1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年五月二十二日(水曜日)
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議事日程 第二十八号
昭和四十三年五月二十二日
午後二時開議
第一 所得に対する租税に関する二重課税の回
避のための日本国とデンマーク王国との間の
条約の実施に伴う所得税法、法人税法及び地
方税法の特例等に関する法律案(内閣提出、
参議院送付)
第二 海外経済協力基金法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
会期延長の件
日程第一 所得に対する租税に関する二重課税
の回避のための日本国とデンマーク王国との
間の条約の実施に伴う所得税法、法人税法及
び地方税法の特例等に関する法律案(内閣提
出、参議院送付)
日程第二 海外経済協力基金法の一部を改正す
る法律案(内閣提出)
航空業務に関する日本国政府とレバノン共和国
政府との間の協定の締結について承認を求め
るの件(参議院送付)
所得に対する租税に関する二重課税の回避及び
脱税の防止のための日本国政府とセイロン政
府との間の条約の締結について承認を求める
の件(参議院送付)
所得に対する租税に関する二重課税の回避のた
めの日本国とデンマーク王国との間の条約の
締結について承認を求めるの件(参議院送
付)
船員の厚生用物品に関する通関条約の締結につ
いて承認を求めるの件(参議院送付)
アジア=オセアニア郵便条約の締結について承
認を求めるの件(参議院送付)
午後二時二十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/0
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001・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/1
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002・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) この際、新たに議席に着かれました議員を紹介いたします。
第二百十七番、奄美群島区選出議員、保岡武久君。
〔保岡武久君起立〕
〔拍手〕
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会期延長の件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/2
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003・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 会期延長の件につきおはかりいたします。
本国会の会期を六月三日まで十日間延長いたしたいと存じ、これを発議いたします。
採決いたします。
会期を六月三日まで十日間延長するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/3
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004・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、会期は十日間延長するに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/4
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005・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 日程第一、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とデンマーク王国との間の条約の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/5
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006・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長田村元君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔田村元君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/6
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007・田村元
○田村元君 ただいま議題となりました租税条約関係の法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
この法律案は、今回、わが国とデンマーク王国との間の租税条約が全面的に改定されることとなったことに伴い、改定後の同条約を実施するため、現行特例法の全文を改正し、特に法律の規定を要するものについて、所要の立法措置を講じようとするものであります。
すなわち、わが国の所得税法によりますと、非居住者または外国法人の取得する配当、利子及び工業所有権の使用料等につきましては、原則として二〇%の税率で源泉徴収所得税が課されることになっております。
ところが、今回の改定条約によりますと、一般の配当につきましては一五%、親子会社間の配当、利子及び工業所有権の使用料等につきましては一〇%を、それぞれこえてはならないとされておりますので、これらの所得に対する源泉徴収所得税の税率を、条約に定める制限税率に法定するとともに、合算申告納税の場合の税負担についても、右制限税率をこえることのないよう、地方税の負担をも含めて調整措置を講ずる等、所要の規定の整備をはかることといたしております。
本案は、さきに参議院を通過して本院に送付されたものでありますが、審査の結果、昨二十一日、質疑を終了し、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案のとおり可決となりました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/7
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008・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/8
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009・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/9
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010・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 日程第二、海外経済協力基金法の一部を改正する法律案を議題といたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/10
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011・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。商工委員長小峯柳多君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔小峯柳多君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/11
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012・小峯柳多
○小峯柳多君 ただいま議題となりました海外経済協力基金法の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
海外経済協力基金は、設立以来、長期低利の資金を発展途上国の産業開発計画に投融資することにより、その国の経済発展に重要なる役割りを果たしてまいりました。そして、わが国経済協力の一翼である資本協力の実施機関として大きな成果をあげてまいりました。
ところが、最近、東南アジア等の発展途上国の一部において、当面する外貨事情の窮迫等による経済危機克服のため、物資協力が強く要請されるようになりました。すなわち、開発協力に加えて、物資協力のための輸入資金の供給が強く要望される実情にあるのであります。
本案は、こうした発展途上国の要請に対処し、その経済の安定に資するため、わが国からの物資輸入について、経済協力基金がこれらの地域の政府等に対して、必要な輸入資金を貸し付けることができるよう、経済協力基金の目的及び業務範囲を広げること等、所要の改正を行なわんとするものであります。
本案は、去る四月十二日に当委員会に付託され、十六日に宮澤経済企画庁長官から提案理由の説明を聴取し、五月十五日より質疑に入り、以来、参考人を招致し、四日間にわたり経済協力一般を含めて熱心な質疑応答が行なわれました。その審査の内容については、会議録を御参照願いたいと存じます。
かくして、二十一日、質疑を終了し、討論に付しましたところ、日本社会党を代表し千葉佳男君より反対、民主社会党を代表し玉置一徳君より賛成、公明党を代表し近江巳記夫君より反対の、それぞれの意見の開陳が行なわれたのであります。
討論終局後、引き続き採決いたしましたところ、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/12
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013・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。千葉佳男君。
〔千葉佳男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/13
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014・千葉佳男
○千葉佳男君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となっております海外経済協力基金法の一部を改正する法律案に対しまして、反対の意見を表明するものであります。(拍手)
あらためて申すまでもなく、いわゆる南北問題は、先進諸国と発展途上国との格差の解消を目ざし、抑圧と不満から生ずる紛争を未然に防ぐという意味で、二十世紀後半の世界政治において最も重要な課題であります。昭和三十五年十二月に施行せられました本法に対し、附帯決議を付して賛成したのも、この世界史の流れの中で、わが国もその国力にふさわしい貢献をすることに心から拍手を送ったがためであります。
しかるに、今回の法改正は、特定の国を特定の国に肩がわりして行なおうとする点におきまして、その動機と性格に反世界史的、反国民的な誤りがあります。すなわち、南北間の格差の解消は世界平和に通ずるがゆえに、先進諸国民の理解と協力を得た上での国連中心主義で行なわれるべきものであります。しかるに、去る四十二年九月、わが国がそのイニシアチブをとり、アメリカ、イギリス、西ドイツなど八カ国、オブザーバー三カ国、それにIMFが加わり、いわゆるコンソーシアムを結成し、同じく債権国であるはずのソ連、中国を排して、ひたすら親西欧のポーズをとるスハルト政権てこ入れに狂奔するのは、国際協力による南北間の格差解消という世界史の流れに逆行するものであります。
基金法の目ざす東南アジアの開発と援助を待つ国々は、ひとりインドネシアのみではなく、餓死者を出しておるインドにおいてしかり、社会主義体制下にあるビルマにおいてしかり、ベトナム動乱と背中合わせのカンボジア、ラオスにおいてしかりであります。にもかかわらず、三十五年の施行以来、最大の貸し付け国は韓国と台湾であり、いままたさらにこれにインドネシアを加えるということは、中国を取り巻く反共体制の確立を目ざしたもので、佐藤・ジョンソン共同声明の中国敵視政策と軌を一にするものであります。(拍手)
ベトナム戦費の増大のためのドルの不安、そしてそのドルの防衛のための対外経済援助費の削減は、コンソーシアムという穴をくぐり抜けるときにアメリカと同額の三分の一の重荷を背負わせられるのであります。国民の血と汗の結晶である税金が、インド、ビルマ、カンボジア、そしてインドネシアと、真に経済協力の目的にかなう使い方をするならば、これは格別でありますが、ベトナム戦争によるドル防衛の肩がわりというのでは、納税者である国民の利益に相反し、断じて容認することができないのであります。(拍手)動議において反国民的であり、性格において世界史の流れにさからうこの改正案に対しまして、私が反対する第一の理由であります。
ひるがえって、十年前の一九五八年四月に発効しました賠償協定以来のわが国とインドネシアの関係を、主としていうところの経済協力について見た場合はどうでありましょうか。
賠償協定八百三億のうち、すでに六百五十八億を支払い、緊急援助等を含む贈与分七十二億、円借款二百八十八億、合計一千十八億円という巨額な資金を貸与しております。加うるに、焦げつき債権に対する再融資が百八十億、合計実に千百九十八億円に達しております。しかし、この巨額な援助にもかかわらず、たとえば高さ百メートルの多目的ダムを建設するはずが、六十メートルに変更を余儀なくされ、洪水調節用の役割りしか果たしていない。あるいは百九十隻の船のうち、喫水線が深過ぎたり、故障を直す部品がなかったりして、百五十隻が岸壁につながれたままで、モニュメントやホテルだけがひとりむなしく建っておる。しかも、その裏に数々のスキャンダルが見えつ隠れつしたことは、国民周知の事実であります。
審議の過程で明らかにされましたが、昨年の六千万ドルの援助に対するルピアの積み立て金の大半が、軍人を含む政府職員の給料に使われた事実、この法案の通過するのを待って直ちに正式契約されるであろうと報じられております八十優円にのぼるジープ、ステーションワゴン、救急車などの軍需品は、インフレを抑制するどころか、かえってこれを助長するものであります。これが今回改正する商品援助の姿であり、この商品の輸出こそ、開発の本来の目的を忘れ、かつ、汚職、腐敗の根源につながるもので、まさに言語道断であります。(拍手)焦げつき債権救済のリファイナンス、その商社の名簿は、追及にもかかわらず、ついに明らかにされませんでしたが、さきにスマトラのランボン開発に期待するアラムシャ将軍が、外交ルートを飛び越えて、スハルト大統領の信書を佐藤総理に手渡そうとしたことは、利権と結ぶインドネシア援助をあざやかに象徴するものであります。
私が第三に指摘しなければならないのは、経済外交を唱えながら、場当たり的で便宜的なそのまずさであります。スハルト政権が新外資法をとりながら、旧宗主国であるオランダ等に接収財産の返還を進めておりますが、将来の債務返済の唯一の原資ともなるべき銅、すず、ニッケル、ボーキサイトなどの資源は、資本間の冷厳な鉄則によりまして、現在、すでにアメリカ、カナダ、西ドイツなどの巨大会社によって独占開発権がもぎ取られ、しかのみならず、内水面宣言によりまして、日本漁船の安全操業はいまだに確立されておりません。日米対等のパートナーシップでアメリカと同額の三分の一を負担する高価な代償は、かくのごとき姿であります。
なるほど、わが国の総生産は世界第三位に達しました。あのオリンピックも、これからの万国博覧会も、世界驚異の中でにぎにぎしく行なわれるでありましょう。アジア唯一の先進国であることも、そのとおりであります。しかしながら、それと同時に、第二十一位の国民所得であることも、まぎれもない事実であります。私は、足らない社会資本や倒産する群小の会社、低所得に苦しむ諸階層、これを放置したままでなぜ出すのか。こういう次元を異にすることをあえて言うつもりはありません。しかしながら、先進国の一員として、それにふさわしい経済援助は、当然しかあるべきでありますけれども、唯一の返済の資源が食い荒らされ、次の金の出し方が渋いと、ブラックメイル、いわゆる脅迫外交呼ばわりされたのでは、泣くに泣けないというべきであります。もっとも、この海外経済協力基金は、大蔵省の予算に計上されております。監督は経済企画庁、指導は外務省、輸出のチェックは通産省というわけで、責任不在でありますから、今後、延べ払い、再融資、再援助、再々融資、こういうようなおおばんぶるまいの悪循環を繰り返しまして、えい、めんどうだからくれてしまえ、こういうような、第二の賠償の道をたどるのではないか、このように心配されますが、そうなりましたならば、私は、また何をか言わんやであります。
最後に申し述べたいのは、前にも触れましたように、予算どおりの六千万ドルであるか、アムステルダム会議でIMFから明示された三億二千五百万ドルの三分の一、一億一千万ドルをアメリカから押しつけられるのか。けさの新聞に早くも報じられておりますように、九千万ドルまでせり上がるのかについてであります。審議の過程でも、相手のある交渉ごとであるからとの理由で、ついに明らかにされなかったのでありますが、これは、国会の予算審議権を拒否する憲法上のゆゆしい問題であります。(拍手)それと同時に、この法改正の持つ、暗く解きがたい性格を端的に物語っておるものと私は思います。
総じて、いまるる申し述べましたように、この法改正の動機において、性格において、はたまた内容、いきさつ、そのねらい等、いずれをとりましても、経済援助の持つ本来的な性質から見まして、世界平和、国際協調、善隣友好、国家利益、国民の利益、このいずれとも縁もゆかりもないことを明らかにしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/14
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015・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 坂本三十次君。
〔坂本三十次君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/15
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016・坂本三十次
○坂本三十次君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました海外経済協力基金法の一部を改正する法律案に対して、賛成の討論をいたすものであります。(拍手)
私は、先年ジュネーブにある前の国際連盟、いまの国連ヨーロッパ本部へ参りました。私の目を引きつけましたのは、建物にあらずして、その一室に掲げられた一枚の大きな絵画でありました。その絵は三色に分けられて、一部は暗黒にうずくまる人影、夜明け前の薄あかりにうごめく群像、さらに、さんざんたる太陽のもとの幸福そうな三通りの人々の絵でありました。すなわち、一つの世界の中に、暗国のアフリカ、夜明け前のアジア、文明なる欧米の激しい格差を象徴しておりましたこの一枚の絵画は、いままさに南北問題の現実的課題として、ほうはいたる世界的世論となってまいったのであります。貧困、無知、疾病、すべて平和の敵であります。この先進国と後進国との格差が、あまりにもあり過ぎることこそ、世界の紛争の種であります。(拍手)イデオロギーの油が注がれれば、たちまち戦争の火の手が燃え上がることは歴史の示すところであります。私は、この南北問題解決の提言にこそ、世界史における人類良心のひらめきを見んとするものであります。(拍手)
わが国といたしましては、いまだ国内の公共、社会開発投資が立ちおくれてはいますが、それにもかかわらず、国民総生産世界第三位、アジアにおける唯一の先進国として、南北問題、特に近隣アジアの開発のために、真剣に取り組むことこそ、平和の国、日本の道義的責任のみならず、誇るべき歴史的使命とかたく信ずるものであります。(拍手)
私は、かつて学徒兵として、東南アジアに出征いたしました。そのときの銃剣や大砲や軍艦を持っていった軍国主義はいまや一掃せられ、このたびは衣食や工場やダムなどにより、友情と援助の時代を迎えんとすることは、感慨深きものを禁じ得ないのであります。(拍手)
さらにまた注目すべきは、アジアに対するわが国の種々の援助は、結局長期的に見て、わが国のナショナルインタレストと合致することであります。ナショナルインタレストとは、海洋国家日本が、原材料を確保し、輸出を伸ばすこと、また外交の展開を容易にして、日本自身の安全保障をはかることであります。現に、アジアに対する貿易量は北アメリカに次ぎ、その特色はほとんど日本の一方的出超というパターンにあります。特にここ数年、日本は韓国、台湾、フィリピン、インドネシアなど、近隣アジア諸国への輸出を急激に増加させ、日本のシェアは急速に高まり、アメリカにとってかわりつつあります。援助があったからこそ、輸出の急激なる増大によって、シェアの拡大が可能になったのであります。(拍手)
次は、外交と安全保障であります。外交の展開には支持者を必要といたします。支持者を得るには、近いアジアの中に求めるのが一番手近でございます。また今日では、一国の孤立した安定というものはあり得ない。近隣諸国の騒乱は、また日本の平和を脅かすでありましょう。その意味でアジアの経済安定が不可欠となります。援助には、こうした経済安定を促すことによって、日本の安全保障を高めるという側面があるのであります。援助は、持てるものが持たぬものに金や物や技術を援助することで、何か他人のために尽くしてやる行為だと思われやすいが、実は日本のナショナルインタレストを守る大切な手段であります。アジアの中の日本は、アジアの経済発展の中で、日本のナショナルインタレストを生かしていくべきであります。(拍手)
いま、アジアは貧困と経済的停滞の中で苦悩しております。アジアのあすは決して明るいものではありません。そのためアジアの中には焦燥感が強く、最近の六四年UNCTADにおいて、先進国の援助量の目標が国民所得の一%と決議され、さらに本年三月、第二回UNCTADにおいては、国民総生産量の一%と引き上げられており、援助の条件についても、金利、期限の緩和が強く要請されております。
このような世界的動向を背景として、わが国の援助状況を見れば、六六年、援助総額は約五億三千九百万ドルで、国民所得に対する比率は〇・六九%で、一%目標にはほど遠い現状であります。しかしながら、あせらず、着実に援助量を増加しつつある政府の努力は認めるべきであり、今後とも国民の理解と協力を得つつ、相手国の実情に適応した援助を増大することを要望してやみません。
さて、ただいま案件になっておりまする海外経済協力基金法の一部改正案は、東南アジア等の地域の実情にかんがみ、海外経済協力基金が、これらの地域の経済の安定のために、いわゆる商品援助のための貸し付けをも行なうことができるようにするため提案されたのであります。一般的には、経済援助の中心が産業開発の援助にあることは申すまでもありません。しかし東南アジア、ことにインドネシア等は、インフレに苦しむ一般民衆の生活を潤し、経済の安定のために、低利、長期の商品援助を強く望んでいるのが実情であります。衣食足ってこそ経済建設に立ち上がる余裕ができるというものであります。かつて終戦直後のわが国民が、食うや食わずの生活に苦しみ、インフレに悩んでおりましたとき、友邦からの食糧などの商品援助がいかに国民の復興の意欲を高めるに役立ったかは、いまだ多数国民の記憶に残っているところであります。(拍手)このように考えれば、今回の一部改正法案はまことに時宜を得た措置であります。
しかしながら、このたびの改正案に対する反対理由として、インドネシアへの援助は、ベトナム戦争に原因するドル防衛に協力してくれとのアメリカの要請に屈して、アメリカの援助の肩がわりをするものだとの意見があります。アジアの安定はアメリカよりも日本にとってこそ大切であります。アジアにおける唯一の先進国として、隣人アジアが経済的苦悩から立ち上がるのを手を差し伸べて助けてやることこそ、南北問題解決への日本の歴史的使命につながるのではありませんか。(拍手)夜明け前のアジアの民衆を日本一国で援助することはとうていできないことはもちろんであります。とすれば、世界の先進国、とりわけアメリカをはじめ太平洋を囲む先進諸国を、イデオロギーを越えて援助に誘い込む日本のリーダーシップこそ大切であります。(拍手)
また、スハルト政権下のインドネシアに対する援助は、金をどぶに捨てるようなものであり、利権と汚職を防ぐことができないとの反対論は、日本の明治維新を手本としてきびしいイバラの道を歩むアジアの隣国に対して、これほど同情も友情もなき残酷なことばはないでありましょう。(拍手)われわれ自由民主党は、かかる残酷な非難よりは、あたたかい友情の助言こそ、生きた援助の実を結ばせるものと確信するものであります。
しかしながら、政府におきましても、審議の経過において与野党を問わず提言せられた意見には謙虚に耳を傾け、今後の行政改善に努力さるべきはもちろんであります。特に経済援助についてはとうとい国民の血税を使うのでありますから、双方ともいやしくも国民の疑惑を招かざるよう、不正ルートの介入を排除する等、その姿勢を厳に正すべきであります。
以上、政府に要望するとともに、本改正案に賛成し、私の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/16
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017・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/17
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018・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/18
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019・山村新治郎
○山村新治郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
この際、参議院送付、航空業務に関する日本国政府とレバノン共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とセイロン政府との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とデンマーク王国との間の条約の締結について承認を求めるの件、船員の厚生用物品に関する通関条約の締結について承認を求めるの件、アジア=オセアニア郵便条約の締結について承認を求めるの件、右五件を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/19
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020・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 山村新治郎君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/20
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021・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
航空業務に関する日本国政府とレバノン共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とセイロン政府との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とデンマーク王国との間の条約の締結について承認を求めるの件、船員の厚生用物品に関する通関条約の締結について承認を求めるの件、アジア=オセアニア郵便条約の締結について承認を求めるの件、右五件を一括して議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/21
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022・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。外務委員会理事青木正久君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔青木正久君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/22
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023・青木正久
○青木正久君 ただいま議題となりました五案件につきまして、外務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、レバノンとの間の航空協定について申し上げます。
本協定は、わが国とレバノンとの間に、定期国際航空業務を開設することを目的とし、業務の開始及び運営についての手続と条件とを規定するとともに、附属書において、両国の指定航空企業が、業務を行なうことのできる路線を定めているものであります。
次に、セイロン及びデンマークとの間の租税二条約について申し上げます。
この二条約は、企業の利得に対する課税基準、船舶及び航空機の運用利得に対する課税の減免、配当、利子及び無体財産権の使用料等に対する相手国の課税の減免及び限度、政府職員、短期滞在者、教授、留学生等に対する租税の免除、二重課税の排除方法及び租税上の内国民待遇の相互供与等について規定しております。
なお、デンマークとの間の租税条約は、現行条約にかわるものであります。
次に、船員の厚生用物品に関する通関条約について申し上げます。
本条約は、国際海上交通に従事する船員の使用する書籍、映画フィルム等の厚生用物品の外国への搬入、他の船舶への積みかえ及び船員によるそれらの物品の利用を容易にすることを目的といたしておりまして、締約国は、それらの物品に対し、再輸出を条件として、輸入税の免除等の便益を与えること等を規定しております。
最後に、アジア=オセアニア郵便条約について申し上げます。
本条約は、加盟国間の郵便関係を拡張し、円滑にし、かつ改善すること及び郵便業務の分野における協力を増進することを目的といたしておりまして、連合の組織、任務、郵政職員の交換、加盟国間の通常郵便物の取り扱い、無料継ぎ越し及び郵便料金等について規定しております。
以上五案件は、いずれも参議院において承認されて後、本院に送付され、それぞれ本委員会に付託されましたので、政府から提案理由の説明を聞き、質疑を行ないましたが、詳細は会議録により御了承を願います。
かくて、五月二十二日、質疑を終了し、討論を省略して採決を行ないましたところ、右の五案件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと議決いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/23
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024・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) これより採決に入ります。
まず、航空業務に関する日本国政府とレバノン共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、船員の厚生用物品に関する通関条約の締結について承認を求めるの件、及びアジア=オセアニア郵便条約の締結について承認を求めるの件の三件を一括して採決いたします。
三件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/24
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025・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、三件は委員長報告のとおり承認するに決しました。
次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とセイロン政府との間の条約の締結について承認を求めるの件、及び所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とデンマーク王国との間の条約の締結について承認を求めるの件の両件を一括して採決いたします。
両件は委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/25
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026・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、両件は委員長報告のとおり承認するに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/26
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027・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時一分散会
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出席国務大臣
外 務 大 臣 三木 武夫君
大 蔵 大 臣 水田三喜男君
国 務 大 臣 宮澤 喜一君
出席政府委員
外務政務次官 藏内 修治君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805254X03819680522/27
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