはやこれまでどおりの戦争政策を継続することができないほどの窮地におちいったことを示すものでありますが、しかし、重要なことは、決してアメリカがベトナムに対する侵略政策を根本的に変更したものではないということであります。
第一に、このジョンソン演説は、北ベトナムに対する爆撃を無条件に停止することを言明したものではありません。現にその四時間の後には、周知のように、非武装地帯から三百三十キロも奥深いタンホアを攻撃しました。その後連日にわたり、今日まで毎日百波以上に及ぶ爆撃を続けておるのであります。
第二には、南ベトナムに対しては、米軍の増派と五十一億ドルにのぼる戦費の増額を言明しております。同時に、かいらい政権を強化し、南ベトナムをアメリカの支配下に確保するばかりではなしに、侵略戦争を一そう拡大することを明らかにしたものであるといって差しつかえありません。
第三に、ジョンソン大統領が、ベトナム人民の態度いかんによっては、さらに北爆を強化し、一そう戦争を拡大する意思を明らかにしていることは最も重要であります。
要するに、この演説は、和平を唱えて時をかせぎ、体制の立て直しと新たな侵略を策する危険を含んでおることを無視することはできません。総理はジョンソン大統領の演説を歓迎すると述べておられます。それならば、このような危険な内容を含むこの演説のすべてにわたって歓迎されるのでありますか。これは明確な御答弁をお願いいたします。これが一点です。
現にベトナム民主共和国は、ジョンソン演説の偽りをきびしく非難するとともに、話し合いの前提として、アメリカのベトナム民主共和国への爆撃と一切の戦闘行為の無条件停止を重ねて要求しました。これはきわめて当然のことであります。そうして、アメリカのベトナム民主共和国に対する爆撃とそのほか一切の戦闘行為の無条件停止をアメリカと確定することによって、話し合いが始められるようにするために、アメリカと接触する代表を任命する用意があることを言明したのであります。
そこで、総理にお伺いいたします。総理は、ジョンソン大統領の演説を歓迎し、アメリカの北爆の継続、戦争の拡大の方針、これをあくまでも支持されるのでありましょうか。それともベトナム民主共和国の提案を支持されるのでありましょうか。これは今日きわめて重大な問題でありますから、明確な御答弁をお願いいたします。
第二に、ベトナム問題の根本的解決について質問いたします。
ジョンソン演説は、ジュネーブ協定を云々し、ジュネーブ会議の共同議長国である英、ソ両国に対して、和平のあっせんを求めております。しかし、アメリカは今日までジュネーブ協定についてどういう態度をとってきたのでありましょうか。アメリカ政府がジュネーブ会議に参加しながら、協定への調印を拒否したことは、周知の事実であります。申すまでもありませんが、ジュネーブ協定は締結後二年以内に南北ベトナムが自由選挙を行ない、統一ベトナム国家をつくり上げることを取りきめておるのであります。ところが、アメリカは、この自由選挙の実施を拒否したばかりではありません。ゴ・ジン・ジェムかいらい政権をでっち上げて、暫定的な軍事境界線を国境にすりかえ、さらにジュネーブ協定をじゅうりんして、大量の軍隊を送り、南ベトナムを文字どおりアメリカの軍事植民地に変えてしまったのであります。これこそが今日のベトナム問題の根源であります。(拍手)このようにジュネーブ協定をじゅうりんしたアメリカに、ジュネーブ協定を云々する資格があるでありましょうか。もし佐藤総理がジュネーブ協定に基づくベトナム和平を望まれるのであるならば、何よりもベトナム問題の根源、すなわちアメリカの侵略を取り去ること以外にありますまい。わが党は、とりわけ、アメリカのベトナム民主共和国への爆撃と一切の戦闘行為の即時無条件停止こそが、ベトナム問題解決への現実的な第一歩を切り開く道であることを一貫して主張しております。これについて、佐藤総理は、今日現在、どういう考えを持っておられますか、明確な御答弁を承りたいのであります。
第三に、アメリカのベトナム侵略戦争に対する佐藤内閣の態度について質問いたします。
佐藤内閣は、アメリカのベトナム戦争に軍事的協力はしていないと繰り返し答弁しておられます。しかし、ベトナム民主共和国は、去る三月十三日、日本政府に抗議する声明を発表しました。その中で、日本政府がベトナム戦争に、日本領土の米軍基地を使用させ、人力、銃砲、弾薬、ナパーム弾、化学毒物、その他ベトナムで使用する軍需品をアメリカに提供し、さらにベトナム人民虐殺のためのB52が沖縄から発進することを許していることについて厳重に抗議をしております。佐藤総理は、一昨日、参議院の予算委員会で、今後も従来の姿勢を改める必要はないと答弁されておりますが、このベトナム民主共和国の抗議声明に対して、今日までいかなる措置をとられましたか。今後またどういう措置をとられるつもりでありますか。この重大な抗議声明を全く無視するのでありますか。さらにまた、この抗議声明にもかかわらず、ますますアメリカのベトナム侵略戦争への支持、協力を深めると、こういうお考えでありますか、ここで明確な答弁を求めます。
以上、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/26
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027・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 川上君にお答えいたします。
ただいままで、ジョンソン大統領の演説は、世界各国におきまして、たいへん歓迎されております。また、これに対応する北ベトナムの態度も、これまた好ましいものだと申しておることは、先ほど来の私の答弁でおわかりだと思います。しかし、川上君は、共産党一流のただいま解釈をしておられます。したがいまして、ジョンソン大統領の演説は、真の和平を望むものではないんだ、北爆の正当化並びに戦争への増派、また、軍事費の増額、かようなことを考えている、いわゆる戦争の拡大である、かような御指摘であります。私はさようには考えません。先ほど申し上げますように、和平を心から願っておる、また、世界各国も、和平のきっかけができた、こういう意味でこれを育てようとしている、このことを真剣に、また率直に考うべきだ、かように私は考えております。
そうして、次に、今回ジュネーブ会議の協定を持ち出しておる、どうもこれもわからないことだ、こういうようなお話ですが、この北ベトナム——現状がどうして起きたのか、このことをひとつ、共産党は共産党なりに観察されるでありましょうが、私どもの観察は、ただいまのような状態が起きたのは、北からの浸透が絶え間なく南ベトナムに対して行なわれておる、この浸透を防いで、そうして南ベトナムの自由と独立を守る、その目的のためにただいま戦いが展開されておる、かように思うのでありまして、(拍手)この大事な事実の認識が、遺憾ながら共産党と私では違うのであります。さように御理解をいただいて、この認識のもとに立つならば、ただいまの戦争が、どういう方向に展開されておるか、おのずから御理解ができるだろうと思います。
次に、したがって、米国の侵略戦争だと一口に言われますが、米国は領土的野心は持っておりません。また、ただいま申し上げるような南越の自由と独立を確保するために、ただいまのような戦いが展開されておるのであります。したがって、この点を十分理解してやらないと、この南越政府の考え方も、また南ベトナム政府に協力するアメリカのやり方にも理解ができないだろうと思います。
私どもは、心から和平を望んでおるのでありますし、米国自身も、和平が一日も早く招来することを念願いたしております。幸いにして、そのきっかけができたのであります。これを批判するだけでなしに、これを見守って育てていこうではございませんか。私は川上君に、和平を心から願われるなら、そういう方向で御協力を願いたいと思います。(拍手)
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日程第一 所得税法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
日程第二 法人税法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
日程第三 物品税法等の一部を改正する法律
案(内閣提出)
日程第四 租税特別措置法の一部を改正する
法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/27
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028・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 日程第一、所得税法の一部を改正する法律案、日程第二、法人税法の一部を改正する法律案、日程第三、物品税法等の一部を改正する法律案、日程第四、租税特別措置法の一部を改正する法律案、右四案を一括して議題といたします。
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所得税法の一部を改正する法律案
法人税法の一部を改正する法律案
物品税法等の一部を改正する法律案
租税特別措置法の一部を改正する法律案
〔本号(二)に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/28
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029・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 委員会の報告を求めます。大蔵委員会理事渡辺美智雄君。
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〔報告書は本号(二)に掲載〕
—————————————
〔渡辺美智雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/29
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030・渡辺美智雄
○渡辺美智雄君 ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案外三法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過の概要並びに結果を御報告申し上げます。
まず、所得税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
この法律案は、まず第一に、夫婦及び子三人の給与所得者の課税最低限を十万円程度引き上げて約八十三万円とするため、各種人的控除をそれぞれ一万円引き上げるとともに、給与所得控除の見高限度額を六万円引き上げることといたしました。一方、これに関連して、最低税率を〇・五%引き上げて九・五%にすることといたしております。
第二に、母子世帯、身体障害者等についての所得控除の引き上げを行なうとともに、適格退職年金及び地方公共団体が心身障害者に関して実施する共済制度の掛け金を、生命保険料控除の対象とすることといたしました。
また、営業外の商品取引による雑所得や政治家の雑所得等、いわゆる雑所得については、その所得の計算上生じた損失の金額については、他の所得との損益通算はできないことといたしました。
そのほか、寄付金控除の足切り限度の引き下げ、雑損控除等の適用要件の緩和等、税制の整備、合理化をはかることといたしております。
次に、法人税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
この法律案は、貸し倒れ引き当て金をはじめとする各種引き当て金制度及び欠損金の繰り越し控除に関する適用要件を緩和することといたしております。
さらに、退職年金積み立て金に対する法人税率を一・二%から一%に引き下げることとするほか、圧縮記帳の特例の対象となる工事負担金の範囲に農業協同組合等が受け取る有線放送電話についての工事負担金を追加する等の措置を講ずることといたしております。
次に、物品税法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
この法律案は、暫定軽減措置の適用期限が到来する物品十品目のうち、トランジスターテレビ受像機、パッケージ型ルームクーラー、温蔵庫及び電子楽器の四品目については、現行税率に若干の手直しをして、さらに二年間経過措置を続けることとするほか、アンサンブル式レコード演奏装置につきましては、今回一五%の本則税率が適用されることになりますが、その構成部分品に対する税率についても、これと同一とする等の調整措置を講ずることといたしております。
最後に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
この法律案は、まず第一に、輸出の振興に資するため、輸出の伸長に特に貢献したと認められる企業に対して輸出割り増し償却の特別割り増し及び海外市場開拓準備金の高率積み立てを認めることとしたほか、技術等海外取引にかかる所得控除制度の対象範囲を拡大する等、現行の軽減措置を一そう強化することといたしております。
第二に、技術開発の促進に資するため、試験研究費が増加した場合の税額控除制度を拡充し、年率一二%をこえて増加した試験研究費について高率の控除を認めることとしたほか、電子計算機産業の育成に資するため、電子計算機買い戻し損失準備金制度を設けることといたしたのであります。
第三に、中小企業の構造改善に資するため構造改善促進計画を実施する商工組合等の組合員である中小企業者につきまして、工場用建物、機械等の二分の一割り増し償却制度を設けるほか、中小企業構造改善準備金、中小企業の貸し倒れ引き当て金の特例等の適用期限を二カ年間延長することといたしたのであります。
第四に、既存の特別措置の整備合理化等を行なうことといたしております。すなわち、価格変動準備金制度につきまして、現行の積み立て率を二%程度引き下げることといたしました。国債については、別ワク五十万円の少額貯蓄非課税制度を設けることとし、また事業用資産の買いかえの特例の適用期限を一年間延長するほか、期限の到来するその他の特別措置について、実情に応じ、二年ないし五年間期限を延長する等の措置を講ずることといたしております。
この法案の審議の過程を通じて、質問者の中から最も多く出された意見は、特別措置法の減免税について、政府は一そう厳格な姿勢で再検討、洗い直しをし、その目的を果たしたもの、期限の到来したものなどは、勇断をもって改廃すべしということであったことを御報告申し上げます。
以上の各案につきましては、参考人を招いて意見を聴取するなど、慎重審査を行なった結果、所得税法の一部を改正する法律案、及び法人税法の一部を改正する法律案につきましては去る三月二十五日、他の二法律案につきましては、四月三日質疑を終了いたしました。質疑応答の詳細は会議録に譲ることといたします。
次いで、これら各案に対して、山中貞則君外二十一名より修正案が提出されました。
修正の内容を概略申し上げますると、物品税法の改正案を除く三案の施行期日を公布の日に改めるほか、法人税法の改正案につきましては、欠損金の繰り越し控除等の改正規定を四月一日に遡及適用することとし、租税特別措置法の改正案につきましては、減価償却の特例等に関する改正規定を四月一日に遡及適用する等の措置を講ずることといたしたのであります。
また、物品税法の改正案につきましては、施行期日を四月十日に改めるとともに、改正法が四月一日から施行されなかったことにより税負担が上昇した物品のうち、改正法の施行により税負担が軽減もしくは免除される物品に関する改正規定の適用を四月一日に遡及させる等の措置を講ずることといたしております。
次いで、各案並びにこれら各案に対する修正案を一括して討論に入りましたところ、自由民主党を代表して村上信二郎君、各案並びに各修正案に賛成の旨を、日本社会党を代表して広沢賢一君、民主社会党を代表して河村勝君、公明党を代表して田中昭二君は、各案並びに各修正案に反対の旨をそれぞれ述べられたのであります。
次いで、順次採決をいたしましたところ、修正案並びに修正部分を除く原案のいずれも多数をもって可決され、よって各案とも修正議決となりました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/30
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031・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 四案につき討論の通告があります。これを許します。広沢賢一君。
〔広沢賢一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/31
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032・広沢賢一
○広沢賢一君 私は、日本社会党を代表して、所得税、法人税、物品税及び租税特別措置法の一部を改正する諸法案並びに修正案に反対の討論を行なうものであります。
今回の所得税法の一部改正は、給与所得の課税最低限を四人世帯年収約八十三万円に引き上げるものであります。しかし、これでは、政府みずからが消費者物価の上昇四・八%に、消費者米価の値上がりが含まれていないとみずから告白している状況のもとにおいて、物価がさらに上がり、給与ベースの引き上げが行なわれた場合、物価調整減税としても、きわめて不十分であることは明らかであります。しかも、今日の所得税の累進構造が、年収百万円付近で小刻み累進制になっているため、今回のいわゆる減税措置によっても、年収五十万円の独身者は、わずか年千六百五十円の減税に対して、年一千万円の所得者は、二十五万九千五百円の減税になっております。まことに話が逆になるような効果を生んでおります。
第二に、今回のいわゆる減税千五百億円は、一方でちょうど千五百億円の酒税、たばこ、物品税の増税を予定しているのであります。その結果、政府は、これで差し引き減税ゼロであると称しておりますが、事実は全く反対に、所得税の減税に浴しない二千万人の勤労大衆は、むしろ、一日当たり、たとえば、たばこ一箱十円、ビール一本七円の値上がりで、これを年にすれば、総計六千百二十円程度の増税になるのであります。したがって、さきに申しました月収四万円、年収五十万円の所得税納入者までが、所得税の減税どころか、差し引き四千四百七十円の増税になるわけであります。これは、まさに羊頭を掲げ狗肉を売るのたぐいであり、このような大衆増税、高額所得減税というにせ減税法案を許すことはできないのであります。(拍手)
しからば、十分に大衆減税を行なう財源はないかといえば、そうではないのであります。去年の九月期、ことしの三月期決算に見られるように、独占的な大企業は、かつてない利益をあげております。問題は、正しい税制を通じて、これらが十分に予算財源にくみ尽くされていないところに、今日の財政硬直化、税制硬直化の真の原因があるわけであります。
そのガンの一つは租税特別措置であります。この点、同法案について、本会議におけるわが党の総括質問に対して、佐藤総理は、「租税特別措置法に基づく減収は大企業のみを有利にしているものではない。中小企業のほうが減収額は多い、社会党はためにするために申している」と、およそ非科学的な放言を行ないました。
これに対してわが党が大蔵委員会で究明したところ、総理は、肝心の大企業と中小企業の区別は資本金でどのくらいであるか、それさえも知らないでかかる放言を行なっていることが明らかになりました。国権の最高権威の答弁としては許すべからざることであり、不謹慎といわねばなりません。(拍手)
さらに、総理答弁の根拠となった政府資料を検討した結果、たとえば千六百十六億円に及ぶ貯蓄の奨励、これは国民すべでが同じ条件だからという理屈で、大と中小企業の区別からはずしているということも明らかになりました。ところが、勤労者は、年収四十万円以上の給与所得には税金がかかるのに、不労所得、高額資産階級は、株の配当収入年収二百二十六万円まで無税であるという、例の配当所得の課税の特例をはじめ、利子所得の分離課税などがこの中に含まれているのを見てもわかるように、これはだれが見ても、圧倒的に高額資産階級に有利な税制であることは明らかであります。
さらにまた、たとえば九電力会社に許されている渇水準備金も、明らかに会社経理の中では益金不算入となっているにもかかわらず、取りくずした分はむしろ増収であると、白を黒とした言い方で、ばく大な各種引き当て金、準備金が会社会計学の解釈操作のもとで隠されております。このことは今後とも許し得ないことであります。
そればかりではありません。こうした租税特別措置が世論一般に評判が悪いことも一つの原因となって、すでに、貸し倒れ引き当て金、返品調整引き当て金、賞与引き当て金、退職給与引き当て金、特別修繕引き当て金等が法人税法に組み込まれております。今後も引き当て金、準備金が各種名目のもとで本法に繰り入れられ、その減収額は租税特別措置から消え去り、巨額の大資本の特別減税が会計制度の中に制度化されていく傾向を厳に警戒しなければならないと思うのであります。今回の法人税法の一部改正をする法案の中に、わが党としては幾多の賛成すべき諸点があるにもかかわらず、この五つの引き当て金制度が将来負債性の強いものであるという、そういうことで、青色申告の特典からこれを一般化していく動きがあらわれております。これがやがて他の引き当て金に及んで、漸次法人税法の中に制度化されていく危険に対して、国民はこれに強く警戒しなければなりません。
租税特別措置は、本来税の公平を阻害するものであるから、これを制度化し、固定化してはならない。政策効果を吟味して、常に洗い直す必要があると税制調査会で繰り返しいわれているにもかかわらず、今回の法改正では、資本構成の是正のための減税措置の期限延長をはじめ、輸出割り増し償却、海外市場開拓準備金制度の拡充等、ひいては国際観光ホテルの減価償却資産耐用年数の短縮、国税庁汚職で有名になった電子計算機の下取り買い戻し準備金まで拡充するというありさまであります。さらにまた、最近土地価格の騰貴、銀行や大会社の子会社による土地買い占めと脱税等、重大な社会問題になっている土地税制については、ただ一つ事業資産の買いかえの延長だけにとどめて、何ら根本的な対策を明示していないのであります。これは重大な政府施策の失態といわなければならぬのである。
以上の諸点からしまして、われわれは、所得税、法人税、物品税、租税特別措置法の一部改正法案並びに同修正案に反対するものでありますが、最後に、大蔵委員会における議会政治のあり方について一言しなければなりません。
わが党は、以上の諸点について、一つ一つ具体的事実を明示して政府失政を追及し、酒の増税を一カ月引き延ばしました。これをはじめとして、数々の成果をあげたと確信しておりますが、このように、国民のためにきわめて大切な税制について、委員会はときには夜おそくまで慎重審議を続け、ついに期日である四月一日を越えました。日が迫るに従い、与党自民党有力者の中から一括強行採決、単独採決などの暴論が起こったと新聞は報じております。何たる党利党略、みずから議会政治と国を乱すものではありませんか。これに対して大蔵委員会は堂々たる慎重審議に努力してまいりましたが、これは議会政治確立の上から大きな成果であったと確信しております。(拍手)
特に政府・与党の諸君に申し上げたい。世界はいま、ポンド、ドルの危機、ジョンソン大統領の敗北といい、アメリカの支配体制は大きくゆらぎ、転換しております。与党の中からも、大きな平和への前進に伴って、対中国政策転換の要求など正しい声がほうはいとわき上がっておるではありませんか。(拍手)このようなときに、アメリカのドルのかさ、核のかさ、台湾、韓国に一辺倒し、国内では社会党をはじめとして野党に対して、増減税法案を多数横暴で押し通す、こういうがんこ頑迷分子の言うことをそのとおり聞くならば、佐藤内閣の崩壊、危機に迫られるばかりではございません。日本の平和と民主主義の危機を招き、議会政治の正しい発展は期し得られません。いま重大な歴史の転換期にあって、特に厳重に警告して、私の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/32
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033・小平久雄
○副議長(小平久雄君) これにて討論は終局いたしました。
四案を一括して採決いたします。
四案の委員長の報告はいずれも修正であります。四案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/33
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034・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 起立多数。よって、四案とも委員長報告のとおり決しました。
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日程第五 日本開発銀行に関する外航船舶建
造融資利子補給臨時措置法の一部を改正す
る法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/34
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035・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 日程第五、日本開発銀行に関する外航船舶建造融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
—————————————
日本開発銀行に関する外航船舶建造融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法律案
〔本号(二)に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/35
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036・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 委員長の報告を求めます。運輸委員長大野市郎君。
—————————————
〔報告書は本号(二)に掲載〕
—————————————
〔大野市郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/36
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037・大野市郎
○大野市郎君 ただいま議題となりました法律案について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案の内容については、お手元に配付されております要旨をごらん願います。
本案は、去る三月十二日本委員会に付託となり、自来五回にわたって審査が行なわれましたが、その内容は会議録によって御承知を願います。
四月三日、討論の後、採決の結果本法案は起立多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対して附帯決議を付することに決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/37
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038・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を・委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/38
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039・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
————◇—————
日程第六 皇室経済法施行法の一部を改正す
る法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/39
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040・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 日程第六、皇室経済法施行法の一部を改正する法律案を議題といたします。
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皇室経済法施行法の一部を改正する法律案
〔本号(二)に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/40
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041・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 委員長の報告を求めます。内閣委員長三池信君。
—————————————
〔報告書は本号(二)に掲載〕
—————————————
〔三池信君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/41
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042・三池信
○三池信君 ただいま議題となりました皇室経済法施行法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、内廷費の定額六千八百万円を八千四百万円に、皇族費の定額六百二十万円を七百二十万円にそれぞれ増額しようとするものであります。
本案は、二月十日本委員会に付託、三月五日政府より提案理由の説明を聴取し、慎重審議を行ない、四月三日質疑を終了いたしましたところ、松澤委員外三名より、「四月一日」としている施行期日を「公布の日」に改め、その適用を本年四月一日からとする旨の修正案が提出され、趣旨説明の後、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/42
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043・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/43
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044・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/44
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045・小平久雄
○副議長(小平久雄君) 本日は、これにて散会いたします。
午後五時十五分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 佐藤 榮作君
外 務 大臣 三木 武夫君
大 蔵 大臣 水田三喜男君
運 輸 大 臣 中曽根康弘君
国 務 大 臣 田中 龍夫君
国 務 大 臣 鍋島 直紹君
出席政府委員
内閣法制次長 吉國 一郎君
厚生政務次官 谷垣 專一君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X02019680404/45
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