1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十六年二月十八日(木曜日)
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昭和四十六年二月十八日
午後二時 本会議
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○本日の会議に付した案件
所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、
法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
及び租税特別措置法の一部を改正する法律案
(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後二時四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X00819710218/0
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001・船田中
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
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所得税法の一部を改正する法律案(内閣提
出)、法人税法の一部を改正する法律案(内
閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正
する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X00819710218/1
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002・船田中
○議長(船田中君) 内閣提出、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、及び租税特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣福田赳夫君。
〔国務大臣福田赳夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X00819710218/2
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003・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、及び租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
政府は、昨年十二月税制調査会から提出されました昭和四十六年度の税制改正に関する答申に基づき検討を重ねました結果、昭和四十六年度の税制改正におきましては、最近における国民負担の状況にかんがみ、所得税の負担の軽減をはかるため、給与所得控除をはじめとする各種の所得控除の引き上げ、青色事業主特別経費準備金制度の創設、相続税の軽減合理化等を行なうことにより、平年度約二千億円の減税を行なうほか、当面の経済社会情勢の推移に即応するよう、公害対策、海外投資、資源開発対策、貯蓄奨励及び住宅対策、企業体質の強化等に資するため所要の措置を講じ、輸出振興税制を改正し、交際費課税を強化する等、税制の整備合理化をはかるとともに、道路その他の社会資本の充実の要請を考慮して、自動車重量税を創設することとしたものであります。
まず初めに、所得税法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
最近における所得水準の上昇等を考慮して、中小所得者を中心とした所得税負担の軽減をはかるため、課税最低限の引き上げを行なうことといたしております。
すなわち、基礎控除、配偶者控除及び扶養控除をそれぞれ一万円引き上げるとともに、給与所得者について、その負担を軽減するため、昭和四十三年以来据え置かれている給与所得控除の定額控除を三万円引き上げることといたしております。この結果、給与所得者の課税最低限は、夫婦と子供二人の場合では、現行の約八十八万円から約九十六万円に、夫婦と子供三人の場合では、現行の約百三万円から約百十三万円にそれぞれ引き上げられることに相なります。
また、障害者控除等の特殊な人的控除につきましても、それぞれ一万円ずつ引き上げを行なうとともに、配偶者控除及び扶養控除の適用要件である所得限度について、現行の十万円から十五万円に引き上げるなどの措置を講じ、貯蓄奨励をはかる見地から、少額貯蓄非課税制度について、非課税限度を元本百万円から百五十万円に引き上げることとする等所要の改正を行なうことといたしております。
次に、法人税法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
法人税につきましては、課税所得の計算の合理化をはかるため、完成工事補償引当金制度を拡充して、製品保証等引当金制度に改めるほか、寄付金につきまして、別ワク損金算入を認める特定の公益法人の範囲を拡充する等所要の規定の整備合理化を行なうことといたしております。
最後に、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
まず、公害対策に資するため、公害防止施設について、特別償却の率を現行の三分の一から二分の一に引き上げるほか、公害防止事業者負担金について、その納付したときに一時に損金算入を認める等の措置を講ずることといたしております。
第二に、海外投資、資源開発を促進するため、海外投資損失準備金の対象地域の拡大及び出資要件の緩和をはかり、また、石油開発投資損失準備金制度を資源開発投資損失準備金制度に改め、その適用対象を拡大し、積み立て率を引き上げることにいたしております。
第三に、貯蓄奨励対策として、少額貯蓄非課税制度とは別ワクで、元本百万円を限度とする勤労者財産形成貯蓄非課税制度を創設する等の措置を講ずるほか、住宅対策として、住宅貯蓄控除の拡充等を行なうことといたしております。
第四に、中小企業対策として、青色事業者について、青色事業主特別経費準備金制度を創設することといたしております。
すなわち、毎年の事業所得の五%相当額、最高十万円、を限度として、年齢六十五歳までの間、必要経費に算入することを認めることといたしております。
そのほか、特恵関税の供与に伴い事業を転換する中小企業者についての償却の特例制度を創設する等の措置を講ずることといたしました。
第五に、輸出振興税制について、輸出割り増し償却率の縮減等の整備合理化を行なった上、適用期限を延長することといたしておるのであります。
以上のほか、交際費課税の強化をはかるため、損金不算入割合を引き上げて適用期限を延長するとともに、証券取引責任準備金制度その他の特別措置についても、実情に応じ所要の措置を講ずることといたしております。
以上、三法案の趣旨について御説明申し上げた次第であります。(拍手)
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所得税法の一部を改正する法律案(内閣提
出)、法人税法の一部を改正する法律案(内
閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正
する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する
質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X00819710218/3
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004・船田中
○議長(船田中君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。佐藤観樹君。
〔佐藤観樹君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X00819710218/4
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005・佐藤観樹
○佐藤観樹君 私は、日本社会党を代表して、ただいま政府より提案されました所得税、法人税並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、首相及び大蔵大臣にその所信を伺いたいと思います。
佐藤首相、いま国民が一番政治に期待しているものは一体何でしょうか。国民がひとしく悩んでいるのは物価の引き続く高騰であり、これを非難する声は全国津々浦々からあがっております。政府もこの事態を知っているからこそ、いろいろと手を打って物価の安定につとめているようでありますが、残念ながら、何の効果もあがっておりません。絶えざる物価の騰貴にいらいらする国民に、もし、いま政府がなし得る唯一の答えがあるとすれば、それは税金を安くすることだと思います。これならやる気にさえなれば、政府は確実に実行する権限があるわけですし、国民は物価騰貴を別の方法で緩和することができたのです。これこそ国民がひとしく待ち望んでいた政府から国民へのプレゼントであったと思います。しかし、ただいま挺案されました税三法を見ますと、まことに遺憾ながら、この国民の切なる願いはむなしくくずれ去ってしまいました。
今度の所得税法の改正では、中小所得者の所得税負担を軽くするために、基礎控除、配偶者控除を現行の十八万円から十九万円に、扶養控除は十二万円から十三万円にと、いずれも控除額が一万円引き上げられます。しかし、昨年のように七・七%も物価騰貴する世の中で、この控除額一万円というのは、わずかに十八分の一の引き上げにすぎず、これでは全部が物価上昇に吸い取られてしまいます。幾ら政府が大幅減税と大宣伝をしても、国民にとってはちっともぴんとこないのが現実ではないでしょうか。
来年度の自然増収は、総額で一兆四千九百六十五億の巨額にのぼっております。ところが、所得税の減税は一千六百七十四億円の予定ですから、自然増収のたった一一・一%にしか当たらないのです。昨年の減税は、自然増収全体に対して一二・八%だったのですから、昨年に比べましてもかなり低い減税であります。
しかも、この一千六百七十四億円の減税も、物価上昇が、政府が公約しましたように五・五%で幸いにして押えられたとしましても、この減税額の七百四十億円が物価上昇に食われてしまいます。これでは、国民は逆に一年間に九〇%の増税になるではありませんか。一体首相は、この消費者物価の高騰の中で国民に減税をして、せめて物価高を減税で埋め合わせるという政治姿勢はないのですか、お伺いしたいと思います。
また、サラリーマンの給与所得控除の定額分はわずかに引き上げられましたが、われわれの要求とはほど遠く、これくらいではとても勤労者の税負担は軽くなりません。企業では、車を買うのも、それを動かすガソリンも、すべて必要経費として落とされます。すなわち、ガソリン税などの税金まで必要経費として、企業は払っておらないわけです。しかし、サラリーマンにおきましては、まず所得税を取られ、そして自動車を買えば自動車税、ガソリン税は所得税を払った上に別個に払わなければいけないのが、現代の税制であります。このように勤労所得者は二重に税金を取られることを考えますと、給与所得控除の定額分は、この際思い切って二十万円まで引き上げ、勤労者控除しか必要経費として認められない多くのサラリーマンの税負担を軽くするつもりはないのか、首相にお伺いしたいと思います。(拍手)
さらに突っ込んで大蔵大臣にお伺いいたします。
現在、四人家族の勤労者は、総理府統計から推計いたしますと、今年度の生活費は百三十万円を下回ることはないと見られます。一方、所得税の課税最低限は、現行九十万円が法律改正で九十六万円に引き上げられるにすぎません。この額では、生活費の実態に比べて、明らかに生活費にまで食い込んで課税されていることになります。
しかも、この年間百三十万円、四人家族の人が、一八%のベースアップがあったといたしますと、現行では一万七千七百九十四円の所得税でよかったものが、新しい所得税率では、何と二万七千百七十七円と、一万円も増大するわけであります。
政府は、いつから生活費には課税しないという大原則を捨てたのか、そして減税したという政府が、逆に増税になってしまう人々に一体いかなる処置をなさるのか、大蔵大臣の率直、明快なる御答弁をお伺いいたしたいと思います。(拍手)
さて、このたび租税特別措置法の中に青色事業主特別準備金制度が新設されることになっております。
これは青色事業者の老後保障を主眼にして、最高十万円までの積み立てを経費として認め、廃業、引退などをする場合に取りくずしができるものでありますが、この緊急性に乏しいものがいま出されてきた背景は、来たるべき地方選挙、参議院選挙を前にしての選挙対策のにおいが強いのであります。しかし、残念ながら、こんなことでは選挙対策にはなりません。この制度の発想は、長年青色事業主が望んでいた個人企業の事業主報酬を認めないかわりであり、明らかに問題のすりかえであると思うのであります。こんな制度をつくるより、むしろ、個人企業者に対して勤労性事業主控除などを考えて、税負担の軽減をはかるべきであると考えます。乏しい老後保障、職業保障をそのままにして、わずかな税制で個人事業主の救済をはかろうとすることは本末転倒であります。政府は、個人事業主と法人企業との税負担のバランスをとるために、個人事業主に新たな控除措置をする考えはないか。福田大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
私は、これまで勤労者や中小企業者にとってもっと優遇措置をと訴えてまいりましたが、政府としては、一体どこにそんな財源があるのかと疑問を持たれるかと思います。
私は、次に、一部の特定者のみが優遇されている租税特別措置法について、佐藤首相に基本的な点をお伺いいたしたいと思います。
租税特別措置法につきましては、その法律の制定以来、税の公平論理から数々の批判が加えられてまいりました。昨年の国会におきましても、実際に汗水たらして働く勤労者が優遇されずに、働かずして不労所得を得ている利子生活者を優遇する利子配当優遇措置、あるいは過分に保護されている銀行の貸し倒れ引当金あるいは輸出振興税制の問題など、数々の点が指摘され、佐藤首相も口癖の、慎重に検討いたしますと約束をしておられます。たとえば、銀行の貸し倒れ引当金に関しましても、「一般的に貸し倒れの実情から見て、かなり高い水準になっており、それだけ課税が甘くなっているという意見もあるように見受けられますので、税制調査会にも御検討願い、十分検討してみたいと、かように考えております。」と、昨年の三月十二日、わが党の阿部助哉議員の質問に対して、私がいま質問をしておりますこの場で答えているのであります。しかし、一向に慎重に検討した結果はあらわれておりません。昨年の十二日の税制調査会の答申にも、租税特別措置が既得権化や慢性化しているのを排除して、政策目的の合理性や政策手段としての有効性の判定を、厳格に行なうようにすべきだと指摘しております。しかし、まことに遺憾ながら、ここに出された租税特別措置法の内容は、佐藤首相の言われた方向とも、税制調査会の答申の方向とも、ふしぎなことに逆の方向になっております。
すなわち、既存の制度はこれをできるだけ温存し、期限切れになると直ちに新しい制度でかわりをつくり、従来の既得権を守っているのです。たとえば、前に私が申し上げました輸出振興税制は前国会で改廃することを検討することになっていたのですが、今度は部分的な圧縮にとどまり、むしろ今後の経済の国際化に対応して、税制面の援助体制の新たな段階へと、質的に整備しようとしております。
また、海外投資損失準備金の拡充や、資源開発投資損失準備金の設置、船舶特別償却の拡大など、経済の国際化に対応できるように制度を組みかえ、海外進出を助ける税制にしております。さらに、テレビ製造、造船機械産業など、戦略産業に手厚い保護をするため、新たな制度が創設されるなど、政府、財界一体化した構想のもとに進んでいるのであります。
こうして、大企業や資産所得者のみに有利につくられた制度は、一つつくられますとそれが既得権化され、さらに次々と新たな特別措置を誘発し、公平論理という税体系の根本をいびつなものにしているのであります。すでに百四十項目にわたるという租税特別措置は、著しく国民に税負担のばかばかしさを植えつけていますが、首相は、今後この租税特別措置を一体どのようにしていくおつもりなのか。国会での答弁と、いまの方向とは、明らかに違うと考えられますが、その政治的責任をどのように考えられていらっしゃるのか。私は、三年計画でこの特別措置を全廃すべきと考えておりますが、首相の考えはいかがでしょうか。特に新制度の設置、期限切れの特別措置の延長は、絶対にやるべきでないと考えておりますが、佐藤首相の責任ある答弁をいただきたいと思います。(拍手)
次に、交際費課税の問題についてお伺いいたします。
四十四年度の交際費は、何と九千百五十五億円、これだけの金があれば、鉄筋の公団住宅なら三十万戸分、国の来年度の下水道整備費を除いた公害予算の三十年分に当たるというばく大な額が、一年間に飲み食いされたのであります。大蔵省発行の有価証券報告書によれば、三井物産は半期で八億八百万、丸紅飯田が七億九千万、日商岩井が七億三千万と、何と年間十六億円の交際費を、あたかも使わなければ損のように使っている商社もあるわけです。そしてこの全く日本的な交際費は公私の混同を招き、ある会社の幹部は、二号のために家具一切と自分の洋服まで買い、その領収証を交際費に入れて、東京国税局の調査でばれたり、二千万もするマンションを買ったホステスを調べてみたら、会社の幹部が交際費で落としていたなど、こんな事例をあげていったら枚挙のいとまがありません。
交際費は、企業の経営をゆがめていると同時に、日本人を、公私のけじめのつかない人間に育て上げてしまったともいわれております。(拍手)しかも、この交際費なるものは、飲み食いなどの消費が大部分ですから、当然企業は生産コストに含めて考えますので、いずれ物価高として消費者にはね返ってきます。この一兆円に近い交際費も、実は物価高を招く一つの原因となっていることは見のがせない事実であります。
この交際費に対しまして、いままで一社当たり、四百万円プラス資本金の千分の二・五以内だと税金がかからず、これをオーバーいたしますと、その額の六〇%に法人税率をかけて税金となっていたのでありますが、改正案では、この六〇%を七〇%にしたのみであります。四十四年に、交際費内のわずかに二一%、一千九百八十一億円にしか課税されておりません。あとは無税、野放しでございます。しかも、将来とも交際費はウナギ登りに上昇することが考えられますので、せめて昭和三十七年当時の、三百万円と千分の一の課税限度とするべきだと思いますが、大蔵大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
最後に、法人税についてお伺いいたします。
提出されました法人税の改正案には、ついに法人税率の改正は見送られてしまいました。確かに、昨今の景気停滞含みの情勢から考えますと、一見、法人税率を引き上げるのは無理であるかのように見えます。しかし、現在のわが国の法人税負担は、地方税を含めてですが、西欧諸国の水準に比べまして、はるかに低い現状となっております。すなわち、四十五年度の法人税率は、日本が三六・七五%であるのに対して、アメリカが五三・八七%、西ドイツが四九・〇五%、フランスが五〇%になっているように、日本の法人税率は、たいへん低くなっております。この点から考えましても、現在の税率は、さらに三%程度引き上げるのが妥当なレベルと考えます。
また、来年度の公共事業関係費は、一兆六千六百五十六億円にのぼりますが、この受益者は、ほとんどが企業ですから、法人税率の引き上げは当然であると考えます。
さらに、現在の法人税率は、昨年の改正でやっと現行の三六・七五%に引き上げられたものであります。この経緯を見てみますと、法人税率は、不況の回復や開放経済体制における企業の基盤強化という名目で、過去三回下げられてまいりました。すなわち、三十年に四〇%だったものが、四十一年に三五%に引き下げられてきたのであります。この経緯から考えてみましても、現行の三六・七五%というのは、引き下げ前の三十年の四〇%にいまだに戻っていないわけであります。この点から考えても、法人税率を、せめて現在よりも三%くらい上げる必要があると考えますが、大蔵大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
また、企業は、相次ぐ三回の法人税率引き下げと好況とが相まって、いままで恩恵を受け過ぎており、そのまま低税率は固定化されてきてしまいました。このため、いざ不況というときにも、もはや税率は下げられないのが現状であります。
この観点からも、法人税率は、不況時に弾力的に措置できる程度の水準にあることが望ましいにもかかわらず、政府は、不況対策による引き下げを行なったまま放置しておりますが、過去の異常な高度成長の原因をつくったことを反省し、必要な公共的受益を負担するに足る法人税率を設けることが当然と考えられますが、大蔵大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
以上、物価の高騰に悩む国民の一人として、税制の改正問題についてお伺いしたわけでございますが、どうか総理並びに大蔵大臣は、実効性のある答弁をされることをお願い申し上げまして、私の質問を終わりといたします。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X00819710218/5
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006・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 佐藤君にお答えいたします。
まず、今回の所得税の減税は、実質減税になっていないとの御意見でありましたが、今回の改正の結果、課税最低限は、一〇%程度引き上げられることになり、消費者物価の上昇を見込んでも、なお相当の実質的負担の軽減になっているものでございます。
給与所得者の定額控除については、その引き上げが、低額な給与所得者から強く望まれており、前回の所得税法の改正に際しましても、特に議論のあったことは私も承知しております。今回の改正案におきましても、基礎控除や扶養控除引き上げに対して、定額控除の引き上げに重点を置いたことは、佐藤君も十分お認めいただけることと思います。私は、わが国の所得税負担は、先進諸外国の負担と比べて、すでにおおむね妥当な水準に到達したように見ておりますが、この中にあって、今後とも中小所得者、特に勤労所得者の税負担の適正化には、十分配慮してまいりたいと考えます。
次に、租税特別措置についてでありますが、これを頭から、これは悪であるから三年でやめてしまえ、かように言われたことはいかがかと思います。確かに、租税特別措置は、一面において税負担の公平をそこなうものであることは否定いたしませんが、一方において、税制を通じて経済諸施策の遂行に寄与しようとするものであります。問題は、両者のかね合いであろうと思います。今回の改正案も、公害防止、資源開発、海外投資等に資することを目途としたものであり、その機能は正しく評価さるべきであると考えます。今後とも、政策目的の合理性や政策主段としての有効性の判定は厳格にこれを行ない、常に適切な制度であるように留意してまいります。
以下、いろいろの問題についてのお尋ねがありましたが、大蔵大臣からお答えをいたしますから、お聞き取りをいただきたいと思います。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X00819710218/6
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007・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) まず所得税減税についてでございますが、所得税減税につきましては、昭和四十五年度におきまして、いわゆる税制調査会の長期答申を完全実施をいたしたわけでありまして、そこで、まあ四十六年度は一休みしたらどうかというような意見を言う人もありましたが、私はそうは考えない。やはり、いま佐藤さん御指摘のように、物価の変動もある、その辺は十分考慮しなければならぬということを考えまするときに、所得税減税は、今後ともねばり強くこれを推し進めていかなければならぬ、かように考えまして、ただいま御説明申し上げたとおり、二千億減税を実行することにいたしたわけであります。(拍手)
この結果、給与所得者にとりますると、課税最低限は一〇%前後上昇したことになるのであります。いま四十六年度における物価展望は五・五%になっており、これと相対比いたしますると、かなりゆとりのある減税になった、かように考えておるのであります。特に給与所得者につきましては、たいへん私どもは意を用いておるというか、重点を置いておるのであります。給与所得者控除、これを三万円引き上げることにした。これは、一万円上げますと三百億円かかるのです。ですから、三万円上げますということになると、九百億円の財源を必要とする、こういうようなことを考えまして、さあ二万円にしますか、一万円にしますか、ずいぶんこれは議論のあったところなんです。そこで、最終的に税制調査会は、三万円というふうにふん切りをつけ、大蔵省においてもやむを得ないかなという意思表示をいたしましたところ、東畑会長におきましては、ああこれで一流料理屋のフルコースになった、こういうふうな感想を漏らしておりましたが、さように意を用いているという点を申し上げたいのであります。
また、課税最低限につきまして、これは生活費の最低限、これを考えてあるのかどうかというお話でございますが、これは私は、生活費の最低限というものは、その国の国力の状況あるいは社会環境によって変化をしていく、こういうふうに見るのであります。つまり、これはわが国と同じような先進諸国で一体どうなっているかということを見るのが一番早いのじゃないかと思いまするが、今回の課税最低限、これはアメリカなどには及びませんけれども、まあヨーロッパの先進諸国に比べると、まずまず肩を並べ、その配列におきましては、やや上位におる程度まできておる、かように存じますので、御不安はない、かように考えております。
また青色申告者準備金制度は、事業主報酬控除のすりかえではないかというお話でございますが、これはそういう一面があるのです。つまり、御承知のように、また、いまお話しのように、そういう声が中小企業者から聞こえる。それを考えようとする。しかし、その考える場合におきまして、それを控除制度あるいは必要経費というような考え方を全面的にとることは、これはできない。そこで、しかし、中小企業者の老後の安定というもの、また、青色申告制度を普及しなければならぬというようなこと、そういうようなことを考えますると、青色申告者につきまして、特別の制度をも認めることが妥当ではあるまいか。そういう考え方に立ったわけでありまして、決して選挙対策にこれを使ったというようなことはございません。
さらに、特別措置を三年で廃止せよというお話でございますが、これはなかなかむずかしい。これが慢性化する、定着化するというようなことにつきましては、時々刻々これは反省し、改定を加えていかなければならぬ。現に四十六年度税制におきましても、特別措置の尤たるものである輸出控除制度、これについて改定を加えるというふうにいたしましたが、また、交際費課税につきましてもそうした、これは御承知のとおりであります。
なお、交際費課税について、具体的な御提案といたしまして、四百万円という基礎控除額、また千分の二十二・五という基礎控除、これについて改定を行なう意図があるかというお話でございますが、今回の課税対象額の中で、その対象額とする比率を六〇%から七〇%にしたのです。これは御了承願ったと思うのでありますが、なお、その基礎控除の点について御検討というお話でありますが、その点について、私もそう考えているのです。ただ、この四百万円という問題は、これを下げる、あるいは全廃するということになると、中小企業者に急激な負担増加を及ぼすという点を考えるときに、これは慎重にならざるを得ない。いろいろ考えたのですが、結論を得ないままに今日に至っておりますが、これは今後の検討問題にいたしたい、かように考えておるのであります。
次に、法人税率三%引き上げ論でございますが、法人税率、佐藤さんのお考えの根底は、日本の法人税率が外国に比べて安いのだ、低いのだというようなお考えなんですが、これは事実違っております。よくアメリカのことを比較いたしますが、アメリカでは、法人税率が、地方税、国税総合しての話ですが、四二・五%になっております。わが国におきましては、それが四五・〇四%というふうになっておりますので、決してわが国の法人税が低いんだ、安いんだという状態ではない、この点を御了承願いたいのであります。
また、さらに、法人税率につきまして、これを景気の変動等において流動的、弾力的に考えたらどうだ、こういうお話でございます。これは、私も、考え方としては賛成なんでありまして、現に四十五年度税制におきましては、法人税の増徴をいたしております。しかし、佐藤さんがおっしゃるのが、そういう税制の改正をその年々にやれということではなくて、包括的に、この弾力条項というか、上げ下げを機動的にできるようにという御趣旨であると、私は、これはたいへんけっこうだと思います。しかし、これは国会が御承認くださるかくださらぬか、これはたいへん問題があろうかと思いまして、それは御提案をいたさないまでである、かような次第であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X00819710218/7
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008・船田中
○議長(船田中君) 貝沼次郎君。
〔貝沼次郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X00819710218/8
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009・貝沼次郎
○貝沼次郎君 私は、公明党を代表して、ただいま趣旨説明のありました所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、問題点を提起し、政府の税制に対する基本的見解について、総理並びに関係大臣に対し若干の質問をいたすものであります。
まず第一に明らかにしていただきたいことは、今後のわが国の財政の方向についてであります。
新経済社会発展計画には、「所得水準の上昇に応じて租税負担や社会保険負担をある程度高め、それによって高い福祉を実現し、」と述べ、七〇年代の財政が、高福祉高負担を指向することを明らかにしております。
私は、高福祉を実現するためには、まず、歳出内容を高福祉にしなければならないと思います。すなわち、物価、公害、社会保障等の諸問題に、重点的に効率的に財政が運用されなければならないと思うのであります。しかしながら、今回の予算案を見ましても、すでに何回も指摘されたところではありますが、歳出内容は、決して高福祉と断言できるものではありません。
一方、高負担については、昭和四十六年度の租税負担率が、四十五年度当初見込み一八・八%を〇・五%も上回るものであること、あるいは自動車重量税の導入など、確かに高負担への道を政府は歩んでおります。まさしく、これは高福祉高負担ではなく、低福祉高負担であります。総理が、もし、七〇年代の財政の方向が高福祉高負担であるとするならば、どういう内容で、また、どのようにして実現するのか、ここに明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
第二に、今後におけるわが国の税体系についてであります。
税制調査会は、今年八月、税制に関する長期答申を提出する予定であります。この中には、付加価値税の導入が必至といわれておりますが、このことは、現行の所得税中心の税体系を大きく改めることになるのであります。
総理は、もし答申が付加価値税の導入を提唱した場合には、時間的な準備期間は設けるとしても、これを採用するかどうか、それとも、現在の所得税中心の税体系でいくのかどうか、明らかにしていただきたいと思います。
と同時に、高負担というのは、だれに、どの階層に主として高い負担を負わせるのか、この点、お示し願いたいと思います。
第三に、税負担の公平についてであります。
これは、高負担を主張する以前の問題であります。しかるに、今回の改正に際しても、租税特別措置についてはどこまで真剣に検討されたのか、全く疑問であります。たとえば、具体的には、銀行の貸し倒れ引当金の問題があります。現行税制では、貸し出し総額の千分の十五に当たる分までの積み立てが非課税になっておるわけであります。ところが、実際に貸し倒れの発生率は、都市銀行を例にとっても千分の〇・二程度にすぎないのであって、千分の十五という引き当て率は、あまりにも銀行を優遇する制度となっているといわざるを得ないのであります。したがって、千分の十五を実情に合わせて引き下げるべきであると思いますが、この意思があるかどうか。また、ありとするならば、その時期はいつとお考えなのか。お伺いしたいと思います。
さらに、交際費課税についてでありますが、今年度の改正で若干強化されたとはいうものの、現在六割の否認率を七割に引き上げたにすぎないのであります。これでは一兆円をこす交際費総額の二〇%程度しか否認されていないことになるのであります。「交際費天国日本」の悪名をほしいままにしている現在、交際費課税こそさらに強化すべきであると思うのでありますが、総理の見解を伺いたいと思います。
なお、私はここに二つの例を出しましたが、問題のあるものはこれだけではありません。現在の租税特別措置は、その発足の当初とは大きく性格を異にし、きわめて大企業擁護のものとなり、しかもそれが既得権化してしまっているのであります。その上、租税特別措置は、国税に減税効果をもたらすだけでなく、地方税への波及効果をも考えると、負担の不公平はさらに拡大されることになります。したがって、私は、総理に対し、租税特別措置を根本から洗い直し、この実態を国民の前に明らかにし、さらに今後どうするかを明示することを要求いたします。(拍手)
第四に、所得税減税についてであります。
今回の改正では、若干の各控除が引き上げられたものの、初年度千六百億円という小幅なものに終わってしまい、自然増収見込みの一割そこそこの超ミニ減税であります。これは、夫婦、子二人の四人世帯で年間百万円の収入があった場合、わずか四千四百円の減税にしかならず、これでは物価調整減税にもなっていないのであります。また、これにベースアップがあったとすると、累進税率によって、かえって増税になる事例がきわめて多いのであります。したがって、減税とはいうものの、事実は取り過ぎの一部を還元したまでであり、少な目の減税という形で、国民はいつとはなしに高負担への道を歩んでいることになるのであります。これでは国民の重税感の緩和はできません。諸物価高騰のおり、国民生活の負担軽減を考えるならば、課税最低限をさらに引き上げるべきであると思いますが、総理の見解はいかがですか。
また、わが公明党の主張する、夫婦、子三人の五人世帯で百五十万円、四人世帯で百三十万円まで無税を実現される意思はないかどうか、お尋ねしたいと思います。
さらに、今後の所得税減税の方向についてでありますが、単に物価調整的なものにするのか、それとも、われわれの主張するような大幅減税を行なうのか、あわせてお伺いいたします。
さらに、所得税の税率改正については、中堅所得層の重税感を緩和するためにも、税率調整に関しては特に配慮すべき時期を迎えていると確信するものでありますが、総理の見解をお伺いいたします。
また、夫または妻の収入は、配偶者の功がなくてはあり得ないと思います。そこで、その収入を二分して税率をかけ、合算して税額とする、いわゆる二分二乗方式を採用すべきであると思いますが、総理の御見解はいかがですか。
次に、法人税の問題についてでありますが、わが国の法人税負担は、諸外国に比べてなお低い水準にあること、また、経済を安定成長路線に乗せるという点からも、法人税率の引き上げを今後検討すべきであると思いますが、総理の見解はどうか、お伺いしたいと思います。
最後に、所得税の課税最低限と関連した問題として、住民税の課税最低限についてであります。
自治省及び地方公共団体は、応益負担の原則と地方自治の観点から、所得税と住民税の課税最低限に格差を設けることを是認しているようであります。しかし、地方税に対する住民の負担感からいっても、この格差は是正すべきであると思います。しかるに、今回の改正では、この是正は行なわれておりません。総理並びに自治大臣は、この点どう考えられているのか、また、格差の解消をいつまでに行なうか、明らかにしていただきたいと思います。
以上、税制の基本的な問題について質問をいたしました。総理並びに関係大臣の明快な答弁を、希望して、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X00819710218/9
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010・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 貝沼君にお答えたします。
当面御審議願っています税法のもとにおきましては、直ちにこれをもって高負担というのは当たらないことだと、かように私は考えます。国民所得に対する租税負担率におきましても、四十六年度は、四十五年度のほぼ横ばいで推移するものと見込まれておりますし、先進諸国の負担率と比べても、決して高負担というべき状況ではありませんこのことをまず御認識いただきたいと思います。
ただ、今後の問題としては、社会資本の充実、社会保障の拡充等、政府の施策に期待される分野は次第に拡大されていくものと考えまするが、その過程においては、国民の税負担はある程度上昇せざるを得ないものと考えます。このことは、すでに新経済社会発展計画におきましても指摘しているとおりであります。
貝沼君のお尋ねは、この高負担を何によってささえていくかとの趣旨であろうと私は思いますが、率直に申しまして、所得税を中心とする直接税に依存することには限度があり、高級化、多様化の傾向をたどる商品にも着目してまいらねばならいのではないかと考えます。そこで、御指摘の付加価値税は、その場合の有力な検討課題である、かように考えます。税制調査会の十分な御検討をいただいた上で、政府としても慎重に取り組んでまいる所存であります。
最後に、租税特別措置についてでありますが、まず、この制度が単純に大企業優先のものであるという認識は改めていただきたいと思います。その半分程度、四八・五%、これは貯蓄優遇のためのものであり、その他にしても、公害防止や資源開発等の特定の政策目的を追求しようとするものであります。ただ、先ほど佐藤君にもお答えしたように、この制度は税の公平の観点からは問題がありますので、随時弾力的な改廃を加えていくべきものと考えます。
また、先ほど佐藤君からも御指摘がありましたが、税制調査会も、新規の措置の創設及び既存の措置の拡充は、既存の措置の整理、合理化に伴う増収額の範囲内にとどめるべきであるという答申を出されており、四十六年度の改正案はこれを忠実に守ったものであります。
いろいろ具体的な幾つかのお尋ねがございましたが、それらの点については大蔵大臣からお答えをいたします。また、秋田君からもお答えすることになります。
以上、お聞き取りをいただきたいと思います。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X00819710218/10
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011・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) いま、現実に政府がやっておることは低福祉高負担、こういう実情じゃないかというようなお話でありますが、決してさようなことではないということを申し上げます。
総理は、七〇年代は内政の年である、こういうふうに申しておりますが、まさにそういう方向に沿って諸施策を進めておるのであります。現に御承知のように、ことしの予算をごらんになりましても、何にしても形式的に一番多いシェアを占めるのは地方交付税交付金です。これは別格といたしまして、一番高い率を占めますのは一兆七千億円の社会資本、公共事業費であります。われわれの生活環境、産業関係の改善のためである。また、次の座を占めるのは何であるかというと、社会保障諸費であります。そういうようなことを考えまするときに、これはわれわれの福祉というものは年を追うてだんだんと改善されていく、展望は非常に明るい、こういうふうに見ておるのでありまして、決して低福祉高負担という状態ではありません。
それでは、しかし金がかかるのです。金なしに福祉政策を進めていくわけにいかぬ。しかしながら、それにもかかわらず私どもは負担はそうふやしたくない、そういうふうに存じますが、ここ数年周において二、三%ぐらいの負担が増加する、これは私はやむを得ないんじゃないか。いま世界各国、先進国の租税負担率は三〇%内外であります。ひとりわが国のみが一九・三%という低負担にあるわけです。そういうことをお考えなさいますると、私は、福祉社会建設のために、今後数年間に二、三%の負担増加が出てくるというのもやむを得ないんじゃないかという点が御理解願えるのではあるまいか、さように考えるのであります。
さて、しかし、そういう際において租税体系をどうするか、こういう貝沼さんの御質問でございますが、今日の税制、これはただいま申し上げまするように、一九・三%という、世界の先進国社会において最低の負担率であるにかかわらず、重税感というものがあるようだ。税金が高い、高いということを訴えられる。それはなぜかというと、わが国の租税体系下におきまして、直接税負担、これが非常に重い。実に六五%までが所得税、法人税、直接税負担である。そこに問題があるんじゃないかというふうに考えるのであります。私は決して直接税中心主義を捨てようというのではありません。あくまでも直接税中心主義をとります。しかしながら、六五%を直接税に依存をしておるという状態はこれを改善し、その反面におきまして、思い切った所得税減税を行ないたいものだな、さように念願をいたしておるわけでございます。(拍手)
そういういわゆる直間比率の改善を行なう、そういう際において付加価値税はどう考えるか、こういう問題でありますが、付加価値税はいまヨーロッパ諸国、EEC諸国がこれをほとんど採用するに至っております。それからさらに英国が、さらにアメリカがこれが採用について検討を始めておるのであります。やっぱりそういう付加価値税方式によって直接税の負担を軽減しよう、こういう考え方じゃないかと思いますが、わが国におきましても、そういう世界潮流の中でありますので、検討すべき問題である、かように考え、税制調査会にもおはかりをいたしておるわけであります。
これに対する具体的な答申が税制調査会からいつあるか、これはなかなか時間がかかるんだと思いますが、ある程度の見解はこの夏ごろ聞かしていただけるんじゃあるまいか、そういう腹がまえをいたしておる次第でございます。
交際費の問題につきましては、先ほどお答えいたしましたから、重複を避けます。
それから、銀行の貸し倒れ引当金に対する課税問題でございますが、これは御指摘のような問題があるのです。私も目下これを調査中であります。この調査の結果をまちまして、いまの銀行に対する法定繰り上げ率千分の十五がいいのか悪いのか、悪いという結論が出ますれば、これを改正いたしたいと思う。いつやるのだというお話でございますが、これは結論を得て、四十七年度、次の国会におはかりをいたしたい、かように考えております。
それから、所得税につきまして、課税最低限の今後の見通しというようなことでございますが、私は物価のことだけを考えておるんじゃありません。先ほど申し上げましたように、何とかして所得税については実質的に評価されるような減税行ないたい、さように考えておる次第でございます。
それから、中堅所得者階層はどうかというようなお話でございますが、これは四十五年度税制で中堅所得階層に対する減税を行なったわけであります。国会でもいろいろ御批判を受けたところでありますが、四十五年度にやったばかりでありますので、この一両年は一休みというふうに考えておりますが、今後の検討問題としては私もやってみたい、かように考えております。
また、いわゆる二分二乗方式の採用につきましての御提言でございますが、これはいわゆる妻の座というものにも関連をいたしまして、非常に議論のあるところであります。私はこれを検討してみましたが、利点もあります。しかし、欠点、これもかなり多いのでありまして、なお、今後継続審議いたしたいと考えております。
最後に、法人税率引き上げの考えはないかというお話でございますが、これは四十五年度税制改正において引き上げたばかりでありまして、ただいまのところ、法人税率を引き上げる考えを持っておりません。(拍手)
〔国務大臣秋田大助君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X00819710218/11
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012・秋田大助
○国務大臣(秋田大助君) 住民税の課税最低限の問題でございますが、自治省といたしましては、逐年これが引き上げ、すなわち、住民の税負担の軽減に努力をいたしております。
ただいま、何もしていないというようなお話でございましたが、御承知のとおり、夫婦、子三人の給与所得におきまして、四十五年度におきましては、所得税と住民税の課税最低限においては一万円差を縮めております。四十六年においては二万円縮めておりますので、相当努力をいたしておるということを御了解願いたいのであります。
今後の問題でございますけれども、税制調査会の長期答申もありまして、この所得税と住民税との税の性格が必ずしも同一でございませんので、課税最低限を理論上一致せしめねばならぬということはないと思いますけれども、しかし、何と申しましても、住民の税負担軽減はこれをはからなければなりませんので、今後の国民の生活水準の状況、あるいは推移の状況、それから所得税の課税最低限の推移の状況、地方財政の状況等を勘案いたしまして、極力、できるだけ住民負担を軽減いたすために住民税の課税最低限を引き上げまして、その税負担軽減につとめてまいる所存でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X00819710218/12
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013・船田中
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
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014・船田中
○議長(船田中君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時四分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 佐藤 榮作君
大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
自 治 大 臣 秋田 大助君
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106505254X00819710218/14
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