1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十九年二月十九日(火曜日)
午前十時四十分開議
出席委員
委員長 三池 信君
理事 江藤 隆美君 理事 佐藤 孝行君
理事 佐藤 文生君 理事 佐藤 守良君
理事 太田 一夫君 理事 兒玉 末男君
理事 三浦 久君
小此木彦三郎君 唐沢俊二郎君
關谷 勝利君 宮崎 茂一君
山村新治郎君 綿貫 民輔君
金瀬 俊雄君 神門至馬夫君
斉藤 正男君 坂本 恭一君
土井たか子君 梅田 勝君
石田幸四郎君 松本 忠助君
河村 勝君
委員外の出席者
参 考 人
(大阪府知事) 黒田 了一君
参 考 人
(兵庫県知事) 坂井 時忠君
参 考 人
(大阪国際空港
騒音対策協議会
会長) 伏見 正慶君
参 考 人
(日本空港コン
サルタント会
長) 秋山 龍君
参 考 人
(日本弁護士連
合会公害対策委
員長) 伊東 正雄君
参 考 人
(芝浦工業大学
助手) 小坂 宏君
運輸委員会調査
室長 鎌瀬 正己君
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委員の異動
二月十九日
辞任 補欠選任
久保 三郎君 土井たか子君
同日
辞任 補欠選任
土井たか子君 久保 三郎君
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二月十八日
帆船から汽船に登録替えされた船舶職員の資格
の取扱いに関する請願(河村勝君紹介)(第二
一六二号
同(石母田達君紹介)(第二二二四号)
は本委員会に付記された。
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本日の会議に付した案件
連合審査会開会に関する件
公共用飛行場周辺における航空機騒音による障
害の防止等に関する法律の一部を改正する法律
案(内閣提出、第七十一回国会閣法第七一号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/0
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001・三池信
○三池委員長 これより会議を開きます。
公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日御出席願いました参考人は、大阪府知事黒田了一君、兵庫県知事坂井時忠君、大阪国際空港騒音対策協議会会長伏見正慶君、日本空港コンサルタント会長秋山龍君、日本弁護士連合会公害対策委員長伊東正雄君、芝浦工業大学助手小坂宏君、以上六名の方々でございます。
この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございました。本案について、それぞれ忌憚のない御意見を承りまして、審査の参考にいたしたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げますが、黒田参考人、坂井参考人、伏見参考人、秋山参考人、伊東参考人、小坂参考人の順序で御意見をお一人十五分程度に取りまとめてお述べいただき、次に委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
それでは黒田参考人からお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/1
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002・黒田了一
○黒田参考人 初めに、空港周辺のうち大阪府側における地域の概況と、大阪府のとってまいりました航空機公害対策の概要、並びに国においてとってこられた対策についての問題点といったことを述べました後、お尋ねの法改正についての意見を申し述べ、あわせて今後の問題点につきまして若干付言させていただきたいと存じます。
まず初めに、空港周辺地域の状況でございますが、空港周辺における大阪府側の大部分は航空機の着陸側に当たり、着陸機の進入直下に当たる豊中市利倉、勝部地区等は、滑走路に近接し、最も近いところでは滑走路から百メートルそこそこのところに人家が所在しております。同じく進入直下に当たる庄内地区は、人口密度の高い豊中市内でも特に人家の密集度の高い地域であり、さらに進入直下の地帯は大阪市東淀川区へと連なっております。たとえば庄内地区では人口密度が一ヘクタール当たり二百人をこすような状況にあります。全国平均の二・八人、大阪府平均の四一・四人に比べても、いかに人口の密度が高いかということが御理解願えると存じます。
第二に、このような人家の密集地帯に毎日二百機をこえる航空機が着陸のため、ひどいところでは高度が五十ないし六十メートルで、まさに人家すれすれの感じで通過するとともに、離陸機の多くもその上空を通過しております。しかも、これらの航空機は年を追うてジェット機の比率を増し、昭和四十五年四四・九%が四十八年では六〇%に達しております。
第三に、この激しい航空機の離発着とジェット比率の上昇により、最近では、大阪府が常時測定を行なっております共同利用施設、B滑走路南端から約一・七キロメートルの穂積センターで最高百十六ホン、B滑走路から約二・七キロメートルの野田センターで百二ホンといった騒音を記録しております。私も何回かこの騒音激じん地に立って、これはまさに激痛音というべきものであると痛感しております。
この航空機騒音による大阪府下被害地域の人口は、豊中市、大阪市及び離陸騒音を主として受ける池田市の三市内において、WECPNL八五以上の地域が六万ないし十万人、WECPNL七〇以上の地域としては上の三市のほかに箕面市、吹田市、東大阪市の三市を加え、六市にわたりその被害人口は七十万人をこえると推定されております。
第四に、以上の騒音被害とあわせ、誘導路を通って発進する航空機によるエンジンからの排出ガスは、豊中市勝部地区を中心に吐き気を催すような悪臭とともに、瞬間的に高濃度の有害物質として流れ込んでいるのであります。
この排出ガスの実態調査につきましては、大阪府といたしましても、長い間取り組んでまいりましたところ、測定機器の問題等種々の難関がありましたが、最近ようやく瞬間値の調査をまとめましたところ、たとえば一酸化炭素は、大型ジェット機の通過時に通常の約九・三倍もの濃度に達し、また炭化水素などの汚染物質も、エンジン排気口での濃度に比例して瞬間的に高濃度となることが類推され、さらに炭化水素の一種で刺激性の強いアクロレイン、ホルムアルデヒドも検出されております。また大阪府の環境管理計画においても、たとえば航空機による窒素酸化物の排出を昭和四十五年時点の五〇%に削減する必要があると指摘しております。
第五に、空港周辺の住民は、こういった航空機の離発着による騒音により、難聴はもとより、耳鳴り、頭痛、目まいなどの被害を訴えてまいっております。それとともに滑走路近くにある勝部地区では、排出ガスによる悪臭、鼻出血、気管支炎などの人体に対する影響についての訴えが続いております。私も、鼻血をかんだ多くの人の血に染まったちり紙の山を見せられ、その深刻さにがく然といたしている次第であります。これらの被害の訴えと航空機騒音及び排出ガスとの関係はいまだ科学的に十分には解明されていないとはいえ、きわめて憂慮すべき状態にあることは何人も否定し得ないところであります。
このような空港周辺住民の耐えがたい航空機公害は、ついに昭和四十四年十二月の川西市住民に始まり、四十六年六月の第二次、十一月の豊中市住民による第三次航空機公害訴訟の提起となって爆発するに至ったのであります。
このような状況のもとに、空港周辺住民は抜本的な対策を国に訴える一方、現実の耐えがたい公害のために、空港に近い住民の多くは、やむを得ず長年住みなれた住居を他に移転することを決心せざるを得ない状態にあり、昭和四十五年七、八月の大阪府のアンケート調査では、現行の移転補償対象地域内の約五〇%が移転を希望しております。また広い範囲にわたる多くの住民は、国の費用による民家防音工事等を当面の対策として望んでおります。
第六に、こうした公害問題の中で、国が対策を打ち出してきたのは、昭和四十二年八月に公布されましたいわゆる航空機騒音障害防止法からであります。この法律による対策は、申し上げるまでもなく、第一に共同利用施設の建設と学校等の防音工事に対する国庫補助、第二に民家の移転補償、この二つを骨子とするものでありますが、一につきましては、補助額が低額であり、実施主体である地方公共団体の超過負担が大きいこと。第二につきましては、国の移転補償費では適当な代替地を求めることが困難であること、及び独力で代替地をさがすことの困難さが指摘され、加えて移転補償対象地域を騒音等の被害の実態に応じて拡大すべきことが要望されてまいった次第であります。
第七に、これに対し大阪府としましては、関係市及び住民に対し国の対策の補完策として種々の助成を行なってまいりました。
すなわち、関係市に対し、共同利用施設の建設の際、国と同額の補助、学校等の防音工事の不足資金についての貸し付けなどを行ないますとともに、移転補償を受けて移転をする人に対しては、移転を円滑に行なうため、つなぎ資金の貸し付け、この制度は昨年十一月から国の移転補償の前払い制度の実施によって廃止しておりますが、それと、この移転資金を市中銀行から借り入れた場合の借り入れ金に対する利子補給の実施、さらには移転者が代替地を取得した場合の不動産取得税の減免措置など、きめこまかい対策をとってまいりました。
また、騒音地域内になお新しく建売り住宅等が建ち、新たな被害が生じるのを少しでも防止するため、騒音地域内の土地について、国による買い上げの先行措置を地元豊中市の協力を得て講じてまいっております。
第八に、こうした情勢のもとで、大阪府としましては、被害住民をこのまま一刻も放置し得ないという認識のもとに、航空機公害の軽減、防止をはかるため、四十六年以来、国に対しエンジンの改良、飛行便数の削減、とりわけ夜間飛行の禁止と東京-大阪便の大幅削減等、発生源対策を強く要望してまいったところであります。
一方、現在の移転補償対象地域が騒音被害の実情に合わないことを指摘し、被害の実情並びに地元の意向を勘案し拡大するとともに、従来の移転補償対策の改善はもとより、被害住民の移転先の確保、つまり代替地の造成、また移転あと地の整備、周辺の土地利用の変更、つまり空港周辺整備及び民家防音工事の実施など、当面の被害者対策が緊要であることを主張してまいり、また国の責任においてこれら事業の実施機関を設立し、地元府県もそれに協力することにより、総合的な空港周辺整備事業の促進がはかられるよう要望してまいった次第であります。また、健康被害についての原因の究明と救済対策についても要望してまいっております。
次に第九に、騒音問題について最も基本的なものの一つは、生活環境基準の設定ということにあると考え、大阪府としましては、以前から航空機騒音にかかる環境基準の制定等を要望してきたところであります。御承知のように環境庁においては、四十六年十二月、騒音被害の特に著しい東京及び大阪国際空港について、夜間飛行禁止時間の延長及びWECPNL八五以上の地域における民家防音工事の助成等の実施について緊急措置勧告が出され、四十八年十二月には、公害対策基本法に基づき航空機騒音にかかる環境基準がWECPNLで七〇以下として制定されたわけでありますが、大阪府としましては、具体策の実施によって一日も早くこの目標値を達成するよう強く要望するものであります。
次に、以上述べてまいりました諸点を考えました場合、現在審議されております法改正により、第一に移転補償推進のための代替地の確保、第二に緑地帯の整備、その他航空機公害のない施設への転換等の空港周辺再開発整備、第三に民家防音工事による住民の生活環境保全の前進がはかられるとともに、別途これらの施策の対象となる地域が騒音の実態に応じて指定されることなどが関係政令、省令の改正並びに告示の整備によってなされることと存じますが、現に人体に対する影響が深刻な問題となっていること、さらには航空機の進入直下については防災上の対策がとられていないことから、当面緊急な対策が必要となっております。
しかし、このようないわば被害者対策だけでこの航空機公害問題がすべて解決するものではなく、発生源対策が強力に実施されなければならないことは申すまでもありません。最近におきまして郵政大臣が、本年三月をめどに深夜郵便機全廃の方針を示されたことは、音源対策としては当然の措置ながら、一歩前進したものとしてその勇断に敬意を表するものでありますが、それに加えて、さきに述べました排出ガスによる大気汚染防止のためにも、また騒音にかかる環境基準の早期達成のためにも、さらに大幅な便数削減、飛行時間の規制、エンジンの改良等が保障さるべきであり、このような措置が確実に実行されるよう強く要望する次第であります。
また一方、目下新空港の問題が論議されており、これと関連して現空港の将来のあり方も真剣に検討されなければならないかと存じますが、目前の現空港の公害問題の解決なしに新空港についての論議もできないといった観点から、何よりもまず現空港の公害対策が先決であると考える次第であります。
最後に、法改正の運用について希望を申し上げたいと思います。
今回の改正法案につきましては、当面の航空機公害対策として提案されていることと存じますが、この法改正にあたっては、航空機公害についての発生源対策の強化を重ねてお願いいたしますとともに、改正法の運用にあたっては、整備機構の運営において赤字が生じた場合には国においてそれを補てんすること。第二に、整備機構に対し地元地方公共団体が無利子貸し付け、補助等を行なう場合には、国においてその資金手当等、財政面での援助をあわせて行なうことなどをお願いいたしたいと存じます。
以上のような御配慮によりまして、法改正に盛られるべき内容が空港周辺の被害住民にとってより一そう役立つのとなることを心から期待するものであります(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/2
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003・三池信
○三池委員長 どうもありがとうございました。
次に、坂井参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/3
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004・坂井時忠
○坂井参考人 兵庫県知事の坂井でございます。
大阪国際空港周辺地域の航空機公害につきましては、航空路直下の被害住民から訴訟や公害紛争調停の申請が次々に提起され、公害反対住民運動が活発に行なわれておる事実で御推察いただけると思います。これら地元被害住民の方々にとって、航空機騒音対策がどのように進められるかは生活に直結する問題として重大な関心事でございます。この意味から、当委員会が地元の意見を聴取するため、御多忙にもかかわらず、今明日二日間の機会を持たれたことは、きわめて意義深いものであり、今後とも幅広く地元の意向をくみ上げていただくようお願いするものであります。
さて、意見を申し述べるにあたりまして、まず大阪国際空港問題に対する根本的な考え方を申し上げたいと思います。
航空機の航行によって生ずる地域環境への影響としましては、一般的に航空機騒音による健康や生活への障害、航空機事故に対する不安、大気汚染、振動による建物の被害等があげられます。大阪国際空港の兵庫県側では、離陸と旋回による激しい騒音が広範囲に及んでおります。昨年暮れ環境庁が定めました航空機騒音の環境基準WECPNL七〇以上の地域には実に百万人に近い方々が住んでおります。特に滑走路先端から三キロメートル以内の地域では一日二百回以上の飛行があり、うちジェット機はその六三%を占め、百三十機を数えております、したがいましてこの地域では、百ホン以上の騒音というよりごう音ともいうべき大きな音に悩まされておるのが現状であります。私も何回か騒音体験をいたしましたが、地元の方々にはまことにお気の毒で、一日も早くこのような苦しみから解放してあげるべきだと痛感しております。そこで、寝たきり老人や心身障害者で終日騒音の中に暮らさねばならない方々の家庭に対し、ささやかではありますが、その病室の防音工事と冷暖房工事とを県単独の事業として実施したのでありますが、これらの方々からは心からの喜びと感謝の手紙が寄せられました。これほどまでに地元の方々は対策を待ちわびておられることを諸先生方にも御理解願いたいものと思うのであります。
ひるがえって、大阪国際空港が諸外国の国際空港に比べましてきわめて狭小で、しかも市街地のまん中にあることを考えますと、今後技術の革新や対策が進んだといたしましても、なお完全な公害の除去は期しがたいものと存じます。また、大型化している航空機の密集市街地における事故の危険や被害の大きさを考えますと、住民が不安感、危機感を訴えられるのは当然でありましょう。
こうしたことから、私は、現大阪国際空港は、現在におきましても、また将来においても、欠陥空港であると断ぜざるを得ません。その根本的解決方法としては、公害のない関西新国際空港を建設して、そこに現空港の一切の機能を移す以外にないと考えます。しかしながら、現在の情勢では新空港の建設には相当長期の歳月を要しましょう。この間、現実に被害を受けている大阪国際空港周辺住民の、静かで安全な生活環境を回復させてほしいという願いをそのまま放置、傍観することは許されません。国が中心となって騒音発生源対策を推進するとともに、被害住民の救済に万全を尽くすべきであると存じます。さらに、抜本的解決策である新空港の建設そのものにつきましても、現大阪国際空港周辺の公害対第が十分に実行をされて、その実証を見せてもらわない限り地元の納得と協力は困難であろうと思うのでございます。
以上、基本的な考え方を申し上げましたが、次に改正法案についての意見を申し上げます。
まず第一点は、法改正に対する県の姿勢についてであります。今回の改正案は、周辺整備機構を設立して騒音対策を促進することと住宅の防音工事を助成することにあります。先ほども申し上げましたとおり、被害住民の緊急救済対策としてこれらが法案に取り上げられておることは基本的に賛意を表します。しかし法案では、なお多くの基本的な問題点、たとえば特に周辺区域の指定などが政令に委任されておったり、地元住民は、一方的な住民の追い出しまたは空港の永久存続、拡張の手段ではないかと危惧しております。この危惧を払拭して地元の同意を得ることが、この改正法を円滑に運営してまいる前提条件であると思います。国におかれましては、まず大阪国際空港の将来のあり方について、その移転、廃止の方向を明確にさるべきであると存じます。県といたしましては、地元の方々の同意を得まして、機構の設立や運営に協力してまいりたいと思っております。
第二点は、住宅の防音工事にかかる助成と汚染者負担の原則についてであります。公害対策の費用は本来汚染者負担が原則であります。被害住民が公害救済において自己負担をしいられることがあってはならないものと考えます。法案は住宅の防音工事に助成の措置をとるとしておりますが、騒音防止の費用は公害発生原因者が負担すべきものであります。住宅の防音工事は本来一戸の全室に施すべきものでありますが、現実の問題としまして、当面限りある資金でより多くの人々を救済するためには、一戸一室または二室に制限することもまたやむを得ないかと存じますが、その費用の七五%、第二室は五〇%ということでございますが、これを補助するというのは当を得た措置であるとは思いません。すべからく全額負担して、住民や公共団体に負担をかけないようにお願いいたしたいと思います。
第三点は地方公共団体の財源措置についてであります。改正法案の趣旨にのっとり、住民福祉の立場からできるだけ早くその対策を進めるために、地元公共団体としては積極的に協力してまいりた
いと存じますが、その財源につきましては十分措置できるようお願い申し上げたいと思います。
第四点として、機構設置により騒音発生者の責任があいまいにならないようにお願いをしていきたいと思います。とにかくこうした組織をつくりますと、公害対策の責任がこの組織にあるかのようになりがちであります。公害対策の責任はあくまで公害発生者にあることははっきりさせておいていただきたいと思います。
以上、改正法案に対する意見を申し上げましたが、初めに申し上げましたとおり、地元の住民は一日も早い救済の手を待ち望んでおります。本日申し上げました意見をおくみ取りいただき、法案がすみやかに審議決定されることを希望いたします。
終わりにあたりまして、現下の大阪国際空港周辺の航空機公害対策は、この改正法案による対策とあわせまして、発生源対策の強化が最も重要であると思います。このため、東京-大阪間などいわゆる新幹線がある幹線の航空路は、これを廃止するか、または騒音対策の面から、大型ジェット機を廃してYS11のような騒音の少ない航空機に交代するなど、思い切った対策がぜひとも必要であろうかと思います。さらに、料金政策や騒音料の徴取などにより不急の需要を極力抑制するなど、被害住民からも共感の得られる航空行政を進められることをお願いいたしまして、私の意見を終わります。まことにありがとうございました。
(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/4
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005・三池信
○三池委員長 ありがとうございました。
次に、伏見参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/5
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006・伏見正慶
○伏見参考人 私は大阪国際空港騒音対策協議会の会長であって、伊丹市長の伏見正慶でございます。この法改正の意見を申し上げる前に、少し大阪国際空港騒音対策協議会がどんなものであって、どういうことをやっておるかということを簡単に申し上げまして、御理解を深めていただきたい、こういうふうに考えます。
この大阪国際空港騒音対策協議会、これは非常に長うございますから、周辺十一市で構成しておりますので、これから十一市協という名前で話をさしていただきたいと思います。この十一市と申しますのは、大阪府側では大阪市、豊中市、池田市、箕面市、吹田市、兵庫県側は尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、川西市、宝塚市、この十一市でございます。
この十一市協の基本的な考え方と、それからいまやっております運動、これは二つの基本的な面がございます。
第一の面は、現在の大阪空港を撤去しろ。しかしその撤去しろというには、関西に新しい空港をつくって現大阪国際空港を撤去しろ、これが第一点でございます。第二点は、現実の問題として、そう撤去、撤去と言っても、簡単に一年、二年で撤去できるものではございませんので、その新空港をつくって現大阪空港を撤去するまでの間は国において騒音対策を十分にしてくれ。
この二つの点からいろんなことをやっておりますが、その一つの例をあげてみますと、たとえば減便ですね。あるいは減便をやるために大型機を入れるというような、そういう大型機の導入の反対、あるいは深夜郵便機の廃止。それから時間帯としていま十時から六時までの飛行は禁止されておりますが、これを九時から七時までに延長せよ。あるいは空港の固定化につながるような空港内の施設の改良あるいは増築、増設というものは一切行なってはいかぬ、たとえば格納庫あるいは給油タンクと申しますか、あるいは誘導路の設置とか、そういうようなものには反対しております。それから現在の国の騒音の補助は公共施設に限っております。特に義務教育に重点を置かれておりますが、最近は幼稚園あるいは保育所あるいは公民館のようなものまで及んでまいりましたが、さらにこれを民間の騒音の防止の補助にも拡大せよ、こういうことを申し上げております。でありますから、この十一市協の方針としては、いま申しました新空港をつくって現空港を撤去しろ、その間の騒音対策を国において十分にやってほしい、この二つで進んでおるのでございます。
本論に入りまして、ではこの整備機構、いわゆる法改正に対してどういう意見を持っておるか。これは十一市協の内部のことからお話を申し上げたいと思います。この協議会は十一市でございますが、この騒音防止法に関係する市は、大阪府では大阪市と豊中市と池田市、この三市でございます。それから兵庫県側は川西市と宝塚市と伊丹市の三つでございます。三つ合せて十一市の中で六市がこの騒音防止法改正の対象となるのでございます。
それではいまその各市はどういう態度をとっておるかといいますと、大阪市、豊中市、池田市、川西市、宝塚市に関しましては、市当局あるいは議会、住民の間から反対の意見はございません。私の会長として得ておる情報では、その五市に関しましては反対の声を聞いておりません。ただ、伊丹市におきまして少し問題がございます。これは私、今度は伊丹の市長として申し上げたいと思うのですが、伊丹市におきましては、市、伊丹市長はこの法改正に関しまして整備機構にはあえて反対いたしません。それから市議会、住民組織――これは一番大きな住民組織があるのですが、自治会連合会という組織がございますが、市議会とこの自治会連合会は反対をいたしております。
私があえて反対せずという、何かあいまいなようなことばでございますが、これはどういう意味かと申しますと、この法改正に関して全面的に賛成はできない。その内容をよく検討いたしてみますと、異論を申し述べなければならない点がございます。しかし整備機構そのものの設立には反対しません。ただ各論的に、各条の中に反対をしあるいは要望しなくてはならないところがある。たとえば先ほど兵庫県知事が申されましたように、民家の防音ですね、それを国が七五%持って、あと自己負担を二五%持たすということは、これは公害のいわゆる原因者負担の法則に反するのじゃないか。当然国が全額を持って、そしてこれがあとの維持管理も国が持つべきである。また、一室とかいうような問題も、これははたして一室でいいのかどうか、これは二室、三室、あるいは全家屋を当然そうすべきではないかというような、これは一つの例でございますが、そういう例において、各論において全面的に賛成を申し上げるわけにはいかない、しかし整備機構の設立に関しましては私は反対いたしませんという意味で、あえて反対せずということばを使っておるわけでございます。
ただ、こういうように申し上げますと、伊丹市の中で市長と議会と住民とが何か相対立しているような感じを与えますが、しかしこれは、表面的にごらんになりますとそういうふうに考えられますが、この三者が一致した考え方の基本はあくまでも空港の撤去である。撤去を前提としたいろんな考え方、これは一致しております。特に市会と住民側は、撤去を前提とした暫定措置であればこれは反対しない、こういうことを申しております。
ところが、この間にまたちょっとニュアンスが違いますが、私が整備機構の設立にはあえて反対しないというのはどういう理由かといえば、初めは私も反対でしたが、それがあえて反対せずに変ったのは、去年でしたか、いわゆる航空局長の回答、一つの通達ですね。これによって、新空港の開港の時点においては撤去をも含めて考慮する、その際には地方自治体の意見を尊重する。ということは、ここに隅飛行場部長もおられると思いますいわゆる地方公共団体が撤去を望めば撤去します、こういう意味であります。でありますと、また航空審議会がその局長回答によって、現在、現伊丹空港の撤去を新空港の計画の中に入れるような審議もなされておるようでございますので、そういう意味におきましてあえて反対せず。ただ住民と市会側は、撤去ということをいま宣言しろ、言明したら反対しない。ここにちょっとニュアンスの差はございますが、三者よく話し合って、意思の統一、コンセンサスが得られるものと考えております。現在、ここに出て陳述いたす前にも、二、三回、三者寄って話をいたしましたが、私がきょうここで意見を申し述べることには、市会も住民組織も反対しておりません、抵抗せずに。行って話をして、あとでよく三者話し合って意思の統一をはかろうじゃないかということで参っておりますので、伊丹市に関しましては、私は市長の責任としてこの問題を考えていきたい、こういうように考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
何はともあれ、伊丹市におきまして意思の統一ができてないような感じをお与えしたことを非常におわび申し上げますとともに、今後この十一市協が全部がこぞってこの整備機構の設立に反対しないようにやっていきたい、こういうように考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/6
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007・三池信
○三池委員長 ありがとうございました。
次に、秋山参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/7
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008・秋山龍
○秋山参考人 私、日本空港コンサルタントという会社の会長と航空審議会の関西新国際空港部会の部会長をいたしております秋山龍でございます。
私の立場は、いま上程されております空港の騒音問題に関する周辺整備を実行するための法改正につきましては賛成の立場でございます。その理由を少し順序立てて申し上げてみたいと思います。
まず、航空という一つの運輸技術に対する認識の問題でございますが、私は、運輸、交通というものが人間生活における距離の障害を克服する技術であるという本質を踏まえまして、また、これが長年の人類の歴史におきまして逐次種々の改善が加えられてまいりまして、多くの先人の英知と努力と犠牲の上に今日の航空輸送技術というものが確立したものでございまして、現在の人類生活から申しますと、距離の克服という、人間の社会生活に欠くことのできない基本的な要請である交通輸送技術という点におきましては、人類の到達した最高のものであるという認識でございます。
人間が社会的経済生活をする以上は、前申しましたように、距離の克服、つまり交通運輸ということは通信とともに絶対に不可欠なものでありまして、特に距離と申しますものはやはり一種の人間生活における障害でございます。人間のあらゆる経済的欲望の充実その他は、距離がない、アットハンドである、手が届くところにあるということが絶対に必要なのでありまして、それを実現するために多くの犠牲が払われておるわけであります。特にそのためには時間という犠牲が一番大きなわけでありますけれども、この時間というものは、また人生というものを考えてみました場合に、文明が進歩いたしましても非常に人生に与えられている時間が延長したということは考えられないのでございまして、その一定の与えられた時間の中においていかに多くの人間生活の充実を見るかということは、やはりこの交通運輸に要する時間を節約する、なくするということができれば、これは最も理想的なものであるわけでありまして、そういう意味において運輸交通技術の発達がその方向に指向されてきたものと思うのでありまして、そういう観点から見て私は航空は非常に価値がある。また、現在の経済生活は、国際的に見ましてもやはり国を単位とする国民経済の競争というシステムになっておるわけでございまして、そういう中におきまして資源のないわが国が、一億の人間をこの狭い国土で養い、かつ発展していくというためには、やはり国際競争における経済の力を十分に充実しなければならない。そのためには国内的に交通通信に関するいろいろな手段を整備しておくということが非常に必要であるというふうに考えるのであります。
また、航空会社というものがありまして、この航空会社というものは、その航空輸送技術が持っております使命を最善に達成せしめるために置かれたる機構でございまして、航空は航空会社の利潤獲得のためだけにあるのだというようなことが往々にしていわれますけれども、私はこれは本末転倒であろうと考えるのでございます。これが航空に関する私の根本的認識でございます。
第二に、航空の発達ともに、空港を中心といたしましてその周辺社会に騒音その他の悪影響が生じておるということも事実でございます。また、これにつきましては、私に先立つ三人の参考人の方々から詳細にお述べになりましたので、私はこれを繰り返しません。そういう事実があることは十分認識いたしております。その原因はどういうところにあるだろうかということでございますが、これはまず三つあるかと思います。
第一には、航空輸送というものの発達が予想以上であった。つまりそれが技術的に経済的に必要かつすぐれておるものであるという点から非常な発達をしておる。その速さがわれわれの想像以上であったということが一つでございます。それから第二には、そういうような急速な発達をいたしますものに対して即応するような社会資本の投下による整備、対策、施策というものがおくれておるということが一つでございます。立ちおくれでございます。
それから第三には、この空港周辺と申しますものは、一つのターミナル、交通の中心がございますと、やはりそこにどうしても人家が集まってくる。都市が発達するという自然傾向を持っておりますが、それがまた、その自然傾向に従いまして予想以上に実現しておるということだと思います。大体この三つの原因が考えられておるわけでございます。
そこで、ひるがえって考えてみますと、この一、二申し述べました航空というものの持つ国民経済全体として考えられるメリットの問題と、それから部分的な空港周辺の住民その他に与えておりますデメリット、この二つのものはやはり相克する状態にあると考えます。これを調和するという努力がこの際非常に必要である、急速、緊急に必要であるというふうに考えます。この二の部分をあまりに強調いたしますと、航空が国民経済全体に与えておるメリットというものが失われる結果になりますし、また場合によりますと、国際的な経済競争にも負けたり、また国際的な孤児になったりするようなおそれがございます。これは現在の世界経済、政治組織がそういうふうになっておるからでございまして、やはりわれわれはこれに対する見通しを失ってはならないというふうに考えるのでございます。
それから、この一と二の相矛盾する価値を調和するというのは、なかなかむずかしいことでございますけれども、最近、行政の目標といたしまして、航空機騒音に関する環境基準値というものが示されたのでございます。環境基準というものは、その性質からいたしましても、やはり非常に理想的といいますか、そういうふうな方向に向くであろうことは当然でございますけれども、この与えられました基準値というものは、私の感じでは、これは十年間に国民経済全体のメリットを考えながら実現するということには非常な困難性があるということを認識しておるのでございます。しかしながら、行政といたしましては、こういうものが与えられました以上、あらゆる努力をしてその達成に努力すべきであろうというふうに考えます。
航空機の騒音に関する環境基準値の達成への行政の努力というものは、いま申し上げましたように、きわめて困難な仕事でありましてまた一面、国民経済上航空を生かす必要というものが大きいという点から見ましても、その行政には社会全体としてあらゆる部面の人々が協力していくということが絶対必要であろうかと思うのでありまして、いたずらに行政当局のみを叱咜激励いたしましてもなかなかその効果はあがらないようにも感じるのでございまして、将来航空の鎖国を避けたり、また早くなるべく環境基準に近いような状態を達成させるためにも、どうしてもこれは協力してその努力を実現さしていくように向けていかなければならないかと考えるのでございます。
そういうような事態におきまして、航空機騒音対策というものは一体どう考えるべきであるかと申しますと、やはり一つには航空機そのものの音を減少すること、つまり音源対策というものがございます。それから第二には空港周辺に対する対策、空港の改善でございます。それの中心をなしますものは土地利用対策だと思います。この二本の柱以外にはあり得ないと思うのでございますが、音源対策につきましては、国際航空主管庁の機構でありますICAOにおきましても種々検討いたして、いろいろな騒音低下の基準値を示し、それをメーカーに強く求めたり、また世界が国というものを中心にできておりますので、各航空主管庁たる国は、これを飛行機が持つべき騒音の基準として、これに合わぬものは離着陸させないというようなことを強行いたしまして、その音源対策に従事しております。
問題の一つは、現在そういうことをあまり考えないでできましたジェット機のエンジンが非常に音が高いということでありまして、それを新しい騒音の少ないエンジンに取りかえるという対策がもう一つあるかと思うのでありまして、これがためには航空輸送そのものが非常にコスト高になるといったような問題がございますけれども、私はあえて強くこの対策は推進せしむべきものであるというふうに考えておるのでございます。
それからその音源対策の一つといたしまして、いろいろ時間規制というようなお話がございます。もちろん、要するに全体的利益とその地方の利益との調和の問題でございますから、がまんできるものはやはりできるだけがまんするということも当然だとは思いますけれども、もしもこれだけを非常に強くいたしますと、航空そのものの持ちます価値がそれだけ減少するわけでございます。したがって、それをあまり強くむちゃくちゃにやるということにつきましては、やはり近視眼的に過ぎるのじゃないかというような感じを持たざるを得ないのでございます。この二つの柱による騒音対策に対するアプローチというものは、先ほど申し上げましたICAOにおきましても国際的に最良と認められております。また国内的にも、中央公害対策審議会におきましてもそのような答申をされておるわけでございます。
こういうように見てまいりますと、ただいま問題になっております今回の法案というものは、一方で低騒音大型機の導入、現エンジンの低騒音化改修といったような音源対策を進めますとともに、他方でこの法案で抜本的な周辺整備を地方公共団体と協力して進めようとするものでありまして、きわめて妥当なことだと思うのでございます。もちろん予算規模その他の内容におきまして、いろいろと不満の点、私自身もどうかと思う点がまだあるのではございますけれども、だからといってこれが発足を押えるべきものではなくして、早くとにかく発足させて、そして正しい方向に一歩でも一日でも早く踏み出させて、そしていろいろな必要な改善、改良がございますれば実績を見ながら逐次やっていく、どんどん実施していくという立場が正しいと思うのでございまして、その意味におきまして私は本案に賛成するものでございます。
最後に、関西新国際空港部会長として一言申し上げたいのでございますが、新空港は、成田の先例もございまして、なるべく地元の住民の方々と十分な了解を得まして、そして公害のない空港として一日も早くでき上がらせたいという考えでございまして、いろいろ調査審議に当たったのでございますけれども、いろいろ客観的な情勢の変化が非常に激しゆうございまして、そのために答申がおくれておりますことは、まことに部会長として申しわけないと思っておる次第でございます。
新空港は最初、航空需要の増進に対処するためという考え方で出発いたしましたことは皆さん御承知のとおりでございますが、後になりまして、伊丹空港の存廃が、新空港の完成時にその存廃を含めて検討する、廃止を含めて検討する、こういうことになったわけでございます。当部会はその点を非常に重大な事態として取り上げまして、この伊丹の廃止が新空港ができました場合には可能になるようにということにファクターを入れまして、さらに検討を加えておるような次第でございます。
伊丹空港の騒音問題というのは、この新空港ができまして、完全にそれへ機能を移してしまうということをかりにしたといたしますと、一応根本的に解決するということにはなるわけでございます。ところが、新空港の部会としていろいろ考えてまいりました今日までにおきましては、音が絶対に聞こえないということにはなかなかならないわけでありまして、一体どの程度の音が受忍限度であるのか、それをどういう理由で納得してもらえるのかということが実は最大の私どもの悩みであったわけでございますが、今回環境基準というものがとにもかくにも出たわけでございます。したがって、これに合致すれば新しい空港はつくってもよい、合致しなければつくってはいけないということが大体コンセンサスとして出ているわけでございます。したがいまして、私ども悩んでおりました一番むずかしい問題が明快に解決をしたわけでございまして、いま事務当局におきまして、慎重に騒音コンターを作成して正確にこの基準に合致させることができ得るかどうかということを検討しておるわけでございます。かりにいままでにいわれておりますような海上の候補地を考えます場合には、いまいろいろ問題になっておりますように、伊丹周辺のような八十、九十五ホンとか、たとえば百六ホンとかいうようなことをいろいろ御発表されておられましたが、ああいう現象は絶対起こらないと思います。しかもそこに市街地が発展してくるということもございません。ですからやはり、これは海上に空港をつくるというふうな考え方が唯一の解決方法ではないかというふうに考えておるわけでございます。それで、大体中間報告で承っておるところでは、だいじょうぶできそうだ、またそれによって安全に飛べそうだというふうな中間的なお話も承っておりますので、私どもはなるべく大馬力で残りの作業を完成いたしまして御答申申し上げたいということを考えておるわけでございます。
しかしながら、新空港の完成というまでには、どう考えましても、幾ら急ぎましても、あれだけの大工事でございますので、どこに位置をきめましても十年ぐらいの日子は当然かかると思うのでございます。ところが伊丹の現状は、ただいまもお話がございましたように、放置することはとうてい許されない現状でございますし、また強力な騒音対策を実施するということは、新空港について地元の方の納得を得る必要条件になっているように感じられる。これはただいま各参考人のお話しになりました点と同一でございますが、私も同様に認識いたしております。したがって、この法案が一日も早く成立、実施されまして、ほんとうに地元の要望されておりますような対策が着々と実績をあげますことを、私は希望いたす次第でございます。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/8
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009・三池信
○三池委員長 ありがとうございました。
次に、伊東参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/9
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010・伊東正雄
○伊東参考人 日本弁護士連合会公害対策委員長の伊東正雄でございます。時間が十五分という制約もございますので、簡単に問題点を申し上げて先生方の御審議の御参考に供したい、かように考える次第でございます。
まず私は、この航空機騒音の規制という問題を考えます場合に、これが国によるところの空港の設置、利用によって国民が被害をこうむる。今日問題になっております公共事業によって住民が被害を受ける、こういう問題でございまして、これは航空機のほかに、新幹線あるいは高速道路、あるいは原子力発電所の設置その他、すでに各地におきまして御承知のように訴訟まで提起されておるわけでございまして、ことに航空機問題につきましては、大阪におきまして数年来訴訟が提起されまして、近く第一審判決が行なわれよう、こういう時期にあたりまして、この法案が国会の御審議をいただき、また、私もここで直接先生方に御意見を申し上げる機会を得ましたこと、まことに光栄かつありがたく存ずる次第でございます。
まず、この政正案につきましては、いろいろなお立場から賛否の御意見を先ほどから伺っておるわけでございますけれども、抜本的に改正いたしますには、現在におけるところの環境政策の理念というものをまず基本においてしっかり御認識いただかなければ、やはり抜本的な改正はなされないのではないか、かように考える次第でございます。
で、それにつきましては、すでに先生方御承知のように、一昨年の六月、スウェーデンのストックホルムにおきまして、世界人間環境会議が開催せられ、わが日本からも当時の環境庁長官の大石長官が出席されたわけでございます。で、このような、世界におきまして、国際連合としましてはすでに、人権の宣言、あるいは世界の健康の確保に関するところの世界保健機構の確立を見たのでございますけれども、環境保全によって、私どもの生存を確保するだけではなく、将来の世代にわたって現在の資源その他の保存を行なうということは、歴史的に見ました場合にまさに現代における人類の責務である、かような観点から第一回の会議が持たれましたことは御承知のとおりでございます。
しかも、この会議におきまして、政府の代表である大石長官はどういうことを申されましたか。これもすでに御承知のとおりでございまして、この人間環境会議におきまして、大石長官はこういうことを申し述べております。それは、日本は従来いわゆるGNP追求をすることが国民の福祉であるというように考えて、それを努力目標としてきたけれども、それは誤りであった、そうして世界に類例を見ないような水保病が発生し、しかもその対策を怠ったためにさらに被害を発生し、それのみではなく第二水俣病の発生を見た、そういうことに対しましては、これはまさに政府がその責任を尽くさなかったことが原因であるというような趣旨のことを率直に認めて述べておられるわけでありまして、そういうことに対して、当時、会議に列席しました世界各国から非常に好感をもって迎えられたということが新聞に報道されておるわけですけれども、その大石演説の末尾におきまして、そういうようなGNP追求政策からまさに人間尊重政策へとわが国の政策を転換するという決意を表明し、あるいはそれがそのような世界の場におきまして述べられたことは、これは単なる決意ではなくして、まさに公約といわなければならないわけであります。
そういうような国際的な会議におきまして、現在そのような宣言がなされましたことは、先ほど秋山参考人が述べられましたけれども、まさに人間の英知による科学の破壊力というものが私どもの環境を破壊し、そしてそのことのゆえに生存への危機を与え、そして切実な危機感をもって迫っておるわけでございます。したがいまして、現在の公害問題というものは、まさにそのような人類の英知の所産であるところの科学力に対して、むしろそれを抑制し、それと同時に、その利用によって生ずる公害というものを、そういう技術を用いる場合には、事前に防止する技術を同時に開発しなければ用いてはならないということが、人類の英知であり理性であるべきはずなのに、いたずらにそういう利用の面のみを利用してきたことが今日の公害の発生の一つの大きな原因になっているのではないか、かように考えるわけでございます。
去る四十二年に公害対策基本法が制定されまして、この基本法におきまして経済との調和条件なる条項がございまして、これがその後各方面のきびしい指弾のもとに削除されたのでございますが、御承知のように、昭和四十五年のいわゆる公害国会におきまして公害十四法が成立いたしたのでございますけれども、そのとき、衆議院の公害対策特別委員会におきまして、環境保全宣言に関する件として附帯決議がなされておりますことはすでに御承知と思います。
この環境保全宣言におきまして、「健康で文化的な生活を享受することは国民の基本的な権利であり、そのためには良好な環境の確保が不可欠である」、したがって「長期的な視野のもとに、現在及び将来の国民のために、国をあげての努力により良好な環境が確保されければならない」、こういうことを決議しておられるわけでございます。参議院の公害防止に関する決議におきましても、「快適良好な生活環境を維持発展させることが肝要である」、こういうことをやはり決議されておりまして、そういう観点から、国民生活優先の見地から公害の排除に全力を尽くさなければならない、かように決議されておるわけでございます。
すでに御承知のように、四日市判決によりまして、従来のいわゆる産業公害、企業によるところの公害につきましては、企業は経済性を度外視して最高の技術をもって公害防止に当たらなければいけない、そういうようなことを怠った場合には過失があるのだということが指摘されておるわけでございます。したがいまして、企業に対してこのように公害防止の義務が課せられておる今日におきまして、国民のための政府の施策におきましては、より一そう公害防止に対する責務というものが重要であることはもとよりでございまして、この点につきましても、公害対策基本法において明確に国の責務が明記されておる次第でございます。
私は、このような良好な環境を保全するということが私どもの最も基本的かつ重要な事項でありまして、この点に立脚して今日の公害に関するところの法規というものが実現されなければならない。もしそうでなければ、それは時代おくれの、時代の要請に逆行する法改正といわなければならない、かように考える次第でございます。
日本弁護士連合会におきましては、昨年、わが国の公害のはなはだしい現状に対しまして、環境保全に関するところのいわゆる環境保全三法というものを法律試案要綱として発表いたしたのでございますけれども、その基本的な理念といたしましては環境権を確立するということでございます。これは、環境保全基本法の第二におきまして「国民は、良好な環境を享有する権利を有する。」そうして「国民は、この法律の定めるところにより国及びその機関または公共団体ならびに私人に対して、この権力を行使できる。」こういうふうに規定いたしたのでございます。そして良好な環境というのは、質的にも、また自然の生態系その他も、いわゆる今日問題になっておりますような資源の保護も含みまして、単に私どもの人体、精神的な状態が健全であるというだけではなく、その前提をなすところの環境を汚染から保全するという、こういう質的な観点に立ちまして、良好な環境についてさらに詳しく内容を定めておるわけでございます。このような環境を享受するということ、これは日弁連の試案要綱では権利として明確にうたってございますけれども、先ほどの衆議院並びに参議院の御決議によりましても、実質的にはやはり環境の保全が最重要なことで、人間の良好な環境を確保することが必要であるということを宣言されておるのでございまして、今後の国の施策におきましては、国民のいま申し上げましたような質的な良好な環境を保全する、そういう観点においてぜひとも法の改正がなされなければならない、かように考える次第でございます。いかに空港におきまして利用者が多く非常に便利であるというようなことがあったとしましても、しかし、それによって国民の健康、良好な環境が破壊されるということであっては、全くその正当理由はないのでありまして、そういう点において、私どものこの良好な環境を享受するということはあくまで人間としての最も基本的な権利であるということから、立法に対して、こういう見地に立ちまして立法の改正をすべきである、かように考える次第でございます。
この空港問題につきましては、先ほど、大阪府と兵庫県の知事さん、それから伊丹の市長さん、関係の自治体の首長さんが述べられましたように、また、大阪の国際空港訴訟におきましてもいろいろ立証されておりますように、まことにこの良好な環境が破壊されて、しかもそれが一人や二人ではなくて、百五十万とか二百万とか、そういう多数の人が被害をこうむっておる状況でありまして、こういう点から、やはりこの今回の改正につきましては抜本的に改正さるべきである、かように考える次第でございます。
なお、この航空機その他騒音対策につきましては非常に立おくれているわけですが、この地域開発の関係におきましては、これはたとえば昭和四十七年十二月の中央公害対策審議会防止計画部会の答申がございまして、これは特定地域における「公害の未然防止の徹底方策についての中間報告」という報告でございますけれども、地域開発においては絶対に健康をそこなってはいけない、もしそういうようなおそれがあったならば、それは地域開発を行なうべきではないということを明白にうたっているわけでございます。しかもそれは単なる狭い意味の健康だけではなくて、質的な、たとえば精神的な安らぎというようなものを含む、そういう良好な生活環境の保全ということをうたっておるのでありまして、そういうようなことの侵害は許されないのだ、こういうことをはっきりとうたっておるわけでございますので、そういうような、国際的な観点からしましても、また公害に対するこれまでの立法の傾向、あるいは判例の傾向にいたしましても、今日そういう観点において、やはり航空機騒音防止法の今回の改正につきましても、そういう観点からさらに二考、三考されまして慎重に御検討いただきたい、かように考える次第でございます。
そこで、実は日本弁護士連合会から、昭和四十八年四月六日、「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律の一部を改正する法律案に対する意見書」と題しまして意見書を発表し、お送り申し上げてあるわけでございいまして、先生方もごらんいただいたかと思うのでございますけれども、この改正案に対する日本弁護士連合会の意見は問題点として記載してございますので、それを簡単に申し述べまして意見といたします。
従来の四十二年に制定されましたこの法案、これは四十二年が公害対策基本法が制定されたというような時期でございまして、まことに公害対策が緒についたような時期でありまして、非常に不十分な法でありまして、したがって、その立場に立脚しながら、今日のような、いろいろな立場からする、住民その他時代の要請からする改正の要望に対しての改正案ということでございますけれども、この内容の実体につきましては、むしろ従来の立場をさらに強化推進して、結局住民のコントロールの及ばないような空港周辺整備事業というようなものによって、それを隠れみのとして空港の設置者あるいは航空会社の責任をあいまいにして、そして住民をむしろ追い出すような形においてこの騒音対策をとろうとしているということがいえるのではないか、かように考えるわけでございます。
問題点を簡単に申し上げますと、発生源対策が欠除している、これは先ほど来他の参考人の方も申されたとおりでございます。公害対策におきまして最も有効な対策は発生源対策でございます。発生源対策を徹底的にとるということが公害対策の最も有効な手段でございまして、それは現行法の第三条におきまして、運輸大臣が航空機の騒音による障害を防止軽減するために、航空機の離着陸の経路、時間その他航行の方法を告示で指定することができる、こういうふうにいわば運輸大臣の裁量によってそういう航行方法を指定することができるとなっておるのでございますけれども、これを、規制を義務づけるという形においてできるというのではなくて、すべきである、なすべきであると義務づけて、そうして発生源対策としまして最も有効であります航空機そのものの騒音防止に徹するという意味におきまして、音量規制、時間帯別規制、機種及び機数の制限、そういうような規制を義務づけるようにすれば、発生源対策として最も簡単に容易にできるのではないかということがいえると思いますので、そういうふうにすべきであろう、かように考えるわけでございます。
その規制を実施するにあたりましては、これは単に都道府県知事の意見を聞くだけではなくて、被害住民の意見が反映されるようにしなければなりませんし、日弁連も、環境三法におきまして、規制内容があいまいであったり規制措置がとられないような場合には、規制措置請求、あるいは場合によって訴訟もできるというような立場をとっておりますけれども、要するに被害住民の意見が反映されないということで被害だけを受けるというようなことは、これはまさに環境権に対するところの侵害であるといわざるを得ないわけでございまして、発生源対策としては第三条においてそういうふうに規制すれば、きわめて簡単、有効ではないか、かように考えるわけでございます。
それからさらに、改正案におきましては、航空機公害による被害者の救済につきまして施策がきわめて不十分である。これは先生方御承知のように、公害の被害者救済につきまして、先般公害健康被害補償法が成立いたしましたけれども、これは大気汚染、水質汚濁、しかも健康被害に限定されたわけでございます。しかしながら、それにいたしましても、医療給付にのみ限定した従来の法に比較いたしますと、非常に大きな救済をされるのでございまして、何といいましても、やはり立法において明確かつ広範にそういう規制なり救済をされるということが一番いい方法でございまして、どうしても、行政当局にそれをまかせるというようなことになりますと、それが裁量行為ということになると行なわれないということは、すでにこれまでの経験的な事実でございますので、国権の最高機関である国会の先生方におかれましては、明確に、そういう行政機関がちゅうちょしないで――行政官庁の方も、内心はやはり個人では賛成であるというようなことを思ったりされておられるわけです。しかし、法的な根拠がない場合にはやはり積極的にそういう措置をとられないということがございますので、法において明確にそういう措置ができるように、はっきり規定していただくということが必要でございまして、この公害を完全に補償するということが、とりもなおさず、公害の原因を与えている者に対して、公害の発生を防止するということにつながるわけでありますし、また公害被害者というものは、何らの過失なくしてそういうようなまことに悲惨な被害を受けるわけでございますので、それは十分に完全に救済すべきである。先ほど他の参考人も御指摘になりましたように、そういうような自己の責めに帰すべからざるところの被害をこうむりながら、自分が二五%負担して防音工事をするというようなことがあってはならないわけでございまして、そういう点、その他航空機騒音の被害者につきましても、これはやはり公害の被害補償法におきまして、日弁連では、その原因たる公害についても、航空機、地盤沈下、その他他の公害によるところの被害についても救済すべきであるという意見を申し上げておるわけでございますけれども、今度の改正におきまして、やはり財産被害、生業被害の問にさらにこういうような被害も加える必要がある、かように考えるわけでございますけれども、この法案におきまして、そういう公害被害者を完全に救済するという点からは非常に不徹底であるということが、いろいろの点で言えるわけでございます。
先ほど他の参考人の御指摘にありましたように、住宅の一室、二室、防音工事が施されても、それによって、先ほど申し上げておりますような生活の良好な環境というものはとうてい回復されないわけでありますし、またこの改正案におきまして、借地人、借家人は単独では移転補償が認められないし、また時価補償主義というような点でございますので、すでに空港の騒音によって値下りいたしておりますような状況において補償されましても、またその補償に対して税法上の特典がないということによって、従来と同じような質的な代替地、代替住宅を得られない、こういうような点におきまして、やはり実質的に航空被害者に大きな負担をかけている、こういうことはあってはならないわけでございます。
それからさらに、改正案におきまして、原因者負担主義が欠如している。これも他の参考人の述べられたとおりでございまして、これは先ほど伊丹市長が言われましたように、大阪国際空港におきましては、空港の設置自体が公害の原因になっているということを言っておられたわけですけれども、この公害の原因者と、利用しておる者、航空会社、これは明白にこの責任を負うべきでありまして、この点について、注案において原因者負担主義が貫徹されてない、しかも周辺整備機構というものが、こういう公害の原因者から離れまして、そういう機構が一つの事業をやりながらやっていくということになりますと、公害の原因というものを人にまかせているのだ、自分は関係ないというような観念になるわけでありまして、そういう点からも、かような機構によって運営していくということは不適当である、かようにいわざるを得ないわけでございます。
さらに、これは住民参加手続が欠如している。これは地域開発の場合その他すべての公害関係について言えるわけでございますけれども、これが今日の大きな公害問題になっておりまして、どうしても公害の被害を受ける地域の人の意見というものを十分くみ取られて、それによって初めて公共事業であれば公共事業というものが担保されるわけでございます。公共事業でありながら、地域住民に被害を与えたり、あるいは地域住民の福祉につながらないということは、それ自体矛盾するわけでありまして、そういう点におきまして、やはり日弁連の環境三法におきましては、住民の参加の確保に関する手続としまして、公聴会、意見書の提出、その他実質的に制度的に保障するような案が提示してございます。そういう点において、住民の参加手続が欠如している、こういうことは、今日における公害の現状と公害の問題からしましたら、やはりそういう問題に正面から取り組んでこれを法の中に取り入れて、そして相ともにそういう被害をなくすということでなければ、とうてい今後、公共事業だからといってそれを押し通すというようなことは許されないわけです。それは環境権ということによって、すでに各地において訴訟が起きていることは御承知のとおりでありまして、これは制度的に住民参加手続を取り入れることによってそういう問題の解決の糸口があり、そしてよりよい方向にそれがいくのではないか、かように考えるわけでございます。
そのほか、地域指定によって第二種地域において、工場、倉庫、流通センターが設置されるということになりますと、これによって工場公害あるいは自動車公害、二次公害の発生するおそれがあるわけですし、そういうことによって、先ほど大阪国際空港につきましては、御指摘がありましたように、空港の固定化、そのためにそういう周辺の地域を整備するのだと言われるのもその点にあるわけでございまして、そういうような糊塗的なことではなくて、やはり抜本的に航空機の騒音、しかも私どもの平穏な良好な環境を保全するという点に立ちまして抜本的な対策がとられるべきである、かように考える次第でございます。
いずれにしましても、この法案を見ました場合に、今日における環境の理念から見ますと、非常にそういう点並びに環境権、国民のために良好な環境を保全するという衆議院の昭和四十五年の決議及び参議院における決議の趣旨からしましても、また人間環境会議の宣言によりましても、またそれに参加したわが国の政府の責任におきましても、そういうような今日の環境政策を踏まえた上でりっぱな改正案になられますことを切に希望をいたしまして、私の意見を終わりたいと思います。
御清聴ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/10
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011・三池信
○三池委員長 ありがとうございました。
次に、小坂参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/11
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012・小坂宏
○小坂参考人 御紹介のありました小坂でございます。ごらんのとおり皆さま方にとっては弟のような年ごろなので、親しく耳を傾けてお聞きくださるようお願いいたします。
私が本日この場において述べますことは、最近航空機騒音の単位として採用されるようになりましたWECPNLという単位の説明というようなこと、それと今回改正案がここで審議されているわけですけれども、それについての幾らかの意見、大きく分けてその二つについて述べさせていただきます。
私ども一般にはWECPNLというような単位は非常になじみが薄いわけですけれども、この単位が設定された経緯と申しますのは、航空機、特にジェット機が採用されるようになった昭和二十七、八年――二十七、八年ごろは、ジェット機と申しましても、ジェット戦闘機がまだようやく出始めたというような時期なので、おもにその騒音の問題というのは軍用飛行場の周辺において起こっていたようです。その後、昭和三十四年だったと思いますが、民間航空においても最初のジェット旅客機が就航するようになって、その時点から騒音の問題が大きな社会問題ということになってきたようです。ジェット機が就航する以前から、年代的に申しますと昭和二十五、六年ごろから、ジェット機による騒音の被害というのは将来かなりひどくなるであろうというような予測がICAOにおいてなされております。このような点は、私ども銘記しておく必要があるかと思います。
そのような騒音の問題というのが、各国においても大きな社会問題となってきた。そのような背景から、ICAOにおいては、そのような騒音の社会問題に対処するために、国際的な評価単位、測定単位を設定する動きが三十年前後から出てきております。結果として、昭和四十四年のICAOの騒音特別会議において、ICAOの関係各国はECPNLという単位を用いて騒音証明、それから騒音の測定といったようなものをするべきであるという勧告が出されました。このようなことは、皆さんもうすでに御存じだと思いますが、そのようなことを背景にして、昨年から正式に航空機騒音の測定及び騒音証明の単位としてWECPNLあるいはECPNLというような単位が使われることになってきました。
先ほども申しましたように、WECPNLあるいはECPNLというような単位は、私どもにとって非常になじみが薄いわけです。単位が設定されてから日が浅いというようなこともありますが、非常に計算上も複雑なものでございまして、私ども一般に街頭騒音やなんかで目にするホンというような単位とは根本的に性格が異なっております。騒音の測定の単位というのは、さまざま提案されておりまして、私たちにとっては、残念なんですが、騒音の持つ複雑な性格というか、それと人体との反応、それらの関係の上で、どれをとってみても十分であるというようなものはありません。したがって、今回WECPNLというような単位を採用するように勧告され、わが国でも採用することに決定したわけですけれども、これが騒音の測定単位の絶対的なものであるというように誤解されては非常に危険なことではないかと思います。
さて、WECPNLのことについてもう少し説明をいたしますと、いままでのホンというような単位と基本的に異なる点は、ホンという単位は、ピアノの音だとかバイオリンの音のように、純音をもとにして、それと人間の感覚との関係ということで設定されております。
私たちが騒音ということで問題にする場合は、ほとんど純音というようなことではなくて、いろいろな周波数の音、それからいろいろな大きさの音がさまざまにまざってわれわれの耳に入ってくるわけです。それを騒音というわけですけれども、その騒音を先ほど申しましたホンのような単位では正確にはかることは無理な話だと思います。それを幾らかでも人間の感覚に近づけようということで設定された単位でPNデシベルという単位があります。これはWECPNLの計算の一番基礎になる単位であります。これはうるささとかやかましさとかというものを、いろんな周波数の音について機械を使ったりなんかして分析し計算して数値を出すわけですけれども、そのPNデシベルをもとにして、飛行機は特にジェットエンジンのファンの音だとかコンプレッサーの音だとか、そのようなものによって非常に特異な音の成分を含んでおりますので、それらを加える。それから音の継続時間と申しますか、それらの補正を加えたものがEPNLという単位です。これは航空機騒音測定などで非常に進んでいるアメリカのある空港で、長い間機種ごと、離陸パターンごとに測定した結果の数値が公表されておりまして、EPNLという単位で各飛行機の機種ごとにその単位が使えるようになっております。このEPNLをもとにして一日の騒音量、それから時間帯による騒音を受ける側の反応ということを加味して計算したものがWECPNLです。
先ほども申し上げましたように、人間の感覚に幾らか近づけたとはいえ、やはりまだまだ問題があるわけで、たとえばそのWECPNLの問題点というか限界性というか、少なくとも三つの点が指摘されるかと思います。
まず第一はたとえば、観測時間を一日とすれば、一日の騒音量の平均がWECPNLであるということです。これは平均でありますから、瞬間的にはその平均の値よりも大きな音をわれわれは聞くことになるわけです。
第二番目は、WECPNLのWというのはウエーテッドという意味で、時間による重みづけをしたECPNL、騒音レベルという意味です。その時間による重みづけのしかたがもう一つ問題だと思われます。いま採用されようとしているのは、一日を昼と夕方と夜の三つに分けまして、七時から十九時までが昼、十九時から二十二時までが夕方、その残りが夜というふうに設定されてあるわけですけれども、その時間の区切り方の問題が一つ。それから、この時間を区切って、夕方と夜については、おのおの夕方、たとえば十機飛べば、夕方についてはまあ昼間より比較的静かであるというようなことから三倍飛んだ、夕方十機飛んだならば三十機飛んだというふうに重みづけをします。そして夜は十倍で、十機飛んだら百機というふうに重みづけをするわけですけれども、その重みづけのしかたの数値の問題、それから時間の区切り方の問題、たとえば夕方というのは、これはICAOの勧告ではイブニングというふうにいっていますが、私どもの生活にとって、たとえば、イブニングというような時間帯は概念としてあるのかどうかというような問題もあるかと思います。
それからWECPNLというのは、先ほども申しましたように、平均でもあり、それから機数や機種によって音量の違うものをトータル――トータルというか合計して平均したようなものですから、機種とか機数それから運航時間帯によって幾らでもこの数値は変えられるということです。非常に悪意に解釈するとすれば、計算する側によって幾らでも操作ができる。たとえば先ほどの話ですが、夜十機飛べば百機と同じ、夜全く飛ばなければゼロだと、このような操作は幾らでも可能なわけで、この辺はかなり問題が残るところであると思います。
それから最後に、このようなWECPNLの計算の方法は、世界各国共通に一応きめられたわけですけれども、その数値と、たとえばWECPNL八五と、それから人間の反応というか、人間の感覚に対する反応、それから人体への影響というようなものについては、今後の研究にまつ、いまだ検討が必要であるというような結論が出されております。ですから、単に数値だけでものを言うことは決してできないのではないかというふうに考えます。
以上がWECPNLの持つ幾つかの問題点でありますけれども、今回の法改正案について、一応このようなかなりのいろいろな制約条件を持った上で採用しなければならないWECPNLをもとにして、その騒音対策範囲をきめるわけですけれども、そのWECPNLが、先ほどのようにデータがあって、機種とか機数とか、それから飛行パターンとかが設定されれば予測も可能である、計算もできるというふうなことになっております。
今回の法の改正では、はたして民間のローカル空港というか、日本全国には幾つも空港があるかと思いますが、すべての空港においてそのような予測を行なった上でそれ相応の対策といったものをおとりになるのかどうか。現在問題になっているように、羽田、大阪等の空港で問題になっているわけですけれども、もっと以前に予測というか騒音対策範囲というか、そういったものを設定すれば、今日のような問題の発生は幾らかでも防止できたのではないかというふうに考えます。
それからもう一つ、騒音の防止工事ということについてですが、建築的にいろいろな騒音の防止の手だてをやったとして、普通は一〇から二五デシベルが減少する程度である。非常にうまくいって、まあ資金もかけて三〇デシベル減少するのがせいぜいであるというようなデータが発表されておりますが、そのようなデータが一つと、それから家屋の構造別の防音効果といったようなものについてもさらに研究にまたなければならないというような状況にございます。これは、たとえば日本建築学会の論文報告集などにもその報告が出ております。
そのような防音工事が、たとえば、聞くところによれば、ある一家屋のうちのたった一つあるいは二つといった部屋のみが防音工事の対象になる。かりに三〇デシベル減ったとすれば、それはかなりの居住性が回復されるわけです、その部屋に限って。しかしながら、われわれの生活行為というのは、一室に閉じこもっているわけではなくて、家の中をあちこち動き回るようなこともたくさんあるわけです。実際そのようにある部屋を防音工事を行なって居住性をある程度回復したと思われるような、そのような人の意見を聞いてみますと、実際はその部屋に一日じゅういろ、その部屋に閉じこもっていろというような、そういった要求をされているような気がする、むしろこれは非常に耐えられないことであるというふうな感想も聞いております。むしろこのような防音工事というのは居住性のアンバランスというか、そのようなものを起こすのではないか、そのような気もいたします。むしろこのような防音工事というのは、結果として移転を、直接的ではないにしても、側面から促進することになってしまう。言いかえると、住民を追い立てるようなことになってしまうのではないかというようなことが憂慮されるわけです。
最後に、今回の法律改正案には、「航空機騒音による障害の防止等に」、「障害」というふうに書いてありますが、騒音による被害といったようなこと、それは単なる障害、まあ克服でき得るようなものということではないのではないかと思います。
たとえば、耳ではなくて目の話なんですが、暗いところから急に明るいところへ出たとすれば、目がくらんで瞬間的にはものが見えなくなるというような現象を私たち経験するわけですが、同じようなことが耳においてもいえます。大きな音を聞いたその直後では、聴力が非常に低下する。たとえば、そういった大きな音を断続的に聞く、そのような経験を繰り返していくうちに聴力の損失というか、そういったものが回復しにくくなるというようなことになります。ひどい場合には回復するまでに何日もかかったり何カ月もかかったりするようになってしまう。本人が気がついたときにはかなり聴力の損失というものが進行してしまっているというようなことになっております。その聴力の損失というような観点からしますれば、航空機騒音による障害というよりは、むしろこれは被害というふうに言うべきではないかというふうに考えます。
大体以上で私は、WECPNLの測定単位と、それから今回の改正案の一部についての疑問点ということで述べさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/12
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013・三池信
○三池委員長 ありがとうございました。
以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
この際、本会議終了後再開することとし、暫時休憩いたします。
午後零時三十分休憩
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午後二時三十分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/13
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014・三池信
○三池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
これより参考人に対する質疑を行ないます。
質疑の通告がありますので、順次これを許します。唐沢俊二郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/14
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015・唐沢俊二郎
○唐沢委員 参考人各位には、きわめて御多忙のところ当委員会に出席され、御高説を開陳をしていただきまして、ほんとうにありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。
先ほど知事さん方から貸し金の面とかあるいは補助金の面、さらに移転する人の移転先の確保等々、国の施策に対する補完策について非常に御努力をいただいたことを伺いまして、敬意を表するのでございますが、当委員会におきましても、航空機騒音につきましては非常に精力的に取り組んでおります。野党の先生方もそれぞれの立場から非常に御努力をいただいておりますが、わが自民党におきましても、昨年の予算編成時にこれがたいへんな問題になりまして、御承知のように空港周辺整備機構は、当初第三セクターだ、国の出資比率も四分の一だというような状態でありました。そのところで、地域住民の皆さんは、ラジオやテレビも十分に聞こえない、そればかしではなくて話し声も聞こえないことがある。さらに耳鳴りや非常な苦痛を訴えておられる方が多いので、一日も早くその苦痛を除去し、不安を解消しなければいけない。特に大阪、兵庫の選出議員の皆さんが、その住民の切実な声を披瀝され、さらに新しい空港を建設するためにも、さらに航空行政を推進するためにも、一日も早くこの問題を解決しなければいけないということで、出資比率も国が四分の三、これは非常に珍しいことでありますが、逆転をいたしたわけであります。
そのような経緯がありますので、私どもといたしましては、一日も早くこの改正案を可決成立していただきたい。さらにその暁には空港周辺整備機構の設立について十分な御協力をいただきたい。出資金を含めて、御協力をいただけるものと思いますが、たまたま黒田知事さん、坂井知事さんおられますので、その空港周辺整備機構に対する出資を含めた御協力についてのお考えを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/15
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016・黒田了一
○黒田参考人 私の考えは、先ほど述べたところにほぼ尽きると思いますが、一日も早く航空騒音の被害者を救済する措置を積極的にとっていただきたいという意味において、本法案の成立を期待するものでありますが、同時に、公害発生原因責任者負担の原則を明確にせられ、発生源対策を強化するという、そしてさらに地域住民の声を反映し得るような諸条件を整備される中において、被害者の救済措置が一そう強化されることを心から念願しております。そうした目的が達成されることにつきましては、地元の府県としましても、精一ぱいの努力をしたいと考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/16
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017・坂井時忠
○坂井参考人 大体ただいま大阪の黒田知事からお述べになりましたことと同じでございますが、やはりこの機構が円滑にいくには、地元のほんとの理解がなければいかぬと思います。それを前提としまして前向きに考えてまいりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/17
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018・唐沢俊二郎
○唐沢委員 ただいま両知事さんからたいへん政治的な御答弁をいただいたわけでございますが、おっしゃるとおり、空港周辺整備機構の設立に関しては、まず地元の御理解、御協力が必要でございますので、両知事におかれましてもよろしくお願いをいたす次第であります。
ところで、移転補償の問題あるいは民家の防音工事に対する補償等、いろいろの補償の問題が出てくるのでありますが、その補償のやり方でございます。たとえば民家の防音工事にいたしましても、先祖伝来そこに住んでおられる方、あるいは空港ができてからそこに移転された方、さらには、大阪の場合ですと四十四年の十二月に訴訟が提起されておりますが、もう相当騒音のあることを知っておられて移転された万、非常にさまざまあると思うわけでありますが、そのような方々を平等に扱うということはかえってこれは不平等ではないか、かように思うわけでございますが、そういう点について、ある程度役所のほうも検討しておるようでございますが、やはり差をつけるべきであるかどうか、どういうように考えておられるか。
それと関連をいたしまして、これは一般論でありますが、さらに第二種、第三種の空港におきましても航空機騒音の問題が出てくると思うわけでございます。ですから、いまはそれほど飛行機が飛んでおらなくても、便数がふえるかもしれない。さらに、先ほどお話がありましたジェット機のパーセントがふえる可能性が十分にあるわけでございます。したがいまして、将来を展望して、空港のほんとうの周辺は緑地化するとか、そういう何らかの立地規制が必要だ。たとえば、問題かもしれないが、住宅建築の制限等も早く考えておかないといけないのではないか。これは、とりあえずは都市計画等で条例等でこういうものをおきめいただくほうがいいと思うのでありますが、その立地規制の問題と先ほどの補償の差別について、黒田知事さんから伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/18
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019・黒田了一
○黒田参考人 ただいま御意見のように、先祖伝来の土地として早くから住んでおった方と、近年入ってきた人との間に若干の取扱いの差が起こることもやむを得ないと思いますけれども、それはごく近年になって騒音の激しいことを承知の上で来た人に限定せらるべきであろうと思います。と申しますのは、ある程度の騒音が予想されても、現在の大都市圏におきましては、もはや適当な土地を得あるいは住宅を得るということがきわめて困難にな事情にありますので、あとから来たからといって冷たく扱うということは、やはり適当ではないであろうと私は考えております。そして、その際に、そうした人たちを移転させるにしましても、移転補償単価の引き上げの問題、あるいはその対象地域を実情に合うように見直しの必要、さらに代替地造成についての補助の強化、また移転者に対する税制上の優遇措置、さらには民家防音工事の実施にあたっては、あわせて換気の施設や冷暖房の施設も必要であるということを十分御配慮いただきたいと考える次第であります。要するに被害住民の立場に立ってきめこまかな配慮をお願いしたいと存じます。また、そのあと地の利用につきましては、緑地として残す地区や、あるいは、一定の防音施設のもとにおいて平常の業務の可能な地域もありましょうし、幾段階かに分けてきめこまかい立地をすることが必要であろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/19
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020・唐沢俊二郎
○唐沢委員 次は、将来の問題でありますが、新関西空港につきまして、坂井知事からお伺いいたしたいと思います。
先ほど黒田さんは、航空機騒音公害の解決なしに新空港の論議はできないというようなお話がございましたけれども、逆に新しい空港を建設するということは約十年ぐらいかかるわけでございまして、早くから手を打っておかないと、将来の航空行政を誤るもとになるわけです。先ほど秋山会長からですかお話があったのですが、いろいろ交通機関があって、航空機というものは先人の非常な努力と英知のたまものである、最も高速度の交通機関であって、地球の距離を短縮するというたいへんなメリットを持った交通機関であるというお話がありました。したがいまして、公害がないからといって中心部から遠く離れた遠隔地につくるわけにもいかないわけです。そうかといって、一ヘクタールで二百人もおられるような人口密集地に新空港を建設するということもできないわけです。たまたま先ほど秋山先生は、新空港は海上空港が適当ではないかというお話がありました。もちろん海上の空港も騒音の問題はあるでしょうし、さらに漁業補償の問題とか航路補償の問題等々も出てくると思うのでありますが、陸上と海上とどちらが妥当だとお考えになっておるのか、さらに都市の中心部から何キロくらい離れたところが適当であるのか、さらにはどの辺がよろしいのであるか。これはもうたいへん難解な質問だと私は思います。しかし、特にアイデア知事の御尊名を承っておりますので、坂井知事からそれについての御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/20
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021・坂井時忠
○坂井参考人 先ほども申し述べましたとおり、私は現在の大阪国際空港は欠陥空港である、一日も早く撤去をしてほしいということを考えておるわけでございますが、それだけでは問題は現実的に解決いたさないと思うのです。そこで、やはり公害のない新しい新国際空港をつくって、現在の大阪国際空港のあらゆる機能をそっちに持っていくということでなければならぬだろうと思います。ここに黒田大阪府知事もいらっしゃいますが、そういうことで大阪の府知事、大阪の市長、神戸の市長、それに兵庫県知事と四者で新しい国際空港建設につきましての共同の意見の一致を見ておることは御承知かとも思いますけれども、国の責任におきましてそういう空港をつくっていただきたいというお願いをしておるわけでございます。
ただ、それをどこにつくるかということにつきましては、われわれ、何といいましてもしろうとでございます。したがいまして、権威者があらゆるデータをそろえて、ここが一番公害のない、しかも適正な空港の予定地であるというところを探していただきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。私どもといたしましては、ここに誘致をするという考えもございませんし、ここがいけないというふうに言うべきでもなかろう。やはり科学的なあらゆる条件をそろえまして、そこに新しい空港の予定地ができたならば、そこの予定地にあらゆる努力をみなが払って、いかにすれば公害のない空港を建設できるかというふうに力を合わせるべきじゃないか。その力を合わせましても、どうしても公害のある空港しかできないということであれば、これはいたしかたないと思いますけれども、私はやはりいまの科学その他の英知をしぼれば、生活に影響のないところの新しい国際空港の建設ができるのじゃないか、こう思っておる次第でございます。したがいまして、海上がいいとか、あるいは陸上がいいとか、どこにするかというようなことは、ひとつ国の責任におきまして最も適正なところを選んでいただきたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/21
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022・唐沢俊二郎
○唐沢委員 各先生にいろいろ承りたいのですが、時間もありません。同僚議員の質問もありますので、以上で終らしていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/22
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023・三池信
○三池委員長 佐藤孝行君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/23
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024・佐藤孝行
○佐藤(孝)委員 私の持ち時間は五分よりございませんから、まくらことばを抜きにして、率直にお尋ねいたします。
けさほどの朝日新聞の一八ページに、YS11の起用ということで、兵庫県の坂井さんの談話というのですか記事が出ておったのですが、この内容を読みますと、大阪-東京、さらに新幹線の開通後の大阪-福岡はジェット機をやめてYS11を利用したらどうか、こういう記事なんですが、本来運輸というのは、やはり需要があるから供給するというのがわれわれ運輸行政の原則だと思っています。そう考えた場合、実はこのYSというのは、もう二、三年前からつくっていないのです。あるいは御存じであったのかどうかわかりませんが、いま飛んでいる便数とロードファクターから見ると、YSと同じようなロードファクターの飛行機を利用した場合、現在五十四便ないし五十六便、二十七か八往復ですね。これがいま全日空と日本航空が入れているいわゆるエアバスを利用すると二十七ないし二十八便になるわけですが、これをYSと同じようなフレンドシップあるいは同型の飛行機を利用した場合百六十便が必要なんですね。そうして騒音はホンで見るとそう大差がない。ほんのちょっと確かにYSのほうが低いでしょうね。それで、これだけ多い便数でも住民が受け入れられるというような感覚でYSという飛行機を利用したらどうかということを御提案になったのかどうか、ちょっとお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/24
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025・坂井時忠
○坂井参考人 きわめてしろうと的な意見かもしれませんが、現在の大阪国際空港が非常な騒音で悩んでおる、少しでも騒音を減してもらいたいという意味で、私は少なくとも現在の東京大阪間のジェット機あたりはやめていただきたい、そして騒音の少ないYSにかえていただけぬものか、こういうふうに考えておるわけでございます。
そういう意味では需要供給の関係も御指摘のとおりでございましょう。しかし、それはある意味で需要を抑制してもいいのではなかろうか。現在の大阪-東京間の航空運賃というものは、昭和二十六、七年ごろきまったと思いますが、その当時には兵庫県の職員の平均給与の大体七〇%ぐらいを、一回飛行機に乗りますと使わなければならなかったが、いまはわずかに六%の値段なんです。ですから、この点も考え合わせて需要を抑制する方法もあるんじゃなかろうか、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/25
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026・佐藤孝行
○佐藤(孝)委員 YSはこれはもう製造をやめておりますからね。もしそういう発想法でいくなら、同型のどこかの飛行機を利用することになるでしょうが、まあその話はいいでしょう。
もう時間がないようですから、先ほど大阪の黒田さんの結論的なことは、現在の騒音問題の解決なくして新国際空港の問題を論ずべきでないような、こういうお話だったです。それから坂井さんのほうは、大阪空港は現在も将来とも欠陥空港と断定せざるを得ない。したがって移転、廃止の方向を明確にすべきである、こういうようなお話。伊丹の市長さんは、いろいろ協議会の立場あるいは市長さんの立場、ちょっと三者を総合してみますと、先ほど唐沢君からの質問にあったように、もちろん現在の飛行場が欠陥空港であるということは三者とも御異論ないところだと思いますが、それにかわるものとして国際空港新設という問題を考えた場合、これは鶏が先か卵が先かの議論になると思いますが、もちろんいまのお話のように、需要の多少仰制しようという方法も一つの方法でしょう。あるいはいまのニュアンスからいうと、運賃体系でこれを考えるというような感じにも受け取れました。しかし、運賃体系というのは、路線だけを特に扱うのは運賃体系の原則に反すると私は思うのです。
そう考えたとき、関西国際新空港というものは、いまの時点において将来を考えて、十分調査なりあるいは調査を前提としたような着工を考えても、これは皆さんの自治団体の傘下にある住民感情として受け入れられるものかどうか。これをひとつ御三人の方にお尋ねしたいと思います。非常にデリケートでめんどうですけれども、どうぞよろしく。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/26
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027・黒田了一
○黒田参考人 まあ関西新国際空港の問題は、近畿全体がかつての高度経済成長路線の中において航空機の需要が年を追うて増大していくに違いないというそういう前提のもとに、多くの人々の期待の中で起こってきたものだと思います。私の就任した当時も、なおそうした状況の中でこの問題が論議されまして、一般論としては、公害のないという条件をきびしくつけながらも、新空港の必要性が四者で合意に達したということは、先ほど兵庫県の知事さんからお話のあったとおりでございます。
それにもかかわらず、なお新空港の建設に私が消極的たらざるを得ないというのは、かつて現大阪空港の拡張の際に、公害の心配はほとんどないんだ、あれば十分補償するという住民との約束の中において拡張が行なわれたにもかかわらず、その後起こってきた公害に対して十分なる対策がとられてこなかったというこうした状況の中で、新空港も公害の心配はありませんと幾らわれわれが説明しても、まただます気かというふうに反論を受けるのが必至であるということを感ぜざるを得ませんので、そういう意味におきまして、少なくとも現空港に関しても、音源対策を十分とっていただきたい。エンジンの改良というのは、ほとんど外国製に依存している状況でむずかしいかもしれませんが、それにもかかわらず十分な補助金を出して研究をさせ、一日も早くエンジンの改良もやってもらう。しかし、現行法のもとにおいてなおなし得るのは便数の制限であり、しかも新幹線によって代替し得る路線につきましては、大幅に便数を減らしてもそれほど著しい不便を与えないのではなかろうかというふうに考えております。
現行法で、かつ現在の技術水準でもなおなし得ることが残されているのでないか。それを精一ぱいやる中で十分なる誠意を示すことによってのみ新しい国際空港の問題が考えられるのであって、不誠意なままで先へ進めば、現大阪空港の起こした大きな被害をまた新空港に横すべりさせるのではないかという疑惑に対して、われわれがこたえることができないという、そういう窮地をお察し
いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/27
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028・坂井時忠
○坂井参考人 大阪空港との関連において新しい国際空港を一日も早くつくっていただきたいと思うのですけれども、それにはやはり先ほど申しましたように、地元の方々の完全な理解を求めなければいけないと私は思います。あらゆる資料を全部公開していただきまして、地元の方々に疑念の余地がないようにしていただくということが一点。
それからもう一つは、学問上あるいは科学上だけではなく、実際候補地がきまったならば、そこに何回も飛行機を飛ばしてみる。大型、小型、いろいろの飛行機を実際に飛ばしてみて、どのくらいのものであるかということを実際に教えていただく、こういうことが一番大事ではなかろうか、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/28
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029・伏見正慶
○伏見参考人 お答え申し上げます。
実は私は、現大阪国際空港は欠陥空港だということですが、そういうなまやさしいものではなくして、むしろ殺人空港である。憲法上のいわゆる生命権ですね、いま何百万の周辺の住民の生命がどんどん失われつつある空港である。そういうふうに考えますと、これはもうどうしても一日も早く別な新空港をつくって、この殺人空港を取りこわさなければいかぬですね。それを怠っておるところにやはり国の怠慢があるのじゃないか。むしろ国は殺人の共犯である、こういうふうに言いたいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/29
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030・佐藤孝行
○佐藤(孝)委員 時間がありませんから、残念ですがやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/30
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031・三池信
○三池委員長 土井たか子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/31
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032・土井たか子
○土井委員 たいへん長時間お気疲れでいらっしゃると存じますが、いましばらくお許しをいただいて、時間を節約するという上から一括してまず御質問を申し上げますから、したがって順を追ってひとつ御返答をお聞かせいただければ幸いに存じます。
まず、伊東参考人にお尋ねをしたいのですが、受忍限度という問題があります。騒音について受忍限度というこの問題は、一般的に言い得ること
であるかどうかをひとつお答えいただきたいのです。
環境基準ということが先ほどからもたいへん問題になりまして、昨年の十二月に中公審から出された中身を、十年かかってやれと言われてもなかなかむずかしかろうというふうな御趣旨の御発言も秋山参考人からお聞かせいただいたわけでありますが、この環境基準の内容というのはどういうふうに考えるべきか。努力目標ですね、いわゆるプログラム内容というふうに中身を認識すべきか、それとも義務指示規定というふうにはっきり認識すべきか、この点をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
それから、その次に小坂参考人、WECPNLというのを線引きに使用するということに問題ははたしてないであろうかということについて、端的にひとつお答えをいただきたいと思います。
それは、一つは人間の生活環境を保持する単位としてはたして適当なのかどうかということが一つございますし、二つ目には、機数や便数が今後変わることによって線引きの内容もおのずと変わるはずでありますから、そういうこともひとつ念頭に置いてお聞かせいただきたいわけであります。
さて、今回この法案の中身で問題になっております民家の防音装置の問題ですが、防音装置を施して除音効果というようなことだけを、いま考え得る限りの技術面を駆使して、そしていま国のほうが考えておられる予算を駆使して、日常生活に支障を来たさないような除音効果というのがはたして期待し得るかどうか。実はこのことは、快適でない、相変わらずの生活だということになりますと、せっかく環境整備、周辺整備ということをやりましても、いたたまれずに住民の方々はそこから立ちのくことを余儀なくされる、いわゆる追い出しということにつながっていくという側面を持ちます。したがいまして、この点についてひとつ端的なお答えをいただきたいのです。
最後に小坂参考人にもう一問。これもまた端的にお答えいただきたいのですが、航空法の一部改正で、今回騒音証明が問題になっておりますが、これはFAR、アメリカの連邦航空法の三十六条でいうところの騒音証明からこちらに写されて航空法の一部改正というふうなことに相なったといういきさつを聞かされております。この騒音証明ということによって、騒音ももちろんのこと、いま問題は騒音に重点が置かれておりますけれども、航空機公害は騒音だけじゃありません。きょうの参考人の御発言の中にも出てまいりましたとおりに、排ガスの問題もございます、危険度の問題もございます。したがいまして、そういうことも含めて、この騒音証明はいまの公害対策ということに十分役立ち得るのかどうかということをひとつお聞かせいただきたいのです。
それから、さて伏見市長さんですが、伏見市長さんは、先ほど必ずしもこの案に対して反対はしない、しかし全面的な賛成でもない、これはたいへんに微妙な御発言でございまして、聞いていてあまりよくわからないのです。ただしかし、はっきりおっしゃったことは、この大阪国際空港撤去を前提として今回のこの周辺整備ということも考えていかなければならぬ、こういうことだと思うのです。そういうことになりますと、これはその問題に終始すべきじゃないかと思うのですよ。大阪国際空港の撤去の方向に向けて、いまある大阪空港の中身をひとつそっちの方向に改善していくということですね。つまり、まず端的に申し上げれば、需要度というものを低くしていかなければいけません。大阪空港の需要というものをこれから先押えていかなければならぬということでしょう。そういうことからいたしますと、便数の削減、夜間便の全面禁止、それも時間帯をずっと広げていく、これはおっしゃるとおりでありますが、最近新聞紙上ではっきり出されましたとおりに、一月の中旬にこっそりとジャンボの誘導路がつくられていたとういきさつがあるわけです。これは市長は御承知だと思うのですがね。運輸省の大阪空港事務所のほうでも、これはやはり住民の方々の同意を得てから工事をすべきであったかもしれないという御趣旨の御発言があったりいたしますが、このことを事前に市長さんは御存じだったのかどうか。先ほどの御発言の中には、空港の拡張は困る、反対だ、便数をふやすことも反対だ、夜間便は全面的に禁止してもらいたい、こういうことを前提としながら、やはり大阪空港撤去という方向に向けて取り組んでもらわなければならないという御発言だったわけですから、これはまさしく空港の拡張整備ということになると私は思うのです、ジャンボの誘導路をこっそりと整備していくということはね。もし御存じであったならば、これをお認めになっていたということは、きょうの御発言と矛盾いたしますし、もし御存じなかったということならば、このたびのこういう法案を出して運輸省はたいへんな意気込みでがんばりますとおっしゃっているけれども、運輸省のおっしゃることはあてにならないし、信用できないということであろうと思うのです。したがいまして、この点についてひとつはっきりお答えをいただきたい。
それから、きょうの伏見市長の御発言をさらに承っておりますと、新空港建設までには少なくとも十年はかかる、しかしその予定もいまだはっきりしていないわけです。どこにつくられてどういう規模であるかということもはっきりしていない。にもかからわず、きょうは、もともと第三セクターに私は反対であったのが条件つき賛成に変わったというのは、昨年の七月に運輸省のほうから、新空港建設については伊丹空港撤去も含めて考えるという覚書ですか書面が、十一市協に対してあったということが動機だと言われております。だけれども、あれは大阪空港撤去を前提としてということにはなっていないのです。まだいまだに新空港についてどこに建設することが好ましいかということを考えていらっしゃる部会のほうでも、伊丹空港撤去を前提とするかしないかということについては決定が見られておりません。したがいまして、運輸省のほうでもそういうお考えであるはずであります。だから、いま条件つき賛成に変わられたという根拠は、そういう点からするとまことに甘い、ある場合には根拠がないと申し上げてもこれは過言ではないと思うのであります。その点をいままでいろいろ運輸省が取り組みについて約束をしながら約束を十分に守ってこられなかったというのは、先ほどの黒田了一大阪府知事の御発言の中ではっきりわかりますように、このことについて一番御存じなのは私は伏見市長であろうと思うのです。ですから、そういう点から申しまして、今回のこの法案に対して、先ほど条件つき賛成と言われる前提に置いていらっしゃるところが新空港建設ということでありますから、私はやはり空港撤去ということに持っていくほうに終始すべきではなかろうかということをひとつ申し上げて、その点の御意見をもう一度確かめたいわけであります。
それからさらに、秋山参考人にお尋ねをいたします、きょうは、これは海上のほうが好ましいという御趣旨の御発言でございました。それを承ったわけですが、いま関西新国際空港について四つの候補地が諮問されて御検討のさ中でございます。この四つの候補地の中には、淡路を除いてあと三つは海上でございますね。ところが、きょうの御発言の中にも、地元の住民が賛成をするということが、やはり決定の段階には大事な問題だというふうな御意見でございました。私は、それはそのとおりだと思うのですが、いま三つの海上において考えられておる候補地いずれをとりましても、大阪湾、瀬戸内海に位置しておりまして、御承知のとおり公有水面埋立法ですね。それからさらには、先日たいへんな努力の結果できました、議員立法として成立しました、ここにお運びの兵庫県知事もこれに対してはたいへんな御努力、大阪府知事もたいへんな御努力だったわけですが、瀬戸内海環境保全法、これができ上がっているわけであります。こういう法律からしますと、いまの三つのどの候補地も、つくることはむずかしかろうと私は思うのです。特に、規模は小さなものではない。大プロジェクトになればなるほど私はむずかしいと思うのです。大阪空港を撤去して考える新空港ということになりますと、その規模は非常に大きなものになるはずでありますから、いま考えられておる四つの候補地について、いま申し上げたような事情を勘案しながら、秋山参考人はどういうお考えをお持ちかということを、ひとつ御披瀝いただきたいと思うのです。
さて、最後に両知事に対してお尋ねをいたしたいわけでありますが、はたして今回のこういう周辺整備の内容からしまして、住民の生活環境保全、それを守り得る計画たり得るかどうかということをひとつお考えいただきたいわけです。いま線引きの問題も少し初めにお伺いをいたしておりますが、いまの線引きのままでは十全じゃなかろうと思いますし、そのほかやはり伊丹空港そのものが、はっきり言われたとおり、欠陥空港だといわれる。伊丹市長のごときは、殺人空港とまで言われる。国の名において殺人を認めるわけにだれしもいかないわけであります。したがいまして、そういうことからすれば、一にも二にもこれは撤去以外にないわけでありますが、そういうことからして、今回のこの法案が住民追い出し、空港永続化という側面がはたしてないかどうかということですね。この点についてひとつお考えをお尋ねしまして、一応御質問にいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/32
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033・伊東正雄
○伊東参考人 伊東でございます。
ただいまの御質問、二点ございまして、第一点は、受忍限度についてどう考えるか、こういう御質問であったかと思います。
受忍限度ということになりますと、これは公害の加害者側のいろいろな事情と、それによって被害を受ける側の事情と、相互に比較考量しまして、それで受忍限度を考えるという考えに立つわけでございまして、そういうことになりますと、今日、先ほど申し上げましたように、良好な環境を享受するというこれは比較さるべきものではなくて、最優先的に人間の基本的人権としての絶対的な価値を持っている権利でございますので、そういうような比較考量によって、たとえば公共事業であるから受忍の限度は一般より強いのだというようなことになりましたならば、これは環境保全という目的からしましてそこなわれるわけでございます。したがいまして、公害問題につきましては、やはり良好な環境を享受するという環境権というものを明確に認識しました上で、それをあくまでも絶対的な価値として考えていくというような立場に立ちませんと、たとえば家屋の明け渡しの問題につきまして、家主さん側の明け渡しを必要とする理由、それから借家人側の移転しないでそこにとどまる理由というような、そういうような同一平面において相互の必要性を考えて、その上で比較考量するというようなことでは、この基本的人権でありますところの環境権を守るということはできないと思いますので、やはり公害問題につきましては、そういうような見解をとるべきではないか、かように考える次第でございます。
それから、環境基準の問題でございますけれども、これは行政上の努力目標というように考えてまいりますと、現在この航空機騒音にいたしましても、人体に騒音が影響を及ぼしますのは、大体五十ホン前後であるように学者の研究に出ております。ところが、現在、先ほど来問題になっておりますように、非常に大きな被害を及ぼしておるわけでございまして、私どものその環境基準というのは、やはり精神的な安らぎ、そういうものを含めまして、単に肉体的な健康被害とかそういうことではなくて、全くわれわれが快適に生活することを確保するために必要な基準でありまして、そういう観点から、やはり国は地域開発にしろ、あるいは空港の設置、利用にしろ、快適な環境を保全、維持すべき義務があるわけですから、やはりそういう行政上の努力目標というようなことではなくて、法律上の義務にならなければならない。それを怠るということになりますと、現実の公害の問題から、あるいは五年先、十年先というようなことになりまして、その間に毎日、先ほど伊丹市長さんの話にございましたように、生命を奪われるというような、そういうようなことにつきましても、一刻の猶予もできない被害が日々発生しているわけでございますから、やはりこれはきびしく法律上の義務として対処していかなければならない、かように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/33
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034・小坂宏
○小坂参考人 時間がないので簡単にお答えいたします。三つ御質問いただきましたので、最初からお答えいたします。
WECPNLがが線引きに適当であるかどうかということについて、これは休憩前にも申し上げたとおり、数々の問題点というか限界性があるということです。
それから、防音工事の問題についてですが、人の生活の場であるという家屋の性格というか、構造というか、そういった面からいって、十分なる防音効果を期待することは非常にむずかしいことだと思います。
それから、最後の騒音証明の問題点ですが、生活環境という観点からして、公害の本質的な解決にはならないであろうと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/34
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035・伏見正慶
○伏見参考人 先ほども申し上げましたように、あくまでも私たちの運動の基本的な考え方は、空港の撤去であり、それは新空港をつくってここを撤去しろ、しかしこれには現実の問題として時間がかかるから、その間の騒音対策を十分にやってほしい、この二点です。
それに関連しまして、新空港建設、現空港撤去の間の騒音対策として、今回整備機構の問題が出てまいりました。それは、こちらが要望しておるような面も十分考えられておりますし、いままで国が言わなかった撤去ということばを使って、将来これが撤去を考える、しかも地方公共団体の意思が撤去というふうに固まれば撤去いたします。こういう確答、これは通達と同じような問題でございますので、私は国を信用して、そしてあえて反対をせず、一部で変身したとしかられておりますが、しかし先ほど申し上げました住民組織との対立的な印象を与えておる。住民のほうは、撤去ということばがもらえなければ、この法案改正には賛成しない。これは非常な国の不信をあらわしておるわけですね。この点、運輸省としてもこの信用を回復するための努力がぼくは必要だと思うのです。昭和三十九年に八市協議会から出発いたしましてもう十年になりますが、最初はやはりそういう面もありましたが、最近は国が非常に誠意を持ってこの空港問題に取り組まれておりますので、私はその点を信用して、態度を変えて、あえて反対せず、条件つき賛成を申し上げたわけでございます。撤去の問題はまた別な問題としてこれから国に対して詰めていきたい、こういうふうに考えております。
それから誘導路の問題は、実は私は知らなかったのでございまして、あとで聞きまして厳重に抗議を申しております。これからは現空港の存続にかかわるような工事は一切事前に十一市協会長のほうに通知を願いたい、そういうことを厳重に申し上げております。誘導路の工事が完成したということをあとで知ったことに関しましては、不明の点はおわび申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/35
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036・秋山龍
○秋山参考人 まず海上空港ということを申し上げたのにつきまして淡路はどうするんだというような御質問だと思いますが、淡路候補地につきましては、空中並びに地上をくまなく私自身も歩いてみました結果、陸上につくる場合、特に淡路島というのはわりあいに経済的には後進的だといわれておりましたけれども、やはり数千年にわたって人間が住んだところでございまして、開発も進んでおり、人家もかなりたくさんございます。そういたしますと、やはり環境基準から申しますと抵触するきらいもありますし、また、もしも空港をつくるとなりますと、周辺都市化ということも進む可能性が十分ございまして、伊丹のような現象を繰り返すことになると考えますので、やはりそういうおそれのない海上のほうがベターだ、こいうふうに考えておる次第でございます。この点は委員会で、まだ非公式でございますが、各委員の意向を打診いたしましても、大体そういうように意見は一致しておるようでございます。
それから、海上の環境保全と空港の問題につきましての御疑問点でございます。私の感じておりますことは、私が申し上げました中にも基本的にはあることでございますが、人間の所有しておる環境資産というものは一定量でございまして、これを全世界三十八億の人間が共同の財産として使っていくという面もございますけれども、日本のように特に狭いところにたくさんの人間が住んでおります場合、われわれがまた処分し得る環境資産も他の国に比べるとよけいに少ないのじゃないかということを感じておるわけでございます。さりながら、われわれは与えられた国土に与えられた人口で生きていかなくてはならぬという点を考えました場合には、やはりいろいろと考えられまする施策につきまして絶対的にいいというものはございません。必ずメリットとデメリットがございますので、それを比較勘案してわれわれの進むべき道をきめていかなければならぬのだと思いまして、しかもそれをきめる機構は、政治という機構が憲法並びに地方行政法等によりましてきまっておるわけでございますから、それによって比較選択をいたしましてきめていかなければならぬものだろう。それに対してわれわれは、お考えをきめていただく基礎資料を提供するというのが航空審議会の関西部会の使命である、かように考えて進めておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/36
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037・黒田了一
○黒田参考人 今回の改正案によって生活環境保全が可能かという御質問でございます。
国及び地方公共団体等の責務としては、住民に快適にして良好な生活環境を保障する重大な責務がございます。この責務をはたして今回の改正案で十分に果たせるかと言われると、必ずしも十分だとは言えないと思います。しかし、それにもかかわらず、一歩前進であり、これを端緒としてさらに被害者対策を強化し、あわせて音源対策をも兼ねて住民の苦痛を緩和するための最大の努力をしていかなければならないと考えております。民家の防音工事をしてもほんとうに快適な生活が可能となるかと言われると、おそらくわずかの改良にすぎないであろうと予想されますが、それにもかかわらず、やらぬよりはましであり、やるということを通じてさらに次への前進の道が開かれるのではないかという意味におきまして、本法案の改正に賛成をしているわけでありますけれども、地区の住民の苦痛はもう一刻も猶予できないという事態であります。そうした突き詰めた状況の中において撤去論が出、またそれを受けて兵庫県知事や伊丹市長が撤去論を出されるお気持は十分理解できるところでありますけれども、大阪のほうが表向きそう強く撤去論を出していないというのは、言うてみてもなお十年もかかるというのが現実であるとするならば、一刻も猶予のできない人々に対する対策を、いまこそ全力をあげて強化しなければならぬという必死の気持ちがあるからであります。
空港拡張につきましては、国だけでなくて、大阪府、兵庫県等地方機関もまたそれに協力してきたということに対して非常に胸の痛む思いでおりますので、何とかすみやかに住民の被害を少しでも緩和するためには全力をあげていきたいと考えている次第であります。その点御理解の上、本法案をさらに強化する方向で御検討いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/37
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038・坂井時忠
○坂井参考人 空港周辺機構が整備されたらうまくやっていけるだろうか、こういう御質問だったと思います。私は多大の心配をしております。そのことは午前中申し述べたとおりでございます。にもかかわりませず、前向きに地元の了解を得て進めたいと申しますのは、いま黒田知事がお話しのとおり、一刻も座視するに忍びない、こういうことでございます。
それからもう一つ、出資金四分の三は国が持つ、あとの四分の一は地元が持つということにも私は割り切れない気持ちを持っております。しかし、やはり周辺機構に県としましても発言権を確保してまいりたい。そして周辺機構が少しでもうまく運営されるようにやっていきたい、こういうつもりでございます。
それから、午前中も申し上げましたが、大阪国際空港の解決の問題は、周辺整備だけではなくてやはり発生源を押えなければいかぬ、こういうことでございます。この点につきましても午前中申し述べましたので繰り返しませんが、あらゆる方法を講じてその問題を解決していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/38
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039・三池信
○三池委員長 金瀬俊雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/39
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040・金瀬俊雄
○金瀬委員 委員長のお許しをいただきましたので、一問だけ一分間御質問申し上げます。
秋山参考人にお尋ねいたします。午前中の新しい関西空港に関するお話の中に、成田空港の例にもあるように、公害を防止できる新しい空港の建設は海上につくる以外にはない、こういう話でございました。そうなってきますと、成田空港というのは騒音もあり、あるいは大気汚染もあり、欠陥空港であり、公害空港であるということをはっきり言えるかどうか、その点についてお話を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/40
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041・秋山龍
○秋山参考人 お答えいたします。
どうもいまのお話は、私の与えられた時間内にものを言おうとするうちのことばの短絡が非常にあるように思います。私が申し上げましたのは、成田空港を計画し着手したときには、今日のごとく十分に地方の方とお話し合いをするという手続が欠けておったということを申したあとでございまして、決して海上空港とそこへ直結はさせておりませんものですから、その点をはっきりと御認識を賜わりたいと思います。速記録をお調べくださればはっきりわかると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/41
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042・金瀬俊雄
○金瀬委員 成田空港のときにも、海上につくることがいいか陸上につくることがいいかということがたいへん論議されたわけでございます。そして、いまの成田空港の状況は、非常に都市の密集地帯でございます。そうした中に新しい空港をつくるということについては、私どもは長い間反対してきたわけですが、あなたの午前中の話ですと、海につくることが一番ベターであるというこをはっきり言っております。これはあとで速記録を調べればわかりますが、ですからあなたが、速記録の結果でまた私どもの運輸委員会に出てきて、あなたの意見をはっきりとさしていただきたい、さように考えて、要望だけ申し上げまして質問を打ち切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/42
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043・秋山龍
○秋山参考人 お答えいたします。
成田につきましては、ただいま弁明いたしましたとおりでございます。私が海上空港について発言いたしました部分は、関西航空審議会の関西国際空港部会長の立場として感想を申し上げたのでございまして、大阪としては、あの近辺には陸上にはない、海上が非常によろしいということを私は申し上げたつもりでございまして、その成田の云々につきましてその位置を批判したり、その位置の問題について海上がいいとか悪いとかいうことは一言も申しておりませんので、はっきりと申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/43
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044・三池信
○三池委員長 三浦久君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/44
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045・三浦久
○三浦委員 参考人の先生方には、きょうはお忙しいところをたいへんありがとうございました。
最初に、坂井参考人にお尋ねをいたしたいと思います。
昭和四十二年に現行法が制定されましてから今日まで、全く発生源対策、いわゆる音源対策というものがなされてこなかったわけであります。これが今日の被害を大きくした最大の原因だと思います。それで、午前中のお話にもありましたけれども、現在この音源対策としてどういうことをやったら一番ベターなのかということをお尋ねいたしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/45
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046・坂井時忠
○坂井参考人 私どもは何と言いましてもその点はしろうとでございます。したがいまして、国におきまして責任をもって解決していただきたいと思うのでございますが、ただし、しろうとなりにやむにやまれぬ気持ちとして申し上げておるのが、たとえば国内のジェット航空はやめていただいたらどうだろう、少なくとも新幹線があります。東京-大阪、あるいは新幹線が福岡まで延びれば大阪と福岡の間のジェット機の使用はやめていただいたらどうだろう、それにかわるものとしてYS11というようなものを考えていただいたらどうか、こういうふうに思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/46
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047・三浦久
○三浦委員 次に、黒田参考人にお尋ねをいたしたいと思います。
先日私も空港騒音訴訟団と一緒に運輸省との交渉に参加をいたしたわけでありますけれども、その交渉の中で、住民は口々に府や市はいろいろと住民のめんどうを見てくれるけれども、国は一つもめんどうを見てくれないということで、政府の態度を非常に強く非難をしていたわけであります。
私たちの調査でも、たとえば移転補償につきましては、現在公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱というものに基づいて行なわれているわけで、これは実際にかかる費用を全部補償するという立場にはなっていないと思います。これはやはり国の施策というものが、結局原因者負担の原則という立場に立っていないからじゃないかというふうに考えるわけですが、この点について、いまの政府の損失補償基準要綱に基づく移転補償の問題等について、原因者負担という点から、知事さんはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、お尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/47
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048・黒田了一
○黒田参考人 従来の国の政策は、騒音についても、他の公害一般についても、必ずしも十分に発生原因者負担の原則が貫かれてこなかったのではないかという感がいたしております。近年ようやくその原則が次第に固まってきたようには思いますけれども、きわめて不十分であったし、現になお不十分であると考えております。そして発生源対策の強化につきましても、現行法のワク内でやれることすら十分やれていないし、現行法を改正して積極的に強化しようという意欲もなお十分でないように思われるわけであります。
先ほどの音源対策に関しましても、機種の変更について、あるいは航行方法の改善について、便数の制限について、さらにエンジンの改良について、より積極的に取り組んでいただくことを強く要望しているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/48
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049・三浦久
○三浦委員 次に、秋山参考人にお尋ねいたします。
国の施策が、発生源規制がありませんし、損失補償についても原因者負担というものが貫かれていないわけでありますけれども、これは住民の環境権というようなものを認めていないというところから必然的に出てきているのじゃないかというふうに考えるのです。
それで、二月十六日の大阪の朝日新聞なんですけれども、参考人の談話といたしまして、公害訴訟で国が敗れれば大阪空港の撤去を建議する、こういう記事が出ております。その理由として、裁判で国が負ければ慰謝料を支払う、慰謝料を支払うのは、原告だけではなくて同じ騒音地域に住む他の数万人の人々にも払わなければならなくなる、そうすると非常にまあ天文学的なお金がかかるのだ、だから空港は撤去したほうがいいんだ、こういうことを述べられておるようでありますけれども、裁判に負けようと勝とうと、住民の受けている被害は同じだと思うのですね。住民の苦しみは同じだと思うのです。負けた場合には撤去するし、勝った場合には撤去しないのだという考え方は、どうも住民の基本的な人権を擁護しようとか、住民の環境権を保護しようとか、そういう立場には立っていないような御発言だというふうに感じ取られるわけであります。現在たとえば高速道路の建設の問題、またビルの建設等におきまして、住民の環境権という立場から建設中止の差しとめ請求というようなものが認められておる。裁判所においてもこれが順次定着しつつあるという状況にあるわけでありますけれども、参考人の考え方としては、住民の環境権というものはお認めにならないのか、なるのか、その点をお伺いいたしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/49
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050・秋山龍
○秋山参考人 お答えいたします。
実は、その朝日新聞の記事というのを読んでおりませんので、あるいは見当違いを申し上げるかもしれませんが、実は朝日新聞の記者の方と会談したということは事実でございます。その節に、騒音問題の関西空港部会としての立場は、裁判に勝つとか勝たぬということとは全然関係がないのだということを、私繰り返し申し上げておいたのでございます。それで撤去問題、伊丹の廃止問題につきましては、だんだん委員会の内部に、新空港ができた段階には伊丹の廃止をも含めてその存廃を、その処置を検討するといういわゆる公文書が十一市協の会長さんにあてて出されたということを知りました段階から、当然新空港は移転の可能性をも含めて検討すべきものである、こういう部会は意見のコンセンサスを得まして、そういう方向で審議を進めておるわけでございます。特に、そのときに申しましたのは、裁判の問題は、もしも国が敗訴するという事態が起これば、おそらく運輸省航空局並びに運輸省の幹部は非常にそれの措置に時間をとられるであろう、そうすると、審議会の進行に影響なしとは言えない、その進行問題に対して影響があるだろうということは、繰り返し申しましたけれども、いまの、お読みくださったような趣旨の因果関係にあることは私は申しておりませんので、どうぞ御了解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/50
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051・三浦久
○三浦委員 伊東参考人にお尋ねいたします。
現在の国の騒音対策というのは、環境権を認めずに、いろいろな施策というのは恩恵的にやるんだ、そういう考え方で貫かれていると思うのですが、先生の立場は環境権をお認めになる立場だと思うのですが、この点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/51
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052・伊東正雄
○伊東参考人 この法案自体を見ますと、これは障害の除去というような表現が使われておりまして、何か自然発生的に障害が出てきておるのを除去するような、そんな印象を受けるのみならず、防音工事について助成する、何か恩恵的に国が費用を出して補助するんだというような、片言隻句をとらえるわけではありはせんけれども、そういう点にこの法案のニュアンスというものが出ていと思います。私はやはり午前中に申し上げましたように、今日の環境権というのは、これは現在の私どもの生命、身体、生活、良好な環境を守るということだけではなくて、やはり私どもの周囲の自然の生態系、それから今日石油資源で問題になっておりますように、有限な地球上の資源、そういうものを私どもが乱費してしまうということになりますと、やはり将来の世代に対して私ども責任を尽くせないわけでございまして、そういうような現在の歴史的な時点におきまして、環境権というものは認めなければならないという立場に立っておるわけでございます。
ただ、判例でも実質的には、先ほど御指摘になりましたように、逐次環境権が認められてきつつございまして、先ほど午前中で引用しました衆議院並びに参議院の附帯決議におかれましても、やはり良好な環境を保全することが必要であるということをお認めになっておりまして、これは現代に生きる私どもの責任でもありますし、新しい権利意識であり、それは乱用してはいけませんけれども、やはり私どものよりどころのとうとい基本的な権利であろうか、かように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/52
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053・三浦久
○三浦委員 終わります。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/53
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054・三池信
○三池委員長 石田幸四郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/54
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055・石田幸四郎
○石田(幸)委員 参考人各位におかせられましては、午前中からたいへん貴重な御意見を賜わりまして、ありがとうございました。
大体四時をめどに終わろうということになっておりますので、ごく端的にお伺いをさしていただきたいと思います。
一つは、両知事さんにお伺いをしたいのでありますが、今回大阪の国際空港周辺整備機構、これは仮称でございますが、その事業内容が規定をされております。さらにその事業地域が指定をされておるわけでございますけれども、先ほどのお話ではWECPNL七〇以上というような御意見があったと思うのです。そういうような御希望に反して、法律は八五以上の範囲の地域を事業地域とする、こういうことになっておるわけでございますが、ここまで拡大をして考えなければならないという御要求は当然だと思うのでございますけれども、同時に、騒音対策等をこれからいたしておかなければならないわけでございます。したがって、先ほどの数値を七〇以上と考えて、両県におかれてはどの程度の対象家屋数になるのか、また、どの程度の、騒音対策の場合ですね、総経費が必要というふうに予想されているのか、この点をまずお伺いしたいと思います。いますぐおわかりにならなければ、あとで数字でお答えをいただければけっこうだと思います。
それでは次の問題に移らしていただきますが、先ほどの坂井参考人のお話の中に、寝たきり老人に対しまして、防音装置、さらにそれに伴う冷暖房装置をつけたところ、たいへん喜んでいただいた、このように言われております。前回の四十二年に法律が制定されたときに、附帯事項がついておりまして、「騒音防止工事の施行により必要となる空気調節装置等の設置についても十分配慮すること。」こういうふうに附帯決議ではなっておるわけでございます。なかなかこれが実現がむずかしい状況のようにあるのでございますけれども、ここで大阪と伊丹市の場合、このような寝たきり老人に冷暖房装置までつけていらっしゃるのかどうか。あるいは基本的にやはり一般のそういう家庭にも冷暖房装置までやってあげるべきではないだろうかとわれわれは考えておるわけでございますが、ここら辺についての御意見を黒田参考人、それから坂井参考人、伏見参考人に簡単にお伺いしたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/55
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056・黒田了一
○黒田参考人 先ほど、周辺整備機構の事業の内容、地域等について御質問がございましたが、今回の改正案におきましては、その点は、必ずしも十分ではないけれども一歩前進であるという意味において、積極的にそれを推進していただくこと。さらに、地域につきましては、地域の実情に合うように見直しをしていただきたい。内容につきましては、先ほど申し上げましたように、移転補償単価の引き上げ、あるいは代替地造成についての補助の強化、あるいは移転者に対する税制優遇措置、さらに民家の防音工事の実施にあたっては、同時に換気の問題と冷暖房の装置の問題についても配慮をしていただきたいということをお願いした次第であります。とりわけ寝たきり老人、身障者、その他終日騒音の中に置かれる人たちにつきましては特別の配慮をしなければならないし、国の措置が十分でないという場合には、とりあえず府県において緊急の措置をとり、それらに要した費用は、いずれ国のほうにおいて見ていただきたいというふうに考えております。
それからWECPNL七〇以上の世帯数は、大阪府側におきましては約二十二万四千世帯程度であろうと考えておりますので、一世帯当りどの程度の費用が適当かということは、今後検討しなければならぬと思いますが、相当膨大な金額が十分な対策をするには必要であろうと考えざるを得ないところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/56
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057・坂井時忠
○坂井参考人 公的な施設につきましての防音工事等は国でやっていただいておりますけれども、民家へのそういうあたたかい手がまだ差し伸べられておりません。しかし、とにかく終日床の中で寝ておる老人の方等見ておりますと、もう黙っておらぬという気持ちで、冷暖房を含めました防音工事を行なったわけでございます。ことしは、県の乏しい財政の中ではありますが、身体障害者等にも広げてまいりたいと思っております。こうした実情を先生方もごらんになれば、もう機構がどうであろうがこうであろうが、とにかく早くやっていただきたい、そういう気持ちが切々とするわけでございます。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/57
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058・伏見正慶
○伏見参考人 伊丹市におきましては寝たきり老人と身障者二十戸、県のほうで県の費用でこれが冷暖房をつけました。その維持管理費に関しましては、これは本来ならば国がやるべきものを県が先取りしてやられた、だからその維持負担は原因者である国が負担をすべきであるというたてまえから、国に対して維持管理費を要求をいたしておりますが、事はやはり福祉対策として老人あるいは身障者に対する施策でございますので、国のほうの支出が困難であればむしろ市においてこれを負担してもいい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/58
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059・石田幸四郎
○石田(幸)委員 それでは基本的な問題についてひとつお伺いをしたいのでございますけれども、この整備機構の事業内容が、いわゆる空港周辺緑地造成事業、空港周辺の再開発事業、代替地の造成事業、共同住宅建設事業、移転補償及び民家の防音工事の助成その他を行なう、こういうことになっておるわけでございますけれども、先ほど来三人の参考人の方々の御意見をお伺いいたしますと、飛行便数の削減を強く希望していらっしゃいますし、それはすなわち空港機能の縮小になろうか、このように思うわけでございます。そしてまた撤去のお話もあったわけでございまして、もしそういった空港機能の縮小から撤去、そういうような立場に立つならば、私はこの事業内容についても、いわゆる個別の問題を検討してみますれば、たとえば空港周辺の緑地造成事業というものは、やはり大阪の国際空港の固定化につながるであろう、あるいは空港周辺の再開発事業にいたしましても、どうしてもそういう方向に将来引っぱられていくのではないかというふうに考えるわけでございます。こういう立場から見ますれば、移転補償及び民家の防音工事の助成、こういうものをまずその機構の中で早急にやってもらいたいというような御要望ではないだろうか、こういうように考えておるわけでございますが、どういうような優先順位をつけて何を重点にやるべきか、あるいはこの事業内容についても、こういう問題については反対だということがございましたらば御意見を承りたいわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/59
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060・黒田了一
○黒田参考人 先ほども発生源対策の強化についてお願いをした次第でありますが、そういうことは現空港の機能が若干縮小されざるを得ないであろうと思います。そうして、さらにそれが突き進んでいけば撤去というところに進まざるを得ないと思いますが、先ほど申しましたように、私が現段階において撤去ということをあまり強く言わないのは、どうせ撤去されるならば周辺整備を急ぐ必要はなかろうというふうにあと戻りして、そして緊急を要する被害者対策がおろそかになるということをたいへんおそれたからであります。撤去は理想であっても、現実的にはおそらく十年以上を要するであろうというのが今日の常識であります。そうなると、その間、現在の耐えがたい苦痛をもうしばらく、十年間待てということにつながりかねないので、とにもかくにもいま困っている方々に全力をあげて手当てをすべきである。その際に、まず防音工事をやり、換気、冷暖房等についても配慮をする。しかしそれでも十分とは言えませんし、とりわけ離着陸の直下に当たる地域においては、多少の防音施設をしてみてもなお耐えがたい状態が続くであろうと思わざるを得ない次第であります。一番そうした被害の激甚の地域、たとえば豊中市あるいは川西市の地域においては、むしろ撤去を言う前に、ともかくも何とかしてほしいという声が強いわけであります。そうした人たちの切実な叫びにこたえるということが当面何よりも大事であって、雪中に炭を送るの段階においては錦上花を添えることに適当でないという中国のことばがございますけれども、錦上花を添えることも大事であるけれども、とりあえず寒いときには炭を送り、飢えている人には食物を送るという、それから手をつけないと、より高い次元での問題を論議していることのできないほど差し迫った問題であるということを御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/60
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061・石田幸四郎
○石田(幸)委員 同じ質問を坂井参考人にお願いしたいのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/61
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062・坂井時忠
○坂井参考人 黒田知事からよく言われましたので大体尽きておると思いますが、とにかく現状を座視するに忍びないような状況を一日も早く解決しなければいかぬ、こういうことでございましょう。ほんとういえば、この機構ができるまででも政府はどんどんいろいろやっていただきたい。しかし、それがなかなかできないということであれば、一日も早くこういう機構をつくってやらざるを得ないのじゃなかろうか。県は県としまして、もうやらなければならぬことはやっていくつもりでございます。どうぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/62
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063・石田幸四郎
○石田(幸)委員 ちょっとまだ私の質問の内容が足らなかったのかもしれませんけれども、この事業内容の中でとりあえず行なわなければならないのはいわゆる移転補償及び民家の防音工事の助成であって、空港周辺の整備事業なんかあと回しでもいい、極端に言えばこういうお考えはないんですか。坂井参考人にお伺いしますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/63
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064・坂井時忠
○坂井参考人 やはりいろいろの対策を進めるには地元の方々の理解を求めなければなりません。理解を求めるには、撤去ということはもちろんのことでございますが、こういうふうにしてやるんだという一種の計画性も必要でございましょう。そういう意味におきまして、法案の中に盛ってあるようなことをひとつ計画的に早くやることを示してまいりたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/64
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065・石田幸四郎
○石田(幸)委員 伏見参考人にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/65
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066・伏見正慶
○伏見参考人 私たち地元の周辺住民としては、最終の目標はやはり撤去、しかし撤去に至るまでの時間がかかるからその間の対策を強化してほしい、こういう意味でございまして、その撤去ということを考えてやはり周辺整備等も行なわなくちゃならぬ。そういうことでなければ、現在の空港のむしろ存続を強化するというようなことにもなりますので、そういう撤去ということを前提とした、撤去を目標としたこの整備機構の事業を行なっていただきたい。この事業の内容につきましては、これ全部優劣なしにこの事業はどんどんやっていただきたい、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/66
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067・石田幸四郎
○石田(幸)委員 伊東参考人にお伺いをしたいのでございますけれども、先ほど受忍限度のお話が出たのでございますが、私の地元に行きましてもやはり空港がございまして、おそらく名古屋の空港の場合は、大阪空港の三分の一から四分の一程度の飛行機の往来であろうと思うのです。しかし、その周辺においてもこの騒音の問題につきましては非常に苦情が出ておるわけでございまして、そういった意味で許容限度というものは、特に大阪空港の場合、利用度を半分に減らした、三分の一に減らしたからといって片づく問題ではないというふうにわれわれは心得ておるわけでございますけれども、そういった意味で許容限度をどういうふうに考えていくかというのは非常に大きな問題であろうと思うのです。そこら辺につきましてもう一度ひとつお願いしたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/67
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068・伊東正雄
○伊東参考人 ちょっとこちらで御質問してよろしいですか。ちょっと御質問が……。許容――受忍限度……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/68
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069・石田幸四郎
○石田(幸)委員 そうです。ことばの違いでござ
います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/69
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070・伊東正雄
○伊東参考人 これは、先ほどちょっと申し上げましたのですが、やはり私どもの健康、この健康というのは何も疾病にかかっているとか虚弱になっているとかそういうことでございませんで、やはり精神的、肉体的並びに社会的に良好な状態という、これは世界保健機構の定義でございますけれども、そういう状態が侵されないということが基本的な立場でございますから、そういう点でとらえていきませんと、侵害行為のほうとお互いにそういう基本的な絶対権ともいえるようなそういう権利との比較においていきますと、現在も問題になっていますけれども、交通の利用度とかいろいろな問題からして、どうしても基本的な環境権、人格権、そういうものが侵されるおそれがございますので、そういう点から言えば、やはり受忍限度ということはとると誤解されますし、そういうことで利用されるおそれもございますので、そういうふうにはとらない、こういう趣旨なんです。よろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/70
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071・石田幸四郎
○石田(幸)委員 時間がありませんから、以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/71
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072・三池信
○三池委員長 河村勝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/72
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073・河村勝
○河村委員 参考人各位には午前中から長い間たいへん御苦労さまでございます。もう予定された時間が過ぎてしまいましたので、私は両知事に一点だけお伺いをして質問を終わりたいと思います。
それは、お二人ともおっしゃっておることでございますが、新しい空港ができて、それで古い空港を片づけなければ問題は片づかない、そのとおりだと思います。それと同時に、お二人ともおっしゃっておることでありますけれども、この新空港決定にあたっては、現在の空港に関する被害者の対策、これが完全に行なわれなければ、新しい空港の決定についても賛成するわけにはまいらない、こういう趣旨の御発言がございました。気持ちとしてはたいへんよくわかります。いままでいろいろ国に裏切られたこともあるから、なかなか信用ができないということもあるだろうと思います。ただ実際これから被害者対策を新しい法案がかりに通ってやるといたしましても、この法律自体がそう十分なものでもありませんし、新しい環境基準の中間の目標を達成するだけでもやはり五年ぐらいはかかるわけですね。ですから、ほんとうに十分実績をあげるというところまでなかなかいかないと思う。そうなりますと、一方、新空港のほうがかりに海上なり何なりで一つの案が出てきた。それが一応科学的にはどうやらいけそうだという状態であっても、一方なかなか信用できないから、十分実績があがるまでは、ただ科学的な検討、あるいはさっき坂井さんは、実際飛ばしてみてその裏づけもやれというお話もありましたが、そういうことをやって大体見当がついても、片方のほうの現在の空港のほうの被害者対策がなかなか進まぬということでは、賛成ができぬということになりますと、なかなか決定ができない。そうなりますと、それだけ新空港の建設がおくれるわけです。新空港の建設が早くきまれば、いまの空港の被害者対策だって多少変わってくると思うのです。よそに引っ越すよりは防音工事でがまんしたほうがいいというようなこともありましょうし、いろいろ対策の条件も変わってくると思うのです。ですから、どっかで踏み切る時期がなければ事はほんとうには解決できないと思うのです。ですからお二人に、一体その辺のところ、なかなかおっしゃり方はむずかしいと思うのですが、どの辺をめどに新しい空港に踏み切ろうと考えておられるか、その辺をお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/73
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074・黒田了一
○黒田参考人 新空港の問題につきましては、それが十分科学的に検討がなされて、単に騒音だけでなくて、排ガスの問題も、あるいは埋め立てによる水質の汚濁の問題、あるいはそこに必要な土砂を獲得するための環境破壊の問題、あるいはアクセス、交通公害の問題、その他多面的な見地から十分に検討されて、そうしてこれならば被害は起こるまい、快適なかつ良好な生活環境が十分保全できるという、そういうめどがつくということが一つの条件であります。と同時に、現空港に対しても、そうした生活環境を保全するための誠意のある態度を国及び地方公共機関が示したという、その姿勢をはっきりと住民に理解していただくということが必要であろうと思うのです。幾ら科学的にだいじょうぶですと、こう言っても、すぐに信頼が得られるであろうかといえば、私はなかなか得られにくいんではないかと考えております。そうして今度の周辺整備機構を強化していく中で現実的な成果がどの程度あげられるかといえば、先ほどおっしゃいましたように、十分な成果を直ちにおさめるということは困難であろうと思うのです。しかし、それにもかかわらず、現になし得る精一ぱいのことをしているんだという姿勢が、あるいはその誠意がにじみ出ておれば住民の信頼を回復する道は必ずあると、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/74
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075・坂井時忠
○坂井参考人 先生がお述べになりましたと全く同じような悩みを私は持っていま当たっておるわけでございます。大阪国際空港は撤去しなければならない。しかし新しい国際空港をつくっていくまでには相当時日がかかる。それはそれでひとつぜひとも公害防止の対策を進めなければならない。しかし、新しい国際空港をどうして公害がなくつくれるか、こういうことがいまの大きな問題でございます。一日も早く権威者の手によりまして候補地を定めて、それについて関西全部の理解を求めて、そして関西人全部の協力によって公害のない空港をつくってまいりたい。そういう意味では私はあせりに似た気持ちを持っておるわけでございます。一日も早くそうした積極姿勢を国のほうで示していただく、それが大事ではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/75
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076・河村勝
○河村委員 そうしますと、坂井さん、黒田さんのお話はわかりましたが、坂井さんは先ほど、現在の空港に対する対策が完全でなければ決定には賛成できないというお話がございましたが、いまのお話でありますと、要するに新しい空港のほうの企画ですか、プランが信頼に足るものであれば、現在のさしあたりの対策、これはもちろんやるにはやらなければいけないのですけれども、それがどこまでのめど、どこまでなされなければならないかということについては特に触れられなかった。それでよろしいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/76
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077・坂井時忠
○坂井参考人 ことばが足りなかったかと思いますが、やはり大阪国際空港に対する真摯な解決の努力というものを示していただかなければ、私は新しい空港についての地元の理解も得られないのではないか、これは当然なことだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/77
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078・河村勝
○河村委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/78
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079・三池信
○三池委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位にお礼を申し上げます。
本日は、御多用中のところ長時間にわたり当委員会に御出席いただきまして、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/79
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080・三池信
○三池委員長 この際、連合審査会開会の件についておはかりいたします。
ただいま本委員会において審査中の本案について、地方行政委員会及び公害対策並びに環境保全特別委員会から、それぞれ連合審査会開会の申し入れがありますので、これを受諾するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/80
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081・三池信
○三池委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
なお、連合審査会の開会日時は、関係委員長と協議の上、追って公報をもってお知らせいたします。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X00819740219/81
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