1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年四月二日(火曜日)
午後一時九分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 青柳 秀夫君
理 事
植木 光教君
小林 章君
柴谷 要君
委 員
青木 一男君
伊藤 五郎君
大竹平八郎君
大谷 贇雄君
藤田 正明君
木村禧八郎君
田中寿美子君
戸田 菊雄君
野上 元君
野溝 勝君
二宮 文造君
瓜生 清君
須藤 五郎君
国務大臣
大蔵大臣 水田三喜男君
政府委員
大蔵政務次官 二木 謙吾君
大蔵省主計局次
長 相沢 英之君
大蔵省理財局長 鳩山威一郎君
事務局側
常任委員会専門
員 坂入長太郎君
説明員
大蔵大臣官房財
務調査官 細見 卓君
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本日の会議に付した案件
○所得に対する租税に関する二重課税回避のため
の日本国とデンマーク王国との間の条約の実施
に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例
等に関する法律案(内閣提出)
○国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律
案(第五十五回国会内閣提出、衆議院送付)(継
続案件)
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001・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とデンマーク王国との間の条約の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律案を議題とし、質疑を行ないます。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/1
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002・柴谷要
○柴谷要君 デンマークとわが国との二重課税の回避のための特例法、この問題についてではなしに、関連がございますので、二、三質問をいたしたいと思いますが、隣国である韓国との租税条約締結交渉が昨年来持たれてきておるわけです。一体その交渉経過の見通しはどうなっているのか、まずこれを聞きたいこと。
それから、昨年来、日本商社は、課税問題で韓国の税務当局との間にごたごたを起こしておるけれども、現在政府間の話し合いは一体どうなっておるのか。このごたごたの問題が解決をしておるのか、この点についてまず最初に承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/2
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003・細見卓
○説明員(細見卓君) お答え申し上げます。
日韓の租税条約につきましては、私ども最も密接な経済関係のある韓国との間に租税条約をつくりますことは、いま御指摘の韓国におきます日本商社の課税問題が発生しておるおりからでもありますので、一番大事な問題としてずっと取り組んでまいっておるわけでありますが、なかなか現在のところ、確たる見通しというものはございません。ただ、しかし、私どもの交渉におきましても、あるいは、また、過去二回に行なわれました日韓閣僚協議会におきましても、この問題を閣僚のベースで取り上げていただいておりますので、事態は漸次好転いたしております。ただ、何といたしましても、韓国は租税条約を結びますのが建国以来初めてということで、どういう形の条約を結んだらいいのかというようなことについても、まだ確たる成案を得ておらないようでありまして、そういうものも、まあ日本とのたび重なる予備交渉、あるいは、また、米国とも交渉をやっておるやに聞いておりますので、そういうものを通じまして、およそ租税条約に関する国際慣習というようなものは、どういうものかということが漸次わかってまいりつつあるようでありますので、私どもといたしましては、この問題の将来も、交渉を開始いたしましたころに比べますと、かなり明るくなっておるのではないかと思います。なお、この六月ごろにはソウルに私どもの代表が参りまして、なお引き続き交渉をいたし、そのあと予想されまする閣僚協議会においてもこの問題をさらに強力に推進してまいるというふうに、政府の中で大体の話し合いがついております。
なお、第二点の、韓国の商社の課税の問題でございますが、日本の商社に対しまして課税の問題が起こりましたのは三十九年の九月でございまして、そのときにまあ日本は、御案内のように、日本商社は、韓国におきまする商社としての地位をまだ登録されておらなかったわけでありますが、にもかかわらず、韓国主税当局は日本商社における活動をとらえまして、これに課税をしてまいったわけであります。その結果、三十七年から三十八年、あるいは三十九年程度の課税、もちろんこの課税もかなり額が大きいので、日本側としては問題ではあったのでありますが、さらにその次の四十年一月から九月におきましては、一挙に従来の税額の十倍程度を課税されるというようなことになりまして、これではとてもたいへんだということで、一応税は払ってはおりますが、この四十年一月から四十一年の九月にかけまする税金については、いま訴訟を起こしております。どういう点が問題になっておるかと申しますと、法人税につきましては、いわゆる実査といいますか、直接調査してその企業におきまする収益の状態を調べるのではなくて、韓国側が一方的に持っておりまする一種の所得率とでもいいますか、利益率というものさしを持ってまいりまして、当初それは商社に対して一三%という程度の、非常にわれわれから考えれば常識外の数字であったわけでありますが、それが四十年になりますと三・一一%にまで下がっております。しかしながら、これにいたしましても、日本の商社の営業の実態を私どもが調査いたします限りは、とても三%程度にみんなの平均利益がなるというわけにはいかないわけで、私どもは、この問題に関しては、強く韓国当局に対して、日本商社の実態を調べて、実態に即したそういう認定課税じゃないものをやってくれ、そうして、その結果、所得のあるものについては当然払うべきであるが、しかし、所得がないものを推定されては困るではないかということを強く申し入れてまいったわけでありますが、この四十一年十月から四十二年三月までの事業年度におきまする法人税につきましては、わずか三社だけではございますが、とりあえず実査をいたしております。この実査の率で申しますと、〇・八とか〇・九とかという程度の利益率に韓国側が調べましてもなっております。ところが、それ以外の商社につきましては、一応一・九四という程度の利益を推定して課税しておるわけで、いま申しましたことから明らかでありますように、調べれば一・〇以下の数字である、それが一・九とか二に近いような利益率で課税されるということは、あくまで私どもとしては不当な取り扱いであるというふうに考えまして、いまなおこの問題については、課税の適正化と申しますか、実態に即した課税を行なうように強く私どもも申しておりますし、また、閣僚ベースにおきましても強く申し入れておるわけでございます。
それから、もう一つは、営業税が問題でございまして、これにつきましては、日本の昔にありましたような営業税が韓国に行なわれておるわけでありますが、この営業税をかけるにあたりまして、日本の商社の業態を卸売り業と向こうは見ておるわけでありますが、私どもは、これは全くの韓国にある支店について申す限りでは、コミッション・マーチャントで、手数料収入でやっておる商社ということで、この点も強く申し入れておるわけで、以上二点が商社の課税に対して日本政府が申し入れておる事柄であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/3
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004・柴谷要
○柴谷要君 第二問目は、ただいま説明がちょっとなされましたけれども、現在申告に基づいて実質課税されておるのはわずかに三社、それで、残りの十一社には韓国税務当局が見込んだ法人税認定利益率一・九四%に基づいて認定課税をされておる、こういうことになっておると思うのですが、この問題をめぐっての交渉経過は一体どういうふうになっておるか。それから、申告に基づいた実質課税を認められておる三社というのは一体どこの社か。それから、残された十一社というのは一体どこの社か、それがわかったらひとつその社を教えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/4
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005・細見卓
○説明員(細見卓君) まず会社の名前を申し上げます。これはあるいは申し上げることは適当であるかどうかわかりませんが、個々の会社の利益ではないと思いますので申し上げます。安宅、住友、三菱の三社がいま申し上げた実査課税を受けております。それから、したがいまして、残りは伊藤忠、岩井、兼松、江商、丸紅、東食、東綿、豊田、日綿、日商、野村、三井というような会社になっております。この実態に即した課税ということにつきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、実際に調べれば一%下回る所得率になるわけでありますので、韓国側に対しまして、再三にわたりまして、私どもだけでは足りないものですから、あるいは総理から日本へ韓国の副総理が見えたときに強く申し入れていただくとか、あるいは、また、大蔵大臣から向こうの大蔵大臣に強く申し入れるというようなことをいたして、とにかく、ある所得に対しては税は払うのですが、単なる認定によって税を払うということは、あくまで日本政府としても、日本商社に対して、立場上、そういう税を払うべきだということは言えないのだということを強く申し入れて、なお、この点については明年度、この事業年度以後につきましては、全部の商社について、実態に即した課税をするということを約束をしておりますが、既往分についてどうするかということについては、この六月あたりにもう一度交渉いたしますときの議題になろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/5
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006・柴谷要
○柴谷要君 どうも韓国との交渉は、租税問題だけではなしに、すべての交渉の過程において韓国がどうも背伸びをし過ぎておる、それに対して日本国は、何かはれものにさわるがごとき扱いをしておるような感じがするわけです。これは外交面におけるいろいろな問題があるかとは思いますけれども、韓国をしてこのような状態をいつまでもさせておくということは、国際上もちろんいいことではない、こう思うのですが、この問題については、一体いつごろまでに解決のめどをつけられるのか、それを簡単にひとつ御説明願いたい。これはもちろん外務省といろいろ話し合いの上でなければできないと思いますが、解決のめどをつけられるのか、その見通しについてひとつ簡単に答弁してもらいたい。その次に、もう一問ありますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/6
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007・細見卓
○説明員(細見卓君) いまの問題は外交上の問題でございますし、相手のあることでございますから、確たることはなかなか申し上げかねるかと思いますが、いままで二回の交渉を持っておりまして、第三回目の交渉を本年六月ごろにソウルにおいてとり行なう予定にして、そのあと八月、あるいは九月に予定されまする日韓定期閣僚協議会において最終的な大筋を取りきめていただくと、そういうことになれば、あとは時間の問題で解決ができるのではないかと思いますが、最終的な取りきめは、骨格をきめるというところがもめておりますので、その点は閣僚協議会に期待しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/7
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008・柴谷要
○柴谷要君 では、最後に、日豪両国間の交渉も二月にキャンベラで持たれている。その交渉の問題点は一体どんな点にあるのか、これをまず伺いたい。それから、現在、船会社は企業収益が赤字であるにもかかわらず、運輸所得には運賃収入の二%が課税をされている、こういうことは非常に矛盾ではないかと思う。早期の租税条約の締結が望まれる理由というものはそこにあると思いますが、これらの点をどう考えているのか、早期妥結の方向に向かって話を進められるのか、現状のまま当分いかざるを得ないのか、この点をひとつ説明願いたいと思います。赤字であるのに運輸所得として運賃収入に二%かけるなんということは、これは早く解消してやらぬとたいへんなことだと思う。この点についてひとつ説明されたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/8
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009・細見卓
○説明員(細見卓君) まさに御指摘の点が日豪におきます租税条約を早期締結する必要の最たる理由であったわけでありまして、そういうことでことしの二月に第一回の交渉を持ったわけでありますが、幸い大筋について了解を得ることができまして、いまの船舶、航空機に関する所得につきましても、相手国は商船隊の建造中であるというようなことで、かなり交渉は難航はいたしたのでございますが、しかし、どのような二国間の租税協定におきましても、船舶とか航空機の所得をどういうふうに課税するか、これはまさに水かけ論に終わるところで、そういう意味で大体相互に免除し合うというのが原則になっております。豪州は、幸いにこの原則について了承をいたしておりますので、近く今月下旬ないし五月の上旬において向こう側が最後的な対案を持って交渉に参りますので、そこで、政府としては、問題の船舶所得に対する課税を含めまして、相互の合意に達し得るものと確信しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/9
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010・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/10
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011・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 速記をつけて。
他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/11
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012・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 御異議ないと認めます。
これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/12
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013・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 御異議ないと認めます。
これより採決に入ります。
所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とデンマーク王国との間の条約の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方は挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/13
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014・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 多数と認めます。よって本案は、多数をもって可決すべきものと決定いたしました。
なお、本院規則第七十二条により、議長に提出する報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/14
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015・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/15
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016・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/16
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017・柴谷要
○柴谷要君 本格的な質疑は後日に譲るとして、きょうは一問だけ質問しておきたいと思うのです、というのは、ほかでもありませんけれども、国債整理基金特別会計法を早急に改正しなければならないという理由は一体何か。これ一つだけ聞いてきょうはこの質疑を終わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/17
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018・相沢英之
○政府委員(相沢英之君) 四十一年度から本格的な公債の発行へ進むという事態を迎えたわけでございますが、公債政策に対する国民の理解と信頼を得、かつ、公債政策の健全性を確保するためには、政府として、単に公債発行についての節度を守るだけではなく、公債償還についても、その節度ある運営をはかり、公債を租税等の一般財源で償還していくことのきちんとした考え方なり仕組みなりを確立しておくことが必要だと考えられたのでございます。しかし、現在におきましては、国債整理基金特別会計に対する財源繰り入れの制度につきましては、かっての公債残高に対する一定割合の繰り入れ制度は昭和二十八年に停止されて以来、一般会計は、財政法六条の規定に基づきまして、決算上の剰余金の二分の一を下らない額を翌々年度までに公債償還財源に充当するということが義務づけられているにとどまっておったわけでございます。しかし、剰余金が相当に出ておりました従来の時代ですとこれでも差しつかえないということでございましたが、公債発行下におきましては、もはや従来ほどの多額の剰余金は期待できません。それで、この制度のままにしておいては、節度ある公債政策の一環としての減債制度というにはきわめて不十分な面があると考えられたわけでございます。公債に対します償還財源をある程度平準的に国債整理基金特別会計に繰り入れるということも一つのねらいでございます。
以上のような理由から、今回減債制度を改正いたしまして、その充実強化をはかることとした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01019680402/18
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019・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 本法案に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時三十九分散会
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