1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十九年三月六日(水曜日)
午前十時七分開議
出席委員
委員長 三池 信君
理事 江藤 隆美君 理事 加藤 六月君
理事 佐藤 孝行君 理事 佐藤 文生君
理事 佐藤 守良君 理事 太田 一夫君
理事 兒玉 末男君 理事 三浦 久君
阿部 喜元君 井原 岸高君
小此木彦三郎君 越智 伊平君
唐沢俊二郎君 國場 幸昌君
關谷 勝利君 細田 吉藏君
宮崎 茂一君 山村新治郎君
綿貫 民輔君 金瀬 俊雄君
神門至馬夫君 坂本 恭一君
梅田 勝君 紺野与次郎君
石田幸四郎君 松本 忠助君
河村 勝君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 徳永 正利君
出席政府委員
運輸政務次官 増岡 博之君
運輸省航空局長 寺井 久美君
委員外の出席者
運輸委員会調査
室長 鎌瀬 正己君
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委員の異動
三月六日
辞任 補欠選任
渡海元三郎君 越智 伊平君
同日
辞任 補欠選任
越智 伊平君 渡海元三郎君
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本日の会議に付した案件
公共用飛行場周辺における航空機騒音による障
害の防止等に関する法律の一部を改正する法律
案(内閣提出、第七十一回国会閣法第七一号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/0
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001・三池信
○三池委員長 これより会議を開きます。
公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案に対する質疑は昨五日終了いたしております。
これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。江藤隆美君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/1
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002・江藤隆美
○江藤委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、本案に対し賛成の討論を行なうものであります。
わが国の民間航空は、昭和二十九年に再開されましてから約二十年を経過いたしたのでありますが、今日、その発展は、経済の伸長と国民生活の向上によりまことにめざましいものがあり、国際的には、世界の航空交通の要衝としての地位を確保するとともに、国内的には、昭和四十七年度の国内線の利用乗客総数が一千八百八十三万人にものぼり、航空はいまや国民生活上欠くべからざる交通手段となっております。
このような航空の急速な発達、特に昭和三十四年のジェット機の導入及びその後の機種の大型化、高速化はようやく空港周辺住民に対し航空機騒音の障害を激化させるに及びましたので、昭和四十二年に本法が制定されるに至ったのであります。
公共用飛行場の周辺地域の騒音対策につきましては、本法により学校、病院等の防音工事の助成及び共同利用施設整備の助成並びに移転補償等が行なわれてまいりましたほか、東京国際空港及び大阪国際空港につき、騒音軽減の行政措置が実施されてまいりましたが、航空機騒音問題は、引き続く航空需要の急速な増大によって年々深刻化し、特に、大阪国際空港においては、大きな社会問題となっている現状でありますので、従来の学校、病院等の防音工事の助成を中心とする対策から、さらに進んで住宅の防音工事の助成のほか、住民から航空機騒音をできる限り遮断しようという基本方針のもとに、空港の周辺地域の整備、再開発を含む抜本的対策を実施しようとして本改正案が今回提案されるに至りましたことは、まことに時宜に適したものとして、賛意を表するものであります。
本案は、第一に運輸大臣の指定する特定飛行場の周辺区域を騒音の程度に応じ第一種第二種及び第三種の区域に区分して指定の上、防音対策を実施することといたしております。すなわち、まず、一般住宅の防音工事を助成することし、第一種区域に現存する住宅について、その騒音防止の工事に対し国が助成措置をとることを定めており、昭和四十八年度予算に三億円、昭和四十九年度予算に九億円が計上されているのであります。
また、第二種区域については、従前のとおり移転補償等を引き続き行なうこととするとともに、第三種区域につきましては、緑地帯その他の緩衝地帯として整備することにより航空機騒音による障害の新たな発生を防止し、あわせてその周辺の生活環境の改善に資することといたしております。
第二に、特定飛行場のうち、計画的な周辺整備を促進する必要があると認められるものを周辺整備飛行場として指定し、これについて当該都道府県知事が、あらかじめ関係市町村長の意見を聞き、かつ、当該空港の設置者等と協議して、その周辺地域における緑地帯等の整備、工場・倉庫等航空機騒音の影響の少ない施設のための土地の造成等を内容とする空港周辺整備計画を策定することといたしております。
第三に、周辺整備空港ごとに、国と地方公共団体が、ともに出資し運輸大臣の認可を受けて空港周辺整備機構を設立し得ることとし、空港周辺緑地造成事業、空港周辺再開発事業、代替地造成事業、共同住宅建設事業等、空港周辺整備計画の実施をこの機構に一元的に行なわせることといたしておりますことは、従来の単なる移転補償の実施にとどまっていたのに比べてまことに適切な措置と存ずる次第であります。
なお、昭和四十八年度予算におきましては、大阪空港を周辺整備空港に指定して同機構を設立することを予定し、七億五千万円の出資、十五億円の政府無利子貸し付け、三億円の補助金が計上され、また、昭和四十九年度予算においては、同機構に対して十四億九千四百万円の無利子貸し付け及び五億五千八百万円の補助金のほか、三十三億八千万円の財政融資が予定されているのであります。
以上の本法改正による措置は、いずれもきわめて妥当であり、騒音防止対策として現下において最も緊要な画期的な施策であると存ずるものでありまして、先般委員会に出席された参考人の方々のうちにも本機構のすみやかなる設立について賛意を表され、また現地の委員派遣におきましても、おおむねその設立を地元住民の多くの方々が希望されているのであります。
しかしながら、民家の防音工事の助成にいたしましても、また移転補償等にいたしましても、今後の財政的措置によるところが大であり、特に昨年十二月の環境庁告示の環境基準の達成のためには、その財源措置につき、勇断をもってその確保をはかる必要があることは言うをまたないところと存じます。
本改正案は、住民から航空機騒音をできる限り遮断することを中心とするものでありますが、政府においては、大阪国際空港における航空機騒音の実態にかんがみ、減便等の音源対策、さらには関西新空港の早期建設に特段の努力をされることを要望いたしまして、本案に対する賛成の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/2
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003・三池信
○三池委員長 金瀬俊雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/3
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004・金瀬俊雄
○金瀬委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、反対の意思を表明いたします。
まず第一に、航空機騒音の被害に対する政府の認識についてであります。
空港周辺の住民の被害は、航空輸送の異常な発展、ジェット機の導入、便数の激増等により、まさに言語に絶するものがあります。昼夜、休日を問わず、絶えず騒音や振動に悩まされ、身体や精神が侵害され、生活環境、教育環境等の破壊など、多様な被害が継続し深刻化しております。
しかし、大阪空港訴訟でも明らかなように、被告である国は、身体的被害は、学問的に明らかではない、精神的影響は、主観の問題である、という冷酷きわまる主張を、平然と繰り返し、本院委員会審議におきましても、迷惑はかけているが、重大な障害とは思わない、とすら放言しているのであります。かかる認識のもとに作成された本改正案によって、所期の目的である住民の福祉が守られるとは、断じて思えないのであります。
本法は、昭和四十二年、住民の生活安定と福祉の向上を目的として成立したものであります。したがって、今回その改正案を策定するにあたっては、まず被害の実態を正確に把握することを第一として、現行法の不備を克明に解明し、騒音防止に有効適切な新しい施策を盛り込む積極的な姿勢がなければなりません。
しかし、本改正案は、そのいづれの点についても全く不十分であり、被害者の救済というより、飛行場の救済であり、航空産業界への強力な政府の保護政策であり、この深刻な住民の被害に対する政府、運輸省当局のはなはだしい認識不足に対し、私はまず強い憤りを感ずるとともに、猛省を促すものであります。
次に、航空機騒音の防止対策は、他の公害と同様に、まず発生源への強力な規制が何より優先されなければなりません。
すなわち、騒音の軽減措置としての飛行場の運用時間の縮減や、飛行経路の調整、便数の制限、あるいは騒音量から割り出した最大許容便数の指定、また低騒音エンジンの研究開発等、国の責任においてなすべき対策が山積しているのであります。
この発生源への規制の欠落こそ、現行法の最大の欠陥であったといわなければなりません。しかし、これを正すべき本改正案は、相変わらずこの音源対策には何ら触れることなく、ひたすら、関係住民に犠牲をしいる住民追い出しの方策のみを規定し、飛行場周辺の住民を犠牲にし、航空需要の増大を許容しようとするはなはだ本末転倒の内容であります。
たとえば、三種類の騒音区域を指定し、その度合いに応じ移転補償や防音工事の一部を補助する、あるいは移転した跡地を緑地や緩衝地帯として整備する、そして、整備機構という公団まがいの法人をつくり、それに当たらせるというものであります。ここに流れる考え方は、明らかに、住民保護とはほど遠いものであり、公害の元凶である騒音発生源に対する規制は全く見られないのであります。
本案の提案説明には、住民から航空機騒音を遮断する抜本的対策を実施するとあります。しかし、ここにいう騒音からの遮断とは、まぎれもない住民の追い出しであると断ぜざるを得ないのであります。しかも、この法案に基づき設置を予定される空港周辺整備機構は、国と地方公共団体の出資による認可法人として、金と責任を地方に分担させるやり方であり、それでなくても苦しい地方自治体の財政を、いよいよ、悪化させることになりかねません。
現行の公害防止基本法にも、国は、事業者の行なう公害防止のために、金融、税制その他の措置を講ぜと規定し、公害発生源に対する国の措置を義務づけているのであります。このことはすなわち、公害はもとを断たなければだめだという考え方であり、そのための国の責任を規定したものでありましょう。民家の買い取りや、防音工事の補助をもって、騒音対策となし、国のなすべき本来の責任である空港周辺住民の被害や、苦脳を除去する発生源対策を回避するやり方は、断じて許されないことであります。憲法第十三条や第二十五条で保障されている人権や国民の生活権が侵されることになりかねないのであります。
最後に、航空機に限らず、騒音公害全般に対する政府の基本的姿勢について指摘しなければなりません。大阪空港に続いて新潟空港、あるいは新幹線の名古屋地区住民の訴訟も進められております。しかし関係住民がこの訴訟に持ち込むまでには運輸省や国鉄当局にしばしば足を運び、陳情、請願を繰り返し、当局の善処方を要請しているのであります。政府に、被害者の切り捨てでなく、真剣に住民の苦しみを受けとめ、住民の声が直接反映できる体制があれば、法廷でなく行政で解決できるのではないかと考えられます。現行法によっても、行政措置によっても、航空当局にその決意さえあれば可能な対策があったはずであります。
端的に言えば、現在航空機を利用している乗客の半数以上が観光客とのことでございます。団体旅行や観光客が飛行場にまき散らす騒音公害による被害に、なぜ住民が耐えなければならないのでしょうか。ただ公共性という名で押しまくってきた政府の態度こそ問題であり、大阪地裁の判決にさえあるように、公共性があるからといって、それを理由に被害者に受忍をしいることは許されないことであります。
一体、真の公共性とは何なのか、航空輸送の公共性とは何か、あらためて問い直さなければならない時代、新しい時代が来ているのではないかと考えられます。静かな農村に働く住民を一方的に追い散らし、強行している成田空港建設にもこの姿勢は顕著であります。この姿勢が開港ができない大きな要因でもあると思います。
民主政治とは、国民の切実な要求に的確にこたえるところから始まるはずであります。住民がやむにやまれず住民運動を起こしたり、法廷のさばきにたよる前に、あたたかい理解と適切な処理をすることこそ行政の当然のつとめであり、政治の果たすべき責務であります。空港、新幹線、高速道路等々、住民不在の開発万能主義によって推し進められてきた建設の陰に、その被害に泣く住民の声を、政府はいまこそ謙虚に聞くべきであります。
大阪判決を受けて、政府は、騒音防止、環境保全の観点から、総合交通体系や経済社会基本計画を再検討すると伝えられております。それならば、本改正案のような小手先の改正を急ぐ必要は全く認められません。当然、総合計画の抜本的再検討の中に、真に有効な住民の願っている静かな不安のない生活を保障することのできる空港騒音防止対策を組み込むべきであります。
以上の理由により、本改定案の練り直しを要求いたしまして、反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/4
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005・三池信
○三池委員長 梅田勝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/5
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006・梅田勝
○梅田委員 私は、日本共産党・革新共同を代表いたしまして、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律の一部を改正する法律案に対する反対討論を行なうものであります。近年における航空機のジェット化、大型化の進行は、飛行場周辺における住民に、騒音のみならず大気汚染による健康破壊など、耐えがたい苦しみをもたらしてまいりました。これは、「公共性」の名による環境の破壊であり、国による公害、不法行為というべきものであることは、最近の大阪空港騒音公害裁判の判決すら認めているところであります。
また、DC10型機のパリにおける惨事は、エアバスの安全性に問題を提起し、人口密集地域への乗り入れにきわめて慎重でなければならないことを教えたのであります。
航空機による公害をなくすためには、国は何よりも被害住民の立場に立って対処することが必要であることは、すでに質疑の中で明白にされてきたところであります。
しかるに、本改正案は、まず第一に、現在の航空機による騒音をまず発生源において規制するものとはなっていない点を指摘しなければなりません。
公害防止の基本は、何よりもまず発生源において防止することが、今日まで広く認められてきた原則であり、常識であります。昭和四十二年制定された現行法は、その点においてきわめて不十分でありましたが、政府はその中で認められた運輸大臣の規制権さえ行使していないのであります。逆に需要の増大を口実として、航空機の大型化、ジェット化を進め、増便に次ぐ増便を認め、大阪空港などは、当時と比べ一・七六倍にも激増させてきたのであります。
この結果、日本航空は毎年百億円をこえる利益をあげるなど航空会社は大もうけをいたしております。しかし一方の周辺住民は、騒音と排気ガス公害によって静穏権、環境権を破壊され、憲法の認めるところの生活権、健康権を脅かされるという非常な苦痛だけをもたらされているのであります。改正案は、発生源対策は何もなく、長年にわたるこの住民の苦しみにはこたえず、航空会社には引き続き利益を保証するだけのものとなっているのであります。
反対理由の第二は、空港周辺の整備事業などの推進によって公害に反対する住民の要求にこたえるかのように見せかけながら、実際は住民を空港周辺から追い出し、公害反対運動を弱め、さらに高度成長政策に見合った空港の増強をねらったものであるからであります。
今日の航空機騒音公害の激化は、自民党政府が日米安保条約によって空の主権を放棄し、米軍に日本の空をほしいままにさせながら、大資本奉仕の高度成長政策のもとで航空機需要をつくり出し、安全性と経済性を紙一重に置いた航空機の大型化、高速化を促進し、さらに住民の環境権や生活権を無視して新空港の建設や空港の拡張など、第二次空港整備五カ年計画を推し進めてきたところにあります。
ところが、本改正案は、この根本原因に何らメスを加えず、空港整備事業などわずかの改良をもって住民の不満をそらそうとしているのであります。
政府は、環境基準を告示しながら、質疑の中で明白となったように、それは望ましいものという努力目標にすりかえられ、改正案に盛り込まれた住宅の防音工事への助成拡大といっても、わずか一室か二室という限られたものであり、しかも四分の一は自己負担させられ、かつ十年たっても解決されないというものであります。これでは住民をいたたまれない状態に放置するものであり、結局住民を空港周辺から追い出すものと言わざるを得ないのであります。
反対理由の第三は、原因者の負担による被害者救済の原則が放棄されている点であります。
公害対策基本法は、第二十二条において、公害を発生する事業を行なっているものが、公害防止事業の費用を負担することを明らかにしています。航空機による公害は、航空会社と国の責任であることは明白であります。
しかるに、本改正案においても政府は、この基本を認めず、騒音対策事業を行なう費用を航空会社には負担させず、逆に、被害を受けている地方公共団体に空港整備機構への出資を義務づけようとしているのであります。
また、被害住民に対しては、損害賠償としての補償ではなく、あくまで恩恵的な補助という立場で対応し、鼻血まで出している健康破壊の被害に対しては、医療救済はいまなお放置されたままであることは、全く許せないものであります。
以上、私が述べましたように、今回の改正案においても、航空機騒音公害を住民の立場において解決するものとはならず、結果的には住民を追い出すことによって、航空機公害を不問に付そうとする、本末転倒のやり方は変わっていないと言わざるを得ません。
航空機公害の解決の基本は、第一に発生源規制の原則、第二に被害者救済の原則、第三に原因者負担の原則という三つの原則であり、政府が何よりも被害住民の立場に立つということが必要であります。
私は、政府がそういう基本的な立場に立ち、被害住民の苦しみを一日も早く解決するため、当面の緊急対策として、便数、機種の規制を含む大幅な時間帯規制による発生源対策の強化と、全額原因者負担による被害住民の救済、騒音防止事業の促進を要求すると同時に、本改正案をそういう角度から再検討することを要求いたしまして、反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/6
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007・三池信
○三池委員長 松本忠助君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/7
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008・松本忠助
○松本(忠)委員 私は公明党を代表して、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律の一部を改正する法律案に対して、反対討論を行なうものであります。
まず、今回の法改正の主眼点は、そのものずばりで言うならば、世界に類例がないといわれる公害空港という悪名を冠せられている大阪国際空港の航空機騒音に対し、住民をできる限り遮断するという基本的方針のもとに、空港周辺地域の整備、再開発を含む抜本的な対策を実施するため、昭和四十八年度において大阪国際空港について空港周辺整備機構を設立することを予定しての法改正であります。
わが党がこの法案に反対する第一の理由は、周辺整備機構を設立するにあたり、大阪空港を将来どのようにするかという点が明確に示されていない点であります。
去る二月二十七日、大阪地裁で行なわれた空港騒音訴訟における第一の問題であった航空機運行の差し止め請求は、周辺住民の究極的願いでもある静かな住みよい生活環境の復元にその目的があったのであります。しかるに差し止め請求が認められなかったこの判決は、公共性の優先的立場を認めたものとし、強い反発を覚え、わが党は、今後も原告側の主張を支持するものであります。
いずれにせよ、周辺住民は住みよい環境の確保を究極の願いとしているわけであり、住民にとって、周辺整備機構の設立は、大阪空港を現状のまま存続することを認めるものと考え、この設立に強く反対しているのであります。空港が現状のままであるならば、中央公害審議会の答申が実施されるであろう向こう十年間、常に現在のような騒音に悩まされ続けることになります。三木環境庁長官が、この判決後、次のように言明しております。すなわち「大阪空港はほかの空港に比べ深刻な環境条件下にある。将来新空港が建設された時点でも環境基準が達成されない場合は現空港の廃止も含めて再検討する」と語った旨、新聞報道されておりますが、このことは、政府当局が同空港の将来の問題について発言したきわめて重大な発言であります。
また、この七月にも新大阪国際空港の設置場所の決定が行なわれることも考慮し、また周辺住民の被害状況を配慮して、本法の改正にあたって、まず大阪空港の将来の姿を明確にすべきであります。そうでなければ周辺住民の真の理解は得られないと考えるのであります。したがって、代替空港として無公害の関西新国際空港を開港し、現大阪国際空港を廃止する以外に、航空機騒音基準の実損は不可能と考えるものであります。一番大事な一の点を明確にすべきであるにもかかわらず、政府は常に明言を避けております。この点を明確にしない限り、周辺住民の真の理解は得られないと考えるものであります。
したがって、周辺住民の真の理解なくしては、五千億円以上の国費を投入しようとしても周辺整備機構の事業遂行は全くとんざせざるを得ないであろうと考えるものでありまして、これこそ、いわゆる死に金を使うのたとえであり、国費のむだづかいであると言わざるを得ません。これが本法案に反対する第一の理由であります。
反対する第二の理由は、離着陸のたびに、平均八十五ホン、最高百十ホンといった金属性の騒音をまき散らす航空機に対して、空港周辺住民は限界を越えた苦悩を味わっていることは言うまでもありません。このことは、去る二月二十七日の大阪国際空港の公害訴訟に対する判決においても、最高五十七万円の騒音公害に対する賠償認容額が百三十二名について容認されたことによっても証明されるものであります。
しかして、その対策のほとんどが、今回の本改正案に見られるごとく、民家の移転、防音工事といった騒音公害のしりぬぐいを住民に押しつけた施策に終始していることは、許すことのできないことであります。政府がいまとるべき道の第一は、騒音の主たる発生源である航空機自体の改善、エンジンの改良等による騒音低減策に、もっともっと積極的に対処すべきであると考えるものであります。
一面、航空機騒音の軽減については、かなり技術的にむずかしい点があるとされているのでありますが、一九六九年ICAOが勧告している騒音証明制度の採用、リトロフィットの推進等々の抜本的な音源対策、ひいては発着回数の大幅な削減などの実施を早急にはかることが、航空機騒音解消の主体であると主張するものであります。したがって、少なくとも航空騒音に関する中央公害審議会の答申の基準値をすみやかに達成する音源対策が第一義であるにもかかわらず、明確なる青写真をも提示せず、これらの達成が困難であるとして、あと回しにして安易な対策に走ることは、公共性の名のもとに国民を愚弄する姿と断ぜざるを得ないのであります。
この法案に反対する第三の理由は、この法案の主要目的である大阪空港周辺整備機構の行なう事業内容が、空港周辺住民の期待とあまりにもかけ離れていることであります。たとえば民家の防音工事に対する国の補助率は、一室当たり七五%となっており、居住者は残り二五%を負担しなければならないのであります。もしかりに百万円の防音工事費用がかかったとすると、居住者は、二十五万円もの負担を負わなければなりません。騒音に悩む居住者にとって、家屋全体の防音化を強く要求するのは当然であります。その当然の要求を、老人や子供のためにせめて一室だけでも防音化したいと考えても、そのために多額の出費を必要とするのでは、このささやかな願いさえも捨て去らなければならないのであります。激しい騒音によって生活環境、家庭環境が破壊され、精神的、肉体的被害をこうむった上に、さらに多額の負担を負わされる点に、強く反対するものであります。
また、従来より施工せられていた学校、病院等の公共施設の防音工事についても、工事後のアフターケアーが全く行なわれず、そのため特殊に加工された防音資材の、たとえば防音用の二重ガラス等が破損した場合、これを補修するにはコストも高く、加えて、急いで補修することはきわめて困難な状況になっており、何のための防音工事かわからない状態にあるのであります。
これに類したことが民家の防音工事の完成後においても必ず発生することが予想されます。企業優先の運輸、環境行政がもたらした騒音被害のしりぬぐいを、このような形で居住者が負担する理由は全くないのであります。このようなことは、被害者の立場を少しも考慮せず、一方的に事を運ぼうとする官僚独善の行政と言わざるを得ません。
このような姿勢は、本法案の至るところに見受けられるのであります。この姿勢を改めずして空港周辺整備機構を発足させても、決して成功することはないと考えるものであります。
反対する第四の理由は、移転補償の問題であります。これまで行なわれてきた周辺住民の移転補償実績を見ると、その進捗率は平均わずか五〇%にすぎないのであります。
この低い実績の原因は、第一に、買い取り価格があまりにも低額で居住者のほとんどが納得しないこと。第二は、移転を希望しても条件に合う適当な代替地が見当たらないこと。そして第三は、移転交渉に当たる担当者がきわめて少なく、移転補償事務も繁雑であるため交渉が進まない等が理由としてあげられています。
このような過去の実績から考え、たとえ周辺整備機構が設立されたとしても、せいぜい事務担当者が多少ふえ、繁雑な事務が改善される程度であって、移転補償に伴う代替地造成や居住者の納得のいく移転補償費の提示など、諸問題解決のきめ手にはならないのであります。土地の暴騰、建築資材の大幅な値上がりは、移転補償によって得られた金額では現在住んでいる家屋と同規模、同条件のものを購入することが不可能であり、それを補うために居住者が多大な負担をせざるを得ないことは明白であります。
したがって、運輸当局は同機構の設立以前の問題として、まず代替地の造成や居住者の納得のいく、たとえば建築資材や土地高騰分の上乗せや値上がり分のスライドを考慮した移転補償額を提示する等、居住者が納得し理解できる確約を果たすべきなのであります。現在の移転補償の延長にすぎない本法の改正には絶対に反対であります。
最後に、これまでの航空行政はあまりにも周辺住民を無視したものであったのであります。騒音訴訟の判決で指摘されているように、今日までの騒音防止に取り組む運輸省の姿勢は、全く怠慢そのものであったと言えます。周辺住民が同機構の設立に反対する原因は、同機構に対する不信感によるところが大であり、これはすなわち、運輸省の航空行政や騒音対策に対する不信感が原因となっているのであります。
これまでの住民無視の行政姿勢を例にあげれば枚挙にいとまはありませんが、つい最近でもこのような例がありました。騒音訴訟の判決が出たあと、原告団は運輸大臣に対し、航空機の減便を申し入れております。しかし大臣は、この申し入れに対し何ら回答を与えていないのであります。ところが、原告側代表がその翌日、日航の朝田社長に申し入れをした際に、日航側は午後九時以降の航空機の乗り入れを中止すると発言しているのであります。
このような事実を見るにつけ、運輸省はほんとうに周辺住民の期待にこたえる対策を持っているのかと疑わざるを得ないのであります。
企業に対する強い行政指導さえできない当局の姿勢こそ改めるべきではないかと思います。この姿勢が改まらなければ、いかなる騒音対策を進めても、空港周辺の住民の理解は得られるとは思われません。このような姿勢が根底にある以上、周辺整備機構が住民の生活保護に役立つものとは考えられないのであります。
なお、最後に、三月三日夜、パリ郊外において発生したエアバス墜落事故は、大阪国際空港周辺住民にとって大きなショックを与えました。低騒音証明機のエアバスの導入を間近に控えている同空港として、このエアバスの威圧感や墜落事故発生の心配が現実のものとして大きくのしかかってきました。エアバスの安全性について確たる見通しがないままこの就航に踏み切ることには反対せざるを得ません。
この状況からして、地元を説得して就航了解を得ることはきわめてむずかしい状況となりましたことをつけ加え、以上の理由をもって本改正案に反対し、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/8
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009・三池信
○三池委員長 河村勝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/9
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010・河村勝
○河村委員 私は、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律の一部を改正する法律案について、賛成の討論を行ないます。
以下その理由を述べます。
この法案は、近年とみに深刻化した航空機騒音問題に対処するために、従来の法律による対策の不備を補おうとするものであって、それなりの効果を持っているとして評価するが、それは政府の言うがごとき抜本的対策を可能にするものとは言いがたい。しかしながら、その欠陥の多くは、本法律外の問題あるいは法の運用にかかる問題であって、政府当局の決意いかんによっては相当な効果をあげ得るものと考える。ゆえにわが党は、特に左の諸点について政府の誠意と努力を期待し、本法案に賛成するものである。
一、最大の課題である大阪空港については、新空港の開発によって現空港を撤去するか、騒音上無害なローカル空港にするのでない限り本質的な解決はあり得ない。その点が明確でなければ周辺住民の不信は除かれず、すべての対策も住民の協力を得られないであろう。政府はすみやかに新空港の設置計画を決定し、右の方針を明らかにしなければならない。
二、周辺整備計画を進めるにあたって、いまだに原因者負担の原則に基づく財源の手当てが行なわれていない。すみやかに対策を決定すべきである。
三、騒音によって障害を及ぼす航空機の機数、機種の制限については、質疑の中で確認したように、継続審議中の航空法改正案の成立によって可能となるが、それ以前においても、問題の緊急性にかんがみ、行政指導によって積極的な措置を講じなければならない。
右の諸点については、すでに質疑を通じておおむね政府の善処が約束されたものであるが、重ねて、政府当局が、深刻きわまる航空機騒音公害に苦悩しつつある周辺住民の心を心として、誠意をもって実行することを強く要望して、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/10
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011・三池信
○三池委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより採決いたします。
公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/11
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012・三池信
○三池委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/12
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013・三池信
○三池委員長 この際、佐藤守良君、兒玉末男君、三浦久君、松本忠助君、河村勝君から、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の五派共同提出をもって、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
本動議を議題とし、その趣旨の説明を求めます。佐藤守良君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/13
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014・佐藤守良
○佐藤(守)委員 ただいま議題となりました本案に対し、附帯決議を付すべしとの動議につきまして、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
附帯決議の案文は、お手元に配付してありますので、朗読は省略させていただきます。
本附帯決議案は、当委員会における本法律案審査におきまして、委員各位から述べられました御意見及び御指摘のありました問題につきまして、これを取りまとめたものでありまして、本法の実施にあたり、政府において積極的に措置すべきところを明らかにし、本委員会の決議をもって、その実施に遺憾なきを期することといたした次第であります。
以下、附帯決議案の内容につきまして簡単に申し述べます。
まず第一項は、昨年末環境庁告示により、航空機騒音に係る環境基準及びその達成期間が示されましたが、航空機騒音障害の重大性にかんがみ、可及的すみやかにこの基準を実現すべきであるとの趣旨であります。
第二項は、航空機の音源対策の強化を積極的にはかるとともに、便数増加の抑制または便数の削減についても十分配慮すべきであるとの趣旨であります。
第三項は、航空機の騒音防止対策は特定飛行場の設置者たる国が中心になって行うべきであるとの観点から、地方公共団体が騒音防止対策の実施に伴い分担いたします負担を極力軽減するよう、国において適切な措置を講ずべきであるとの趣旨であります。
第四項は、今回新たに行なうことといたしている民家の防音工事の助成につきまして、当面予定されております内容についてさらに改善するよう今後鋭意検討を加えるとともに、移転補償に要する経費、予算の一そうの充実をはかるべきであるとの趣旨であります。
第五項は、運輸大臣が第一種、第二種及び第三種の区域を指定するに際しては、騒音の測定調査を十分に実施し、その適正を期すべきであるとの趣旨であります。
第六項は、空港周辺整備計画の策定及び実施につきましては、関係地方公共団体及び地元住民の意思が十分反映されることが必要であり、そのため適当な配慮をすべきであるとの趣旨であります。
第七項は、空港周辺整備計画の実施に要する経費は膨大な額となるものと予想され、また公害対策の経費は原因者負担がその原則でありますことにかんがみ、計画の実施に支障を来たさないよう原因者負担の原則に基づき、十分なる財源の確保をはかるべきであるとの趣旨であります。
以上をもって本動議の趣旨説明を終わります。何とぞ御賛成を賜わりますようお願い申し上げます。(拍手)
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公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、 公共用飛行場周辺における航空機の騒音等の障害の防止の重大性にかんがみ、本法施行にあたり、次の事項につき適切な措置を構ずべきである。
一 航空機騒音に係る環境基準の可及的速かな達成を図ること。
二 航空機の音源対策を強化するとともに便数の抑制又は削減についても十分配慮すること。
三 地方公共団体の財政負担の軽減を図ること。
四 住宅の防音工事の助成の改善についてさらに検討するとともに、移転補償費の充実を図ること。
五 第一種ないし第三種区域の指定については、十分なる測定調査を行い適性を期すること。
六 空港周辺整備計画の策定及び実施にあたつては、関係地方公共団体並びに地元住民の意思が十分反映されるよう適当な配慮をすること。
七 空港周辺整備計画の実施に要する経費について、原因者負担の原則に基づき財源の確保を図ること。
右決議する。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/14
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015・三池信
○三池委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
本動議について採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/15
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016・三池信
○三池委員長 起立総員。よって、本案は佐藤守良君外四名提出にかかる動議のごとく附帯決議を付することに決しました。
この際、運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。徳永運輸大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/16
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017・徳永正利
○徳永国務大臣 ただいまは公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律の一部を改正する法律案について、慎重な御審議の結果御可決いただきまして、まことにありがとうございました。
また、決議されました附帯決議の内容につきましては、その趣旨を十分尊重し、誠意をもって実施に当たる所存でございます。まことにありがとうございました。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/17
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018・三池信
○三池委員長 おはかりいたします。
ただいま議決いたしました本案の委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/18
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019・三池信
○三池委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/19
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020・三池信
○三池委員長 次回は、来たる八日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。
午前十時五十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203830X01219740306/20
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