1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十九年四月八日(月曜日)
午後二時八分開議
出席委員
委員長 木村 俊夫君
理事 石井 一君 理事 鯨岡 兵輔君
理事 福永 一臣君 理事 水野 清君
理事 河上 民雄君 理事 松本 善明君
足立 篤郎君 加藤 紘一君
小林 正巳君 坂本三十次君
田中 龍夫君 石野 久男君
勝間田清一君 渡部 一郎君
出席国務大臣
外 務 大 臣 大平 正芳君
出席政府委員
外務政務次官 山田 久就君
外務省経済局長 宮崎 弘道君
外務省経済協力
局長 御巫 清尚君
農林省農林経済
局長 岡安 誠君
委員外の出席者
外務大臣官房領
事移住部長 穂崎 巧君
通商産業省通商
政策局経済協力
部長 森山 信吾君
外務委員会調査
室長 亀倉 四郎君
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四月五日
世界連邦樹立の決議に関する請願(安里積千代
君紹介)(第三四八三号)
同(加藤常太郎君紹介)(第三四八四号)
同(中川一郎君紹介)(第三四八五号)
同(濱野清吾君紹介)(第三四八六号)
局(安部昭吾君紹介)(第三五四二号)
同(塩崎潤君紹介)(第三五四三号)
同(正示啓次郎君紹介)(第三五四四号)
同(關谷勝利君紹介)(第三五四五号)
同(高沢寅男君紹介)(第三五四六号)
同(土井たか子君紹介)(第三五四七号)
同(服部安司君紹介)(第三五四八号)
同(原健三郎君紹介)(第三五四九号)
同(芳賀貢君紹介)(第三五五〇号)
同(八木昇君紹介)(第三五五一号)
同(安井吉典君紹介)(第三五五二号)
同(渡辺惣蔵君紹介)(第三五五三号)
同(小林正巳君紹介)(第三六四五号)
同(受田新吉君紹介)(第三六四六号)
同(佐藤孝行君紹介)(第三六四七号)
同(玉置一徳君紹介)(第三六四八号)
同(坊秀男君紹介)(第三六四九号)
同(松浦周太郎君紹介)(第三六五〇号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
国際協力事業団法案(内閣提出第五七号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/0
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001・木村俊夫
○木村委員長 これより会議を開きます。
国際協力事業団法案を議題とし、審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/1
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002・河上民雄
○河上委員 国際協力事業団法案につきまして、問題がたくさんあるのでございますけれども、まずこの法案を拝見いたしまして、非常に実務的な点から伺いますが、理事の数は何人ぐらいになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/2
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003・御巫清尚
○御巫政府委員 理事は十二名ということが第八条に書いてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/3
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004・河上民雄
○河上委員 各種公団あるいは事業団が現在たくさんあるわけでございますけれども、それらにおける理事、役員の数と比較いたしますと、今度の、国際協力事業団の理事十二名というのは非常に多いように感ずるのでありますけれども、他の各種公団、事業団の役員の定数は一体どのようになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/4
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005・御巫清尚
○御巫政府委員 御指摘のように、理事の数が十二名というのは、これまで存在しております事業団、公団等を通じまして比較的多いほうでございますが、それは他の例で申し上げますと、この事業団のもとになりました海外技術協力事業団が常勤の理事は四名、移住事業団も常勤の理事は四名、それから事業団という名前はございませんが、海外経済協力基金が四名、日本輸出入銀行が六名、それから多いのでは、これは公社でございますが、専売公社の場合には十名、また水資源開発公団でございますが、この場合には八名、日本住宅公団が十一名、そういうような例がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/5
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006・河上民雄
○河上委員 いま局長が言われましたが、私のほうで調べましたところでも、理事の数が非常に多いということは先般来問題になっております。しかし、その中でも今度の国際協力事業団の理事の数、役員の数というのはきわだって多いわけですね。日本住宅公団はいま十一名というふうにおっしゃいましたが、これは定数は五名以上、農地開発機械公団が四名以内、日本道路公団が八名以内、森林開発公団は三名以内、船舶整備公団が四名以内、首都高速道路公団は六名以内、水資源開発公団は八名以内、阪神高速道路公団は四名以内、等々とこうなっておりまして、十名以上というのはまず少ない。大体少なくとも八名以内というのが多いのですね。この前も政府関係機関の労働組合から、役人の天下りの問題とあわせて、いわゆる政府関係機関における役員の数が非常に多い、そしてその給与も他と比較して非常に恵まれておる、退職金も非常に多いというようなことが問題になっているのでありますけれども、今回の国際協力事業団というのは、またそういう中でも十二名というのはいかにも多過ぎるのではないか、こう思うのですけれども、何か市町村の合併のときの市会議員の数みたいなもので、やたらにごそっと多くなって、そのうち減らすつもりかどうか知りませんけれども、どういうお考えでございますか。こんなに十二名も必要なのかどうかですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/6
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007・御巫清尚
○御巫政府委員 先ほどお答えの中でも申し上げましたように、本件事業団は、目的、それから業務の範囲というところで書かれておりまするように、従来存在しておりました海外技術協力事業団並びに海外移住事業団の両事業団を統合し、さらにそのほかにも新しく出資、投融資というような仕事を行なうというために、この事業団の規模は、これまで存在しておりました事業団と比べまして非常に大きなものとなります。その仕事の規模が大きくなるという意味でございます。したがいまして、それに要します職員の数も、従来からの者、それから新たな仕事に従事する者等もひっくるめて相当な数になります。したがって、役員につきましてもかなりの数を置きまして、それらの大きな仕事を分担させていくことが必要であろうということから、先ほど申し上げましたように、海外技術協力事業団に四名、移住事業団に四名の常勤の理事がおりましたということから、新しい事業が加わったということもあわせて、理事を十二名以内置くということにいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/7
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008・河上民雄
○河上委員 従来とも政府関係機関の役員の数は多過ぎる、しかもこれが高級官僚の天下りのいい植民地だという非難が多い中に、今回こういう国際協力事業団というものが発足する、その理事が従来の関係機関の理事の数から比べましても二倍近くもあるということは、非常にまずいのじゃないかと思うのであります。私は、この問題一つとらえても、今回のこの協力事業団法案がかなりあわてて寄せ集めをしたという感じを、いまの局長のお話からも承ることができるような気がするのですが、大臣いかがでございますか、関係機関の役員の数が多過ぎる、頭でっかちであり過ぎる、また高級官僚の植民地といいますか、天下りのよい対象になっているというような非難の中で、こういう膨大な役員構成というものがはたして必要だったのかどうか、その点はどういうようにお考えになりますか、大臣のお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/8
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009・大平正芳
○大平国務大臣 問題の取り上げ方が、機構は簡素であることが望ましいという観点から申しますと、河上さんがおっしゃることよく理解できますけれども、われわれといたしましては、事業団をせっかくつくりまして、その任務を十分に果たしてまいらなければいけないわけでございますので、その趣旨から申しまして、今度の事業団は多くの機構を統合いたしまして一つの仕組みにまとめ上げたわけでございます。したがって、仕事が非常に多岐にわたっておりますので、その分担を責任を持ってしていただく意味におきまして、十二名以内というのはやむを得ない数字ではなかったかと私は思うのであります。
しかし、本来機構が簡素で、しかも活動は活発であるほうがよろしいことは申すまでもございません。これを運営してみまして、そしてこの経験に徴しまして、御趣旨のような点を念頭に置きまして考えてみる必要があるのではないかと考えております。いま多くの機構を統合いたしまして、十分責任を果たすためには、この程度お認めいただかなければならぬのじゃないかという方針には変わりはないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/9
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010・河上民雄
○河上委員 この理事の数が非常に膨大になっているということに一つ示されておりますように、今度の国際協力事業団法の法案をまとめる過程で、いろいろないきさつがあった。これはこの前の本会議における趣旨説明に対する質問の中でも申し上げたところでありますけれども、どうも便宜主義的に、いろいろなものを適当に集めたような印象をぬぐい切れないのでございます。
一体、この新しい事業団法案をつくるにあたりまして、そこで働いている職員の意向というものをどの程度聞いておるのか。海外技術協力事業団あるいは海外移住事業団、その他で働いておられる職員の方々の実際の業務の中でどうしても統合は必要なんだというような声があったのかどうか。そういうことには全く無関係に上の指導で適当に事業団をつくる、しかし行管のほうからあまりふやしちゃいかぬといわれておるので、二つあるのを一つにしたとかいうようなことであるのかどうか。やはり実際に働く人の意欲をそぐようでは、理事の数を十二名にしたところで十分な業績をあげ得ないのじゃないかと思うのです。この法案を提出されるにあたり、あるいは作成されるにあたって、そこで働いている職員の方々の意向、あるいは従来から述べられているようないろいろな意見を生かして、そこから国際協力事業団というものをつくらなければいかぬ、こういう判断に達せられたのかどうか、私ども非常に疑問に感ずるわけです。そういうことが実際に行なわれておるのかどうか。
また第二に、対外経済協力審議会というようなものがあるようでございますけれども、その他そういう審議会で、機構の問題について、国際協力をさらに推進するために国際協力事業団という包括的な機構をつくる必要があるという答申がいままで出ていたのかどうか。そうした答申に沿ってやったのかどうか。あるいは海外協力をする相手であります開発途上国のほうから、どうもばらばらじゃ困る、一本化してほしいというような要望があったのかどうか。この法案は、昨年予算作成の過程で田中内閣総理大臣が発言をされて、それが契機で急速にまとまったと伺っておりますけれども、その前提としてこういうような三つのことがあったのかどうか、それを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/10
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011・御巫清尚
○御巫政府委員 海外移住事業団と海外技術協力事業団とは、それぞれその設立の目的も業務も異にするものではございますが、やっております仕事の中にはある程度性質の似通ったものがございます。従来から海外技術協力事業団と海外移住事業団とは、いずれも日本の一つの事業主体が海外に出て仕事をするものでございますので、お互いのやり方にちぐはぐのないようにしていかなければいけないということから、先生御指摘のように一緒になったほうがいいというところまでいった話し合いではございませんが、仕事のやり方等について話し合いをしてきたことは事実でございます。ただ、そのために一緒になってやろうではないかという結論を得るまでにはなかなか簡単には至っておらなかったようでございます。
それから、対外経済協力審議会は、御承知のように永野氏を会長といたしまして、民間の有識者十五名からなるものでございますが、ここでは経済協力の機構について、日本の現在の経済協力の仕組みが複雑に過ぎてなかなか思ったように仕事ができないのではないか、もう少し単純な機構にすべきではないか、したがって、関係省にばらばらにあるようなものも順次統合していくようにすべきであるといったようなことを趣旨とする考え方がしばしば述べられておりますし、現実に二、三年前にそういった趣旨の答申も出ておるわけでございます。ただ、この国際協力事業団というような形での答申は現実には出ておりません。
三番目に、開発途上国の側におきましては、日本から、たとえばまず技術協力によりまして事前調査をやったり、それからいわゆるフィージビリティー調査というものをやりましたあと、すぐにまた資金協力につなげてほしいというような要請はしばしば出てまいっております。その点につきましては、従来の日本の仕組みではなかなかやりにくかったのを、この事業団をつくることによってやりやすくするということで、開発途上国の希望には沿うものであると存じております。
もう一つ、御質問にはございませんでしたが、ほかの先進国の仲間からは、毎年OECDの開発援助委員会で日本の経済協力の審査を行なうわけでございますが、昨年の審査の席上におきましては、日本の経済協力に従事している人間は意外に少ないというような指摘をされ、また仕組みをもっと単純化するとか統合するとかすべきであるというような指摘が行なわれていることをつけ加えさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/11
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012・河上民雄
○河上委員 いま局長はそれは対外経済協力審議会の答申にもあるということでございましたが、もしほんとうにあるならば、それ以外の何らかの審議会とか諮問機関でこういうような形でやるべきだというものがもしあるならば、この場でそれを出していただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/12
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013・御巫清尚
○御巫政府委員 ただいまは対外経済協力審議会の答申の中に国際協力事業団をつくれというような答申はないと申し上げたわけでございます。ただ、日本の対外経済協力をもっと能率的に行なうべきであるといったような趣旨の答申がかつて出たことがございますということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/13
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014・河上民雄
○河上委員 そういたしますと、具体的な答申はなかったということでございますね。——私はこの前もちょっと申し上げましたが、今回の国際協力事業団に統廃合されている中で、どうも海外移住事業団の仕事はちょっとなじまないのではないかという意見を申し上げているわけなんですけれども、海外移住審議会というものはございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/14
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015・穂崎巧
○穂崎説明員 海外移住審議会はございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/15
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016・河上民雄
○河上委員 昭和四十六年九月の海外移住審議会の勧告は、この移住事業団の問題についてどういうふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/16
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017・穂崎巧
○穂崎説明員 昭和四十六年に出されました海外移住審議会の答申のことでございますが、この答申は、現在——その当時でございますけれども——の時点に立をして日本の移住政策どういうふうにあるべきかということについて答申をしたわけでございます。その中身は、簡単に申し上げますと、移住は御承知のように戦後どんどん進んでまいりまして、海外にすでに移住者は、日系人を含めまして、アメリカを合わせますと百四、五十万いるわけでございますけれども、戦後日本と外国との関係は非常に密接になって、いわば国際化という時代になりましたので、この際、日本の海外移住政策、これは広い意味におきまして、海外移住問題というものを単にいままでわれわれが焦点を当てておった移住者だけではなくて、いわば長期的に、外国に長い間滞在する日本人のことも考えて、日本のそういう広い意味の移住政策を進めないと、やはり海外に住んでおる日本人とこれを通ずる日本とその国との関係というものの重要性というものを見失うのではないか。そういう意味におきまして、海外移住審議会としましては、従来とっておった移住政策のほかに、広い意味におきまして海外移住というものをとらえるべきではないか、こういう趣旨の答申をしておるわけでございます。
そこで、その答申と、いま問題になっております国際協力事業団の関係でございますが、現在われわれとしましてそういう新しい意味の、広い意味の移住というものについてどういうふうにやっていくべきか。これは従来の狭い意味の移住と違いまして、日本として、相当長期的に海外に出ておる日本人を含めての政策でございますので、どういうふうにすべきかということは、個々の問題についてはいろいろやっております。ただ、全体といたしまして今度のような国際協力事業団の中にそれを取り組む、取り入れるというような段階にまではまだ至っておりません。したがいまして、この国際協力事業団の中には、従来われわれが海外移住事業団で取り扱っておったと同じ範囲の問題につきましてこれを取り上げるということになっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/17
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018・河上民雄
○河上委員 その審議会の勧告では、機構の問題で、統合よりも協調にとどむべきであるというような趣旨のものがあったように記憶するのでありますけれども、今回この国際協力事業団をつくる過程においてそうした勧告は完全に無視されたというふうに理解するほかないように思うのですが、その点はどういうようにお考えでいらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/18
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019・穂崎巧
○穂崎説明員 ちょっと恐縮でございますが、いまの御質問もう一回お繰り返しいただけませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/19
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020・河上民雄
○河上委員 私も正確な記憶ではないのですけれども、海外移住審議会の勧告の中に、その機構については統合するよりも各機関の協調にとどむべきであるというような趣旨の文句があったように記憶しておるのですけれども、私もいま手元に持ってきておりませんので、むしろそちらのほうが専門家でいらっしゃるから持っておられると思いますが、そういう勧告の趣旨等を考えますと、この国際協力事業団の中に海外移住事業団を入れることがよかったのかどうか、非常に問題があるように思うのでございますが、その点ちょっと正確にお聞かせいただき、また御意見も伺いたい、こういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/20
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021・穂崎巧
○穂崎説明員 いま御指摘のありました統合よりも協調云々というのは、ここに資料を持っておりませんが、私が思い出しますと、おそらくそれは先ほども経済協力局長からお答えいたしました海外移住事業団とそれから海外技術協力事業団、この二つの統合の問題についての海外移住審議会の答申であろうと思います。
そこで、この点もちろん移住審議会でそういう答申が出たわけでございますが、その後われわれのほうでいろいろ検討をいたしました結果、たとえばいろいろなものの見方があるわけでございまして、今回海外移住事業団をこの国際協力事業団に統合いたしましたにつきましては、いわば移住というものが従来とだんだんと意味が変わってきたということをさっきちょっと申し上げましたけれども、従来は、いわば昔の移住といいますのは、非常に、そう言ってはなんでございますけれども、日本で生活に困ったというような方が出ていった面もございますし、いろいろなことがございましたけれども、すでに一番最初の移住からいきますと百年近くたっているわけでございますけれども、その長い間を振り返ってみますと、やはりこれらの移住者の功績というものは日本人というもののイメージと申しますかそういうものの向上、あるいはそれらの移住者を通じましてその国の経済開発が進んだとかいろいろな面がございまして、われわれといたしましてはそういう移住者が国際協力に非常に寄与しているという点に着目したわけでございます。
他方、こういう国際協力という面に着目いたしますと、今度の国際協力事業団というものとの接触面と申しますか、いわば国際協力というものにおいて接触面がある。同時に、今度の国際協力事業団のような事業がかりに海外でいろいろ行なわれます場合、われわれとしてはそういう開発の中に移住者の経済的地位の向上という場面も出てくるのではなかろうか。
それやこれやを考えますと、やはり一つの大きな意味におきまして移住というものと国際協力というものとの相接触する面がある。こういう点をとらえまして国際協力事業団に移住事業団を入れたわけでございまして、先ほど審議会のほうで答申いたしましたことはむしろ移住事業というものを独自のものと考えて、したがってこれといまの技術協力事業団は一緒にならぬほうがいいだろうという意味の答申をしたわけでございますけれども、先ほど申し上げましたような問題点をいろいろ洗っていきますと、もっと別の見方があるのではなかろうかということで、海外移住事業団を今度の国際協力事業団に統合することにした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/21
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022・河上民雄
○河上委員 いまの御答弁でわかりましたことは、海外移住審議会の勧告、つまり、海外技術協力事業団と海外移住事業団との統合を急ぐよりも、むしろ両者は別々の機関で協調したほうがいいという勧告は取り下げられたといいますか、リジェクトされたということは、これはもうはっきりしていると思うのです。それはここで一応確認しておきたいと思うのです。
それから、にもかかわらず、その後いろいろ考えてみたら、あれやこれやという表現でしたけれども、あれやこれや考えて一緒にしてもよかろうじゃないか、こういうようなことでございますけれども、事はこれ、非常に重大でございますので、海外移住の理念というものを一体どう考えておられるのか。あれやこれやで済む問題でないと思うのでございますが、これは一体どういうふうにお考えになりますか。
これはあとで大平外務大臣にも伺いたいのでありますけれども、自民党の、かつての総理にもなられ、また総裁でもあった石橋湛山氏の「石橋湛山全集」というのが全十五巻ありますけれども、それのたしか第一巻だと思いますけれども、石橋湛山氏がジャーナリストとして最初のデビュー作といってもいいような論文がございます。それは何と題してあるかというと、「われに移民の要なし」というのです。日本人は領土が狭く資源乏しく人口過剰であるという宿命論は間違っておる、日本は四つの島で生きていけるのである、移民というものを考えるその発想が植民地支配へ発展していくおそれがあるというような意味で、「われに移民の要なし」という非常な画期的な論文を書いておる。当時二十八歳ですから、それがどの程度反応を呼んだかわかりませんけれども、石橋氏が後に、大正十年に朝鮮、満州、台湾を捨てよう、こういうふうに呼びかけるようになりましたその前提になる思想なのであります。
したがって、この移住というのは本来はそういう国家目的で、あるいは経済的な事情から行なうのが筋ではなくて、憲法二十二条でうたわれているような個人の人権の問題として、職業選択の自由やなんかと同じような意味で海外移住というものが認められるべきものだと思うのであります。したがって海外移住の理念というのは、ある意味において国というものが外国との関係をどう考えるかということをそこにはしなくも明らかにする一つのポイントだと思うのですね。いまおっしゃったように、あれやこれや考えて大体似たようなところだからということでやっていいものかどうか。その点は、これは機構ができますと、機構はそれ自体ひとり歩き始めますので、私はこの際海外移住の理念というものは一体どういうことか、海外協力ということとそんなに本質的に同じものなんだろうかということをここで少しはっきりさせておく必要があろうと思うのですが、大平さん、海外移住という理念をどういうようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/22
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023・穂崎巧
○穂崎説明員 海外移住の理念につきましては、いま先生のおっしゃったことと私の意見は大体同じだと考えます。
基本的に申しますと、海外移住といいますのは、昔から個人が自分の幸福を追求する、日本よりも海外に出たほうが自分は幸福になるのだという考えで幸福追求の手段として出るものでありまして、いま国が置かれておる立場は、そういう移住に対しまして、もちろん南米のようなところに行くわけでございますし、日本ほどいろんな援護は行き届きませんから、政府といたしましてこれらの移住者をどのようにすれば幸福であるかということで、いわば政府は側面的にこれを援助しておるわけでございます。
ただ、いまこれが国際協力と結びつくと申し上げましたのは、われわれこの援護をやるにあたりまして、やはりまず第一に移住者の幸福は考えなければいかぬわけでありますけれども、少なくとも移住者が置かれている環境が外国であります。したがいまして、われわれとしましては、できる限り、移住しただけでなくて周囲の人々の幸福も考えるというようなことでやっていかなければいかぬのじゃなかろうかというようなことを考えておるわけでございます。したがいまして、移住自身はいわば個人の幸福追求ということでございますけれども、われわれが移住に対していろいろ考えていかなければいかぬ問題の中には、そういう国際協力という大きな理念に結びつくものを考えていかないと、やはり移住者の幸福だけではその国との関係、全般的な日本とその国との置かれた関係からいきまして、それだけじゃ済まないだろうというようなことで国際協力という問題が出てくるわけでありまして、国際協力という一つの大きな目標に結びつき方が、いわば移住というのは間接的な結びつきでありますけれども、少なくともそういう結びつきがあるのじゃないかということでございます。
誤解があるといけませんからはっきり申し上げますと、別に国が移住者をどんどん押し出すとかなんとかいうことではございません。ただ国としては、そういう外に伸びていくという力を助けていこうじゃないか、同時に向こうへ行ったらそれがうまくいくように援助しようじゃないか、こういう考えでございまして、その点ひとつ先生の御理解をいただきたいと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/23
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024・河上民雄
○河上委員 さっきちょっと石橋さんのお話をしたのですけれども、石橋さんがそういう論文を書いたのは明治の末年です。当時は日本はもう住みにくいから、人口は余ってしようがないから棄民、民衆を捨てるかわりに外国へ移民を送るというのは国家政策になっておった。やがて昭和になりましてから、いわゆる大陸進出等のかけ声の中で満蒙開拓団のようなものもできたわけです。
そういうものと海外移住事業団がやるべき移住事業というものとは本質的に違わなければ困るわけですね。これは国際協力ということは非常にいいことではありますけれども、はたしてそれと海外移住というものとがそんなにすんなりと結びつくものかどうか、たまたま外国との間に接触があるからというだけで一緒にしていいものかどうか、その辺はよほど間違えないようにしないと私は危険だと思っておるのです。
特に今回の国際協力事業団の一つの仕事の分野といたしまして、農業の開発輸入というようなことが実際には考えられております。その場合に、農民もたまたまちょっと行ったくらいではだめだということで、こういう海外移住事業団で送り出されるところの移民と農業プロジェクトとが結びつくというようなことでも起きてまいりますと、これはへたをしますと満蒙開拓団の二の舞いになりはせぬか、非常にモダンな満蒙開拓団になりはせぬかという危険もあると思うのでありますが、そういう危険は全くないのかどうか。私はそういうようなことをいろいろ考えてみますと、やはり海外移住の理念というのは——単なる理念を争っているようでありますけれども、実はこれは実際の仕事を当てはめていくときに非常に重要なポイントになってくる、こういうように思うのです。
大平先生にそういうことをいまここでお伺いするのはどうかわかりませんけれども、石橋さんがそういう一つの石橋哲学の出発点として移民問題を取り上げられたわけですから、ひとつ大平さんも、将来総理になられるかもしれないので、やはりこういう大平哲学をここで披瀝していただければたいへん幸いだと思うのでありますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/24
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025・大平正芳
○大平国務大臣 御披露申し上げるような哲学は別に持ち合わせばないのでありますが、石橋先生がおっしゃったことは私にはよく理解できるわけでございます。日本は土地が狭い、資源が乏しい、したがってよそへ出て行かなければ活路はないというような見方は私はとりません。三十七万平方キロは、私どもが志を遂げるに決して狭い国土とは思いません。われわれ目に見える資源は乏しゅうございますけれども、われわれの頭脳と新鮮な労働力とすぐれた組織力、これは非常に貴重なそして一番手がたいわれわれの資源であると思うわけでございまして、これを開発し動員していくということに成功すれば、三十七万平方キロというのは、われわれにとりまして決して狭い国土とは考えないわけでございます。したがって、国として移民政策を国是としてとる必要は私はないと考えます。
しかし、先ほど政府委員からも御答弁申し上げましたように、日本の国民の海外に進出、移住したいという希望を日本の国民から奪う必要はないと思うのでありまして、そういうことに希望を持たれている人がありますならば、政府としてこれをお手助け申し上げるということは考えてよろしいことであろうと思うのであります。すなわち、いまの移民政策は、移住政策は、国が移住政策を国是として持っているというのではなくて、原点は、個人の自由な意思が前提にありまして、そしてそれを実行に移す場合に国として可能な限り手伝いをいたそうということであると私は了解をいたしておるわけでございます。
それから、また一面経済協力の問題でございますが、経済協力もそれと同工異曲の論理を持っていると思うのであります。すなわち、日本の政府が第三国に対しましてどうしても経済協力をするのだなんということであってはいけないと思うのであります。相手国がみずからの計画を持ち、意欲を持ち、自助努力を行なうということが前提にあるわけでございまして、そしてそういう国が日本の協力を求めてまいりました場合にわが国がそれにどう対応してまいるかということが経済協力でございます。経済協力は決して押し売りをしているわけではないわけでございまして、ちょうど移民と似通った性格を持っておると思うのであります。
これまた先ほど政府委員が御説明申し上げましたように、現地でそういう経済協力が展開される場合、それから移民に対する協力が展開される場合、その舞台は外国である。そしてその仕事がたまたま組織的に連携を保ちながら効率的に行なったほうがよろしい場合があるのではないか。そういう連関は日本の政府がつくったのじゃなくて、むしろそういう状況がありまして、そしてそこに連携作業が行なわれるような状況があるということに御理解をいただきますならば、この事業団がねらう目的というものも押しつけがましいものでもなく、身がってなものでもなく、経済の侵略とか支配とかそういうものとは一向無縁なものでございますので、そういった点につきましては御理解をいただけるのではないかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/25
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026・河上民雄
○河上委員 いまのお話を承っている範囲では、何か海外移住事業団を新たに国際協力の事業団の中へ入れる特に必然性というものは感ぜられないような気がいたしますが、いま大平さんから移住についての基本的な哲学を伺って、やはりそういう本来基本的な哲学をはっきりさせておかないと、実際の業務が始まってから結局非常に大きな問題が起こるということを私は心配しているわけでございます。
最近、新聞によりますと、南米移住を海外移住事業団のあっせんで行なったところ、苦闘十一年、借金だけが残って帰ってきたということで、大阪地裁に海外移住事業団を相手どって二千万円の損害賠償の請求の裁判を起こした方があります。これから国際協力事業団という形で本腰を入れるということであります場合に、こういう過去の問題をおろそかにしていいということにはならないと思うのです。
この問題はどこから出てきたのか。これは裁判の結果によりまして国の責任といいますか、国ではないかもしれません、海外移住事業団の責任というものが問われると思うのでありますが、外務省の設置法によりますと、この移民の問題についてはあっせんということばが使われておるのですね。おそらくこのあっせんというところから国あるいは海外移住事業団というものが移住者に対してどの程度の責任を負うかということが出てくるのじゃないかと思うのです。どうしてこういうような問題が起こったのか、今後こういうような問題が起こらないという歯どめはどこにあるだろうか、その点いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/26
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027・穂崎巧
○穂崎説明員 いま最初に御指摘のございました訴訟の問題でございますが、これはブラジルにありますバルゼア・アレグレという場所にたしか昭和三十五年か六年ごろに移ったある移住者の方から提起された訴訟でございます。
内容は、当時は移住振興会社というのがございましたけれども、振興会社が募集いたしました募集要網が、現地へ行ってみると必ずしもそのとおりになっていないということでございますが、われわれが現地までに調べましたところでは、募集要綱と現地の状況は大差はない、要するに募集要綱に偽りがあったということではないようなわれわれの考えでございますが、これは何ぶん現在訴訟になっておる問題でございますので、詳細はここで申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。
それに関連して御指摘のありましたのは、そういういろいろな移住者の方々が困っておるのではないかという問題であるかと存じます。現在確かに移住者の数は減っております。一応南米が六百人から七百人ぐらいで、カナダは七、八百人、アメリカが三・四千人その他でございますので、年間やはり五千人くらいおりますけれども、数は減っております。
われわれがいま非常に注意しなければいかぬのは、移住者を出すということよりもむしろ現在出ている移住者、古い人は十数年、新しい人は十年ばかりでございますけれども、こういう人々は非常に現地で苦労しておられる。これに対して現在の移住事業団ができる限りの援護を与え、いち早く現地に定着あるいは自立できるようにしなければいかぬということであると思いますので、われわれとしましては、年々こういう移住者の方々の定着安定に寄与できるようないろいろな事業を考
えてやっているわけでございまして、これが進みますればそういう問題も少なくなると思います。私としましても、国際協力事業団に移住事業団が入りましても、その援護を手厚くするという目標だけは見失わないようにしてやっていきたい、このように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/27
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028・河上民雄
○河上委員 この問題につきましては、国あるいは海外移住事業団はかなりあっせんをしたわけですか。もしあっせんをすれば、当然そこにある程度の責任が出てくるわけですし、全く個人の自由意思で行ったということでありますれば、また違った評価も出てくると思うのです。今後この海外移住事業団の仕事が、新しい移住者が全くゼロになってもそれはそれでいいんだということであるのか、やっぱり絶えずある程度の移住者が必要なんだということであっせんをされるおつもりなのかどうか、そういうようなことにも関連してくると思うのでありますが、この事件の場合、あっせんというのはどの程度のことを意味し、またどの程度の責任を生ずるというふうにお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/28
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029・穂崎巧
○穂崎説明員 この件につきましては、移住事業団が現地に土地を買いまして、その土地を耕作に適したところを割りまして、それをある程度造成をいたしまして分譲したわけでございます。分譲するにあたりましては、大体一区画幾らということで面積がきまっております。ただ、どこに入るかということにつきましては、移住者が現地へ行ってきめる。最終的に自分の判断でここということがきまればそこを売る、こういうことでございます。そういう意味におきましてあっせんということがございますが、同時に、先ほど申し上げましたように、移住事業団としましては、そういう人たちが現地へ定着をいたしまして、そこに学校をつくったりあるいは道をつくったり井戸を掘ったり、そのようないわば援護事業もやっているわけでございます。
したがいまして、通常の場合ですと、うまくいけばそこで定着ができるわけでございますけれども、本件の場合はどういう理由か知りませんが、十年以上たちまして日本へ帰ってきたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/29
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030・河上民雄
○河上委員 いまのお話伺っている限りでは、やはりどうも海外移住事業団の責任といいますか、その人は全く自由意思で行ったということには必ずしもならないような感じを受けるのです。これは裁判で争われることと思いますが、先ほど来申し上げておりますように、海外移住の理念というものが一体国際協力の一環なのかどうかですね。その辺の問題をもう少しはっきりしない限り、それと同じような問題、幾らでも起こるのじゃないかということを私は心配いたします。
特に今度の法案では、農林省関係の仕事として農業プロジェクトをいろいろ計画することになっているようでありますが、そういう場合に、従来ならば耕作の指導員を日本から数人送って、二、三年で帰ってくるというようなケースがあったわけですけれども、相当の食糧増産に役立つような仕事を向こうでやるという場合に、こういう移住者、移住事業というものとそういうものと結びつける考えはあるのかないのか、ここで伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/30
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031・岡安誠
○岡安政府委員 いま御質問の海外農林業開発と移住との関係でございますが、私、考えておりますのは、全く関係がないということは言い切れないと思います。たとえば海外の、外国の希望によりまして大型の農林業開発を進める際に、あわせて日本人の移民を希望する場合があるとするならば、そういう場合もあり得ようと思いますけれども、一般的にはやはり私ども考えておりますのは、プロジェクトを計画いたしまして、それを遂行するに必要な技術並びに資金の援助を行なうということを私どもは今後の海外農林業開発の基本に考えております。したがって、御質問の点はあり得ないということは申し上げかねますけれども、主流になるということはあり得ないのじゃないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/31
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032・河上民雄
○河上委員 いまの御答弁は、非常に微妙であるように思うのです。将来これが非常に大規模になりましたときには、いまここで大阪地裁に提訴をしておられます十倉さんのような問題が起こる可能性がある。国際協力という半ば国家的な事業に協力するということで行った。しかし一方では移住者として取り扱われるという問題が起こる可能性、十分あると思うのですね。そういうことが主流になっては困るのですけれども、いまのお話でありますと、そういうことは理論的にも実際的にもあり得ないことではないというふうなお話でございますが、そうなりますとやはり海外移住の理念というものを非常に明確にしておかないと、これは今度の国際協力事業団の発足とともに第二の満蒙開拓団を生み出す可能性が出てくるのじゃないかということを私はここでその懸念を表明しておきたいと思うのです。
特にいま農林省の方、おられますからついでに伺いますけれども、食糧自給という政策に最近また変わってきたようにも聞いておりますが、食糧自給ということと海外における農業プロジェクト、農業開発援助という問題との関連は一体どうなるのか。
たとえば、これは田中総理大臣が言われたのではないかと思うのでありますが、新聞か何かで私は読んだように記憶しておりますけれども、ボルネオの農地三十万ヘクタールの開発に協力しようというようなことを総理が言われておる。ところが、一方ではこれは日本で減反政策で三十万ヘクタール減らす、そういうことをやっておるわけで、どうも三十万ヘクタール国内では切り捨てる、海外では三十万ヘクタール農地の開発に協力する、こういうことになりますと、あまりにもこれは数字が合い過ぎてしまいます。こういうことでは困るわけですけれども、一体この点どういうようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/32
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033・御巫清尚
○御巫政府委員 ただいまの御質問に関連いたしまして申し上げられますことは、この国際協力事業団は、総則の目的とか、それから二十一条の業務の範囲とかいうところに書いてございますように、その背後にあります理念は、あくまでもその協力をいたす相手国の国民の福祉のために行なわれる協力でございまして、日本の利己的な利益を追求するために行なわれるものではない。したがいまして、たまたま新聞等で御指摘のような数字の符合があったのかもしれませんが、これは全く関係のないことでございまして、一方わが国がたとえばインドネシアにおいてインドネシアの食糧増産に協力するために資金協力、技術協力を行なうということとわが国が食糧自給体制をとるということとの問題は、全く別々の見地から考えらるべき問題であると私どもは承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/33
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034・岡安誠
○岡安政府委員 御質問でございますので、減反政策と海外農林業開発との関係につきまして多少申し上げますが、いま御指摘の、まず減反政策という問題ございますけれども、現在農林省がやっておりますのは、米につきましては、ほうっておけば需要量以上の米が生産をされるわけでございますので、需要量までにこれを押えまして、さらに必要な在庫を確保するということは予定いたしますけれども、来年度におきましては大体百三十五万トン程度の米の生産調整はする。ただ、その農地はできるだけ米以外のものをつくってもらうということで進めておるわけでございます。
たまたま生産調整と三十万ヘクタールとの関係という御指摘もございましたけれども、三十万ヘクタールの農地の壊廃というものは、現在進められております各種の開発をそのまま進めていけば、大体十年間に百万ヘクタールぐらいの土地を必要とする。その土地はやはり現在の宅地その他のほかには林地、農地等を必要とするわけでございますが、そういう計画的な開発をスムーズに進めるためには、私どもも計画的にといいますか、必要な土地を供給することにやぶさかではございませんけれども、一方やはり国内におきます農産物の自給度を向上するためには優良な農地はぜひとも確保しなければならないというふうに考えております。したがって、優良な農地の確保とそれから必要な土地の提供というものを調整をとりながら進めるということを、総理その他が申しておられます三十万ヘクタールの用地の確保につきまして農林省も協力をしていくというつもりであるわけでございます。
したがって、今後の農産物その他の自給度の向上につきましては、私どもは国内でできる可能性のある農産物につきましては、極力これは国内で自給をする。したがって、自給力をできるだけ高めるというような方策をとっているわけでございまして、どうしても国内で自給できないものにつきましてこれを海外に依存する、これも安定的に供給ができるような角度から海外にその供給を求めるというとらえ方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/34
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035・河上民雄
○河上委員 いまのお話でちょっとまだはっきりしないのですが、そういう農業プロジェクトをつくって農業開発援助をする、それはあくまでその先方の国の国民の福祉あるいは食糧増産に役立つことに協力するのである、こういうことでございますけれども、しかし同時に、いまお話しのように、完全には自給したくても全部できない、米以外のものについては海外に依存せざるを得ない。その場合に、われわれが協力をした、国際協力事業団が協力した農地の開発が非常に成功をして生産物ができた場合に、もし余剰ができたら、恒常的に日本がそれを得たいという考え方はおありなのかどうか、ごく一般的な貿易交渉で、話し合いで不足分を海外から輸入するという構想であるのか、その中にいわば手付のような形で、ある程度一定の確保をしたいというお考えなのか、全体として通常の貿易交渉で不足の食糧を輸入するというお考えなのか、その点、事業団をやる以上は、はっきりしておかないといかぬと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/35
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036・岡安誠
○岡安政府委員 農産物の安定的供給のためには、国内の自給力を高めるということのほかに、やはりトウモロコシ、大豆、マイロその他、どうしても国内では十分、一〇〇%自給ができないものがあります。これはやはり安定的な供給を海外に求めなければなりませんけれども、私どもは何もこれを農林業開発、いわゆる開発輸入といわれておりますけれども、これですべてをまかなうとは考えていないわけでございます。やはり安定的な供給を確保するためには、相当大規模な供給国との輸入に関します長期取りきめを進めるとか、その他世界的な規模におきまして量並びに価格の安定のための協定を結ぶとか、いろいろあるわけでございます。
ただ、私ども考えておりますのは、それ以外にも供給源の多角化とかそういうような見地から、現在は輸出能力がないけれども将来輸出能力が拡大される可能性のあるところがある。特にその政府におきましても、輸出農産物の増産によりまして経済を立て直すというような強い要請のあるところもございます。そういうところにつきましては、やはり当該の国の輸出農産物余力を増大させるために、大規模なプロジェクトをつくりまして技術並びに資金の援助をするということを私どもは考えておるわけです。
もちろん国際協力事業団が考えております海外農林業開発は、そのような開発輸入のみではございません。相手国の政府が、人口問題の解決のためにとか、また自国内におきます食糧自給を達成するために、農林業の、特に農業の協力を要請する場合があります。もちろんそういう場合にも、私どもは喜んで協力をすることにやぶさかではございませんけれども、やはり相手国の中には、輸出農産物を特に力を入れてやりたいというところがあれば、たまたま私どものいわゆる開発輸入という希望と合致するわけでございますので、その際にはそういう方向で協力をいたしたいということを考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/36
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037・河上民雄
○河上委員 いま当局の方のお話の中で、可能性のある食糧、可能性のない食糧というふうなことばがございましたけれども、それは具体的にいうとどういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/37
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038・岡安誠
○岡安政府委員 代表的なものを申し上げますと、御承知のとおり米につきましては自国内で完全自給ができますけれども、たとえば麦類につきましては、なかなかこれは、わが国の自然状況その他から申しまして、一〇〇%わが国で自給をするということは不可能だというふうに考えております。それから大豆、トウモロコシ、こういうようなもの、それから木材につきましても、最近の需要の増大等を考えれば、一〇〇%自給というものはなかなかむずかしいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/38
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039・河上民雄
○河上委員 いまのお話で、ある程度ねらいはわかるのですけれども、御承知のとおり九日から国連の資源特別総会も開かれます。また先般の、海洋法会議を控えまして、ケニアのナイロビで開かれた開発途上国七十七カ国グループ会議のいわゆる専管水域、それから大陸だな等についての新しい考え方、主張、こういうものが出ております。
そういう中で、まあ向こうの発展のために寄与するといいながらも、できるならば日本の不足をまかなうためにというか、日本の食糧政策の中にいわばビルトインされるような形で農林業開発計画というものを盛り込むことがはたして適当かどうか。いまそれが可能のように思われましても、国際協力事業団が実際に運営されていくあと何年か後には、いまの開発途上国における資源に対する恒久主権という考え方はますます強まってくる。そういうことを考えますときに、それがはたしてどれだけうまくいくものかどうか。結果的にはうまくいかないのだったら初めからそういうことは期待せずにやるぐらいのことがないとうまくいかないのじゃないかということを、私はちょっと心配するのです。
この外務委員会でも、私が専管水域二百海里の問題を取り上げましてから二、三カ月の間でありますけれども、その二、三カ月の間においてすら、次々いろいろな名目で開かれる国際会議における開発途上国の主張はだんだん強くなってきておる。そういう中で、日本だけいわゆる三海里説を幾らとったってだめだということになってきているわけですね。
そういうことを考えますと、いまおっしゃったようなことがはたしてどれだけうまくいくのかどうか、いまうまくいくように思っても、あと二、三年後にはそれはもう全く絵にかいたもちというか、全然違ったことを夢見ていたにすぎないのじゃないかということになりはしないかということを私は非常におそれるのです。いまのような御説明ではそういうことになる危険が、私は非常に多いと思いますね。こういう世の中が大きく動いているときは、かなわぬことにいつまでも執着するよりも、思い切って捨ててかかっていかないと、かえって浮かぶ瀬は出てこないのじゃないかという気がいたします。これは通産関係のお仕事にも同じような構想があるようですが、そういうことがはたしてどれだけ通用するものかどうか、私は非常に疑います。いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/39
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040・岡安誠
○岡安政府委員 御指摘のとおり、あすから開かれます資源問題中心の国連の会議におきましても、資源の恒久主権についての開発途上国等の要求が非常に強いというように聞いております。ただ、私考えますのは、農林業開発につきましても私どもは先ほどのような考え方で仕事を進めたいと思いますけれども、基本はやはり相手国政府等とも十分話し合いをいたしまして納得ずくでこれをやるということを考えているわけでございます。したがって、都合のいいところだけをとってあとは知らないというような相手国の態度を前提とした海外協力ではないつもりでございますので、私どもはそう不安ということは考えておりません。
むしろ、御指摘があったかと思いますけれども、現在の日本の農産物の自給の見通し等を考えますと、先ほど申し上げました麦類、大豆、トウモロコシ等につきましては、そのほとんど大部分をアメリカから輸入をいたしておる、いわばアメリカに対する依存度が極端に高い状態でございます。はたしてそのままでいいのかということを私どもは考えざるを得ないわけで、やはり安定的な供給を確保するためには、供給源を拡大いたしまして、多角的な、かつ安定的な輸入の体制をつくり上げるということが、長期的に見ましてやはり日本のためであろうというふうに考えて、私どもはさっき申し上げたような考え方を、繰り返し申し上げますけれども、長期的な観点に立って今後進めて
いきたいというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/40
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041・河上民雄
○河上委員 それはよくわかりますけれども、私が先ほど申し上げたようなこともこれは現実になっているということを十分認識してもらいたいのです。極端なことを言いますと、今度は石油だけではなくて、いわばこの仕事としてつくった農業プロジェクトの大きな農地というものをこれは国有化するとかいろいろな問題だって将来は起こると思うのです。食糧も石油と同じことでありますね。そういうようなことも考えながらやらぬと、海外協力というものは事実上できない時代になってきているのじゃないか、私はそう思うのです。
大臣、いかがでございますか。いま私がちょっと提起いたしました問題について、これはもうやがて私は二、三年後に大問題になると思うのです。この法案が成立したあと実際に事業を行なうときにこの点が一番大きな問題になると思うのです。大臣の御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/41
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042・大平正芳
○大平国務大臣 かねて申し上げておりますように、資源保有国の資源に対する主権の主張が非常に強くなってきておる。これは河上さんが御指摘のように動かしがたい、根強い歴史の方向でございまして、それを前提に考えておかなければならぬことは御指摘のとおりだと思っております。ただ、開発途上国の場合、せっかく資源は持っておりますけれども、これを活用する資本、組織、技術というものに恵まれていないわけでございまして、そういう意味では持たざる国なんです、持てる国でございますが、同時に持たざるものを持っておるわけでございますから。私どもはそういうものはございませんけれども、そういう魅力ある力、力量を持っておるわけでございますので、これはどちらが損得という問題を離れまして、やはり持てる者と持たざる国々同士が調和ある関係をつくり上げていかないと、世界の仕組みはもたないのじゃないかと思うのでありまして、まずその調和ある仕組みをつくり上げるような意味の国際協力というネットワークをたんねんにつくり上げていくように努力しなければならぬと思うのであります。
その場合次に出てくる問題は、かくして資源は開発されてくるという場合に、それはどういう仕組みを通じて処分されるかということでございまして、あなたがおっしゃるように、これは自由な交易のルールに従いまして無差別、平等の原則で取引が行なわれる、いまガットが志向しているような方向で、そういう秩序の中で処理が行なわれるか、それとも石油でいまよく問題になっておりますように、二国間取引というようなものが主流になるのか、そういうことが非常に大問題だと思うのでありますが、日本といたしましては、できるだけ自由な交易の秩序がグローバリーに確立して、その中で食糧にせよ原材料にせよ安定確保の道が保障されるような仕組みをつくることが私は日本として大事だと思うのであります。
しかし、ものごとは原則のあるところ必ず若干の例外があるものでございまして、例外は全く排除するというようなことをそうかたくなに考える必要はないと思うのでございまして、一部開発輸入というのが二国間の了解のもとで行なわれて、全体の秩序をそこねない範囲内においてそういうことが行なわれましても別に差しつかえはないのではないかと思うのでありまして、この国際協力事業団が行なう事業なんというものが世界経済の中でどれだけのウェートを持つかというと、これはほんのかそけきものでございます。経済の大海の中では非常に大きなウェートを持つものではございませんが、われわれは向こうの立場に立って向こうの福祉向上、向こうの経済の自立、向こうの計画に従いましてそれに虚心に協力していこうというところにいかりをおろして協力を考えていこうということでございまして、国際協力の網の目の中の一環をこういう姿でやっていったらどうだという御提案でございまして、これができるといろいろな——これに過大な期待を持っておりません。こういうことも一つの手だてではないかという考え方で立案をいたしておるものでございますことを御了解賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/42
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043・河上民雄
○河上委員 それではもう次の質問者の渡部さんが到着されたようですので、二つほどもう一度まとめの意味で伺っておきたいと思うのですが、最初に申し上げました今度の事業団の組織のあり方であります。
まず私は、何度申し上げてもよいと思うのでありますけれども、海外移住事業団というものをこの中に入れるということには何かなじまないものを感ずるわけであります。現に海外移住事業団を相手取って、南米移住で失望し、苦闘十一年借金だけ残って帰ってこられた方が提訴いたしておりますこの事件が、非常によく物語っているように思うのであります。一方これに入ってもしかるべきだと思うようなものが実は入っていない。
私の最近の個人的な経験ですけれども、イリノイ大学のある先生が、大学間の交流をしたいということで相談がありましたときに、今度日本では何かこういう法律が、新しい事業団ができるそうで、その中に編入される国際交流基金を使いたいのだ、こういうような話でございます。いや、これは実は入っていないのだ、そんなことを説明してもしかたがないから私は黙っていましたけれども、そういうようなことでございます。一方入ってもいいのじゃないかというものは入っていなくて、入るのはどうもなじまないのじゃないかと思うものが入っておる。こういうようなことで、私は、十分練られないうちに急いでこの国会に提出されているというような印象をぬぐい去れないのであります。
これは論理的にいえばやはり技術協力を幾つかに分けるべきだと思いますが、大体三つに分けたらどうかというふうに思うのです。まず政府援助、無償でやるもの、これを一つのグループ、第二としては資金協力、これは政府援助、有償でやるもの、第三には貿易を通ずる援助、民間でやるもの、こういうような大まかに三つに分けて、少し論理的に分ける必要があったのじゃないか。それに従っていろいろな従来の事業団なり機関を統合するならばかなり意味があると思うのであります。そうしませんと、これは私はある人から聞いたのでありますけれども、たとえばOTCAですか、海外技術協力事業団の仕事はこれは無償であります。無償であるために、かなり海外では評判がいい。ところが今度一つの大きな中へ入ってしまいますと、金を取るものも同じような仕事の中でやるわけですから、そうするとせっかくの名声が影が薄くなるというようなことも十分あり得るのじゃないか、こういうように思うのです。
したがって、第一部門、第二部門、第三部門というような論理的な分け方が実は必要であって、それに従って統廃合をするならば、またこれは新しい国際事業団をつくる意味はかなりあったと思うのです。したがって国際交流基金などは、これは無償でやるものの中に当然入れるべきであるというふうに私は思います。こういう点をもう少し考えるべきではなかったか。また政府援助で統合するならば、たとえば海外経済協力基金とかあるいは日本輸出入銀行とか、そういうようなものはむしろこういう中で一つの仕事をすべきではなかったか、こんなようなことを感ずるのであります。そういうようなもう少し整然たる整理というものを行なった上で、この国際協力事業団というものをもう少し練っていただきたかったように思うのであります。
そのことから、いま言ったように、世間の人は当然入ると思うような国際交流基金というようなのがここへ入ってないというようなことがもう起こってきているのであります。この点を一体どういうふうにお考えになるか。もう出ちゃったものはしようがない、こういうことであるのかどうか。理事の数が十二名、監事三名、要するに役員は十八名にもなるわけですが、こういうような膨大な役員がはたして必要であるのかどうか。一事業団について何人ずつというような割り当てでやっているのかどうか私はわかりませんけれども、一体この十八名の役員というのはそれぞれ任務分担があってやるのか、ただそれぞれ関係している役所の利益代表者として入ってくるのかどうか。私は、こんなに十八名も必要はないのじゃないか、ほんとうに仕事をするつもりなら五名でも六名でもやれるのじゃないか、こういうように思うのです。
それからもう一つ、この国際協力事業団法案を見まして、私は、この統廃合の過程で、ここで働いておる職員の方々は一体どういうことになるのか気になるわけです。これを拝見しますと、たとえば海外移住事業団の解散のところを見ますと、附則の第七条に「海外移住事業団は、事業団の成立の時において解散するものとし、その一切の権利及び義務は、その時において事業団が承継する。」と、こうなっております。こういう場合に、この中に、たとえばこの労働契約、労働条件などがそのまま継承されるのかどうか、あるいは幾つかの事業団でそれぞれ労働条件が違っている場合に、これはやはり同じ事業団で働く以上は同じ待遇というものが保障されなければ意味ないと思います。士気に影響すると思うのです。
そういうような問題について、これをほっておくとかあるいは足して二で割るというようなことではなくて、やはりみんな高い水準にならして、合わせてやらないと、いままで低かったところに対して、おまえいままで低かったのだからそのままでいいということでは、この事業団の中で同じ職員として働く意欲というのは出てこないのじゃないか、こんなようなことも私はおそれるわけですが、実際今回の機構統廃合につきまして、私がいま指摘いたしました三つの問題点について政府当局の御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/43
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044・御巫清尚
○御巫政府委員 第一番目の御指摘は、いまの無償と有償と貿易というような三つのカテゴリーに分けて、それぞれの機関を整理べきではないかという河上先生のお考えでございますが、これはまことに傾聴に値するりっぱなお考え方かと存じます。ただ、今回この国際協力事業団をつくりますときに考えました一番の問題点は、この資金協力と技術協力というものの結び目に何かうまくいかない点が従来あったのではないかという点、並びに政府がやっております協力と民間がやっております経済協力との間のいわば連絡と申しますか、調整と申しますか、そういうところに若干の欠けたものが従来あったのではないかというような点から考えまして、この新しい事業団を考え出したわけでございまして、決していまこれによりまして今後の経済協力のやり方の理念を恒久的に一定化しようというような大それた野心を抱いてつくったものでもございませんし、この事業団が全部を総合しようというようなことを考えたわけでもございません。したがいまして、先生御指摘のような、海外経済協力基金でございますとか日本輸出入銀行でございますとかあるいはまた国際交流基金といったようなもののお仕事は、それぞれの分野でそのまま残されておるというのが実情でございます。
確かに文化の面におきます協力という点からとらえれば、国際交流基金のやってまいります仕事はかなりユニークなものでございまして、御指摘のように無償協力という点から見れば技術協力にも非常に近いような、あるいは政府のやっております無償協力にも非常に近いような点はございますが、文化という面のユニークさをかなり発揮していくものがあってもいいのじゃないかということで、この国際交流基金はそのままとりあえず残してあるわけでございます。
第二点、役員の数が全体で十八人にもなって多過ぎないかということでございますが、これはもちろん、新しい事業団ができまして後に、この仕組みの問題というものはその事業団において考えられることでございまして、現在のところ私どもといたしましても、どういうふうなやり方が一番適当しているかということについてまだ最終的な結論には到達しておりませんし、私どもが最終的な意見に到達するというようなことではございませんけれども、やはりこれだけの人数がおればそれぞれの分担の仕事ができるというふうに考えるのがごく自然ではなかろうか。したがいまして、これだけの人数の人たちに、この人はこういう仕事というふうに分けてやっていただくような考え方が出てくるのではないかと考えております。
それからまた三番目に、この事業団の仕事に従事いたします職員の問題でございますが、これにつきましては、御指摘の附則の七条ですか、そういうような問題で一切の権利義務の引き継ぎというようなことがございますが、その中には法律論としてはそういう雇用契約とかそういうようなものも含まれてくるのだというふうに従来解釈されておるようでございます。
しかし、これにつきましても、新しい事業団ができまして、現在二つの事業団に分かれて、それぞれの事情に従ってそれぞれの事業団が理事者側と労働者職員側との間で仕組みをつくっているわけでございますので、そういった過去の経緯、それから今後のこの事業団のあり方というようなことを考えて、新しい事業団において十分に、いわばある意味では段階をつける必要がある場合には段階的に、そうでない場合もあるかもしれませんが、考えていってもらいたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/44
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045・河上民雄
○河上委員 いま最後の御答弁ですけれども、新しい事業団では、過去のそれぞれの事業団にある労働条件あるいは雇用条件、そういうもののでこぼこはこれは残すということではなくということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/45
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046・御巫清尚
○御巫政府委員 先ほどの御答弁の趣旨といたしますところは、やはり一つの事業体になりますわけでございますから、公正妥当な方向に次第に調整をはかっていくという趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/46
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047・河上民雄
○河上委員 それはもうやはり士気にもかなり影響いたしますので、当然同じ事業団であるとするならば、これはやはり全職員同じ待遇を与えなければならない、私はそう思いますし、過去のいろいろな労働条件、それぞれの事業団の組合でかちとった一つの条件というものは、やはりそれは引き継がれていくべきものだと私は思うのです。その点誤りのないようにしていただきたいと思います。
最後に、もう時間がありませんが、私が、先般の本会議質問でも申し上げましたように、国際協力につきまして、あるいは海外経済援助、国際協力というような問題につきまして、機構だけが先走っても国際協力についての理念というものの確立がないとうまくいかないのじゃないか、こういうことを強調いたしたいのであります。
最後に外務大臣にお尋ねをいたしまして私の質問を終わりたいと思いますが、いまこのような非常に流動的な世界経済の中で、国際政治の中で、そしてまた開発途上国が資源に対する恒久主権という、そうした主張を強めている中で、北側先進工業諸国が富んでいて、開発途上国は貧しいんだという考え方が、実はそうではなくて、むしろそれは逆である、北側がもろくて南側のほうが強いのではないかというような反省が石油危機を契機に起こっておる今日において、日本が開発途上国に対し援助をしたり、あるいは協力するというのは一体どういうところに理念があるのかということをやはりここで明らかにしておかないと、外貨がたまったときはあわててやるし、今度はなくなっちゃったらやめようかというようなわけにはいかないのじゃないかと思うのです。そういうことを踏まえまして、大平外務大臣に最後に国際協力、日本のような資源小国が国際協力をやるのはどういうところにそもそもの根拠があるのか、意味があるのかということをお伺いしたいのであります。御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/47
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048・大平正芳
○大平国務大臣 一つ世界社会の中におきまして、お互いの助け合いをしていくというのは当然世界の平和、安定の維持のためになくてはならぬことだと思うのでございます。いま経済協力の問題が提起されたわけでございますが、これはただいままでのところ、先進国と開発途上国の間の格差が年々歳々拡大していくようでは世界の平和に役立たない、世界の平和を危険におとしいれるおそれがあるという意味で、国際機関で提唱され、その仕組みがいろいろ検討されて実行に移されてまいったわけでございますので、日本といたしましては一応各世界社会に仲間入りさせていただいている以上は、人並みのことをせにゃならぬということでございまして、わが国の力量に相当した貢献を世界の安定のためにいたすということでなければならぬと思うのでありまして、わが国の利益のためにやる、わが国の都合によってやるというのじゃなくて、一つの国際的な責任であり、義務であるということでいたしてまいらなければならぬと思うのでございます。
ところが、現在のようにここ最近非常に基盤が変わってまいりまして、強いもの必ずしも強くないという状況になってきた場合どう考えたらいいかということでございますが、それはたまたま私が先ほども述べましたように、われわれはそういう意味で資源的には持たざる国でございますけれども、しかしわれわれ目に見えぬ資源を持っておるわけでございますから、この両方の調和ある仕組みをたんねんにつくり上げていくということに経済協力を発展していかなければならないのではないかと思うのであります。
それもまた第一義的な目的は、やはり世界の平和と安定のためになすべきことをなすということでなければならぬと思うのであります。てまえがってなことを考えてはいけないと思うのであります。しかし、そうすることによって、お互いが互恵的な結果を享受することは差しつかえのないことで、望ましいことであると考えておるものでございます。
われわれといたしましては、理念と申しますと、これはあくまでも第一義的に世界の社会の一員として、われわれの立場におきまして国際的義務としてやるべきことをやるのであるということ。それから第二はやはり相手国の立場、相手国の意欲、相手国の計画、相手の国の努力というものを踏まえた上で、それに対して謙虚な協力をしてまいるということでなければならぬと思います。しかしながら、同時に、第三には、わが国の力というものをはかってまいらなければならぬわけでございまして、われわれの協力いたす能力というものを十分はかりながらやってまいらなければならないものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/48
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049・河上民雄
○河上委員 いま大臣から伺ったわけでございますが、これから明日始まる国連資源総会あるいは六月の海洋法会議その他そういう国際会議が次々と開かれる中で、やはりそれにたえられるような理念というものをわれわれは持たないといけないのじゃないかと思うのでございます。いまの大臣のお考えも、また私どもとしていろいろ検討さしていただきたい点もたくさんあるわけですが、そのことを含め、あるいはその機構の仕組み、編成の上でやはりいろいろまだ納得できないようなところもあるわけでございます。理事の数の問題などもございますが、そういうような問題を含めて、また後日質問の機会を留保させていただいて、きょうはこれで終わりにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/49
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050・木村俊夫
○木村委員長 渡部一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/50
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051・渡部一郎
○渡部(一)委員 ただいま議題となっております事業団法案に関し、通産省、外務省、農林省から御説明を受けたのでありますが、各省庁とも力点の置き方がだいぶ違いますので、その辺からまずお伺いをしたいと存ずるわけであります。
まず、本法案に対し私が承った限りにおきましては、この国際協力事業団法案の目的、第一条の書き方がきわめて不的確なのではなかろうかと私は思うわけであります。それはなぜかと申しますと、第一条を読んでみますと、三省庁管轄の事項を一カ所にまとめようとした御努力は、これは非常に技術的な背景があったということはわかるわけですが、日本外交として、国際協力に対してどういう態度で臨むかという基本的な意向が鮮明にされていないわけであります。
つまり、河上委員もいま何回か御質問されているわけでありますが、一体国際協力事業団は何ものなのか、ほんとうの腹の中は何なのかという、そのフー・アー・ユーという問いかけに対する答えがないわけであります。これは国際協力事業団の仕事の中身の一部分を次から次へと部分的に表明して足し合わせたものである。ですから、これは人間でいうならば、この人間は歩くのであるとか、しゃべるのであるとか、めしを食うのであるとかは書いてあるが、この人間が悪人なのか善人なのかは書いてない。国際協力事業団法というこの法律は、その意味ではきわめて不可解な法律ではないかと私たちは思うわけであります。したがって、この間の御審議でその辺が明らかになればいいし、明らかにならないならば、これは奇形児であると私は思います。
その理由のまず最初を申し上げますと、簡単な例で幾つかお話ししたほうがよかろうと思うわけであります。これは四月六日の朝日新聞の中から切り取ってきたのでありますが「東南アジアの女性たち」というのが同紙に連載されております。その中で、サイゴンに住んでいるゴ・バ・タン夫人という人の物語が、こういう小さな連載で書いてあります。これは何が書いてあるかといいますと、このゴ・バ・タン夫人というのは、ベトナムの中で、共産主義者かあるいは政府かという二重対決構造の中で、女性こそ平和の力であるというので、生きる権利を要求する婦人運動という五十万人の運動を組織し、サイゴン政府に対して抵抗した人であります。獄中に投獄され、この第三勢力の平和運動がどれだけひどい弾圧を受けたかは想像にかたくないわけであります。「せっけん水を飲まされて発狂した十五歳の少女、天井からつり下げられ打たれて気絶した女子学生、乳房や性器を焼かれ、暴行された娘たち、打たれて肉がとび出した妊婦、電気ショックでベッドにのたうちまわる中年女性、神経組織を破壊されて半身不随で横たわる六十七歳の女囚——地獄をかいま見た米人女性やフランス青年の証言はすさまじい。」とここにしるされております。
このタン夫人たちの運動というものに対して、私たちが見ているところでは、独裁政権に反対し、独立と平和を求めたというこの運動に対してこれほどの弾圧が加えられている。その当否は本日は論じないことにいたしますが、このようなベトナムのある意味の文化人たち、あるいは市民たちが何を最後に要求しているのか。「私たちを弾圧する政権に経済援助をしないよう日本政府にいって下さい。」というのが悲痛な最後の願いであります。
「私たちを弾圧する政権に経済援助をしないよう日本政府にいって下さい。」こういう表明は、対立構造にある後発国の政治的不安定状況の中にあって、幾つも幾つもこういう問題点が起こってくるわけであります。したがってわれわれは、これは日本国として国際協力事業をするという善意があるにかかわらず、受け取る人が欲するような国際協力でなければ初めから話にならぬということはもうおわかりのとおりだと私は思います。
そうすると、なぜこういう国際協力事業団が対立する構造の中の腐敗政権を味方にするというニュアンスを込めたこうした目的で出てくるのかということであります。何ら弁明が書いてないではないか。ふしぎなほどこの国際協力事業団というのはそういう政治センス皆無、ノンポリ型の協力事業団として出ようとしている。そうしてそのノンポリは、善意のノンポリではなく、そうした内政干渉を行なうことについて、まるでフリ一ハンドを持つために用意されたかのごときこうした国際協力事業団法ができ上がってくる。私はここに官僚主導型の最悪のケースを見るのであります。
この第一条の中に「もってこれらの地域の経済及び社会の発展に寄与し、」と、たった一行書いてあります。七行の中のたった一行の半分「もってこれらの地域の経済及び社会の発展に寄与し、」と書いてあるだけ。その社会及び経済の発展に寄与するためにわれわれのほうにどういう配慮がなければならぬかということについては何一つ触れていない。これでは私は、こうした事業団を今度つくりますというこの法案を持ち出して説得するときに、説得性はきわめてないといわなければならない。しかも関係三省庁のこの事業団に対する設立の目的の章を並べてみますと、その辺の配慮が行なわれていない。私は、外務省がこれは特にメーンとしてこの事業団法に対して責任を持たれる省庁である以上は、これはあまりにも外交欠落というか、外交センスが欠落していたのではないのか、ちょっと遺憾に思っているわけであります。
私はその意味で、これに対して外務大臣にどういうおつもりであったか伺いたいわけでありますが、外務大臣のふだんのお気持ちはわかってないわけじゃありません。ですから私は、外務大臣、これはあまりできがよくないと申し上げるしかない。この総則はとんちんかんです。少なくとも他国に持ち出して通用をする総則ではない。そんな悪い気持ちはわがほうは持ってないよという日本人の一番悪いのがここに出てきておる。察してくれよ、そんなことをするわけがないじゃないかなどとおそらく言われる可能性があるわけであります。これは国内で通用する理論であって、国際的に持ち出すこの事業団がこんなお粗末な目的でいいのでしょうか。
私はその意味では外務大臣がここでこれを鮮明になさる必要があると思う。それは私への答弁だけではないと私は思うのです。その辺を、まず基礎的な認識からお伺いしたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/51
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052・御巫清尚
○御巫政府委員 まず、日本の対外経済協力の基礎的な理念と申しますものは、私も機会のありますごとにたびたび申し上げておることでございますが、発展途上国と先進工業国というような二つの世界のグループが現在までにできて、日本はその先進工業国という範囲に入っておる。その場合、世界人類の福祉の向上のためには、発展途上国に対しまして先進工業国がその経済発展を援助してあげて、一日も早く経済発展ができるようにしてあげるということが最大の目的であるということをかねがね申し上げておるわけでございます。これはもちろんこうすることによりまして、いろんな意味でその経済協力を行なう当の日本につきましても、大きな意味での国益に合致するところであると考えておるわけでございまして、このことは第一章第一条の中に特にあらためて書き上げるという必要のあることではないのでございまして、従来通常こういう事業団等の目的を書きあらわしますには、ほぼこういうような、主としてその事業の目的とするところを書きあらわしているだけで、その基礎に横たわる理念についてそれを明確にここで書きあらわすというようなことは、あまり行なわれておりません関係もございまして、こういうような書き方になった次第でございますが、基礎的な理念といたしましては、いま申し上げましたようなところに置いておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/52
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053・渡部一郎
○渡部(一)委員 そういうお答えのしかたをなさるから、私はゴ・バ・タン夫人のあれをわざわざ持ち出したのです。あなたみたいな説明で、ゴ・バ・タン夫人という人は一体納得しますか。それだからだめなんだとぼくは言いたいのです。開発途上地帯の経済を発展させるという美名に隠れて、いままで日本側がしたことの中では重大な過誤もあり失敗もあった、それは経済協力に対する基礎的な原則がきまっていなかったからであるということは、外務大臣が言われているのですよ。アフリカ開発基金の審議の際に、私は経済協力の問題について申し上げた。それに対する基礎パターンができていなければ、今後の日本のこうした問題ではいつでも問題が起こる旨申し上げた。外務大臣はそれに対してゆるやかにそれを認められて、すでに答弁があるではありませんか。
だから私は申し上げているのです。このパターンは一体平和五原則を守るのかどうなのか、中でも内政不干渉の原則を守るのかどうなのか、そういったことを日本政府は鮮明にしなければならない。この法案の書き方では、いままでこういう法案はこういう法案の書き方だからこういうやり方なのですというのは、一官僚の答弁にしかすぎない。われわれは明らかに政治行為をなそうとしているのですから、いままでのしきたりがどうこうにとらわれる必要はないと思う。もしそうだったら、どうしてこれに対して、この法案を出すにあたって、特殊なる総理あるいは日本政府の見解なり基本原則なりを打ち立ててこれに添付しないのですか。そうしたやり方だってできたはずじゃないですか。これでは内政干渉するかどうか、その一つすらもわからないじゃないですか。御巫さんはどう思われますか、それを。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/53
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054・御巫清尚
○御巫政府委員 わが国が政府ベースの経済、技術協力を行ないます場合におきまして、相手国の政府といろいろ取りきめを結んだりしなければならないことは御承知のとおりでございまして、それ以上私どもはいわゆる内政干渉とかそういうようなことをやる考えは毛頭ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/54
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055・渡部一郎
○渡部(一)委員 あなたの言い方と似た言い方は、農林省のこの御説明の中にもあるのです。農林省はこの事業団法にあたって明確に書いてあるのですけれども、「海外農林業開発推進体制の整備の必要性」という文書が四十八年十一月付で出ているのがあります。この中に「海外の農林業開発を推進する場合においては、相手国政府に対する支援を重視し」とばちっと書いてあるのです。その意味ではいま御巫さんの言われたのと同じですね。まさに同じです。要するに相手国政府を支援するという態度が明確なんです。
ところが、まっ二つに分かれている南ベトナムのような場合だったら、どっちを応援するのですか。革命政権側を応援するのですか、それとも表側の政権を応援するのですか。その辺が何にもないじゃないですか、これには。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/55
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056・御巫清尚
○御巫政府委員 その問題につきましてはかねがね大臣その他の政府委員からも御答弁申し上げておりますとおり、わが国が南ベトナムにおきまして相手としておる政権があるわけでございますから、その政権と約束をして、政府ベースの経済協力はその政府と約束をしてやっていくということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/56
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057・渡部一郎
○渡部(一)委員 それは不穏当ですよ、御巫さん、そこまで言われるのは。日本の外務省はそういうふうに両者対立しているところの経済援助については、いままできわめて控えてきたのですよ。それは通産省にお聞きになったらわかる。そういう対立してチャンバラをやっているときに、戦火が終わるまでの間に一方にどっと押していくというやり方はきわめて不穏当ですよ。それならカンボジアはどうなるのですか。どっちを応援するのですか。カンボジアも、いま落ちなんとしているそのカンボジア政府に対してあなたは応援するとおっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/57
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058・御巫清尚
○御巫政府委員 私のただいま申し上げました御答弁の趣旨は、政府ベースの援助をいたします場合の約束の相手方は、現在日本が相手としておる政府であるということを申し上げたことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/58
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059・渡部一郎
○渡部(一)委員 そういう小細工的答弁では話になりませんから大臣に伺うのですけれども、援助するということは強大な政治行為なんです。これはノンポリ型のものではあり得ない。日本がどういう経済援助をするかというのは、強烈な政治援助であると私は思います。そうすれば、その対立した両国の間に国際協力とか経済協力とかいう名前を駆使して妙な応援のしかたをするということは、日本の外交をくつがえしてしまうおそれすらある。対立している両者間に火種をさらにかきたてることにもなりかねないと私は思うのです。その辺は大臣は私と御意見を同じくされると私は信じます。
ですからこそ私が申し上げているのは、協力事業団法案のこれではその辺が不明確ではないかと申し上げているわけです。少なくとも騒動を起こしているときには、その騒動を起こしておる一方に援助するなどという不謹慎なことはしないのだという意思表示を何らかの形でしなければ、この協力事業団は一体何をしたかということになりかねない、私はそう思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/59
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060・大平正芳
○大平国務大臣 まず第一に御了解いただきたいのは、国と国との関係につきまして国交を持つということはどういうことかと申しますと、渡部先生も御承知のとおり、相手の国の政権を政治的に、道義的にサポートするという意味ではないのであります。その政権がその地域におきまして有効な支配を及ぼしておる事実を評価して、その国とわが国との関係を取り結ぼうということでございます。したがって、その国と国との関係は、イデオロギーが違いましても政治信条が違いましてもよろしいわけでございまして、外交関係というものはそういう観念でできておると私は承知いたしております。
したがって、第二の問題といたしまして、その国に対して経済援助をやるということは、あなたは非常に政治的な行為だということを申されましたが、ある意味において政治的な行為だと思うのであります。しかしそれは、私どもがその政権に対しまして、その政権を道義的にあるいは政治的にサポートするためにやっておるのではなくて、先方の要請がございまして、その要請をわれわれが吟味いたしまして、日本政府の考え方といたしましてその国の国民の方々の福祉の向上に役立つ、そういうプロジェクトであって、日本の立場において実行可能なものでございますならば、それを日本として援助を決意しようということでございます。したがって、そのことはその政権をささえるためにやっておるわけでないということを御了承いただきたいと思うのでございます。ただしかしながら、それを実行に移す場合に手だてがございませんから、われわれが相手にしておる政府を通じてやるのだということが第三のことになってくるわけでございます。
ところがいま御指摘のように、ベトナムでございますとか朝鮮半島であるとか、いろいろ紛争というかトラブルがあるところにおきましては現地の情勢は定まっていないわけでございますし、場合によっては、いずれが主流であり、いずれが傍流であるかさえわからないという状況も現実の世界ではあるわけでございます。その場合にわれわれは現地の情勢がおさまるまで本格的な援助を慎んでまいったわけでございます。ただ、戦禍にさいなまれた難民の救済というようなことが国際赤十字等の国際機関等で実行される場合には、日本政府といたしましてそういう第三の機関を通して援助するということはやってまいったわけでございますが、南ベトナムにおきましては、パリ協定が発効いたしまして戦火が一応やみまして、サイゴン政府におきましても戦後の復興についてもろもろの計画を立てる余裕が出てきてわがほうにも援助を求めてきたわけでございまして、われわれのほうはその計画を吟味いたしまして、そしてその必要と思われる援助を実行いたしておるわけでございますので、つまりあくまでもその政府を援助する意味でやっておるわけではなくて、問題はその国民の福祉向上という点に日本政府はねらいを定めてやっておるのであるということの御理解をいただきたいと思うのでございます。
それでは、この国際協力事業団は、そういう経済協力政策の実行機関の一翼をになうと国際協力事業団法にちゃんと書けばいいじゃないか、書いてないということはいけないじゃないかという御指摘でございます。これはそういう援助の本旨なるものを法律に書くべきかどうか、それとも一般的にわが国の援助政策というのは別な政府の声明なり政策の発表なりを通じてやるべきか。これはどういう方法でやるべきかは、どちらがいいかという問題でございまして、そこに書いてないからといってそういうことが忘れられているわけでは決してないわけでございます。
いままで日本政府のやり方といたしまして、この種の法律に国際経済協力の基本の理念をうたうというようなことをしてまいっていないわけでございまして、そういうやり方をやってきたということでございます。そのことは経済協力理念が確立していない、あるいはそれをないがしろにしておるという意味では決してないわけでございまして、それはこの法律に書かなくても、日本政府といたしましてはそれを堅持して実践してまいるわけでございますので、そのように御了解を賜わることができればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/60
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061・渡部一郎
○渡部(一)委員 いま外務大臣は、経済協力に関する理念というものを別にないがしろにしておるわけではないと、るる御説明をいただいたわけで、私はその意味ではたいへんうれしく思っているわけでありますが、問題は、今日までそれがまとめて表明された例がないわけであります。まことに悪いのですけれども、この国際協力事業団法案の審議にあたっての関係資料というこんな厚いのを外務省はくださいました。これは世界で何がいわれているかということについて確かによくわかります。ところがこの中において、わが国が経済協力に関してどうしたかは基本的な資料はございますが、どういう意思でやったかについては一枚もないのです。要するにわが国はそういう基本ルールをきめてきちんとするということはきらいなのかいやなのか、そういうものがいままでの外務省になじまなかったのか存じませんけれども、ともかくそういうルールが明確でないところが、わが国の経済協力というもの全般を不当に発展させ不当に解釈させてきたという側面があることはいなめない事実だと私は思うわけであります。したがって、いま外務大臣がお話しになりましたのは、私に対する御説明はある意味では非常に簡単な、全然わからない人に初めて言ったのではなくて、ある部分を述べられたと私は理解したいと思うのです。ですから、諸外国とこれから接触がますます深まるにおいては、その辺を政府として意思をまとめられてその原則を明示される必要があるのではないかと思うのですね。そうしないと——大臣みずからアフリカ基金の審議の際にはそういうのはうまくまとめていないのだとおっしゃいました。そのままになっており、いまだ私はそれ以後の明快な御説明を承っていないわけであります。したがって、本委員会でこの討議が終わるまでの間に、大臣として経済協力あるいは国際協力に関する基本原則に関して整備した形で今後のルールになるような御説明をいただきたいと思うのですが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/61
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062・大平正芳
○大平国務大臣 政府の経済協力に対する考え方は総理の施政方針演説、私の外交演説それから国連における政府の首席代表の演説あるいはエカフェその他各種の国際機関における政府の政策の宣明、あらゆる機会を通じましていたしておるつもりでございます。しかし、この声明ないし政策の宣明が、渡部先生がおっしゃるように間然するところなく非常によくできておるかどうか、そしてそれが関係国の理解を十分得ておるかどうか、あるいは国内におきましても国民の熟した理解を得ておるかどうか、支持を得ておるかどうかということになりますと、前々から申し上げておるように私も決して十分であるとは思わないわけでございますが、そういうことをやっていないのじゃないかということではなくて、それはやっていることはやっているということでございますので、いままで政府はそういうことをどういう機会でどういうことを全世界に対して申し上げたかということは、整理いたしまして資料として差し上げたいと思います。
それから、その中でなおわれわれがもっと発展させなければならない、もっと改善させなければならぬと思う点がございますならば、なおそういった点も究明するにやぶさかではないと思うのであります。しかし、この法律の条文にそういうものを書くか書かぬかということは、慣例といたしましてそういうことはいままでやっていなかったということでございます。国会の御意思としてそういうことは書くべきであると、福祉関係の立法におきましては憲法第何条というようなものをちゃんとうたうというようなことが、この法律の目的を徹底させる上において非常に大事だということもある意味において理解できるわけで、そういうように福祉立法というのはしていくべきであるという見解も私は確かにあると思います。でございますから、そういうのでいくか、理念の発表は別途の方法によるか、それは一つの考量、選択の問題だと思うのでございますが、政府はいままで法律の条文の中でそういう理念を鮮明にするというようなことはしなかったということだけを御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/62
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063・渡部一郎
○渡部(一)委員 委員長にお願いするわけでありますが、しま外務大臣から、経済協力に関しての従来までの政府の方針、説明等を整理して資料として当委員会に提出すること、並びにそれらについて改善すべき点は究明して提出されることをお約束なさってくださいましたので、さようおはからいを願いたいと存じます。それから、その理念の件に関しては、日本国書法は理念の象徴であります。これは法の中の最高法規であると同時に理念を表明しているものであります。また、こういう意味ではいろいろな例があるわけでありますが、何をするかの目的が現実に即して行なわれる場合は技術的な文章でいいと思うのでありますが、この場合には、この国際協力事業団は明らかに外国へ出かけて仕事をする事業団でありますがゆえに、日本憲法の範囲内で日本国内法の常時監視の目にあるものではない。したがって、諸外国がこれを管轄しようとした場合、諸外国に進出した場合、その辺の説明が明示されなければ話にならぬのではないかと私は申し上げているわけであります。したがって、この目的の項があまりにも技術的に過ぎて、そうした方向性というものを単なる理念と技術とのちょうど間くらいのものがもう少しあっていいのではないかという感じがしたわけであります。ですから、その意味の私の提案であると理解していただきたい。そして私は理念の面では、この案を国会において審議するにあたっては、政府の何よりもなすべきことは、国際経済協力に関する基本方針はかくかくしかじかのものである旨がここで明示されて、資料としてよりも、委員会に表示されるだけでなくて、この法案とセットされて提出されなければならなかったし、そうでなければ諸外国に対する説得力を欠くのじゃないか、こういうつもりで申し上げたわけであります。その辺はおそらくおわかりいただけると思いますので、今後の御審議の途中でその辺を明快にしていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/63
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064・大平正芳
○大平国務大臣 いままで宜明いたしましたのを全部収録いたしまして整理してみたいと思いますし、なお今後考えなければならないような点を検討いたしまして、資料として御提出申し上げます。そして本事業団法案を御審議するにあたりまして、経済協力の基本理念というものについて日本国政府はどういうスタンスをとっておるかということは、仰せのとおり鮮明にさるべきだということはごもっともと存じますので、そういうことが鮮明になるように資料を提出申し上げ、あるいは、この法律に関連してどのようにやれば政府として渡部委員がおっしゃるような目的に合致するのか、その辺の方法につきましては、もっと検討さしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/64
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065・渡部一郎
○渡部(一)委員 それでは農林省にお伺いするわけでありますが、いまの御討議は外務省との間で私はいたしたわけでありますが、農林省はこの国際的協力事業団法案の中で一体何を意図されておるのかということであります。それは私は、農林省の考えの中で外交的なことを農林省にわざわざ伺うわけでありますが、農林省は国民に対する食糧の安定的供給を確保するためにということを真正面からうたったこうした資料を出された。また農林省はこの中で、「農林業及び鉱工業の開発に協力する見地から」と、この目的のところにはなっている。また「海外農林業開発と国際協力事業団」というパンフレットがありますが、その頭のところで「同事業団設立の大きなねらいの一つとして、海外農林業開発の推進がある。」としるされ、その中で何が書いてあるかというと、わが国の食糧の確保に関して大きな意味があるのだというような意味合いがここに書かれている。また「世界の食料需給の現状と展望」という農林省官房企画室のこの御説明によれば、世界の食糧需給はきわめて逼迫しており、それに対して需給を確保することの必要性が論じてあり、また「農産物需給の展望と生産目標の試案」の概要という四十七年十月の資料によれば、これまた農産物の生産の見通しにあわせてその需給問題がしるされているわけであります。また昨年の十二月の「特定農林産物の需給動向と見通し」という書面にも、資料だけでありますが、その辺がしるされている。こうした資料を農林省側が御説明として私にくださった意味合いのものは何であるか。要するに食糧が足らないんだ、足らないんだから海外から持ってこなければならぬのだと言わんばかりの資料をここで四枚私のところにお届けになったわけであります。したがって、農林省の意図されるのは、わが国の食糧が足りないんだから海外で食糧をつくり上げて日本へ持ってくる、すなわち開発輸入というのだそうでありますが、開発輸入をすることを目的として国際協力事業団を運営する、こういうことが第一義なのかどうか、まず伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/65
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066・岡安誠
○岡安政府委員 私どもは、いま先生御指摘の各種の資料等で明らかにいたしておりますように、国民に対する食糧の安定的供給の確保という責任をしょっているわけでございます。ただ、私どもその手段といたしましては、第一義的にはやはり国内におきまして生産可能な食糧はできるだけ国内で生産をするということにあると思いましてその方向で努力はいたしておりますが、しかし国内では完全に自給できないものが確かにございます。これはやはりこれを国外に求めまして、その安定的な供給を確保しなければならない。その方法につきましては、世界の各国との間におきまして、商品協定等の方法によりまして量並びに価格の安定をはかる方法もございますし、また二国間におきまして長期の輸入の取りきめをするという方法もございます。また、それ以外に、いま議題になっております海外農林業の開発を通じまして開発輸入の促進をするという方法もあるわけでございます。
私どもは、やはりその第三番目の海外農林業の開発によります開発輸入の促進ということは、現在わが国の農林産物の輸入につきまして、その大部分が特定の国から大量にこれを輸入しておるというような現状がございます。その問題はもちろん、供給の側におきます事情によってそういうようなことになっておりますけれども、安定的な供給の確保のためには供給源の拡大並びに多角化と
いうこともぜひ必要であろうというふうに考えるわけでございまして、そのためにはやはり現在は供給余力が十分にはないけれども、輸入農林産物を今後大いに振興いたしたいというふうに考えている国もございますので、そういうような国々に対しまして技術並びに資金の援助をいたしまして、まずその当該国の需要を満たす必要があればそれを満たしまして、余力につきましてはわが国のほうに供給をしてもらうということが、長期的に見てぜひとも必要であるというふうに考えて、今後ともそういう施策をいたしたいと思っているわけでございます。
ただ、念のためにつけ加えますと、国際協力事業団が意図しております海外農林業の開発事業は、先生御指摘の開発輸入、わが国に農林産物を入れる、また入れることが可能であるというような事業だけを協力するわけではございません。中には自国の人口問題、食糧問題を解決するためには事実資金が足りないので、そのために協力をしてもらいたいというところもあるかもしれません。で、計画といたしまして、輸出の余力は当分はできないというところもあるかもしれません。しかしそういうところに対しましても、当然私どもは国際協力事業団の事業を通じまして、農林業開発の援助はいたしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/66
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067・渡部一郎
○渡部(一)委員 これは外務省のほうにもよく聞いておいていただかなければならないのは、両省共管する問題なものですから、両方の説明が私は混乱していると思うのです。そのまず第一のお話を申し上げなければならない。
ここに農林省からいただいた「特定農林産物の需給動向と見通し」、こういうリストがあるのです。この中に数字があるのですが、トウモロコシの輸入は、日本では米国、南ア連邦、タイに集中しておる。それからグレーンソーガムと書いてありますが、これは飼料用の穀物のことのようでありますが、米国、豪州、アルゼンチン。それから大豆は米国、中国。それから牛肉が豪州、ニュージーランドとなっているわけです。ここに出てくる名前はアメリカが一番多い。米国、豪州、南ア連邦、アルゼンチン、中国、ニュージーランド、そんなようなところが食糧の日本に入れてくる国家群としては大どころであります。
そうすると、いま農林省の言われたことは話が二つ入っておるわけであります。一つは、日本にこれから先食糧を安定的に輸入したい、安定的に確保したい、国内でも自給するが、足らぬ分は安定的に確保したい、こういうのと、それから後発国のほうもちゃんとしてあげて、そこもどんどん食物が輸出余力ができるほど育て上げて、やがて輸入したいというのと、二つあるわけであります。
ところが、ここで明らかになりますように、このデータを見れば明らかなように、開発途上国に対する農業援助が日本のこの事業団法の目的であるとするならば、目的外のところ、つまり米国とか豪州とかニュージーランドとか、これは後進国じゃない。開発途上国じゃないわけですね。しかも日本のいま食糧需給を急速に安定化させるためには、ある程度手をつけなければならぬところもある。たとえば豪州、ニュージーランドの牛肉、こうしたものであるとかあるいは米国のグレーンソーガムであるとか、こうしたものに対してはある程度手を出さなければならぬという実情が明確にあるわけですね。本事業団の意図とする、いま農林省の言われたその前の部分に関しては、この事業団は役に立たない。海外からの食糧の需給を安定させるという意味ではないのじゃないかなと私思うわけです。まずこの部分が私の判断は合っているかどうか、それをまずお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/67
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068・岡安誠
○岡安政府委員 開発輸入という点だけについて申し上げますと、おっしゃるとおりわが国の農林産物につきまして、今後開発輸入等の可能性がある国々の中には、開発途上国のみならず、オーストラリアとか、それから中進国といいますか、ブラジルのようなところもございます。したがって法律の中にも、海外農林業の開発事業を行ないます相手国の中には、開発途上国のみならず、ほかの国々も相手にできるように法律には書いてございまして、私どもは、開発輸入という面に限りましては、途上国以外の国々もこの国際協力事業団の事業対象になり得るように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/68
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069・渡部一郎
○渡部(一)委員 それはおかしなことを承わるわけだけれども、そういうふうになるならまた話は別なんですがね。この第一条の中には、「開発途上にある海外の地域に対する」と明確にしるされていますが、それは、そう明確に書いてあるのを、どういうふうに先進国や中進国に対する援助もやるように読みかえるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/69
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070・御巫清尚
○御巫政府委員 第一条、目的の中に、二行目の下のほうでございますが、「開発途上地域等の社会の開発」云々とございます。この「等」というのが、ただいま岡安局長の御指摘になったところだと思います。その点は、同じ法案の第十三ページの三の昌頭にも、「開発途上地域等」というふうに書いてございまして、その前の十一ページ等では「開発途上地域」というふうに限定してございます。その差に御着目いただければ幸いだと存じます。
ただし、私が申し上げたい点は、先ほども私が申し上げましたように、この国際協力事業団の目的の本義といたしますところは、開発途上地域におきまする経済ないし社会の発展というところを、日本が技術的になり資本的に援助してあげるというところが、その背後にある理念の主体となっておるものであるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/70
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071・渡部一郎
○渡部(一)委員 まことにひどい御説明を受けたなと思うのだけれども、それでは総則にある「国際協力事業団は、開発途上にある海外の地域に対する」などということを述べる必要は私はなかったと思います。むしろ、それならば、正確にいうならば、開発途上にある海外の地域を主体として海外技術の協力、というふうに一行目は書くべきであったでしょう。その意味では私はこれはごまかしだと思いますね。だけれど、そのごまかしが、そういうふうにしてできたのでありますから、それをいまここでごたごた言ってもしかたないのだろうと思いますが、そういう妙なやり方では、私は理解がきわめてやりにくいと思います。
それから、後段の部分でありますが、岡安局長が言われた、わが国としては開発輸入をしたい、向こうから食糧を安定的にもらいたいという、要するに主体的な意味があるのと同時に、今度はその国を技術援助をしたい、そして余力ができたら輸入もしたい、こういう後段の部分があるわけであります。その後段の部分に関して言うならば、そうしたら私は、これはもう明らかに当国際協力事業団に農林業技術の開発はなじまないのじゃないかなと思うわけであります。それはなぜかと申しますと、農林技術の開発というものは、たんぼを直したり畑を直したり、あるいは耕作技術を教えたりするのに時間がかかるわけです。早くて五年、まあ通常十年ないし二十年という時間がかかると思います。そしていま岡安局長が言われたのは、その国との間で商品協定とかあるいは二国間長期輸入の取りきめとかいう形で述べられましたが、これは外交のもう一つ基礎的な立場に立ちますと、その国との間に安定的な政治関係をつくり上げなければいかぬということを意味しているわけであります。つまり、内乱なんかが起こられては困るのであり、つまりその国と戦争が起こったら困るのであり、また、その国がほかの国と戦争を始めたら困るのであり、そういうことになるわけであります。私がさっきから外務大臣と押し問答をしておりましたのもまさにそこにかかるわけでありまして、この国際協力事業団としては、内乱が起こったら、そのどちらにも加わるわけにいかぬわけですね。また、隣の国と戦争が始まったら、その国の一構成分子として戦闘に参加するわけにもいかぬわけですね。また、日本とまさにその国が戦争を起こした場合に、日本と戦争するわけにもいかぬわけでありますね。そういった意味では、これはきわめて政治的な不活性な団体であることが表示されなければいかぬだろうと私は思うわけなんです。私の必配はまさに外交問題に関する心配なのです。
そこで、農林省としては、そういう問題が起こったときに、いや、それは困る、実はその出先を守るために、この協力事業団の総裁を持たれるところの外務省に対して、何とかしてくれ、戦争をやめさせてくれ、内乱を押えてくれ、内政干渉をやってくれと言いますか、言いませんか、それをまず伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/71
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072・岡安誠
○岡安政府委員 農林省のほうから、国際協力の基本に触れるような問題についての御答弁いかがかと思いますけれども、しかし、私どもの関係いたしております農林業開発を通じます国際協力というものは、先生御指摘のとおり、きわめて長期の見通しに立ったものでなければならないというわけでございます。したがって、そういう長い期間にわたっての協力をいたしまして、その成果が十分あがるというためには、御指摘のとおり、当然わが国と当該相手国との間におきましては、平和的な友好関係が持続されなければならないというふうに考えております。
そういうようなことを期待し、また前提としまして、私どもは今後やはり海外農林業の開発援助をいたしたいと思っておりますが、万一というような御指摘でございますけれども、これは私どもよりも、やはり外交の主管官庁でございます外務省とも御相談をいたしまして、わが国の外交のあり方というものに沿った対処のしかたでなければならないと思いますし、そういう意味合いからも、国際協力事業団の主管官庁というものは外務大臣ということになっているのではなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/72
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073・渡部一郎
○渡部(一)委員 これはまだ続きますよ。農林省の方、いいですか。この間、ここのところに中曽根通産大臣をお呼びしたのです。そのときに何を伺ったかということの一つの中で、私がさんざん言ったのは、日本からいま日本系の多国籍企業が外へ出ていきます。その多国籍企業は、たとえばアメリカ・ソニー株式会社であるとかあるいは新日鉄ブラジルであるとか、こうしたものが出ていくわけです。そうすると、そういう国々の中には経済的に不安定な国々もある。政情的に不安定な国々もある。あるいはその巨大な進出というものは、必ず進出企業をめぐっての政治対決というのが始まりはじめることになりますね。
それでこの間から国連では、そういうように出かけた多国籍企業が、原籍の国との関係で、忠誠の問題でどうなるかというのがさんざん議論されているのです。そうしていま国連の中で試案で出ている話の中に、カルボー原則というのがあるのです。それは何かというと、出かけた企業は、その国で国有化されたり、何か騒動が起こったときに、本国政府に、おれはもうやられたなどと悲鳴をあげて、政治的圧力を加えてくれるように頼まないという原則ですね。それがいま問題になって議論されているわけです。その意味では、多国籍企業に対する国家の主権というものが回復されようとしているわけであります。
そうすると、農業はこれからであります。そして農業は、多国籍企業のように巨大でないかわりに、その国に与える技術的な影響というものは多大なものであると同時に、農業というのは、ある意味ではその進出先の国家の基礎力をなすものでありますから、農業技術者及び農業技術の開発をするための金融措置を扱うこの協力事業団の農業部門の方々は、おそらくは外交問題の先端に位置するわけであります。そうすると、通産省が多国籍企業に対して配慮する何十倍も、あなた方はその国の政情というものに対して、きわめて巧みなる平和原則を持ち合わせなければならない、こういうことになるわけですね。
そのときに、出た出先で、外交問題は主管官庁は外務大臣ですなどと叫んでも、それはフィリピンで通じるか、インドネシアで通じるか。また、いきなりゲリラ部隊につかまったときに、主管官庁は外務大臣ですなどと叫んで通じるか。通じないと私は思うのですね。そうすると、この国際協力事業団の中に入ったということが、農林省としては非常におそろしい結果を招いたわけですね。これは日本政府の皮をかぶって出かけていく強大な日本の経済侵略部隊だと見られる可能性があるわけです。私たちは農業技術だけを教えるほんとうの専門家なのですと叫ぶわけにいかないものを、これは背負っているじゃありませんか。
そういうふうに私は丁寧に申し上げたのですが、こうやって進出するにあたって、外交問題に対する見解が必要になるわけであります。その技術者に、あるいは金融をなさる方に、農林の専門家たちに、それを言う必要がありますね。そうすると、その人たちは平和五原則を守るのですかと私はまず聞きます。よろしゅうございますか。めんどうな言い方をするつもりはいまございませんから、平和五原則を守るということを農林省はわかっておられるのか。あるいは内政干渉はいかぬ、しないというふうに思っておられるのか。また、カルボー原則に似た、農業問題をたてとして、そうしたことは十分考慮する余地があると考えていられるのかどうか。その辺を伺うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/73
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074・岡安誠
○岡安政府委員 おっしゃるとおり、海外におきます農林業開発を推進する場合には、国内で農林業開発をする場合と違いまして、きわめて複雑な国際間の問題と関連をせざるを得ないことは、御指摘のとおりでございます。したがって、私どもはただ単に技術なり資金、純粋な意味での技術なり資金をもって協力しようと思いましても、いろいろな影響があるということを十分注意してかからなければならない。したがって、特定のプロジェクトについて対処するにあたりましては、ただ単に技術的な面だけじゃなくて、わが国と当該国の置かれておりますいろいろな関係等に十分配慮いたしまして、援助するかいなかの決定並びに援助のしかた、その後の処理等も十分考えて対処しなければならないというふうに考えております。
ただ、私どもいまあらかじめ具体的に、国際協力事業団関係の海外農林業開発につきましては、これこれこういうような態度でもってすべて処理をしろというような整備された方針というものは持っておりませんけれども、先生御指摘のとおり、非常に困難な事態に立つ場合もあり得るかと思いますので、今後は外務省その他関係のところとも十分打ち合わせいたしまして、進出企業といいますか、国際協力事業団関係の海外農林業開発をする者の対処方針といいますか、あり方につきましては、できるだけ整備された形での行動綱領というものもつくりまして、誤りのないようにいたしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/74
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075・渡部一郎
○渡部(一)委員 そこで、農林省にもう少し伺いますよ。農林問題の話ばかり聞いて悪いのですが、これが大事な問題だということを御認識いただいたようです。いま農林省がいみじくもおっしゃったように、そうした場合の整備された方針がないと岡安さんは言われたのですよ。よろしいですか、外務省のほうは。ですから、外務省が打ち合わせをしなければならないのは、この事業団法で副総裁を何人にするかなんということよりも、一番大事な基本ルールを打ち合わせる必要があるわけですね。私はいまそれをぎゅうぎゅう粘って御巫さんを苦しめようとして質問しているのじゃないですよ。そうじゃなくて、いま農林省と外務省が打ち合わせなければならない一番大事なことは、一体平和五原則は守るのかどうなのか、内政不干渉原則は守るのかどうなのか、進出農林業に対する政治弾圧に対してどうするのか、あるいはUNCTADにおける決議を守るのかどうなのか、天然資源に関する国連決議を守るのかどうなのか、そういったことに対して日本政府の方針をこの際明示する必要がある。それは外務省として答えなければならない。そしてそれは外務省が答えたのじゃだめなんで、これと一緒に加わる農林省が、また通産省も加わるんだが、通産省もそれをよく理解しないことには、これは経済協力、経済進出、経済侵略何国版などといわれるだけの話になるのじゃないか、私、こう思うのですね。だから、まず農林省からお答えいただきましょうか。
農林省としてはその辺を外務省とよくお打ち合わせになって、それであとで責任をかぶせられるのは、被害を受けるのは出ていった農林技術者であると私、意思表示しておきたいと思うのです。農林技術者は、騒動が起これば必ず先頭に立って殺されるなり人質になるなりぶちこわされるなり巻き込まれるなり、その判断をしいられるのは、その一番先端に出るのは農林技術者です。そしてそれは、わが国の農民がそういうところに出ていくにきまっているのですから、だからこの問題についてはよほど農林省とばちんと打ち合わせする必要がある。その打ち合わせた結論が、先ほど外務大臣の言われたこうした問題に関する政府の方針の中に資料としてあるいは基本方針として鮮明にされる必要がある。だから先ほど外務大臣から方針を明示する旨お話があったのはたいへんけっこうなことですが、その中に農林省側としてはこれとこれとこれはこうするということを明示してもらうように農林省側はがんばらなければいかぬわけであります。要するにお願いしてよくお打ち合わせなさる必要がある。その点はしっかりやっていただきたいと思いますが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/75
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076・岡安誠
○岡安政府委員 おっしゃるとおり外務省とも十分打ち合わせをいたしまして慎重に対処するつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/76
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077・渡部一郎
○渡部(一)委員 念を押しておきますが、そのときどうか平和五原則であるとか、ここのところに外務省から厚いこういう資料をいただいているのをお持ちでございますね、この中には国際連合で国際的に取りきめた幾つかのものがあるのです。たとえば食糧備蓄についてのFAO事務局長提案とかそれから天然資源の恒久主権に関する国連総会決議とか、これは頭からおたくに関係するわけです。こういうものについてよくお読みいただいた上で、外務省とお打ち合わせをいただきたい。そして日本側のルールというのをびしっときめていただきたい、こう思うわけです。
今度は外務省の御巫さんに伺うわけですが、いまの農林省との私のお話し合いについては御了解いただいたかどうか、その辺よくお打ち合わせをしていただけるかどうか、御答弁いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/77
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078・御巫清尚
○御巫政府委員 先生御指摘の点、ただいま岡安局長からも御答弁がございましたように、私どもといたしましてもかねがね農林当局ともお打ち合わせしてまいりましたところでもございますし、今後も御指摘の諸点よく踏まえまして十分なお打ち合わせの上で粗漏のないようにいたしたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/78
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079・渡部一郎
○渡部(一)委員 十分打ち合わせしたところなんて言う必要ないんで、農林省側はいま、これは整備された方針はないと言われたじゃないですか。整備された方針がないというのは打ち合わせしてないと同じではないですか。だからそんなことを私は一々言っているわけじゃない。ちゃんとした方針が出ればいいと私申し上げているわけです。だから今後打ち合わせられて、この委員会の審議に対する態度としては、その辺が整備されてないでこの委員会が始まったということはあまりいいことじゃないと私はついでに御指摘しておきたいと存じます。
農林省はここのところでちょっと話をやめまして、今度は外務省に農業の話を伺いたいと思うのです、異例なことでありますが。外務省は一体これからの農業問題に対してどういう展望を持っておられるかを私伺いたい。それはなぜかというと、いまこうした事業団はつくった、海外との間で農林業を開発しようとした、こうした話がもう起こってきたわけであります。そしてこうせざるを得ない状況にもあるわけであります。そうしたら日本は、農業政策の基本が外交政策にからむことは昨年の大豆のものすごい暴騰でもおわかりのとおり、また昨年の暮れの石油のものすごい暴騰が日本国外交を狂わしたことでも御存じのとおりであります。要するに農業問題に対する見解が外務省のほうに明確になければならぬと私は思うわけであります。
そこで伺うのですが、ゆっくり申し上げます、どういう認識であり、どういうふうに国内農業に対して考えているかをいま一つずつ伺いますよ。
まず、外務省としては世界の食糧需給は長期的にどうなると思っていられるか、それに対して日本はその食糧需給に対してどういう方針でなければならないか、それに対して外務省はどういうふうに対応しようと、外交方針を調整しようとしておられるか、そこをまず伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/79
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080・宮崎弘道
○宮崎(弘)政府委員 世界の食糧の需給につきましては、すでに御案内のとおりFAOにおきまして一つの試算を出しておりますし、またアメリカの農務省当局も相当世界各国の事情をそろえまして一応の資料が出されておるわけでございます。さらにOECDその他におきましても、最近の状況を踏まえまして新しい作業が開始されるかと存じます。私どもといたしましては、そのような各国際機関におきます作業の際に十分これに参加いたしまして意見交換をして刻々とそういう問題を把握していきたいと思います。
比較的短期的に申しますと、先般一九七〇年以来の世界的な異常気象その他の事情に端を発しました食糧の需給の逼迫は七三年におきます各国の良好な収穫により漸次緩和の方向にはございますけれども、非常に減少しました在庫のレベルを復元するまでには必ずしもいっておりません。また、今後開発途上国におきます食糧輸入需要がどうなるかということ、あるいは社会主義諸国におきます生産がどうなるかということ等もございますけれども、さしあたりは、いま申し上げましたように在庫状況が従前のレベルまで復活しておりませんので、若干需給事情は堅調に推移するものと思われます。
ただし、もっと短期的に申しますと、ことにアメリカその他におきます今年度の作付面積増大等もございまして、収穫予想はまだはっきりしたものはございませんけれども、そういうものを反映いたしましてか、小麦、トウモロコシ、大豆等は、たとえば代表的な市場でございますシカゴ市場の価格が二月を、あるいはものによりましては三月をピークといたしまして下がりぎみに推移いたしております。しかしこれは非常に短期的な問題かと思います。
そこで、日本の農業の問題は、これは私どもの直接主管するところではございません。しかし、先ほど農林省当局から御答弁がございましたように、主要食糧のうち国内で生産すべきものは当然国内で生産すべきものは当然国内で生産いたしましてできるだけ需要をまかなうように生産力維持、増強をはかっていくことが肝要かと存じます。
ただ、これまたすでに御説明がございましたように、どうしても海外に依存せざるを得ない食糧がございます。これにつきましては私どももいろいろな方策によりまして安定供給をはかるように努力しておりましたし、今後もそれをさらに継続する努力を重ねる所存でございます。
もう少し具体的に申しますと、わが国が現在食糧を輸入しております主要食糧輸出国との友好関係の維持、増進はもちろん、これらの諸国との情報収集協議体制をさらに強化する必要がございます。かつまた、たとえばガットにおきまして新しい国際ラウンド交渉が始まっておるわけでございますが、こういう場を通じまして、国際的な一つの約束によりまして、これは二国間のものもございましょうし、多数国間の一つの約束によりまして、安定供給を確保することにもつとめたいと存じますし、さらに国連におきまして、世界食糧会議も開かれますので、こういったような場でもいろいろ努力を重ねたいと存じます。
さらにまた、先ほどこれまた農林省から御指摘がごさいましたように、輸入先の多角化にも意を用いまして、あるいはまた国際協力の一環としまして、一つの方法といたしまして、開発輸入というようなこともやってまいらねばならないと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/80
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081・渡部一郎
○渡部(一)委員 さてそこで、今度はその混乱しているのを、こちらも少し片づけなければならぬ。それは食糧の需要に関して、いまおっしゃいましたことはいろいろニュースを、状況を把握しようとおっしゃっていることは、私はわかります。だけれども、これは人口が激増していき、そして食糧の開発というものがそれほど激増しないとしたら、世界は食糧問題を中心とした政治的危機状況におちいるだろうということは、すでに多くの報告が述べているとおりであります。いま、その辺を故意に述べられなかったような感じがするわけで、短期的レンジのみ述べられたような感じが私
はするわけでありますが、長期的にはどういうふうに見ておられますか。
OECDでどういう話があったとか、FAOでどういう話があったとか、米国農務省はどう言われたとか、それは一つのニュースでございます。私が求めているのは、日本の外務省としては、食糧はいつごろからなくなり始める、これはたいへんだという問題、危機感というか、そうしたものがなければ対応できないのではないかとまず心配しているわけです。そしてある日突然農業が遮断されてくる、食糧輸入が遮断されたときに、飛び上がってびっくりするというようなやり方では、私は外務省としたって対応ができなかろうと思うのですね。いまお答えになった経済局長ともあれば、その辺の見通しも十分ついておられるだろうと思うから、私はあえて伺うわけです。農林省には伺いません。外務省はどういう認識を持っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/81
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082・宮崎弘道
○宮崎(弘)政府委員 御案内のように、食糧の需給に関しましては、過去におきましても大体七年、八年ぐらいを周期といたしまして、世界の食糧需給が非常にタイトになる。つまり、食糧不足の状況か生ずるという説が出てまいったことがございます。しかし、そのときは、過去二回程度そういうことがございましたけれども、その後におきまして、実は食糧の増産が行なわれて、結局、むしろ食糧が余った時期が続いたわけでございます。今回もまた、食糧の需給事情の逼迫ということが言われておりますが、私どもといたしましては、先ほど申しました各国際的な場で協力いたしまして、そういうことが起こらないように努力をするのが一番だと存じております。
問題は、先進諸国におきましては、たとえば小麦であるとかあるいは米であるとか、こういうものはいわゆる所得弾性が少ないものでございますから、需要は、人口増等もございますから若干は伸びるかと存じますが、あまり伸び方が激しくない。これに対しまして、たとえば肉であるとか酪農品であるとか、こういったようなものは今後とも需要が伸びていく。その場合にやはり飼料が必要になってくるというようなことはございます。
しかし、先進国におきます需要の伸びというのは
大体予測がそれほど不可能ではないわけでございます。他方先進諸国におきます供給の面は、これまた非常に予測が困難とまでは申し上げられない。
そういたしますと、問題は発展途上国におきまして人口増に追っつくような農業の生産性の増強が行なわれ得るかどうかということが問題になるわけでございます。それともう一つは、発展途上国におきます所得水準の向上に伴いまして、たん白の多い食糧に需要がシフトしてくるかどうかというような点が問題かと存じます。
そこで、これは発展途上国の生活水準の向上に伴って食糧も十分に供給が行なわれることが望ましい、そのための方策としましては、かつてはたとえばグリーンレボリューションとか、農業技術面の非常な画期的な向上によりまして増産が行なわれた例がございます。今後も、もちろん気象条件その他の条件によりまして左右されると思いますが、日本といたしましてはほかの国と協力しまして、ことに発展途上国におきます農業生産性の向上ということに意を用いまして、そうしてもちろん発展途上国それ自身の努力と相まちまして必要な食糧の増産、特にこういう国におきます増産、こういう国におきます自給率の向上、あわせまして先進諸国におきます、現在も米国その他でたいへんな増産が行なわれつつございますが、そういうものとあわせまして、食糧の需給がこれ以上逼迫しないようにやっていくための国際的な話し合いを今後とも鋭意継続していきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/82
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083・渡部一郎
○渡部(一)委員 これは農林省の外交問題の答えよりだいぶ程度が悪いですな。それはなぜかというと、お打ち合わせをよくされている形跡が見えないですね。というのは、世界的な人口増と食糧の問題というものがこれ以上、しばらくすると爆発的な状況になることについては、UNCTADでもFAOでも指摘され、農林省でつくられたものにはちゃんと出ていますよ。それは両省の連絡が悪いどころではない、農林省の言うことを軽べつしている外務省がいけないのだと私は思うのです。食糧は何となく足りているようにやるのが農林省の役だなどと思っているからそんなことになるのであって、いまのお話は評論家的な御発想であって、わがほうはどういう見通しを持っているかについてはとんと不案内です。足りるのか足りないのかすらわからない。そうして人口問題に対してどういう見解を持っているのかすらわからない。
いきなりこんなところでそんなめんどうなことを申し上げることは気の毒だということも私はわかっております。しかし当委員会は、少なくとも国際協力事業団というものをめぐって、日本の国際的な農業の位置づけというものが当然問題となるということはすでにお話ししてあるところであり、わかっていていいはずだと私は思っているわけであります。これでは私はこの問題に関しては質問を続ける勇気がないですね。あまりにもみっともない。農林省側とよくお打ち合わせをしてくださって、人口増問題と食糧需給問題と関連させて、外務省はひとつ明快なる御見解をつくっていただきたい。そうでなければ、日本の外交はどっちを向いて進むのかということについて行き当たりばったりになってしまうじゃありませんか。
世界の食糧がもし一九八〇年の段階で危機的状況におちいるとすれば、日本はやるべきことがすでにあります。一九九〇年の段階で人口爆発は極点であるとローマクラブからがんがん報告が出ております。西暦二〇〇〇年の段階では食糧問題はもう危機の段階を通り越して、戦争、災厄あるいは公害等によって大幅の人口減少が起らない限り全世界的な騒乱状態になるなどという報告すらあります。また諸国間のおだやかな報告においてすら、一九八〇年をめどとして食糧需給問題は世界外交の主題問題になることが表示されているのではありませんか。私のところに来るわずかな報告ですらそれであります。
そうすれば、外務省は今後食糧問題に全面的に取り組んでこなければ、外交方針何立てたかわからなくなりますよ。日米安保に対する関心もよいが、日米安保以上の問題点がここで出てきてしまう。石油問題とほぼ比重を同じくするような問題が出るじゃありませんか。いままでの農林省というのは国内農林業を主体とする官庁として、農林業の世界的な需給に対しては関心が寄せられなかった。その分については外務省がカバーしておられたはずじゃないですか。いまの御答弁ははなはだ私は不本意ですな。ですからもう質問するに忍びないから、これはこの次もう一回申し上げたいと思います。世界的な人口増の問題と食糧需給問題と関係さして伺いますから、農林省とよくお打ち合わせしていただきたい。
それから、ついでに申し上げますが、農林省の官房企画室からいろいろなものをいただきましたけれども、この中の食糧需給の世界的な見通しのリスト、私は丁寧にこれを拝見してみましたら、この食糧需給の見通しはあまりいいあれとは言いがたい。たとえばここに「特定農林産物の需給動行と見通し」というのがありますが、この中の第五表に、昭和五十七年度における「特定農林産物の需給見通しの試算」というのが書かれている。この試算表は人口問題が計画に入っていない。おまけにこの通常輸入量Dというものと輸入必要量Cというものはきわめてあいまいな計算であって、積算の根拠にはなり得ない。これはあとで外務省もよく見てください。こういう積算をせざるを得ないところに農林省の今日までの気の毒な問題点があったし、こういう量でしか問題を考えられないところに農林業のむずかしさというのも私はあったと思う。
ですから、こうしたものこそ将来の見通しのない官庁というものはだめなんで、出たとこ勝負の官庁ではだめだということはもうおわかりのとおりなんだから、農林省の言うことをよくお聞きになって、海外農林業に対してどう考えるかという前に、ひとつこうした輸入量や何かのお話も十分お打ち合わせいただかなければならぬ。そして少なくとも食糧確保ということは、日本を含める世界の食糧確保という観点で外務省は今後御努力をいただかなければいけない 私はそう思うのですが、いかがですか、こういう基本的な話について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/83
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084・宮崎弘道
○宮崎(弘)政府委員 世界の食糧見通し、ことに人口増との関連におきます世界の食糧増の見通しにつきましては、先ほど申し上げましたようにいろいろなところで議論が行なわれております。ただ、ローマクラブの要請に基づいて書かれました一部の専門家の見通しについては、これは必ずしも国際的に認められているわけではございません。
私どもといたしましては、もちろん世界の人口増とそれから食糧需給の増大に伴いまして一体どういう施策を講ずるべきかということにつきましては、まず日本自身につきましては、先ほど来申し上げておりますように、安定供給を確保するためのいろんな政策手段を講じていかなければならないというふうに存じます。
それから世界全体の需給につきましては、これは日本一カ国では解決がつかないことでございますので、それぞれの国際機関の場におきまして、先ほど申し上げましたように、需要の見通しをさらに正確なものにすると同時に、供給増大の可能性はまだずいぶん残っているわけでございます。これをどうするか。あるいはまたたとえば現在も行なわれております食糧援助ないしは農業援助によりまして後進国におきます農業生産性の向上の可能性あるいは農産物増産の可能性というものを十分関係方面と打ち合わせてやっていかなくちゃいけないというふうに考えておるわけでございます。
そこで、この問題を軽視しているわけではございませんで、いろいろな資料、いろいろな見通しに基づき、かつ国際的な場でこれに対する対策を各国と協調しながら鋭意検討中であるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/84
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085・大平正芳
○大平国務大臣 渡部さんがいまおっしゃいましたが、農業問題の展望をつけることはたいへんむずかしいとあなた自身も言われておりましたように、これはたいへんむずかしい作業であると思いますし、天候の関係その他いろいろな条件がございまして、外務省と農林省が打ち合わせまして、自信のある答案が出せるというようなしろものでは私はないと思います。ただ、いろいろないまあるデータ、国際機関でもあるいは国内のいろいろな機関で見積もりましたいろいろなデータをいろいろな留保をつけて、こういう前提でつくったものはこうだというような意味で資料の整備をしてみたいと思います。
それから第二に、私は御了解を得ておきたいのですけれども、農業問題というのは、そういう展望は非常にむずかしいけれども、過去の経験から申しまして、まず国内におきましてはできるだけ高い自給率をつくり上げたいという農林省の政策はこれをサポートしてまいらなければならぬと思います。
国外におきまして私どもが外交政策の上で注意しなければならぬと思いますのは、何としても開発途上国の農業というものがしっかりしないと、その国の経済の自立がむずかしゅうございます。これは過去においてソ連においても中国においても痛いほど辛酸をなめたことでございまして、工業化をやるにいたしましても、農業が足場がしっかりしていないと成功するものじゃございません。したがって、わが国は対アジア政策の基本に開発途上国の農業振興、農業技術の向上、そういう基本の方針をひとつ打ち立てまして、エカフェ等を中心にいたしましてこれを各国にも申し上げ、技術センターその他の設立も急ぎ、それから肥料の需給体制、肥料の融資等につきましてもいろいろくふうをして、ともかくまず農業経済というものがしっかりしていないと、その国の政治的安定をはかる上においても、経済の自立をやる上においても話にならぬ。したがって、われわれの経済協力の一つの柱はどうしても農業協力でなければならぬのではないか、このことをはっきりいえるのではないかと思っているのです。
したがって、わが国の自給率の向上それから開発途上国の農業経済の確立というようなところに力点を置いて施策を進めてまいることは、どうころんでも間違いないことでございます。その点はすでに御了解いただいておると思うのでございますけれども、念のために申し上げておきたいと思います。
前段の資料の整備ということにつきましては、手に負えないほど私はむずかしい仕事だと思いますが、いまあるデータを、こういう前提でとるとこうなる、こういう前提でとるとこうなるというようなことをたんねんにつくることは私は可能である。しかし農林省と外務省と相談して権威ある国会に出して数年たってみて、あいつあほうみたいな資料であったじゃないかと言われるようなことになるとえらいことでございますから、そんなもう神さまに匹敵するような能力は農林省にも外務省にもないわけでございますので、いまあるできる限りの資料をいろいろな留保をつけて差し上げるというようなことでひとつ了解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/85
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086・渡部一郎
○渡部(一)委員 外務大臣がいまお話ししてくださった中で、国内の農業需給に対し高い自給率をつくりたいという農林省の方針に対し、外務省はそれをサポートしたいと述べられました。これは画期的な御返事だと私は思うのです。まさにそれこそ日本外交始まって以来の御発言だと私は思います。
といいますのは、私がいままで調べてきた途中でしばしば衝突しましたのは、外務省関係では、開発途上国では売るものといったら農産物しかないではないか、だから日本はそれを買ってあげることによって貿易バランスがとれるのである、したがって日本国内が高い自給率を持つなどということは、こういう東南アジアの国々の貿易バランスをさらに破壊することになるではないか、いまでさえバランスがとれていないのだから、という御説明を外務省から承ったことがしばしばあるわけであります。したがって、私はそれをきょう大きな問題点の一つとして外務省の御認識を承るつもりでいたのでありますが、外務大臣からいち早くそういう御説明がありましたので、その問題については私はけっこうなことだと存じます。
といいますのは、貿易バランスの回復は農業と商工業のバランスというようなバランスで行なわれるべきではなくて、原料と製品とのバランスで行なわれるべきではなくて、製品と製品との間、加工品と加工品とのバランスをとるべくまじめに努力を傾けていかなければならないと思うからであります。その意味で、日本の高い自給率を達成するという農林省の方針に対し外務省が理解を示されたということは画期的なことだと私は思います。
それと同時に、自給率を高めるとともに、備蓄量を増大するということが日本外交にとっても非常に大きなテーマになるのではないかと私は指摘したいと思います。といいますのは、食糧の備蓄量が少ない、ある限界を越えているということは高能率の国家という意味ではいいのでありますが、石油危機でも明らかになりましたとおり、原油量の保持がある一定限界を越えて少ないわが国においては、石油の価格の膨大な高騰というものに対して直ちにろうばいして、日本国の対アラブ外交方針でさえかなり思い切った転換をしなければならなかった。その当否は本日論じるつもりはありませんが、したがって食糧備蓄量等の増大というものに対しては、これまた農林省がある程度いまやっておられますが、あまり十分な量ではないと思います。外務省としてもその辺に御理解をいただかなければいかぬのじゃないかと私は思っているわけでありますが、その辺、外務省の御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/86
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087・宮崎弘道
○宮崎(弘)政府委員 御案内のとおり、つい最近までは米国にいわゆる余剰農産物と称せられておりました膨大な備蓄があったわけでございますが、これがすでに激減いたしまして、かつ将来の問題といたしましては、米国は世界のために自分の負担で備蓄を持つ政策はもうとり得ないということで、各国が協力しましてしかるべき備蓄の量を持つべきだということを提案しているわけでございます。この問題は先ほど申し上げましたガットの国際ラウンドにおきましても議題の一つになっております。
そこで、日本といたしましても、その国際的な場におきます交渉ともにらみ合わせながら、しかるべき備蓄量は確保しなくてはいけないのではなかろうか、そういう意見がいま強くなりつつございます。ただこれは御承知のとおり、相当の予算なりあるいはまた備蓄を確保するための施設なり、こういったような問題もございますし、国際的に将来合意されます備蓄量とのにらみ合わせもあると思います。そこで内外の情勢をさらに十分検討しながら、わが国におきます備蓄量をどうすべきかということを考えていきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/87
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088・渡部一郎
○渡部(一)委員 私はそんなことを聞いているのじゃない。私が言っているのは、農林省が備蓄量をふやそうとしておる。それに対して理解を示すのかと聞いたのです。めんどうなことを聞いているのではないのです。ところが農林省がどのくらい備蓄量をためようとしているかすら知らないのだから、農林データについて無関心なんだから、それを考え直してくださいと私は申し上げているのです、さっきから。膨大な統計をつくって、外務省と農林省のデータが一ペンに合うなどということを私は想像しておりません。これは確かにむずかしい問題です。だけれども、一生懸命に国内の自給量を高めようとしていることさえいままでとかく無理解だった外務省なんだから、それくらいすごい認識の外務省なんですから、その辺よく考え直されて、農林省の言うことをまずよく聞いたらどうですか。
だから、備蓄量だって世界じゅうをよくにらみ合わせてといういまのお返事だが、世界じゅうをにらみ合わせる前になぜ農林省の言うことをよく聞かないのですか。農林省がいま備蓄を何ぼしようとしているか御存じですか。私が言っているのはそれなんです。両方がばらばらの二本の線の上を走っている。そしてその線はだんだん開いていく。ときどき思い出したように、おい、どうしているんだと声をかけるのじゃだめだと言っているのです。そういう問題について外交の大方針としてこれからはじっくりお打ち合わせをお願いしたい、こう言っているわけであります。私の言うことが無理でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/88
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089・大平正芳
○大平国務大臣 いま宮崎君が申し上げたことは、備蓄政策けっこうでございます。これのためには世界のストックも激減して、その復元がいまたいへんな問題になっていることも先ほど御説明申し上げたとおりでございますが、世界各国で備蓄の問題についていろいろ検討しておるというようなことも考慮に入れて、わが国の食糧当局であられる農林省におかれましてもそういう備蓄政策について真剣な検討が望ましいし、現にやられていることと期待しているわけでございまして、農林省を助ける意味で言っているわけでございますから、農林省の備蓄政策に無関心であるというような意味では決してないことをまず御了解を得ておきたいと思います。
また、私どもの在外公館の現地にも、農林省から多くの優秀な方々をお迎えいたしておるわけでございまして、外務省と農林省の間にパイプがつまっておるなどということは決してございませんので、共同作業をいたしておるわけでございますし、備蓄政策はあなたのおっしゃるとおり非常に緊切な課題であると思います。農林省が鋭意その施策を進められる限りにおきまして、私どももサポートしていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/89
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090・渡部一郎
○渡部(一)委員 どうも外務大臣が、私が文句を言うと必ずあとで消防役みたいに飛び出してこられて質問をまるめてしまわれるので、質問がやりにくくてしょうがないのであります。私が指名するまでは黙っていていただきたいと思っております。
いままでの間いろいろなお話をしてまいったわけでありますが、備蓄の問題について私が心配しているのはまさに政治的な課題でございまして、先日中国へ参りましたときに、日本の経済問題について周恩来総理と話し合うチャンスがあったわけでありまして、向こうは、日本は軍国主義化する可能性が非常に強いだけでなく、絶対軍国化すると強く述べたわけであります。その理由はと聞いたときに、彼の主要な論拠になったことは、日本は食糧の自給量が少ないということでございます。食糧の自給の少ない国家群で対外侵略しなかった国家はない、つまり少なければ必ず攻め出す、おまけに備蓄量の少ない国家というものは対外的な緊張があると必ず矯激な行動をとる、それは明らかではないかと盛んに論証しようとかかったわけであります。中国は今日に至るまで備蓄量は非常に多い国家である、今日ですら一年ないし二年の備蓄量をためようという運動を起こしている最中である、それに対して日本はろくろくためておらぬ、だからいつかかってくるかわからぬと、まあ短いことばでいえば、かなり省略した言い方でありますが、そういうようなニュアンスの話をしておったわけであります。
私はそれに反撃をして、食糧を大量にたくわえているアメリカでも、あるいは大量の備蓄があったといわれてきたソビエトにおいても、対外侵略というのはあったのであり、そういう論法というのは必ずしも正確ではないと、私はそれに反論しまして、この議論は終わりになったわけでありますが、それにいたしましても、食糧の備蓄の少ないことが日本の外交にとってブレーキになる、あるいは食糧の自給率の低いことが日本外交の大きなマイナスポイントというか重荷になるということについては、私は周恩来の指摘は正しかろうと存じます。しかもいままでのように世界がある意味での安定状態でなくて、多極化時代を迎えているときはこれは考慮しなければならぬかと存じます。
その意味で今後、ともにわたって外務省の食糧問題に対する関心を喚起しようというのが私のねらいであったわけでありますが、外務大臣の御答弁が早過ぎたのでもう一回伺うわけでありますが、大臣はこの辺はおわかりいただけるかと思いますがどうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/90
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091・大平正芳
○大平国務大臣 御指摘を待つまでもなく、エネルギー問題に匹敵しあるいはそれ以上の課題として食糧問題につきましては外交政策上最大の用意と配慮をもって臨んでいかねばならぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/91
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092・渡部一郎
○渡部(一)委員 それでは時間もだいぶ長引きましたので、本日の私の質問はこれまでにしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/92
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093・木村俊夫
○木村委員長 次回は、来たる十日水曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時三十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107203968X01819740408/93
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