1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年四月十六日(火曜日)
午前十時三十四分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 青柳 秀夫君
理 事
植木 光教君
小林 章君
西田 信一君
柴谷 要君
委 員
青木 一男君
伊藤 五郎君
大竹平八郎君
大谷 贇雄君
竹中 恒夫君
徳永 正利君
田中寿美子君
戸田 菊雄君
野上 元君
野溝 勝君
瓜生 清君
須藤 五郎君
衆議院議員
大蔵委員長代理
理事 山中 貞則君
政府委員
大蔵政務次官 二木 謙吾君
日本専売公社監
理官 前川 憲一君
大蔵省主税局長 吉國 二郎君
大蔵省関税局長 武藤謙二郎君
大蔵省国際金融
局長 柏木 雄介君
国税庁長官 泉 美之松君
事務局側
常任委員会専門
員 坂入長太郎君
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本日の会議に付した案件
○所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
○法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
○租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
○製造たばこ定価法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
○酒税法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/0
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001・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案、酒税法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。
まず、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案、酒税法の一部を改正する法律案の衆議院における修正点について、衆議院大蔵委員長代理理事山中貞則君から説明を聴取いたします。山中衆議院議員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/1
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002・山中貞則
○衆議院議員(山中貞則君) ただいま議題となりました製造たばこ定価法の一部を改正する法律案並びに酒税法の一部を改正する法律案は、すでに当委員会で提案理由の説明は済んでおるということでございますので、私どもの委員会におきまする委員会修正並びに衆議院の本会議において可決されました修正案について、その内容並びに経過を御説明申し上げます。
製造たばこ定価法の一部を改正する法律案に対する修正案は、お手元にございますとおり、施行日の「四月一日」といたしてありますものを「公布の日」と改めたのみであります。したがって、たばこの定価を改定する内容についての変更は何らないものでございまして、衆議院における審議遅延ということから、予定しておりました四月一日に間に合わなかったということにおける時間的な修正にすぎないわけでございます。
他方、酒税法の一部を改正する法律案に対しまする修正案は、これは中身を伴うものでありまして、経過は、ただいま申し上げましたように、期限までに成立しなかったために修正をいたしたことに原因はあるのでございますが、これをめぐりまして、私どもの与党としては、わが党内閣の責任ある地位の者が、まだ委員会において審議中の同法案に対しまして、すでに一カ月ほど延びるであろうというような新聞等の談話が出まして、一騒ぎがございましたり、いろいろいきさつがございました。結局は、国民は、すでに内閣の責任ある者がそのような趣旨に受けとられる話をしている以上、委員会が、これを日限が間に合わなかったからといって十五日間の延期をする修正とかいうようなものはむしろ逆効果になるのではなかろうかというような、これは与野党こえた判断をいたしまして、結果、わが自民党の提案という形にいたしまして採決を願った結果、多数で可決をいたされたものでございますが、五月一日より酒税の値上げをいたしますということでございます。ただし、衆議院規則の四十七条二項によりまして、「修正案が法律案に対するもので、予算の増額を伴うもの又は予算を伴うこととなるものについては、修正の結果必要とする経費を明らかにした文書を添えなければならない。」、こういうのがございます。実はこの解釈でございますが、私どもといたしましては、先例集等では、法律案に対するもので修正案の金額の文書を提出するという場合は、計上されている予算の増額に結果なるものと、修正の結果、別途に新規の予算を伴うものということに解釈が大体成り立っておりまして、先例集中にはそのように記載されております。しかしながら、大蔵委員会の先例の中に、これはまた私のつくりましたものが先例となるわけでありますが、過般お願いをいたしましたLPガスに関する委員会修正の際に、当該年度の修正によって生ずる収入減というものも、やはりこれは予算を伴うものという意味において厳密に解釈していくべきであろうということで文書を提出した先例がございました。これはまだ先例集には記載になっておりませんが、今回もこれはやはり先例とすべきものであろうという判断をいたしまして、衆議院規則の四十七条二項による金額に関する文書を提出いたしました。その文書は、「本修正の結果必要とする経費、本修正による減収見込額は、初年度約四十億円である。」「約」といたしましたのは、正確に機械的な割り算をいたしますと四十一億五千五百万円という数字も出ないこともないわけでありますが、しかしながら、一方、花見シーズンであったりなどいたしまして、これはまあ機械的な割り算というものでもいくまいから、約四十億という表現にとどめた次第でございます。そこで、この四十億円というものは、当然予定いたしておりました本年度の窮屈なる財政収入の中でどのような影響を与えるものであろうか。すなわち、減税すらも、野党の皆さんからは、国民の多数から見るならば、減税より、むしろ増税されている人が多いじゃないか、数字だけでも差し引き増減ゼロじゃないかという御批判を賜わっておりますとおり、非常に財源を苦労してつくった予算案でございますので、四十億円という金額については、当然これに対していろいろの議論がかわされることになったわけでありますが、しかしながら、私どもといたしましては、毎年の決算における内容等を振り返ってみましても、不用経費として結果残るもの、あるいは執行残その他の経費等の数字にもかんがみ、あるいは、また、予算編成の際の見通しの指数、すなわち、一番多く変動要素のある法人税等の場合の鉱工業生産指数等の把握のしかたいかんによっては、もともとの自然増収という大きな数字の法人税を中心にしたものがそうそう確定したものではない。確定したような言い方をしておりますけれども、指数の変動によっては相当大きな結果を招来する振幅を持つものである。したがって、四十億ぐらいのものは飲み込んでいけるであろうし、最終的に四十億が、かりにきっちりと財源不足になったという場合でも、執行の面においては、歳出の面においては支障なくこれを行なうことができる。結果、歳入欠陥の四十億というものを招来しても、歳出においては影響ないという判断をいたしました。しかしながら、同じく衆議院規則四十八条の二によりまして、内閣のこれに対する意見を求めた次第でありますが、内閣からは大蔵大臣が所管大臣といたしまして、この修正はこの程度の金額においてはやむを得ないものであるという趣旨の答弁がございました。
以上がその経過並びに結果でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/2
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003・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 五法案に対して質疑を行ないます。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/3
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004・柴谷要
○柴谷要君 前回に引き続きまして、法人税の問題について少し質問し、それから租税特別措置法について質問したいと思います。
今回の改正案は、改正部分について問題はないとしても、法人税改正法案が提出された以上、中小法人に対する軽減措置がはかられていないということはまことに遺憾であります。われわれはこの点は非常に不満に思っている。すなわち、税率の引き下げはもちろんでありますけれども、一番疑わしいのは同族会社の留保所得課税であります。これは同族会社は中小会社であり、法人の九〇%以上を占めるものであるから、考えれば、同族会社こそ内部留保が必要であると考えますが、これに特別な課税をすること自体に無理があるのではないか、こういうふうに私どもは考えますけれども、政府はもっとこまかい配慮を行なうべきだと思うけれども、この点に対する見解を聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/4
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005・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) これは先生御承知のことでございますけれども、同族会社の加算税率と申しますものは、同族会社の株主、社員等が非常に少数でございますので、その場合の各人の法人を通ずる所得の形成というものを考えますと、同族会社でない法人の場合に比べまして、各個人に対応する所得というものが大きくなる可能性があるわけでございます。そういう意味で、それが留保された場合には、法人税率だけの課税で再投資ができる。これに対して、個人が所得を得た場合には、所得全体に課税をされて、課税済みの金額で留保をすることになりますが、その場合に所得税の累進税率が非常に高いために、法人の場合よりも高額の税をかけられて留保する結果になる。まあそういうような意味で、株主がごく少数である同族会社につきましては、その留保した金額につきまして一定の加算税を課するというのがまあ各国のやり方のようでございます。で、わが国におきましても、御承知のとおり、昭和二十五年には積み立て金に対する課税をいたしておりました。つまり個人に対して分配をしないために、個人の所得税の追加課税がおくれる分だけ二%積み立て金に対して課税をする。その場合に、同族会社に対しては所得税のおくれというものが一般の会社よりもより大きいであろうという推定から七%の加追課税をすることにいたしておりましたが、その後、積み立て金課税というやり方は、その年の所得がないにかかわらず税がかかるということから、好ましくないというので、当年度に留保したものに対して一定率の課税をする。さらに、その後、中小企業等の負担を考えまして一部改正をいたして今日に及んでいるわけでございます。で、まあこの留保課税の問題は、御指摘のように、中小企業に負担がかかるという点はございますけれども、一方において個人の事業所得との権衡を考えますと、これを放置すれば個人事業との負担が非常に不均衡になるわけでございます。そういう意味で個人の事業の所得との権衡を考えつつこの加算税を調整をしてまいった経緯がございますが、むしろ中小企業に対しては、私どもとしては、中小企業独得のいろいろの点を考えていくということで、ことしの改正におきましては、租税特別措置法で中小企業が構造改善を行なった場合の割り増し償却を創設をいたしましたし、中小企業についての貸し倒れ引き当て金の割り増しとか、あるいは構造改善準備金等は期限が到来いたしましたが、これをさらに延期することによりまして中小企業の実態的な課税の緩和をはかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/5
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006・柴谷要
○柴谷要君 いまの答弁で大体内容はわかるのですけれども、われわれが今日の改正を行なう内容を検討して見ると、どうも上に厚く、下に薄いというような感じを持つわけであります。これは非常に大事なことであるから、今後といえども十分配慮してもらいたい、こう思います。公債を発行して三年目を迎えているわけでありますけれども、今後の財政経済のあり方等とにらみ合わせて、税負担水準の基準というのは一体どのようにあるべきか。昨年政府の決定をみた経済社会発展計画ですか、この最終年度の四十六年度は約二二%程度を考えているようであります。ところが、ことしの率でいきますというと一九・六%、かつて税制調査会が二〇%程度が妥当であるという答申をしたのを考えますと、この経済社会発展計画の四十六年度、最終年度の二二%というのは多少上昇機運にある、こういうことでありますけれども、一体来年度の負担率の上昇について政府はどのように考えておられるか、この点をひとつこまかく御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/6
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007・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) 国民所得全体に対して税負担の程度がどの程度であるべきかという問題は、これはその国の経済発展段階等から影響される問題が多いのでありまして、一律には言えないと考えられますが、御承知のとおり、税制調査会が、三十五年でございますか、現在の国民所得に対するおおむね二〇%という負担は、日本の経済の現状から見て日本経済がこの程度成長をし、この程度の自然増収があって、そうして、しかも、財政の伸びが国民経済の伸びを上回っているという現状、その中でも社会保障、公共事業費等がさらにこの伸びを上回って伸びておるという現状から見ると、大体今後ともこの二〇%という負担を続けていけば、一方において減税は可能であり、かつ、必要な財政収支は保てるであろうということから二〇%が適当であるということを申したことがございます。で、その後三十九年に税制調査会が、再び長期答申の中におきまして、従来の二〇%という負担率の問題は、その後の経済の動き、ことに今後の社会資本の充実、社会保障の拡充という点を考えると、負担率自体がやや上がっていくことは将来としてやむを得ないんではないか。しかし、一方において、わが国においては租税の大きな弾性値によって毎年自然増収が大きく出るので、むしろ自然増収の二〇%程度を減税に充てていくという態度が必要であろうということに言いかえたわけでございます。ところが、四十一年の十二月に出てまいりました長期答申の中間答申におきましては、発行した公債を抱いた財政のもとにおいて新しい経済に即応した考え方というものが必要であるということを申しまして、現在の負担の水準は先進諸国に比べて必ずしも高くはないんではないか、さらに今後の社会経済の発展ということに追いついていくためには、ある程度の上昇はやむを得ないということを言ったのであります。これは経済社会発展計画と平仄を合わして考えておりますので、このときの考え方は、発展計画の初年度から最終年度にわたる間に約二%の上昇が計画上見られました。これは、わが国の自然増収を考えていけば、その程度の上昇は減税しながらもできるんだと、たとえば従来から考えられている所得税の軽減というようなこと等を含みながら、こういう負担の増加というものはある程度可能であろうかということを言っておるわけでございます。で、御承知のとおり、従来の二〇%という負担は、昭和四十年度に非常に大きな赤字を出しました際にだいぶ下がってまいりまして、昭和四十一年度には一方で公債を発行しながら減税をやったために一八・六まで下がりました。さらに四十二年度の当初予算においては、これが一八・五まで下がったわけでございます。いわば二〇%をすでに一・五%割ったわけでございますが、それが補正後の予算額におきましては、ほぼ一九%に回復いたしましたし、本年度の当初見積もりによりますと、一九・六%まで回復をみたわけでございまして、今後、経済発展計画の予想するような一一%程度の経済の伸びがあるならば、先ほど申し上げましたような二%程度最終年度に上がるということを予想いたしましてもかなりの余裕は生ずるものではないかと、かように考えているわけでございます。したがいまして、税の必要を満たしながら減税に振り向ける金額は全然ないというわけではなくて、かなりそこから減税財源が生み出せるものではなかろうかというのが現在の見通しと申してよいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/7
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008・柴谷要
○柴谷要君 本年度税制改正の租税特別措置の取り扱いについてですが、わが党は、酒やたばこの消費税の引き上げを行なうことよりも、むしろ特別措置の大幅な整理を行なって所得税の減税財源を捻出すべきであると考えている。租税負担の公平性の見地から、問題のある特別措置を大幅に削って、そうして所得税納税者に対して、全廃か一部減税を行なうことは、税の公平性のための前進を意味することは明らかであります。一挙に全廃することは実際問題として容易ではないと考えられますが、漸進的な改廃が計画的に行なわれなければ、いつまでたってもその合理化は不可能に終わると思われる。長期的な合理化のスケジュールについて一体どのように考えておるのか、また、本年もっと思い切った財政の硬直化打開の方法をとらなかった理由はどうしても納得がいかないので、この点もひとつ御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/8
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009・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) 租税特別措置が負担の公平を害するということは、これは当然のことでございまして、したがいまして、政府といたしましても、租税特別措置がその目的を達成したときには漸次洗いがえをしていくという考え方をとっておることは毎々申し上げておるとおりであります。これだけ税収が大きくなりましても、租税特別措置の減収額が相対的にはだんだん少なくなっておりますのは、制度自体を改廃して入れかえておるということから生じておるわけでございますが、どうしてもこういう制度が固定化しやすいので、常にこれに気をつけてまいる必要があると思っております。御指摘のように、ことしの財源措置として、租税特別措置を整理をするということももちろん一つの考えであると思います。ただ、御承知のように、租税特別措置の中で約六割を占めておりますものが貯蓄増強関係、しかも、その半ば以上を占めておりますのが少額貯蓄、生命保険料控除というようなものでございますので、あと残ります四割程度の中で整理をしていくということになりますと、その額もかなりしぼられますし、その中には、また、御承知のとおり、中小企業関係の特別措置というものが半ば以上を占めております。そういった観点から、一方においては配当、利子の特別措置についても検討いたしましたが、これは昨年一〇%から一五%に引き上げて三年間据え置きまして、その間の影響を見ながら将来さらに縮減、廃止の方向に向かうという考え方がとられておるわけでありますし、それから、交際費の損金不算入の措置につきましても昨年やはり改正をいたしまして、前年度の交際費の支出額の五%を上回る部分は全額損金不算入というきつい措置をとっております。それらを勘案いたしますと、ここで相当の財源を生み出すことは、本年度としてはなかなかむずかしい。一方におきまして、税制調査会の中間答申でも言っておりますように、間接税のうちで、従量税体系をとっておるものは、ことに三十五、六年以後の物価の一般的な上昇の中においては、相対的に負担が減少してくる傾向があるということを言っておりまして、これは数年に一度くらい洗い直さないと税全体のバランスがとれなくなる。たとえば所得税であれば、物価水準なり所得水準が増加いたしますと、税負担がそれだけ上回って上昇するということから、これの調整を要するという問題があるし、従量税のほうは、逆に物価水準が上がってまいりますと相対的に定額できめられておる税額は低くなってくるということになりますので、これもやはり所得税の税負担の増加を調整すると、逆の意味で、今度は逆の調整を必要とする。従価税率による間接税は、これは物価の動きと忠実に並行してまいりますから、これはいわば忠実である、こういう考え方を示しております。そういうことから、今回、たばこにつきましては昭和二十六年以来価格を据え置いておりますので、その間コストが約五割上がっております。そのことは、逆に言えば益金がそれだけ減っているわけで、益金率は約一割ぐらい低下しているという事実が見られますし、酒につきましては、三十八年に初めて戦後を脱却するような基準的な税率をつくりまして軽減をやったわけでございますが、その後状況を見ますと、価格が引き上げられたにかかわらず、税率が据え置いてあるために、五年後の今日では、当時考えました税負担の一五%ぐらいが軽減された結果になっておるという事実がございますので、この際、数年に一度見直すというチャンスの一つとしてこの酒、たばこを取り上げたわけでございまして、むしろこの場合は、増税という感覚ももちろんございますけれども、むしろ税負担の調整をはかって程全体のバランスを回復しようというねらいがあったわけでございます。そういう意味でことしは酒、たばこによる歳入増をはかったわけでございますが、一方、租税特別措置につきましても、ことしの客観情勢から申しまして、輸出関係の奨励がどうしても必要であるということでございますから、輸出関係、あるいは技術開発ということを中心にした租税特別措置を拡充いたしましたけれども、その財源については、租税特別措置の中の価格変動準備金と、その他二、三の措置を縮減することによって財源を生み出しまして、酒、たばこによる財源で租税特別措置を拡充するというようなことは避けてまいったつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/9
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010・柴谷要
○柴谷要君 特別措置の恩典に浴する数字を、先般の本会議での同僚戸田君の質問に対して、総理大臣は、大企業四五%、中小企業五五%という数字をあげて、中小企業にむしろ役立っていると説明しておりました。もちろん、この数字には、課税が当然であると私どもが思っております交際費に対する課税分を増税分として相殺しておる等、納得のできない点がありますが、さらにこれを個々の企業で大企業と中小企業を比較して、特別措置の利用前と利用後の課税所得を比較して説明をしてもらいたいと思います。特に四十一年後半以後の景気上昇過程で大企業は相当の利益をあげて、特別措置をフルに使って課税所得を減らしているとわれわれは考えておるのですが、そういう点があるかないか、これらについても説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/10
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011・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) 総理が説明された、大企業が四五%、中小企業が五五%という数字は、これはすでに御承知と思いますけれども、大企業と申すのは資本金一億円をこえる法人を想定いたしております。御承知のとおり、現在の税制におきましては、一億円以下の法人と一億円超の法人を区別いたしまして、一億円以下の法人については中小企業に対する配慮としての特別の税制をとっております。一億円超の法人は大企業として、それらの規定の適用はない扱いをいたしておりますので、一応一億円で特別措置を区切ってみますと、現在の特別措置のうち、個人の投資その他に適用のある貯蓄関係、この貯蓄関係その他のものを除きますと、それらが本年度の減収額の二千六百四十八億のうち、千八百三十三億を占めております。残りの約八百億をただいま申しました一億円超と一億円以下の法人で適用の状況により区分をしてみますと、五五%が中小企業にいっているという数字になるわけでございます。確かに御指摘のように、損金不算入によるオフセットをやっておりますけれども、最終的な税負担としては、やはりそれの計算をいたしませんと計算になりませんので、それは見込んであるわけでございます。個々の企業についてどうかという御指摘でありますが、この特別措置は、御承知のとおり、その適用の年度によって非常に違います。たとえば大企業であっても、ある特定の投資をいたしまして、それに合理化償却の特別償却が適用になるというような年度には、税負担がその特別措置の適用前に比べて非常に落ちるということもございますし、逆に、中小企業におきましても、貸し倒れ引き当て金の二割増しの特例で、最初に適用した事業年度にはほとんど所得がなくなってしまうということも起こるわけでございまして、個々の企業で比較いたしますと、租税特別措置の適用状況によって不同がございます。そこで、私どもは、いつも全体の減収額ということを比較して事実を確めておるわけでございますが、これは衆議院でお配りした資料でございますが、おそらくお手元にあるかと思いますが、昭和四十年度の実績をもとにいたしまして、一億円以下と一億円超の法人について租税特別措置を適用した場合と適用しなかった場合の税負担の相違を出した資料がございます。それによりますと、法人税の税負担率が、一億円以下の法人では、法人税分だけでございますと実効税率で三二・五、千万円以下になりますと三一・二、地方税を加えたところで一億円以下が四八・七、千万円以下が四五・四、これに対しまして一億円超のほうは、国税だけで申しますと三二・六、地方税を加えますと四九・五という数字になっております、そこで、それが租税特別措置が適用されなかったとしたらどう変わるかと申しますと、千万円以下の分は、国税で申しますと三一・二が三〇・七ということになりますし、一億円以下のところが三二・五が三一・二、それから、一億円超のところが三二・六が三一・二ということで、大体間差はほぼ変わりがないわけでございますので、大体私ども相対的に見た場合には、中小企業と大企業との租税特別措置による影響というのはあまり差がないんじゃないか、こう見ておるわけでございます。ことに四十年度の当時は、先ほど私が申しましたような計算をいたしますと、特別措置のうち、大企業が適用を受けている分が約七割を占めておった時代が、中小企業は三割、それが御承知のように、中小企業独特の特別措置をふやし、大企業のほうはできるだけ削減をし、ことにことしは価格変動準備金を思い切って切りましたので、現在は四十五と五十五に逆転したわけでございますが、この数字の実績が出ますと、さらにこの点がはっきりいたすかと思いますが、法人税の実績が出るのはおくれますので、新しい資料で申し上げられないのでたいへん申しわけないと思いますが、大体の感覚はそんなところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/11
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012・柴谷要
○柴谷要君 租税特別措置の洗い直しについて、大蔵省当局は、ことしの税制改正を検討する当初においては、ある程度積極的な意向を持っていたようにわれわれ聞いているわけです。ところが、三月で期限切れとなった企業合併助成の税額控除制度や、それから設備のスクラップ化促進の税制などは利用件数も少なく、全く個別企業の措置といった感じが強いのですが、何ゆえ初志を貫徹しなかったのか、熱意を持ってこれを積極的にやろうと意思を示しておった大蔵当局の熱意が喪失した理由は一体何か、この点について聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/12
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013・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) 今回の租税特別措置の取り扱いの際にいろいろな問題がございましたが、一つは、期限が到来するものをどうするか、さらに期限のないもので問題のものをどうするか、この二つの問題があったわけでございます。期限の到来するものにつきましては、いま御指摘のございました企業資本充実、合併、スクラップ化、この三つの四十一年に創設されました制度が問題になったわけでございますが、御承知のとおり、企業資本の充実という点は、当時企業資本の自己資本比率が一九%程度であったのが、この措置が適用になった後にさらに経済が悪化をいたしまして、一八%台に下がってまいりました。こういう措置は、ある意味では一つの経済のサイクルを経過いたしませんと効果は生じないという点もございますので、いろいろ検討いたしました結果、この措置だけはもう一回期間を延長して一サイクルを経過させる必要があるだろうということにいたしました。さらに、合併につきましても、資本自由化にあたって企業の規模の拡大、技術の開発の集中といったような必要性はなおございますが、こういう特別措置を漫然といたすのはいかぬという趣旨で、業界全般を通ずる合理化計画、構造改善計画というものを持って、それによって合併を行なうもの以外のものにつきましては、合併による税制のメリットを二分の一に削減をいたしまして継続することにいたしました。同じく、スクラップ化につきましても、構造改善というものをしっかりつくって、それに基づいてスクラップ化するもの以外は認めないということで大幅に縮減をはかったわけでございます。別途、今回は、従来から問題でございましたが、価格変動準備金につきましては、積み立て率を平均二%切り下げまして、それによって新しい措置に対応する財源を生み出すということにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/13
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014・柴谷要
○柴谷要君 租税特別措置法に関連をして、輸出振興税制についてお尋ねしたいのですけれども、わが国の輸出振興にきわめて有効に働いた輸出所得控除制度は、一九五三年以来約十年間行なわれてきたのでありますが、ガットの規定に抵触するということで、一九六四年三月廃止された。わが国の輸出所得控除制度がガットの場において輸出補助金であるとやり玉にあげられることになったのは、輸出に関連してなされる直接税の減免は、ガット第十六条の輸出補助金の禁止規定に反するということで、特にイギリスの反対があったことに起因をしている。しかし、反対したイギリスが、ガット規定に反した輸入課徴金を行なった。より根本的には、ガットにおいて輸出に関連してなされる直接税の減免を違反であるとされながら、間接税の払い戻しは補助金ではないとされることは不都合であると思いますけれども、この点はどうお考えになっておられますか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/14
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015・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) ただいま先生御指摘になりましたように、現在のガットの規定の解釈では、直接税の関係の輸出の払い戻しというものは補助金だ、これはいけない。それから、間接税に関するものは、これは補助金と見なさないで、したがって、禁止に触れない、こういうことになっております。こういう解釈がだいぶ前にあったのでございますが、御承知のように、今度の一月一日からのドイツの付加価値税の改正に伴うボーダータックスアジャストメント、それに端を発しまして、アメリカの輸入制限関係のいろいろな措置、そういう一連の問題に関連しまして、どうもこの問題の間接税に関するものは、直接でも間接でも、輸出の場合に払い戻すのが補助金禁止にかからないという規定はおかしいのじゃないかという意見が出ておりまして、特にこれにつきましては、直接税の比重の多い日本とかアメリカ、それから、間接税の比重の多いヨーロッパの間に非常に利害が相反するということがございますので、ガットで作業部会が設けられまして、今月の終わりのころにこの問題について、これはだいぶむずかしい問題でございますので、目先きの問題と切り離して根本的に再検討しよう、そういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/15
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016・柴谷要
○柴谷要君 それから、また、アメリカの輸入課徴金の問題もまだ完全には消えていないのじゃないか。むしろ最近、一時課徴金問題が消えかかってきたのが再燃してきたようにわれわれはとるわけです。これらの国際的情勢に対して、今後いかなる形で反応し、対外経済政策を立案すべきであろうか、当面の問題と長期的な問題を区別して政府当局の見解を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/16
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017・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) 当面、アメリカの課徴金、あるいは、また、輸出のところに戻しをして、輸入のところで課徴金をつける、両方やるということも考えられますが、そういう一連の措置に関連しましては、これはずっと戦後続いてきた世界貿易の自由化拡大という方向に逆行するものであるということで、何とかこれをやめさせたいということで、日本もケネディラウンドの実施を繰り上げるというようなことをするからやめないかということを言っておりますし、イギリスをはじめとしたEFTAの国も同じように言っております。それからEECも、これは条件についていろいろと問題が起きておりますけれども、方向としては世界貿易の拡大の方向にいくようにということで努力をしている、そういう状況でございます。当面はそういうことでございますが、今度基本的な方向と申しますと、基本的な方向は、非常に抽象的に申しますと、世界貿易の正常な姿での拡大ということを推進するということでございますけれども、特に先ほど先生から御指摘のございましたように、内国税に関して、直接税の払い戻しは輸出補助だが、間接税は、それが直接のであろうと間接のであろうと、輸出補助ではない、こういう現在のガットの解釈というものは基本的に問題があるのではないか。で、この点を長期に——これは相当時間かかかりますが、基本的に検討をしよう、こういう方向で進んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/17
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018・野上元
○野上元君 関連して質問したいのですが、ケネディラウンドの繰り上げ実施によってアメリカの課徴金がどうなるかというようなことは非常に注目されるところだろうと思いますが、で、ガット加盟国の、特に欧米先進国の中で、繰り上げ実施をするからアメリカの輸入課徴金をやめてくそ、こういうように要請しておりますが、しかし、条件もついておりますね、幾つかの条件がついておる。しかし、これはアメリカはその条件をのむということになると、これはまた重大な問題だと思いますし、特に国内の卸価格を基準として課税するというような一つのやり方をやめてもらいたいということをEECのほうではやかましく言っておるようですが、これに対してアメリカは一体どういう反応を示すか。それで、ケネディラウンドの繰り上げをやった場合に、その効果は一体いつあらわれるのですか、アメリカはそれ待てるのですか、その点についてひとつ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/18
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019・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) ケネディラウンドの繰り上げにつきまして、特にEECがきめましたその条件について、アメリカはそれに非常に強い不満を持っております。これはどういうふうに今後動くかということになりますと、たぶんガット、あるいはOECD、そういうところで両方話が進む。その場では、これは繰り上げはEECばかりではありませんで、イギリスをはじめ、EFTAの国も日本も繰り上げをしようということを言っておりますので、そういう国々の間で、この処理をどうするかということは、今後の話し合いになるだろうと思います。
それから、繰り上げの中味はそういうことでまだきまっておりません。したがいまして、その中身いかんでございますけれども、たとえばEECの側ですと、来年の一月一日に繰り上げを実施する、これは再来年の一月一日を一年繰り上げる。そういたしますと、それから効果が出ると、こういうことになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/19
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020・野上元
○野上元君 EECがケネディラウンドの繰り上げをやるかわりに、アメリカに対する条件がついているわけでありますが、アメリカがこれをのまなければ御破算にする、こう言っておるのでありますが、アメリカとしてそれがのめる条件であるかどうか、日本としてはどういう判断をしておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/20
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021・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) これは非常にデリケートなところでございまして、アメリカもそういう意思表示をしてまいりましたのも非公式でございます。そこで、先ほど申しましたように、これについては関係国で話し合う、こういうことになるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/21
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022・野上元
○野上元君 関連質問ですからこの程度でやめますけれども、日本政府としては、アメリカの態度として、EECの条件がはたしてのめるような状態にあるのかどうか、あるいはケネディラウンドの繰り上げが実際に効力を発生するのは一年か、あるいは一年半か二年後になるだろうというふうに私は見るのですが、それだけアメリカは余裕を持って待てるのかどうか、そういう点についての日本政府の判断はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/22
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023・武藤謙二郎
○政府委員(武藤謙二郎君) これは非常にいろいろな国が関係しておりまして、虚々実々と申しますか、事態が非常に流動しますので、日本としてどういう見通しかということはなかなか申しかねる、そういうのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/23
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024・柴谷要
○柴谷要君 現行法人税制は擬制説を採用している。法人税は株主に対する税の先き取りという考え方に立ち、二重課税を避けるという意味で、配当所得に対し一五%の配当控除を行なっておることから、標準世帯で配当のみの所得の場合は、課税最低限二百三十六万三千円余という、給与所得に比して大きな相違を来たしているわけです。この点非常に不合理だと思うのですが、法人税の転嫁についても明確な実証がなく、製品に転嫁されている面が大きいのではないか。わが党が主張しているように、法人実在説に立った法人利潤税に移行するという考えをわれわれは考えているのですが、政府当局の見解をこの際聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/24
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025・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) ただいまの点につきましては、御承知のとおり、税制調査会の長期税制に対する中間答申の中では、法人の課税を法人を独立と見て課税をする、いわばイギリス方式に移行することを研究する必要があるという指示をいたしております。それに基づきまして、主税局が、事務当局といたしましての一種のたたき台としての仮案を提出していることは御承知のとおりだと思います。ただいま御指摘になりましたように、現行の税制はシャウプ税制の考え方で、法人を通じて事業をやる場合と、個人がそのまま事業をやる場合とで負担が不均衡になってはおかしい、したがって、法人税を課税した場合には、個人の所得税はその負担をそれだけ軽減すべきであるという考え方に立っていると思います。これはイギリスの従来の税制の形をかなり制度的に簡略化したものでございますので、その面でやや明確な認識が欠けているという点はあると思います。たとえばイギリスでございますと、御承知のように、配当に対しては、個人の所得税である個人の標準税率を課税をして、個人のところでは、その配当を受け取った場合には、その配当は源泉課税済みであるとみなして、その標準税率でグロスアップいたしまして、そうして課税所得に入れて、そして法人段階で取られた標準税率相当額を控除する。ちょうど私どもが源泉の段階で税を取られておりますので、ほかに所得がなければ、五百万円までの収入金額であれば申告をしないでよろしい、いわば源泉で取ったので十分であるという結果になるのと同じかっこうをとっているわけであります。ところが、日本の場合は、それを法人税そのものでグロスアップするというのが非常に複雑であるために、かりの計算をして、シャウプのときは、最初は二五%の税額控除をやれば、所得の階級に応じて大体若干のズレはあるけれども、イギリスと同じ効果を生ずるものであろうということで二五%の税額控除をいたしました。その後、御承知のとおり、配当軽課ということで、法人のほうの配当に対する税率を軽減いたしました関係で、現在は配当控除を一五%に下げたということになっております。そういう点から日本の税制はやや複雑化しておりまして、法人段階で調整を一部を行ない、受け取り段階でまた調整をするということで、非常に複雑になっておりますので、先生御指摘のように、何となく不合理な形に見えるわけでございます。そういう点もございまして、税制調査会としては、イギリスが従来の制度を一てきして、法人独立課税的な考え方をとったのを契機といたしまして、その検討が必要ではないかと言っているわけでございます。しかし、一方において、もし法人を独立の課税主体と考えるならば、株主に対する投資の報酬である配当というものは当然損金ではないかという理屈も出てまいります。利子を払うのと同じように、配当も損金ではないかという考え方が出てまいりますので、これは大きな問題でありますので、そのあたりも十分考える必要があるのじゃないかということで、これから慎重に税制にあたって検討してまいりたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/25
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026・柴谷要
○柴谷要君 次に、社会保険診療報酬の問題でちょっと伺っておきたいと思うのです。今回の税制調査会の答申においても廃止の方向で検討するということがいわれております。税制調査会で廃止をすべきであると答申したのはことしに始まったことではなくて、三十六年以来言っておる。これは実際の経費額が幾らであるかを問わずに、収入金額の七二%という法定経費率を乗じたものを経費と認めるというものであり、負担の公平を著しく阻害し、一般の納税観念にもたいへん悪影響を与えているのではないか、こう思うわけです。来年の廃止を確約されるかどうか、大蔵当局の見解を、この際、明らかにしてもらいたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/26
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027・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) 社会保険診療報酬につきましては、御指摘のような問題があることは周知のところでございますが、御承知のように、これは昭和二十七年、法制化いたしましたのは二十九年でございますが、当時一点単価が不十分であるということの代償として国会でおきめになった制度でございます。しかし、その後、期限の定めがないためにずっと据え置かれてまいりました二八%の所得率というものも非常に問題が出てまいっております。一方では、たとえば法人の形態でやっておりますような病院の場合は、七二%の経費率よりももっと経費率が高いと言っているところも多々ございます。また、産婦科とか内科とか、科によってはこの経費率が非常に違うという点も指摘されております。この制度の悪いところは、先生の御指摘のとおりに、一律に七二%の経費率としている。しかも七二%以上実際に計算すると経費がかかる。たとえば所得は計算した結果二〇%しかないというところは、申告にあたってこの特別措置を適用する意思を表明いたしませんと、実質収支計算によって課税を受けることになるので、この制度としては甘いほう甘いほうしか適用にならぬという結果になるわけでございます。そういうことから、これを廃止すべきであというと意見が強かったのでありますが、このたびの政府の態度といたしましては、実際には社会診療報酬部分については税制調査も十分行なわれておりません。経費の送定をしても意味がないので、そういう意味では実態が不鮮明になっておるので、しばらくその実態調査をして、経費率が実際幾らであるのか、科別に違いがあるのかどうか、そういう点を十分確かめた上で最終的な調査をしたい。来年度直ちにというわけにはまいりませんので、税制改正要綱におきましても、将来の問題として検討を進めて、それの結果改正するという態度をとったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/27
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028・柴谷要
○柴谷要君 今回の租税特別措置の改正で、これは画期的なものだと思いますが、民間外債を取り入れやすくするために原泉利子課税を免税とする措置をとっているが、外資取り入れについて基本的にどのように考えているのか、これが一点。
それから、ドル、ポンド体制の動揺している中で、借金による成長政策は資金繰りが安定しない心配はないのか、この二点について御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/28
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029・柏木雄介
○政府委員(柏木雄介君) 日本の国際収支のパターンは昭和四十年度以降からだいぶん変わってまいりました。昭和四十年度から長期資本収支の赤字というものが大きくなってまいりました。これはいろいろ原因がございますが、主として海外向けの延べ払いがふえる、あるいは海外向けの経済協力というものが問題がございます。まあその他貿易収支の黒字でカバーしていく。貿易外の資本収支の赤字がありますので、それを貿易収支の黒字で埋めてまいったわけでございます。そういうふうに貿易のパターンが変わってまいっておりますのですが、長い目で見れば、やはり何といっても貿易収支を伸ばして、いくことが必要だということはもちろんでございますが、しかし、同時に、この長期資本の収支の赤字をやはりなるべく少なくしてまいりたい。昨年の四十二年の国際収支はかなり大きな赤字になりましたが、この大きな原因の一つは長期資本収支の赤字でございます。そういうようなことから、私どもといたしましては、今後もやはり長期の優良安定外資というものは積極的に取り入れることがぜひ必要だと思います。その場合に、長期安定外資というときに、外債の形の外資というものはやはり非常に望ましい形の外資でございますが、今度の特にヨーロッパにおける外債の発行を考えます場合には、この税の問題がやはり大きな問題でございます。と申しますのは、欧米における外債の発行というものは、大体通常免税の外債でございます。日本の国債、あるいは政府保証債というものは従来でも免税でございましたが、民間債の外債は免税でなかったわけでございます。しかし、今後積極的に欧米市場、特にヨーロッパ市場における外債を考えるという場合には、やはり免税でないとうまくいかない。先ほども申し上げましたように、長期資本収支をよくしようという考えとあわせまして、国際収支が非常にむずかしいこの時期におきましては、やはりできましたら一〇%の所得税の源泉徴収をしないこととしたい、それが今回の法案をお願いした次第でございます。
それから、いま柴谷委員から御指摘がありました、借金によって成長をやるというのはいかがかという点でございますが、これはまさにいわゆる借金でやるというか、不安定外資によってやるということは問題かと思います。しかし、長期の安定外資によってできるだけ成長を伸ばしていくということは、やはりこれは国民経済の今後の発展、安定を考えた場合に、やはり政府としては十分考えていく必要があると思います。安易に借金に依存するんじゃなくて、長期の安定した外資を入れる、それによって国民経済全体の成長発展を期待するということがぜひ必要かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/29
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030・柴谷要
○柴谷要君 最後の質問になると思いますけれども、次に、価格変動準備金の積み立てについてお尋ねしたいと思います。
今回積み立て率を引き下げて、平年度百五十七億円、初年度三十九億円の増収をはかっているようですが、昨年度の大蔵省の租税特別措置における減収額の試算では百億円計上しております。本年度の試算は十三億円であります。平年度百五十七億円の増収と昨年度の百億円と本年度十三億円の試算の関係を説明をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/30
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031・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) 昨年度百億円の試算をいたしましたのは、四十年度実績を基礎として見たわけでございますが、その後四十一年度の実績が出ますと、かなり在庫投資等がふえておりましたので、実績ではかなりこれを上回っておると思います。それらを見込みまして、ことし税制改正をしないとすれば約百七十億円の減収が生ずるであろうと見たわけでございますが、税制改正をいたしました結果、百五十七億は減収がなくなって十三億残る。この理由は、今度の積み立て率を、従来の八、六、三を六、四、二というふうにいかしました。
実例であげますと、たとえば一億円のたなおろし資産を持っていたものが、従来八%で積んでおりますと八百万円の価格変動準備金が積めたわけであります。ところが、かりにここでたなおろし資産が一割ふえるといたしますと、今年は八百八十万円積めて、八十万円だけ減収対象分がふえるわけです。ところが、それを六%にしてやったものですから、たなおろし資産が一億一千万円になりましても、積める額は六百六十万円。ですから、本来ならば八百八百八十万円積めるところが六百六十万円に減ってしまいますために、それらをやりますと増収税額は非常に多くなりますけれども、これは従来からやっておりますとおり、新しい率で積める額が、その年に取りくずした前年からの繰り越し額を下回るときには、その前年額だけは積めることになりますから、いまの場合で申しますと、前年積めた八百万円だけは積めることになります。そこで、今年の八十万円だけがこれは飛ぶという計算になります。減収額が生じますのは、今年ふえる分だけが減収額になるわけでございまして、確か十三億になる。十三億と申しますのは、今年初めて積む企業もございますし、新しくできた企業もございますので、その分は六%、四%フルに積めますから、そこで十三億は残るわけでございますが、あとは全部飛んでしまう。そこで、三、四年間は積み立て分がなくなってしまうだろう、そういう計算であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/31
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032・野上元
○野上元君 政務次官にお尋ねいたしますが、私きょうもちょっと新聞を見ておりましたら、税制調査会もいよいよ七月をもって任期が切れるということになったようでございます。したがって、税制調査会としては最後の答申を出すいま準備をしておる。その審議の題目となるのは、一つは所得税の減税、第二は、先ほど問題になりました法人利潤税の導入の問題、第三は売り上げ税の創設の問題、第四は土地の税制確立の問題その他、こういうふうになっておるわけでありますが、これを見ておりますと、いつか私が質問いたしましたように、直間比率を現状に据え置くためには、相当間接税のほうを引き上げないと現状を維持することは困難だというふうに思っておったのですが、この審議の内容を見ておりますと、いよいよまた直接税がふえてくるのじゃないか、もしこれが実施されるとなるとこういうことになるわけです。そこで、取り上げられたのが売り上げ税の創設ということになろうかと思いますが、先般売り上げ税の創設の問題についてはいろいろ質問をし、大蔵当局としては慎重にこれを検討したい、こういうふうに言っておられたわけですが、いよいよこれが審議会の公式の題目として取り上げられ、これが答申をされた場合に大蔵省としてはどういう態度をもって臨まれるのか、それを聞いておきたいと思いますし、さらに、また、こういう答申を要求したというか、どうしてその検討の内容を大蔵省ではこれを要求したのかどうか、その点をひとつお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/32
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033・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) 御承知のように、いよいよ税制調査会が再開になりますから、このごろ新聞が非常に観測記事を出しておりますので、その点で、きょうの記事もそれだと思いますが、今年の七月で任期が切れますので、調査会といたしましても長期税制に関する答申をまとめざるを得ない立場にございます。また、そのために四月から実はもう審議を開始するという体制になったのも事実でございます。この長期税制に対する答申の内容は、ある程度一昨年の十二月にいたしました中間答申でオリエンテーションができているわけであります。その中では、所得税については、将来の所得税の問題として、課税最低限を実は八十三万円まで上げる、それに合わせて税率の調整をするというようなことを言っておりますが、この課税最低限については、すでにことしの改正で実現してしまいましたので、おそらくこれをさらに再検討するのじゃないかと思います。
法人税につきましては、利潤税方式と仮称いたしておりますが、法人を独立の課税主体といたしまして、配当を受け取る個人と法人とは関係なしという課税体制を検討する必要があるということを言っておりますので、これに対する結論なり、あるいは方向づけなりを行なわざるを得ない立場にあると思います。
それから、土地税制につきましては、昨年の暮れに、前提条件がいろいろ整っていないために、もう一年延長する必要があるということを言っておりますので、これも長期税制の中に取り入れるか、あるいは単独の回答を出さざるを得ないと思います。
売り上げ税につきましては、中間答申では、現在の直間税制の比率その他から考えると、当面、売り上げ税を考えることは実際的でないという表現をとっております。したがいまして、売り上げ税を取り上げるかどうか、間接税の一つの問題として売り上げ税に触れることもあり得るとは思いますけれども、これを政府側から特に売り上げ税を御研究願いたいという立場にあるわけではなくて、従来の中間答申の線で御検討を願うことになる、かように考えておるわけでございまして、御質問のように、来年度売り上げ税を採用すべしという結論が出るとは、私どもも全く予測をしていない段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/33
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034・瓜生清
○瓜生清君 この間も質問したのですけれども、今度の増税、減税について、どうも私ども納得のいかない面があるわけです。ということは、片一方では所得税を約一千五十億円減税する。一方じゃ酒など四百五十億円、たばこが五百五十億円、物品税等で五十億円取るというならば、両方プラスマイナスゼロになる。そこで、私の聞きたいのは、こういう声があるのです。これだったら減税も増税もないほうが、かえって物価政策の面から見るとプラスになるのじゃないか、こういう批判があるわけです。そこで、大蔵省のほんとうのねらいは一体どこにあるのか、そういう面からお考えを聞きたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/34
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035・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) たいへん長くなるかもしれませんが、税制調査会がこの案をつくってまいりました過程を簡単に御説明いたしますと、あるいはお答えになるかと思います。
税制調査会では、来年——本年になりましたが、本年度の税制改正をいたします場合に何を考えるべきかということを取り上げたわけでございます。税制調査会は、現在日本の税体系というものが、日本の経済発展というものから見ますると常に問題を生ずる可能性がある。と申しますのは、先ほど申し上げましたように、所得税につきましては、日本の個人所得が非常な勢いで伸びております。年率一二、三%ずつ伸びるというのは世界に類例のないことであります。したがいまして、静態的にでき上がっております税制がその所得の伸びに適用されますときには、非常に負担増を生んでいく傾向がございます。それが世界でも例がないような二・二という弾性値を生んでおるわけでございます。したがいまして、日本の経済成長が非常に続く限りは、所得税についての調整をはかっていくことが所得税全体の負担のバランスを適正化するゆえんであるという前提を一つ持っております。
そこで、ことしも自然増収が九千五百億程度望まれますけれども、一方には、財政硬直化ということで、七千億くらいがすでに義務的経費の増で食われ、さらに純当然増的なものが二千億くらいあるということ、さらに今年度は総合予算を組まなければならない、ある程度補正もなしにするということから、やはり千数百億の財源が要る。一方において、財政の公債に対する依存度を下げる意味では公債を減らさなければならない、それがやはり千数百億も減らさなければならないということになりますと、減税財源というものはほとんどないという結果になりますけれども、税制調査会としては、所得が伸びたから自然増収が出るわけであります。その自然増収の中には、相当負担増を来たしたものがあるから減税をしなければならぬのだということで、まず減税はどうしても所得税については適当な度合いで、従来やってきたような考えでやらざるを得ないということで踏み切ったわけでございます。ところが、その減税なしてしまうということをきめたあとの自然増収と、いま申し上げましたような財政需要、あるいは公債の縮減という数字を合わしてまいりますと、どうしても不足が出てくる。その場合に、それでは不足を何で埋めるかという判断をしたわけでございますが、そのときにいろいろあるわけでございます。所得税自身をそういう形で下げておいて、別な観点からもう一度所得税を上げるという形をとる。たとえばイギリスでは今度いろいろ検討しましたけれども、所得税を上げるということでやりましたが、結局たばこ消費税に変わったわけでございますので、結局所得税も対象になるわけでございます。各税目を全部洗ったわけでございます。そのときに、酒、たばこにつきましては、いわゆる従量税体系をとっておるということから、たばこの例で申しますと、たばこの販売総額の弾性値は毎年〇・六五ということになっておりますが、今度は益金の弾性値は〇・五六なんです。つまり単年度ごとにそれくらいずつ益金率は減ってくるという姿がございます。これはやはりたばこの定価がきめられている、それを通じて従量税と同じ効果が発揮されているということなんです。それから、酒につきましても、昭和三十七年当時の小売り価格に対するこの負担率は、特級でございますと五〇であったのが、現在では四三くらいに下がっておりますし、一級酒が四三くらいであったのが三七程度に下がっている。二級酒は三三%程度だったのが二八%程度に下がってきているという事実がございます。こういうことは、税制調査会が二、三年前から、従量税体系にある税制については、所得水準、物価水準が上がったときには、常にその額自体を直さないと税率が相対的に軽減されていく結果になるのだということを指摘しておりまして、去年の税制改正でもここでお願いいたしましたのは、たとえば登録税、印紙税につきまして定額制の部分を大幅に引き上げをしていただいたことがございます。それと同じことが酒、たばこにもあらわれている。それを、その結果として、御承知のとおり、昭和三十年ころは直間比率は五〇と五〇だったわけであります。その後ずっと所得税だけの減税を続けてきておるにかかわらず、いまでは六〇と四〇という比率に下がってきておる。これはやはり間接税にはそう手直しをしない限り、減っていく要素がある。揮発油税も従量税でございますが、これは道路五カ年計画を、収入がふえるたびに上げております。これはいわば従価税率と同じような上げ方をして、収入と見合って伸ばしているわでございます。それと同じ意味で、酒、たばこについては、いつかの時期に税率調整をして負担を調整しなければならぬということを言っておりましたので、最終的な結論としては、税制調査会では、その不足する財源、これは所得税減税のためということではなくて、所得税減税は先にどうしても必要だからやってしまう。残る点、全体の財政に対して不足する財源を酒、たばこの税率調整でいこう、酒については特級、一級、ビール、ウイスキーというような、いわゆる大体において高級な、しかも、特級、一級の場合でございますと、半分以上がいわば交際費的に使われておるこういうものを対象として課税をしよう。たばこの場合、かなり長い期間据え置いておりますし、たばこのような商品は嗜好品性が非常に強いので、安いたばこを高額所得者が吸っている場合もございますし、高いたばこを低額所得者が吸っている場合がある。そのために、価格に差ができますと非常に大きなズレが出てまいりまして、いわゆる価格によるズレの効果が生じてまいります。そういうこともあって、かなり大幅に引き上げをする必要があるということでやったわけでございますが、これも、たばこにいたしましても、当時の益金率よりははるかに低い程度でございますし、酒につきましても、三十二年当時の負担率よりははるかに低い率に調整したにとどまるわけでございます。そういうことで、今回の考え方の全体を申し上げるとそういうかっこうになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/35
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036・瓜生清
○瓜生清君 いまの御答弁は納得できない面がありますが、いずれにしても、酒、たばこをきょうは質問しないということらしいですからやめますが、私ここに持っているハイライトで四十円ちょっと税金がかかっているそうですが、そうでしょうか、六割近いものがあるわけです。そういうものをどうして値上げしなければならないのか。本日はこれでやめますけれども、何としても私は理解ができないと思います。
そこで、所得税法に関係しまして二、三具体的な質問をしてみたいと思うのです。
その一つは、いま通勤の定期代は、たしか一カ月二千四百円までは非課税であると思うのです。ところが、各企業で従業員に支給しておるいわゆる食費ですね、これの非課税の金額が七百円だというふうに私理解しておるのですが、通勤定期の場合は二千四百円というもの以上の分に対して税金がかかってくる。ところが、食費は七百円をオーバーしたらもとからかかってくるという、こういう差があるわけです。それの取り扱いの理由といいますか、根拠といいますか、ひとつ説明してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/36
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037・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) いわゆる給与所得者の現物給与ういうものはいろいろ問題の多いものでございます。いまお話の通勤に伴う定期代、これは通勤費手当という形で雇用主が支給している場合、それから現物給与として食事を出しておる場合、あるいは社宅に住まわせて、その実際の取るべき家賃よりは比較的安い家賃で住まわしている場合、そのほか、いわゆる現物給与というものはいろいろあるわけでございますが、これについては、実は沿革を申し上げないとなかなか御理解いただけないかと思うのでございますが、こういった現物給与につきましては、昭和四十年に所得税法が改正される以前は、実は法律に規定がなかったのであります。そこで、そうかといって、現実に会社が支給しているそういった場合に、すべてこれを給与所得として課税するということになりますと、源泉徴収義務者の手数もたいへんでございますし、また、場合によって酷なような事例が出てまいります。そこで、国税庁としましては、いわゆる税法の解釈通達としてでなしに、執行上の通達といたしまして、税務行政を執行していく上において、この程度のものは、しいて課税所得として源泉徴収をしなくてもいいという執行上の通達を出したわけであります。その際に取り上げられましたものが、先ほど申し上げましたように、通勤手当とか、それから食事であるとか、あるいは寄宿舎、社宅等に住まわせておる場合のことであります。その際に、まあ食事のほうにつきましては、月額七百円まで以下のような少額の場合には、それを課税するということになりますと徴収義務者もたいへんですから、そこまでは課税しないということにする。それから、通勤費につきましては、当初は定期を買って与えるという形をとった場合には月額七百五十円までということになっておったのであります。その後通勤費がだんだん上がってまいりますものですから、三十八年に九百円にいたしました。そして四十年の所得税法の改正の際に所得税法に規定を設けまして、そういう通勤のためには、従来は定期を買って与えるときに限っておったわけですが、現金を与えて定期を買わせる場合においても同じに扱って差しつかえないじゃないかということから、所得税法の九条第一項第五号にそういう通勤手当の非課税の規定が設けられたのであります。それが現在は、お話のように、二千四百円まではその非課税措置がとられる、こういうことになっておるわけでございます。ところで、それとの関連で、現物給与についても非課税規定を設けようということで、当時私は主税局におりましていろいろ検討いたしたのであります。そのときに、所得税法九条一項六号の規定を設けまして、いわゆる現物給与のうち、非課税の規定を設けようということをいろいろ検討したのであります。その非課税の規定としては、どうも他の非課税規定とのバランスからいたしまして、そういう現物給与で「職務の性質上欠くことのできないもの」に限るという規定に法律はなったわけでございます。それを受けまして、政令の二十一条にその「職務上必要な給付」というものを規定しております。これは先ほど申し上げましたような、たとえば船員が船員法の規定によって支給される食料とか、そのほか法令の規定で無料で支給される食料がある場合にはそれ。それから、制服を着用しなければならない者がその制服を支給された場合、あるいはそれに伴って身回り品の貸与を受けたといったような場合、さらには、国家公務員宿舎法によって無料で宿舎の貸与を受けることによって受ける利益、こういったものを非課税にすることになったのでありますが、食費につきましては、どうも「職務上必要な給付」ということがなかなか明確にできない。通勤費でございますと、それは給与所得を得るために勤務すべき場所まで来なければなりませんので、そういう意味では、いわゆる従来から非課税規定になっておりました旅費と同じような性格を持っていますので、通勤手当という形にしても、それを非課税とすることは差しつかえない。しかし、食事となりますと、何も通勤しなくても食事はしなければならぬわけでございますし、そうして現実に行なわれている状況を見ますと、食事を出す雇用主と食事を出さない雇用主とおるわけでございます。そういたしますと、食事を出す雇用主に雇われている者とそうでない者に雇われている者との間の課税上のバランスということも考えなくてはならないというようなことからいたしまして、どうも政令で規定されにくということでその当時見送ったのであります。もっとも、その際には、根本的にはこういう考え方もあったわけです。一つは、現物給与というものはすべて課税対象に入れる、しかし、そのかわりに、課税最低限と申しますか、給与所得控除を大幅に引き上げる、こういう案を考えて、いろいろ関係方面にはかったわけでありますが、どうもそれはいままでのやり方からして、現物給与をすべて課税所得に入れてしまうということはなかなかむずかしい。したがって、当分そういう規定を設けるのは待ってくれというようなことで今日に至っております。そのために、いわゆる定期代のほう、通勤費手当と称せられるものは、だんだんと通勤費が上がってまいりましたために二千四百円まで非課税ということになっておりますが、食事のほうにつきましては従来どおり七百円ということで今日まで来ておるわけであります。ただ、そういういきさつがありますので、そういう食事に対する非課税の限度というのは、もっぱら税務執行上の見地からできておる。そういう給付を受ける者と受けない者との課税のバランスといったようなことを考えると、通勤費を上げたからといって、すぐに食事のほうの七百円というものを上げるというわけにはなかなかまいらない。ほんとうを言えば、どうしても所得税法でそういう現物給与たる食事に対する税法の態度というものを明確にしていただくのが先決ではないか。これを国税庁の執行通達でやっていることについては、実はおしかりをいただくのではないかと思っておそれておるような次第なのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/37
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038・瓜生清
○瓜生清君 経過は、長官、よくわかりましたが、しかし、静かに考えてみますと、確かにそういう法解釈その他はいまおっしゃったとおりでしょう。だけれども、一つの例をあげますと、通勤の定期代の負担は、昭和二十六年に三百五十円だったものが、昨年の昭和四十二年には二千四百円に課税限度額というものは上がっているわけです。ところが、食費補助などの現物給与は、昭和二十五年以前は百円、昭和二十九年に七百円に引き上げられて、十三、四年というものはそのまま放置されているわけです。通勤定期のほうは大体運賃上昇に見合って上げられてきておる。しかるに、食費のほうは依然としていま私が言いましたような経過で放置されておる。だから、その現物給与に対する取り扱いのやり方が、これはあまりにも片手落ちじゃないかという気がするんですがね。法令改正をする必要がない、いわゆる国税庁の通達でできるわけですから、それを早急におやりになる意思があるのかないのか、ひとつお聞かせ願いたいと思のです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/38
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039・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) 先ほども申し上げましたように、これは国税庁で執行通達として、そういう少額な食事を給している場合にまで課税所得に取り入れるということは、源泉徴収義務者の手数もたいへんですし、適当でなかろうということで課税しないということにしておるのであります。したがって、本来は、先ほど申し上げましたように、通勤手当と同じように、所得税法でしかるべき規定を設けるのが望ましいことではないかと思います。ただ、その規定のしかたがなかなかむずかしいということで今日まで見送られてきておるのであります。確かにその以前の通勤定期を現物給与として与えた場合に非課税とされておった金額がだんだん上がったのに比べて、食事のほうは二十九年以来据え置いておるという点で、一見アンバランスだというお感じを持たれるのはごもっともだと思います。ただ、先ほども繰り返して申し上げましたように、食事を給される者と給されない者との間の課税のアンバランスを考えますと、これを、食事代が上がっていったからといって、そうむやみに大きく上げていくのは、執行通達の性格上どうであろうか。実は通勤費のほうも、九百円までは通達でしんぼうしよう、つまり千円以下なら通達でやってもそうしかられはしないだろう、しかし、千円をこえるような事態になってくると、どうも通達でやるのは問題ではないかということから、法律に規定を設けて、政令にきちんと二千四百円までという規定を設けていただいたわけです。そういう趣旨から言うと、この七百円を上げたらいいじゃないかという御意見はごもっともでございますけれども、やはりそれを上げるということになりますといろいろ問題も出てまいります。私どものほうとしては、どうか主税局のほうで法律の範囲内で規定をつくっていただくのが望ましい、こう考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/39
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040・瓜生清
○瓜生清君 私、この問題に関しまして、この間三月二十一日ですか、衆議院の大蔵委員会で国税庁の川村直税部長が、いまの食事の問題に関連をして、いわゆる七百円の限度額の引き上げをためらっている一つの理由として、いま長官がおっしゃられたように、大企業等の福祉厚生施設の非常に行き届いたところでは控除されるけれども、中小企業のように、そういう施設を持たないところでは控除が受けられなくて問題があると、こういうような御答弁をなさっておるんです。で、私は、端的に申し上げまして、いまそれぞれの中小企業でも、いわゆる構造改善というものが進んでおりまして、特に労働力不足という問題から、むしろ給食センターのようなものを設けて、そして産地ごとに、何といいますか、そういうふうなことをやっているところがたくさん出てきたわけです。そこで、いまおっしゃいましたことは、確かに給食をしているところと、していないところの差別というものはありますけれども、これからそういうふうな傾向というものが各地で強まってくるのじゃないか、こういうふうに判断されるわけです。で、そういうふうなことを考えますと、私はいまの長官の御答弁を聞いておって、何といいますか、それではたしていいのかどうか、もっと積極的な姿勢で国税庁とか主税局がこういう問題と取り組む必要があるのじゃないか、こういうふうに考えておるのですが、そういう点について、いまはっきり言うと、中小企業では人が足らないから、何とかして福利厚生施設、あるいは給食センターというものを借金してでも建てなけりゃ人がやってこない、こういう状態の中に置かれておるわけです。そういった新しい観点から、この問題に対して、それはいまなかなか長官としては、こうしますという答弁ができないかもしれませんが、今後これと取り組むいわゆる姿勢について、もう一ぺん、くどいようですが、お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/40
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041・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) お話のように、最近中小企業の場合に、いわゆる給食センターをつくって従業員の福利厚生をはかっていかないと、なかなか従業員が集めにくいというふうになっておりますことは私どもも十分承知いたしております。で、そういった場合、食事を供する場合には、自分でそういう食堂の施設などを持っております場合は、主食、副食のいわゆる直接費のみの七〇%相当額が七百円以下であればまあ課税しない、こういう扱いにいまいたしておるわけでございます。それでまいりますと、直接材料費の七割でございますので、したがって、直接材料費だけで申しますと千円ということになりますか、で、月に二十五日そういう昼飯を供するといたしますと、一回四十円という直接材料費になります。そういたしますと、普通でございますと、普通の直接材料費が四十円という食事でございますと、八十円ぐらいに相当する場合はいまでも非課税になっておるわけでございます。で、現実のそういった給食センターとか各会社で支給しておりまする食事の内容を見ますと、大体八十円から六十円ぐらいで済んでおるようであります。そうなれば、いまの七百円の非課税規定の中で救われておる形になっております。ただ、問題がありますのは、そういうふうにみずから食堂を経営と申しますか、食堂を設けておったり、あるいはそれと異ならないような給食センターをつくっておる、こういう場合にはいいのでありますが、そういう食堂なり給食センターを設けることができないで、出前をとっておるというようなことになりますと、これはそういう食事をつくって出前をする業者の人件費であるとか利潤といったものが入りますので、それの七割相当額ということになりますと、なかなかいまの七百円というワク内におさまらないという問題が出てまいりまして、そこにみずから食堂を設けている場合とそうでない場合との間のアンバランスという問題は確かにあるのであります。しかし、まあそういう出前をとる場合の直接材料費が幾らかということはなかなか計算しにくいものですから、払った対価の七〇%相当額ということで処理せざるを得ない形になっているのであります。まあそういう点からいたしまして、現物給与である食事についてどういうふうに扱うべきか、なかなかむずかしい問題があるのでございます。私どもとしましては、もちろん世の中のいろいろの動きというものを十分見きわめましてやっていきたいという気持ちは十分持っておりまして、したがって、七百円についても、一切考えないということではもちろんございません。実情を十分考慮したことに持っていきたいとは思っておりますけれども、何ぶん給食の実態がいろいろ分かれておりまして、給食しない中小企業というものも相当まだあるというような現状でございますものですから、この課税のアンバランスを一そう広げるような姿はなかなか問題だと思っているのであります。しかし、御趣旨の点もありますので、本来ならば法律的に手当てをしてもらうということが望ましいのですが、主税局のほうとも十分相談いたしまして、もし法律的に手当てをすることが現段階で非常に困難だということでありますれば、なお私どものほうで実情を十分考慮してこの金額を検討してみることにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/41
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042・瓜生清
○瓜生清君 これで私はやめますけれども、いま長官のおっしゃっているような、その昼御飯だけを提供するというところと三食喫食さしているところとあるわけですね、いま。それぞれの地域においては中小企業の団地がどんどんできているわけです。これは政府も奨励をしているわけです。そういうところでは、少なくとも一カ月に三千円なり三千五百円なりの食費というものをとられているわけです。私どもの言いたいのは、国鉄におきましては三百五十円から二千四百円までまた上がってきたけれども、給食費のいわゆる課税限度につきましては、十数年間というものは、これは食糧費が一番値上がりしているわけですね、そうでしょう。これはだれが考えても一目りょう然の事実だと思うのです。したがって、その七百円という限度については確かに法律的な措置というものをとらなければいかぬというならば、そういうふうな方向にわれわれも努力いたしますけれども、ひとつ国税庁なり主税局の権限の範囲内でやれる問題については、私はぜひ食費については御考慮願いたいことを強く要望して、御答弁は要りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/42
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043・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) ちょっと一日三回食事を与えているというようなお話でございましたが、私どものほうの考え方といたしましては、一日三べん食べるものを全部非課税ということには、これはまいりかねると思うのでございます。まあ私どもとして現物給与である食事を非課税にするのは、せいぜい昼飯を勤務場所においてとる場合に、弁当を持ってこいというわけにいかぬから、これは非課税にしてもけっこうでしょう。それから、たまたま残業等があった場合に夜食を給するといったような場合に、その夜食はそれは非課税でもけっこうでしょう。しかし、朝、昼、晩毎日毎日食べるものを全部非課税というわけには、これはなかなかまいりかねるのでございます。したがって、私ども検討するといたしましても、そこまではとうてい検討いたしかねますので、その点はひとつあらかじめ申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/43
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044・瓜生清
○瓜生清君 私はそういう意味で言ったのじゃないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/44
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045・須藤五郎
○須藤五郎君 政府当局は、四十三年度の所得は一千五十億円減税いたします、しかし、酒、たばこ、物品税の増税で一千五十億円だからプラスマイナスゼロだ、こういうふうに言っていらっしゃいますが、こういうことが問題ではないので、一体だれが減税になるかという点が問題だと思うのです。そうしてだれに増税になっているかということが私は問題だと思うのです。そこで、政府は、今度の税制改正で中小所得者の税負担が一体軽減されると思うのかどうかという点を伺いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/45
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046・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) お尋ねの点は、所得税においては課税最低限を引き上げますから、中小所得者の減税が一番大きい。また住民税も引き上げておりますから、所得税のかからない世帯につきましても減税が主として小さいほうにある。しかし、一方において酒、たばこはだれでものむものじゃないか、こういう御指摘だと思います。私どもいろいろはじいて考えておりますけれども、まず酒の税でございますと、これは御承知のとおり、まず今度の増徴になります酒類の半分は料理屋、飲食店で消費されているという実績になっております。 つまり特級、一級、ビール、ウィスキー、これは大体半分がそれでございますし、大体家計調査で見ますと、これらの酒類はかなり高い階層が多く飲んでおるものでございます。その意味では、酒税の負担はむしろ中以上のところへかかっておるという感じはいたします。たばこは、御承知のとおり、全部が吸っておりますので、かなり平均的に負担がふえる、こういう実情でございます。通じて考えますと、私どものいろいろ不完全な計算ではございますけれども、大体たばこについては、いまのたばこの負担が各所得階層に分布しているのとほぼ同じ形で増税がかかるということになっております。その点で、御指摘のように、酒を飲む人、たばこをのむ人については、所得税の減税の効果と、たばこの増税、あるいは酒の増税の効果が相殺されるということも事実あると思うのですが、私ども再々申し上げておりますように、今回のたばこ、酒の増税と申しますのは、多年にわたって負担率が下がってきたけれども、調整しているということを前提に考えておるわけであります。たとえばたばこの消費支出金額が全体の消費支出金額に占める割合というものはここ十年間で約七割に下がっております。これは下がった原因というものは、主としてたばこのコストは上がっておりますが、価格を引き上げない、益金がそれだけ減ったということになって、家計の経費のたばこの消費支出金額は七割減っておるという実情がございます。酒についても同じことがございます。確かにことしの現時点をごらんいただきますと、酒、たばこによる増税の影響が中小所得者に影響しておる、これはもう事実でございますが、全体としての税体系全体をながめますと、数年来ずっとバランスを失してきたものを直したものでございますから、負担としては調整を受けたというふうにお考えを願えるのではないか、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/46
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047・須藤五郎
○須藤五郎君 それは酒を飲む人、飲まない人、たばこを吸う人、吸わない人があるわけですから、その立場立場でいろいろ計算は違ってくると思うのですが、私は私なりに計算をしてみたのですが、給与所得者の年収が五十万円の独身者、それから、次に、同じく年収百万円の人で夫婦子供二人の四人家族の人、それから年収五百万円で、やはり夫婦子供二人の四人家族の人、まあこの三つの例をとってみたのですが、これをA、B、Cとしました。そうしますと、Aの人は四十二年度の所得税は、独身者ですが、一万五千六百六十円です。四十三年度の所得税が一万四千十円ですね。これはあなたのほうでずっと出していただいたもの、あなたのほうから出ておるこれに出ておるから、ぼくは、だらだら質問しないで私のほうから出しておるのですがね。それから年収百万円の人は、去年が三万二百十五円、ことしは二万三千三百二十二円、すなわち、減税額が六千八百九十三円ですね。一人除けば一千六百五十円でしょう。それから五百万円以下の人は四人家族で、去年が百二十九万八千百五十円、ことしは百二十六万四千七百円、いわゆる減税額が三万三千四百五十円、これ間違いないですね。そうしますと、これをA、B、Cとしますると、ハイライトが十円上がるとしますね。そうしますと、ハイライト一箱ぐらいはたばこを吸う人は大体吸いますね。そうしますと、三百六十五日で三千六百五十円の増税ということになるわけですね。それから、酒を飲まぬ人があると言いますが、まあ何じゃないですか、ビール一本飲むと仮定しますね、そうしますると、ビールの税金が七円上がると——七円ですね、そうすると年に二千五百五十円。そうすると、酒とたばこで一日十七円、三百六十五日で六千百五十円と、まあこういう数字が出てくるわけですね。そうすると、いわゆる年収五十万円の独身者は減税が千六百五十円、そうすると、酒、たばこの増税が六千百五十円となりますと、差し引き四千五百円の増税という数字が出るわけですね。で、四人家族百万円になりますと、減税額が六千八百九十三円で、それから間接税の増税が六千百五十円、差し引き七百四十三円の減税になると、こういう計算になります。そうすると、今度五百万円の人になりますと、減税額が三万三千四百五十円、それから間接税の増税で六千百五十円、差し引き二万七千三百円の減税と、こういうふうな数字が出るんですね。これをずっと計算しますと、確かに年収五百万円の人、これには確かに減税になるんです、二万七千三百円からの。たばこや酒が上がってもこれだけの減税になるということははっきりするんですが、五十万円以下の人には増税になっているわけです。ということは、高所得者には減税になるが、低所得者には増税という形が出ておるんです。どうなんですか、そういう点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/47
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048・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) 御指摘のような計算をいたしますとそういう結果が単年度では出ると思います。まあビール一本毎日飲むといたしますと相当な高額所得者だと思いますけれども、これは仮定でございますが、まあそのとおりであると思います。いま御指摘の点はそのとおりだと思いますが、ここで私申し上げたいのは、酒、たばこというものに対する税率というものは、これは日本だけでなくて、世界各国非常に高いのでございます。なぜかと申しますと、酒、たばこにつきましては、麻薬ほどひどくはございませんが、かなり衛生的な問題がございます。また、非常に欲望充足に対してコストが安いわけです。それを放置いたしますと、これは非常なばく大な利益が出まして、これはアメリカの禁酒法の経験で明らかでございますが、ばく大な富の集積ができる。そういう意味では、衛生の管理という視点からも、あるいは不当利得を多くしないという点からも、どこの国でも、酒、たばこについては、もう封建時代から高い税率を課するとか、あるいは高い専売益金をとっておるのが実情でございます。つまり欲望充足の形から申しますと、たとえばビール一本いま百二十円でございますが、コカコーラなどというのは、あれはビールの四分の一しか入っておりませんが、あれが一本五十円。つまりそれだけ酒の欲望充足というのは、税金をたくさんとっておっても非常に大きいということから、酒、たばこには特別税をとっている。そういう意味で、今度の増税と申しますのは、そういう前提を一つ置きまして、その点だけバランスをとっているから、税金が経済の動きによってどんどん下がってくる、それを是正したという意味でございますので、これは、たとえば早い話が、いまの特級酒にいたしましても、昭和二十五年ころは千百円だった。それをずっと税金を下げてまいりまして、そうしていい負担になったというのが三十七年だったわけです。このとき八百五十円くらいに下がった。その後、今後税を上げないのに価格が上がってまいりまして、またちょうど千円くらいになった。今後の増税をやりまして、大体昭和二十五、六年ころの酒値段と同じようになったわけでございますから、そういう意味では、単年度をごらんになると確かに先生御指摘のとおりだと思いますけれども、酒の税率調整ということが全体のバランスをとるためにはどうしても必要だとすれば、どこかの年にこの問題が起こる。それは、御指摘の数字はそのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/48
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049・須藤五郎
○須藤五郎君 私はそういうことを問題にしているのじゃないのですよ。大体今度の税制改革でだれに増税になっておるか、だれに減税になっておるかということを私は問題にしたのであって、酒の値段、たばこの値段がどうのこうのというわけじゃない。私がこういうA、B、Cという例をあげましたのは、この例で見ましても、たばこだけ吸う独身者では相当の増税になるのですね、減税よりは。減税が千六百五十円でしょう。たばこを毎日吸うたら増税額が三千六百五十円です。これだけ見ていても、酒を飲まない、たばこだけでもこれだけの増税になっているのです、低所得者にはですよ。ところが、酒とたばこを吸うても、五百万円の収入のある人には二万七千三百円という減税になっておる。すなわち、今度のこれで減税になる人は高所得者であって、低所得者には今年度は減税がないということを私は言っておるわけなんです。それに間違いないでしょう。これだけの例を見てもそういうことがはっきりするじゃないですか。あなたの認められるとおり、たばこだけ吸う人は、たばこの値上げで減税千六百五十円は消えてしまって、二千円あまりやはり増税になることはこれで明らかでしょう、そこを私は言っているのです。ますます今度の減税は低所者に増税であって、高所得者には減税になる、そういう点を言ったわけです。
その次には、昨年も当委員会で私は質問しましたが、政府が千五十億円所得税の減税の中に、四百三十億円の物価調整減税をちゃんと入れておる、こういうふうに言っていらっしゃるわけですね。物価調整減税以上の減税をやっています。こう言うのでありましたら、なぜ所得税も納められない低所得者に物価調整減税をまっ先にやらないのか、こういう点ですね。この人たちこそ、低所得者こそ政府の経済政策による消費者物価の上昇によって生活に大きな痛手をまず第一に受ける人だと思うのです。
そこで、私は、まず質問をしますが、四十一年度低所得者の負担する間接税総額はどれだけか、また、所得税を払わない人たちの人数がどれだけかということをまず質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/49
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050・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) 所得税を払わない人数と申しますのは、大体所得税を払っていない人は、有業者人口で考えますと約二千七百万名くらい、そう考えます。間接税をどの階層が負担しているか、実はこれは私どもも何とか捕捉をしたいと思いまして、昭和三十二年ころから家計調査の資料をとっていろいろ推計いたしましたが、遺憾ながら、家計調査の資料をもとに資料をとりましても実態がなかなかつかめない。たとえば酒類にいたしますと、二九%しか家計調査の総計の中からは出てこない、ほとんどが家計調査から漏れているわけです。たばこに至りますと二三%しか入っておりませんので、なかなか実際の数字がつかめません。それから、物品税に至りますと課税最低限というものがございますので、たとえばたんすを買ったと申しましても、幾らで買ったか、そのときの製造価格が幾らかわからないと、課税になっているかどうか、実はわからないわけでございます。そういうわけで、たいへん恐縮なんでございますけれども、間接税を低所得者がどの程度負担しているかという推計は、実は世界的にもないわけでございます。アメリカでマウスグレーブもやりましたけれども、これはとてもいかぬということで、とても使いものにならぬということを言っておりますし、比較的日本の家計調査はしっかりしているとは思いますけれども、どうも実態がつかめないので、この点はまことに申しわけないのでございますが、申し上げられないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/50
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051・須藤五郎
○須藤五郎君 大体納税人口というものは五千万くらいですか、三千万ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/51
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052・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) 全体がいわば所得税の対象になり得ると考えられる有業人口が約五千万、そのうち、二千百万くらいが課税になっているという勘定です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/52
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053・須藤五郎
○須藤五郎君 そうすると、所得税を払っていない低所得層が二千七百万というのですから、この人たちが約六割を占めているわけですね。それじゃこの人たちは間接税を払わぬかというと、そうではないのですね。酒も飲むでしょうし、たばこも吸うでしょうし、砂糖もなめるでしょうし、私ども計算しますと、どうしてもこういう低所得者層が負担しておる間接税というものは大体六千億とか七千億くらいになるという数字が出てくるのですがね。政府はどういうところに数字をはじいているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/53
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054・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) 間接税の中で大きなものと申しますと、酒、たばこ、それから揮発油税でございます。あといろいろございますけれども、酒、たばこ、揮発油税でほとんど間接税の大体六、七割を占めております。酒、たばこ、揮発油税で推定をするということをおやりになったと思うのでございますけれども、揮発油税はほとんどがいわゆるオーナー・ドライバーにかかっている。これは相当高い階層です。酒、たばこは、おっしゃるとおり、みんな平均的に負担されますから、そういう意味では、まあいまの課税対象が六−四でございますと、高級な酒類、たばこ等を考えましても、まあ酒、たばこについては五分五分くらいになるのじゃなかろうかという感じがいたします。そういう計算をいたしますと、先生のおっしゃるように、両方合わせますと、大体、酒、たばこ一兆円でございますから、五千億くらいは非課税者が負担しているかもしれないということは言えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/54
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055・須藤五郎
○須藤五郎君 あなたたち非常に下目に計算して五千億という数字が出てくるのですがね、私たちが計算すると、七千億という数字は大体出てくるのですね。所得税も払えないような低所得者が、間接税というものをこれほど払う。間接税の大部分ですね、過半数はそういう人たちが払っているという点にひとつ注意をしてもらいたいと思うんですが、間接税というのはそういうものだということですね。
そこで、昨年五月、私が当委員会で水田大蔵大臣に、所得税も納められないような低所得者に一体どういう処置をとられますか、こういう質問をしたのです。所得税を払っている人というのはいわゆる物価調整で減税すると、こうおっしゃるのですね。ところが、所得税を払っていない人たちはそういう調整もされないわけですね。それで間接税で七千億からの税金がとられている。そこで、低所得者に一体どういう処置をとっていらっしゃいますか、やる考えか、こういうことを質問したのですよ。そういう質問に対して、大臣は、その調整を間接税でやったらよかろうという御意見であろうと思いますが、間接税の目的、間接税の筋からいってそうすべきでなく、たとえば社会保障のいろいろな拡充とか、そういう面から考えるべきである、こういうふうに大臣が言っていらっしゃるわけなんです。これは速記録からとったのですから間違いない。そこで、質問なんでございますが、所得税を納めている人全員に所得税の物価調整減税が行なわれるのですが、所得税を納めていない人が七千億円もの間接税を負担しておる。低所得者全員に対して物価調整減税と同じ効果を持つ措置をどのような方法で行ないましたか、また、今後どのように行なうつもりでございますかというのが私の質問なんです。はっきりと答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/55
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056・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) 物価調整減税と先生がおっしゃいましたのは、これは所得税を納めていない人にはない問題でございまして、所得税が累進課税であるために、ノミナルな所得が上がりますと実効税率が上がるわけでございます。ところが、実質所得でまいりますとほとんど変わっていないにもかかわらず、形式所得がふえるために税率が上がる、その実効税率が上がった分を軽減するというのが物価調整減税です。ですから、所得税のかかっていない人には最初からない問題です。ですから、そういう意味では、物価調整減税をやるから低所得者にも物価調整減税をやれという理屈にはならない。むしろ所得税がかかっておる人が所得がふえ、その中でまた税額がふえるから、これは排除する。そうすると、所得税がかかっていない人は所得がふえるだけで、所得税も何もかからないというところでバランスがとれていくわけです。つまり累進税から出ておる固有の問題です。実質所得とノミナルな所得との間に差があるということから出てきたのが物価調整減税でございますから、先生のおっしゃる意味はよくわかりますが、税制で物価の上がりを調整するとか何とかいうことは考えていない。物価が上がった分だけ税をまけるということではございません。ですから、物価調整減税というものは、物価が上がった分に対する実効税率の上がりだけを調整しておるものでございますから、そういう意味で、私、同じ意味ではあり得ないということを申し上げておるわけなんでございます。
それで、低所得者の場合は、確かにおっしゃるとおり、補助金を出すとか、社会保障費を拡充するとかという方法しか実はない。間接税については、間接税を軽減すれば上のほうも一緒にもうかってしまうという結果になってしまうわけで、そういう意味では、税制として、たとえば間接税が多過ぎるではないかという御意見があると思います。ただ、日本の場合は世界に比べても間接税の負担が非常に少ないというところなんです。たとえば国民所得に対する間接税の負担は日本は五・三%でございますが、イギリスは一四・一%、西ドイツでも一三・九%、フランスに至りますと一六・八%ということで、間接税に非常に負担をかけております。日本より低いのはアメリカだけでございまして、アメリカは確かに低いので、二・四%しかかかっておりません。そういう意味で、将来日本の所得がふえていくにつれてアメリカ式に間接税が少なくなっていくことが望ましいわけでございますが、いまの段階では、日本はむしろその点では先進国に属しておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/56
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057・須藤五郎
○須藤五郎君 ぼくの質問に直接答えなければだめだよ。そんな横っちょのことを答えておったのじゃだめだよ。所得税を払っている階層は減税措置があるのですよ。それから、物価調整減税というものもあるのです。ところが、所得税を払っていない人はその物価調整減税措置も受けないでしょう。減税措置が全然ないでしょう。ところが、一方、間接税が上がってくるのですよ、一体これをどうするかということなんですよ。いま七千億円も間接税をとられているのです、所得税を払わない人が。その人たちに対してあなたたちは何にも処置しない。そうして間接税の目的、間接税の筋からいって、間接税で調節するのじゃなしに——これはできないですよ。間接税で調節するということは。所得税を払わない人は砂糖も割引で買うとか、たばこも割引で買うとか、そういうことはできないでしょう。一体それじゃどうするかといったのです。そうしたら、たとえば社会保障のいろいろな拡充とか、そういう面から考えるべきでありますと、こういうように大蔵大臣は答えているのですね。そこで、私は、今年この低所得者に対してどういうふうに措置をとられましたかということを端的に聞いているのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/57
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058・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) いまの御質問、確かに私少し横っちょにいっておりましたが、ことしも社会保障の拡充費は、前年に比べまして七百六十億歳出の面でふやしております。また、御承知と思いますけれども、国の歳出自体というものは、これは所得弾力性は一以下でございまして、歳出というものは大体低所得者にプラスになる。高額所得者は税金をよけい払いますが、受ける利益は非常に少ないというのが学者の定説でございまして、そういう意味では、社会保障、あるいは社会資本の充実というものと税金のあり方というものは、両方合わせてお考えいただかなければいかぬと思うのでございますが、とりあえず申し上げますと、七百六十億ほど社会保障費がふえているという事実がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/58
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059・須藤五郎
○須藤五郎君 たぶんそういうふうにお答えになると思っておったのですが、それじゃ生活保護世帯は一体何世帯ぐらいあるんですか、いま。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/59
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060・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) 実は私、所管外でございますので、こういうお答えをしておきながら申しわけないのでございますが、生活保護世帯の数字をいまちょっとはっきり申し上げかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/60
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061・須藤五郎
○須藤五郎君 持っていない……。それじゃ得所税を納めていない低所得者の世帯はどのくらいか。これはさっき二千七百万と答えたね。おそらく生活保護世帯が二千七百万もあるわけはないんです。これは私も、いまここに資料を——あなた知らないか、ぼくは答えられるだろうと思うから資料を持ってこなかったのだが、ごく一部ですよ。そんなになるわけはない。それじゃ生活保護で処置していると言うけれども、それ以外の人はあなたたちは何で処置するのですか。何ら処置してないじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/61
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062・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) いま御指摘になりましたように、二千七百万人の非課税人員があるわけでございます。いま社会保障では、扶助を受ける人員は百三十四万ということでございますが、先生のおっしゃるように、差があるわけでございますが、その間には住民税の軽減を受けている階層がございます。住民税軽減の階層は、大体納税者三千万人でございますから、千万くらい所得税より幅が広い、その分は、今度は住民税の課税最低限の引き上げを受けておりますから、そういう意味では、やや半分くらい……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/62
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063・須藤五郎
○須藤五郎君 あなた、政府の答弁のとおり信用するとしても、残りの半分は何もないじゃないか。どうするんだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/63
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064・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) 残りの半分は、こちらで御意見がございましたように、所得がふえても所得税がかからない、したがって、物価調整という問題が起こらない対象になりますし、ことし所得税の最低限を上げたために、そういう階層が課税者になるのを課税者にならないでとめておるということがございます。そういう点はやはり影響を受けておるということが言えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/64
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065・須藤五郎
○須藤五郎君 所得税を払う人は二重の……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/65
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066・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) それは、先生、所得税がふえるやつを減らしているわけでございまして、いま払っているものを減らすというよりも、所得が伸びて、そうして、しかも、物価との差があるために所得税がよけいになるその分をまけているわけでございますから、所得税が元来かかっていない人と所得税がかかっている人とは、所得が伸びた場合に、所得税自身が所得が伸びる以上にふえるという現象があるわけで、そのふえる分を、その何分の一かを減税しているというのが実態なんでございますから、所得税がかかっていない人自体は、これはその問題はないわけなんです。ですから、いわゆる調整減税というものは、まさに所得税がかかった人に対する問題だというふうに思います。先生がおっしゃるように、少なくとも、減税を受けているのだから、低所得者にも減税に相当するものを与えるべきだという御意見はわかりますけれども、所得税の調整減税というものはそういう性質のものじゃなくて、所得が十伸びれば税金が十八伸びる、あるいは二十伸びる、その伸びるうちの物価によって影響される実効税率が上がる分は約四くらい、その分を含めて六なり七なり減税しているというのが今回の減税の姿ということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/66
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067・須藤五郎
○須藤五郎君 あなたの説じゃちょっと納得できないですね。要するに、所得の上がっていく人はだんだん減税措置がとられて——これは不十分なものですよ、不十分なものですけれども、こういう措置がとられているが、所得が上がらない人ではいわゆる物価調整減税というものもないし、そのかわりに片方で物品税が上がり、いわゆる間接税がどんどん上がっていく、税金だけがだんだん高くなっていくのに何にも低所得者に対する手当てというものは積極的に考えられてない、こういうことが言えると思うのですね。大蔵大臣はそういう意味じゃなかったと思うのですね。もう少し大蔵大臣の答弁には積極的な意味があったと思うのですが、これが私らどういう措置をするだろうかと見ていると、何にもされていない。社会保障費が多少ふえたというだけで、社会保障費をもらわない人は一体どうするのだというと、千五百万くらいの人は何にも手当てもなしにほっちゃらかしになっておる、それで間接税がだんだん上がっていく、こういうことはぼくは問題だ。いわゆる間接税というものはそういう悪質な税金だと私は思うのですよ。だから、間接税なんというものは私はやめてしまうべきものだと、こういう意見になるわけですがね。要するに、何も措置がされていないということを私は指摘するためにやったのですね。
それで、時間がないからその次の質問に移りましょう。政府は毎年毎年所得税を減税してきたと、こういうふうに言っていらっしゃる。今後も四十五年度百万円に課税最低限を引き上げると、こういうふうに言っていらっしゃいます。ところが、毎年毎年減税しているはずの所得税の比率は上がる一方なんですね。それから、そうして所得税の納税人口はふえる一方、ことしは現在二千万人以上になったでしょう。毎年毎年減税をされていればよほど税金は軽くなったはずなのに、納税者は実際には少しも減税感を感じない。これは去年の委員会で私は大蔵大臣に、水田さん、あなたは減税減税と言っておられるが、減税の実感がわくかと言ったら、いや、ぼくも減税ということがどうも感じられないと、そのとき大蔵大臣自身が言ったのですね。それで税負担はだんだん重くなるというふうにみな言っているわけですね。いつでしたか、朝日に、大蔵省の課長さんが、やはり税負担が重くなっているということを言っていますね、ある課長さんです。二百万ほどの収入がある課長さんは、これが仮名になっていますけれども、東京杉並区に住む公務員木村一吉さん、四十三歳、大蔵省の課長さん、こういうことで出ているわけですね。この課長さんすらも、やはり考えると税金は高いものだ、だんだん高くなっていくと、こういうことをこの課長さんが言っている。ましてや課長さん以下の人は、もう税金が高いと思う。というのは、私は、あなたたち自身も、やはりほんとうのところはそういうふうに考えているのだろうとぼくは思うのだ。それで、一体何で毎年毎年減税して、所得税の比率が上がって、減税してない間接税の比率が大体下がるのかという点ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/67
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068・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) この点は、先ほどから申し上げておりますように、個人の所得の伸びが非常に高いということでございます。年率で大体一二、三%くらい伸びておりますから、ですから、所得税の収入というのは大体また年率で二五、六%ずつ伸びてしまうわけです。超過累進てございますから、いま五十万円の人が七十万円になれば実効税率が上がるのは当然なんですが、ただ、その間に物価も上がっているじゃないかという問題があるので調整減税ということが一部行なわれる、こういうことでございますけれども、総体としては、とにかく昭和二十五年当時の所得税は、五十万円の所得をこえますと五五%の最高税率がかかったわけです。当時の課税最低限というのは夫婦子三人で七万ぐらいです。ですから、いまは八十三万になりましたから、それだけ軽減をしてきても、その間に所得が七倍ぐらいに伸びているものですからなお追っついていかない。たとえば昭和二十五年の税制をいまの所得の対象に適用したら一体幾ら税金がとれるかと申しますと、驚くなかれ二十兆円という数字になるわけです。毎年少しずつ減税してきた結果が、いま所得税の税額は一兆四千億ぐらいでございますけれども、二十五年の税制をいま適用したとすると、つまりその間ずっと減税してきたのを、なかったとして計算していきますと二十兆円の収入になる、それだけ減税しているのです。しておりますけれども、個人所得がその間に十倍以上ふえておりますから、課税対象というものはやはり残ってきて、私どもも、実を申しますと、昭和二十五年から比べて税金はずっとたくさん、十倍以上になっておりますけれども、所得も十倍以上になっておるわけです。要するに、所得がふえたということ、この経済成長ということが日本の所得税をどんどんふくらましておるわけです。ですから、毎年減税しないでいれば、みるみるうちに所得税で大部分の税収を占めてしまうことになると思います。したがって、所得税を軽減しながら、それで直間のバランスがようやく保っている。しかし、間接税のほうはいまの現象と逆に、物価が上がり、所得水準が上がりますと、税額は定額できめてありますから、たとえば昭和二十年に十円の税金だったものが、昭利三十五年に諸物価が何倍かになり、所得が何倍かになったときにも依然として十円であれば、これはもう税金が何分の一か減ったことになるわけです。そういう形で間接税のほうはだんだん減る傾向がある。所得税は、経済が伸びればふえる傾向がある。間接税は、経済が伸びれば減る傾向がある。それでバランスがとれなくなりますから、所得税のほうは、所得がふえるたびに減税をしていく。間接税のほうは、そういうものを調整していって直間のバランスを保っているというのがいまの税体系のあり方だと私どもは思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/68
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069・須藤五郎
○須藤五郎君 あなたは物価の上昇ということをいまに計算していま意見を吐いていらっしゃるようですが、確かに収入は上がりましたよ、収入はふえました。しかし、暮らしは十倍の暮らしになったかというと、そうじゃないのですね。やはり暮らしはやや似たところをうろついて、ある人はより苦しくなっているという面も出てきて、決して十倍の暮らしにはなってないわけですね。私がいま申しましたのは、酒、たばこの間接税の比重が下がるのは悪いという立場で言ったのじゃないのですよ。私は逆なんですよ。間接税の比重はどんどん下がっていくのがほんとうなんです。間接税なんというものはなしにしちゃうのです。そして所得税の比率は上がっていいのです。所得税一本やりでいったらいいのですよ。そのかわり、高度累進課税でずっといって、所得税一本でいく。間接税は、先ほど申しました、税金も払えない低所得者層も間接税で七千億円の税金をとられるというような、こういう間接税はやめていくべきだ。だから、間接税が下がることはまことにけっこうなことじゃないかと、こういうふうに私は思うのです。また、直税の比率を上げることがなぜ悪い、いいことじゃないですか。悪いことじゃないのです。共産党は課税公平の原則に立って、租税再分配の機能を重視する立場から、直接税については、汗を流して働いている勤労大衆には大幅減税、高額所得者層には高度累進課税を主張しておるわけですね。それから、また、法人税も中小企業には安くする、独占企業にはできるだけ高くする法人税の高度累進を主張しておるわけですね。その結果、直接税の比重が高くなれば高くなるほどよく、間接税の比重が下がれば下がるほどよい、こういうふうに私は考えるわけです。政府の考えは、この直接税の比重を下げて間接税の比重を上げるのがいいという、こういう考え方に立っているようなんですが、そこはどういうふうに考えてこういう措置をとられたものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/69
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070・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) 私がさっき申し上げたのは、やや誤解を生ずるような言い方を申し上げて恐縮でございますが、政府は間接税の負担を上げようと言っているのではないのでありまして、ほうっておきますと、当初とれたバランスが悪くなっていく、この点を直そうということでございます。たとえば今度から間接税の増徴をしたと申しますけれども、直間比率は依然として四〇%で、ほとんど動いておりません。昭和三十五年当時の五〇%に比べればはるかによくなっていると思います。先生御指摘のとおり、所得税単一税論というのは昔からございますが、どこの国でも、それだけ所得に負担を持たせますと、脱税が横行したり、税務の執行が困難になりますので、どうしても補完税として財産税なり間接税は行なわざるを得ない。したがって、間接税の少ないものほど国としてはいいということになりますけれども、日本はその点では世界第二位だと申し上げているわけでございまして、私も間接税をどんどんふやしていこうというつもりは、私自身としてもございませんし、いまの負担も、戦後間接税が一番低くなった時期であるということは申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/70
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071・須藤五郎
○須藤五郎君 去年、基準生計費と課税最低限の比較を出していただいたんですね。そうしますと、去年は基準生計費が一人で二十一万九千八百十六円、課税最低限が二十六万七千六百二十二円、その差額が四万七千八百六円ですね。ゆとりがこれだけあったわけです。これは政府から出してもらった資料です。それが二人家族になると、ゆとりが九万二千七百五円、三人になると十万五千五百三十二円、四人になると十一万八千四百十五円、ところが、五人になりますと、急に、二人のとき、三人、四人のときよりもがた減りになりまして、七万四千百二十一円になっているのです、ゆとりが。これは不公平ではないかということを私は大蔵大臣に申し上げたのです。そうしたら大蔵大臣も、そうだとおっしゃいましたよ。これは考えなくちゃならんことだ、こういうふうにそのときおっしゃったように思うのです。そうすると、ことしはどういうふうにこの計算はなるのですか、ちょっと教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/71
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072・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) 実は、基準生計費の計算はことしはやっていないのです。実は去年もやらなかったのでございますけれども、その前の年の基準生計費に物価上昇率をかけて、仮定してお出ししたわけで、これはそのときお断わりしたと思います。この基準生計費を私どもがつくりましたのが昭和三十八年でございます。この当時は課税最低限を何とか引き上げたい、もうすれすれである、こういう、いわば普通の生活をしていても課税最低限はすれすれであるということであれを盛んに宣伝したわけでございますがその後物価上昇率は大体この五年間で二九%ぐらいでございますが、課税最低限は、幸いにしてと申しますか、その点はだいぶ急激に上がりましたので、七割七分ぐらい上がっているわけです。そこで、基準生計費というものはそれに合わして、実は内容をよくして上げたりしてございましたけれども、いまとなっては基準生計費と比較する理屈はなくなってまいりましたので、ことしはつくらないことにいたしました。去年も実はつくらなかった。去年五人世帯がこういう形が出ておりましたのは、おそらくそのときの生計費で、五人世帯になりますと、三人目の子供が出てまいりますと、よくこれは扶養親族の控除をやる場合には議論になることでございますが、一人目は確かに掛かりが高くかかる。二人目は減る。三人目になりますと、大体その子供が学校に行くころは、一人目の子供の洋服はすり切れて着られないという状況がございまして、三人目の扶養親族は掛かりがかかるというような実績もございますので、まあそういうことがここにあらわれているのじゃないかと思いますけれども、いまこの数字について私もはっきり断定することはできませんが、いずれにいたしましても、いまの基準生計費と課税最低限とは大きく水があいたと思っておりまして、基準生計費というものを今後つくるとすれば別の角度からつくらないと、前のようなものだというと、課税最低限が上がり過ぎているというような批判を受けても困りますから、もうつくらないことにしております。ことしはつくらないことにして、済ませました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/72
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073・須藤五郎
○須藤五郎君 つくるのはぐあいが悪いのでつくらないのじゃないか、こういうふうにも言えるわけですが、確かに去年のこれを見ますと不合理ですよ。一人でゆとりが四万七千どれだけあって、五人では七万四千という、こういうゆとりというものは非常に不合理で、やはり五人になれば十何万というゆとりが出るように課税最低限は考えていくということが実際には必要だと思うんですね。あなたたちはエンゲル係数でどうのこうのというような計算を出してこういう数字を出されたのですけれども、それは実際に即さぬやり方だと私は思うんですね。去年は一人一日二百五円という数字を出されたわけです。ことしは出していないようですが、ことしはどういうような数字をおはじきになっていらっしゃるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/73
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074・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) いま申し上げたように、ことしはそれをやっておりませんので、去年の二百五円も、四十年の改正のときの百六十七円というのに四十一年と四十二年の生計費の増加指数を掛けたのが二百五円。ですから、ことしもこれを掛けますと、おそらく生計費が五%以上上がっておりますから、そうですね、二百十六、七円になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/74
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075・須藤五郎
○須藤五郎君 あなたよく考えてください。私はこれでもう議論はしません。もうそういうことはいつも言うことですから言いませんが、ことし二百十五円でまあ三度のめしを食えと、こう大蔵省はおっしゃるのだろうと思いますが、そうでしょう、これ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/75
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076・吉國二郎
○政府委員(吉國二郎君) この数字は、御承知のとおり、直接材料費、いわゆるエンゲル系数の基礎になるやつでございますから、直接の材料費だけでございますから、光熱費や何か入っていない。ほんとうの素材だけの数字でございますから、これはちょっと誤解を招くと思って私も考えていたのでございますけれども、もう少しほんとうの実際の食事としてはいいものになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814629X01519680416/76
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077・青柳秀夫
○委員長(青柳秀夫君) 質疑は、本日はこの程度として、これにて散会いたします。
午後一時三分散会
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