1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十九年四月二十六日(金曜日)
午前十時三十二分開議
出席委員
委員長 角屋堅次郎君
理事 坂本三十次君 理事 登坂重次郎君
理事 林 義郎君 理事 森 喜朗君
理事 渡部 恒三君 理事 島本 虎三君
理事 木下 元二君
大石 千八君 加藤 紘一君
住 栄作君 田中 覚君
戸井田三郎君 羽田野忠文君
松本 十郎君 山崎 拓君
渡辺 栄一君 岩垂寿喜男君
小林 信一君 佐野 憲治君
米原 昶君 岡本 富夫君
坂口 力君 折小野良一君
出席国務大臣
国 務 大 臣
(総理府総務長
官) 小坂徳三郎君
出席政府委員
公害等調整委員
会委員長 小澤 文雄君
公害等調整委員
会事務局長 宮崎 隆夫君
環境庁長官官房
長 信澤 清君
環境庁長官官房
審議官 橋本 道夫君
環境庁企画調整
局長 城戸 謙次君
委員外の出席者
特別委員会調査
室長 綿貫 敏行君
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委員の異動
四月二十六日
辞任 補欠選任
染谷 誠君 山崎 拓君
橋本龍太郎君 加藤 紘一君
八田 貞義君 住 栄作君
同日
辞任 補欠選任
加藤 紘一君 橋本龍太郎君
住 栄作君 八田 貞義君
山崎 拓君 染谷 誠君
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本日の会議に付した案件
公害紛争処理法の一部を改正する法律案(内閣
提出第七二号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/0
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001・角屋堅次郎
○角屋委員長 これより会議を開きます。内閣提出の公害紛争処理法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。米原昶君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/1
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002・米原昶
○米原委員 現在、この公害紛争処理法で対象となっている公害紛争は、いわゆる典型七公害、大気汚染、水質、土壌、騒音、振動、地盤沈下、悪臭に限って、その他のものは対象とはしないこととなっておりますが、その理由は、どういうところにあるか、まず聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/2
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003・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 仰せのとおり、現在公害紛争処理法の対象となる紛争は、御指摘の典型公害に限られておりますけれども、これはもともと公害基本法がそういうふうになっておりまして、この公害紛争処理法は、公害基本法の条項を受けて立法されたものでございまして、一応それを受けたことになっております。しかし、そのほかにも御指摘のような、いろいろないわゆる公害、世間一般に公害といわれている問題があることは事実でございまして、これについては、やはりそれについての紛争解決の必要はあるのでございますけれども、公害紛争処理法の体系に入るかどうかということにつきましては、いまの基本法の根本問題との関係がございまして、いますぐにどうということはできないのではないか、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/3
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004・米原昶
○米原委員 そのことは、私も一応は知っているのですけれども、ただ実際問題として、非常な紛争がいろいろ起こっているわけです。しかも、むしろそれこそ紛争処理の対象にしたほうがいいし、それからわりあい簡単に処理ができるような種類のものがあるのではないかということなんです。典型七公害以外に、たとえば最近非常に起こっているのは、日照権問題あるいはビルによる風害問題とか電波障害の問題、数多くの紛争が起こっているわけです。それで、その紛争の中では、一部にはけが人も出るというような騒ぎも起こって、紛争はむしろ、そういうところのほうに多く起こっているのですが、問題の性質からいうと、紛争処理の対象として扱うならば、わりあい簡単に処理できるんじゃないかと考えるようなものがあるわけで、当然改正されるとしたら、この際、そういうものをむしろ対象とすべきだ、そういうふうに思うわけですが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/4
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005・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 確かに仰せのとおり、この種の問題を取り上げるとすれば、わりあいに簡単に早く済むようなケースもあり得ると思います。ただ、さっきも申しましたように、現在のところ公害基本法がいわば公害の憲法でございまして、それから受けてきた公害紛争処理法ですから、いろいろ立法上の問題がありまして、すぐここで公害紛争処理法の中にそれを取り入れるということは、なかなかむずかしいんではないかと思いますけれども、本質的に申しますと、そういう紛争について、やはり典型公害と同じように処理するほうが被害者のためにも有利だという場合があると思います。でございますから、実際問題としては、たとえば苦情処理なんかの段階では、そういうことを区別せずに、そういう問題は、やはり地方の苦情処理の窓口ではそれを受け付けて、そして適切な指導をするようにということを当委員会としても指導いたしております。
それから、普通の典型公害とあわせて、そういう問題が入ってくるケースがあると思いますが、そういうときには、たまたま同時に請求された紛争であるけれども、これは典型公害に属しないから、その分はだめといったようなことはしないで、やはり一緒に調停にのせるということにすべきだと思っておりますけれども、ただ、いま言ったような法の体系もございますので、純然たる非典型公害だけを対象にして持ってきたときには、いまのところ、まだ扱いかねておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/5
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006・米原昶
○米原委員 法体系という点からいいますと、——しかし実際は、公害国会で基本法の改正が問題になったときにも、だからこそいろいろな議論が出て、例示されている七公害の下に「等」という字を入れて、こういう場合も含めるようにすべきだという修正案も私自身出したわけなんです。この際、そういう点を考えられたらどうかと思う。確かに法体系からいえば、日照権などは建築基準法にかかわってくるものですし、そして建築基準法の一部改正案も今国会に提出されているわけです。しかし紛争を処理するという面からいえば、その性格からいえば、典型七公害と何も変わりはないのであります。その点を、ひとつぜひ考慮に入れてもらいたいということが一つです。
もう一つ、日照権の問題で具体的に聞くわけですが、新聞にも出ておりますが、千葉県の市川市で総武線の高架化で沿線住民が日照を奪われたということで紛争が起こりました。住民は国鉄と交渉したけれども、ちっとも解決の見通しがつかない。それで結局補償として国鉄にかわって市川市が、暖房費を沿線住民に払うことを約束した。これは一つの具体的な例ですが、こういうことは、市川市の善意な態度というのは私、高く評価しなくちゃならぬと思うけれども、こういうことが起こっているわけなんで、環境庁として、こういう問題をどう思われますか。
つまりこの問題では、国鉄の姿勢というものが非常に問題だと思うのです。法体系は違っても公害に変わりはないわけで、とすれば、原因者である国鉄が誠意ある措置をとらないで、市川市という自治体が補償を肩がわりさせられるというのは、明らかに原因者負担の原則に反するわけです。この種の問題がかなり起こっているので、この問題についても環境庁としても一定の対策を講ずべきではないかと思うわけですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/6
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007・角屋堅次郎
○角屋委員長 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/7
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008・角屋堅次郎
○角屋委員長 それでは速記を始めて。
環境庁城戸企画調整局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/8
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009・城戸謙次
○城戸政府委員 日照妨害の問題が、これはまた環境の問題ではございますが、非常にいろいろな特色があるわけでございます。いまのお話は国鉄の関係で、若干特殊の例でございますが、一般的には被害者の土地、建物利用形態等にも左右されるとか、あるいはそれ自身が水質だとか大気汚染などのように、自分の生活領域への積極的な汚染物質等によります侵害ではなしに、被害者の土地、建物への日光の採光等を妨げるという形での消極的な侵害であるとか、あるいはもっと問題点としましては、一たんできました以上、その侵害が永久的、確定的なものとして継続するというなかなか非常にやっかいな問題があるとかいろいろな特色があるわけでございます。
いまお話がございましたように、公害対策基本法を四十五年の公害国会で私ども提案いたしました場合におきましても、確かに日照問題につきましてはいろいろ議論をいたしたわけでございますが、やはりこの公害の概念におきましては七公害に共通します特色に着目しまして、これを行政上の公害という共通の概念でとらえた上で、総合的な施策を講じていこう、こういう考え方で推移しているわけでございます。
したがって、いろいろな特色ございます日照につきましては、この典型七公害の中には入れていないということでございまして、基本的には、隣地の上の上空の利用と自分の土地の日照確保、つまり私法上の相隣関係につきましての問題である、こういう考え方でございまして、究極は裁判所が司法上の問題として判断すべきものだ、こう考えているわけでございます。もちろん、建築行政の上におきまして、日照の確保をはかられるようにしていくということは非常に重要でございますので、この点は建設省のほうでこれまで十分検討してまいりましたし、今回の建築基準法の一部改正を今国会に提案されているという段階になつているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/9
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010・米原昶
○米原委員 そういう点で確かに公害として、ほかの公害と違う面があることはわかるわけです。しかし、紛争処理という面から見ますと、かなり以ているし、それからこの種の紛争は典型七公害に比べて解決がむずかしいというわけでもないと思うのです。もちろん、法の整備ということも必要ですが、同時に問題は、紛争処理法にこういう種類の公害も解決の対象にしていいように改正することはできないのかということなんです。
住民の権利を保護するために法の整備を積極的に進めると同時に、紛争が起きた場合も行政が積極的な措置をとれば解決が促進される。そうした意味で何らほかの典型七公害と異なっていない。これらの紛争の解決についても、この法の対象とするようにしていいじゃないかというこの一点なんです。この点をどう考えられるか。性格は確かに違うのです。しかし、実際に社会に起こっている事態から見ますと、まさに紛争処理をやるのが特別むずかしいわけではなくて、むしろ乗り出してやられたほうがいいんじゃないか、こういうのを対象に入れるべきじゃないかという点を、もう
一度答弁してもらいたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/10
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011・城戸謙次
○城戸政府委員 私、基本法を所管している環境庁の立場で申し上げましたので、紛争処理をどういうぐあいに取り上げるか。これは紛争の問題があるということは、よくわかるわけでございます。これが円満に解決さるべきこともわかるわけでございますが、この問題につきましては、公調委のほうからお答え申し上げるのが至当だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/11
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012・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 いまの典型公害以外の公害につきましても、紛争を簡易、敏速に適正に解決する必要という点は同じでございまして、その点ではこういうようなことも考えられると思いますけれども、もともとこの公害紛争処理法によりまして、行政機関が私人の権利関係、私人の法律関係に立ち入りまして、紛争処理をするということは、実は公害紛争処理法がいままでの例を破ったものだと思いまして、これは司法権との関係でもいろいろ問題が論議されたところだと思いますが、そういうわけでございまして、ただ簡易、敏速に解決するというだけを考えますと、あえて典型公害に限らず、そのほかの公害もございますし、それからそのほか公害といわれないいろいろな紛争もあるかと思います。たとえば薬品公害とか食品公害などと俗にいわれておりますが、あれがはたして公害の概念に入るかどうかということについては、本質的にはいろいろ問題があろうかと思います。
それで、結局公害といいましても、はっきりしているのは典型公害でございますが、そこをどこでとらえるかということは、いろいろ政策的な問題もございましょうし、同時に、いまの司法機関を離れて行政機関がある程度の権限を持って、私人間の民事上の紛争に介入するという制度でございますから、おのずからそこにも限界があろうかと思います。非常にむずかしい問題だとは思いますが、御指摘のとおり、そういう問題について簡易、迅速に行政的な手段で救済がはかられるということは、まことに望ましいことでございますが、いま申しましたようないろいろな問題がございまするので、なおよく研究さしていただきたい、そういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/12
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013・米原昶
○米原委員 確かに私自身も、こういう紛争処理制度がいいのかどうか、もう一ぺん考え直すべきときにも来ているんじゃないかと思うぐらい複雑だと思うのです。公害等調整委員会ができてから三年になるわけですが、実際に現在まで何件の申請があり、何件処理したか、この点、まず簡単に答えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/13
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014・宮崎隆夫
○宮崎(隆)政府委員 公害等調整委員会における公害紛争の処理の状況について、お尋ねがございましたので、お答えいたします。
昭和四十五年十一月発足いたしまして以降四十九年三月三十一日までの間におきまして、調停申請事件が五十七件、そのうち、処理済みになりましたものが十二件、未済のものが四十五件でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/14
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015・米原昶
○米原委員 もう一つ、そのうちの裁定の申請は何件ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/15
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016・宮崎隆夫
○宮崎(隆)政府委員 お答えいたします。
ただいままでのところ一件もございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/16
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017・米原昶
○米原委員 裁定の申請が全然なかったという理由は、どういうところにあると考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/17
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018・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 裁定制度が発足しましてから一年半になりますが、御指摘のとおり、まだ一件も申請を受理しておりません。それのほんとうの原因というのは、もちろん正確なことはわからないわけでございますけれども、私どもの察しておるところでは、第一に、私人間の公害をめぐる民事紛争について行政機関が、ちょうど裁判所と同じような立場で紛争処理をするということが、まだ制度発足後間もないので国民に十分浸透してないんじゃないかと思われるのが、これが一点でございます。
それからもう一点は、公害紛争は、ほんとうに企業の責任を追及するとなりますと、因果関係なり、それから損害額の算定なりに、いろいろむずかしい法律技術的な問題がございます。それで、法廷技術に練達な弁護士などこういうものを取り扱う専門家は、やはり従来の御自分たちの経験から考えて、裁判に持ち込むほうが手続が安心といいますか、自信が持てるとか、そういうことがあるのかもしれないと察するわけでございますけれども、いずれにしても、この二つの理由とも制度の本来の趣旨とは離れるわけでございますから、これはいけないのでございまして、私どもとしては、いまの制度が国民の間に十分浸透してないのではないかということを感じますので、これについては一そう制度のPRというようなことをしなければならないと思っております。
それからなお、これは現に苦情処理相談員の制度を通じまして地方とも連絡を密にしておりますが、そういう人たちの協力を得て、被害者に対し、この制度の活用の道があることを十分浸透させるようにやっていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/18
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019・米原昶
○米原委員 制度発足後一年半、二年に近づこうとしているわけですが、確かに国民に十分浸透してないという点もあるかもしれません。しかし聞いてみますと、国民のほうはむしろ裁判のほうに信頼を置いているわけですね。はたしてこういう制度が必要なんだろうかどうかと私も感ずるくらいなんです。この点では、やはり調停や裁定を行なうにあたって、公害等調整委員会がどのような立場をとるか、このことと重大なかかわり合いがあるんじゃないかという感じがするのです。
つまりこの点、労働委員会なんかの調停や裁定とは性格が若干違うと思うのです。どっちかというと、もちろん労使の場合も労働者のほうが弱者でありますが、法律的にはいろいろ保障されているし、立場としては対等なわけです。ところが公害問題というのは、どっちかというと、加害者と被害者という関係なんです。一般国民が弱者の立場に置かれているのです。ですから、はっきりと弱者を守るのだという立場が鮮明であることが必要だと思うのです。もちろん法的には公平でなければいけないわけですが、そのことと、国民一般、被害者を守るというこの立場が非常に明確であれば、みんなここに調停を持ってくると思うのです。ところが、何か第三者的に見えて——それは解決のほうは法的には公平でなくちゃならぬ、そのことはわかっていますけれども、やはり公害というのは、加害者と被害者がありますから、被害者を守るという立場が明確でないと、調停も裁定も申請する人があまりないのじゃないか、それよりも裁判に持っていったほうがいい、こういうことになるのじゃないかという気がするのですが、この点どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/19
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020・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 御指摘のとおり公害紛争の当事者は企業と、それから公害を受けた人でありまして、そして公害の被害者というのは、概して資力も十分でありませんし、何といっても、企業と対等に太刀打ちできる立場にはないわけでございますから、ですから、これが調停なりあるいは裁定なりに持ち込まれたときには、ただ公平な第三者でもって、両方の主張を同じようにそのまま聞いて、そして資料を出してもらって、出された資料に基づいて公平に判断するといったようなことでは、実質的には被害者の救済は期せられません。そのために、この紛争処理制度では、もちろんその法律的な立場は公平、公正に、どちらにも偏しないということでございますけれども、公平な立場で判断するためには、両方が十分主張も出し、それから資料も出して、十分出し尽くして、平等なところまで持ち上げてから、それで判断すればこそほんとうに公平にいくのだろうと思います。
それでございますから、現に係属している調停にいたしましても、これは企業のほうはほうっておいても、たとえば損害が程度が少ないとか因果関係がないとかという資料は幾らでも出しますけれども、被害者のほうは、それが出せないのが実情でございます。それに対して、委員会でこれを公平、平等に扱うためには、その損害の有無の解明、それから因果関係の解明、そういうものについて、もう職権で立ち入って、どこまでも調べていかなければならないわけでございます。実際もわれわれ、いままで力は十分とはいえないかもしれませんけれども、まず係属している調停事件についてのわれわれの努力というのは、ほとんどが因果関係の解明、損害の解明、そちらのほうに非常なエネルギーを使っているわけでございまして、この事実はおそらく、まだ件数は少のうございますけれども、いずれ次々にあらわれてくる事件の解決を通じて、必ず国民に理解をしてもらえるものと思っております。
まだ、いまのところは件数が非常に少のうございまして、その件数といいますか、処理のできた件数が少のうございまして、その点は残念でございますけれども、この紛争処理制度の本来の性格、それから実際処理している委員会の立場というものは、そういうものでございますから、どうぞ御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/20
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021・米原昶
○米原委員 いわゆる単なる行司のような役目ではなくて、被害者を守るということに徹することが、調停委員会に対する信用ができてくるゆえんだと思うのです。もちろんこの制度は裁判とは違います。しかし、同時に調停は特に処理の時間を裁判よりも短く早くやらなくてはいけない。そういう点では、裁判ほどこまかい判断は下せないかもしれない。したがって、弱い者、被害者、これを守るという姿勢を国民にもはっきり知らせるということが非常に大切だと思うのです。そうでないと持ち込んでこないし、信用されないわけであります。
そこで具体的な問題で聞くわけですが、たとえば先日の大阪空港の騒音公害の問題、これは訴訟があって、これについては去る二月に判決が下されました。同時に公害等調整委員会にも調停申請が出て調査中と思いますが、いつごろ当事者に調停案を示すつもりでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/21
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022・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 この大阪空港調停事件は、現在幾つかのグループから何回かの調停の申し立てがありまして、現在では件数としては十件、申請人の数としては一万四千八百二十二人になっております。それで古い順序から調停委員会におきまして双方の主張を聞く、現在の段階では私は調停委員会のメンバーではございませんし、それから調停委員会の実際の内部の進行状況などにつきましては、これはやはり秘密でございますから、お許しいただきたいと思いますし、また、私自身も聞いておりませんけれども、ただ、聞くところによりますと、やはり申請人の主張をいろいろ聞き、それに対する運輸省側の意見を聞き、また、その運輸省側の意見に対する申請人側の問題点、疑問点などについて双方の主張をいま煮つめているところだという、その程度のことを聞いております。
それから、いつ調停ができるのかということについては、これは全くわかりません。私聞いておりませんし、それから事実いつごろあるかというようなことは、まだきまっていないんじゃないかと思います。おそらくそういうことのできる段階まで進んでいないんじゃないか、そういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/22
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023・米原昶
○米原委員 確かにこの場合調停申請人も非常に多い、そして複雑な面がなくはない。しかし、裁判のほうは一応の判決が出ているわけです。この調停制度というのは、裁判なんかにかけるよりも早く解決したいという趣旨からできた制度なわけですから、迅速な解決ということ、それも国民が信頼し得る迅速な解決ということが一番肝心じゃないかと思うのです。この申請がすでに昨年の二月十五日出ておるわけで、すでに一年以上たっておるわけですから、いまのところ、あなたの立場として、いつごろということは言えないかもしれません。しかしこういうことが、あるいは裁判より長くかかるとか、それから今度の裁判は双方が控訴していますから、今度の判決までにはまだ数年かかるかもしれませんが、まるでこの次の判決の下るまで、この委員会のほうもどうにもできないということになると、こういう委員会をつくった意味がなくなるのです。迅速で、しかも国民が信頼できるような解決、調停、そういうことをやっていただきたいわけです。
ですから、大体いつごろまでに何とかやりたいというようなことでも、めどをひとつはっきりさしてもらえませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/23
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024・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 どうもいつまでに調停をやる、調停が成立するというようなことをめどを立てるということは、おそらく当該担当の調停委員会でも、これはまだそこまではお答えできないのではないかと思いますけれども、しかし、いろいろな点での御要望の筋は全く私も同感で、そのとおりでございまして、いろいろな障害がございましょうけれども、それを乗り越えて早く、敏速に被害者の救済をしなければならないということは同感でございまして、そのために努力していきたいと思います。調停委員会の人たちにもそういう御発言のあったことを伝えておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/24
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025・米原昶
○米原委員 こういう制度がある以上は、とにかく裁判の判決が下ってから、またそれと付随して調停をやるというようなことであっては、こういう制度をつくった意味がなくなるのです。ですから、現状では裁判について双方が控訴しているわけですが、当然被害者のほうが納得のいくような、そういう方向で調停を進めるべきだと思いますがどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/25
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026・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 調停は双方が納得いくのが理想でございまして、そのつもりで調停を進めております。ただ、実際調停が成立するときには、あるいは事件によっては双方が納得しないけれども、双方が必ずしも満足ではないけれども、やはりこの紛争はこの程度で解決したほうがいいということで双方が合意することもございます。しかし、被害者が納得しないのに調停が成立するということは、これはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/26
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027・米原昶
○米原委員 どうも聞いておりますと、結局国民は裁判のほうを信用してしまうようなことになるのではないか。この委員会があまり意義を持たないというふうに現実にはなっていると思うのです。ですから、公害等調整委員会が国民から信頼を受けるような、そういう措置をとることが、この委員会の活動をさらに機能をよくするために必要じゃないかと痛感するわけです。
そこで、今度の改正案についてもう一つ。今回の改正の最も大きな点は、職権あっせんが可能となった点だと思うのです。この点の提案理由は抽象的に述べられているだけでありますが、具体的な事例をあげて、職権あっせんの必要性を示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/27
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028・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 法改正をお願いしましたときには、特に特定の具体的なこの事件の解決のためにという、そういう具体的な事件はございませんでした。ただ、こういうことをしなければならないということを考えましたのは、昨年の夏、各地で漁業被害をめぐる紛争がございまして、これが非常にエスカレートして、なかなか解決がつかないという状態になりまして、それで、これはこういうのがもし、そのままずっと長年月にわたって、あるいは長期間にわたって解決がつかないということでは、被害者の救済にはまことに困ることになるというようなことがございまして、そういうときに政府としては、国としては一体何ができるのだろうか。いままでの紛争処理制度では、要するにどちらからか申請がないと全く動けないのですが、これをそのまま座視して、ただどちらからかの申請があるのを待っているということでは、国としての責任が果たせないのではないかということを痛感しまして、この制度の改正の研究に入ったわけでございます。
ただ、そのときに、いま申しました各地の漁業紛争の、あの当時新聞に報道されました、非常にエスカレートした状態は、間もなく双方の話し合いで解決がついたようでございますけれども、しかし、こういう事態がいつまた起きないとも限らぬ、そういうときに国としては、いつまでも手をこまねいて待っているわけにはいかないのでございまして、そのために特に職権あっせんの制度をお願いしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/28
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029・米原昶
○米原委員 その点で確かに職権あっせんをやったほうがいい場合が現実にあると思うのです。その場合に、加害者側が納得しない場合は別として、被害者側がこのあっせんを歓迎しない場合があると思うが、その場合はどのような措置をとられるかという点です。申請がない場合でも、あっせんが行なわれるという点はとにかくとして、被害者側があっせんを歓迎しない場合、このあっせんをやめるべきだと思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/29
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030・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 これは、実際の事案がいろいろございましょうから、実際にはその事案の実情によって考えなければなりませんとは思いますけれども、もともと職権あっせんに乗り出す場合には、当事者の意見を聞くということが要件でございますし、そして、加害者側にしろ被害者側にしろ、とにかくこのあっせんは断わる、あっせんによっては解決がつかない、どうしてもあっせんを受け入れないというようなことがはっきりしており、そして、それがほんとうに理由のあるものと考えられるような場合には、これは職権でそこまで立ち入ってやるということはできないと思います。
ただ、形の上では、われわれは自主的に解決するので、国の介入は困るというふうなことを言っていても、事案によっては、従来の立場上どうしてもそういうことを言わざるを得ないけれども、実際は当事者間では全く対立して先には進展しない、そのときに第三者が出てくれば、それがきっかけになって解決する可能性があり、むしろ内心ではそれを希望している、待望しているというようなことがあればまた別でございますけれども、しかし、御指摘のように、ほんとうに当事者がこのあっせんを希望せず、あっせんしても解決するとは考えないといったようなときに、それに無理に介入していくということは意味がございませんので、そういうことはできないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/30
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031・米原昶
○米原委員 形式的にも実質的にも被害者があっせんを歓迎しないような場合は、当然やるべきじゃないと思うのです。
で、改正部分にある第二十七条の二の「被害の程度が著しく、その範囲が広い公害」というのは、たとえばどの程度のものをさしているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/31
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032・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 その二十七条の二に書いてありますように、被害の程度が特にはなはだしいという場合でございますが、たとえば、法の第二十四条各号がございますが、その第二十四条の一号に「現に人の健康又は生活環境に公害に係る著しい被害が生じ、かつ、当該被害が相当多数の者に及び、」というような例が、(管轄)のところに規定がございますが、ここにあるようなのは、もちろんこれに該当するわけでございます。
たとえば健康被害で、それで現に病気にかかるとか病人が出ているとか、まあ死者とまでいかないまでも、現に健康被害によって病人が出ているなどというのは、これは被害の程度が著しい例になろうかと思います。それから、これは訴訟の例でございますけれども、従来あります、たとえば水俣病にしろ、あるいはイタイイタイ病にしろ、ああいう被害を受ける、これはもちろん範囲の広い公害でございますし、こういうのはいまの著しい、範囲の広いそれになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/32
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033・米原昶
○米原委員 そうしますと、新幹線や高速道路の建設で今後予想される公害についての紛争、これについては、この条文を読むと職権あっせんの対象とならないと思いますが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/33
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034・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 新幹線公害にしろ、それから高速道路公害にしろ、やはりその騒音、振動によって沿線住民の人たちの健康がむしばまれているとか、そういうことになれば当然、被害の程度が著しいことになりますし、それから、その範囲が広いことは、これはもう事柄の性質上当然だろうと思いますから、そういう場合は二十七条の二の職権あっせんの対象にはなり得るというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/34
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035・米原昶
○米原委員 それから、いまお話にあった二十七条の二の「当事者間の交渉が円滑に進行していない場合」というのは、どういう場合のことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/35
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036・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 本来、紛争の解決としては当事者間の話し合いでもって、第三者が介入をせずに話し合いで円満に解決するのが一番望ましいわけでございますけれども、これが当事者間の話し合いがなかなかそう円満にいかない、いつまでも対立している、対立して話し合いのきっかけもつかめないなんていうことが実際の例としては、むしろ常態かと思います。そういうときに当事者間の話し合いの場をつくる、用意をする、それのお手伝いをするというのが、この職権あっせんの考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/36
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037・米原昶
○米原委員 訴訟中またはその準備中などの場合は、この場合に該当しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/37
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038・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 まあ、訴訟も一つの解決の手段でございます。ですから訴訟が進行中である、確かに訴訟進行中は当事者の直接交渉が円滑に進行していないということは、これはそのとおりでございますけれども、やはり当事者がそういう形で解決の道をとっているということになりますと、やはりその当事者の意思は十分考えなければなりませんし、そういうときに、あえて、裁判所に現にそれが係属している、あるいは係属しようとしているときに、国のほうから別にそれを無視して介入するということは適当ではないと思いますし、いまの二十七条の二の条文によりますと「当該紛争を放置するときは」これこれというようなことになっておりますが、いまの場合は放置されているというふうには客観的にはいえないだろうと思いますし、まあ訴訟中あるいは訴訟になろうとしているときに、そしてそれがはっきりしているというような場合には、そこまで介入するということはできないだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/38
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039・米原昶
○米原委員 それでは、最後に長官にお聞きいたします。
私が質問しましたのは、公害行政は被害者を守るということが根本でなくてはならない。もちろん調停制度ですから、法的には第三者ですが、しかし、そのことは法的には公正にやらなくちゃならない、調査も公正にやらなくちゃならない。しかし、立場は被害者を、国民を守る、この点が徹底しないと、何か第三者的な処理では国民の信頼が得られない、またほんとうの解決にもならない。したがって、紛争処理の制度の場合、被害者の立場に立って、そして迅速かつ適正な解決が必要だと思います。単なる簡易裁判のようなものとは違わなくちゃいけない。その点で、今後具体的にどのようにこの法を運用されるかということを最後に伺って、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/39
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040・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 ただいまお尋ねの問題でございますが、私はこの公害問題というのは現在の非常に重要な社会的な問題であるという認識を強く持っております。同時にまた、公害による目に見えないような生活に対する脅威ということは、これは原因が何であれ、やはり政治としては被害者の立場に立つ人を守るということが、きわめて重要なことだと認識しておるわけでございます。
今回も、この法改正をお願い申し上げているときに、あっせんという形をやるということは私は当然のことだ、むしろおそきに失したのではないかという考えを自分では持っておりまして、ぜひこれは国会の御審議の場にお願いをして、あっせんを早くやって、そして被害者を守り、かつ社会のいろいろな混乱というものを防げる、そうした役割りをこの委員会が持つということは、非常にいいではないかという考えを持っておるわけでございまして、この運営につきましては、もちろん公平であり、かつ公正でなければなりませんが、しかしその運営の一番基本はやはり被害者を大切にすると申しますか、守るということを基本に考えていくべきであるというふうに私は考え、またそのように総務長官としての行動をしてまいりたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/40
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041・米原昶
○米原委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/41
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042・角屋堅次郎
○角屋委員長 岡本富夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/42
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043・岡本富夫
○岡本委員 最初に総務長官にお聞きしますけれども、この法案の十三条に、各都道府県において審査会を設置する義務がある、こういうようにあるわけでありますけれども、現実にはまだ十二の府県では設置されていない。岩手、山形、石川、山梨、長野、京都、和歌山、島根、鳥取、香川、愛媛、徳島、こういう県においてはまだ現実にこの審査会が設置されておらないわけですが、そうしますとどういうことになるかと申しますと、一つの事例をあげますと、これは愛媛県です。
伊予三島の大王製紙の排水の隠蔽の件について漁業者関係が非常に漁業の被害を受けた、そのことによって、これはNHKの四十九年二月十九日のニュースでも取り上げられたわけでありますけれども、これを提訴するところがない。これが被害が、政令では一億円以上の被害となっておりますから、一億円以上の被害になれば、これは当中央委員会に提訴できるわけですけれども、一億円以内でありますとできない、こういうことになっておるわけですね。そこで総務長官は、こういった現実に審査会を設置しない県に対してどういうような方法をとるのか、これをひとつお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/43
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044・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 お答え申し上げます。
やはり公害問題は、県それぞれによってたいへんいろいろな形もあるし、またその激しさも違っておるわけでございます。したがいまして、なお設置してない県もあるわけであるし、また同時に、そうしたようなある程度の自由裁量的な方法も認めておるわけでございますが、しかし最近のように、公害問題がその県の産業のあり方とか、あるいはまたその他のいろいろな事情を越えまして非常に広く広がってきておるわけでございます。同時に、今度もわれわれの委員会としては、あっせんという非常に前向きな姿勢でこの問題に取り組んで、被害者の救済あるいはまた公害問題そのものに対する取り組み方を前向きにやっていこうという方向で動いておる現段階でございますので、現在設置していない各府県においても、やはり設置をする方向でひとつ前向きに行動してもらいたいということを私自身は考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/44
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045・岡本富夫
○岡本委員 一つは、設置するにしましては費用もかかるわけですね。そういった何といいますか、地方自治体に対するところの援助、そういうものなくして、ただ期待するとか、希望するとか、これで私はできないと思うのです。
そこで、ひとつ総務長官に、もう一度確たるところの決意を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/45
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046・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 やはりこの委員会の設置そのものにつきましては、私は都道府県そのものの自主性というものが基盤であってしかるべきだと考えております。しかし、先ほど申し上げたように、方向としては積極的に動いてもらいたいというわけでございまして、今後さらに委員会ともよく話し合いまして、政府内部においても、その方向を進めるような努力をひとつしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/46
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047・岡本富夫
○岡本委員 地方自治体は地方自治ですから、これにあまり介入するということはあれでしょうけれども、しかし、この十三条で設置しなければならぬという義務があり、また現実に京都にしましても、和歌山にしましても、先ほど事例をあげました愛媛にしましても、島根県、鳥取県にしましても、香川県にしましても、私ども当委員会で調査しましても、そういった公害の被害が確かに出ておる。ところが、それを設置はしない、しかも中央委員会に出せない、こういったことになれば、これはもうほんとうに何といいますか、実施において確実な法案とは言えないと私は思うのです。
これはひとつ総務長官、あなた総務長官になって今度初めてでしょうけれども、相当強力に指導してもらわないと、ぐあいが悪いと思うのですね。しかも、これはあとでまた聞きますけれども、中央委員会とこの地方審査会との関連、こういうものが出てくると思うのです。そうなりますと、地方に審査会がないということは、それも職務ができない、こういうことになるわけですよ。
次に、この審査会を今度改正案には、都道府県知事の請求に基づき、あっせんを行なうことができる。しかし、都道府県知事の請求がなければ、これはあっせんできない。一つの事例をあげますと、伊予三島の愛媛県の問題を見ますと、これは伊予三島市が加害者である大王製紙との間に公害防止協定を結んでいるわけですけれども、公害防止協定を結ぶと排水の調査、分析結果、こういうものを明らかにしなければならない。ところが、この伊予三島市が、たとえば四十八年の十月十六日から十七日までの調査したものを夫公開にする、あるいは四十八年十一月十六日から一カ月後に調査したものを未公開にする。これ全部調べると、みな防止協定より、はるかにSSも高いというのですね。その企業の出した排水が公害防止協定よりも汚染されたときには隠している。
こういうような、これは市でありますけれども、府県がやったとしたら、これはおそらく都道府県知事から、あっせんしてくれというようなことは出てこないと私は思うのです、隠そうとするのですから。それでは被害者が浮かばれないわけです。したがって、この公害等調整委員会が、当委員会でやかましゅう言うて、やっと三条機関になって、独立機関のようになったわけです。そうしますと、都道府県においても審査会というものは、そういった独自性を持たさなければ、私はほんとうの公正な審査ができないではないか、こういうように考えられるのですが、その点、総務長官いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/47
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048・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 やはり知事は、その県の民生については非常に大きな責任を持っているし、また現在の民生の問題といえば公害問題、そしてまた物価の問題であると私は思いますが、そうしたような雰囲気の中で、知事が県民の要望にこたえて、そういう問題を全部伏せてしまうということも、私は何か、そういう力はとても知事にはないんではないかというふうにも思います。しかし御指摘のように、そのような具体的な事例がございますれば、ただいま伺いましたので、そうしたことについては、一応先方にもよく聞いてみるということをしてみたいと思います。
また同時に、先ほどの御質問でございましたが、もう先生の御承知のとおりでございますけれども、そうした委員会設置がないところにおきましては名簿をつくって、いつでも発足できるような体制を各都道府県で整えておるようでございますし、また現在ないところも、相当の数のものが設置をしようという動きを現在していると聞いておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/48
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049・岡本富夫
○岡本委員 そうしますと、二十七条の二の第一項、職権によるあっせん乗り出しは、中央委員会または審査会が行なうことになっておるけれども、委員の候補者名簿方式をとる府県の場合は、あっせん乗り出しができないという理由なんです。総務長官はいま、そういう審査会がないところは名簿方式で置いてあるんだ、名簿方式のところはあっせんができない。これはちょっと片手落ちと違いますか、いまおっしゃったことと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/49
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050・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 名簿方式の県でございましても、申し立てがあれば、あっせんはもちろんやるのでございまして、ただ審査会がない以上、審査会が職権であっせんにいくとかという問題が起きないのは当然でございますけれども、しかし、そういう場合には、おそらく当事者としても、審査会がないから申し立てしないで、そのままおくということはないだろうと思いますし、あっせんを求めるという道は開かれているわけでございますから、その点は、それほど支障はないんじゃないかとも思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/50
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051・岡本富夫
○岡本委員 この改正案を見ますと、特に迅速にこれを解決するために、職権または都道府県知事の請求に基づいてあっせんを行なうことができる、これは職権あっせんでしょう。要するに、これは申請がなくとも職権あっせんなんですね。そうしますと、いまお答え願ったのと、ちょっと違うように私は思うんですがね。当事者は黙っておることはないだろう、だから申請するだろう、もう一度ちょっとその点を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/51
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052・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 名簿方式の県におきましては、審査会が職権であっせんに乗り出すという道がないことは、御指摘のとおりでございます。しかし、その場合にも、そもそも公害紛争について公害紛争処理法によるあっせんの道が全然ないというわけではございませんので、通常のあっせんは当事者の申し立てに基づいて随時やれるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/52
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053・岡本富夫
○岡本委員 当事者の申し立てがあれば、随時名簿方式でやるということですけれども、今度せっかくこれが職権あっせんできるというけれども、これは職権あっせんできないということなんですよ。そこで総理府総務長官に、これは名簿方式をやめて、現実の審査会を各都道府県にきちんと置かせるべきではないですか。私、最初指摘しました十二の府県だって、公害のないところはないですよ、みな調べたら。これはあなたのほうの少し怠慢と違うんですか、いかがですか。これは総理府のほうですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/53
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054・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 ただいまのような具体的な、たとえば愛媛の問題につきまして御指摘がございましたわけですが、やはり公害そのものの及ぼしている範囲とか、あるいは被害者の数、特にそれがその地域においては、非常に大多数の人に対して重大な被害を与えておるというような事態であるならば、これは名簿方式のところであっても当委員会が発動して事情を聞き、そしてまた同時に知事とも話し合いをして、あっせんに乗り出すこともあり得るわけでございます。しかし、それはいまやってないということが怠慢であるかどうかは、よく実情を私、つまびらかにしておりませんので、委員長からお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/54
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055・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 御指摘の点は、結局根本に戻りますというと、先ほどの長官からお答えになりました事項になりますが、都道府県公害審査会は名簿方式をやめて、必置機関とすべきではないかということに結局帰着するのじゃないかと思います。
それで、その問題につきましては、先ほどもお答えがございましたように、地方の各県の自主性との問題もあり、現在のところは必ずしも一律にこれを必置にしなければならないというところまで事態が及んでいないのでございますけれども、先ほど長官のお話のありましたように、しかし、理想としては、これを必置にすべきものではないか、そのほうに努力していかなければならないものではないか、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/55
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056・岡本富夫
○岡本委員 長官お聞きですか。やはり中央委員会においても各府県で審査会をきちっと置くべきではないか、名簿方式では非常にあいまいなことになるわけですね。何ぼ法律きめてこういうふうにやる、こういうふうにやると言うてもできないわけですよ。要するに中央委員会で受け付ける事項というのは政令できまってしまっておるわけですよ。その以外のものは審査会で受けて、そしてこれを処理していくということになっておるが、その審査会がない。しかも名簿方式では、職権あっせんもできない。これは非常に片手落ち。しかもその県の自主性といいますけれども、その県に公害が全然ないというなら、私はうなずける。和歌山、京都、愛媛、徳島、香川、鳥取、島根全部回りましたが、全部ものすごいですよ。
だからひとつ、この点はもう一度あなたのほうで調査して、そして十三条で都道府県には審査会を設ける義務があるわけですからね。義務には今度は担保して、補助金といいますか、そういった公害に対するところの配慮というものがなければならないと私は思うのです。あなた、長官になられて間もないから、ここのところは、あまり公害ないのかなと思っていらっしゃるかもわからぬけれども、これは行って全部調査してあるのです。
それからもう一つは、先ほど申しましたように、この公害等調整委員会が三条機関になったように、やはり各県で独自性を持たさなければならない。そうでないと、はっきりしたものが出てこないと私は思うのです。その県のあれだから、知事は県民のあれだからということでと、あなたはおっしゃっていますけれども、そうでない事例を私は先ほど聞いたわけです。この点については、ひとついかがお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/56
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057・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 委員からの御指摘を待つまでもなく、私は各県にあってしかるべきだと考えておるわけです。それが名簿方式というような形でいまだにはっきりとした組織ができていないということは、やはりそれなりの事情もあると思いますが、私は、今度の法改正によって、あっせんということまで踏み出していくという政府の姿勢が明確になっておるわけでございますので、さらに従来のような地域の特殊性だとか、あるいは公害問題をあまり取り上げることが、自分らにとって不利であるとか、いろいろな配慮もあったと私は推測いたしますが、そうしたことを乗り越えても、公害問題に対して前向きに国全体の行政が動いていくということを強く期待いたしておりまして、ただいま委員のおっしゃったような方向で努力してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/57
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058・岡本富夫
○岡本委員 次に、裁定権、この権限を地方の審査会にはおろしていないのです。中央委員会にだけは裁定権を、原因裁定あるいは責任裁定権を持っていますけれども、こういった審査会を、きちっとしたものをつくると同時に、できれば独自性を持たせて——独自性を持たすことが第一、そして裁定権も与える。そうすると私は非常にスムーズに公害被害関係の紛争というものは処理されていくのではないか、こういうふうに思うのですが、その点について山中長官と同じような答えはいけませんよ、だいぶ進んでいますから、そのころよりは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/58
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059・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 お尋ねの点は、都道府県公害審査会にも裁定を行なわせてはどうかという御趣旨と拝承いたしましたが、都道府県公害審査会に裁定を行なわせるかどうかということは、すでに第六十八回国会のときにも御議論があったところでございます。しかし、そのときにも申し上げましたけれども、この裁定というのは新しい制度でございますし、しかも当事者の合意に前提を置かない、紛争について事実関係を調査し、それに現行の実体法を適用して、その適用の結果の判断を下す、そういう制度でございますから、全く法律を適用して、その結果を待ったなしに下すというのでございますから、地方地方によって、もしその結論、判断というものに食い違いがあってはたいへんなことにもなります。しかし、現在のところ、かりに地方の審査会に裁定をしてもらうということになりますと、各審査会の判断の食い違いを直し、判断、法解釈を統一するという機能を行なうところがございません。
それで、その点を手当てするためには、たとえば現在各県で全く独立に置かれている公害審査会に対して、さらにその上級機関的な機能を公害等調整委員会が持つとか、何かそういうことを考えなければならないかと思いますけれども、それには、地方自治体プロパーの審査会との性格で、それがはたしてうまくいくかどうかということについては問題がございます。
その問題が一点と、それからもう一点は、もともと公害紛争処理の迅速な解決のために、その一環として裁定制度も考えられたものでございますが、その裁定を地方が行ない、それからさらに、行政機関としての上級審たる公害等調整委員会に提訴させて、それからさらに、それでもしいけなければ、また訴訟の問題になるということになりますと、救済機構が屋上屋を重ねるのではないかという問題もございます。しかしこれ、だからいけないというわけではありませんけれども、そういういろいろな問題がございますので、実は裁定の実績もそれを見て、そして慎重に考えなければならない問題ではないか、そういうふうに考えております。
それで、現在のところは、都道府県公害審査会に裁定を行なわせる時期が熟しているとまでは、まだ考えておらないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/59
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060・岡本富夫
○岡本委員 イギリスなんかは公害裁判所というのがありますね。だから迅速にこういった公害紛争が解決されていくわけですよ。わが国のこの経済成長政策のあと、非常にこういった公害が各所に起こっているわけですね。ですから、この紛争というものは、ほとんど各地方の、地域の問題で起こっているのが非常に多いわけです。しかも、その地域の問題で起こっているものが、全部が全部中央に持ってくるわけにいかない。そうなってきますと、すみやかにこれができるためには、やはり私はここらで裁定制度をきめて、それで、あなたおっしゃったように、上級審をつくるというような、公害問題だけを——なかなかこれは専門家でなければわからない場合が非常に多いわけですね。
しかも、裁判に行きますと非常に長くかかる。その間にどんどん公害被害にかかった人たちはなくなったり、あるいはまたいろいろな重度になっていくとか、もっとすみやかに早く解決してやれば、健康もそのあたりで助かったという場合が非常に多いわけです。しかも健康被害補償法によると、地域を指定するとか、あるいはいろいろな要素がありまして、全部が全部救済できない、こういう状態でありますから、私は少し思い切って裁定制度をつくって、そこに——おそらく各県によって最初は相当ばらばらが出ると思います。裁判になっても、同じように一審と二審と違ったり、あるいはまた高裁にいったら、ころっと変わったりするわけですから。
どうも公害に対する救済については、政府の態度というものは非常におろそかにしているのではないか、企業に対する、加害者に対する慎重であって、被害者に対しては慎重でないと私は思うのです。慎重と言っている間に、みんなばたばた倒れていくわけですからね。この点、総務長官はどういうようにお考えになり、今後前向きに検討するのかどうか、これをひとつお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/60
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061・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 政府の姿勢が、必ずしも被害者に対して慎重でないというふうにきめつけていただくと、非常にわれわれは困るわけでございまして、また、そういう世評も多々耳にしておりますので、現在はそれを前向きに切りかえるということで、公害問題を非常に重要な政治の政策の中に大きく位置づけていきたいという意図をもって現在動いておるわけでございます。その点も、ひとつこれからの努力を十分にまた御検討いただいて、御忠告いただければありがたいと考えます。
それからまた、ただいまの裁定でございますけれども、中央におきましても、まだ一件もそうした事案が出てきておりません。きめていただいてから、四十七年以来ないと記憶しております。そんなようなことでございまして、まだ事実がよく認識されておらない面もあるように考えます。
同時にまた、委員長の先ほどからの御説明で申し上げているとおり、地方にそうした裁定権を与えるということは、一つの前向きな姿勢であると、もちろん私も思いますが、しかし同時に、それの決定が即オールマイティーであるというわけにもいかないのじゃないか。そうなりますと、上級審的なものをどんどん積み上げていかなければならぬ、あげくの果ては、またかえってそれが裁判に持ち込まれていくということにならぬとも限らないということを、委員会のほうではいろいろと配慮しておると聞いております。私ももちろん、各自治体が公害に対しても、いままでとは違った体制ではっきりと取り組むということをしてもらいたいということは、非常によくわかるのでございますが、一つの権限を持って、その問題の処理を進めるということについて、なおしばらく検討させていただきたいというふうに考えるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/61
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062・岡本富夫
○岡本委員 紛争処理法案を、山中総理府総務長官が担当したときでありましたけれども、そのときも、裁定制度については地方の審査会にもおろして、そしてすみやかに処理ができるように、こういうような要求もしたわけです。依然として、かわっても同じようなことを言っているということでは話にならないから、私はやはり前向きに検討をして、中央委員会を、公害等調整委員会を上級審にしてもよろしい。小澤委員長みたいな、まじめな人がおればだいじょうぶですよ。これはひとつ、その点については、ここで押し合いしても時間をとりますから、強く要求をしておきます。
それから二十六条の「その他の民事上の紛争が生じた場合」ということがありますけれども、この中には差しとめ請求権も入っていると解してよいのかどうか。たとえば大阪空港の裁判で、十時以降については認めないという差しとめ請求をしたわけですが、いま調停については、私はとやかくことばをはさむわけにはいきませんけれども、そういった差しとめ請求権というものが、この中に含まれておるのかどうか、これをひとつ念を押しておきたいと思います。これは委員長に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/62
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063・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 第二十六条は、あっせん、調停及び仲裁の規定でございますが、このあっせん、調停、仲裁の内容として、差しとめ請求についての定めをするということ、これも当然入っております。ただ、それはあっせん、調停、仲裁でございまして、裁定ではございませんが、いまのこの範囲内では当然入るわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/63
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064・岡本富夫
○岡本委員 もう一度、裁定の中には入っているわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/64
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065・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 裁定に、原因裁定と責任裁定の二種類があることは御存じのとおりでございます。
それで、差しとめ請求ということになりますと、原因裁定の段階ではまだ入りません。原因裁定の段階では、一体差しとめ請求ができるか、あるいは損害賠償請求ができるかという、その前提としての原因をきめるわけですから、これは本来的に原因裁定には入らないのは当然でございます。それから責任裁定につきましては、四十二条の十二に規定がございますが、第四十二条の十二によりますと、「損害賠償の責任に関する裁定」ということになっておりまして、責任裁定で差しとめ請求についての定めをするということはできないということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/65
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066・岡本富夫
○岡本委員 それでは次は、この二十四条一項二号の政令の中に、あなたのほうで処理できるものが出されているわけですけれども、この中で航空機、新幹線の騒音のみに限定しておるが、この振動等による身体障害、こういうものもこの中で処理できるのかどうか。この政令を見ると、それが入っていないわけですね。新幹線の騒音ということになっている。その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/66
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067・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 政令によりますと、航空機騒音それから新幹線騒音に関する紛争は、すべて、この二十四条の第一項第二号によりまして、中央委員会がこれを処理することができることになりますので、それはその騒音によって財産上の被害とか精神上の苦痛を受けたという場合はもちろんのこと、いま御指摘の身体障害を生じたなんということは、当然それに入る、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/67
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068・岡本富夫
○岡本委員 騒音によって身体障害じゃなしに、振動によって。——この間、委員長を中心にして私らはみな名古屋に行ったわけですが、振動が非常に大きな健康被害の原因になっている。それからもう一つは、山陽新幹線では、振動によって家屋が破壊しているわけです。こういうものも、この政令だけを見ると入っていないですね。それは運用でできるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/68
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069・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 確かに、御指摘のように「騒音に係る紛争」とございますので、振動は入っていないということになりそうでございますけれども、実際の紛争の実態を見ますと、騒音を伴わない振動というのは、ほとんどないのでございまして、新幹線騒音にしろ、航空機騒音にしろ——まあ航空機の振動というのはどういうのか、ちょっといま申し上げかねますけれども、新幹線騒音というのは、これはもう当然振動も含むのでございますし、それで、委員会といたしましては、騒音にかかる紛争として、振動による被害もあわせて申し立てがありました場合には、その被害は振動にかかるものだから、こちらは取り扱わないといったような運用はいたしません。必ず両方あわせて紛争の解決をするということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/69
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070・岡本富夫
○岡本委員 そうすると、先ほど申しました家屋破壊、それから電波障害、こういうのもこの運用によって処理ができる、こう解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/70
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071・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 騒音を伴うものであり、騒音とあわせて申請があれば、全部一緒に解決できることになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/71
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072・岡本富夫
○岡本委員 次に、調停委員会の権限の問題につきまして、三十四条ですか、これは勧告になっておるわけですけれども、今回の一部改正にあっても、義務の履行に関しては「勧告を」ということになっている。なぜ命令にしないのか。たとえば民事調停法の十二条ですか、これは小澤委員長得意なやつですけれども、これには行為の排除命令権が出ているわけですけれども、勧告だけではどうも、せっかく中央委員会でやってもらった、それからその決定がされた、しかし、履行にあたって、いつまでも履行されなかったら、これは被害者はたまったものではないわけですからね。勧告だけでは私は非常に弱いと思うのですよ。なぜ命令にできなかったのか、しないのか、この点をひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/72
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073・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 御指摘のとおり、こういう調停などできまった義務の履行の完全を期するためには、これは命令もでき、そして命令をさらに強制的に執行する道も考えるというようなことは当然問題にはなろうかと思いますけれども、もともとこの調停委員会の調停というものは、スタートが当事者の合意に基づくものでございますし、それからそれの効力につきましても、これは当事者間に合意があったものとみなされるというのが最終の効力でございます。ですから、これに対して普通の判決のように、裁判所の裁判のように、直ちに国家の強制権を付与するということは、やはりそこまでは及びかねるのでございまして、これは性格上、いま言ったような、国が介入して、それを強制執行するというような道は、これはできないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/73
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074・岡本富夫
○岡本委員 そうしますと、そういう場合また裁判に持ち込まなければならぬことになってくるんですね。ですから、せっかく中央委員会で裁定してもらい、あるいはまた調停してもらっても、この履行にあたっての担保というものは——そのときは合意した、しかし、あとやらない、こういう場合は、もうどうしようもないということになるんではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/74
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075・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 調停をいたしますときには、委員会が関与してそれを処理する限り、単に口先だけの合意が成立すれば、それでこと足れりとするものではございませんので、もうどの調停でも、それをどのようにして履行するかということについて十分突き詰めて、そこを確かめた上で調停をいたしますので、当事者間に、調停委員会の関与によって調停が成立した場合に、それがそのままで終わってしまって履行がされないというようなことは、普通は考えられないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/75
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076・岡本富夫
○岡本委員 なかなか普通は考えられないことでありますけれども、やはり被害者救済の立場から見ましたら、そこまでひとつ考えを及ぼしておきませんと、結局調停されても履行しないということになれば、調停されなかったのと同じことになるわけですね、結果とすれば。これはひとつさらに御検討をお願いしておきたいと思います。何かありますか。言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/76
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077・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 この調停が成立して、それがもし履行されなければ、せっかくやった調停の意味もないわけでございますけれども、それはただいま申しましたとおり、その調停の内容が実現されるように、調停するときから十分にその道を確かめた上で調停をいたしますし、それからさらに、今回お願いしております(義務履行の勧告)これは第四十三条の二でございますが、義務履行の勧告の制度も今度お願いしております。この義務履行の勧告の制度におきましては、調停成立後、もし義務が予定どおり履行されないときには、それについてどういう支障があるのかを調べまして、そしていろいろな場合があるだろうと思いますが、それについて必要なたとえば履行方法だとか、あるいは場合によっては、さらにほかの補助的な方法によって履行を容易にするような方法を考えるとか、そういうことについて勧告などいたしまして、履行が必ずできるように配慮していきたい、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/77
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078・岡本富夫
○岡本委員 最後に総理府総務長官に。今回の法律の二十七条の二の第二項によるところの都道府県審査会は、知事の要請がないと、あっせんに乗り出せない。なぜこのような、知事の要請がなかったらあっせんに乗り出せないというような規定を置いたのか。審査会の独自性というもの、この性格と矛盾するのではないかと私は思うのですが、この点だけひとつお聞きして終わりたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/78
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079・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 もちろん審査会には権限がございます。しかし同時に、知事はその地域の行政の責任者でございまして、やはり地方自治というようなものを、問題が問題であるからといって審査会のほうがどんどんと前に出ていくということは、やはりこれは一応そこで知事との話し合い——私はむしろ話し合いという程度に考えるものでございますが、話し合いをして、そして乗り出していくということを踏むべきではないかと思うわけでございます。必ずしもそれがきわめて重要な条件、一方においては行政的に見れば大きな条件でございますけれども、しかし、さればといって知事が頼んでこなければ動かぬというものではないというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/79
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080・岡本富夫
○岡本委員 そうですが、そうすると、必ずしも知事の要請がなくともあっせんはできる、こういうように解していいわけですね。あなたのいまおっしゃるのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/80
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081・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 必ずしもそこまでのことを申し上げているつもりはございません。しかし、その事件あるいは事態そのものが緊急であって、しかもそれに対して知事が何ら動かないというときには、やはりこちらではこちら相応の努力をいたして、同時に知事にも問題を提起して、そこで一応の話し合いを詰めてみるという手段をとるべきだというふうにわれわれは解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/81
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082・岡本富夫
○岡本委員 わかりました。そういうようにあなたの法の解釈であれば、これは修正がちょっと必要になってくると思うのですね。都道府県知事の請求に基づきということを、都道府県知事の請求に基づく、それから基づかなくとも、あっせんを行なうことができる、こういうことに解してよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/82
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083・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 法律的には、もちろん請求がなければできませんわけでございますが、しかし運営においては、ただいま申し上げたように、むしろ公害等調整委員会が発動して、そして事後になっても知事との話し合いをして、行動を続けていくというふうにいたせばいいのではないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/83
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084・岡本富夫
○岡本委員 小澤委員長、それでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/84
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085・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 全くそのとおりに運用していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/85
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086・岡本富夫
○岡本委員 行政というものは、大体法律に基づいてものごとは運用しなければならぬと私は思うのです。いつだったか、あれは山中長官だったか、中曽根通産大臣でしたか、当委員会で、法律はあっても、そのときそのときの解釈があるのだというようなことを言って問題になったことがあるのですね。
ですから、この点は私は、きょうはこの程度にしておきますけれども、委員長、ひとつその点について、やはり法律に基づいて行政というものは行なわれるものであって、法律に明記してないものを運営によってやるのであれば、法律は要らないことになる、こういうような解釈にもなりかねない、こういうように思いますので、ひとつあとで理事会で御検討いただいて、その点は善処されたいことをお願いしまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/86
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087・角屋堅次郎
○角屋委員長 この際、暫時休憩いたします。
午後零時十四分休憩
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午後一時五十分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/87
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088・角屋堅次郎
○角屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。島本虎三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/88
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089・島本虎三
○島本委員 初めて総理府総務長官の来臨を仰いで、ここに質問する機会を得たのでありまして、身に余る光栄だと思います。私は、そういうような点からして、締めくくり的になるかもしれません、自分の意見をまじえながら、ひとつ長官の公害紛争処理に対する含蓄の深い真意をただしたい、こういうふうに思うわけであります。
第一番に長官に聞いてみたいのは、裁定の問題です。紛争処理法、これは当初提案されたときには、政府案の中に裁定はございません。社会党案として、当時、現委員長である角屋委員の名において別案を提案しているのであります。それによると、紛争処理法案、政府提出のものよりも数等りっぱなものであったわけであります。しかし、その後政府も裁定を入れたり、国家行政組織法第三条機関に移行させたり、こういうような進展をたどってまいりました。しかし、まだその内容等については、いかに三条機関に移行し、いかに裁定権を付与されましても、それがいままでかつて全然これを利用した人がない、こういうような状態であります。その理由を小澤公害等調整委員会委員長に聞きましたところが、やはりPRが不足だ、国民の中にこの制度が十分浸透しておらない、第二番目には、法律技術的なものが必要で、練達の者のいる裁判所に持ち込むことが妥当と思っている向きが多い、この二つの点が解明したのであります。
それで、長官、国家行政組織法第三条によるところの準司法的な機関として、もうすでに責任裁定、原因裁定、これは行なえるのです。そして日弁連も、かつては準司法的な行政機関、この必要がないという基本的な考えに立っておりましたが、公害行政に関しては、特にその必要を認めたのです。そして他の三条機関は要らなくても、公害関係にはこれが必要であるということを強調したのです。その結果が利用者皆無ということになっているわけであります。これはやはり問題は深刻だと思うのです。いまのうちに十分考えておかないといけないと思います。PRの不足もあるでしょう。そのほかに考えられる点はないのかどうか、この機会に長官に伺っておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/89
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090・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 お答え申し上げます。
確かに、私は実情をまだつまびらかにいたしておりませんが、報告を受けております限りにおいては、やはり一般の市民、国民が裁定という制度についての十分な認識を持っていない、またそれに対して、委員会のほうからも積極的にあらゆるメディアを通じてのPRを十分していなかったということが、やはり私は国民の理解をまだ得ていなかったということの大きな原因であると思うのです。もちろん裁定という制度は、私は非常にすぐれた、英知の産物であると考えます。したがいまして、この裁定が今日、発効されましてから一年たっても、なおかつ少しも活用されておらないという事態については、この制度の重要な意味にかんがみればみるほど、特に公害問題であればあるほど、まことに残念なことだと考えまして、今後はやはり国民の理解を得る方向に十分なる努力をいたしたいと考えます。
また同時に、やはり従来の訴訟という形のほうが手っとり早いし、成果もきわめてはっきり出るというような考え方、これはまた、委員会そのものの従来までの活動の中で、国民がその調停なりあるいは裁定という一つの決定そのもの、そうしたものに対する信頼感と申しますか、そうしたものに対しての十分なる認識をまだ持ってもらっておらないということ等々を、やはり私は感じておるわけでございます。したがいまして、ただいまの裁定という制度をせっかくつくっていただいたのに、十分なる運用上の妙味を発揮していないということについては、今後十分心にいたしまして努力をして、国民の理解を得る方向で進んでまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/90
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091・島本虎三
○島本委員 その点でありますが、なおもう一歩お伺いしてみたいのですが、これは裁判に移行するほうが練達の者がいるから、それのほうが妥当だと一般の住民が思うという、こういうような考え方がもしあるとしたら、これは行政の中で準司一法的な権限を持って、そして練達の士を置いて、裁判でやるより早く、かつ資力がなくてもやれる、これがこの機関の持っている特徴なんです。せっかくりっぱなものがありながら、まだ利用されないということは、もっとほかに考えるべき点があるかないか。確かにPR不足でしょう。浸透していないでしょう。しかし、やはり裁判に移行すると長くかかるから、それよりも的確にかつ迅速に、そして裁判で受ける利益よりも、被害住民にもっと適正な利益というか損害の回復が可能だというところに特徴があるはずなんです。それが行なわれていないということです。
そうすると、結局これは内部の問題として、実務を持たない官庁である、したがって官僚的な意識、不親切、こういうようなもの、したがって国民大衆から近づきがたいというような印象が少しでも、つめのあかほどでもあっては、これは困るのじゃないか、こういうようなことなんです。もちろんPRは必要でありますけれども、この利用されないということに対して内部告発くらいはあってもしかるべきなんです。私は、これに対してほんとうに今後の問題として、もっともっと真剣に、いい制度ですから、利用されれはされるほどいいんですから、それが等閑視されるということに対して残念なんです。この実務を持たない官庁であるということからして、官僚くささや不親切、そういうようなものが住民の中に入っていくために、この疎外がある、こういうようなことはあってはならないことですが、これは私の杞憂でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/91
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092・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 この委員会の持つ性格というものが、委員も十分御指摘であるし、また同時に非常に深い期待を持っていらっしゃることも私は全く同感でございます。せっかくこのような公害等についての委員会をつくって、それが一種の行政機関的な役割りをして、国民のわずらわしさを取り除くスピーディーな非常に早い活動のできるような組織をつくったということについて、十分にその機能が作動してないという御指摘については、これからひとつ大いにその点についても委員会の諸君とも話し、委員長にも十分お願いいたしまして、前向きに取り組んでまいりたいと思っております。
それで、今度あっせんという一つの新しい前向きな仕事をするわけでございますが、こういうことをしていけば——だんだんとPRでこういうものがありますよということ以上に、実際の行動の中で、公害処理というものについて、この委員会の活動がはっきり位置づけられれば、それがまた国民の理解を得る大きな力になるのではないかと私は考えておりまして、いろいろな面で御注意、深く胸に持ちまして努力をしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/92
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093・島本虎三
○島本委員 やはりせっかく機関がそこまで伸びてまいりましたから、今後は十分運営の妙を発揮してもらいたい。
これは当時できたころには、この官庁を総理府に置かないで、環境庁に置いてはどうかという意見さえありました。しかし、純正を期するためにも、これはやはり環境庁よりも総理府に置いたほうがいいという当時の意見が勝ったわけであります。しかし環境庁のほうは、最近行政はどうも忙しくなってきてしようがないのです。しかし、総理府のほうが忙しくないということがあってはならないわけです。運営上において、環境庁では何か考える点がありましたら、この際、あなたでは無理かもしれませんが、あなたは前の官房長ですから、そういうような立場からして三百ありましたら、この際、開陳してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/93
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094・城戸謙次
○城戸政府委員 私どものほうとしましては、公害対策基本法以下各法に基づきます仕事に非常に追われておりまして、特に紛争の処理というような中立性を要するものにつきましては、やはり総理府本府に置かれました調整委員会のほうでおやりいただくという現在の形が、有効に働いていくということに大きく期待いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/94
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095・島本虎三
○島本委員 やはり官僚の答弁じゃだめですね。そういうようなことを聞いているのではない、もっと思い切ったことを言っていいのです。もしそれならば、先ほどいろいろ指摘がありました、答弁もありましたが、今回の公害等調整委員会のこれにも職権あっせんが中に入っております。公害基本法が、いわば公害の憲法である。したがって、公害等調整委員会の小澤委員長の先ほどのいろいろな質疑に対する答弁を聞いておりましても、典型公害、いわゆる七公害、それの中心の紛争処理である、しかし非典型公害もこの中に入ってきても迅速に解決のために努力したい、ただし、非典型公害のみでは扱いが困難である、こういうふうな御答弁があったようです。
典型七公害に対しての紛争処理、それは大体中心だということはわかるわけです。しかし大臣、いまや、もうすでに根拠法がない、そういうように言いながらも、日照権の問題に対しての公害、これはもう東京都の都民である以上、三つ子までもこの問題に対しては知っているわけです。電波障害、こういうようなものも十分知り尽くしているわけです。それが大きくなって環境権というものの考え方は、もう小学校の生徒にも浸透してきているわけです。
そういうふうにして見ます場合には、この日照権や環境権や、こういうようなものは根拠立法がないんだ、こういうようなことで等閑視さるべき問題じゃない、こういうようなものを入れて、真に国民の健康と生命を守るためにも法の改正も考えて、そして国民のためにやるのが当然だ、こういうように思っているわけです。いまだに公害基本法いわば公害憲法としての典型七公害に限っての紛争のみである、そして日照権、環境権、電波障害やその他もろもろのものがございますが、それは紛争あるならば裁判だ、あるいは行政によるところの措置だ、本法によるところの紛争処理には当たらない、こういうような考えの上に立ってやっているようです。日照権、環境権、電波障害その他これからはずれて国民の生活にのしかかってきているこういうような障害に対して、大臣はどういうようにお考えでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/95
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096・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 非常に率直な私の考えを述べさせていただきますと、やはり日照権その他の現在の大都市における住民のいろいろな権利が、それが生活の上にいろいろと大きく影を投げている現実は私も決して否定しないわけです。また、そのことが都市の人々の生活にとっては、きわめて重大であるという認識を私は持っております。
が、しかし一方から見ますと、まだそうした諸種の生活上の権利というものが、明確に位置づけられていないということも私は現実ではないかと思います。したがいまして、その明確に位置づけられていない法律ケースというものを処理するという場合には、やはりそれ相応の、私はいろいろなたてまえなり仕組みが必要ではないかと思うわけでございますが、しかし、そういう議論を繰り返しておりましても、住民にとっては、少しも環境は改善されないということは現実でございます。
したがいまして、可能ならば、本委員会がそうした問題についても十分なる配慮、そうしてしかも、それが非常に大規模であり、かつ広範な市民生活を脅かしているという現実があるならば、そうした問題に対しても積極的な意向を示し、また調査もし、話も聞くというような形で前に一歩出ていくということを期待しておるわけでございまして、問題は運用上の問題として、もう少し幅広く、あるいはもう少し前向きにと申しますか、そうした活動が、この委員会には本質的に許されていいのではないかというふうにも考えているわけでございます。
そうした活動の中で、法律的ないろいろな不明確なステータスと申しますか、状態の事件に対して処理をしていかなければ、やはり政治としては国民や市民の十分なる満足を得られないというふうにも考えまして、そのような方向を今後よく委員会とも話し合って、可能なる限り前進をさせていきたい、そのように私は考えておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/96
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097・島本虎三
○島本委員 そうなりますと、公害対策基本法の改定ということも含めて考えないとならないと思います。
それからその他の関係立法、個々の立法に対しても、これを考えなければならない、こういうふうなことにもなろうかと思います。その辺も十分お考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/97
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098・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 ただいま申し上げましたのは、私の現状認識でございます。したがいまして、それを直ちに法律改正あるいは基本法改正等の問題につなげ得るかどうか、さらに十分よく検討してまいりたいと思いますが、そうした議論を繰り返しておるうちに時間は過ぎていくわけでございますので、できるならば、運用の中でそうした問題をできるだけ幅広く拾っていくというような方向をお認めいただくことから、ひとつ始めていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/98
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099・島本虎三
○島本委員 将来は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/99
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100・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 将来は、こうした事案が一つの法律的なものとして定着をするという事態が必要ではないかと考えますが、詳しくは委員長からお答えをしたほうが正確だと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/100
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101・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 典型公害以外のものについても、現行法のもとで運用で処理できるものは、もちろんそのほうで処理をしたいと思います。
先ほども申し上げましたように、たとえば新幹線あるいは高速道路、そういうものは法令の上では典型公害のうちの騒音というところをとらえて、当委員会に処理がまかされておりますけれども、およそそういう対象から出る騒音は同時に振動もございますし、日照権の問題もございましょうし、いろいろ出てくると思います。そういう問題につきましては、運用の上では騒音と同時に紛争処理の申し立てがある限りは、それを取り上げて、正面から解決に努力していきたい、そう思います。
ただ、単純な日照権だけ、そういうほかのものは全く含まない、典型公害に全く属しないものだけが独立してきたということになりますと、現行法においては、やはりそれまで運用で、こちらが中に入るということは非常にむずかしゅうございますが、これはむしろ将来の立法の問題、公害基本法の改正の問題なども含めて検討されなければならない問題ではないか、そういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/101
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102・角屋堅次郎
○角屋委員長 島本先生の質問の前に。答弁の声がときどき小さくなるので、速記の関係もございますので、どうぞよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/102
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103・島本虎三
○島本委員 紛争処理の場合には、公害対策基本法、いわゆる公害憲法といわれる公害対策基本法に定められる典型七公害中心の紛争処理であります。この基本的なかまえはわかったわけです。そうすると、大臣、公害基本法ですから、公害の憲法ですから、これが基本になるという考え、そうすると、その被害が及ぶ健康被害の補償、こういうようなところにも当然法の体系としても基本法から実体法へと移行し、その権限が及ばなければならなくなるはずです。典型七公害に対しての紛争処理を基本にきめながら、そしていま典型七公害のほかに、まだ積み重ねられつつあるところの日照権やその他のそれに付随する公害の問題も、入れて考えてもよろしいというところまでいっているわけです。
ところが、官庁が違うと、健康被害補償法になると大気と水質、この二つだけを補償の対象にしているというような実態があるわけであります。片や紛争処理のほうは典型七公害がある、片や健康被害の補償の点では水質と大気のみに限定した補償を考える。法の一貫性がどうも貫かれていないのじゃないかという気がするのですが、これに対して総理府総務長官と環境庁の城戸局長から、双方からの御所見をひとつ賜わりたいと思います。まず、総理府総務長官のほうからお願いした
い。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/103
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104・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 お答え申し上げます。
私も、そうした問題については非常にお答えしにくいわけでございます。特に諸法規の内部的な脈絡が一貫してないという御指摘でございますが、私はそういう点は他の法規の中にも非常にたくさんあるように考えます。その不明確な部分が、やはりいまのいろいろな社会的な問題となって、いろいろと物議をかもすということも現実の問題だというふうに認識しております。したがいまして、この公害対策基本法そのものを今後どのように考えるか、少なくともただいまの委員長の説明と私の気持ちとの間には、なお相当な隔たりがあるように私も考えます。しかし、これは隔たりがありましても、実際運用面の中で——いきなりここで基本法の改正を持ち出すということが可能な客観情勢であるとも、いささか考えにくい点もございます。
なお、このようなことについては、ただいま御指摘もございましたので、私自身もよく勉強していかなければならぬというふうに考えますが、その前に、やはり現実の社会生活の中での国民や市民の受けるいろいろな苦痛という問題、それが、明確に規定されておる公害というようなものに入っておらなくても、現実に多数の市民や国民に公害と受け取られているような問題については、できるだけそれを運用の中で拾い上げ、そしてその処理はそれぞれの機関にまかせるといたしましても、この委員会としては、その処理に至るまでに何らか行政として前に出ていくというようなことの中で前進をはかっていきたい、そのように現時点ではお答え申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/104
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105・城戸謙次
○城戸政府委員 公害の紛争処理法のほうでございますが、これは調停、仲裁あるいは裁定等の方法によりまして、当事者間の紛争を処理するということでございますから、当然その対象は公害対策基本法の典型七公害の範囲をすべてカバーする、あるいはまたいま御指摘ございましたように、できるだけ運用で広く運用していかれる、これは当然だと思うわけでございます。ただ、健康被害補償法のような補償の問題につきましては、これはやはりその公害の態様によりまして考えていく必要があるのじゃなかろうかということでございまして、私どもとしましては、公害健康被害補償法を提案いたしまして成立していただきましたのは、その中でも特に健康被害としての疾病が一番緊急を要するものでございますから、これにつきまして、とりあえず補償制度をつくっていこうということで努力をしてまいったわけでございます。
したがって、残りました生業被害等につきましても、これに対する何らかの補償制度を制度としてつくり上げることが必要であるということは、よくわかっておるわけでございまして、この点につきましては、その被害の態様あるいは因果関係の究明等との関係もございますので、農林省その他と協力しながら、今後制度化をはかってまいるということにしているわけでございます。
今日一番大きな問題となっております赤潮だとか、あるいは原因不明の油濁、こういうものにつきましては来年度の予算におきましても、その制度化のための措置をしておりますし、それから赤潮につきましては、現在赤潮特約制度を設けるための漁業災害補償法の一部改正案が今国会に提案されている、こういう段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/105
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106・島本虎三
○島本委員 努力のあとは見えますけれども、法の一貫性が貫かれておらない。この点は将来の問題でありますけれども、せっかく紛争処理の点では、公害対策基本法に定める典型公害をやるようになっている。健康被害の補償のほうになると、水と大気しかこの対象の中に現在考えておらない、将来はまた考えたい、生業補償についても考えたいということであります。それは大いに考えてもらいたいと思います。それを可及的すみやかに実現してもらいたい。したがって、長官がいまおっしゃったように幅広く前向きに、この基本線で進めてもらわなければなりません。ことに幅広く前向きにというと、中央委員会だけじゃなく、下部機構においても当然考えられなければならないわけであります。
そこで、都道府県の公害審査会の公害紛争の処理状況はどうなっておりましょうか。昭和四十五年から現在までの数を、ひとっここに出してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/106
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107・宮崎隆夫
○宮崎(隆)政府委員 お答えいたします。
昭和四十五年十一月以降四十九年三月三十一日までの間におきまして、地方におきまする公害審査会に対しまして申請が行なわれました事件は七十八件、申請人数にいたしまして七千六十五名でございます。このうち事件が終結いたしましたものは五十七件、いまだ継続中のものが二十一件でございます。
なお、手続別に申し上げますと、受理件数七十八件のうち、和解の仲介が十七件、調停事案が五十八件、仲裁事案が三件、計七十八件となっておりますし、また、公害の種類別に内容を申し上げますと、大気汚染の関係が十三件、水質汚濁の関係が十六件、騒音、振動にかかるものが四十件、土壌汚染に関するものが四件、悪臭に関するものが五件という状況になっております。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/107
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108・島本虎三
○島本委員 これはいかがでしょうか。一年間の扱いではない。四十五年、四十六年、四十七年、四十八年、四十九年までに、ただ七十八件くらいじゃ件数としては、ほんとうに少な過ぎませんか。先ほど長官がおっしゃったように、幅広くかつ前向きにという態度に欠ける点があるじゃありませんか。この点、あまり数の不足なことにびっくりしているわけなんですが、この数字は間違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/108
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109・宮崎隆夫
○宮崎(隆)政府委員 ただいま申し上げましたことに間違いはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/109
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110・島本虎三
○島本委員 長官、この五年間にこれくらいの数。中央公害等調整委員会、これは国家行政組織法第三条機関である。そして、これまた、いまを時めく公取と同じ権限の行使ができ得るような制度を持っている。その地方の機関が、これじゃほとんど眠っているにひとしいようなことになっているじゃありませんか。一体この原因はどこにあるのでしょうか。本制度設立の趣旨、これは紛争を迅速に解決すること、簡易気軽に利用できること、これが一つの特徴のはずです。ところが、こういうふうな状態だとすると、制度はあっても、なかなかこれを利用するものがない。まして裁定に至っては、せっかくこれが年来の要望として、ここに裁定権がありながら利用したものがない、こういうようなことになっているのであります。したがって、この問題に対してはその原因を十分究明して、そして制度として、これに乗らないのであるならば、別にこれを考え直さなければならないんじゃないか、こういうように思うのです。
現在までの都道府県の公害審査会における公害紛争の処理状況が意外にふるわないということは、幅広くかつ前向きにこれを実施しなければならないという長官の考え方と相反します。この原因を究明しなければならないと思います。そして、これを的確に利用させるように対処しなければならないと思います。長官の御高見を拝聴いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/110
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111・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 お答え申し上げます。
詳しくは委員長からも御説明申し上げると思いますが、ただいま御報告申し上げました七十八件のケースは、いかにも申請者数七千六十五人程度でございまして、島本委員御指摘のように、この委員会あるいは地方組織そのものがきわめて重要な役割りをしているという御指摘に対して、活動がやや低調であるという御指摘は、これは十分今後も検討しなければならぬことだと思いますが、こうしたような和解、調停、仲裁というケースになる前の苦情処理は八万件になっておりまして、苦情処理の段階では相当にそれぞれ活動をしていると私は理解をしております。
しかし、なお公害という問題の持つ社会的な意味、及び生活そのものに直結する非常に重大な問題であるという理解の上に立ちまして、さらに活動を活発化する方法につきまして、十分また委員長とも話し合いをしてみたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/111
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112・島本虎三
○島本委員 この都道府県別の受理件数の少ないこと、先ほど各委員から指摘されましたように、肝心の都道府県の公害審査会、これも三十二都道府県だけに置かれておって、公害審査会を置かないで委員候補者方式をとっている二府県もある、こういうようなことであります。私どもは、こういうようなばらばら行政というか、この問題だけに固執しての考えじゃないのです。私、少なくとも、審査会等置かれてある場所、こういうようなところにおいては、積極的にこれを利用させるようにしなければならない。それは行政不信につながってはならない、こういうように考えるのであります。
それで長官、この不信の原因の中には、組織自体が十分機能し得ないような機構になっているのじゃないかというような点。これも金がかからない、期間が早いから、迅速気軽に利用できる、こういうような機関が地方のほうへ参りますと、財産被害ではないところの健康被害、これ自分の命の問題です。まして次代の民族にまで及ぼすような被害にもなります。水俣のああいうような胎児性の、脳神経がおかされてくる子供を持った親、イタイイタイ病、全身何カ所か骨が折れて、痛い痛いとうめきながら死んでいく人、こういうようにしてみます場合には、その恨みというようなものを感じない人間はないだろうと思うのです。この機関そのものが、健康被害に対する場合には罪の黒白を明確にしないで、そしてこれも裁定なり、仲裁なり、あっせんなりをさせよう、両方がまんしなさいでやろうとする。当然食い足りないから、裁判に移行する、こういうケースがあるのじゃないか。
第二番目には、長官、行政不信の最たるものは、たとえば水俣でもよろしい、どこでもよろしい、具体的な個所はたくさんあるのです。企業を立地させるのに誘致したのが知事である、そしてその行政機関の中に審査会がある、そして自分の住んでいる市の市長、それも知事と一緒に企業誘致に奔走した市長である、その機構の中に審査会があるとするならば、住民は進んでそこへ行って救済を求めましょうか。やはり現在この紛争等調整委員会、その下部機関である審査会、こういうようなところが行政と密着して、そして県の姿勢と同じようにしてこれが運営されるところに、住民から行政不信が満ち満ちているんじゃないか。したがって、それが使われない、利用されない原因になっているんじゃないか。
もしそうだとするならば、この際、審査会そのものに対してのあり方も、はっきり考える必要があるのじゃないか。それをそのままにして進めても、一定の点は進んでも進まない個所は必ずできてくる、それは行政不信につながる。こうだとすると、やはり機構そのもののあり方にも検討を要する点がありはせぬか、こう思うのであります。長官、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/112
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113・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 いまの知事が工場を誘致し、その下部の市町村長もそれに一緒になって誘致をした、その結果公害が出た。そうした問題について、公害を取り上げないであろうということは、容易に私は想像できる一つの権力構造じゃないかと考えます。それがあってはならないわけでございますし、また同時に、知事あるいは自治体の長というものは、やはり公正な立場に立って、全住民に平等な立場に立って、これに当たらなければならない本質的な私は意味があると考えます。
われわれは、一つの地方自治という本質をのがさないようにしていくという基本ラインの中で、同時にまた地方自治体の長というものは、それだけの住民や県民に対する平等な一つの立場に立って行政を進める本来的なものがあるということを信頼しておるわけでございまして、ただいま御指摘のような形で、その一つの大きな社会的な事象が起こっておるのにかかわらず、知事がそれに対して全く動かない、市町村長もそのことは知事に迷惑がかかるから動かないというような事態がありますれば、むしろわれわれのほうといたしまして、その実態を調査し、また各党からもそういうお話をどんどんと出していただきまして、われわれといたしましては、地方自治という本質的な問題を変えない中でも十分に活動ができるはずだと考えておりまして、いましばらくそうした善意の行政活動というものをわれわれに続けさせていただきたいというふうに考えるものでございます。
同時にまた、そういう事態がございますれば、ひとつ御遠慮なく、どんどんとわれわれのほうに教えていただき、またその問題についての促進を請求していただくというようなことをしていけば、もしもそういう弊害があるとするならば、その弊害はある程度除去できて、県民に対しましても地方自治という本質的な線をはずさないで事態の収拾処理、そうしたものが進め得るのではないかと私は思うものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/113
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114・島本虎三
○島本委員 自民党員じゃない、そして現在の高度経済成長政策を促進した政党でない、またそういうような閣僚の一員として総理府総務長官が言うならば、私はそのとおり、ごうまつも疑う余地もありません。しかし、現在不幸にして日本列島を公害列島にした大きい原因、これはやはり過去から現在までの間の一つの高度経済成長のしわ寄せである。すでに公害列島化して環境を破壊されている。残った環境だけは、まさに保全しなければならないのだという、こういうような状態になっているわけでしょう。
私は、そういうような点からして、具体的にというならばあるんです。
では、熊本はどうします。明治四十二年、チッソが誘致されて、県民が当時四十銭の日給を二十銭にして、そして会社のために一生懸命にやったんです。会社あっての水俣市であるということです。四十銭の日給が二十銭、これでもよろしいと働いた。発電所から工場までの電柱を市の音頭とりによって市民が寄付をして、そして電力を送ったんです。それが幾らか改正されてきて、そして出された結果が水俣病ということで住民に還元されてきているんです。そして有機水銀中毒によって、胎児性の、へその緒を通じて子供にそれが移ったら、何の抵抗力のない子供、脳神経をおかされて植物的な生存をしいられるような状態において現出したのが、水俣闘争でございましょう。
行政不信は最たるものがあるんです。そして、市長がやっても、市民がそれに乗っていかないという現象さえ起きているんです。そのために、施設ができましたが、市民が利用しない。そして、市民が自分らの力でつくったそれを利用しようとするんです。完全な行政不信でしょう。その熊本県の中にいかに審査会があっても、そこへ行かないで、他のほうに救済を求める気持ちは容易にわかるじゃありませんか。現在の知事は一生懸命やっているでしょうけれども、そういうようないきさつで行政不満が満ち満ちているということです。
もういまできる点があるとするならば、「日本列島改造論」で内閣総理大臣田中角榮氏が場所をきめて開発を志向した当時の苫小牧東部開発、それと志布志湾、それからむつ小川原、場所まできめて工業を誘致しようとしているが、反対運動が起きている。それに対して、はっきりとして国がそれを志向し、北海道自身が、かってないような一万三千ヘクタールにわたる世界一の広大な重化学工業のコンビナートを立地させようとしている。環境庁ができて初めての公害事前影響調査、これを行なった。それによってやってもよろしいということになった。それが不完全な環境アセスメントだということがあとになってわかった。それでも一たん引いた引き金は、補完してもいいから、これを進めようとしているんです。
もう一回もとへ戻して、港の構造から全部やり直して、真に公害が現出されません、こういうような住民等の納得が得られて初めて、これはやってもいいし、環境優先、そうして地域開発は環境と両立するものを認めるんだ、それによって公害を現出する場合には、その企業を停止するんだ、こういうような三つの原則が中公審からの中間答申によって、いま環境庁の重大な指針になっているんです。
それがありながらいま苫小牧をやっているんです。これはいまでもとめられる。いまでも是正できる。そういうようなものがあったならば、それはもう直ちに——これに対して具体的に行なおうとするならば、いま苫小牧があります。どうですか、やる気はありませんか、やりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/114
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115・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 現在の苫小牧の開発計画そのものが、非常に環境的に見ておもしろくないという御判断のようでございますが、われわれの聞きまする限りにおきましては、十分その点も考慮して、地域住民及びそこに働く人々に対して、公害あるいは健康被害等についても、十分配慮できるスペースと配置を考えておるんだというような説明をわれわれは受けておるわけでございます。
したがいまして、その健康被害が将来起こるであろうかどうであろうかということは、これはあくまでも予測されたことでございますが、しかし、私らはもしも予測されたことが、ほんとうに予測されたとおりになるであろうというような具体的な現実的な、あるいはまた予測でございますから、その十分な試料があるならば、やはりそうした具体的な試料に基づいて、この問題の再検討を申すことはやぶさかではございません。しかし、現時点におきましては、あぶないのではないかというような予測程度でございまして、これを裏づけるより広範な調査あるいは住民側のいろいろな問題提起、これは環境庁においていま十分検討しているところではないかと思います。
したがいまして、総務長官として、ただいまの島本委員の御質問でございますが、そのような具体的な問題について、ここで意見を申し上げることは、いささか遠慮せざるを得ない立場にあることも御了承いただきたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/115
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116・島本虎三
○島本委員 具体的な問題があったならば対処するからと言うから、具体的な問題を言ったのです。
わかりましたが、それでもやはり長官にこの際、はっきり申し上げておきますが、都道府県における審査会の活動状況はわかりましたし、公害紛争処理の状況についてもわかりましたし、そういうような機構があっても十分機能していない点もわかりましたが、私が心配する点は、この中央の委員会でどのように行政指導するのか。同時に、地方の審査会で行政不信があってはならないが、これをいかに払拭して十分この紛争処理機構を活用してもらうか、ここが私の考えなんです。だから、いまのようなことがあると言ったのは、これをよく適用し、これをよく活用するこのために、いま私が言ったようなもろもろの事態があるぞということを指摘したわけです。今後これを払拭して、まさに行政不信を払拭する、これがもう最大の利用させるための方途だ、こういうように思うのです。
私は、そういうようなことからしてもう一点、伺っておきたいのですけれども、せんころからいろいろ質疑がかわされておりました中で、裁定の実績、これは何回言ってもないというのはわかりましたが、これは審査会で裁定を行なうことができるような体制がないことに原因があるのじゃないか。そうではないという答弁であります。しかし、その点をもう一度考え直す必要がございませんか、長官。
裁定は中央のみ、地方の審査会においては裁定を行なうことができない。裁定の実績は中央にもない。行政不信のあるこういうような地方には、やはりその裁定を行なうような体制がまだない。もう一回この点を機構とともに考える必要はないか、考えなくてもいいか、これなんです。裁定ということになると、行政付属機関じゃないでしょう。審査会そのものをもう少しばりっとさせないと、だめでしょう。その辺のかね合いで、もっと内容を考える必要があるのじゃないか、こう思いますが、この点はどちらからでもけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/116
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117・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 お答えいたします。
裁定を地方の審査会にやらせるかどうかという問題は、かねてからの問題でございますが、さきにも申し上げましたように、裁定そのものは、法を適用して結論を下すという非常に重要な問題でございますので、その裁定において、民法その他の基本法についての法解釈が多岐にわたるというふうなことがあっては、これはたいへんなことでございます。そういうこともありまして、その法の適用、法の解釈についての全国的な統一が必要であるということ、これは地方の審査会がかりに裁定を行なうとすれば、どうしてもその点は逸してはならない問題だと思います。
そういたしますと、それを統一するためには、現状のままでは機構としても不十分でございます。第一に、地方の審査会は中央の委員会の付属機関ではございません。あるいはその出先機関じゃございません。それぞれ地方自治体に設けられる一つの独立の機関でございまして、現在では、中央からそれに対して指揮命令をするというような道は全くございません。それでございますから、現在の状態を前提にすれば、これはむずかしいのではないかと思います。
ただ、御意見の御趣旨は、その地方の審査会をもっと強力なものにし改組し、中央からも、中央との関係で地方の裁定における法解釈、法適用というもの、そういうものの統一をはかるというような道もつくって、そして両方相まって、各地の公害被害者が簡易にその地元の審査会に裁定の申請をすることができるようにしてはどうかという、そういう御趣旨かと理解いたしますが、もしそういうことになれば、まことにけっこうな話でございますが、そのためにはいろいろ制度の点などでもう少し検討しなければならぬ問題、研究を要する問題があろうかと思いますけれども、方向としては、確かにそういうことができればけっこうなことだ、そういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/117
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118・島本虎三
○島本委員 できればけっこうなことであるならば、やるにこしたことがないということに、すぐつながるじゃありませんか。この点はいますぐ、そうでなくとも十分検討を要します。
それと同時に、要請しておきたいと思います。
この公害紛争については、これは当事者の自主的な話し合い、あるいは当事者の申請に基づくあっせん、調停、こういうようなものによって解決を見出すことが、これが本筋である。中央委員会などがみだりに職権あっせんに乗り出すということは、逆に問題を紛争させるおそれがないか。職権によるあっせんは必要最小限度にとどめるとともに、それを行なう時期等については慎重に配慮する必要がある、こういうように思いますが、これに対しての御所見を伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/118
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119・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 御指摘のとおりに思います。職権あっせんの制度をこの際設けられましても、これをみだりに行使して、本来介入するのが不当である、むしろ当事者の自主的解決にまかせたほうが妥当な解決が得られるというふうに考えられる事案についてまで職権で介入していくということは、これは慎むべきものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/119
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120・島本虎三
○島本委員 したがって今後は、裁判のあと追いばかりをするような、こういうような公害等調整委員会のあり方じゃなくて、逆に、設立の趣旨からして迅速に簡素気軽に利用でき、それが裁判よりも有効なものであるという、こういうような結諭、結論に対する信頼、これを得させるようにしなければならないと思います。したがって、裁判のあと追いではなくて、公正妥当に理解してもらうような態度をとることと、あわせて地方の審査会、これを行政不信を招くような——その中にある以上、やはりもう住民の意思としては同じものだと見がちですから、もっとばりっとしたものでなければならないんだ、このことであります。
私は、そういうようなことからして、裁判のあと追いばかりやるのはもうこの辺で一せっかくいい機関があり、片や同じような行政機構の中に公取委があり、いま一生懸命やっているわけです。一方、公害等調整委員会、公害列島化した日本の中でせっかくいい機構がありながら、かんこ鳥が鳴いている、こういうような状態では、これはまことに私は遺憾なんです。したがって、今後その点に対しては十分考えて対処してもらいたい、このことだけは強く私は希望しておきます。長官の御高見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/120
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121・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 ただいま委員の仰せられましたことは、まことにそのとおりだと思います。同時に私は、公害というものは悪であるという強い考え方を持っておるものでございまして、そうした私の見解が中央の公害等調整委員会を通じまして、さらに地方の行政に対する不信感を多く持った地域に対しても、そのような考え方が浸透していくように努力をして、御期待に沿う活動をいたしたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/121
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122・島本虎三
○島本委員 今後この扱いのためには細心の注意を払って、改正すべき点は進んで改正する。そうして私は最後にもう一回言います。
裁判のあと追い行政から脱却してもらいたい。脱却できるだけの機能であります。脱却できるだけの機構であるはずです。それがないということになると、これは総理府総務長官、もう一ぺん点検して——もうあなたの責任だということになる。もうすでにあるのですから、片や公取委があのとおり活躍しているのですから、もっともっと活躍してもいい。そうして国民の信頼を得ておいてもらいたい。その上に立って簡速に、かつ期待に沿えるように、こういうような信頼の上に立って行政を運営してもらいたい。このことだけは心から希望しておきたいと思います。私はこれで終わるわけでありますが、今後再び同じような質問をこの場所で繰り返されることがないように心から希望して、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/122
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123・角屋堅次郎
○角屋委員長 木下元二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/123
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124・木下元二
○木下委員 本改正の第一点は、当事者の申し立てを待たずして、あっせんもしくは調停が進められるという制度にしたことであります。いわば申し立て主義から職権主義へ移行したものということができると思います。この点は、私は重大な改正点だと思います。この職権主義を加味した改正の趣旨ですね、これを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/124
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125・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 これは法改正の背景から申し上げたほうがよろしいかと思いますが、公害紛争処理法は、もともとは公害紛争を迅速、適正に解決するために、まず和解の仲介、調停、仲裁といったようなものから入っていったわけでございます。そしてそのために、行政部内にこれを解決するための準司法機関をつくり、それによって従来の裁判所の裁判手続とは違った迅速簡易な解決を期待したわけでございます。
ところで、そういうふうな制度はできましたけれども、実際は和解の仲介といい、調停といい、これは当事者間の合意に基礎を置くものでございますし、それから和解の仲介、それから調停は、当事者の申し立てによって手続が開始いたします。当事者の申し立てにより手続が開始し、そして、しかも最後には当事者が合意しなければ成立しないわけでございまして、解決の道は得られないわけでございます。それで、そうなりますというと、もし非常に固陋な当事者がおりまして、結果は妥当と思っても、それに対してあくまで反対を続ける、固執するということになると、これは解決の道が得られません。
そこで昭和四十七年には、これはそもそもこの法律の制定当時から懸案になっていたのでございますが、裁定制度を導入いたしました。先ほどからいろいろお話の出ている制度でございますが、裁定制度を導入し、この裁定制度では、たとえ当事者間に合意が成立しなくても、委員会自身がその事案について事実の認定をし——もちろん調査の結果、資料に基づいて事実の認定をします。そして事実の認定をして、それに民法の不法行為の規定そのほかの関連規定を適用しまして、損害賠償責任があるかないかということを宣言する、そういう裁定制度を導入したわけでございます。
これは先ほどからいろいろ御議論のあったところでございますが、現在までのところ、実績がまだございません。実績がございませんけれども、これは制度発足間もないことでございますから、いずれは、これが国民の間に非常に重宝な制度として利用されるものと信じております。
ところが、特にこのごろ、昨年あたりのいろいろな実情を見ますと、いまこういったような制度はできましたけれども、裁定といい、調停といい、和解の仲介といい、いずれもスタートは当事者の申し立てでございます。ところで世の中を見てみますと、実際紛争がある。当事者の間に非常に大きな被害について、顕著な被害について広範な紛争が行なわれている。そして事柄は重大であり、他の地方にも同じような問題があって、これをほうっておいてはいけない、そういうふうに思われるのですけれども、当事者はあえて、いまの和解の仲介なり調停なり仲裁、裁定などに、これはどういうわけかそれぞれの事情がございましょう、その当事者については、それぞれの事情はございましょうが、積極的に自分のほうから申し立てるということはしないで、両すくみみたいな形になっている事案がございます。
そういう事案につきまして、これをそのまま放置するということは、多数の被害者に対しても、国として責任が果たせないのではないか。小さな、どうでもいいような事案ならともかく、被害の程度が著しくて、その範囲が広範である。そしてこれを放置しておくときには多数の被害者に困った事態が起きまして、社会的に重大な影響がある、そういったようなものについては、当事者間に交渉が円滑に進まず、両すくみの状態で難渋しているという場合には、積極的に国が乗り出して当事者間に話し合いの場をつくって軌道に乗せるようにする。さらに進んでは、場合によっては、さらに国のほうからあっせん案なども出して、そして円満な解決をはかることを積極的にやる必要がある。そういうことで、この職権によるあっせんの制度を考えたわけでございます。
ただ、あっせんといい、和解の仲介といい、これは本質的には共通の分野が非常に多うございます。それでございますから、あっせんという制度をつくれば、和解の仲介というのを残す必要は比較的少ないので、和解の仲介をあっせんに変えて、そして職権により、あっせんに乗り出すことができるような道を開こうとしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/125
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126・木下元二
○木下委員 限られた時間ですから、これから私の質問だけに簡単にお答えをいただきたいと思うのです。
趣旨はわかりました。要するに職権によるあっせんもしくは調停の制度をつくった趣旨なんですが、これは公害問題を事柄の性質からいっても放置できない、多数の被害者の救済というところに力点を置いて、被害者救済ということから、国が積極的に乗り出す道を開いたのだ、こう伺っていいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/126
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127・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 多数の被害者が公害によって不法に不利益な位置に置かれるということは、これは放置できないので、それは国として救済しなければならない、そういう立場でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/127
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128・木下元二
○木下委員 そこで、もう少し条文に即して問題点を吟味していきたいと思いますが、もうすでにほかの質問でお答えがあったかもわかりませんけれども、お尋ねをいたします。
二十七条の二及び三であります。
二十七条の二によりますと、「被害の程度が著しく、その範囲が広い公害に係る民事上の紛争が生じ、」た場合、これを対象にするということでありますが、これは一体どういう場合でありましょうか。簡単でけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/128
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129・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 たとえば公害によって健康被害を生じ、それが相当範囲に広がっているなんというのは典型的な例かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/129
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130・木下元二
○木下委員 ばく然と言われましたけれども、公害一般でなくて、特にその被害の程度が著しく、その範囲が広いという要件つきの公害を対象にしておるようなんですけれども、その意味、解釈というのは、どういうふうに理解していいのでしょうか。特別、社会通念的に公害が広範囲にわたり、被害も軽くないという程度に理解してよいというわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/130
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131・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 御指摘のとおり、「被害の程度が著しく、その範囲が広い」、これだけの表現でございまして、これは結局は社会通念で考えるということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/131
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132・木下元二
○木下委員 次の、「多数の被害者の生活の困窮等社会的に重大な影響があると認められるとき」ですね。これは職権発動の要件でありますが、これは結局のところ、「多数の被害者の生活の困窮」ということが書かれておりますが、被害者の救済をはかるということが最大の眼目になっておるように思いますが、そう理解してよいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/132
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133・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 要するに多数の被害者を公害から守る、救済するということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/133
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134・木下元二
○木下委員 そう読みたいのですが、被害者の救済以外にも何らかの目的があるかのようにもとれる表現になっております。
「困窮等」と、「等」というのがあるわけですね。そして、「困窮等社会的に重大な影響がある」という場合を職権発動の要件にしておるのでありますが、これは一体どういう場合を想定しておるのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/134
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135・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 「生活の困窮等」と書いてありますのは、「等」とは何だということをお尋ねかと思いますが、これは、たとえば多数の被害者に、健康の障害を生ずるとか、あるいは公害から出てくる社会不安的なものが起きるとか、そういうことを、まあ常識的に考えられるようなものが入るだろうと思います。
それから、「社会的に重大な影響がある」これも結局は社会通念で考えざるを得ないと思いますが、やはり社会不安だとか、あるいは現実に社会生活の上でいろいろひずみが出てくるとか、そういう場合はみな入ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/135
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136・木下元二
○木下委員 この二十七条の二のあっせん、これは「当事者の意見を聴いた上、」「行うことができる。」ということになっております。調停も同じであります。二十七条の三。これは、したがいまして、手続上、この当事者の意見聴取をあっせんあるいはまた調停の要件としておるものと思われます。したがって、これは法律上は、当事者の意見がどうあれ、この意見聴取の手続を踏めば、職権であっせんもしくは調停を行ない得るんだというふうに解釈できる規定なんでありますが、そうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/136
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137・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 それはちょっと違いますので、もう当事者の意見さえ聞けば、あとは幾らでも手続を進められるという趣旨の規定じゃございません。これは手続を進めるについては、当事者の意見を聞くことを要する、その当事者の意見を聞くというのは、当事者の意見をほんとうに聞いて、そしてそれを考慮して手続を進めるということでございます。ただ手続を進める都合上、聞いてさえしまえばいいんだという性質のものじゃございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/137
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138・木下元二
○木下委員 それはそうでしょうけれども、しかし当事者の意見が、調停、あっせんをすることに反対であった場合には、調停、あっせんに移行しないのかですね。ここが一番大事なところですよ。そうでなくて、やはりこの規定のたてまえというのは、もちろん意見を聞くという以上は尊重もしなければならないけれども、いろいろな事情も加味して、その意見の内容には拘束されずに、意見を聴取すれば、調停なりあっせんに入っていけるんだ、それがこの規定でしょうが。
たとえば当事者が調停もしくはあっせんに入ることを反対しておる場合には、では絶対に調停、あっせんには入らないというふうに理解してよろしいですか。そうはいえないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/138
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139・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 御指摘のとおりでございます。これは手続を進めるためには、当事者の意見を聞かなければならない。そして、その当事者の意見を聞くというのは形式的なものではなくて、ほんとうに当事者の意見が何であるかということを委員会としては十分に考慮し、そしてその意のあるところをくみ取らなければならないのでございます。しかし、この当事者の意見というのは、その当事者の意見の結論に委員会が拘束されるという趣旨ではございません。ですから、場合によっては、どのようなケースが起きるかわかりませんけれども、場合によっては双方が反対であっても、やはり手続を進めるという場合もあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/139
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140・木下元二
○木下委員 そこで、両当事者があっせんなり調停を希望する場合がケースとして一つあります。それから、被害者側が希望する場合があります。この二つの場合は私は問題はないと思うのですよ。問題になるのは、被害者の——被害者といいましても、公害ですから大ぜいおりますよね。被害者側の当事者というのは大ぜいだと思うのですよ。被害者側の一部が希望しておる、したがって、一部があっせんや調停を反対をしておるという場合があります。むしろ普通の場合はそういう場合だと思います。それから、被害者が大ぜいいても、もう全然希望しないという場合があります。問題が起こるのはこの二つの場合ですね。この二つの場合についても、いまのあなたのお話では、結論に拘束されずに、いろいろの事情を勘案してあっせんや調停ができるんだ、こういうわけですね。イエスかノーで、簡単でけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/140
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141・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 これはちょっと簡単にイエスもノーも言えないので、やはり申し上げなければいけないと思いますが、いま言ったような、被害者のむしろ多数が、意見を聞いたところ、いやだという場合、そして一部がいいといったような場合、その場合にはやはり実情を見て、それがほんとうに真意かどうか、あるいは一応そう考えていても、ほんとうに内心的にはどう考えているのか。たとえば、いままでの行きがかり上、そういう両含みみたいな形になっているけれども、ほんとうは、やはりこれによって早く解決したほうがいいんで、結果としては、早く解決することを希望するというようなことが考えられ、そして職権であっせんに乗り出すことによって、そのはんとうの希望がかなえられるというようなことが十分見きわめられるような場合には、たとえ多数が一応表面では反対だと言っていても、やはり乗り出さざるを得ない場合もあるだろうと思いますので、一がいにはちょっと申し上げかねると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/141
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142・木下元二
○木下委員 ですから、一がいにはいえない、ケース・バイ・ケースで考えていくということだと思うのです。だから私が言っているのは、被害者の一部が希望し、一部が反対している場合であっても、あるいは被害者がもう全然希望していない場合であっても、あっせんや調停をやる場合があるんだ、あり得るということだと思うのです。それでまた、では被害者が一体どういう希望をしておるか、どういう意思でおるかということ自体も、この判断、認識はなかなかむずかしい問題ですよ。第一、あっせんの場合なんかを考えると、まだ手続の上にのぼっていないのですから、被害者といったって、だれが被害者なのか。その地域一帯に大ぜいいる。そういうところを一々世論調査もできませんね。調停の場合はすでにあっせんの手続に入って、その上で調停に踏み切るかどうかということを考えるので、その場合は、あっせんにのぼってきている被害者の意向を聞くことはできると思うのです。しかし、その場合だって、そのあっせんにのぼってきていない被害者というのはたくさんいるわけです。だから、被害者の意思を確かめること自体が非常にむずかしい問題だと私は思うのです。
問題は、被害者が全く希望しないのに、あっせんや調停を進めたり、あるいは一部の被害者が希望しただけでもって、ほかのものも一緒にあっせんや調停が進められる、これは私は、きわめて問題だし、また、不当な結果を招来する問題が起こると思うのです。これはたとえば、ごく一部の被害者が、生活が困窮しておるということで、何とか早く解決してほしい、あっせんを希望する、そういうことで、一部のそういう被害者の腹の底を見透かさ、れて、あっせん等が加害者のペースでそうっと進んでいくということだってあり得るわけですね。それで非常にわずかな見舞い金で解決されてしまう。もちろんそれはその解決した被害者だけの問題かもわかりませんけれども、それは先例として、あとのものに非常な影響を及ぼすわけです。だから、こういうことがあるので、被害者が欲しないのに、その意思を無視してあっせんに入ったり、あるいは調停に引き込むというのは、明らかに私は行き過ぎだと思うのです。この点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/142
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143・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 まず被害者の意思がほんとうにどうであるかということは、これはなかなかわからないではないかということでございますが、それはそのとおりだと思います。そのために、当事者の意見を聞くにしても、その前なり、そのあとなりに十分実情を調査する必要があると思います。
問題は結局、その事案自体が、たとえ被害者の一部にあっせんを希望するものがあっても、その紛争全体として見て、これは当事者が自主的に解決するほうがよいのであって、みだりに委員会あたりが介入してやらないほうが結果としてはいいのじゃないかと思われるような事案、そういう場合にはどうですかということだろうと思いますが、そういう事案について委員会がみだりに介入して職権あっせんに乗り出すというようなことは、この法の考えている趣旨でもございませんし、委員会としてもそういうことをやる意思はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/143
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144・木下元二
○木下委員 被害者の意向を無視して進めないという姿勢で臨むというのはわかるのですが、ただ、私のいま問題にしておるのは、こういうふうな改正をして、制度としてそのように被害者の意向を無視して調停、あっせんができ得るという、そういうふうな制度にすること自体を問題にしておるので、それは実際には、そういうことをされてはたまったものではございませんし、あっては困ると思うのですけれども、そういうことがなし得るようなシステムにすることに問題があるということを言っているのです。これが当事者であっても、加害者のほうの意思を無視して調停を進める、これは被害救済というところに重点があるわけでありますから、けっこうだと思うのです。しかし、被害者の意思を無視して調停を進め得るということになってきますと、被害者救済にならないと思うのですね。だから、被害者救済のためには、この被害者の意思を待たずに職権で手続を進めることが必要だという発想、これはもうきわめて私は問題だと思うのです。この点いかがですか。
私の考え方おわかりになっていただけると思うのですが。あなたのほうは、いや、そういうことはできるだけやりません、こう言われるのですが、やる、やらぬの問題じゃなくて、こういう制度自体にすることに問題がないのかということを問題にしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/144
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145・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 この二十七条の二の条文全体、それからこれが公害紛争処理法の中に置かれているその位置、そして公害紛争処理法全体の精神、いままでの立法の趣旨、そういうものから考えまして、この二十七条の二が、いま御懸念されているような趣旨に運用さるべき規定でないということは明らかであろうと思いますし、またそういうことは委員会としてももちろんいたす考えはございません。もしそういうことがあれば、結局はこの条文の趣旨に反することになりまして、非難されてもいたし方ないことでございまして、そういうことはすることはないと考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/145
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146・木下元二
○木下委員 それでは何もこんな改正をする必要はないじゃないですか、言われるように、そういう運用はせぬ、運用する必要がなかったら改正する必要ないので、ある場合には、そういう運用をする必要があるからこそ改正をするのでしょう。念のためにもう一度聞きますが、被害者の救済のためには、被害者の意思を待たずに職権で手続を進めることも必要だ、こういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/146
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147・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 その公害紛争で被害者の真の利益を守るために、どうしても職権であっせんをする必要がある、そしてたとえ一部の被害者がそれに反対していても、その反対にもかかわらず、これはあっせんしたほうが被害者の救済により適当であるというような事案があれば、これはやはり職権であっせんに乗り出すべきものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/147
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148・木下元二
○木下委員 ほかの者が反対しておってもできるんだ、それはけっこうですよ。そんなことでなくて、本人自身が反対しているのに、それでもできるのだというところに問題があるんじゃないですかということを指摘しているのです。そういうことを言うならば、たとえば健康被害補償法による救済制度がございますね。被害者の申請を待って補償手続が進められる、これは当然のことだと思うのです。だから申請なしには絶対に補償は受けられないという仕組みになっておるのですね。申し立て主義が貫かれておる。あなた方のお考えでいくと、真に被害者の救済をはかるためには職権発動も必要だということになると、この健康被害補償法だって、職権でもって発動して被害者をさがしてきて救済する、そういうことも必要じゃないのですか。私はそこまでせぬでもという気がしますけれども、あなた方の立論でいくと、そういうことになるのですよ。そうでしょう。だから私は、紛争の処理においては申し立て主義を貫くべきだと思うのです。なぜこの場合だけ職権主義を採用するのか、この点については大きな疑念を抱いております。
この被害者の救済をはかるのには、何よりも被害者の意思を尊重し、それに従って救済手続を進めていくという手法、これが一番大事だと思うのです。これは訴訟手続なりあるいは広い意味の争訟手続の鉄則だと思うのですね。これを破るような被害者救済制度というのは、ほかにないと思うのです。民事訴訟法あるいは民事調停法あるいは家事審判法等々を見ましても、こういう申し立て主義を破るような職権発動を認める、こういう手続というものはないと思うのです。なぜこれだけ例外を認めておるのか。総務長官、この点について、だいぶ論議を進めてきましたけれども、いかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/148
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149・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 私は、ただいま委員長から御説明申したとおりの考え方でいいのではないかと思っております。同時にまた、この公害という問題は、両者の申請を待って行動いたしますと意外な波紋を及ぼし、また処理が非常におそくなり、非常に大ぜいの方々が長い間このケースのために苦しまなくてはならぬという場合がある。たとえば水俣の場合その他等々われわれ現実に目にしておるわけでございまして、そうしたような事態は決して被害者にとってもいいことではないし、また国にとっても、きわめて重要な行政上の手落ちになるというふうに考えるわけです。そうした意味で、特にこのあっせんをしていくということを今回あらためて皆さま方の御審議をいただく中に入れました趣旨は、公害問題に対して前向きに取り組んで、早くこれを解決していくのだという純粋な気持ちでございます。
ただいま御指摘のように、被害者が一部反対をしても、それでもやるのかというようなお話でございますが、委員長が再三御説明申し上げているとおりこれはケース・バイ・ケースでございますし、本質的にそうしたことによって被害者の主張を著しく曲げて、この委員会が活動するとか、あっせんをするということはないというふうに考えております。どうかその点御了解いただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/149
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150・木下元二
○木下委員 私は、あっせんや調停そのものを否定はしておらぬし、これには意義を認めております。いま言われましたけれども、私の言うのを誤解しておると思うのです。ほかの者が反対しておるのに、それでも進めるのか、そういうことを私は何も言ってないですよ。ほかの者が反対しても進めていい場合はたくさんあると思います。やったらいいのです。そうじゃなくて、ほかの者でなくて自分自身がいやがっているのに、反対しているのに、それでも職権であっせんや調停に入っていかざるを得ないという仕組みにするところに問題があるのじゃないかと言っているのですよ。これはそういう制度になっているのです、職権調停、職権あっせんですから。だから、これはいま申しておりますように、救済手続いろいろありますけれども、そういうものの基本的な原則からいって非常に問題があるのじゃないかということを指摘しているのですよ。私は、総務長官はその点十分理解していないのじゃないかと思うのです。
そこで、時間の関係もありますので、いま私が言いましたほかに例外はございますか。こういうふうな救済手続には申し立て主義というものが貫かれておる。その例外というものは、どういうものがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/150
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151・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 あっせんにつきましては、職権あっせんをやるというのは立法例としては若干ございます。たとえば労働関係調整法の場合ですか、それから建設業法のあっせん調停の場合、そういったような場合に例がないわけではございません。御指摘の点は、被害者自身、当の本人が反対しているのに職権であっせんに入るというのはおかしいじゃないかという御指摘、そこのところだろうと思います。
これは私、別に御質問を理解できないわけじゃございませんで、正確に理解申し上げているつもりでございます、そしてそれを正確に理解した上でお答えするのでございますけれども、やはりケース・ハイ・ケースで、被害者が反対だと言っていても、実情を調査し、十分事情を明らかにすれば、そしてその場合に、なおかつ、あっせんをしたはうが当該被害者にとって有利であるという場合はあり得ないわけじゃございませんので、そういう場合には、たとえ反対であっても職権であっせんに乗り出す、しかし職権であっせんに乗り出しても、もともとあっせんですから、それによって和解が成立するかどうかということは当該被害者の意思、双方の当事者の意思にかかるわけでございまして、たとえこちらのほうで、被害者の反対にもかかわらず、これはあっせんに入れば被害者に有利であると考えて手続に入りましても、それでも被害者がやはりそれにはとうてい応じられない、その態度が明らかになってきて、これはたとえ被害者に有利であっても、その被害者が和解に応ずるだけの心がなごんでいかないということになってしまえば、これは手を引かざるを得ないのでございまして、少なくとも話し合いの場に入れるだけの手続は職権でやったほうがいいのではないか、そういうふうに思います。
これは被害者が反対の場合にも常にそうであるというわけではございません。被害者が職権あっせんに反対の場合でも、ケースによっては、やはり職権であっせんに入り込むだけの手は尽くさなければならないケースがあろう、そういうことを申し上げているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/151
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152・木下元二
○木下委員 被害者の意思を、未成年ならともかくも、普通の被害者の意思をそこまで裏の裏まで見て、いろいろな角度から真意をさぐって、そこまでする必要というものは私は考えられないと思うのです。それは不見識ですよ。被害者の意思にもかかわらず、職権であっせんや調停ができるというこの趣旨というのは、私はあると思うのです。あなた方それをはっきり言われないから私は問題にしているので、それはあるでしょうが。何かいかにも被害者の救済だけをはかっているかのようなことを言われているけれども、それ以上のことがあるのじゃないですか。
先ほど労働関係調整法のことを言われましたね。ここでは確かにあっせん、調停については申し立て主義がとられておりません。この労働争議が発生したときには、職権あっせんというものが行なわれますね。これは趣旨はもう私から申すまでもなく、一定の社会的な影響ということを考慮して、あっせんが行なわれると思うのです。それから職権による調停制度がありますね。これは普通の争議ではなくて、電気、ガス、水道、郵便等のいわゆる公益事業に限定しておりますね。こういう公益事業の場合は、労働争議が発生すると社会的混乱が起こるとかあるいは重大な悪影響が起こるということを考慮して、職権調停の道を開いておるのでしょう。結局、この公害紛争というものも、これと同視して処理をしなければならないという考えなんでしょう。
なぜ、この公害紛争を公益事業の労働争議並みに見て処理をするのか。私はここに提案者の意図がだんだんと見えてきた感じがするのです。被害者の救済に力点があるということを盛んに強調されるけれども、だんだん化けの皮がはがれてくるのですよ。救済のために職権で調停に持ち込むという理由は、私はないと思うのです。それはくずれましたですよ。そんなの子供じゃあるまいし、少なくともいまの司法制度のもとでは、本人がちゃんと自分の意思で調停に持ち込むか、あるいは持ち込まないか判断するのです。結局、被害者の運動が混乱を招くおそれがある、あるいは社会的に他に波及して好まない影響を及ぼす、そこでこれを公益事業の労働争議並みに取り扱って押え込むために職権調停の道を開いた、こう考えざるを得ないじゃないですか。これを否定できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/152
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153・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 何かほかに意図があるのではないかという御質問で、ちょっとどういう御質問の趣旨かはかりかねていたのでございますけれども、いまわかりましたが、なるほどこれは、ちょうど労調法がそうだかどうか、それは私はよくわかりませんけれども、何か被害者救済とは離れて、別に社会的な目的のために、被害者を押え込むための意図があるのではないか、そういう御質問ではないかと思いますが、そうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/153
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154・木下元二
○木下委員 私がいま言ったとおりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/154
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155・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 もし私がいま理解したそういう趣旨だといたしますれば、これは全く違うのでございまして、この規定は、先ほども申しましたように、公害紛争処理法の中の規定で、それを受けてやっておりますので、全体の体系が決してそういう何か権力的な目的のために被害者を押え込むなんということは、もう全然考えていないわけでございます。そういう趣旨のものとは私は解釈もいたしませんし、もちろんそういう運用になるというようなことは想像もできないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/155
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156・木下元二
○木下委員 当然あなたのほうではそういうふうに否定をされると思いますが、幾ら否定をいたしましても、私は、この提案者の意図というものは、少なくとも客観的には動かしがたいと思うのです。そうでないというなら、この職権調停というような、公益事業の労働争議の場合にしか認められないような制度を、なぜ導入するのかということなんですね。被害者の救済は被害者の意思に従って行なう、これが鉄則なんですから。これを破ってまで職権調停制度を導入する理由というのを、わかるように説明いただきたいと思うのです。これは説明できないと思います。少なくとも国が職権でもって当事者間の紛争に介入をするというのは、紛争処理の形態としても好ましくない、これはもうおわかりだと思うのです。基本は、被害者と加害者との話し合いで解決をはかっていく、それが決裂をして救済を求めてきたときに国が乗り出す、これが私は救済制度なり紛争解決制度の基本だと思うのです。
公害紛争の場合だって同じだと思うのですよ。ただ、この公害の場合に、その被害者と加害者との話し合いが加害者側の不誠意で進まない、できないという事態は起こり得ると思うのですね。しかし、被害者と加害者との関係で見ますならば、こういう場合には加害者側は誠実に交渉に応じる義務というものがあると思います。実体法的にも私はあると解釈いたします。
そこで明文上も、加害者側に被害者と交渉に応ずる義務、交渉応諾の義務と申しますか、これを課するようにしてはどうか。これはわが党の公害対策基本法の提案をいたしておりますが、この中にも、はっきりとこの点はうたっておるわけであります。「事業者は、公害に係る被害者又はその団体が公害に係る被害についての原状の回復等を要求するため交渉をしたい旨を申し出たときは、誠意をもつてその交渉に応じなければならない。」こういう(誠実な交渉の義務)というものを明文上明確にいたしております。そうしておいて、調停委員会において必要に応じて交渉せよというように勧告ができるような制度にすればよいと思うのです。
私は、いま申しましたような趣旨から、こういうふうな制度にすることが、ほんとうに被害者の立場、被害者の救済をはかるゆえんだと思うのです。この点について、長官からも所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/156
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157・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 われわれがただいま御提案しておりますことは、公害紛争において往々見られるように、やはり加害者のほうの立場が非常に強いということです。これはもうおおうべくもない事実であります。また加害者の立場が強いからこそ、公害紛争というものがきわめて陰湿な状態になるし、また長期にわたり、また、その解決が非常におくれるというのが今日までの実態でございまして、むしろわれわれがこの立法を考えましたときの最も基本的な発想は、このあっせんそのものが、職権あっせんというものが、むしろ加害者がこのあっせんに乗る、また乗らせるということをまず一義的に考えて、そしてこのような改正をお願いしているわけでございまして、ただいま委員が仰せになりましたことも、ある場合にはいろいろと具体的にそういう事態もあるかもしれません。しかし私どもといたしましては、そういう場合にはケース・バイ・ケースとしまして、被害者擁護ということにきわめて純粋に考えて行動してまいりたいというふうに思っております。
そうした点を御理解いただければ、非常にわれわれとしてありがたいわけでございますが、ただいま申し上げましたとおり、被害者保護という基本的な姿勢を決してくずすものではないし、また今日までの公害行政そのものが、多少批判的な言辞を言わせていただくならば、その点に対して十分満足な方向をとっていなかったことも事実ではないかと、われわれは反省しておるわけでございます。したがいまして、今回法の改正をお願いをして、国の職権によってむしろ加害者をいすにすわらせ、しかもそれに対して公正な第三者機関である委員会のあっせん案というものを実施させるということを主体に考えておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/157
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158・木下元二
○木下委員 長官の言われることはわかるわけでありますが、しかし、それにいたしましても、私はやはり改正しようとする制度そのものに問題があるように思うのです。これは、いま本質的な問題を申しましたけれども、実務的、技術的にいいましても、いろいろ問題が起こってくると私は思うのです。たとえば職権によるあっせん、調停ですけれども、通常は加害者と被害者の一部との間であっせんが進められると思うのですね。初めから全部被害者を網羅することはできないと思うのです。実際上は。そうやってあっせん作業が進められて、いよいよ受諾をする段階になって初めて被害者がもっとたくさんおるということで、そうした人たちも加わって、あっせんで解決をする、こういうことになると思うのですね。
そういたしますと、これは水俣病の場合でもたいへん問題になりましたけれども、委任状の偽造の問題です。ああいう場合でも、こうした問題が起こるのです。職権であっせんが進められて、いよいよあっせんが成立をするという段階になって、委任状を集めるというふうなことになってくると、大ぜいの被害者がざっと加わってくる。ああした委任状の偽造といったような問題は非常に起こりやすい条件がつくられると思うのですね。間違いが実務上にも非常に起こりやすい。そういう点も私は指摘をしておきたいと思います。
それから、時間がありませんのでもう一つ、二つ、問題を申しておきますけれども、調停前の措置といたしまして、一定の勧告制度が置かれております。三十三条の二であります。この制度のねらいは一体どこにあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/158
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159・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 たとえで申し上げたほうがいいかもしれませんが、たとえば調停が金銭の支払いでやがて成立しようといったようなときに、もし事前に加害者のほうで財産隠匿行為などがありそうだといったようなときには、何か手当てをしておかないと、せっかく調停が成立しても、から振りになってしまうおそれもありますので、そういうときには補償金額に見合う財産の処分の制限を命令するとか、そんなようなことを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/159
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160・角屋堅次郎
○角屋委員長 木下委員にちょっと申し上げます。
小坂総理府総務長官は、日中航空協定の問題で閣議が控えております。ちょうど先生の質問の終わられる時分に退席の時間を迎えるのではないか、こう思っておりますので、あらかじめその点だけ御連絡して、おきます。
坂口先生のほうは、そういうことであれば、小坂総務長官がおられなくてもやむを得ないというふうな連絡等がございますので、その点もお含みおきいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/160
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161・木下元二
○木下委員 そうしますと、被害者の救済が、調停の成立前の段階で一定の措置を講じなければ不能または困難になる。そこで、被害者の救済が実現できるように設けられたもの、つまりこれは加害者側の行為を規制しようとするものだというふうに理解をしてよいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/161
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162・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 私がただいま申しましたのは、一つの例でございますけれども、全体としては、大体加害者の行為をチェックするのが大部分じゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/162
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163・木下元二
○木下委員 そうだとすれば、ここは「当事者」という表現になっておりますが、むしろこれは明確に、加害者側に対してというふうにしたほうがすっきりするように思うのです。何かこう、被害者側に対してもいろいろな規制、たとえばすわり込みをやっておるとか、あるいは封鎖をやっておる、そういうものを解くような措置もあり得るんだというふうに考えられぬでもないので、そういうことではない、加害者側に対する規制であるということを明確にする表現にすべきだと思うのですけれども、そういうふうにできぬでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/163
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164・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 被害者側に何かやるということは、ちょっと思いもつかなかったのでございますけれども、そういうことをやるという意思はございません。ただ、この法律全体が、この委員会の性格から考えまして、当事者双方に対し中立な立場ということを前提にしておりますので、被害者がどうの、あるいは加害者がどうのというような表現をなるべく避けております。ですから、この場合にも「当事者」ということをいっておるのは、この委員会の中立の立場と合っているものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/164
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165・木下元二
○木下委員 この提案者の三十三条の二の趣旨は、加害者側の行為を規制するというところにねらいがあって、被害者側などは、私が質問するまで思いも及ばなかったということで、そういう考えは毛頭ない、こういうふうに確認しておきたいと思います。
それから三十四条の二でありますが、調停は非公開とされておりますけれども、勧告をした場合に調停案の公表ができるという規定であります。非公開の調停の趣旨から申しますと、公表できるとする趣旨は一体どういうことなのか、幾らか問題があるように思うのですが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/165
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166・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 調停は非公開でございますけれども、本来公害問題の社会性、公共性などを考慮いたしますと、受諾を勧告された調停案についての調停委員会の判断を公表して、社会一般に正確に周知させるということは必要だろうと思いますし、また、まず世論の批判にさらすことによって調停の公正なことを一般に知ってもらう、それから受諾前の場合には、当事者が受諾するかいなかについての適切な判断の材料を得させる、そういうような意味があると思うので、この場合だけ公表することにしてあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/166
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167・木下元二
○木下委員 言われる趣旨はわかります。ただ、非公開の原則というものも大事なものですから、やはりこれに従うということも一つの要請だと私は思うのです。特にこれは公表する場合というのは、この場合もやはり被害者の意思を尊重していただいて、被害者の申し出に基づきとか、あるいは被害者の同意を得てとか、そうして初めて公表できるという仕組みにすべきだと思うのです。
そうでないと、調停委員会のほうで勧告をして、それが公表をされると、先ほど世間の批判にさらすということも言われましたけれども、これがかえって加害者側の立場に立った世論づくりに利用されるということも、なきにしもあらずだと思うのです。そしてまた、たとえばその被害者に対して村八分的な事態も起こり得るということもないとはいえない。ですから、この点はやはり慎重を期して、被害者の意思、被害者の申し出もしくは同意に基づきというふうに、これは修正すべきだ、こう思います。いかがでしょうか、この点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/167
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168・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 御指摘のような問題がもしあるとすれば、これは非常に慎重にやらなければならない問題だと思います。
ただ、これはどちらかといいますと、公害問題の社会性から考えて、この調停委員会の出した受諾案を公表することによって、むしろ被害者が力を得るというのが実情じゃないかと私は考えておりますけれども、しかし、確かに御指摘のような懸念があるとすれば、そういう点については十分慎重に運営すべきものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/168
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169・木下元二
○木下委員 長官は、もう時間がないようですので、一言だけお尋ねして終えたいと思いますが、先はども、この調停の運営等については中立の立場というようなことも言われたと思うのですが、この規定の上からいいましても、これは「当事者」というふうな表現になっておるわけですね。これは表現上やむを得ない面があると思うのですけれども、やはりこれは実態的に見ますと、被害者と加害者の解決の場である、それに国が調停なり、あっせんということで乗り出すということであります。
それで、ちょうどこれは労働委員会の不当労働行為の救済などの場合を見ますと、資本家、使用者と労働者、そしてその場で使用者側の不当労働行為を裁き、あるいは労働者側を救済するという点に力点があるわけですね。それと同じような趣旨で、やはりこの公害等調整委員会におきましても、これは被害者の救済というところに重点があると思うのです。そうでなければ、ただ対等、平等の当事者だということで、手続もそういう形で形式的に進むということであっては、私は真の救済は得られないと思う。この点は長官、どのようにお考え、またどのように運営をされていくおつもりでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/169
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170・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 この委員会の運営は、本来委員会の独自の活動にまつべきものでございます。総理府といたしましては、いわゆる委員会を外局といたしておりまして、表現が適切であるかどうかは別といたしまして、所轄するというわけであります。予算とか事務局の人事、それから法案を提出する場合の事務的な取り扱いという程度でありまして、きわめて独立性の高い委員会でございまして、私はその点について十分、行政府としてのたてまえをはっきりと守ってまいりたいと考えております。
それからもう一つは、しかし同時に、私個人といたしましても先般来るる申し上げておるとおり、公害という問題は非常に重大な社会的な問題であるという認識を持っておりますし、また今回の改正法案につきましても、私は非常に積極的な意欲を持っていますのは、ただいま委員もおっしゃいましたとおり、また今日各委員にお答え申し上げているとおり、私は被害者を救済すると申しますか、被害者を守るということがきわめて重要な任務であると、この委員会に大きな期待を持っておるものでございます。したがいまして、そうした運営が十分に行なわれるように、しかも十分なる独立性と中立性をもって運営できるように私は配慮をしてまいりたいというふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/170
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171・木下元二
○木下委員 それでは、また別の機会に一般質問等の形で質問をすることにいたしまして、もっと質問したい点がありますけれども、これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/171
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172・角屋堅次郎
○角屋委員長 ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/172
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173・角屋堅次郎
○角屋委員長 速記を始めて。
坂口力君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/173
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174・坂口力
○坂口委員 長官、時間が詰まっているようでございますので、岡本議員が午前中に質問をいたしまして残りました二、三問だけについで質問をさせていただきたいと思います。
第二十七条の前半につきましては、すでに岡本議員が質問をしているところでございますが、第二十七条の二の三項を読みますと、中央委員会と審査会とが協議をして管轄を定めることができることとしております。こういうことになっておるわけでありますが、これは運用のいかんによっては第二十四条に定められております管轄が無意味になりかねないという気もするわけでありますが、この辺はどのようにお考えになりますか、ひとつお聞かせを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/174
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175・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 これは、管轄の規定が、やはり規定の性格上非常に画一的になってしまいますので、具体的な事案によりましては、その画
一的な規定を適用するのが適当でない事案がございます。
〔委員長退席、渡部(恒)委員長代理着席〕
たとえば中央管轄の事件で加害地、被害地がほとんど同じ県内にある、そして当事者も中央までいくのを好まないで、地方の審査会での処理を望む、そのほうが手続の点でも当事者に便利である。しかも被害の実質が、中央で全国的、広域的な見地からやらなければならぬほどの被害の重要性というものも必ずしもないといったような場合には、これは地方でやるのがいい。それから逆に、地方の管轄の事件でも、実は当事者が住所も中央にあり、被害の実質も相当重大で、ほかにも影響があるので、中央で処理するのを希望する。また事実、紛争の性質上、今後もいろいろ起こり得るといったようなものは、これは中央でやるのが適当ということになろうかと思います。ところが、現行法では管轄の規定が一律でございまして、その間に融通がききませんので、これを当事者の便宜
のために、なるべく楽にやれるようにしよう、そういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/175
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176・坂口力
○坂口委員 長官、あまり時間がありませんので、一つだけお聞きをしておきたいと思いますが、この規定によって、委員候補者名簿方式の府県の中の紛争の場合、中央委員会があっせんに乗り出すことは、そうすると可能だというふうに解釈させていただいてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/176
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177・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 もちろん可能であると思います。また同時に、積極的に中央組織が動くということを考えていくべきではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/177
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178・坂口力
○坂口委員 その辺、もう少し事務レベルで具体的にお話を伺いたいわけでございますが、特に中央委員会が乗り出しますような場合には、先ほど一の御答弁にも少しございましたけれども、おもにどういうふうなときに中央委員会が乗り出してくるというふうに理解したらよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/178
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179・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 これはいまの管轄の問題かというふうに思いますが、中央委員会としては、本来の使命から申しまして、広域的なしかも重大な問題については中央で処理する。そしてそれによって、その紛争の解決が他の紛争解決の一つのモデルになるというふうに考えますので、そういう解決方法が妥当だと思われるようなものは、本来は、地方の管轄に属するものでも中央でやるのが適当と、そういうふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/179
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180・坂口力
○坂口委員 そのときに、地方の審査会で、これは自分たちのほうで十分やれるというような意見を出したときには、これはどういうふうになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/180
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181・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 協議して、地方が十分自分たちのほうでやれると言い、そして中央でもその意見を吟味しまして、一応もっともだと思われるようなときには、これはもちろん地方にやってもらうということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/181
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182・坂口力
○坂口委員 公害にかかわる紛争は非常にむずかしい問題が多いわけでございますが、この紛争の解決を見ます場合に、非常に期間も長期にわたることが多いわけでございます。聞くところによりますと、中央と地方とが互いに押しつけ合ったりというようなこともなきにしもあらずというようなことを、われわれも聞いたりもするわけでございますが、これは「協議して」ということになっておりますので、その点が非常にスムーズにいくことをわれわれは望むわけでございますけれども、そういうことで時間が空費したりということがあっては、これはどうにもならない。
そういう意味で、この二十七条、それから二十四条にいわゆる中央と地方のことが載っているわけですけれども、しかし、ややもいたしますと、その辺が複雑になる可能性もまた中に秘められております。その点、ひとつ遺憾のないようにお願いをしたい。御決意のほどをひとつ聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/182
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183・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 御指摘の点、まことにごもっともでございまして、そういうことは絶対にないように、そのために当事者の被害者に対する救済が少しでも支障を起こすというようなことは、これは避けなければならないことでございますから、そういうことはないようにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/183
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184・坂口力
○坂口委員 四十三条でございますが、四十三条の二、この条文から見ますと、(義務履行の勧告)というのは、すでに確定した義務の履行を求めているというふうに解釈してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/184
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185・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 それも入ります。確定した義務の履行そのものも行なわれていないときに、確定した義務を履行するようにということを勧告することも、これに入るわけでございますけれども、むしろこの制度のねらいは、第一項の三行目にありますように、「義務の履行に関する勧告」でございまして、義務の履行について、すでに調停なりそのほかのもので、義務ははっきりと確定しておりますけれども、それを履行するについて、履行の段階でたとえば思わぬ支障のために、すぐには払えなくなったとか、そういうときに、たとえば分割の方法でやるなら払えるとか、あるいはだれか家族、親族の間から、かりにかわって払ってもらうのならできるとか、そういう道がありそうなときには、そういうお手伝いをするという、要するに履行をやりやすくするためのアフターサービスのようなことを主として考えております。
〔渡部(恒)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/185
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186・坂口力
○坂口委員 この勧告に従わないような場合ですね、いままでそういうふうな事例があったかどうかわかりませんが、もしもあればそういう点もひとつお教えいただきたいと思いますが、そういった場合に、これはさらに命令を出して、義務を履行させるべきかどうかというようないろいろ議論がございますが、その点いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/186
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187・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 御指摘の点、確かにそういう問題がございまして、ここまで来る、こういう成案を得る段階ではいろいろ検討したわけでございます。たとえば命令というのは、どういうことかというようなことも検討したのでございますが、結局は命令しても、命令に強制力がなければ、どうにもいたし方ございません。それで命令に強制力を与えるためには、たとえば確定判決と同じ効力を持つということになれば、これは確定判決に基づいて執行吏による強制執行もできます。しかし、この公害等調整委員会は、あるいは審査会は、あくまで行政機関でございまして、たとえば判決機関のような、あれだけの整備された組織ではございません。それでございますから、命令を出して、その命令に確定判決と同じように強制執行力を持たせるというようなことは、これはやはり考えられないことでございます。
そうすると、命令を出して、しかも強制執行の道のない命令がいいのかどうか、これも、執行力はなくても命令という形のほうがまだききやすいんじゃないかというようなことも検討してみましたけれども、結局は、国の命令というもので執行力がない、それに従わなくても、その段階になって手のつけようがないということでは、やはり適当ではないので、最後に、この勧告ということに落ちついたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/187
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188・坂口力
○坂口委員 同じような意味でございますが、四十三条の二の二項にもあるわけでございます。「中央委員会又は審査会等は、当該義務の履行状況について、当事者に報告を求め、又は調査をする」云々となっておりますが、この「報告を求め、又は調査をする」という意味も、考え方によっては立ち入り調査権というような感じもとれないことはないわけでございますが、この辺の考え方というのは、どうでございましょうか、もう一つ聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/188
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189・小澤文雄
○小澤(文)政府委員 この四十三条の二第二項の報告、調査については、立ち入り調査権といったような、そういう強制力を伴うものは考えておりません。報告を求める、あるいは行って聞く、行って調査をする、そういったようなことで目的を達するものではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/189
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190・坂口力
○坂口委員 ありがとうございました。以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/190
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191・角屋堅次郎
○角屋委員長 この際、暫時休憩いたします。
午後三時五十九分休憩
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午後五時二十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/191
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192・角屋堅次郎
○角屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
これにて内閣提出の公害紛争処理法の一部を改正する法律案に対する質疑は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/192
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193・角屋堅次郎
○角屋委員長 これより本案に対する討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/193
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194・林義郎
○林(義)委員 私は、自由民主党を代表して、内閣提出の公害紛争処理法の一部を改正する法律案に対し、賛成の態度を表明するものであります。
以下、その理由を申し述べます。
公害紛争処理法は、公害対策基本法第二十一条の趣旨に基づき、公害紛争を迅速、適正に解決するために、和解の仲介、調停、仲裁等の紛争処理制度を設けたものでありますが、これは、一つには、従来の行政機関による公害紛争の和解の仲介の制度を統合充実したという点において、また、一つには、民事紛争である公害紛争を包括的に取り扱う準司法的機関を創設したという点において、重要な意義を有していたのであります。
これによって、公害紛争処理制度の基礎はできたのでありますが、和解の仲介及び調停は、紛争処理機関がいかに努力しても当事者がその気にならなければ合意が成立しない、また、仲裁は当事者間にあらかじめ合意がなければ申請ができないという点において、いずれも当事者の合意に基礎を置く紛争処理制度として、それなりの限界があったのであります。特に、すでに長期間にわたって激しい対立が続き、こじれてしまった紛争については、有効に機能しないことが痛感されたので、これに対処するため、昭和四十七年の改正において裁定制度を導入したのであります。これは、民事紛争についての本格的な裁定制度として画期的なものであり、公害紛争処理制度上の重要な懸案を解決しようとするものでありました。
ところが、最近の公害紛争の実情を見ると、これでも不十分であります。すなわち、新たな公害が広範囲にわたって生じ、その発生源である企業と多数の被害者との間で紛争が生じ、急速に拡大激化していくような場合には、現行の申請主義による制度のみでは十分に対処できないのであります。紛争処理機関は申請がなければ動けず、他方、申請するには一定の手数と時間を要し、事態の進展がその余裕を与えないという場合に、紛争処理機関が申請がないからと腕をこまねいていてよいのか、そのために紛争がこじれ長期化し、多数の被害者が困窮するのを傍観していてよいのか。それでは、公害紛争処理制度を設けた趣旨を全うできないことは明らかであります。したがって、大規模な公害紛争について早い時期にあっせんを行なうことが紛争解決のために効果的であると認められるときには、当事者からの申請を待たずにあっせんを行なうことができるようにする必要があるのであります。
今回の改正によって、公害紛争処理制度は、簡易な手続で、申請の有無にかかわらず機動的に対処できるあっせんから、被害者の申請に基づいて損害賠償額を決定する責任裁定まで、非常に幅広いものとなり、あらゆる形の公害紛争について国民の期待にこたえることができるようになるものと信ずるものであります。
以上で、私の賛成討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/194
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195・角屋堅次郎
○角屋委員長 島本虎三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/195
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196・島本虎三
○島本委員 公害紛争処理法の一部改正法案について、私は、日本社会党を代表して、賛成の討論を行なわんとするものであります。
すでに御存じでございましょうけれども、高度経済成長のしわ寄せは、公害と環境破壊というふうにあらわれて日本を公害列島化するに至りました。そのために紛争はあとを断ちません。その後、
昭和四十五年六月一日には、公害紛争処理法が制定されたことは御存じのとおりであります。しかし、その内容は、十分それに対処し得るに至っておりません。日本社会党としては、当然対案をもってこれに臨んだのでございます。対案の提案者は現角屋委員長であることも御承知のとおりであります。その後昭和四十六年、環境庁設置法に伴い苦情の処理等についての一部の手直しが行われました。また、昭和四十七年六月三日には公害等調整委員会設置法ができ、ここに国家行政組織法三条機関という機能を備え、そして裁定権を得るに至ったのであります。いまや公正取引委員会とほぼ同様の準司法的行政機関であるのであります。
そのようにして改善されてきておるのでありまするけれども、しかし、内容等につきましても、いまだ不十分である点は指摘せざるを得ません。しかしながら、一歩前進とみなされる点は評価したいと思います。したがって、運用にあたっては、本法案中の職権によるあっせん及び調停の開始にあたって当事者、特に被害者の意思を尊重し、当事者の自主的な解決の努力を妨げることのないように十分配慮しなければならないのであります。それと同時に、水俣病と、あの水俣闘争の実態を十分反省して、公害紛争の迅速かつ適切な処理の必要性にかんがみて、被害者の多くが生活に困窮しておる実情を考慮して、費用負担等の軽減等についても十分配慮しなければならないのはもちろんでありますが、地方公共団体が公害紛争処理のために支出する経費についても配慮すべきはもちろんであります。
このようにして、まだ不十分な点はあるのでありますけれども、運用の面でこれを十分カバーし、配慮して、職権の乱用にならないように厳重に留意すべきことを望む次第であります。
私は、以上のような点を申し添え、そして一歩二歩前進されておるこの実態の中に、公正取引委員会とほぼ同様の準司法的権限を持つ行政機関であるというこの実態の上に立って、少なくとも行政の不信を招かないような運営をするべきことを、ここに心から望み、私の賛成討論とする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/196
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197・角屋堅次郎
○角屋委員長 木下元二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/197
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198・木下元二
○木下委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、公害紛争処理法の一部を改正する法律案に対する私たちの態度を明らかにしたいと思います。
多くの公害裁判で明らかなように、公害被害者を苦しめているのは、加害者の無責任な被害者無視の態度であります。政治のなすべきことは、このような加害者、特にその中心である大企業に対して、損害を誠実に賠償させる責任と義務を法的に明確に課することであります。
私たちは、早くから政府に対して、このような原則を含む公害対策基本法をはじめとする公害諸法の抜本的改正を提起していますが、政府は、何らこれにこたえようとしないのであります。
このような原則を明らかにしない紛争処理制度は、被害者の利益を守り切れないばかりか、つまるところ紛争解決の促進の名のもとに加害者を擁護する役割りすら果たす危険性が大きいのであります。職権あっせん制度、職権調停の制度の導入を主たる内容とする本改正案は、その危険性を一そう大きくするものであります。
公害をなくす基本的な力、また、公害による損害を加害者の責任と負担で、すみやかに、かつ、完全に原状回復を原則として賠償させる基本的な力が、被害者を中心とした住民の運動であることは、公害の全歴史から明らかであり、本改正案が、このような住民の運動の発展を阻害し、抑止的な役割りを果たす危険性を持つものであることもまた明らかであります。
以上の理由により、日本共産党・革新共同は、本改正案に対して反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/198
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199・角屋堅次郎
○角屋委員長 岡本富夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/199
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200・岡本富夫
○岡本委員 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております公害紛争処理法の一部改正に対する反対討論をいたします。
理由は、都道府県の公害審査会を中央委員会と同等のように独自性を持たせ、また、みずからあっせん、勧告等ができるような機関にすべきであります。特に都道府県において公害審査会を必置条件にすべきであります。
また、二番目は、都道府県の公害審査会の所掌事務に対しても、裁定の権限を与えるようにすべきである。
三番目は、公害等調整委員会の管轄は、人の健康及び生活環境で法定公害に準ずるもの、たとえば日照権についても、公正な紛争処理を受けられるようにすべきである。
こういうように考えておりますので、相当前進をしたとはいえ、まだ完全でない、この法案に対しまして反対であります。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/200
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201・角屋堅次郎
○角屋委員長 これにて討論は終局いたしました。
内閣提出の公害紛争処理法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/201
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202・角屋堅次郎
○角屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/202
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203・角屋堅次郎
○角屋委員長 次に、本案に対し、林義郎君、島本虎三君、岡本富夫君、折小野良一君より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
まず、提出者から趣旨の説明を求めます。島本虎三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/203
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204・島本虎三
○島本委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表いたしまして、内閣提出の公害紛争処理法の一部を改正する法律案に対する附帯決議を付すべしとの動議について御説明いたします。
まず、案文を朗読いたします。
公害紛争処理法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行にあたつて、次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。
一、典型七公害以外の日照等に原因する紛争が多発している実情にかんがみ、紛争処理制度の対象となる範囲を拡大するよう速やかに検討すること。
二、職権によるあつせん及び調停の開始にあたつては、当事者、特に被害者の意思を尊重し、当事者の自主的解決の努力を妨げることのないよう配慮すること。
三、公害紛争の迅速かつ適切な処理の必要性にかんがみ、調査体制の充実、運営の改善に努めるとともに、被害者の多くが生活に困窮している実情を考慮し、費用負担の軽減等について配慮すること。
四、公害紛争の動向等にかんがみ、公害審査会を置いていない府県に対し、公害審査会の設置について再検討するよう指導するとともに、地方公共団体が公害紛争処理のために支出する経費について十分配慮すること。
以上でありますが、この動議の趣旨につきましては、案文中に尽くされておりますので、省略させていただきます。
何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/204
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205・角屋堅次郎
○角屋委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/205
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206・角屋堅次郎
○角屋委員長 起立総員。よって、さよう決しました。
この際、小坂総理府総務長官から発言を求められておりますので、これを許します。小坂総理府総務長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/206
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207・小坂徳三郎
○小坂国務大臣 政府は、ただいま議決されました附帯決議につきましては、十分にその趣旨を尊重し、その実現に努力する所存であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/207
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208・角屋堅次郎
○角屋委員長 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/208
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209・角屋堅次郎
○角屋委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/209
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210・角屋堅次郎
○角屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204209X02019740426/210
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