1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十七年三月十六日(木曜日)
午前十時三十六分開議
出席委員
委員長 藤田 義光君
理事 仮谷 忠男君 理事 熊谷 義雄君
理事 松野 幸泰君 理事 三ツ林弥太郎君
理事 渡辺美智雄君 理事 千葉 七郎君
理事 合沢 栄君
小山 長規君 坂村 吉正君
野原 正勝君 別川悠紀夫君
安田 貴六君 山崎平八郎君
角屋堅次郎君 田中 恒利君
中澤 茂一君 長谷部七郎君
松沢 俊昭君 相沢 武彦君
瀬野栄次郎君 津川 武一君
出席国務大臣
農 林 大 臣 赤城 宗徳君
出席政府委員
農林省農地局長 三善 信二君
水産庁長官 太田 康二君
委員外の出席者
農林水産委員会
調査室長 尾崎 毅君
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本日の会議に付した案件
土地改良法の一部を改正する法律案(内閣提
出、第六十五回国会閣法第一〇〇号)
漁港法の一部を改正する法律案(内閣提出第二
九号)
中小漁業振興特別措置法の一部を改正する法律
案(内閣提出第三〇号)
漁業協同組合整備促進法を廃止する等の法律案
(内閣提出第三一号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/0
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001・藤田義光
○藤田委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、漁港法の一部を改正する法律案、中小漁業振興特別措置法の一部を改正する法律案、漁業協同組合整備促進法を廃止する等の法律案の各案を議題とし、趣旨の説明を順次聴取いたします。赤城農林大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/1
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002・赤城宗徳
○赤城国務大臣 漁港法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
漁港は、漁業生産の基盤であり、かつ、水産物流通の拠点でありますことから、水産業の発達をはかるためには、漁港の整備を推進することが不可欠の要件であることは、御承知のとおりであります。このため、政府におきましては、昭和四十四年に国会の御承認を受けました第四次漁港整備計画に基づきましてその整備を推進しているところであります。
しかしながら、最近、漁獲量が増大するとともに漁船の大型化がはかられており、また、水産物の流通の改善が要請されておりまして、これに対処するためには、漁港の整備を促進することが一そう緊要となっているのであります。また、漁港につきましては、水域及び陸域並びに施設が有機的に結合することによって初めて十全の機能を発揮することができるものでありまして、このような観点から漁港の維持管理を一そう適正に行なうことが要請されているのであります。
このような事情にかんがみ、特に公共性が高く、かつ、事業規模の大きい特定第三種漁港の整備を促進するとともに、漁港の維持管理の一そうの適正化をはかることとし、この法律案を提案いたした次第であります。
次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
第一は、特定第三種漁港の国の費用負担割合についての改正であります。
特に公共性が高く、かつ、事業規模の大きい特定第三種漁港の漁港修築事業に要する費用についての国の負担割合のうち、外郭施設及び水域施設にかかるものを現行の百分の六十から百分の七十に引き上げ、地元負担の軽減をはかることといたしました。
第二は、漁港の区域内における行為の制限についての改正であります。漁港の維持管理の一そうの適正化をはかるため、漁港の区域内においては、水域のほか、公共空地で一定の行為をしようとする者も農林大臣の許可を受けなければならないものとするとともに、許可を要する行為として土地の掘削、盛土等を追加することといたしました。
第三は、土砂採取料及び占用料を徴収し得る規定を設けたことであります。すなわち、漁港管理者の長は、漁港の区域内において土砂の採取または占用の許可を受けた者から土砂採取料または占用料を徴収することができるようにいたしました。
以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
次に、中小漁業振興特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
わが国漁業の生産量は年々増加し、国民の動物性たん白質食料の重要な供給源として、国民経済上きわめて重要な役割りを果たしておりますが、中でも中小漁業は、国民の生活水準の上昇に伴い需要が増大している中高級魚及び多獲性魚の供給上主要な地位を占めております。
しかしながら、近年、わが国の中小漁業は、経営規模の拡大、資本装備の高度化等その合理化につとめておりますものの、これを取り巻く環境は水産資源の制約、労働力の不足、国際規制の強化等一段ときびしさを加えつつあります。政府といたしましては、中小漁業のわが国漁業に占める重要性にかんがみ、かねてからその振興をはかるため、中小漁業振興特別措置法に基づき金融及び税制上の特別措置を講じてまいりましたが、わが国の中小漁業をめぐるこのような情勢に対処してさらにその経営を安定させていくためには、特定の業種につき構造改善を進めることが緊要であります。
このような見地に立ちまして、最近における漁業事情等の推移に即応して振興措置の対象とする中小漁業者の範囲を拡大するとともに、中小漁業の構造改善に関する所要の規定等を加え、中小漁業の振興をさらに計画的かつ総合的に講ずるため、この法律案を提出いたした次第であります。
次にこの法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
第一は、振興措置の対象となる中小漁業者の定義につきまして、その使用する漁船の合計総トン数を二千トンから三千トンに引き上げ、その範囲を拡大することとしております。
第二は、指定業種のうちその経営を安定させるため緊急に構造改善をはかることが必要な業種を特定業種として指定し、当該業種について中小漁業構造改善計画の認定制度を設けることとしております。
第三は、この認定を受けた計画に従って構造改善事業を実施する中小漁業者に対し、農林漁業金融公庫からの必要な資金の貸し付け及び税制上の特別措置を講ずることとしております。
その他構造改善計画の実施状況を把握するための報告の徴収等について所要の規定を設けることとしております。
以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
次に、漁業協同組合整備促進法を廃止する等の法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
漁業協同組合整備促進法は、経営不振にある漁業協同組合の整備を早急にはかるため、その指導及び助成を行なう法人の設立その他漁業協同組合の整備を促進するための措置を定めることを内容として昭和三十五年に制定されたものであります。
この法律に基づき、漁業協同組合の整備につき指導及び助成を行なう法人として同年八月に設立された漁業協同組合整備基金は、全国漁業協同組合連合会等からの出資金及び国からの無利息の貸し付け金を運用することにより生じた収益を財源として、その整備計画が適当である旨を都道府県知事が認定した漁業協同組合に対し信用漁業協同組合連合会等の金融機関が債権の利息の減免をした場合にその金融機関に対し利子補給を行なうとともに、都道府県知事の勧告により合併した組合に対し合併奨励金の交付を行なう等、漁業協同組合の整備のため多大の寄与をしてまいってきたのであります。
しかしながら、漁業協同組合整備基金の業務のうち主要業務である利子補給金交付業務は、漁業協同組合整備促進法に基づく漁業協同組合の整備計画の達成の最終期限が昭和四十七年三月三十一日に到来することとなっているため、昭和四十六年度をもって終了することとなっているのであります。
このような漁業協同組合整備基金に関する経過と特殊法人の整理統合に関する政府の方針とにかんがみまして、この際漁業協同組合整備基金を解散することとし、その根拠法である漁業協同組合整備促進法を廃止するためにこの法律案を提出いたした次第であります。
次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、漁業協同組合整備促進法は、この法律の施行のときにおいて廃止することといたしております。
第二に、漁業協同組合整備基金は、この法律の施行のときにおいて解散することとし、清算手続等につき所要の規定を設けることといたしております。
第三に、清算人は、漁業協同組合整備促進法の規定により残余財産を分配した後なお剰余を生じたときは、これを漁業協同組合整備基金の目的に類似する目的のために処分することができるよう剰余財産の処分についての規定を設けることといたしております。
以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決いただきますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/2
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003・藤田義光
○藤田委員長 以上で各案の趣旨説明は終わりました。
引き続き、漁港法の一部を改正する法律案、中小漁業振興特別措置法の一部を改正する法律案、漁業協同組合整備促進法を廃止する等の法律案について、補足説明を聴取いたします。太田水産庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/3
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004・太田康二
○太田(康)政府委員 漁港法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。
本法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。
第一は、特定第三種漁港の漁港修築事業についての国庫負担割合を引き上げたことであります。特定第三種漁港は現在全国で十一港が政令により定められており、これらの漁港は、その利用範囲がきわめて広く、また、利用漁船数においても、水揚げ量においても特に規模が大きく、わが国の漁業生産の基盤として、かつ、水産物の流通拠点として重要な役割りを果たしております。このように特に公共性が高く、かつ、事業規模の大きい特定第三種漁港の整備を円滑に推進するため、国以外の者が特定第三種漁港について施行する漁港修築事業に要する費用のうち外郭施設及び水域施設の修築に要するものについての国の負担割合を現行の百分の六十から百分の七十に引き上げることといたしております。
第二は、漁港の区域内における行為の制限に関する規定を整備したことであります。
漁港の区域内における行為の制限は、現行法においては水域についてのみ行なわれているのでありますが、漁港の整備及び保全の現状から見て、公共空地について、工作物の建設または改良、土砂の採取、汚物の放棄、占用等の行為をしようとする者も農林大臣の許可を受けなければならないことといたしております。
なお、漁港の区域内における行為の制限を公共空地に及ぼしたことに伴い、農林大臣の許可を要する行為として、土地の掘削、盛り土等を追加することといたしております。
第三は、土砂採取料及び占用料を徴収し得るようにするための措置であります。漁港管理者の長は、農林省令で定める一定の基準に従って、漁港の区域内において土砂の採取または占用の許可を受けた者から土砂採取料または占用料を徴収できることといたしております。
このほか、以上の諸措置に関連して所要の規定の整備をはかることといたしております。
以上をもちまして、漁港法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。
次に、中小漁業振興特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を補足して御説明申し上げます。
本法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。
第一は、振興措置の対象となる中小漁業者の範囲を拡大するため、第二条を改正することとしております。すなわち、近年の中小漁業における経営規模の拡大、資本装備の高度化の進行等にかんがみまして、その使用する漁船の合計総トン数につきまして従来「二千トンをこえない範囲内において政令で定めるトン数」となっておりましたが、これを「三千トン」に引き上げることとし、その範囲を拡大しております。
第二は、特定業種にかかる構造改善計画の認定制度についての規定を第四条の二として追加することとしております。すなわち、指定業種のうち、その構造改善をはかることが当該業種にかかる漁業を営む中小漁業者の経営を安定させるため緊急に必要であると認められるものを特定業種として政令で指定することとし、この特定業種にかかる漁業を営む中小漁業者を構成員とする漁業協同組合等は、その構成員たる中小漁業者が営む特定業種漁業にかかる水産資源の利用の適正化、経営規模の拡大、生産行程についての協業化その他の構造改善に関する事業につきまして、自主的に構造改善計画を作成し、これを農林大臣に提出して、その計画が適当である旨の認定を受けることができるものとしております。
なお、構造改善計画の認定及びその取り消しに関し必要な事項は、政令で定めることとしております。
第三は、構造改善事業を実施する中小漁業者に対する助成措置についての規定を整備するため、第五条及び第六条を改正することとしております。すなわち、第二の認定を受けた計画に従って構造改善事業を実施する中小漁業者に対し、農林漁業金融公庫法で定めるところにより、同公庫から必要な資金の貸し付けを行なうものとするとともに、租税特別措置法で定めるところにより、課税の特別措置を講ずることとしております。
これらの措置の内容についてあわせて申し述べますと、金融面では、構造改善事業の実施に必要な資金であって漁船の改造、建造もしくは取得または漁具その他の設備の改良、造成もしくは取得に必要なものを同公庫から年利六分五厘で貸し付けることとしております。
税制面では、構造改善事業を実施する中小漁業者に対して構造改善計画の認定後五年間その有する漁船について二分の一の割り増し償却を認めるとともに、構造改善計画に従って合併出資を行なう者について法人税及び登録免許税の特例を認めることとしております。
第四は、構造改善事業の実施状況にかかる報告の徴収等の規定を第八条及び第九条として追加することとしております。すなわち、農林大臣は構造改善計画について認定を受けた漁業協同組合等に対し、構造改善事業の実施状況について必要な報告を求めることができることとし、これに違反した場合に罰則を適用することとしております。
以上をもちまして、中小漁業振興特別措置法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。
次に、漁業協同組合整備促進法を廃止する等の法律案につきまして、その提案理由を補足して御説明申し上げます。
本法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下その内容につきまして若干補足させていただきます。
まず第一に、漁業協同組合整備促進法の廃止についてでありますが、これは第一条に規定いたしております。
第二に、漁業協同組合整備基金の解散の時期についてでありますが、これは第二条に規定しており、この法律の施行のときにおいて解散することといたしております。
なお、この法律の施行のときは、附則第一条に規定しておりますように、公布の日といたしております。
第三に、漁業協同組合整備基金の解散後における清算手続についてでありますが、これは第三条から第六条まで及び第八条から第十条までに規定しております。清算事務を適正に行なわせるため、農林大臣は清算人を任命し、清算人は基金の財産の現況を調査するとともに、農林大臣の定める清算計画に従って清算を行なうことといたしております。また、清算人の所定の行為につきましては、農林大臣の承認ないし認可を受けることといたしております。
第四に、剰余財産の処分についてでありますが、これは第七条に規定しております。清算人は、漁業協同組合整備促進法第五十二条第一項及び第二項の規定により残余財産を各出資者に対し、出資額を限度として、出資額に応じて分配した後に剰余を生じたときは、これを基金の目的に類似する目的のために処分することができることといたしております。
第五に、関係法律の規定等についての所要の整備及び経過措置についてでありますが、これは附則第二条以下に規定いたしております。
以上をもちまして、漁業協同組合整備促進法を廃止する等の法律案の提案理由の補足説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/4
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005・藤田義光
○藤田委員長 以上で補足説明は終わりました。
質疑は後日に譲ることといたします。
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006・藤田義光
○藤田委員長 第六十五国会より継続審査となっております内閣提出、土地改良法の一部を改正する法律案を議題といたします。
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007・藤田義光
○藤田委員長 本案につきましては、第六十五回国会におきましてすでに趣旨説明を聴取いたしておりますので、これを省略したいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/7
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008・藤田義光
○藤田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/8
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009・藤田義光
○藤田委員長 本案について審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。三ツ林弥太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/9
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010・三ツ林弥太郎
○三ツ林委員 土地改良法の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたしたいと存じます。
この土地改良法の一部を改正する法律案は第六十五通常国会において昨年の三月十九日政府より提案され、自来六十六臨時国会、次いで六十七臨時国会において三たび継続審査となり、今国会においていよいよ実質審議を見るに至りましたが、この改正法案を審議するにあたりまして、まずその背景また問題点について申し上げてみたいと思います。
〔委員長退席、松野(幸)委員長代理着席〕
近年におけるわが国農業とこれをめぐる内外の諸情勢はまことにきびしいものがあることはいまさら申し上げることもないところであります。このような状況に対処して、わが国農業を近代的な農業として確立するため、従来より進められてまいった経営規模拡大に関する一連の施策に加えて、農業生産及び流通、加工等の体制を団地的に再編整備して高能率的な農業の展開をはかるという見地から、政府は農業団地育成事業に取り組まれているものと承知をいたしております。
一方、農業基盤整備事業は、農業生産性の向上と農家所得の増大、農産物流通の合理化及び農村社会生活近代化の基盤を整備するものとして、各種施策の効果を十分に発揮させるために不可欠の条件となっており、農業団地の育成上もまたきわめて重要な意義を有するものと思われます。
そこで、今後基盤整備事業の担当すべき分野はますます広がって、その役割りはまたいよいよ重要となってくるものと思われます。
しかしながら、他方、農業とこれをめぐる内外の情勢のきびしさは、基盤整備事業を推進する上にも無視し得ない影響を及ぼしているようにうかがわれます。
すなわち、まず第一に、兼業化の進行があげられます。農林省の発表にかかる昭和四十五年度年次報告によりますると、総世帯に占める農家割合は、大都市近郊地帯において九%、中間、遠隔両地帯においても三〇%を割り、農業経営に対する意向や依存の度合いを異にした少数の専業農家及び多数の兼業農家並びに非農家などの混在が進んだため、従来農村に存在していた農業者としての共同意識が希薄となり、農業の基盤整備等、農業近代化のために必要な地域としての意思統一が困難となってきたと述べております。
第二に、一般的な農産物価格の伸び悩みであります。さきの年次報告によれば、農産物の生産者価格は、四十三年度を境に上がり方が鈍りまして、従来の基調とは異なった動きを示している、としております。四十五、四十六年度も同様な傾向に推移すると見込まれており、このような価格の鈍化に対処し、農業所得の確保をはかるためにも一そう徹底した基盤整備事業の実施が要請せられるにもかかわらず、農民、農家そのものについて気迷い、不安の傾向が見られる原因の一つに生産者価格の低迷があると考えられます。
第三に、農村地帯への都市化の影響が広くかつ深く進行していることであります。道路交通網の整備、工場の地方分散等は、農村開発の見地から見ても好ましいことではありますが、その反面、土地と水とに関し、農業的利用と都市的利用との間に利用の競合を生じ、スプロール的転用、地価の高騰、農業用排水路の汚濁、温水等の現象が各地に生じております。
このような問題点に対しては、当然農政全般の立場から積極的に取り組まれていることとは信じますが、私はこの土地改良法改正法案の審議にあたり、ただいま申し上げましたような見地から、改正法案を中心として今後の基盤整備事業の進め方に対する基本的問題点について、政府の見解をただしていきたいと思います。
第一に、今回の法改正は、多年事業関係者から要望されていたところであり、その内容も一応満足すべきものとは考えられますが、そもそも基盤整備事業の内容自体につきましても、政策の重点の推移、客観的情勢の変化等を反映して相当変わってきているのではないかと予想されるのですが、今後の基盤整備事業及びその投資の指針についてお伺いいたしますが、具体的に大臣よりお答えをいただきたいと思います。
また、これとの関係において、四十一年三月閣議決定された土地改良長期計画をどのようになされるつもりか、あわせてお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/10
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011・赤城宗徳
○赤城国務大臣 ただいまお述べになりました農業基盤整備事業の役割り及びその重要性につきましては、御指摘と全く同感でございます。御指摘のような諸点をも考慮しながら、今後の農業基盤整備投資につきましては、次のような点に重点を置いて取り進めることといたしたいと考えております。
第一には、適地適作を旨として、畜産、果樹、野菜等の畑作振興に重点を指向して、農道網の整備、畑地かんがい、その他圃場条件の整備と草地の開発整備を強力に推進することといたしたいと思います。従来、土地改良は水田を中心として進められてきましたが、いま申し上げましたように、また御指摘のような趣旨も組み入れまして、畑作振興、そういう方面に相当重点を指向したい、こう思います。
第二に、水田につきましては、転作作物にかかる圃場条件の整備等を推進するとともに、適地における稲作経営の合理化をはかる方向で、農道と圃場整備及び用排水施設の整備を促進することとしたいと思います。いまお話しのような水田等につきましても、団地的な経営に持っていく条件として、いま申し上げたような方針を進めていきたいと思います。
第三には、農業生産基盤にあわせて農村の環境基盤を総合的かつ計画的に整備することを内容とする農村基盤総合整備パイロット事業に着手して、その着実な実施をはかることとし、これを通じて農村地域社会の変化の実情に対応した農村の総合的な整備開発方式の確立に資することといたしたい。お話しの中にもありましたが、土地改良を団地経営の基礎としての基盤整備というようなことを申されておりましたが、団地的なパイロット事業も行なうというつもりでおりますので、その整備開発の確立に資することにしたい。
第四には、広域な未開発地を有する特定の地域についてでありますが、そういうところにおきましては、大規模な草地畜産基地を建設したい。そして地域全体に着目して畜産物の生産、流通、処理加工の各段階にわたる諸施設を総合的、計画的に整備するとともに、生産性の高い大規模な畜産経営を創出することを目的とする新事業の実施につきましての調査、検討をとり進めることとしたおと思います。
なお、土地改良長期計画につきましては、現行の計画が、昭和三十七年五月に公表された「農産物の需要と生産の長期見通し」等を基礎として、昭和四十一年三月に閣議決定されたものであり、その後において御指摘のとおり、計画作成の前提となった諸条件が大幅に異なってきておりますので、ただいま申し上げた農業基盤整備事業の整備拡充の方向を踏まえまして、昭和四十七年度におきまして改定すべく目下検討作業を進めているところでございます。
要は、ただいま御指摘になりました真意に私ども賛成いたしまして、そしてまた、現在農業として団地的経営その他新しく進めるその基礎である土地基盤整備を非常に重大視しまして、御指摘のような方向、また私が申し上げたような方向に土地基盤整備を進めていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/11
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012・三ツ林弥太郎
○三ツ林委員 次に、現在の土地改良法は、基本的に農地法と同様、戦後農地改革により広範に創設せられた自作農の存在を前提とし、その自発的意思の結合により事業を実施するという仕組みをとっており、その基本的性格は、三十九年法改正による目的の改正があった後においても基本的に変わっていないものと考えている次第であります。
ただいまの大臣の御答弁にありました農業生産基盤を総合的かつ計画的に整備するための事業とか、あるいは四番目に答弁されました広域な未開発地を総合的、計画的に整備するための事業等の事業は、農政の新たな展開に即応するものとして、積極的に推進すべきでありますが、現在の土地改良法の手続、仕組みではうまくいかない点があるかとも思います。今回の法改正の必要なゆえんもまた一つにはその辺にあるかと想像するのですが、ここで大臣から、先ほど御答弁のあった基盤整備事業投資の基本的方針と今回の法改正との関連を御説明いただきたいと思います。
また、私が先ほど指摘した現在基盤整備事業を推進する上での具体的問題点は、今回の法改正においてはどのように考慮されているか、あわせてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/12
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013・赤城宗徳
○赤城国務大臣 ただいまお尋ねの点でございますが、今後の基盤整備事業投資の基本的方向につきましては、すでにお答えしたように、農道網の整備、畑地帯の総合的整備等を重点として、その充実強化をはかるとともに、新たに地域全体に着目して、農業生産基盤と農村環境の総合的整備または広域な未利用地の総合的開発を進める方向でその整備拡充をはかる考えでございます。
このような方向で基盤整備事業を推進するためには、まず各種土地改良事業を統一した目的のもとに計画的に実施するということ、第二には、基盤整備事業と施設配置を有機的に関連づける、こういうこと、第三は、基盤整備に際しまして、非農用地を含めて地域全体としての合理的な土地利用をはかるということが必要であると考えております。したがいまして、改正法におきましては、このような見地から、市町村申請特別土地改良事業制度の新設、こういうものを新たに設けます。また各種土地改良事業の総合的実施、圃場整備事業等における非農用地の取り扱いの改善、まあ宅地等でございますが、総合的にやるために、土地改良事業の実施に際しての市町村長の意見の聴取等を行なうこととしております。
また、御指摘の基盤整備事業推進上の現実的な問題点につきましては、ただいま申し上げた措置のほか、非農地受益者賦課、あるいは農業用用排水路への排水の差しとめ請求等、農業用用排水路の利用関係の調整に関する規定を整備すること、公害その他も含めて、以上のようにいたしたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/13
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014・三ツ林弥太郎
○三ツ林委員 第三点として、基盤整備事業推進に伴う農民負担の問題についてでありますが、ただいまの御説明によれば、今回の法改正は客観的な農業事情の変化を考慮しつつ新しい政策的な要請に応ずるものとして、現段階においては一応満足すべきものと考えますが、農民負担の軽減をはかるための積極的な措置を伴わない限り画竜点睛を欠く結果となるおそれがあります。もちろん事業に対する国庫負担の割合、償還条件等につきましては、他の諸制度とのバランス、国の助成する積極的理由等の問題があるとは思いますが、先ほど申し上げましたように、基盤整備を一番積極的に推進しなければならないこの時点において、農産物価格の低迷、兼業化の深化、生産調整等から事業の実施にためらいの機運が一部にあることは率直に認めざるを得ないと思います。
このような見地から、大臣に前向きにこの問題に取り組んでいただきたいと思いますが、大臣の所信を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/14
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015・赤城宗徳
○赤城国務大臣 土地改良事業の受益者といいますか、関係者の負担の問題でございますが、これはなかなか私が考えているようにもいきません。実は国でこうやって、そうしてまあ受益者の負担を出すくらいにまで持っていきたいと思うのですが、いまのところでは、土地改良事業の補助というようなことでやっておりますが、この補助率をだんだん上げていくということで進める以外に、なかなか私の考えているようにはいきません。
土地改良事業に対する補助率、公庫資金の貸し付け条件等につきましては、各種土地改良事業の性格、農業者の負担能力等を勘案して定められているものでありまして、これまで逐次改善をやってきているところでありますが、今後ともこれらの問題につきましては、御指摘のような農業を取り巻く諸情勢の変化を考慮して、四十七年度は特に実態調査をすることとしておりまして、その結果を待って所要の措置を講ずるよう検討してまいりたい。根本的にはいろいろ考えておりますけれども、まだそこまでは行っておりませんが、いま申し上げたようなことで進めたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/15
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016・三ツ林弥太郎
○三ツ林委員 次に、最近水需要の増大と用地の問題からして、ダム建設の困難化に伴って農業用水の既得水利権に新たな水源を求める動きがあるように伺っております。もとより農業水利側といたしましても、不必要なものをいたずらにかかえ込むという姿勢をとり続けているものではありませんが、現在の農業用水は決してただの水を浪費しているというわけではなく、過去数百年にわたる農民の血と汗の結晶により建設、維持、管理してきた水利施設によって取水が可能となっていることであります。また、農業生産、特に稲作の特性と現在の技術水準から見て相当な水を使用することはやむを得ないものでありますが、また、一度使用された農業用水の相当部分は河川に還元されるものでありますので、この点都市用水とは基本的な性格の差異があると考えられます。このような農業用水の歴史的経過及び特性を無視して、たまたま生産調整等の特殊事情があることに乗じて行政官庁の許認可によって農業水利権の内容を変更しようとする動き方、考え方は納得できませんし、農業用水にとって重大な問題だろう、かように考えます。
現在、農林省におかれましても農業用水合理化事業が予算化されまして、改正法案においても用水の他に転用を前提とした条文があるようですが、この際、農業水利権についての大臣のお考えを明確にお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/16
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017・赤城宗徳
○赤城国務大臣 御指摘のような傾向は非常に多うございます。多目的に土地改良の用水を使いたいとか、あるいは都市化に従いまして農業用水の都市用水への転用、こういうことも出てきております。しかし、都市用水への転用等にあたりましては、御指摘のような事情を十分考慮する必要があると私も考えております。改正法の運用に際しましても、農業に必要な水量は絶対に確保することを旨としまして、農民の過去の努力に対しましては妥当な補償を行なうよう、河川管理者とも十分協議してまいることといたす考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/17
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018・三ツ林弥太郎
○三ツ林委員 次に、改正法案の内容について若干お尋ねいたしたいと思います。
まず、圃場整備事業等における非農用地の取り込み等に関する改正であります。この点はかねて事業関係者から要望の強いところでありますし、また、農村の都市化や工場導入の観点から見て時宜を得たものと思うのでありますが、工場用地等のため捻出する非農用地の規模、位置等は農業側から見て適正、妥当なものである必要があると考えます。農林省としてはどのような規模、位置等を考えているのか、またそれは制度上どのように担保されているのかを御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/18
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019・赤城宗徳
○赤城国務大臣 事務当局から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/19
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020・三善信二
○三善政府委員 ただいまの御質問は創設換地の規模、位置等についての御質問と思いますが、やはり圃場整備をいたします場合に、近い将来に農地の転用が相当行なわれるということが予想される地域で圃場整備をいたす場合でございますが、その場合、全く御指摘のような農業あるいは農地の有効的な合理的な利用、こういった観点から創設換地の規模、位置等について必要な限度においてこれを制限する考えでおります。面積的に申しますと大体二割から三割程度を考えております。
それから、そういった規模、位置につきましての制度上の保証といいますか担保といいますか、どういうようになっているかという御質問でございますが、制度上は、御承知のように、土地改良法の第一条の目的からいっても当然でございますが、新しく八条の五項におきまして、創設換地は「適切な位置にあり、かつ、妥当な規模をこえないものであること」という規定を設けております。また五十二条の第三項におきましても、換地計画については「農用地の集団化その他農業構造の改善に資するように定めなければならない」というふうな規定を設けております。そういうことで創設換地の規模、位置等につきましては、制度的にもこれを限定したようなかっこうで担保していると申しますか、そういうふうにいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/20
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021・三ツ林弥太郎
○三ツ林委員 次に、宅地等の取り込みにつきましては、特に都市近郊においては、農村に住宅がスプロール的に進出して、その排出する下水等により農業用水の汚濁の問題を起こしたり、あるいは農業用の排水施設の受益を受けたりしている実態があります。この点についても、今回の改正案では用排水路の利用関係の調整に関する改正がなされておりますが、一歩を進めて、宅地等についても三分の二の同意で地区に編入し、農用地と同様の事業費負担を課するという考え方はないものか、この点について御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/21
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022・三善信二
○三善政府委員 御承知のように、土地改良法は農業の基盤整備ということを前提にいたしておるわけでございます。その観点から同意とかあるいは負担等の仕組みを法的に仕組んでおるわけでございます。そういう意味におきまして、宅地等の非農用地を農用地と同様に取り扱うというようなことは行き過ぎではないかと考えております。したがいまして、宅地等の地区編入につきましては、やはり個別の農家の同意を要するということにいたしております。また、非農家の方を土地改良区の組合員にしないということに法的にいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/22
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023・三ツ林弥太郎
○三ツ林委員 次に、改正法案の第五十七条の三において、用排水路への予定外廃水の差しとめ請求が制度化されておりますが、工場排水、下水等による農業用用排水路の汚濁、温水は、農業上はもとより、地域環境保全の上からもきわめて深刻な問題であります。この規定による差しとめ請求に相手が応じなかった場合はどうなるのか。また、第三十六条第八項において非農用地の受益に対する賦課が制度化されておりますが、その運用の方針はどうか、こういう点について御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/23
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024・三善信二
○三善政府委員 差しとめ請求というものは、もともと土地改良施設の財産権と申しますか、それによって法的にはできるというふうに解釈しておりますが、今回はこの五十七条の三の規定で制度的に明確にしたというものでございます。制度的に法的にはっきりいたしましたので、これによって相当実効はあがると私は考えております。
相手方がその差しとめの請求に応じない、こういう場合がもし万一ございましたならば、その場合には法的にはやはり一般の訴訟に訴える、こういうことになるわけでございますが、その前に実際的に、こういう制度を明確化したことによって、そういう必要はなかろうかと思っております。
また、非農用地の受益に対する賦課につきましては、非農家は、先ほど申し上げましたように、土地改良区の組合員とはしておりません。したがいまして、賦課にあたってはこれを慎重に考えて運用することは当然のことだと思っております。その場合、やはり受益の度合いとか、あるいは組合員である農家、その組合員に対する賦課とバランスをとったことを当然考慮して、不当に高くなるとかいうようなことは絶対ないように妥当な水準で賦課が行なわれるように運用いたすようにしたいと思っております。
また、この賦課をいたします場合に、法律的にも知事の認可が必要でございまして、知事が認可いたします場合に、地域住民の代表と申しますか、市町村長の意見を十分聞くことになっておりますので、そういうことをやりまして慎重にこの問題は運用いたしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/24
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025・三ツ林弥太郎
○三ツ林委員 次に、土地改良事業の総合化についてでありますが、土地改良事業のあり方といたしまして、一定の地域について用排水路、農道、圃場整備、農用地造成等を一体的に実施する地域開発的性格の強い事業が多くなっており、また、農業団地構想等と相まって今後その必要性がますまず増大するものと思われます。ただ、かかる総合事業を一個の事業として仕組み、セットで農民の同意をとることとなると、ややもすると農民から事業の選択の自由を奪うことになりはしないかという懸念があるのでありますが、この点についてはいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/25
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026・三善信二
○三善政府委員 今度の改正によって総合事業を認めたわけでございますが、この総合事業は、御承知のように、各種の土地改良の事業を一つの事業として実施するということでございます。したがいまして、形式的には御質問のようなことも考えられますが、これを実施します場合に、一つはその受益地域ということを考えてみまして、その受益地域が相当程度重複しているということが一つの条件と申しますか、必要だと思っております。
それからもう一つは、やはり総合的にやったほうが農業経営上から効率的であるというような判断も加わってこの実施をやっていかなければならないと思っております。それから法的には、土地改良事業計画の概要につきまして十分市町村長の意見を聞くということになっておりますし、地域住民の代表でありますし、また農業開発の計画的な推進をしてまいるという観点から、市町村長が総合事業としてやることがこれは適切であるという判断をした場合にこの総合事業を実施することにしておりますので、農民の選択の自由を奪うというおそれはなかろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/26
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027・三ツ林弥太郎
○三ツ林委員 最近におけるかんがい排水事業等の大規模化、広域化等を見ますと、一般の土地改良事業と同様の同意手続にはなじまないので、農業振興地域整備計画の達成上必要がある場合に、特に基幹的かつ先行的な施設の建設事業については三分の二の同意を得ないでも申請する道を開くという考え方はうなずけますが、伝統的に土地改良区が管理している施設、水利秩序が確立しているような場合にも市町村による申請を認めるのかどうか、お伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/27
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028・三善信二
○三善政府委員 市町村の特別申請事業といいますのは、その地域の開発のために、ただいまお話がありましたように、先行的にこれは必要と思われるような基幹的な水利施設、それからまた農業用の道路、こういったものをつくる場合の手続として今回特例を認めたわけでございます。御指摘のような旧来からの水利組織がきちっと確立している、あるいは伝統的な管理をしている、こういった水利施設について、私どもはそういう伝統的な、あるいは非常に組織が完備したような水利施設の改良とか更新につきましては、こういった市町村特別申請事業を適用して事業を実施するというようなことは考えておりません。また、そういった施設はおそらく末端まで全部整ったような施設でございますから、この事業にも該当しないだろう、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/28
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029・三ツ林弥太郎
○三ツ林委員 いま説明がありましたけれども、ただ、今回の改正においては市町村の特別申請事業であるとか、一般に土地改良事業開始時に市町村長の意見を聞くとか、土地改良事業についての市町村のウエートが高まったように感じられておるのでありますが、この点についての説明をひとつ承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/29
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030・三善信二
○三善政府委員 御指摘のとおり、今回の改正におきましては土地改良事業について市町村の果たす役割りと申しますか、そういうのを重視いたしまして、ただいま申し上げました市町村に事業申請の資格を与える、あるいは土地改良事業の実施にあたっては市町村長の意見を聞く、こういった規定を設けているわけでございます。
御承知のように、最近の農林行政におきましては、農振法の運用をはじめ、特に市町村のウエートというものが高まっているわけであります。今回の改正におきましてもそういった点を重視いたしまして、土地改良事業の実施過程において市町村の地域的な農業開発上やはり市町村長がリードしていくというようなことを考えまして、ただいま御指摘のありましたように、市町村が果たす役割りということにウエートを置いたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/30
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031・三ツ林弥太郎
○三ツ林委員 次に、前々から関係者の間に要望の強い換地士制度の問題であります。改正法案を見ますと、第五十二条第四項におきまして、換地計画を定めるには政令で定める資格を有する換地技術者の意見を聞かなければならないとされておりますが、これは換地士制度の要望にこたえたつもりでありますかどうか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/31
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032・三善信二
○三善政府委員 最近の農業基盤整備事業におきましては、圃場整備等換地を必要とする事業が非常にウエートが増大しております。この換地業務につきましては、これは農地の評価とか、あるいは登記法上の手続とか、あるいは民法上の手続とか、そういった非常に高度な専門的な技術的な知識を要するわけでございます。それにもかかわらず換地技術者に対しては十分な社会的評価と申しますか、処遇と申しますか、そういうのが受けられていない。そういった点で換地士を制度化せよというような強い要望が実は前々からあったわけであります。それで今回の改正におきましては、特に非農用地を取り込む換地業務がますます複雑化し、あるいは非常に専門化してきているわけでありますが、したがいまして、土地改良区の行なう圃場整備事業等につきましては、換地計画を権利者総会にかける前に、あらかじめ国の行なう一定の試験に合格した者の意見を聞かなければならないということにいたしております。そして関係権利者の利益の保護をはかり、あわせて換地技術者の資質の向上と身分の安定をはかるということを行なったものでございます。したがいまして、今回の改正で、直接いわゆる換地士制度というものを土地改良法上制度として明記したというものではございませんが、ただ、実質的にこれまで要望があったようなことにこたえたような改正をしたというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/32
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033・三ツ林弥太郎
○三ツ林委員 以上、法改正の大体要点のみをお尋ねいたしたのでありますが、最後に、公共投資回収のための特別徴収金制度について、その考え方及び対象の範囲はどうするのか、御説明をいただいて、質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/33
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034・三善信二
○三善政府委員 特別徴収金制度の考え方の問題でございますが、現在でも農業目的の投資がその本来の機能を十分に果たしていないまま他目的に転用されるということは、これは農業に対する国の補助等の見地から問題であるというような趣旨で、現在、国営の干拓地を取得して、取得後八年以内に他目的に転用した場合あるいは補助事業として行なわれた圃場整備あるいは農用地の造成事業等で、事業が完了いたしましてからやはり八年以内に転用した場合には、原則的には特別徴収金の徴収あるいは補助金の返還、こういう措置を講じているわけでございます。現在もこういうことはやっているわけでございますが、今回の改正では、同様な趣旨からこういう制度を一般の国営事業にも全部及ぼすということで、干拓補助事業を通じ、統一的に法的根拠に基づいて、そういう途中で他用途に転用したような場合には補助金の返還あるいは特別徴収金を徴収する、こういう規定を設けたようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106805007X00319720316/34
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035・松野幸泰
○松野(幸)委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午前十一時四十二分散会
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