1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十四年二月二十八日(金曜日)
午前十時十三分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 任田 新治君
理 事
園田 清充君
宮崎 正雄君
中村 波男君
矢山 有作君
藤原 房雄君
委 員
亀井 善彰君
河口 陽一君
久次米健太郎君
栗原 祐幸君
小枝 一雄君
櫻井 志郎君
田口長治郎君
高橋雄之助君
和田 鶴一君
杉原 一雄君
武内 五郎君
達田 龍彦君
沢田 実君
河田 賢治君
国務大臣
農 林 大 臣 長谷川四郎君
政府委員
農林政務次官 玉置 和郎君
農林大臣官房長 大和田啓気君
農林大臣官房予
算課長 大場 敏彦君
農林省農政局長 池田 俊也君
農林省農地局長 中野 和仁君
農林省畜産局長 太田 康二君
農林省蚕糸園芸
局長 小暮 光美君
農林水産技術会
議事務局長 横尾 正之君
食糧庁長官 檜垣徳太郎君
水産庁長官 森本 修君
事務局側
常任委員会専門
員 宮出 秀雄君
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本日の会議に付した案件
○農林水産政策に関する調査
(昭和四十四年度農林省関係の施策及び予算に
関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X00319690228/0
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001・任田新治
○委員長(任田新治君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
農林水産政策に関する調査を議題とし、昭和四十四年度農林省関係の施策及び予算に関する件について調査を行ないます。
まず、農林大臣の所信を聴取いたします。長谷川農林大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X00319690228/1
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002・長谷川四郎
○国務大臣(長谷川四郎君) 大臣に就任いたしましてから約三カ月を経過いたしましたが、農業及びこれをめぐる内外の諸情勢がまことに容易でない時期でもあり、その職責のきわめて重大であることを痛感いたしております。全力をあげてこの重責を果たしてまいる所存でございますが、委員各位の御理解ある御協力を賜わりますよう切にお願い申し上げます。
本日、この機会をかりまして、農林水産業に対する施策について所信の一端を申し述べ、今国会に提出いたします農林省関係の予算案及び法律案につき、委員各位の御協力を得て御審議をいただく御参考に供したいと存じます。
まず、農政推進についての私の基本的考え方について申し上げます。
申すまでもなく、農政は、国民に対しその必要とする食糧を安定的に供給するとともに、農業従事者の所得と生活水準の向上をはかることを目的といたすものであります。このため、政府といたしましては、従来、農業基本法に定めるところにより、各般の施策を講じてまいったのであります。
しかしながら、近年、国民経済の高度成長その他農業をめぐる諸情勢の変化には著しいものがあり、米の問題をはじめ各般の面でいろいろと困難な問題を生じております。また、加えて、わが国農業を取り巻く国際環境は一段ときびしくなってまいりました。
このような諸情勢に対処するためには、農政も新たな飛躍をはかるべき時期にきていると考えられるのであります。
このような観点に立って、政府といたしましては、農業基本法に定める方向に従いまして、農業を取り巻く諸情勢の推移を十分に織り込みながら、国民の食生活の多様化、高度化の動向に即応して、米ばかりではなく畜産物、野菜、果実など総合食糧の安定的な供給をはかること、生産、価格、流通、構造等各般の施策を均衡のとれた形で総合的に推進すること、農政を農業生産の場だけでなく、流通、消費の場まで広げて施策を充実すること等をねらいとして総合農政の推進をはかることといたしておるのであります。
このような総合農政推進のため、去年の夏以来施策の具体化につきまして鋭意検討を続けてまいりましたが、今後さらに、各方面の御意見を十分に伺いながら、施策の一そうの充実強化をはかってまいる所存でありますが、当面、昭和四十四年度におきましては、次の点に重点を置いて所要の施策の推進をはかってまいる考えであります。
まず第一に、農業生産基盤の整備及び開発であります。
今後の農政の展開に即応して末端圃場条件の整備、その前提となる基幹かんがい排水施設の整備、農道の整備及び農用地の開発等、各種の農業基盤整備事業を強力に推進する考えであります。特に、水田について、適地における稲作経営の合理化をはかる方向で土地改良の推進につとめるほか、水田に比べて立ちおくれている畑地基盤の総合的整備と草地改良の拡充に、特段の配慮を加えることとしております。
第二は、米対策であります。最近の米の需給につきましては、国民の食生活の変化により米の需要が減退しているのに対し、米の生産が増加しているため大幅に緩和し、今後とも基調としてこの傾向に変化はないものと見込まれます。
このように米の需給が大幅に緩和する反面、かなりの農産物については、需給の増大に対し生産がこれに伴わないおそれのあるものがあります。
このような、米をはじめとする農産物の需給の動向に対処するためには、農産物の需要と生産の長期的見通しに立って、需要に即応した農業生産をすすめることが肝要であります。このため、畜産、園芸等今後需要の増大が期待される作目について生産の増強をはかる一方、米の生産については、米の主産地域を中心として生産性の向上と品質の改善に重点を置いて施策を進めるとともに、米の生産調整をはかることが、当面、農政に課された緊急の課題であると考えられるのであります。
したがいまして、昭和四十四年度におきましては、米の生産調整をはかるため、新規開田を極力抑制するとともに、稲から今後生産を伸ばすべき飼料作物、園芸作物等への作付転換の問題に取り組むことといたしております。
また、これら米の生産対策と関連して重要な問題は米の管理の問題であります。米の管理につきましては、最近における米の需給の大幅緩和の実情、米穀管理の現状に対処いたしまして、米の輸出等の米の需要の増進につとめますとともに、管理制度の根幹を維持しつつ、米の買い入れ、売り渡し等制度運営の各面にわたって事態に即応して所要の改善につとめてまいるほか、米価については、生産者米価及び消費者米価を据え置くことといたしたいと考えております。
申すまでもなく、わが国農業は伝統的に米中心であり、農家の生産意欲と政府の施策と相まって米の生産が今日のように増加したところであり、政府といたしましても、農家の方々の努力に対しまして心から敬意を表するものであります。したがって、以上述べましたような米対策を進めるにあたっては、農家の方々にいたずらに不安を与えることがないよう特に留意し、農家の方々をはじめ農業関係者の理解と納得を得て、その円滑な推進につとめる所存であります。
第三に、畜産、園芸等の振興対策であります。
畜産物、野菜、果実などの需要は、国民の食生活の高度化に伴い増大しており、短期的には需給にやや問題があるものも出ておりますが、今後とも引き続き需要の増大が見込まれるのであります。
そこで、需要の増大に即応して安定的な供給を確保するため、畜産、園芸につきまして、生産性の向上を主眼に各般の施策を充実強化し、これらの振興をはかる考えであります。
畜産につきましては、国内産生乳による学校給食供給量の拡大、加工乳生産者補給金制度の円滑な実施をはかるとともに、畜産関連試験研究の拡充、飼料基盤の整備、家畜の導入をはじめとして、各般の施策を拡充強化する考えであります。
また、園芸等の畑作農業につきましては、畑地基盤の総合的整備と畑作関連試験研究の拡充をはかるとともに、これらと相まって生産、流通の近代化に必要な施策を充実強化し、地域、作目に適応した主産地の形成を推進する考えであります。
これらの部面におきまして、今後ますます海外農産物との競争は激化してまいることが予想されますが、農産物の輸入の自由化の問題については、国内の農業生産に悪い影響を与えないよう慎重な配慮をしてまいるつもりであります。
第四に、構造政策であります。
農業の近代化を進めるためには、自立経営の育成、協業の助長など農業構造の改善をはかることが基本的に重要でありますが、特に、最近の農業の動向を見ますと、価格政策、生産政策とともに、構造政策の推進がますます重要となってきていると考えられるのであります。
このような観点から、農地法の改正をはじめとする一連の構造政策関連諸法案の成立について、特に御理解と御協力を得たいと存じます。第二次農業構造改善事業も昭和四十四年度から発足させることとし、農業者年金についても昭和四十五年度実施を目途に所要の調査検討を行なう等、構造政策については今後一そうの推進をはかる考えであります。
第五に、消費流通対策であります。
近年、生鮮食料品の価格が高騰し、国民生活の充実、消費者家計の安定の面から見てゆるがせにできない問題となっております。そのため、生産対策の強化と価格政策の適切な運用にあわせて、農水産物が消費者に円滑に供給されるよう、流通の合理化と加工流通関係企業の近代化、さらに消費者保護対策の充実並びにこれらに関連する試験研究の拡充等につきまして、施策の強化をはかる考えであります。
第六に、農業金融の強化であります。
以上の施策の拡充に対応いたしまして資金需要の増大にこたえるため、農林漁業金融公庫資金、農業近代化資金の一そうの充実をはかることとしております。
次に林業について申し上げます。
近年、木材の需要は著しく増大しております。これに対し、国産材の供給は十分でなく、伐採、造林等の林業の生産活動は停滞する傾向を示しており、外材の輸入は年ごとに増加しております。
このような動向に対処いたしまして、林業政策の当面する課題は、林業総生産の増大と林業の生産性の向上をはかり、あわせて林業従事者の福祉の向上に資することにあると思いますが、同時に国土を保全し、国民の保健休養の場を提供するなどの森林の持つ公益的な機能を活用する重要性もますます多くなってきているのであります。
このため、林道、造林等の林業生産基盤を整備拡充し、また、新たに里山の再開発を推進して森林資源の有効利用をはかるとともに、資本装備の高度化、森林施業の計画化を進めて林業経営の近代化を促進するほか、林業従事者の就労の安定等をはかり、あわせて治山事業を拡充する等、これら施策を総合的かつ強力に推進してまいる所存であります。
さらに、水産業について申し上げます。
水産物に対する需要は、国民の食生活の向上にささえられて堅調に推移しておりますが、他方、漁業生産は、国際規制の強化、資源上の制約等のためこれに十分対応することができず、水産物価格は上昇し、水産物の輸入は増加しております。また、漁業経営につきましても、その所得水準は近年上昇しておりますものの、なお多くの問題をかかえております。
このような動向に対処して、水産政策の当面する課題は、水産資源の維持増大と漁業経営の近代化を進めて水産物を安定的に供給するとともに漁業従事者の地位の向上をはかることにあると考えられます。
このため、漁業情勢の進展に即応した新しい整備計画のもとに、漁港の重点的な整備をはかる等漁業生産基盤の整備を強力に推進するとともに、水産資源の保護培養対策の推進、新漁場の開発調査の拡充等水産資源の維持増大につとめる考えであります。さらに、沿岸漁業構造改善事業の推進、漁業近代化資金融通制度の創設、中小漁業振興対策の推進等漁業経営の近代化等をはかってまいる所存であります。
以上述べました農林水産業に対する施策の推進をはかるため、昭和四十四年度予算の編成にあたりましては、所要の財源の確保につとめ、主要な施策を推進するために必要な経費につきましては、重点的にこれを計上いたしたつもりでございます。
また、これらの施策の実施に必要な法制の整備につきましては、鋭意法案の作成を取り進めているところであります。
以上、所信の一端を申し述べましたが、最後にあたりまして、近代的な農林漁業経営の育成をはかり、明るく将来に希望の持てるような農山漁村をつくり上げるために最善の努力を尽くす所存でありますので、今後とも、本委員会及び委員各位の御支援、御協力を切にお願い申し上げる次第であります。
何とぞよろしくお願い申し上げます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X00319690228/2
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003・任田新治
○委員長(任田新治君) 次に、昭和四十四年度農林省関係予算について説明を聴取いたします。玉置農林政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X00319690228/3
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004・玉置和郎
○政府委員(玉置和郎君) 昭和四十四年度農林関係予算について、その概要を御説明申し上げます。
まず、昭和四十四年度の一般会計における農林関係予算の総体につきましては、農林省所管合計は七千一百二億円で、これに総理府、文部省、労働省、及び建設省の各省所管の農林関係予算を加えた農林関係予算の総額は七千六百八十八億円となり、これを昭和四十三年度当初予算と比較しますと千百四十六億円の増加となります。
この予算編成にあたりましては、国民食糧の安定的な供給を確保し、農林漁業の生産性と農林漁業従事者の所得の向上をはかるという農林漁業政策の基本的目標に沿い、農林漁業生産基盤の整備、農林漁業生産対策の拡充、生鮮食料品の価格安定並びに流通加工の近代化及び消費者保護対策の充実、農林漁業構造改善の推進、農山漁村対策の充実、農林漁業金融の改善等の主要施策を推進するための経費を重点的に計上することとしております。
以下、この農林関係予算の重要事項について御説明申し上げます。
第一に、農林漁業生産基盤の整備に関する予算について申し上げます。
農業に関しましては、農業の生産性の向上、農業生産の選択的拡大及び農業構造の改善をはかるため、農業生産基盤の整備開発を積極的に行なうこととし、このため、農政の新たな展開に即応して末端圃場条件の整備、その前提となる基幹かんがい排水施設の体系的整備、農道の整備、農用地の開発等各般の事業を計画的に推進することとしております。特に、水田に関する基盤整備事業については、米の需給事情、水田の壊廃の動向等な考慮して新規開田を極力抑制する一方、適地における生席性の高い稲作経営の育成に資する方向で推進するとともに、畑作及び畜産等の振興に資するため、所要の基盤整備の積極的推進をはかることとし、総額千六百二十三億二千三百万円を計上しております。
林業に関しましては、林道事業について百十九億四千七百万円、造林事業について七十七億三百万円を計上し、その推進をはかることとしております。
また、治山事業につきましては、四十三年度を始期とする新治山事業五カ年計画の第二年目として総額二百六十億四千五百万円を計上し、民有林及び重要流域の国有林の治山事業を推進することとしております。
漁業に関しましては、最近における漁業情勢の進展に即応して、新たに昭和四十四年度から五カ年にわたる第四次漁港整備計画を策定することとし、この新計画に基づいて漁港修築事業等を推進するとともに、大型魚礁設置事業、浅海漁場開発事業調査等の拡充をはかることとして、総額百九十一億二百万円を計上いたしております。
第二に、農林漁業生産対策に関する予算について申し上げます。
まず、米生産対策につきましては、米の主産地域を中心として生産性の高い稲作経営の確立を期するとともに、米の品質改善に重点を置いて必要な施策を推進することとし、このため、高度集団栽培促進事業等を引き続き実施するほか、今後の米の生産対策について新たな展開をはかるため、米の主産地域において広域的な米の生産流通の抜本的な合理化等その総合的改善方策の確立普及をはかるためのパイロット事業を行なうこととしております。
また、麦生産対策につきましては、表裏作を通ずる一貫した機械化作業の体系化と品質改善をはかること等により、生産性を向上しつつ主産地の育成を推進することとし、このため、新たに麦作団地育成対策事業を実施する等麦生産対策を拡充強化することとしております。
このほか、農作物種子対策、地力保全事業、植物防疫事業等を推進することとしており、以上を合わせ米麦生産対策に要する経費として二十二億七千三百万円を計上しております。
ところで、米の生産対策の基本方向は、ただいま申し上げましたとおり、生産性の向上と品質の改善に重点を置いた施策の強化でありますが、最近における米の需給事情は周知のとおり大幅に緩和しておりますので、これに即応して米の生産調整をはかる必要が生じております。
そこで、昭和四十四年度においては、新たに稲の作付を今後生産を伸ばすべき飼料作物、園芸作物等に転換することを誘導することとし、転換奨励金、転換に必要な機械施設の導入助成等のため三十億二千四百万円を計上しております。
次に、畜産生産振興対策について申し上げます。
まず、飼料自給度の向上をはかるため、草地改良事業を計画的かつ強力に推進することとし、その一環として既耕地とその周辺部の未利用地を一体として畜産的利用に供するため、新たに飼料基盤整備特別対策事業を実施するほか、既耕地に対する飼料作物の積極的導入のための飼料作物総合増産対策を引き続き推進することとしております。
さらに、乳牛及び肉牛の安定的供給等をはかるための生産性の高い大規模牧場の創設事業、酪農及び肉用牛経営の経営技術改善をはかるための指導的施設の設置事業等を新たに実施するほか、家畜導入事業の強化、乳用牛集団育成事業の拡充、里山利用肉用牛増殖育成事業の拡充、家畜改良増殖の推進、家畜衛生対策の強化等の諸施策を推進することとし、以上を合わせ畜産生産振興対策として百十四億四千七百万円を計上しております。
次に、蚕糸園芸生産振興対策について申し上げます。
まず、養蚕生産対策につきましては、新たに山地における養蚕合理化施設の導入を加え、繭生産改善推進施設設置事業を拡充強化することとしております。
野菜生産対策につきましては、指定野菜の拡大、指定消費地域の追加、野菜指定産地の増加、生産出荷近代化事業の拡充等、野菜指定産地の計画的育成をはかることとし、果実につきましては、引き続き広域の主産地の形成につとめるとともに、新たに高度な省力栽培技術の改良普及を目ざす果樹栽培省力化促進事業を実施することとし、特産農産物及び甘味資源作物につきましては、それぞれ引き続き地域特産農業推進対策及び甘味資源生産合理化推進地区の設置等、生産性の向上をはかるための施策を拡充することとし、さらに、これらに加え、畑地の生産力増強と近代的作付体系の確立等を目途に畑作経営の総合改善をはかる施策を新たに講ずる等、以上を合わせ蚕糸園芸生産振興対策として四十一億二千五百万円を計上しております。
林業生産対策につきましては、引き続き優良種苗確保事業、森林病害虫等防除事業等を実施することとし、これらに要する経費六億六千万円を計上するほか、最近における木材需給の動向にかんがみ、里山を中心とする低位利用の広葉樹林の合理的利用の促進とあと地の高度利用をはかるため、新たに簡易林道の開設、集団的な伐採、造林等を総合的に推進する里山再開発事業をパイロット的に実施することとし、所要の予算を計上しております。
漁業生産対策につきましては、動物たん白質の自給度の向上と、国際漁場におけるわが国漁業の地位の確保に資するため、遠洋の未開発漁場について大規模な開発調査を拡充実施するとともに、新たに外国沿岸漁場におけるわが国漁船の操業の確保と円滑な進出をはかるに必要な調査を実施するほか、引き続き沿岸漁場等における水産資源の保護培養対策の強化、内水面における地域振興対策の拡充等をはかることとし、これらに要する経費十三億六千二百万円を計上しております。
第三に、生鮮食料品等の価格の安定並びに流通加工の近代化及び消費者保護対策の充実に関する予算について申し上げます。
まず、畜産物の価格安定及び流通改善対策につきましては、引き続き加工原料乳に対する不足払い制度に必要な交付金及び学校給食用牛乳供給に必要な交付金を畜産振興事業団に交付するとともに、同事業団の行なう価格安定業務の円滑な実施をはかるため追加出資を行なうこととし、さらに、生乳流通改善施設、食肉センターの設置等を推進するほか、食鶏処理加工合理化施設、鶏卵出荷合理化モデル施設設置につき新たに助成することとし、これらに要する経費百七十三億九千七百万円を計上しております。
次に、野菜の価格安定及び青果物の流通改善対策につきましては、青果物の出荷調整対策等を推進するとともに、野菜生産出荷安定資金協会が行なう野菜の価格補てん事業を拡充強化することとし、これらに要する経費二億二百万円を計上しております。
水産物の価格安定及び流通改善対策につきましては、引き続き産地流通加工施設建設事業等を推進するほか、新たな角度から冷凍魚の流通の改善を推進するための事業を実験的に行なうとともに、わが国漁業の生産構造の変化に即応し、拠点的な産地流通加工センターの形成についての調査検討を行なうこととし、これらに要する経費三億四千九百万円を計上しております。また、真珠養殖事業の不況に対処するため、真珠の調整保管等について助成措置を講ずることとし、二億一千三百万円を計上いたしております。
生鮮食料品等の流通及び加工の近代化につきましては、中央卸売市場、拠点的な公設の地方卸売市場の整備を促進するとともに、公設小売市場、大型米穀搗精施設等の整備を推進するほか、小売り業者に対する指導、中小企業の近代化促進、食品工業に対する内外技術の提供等の事業を実施することとし、これらに要する経費二十三億八千六百万円を計上しております。
なお、以上の措置に加えて、農林漁業金融公庫に設けられた卸売市場近代化資金及び国民金融公庫に設けられた生鮮食料品等小売業近代化貸付制度の拡充をはかることといたしております。
次に、消費者保護対策につきましては、農林物資の規格等の設定普及、消費者向けの情報提供等の事業を拡大実施するとともに、新たに都道府県に設けられる生活センターの食品テスト施設の整備等の事業を実施することとし、これらに要する経費一億五百万円を計上いたしております。
第四に、農林漁業の構造改善の推進に関する予算について申し上げます。
まず、経営規模が大きく生産性の高い自立経営と効率の高い集団的生産組織の育成助長を推進するため、農地の流動化が促進されるよう所要の措置を講ずることとし、八千二百万円を計上しております。
農業構造改善事業につきましては、現行事業について当初計画どおり四十五年度終了を目標として、継続地域及び新規地域における事業を推進することとしておりますが、最近における農業をめぐる諸情勢の推移に対処して、地域の条件に応じ、規模の大きく生産性の高い農業経営が地域農業の中核的地位を占める農業構造の実現をはかることを目標として、第二次農業構造改善事業を全国二千二百五十地区につき四十四年度以降十年間に計画を樹立して実施することとし、四十四年度においては、二百地区につき計画を樹立することとするほか、引き続き農業経済圏における広域の農業近代化施設等の整備を進めることとして、総額二百五十四億八千九百万円を計上しております。
また、土地の農業上の有効利用、農地保有の合理化、農業経営の近代化及び生産基盤の整備に関する措置を総合的計画的に推進するため、農業振興地域制度を発足させることとし、このために必要な経費一億五千八百万円を計上するとともに、引き続き集団的生産組織育成対策を推進することとしております。
さらに、農業者年金制度については、現在検討されております国民年金の改善との関連を考慮しつつ、四十五年度実施を目途に調査検討を行なうこととし、このため一千万円の調査費を計上しております。
以上のほか、農業経営の上向き発展を志向する農業者の資金需要を包括的に充足するため、前年度から発足した総合資金制度を一そう拡充することとしております。
林業構造改善事業につきましては、四十五億二千一百万円を計上し、事業の計画的推進をはかることとしております。
沿岸漁業構造改善事業につきましては十五億六千四百万円を計上し、経営近代化促進事業、同補足整備事業及び漁場造成改良事業を引き続き実施するほか、新たに沿岸漁業対策の問題点と今後の施策のあり方を検討するための調査を行なうこととしております。
第五に、農山漁村対策を拡充するための予算について申し上げます。
まず、農林漁業の後継者対策につきましては、農業後継者育成資金の貸し付けワクの拡大をはかるとともに、引き続き将来の林業のにない手となる山村青年の育成をはかるため実践活動の場として「青年の山」の造成を促進するほか、農業者大学校(仮称)をはじめ各種の教育研修施設の整備、農村青少年育成対策等を拡充実施することとし、これらに要する経費六億一千五百万円を計上しております。
また、最近の農業労働力をめぐる諸情勢に対処して農業就業の近代化をはかるため、新たに農業就業近代化対策事業を実施することとして、一億二千二百万円を計上しております。
次に、農山漁村の環境整備につきましては、農林漁業用道路の整備を拡充実施するとともに、農家生活改善資金の貸し付けワクの拡大、生活改善特別事業の拡充、住宅金融公庫の農山漁村住宅資金の活用、僻地農山漁村電気導入事業等を引き続き行なうこととし、さきに述べましたものを含め、これらに要する経費として総額百四十五億一千三百万円を計上しております。
山村振興対策につきましては、振興山村における農道及び林道等の整備について特に配慮するとともに、二十億三千九百万円を計上して引き続き振興山村農林漁業特別開発事業を計画的に実施することとしております。
第六に、農林漁業の近代化の推進に必要な農林金融の拡充に関する予算について申し上げます。
まず、農林漁業金融公庫資金につきましては、農林漁業の経営構造改善、基盤整備及び卸売市場近代化等に必要な資金を拡充するため、新規貸し付けワクを二千二十億円に拡大し、この原資として財政投融資千四百五十六億円を予定するとともに、一般会計から同公庫に対し補給金百一億四千万円を交付することとしております。
次に農業近代化資金融通制度につきましては、貸し付け資金ワクを三千億円に拡大することとし、所要の利子補給補助等を行なうとともに、同資金にかかわる債務保証制度を拡充強化するため、農業信用基金協会に対する都道府県の出資について助成するに必要な経費六十七億三千万円を計上しております。
また、農業改良資金制度につきましては、技術導入資金について、前年度に引き続き集団的生産組織の育成をはかるための集団的技術共同導入資金の貸し付けを行なうとともに、農業後継者育成資金及び農家生活改善資金を含めて貸し付けワクを百十七億円に拡大し、これに要する経費三十七億四千二百万円を計上しております。
また、林業信用基金の債務保証業務の円滑化をはかるため、同基金に対し一億円の出資を行なうこととしております。
さらに、漁業者等の資本装備の高度化をはかり、その経営の近代化を促進するため、新たに漁協系統資金を活用した漁業近代化資金融通制度を創設して、漁船、漁具等の整備拡充に必要な資金の融通をはかることとし、四十四年度においては貸し付け資金ワク百億円を予定するとともに、利子補給補助等に要する経費として二千四百万円を計上しております。
なお、遠洋漁業について国際的漁場における国際競争力の強化等をはかるため、その漁船の建造等に対し新たに日本開発銀行からの特利、特ワクによる資金融通の道を開くこととしております。
以上のほか、農林漁業施策の推進のために重要な予算について申し上げます。
まず、農林水産業の試験研究につきましては、試験研究費の増額、試験研究体制の整備、都道府県に対する助成の充実等により試験研究の拡充強化をはかるとともに、新たにたん白質の高度利用技術及び資源の開発に関する総合研究等を行なうほか、熱帯、特に東南アジア地域の農業協力の要請に対処し、かつ、わが国の農業研究の発展に資するため、農林省の付属機関として熱帯農業研究センター(仮称)を設置することとし、これらに要する経費百四十二億九千一百万円を計上しております。
次に、農林水産業の改良普及事業につきましては、農業関係について新たに現地技術確定事業、畜産専門改良普及員の緊急養成研修を行なうほか、引き続き普及体制の整備、機動力の強化、職員設置費の補助単価の是正等を行なうこととし、農業改良普及事業に六千九億五千七百万円、生活改善普及事業に十五億二千三百万円、畜産経営技術指導事業に二億四千一百万円、蚕糸技術改良事業に十億三千一百万円、林業普及指導事業に十三億一百万円、水産業改良普及事業に二億三千三百万円をそれぞれ計上しております。
農業災害補償制度につきましては、掛け金国庫負担金を増額するほか、家畜共済損害防止事業の強化、果樹保険事業の試験実施の推進、農業共済団体職員給与の改善等を行なうこととし、これらに要する経費四百十五億二千六百万円を計上しております。
また、わが国の農林業の基本構造と動向及び農山村の生産、生活環境を明らかにし、農林業施策の推進に必要な基本資料を整備するとともに、農業の国際比較に必要な統計を作成するため、一九七〇年世界農林業センサスを行なうこととし、これに要する経費十七億五千三百万円を計上しております。
このほか、農業関係につきましては、開拓者の営農振興対策として二十四億六千六百万円、農産物の輸出振興対策として十二億七千四百万円、農業資材の価格流通対策として三十五億六千万円、農業団体の整備強化対策として三十六億七千二百万円をそれぞれ計上しております。
林業関係につきましては、さきに述べましたもののほか、森林計画制度及び保安林の整備について七億三千四百万円、入り会い林野等の整備促進対策を含む森林組合の育成対策として五千七百万円をそれぞれ計上しております。
水産業関係につきましては、すでに述べましたもののほか、漁船損害補償制度の実施費として十四億四千三百万円、漁業災害補償制度の実施費として十億七百万円、水産業協同組合の育成指導対策として四千七百万円をそれぞれ計上しております。
農林水産関係の災害対策公共事業につきましては、海岸事業及び農地、農業用施設、治山施設、林道、漁港等の災害復旧等の事業の推進をはかることとし、総額二百七十八億七千七百万円を計上しております。
次に、昭和四十四年度の農林関係特別会計予算について御説明いたします。
第一に、食糧管理特別会計につきましては、国内米、国内麦及び輸入食糧の管理について、予算補正を当初から予定しない考え方のもとに、政府を通さない米穀の流通を認めるなど管理制度の適切な運営をはかることとしております。
このため所要の予算を計上するとともに、一般会計から調整勘定へ二千九百七十億円を繰り入れることとしております。
また、国内産イモでん粉及び輸入飼料の買い入れ等の実施のため必要な予算を計上し、輸入飼料勘定へは一般会計から三十一億円を繰り入れることとしております。
第二に、農業共済再保険特別会計につきましては、農業災害補償制度の運営のため必要な予算を計上しており、一般会計から総額三百一億五千二百万円を繰り入れることとしております。
第三に、国有林野事業特別会計につきましては、国有林野事業勘定において、国有林野事業の一そう合理的な実施運営をはかるとともに、治山勘定において民有林治山事業及び国有林野内臨時治山事業を実施することとし、必要な予算を計上しております。
第四に、漁船再保険及漁業共済保険特別会計につきましては、漁船再保険事業及び漁業共済保険事業の実施のため必要な予算を計上しており、一般会計から総額二十三億三千二百万円を繰り入れることとしております。
以上のほか、自作農創設特別措置、開拓者資金融通、特定土地改良工事、森林保険及び中小漁業融資保証保険の各特別会計につきましても、それぞれ所要の予算を計上しております。
なお、糸価安定特別会計につきましては、その業務を日本蚕糸事業団の業務に統合し、より合理的な繭糸価格の安定をはかることとして四十四年度からこれを廃止することとしております。
最後に、昭和四十四年度の農林関係財政投融資計画について御説明いたします。
財政投融資の計画額としましては、農林漁業金融公庫ほか三機関及び二特別会計を合わせて、総額千六百七十一億円の資金運用部資金等の借り入れを予定しております。
これをもちまして、昭和四十四年度農林関係予算及び財政投融資計画の概要の御説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X00319690228/4
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005・任田新治
○委員長(任田新治君) 本件についての質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。
午前十時五十八分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106115007X00319690228/5
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