1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十九年三月二十二日(金曜日)
午後一時三十七分開議
出席委員
委員長 安倍晋太郎君
理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君
理事 村山 達雄君 理事 森 美秀君
理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君
理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君
伊藤宗一郎君 宇野 宗佑君
小沢 一郎君 金子 一平君
鴨田 宗一君 栗原 祐幸君
小泉純一郎君 小宮山重四郎君
三枝 三郎君 塩崎 潤君
塩谷 一夫君 田中 覚君
萩原 幸雄君 坊 秀男君
箕輪 登君 毛利 松平君
山下 元利君 佐藤 観樹君
高沢 寅男君 塚田 庄平君
広瀬 秀吉君 松浦 利尚君
武藤 山治君 村山 喜一君
山中 吾郎君 荒木 宏君
小林 政子君 広沢 直樹君
内海 清君 竹本 孫一君
出席国務大臣
内閣総理大臣 田中 角榮君
大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
出席政府委員
内閣法制局第三
部長 茂串 俊君
大蔵政務次官 中川 一郎君
大蔵大臣官房審
議官 大倉 眞隆君
大蔵省主計局次
長 長岡 實君
大蔵省主税局長 高木 文雄君
大蔵省銀行局長 吉田太郎一君
委員外の出席者
議 員 山田 耻目君
法務省刑事局刑
事課長 根岸 重治君
国税庁直税部長 田邊 曻君
国税庁調査査察
部長 井辻 憲一君
大蔵委員会調査
室長 末松 経正君
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委員の異動
三月二十二日
辞任 補欠選任
大西 正男君 箕輪 登君
奥田 敬和君 小沢 一郎君
野田 毅君 塩崎 潤君
村岡 兼造君 田中 覚君
内海 清君 宮田 早苗君
同日
辞任 補欠選任
小沢 一郎君 奥田 敬和君
塩崎 潤君 野田 毅君
田中 覚君 村岡 兼造君
箕輪 登君 大西 正男君
宮田 早苗君 内海 清君
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三月二十二日
所得税法の一部を改正する法律案(山田耻目君
外三名提出、衆法第八号)
同月二十日
中小業者に対する税制改正等に関する請願(瀬
野栄次郎君紹介)(第二九六九号)
中小業者に対する減税措置に関する請願(土橋
一吉君紹介)(第三〇六〇号)
同(中島武敏君紹介)(第三一三八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
所得税法の一部を改正する法律案(山田耻目君
外三名提出、衆法第八号)
所得税法及び災害被害者に対する租税の減免、
徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律
案(内閣提出第一三号)
法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一四号)
租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第三九号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/0
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001・安倍晋太郎
○安倍委員長 これより会議を開きます。
この際、おはかりいたします。
すなわち、本日付託になりました山田耻目君外三名提出にかかる所得税法の一部を改正する法律案を議題といたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/1
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002・安倍晋太郎
○安倍委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
所得税法の一部を改正する法律案を議題といたします。
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所得税法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/2
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003・安倍晋太郎
○安倍委員長 提出者より提案理由の説明を求めます。山田耻目君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/3
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004・山田耻目
○山田(耻)議員 所得税法の一部を改正する法律案の趣旨の説明を申し上げます。
私は、提案者を代表いたしまして、ただいま提案されております所得税法の一部を改正する法律案について、その趣旨と内容を申し上げます。
昭和四十九年分の所得税につきましては、別に昭和四十九年分の所得税の臨時特例に関する法律案を提出いたしまして、夫婦子二人の給与所得者につき年収二百十五万円まで無税とするよう税額控除方式による低所得層中心の勤労者大幅減税法案を提出しているところでありますが、これとあわせて、現行法のもとで税負担が他の所得者に比べて重くなっている給与所得者について、各種の所得控除または非課税措置を設けて税負担の軽減をはかるとともに、他方、ある種の資産所得について課税を強化しようとするものであります。
まず第一に、通勤費の非課税であります。現行制度では、実際支給した通勤手当のうち一定限度までの金額について非課税としておりますが、通勤費は明らかに必要な経費でありますから、その制限をはずし、通勤費の実費相当額は全額これを非課税とすることにいたしております。
第二は、夜勤手当の非課税であります。警察官、看護婦等のように夜間勤務をする者の場合は、心身の消耗が激しく、その回復のためにはかなりの経費が必要でありますが、この点を考慮して、一定額の夜勤手当についてこれを非課税とすることにいたしております。
第三は、労働組合費控除の創設でありますが、労働組合が労働者の地位向上、福利増進をはかるものであることは明らかであり、組合費はそのための費用でありますから、今日の社会福祉の見地から当然必要経費と見られるものであります。この点から見て、組合の経常的な費用に充てられる組合費については、これを所得控除として認めることにいたしております。
第四は、寒冷地控除の創設であります。寒冷地域におきましては、暖房費その他の生計費が他の地域に比べて多額にかかることは言うまでもありません。これに対し、公務員等の場合は寒冷地手当が支給されておりますが、これは課税所得の中に含まれており、また、それ以外の所得者の場合は所得の中から経費をまかなわなければならず、いずれにいたしましても、他の地域の居住者とのバランスを欠くものといえます。そこで本改正案におきましては、その経費相当分を総所得金額等から控除する制度を新たに設けることといたしております。
第五は、有価証券の譲渡等による所得に対する課税であります。現行制度では、株式等についてのキャピタルゲインは非課税となっておりますが、これは制度の大きな欠陥であります。とりわけ昨今のようなインフレ、物価高騰のもとで株式が高騰し巨額の利潤を得ているものが続出している場合には、著しく課税の公平をそこなうものとなっております。このような観点から、現行非課税制度を廃止し、有価証券及びその類似のものの譲渡所得については、すべて課税することといたしております。
第六は、配当控除制度の廃止であります。現行制度は、いわゆる法人擬制説に立って、所得税の前払いである法人税を清算する意味で配当控除が行なわれておりますが、この制度によれば、配当のみの所得者は夫婦子二人の場合、課税最低限が三百五十七万円となり、他の所得者と著しく不均衡を生ずる資産所得優遇の制度となっております。したがって、法人擬制説を維持するという考え方をやめ、税負担の公平をはかるため、配当控除制度は廃止することといたしております。
その他、以上の措置に伴い、確定申告、年末調整等の制度等について、所要の調整を行なうことといたしております。
以上が本法案の概要であります。
何とぞ、御審議の上、御賛成賜わりますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/4
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005・安倍晋太郎
○安倍委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
本会議散会後再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
午後一時四十三分休憩
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午後四時十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/5
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006・安倍晋太郎
○安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
内閣提出、所得税法及び災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。山田耻目君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/6
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007・山田耻目
○山田(耻)委員 総理、きょうはたいへんお疲れのところをわざわざ来ていただきまして、ありがとうございました。
きょう租税三法を一応審査終了するという時間的な段階に来たわけですが、附帯決議につける中身についてお伺いするのもどうかと思いますので、先般、殖産住宅の前会長でございました東郷民安さんが、個人としてはかつてない大がかりな脱税を起こされまして、すでに東京地方裁判所で係争中のものでございます。これら一連の事件の中で、中曽根通産大臣の名前が出てまいりますし、中曽根通産大臣の秘書官である上和田義彦さんですか、この方が介入をなさっておりますので、こうした一連の脱税問題につきまして、そのことが租税特別措置法の譲渡所得非課税措置にその原因があります立場からも、きょうからめて総理にお伺いをしたいわけですが、総理は細部事項については御理解ないと思いますので、その過程をそれぞれの主管の各省から話を詰めていきながら、総理よくお聞きいただいておりまして、最後に総理の見解なり方針を明らかにしていただければ幸いだと思います。
一つは、国税庁に最初にお伺いをするわけですが、個人税としては、申し上げましたようにまさに史上最高の大脱税をやられた前殖産住宅の会長である東郷さん、この事件について、一体、国税庁はどのような処理を今日までなさってきたのか。その処理方針なり、今日公判中でございますから、公判結審後にはどういう措置をなされていこうとするのか、あわせてこの事案についてお話を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/7
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008・田邊曻
○田邊説明員 お答え申し上げます。
ただいまお話しの東郷民安の件につきましては、所得税法上他人名義、架空名義を使いまして年間五十回以上の、また二十万株以上の株の売買を行ないまして、約三十九億円にのぼる所得をあげておりまして、それにもかかわらず隠蔽し、申告がございませんでしたので、昨年六月十三日査察調査に着手いたしまして、同年七月二日に東京地方検察庁に告発してございます。告発後の現在までの状況は、昨年の夏地検から起訴されまして、現在まで二回の公判が開かれているというふうに聞いております。
課税関係は、四十七年分脱漏所得が三十八億八千万円、脱漏税額三十七億八千万円、これらは重加算税を含んでおりますが、昨年の十月十日に処理いたしておりまして、それに対しまして異議の申し立て、審査の請求がなされております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/8
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009・山田耻目
○山田(耻)委員 もうすでにこの脱税金額というのは、いま御説明がございましたように、国税庁のほうに納めているわけですか。納めていなければ、どういう税法に基づいて具体的措置をおとりになっているのか、それらについて御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/9
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010・田邊曻
○田邊説明員 お答え申し上げます。
課税額の一部が納付されておりまして、その他大部分はまだ滞納になっておりますので、保全のための差し押え処分がなされております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/10
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011・山田耻目
○山田(耻)委員 滞納処分、差し押え処分をしておるという御返事なので、一応税法上脱税をした分野については遅滞なく、粗漏なく手が打ってある、こういうことでございますね。
そこで、なぜこのような事件が起こってきたのか。それはいまの税制の中に引き金となるべきかぎがある。それは御存じのように有価証券の譲渡所得非課税、これは株の売買が回数で五十回以内、株数で三十万株以内を非課税措置とする。今回東郷さんがやりましたこの脱税行為というのは、この税法から生まれ出ておるものであります。これが引き金になっているのです。このような史上まれな大脱税が行なわれていったのは、いまの特別措置条項に基づく優遇措置が原因であるということになりまするならば、一体、税務当局としてはどのようなお考えをなさっておるのか、その基本的な考え方を私はお尋ねしたいわけです。いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/11
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012・高木文雄
○高木(文)政府委員 株式の譲渡所得につきましては、毎々当委員会におきましても御説明申し上げておりますように、売買がどのような実態であるかということが一般になかなか明らかになっておりませんために、かつて昭和二十年代末にこれを課税するということに法令上定まっておりました時代に、譲渡益というものについての申告は必ずしも十分でなく、むしろ譲渡損についての申告がありまして、税務当局のほうはそれを調査するのにいろいろ苦労したわけでございますが、十分にそれを達成できないということから、ただいま御指摘がありました五十回以上、二十万株以上というような特例的なものに限って譲渡所得課税が行なわれているわけでございます。これは御指摘のように、課税の公平という点からいえば非常に問題があるわけでございますから、私どもといたしましては何とか方法を見つけて、全部とは言わないまでも、もう少し課税をする方式が見つからないものかということで苦慮しておるところでございますけれども、いまだその結論に至っていないという現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/12
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013・山田耻目
○山田(耻)委員 非常に大きな問題なのに時間が足らなくて残念なのですが、こうした税改正の問題は、また次の委員会で触れることにいたしたいと思います。
私は今回のこの事件を国民が見まして、この特別措置というのは金持ち優遇の一つの措置であるし、税そのものの持つ累進性というものがゆがめられて逆進性を強めておるし、しかも、徴税の基本原理である公平というものも阻害されている、こういう立場に非常に深い疑惑を持ったのですが、それに加えて、本件には田中内閣の有力な閣僚である中曽根通産大臣の名前も出てくるし、しかもその秘書官である上和田さんの直接の介入の事案が出てくるし、国民の中に広がっておる不信感というものは、私はぬぐいがたいものがあるような気がするわけです。
私は、ここで若干この問題の中身に入ってみたいと思うのですが、昨年の十月、殖産住宅のこうした一連の関係で株が上場されていきます。この一カ月前の九月に、東郷前会長と中曽根通産大臣秘書官とのかなり具体的な話が深められておるように公判の冒頭陳述で述べられております。そうして十一月に東郷前会長と上和田さんとの間で、これは株の売買資金である四億一千二百万円の金はおまえに貸したんだ、上和田さんに貸したのだ、こういうふうな具体的な書面がかわされております。そのときに秘書官である上和田さんは、通産大臣の中曽根さんと東郷さんは旧制静岡高校時代の同級生である、迷惑がかかってはならぬからという言い方もことばの中では出ていたようですけれども、結果としてみごとな書面ができ上がっております。
そこで、私は二点に分けて聞きたいのですけれども、上和田さんに株の売買資金として渡した四億一千二百万円の金は、いま直税部長が御答弁なさいました、脱税の金額は法に基づいて一切処理をしておる、一部は収納し、一部は差し押え処分をした、この脱税金額の中に、東郷さんの所得の総計の中に、この四億一千二百万円が含まれておるのかどうか。貸し付けですから、当然この資金は東郷さんの資産にかかわるものです。一体、この四億一千二百万円はだれの資産になっておりますか。その点について御答弁をいただきたい。
いま一点は、時間がございませんから重ねて聞いておきますが、それがそうであったとすれば、その金を借りた上和田さんは、その金によって株の売買を行なった。この売買を行なった売買利益は、上和田さんのものになります。四億一千二百万円の売買がやられておりまして、十月の殖産の上場株の値段は約倍に引き上げられております。この株の売買益は、少なくとも四億の倍近い八億の金になっておるはずです。これだけの所得をおさめた上和田さんの所得申告はどうなっておるか、この点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/13
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014・根岸重治
○根岸説明員 お尋ねの件に関しましてお答え申し上げますが、東郷民安を検察庁で起訴いたしまして現在公判中でございますが、その冒頭陳述の中で、東郷が上和田氏の名前を使って株の売買を行なったということ及びその後四億余りの金を上和田氏に東郷が貸し付けたという書面をつくったということは、いま御指摘のように、事実はあるのでございますが、検察庁の現段階の見解といたしましては、これは真実は東郷の売買であるという認定のもとに、脱税額に入れて起訴をしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/14
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015・山田耻目
○山田(耻)委員 いまおっしゃっていたお話は、東郷さんの脱税行為を隠蔽するためにそうした措置がなされたということでございます。脱税を隠蔽するそうした証拠書類をつくったのは昭和四十七年十一月です。ところが、貸し付けという名目はあとで明確になったのですけれども、この話がまとまったのは昭和四十七年の九月です。そういたしますと、犯罪構成の要件としては、刑事課長のおっしゃっているような要素も私はあると思いますが、税法上の立場から見ますと、当然、貸し付け、脱税行為、株の売買、売買利益、これは金を借りた者に対して課税をしていくのが私は税法上のたてまえだと思うわけです。これは直税部長、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/15
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016・田邊曻
○田邊説明員 お答え申し上げます。
ただいま検察当局からのお話がございましたとおり、事実関係につきましては、一応公判廷で冒頭陳述をされておりますところによれば、東郷個人の所得を構成するということになっておりますが、最終的に税法に照らしまして、まずその方個人の名において借りまして、それがその個人の株式売買の所得というようなことが判明いたしますならば、それはその個人の株式の売買に伴う所得、こういうことになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/16
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017・山田耻目
○山田(耻)委員 それはあなたの御意見としては、いずれにしても裁判が結審をして明確になれば、当然税法に照らして適法な措置をして税の徴収をする、それは上和田氏に対する税の徴収である、こういうお話しのように受け取りました。私は、ここの国会の中でこういうやりとりをしていることは、いまのようなやりとりでまあまあけっこうだと思うのですけれども、ただ、疑惑として残るものが私自身にある。
脱税がばれそうになってきた十一月の段階でそういう証書を取りかわした。しかし、そういう事実行為があって、四億一千二百万の金が動いていったのは四十七年の九月である。一体その間、この金はどこに行っておったのだろうか、政治献金だったのだろうか、そういう疑惑をみな持つわけですよ。この疑惑の解明については、私は当然公判中明白にされていくものだと思います。ここらについて、刑事課長、やはりこれからその立場に立って問題の究明をしていくという姿勢がなければ、私は本件の明確な解明はなされないと思うが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/17
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018・根岸重治
○根岸説明員 すでに御承知のように、冒頭陳述と申しますのは、その段階におきます検察官の証拠に基づきます事実の認定を集約したものでございます。したがいまして、現在検察官といたしましては、東郷が自分の所得を隠すために上和田氏の名前を使わせてもらったという前提に立って冒頭陳述を行なっておるわけでございます。したがいまして、検察官の立証としましては、当然いま申し上げました事実を立証していくことになるわけでございます。
ただ、東郷のほうでかりにその事実を争う場合には、反対証拠等をもちろん提出いたしますし、弁護人の弁護活動もございますので、その過程を通じてどれが真実であるかということはおのずから明らかになっていくものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/18
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019・山田耻目
○山田(耻)委員 質問します私自身の気持ちの中には、やはり法廷というものは客観的に真実を追及する唯一無二のものでありますだけに、私もその審理というものに疑いは持ちたくありません。ただ、この脱税行為を隠蔽し、可能な限り合法性をその中に打ち立てようとした東郷は、なぜ国務大臣中曽根康弘さんの秘書官に手をかけたのか、この釈明はできないわけですよ。この釈明はできない。ただ単に旧制静岡高校の同級生だった。中曽根さんだけが同級生じゃないでしょう、高等学校は二人だけじゃないですから。私はここに非常に不明朗な、不愉快なものがあるような気がしてならないわけですよ。しかも、金のやりとりがなされてから脱税がばれるまでの間、どのようにこの金が使われていったのだろうか。四億一千二百万という金がずばりそのものであるかどうか。この金額はわからないにいたしましても、いま明らかになっているのは、四億一千二百万です。この金が上和田秘書官のほうに渡って、それから先どこに行ったのか。しかし、株の売買はその金でやられたということよりか、脱税を隠蔽せんがために証書をかわしたとあなたはおっしゃっている。そうなると、一体その金はどこに行ったのか、私は中曽根さんの政治献金のあの中身もいろいろ調べてみましたけれども、そんなものはございません。
こういう非常な不明朗さが、これが税にかかわり合っておるだけに、私はこの委員会で重要視するわけですよ。こういう事案が重なってくれば――税金というものは、本来原理原則に基づいて公平でなくちゃならぬ、不平等であってはならぬ、累進性を持たせなくちゃいけない、こういう立場から、私たちは税制審査に当たってきた。しかし、そういう問題の中でその不合理性が指摘をされ始めた。株の売買譲渡に対する非課税の措置はもうおやめなさい。こんなものはもうおやめなさい。そうして平等性を確立し、累進性を維持しながら国民の信頼を保つようにしなくちゃならぬと主張し続けてきたのです。
そこで、総理に、最後に、時間もございませんのでお尋ねしますが、いまアメリカではニクソンさんの脱税の問題なり政治献金の問題なり、かなりきびしく追及されております。私はこの行為それ自体というのは、税に対する国民の信頼性、国政に対する国民の信頼性を失ってはならぬという民主主義政治の良識のしからしめたものだと思っているのです。
いまいろいろやりとりをしてまいりました。短時間ではございましたが、この問題については、少なくとも税の公平性、犯罪の温床となるようなこうした問題、特例措置については、これを廃止する決心はまだつかないのでしょうか。そうして税の基本のあるべき当然の姿を確立をしていく、そういう政治姿勢はお示しいただけないのだろうか。特に国務大臣のきわめて重要な職にあられる中曽根通産大臣や、その正規の秘書官、国家公務員、この上和田さんに対するこうした一連の疑惑に対しても、いまこそ政治の姿勢というものをしっかり正して、国民に信を問うという態度があってしかるべきではないだろうか、私はこういう気持ちがいたすわけです。総理から一つの見解をお示しをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/19
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020・田中角榮
○田中内閣総理大臣 二つの問題を指摘しておられるわけであります。これは明確に分けて考えなければならぬ問題でございますし、お答えも明確に分離をしてお答えいたします。
一つは、東郷何がしの問題でございますが、この問題は、立件せられておるわけでございますから、司直の手によってこの真相は国民の前に明らかにせられる。これは判決を待つということでなければ、法治国民としては、感情だけでさばいてはならないことは申すまでもないことであります。これはもう、いま刑事課長から御報告がございましたが、いろいろな工作が行なわれたような節が見られるけれども、検察庁が調査をした結果、立件の前提となるものは、東郷がみずから行なっておる株式売買を擬装したものであって、この責めは東郷にありということで立件せられておるわけでございます。だからこれは、東郷がどのように反論をするか、事実がどうなのかということは、裁判の過程において真実は究明せられるということで、この判定を待つ以外にはないわけでございます。これは憶測に基づいていろいろ判断をするということは誤りである。これは憲法に照らしても、個人の人権もあることでございますし、いろいろな問題、特に適法に処置せられつつある事案に対しては、これが最終的判断を待ってから考えるべきであります。これは私が言及する限りではありません。
第二の問題は、株式売買によるキャピタルゲインに対して課税してはどうかという問題でありますが、これは長い間の問題でございます。これは主税局長がいまほども答弁申し上げましたし、私の大蔵大臣三年在職中にも絶えずこの問題が議論になったわけでございますが、率直にいって、世界各国はどうしておるのか。これに課税しておる国もあります。課税していない国もあります。それはいろいろな学問的な理由と現実的な理由があります。また、国家目的という第三の目的もあるわけです。
国家目的というのはどういうことかというと、自己資本比率が非常に少ない、そういう国が、資本の自由化に対応して、外国資本の支配から脱するために、国民の自己資本比率を拡大しなければならない。そのためには、いろいろな税制措置、特別措置がとられておる。誘導政策としてとられておる。これは当然でございます。同時にまた、別な観点からは、それが悪の温床になる、公平の原則を欠くというような場合には、特に制限をしておるということも法律の中には間々あるわけでございます。そういう第三の理由からも、この問題に対しては十分検討を必要とする。
戦前六一%であった自己資本比率が一六%を割っておる、こういう事実を考え、しかも去年の五月一日から、資本の自由化は完全に世界に宣言をされたわけであります。その中で民族資本を守るか守らぬかという大きな問題が大前提にあることは、これは何人といえども否定できないことが一つございます。
もう一つは、第二の問題でございますが、これがキャピタルゲインに対してほんとうに課税できるのかどうかという問題、厳に捕捉できるかどうかという問題、これは徴税機構を拡大し厳密にやればできるのだということでございますが、これは先ほど端的に主税局長から話がございましたが、かつてこの制度が課税をするという原則に立ったときどうだったかというと、もうかったときは何にも申告をしないで、損をしたときばかり申告をする、こういうことでなかなかむずかしいということを端的に表明しましたが、事実この問題に対してそういうことがございます。
いま、国民から異議の申し立てがあるとたいへんでありますが、幸い異議の申し立てがないということでやっているものはあるのです。これは競馬の配当金など、あの男五百万円もうけたということになりますと、これはぽんと税金かけているのです。しかし、損したときは控除を認めていないのです。これは、損したときはこれだけ損しておったので、差し引きずるとこれだけしかもうかっておらぬのですと言って幸い異議の申し立てをしないから税は徴収しておる、こういうことでございますが、株式のキャピタルゲインに対して全部、土地の売買のようにできるかどうかというのは、これはなかなかむずかしい問題なんです。ですから、現にそういうことをしておらぬ。しかし、無制限になると不公平の問題が起こるということで、五十回、二十万株ということで制限をしておる。これはだんだん狭められてきたことは御承知のとおりです。ですから、これを全部認めないということになると、これはもう市場を拡大するとか自己資本比率の増大とか、いろいろな面で非常に困難な問題もあります。ただ、狭められる方向にあるということは言い得ると思うのです。ですから、そこらは専門家の判定に待たなければいかぬのだろうということであります。
それからもう一つ、今度の税制改正で個人事業者に対しての所得控除を認めているわけでございますが、あとからきっと質問が出ると思いますが、妻とか、同じ屋根の下で働いておる人に対しての所得の減免という問題で、これと同じ問題が起こってくるのです。個人がやった行為というものが反復継続して行なわれている場合には、営業だという認定でもって税をかけるわけです。そうしますと、五年間だったら五年間の差し引き増減計算をしてからでないと課税の対象にはならぬ、これは当然のことであります。ですから、税はなかなか感情だけではいかないわけです。
なぜこんな問題が起こってきたかといいますと、これは個人がずっと個人企業でやってくる、ある時点において株式に組織変更する、そのころは同族会社として海のものか山のものかわからぬものに対しては、親類とかきょうだい、縁者からしか出資が得られません。そういう状態でだんだんやってきますと、二十年とか三十年とかというものは無配でずっと出資をしてきているわけです。それがさて上場をして、一般の不特定多数の人から集めるというときには、これは上場するときには税金の対象にするというわけにはまいりません。ですから、五十円株が十倍になってもそのまま上場は可能なわけでありまして、法律において調整をしているわけです。ただやはりそのほかに、何の犠牲もなかった人が、第三者が突然きて株の売買を行なうということに対しては、これはキャピタルゲインに対して課税をすべきじゃないかという議論があるわけです。
ですから、この問題は専門的な問題でして、これはわれわれよりも税学者がおるわけですから、やはり国際的な状態も見ながら現段階においてどうするかということでなければ、私がにわかに結論を出せる問題じゃない。これはもうほんとうにそうなんです。これはにわかにはできません。だから、いまの東郷何がしの問題とは区分をして、あとの株式のキャピタルゲインに対する課税というのは、前からどこの国にも存在する税の論争点でございますから、そこらは区別をしてやっていただきたい。私は、これとこの問題を二つ混淆して、この二重のものを一つにして、このような状態を見るときに、国民感情からいって直ちに課税の対象とすべしという議論にはにわかに賛成しがたいと、こう答えざるを得ない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/20
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021・山田耻目
○山田(耻)委員 中曽根さんのその政治姿勢。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/21
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022・田中角榮
○田中内閣総理大臣 ここで中曽根君の問題を引き出してくることは妙だと私は思うのです。(山田(耻)委員「冒頭陳述にも出ている」と呼ぶ)冒頭陳述に出ておっても、それは真実は立件せられておるのですから解明せられるのであります。それは日本の司法権の峻厳さをすなおに評価すれば、一時とにかくうわさになったからといって、そういういろいろなことを言ったり憶測したりすることは憲法の原則にも抵触をするということは、これはもう私が申さなくてもおわかりのとおりでございますから、私が答えられる範疇のものでないことは申すまでもありません。これはもう戦後でありましたら新憲法の精神、一番の目的は個人の人権の尊重であると、こういわれたじゃありませんか。それが三十年目になったからといって、何でもしゃべっていいんだというようでは、憲法を守れなんということばとはほど遠いような気がいたします。
そういうようなことで、せっかくの御質問ですが、これはいま私がお答えできるようなものでない、現に立件をせられておるという事実に徴して判断をすべきであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/22
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023・山田耻目
○山田(耻)委員 時間がございませんから終わりますが、いまの総理のお話では、おそらく私を含めて国民もきわめて不満です。これらはまたあらためて本委員会で議論を深めていきます。
それから、公判の結審がございましたら、刑事課長もそれから中川政務次官にもお願いしておきますけれども、先ほど答弁のございました案件については、結審と同時に資料の提出を求めておきたいと思いますので、よろしく御配慮いただきたいと思います。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/23
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024・安倍晋太郎
○安倍委員長 佐藤観樹君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/24
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025・佐藤観樹
○佐藤(観)委員 私は、総理に減税の問題と今後の物価上昇の関連についてお伺いをしたいと思うのであります。
四十八年度は三千百五十億円の減税をした。しかし、現実にはこのときには消費者物価指数の上がりを五・五%ということで踏んだわけでありますけれども、五・五%にしますと物価調整に千三百七十億円かかってしまうわけであります。ところが、ことしの一月十九日の閣議決定でも、四十八年度の物価上昇というのは一四%だ、こういうことに政府は見通しを立てられたわけでありますので、この率でいきますと、物価調整に必要な額というのは三千四百八十七億円。ということは、四十八年の初めに三千百五十億減税をしたとしましても、物価調整に食われてしまっている。だから、事実上減税になっていないのだ、こういうふうに見ざるを得ないと思うわけであります。
それで、私たちは今国会の冒頭に三万円の戻し税を提案してきたわけでありますけれども、いまだに日の目を見ていない、こういうふうになっているわけでありますが、問題は四十九年度の減税であります。四十九年度の減税は平年度で一兆七千億、こういうことになっているわけでありますけれども、これは九・六%の物価上昇で考えているわけですね。そうしますと、一兆七千億のうちの物価調整が二千二百六十億円、これだけ物価調整に必要だというわけであります。ところが、九・六%という物価調整が、一番最近の日本経済研究センターなんかの指数によりますと、ことしの物価上昇は二二・三%までくるのじゃないか。こういうことになりますと、この物価調整だけで五千二百五十億円が減税から食われてしまうことになるわけであります。
しかも、政府の見通しでは、今度の四十九年度の所得の伸びというのは一八%だ。ところが、これはおそらく今度の大型春闘で二五%ぐらいの伸びはあるんじゃないか、私はこう見るわけですね。そうしますと、昨年の実績で、昨年は一七%の伸びで税収は約七千億自然増収になっているわけであります。今度は二五%所得が伸びるとしますと、おそらく一兆円近い自然増収が出てくるのじゃないかという計算をせざるを得ないわけですね。
このあたりで、四十九年度当初としては一兆七千億の減税を組まれたわけでありますけれども、いま申しましたように、物価が政府が予想された九・六%より上回ってくる、あるいは所得の伸びが一八%より上回ってくる、こういうところからいきますと、これはいまの所得税のあり方からいって、弾性値が働いてきて累進課税になりますから、結局、国民の側から見ますと、一兆七千億税金をまけてもらったというけれども、そのうちの五千億余は物価調整に食われてしまって、それから一兆円近いものは所得の伸びで税金を取られてしまう。そうすると、何だ、大型減税大型減税と田中首相は言ったけれども、事実上国民の側から見ますとあまり大型じゃないじゃないか、ほとんどゼロに近いんじゃないかという感じに、計算をしてみるとなってくるんじゃないか。
そこで、私は、いますぐ、まだ租税三法が通っていない段階で減税をやれということを申すわけではありませんが、この四十九年度内に、いま私が申しましたように、政府が予想している以上の所得の伸び、それから物価の指数が政府が予定をしていた九・六%をさらに大幅に上回るときには、もう一度やはり年度内減税ということを考える時期が来るのではないか、こう考えるわけでございますけれども、この問題について田中首相の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/25
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026・田中角榮
○田中内閣総理大臣 いまあなたは、四十九年度の年度内にもう一ぺんということでございます。この間までは四十八年度の年度内にやらないか、こういうことでありましたが、もう十日ばかりですから、まだまだ前に出た法律案もたくさんございますので、なかなかそうできないと思います。四十九年度は四十九年度でまた事態の推移ということを見ながらということで、慎重にお互いが考えていかなければならぬ問題だと思います。
あなたが御指摘になりましたように、減税は今度は大幅にやったつもりですが、しかし、実質的な減税というものが、いまのままの物価情勢でいったならば調整減税程度のものじゃないかというような御指摘、それはすなおに受け取っていってもけっこうです。けっこうですが、これから政策を行なうことによって、四月一日から来年三月三十一日まではこれはちゃんと押えよう、こういうことでいま言ったわけです。それで、一月から三月までげたがありますから、これはなかなかたいへんな数字が出ていますよ。出ていますが、すでに新聞に発表されておりますように、三月の一、二旬、中旬、下旬の見通しは、ほとんど卸売り物価は据え置きであります。
そういう事態で、一面、新聞などを見てもおわかりになるとおり、このままの政策を続ければ、これは第三・四半期には異常な不況感というものが来るのではないか、中小企業が将棋倒しになるのではないかという議論が散見をせられております。物価は、もう卸売り物価は上げどまった。上げどまっただけではなく、今度はもう下がりつつある。急速に下がるだろうという議論もあるわけです。しかし、何でも急速に上がるのはよくないが、急速に上がっていいのは賃金だけでございまして、その他のものはあまり急速に上がるべきではないでしょう。急速に下げるといっても、なかなかこれは社会的ないろいろなトラブルが起きますから、やはり国民の納得と理解を得ながら、摩擦のないように下げていく。そこらのスピードが政治的に非常にむずかしいところでございます。私は毎日こづかれておりますから一ぺんに下げてやろうとも思うのですが、しかし、社会の摩擦や何も考えないで一ぺんに下げたということになってはたいへんですから、そこらは政治の責任として、上がったときの責任もあるのですから、ひとつ国民生活に影響を与えないように、支持と理解を求めながら、正常な、ノーマルな状態にしたい、こう考えているわけです。
あなたが単年度でもって述べられますと、確かに去年度の減税と去年度の物価上昇とをもってしますと、調整減税にもならなかった。今年度の問題は、まだ四月から、これから始まるのですから、これはもう政策を見ていただく、御声援のほどをお願いします、こういうことで済むわけですが、四十八年度を言われますと、実際物価が上がったのと減税幅とを見ますと、上がった率のほうが多いということで、これは調整減税にもならぬということ、それはもう理解しております。理解しましたから、この物価抑制というときに二兆円減税をやったわけです。物価を抑制する抑制するとこっちで言っておいて、二兆円の減税、これは百年来――百年来というとあれですが、二十年来われわれが叫んできたことを一ぺんにやるとは何だ、こう言われつつもやったわけですから、これは政治に誠意を持っており、責任を持っておるということなんです。だから、半年とか一年の単年度で減税だけを言えるわけはないのです。年度の末になってどうしてもどうにもならないから調整減税式のものを行ないなさいということは、過去も間々ありましたし、年度の最終の段階で減税したこともありますが、四十八年度はそういう事態ではない。これは物価問題もございましたし、その間に、四十九年度は大幅に減税もしますが、物価も押えます、これは二律背反の問題に正面から取り組んでおるということでありますから……。
減税というのは、一ぺん減税しても来年度物価が下がったからまた減税率をもとに戻すというなら、これはいいのです。そうではないのですよ。減税というのは、これは一ぺんやっちゃうと、この率を上げるなんということはできませんよ。これはできません。ですから、今度見ていただくのは、減税は思い切ってよくやったわい――識者の間には、物価を上げるだけの手段だ、一年間待ちなさいという議論があったにもかかわらず、思い切って二兆円減税に踏み切った、これはとにかくたいしたものだ。まあ、たいしたものといわぬでもいいですよ。(佐藤(観)委員「だいぶ自画自賛だ」と呼ぶ)いや、あなたのおとうさんともさんざんやったですよ、ここで。私は大蔵大臣でさんざんやったです。やはり同じような論争をやったのですが、しかし、あのころからの論争からいうと、ずっと十年間で減税はできたし、日本の所得も上がったし、一番最後がちょっと悪くなったということですから、だからこれで四十九年が押えられれば、二兆円減税は依然として平年度化される、そして今度この物価を押える、こういうことになれば、これがちゃんと生きてくるわけですから、そこらはひとつ――まあ、私も半年くらいはあなたに相当いじめられると思いますけれども、これはやむを得ない現実なんだ。いま政策に取り組んでいるのですから、これはやむを得ません。やむを得ませんが、単年度だけのことをお考えにならないで、やはり物価を抑制して、この減税が真に国民生活のためになるように御声援のほどお願いしたい。
ですから、私は過去の数字は述べないわけです。過去二十年の数字を述べるならば御理解いただけるわけですが、それは述べません。あえて述べません。ですから、やはり父子二代にわたる大問題で議論してきたわけですから、そこらはひとつ十分お考えくださいよ。これは、そうしていただけば、必ずやります。私はここに数字を持っていますけれども、そこまで申し上げません。ですから、これは二カ月前には、何だ、こんな減税を強行するのかといって一時御注意も受けたわけですから、しかし減税は減税、それで国民の負託にこたえながら物価を抑制する、こういう二兎を追っている苦衷をひとつ御了察賜わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/26
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027・佐藤観樹
○佐藤(観)委員 それは、総理がそのくらいの決意でやってもらわなければ困るわけで、ただ問題は、これから石油価格の値上げがきて電力に影響して、あるいは公共料金の値上げが解除になっていくということになると、まだまだやはり物価が上がっていく要因というものは残念ながら現実にあるということですね。それを踏まえてやはり、総理としてはそれをあまり言いたくないような気持ちはわかります、わかりますが、現実にはそうなってくるんで、私はいずれ大蔵委員会でも――福田大蔵大臣が四十九年のいつの日にか一度また検討しなければいかぬ時期がくるのではないかということを言われておりますので、総理のお話も大体決意のほうが先に出て、それはあまり述べられたくないという気持ちはわかりますので、この問題はこれだけにしておきます。
次に、今度の減税というのが、総理御存じのように、一番恩典を受けるのは、大体、年間所得が二千万から三千万くらいの人。この人々が一番恩典を受けるということで、大蔵委員会でも長いこと重役減税、金持ち減税ということでいろいろとやったわけでありますけれども、これから私は税制も、日本経済がいわゆる産業優先、成長第一主義から脱却をして国民福祉を優先させるという日本経済になっていく以上、単なる支出だけではなくて、税の使い方だけの問題でなくて、税を取るほうでも、やはり国民生活の一人一人を考える税制に変えていかなければいかぬだろう、私はこう考えるわけですね。具体的に私たちはいろいろなことで、寒冷地に住んでいる方々の控除を考えたらどうかとか、あるいは夜間の割り増し賃金について非課税にしたらどうかとか、あるいは年金収入に対しては原則的に非課税にしたらどうかとか、いろいろ提案してきたわけですが、なかなかこれは実行に移されていないということで、私は二点だけお伺いをしておきたいのです。
それは未成年者の方々に対する課税の問題なんですけれども、総理、大蔵大臣をやられているのですからよくおわかりだと思うのですが、いまこれは何にも区別をされていないわけであります。ですから、中学卒の方でも現実には課税をされている。四十七年度の中学卒の初任給が、これは初年度の平均ですが、四十五万八千円、四十八年度が五十三万三千百六十四円、これに対しまして課税最低限が、独身者でありますから、四十七年度が四十万五千円、四十八年度が四十三万九千円と、課税最低限のほうが下なんですね。ですから、中学卒でもいま課税されている、こういうことになっているわけです。
いま十五歳から十九歳の雇用者数が四十七年度で二百四万人、四十八年度で百九十三万人、このうちの多くの方々は課税対象になっているわけです。中学でやめられる方あるいは高校でやめられる方というのは、大体が家庭の事情で上の学校へ行きたいけれども行けない、家に仕送りをしたり、そういった方々からいま現実に税金を取っている。総理も苦労されたお方ですのでその気持ちはわかると思うのでありますけれども、これはどう見てもこれから福祉社会をつくっていこうというときには、税制の面でも、いまの政治から考えても、私はあまりにも酷じゃないかと思う。いささか釈迦に説法でありますけれども、学生を持っている方々については、これは扶養控除で控除されている。それからアルバイトをして学校へ行っている方については、これは勤労学生控除という控除があるわけですね。ところが、学校にも行けずに働いている青少年の方に税金が課せられているというのは、これはやはりいまの税法、いまの政治のあり方からいって、あまりにも酷じゃないかと私は思う。
そこでひとつ、未成年者控除、こういったものを設けたらどうだろうかということを言っているのです。これは課税最低限の引き上げで解決したいと言っているのですが、本年度課税最低限、独身者は七十万まで上がりましたけれども、ベースアップすれば、中卒でも高卒でもみんなまた上がっていっちゃうのですね。だから、また置いてきぼりを食っちゃうということになるのですね。このあたりでやはりこういった学校に行きたくても行けない、そして働いていらっしゃる未成年者の方々、これらの方には選挙権もないのですから、税金だけは取られていくけれども、税金の使い道については何一つ文句を言えない。これはやはりいまの政治からいっておかしいのではないか、私はこう考えるわけでありますが、この未成年者の控除といったものについてはさらに前向きに検討するお気持ちはないか、このことについてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/27
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028・田中角榮
○田中内閣総理大臣 税の問題はいろいろ議論をされておりまして、私たちも真剣に減税を考えてきたわけでございます。税は国際比較で見ましても、日本は国民所得に対する租税負担率は非常に低いということは、これは間々申し上げているとおりです。スウェーデンが四四・六、イタリアが二三・五、フランスが二七・四、西ドイツが二九・六、イギリスが三九・八、アメリカが二九・一に対して、日本が一九・三であるということですから、これは申すまでもないことであります。社会保険料を加えると、スウェーデンが五七・六というのに対して、日本が二四・一という数字でありますから、これは税負担は相対的に少ないということはまずこの数字が示すとおりであります。
同時に、今度は金持ち減税だといいますが、これは所得税の初年度の一兆四千五百億円のうち、人的控除、基礎控除や配偶者控除などで四千六十億、給与所得控除が八千四百二十億、いわゆる所得の高い人といわれておる人たちの税率は二千二十億、ちょうど法人税の増徴分にひとしい数字でございます。ですから、そこらはバランスがとれておる、こう見てもいいと思います。
それから、もう一つは、課税最低限百七十万円平均にしろというのですが、今度の初年度は百十四万九千円から百五十万円になったわけです。この百五十万円という数字を見ても、イギリスの七十九万一千円、西ドイツの八十七万六千円、フランスの百二十六万二千円、アメリカの百二十九万円に比べても百五十万七千円でございますから、初年度でもすでに高い。ですから、給与所得者に対しては、アメリカにおいてさえも――アメリカは日本の倍ぐらいの給与を取っているわけですが、これらに対しても、すべて課税最低限というものは非常に低いところから課税が行なわれておるということは数字が示すとおりでございます。ですから、政府は相当意欲的である。百七十万円といえば、世界のどの国が課税最低限を上げておっても、百七十万円までには相当な時間がかかるという見通しで、あえて二兆円減税に踏み切ったというこの姿勢だけはわかっていただきたい。そういう意味で上げたんだということだけは、これはひとつ認めていただきたいと思うのです。
あなたがいま言われた学生とか勤労青少年とか未成年者、それから子を持つ婦人とか、働いておる婦人とか、みんな同種のものです。そういうものに対して長いこと議論が国会において行なわれて、私もちょうど十一、二年前から三年間、毎度大蔵委員会で攻め立てられたわけです。攻め立てられなくてもわかるんです。私も勤労学生やったんですからわかるんです。わかるんですが、学校へ行った者に控除をしろというと、あなたがいま述べられた学校へ行かないで国民総生産に汗をもってとにかく寄与しておる人たちとの権衡を失するということです。未成年者といっても、これはなかなかむずかしいのは、ほんとうに未成年であれば扶養家族として控除の対象になるわけです。ところが、働いておる人、能力のある人、未成年なるがゆえに課税対象外になるかというと、なかなかそうはいかないんです。未成年でも例の光商事という問題がございましてね、未成年ですけれども、すばらしくもうけて大問題が起こったことがあるのです。大事件が起こった。所得があるものは性別、年齢等に関係なく課税の対象にすべし、これはもう税の基本理念でございます、それはそうでしょう。(「選挙権がない」と呼ぶ者あり)選挙権がなくたって、おやじさんからばく大もない遺産をもらえば、遺産相続税を払うのはあたりまえなんです。そこいらは感情論と税論というものの厳密な区分をしていただかないと、これは簡単にいかないんです。
ですから、税理論というものを十分承知しながら、税理論をくずさないで、しかし、国民感情にマッチするようにするのがやはり税のうまさだと私は思うんです。ですから、私は法学博士でもございませんから、何もただ法律論で押し切ろうなんという気はないのです。私は特に人情の機微をよくわきまえているつもりなので、法律万能でいこうものなら国民生活あじけなくてどうにもなりませんよ。そこらが主税局が非常に苦労しておるところである。そこでこういう改正案が出たんだということであります。私も大蔵大臣時代から主税局と毎日毎日論争したのです。主税局でも、わからないような税はまずやめなさい。私十年前に、税法をわかりやすくしなさい、納める人が何で取られているかわからないという税法ではいかぬからというので、あのむずかしいかな書きの税法を全部直せというのでやったわけです。
第二は、いろいろな数字でもってわからない。この間大平国務大臣に、君は昔税の大家だ、自分の年度の所得を自分で計算して届けているのかと言ったら、わしもわからぬ。そういう税制を直そうというので、月二万円、二十四万円、こうしたわけでございますから、そうしますと、現実的に税法の理論の中で、実際の未成年者、学生勤労者はちゃんと減税になる、税を納めないで済むということにしたわけでございますから、両々相まって目的を達成するというので、課税最低限七十七万八千円、初年度七十万五千円でございます。四十九年度の新規学卒者は一五%ないし二〇%上がったとしても、よほど収入の多い特別のものを除いて課税されないということになっておるわけです。中学新規学卒者の平均給与は五十三万三千円です。四十九年に一五%アップの場合は六十一万三千円、二〇%アップの場合は六十四万円。ですから、これはちゃんとかからないようになっているのです。
来年はどうか。来年また三〇%上がる、こういうようなことになれば、それはそのときでまた税制調査会の議も経て、いろいろまた改正案も考えられる、こういうことでございまして、いまは未成年者なるがゆえに、婦女子であるがゆえにということではなく、現実問題として課税限度以下に押える、非課税限度額の中に全部吸収できるようにしよう、こういうことを考えて実行したわけでございますので、言うなれば、あなたのいま述べられておることは、この税制改正案で全部消化しておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/28
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029・佐藤観樹
○佐藤(観)委員 いや、そうならぬのです。そういうようになれば私もこんなことは言わないわけですけれども、これは大蔵委員会の中でも、主税局もやはり減ることは減るだろうけれども、未成年者にまだまだ課税は――今度四十九年度、初年度七十万になったとしても、やはりまだ残るのではないかということは、これは書類がないのでわからぬのです。つまり二十歳以下、十九歳以下という統計は全然とっていないですから、統計上は独身というあれしかないですから、わからぬわけです。ただし、初任給なりあるいは働いている方々の実態から見ると、かなり勤労未成年者にも課税がされているじゃないかという現実に立っているわけですね。
もう一つは、時間がなくなってしまったんですけれども、保育料の問題なんです。これは大臣も御存じだと思うのですけれども、最近保育料が高くなってきて、保育料の控除を設けたらどうかということを私たちは考えているわけです。と申しますのは、これは共かせぎと母子家庭、とにかくお子さんを預けなければ働きにいけない人々、こういう人々の保育料が、もちろん収入にもよるのですけれども、月五千四百円とか六千九百円とか九千七百五十円とか、たいへん高くなってきているわけですね。いま五歳以下のお子さんを持っていて、そのお子さんを預けなければ働きにいけない人が、労働省の調査でも、大体百三十一万人ぐらいいるというわけですね。そういうことになってきますと、この方々たちにも何らかの――とにかくお子さんを預けなければ働きにいけないわけです。ですから、やはりこういう方々には、全部とは言いませんが、共かせぎ及び母子家庭については、保育料控除のようなものを創設すべきではないか。こういうものを一つ一つつくっていくのが、いわゆる福祉優先型の税制ということになると私は思うのですが、その点についてはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/29
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030・田中角榮
○田中内閣総理大臣 夫婦別算制をとっておりますから、共かせぎをしておられる方々は両方とも基礎控除を認めておるわけです、五十万プラス二十四万。それで、扶養は夫婦両方でもってやっておりますから、これはどっちかでもって扶養控除を認める、こういうふうになっておるわけですが、これはやはり十六万円を二十四万円にしたものを、三十六万にするとかいうことで解決をすれば、子供さんを持っている人は恩典を受ける率が多くなるわけですが、これがなかなか、いままでは一万円ずつ上げておったのですよ。私はそれに非常に不満があったのです。これは主税局と私と半年間がちゃがちゃやったのです。月二万円とか二万五千円とか三万円とか五万円とかにしなさいよ、そういうことじゃないと、国民は理解しないということで、一万円ずつ上げればいいことだという計算がいままで出たのですが、これもぼんと十六万円から、ほんとうにぼんとですな、二十四万円にしたのですから。ですから、この次は月三万円にしたいと私は思っているのですよ。三万円にできない場合は、二万四千円なんて言わないで二万五千円、三万円というぐらいに、ラウンドナンバーでもってぽんぽんといければだれでも計算できる、頭の中でやっても計算できるということで、やはり国民、納税者の理解を得ながら、あなたが言うように、真に子を持つ親というものが働けるように、税制上の恩典がないから働きたくても働けないということは、やはり国民全体の利益を守るためにいいことではないのです。
そういう意味で、あなたが言われたさっきの、就学している者それから未成年者、それから共かせぎの子の扶養料とかいわゆる保育料とかいうものがいままでいろいろ議論されてきたのですが、税制はものわかりがいいような税制、だれが見てもわかるような税制、簡単なほうがいいと思う。そのためには、税制の中にいろいろな政策を織り込まないで、税は簡単にいただく。そのかわりに、別の政策でやることが正しい。場合によれば、一般会計でもって補助するほうが望ましいということに踏み切っているわけです。
これは野党の皆さん、特に社会党の皆さんなどが農民運動をしましたときに、表日本の人たちが新潟県とか秋田県とかというところへ入りまして政策としてとらえたものは何かというと、表日本で二十五年もつ駅舎が裏日本へ来ると十二年半しかもたない。同じところにおりながら、これだけの犠牲を払っておるのを同率の税率でもって税をかけるのは不当であると、長い闘争を続けられたのです。その結果どうなったかというと、これは寒冷地手当というのを戦後やりましたよ。ところが、この級地をきめるのに問題が起こって、隣のほうが高い級地でありながら雪が降らぬじゃないか、雪は降らなくても風は強いんだ、こういうんで、新潟県は雪が多い、群馬県は風が強いんだというので、国会の大論争になって収拾がつかなくなったのですよ。ですから、その意味では、税は一律にいただく、そのかわりに別の政策を加味するということになっているわけです。
ですから、あなたの言うことはよくわかりますよ。私たちも政府でありますから、全部反対です、ではないのです。これは税率を加味しますと、議論としては一人一人、一億一千万通りの税率をきめるべきであるということになるわけです。税制調査会では、よくそういう議論をするわけです。ですから、それをただ技術屋の議論として看過するわけにはまいらない。そういう意味では、やはり画一、一律的なもので税法はきめるが、必要なものを取捨選択して、ウエートの高いものから別な政策を付加する、こういうことになっておって、そういう政策もとられておるわけですから、税制の中で解決しなくとも他に政策はとられておるということで御理解を賜わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/30
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031・佐藤観樹
○佐藤(観)委員 私も大臣が言われることはわからぬわけじゃないのです。あまりこまかな控除控除をつくっていきますと、確かにいろいろまた、逆の問題も出てくるということも、私も税を五年やっていますので、わからぬわけじゃないのですが、しかし、総理、租税特別措置なんというのは百四十ぐらいあるんだから、これに比べれば、まだまだ、普通の人が使う所得税法の控除というのは、いろいろその事情に合わしてつくっても、私はそれほど――複雑にすることは私もあまり好ましいとは思いませんが、そういう特殊なものはまだつくってもいいんじゃないかというふうに私は思うわけです。
もう一つ、いま言ったように、未成年者の方々は税金を納めているし、それからお子さんを預けなければ働きにいけない御婦人方も、まあなかなか税法上いま言ったように恵まれないということなんでありますが、こういった方々に比べて恵まれているのは配当所得の方ですね、これは何と言っても恵まれていると私は思うのです。総理、御存じだと思いますけれども、とにかく配当所得だけで食べている人は、一体幾らまで一銭も税金を払わなくていいか。これは三百五十七万円まで。今度の改正で、基礎控除が上がっていきまして、扶養控除が上がっていきますから、三百五十七万円までは、所得があっても一銭も税金がかからないわけですね。それで、これだけの額が勤労者がありますと、大体十八万八千円の税金を払わなければいかぬ。ところが、額に汗を出して働く勤労者の方々は税金を納めるけれども、配当所得の方は、三百五十七万円まで一銭も払わなくていい。それは私も理由を知っているのですよ。先ほど総理も言われましたように、資本を充実しなければいかぬとか証券市場を育てなければいかぬとか、いろいろ理由はわかるのです。理由はわかるが、一年半前に、総理が総理になられたとき、というのはおかしな言い方ですが、庶民宰相だといわれたわけでありますが、これはどう見ても、庶民感情からいって合わない。不労所得、配当所得は三百五十七万円まで一銭も税金はかからぬけれども、勤労者の額に汗して働くその所得に対しては十八万八千円という税金がかかる、これはどう見ても、庶民感覚と合わぬことだと私は思うのです。
具体的にいろいろ計算して考えてみましたら、いわゆる配当所得の特例ですね、配当所得の一千万円までは、そのうちの一〇%は控除しましょうというこの特例、これが、税額控除ですから非常にきいているわけですね。いまこれは一〇%になっていますが、せめてこれを半分の五%くらいにして、配当所得と勤労所得のバランスをとっていかないと、幾ら公平な税、公平な税と言っても、これは世間に通用しないと私は思うのです。このあたり、庶民感覚からいって、ひとつ総理のお考えをお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/31
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032・田中角榮
○田中内閣総理大臣 あなたの申されることは私も理解をしております。理解をしておりますが、そこらがなかなかむずかしいところなんですよ。それはいままであまり議論しませんでしたけれども、あなたが述べられることそのままなら、主税局も税調もあなたの申されるとおりにするはずなんです。しないのは何か。これは政策的にありますよ。確かに、六一%の戦前の自己資本比率が、一五%を割っておるというような事態ですから。これはアメリカの五三%とかその他のものに比べれば、もう日本は一体どうなるかわからぬというような状態であるということが一つの理由でもございます。また、キャピタルゲインは非常に捕捉しがたいとか、いろいろな技術上の問題はありますが、国民の感情の面からいうと、あなたの言うとおりなんです。ところが、一歩掘り下げてみますと、捕捉しがたいとか技術上の問題だけじゃないのです。国民所得に対する原則的な問題がもっと大前提にあるのです。
給与所得は第一次所得です。他に投資をするようなものは二次所得なんです。一ぺん税金を納めたものなんです。納めたものが何かに運用したときに、二次所得としてこれを受けるわけです。それですから、妻のために、子供のために、人間老少不定、いつ死ぬかわからぬ。せめておまえのために、わが子、わが孫のためにと、食うものも食わないで貯蓄をしておる。貯蓄も手段である、株式投資も手段である、土地を買うことも手段である。土地土地と言いますけれども、土地は合わないのですよ、はっきり言いまして。社会主義国は、土地というものを全部国有にしていますが、私たちは土地問題があるから自由主義経済理論をとっているのです。
なぜかといいますと、土地を国が公有にしたら、第一、財源が確保できないのです。税の大宗は地租であったということを考えてみれば申すまでもないことなんです。だって人間が二十歳で土地を坪五万円で買っていま八十歳になる、ちょうど六十年間です。年間一〇%ずつの利益でもって複利計算をすると幾らになるかというと、坪千二百万円になるんです、七年で倍になるのですから。そうすると、二十歳で買った五万円の土地が千二百万円になる。千二百万円じゃ売れませんよ、実際において。売ればまた税金がかかるわけです。その間、土地はちゃんと不動産として課税の対象になっておるのですから、これを公有にし、国有にしては、これは何かの財源を他に求めない限り、土地という大きな財源が財源の対象からはずれるというので、社会主義国は五五%も税を直接税、間接税で徴収しなければならないという事態になっておることを看過するわけにはまいらない。
ですから、一次所得とすでに税を払った後のもの、それで死ねば必ずこれは今度遺産相続税としてまた第三の徴収があるわけですから、中間において徴収するかしないかというのは、税の一番根本論に抵触するのです。これはへたしますと、みんな浪費をしてしまって、全然貯蓄が行なわれない。そういう問題もありますので、そう簡単に――私ももう十二、三年前の大蔵大臣のときからやられてきたんですよ。そして父子二代にわたって言われているのですから、ここでやりますと言いたいのですけれども、それはとても簡単に言えない。私の一存で言えるような問題じゃないということを、ここは少し考えてくださいよ、あなたも大蔵委員をずっとおやりなんでしょうから。
ほんとうに国民感情はわかるのですよ。わかるのですが、課税後のものであるということ、資産の運用である、資産運用はイコール不労所得だ、そういう意味で国民感情が出ることはよくわかります。わかりますが、簡単に、国民の貯蓄精神とかいろいろなものにマイナス要因として働くようなものを、みだりに画一、一律な議論で踏み切ることもしがたい。ここらが非常に苦労のあるところでございますので、これはひとつ以上で御理解を賜わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/32
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033・佐藤観樹
○佐藤(観)委員 最後に、総理に一問だけお伺いしておきたいのですが、それはいわゆる超過利得税の問題なんです。今国会が始まって、とにかく企業の不当利得について、過剰利得について徴収をしなければいかぬということはずっとやってきたわけです。ただ御存じのように、超過利得、不当利得といっても、これはなかなか判定はむずかしいから、われわれは一律に累進の付加税にしたらどうかということなんですが、最近自民党の案も見せていただきました。内容的には私たちの案にかなり近くなっていると思うのです。異常利得ということで一律何%の付加税をかけようということになっているわけだが、とにかくきょうは、総理御存じのように、二十二日です。これは二十六日までに国会を通らぬことには、参議院もありますから、事実上、三月期には取れぬことになるわけですね。
総理、これは党のほうにおまかせになったということになるかとも思いますけれども、総理といってもこれは総裁でございますから、やはり党の責任者としてこの問題を――この異常利得について法制の面で何もできなかったということになったら、私は国民の不満というのはきわめて残ると思うのですね。われわれはいつも門戸を開いて協議を重ねているわけですけれども、自民党の中もまとまらないということで、なかなか出てこないわけです。これについて総理は、一回もあまり督励されたという話を私は聞かぬのですけれども、このあたりはどういうふうに責任をお感じになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/33
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034・田中角榮
○田中内閣総理大臣 異常な利得に対しては税で取り上げることもできます。これは私が一番初め述べたのですから、もうこれは非常に異常な熱意を持っておる。これは記録に残っておるとおりでございます。三月ももうすでに残すこと一旬ということでございますから、三月決算に間に合わせるということになれば、もう急を要さなければいかぬということでございます。
ただし、この問題は、すなおに申し上げて、やはり三六・七五というのは一・七五という暫定税率が入っているわけです。ですから、三五%です。三五%のものを野党の皆さんが去年、せめて法人税は四〇%に上げろ、こう言ったのでぽんと上げたんです。野党さんの言うことがいいから聞いているのですよ。去年、せめて課税最低限を百五十万円にしろと言ったから、初年度百七十万円にしたらどうも当てこすりみたいで悪いから初年度は百五十万円、それで平年度は百七十万円と、皆さんのいいところを全部とっておるわけですよ。それと同じように、いまの問題、四〇%にしたら今度は四二%と、こう言われれば、まあそれも国民の声だ、こう思っているわけです。
この異常利得については、三五%から四〇%にして、その上になお土地の問題も、たしか四十四年の四月一日以降のものに対しては二〇%付加をしているわけです。その上になおの税ですから、これは全く臨時の税である。これは臨時の税の場合には画一、一律的というのが、まあ不動産、土地に関して二〇%一律といった例がございますから、それはそのほうがあとくされないし、一番いいことだと思います。しかし、この三五から一・七五の暫定税率を基本税率に繰り込んで、第二にはそれをまた四〇%に上げて、その上に第三としましては土地に対する二〇%重課をやって、その上に臨時税率を適用しようというのですから、これは自民党や一内閣だけの問題じゃないのです。これはやはり全党が完全に一致をして、国民の負託にこたえるということが必要なんですよ。
だから、私も、あなた方があまりいい顔をされませんから、二十余年間も検討して、政府は出すべし、出しますと言った公約違反をしながらも、小選挙区法案をまだ提案もしないのですよ。それはそうですよ、あなた。そんなことを考えないで、これはこれ、あれはあれで使い分けしちゃいけません。そんなことをすれば、国民は理解するはずがない。ですから、これは共産党も含めまして、全部でしゃんしゃんということで、これでいこうということでないと、それは国民にこれだけの賦課はやれませんよ。これはほんとうですよ。
国会は唯一無二の立法機関である。唯一無二の国会、政府もまた議案を提出することができると憲法に書いてある。もまたなんというどころじゃなくて、これは憲法に示すとおり、国会が全部でおやりになるというそういう趣旨のものですよ。私がいま言ったように、私は立場を言っているのじゃありません。これはこんな非常立法に対して与野党の意見が一致しないことはありません。これはやろうとする意思があって一致しないことはないのです、これだけ議論をしてきて。それを自民党に出さして、そうして文句だけ一ぱい言われて、そしてこっちは反対するけれどもまあ多数で通せと、こういうことじゃ、これは国民、理解しませんよ。
ですから、その意味において私は、この問題はこれだけ初めから各党の中で、皆さんみんな答案を持っておられるのですから、それを譲り合って、あなたの案が一番中庸だといったら、ちょうどまん中におられるのですから、さっと左右両派がほんとうに調整できると思うのだ。国民のためならそれくらいのことはやってやる。私は、ほんとうにそう思うのですよ。だから、初めからこれは政府はお手伝いもしますし、勉強もしていますが、これは大蔵委員会でもってまとめればまとまりますよ。ちゃんとこの委員会はまとまるのですから。(「だって案が出てこない」と呼ぶ者あり)いや、案は皆さんがみんなもうお持ちになっているのですかちね。(「自民党の案が示されない」と呼ぶ者あり)いやいや、各党の案、自民党の案と全部突き合わせて、まだまだ十日ありますから、どうぞ御勉強、御協力のほどを切にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/34
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035・安倍晋太郎
○安倍委員長 増本一彦君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/35
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036・増本一彦
○増本委員 共産党・革新共同の増本でございます。
私に与えられている時間は三十分ですので、ぜひひとつ簡潔な御答弁をお願いしたいと思うのです。
私が総理に伺いたい問題は、今日のインフレ、物価問題をその根本原因にメスを入れて解決するために、税制の上からも何をなすべきかという問題です。今日の国民生活のかつてない危機をつくり出した原因は、一つには、やはり大企業の先取り便乗値上げや売り惜しみ、買い占めなどの、これまでの予算委員会などでも明らかになった悪徳商法ですし、もう一つは、これまでの長い間政府が続けてきた大企業中心の高度経済成長政策によるさまざまな矛盾がここへ来て爆発をしてきている、こういう点であろうと思うのです。
そこで、このインフレ、物価問題の抜本的で緊急な対策として、税制の面でも、大企業の便乗的な価格のつり上げによるぼろもうけを吐き出させることとか、あるいは内部留保を必要最小限に押えて、過剰流動性をなくす、こういう面からも通貨価値の安定に努力をする必要があるのではないかというように考えるわけです。そのために、租税特別措置をはじめとする大企業優遇税制を、ここで根本的に再検討をすることが重要であるというように思うのですよ。総需要抑制を貫くならば、本法の貸し倒れ引き当て金や租税特別措置の価格変動準備金、異常危険準備金、海外市場開拓準備金などはもっと積み増しを押える、逆にもっと圧縮をさせて、課税所得の拡大をはかって、大企業法人に相応な税負担を求めるという立場で進むべきではないかというように考えるのですが、本会議でも総理は、こういう租税特別措置は再検討もし、整理改廃もやっていくというような趣旨のお話もありましたけれども、その決意のほどと、それからそれを目ざす具体的な方向、この点についてまず明確な御答弁をいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/36
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037・田中角榮
○田中内閣総理大臣 租税特別措置というのは特別措置でございまして、恒久的なものでないということは申すまでもありません。なぜこのようなものが必要であったかというと、無資本、無資源の焼け果てた中から、原材料を持つ国と持たない日本が自由な世界で競争をしなければ国民所得の増大ははかれないという、そういう状態において国際競争力を培養し、そして日本に企業が興ることによって完全就労の機会を得よう、これは国民的課題であったわけであります。政治の一番の問題は何かといったら、働く意思ある人に職場を与える、それから勉学の意思ある人には学校を与えるということが政治の基本だと思うのです。そういう意味で、まあ一つの目的は達成されつつあるということは事実です。
ですから、国際競争力が強過ぎる、もうここらでやめたらどうかという議論もありました。ありましたが、日本の労働者の賃金とか、日本の社会保障制度とか、日本の社会環境とかいうことを考えると、まだまだ先進工業国にいくまでには相当な開きがある。だから、そういう意味で、チープレーバーだといわれておった日本が、国際水準まで賃金水準を上げ、それで生活環境を整備し、社会資本を拡充して、少なくとも何年間、何十年間、自分の子供の代ぐらいまでは世界の波動にも耐えられるという日本をつくるためには、必要なものは残します、しかし、多少無理でも、排除できるものはみな排除しますということで、いま残っているものは、特殊なものしか残っていないのです。公害施設をしなければいかぬとかそういうものしか残っていないことは、二十何年間のそういうものを考えれば、もう十分おわかりになるとおりでございます。
ですから、そういう意味で、租税特別措置というのはだんだん整理統合して現在に至っておる。これからもまだ整理できるものがあれば整理をいたします。しかし、明確に申し上げます。角をためて牛を殺して、大失業が出るようになっちゃ困るのです。政治の責任を果たすゆえんではない。そういうことで、完全就労をやり、月給もふえ、国際的波動にも耐える、石油がもう少しぐらい上がっても国民生活を安定的に押える、押えるためには相当な財源が必要、その財源も確保できる、こういうことでないと、それは簡単にはやれませんよ。
ですから、何か企業はみんな国民の敵だと思っちゃ間違いなんです。これは就労の場なんですよ。しかも、企業は個人と違いまして、あるだけみな使ってしまおうというわけにいかないのです。使うときには税の対象になっていますから。ですから、主税局や国税庁は、日本の何千社、何万社というものを全部、どれだけ積み立てがあって幾らある――それは危急存亡のときは税率を直せば、大蔵委員会で税率さえ直してくだされば、これは全部国の財源になるのです。ですから、それを使ってしまうということを考えられちゃいかぬのです。これは蓄積されているのです。これは国民の蓄積です。そういう意味で、企業といったって、税率を変えればちゃんと大蔵省へ収納するのですから、それは個人のものとは違って、確度は非常に高いものです。ですから、いまの状態においてすべてのものを廃止するわけにいかぬわけです。
まあ、国債を発行するときにはそういう議論があったのです。これは昭和四十一年度予算から国債を発行したわけですが、四十年度に減収補てん債を出して、その減収補てん債を通すときの議論を国会でやられたときに、これをやると国債を出すのじゃないか、長期投資にあたっては後代の人も何ぶんかの負担をなすべきであるという財政理論はわかるが、しかし、ここで国債を出す場合には、いわゆる税制上の優遇措置とかいろいろなものはやめたり、増税をしてもいいじゃないかというような議論があったのですが、四十年は不況のときでありまして、ついに四十一年度から公債発行に踏み切ったわけです。そこら非常にむずかしいのであって、そこらを十分ひとつ御理解の上、私は租税特別措置は、いままでもそうでございますし、いまもそうでございますし、これからもそうでございますが、これはもうできるだけ整理するものは整理をいたします。大原則はそうであるが、にわかにすべてを廃止するわけにはいかないということだけはひとつ御理解を賜わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/37
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038・増本一彦
○増本委員 私も、内部留保というのは、最初にお話ししたように必要最小限のものにして、必要以上のものの積み増しは押えていくようにすべきだという趣旨で申し上げているのですよ。
それから、総理はいま、この内部留保が一面では労働者のほうに流れていくような趣旨のことをお話しになりましたけれども、しかし、実際はそうじゃないですよね。新日本製鉄の四十八年九月の決算をとっても、六百十九億円が引き当て金、準備金で積み増しになって、これは賃金のほうに回るわけじゃないですね。ほかの企業でもみんな同じですよ。これが買い占め資金に使われて、今日の異常な経済の混乱した状態をつくり出している。国の財源を確保してそれを福祉に回すためには課税所得を拡大するということで、この準備金、引き当て金などの圧縮をはかっていくことが必要なんだという趣旨で申し上げているわけです。そういう方向での検討を今後やられるかどうか、そのことだけもう一度簡潔に答えてください、時間がありませんから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/38
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039・田中角榮
○田中内閣総理大臣 簡潔に答えます。
それは単年度だけでは計算できないのですよ。ですから、そういう蓄積があったために波動が多かったら――過去、足かけ三十年、日本は、実質賃金はGNP二・七倍に対して三・八倍上がっておる。それでまた、実質成長率よりも名目成長率よりも、賃金の上昇率というものははるかに多い。過去十年間、六五年から七〇年、七〇年から七三年をとっても、実質成長率九%、名目成長率一六%に対して、賃金上昇率は一七・六%である。これは一年だけでもって見られないのですよ。そういう意味で、来年不況があっても賃金を下げるわけにいきません。昭和の初年のように一割カットというわけにまいりません。
これは少なくとも、いまの西ドイツの三分の二である、西ドイツ並みにならなければいかぬ、アメリカほどになるかどうかわかりませんが、アメリカと西ドイツの中間まではやりたい。私の列島改造論には、昭和六十年、一九八五年にはアメリカの労働者賃金まで、こう書いてあります。ですから、それをやるには、波動があっても上昇過程をたどっていかなければいかぬ。それは蓄積がなければ、ある時期にはやれなくなるのですよ。
もう一つは、今度物価を下げさせるでしょう。石油が上がったけれども、九〇%、八〇%に押えて、これから一年間やっていこうという場合には、蓄積がなければやれませんよ。それは取りくずしを行なっても、とにかく賃金を上げる、取りくずしを行なっても物価は据え置きのままにするという相当な政策目的がございますから、そういう蓄積の状態というものは、絶えず主税局と主計局が争いながら協議をしているのです。もう主計局はほんとうに公債を出すのはいやなものですから、これはどうしても取りくずせ、そうしていると、主税局は来年の財源はどうして確保できるのだ、こういうことで相当の議論をした結果、厳密な査定をやっているわけです。
単年度で見ると、あなたがいま指摘されたようなものがありますけれども、やっぱりこれだけ石油が上がったときには三年ぐらいのものを見ながら、来年石油は安定であるというならば、来年はここまで留保は積み増しを押えてもいいだろう。ことしもとにかく超過したと思われるようなものに対して臨時税を課そうという前提なものですから、積み増しは行なわせない。それから定額のものは定率には変更を認めない。法律で認められているものを、定額は定額でもってことしは計算させるんだ、こう言っているのですから、それはやっぱり政府も相当深刻な態度でもって企業会計を押えておる、こういうことだけはひとつ御理解をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/39
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040・増本一彦
○増本委員 ですから、私のほうで申し上げているのは、そういう財源を確保し、公債の発行も極力縮減していくためには法人所得の拡大をはかるべきだ、そういう趣旨で申し上げているのです。
そこで、いま定率法、定額法の問題が出ましたので、これは総理、どうでしょう。いま大企業の特別償却の制度が、これもたいへん重大な問題の一つになっているわけですね。ここで大企業の特別償却制度を廃止したり、それから新しい機械設備の定率法による償却をもう認めない。いまわが国の製造大企業の減価償却率というのは、昭和十一年が六%弱だったのが、四十七年ぐらいになると一五%で、大体六年ぐらいで新規の機械設備はもとをとってしまって、実際は機械はもっと長く使うわけですね。これが結局費用を大きく見せて、そしてもうけを隠しているということになるわけですね。総理のよく引用される海外の水準を見ましても、アメリカは大体一〇%です。日本は一五%。イギリスは八%ぐらいですよ。こういうところの問題もしかく検討すべきであると思いますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/40
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041・田中角榮
○田中内閣総理大臣 それは主税局は絶えず検討し、絶えず勉強しております。勉強しておりますが、日本よりも低く押えられておるような国の企業の国際競争力がうんと強くなっているというなら、それは対象として比較してもいいですが、アメリカのような企業になったり、アメリカではだめだからみんな海外に投資をしようというふうになって、アメリカは輸出禁止をやったり、利子平衡税制度をとらなければいかぬということになっては困るのです。日本はアメリカほど潤沢じゃありませんから、海外との間に原材料を入れて自動的に対流しているわけですから、その意味では、国際情勢に順応できるような体制でなければ、これは一ぺんに参ってしまう。これは持たざる国の悲哀であります。特性であります。イギリスのように、蓄積が少ない、控除率も少ない、積み増しもできないようになっておる、そのかわり週三日しか働かないというのじゃ、どうしようもないです。(増本委員「日本の問題でどうなのかということを聞いている」と呼ぶ)
だから、その影響することを考えないで、画一、一律的にはやりません。ですから、日本の特性とそれから各国の特性もみんなちゃんと取捨選択をして……(増本委員「その特性はどういう方向でおやりになるのですか」と呼ぶ)方向としては、これ以上特別な社会情勢が起これば別ですよ、特別な社会情勢が。それは石油はもっと上がる。上がるけれども、石油に対しては石油価格を押えるのだ、こういうことを言いますと、その場合には、まだ税制上の問題がありますよ。それはなぜかというと、電力料金を押える、こういってきめたら、イフがつきますが、きめたら、少なくとも単年度ではできませんから、石油は上がっておるにもかかわらず電力料金を押えたら、その差額は五年度でもって繰り延べ決算できるような税制上の特例ですが、そういう場合は国民も認めるし、あなたも電力を押えろ、税制上の措置はしてやるな、これでは電力はとまるだけの話でございますから、そこらはよく理解できると思うのです。
そういう国民が理解できるような新たな状態が出ない限り、新しくいろいろなものを付加するということはありません。これは整理をしていく、積み増しはさせない。だから、先ほども申し上げたように、ことしはいままでやってきた決算方法以外に、法律がこれを容認しておるというゆえをもって目一ぱい積み増しをしてはならない、そういう決算は認めない、こう言っているわけでございますから、そこには政府の基本的姿勢というのはおのずから明らかでございます。あなたがいま指摘されていることとあまり違わぬ、こういうことですな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/41
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042・増本一彦
○増本委員 それから、総理は自由民主党の総裁ですね。私もここで自由民主党が臨時利得税をほんとうに出す決意があるのかどうか、このことをはっきりとさせていただきたいと思うのです。
御承知のように、これを最初に言い出したのは総理自身ですね。ところが、日柄がたって期限が迫ってきて、それで経過からいきましても、自民党案の大綱は私たちも説明だけを受けました。しかし、こまかくこれをどうするのかという案というものはまだお持ちになっていない。しかも、野党ときちんと話し合いをするという権限をお持ちになって自由民主党の代表の方がお見えになったということでもなかったのですよ。大綱であって法案要綱でもない、こういうことで今日まで来てしまっている。こうなりますと、もはや提案されるのかどうかという雲行きすらおかしくなって、私は実行性のある案をきちんとおつくりになって、そして人件費をX%に押えるなどという所得政策条項はやめて、野党の意見も十分に入れるような案を早期に提出して、早期に審議できるようにすべきだというように思うのですが、そういう方向できちんとおやりになるかどうか、この点だけはっきりさしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/42
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043・田中角榮
○田中内閣総理大臣 野党の皆さんも案を公表しておられますし、自由民主党案ももう結論に達しておりますし、自由民主党案は野党の皆さんに提案をする予定であります。もう提案しているはずです。この提案に対して野党の皆さんからの意見が大体出たようでございまして、それに対して最終的な自民党の態度を、これは当事者能力を十分持つ政調会長が正面に出まして、ほんとうにこれの決着をつけるという熱意と決意を持って、野党の皆さんに対応しておるということだけは申し上げます。
ですから、問題は、国民の一部だとはいいながら国民の権利を制約し、しかも、大多数の国民の理解を得るという二律背反のものをここでもってまとめるわけですから、私は野党の皆さんも、自民党案がたたき台であるならば、やはりそれに対してちゃんとした提案を出されて、それでまとめらるべきだと思うのです。これがまとまらぬはずはありません。ただ、自民党と政府にだけ押しつけておってやろうといっても、これは国民が理解しませんよ。ですから、自民党の案は出るのです。出てますよ。(増本委員「出てませんよ、まだ」と呼ぶ)いや、きょう夕方にちゃんと出ます。(増本委員「夕方に出るんでしょう、今日まで出なかった」と呼ぶ)いや、それはもっともっとちゃんとしているのですが、あなた方のほうはどうも強いものだから……。
とにかく、五常ですからまとまりますよ。あなた方が自民党にだけどこまででも無制限にとにかくおりてこいということではなく、やはり民主政治というのは、両方から来てぱんと合うところにいいところがあるのでしょう。ですから、そういう事態が、時期がもうきているんじゃないですか。四党は皆さん一党なんでしょう。一党のごとき観を呈しているわけですな。一対一で話がまとまらぬことはないじゃないですか。自民党はちゃんとまとめるつもりなんですよ。ですから、あなた方の出方一つです。もうさいは投げられたということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/43
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044・増本一彦
○増本委員 あなたは総裁なのに、私たちが公式にこの大蔵委員会で聞いているのは、二十六日の総務会でどうするかをきめた上で、二十七日以降でなければ提案もされなければ審議もできないという、こういう状態ですよ。自民党政調会長からの申し入れも、一枚の紙に修正意見があるなら持ってこいという、これだけの話ですよ。中身を出しておいでにならないんだ。だから、総理がいまおっしゃったことは、これまでの経過と事実とも違うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/44
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045・田中角榮
○田中内閣総理大臣 私はここで総理大臣として答弁に応じておるわけでございますが、個人ではなく自民党の総裁であることも事実ですから、私が言っておることは自民党の総裁としての発言でもあるわけです。ですから、ちゃんとしますから、皆さんのほうもちゃんとしてください。これは時間切れになっては責任のなすり合いでは済みませんよ、実際。責任のなすり合いでは、幾ら言ったって国民は受け取りませんよ。ですから……(増本委員「カードも見せないで意見を出せと言われても困るわけです」と呼ぶ)いやいや、それはちゃんとします。これはあと十日もありますから、きょう税法をみんなあげていただければ、あしたからじゃんじゃんやれるということにもなるのですから、そういうところをひとつお互いに胸襟を開いて、第一に国民の利益を守るために、こういうことでお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/45
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046・増本一彦
○増本委員 そこで、最後に所得税の問題についてお伺いします。
もはや、国民生活をほんとうに守っていくために大幅な減税というのは、緊急の国民の要求でもあると思うのです。今回の所得税の減税は、給与所得控除中心の減税だと言っても言い過ぎではないと思うのです。大体、給与所得控除の減税額だけで五八・一%を占めている。そこで、一つは、サラリーマン減税の積極的な面を、中小零細業者などの個人事業者にも及ぼすことを総理は考えるべきではないかというように私は思うのです。それは家族労働に支払われている賃金、今度は自家労賃分が白色申告の場合に専従者控除として三十万円に十万円だけ上がりましたけれども、この実額を人件費経費として見てやって、そして、その賃金をもらった者は給与所得控除の恩典を受けるということのほうが、中小零細業者、小規模零細業者の要求に沿うゆえんではないか。そういう方向で検討さるべきであるというように私は思うのですが、この点はいかがですか。
時間がありませんので、続けてもう一点は、年度内減税の問題です。これはなくなられた愛知大蔵大臣も、物価上昇率が当初見通しよりも上がったときには、年度内減税も検討するということを言われました。いま年度内にもっと減税をしてほしいというのも国民の世論であり、要求でもある。これは総理もよく御存じだと思うのです。私はここに踏み切るべきではないかというように考えますが、どうか。
それから、三番目の問題は、一月末の消費者物価は、御承知のように、東京区部で二四%、来年度の経済見通しが九・六%ということですから、これを相乗して考えますと、四十九年度では三六%の物価上昇と同じことになるわけです。ところが、今回の減税割合は、夫婦子二人の四人家族の場合でも、全体の課税最低限の引き上げ率は一三四・四で、経済見通しから見ても実質的にはまだ低い。ここでもっと大幅な減税を検討さるべきであるし、ましてや、この経済見通しの消費者物価上昇率をこえるような事態になれば、当然、国民に物価調整減税として来年度の年度内再度減税ということを検討さるべきであるというように考えますが、その点どうか。
この三点について伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/46
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047・田中角榮
○田中内閣総理大臣 第一点は、中小企業で共かせぎをしておる家族労働者、特に妻ですな。おやじさんもそうでしょう。妻が一番はっきりしているわけです。これは私もそういう問題を税制改正のときにも十分考えたわけです。働かないでおる妻というものは配偶者控除を認められておりますし、パートタイムで働いている人も認められております。そういう者に比べて、事実上は、魚屋とかそれから八百屋とかを見ますと、奥さんは時間外労働まで一切やっていますよ。朝早く五時に起きて掃除をして、御飯を食べさせて店掃除までやって、それで今度ずっと店番をやっているわけです。それで、夜おそくまでやっていて夕めしの支度をし、とにかく子供のふとんの始末までやるということですから、現実問題から考えると、これは非常に過重な労働をやっているわけです。
そういう意味で、この問題に対して私も相当強い主張を持っておるわけです。まあしかし、いまの状態で差があるのは、給与所得者と比べて中小企業の企業主というのは同じ税率でもって引いておるわけです。ですから、そのぐらいの差が現在あるわけです。こういう問題は、時間で拘束八時間働いている人と、その仕事の性質上十時間も十二時間も十五時間も働かなければ営業が成り立っていかないという現実というものを見たときに、私は画一、一律的な税理論で割り切っていくということは望ましいことではないと思っております。そういう意味で、こういう問題をいますぐどうこうじゃありませんが、これは次に百七十万円までという課税最低限が引き上げられるのには、さっき申し上げましたが、アメリカでも三年か五年かかるでしょう。それなら、その間全然減税もやらないのかというわけにいかぬのです。だから、やはり検討事項としては重要な問題であるということは明確に申し上げておきます。これはなかなか不公平がある。それは理論の上では不公平はありませんよ。いまでも優遇しているんだというけれども、それは比較してみたら、では働かないほうがいいから、よその人を入れて給料を払っておったほうがいいということになったら、中小企業や零細企業は成り立ちませんから、そういう意味で、これは重要な検討課題として検討に値するということだけは申し上げておきます。
それから、四十八年度年度内減税をするかどうかという問題ですが、これはさっきも申し上げたとおり、もう十日しかありませんし、これはそれが含まれておるということで百七十万円減税になったんです、二兆円減税になったんですということで、四十八年度年度内減税をする意思はありません。明確に申し上げます。
それから、四十九年度の年度内減税を考える余地はないか。これはこれからの税収がどうなるか、物価がどうなるかというような問題、物価は単年度の問題じゃありません。さっき佐藤さんにお答えしましたけれども、これはずっと物価が上がったけれども、国民生活がよくなったじゃないか、はだしでもないし、車も持っているじゃないか、クーラーもあるじゃないか、月給も上がったじゃないかということを述べましたが、まあ過去のことは過去のこと、やはり政策は前向きでなければいかぬ。国民生活を対象にして前向きに、積極的でなければいかぬ。こういう意味からいいまして、四十九年度は物価のために年度内減税をしたくない。ということは、物価を押えたいということが先ですな。物価を押えたい。国際要因もありますが、あなたが言うように物価問題のための年度内減税、これは私は意図しませんよ。意図もしませんし、絶対に物価を押えるということが前提でございますから、もしもなどということにはお答えできませんと、こう言ってしまえば木で鼻をくくったようになりますから、そういうことを申し上げないで、いろいろな場合、財源が許せばどうかというすなおな御質問と理解をして申し上げれば、それは事態の推移を見ながら、国民的動向に対応して、政治も行政も柔軟に考えなければいかぬ、これはまことにそのとおりであります。
ただ、一般的な減税をする前に、そういう事態もしありとせば、もっと低所得者にこれから三回も四回も幾ばくかずつの支出に応じていますように、いろいろな段階があると思いますよ。段階はありますが、四十九年度がいま始まろうとしているときに、四十九年度、減税しますとも言えません、減税しませんとも言えません。これはほんとうにすなおに事態の推移に対応して国民の理解が得られるように、国民の生活を第一に考えてすべての政策を行なってまいります。こういうことで理解いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/47
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048・安倍晋太郎
○安倍委員長 広沢直樹君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/48
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049・広沢直樹
○広沢委員 それでは時間が非常に短い時間でございますので、総理に、四十九年度の税制改正に関する答申、これは総理に答申されているわけですから、そういった面を踏まえながら、いろいろ質問申し上げてみたいと思います。
まず第一点は、総理が昨年の初めに大きく打ち出しておりました減税構想、何だかんだと言いながら、やっとこうやって日の目を見ているわけで、それはそれなりの評価というものがあろうかと思います。しかし、具体的に今日まで当委員会においていろいろ内容を、所得税減税の問題にしましても、法人税の適正負担の問題にしましても、検討はしてまいったわけでありますけれども、やはりまだまだ国民の期待に十分沿うものではない、こういうふうに私どもは考えております。
特に、昨今、経済政策の転換とともに強く期待されております所得格差の是正の問題だとか、あるいは資源の再配分の問題だとか、あるいは不公平な課税負担の是正、こういった点から見れば、やっと手をつけたという段階ではないか。ですから、ここで十分事足れりということではなくて、今後さらにそういう経済政策を転換して福祉社会へということを考えていくならば、ここにもう少し抜本的な改正を五十年度以降は検討していく必要があるのではないかと思うわけでありますが、それが第一点。
それから、時間の関係で二、三一緒に聞きますので、まとめてお答えいただきたいと思うのですが、さらに福祉社会の建設という面に関しましては、当然、財源というものが要るわけであります。経済社会基本計画にも、ある程度、期間中に三%程度のいわゆる負担割合の増加というものはあるであろうということを見込んでおります。ところが、現在、直接税中心の税体系になっておりますし、税務当局もあるいは税調も、今後現行の体系を基準として考えていくというようなお答えでありました。今後さらに高まる財政需要に対して、まずどう考えていくのか。答申を読みますと、いわゆるなだらかに負担が増加することに対処して、まず所得税の累進構造のための軽減を今後ともはからねばいかぬということを指摘しておりますし、それに続いて、法人税の負担の適正化あるいは間接税の整備をはかるようにということの指摘があります。いわゆる法人のこれまでの種々の優遇措置というものをここで見直して、改廃をしなければならぬということの指摘であろうと思うし、あるいは間接税もそういった財政需要の面からは見直さなければならないという示唆のようにも受け取られるわけでありますが、答申を受けられた総理自身がこの点をどう考えておられるのか、時間の関係で簡単にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/49
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050・田中角榮
○田中内閣総理大臣 今度の税は非常に画期的なものだったと思います。
それは、一つには、二兆円減税を行なったということよりも、あなたがいま指摘せられたように、いままでシャウプ税制以来直接税中心であった。ですから、国民所得に対する税負担率というものは、さっき申し上げたように、先進工業国に比べて二分の一だといっても、直接税中心だ。これが源泉課税であるということ。二十万円の月給をもらっても、十五万円しか奥さんに渡せないということになると、妻は夫の価値を二十万円と評価しませんよ。やはり手取りの十五万円としか評価しない。それはほんとうです。直接税にはそういうマイナスがあるのです。ですから、国会議員でも、たくさんもらっているというのが新聞に出ますけれども、受け取ってみたら、これだけ引かれて、何だこれは、これでよくやっているなということを言われるようです。これは直接税の一つの弊害であります。
そういう意味で、直接税というのは一体何がいいのかというと、税捕捉が非常に的確にできる。そして月給が上がれば自動的にその財源もふえるということでして、これは戦後の日本の財政が健全にやれてきたということの一つの証左であると思うのです。ですから、シャウプ税制はそれなりに評価できると思う。ただ、税は取られるという感覚からどうしても抜けませんよ。本人の意思いかんにかかわらず、これは天引きされるのですから。そういう意味で、税のマイナス面があるということであります。
そういう意味で、今度の税制は、あんまり議論されませんが、長いこと懸案であったシャウプ税制に一つの改正の斧鉞を加えたということは、歴史的な問題ではあるのです。これは二兆円よりも私はそっちのほうにウエートがある、こう思っております。
二十四年には直接税が五四・一%、間接税が四五・九%だった。これが、だんだん下げてきましたが、四十九年度予算、ここの税制改正によりまして、直接税が六九・九%、間接税が三〇・一%というふうになったわけですが、しかし、その前の年の二八・八%というものからいうと、幾らか間接税はふえておる。これがまた二十四年のような状態まで間接税のウエートが上がっていくと、これはずうっと押していきますと、戦前の直接税三四・八%、間接税六五・二%。
ですから、戦前は、小さい事業をやっているような人でも、小さい村の中の雑貨屋でも、税務署が調べに来たものです。それで何売った、かに売ったというようなことがあったわけですが、そのかわりに役人などの給与ですと、当時の二百円というと相当な金額です、大蔵省の主計局長、予算があがると当時千円御内帑金をいただいたというようなことでしたが、そのころの税は、いまから比べて非常に低いわけです。また退職料でも、まあ三十年働いて高等小学校出が三千円、たんぼ一町歩買って、うちが全部新しくできて、なお千円残ったというようなときですな。そういうときから比べると、税負担は国際的には非常に低いのですが、ところが、国民の実感からいうと非常に高いのです。これは給与所得者は高いです。私は大蔵省に三年いまして、自分でもってずっと明治からのいろんなものを引っぱり出してやりましたが、やはり税は高いなという感じですな。
ですから、そういう意味で、税というものは、これからはやはり直接税のウエートを間接税に――私は大蔵委員会で、昔、大蔵大臣のときに、君は一体目標を何と考えるかというときに、せめて五〇%、五〇%、フィフティー・フィフティーにしたい。これは、国民の所得が上がってくれば必ず消費がふえる。それで、消費の中で課税する。それは大衆課税である、間接税は逆進税制だなどという時代じゃもうなかろう。それはビールは一割ぐらいずつ残してくるもの。同じことじゃありませんか。しかも、こういう時計とか、何十万円、何百万円という指輪に一割、二割かかったって、それは国民は理解しますよ。私は、そういう意味で……(「官房長官がまたあとで補正しなくちゃならぬから……」と呼ぶ者あり)いやいや、これは真実が述べられないような国会審議じゃ困るのでね。
私は、そういう意味で、ちょうど、さっき申し上げた戦前のものは、一つのめどになるのでね。直接税三四・八%、間接税六五・二%というのは、現在四十七年度におけるフランスが大体そうであります。直接税三二・六%、間接税が六七・四%。アメリカ税制が直接税八七・八%、間接税一二・二%。だから、アメリカの国民が一番税に対する反発が多いわけです。これは事実なんです。ですから、そういう意味で、フランスほどになれるとは私は思いませんが、西ドイツの直接税四九・九%、間接税が五〇・一%、これはフィフティー・フィフティーです。ここらが先進工業国としては一つのめどであることは間違いありません。ですから、そういう意味で、これからの税制改正というのは、国民の理解を得ながらそういう方向でやっていく。しかし、それは直接税に全然手をつけないのじゃありません。これはさっきからいろいろな議論がありましたように、国民の理解が得られればそういう中でもってやはりやっていく。
今度たった一つ、第二の問題でいいのは中間層。人生において三十五歳から五十五歳までの人が一番金がかかるわけです。最も投資が多いわけですよ。子供は全部大学に行っているとか、一番末は中学に行っているとか、一番最後はまだ大学だというときに、そのころは安い賃金で働いているのです。賃金は中だるみです。それはとにかく八千円の初任給を国会で議決しようといったのは、わずか十年前ですから。そうすると、人生で一番投資の多い中間層が税に対しては不満がある。これは私はそういう意味でわずか二千億ですけれども、それに手をつけた。そして結局、全国民が税を納められる階層になることが望ましいのです。全部が課税最低限に入ろうなんていって、国はよくなるわけはありませんよ。所得がふえて、全部の国民が税金を納めるという、公の責めを果たすということでなければ、胸を張って歩けない、そういうことを考えなければいかぬし、そしてその過程において恵まれない人には全額、お互い連帯の思想でもってごめんどうを見る、こういう理想の姿を追求していくのが、これからの税制の将来だ、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/50
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051・広沢直樹
○広沢委員 直間の問題につきましては時間の関係がありますので、別の当委員会の機会でいろいろ論議がありますので、そこでいたしたいと思いますが、次に、所得税の減税の関係についてお伺いしておきます。
これは今回、初年度一兆四千五百億円にのぼる減税をやっておりますけれども、税調の答申では、三つの観点から今度の所得税の減税を考えていると私は思うのです。これを読めばそれははっきりしますけれども、一つは、所得税に対する依存度が非常に大きいという観点、もう一つは、安定した生活を築くために家計における蓄積の充実をはかるため、三つ目には、物価騰貴に伴い国民各層間の所得の分配、ひいては不公平が進行するおそれが強い、こういうような三つを加味して、さらに、先ほどもいろいろ議論がありましたとおり、租税のいわゆる景気調整機能を重視する立場からは疑問視する意見が多い。確かにいろいろな意見がそれぞれのエコノミストにおいても述べられておりました。それはよくわかります。しかし、そういう意見がある一方では、福祉社会の財源をという見方、それに対する期待という面もあるけれども、直接税中心になっておりますから、さっき申し上げたこういう三つのことを基準として考えるならば、やはりここに大幅な減税をしなければならぬという結論で、今回諮問にこたえて答申が出ているわけですね。この考え方は私は正しいと思っているのです。
そこで、政府はその減税にあたって、いわゆる所得税制の改正にあたりましては、やはり物価といったことを十分加味して、今後の所得減税あるいは改正というものを行なっていく考え方があるのか。何も物価の問題を税だけでどうこうしようといったって、それはできないことは常識論ですけれども、経済のひずみとして当然起こってくるこういう異常な物価上昇のもとにおいては、税が何らかそこに補完的な働きをしなければなりませんし、特にインフレ下において、指摘がありますように、不公平が進むであろうと思われるような時点においては、物価を配慮した減税というものに重点を置いて考えるべきじゃないか、その点を考え方としてお伺いしておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/51
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052・田中角榮
○田中内閣総理大臣 それは御指摘のとおりです。物価問題は税だけでもって全部調整はできない。そしてまた、税は単年度だけではなく、物価は十年間上がっても、実質賃金はもっと上がったということが望ましい姿であるし、また現にそうしてきたわけでございますが、しかし、そうかといって単年度の現状を全然無視して、減税をしないでいいということじゃないのです。これはやはり長期的な見通しの中で、税制はあり得べき理想的な姿に向かって前進を続けつつも、しかし、取捨選択をするときには、物価の面で国民生活を守るという面があれば、それは理想的税制までいくには少し遠い位置にあっても、それを先にやらなければいかぬ、そのぐらいの配慮と取捨選択が必要であることは申すまでもないことであります。そういうことであります。ですから、これからの税制改正に対しては、物価問題、物価の動向ということが十分しんしゃくせられるということは申すまでもないことであります。
ただ一言だけ申し上げますと、税をやるときに惰民政策にならないような税、ひとしからざるを憂えるという、いわゆる不均衡の是正ということも重大な税のポイントでございますが、へたをすると惰民政策につながるということがありますので、やはり勤勉な人たち、能力のある人たちの能力を伸ばす。うんと能力があって寝ないで勉強した人がものを発明して収入があった。それが全部累進課税で九九%まで召し上げられるというのでは、だれもやらないということになりますから、生きている間には自分がみずから開発した利益の恩恵は相当に受けるが、しかし、それは不労所得として次の世代に受け継がれてはならぬので、そういう意味では遺産相続税というものとの間のバランスの調整が必要だという問題もありますから、税はしかく簡単なことだけでは割り切れないと思います。思いますが、やはり人間の本能というようなものや民族の特性というようなものも十分勘案をしながら、しかも現実に目をおおうことなく、国民の理解が得られる、まあ政府も国会も、国民のためということを前提に税制を考えておってくれるということでなければ、納税者の理解は得られない。納税者の理解が得られないときは、税は根本的に破壊されるということでありますから、これはもう当然のことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/52
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053・広沢直樹
○広沢委員 納税者がそういうふうな物価の異常上昇の中で非常に困惑をしているときには、当然、税制もそれに応じて配慮するというお話であります。先ほどからいろいろ年内減税云々という問題が出ておりますが、ならば、こういう異常な物価上昇のおりにおいては、税がそういう物価に対するある程度の、補完的にせよ働きをしていくならば、見通しが狂ったりあるいは今日のような異常な物価高に国民生活がさらされる段階においては、行政当局としては、年内であろうが何であろうが、とにかくそれに対する配慮というものを考えるべきではないか。物価に対してもある程度税制というものは考えてあげているのだということであるならば、当然、いま私が申し上げたように、年内においても異常な物価高がかりに起こってきたというような場合には、それは配慮するということは理論的にも考えてもいいんじゃないかと思うのですが、その点もう一ぺん念を押しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/53
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054・田中角榮
○田中内閣総理大臣 これは先ほどから申し上げておりますとおり、減税というものには二つの面があるわけです。物価が上がるから国民生活を守るために減税をしなければならぬという議論と、物価が上がるときには増税をしなければならぬという議論もあるわけです。
物価抑制というときは賃金ストップ、増税、これはイタリア型、イタリアがとった税制であります。これは物価抑制の一つのオーソドックスな手段でもあります。しかし、考えてみると、今度も田中は二兆円というのをぶったが、石油問題が起こって、十二月末にほんとうに二兆円減税やれるのか、やるとすれば気違いだという極論さえ出たわけですが、やはりこれは物価を押し上げるという議論になりますよ。減税を行ない、しかも相当多額の給与が上がるということになれば、どうして物価を押えるのだという議論にはなります。しかし、あえて二兆円減税に踏み切ったのは、これは国民生活の現状に適合する政策が先だ。まず目張りをしておいて、それは理想の道の一環でもあるし、まずこれが先だ。そうして引き締めの政策とか物価抑制の政策は勇敢に行なうべきである、これは間違いでなかったと私は思うのです。
ですから、そういう意味で四十八年度中の年度内減税ということは、これは二兆円減税の中に組み込んでおりますので、三月ももう二十日過ぎでございますので、四十八年度の年度内減税はいたしません、こう述べている。四十九年度は四月一日から始まるわけですから、これは夏までに物価を押えます、こう言っているわけですから、そのときに、夏までに四十九年度も減税をいたします、しかも物価減税、調整減税いたしますと言ったら、夏まで押えられないということを裏返して言うようなことですから、それはとてもそんなことをいま申し上げられない。ただいまは物価を抑制するのが先です。
しかし、行政も政治も国民のためにあるので、そんなことを国民が困っているときにほっかぶりしていいわけはありません。そういう意味で、先ほど述べましたとおり、減税というものやそういうものは、事態の推移を見てそれに対応するような過程において考慮されるべき問題でありましょう。いま申し上げられることは、ことしは絶対に減税以下に物価を押える、いい減税だった、歴史に残る減税だったと言われなくても、やはりよかったと言われるように全精力を傾ける。物価抑制がまず焦眉の問題である、こういうように理解いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/54
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055・広沢直樹
○広沢委員 いろいろな議論のある中で、思い切った二兆円減税をやったということは、先ほど申し上げたように、その考え方に対してはそれなりの評価はできるのですが、内容の問題で、やはりこういう時期においては、インフレが進行していきますと不公平な負担という問題が出てまいります。そこで、低所得者に対する思い切った減税というものを行なうべきではないのかということです。
ところが、先ほどもお話がありましたけれども、今度は給与所得控除のいわゆる頭打ちというものがなくなっておりますので、絶対額においては相当大きな金額が高額所得者のほうに減税になるという結果が出てきておりますね。しかし、これも、いままでの頭打ちを行なってきたには、それなりの当局は説明をしてきました。ところが、今回は大改正だからということで、こういう頭打ちがあるのを必要経費の概算控除という見地からはずすのだということをおっしゃる。しかし、やはりもう一歩、一番考えなければならないのは低所得者、納税者の人数からいっても多いわけでありますから、こういうような時期にはやはり、たとえ議論がどうあろうとも、低所得者に対する重点的な減税を行なう。こういう頭打ちを排除して高額所得者にまで配慮を及ぼすようなやり方というものは政治的にいかがなものか、こう思うわけですが、その点に対するお考え。
さらに、こういう一面を見ますと、低い所得で減税の恩典にあずかれない方々も多数おるわけでありますが、なかんずく、いわゆる社会的に弱い立場にある方々、そういった方々に対しては、インフレ手当というのも部分的には考えているようです。しかしながら、これもやはり実態に即して十分な手当というものを考えていかなければならないと思うのです。政府の答弁を聞いておりますと、たとえばお年寄りの手当にしても、来年には五〇%もアップするんだというパーセンテージの話をしておりますけれども、それ自体が小さい上に、このインフレでありますから、インフレ手当における十分なる配慮を考えるべきではないかと思うわけでありますが、その点に関しての問題。
それから、二、三続けて時間がありませんから質問申し上げておきたいと思います。
法人税の問題で、まず法人税制を景気調整に十分活用すべきではないか、こういうことで、せんだっての新聞報道によれば、法人税の延納利子率だとかあるいは減価償却弾力操作だとか、それぞれ考えられておるようでありますが、その他引き当て金やあるいは準備金、そういう企業会計原則にも触れる問題がありますが、そういった面も今日非常に大きな企業の優遇処置になっておるわけでありますから、景気の動向によって、これについても操作を加えられるような処置が必要じゃないかと思うのですが、その点がいかがかという点。
それから、先ほどお話があったように、今度基本税率を四〇%に上げました。しかし、それで企業の優遇措置を整理したということにはならないと思うのですね。ですから、企業が適正な税負担に応じる体制というものは今後さらに考えていくべきじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、その点を簡潔にお答え願いたいと思います。
その他、配当の軽課制度、それから受け取り配当の益金不算入の問題、あるいは配当控除の問題、これはともに税制を複雑にしておりますし、あるいはその効果も、初めの趣旨説明あるいはいままでの当局の説明からすると、行政効果があがっていないものもあります。ですから、一挙にやめてしまえというには問題があるかもしれませんが、やめる方向で検討されるかどうか、その点をお伺いしておきたいと思います。
それから最後に、もう一点は、税調の答申の中に地方税制に対する答申がございます。そこでお伺いしておきたいのでありますけれども、やはり今日の地方財源が非常に不足しているということで、それに対する要望が地方団体から多いことも明らかでありますが、そのために今度の地方税制の改正では、確かに市町村民税の法人割りの税率をアップしております。ですから、それなりの配慮というものはあったと思われますけれども、今度は法人事業税を地方団体において考慮していかなければならないという事態になっている。こういう点が一つの問題点になっておりますが、それによって起こるいろいろな問題があります。それに対して当局としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。むしろそれは地方的な立場から考えてまいりますと、今日、福祉社会の建設という問題、福祉に対する要望が非常に強い。ですから、それにこたえようとするならば、財源的に考えていくならば、当然そういった地方財源を充実するということをまず第一に考えていかなければならない、こういうふうに考えるわけでありますが、その点所見を承って、なお疑問があればお伺いして、終わりにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/55
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056・田中角榮
○田中内閣総理大臣 今度の減税が金持ち減税だといわれるような面もございますが、先ほども述べましたとおり、人的控除が四千六十億、給与所得控除が八千四百二十億、税率が二千二十億、税率は法人税の二千百十億と大体パーになるというぐらいでございまして、この税率調整も人生における一番の高率投資を必要とするような、言うなれば恵まれない青春を持ったという人たち、現に一番国の生産の第一線におって指導的立場にある者、家族の中においても家長として収入の源泉となっておる人たち、こういう人たちに対する、希望も何も求められないような者に対して、これはやはり長い将来を考えると、ここで投資の一番高い層に対して税率の調整を必要とするということで、シャウプ税制以来さんざん言われながらついにできなかったことに手をつけた。これは真にやむを得ない処置であるということで、これが金持ち減税であるというふうには思いません。
中には何億、何十億という人もあるでしょう。こういう人たちは非常に少ないのであって、これは場合によれば、今度相続税率を直すときに幾らでも手を加えられるものでございますから、そういう問題に対しては、とにかく税率というものの修正の第一歩をやった、国民の働く意欲というものに対して一つのめどをつけた、こういうことであって、私は非難さるべきことではないと考えます。
それで、あとは低所得者に対しては、扶養控除の十六万円を二十四万円にしたとかいろいろなことをやりまして、約四百五十万人ばかりの納税者が減るわけです。ですから、これはだんだん上げていけば、確かに低所得者というものに対しては優遇をするということになります。そして、あとは税を納めない人たちは、税制の中でこれをやることはむずかしい。これは先進工業国の中の税学者は、負の税制ということを言います。戻し税、これをやりますと、納税する人の意欲をまるで減殺するということで、税は税、それで、ほんとうに国家社会の連帯の責任において扶養しなければならないというものは、一般会計があるわけですから、そういうものの中から歳出によって解決をすべきである。税制の中にいろんな政策を織り込むと、今度は納める人がわからなくなってくるということもありますので、税はできるだけ簡単なほうがいいということは先ほど申し述べたとおりでございます。
それから、法人税を景気調整に使えないかということでありますが、法人税そのものを三五%から四〇%に引き上げたということ、一年前は野党の皆さんもせめて四〇%にせよ、こう言ったものをやったわけですから、今度は相当踏み切ったということであることは事実です。その上に土地に対しては二〇%の重課をやっている。それだけじゃなく、きょう、あす、あさってごろ、五常が協定できれば、その上になお法人の臨時所得に対しての課税を行なおう、こう言っているわけですから、これは相当なものである。それでもって、もう一つ物価抑制というものに法人税を調整用として活用する。これは確かにあります。西ドイツは法人税を一〇%重課しております。これは重課しておれば、それだけ高い品物が出るということになります。
もう一つ問題としてあるのは、いわゆる所得政策というものを実際において税の中でやるのはどうするかというと、いわゆる流通税を取って、一番最後に、いま十万円の商品券に一万円ずつ証紙を張らなければいかぬのと同じように、取引高税式に取引高にやれば国民の購買力は落ちるということで、物価はある意味で抑制できる、こういう税の使い方はあります。また各国でもとっております。とっておりますが、輸出税をとったり、法人税をとったり、付加価値税を採用したりしても、その上になお所得政策をやっておっても、物価は必ずしも下がらぬというのを見ますと、簡単には乗れない、こういうところもあるわけです。だから、そういう意味で非常に慎重だ。日本の主税局というのは相当なものだということを、私もあんたと同じようなことを主税局長と毎度やるのですが、やはりなかなか相当なものであるということはひとつ御理解いただきたい、こう思うわけでございます。
それから、法人税率は四〇%でいいかという問題ですが、これはさっき言ったとおり、四〇%プラス土地の二〇%、その上になお臨時税というのがございますので、そこらは、実効税率が五〇%、五一%、五二%というのが全世界で一番高いですから、今度四九・四七ぐらいになるわけですから、ここらがいいところじゃないかな、こう思っておりますが、しかし、物価の特殊な状態もありますから、こういう問題に対してはやはり勉強していくべき問題だろう、こう思いますよ。
それから、配当軽課の問題とか配当課税の問題についてはもう議論されておりますが、これは二重課税ということで、ほんとうは法人税をすんなり四〇%をのんだので配当軽課の問題はちょっと二段階にしたのですが、これが三八%だったら私は配当軽課に先に手をつけるべきだと思ったのです。これは半年間も議論したのです。こう幾つも幾つも一斉に怒濤のごとくやって、日本の企業がおかしくなったらたいへんだということもありまして、やはりそれには、国民のほとんどすべてがそれに対して就職をし、その製品を使っているわけですし、国際収支がかかっておるんですから、そうその議論だけはできないというんで、法人税の引き上げということで配当軽課は二年でもってやろう。ただ、二重課税と言うけれども、個人は三月十五日、分離課税でもって税を納めているか、もしくは総合課税をやっているんですから、だから、これは税を納めている、納めないにかかわらず、法人と個人との間に配当軽課に対しては差があるということに対しては議論のあるところです。これはこれから議論が積み重ねられていくところだと思います。
それから、地方税制につきましては、これはもう事業税の問題等がございますが、これは問題があるのです。問題があるというよりも、これは地方で恣意によって、ということはありませんが、ただ財源対策としていろいろな税を新設することは、地方自治そのものをこわすおそれにもなるのです。これはそんな高いところに行きませんから、そういう意味で、これはやはり一律的な付加税にするとか何か、とにかくこれは税制の中で考える問題です。
ただ、ここで一言いやなことでございますが申し上げておきます。
国は、総定員法を通してもらいまして六十五万人が六十一万人、六十万何千人ですかな、とにかく六十万人で押えているわけですよ。その間苦労しているのに、ところが、地方行政機構の中では十万人人間がふえているのです。これでどんどんどんどん十万人ふやされて、月給がどんどんどんどん上がっていって、局長の退職料が三千万円だ、四千万円だ、五千万円だというのがあるでしょう。あなた方御存じでしょう。それで、そのたびに事業税でも何でもやられたら、これは地方自治が第一なっていきませんよ。だから、それは国民は平等だというために、地方の総定員も住民全部何百人に一人というぐらいな基準をつくってからでないと、地方財源確保のために幾らでも地方税をつくっていいというわけにいかぬ。これは遺憾ながらいきません。そんなことをしたら、地方自治そのものがひっくり返ってしまうでしょう。ですから、それは人件費は総歳出の何%であると、こう押えられれば別ですよ。そうでなくて、もう地方の行政の中でこんな差が出てくること、これは国の中において格差をつくることだ。そういうこともありまして、地方税制の中にもいろいろ考えなければならぬ問題がありますが、事業税の問題はなかなか問題があるということはひとつ御理解いただきたい。何でもかんでもみんなできないという反対じゃありません。ありませんが、いまの自治団体の姿をそのままに是認をし、それでそこで特別財源をどんどんとつくっていいんだ、条例によってつくっていいんだということには賛成しかねる、これだけは申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/56
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057・安倍晋太郎
○安倍委員長 竹本孫一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/57
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058・竹本孫一
○竹本委員 私は簡単に二、三の問題についてお伺いいたします。
第一点は、自己資本の充実という問題を中心に、少なくとも外国並みの自己資本比率に持っていくために、五カ年計画ぐらい立てておやりになるお考えはないかということであります。
もう一つは、うらはらになりますけれども、過剰流動性、総理もたいへん熱心に吸い上げることをお考えになっておるようでございますが、これまた、ただ貸し出し金を回収しろということだけ言ってもなかなか具体的な指示になりませんので、やはりどの程度までは五年なら五年のうちに回収しろというところの目標を、具体的に設定する必要があるのではないかという点であります。
御承知のように、日本の会社の自己資本というのがあまりにも少ない。考えてみると、それがまた高度成長の一つのかぎでもあったと思うのです。日本の高度成長を改められて福祉中心の安定成長に切りかえようというならば、そのことが財政金融政策の中にも具体的に盛り込まれなければいかぬ。そういう点で考えてみますと、間接金融と低金利政策というのが高度成長をささえる大きな柱であった。その間接金融方式というものを、いま再検討すべきではないか。それがまた一番具体的に高度成長を押えるかぎである。
それから、日本のすべての会社がどちらかといえば過当競争でありますけれども、この過当競争というものも、借金政策で資本が自分の資本というものでなくて借金の元利を払わなければならぬということになりますと、いわゆる自転車操業で常に走らなければいかぬ。大体、日本の会社というものは、名目成長二〇%近くのものでなければ会社が成り立たない、こういうことになっておるので、一方では高度成長になる、一方では過当競争になるというふうに思うのです。
さらに、商品投機がこの間からずいぶん問題になりましたし、総理もいろいろ御苦心があるようでございますけれども、その商社に至っては自己資本率は三・四%、三千億円で九兆数千億円の商売をやっておる、こういうことでございますが、いろいろ考えてみると、いろいろの弊害というものは、この自己資本があまりにも貧弱であるということから来ておる。特に、福祉社会ということになりますとインフレが一番困るのでございますけれども、そのインフレも実は借金をしている人には得である。債務者利益である。いま銀行が貸し出しているものが七十二兆円ありますが、もし一割物価が上がれば、もうそれだけで七兆円の債務者利益がある。これが全部大企業とは必ずしも言いませんけれども、やはりそういうインフレによる債務者の利益というものが膨大であることが、社会的な不公正というものを大きくする。
いろいろ数えあげるとたくさん問題がありますが、これを改めるために、この際、政府は、自己資本比率というものを大体外国並みに持っていくべきことを一つの目標にして、一ぺんにはできませんから、それを五カ年なら五カ年計画で埋めていく、こういうひとつ思い切った具体的な目標を設定さるべきではないか。同時に、貸し付け金についても回収しろということだけではなかなかできませんので、これまた五年なら五年のうちにある程度まで預貸率を改善できるような方向を考えるべきではないか。総理のお考えを承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/58
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059・田中角榮
○田中内閣総理大臣 非常に重要な御発言でございます。昭和九年から十一年平均の自己比率は六一・二%でございます。それが三十九年には一九・七%、四十六年には一五・八%、四十七年には一五・三%と、しかも時価発行制度を採用してこのていたらくでございますから、ここでもって一〇〇%資本の自由化ということで、全くこの問題はなおざりにできない状態にあるということは数字が示すとおりでございます。そのかわりに、あなたがいま述べたように、戦後の異常だともいうような経済復興、GNPの伸びは何で起こったのだといったら、極端に言う人は、それは雑金融機関だよということを言うわけであります。これは間接資本のウエートが非常に高かったということであることは申すまでもありません。
そういう意味で、政府が当初一〇%と企図しておった民間の設備投資が、倍以上に伸びるというようなことがやられたわけです。そういう意味で、けがの功名のようなところもございます。しかし、いまの制度では配当は損金算入を認めませんし、金利は損金算入を認めておりますので、結局、企業者は間接金融、間接資本に移るというのは、これは理の当然でございます。それでしかも、これをあまりふしぎがらないというところにおかしなものがございます。
ですから、中には、ある例を申し上げますと、五千万円くらいの会社でボーリング場を百億借りておるものがあります。ボーリング場とか、それからゴルフ場とか、いろんなものです。これはとにかく、もっと有名なものでも――これは実際の自己資本はあります。帳簿価格は非常に小さくても明治時代からの土地を持っておるとか、それはありますけれども、借り入れ金が資本金の百倍とか二百倍をこして、あなたの言うような膨大もない比率、おそろしいと思われるものがあります。ですから、何でもかんでもデパート化が行なわれておるわけであります。
ですから、アメリカのように、一企業に対する一銀行の貸し出せる額はその銀行の自己資本の二〇%をこえてはならないという規定のある国もあります。しかし、十行が貸せば一企業の資本金の十倍、二十倍を貸すことができます。企業の借り入れ限度を払い込み資本金の二十倍にするのか、自己資本の十倍にするのか、めどをつけなければいかぬだろうということは、これは御指摘を待つまでもないのです。ですから、そういうめどをつけながら金融の正常化をはかっていこう、こういうことです。
ただ、必ずしもマイナス面だけかというと、プラス面もあったわけです。これは借り入れ金でどんどんと設備投資ができますから、そうすると、これは政府の想定した倍くらいに戦後の成長ができたというプラス面もあったわけです。また、自己資本比率がうんと高くなって、アメリカのように――アメリカはいま五三・二%ですが、こうなりますと、設備投資は自己資本においてのみしかやらぬ。借り入れ金でやるというのは日本だけであります。自己資本だけでもって設備投資をやると、これは簡単にもうかるからといって設備投資はしませんから、成長率は落ちます。
ところが、これを借り入れてやるのですから、調整インフレという議論がありますが、間接資本のウエートが非常に高いときには、好むと好まざるとにかかわらず、調整インフレ的な気持ちが多いということは事実なんです。生産が拡大する、投資は大きくなる。そうすれば借りた金は、十年前に長期的に一億借りたものは、一千万円返せば――一千万円じゃありませんが、実際、まず半分の五千万円返せばいいというようなマイナス面もありますので、だから、そういうプラス面とマイナス面を相当考えながら、私はやはり一九八五年、昭和六十年にはフィフティー・フィフティーにしなければいかぬなということで、大蔵省ともさんざん議論をしてきたわけですが、どんどん下がっていくときに、六十年までには自己資本比率がフィフティー・フィフティーにはなりませんよというのが、これは事務当局だけじゃなく、世の識者もそうなんです。
いまいいのは、大蔵大臣が締めようと思えば、あなたの言われるとおり、昭和十七年設定の日銀法がありますし、がちっと締まる。自己資本比率がうんと上がっていますと、大蔵大臣が締めようと思っても締まらぬ。そういうプラス面もある。しかし、まあ総体に考えて、自己資本比率が低いということはマイナス面のほうが多い。これは御指摘のとおりだと思います。
そういう意味においては、やはり国民的な理解を得ながら自己資本比率を上げなければいかぬ。だから、今日の段階において、勤労者財産形成というようなものは土地と自社株に結びつくように、そういう前提であの五万円、十万円というのの伏線もあるわけです。ですから、いろんな政策の中で、やはりこういう目標でこういう政策をとるのです、これは時限的にこうですと言えば、国民の理解を得られると思います。自己資本比率が一五%台であって年々一%ずつ減っていくなどということは、先進工業国として、とても国際活動にはたえない状態であることは御指摘のとおりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/59
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060・竹本孫一
○竹本委員 いま総理も言われましたけれども、確かに借金政策でいくということには、便利な点、プラスの面もあります。しかし、これまた総理も言われたように、いまの段階ではマイナスのほうが多いということも事実のようでございますから、ぜひひとつフィフティー・フィフティーならフィフティー・フィフティーをねらいにして、ある程度具体的な努力目標をつくり、御努力を願いたい。設備投資主導型の時代が一応終わったものですから、設備投資に借金政策は一番簡便であるということは、あまり大きな根拠にはならない。むしろ逆に、いまのインフレが社会福祉を混乱させておるということのほうに大きな問題があるわけですから、ぜひ積極的に取り組んでいただきたい。要望を申し上げておきます。
次は、租税特別措置法の八十九条、九十条で、御承知のように、今回は自動車に関する税金を倍にするということに大体なっております。これはもう申し上げるまでもありませんけれども、自動車産業というのはわが国の総合工業の代表的なチャンピオンである。その生産高も、いまやもう六百万台をこえて七百万台に近づこうということになっておりますし、また、そのうち二百万台は輸出するということになって、従来は輸出産業といえば三大花形、船と鉄鋼と自動車ということになっておる。そういう関係もありまして、従業員も、直接この製造、販売にタッチしておる者だけでも百三十五万人くらいになりますし、また関連産業を入れれば、まあ数字のとり方ですけれども、三百四、五十万にもなる。こういう重大なウエートを持っておるわけでございますし、また、われわれの日常生活、あるいは中小企業その他の日常の事業、仕事ということから考えてみても、自動車は必需品であります。今度は自家用というものにだいぶねらい撃ちをしてきておるわけでございますけれども、たとえばトラックのごときは、九百八十万台のうち九百四十万台までは自家用という形にカテゴリーはなっておる。そういう点を考えてみると、今度の税金をかけるということが影響するところは、量的にも質的にも、非常に大きいということが第一であります。
第二は、時間がありませんからまとめて申し上げますが、最近の不況の問題であります。先般来、どの自動車メーカーも相次いで値段を引き上げました。そこへ今度の短期決戦、引き締めということが浸透してまいりましたので、不況感もこれあり、最近における自動車の販売というものは非常に激減をしておりまして、特に三月上旬のごときは、国内の販売台数は六割減なんですね。この間までは、たとえば十二月には三十万台くらい売れたものが二月には二十万台売れなかったということで、この場合でも三七%落ちておる。すなわち、四割落ちておる、五割落ちておる、今度は六割落ちる。この先いつもその調子で減っていくかどうかわかりませんけれども、しかし、現に四割、六割というふうに販売台数が激減をしておる。
そこで、自動車会社としては、これを切り抜けるためには輸出以外にない。幸いにして為替レートも二百六、七十円に見ておったやつが三百円になったということで、これに乗じてひとつ大いに輸出を二十万台ぐらいふやそうというふうに計画されておるとわれわれは聞いておりました。ところが、アメリカのほうでも、御承知のように、油ショックで大型自動車の売れ行きは、大体、三割あるいは四割ぐらい落ちているのですね。アメリカ自身が今度は、小型に切りかえようということに油の関係もあって考えておるようですけれども、切りかえるには一、二年あるいは二、三年かかります。その虚をついて日本の自動車は小型専門だから大いに売り出そう、こういうふうにして、私もその点でむしろ自動車の輸出から秋になれば日本の経済が回復してくる、あるいは設備投資も動き出すというふうに期待をして見ておりましたところが、最近はアメリカのUAWといったような自動車労働組合のほうが先手を打って、小型が日本から入ってきそうだ、これを押えるような議員立法をやらせるということで、組合長が声明を出しておるというような状態で、内でも売れない、外にも切り抜けられないということで、内憂外患ともども襲ってきておるところへ持ってきて今度の税金、こういうことであります。
したがいまして、税金をかけられる前すでにトヨタや日産のような代表的なところでもショックを受けて、今度の経常利益というものは、大臣御承知のように、半分もしくは四分の一という驚くべきショッキングな結果が出ております。そこへもってきて今度の追い打ちをかけるということでございますし、われわれ雇用不安ということを大事に考える立場から考えてみましても、これは御承知のように、二交代制を一交代制に切りかえる、それから残業はやめて超過勤務もなくなって、そのための収入も二、三万円減というふうにいわれております。さらには、臨時休業をやっておるところも出てきておる。惨たんたるような状態でございますが、そこに今度の税金が、重量税のごときは大体二倍ということでいくわけです。
そこで、総理にお伺いいたしたいのは、もともと自動車重量税というものは石油ショックがこれほど深刻でないときに考えられたものであり、あるいは今回の増税というものも、これほど自動車産業等にショッキングな打撃を与えるということは前提になっていないと思うのですね。そこで、事情変更の原則というのもありますが、こういう石油ショックで重大な打撃を受けて、企業として成り立つかどうかが危ぶまれるような段階に、なおかつあわてて税金を増税で二倍にしていくということが政治的判断として妥当であるかどうか。この際は何らかの便法を講じて、少し事情が落ちつくまでは、この増税案についていろいろ是非の議論がありますけれども、少なくとも業界にある一つの見通しがつくまでは、そういう倍の税率、何千億の税負担ということを一ぺんに強要するということは政治的な配慮をすべきではないか。
たとえば、政府でも、標準価格の決定を急いでくださいとわれわれが主張しておりますけれども、政府は、石油の値段あるいは入る量その他内外の条件が不安定だから標準価格をきめるわけにはいかない、行政指導でいこうと、これは一つの事情の流動性というものを配慮した政治的な結論であると思いますが、標準価格についてそれほど事情の流動的なものを取り組んで考えるというならば、この自動車税の増税についても、そういう事情を考慮すべきではないか。内外いろいろありますが、この際は前提になっていない予想以上の不況が押し寄せておるというそこに増税を持っていって、自動車産業というわが国の代表的な総合工業が企業として存立を問われる重大な時期に、それを急いで従来どおりの考え方で迫っていかなければならないかどうか、政治的考慮をされるお考えがあるかどうかという点だけお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/60
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061・田中角榮
○田中内閣総理大臣 自動車産業が急速な変化を見せておるということは承知しております。私は昭和二十年代から自動車や道路の状況をずっと見てきておるわけでございますが、道路三法が公布された昭和二十八年に、自動車問題というのは国会両院で議論されたわけであります。
戦後、自動車はほとんど壊滅状態になったということで、保有台数百三十五万台ということでございましたが、これが四十七年に二千三百三十七万台、四十八年には二千五百九十四万台、年間の増加は四十七年から四十八年には二百五十七万台ということでございます。現在では、四十九年度を迎えようとしておる現在でございますから、大体二千六百万台に保有台数はなっておると思います。
いままでは日本がコンベア式、オートメーション式に自動車をばんばんつくりまして、世界では非常に脅威だと思われるぐらい自動車産業は急激に伸びたことは事実でございます。安かろう悪かろうといわれておった日本商品の中で、自動車だけはよかろう安かろう、安かろうよかろうということで全世界に出て、ヨーロッパなどはこのためにたいへんな打撃を受けたということは御承知のとおりであります。それがいま急激に自動車の売れ行きが落ちておるということも承知しております。承知しておりますが、おととし、去年は異常に国内に売れたということであります。また、アメリカなどに対しても、もう間に合わない。アメリカは日本の車に対して輸入制限をするといっているのに、日本の出先は政府に対して訴訟を起こして、とにかく割り当てをふやせというぐらいに売れ行きがよかったわけでございます。
それが今度、この石油ショックということで、国民の買い控えということもございまして、がた落ちになっておる。がた落ちになっているのですが、世界的に見て必ずしもがた落ちになっていないのです。いままで異常に伸びておったものがノーマルな状態になるだろう、こういうことでございます。
自動車とん税として引き上げられるものは七百九十億円ということでございます。この税がいま問題になっていることも承知をしておりますが、自動車産業そのものはもう少しの推移を見ないと、なかなかすぐどうしようかというような問題ではないと思うのです。それはとん税というようなものは、かの誘導税制、禁止税制、いろいろな立場からとん税が創設されたものでございます。近距離は車、中距離は鉄道、長距離は船にということで、内国海運のシェア四〇%を五〇%に、あと残りの五〇%を鉄道と自動車で運ぶ場合のシェアを大体想定して六十年展望の数字が出ておるわけです。いままでのような状態でもってやっていくと、結局たいへんなことになる。それは私が列島改造論の中で一つの試算数字として出しました昭和六十年度展望は、国内における貨物総量だけでも一兆三千二百億トンキロ。それで、二千五百万台から二千七百万台のトラックが必要であるということになれば、三百万人ないし三百二、三十万人しか確保できない運転手そのものを考えると、全部自家用でもって全国を動かす以外には、四分の一の貨物も運べないということが、新幹線や在来線二万キロ余の複線電化計画になって出ているわけですが、だから、自動車とん税四倍論、三倍論、二倍論ということをたたきながら、四倍はひどかろう、三倍もまあまあちょっと時期を見なければいかぬということで、二倍論を実行したわけです。そうしたら、ちょうど石油問題でこの売れ行き不振ということにぶつかっておる。
しかし、GMなどが日本と提携をして、小型車を日米の共同でもって開発しようということも進んでおります。しかし、ヨーロッパの車を見ますと、依然として日本などでは、西ドイツの車などは一年半たたなければ注文品が入らないというような状態です。日本だけなぜ一体売れ行きが悪いというようになっているのかといいますと、生産調整が西ドイツでは行なわれております。ベンツなどは日本に対する年間の割り当て二千台、二千台以上は供給しないということですから、値くずれもしない。これはちゃんと年率は幾らかずつ上がっていくということになっています。日本のあれは多少よかろう安かろうということで台数をよけい出したためにいろいろな摩擦も起きましたし、だから、ここらで、日本の車というものが世界的シェアで見て一体どういうふうなウエートを持つのかということを検討するこれは一つの好機だと思います。国内に対して日本の車のウエートというのはどうなるのかということも、ここを好機として、自動車産業界においてはまずそういう数字をたたいてみてくれというのが、いま政府が自動車業界に要請していることでございます。
当面するいろいろな金融の問題とか操短の問題とか、夜勤をやめているとか、一時帰休制度をとらなければいかぬとかいう問題に対しては、これはやり得る施策は十分あると思います。これは輸出産業として国際収支の面から見ても重大な問題でございますので、そういう意味では、政府も、ただ完全な私企業としてその推移を見守るというには、あまりにも大きな産業であるということはよくわかってはおります。ただ、この七百九十億のとん税そのものの実施をある時期まで様子を見たらどうだとかいうような具体的な御提案につきましては、税は、まあこれは払えなくなればどうしようもない話ですから、そういう問題よりも、自動車産業というものが、国民的に見ても、国家的に見ても、非常に重要な存在である、急激にとにかく鉄板も上がる、材料も上がっていく、労賃も上がる、売れ行きはがたっと落ちる、国内的な売れ行きが全然ささえになるものがないというようになりますと、これは何年分か一ぺんに来た非常に高い成長率を維持してきただけに、一ぺんにそのスピードがとまった場合に、他の産業よりも影響が大きい、それは政府も十分承知しております。ですから、これは実態を十分つまびらかにして、これに対応する政策そのものは通産省でもとらなければいけませんし、これはほんとうに輸出産業として国際収支に直接影響あるだけに、財政当局も無関心でおるわけはないということで、きょうはせっかくの御提案でございますが、いま通してもらおうという寸前になって、それはまたちょっと考えますと言うわけにはまいりませんから、これはまあひとつすんなり通していただいて、それで、そのあとはいろいろな融資なりでというようなことで、ひとつ御採決賜わらんことを切望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/61
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062・竹本孫一
○竹本委員 時間が参りましたから、簡単に一つだけお伺いするのですが、異常に伸びてきたということは私も大体同感でありますが、しかし、四分の一の経常利益になると、四分の一に削減された形がノーマルな状態であるというふうには考えられないとぼくは思うのですね。そういう意味で、やはり激動、激変をしておるのだから、やはりこの際、政治というものは生きものですから、考えなければならぬのではないか。
それからもう一つは、産業政策というものは、やはり税収だけを考える考え方以上の、より高い、より広い視野で考えなければ、ちょうどあの農地と同じで、一ぺんここでつぶしちゃったら、もう一ぺん今度はまた増産だといってみても、そういうわけにはまいりませんから、やはり産業政策というものは、単なる財源対策、税収ということ以上の高い立場から考えられなければならない。そういう意味で、これは輸出のほうもまたこれから流動的でもありますけれども、どうしてもここで総合的な判断で、無関心でないということではなくて、やはり積極的な関心を持って、周囲を、全体の動きを見守って、適時適当な策は打つということだけは、総理の政治的な立場において御意見を承って、終わりにしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/62
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063・田中角榮
○田中内閣総理大臣 非常に傾聴に値する議論でございます。これは、いま企業というのは企業悪というような面ばかりが国民の目に大きく映っておりますが、しかし、企業に国民生活が直結しておる。企業イコール国民生活である。企業そのものが破壊されるときには国民生活そのものがストップするのだということは、これは事実なんです。
これは、一つの元請会社をこの間調べてみましたら、たった一つの会社で、その関連の中小企業から労働者全部をやっていきましたら、三百万人という数字が出ましてね、これはもう非常に驚いたのです。私が大蔵大臣のときに、最後に一つ私企業の再建という問題に関与しましたが、これは富山県の不二越という、一つのこの企業をどうするかという問題になりますと、北陸全体で約二百万人に関係があるということの実態を調査して知ったときに、ほんとうにりつ然としたわけであります。
ですから、まあ不当利得を徴収しろとかいろいろな、それはしなければならぬ問題はあります。ありますが、企業というものの必要性、安定的企業というものが国民生活をささえている源泉なんだということと、これだけ国際収支という問題がこのように逆調基調にあるときに、そういう面からも、しさいに状態を見ないで画一、一律的なものだけではいかぬので、国民に対してはやはりその実態を明らかにしながら、政府は、行政の上でも政治の上でも、それは感情にはマッチしましても、角をためて牛を殺す、そういうどうにもならないような状態にしてはならぬということは、もう行政の責任であります。だから、各業界の、産業分野の全体制についてしさいな観察を進めながら、遺憾なき政策をやってまいりたいと思います。
まあ春闘が終わらないと、日本の経済、各企業別にどうなるだろうという計算が実はいま出ないのです。税収の見込みも立たないのですよ。ですから、それは春闘を見てからです、春闘を。これは安閑として見ておるわけではないのです。労使の間の正常な交渉においてきまるであろう。その春闘の情勢を見ていきますと、その間に石油の情勢も大体四月一ぱいになるとわかるだろうし、それと物価の情勢も大体判断がつくだろう。そうでなければ、夏までなんということを幾ら荒らっぽくても言いませんよ。ほんとうにそういう意味で、企業の重要性、それは日本人の血であり、肉であるという観点から、おろそかにしてまいりません。
以上をもって御了解いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/63
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064・安倍晋太郎
○安倍委員長 これにて各案に対する質疑は終了いたしました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/64
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065・安倍晋太郎
○安倍委員長 法人税法の一部を改正する法律案に対し、日本社会党、公明党及び民社党を代表して山田耻目君外二名より修正案が提出されております。
―――――――――――――
法人税法の一部を改正する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/65
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066・安倍晋太郎
○安倍委員長 この際、提出者より趣旨の説明を求めます。山田耻目君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/66
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067・山田耻目
○山田(耻)委員 私は、提案者を代表いたしまして、ただいま提示されております法人税法の一部を改正する法律案に対する修正案について、その趣旨と内容を申し上げます。
案文は、すでにお手元に配付してございますので、その朗読は省略させていただきます。
この修正案は、中小法人の税負担の軽減をはかるため、その軽減税率の引き下げ等を行ない、あわせて大企業にきわめて有利な配当軽課措置等を廃止しようとするものであります。
まず、資本金一億円以下の中小法人については、現行では三百万円以下の所得に対して二八%の軽減税率が適用されており、今回の政府の改正案においてはその適用範囲を七百万円以下の所得に広げておりますが、担税力のきわめて弱い中小法人にとってこれではまだ不十分でありますので、税率をさらに五%引き下げて、二三%とすることといたしております。また同様の趣旨から、公益法人及び協同組合等の現行税率二三%を一八%に引き下げることとしております。
次に、受け取り配当の益金不算入制度でありますが、これは法人擬制説に基づく二重課税防止の見地からつくられたものであります。しかしながら、大法人の株式投資が増大し、その持ち株比率がきわめて高くなっている現在におきましては、もはやこのような考え方は通用せず、いたずらに大企業に有利な制度となっておりますので、これを廃止し、配当金はすべて課税所得の中に含めることといたしているのであります。
また、法人の寄付金につきましては、一定限度の範囲内で損金算入が認められることとなっておりますが、資本金等の増加によりその限度額が相当巨額となり、法人の寄付金支出を容易にしております。そこで、修正案においては、資本金基準及び所得基準をいずれも大幅に引き下げて、適正な限度といたしております。
次に、われわれは、今回の租税特別措置法の一部を改正する法律案に反対するものでありますが、特に支払い配当軽減税率について四%程度の引き上げをはかっている改正事項には、強い不満を覚える次第であります。すなわち、この制度は、当初の目的である法人の自己資本の充実に何ら貢献せず、いたずらに大企業の税負担を軽減する役割りしか果たしていないからであります。そこで、法人税法改正案の附則の修正により、租税特別措置法の一部を改正することとし、この配当軽課制度を全廃することといたしております。
また、交際費課税の強化につきましては、資本金基準の引き下げだけではなお不十分と考えられますので、四百万円の限度を三百万円に引き下げ、損金不算入割合を九〇%に引き上げることといたしております。
なお、同措置法で定められている特定医療法人の税率につきましては、前に申し述べました法人税率の引き下げと関連して、二三%から一八%に引き下げることとしております。
以上が修正案の概要であります。
何とぞ、御審議の上、御賛成賜わりますようお願い申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/67
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068・安倍晋太郎
○安倍委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/68
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069・安倍晋太郎
○安倍委員長 これより各原案及び法人税法の一部を改正する法律案に対する修正案を一括して討論に入ります。
討論の通告がありますので、順次これを許します。小泉純一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/69
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070・小泉純一郎
○小泉委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法及び災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案に賛成、日本社会党、公明党及び民社党の三党共同提案にかかる法人税法の一部を改正する法律案に対する修正案に反対の意向を表明するものであります。
〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕
今回の所得税法等改正案におきまして、まず第一にあげるべきは、給与所得者に対する大減税であります。すなわち、人的控除の引き上げ、給与所得控除の大幅な引き上げ及び税率の緩和により、初年度実に一兆四千五百億円という通常の年の五倍にも達する大規模減税を実施することにしているのであります。
改正による課税最低限は、夫婦子二人の給与所得者の場合は平年分で現行の百十四万九千円から百七十万七千円に引き上げられ、西欧諸国はもちろん、米国のそれをはるかにこえる高い水準に達しております。したがって改正案は、従来からのサラリーマン減税についての強い世論に積極的にこたえたものといえるのであります。
次に、各所得控除の内容でありますが、人的控除のうち扶養控除の八万円という大幅引き上げは、扶養親族について教育費のかかることを考慮したものであり、老人扶養控除の九万円の引き上げは、社会福祉の見地からの配慮であり、給与所得控除で五十万円の最低控除額を定めたことは、未成年者に税金がかからないようにするための努力のあらわれであって、いずれも適切な措置と認められるのであります。
なお、給与所得控除について、控除限度額の頭打ちをはずしていることは、この控除を必要経費の概算控除と認識する以上、給与所得と他の所得とのバランスをとる意味において必要な措置であると考える次第であります。
さらに、現行の課税所得二千万以下について税率の緩和をはかっていることは、毎年の所得増とそれに伴う所得控除の引き上げで累進構造がいびつになっているところを是正するものであって、この大幅減税の機会にそれを実施するのは時宜に適した改正であると考えるものであります。
その他退職所得について、特別控除額の引き上げにより勤続三十五年の場合の非課税限度額を一千万円に引き上げていること、白色申告の場合の専従者控除を大幅に引き上げていること等いずれも妥当な措置であります。
〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕
次に、法人税法改正案でありますが、法人税の基本税率四〇%への引き上げは、法人の税負担の適正化をはかる見地から時代の要請にこたえたきわめて適切な措置であり、さきに申し述べました給与所得税の大幅減税と並んで、本年度税制改正の二大重点事項の一つといえるものであります。しかも、中小法人につきましては、一般的な増税にもかかわらず軽減税率を据え置きとし、さらにその適用所得の限度を三百万円から七百万円に引き上げておりますことは、その適用範囲を大きく拡大することとなり、中小企業に対する配慮は十分に尽くされているのであります。
また、昨年度及び一昨年度に引き続き同族会社の留保金課税について、その定額控除額の引き上げを行ない、一千万円に倍増させていることは、広範囲にわたって中小企業法人の税負担を軽減し、その内部留保の充実をはかるものとして重要な改正であります。
そのほか、中間申告書の提出不要限度を十万円に引き上げていること、政令改正により金融機関の貸し倒れ引き当て金の繰り入れ率を千分の十に引き下げていること、賞与引き当て金について引き当て額の計算の合理化をはかっていること等いずれも実情に即した妥当な措置といえるのであります。
次に、租税特別措置法改正案におきましては、まず法人税の配当軽課税率について引き上げを行なっておりますが、これは基本税率の引き上げと同様にきわめて重要な改正であります。
また、自動車関係諸税、すなわち、揮発油税、地方道路税及び自動車重量税の引き上げは、現今の石油情勢のもとにおいて資源の節約と消費の抑制をはかるとともに、道路財源を充実するものとして、当を得た措置であると考えます。
さらに交際費課税について、損金算入の資本金基準の引き下げを行なっておりますことは、問題となっております大企業の社用支出を抑制し、世論の強い要請にこたえるものでありますから、交際費課税強化の顕著な前進と考えられるのであります。
また、勤労者財産形成貯蓄について、その非課税限度額を大幅に引き上げ、また住宅貯蓄控除の限度額を引き上げておりますことは、当今の課題である勤労者財産形成政策を推進する意味において、時宜に適したものであります。
そのほか、公害対策、中小企業対策、農林漁業対策、宅地対策等のための所要の改正は、いずれも妥当なものとして認められます。
次に、日本社会党、公明党及び民社党共同提案にかかる修正案について申し上げます。
法人税における中小法人の軽減税率の引き下げ等につきましては、今回は基本税率等の引き上げを行なう時期であり、軽減税率についてもその適用範囲の拡大をはかることとしているのでありますから、政府原案のとおりでよいものと考えます。
次に、配当軽課制度の廃止は、その影響の大きさから見て慎重に検討すべきものであり、受け取り配当等の益金不算入制度の廃止につきましては、二重課税の問題についてさらに検討する必要があり、単なる考え方の転換だけで廃止を行なうべきものではないのであります。
また、交際費課税の強化は、政府原案で十分であり、修正案は中小企業者に多大の犠牲をしいることになり、反対であります。
さらに、寄付金の損金算入限度の引き下げにつきましては、元来寄付金は会社経営上必要なものであり、その限度は現行ぐらいが適当と考えられますので、引き下げに賛成するわけにはいかないのであります。
以上申し述べました理由により、私は三法律案に賛成し、日本社会党、公明党及び民社党共同提案にかかる修正案に反対するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/70
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071・安倍晋太郎
○安倍委員長 塚田庄平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/71
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072・塚田庄平
○塚田委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました政府提案にかかる各原案に対して反対し、日本社会党、公明党、民社党の共同提案の修正案に賛成の討論を行なうものであります。
政府がいわゆる二兆円減税として提案しております所得税法の改正案の内容は、一口でいえば、勤労大衆、低所得層には重く、高額所得層、資産所得者には軽いという現行所得税制の欠陥を正すものではなく、現在の矛盾をさらに拡大するものとなっているのであります。
すなわち、給与所得者の標準世帯の課税最低限を来年度百五十万円に引き上げることをもって、欧米水準に比較しても低くなく、低所得層には大きな減税効果があると主張していますが、勤労者の生活実態から見るならば、依然として税負担は重いことに変わりはないのであります。四十八年家計調査の五分位階級別収入の第一分位の実収入相当額が四十八年度の課税最低限であり、課税最低限と生活費との関係をあいまいにした状態で、引き上げ額を誇大に宣伝するのは国民を愚弄するものであります。租税原則、特に所得税の課税においては応能原則こそ厳格に守られなければならず、その具体化としての生活費非課税の原則がいまこそ確立されるべきであります。
年収百五十万、月収十二万五千円をこえると所得税がかかるといった水準は、やはり第一分位の実収入額に当たるものであろう。賃金引き上げは狂乱物価のあと追いでしかなく、その上に課税最低限も低いとなれば、決して勤労大衆の税負担の軽減にはならないのであります。
第二には、その減税方式がきわめて不公平なものであり、高額所得者ほど減税の恩典は大きいことであります。
給与所得者の不当な源泉徴収制度に対する戦いの中で、給与所得者にも必要経費を認めよとの要求を逆手にとり、一方で現行給与所得控除の性格を明確にすることなく、給与所得控除にいうところの青天井を設けるというのは、まことに悪質な税制改革と断定せざるを得ないのであります。しかも、税率緩和を三千万円層まで広げるといった二重の反勤労所得減税を実施するものとなっており、このため、一千万円の給与所得者は九十一万円、二百万円の者は四万五千円の減税を受けることになるのであります。この減税の不合理な一面をいえば、前者は国から九%の利子を受け、後者は二%強の利子を受けたともいえるのであります。富める者には多く、乏しい者にはより少なく、文字どおり高額所得者にとって、青天井の重役減税方式なのであります。
第三には、物価上昇は政府見通しの九・六%ではとうていおさまらず、名目所得の上昇が実質所得の上昇とならない事例はすでに四十八年の勤労者の実質賃金四%減との報告に見られ、この傾向は四十九年にも継続することは明らかであります。実質賃金は下がり、他方で税負担は高まるのは必定であり、この減税案では低所得層ほど物価調整減税すら受けられなく、ましてや実質減税とは無縁なものとなるのであります。
政府の所得税改正案は、このような重大な問題点を持っており、賛成できず、野党四党共同提案している所得税の特例法案の成立こそ、現在勤労大衆の要望している減税案なのであります。
次に、法人税法につきましては、いま、わが国税制改革の主要な柱となっている企業課税のあり方、法人重課の基本認識を欠き、企業悪の声すら聞かれる国民不満の激しさにも耳をかすことなく、企業第一、財界奉仕の改正案となっており、全く容認できないのであります。
欧米諸国の法人の実効税負担率がそれぞれ五〇%前後であるのに比較し、わが国は四五%の低さにあったのを、曲がりなりにも基本税率を四〇%に引き上げ、実効税率も四九%にするとしていますが、実質負担率は、配当軽課措置あるいは特別措置によって資本金百億円をこえると政府試算でも三五%前後となるのではないか、こう考えておるのであります。
今回の改正内容に即しても、昭和三十六年の高度成長型税制から生まれた軽減税率の存続を認め、その限りでは高度経済成長路線上の法人税制であり、経済政策の転換の欺瞞がここでも暴露されているのであります。総需要抑制の中軸は、企業の過剰資金を吸収することであり、そのための法人税制が必要とされており、四〇%への税率引き上げだけで企業優遇税制が免罪されるものではないのであります。
この点で、政府が当初要求した配当軽課税率三〇%への引き上げが、財界の圧力で一年間だけとはいえ二%押し下げられたことは、政府から財界への減税、財界が力で奪い取った減税にほかならないのであります。その減税額は数百億円は下らず、しかも大企業になればなるほど配当性向が高いのであって、この二%減税は大企業本位のものであります。
インフレ物価、殺人物価の中で生活を圧迫されているインフレ弱者救済のため、政府は生活保護世帯など約七百万人を対象にインフレ手当を百二十億ばかり支出するといわれています。一人約二千円にしかならないのです。企業への奉仕ではなく、低劣な社会保障制度のもとで呻吟している人々にこそ、政府はあたたかい手を差し伸べるべきであり、それ以外の税制の利用は許されないのであります。財源がないのではなく、あるところから取り、求めるところに与えない誤れる税制の運用、所得再分配機能の悪用が、社会の不公正をもたらしているのであります。
中小企業の税率を据え置いたといっても、経済政策、税財政政策の観点からではなく、全くの政治的対策が優先した措置にすぎないことは明白な事実であります。
かかる法人税法の改正案には賛成できるものではありません。
租税特別措置でありますが、それが隠れた補助金といわれ、税負担の公平を乱すだけでなく、現在その項目は百五十二を数え、税務当局ですらその実態を完全に把握できず、それだけに企業にとってはメリットのある減免税制度なのであります。安易な、しかも企業重点の特別措置は全廃の方針をとるよう要求してきているにもかかわらず、従来の路線を踏襲しているのであります。
四十八年度に期限到来で本来廃止すべき特別措置が二十九種、そのうち廃止に踏み切ったもの四種、単純延長が二十種、拡大延長五種と、特別措置温存の姿勢は改まってはおらず、減免税額は交際費特例による増税分を除き七千二百七十億円の巨額に及んでいるのであります。中でも、税制調査会で税制改正作業過程ではその廃止が答申されるかの様相を呈しながら、結局は次年度以降に繰り越され、かつ不公平税制の典型でもある社会保険診療報酬の特例措置で千五十億円も一握りの集団に減税の恩典が与えられていたり、あるいは配当所得課税の特例によって四百九十億円も減税を行ない、配当所得だけの四人家族では年収三百五十七万円まで所得税はかからない不公平をもたらしているのであり、かかる社会的不正義は許さるべきものではありません。
企業関係の特別措置は内部留保の充実、企業体質の強化、技術の振興などから、環境改善、地域開発、資源開発などにその内容を移行させてきていますが、四十七年度末の準備金残高は一兆六千億、期中積み増しは二千三百億で、特別償却と合わせると約六千億、税額で二千二百億の減税を行なっているのであります。
実質的な特別措置である貸し倒れ引き当て金、退職引き当て金の四十七年度末残高は四兆円をこえており、企業の合法的逋脱は膨大なものになっておるのであります。
今回の租税特別措置法で、自動車関係諸税の引き上げを二年間の暫定措置として行なうのは、現在の第七次道路整備計画が日本列島改造計画に組み込まれているものであり、道路中心の公共事業投資に固執した政策の推進のあらわれと、こう見ざるを得ないのであります。すみやかに撤回することを要求いたします。
また、貯蓄の奨励、勤労者財産形成、住宅対策として、非課税限度額の引き上げ、控除の拡大を行なっておりますが、勤労者の貯蓄額、住宅取得の困難さ等を考えるとき、本来政治が責任をもつて行なうべき行政を個人の責任に転嫁するという危険な税制の姿があらわれてきていることに注意しなければならないのであります。
福田大蔵大臣みずから、土地成金の発生と法人の土地投機に道を開き、国民には一段ときびしい物価高と住宅難をもたらした土地税制に対しては手を触れることなく、これまた次年度以降に持ち越すなど、二重にも三重にも租税特別措置の制度を悪用しているのであります。
これに対しまして、社会党、公明党、民社党提案の修正案では、法人の受け取り配当の益金不算入制度の廃止を主張しておりますが、これは法人擬制説から法人実在説的な考え方をとり、法人の受け取り配当も課税の対象とすべきものだとするもので、法人の持ち株比率が高まり、法人独自の税負担能力に立った法人税率のあり方を検討すべき今日、当然の修正事項というべきであります。
以上申し述べました理由から、政府提案にかかる諸原案に反対し、日本社会党、公明党、民社党提案にかかる修正案に賛成して、私の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/72
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073・安倍晋太郎
○安倍委員長 小林政子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/73
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074・小林政子
○小林(政)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提案の所得税法、法人税法、租税特別措置法三法の各一部改正案につき反対、日本社会党、公明党、民社党共同提案の法人税法の一部修正案に賛成の態度を表明し、討論を行ないます。
政府が広範な国民の要望を無視して石油製品再値上げを実施した今日、国民の前には米騒動時にも匹敵する未曽有の物価値上げによる生活の危機が迫っているのであります。このような現在の緊急政治課題の一つは、未曽有な物価上昇を押えること、そして生活破壊にさらされている国民、とりわけ経済的弱者を救済することにあることは全く明白であります。このようなときに、経済政策の重要な柱の一つである租税政策は、この緊急課題を遂行して国民の期待にこたえるものでなければなりません。しかし、政府提案の租税三法改正案は、依然として大企業と高額所得者優遇の税制を維持しあるいは強化して、国民の期待に背を向けているのであります。
この国民の期待にこたえる道は、わが党を含む野党四党が提案している昭和四十八年分の所得税の臨時特例法、昭和四十九年分の所得税の臨時特例法の各法案をすみやかに可決し、年度内減税を実行し、昭和四十九年度においても真の大衆減税を実行することであります。わが党はこの実現を強く要望するものであります。
次に、政府提案の各案に反対する理由について申し述べます。
所得税法改正案について、第一は、基礎控除、配偶者控除、扶養控除がそれぞれ二十四万円というきわめて低い額に押えられたことであります。このため、白色事業所得者の四人家族の課税最低限は約百万円程度であることにも示されているように、生活費に大きく食い込む課税が何ら改善されていないばかりか、すさまじいインフレ下での貨幣価値の著しい下落を考えるならば、生活費に食い込む課税が一そう強化されているのであります。
さらに、給与所得控除について、若年勤労者の減税対策としての五十万円の最低控除額と引きかえに、高額所得者に対する従来の頭打ち制度を廃止しようとしていることであります。これが実現されるなら、たとえば、二千万円収入のある人は三百五万円の控除額、収入三千万円の人では四百五万円もの控除が行なわれることになり、高額所得者には税制上独身者の生活費とされている基礎控除額の十倍から二十倍もの必要経費が認められるという、全く不当なことが承認されるのであります。しかも、政府は、高額所得者にこれだけ必要経費を認めるといっていながら、何らの実態調査もしていないのであります。したがって、このような高額所得者の給与所得控除は虚構であり、サラリーマンの必要経費の概算控除という制度の趣旨も踏みにじるものといわなければなりません。
第三に、税率緩和についてであります。これが所得税の基本的使命である高度累進制に逆行するものであり、給与所得控除の頭打ち廃止とあわせて、所得税制の応能負担の原則に反するものであることは明らかであります。
以上述べてきたような要因によって、今回の減税は高額所得者に集中し、低額所得者にはその効果が薄く、重役減税、高額所得者優遇の減税であるといわなければなりません。
次に、法人税法、租税特別措置法の各改正案についてであります。
企業課税についていま国民が強く求めているのは、減税効果が大企業に集中している引き当て金、準備金、特別償却などの特権的減免税を廃止して大企業の横暴の主要な原因である過剰資金を吸収し、悪徳商法で荒かせぎをした不当利益を吐き出させるために大企業に適正な税負担を求めることにあるのであります。しかるに、政府は、この国民の要求にこたえようとしていないのであります。
第一に、全く実体がなく利益隠しの役割りしか果たしていない価格変動準備金、貸し倒れ引き当て金などを存続し、公害防止準備金は対象業種の拡大、さらに物価狂乱に主要な役割りを果たした商品取引所の会員にだけ適用される商品取引責任準備金の期限の延長、旧重要合理化機械の特別償却の対象設備が半数を占める無公害化生産設備の特別償却の対象の拡大、為替差損の救済策の強化などが行なわれると同時に、配当軽課制度をもそのまま存続させていることであります。
また、法人税の基本税率の改正について、大企業の税負担は課税所得が増加されなければ税負担は強化されないのであります。具体的に見るなら、たとえば、昭和四十八年上期決算において新日鉄は、引き当て金、準備金の積み増しと特別償却だけで六百十九億円も利益隠しを実施しているのであります。
さきに述べたように、引き当て金、準備金、特別償却、配当軽課措置などが存続あるいは強化されたことにより、大企業の利益隠し、すなわち課税所得の恣意的縮小の道が残されたままの基本税率の引き上げは、大企業の実質税負担を高めることにはならないだけではなく、国民に対して大企業の増税を実施したような印象を与え、大企業の横暴と反社会的行為を免罪する効果を持つ以外の何ものでもありません。
以上、政府案は、同族会社に対する課税の軽減というきわめて限られた改良はあっても、大企業の特権的減免税の大宗が維持され、強化されていることに重点が置かれており、それは東京都の調査で明らかにされているように、法人税は逆累進であるという大企業優遇税制がむしろ強化されているのであります。
わが党は、このような改正ではなく、資本金十億円以上の大企業の特権的減免税を廃止し、法人税率も四三%以上に引き上げ、中小法人の税率を五%引き下げて累進税率を取り入れ、大法人に適正な税負担をさせることを強く要求するものであります。
最後に、揮発油税、地方道路税、自動車重量税の増税は、中小業者の営業にとって不可欠なライトバン車などに一・四倍の引き上げが行なわれる。明らかにこれは大衆課税の増税といわなければなりません。
ことに今回、石油製品価格の値上がりが物価高騰に一そう拍車をかけ、国民生活が危機に直面しているとき、自動車、石油関係諸税を引き上げることは、物価引き下げを願う国民要求から見ても相反するものといわなければなりません。
なお、日本社会党、公明党、民社党共同提出の法人税法一部修正案は、受け取り配当の益金不算人制度の廃止、中小企業の軽減税率の引き下げなど、わが党の政策に沿うものであり、賛成いたします。
以上、政府案三案に対する反対理由並びに社会党、公明党、民社党共同提出の法人税法一部修正案に対する賛成の理由を述べて、共産党・革新共同を代表する討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/74
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075・安倍晋太郎
○安倍委員長 広沢直樹君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/75
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076・広沢直樹
○広沢委員 私は、公明党を代表して、政府提案による所得税法の一部改正法案、法人税法の一部改正法案、租税特別措置法の一部改正法案について反対し、野党三党共同提案による法人税法改正案に対する修正案に賛成の討論を行なうものであります。
異常ともいえる物価高騰の中で、来年度税制改正に要請される課題が、大幅減税によって国民の税負担を軽減し、同時に、税負担の公平化を実現することであったことは周知のとおりであります。国民生活、福祉優先の福祉型税制への転換は、当面の急務であるはずであります。にもかかわらず、昭和四十九年度税制改正がその要請にこたえるどころか、むしろそれに逆行する内容となってしまったことはきわめて遺憾といわなければなりません。
まず、所得税法の一部改正法案についていえば、石油危機等のあおりを受けて実現が危ぶまれていたいわゆる二兆円減税の構想が何とか日の目を見るに至ったことは、一応評価できるものでありましょう。しかしながら、その内容は、課税最低限を夫婦子二人の四人世帯で初年度百五十万円まで引き上げたにすぎず、この程度の減税では、年度内減税が見送られたばかりか、現在の異常ともいえる物価高騰にきびしい生活を余儀なくされている国民生活を配慮したとはいえないのであります。しかも、来年度は、米価、国鉄運賃、医療費、バス等公共料金の引き上げが予定されており、その政府主導のインフレ、高物価によって、今回の所得税減税が全くの焼け石に水ともなりかねないのであります。
さらに指摘しなければならないことは、今回の所得税減税において年間所得三千万円前後の高額所得者にまで累進税率を緩和し、給与所得控除の上限をなくし、年収六百万円をこす高額所得者に一挙に一〇%を控除するといういわゆる重役減税、金持ち減税がまかり通ってしまったことであります。これでは高額所得者ほど税負担が低下している逆累進の傾向をさらに助長し、税の不公平をますます拡大するものといわなければなりません。むしろ、ことしこそ、中、低所得者に重点を置いて、下に厚い所得税減税を実現すべきであったのであります。そういう意味で、先日の野党四党共同提案による所得税の臨時特例措置こそ実現すべきであります。
次に、法人税の一部改正法案、租税特別措置法の一部改正法案について申し上げます。
わが国経済は、高福祉社会実現のために、今日ほど民間設備投資主導の成長から生活環境資本や社会保障充実のための財政主導の経済へと転換を急がなければならないときはないのであります。そういう意味で、欧米諸国に比べて著しく低水準にあり、しかも、これまで高度成長、生産第一主義の中で優遇し続けてきた大企業の法人税の負担の強化こそ実現しなければならないわけであります。
しかるに、政府は、口では経済政策の転換を言いながら、円切り上げのときと同様に、石油危機の発生で極度な不況の前宣伝をし、法人税増徴を中途半端に終わらせてしまっております。法人税負担の現状が、資本金一億円前後以下の中小企業よりも資本金百億円以上の大企業のほうが少ないという法人税負担の逆累進的実態からいっても、さらに減価償却費や受け取り配当など特別措置によって大企業が想像以上に手厚い保護を受けていることからいっても、大企業法人税率は少なくとも四二%以上に引き上げるべきであったのであります。
さらに、配当軽課措置については、その目的とする自己資本充実は、充実どころかむしろ低下の一途をたどっており、その実情からいっても、配当分についても基本税率に一本化すべきであります。にもかかわらず、基本税率は四〇%にとどまり、配当分については当初の一年間は二八%、その後は三〇%にとどまってしまったことはきわめて遺憾であり、今回の法人税法の一部改正に納得しがたいところであります。
また、わが国経済の高度成長が大企業優先の租税特別措置によってはかられた反面、企業と給与所得者、大企業と中小企業の間に大きな格差をもたらしたことは明らかであります。
わが党は、かねてより現行税制の不合理の根源ともいうべき租税特別措置の徹底的な洗い直しを主張してまいりましたが、今回それが一向に見られず、利子、配当所得に対する優遇措置、法人の受け取り配当に対する減免措置をそのままにして、大企業優先、資産所得者優遇の不公平税制を温存してしまったことは、きわめて遺憾であります。
最後に、三党共同提案による修正案は、中小企業の法人税率を引き下げ、配当軽課措置と受け取り配当の益金不算入制度を廃止するほか、寄付金の損金算入限度の引き下げを行ない、交際費課税の一そうの強化をはかることとしておりますが、いずれも適切な措置と考えられるのであります。
以上の理由により、租税三法改正案に反対し、野党三党共同提案による修正案に賛成の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/76
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077・安倍晋太郎
○安倍委員長 竹本孫一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/77
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078・竹本孫一
○竹本委員 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法、法人税法及び租税特別措置法の各一部改正法律案に反対、社公民三党提案にかかる法人税法の一部改正法律案に対する修正案に賛成の討論を行なうものであります。
今回の所得税減税は、初年度一兆四千五百億円を減税するという大型減税であり、量的には一応評価されるのでありますが、質的、内容的には賛成いたしかねる点が多いのであります。
すなわち、政府案においては、給与所得控除額の限度額七十六万円の頭打ちをはずして、いわゆる青天井の制度をつくる。また三千万円、二千万円の所得階級には非常に厚い減税をやる。これらのことは明らかに高額所得者優遇の減税であります。
次に、法人税法改正案については、基本税率を四〇%へ引き上げたことは、法人の税負担の適正化をはかる見地から一応評価するものでありますが、支払い配当の軽課制度や受け取り配当の益金不算入制度等、法人税制の基本的な問題について、いまだ十分な検討が加えられておりません。また収入が多い、あるいは急にふえた法人に対する税制のかまえが十分にできておりません。このことは、問題の臨時利得税の必要が叫ばれるゆえんでもあります。法人税全体についての総合的な検討が必要であろうと思います。
さらに、租税特別措置法改正案につきましては、すでに社会党、公明党の皆さんの論議された点については全く同感であります。ただ、自動車関係諸税、すなわち揮発油税、地方道路税及び自動車重量税の税率を一斉に引き上げるということは、自動車のユーザーとメーカー、それに自動車関連の中小企業にも深刻な打撃を与えるものでありまして、これは取りやすいところから税を取るというやり方であって、非常に遺憾であります。特に、今日のように経済情勢が全く一変したときに、何らの政治的な再検討を行なうことなく原案を強行するということには問題があります。
わが国の交通基本政策もいまだ確立されておらず、また、道路整備計画そのものの再検討も論議されておるような段階において、さらにいま申しました不況深刻化の今日の情勢の中で、多くの自動車関係諸税も一斉に引き上げるということは、本末転倒といわなければなりません。
以上の理由によりまして、政府提出にかかる租税三法の原案に反対するものであります。
社公民三党提案にかかる法人税法の修正案につきましては、中小法人の税負担の軽減をはかるために税率をさらに五%引き下げる、あるいは交際費課税を強化する等、まことに時宜に適した妥当な措置でありまして、賛成であります。
以上、政府三原案に対しては反対、社公民三党の修正案に対しては賛成の意向を表明して、私の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/78
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079・安倍晋太郎
○安倍委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより順次採決に入ります。
まず、所得税法及び災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/79
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080・安倍晋太郎
○安倍委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。
次に、法人税法の一部を改正する法律案について採決いたします。
まず、山田耻目君外二名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/80
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081・安倍晋太郎
○安倍委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
次に、原案について採決いたします。
原案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/81
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082・安倍晋太郎
○安倍委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。
次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/82
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083・安倍晋太郎
○安倍委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/83
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084・安倍晋太郎
○安倍委員長 ただいま議決いたしました所得税法及び災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表して森美秀君外三名より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
この際、提出者より趣旨の説明を求めます。山田耻目君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/84
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085・山田耻目
○山田(耻)委員 ただいま議題となりました所得税法及び災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表し、私よりその趣旨を御説明申し上げます。
まず、案文を申し上げます。
所得税法及び災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、左記事項につき、十分配慮すべきである。
一、医療費控除については、いわゆる足切り限度額を昭和五十年度の税制改正において引下げ、負担の軽減を図るべきである。
一、通勤手当の非課税限度額については、通勤の実情の推移に応じ、適宜見直しを行うべきである。
一、深夜労働に伴う割増賃金については、一定の非課税限度を設けることの是非について検討すべきである。
一、有価証券の譲渡所得の非課税及び配当所得の課税制度のあり方については、所要の改善措置につき検討すべきである。
一、各種準備金等の租税特別措置については、その実績の把握に努め、政策目的を達成したもの及びその政策効果がみられないものについては、速かに整理合理化を行うべきである。
一、年金に対する課税については、将来の年金制度のあり方とも関連せしめつつ、その負担の軽減についてさらに検討すべきである。
一、社会保険診療報酬の課税の特例については、社会保険診療報酬のあり方との関連をも含めて、早急に税制調査会の答申を求め、適正な解決を図るべきである。
以上であります。
提案の趣旨といたしましては、法案の審査の中で概要つまびらかにされたところでもあり、大要案文で尽きているものと考えられますので、省略いたします。
以上、簡単でありますが、各位の御賛同をお願い申し上げ、御報告といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/85
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086・安倍晋太郎
○安倍委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
おはかりいたします。
本動議のごとく附帯決議を付するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/86
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087・安倍晋太郎
○安倍委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。福田大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/87
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088・福田赳夫
○福田国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしまして、御趣旨に沿って十分配慮いたします。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/88
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089・安倍晋太郎
○安倍委員長 おはかりいたします。
ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/89
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090・安倍晋太郎
○安倍委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/90
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091・安倍晋太郎
○安倍委員長 次回は、来たる二十六日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後八時六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204629X02219740322/91
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